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1980-04-17 第91回国会 衆議院 地方行政委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十七日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員    委員長 塩谷 一夫君    理事 石川 要三君 理事 大石 千八君    理事 中村 弘海君 理事 松野 幸泰君    理事 小川 省吾君 理事 神沢  浄君    理事 小濱 新次君 理事 三谷 秀治君    理事 部谷 孝之君       池田  淳君    小澤  潔君       亀井 静香君    亀井 善之君       岸田 文武君    北口  博君       工藤  巖君    丹羽 雄哉君       井岡 大治君    小川新一郎君       吉井 光照君    安藤  巖君       田島  衞君  出席国務大臣         自 治 大 臣 後藤田正晴君  出席政府委員         自治大臣官房審         議官      花岡 圭三君         自治大臣官房審         議官      川俣 芳郎君         自治大臣官房審         議官      矢野浩一郎君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         建設省住宅局民         間住宅課長   浜  典夫君         地方行政委員会         調査室長    岡田 純夫君     ————————————— 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   亀井 静香君     西田  司君   田島  衞君     河野 洋平君 同日  辞任         補欠選任   河野 洋平君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   西田  司君     亀井 静香君   山口 敏夫君     田島  衞君     ————————————— 四月十六日  地方財政対策に関する請願(近藤元次君紹介)  (第四一五三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提  出第二八号)      ————◇—————
  2. 塩谷一夫

    塩谷委員長 これより会議を開きます。  内閣提出に係る地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安藤巖君。
  3. 安藤巖

    安藤委員 私はまず、去る四月十日この委員会で、わが党の三谷議員広島県の参議院選挙関係で、元自治省事務次官松浦功氏の参議院選出馬に絡む広島県知事らの地位利用の問題を取り上げて質問しましたことに関連をして、引き続いて補足的にお尋ねをしたいと思うわけです。  大臣はそのときの答弁では、励ます会は後援会活動だ、だから事前運動にはならないので地位利用にもならないのだという趣旨答弁をされたはずです。ところがその関係について、これは私も、大臣えらいことをおっしゃったなと思ったのですが、これは翌日の毎日新聞記事でございますけれども、「後援会活動であれば市町村長などに出席を呼びかけても問題はないとの判断が示されたことは注目される。」とありまして、異例の見解だというふうに報道しておった新聞もあったんじゃないかと私、記憶しておるのですが、これは関係者自治省出身者だからというので、あるいはさらに、大臣と同じ党派から出馬をされるというようなことで、選挙の公正を維持するための一番の元締めである自治省の長、自治大臣が党派的なかばいの答弁をされるというようなことでは、これは選挙の公正は保たれないわけですね。これでは、励ます会大いに結構だ、どんどんやってよろしい、ゴーのサインを出したみたいなことになります。これが違法なことであるということになれば、違法行為大臣は教唆扇動したということにもなりかねぬわけなんですよ。笑っておられちゃいかぬですよ、大事なところですから。  そこで大臣は、いまでも四月十日、三谷議員に対してなされた答弁、これは間違いないというふうに思っておられるのかどうか、まずお尋ねします。
  4. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 四月十日に三谷さんの御質問に対してお答えしたとおりでございます。ただ、私はあのときの答弁記事を読みまして、これはうっかりすると励ます会という名前さえ使えば何をやってもいいんじゃないかという誤解を受けてはぐあいが悪いということで、その次の閣議後の記者会見の席で、そういった誤解を生んではいかぬという意味合いから、こういうことなんだという説明をその記者会見の席上で申し上げたわけでございまして、別段三谷さんに対する私の答えが間違っておったというふうには考えておりません。  といいますのは、励ます会あるいは育てる会、いろいろいま各方面で行われておるわけですけれども、これらは、当該政治家政治活動を激励をしてやろう、あるいはりっぱな政治家に育ってもらいたいといったようなことでそれぞれの後援者等がやっておるわけでございますので、これは別段、選挙事前運動にもなりませんし、同時にまた、地位利用等が行われているというふうにも考えてない、こういうことで私はああい答弁をしたわけでございます。  もちろん、どんな名前を使おうとそれが選挙事前運動になる、たとえばその席上で投票を頼みますよといったようなことになれば、これは事前運動の疑いを生じるし、同時にまた、そういった会合への出席を呼びかける際に、出なければ場合によればおたくの仕事が云々といったようなことになりますと、これは地位利用になります、もちろん知事だとか副知事であるとか市町村長というのは特別職ですから、政治活動は自由ですけれども。しかし、やはり地位利用はいけませんし、同時にまた、選挙事前運動にわたってはいけないことは当然ですから、いかなる場合においても、名前がどうあろうと、個々具体的な中身によって判断せられるものなんですね。そこで、そういった誤解を生まないように、いまやっていることは一向差しつかえないんですよ、しかしながら何をやってもいいんだというような誤解を生んだのでは大変な間違いになりますから、ああいった記者会見での補足説明をした、これが、私がここでお答えした後での新聞記者会見での発言の趣旨でございます。
  5. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、三谷議員に対する答弁は間違っていないけれども、その答弁どおりに励ます会あるいは育てる会というようなことでどんどんやるというようなことになって、先ほどおっしゃったような地位利用にわたるようなことがあるおそれがあったらそれはいかぬのだ、だから、何でも励ます集いだからいいんだ、育てる会という集会なんだからいいんだということでどんどん何をやってもいいんだというわけではないんだというふうに補足された、こういうことですか。
  6. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 新聞記事を見て、そういう誤解を生んではいけないという意味で、次の閣議後の記者会見補足説明をしたというのが実情でございます。
  7. 安藤巖

    安藤委員 そこで毎日新聞の、その閣議後の記者会見報道したコラム欄ですが、お読みになっておられると思うのですが、そういう三谷議員に対して大臣答弁されたことそのことを、「私の言うことを信じたら逮捕された、というのではかわいそう」だ、だからいまおっしゃったような補足的な説明閣議後になさった、こういう記事になっておるのですが、こういうふうに言われたことは間違いないのですか。
  8. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 コラム欄中身について一々コメントする立場にはございません。しかし私が言った趣旨は、ただいま言ったように、誤解を受けてはいけないので、名前が励ます会、育てる会であれば何をやってもいいんだといったことではない、こういう趣旨でございます。
  9. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、三谷議員に対する答弁内容は、誤解を生むおそれがあったというふうに判断をされたことになりますか。
  10. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 そうではございません。これは新聞記事について私が一々コメントする立場にはないわけでございます。ただ、あのときの御質問広島の例を挙げましたから、広島の例については、地位利用であるとか事前運動であるとかいう報告は私は全然聞いておりませんので、ああいった趣旨で御答弁したわけでございます。
  11. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、具体的に三谷議員が挙げた広島の例、あれは地位利用にもならないという考えであるけれども、新聞報道誤解を生むような報道になっておったので補足説明をした、こういうふうに聞こえるわけです。そうしますと、三谷議員に対する大臣答弁は、私は毎日新聞を読んだのですが、正確な報道ではなかったからそれを訂正した、こういうことになりますか。
  12. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 毎日の記事そのものが正確であるとか正確でないとかということを申し上げているわけではございません、これは新聞記事について私の立場でコメントできないわけですから。ただ、あの記事だけを読んで誤解を生んではぐあいが悪い、こういう意味で、閣議後の記者会見で私から真意を話をした、こういうことでございます。
  13. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと大臣のお考えは、三谷議員にああいうふうに答えた、そしてそれに関連して新聞報道があった、新聞報道内容についてあれこれ言わないけれども誤解を生むおそれがあった、だから、励ます会とか育てる会というのはもっと慎重にやる必要がある、三谷議員にはああいうふうに答えたけれども、これはやはり慎重にやってもらいたいというお気持ちがあったから、閣議後の記者会見で改めて補足をされた、こういうことになりますか。
  14. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 いままで行われておる励ます会とか育てる会が乱に流れておって、慎重にやってもらいたいという意味ではございません。あの記事をごらんになって、これから先そういったおそれが出てきては困るから、こういうことでございます。
  15. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、三谷議員に対する御答弁そのもの補足する必要はないというふうに考えておられますか。
  16. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 広島の例を挙げての御質問でございましたので、広島の件については、地位利用であるとか事前運動とかという報告を私は全然聞いておりませんし、また、そういった中身ではなかった、こういうふうに考えておりまするので、答弁そのものはあのとおりでございます。
  17. 安藤巖

    安藤委員 そこで、私の方から改めてお尋ねするわけなんですが、先ほど大臣がちょっとおっしゃってみえたように、地位利用にわたるような何らかの言動があって——町長さんあるいは市長さんが、知事の方から出席しろと言われて、それがさしあたって、いろいろ補助金をもらうとか、あるいはいろいろな手当てをしてもらうとかということがあって、それとの関連出席をしなければならぬという立場になってしまったということになれば、地位利用ということにもなってくると先ほどおっしゃったですね。それで、この三月四日の松浦氏を励ます会で三谷議員が問題にしたのは、出席をした音戸町長さんが、知事、副知事から出てくれと言ってきたのでやむなく出席した、こういうことを言ってみえるわけです。それから川尻町長さんは、例の山林火災の問題もあるので出席しなくてはと思って出席した、こういうふうに言っているということまで挙げたわけですね。これは公選法上百三十六条の二の公務員地位利用による選挙運動禁止規定の特に二項の三号と五号の違反行為ではないかということを追及したのですが、先ほどおっしゃったように、いろいろな問題で不利益をこうむることになるのではないかということになったら、これは地位利用になるかもしれぬ、おそれがある、こういうふうにおっしゃったのです。こういう具体的な事例があるのですが、これは全く問題ないというふうにお考えなんですか。
  18. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 知事なり副知事市町村長さんに、こういう会合があるんだがひとつ出席してくれぬかと言うことは、一向に差し支えないと私は考えます。ただ、それをお受けになった市町村長さんなりが、何々があるからどうとかいう、これは市町村長さんの中身気持ちの問題で、そういう音戸ですかどこですか、何か具体的な問題があるからなんということは、それを知事が口にして、それがあるからおまえ行ってと言うのはいけませんけれども、一般的に、こういう会合があるんだが出てくれませんかいなと言って、出ましょうと言えば、一向差し支えないことだろう、かように考えます。
  19. 安藤巖

    安藤委員 大臣は一応かっこうのいいことを言っておられるのですが、公職選挙法条文解釈をよう御存じになっておられるのかいなというふうにいま疑問に思うわけですよ。そこで、いま私が言いました公職選挙法の百三十六条の二の二項、私が特に問題とするのはそのうちの三号と五号なんですが、認識を確実にしていただきたいと思いますので一遍、自治省担当官の方、百三十六条の二の二項の三号、五号をひとつどなたか読み上げてみてください。
  20. 大林勝臣

    大林政府委員 百三十六条の二の第二項第三号は、「その地位を利用して、第百九十九条の五第一項に規定する後援団体を結成し、その結成の準備に関与し、同項に規定する後援団体構成員となることを勧誘し、若しくはこれらの行為を援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。」でありますし、第五号は、「公職候補者又は公職候補者となろうとする者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを申しいで、又は約束した者に対し、その代償として、その職務の執行に当たり、当該申しいで、又は約束した者に係る利益供与し、又は供与することを約束すること。」でございます。
  21. 安藤巖

    安藤委員 いま条文を読み上げていただいたのですが、この条文に対して自治省の方での実例解釈というのがありますね、そういうものがあるということは大臣御存じだろうと思うのです。  この便宜を供与することを約束するというのは、五号の終わりの方ですが、これははっきり明言して、こういうことを約束しますということを言わなくても、いままでの経過からしてそのことを言っているのだなということがわかれば、あるいはマイナス利益、いままでの経過からしてやらないぞということになることがわかっている場合には、暗黙の約束あるいは暗黙不利益供与ですな、マイナスの方、約束しておってもやらないぞということも該当することになるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  22. 大林勝臣

    大林政府委員 いまのお尋ね利益供与に関する前提としますいろいろなことの申し出であるとかあるいは約束するという事実関係につきましては、客観的な事実関係をいろいろ調査をしました末でそういう結論になれば、これに該当するということにはなろうかと思います。
  23. 安藤巖

    安藤委員 そこで、先ほどからお尋ねしているちょっと具体的な話の出ている例として、川尻町長が例の山林火災の問題もあるので出席しなくてはということで出席した。私の聞いているところでは、この三月四日のしばらく前に川尻町で山林火災があったようであります。だから、この山林火災の後始末の問題について補助金をもらうとかあるいはその後の対策を立てるとかいうようなことで、広島県当局と川尻町との間では話し合いがなされておった。そこで例のと出てくるわけですね。  そこで、そういう山林火災の話が具体的に出なくても、あなたのところ例の問題があるでねということになったらこれは暗黙に、いまおっしゃったようにいままでの経過からすればそのことを言っているんだなということを黙示的にちゃんと示したことになるんじゃないかと思うのですが、選挙部長さん、いかがでしょうか。
  24. 大林勝臣

    大林政府委員 そういった問題については、相手方のいわゆる思惑というのはいろいろあろうかと思いますが、そういった相手方思惑利益供与する人の間の意思の一致があるかどうか、そういったことについては、単なる想定では決められ得ない問題だと思います。
  25. 安藤巖

    安藤委員 これは想定で言っておるわけじゃなくて、現実に川尻町長は例のと言っているんですから——例のと言ったかどうかはもちろんわかりませんよ。しかし、出席してくれと言われると、例のあの問題があるから、これは行かないとまずいというふうに判断したというふうに考えるのが一番筋の通った考え方だと思うのですよ。  そこで大臣、いい気になって笑ってみえるけれども、この解釈実例では、いまの地位利用の問題についてこういうふうになっているわけなんです。これは時間がありませんから私の方から言いますけれども、「「地位を利用して」とは、その公務員としての地位にあるがために特に選挙運動を効果的に行ないうるような影響力又は便益を利用する意味であり、職務上の地位選挙運動等行為が結びついている場合をいう。」これが一つあって、その次にもう一つあるのです。「補助金交付金等交付、融資のあっせん、物資の払下げ、契約の締結、事業の実施、許可、認可、検査、監査その他の職務権限を有する公務員等が、地方公共団体外郭団体請負業者関係団体関係者等に対し、その権限に基づく影響力を利用すること。」こうなっているのです。  この二つ目に私が読み上げた解釈実例の、公務員等地方公共団体に対しその権限に基づく影響力を利用するということになると、本件の場合は、上の方の「公務員等」というのは広島県知事あるいは副知事、そしてその次の「地方公共団体に対し、」という地方公共団体川尻町長あるいは川尻町ということで、まさにその権限に基づく影響力を利用するということ。仮に例の山林火災の問題というようなことがなくても、本来、知事はその県下における地方公共団体である市あるいは町あるいは町長に対して影響力を利用することができる関係にある、この解釈実例からすればそういうことになるんじゃないですか。
  26. 大林勝臣

    大林政府委員 御指摘実例で、御質問のような内容が列記されておるわけでありまして、補助金であるとか許認可権検査権、そういった権限を有する公務員が、地方団体とか外郭団体とかその他のものに対して、その権限に基づく影響力を利用する、こういうことが書いてあるわけでありますが、結局問題は、その権限に基づく影響力を利用するという態様があるかないかということになるわけでありまして、一般的に知事とか市町村長とかという方々がいろいろな行動をされる場合に、いかなる場合もすべてその権限に基づく影響力が利用されたというわけにはまたまいらないわけであります。したがって、この影響力を利用してそういうことを行われたかどうかということは、その個々具体のやり方の問題にかかってくると思います。
  27. 安藤巖

    安藤委員 もう一つその関係についてお尋ねしますが、この解釈実例の私が言った「公務員等が、」というその公務員等県知事、あるいは「地方公共団体」はその県下市町村というふうに当てはめることはできるのかどうか。
  28. 大林勝臣

    大林政府委員 百三十六条の二に書いてございます「公務員等」、したがってそれを受けておりますこの解釈実例の「公務員等」と申しますのは、非常に広いわけでありまして、特別職一般職を問わず、およそ公務員たる者はすべて、こういう前提でございます。
  29. 安藤巖

    安藤委員 だから、非常に広いのは私もわかっているのですが、県を一つの単位として見た場合に、県知事がこの「公務員等」の中に含まれるのか、そして、その県下における市町村はこの「地方公共団体」に含まれるのか、そういう点はどうですか。
  30. 大林勝臣

    大林政府委員 公務員の中に知事あるいは市町村長が入るということについては、そのとおりであります。
  31. 安藤巖

    安藤委員 いや、それはいいんですが、私がもう一つ言っているのは、公務員等地方公共団体に対しというふうになっているわけですよ。上の「公務員等」には知事が入る、市町村長も入るというお話です。そうするとこの「地方公共団体」というのは、これはあたりまえの話だと思うのですが、市町村も入ることは間違いないですね。
  32. 大林勝臣

    大林政府委員 そのとおりであります。
  33. 安藤巖

    安藤委員 そうすれば、本件の場合にこれを当てはめてみれば、上の「公務員等」というのは知事であり副知事であるということにもなるわけです。そして下の「地方公共団体」というのは川尻町ということになってくるということは言えると思うのです。それはいまの御答弁ではっきりわかったと思うのです。  問題は、影響力を利用したかどうかということがもう一つの問題であることもわかっておりますが、そこは私が先ほどから言っておるように、川尻町長に対して知事の方から出てくれと言われれば——客観的な状況としては、火災があってその後始末のことについていま話をしている真っ最中だという状況にあるわけです。そこへ出席してくれと言われたので、例の問題があるから、これは不利益になってはいかぬというので出ていったということになれば、これは影響力を利用したというふうに見るのが一番筋の通った筋道ではないかと思うのです。いまその問題を繰り返しても先ほどのように、そういうことがあったかどうか人の心の中の何とかはわからぬみたいなことをおっしゃるから、これ以上お尋ねしませんが、これでこの問題は済まないのです。  もう一つ解釈実例、私も選挙部長さんと同じのを持っているんだと思うのですが、地位利用による選挙準備行為の問題について、「従来、準備行為考えられていた次の行為は、候補者推薦支持目的をもつてなされたときは、地位利用選挙運動とみなされる。」というのが一つあるのです。それは五つほど例が挙げてあるのですが、この松浦いさお君を励ます会の案内状には、「拝啓」云々とあって、「このたび 自由民主党並びに諸先輩のおすすめにより国政参加の決意をかためられ」、いま東奔西走しておられるんだ、そこで御出席をいただいてお励ましを賜りたい、御案内申し上げます、こういうことになっているわけですね。ということになると、これはその解釈実例の中にあるのですけれども、先ほど言いましたように、候補者推薦支持目的をもってなされる——いいですか、推薦もしない、支持もしないのにお励ましのために出ていく人はだれが考えてもおらぬと思うのですね。推薦もしない人にがんばってくださいというようなことはちょっとないと思うのですね、精神分裂か何かでなければ。ということになると、この励ます会というのは、そういう推薦支持目的とした会だということになるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  34. 大林勝臣

    大林政府委員 励ます会の態様は御承知のように、いろいろあるわけでありまして、それぞれの励ます会の時点で励ます会をやる目的があろうかと思います。改めてその励ます会においてこの方を候補者として適当であるというふうに推薦をするために行われる場合もありましょうし、それから、もうすでに候補者となろうとする者であるということは御本人が決心をし、周囲もそれを容認をしてこれを元気づけるという場合もございましょう。励ます会における態様それぞれに応じて、当たる場合もあり当たらぬ場合もあろうというふうに考えます。
  35. 安藤巖

    安藤委員 当たらない場合もあるというのは実はよくわからぬのですけれども、いま私が言いましたような案内状趣旨からすると、これは推薦支持することを目的とした励ます会ということになるのかならぬのか、どうなんですか。
  36. 大林勝臣

    大林政府委員 広島の件についての励ます会がどういう目的で行われたかということについてはつまびらかに承知いたしておりませんが、いま御指摘のような前提考えました場合に、たとえば発起人として名を連ねるというようないろいろな具体的な条件がございました場合に、それは推薦をするという目的をもってされたというふうな認定は、通常の場合は成り立っておるであろうというふうに考えます。
  37. 安藤巖

    安藤委員 推薦の中に名前を挙げた場合はというふうにあなたはおっしゃったのだけれども、こういうような内容案内状をもらって出かけていくということになると、やはり推薦支持するということを目的として、そういう気持ちがあってその出席者は出かけていく、どうしてもそうならざるを得ぬと思うのです。  そこで、先ほど言いました準備行為関係での解釈実例、この中に、「〇〇省〇〇局長が、外郭団体に特定候補者の後援会に参加することを要請すること。」これは地位利用選挙運動とみなされるということになるとはっきり書いてあるのです。そしてこれは「注」のところにあるのですが、「〇〇省〇〇局長は単なる例示であり、国若しくは地方公共団体又は公社、公団、公庫の部長、課長、係長その他の職員も同様である。」だからこれはそういうふうに読みかえろということですね。となると、この松浦いさお君を励ます会に知事あるいは副知事らが——これは呼びかけ人の中には広島市長さんも、入っておるのですが、現実に知事、副知事市町村長に対してこの会に参加することを要請したということになれば、この明文によってはっきり地位利用選挙運動ということになるのじゃないですか。
  38. 大林勝臣

    大林政府委員 この解釈実例の中で特に「〇〇省〇〇局長」という前提でいろいろ列記をいたしておりますのは、一般的に特定の省庁の局長であるとか、あるいは地方団体であれば部長であるとか課長であるとか、その他外郭団体、公社、公団の部長であるとか課長であるとかということになりますと、その地位に伴う具体的な権限関係というのがきわめてはっきりいたしておるわけであります。したがって、そういった具体的な権限関係補助金であるとか許認可、それぞれの局長、部長、課長が持っておるわけでありますが、そういった具体的な権限関係がはっきりしておるという方がやられました場合には、非常にこの地位を利用したというふうに見られてもやむを得ないという面もありますから、特に代表的にこういう列記をいたしておるわけであります。  ただ、一般的な権限をお持ちである知事であるとか市町村長であるとかについて、すべてこれがそのまま該当するかどうかという点についてはかなり問題があるわけでありまして、別途三十八年にまた通達を出しております。その通達の中で、たとえば今度は市町村長を例に出しておるわけでありますが、市町村長地位利用に当たるか当たらないかという列記の中では、市町村長の持っておる権限がたとえば具体的な問題については下の方に委任されておるというような例も相当あると思いますが、そういうことを前提としたんだろうと思いますが、たとえば外郭団体に対していろいろなことを指示する問題、後援団体に参加することを依頼する問題、こういったものについては、その影響力を利用してという条件をつけて、こういう場合は当たるんだということを言っておりますし、そうじゃなしに単に市町村長が、後援団体の会員の加入勧誘をするとかあるいは後援団体の結成に関与しその役員となるというだけでは、禁止行為には該当しないんだ。つまり、市町村長というものを前提とした場合には、やはり影響力を利用してという条件の有無が地位利用になるかどうかという判断の材料になるということを、改めて出しておるわけであります。
  39. 安藤巖

    安藤委員 三十八年になってから新しい通達を出したというお話ですが、そして市町村長のことをいろいろおっしゃったのですが、いま私が問題にしているのは県知事です。地方団体の長がそういう後援会への参加を要請すること、このことを問題にしているのですよ。  そこで、先ほども言いましたけれども、「注」の中に、「〇〇省〇〇局長」というふうに言っておるのは、「単なる例示であり、国若しくは地方公共団体」とちゃんと書いてある。だから、これは影響力を利用するような具体的な何とかの立場にあるかどうかというようなことからこういうふうに例示してあるんだ、そして先ほど影響力を利用するということがもっとはっきりするような問題として市町村長というふうにおっしゃったのですが、この自治省解釈実例の中に、「〇〇省〇〇局長」というのは地方公共団体と読みかえるんだ、このことなんだということをはっきり言っているわけです。そうすると、その地方公共団体の機関である知事あるいは補助者である副知事、これが市町村長に対して特定候補者の後援会に参加することを要請したことになるんじゃないですか。今回の松浦いさお君を励ます会に参加してほしいということを言ったのは、まさにこの明文にがちっと当てはまる行為じゃないですか。どうですか。
  40. 大林勝臣

    大林政府委員 先ほど申し上げましたように、この解釈実例で特に「局長」、もちろんこれは例示でありまして、しかし後の例示と申しますのは、本省の局長のほか、地方団体の「部長、課長」、という例示になっておるわけであります。つまり、局長であるとか地方団体の部長、課長というものを特に取り出しましたのは、局長であるとか部長、課長については、それぞれ特定の具体的な権限関係というものがはっきりいたしておりますから、こういった権限関係がはっきりいたしておる者につきましては、候補者推薦支持目的を持っておるということだけで、地位を利用してという態様判断するかしなかという問題は一般的にはほかの場合と比較して起こることが少ない。つまり、こういう目的を持っておって、自分がそういう具体的な個別の権限を持っておる方がこういう行動をされれば、もう大体それだけで地位利用とみなされるおそれが十分あるという意味で、特にそういう具体的な権限関係のはっきりしている局長とか地方団体の部長、課長を例示に挙げておるわけであります。
  41. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、知事、副知事というような人は、市町村長に対して一般的に影響力を与える、そういうような関係にはない、全くそういうものはないというふうな判断ですか。
  42. 大林勝臣

    大林政府委員 でありますから、地位に伴う影響力と申しましても、おっしゃっております一般的な影響力というのは、これは知事市町村長だけに限らず、およそ特別職である公務員でもすべて一般的な影響力はやはりあろうと思います。ただ、そういうものをすべて地位利用としてとらえておるわけではありませんで、具体的な権限関係に基づく影響力の利用ということに限定をしてとらまえておるわけであります。
  43. 安藤巖

    安藤委員 一般的な影響力はあるということはお認めになったのですが、先ほどおっしゃったように、地方公共団体の部長、課長、係長が具体的な影響力を与えるんだということでこういう解釈実例になっているのだという御趣旨のようなんですが、そうしますと、知事、副知事が部長、課長、係長に指示をしてあるいは命令をしてこういう後援会への参加を要請した、部長、課長、係長を道具に使って、いわゆる道具理論ですよ、道具に使ってやったという場合はどうなるのですか。
  44. 大林勝臣

    大林政府委員 そういう仮定の問題になるわけでありますが、具体的に権限関係を持っておる部長、課長がそういった行動をとれば、先ほど解釈実例にそのまま当たってまいると思いますし、また、そういうことをやられる特別職がおられるということになれば、同じように考えられると思います。
  45. 安藤巖

    安藤委員 ということになれば、いろいろあれこれおっしゃってみえておったけれども、やはり知事、市長の命を受けて部長、課長、係長がやればそういうことになるのだという、おっしゃったようないまの趣旨でしょう。ということになれば、知事、市長が直接やっても、あるいは部長、課長、係長を通じてやっても、これはかちっとこの解釈実例の明文に当てはまることになるんじゃないですか。本件の場合、まさに広島県知事あるいは副知事が、音戸町長あるいは川尻町長初め市町村長に対して、この励ます会への出席を要請しているじゃないですか。まさにこれは該当する行為だと思うのですが、どうですか、重ねて。
  46. 大林勝臣

    大林政府委員 そういうことになりました場合には結局、どういうかっこうでそういう要請が具体的に行われたかという事実の問題になりますので、どういうかっこうで地位利用が行われたか行われなかったかというような事実判断の問題になると思います。
  47. 安藤巖

    安藤委員 そこでいろいろお答えになっているのですけれども、ああだこうだとおっしゃっておるのですが、そういうような私がいま言っているようなことが事実だとすればこれは当てはまるんだ、しかし、それはそういうことが実際に行われたかどうかを調べてみなければというふうにおっしゃったのですね。それでは、早速これは調べてほしいのですよ。調べてほしいということ、いいですか、それを答えてください。そして、調べる前にも——あるいは調べた結果、事実がはっきりすれば適当な措置をとっていただく必要はもちろんあるのですが、調べる前にも、そういうような疑いを持たれるようなことはやめるべきだというようないろいろな指導をすべきじゃないかと思うのですよ。  この前も三谷議員質問しましたのに対して選挙部長さんは、その事実関係調査したり云々するということは警察の方のことで、そこまで自治省選挙部としては直接関与しないみたいなお話をされておったのですが、いま財政局長でいらっしゃる土屋さん、この人が前に選挙部長のとき、これはやはり三谷議員質問しているのですが、昭和四十九年五月二十三日の当委員会で、和歌山県の問題についていろいろ質問したのに対して、当時の選挙部長である土屋政府委員は、省略して要点だけ言いますが、「地位利用したのではないかといったような疑惑を招くことのないように慎重な行動をする必要があると思っております。」そして「私どもよく事実を調べた上で、こういうことが、疑惑を持たれるようなことがあっては非常に困るわけでございますので、その点十分注意をしてまいりたいと思っております。」そしてさらに、「そういった疑惑を招くことのないようにするように指導するということをいたしたいというふうに考えておるわけでございます。」こういうふうに答弁をしておられるわけです。  いまの選挙部長さんの方は、この前の選挙部長さんの土屋さんの答弁からすると、そこから先はわしゃ知らぬ、事前にそういうようなことになるかどうかということに対しても、わしゃ知らぬみたいなことに聞こえるわけですよ。だから、いやしくもそういうような疑いを持たれるようなことはしてもらっては困るんだ、やはりそういうような指導をすべきだと思うのです。前の調査するかどうか、調査すべきだと思うのですが、それと二つ、答えてください。
  48. 大林勝臣

    大林政府委員 選挙管理機関と申しますのは御承知のように、選挙の管理規定の執行あるいは啓発、そういったものを担当しておりますし、それから、選挙違反事件については公職選挙法の七条で、要するに司法機関の方の担当ということになっておるわけであります。これはもう先生の方が十分お詳しいわけでありますが……。したがいまして、もちろん選挙法に違反するような行為が行われるべきものでないことは当然なことでありますし、この地位利用の問題についてもその選挙の都度、これは公務員部の方からでありますけれども各地方団体に対して、そういうことのないようにという注意の通達を出しておるのが従来から続いております。したがいまして、個々の疑惑というものが起こった場合に、そういうものについて具体的に内容調査するというような立場には選挙部はないわけであります。もちろん、一般的にそういったお話がある場合に現地の方に照会というのはいたしておりますけれども、これは一応の照会ということでありまして、いわゆる調査がどうであるかこうであるかというような問題ではないわけであります。
  49. 安藤巖

    安藤委員 これ以上あれこれやっておってもあれですが、調査というところまではやらないにしても、照会はするということですね。  そして、事前にそういうような疑わしいことをやらないようにということで通達を出しているということですが、前の答弁と比べると、前は指導すると言っているのですよ。今度は指導もしなくなったのですか。だから、後から問題が起こってからそれはだめだというふうにきめつけるのか。事前に指導してそういうことのないようにすべきだと私は思うのですが、指導もしないのですか。前の答弁から大分後退しているのですよ。土屋財政局長さんがいま見えますけれども、そう思っておられるんじゃないかと思うが、どうですか。
  50. 大林勝臣

    大林政府委員 選挙部における指導あるいは選挙管理委員会における指導と申しますのは、いわゆる一般的な指導ということでありまして、具体的な個々の事例について、この事例についてどうであるかこうであるかということについては、それを最終判断をいたします立場にないわけでありますから、その個々の具体的な事例をとらまえて、これはああであるとかこうであるとかという指導をする立場には実はないわけでございます。したがって、選挙法ではこう書いてあるから、特にこういう問題については今度の選挙については十分に注意をしてほしいという、一般的な指導という意味での通達を従来からしてまいっておるわけでございます。
  51. 安藤巖

    安藤委員 そうすると、一般的な意味における指導はする、しかしそれはいままでやっておる通達でやる。それで、もちろんいま私が問題にしているこの広島県における問題を、きちっと事後であるけれども指導すべきだ、再びこういうことの起こらぬように。そして一般的にすべての自治体に対して、そういうようなことにならないように、いやしくも地位利用にわたる公職選挙法違反にならないようにこれは指導するのは、自治省の当然な仕事だと思うのです、それこそそちらの方面では影響力を行使して、ということはだれが考えてもあたりまえだと思うのですが、いまおっしゃったように一般的な指導をするということで、まだほかにたくさんありますから、これで一応打ち切ることにします。  そこで、次は別の問題をお尋ねしますが、これは建設省からも来ていただいておるのですが、浜さんかぜを引いておられるようですが、私のほかに質問をされる方がなければ、私の質問が終わりましたら帰っていただいて結構ですから……。  まず、自治省の方にもちろんお尋ねをするわけですが、愛知県の住宅供給公社、これは各県にあるのですが、それがホテル豊田キャッスル、これに勤労者の住宅を建設するという目的で取得をした土地をまるごと売り渡したという事実、これは自治省の方は知っておられるかどうか、当然知っておられると思うのですが、そして、愛知県知事がこの売却について承認をしたということを知っておられるかどうか、この愛知県知事が承認した日はいつで、それは住宅供給公社法の何条に基づく行為であるのか、お尋ねします。
  52. 花岡圭三

    ○花岡(圭)政府委員 愛知県知事が公社に回答いたしましたのは五十四年の九月二十五日でございます。  このことにつきまして、特にどの規定でやったかということでございますけれども、この土地というのは当初、愛知県の住宅供給公社が住宅を建てる目的で取得いたしましたけれども、四十八年ごろですから当時の高度経済成長時期でございました。その後、思惑が外れまして、ここに建てても住宅としての分譲というのができないというふうな見通しになったために処分をしたということでございますから、特に法律の規定に基づく特定の条項によってやったものではない、このように理解をしております。
  53. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、こういう住宅供給公社というのは出資は全額愛知県からなされておる、それぞれ県からなされておるわけですね。それで成り立っている特殊法人なんですが、これがいまおっしゃったように住宅供給公社本来の目的とは違った財産処分をしたわけですよね。それに対して知事が承認をするというのは——現実にしたわけですが、これは何ら法的根拠もなしに知事が承認をした。そして、との愛知県の住宅供給公社が、勤労県民の住宅を建てるという目的で買った土地を、全くそれ以外のホテルをつくるというホテル会社に譲渡した。これは全く業務と関係のないことですね。業務と関係のないことを住宅供給公社がやって、また知事が住宅供給公社法に何らの根拠も置かない承認を行った。一体これはどういうことなんですか、どういうようにこの問題は見ておられるのですか。
  54. 花岡圭三

    ○花岡(圭)政府委員 もちろん、この公社の目的というのは住宅困窮の人たちに住宅を供給するのが目的でございます。そういうつもりで用地を取得した。しかし、その用地に家を建てるというのが現実の問題としてむずかしい、家を建てるというよりも分譲の見通しが立たない、そういうふうなことでございますから結局、公社としましてはその用地の取得について見通しの誤りがあった、こういうことは事実でございます。ただ、そういったものをこのまま保持するということは、公社の経営基盤から見ましてもこれはマイナスになるわけでございますから結局、そういった業務以外の用途へ処分せざるを得なかった、いわば公社としては不用品の売却というふうな形にならざるを得なかったと思います。  そういう意味で、公社本来の考え方と違ってくるものでございますし、当初の事業計画に外れるといいますか異なったことに処分をするわけでございますから、やはりそこは設立団体と協議をするということは必要であろうというふうに理解いたします。
  55. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、これは住宅を建てるということで取得したのだけれども、その土地を持っておるのは公社の経営上どうもいかぬということだということですが、そうしますと、業務以外のことは何でもそういう理由がつけばどんどんやって構わぬというようなかっこうになってしまうのですね。いまおっしゃったように、そういうようなことなので設立団体である県の知事の承諾、了解を得る、こういうことだ。そういうようなことでいけば何でも自由勝手にできる。  いいですか、地方住宅供給公社法、先ほどから何度も言っておるようにとにかく、勤労者の住宅を提供する、そして生活の安定と社会福祉の増進に寄与するのだということで設立されている公社が、そのために買った土地をそういうような形で処分できるということになったら、これ何でもやれることになるのですよ。だから、これが一条。そして二十一条にはこれ御承知のように、業務がきちっと書いてあるわけですね。この二十一条の業務にも規定してないことをやったわけですよ、先ほどからおっしゃってみえているように。公社法と全然別のことをやったのだということは認めておられるとおり。そうなると、これは住宅公社法の一条、二十一条にも違反する。この二十一条に違反するということになると、四十九条の三号で、たしか三万円以下ですか罰金に処せられることになっておるのですね。きちっと罰則までついているのですよ。それを勝手にやっているんですが、それはこれに該当しないのですか。
  56. 花岡圭三

    ○花岡(圭)政府委員 もちろん、住宅供給公社の目的にかなった事業をしなければならぬわけでございますが、先ほどのようないわばオシャカの土地でございまして、これをそのまま持っておくというのは非常に都合が悪い。知事の方でもやはり相談がありましたときに、なぜ建てられないのかあるいは分譲ができないのかというふうなことは公社にただしたようでございます。そうして今度売却するについては、それはやむを得ないからその代金で代替地を取得して住宅を建てるようにというふうな指示をしたようでございます。一方、公社の方もこの問題につきましては、建設省とも事前によく御相談をなさいまして、こういった法令に違反をしないかどうか十分確かめた上でなされたというふうに伺っておりますから、この二十一条の規定の外にあるというふうに理解しております。
  57. 安藤巖

    安藤委員 オシャカの土地とおっしゃるのは、本件の売却の対象になった土地、これがオシャカの土地ということなのか、先ほどおっしゃったように財政上の理由によるのか。本件の土地を私も現場を見てきたのですが、非常にいいところなんです。市の中心街から一キロ、それからトヨタ自工本社から一キロ、国道二百四十八号線沿い、便利、静か、一番いいところですよ。一等地ですよ、住宅地としては。何がオシャカの土地ですか、いいかげんなことを言っちゃいけませんよ。あなた、現場を見てきたのですか。その点どうですか。
  58. 花岡圭三

    ○花岡(圭)政府委員 この土地というのも、私ども聞きました範囲内では要するに、国道と、それから南側に面した道路と、これから六メートルから八メートル下になっている土地だというふうに聞いています。またへ国道側の間口が七十三メートルあるようでございますが、国道に接している部分は十二メートルにすぎないというふうなことでございますし、しかもかなり低質な土地であるというふうなことでございます。そこを買収したということは、やはりそこに分譲住宅が建てられる、しかも高層住宅を建てようという計画であったと聞いております。しかし、高度成長期の当時の思惑は外れまして、豊田市への流入というものがかなりとまってきた、しかも豊田市におきましては、一戸建ての持ち家住宅志向が非常に強いというふうなことから断念せざるを得なかった、このように聞いております。
  59. 安藤巖

    安藤委員 最初におっしゃったような土地だったら、もともとそんなところは住宅地としては不向きだということになって、買うのが、手に入れるのがどだいおかしいのですよ。それを住宅を建てようということで取得したのですよ。そして、五十三年から五十四年にかけて二千万円かけてこれを整地までしているのですよ。いいですか、その上に、ホテル豊田キャッスル、これは名古屋キャッスルというのが名古屋にあるのですが、これとトヨタ自工、それから豊田通商というところが資本金を出資している。これはまさにトヨタまる抱えというようなホテル会社なんです。そこへ売却をした。しかも、これはできたばかりの会社なんですが、このホテル豊田キャッスルの代表取締役社長におさまったのは、佐藤さんという前豊田市長、そしてこの人は、市長になる前はトヨタ自工の社員であった、こういう関係なんですよ。そして、先ほどおっしゃった愛知県知事が承認をした九月二十五日、それよりも二カ月以上前に、もうすでにこの土地にホテルをつくるんだということをその佐藤何がしという人は新聞記者会見で発表している。もう事前にちゃんとレールが敷かれておって、そして話し合いが行われておって、その上で手続だけはかっこうつけてやった、こういうようなやり方なんですよ。  そして、経営上の問題が県議会でもいろいろ問題になって、建設部長さんは言っておられるようなんですが、たとえば、高度成長のときにやって経営的な面でも思惑外れだと先ほどちょっとおっしゃったのですが、この経営状況は、これは三億二千万円程度で売ったわけですけれども、五十四年度の事業計画では、県から六十七億、住宅金融公庫から六十五億、民間金融機関から四十八億の借り入れがちゃんと行われることになっておる。そして資金の償還なども五十四年度は、三十億円払うという予定になってちゃんとやっておるのですよ。それを三億二千万円が手に入らないとつぶれるみたいな、緊急避難だみたいなことを言って説明をしておられるようなんですね。緊急避難ということは、この土地を処分しないと住宅供給公社がもう破産してしまうんだ、まさに緊急事態なんだというような言い方をしておられるようなんですよ。だから、これは全く理由にならない理由でもって処分をされたと言わざるを得ぬのですよ。その辺は自治省としてはどう思ってみえるのでしょう。
  60. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 いろいろな経緯はただいま審議官から申し上げたとおりでございまして、私どももこの住宅供給公社が非常に見通しを誤ったといった意味では適切でなかったと思っております。県が一〇〇%出資しておる公社でございますから、私ども自治省財政当局といたしましても、その点については大変関心も持ち、調査もしたわけでございます。しかし何分、個々具体な問題をすべて私どもが所管しておるわけではございませんので、いろいろな経緯というものは、すべて県なり建設省を通じて私どもが承知しておることを申し上げておるわけでございます。したがって、現地も見ておりませんが、図面その他いろいろ研究したことは事実でございます。しかし、私どもが承知しておるのはいま申し上げたようなことでございまして、その意味においては私どもは、県その他公社等の処分というものは十分理解もし、了解もしておる次第でございます。それ以上の関連した事項につきましては、地方公社法の所管省から細かい点をお聞きいただければ幸いに存じます。
  61. 安藤巖

    安藤委員 こういう住宅供給公社が公共団体あるいは公の施設をつくるための——まあ公共団体になろうかと思うのですが、それ以外の民間の団体、本件のようなホテルも含まれるわけですけれども、そういうような事例が今回以外にあるのかないのかという点については、建設省の方がよくおわかりだと思うのですが、どうでしょうか。
  62. 浜典夫

    ○浜説明員 お答えいたします。  端的な御質問のところだけ先にお答え申し上げますと、先ほど財政局長からも御答弁がございましたように、地方住宅供給公社がいろいろな事業をやっている中で、一種の見通しの誤り、事情の変更等で、当初事業用地として取得しながら最終的にはその用に供せ得なくなったということは間間あることでございまして、いいことではございませんけれども、特に本例のごとくオイルショック前後をはさんだ時期などには実は全国的に多発したわけでございます。そこで、一般的にもございますが、特にこういう時期にはさらにそれがふえてまいりまして、私どももそれをなるたけ有効かつ適格に処分するように、あるいは有効に活用するように、各公社に指示をしておるところでございまして、有効な活用の仕方としては、たとえば他の公共施設の用地あるいは県営住宅になら使えるかもしれないとかそういうものもございますし、あるいは、その他公園にするとかいうようなこともございますし、いろいろございます。  そこで、いまの御質問でございますけれども、私どもちょっと全部調べ尽くせないのでございますが、一般的な情報その他で大体の感触を申し上げますと、幾つかのパターンに分けられますが、事業用地の余りみたいないわゆるへた地と言っている部分がございますね、そういうものはわりあいに濶達に処分しておるわけでございまして、これは住宅用地にならないわけでございます。これは民間に払い下げている例もあろうかと思います。それから、団地そのものの計画を計画がえしなければならないといったような場合は、ほとんどが県立養護学校の敷地になったとかそういったたぐいの公共的施設になったのが多くございます。それから、これはよくそういう変動の時期でなくてもあるのでございますが、地方住宅供給公社の団地計画に県の道路公社の道路がうまく乗ってきたという場合に、初めにその用地まで住宅供給公社が買ってしまった、その場合、今度道路公社に売らなければなりません。そういうような処分の場合には、相手の公共団体なり公共主体に渡す。それから一時的な利用がございます。たとえば最終的にはあと二、三年たてば住宅用地に使えるが、いまは当面無理である、需要がない、そういう場合には、わりあいにプライベートな私的企業などに一時使用、たとえば駐車場に御利用いただくとかあるいは仮設事務所にお使いいただくとかいう例もございます。それから、珍しい例でございますけれども、ごく具体の話として、バスの待機所に使わしてくれないかとかそういった非常に小さなものでございますけれども、私企業に使わせた例もございます。  事実関係のごく個々の分だけをお答え申し上げました。
  63. 安藤巖

    安藤委員 いま建設省の方からお答えいただいたように、住宅の用地として取得した土地をまとめて全部民間に払い下げた、売り渡したという事例はないのですよ。片地とか残地、あるいは、一部住宅をつくって、その一部分をスーパー、市場などの用地として売却するということはあり得るけれども、本件は全く異例に属することなんですよ。  これは大臣、よく聞いておいてくださいよ。私がずっと行くわけにいかぬですから、電話で聞いたのですが、現実、たとえば埼玉県の住宅供給公社、分譲住宅にならないものについては公共機関に払い下げている。千葉県、土地の買収に伴う代替地などで少しかわりの土地をもらうということでは少しあるという程度、これは民間にやるかどうかということを問い合わしたのです。それから住宅を建てたその残り、先ほどの話ですが、民間に残地として処分することはある、これは神奈川。東京都は、公共用地として渡すことはあるが、民間に払い下げたことはない。それから京都、自治体に緑地として払い下げたりするが、他に代替地をもらう、民間にはもちろん払い下げていない。大阪、オイルショック以降に休止した土地はあったが、保育所などの公益施設に渡す、こう言っておるんです。それから兵庫、住宅用地という前提で土地を買っているため、民間に払い下げるなどということはない、こうはっきりなっておるんですよ。そうなると、いよいよ本件の、愛知の住宅供給公社が住宅用地として手に入れて、そして整地までした土地を、ホテル豊田キャッスルにそっくり全部売り渡すということは全く前代未聞のことなんですよ。しかも、先ほど自治省の方では、これは住宅供給公社法の業務以外のことをやったということまで認めておる、しかもそれを知事さんが了承しておる、これはもうとんでもないことだと思うのですね。  そこで、こういうように民間に売り渡す場合があったとしても、これは前代未聞のことなんですが、公社の財産ですが、先ほど言いましたように、これは県の出資で全部できた特殊法人ですから、この財産の処分については自治法の二百三十八条の五あるいは二百三十七条二項の規定で、条例または議会によるべきだ、こういうふうに考えるべきだと思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  64. 花岡圭三

    ○花岡(圭)政府委員 聞くところによりますと、五十年ないし五十一年ごろの話と思いますが、住宅供給公社も、住宅用地に適しなくなっておるから豊田市の方で公共用の施設に使ってもらえないだろうかというふうな申し入れをしたようでございます。しかし結局それも、豊田市の方で要らないというふうなことでもあったので、最終的には建設省と御相談の上、こういった措置をとったというふうに私ども聞いております。  先ほど質問の自治法の関係でございますが、これはこの公社は建設大臣の認可を受けて設立した法人でございますので、法令に違背しない限り、自己の判断によってそういった処分を行うべきものでございまして、特に自治法の規定の適用はございません。
  65. 安藤巖

    安藤委員 そうなりますと、こういう全く前代未聞のことが勝手次第にやられるということになってしまうのですね。  いま豊田市の方からも要らないという話があったというのですが、これは昨年の七月十一日に、豊田市の柴田助役と先ほど言いました前市長が、現在の西山豊田市長の具申書を持って公社へ払い下げの陳情に行ったということになっておるんですね。ところが、実は私ども共産党の市議会議員が公社に問い合わしたところ、この七月十一日以前にも佐藤前市長が、ホテル豊田キャッスルの代表取締役になった人ですが、公社に払い下げの申請をしたけれども、公社は、民間には払い下げないということで一応断っている。そこで今度は、先ほど言いましたように豊田市長の具申書を添えて行った。そうしたらとんとんと事が運んだ、こういうようなかっこうになっておるんですが、そういう事実は建設省は御承知ですか。
  66. 浜典夫

    ○浜説明員 お答えいたします。  事実関係の方を少し詳しく御説明しなければならないと思うのでございますが、実はこの土地は、オイルショック前後を通じて各公社が、先行き土地取得難をおもんぱかって多少積極的に土地を取得したものが、その後の住宅需給の緩和に伴いまして使えなくなったという適例でございまして、私どももこれを有効に活用し、かつ公社の財政にとってダメージがないようにということを県公社及び県当局にもお願いしたわけでございます。  多少繰り返しになりますけれども、先ほどの先生の御質問にもうちょっと正確に申し上げておいた方がいいことがございますので説明いたしますと、実はこれは高層の賃貸住宅を計画したわけでございます。ところが、その後のあの地方での賃貸需要が非常に緩和いたしまして、戸建ての分譲需要はあるものの賃貸需要というものはほとんどなくなってきて、公営住宅の空き家の発生状況であるとか、公社住宅の応募状況とかを見ますと、賃貸は非常にルースになってきたということがはっきりいたしてまいりました。そこでまず第一に、分譲住宅の建設を検討してもらったわけであります。ところが地形上、道路からきわめて低くなっているために、高層住宅であれば、建ち上がり十一階の計画をしておりましたが、これならば形がつくのでありますが、戸建てになりますと、道路から見おろせるような非常な不適地であるので、戸建て住宅としては不適であるということ。それから、地元の他の公共施設への転用等も検討してもらったわけでありますけれども、適格な例がない。ところが一方、最終的には市長さんの副申書という形をとりましたけれども、人口の動きから見てホテルが非常に不足しているので、地元の市としてもホテルを建ててほしい、そのためには、ここにたまたまその土地があるならば、もちろん適格な評価額でいいから譲渡してもらえないかという話がまとまった、こういうわけでございます。  私どもとしては、余りほめられた事案じゃないわけで、初めから最終的に住宅の建てられる用地を取得するのが一番いいわけでございますけれども、見込み違いが生じた後においては、地元の実情だとかそういう事情にうまくマッチいたしまして、しかるべき処分ができた、まあ幸せな例の一つかと思っておるわけでございまして、先生おっしゃいましたような、初めからホテルのための土地を県公社が、独自の資金なりあるいは住宅金融公庫の資金を借りて買うとかというようなことであれば、これは公社法上二十一条の違反にもなりますし、罰則の適用もございますが、一種の撤退作戦みたいなものをやったわけでございまして、その例として、これはそういう地元での合意のやりとり等を踏まえまして、適格な処分だというふうに考えております。
  67. 安藤巖

    安藤委員 時間がなくなってきまして、まだほかのことをお尋ねしたいので、残念ながら少し結論を急ぎますけれども、豊田市の方から具申書が出されたというような関係について先ほど私が言ったのですが、これは新三河タイムズという地元の新聞なんですが、ここで公社の増田課長それから寺井理事長等々に一問一答をやって、それが全部そのまま載っているのです。それによると、増田という用地課長さんは、本件の土地、下林の用地が住宅地として不適になったというよりは、豊田地区全体の企業がホテルを必要としているとの判断からだ、こうなっているのです。そして寺井理事長は、先ほども言いました経過の中に入ってくるのですが、公社の所有地は公共性のある事業に限って払い下げができる、豊田市から先ほど言いましたように、ホテルが必要だという具申書があったからとにかく払い下げることにした、こういうことなんですよ、経過は。愛知では、すべての道路は豊田に通じておるというふうに言われておるぐらいになっておるのですよ。今度は住宅地まで豊田関連のホテルに取ってしまう。これはどえらいことです。  そして、しかもいま言いましたように、建設省の方からそういう話がありましたけれども、私が具体的にずっと調べた事実からしましても、住宅用地として取得した土地をまるごと供給公社が民間団体に売り渡した、払い下げたなんということは全く前代未聞なんです。先ほど地方公共団体の普通財産と同じように扱えと言いましたけれども、一歩下がっても、地方自治法の二百四十五条以下、特に二百四十六条の二の関係でいくと、これは自治省の方としてもきちっと一遍調査なさっていただきたいと思うのです。そして、その辺のところはいかがなものか、そんなものは取りやめるべきじゃないかというところまでいくべきだと思います。どうですか大臣、にやにや笑っておられないで、前代未聞のことをやっている、それを知事さんが承認してしまっている。  先ほど住宅の関係で、余り需要がないみたいなことを言われましたけれども、ごく最近、ことしの四月一日に入居を開始したのですが、豊田市内にナガレダというというところがあるのです。市役所から四キロです。トヨタの元町工場という大きな工場ができたのですが、その近くです。家賃二万八千円、入居希望者二・六八倍、こういう状態なんです。こういうところからすれば、住宅の需要が少ないということは言えた話ではない。にもかかわらず、こういう処分をしてしまっている。これはどうしても自治省の方からきちっとおきゅうを据えてもらわなければいかぬですよ。大臣、どうですか。
  68. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 先行投資の必要なこともあるわけです。ただそういった場合に、見込みが外れて当初の目的どおりにはなかなかうまくいかぬ。これはよくないことはもう初めから決まっておることでございます。しかしさればといって、財務基盤が大変なマイナスを受けるといったことになってもぐあいが悪い。ならばその際に、本来公社法等で定められておる目的とは違って、いわば一種の不用財産とでもいいますか、それの整理をしなければならぬといった場合も起きるわけでございますので、そういった処置をすべていかぬというわけにもいかないのじゃないか。もちろん、当初の目的どおりきらんとやることができるように、当初のもくろみそのものを間違いないようにきちんとやらなければならぬことは当然のことであろうと思います。  具体的ないまの御質疑の点は、私もつまびらかにはしておりませんが、聞くところによると、当初は高層の住宅を建てる予定であった。それであれば問題の土地に建てられるのだけれども、ところがその需要がなくなって、戸建てのものにしなければならない。そうすると、国道から大変下に下がっておってぐあいが悪いといったような事情があったようでございます。そこで、何かホテルの需要が多いのだということで、豊田市からもそういう要望があり、市の具申等もあったので、公社としては、当初の目的には反するけれども、このまま持っておって金利負担その他で財務基盤にマイナスになるというのではぐあいが悪いということで処分したのでしょうから、いいことではないけれども、それなりに容認してしかるべきことではなかろうかと私は思います。  ただ問題は、そういった際の払い下げの価格が果たして適切であったのかどうかという点だけは、きちんとやらなければなるまいと私は考えておるわけでございます。値段等についても聞いてみましたけれども、そう特別にその間に云々せられるようなことはない、きちんとした評価等もしてやっているのだということでございまするので、いいことではないが、この際はやむを得ない処置ではなかったか、かように現段階では考えておるわけでございます。
  69. 安藤巖

    安藤委員 いまおっしゃった中に欠落しているのが、何度か私が強調しましたように、こういう地方住宅供給公社が民間に払い下げたことはいまだかつてないのですよ。いろいろな問題でお尋ねしても、そういうことはかつて前例がないとかいつもおっしゃるのですが、全く前代未聞のことをやっているのですよ。そして、県へ譲渡して県営住宅を建てるということになれば、たとえば家賃対策補助制度というのがあって、ことし五十五年度からちゃんと補助が出る、二分の一あるいは三分の二国が補助するという制度もあるし、あるいは、県営住宅の建築費に対する国の補助もあるのですね。こういうことにすれば、家賃を低くして貸すというようなことだってできるわけです。問題は、どうしてそういうことをやらないでホテル豊田キャッスルに渡したかということなんですよ、前代未聞のことまでやって。だからこれは大きな問題だと思うのですよ。  そうなると、いままでそういうことをやってなかった、それがあちこちの住宅供給公社がみんなやることになるのですよ。民間にそっくりそのまま、値段さえちょっと何かかっこうがつけばいいだろうということでやってしまう。そうなったら結局、勤労県民の住宅を供給するために住宅供給公社法をつくった趣旨が全くゼロになってしまう、そういう大きな問題をこれは含んでいるのですよ。そういうことも踏まえて考えていただきたいのですよ。もう一遍大臣、どうですか。
  70. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 もちろん、そういうことを踏まえてお答えしているのです。先ほど来こんなことを認めておったら何をやってもいいじゃないかということになるという御議論ですが、それはちょっと短絡しているのじゃないか。そうじゃないのです。やはりできれば目的どおりやらなければならぬのはあたりまえですし、できなければ処分しなければならぬでしょう。その処分する際にも、できればそれは公的なものに需要があるのならそれにやればいいのじゃないですか。しかしながら、それもないということならば、いつまでも抱えるわけにもいかぬじゃないか。ということになれば、こういった市長等の具申もあり要望もあれば、それに払い下げをしても、いいことではなくてもやむを得ないのではないのか、私はそう思うのです。
  71. 安藤巖

    安藤委員 やってしまった後だからやむを得ないというふうに言っておられるとしか思えないのですが、先ほど言いましたように、一つの例として県営住宅を建てるという方向でこの土地を利用するということは考えなかったのか、そういうようなことも含めて一遍、調査をしていただきたいと思うのですよ、先ほど言いましたように地方自治法に監督権限がちゃんとあるのですから。これは知事が了承しているのです。だからそういうようなことをしないと、大臣は短絡していると言いましたけれども、前代未聞のことをここで突破口を開いてしまって、民間の会社にそっくりそのまま土地を売ってしまうということになってくると、ほかのところだって、あそこで一つそういう前例があった、じゃあうちもいいじゃないかということになっていくと言うのですよ。それが私が危惧するような、何でもやってもいいじゃないかというところまでつながっていくのじゃないか、そういうことを言っているわけですから一遍、事情を聞いてもらいたいと思うのです。そういうような方向も検討したのかということですね。そういう点、どうなんですか。
  72. 浜典夫

    ○浜説明員 検討の中身には、県営住宅の転用その他すべてが入っているようでございますが、先ほど需要がないと言いますのも、適格な価格での賃貸需要がないということで、先ほどの話だと二万数千円でございましたが、当該地を賃貸住宅にしますと、現在のコストであれば五万九千円くらいになるという試算が当時出てまいりまして、これですと、公社の場合も低金利の資金を使いますが、公営住宅の二分の一の補助金を入れても適格なものにはならない、家賃が高くなる、空き家が生ずるのが落ちじゃないか、家賃が高くてもいいということならば地形的にも建つわけでございますけれども。そういうことからあきらめたというふうに県は言っております。  しかし、こういう検討を含めて、今後このような民間への例外的な払い下げが一般化したり野方図になるかという懸念でございますが、地方住宅供給公社の監督権は、一義的には設置団体である知事さんにございます。知事さんとともに、さらにそこを離れて、機能しない場合には建設大臣に監督権がございまして、その他の立入調査権なり何なりがございます。したがいまして、今後これらの運用が乱に流れないようにするためには現在の仕組みで、自治省さんの方の御指導もいただきたいと存じますが、いまの地方住宅供給公社法の施行の対象の中ですでにあると建設省は考えておりますし、現にこの本件を含めまして具体の処置につきましては、きわめて例外的でどうしたらいいんだろうかといったたぐいの問題は、公社から県等を経由して一件審査的に照会がございますので、御心配のような、これは確かに相当例外的な事象だと思いますが、乱に流れるおそれはないと考えております。
  73. 安藤巖

    安藤委員 その点は、建設省の方もそれから自治省の方も、こういうような例外的な措置はされないように、そのためにはここのところできちっとやる必要が本当はあるのですよ。そのことを強く要望しておきます。  時間が来ましたのでもう一つだけ、これは簡単に済みますので……。  公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律というのがございます。これが時限立法になっておりまして、来年の三月三十一日でしたかで失効するわけですね。この特別措置に関する法律によって、地方公共団体が実施する公害防止対策事業で公害防止計画に基づいて行う公共下水道及び流域下水道の設置あるいは改築事業に対する地方公共団体が必要とする財源に充てるために起債をしているわけですね。その元利償還に要する経費がこの法律によって地方交付税算定の需要額に算入されてきておるわけなんです。そしてこれは、地方交付税法の附則の十一条で手当てがされているわけですね。ところが、先ほど言いましたように、昭和五十六年三月三十一日で期限が切れるということになりますと、自動的にこの交付税の措置もなくなるのではないかと思います。そこで、これは公害防止対策に対して国の方も一層努力していただく必要があるし、あるいは、県や市等もこれからも努力していく必要がありますので、引き続いてこれは延長していただく必要があろうかと思うのですが、その点はいかがか。どうですか。
  74. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 いまお話のございましたいわゆる公害財特法は昭和五十六年三月までの時限立法でございます。いろいろと御指摘がございましたが、この公害防止事業につきましては、種類も非常に各般にわたっておりますし、事業も膨大でございます。必ずしも公害防止計画の期間内に全事業が完了できないという地域が出てくることも予想されますので、地方団体の行っております公害防止事業の進捗状況とか関係省庁の意向等も踏まえながら、この適用期間の延長については検討する必要があると私どもとしては考えております。状況をよく見定めて対応いたしたいと思っております。
  75. 安藤巖

    安藤委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  76. 塩谷一夫

    塩谷委員長 田島衞君。
  77. 田島衞

    田島委員 私は与えられた時間の中で、交付税制度の現状とその見直しについて、それから、交付税制度とそれに伴う地方財政調整措置の当否について、大きくこの二つに分けて御質問を申し上げてみたい、こういうふうに思うわけであります。  まず最初に、交付税制度の現状とその見直しについてでありますけれども、いま私が改めて申し上げるまでもなく、まさにここ数年、引き続いて地方交付税総額と地方自治体の財源不足額との差は著しい開きが続いておる。こういう現象に対しては法の六条の三は、制度の見直しかしからずんば税率を上げるようにすべきだ、こう規定しておるわけであります。もちろん、それに対する救済方法として、交付税特別会計からの借り入れあるいは基準財政需要額の起債振りかえ等の措置を講じておることは知っておりますけれども、それはあくまでも正規のやり方ではない、言うならば便宜的、一時的手法だと言わざるを得ないと思うのです。そこで、そういう形がいつまでも続けられることは、これはだれが考えても望ましいことではない。とすれば、その法の命ずるところに従って、税率を上げるかしからずんば違う何らかの制度の改正を考えるかしなければいけないのじゃないかと思うのです。いままでの議論の中でもそれに対しては、国の財政事情という事情の説明もありましたけれども、財政事情がどのようにあろうとも、そのことによって法律が守られなくてよろしいという理由は成り立たない。したがって、どうしても守れないものならば法そのものを改正するか、何とかがんばって守っていくかしなければいけないと思うのです。  そこで、まず一番単純な問題として、ここでどうこうじゃありませんけれども、将来に向かって、何とかその税率を上げていくということについてお考えがあるかどうか、その可能性についてまずお聞かせをいただきたいと思います。
  78. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 いまお示しのございましたように、五十年度以来大幅な財源不足が生じておるわけでございまして、そのために地方交付税法六条の三の第二項の規定があるわけでございまして、私どもとしては現状は、まさにそういった六条の三の二項に当たる状況だと考えておるわけでございます。  そこで、交付税率の引き上げ等を含めましていろいろと検討も加え、大蔵当局とも折衝してきたわけでございますが、まさにお示しのございましたような国、地方を通ずる財政の収支不均衡の現状のもとにおいては、容易には交付税率の引き上げ等が行われなかった。そこで、従来からのパターンでございますが、交付税特別会計における借り入れといわゆる財源対策債の発行という形で穴埋めをしておりますが、私どもとしては、これも六条の三の第二項にいう一つの措置であると考えております。六条の三の二項の趣旨は、これはいろいろな方法が考えられる、方法としては幅の広い選択を許しておるわけでございまして、いまのような状況のもとではああいった方式もやむを得ない、こういった意味では一つの方法であると考えております。ただ、おっしゃるように、本当にこのままでいいのかということになりますと、これは抜本的な改正ではないと私どもも認識しておるわけでございまして、できるだけ早くこういった措置で済ますという状況から離れていかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。  そこで、それはそうとして、法にちゃんと規定がある以上はそれを守るか守らぬかどっちなんだ、こういう御質問でございますが、そういった意味では、いまも措置はとっておるが十分ではない、早く十分な抜本措置がとられるような状況に持っていきたいというふうに考えております。そのためにはやはり基本的には、わが国の経済が安定成長という形で基盤が固まっていくということと、もう一つは私どもといたしましては、いまの国、地方を通ずる行財政全般を洗い直して、やはり必要な整理合理化ということを通じて財政の健全化を立て直しますとともに、一体今後わが国の行くべき道を考えながら、どういった形での行政水準というものを維持していったらいいのか、それに対応して国民負担というものはどう考えていったらいいのか、そこらの全般の姿を見ながら、この負担と受益の関係というものを考えながら、私どもは対策考えていかなければならぬ。そういう中で、結果的には、税率の引き上げがいいのか、あるいはもっとほかの交付税対象税目がふえてきた方がいいのか、いろいろな要素を考えていかなければならないと思っております。ただ、現状において考えますと、いますぐ直ちに現状のままで交付税率が上げられる状況にあるかということになりますと、いささか私どもとしては、この近々の間においては簡単にはいくまいといったような感じを持っておる次第でございます。
  79. 田島衞

    田島委員 確かにお答えの趣旨はよくわかるのですね。だれがやってもないそでは振れない。確かにそうしなければならぬと思っても、そうすべき財源がなければ、そういう財政事情になければできないことはよくわかるのですけれども、しかし、法は厳としてあるわけですね。どんなに金がないからといって、では、お金がないからどろぼうはつかまえないか、何をしてもいいかというと、そうはいかぬ。やはりどちらを優先すべきかといったら、法治国家ですから、法を優先すべきだと思うのですね。もちろん、その法の解釈の中に、先ほど来お互いに取り上げております便宜的な借入措置あるいは起債による振りかえ措置というものもあるけれども、それはどう考えても法の精神からいっても正しいものではないと思うのですね。後ほどまた根本的に、この地方交付税法そのものの法の精神とは何だということについて、意見を交換してみたいと思うのですけれども、一体特別会計からの借り入れだとか起債による振りかえだとか、そんなことをしてまでも交付しなければいけない性格のものなのか、これはちょっと聞き方によっては誤解がありますけれども、本来交付税制度そのものが、国が地方公共団体、地方自治体に対してそこまでめんどうを見るためにあるものなのかどうなのか、あとでまたじっくりお互いに検討してみたいと思うのですけれども……。  ちょっと途中で、地方交付税法の第一条の法の目的の中で要点を引っ張り出してみたのですが、一緒に考えてみていただきたいのですけれども、法第一条の目的の中に、「自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、」と、こうあるのですね。だから、地方公共団体が自主的にこれこれのことをする、その権能を損なわずにやれということがまず一つあるわけです。これは、国が何でもかんでもやってやるんだったら、自主的もヘチマもないと思うのですね。そこがなかなかむずかしいことで、下手に誤解されると、もっとほっぽり出してやれということになると、地方公共団体から大変なおしかりを受けるだろうと思いますけれども、どっちこっちの立場にかかわらず、このことはやはり慎重に考えていかなければならぬと思うのですが、「自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、」ということがまず一つある。  それと、「その財源の均衡化を図り、」これは国と地方ではないのですよ、地方公共団体における財源の均衡化を図る、こうなっているのですね。だから、これも後でまた意見を交換してみたいと思いますけれども、いまみたいに道府県段階で東京都がたった一つ交付団体である、あとは全部交付団体であるというような形の中で、果たしてこの財源の均衡化と言えるかどうかの問題もあるし、それから、「交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障する」とあるのですね。さらに、「地方自治の本旨の実現」をし、「地方団体の独立性を強化する」、こういうのですね。足りなかったら交付税でやる、その交付税で不足したら借金までしてこうしろああしろということが、果たしてその地方団体の独立性の強化につながるかどうか、まことに疑問だと思うわけであります。  なぜそんなことを途中で言い出したかというと、そういうふうに考えてみると、一番手軽な方法は、税率をたとえ一%ずつでもじわじわ上げて、こうやって少しずつ前進をしているんだという努力のあかしとするということもあるでしょうけれども、それではしょせん、いまの交付税制度の中での抜本的なよみがえりはあり得ないのではないかと思うのです。交付税のもとになっておるのは国税三税ですから、この国税三税というものを計算の基礎にして三二%が何%になろうと、それを乗じたものによって交付税総額が出される形である以上は、なかなか今後の交付税制度が本当に地方団体にとっても望ましいものとなるのにはむずかしいのではないか。かつての日の高度成長のころのように、いきなり経済がどんどんウナギ登りに成長すればともかく、そういうことは今後ちょっと考えられることでないとするならばなおさらに、それに頼った交付税制度のあり方というのはもう根本的に見直されるべきではなかろうか、単に税率をちっとやそっと上げたからといって、それでいいというようなものではないのではなかろうかと思いますが、その辺の根幹的なことについて、できれば大臣からもちょっと御意見を承りたいと思うわけであります。いますぐやれということではありません、一つの志向する方向として。
  80. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 いまやっている処置は、確かにこれは根本的な解決のものでありません。五十三年の改正を政府は、これはやはり制度の一つである、こう理解をしておるようでございますが、これはあくまでもやはり暫定的な処置でございます。基本的には私は、交付税率の引き上げになるのか、あるいはまた、交付税の基礎となる新しい税目を選んでいくのか、こういった根本的な改革をいつの日にか断行しなければならない、かように思います。  それで、いま交付税法の第一条の点のいろいろの目的をお挙げになりましたが、この制度は本来私どもは、やはり地方の一般財源だと心得ているわけでございます。ひもつきの財源ではない。ところが今日、こういう制度がなぜ必要かというならば、もともと地方自治という立場に立てば、自分のところの行政需要というものは自分のところの区域の中での税によって賄うのがたてまえであろう。しかしながら、今日の経済の発展段階がみな違うわけです。しかも片方、諸外国と違いまして日本の地方自治体の現状というのは、住民の需要というのは非常に均一化せられて、どこの田舎であろうとどこの都会であろうとみんな需要が全く同じになっておりますから、そうなってくると、経済力のない団体ではそれに対応ができない。そこでこういう交付税制度によって、足りない財源を保障すると同時に、やはり財源の調整といいますか、需要がもう均一化しておりますから、それにできるだけ対応できるように交付税という制度で、それらの団体でお金の足りないところには配分をしていくということをやらざるを得ないということで、交付税制度はできておるわけです。  したがって、この交付税がひもつきになったら、これはどうにもならぬわけですから、やはりわれわれが一般財源として理解もし、そういう立場をずっと堅持しているわけですが、いずれにいたしましても、独立税ともう一つ交付税、この二つで何とか目的を達成していきたい、これが私どもの念願でございます。それが今日、毎年毎年のように赤字になっておるわけですけれども、ならば、それに対する対応策は基本的にはやはりやらなければならない。その前にやらなければならぬことは何かと言うならば、行財政の根本的な行政改革を初めとして、それらを踏まえながら、同時にまた、交付税制度そのものの根本的な見直し、こういうことをやっていかなければならぬ時期が必ず近く来るだろう、かように私は考えておるわけでございます。
  81. 田島衞

    田島委員 過日、大蔵大臣とも質疑を通じて意見交換したところでありますけれども、国の仕事と地方団体の仕事をそれぞれ納税額と実際の財源が配分された最終的な形とにおいてとらえてみると、これは昭和五十二年度の決算に基づくものですけれども、徴収段階では国が六三%を押さえる、そして地方は三七%である。ところが、最終的な財源の配分によるところの国と地方との仕事の分担は、国が二〇%で地方公共団体が八〇%。要するに、それだけの財源を与えているということは、それだけ地方団体が仕事をしているということを国自体も認めていることになるはずです。認めている以上は税の徴収段階では逆に、八〇%の仕事をしている地方団体に三七%しか与えないで、二〇%の仕事をしている国が六三%を押さえるということ自体に無理があるのじゃないか。  しかし、いま私が申し上げたその配分の仕方も、必ずしも正確ではありません。なぜかと言うと、国がやっておる仕事がどの部分が国の責任範囲で、どの部分からが地方団体でやった方がいい、その責任範囲であるべきだということの分け方というのは非常にむずかしいです。だから、必ずしもいまの分け方がどんぴしゃり正確だとは言いませんけれども、しかし、現実に最終的な行政を執行するための財源の配分というのは、税総額の八〇%が地方団体に与えられているということからすれば、税財源そのものを初めから取り上げておいて、交付税だ、やれ国庫支出金だ、やれ何だと言って出すよりは、もっと洗い直してみて、そんな持ってきてまた戻すなんということをせぬで、初めからこれは地方で自主的におやりなさいというような税財源の見直しというものが必要ではなかろうか。これは自治省の仕事ではなくてむしろ、大蔵の仕事だろうと思いますけれども、考え方として、できればお聞かせいただければありがたいと思います。
  82. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 おっしゃるとおりではないかと思います。ただその場合に、税の配分だけでいくかというと、先ほど言いましたように、そうするとえらく余るところと足りないところと出てきますから、傾向としてはやはり交付税というものをもう少しふやさなければどうにもならないのではないかな、こう私自身は考えているのです。いまは交付税が不足していること、これは事実でございます。ことにまた最近、府県で言えば東京都だけしか不交付団体がない、同時にまた、市町村等を見ましても、だんだん交付団体がふえてきているということは、税そのものも少し国に偏り過ぎているのではないのかな、もう少し地方に税源を配分すべきではなかろうか、私自身はそういうふうに考えております。
  83. 田島衞

    田島委員 いまの大臣のお話のように、市町村段階でも交付団体がふえている傾向もあるわけですし、道府県団体としても依然として東京都が唯一の不交付団体。この東京都が唯一の不交付団体であるということの中にも、東京都の立場に立ちますといろいろ問題点があるのですが、だからといって、東京が日本全国で一番税財源の豊かなところであるということだけは東京都そのものが認めざるを得ない。とすれば、その東京都が不交付団体でなくなったら、もはや国の税財政制度も交付税制度も成り立たぬ。とすれば、東京は大人になってそのことに甘んじなければならぬと思うのです。しかし、東京が甘んじるということと、制度がそのままでいいということとはまた違う。やはり道府県団体としてももう少し大都市の中で不交付団体が生まれていいのではないか。  そんなことを言いますと、東京を除く他の大都市関係の方から、よけいなことを言うなとおしかりを受けるかもしれませんけれども、本来、この交付税制度のあり方からいっても、地方団体における財源の均衡といいますか均衡化を図るということは言うならば、財源の多少豊かなところから少し協力してもらって、財源は非常に乏しいけれども、同じ日本人として同じような財政需要を抱えているところへ、お互いの扶助といいますか互助制度といいますか、そういう精神も生かしてやろうというところに交付税制度の本当にいいところがあると思うのです。交付税制度というのは、地方団体と国との関係の問題ではなくて、言うならば国が仲人役、親元みたいな形になって、長男、次男あたりの多少余裕のあるところから少し協力しなさい、そして末っ子の乏しいところへこれで何とかやってみろという、ざっくばらんに言えばだんだんそういう色彩が出てこないと、地方財政制度にしても交付税制度にしても本当に命が出てこない、いいところが出てこないのではないかと思うのです。  そういうことから考えればこの不交付団体をつくるということも、せんだっての大蔵大臣との質疑応答では何か大蔵大臣は、作為的に不交付団体をつくることにはどうも賛成できぬという御答弁がありましたけれども、私の言うのは、作為的につくれということではなくて、自然に不交付団体になるような措置をすることが必要ではないか。それが先ほど来言っておるところの、税率をいじるよりはむしろ税財源の配分を考え直すことによって不交付団体をふやす。ふやされたことによって、交付税法の性格が改めて精彩を帯びてくるといいますか、同時にまた、新しく不交付団体になったところは、それなりの誇りを持った行財政のやり方というものをやるのではなかろうか、こう思うのですが、その点についてのお考えはどうでしょうか。
  84. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 地方団体が自主性、みずからの責任で行政をやれるということが地方自治の原点だと思うわけでございますし、その意味では、その地域における地方団体の行政サービスというものは住民が負担していく、そういった受益と負担との関係がうまくいくことが望ましいわけでございまして、基本的にはおっしゃいますように、地方の税源が強化され、まさに独立の財源で自主的に運営することが望ましいと私は思うわけでございます。しかし、たびたび大臣からも申し上げておりますように、いまの行政需要の量、特にまた、いろいろなナショナルミニマムとかといったようなこと等で行政の均質化ということが求められておる、そういった行政の量というものがどこでもふえてきておるということと、それから税源の偏在といったこと等を考えてまいりますと、やはり財源調整的な意味交付税制度ということを度外視するわけにはいかないし、この役割りというのはやはり重要なものであるということを認めざるを得ないわけでございます。  ただ、おっしゃいますように、基本は税であるとは思いますが、一体今後、そこらの税と交付税の配分というのはどういう形がいいのかということになりますと、なかなかむずかしい問題でございます。税源というものが強化されれば当然に、不交付団体がふえるという方向になるだろうと思います。それは好ましいことだと思うのでございますが、そこのそうなってきた場合の今度は、行政の需要に対します財源の衡平な配分、そこらで一つ問題が出てくるのだろうと思うのでございます。不交付団体がどれぐらいならいいのかといったような基準は、そういった意味ではなかなか求められないと思うのでございますけれども、ただ全般的に、地方の独自の税源をふやし、また交付税というものもある程度財源調整ができ、一般的ないわば財源の貧弱団体にも財源付与ができるといったような形になることが望ましいし、そういうふうにも持っていくべきだと思っております。  ただ、先ほど指摘がございましたが、いまのような国と地方との事務配分の中で議論していく場合には、なかなかそこの解決というのもできにくい。新しい税の負担というものを求めることができれば、あるいは解決しやすい面もあるのかしれませんが、そこらはいろいろ国民との間でなおコンセンサスを得る必要がある。しかしそうでない場合に、国の方からただ税源だけを移譲させるということになった場合は、いまの事務配分のままでいいのかどうかといったいろいろな問題がございます。そうなってくると、きわめて広範な問題になってくるわけでございまして、先ほどもお答え申し上げましたように、いまのような財政収支の不均衡の中では、今後のあるべき行政の水準ということと負担ということを踏まえて、根本的に考え直さなければならないと思っております。  いずれにしても、不交付団体であろうと交付団体であろうと、これは賄っておるものは住民、国民の税金でございますから、それは安易な運営ということは許されるわけではないわけでございます。そこらは、どちらがいいかということはともかくといたしまして、税源の強化ということは、事務配分等も含めまして十分検討し、見直していくべき問題だと思っております。
  85. 田島衞

    田島委員 次に、単に国がどうしたらいい、どうしなければならぬだろうということばかりじゃなくて、もう一つ交付税制度によみがえりを与えるために努力してみなければならぬ立場があり、またそれを指導する立場があると思うのですが、それは、たくさんあるところの道府県、市町村、各段階における地方公共団体、地方自治体それぞれの行財政の洗い直しといいますか、私も地方政治出身でありますから、みずから相当長い期間直接それにタッチしてきたわけでありますけれども、地方自治体の財政が不足だからというて、本当にきりきりしぼった不足なのかというと、私は疑問が多分にあるだろうと思う。足りないと言えばくれる、くれるからできるだけ足りないと言った方がよろしいという、甘えた考え方だってなきにしもあらずだと思うのです、あえて憎まれ口をききますけれども。  そこで国の方も、いわゆる便宜的措置としては税率を少しずつ上げていくということもあるでしょうし、抜本的な方法としては税財源の配分を考え直すということ、交付税制度そのものの見直しというものを考えてみるというようなことも努力しなければならぬ反面に、地方団体そのものも、交付税制度というものの命を奪わないためには、それなりの自粛が必要だろうと思うのです。そして基準財政需要額の圧縮、同時にまた反対に、収入額の捕捉、確保といいますか、それによって不足額を減少していく、こういう協力の姿勢を、できるできないはともかくとして、やはり各地方団体に対して、いままでもやっておることでしょうけれども、地方交付税制度の現状に対してその責任は国ばかりではないんだ、お互いに一緒になって立て直さなければいかぬのだというような意識の再開発というか、そういうことについての努力をしてみる必要があるのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  86. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 先ほども申し上げましたが、地方団体が自主性を持ってみずからの責任で行政をやっていくということにおいては、住民のニーズに応じていろいろな仕事をやらなければならぬということはわかるわけでございますけれども、それに対応する財源ということ等も考えながら進めていかなければならないので、ただむやみに仕事を広げるということだけではいけない。特に、この長い間の高度成長期にかなり行政水準も高まってきておりますが、それはそれでいいといたしましても、反面、そういった点から行政全体としての、行政の責任の分野という点から見直す必要もある。今日これほど厳しい財政状況になっております場合は、そういった点も必要だと思うのでございます。  そういった中においては、やはりただいま御指摘のございましたように、地方団体みずから、最小の経費で最大の効果を上げるといった観点に立ちまして、体質改善のために内部的な改善を含めて大いに努力をすべきことであって、いわば企業も苦しい中で体質改善に努めた、地方公共団体においてもそういう立場をとるべきだ、こう言われておりますが、基本的にやはりそうだと思うのでございまして、いろいろな過去の経緯はございましょうけれども、この際、全般的に行政の見直しを行いながらみずから、内部的な努力、行政の簡素合理化等々いろいろございますが、そういった点には大いに努力をしていくべきだというふうに考えております。
  87. 田島衞

    田島委員 国、地方を問わず行政の中には、そのときの財政事情に応じて伸縮していいものと、どんなことがあってもやらなければならぬ、たとえば借金してでもやらなければならぬこととがあると思うのですよ。その行政のニーズの中の二つの分け方、これをやはり今後、何らかの形で明確にしていって、それを一つの、国みずからもそうですけれども、地方団体の指針として与える。こういうことについては、これはもう国もめんどう見るし、どんなことがあってもがんばっておやりなさい、こういう種類のことについては、お互い国も地方も多少自粛して、少しはがまんをしようじゃないかということの分け方ですね。  それからもう一つ、前にも私この委員会で申し上げたことがあるのですけれども、国、地方を問わず行政の一番根幹的な命題というのは、やはり最小の経費で最大の効果を上げることだと思うのです。それはだれもわかるんだけれども、じゃあその最小の経費で最大の効果を上げているのかどうかということをはかるための手法といいますか、この方法は何もないわけなんですね、人間の感覚だけ。これはもう国でもそうだろうと思うのですが、地方団体でも、はかり方があって、これはこれだけの財源を投ずる資格がない、もったいない、それだけの行政効果はないじゃないか、じゃあやめようとか、これはもっとこっちへ予算を重点的にふやしてやった方がよろしいとかいう、その行政効果を測定する方法がないということは、どれほど国、地方を問わず行財政にむだを悠悠と生ましているかということになるんじゃないかと思うのです。何らかこれに対する測定の基準というものができて、いわゆる物差し、はかりができたら、いやだろうとおうだろうと相当、国も地方もその財政事情に一つの明かりを見出すようになるんじゃないかと思うのですけれども、そういう点で、どうでしょうか、行政効果測定のための何か特別なエリートを置いて勉強させて、物差しをつくる考えはないですか。
  88. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 私どもも地方全体の財政状況等につきましては、たとえば公債費比率の面から見てみたり、経常収支比率といったような手法等で診断をしたりしておりますが、いまおっしゃいますように、行政当局来ておりませんけれども、行政全般についてはかねてから、いろいろ公務能率といったような点で研究はしておるわけでございますが、たとえばいろいろな各施設についてはある程度のものが測定される場合もございますが、教育といったような目に見えないものになりますと、なかなかそういった測定単位といったような正確なものはでき得ないと思うのでございます。しかしながら世の中全体として、いわゆるチープガバメントということも言われましたり、最小の経費で最大の効果を上げると言われたりしておる、そういった基本的な考え方においては、世の中でコンセンサスを得ておるような一つの流れがあると思うのでございます。そういったものについてどういった手法でいったらいいか。これは公務員部なら公務能率という点でやっておりましたり、行政局全体としてはいろいろ検討もしておるわけでありますが、おっしゃるように、明確な意味での結論を得た状況にあるとは私も考えておりません。  しかし、何らかそういった面で効果を測定しながら、反省もしながら、よりいい方向を見出していくという努力は進めなければならぬと思います。そう思っておりながら、なかなかむずかしい点がございます。先般もお答え申し上げましたが、たとえば予算執行上の工夫においても、原点に立ち返ってのゼロベース予算ということが言われたり、あるいは、一回できたものは経緯があってなかなか抜け切らぬというなら、いっそサンセット方式を導入したらどうだとかいったような、そういった面での検討などはあるわけでございますが、全般的に効果の測定ということになると、なかなか分野が広く多岐にわたっている行政でございますから、むずかしい問題だと思っております。しかし、お説の趣旨はよく理解できるわけでございます。今後ともそういう努力は私どもとしても続けていかなければならぬと思っております。あるいは行政当局だったら何らかもっと別途の答えを用意しておったかもしれませんが、大変恐縮でございますが、私からはいま言った程度しかお答えできませんので、御了承願いたいと思います。
  89. 田島衞

    田島委員 そこで、もう一回地方交付税制度そのものについて振り返ってみたいと思うのですけれども、私も専門家ではありませんから、あるいは私の解釈、理解には誤りがあるかもしれませんけれども、地方交付税制度の第一条の目的の中に言われているところの、自主的に地方団体がいろいろなことをやる、その権能を損なうなということ。そしてまた、地方公共団体の財源の均衡化を図るためにやるんだ、要するに、足りないことに対して国が救済するんだとは言ってないのですね、団体の中における財源の均衡化を図るためにあるのだ。それから、交付基準の設定を通じて、つまり、交付基準を設定することは地方行政の計画的運営を保障するんだということ。そして最終的に地方自治の本旨の実現、地方団体の独立性の強化とうたって終わっておるわけです。これからすると、先ほど私が言ったように、地方交付税法の存在の意義といいますか、その制度の本当のいいところというのは、地方団体が独立性を失わない、自主性を失わないようにして、しかもなお、そこにあるところのいろいろな財政上の困る点については、国が調整してやれというようなことだと受け取っていいんじゃないかと思うのです。  そういう受け取り方をしてくればまず、交付団体と不交付団体とが、いまの道府県段階における東京都が唯一の不交付団体というようなこと自体が、どう考えてもこれは改められなければならぬ、また、改められるような税財源の配分の見直しをやらなければうそじゃないか。それを引きずり出すために途中でよけいな、地方と国との徴収の割合と、今度は実際の配分の割合等にも触れて話をしてきたわけですけれども、いろいろな点を考えてみると、それぞれに一つの是正の方角になるのはどう考えても、抜本的な税財源の配分の見直しをやって、不交付団体、つまり交付を受けないでよろしいという団体をもう少しふやしていくことが必要じゃないかと思うのです。  ところが、そういうことを考えていくと当然、そこにいままで交付されていたところはとんでもない話だということになってくるし、それから、現在交付されているところが果たしてその交付状況でいいのかどうかを検討するにも、最終的にやはりどうでも必要なものが行政効果測定の手法になってくるわけですね。だから先ほどそのことについて取り上げたわけですけれども、文字どおりだれもが納得せざるを得ないような行政効果測定のはかり、手法、測定の方法といいますかそれが生まれたら、行政改革がどうとやら、地方団体への指導がどうとやら言わぬでも、そのはかり、物差し一つ持って駆け回れば、いやでもやめなければならぬものはやめなければならぬ、また伸ばしてやらなければならぬものは伸ばしてやれるようになるはずなんです。何の抵抗もできなくなってくるし、また、どんな陳情、請願もなしにちゃんとしてやれることもしてやれるようになると思うのですけれども、いまのようにはかりなくしては、指導するといったって小言を言うといったって、そういうことはやってだめですよといっても、非常に困るんじゃないかと思うのです。  だからといって、行政効果測定の方法というのは、私もなかなかむずかしいことだと思うのです。これができれば、これは国、地方を問わず日本の国の行財政にとって大変な黎明になるだろうと思うのですけれども、それだけに自治省ひとつがんばって、一度にすばらしいものができないまでも、何かそれに近づけるための手法というものが考え出されれば、よけいな議論をしなくなるだけだって大変経済的になってくるんじゃないかな、こう思うわけですけれども、もう一回その決意のほどを聞かしてみてください。
  90. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 先ほどるる申し上げたわけでございますが、いまのところ、明確な効果を測定するような単位なり、それに対応する数値というものは持ち合わせていないわけでございます。ただ全般的には、類似団体別にいろいろな行政水準というものを分類いたしまして、そういった団体は他の団体と比べて、うちはこういうのがいささか異なっているということ等においてみずからを見直すといったような資料等はございます。しかし、いまおっしゃいましたような基本的な意味での効果測定方法というものは、これはなかなか見出しがたいわけでございまして、これは一つには、ある単位が決まっておる場合、その範囲内ではどうすれば一番いいとかどうとかということは出てくるかもしれませんが、そういったものをどの程度行政の量としてやるかといった問題等も全部絡まってまいることになりますと、そこらの測定の仕方ということがなかなか容易じゃないと思います。  しかしながら、こういったものはすべて一定の前提を置いて指標は認めざるを得ないわけでございますから、おっしゃるように研究を進めまして、こういう前提のもとにおいてはこういうことであろうということが出てきても、それはそれなりで非常に効果的だと思っております。大変むずかしい問題だと思っておりますが、私どもはおっしゃった趣旨は十分理解できますし、できるだけそういった方向で勉強してみたい、こういうふうに考えております。
  91. 田島衞

    田島委員 今度は、先ほど冒頭に申し上げた二つ目の、交付税制度とそれに関連しての財調措置、それについて少し聞いてみたいと思うのです。  東京都が道府県における唯一の不交付団体であることは前々から言っているところだし、それについて東京都がどのような不満を持とうとも、不交付団体から外したらもはや大変な状態が考えられるわけですから、そのことは当分の間やむを得ないとしても、それに伴う国の東京都に対する——東京都と言うとあれですけれども、不交付団体に対する財政調整措置の中には、どう考えても当たらない、間違いじゃないかと思うことがいろいろあるわけです。  たとえば東京都が、いま問題になっている地方交付税と同じようにここ数年来、引き続き実質的な赤字の中に苦しんでいることは御承知のとおりなのですが、実質赤字で苦しんでいる東京都が、基準財政収入額と基準財政需要額とを比べてみたら、収入額の方が幾らか残って黒字が出たということのために不交付団体の指定を受けた。これは東京都として、あるいは日本の国全体の地方団体のために、名誉ある犠牲的精神を発揮しなければならぬかもしれません。ところが、不交付団体イコール富裕団体という扱いを受ける。富裕団体は読んで字のごとく大変金持ちの団体だ、こういうわけです。金持ちの団体が赤字でふうふう言うわけはないけれども、赤字でふうふう言いながら富裕団体だと言われ、富裕団体なるがゆえに、それ自体当然国が全額負担すべき義務教育の国庫負担分についても調整を受ける、それから道路譲与税についても調整を受ける、それからまた国の施設等に関連するところの財政措置にも調整を受ける。そういう不交付団体イコール富裕団体、金持ちだからおまえのところはこういうように削るよと言って、とんでもない方まで削っていくことは少し行き過ぎではなかろうか。  それも、一度に直せ、そんな無理なことはいまの情勢の中で言いませんけれども、少なくともできるだけ早い時期に、本当にすぐにでも直さなければいかぬのだけれども、ひとつ御了解をいただいて、徐々に直すくらいのかっこうのついた御返事をいただかないと、東京出身のわれわれはだんだんがまんがならなくなってくるわけでありますが、そこのところをちょっと聞かしていただきたいと思うわけであります。
  92. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 先ほどから申し上げましたように、やはり財源の調整ということは必要だということもございまして、東京都は何と申しても一人当たり税額で見ても全国一番でございまして、そういった意味では金持ちだ、こうつい言われがちでございます。しかしながら、いま申しましたようなことで財源調整措置はとっておって、一貫してずっと不交付団体ではございますけれども、構造的に見ていきますと、法人税収のウエートが非常に大きいために、不況期には大変苦しい財政運営に追い込まれることもございますし、また、国土の均衡ある発展を図るといったような見地から企業人口の集中がだんだん緩和される、UターンなりJターンなりいろいろなことが言われておりますが、そういった方向もございます。そういった点から、東京の全国に占めるシェアは全般的に落ちてきております。たとえば地方税の全国に占めるウエートは、昭和四十年は二〇・六%でありましたが、逐次低下をしてまいりまして、五十三年度は一七・八%といったようなことでございまして、全般的に人口のウエートも減ってきている、そういった問題もございます。  それのみによってすべてを律するわけではございませんけれども、いろいろと大都市としての問題が多いことは私どもも理解できるわけでございます。しかしながら、いまおっしゃいましたように何といっても、交付税計算上いろいろとそれ相応の基準財政需要を計算し収入を挙げてみますと、やはり不交付団体になる。そういった意味から、義務教育職員給与費国庫負担金につきましても、あるいは地方道路譲与税における財源調整措置についても、今日までずっと是正が図られてこなかったわけでございますが、五十五年度予算においては、すでに前にもお答えいたしましたが、首都における警察の任務の遂行に関します特殊事情も参酌いたしまして、金額としてはわずかではございますが、十億を十五億ということで国庫補助金の五割アップということをいたしましたし、義務教育職員給与費につきましても、五十五年度から四十三億の是正がされることになりました。また、地方道路譲与税における財源調整措置につきましても、全部撤廃ではございませんけれども一部緩和をいたしまして、五十四年度ベースで見ますと二十四億円の是正が図られたということでございまして、今日の東京都のいろいろな状況等を見ながら、私どもとしては是正を図ってきておるわけでございます。  今後どういうふうにしていくかということになりますと、私どもとしてはいま申し上げましたようないろいろな、東京都の全国に占める立場なり、今後の行財政の状況等をも的確に把握しながら、必要があれば是正措置等も含めまして、他省庁とも協議しながら努力をしてまいりたいと思っております。
  93. 田島衞

    田島委員 いま申し上げたことのほかに、これも私が言えばすぐ大臣などには御理解いただけると思いますけれども、都財政の中で地方財政全体と比較して特異な点があるのです。それを目的別の歳出の中で調べてみると、たとえば警察費とか消防費、それから清掃費、公営企業関係で交通事業費とかこういうものが、目的別歳出の中では他の地方団体の平均に比べてはるかに多いわけです。たとえば警察費のごときは、地方財政全体の平均の構成比が三・九%になっているわけです。ところが都の場合は一〇・六%を占めておる。それから清掃費は、地方財政全体の中での構成比二・七%に対して都は六・一%、大体二倍から三倍くらい多くなっておるわけです。これを性質別に見ても、不思議に大体同じような結果が出てくるわけですけれども、人件費が非常に多い。人件費が多いというのは、警察費とか清掃費とかそういうものが入っているから多くなるわけですが、特にその中でさらに、どなたでもがわかり過ぎるほどわかる警察費。ここにたとえば国会がある、総理官邸から何とか官邸いろいろある、外国の大公使館がある、そこに特別な警備が要る、これはみんな東京都がしょっているんで、特に首都警備費なんというのはないのです。東京都の警察費の中に入っている。もちろん今年度の予算の中で、そのことについては国の方でも大変理解を示していただいたわけですけれども、それは警察関係だけで、清掃費だとかあるいは公営企業関係の特に交通事業費なんかが大変大きなウエートを占めておる。しかも地方財政全体の中の平均構成比から比べるとはるかにウエートが大きくなっている。  ということは、東京という特別な大都市、東京はよく一般的に日本のキャピタルだ、首都だ、こう言われますけれども、だからといって、法的に日本の首都としての何らの措置は受けていない、法定は何もされていませんから。そう言われる名誉だけで、もっぱら背中にしょうものだけを一生懸命しょっておるような形でありまして、いま申し上げたのは一例で、東京という巨大都市、しかも日本の中心都市なるがゆえにそこに異常な流動人口が集まる、集まる人口を対象にしての行政サービスもまた考えなければならぬというようなことがあるわけなんです。  これをいまの交付税制度の中で改めて、そういう特殊性について見直した補正をやってくれという要求を出して、その要求が入れられて補正していったら、やはり東京も不交付団体でなくなっちゃうと思うのですよ。だからいまの段階で、東京が交付団体になったときの日本の国全体の地方財政制度、税財政制度といいますか交付税制度のことを考えると、そうわがままも言えぬから、せめて日本の国の中で東京都ぐらいは大人になって、兄貴になってがんばらなければしようがないのだなとは思いますものの、だからといって、東京だけが何でもかんでもがまんしてよろしい、がまんさせるのだということも当たらないと思うのですが、そこらのところ、何らか東京都に対する救済措置が考えられないかどうか。したがって、不交付団体を外せというのはもう初めからがまんします。するけれども、そのほかの財政調整措置については、できるだけ早い時期にその不利益立場を是正するようにしてはもらえませんかな、どうでしょうか。
  94. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 いろいろとお話を伺ったわけでございますが、私どもも現実に東京に住んでおりまして、東京都というこの大都市、特に特別区におけるいろいろな財政需要が他の都市に比べて特殊性があるといったことはよくわかるわけでございます。そういった意味から交付税算定上も、基準財政需要額の算定に当たりまして、普通態容補正なり投資補正なり事業費補正というようなことで、たとえば流入人口が非常に多い、そのための増加需要とか、地価が高いとか、いろいろなことを反映できるような計算方法をできるだけ取り入れておるわけでございます。しかし先生、それは交付団体になれという意味ではないということでございましたが、結果としては税収等もございまして不交付団体という形できておるわけでございます。そういったことで、今後ともそういった算定については私どもも、結果がどういうことになれ、財政需要の算定については特殊需要というものは十分反映できるように見ていくべきだと思っております。  それと同時に、不交付団体なるがゆえにこういった制限があるということで、先ほどもお答えいたしましたが、いろいろな問題がございました。それが取るに足らない、取り上げるに足りない問題ならば私どももほっておったわけでございますが、先ほど申しましたように、東京都全体として全国における相対的な地位ということも変化してきておりますし、そういったこと等も含めて、もう繰り返し申し上げませんが、譲与制限なりあるいは教職員の給与負担につきましてもいろいろ改善したところでございます。  今後とも、どうすると的確には申し上げられませんが、都のいろいろな財政需要なり実態を見ながら、私どもとしてはそのあり方というものを頭に置いて検討は進めていきたいと思っております。それでは来年こういうふうにしますといったような具体的なものを持っているわけではございませんが、首都であるがゆえのいろいろな実態というものには十分注意を払い、改善すべきものは改善していく方向で検討したいと思っております。
  95. 田島衞

    田島委員 局長さんが一生懸命、前向きで努力してくださるという答弁をしてくださっておりますから、余りしつこいことは言いたくないのですけれども、特に不交付団体イコール富裕団体というそこらあたりはぷっつり切っていただかないと、本当に不交付団体もっともだと思っているのではなくて、東京都政に関連を幾らか持っているわれわれの立場としては、国全体の地方税財政制度だとか交付税制度というものを考えた場合に、東京ぐらいはがまんしなければしようがないだろうと思ってがまんしているので、もっともだと思っているのではないですからね。それだけに、不交付団体はがまんするから、不交付団体イコール富裕団体というところの関連ぐらいはもうそろそろぷっつり切っていただいて、富裕団体ではない、実質的にはちゃんと毎年赤字の団体である、こう考えていただくことによって、その他の財源調整といいますか抑制方式については、できるだけ早い時期に考え直していただく。  特にその中の義務教育の教職員の給与費国庫負担金がありますね、これは、そのものの性格からいっても、不交付団体イコール富裕団体、そこまでがまんしたにしても、これを抑制するのは法的にいささかまずいというか、私の方にしてみるとがまんができないことだな、こう思うのです。これは財源が豊かなところであろうとあるまいと、法律そのものがそのような措置を命じている性格の費目ではない。あくまでも全国一律同じように、財源に乏しい地方団体であろうと乏しくないと考えられておるところの東京都であろうと、区別をされることはおかしいんじゃないか。片方はたしか定員定額でしたね、片方は原則として定員実額、つまり交付団体の方は定員実額、東京都は定員定額、これは、不交付団体が是か否かとか、富裕団体という呼び方をそろそろ変えてもらいたいとかという議論よりも、本来国が全額負担すべき性格の費目だと思うのですよ。それを、おまえさんのところはいささかふところに余裕があるだろうから云々といって、差別すべきものではないのではないかと思うので、それはぜひひとつ、今年度手直ししていただいたのはわかっておりますけれども、手直しすべきものではなくて、一気に交付団体と同じような扱いに戻すべきものだと思うのです。その上で、もし東京都の教職員の配置その他について行き過ぎがあり甘えがあれば、それを指摘しこれを直してもらう、これは結構です。  現に私自身が幾らかの時期おりました東京都政、その行財政の中、いま一生懸命鈴木知事がんばっておるようですけれども、幾らがんばったって、まだまだむだも甘えもでたらめも相当あると思うのです。それは私自身が知っておるところです。だから、何でも言いなりほうだいやってくれとは言いませんけれども、形の上ではだれが考えても、日本の法制上、義務教育に関する費用というのは国が全額負担すべきものですから、早く直してもらって、その上でうるさく言うことはどんどんうるさく言っていただいて結構だと思うのです。しつこいようですけれども、もう一回そのことについて、できれば大臣から……。
  96. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 一つは、ともかくいま不交付団体が東京都一つになってしまっているということは、正常な姿ではないと私は思います。これは税の配分等が必ずしも十分に行われているとは思いません。やはり将来の検討課題であろう。同時にまた、調整財源あるいは保障財源である交付税そのものも、今日の姿でいいとは考えておりません。これは基本的に取り組んでいかなければならぬ問題である、かように考えます。  それからその次の問題は、東京は首都としての特殊性があるじゃないか、その点を考えてもらわなければ困る、こういう御意見。その一例として、警察の例をお挙げになられましたけれども、確かに警察は今日、定員だけ見ましても、警視庁はたしか四万余りおります。しかしこれは一人頭の負担で言えば三百人足らずで、厚い配置になっております。これは一つは、大都市警察の特色から来ておりますけれども、同時にそれ以外に、いわゆる国の立場での事務が多い。ならば、その面はもう少し国で考えるべきではないか、これは御説のようにそれを否定するわけにいきません。これに対する対応策は漸次講じていかなければならぬ、こう思います。  それからもう一つは、東京都は不交付団体だから富裕団体じゃないか、それはおかしい、こういう御意見でございますね。確かにそういう物の考え方が政府の方にあったこと、否定いたしません。しかし、その考え方は別段、東京都が不交付団体だから絶対的にお金持ちの団体だと理解しているのではないので、やはり相対的に、比較の問題としてお金持ちの団体ではないのか、こういう物の見方であったのではなかろうかと思います。  そういうような例として義務教育の問題をお挙げになった。義務教育の点についても、直すべき点は直さなきゃならぬ、私はこう思います。ただ、一つ考えを願いたいのは、東京都は都政をしいておりますから、二十三区について申し上げるならば、他の府県とは違った消防とかあるいは清掃ですか、これはほかであれば市町村がやるのが東京都にいっていますね。だから、そういう出費は当然あるわけですが、しかし、そういったことを頭に置きながら、税の配分そのものが東京都の場合、たとえば一例として固定資産税、これは都が徴収なさっておるわけですね、法人関係にも若干あるようですけれども。そういったように、都政特有の制度にふさわしい税制も考えてあるんだということも御理解いただきたいと思います。  ただ、一般的に申し上げまして、不交付団体だから即それが絶対的な意味でお金持ちだというようなことではなかろう。したがって、東京都の行財政の今後のあり方、そういうような点もにらみ合わせながら、国の側においてなさねばならぬ、改善をしなければならぬ点があるならば、これは私どもとしては検討の課題として勉強しなければなるまい、かように考えております。
  97. 田島衞

    田島委員 大臣初め局長さんから大変御理解ある答弁をいただいて、私も感謝をしておるわけでありますが、そこでまとめに入ります。  先般、参考人の方々をお呼びしてその意見も聞いた。その参考人の意見の中でも、今回の改正も含めてとにかく現在の交付税制度のあり方、それにはまだたくさん問題点がある、不満がある、改善すべき点がある。だけれども、じゃあ改悪かというとそうじゃない。やはり現状としてはやむを得ないだろうという、参考人の人のうち一人だけが何とも賛否いずれの意見も吐かれなかったようでありますが、ほかの方は、原則的には一部改正は悪いことではない、消極的賛成といいますかそういう立場での御意見があったわけであります。  私たちも、前より悪くなる形だとは考えない、したがって、前よりはいいんだという立場をとらざるを得ないと思いますけれども、そのとらざるを得ないということと、これで満足しているということとは大変違うと思うのです。大変まだ不満がある。だけれども、不満があっても、少しでも、たとえ半歩でも一歩でもよくなったということについては賛成せざるを得ないだろう、よくなることに反対するわけにはいかない、まあ大変つらい立場といいますかむずかしい立場なんですが、そういうことでありますので、この交付税制度そのものについては、先ほど来も個々の御答弁をいただきましたけれども、ぜひとも本当に思い切ってこの交付税制度というものが改めて命が出てくるように、生き生きと生き返ってくるような見直しといいますか改善策を、暦年やっておるような本当の手直し程度の一部改正で、しようがない、ここらのところでがまんしてくださいというようなことじゃなくて、今度は本当に改正らしい改正になってきたなというような改正を、少なくとも来年度までにはお目にかかれるような御覚悟をひとつ決めていただきたいと思うのです。  その中で、東京の立場もきょうは少し言わしていただいたわけですが、東京は日本全国の地方団体の中の特異なものとして、不交付団体であることをむしろじっとこらえなければいかぬと私も思います。だからといって、その一番兄貴分のような立場に立つ東京だって苦しいこともあるし、これだけは何とかしてもらいたいな、またしてくれるべきだと考えることも、いま申し上げた幾つかの例の中にもあるようにあるわけでして、それらのことについては、ぜひともできるだけ早い時期に改善の措置をとっていただきたい。  それからまた、交付を受ける立場の多くの地方団体、もらう方だからいいわということでは困るので、交付を受けない団体もあることも考えていただいて、まずみずから自粛して、本当に最小の経費で最大の効果を上げるということを改めてもう一回考え直していただいて、できるだけその不足額を縮減する、また縮めていくことが誇りなんだ、これだけ足りないぞと言って手を出すことが自慢なんじゃなくて、手を出さずに済むようになることが自慢なんだというような考え方を持っていただかないとまことに困ると思うので、そのことへの指導の面も自治省としては極力御勉強いただきたい。  そしてまた、それらの調整を図る言うならば親元的存在である国、特に当面の自治省としては、大臣を先頭にぜひとも、地方財政制度が本当に確立できるような、それは単に甘えを許せということじゃなくて、その甘えをなくさせることも含めて本当の地方財政が確立し、本当の自主、独立という言葉が文字どおり認められるような、すばらしい、りっぱな地方団体一つでも多く生まれるような御指導を心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
  98. 塩谷一夫

    塩谷委員長 次回は、来る二十一日午後一時三十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十一分散会