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佐野説明員 お答えいたします。
私どもといたしましては、
日ソ漁業共同事業は
昭和五十三年から話の始まったことでございますが、この事業につきまして四つの基本方針をもって対処いたしております。
一つは、先ほど先生のお話がございました
政府間
協定による漁業実績の維持に悪
影響を及ぼさない。第二番目に、各国二百海里
水域の設定等によって
影響を受けている漁業者の経営の改善に役立つような
内容であること。三番目は、共同事業の
内容が公正で、
日本側に不当な
負担を課するものでない。四番目は、
関係漁業者間において十分な
意見調整が行われていること。こういう四つの条件を掲げてございます。
具体的に申し上げますと、たとえば
日ソ間の
政府間
協定によって
操業を認められております沿海州の第七海区というのがございますが、ここで
日本の
漁船が相当のイカの
クォータをもらって
漁獲をしております。そのすぐ北方の隣接する
水域で共同事業によってイカをとろうというような話がございました。それで、こういうことをやられますと、
政府間
協定による
クォータをとるために第七
水域に出漁しておる
日本の
漁船から見ると、その手前で先どりしてしまう。こういうのは先ほど申し上げました第一項に抵触するというので、絶対許可できないということで抑えております。ですから、そういう面で、具体的にまず
政府間
協定に基づく
操業に悪
影響を及ぼすようなものについてこれを絶対認めないという方針は従来から堅持されていると考えております。
ところが、問題の点は、先ほど先生御
指摘のように
関係業者間で一種の過当競争めいたものが起こる。しかもその中で、
日本国内の業界内のコンセンサスの得られていないような事業について
ソ連側が先走ってライセンスを発行してしまう。そういう事態が起こることによって国内の
関係業者の間で無用の摩擦が起こる。それがいろいろな意味で
ソ連側に乗ずる機会を与える。こういうことは、確かに従来の共同事業の
経過をながめてみまして遺憾な点がなかったとは申せないと思います。
それで、実は本年七月
渡辺前大臣が訪ソされてカメンツェフ漁業大臣と会談をされた際、この問題について、
ソ連側と共同事業の枠組みについて両国
政府間で原則的な合意を達成しておくべきものではないかということを、いまのような事情を踏まえて
渡辺大臣の方から提起いたしました。それに対して
ソ連側は、これは民間ベースの話であるので
政府間合意ということにはなじまないのだが、
渡辺大臣の言われる問題の所在というのもよくわかるので、今後は
ソ連側が先にライセンスを出してしまうというようなことはやらないようにしましょう、まず
日本のライセンスを先にもらってきて、
日本のライセンスをもらっている者を相手に話をつけるということにしたいということをカメンツェフ大臣は申しました。それで、これによって問題が完全に解決するかどうかということは疑問なしといたしませんが、確かにカメンツェフ大臣の言ったことだけでもきちんとやってくれれば、現状に比べて大変なインプルーブメントであると思いまして、私どもとしてはそういう
ソ連側の意向を歓迎しておることは事実でございます。
そういう
経過を踏まえまして、私どもといたしましては、国内の方の話を後回しにして先に
ソ連側に駆け込んで、
ソ連側と話を決めてきて国内で事後の了解をとるという、そういう話の進め方をする人には絶対にライセンスは出さないということにする方針でおります。これだけでも従来に比べれば相当弊害は除去できると思いますが、それだけで完全であるかどうかということについてはさらによく検討をしてみたいと思っております。