○二瓶
政府委員 繭糸
価格安定法に基づきまして、五十五生糸年度に
適用いたします
基準糸価等の行政
価格につきましては、二十九日に開催予定の
蚕糸業振興審議会繭糸
価格部会の
審議を経て適正に決定してまいることといたしておりますが、本日は
蚕糸業をめぐる最近の諸情勢につきまして、お
手元に御配付いたしております
資料に従いまして御
説明を申し上げたいと思います。
それで、この
資料の一ページをごらんいただきたいと思います。
まず、生糸
価格及び需給の
動向について見ますと、五十三生糸年度、五十三年の六月から始まりました五十三生糸年度におきましては中間安定帯のおおむね上方で堅調に推移いたしました生糸
価格は、五十四生糸年度に入りますと中間安定帯の下方で推移をいたしたわけでございます。これは一ページの表をごらんいただきますときれいにその辺の
関係が読み取れるかと思います。そこで、昨年の七月以降、日本蚕糸事業団によります中間買い入れを行っておるところでございまして、現在までのところ一万二千六百俵の国産糸の買い入れを行っておるわけでございます。生糸現物
価格は、五十三生糸年度、これを
平均いたしますと、キロ
当たりで一万五千百十八円ということであったわけですけれども、五十四生糸年度におきましては、昨年六月からことしの二月までの
平均で前年を約五百円下回ります一万四千六百二円ということになっておりまして、現在も一万四千五百円台で推移をいたしておるような
状況にございます。
なお、今回の事業団によります中間買い入れに
当たりましては、この一月、二月、三月にもそれぞれ買い入れを行っておりますが、本年のように
基準糸価決定の時期におきましても事業団が中間買い入れを行っておる、そういう事態は、十年ほど前の
昭和四十四年以来の出来事でございます。
このような情勢に対処いたしまして、生糸、絹製品の輸入につきましては、中国、韓国との間の二国間協定数量の削減なり、あるいは輸入
調整措置の強化等に努めてまいったところでございまして、輸入数量は生糸、絹糸、絹織物、いずれも五十四年の暦年は五十三暦年よりも
減少しております。これは二ページをごらんいただきますと輸入数量というのがございますが、上に、左のところに暦年というのがございまして、ここに五十二、五十三、五十四、この五十四のところをごらんいただきますと、生糸は前年
対比七二%、絹糸が八五・六、それから一つ飛びまして絹織物九四・八ということで、通関ベースでながめますと五十三年よりは五十四年の輸入数量は減っておる。
さらに、御
参考までに三ページに現在の生糸なり絹製品の輸入コントロールの仕組みにつきまして、生糸、絹糸あるいは絹織物等につきまして一覧表に収録をいたしておるわけでございます。
しかしながら、このような
措置にもかかわらず、日本蚕糸事業団の在庫は、現在、先ほど申し上げました国産糸の中間買い入れの一万二千俵強を含め八万九千俵という事業団設立以来最高の在庫水準になっておりまして、さらに今後、相当量五十四年度の発注をいたしました輸入生糸が入着いたしますので、近々さらにこれに上積みされまして、十万俵を超えるということは確実でございます。これは四ページの表をごらんいただきますと、この在庫数量の推移が四十九年の六月以降収録してございますが、一番右のところに五十五年の三月二十日現在がございますが、八万九千四百八十六俵ということで非常に高い山を形成をいたしております。これがさらに近々じゅうには十万俵を超えるというのは確実でございます。
それから五ページをちょっとごらんいただきますと、ここに「買入、売渡、在庫
状況」というのがございますが、中ごろに五十四年六月というところで線が引いてございます。まず輸入糸の一般でございます。買い入れのところは、六月以来買い入れございまして、三月二十日現在までで九千俵ほど輸入糸の一般糸を買っております。しかし、売り渡しはきれいにゼロが並んでおりまして、在庫は六万七千七十五俵という一般糸の在庫。それから次は、実需者売り渡し用の生糸でごごいますが、これも買い入れが一万六千三百十九俵の買い入れをやっておりますが、売り渡しは昨年の十月でストップをいたしておりまして、わずかに六千五百四十六俵売っただけで、在庫は九千七百七十三俵。それから国産糸の方は、買い入れは先ほど来申し上げておりますように一万二千六百三十八俵でございますが、これも糸価
低迷いたしておりますから、当然売り戻し、売り渡し一切ないわけでございます。そういうことでこれをそろばんを入れますと、計を入れますと、先ほど申し上げましたような最後の在庫が八万九千四百八十六俵というのがこの三月二十日現在の姿でございます。
それから、輸入糸の実需者売り渡しにつきましては、糸価
低迷のために、今五十四年度におきましては現在までのところ、昨年度のずれ込み分を含めまして約九千俵を行ったのみでございまして、ただいまも申し上げましたように、昨年十月以降糸価がいわゆる下べそ
価格であります一万四千七百円というのを上回らないため、五カ月間売り渡しを停止した状態となっております。大体このマル実といいますのは瞬間タッチ
方式で売るものでございますが、その瞬間タッチで売るものが五カ月間以上売れずに現在まで続いておるということでございます。現在このように需要者に対する引き渡しが行われないまま事業団手持ちとなっておりますものが九千八百俵でございますが、さらに四月から七月にかけまして五十四年度分の需要者、実需者売り渡し用の生糸が一万六千俵わが国に到着をいたします。そういう
状況でございます。
需要者サイドからは、生糸
価格が一万四千五百円あるいは一万四千六百円ということで昨年十月以降推移しておるわけでございますので、何らかの
措置によりまして需要者売り渡し生糸が実際に実需者の
手元に速やかに渡るようにしてくれという要請があるわけでございます。
六ページのところに現在の「繭糸
価格安定制度の概要」、金額の方はこれは五十四生糸年度
適用の現在の
価格、これをはめ込んでおるわけでございますが、中ごろに斜線で、この棒のところに斜線がございますが、これが中間安定帯でございます。この中間安定帯の
下限が一万四千四百円の
基準糸価でございます。
上限の方が一万五千九百円、標準中間売渡
価格でございます。この中に実は下べそ
価格と上べそ
価格という、いわゆるそういうものの設定をいたしております。そこで、この一万四千七百円という下べそ
価格といいますのは、需要者に対しまして瞬間タッチで売り渡します場合の一応のめどを一万四千七百円というふうに決めておるわけでございますが、糸価がこれの下で
低迷していますので実需者売り渡しが実際できない、停止しておるということでございます。
これまで申し上げてきましたような糸価
低迷の要因につきましては、いろいろあろうかと思いますが、基本的には末端需要の停滞によるものと見られております。これは七ページをごらんいただきますと、「和服等購入
状況」というのがございます。全国、全世帯一人
当たり平均でございますが、右の方に数量がございます。婦人絹着物、絹着尺地、絹地とございますが、五十四年はこの下のところに対前年比がございますが、婦人の絹着物は九六・二%ということで前年より落ち込んでおる。それから絹着尺地、いわゆる反物でございます。これが、絹の反物が八六%でございます。それから絹地、これは広幅で、いわゆる洋装などいたしますときに、洋服などつくるときの絹地でございますが、これが九一・八ということで、いずれも落ち込んでおる、こういう
状況でございます。
それから、もう一つのメルクマールとして八ページをごらんいただきますと、これは国内生糸の引き渡し数量でございます。絹織物業者に引き渡されました数量でございますけれども、これが五十二、五十三、五十四とございますが、五十三年は前年より一〇八・一%とふえたわけでございますが、五十四年に入りますと落ち込んでおりまして、昨年の六月からことしの一月までを前年同期と比較しますと、八一・一ということで二割ほど
減少をいたしておるわけでございます。これをグラフにしたのが九ページでございまして、五十三生糸年度の方が上の破線、下の方の実線が五十四生糸年度でございますが、昨年の下のラインを五十四生糸年度では線グラフが走っておる、こういう姿になっておるわけでございます。
そういうことで、絹全体、生糸、絹糸、絹織物の在庫が増加をいたしております。これは十ページの「絹の在庫の推移」というのがございますが、ごらんいただきますと、上のところに暦年、五十二、五十三、五十四とありますが、この五十四年の暦年のところをごらんいただきますと、一番右のところに合計がございます。そうすると三十万三千二百十一俵ということで、絹糸も絹織物等も全部生糸に
換算をして積み上げますと三十万三千二百十一俵の五十四暦年末、十二月末の在庫になるわけでございます。これは前年が二十七万ですから約三万俵在庫がふえておるということでございます。これは、「生糸」のところに「事業団」という欄が左の方の四欄目ぐらいにございますが、八万二千七百三十六俵、前年が五万俵ということで、全体で三万俵ふえているのが事業団のところに積み上がっておりまして、ここでたな上げされているという姿で、昨年十二月末では八万二千俵という姿になっておるわけでございます。そこで、さらに昨今の経済情勢下におきまして、在庫の圧迫感が非常に強まっているという需給事情にございます。
十一ページに「絹の需給表」というのがございますが、右の方の一番下の欄をごらんいただきますと、内需が八九%ということで、五十四暦年は前年
対比八九%方の内需でございます。一番すみのところに「末在庫」というので二〇・四%ということで、先ほど申し上げました二十七万が三十万俵になっていますので三万俵ほどふえておる、そういうことで一割ほど在庫がふえておる、それが一つの圧迫要因にも相なっておるという厳しい需給情勢でございます。
次に、繭生産の
動向についてながめてみたいと思います。
十二ページをお開きいただきますと「養蚕業の概況」というのがございますが、繭生産は天候に恵まれたこともありまして、官民挙げての努力により、五十四年は六年ぶりに増加をいたしまして、「繭生産量」というところの一番右すみにございますが、八万一千トンとなったところであります。この五十四年の繭生産において
特徴的なことは、十アール
当たりの収繭量が六十四・九キロで、対前年比八%ふえてございます。それから、二戸
当たりの収繭量四百六十一キログラムで一一%増加というようなことで、いずれも大幅に増加を示しておりまして、生産性向上及び規模拡大が見られるということでございます。このような傾向が継続いたしますよう今後とも努力する必要がある、かように考えているわけでございます。
以上で、最近の
蚕糸業をめぐります諸情勢についての御
説明を終わらしていただきます。