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1980-04-03 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月三日(木曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 津川 武一君    理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    佐藤 信二君       佐藤  隆君    菅波  茂君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       玉沢徳一郎君    福島 譲二君       堀之内久男君    新村 源雄君       日野 市朗君    細谷 昭雄君       瀬野栄次郎君    武田 一夫君       中川利三郎君    中林 佳子君       近藤  豊君    阿部 昭吾君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         通商産業大臣官         房長      杉山 和男君         通商産業省生活         産業局長    児玉 清隆君  委員外出席者         外務省北米局北         米第二課長   小倉 和夫君         外務省経済協力         局外務参事官  後藤 利雄君         大蔵省関税局輸         入課長     中島  潔君         農林水産大臣官         房企画室長   鴻巣 健治君         水産庁振興部長 佐竹 五六君         水産庁海洋漁業         部遠洋課長   上田 大和君         通商産業省貿易         局輸出課長   北川  正君         通商産業省貿易         局農水課長  古澤松之丞君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、五十五年度畜産物価格等決定について、政府から説明を聴取いたします。犬伏畜産局長
  3. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 昭和五十五年度の畜産物安定価格等をこのたび決定をし、去る三月三十一日付で告示いたしましたので、その内容及び関連施策につきまして御報告申し上げます。  まず、指定食肉安定価格につきましては、去る三月二十七日に畜産振興審議会答申をお手元に配付してあります資料一のとおりいただいたところであります。  答申は、「指定食肉生産条件及び需給事情その他の経済事情を総合的に考慮すると、試算に示された考え方でその安定価格を決めることは止むを得ない。」という内容でありまして、あわせて、豚肉肉質改善対策の強化、養豚経営安定対策肥育素牛安定供給食肉流通改善対策等、七項目にわたる建議をいただいております。  この答申を受けまして、資料二のように、畜産振興審議会に提示いたしました試算値のとおり指定食肉安定価格決定いたしました。すなわち、去勢和牛肉につきましては、安定基準価格枝肉キログラム当たり千三百五十七円、前年度比四・一%の上昇であり、安定上位価格は千七百六十三円で、前年度比一・九%の上昇となっております。その他の去勢牛肉につきましては、安定基準価格が千百五円、安定上位価格は千四百三十五円、前年度対比上昇率去勢和牛肉同一であります。なお、安定価格帯変動幅につきまして、去勢和牛肉及びその他去勢牛肉とも従来一四・一%でありましたものを一三%としております。  次に、豚肉につきましては、皮はぎ法により整形したものの安定基準価格は、枝肉キログラム当たり五百八十八円で、前年度を二・二%下回っておりますが、安定上位価格は七百六十四円で、前年度比三・九%の上昇となっております。なお、これに伴い、差額関税制度における基準輸入価格は六百七十六円で、前年度比一・二%の上昇となっております。湯はぎ法により整形したものの安定基準価格は五百四十七円、安定上位価格は七百十一円、基準輸入価格は六百二十九円で、前年度対比は、いずれも皮はぎ法により整形したものと同一であります。また、安定価格帯変動幅につきましては、従来一〇%でありましたものを一三%といたしております。  なお、安定価格決定の際にあわせて決定いたしました関連対策概要につき御説明申し上げます。  まず、子牛生産奨励対策といたしましては、将来その価格状況に応じて奨励金を支払うための基金として五十五億円を積み立てることとしているほか、子牛生産に一頭当たり一万五千円の奨励金を交付することとしております。  また、豚肉関係につきましては、養豚経営安定推進組織等を通じた豚肉計画生産及び品質改善推進のため二億円助成することといたしておりますほか、優良繁殖豚の導入及び養豚農家負債軽減等のため低利融資措置を講ずることとし、融資枠百五十億円で、末端金利五%、償還期限五年の融資を予定しております。  食肉流通消費改善対策につきましては、牛肉値下げルート新設事業等を進めることとし、四十三億円の助成を見込んでいるところであります。  次に、昭和五十五年度の加工原料乳保証価格等につきましては、去る三月二十八日に畜産振興審議会答申を、お手元に配付してあります資料三のとおりいただいたところであります。  答申は、「牛乳及び乳製品需給事情については、今後とも過剰基調が続くものと考えられるので、在庫の推移並びに現在生産者が自主的に実施している計画生産遂行の意欲を阻害しないようにすることを十分配慮して、価格及び数量を適正に定めること。」という内容でありまして、あわせて、牛乳乳製品消費拡大対策国産ナチュラルチーズ振興策酪農経営安定対策乳製品輸入対策等、六項目にわたる建議をいただいております。  この答申を受けまして、その趣旨に即し慎重に検討いたしました結果、資料四のように加工原料乳保証価格等決定いたしました。すなわち、加工原料乳保証価格は前年度と同額キログラム当たり八十八円八十七銭、基準取引価格は同じく前年度と同額キログラム当たり六十四円三十銭、指定乳製品安定指標価格は同じく前年度と同額の、バター一キログラム当たり千二百五十三円、脱脂粉乳二十五キログラム当たり一万二千五百三十円、全脂加糖練乳二十四・五キログラム当たり八千六百二十円、脱脂加糖練乳二十五・五キログラム当たり七千六百十円と決定いたしました。  また、生産者補給交付金に係る加工原料乳数量最高限度、いわゆる限度数量につきましては、審議会答申趣旨を慎重に検討いたしました結果、前年度と同量の百九十三万トンをもって限度数量と定めたところであります。  なお、加工原料乳保証価格等決定に際しあわせて決定いたしました関連対策概要につき御説明申し上げます。  まず、生乳需給均衡の回復を図るため、五十四年度に引き続き生乳需給調整対策として三十三億円の助成を行うことといたしております。  また、酪農経営安定対策として、酪農経営改善合理化負債軽減を図るため、低利融資措置を講ずることとし、融資枠三百億円で、末端金利五%、償還期限五年の融資を予定しております。  さらに、生乳需要拡大対策の一環として、国産ナチュラルチーズ振興対策について、前向きに検討し、早急に結論を得ることといたしております。  以上をもちまして御報告を終わらせていただきます。
  4. 内海英男

    内海委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  5. 内海英男

    内海委員長 農林水産業振興に関する件について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤隆君。
  6. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 私は、すぐせんだって五十五年度の繭糸価格が一応決まりましたので、この機会に伝統的な産業民族衣装ともいうべき、かつては輸出の花形であった絹業が非常に衰退をして今日に至っておる。しかも、その原料を供給する養蚕農家がこれまた営農上非常に苦労をしておる。この現実の中で、養蚕農家水田利用再編絡み、このことでもまたいろいろ苦悩をしている、考えている。ところが、なかなか養蚕収支を償うような先行きというものが明らかになっていない。それぞれ不満がある。そして、どうやら事業団生糸一元輸入、このことに支えられておる現実。しかも一方、機屋さん関係はどうかというと、原料高製品安、そして不況、こういうことで経営が極端に圧迫されて、ここ何年来かずっと苦労をしておる。そういう中で、原料供給体制国内になければ日本絹業はあり得ない、こういうことで、蚕糸絹業一体という考え方が出てきております。われわれもまたそう言っている。  しかし、この蚕糸絹業一体ということについて、農林省通産省はそれぞれどう思っているのですか。局長、簡単に答えてください。
  7. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農林省におきまして、いわゆる蚕糸、繭、生糸を所管いたしまして、養蚕振興等を進めておるわけでございます。しかし、先生御案内のとおり、繭にいたしましても生糸にいたしましてもこれは中間生産物でございます。こういう生糸を使いまして絹織物等ができるわけでございます。そういう意味では、あくまでも蚕糸絹業共存共栄といいますか、ともに栄えることがどうしても必要であろう、そういう心組みを持ちまして、所管の蚕糸業振興等にも取り組んでおるわけでございます。
  8. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  わが国の養蚕業製糸業及び絹業はそれぞれ多くの就業人口を有しておりまして、いま先生指摘のように、長い伝統を持ってきました民族的なものでございますし、かつ地域経済を支える重要な産業であると認識をいたしております。養蚕業製糸業及び絹業は、一方が原材料供給者でありまして、他方はその需要者であるという非常に緊密な関係を持っております。したがいまして、これらの産業が発展いたしますためには、相互に調和ある発展と共存共栄を図っていくという観点からの行政を展開していく必要があると考えております。  このために、絹業を所管する通産省としましては、絹業振興を図ることはもちろんでございますけれども農林省一体となりまして、原材料供給者たる養蚕業製糸業相互に調和して発展するという側面に十分配慮しながら、今後とも努力してまいりたいと考えております。
  9. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 ここでいろいろ問題点指摘すると二時間くらいかかりますから、私は三十分なんだから、簡単に要点だけを申し上げますので、答えもいまのように簡単に答えてください。  私が言うのと同じような答弁がいまあったわけです。蚕糸絹業一体農林省通産省もそうお答えになった。ところが、どうなんでしょう。たとえば去年の事業団実需者売り渡しの年間三万俵。去年の十月から今日に至るまで四千俵しかやってないのです、農林省。三万俵の枠を取っておいて四千俵の実需者割り当て。このことについては絹業関係者は非常な不満があるわけですよ。今日までの取り運びを適切だとお考えですか。
  10. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話ございましたように、五十四年度の実需者売り渡しの枠は三万俵でございますが、昨年十月中旬以降四千俵やりました以外実需者売り渡し停止になって現在に至っておるという状況にございます。これにつきましては、実需者売り渡し輸入生糸売り渡しということになるわけでございます。現在の繭糸価格安定法によりますと、輸入生糸売り渡しによって国内糸価基準糸価を割るおそれがある場合は売り渡してはならぬという規定があるわけでございます。したがいまして、非常に糸価が低迷をし、中間買い入れを現在やっておるわけでございますが、そういう姿からいたしますと、いわゆる下べそといいますか、一万四千七百円、これの下を現在実勢糸価が低迷しておりますので、売り渡したいわけでございますが、法律との関連で、いまの仕組み関係でなかなか売り渡すわけにはまいらないということで、絹業者の方々は御不満の面もあろうかと思いますけれども、そういうことで実勢糸価が上向きになることを期待して現在見守っておるわけでございます。
  11. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 下べその理由はよくわかるのですよ。だから、決めてあるとおりにやっていっていいのか、それでいいのですか、こう言っているのですよ。糸の相場なんというのは、いろいろ動かし方があると言ったらちょっと言い過ぎになるけれども、いろいろあるじゃないですか。きょうはここでは言いませんよ。糸の相場はどこでどういうことに動かしているかわかっているのじゃないですか。どのつぼを押せばどういうことに誘導できるかぐらい農林省は知っているのじゃないですか。きょうはそこまでは言いませんよ。だから、一知恵も二知恵もまだ出さなければいかぬでしょう、こう言っている。だから一言答えなさいよ。
  12. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 現在、そういうことで実需者売り渡しが昨年の十月以降停止になっておるわけでございますけれども、いわゆる糸価に悪影響を与えないやり方で、なおかつ実需者売り渡しが可能だというような何かうまい手がないかということにつきましては、過般の蚕糸業振興審議会附帯決議にもそういう面を検討せよということもついておりますので、何とか知恵を出したいということで、現在いろいろ検討を進めておるところでございます。
  13. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 前々から考えることになっているのがいまだに結論が出てないから私はこう言うのです。急ぎなさい。いいですね。  通産省蚕糸絹業一体絹業振興を図ると言うけれども、去年の繊維統計速報一体何ですか。去年の六月に一億平米の在庫と発表しましたね。半年たったら八千万平米だというのです。統計というのはとり方でいろいろあるというけれどもとり方を変えたのですか。間違いなのですか。どっちなのですか。
  14. 杉山和男

    杉山(和)政府委員 統計に誤りがありましたことは深くおわび申し上げておるところであります。関係者に対しましては、誤った報告をよこしました事業所それから関係都道府県に対しましては厳重な注意をいたしましたが、調査統計部長等関係者を処分いたしました。なお、今後二度とこのような事態が生じないように、統計とり方、チェックの仕方について再検討をしたところでございます。
  15. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 下だけ処分したってだめですよ。行政が取り組む蚕糸絹業一体、そして絹業振興姿勢がなってないのですよ。もとをただせば行政改革にも触れることになりますけれども通産省農林省となわ張りがあって二元行政になっている、ここに問題があるのですよ。しかし、現実それは一本にせいと言ったってなかなかむずかしい話、そういう中でどういう知恵を出すかということは、あなた方が努力をしてくれなければうまくいくはずがないじゃないですか。そういう何となくむずかしいことはほっておこうという官僚の甘ったれた考え方がこういう問題を起こすのですよ。  こういう問題というのは、通産省事務次官のあの発言ですよ。けしからぬじゃないですか。発言真意はそういうことではなかった、撤回をいたします、撤回して済むのですか。しかも、通産大臣農林省にわび状を入れたというのだ。それで政府部内は一件落着、冗談じゃないですよ。これがもとで、行政への不信だけではない、政治への不信がまた新たにできてくるでしょう。それはだれが始末するのですか。その責任をわれわれがここで共通に感じなければいかぬから、私がこういう強い口調で言わなければいかぬのですよ。(「もっと強く言え」と呼ぶ者あり)きょうは野党よりは相当強く言っているのだ。いいですか。本当にいま養蚕農家でも絹業家の間でも、矢野次官発言しておる安楽死という言葉がなぜ出てきておるのですか。農政水田利用再編対策を進めていく上からもこれはただならぬことであると私は思っているのですよ。これは役所だけで一件落着、そうはまいりませんよ。私はここで、いま二つの点を一つ一つ通産農林各省指摘をいたしましたが、本当に真剣になって考えてくれなければ前に進まぬじゃないですか。あなた方の行政に取り組む姿勢を正すために、異例のことではあるけれども両省官房長に並んでもらったのです。帰ったらこのことを報告して、事務次官とゆっくり相談をしてください。いいですね。  きょうの日本農業新聞にも出ておるけれども矢野事務次官との一問一答の中に、矢野次官の、絹織物輸入規制、これは頭から否定はしていない、しかしそれにはいろいろなことを詰めなければならない、こういう発言があります。なるほどと思います。かつて、もう何年か前にも、生糸一元輸入とあわせて絹織物輸入規制もやらなければ意味がないではないか、こういうことを指摘してきたのです。政府がその気にならなければわれわれは議員立法をやる、こう言ってきたのです。先週の土曜日、わが党の農林部会では、議員立法も辞さず、この国会でやらなければならないという方向づけが了承されました。その方向づけを受けて、私はここで質問をしているのです。今度は真剣ですよ。  そこで、この矢野発言について、政府部内は一件落着したと言うけれども、広く生産者立場、あるいは政治に対する国民の見る目、そういうことから考えて、本当に終わったと言えますか。両方の官房長、終わっているか、終わっていないか、一言で。
  16. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 伝えられました通産事務次官発言処理につきましては、経過並びに処理を簡単に申しますと、通産大臣から農林大臣への釈明がございまして、私どもはその内容につきまして確認をいたしまして、行政組織両省といたしましては、この件については了承して、組織間の問題としてこれを公にいたしまして了解したということでございます。
  17. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 通産省も似たような答えになるからね。それでは不満です。いままで、わずかな時間だけれどもこれだけ私が質問しているのに、あなた方はいまこの場で考えてどう思われるのですか。各省を代表して、なるほどと思うぐらいのことを一言言えないのですか。なぜ国会でこれだけ問題になるのですか。広く考えなければならぬと思っております、それぐらいの答弁を言いなさいよ、官房長、一人ずつ。
  18. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 今回の発言釈明の中でも、農業を軽視しないということははっきり断言いたしましたし、当然のことでございますので、今回の問題は、私どもこれからの農政の衝に当たる者としましては一層心を引き締めて対処いたしたい、このように考えておりますし、各行政の分野におきましては、それぞれの問題を相互に率直に交換し合って当然対策をとっていくものだ、このような立場は確認したと考えております。
  19. 杉山和男

    杉山(和)政府委員 先生が御指摘になりました矢野発言でございますが、ただいまも先生からお話がありましたが、真意は、生糸一元輸入という問題はきわめて複雑な利害関係の絡まった大変むずかしい問題であるということを申し上げたわけでございます。ただ、その表現に妥当でない点があり、また、真意がそのまま伝えられなかったということに対しましては、おわびを申し上げたわけでございます。
  20. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 両省がそういうやりとりの中で一件落着をさせた。私ども不満足でありますので質問をしているわけです。しかし、どうやったらいいかわからないと言うなら教えましょう。謝って事が済んだと思うわけではないけれども、一応政府部内では処理をした、それは一応認めてもいい。しかし、謝っただけで、それでいいのでしょうか。これだけの騒ぎをしたときは、その騒ぎを起こしただけの価値があった、あんな騒ぎを起こしたけれども、あれがきっかけになって蚕糸絹業一体の方向へ進んでいったという実りが行政の中で出てこなければおかしいのじゃないですか。そういう意味で、謝っただけでは済まぬ。そのやりとりだけで政府部内で一件落着では困る。これがきっかけになって、両省でこんなことを考えていきたいということが出てこなければ、一件落着にならぬと言いたいのですよ。そうじゃないですか。なぜ、わびることと同時にそれが出てこないのか、それを私は残念に思うのです。  時間がないから、専門家のお役人には僣越でありますが、私が申し上げておきましょう。  矢野次官は、川上から川下まで一貫した形で考えなければならぬのだと言っているのです。これは農林通産両省を含めてのことですよ。川上から川下までというのはそういう意味です。それだったら、昨年来私自身も主張いたしましたが、シルクコンビナート蚕糸絹業一体養蚕農家製糸家絹業家も三者契約をして、本当に、ああこの原料でこういう糸ができてこういう織物ができるのだという、ある種の市場メカニズムまで吸収した形のコンビナート体制先行きが見えるやり方生産体制をつくったらどうかということで、蚕糸事業団にことしから予算化してもらいましたね、新潟県十日町一カ所。私は自分が言い出したことをここで誇らしげに押しつけるのじゃないのです。たとえばこういうようなことを本当に両省で考えよう、そして調査をし、検討をし、具体化をしていこう、日本国内における織物というものはこの程度需要、この程度繭生産、こういうことで見通しのつく決め方をやったらどうですか。そういう誘導指標をつくったらどうですか。こういう時期にそういうことをやらなければ、これだけ騒いだ意味がないじゃないですか。矢野次官の首までとろうなんという騒ぎもあるじゃないですか。しかし、私は、首をとっただけでは済まないと言っているのです。そういうことではないのです。必ずもめごとがあればよくなるのである、そういうことを信じなさいよ。そういう意味での一つの哲学を持ちなさいよ。そして、それを政策として具体化していったらどうですか。そのための一案としては、シルクコンビナートのような考え方をせっかく事業団がことしから具体化をしていくこのときに、この汗を流した経験を生かして、痛い思いをした、釈明もした、わびもしたという経験を生かして、そしてああよかったなと言われるようにやりましょうというそういうことをやってもらいたい。きょう帰られたら、両省事務次官同士話し合いをさせなさい。事務次官同士話し合いをきわめて事務的に、そして実需者割り当てのときだけ課長同士でごちゃごちゃ相談している、そんな蚕糸絹業一体じゃなくて、関係団体の意見を聞くのはもちろんですよ、しかし、役所自体でもってなわ張りが分かれているこの中で、そういう仕組みを、プロジェクトチームくらいつくったらどうですか。この成り行きを私は見守りながら、これ以上質問は保留をいたしておきますよ。いいですね。それはどうですか、農林省政務次官
  21. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 いろいろ御指摘がございましたけれども、現在日本養蚕業をめぐる環境は非常に厳しいわけでありますし、また絹織物業をめぐる環境も非常に厳しい、そういう中で、まさに蚕糸絹業一体として困難な問題を打開していくためには、相互の理解、相互協力が絶対条件でございますが、そういう中で矢野通産次官発言があったことは非常に遺憾である、かように私ども思っておるわけであります。  しかし、こういう状況でございますので、通産当局からもいろいろ反省の話もございますし、ひとつあえてこういう状況を奇貨として、いまいろいろ先生から御指摘がございましたような問題について、これまでもやってまいったつもりでございますが、さらに一歩も二歩も前進して、ともに養蚕絹業共存共栄できるための基盤つくりに全力を傾けてまいりたい、かように考えております。
  22. 杉山和男

    杉山(和)政府委員 御示唆に富んだお話をいろいろ伺いましたが、省という枠を超えまして常時密接に情報を交換し、また意見を闘わして考えていきたい、いくべきであるというふうに考えております。
  23. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 とにかくこの機会に両省がそういう方向に向かって形づくりをやるという決意のほどだ、こう受けとめますが、よろしいですね。そして私はそれを見守りますからね。もちろん、先ほど私が質問の中で触れました矢野さんがきのうある新聞社の記者との対談で言っている輸入規制、これを頭から否定するものではないということも含めて、いいですね、検討してくださいよ。これは雇用問題にも地場産業の育成にも全部関連があるのですから、時の重要な課題ですよ。事務次官同士話し合いをさせてください、いいですね。一言答えてください、念を押しておきますよ。
  24. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 非常に厳しい問題がございますし、それを一つ一つ解決していかなければならないということは先生も十分御理解だと思うわけでありますが、しかし、そういうむずかしい問題を解決していくのが政治でございますから、農林通産両省、この具体的な問題についてこれまで以上に話を詰めてまいりまして、できるだけ御要望に沿うような形で問題の解決を図ってまいりたい、かように考えております。
  25. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 これは政治の問題ではなくて、私は政治の問題として取り上げておりますが、行政にも踏み込んで質問しているわけですから、政治の問題としてでなくて行政の問題として、あなた政務次官だから、必ずそういうことで事務的にやらせます……。
  26. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 事務的にはもちろん詰めてまいります。
  27. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 いま御指摘いただきましたようなことを十分頭の中に置きまして、農林省一体となりまして熱心に研究してまいりたいと思います。
  28. 佐藤隆

    佐藤(隆)委員 以上いろいろ申し述べましたが、農林、通産の今後の具体的な取り組みを見守るために、残余の質問は保留をいたします。  どうもありがとうございました。
  29. 内海英男

    内海委員長 新村源雄君。
  30. 新村源雄

    ○新村(源)委員 ことしの農畜産物価格のはしりとして畜産物並びに酪農の価格が去る二十九日に決まったわけでございます。これが決まる前から、ことしはことに酪農製品あるいは豚肉等の在庫増という立場から、乳価についてもあるいは限度数量についても据え置く、こういうことが事前に流されておったわけです。  日本農業新聞の三月十八日の記事によりますと、もしことし乳価並びに限度数量が据え置かれたならば負債の返還もできないし、さらにこれから負債がどんどん増高していくだろう、こういう心配が出されておるわけです。さらにまた、二十九日に決まった後にも、これも四月一日の日本農業新聞で、全国的に牛あるいは豚あるいは養蚕、酪農各界にわたるところの不満が渦巻いておるわけです。  こういう事態を一体農林省はどういうように受けとめておられるのですか。価格決定されるというときに、このくらい農民が無念だ、あるいは不満が渦巻く、こういう記事が堂々と出るような状態をどういうように受けとめておられるか、政務次官の感想を聞きたい。
  31. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 加工原料乳保証価格また限度数量決定当たりましては、いま先生から御指摘がございましたように、酪農農家の方々の当面していらっしゃる問題、非常に厳しい状況を私たち十分にわかっておるわけでございますが、同時に、御案内のように需給問題につきましても、これも長期的な問題は問題として、当面短期的には過剰であり、また酪農製品の在庫もふえている、こういう状況でございますので、そういう状況の中で、生産農家の方々の少なくとも再生産だけは何とか確保していただけるための措置と同時に、短期的な需給の調整を何とか達成してまいりたい、こういう問題を同時に解決いたしたい、こういうことで、畜産振興審議会にも十分に諮った上で御案内の決定を見たような次第でございます。
  32. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次官、私の友人の息子さんが、高校を卒業するとすぐ北海道の遠浅という酪農先進地に約二カ年間実習をした、それからさらにアメリカに一年半実習をして、三月の中ごろに帰ってきたのです。当時、ただいま私が申し上げましたように、ことしの乳価をめぐる情勢が伝えられている、酪農家はことしの乳価の決まり方はどうなんだということで大きく見守っている、そういう時期にちょうど帰ってきたわけです。そういういまの酪農の情勢を踏まえて、高校を卒業してからいちずに酪農によってこれから将来身を立てていこう、こう思っておったのが、この厳しさにぶつかって、酪農はもういやだ、何かほかに職業を探していきたい、こういう情勢が出てきておるわけです。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 ですから、いままで農畜産物価格政策によって、いわゆる経営拡大というものを進めるために、できるだけ安い農畜産物価格を押しつけることによって農民がどんどん農村から離れて離農していく、あるいは兼業化の方向に向かっていく、こういう状態、こういうパターンが繰り返されてきたわけです。ですから、昭和三十五年当時は総就業人口のうち農業就業人口は一千四百五十三万二千人、その占める割合が二六・八%であった。ところが、昭和五十三年には七百六万六千人、三十五年と対比をいたしますと四八%になって、総就業人口に占める割合が一〇・六%に下がっているわけです。こういうことは、いま申し上げましたように、低農畜産物価格を押しつけることによって自然に農民が農村から押し出されていく、こういう作用をしておったわけです。ことし決まったこういう価格によってさらにこういう状態に拍車をかけていくのではないか、こう考えるのですが、政務次官、どうですか。
  33. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 確かに、御指摘のとおり酪農家戸数が減っているということはあると思います。しかし、同時に、酪農農家一月当たりの乳牛頭数はふえておりますので、そういう形で酪農農家の規模の拡大、そして経営の近代化、合理化が進んでおるということも私たち認めなければならないと思っておるわけであります。いろいろ諸資材が上がっている折からでございますから、したがって、それに相応してのいろいろな経費の増が見込まれる反面、片方では規模の拡大等を通じて経営合理化が進んでいる、こういうことで、いわば生産費というのは相互バランスの中で決まってくるわけでありますが、先ほど申しましたように、長期的な酪農の振興を図る一方、同時に今後の需要の伸びも私たちとしては確保していかなければならない。そのためには、いろいろな要素がございますけれども、やはり生乳であれ酪農製品であれ、適正価格で消費者に提供できる、そういうことも需要の拡大のためにはどうしても必要な条件である、かように考えておりますので、その辺の絡みを考えながら乳価の決定をしてまいったつもりであります。
  34. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そうしますと、いま政務次官のおっしゃったように、こういうことによって農家が減少していく。農家が減少していって、残った酪農家の規模が拡大していく、そのことによって適正な価格を生み出すようにしていきたい、こういうことですね。
  35. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 経営規模の拡大というものがこれからの酪農家にとって大事であるということは、先生も御理解いただけると思うわけでございますが、農家戸数を意図的に減らすという気持ちは私たちは持っていないわけでありまして、結果として経営規模が拡大し、そして適正価格牛乳の生産が可能になり、それが消費の拡大につながっていくということが望ましい、こういうふうに考えているわけであります。
  36. 新村源雄

    ○新村(源)委員 いまの次官のおっしゃっていることは、私が先ほど申し上げましたように、意図的ではないけれども、安い価格を押しつけることによって、それに耐えられない農家は出ていっても仕方がないのだ、そのことによって酪農の消費拡大が図られるんだ、こういうような答弁ですね。それでは、一体この補給金暫定措置法というのは何のために出てきたのですか。
  37. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 片方では生産費を、再生産を確保できる保証価格を農家の方にお払いいたし消費者に適正価格で供給できるような、そういう生産を可能にいたしたい、そのギャップを埋めるための措置であるというふうに考えております。
  38. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この補給金暫定措置法というのは、日本の非常におくれていた、低位な酪農経営というものをできるだけ早い時期に国際化に対応といいますか、国際化への対応というのは私は農林省が考えているような見解ではとらえていないわけですけれども、しかし、できるだけ安い酪農製品を消費者に供給するということは農業サイドとしても当然考えていかなければならぬことはうなずける。そのために、国民の需要にこたえるために急激に生産を拡大していかなければならない、そうすれば当然投下資本その他によって価格がある程度高くなる、それを政策的に価格を補給をして、一定限度の価格で国民に消費をしてもらう、こういうことが暫定措置法の精神でしょう。そうすれば、乳価の決定に当たっては、農業団体なり農民組織なりが要求していたあの額というものを尊重して決めるべきであった、私はこういうように考えるわけです。  そこで、これは決まったことですので、観点を変えて、先ほど申し上げましたように農業就業人口というのは一〇・六%まで下がってきた。これを農林省あるいは政府は、農業就業人口というものをどのくらいまで下げるんだ、そういう想定があるのですか、そういう点についてお聞かせ願いたい。
  39. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 全就業人口の中に占める農業人口の割合が幾らであるということは、私は必ずしも政策的な目的にはないと思うわけであります。要は、日本にとってきわめて大事な食糧の安定供給の確保がなされるかどうかということが一点と、そして、その大事な食糧の安定供給の確保を実際にやっていただける農家の方々の所得が、他産業の従事者に比較して少なくともまさるとも劣らないという所得が確保できるかという、この二つの命題を解決することが農林水産行政農政の根本でございますから、結果としてそれがどういうふうな人口比になるかということは、まさに結果として出てくる問題であって、何%にするかということは目標ではないというふうに私は考えております。
  40. 新村源雄

    ○新村(源)委員 結果として出てくる、それはきわめて無責任な答弁ですね。私は、日本産業というものを、第一次産業はどういうように位置づける、第二次産業はどうしていく、第三次産業はどうしていく、そういう大きな政策目標に向かって農業の仕組みなりあるいは構造というものを、そこに一つの目標を置きながら進めていくべきものではないか、こういうように考えるのですが、安価なものが供給されるためには無制限に農民の数を減らしていって経営規模を大きくしていく、こういうことなのですか、政務次官のおっしゃることを言いかえると。
  41. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 国民全体としての食糧の消費量が一定だと考えますれば、一人当たり農家の生産性が高まってまいりますと、当然、割り算でございますから、必要な農業従事者の数が割り算の結果として減ってくる、こういうことだと思います。しかし、同時に、たとえば外国の農産物を輸入して賄っている面がいろいろあるわけでございますから、まさにその自給率を高めていく、言いかえると外国の農産物によって占拠された市場を国産農産物に切りかえていくということになると、これまた需要も拡大してまいりますから、分子と分母の関係で分母がふえてまいりますし、またさらには、当面はともかくとして将来において日本の農産物が輸出できるということになれば、これも分母がふえてまいるわけでありますから、割り算として当然農家戸数がふえてまいる、こういうことでございますから、そういう相対的な絡みの中で決まってくるものであると私は考えております。
  42. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この問題に余り時間を費やすと、他の問題を申し上げられませんので、この問題につきましては、また機会をとらえて農業の基本的な問題としてひとつ御質問申し上げたいと思います。  そこで、三年据え置きに酪農乳製品決定した。しかし、私の調査したところによりますと、後で数字を申し上げますが、昨年度においても非常に多くの負債が残った。しかもいま、予想されるのは昭和四十八年以来のいわゆる狂乱物価が目の前に来ている。電気、ガス、石油、肥料、飼料、農機具、こういうもの等も軒並みに、過去五年以来の暴騰をもうすでに記録しておるわけです。こういう中でことしの乳価なり限度数量なりを据え置いたということが、ことしの酪農にどういう影響をもたらすと考えておられますか。
  43. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 今度の加工原料乳価格決定につきましては、これは加工原料乳決定だけじゃございません、その他畜産物価格生産者米価においてもそうでございますけれども、いわゆる過去の統計的なデータを基礎にいたしまして、直近までそれを引き延ばして努力はしておりますが、そこから先、向こう一年間についてどうなるかということについてはなかなか見通しが困難でございます。従来いろいろな農産物価格決定につきましても、そこはぎりぎり直近まで考えますが、そこから先については現実問題として考慮に入れられていない、こういうことでございます。今年度どういうような資材費になるか、それこそ上がるものもあれば場合によっては下がるものもあるかもしれませんが、これについては考慮されていないということは御運解いただけると思うわけであります。  ただ、私たちの見通しとしては、えさの価格にしてもそれほどの値上がりを予想はしておりませんし、同時に、先ほど先生おっしゃいましたある程度負債を抱えておられるのもわかります。そのことは、裏返して申しますと、いろいろな経営の近代化のために投資されているというふうに考えます。酪農家の方々の経営改善の努力も同時に並行してことしも進められると考えておりますので、差し引き考えますと、ある程度の所得の確保はしていただける、私はかように考えておるわけであります。
  44. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次官も御案内のように、農業経営改善というものは一年や二年でそんなにできるものではないわけです。これは長期にわたって一つの目標をしっかり据えて、それに向かって着実な経営改善を行った上で初めて実効が上がる。  そこで、先ほどすでに申し上げましたように、酪農主要地帯の負債というのは、五十四年度末で、農業団体の調査も約二千万、それから道の調査でも約二千万、こういうようにずっと増高してきておるわけです。そういう中で、先ほど申し上げましたように、もうすでに電気が五〇%、ガスが四三%、飼料が昨年対比で一三・八%、肥料が一五%、農機具が約五%、こういうように上がっており、上がることが決まっておるわけですね。こういうものをたった一年間の短期間の中で経営改善によって吸収できるなどということを、次官、本気で考えておられるのですか。
  45. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生の御指摘もよくわかります。しかし、酪農家の方々も経営改善のための努力をごれまでもやってこられましたし、これからもやっていただけると思っております。なかなか簡単に経営改善ができないだろうという御指摘もよくわかりますが、そういう努力をしていただいて適正価格で生産をしていただけることを私たちは強く希望をしておるわけであります。  負債につきましては、御案内のように今年度は三百億の特別融資の枠を設けまして、これまでの負債についてある程度の緩和の措置を講じさせていただきたい、かように思っているわけであります。
  46. 新村源雄

    ○新村(源)委員 政務次官のおっしゃっている願望というのは、それはだれでも期待することです。しかし、実態はそういうものではないということをしっかり認識しておいていただかなければならないと思うのです。  そこで、私は、いま北海道の酪農主要地帯の負債が一戸平均二千万滞っておる、こういうように申し上げたわけでございますが、北信連の調査によりますと、五十四年十二月末の負債残高というのは、プロパーでもって三千四百十四億円、農林漁業資金によって四千二百億円、合計七千六百十四億円。その負債総額に対して要償還額がプロパーで九百六十億、農林漁業資金で二百十億、合計しますと千百七十億になるわけです。これが大体元利に対して一〇%以内であれば返還が可能であるということは、いままで北海道信用組合連合会で調査ができておるわけです。これを見てまいりますと、大体千百七十億円というのは一五・四%に当たるわけです。大体負債償還の可能額を一〇%、あと五・四%というものが返せないということになって、その数字を計算をしてみますと、約六百億になるわけであります。そこで、すでに次官も御案内のことと思いますけれども、北海道の方では何とか六百億円の負債整理を必要とするということで、すでにこういう運動が起こされておるわけですが、今回のこの乳価決定関連をして三百億円というのではこの半分よりならない。しかも、三百億というのは全国枠である。北海道枠ということになると、仮に六〇%にしても百へ十億。四百億以上の格差があるわけです。これを一体どういうようにされようと思っておりますか。
  47. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 今回の乳価等の決定当たりまして、農家の負債状況に対応することといたしまして、一つ価格そのものにどう反映させたかという点、それからもう一つは、その負債整理についてどのような対策を講ずるかという点が検討課題であったわけでございます。  それで、第一点の価格決定当たりまして、負債状況、これは当然保証価格の算定の中に織り込んでおります。御承知のとおり、保証価格の算定に当たりましては、最も新しい農林水産省の統計情報部の生産費調査を基準といたしまして、その中で借入資本の利子につきましてこれを保証乳価の中に算入をするということをいたしておるわけでございます。  第二点の負債対策でございますが、先ほど先生のおっしゃった北海道の借入残高、農家の負債状況、私どもが承知いたしておりますのは、五十四年末におきまして、これは地帯別に出しておるわけでございますが、酪農地帯におきましては負債の残高のトータルが千九百六十六億円、そのうち公庫資金が千百六十二億円、残り八百四億円がプロパー資金ということで承知をいたしておるわけでございます。返済額でそれをどういうふうに見るかということにつきましては、個別の農家の事情等がございます。私どもが今回三百億円というものを設定をいたしましたのは、これまでの負債対策等を実施してまいりました経験並びに実態に基づきまして、搾乳牛一頭当たり十五万円の負債対策費を考える、これは返済が系統資金等におきまして滞る可能性がある、それに対応するものとして考えたものでございます。
  48. 新村源雄

    ○新村(源)委員 いま畜産局長から統計情報部の資料もとにして御説明があったわけですが、私の調べてきた酪農主要地帯の農家経済調査からいきますと、これはちょっと負債の多いところですが、一戸当たり三千七百五十七万円、さらにまた、これは根室地区の酪農主要地帯でございますが、また十勝管内のこの酪農主要地帯の負債残高を見ますと、これも一戸平均にいたしまして四千二百八万円、こういうようになっているわけです。ですから、統計情報部のこの調査というのは特定の約束があって、そういうことによって調査をされる。私の調査をしたのは、農家経済の実態に触れて調査をしておるわけです。そこに大きな開きがある。したがって、今回の乳価の要請等におきましても、局長もあるいは次官もこういう農家の実態というのはある程度把握されている——こういう実態を把握されないところにこういう大きな見解の相違が出てくる、こういうように思うのですが、次官、どうですか。
  49. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 ただいま局長から御説明いたしましたように、今度の乳価の決定当たりましても、当然その負債から出てまいります、その負債の償還そして利子の支払い等については、生産費の中にその計算を算入してあるわけでございますので、一応平均的にはこれで十分にその再生産を確保できるというふうに理解するわけでございますが、同時に、この平均ではなしに、それを超えてさらに多くの負債をしていらっしゃる農家の方々がいらっしゃるわけでございますが、私たちの解釈では、そういうふうに多額の負債を持っていらっしゃる方はそれなりに規模が大きいし、したがって、当然酪農経営の近代化、合理化を進めていらっしゃる、言いかえますとその生産費が平均よりも合理化、近代化によって下がっていらっしゃる、こういうふうに理解できると思うわけであります。そのことが、その値段は同じでございますから、したがって、ある程度負債返還能力もお持ちになっていただけるのではないか、こういうふうに考えておりますが、平均では算定の中に取り入れてございますし、さらに大きな負債の方はそういう形の経営合理化の効果も当然期待していいのではないか、かように考えているわけであります。
  50. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今度の三百億の対象枠というのは、いまの酪農の実態から見まして枠が非常に少ない。それと同時に、この償還年限を五年としているわけですね。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そうしますと、一年据え置きの五年だったと思いますが、すぐこの償還が始まってくる。こういうことで、明年度以降相当手厚い酪農対策をやっていかなければ、それがさらに翌年度に償還分がかぶってくるのですね。酪農家の経営というのはそういう点では雪だるま式に苦しくなってくる、こういうように考えるのですが、そこで第一点として、いまのような酪農情勢をいつまで続けるつもりなのか、いつになったらいまの閉ざされている酪農に展望が開けるのか、そういう点についてはどういう見通しを持っておりますか。
  51. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 先ほど私がお答えいたしました三百億円の考え方は、償還金そのものではございませんで、農協等の借入金の返済の円滑化というための融資でございまして、延滞をするおそれのあるものにつきまして、それを一時特別融資をいたしまして、先生お話しのとおり五年間でそれを漸次返していくという考え方でございます。言葉が足りませんで、補足して御説明を申し上げた次第でございます。  それから、最後のお尋ねの酪農の将来についてでございますが、御承知のとおり、現在のわが国の生乳需給状況過剰基調でございます。しかしながら、他方需要につきましては、他の農産物の中で牛乳需要はなお今後とも、従来ほどの伸びではないにしろ、やはり安定的に伸びていくということで、その伸びに合わせた形の生産を安定的に続けていくということでありますれば、わが国の酪農の将来というのは安定して健全に発展していくものだというふうに考えておるわけであります。  現在の生乳需給の状況は、すでに御案内のとおり、昨年度計画生産推進と消費拡大の特別対策を講ずるということで、その対策が本格化いたした秋以降はかなり需給関係は好転の兆しを見せております。これが定着をしていくならば、需給の均衡回復というのはさほど遠い先のことではなしに、かなりの程度五十五年度中においても改善されるものではないかと期待をいたしております。需給関係が非常に厳しい中でありますが、いま生産者団体等が自主的に進めておる対策、また生産者処理業者、販売業者が一体となって進めております飲用牛乳消費拡大対策、これらが着実に進められますならば、いま言ったような期待が持てるというふうに考えておる次第でございます。
  52. 新村源雄

    ○新村(源)委員 後段申し上げました酪農の将来見通しにつきましては、いま局長がおっしゃったように、酪農市場、乳製品市場が正常な形で、そして消費が拡大されていくように全力を挙げて対策に取り組んでいただくことを強く要請をいたしておきます。  さらに、負債の問題でございますが、局長、非常に安易な見方をして保証価格なりあるいは三百億の対策なりをされておるわけでございますが、私の実態調査の見方では、なかなかそういう状態になっていかないわけです。したがって、枠の三百億にしましても、あるいは融資条件の五分、五年の問題にいたしましても、これを一本で今回の酪農経営改善のための負債整理ということにはならぬと思うのです。したがって、私は、昭和四十八年に北海道において行ったところの自作農維持資金の特例措置を今回発動して、これを別枠としてセットにすべきではないか、こういうように考えるのですが、この点についてどうですか。
  53. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 自作農維持資金の問題につきましては、私直接の所管ではございませんが、四十八年当時、あの畜産危機の状況もとで酪農の安定を図るということが非常に大きな課題でありまして、その中でえさの価格が上がる、消費の伸びが減退をするということで、酪農経営が非常に苦しい状況に置かれたその当時の措置であったというふうに理解をいたしております。現時点が同様な状況であるかどうかという点につきましては、あの時点の状況と比べますと、酪農の経営内容も非常に充実をいたしておりますし、またスケールも大きくなっておるということでございますので、直ちにあの当時と同じような状況であるというふうには考えておらないのでございます。当面、先ほど申し上げましたような負債処理対策を講ずる一方、需給の均衡を図り、なおかつ、各般の酪農振興のための対策を講ずることによって、今後の酪農の健全な発展が図り得るものと考えておる次第でございます。
  54. 新村源雄

    ○新村(源)委員 情勢はちょうど昭和四十八年、九年、あの狂乱物価時代の前兆がすでに出始めておるわけです。すでに先ほどからも繰り返して申し上げておりますように、現在かなり多額の負債を持ち、経営も苦しくなっている。いま局長がおっしゃったように、大きくなっているから、ですから対応力があるとおっしゃっておりますけれども、大きいだけに負債の額も大きい。したがって、一年、二年つまずきが出ると取り返しのつかないような状態に追い込まれる。これは過去の歴史の中でもはっきり証明をしておる。  したがって、私は、ここで局長立場で自作農維持資金の特例を発動するということはなかなか言明することはできないと思うわけですが、今後農業団体等からこれらの実情等が——農林省みずからもそのことに積極的な調査をするということで、必要であればこれを発動する考えはございませんですか。
  55. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 局長からもお話しいたしましたように、一応の計算では負債に対する支払い、利子の支払い、元本の支払いは、乳価の計算をしておるわけでございますし、ある程度のそれを超える平均的な計算はしてございますから、さらに合理化を進めておられる農家の方々は当然そういう負債の償還の余裕をお持ちになっていただける、かように考えるわけであります。しかし、現実問題として、いろいろその経営で御苦労なさっている方もあると思いますので、そういう方々のための三百億でございますから、一番御苦労の方々はその三百億である程度見させていただきたい、こういうことでございます。  そんなことで、大変御苦労もわかりますが、一応の手当てはさせていただいておるというふうに私どもは理解をして考えておりますが、しかし、いろいろさらに深刻な問題についての御指摘がございました場合には、またいろいろなことは当然考えなければならないと思っております。
  56. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そうすれば、いまの次官の答弁では、そういう実態が出てきた場合には、そういうことに対して対応する、こういうように受けとめておいていいですか。
  57. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 ただいま申しましたように、いろいろなことを考えて、一番御苦労の方はともかく三百億ございますから、これで見させていただいている、こういうことでございます。ただ、さらにいろいろな深刻な問題があるというようなこととすれば、それは当然行政当局としてまた改めて検討しなければならないことであるということであります。
  58. 新村源雄

    ○新村(源)委員 それでは、恐らく後日北海道あるいは北海道の農業団体等から要請があると思いますが、そういう要請を前向きに受けとめて、そういう要請が実現ができるように全力を挙げていただきたい、こういうことをお願いを申し上げておきます。  次に、資金の金利の問題でございますが、金利が五分というのはどうも経営の実態に合わない。外国のいろいろな例を調べてみましたが、西ドイツでは、天災、干ばつを受けた農家五万五千戸に対して、向こうは資金は銀行取引でございまして大体末端金利三分五厘になるように、そういうめどづけをして国と州でもって利子補給をしている、こういう実例があるわけです。これは農林省の経済局の金融課課長補佐の副島さんという方等、日本の農業金融に関する権威者の方々が行って調査をされてきた本なのですが、こういう金融体系について、もう少し農家の経営実態に合うような金利体系というのを考えておられないのですか。
  59. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 いま御指摘内容については私十分承知をいたしておりませんが、たしか干ばつで大きな被害を受けた場合の措置として講じられたように承知をいたしております。わが国におきましても、天災融資法によりまして、大きな災害を受けて被害が甚大である農家につきましては、三分の融資が国及び都道府県の利子補給措置によりまして実施をされておるわけでございますので、そういう災害に関連しての制度ということでございますれば、わが国もそれ相応の制度があるというふうに存じます。  それから、今回の三百億の金利でございますが、これは自作農維持資金におきましても五分でございます。また、酪農家の潜入金利の水準等を見ましても、それが振りかわるということで考えますと、五分程度の金利であれば、十分とは言えないまでもそれなりの対応が可能であろうというふうに考えておる次第でございます。
  60. 新村源雄

    ○新村(源)委員 御案内のように、いま日本の金融市場というのは、公定歩合がもうすでに九%、けさの新聞で見ますとアメリカの貸出金利が二〇%になった、こういうことで、異常な金融市場の前兆であるわけです。したがって、この対策をおくらせると、酪農民の持っておる負債が、どんどん加速的に金利の負担が非常に増大してくる、こういうことでありますので、先ほど申し上げましたように、新たな負債整理対策とあわせて、三百億円のすでに決まった分についても早急な実現を強く要請をいたしておきます。  次に、農用馬の問題についてちょっとお伺いをしたいわけですが、農林省はことし農用馬の輸入のために約二千万程度の予算を組んでおられるわけです。この農用馬の輸入というものはどういう考え方によってこの事業をやっておられるか、お伺いいたします。
  61. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 わが国の馬の生産の状況でございますが、馬肉の需給関係について若干申し上げますと、現在外国から馬肉が相当程度入っております。輸入価格も割安で、主として加工用に向けられておりますけれども、そうした中で、国内で馬肉を生産するということはなかなか困難でございますが、一部の地域におきまして生食用として使われておるという状況がございます。  馬肉の需給のことからお話を始めましたが、そういう馬肉の需給と農用馬の振興との関係でございますけれども、農用馬自体は、むしろそういう馬肉の供給ということよりも、わが国が非常に農業も機械化されて農用馬の需要というのが非常に少なくなってきておる、そうした中で、なお一部の地域におきましては、馬を農業用あるいは運搬用に使うという実態がございます。そうしたことで、その地域地域の状況に応じまして農用馬の振興を図るということを考えておるわけでございます。そうした中で一部馬肉の生産が行われるということで、冒頭申し上げたような需給関係でございます。むしろそうした馬肉の生産はなかなかむずかしい状況でございますが、農用馬の動力としてなお使うという場面はあるわけでございますので、そうした面での国内の馬資源の維持を図っていきたいと考えておるところでございます。
  62. 新村源雄

    ○新村(源)委員 時間が参ったわけでありますが、今日の日本の農業の実態から見ますと、農用馬というものはほとんど必要がなくなっておるわけです。しかし、これはフランス等で聞いてまいりましたけれども、資源を持っていないフランスでは、一朝有事の際にはやはり馬によって農作業も考えていかなければならぬのだ、こういうことを基本として一定の馬産の確保奨励事業を積極的にやっている。わが国におきましても、現状では必要はございませんが、しかし、一定数量の農用馬資源を確保しておく必要があるのではないか、こういうように考えまして、いま大体北海道の全域にわたりまして馬産の意欲というのはだんだん高まっておるわけです。したがって、いま農林省の行われようとしておりますこの事業の中でももっと拡大をしてもらいたい、こういう意見がございますので、こういう点について後日また要請をしたいと思いますが、そういう点について要望申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  63. 内海英男

  64. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日ソのサケ・マス漁業に関する政府間交渉が、政府代表として佐野海洋漁業部長ら二十名で昨四月二日よりモスクワで開始されたわけでありますが、例年のことではありますけれども、今回は日本政府としてはいかなる方針で交渉に臨んだのか、政府の考えをまずお伺いしたい。
  65. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御案内のように、今年度の日ソサケ・マス政府間協議は、四月二日、日本時間でありますと二日の午後四時でございますが、モスクワ時間では午前十時でございますけれども、モスクワにおいて行われております。今年はこのマスの不漁年に当たりますし、また第二に、ソ連側がサケ・マスの資源状況が悪い、こういうふうに主張しておりますので、今次の交渉はなかなか難航し、また非常に厳しいものである、かように考えております。  しかし、政府といたしましては、伝統あるわが国サケ・マス漁業の維持発展を図ってまいるという基本方針のもとに、厳しい状況の中でございますが、粘り強い交渉を最後まで行ってまいる所存でございます。
  66. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昨年は四月三日に交渉開始、同二十日に合意、四月二十一日に署名調印したわけでありますけれども、今年の政府間交渉の見通しはどういうことになっていますか。
  67. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 交渉は、いま次官からもお答えしたとおり、昨日開始されたばかりでございます。したがいまして、現在の段階で妥結の時期の見通しを申し上げますことは非常にむずかしいわけでございます。いずれにいたしましても、農林水産省といたしましては、本年の漁期でございます五月一日からに間に合うように、交渉の妥結を図るように努力してまいる所存でございます。
  68. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日ソ両国は昭和五十三年四月調印の日ソ漁業協力協定に基づいて、毎年一月末に前年のサケ・マス漁獲量などの資料を交換することになっております。しかし、ことしは事務手続のおくれでかなりおくれまして、ソ連側は一月末の期限が切れても資料をなかなか提出しなかったという経緯がございます。われわれが承知しておる範囲では三月二十五日でしたか、水産庁がかねてソ連側に要求していた昨年のソ連のサケ・マス漁獲量や生物資源に関する資料が同国漁業省から届いたということを明らかにしております。すなわち、ソ連のサケ・マス資源評価の前提となる資料が届いたわけでございまして、このソ連側の資料によると、昨年豊漁年のソ連の極東サケ・マス漁獲量実績が十二万三千九百八十九トンで、五十三年の不漁年に比べ五八%ふえておるようにわれわれは受けとめております。ただ、同じ豊漁年の五十二年と比べると一一%減となっておりまして、ソ連の漁獲実績を日本との関係で比較してみますと、昨年は日本が四万二千四百四十七トンの水揚げでございましたから、約三倍のサケ・マスをソ連は漁獲したことになるわけですが、この点は確認の意味でお伺いしますけれども、私の理解で間違いございませんか。端的に、間違いなければ間違いないという答弁だけで結構ですから、お答えください。
  69. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 ソ連側からの資料の到着は三月十九日でございましたが、その他の点につきましては、数字については先生指摘のとおりでございます。
  70. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ソ連側の報告がずいぶんおくれたことはけしからぬ問題だと思っています。  そこで、ソ連側はこれまで一貫してサケ・マスの資源状態は悪化していると主張してきたのであります。今回の資料で判断する限り、私はことしの資源状態は過去五年間の平均的水準と同じということになると思うのですが、その点の認識はどうですか。当局はどう検討しておられますか。
  71. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 日本側の見解といたしましては、先生の御指摘のとおりでございます。
  72. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日本は例年になく稚魚の放流もふやしてきております。また、これに対する予算も大きく伸びてきておることも事実であります。このような資源増大の現状にかんがみ、これに対応する適正な漁獲量を確保すべきであるということは言うまでもありません。したがって、昨年の漁獲割当量四万二千五百トンは絶対下回らないよう確保すべきであると思うが、この点は政府代表には十分指示をして出発しましたか、どうですか。
  73. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 私どもといたしましては、先生指摘のとおり、少なくとも昨年度の漁獲水準を下回らないように努力するように所存いたしまして出発したわけでございます。
  74. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 当然のことであります。  さらに、わが国の北洋サケ・マス漁業は、昭和五十二年また昭和五十三年の両年にわたり、合計五割に達する大幅な減船を余儀なくされておることは十分国民の知るところであり、ソ連側も知っているはずであります。その補償に要した負債総額はいまなお数百億円に及んでおります。かつてない重大な危機に直面していることは十分国民も認識しております。このときに当たり、ことしの交渉で仮に四万二千五百トンの確保ができなければ、またぞろ減船問題が起こり、いよいよ最大の危機に落ち込むことになるのであります。このことは交渉に当たる政府代表は十二分に認識して臨んでいるということでございますが、私は、よほど腹を据えて粘り強く強力に交渉に当たらなければならないと思うわけです。これに対する日本側の減船の実態など、さらに窮状を示す説得に必要な資料等も十分携行して、彼らの認識を変える自信を持って行ったのか、その点もあわせて答弁を求めます。
  75. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 先生ただいま御指摘いただきましたように、わが国の厳しい国内事情、それから先ほど御指摘もございました資源事情等、十分に粘り強く説得いたすべく、十分に詰めて、データも取りそろえ、出発したわけでございます。
  76. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、漁業協力費についても、昨年は三十二億五千万円も支出しておりますが、いまソ連は慢性的な貿易赤字で外貨事情が悪化しておりますから、この漁業協力費については魅力ある問題としてソ連は相当わが国に要求してくるであろうということは一応想像できます。また、この問題が今回の交渉の一つの大きな焦点になることも事実であると思います。先ほど申しましたように、日本側も例年になく稚魚の放流を増大しておるのでありますから、サケ・マスの沖取り禁止は断固拒否すべきであり、漁業協力費についても増額は断じて拒否すべく強力な交渉をするよう佐野政府代表に訓令を出すべきだと思うが、この点については政府はどういうふうに処置をされておるか、この席で明らかにしていただきたい。
  77. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 漁業協力費につきましては、ソ連が母川国といたしまして極東のサケ・マス資源の保護、再生産のために相当多額の経費を支出している、かつまた、わが国が漁獲しておりますサケ・マスのほとんどがソ連系でございます。そういう事情は当方としても認めざるを得ないという観点から、わが国といたしましても、ソ連の経費投入に対して応分の負担を、協力を行う、こういうような趣旨から、過去二年にわたってこれを負担してまいったことは御高承のとおりでございます。  今回の交渉におきましてソ連側が漁業協力費についていかなる要求を行ってくるかにつきましては、現在では何とも申し上げられる段階ではございませんけれども、ソ連側の規制措置内容、さらにはまた、この負担はかなりもう限界に来ているという事実もあるわけでございまして、この点を勘案しながら、粘り強く交渉してまいりたいというふうに考えております。  また、沖取り禁止については絶対にわれわれの容認できるところではございません。この点も御指摘のとおりでございますので、政府代表としてもその点は深く心に銘じて交渉に当たっているわけでございます。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 漁業協力費については、これもいま答弁があったように限界に来ていることは事実であります。予算の厳しい中でありますから、交渉の過程においていろいろソ連側からも要請が出てくると思いますけれども、わが国の事情を十分説明して、説得をするようにさらにさらに強い努力をしていただきたい、かように思うわけです。  さらに、現在アフガン問題に絡んでいろいろありますけれども、アフガン問題はソ連自体が引き起こした問題であり、それによって世界的にいろいろな問題が発生していることは事実であります。また、こういった問題を報復手段として、今回のサケ・マス交渉にわが国に対して報復手段をするようなことがあったんでは、私はけしからぬ問題であると思う。そういった意味で、交渉団は、それはそれ、これはこれとして、われわれの先祖が血と命をかけて長年開拓してきたソ連のあの北海の漁場であります。狭まってきたいわば漁場、禁漁区がだんだんふえてきた、こういった中で、あくまでも主張を通してソ連を説得する最大の努力を傾けてもらいたいと私は思う。そういった意味で、さらに公海部分での禁漁区の拡大を強く日本に迫る可能性があるやに聞いておりますけれども、これについても、これ以上の拡大は日本の死活問題でありますから、妥協しないように訓令を発して、ひとつ政府は強力にバックアップをしてもらいたいと思う。その点どうですか。
  79. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 操業区域にいたしましてもここ数年ずっと縮小されてまいったことでございますし、もはや譲るべきものは全くないような状況でございます。先生指摘のとおり、粘り強く強力に折衝に当たるつもりでございます。
  80. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政府の強い姿勢のほどを一応伺いましたが、きょうは参議院の総括質問関係で大臣がいませんので、大臣にもよくきょうの質問内容を伝えて、当分交渉の経過を見守っていきたい、その上でさらに、本件については質問を留保し、政府に対する見解を求めていく考えであります。  もう一点漁業に関してこの際お伺いしておきます。  二月五日に水産庁は、これまで種々問題にされてきましたソ連漁船による漁具被害に対して、ソ連が初めて北海道室蘭沖での日本漁船に対する漁具被害に賠償金を払う意向を伝えたのであります。農林水産省によりますと、今回ソ連の意向が伝えられたのは、五十年十月の事故で、ソ連トロール船に日本漁船の網が破られたもので、日本側の請求のうち一番額が小さい案件で、しかも半分に値切られております。金額はわずか四万八千円。これはすでに支払われたのかどうかということ。しかし、五十年十月にソ連漁船による被害頻発の結果、損害賠償請求、審理のために結ばれた日ソ漁業操業協定がスタートして以来四年余ぶりで、初めて請求にこたえたわけであるのも事実でございます。この間、協定によって設けられた審理機関である東京委員会には九百七十五件、七億七百万円の損害賠償請求が漁民から寄せられております。同委員会は、このうち相手船がはっきりしているものなど六十四件、一億七千八百万円をモスクワの委員会に送付して回答を求めておるわけでございまして、これに対するソ連の反応はどうだったかということ。さらに、この突然のソ連の措置に対して、今回四万八千円を支払うということでありますが、この金を受け取ったかというさきの答えとともに、今後、これを機会にこの損害賠償請求というものが軌道に乗ると政府は見ているのかどうか、これらは今回のいわゆる日ソ交渉の機会にこういったものを含めて交渉するべく準備をして政府代表は行っているのか、それらを含めてひとつ御答弁をいただきたい。
  81. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 お答えいたします。  本年二月中旬に開催されましたモスクワ委員会で、先生から御指摘のございましたような賠償金を支払うべき旨の和解勧告が作成されまして、それぞれ日ソの関係者に対して通知されたわけでございます。日本側の請求者は、四万八千円であって不満ではあるが一応これを受諾する旨の回答を行っておりますが、ソ連側の被請求者、加害者の方でございますが、いまだに回答は届いていないという状況でございます。したがいまして、現在その金がまだ支払われてはいないわけでございます。  それから、今後の見通しでございますが、本件につきましてはすでに五十一年以来さまざまな折衝が重ねられてまいったわけでございますが、御指摘のとおり今回が初めての解決でございます。しかし、昨年七月モスクワで開催されました渡辺前農林水産大臣とカメンツェフ両大臣の会談におきまして解決の大枠が決まったわけでございます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 つまり、いままでに請求している案件のうち、加害船がはっきりしているもの、つまりどの船がやったかはっきりしている、そういうものにつきましては一件ずつ審理する、それから既請求案件のうちに、不明船、つまりだれがやったかはっきりしないものがかなりあるわけでございますが、これについては一括審議により対処する、かような枠組みが昨年七月に決まりまして、これに基づきましてその後東京委員会で鋭意折衝が重ねられてまいったところでございまして、まず、前者の判明船につきましては、今回一件片づいたことでもございますし、今後とも漁業者の協力も得ましてできるだけ早く解決するようにいたしたいと思いますし、またその可能性もあろうかと思います。また、不明船の方につきましても、現在話が相当程度煮詰まってまいっておるわけでございますので、今後もできるだけ早く解決するように努力いたします所存でございます。またその可能性はあるものと私どもは考えておるわけでございます。  なお、今回の交渉に際しては、本件はやや性質が違うものでございますので、別途の機会をとらえて折衝をしてまいるということを考えております。
  82. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、米の過剰問題で若干お尋ねします。  これは時期を失してはならないということと、近く交渉が行われる関係もありまして、政府の考えをただす必要があるから、時間の制限もあるのではしょってお伺いしておくので、明快な答弁をお願いしたい。  四月一日の閣議後の記者会見で武藤農林水産大臣は、日本の過剰米輸出をめぐり日米間に生じた摩擦を解決するため、四月十日、十一日の両日、外務省で澤邊次官とハザウェー米農務省次官が会談することを発表しておりますが、これはどういう経緯のもとに行われるのか、まずその辺からお答えください。
  83. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 昨年の十一月に日米農産物定期協議が行われましたが、その席上で、日本の過剰米処理、過剰米処理に伴います輸出についての問題が種々議論されました。その席上におきまして、今後この問題を引き続き協議していこうということになりまして、その後事務的レベルでの折衝をいたしてまいりましたが、早急な結論を得る必要が出てまいりましたので、この機会に両国の事務当局の幹部が話し合いをして決定をしようという段取りになった次第でございます。
  84. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日本政府が過剰米処理の一方法として去年から始めました米の輸出について、米国からクレームがつき、昨年よりダンピング論議がなされておることは事実であります。このことについては本年の当委員会で三回にわたり私は政府指摘した経緯がございますが、さらに今年に入っても、米下院有力議員から、国際規約で禁じられた補助金つきの略奪的輸出であるとの声明が出されております。この問題を協議するためであると私は認識しておりますが、ただいま答弁がございましたけれども、これに対しては政府としてはどういうような方針で説得すべく、また認識を変えるべく方針を立てておられるか、さらに具体的にお答えをいただきたい。
  85. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 いわゆる過剰米処理の一環として実施しておりますわが国の米の輸出に対しまして、米国は、米の国際市場を撹乱しているのじゃないか、また米国の米の輸出に悪影響を与えるのではないか、こういうことで強い懸念を表明しており、今後の輸出計画を明らかにするように求めてきているわけであります。  わが国といたしましては、輸出は過剰米処理の重要な方途の一つであり、かつ食糧不足に悩む開発途上国からの強い要請もございますのでこれに応ずるという、いわば援助的な性格のものであるので、FAOの余剰農産物処理原則等に即して関係国と十分連絡をとりながら進めてまいったところでございます。したがいまして、今回の協議におきましても、今後ども米の伝統的な輸出国であります米国との間に摩擦を生じないように、わが国の考えを十分に説明して、過剰米輸出が円滑に行われるように米側の理解を求めてまいりたい、かように考えております。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この機会に申し上げておきますけれども、当局は御承知かどうかということも兼ねてお伺いするのですが、ことしの二月十九日、ニューヨーク及びポートランド在住の日本商社の穀物担当者がワシントンに集まり、今回来日する農務省ハザウェー次官以下と会合を持っております。この会合は少なくとも年に一回、問題があればその都度意見の交換をしておるわけでありまして、今回の会合を通じても、日本の過剰米に対する理解、安定的輸入国としての評価などが確認され、多岐にわたる意見交換を通じて相互理解を深めた、こういうことでございますが、このことについては十分承知しておられるかどうか。  私が危惧するのは、ハザウェー米国農務省次官等と商社とのこういった会合が向こうで行われている。従来からよく言われておりますように、農林省の外国における穀物の情報等を見ましても、日本の外国公館員の情報よりも商社の情報が早くて商社の打つ手が早いということは、過去にもしばしば当委員会でも論議したところでありまして、私は、商社がこういったことを機会あるごとにやって、ハザウェー次官などと事前にこういったことが進んでおるということを思うとき、今回政府がいろいろ交渉するのですけれども、その前にいろいろと洗脳されていると困る。またどういうようになっているか、どういうふうな話が論議されたかというようなことも十分承知の上で今回の会談に臨んでいかなければ、私は画竜点睛を欠くのではないか、かようにも思うわけです。そういったことは承知しておられるのか、またその内容等はよくつかんでおられるか、その点、政府の見解を伺っておきたい。
  87. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 アメリカにおいて商業活動を行っております商社が、その情報を獲得いたしますためにアメリカの政府当局者とも接触しておるということは十分に考えられることでございます。ただいま先生からお話がございましたようなハザウェー次官との折衝ということも、親睦ということでやっておるということは聞いております。したがいまして、私どもとしては、アメリカの政府考え方を、直接政府関係者からも、ないしはそのような商社等を通じましてもできるだけ広く情報を得まして、交渉を進めていきたいというふうに考えているわけでございます。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ダンピングということでアメリカは日本に対して略奪的、こう言っておりますけれども、これは政府も十分知っておるわけですが、私は、この交渉を前に国会の場でもこういったことで論議されたということで、政府が強気で臨むためにも、あえてこれを取り上げて国会の場で指摘をしておるわけです。いま日本は米の過剰時代を迎えて大変苦しんでいるときですから、ひとつ強力な交渉によって認識を変えてもらわなければいかぬ。  そこで、あえて申し上げるのですけれども、畜産、乳価をめぐる論議の中で、ニュージーランドからの乳製品の輸入がダンピングではないかという問題が過去にございまして、いろいろ論議したことがございます。その中で、大蔵省の見解は、ダンピングというのは業者が赤字を覚悟して価格を引き下げ輸出するやり方を言い、ニュージーランドの場合は政府が補助金を出して安く輸出しており、これはダンピングではないという見解を示しております。これは会議録にもきちっと載っております。  そこで、これを当てはめれば、今回の日米交渉においても、わが国の米を東南アジアに輸出するという問題については、わが国の過剰米の輸出も言われるところのダンピングには当てはまらないという理論になるわけでございまして、言うまでもないことでありますけれども、その辺を国会で十分論議されたということで強力に説得するべく、米国の印象を変えてもらわなければならぬ、私はかように思うわけですが、強気で臨む決意のほどを伺っておきたい。
  89. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御指摘もあったのでございますが、ダンピングといいますのは、まさに国内価格を下回って安い値段で売って、それがいわゆる輸入国の産業に非常に悪い影響を与える、こういうことでございます。現実にわが国の米の輸出の場合には、むしろ輸入国から好意的に迎えられているわけでございますので、それがダンピングだという非難は公式な形ではない。先生指摘ございましたように、たとえばアメリカの議会における議員の発言の中にそういうことがあったのかどうかについては私は存じませんが、少なくとも政府政府立場では、これはダンピングとは向こう側も理解していない、こういうふうに考えているわけであります。  ただ、ダンピングではありませんが、やはりその国内価格を下回った価格で売っているということですから、それはまさにそれと競合する、たとえば米についてアメリカ側が、これはまさに輸出補助金ではないか、差額に補助金を出して輸出しているのじゃないか。だから輸入国、当事者ではなしに競合する第三国がそういうことでいろいろ問題を提起している、こういうことでございますが、これはまさに過剰米処理の一環として臨時的また緊急的に行っているものであり、特に食糧不足に悩む輸入国の要請に基づいて行っている、すなわち援助もしくは援助的な性格の強いものであるということで、ただ、いたずらに輸出の拡大を目的にしたものではない、こういうことでございます。また、この輸出価格につきましても、いわゆる米の国際的な価格を参酌して決めており、御説明ございましたように、従来とも米の輸出国でありますアメリカとは十分に協議をしながらできるだけ円滑に事を運んでまいりたい、こういうふうに考えている次第であります。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、蚕糸振興対策についてお伺いします。  農林水産省並びに通産省当局にお伺いいたしますが、本件については、本年度の基準糸価、基準繭価の大幅引き上げについて、去る三月二十七日長時間にわたって政府の見解をただし、質疑をしてまいったところでございます。  その間の事情、またその後の基準糸価、基準繭価の決定等については、すでに決定したことでございますので、これはさておくとしまして、その後、当時から問題になっております矢野発言問題について私は政府の見解をさらにただしておきたい、かように思います。  申すまでもなく、京都商工会議所が十四日開いた地元経済界との懇談会で、西陣織の工業組合の滋賀辰雄理事長の絹織物業界の救済要請に対し、矢野俊比古通産事務次官国内蚕糸農家を無視する発言を行った問題でございます。矢野発言は、私は、出るべくして出た、すなわち通産省の日ごろの体質があらわれたのである、かように認識しております。すなわち、矢野発言は、その場限りの思いつきで出たものではなく、かねがね農業軽視の通産行政の体質があらわれたのである、こういうふうに認識していますが、政務次官はその点はどう認識しておられるかお答えいただきたい。
  91. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 日本養蚕業をめぐる情勢につきましては非常に厳しいものがございますし、そういう厳しい状況を踏まえながら、今年度も糸価決定に当たったわけでございますが、養蚕業が安定的に発展をしてまいりますためには、どうしても同じ日本の繭糸業界、さらに絹織物業界の十分な協力相互理解がなければならないわけでございますので、私どもは、養蚕業者だけではなしに、繭糸業者、さらに絹織物業者にも十分にいろいろな問題について理解や協力を求めてまいっておる次第であります。  そういう状況の中で御指摘矢野通産次官発言を見たということは、きわめて遺憾なことでございますし、農林水産大臣も、また事務局も、ともに通産省に対しては厳しい抗議をし、また矢野発言の撤回を求めてまいったところでございますけれども通産大臣から、そして矢野次官から、ともに釈明があり、また撤回の話がございましたわけであります。きわめて遺憾なことでございますが、そういう重大な発言をして、養蚕業者に、ただでさえ非常に苦労しているわけでございますから、将来に対して不安を与えるようなことは絶対ないように今後とも私たちは注意をしてまいりたい、かように考えておりますし、また同時に、そういうことで非常に御心配をおかけしたわけでございますから、その点につきましては十分今後の措置において考えてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五十一年、当委員会で生糸一元化を議員立法で行ったわけで、その当時も大変いろんな問題がありましたが、本員も大変努力さしていただいて、ようやくこれが一元化できたという歴史がございます。そういったことから、今回の矢野発言というものは、国家の制度として確立している養蚕業蚕糸業体制を否認する暴言である、すなわち立法府に対する挑戦である、かように私は受けとめておりますけれども、政務次官はどういうふうに受けとめておりますか。
  93. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 矢野発言は、これは本人の説明によりますと、必ずしもその真意が正しく伝わっていない、むしろ養蚕農家に対して所得補償をするという、そういう形で、ある程度適正な価格での生糸の生産を可能にして、その適正な価格生糸絹織物業界が立っていくように、そういう共存共営を図る趣旨なんである、こういう説明を後ほどいろんな場でやっているわけでございますが、しかし、先ほど申しましたように、やっぱりそういう誤解を、一元輸入を真っ向から否定するような、そういう発言であると受けとめられかねない発言をしたということについては、これはきわめて遺憾なことである、かように考えておるわけであります。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 通産省は、今回矢野発言に対してどういうふうな発言をされて、農林水産省の抗議に対して答えられましたか。
  95. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま農林水産政務次官の方からお話がございましたように、農林水産省から非常に強い抗議の申し入れがございまして、これに対しまして、通産省といたしましては、大臣が直接次官の真意を確かめまして、三月十四日の発言は、生糸一元輸入という複雑な、かつ、非常に長い経緯のある問題の持つ解決の困難性、それを強調するために述べたものでございまして、現行の法律制度をないがしろにしたり、あるいは農業を軽視するような考えは毛頭なかったわけでございます。ただ、その真意が必ずしもそのまま伝えられなかったために誤解を招いて、関係者にいろいろと御迷惑をおかけしましたことは全く遺憾であり、深くおわびいたしますとともに、誤解を招く原因となりました部分はこれを本人も撤回するとのことでございましたので、大臣から農林水産大臣の方にそのような回答をいたしまして、大臣はさらに二度とこのようなことがないよう強く本人に注意をされたというふうに承っております。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産省は一応一件落着というようなことで受けとめておられるようだけれども、いま通産省発言しましたように、真意が伝わらなかったとか、陳謝する、また暴言を吐いた部分については削除すると言いますけれども、事実そういった発言があったということは事実じゃないですか。通産省、どうですか。事実でしょう。農業軽視もはなはだしいじゃないか。
  97. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  いま御指摘のように誤解を招くような表現がございましたので、その点については深くおわびいたしますとともに、これを撤回するということでございます。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 午前中も論議がありましたけれども、こういう重要なときに、またあれだけ農民が真剣に政府に要請をしておるときに、また去る三月十八日の大会なんかでも、各党が出向いて農民のあの切実な叫びを聞き、またこれに対して、われわれは各党こうこたえたということで発言をしたし、先月の三月二十七日の当委員会のときも私は切実に皆さんに訴えたわけですが、こういうようになめられたような通産省考え方を私はただではおけないと思う。こういった体質があるから、いつも、公害問題その他にしても、通産関係のたれ流しによって農林漁業はいつもその後始末、そして農林漁業に対しては厳しい処理がなされて、いわゆる環境破壊にしてもみんなそうじゃないか。同じ国民でありながら、国民の生きる糧を生産をしている農民に対して、また漁民に対して、私は、全く許せない問題である、かように思うわけです。そういった意味で、通産省姿勢を正さなければ、私はこういうようなことで決して納得できるものじゃありません。政務次官、一応政府の内部では了解したとこう言いますけれども行政の中でこれははっきりした答えが出なければ私は納得できません。と同時に、関係団体の意見を聞いて国民に対する責任というものを明確にしてもらわなければ、私は二の問題の決着はつかないとこう思って、いるのですが、政務次官はどういうふうに考えていますか。もうこれで何とか政治問題にならぬようにして済ませようという考えなんですか。どうなんですか。
  99. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 養蚕業に限らずわが国の農林水産業は非常に大きな問題を持っているわけでありますし、これは当然、通産行政当局の十分な理解や協力がなければ、農林水産省単独では解決できないような問題が数多くございます。そういうことで、実は従来ともこのいろいろな問題につきましては、通産当局にも十分に説明をし、理解を求め、また協力を求めているところであったわけでありますけれども、よしんば逆説的な表現であれ、また意を尽くせなかった、言葉が十分でなかったとは言いながら、先生指摘のような非常な問題の発言を最高の責任者の一人である矢野次官がされたことについては、先ほど来申しておりますように、農林水産大臣からも、また事務当局からも厳しく抗議をいたしまして、発言の撤回を求めてまいったわけでございます。  そこで、これにつきましては、いま通産省の方から答弁ございましたように、一応陳謝をし、撤回をしてまいったわけでございますが、先生指摘のとおり、単にこれは言葉の問題ではなしに、今後の養蚕業のみならず日本農林水産業の発展のために、通産当局には十分に従来以上の理解と協力を求めていかなければならない、こういうことでございますので、今後ともそういう態度でこの問題については真剣に話し合いを進め、具体的な行政の面における実績を見てまいりたい、かように考えている次第であります。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまや全国の蚕糸業団体初め、また蚕糸農家も、さらには全養を初め各上部団体もまさに怒り頂点に達している感じであります。一方、繊維労連等でも罷免要求を出すべきだ、また農民も、この問題についてははっきりした決着がつかない限りわれわれは徹底的に追及するという声が全国養蚕地においてほうはいと起きております。これをいわゆる通産省の陳謝によって一件落着というような甘い考えでは——当局は、農民のサイドに立って、農民の代理である農林大臣も許せない立場でなくてはならない、許せるものではない、かように思うわけです。  私は、最後に申し上げたいけれども、この問題については、生糸一元輸入だけでなく、絹織物、絹糸等も一元輸入し、蚕糸絹業界の一体的発展を図らなければならない、かように思うのです。先ほどの質問でも、通産省農林省も、いわゆる蚕糸絹業というものは一体でなくてはならない、地域経済のために当然である、こういったことを言っている。口では言っておるけれども、中身がない。これでは国民に対する責任を果たせるものじゃないと思う。そういった意味で、矢野発言の解決に当たっては、この機会に一元輸入の法制化が必要である。ガットの問題、いろいろなことも十分承知しておりますが、それを乗り越えて、強力ないわゆる両省検討を進めなければならないと思うわけです。三月二十七日にも私はいろいろと申し上げましたけれども国内需給の不足分に限り外国より繭を初め生糸、絹紡糸、絹糸、絹織物等輸入すべきであると思いますけれども、このうち中国、韓国との二国間協定については、実情を無視した過大なる取りきめが行われ、また絹糸、絹織物等についても、法の盲点をつき無秩序な輸入がなされている、このために需給が著しく乱れておるわけですから、こういったことをせんだっても指摘したわけでありますが、その方向で真剣にこたえてこそ初めて今回の矢野発言に対する政府の国民に対する責任ある態度である、私はかように思うわけです。矢野次官もまたその後輸入規制を否定するものではないという発言もしておるようでありますが、いまさら遅い。遅いけれども、私はこの発言そのものが通産省のかねがねの農業軽視が根底にあるということを思うときに、こういう機会に、これが露骨に出たわけでありますから、農林水産省また通産当局検討して、こういった輸入問題に対して行動で示すべきである。そして、日本蚕糸業家といわゆる機屋とが一体となって、伝統産業である絹織物が、いわゆる養蚕が発展していくということでなければならない。  こういう意味で、私は、今後政府の態度、検討を促すわけでありますけれども、早い機会にこういった絹糸並びに絹織物一元輸入についての方向で法制化を目指し、検討を早急にすべきである、かように思うのですが、政務次官どうですか。
  101. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 非常な困難を抱えております日本養蚕業、そして繭糸業、絹織物業の今後の安定的な発展のためのいろいろな解決をしなければならない深刻な問題の一つ、重要なものの一つが、先生指摘の輸入調整の問題であると私たちはかねてから考えておりまして、今度の糸価決定当たりましても、審議会附帯決議の中にもこの輸入問題については触れられてあるわけであります。従来も実はその一元化輸入を、生糸だけではなしに、さらに拡大をして絹織物まで含めるべきだという御主張、御意見は各方面から強くございまして、この点については政府としてもいろいろ検討を続けてまいったわけでございますが、先生も御案内のように、これは国際的な取引の中での話でございまして、いろいろな関係するところがございます。なかなか困難な問題であるがために、これまで踏み切ってこれなかった面があるわけでございますが、まさにいよいよ非常に深刻な事態にいま入っておりますので、従来以上の決意でこの輸入調整の問題については取り組まなければならない、かように考えておるわけであります。すべてを一元化するということが即刻できるかどうかについては、なお政府部内でいろいろ検討がございますし、率直に言って容易なことではないと思いますが、これらのことを含めまして、従来以上の決意で、これから絹織物を含めて生糸、絹糸、絹織物全体としての輸入調整問題に真剣に取り組むことをこの際申し上げておきたいと思います。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 通産省も、陳謝または暴言を吐いた分については削除するというようなそういったなまやさしいことで一件落着にはならぬ。農林水産省も、この際、こういったことがあって初めて通産省姿勢というのがあらわにあらわれたわけでありますから、強力な姿勢で、国民への責任を感じ、国民への責任を果たすためにも、強力ないわゆる一元輸入についての検討を進めて、そして早くひとつ国内産業を守るための努力を積極的にやられる、こういったことを私は今後見きわめていきたい、注目していきたい、こう思います。そういったことで、今後機会があるごとにこの問題に対しては政府の見解をただしてまいります。また通産省姿勢をただしてまいります。そういったことで、質問を以下留保し、本日の質問については時間が参りましたので、以上で一応終わらせていただきます。
  103. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  104. 内海英男

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、食糧自給力強化に関する決議案について申し上げます。  本決議案につきましては、本会議において決議をいたすべく、先般来各党理事間において鋭意検討を重ねてまいりましたが、本日協議が調い、お手元に配付してありますとおりの案文を作成いたしました。  これを朗読いたします。     食糧自給力強化に関する決議案   現下、わが国の農業・漁業は極めて厳しい情勢にある。   即ち、国民食生活の多様化等により食糧の需給に不均衡を生じ、政府はその対応のため水田転作を実施中であるが、生産農家は重大な試練に立たされている。   一方、海外からの農畜産物の輸入増加に伴い、食糧自給度は年毎に低下し、国民食糧の供給体制を先き行き不安定にしている。   また、漁業においても二百海里時代に入り、水産物の生産と供給の確保について厳しい対応を迫られている。   八〇年代における世界の食糧需給の動向は、人口の増加、生活水準の向上、さらには食糧が外交手段に用いられる等、一段と不安要因が増大し、わが国の食糧需給に強く影響することが憂慮される。   かかる困難な情勢の下にあって、先進諸国に較べ低位にあるわが国の食糧自給力の向上を図り、国民食糧を安定的に供給することは、将に国政上の基本的且つ緊急の課題である。   よって政府は、国民生活の安全保障体制として食糧自給力の強化を図り、わが国農業・漁業の発展と生産力の増強に万全の施策を講ずるべきである。   右決議する。 以上であります。  この際、念のため申し上げます。  本決議案につきましては、委員長及び各党理事が提出者に加わり、本会議上程の手続をとりたいと存じます。  以上、御報告申し上げます。      ————◇—————
  105. 内海英男

    内海委員長 農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。柴田健治君。
  106. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 私は、国営事業でやっております干拓事業に関して簡潔に御質問申し上げたいと思います。  まず、笠岡湾の地域で行われている干拓事業に関して、当初この計画は三十年代に計画されて、そして三十四年から三十八年、五カ年間調査計画をやる、そして三十九年から全体設計に入って、四十一年度から着工ということになっている。総事業費は二百七十一億円、そして五十四年度まで百六十一億六千五百万円の投資をし、そして五十五年度予算案はあす決まるわけでありますが、十二億七千五百万円ということで、当初計画から言うと五十五年度を入れて進捗率が六四%ということになるわけです。そして、この当初の計画は水稲栽培を考えてやったわけでありますが、中途で総合農政論にかわって米の生産調整ということになり、現在ではこの基幹作目については飼料、野菜ということで、今度は花卉を入れる。また穀物については大豆だとか麦だとかいうものをつくったらどうか、こういうように基幹作目の変更も含めて計画をされていま実施中であります。  われわれはこの推進協力してきたものでありますが、現在お尋ねしたいのは、早く干陸分を決めてもらいたい、要するに干陸計画ですが、それを早急に決めてもらいたいという気持ちから申し上げるわけですが、この計画はいつごろできるのか、まずお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  107. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 笠岡湾の干拓事業につきましては、経緯はいま柴田先生が言われたとおりでございます。私どもとしては、早期完成を目指して鋭意努力いたしているところでございますが、進捗率等についても、柴田先生の言われましたとおり、かなりおくれてまいっておるわけであります。若干弁解になりますが、水田転作の関係もございますし、それから、現地におきまして工業用地との調整等の問題もございましたし、それから、オイルショック直後におきます予算の伸びが期待し得なかったような事情、もろもろのことが重なりましておくれているわけでございます。今後一層努力して、そういうおくれた中でも早期完成にさらに一層努力しなければならないと考えております。  干陸計画についていつごろまとめるのかというお話でございますが、これは実は五十四年度中にもつくりたいと考えて作業を進めてまいったところでございます。残念ながら今日までまだでき上っておりません。これは現地におきまして、干拓地の計画的使用について各種の意見が出されておりまして、これらについて十分検討を加える必要がある。さらにはまた、酪農等最近の農業情勢の推移もございまして、これらの動向も見定めてこの地域の将来の農業の方向を示す新しい計画というものにする必要があると考えておるわけでございます。したがいまして、当初計画の酪農、野菜のほかに大豆、小麦、施設野菜、花卉、肉用牛、こういったものの導入等についても検討を進めているところでございます。関係県、市そのほか関係する向きと協議を進めまして、なるべく早い時期に計画案を作成したいと考えております。具体的に時期はいつごろかということになりますと、五十四年度中にも作成したかったところでございますので、五十五年度中できるだけ早い時期にというふうに考えております。
  108. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 干陸計画を早く示してもらいたいということをお尋ねする理由は、いま地元の方で市なり県なりの、これは一部の動きだと思うのですが、多目的利用にしてもらいたいという運動が起きておるわけです。われわれは多目的利用というのは断じて認めてはならないという立場に立っておる。それから、市なり県の、県はそこまで踏み込んでないですけれども、市の方の一部では多目的利用の推進協議会というものをつくっておる。これは相当前からつくりて運動を展開しておるわけです。これにまつわるいろいろなデマが飛んでおるわけでありますから、われわれの立場から申し上げると、早く干陸計画を示さないとこの運動が発展してくるだろう、そういう心配がありますので、農林水産省はそういう運動に恐らく乗るようなことは断じてないだろう、こういう気持ちを持っておるのですが、この運動をお聞きになっておるのか、それともそういう意見なり運動は知っておるけれども、断じてそういうことは認めない、こういう強い意思を持っておられるのか、その点をはっきりしておいていただきたいと思います。
  109. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 平地の乏しい地域でございますから、でき上がりつつある干拓地に対して、農業ばかりでなくほかの用途に使わせてもらえないかという期待もございまして、現地で先生がおっしゃられたような各種の動きがあり、そのための組織もできておるということは私ども承知いたしております。ただ、この干拓事業は、今日若干農業情勢について種々の状況の変化はございますが、農用地として使うべく造成しているものでございます。私ども当初の目的どおりこれをりっぱな農地として将来とも活用してまいりたい、ほかの目的に使うということは考えておらないところでございます。そういうことをはっきりさせるためにも、お話のとおり干陸計画をできるだけ早い時期につくりたいと考えておりますし、また、できますまでの間もそういう他用途に使うということについては農林省はそのような考えはないということを、あらゆる機会を通じてはっきりさせてまいりたいと考えております。
  110. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 なぜこの多目的利用運動が起きるかというと、水の問題が関連しておると思うのです。いまの水路の建設がほぼ終わって、それぞれ工業用水、生活用水と農業用水ということに分かれておるわけです。その中で工業用水にも使えるのだということが、多目的に利用できるのじゃないか、こういう意見が出てきた大きな原因だ、こう思うわけですが、このいまの水路の関係の工事額、そして負担区分、負担をしたところはどことどこが負担したのか、そしてこれは県の債務負担行為がまだされておらないわけですが、入植者に今度おろすときにどういう負担区分になるのか、その点もあわせて説明を願いたい、こう思います。
  111. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 まだ事業全体については継続中でございます。全体の事業費が確定次第、完成された干拓地を配分し、それに伴って負担金を徴収するということになりますが、その金額はまだ確定いたしておりません。全体の額としては、現在までの金額といたしまして十アール当たりおおむね二百七十万円台の造成費、負担の額は百三十万円見当というふうに見ておりますが、その内容については、先生がおっしゃられました水路の事業の分も含めまして詳細決まっておりませんので、それらも先ほど申し上げました干陸計画の内訳においてはっきりお示しするようにいたしたいというふうに考えております。
  112. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 県の債務負担行為を早く決めさせる必要があるとわれわれは思うのですが、そういう点は心配ないのですか。
  113. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 県におきましては、すでに四十一年の九月三十日、地元負担の一定割合部分について債務負担議決を行っておりまして、私どもとしては現在までのところ特別の支障があるというふうには思っておらないところでございます。
  114. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 もう一つは、高梁川からの水を取るわけですが、建設省との関係、要するに水利権の話し合いはどの程度進んでおるのか、いつこれが話し合いの決着がつくのか、その見通しをお聞かせ願いたい。
  115. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 これは水利権の内容は多岐に分かれております。昭和四十六年に建設大臣に対しまして、流水の占用、土地の占用、工作物の新築、これらの問題につきまして河川法上の協議を一括して行ったところでございます。そして、その翌年四十七年に、流水占用を除く件については同意が示されたものでございます。流水占用の問題だけ残っておるわけでございますが、これについては引き続き協議を進めているところでございます。まだ協議調っておりませんけれども、営農開始の時点までには支障のないよう調整を了するということにいたしております。なお栽培試験用水、除塩用水、こういった問題が残っておりますが、これらについても別途協議中でございます。
  116. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 次にお尋ねしたいのは、何としても干拓地でありますから、特にあそこはヘドロが多い、ヘドロ地域の埋め立てでありますから、除塩をする手当てがいろいろ化学的に行われておるのですけれども、まだわれわれが見ておるとどうも十分な工法ではないじゃないか、もう少し技術員を動員して早く除塩措置を講ずべきではないか、早く完了したらどうかという気がするわけで、工事費でも毎年つけ方が少ない、そして除塩措置の経費も少ないというところに問題があると思うのですが、この二つの点。もう相当期間かかっておるわけですね。四十一年度から工事に着工して、ことしを入れて六四%の進捗率、これからまだ物価が上がると相当の計画変更をしなければならぬだろう、こう思うわけですが、このままいくとまだ何年かかるのかという気がするわけですね。こんなばかな国営事業はないと思うので、余りにも時間をかけ過ぎる。それで一方では除塩が完全にできないという意見がある。それはやらないから除塩ができない。塩分を排除するそういう経費そのものが予算の中で少ない。もう少し思い切って予算をつけたらどうかという気がするのですが、その点についてのお考えを聞きたい。
  117. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 笠岡干拓の事業量の残は、金額にして百十億円ほど残っておるわけでございます。五十五年度の事業費予算は、これが成立いたしますれば十二億七千五百万円ということになるわけでございます。この割りでいきますというと、消化するのにあと八年以上もかかるというような計算になりますが、私どもといたしましてもそう長くかけてはいられない。今後の予算総枠の問題ございますが、できるだけ笠岡にも配慮してこれより短い期間のうちに完成いたしたいと考えております。  それから、技術的な問題がいろいろあるわけでございますが、やはりヘドロ、これの乾燥して落ちつくのを待たなければいけないとか、それからいま御指摘になりました塩分をきちんと除去しなければいけないというようなこともありまして、予算面以外にもかなり期間を要する技術的な理由もあるわけでございます。これらの問題につきましては、各方面からの意見も聞きながら十分検討して最善の措置をとってまいりたいと考えておるわけでございます。  現在、笠岡湾干拓干陸計画協議会というものがございまして、農政局それから県の担当部局の責任者が集りまして、ただいまの問題なども含めて寄り寄り協議を進めているところでございます。
  118. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 時間が余りございませんからこの程度で終わりますが、なるべく早急に完成を急いでもらいたいということを強くお願いしておきたいと思います。  次に、通産省見えていますかな。通産省官房長見えているようですね。  本委員会でもたびたび問題になっておるわけですが、三月十四日に京都の織物業者の大会で矢野事務次官発言した内容について、われわれは非常に不満であるし、まことに残念至極というか、腹が立って物が言えないくらい不満を持っておるわけであります。なぜこういう発言をしたのかということを、いろいろわれわれの立場で考えてみて、依然として通産省日本の農業、農民を十分理解してないという点が第一点。そして、やはり通産省日本養蚕農家の歴史を全然知ってないという点が大きく影響しておるのではないか。と同時にまた、われわれ農林水産委員会立場から申し上げると、日米の摩擦を起こすのも通産省なんですよ。日米の摩擦を起こすたびに農産物を中和剤に使っておる。われわれの立場から言うと、通産省はどうも農業、農民の立場からいって味方ではない、そういう考えにわれわれいままで立ってきた。ところが案の定、通産省というのは日本の農業、農民のことは一切考えてないという気がするわけで、なぜこういう発言をしたのか。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、いろいろな流れもあるでしょうが、この一元化の問題と、日本の生産農民を一時抑えよ、休ませる、この二つのねらいで発言をしたのではないかという気がするのですが、その点、通産省説明願いたい。
  119. 杉山和男

    杉山(和)政府委員 大変お騒がせしましてまことに申しわけないと思いますが、まず、一元輸入というのは利害の絡み合いましたむずかしい問題でございまして、直ちにこれに手をつけることはきわめてむずかしいということを逆説的な言い回しで話したというふうにわれわれは考えております。京都の商工会議所の例の懇談会で、織物の業界の方から、自分たちは安楽死するほかないという趣旨の話があったのを受けまして、死ぬくらいなら対策を一生懸命考えるべきじゃないかということを言ったものと理解するわけでございます。しかしながら、表現に妥当でない点もございますし、また、真意がそのまま伝わらなかったという点もありまして、各方面からおしかりを受け、また御迷惑をかけたことはまことに相済まないと思っております。先週、農林省からも御抗議がございまして、佐々木通産大臣もみずから武藤農林大臣に対しましてお答えを申し上げたところでございますが、関係者にいろいろと御迷惑をかけたことは全く遺憾であり、深くおわびをいたしますとともに、誤解を招く原因となった部分は本人はこれを撤回したいと言っております。大臣からも二度とこのようなことのないように注意しておいたということでございますので、御報告いたします。
  120. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 これは謝って済むような問題だという理解をしておるのかね。これが第一点。この点のお答えを願いたいことと、そして、日本養蚕農家が戦争中にどういう仕打ちを受けたかということを知っておられるかどうか。戦争中に桑園を全部掘り起こして食糧増産に日本養蚕農家協力した。戦後営々としてまたやり直しをした。そういう経過を知っておるのかどうか。この二つの点で、通産省
  121. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま官房長の方からお話し申し上げましたように、誤解を生ずるような発言をしましたことにつきまして深く陳謝の意を表しておるわけでございますけれども、私どももかねがね絹業養蚕、糸というのは一体的に共存共栄の形でなければ生きられないという感じを強く持っておるわけでございまして、そうは申しましても、いま申し上げましたような誤解を与えたわけでございますので、これを契機といたしまして、今後は農林省とも十分私ども連携をとりまして、蚕糸絹業一体として共存共栄、調和ある発展をしていくような努力を最大限にやりたい、このように考えております。
  122. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 日本養蚕農家の歩んできた歴史を全然理解してない。答弁はないから理解していないんでしょう。それだからそういう発言が平気で出てくる。それと同時に、三月中に繭糸価格を決める、畜産物価格を決めるということは、いやしくも日本のどこの省におろうとも知っておらなければならぬ問題だと思うのですね。三月十四日に国会ではどういうことをやられておったか。これは官房長答弁願いたい。三月十四日、国会で何が起きておったか。
  123. 杉山和男

    杉山(和)政府委員 申しわけありませんが、存じ上げません。
  124. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 国会中に、議員であろうと高級官僚であろうと、出先で出歩きをしていいかげんラッパを吹いてもらうというようなときじゃない、国会中というのは。三月十四日は本会議があった。立法府では真剣に予算の審議をやっている。予算の審議というのは、不用意に京都で二年間生産を停止したらそれに補償金出せばいい——補償金は事務次官の個人の金を出すつもりで言うたのならいざ知らず、いやしくも国民の金を使おうとするならば、予算審議中に金に関することは一切——そうでしょう。予算の個所別に国会で審議中は発表もできないんでしょう。どこに補助を何ぼつけますということを発表できない。それにもかかわらず、二カ年停止させたらその間補償金を出したらいいというような金の使い方まで発言するような、これはもう不本意というか、完全に資格ない。どう思うのです、官房長
  125. 杉山和男

    杉山(和)政府委員 先ほど申し上げましたように、織物が壊滅するというのであればいろいろな考え方を出さなければいかぬじゃないかというふうなたとえとしてこんな考え方もあり得るということを言ったように私は伺っております。
  126. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 通産省のやっているのは、私は日本人として考えてもらいたいということですね。日本養蚕というものは長い歴史を持っているわけですね。いまは各国にそういう技術指導をして生産がふえてきておるわけでしょう。本家本元のようなんです、日本は、養蚕業。本家本元のような歴史のある日本蚕糸業について、つぶしてもいいわという考え方自体が私はおかしいと思う。いまあなたたちがわれわれの立場から申し上げて検討してもらいたいことは、たとえばブラジルであろうとトルコであろうとどこであろうと、現地で買えばそれは日本の繭価格よりか三分の一価格でしょう。それを商社が現地で買ってフランスへ持っていってフランスで加工して製品として輸入するから、日本絹織物が売れないということですよ。そういうことを自由にやらして貿易の自由化……。  それからもう一つは、撚糸と絹糸とのよりの問題でももう少し通産省がはっきりすればいい、こういう気がするわけです。それを完全において、何回よりなら絹糸、何回よりなら撚糸ということで、その認定もあいまいなことをさしておる。通産省がほとんど責任あるのですよ。二十万俵も輸入しなければならぬというむちゃくちゃな輸入をさしている。共存共栄協力協調だとあなた盛んに言う。共存共栄になってないのですよ。日本の農民いじめになっているわけですよ。そういうことを通産省はもう少し貿易の実態をよく知って、国内の政策を農林省と打ち合わせをしてやるというなら話はわかる。勝手なことをしておいて勝手な放言をして、それぞれ一遍謝ったらそれで済むという問題じゃない。これはもう徹底的にわれわれは追及せざるを得ない。わが党を挙げてやる。矢野次官がどんな偉い人か知らないが、やめてもらわなければおさまらないという腹を持っておる。全国十六万七千の養蚕農家にとっては大変なショックであります。  それから、通産大臣農林水産大臣が連署で十六万養蚕農家に声明文を出してもらいたいと思う。謝罪文を出してもらいたい。新聞でもいい。個人個人は発送できないから新聞に出す。その点について通産省農林水産省の次官の答弁を聞きたい。
  127. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御指摘の矢野通産事務次官発言につきましては、当委員会でも再三御指摘がございました。私ども答えをしているわけでございますが、まさに養蚕業絹織物業がお互いに協力し合って、理解し合って、この厳しい状況の中で生き残っていかなければならないこの状況の中で、きわめて不穏当な発言である。その真意が那辺にあるにせよ、少なくともああいう発言はいやしくも通産行政の責任ある立場にある者としては絶対言うべきでなかった発言である、かように考え、これにつきましては農林水産大臣からもまた事務局からも厳重に抗議をし、発言撤回を求めたところでございます。このことにつきましてはすでに新聞等で報道されておりますので、国民の皆さん、とりわけ最も関係のある養蚕農家の皆さんも一応御理解を賜ったことである、かように考えるわけでございますが、単に言葉だけの問題でなしに、今後、従来もやってまいりましたけれども、従来以上の決意で養蚕農家を守り、そしてその需要者であるところの絹織物業界の発展を図る。両省協力をしてまいるわけでありまして、とりわけ通産当局にはその実を示してもらわなければならない。輸入の抑制等の措置を通じてもこの問題については厳しく措置方を要望しなければならない、こう思っておるわけでございます。
  128. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま政務次官から御答弁申し上げたわけでございますが、ちょっと補足さしていただきます。  実は三月の二十九日に基準糸価決定を見たわけでございますが、その際に、農林水産大臣から、基準糸価等の決定に当たってという談話をプレス発表いたしております。その中におきまして、いわゆる今度の矢野発言問題に絡みまして大分製糸業者、養蚕業者ともに今後の養蚕、製糸がどうなるかというのを非常に不安に思っておるということを耳にいたしましたので、大臣談話におきまして、今後とも蚕糸業をわが国農業におきます重要な一部門として位置づけまして、蚕糸絹業ともどもその発展が図られるよう一層努力してまいりたいということで、蚕糸業に携わる皆様方におかれては安んじてその業に専念されることを望みますという大臣談話を発表しまして、農林省としての物の考え方を明確にいたしたわけでございます。
  129. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 通産省も、いま先生おっしゃったような趣旨で、かつ農林水産省の方から御答弁ありましたような線で、私ども深く陳謝の意を表しまして、国会の場におきましても大臣からもお話しいたしておりますし、それから、農林省からお話ありましたような抗議を受けて、これに対して農林大臣に対してこういう謝罪の措置をとったということを新聞等にも説明をしてございます。
  130. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 これで終わりますが、とにかく通産省農林水産省も、本委員会でいずれ蚕糸振興に関する決議案を提案しますから、それには反対しないようにはっきり申し上げて終わります。
  131. 内海英男

    内海委員長 細谷昭雄君。
  132. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、主としてえさ米問題について農林省当局に詰めたお話考え方、こういったものをお聞きしたい、こういうように思っております。  最初に、農政審議会は昨年の八月三十日に「農政の今後の検討方向」の中間報告をまとめたわけでございます。この報告内容を見てみますと、「農政の今後の検討方向(論点整理)」という形で「農業の長期展望の確立」という項目を出しておるわけでございます。たとえば「需要見通し」、「生産見通し」、こういったものに触れながら、特に「農地面積、農業就業人口等を含め、今後の我が国経済社会の中での農業の位置づけを明らかに出来るよう農業の全体像について将来のビジョンを明らかにするものとする必要がある。」と強調しています。そうして、自給力や食糧の安全保障、農家人口の許容ライン、長期的な食糧の輸入の確保の可能性の検討、飼料米の品種・栽培技術の開発の可能性等、かなり突っ込んだ論点が挙げられているのに、私は改めて驚いてみたり、次には敬意を表してみたり、こういうふうにこれまでのお役所仕事にしては大変読みごたえのあるものに感じたわけでございます。  そこで、若干の論点について政府考え方をただしたいと思うわけでございます。  第一に、この中間報告の論点は政府が提示されました「農政検討方向」の枠の中で書かれておるのか、それとも枠を超えているものかどうか、その点、まず次官にお尋ねしたい、こう思います。
  133. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 昨年六月に農政審議会に提示いたしました「農業の動向と農政検討方向」におきましては、飼料米につきまして名義的には必ずしも触れられていないわけでございますが、農林省におきましては、従来から飼料米につきましてはその低収益性の問題その他いろいろな問題もございますので、種々検討を行ってまいったわけであります。したがいまして、農政審の中間取りまとめにおきましても、このような農林水産省の問題意識を踏まえて、飼料米についての検討の必要性について言及されたもの、かように考えております。
  134. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 新聞等によりますと、この答申は五月に出るというふうに伝えられておりますけれども、いつ最終答申が出るのですか。
  135. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 お答え申します。  農林大臣の所信表明でも話してございますが、大体ことしの半ばごろを目途に鋭意検討を急いでおるところでございます。
  136. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 ことしの半ばごろといいますと、九月ごろですか。
  137. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 何とか夏ごろまでに結論を出したいと急いでおるところでございます。
  138. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 実は当委員会でもいろいろ、この長期見通しないしは食糧自給、特にきょうは食糧自給に対する本委員会、そして八日には本会議で単独上程されるというほどこれは全会一致、超党派的な緊急課題として取り組んでおる問題でございますけれども、この自給問題を取り上げますと大臣が答弁するには、現在農政審に諮問してあるので、その諮問結果を見てからということをよく言われるわけでございます。ですから、私たちはこの答申案がどのような形で出てくるのかということについてはきわめて重大な関心を持っておるというふうに言わざるを得ないわけでございます。  そこで、この夏ごろまでに答申される中身を政府はどう受けとめるつもりであるのか、その基本的な態度をまず次官にお聞きしたいと思います。
  139. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 農林水産省というよりは政府が基本的な農業政策の方向を決めます場合に、当然でございますけれども農政審の答申は最重要視して、その答申の線に沿っていろいろ具体的な施策の展開を図ってまいる、こういうことでございますので、近くといいますか夏ごろに予想できます答申については、そういう方向でこれから検討させていただいて施策に取り組んでまいりたい、こういうことであります。
  140. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この答申内容の中には、いままで政府が続けてきました、たとえば先ほどから問題になっております食糧の大量な輸入、こういったものを抑制しなさい、食糧の自給政策というものを至急に確立しなさい、これはもう本委員会でも先ほど決議案の起草について報告になりましたし、本会議でもそういうふうに出てきますので、当然拘束されると思いますが、もし仮にいままでの政府農政と違った方向が答申に出された場合、政府ははっきり政策方向を改めますか。
  141. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先ほど申しましたように、政府の農業政策の決定当たりまして私どもが最も配慮しなければならないのは農政審の答申の方向でございますから、仮に従来の政府の方針と百八十度といいますか非常に異なった線が出ても、それには当然私たちとしては従うという方向でこれからの政策転換を図っていくわけでございますが、ただ、率直に言って、従来の農政審の委員の方々が大体引き続いてやっていらっしゃる場合もありますし、また新たな方がいらっしゃると思いますが、従来の方向とそう極端に異が出るということでもないように私どもは考えております。
  142. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 どうもその点歯切れがよくないような気がします。  ところで、この中間報告の中に「構造政策」というのがございます。この構造政策の項目に述べられております農用地の有効利用、さらにそれに付随しまして農地法の見直しの一連の中身、この問題につきましては、いわゆる農地三法という形ですでに皆さんの方から国会に法律案として近く上程されるというふうになっておるわけでございます。  そこで、お尋ねしたいと思いますのは、最終答申を待たずにかかる法案の提出の態度というものは、いま次官のお答えなされた、尊重するという精神と反するのではないか。答申を待たずして、ある部分についてはつまみ食いをするといいますか、答申を待たずしてどんどん立法化するということは、ひいては農政審の軽視であり、答申の無視につながるのではないかというふうに考えますが、いかがですか。
  143. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 農地制度の改善整備につきましては、昨年来、農政審議会の構造・農村整備部会に置かれました構造専門委員会におきまして検討をお願いしてまいっておるところでございますが、昨年八月三十日の中間取りまとめの方向に即して具体的に検討を行い、本年二月十九日の構造専門委員会にその大綱を示して御了承を得、いわゆる農地三法の国会提出をいたしたのでございますので、農政審議会の御議論を無視して行ったものではないわけであります。
  144. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 わかりました。  そうすれば、生産政策の中で述べられております「飼料米等の飼料穀物を導入する」ということにつきましても、これは需給・価格部会だと思いますね、ないしは農林水産省当局の部内でも検討が相当以上に進んでおるというように考えていいわけですね。
  145. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 飼料米につきましては、先生指摘もございましたように、いわゆる水田再編対策に絡みまして、転作作物の一つの型としての可能性、さらにそれの実用性やまたそれを行う場合の技術的な問題もございますし、また、いわゆる価格政策、農家の方の所得の保障をどうするか、財政的な問題から技術的な問題からいろんな問題がございますので、その点につきましては、いま御指摘のように農政審におきましてもお取り上げがあり、いろいろ御議論があることと思いますし、また農林省部内におきましても、いろいろな角度から現在これは検討をしておる、こういうことでございます。
  146. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 二月二十六日の日本農業新聞の記事によりますと、大きな活字で「えさ米の総合検討へ 農政審でも焦点に」となっております。しかも、「第二期水田再編と絡め位置づけで論議」、これは二月二十六日なんですよ。それからもう一カ月以上たっておりますね。しかも先ほどは、農地三法についてはその部会で一応の中間的なまとめをし、農政審に中間報告をしながら了承していただいた。都合のいい方はどんどんやる、都合悪いのは伏せておくというわけじゃないでしょう。したがって、私は、農林水産省部内でこのえさ米についてはどの程度まで検討しておるのか、それを明らかにしてもらいたい、こう思うわけです。本委員会におきましても、えさ米につきましては、私が昨年の十二月六日、それから何人かの委員の方々から、さらに先般の衆議院の予算委員会で、私の知っておる限りにおきましても五人の方々が取り上げておるわけでございます。大臣答弁は、検討したいとしながらも、一つは食用米との識別、二つには流通コストが割り高になる、三つには栽培技術の三点について問題点を挙げられております。相当期間の検討を得たわけでありますから、農林水産省が考えておるこれが現在のえさ米だというふうな基準といいましょうかその枠組み、こういったものを示すべきじゃないかというように思います。それを示してください。これは技術当局でも結構です。
  147. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御指摘ございましたように、これは稲の品種の問題、いろいろ技術的な問題もございますので、農林水産技術会議の事務局長から御答弁をいたします。
  148. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 えさ米の技術的な問題につきましては、えさ米の問題そのものがごく最近いろいろと問題になってきた経過もございまして、必ずしも技術的にこういう目標、こういう内容でということは定まっていないような段階だと思います。したがいまして、私ども、技術的にある目標を持って、それを明確に設定をした上で、いまやれるという段階には至っていないわけでございますが、技術的にどこまで識別性なり収量性なり、いろいろな問題が到達できるかということについて、いまいろいろと研究を進めているところでございます。先ほど申し上げましたように、問題そのものがごく最近でございますので、えさ米につきましては、稲一般の研究で従来進めてきたものの中にいろいろと素材あるいは将来役に立つであろうような問題がございますので、そういったようなことも含めましてこれからいろいろ検討したいと思いますし、また、各方面でもいろいろとこういった点についての関心なり検討を持っておりますので、よく連携をとりながら進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  149. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 技術的な点でまだはっきりしておらないということはわかりました。  じゃ、この新聞によりますと、農林水産省の各部局にそれぞれのテーマを与えて検討させておるというふうに報ぜられておりますし、いままでの大臣答弁からしましても、その点の検討そのものは約しておるわけであります。ですから、少なくとも昭和五十四年度のいわゆる各試験地にもそれを技術的にはやらせた、そしてそれぞれの部門につきましてテーマが違うわけでありますが、それを与えておるということでありますので、官房は恐らくそれを集約して、現在こうありたい、えさ米についてはある程度ここまでいくとこれはもう認めるべきでないか、そういったイメージみたいなものはもうすでに持っておられると思います。持っておらなければだめだ、こういうように思うのです。その点でどうですか。官房でも結構です。
  150. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 飼料米の問題は、私見で恐縮でございますが、実は私が十年ほど前に米の生産調整を担当いたしましたときから、えさ米を入れたらどうかというお話はございました。それで、頼まれまして、私は全国農協中央会などでややモデル的にやってもらったことがありますが、結果的にはうまくいかなかった。なぜ一番問題が多いかといいますと、これは先生御承知のとおり、米の主食用の価格とたとえば輸入するえさ穀物の価格との間に、十対一ぐらいなすごい開きが出ておるということでございます。したがいまして、たとえば十アール当たりの米の生産費は、御承知のとおり全国平均で約十一万四千円でございます。それに対してえさ米、これは国際価格で入ってまいります輸入飼料の価格が大体トン当たり三万円でございますから、大体米は十アール当たり五百キロぐらいの収量だと考えますと約一万五千円でございますね。そうすると、十アール当たりのえさ米としての価格というのは一万五千円にしかならない。ところが、物材費と雇用労賃と家族労賃等を加えました十アール当たりの生産費が十一万四千円になってしまう。つまり十対一みたいに開いているわけでございます。それをもう少し具体的に言いますと、物材費に雇用労賃を入れましても六万五千円ですね。ですから、実は粗収益が恐ろしく低くて、その粗収益の低収入をどうやって補てんするかというところがなかなかむずかしい問題がございます。そこで、じゃすぐに反収の向上のめどがつくかというと、これもなかなか試験研究にかなり長期を要する、規模拡大でコストを下げるかというとこれもなかなかむずかしい、そういう問題がたくさんございますので、メリットもありますが、いろいろむずかしい問題がありますので、それをいま検討いたしておるというところでございます。
  151. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それはすでに大臣が何回も言っておる、いわゆるコストが割り高だと言っておる内容にすぎません。私が言っているのはそうではなくて、同じ答弁を何回聞いても私たちは納得しないわけなんですよ。政策的に一体どうなんだ。あれだけ各部門に、それぞれの部局にテーマを与えておりながら、しかも一年という年月がたっても、ほかの方はどんどん農地三法みたいに出してやる、そしてこちらの方は結論をなかなか出さない、一体これはどういうことなのか、私はそこを言っておるわけなんですよ。五十五年度のえさ稲育種の研究体制というものと研究予算、さらには研究内容を明らかにしてもらいたい、こう思います。
  152. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 先ほどお答えいたしましたように、このえさ米の問題はごく最近の問題でございますので、従来稲の育種あるいは栽培改善、こういったようなものにつきましては相当りっぱな組織、体制をもってやってきておりまして、今日まで技術開発に努力をしてきたわけでございますが、そういった中でいろいろやっていたことが、五十四年度の結果をまとめてみますとそれなりにいろいろなことがこれからの可能性に役立つような形で出てきておる、こういうことでございます。五十五年度以降どういうことになるかということでございますが、これはえさ米といいましてもやはり稲の一部でございますから、稲の品種改良あるいは栽培改善の一環として今後とも続けてまいりたいというように考えておりますが、飼料米の最近のいろいろな問題等もございますので、そういった点については格段の留意をしながら進めてまいりたいというように考えておるわけでございます。  なお、予算とかそういったような点につきましては、先ほど申し上げましたように、稲作の研究についてはすでに相当の組織がございますのでその中でやっていくということでございますので、必ずしもえさ米についてこういうことだというような予算のまとめ方は非常にむずかしいわけでございますけれども、御案内のような稲の研究のこれまでの蓄積を生かしてこれからやっていくということで考えておるわけでございます。
  153. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 農林水産省は、いままで私たちがえさ米の政策化について現実的な問題として提起をしておるにもかかわらず、腰が決まっておらないといいますか、本当にやる気がないといいますか、きわめて不誠意な態度だと言わざるを得ないと思います。たとえば予算委員会等の記録を見ましても、まことにその場限りの答弁を繰り返しておるというふうに私は感ずるわけであります。十二月六日に私はイタリア品種、イタリアの原種をもとにしたアルボリオについて大臣にも言ったわけですし、写真も見せたわけですが、その後の予算委員会で野坂委員にアルボリオって知っているかと聞かれましたら、それは初めて聞く品種ですという言い方をしておるわけです。大臣やそこに座っておられる方々はそのときの答弁だけで事足りるとしておるのでしょうか。私は、少なくとも人と人の問答、言葉、約束というものは、誠実に実行しなければ言葉としての意味をなさないのではないかというふうに思うわけでございます。したがって、いま技術会議の事務局長ないしは官房の方からもお話がございましたけれども、本当の農林水産省のえさ米に取り組む姿勢というのが全くなっておらない、決まっておらない、そう感じざるを得ないわけです。いままでの何人かの答弁、何人かの議員に対する答弁、予算委員会に対する答弁、こういった答弁では、常に前向きで検討します、しかも暇をつくって現地にでも行って、見て、それからよく考えていきたいというようなことまで言っておるわけです。にもかかわらず、いま言ったような腰の決まっておらない姿勢、それは非常に遺憾だと思うわけでございます。いままでのこのいわば中間報告に示されておるえさ米の、えさ稲の栽培ないしはその展望、こういったものを議論しておるという中身、そして大臣が各部局の皆さん方にテーマを与えていままでやってきたというこの実績を踏まえながら、一体全体これがえさ米だという枠組みというのをいつ示すのですか、ひとつ近藤次官、明確に示していただきたい、こう思います。
  154. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 水田利用再編対策を強力に遂行していかなければならないような現状の中で、その水田そのままに稲を植えて、そしてえさ用に供せられるということは、方向としては非常に魅力的な方向でございますから、大臣初め事務当局もたびたびお答えをしておりますように、この問題について検討はしておるわけでございますけれども、技術的な問題として、従来、いわゆる食用の米じゃなしにえさ用でありますから、いろいろと品種の問題もございますし、また多収穫性のものを確保しなければならない、同時に反当収量また収入の問題もございますし、そういう農家経済全体としての対応の仕方もございますから、そういうものを総合的に十分検討した上でありませんと、片っ方でいわゆる主食の米の生産、流通があるわきに出てくるわけでありますから、いろいろな意味で将来混乱を予想される面もございます。ですから、十分いろいろな角度から検討しているわけでございますが、その総合的な検討の上でなければ最終的に決定ができない、こういうことで、これまでお話をしていましたように、その最終的な決定についてはまだ若干時間をおかしいただきたい、こういうのが実情なわけでございます。
  155. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 えさ専用米の開発というものは非常に育種の期間が長くかかるわけであります。普通育種というのは十年、早くとも七年だというふうに聞いておりますけれども、新しいそういう育種ができるまで、その実用化できるまでの間、いま次官のお話があったようにこれまでの転作の奨励を水田地帯、近藤次官も山形県、米どころです、内海委員長も宮城の米どころ、私は秋田でございます、こういった何といっても水田に頼らざるを得ないところの水田地帯にしていくつもりなのかどうか。さらに、大蔵省では、いまのような転作奨励金、これは財政的にとてもじゃないけれども見直さなければならない、こういう議論があるやに聞いております。現場の農家では、価格保証の問題や流通の問題こういった問題でますます農政不信というのが高まっておるという現状でございます。  そこで、次官にお尋ねしたいと思いますが、東北大学に角田教授がおられますが、この角田重三郎教授の食用米のえさ化と専用米のデントライス構想、こういったものを御承知でございましょうか。御承知であるとすれば結構でございますが、この角田構想の大筋を御紹介したいと思うわけです。  これは、わが国の米の過剰の主な原因というのを、人口増の鎮静化と主穀——主穀というのは米だと思いますが、主穀である米の増収、それに穀物の直接摂取量の減少の三要素の同時進行によるとして、これをわが国の近代化と角田教授は位置づけておるわけであります。もちろん、米の消費量の減少だとかないしは小麦の大量輸入、こういったのも当然要因だ、こうはしております。そして、近代化して主穀に余裕ができたとき、欧米の先例のように、小麦、トウモロコシは人間の専用から初めて家畜のえさに回った。つまり、主穀に余裕ができたら家畜のえさに転用するのは当然の成り行きである、このようにしております。そして、日本の気候風土から言って申し分ない作物である稲を最大限増産すると、最高千八百万トンの生産量を確保できると予想する。二十一世紀の初頭にピークになると言われるわが国の人口は一億二千九百万人になると思いますが、この対応をすること、これが当面わが国の食糧問題解決の方法でなければならない。つまり、日本の食糧問題というのは、上質新米を食用にし、余裕米を備蓄しながら、一年後にはそれを全部飼料に転用する、この方式をデントライスの専用米の実用化までつないでいく、これがいわゆる角田構想と言われるものであります。  これは発想の転換といいますか、いままでの私たちの観念、発想と全然違っているわけであります。農政審議会では恐らくいろいろな説を検討したと思われますけれども、この角田構想というものもその検討の中に入れておられるのかどうか。これはいかがでしょうか。
  156. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 農政審議会の具体的な検討の中でどういう議論をされておりますかは、私つまびらかにしませんので、後ほど企画室長からでも答弁させますけれども、構想としては非常におもしろい。先生指摘もございましたように、いわゆる欧米におきましても、人間が食べるものと家畜が食べるもの、必ずしも画然と区別されていなくて連続的なわけです。ですから、日本の米も、いわばある程度の品質の高いものを人間が食べておって、多収穫で若干質の落ちるものが今度は家畜に回るという形で、一種の中間領域があるわけですね。全体として、たとえばアメリカの小麦の輸入が抑えられたときにずっと米でそれを代替していくというようなことですとか、逆にほかでいった場合にはえさに回す方がふえてくるという形で、全体としての総合の需給バランスを主食用の米とそれから飼料用の米と総合で図るというようなことは一つのアイデアじゃないか、かように私は考えるわけでございます。しかし、その場合にも、今度はいわゆる主食用の米と飼料に向ける米との区別がますますつかなくなってまいりますし、値段も、ボーダーラインでは一体どういうふうにつけていくんだという問題がございます。  角田先生お話は、何か全体として米の買い入れ価格を下げておいて、そして片っ方では飼料用に回った米についてはある程度価格維持をして、生産者農家の方々の所得を確保する、こういうことでございますけれども、果たしてそういう人間用の米の値段を下げることができるか。また片っ方では、そういうえさ用の米の値段を逆に売り渡し価格と買い入れ価格の差をどの程度つけることができるか。いろいろな問題、財政事情もございますので、数を分けないで、ある程度すその広がる形で総合的に調整するというのは、アイデアとしては非常におもしろいアイデアだと個人的には思ったわけでございますが、実際財政その他考えてまいりますと、また配給制度全体を考えてまいりますと、現実にこれを採択するにはいろいろな問題を解決していかなければならない、かように考えているわけであります。
  157. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 朝からずっと一貫して流れておるきょうの委員会の底流というのは、外国からの無制限な食糧輸入、農畜産物の輸入に対する怒りの一つのあらわれじゃないかと思うわけであります。  そこで、昭和六十五年の農産物の需要と生産の長期見通しが試算として発表されておりますけれども、この試算によりましても、特にいま私が取り上げております飼料作物、特に濃厚飼料等につきましては七〇%依然として輸入に頼るということになっておるわけであります。これは、可消化養分総量、TDNのベースで言いますと、千四百七十七万トンもの小麦、トウモロコシ、燕麦、こういったものをずっと長期にわたって日本で輸入するとなっているわけです。しかし、一体全体こういう安定的な供給が今後そのようにできる見通しがあるのかどうか、その根拠をひとつ示してもらいたい。私は、これはできないのではないかという前提に立っているわけです。一つは石油の問題であります。もう一つは世界人口の増大によるところの供給悪化、この二つの要因によりまして、まず第一に穀物価格が急騰するのではないか。そして食糧危機が来るのではないか。そのときこういう長期的な見通しに安閑としておられるのかどうか。これを、まず通産省の見通しについてひとつお答え願いたい、こう思います。
  158. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 飼料穀物の需給の問題でございますので私からお答え申し上げたいと存じます。  飼料穀物を……
  159. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 違いますよ。石油の問題で価格が上がらないかどうかということを通産省からお聞きしたい。その後で結構です。
  160. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 お答えいたします。  飼料穀物、これから需要がふえていくのに対してちゃんと国際的に輸入ができるかという御質問でございますが、私たちいま手持ちしておるところによりますと、粗粒穀物の生産量がほぼ七億三千万トンある。その中で日本の輸入が千八百万トン程度輸入されておりまして、貿易量もほぼ一億トンに対して千八百万トンというウェートになっておりまして、世界の貿易では相当のウエートを占めておるのは事実でございますが、従来から世界的にも穀物生産は、品種改良、その他の技術開発もございまして生産してきております。これからもその開発は期待できるのではないかというふうに考えておりますので、ある程度の輸入は、今後の状況にもよりますが、期待してもよろしいのではないだろうかと考えているところでございます。
  161. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この際、通産当局にお聞きしたいと思います。  貿易自由化という、そのかけ声のたびに何がもたらされたかと言いますと、外国食糧の大量の輸入、そしてわが国の農畜産物を駆逐するという形で、国内からどんどん日本の農業というのを縮小させてまいりました。この委員会でも先ほど矢野次官発言というものが問題になったことでありますので、これはもう毎回のように議論されておる問題でございます。日本の貿易立国、工業優先、こういう政策というものが、時に日本の農業を一方的に縮小してきたのではないか。その責任というのは、先ほども柴田委員からお話しがありましたとおり、通産省の野方図な工業生産、工業貿易、それに依存するという政策に追随しているのではないかというように思われてなりません。この点について通産省の当局の考え方、これは、課長さんだそうですけれども、大臣にかわってひとつ答弁願いたいと思うのです。
  162. 北川正

    ○北川説明員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、わが国は三十七万平方キロメートルという狭い国土で現在一億一千六百万人という人口を擁しておる、しかも資源エネルギーに恵まれない国土でこれだけの国民が生きていかなければいけないということでございます。その一億一千六百万人の国民が少しでも豊かな暮らしをしようとすれば、どうしてもわが国としては必要な資源やエネルギーを輸入しなければなりません。そのためには輸入に必要な外貨をかせがなければいけない、そのためには輸出もやっていかなければいけないということがわが国の経済運営の基本的な仕組みであると私考えておる次第でございます。  一方、わが国の農業政策でございますが、これは通産省といたしましても、国民食糧の安定的供給の確保という非常に重要なことを農業政策が主眼にし、さらに、それだけではなくて、国土や自然環境の保全あるいは健全な地域社会の形成、そういった面にも着目しながらその、層の強化が図られてきているというふうに承知しております。  通産省が担当いたします貿易政策は、政府全体の行政の総合性及び整合性に十分配慮しながら、国民全体の福祉の向上のためにたゆまぬ努力を払わなければいけないと考えております。したがって、今後とも国民各界各層の利害の調整という側面に十分留意しながら適切な政策を講じていかなければいけない、かように考える次第でございます。
  163. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 近藤次官どうですか。いまのお話を聞きますと、いわゆる食糧の輸入とかという問題は輸出、輸入という整合性の問題だというふうにお聞きしますが、しかし、何といいましても通産省は国際分業論の立場に立っておるのではないかというふうに思うわけです。資源のないわが国が外国から物を買うとすれば何か売ってやらなければいけない、売ってやるとすれば買う物を出さなければいけない。それで油を買うのだ、食糧を買うのだという言い方なんですね。しかし、これは何といいましても、一方では農民がそれによって苦しむという問題、整合性の問題、いわゆる行政の上で、次官は通産省農林省のそういう整合性に対する協議、政策的な協議、それを政府部内としても十二分にやっていただきたいし、やらなければならないというふうに思うわけでございます。後からその点も含めてひとつ御答弁を願いたいと思うわけです。  時間がありませんので、最後に、私はきわめて具体的なお答えを願いたいと思いますのは、きょうは本当は大臣がいらしておりますとはっきりお聞きできると思ったのですけれども、第一に私は十二月六日に提案をしておるわけであります。その提案と言いますのは、畜産農家の自家飼料として、売るとかなんとかじゃなくて自分の家畜に食べさせる飼料として、転作作物にえさ稲作付を認めてもらいたい、こういうことを提起をいたしました。私の秋田県の高橋良蔵さん、これはこの前も紹介いたしましたけれども、この方は、常に農林水産省が言っております耕種農業と畜産農業を結びつけるいわゆる複合経営、これを水田のど真ん中でやっておるという篤農家でございます。水田酪農の実践家でございます。この方が一昨年から研究を続けてきておる例なわけですが、在来水稲、これはアキヒカリというものでありますが、この在来水稲アキヒカリを表作にして、反収を、これは玄米として四百六十九・二キログラム、稲わらが二百二十三・〇キログラム、これは反収です。さらに裏作としましてライ麦の青刈りをやった、そして五百九十二・〇キログラム。これをいわゆるTDNの総量換算をいたしますと一反歩から千二百八十四・二キログラムの収量が上がった。これを庭先渡しの配合飼料価格一キログラム六十二円というので換算いたしますと、反収が十一万七千円、これに七万円の転作奨励金を加えるならば十八万七千円になるわけでございます。これは十二分にいわゆる普通の米作をやっておるのと変わらない。ですから、コスト高コスト高と先ほどから官房企画室長も言っておりましたけれども、売るのじゃなくて自分の家でつくる、自分の家の家畜に食べさせる飼料という点でありますと十分ペイするというふうに思うわけでございます。したがって、これを望む農家の皆さん方が大変な熱いまなざしで皆さん方のこの回答を待っているわけでございます。これについてぜひひとつ具体的な回答をお願いしたい。  第二の問題は、民間研究団体に研究助成すべき時期であると思います。すでに地方自治体、これは茨城県、それから鳥取県、秋田県。私たちの秋田県では具体的に言いますと羽後町、湯沢市、本荘市、大曲市、こういったところでは自治体自体がすでに研究費を予算化しております。秋田県におきましても今回、今年度は十カ所における民間の研究農家と提携をしながら共同研究をするということに踏み出しております。農林省はいまやこういう全国津々浦々における農民の要望にこたえるべきときではないかというように思うわけでございますので、この点についての御回答をお願いしたい。  最後に、大臣が常がね現地を視察をしたいと言っておりますが、私はその日程と視察先についてお尋ねしたいと思うわけでございます。何と言いましても、ただのときに参りましてもこれはどこにも植わっておらない。ですから、七月の末他の稲と比較をしてみれば一目瞭然でございます。ですから、七月の中旬から末、参議院の選挙が終わった後で結構だと思います。そうでなければ、後は八月の下旬だと思います。それから、行き先につきましては、茨城県の小室さんはぜひひとつ見ていただきたい、こう思いますし、私の方の秋田県であれば皆さんの方の農業試験場もあります。秋田県の農業試験場では、全農の委託で実験をやっております。先ほど挙げました湯沢市を中心とした私たちの仲間の研究もございます。大曲市や本荘市の自治体における研究もございます。ぜひ行き先も指定しながら、時期を指定しながら、大臣の行き先、時期、こういったものをひとつ明確にしていただきたい。  以上三点と、先ほどの基本的な問題をお答え願いたいと思います。
  164. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 第一点の、高橋さんの栽培実験につきましての所見を申し上げたいと存じます。  調査をいたしておりませんので詳細はよくわかりませんけれども、表作に飼料米を入れ、裏作に青刈りライ麦を作付されまして、土地の有効利用によりまして自給飼料の確保に相当の成果を上げておられるように存じます。しかしながら、自給飼料の生産はそれ自体価値の実現をするものではなくて、畜産経営全体の中でそれが価値の実現をするというふうに考えられるわけでございます。そうした見地から、自給飼料の生産部門もできるだけコストが償って、畜産物自体の価格に対しまして大きな負担にならないように、できるだけ合理化をする必要があろうかと存じます。そういたしますと、高橋さんの計算の中で自給飼料の栄養価の評価につきまして見てまいりますと、TDN、可消化養分総量で換算をいたしておるのでございますが、それだけで換算していいものかどうか。私どもは、可消化たん白量も含めた栄養バランスを見た見地から考えてみる必要があるのではないかという点で、配合飼料の流通価格だけで換算をいたしておりますが、その点、配合飼料は栄養のバランスのとれた内容になっておりますけれども、自給飼料の青刈りライ麦、飼料米、それらの栄養のバランスが必ずしも配合飼料と同等ではないという点で計算をする必要があろうかと存じます。  それから、もう一点は、先ほど申し上げましたような畜産物価格のコストをできるだけ高めないようにする必要があるわけでございますが、コストの関係がどういうぐあいになっておるのか、その点がよくわかりません。収益性を見てみる必要がございます。それから、さらに非常に高い反収を上げられておるわけでございますが、現状におきましてこれを全国的にそういった水準で期待できるかどうかという問題もございます。そういったいろいろな問題がございますので、さらに検討を要することではなかろうかと存じます。特に水田の表作に作付する飼料米につきましては、他の作目との収益性あるいは単位当たり生産量につきまして比較をし、検討していく必要があろうと考えておるわけでございます。
  165. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 秋田県の高橋さんの水田畜産につきましては、いま局長から話をしたとおりでございますが、実は先ほど官房企画室長から話もいたしましたけれども、米の反当収入とえさ米の反当収入は十四万と一万五千で十倍差がある、こういうことも申し上げたわけでありますが、これからの転作につきましては、そういう反当収入均等ということでは必ずしもないのじゃないかという気がするのです。むしろそうじゃなしに、いまお話しの中の、片一方では酪農やら畜産やらという形で総合的な経営全体としての収入と、こっちの従来の水田の収入が均衡すれば、まさに農家の方々の収入の安定がなされるわけでありますから、そういう反当収入で横並べるのじゃなしに、総合的な経営の均衡を考えるということもこれから積極的に取り組んでいかなければならない。そういう意味では、高橋さんの経営というものは非常に参考にすべき面があると思うわけであります。ただ、お米でございますので、同じ米に片一方にいわゆる転作奨励金を出すということにつきましては、また米全体の流通、いろいろな問題を考えてまいりますと、技術的に問題なきにしもあらず、こういうことではないかというように私は考えております。  民間の試験研究にもうちょっと助成すべきじゃないかというお話でございます。えさ米の開発というのは非常に高度技術的な問題がございますから、従来とも国立の試験研究機関でやっておりますが、同時に、一つの方向としては、いま地域特性に応じて多角的な新しい農産物の開発をしなければならないというときに、やはり国立の研究機関だけではなしに、民間のいろいろな創意工夫も積極的に促進するということもこれからの研究政策の方向ではないかというふうに、これは個人的でございますが考えておるわけであります。  大臣の視察の問題につきましては、恐らく大臣も機会を得ていたしたい、こう思っておると思うわけでありますが、御案内のような現状で、まだ国会で相当これから大きな問題を抱えておりますので、国会の審議の状況とか時間的な余裕を見て現地を見れるような機会をつくることを恐らく本人も希望しておるのじゃないか、かように思うわけであります。  最後に、最初に先生指摘あった件でございますが、日本輸出するから見合いで輸入するのだという考え方ではもうだめなんで、御案内のようにことしも石油価格が上がりまして、少なく見積もっても五百億ドル、多くは六百億ドルの石油代金の支払いである。総合的な輸出が千億ドルから千二百億ドルというときに半分以上が石油代金になるわけでありますから、安易にもうこれだけ輸出しているからあとは買えばいいのだということではないので、やはり農産物におきましてもできるだけ外貨を節約するということも大事じゃないか。御案内のような厳しい国際環境の中における国家の食糧の面の安全保障という問題もございますし、同時に、これからの農家収入の増を考えた場合に、なかなか米を含めていろいろな農産物の需要の拡大はむずかしい中で、少なくとも外国の農産物によって占拠される、言葉はきついですが、食糧を国産の食糧に切りかえていくということがこれからの農業所得向上の道でもある、かように考えますので、そういう意味から、いわゆる輸出入のバランスというようなレベルの議論でなしに、もっといろいろな判断から、国の食糧自給度を高めていく、それがこれからの農林水産省の基本的な政策態度ではないか、かように考えておる次第であります。
  166. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 ただ、試験研究の問題等につきましては、また何カ月か後でもう一度詰めていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  167. 内海英男

    内海委員長 武田一夫君。
  168. 武田一夫

    ○武田委員 私は、三点につきましてお尋ねいたします。  まず最初に、米の品質表示の適正化の問題について食糧庁にお尋ねします。  最近、米の品質表示の適正化、これに乗り出すことを決めたようですが、簡単にその要点、ポイントとなる点を説明していただきたいと思います。
  169. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 従来から袋詰め精米につきましての品質表示についての規定を設けておったわけでございますが、最近の米の消費拡大、特に需要者にわかりやすいような米の内容を表示するということを目的にいたしまして、今年度から新たな表示方法を行うことにいたしたわけでございます。  その主な内容といたしましては、知事が品質区分を袋詰め精米について明確にするということでございます。それから、品質区分ごとにその内容を明確にするということでございまして、類別区分、一類から五類までございますが、類別区分による原料玄米の構成割合を表示するというふうにしておるわけでございます。やり方といたしましては、それぞれの地方の実態もございます、いままでの表示の経過もございますので、そのような都道府県ごとの実態に応じて、漸次このような方向に改善をしてもらうということにしたいと思っております。
  170. 武田一夫

    ○武田委員 従来から表示されたものと中身が違うということで、特にこれ大都会が多いようですね。東京とかそうしたところの消費者の皆さんが、たまたま私たちのような宮城県のところでおいしい米持ってきて売りますとはっきりするわけですね。この間も、宮城県で西武デパートで一週間にわたってササニシキを売ったそうです。そうしたら、ずいぶん違うという苦情があったものですから、やはり小売店さんあるいはどこかで中身が大変変わっているんじゃないかというような不満、それが大きいということがこれによって改まるなら、非常に結構なことだと私も思いますし、消費者の皆さん方もこれは一応評価しているように思いますが、問題は、巡回指導を強化するというところに一つありますね。果たしてそのとおりであるかどうか。この体制は十分でございますか。巡回指導体制といいますか、人員の面なんかも含めまして、その点どうでしょうか。
  171. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 この表示の実施につきまして適正に行われるような指導というものにつきましては、直接的には都道府県知事の指導ということにゆだねられておりますので、都道府県知事の指導を強化していただくということでございますが、食糧事務所におきましてもこの巡回指導を強化するということにいたしたいと考えておりまして、現在、各食糧事務所ごとにこの表示についての指導を行う体制を準備中でございます。
  172. 武田一夫

    ○武田委員 これは十分になされないとかえって反発が大きいと思うのですよ。これは十分御理解していると思いますが、それだけにやはり、その指導に当たる知事にせよあるいは食糧庁の担当官にせよ、十分なるキャリアと、また、いつ巡回するのかとかというのは私はわかりませんけれども、そういう期間の問題と、あるいはまた時間の問題といろいろありますね。そういうものを十分にやっていただかないと、また大変な飛ばっちりが返ってくるように思いますので、その点、まずしっかりとお願いしたいと思うのです。  ところで、消費者の皆さん方がいつも言うのは、言葉の不統一、やはり私たちも正直言ってわからないことがあります。たとえば一等から三等ですか、それが一類から五類になったというのは、どういう関係性とどこで類似点がどうなんだと言われても、ちょっと専門的な方でないとわからない。買う方にしてみればそのとおりのものが出ていれば文句ないのですが、願わくばもう一歩深く入って、そうした言葉のむずかしさといいますか、不統一というものは改めていってほしい。この点も十分配慮されていると思うのですが、何かいま県の実態に合わせてというふうに話がありましたね。そうすると、この言葉の不統一、要するにわかりにくい、これをわかりやすくするということと、言葉の不統一の問題というのは、今回の表示の適正化によって解決できるものですか、その点。
  173. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 先ほど申しました袋詰め精米について品質区分を設定するという場合の品質区分のやり方につきましては、原則として中央で例示をいたしまして、できるだけ統一的な品質表示ができるように指導いたしておりますが、ただ、従来からの各都道府県ごとの指導の経過もございますし、また、非常に細かく指導しておる県等もございますので、その辺はやはり地方の実態を取り入れていいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  174. 武田一夫

    ○武田委員 それで、もう一つお尋ねしますが、店頭精米のものをどうするか。私は、どちらかというとこっちの方が、正直言うとこれは申しわけないですが、問題になってくると思うのですが、余りにも多いわけですね。本当は小売店さんが、全部とは言わないですよ。インチキしていると私も思いませんが、商売ですから、ちょっとまぜて質の落ちたのを出していないということはこれは否定できないと思うのです。現実に消費者の皆さんが不平を持ってくるのは、小売店さんから買ってきたものについて、地元から来たのとずいぶん違うじゃないかというのがあるのですから、これをどうするかということで、ここのところをやっぱりもう少し煮詰めないと、この適正化の問題についても画竜点睛を欠くような気がするのですが、それに対してどういうふうに取り組んでいくつもりですか。
  175. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 この表示の問題は、ただいま先生からお話がございましたように、小売の店頭精米の場合に非常に問題があるわけでございますので、私どもといたしましては、小売の店頭精米につきましても、同様に表示を明確にしていくというふうな指導をしておるわけでございます。従来から大型搗精工場における袋詰め精米につきましては比較的明確な表示が可能でございましたか、いまお話がございましたような小売の店頭精米についてもやはり適正な指導をする必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  176. 武田一夫

    ○武田委員 そうすると、それも何か巡回指導みたいなことを本当はしなくちゃならないわけですね。だけれども現実問題として、たとえば東京なんかでは小売商組合ですか、自主検査をしているそうですが、これはお互いの信頼関係ですから何とも言えないのですが、消費者にとっては、やはり同じ仲間でないかという感じは否めませんわね。こういうところの問題をもう少し煮詰めた上で、大変だけれども、やっぱり消費拡大も必要ですし、消費者に安心して買ってもらえるという、この品物は大丈夫だという信頼感を植えつけていくためにはまだ相当努力が必要だと思うのです。そういう点で、これはどういうことを考えているのですか。今後の課題ですが、ひとつ何か腹案でもあるならば聞かしていただきたい、こう思うのですが、いかがでございますか。
  177. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、この表示の問題は、米の小売店と消費者の間の信頼関係を確保していくというためのことでございますので、ただ単に行政の指導だけで可能なものではなくて、小売業界の努力が必要であるというふうに考えております。したがいまして、小売業界にも積極的に協力してもらって、自主的な努力をお願いをしておるところでございます。しかし、できるだけ私どももその実効を確保いたしますような指導をしてまいりたいということで、小売店ごとの巡回指導もできるだけやってまいりたいと考えております。
  178. 武田一夫

    ○武田委員 これはこれから始めるわけですから、その推移を見ながら、気がついたことがあったらその都度またいろいろと御質問なり何なりでお聞きしたいと思いますので、このくらいにしておきます。  次に、鯨肉の問題でお尋ねします。  最近の新聞記事で、違法の鯨肉が輸入されたのではないかという内容のものがありましたね。この事実関係はどうなんですか。新聞に書かれているこういういきさつをもう少し詳しく知りたいと思うのです。これによりますと、国際捕鯨委員会の非加盟国であるため輸入が禁止されている台湾産の鯨肉が日本の市場に出回っていることが表面化し問題となったということですが、この点いかがですか。
  179. 上田大和

    ○上田説明員 お答えいたします。  国際捕鯨委員会の非加盟国からの鯨製品の輸入につきましては、昨年の七月に貿管令の事前許可制の対象といたしまして、事実上輸入を禁止する措置を講じたところでございます。  それで、ただいま先生指摘の台湾鯨の輸入云々のうわさでございますけれども、昨年七月から本年二月までの間に韓国から冷凍及び生の形態の鯨肉が約千二百六十トン輸入されております。このうち千百トンは冷凍肉ということになっておりまして、この冷凍肉が台湾産の疑いがあるという情報を私どもも得ているところでございます。これにつきましては、目下関係省と協議しながら、事実関係を鋭意調査しておるところでございます。いずれその結果を踏まえて適切な処置を講ずる必要があると考えております。
  180. 武田一夫

    ○武田委員 いつごろまでにそういう事実関係がわかるか、大体の見通しですね。もしこれが言われるようなものであるとすれば、これは問題ですね。それでなくても鯨は問題になりますね、日本人は鯨のとり過ぎだとか食べ過ぎだとか。しかもこういうルール違反ということになれば、ことしの七月ですかIWCの会議があるわけですが、そういうときに日本は相当困るのじゃないかと思うし、これは十分な対応をしなくてはいけないと思います。大蔵省としましても、いま事実関係を調べているようですが、もし事実とすれば、チェックの問題で、たとえば原産地証明だけつければいいのだというだけでは今後不十分でないかと思うのです。大蔵省、来ていると思いますが、この点いかがですか。
  181. 中島潔

    ○中島説明員 私どもも確かに韓国産ということで台湾産の鯨が入っているのではないかということを聞いております。税関といたしましては、申告書が提出されるわけでございますが、そこに原産地が記入されておるわけでございまして、申告書につけまして貨物の送り状といいますか、通常われわれインボイスと呼んでおりますけれども、そこでも原産地がわかるような記載がしてあるということで、そういう確認をいたしておるわけでございます。もちろん必要によりましては現物も検査するということで、申告書に書いてある原産地に疑いがなければ許可をするということでいままできたわけなんですが、最近このようにいろいろな情報がございますので、私どもとしましては、もっと慎重にチェックする必要があるのではないかということで、現在IWCの加盟国から輸入される鯨につきましては必ずしも原産地証明書が必要とはされておりませんけれども、原産地証明書をとるように指導するとか、あるいは現物も原則として検査しよう、鯨にはいろいろな種類がございますけれども、これも分析によってある程度わかるということもございますので、必要によっては分析もしようということで、厳重にチェックするように各税関を指導いたしたわけなんでございますが、それで果たして十分かどうかという問題もございますので、場合によっては現在の規制をさらに強化しなければいけないのじゃないかということも考えられますので、先ほど水産庁の方から関係省庁と協議して調査中ということでございましたけれども、私どもは今後の方向も水産庁初め各省庁と協議しながら検討したいと考えております。
  182. 武田一夫

    ○武田委員 それがわかれば、その状況をもう一度公の場所で教えてもらいたいと思います。これはお願いしておきます。よろしゅうございますか、水産庁。
  183. 上田大和

    ○上田説明員 ただいま先生指摘のように、非加盟国である台湾から鯨が輸入されている事実があるとしますれば、今後の国際捕鯨委員会におけるわが国の捕鯨業存続の立場をきわめて弱いものにする非常に重要な問題でございますので、先ほど申し上げましたように、関係省庁と早急に事実関係の確認を行うとともに、今後の対策については適切な処置を講じてまいりたいと考えております。
  184. 武田一夫

    ○武田委員 わかったらこちらにも教えてください。  時間の関係で、最後に、もう一つ水産庁にお尋ねしますが、日本は御承知のとおりすべての面にわたって資源が少ない国ですね。特に魚についても無尽蔵にとれる時代でもなくなったわけです。いままでの遠洋漁業がどんどん縮小されてきたし、近海漁業、沿岸漁業等の必要性が増し、また養殖漁業が重要になってきた。こうなってくると、特に増養殖の場合は技術というのが日本にとっては大きな資源だという考えは重要な考えだと思うわけです。ですから、それに取り組む水産庁としての予算措置等含めまして、すべての面で相当力を入れなくてはいけないというふうに私は考えているわけですが、そうした考えで今後の食糧資源対策の万全を図っていただきたいと思うのですが、その点についてまず簡単に御見解を伺って、次の問題に移りたいと思います。
  185. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 二百海里時代を迎えまして、水産行政のあり方の上で増養殖漁業を中心に進めていかなければならないという御指摘は、私どももそのとおりであると考えております。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 したがいまして、五十二年八月に水産増養殖の推進に関する懇談会というのを設けまして、学識経験者にお集まりをいただきまして、今後の方向について種々御検討をいただいたわけでございます。その中で、特に、今後海域の総合的な開発を推進すべきである、あるいはただいま御指摘のありましたような増養殖技術の推進体制の整備を図るべきである、こういう御提言をいただきまして、その後現実に予算措置等を講じて実行に移しているところでございます。
  186. 武田一夫

    ○武田委員 その水産増養殖に関する懇談会というのは五十二年から始まったわけですか。そうすると、そこでいままで毎年行われてきて、いろいろな提言が出てきた。その中で、いままでそうしたものが行政の皆さん方の仕事の上にどれくらい生かされて、一つの形のものとして出ているか。集まってくる人の中には漁協の代表なんかもいまして、現実に仕事に取り組んでいる方々の方が熱心だと思うのですよ。それだけに、そのはね返りが早ければ早いほど意欲も出てきまして、希望も大きいわけですね。そういう点で、その状況を簡単にお話し願いたい。
  187. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 提言の中では、一つには、個々の技術とか施設の整備、そういう個々のものを組み合わせて、いわばその地域地域の海の総合的な生産力を生かすようなことを考えるべきである、こういう御提言をいただきまして、五十三年度から沿岸漁場整備開発事業の一環といたしまして、海域総合開発調査事業を実施しているわけでございます。  さらに、先ほど申し上げましたように、栽培漁業の推進体制の整備を図れというようなことがございまして、国の栽培漁業センターを従来瀬戸内だけであったものを全国に広げていく、あるいは県の栽培漁業センターにつきましても、五十五年度に新しく高知、沖繩両県で着工することになりました。これをもちまして、東京、大阪を除きまして沿岸全海域でこの施設が整備されることになったわけでございまして、懇談会の御提言はそれなりに生かすように私どもは努力しているつもりでございます。
  188. 武田一夫

    ○武田委員 私の地元の漁業組合長さんの後藤さんという人が、かつて漁業栽培協会の設立というものを強く提唱した。だけれども、本人は、農林省が賛同しておりながら、実質計画を予算に盛っておりながら、大蔵省が新事業はまかりならぬというのでばっさり切っちゃったなどと、みずから書いて新聞に投書しているわけですよ。いま話を聞きますと、一応後藤さんなどの提言も、五十四年ですか、ことしもまたその一つの具体的な方向に進むということがわかっているとするならば、どうもフィードバックというのが弱いのではないかという気がするし、こういうようなことの行き違いもないようにしようじゃないかと言うのですが、この点はどうなんですか。そういうことはきちっと、参加者だけでなくて、もっと広くこういう状況だということを言っているのでしょうけれども、肝心の組合長さんが聞いていないということは私はどうも気にかかるわけですが、これはいかがですか。
  189. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 お答えいたします。  いま御指摘のございました新聞の投書は私どもも見たわけでございまして、漁業組合長さんは懇談会の委員に入っていただいておりましたのに、その後私どものPRが大変不足しておりまして、その辺反省しておるわけでございます。  しかし、事柄の実体といたしましては、先ほど申し上げましたように、従来瀬戸内海の栽培漁業協会であったものを全国の栽培漁業協会に組織変えした。ただ、法律を出しまして、これをいわゆる認可法人というような形を考えたわけでございますが、この点はどうも、こういうように行政機構簡素化の折でもあり、見送ることとしたわけでございますが、実質的な事業の内容面では、大蔵省の方ともよく相談いたしまして十分な予算措置をつけていただいたわけでございまして、十分その充実を図るようになっているわけでございます。いずれにいたしましても、私ども、どうも仕事の進め方についての現場に対するPRがやや不足しておりました点、深く反省しております。今後、気をつけてまいりたいというふうに考えております。
  190. 武田一夫

    ○武田委員 ちょっとした行き違いというのはこわいのですよ、何事によらず。ですから、そういう点では、何か大蔵省は悪者になっていますから、大蔵省も少し守ってやらなければ、来年また金をお願いするときに大変ですからね。ひとつ地元の方にもそういういきさつはきちっと申し上げて、十分に反応してあげる方が親切じゃないかと私は思いますので、一応その点だけ申し添えておきます。  次に、水産加工業の問題ですが、これは三百海里のときに非常に苦労しまして、宮城県には塩竈市という代表的な笹かまぼこの産地がありますが、いまだにその後遺症というのが衰えないわけです。塩竈の場合は約八百軒、従業員が一万数千人いるわけです。塩竈市としても、何せこれは経済を支える大事な企業ですから、地場産業として将来定着させたいと考えているようですけれども、要するに金詰まりですな。公害防止だとか、あるいはまた工場を団地化せよとか、そういう指導をどんどんされまして、それに乗ってやったあるいはそういうので一生懸命努力した人たちというのは、聞きますと大体自腹でやった人が多かったのですね。公害対策だからというので公害の方の資金を利用したかというと、そうでもなかったという人がかなりいるわけです。こういう人はまじめな人です。しかも、大きい人というよりは中以下の人がわりとまじめですね。そういう方々は苦労しているのです。それで、二百海里がその後に来まして、今度は電力料金が上がるでしょう。これまたえらいことですね。  こう考えまして、私は、こういう苦労している方々に、もう少し点検してみまして救済する方向の金融というか融資をしてもらいたいと思うのですよ。洗ってみますと、一千万とかなんとかそんな小さなものではないのです。一億五千万とか八千万とか七千万とかがざらです。それで二、三十人から四、五十人、こういう方々が一番苦労しているようなんです。こういう問題について、水産庁としても、加工業界というものの今後の重要度を認識した上で対策を講じてもらいたいと私は思うのですが、何か特にお考えになっていることはないですか。
  191. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 諸外国の二百海里体制への移行に伴いまして、特にかまぼこの原料になっておりましたスケソウのすり身、このスケソウの漁獲量がピークで三百万トンぐらいあったものが百五十万トンぐらいにまで減ってきている。その関係から、加工業者の経営が非常に大きな影響を受けていることは御指摘のとおりでございます。水産庁といたしましても、このような観点から、特にその経営の安定を図りますために長期低利の水産加工経営安定資金という制度を新しくつくりまして、その金融の円滑化を図っているわけでございます。さらにまた、今後はスケソウダラからイワシ、サバのような原料魚の転換を図っていく必要があるだろう、このために必要な施設資金につきましても農林漁業金融公庫等から融通しておるわけでございまして、五十五年度におきましてはこの水産加工経営安定資金の融資枠百五十億円を用意しているわけでございますが、その執行につきまして、各県等とも打ち合わせながら、水産加工経営に支障のないようにきめ細かい運用を図ってまいりたいと考えております。
  192. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来たので、最後に要望しておきますが、大きい方に有利な金の使い方というのは間違いなくあるのです。ですから、その点、百五十億にしましても、肝心の一番困っている人たちに重点的にいくような方法ですね。長期低利という問題につきましても、やはり貸すときにそういう対象をよく見ていただきたい。その融資でも、六百万とか七百万ではとても——前にありましたね。従業員四十人のクラスには六百万とか七百万とかいうのがあったでしょう。これはいつでしたかな。前に出した、昭和五十三年三月十五日までに行うというのがありましたね。その中を見ましても、水産練り製品の製造は大体六百万から九百万ですよ。ちょっとこれではどうしようもならぬのですよ。ですから、この金額につきましても、もう少し適正な、必要に十分にこたえられるようなそういう御配慮をいただかないと、こういう小さいところは連鎖反応というのが非常にこわいですよ、これは一回だめになったら立ち上がれません。ですから、そういう点でひとつ十分なる御配慮をいただきたい、こう思います。これを要望して、時間が来ましたので質問を終わらせていただきます。
  193. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 中川利三郎君。
  194. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 通産省にまずもってお聞きします。  矢野発言と言われるものは、御承知のとおり二年間生産をストップすれば養蚕農家生糸が売れなくなって全滅する、その上で国際相場の中国生糸などを使って生産を再開したらどうか、こういうだれが見ても疑うことのできない明白な発言なわけです。この発言を暴言だという人もいるわけでありますが、私は真意そのものだと思うのです。その証拠に、最近、財界や大企業の代表である経団連の公式な方針の中でも、たとえば農業過保護論だとか農産物の自由化論だとか、そういうものを進めるために具体的なステップを示すべきだ、こうおっしゃっているわけですね。まさにぴったりじゃありませんか。同時に、同友会にいたしましても同じように、問題解決のためタイムスケジュールを明示し第一歩を踏み出すべきだ、つまりステップを踏み出す、第一歩を踏み出すという、まさに先ごろの通産事務次官発言は、財界のこうした意向をこれ以上忠実ということのないほどにも忠実に代弁したものだというふうに私は思うわけでありまして、国民が騒いだからこそ陳謝とかいろいろなかっこうをつけただけでありまして、真意そのものだというふうに私は思うわけでありますが、この点通産省の御見解をいただきたいと思います。
  195. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  このたびは関係方面を大変いろいろとお騒がせいたしまして申しわけないというふうに深くおわびを申し上げておりますが、いま御指摘のように、こういう発言が出たことについていろいろと御指摘をいただいておりますけれども、私ども、大臣から次官に直接真意とそれから事実関係を確かめていただきまして、そして大臣から承ったところによりますと、三月十四日の発言というものは、あくまでも懇談会の席上、これはいわゆる織物業界でございますが、業界の代表の方から、糸高製品安で非常に困窮しておってもう安楽死するしかないというような極端な表現で陳情がございまして、それに対しまして次官の方から、まあそう短絡して一元輸入制度そのものについての解決を簡単に考えてもいけないので、むしろ非常に複雑な経緯と問題のむずかしさがあるということを述べるために、表現が穏当でなかったのですが、それを裏から逆説的に申し述べたということでございまして、決して現行の法律制度をないがしろにしたり、あるいは農業を軽視するとか、そういう考えは毛頭なかったということが真相でございまして、必ずしも表現が十分でございませんで、その真意がそのまま伝えられることなく、むしろ誤解を招きまして、関係者に非常に御迷惑をかけることになったというのが本件の中身でございます。したがいまして、大臣もこれを直接問いただされまして、そして二度とこういうことがないようにということで次官にも強く注意をされたというふうに承っております。いま先生指摘のように、非常に深い農業軽視の背景があって、そしてそれがつい言葉で出たということは万々ないというふうに私どもも承知いたしておりますので、その辺は御理解をいただきたいと思います。
  196. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 長々とくだくだといろいろ御説明がありましたが、私は理解できません。問題は、いま言ったように、財界の意向をこれほど忠実に代弁した発言はないということですね。あなたは、あれこれ複雑な経緯だとか、あるいは問題がどうだとか、逆説的にと言う、何の逆説的だ。これを証明するものも何もなくて、全体の状況から見ましてもまさに真意そのものを代弁しておるということは動かすことのできない事実だと思うのですね。ですから、そういう真意を述べていながら、これは騒がれた、国民に問題になったら、今度はこれは真意でなかったという言い方をしている。そういう発言のあやふやな人間が一国の通産行政の主要なポストを占めている。私は、そういうころころ変わるようなやつは、ここに津川先生はいらっしゃらないけれども、精神科の鑑定を求めなければならないと思うのですね。こういう重要なポストにいる人が、そのこと自体が問題じゃないかと思うのですよ。また、そういう発言を誤るような、国民に不安を与えるような、逆説のまた逆説を使うようなこういう人間が通産行政のトップにいること自体問題だと思うが、どうです。あなたは局長だからそこまで答えるかどうか知りませんが、答えてください。
  197. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 先ほども申し上げましたように、結果的に大変関係方面に御迷惑をおかけしておるわけでございますけれども真意は先ほど申し上げましたようなところにございますので、そういった点で本人も十分遺憾の意を表明いたしまして、表現についての誤解を生じたという個所がございましたので、これについては撤回したいということでございます。したがいまして、真意は先ほど申しましたように誤解を受けておりますようなところではございませんで、真意はむしろ蚕糸絹業一体で、片一方だけどうこうということではなかなか生きていけないんだというところを言っておるわけでございますので、こういった表現そのものについて確かに不適当でございますので、その辺について撤回をすると言っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  198. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 理解を賜りたいつて、何です、理解できない。最初申し上げたところなんですね。あなたはいままた同じようなことをぐたぐた言うたわけでありますが、さっぱりわからないな。同時に、先ほども、大臣が本人に厳重注意したとか、あるいは新聞記者に記者会見した、だから国民は当然理解するものだと思う、こういう言い方だ。私たちの理解してないものまで理解してほしいと言う、同じ言い方ですね。そこで、大臣が記者会見すれば国民が納得して理解したと思うのですか。国民が要求しているのは、このような事務次官は罷免すべきだということですよ。これについて、あなた方は一方的に財界べったりの、代表そのままの姿で、そのままの発言をしていて、急にくるくる変わるようなことで、こういう国民の全うな声についてどう考えますか。
  199. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、まことに遺憾なことでございますので、本人もその意思を大臣に強く表明いたしております。したがいまして、撤回させていただくということでございます。
  200. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 世の中には撤回で済むことと済まないことがある。これは大変なことですよ。あなたに幾ら聞いても何にも実のある答弁にならない。それはあなたの立場から言えばしょうがないかもわかりませんが、そこで、農林次官にお聞きしますが、悪名高いと言えば言い過ぎかもしれませんが、通産のトップ官僚が、真意でなかった、こう言っているわけだ。あなた、本気でそれを感じますか。真意でなかったと思いますか、本気でしゃべったと思いますか、どっちですか。
  201. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 現在、日本の貿易収支を考えてみましても、五百億ドル、六百億ドルのドルを石油の代価に支払わなければならないという状況でございますから、安易な国際分業論というのはすでに政府としても、よしんば御指摘がありました財界としても、私はとるべきでないと思っておるわけでありますが、とりわけ養蚕業先生御存じのとおり非常に厳しい状況でございますから、この発展のためには、養蚕業もまた絹織物業界も、お互いに理解し合い協力し合って発展していかなければならない、こういう状況でございますから、農林水産省も、常日ごろ通産省といろいろ話し合いを進めて、この政策に万全を期してまいったつもりでございます。  そういう状況の中でのこの通産次官の発言というのは非常にショッキングでございまして、きわめて不穏当である。いま生活産業局長からも話がございましたけれども、必ずしも本意が正しく伝わっていないということであったにもせよ、少なくとも、全国の養蚕農家に非常な衝撃を与え、不安を与えたわけでありますから、これについては、たびたび申しておりますように、農林水産省として厳重に抗議をし、その発言は撤回を求めてまいっているところではございます。
  202. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、まずあの発言真意だ、まさに腹から出た本当の声だと思うのですね。ここであなたとその点で争ってもしようがないけれども、つまりこういう人間が通産の農林行政と密接なかかわりのある最高ポストにいるということですよ。あなた、望ましいことだと思いますか。一言でいいです。
  203. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 あの発言はきわめて不穏当であり、望ましいことではないと考えております。
  204. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農民は、通産省農林省、そう区分けしてない。ここに農業新聞の、矢野暴言に一斉に反発という、全国のいろいろな声を聞いていますが、これは通産省初め、農水省までが農業をないがしろにしているあらわれだと言っている。同罪視しているのですよ。この農林行政を無視した発言農林水産省がどう出るかも見ものだ、どっちかというとぐるになっているのではないかというぐらいに、そういう見方というのは非常に残念です。  そこで、きょうの質問の本題に入っていくわけでありますが、過剰米の輸出の問題でありますが、過剰米の処理、古米の処理状況、とりわけ輸出状況は、五十四年度輸出状況はどうなっているか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  205. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 五十四年度の過剰米の輸出状況は、玄米ベースで約九十一万トンでございます。
  206. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いろいろな国に輸出していると思いますが、輸出先の国々の評判はどの程度のものですか。
  207. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 わが国の過剰米によります輸出は、特に開発途上国等食糧の必要な国に対して援助的な性格を持ちまして行っております関係上、それらの国々が必要なものを輸出しておるというふうに考えております。
  208. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 評判はどうですかということを聞いているのです。日本米というのは評判がいいのか悪いのか、どうなんですかということを聞いているのです。
  209. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 相手方が必要なものでございますので、評判が決して悪いとは考えておりません。
  210. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 当初計画二十万トンが九十一万トンまでいっているわけですから、評判は非常にいいということですね。なぜ役人というのは回りくどい言い方をするのですか。聞いたことをはっきり言ってください。  そこで、近く日本とアメリカのトップレベルというか、そういう者の農産物のいろいろな問題での会談が行われると聞いておるわけでありますが、いつごろ、どこで、どういうかっこうで開かれるのか、簡単に答えていただきたいと思う。
  211. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 今月の十日、十一日にアメリカから農務省の次官が参りまして、わが省の次官との間に交渉をする予定になっております。
  212. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私の手元に二月十六日の共同通信の「日本のコメ輸出非難」というアメリカからの報道が入っておるわけでありますが、アメリカの下院の議員が、米国の伝統的な米の輸出市場を、政府補助を受けた輸出で略奪するものだと言って日本輸出を非難しているわけだ。これは御存じだと思います。同時に、この下院の要路にある方でありますが、日本が政策を変更しない限り、漁業問題で議会が圧力をかけると警告した、こういうことになっておりますが、この確認を求める前に、まだちょっと追加したいと思うのですが——そういう報道を御存じですか。
  213. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 アメリカが日本の過剰米輸出に対しまして、これが従来の輸出市場に対して非常な悪影響を与えるということで、危惧の念を強くしていることはございます。具体的に、それが日本の水産業にどうこうするというような形での話は直接には聞いておりません。
  214. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いずれにいたしましてもひどい言い方じゃないですか。伝統的な米の輸出市場を、政府補助を受けた輸出で略奪するものだ、漁業問題で議会が圧力をかける、こういう警告ですね。そうかと思いますと、アメリカの政府自体もいろいろ日本の米の輸出に対しまして大変問題を出しているわけであります。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば日米農産物会合、これは昨年の十一月一日にやったものでありますが、ここの中でもいろいろ問題提起しているわけであります。たとえば「日本の米輸出は、国際価格と生産コストの差をばく大な政府負担によって補てんしており、輸出米を生産する農家に現金を与えていることと同じであって、」ひどい言い方だと思うのですがね、「GATTの取決めに違反した補助金付き輸出である。このため、米国通商法三百一条に基づき、」云々というようなことが書いてあるわけであります。こうなっているほかに、最近の情報によりますと、これは三月二十五日の日本経済新聞ですが、こういうふうな報道が出ているのです。「日米両国間の貿易摩擦に発展しかねないわが国の過剰米輸出について米国政府は、数量の圧縮ばかりでなく年次別数量見通しの明示を求めてきたことが二十四日明らかになった。」つまり年次別の輸出計画を出しなさいというわけです。  いまこういう三つの例を引き合いにしたわけでありますが、私はアメリカとは対等な関係であると思っているのです。まさに一つは脅迫だ、もう一つは筋違いの抗議だと思うし、年次計画を出しなさいというようなことはまさに内政干渉だと私は思うのですよ。このようなことを向こうではちゃんと準備して、理論的に武装してこの会議に臨むのだと思いますが、日本の対応なり準備は一体どうなっていますか。
  215. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 この過剰米輸出問題につきましては、食糧庁長官からもるる御説明をいたしましたように、片一方で米の生産調整を進めながら、さしあたっての過剰米を緊急的、一時的に処理しよう。しかも、相手方はそれを要望する食糧不足に悩む国で、その国の要請に基づいて援助もしくは援助的な性格のもとに、しかも価格につきましては国際価格を十分参酌しながら、少なくとも伝統的な米の輸出国の市場を侵食しないように、現実にアメリカの各国に対する米の輸出はふえておりこそすれ減っていないわけでありますから、そういう十分な配慮のもとにやっているわけであります。したがって、いろいろ先生指摘のような議論をなす向きも一部アメリカにあるとは思いますが、私たちとしては正当な手続を踏まえて協議をしながらやっているということでございますし、あえて申し上げれば、こういう形で現在の米の生産調整を余儀なくされておりますのも、これは国民のニーズがあったにもせよ、米国から非常に多くの小麦を買い、また飼料農産物を買っているその裏での過剰米の発生でございますから、この点につきましては十分理を尽くして話をすればアメリカ当局も理解をしてくれるものである、かように考えておる次第であります。
  216. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 何かアメリカの出方というのは尋常でないような感じが私はするのですね。たとえばGATTに提訴するとか、FAOの余剰農産物処理規則に違反しているとか、あるいは警告するとか、こういう言い方ですね。いま日本がそれに該当するような違反、たとえばGATTに違反していたり、そういうFAOの原則に外れていたりするのかどうか、この点をまず確認しておきたいと思います。どうですか。
  217. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 FAOの余剰農産物輸出の規則には十分沿って、すなわち伝統的な輸出の阻害にもならなければ、また関係第三国と十分協議をしながら行っているわけであります。GATT問題につきましては、これは若干いろいろな議論がある場合もあり得ると思いますけれども、ただいま申しましたように、片方でアメリカから非常に膨大な農産物を買った結果の話でもございますから、こういういろいろな客観的な状況を十分に話をすれば相手方の納得を得られる、かように考えております。
  218. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、もちろんその点は、一応協議はするのでしょうけれども日本立場として輸出しなければならない状況はあるわけでありますから、圧力に屈しないでばっちりやるのだ、こういうことなんですね。
  219. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  220. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 アメリカの言い分は、日本の米の輸出のために世界の米市場に非常に変化を来しているのだ、これは、本心を言えば、自分の市場を少しでも荒らされるのじゃないかという懸念からだろうと思うのですけれども日本から輸出すれば世界市場を荒らすなんてことは私は考えられないと思うのです。  そこで、いまの日本がそういう輸出をするという状況になったその後で、アメリカの米の輸出はふえているのか減っているのか、あるいはそのために市況が非常に冷え込んでいるのか好況になっているのか、どうなんですか。
  221. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 五十四年度におきましては世界の米の需給関係が非常にタイトでございましたので、日本の過剰米輸出がありましても、アメリカの輸出量は伸びております。それからまた、価格関係上昇ぎみに推移しております。
  222. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、市場の流通も、いろいろな面からいえば何らアメリカの輸出を妨害しているわけじゃないのだ、そういうことをそれは客観的に証明するもの、こういうことに理解していいですね。——それじゃ、それを確認して次に入るわけであります。  何か新聞その他の報道などを見ますと、あるいは外務省のヒヤリングといいますか私の方でこの前外務省からちょっといろいろお聞きしたわけでありますが、とにかくいまの日米のこの問題に対する会議の前に、いろいろな点で政治問題になれば困る、何とか日本が譲歩したかっこうで解決しようということで、この前、参議院の私どもの方の立木議員の質問に対しても、武藤大臣は非常にやり過ぎであって申しわけないというような意味発言なんかしているわけでありますね。この新聞を拝見いたしましても、たとえばおたくの澤邊事務次官の、ほっておくと政治問題になりかねないから、いまのところアメリカの要求どおりの輸出数量で抑制することで調整を図ることになると見られる云々という記事が出ているのですね。こういうことを見ますと、何かアメリカでは日本に制裁を加える、いろいろ言いたいほうだいで日本はがまんしてだんだんそれににじり寄っている、こういうことが自主外交と言えるかどうか、私は非常に懸念するわけであります。きょうは外務省からどなたか来ておると思いますので、こういう姿勢で本当に日本農業を守っていくことができるかということをお聞かせいただきたいと思うのです。
  223. 小倉和夫

    ○小倉説明員 お答え申し上げます。  先生がおっしゃいましたとおり、まず外交の本質は自主外交でなくてはならないと私ども考えております。また、その自主外交の一つの要素といたしまして、言うべきことは相手がいかなる国であろうともはっきりわが国の立場を明らかにするということが大切であることは、先生おっしゃるとおりだと思います。  農業の問題につきましても、日本立場日本の抱えているいろいろな事情、そういったものは、多数国間の場におきましても、また二国間の場におきましても、私どもとしてはできる限り諸外国の理解を得るように努力しております。  ただ、同時に私どもとしましては、やはりわが国の政策を遂行するに当たりましては、国際的なルールといったものは守っていかなければならないというふうに思っております。先生のおっしゃる点はそのとおりでございまして、私どももそういう点は極力努力しております。
  224. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 このことは、農林省にも同じことが言えると思うわけであります。十日、十一日にそういう会議があるわけでありますから、何か会議を開く前からアメリカに妥協していくような、にじり寄るような、そういうことでは日本農業を守っていくことはできないと思うのです。圧力に屈していけば、どのみち日本の農業としては出口がなくなる。つまり、古米を飼料の処理に回しても、結局その分はアメリカの穀物輸入は減るわけでありますね。あるいはえさ米用の開発を進めましても、アメリカの飼料輸入を減らさなければならないわけですね。どっちにしてもぶつかるわけですね。そういう点から見ますならば、今度の会議というのは、まさに農林省姿勢日本外交の姿勢、こういうものが根本的に問われるやはり試金石であると思うのですね。  そういう点で、私はこういう発言をしているわけでありますけれども、その中で特に私、気がついたことを一つちょっと申し上げますと、現に日本では海外援助米として日本の米を出すのではなくて、外国からわざわざ米を買って援助用としてやっている部分が相当ありますね。私は全部日本の米を出せとは申しませんけれども、なぜ援助米に外国からそういうものを買わなければならないのかということと、もっと日本の米の輸出の割合を強めていく必要があるだろうと思うのですね。私、いろいろな資料を持っているわけでありますが、しかもケネディラウンドによる援助だと思いますけれども、このあて先、対象国というのがまた非常に気になるのですよ。この資料を見ましても、東南アジアのいろいろな国々にやっているわけですね。しかし、やはりいま米で困っているベトナムだとか、ラオスだとか、カンボジアだとか、こういう国々に対してはそういうお米を出していないんだな。なぜそういう偏ったあり方で、やるんだったら一緒にやったらいいではないか、こういうふうに考えますけれども、この点はいかがでしょうか。
  225. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 最初にお断りをしたいわけでありますが、日米最高責任者によるこの過剰米問題について議論がすぐ近く行われるわけでありますけれども、実は私、最近の日米関係を見て思いますことは、どうも日米関係というのは非常に密接な関係がございまして、たとえば農産物でも、敵対といいますか、相反する関係よりも、御案内のようにもう千何百万トンという大量の穀物を小麦なり飼料なりいろいろな形で輸入しているわけでありますから、それを全部合わせれば二千万トンぐらいになるボリュームの中で米の過剰を言われても、それはわずか数十万トンの問題でございますから、だからこのオーダーが非常に違うわけでありまして、したがって、そういう数十万トンの問題で日米関係の大きな農産物の流れの友好的な関係というものを損なうことは、両国の当事者にとって必ずしも賢明なことではないということは、十分アメリカ当局者もわかってもらえる、かように私は考えるわけであります。  KR援助の相手国がなぜ現状のようなことになったのかということにつきましては、外務省から担当官が来ておりますので、お答えをさせていただきます。
  226. 後藤利雄

    ○後藤説明員 お答えいたします。  お米の援助あるいは援助的なものといいますと、細かく言いますと、いわゆる延べ払い輸出あるいは無償援助ということがございますが、私どもの経済協力局が担当しております無償援助ということだけに限ってお答えさしていただきますと、たとえば五十四年度の実績で見ますと、無償援助ではお米として約六十億が支払われております。この中では、ただいま先生から若干御指摘がございましたタイとかビルマのような伝統的な産米国等からのお米を買うという部分もございますが、この六十億円の中で日本米を使った金額は三十五億円ということで、五十数%の割合を占めております。  なお、その相手の国でございますが、この三十五億円の中では、バングラデシュ、アフリカ等の諸国に対しまして十五億円ぐらいがございますが、そのほかに先ほど先生が御指摘のございましたカンボジア難民につきましても十六億円という金額、トータルといたしまして三十五億円、四・八万トンが出ておりまして、ただいま申し上げましたように無償の援助で、お米の中では五十数%が日本のお米を使っております。
  227. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私、聞いたのは、聞いたとおり、たとえば外務省さん、相手国が非常に偏って——どうせおやりになるのならば、やはりお米の不足しておるカンボジアもラオスもあるのです。ベトナムもあるのです。なぜ、そういうものを外すのか、やるならば御一緒したらばどうなのか、このことを申し上げておるのですが、これの御回答をもう一回お願いしたいと思うのです。
  228. 後藤利雄

    ○後藤説明員 ただいまお答えいたしましたように、日本のお米の中で約半分以上をカンボジア難民のために使っております。したがいまして三十五億円が日本米でございますが、そのうちの十六億円は五十四年度ではカンボジア難民に使われております。
  229. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 カンボジア難民といっても、難民にもいろいろ問題がいまあるのですよ。あなたは国際的に御存じだと思うのですが、つまりカンボジアの難民というのはいろいろ考え方によって問題があるということはあなたが一番よくわかっていると思うのですね。カンボジアの国に、ベトナムの国に、ラオスの国に、ほかの方はみんなそういう国にやっているのでしょう。
  230. 後藤利雄

    ○後藤説明員 お答えいたします。  ただいまカンボジア難民といいますのは、WFP、世界食糧計画を通じましてカンボジア難民に行くということでございますが、ただいま先生お話にありましたようにカンボジアあるいはタイの国にどうかという点につきましては、私どもの食糧援助に当てられます金額、予算の中におきまして、ただいまの先生の御指摘につきましては、五十五年度の執行において十分配慮したいと考えております。
  231. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほど矢野通産事務次官の問題を提起したわけでありますが、日本の農業は、ずっとアメリカのいろいろな文献なりアメリカ政府の意向なり日本の財界の意向、それを受けてやるわけですが、それとそっくり写しのように農政が進められてきているわけですね。その話をずっと出せばなかなか論議の時間が終わらないわけでありますが、省略しますけれども、いずれ全く矢野発言がもう偶然でも過ったものでもないという状況、それと同じように日本の農業の展開の仕方も農政そのものがアメリカのいろいろな意向の中で動かされてきた。ちゃんと首根っこを押さえられて、そのとおり動いてきたということを、私いろいろな資料を見て最近つくづくびっくりしているわけでありますけれども、自主農政だとか自主外交とか言っても、ここの大臣のいないところの論議ではなじまないわけでありますから省略しますけれども、私は非常に問題があるというような感じを改めてしているわけであります。  ところで、全く別の角度からの問題でありますが、一三月の二十五日に霞が関のプレスセンターで、国立がんセンターの平山雄という博士がダイタリー・ファイバー・シンポジウムという学会の中で講演をした資料を私持っているわけでありますが、この平山さんというのはがんセンターの中のがんの疫学に関する研究の班長さんで、御承知のとおりがん研究のために十五億円の国費が充てられているわけでありますね。どういう講義の内容か、ここに英文のいろいろな資料を私持っているのですよ。時間がないから省略しますけれども、簡単に言いますと、一日の米の摂取量と胃がん、大腸がんの疫学的研究をずっと十何年間の経過の中で調査してきた、こういう研究なんですね。日本は三十年前まではほとんどそういう胃がんだとか大腸がんは少なかった。最近ずっとふえてきた。なぜかということですね。これは食構造の変化だというのですね。一つは食生活が高度化した、農林省の好きな言葉で言えばそういうかっこうになるわけでありまして、このことで炭水化物の摂取が少なくなる。それでかわって脂肪質を多くとる。その関連で、つまり繊維質が非常に不足してきておる。これとがんとの密接な関係指摘していらっしゃるわけですね。それで大阪でも三月二十六日に、八〇年代の食を語り合い、食卓の見直し討論会というものをやりました。ここでも学者がこのような意見をずっと出しているのですね。また、きのうの毎日新聞を拝見しましたら、イギリスの学士院会員のデニス・P・バーキット博士ですか、日本学術振興会の招きで来日した。この方が「繊維食物のすすめ」と、同じ観点から問題を提起していらっしゃるわけですね。繊維質、つまり米類、穀類ですね。平山さんの研究は、結局、十何年にわたって、穀類、繊維質を少なくとる人ほどそういう胃がんの発生、大腸がんの発生が多くて、多くとればとるほど少なくなる、平均以下になる、そういう研究なんですね。  そこで、これが直接がんそのものと結びつくかどうかは別にいたしまして、やはりこういうものを研究の成果として発表されているわけですね。いままで日本人は、米食えばばかになるとかそういう教育、つまり農林省がばかにされたようなそういう環境の中でわれわれ置かれてきたわけでありますけれども、こういうものを契機に、やはり米を食うからこそ頭もよくなるし、体も健康になるし、がんにもかからないんだ、こういう宣伝なんかを、学術的な裏づけもありますからやれば、下手な宣伝するよりも、日本の国民であるならばよほどはっきりとした効果がここへ出てくるであろうと私は思うのですね。そういう意味で、やはり見直しすべきであるということですね。こういう立場からの見直しも必要ではないかということ。  もう一つの問題は、米の生産量が一千万トンを割れば、日本人そのものの健康、日本の民族そのものの運営維持ができなくなるという、そういう説もあるわけですね。だから、当面の減反だ、当面米が余るということだけに目を奪われるのじゃなくて、長期の日本民族自体を考えた場合に、そういう面で日本の米はどうあるべきかということで、やはりそういう視点での考え方も非常に大事だと思うのですが、この点について、最後に農林次官からお聞かせいただきたいと思うのです。
  232. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生、私も米が大好きでございますので、先生指摘の記事は私も読みまして、まさにわが意を得たりという感じであります。アメリカでは若い女性が美容食に米を食べておる、こういうことでございます。やはり問題は、太るというのは米じゃなしに脂肪をとるわけでありますが、結局パンですと、バターから肉からワンセットで脂肪がどんどん入ってくる。お米の場合には、極端に言えばお茶づけで済んじゃいますから、したがって、腹いっぱいにするために必要な脂肪量というのは、お米、日本食の方がはるかに少ない。いろいろな角度から考えますと、私は、まさにかつての栄養不足時代じゃなしに、むしろ栄養過多時代の健康食として、美容食として、お米の価値の再認識をしなければならないと思いますので、先生の御指摘、大変ありがたく承りまして、ひとつ農林水産省もこういう線でさらに自信を持って米の消費拡大のPRに努めてまいりたい、かように考えております。
  233. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  234. 内海英男

    内海委員長 津川武一君。
  235. 津川武一

    ○津川委員 米の流通のことでございますが、やみ米、自由米がかなり横行しておって、国民の心配は、それを追認する形で食管法の改悪が行われるんじゃないか、そんな心配があるわけです。  そこで、正しい米の流通をしなければならぬという立場から、この間の予算委員会で私、大臣や食糧庁長官にやみの流通をこのままほっておくのか、こういう質問をしたわけであります。そうしたら、政府の方できちんとさせるとこういう話でございました。さらにまた、登録の小売業者が食糧庁長官や大臣のところに行ったときに、三月中に一つ対策を出すというふうな返事でもありましたが、この点どうなったのでございましょう。
  236. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 米の流通が乱れることは、食管制度の維持にとって非常に問題でございます。先般、先生からも御指摘をいただきました名古屋の米常という店が越境をして不正規販売をしているというふうな事件がございました。それに対しまして、私どもとしては、厳正にこれを処置していきたいということで、直接の指導責任を持っております県に指導をしてまいったわけでございます。その結果、三月中を目途といたしまして、県直接の、知事から食管法に基づきます行政命令を出しまして、是正をさせることにいたしました。  その行政命令の内容は、一つは、営業区域外の販売を直ちに停止すること、二番目は、今後このような不正規販売を行わないこと、三番目は、再びこのような不正規販売を行った場合には直ちに登録を取り消しをするという行政命令を出しまして、そのような実施を求めたわけでございます。これに対して当該業者は、これに従いますということで、愛知県知事に対して誓約書を出しまして、この方向を確認をいたしておりますが、さらにそのような実態が確保されますように、関係県及び食糧事務所におきまして指導監視をすることにいたしておるわけでございます。  さらに、このような不正規な流通を防止していきますためには、一業者だけの問題ではなくて、業界としてなりを正していただく必要がございますので、この機会に関係の業界の幹部を呼びまして、今後とも不正規流通を防止するためにこのような不正規な米が流れ出ることがないようにということを強く要請をいたしました。また、販売網につきまして、消費者の利便ということも考えて、今後整備をするということについても配慮してもらいたいというようなことを申しまして、業界の協力を要請しておるところでございます。
  237. 津川武一

    ○津川委員 その指導と命令の結果、米常はどんなことを実際上にしたのでございましょうか。
  238. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 米常のその後の状況は、直接問題になりました静岡県からは、三月中をもってほぼ全面的に撤去をしたというふうに聞いております。  それから、その他の県につきましても、できるだけ早期に撤去をしていくということを申しておりますので、今後そのような実績を確認してまいりたいというふうに考えております。
  239. 津川武一

    ○津川委員 私が食糧庁長官にもう一つ問題にしたのは、やはりやみの自由米がこういう形ではやっていくのは、登録の米屋さん、またはやみの米屋さんで品質の悪いものを格上げ販売されるとか、消費者にどのようなお米を持っているかそういう表示、そういう知らせ方に問題がありますので、この点についても政府は何らかの処置を講ずるというふうに言っておりましたが、その点はどうなったのでございましょう。
  240. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 先生が御指摘をいただきましたように、この適正な表示ということが非常に重要でございますので、食糧庁といたしましては、五十五年度から新たな表示実施要領を制定いたしまして、それに基づきまして知事が明確な品質区分を設定していくということと、それから米の内容につきまして品質区分ごとの内容説明する表示として、類別区分ごとの原料玄米の構成を表示させるということで、どのような米が入っておるかという内容を明確にさせるということで表示の徹底を期すことにいたしたわけでございます。今後このような表示が適正に行われますように、都道府県の指導及び食糧事務所の巡回指導を行って徹底を期してまいりたい。ただ、このやり方につきましては、従来の表示との経過もございますので、各都道府県ごとの実態に応じた運営の余地を残しておるわけでございます。
  241. 津川武一

    ○津川委員 それはそれなりによかったと思いますが、この指導は業界に対してだと思います。消費者の国民がこれがわからなければまたいけませんので、消費者に対してはこの点はどんなふうにして知らせるつもりでございましょうか。
  242. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 この表示の方針を決定いたしまして、直ちに新聞発表をいたしましてできるだけ消費者に理解を得るようにと努めたわけでございますが、今後とも各食糧事務所の指導等の過程で消費者にこの趣旨を徹底してまいるというふうに努めていきたい。また、小売店に対しても、このような消費者に対する理解を深めるような努力をさせるように指導してまいりたいと考えております。
  243. 津川武一

    ○津川委員 米の正しい流通のために一層がんばるように要請して、質問を終わります。
  244. 内海英男

    内海委員長 近藤豊君。
  245. 近藤豊

    近藤(豊)委員 油の値段が非常に上がってきまして、省エネのための工夫が最近は官民を通じて非常に盛んに行われておるわけですが、当然、農林水産省においても施設園芸等で使う油など、この省エネの努力を予算化をしておられるわけです。  この点について最初にまずお伺いをしたいのですけれども、どのような見通しで、たとえばことしの予算から来年の予算、来年と申しますのは五十六年の予算に向けて今後予算措置を行い、この省エネ関係の研究開発あるいは実験を続けていくことになっておられるか、この辺を少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  246. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 省エネルギーの関係につきましては、対象がいろいろ多方面でございますし、またそれの利用の関係でもいろいろと各方面にわたりますので、関係の試験研究機関それぞれのところでいろいろ努力をしておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、施設園芸の関係につきましては野菜試験場が中心になってやっておるわけでございますが、このほかに農業土木試験場あるいは農業技術研究所等では施設の構造あるいは各種の集熱、蓄熱あるいは放熱関係のハードの研究等をやっております。また、それに関係をいたしまして大学あるいは民間等にもいろいろとお願いをしている向きがございます。  そういう関係がございますので、試験研究の基本的な問題としていろいろとやっているということから申し上げますと、この関係に特定にどれくらいの体制でどれくらいの規模でやっているかということは、一概には申し上げかねる点があるわけでございますけれども農林水産技術会議といたしましては、そういったような各研究部門の本来の研究体制なり、予算のほかにプロジェクト研究というものを設けまして、さらに一層の推進を図るということをしているわけでございます。  その点についてはかなり具体的な計画なり予算がございますので、そういった点について申し上げますと、私どもの方で、エネルギー関係につきましてかなり総合的な研究としていま進めておりますのは、グリーンエナジーと略称しておりますけれども、自然エネルギーの効率的利用技術に関する試験研究でございます。これは太陽熱、それから風力、地熱、廃棄物、廃熱、いろいろな点を考えておりますけれども、主としてこの関係では太陽エネルギーを中心にいたしまして、それの効率的な利用、また一部地熱、風力、そういったものも考えているわけでございます。  そういうことでございまして、年々こういった点については力を入れてやっているわけでございますが、五十五年度はさらにそういった点の研究を進めてまいりたいと思いますが、五十六年度につきましては、これからいろいろと関係方面と検討の上要求をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  247. 近藤豊

    近藤(豊)委員 このグリーンエナジー計画の中で太陽熱利用による蓄熱あるいは集熱、蓄熱、放熱の研究、いろいろ行われておるわけですけれども、特に私がいま関心を持っておりますのはミカンのハウス栽培のことなんです。ミカンのハウス栽培はもともと農林省が先に立って推進されたものではないわけでして、前に予算委員会で局長から答弁がありましたけれども、これはミカンの施設園芸による生産量のパーセンテージが全体のミカンの生産量のパーセンテージに比べて非常にミニマムであるというようなことからも、余り重視はされていない。しかし、御承知のように、ミカンの問題は日米経済関係の中でも大変な大事な問題になっております。そしてなおかつ、ミカンをつくっている農家の収入の問題は、これから日米関係との兼ね合いで非常に問題になってくると思うのですが、油が上がってくることによって収入が下がる、これは困ることなんで、何とかして油から脱却できればという願いをこの関係の農民は皆持っております。  そこで、特にこのグリーンエナジー計画の中でハウスミカン等のいわば非常に丈の高い施設園芸についての太陽熱の利用、これについてはすでに現在も研究が行われていると思うのですけれども、もう少しこの点を詳しく現状と見通しについてお聞かせいただきたい。
  248. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 私どもの方でやっておりますのは、かなり基本的な研究をやっておりまして、実用的な方面につきましては、公立の研究機関あるいは民間等でかなり進めております。このグリーンエナジー計画はかなり基本的なことをやっておりますので、一般的な集熱、外部集熱もございますけれども、内部集熱ですと地中熱の交換の問題でございますとかやっております。こういった点については各県でもおやりになっているようでございます。
  249. 近藤豊

    近藤(豊)委員 基本的な研究はどんどん進めていただかなければいかぬわけですが、それではお伺いいたしますけれども、いずれにせよわれわれが石油を節約しなければいかぬというのは当然なことなんです。その場合に、農林省がいろいろな研究をされるあるいは外部の研究を委託研究等でどんどん助成されていく、これはいますでに行われているわけです。しかし、今後たとえばハウス園芸、特にミカンのハウス園芸なんかでも、仮に民間で非常にいい研究があり得る場合、これは妥当なものであればどんどん助成の対象にも繰り入れていくというふうに考えてよろしいですか。
  250. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 省エネルギーの関係の試験研究の成果等が出まして、これを普及の段階におろしていく、そして広げていくという角度のものにつきましては、これは補助という分野もございますし、また農業改良資金等の無利子の貸し付け等もございますし、その他近代化資金等もございますから、そういう研究成果の結果、実用段階におろしてもいい、しかもそれをさらに普及した方がいいというものにつきましては、そういう奨励、助長策はとりたいと思っております。  ただ、先生お話しのございますハウスミカンの問題につきましては、このハウスミカンそのものにつきまして、農林省としては奨励的な姿勢は実は持っておらないわけでございます。と申しますのは、農家の対応として所得を確保するという角度で取り組んでおられるということはわかっておりますけれども、ただ、このハウスミカンが大きく広がりますと、逆に、需給との絡みにおきまして暴落をする、またコストを割るというような問題もございますので、やはりその辺につきましては非常に気をつけてやっていかなくてはなりませんよという指導の姿勢をとっておるわけでございまして、大いにハウスミカンを伸ばそう、それとの関連において省力技術をどんどん投入しようというところまでまだ考えてはおりませんが、一般的には先ほど申し上げましたような態度で取り組んでいきたい、こう思っております。
  251. 近藤豊

    近藤(豊)委員 そのハウスミカンをどんどん伸ばすべきではないし、また伸ばしたらいまやっている人が困るだろうということはよくわかるのです。  そうしますと、問題は、ハウスミカンに限らず、施設園芸に使い得る太陽熱利用のディバイスは、いいものがあれば、それは農林省あるいは国の実験所から出てきた技術でなくても、これは今後国の予算の補助対象あるいは助成対象としてどんどん振興していくのだ、こういう方針を確認をしていただきたいわけです。
  252. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 それは、ただいま先生おっしゃるとおりでございまして、その線で奨励をしていきたいと思っております。
  253. 近藤豊

    近藤(豊)委員 いまそういうことで念を押させていただいたのは、とかくわれわれ——私も前は公務員だったのですが、国の中で、政府組織の中で生まれてきたものはすぐ信用しやすいのだけれども、民間の創意で出てきたものは、とかくためつすがめつ試してみたり何かしないとなかなか信用しないという傾向があるわけなんでして、たまたまそれが民間にいいものがあっても取り上げられないような結果になると、国としても大変むだなことですので、特にこの点について念を押したわけです。  そこで、いま局長の最後の答弁のときに指摘がありました需要の問題に入るわけですが、ミカンの生産全体の需給の見通し、プロジェクションと申しますか、これを昭和六十年から六十五年ごろにかけて、これからの十年、十五年間、どのようなプロジェクションでやっておられるのか。相当の地域ではもうミカンの木が古くなってきましたから、いまそれを切り倒して別のものを植えるとか、あるいは新しいミカンの木を植えるとか、品種を変えるとかいうことが行われているわけです。これについては、いま農林省の方でいろいろと検討をし、研究をされている段階だと思いますが、大まかな意味でのプロジェクションをまずお聞かせいただきたい。
  254. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 果樹農業振興特別措置法という法律に基づきまして、果樹農業振興基本方針というものを決めることになっております。現在の振興基本方針は五十一年に策定し、公表をいたしております。ただ、最近の情勢からいたしまして、これの見直し作業を現在進めております。その際に、六十五年度を目標年度ということで、全体の農産物の需要と生産の長期見通しとの整合性も持たせながら、果実の需給見通しの改定作業を現在やっております。この面につきましては、果樹農業振興審議会等におきまして検討を進めてもらっており、現在その辺の取りまとめ等も進めておるところでございます。
  255. 近藤豊

    近藤(豊)委員 取りまとめ中ということなんですが、伝え聞くところによりますと、大体昭和六十五年あたりに三百七十万トンぐらいを見込んでおられる。これは総量についてはある程度増減があり、変化があるかもしれませんし、私の申し上げた数字が正確じゃないかもしれない。しかし、その中で大事なことは、相当大きな割合をジュース用に振り当てるということで考えておられるのじゃないかと思うのです。  ジュース用というのは、もう御承知のとおり三分の一から三分の一以下の値段でしかないわけなんですから、もしこのことを生産者が聞きますと、やはりそれは非常に割り切れない気持ちを持つ。なぜなら、アメリカから、これだけわいわい議論をしながら、ようやくいま季節輸入ということでオレンジが入り出したのですが、今後もふえていくだろう。そういうときに、なぜわれわれ日本の農家がつくるミカンあるいは柑橘を、単価の安いジュース用に使うことを初めから予定してかかるのだ。どんどん生食用に日本のものを使って、安いジュース用はアメリカから輸入することで賄えるではないか。もちろんたくさんのジュース工場もあり、かん詰め工場もあるわけですが、そういうものは輸入のものでも賄える。濃縮してくればフレートも安いわけですし、生食用のものを運んでくるよりも、国民経済、グローバルな立場から見てもプラスであるに違いない、こういうことになるわけなんで、その辺の基本的な態度、ジュース用のものは輸入のものを使うのだ、日本でできるものはなるべく生食用に回していくのだ、農民の手取りをよくしてやるのだということが妥当だと思うのですが、この点いかがでしょう。
  256. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 現在、ミカンの需給見通しの作業をやっているわけでございますが、その際に、近年温州ミカンの消費の主力でございました生果の需要が、四十八年をピークにいたしまして減ってまいっておるという実態がございます。逆に、果汁等の加工需要が増加傾向にあるというのが実態でございます。したがいまして、温州ミカンについて長期需給見通しを立てます際にも、やはりこういう需給傾向というものは今後も持続されるのではないかというふうに一応考えておるわけでございます。  長期需給見通しを立てるに当たりましては、生果の方と加工仕向けの面につきまして、先生おっしゃるように相当大きな価格差があるというのは現実でございます。したがいまして、そういうことも十分配慮しながら、やはり需要の大宗は生果でございますので、そういう生果を主体にしながらも、なお加工需要の拡大という面にも対処していきまして、総体としての温州ミカンに対する需要を確保するということを基本に考えておるわけでございます。したがいまして、生果と加工仕向けと価格差があるということは現実でございますけれども、加工分は輸入に頼るというような割り切りは困難ではないか、こう考えております。
  257. 近藤豊

    近藤(豊)委員 加工部分を全部輸入に頼れというのではなくて、もちろん温州ミカンの中、あるいはいまどんどんできてきているネーブルとか新しいものの中にも、ジュースにしかならない品質の悪いものもできてくるわけです。それは当然ジュースに回すわけなんです。しかし、そうではなくて、生果用で売れるものをわざわざジュースにつぶす必要はないだろう。それからまた、米国から運んでくるオレンジも、必ずしも最近は粒のいいものばかりがそうたくさん供給力があるわけではないので、玉のいいものはかなり少なくなっている傾向にあるようです。ですから、そういうときに、私が仄聞するところによると、大体三五%くらいをジュース用に回す予定でプロジェクションをだんだん組まれつつあるということは、いささかジュース用を多く見過ぎているのではないか。もちろん、サンキストオレンジでも何でも生果用で輸入すれば、輸入業者はもうかります。これは自由化品目ではありませんから、当然そこにいろいろな問題が発生し得るわけで、その辺のことがやはり国民に不信を抱かせる一つの原因になっておる。できるだけ日本のものを生果用に回して、ジュース用は、向こうが幾らでも喜んで売ってくれるわけですから、それを輸入する方向を大まかな方向として考えられることが妥当だろう、これが私の意見なんです。したがって先ほど、加工用を全部輸入しろと言っているのではありません。その点をひとつ誤解なきようにもう一度申し上げて、その方針について依然としてどうも私はっきり納得できませんので、御確認いただきたい。
  258. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生御存じのように、アメリカからのオレンジなり果汁の輸入の問題があるわけでございますが、これは過般のといいますか、要するに五十三年の十二月に、日米農産物交渉の一環といたしまして、このオレンジの生鮮ものあるいはオレンジのジュース、こういうものもアメリカとの間に話を一応つけたわけでございます。これは一九八〇年度から八三年度までの分につきまして、生鮮オレンジにいたしましても果汁にいたしましても段階的にふやしていくということに一応なっております。八四年度以降につきましては、また八二年度末前後に日米の再協議というのが来るわけでございます。ただ、日米での農産物交渉におきましても、アメリカサイドにいたしましては、オレンジそのもの、生鮮のもの、こういうものの自由化というようなところからいろいろ主張をしておるわけでございますし、オレンジ果汁につきましてもなかなか御熱心なわけでございます。そういうことで、温州ミカンの生果というものを主にして、それでオレンジの果汁、これにつきましては国産果汁ももちろん生産するという先生お話でございますし、またこちらもそう思っておりますが、どちらにウェートというようなわけにもこれはまいらぬのじゃないか。相手国の方も必ずしもオレンジの生果をそれほど主張せずに、果汁を非常に買ってくれ、こういう角度でもどうもないようでございまして、両方とも大いにアメリカの農産物を買ってもらいたい、こういう姿勢であるように私は交渉に関係いたしましても考えておるわけでございます。
  259. 近藤豊

    近藤(豊)委員 いまの局長の御説明の中のアメリカの真意なんですけれども、これはいろいろと議論が分かれるかもしれません。しかし、西海岸の方と東海岸の方は大分違うわけなんです。現在圧力がかかってきているのはむしろ東海岸の方の、南東のマイアミ、フロリダ、あちらの方から大分圧力がかかってきている。こちらは御承知のとおりアスキューといういまのカーターさんの通商代表が知事をやっておったところで、そこで私は、まだ通商代表になる前にアスキューさんと話をしたときに彼が言っていたことは、ジュースだって生だっていいのだ、要するにアメリカの農民がつくったいいオレンジを日本が買ってくれればいいのだと言っているわけなんです。  そこで、いろいろな話の中から引っ張り出した一つの私なりの結論は、アメリカはこの問題に大いに固執しているけれども、これはジュースにしろ生果にしろ、とにかく向こうのアメリカの農民がつくるものを日本側が買ってやりさえすれば、現地にわれわれがプラントをつくってジュースをつくろうと、あるいは生果で運んでこようと同じなんだという気がしておるわけです。むしろ生果の方をどんどん輸入した方がというのは、日本側の方にもう少しプロモーターがあるのではないかという気がするわけなんですけれども、いずれにせよこの点は、できるだけ今後の交渉で、ジュース用のものを入れることでアメリカ側が納得するならその方向で交渉していく、そうして日本の農民のつくるもので生果で消費できるものはなるべく生果で消費させてやろうということが温かい国の立場だと思うのです。通商上はそれで私は問題は起きてこないと思います。そういうことで、政務次官のこの辺についての感触をひとつ伺いたい。
  260. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生のおっしゃるように、やはり基本的に生果の方が付加価値が高いわけでございますから、国内の農家の方がおつくりになっても生果で消費していただいて、しかも日本の果実は世界最高の品質だと思っておりますので、そういう意味ではジュースにするのはもったいないので、むしろジュースとしたものは輸入してくるということの先生の御指摘が正しいと思います。と同時に、あえて一言つけ加えますと、私も山形で、いろいろ果樹がたくさんありますので話したわけでありますが、確かにそれこそ世界最高のリンゴであり、サクランボであり、ブドウであり、こう思っておるわけでありますが、しかし、その生果の限度があると思うのですね。ですから、今後日本の果樹生産をふやしてまいりますと、生果だけでどの程度行くかということについては、値段との関係がございまして、ある程度の限界というとあれですけれども、そんなに飛躍的に伸びるということもないような気がいたします。そうしますと、絶対量として数をふやしてまいりますためには、ある程度日本も高級品種のものと、それからジュース化してそしてある程度適正な値段で消費するというものもあわせてやっていかないと、ただ生果だけに特定して、日本は生果だ、ジュースは外国だという形でもないのじゃないか。現実にリンゴなんかは生果は生果としてありますけれども、むしろリンゴジュースは輸入しているような状況でございますから、そういう生果とジュースは、国内でもやはりジュースもやっていかないと全体の枠が、マーケットが広がっていかない、こういうふうに考えておりますので、その方向でいろいろ考えさせていただきたいと思います。
  261. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 政務次官の御答弁に補足して御説明申し上げます。  アメリカとオレンジの生果なりあるいはジュース、こういうものの交渉をやりましたときの印象といたしまして、アメリカではオレンジの関係等は、いわゆるカリフォルニア、アリゾナ、あれを中心にしました西海岸のものと、それからもう一つはフロリダ、まずこの二つにあるわけであります。生果の方は、現在でもほとんどカリフォルニアのものが入ってきております。それに対してむしろフロリダは、時期的な面からすればわが国の四、五月になりますけれども、そのときでないと生果ではなかなか入らない。したがって、現在季節枠等設けておりますが、六、七、八とこういうものを広げろとか、非常に強い要請もあったわけでございます。もちろんこの前の交渉では拒否をいたしております。しかし、そういうことでフロリダの方はむしろジュースの生産が非常に多いわけでございます。したがいまして、カリフォルニアとフロリダを考えました際に、フロリダの方はむしろ生果も四、五月に入れてくれということと、もう一つはジュースということをやはり頭に置いておると思います。カリフォルニアはジュースはむしろ考えてないし、年間供給を生果ができるというシチュエーションにあるわけです。したがいまして、将来八二年の末前後に再交渉があるといたしましても、両方のあれを引っ下げてアメリカのSTR、通商代表部の方はまた攻め込んでくるだろう、こういう感じがいたしております。
  262. 近藤豊

    近藤(豊)委員 いずれにせよ、もちろん日米関係を崩すということはできないわけですから、日米関係を崩さない範囲で極力この点はがんばっていただきたいということは、この際特にお願いをしておきます。  それから次に、ミカンの栽培で、あちこちで木が老化してきてある程度植えかえをする場合に、引き続きミカンをつくるか、何か別のものをやろうかと迷っている人があるわけです。そういう事態に対しては、農林省としては、ミカン畑の後に適した作物というようなものについては、いま研究開発はどのように進んでおりますか。ミカン全体がある程度問題になっているときだものですから、そこで、柑橘類の畑にできるような作物とかそういうものの研究も行われているのじゃないかと思うのですけれども、その点いかがでしょう。
  263. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 温州ミカンにつきましては、四十七年の大豊作によりまして過剰が顕在化いたしたわけでございます。その後、この過剰を解消いたしますために、改植等につきまして国も助成をいたしまして、一種の生産転換といいますか、そういうものを進めてきております。五十四年度からさらに温州ミカン園の転換対策というものを打ち出して三十四億円の補助金を計上し、五十五年度の予算においても三十四億の予算を計上して切りかえを進めておるわけでございます。  その際に、農家の方の対応といたしまして、温州ミカンの価格がことしなども低迷いたしておりますので、転換先といたしましては約半分近くが実は晩生柑橘、晩柑類に向いております。その他柑橘類以外の果樹、栗とかそういう角度のものにいっているのもありますし、それから単年生の作物にいっているのもあります。いずれにいたしましても、やはりその土地条件なりその辺の気象条件なり、そういうものを踏まえてそれぞれ対応を考えておられるようでございますし、それについてのいろんな技術的な面の相談なりなんなりは、農業改良普及員なりそういう組織でも相談にあずかりながら、適地適産的な角度でその土地に合ったような作物に切りかえをしていただく、そういう御助言もしておるということでございます。
  264. 近藤豊

    近藤(豊)委員 柑橘の問題はこれで終わります。  次に、えさの問題について少しお聞きしたいのですが、現在の大豆とかコウリャンあるいはトウモロコシなどの需給は、どこでも売ってくれる状態だと思うのです。八五年ぐらいまで、あと五年間ぐらいは恐らく需給関係はそうタイトになることはないだろうと思うのですけれども、それが過ぎますと、九〇年にかけてややタイトになりかけてくると思うのです。その後は日本としてはいつでも、現在頼っている伝統的な供給先が十分供給できなくなるという事態を予想しておかなければならない時期が来ると思うのですけれども、これから十年間あるいは十五年間くらい先を見て、農林省としてはどのような長期の需給予測をしておられますか。
  265. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 飼料穀物を含む粗粒穀物全体の今後の見通しでございますが、御指摘のように、一九八五年までの見通しにつきましては、FAOあるいはアメリカの農務省、さらにはOECDの見通しが出されております。これらによりますれば、穀物の潜在生産力が需要を上回っておりまして、需要に見合った生産が行われるものと見込まれておるところでございます。  その後の見通しがどうなるかという点でございますが、まだ公式のものはございませんが、ことしの国連総会に報告される予定のFAO事務局の案が公表されておりますが、これは西暦二〇〇〇年における穀物貿易バランスの見通しでございます。それによりますれば、一定の仮定を置いておりますけれども、世界全体の穀物の需給バランスにつきましては、トレンドで見ていった場合には八千二百万トンの供給オーバーになる。ただ、農産物の価格を生産刺激的に見た場合にはこの八千二百万トンが一億七千万トンぐらいになるだろう、逆に、生産抑制的に見た場合にはマイナスの八千八百万トンということで、かなりの幅を持たせた内容になっておるようでございます。  いずれにいたしましても、農業生産は御承知のとおり自然条件に左右されやすいということ、それからいま幅でもって申し上げましたように、需要関係が、先進国を中心とする畜産物需要の増大があれば非常に需要の量が多くなる、また開発途上国における人口増加という点からも需要が増大するという要因を持っておるわけでございまして、農林水産省といたしましては、いまのところは一九八五年の見通し、それの延長線上にあるものと見込んでおりますが、国内畜産物需要の動向、特に中小家畜の生産物である畜産物需要の動向との関係も非常にかかわりがあるわけでございまして、ただいま農政審議会に御相談申し上げております試算値におきましては、年率大体三%くらいの飼料需要の伸びがあるものと見込んでおるところでございますが、そういう需要の増に対して供給が円滑にいくかどうかという点について、さらに検討を深めておるところでございます。
  266. 近藤豊

    近藤(豊)委員 もちろん、これみんな試算の段階で、いまお話のあった一億トンもサーブラスが出てくるということなら全然心配要らないのですけれども、そうじゃなくてむしろ、七七年から八五年くらいまでは、たとえば大豆の需要の伸びは四・七%、これに対する供給の伸びがやはり四・六から四・七くらいで、均衡していくと思うのです。しかしその後は、アメリカもこれ以上供給の伸びが余り大きく伸びるとは思われませんで、むしろ減ってくる可能性があるだろう。  そうしますと、日本のこういう飼料穀物、まあわれわれの食べる小麦もそうですけれども、先進国中心でいま供給先が決まっておりますね。大部分が先進国から来ております。これがもし次第にタイトになってくるようなことがある場合には非常に危険なわけで、どんどん出してくれればいいのですが、出せないこともある。この前大豆が一遍なくなったことがあって大騒ぎをしたことがありますが、あのようなドラスチックな事態はないにしても、だんだん不足する事態というのはやはり予測しておかなければいけないと思うのです。  そうした場合に、アメリカ、カナダ、オーストラリアという伝統的な供給先以上にこれから発展途上国にむしろその供給先を新しく開拓していく。かつてブラジルに食糧供給基地をなんという話もあったことがあるわけですが、そういう考え方を取り入れることが必要ではないか。これはむしろ、われわれが安定的に飼料を入手していくというだけではなくて、やはり援助よりも貿易をという南北問題への対処の仕方においても正しいことだと思うのです。そうした意味で、飼料穀物等については、いろいろと世界を見てみますと、もうあとは南米ぐらいしかない。ニューギニアがまだ当分先行きわかりませんので、そうしますと南米ぐらいしかないわけなんですが、その辺でもう少し努力しておかなければいけないのじゃないかと思うのです。この点についてひとつ御感触を聞かせてください。
  267. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 全体のわが国の飼料穀物需要に対する供給源といたしましては、先生御承知のとおり現在アメリカが相当大きなウエートを占めております。それ以外にカナダ、オーストラリア、それから南米もございますが、いまお話のございましたように、それぞれの国の生産余力、供給潜在力というものを考えていった場合には、輸入先の多元化というものを図ってまいる必要があろうかと存じております。アメリカ以外の国からの輸入も安定的に行っていきたいという考え方は持っておりまして、今後ともそういう方向で民間等とも話し合って進めていきたいと考えておるところでございます。  いまお話しの、国際協力の形でその輸入先をさらに確保しておくという点につきましても、私ども政府部内で十分検討をしてまいっておりますが、さらにそのようなことを考えていきたいと思っております。
  268. 近藤豊

    近藤(豊)委員 とかく発展途上国というのはなかなか横着なものですから、先進国と違って売る努力が足りないわけなんです。特に金融の力がありませんから、ついつい相場がいいと相場がいい方へ売ってしまって安定的な供給者として信用できないということで、日本もこれまでそれほど強いてつき合う必要はないよということだったと思うのですが、いまの答弁を聞いて非常に心強く思います。  ひとつぜひ、大きな南北問題を解決することにも役立つんだという考え方で、この問題は今後長期的な見通しで取り組んでいただきたいと思いますが、ひとつ政務次官からまた御確認いただきたいと思います。
  269. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 将来の飼料農作物の安定確保、こういうことを考えますと、御指摘のとおり、現在アメリカ、カナダを中心としたいわゆる先進国だけに頼っている体制から多角化すべきではないかという御指摘は、まことにそうと思いますし、ただいま畜産局長答弁したとおりでございます。  ただ、あえて申しますと、やはり先生指摘ございましたように、発展途上国というのはまだまだ農業条件、基盤整備しておりませんから、したがって、これまた、過度に依存いたしますと、かえっていろいろなことが起こってまいります。一応メーンはあくまでも従来どおりの供給先にしておいて、なおかついろいろな経済協力その他方法もございますから、協力しながら安定的な食糧、飼料供給の地盤をつくっていきませんと、また天候の変化も激しいし、それにつれて作物のあれも非常に激しいわけでありますから、そういう点を踏まえながら、やはり方向としては多角化であるという方向でこれからも努力してまいりたいと思います。
  270. 近藤豊

    近藤(豊)委員 ひとつその方向で、いまブラジルとはかなりいろいろなことが始まっておると思います。しかし、今後はやはり潜在的な農業生産増加の可能性を秘めているアルゼンチン、それからコロンビア、ペルー、こうした国についてもぜひひとつ大いに研究を始めていただきたい、こう思うわけです。  以上で私の質問を終わります。
  271. 内海英男

    内海委員長 次回は、来る八日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会