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武藤国務大臣 大変厳しいおしかりでございますが、農政審議会で議論をしていただいておりますときに、私がここである程度のはっきりした将来の
方向を打ち出してしまいますと、何か農政審議会をやっていただく必要がないというようなことにもなりかねないわけでございまして、その点については、農政審議会でせっかく昨年来議論をしていただいているわけでございますので、その審議を尊重しなければならないという
立場において、大変どうも夢を申し上げられなかったわけでございます。その農政審議会も、実はこれは
先生御
指摘の、その
農業基本法の中に農政審議会というのがあるわけでございまして、
農業基本法にあるその農政審議会において議論をしていただいているわけでございます。私は、
農業基本法の
考え方というものは、これはいまの
時代にも当てはまるところは
相当あるわけでございまして、いま空洞化しているというお話でございますが、完全に空洞化しているわけではないと思いますけれども、多少は、私自身も、せっかくの
農業基本法の
考え方で、いまの
時代にも即応するものが、必ずしもうまくいっていないという点はあると
承知をいたしております。
そこで、せっかくの機会でございますから、これは私の私見と申しますか、
所信表明は、そういう形で農政審議会の審議をかえって阻害をするようなことになってはいけないということで控えておりますけれども、何かビジョンがないかという御
指摘でございますので、私は、農政審議会の
先生方にも、私の個人の
考え方として申し上げていることはあるわけでございまして、それは、私は、よく
五つの柱、こう言っているわけでございますけれども、
一つは、今日の
日本の置かれている
農業の環境を見ますと、結果において土地利用型
農業と施設利用型
農業と比較してみますと、生産性において非常に違いがあるわけでございます。土地利用型の場合にはどうしても生産性が低いわけでございます。しかも、面積を比較をしてみますと、耕地面積の多いところは結構生産性が高い。耕地面積の非常に少ないところはやはり生産性が低いわけでございまして、そういう点からも、土地利用型
農業の経営規模の拡大を思い切って図っていかなければいけないのじゃなかろうかというのが
一つでございます。
それからいま
一つは、米は幸い余っておるという状態でございますけれども、けさほどから議論がなされておりますように、小麦その他について、
日本において非常に自給率の低いものがあり、しかもそれは
国民は要求しておるというものがあるわけでございまして、こういうものについては、やはり極力自給力を高めていかなければならないのじゃなかろうか。そのためには、水田利用再編対策でせっかく転作をやっていただくならば、それを定着させながら、しかも将来は適地適産の
考え方で、きょうも
地域農政という
言葉をお使いになりましたけれども、私どもは、やはり
地域のそれぞれの市
町村とか部落とかそういうところにおいてよくお話し合いをいただいて、そしてやはり
国民のニーズに合ったもの、いわゆる需要のあるものについて、なるべくそれぞれの
地域に合ったものをつくっていただく。それで、その国全体の
計画というものはやはり私どもの方で示さなければなりませんけれども、そういう形での適地適産の
考え方、国と地方と
本当に一生懸命やろうという農民の
皆さんとが一緒になって、ひとつ需給の見通しに合ったような形での適地適産という
一つの青写真を描いてみるべきではないか。
それから三番目には、そういう中にあっても、
日本の、たとえば小麦あたりあるいは大豆あたりがなかなか伸びていかないのは、その品質の問題とかあるいは収穫
機械の問題であるとかいろいろ言われているわけでございますから、こういう
農業機械の改良なりあるいは品質の改良について思い切って力を入れていくべきではなかろうか。
それからもう
一つ、やはり
後継者づくりということが大切でございますし、そのためには集落のリーダー、特に若手のリーダーというものが必要だろうと思いますし、また、今度経営規模の拡大ということになると、ある程度農地をお貸し願える、出していただく方が必要でございます。しかし、その方もその村にはやはり定住をしていただく必要があるわけでございますので、そういう全体の中の、いわゆる農地を出していただける方も、あるいは
農業を一生懸命やっていただく方も一緒になった形での
地域社会を健全に育てていくという必要があるのではないか。そのためには、生産環境
整備だけではなくて、生活環境
整備もあわせてやっていかなければならないのではなかろうか。
それから、せっかく生産者が
努力をされても、きょうも議論がございましたけれども、消費者の手に渡るときには結構高いものになっておるということがございますから、そういう流通、加工という面についても、いままで、ややもすれば十分なメスが入れられていなかった。ひとつ思い切ってそういう点も
見直しを図っていくべきではないか。
私は、こういう、正直
五つの柱をもちまして農政審議会の
先生方と議論をしておるわけでございます。せっかく、何か私は全く夢を持っていないというような御
指摘でございましたので、私も夢だけは持っておるということをひとつこの機会に御
理解をいただきたいと思って、お話し申し上げたわけでございます。