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1980-04-09 第91回国会 衆議院 地方行政委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月九日(水曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 塩谷 一夫君    理事 石川 要三君 理事 大石 千八君    理事 中村 弘海君 理事 松野 幸泰君    理事 小川 省吾君 理事 神沢  浄君    理事 小濱 新次君 理事 三谷 秀治君    理事 部谷 孝之君       池田  淳君    小澤  潔君       北口  博君    工藤  巖君       椎名 素夫君    丹羽 雄哉君       河野  正君    細谷 治嘉君       吉井 光照君    安藤  巖君       河村  勝君    田島  衞君  委員外出席者         参  考  人         (川西市長)  伊藤龍太郎君         参  考  人         (横浜国立大学         名誉教授)   井手 文雄君         参  考  人         (日本大学教         授)      北野 弘久君         参  考  人         (関西学院大学         講師)     高寄 昇三君         参  考  人         (西南学院大学         教授)     古川 卓萬君         地方行政委員会         調査室長    岡田 純夫君     ————————————— 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   田島  衞君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     田島  衞君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提  出第二八号)      ————◇—————
  2. 塩谷一夫

    塩谷委員長 これより会議を開きます。  内閣提出に係る地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取することといたしております。  本日御出席を願っております参考人方々は、川西市長伊藤龍太郎君、横浜国立大学名誉教授井手文雄君、日本大学教授北野弘久君、関西学院大学講師高寄昇三君、西南学院大学教授古川卓萬君、以上でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、議事の順序は、初めに参考人方々から御意見を約十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑に対して御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず、伊藤参考人にお願いいたします。
  3. 伊藤龍太郎

    伊藤参考人 ただいま御紹介をいただきました全国市長会税制調査委員会委員長をいたしております川西市長伊藤龍太郎でございます。  衆議院地方行政委員会の諸先生方には、日ごろ地方行財政の諸問題につきまして特段の御配慮、御尽力をいただいておりますことを厚くお礼を申し上げます。  本日は、地方交付税法の一部を改正する法律案につきまして地方団体を代表して意見を申し述べる機会をいただきましたので、地方行政の第一線で直接都市行財政に携わっておる者の立場から若干の意見を申し述べたいと存じます。  昭和五十五年度地方財政は、前年度財源不足額四兆一千億に対し、幸い国税地方税自然増が大幅にあったこと、地方交付税において昭和五十四年度補正により六千百九十七億円の繰り越しの措置が講ぜられたこと、さらに、歳出において公共事業の前年度並み取り扱い等財政規模圧縮によりまして、財源不足額は二兆五百五十億円にとどまったわけでありますが、この財源不足見込み額については、地方交付税の増一兆二百五十億円、建設地方債増発一兆三百億円をもって補てんする措置が講ぜられ、当面の地方自治体財政運営に支障を来さないよう配慮された総額四十一兆六千四百二十六億円の地方財政計画が策定されているところであります。これらの措置に伴う本改正法案につきましては、わが国におきます経済環境、国、地方を通ずる財政状況等を勘案いたしますとき、当面やむを得ない措置内容であると存じ、基本的には賛意を表するものであります。  思いますに地方財政は、昭和五十年度以降毎年度巨額の財源不足を生じ、財源総量の絶対的不足が解決されないままの状態で今日に至っております。また、その都度の地方財政対策は各年度とも当面それなりの措置がとられておりますが、いずれも借入金により収支の均衡が保たれるといういわば臨時応急的なものであり、そのため財政構造的悪化を招いておりまして、財政基盤確立が緊急の課題となっているところであります。  たとえば例を本市にとりまして恐縮でございますが、財源対策債を含む地方債が累増し、その償還に要する公債費が増大しまして、昭和五十年度決算では歳出中に占める構成比は六・五%であったものが、前年度対比で昭和五十一年度では二三・三%、昭和五十二年度では二六・二%、昭和五十三年度では三一・〇%と決算ベースで高い伸び率を示しておりまして、五十四年度では構成比決算見込み九・五%に達する見込みでございます。これは全地方自治体ともおおむね同様な傾向にあると存じますが、加えて昭和五十六年度以降の地方財政を展望いたしますと、前に述べました本年度財政状況のように果たして大幅な税の自然増が見込まれるか、歳出圧縮にもおのずから限界があることからしましても、現行制度のままで推移するならば、地方財政状況は一段と厳しくなることがうかがわれまして、その財源確保に大きな不安感を抱くものであります。  今日、地方の時代といわれる状況下にあって、こうした地方財政状況を一刻も早く改善し、地方自主自立性を尊重する基本的な考え方に立って、長期、安定的な財源確保するための税財政制度確立が強く望まれるものと考えます。したがいまして、今後における問題点として御配慮を賜りたいきわめて多くの問題がございますが、幾つかの点にしぼって申し述べさせていただきます。  第一は、地方税源拡充強化を図ることでございます。  国と地方事務財源の区分を明確にした上で本来、地方自治体はその行政運営に必要な経費住民自身負担する税によって賄うべきが本筋であると考えております。しかしながら実情は、社会経済情勢の変化に伴い、地方財政、特に都市財政は、その財政需要の増大に反比例して歳入中に占める税収入構成比は低下し、大部分の地方自治体地方交付税地方債国庫支出金に大きく依存する姿となっております。  全国市長会が毎年調査いたしております都市決算について見ますと、昭和三十五年度における歳入中に占める税の構成比は四七・八%であったものが、昭和五十三年度においては三五・八%となり、この間その構成比は実に一二%も低下いたしておるわけでございます。もちろん最近における国、地方を通ずる財政状況を考慮すれば、ある程度この傾向はやむを得ないと存じますが、この際特に強調しておきたいのは、税の大幅な自然増が見込まれた昭和四十年代の高度成長経済下にあっても都市財政は税の構成比が四〇%以下と低下していることでございまして、これは都市的財政需要に即応した税源確保がなされていないことを示すものでありまして、現行地方税制度に問題があると存じます。したがいまして今後、歳入の根幹をなす地方独立税源、特に市町村税制拡充強化につきまして御配慮を賜りたいと存じます。  第二は、ただいま申し上げました地方税源拡充と関連することでございますが、地方交付税総額確保であります。  御案内のように地方交付税法第六条の三第二項においては、引き続き地方財源不足が生じた場合には、地方行財政制度改正または交付税率の変更を行うものと規定されておりますが、昭和五十年度以降毎年度二兆円を超える財源不足が生じておる最近における地方財政状況は、まさに法改正を必要としている事態にあると存ずるのでございます。したがいまして、前述の地方税源確保とあわせて地方交付税制度について、交付税率引き上げ国税三税のほかに対象税目拡大する等、安定的な交付税総額確保を図るための抜本的な改正を早急にお願いせざるを得ないのであります。さらに、地方財政支出実態に即した適確財源確保するため、基準財政需要額算定に当たっては、引き続き算定強化を図られるよう特に御配慮願いたいと存じます。  なお、財源対策債につきましては、昭和五十五年度において六千百億円の縮減が図られましたが、これは本来、一般財源措置すべきものを地方債に振りかえられているものでありますので、将来の財政負担を軽減し、財政構造改善を図るために今後引き続き縮減に努力していただきたいと存じます。また、財源対策債元利償還費につきましては、基準財政需要額に算入する措置が講ぜられておりますが、しかしこのことはその償還時において結局、地方交付税において負担することになるものでありまして、その意味において地方交付税総額拡充措置が必要になると考えられます。  第三は、地方債の問題でありますが、生活関連施設を中心とする都市施設等の水準は依然として低く、立ちおくれている施設緊急整備並びに地域総合整備を図るためには、その財源として地方債の活用が必要でありますので、その所要額確保するとともに将来の財政負担を軽減するため、良質な地方債資金拡充を図られたいと存じます。  地方債資金については、昭和五十五年度においては地方債総額に占める政府資金の比率を若干高める措置が講ぜられ、また、その総額の六割に相当する額に至るまで利率政府資金並みとなるように金利差について臨時地方特例交付金交付税特別会計に繰り入れられ、さらに、政府資金市町村に対し優先的に配分されるなどの配慮をいただいておりますが、縁故債につきましては、五次にわたる最近の公定歩合の引き上げにより金利が大幅に上昇し、地方財政に及ぼす影響が多大でありますので、引き続き政府資金拡充を図るとともに、公営企業金融公庫の機能の充実と融資対象事業拡大を図り、長期低利資金を安定的に供給していただくよう御配慮を願いたいと存じます。  第四は、国庫補助金の問題でございます。  政府は、昭和五十五年度予算編成とも関連し、昨年十二月に「昭和五十五年度以降の行政改革計画の実施について」を閣議決定されておりますが、その一環として補助金等整理合理化について、昭和五十五年度以降四年間にその件数の少なくとも四分の一を整理するものとし、整理合理化案策定に当たっての基本的な考えを示されております。  国庫補助金等につきましては、地方自治体自主的財政運営財政効率的運用等を図る見地から、地方団体におきましてもその改善合理化を要望しているところでありますので、その推進を図っていただきたいと存じます。  ただし、この際御留意願いたいのは、補助金等の見直しに当たって従来とかく、補助金等交付する国サイド効率化という観点が先行するきらいがありますので、今後の整理合理化に当たりましては、補助金等交付を受け、実際に事業を実施する地方自治体意見を尊重して検討されるととともに、補助金等を整理する場合に当たりましては、補助金だけをなくして事務地方に残し、その負担地方に課するようなことは絶対避けていただきたいし、その場合は所要財源一般財源で完全に補てんするよう特にお願い申し上げておきます。  また、地方超過負担につきましては、諸先生方の御尽力により逐年解消措置が講ぜられておりますが、まだ不十分な点があります。この点につきましては、時間等の制約もあり詳細については申し上げませんが、すでに地方団体において実態調査に基づく問題点と具体的な改善策を要望いたしておりますので、その線に沿って引き続き地方超過負担完全解消を図られるよう御努力いただきたいと存じます。  第五は、新産、工特地域、首都、近畿、中部圏地域及び産炭地域に対する財政措置でありますが、これら地域に対しましては現在、それぞれ個別法補助率かさ上げ等財政上の特例措置が講ぜられておりますが、おおむね本年度末をもって期限切れと相なることになっております。これらの措置はいずれも、地域の振興と地方の総合的な施策の推進に重要な役割りを果たしており、また、地方財政の厳しい実情からして財源確保を図る見地からも、これら関連法案期限延長をお願い申し上げます。  最後に、地方交付税法の一部を改正する法案は、冒頭に申し上げましたように、現時点における地方財政対策といたしましては適切妥当なものとして賛意を表しますので、速やかにこの法案が成立するよう何とぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。  このことはすでに御案内と存じますが、地方自治体資金繰りとの深い関係がございまして、四月という月は地方自治体にとりましては、税の収納が少なく、反面支出がかさみ、資金繰り上非常に苦しいときでございます。私どもの川西市の例を再びとって恐縮でございますが、本年四月の資金不足額は約四億七千万円ともなるのでございます。先般、本市におきましては、国の予算が成立すると同時に四月分の概算交付額をいただきましたが、本法案が成立しないと改正法に基づく四月概算交付額が二千九百三億円も未交付となるわけでございます。仮にこれを一時借入金によりますと、特にことしは最近の高い金利からしてその利子負担は苦しいものがありますので、これらの点も御考慮賜り、一日も早くこの法案を通していただくようお願い申し上げる次第でございます。  以上、長々と申し上げましたが、何とぞよろしくお願い申し上げまして、公述を終わらせていただきます。
  4. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  次に、井手参考人にお願いいたします。
  5. 井手文雄

    井手参考人 御紹介にあずかりました井手文雄でございます。本日は、地方交付税法の一部を改正する法律案につきまして私見を公述する機会をお与えくださいまして、まことにありがとうございました。  この五十五年度地方財政財源不足額は二兆五百五十億円、こういうふうに相なっております。その補てん措置といたしましては、地方交付税増額、それと建設地方債、すなわち財源対策債増額、この二つをもって対応されておりまして、地方交付税増額は一兆二百五十億円でございます。この中身を申しますと、臨時地方特例交付金が千三百億円、それから交付税特別会計借り入れが八千九百五十億円、こういうふうに相なっております。建設地方債は一兆三百億円でございます。  この交付税特別会計借り入れ、これは八千九百五十億円でございますけれども、純増加額が七千四百十五億円でございまして、その七千四百十五億円の二分の一の三千七百七億五千万円、この分を昭和六十一年度から七十年度までの各年度におきまして、臨時地方特例交付金として国の一般会計から交付税特別会計へ繰り入れることに相なっております。つまりこの三千七百七億五千万円というものは将来、その償還を国が負担することに相なっております。それで、八千九百五十億円からこの三千七百七億五千万円を引きますと五千二百四十二億五千万円、これが将来における地方負担する償還分ということに相なっております。それで、地方交付税増額の一兆二百五十億円、このうちその五一%、半分以上でございますが、五一%に相当する五千二百四十二億五千万円、これが、地方債によって財源不足を補てんしたことと同じことになるわけでございます。つまり、その償還地方後代において負担するわけでございますので、地域住民負担ということに相なります。  ですから、これは財源不足対策といたしまして地方交付税増額された、ということは地域住民から見ますと、何かその地域借金がふえないで、借金ではない税金に当たる自主財源としての交付税がふえたのだというふうに一種の安心感があると思いますけれども、実際は地方債がそれだけふえて将来の地域住民にそのツケが回る、そういうことになります。ですから、地域住民自主財源が一兆二百五十億円ふえたと思いましてその住民ニーズをふやす、そういう傾向にある。借金がふえなかった、交付税がふえたと、楽観ムードが出るという傾向がございますし、また、地域の首長もそれに応じてそういう住民ニーズ拡大に対応するという可能性もございます。  次に、建設地方債増額が一兆三百億円でございまして、これに先ほど交付税特別会計地方負担分五千二百四十二億五千万円を足しますと一兆五千五百四十二億五千万円、これは財源不足額二兆五百五十億円の約七五・三%に当たるわけでございまして、財源不足二兆五百五十億円は借金によるものと同じで、後代国民地域住民にその償還ツケを回す、そういう性質のものである、こういうふうに思われます。  また、国家財政について申しますと、三千七百七億五千万円が国の負担する償還になりますので、これはいわばこれだけ国債増加したものと同じような効果を持つものでございます。臨時地方特例交付金は、全体といたしまして三千七百九十五億円増加いたしますが、その内訳を申しますと、一つは、地方財源不足対策のためのいま申しました千三百億円、それからもう一つは、五十年から五十二年度までの間に交付税特別会計が行いました借入金償還額の国の負担分等でございまして、これが千三百八十九億円と相なっております。それから三番目が、五十一年から五十五年度までの間における地方債の発行による地方負担を軽減するための措置分利率資金運用部からの借り入れ並みに低くするための措置でございまして、これが千百六億円、うち、五十五年度分は十一億円と相なっております。  この臨時地方特例交付金三千七百九十五億円の中身の中で、二番目の五十年から五十二年度までの間に交付税特別会計が行った借入金償還額の国の負担等千三百八十九億円、これを見ますと、先ほど申しましたように、交付税特別会計借り入れた分のうち国が将来その償還負担すべきものとされておったもので、後代国民にその負担ツケが回るということがここに明らかになっております。五十五年度の三千七百九十五億円の臨時地方特例交付金の中にはいま申しましたように、五十年から五十二年度までの間の特別会計借入金の中で国が償還を約束したその分の千三百八十九億円が含まれておるということでございます。  ですから、このように交付税特別会計借り入れ方式によるということは、見たところ国及び地方国債及び地方債増額を回避したことになりますけれども、実際は全くそういう国債及び地方債が発行されたのと同じであって、それが将来の国民及び住民負担ということになる、そういうツケ国民及び住民に回す性質のものである、こういうふうに存じます。  先ほども申されましたように地方交付税法第六条の三の第二項には、引き続き財源不足額に法定の地方交付税額不足するときには、これは地方制度改正交付税率改正、つまりこの場合は引き上げというようなことを行わなければならないという規定がございますが、これも先ほども御指摘にありましたように、現在はそういう条件が満たされておるわけでございます。五十年度補正から五十五年度まで、ほとんど二兆円を超える財源不足額が数年にわたって続いておるわけでございまして、引き続き多額の財源不足額が出ております。  五十五年度財源不足額が二兆五百五十億円でありまして、五十四年度は四兆一千億、つまり二兆四百五十億円だけ財源不足額縮減されたということでございますけれども、これをもって地方財政が好転したと、こういうような楽観は必ずしもできないわけでございます。この二兆五百五十億円という財源不足額は、税制改正による増収見込み額と、それから、五十四年度補正予算による地方交付税増額分の一部を五十五年度へ繰り越し措置をいたしました額を算入した後の財源不足額でございますので、そういう事情を勘案しますと、五十五年度財源不足額が五十四年度に比べまして二兆四百五十億円大幅に縮減されたとは必ずしも言えませんし、それからまた、今後のわが国経済の動向、不況の深化、そういうような見込みを考えますと、これからも地方財政の好転は必ずしも楽観はできない、こういうことになっております。こういうことを考えますと、やはり先ほど地方交付税法規定に従いまして交付税率引き上げかあるいは制度改革が必要である、こういうことに相なるかと存じます。  それで、こういうような状況を踏まえましていろいろな対応策を考えてみますと、一つは、交付税特別会計借り入れをやめまして国債及び地方債増発する、つまり、こういう借り入れをやらなければ当然、国の場合においては国債地方の場合においては地方債増発せざるを得ないわけです。国債においては三千七百七億五千万円、地方債は五千二百四十二億五千万円、つまり、財源不足額八千九百五十億円というものが結局、国及び地方において借金増加ということで対応されなければならない、まともに行くとこういうことになります。  これはいかにも国家財政及び地方財政が非常に状況が悪くなるように思われますけれども、実態はまさにそういうことでございますので、先ほど申しましたように、交付税特別会計借り入れましても結局は、実態国債及び地方債増発になることであって、後代国民及び地域住民負担ツケが回るわけですから、それを回らないようなかっこうにしておくから住民ニーズ過大化というようなことも出てくる、つまり国民及び地域住民公共財に対するニーズというものに甘えが出てくるわけですね。これで本当は借金がふえなければならないのだということをはっきりした方が、もっと事態の深刻さというものを国民住民に知らせることによって反省を促すということになる。むしろ荒療治でございますけれども、国債及び地方債増発に任せてしまう、これが経費の節減、そういうものを徹底化する一つの踏み台になるとも思われます。そういうことが一つアイデアとして考えられるわけでございます。  五十五年度対応策は、先ほど申しましたように地方交付税特別会計借り入れでございますが、これは地方交付税法先ほどの条文と照らしてみますというと、必ずしもうまく合致しているかどうかということに多少の疑問がございます。政府筋ではこういう措置制度改正が行われたというふうに解釈されておりますが、確かに昭和六十一年度から七十年度にかけまして八千九百五十億円の借入金償還計画が、「臨時地方特例交付金」及び「差引地方負担分」というものが列記されておりまして、そういう計画が示されておりまして、これが地方交付税法に明記されておるということでございますので、これをもって制度改正が行われた、こういう解釈でございますが、あるいはそういう解釈が成り立つかもわかりませんけれども、それはやはりこの六十一年度から七十年度にかけてのいわば数年間にわたる臨時的な措置でございますので、本格的な制度改正ということについては多少の疑義があるのではなかろうか、こういうふうに思います。五十年度以来こういういわば臨時措置を繰り返して今日に至った、こういうふうに思っております。それで、先ほどのように思い切って国債及び地方債増発に依存する、つまりそれをやめるならば、結局は交付税税率、現在の三二%の税率引き上げるということで制度改革ということになると思います。  制度改革といたしまして考えることは、まず第一に、税源の国と地方との間の配分状況をよく言われておりますように改善いたしまして、国から地方への税源の移譲ということが一つ考えられます。大多数の地方自治体交付税交付団体となっておりますということは、これは交付税が少ないというよりもむしろ多過ぎるという逆説的な考え方もできるわけです。つまり、地方税が少ないから交付税でカバーせざるを得なくなる、大部分が交付団体になってしまう。ですからして、地方自治体に十分な税源を供給をするということが必要である。そのためには、国と地方との間の税源の再配分が必要である。しかし、それだけではやはり地域間の調整ということも必要でございますので、もちろん交付税制度というものは存続をしなくてはならないと思います。  ただ、国の財政も苦しいわけでございますから、国と地方とを合わせました税収全体、つまりパイの大きさをそのままにしておきまして中身を国と地方とで分ける、その配分の仕方を変える、国から地方税源を移譲するということでは問題は済まないと思うわけですね。国の財政も御承知のように非常に苦しいわけなんです。ですから結局、これは増税ということ。われわれは安易に増税を肯定するわけではございませんし、増税という問題はきわめて慎重でなければなりませんし、またよく言われておりますようにその前には、租税制度の徹底的な公平化ということを図るということが前提でありますし、さらにはまた、国と地方との財政の徹底的な効率化圧縮、こういうことが必要だと思うのです。  地方交付税法先ほど申しましたように規定されておる制度改革というものも、まさにいまや国と地方における行政改革などの徹底的な遂行によりまして、思い切った財政効率化縮減を図るということに通ずるのではないかと思うのです。それをやって税制の公平化を図る、これが大前提でございますけれども、その上で私はやはり増税ということは必要じゃないかと思うのですね。増税をしないで、そして国と地方との間の配分を変えるだけでは問題は解決はしない。  では、その増税はどうするかということが問題でございます。一般消費税の問題もございます、その他いろいろ問題はございまして、むずかしい問題だけれども、国民も覚悟しなければならぬと思うのですね。増税を避けては通れないというふうに私は率直にここで申し上げます。その方法は慎重に考えなければなりませんし、その前に、繰り返しますけれども、徹底的な行政改革などによる制度改革による経費縮減圧縮、これをやらなければいかぬ。それから、税制の公平化はなかなかむずかしいのですが、これはやはり思い切ってやらなければいかぬ。その上でやはり増税は必要だ。そういうことをいま地方財政国家財政の困窮化を前にしてやらなければいかぬわけです。かけ声ばかりですけれども、一向進んでないわけですね。そういうことを私はここにぜひとも申し上げたいというふうに存じております。交付税の三二%、これはそういうふうにして、どのように増税が行われ、どのように国と地方税源強化されるかということとの兼ね合いで、この三二%をどうするかということになろうかと思います。  それから基準財政需要額算定方法につきましては、いろいろとお骨折りいただきまして、単位費用、補正係数等について改善がなされまして、まことに結構だと存じます。その中で、投資的経費について格別の御配慮をいただいておるようでございまして、これも結構でございますが、この点についてちょっと私見を申し上げますと、投資的経費は必要でございますけれども、国家財政地方財政がこういうように苦しいということ、再建を急がなければならないということがまず第一の緊急課題であるとしますと、その投資的経費は望ましいかもわからぬけれども、やはりその拡大については節度を要するのではなかろうか。そういう反省がひとつ行われなければならないと存じます。  大蔵省が提出されました五十五年度ベースの財政収支試算あるいは自治省がおつくりになりました地方財政収支試算を拝見いたしますと、これは必ずしも正確な財政計画とは申しませんが、今後の成り行きということでございましょうけれども、非常に楽観を許さないところがあるわけです。それに、やはり大蔵省がおつくりになりました国債整理基金の資金繰りに関する仮定計算、あるいはまた、国債償還高あるいは国債残高及び利払い費に関する仮定計算、こういう二つの仮定計算を合わせてみますと、国家財政は大変なことです。一応五十九年度で赤字国債をやめてしまって六十年度は、現在三十数%の国債依存度を十数%に引き下げるというようなかっこうになっておりますけれども、その後の状況を見ますと、国債は毎年毎年増発されていくのですね、減らないのです。増発されていって国債残高がどんどんふえていく、したがって国債利払い費もふえていく、したがって国債費というものがどんどんふえていって、国家財政歳出に占める比率がどんどん上がっていく、こういう状況になっております。これでは財政再建はとても及びがつかないわけです。  それからまた、地方財政収支試算を見ましても大体同じようなことが言えるわけですね。建設地方債がどんどんふえていくのです。これはなぜそういうことになるかと言うと、大体地方財政収支試算ももともとは、新経済社会七カ年計画とタイアップしてできているわけであります。御承知のようにあの七カ年計画は、昭和五十四年度から六十年度までに公共投資二百四十兆円、五十三年度価格で二百四十兆円の公共投資を行う、そうして社会資本ストックをその間に倍増するという、これが一つの中心テーマになっておるわけでございまして、それとタイアップしてそういう経済計画国家財政及び地方財政の場において引き受けようということ。そうすると、国家財政において公共投資はどんどんふえていくのです。つまり四条債はどんどんふえていくのですね。そうするとまたそれと対応して、地方自治体がやらねばならない公共事業もどんどんふえていって、建設地方債もふえていくということになるわけです。  ですから、私思いますのに、ああいう経済計画は非常に重要でありますけれども、昔は経済計画の策定がまず先行しておって、そしてそれを受けて、国家財政及び地方財政がそれぞれの持ち場においてそれを実現するための財政運営をやっていく、こういうことになっておったかと思いますけれども、今日のように国も地方財政再建というものが非常に重要である、何をおいても緊急課題であるということをおっしゃっておるわけでございまして、もし本当にそうであるならば、そういう経済計画、そういう財政再建を困難にするような経済計画の策定については大蔵省や自治省がクレームをつけるべきである。財政の論理を経済計画の論理に貫徹させる必要があると思うのですよ。  ああいう二百四十兆円を短期間に行って、社会資本のストックを倍増する、結構なんだけれども、しかし、そういうことを財政の場において引き受けていくというと、国債及び地方債はどんどんふえていく。じっとこういう御提出の、先ほど申しましたようないろいろな資料を見ますと非常に不安ですね。たった六十年度までならば、国も地方も何か再建のかっこうがつくようになっておりますけれども、その後どんどん公債がふえていって、再建どころの騒ぎではない。ですからこれからは、この新経済社会七カ年計画は一月にちょっと手直しが行われましたけれども、今後本格的な見直しが行われる、新しい七カ年計画の策定になろうかと思いますけれども、そのときにはぜひひとつ大蔵省及び自治省が財政の場から、財政再建を可能ならしめるような経済計画の策定に大きな発言をしていただきたい、こういうように考えざるを得ません。そういう根本的な仕組みを変えないと、いかに技術的にこういうような財源不足対策をやっても、根本的には解決しないということでございます。  それともう一つは、言いにくいことですけれども、やはり国家及び自治体において大反省をしていただいて、財政の徹底的な圧縮を行う。これは地方交付税法制度改革ということだと思うのです。と同時に、国民もそれにこたえて、やはりここは増税ということを、何でもかんでも増税反対だということはいけないわけであって、われわれもまた企業も家計も、それに応ずるということは必要だと思うのです。国民がそういう覚悟をすれば、政府側もそれに対応して誠実に財政効率化、税制の公平化に御尽力いただきたい、こういうふうに存じております。  よろしくひとつお願い申し上げます。
  6. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  次に、北野参考人にお願いいたします。
  7. 北野弘久

    北野参考人 ただいま御紹介いただきました日本大学の北野であります。  大体四つのことをこの機会に申し上げたいと思います。地方交付税制度を中心とした基本的な問題につきまして、主として制度論の観点から四つのことを申し上げたいと考えております。  第一でありますが、地方交付税総額昭和四十一年度以来、御承知のように原則として国税三税の三二%ということになっております。今回の地方交付税法改正におきましてもこのことが前提にされております。そしてこのことを前提にした上で、昭和五十五年度地方交付税総額増加させるための幾つかの特別の措置がとられているわけであります。私としましては、地方の時代ということが強調されております今日の段階におきまして、一段と地方財政を充実させる必要があると考えておりますので、当面国と地方との現行税源配分制度を前提にした場合には、この際、最低四〇%まで交付税率引き上げるという方向で御検討いただきたいと思っております。  第二番目の問題でありますが、第三者的な地方財政委員会等の機関を設けまして、今日の段階にふさわしい地方交付税制度の具体的な、しかも実体的な運用基準を確定するということをこの際考えるべきであろうと思います。現行の基準が必ずしも実態に合致していないわけでありまして、少しでもその運用基準を合理化する、民主化するということにすべきであります。  さらに私としましては、各自治体に対する具体的な交付税額を決定する手続におきましても、この際、合理化すべきであると考えております。それは憲法の観点から申しますと、憲法三十一条の適正手続、デュープロセスの考え方地方交付税制度の展開におきましても生かすのでありまして、交付税の決定過程におきましてもそういった趣旨を生かすということであります。具体的に申しますと、当該自治体の関係者であるとか住民の代表等を参加させましてそういった協議会をつくりまして、その協議会におきまして具体的な交付税額を決定する、何々市は幾らであるかということをきちっとそういったオープンの協議会で決定するという、そういう公開の協議会制度をこの際、制度化すべきであろうと考えております。こういったものを制度化するだけで、地方交付税の運用が現在よりも少なくとも合理化されると考えます。  なお、大都市におきましてはその性質上、本来国がやるべき仕事を自治体が自分たちの負担でやっている場合が少なくないのであります。その業務の性質上当然国の事務である、そういうものを、たまたまそこの場で発生した仕事であるということで自治体がやっておるという場合がございます。このような場合の仕事のための支出というのは、実はこれは理論的には特別地方交付税でカバーできない性質のものでありまして、もちろん、特別地方交付税の範囲内でカバーできるものであればそれによって措置すべきであると思いますけれども、理論的には本来そうではないと考えますので、この際、特別地方交付税制度とは別に、国からそういったための支出に備える財政資金交付制度というものを設ける、そういったものによって措置していくべきであろうと考えております。東京都などは特にそういった本来国の仕事を自治体が自分たちの負担でやっておる、その場合の支出は国が当然負担すべきものでありまして、国からそういったものを財政資金として特別に交付すべきであろうと考えております。  第三の問題としまして、地方交付税制度を展望するに当たりましても、先ほど井手参考人もちょっと触れられましたが、一般消費税問題というものを慎重に検討すべきであると考えております。一般消費税というのはさまざまなデメリットを持っております。物価上昇であるとかあるいは逆進的な負担になるとかというさまざまなデメリットを持っておりまして、一般大衆国民の生活を危機に陥れる悪税でありますけれども、このことは別としましても、地方自治という観点から見ましても幾つかのさまざまなデメリットをもたらすのであります。  その一つとしまして、国税としてともかく国が一般消費税を徴収する、そうしまして、その上で一部を地方自治体に還元する、そういう仕組み自体が実は財政の集権化をもたらすということが言えると思います。  二つ目としまして、地方自治体も一般消費税込みで財貨であるとかサービスを購入しなければならない。それだけ地方自治体財政を圧迫するのであります。  三番目に、一般消費税導入下の物価高の状況にありましては、地方自治体の超過負担というものが一段と強まるということが予想されるのであります。  四番目に、一般消費税を導入いたしますと、国家財政における所得税、法人税、酒税の国税三税の占める割合は今後相対的に低下することになります。そうしますと、現在の地方交付税制度を前提にした場合には、地方交付税収入というものが相対的に低下するということになってくるのであります。一般消費税も国税三税に加えまして地方交付税の対象にすることも制度としては考えることができると思いますけれども、その際には、一般消費税の一部を、政府の税調の言葉で申しますと地方消費税という言葉を使っておりますけれども、地方消費税として地方自治体に還元するという従来の政府筋考え方との調整が問題になってきます。  しかし、この問題は別にしましても、一般消費税を地方交付税の対象にするということにいたしましても、大事な問題は、その前提段階においてすでに述べたように、一般消費税導入によりまして国民的な規模におきまして、中小零細企業であるとか一般大衆の生活が危機に陥れられる、そういうことになります。したがって、目先の上で地方自治体に若干の財政収入増をもたらしましても、その前提におきまして国民の生活、経済が破壊される、そういう誤りをもたらすことになる点を注意すべきだろうと思います。要するに、具体的な目先のメリットに目を奪われてしまってはいけないということを申し上げたいと思います。  五番目としまして、現在地方税である個別消費税、たとえば料飲税等でありますが、それも遅かれ早かれ国税である一般消費税に統合吸収されるということになります。それだけ自治体の独立財源というものがさらに少なくなるということが予想されるのであります。  六番目としまして、一般消費税の導入によりまして税務行政の場におきまして、現在すでに事実において存在します三税協力体制、そういったものがさらに拡大強化されていきまして、地方自治体職員の国の下請機関化の構造が一段と強まることが予想されるのであります。  いずれにしましても、一般消費税問題というのは、地方財政地方自治の観点からとりましても非常に大きな問題をもたらすのでありまして、私としましてはこの問題について慎重に考えるべきであろうと思っております。政府昭和五十五年度の導入をとりあえず断念いたしましたが、参議院選挙後におきまして形を変えまして一般消費税問題が再浮上することが予想されております。私としましては、地方財政の観点からも、一般消費税及びその変形でありますところの新しい税金の導入を何としても阻止する方向で財政の再建を考えるべきであろうと考えております。本委員会におきましても、一般消費税等の新税の導入を阻止する方向で財政再建の具体的な方策を検討していただきたいと思います。  第四の問題としまして、地方の時代という問題が最近提起されておりますけれども、これは八〇年代を展望するに当たりまして非常に大きな示唆を与えるものであります。この問題提起の真の意味が表面的にではなく正しく理解される必要があると考えております。  わが国を含むアメリカであるとかそういった先進国におきましては、いまや新しい意味での地方分権というものを確立することが最大の課題になっております。その地域の特殊性に適合しました文化的な環境を創造していく、そうしなければ人々の豊かな生存というものは確保できなくなってきているのであります。地方の時代というのは、まさにそういった先進国におけるこのような現代的な人権危機を深刻に受けとめまして提起された新しい問題提起であります。私どもはこのような問題提起の今日的な緊迫性を正当に理解する必要があると考えます。  こういった観点から行財政制度のあり方も、このような地方の時代の要請にこたえるためのものとして抜本的に改められる必要があると考えます。そのためには、国と地方との行政事務の配分のあり方について根本的に見直しをする必要があります。もちろんすでに言われておりますように、機関委任事務はすべて廃止するという方向で検討する必要があります。  次に、財政の問題としまして税源配分のあり方そのものをこの際、八〇年代の地方の時代にふさわしい形で、従来の行きがかりを捨てまして根本的に改める必要があると考えます。国と地方との税源配分の構造を従来とは逆の方向で、私としましてははっきり申しますと、まず国税地方税すべての税金を基礎的な地方自治体であるところの市町村において徴収する。現在ほとんど国がまず取っておりますけれども、そうではなくてまず市町村において税金を取らせる。そういうことを前提にした上で逆に、市町村から府県へ、府県から国へ税収の一部を移譲していく、そういう基本的な姿勢に立ってわが国税財政制度の基本的な仕組みをこの際考えることが必要なのではないか。少なくとも理念的な方向としてはそういう方向に立って、現段階で可能な税財政制度の基本的仕組みを再編する、そういう方向でよほどの覚悟を決めてやる必要があると私は考えております。  この点、非常に小さな問題のように見えますけれども、私はかねてから言っておるのですが、国の行政機構でありますところの税務署という役所がございますが、この税務署という役所の名称自体が、明治憲法下の中央集権的な構造のあらわれだと考えております。これは不当表示であります。地方の自治体の税務機構、税務職員の存在を抹殺した名称でありますので、この辺から改める必要があると思います。税務署という名称は、国税、特に内国税しか扱っておらない役所でありますので、それにふさわしい方向で改正する、国税署であるとか内国税署、そういう方向で改めることからまずこの問題に着手すべきだろうと考えております。非常に小さな問題に見えますけれども大事な問題でありまして、わが国税財政制度の根本にある基本的な哲学といいますか理念というものが明治以来、私に言わせますと基本的に変わっていないのではないか、この辺から変える必要があるのじゃないかということを考えているのであります。そういうことの一環として、地方交付税制度のあり方もこの際、考えるべき時期に来ておるということを申し上げたいと思います。  そのほかにも、国庫支出金制度を抜本的に合理化する、少なくとも廃止ないしは縮小の方向で考えていくべきであるとか、あるいは国と地方の不公平税制の是正を行うとか、あるいは起債制度であるとか法定外普通税制度等の許可制を廃止しましてこの際届け出制にするとかという、さまざまな改正が必要になってくると思います。  さらに、私としましてはあと若干の時間をいただきまして一言だけ申し上げたいと思いますが、国と地方財政再建のためにも、あるいは国と地方財政の民主化のためにもこの際、国等の行政につきまして、アメリカにおいて発達しておりますような納税者の訴訟と申しますか、納税者に公金等の徴収あるいは使い道の両方の問題につきまして監視させるという、そういう法的手段をこの際導入すべきであろうと考えております。現在、地方自治法には住民訴訟という制度がございますが、あるいは住民監査請求という制度がございますが、それを国等のレベルにおいても制度化する、つまり、納税者検査請求、納税者訴訟の制度を導入しまして、納税者に国等の公金の徴収及び使い道につきまして監視させる法的手段を保障する、そこまでしなければわが国財政の再建、財政の民主化はできないのではないか。このことは実は、単に国だけの問題ではないのでありまして、地方財政の再建、合理化を考える場合におきましても不可欠な条件になろうと考えております。  以上で、私の陳述を終わります。
  8. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  次に、高寄参考人にお願いいたします。
  9. 高寄昇三

    ○高寄参考人 御紹介いただきました関西学院の高寄でございます。  交付税制度改正とそのあり方について私見を申し上げます。  地方財政が五十年度の景気の後退によりまして非常に税収の減退の結果、財政運営がピンチに立ったわけであります。そのときに、やはり地方財政そのもので固有の財源を見出すとか経営の効率化によって財源圧縮するということは、現実的には不可能でございます。非常に大きな額になったわけで、その際、地方交付税特例措置がありまして地方団体というものが、いわゆる三十年当時の財政破綻と同じような状態に陥ることがなかったということは非常に幸福であったと思うわけです。しかし、このような地方交付税特例措置というものが果たして地方交付税法六条の三の二項の制度改正に該当するかどうかということは、私はきわめて疑問に思っているわけであります。実質的な効果におきましては、これは交付税率引き上げに十分匹敵するだけの財源を国の財政から地方財政全体としてはとってきたと思います。しかし、このとってきたという現実の問題は、制度改正に該当するかどうかという地方財政のルール化とか秩序化の問題から見ますと、全く別問題とも言えるわけです。  一応権力解釈では、第六条の三の二項の「著しく異なる」という財源不足は、一割ということが通説になっております。御存じのように、このたびの五十年来からの一兆円とか四兆円とかに及ぶ交付税特例措置は、一割をはるかに超えるものでありまして、これは「著しく異なる」という財源不足額としては、制度改正交付税率引き上げに十分該当する金額だと思います。  それから、やはり六条の三の第二項の「引き続き」というのは、一応権力解釈では二カ年ということになっております。私、一昨年この委員会に来まして参考人で言ったときには、やはり地方財政状況とか景気の状況、国の状況を考えまして、万やむを得ない措置であると一応その特例措置を是認したわけでございますけれども、五十年から引き続きましてことしですでに六年目に入っているわけでございまして、こういうことをいつまでするのかということです。いわゆる当分の間というのは三十年でも当分の間と言われておりますけれども、やはり現時点において一度見直すべきではなかろうかと思いまして、このような状態は、やはり条文解釈による「引き続き」というのに十分該当するのではないかと思うわけでございます。  一番問題になりますのは、このような特例措置というものが制度改正に該当するかどうかということであります。もちろんこれは解釈の問題でありまして、該当するという解釈と該当しないというこの二つの解釈があると思います。こういう解釈論というのは一応、水かけ論に終わる可能性がありますけれども、しかし地方交付税の精神に返りますれば、やはり該当しないのではなかろうかと思われます。  と申しますのは、地方交付税というのは、以前の平衡交付金というものが毎年国と地方が相争うというようなこと、それから地方としては共通の独立財源としての性格が非常に薄いということで、シャウプ勧告に基づいてつくられました平衡交付金というのを改正してでき上がったわけであります。ところが、実態を見ておりますと、景気の変動とか税収の変動に対応して毎年特例措置の金額が大幅に変わるということで、これでは交付税ではなしに平衡交付金の性格とほぼ一緒ではないかということです。そういうことですから、平衡交付金の制度上はこのように毎年変わるというのが原則でありますけれども、交付税制度というものを全体を見て解釈する場合には、このように毎年変わるということは恐らく、制度改正という趣旨を引き出すのは非常にしんどいのではないかと思うわけです。  それとあと一つ、もっと基本的な問題としまして、交付税というのは、国の財政事情のいかんにかかわらず地方が共通して持っている独立財源であります。そういうことから見ましても、国の財政事情に連動して変動するというのは、地方財政の運営上きわめて不安定をもたらすということでございます。この場合、何%上げるとか、そうしたらどのような制度をかわりにつくるかということは非常にむずかしいと思いますけれども、これは国と地方の話し合いによって、先ほど言いました四〇%なら四〇%という率をできるだけ決めていただく。そういう場合私は少々不利でも、その方がきわめて安定性とか、それぞれの地方団体の運営において実質的な効果としては非常に大きいのではないかと思います。  その場合、交付税が余ったり減ったりするような場合、現在、交付税会計への繰り入れ、繰り出しで調整しておりますが、日本の財政全般としてこういう年度間調整というのは、昭和二十八年の地方制度調査会で一応答申されたわけでありますけれども、原則的にはそのようなものは非常にむずかしいということで、交付税における年度間調整の基金をプールするということは行われていないようですけれども、一応年度間調整のための交付税のプールの制度というのもつくっていって一応の引き上げに落ちつくということが、交付税解釈からいって非常にふさわしいと私は思います。  それから、現在の制度についてはどのように考えるかということでございますけれども、これは国と地方のいわゆる財源争いでございまして、財源的にそれほど不利な状態でこの制度が落ちついているとは私は思いません。むしろある意味においては、地方団体側にかなり有利な形で財源措置がとられているようにも解釈できるわけです。それは、臨時特例交付金というのは国から十分、そのままの形で財源移譲を受けているわけでございます。それから交付税特別会計のうち、半分は地方財政負担しますけれども、あと半分は国庫が将来にわたって繰り入れるということです。それから、あと残りました分は建設地方債で発行するということで、この分につきましても逐次、交付税基準財政需要額に算入していくということですから結局、建設債の半分は交付税で将来見てもらえる。それから、あと交付税措置のうち四分の一だけが、国家財政の関係上地方財政が持つ、値切られたというような感じでございますが、全体として四分の三は交付税で見てもらったということになりまして、国家財政の立場を考えると、四分の一は地方財政としては負担せざるを得ないということも考えられるわけでございます。  問題は、建設地方債でやりました交付税と見合うだけの二分の一の不足額が将来財政需要として算入されるということです。地方財政基準財政需要額そのものが現実的にその分だけ将来、プラスアルファとなって確実に上積みされるかどうかというのはきわめて不確定要素が多いということでございます。それから、このように建設地方債を認めるということは、建設事業をしない地方団体にとってはほとんど意味がないということと、ことに、公共投資の実態が港湾とか道路からいわゆる箱物行政に変わってきているわけでありますから、建設公債そのものが将来、建設費は償還できても維持費がほとんど交付税に入らないということですから、このような措置を毎年繰り返すということは、地方財政が建設後の維持費にいたずらに苦しむというような潜在的な要因をつくるわけでございまして、そういう意味から言いましても、建設公債であと見るというようなことだけでは済まない地方財政のゆがみをもたらすのではないかということでございます。  さらに、建設公債の基準財政需要額の算入のテンポと起債の償還のテンポの食い違い、算入のテンポの方が早いということでございます。そういうことは一見地方団体にとっては財政が裕福になったという錯覚をもたらすということです。このような国の財政との非常に技術的な妥協を重ねていくことは、トータルにおいて確かに地方財政不足を埋めるものでありますけれども、それの間接的な影響、効果を考えると、やはり再検討すべき実態ではないかと思います。  翻って、交付税制度全般を見ておりますと、交付税の大きな機能の一つとして財源保障機能があるわけでございますけれども、この財源保障機能は、四十一年度以降交付税率引き上げがストップしておりますので、結局、財源保障機能の低下は否定できないと私は思います。  それから、あと一つの大きな機能は財源調整機能でございますけれども、この財源調整機能というのは、地方団体の中にも富裕団体があり、かつ、貧困団体があるという状態のもとで調整機能が行われるわけでございますけれども、現在のように府県では東京都一つ市町村ではわずか五十六ということですから、交付税でもって財源調整をするということは実際に不可能なような状態でございまして、少なくとも三分の一以上の地方団体が不交付団体でなければ、財源調整機能は発揮できないのではないかと私は思います。  さらに、もっと重要なことは、交付税の基準財政需要が非常に低く抑えられている結果、たとえば財政力指数が一・〇一とか一・一とかいうような非常にすれすれの人口急増市にありましては、ほとんど交付税の恩典をこうむらない、どちらかといいますと交付税制度があるゆえに人口の変動のない地域よりむしろ財政が苦しいというような、調整機能の逆調整が行われているのではないか。このような点は、東京都についても同じようなことが言えるのではないかと思います。これは地方財政全般が昭和三十年代、郡部の自治体を救済するということにおいて基本的に立てられているものでありますけれども、五十年代の地方財政実態を見ておりますと、府県ベースでも、人口の集中したところにおいてむしろ財政悪化が著しいということですから、交付税のみでなく全般的に組み直す必要があるということでございます。  交付税につきましてあと一つ重要な問題は、補助金と比べてその配付の基準についての議論がきわめて少ないということでございます。交付税というのは、総額が決まりまして、Aの市が得をすればBの市が損をするということでありますから、挙げて中央政府にその配分の基準を任せているということでありますけれども、これから地方交付税地方財政の中においてきわめて重要な地位を占めることを考えた場合、交付税補助金化しつつあるような状態では、交付税の配付基準、いわゆる行政項目とか単位費用とかそのようなところについて、改めて議論をする必要があるのではないかと思います。  その一つの具体例と申しますれば、最近文化とかスポーツとかの行政がきわめて盛んでありますけれども、交付税においての算入率は依然としてきわめて少ない。それから、港湾とか道路におきましてはきわめて算入率がいいですけれども、清掃とか公園行政においてはきわめて算入率というものは少ない。こういうことは、国家経済全般が開発型から生活型になっても、依然として交付税だけがそのような開発志向性を持っているということ。これはしかし、A市にとってはあくまでいい制度であってもB市にはいけない制度であるというような状態ですけれども、可能な限り地方交付税も、全般的な社会のニーズに合致するように改正されるべきものではないかと思います。交付税そのものが国の専属の財源ではなしにむしろ地方の共有財源であると考えますれば、やはり地方団体と中央政府とによって交付税のあり方を改めて再検討する委員会というようなものが必要ではないかと思います。  地方財政全般につきましては、その他意見もありますけれども、現在、地方財政というものが交付税で息をつないでいるということです。新しい財源というもの、税源というものをなかなか見出せないような状況である。一方、減量経営というものが非常に叫ばれているわけであります。もちろん、地方財政というものが市民とか国の批判にこたえるだけの十分な財政運営をしていないと私は思います。そういうことですから、思い切って民間の経営方式を導入して、民間委託とか住民委託とか人件費の効率化をもたらすということは必要であります。しかし、減量経営そのもので地方財政が好転するとは私は思わない。やはり国と地方とを含めた抜本的な改正が必要である。  それは具体的にはどういうことか。基本的な視点としては、従来は国と地方財源の奪い合いということに非常に力点を置いておりましたけれども、むしろ地方団体のサービスに伴う費用負担ということの視点から洗い直すべきであると私は思います。そういう場合に、具体例を一つ、二つ、非常に奇抜かどうかわかりませんけれども言いますと、市町村道路財源がわずか三割を切っているのに、国道とか府県道の整備がほぼ八割とか九割に達しているのは、きわめて不公平ではないかということ。それから、三十万以上の市に事業所税というのがありますけれども、あれは収益の上がる企業に課税しているというのではなしに、そういう都心に立地しておることによってもたらされるサービスに対しての応益負担であります。そういうことですから、国とか府県とか非営利法人も含めて負担すべきだと私は思うわけであります。そのようにむしろ、国と地方というような視点もありますけれども、そういうサービスの費用負担をどうするか、これはもちろん、保育所とか地下鉄とかそういう料金問題も含めますけれども、そういうサービスの費用負担ということからいかに効率的な財政の執行方法があるかということ、そういう面に至らなければいかないと思います。  それから、現在の地方財政というものをいかに効率的に運用するかとかそういうことについては、中央統制というのに非常に傾斜しているということです。むしろ市民統制とか自己統制というウエートが非常に薄いということです。もちろん中央統制は必要であると思いますけれども、私は中央統制というのはあくまで基本的、骨幹的な統制であって、一つ一つの統制とか非常にきめ細かな統制はできないと思います。それは今日、地方団体支出に対し住民の監査請求が非常に大きな件数で上がっているということです。そのように地方財政のコントロールを市民の側で監視するというような視点から、財務の公開制とか住民投票制というのを導入しない限り、国と地方財源の奪い合いでは地方財政は私は回復しないと思う。金の問題ではないという点、これは非常に逆説的な表現ですけれども、むしろ国と地方のルール化とか、市民との兼ね合いの費用負担の問題とか、それから全体としての監視機構、民主的で科学的な監視機構の問題と思います。  一応こういうことで終わります。
  10. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  次に、古川参考人にお願いいたします。
  11. 古川卓萬

    古川参考人 西南学院大学古川でございます。  時間の制限がございますので、四点ほど問題をしぼりまして意見を申し上げたいと思いますが、交付税制度の現状をどのように評価をするか、これは当然今年度措置の評価にもかかってまいるわけですが、附則八条の三が五十三年度につくられまして、これによって一応、地方財源不足対策は形の上で傷がなくなったかのような解釈が行われておるわけであります。これは従来、交付税法六条の三についての解釈としてとられてきました、不足財源が引き続き著しく異なるというこの解釈は、なお生きておるというふうに考えるわけでありますから、したがって、毎年度財源不足対策は附則八条の三にかかわらず、論議されるべきであったのではないかというふうに考えるわけです。今年度の場合、不足財源が二兆円を若干超しておりますが、これは本来の普通交付税額に対しましてはすでに三割を上回る不足額ということになりますので、当然著しくということになりますし、五十五年度以降財源不足が予測されておるという状態がございますので当然、六条の三の解釈に従いまして五十五年度対策においても、その面での交付税対策、財源不足対策が論じられるべきであるというふうに考えます。  財源不足額がゼロになるという資料は、形式的には地方財政収支試算によって一応出されておるというふうになるかもしれませんが、これは全く実現可能性がないものでありまして、そこにはすでに租税負担率の二六・五%への引き上げというこの数字だけがそれを支えておるわけであります。ところが、現実には五十三年度実績で、これは年度変更分を除きますと対国民所得比一九・九%でありまして、五十四年、五十五年が大体二一%台というふうな現在の見積りでありますが、仮に二一%台という数字は正しいとしましても、あと五%以上の引き上げを予定しなければこの数字は実現の保証がないわけであります。  試みに、今年度の税収見込みの内訳を見ますと、自然増収二兆百八十八億、これに対して税制改正分千百六十八億というふうになっておりまして、税制改正の進行が現実にいかに困難であるかということは、この数字を見ても容易に理解できるわけであります。租税負担率が五・五%を上回るような引き上げを行うということは、通常の時期にやった国もなければ、理論の上でもそのような状況のもとでは、租税負担率は安定するというのが財政学の基礎的な知識でありまして、そのもとで実現可能性の非常に乏しい数字をもとに、財源不足がやがて解消するであろうというふうに言うことはできないわけであります。したがって、この財源不足問題というのはこの委員会において毎年度、どのような措置をとるか、そういう審議が続かなければならないものだというふうに私は考えます。  それから次に、財源不足額算定方法についてでありますが、これは法七条による地方財政計画をもって財源不足額算定を行うということになっておるわけですが、すでにこれまでいろいろ指摘されてきましたように、財源不足額をはじく方式としては地財計画にはあいまいさが残っておるわけであります。これはすでに自治省の関係者からもいろいろな文献で指摘されておりますが、要するに、超過負担なき場合の財源不足額をはじく資料であるというふうに私は解釈しております。ところが、現実の地方団体財政運営を考えますと、たとえば社会福祉関係での人件費補助の低さということはもうすでに指摘されておりますし、実態調査を行いまして需要額と所要一般財源を比較いたしますと、社会福祉関係費、それから教育費、その他の行政費、総務費ですね、ここのところが大幅な過小算定になってくるわけです。ですから、超過負担問題を抜きにしては実際上意味のある財源不足額ははじけない。  ところが、この問題を無視するところに地方財政計画というのは成り立っておるわけですから、それをもとに財源不足額が幾らだというふうに決まっていく現在の状況は、地方団体側から言えばかなりの疑問を残しておるのではないかというふうに私は思います。収入額の残り二五%があるという考え方もございますが、これは一応単独分の財源というふうな判断をいたすとしますと、これを結局超過負担分が食うことでバランスが合うということになるわけですから、今後単独分あるいは人的サービスに関係するところの行政需要財源、こういうものが含まれていないという状態がさらに進行して、地方団体にとっては非常に大きな制限、制約条件になるというふうに考えるわけです。  では、この地財計画をどのように変えることができるかというと、これはいろいろな技術的な問題もありまして、私も現在解答は持っていないわけですが、最低限、算出を行うところの基礎数値と計算手続を公開すべきであるというふうに思います。それによって、地方団体側もそれをチェックいたしまして、そこから妥協できる方式というものを行っていくべきではないか。ベースとしては、現在まで続けてきた方式を一挙に変更するということは非常にむずかしいと思いますが、そのような方式には実現の可能性があるのではないかと考えるわけです。なお、その間において、財源不足額の算出表という性格でありますれば、府県分と市町村分とを別個に表示をするということも当然、要求されてまいるというふうに思います。  いずれにしましても、この財源不足問題を中心といたしまして、財政事情が悪いからということで財政調整はいかにあるべきかという基本的な論議が、この四、五年非常にかすんできたような印象を受けるわけで、やはりこの点については絶えず本格的な審議が必要であるというふうに考えます。  それから、財源不足対策の内容の問題点でありますが、半分償還のルールというものが一応でき上がっておるわけですけれども、これは財政調整制度として筋が通っておるのかどうかという点であります。つまり、出されております理屈というのは、国、地方が大体税収が半分だ、これが理屈らしき理屈でありますが、これほど財政調整制度として見た場合論理性を欠くものはないのではないか。額的には場合によって不足を残すにしましても筋道として、このような臨時的、緊急的な財源不足であれば、それについてどこまで国が見るのか、あるいは残りの幾らを地方が見ればいいのかという論議は当然行うべきでありまして、おおむね半分だから半々で持とうやということは、決して財政調整制度としてはあり得ない措置ではないかというふうに考えます。  それから、財源対策債の問題については、もうすでに高寄先生の方からお触れになりましたので、ここで詳しくは申し上げませんが、この解決が非常に緊急を要する、そういう状況にあることは重ねて申し上げておきたいと思います。  そこで、私はこの財源不足対策について、一年度措置によってきれいな姿に返すということは今日の状況まで進みますと不可能ではないか。五十五年度財源不足額は形の上では非常に圧縮されておりますけれども、これは五十四年分の繰り越しその他の操作によってそこまで圧縮したわけでありますし、五十五年度、これは年度進行によって、スタグフレーションの影響その他がどのような形で地方団体に影響を与えるかによって違いますが、恐らくかなりの追加財源が必要だという状況になってくるのではないか。そうすると財源不足額としては、現行のはじき方をしましても、三兆円を超えるものが残っておるということになるのではないか。  これが残ったままいっていいんだということでは、財政調整制度として非常に困るというふうに考えるわけですから、そこで、さしあたってどの程度まで財源不足額が消せるか、これは私どもには数字がございませんのでそこまで申し上げられませんが、私は投資的経費に関してメスを入れるべきである。基準財政需要額の投資的経費についてメスを入れるべきであり、事業補正、投資補正、これについてはほぼゼロになるまで削るべきではないかというふうに考えるわけです。つまりこの措置は、国の大規模な公共事業計画地方に連動するための措置であって、今日、三兆円を超える財源不足を抱えながら、そのような誘導措置がそのまま手つかずに残る、あるいは場合によっては、今年度のごとき場合には復活していくということは、私は非常に好ましいことではないというふうに考えます。  地方財政対策としては当然、地方団体の側においても財政運営効率化、こういうものを進めていくことが他方で要求されてまいると思います。地方財務制度改革というのは、その場合に当然要求される条件であろうというふうに考えますが、その中で連結決算制度などが提起されておりまして、これも重要な指摘であると思いますが、私は今日の地方団体においてかなり大がかりな決算操作を行って表面を取りつくろっておるという、このシステムをひとつ縛っていくべきではないかというふうに考えるわけです。  そのねらいが連結決算制度の中にもあると思いますが、普通会計の会計制度自体がいわゆる実質収支で押さえるという全くの大福帳でございまして、これでは財政運営効率化あるいはサービスと負担との対応関係の明確化というふうなことはできないのではないかというのが私の意見であります。したがって将来は、二重予算制度を導入をして、経常勘定は地方団体がみずからの責任で必ずバランスをとっていく、投資関係については資本勘定で行っていく、それについて政府資金が大量に入るというふうな方向に進んでいかなければ、地方財政全体としては安定を期し得ないのではないかというのが私の結論でございます。  わが国地方財政制度のがんというのは一つは、予算補助というふうな制度によって国の財源の許す限りで補助するという、このシステムが一本通っておるということ。それに交付税制度が引きずられまして、場合によっては事業補正等のような過大な算定を行うようなケースもありますけれども、経常的な経費先ほど申しました社会福祉関係費のようなこのような経費に関しては、低い補助単価に合わせた低い需要額の算出しか行っていない。つまり、予算補助制度補助金の弊害がそのまま地方交付税制度を貫徹するという形になっておるというふうに考えるわけですから、その点に財政危機をきっかけとしましてメスを入れていくということが、財政危機対策の地方団体サイドから見れば最も正しい対応の姿ではないかというふうに思います。  ですから私は、財源不足額が残るような形で予算措置をする、本来ここまで持つべきだけれども、財政事情からここまでしか持てない、そういう形にぜひしていただきたい。そのことを通して問題の合理的な解決が進むのではないか、あるいは、財政危機対策に対して本当の意味で効果のある手が考えられてくるのではないかというふうに考えます。いずれにしろ現状では、財政危機解決に向けての見通しというのは、効果のある手段は何ら立っていないということでありますから、その点に向けての各方面からの取り組みが必要だというふうに考えます。
  12. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  これにて参考人からの御意見の聴取は終わりました。  午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ————◇—————     午後一時十一分開議
  13. 塩谷一夫

    塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川省吾君。
  14. 小川省吾

    ○小川(省)委員 まず、伊藤参考人にお伺いをいたします。  厳しい財政状態の中で市政の運営に当たられておられまして、本当に御苦労さまでございます。  実は、本年度地方財政計画を見ますと、地方税の収入が一六・五%を見込んでおるわけであります。私どもは一六・五%という税収が本当に五十五年度確保できるのかどうかという疑問を実は大変持っておるわけでありますけれども、特に参考人は税調にも関係しておられるようでございますので、ぜひこの点についてお考えを伺いたいと思います。
  15. 伊藤龍太郎

    伊藤参考人 ただいまの御質問でございますが、そのパーセンテージが果たして確保できるかどうか、われわれも確たる自信があるというわけでございません。  税調等におきましても、その地方税の増収という問題を今後の財政措置の一環としてはある程度はじいていかなければならぬというところでそういう数字が示されておりますが、今後経済情勢が一体どういうふうになっていくのか、オイルショック、ことに最近のイランの問題等ございますから、全く不透明な経済情勢の中にありまして、これに対しましてはいまのところ、それは絶対自信がありますということをわれわれも申し上げにくいのでございます。ただ、そういうような期待感のもとにわれわれの地方財政計画を立てざるを得ない、こういう状態にあるということしか答弁申し上げられません。
  16. 小川省吾

    ○小川(省)委員 各先生方から地方交付税法の六条の三の二項についてそれぞれ御意見が述べられました。  自治省がとったいわゆる特別措置というのは、この六条の三の二項に該当する措置だとは私ども決して思っておらないわけであります。しかしながら、私どものいろいろな主張なり攻撃に対しまして自治省のガードも大変かたいわけなんでありますけれども、なかなか突き崩していくわけにはまいらないのが実情でございます。あるいはまた、三二%から四〇%にすべきであるという御主張もいただきましたが、私どもそういう国債発行下の現在の時点では当然そうすべきであるということを主張しているわけでありますが、もう少しこれらの点について御説明をいただきたい。どういうことでこの特例措置が六条の三の二項の違反である、こういう点をもっと明確な論点から反駁をするような点をぜひお示しをいただきたいと思っております。この点について、井手参考人あるいは高寄先生、それから古川先生にそれぞれお願いをいたしたいと思っております。
  17. 井手文雄

    井手参考人 お答えいたします。  交付税特別会計への借り入れという便法が講ぜられておりますけれども、あれは地方交付税法の例のあの規定に違反するかどうかということでございますが、先ほどからもいろいろお話がございましたように、引き続きまして数年間にわたりまして著しく交付税の金額が満たないということでございますので当然、交付税率引き上げをやるかあるいは制度改革をしなくてはならない、こういうことでございます。  それで、交付税特別会計資金運用部から借り入れて、そして交付税支出する。ただし、それは借り入れでありますからいずれ償還をしなくてはならない。その償還を将来する場合においては、本来は地方がやるべきでありましょう、筋道から言えば。しかし国が半分を負担する、こういうことになっておりまして、たとえば五十五年度借り入れにつきましては、これは六十一年度からですか、それまで据え置きまして、七十年度まで十年間にわたりまして償還をするということで表ができておるわけであります。国の方から特例交付金として六十一年度から七十年度まで毎年これだけ負担をする、それから地方分は地方としてこれだけ負担をするというふうに各年度ごとに表ができておりまして、それが交付税法のいわば規則としてきちんと明記されておる、こういうことでありますので、それがつまり制度改正といいますか改革である、こういうことで、地方交付税法に違反しないという解釈のようでございますけれども、考えてみますと、あの場合の制度改革ということは、そういうように多年にわたって引き続いて多額の交付税不足ということでございますので、根本的にそういう不足を解消するような制度改革をやらなければならない、こういうことだろうと思うのですね。その法のたてまえから申しますとそういう改革が要求されておる、こういうことになろうかと思います。  ところが、ずっと見ますと、同じような措置が数年来毎年続けられておるわけであります。毎年交付税特別会計借り入れというものが行われておる。ということは、各年各年いわばその場限りの対応策をとっておって、基本的な制度改正が行われていないという解釈が成り立つわけですね。一たび改革が行われるならばそれでずっと今後、ことさら毎年毎年そういう制度を新たに採用するという必要はないわけなんです。ところが、これで見ますようにほとんど毎年のようにそういうのが行われて、昨年も一昨年も本年度、五十五年度も行われておるということは、つまり制度改正が行われていないから毎年毎年同じような問題に逢着してそのときそのときの手を打っていく、こういうようなことになろうと思いますので、本来の意味における制度改革ということではないと思うのですね。制度改革ならば、一度手を打てばずっとその後数年間そのままでいけるわけです。それでその矛盾というものが一応は解決されていく。状況が変わってくればまた新しい制度改革なりで対応しなければなりませんけれども、毎年毎年同じような措置をとっていくということは、実は制度改革が行われていない、こういうふうに解釈することができると存じます。  それからまた、たとえば今年度につきましては、六十一年度から七十年度にかけまして国と地方償還負担額がずっと明記されておりますけれども、それは六十一年度から七十年度までの償還計画が表として出されておるので、数年間でありますけれども、いわば臨時的なものですね。ですから、いろいろな意味におきまして、そういう制度解釈あるいはまたそういう制度改革を要求する法の精神というのは、基本的にそういう交付税不足の矛盾を解決するような制度改革ということでありましょうから、それをねらっておるわけでありますからして、そういうたてまえ、精神、そういう点から言いましても、最近行われておりますところのやり方というものをもって制度改革である、こういうように解釈するのはかなり無理ではなかろうか。ですから、これを続けていけばまた来年度も同じことをやっていくわけなんです。次の年度も同じことをやっていくわけですね。結局、制度改革を行わないで毎年毎年その場限りの手を打つ、それを積み重ねていくということになるわけです。  そうして、このことはつまり先ほど申しましたように、国及び地方において実際に国債及び地方債増発したことになるのです。後代国民及び住民に対して負担ツケを回すということですから、国債地方債の発行と同じことでありまして、同じに将来の国家財政及び地方財政の硬直化を来すわけです。公債費あるいは国債費の比重が非常に高くなるわけです。これは先ほど申しましたような大蔵省が提出されました二つの仮定計算、国債整理基金に関する仮定計算及びもう一つ国債償還額国債の残高、利払い費に関する仮定計算、そういうものをつぶさに見ますと、後代にわたって国債費が非常に増加してくるわけです。地方財政も、地方財政収支試算を拝見いたしますと同じようなことが言えるわけです。それは根本的な改革が行われていないからそうなんですね。毎年毎年同じようなことを今後も続けていくということは、ますます国家財政及び地方財政を硬直化させていく。国債費のウエートを高めていく。そうしてそのことは、財政の再建ということにはならないわけでありますからして、いつかは思い切ってそういう見せかけの健全化、借金依存というような方法を本来は断ち切らなければならない、こういうふうに思います。そういう点から言っても、現在のやり方を制度改正である、こういうように無理な解釈をするよりも、そうではないのだ、もっと基本的な制度改革をすべきであるということでなければならない、こういうふうに私は存じております。
  18. 高寄昇三

    ○高寄参考人 交付税の現在の特例措置制度改正に当たると言うのは非常にむずかしいのではないかということは、一つは、交付税特例措置というのをずっとさかのぼって見ておりますと、昭和三十年にたばこ専売特別地方配付金というのが特例措置で挙がっておる。それから三十一年、三十五年、三十七年とずっと五十年まで毎年のように行われておりますけれども、大体百億とか多くても三百億とか、総額でも一千億以下でございます。ところが、五十年からは一兆円を超えるような特例措置が行われているということです。こういう特例措置というのはあくまで従来の経過から見ましても、数字で言えば一千億以下の過不足の微調整を国と地方財政で行うということでありまして、このような巨額の貸し借り勘定とか財源移転を行うということは、こういう特例措置の範囲を超えているのではないかということです。  こういう巨額の特例措置を行っているのだから制度に該当すると実質的には言えると言うと思うのですけれども、しかし、交付税の基本的な考えから見ますと、このような巨額の特例措置というのは恐らく想定していないのではないかと思います。条文を見ますと、地方行政に係る制度改正とか地方財政に係る制度改正というこの地方財政に係る制度改正というのは、恐らく税源の新設とか譲与税の大幅な創設とか、そういうことを想定しておると思うのです。それから地方行政というのは、大口のいわゆる事務再配分ということで、こういう交付税の中の貸し借り勘定で行っているというのは、あくまで条文の解釈から見ますと妥当しないのではないかということです。  それとあと一つ交付税が、このように国と地方財源不足を計算しまして、過不足が多い少ないは別にしまして、仮に一〇〇%補てんするというシステムが完成されますと、個々の地方団体にとって不足額を全部挙げて国に依存するというような地方財政の運営のムードが形成されるのではないかということです。こういうことは交付制度の場合に非常に問題になった制度でありまして、これは交付税というよりかむしろ交付制度への逆戻りということです。そういうことですから、多い少ないは別にしましても、交付税という制度の枠内では、交付税率を改定するというのが法律の精神に沿った行き方だと思うわけです。  問題は、交付税制度というものを余り中心にして考えるというのも非常に問題があることはあるわけです。地方財政というのはやはり地方税源というのを主体にして行われるということが基本でございまして、交付税ですべての財源調整と保障をカバーするというのは、技術的にも不可能だと私は思うわけです。そういう面では、地方自治体の課税権というのをある程度拡張して期待せざるを得ないのではないかということです。市民とかそういうことについては非常に厳しいような制度になりますけれども、現在の負担制度というようなものをもう少し弾力的に運用できるような形にしなければいけないだろうと思います。  交付税税率の上げ幅が何%かは人によって計算基準が異なると思いますけれども、交付税率を一度上げまして、そういう固定した財源の中で地方自治体は、税源なり受益者負担なりサービスの圧縮をするとか、あるいは財源が多少余裕があった場合は基金をプールするとかいうことで、けじめのある地方財政の運営をしていくという意味においても、交付税率引き上げで行い、このような特例措置というのはできるだけ早い機会引き上げの形で消滅さすということが非常にいいのではないかと私は思います。
  19. 古川卓萬

    古川参考人 六条の三の二項の解釈は、五十一年度までは一応すっきりしておったというふうに思いますが、問題は、五十二年の臨時措置を行いましたときに、制度改正というのは本来の趣旨としては、構造的に生じている地方財源の過不足額を解消できるほどのものでなければならないという解釈を一応残しながら、しかし制度改正については、いかなる内容の地方行財政制度改正を行うべきかについては法律は広い選択を許しているのであってという自治省と内閣法制局との統一見解ということで、五十二年度状況もまた制度改正であるということになりまして、この六条の三の二項に関する解釈が非常に緩んできたというふうに私は理解しております。そして五十二年度措置にかわって五十三年度に当分の間ということで附則八条の三が制定されまして、これで形式的につじつまが合ったというふうになっておる、そういう印象を受けますが、私は内容としては五十二年度状況がそのまま今日まで続いておる。したがって、この財源不足額をいかなる手段で解消するか、形式的に残っております財源不足額をいかに解消するかということが本格的に論議されなければならない。そのための手段としては、地方税の増収もありましょうし、交付税の需要額算定方法の改正ということもありましょうし、いろいろなことが考えられると思うのでありますが、要するに、二兆円あるいは三兆円という巨額の財源不足額が形の上で残りながら制度改正を行ったんだという主張は、本来の六条の三の二項の解釈としては明らかに逸脱したものではないかというふうに考えるわけです。
  20. 小川省吾

    ○小川(省)委員 北野先生にお伺いをいたします。  大変失礼なんですけれども、興味をそそられる御提言をいただいたわけであります。市町村ですべての税を徴収をして県や国に上げるとか、あるいはまた、財政資金交付制度を創設をするというような御意見をいただいたわけであります。財政資金交付制度についてもうちょっと御説明を受けたいと存じます。
  21. 北野弘久

    北野参考人 お答えします。  私は法律学の専門家でありますので、法律学上の理念として少し大胆にディレクション、方向づけを申し上げたのでありまして、現実の制度であるとか現実の問題としては、そういう方向を考えながらどこまで可能であるかという、そういう観点に立って議論を進めるべきだと思いますのですが、一応憲法ないしは法の理念からいきまして、そういう方向づけを押さえた上で、現在の混迷した地方行財政制度を抜本的に改革すべきである、そういうことで申し上げたわけです。  そこで従来、日本の明治以来の制度の基本的な姿勢というのは、主なものは全部国が取ってしまう、そして余ったものをというか、余りはしませんけれども、国から若干権威づけて地方に上げますという姿勢の立て方になっておるのを、この際変えるべきじゃないか、そういうことを申し上げたわけでありまして、憲法の地方自治条項は明治憲法になかった条項でありますけれども、地方自治というのは、単に統治機構の観点から地方自治体の問題を考えていくのではなくて、私からしますと、憲法の人権条項の中で最も大事なのは地方自治条項であると考えております。地方自治というのは、まさに現代における社会の人権を擁護すべき最も基本的なベーシックな法技術である、つまり、地方自治制度自身がまさに現代的な最もすぐれた人権条項であるという発想で考えておりますので、そういうことを考えた上で財政の仕組みを考えるべきじゃないか。  いきなり全部市町村でやるということはむずかしいと思いますけれども、市町村というのは最近では相当自立してきております。しかし、何といっても人々と密着した基礎的な自治体でありますので、町の角のたばこ屋さんのおかみさんの顔が目に見えるという、そういう密着したところでフェアに、公正に行政を行ってもらう。その一環として税金も取ってもらって、地方によっては富裕な団体とそうでない団体がありますので、一定の基準で取ったものを余るところは県へ、さらに国へ持っていくという形で、国はむしろ地方からいただくという形で、そういう発想で考えるべきじゃないかという一つの方向づけを申し上げたわけです。これはあくまで法律学の観点からの理念でありまして、そういう方向に立った上で、現段階でどこまで可能であるかということを御検討願いたいという趣旨で申し上げました。  それから財政資金交付制度というのは、現行制度を前提にした場合におきましても、たとえば東京都などは外国からお客さんが国賓として来るという場合、その場合の護衛の警察官というのは東京都の警察官が当たるわけでありますし、あるいは、交通が非常に渋滞してそういう人のためにいろいろな万全の措置を都でやらなければいけないという費用は、自治体の本来の費用ではなくて国のお客さんの費用でありますから、こういうものは地方交付税制度の枠を越えるのではないかと私は考えておりますので、こういうものにつきましては、特別の財政資金というものを国は当然の義務として負担するという、そのための特別立法というものを制度化しておく必要があるのではないか、こういうことを申し上げたのであります。
  22. 小川省吾

    ○小川(省)委員 古川先生にお尋ねをいたします。時間が参るようですから簡単で結構です。  人は言うわけでありますけれども、現状のような不交付団体が都道府県で一つ、あるいは市町村で五十幾つかというような状態で、すでに地方交付税制度は耐用年数が終わったのではないか、こういう意見があります。この辺で新たな制度改正すべきではないかというような意見があるようでありますが、この点についていかがお考えですか。
  23. 古川卓萬

    古川参考人 地方交付税制度、不交付団体状況はまさに御指摘のとおりであって、地方団体三千三百のうちわずかに六十足らずの不交付団体ということでは、財政調整が目指しております本来の姿から非常に外れてきたというふうには考えております。ただ、それを解決していく方法としては、地方税源の充実を図るということで一応の見通しを立てることはできるのではなかろうかというのが私の解釈でありまして、これは制度のすげかえというふうなことが非常にうまくできるかどうかという問題も含まれておりますので、たとえばイギリスであるとかそういうふうに需要額に余り踏み込まない、租税収入の面だけの調整を行うというふうな方法もあるわけです。今日まで続けてきた財政調整制度に特に市町村の場合には完全に乗っかる形で動いてきておるわけですから、ここで大きく普通交付税の配分が変わるような改正を行うということは無用の混乱を招くことになるのではないか、それをやらなくとも交付税制度の再建というのは可能ではないかというふうに考えるわけです。
  24. 小川省吾

    ○小川(省)委員 時間ですから、終わります。
  25. 塩谷一夫

    塩谷委員長 次に、小濱新次君。
  26. 小濱新次

    ○小濱委員 市長さんやらまた各先生方には、御出席をいただきまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。  まず、横浜国大の井手先生に最初にお尋ねをしてみたい、こう思います。  先生のお話の中で、税源の再配分の必要性を言われておられます。どういう形で行うのがよいのでしょうか、こういう機会でございまするので、これはもう率直にひとつ具体的にお示しをいただければ幸いと、こう思います。  先生にもう一つの御質問は、交付税拡充強化に対するお考えでございます。先ほどいろいろ伺いましたが、これもぜひお聞かせをいただきたい、こう思いますので、以上の二点についてお願いをいたします。
  27. 井手文雄

    井手参考人 お答えいたします。  最初に、税源の再配分でございますが、これは先ほども申し上げましたように、国と地方団体との間の税源の再配分が必要であるということでございますが、ただ、現在の状況におきましては、単に税源の再配分だけでは国と地方とを通ずる税収全額には関係ございませんのでありまして、全体として不足しておる現況におきましては問題の解決にはならない。ですから、その前に増税ということが一つ考えられるということを申したわけでございます。ただ、増税と申しますと誤解を招くかもわかりませんけれども、その増税の内容等等につきましては、いま問題の外にございますので差し控えますけれども、とにかく、そういうことを前提といたしまして、国と地方との間の税源の再配分は必要であるというふうに存じます。  現在、交付税を受けておる地方団体というものがほとんど大部分でございまして、都道府県では東京都だけでございますが、市町村では三千何百のうち、先ほども申されましたように五、六十でございますか、あとは全部交付団体になっておる、こういうことでございます。ほとんどすべての地方自治体交付金を受けておるということは要するに、交付税が少な過ぎるというよりも、地方自治体自主財源であるところの地方税が少な過ぎるというふうに思うわけなんです。これがもう、ほとんど大部分のものが交付税に頼らざるを得ないということになるわけなんです。ですからして、地方自治体に対して税源強化しなくてはならないということは、現状から見ますと、国税及び地方税合計しました金額のうちの大体三〇%ぐらいが地方税収入であり、七〇%ぐらいが国税収入ということになっておって、しかし結局、交付金、譲与税あるいは各種補助金、国庫負担金等々が国から地方支出されますので、結果的に税金を支出するのは、国の方が三〇%で地方の方が逆に七〇%であるという逆の形になっておるわけです。ですからして、こういう関係を断ち切って、地方が使うべき税金は国を通して受け取らないで、初めから地方自主的に徴税する形にした方がいい、こういう点から言いましても、国から地方への、あるいは、国と地方との間の税源の再配分ということが非常に必要だろうと思います。  ただ、そうは言いましても、お尋ねのように実際にどういうようにしたらいいか、具体的にどういう税金をどうしたらいいかということになりますと、これは非常に重要な問題で、またむずかしい問題であります。  所得税というのがございます。それからまた住民税というのがございます、個人住民税。まあこの個人住民税というものは、単なる所得税じゃないんだ、地域共同体の会費であるという解釈が強く行われておりますので、所得税と個人住民税とを一緒くたに論ずるということには御批判もあろうとは思いますけれども、考えてみれば、個人所得を課税標準といたして国が取るか地方が取るかということですからして、理論的には同じような税金である。ですから、そういう個人所得課税、現実には国の所得税、あるいは、地方の個人住民税、つまり府県住民税及び市町村住民税、この個人所得課税というものが一つ浮かび上がってくるのでございまして、この個人所得課税を中心として国から地方への再配分をするということが一つ浮かび上がってまいります。  それからまた、もう少し細かく申しますと、法人所得課税というものがございまして、国の場合においては法人税というものがございますし、あるいはまた、府県においては法人に対する事業税というようなものがございます。それからまた、府県と市町村におきましては法人住民税というようなものがそれぞれございますが、いずれもこれは結局法人所得課税になるわけです。法人税割というのも結局、究極は法人所得を課税対象にしておる。この法人所得課税の再配分も非常に必要なわけですね。  ある地点、地域におきまして、ある市町村あるいはある府県におきまして、その地域から取り上げられる法人所得課税というものを見ますと、いま突然でございますのでちょっとあれですけれども、国税として国のふところに入ってくるのが、もしこの数値が間違っておれば御訂正をお願いいたしますが、六十何%ぐらいでございますかね、それから府県のふところに入ってくるのがたとえば二十何%ぐらい、それで結局市町村は一〇%ぐらいになりますかね、とにかく、圧倒的に国が取るのです。その次は府県が取るのです。一番おこぼれをわずかにもらうのが市町村段階である。それが市町村財政を非常に苦しくしておることになるのでありまして、これも大きく変えていく必要があるのではなかろうかということが考えられます。  そういうように国と地方との間において、いまこれだけのことを申しましたけれども、なお具体的にどういうような税源をどうしたらいいかということは、いろいろの学者によっていろいろの説が出ておりましょうけれども、必ずしも現時点においてこうだという定説はないと思うのです。要するに一番大きいのは、所得税、住民税を一緒にした個人所得課税というものを踏まえまして、それを中心にしてこの再配分をやるということが一つございます。  それから二番目の御質問は、交付税拡充強化ということでございます。初めに詭弁のようでございますけれども、交付税が確かに足りないわけですね、しかしまた考えようによりますと、交付税が足りないのじゃなくて、足りないのは先ほど申しましたように地方税が足りない。地方税が足りないから交付税で補っておる。ほとんど大部分の地方自治体交付税で食っているということになるわけですね。大阪であろうと横浜であろうと富裕団体をも含めまして、東京都を除くほとんど全部の地方自治体交付税で食っているということは、ある意味においては、交付税が多過ぎる、逆を言えば地方の税金が少な過ぎる。ですから、交付税拡充強化する、東京都にも交付税をやればいいじゃないかということではなくて、交付税拡充強化する前に、地方自治体自主財源の最大なものである地方税制度強化拡充をまずしなければならない。それが先なんです。それを留守にしておいて交付税拡充強化というのは、本末転倒ではなかろうかと私は思っております。  しかし、それでは交付税はそのままでいいかというとそうじゃない。いかに地方税強化いたしましても地方自治体は、富裕団体もあれば貧困団体もありましてそれぞれ事情が違っておりますので、そういう地方団体間の財政調整はやはり必要でございます。そのときに交付税制度地方財政調整制度というものはぜひとも必要なんです。幾ら地方税源強化いたしましても、貧困団体においてはナショナルミニマムを実現することはできないわけです。だから貧困団体は、交付税によってナショナルミニマムを実現していかなければならないし、富裕団体は、できるだけ自主財源であるところの税金でやっていかなければならない。それでもなお足りないときは交付税でいく。富裕団体地方税で、貧困団体交付税でという形に持っていくわけです。  いまは税源の配分がアンバランスで国の方に多いのです。ですから、富裕団体交付税で食っているわけです。つまり、そういう地方税制になっておるから、自分のところの潜在的な税収能力を現実の課税によって税収にすることができずにいるのです。そこのところを税制改正によって、富裕団体はそれなりの税金をもっと上げるようにしていく。貧困な地方団体は、幾ら税制改正をやったって、もともと貧困ですから収入はふえない。それは交付金で行う。自前でやっているところは自前でなるべくやれるようにするのが、国と地方の間の税源の再配分の一つのポイントであります。  ですから、現在よりも不交付団体をできるだけ多くするわけです。そして交付団体は比較的貧困団体でいかなければならぬということです。ですから、単純に交付税拡充強化しろということだとちょっと誤解を招くわけですね。そういうふうな手を打った上で、しかもなおかつ、ナショナルミニマムを実現できないような地方団体に十分な財源を与えるような交付税制度確立しなければならない。  そういう意味において、交付税制度の合理化といいますか、三二%を引き上げるのは、現在の税源の配分状態を前提とすれば足りないわけですから、四〇%にあるいはすべきであろうと思うのです。しかし、そういる税源の再配分をすればあるいは三〇%でいいかもわからない、そのときの状況によって交付税率も変わってくると思うのです。三二%を四〇%にするというのは現実を踏まえての議論なんですね。現実を変えなければいけない。しかも交付税制度は必要だ。そういう新しい交付税制度における交付税率は幾らかということは、そのときの状況を踏まえて何%にするかということになろうと思います。  それからまた、拡充強化と申しますか、現時点におきましては所得税、法人税、酒税収入額の三二%に相当する金額が交付税財源になっておりますが、税率もさることながら、三税の一定割合ということがいいかどうかということも問題ですね。所得税と法人税はその収入の所得弾性値が非常に高いわけですから、景気のいいときには金額がふえる、景気が悪くなるとがたっと金額が減る。ですから、好況期になってインフレの心配があるときに、地方自治体も緊縮予算を組まなければならないときには交付金額が非常にふえてきますから、つい放漫予算を組むということになってインフレを激化することになるし、不景気時においては、交付金額が非常に減るわけですから、地方自治体予算はますます収縮せざるを得ない。これはやることもやれないということと同時に、景気をますます悪くするという反景気政策的な性質を現在の仕組みは持っておるわけです。  ですから、収入が非常に不安定なんですから、それを安定化するためには、国税全体の一定割合というふうに変えるか、あるいは国税プラス国が発行する建設国債、第四条債の発行額を加えるか。これは国が建設工事を行えば地方の公共土木事業もふえるわけでありますので、国が積極的に公共事業を行えば行うほど地方財政は苦しくなるわけです。そのためには、国税プラス建設国債発行額の一定割合ということになれば、その国債発行額の一定割合は地方へ行くわけでありまして、地方の公共投資の財源になる。そういうようなことも一つ交付税制度拡充強化といいますか合理化について考えられるわけであります。  それから、先ほどどなたかがちょっとお話しになったかもわかりませんけれども、交付税交付率をある程度高くして、好況期におきましては交付金額が非常にふえて、それを全額地方に渡せばさっき言ったようにインフレを刺激することにもなりますから、景気調整基金をつくりまして、そういうときには一定の余剰金額を繰り込んでおく、そして、不況期において交付金額が非常に少なくなって地方財政が苦しいときにはそれを取り崩していく。そういうことで、地方財政の運営を合理化すると同時に、景気調整にも役立たせるという景気調整基金的な制度を設ける。ただし、だれがそれを操作するかということになると問題でございます。調整基金の運営の責任者は、やはり大蔵省でなしに、自治省が主体性を持つか、あるいは、地方自治体委員会か何かそういうところで、地方の側に立った、地方自主性においてそういう調整基金を運営する。そういうことも一つ考えられるのではなかろうかと存じます。いろいろございますけれども、一応この辺で……。
  28. 小濱新次

    ○小濱委員 大変に貴重な御意見をありがとうございました。  私は次に、高寄先生に御質問をしたいと思いますが、先生のお話の中で、三分の一以上の不交付団体がなければ交付税財政調整機能は果たせない、このようにおっしゃっておられました。その場合、地方税の充実が必要と思われますが、その具体的な方向づけをこの際率直にお聞かせをいただきたい、こう思います。よろしくお願いいたします。
  29. 高寄昇三

    ○高寄参考人 交付税拡充する以前に地方自治体側としては、地方税源の充実が先決であると思うわけでございますけれども、現在の税制体系では、ほとんどの伸長率のいい税源というのは、国、府県、市町村が重複して課税しているというような実態でありまして、ですから法人税は、全部三つの団体が課税しているというようなことで、新たにそういう税源の中へ入っていって、ことに地方団体市町村税源引き上げるというのは私は、方向としては言えましても非常にむずかしいのではないかということです。  そうなってきますと残っているのは、市町村の独自の財源としての固定資産税だと思うのです。この税源を一挙に巨額にふやすというのは、一応望ましいことですけれども、現実的には非常にむずかしいとなりますと、非常に小さいようですけれども、順番にそういう税源を百億単位のものを多く重ねるということになると思います。  具体的には、固定資産税というのは市町村の場合、どこからも介入されない一つ特例措置と私は思うわけですけれども、この固定資産税が低いか高いかという実態ですけれども、カリフォルニアでああいう減税運動がありましたけれども、日本の場合はやはり低いのではないかと私は思うわけです。これは法人、個人を含めまして低い。どうしてかといいますと、以前は住民税が四に対して固定資産税は六という比重を占めていたわけですけれども、現在はこれが逆転しているわけです。そういうことですから、少なくとも対住民税の率でその比率を逆転するまで上げるということは、非常に一つの方向づけとしていけるのではないかと私は思うわけです。  現在地価が非常に高いということは、個人も法人も含めまして、不動産を持っている人はきわめて有利な経済状況にある。同じサラリーマンでも、たとえば民間のアパートに入っている人と自分の持ち家を持っている人とでは非常に差がある。法人も、かつての高度成長以前に不動産を持っているところは、きわめてインフレストックというのは大きいと思うのです。これは具体的に申しますと、個人の住宅の小宅地減税というのは、これは民間のアパートに入っている人と比べまして、四分の一はやはり行き過ぎではないかと私は思うのです。少なくとも二分の一で十分ではないかと思うわけです。  それから非課税措置というのはきわめて多過ぎるのではないか。固定資産税というのはむしろ、水道とか交通とか道路整備とかそういうものに対する分担金的なものでありますから、たとえば貿易の振興とか、地域産業とか、教育とかというもので余り非課税措置を多く導入するというのは、固定資産税としては非常に問題があるのではないか。高速道路の課税の問題も現在、交付金のような形で片づいておりますけれども、本来から言えば課税の対象であるべきだと思うわけです。こういう固定資産税の独自の税源確保する。  それから、交付税制度とか一般の地方制度の限界というのはどうしても技術的にあると私は思うのです、ことに人口急増のような市町村にとりましては。私が以前から言うておりますのは、現在市町村が非常に苦労しております宅地開発者負担という問題ですけれども、これはやはり制度化して、たとえばたんぼを宅地にかえた場合に地目が変わるわけですけれども、こういう地目転換税というのは認めるべきだと思います。現在宅地開発要綱でやっておりますけれども、一戸建てというようなものについてまで追っかけるというのは非常にむずかしい。こういう場合は、海面の埋め立てなんかも、既存の社会資本に乗っかかって開発利益を吸収しているわけですから、こういう海面埋め立てについても、やはり地目転換税とか宅地造成税とかいうようなものを課税すべきだと思うのです。  まだほかに言えますことは、電話なんかは、自己の所得についてのかなり弾力性の高い収入の捕捉の形でありますし、しかもこういう電話税というのは全国に普遍的にあるわけです。これは電気、ガス税なんかとの関係で住民の日常生活を圧迫するというようなことがありますけれども、現在の地方財政の料金の引き上げを見ておりますと、いわゆる定時制の夜間の高校の料金まで上げてきているわけでして、余り料金というものに依存するよりか、多少基礎的なサービスについての負担がふえるようであっても、税で集めていく方が正攻法ではないかと私は思います。  それから、現在三十万以上で取っております事業所税というのも、私は一般税化すべきだと思うわけです。そういうことですから、固定資産を中心とした開発利益とかそのような問題で、地方財政の独自の税源を見出すべきだと思います。こういう問題は、市町村財源が裕福になるということは、府県の交付税財源が浮くということで、決してこれは市町村だけの税源拡充にとどまらないというような状態でありますので、府県税そのものは、やはり中心である事業税の外形標準課税とか、これは一般消費税の問題がありますから早急にはむずかしいとは思いますけれども、特に財政上貧困を強いられておる市町村については、固定資産を中心とした保有税としての固定資産税と、開発利益に伴う負担金を税源化するという二つの方法で拡充していくべきだと私は思います。
  30. 小濱新次

    ○小濱委員 時間の都合で御質問のできなかった先生方におわびを申し上げる次第でございますが、きょうは大変貴重な御意見を拝聴いたしました。当委員会としても個人としても、大いに取り入れて今後努力していく考え方でございますが、きょうの御労苦に対しまして心から厚く御礼申し上げまして、私の質問を終えたいと思います。
  31. 塩谷一夫

    塩谷委員長 次に、安藤巖君。
  32. 安藤巖

    ○安藤委員 どうも参考人方々御苦労さんでございます。  いろいろ貴重な御意見をいただきましたが、二、三補足的にお尋ねをしたいと思います。  最初に、川西市の伊藤市長さんにお伺いしたいのですが、地方交付税税率引き上げに加えて、地方交付税の対象になっている税目、国税三税のほかにもっと加えてほしいという御意見があったかと思いますが、それは具体的にどういうものをお考えになっておられるのだろうか、お伺いしたいと思うのです。  それからもう一つは、基準財政需要額算定強化を図られたいという御要望を言っておられたのですが、それは申すまでもなく、単位費用の問題とか補正係数の問題とかじゃないかと思いますけれども、具体的にどういうことをお考えになっておられるのか、地方団体の代表という格でもお見えになっておられるわけですから、その辺をお伺いしたいと思います。
  33. 伊藤龍太郎

    伊藤参考人 お答えいたします。  われわれの要望としてかねてから、交付税率のアップとともに、対象税目拡大をお願いしているわけでございますが、これは新税の創設という問題とも関連がございまして、現在あります税目に対しましてこれといった具体的な対象を考えているわけではございません。ただ、交付税対象税目ともなりますれば、相当大型税目でないことには余り効果がないことになってまいりますが、かねてからいろいろ一般消費税という問題も話題にのっております。そういう問題も、その当時においては構想として考えながら、対象税目として加えていただきたいという構想をわれわれとしては考えておったようなことでございます。  第二番目の算定強化という問題でございますが、現在におきましても基準財政需要額算定につきましては、建設事業につきましては相当高く標準がとられておるわけでございますが、福祉事業の問題、たとえば保育所といったものに対する経営の問題等につきましての算定というものは、非常に低いわけでございます。また地域の特性、たとえば人口急増都市等に対しまして人口急増補正等がございますが、これも人口急増都市の抱えます財政の必要な上昇に対しましては算定基準がまだ低いではないか、こういう感じを持っているわけでございます。そういう意味におきましての算定強化をわれわれは唱えておるわけでございます。  以上でございます。
  34. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもありがとうございました。  次に、北野先生にお伺いしたいと思います。  これまたいろいろ貴重な新しい御意見もお伺いいたしまして、感謝しておるところなんですが、最初に、地方交付税税率三二%を四〇%にすべきだとおっしゃっておられたのですが、いろいろ国の財政難云々というお話もよく出ておりまして、三二%を四〇%にすることについてはなかなかむずかしいのではないかという議論もあるわけです。これはいまもお話がありましたけれども、税の新設ということもなくて四〇%に引き上げることが可能なのかどうか、あるいはそうではなくて、税金を新設した上での話なのかどうかという点についてお伺いしたいと思います。それが一点です。  それからもう一つは、地方財政委員会と協議会のお話をお伺いしたのですが、大体わからぬでもないのですが、地方財政委員会と協議会の違いは一体どういうところにあるのか。それから、いろいろ地方制度調査会等々で議論をしておるのですが、地方財政確立の問題については、たとえば大蔵省サイドからの財政問題を中心にしたいろいろの問題が出てきてなかなかはかばかしくない。そうなりますと、地方財政委員会というのは相当権威があって、大蔵省もその結論には従わざるを得ぬのだというようなものでなければならぬのではないかという気がするのですが、その辺のところはどのようにお考えになっておられるのかということです。  もう一つは、起債のお話がなかったのですが、現在これは御承知のように、政府の許可制度になっておるわけです。この許可制度を引き続き続けるのが妥当なのか、これは取り払ってしまうべきなのかということを、先生は法律の専門家でもあられるものですから、その辺の視点からお伺いできればと思います。  それから、地方財政の問題については、再建、民主化のお話がございまして、納税者の監査あるいは監視制度というのがあるけれども、国の関係ではないじゃないかという御指摘がございました。私も全部知っているわけではございませんが、たとえば会計検査院というのもあるわけですけれども、そういうものではまだ十分ではないのだという御意見かとも思われるのですが、その辺の構想はどういうふうに考えておられるのかをお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、中村(弘)委員長代理着     席〕
  35. 北野弘久

    北野参考人 お答えします。  非常にたくさんの問題がありますので、簡単にお答えできるものから順番に申し上げていきます。  まず第三番目の起債の問題からお答えします。私は起債の問題につきましては、現行法の解釈論の新しい構成の問題と立法論の問題と両方に分けて議論をしておるのですが、解釈論としましても現状打開は可能であると考えております。  というのは、財政権は本来、立法権でありますので、自治大臣の許可を受けることになりますと、行政権が財政の問題について許可を与えるということになりますと、行政権が財政権の行使を行うというふうになります。しかも起債というのは、財源配分の問題は結局は、合法性コントロール、リーガルなコントロールに親しまないものである、客観的な法規範のもとで厳格な覊束を行う、そういうことができない性質のものでありますので、現在の許可制度規定は、もし合憲的に解釈するとするならば単なる訓示規定である。自治体は許可制度規定を無視してでも、地方議会の予算の議決によって適法有効に起債はできる。法的には一々自治大臣の許可を受けなくても、地方議会の予算手続によって適法有効に起債が可能である、そういう法律論を展開しております。  これは一番大きな前提は、憲法には本来、自治体に固有の財政権を与えておるのだ、そういう自治体財政権の法理の一環として、現行法の地方自治法二百五十条の規定を合憲的に解釈した場合には、そういう解釈論も可能になってくるのだ、そういう議論を展開しておりますし、財源配分の問題は本来、合法性コントロールに親しまない、法の規制に親しまない性質のものである、こういう幾つかの論点を前提にしてそういう議論を展開しております。  立法論としましては御指摘のように、許可制をやめまして届け出制にする。地方議会はすでに戦後二十数年間の経験を持っておりますものですから、何といっても住民の代表機関でありますので、法的な議論としましては、その議会が本年においては起債が必要である、そういうことを決定するだけで法的なコントロールとしては十分でありまして、それを国全体の観点から一応国は知っておくということも必要でありますので、報告させるという報告制だけでいいと思うのです。地方自治法その他の法律では大枠だけ決定する、どういう場合に起債ができるかという起債条件であるとか、適債事業などの要件だけを決定するだけでよろしいのでありまして、一々個別的な許可をやるということは必要ではない、そういうふうに考えておりますので、立法論的には届け出制ないしは報告制で足りる、こういうふうに考えております。  それから一番最後の四の問題でありますが、これは現在、会計検査院制度があるのですが、私が言っていますのはアメリカのタックスペイヤーシュート、あれはもっぱら主観訴訟として法律学的には訴訟の性格は考えられておるのですが、日本的な風土では客観訴訟としてタックスペイヤーという地位に基づいて、広く納税者、主権者である国民が国の行政のあり方についてコントロールを加えることを保障する、最終的には裁判という形でそれを保障する、そういうことを考えているのですが、こういう制度は現在ございません。  いきなり裁判に持っていくわけにいきませんので、国の行政の面で取るべき税金を取っていないのじゃないか。たとえば田中元総理大臣の税金を国税庁は十分取っていないのじゃないか、あるいは、ロッキード事件の関係者について十分国税庁は税務調査をしていないんじゃないか、そういう疑問がタックスペイヤーとしてあった場合には、そのことをまず会計検査院に訴えます。会計検査院に対して検査請求として訴えまして、それで会計検査院の判断があった上で、その判断になお不服がある場合には、裁判所にそれについて一定の差しとめなりあるいは一定の請求を行う、訴訟の形でそれを行うというタックスペイヤーシュートですね。これはタックスペイヤーという地位に基づいて税金の徴収面で裁判所の判断を仰ぐというものであります。  それから税金の使い道の問題につきましても、どうも憲法に違反する税金の使い方をしているのじゃないか、あるいは国の法律に違反するような税金の使い方をしているのじゃないか、あるいはむだ遣いしているのじゃないか、空出張しているのじゃないか、そういう疑いを納税者が持った場合には、広く会計検査院及び裁判所に訴えを起こすことができる。検査院の方は検査請求という形で行われまして、裁判所の方は訴えという形で起こすべきであるという、これは現行制度にございませんので、現在のさまざまな行政救済制度ではカバーできない新しい救済方式でありまして、こういったものを制度化しておくだけで官庁のむだ遣い等が、あるいは国税庁などの税務行政機構のあり方などが引き締まってくると思いますので、こういったものをこの際制度化すべきであろう、そういう趣旨であります。  それから一の問題でありますが、四〇%に上げるべきだというのは、現行税源配分制度を前提にした場合に、毎年特例措置という形で交付税総額を上げるという、先ほどから出ておりますような特例という形で実際的には恒常的なこういつたことをやるんでしたら、この際、四〇%というレベルまで上げるべきじゃないか、こういうことであります。その場合私としましては、新税の導入は必要ではないと考えておるのでございまして、一般消費税その他その変形であるいかなる新税の導入も必要ではない。増税は必要でありますが、それは学問的に考えられますところの不公平な税制を是正するという形での増税をすれば、十分足りるというふうに考えております。もちろん、歳出の合理化であるとか、その他いろいろな面で考えるべき問題はありますし、自然増収の問題もありますが、増税という点だけに限定しましても不公平税制の是正で十分である。  この場合の不公平税制の是正というのは、単に狭い意味での租税特別措置整理合理化だけではなくて、たとえば現在の法人企業課税の比例税の構造自体が、私に言わせますとこれは不公平税制であります。法人企業課税、特に大企業につきましては、その担税力の大きさに応じましてやはり軽い累進税率を適用すべきである、そういう形までやらなければ、所得課税の不公平税制の是正はできないのであるとか、あるいは、所得という面だけでは現代的な巨大企業の担税力は把握できません。いかに国税庁ががんばってもこれはむずかしいのでありまして、現代的な所得課税での担税力の把握の限界がございますので、それは結局、財産という形であらわれてきますので、特に土地及び土地の権利、場合によって有価証券などの目に見える表現された財産課税を、特に資本金十億円以上の大企業法人に対して適用していくという、現在の固定資産税とは別に将来は、固定資産税の調整等の関係が出てきますが、とりあえず法人所得課税の合理化の一環として、そういった特定の財産税を法人について導入していく、そこまでしなければ企業の不公平税制の是正はできない。  こういう問題であるとか、あるいは、細かい問題いろいろ申しますと切りがありませんが、私は大企業を、個人企業も同じでありますが、法人につきましては参政権はありませんので、選挙権とか参政権というのは憲法上主権者だけしか持ってない固有の主権的な権利でありますので、ですから、現在の法人税法が法人について広く政治献金を認めておりますけれども、そのことを税法上保護しておりますが、ドイツの連邦憲法裁判所の判決では、そういう税制は憲法違反であるという判決も出ておりますけれども、私は憲法論の観点からいきましても、法人に対して政治献金を許容しまして、それを税法が保護するという形で税収のマイナスをもたらしておる、こういうことも改めていくべきだと思います。  あるいは、使途不明金等の課税につきましても、もう少し税務調査を厳しくやって適正な課税を行っていく。交際費等の損金算入限度を超える分について、税金を納めれば交際費等は何ぼ出してもよろしい、その交際費等の実態が使途不明金的なものであってもよろしいのだ、そういう趣旨の報道もありますけれども、これは現行法の解釈としては誤りでありまして、現行法の解釈としましては、使途の明確なものだけについてなお、一定の交際費等の損金算入の規制を行っているわけでありますから、使途不明金は最初から交際費等の損金算入の規制の対象にならないのであります。この辺のこともきちっとやってもらう。  最後に二つの問題でありますが、私が考えておりますのは、地方財政委員会というのは相当権威のあるものでありまして、これは行政委員会的なものとして構成をしていくのですが、そこでやります仕事は、個別の地方交付税の配分についてあれこれ決定するのではなくて、地方交付税制度の具体的な国全体の観点からの運用基準を科学的なものにする、合理的なものにしていく、そういうことを検討する専門の委員会として考えております。つまり現在の、先ほどから出ております行政項目であるとか単位費用の問題であるとか補正係数の問題、いろいろございます。あるいは標準団体の問題もありますが、そういうさまざまな地方交付税制度を現段階におきまして、実態に合うような形で科学的なものにするにはどうすればよろしいかということを常時、国全体の観点から検討、研究する専門の委員会をつくる、その委員会の結論を政府としては尊重する、そういう機関であります。  それから、先ほど申しました公開の協議会制度というのは、具体的にある地方自治体に幾らの地方交付税額を配分するかを決定する場合に、一定の公開のカンファランス、協議会を設けなさい、そこに住民が参加しまして傍聴しておりまして、公開の席上で、おたくの自治体はこういう基準でこれだけことしは配分いたしますということを、密室ではなくて公開の席上で、だれでも参加できる席上で決めていく。先ほど申しました地方財政委員会が決定しました基準に基づいて、具体的にそういった協議会でオープンで決定していく、こういうことを申し上げたのであります。
  36. 安藤巖

    ○安藤委員 高寄先生に一つお伺いしたいと思うのです。  先ほどのお話の中に、地方交付税の配付基準についての議論が全く行われていないという御指摘がございました。やはりそういう場が必要だと私も思うのですが、どういうような方法でそういう議論をする、あるいは議論の場を設けるというようなことをお考えになっておられるのか、お考えになっておられたらお聞かせいただきたいと思います。
  37. 高寄昇三

    ○高寄参考人 補助金につきましては新聞、国会、それぞれでかなり議論がありますけれども、地方団体につきましては、交付税というのは補助金以上に重要な財源であります。しかも、現在の交付税というものが非常に補助金化しているような実態から見ますと、交付税については議論が非常に少ないのではないかということですね。  ところが、交付税先ほど申しましたように、総枠というのが限定されておりまして、極端に言えば、府県に有利であれば市町村に不利であるというような、相互の損益勘定が相反するものですから、郡部に有利であれば市部に不利であるというような関係もありまして、何となく自治省の交付税課というものがかなりのイニシアチブを持って配分しているということです。交付税というものは本来、一般財源でありますけれども、現在のような実態では、補助金でもないし一般財源でもないしということと、それから巨額の財源が、国の政策に非常に連動性が強くて、住民ニーズの方に傾斜が非常に弱いのではないか、これはすでにこれまでもしばしば言われていることです。  これをどういうように改めるかということですけれども、イギリスで、国と地方との代表が集まりまして、交付税を配分するための協議会をつくっております。これは、決定機能は政府が持っているわけですけれども、できるだけ公共団体との共同作業の結果配付基準を決めていこうということですね。  現在、国は国、地方地方ということでお互いに調査をしましてやっているわけですけれども、超過負担の問題がその典型です。国と地方の両方が参加した地方財政に関する委員会、これは既存のものでもいいと私は思います。はっきり言いまして、現在の地方財政審議会というのがどの程度活躍しているかというと非常に疑問だと思うのです。ああいう地方財政審議会を拡充するような方向でもかなり効果があると思うのです。それの事務局を強化していくとか、あるいは現在の地方財政審議会の委員の中に地方団体の推薦とか、地方団体の首長の公選ですね、選挙制で入っていく代表者をほうり込むとかですね。これだけの巨額の金が国から地方団体へそれぞれ行くというのが、現在のような形でいいかというと、私は非常に疑問だと思う。これは議論しましても結局、決着はつかないと思いますけれども、少なくともこういう基準のもとで配付したんだというような形ということですね、こういう基準はどういう問題点があるのかということをはっきりすべきだと思うのです。  極端な例でも言いますと、私なんか地方交付税をいろいろ調べてみますと、たとえば道路につきましては道路面積当たりで来ているわけです。公園については、基本的には人口で来ているということですね。そうすると、公園をつくってもつくらなくても一緒だということですね、この交付税の配分基準は。ところが道路は、つくればつくるほど交付税財源がふえるということです。こういうようなことについて余り議論とか要望が起こってこないということ。それから現在、公営住宅がどうしてつくられないかという問題を考えてみますと、公営住宅そのものの建設費の補助とかそういう問題もありますけれども、これは管理費が非常に赤字があくシステムになっております。どうしてかと言いますと、建設費の償還は建物の償還で行くわけですね。ところが、起債の償還は十年とか十五年ですから、その償還額の分だけ赤字があくシステムになっている。これは家賃を上げない以前の問題として、初めからあくシステムになっている。現在、公営住宅を建てましても五万とか六万ということになっておりますので頭打ちをさせまして、傾斜料金制に伴う分については国が半分補助しているわけです。国が補助しているということは同時に、その裏負担というものは国が正式にオーソライズしているわけです。ところが、これが交付税に入ってないということです。国が補助を認めておりながら交付税に入ってないということ、こういうことは、交付税というのは私はどっちかに傾斜すべきだと思うのです。どっちかというのは、単純な人口とか所得とかきわめて簡単にわかるもので来るか、もし補正係数とかそういう裏負担をほうり込むならば、公園も道路も公営住宅も平等にほうり込むべきだということですね。このように交付税というものが、一見きわめて精緻な構造を持っておりますけれども、その中に非常に政策的な裁量の幅がありまして、実際から言いますと公営住宅なんかは、建てれば建てるほど赤字を生むシステムになっているということですね。こういう維持運営費につきましては交付税で補てんすべきである。  このような問題は、交付税というものが非常に補正係数もはまりましてむずかしいということもありまして、余り議論の対象になってないということです。そういう議論の対象になってないまま行きますと、現在のニーズから非常に離れている。それは現在の交付税基準を見ていただきましたらすぐわかるわけでございますけれども、現在文化行政とかなんとか言われておりますけれども、府県で大体標準、標準というのは百万ですけれども、図書館が一つ、博物館が一つ、社会体育施設一つということですね。市町村では、公民館が八つ、図書館が一つ、体育施設一つ。現実的には市町村は非常にたくさんつくっております。こういうことは、同じ市町村の標準的な財政支出で、不算入の額があるのは仕方がないとしましても、やはりこういう生活関連行政で非常に算入率が不足しているということですね。  こういう実態につきましても、地方団体の方でも要望書を持っていきましても、特に自分のところの財政に還元されるわけではないですから、そういう問題はお互いに言わない。要するに、総枠がふえるということだけですけれども、やはり内容につきましても、そういう国と地方の合同の機関を設けまして、できるだけ公平かつ適正に配置する、しかも交付税が納得のある形で配付されるということが必要ではないかと思います。
  38. 安藤巖

    ○安藤委員 古川先生にもまだお尋ねしたかったのですが、時間が来ましたので、残念ながらこれで終わります。
  39. 中村弘海

    ○中村(弘)委員長代理 次に、部谷孝之君。
  40. 部谷孝之

    部谷委員 きょうは、御多忙のところ大変ありがとうございます。  私はせっかくお越しをいただきました先生方でございますので、これからお一人一問ずつ、五人の先生方にお尋ねをしてまいりまして、時間の都合をいろいろ見ますと、お一人四、五分程度で私がお尋ねいたしますことの御答弁をいただければと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。  まず、川西市の伊藤市長さんにお尋ねをいたします。  超過負担の問題につきまして六団体といたしまして、四十九年度から国に対して毎年解消措置の要望を重ねてこられました。国もその対策を漸次講じておるようでございますが、国の解消措置をどういうふうに評価しておられますか。また、超過負担解釈の仕方自体に国と六団体との間に開きがあるような気がいたします。そういうことで、国会における論議におきましても、国と地方の超過負担の見方に違いがあるのではないか、すれ違いに終わっておるのではないかというふうな議論が多いわけでございますが、国と六団体とが同じ土俵の上に立って共同で実態調査を行って、解消措置を講じていく必要があると思うのでございますが、こうした点につきまして市長さんの御見解をいただきたい、このように思うわけでございます。  同じく超過負担につきまして、古川先生にお尋ねをいたしたいと思います。  自治省が算定いたしました財源不足額地方の超過負担が考慮されていない、現実に超過負担が存在しておる以上、この財源不足額実情に沿うものでないというふうな意味の御意見があったと思うのでございますが、超過負担の解消につきまして国としてどういう対応をすべきであろうか、その点についてお示しをいただきたいと思います。  それから、第三番目に高寄先生にお尋ねをいたします。  さっき先生は建設地方債につきまして、あるいはまた、国の施策が開発型から生活型に変わる中で、現在の交付税制度はこれに応じていないという御指摘、先ほども公営住宅のランニングコストに例をとって指摘をされたわけでございますが、実は私はことしの二月にエコノミストに所載されております先生の「転換期の公共投資を考える」という論文を拝見させていただいたのでございます。そこで先生は、「景気対策・地域開発の手段としての公共投資は、それなりの戦略がなければ、有効な手段となりえない」、こういうふうに主張されておりまして、私も大変興味を持ったのでございます。  それによりますと、「公共投資の乗数効果は、相対的に低下しつつあることは否定しえない事実である。」という指摘をされまして、さらに、「公共投資が多様化し、住民ニーズが高次化するにしたがって公共投資の総合評価がなされない限り、経済動向のみならず都市構造・市民生活感との乖離は拡大せざるをえない。」というふうに述べておられます。そして、「公共投資の効果が経済的効果のみでなく、非経済、経営、財政効果とひろがるにしたがって、その最適パターンの決定は困難となる。なぜなら時期・地域によって、その効果は異なってくるからで、したがって一概に生産関連がよいとか生活関連がよいとかいえないからである。結局、それぞれの地域にあって公共投資の戦略的要素を十分に配慮し、効果的な投入をなしていくという政策感覚と経営手腕がのぞまれる」というふうに述べておられます。つまり、公共投資を効果あらしめるためには、地域の特性に応じて、地域にとって最適の体系を生み出して、地域自主的な投資を行っていくという、そういう体制がつくられなければならないということだと思います。  そこで私どもは実は、公共事業関連の補助金地方に一括して交付し、その使途は自治体の裁量にゆだねるといった、いわゆる第二交付税制度の創設を提唱いたしておるわけでございますが、この制度の創設につきまして、公共投資の有効性という観点から先生はどのように評価していただけるか、これが高寄先生に対するお尋ねでございます。  第四番目に、井手先生にお尋ねをいたします。  財政運営の見直しにつきまして、徹底的な合理化をやった上で増税を考えなければならないというふうに先ほどお述べをいただいたわけでございまして、この点については、かけ声ばかりでさっぱり進展しないというふうな御意見であったと思うのでございますが、その場合、どういう形の増税が考えられるのか、先生の御意見をいただきたい、このように思うわけでございます。  最後に、北野先生にお尋ねをいたします。  一般消費税についての御意見につきましては、私どもも賛成でございます。そして、大衆増税なくしても十分な財政運営が可能な状態にしなくてはならないことも当然でございます。このために現在、地方自治体におきましてもいろいろと努力が払われておるとは思います。財政運営効率化、合理化、たとえば民間委託の導入などにつきまして徹底的な見直しを行う必要があると思うのでございますが、これらの点につきまして先生のまた御意見をいただきたい、このように思うわけでございます。  以上五点につきまして、それぞれよろしくお願い申し上げます。
  41. 伊藤龍太郎

    伊藤参考人 いま超過負担の問題について御質問があったわけでございますが、超過負担ということをどういうふうに解釈するか、実際に必要なものに対して国の補助その他の手当てが薄い、それの差額を超過負担と見るか、実際に必要なものをぜいたくであるというふうに解釈するかというようなところで議論の分かれるところだと思うわけでございます。  現在まで超過負担の解消につきましては、諸先生方の御努力によりまして逐年改良していただいておりまして、市の方としても負担は大分軽くなってきているのは事実でございます。その点については厚くお礼申し上げますが、現在なお超過負担の問題として大きく残っておりますのが保育所の問題でございまして、特に保育所の運営費につきましては、国と地方との考え方、その数字のはじき方に現在大変差が大きいわけでございます。特に運営費の中で大きく数字を左右しますものは人件費でございまして、現在の市長会の調査によりますと、一例を申しますと、施設の長、保育所の長でございますが、国の基準におきましては大体十四万二千五百円になっておりますが、実態は一九万三千六百四十五円というのが全国の保育所の統計上の数字ということでございまして、ここでもうすでに五万ぐらいの差があるわけでございます。  私の市に例をとりまして恐縮でございますが、私の市におきましても現在、所長の平均年齢四十四・五歳、給与平均が二十万五千七百円という数字でございますが、国の補助基準の最高額は十五万百円ということで、五万六千円の差がございます。これは全国的な数字とやはり軌を一にしているわけでございます。その他保母、調理員等につきましても同様な傾向がございます。一般保母につきましては現在、国の基準が十万一千三百円に対しまして、地方自治体におきましては約十万四千円ということ。これはほぼ似ております。わずかの超過負担でございますが、調理員につきましては相当差がございまして、現在、国基準が八万八千四百円というのに対しまして、実態は十一万一千円ということで、ここにも二万三千円ばかりの差が生じておるわけでございます。こういうふうに人件費の差というのが、保育所の運営費における超過負担の非常に大きな原因になっておるわけでございます。  ところで、地方の人件費が国家公務員の給与水準に対して高いではないか。これはかねてから、ラスパイレスが高いということはやかましく言われているところでございまして、各地方におきましても、これの改善につきましては努力はいたしておりますが、職員組合との交渉その他いろいろな問題がございまして、一挙に国家公務員並みに下げるということもなかなかむずかしい面もございまして、やはり実態をある程度考えていかなければならないというわけでございます。  給与面におきましていまのように差があります以上に、今度は人員の問題についての差がございます。われわれが調査いたしました百九十七保育所の人数から調べますと、国基準では千三百五十四人になっておりますが、実際に使っているのは千五百七十八人ということで、二百二十四人の人員の差が出ております。百九十七の保育所において二百二十四人という人員の差でございまして、一保育所当たり一・一人の多い人員を使っておる、こういうふうな問題もあるわけでございます。単価及び人数の差、それの相乗積が超過負担として出てくるということでございます。  それから建物等につきましても、国の補助のいわゆる基準というものが低い。実際には国の基準では、地方においてはなかなかそういう建設ができない。現在の建設費が非常に高い、土地が高いという経済情勢の中におきましては、現実建設不可能といったような数字が補助基準になっておる、こういう問題もございます。そういう問題がございますが、主なものは保育所につきましては、人件費を原因とする運営費の超過負担が、いまだに大きく市の財政を圧迫しておる、こういう問題でございます。  そのほかの問題につきましても、やや超過負担の問題はございますが、逐次改善していただきましたので、たとえば学校建設費等におきましては、いま相当実勢単価と補助基準とが近寄ってきている、こういう情勢になっておりまして、その点については感謝いたしております。  いまお尋ねの超過負担の問題について、単に保育所だけを一例に挙げたわけでございますが、すべてこういうふうな実態においての超過負担が生じておるということを御説明申し上げます。
  42. 古川卓萬

    古川参考人 私が申し上げたいと思いましたことは、地方財政計画の性格そのものについてでありまして、超過負担解消措置というのは、あの段階では念頭になかったわけですが、単価差が是正される、あるいは規模是正、新規職員という形で数量差が是正をされるということであれば、その限りで財源不足額は縮小するというふうに考えます。  ただ、市町村実態調査をやってみますと、消防費などの算入というのは的確でありますけれども、それ以外の教育費それから福祉関係、これも、生活保護というよりも生活保護を除く福祉関係ですが、行政費、それから総務費関係、そういうところに過小算定という実態がほぼ共通して見られるというふうに考えるわけでして、その点恐らく、数量差の問題がウエートとしては一番大きいのではなかろうかと思いますが、三つの面から財源不足額算定についても検討を行う必要があるのではないかというのが、一番申し上げたかったことであります。
  43. 高寄昇三

    ○高寄参考人 時間が限られているようなので、国の建設投資の補助金を一括してプールして、第二交付税のようなものをつくってはどうか。これはかつて、義務教育国庫負担とかそういうのが交付税に入っておりました。ところが、どうも地方団体がその趣旨どおり使ってないということで、分離した経過がございます。  この交付税制度の一本以外に現在、補助金でも包括補助金制度、こういうことが非常に叫ばれているわけで、地方団体がそういう公共投資を一括して国からもらってきて使う。これは道路とか公営住宅とか義務教育とか、きわめて通例的に行う補助金というものはむしろ、交付税と同じように精算方式のような形でプールして使っていった方が非常に有効ではないかと思います。  それはどうしてかと言いますと、国の補助の認承が各事業ごとにテンポが違うということがございます。これは宅地造成なんかがあった場合に非常に極端にあらわれるわけです。それからあと一つは、個別投資を強いられるということです。これはコミュニティーセンターのようなものは、厚生省でもらってくれば厚生省のをつくらなければいけませんし、建設省の関係では建設省でもらってきたのをつくらなければいかぬ、こういう二重三重の投資を、現実的には地方団体も縦割りであるので強いられるということです。それから、会計監査その他におきましても非常に繁雑であるということ。  全般的に感じられることは、かつては公共投資というのは道路とか港湾中心であったわけですから、わりかた単純であったわけです。ところが、だんだんきめ細かくなってきた場合に私は、公共団体そのものが計画性を持って公共投資をしているかというと、余り計画性はないのではないかということです。計画性の一つを崩しているのがこのような縦割りの補助金制度でありまして、道路とか公営住宅とかというのはわりかた市町村が、その公共投資の実績に基づいて精算金方式のようなことでプールしてもらうということでも、十分いただけるのではないかということです。こういう問題は地方団体の方で、五年単位くらいの事業計画を示して、それに合致すれば、第二交付税のような制度をつくって、主たる公共投資はその中で全部精算方式でもらう、時期とか重点とか組み合わせというのはかなり自由にしてもらう。これは、これからの公共投資というのがますます維持費とか、複合的な目的を追うようになりますと、従来のような個別、単年度認承方式ではきわめて大きなロスが出てくるのではないかと思います。  これの端的な例なんかは、交通の場合の赤字ですけれども、新しい団地をつくりましたら交通は赤字が発生するように考えられておりますけれども、団地の中に高等学校とか私立の大学をつくれば決して赤字ではない。これは反対交通があるということで、これからの公共投資がますますむずかしくなってくるときに、かなりの公共団体に裁量権を渡さなければ、建設はできたけれども、後の維持費とか、もっと極端に言いますと、資源エネルギーの損失が非常に大きいということで、そういう意味では、できるだけ裁量権の大きい形ですね、それは、事後的に何ぼしたかということを会計検査院が検査すれば済むことでありまして、決して国の補助金とか交付税がむだに使われるケースではないということで、そういう意味で、日常行われている公共投資というのはプール化して、第二交付税化するというのはきわめていい方法だと考えます。
  44. 井手文雄

    井手参考人 増税の方法というお尋ねでございましたが、増税といいましても、単純に新しい税を設ける、あるいはまた、既存の税金の税率を上げるということもございますけれども、その前に、現在の税制の見直しをする、そうして、それが税制の公平化を図るという角度からの見直しをするという過程において税収が増加する、まず第一にそういう方法をとらなければならない、こういうふうに思っております。  たとえば所得税というものを見ますと、これは個人の所得を課税標準といたしております。そうして総合課税の原則になっておるわけでございまして、私なら私という個人が一年間に稼得する所得、いろいろな種類の所得を全部私において総合いたしまして、そうして全体の所得金額を算出して、それに超過累進税率を掛けて税額を算出する、こういうようなことになっておりますけれども、私が一年間にいろいろの種類の収入を獲得するわけでございますけれども、それが直ちに課税標準になるわけではなくて、それからいろいろの脱漏がございます。その一つは、たとえばよく言われておりますように、利子所得とか配当所得、こういうようなものは総合所得に算入されませんで、源泉分離課税をする、こういう仕組みになっております。ですから、そういうものが総合所得から脱漏しておる。  それからまた、その他いろいろ今日においては所得控除というようなものがございまして、これはそれなりに納税者の税負担力を適正に算定するということから、たとえば基礎控除、扶養控除、配偶者控除というようないろいろの控除がございますけれども、これだけではございません。課税最低限度額の構成項目としては、基礎控除、それから配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、こういうことになっておりまして、勤労所得者については特に給与所得控除というようなものを加えまして課税最低限の額が算出されて、それは税金から漏れることになるわけであります。この課税最低限度額に給与所得控除を加えるということは、私はちょっと異論がございますけれども、これは別の問題でございますので、ここには省きまして、そういうものが課税最低限度額の構成項目になっておりますが、その他に雑損控除とかいろいろの細かい控除がございまして、それはそれなりに何とか課税の公平化を図ろう、納税者の負担能力を適正に測定しようという、好意的な観点からのものが多いというわけでございますけれども、非常に多くなっておりますね。  ですからそういう収入というか、つまり初めにレベニューという収入があって、それから必要経費を引いてインカム、所得が出て、その所得からいろいろな控除を引くというとタックサブルインカムといって課税所得が出て、そこでやっと税率が掛けられるんですね。だから、レベニューから必要経費を控除してインカムが出て、そのインカム、所得から諸控除を引いてタックサブルインカムになる、そのときの諸控除が非常に多いわけなんです。そこに脱漏が起こって、タックサブルインカムは非常に少なくなってしまう。それからまた、先ほどの利子所得や配当所得のように、インカムが出るんだけれども、それは総合所得には算入されないということになって、比較的低い比例税率で済むということになって税収が減る。  それでその辺のところを見ますと、税金、超過累進税率を掛ける対象、総合所得というものが非常に少なくなってくるんですね。つまり、タックスイロージョンというか虫食いというか脱漏が起こって、いろいろの収入が多いんだけれども、超過累進税率を掛ける対象はもう何か削り取られて少なくなってしまっておる。タックスイロージョンということですね。これをひとつなくすということ。いろいろの所得控除にはもっともなものもありますけれども、そうでないものがあって非常に複雑になって、むやみやたらに課税対象からはねのけておる。それをもう一遍取り返していく。つまり、よく言われるコンプリヘンシブ・インカム・タックス、包括的所得税、アメリカあたりで盛んにこういうコンプリヘンシブ・インカム・タックス論というものが出ておりますけれども、こういうことももう一遍見直さなければならぬと思うのですね。そうするというと税収がふえるのですよ。もったいなくもいろいろの税金をかけられるべき所得が課税対象から脱漏してしまっておる、虫食いになっておる。もっと包括的な所得税にしろ、こういうアメリカなどの議論がわが国においても上陸しまして、このことを主張される学者もおるわけです。こういうことは考えてみなければならぬわけでありまして、これは一つ税収をふやす方法であると同時に、税制の合理化にも役立つ、こういうふうに思います。  それから法人課税でございますけれども、これは非常に厄介で、わが国の法人課税、国の法人税あるいは地方の法人事業税とか法人住民税というものを総括した実効税率というものは、まだ欧米先進国に比べるというと若干低いから税率を上げろという御主張が行われておるわけでありまして、ですからそこに法人税を重課する、これは実効税率を上げるということが一つ考えられる。ただ、本当に税金が諸外国と比べて重いのか軽いのかということ、これはまたむずかしいわけでありまして、法人税というのは法人所得課税なんですけれども、その法人所得をどういうふうにして算出するかということが多少国によって違うわけです。単に税率とか実効税率だけじゃなくて、所得そのものをどのようにして算出するか。売り上げから必要経費を引けばいいというんだけれども、そこにいろいろ複雑な要素が介入しておりまして、国によってかなり違っておるのでありますからして、そこのところをよく十分に調査して、そうして本当に日本がアメリカやヨーロッパ先進諸国に比べて実効税率がある程度低いということがはっきりすれば、それは税率引き上げる、そういう可能性が出てくるわけですね。ですから、そういうことをやるについては、よほど勉強をして研究をした上でやらなければならぬけれども、そこのところは確かに一つの方法であります。  それからまた、法人税の税率を累進税にして大企業に重課するということ、これは確かに一つの理論であります。ただ、これがまた厄介なことに、法人というものは個人たる株主の集合体なのかあるいはそういう個人を離れた別個の存在であるかという、法人擬制説とか法人実在説という用語を用いますというとおしかりを受けることもあるかもわかりませんが、要するに、法人は個人の集まりかあるいは個人と別個の存在であるかという古くして新しい厄介な問題がございます。現在は、シャウプ勧告をもとにしておりまして、法人というのは個人の集まりである、個人たる株主の集合体にすぎない、こういうようなことになるというと累進税率というのはちょっとおかしくなるという論理で、現在来ておるわけでありますが、といってそれじゃ、そういう法人擬制説的な考え方に立てばそれでいいか、あるいはまた、そういう立場に立てば法人の受け取り配当金は法人税をかけぬでいいかとかいろんな問題が出てきます。ですから、法人税は非常に厄介でありますが、そういう法人というものはどういうものであるか、あるいは、そういう実在説的あるいは擬制説的といいますか、要するに、法人の性質についてあいまいにしないで、もう少し議論をしなくてはならないのじゃないかと思います。  それからもう一つ、資本金何百億、何十億という大法人と、その辺の町工場みたいな小さな法人も法人ですから、そういうものを一緒くたにしてただ一つの法人税法で課税するというのもおかしいと思うのです。新日鉄とその辺の町工場と、どちらも法人であり株式会社だと言って同じ法人税法を適用するというのもおかしい。ですから、そこはいまも若干は、資本金の大きさによって軽減税率を適用されるという仕組みはすでに入っておるのですから、そうすると、いまの仕組みも完全に法人擬制説的ではないわけですから、多少実在説的な要素もやむを得ず取り入れてきておるのだから、そこのところはそれだけの必要性というものがあったわけですから、そこも勘案しまして、小さな法人と大きな法人とを分けた法人税の仕組みというものを考える。そういうような形で、税収がふえるような税の仕組みにするとかそういうようなことも考えられる。非常に重要な問題で、学問的にも決着がなかなかつかない問題でありますけれども、やはりこれも取り組んでいかなければならない、こういうふうに存じております。  それから地方税の方へまいりますと、これはすでに一応圏外に去った形でありますけれども、一般消費税との関連で厄介な問題になるかもわかりませんけれども、事業税の外形標準課税、これは応益原則の立場からいってもよろしい。これは必ずしも増税ということじゃなくて、事業税の本来のあり方。そもそもシャウプ勧告では、従来の事業税、所得課税を付加価値税にしろ、これは応益原則的なあれがあったのですけれども、そういう点からいっても、事業税というものを所得課税から外形標準課税へ転換するということは、国の段階で一般消費税が云々される前に地方の段階において問題になっておったわけでありますからして、一般消費税ということをいま抜きにして考えると、外形標準課税化というものは望ましいし、また、それは収入の面からいってもある程度無理なく現在の事業税よりも増収が図られるような仕組みに考えられると思います。  それからまた、先ほどお話がございましたけれども、固定資産税というものが、これもシャウプ勧告で市町村税の中核になっておった。これがいろいろの事情で非常に伸長率が悪くなってまいっておりますが、この固定資産税というものをもう一遍生かしていく、そして、市町村税の中核にシャウプ勧告のように据えるということが一つ考えられるわけでございます。  時間がございませんので、これくらいにいたしておきます。
  45. 部谷孝之

    部谷委員 大変申しわけないのですが、私に与えられた時間を少し超過をいたしまして、北野先生にせっかくお尋ねを申し上げておったのでございますが、理事会でお互いに取り決めたことでございますので、北野先生につきましては私の方からまた個人的にお話を拝聴させていただくということで、きょうはひとつお許しをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  46. 中村弘海

    ○中村(弘)委員長代理 次に、田島衛君。
  47. 田島衞

    田島委員 時間の関係で結論的な方からお伺いをしたいと思いますが、きょう各参考人から大変貴重な御意見をいただいた肝心の案件の地方交付税法の一部を改正する法律案についてでありますけれども、もちろんこれについては、税率を上げるべきだとか、交付税法そのものの制度を抜本的に見直すべきだとか、地方税財政制度を抜本的に考え直さなければいかぬというようなこと、あるいは基準財政需要額算定の方法に問題があるとか、いろいろあるだろうと思いますけれども、それはともかくとして結論的に、大した改正じゃありませんけれども、今度の改正案そのものはまあまあやらないよりやった方がよろしいという御意見か、それともこんな改正ならばやらない方がよろしいという御意見か、その点だけ一言ずつで各先生方にお願いしたいと思います。
  48. 伊藤龍太郎

    伊藤参考人 今度の交付税法改正でありますが、朝からいろいろと御意見が出ておりますように、現在の国並びに地方財政事情は、国も非常な赤字でございます、地方ももちろん赤字でございます。その中で理論的には、交付税率をアップし、対象税目を広げるということはわれわれの理想ではございますが、いつまでも理想を議論しておっても現実には即さない問題でございまして、われわれは一日も早く事業をやっていかなければならぬという現実に直面しておるわけでございます。そういう情勢の中におきましては、今度の法改正は、ベストではないけれどもわれわれとしては賛成するというのが結論でございます。
  49. 井手文雄

    井手参考人 先ほどからいろいろ文句をつけましたけれども、現時点におきまして拝見いたしますと、国と地方といろいろ御折衝になって、基本的な抜本的な仕組みを変えるということを抜きにして考えますと、かなり良心的なといいますか努力を尽くされた、こういうふうに私は思っております。     〔中村(弘)委員長代理退席、委員長着     席〕 ですから、現時点においてこの改正案というものは、その限りにおきまして結構であり、むしろよくやられたという感じは持っております。  以上でございます。
  50. 北野弘久

    北野参考人 一言でお答えしますけれども、私も現段階ではやむを得ない、賛成でございます。  なお、一分だけいただきますけれども、先ほど民社党の先生から御質問あった件ですが、いろいろ申し上げたいことはありますけれども、結論的には、労働組合の問題、自治体労働者の問題もございますが、その問題を解決しながら、民間委託の方が安上がりであるということであれば、私もそういう方向に向かって話し合いで進んでいただきたいと思っております。
  51. 高寄昇三

    ○高寄参考人 現在のような特例措置はした方がいいかしない方がいいか、これはした方がいいということで、基本的には、実質的には制度改正に匹敵する財源移譲があったと思いますけれども、制度的に見たときにこれを制度改正と言うわけにはいかないということでございます。
  52. 古川卓萬

    古川参考人 ただいまの御質問そのものについては私は何ともお答えできない。ただ、形式的な財源不足額圧縮すべく最大限の努力が払われたかどうかという点には非常に疑問が残る。たとえば六千二百億の繰越分は財源不足額を解消するために使うというふうな議論があってしかるべきではなかったか、あるいは、投資的経費にかかわる各種補正圧縮等も検討されるべきではなかったかというふうに、課題が残っておるということを申し上げたいと思います。
  53. 田島衞

    田島委員 質問がだんだん逆になってきて恐縮でありますけれども、さてそこで、先ほど来の参考人の大変貴重な御意見と、いまの結論的な、まことに愚問に類する質問だったと思いますけれどもそれに対するお答えと双方かみ合わせて、やらぬよりはやった方がいい、だけれども、これでは抜本的な改善にはならぬということにおいては各参考人方々同じような基本的お考えだと思うのです。  そこで、このような改正では本当の地方財政の健全化のための措置にもならぬし、それから、地方交付税法制度そのものの本当の存在の意義にもならないという理由の主たるもの、それを地方自治の本旨ととらえてよろしいかどうか。その点で、よろしいという方はいいのですけれども、違うぞという方はひとつ何かお答えをいただきたいと思います。——ないようでありますので、それは地方自治の本旨に基づいてだ、こういうことだと理解をさせていただきます。  そこで、その地方自治の本旨とは一体何を一番根幹に考えるべきものなのか。この点、大変むずかしい問題でありまして、憲法にも地方自治の本旨をうたっている。地方自治法にももちろんうたっている。あらゆる地方自治に関連する法令の中には地方自治の本旨という言葉は出てくるのですけれども、しからば、その地方自治の本旨とは何ぞやということについてはどこにも定義がない。これが大変混乱のもとになるわけですが、せっかくの貴重な御意見を賜れる機会ですから、地方交付税法そのものの目的の中にも地方自治の本旨、こうあるわけですね、そういう点からして地方自治の本旨について、できれば特にこの地方交付税法制度に関連しての地方自治の本旨とはこういう点でとらえるべきであろうという御意見を、短い言葉でひとつお教えをいただければまことにありがたいと思うわけです。
  54. 伊藤龍太郎

    伊藤参考人 原則的には私は地方自治の本来のあり方というものは、地方行政はその地方税源で賄うべきだというのを理想であると考えておりますが、しかし現在、行財政制度は決してそういう形になっておらない、非常にゆがめられた形である。ですからわれわれとしては、あくまで地方税源の充実と地方財政の充実ということをまずどの要望にも第一番に掲げてお願いしているわけでございまして、交付税というものが従来、そういう調整の役目ということでとられてはおりますが、原則的には、地方税源をあくまで充実してそれで賄うということが原則であると思うわけです。
  55. 北野弘久

    北野参考人 私は法律の専門でありますので、憲法九十二条の地方自治の本旨ですが、この問題に限定して申しますと、要するに一口に申しますと、地域社会の住民の豊かな生存を保障することが地方自治の本旨でありまして、これは霞が関ではできないのであります。地域社会の自治体が中心になってやらざるを得ない。みんな東京のまねをしてはいけないのでありまして、その地域社会特有の豊かな創造的な文化的環境、生存環境をつくっていくという、これが地方自治の本旨であります。ですからそのためには、いま川西市長がおっしゃったように、自治体独自のひもつきじゃない財源を与える。そういう観点から申しますと、地方交付税というのは、たてまえは一般財源でありますけれども、実質的にはひもつき的な特定財源化しておるという、この辺をきちっと改めないといけませんし、いろいろ問題がありますが、いずれにしましても、その地域社会の住民意見を反映できるようなそういう場、その社会特有の豊かな生存を保障する環境をつくっていく、こういうことだと思います。
  56. 高寄昇三

    ○高寄参考人 地方自治の本旨というのは、非常にむずかしいですけれども、地方財政全般について言えることは、地方団体は政策決定とか地方財政の根幹的な決定事項に参加権を持っていないということです。これは地方自治法における住民自治の観念で地方自治体住民との関係からとらえますと、国の政策決定に地方団体はほとんど関与してないわけでございまして、交付税においても地方自治の本旨という点から言うと、もう少し地方団体の参加権があってしかるべきだと思います。
  57. 田島衞

    田島委員 大変ありがたい御意見をいろいろいただいたわけであります。  そこで、府県としての不交付団体は東京都一つなんです。基準財政収入額と基準財政需要額との計算から黒字になるということで、東京都は不交付団体に指定されている。だけれども、その東京都がこのところ毎年引き続いて、赤字財政で苦しんでいるということもまた天下周知の事実なんです。そこらのところからすると、基準財政需要額算定の方法そのものに問題があるだろうと思うわけでありますが、その点についての御意見。  それから、不交付団体イコール富裕団体だという考え方を持たれ、富裕団体だということによって幾つかの、厳密に言うと三つですけれども、減額的な財政調整を受けている。これは東京都にとっては大変不幸なことなんですが、だからといって東京都が交付団体になったら、もはや地方税財政制度、それから地方交付税制度も本当に根本的に見直されなければならなくなってしまうと思うのです。  そこで、基準財政需要額算定の方法、必ずしも妥当ではないと思うけれども、北野先生の御意見はいかがか、短かくお答えをお願いします。
  58. 北野弘久

    北野参考人 一分でお答えしますが、これは非常にむずかしい問題でありまして、御承知だと思いますが、東京都の新財源構想研究会から革新都政最後のレポートが出ております。それには御指摘のとおり、東京都は赤字団体ではないのだ、適正な基準財源需要額等の算定が自治省で行われておれば東京都はむしろ黒字である、つまり、交付税をもらうべき団体であっても、もらえば東京都は赤字ではない、つまり、美濃部さんは決して失敗した行政はやっていないのだというような説明がなされておるのです。私もいろいろ調べてみますと、国の地方交付税の運用の段階で、特に補正係数などにつきまして、官僚の主観的な裁量的な運用が行われておるということをよく聞いております。この辺からもきちっとやる必要があります。そこで一般的には、基準財政需要額等の算定基準を科学化すると同時に、それを保障するために、適正手続の考え方を生かす形で協議会方式などをつくってほしい、手続の面からコントロールを加えるべきだということを申し上げたわけです。
  59. 田島衞

    田島委員 不交付団体イコール富裕団体だという考え方は間違いだと思いますが、これについて高寄先生お願いします。
  60. 高寄昇三

    ○高寄参考人 不交付団体が富裕団体であるというのは私は誤りであると思います。むしろ交付団体の方が実質的には富裕である。特に人口急増市のように、交付税全般が土地に対しての評価とか算入が非常に高いということです。そういうことですから、郡部の人口変動のない市町村と比べておりますれば、実質的な過不足は人口急増市の方ははるかに大きいと思います。だから、これはあくまで国の判断の基準でありまして、仮に地方自治体算定すれば逆の結果があらわれてくる可能性も十分あると思います。
  61. 田島衞

    田島委員 そこでまたもとへ戻りまして、現在の地方交付税法でありますけれども、今度の改正案は、わからぬというお一人の先生を除いては、現状ではやらないよりやった方がよろしいという御意見だったと思いますけれども、だからといってそれでいいということじゃなくて、できるならばもっと抜本的な改善をすべきだ、こういうことであります。  そこで、その改善の方法を各先生から、これなら理屈じゃなくてやればできるはずだと思うこと、たとえば税率をこのくらい上げられるはずだ、あるいは交付税法そのものの制度をこういうふうに変えてしまえ、税の配分をこうせいとか、私が自治大臣だったらこれをやるという御意見がありましたら、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  62. 伊藤龍太郎

    伊藤参考人 抜本的な改正ということになれば私の意見としましては、ずばり申し上げて大型新税の創設でございます。これは一般消費税ということを否定いたしません。そういうものも含めてそういう税制が新設されない限り、いつまでもこういう暫定的な、後追い的な措置でいかなければならぬし、最後には財政の破綻を来すであろう、かように考えるわけです。
  63. 古川卓萬

    古川参考人 私は現在の財源不足額を一挙に解決することは非常にむずかしいのではないか。つまり、大型増税をやりますと数字的には合うわけですが、そのような大型増税が現在のような政治的反対が許される議会制民主主義のもとで、非常に強権的なやり方を伴わない限りとうてい——それでもとれるかどうかわからないくらいの巨額の数字ではないかと思います。ですから財源不足額は、地方財政計画をベースにしてどのような形をとるにしろ、一定の年限を置いてゼロに落としていくという方策を考えなくてはいかぬ。五十五年度の場合には繰越財源で六千二百億削ったわけですが、五十六年度以降はこれは期待できないであろう。ということになりますと、一つは増税措置、これは先ほど出ました固定資産税の引き上げ一つ考えられると思いますが、これとても金額的には恐らく千億円台の数字を積み重ねていくという形になっていくだろうと思います。そうしますとあとは需要額、特に投資的経費において現在行っております事業補正、投資補正、ここに手をつけなければいかぬと思うわけです。こういうふうに政策的に誘導して自治体に仕事をさせながら、財政危機の状況を放置するというそういう姿であると思いますので、ここを断ち切ることによって何とかして経費節減のための政策的な歯どめをかける、そういうことが地方財政の中にできなければいかぬ。この点は、国の財政危機との関連でもそうですけれども、大型増税を掲げるということは、数字は合うわけですが、それは恐らく不可能であろうというふうに考えるわけです。
  64. 井手文雄

    井手参考人 簡単に申し上げますと、一番基本的なことは、やはり国も地方も減量経営だと思うのですね。そう口では言われておりますけれども、これが行われていないわけです。ゼロベース予算主義あるいはサンセット方式と言われておりますけれども、なかなか行われない。これはこの際思い切って、特に地方自治体もまだまだ肥大化しておると思いますので、徹底的な減量経営を行う、これが第一前提だろう、こういうふうに思っております。
  65. 北野弘久

    北野参考人 やるべきことはいっぱいありますけれども、私は税金の方の専門でありますので一つだけ申しますと、これはすぐできるのですが、ただ政治的決断力の問題でありますけれども、国税地方税を通じまして不公平な税制、特に租税特別措置を全部廃止する。廃止しますと、自然に国の方も税金がふえてきますし、自治体の方もふえてきますし、国の方の税金がふえますと地方交付税も自動的にふえてくる。それから国税である法人税、所得税がふえますと、自動的に事業税、住民税もふえていくというこういう構造になっております。  それから地方税固有の問題としましては、これは市長みずからできることでありますけれども、利子配当などの優遇措置というのは、私が十数年前に京都の裁判所に出しました鑑定書によりますと、あの当時ですでに科学的な合理性がありませんし、憲法上の合理性がないということで、当時の利子配当の優遇措置自体が憲法十四条等に違反し無効であるという、そういう議論が法律上は可能でありますので、市長は公務員であります、憲法に従う義務がありますので、仮に違憲の疑いのある租税優遇措置を適用しなかった場合に、幾らの住民税等を課税すべきであるかということを計算されまして、これは郵便代二十円あるいは五十円でよろしいのですけれども、それで徴税令書を発布されまして課税処分を行えばよろしいという、違憲の疑いのある租税特別措置を適用しなかった場合にどうなるかという、そういう形からもぜひおやりいただきたいと思いますし、事業税の外形標準課税であるとか大企業の固定資産税を累進税化するとか、あるいは不動産会社が持っておりますような土地などの国定資産税をもっと上げるとかいう形で応分の負担のかけ方を固定資産税にも導入するとか、やることがいっぱいあるのでありまして、簡単にできるのであります。政治的決断です。それをやりますと簡単にできるのであります。  先ほど出ておりますように、府県段階では不交付団体は東京都だけである、東京都も実態交付団体であるべきだというふうに美濃部都政のレポートは言っておりましたけれども、これは国が取り過ぎているのですね。ですから、もはや財政調整制度ではなくなっておりまして、たった一つの都だけが不交付団体であるとなりますと財政調整じゃありませんから、もう日本の財政制度はまさに虚構のものでありまして、この辺の構造を改めないといけないので、国がたくさん取り過ぎた分を自治体独自の財源として自治体に渡るような税制の再編成をやるべきであろうと思います。
  66. 高寄昇三

    ○高寄参考人 地方財政の再建のために抜本的な改正がもちろん必要であると思いますけれども、そういうことは政治的とか行政的には期待しがたい現実面があると思います。交付税に限れば、現時点で五%でも六%でも上げて、それで一応国と地方は決着をつけるべきだと私は思うのです。そういうことで、あとは地方自治体の課税自主権とか条例制定権を大幅に認めるべきだと思うのです。  アメリカではいま人口制限条例というものが憲法上争われておりますけれども、そのように地方自治体がかなり自由にできれば、ある程度地方財政とか行政の解決の道があると思うのです。それは財源があれば私は解決できる問題ではないと思うのです。人口なんかでも何ぼでも入ってきて、それに対して公共団体が整備を義務づけられるというようでは、財源を何ぼ与えられても現実的には用地取得がむずかしいというようなこともございまして、そういう面から見ますと、一般的な税制とか国税でして、あとはやはり地方自治体の裁量に任さざるを得ないと思うのです。ですから、固定資産税とか電気ガス税というようなものの非課税も全部一応撤廃しまして、それは地方自治体の裁量で行うべきだと思うのです。ましてや東京都の事業税一・二に対してを一・一、いわゆる二〇%の超過課税を一〇%にしておりますけれども、ああいうことをしておりますと、東京都へますます法人が集中するということになりますので、国土の均衡ある発展のためとかそういう地域対策を考えますと、やはりある程度のところで国と地方とは手を打って、それ以上は地方自治体の自前で解決せい、そういう姿勢が必要ではないかと思います。
  67. 田島衞

    田島委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  68. 塩谷一夫

    塩谷委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、御多忙のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  次回は、明十日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十七分散会