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1980-03-04 第91回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月四日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 逢沢 英雄君 理事 有馬 元治君    理事 唐沢俊二郎君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 新井 彬之君 理事 中路 雅弘君       麻生 太郎君    上草 義輝君       大城 眞順君    三枝 三郎君       住  栄作君    田澤 吉郎君       田名部匡省君    田中 六助君       森  美秀君    伊賀 定盛君       石橋 政嗣君    木原  実君       市川 雄一君    山田 英介君       瀬長亀次郎君    辻  第一君       部谷 孝之君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      小渕 恵三君  出席政府委員         宮内庁次長   山本  悟君         皇室経済主管  中野  晟君  委員外出席者         宮内庁長官   富田 朝彦君         宮内庁書陵部長 福留  守君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     荒舩清十郎君   上草 義輝君     江崎 真澄君   三枝 三郎君     倉成  正君   住  栄作君     奥野 誠亮君 同日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     住  栄作君   倉成  正君     三枝 三郎君 三月四日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     麻生 太郎君   江崎 真澄君     上草 義輝君   山田 英介君     岡本 富夫君   塚本 三郎君     部谷 孝之君 同日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     荒舩清十郎君   上草 義輝君     江崎 真澄君   岡本 富夫君     山田 英介君   部谷 孝之君     塚本 三郎君     ――――――――――――― 二月二十一日  遺族年金扶助料改善に関する請願外一件  (藤田義光紹介)(第八二一号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第九三三号)  環太平洋合同軍事演習への自衛隊参加中止に関  する請願四ツ谷光子紹介)(第八二二号)  靖国神社公式参拝に関する請願小沢辰男君紹  介)(第八二三号)  高齢国家公務員昇給停止反対に関する請願  (後藤茂紹介)(第八二四号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願毛利松  平君紹介)(第八四一号)  同(小泉純一郎紹介)(第九〇〇号)  同(中村正三郎紹介)(第九三四号)  同(山崎拓紹介)(第九三五号)  恩給年限に該当する元上海工部局警察官の救済  に関する請願倉成正紹介)(第八六四号)  行政改革推進等に関する請願阿部助哉君紹  介)(第九二七号)  同外二件(井岡大治紹介)(第九二八号)  同(中村茂紹介)(第九二九号)  同(矢野絢也君紹介)(第九三〇号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第九三一号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願赤城宗徳紹介)(第  九三二号) 同月二十五日  遺族年金扶助料改善に関する請願北口博  君紹介)(第一二七二号)  行政改革推進等に関する請願(小濱新次君紹  介)(第一二七三号)  同(山田英介紹介)(第一二七四号)  同外二件(山本幸一紹介)(第一二七五号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願渡辺美  智雄君紹介)(第一二七六号) 同月二十六日  遺族年金扶助料改善に関する請願坂田道  太君紹介)(第一三二四号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願田村良平紹介)(第  一三二五号)  同(田中龍夫紹介)(第一四七一号)  有事立法及び日米共同作戦態勢強化反対に関  する請願金子満広紹介)(第一三九一号)  同(榊利夫紹介)(第一三九二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一三九三号)  同(中路雅弘紹介)(第一三九四号)  同(野間友一紹介)(第一三九五号)  同(三浦久紹介)(第一三九六号)  同(安田純治紹介)(第一三九七号)  行政改革推進等に関する請願斉藤正男君紹  介)(第一三九八号)  同外一件(斎藤実紹介)(第一四六八号)  同(坂口力紹介)(第一四六九号)  同(伏屋修治紹介)(第一四七〇号) 三月一日  旧中華航空株式会社従業員恩給法令外国特  殊機関職員として指定に関する請願山崎拓君  紹介)(第一四九二号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願天野光  晴君紹介)(第一五一七号)  行政改革推進等に関する請願(有島重武君紹  介)(第一五一八号)  同(大野潔紹介)(第一五一九号)  同(森田景一君紹介)(第一五二〇号)  同(田邊誠紹介)(第一五七四号)  同(山田太郎紹介)(第一五七五号)  同外一件(湯山勇紹介)(第一五七六号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願石井一紹介)(第一  五二一号)  同(中野四郎紹介)(第一五二二号)  同(田中伊三次君紹介)(第一五七一号)  環太平洋合同軍事演習への自衛隊参加中止に関  する請願小林政子紹介)(第一五七二号)  同(多田光雄紹介)(第一五七三号) 同月三日  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願大城眞順紹介)(第  一七〇八号)  同(山崎平八郎紹介)(第一七〇九号)  有事立法及び日米共同作戦態勢強化反対に関  する請願金子みつ紹介)(第一七二五号)  行政改革推進等に関する請願玉城栄一君紹  介)(第一七二六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十一日  旧勲章叙賜者名誉回復に関する陳情書  (第八八号)  靖国神社公式参拝等に関する陳情書外一件  (第八九号)  政府関係特殊法人綱紀粛正に関する陳情書  (第  九〇号)  同和対策事業特別措置法改正の際の附帯決議事  項の早期実現に関する陳情書  (第九一号) 同月二十七日  国家公務員法第二十三条の規定に基づく国家公  務員災害補償法改正に関する意見 は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五号)      ――――◇―――――
  2. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 これより会議を開きます。  去る二月二十七日、人事院より国会国家公務員法第二十三条の規定に基づく国家公務員災害補償法改正に関する意見申し出があり、同日、議長より当委員会に参考送付されましたので、御報告申し上げます。      ————◇—————
  3. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  4. 木原委員(木原実)

    木原委員 きょうは、まずこの機会に、宮内庁の方に皇室近況についてお伺いをいたしたいと思います。  天皇皇后並びに皇族方の御日常等についてお聞かせをいただければ幸いだと思います。
  5. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 お答え申し上げます。  皇室の御近況でございますが、天皇皇后陛下におかれましては、お元気で皇居吹上御所日常の御生活をなさっておられますこと、御承知のとおりでございます。  天皇陛下はことし七十八歳ということでございまして、御高齢ではございますけれども、きわめて御健康であり、毎日宮殿においでになりまして、国事行為を初めといたしまして、最近非常に多くなっております国公賓接遇を含め、各種行事等に御出席になっておられる御日常でございます。  一年間で申し上げますと、内閣の方から回ってまいりますような各種書類、たとえば法律政令条約公布あるいは国会召集、その他各種の栄典の授与でございますとか、いろいろな書類というようなものも年間を通じまして九百件もあるような状況でございますが、これらをきちんきちんと御処理になっておるというような御日常でございます。時には、昼間の間にそういった書類のごらんをお願いできなかったようなときには、夜におきましても吹上御所において御決裁を願うというようなこともしばしばあるような状況拝察をいたしております。  皇后陛下は現在七十六歳、この六日には七十七の喜寿をお迎えになるところでございます。御案内のとおり、五十二年七月の下旬に那須御用邸におきまして皇后陛下はお腰をお痛めあそばしました。それで、ある程度の期間公的なところにも御出席にならないというようなことも続いたわけでございますが、御状況は次第によくなりまして、このごろでは、たとえば昨年の八月十五日の慰霊祭、このときから陛下と御同列でそういった場合にも御出席になるというようなことでございまして、次第によくなっておられると存じておるところでございます。  ただ、ことしの一月の初めにはまた御腰痛というようなこともございまして、しばらく、一月に御予定の須崎への御行啓はお取りやめというようなことがございましたけれども、これは心配しておりました五十二年七月のときの御腰痛のところが再発したという問題じゃございませんで、いわゆる老人性腰痛ということだそうでございます。筋肉痛というようなことで、これも一次第次第に薄らいでまいりまして、先般の浩宮殿下成人式におきます御臨席というのも無事お済ましいただいたというようなことでございまして、そういった意味では、まずは御健康にわたらせられる、こういうように存じているわけでございますが、何分にもやはり御高齢でございますから、そういった意味におきますところの再発といったようなことにつきましては、十分御注意をお願い申し上げているというようなところであろうと存じます。  両陛下は、そういうような意味で、基本的には御健康であり、かつ各種の公的な行事その他をおこなしいただいているというように存じ上げているところでございます。  また、皇太子同妃殿下におかれましては、浩宮礼宮紀宮の三殿下とともだお元気で東宮御所日常の御生活をなさっておられますが、昨年で申し上げますと、皇太子同妃殿下にはルーマニア及びブルガリアの両国を十月に御訪問になり、また、その際前後いたしましてオランダ及びベルギー両国お立ち寄りになるというようなことで、国際親善のために御活動をお願い申し上げているところでございます。  両殿下とも宮中の諸儀式、諸行事に御参列になっておりますことはもちろん、国公賓等の訪日に際しましては御送迎行事にも御出席になり、そういった意味で、各種外国賓客接遇に寄与されております。  また、両殿下は、機会あるごとに各種の産業、教育施設あるいは社会福祉施設等を御訪問になっておりまして、各分野の実情につきましていろいろ御勉強になり、またじかにそういった世の中の動きに触れることに努められているというように存じております。  そのほかのお若い各宮様方でございますが、御案内のとおり、浩宮殿下には、先日二月二十三日成人を迎えられまして、成人式を挙行され、いよいよこれからは成人皇族としての御活動をお始めになるというような段階でございます。  ただ言うまでもなく、浩宮殿下はまだ御学業の身でございますから、御学業に御支障のない限りにおいて公的な活動にもこれからいろいろな場において御参加になっていく、こういうことになるのではないかというふうに存じ上げております。  礼宮殿下は、学習院中等科の第二学年在学中、それから紀宮殿下は、学習院初等科の第四学年在学中ということで、学業に励んでおられるところでございます。  そのほか、秩父宮妃殿下高松宮同妃殿下三笠宮同妃殿下、並びに寛仁親王以下各宮殿下、それぞれ日常におかせられましては、各種社会福祉事業に御関心をお持ちになって、そういった場で御活躍になり、その他いろいろ社会的な活動もなさっているところと存じ上げております。三笠宮様の若宮のうちの一番おしまいの方の憲仁親王殿下はただいまカナダへ御留学中、こういうような状況でございます。  簡単でございますが、皇室につきましての御状況を御説明申し上げました。
  6. 木原委員(木原実)

    木原委員 天皇が大変御健康なのは結構なことなのですが、日常大変お忙しい、繁忙でいらっしゃるというふうに承ったのですが、そんなにお勤めにならなくてはならない行事がたくさんおありなんですか。
  7. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 ただいま申し上げましたように、陛下の一番の基本的な御行事と申しますのは、言うまでもなく、憲法で定められております国事行為の御処理ということが一番大切なこととなることは申すまでも一ないわけでございます。その国事行為につきまして言えば、先ほど申し上げました法律政令条約公布国会召集、総選挙の公示、内閣総理大臣任命国務大臣等の任免、それから認証といったようなことがいろいろあるわけでございますが、外国大使の接受といったようなことまで含めまして、五十四年中のこれらの書類は約九百件あったというように承知をいたしているわけでございます。  また、国事行為としての儀式、これは新年祝賀の儀ということになっているわけでございますが、国事行為に関連いたしました儀式としての親任式、認証官の任命式外国特命全権大使、公使の信任状及び解任状捧呈式、こういったような諸儀式がございます。これらが昨年で申しますと約四十回ございました。これはいずれも宮殿にお・いて行われる儀式ということになるわけでございます。  そのほか、象徴としてのお立場から催されます儀式行事、御会見、茶会、拝謁といったようなことが昨年で申し上げますと約二百回ばかりあったわけでございまして、そのほか、外国参伝道御親書、御親電の交換が約五百件、こういうような件数があったのが実績でございまして、そういうような意味では、いろいろと公的なお立場でのお仕事というのがあるような状況でございます。
  8. 木原委員(木原実)

    木原委員 これは一般論ですけれども、そんなに忙しくしていらっしゃるわけですが、やはり御年齢のことを特に側近の者としては考えなければならないときに来ているんじゃないでしょうか。間もなく七十九歳でございますね、御生誕の日を迎えられるという段階なんですが、やはり天皇の御年齢にふさわしいような配慮を当然しなければならないと思うのですが、これはどうですか。
  9. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 確かに、天皇陛下は御高齢でございますので、側近の者といたしましては、当然そのことは念頭に十分置きまして御補佐申し上げねばならない、御指摘のとおりであろうと思います。  ただ、御案内のとおり、天皇国事行為の委任及び代行については、憲法の五条におきまして、皇室典範の定めるところにより摂政を置いて天皇の権能を代行するという規定と、それからまた、憲法第四条の二項におきまして、法律の定めるところにより委任することができるという規定がありまして、その規定に基づきまして法律が定められておりますことは御承知のとおりでございます。  しかし、いずれの場合におきましても、たとえば皇室典範の定めるところによっての摂政ということになりますと、これは言うまでもなく「天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないとき」という場合に置かれるものでございますし、また、臨時代行ということになりますと、「精神若しくは身体疾患又は事故があるときは、摂政を置くべき場合を除き、内閣の助言と承認」によって代行ができるというようなことでございますが、現実に陛下の御健康、御日常の御状況というのを拝見いたしますと、先ほども申し上げましたように、精神におきましても肉体におきましてもきわめて御健康であり、この憲法に定められておりますところの国事行為を中心にいたします象徴天皇としての御行動というのを十分こなしていらっしゃる、かように拝察できる状況でございますので、そういった正式の規定に基づきますところの諸措置というのをただいまとらなければならない段階とは拝察をしていないわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、また御指摘もございましたように、御高齢であることは間違いないわけでございますから、日常各種行事等につきましては、手順等におきまして、十分にそのことを念頭に置きまして、御無理がかからないように配慮することが私どもの責務であるというように存じているところでございます。
  10. 木原委員(木原実)

    木原委員 お元気なのは結構なんですけれども、御年齢のことは当然周囲で十分に考えなければならないのじゃないか。それに私はいつも思うのですけれども皇居東京真ん中でして、余り空気がよくないところなんですよ。その上に、お堀をめぐらしまして、考えようによりましたら、いまの世の中で、かなり皇居の中に閉じこもって生活をしていらっしゃる、こういう環境もあるわけですね。できるだけ皇居外にはお出かけになる、もう少しフランクな——御年齢とそれから環境についても、特に宮内庁補佐機関なんですから、もっと考えるときに来ているのじゃないでしょうか。まあ天皇があそこにいらして、まだ外から通っていらっしゃればともかくですけれども空気がよくない、ある意味ではあの中に閉じこもって生活をしていらっしゃる日常がある、その上に御高齢だということになれば、まあ元気で一生懸命やっておられるからということだけでだんだん済まなくなるのじゃないかと私どもは痛感するわけですが、どうですか、特に側近配慮としては。
  11. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 いろいろと御心配を賜りますことはありがたいわけでございますが、まあ皇居の中は、確かに東京真ん中でございますけれども環境といたしましては比較的、吹上その他自然の森の中に囲まれておるところでございまして、いろいろとデータ等もとっておるようでございますが、それほど他に比べて環境が悪いという状況ではないようにも存じております。  ただ、もちろん環境のよしあしという以外にも、ああいったところでどうだというお気持ちでの御発言だと存ずるわけでございますが、それにつきましては、先ほど来申し上げましたように、健康の許す限りは憲法で定められた象徴天皇としての職責を果たしたいというお気持ちも強いわけでございまして、そういった点も十分考慮しながら、手順その他におきまして実際上御負担がかからないように、また、場合によりましては那須なり須崎なりといったところに御用邸もつくっていただいているわけでございますので、そういったところの御活用というようなことにおきましても、御心配いただきますような点につきましては十分な配慮を申し上げてまいりたい、かようにも存ずるところでございます。
  12. 木原委員(木原実)

    木原委員 これは話がそれるわけですけれども、一ころ宮城の開放論というような問題もあり、それから政府の中には首都移転計画などというものも現にあるわけですね。だから、天皇日常の御在所の問題については、将来にわたって、いま環境もいいし、お元気でいらっしゃるからいいというだけのことではなくて、将来にわたって真剣に考える時期に来ているのではないかという思いもするわけですが、どうですか。
  13. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 皇居開放論あるいは首都移転論、いろいろなものがあったのは私どもも存じているところでございますが、首都移転論というような国全体の構造そのものにかかわる大きな問題、これはやはり政府の方でどういうぐあいにお決めいただくのかということに関連をしてまいりましょうし、また、いまの象徴天皇としてのお立場から言って皇室だけがよそに移るというのが適当なのかどうか、これも大問題として御議論を賜らなければならないことと存じまして、宮内庁がどうだということをいまここで申し上げるのはいかがかと存ずるので控えさせていただきたいと存じますが、もちろん、御議論になっていることは十分承知をいたしております。
  14. 木原委員(木原実)

    木原委員 いずれにいたしましても、八十歳に近い高齢に達しておられるわけですから、天皇としてのお務めもさることながら、特に周辺としては余り御無理のない日常というものをつくり出していくという責任があるのではないかと思うのですよ。民間の場合ですとこれはなかなか、もう八十歳ですから、いずれにいたしましても元気でお務めになっていらっしゃるということだけで、それに甘えていたのでは側近としての役割りを果たせないと思うのですね。やはりそれなりに十分な配慮をして、これからますますお元気でいらっしゃることがいいわけですから、そういうことの配慮をそろそろ優先して考える時期に来ているのではないかと私などは考えるわけですが、どうですか。
  15. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 先ほど来申し上げましたように、各種の事情というのを十分頭に置きながらおそばにおきまして拝察をいたしておりまして、ただいまのところは十分に御活躍、御行動いただいておるというふうに判断をいたしておるところでございますので、その点は御了承を賜りたいと存じます。
  16. 木原委員(木原実)

    木原委員 先ほども次長おっしゃったように、国事行為等については、昭和三十八年の法律でしたか、代理を設けることができる、こういったような法律があるのですが、具体的に何か法律に基づいて国事行為代行等を行われたことが最近ございますか。
  17. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 法律に基づいて正確な意味での代行というのは、ヨーロッパ及びアメリカに御訪問になりました際、国内をおあけになりました際であったと存じます。そのほか、たとえば御病気といったようなことでこの法を発動するまでに至ったことはなかろうと存じます。
  18. 木原委員(木原実)

    木原委員 これはせっかくある制度ですから、もう少し御活用になったらどうですか、そういう考えはありませんか。
  19. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 先ほどちょっと申し上げましたように、国事行為臨時代行に関する法律の第二条では、「天皇は、精神若しくは身体疾患又は事故があるとき」いわゆる故障という事項に該当するときに代行ができるということでございまして、具体にたとえば御病気だというようなときに国事行為をしなければならないことが起これば、その部分についてまさにそういうような事態の発動ということが考えられるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、そういう事態に該当してないという状況でございます。また、ここでは正確な意味における法律行為としての国事行為ということの代行でございまして、いわゆる日常の公的な諸行事につきましては、それはもしも御日程が御都合が悪ければすぐにほかの日にかえてもらうということで処理ができていっているわけでございますので、特にこの法律の幅広き活用ということによってどうこうしなければならないという状況ではまだないというように存じております。
  20. 木原委員(木原実)

    木原委員 いまおっしゃった諸行事公的行為等についての諸行事代理あるいは代行と申しますか、そういうことは間々あるわけでございますか。
  21. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 その点でございますが、いわゆる公的行為という場合には法律行為としての効果というものがあるような諸行事じゃございませんから、もしも陛下に御都合が悪ければ延ばすとかやらないとかいうことでも済むわけでございます。あるいはまた、初めからそういうことであれば陛下の方がだめだから皇太子さんの方でできるかできないかとかいうようなセットの仕方もできるわけでございまして、これは事実行為といたしましてそういったような配慮は、先ほど先生おっしゃいましたように、御年齢というようなことも考慮した上で諸行事の組み方を考えていっているというようなことになっていると存じます。
  22. 木原委員(木原実)

    木原委員 そうしますと、公的行為等代理、そういう場合には何か内規というか基準などはお持ちなんでございますか。
  23. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 特段に公的行為を、どういう場合は代理——代理という言葉がいいのかどうか、これまたちょっと問題でございまして、たとえば陛下の方にお出ましいただきたいというお話があったといたしまして、それが陛下の方の御都合が悪い、あるいはそれはとても無理だというような判断をいたしましたときにはほかの皇族方の方で、あるいは皇太子様を含めましてそちらの方でやっていただける場合もあるかと存じます。しかし、その場合には陛下ということは初めから消えてしまって、皇太子様なら皇太子様、ほかの宮様なら宮様というかっこうでの行事になりますから、これは代行代理という言葉を当てはめるのはいかがかと思いますけれども、実際に行事をセットする場合にはそういったようなことが十分考えられている。  たとえば、これは陛下の場合じゃございませんが、皇后様がお腰を痛められてからは、日赤の大会などにおきましては皇太子殿下がおいでになっているというような例もあるわけでございまして、そういったようなことによって実際上の処理が行われてきている。これは法律行為じゃございませんから、代理とか代行とかいうものじゃございませんけれども、実際には、御負担がそういう意味で実際上かからないように配慮申し上げているということになろうかと存じます。
  24. 木原委員(木原実)

    木原委員 そうしますと、その際に正式な御名代とか代理とかといったようなことは——たとえば皇太子が外国に天皇の御名代でおいでになるということではなくて、そういう場合には皇太子がお出かけになっているので、天皇代理公的行為でお出かけになるといったようなことはないのですか。そういう場合の手続とかなんとかいうことは宮内庁の方にあるのですかないのですか。
  25. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 陛下の場合に、最近にいわゆる御名代としてどこかに行っていただいたというのはちょっと記憶がございません。  外国の場合には、先ほど申し上げました昨年ブルガリア、ルーマニアに皇太子同妃殿下においでいただきましたが、あのときはその二国につきましては御名代ということになっております。ただし、同時に行かれましたオランダ、ベルギーにつきましては御名代ということにはなっておりません。これは一番公式な御訪問のところには御名代というかっこうでいらっしゃいました。国内的には、昨年の例を考えてみましてもほとんどそういう事例はなかろうと思います。  さっき申し上げました皇后陛下のかわりに日赤の大会に皇太子殿下がいらっしゃったときは、たしかこれは御名代というかっこうになっていたと存じます。
  26. 木原委員(木原実)

    木原委員 そういう場合には、特に代理の場合の手続といいますか、内規のようなもの、それはお持ちなんですか。
  27. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 その場合に特に手続的なものとしての決め方は、現在特別なものはなかろうと存じます。ただ、たとえば陛下が御出席になるということになってずっと進んできたものが、ごく近くになってお体の御事情で御出席できないというようなことがありました際には、場合によってはそういうことが起こるかも一しれない。しかし、先ほど申し上げましたように、ずっと昨年来見ておりましてもそういう事例はございませんでしたけれども、そういう場合が起こるかもしれませんけれども、その場合には、御名代の場合には、陛下から特に御命令があって、名代として行けということがあって、その間にはそういうかっこうでという手続が一応内部的にはとられるということになろうかと存じます。それで御名代として、たとえばお言葉なんかをおっしゃるのならおっしゃるということになってまいるかと存じます。
  28. 木原委員(木原実)

    木原委員 昭和三十八年の法律のときにも、国事行為に関して、きわめて限定された形での代理行為といいますか、そういうものが規定をされたわけで、いわゆる公的行為その他にわたってのことについては法律規定がないわけですが、そうしますと、それはその都度宮内庁の判断であるいは天皇の判断で代理を御指名になる、こういうことにとどまっているわけですね。
  29. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 いわゆる代行法に規定されました以外のものにつきましては、おっしゃったとおりであろうと思います。
  30. 木原委員(木原実)

    木原委員 大きな制度としては摂政という制度があり、それから昭和三十八年の法律があり、そのほかには、公的行為等については、随時そのときの御判断で代理を差し向ける、こういうシステムになっていると思うのです。  しかし、いずれにしましても、私ども気になりますのは、陛下高齢のことだということは、宮内庁の皆さんが一番真剣に考えなければならないことなんですよ。民間の場合で言っても、八十歳お近いわけですから、やはりそれにふさわしい御日常をつくって差し上げるというのがむしろ皆さんの務めじゃないかと思うのですね。そのために制度が不備であるならもう少しきちんとするとか。しかし、少なくとも幾つかの大きな代理のための制度もあるわけですね。活用なすって、御年齢にふさわしい形の環境をつくって差し上げるというのは皆さんの務めじゃないかと思うのです。いつまでもお元気だということで、ある意味ではそれに甘えているということでは、これはちょっとむずかしいことになるのじゃないかと思いますね。そんなような時期に来ていると私は思うのです。  そこで、いずれにいたしましても、公的行為等についての御名代を差し向けること、あるいはまた将来にわたって摂政という問題も、これは当然考えなくてはならない時期も一来ると思うのです。やはり御年齢には勝てないわけですから、そのことを真剣にそろそろ考えないと、いつまでも御高齢天皇のお元気だということにある意味では甘えていたのでは、側近としての役目は勤まらないと思うのです。いま、陛下日常を、ある意味ではそんなに忙しく縛るということよりも、いつまでも健康でいてくださるような環境をつくるということの方を優先して考える時期に来ているのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  31. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 その点に関しましては、いろいろのお考えもあろうかと存じますし、側近にいる者の一人といたしまして十分考えていかなければならないこともよく存じているわけでございます。また同時に、第一線で御活躍、御活動願うということが、精神あるいは身体におきますところの御健康というものにもどういう作用をするかということも、いろいろ考え合わせなければならない点もあるわけでございまして、ただいま御指摘の点につきましては十分念頭に置きながら、かつ側近から拝見をいたしておりまして、最もいいような状況に持っていけますように御補佐を申し上げるような気持ちでいっぱいでございます。
  32. 木原委員(木原実)

    木原委員 次の問題に移りたいと思うのです。  さきにヨーロッパ、次いでアメリカ等を訪問をなさったときの御様子を私ども報道等を通じて承知をいたしたわけですが、それぞれ訪問をされた国々で、さまざまな反応もあったわけです。しかし、いずれにいたしましても、われわれ国民にとりましても、天皇御自身にとりましても、あるいはまた訪問をされた国々にとりましても、それなりに大きな意味のあった御訪問だったと思うのです。大変御高齢天皇ですが、これから先海外にお出かけになるという何か腹づもり、御計画、そういうものはお持ちなんですか。
  33. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 陛下の外国への御訪問、最近ではヨーロッパ及びアメリカにありましたことは御承知のとおりでございます。陛下国際親善のために外国を御訪問になるということは、もちろんいろいろな影響のあることでございますので、宮内庁だけで決定する問題でもなく、外交上の配慮も必要でございます。したがって、内閣としての責任を持っての決定というようなことがなければ申し上げられるものではございません。  そういうような状況でございますから、ただいま外国御訪問の計画があるかということでございましたならば、現在の時点ではないということのみは申し上げられる段階でございます。
  34. 木原委員(木原実)

    木原委員 ヨーロッパ、アメリカを御訪問なさったわけですが、私はお元気なうちにぜひ隣国の中国を訪ねてもらいたい、こういう希望を持つのですが、いかがでしょうか。それは大変無理なことでしょうか。
  35. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 ただいま中国というように特定をしての御質問でございましたが、そうなりますと、先ほど申し上げましたように、いま宮内庁側からどうこう申し上げられる段階ではございませんとお答えせざるを得ないわけでございます。御高齢、御健康、その他の事情というのがいろいろあるわけでございまして、御訪問が真に国際親善の実が上がるということを十分慎重に配慮をした上で決めていかなければならないこと、したがって、そういう状況になったときに、内閣としてもいろいろとお考えをいただくというような問題であろうと存じますので、ただいまの段階でどこには行かれる、行かれないということは全く申し上げる状況ではないというように存ずるところでございまして、その点、現在のところでどこに外国御訪問の可能性ありゃという御質問を賜りましても、何ともお答えの申しようがないと申さざるを得ないところでございます。
  36. 木原委員(木原実)

    木原委員 総務長官、考え方を聞きたいのですが、天皇の中国訪問につきましては、いままでも非公式ではあるけれども、中国側がおいでをいただけたらという話も私ども聞いたような記憶があるわけです。もうこれは改めて申すまでもないことなんですが、ヨーロッパ、アメリカを訪問なすってそれなりに大きな意味があったことだと思うのです。そうなりますと、現在中国との関係は、あれだけの長期にわたる戦争という経過を経まして、幸いにして国交が回復をし、日中両国、新たな親善の道を歩き始めた。これは戦後長年にわたる国民の悲願でもあったわけです。中国訪問をなさることについては、さまざまな意味合いのことも考えられるでしょうけれども、そのことはともかくとしまして、やはりお元気なうちに中国を訪問をなさる。それから、中国の方からも華国鋒主席等の来日のこと等も伝えられている。  いずれにいたしましても、アジアの隣邦の中で、ある意味では昭和の世代を通じまして、さまざまな形で問題をはらんできた両国の関係、ぜひ天皇のお元気なうちに中国を訪問なさる、向こうの元首を迎える、こういったような交流のことについては、政府としての考えはあるのですか、どうですか。
  37. 小渕国務大臣(小渕恵三)

    ○小渕国務大臣 天皇陛下の中国御訪問につきましては、現時点、政府としての考え方は存しておらないと私理解いたしております。
  38. 木原委員(木原実)

    木原委員 政府には助言の権限も義務もあるわけですけれども考え方としてどうですか、閣僚の一人として。
  39. 小渕国務大臣(小渕恵三)

    ○小渕国務大臣 木原委員の貴重な御意見と承りましたが、私自身といたしましては、突然のお尋ねでございますので、現在、定かに是非を論ずることについて御答弁申し上げることができかねますので、お許しいただきたいと思います。
  40. 木原委員(木原実)

    木原委員 あなたも有力な閣僚の一人ですから、ここで判断を示してもらいたいと私思うのですが、ヨーロッパあるいはアメリカを御訪問なさった。それは天皇御自身の強い御希望もあったでしょうし、それなりの意味もあったわけですね。また、それぞれの反応があった。ある意味では、天皇が歩いてこられた五十四年にわたる御自身の歴史というものを御自分の足で正すという側面があると思うのです。  これは、もちろん宮内庁だけの判断の問題ではなくて、政府自身の判断としまして、やはりアジアの中で中国との関係というのは、特に昭和の年代において御存じのとおりの経過があったわけですね。ただ、そのことをいま論じ立てて、どうのこうのという特別の意味を持たせようとは思いません。しかし、ヨーロッパをお回りになりアメリカをお回りになった。いずれも戦火を交えた国であったわけですね。しかも、どんなにしても、われわれはアジアの中で生きていく以外にはない。その中での隣邦中国との関係が、国民の努力によって国交も回復をし、現に見られるような大変友好親善の関係があるいまの時期だと私は思うのです。  先ほど来承りますと、御高齢ではあるけれどもまだ大変お元気でいらっしゃる。そういう時期に、これは政府としては真剣に考えて、アジアの中で中国だけとは申しませんけれども、歴史的にも、文化的にも、なかんずく昭和世代の中で不幸な事態というものを経過をしたわが国としては、将来にわたっての問題を含めて、天皇の中国訪問というものがあっても一いいのではないのかと私は強い希望を持つわけですね。いままでも、先ほども申し上げたように、非公式ではあるけれども、中国側の意向等も伝えられたというふうに私も聞いております。これは公式にどうかということは承知をしませんけれども、手続はともかくとしまして、やはりそのことは大きな意味のあることで、政府としては当然考えてしかるべきことではないのか、こう思うのですが、どうですか。
  41. 小渕国務大臣(小渕恵三)

    ○小渕国務大臣 御指摘のように、天皇陛下の御訪欧あるいは御訪米等によって、それぞれの国との友好親善がとみに高まったという御成果があったことは私も承知をいたしておるところでございますが、中国に関しましては、先ほど宮内庁次長から御答弁申し上げましたような考え方であるわけでありますし、政府といたしましても、中国側からの正式の御招待があるとも実は聞いておりませんし、また、国民世論あるいは天皇様の御意思、あるいはまたその他万般のことを十分考慮いたしませんと、政府としての判断はできかねることではなかろうかと存じております。いずれにいたしましても、木原委員指摘の点につきましては、私ども貴重な御意見として承っておかしていただきたいと存じます。
  42. 木原委員(木原実)

    木原委員 あなたが外務大臣でないことは少し残念ですけれども、判断としては非常に大事な段階に来ている。天皇陛下がやはり中国を訪問なすって、ある意味では大きな歴史の流れの中で、何というのでしょうか、一つの御意思を示されるといったような時期に来ておる、こういうふうに考えるわけです。しかしそれはいいでしょう。お考え方は承りました。  宮内庁皇族方で中国を御訪問なさるという御計画はあるんですか。
  43. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 現在のところ、皇族方で中国訪問の御計画があるというのは聞いておりません。  それに関連いたしまして、たとえばことしの正月にも某紙にそれに近いような記事が出たことがございますが、これも宮様の方に確かめてみますと、さような事実はないというようなことでございますので、これは御質問とは直接関係ないかもしれませんけれども、ただいまではそういう計画はないということをあわせて申し上げておきたいと思います。
  44. 木原委員(木原実)

    木原委員 私は、これは一般論で、話がそれますけれども天皇皇族方が外国を訪問なさる、ある意味では王室外交といいましょうか、皇室政府の外交手段に使うということについては反対だし、疑問も持つものなんですが、諸外国の中には、たとえばイギリスの女王陛下などは、御存じのとおり、大変精力的に外国をお回りになって、それだけに大きな友好親善の実を上げておられる。私はこれは大変りっぱなことだと思います。しかしまた同時に、そこまでお勤めにならなくてもと、外国のことながら、考えることもあるわけです。  ですから、政府の外交手段に使うということとは別に、文字どおり国民の象徴として、やはり国民的な大きな立場で、御存じのように、高度成長の過程を経て、政治的にも経済的にも、もう日本は二十年前の日本とも違いまして、大変に国際関係が広くかつ濃密になってきている状態があるわけですね。だからそういう中で、当然政府の助言を得るわけですけれども皇室がやはり独自の立場で国際間の平和、友好のために努力をする、皇室自体もやはりこういう国際化の中で新しい時期を迎えているのではないのか。  しばしば皇太子等が各国にお出かけになる、私はいいことだと思うのです。限度はあるでしょうけれども、しかし、イギリスなどとまた違った意味での皇室の国際的なおつき合い、そういうものをやはりもっと広げていく時期に来ているのではなかろうか、こういう思いがするわけです。宮内庁政府の見解を聞きたいと思いますが、どうでしょう。
  45. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 御指摘のとおり、皇室の方、いわゆる両陛下なりあるいは皇族の方が外国にいらっしゃるというのにつきましては、これは純粋に親善のためということでなければならないと私どもも存じております。その御訪問が政治的な利用となったり、あるいはその誤解を招くというような事態は避けるべきである、これは基本的に常々思っているところでございまして、そのような意味から申しましても、国際的あるいは国内的な諸情勢の推移というのを十分見きわめる必要があるし、また実際の扱いもそうなっておりますように、閣議の決定なり了解なり、そういったような意味で、何らかの意味におきまして政府が責任を持つというような体制のもとにしか皇族方の外国御訪問というものは行われていないし、また行われるべきではない、かようにも存じているわけでございまして、そういったような意味で、真にその御訪問国際親善の実が上がる場合に、そういった情勢を見きわめた上でいろいろなところにおいでいただくことは、先生おっしゃいましたように本当にいいことではないかというように存じております。
  46. 木原委員(木原実)

    木原委員 この問題につきましては、中国訪問の意義については総務長官御同感をいただけると思いますけれども、少し真剣に考えてもらいたいと思うのです。ヨーロッパやアメリカ訪問とはまた違った意味で日本の将来にわたって大きな意味を持つ問題ではないか。天皇御自身の昭和という時代の、時に治世者として、いまは象徴として持っておる御地位からいっても大きな意味のあることではないかと思います。ですから、ぜひひとつ十分に検討をしていただきたい。腹づもりをつくっていただきたいということを要望として申し上げておきますが、いかがですか。
  47. 小渕国務大臣(小渕恵三)

    ○小渕国務大臣 御招待がございますれば、政府としても当然真剣に考慮いたしてまいるものと存じております。
  48. 木原委員(木原実)

    木原委員 最後にもう一つの問題をお聞きしたいと思うのですが、いま宮内庁で管理をしておるいわゆる陵墓と申しましょうか、陵あるいはお墓等なんですが、宮内庁で管理をしておる陵墓の種類やあるいはその数もしくは管理の状況等についてひとつお知らせを願いたいと思うのです。
  49. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 お答えを申し上げます。  陵墓は近畿地方を中心にいたしまして一都二府三十県にわたりまして四百五十四カ所にございます。その数は八百九十二でございまして、管理面積は約六百五十二ヘクタールでございます。  陵墓の内訳でございますが、歴代天皇陵百十一、皇后陵その他歴代外天皇陵七十五、これを合わせて小計百八十六でございますが、皇族墓五百五十、それから分骨所、火葬塚、灰塚四十二、それから髪歯爪塔その他六十八、陵墓参考地四十六、総計八百九十二でございます。  それから陵墓の管理でございますが、書陵部の中に陵墓課という課がございまして、それが本庁の陵墓管理の組織でございます。それから多摩と、近畿地方に桃山、月輪、畝傍、古市と四カ所、計五カ所の監区事務所を置きまして陵墓を管理いたしております。約百五十名の常勤職員、それから約八十名の非常勤職員で管理いたしております。
  50. 木原委員(木原実)

    木原委員 その中に、正確に言ってどなたが祭られているかわからないといった不明な部分というのもあるわけですか。
  51. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 先ほどお答えいたしました陵墓参考地につきましては、特定の方をお祭りしているということは決定いたしておりませんで、ただ皇室の方の墳墓であるということで管理いたしております。
  52. 木原委員(木原実)

    木原委員 そういう部分についての再調査もしくは調査といったようなことは特別に行われてないわけですか。
  53. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 現在、宮内庁といたしましては、陵墓をとにかくよく管理申し上げるということを最大の責務と考えておりますので、特別の調査はいたしておりませんけれども、ただ、保存管理上必要な工事をいたします際には、それに合わせまして事前調査、あるいは工事中の調査をいたしておりまして、それによって各種の調査をいたしておるという現状でございます。
  54. 木原委員(木原実)

    木原委員 御存じのように、いま国民の中でもわが国の古代といいますか、古代の歴史、史跡等についての関心が非常に高まってきておる、そういう状況がありますし、また、学術の面におきましても古代の遺跡の探索等については大変に進歩を遂げている、こういう状態があるわけです。そういう国民の関心の高まる中で、現在の学術の成果等を十分に取り入れて、もう少し陵墓についての再調査、たとえばお祭りをしておる方が不明であるといったようなところももちろんあるでしょうが、逐次現在の科学的な水準等に照らして再調査をしていく、こういう考え方は出ないものなんですか。ただ管理のみにとどめるわけですか、どうですか。
  55. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 現在、陵墓等につきましてはお祭りしてある方が決まっておるわけでございますが、これは古くは古代の、特に高塚式陵墓等におきましては、日本書紀とか古事記あるいは延喜式というものでいろいろ文献等がございまして、それに基づきまして、一時所在がわからなくなったという陵墓もございましたが、江戸期に入りまして元禄以降、特に幕末、文久のころにおきましていろいろ調査をいたしまして、なお明治以降等につきましても若干の陵墓の御治定を願っておるわけでありまして、その当時の学者等の意見を聞きまして正確に治定をいただいたものと思っておるわけでございます。その後歴史学、考古学等の進歩はもちろんございますけれども、いろいろな学説はございますけれども、現在御治定になっておるものを根本的に覆す資料は私ども承知していないわけでございますので、先ほど申し上げましたように、陵墓保存工事の際にいろいろ調査をいたしまして、なお一層正確を期したいと思っておるわけでございます。
  56. 木原委員(木原実)

    木原委員 宮内庁は、歴代の精霊を祭るということに徹しておると思うのですが、しかし、古代等の陵墓についてはある意味では国民にとっては大事な文化財だ、こういう側面もあるわけです。御存じのように、数年前に高松塚の古墳の発掘等が行われ、しかもこれはわれわれの国の古代の歴史に新たな照明を当てたものだといって、国民的な規模でその成果といいますか、歓迎した。しかもその措置については、これが学術的にも十分な調査が行われると同時に、適切な措置が行われて、将来にわたって永久保存の体制も改めてつくられている、こういう形のものがあったわけです。そんなような成果を踏まえまして、すでにいわば古代に属するような陵墓等については、国の行事としても結構なんですが、幾つかの古代遺跡に照明を当てる、あるいは国民共有の文化財である、こういう観点から文化財としての調査を行う、こういう発想は宮内庁からは出ないものなんですか、どうですか。
  57. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 この問題につきましても、各方面にいろいろな御意見のあることはよく承知をいたしているところでございますが、何と申しましても、陵墓は天皇なり皇族なりを葬るところでございまして、そういう意味での尊崇の対象として祭祀が行われているところ、いわゆる祭祀の対象となっているものでございまして、その祭祀の対象となっていない一般の古墳というものと同列に扱うわけには、いささか学術研究のためとは申しても困難ではなかろうかというように存じているところでございまして、ただ、先ほど来申し上げますように、いろいろな意味におきまする陵墓の保存というような点につきましては、最大最善の努力もいたしてまいっておりますし、学術研究者に対しましても、そういった意味におきます堤防その他の外周部の見学あるいは工事の際の事前調査の際の立ち会いといったようなことは、いろいろと便宜も図りつつある。そういう意味での進め得る範囲内におきましては、私どもといたしましても学術研究というものを十分頭に置きたいとは存じますけれども、やはり宮内庁といたしましての基本的な考えは、現在祭祀の行われている生きた陵墓であるという点につきましては、十分基本的な問題といたしまして私どもとしては対処せざるを得ないというようにいまのところは存じているところでございます。
  58. 木原委員(木原実)

    木原委員 われわれの方にも関係の学会その他からしばしば意見を承ることがあるわけなんです。いま次長のお話の中に、たとえば修理等の場合に学会の方々の立ち会いを願うという意味の御発言もあったと思いますが、そういう際に、文部省等と協力を願って積極的に学会の協力も得る、あるいは立ち会いも求めるということで、機会はいろいろあろうかと思うのですが、そういう措置でこれからもできるだけやはりこの調査には協力をする、こういうようなお考えなんですか。それとも、そのときの便宜でおやりになったといったようなことなんですか。どうですか。
  59. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 陵墓の保存工事につきましては、陵墓管理委員という、学識経験者八名の方をお願いいたしまして、ケース、ケースによりましてその方の一部あるいは全部にごらんをいただきまして、工事の際に御指導を賜っております。なお、昨年の秋でございますが、清寧天皇陵の外堤護岸工事を実施いたしました際に、学会等の要望もありましたので、人数もしぼっていただきましたので、十一名の方にそのトレンチの状況等を見学していただいたことがございます。そういうようなケースの場合には今後もなるべく続けていきたいと思っております。
  60. 木原委員(木原実)

    木原委員 これは、そう言ってはあれですが、明治以降、いま宮内庁が管理をしておる陵墓の全般について調査をするというようなことは、特に組織的に大きな調査は余りなかったのではないかと私ども承知をいたしておるわけです。しかし、先ほども申し上げましたように、学術の進歩あるいは国民のたとえば古代等についての、歴史についての関心の高まり、それからまた、考えよ、うによりましては、やはりすでに古代に属するような陵墓については、祖霊をお祭りをする場であると同時に、国民にとってはかけがえのない文化財なんですね。国民共有の文化財だと、こんなことをあわせ考えますと、それぞれやはり重要度に応じて、陵墓等について現在の最高の学術水準における再調査等、そういうものが私はあってもいいのではないのか、こういうふうに考えるわけですが、その辺についての、言ってみれば考え方をひとつお示しを願いたいと思うのですが、いかがでしょう。
  61. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 宮内庁といたしましては、やはり基本的には、現在祭祀の行われている陵墓であるということをどうしても念頭から離すわけにはまいらないと存じます。ただ、先ほど先生おっしゃいました文化財としての国民的な遺産であるという点も、十分それは理解もでき、またよく存じているところでございますので、できる限りにおきましてその間の調整といいますか、調和というものをとった上でやっていきたい、こう存じているわけでございまして、ただいまのところ、すぐさま大調査をやるというような考え方は持っておりませんけれども、十分そのことを念頭に置いて対処はしていきたいというように存じます。
  62. 木原委員(木原実)

    木原委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、この陵墓調査につきましては、これは大規模にやるということはなかなか大変なことなんですが、ただ、いま次長もおっしゃいましたように、やはりそれぞれ機会があると思います。また、学会方面の、やはりこの部分についてのという強い要望も一あろうかと思うのです。その際に、宮内庁としてはお祭りをするということが主体ですから、悪い言葉で言えば、一々やはり祖先の墓を開くということについては強い抵抗もあろうかと思うのですね。しかし、お祭りをするという側面と同時に、やはりわれわれ国民にとってはかけがえのない文化財なわけなんですね。そうしますと、やはり国民の関心と学術の進歩の中で、文化財としてやはり一定の措置をすることに道を開く、こういうことについてもこれまた余り保守的であってはならないのではないか、こういう思いもするわけです。したがいまして、これからのことにつきまして、機会あるごとに学会等の意見等も入れ、それから必要な調査等にもできるだけのやはり宮内庁としての便宜を図る、こういうことでよろしいのかどうか、ひとつもう一度お話を承りたいと思いますが、いかがでしょう。
  63. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 ただいまの先生の御意見を十分念頭に置きまして対処をさしていただきたいと存じます。
  64. 木原委員(木原実)

    木原委員 それではこれで終わります。
  65. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 次に、辻第一君。
  66. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 私は、陵墓の問題についてお尋ねをいたします。  すでに昭和五十一年の四月に参議院でわが党の河田議員が取り上げた問題でありますが、改めてその後の経過を含めてお尋ねをいたします。  まず最初に、陵墓の総数は八百九十二と聞いております。その内訳及びその数をお教えいただきたいと思います。  そして陵墓参考地とはどのような内容なのか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  67. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 陵墓でございますが、近畿地方を中心にいたしまして、一都二府三十県にわたりまして四百五十四カ所、全体で八百九十二陵墓、管理面積は約六百五十二ヘクタールでございます。  内訳でございますが、歴代天皇陵百十一、皇后陵及び歴代外天皇陵が七十五、小計百八十六でございますけれども、皇族墓が五百五十、分骨所、火葬塚、灰塚、これは四十二、それから髪歯爪塔その他六十八、陵墓参考地四十六、計八百九十二ございます。それ以外に、陪塚といたしまして百四十九ございます。  以上でございます。
  68. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 いま陵墓参考地とはどんな内容なのかということもお尋ねしたわけですが、お答えをいただけませんか。
  69. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 陵墓参考地でございますが、文献、伝承、墳塋の規模などから、皇室の方の墳墓と考えられますけれども、特定の被葬者を決定するまでに至らないものや、地元の伝承などで古くから皇室の方の陵墓と伝えられておりまして尊崇の対象となっておりますが、それ以外の資料が発見されないため決定に至っていないものでございます。陵及び墓に準じて取り扱っております。  陪塚につきましては、それぞれの主体となる陵墓に付属する墳墓でございまして、主墳の被葬者の従者あるいは副葬品等を埋葬したと考えられるものでございます。
  70. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 それで結構でございます。  次に、書陵部に考古学の専門家がお勤めになっているように聞いております。何名いらっしゃいますのか、また、その方々の専門分野についてお教えをいただきたいと思います。また、いまその方々で十分な調査や研究ができる体制なのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  71. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 現在、書陵部の中に陵墓調査官という制度がございまして、陵墓調査官のもとに六名職員がおります。おのおの歴史学、考古学を大学において専攻した者でございまして、書陵部に入りまして、その後現場等につきましての研究研さんを重ねておる者でございます。専攻につきましては主として古代でございますけれども、文献等につきましてはその後勉強いたしまして、中世等全体の時代について一応の見識を持っておる者でございます。
  72. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 もう一つお尋ねをしているわけでありますが、いまのその六名の体制で十分な御調査や御研究ができておる体制かどうかということもお尋ねしたわけですが、お答えをいただきたいと思います。
  73. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 昭和四十七年度は実は三名でございましたので、現在倍増されておるわけでございます。一〇〇%十分とは申し上げかねますけれども、ほぼ期待どおりの活躍をしてもらっておるものと思っております。
  74. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 陵墓の中でいわゆる古墳に属するものが何カ所あるのか、また、その古墳のうちで前方後円墳が何カ所あるのか、お尋ねをいたします。
  75. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 古墳という用語につきましては、学会等におきましてなかなか微妙な差異があるようでございますので、この席では神武天皇陵から奈良時代末までのものにつきましてお答えをさしていただきたいと思いますが、それにつきましては、全体百二十、そのうち前方後円墳は四十九というふうに承知しております。
  76. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 大型の前方後円墳について私ちょっと調べてみたのですが、一番大きい大山古墳、いわゆる仁徳陵でございます、全長四百八十六メートルから、コナベ古墳、巣山古墳など全長二百四メートルまでの分が三十二カ所ございます。その中で奈良県が十八カ所、大阪府が十カ所、あと岡山県が二カ所、宮崎県が一カ所、群馬県が一カ所、このような分布で、奈良県、大阪府に集中をいたしております。また、この三十二カ所のうち陵墓参考地、陪塚に属するものが二十五カ所で、残りの七カ所が史跡に属しており、大部分が宮内庁に管理をされております。この私の認識について御異議はございませんでしょうか、お尋ねをいたします。
  77. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 現在宮内庁で管理いたしております陵墓のうち、大型の前方後円墳につきましては、これは全長で二百メートル以上のものだけを拾っておりますが、二十四基あるというふうに承知しております。
  78. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 いま二十四基というのは、宮内庁で管理をされておる分でございますか。
  79. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 さようでございます。
  80. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 このように、畿内を中心に大型古墳やそれの周囲の中小古墳の一部は皇室の祖先の墓として陵墓参考地、陪塚と治定され、宮内庁に管理をされ、現在もなお祭祀が行われているということでございますが、この陵墓の治定は、明治七年から二十二年にかけて国が治定されたというふうに聞いているわけでございます。しかし、現代の考古学や古代史の進展した状況から見てみますと、当時としては科学的には大変むずかしい仕事であったのではないかというふうに思うわけでございます。そういう状況の中で、今日科学的に見てみますといろいろ問題点があるというふうに言われているわけでありますが、この明治初年に治定されたそのよりどころを簡単にお教えいただきたいと思います。
  81. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 陵墓は、中世以来の戦乱の中で次第に荒廃いたしまして、所在が不明となったものがあったわけでございますけれども、江戸時代に入りまして、元禄それから特に幕末文久の時代にいろいろ谷森善臣という学者その他を初め朝廷、幕府で考証等いたしまして、大部分の陵につきましてはそのときに決定されたわけでございます。  なお、その後、一部決まっておりませんでしたものにつきまして、明治に至りまして考証したということでございまして、私どもといたしましては、もちろん歴史学、考古学等の進歩はございますけれども、昔、幕末以前あるいは明治期になりまして決定いたしました陵墓等の正確度につきましては、根本的にそれを覆すに足る資料等が発見されておりませんので、現在のものが正しいものと確信をしておるわけでございます。
  82. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 古墳の中でも陵墓に治定されているものも含めて、前方後円墳は古代国家が確立する前段階、四世紀から六世紀の二百数十年間にわれわれの祖先が創造した建造物であり、その時代をよく体現している文化財であり、日本民族のすばらしい文化遺産であると考えております。また、日本の古代史の解明に欠くことのできない貴重な史料であると考えておりますけれども宮内庁の御見解をお聞きしたいと思います。
  83. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 陵墓につきましては、ただいまお尋ねのとおり、貴重な文化的遺産であるということは全くそのとおりでございますけれども宮内庁といたしましてはあくまで皇室の御祖先の墳墓として管理しておるわけでございますので、その取り扱い上につきましては第一義的に墳墓としての管理、それから第二に文化的遺産としての管理ということでございますので、その文化的遺産としての管理につきましては、先ほどもお答えしておりますように、特定の条件のも一とではございますけれども、一般の学者等に見ていただくとかいうようなことで御要望に沿っておるわけでございます。
  84. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 近年、考古学、古代史研究の発展の中で、その古代史解明に欠くことのできない貴重な史料としての前方後円墳、その前方後円墳の研究が大きく前進をしておるというふうに思います。しかも一、畿内の大型前方後円墳の多くが陵墓であります。これまでの古墳研究の大部分は陵墓を除外して行われてきたのが実情ではなかったかというふうに思うわけでありますが、近年大都市近郊の都市化など、いわゆる開発の大波のもとで、ことに畿内の古墳群の破壊が進んでおります。一方、国や自治体の古墳の保護は十分でなかったというふうに思うわけであります。  このような状況の中で、昭和五十一年の五月、考古学研究会、古代学研究会、日本考古学協会など・十団体は、陵墓の保護と公開を要求するとの声明を発表し、四項目の実行を要望しましたことは御存じのことと思います。その中に、「宮内庁は陵墓に関する文書、記録、見取図、実測図、写真及び出土品を全面的に公開すること、「陵墓」の学術調査を許可し、一般国民の「陵墓」内見学についても便宜を図ること」という一項があります。この声明以後も関係団体は今日までたびたび宮内庁に申し入れを行っております。特に墳丘内への立入調査を強く求めているわけでございます。これに対しまして宮内庁は、遺物の公開、調査記録の公開、改修時におけるその部分の公開、陵墓図のコピー頒布など一定の措置をとられるなど、前向きにいろいろと努力をされたことは評価を惜しまないものでございます。今後もこのような点について一層の御努力をされるかどうかお尋ねしたいわけでございますが、どうでしょうか。
  85. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 学会の要望についてはよく承知してございます。そのうち陵墓関係資料の公開につきましては、ただいま先生からも一応のお話がございましたけれども、関係文献約五千点の閲覧ができるようにいたしておりますほか、陵墓地形図約三百四十二枚の頒布も広く行えるようにいたしてございます。なお、地形図リストにつきましては、書陵部紀要に掲載して一般にわかるようになっております。それから、出土品につきましては、書陵部の展示会で過去に古い鏡と、それから装身具、勾玉等でございますが、それの展示会をいたしましたほか、地方の博物館等への貸出展示等も行っておるわけでございまして、なるべく一般的に資料を利用していただくように今後も留意していく所存でございます。  なお、学術調査でございますけれども、現在一般的に学術研究者に見学をしていただいておりますのは、前方後円墳でございますと堤防まで、周辺部ということで、やはり皇室の祖先をお祭りしておるという陵墓の性格上、墳丘部、墳丘本体についての立入見学は今後もお認めしないつもりでございます。  なお、発掘というものはもちろん論外でございますけれども、一般の御要望につきましては、陵墓の保存工事をいたします際に、たとえば昨年の秋に清寧天皇陵の外堤護岸工事の際に実施したわけでございますけれども、人数、時間等をしぼっていただけますれば、見学をしていただくというようになっております。なお、工事をいたします際には、文化庁、地元教育委員会とも十分連絡をとって遺憾のないように工事をいたしております。
  86. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 いま、陵墓の資料の公開の問題についてお尋ねをしたわけでありますが、陵墓の公開調査については五十四年十月二十六日、昨年の十月に清寧天皇陵の宮内庁による周濠の外堤調査を公開され、日本考古学会が窓口になって組織をした十一団体の代表、十一名がこの公開に参加し、約二時間にわたって見学をされた。これは清寧陵古墳の周濠外堤の宮内庁による発掘調査の現場に限定して行われたということでありますが、従来、宮内庁は特別な関係者のみの陵墓立ち入りを認めてこられた、いわゆる非公式のことであったのが、このときには部分的ではございましたけれども、長い非公開の伝統の中で公開の第一歩を踏み出された。この意義は大変大きい。宮内庁当局の英断を評価したいというふうに思うわけでございます。  しかし、墳丘への立入調査についてはいまだに拒否をしていらっしゃるということでございます。重ねてその理由をお聞きしたいと思いますし、これまでの団体と宮内庁の交渉では、宮内庁は受け入れ体制の問題や立入調査の効果に対する疑問なども出していらっしゃるようですが、基本的には、陵墓の墳丘の上に部外者が公然と立ち入ることに対する管理上の立場に問題があるというふうに考えられているのではないかと思うわけでありますが、この点についてもお答えをいただきたいと思います。一番主な点は、墳丘への立入調査についていまだに拒否をしていらっしゃる、その理由を再度お聞きをいたしたいというふうに思います。
  87. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 陵墓は皇室の祖先を祭る場所として、現に祭祀が承継されておりますいわば生きた墓でございますので、その中心である墳丘部につきましては、いままでも一般研究者の立ち入りをお認めしなかったわけでございますけれども、この方針につきましては、今後ともこのとおりにいたしたいと思っております。
  88. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 いま、皇室の祖先をお祭りになっている生きた墓だ、だから、今後ともその墳丘部への立ち入りはできないというふうにおっしゃったと思うわけでありますが、先ほども私が申しましたように、またあなたもお答えになりましたように、この前方後円墳、畿内に非常に多く、しかもその多くの部分が陵墓であります前方後円墳というのは、私どもの祖先が創造した建造物でありますし、民族の文化遺産、また古代史の解明にかけがえのない史料であるという点をも十分考えていただきたいというふうに思うわけであります。私どもも、天皇家が自分たちの祖先の墓としてお祭りになる、このような自由を否定するものではございません。また、そのような自分たちの祖先をお祭りしているところへ部外者が立ち入ることに対する感情というものもわかりますけれども、しかし、それだけでは困るわけでございまして、やはり貴重な文化遺産であり、また古代史の解明のかけがえのない史料であるというような点から、どうしても墳丘への立入調査もお許しになるべきであるというふうに思うわけであります。そういう観点から古代学研究会などが宮内庁にたびたび申し入れをされているわけでありますが、この点については節度のある申し入れであって、十分宮内庁としてはその点を認めて、公開をされるべきであるというふうに私は思うわけでありますが、もう一度その点についてお答えをいただきたいと思います。
  89. 山本(悟)政府委員(山本悟)

    山本(悟)政府委員 学会その他からいろいろと御意見のあることは十分承知をいたしているところでありますが、先ほど書陵部長がお答え申し上げましたように、祭祀を行っている墳墓であるという点を考えますと、その中心である墳丘についての調査というのはいかがかという気持ちがどうしてもぬぐい去れない現段階でございますので、その点は御了解賜りたいと存じます。
  90. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 何回も同じようなことを聞いて恐縮ですが、それでは、すぐれた民族の文化遺産である、あるいはかけがえのない歴史学の解明の史料であるという点についてはどのようにお考えになるでしょうか、再度お尋ねしたいと思います。
  91. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 貴重な文化的遺産である、あるいは民族の遺産であるということについては全く同感でございますけれども、ただ、宮内庁で陵墓を管理しております第一義的な理由は、皇室典範等に基づきまして皇室の祖先の墳墓の地としてお守りしておるわけでありますので、おのずからその点についての制約はやむを得ないものと承知いたしております。
  92. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 陵墓というものについてはひとまず差しおきましても、それでは参考地については、これを公開していかれるということまでもお考えいただけないでしょうか。
  93. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 陵墓参考地につきましては、先ほどもお答えいたしましたとおり、特定の被葬者というものは決定されていないわけでございますけれども皇室の祖先の方のお墓である、ただ文献その他によってどなたをお祭りしているかはっきりしていないというものでございますので、いずれにいたしましても、皇室の御祖先の方の墓であるという意味におきまして、私どもは陵墓と同じく一般公開をするつもりはございません。
  94. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 宮内庁は、この墳丘部へまでの立入調査を含めての公開の要求をかなえるための条件を整えるべきであると、私はどうしても考えるわけであります。  そのことに関連をして、昭和五十三年二月十五日、参議院決算委員会で野末陳平議員の質問に答えて野本書陵部長は「すでに現在宮内庁において立入検査についての基準の検討は具体的にいたしております。」と言っていらっしゃるわけであります。また、昭和五十三年三月に考古学研究会などの代表の宮内庁に対する申し入れの際にも、目途についてできるだけ早く、二、三年も延ばしたくないと述べていらっしゃるわけでございますが、基準ができたのかどうか。できていないのなら、いつまでにつくられるのか、期日を示していただきたいというふうに思うわけでございます。
  95. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 取り扱いの基準はすでにつくってございまして、典型的な前方後円墳の場合について申し上げますと、周りのお濠の外にございます堤防その他外周部までの立ち入りは認める。それからなお、資格者といたしましては、大学、短期大学等で教授、助教授等の地位にある方、あるいは都道府県教育委員会等において考古学的な職務、調査に従事しておられる方、一般的にはそういう基準でございますが、なお書陵部長におきまして必要と認めた場合には御便宜をお図りする、大体基準の概要は以上のとおりでございます。
  96. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 いまの基準は大体いつごろお決めになったのでしょうか。
  97. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 昨年決めております。
  98. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 昨年のいつごろでございますか。
  99. 福留説明員(福留守)

    ○福留説明員 昨年の二月でございます。
  100. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 それでは最後に重ねて、学術研究の発展や、また学問の自由を守り、真実を求めている国民の期待にこたえて陵墓の公開を一層進められること、ことに墳丘への立入調査を認められることを強く求め、また、いま陵墓を含めた古墳や古墳群の保存が大変好ましくない状態になっている中で、一層の保存の努力をされることを強く求めまして、私の質問を終わります。
  101. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
  102. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。辻第一君。
  103. 辻(第)委員(辻第一)

    ○辻(第)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました皇室経済法施行法改正案についての反対討論を行うものであります。  そもそも憲法第八条、第八十八条では、戦前の皇室財政が国民の目の届かぬところに置かれ、いわゆる皇室の財閥化の弊を生ぜしめた痛切な教訓を踏まえ、皇室財政の公明正大を厳しく規定しているのであります。  しかるに、政府が、今回で十七回に及ぶ内廷費の定額及び皇族費算定の基礎となる定額の改定に際し、私的経済に属することを理由に改定の根拠を明確にしないままでの改定を重ねていることは、まことに遺憾であることを指摘せざるを得ないのであります。  さらに、今回も定額改定の根拠とされている昭和四十二年十二月の皇室経済会議議員懇談会の了解事項なるものは、その方式に従って改定を繰り返せば、当然変動せざるを得ないはずのいわゆる人件費と物件費の比率が、内廷費を例にとれば絶えず一対二になるという不可思議な現象を伴いつつも、際限もなく定額を膨張させるものとして、定額改定の方式としての妥当性を疑わしめるものとなっているのであります。  以上、申し述べましたように、今回提出されております皇室経済法施行法改正案には、その改正の合理性、妥当性を見出し得るところは全くないことを指摘せざるを得ないのであります。  これが私の本改正案に反対する理由であります。
  104. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 これにて討論は終局いたしました。
  105. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 これより採決に入ります。  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  106. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。小渕総理府総務長官。
  107. 小渕国務大臣(小渕恵三)

    ○小渕国務大臣 ただいま皇室経済法施行法の一部を改正する法律案につきまして、慎重審議の結果御可決をいただきましたことは、まことにありがとうございます。  私といたしましては、本委員会における審議の内容を十分尊重いたしまして、皇室経済法施行法の執行につきましては遺憾なきを期してまいりたいと存じます。ありがとうございました。
  108. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  110. 木野委員長(木野晴夫)

    木野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十二分散会