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山本参考人 私、
日本乳製品協会の
山本でございます。きょうここで先生方に現状並びに将来の問題について
意見を聞いていただく
機会をいただきましてありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。
一つは、現在の乳業界の現状、それから今後の問題について二、三
意見を申し上げます。
私
どもの乳業界で現在一番困っている問題は、過剰
乳製品の処置でございます。この過剰
乳製品というのは、もう五十二年から五十三年とずっと過剰の
乳製品が積もって、五十四年度もさらに上乗せをするというのが現状でございまして、これは私
どもの協会の推定で、三月末の市場における在庫数量、これは適正な在庫、バターと脱粉については二カ月分の販売量を差し引いた残りの過剰
乳製品というものが、大体バターで一万五千二百九十
トン、脱脂粉乳で二万三千八百七十
トン、脱脂粉乳は先般飼料協会の方にごあっせんをいただきまして在庫数量が減りましたけれ
ども、それでもなおこれは三カ月分の在庫になります。バターも約三・二カ月分ぐらいの過剰在庫で、一向にこれは減らないで、むしろふえる傾向にございまして、これを
生乳に換算しますと三十六万三千
トンという数量になるわけでございます。
この問題につきましては、酪振法の規定に従ってお買い上げをしていただきたいということを陳情申し上げておりますけれ
ども、
畜産振興事業団にしても、多量の在庫を抱えておられるというようなこともあってなかなか話が進んでおりませんけれ
ども、この過剰
乳製品、乳量に換算して三十六万三千
トンは、これを買い上げ願えれば、大体安定指標
価格にして三百十一億、買い上げ
価格は一〇%引きでございますから二百八十億円というものが長い間の在庫数量になっておるわけでございまして、これらにつきましても早期に買い上げをしていただきたい、こういうふうな陳情をいたしておる次第であります。
もう
一つの問題は、買い上げをお願いする問題にさらにつけ加えて申しますと、バターの一般市場の取引
価格は、
政府が決めた安定指標
価格よりも大幅に下回っているという問題でございます。バターについては、十二月末では、安定指標
価格の八六・九%の安い値段で取引され、約一割五分も安い値でもって取引されているというのが現状でございますし、また、脱脂粉乳におきましては約二割も安定指標
価格を下回っているというような取引
価格でございまして、その財政負担というものは非常に莫大なものになっておるわけでございまして、この安定指標
価格を割っているというのは、
昭和五十二年以来安定指標
価格を常に下回っているというのが乳業界の現状でございます。私
どもは、こういうふうな時代でございますので、もうこれ以上企業の
合理化あるいは経費の節約ということではとうてい処理し切れないというのが現状でございます。
もう
一つの問題は、買い上げに関連してお願いを申し上げていることは、
事業団の買い上げというものは、常に新品と取りかえるという義務を負わされております。したがって、常に古いものを売って新しいものを預けて倉庫に抱いておくというようなことになっておりますので、
需要者は常に新品を求めるのに、供給するわれわれは常に古い品を供給していかなければならぬ。したがって、
消費の
拡大につながらないというのが現状でございます。しかも、バターは一般に市販されているような有塩のバターでなく、塩味のつかないバターでございます。これをわれわれが納入し引き取っても、市販用に売るというには、一般家庭向きの
需要には向かないために再製造するというようなこともしなければならぬというのが現状でございまして、そういういろいろの問題で、せっかくこれを買い上げていただきましても、そういうような新品と取りかえなければならぬということが果たしてこれからいつまで続くかという不安を実は持っているわけでございまして、買い上げしてもらっても常に交換という義務を負わされれば、市場の
消費の
拡大にもならぬし、私
どもの過剰在庫も常にその
金利と倉敷料に悩まされるというような現状でございまして、交換も非常にむずかしいし、やたらの買い上げも、現状においては何とかやりくりできても、将来、長い間の問題としては非常に問題が起こる問題で、私
どももこの問題には大変苦慮して、何かいい案がないかどうかということでございますが、少なくとも
事業団の手持ちの在庫品は何らか別途に処理願えないものかどうかということを陳情にあわせてお願いを申し上げている次第でございます。もしこの買い入れが不可能だと、実際においても市場在庫と
事業団の在庫を合わせますと、乳量にして
生乳換算八十二万
トンにも及ぶ在庫でございますから、大きな問題でございまして、これは米の在庫に次ぐ大きな問題になろうかと思います。そういうことで、もしこれらにいろいろな問題があれば、少なくとも
豚肉が自社保管というようなことで何らかの措置をして
金利、倉敷料を負担するというような話も聞いておりますので、何らかの方法でこの問題を解決していただきたい、こういうことを陳情申し上げている次第でございまして、先生方においてもこの点について十分御理解をいただきたいと思います。
次の問題は、これから始まる五十五年度の乳価の問題でございます。私は
保証価格の問題については何ら触れる必要はございませんけれ
ども、私
どもの取引に最も
関係のある部分だけを申し上げて御理解をいただきたいと思います。
先ほ
ども申し上げましたように、バターの
市場価格というものは安定指標
価格をすでに下回っております。これはもう五十二年度から、五十三年もすでに下回ってきております。五十二年には安定指標
価格の九七・六%、約三%ばかり安売りをして処理をしております。五十三年には九三・二%で、大体七%近く安定指標
価格を下回った
価格で取引をされております。五十四年度につきましても、もう四月以来下がりっ放しでございまして、四月には九〇%でございましたけれ
ども、現在は八六・九%というように、さらに市場の
価格がダウンをしているのが現状でございまして、そういう意味におきましても、この安定指標
価格を決めるについては、それらの点を十分考慮いただいてお願いしたい。
脱脂粉乳についてはバターよりもさらに
市場価格が悪化しております。五十二年にはすでに安定指標
価格の九七・九%でございまして、これも下回っておりますし、五十三年は九一・五%と約八%も
価格が下がっているというのが現状で、さらに五十四年度も引き続き
市場価格は悪化して、五十四年の四月には九〇%、十二月になりましては七八%というように、すでに二二%も安定指標
価格を下回った市場取引
価格が行われているわけでございまして、そういう意味におきまして、私
どもの負担というものは非常に大きいわけでございます。これも認定数量だけで
計算しますと、十二月分だけで十六億円の負担、四月から十二月まででは百十三億円もメーカー負担になっております。恐らく三月末では百五十億円以上の負担になろうかと思います。
そういうようなことで、われわれはつくればつくるほど損するというような現状でございまして、私は、これらの問題について、
基準価格の設定につきましては、この点も十分に考慮していただくように
農林省当局に陳情しておるわけでございまして、これを乳価に換算すると
キロ当たり十円四十三銭基準乳価を引き下げてもらわなければとんとんにならないというのが現状でございまして、そういう意味では非常に大きな問題でございます。早く市場の立て直しをし、安定指標
価格に近いような
価格に一日も早くすることによって問題を解決するということは考えられますけれ
ども、時間的には恐らく相当の期間を要するのではないかと思います。
そのほかに、御承知のように石油その他資材、副原料が全部現在値上がりしております。
平均して大体二四%ぐらいの値上がりになろうかと思います。しかし、末端
価格の安定指標
価格は一向に改正されるような模様は最近見受けられません。したがいまして、これらの値上がりも製造費の中に加算をしていただかなければ私
どもはさらに負担が多い、こういうことになろうかと思います。そういう点においても、先生方にもいずれまたごやっかいにならなければならない問題もあろうかと思いますけれ
ども、その点も御理解をしていただきたいと思います。
もう
一つの問題は、五十五年度の今後の
需給の見通しでございます。これは
需給のバランスをとる上に私
どもは非常に大事な問題として考えております。単年度の
需給の見通しは、私
ども協会の
計算では、六百三十七万
トンあれば大丈夫だということでございます。しかもその中には飲用向けを四・五%増加するという見通し、
乳製品は一・四%の増加というようなことを
計算しますと六百三十七万
トンでいいわけです。こういうことから見ますと、不足払い対象の乳量は百八十一万
トンあればいいということになるわけですけれ
ども、問題は、先ほど申し上げました市場の過剰在庫の三十六万三千
トンをどうするかということでございますが、単純にこれを単年度で処理しようということになると、不足払いの
限度数量は百四十四万七千
トンあればいい、百四十五万
トンあればいいという
計算になります。
事業団の在庫を加えますと、これはちょっと実際は無理でございますけれ
ども、
計算上申し上げますと、
限度数量は約九十九万
トンあればいい、百万
トンあればいいという
計算になります。しかし、これは私が先ほど申し上げましたように、
事業団の手持ちは別途に解決しなければ問題が非常に大きいと思うわけでございまして、そういうことを考えますと、過剰在庫を差し引きますと、五十五年度の
牛乳の
生産は六百万
トンあればよろしいということになるわけでございまして、そういう問題が、私
どもと
酪農民の
計算とは、そこに大きな食い違いは単年度ではございませんけれ
ども、在庫数量の処理ということについては
意見の相違があることを申し上げておきたいと思います。
それから、もう
一つの問題は、こういうように
需給のアンバランスが市場を悪化させ、しかも、先ほどの
永松参考人のように、飼料が値上がりをしている最中に末端
価格がいじられないという現状は、
需給のバランスがとれておらないというところに問題があるわけで、一日も早く
需給のバランスをとることが最大の急務であると私は信ずるわけでございます。
酪農、乳業は食品の中でも将来性のある仕事でございまして、これはこの辺で
需給のバランスをとるということの勇断を下さなければ、今後、市場の回復もむずかしいし、それから
消費の
拡大もむずかしいのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
私は、ここら辺でどういうふうにこの問題を解決するかということについてちょっと二、三
意見を申し上げて、先生方の協力をいただきたいと思います。
日本の国民は飲用
牛乳をもっと
消費すべきだという点においては、もう大方の
意見は一致しております。私は
牛乳普及協会の副会長もさせていただいておりますので、
牛乳の
消費については人一倍努力をしておるつもりでございます。少なくとも
日本人は一日二百ccの
牛乳一本飲むという運動を早急に起こすべきである、そういうことによって、
日本人のカルシウムのとり不足の問題、骨折が多い、虫歯が多いという問題が解決できる。そうしますと年間八百二十五万
トンの
牛乳が要るということになるわけで、この問題を積極的に進めていく必要があろうかと思います。
それからもう
一つは、私は、飲用
牛乳の多様化という問題を大いに主張しておるわけでございます。白
牛乳でなければ
牛乳でないという
考え方は一部にございますけれ
ども、
牛乳のきらいな人もあるわけですから、コーヒー
牛乳でもフルーツ
牛乳でも一、とにかく
牛乳を一滴でも多く口に入れる。こういうためには、多様化の問題を積極的に取り上げていかなければならぬ。アメリカでも
牛乳のきらいな人が約二〇%おります。そういう者は色づきのコーヒー
牛乳あるいはその他の
牛乳で
消費をしておる。ましてや
日本みたいに
牛乳の
消費の十分でないところは、白
牛乳でなければならぬということで主張しておれば、
牛乳の
消費は
伸びていかないというふうに私は信じておるわけで、そういう意味におきましても、多様化の問題は大いに取り上げてやるべきでないかと思っております。私は、
日本における
牛乳の
消費拡大というものは、色物が三〇%、四〇%あっても、いずれは
日本人も、
牛乳のきらいな人も、色物で二〇%くらいの
消費者に落ちるのではないかと思っております。
それから、もう
一つの問題は、こういうようにとかくエネルギーが問題にされている時代でございます。いかにエネルギーを少なくして将来
伸びる
牛乳の処理をするかということは大きな問題でございまして、私は、省エネルギーもこの乳業界に取り入れたいと思っております。それにはやはりロングライフミルク、いろいろ反対の
意見もございますけれ
ども、ロングライフミルクは製造しても冷蔵庫に入れることも必要ございません。それから輸送にも冷蔵車が要りません。家庭に持っていっても、片すみに置いて必要なときに冷やして飲めばよろしいのです。もうそういうふうにエネルギーの問題もございます。それから、
消費拡大は、ビールと同じように家庭に持ち込んで、必要なときに飲む、こういうことが
消費拡大につながるというふうに信じて二二年前からロングライフを私は主張しておりますけれ
ども、一部反対
意見があるために、この問題がまだ採用されておらないというのが現状でございます。これらはやはり大きな観点から、また障害が起きればそれを除去する、こういう問題も含めて早くこれを認めていただきたいというふうに私はお願いを申し上げるわけでございます。
結論といたしましては、この過剰在庫を一日も早くなくするために、
生産者もメーカーのわれわれももっと拡販に努力する、そういうことで努力して、
需給のアンバランスを
昭和五十五年から五十六年の前半くらいまでに解決する、そういうような双方の努力と忍耐が私は必要であろうかと思います。
そういうことで、今後私は、
日本人の健康づくり、体力づくりという問題で、
牛乳、
乳製品というものを非常に大事に育てたい一人でございますので、どうぞ先生方も御理解ありまして、今後この
酪農、乳業が米に取ってかわって
伸びる産業、農業だということに御理解あって、御協力賜りますれば幸いでございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)