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1980-04-04 第91回国会 衆議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月四日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君    理事 愛知 和男君 理事 稲村 利幸君    理事 高鳥  修君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 坂口  力君    理事 正森 成二君 理事 竹本 孫一君       越智 伊平君    大村 襄治君       熊川 次男君    田原  隆君       玉生 孝久君    中村正三郎君       林  義郎君    藤井 勝志君       山崎武三郎君    山本 幸雄君       伊藤  茂君    塚田 庄平君       堀  昌雄君    山田 芳治君       柴田  弘君    古川 雅司君       宮地 正介君    渡辺  貢君  出席政府委員         大蔵政務次官  小泉純一郎君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行副総          裁)     澄田  智君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  関  正彦君         参  考  人         (社団法人公社         債引受協会会         長)      村田 宗忠君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 四月四日  辞任         補欠選任   椎名 素夫君     田原  隆君   山中 貞則君     越智 伊平君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     山中 貞則君   田原  隆君     椎名 素夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度公債発行特例に関する法  律案内閣提出第四号)      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  ただいま参考人として日本銀行総裁澄田智君、全国銀行協会連合会会長関正彦君、公社債引受協会会長村田宗忠君の各位出席されております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところを本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案につきまして、参考人各位それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、議事の順序について申し上げますが、まず各参考人から一人十分程度ずつ御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず澄田参考人にお願いいたします。
  3. 澄田智

    澄田参考人 本日御審議昭和五十五年度特例債に関する法律案につきまして、特例債並びに国債一般についての詳細の点につきましては後刻御質問もあろうかと思いますので、冒頭、私からは背景となっております現在のわが国経済状態並びにそれに対しまして日本銀行といたしまして金融政策の面でどういう考え方をしているかということを最初に申し上げまして、後、国債の問題についての一般的な点について二、三触れさせていただく、こういうことにいたしたいと存じます。  わが国経済運営にとりまして当面する最も重要な課題は、一段と厳しさを増しております物価情勢にいかに対処していくか、当面はこの問題が一番緊急の問題であろうかと思います。そういう観点から、先般日本銀行物価上昇を極力抑止するために総需要の適切な管理を図ることがこの際何よりも適当であると判断いたしまして、政府総合物価対策とも相呼応いたしまして、公定歩合を大幅に引き上げて九%にすることにいたしますとともに、預金準備率の引き上げも行いまして金融引き締めを一段と強化いたしました次第でございます。政府におきましても同様な立場で、同様なお考えで財政抑制的運営並びに各種の個別の物資対策等総合的な物価対策を講じたところでございます。このようにわれわれは当面インフレの防止、あるいは海外輸入物価上昇国内における波及を防止するということに全精力を傾注しなければならないと考えているわけでございます。  当面の情勢についてやや詳しく申し述べますと、まず物価動向でございますが、卸売物価は引き続き高騰を続けておりまして、三月中旬の前年比上昇率は二一・九%に達しまして、また卸売物価のうちで、国内工業製品だけをとりましてその卸売物価を見ましても、前年比上昇率は一五・三%に達しているわけでございます。消費者物価におきましても、卸売物価高騰波及からじりじりと上昇し始めている、そういう段階でございます。  こうした物価情勢悪化は、石油値上げ影響等海外要因もございますが、このところ国内において景気堅調持続という背景から需給の引き締まりの状態が見られまして、そういうところから値上げあるいは価格への転嫁の範囲が広まってきている、そういう影響が大きくなっている状況でございます。電力料金の大幅の値上げやあるいは鉄鋼値上げ動き物価先高感というものを刺激いたしまして、企業はどうしても価格志向を強める、そういうような傾向がうかがわれるところでございます。  一方、円相場は、二月半ばごろから米国金利の大幅な上昇わが国物価情勢の悪さというようなこともございますが、そういう情勢を反映いたしまして、米ドルが各国通貨に対して全面高というような形になっておりますし、それを反映して円の急速な軟化、そういう状態になっております。こうした円安の進展は、わが国経済基調に照らしても明らかに私どもは行き過ぎである、こういうふうに考えておりますので、政府日本銀行は、三月初め以降米国、西独、スイスとの協調のもとで市場介入を強化してきております。このような措置市場不安心理円安心理、それを落ちつかせる上で効果があったと思いますが、目下のところは先ほど申しましたような全面的なドルの堅調、そういう状態でございまして、したがいまして為替市場での円安地合い基調的な変化はまだ見られない、こういう段階でございます。  景気の方は依然底がたく推移しておりまして、設備投資が非常に根強い増勢を示しております。輸出の増勢も定着してきておりますし、個人消費も当面はある程度底がたいという、そういうのが背景であるわけでございます。企業収益基盤もかなり強固なものになっておるわけでございます。こういうような状態から、この先、先般の施策効果浸透によって需要がある程度抑制されるようなことになりましても、それによって景気が直ちに底割れをしたり著しく冷え込むというようなことは当面はないもの、そういうふうに見られる次第でございます。しかしながら、いずれにいたしましても、石油価格大幅上昇というものはそれだけ実質所得海外への移転という、そういう効果を伴うものでありますので、石油価格大幅上昇というもとではわが国経済成長率もある程度鈍化をすることは余儀なくされるということは十分考えておかなければならないところだと思います。企業を初め国民各層においてその負担を分かち合う、そして冷静にこれに対処していくということが最も必要であろうかと考えるわけであります。  以上のような状態から見まして、当面はこれまでの海外コスト高電力鉄鋼値上げ波及あるいは円安基調持続などから引き続き厳しい情勢が続くと思われますので、私どもといたしましてはこれまでの引き締め強化措置効果浸透に全力を尽くしていくということが肝要であると考えております。金融面では窓口指導を一段と強化いたしまして、企業金融面に引き締まり感というものが浸透する、そういう状態期待をいたしております。そしてマネーサプライ伸び率も逐次低下をさせる、そういう方針を堅持するところでございます。財政面におきましては、先般決定された公共事業等執行抑制的な運営方針に即して、今後は明確な目標数値が示されてそれが設定されて着実にその実効が確保されていくことを私どもとしては期待をしているわけでございます。  国債についてでございますが、当委員会において御審議中の昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案に関連いたしまして、国債の大量な発行ということに伴う問題について申し上げるわけでございますが、率直に申し上げまして、現在のところ大量の国債消化というのはいろんな面できわめてむずかしい状態になっております。そうして大量発行持続政府に対する信用に基づくマネーサプライ増加要因ということになるわけでございまして、金融引き締め浸透に対しても政府信用に基づくマネーサプライ増加という面が他方にあるということは、やはりそれだけむずかしい問題をもたらすわけでございまして、現在の私ども金融政策はそういう問題にいかに対処するか、そういう前提のもとでいかにやっていくか、こういうところに苦心をしているわけでございます。さらに長い目で見ましても、国債大量発行持続するということはやはりそれだけ民間設備投資に必要な資金の確保ということが困難になるという面もございまして、それはわが国経済の将来の体質悪化につながるという問題もあるわけでございます。  以上のように、当面の短期的な見地あるいは長期的な視点、いずれから見ましても、基本的にはできる限り財政赤字を圧縮することによって国債発行額を削減していくことがわが国経済の今後の健全な発展のために何としても最も必要なことである、かように考えるわけであります。  五十五年度国債発行額は、政府努力によりまして前年度当初比一兆円の減額が行われたわけでございますが、それにしてもなお五十五年度発行額は十四兆二千七百億円という額に上るわけでございます。したがいまして、五十五年度におきましても、税収あるいは公共事業執行テンポ等動きを見ながら、年度途中においても国債発行額をできるだけ圧縮するようにしていんだく、そういう努力を一層お願いしたい次第でございます。  また五十五年度のみならず、その先々につきましても、そのときどきの内外経済情勢十分配慮を払いつつも何よりも赤字財政からの脱却を財政運営の基本的な方針として、その方向に向かって年々着実に歩みを進めていただくということが、わが国経済インフレ体質に陥るのを防ぐ上でぜひ必要であるということを重ねて強調申し上げたい次第でございます。  さようなぐあいで、できるだけ国債発行額を本年度、五十五年度最小限度にとどめていただいた上でなお必要なことは、その発行国債運用部において引き受けるというような金額もできるだけふやしていただく。政府部内の資金を有効活用することによって対市中発行を減らすことができるわけでありまして、そのことをぜひお願いしたいと思います。それと同時に、発行条件をそのときどきの市場実勢に即して弾力的に決定するようにしていただくということを要望したいわけであります。  国債発行条件はかつてに比べますとかなり弾力的に変更されるようになってきておるわけでありますが、マネーサプライの適切なコントロールを図るとともに、国債の円滑な消化を期する、そういうような見地からもなお一層発行条件市場実勢に即して決定されるようにしていただきたいと強く要望したいところでございます。そしてまた、そういう観点からもある程度の発行実績を上げております中期債公募入札発行方式、これは今後ともぜひ一層育成努力を推進していただくということを期待したいわけでございます。  現在の経済情勢、そして五十五年度経済運営を図っていく上におきましては、特例法案を速やかに成立させて、そして年度を通じて円滑に国債発行していくということが前提でございます。そういうことで、法案の御審議をしていただくことを要望するものでございますが、最近の国債消化にいろいろ問題が出てきているという状態にかんがみまして、国債発行に関する基本的な考え方について意見を述べた次第でございます。(拍手)
  4. 増岡博之

    増岡委員長 次に、関参考人にお願いいたします。
  5. 関正彦

    関参考人 現在、全国銀行協会連合会会長のお役目を承っております関でございます。  本席におきまして、昭和五十五毎度の公債発行特例に関する法律案に関しまして、私ども意見を述べるようにということでございますので、これから申し上げたいと思いますが、私どもは、従来、国債引き受け消化につきましては、財政執行に要する原資の調達に御協力をするというために懸命の努力を尽くしてまいりました。しかしながら、昨年以来、国債自体にいろいろ問題が起こってまいりました。特に相場の急落というような事態に直面をいたしまして、われわれとしてはきわめて深刻な影響をこうむっておりますので、この機会に、国債に関しましての問題全般につきましても、私ども意見あるいは要望にわたることがあると存じますが、これも申し述べさせていただきたい、かように存ずる次第であります。  先ほど澄田参考人の方から、わが国経済の現状というお話もございましたけれども、多少重複にわたるかと思いますが、その面から申し述べさせていただきます。  現在は、景気が底がたい動きを見せておることは事実でございますが、物価の光行きは一段と警戒を要すると申してまず間違いはないと思います。申すまでもなく、現在の物価騰貴は、原油を初めといたしまして、このところ多少下落の傾向はございますが、海外の一次産品の価格上昇というようなものの影響を受けておるという点が非常に大きいのでございまして、このために、これら原材料の値上げに伴いますコストアップというものをわが国企業合理化によりまして全部吸収し切るということは、言うべくしてまことに困難な状態であろうかと存じます。しかし、そうかと申しまして、コスト価格転嫁というものを最小限にとどめることに総力を挙げて取り組むことは、何と申しましてもわが国国民経済的には絶対に必要な努力でございまして、そのために総需要を管理するというようなことも当面の施策の重要な課題であろうと存ずるのでございます。  このような見地に立たれまして、日本銀行におかれましては、金融政策の面におきまして、昨年の四月から今日まで公定歩合を都合五回にわたって引き上げられたわけでございます。そして、厳しい金融引き締め措置がとられておるわけでございますが、この政策運営に当たりまして留意せねばならぬことを私どもから考えますと、財政政策金融政策、これがともに完全な整合性を持って機動的、弾力的に運営されることが必要である、わかり切ったことかもしれませんが、その気持ちが非常に強うございます。この点、政府におかれましては、去る三月十九日に総合的な物価対策を御決定になりました。これはまさに評価できることであると存ずるのでありまして、今後これらの政策が着実に実行に移されまして、所期の目的ができるだけ早く達成されることをわれわれも大いに期待をいたしておりますし、また協力もいたすつもりでございます。  以上、わが国経済の当面の課題及び当面の施策についての御意見を申し上げましたけれども、これをさらに長期的な観点からながめてまいりますと、この間、財政再建を図ることがきわめて重要な課題になっておることはもう申すまでもないのでありまして、財政政策が、昭和四十八年秋の第一次石油危機以降におきまして国内民間需要の極端な落ち込みを下支えし、景気回復牽引車であるという役割りを果たしてきたことは、これまた紛れもない事実でございます。それはそれとしてまさに高く評価すべきでございますけれども、その間、一方、財源不足が相当に生じまして、財政収支に不均衡が生じましたこともやむを得なかったこととは考えられるのでございますけれども、いまや民間経済が自律的な成長力をほぼ回復いたしました今日におきまして、財政再建に対する国民経済的な要請というものは緊急にして重大なものとなっておると思うのでございまして、仮に財政収支の大幅な不均衡が今後とも長期的に続くようなことがあるとするならば、財政インフレーションは必至でございましょう。民間資金の調達困難の事態、すなわち、いわゆるクラウディングアウトの問題が現実の問題となってくるというようなことが起こりまして、国民経済に大きな弊害を与えるおそれが多いということも考えねばなりません。経済の各分野におきまして均衡のとれた安定成長を実現するためには、財政再建こそが必要不可欠であるという認識を強く保持して対処すべき事態であるかと存じます。  そして、現実にこれをわれわれの手につかみ取らねばならぬと思うのでございますが、このような考え方に立ちまして五十五年度予算というものを見ますとき、このような大変厳しい財政事情の中での御努力の跡はうかがえると私は思うのでございます。  まず、一般会計歳出におきましては、財政再建を志向いたしまして全体の規模は極力抑制をされておると思います。特に需要創出効果の高い公共事業関係費につきましては、現下の経済情勢に即応して、きわめて低い伸び率一・七%にとどめられておる一方、必要なエネルギー対策費経済協力費などの施策については、限られた財源の中で重点的、効率的配分を図っておられます意図が十分くみ取られ、まことに苦心の跡がうかがわれるのでございます。  また、歳入面におきましては、歳出規模抑制もございまして、国債発行額が五十四年度当初予算比では一兆円の減額ということになっております。  このように財政健全化方向に踏み出されたということは、まさに当局の御苦心一方ならぬものがあったということであろうかとお察しする次第でございます。しかしながら、私どもは、なお、さらに竿頭一歩を進める努力財政執行の過程におかれましてもぜひ注いでいただきたい、かように存じます。  さて、ただいま当委員会で御審議されております昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案は、五十五年度予算と表裏一体をなして、しかも財源的にこれを裏づけるものでございますので、この措置はやむを得ないかというふうに考えますけれども、なお、七兆四千八百五十億円という多額の特例国債発行は、五十四年度の落ちつき、これは当初八兆円を超えていたものが当局の御努力によりまして七兆円を切る見込みと伺っておりますので、昨年発行額を今年の発行額は超えるということでございまして、既往最高ということになりますので、まさに異例の事態ではないかと存じます。  特例国債発行は、あくまでも当面の緊急的措置でありまして、可及的速やかに圧縮、解消を図るべきものであることは論をまたないものと思いますが、さらに、特例国債解消は当然のことでございますが、建設国債につきましても、これを極力圧縮し、財政健全化を図り、国債依存を脱却するということが何よりも必要なことであろうと存ずるのでございまして、このためには、行政機構簡素化など行財政面の改革にも手を及ぼし、さらに推進されることが強く要望されるところでございます。  次に、私ども立場から申し上げまして、大量の国債発行現実にお引き受けをいたしております私ども民間金融機関経営を深刻に圧迫しておるということにつきましては、すでにいろいろな面で皆様方の御理解をいただいておるところでございますが、ある程度具体的に申し上げますと、われわれ都市銀行というのに例をとりますと、まず資金の面でございますが、五十四年度の場合には実質預金増加額を超えてしまったわけでございます。この実質預金増加額は、見込みをもちまして申しますと今年間で三兆三千億の増でございますが、これに対して国債引受額は三兆五千八百七十五億に及んでおりますし、中期国債の落札についてもさらに四千億はどの協力をいたしております。そういう実情でございます。したがいまして、そのほかの公共債引き受けであるとか、企業個人等に対する貸し出しのための資金の供給は、現有しております債券の売却とか、外部からの借入金取り入れによりましてようやく資金を捻出せざるを得ないというような状況に追い込まれておるのが実情でございます。また、これを収益面から見ますと、御高承のごとく国債相場が大幅に下がっておりますために、巨額の償却損の計上であるとか、あるいは含み損の包含のやむなき事態に至っておりまして、従来の経営状態と比べますと、非常に苦しい決算内容であるという状態でございます。  このように、私ども民間金融機関にとりまして国債の重圧はますます増大をしております。すでに経営の根幹を大きく揺るがしてくるという容易ならざる局面に立っておるのでございまして、このままさらにこの事態が改善されずに推移するようなことがありますると、まず、この国債引き受け自体消化自体にもわれわれの協力の意思が実現できないようなことに陥るやもはかりしれないという懸念すら私は抱いておりまして、このような事態にございますこと、そしてこれを打開するための方策を次に申させていただきたいと思います。  その第一は、前年同様たとえ年度の途中にありましても、財政事情が許す限りにおきまして極力国債減額にぜひ努めていただきたい。五十五年度におきましても五十四年度とほぼ同額の国債民間において消化される予定というふうに承っておりますが、仮に年度途中におきまして増収、これは大変期待はむずかしいと思いますが、増収あるいは特に支出不用、節減というような余裕が生じましたときは、ぜひこれを優先的に民間引き受け国債減額に振り向けていただきたいことを申し上げておきます。また、資金運用部によります引き受けにつきましても、現在二兆五千億円の引き受けということを御予定になっておられるように承っておりますが、これは五十四年の実績二兆六千六百四十一億を下回るというようなことになるわけでございますので、さらに弾力的に拡大をしていただきまして、民間引き受け負担を極力軽減していただきたい、かように存じます。  第二には、国債発行条件弾力化、特に市場実勢重視姿勢を強く打ち出していただきたいのでございます。すでに前年から中期国債発行公募入札制を導入されました。これなどは大変な御努力の結果でございますけれども、当初二兆七千億円の公募入札という御予定でございましたけれども実績はこれに及ばない一兆三百五十九億円にとどまっておるわけでございますし、また、期間十年の長期国債につきましても、発行条件の改定は五十四年度におきましては四月、八月、この三月、三回ございましたわけでございますけれども、われわれ引き受け側といたしますると、市場実勢を完全に反映していただいたというふうにはなかなか受けとめるような気持ちになれないというのが率直な現在の感じでございますので、ぜひこの面につきましても一層の弾力的配慮をお願いいたします。  このような市場原理の尊重の姿勢わが国におきましては貫き通すことが困難な事情がいろいろあったとは察するのでございますけれども引き受け側期待するほどに貫徹をされなかったというような気持ちを強く持っておりますので、引き続きこの点につきましては御配慮を要望するところでございます。また、公募入札の拡充にも力を注ぎまして、真に金利機能を活用した発行体制をぜひ継続していただきたい、さらに強化していただきたい、かように思います。  第三に申し上げたいことは、流通市場の整備のことでございまして、大量の国債円滑消化というためには、何よりも市場での取引価格需給実勢を反映して適正に決定されることが必要である、かように思いますので、そのためには国債保有層もさらに多様化し、市場拡大もさらに努力をし、金融機関保有国債流動化の余地を十分に拡大をしていただく、このことが肝要である、かように存じておる次第でございます。  国債の最大の引き受け手でございます私ども民間金融機関資金吸収力の強化というものにつきましても、さらにわれわれも十分努力いたしますけれども、その道を拡大をしていただきたいということについてもお願いをしたいわけでございます。今後とも当局の御努力ございますと思いますが、なおある期間相当の国債発行というものが継続されざるを得ないということも覚悟をしておかねばならぬと思います。私どもといたしましても引き続き政策運営協力するという立場からは極力その安定的な消化努力をしてまいる所存ではございますけれども、なお税制面についても各種金融機関の資産間の権衡を図るということにつきましても、新たな調達手段の開発ということで、資金吸収力の増強をぜひぜひ御配慮をいただきたい、かように存ずるわけでございます。  以上、いろいろ申し述べましたのでございますが、昭和四十年の国債発行が開始されましたとき以来のわれわれの要望というものは何回にもわたっております。一々これを全部申し上げる時間の余裕はございませんけれども、その要望をさらに現実のものとしていただきまして、われわれの協力の意のあるところを行動で現実に示されるように御配慮をいただくこと、これを何よりも私の念願といたしまして意見の陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  6. 増岡博之

    増岡委員長 次に、村田参考人にお願いいたします。
  7. 村田宗忠

    村田参考人 公社債引受協会の村田でございます。  本日は、昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案につきまして意見を述べよとのことでございます。証券界の立場から若干の所見を申し述べさせていただきたいと存じます。  さて、私から申し上げるまでもなく、わが国経済は、きわめて厳しい状況のもとに直面いたしておりますわけでございますが、生産や設備投資などは底がたい拡大基調を続けておりますものの、このところ物価の騰勢が一段と加速されます一方、国際収支は大幅な赤字ということで、円相場につきましても、いまだ安定したとは申しがたい状況でございます。  こうした情勢を念頭に置きながら、過日、当院で議決されました昭和五十五年度予算案におきましては、経済の自律的な拡大基調の維持に御配慮になりながら、なおかつ歳出規模拡大を極力抑制されることによりまして、国債発行額を前年度当初比一兆円減額されておりますなど、私どもといたしましても、大筋といたしまして、現下の情勢に適合した妥当なものと受けとめている次第でございます。したがいまして、この予算と表裏一体をなしております特例法案につきましても、これまたやむを得ないものと、かように考える次第でございます。  ただ、ここで申し上げたいことは、国債残高がすでに何と申しましても五十兆円にも上っておりまして、かつ公定歩合が九%という高金利情勢のもとにございまして、公社債市場は極度に軟弱な地合いを続けております。こうしたところに、新たな大量発行をこなしていくということはまことに容易なわざではないということでございます。こうしたことから申しまして、今後、年度途中におきましても、歳入、歳出等の状況を見まして、可能な限り発行額ないし市中消化額の削減を行っていただきますように特に強くお願い申し上げる次第でございます。  次に、私ども証券界が担当いたしております国債の個人消化につきまして、最近の状況を御報告申し上げますとともに、せっかくの機会でございますので、二、三の御要望を申し上げ、委員諸先生の御理解を賜りたいと存じます。  五十四年度中の証券会社の国債取り扱い額は、長期国債、割引国債中期国債を合わせまして一兆八千四十億円、市中公募額に対する比率は一六・五%となりました。このうち長期国債だけについて見ますと、一兆九百五十億円、一一・四%でございます。前年度に比べますと、金額、比率ともそれぞれ相当大幅な落ち込みでございまして、率直に申し上げて国債の個人消化は昨年度中きわめて困難であったと言わざるを得ない次第でございます。  この理由につきましては、昨年度中内外を通じる金融情勢の変化を反映して流通相場がほぼ一貫して軟化基調をたどりましたのに対しまして、数次にわたり発行条件の引き上げが実施されましたが、いわゆる乖離現象が続きました。これが基本的背景でございます。証券界といたしましては、できる限りの努力を払って個人消化に取り組みましたが、金利先高のムードが根強く、ただいま申し上げたような募集環境の悪化にはついに抗し切れず、結果として、大幅な落ち込みを余儀なくされた次第でございます。  五十五年度は、こうした厳しい環境の中で引き続き大量発行が行われるわけでございますから、私ども努力は無論のことでございますが、発行当局におかれましても新しい発想や姿勢をぜひともお願いいたしたいと存じます。こうした観点から、以下二、三の要望を申し述べさせていただきたいと思います。  まず第一は、先ほどからもお話がございましたが、発行条件流通市場実勢に即して設定し、投資家にとって魅力ある金融資産としての質を維持していただきたいことでございます。そうでなければ、円滑な消化はきわめてむずかしい面があろうかと思います。この意味におきまして、四月債から予定されております条件改定に当たりましては、市場実勢を十二分に勘案され、再改定の不安や思惑が生ずる余地を残さないよう、勇断をもって臨んでいただきますよう切望する次第でございます。  なお、多少事情の違いがございますが、一例として申し上げますと、西ドイツにおきましては、今般十年もの国債十一億マルクを一〇%のクーポンレートで発行する由でございますが、本年一月には、十二年ものの連邦鉄道債が八%のクーポンレートで発行されております。それをこの三月には一〇%というふうに、実勢に合わせることを当然のこととしてやっておるわけでございます。わずか三カ月の間に市場実勢動きに即応して一挙に二%もの利率引き上げを行った、こういった弾力的な発行姿勢には私どもも深く感銘を受けるのでございます。  また、入札方式で発行されております中期国債につきましては、昨年度の市中消化実績は、実を申しますと、当初計画の半分以下になりまして、まことに不振でございました。これは長期、中期の金利が接近するなどという市場情勢の変化を反映したものと思われますが、中期国債公募入札は、市場状況に応じた弾力的な国債発行国債の種類の多様化という観点から望ましい発行方法の一つでありますので、五十五年度におきましては、市場状況に応じましてもっと弾力的な姿勢でこれを拡大していくという方針を持って臨まれますようお願いいたしたいと存じます。  さらに申し上げさせていただきますと、昨年度中、消化に最も苦しみましたのは、証券界だけで引き受けております割引国債でございました。消化が特に難渋しました理由は、たとえば、税引き後利回りにおいて五年の割引国債が一年ものである割引金融債とほとんどちょぼちょぼで変わらないという、きわめて商品性の欠ける発行条件の設定が行われていることにあります。ほとんど消化困難な割引国債をこの際ぜひとも十分にセーラビリティーのあるものにしていただきますとともに、証券界の販売体制を確立するため、発行方法につきましても、現在の二カ月に一回を毎月発行にお改めいただくように実は御要望申しておる次第でございます。  第二に申し上げたいことは、公社債流通市場の担い手としての証券会社のディーラー金融の拡充整備ということについてでございます。  御高承のとおり、証券会社は公社債のディーラーとして債券の円滑な流通と公正な価格形成に当たっております。こうしたディーラー機能を適正に発揮してまいりますためには、ある程度の商品在庫を保有することも必要であり、そのためのいわゆるディーラーファイナンス、ディーラー金融が欠かせないわけでございます。今日、公社債流通市場における売買高は年間二百兆円を上回る規模になっており、これからも相当高いテンポで拡大を続けることはまず間違いないことと存じます。こうした売買高の拡大に伴いまして、ディーラーファイナンスの所要額も今後相当急速に増大することが見込まれます。現在、ディーラーファイナンスは、一部は証券金融会社の融資に頼り、大部分は現先市場において調達している次第でございます。今後、公社債の円滑な売買と価格形成に果たしますディーラーファイナンスの役割りが非常に重要性を増してくると存じます。この点を御理解を賜りますれば大変ありがたいと存ずる次第でございます。  最後に申し上げたいことは、国債の個人消化の意義と、それを担当しております証券界の立場についてででございますが、私は、個人消化国債の公募債としての本質を維持するために不可欠の基本であり、いわば公募債としての国債の、体でいえば顔であると考えております。  こうした意味合いにおきまして、個人消化の促進につきましては、さらに一段とその意義が重視されるべきであると考える次第でございます。また、こうした見地から申しますと、いわゆる特優の枠の拡大など税制面における取り扱いにつきましても、格段の措置がとられるようぜひとも要望いたします。何と申しましても証券会社は国債引き受けシ団のメンバーとして個人消化を担当しているわけでございまして、一般投資家に販売することが引き受けの目的でございます。したがいまして、発行条件実勢に即しているかどうかということは、個人消化にとりましては、最も重要なむしろフェータルな問題とも言えるかと存じます。現在ターニングポイントに立たされております個人消化を再構築いたさなければなりません。再構築いたしますには、しっかりした足場を固めることが何より大切であり、発行条件実勢化ということがそのためのかぎであろうか、かように存じます。この点につきまして何とぞ深い御理解を賜りますよう重ねてお願いする次第でございます。  以上をもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 増岡博之

    増岡委員長 以上で参考人の御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  9. 増岡博之

    増岡委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これ名許します。伊藤茂君。
  10. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 参考人の皆さんには、お忙しいところ御苦労さまでございます。  いまそれぞれ冒頭の話を伺いましたが、御案内のように、私どもも五十五年度特例公債発行についての法案審議をいたしておりますが、年々、大変気の重いといいますか、憂うつな議論でありまして、というよりは、本当にこれは何とかしなければという気持ちを毎年非常に深めている次第であります。  また、金融界の重要な立場におられる皆さん方も、それぞれ非常に厳しい中で御苦労なさっているというふうなことであろうと思います。報道を読んでおりますと、昨年も六・一国債の値崩れで非常に苦労されて、その苦労の余り六・一しらがなんという言葉も生まれているそうでありますけれども、今回は自殺者まで出たというふうな痛ましいことまで起きておりまして、そういう中で、本当にこれは国民に向けての責任として何とかしなければならないということでございますので、先ほどのお話も伺いましたが、ぜひ日本経済の将来に向けて率直な御意見、本音のところを聞かしていただきたいというふうに思っております。  最初に澄田参考人に、済みませんがまとめて三点をお伺いしたいのですが、一つは、当面する内外の条件対応についての概括的なお話もございました。五次にわたる公定歩合の引き上げあるいは準備率の引き上げ、いろいろな措置がとられているわけでありますけれども、アメリカの金利も一九%ぐらいならばなんとかこれに対応できるであろうというところが、二〇%という状況も出ている、あるいはまた、先般のスイスとのスワップ協定も効果が薄いのではないか、むしろもっと拡充する必要があるのではないかとか、円安への歯どめがなかなかかからないといったようなことで、先般総裁も出席されたようですが、国際決済銀行の中央銀行総裁会議などの金利上げ競争自粛の申し合わせのことも場合によってはふいになる危険性もあるのではないかというふうな市も聞かれるわけであります。これから四月—六月の物価動向がどうなるかということも非常に心配であります。  そういうことを考えますと、これ以上公定歩合を上げることもむずかしいと思いますし、外圧も国内の条件もいろいろと厳しいものがある。昨日参議院の予算委員会の方に総裁が出席をされて、円は過小評価であるというふうな意味のことを言われたようでありますし、私もそういう気もいたしますが、しかし、現実はあらゆる手をこの際打たなければならないというわけでありまして、円安をどう食いとめるか、あるいはまた五、六月に第六次公定歩合の引き上げのようなことにならないようにするためのさまざまの手を打たなければならない。天井感がどう生まれているのかということもいろいろ話題になるわけでありまして、それら当面の打つべき具体策、見通しのようなことをもうちょっと具体的にどうお考えかということが一つです。  それから二つ目に、各参考人とも国債発行減額ということを強調されました。私どももまことにそのとおりだろうと思います。もう一歩その中身を考えてみますと、私ども予算当初の額で昨年から一兆円減らしたということを実は高く評価するというわけにはいかないわけであります。というのは、五十四年度発行実績も、まだ長期債の若干の分は残っておりますからなんですが、五千数百億残っている分も恐らく発行しないで済むように当局努力をしているのではないだろうか。それを考えてみますと、十三兆五千億ぐらいの発行実績となるのではないだろうか。ですから、これから予算執行の過程の中でどう減額をするのかという場合に、十四兆二千七百億の五十五年度予算からどう減らすかというよりも、昨年実績に比べてもっと大幅に減らすという努力が必要なのではないか。それを考えますと、五十四年度発行実績がそういう数字でありますから、少なくとも十二兆円台までこれを下げていくというふうな努力が求められるところではないか。そうでないと昨年の実績を上面ることになるわけでありますから、その辺をどうお考えか。  それからもう一つは、マネーサプライのコントロールのことにもお触れになりましたが、昨今いろいろとそれらについての御努力をされていることも伺っておりますけれども、アメリカその他の国と比べて、目標値を公表して強力な措置をとるとか、もう一つインフレの危険性が大きいだけに、中央銀行として努力をなされる必要があるのではないだろうか。  あわせまして、関参考人村田参考人に後で御質問したいことに関連いたしますが、白銀の買いオペのレベルというものは、いまの状況から五十五年度マネーサプライコントロールと関係をして上げるわけにはまいらないという状況であろうと思いますが、その辺の姿勢をどうお考えか。  三つまとめて恐縮ですが、御意見を伺いたいと思います。
  11. 澄田智

    澄田参考人 ただいまの御質問の点についてお答えを申し上げますが、まず最初の、今後の対策をどういうふうな方向で具体的にどう考えるか、こういうような御質問でございますが、先ほど冒頭申し上げましたような情勢のもとに、私どもといたしましては現在考えられます手を打ちまして、そうして今後はその政策措置浸透状況を注視してまいる。金融の面で申せば、金融引き締めを、窓口指導その他マネーサプライコントロールをさらに徹底していく、そういう段階であろうと基本的には考えております。  円の問題についてでございますが、現在の円安は基本的にはアメリカのドルの堅調、これはあらゆる通貨に対して堅調になっているわけでありますが、そういう背景のもとにおいての状態でございますので、対応としては、そういう情勢を注視しながら行き過ぎた円安、これは為替心理というようなものによって明らかに行き過ぎているというふうに思われますので、これについては介入、それも非常に強力な介入姿勢を崩さないでいくことが必要であろう、かように考えております。先ほど申し述べましたが、米国、西独、スイス、日本と、四カ国の間で協調して介入をするということを初めて行いました。それに基づいて現にニューヨーク市場あるいはロンドンその他ヨーロッパ市場においてアメリカ及びスイスがそれぞれ自発的に自分の勘定において介入をしているわけでありまして、これは海外市況における円の買い支えとしては適宜適切な効果を発揮しているわけでございます。やはりこういうふうに強い介入姿勢を示すことによって、当面の浮動する為替の動き、心理のそういった動きに対処していく。基本的には経常収支の基調が逐次改善されつつある現状でございます。先行き、あらゆる指標の示すとおり輸出は伸びておりますし、輸入につきましては明らかに輸入数量の伸びが鈍化し、さらに下回ってきている、こういう状態でございます。また高値の原油その他海外原材料も入着が大体一わたり入ってきているということでありまして、あとはそういう意味で改善基調が逐次あらわれてくる、こういう状態でございますので、しんぼう強くそういう状況を見守っていく、こういうことではないかと思います。要は腰を据えて物価、その基本にある円安状態というものに対処をしていく、こういうふうな考え方でおるわけでございます。  次に、第二点の御質問ですが、当初予算としては一兆円国債減額が行われたわけでありますけれども、五十四年度は実際の発行額が減らされておるわけで、それはそれとして非常に歓迎すべきことでございますので、五十五年度におきましても五十四年度発行額を下回るような発行にしていただきたい、これは私もおっしゃるとおりであり、全くそのことは望ましいことである、こういうふうに考えるわけでございます。  しかし、五十五年度予算はこれから執行されるわけでございますので、その執行の過程におきまして、先ほども申し上げましたけれども物価総合対策において公共事業執行率を抑制する、こういうような措置がとられる、それについては目標値を早く設定をしていただきまして、その抑制的な姿勢というものをはっきり示されるということが何より必要だと思うわけであります。そういう公共事業執行その他行政経費の節減等を通じまして、年度の経過においてできるだけ早く国債発行額というようなものについてのめどもつけていただいて、可能な減額ということをしていただく。現在、幾らまでということを申し上げる段階ではございませんので、そういうふうにお願いを申し上げる次第でございます。  第三番目の点として、マネーサプライについて、目標値を示してやる、はっきりそういうふうな方向でやることはどうかというようなことや、あるいは買いオペの姿勢等についてのお尋ねがございました。現在、日本銀行マネーサプライにつきましては予測値という形で発表いたしまして、しかし、それをやはりガイドラインのようにいたしましてマネーサプライのコントロールをするというようなことに努めているわけでございます。外国では目標値を定めるという例等もございます。それから、マネーサプライについて逐次経験に応じてやり方を変えるというような措置もいろいろとられている段階で、この点については、今後とも外国の経験等も十分尊重して、見ながら、わが国状況に適したマネーサプライコントロールの方法を検討しつつ実施していく、こういうふうな段階であると思っております。現にさような姿勢で努めておるわけでございます。  それから、買いオペに対する考え方姿勢でございますが、申すまでもなく、日本銀行による国債の買いオペというものは、経済運営に必要な通貨、経済成長に必要な通貨、いわゆる成長通貨を供給する、そういう手段として行っているわけであります。すなわち、あくまで通貨調節、金融調節の一環という形でございます。そういうことからまいりまして、金融引き締めを行っておりますときは、通貨供給、先ほど申しましたマネーサプライがまさにそうでございますが、マネーサプライの一環としての通貨供給を抑え目にするということは当然のことでございます。したがって、適格な国債のうちで、そういうふうな金融調節の見地からその一部を抑制的に買いオペをしていくというような形になるのは、これは当然のことでございます。したがいまして、そういう金融調節という見地マネーサプライコントロールの見地からその手段としての買いオペということで、五十五年度もわれわれは当然にそういう態度でまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  12. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ありがとうございました。澄田さん、銀行局長の当時とはずいぶんさま変わりの中で副総裁のお仕事をなさるわけでありまして、一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、村田参考人関参考人にお伺いしたいのです。  きょう参議院で予算成立の予定ということで、四月新規債の発行の条件の問題が間もなく詰めになると伺っているわけでありまして、けさの新聞などを見ましても八・七%、九十九円とか、詰めの段階でのいろいろな情報が出されております。先ほど来市場実勢尊重という御要望が村田さん、関さんからございまして、私もそうであろうと思います。日本だけスタートのときから非常に特殊な、御用金思想と言われるような形で来ておりまして、その後改善はなされておりますが、なかなかマーケットメカニズムに対応するという状況にはなっていないということで、六・一国債なんかでも、何か新聞を読んでおりましたら、新幹線、全学連並みにジャパニーズ六・一ボンドというのは国際通用語になるほど標語になっている。こういう言葉が国際通用語になるというのも余り好ましい状況ではないと思いますが、市場実勢尊重という立場からいって、大蔵省のさまざまな買い支え、事実上の管理相場じゃないかと言われているわけですが、いわゆる二重相場という現象が生まれている。その乖離の問題もあるわけでありますけれども、これからの見通し、五十五年度の見通しの中で、特に当面新規債の発行条件などについて、デリケートな段階ですから余り細かく数字はおっしゃられるかどうかあれですが、いずれにしてもこれが順調になされるかどうかは非常に大きな問題でございますから、その辺、最初に村田参考人、それから関参考人から御見解をお伺いしたいと思います。
  13. 村田宗忠

    村田参考人 おっしゃいますように、六・一で大分しらががふえました。レートでどうということは差し控えさせていただきまして、先ほどから申し上げておりますように、これは基本的な問題でございます。実勢に即していかなければ今後の個人消化はきわめて困難だということでございます。  一つは、投資家というものが、現在のようにいろいろインフォメーションが非常に行き渡るようになっておりまして、値段のことはわかっております。実勢もわかっております。たとえば八%で九十九円五十銭、しかしその反面におきまして、既発の八%のものが九十四円あるいは九十二円というふうな値段であることはみんな御承知でございます。そのときに九十九円五十銭のものを買ってくれ、ここに非常に無理がございます。そういうふうなことから、実際論としてでございますけれども、その点は非常に切実に感じる次第でございまして、五十五年度国債消化が順調にいくかいかぬかということも、その辺にやはりキーポイントがあるだろうと思います。しかし、財政当局のいろいろの御苦心も私どもよくわかります。国債費の負担の問題もございますし、それからいろいろ金利体系と申しますか、各金融商品の相互間の位置づけと申しますか、そういったような問題もございましょうし、よくわかるのでございますが、しかし、そこはひとつ勇断をもって臨んでいただきたい。  さらに、運用の妙と申しまするか、五十四年度を振り返ってみますと、中期債という、国債の多様化ということに一歩を踏み出していただきました。これは非常に高く評価するのでございます。ただ、これもやはり実勢を反映していくという姿勢のもとに出してまいりませんと、その間の御事情もよく御苦心はわかるのでございますけれども、各金融商品間の位置づけとの相互関係、そこにもやはり御配慮になりましょうし、また中期国債公募入札ということは、実勢を反映する意味において非常に意味合いがあるわけでございまして、御当局にとりまして、余り実勢を反映し過ぎますと、それが長期債のレートの方にも逆に影響してまいりますし、いろいろ御苦心はあると思いますけれども、しかし、そこはやはり本来の行き方で実勢を反映させていただきたい。  また、こういうふうな高金利の状況でございますから、五十五年度は長期債をなるべく後ろ倒しにしていただきまして、もちろん、その間に運用部資金での引き受けとか財政投融資を削減していただきまして、そっちの余裕をつくっていただいて華中消化を減らしていくというふうな御努力を願いたいことはもちろんでございますけれども、その反面、長期債をなるべく後ろ倒しにして、中期債というものは前倒しにして、そう高金利がいつまでもいつまでも続くわけでもございますまいから、その辺の値ごろをつかんで発行していただくというふうなやりくりというふうなものもあろうかと、存じます。  それから、五十五年度を考えますに当たりまして五十四年度のことを多少振り返ってみますと、こういった流通市場が暴落しておるということは、これは単に発行条件だけの問題ではなくて、国際的ないわば金利競争的な現象もございますし、先高見越しということもございますし、環境そのものが非常に困難な環境であるためでございますけれども、しかしながら、昨年の三月に条件が改定されまして——その前にいわゆる六・一が相当期間継続いたしまして、昨年の三月に初めて一月だけ六分五厘になりました。これが国会審議中にもかかわらず行われましたということは、私は非常に高く評価するのでございますけれども、ややタイミングがおくれたのではあるまいか。そういたしますと、すぐ次に上げなければならなくなります。で、四月にさらに七分二厘になったというふうなことになりまして、その辺はもう少しタイミングをうまくやっていくということによってかえって国債費がセーブされるという一面もあるいはあるのではあるまいか、その辺の運用の妙ということをひとつお考えいただいたらいいのではあるまいか、かように存じております。
  14. 関正彦

    関参考人 お答えをいたします。  ただいま村田参考人から、証券会社としてのお仕事の関係から非常に微妙な点についてまでお話がございましたので、私の方からのお答えは、先生のおっしゃいますように、けさの新聞には何か相当具体的な数字がでかでかと書いてございました。実は私はこれを見てあわてたわけでございまして、まだ予算案が決まっておるわけじゃないのでございまして、これを具体的にこうだぞというお話が公式に来るわけではございません。ただ、恐らくあそこに出ました数字というのは相当あれに近いものであろうと思うのでございます。これは私どもといたしましては、国債募集引受団というふうに法律にはなっておるわけでございますが、このメンバーの方々は各金融機関いろいろ種類がございまして、その方々とすぐ会合をいたしまして、この条件で一体満足すべきものとはなかなか言わないかもしれませんけれども予算執行協力ということで、この辺でまず行くということにするかどうかの打ち合わせを至急開催したいと思います。  いま村田参考人がおっしゃいましたように、発行条件の改定というのは、渋っておりますとどうも後を追う、後を追うという形になって、去年の例を申しましても、先ほど申しました四月の改定の後、あれは七月でございましたか、この改定は、私としては意外にタイミングよくやっていただいた、それかあらぬか、その段階においては相場はある程度落ち着いたような動きをしておったことも事実でございますので、こういう点もあわせてこの段階の打ち合わせでは当然話が出るかと思います。それも十分考えて行動をしたいと存じております。
  15. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 村田参考人関参考人にもう一問ずつお願いしたいと思うのですが、私は村田さんがおっしゃったのも一つの筋だと思います。また国の方でも、国債費の負担ということの御事情もわかるというような理解も示されましたが、私は日本の公債制度の経過、これからの見通しなどを考えますと、やはり政府側の方が押しつければ何とかなるというサイクルが続いていることがよくないのじゃないだろうか。大蔵省の方も、理財局の方も聞いていらっしゃいますが、より安いコストで歳入財源を確保しよう、これは勤勉なお役人として当然のことかもしれませんが、昨年なども、聞きますと、理財局長は胃がきりきり痛んで健康のためにもよくないという状態になっているわけでありまして、やはりこの際、発想の転換というのか、欧米の状況もそうでありますから、国といえども借金をするということは大変な重荷と痛い思いをするのだ、軽々にはやってはいかぬというふうなメカニズムがもっと働くようにする、そしてまた、他面ては国民に責任のある財政再建計画をつくる、そういうことが伴っていかないと、いつまでたっても歯どめがきかない。御案内のとおりに、六十年代になれば、新たな第二段階財政危機というふうに言われております。また、償還計画も六十二年では基金もゼロになるとか、大変な状態でありまして、この際、そういう方向に大胆に変わらなければならない。それを革命的にやるかモデレートにやるかは、また現実の問題だろうと思いますけれども。  そういう意味から言いますと、村田参考人の方から、昨年の経過を見ても、もうちょっと対応の仕方が後手後手に回らぬようにあったのではないかとか、それから、発行条件市場実勢尊重は当然でございますし、それから、個人消化というものを再認識をするといいますか、去年はこの面は現実努力がほとんど進まなかった。それから、金利の高いときにできるだけ中期債を活用して長期債を後ろ倒しにするとか、割引債の問題、中期債も昨年は期待外れに終わった、これを何か条件を整えれば、その辺を個々ではなくて総体に考えて、もう一つ何かシステムとしてやり方を改善をしていく、私が申し上げるのは私なりの考え方でありますけれども、ということが必要ではないだろうか。その辺、全体の立場から、引受協会の会長立場から、何か制度、システムとしてこう変えていったらというふうなお考えがございましたら伺いたいということが一つです。  それから関参考人にお伺いしたいのは、先ほど五十五年度国債発行運営の中で極力削減をするようにということがあったわけですが、たとえば予算どおり十四兆円台などのまま発行されますと、反響としては、金利も含めて昨年よりも厳しいわけであります。都銀のウエートも非常に高いというわけであります。クラウディングアウトの危険性ということも言われましたが、昨日も政府金融で、ある国民金融公庫の支店長さんと話したのですが、金融引き締め影響で中小零細企業が殺到するほど申し込みが多い、毎晩遅くまで仕事をやっておりますと、中小企業にとっても非常に深刻な事態になりかねない。そういうことを含めて、クラウディングアウトもシェーマティックには起こっていないと言うのでしょうけれども、デ・ファクトには発生をしているという認識が必要ではないかと思います。含めまして、もし予算どおりの発行でいった場合には、金融機関、それから各行の資金ポジションなどを含めて非常に危険なことになってしまうのではないかと思いますが、その辺どう感想をお持ちかということ。  それから、関参考人も大口規制問題では非常に苦労されたと思いますが、別な意味で言いますと、国債という超大口の資金調達システムといいますか、こういう超大口を何とか規制をするということは、国民の前に国民が利用されている銀行が一体どういう状況になっているのか、国債でこういうことになっている、文字どおりこれこそディスクロージャーの精神で明らかにされる努力をもっとされたらどうだろうかと思うわけでありますが、いかがでございましょう。  それから、時間の関係で済みません、最後にもう一つ、これは澄田参考人にお伺いしたいのです。  きょうの日経新聞にも一面に出ておりましたが、オイルマネーの問題に関係して、私は長期にあるいは政策的に見た場合に、OPEC、アラブの国々とオイルマネーリサイクルというコマーシャルベースの発想ではなくて、やはり日本の先進的な技術の供与その他いろいろな面でのいい関係を総体的につくっていくことが必要であろうと思います。そういう中の一つの問題として、国債あるいは公社債を含めましてオイルマネーとの関連、西ドイツの先般の例もあるわけでありますが、これらについてどうお考えになっているか、全部一緒にお伺いして恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。
  16. 村田宗忠

    村田参考人 システムとしてどう考えるかという大変むずかしい問題、私はシステムとしては物の形は非常によく整っておると思います。問題は、そのシステムをどういうふうに使うかというところに問題があるのではないかな、こういう感じを持っております。  先ほどは実務家的な面から申し上げたのでございますけれども、まず、先ほど実勢実勢と申し上げましたが、基本は、国債発行の歯どめといたしまして、市場実勢に即応するということが実はプライスメカニズムを働かしていくことになるわけでございますから、やはり市場原理に沿っていくという基本を踏まえることが一番大切であろう、かように存じます。  私は、大蔵省から出ております「明治大正財政史」というのをちょっとひっくり返してみまして、そのときに、過去の大量発行のときにはどのようなことがなされたのかということをちょっと見てみようと思って読んだことがございます。そのときには、もちろんいまと同様にやはり引き受けシ団というのがございまして、当時は銀行さんでございましたけれども発行条件、それから発行額、方法等につきまして、大蔵大臣が引き受けシ団のメンバーと十分相談して、その意見を入れて発行されたということでございます。したがいまして、当時、三カ月置きか四カ月置きくらいに発行されておりましたけれども、大体その都度条件を引き上げておられます。  それから、同時に国債の保有者に対するありとあらゆる優遇策を考えておられました。国債の保有者、購入者に対する思いやりといいますか、反面から言えば国債の魅力づくりということになりますか、当時といたしましては国債所有者に対する、現在では多少問題があるかもしれませんが、所得税の免除とか、担保掛け目を一〇〇%にしますとか、あるいは国債担保金融のレートを商業手形並みにするとか、そういったいろいろな配慮がされております。そういった一連のシステムと申しますか、形の上のシステムというよりも心構えのシステムというものがあったのではないか、かように思います。  以上をもってお答えといたします。
  17. 関正彦

    関参考人 お答えいたします。  ただいま村田参考人のお話しの後段の方のお話、過去の大変多額の国債発行したときの政治の対処はいかがであったかということであって、私に対する御質問は後の方かと思いますけれども、ちょっとここに私が持っておりますのは、第一回、つまり昭和四十一年に発行されましたときの最初の契約書でございまして、この第一条というのがいまだに変わっておらないわけです。ということは、システムとしてはあるということなんでございますね。毎月発行のときに契約を取り交わして新たにやっておるわけでございますから、それじゃ今度の発行引き受けないということの——法律上はこのような形が整っておるわけでありますから、システムはあるということです。問題はこれをどう動かすかという決意の問題、特にすぐれて現時点におきましては政治の面における決意というものが非常に必要なんじゃないか、市場原理の尊重も当然でございますけれども。これをわれわれはいまいろんな形で申し上げておるというふうに思っております。  さて、今度は超大口融資規制、大変身につまされた話になりましたのですけれども、問題の本質は、実は大口規制の精神というのは銀行の融資の内容の健全性という問題に非常にかかわっておるわけでございます。それから、そのほかに資金の配分について広く社会的な容認を得るような姿勢をとるというようなことであったと思いますが、この国債の場合は、国債を原資として賄われます予算執行というものは、やはり国会において認められたという意味においては、資金配分の問題につきましては特に何度もわれわれとしてもすでに論議を尽くされたものだと思います。  問題は健全性ということになるのですけれども国債信用できない、不渡りになるかもしれないというようなことを現在私どもは考えておりませんけれども、これが五十兆、六十兆重なって百兆ということになると、国民全体が国債に対する不信の念を抱くというようなことになる。このことを私は非常に恐れるという気持ちで、確かに、この段階でぜひとも食いとめていく、増額に増額を重ねておったのが多少減額になっていくという傾向へ持ち込んでいく努力を、官民挙げて取り組まなければならぬ、こういう気持ちでございます。何かこういう方法をやったらいいじゃないかということは、細かいいろいろな技術的な面につきましては、至るところで要望を重ねておりますので、ぜひぜひそれら一つ一つが着実に具体化されますことを期待しておるということにとどめたいと存じます。どうもありがとうございました。
  18. 澄田智

    澄田参考人 現在の情勢のもとにおきまして、オイルマネーを初め外国からの資金の導入が望ましいことはおっしゃるとおりでございまして、去る三月二日に政府日本銀行において発表いたしました円対策、先ほども申しました協調介入がその柱でございますが、その中にも四つの外国資金の導入のための措置を発表しておりますことは御承知のとおりでございます。  かように外国資金の導入に対して積極的な姿勢で臨んでおるわけでございますが、そしてまた、昨年来かなりな規模でオイルマネーなどが入ってきておったわけでございますが、ごく最近に至って若干その流入ペースが鈍化をしているという次第で、これはやはり円安感、もう一つは公社債価格の低落、こういったものが導入のための障害になっているという面が否定できないわけでございます。  その意味から申しましても、できるだけ公社債市場に底値感が出ること、そしてまた為替市場の方にも安定感が出ること、こういうことが逆に導入のためにも必要な条件である、こういうことになるわけでございます。  オイルマネーの導入につきましては、これは多様な方法で導入することが必要であろうと思いますし、その対応も同様に多様でなければならないと思います。民間ベースにおいては各種のチャンネルを通じ、またあるいは日本の技術との組み合わせで協力する、こういう面も同時に加味をして導入方策が講ぜられるというようなこともあろうかとも思いますが、公的なベースにおきましては、西独の例は国債を売却するという方法でございまして、こういうような方法も一つの方法であろうかと思うわけであります。いずれにしましても、先方の希望にマッチしませんと、入る金も入ってまいりません。そういうことでいろいろ多様な方法を考えていかなければならないわけでありまして、そういうようなことが当面非常に必要なことであろう、かように考えておる次第でございます。
  19. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これで質問を終わります。  、どうもありがとうございました。
  20. 増岡博之

    増岡委員長 この際、五分間休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後零時十五分開議
  21. 増岡博之

    増岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  引き続き参考人に対する質疑を続行いたします。柴田弘君。
  22. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 本日は参考人皆様方、大変お忙しいところを当委員会にお越しいただきましてありがとうございました。  私は、一昨日の当委員会におきまして、財政特例法案審議に際しまして今日の国債価格の暴落あるいは消化難の問題、国債を保有する金融機関の評価損の問題に触れまして、もはや今日の政府のとっております国債管理政策が破綻をしているのではないか、こういう点を指摘をし、発行条件の改善の問題、公募入札の拡充あるいは発行方式、銘柄の多様化等々の問題につきまして国債管理政策の抜本的な改善を求めたわけであります。  ただいま各参考人からも大要そのような趣旨のお話をいただいたわけでありますが、本日は、現場でこの国債の問題につきまして大変に御苦労なさっておみえになられます皆様方に対しまして、忌憚のない御意見をいただきまして、本法案審議の参考にさせていただきたい、このように思います。どうかひとつ率直な御意見を賜れば、このように思います。  そこで、まず第一点といたしまして、日銀の副総裁である澄田参考人にお尋ねをしていきたいと思います。  先ほども触れられましたが、いわゆるオイルマネーの導入の問題であります。いま参考人からは積極的なオイルマネーの導入が望ましい、このような御発言があり、そしてこれを多様化していくという方向で今後対処していきたい、このような御発言があったわけであります。私も、今日置かれております円相場の安定の問題あるいは円安対策といたしまして産油国のオイルマネーを導入することは当然である、このように考えておるわけでありますが、これを具体的に今後あるいはいままで日銀が対応されておみえになりました方向につきましてお伺いしておきますが、日銀保有のいわゆる国債を月間五百億円程度売却されまして、今後とも積極的なオイルマネーの導入に対応していきたい、こういうふうにも聞いておるわけでありますが、この点どうかということ。それから多様化の問題でありますが、これはサウジアラビアだけではなくて、それをもう少し拡大をしていくのか。もしそういう方向であるならば、産油国と具体的にどう今後とも対応していくのか、この辺の話し合いというのは一体どうなっているのか、いま御発言の中には先方の希望にマッチしていかなければならない、このような御発言もありましたが、いま一つ先ほどの議論を突っ込んでお聞かせいただければというふうに思います。
  23. 澄田智

    澄田参考人 ただいまお話しの点でございますが、オイルマネーにつきまして先方とどういうような話になっているかというような点は、産油国一般にその資産をどういうふうに運用するかということにつきましては、きわめて内密に、一般的にこれを発表したりすることのないようにという配慮が非常に強いわけでございます。そういう産油国の態度に対しましては、これを尊重せざるを得ないことでございまして、そういう意味合いにおいて、私どももいままで産油国から資金が入ってくる、しかし、それはどういう形でどれだけ入ってくるということにつきましては、国際収支の統計の各項目であらわされているということ以外には申し上げることができないことでございまして、この点はそういう事情を御勘案いただいて、その程度にとどめさせておいていただきたいと思う次第でございます。現に、公的、私的両方のルートで産油国からも資金が入ってきている。それは産油国側も資産の運用としてそういう運用を考えておるわけでありまして、それにできるだけ応じていく、あるいは積極的にこれを誘うようなことも必要である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  24. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 そうしますと、金額的にはともかくといたしまして、国債を売却して導入をしたい、それを拡大していくという方向には日銀当局としては変わりはない、こういうように理解してよろしゅうございますね。
  25. 澄田智

    澄田参考人 国債ということに必ずしも限るわけではもちろんありません。ただ、国債を売却するということも産油国の希望に応ずる手段としては十分考えられるところであると思います。
  26. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 では、続きまして澄田参考人にお尋ねをしていきますが、先日日銀から資料をいただきました。その資料によりますと、国債の評価損、五十四年度の上期で約千百億円、このようにあります。五十四年度下期、いま計算中かもしれませんが、大体どの程度になっておるのか、この辺を明確にできたら明確にしていただきたいと思います。  それから、日銀も国債の評価損については相当なものを抱えているということも事実であると思いますが、この評価方法は低価法をとられておるわけでありますが、今後ともこの方針を取り続けられるお考えであるか、お聞かせいただきたいと思います。
  27. 澄田智

    澄田参考人 最初に評価方法の方からお答えいたしたいと思いますが、日本銀行としては低価法をとっております。これは中央銀行という立場、中央銀行の資産の評価でございますので、中央銀行の資産は通貨発行、通貨に関する信認の基礎になるものでございますので、そういう特別な意味合いを持っておるわけでございます。したがいまして、できるだけかた目の評価がよろしい。そういう意味では低価法の方が、両方比べて低い方の価格というようなことでございますので、これはできるだけかた目という趣旨にはかなうもの、こういうふうに考えておりまして、今後ともそういう方法でやってまいりたい、かように考えておる次第でございます。  それから、五十四年下期の評価損でございますが、かなりな金額に上るということでございまして、大体上期の倍以上になるというふうに考えております。
  28. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 日銀が経営の健全性という問題から低価法をとられるということ、これは私は異存はありません。問題は、今日のように国債相場の下落によりまして多額な評価損が出ている、このことは同時に日銀の国庫へのいわゆる剰余金による納付金というものが減少するということは避けられない事実である、このように思います。この納付金の減少という問題は、当然財政上好ましくない、こういうことでありまして、私は本質的には国の国債発行の問題あるいはその国債管理政策というものが大きな問題である、このように考えております。この辺についての御見解がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  29. 澄田智

    澄田参考人 日銀の保有国債の評価損によって納付金が影響を受けるということは、これはやむを得ないことではないか。先ほども申しましたように、資産の評価の健全性ということは、これはあくまで中央銀行としては維持をしなければならないところでございまして、その結果として納付金に影響が生じてくるということはいたし方がない、日銀の機能の上から、納付金が出れば当然に国庫に納付する、こういうことでございますので、これはやむを得ないことだと思います。円高のとき、円高進行中の日銀保有の外貨についても同様の問題があったわけでございます。  しかし、このような評価損が発生しないように、あるいは発生しても多額にわたらないように国債の管理政策、これはいろいろな意味の広義の管理政策において十分にそういう考慮をしていかなければならないということはおっしゃるとおり、だと思います。
  30. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで日銀は昨年、五十四年の六月九百八十二億円、同じく十一月に千八十一億円、十三月に九百三十二億円、また同時に六百三十億円、合計三千六百二十六億円の国債を買いオペされております。この買い入れは六・一国債、八・〇国債、いろいろあるわけでありますが、私の理解では六・一国債が多い、このように理解しておりますが、この銘柄をお教えいただきたいと同時に、この買い入れの目的、この目的は経済成長に合わせたいわゆる成長通貨供給、このように考えるわけであります。しかし、このように国債の下落が大きい、こういった状態で、一つはそういった成長通貨供給と同時に、買い支えといいますか、市況対策の意味になったのではないか、このように私は考えておりますが、この辺はどうか、このように思います。
  31. 澄田智

    澄田参考人 日銀の国債買いオペは、おっしゃるとおり、これは金融調節の一環といたしまして、金融市場における不足資金、すなわちその資金を供給するということが日本経済の成長のために必要なわけでございまして、その不足資金を補てんするために行うものでございます。五十四年中に行いました買いオペもそういう趣旨であることは言うまでもございません。  買いオペの銘柄の選定でございますが、これは日銀の買いオペ適格国債、市中にあります適格国債の中で最も多く保有され、かつ取引が最も多いものを選定してやる、こういうことがずっといままでの原則になっております。これは価格対策という趣旨では全然ございませんで、そのときに最も多い銘柄を選定する、こういうことでやっておるわけでございます。五十四年度に買いオペを実施した段階におきましては、六・一国債が最も代表的な銘柄、市中に最も多く保有され取引されておった銘柄でございますので、買いオペの対象としては主として六・一国債で実施したわけでございます。
  32. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで六・一国債が主としてということでありますが、なるほど成長通貨供給ということは私は理解をいたします。がしかし、結果論としてこの国債の値下がりに対して、やはりこういった事態は市況対策の意味が強いのではないか。しかもそれが六・一国債。これは八・〇国債と比較いたしまして一番評価損が多い。これも先ほどから御指摘をいたしておりますように、納付金の減少等々につながってくる。この辺について私はどうしても納得できない、このように思います。だから、下落の大きい六・一国債だけでなくて八・〇国債も買ってもいいのではないか。どうして値下がりの大きい六・一国債ばかり日銀は買われたか、こういうふうに私は考えるわけであります。こういった方向で今後日銀はやられるのかどうか、このように私は思います。言葉をかえて言えば、今回のあるいは今後の日銀の対応というものは、破綻をした国の国債管理政策のしりぬぐいを結果としてしているのではないか、このように私は考えるわけであります。その点ひとつ明快に御答弁をいただきたいと思います。
  33. 澄田智

    澄田参考人 重ねて申しますように、日銀の本来の使命でございます金融調節、すなわち金融市場に必要な通貨を供給する、そういう形で金融を調節していくというその方法として国債の売り買い、その一つとして買いオペレーションを行うわけでございます。これは各国の中央銀行もいずれもこういう方法をとっているわけでございます。その場合に、それは六二国債を買うことによって市況対策をやることになるではないかというお話でございますけれども、先ほども申しましたように、最もそのときに市中に多く保有され、そして取引されている銘柄を選ぶ。これは通貨を供給する場合にできるだけ広く供給するという趣旨から、金融機関に広く持たれている、そして広く取引されている、そういう国債をその段階においては選ぶ。昨年度はそういう形で六・一国債が選はれたわけでございます。しかし、今後はだんだん国債の保有銘柄が移ってまいりまして、六・一国債からその後のたとえば八分の国債というようなものが代表的に保有量が多くなり、国債発行消化につれて国債の銘柄が移ってまいります。その場合には、当然にそのときの市中における最も代表的な取引量の多い、保有量の多い国債が選ばれる、こういうことになるものと考えている次第でございます。
  34. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 副総裁、くどいようですが、最後にあと一問ですが、私が申しておりますのは、今日のこの国債発行に関する諸問題、これは単に日銀が買い入れた程度ではもはやどうしようもないところに来ておる。つまり、当面の政策として先ほど来いろいろと述べておみえになりますように、発行量の減額はもとより、今後政府国債管理政策の抜本的な改正というものが必要だ。制度面云々というお話も先ほど出ておったわけでありますが、この点、何か日銀当局として具体的なものがあればこの場でひとつお聞かせいただければと、このように思います。
  35. 澄田智

    澄田参考人 その点は、私、冒頭の陳述にも申し上げましたし、いままで申し上げたことの繰り返しになるわけでございますけれども、やはり現在の状態におきましては発行量を極力抑えていただく、それからその年度経過中においても国債減額等を可能な限りやっていただく、さらには資金運用部などの引き受けによって市中に出る量を、これもできる範囲において極力減額をしていただく、こういうことが当面の措置としては最も望ましいと思います。そして発行条件の極力市中の実勢に合わせるための弾力的取り扱い、あるいはまた発行銘柄、中期債等の公募入札等を活用していただきまして発行の態様の多様化というようなものも図り、市場実勢に合わせて発行するような努力を極力やっていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。
  36. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 ありがとうございました。  続きまして、関参考人にお尋ねをしていきます。  国債消化、これはいかに円滑にこれを発行していくか、こういうことでありまして、大蔵省当局としてもこれは十分に配慮する必要がある、このように私は考えております。この円滑消化を進める点から申しますと、これは個人消化を含め民間消化を安定的に推進することが肝要であります。しかし、最近の国債価格を見てまいりますと、たとえば六・一国債でありますところの第十三回利付国債、これは取引所価格で見てまいりますと、この三月一日には八十一円八十九銭。これが、この国債発行されましてから一年半もたたない間に値下がりをしておる。しかも、その十日後には七十六円六十九銭という暴落を演じまして、五円以上も下落をしているわけであります。過去の歴史を見てまいりましても、明治四十一年から四十二年ごろ、あるいは昭和に入りまして五年から六年、国債が大暴落をいたしたことがありますが、今日のこの暴落も過去の暴落にまさるとも劣らないものであります。このように相場が大きく揺れ動くことは民間消化を進める上で大きなマイナスだと私は思います。この点について、ひとつ民間引き受け側の率直な御見解をいただきたいし、同時に、これは何か政府としてとるべき有効な対応があるのかどうか、ひとつ一歩突っ込んで具体的なその方法につきましてお聞かせをいただければと、このように思います。
  37. 関正彦

    関参考人 お答え申し上げます。  ただいま国債消化円滑のためには、国債相場は変動というよりはむしろ低落をしては非常に支障があるではないかという御指摘、まことにそのとおりでございます。それに対して何か考えがあるかということになりますと、結局、過去のいわゆる暴落の際にわれわれの先人のとられました政策というものをもう一度とにかくすっかり、当然財政当局でもやっていらっしゃると思いますけれども、洗いざらい点検をされまして、なお現在においてとられておられないという分がございましたら、これはこの時点において御採用になられるかどうかについての検討を真剣にやっていただきたいと私は思っております。  明治のころには、市況対策といたしまして国債に関する課税の軽減の問題であるとか、あるいはこれは先ほどの日銀信用という問題にも絡みますのですが、国債を担保とする借入金の場合の担保の掛け目に関する配慮ということも行われておりましたし、納税のための手段としての国債ということも考えられた、ずいぶんきめの細かいことが出ておったように思うのでございまして、繰り返しになりますが、こういうものについての既往のとられた措置、さらには諸外国においてとられております措置でいまだ日本で行われていないもの、こういうことについてぜひひとつ強いといいますか、幅の広いといいますか、真剣な検討——決して今日まで行われてないとは申しません。要は、点検の結果、実行していただきたいというのが私の気持ちでございます。
  38. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで、最後になりますが、関参考人村田参考人にお尋ねをいたします。  先ほど来、私はいま国の国債管理政策はもう破綻している、こういうふうに言っておるわけですが、この辺についてお考えがあれば簡潔で結構ですから、お聞かせいただきたい。  それからいま一点は、具体的に国債消化は限界が見えてきた、このように私は感じます。ですから、今後、これは五十三年六月から行われたいわゆる公募入札発行拡大ということでございますが、この拡大をしていかざるを得ないのではないか、このように思います。この公募入札方式というのは、市場のメカニズムに従って発行するという面ですぐれております。ところが、五十四年度当初二兆七千億公募入札発行予定されていたのですが、結局一兆円強の実績にとまった。これは先ほどのお話にもありました。その原因についていろいろ考えてまいりますと、発行当局である大蔵省が金利体系にこだわって募入利回りの足切りを行ったのだという意見もあるわけであります。この点のお考え。  それからいま一つは、十年債につきましても公募入札発行を行い、全面的に公募入札拡大をするという考え方についてどうか、このように思うわけでありますが、時間もございませんで申しわけありませんが、簡潔に以上の点についてお聞かせいただきたいと思います。
  39. 関正彦

    関参考人 それでは手短に申し上げます。  管理政策破綻ではないかという御意見につきましては、私は従来の管理政策というものに対しましてのわれわれ民間金融機関の御要望がすべてまだ尽くされてないという認識でございます。  第二の公募入札の問題、これは何しろ昨年初めてのことでございまして、これに踏み切られましたことについての決断は評価される。ただ、応札側も多少ふなれな点があったという感じが、確かに、応札の条件を見ますと、いささか行き過ぎたものもあったのではないかという気持ちも私ございます。これである程度そういう意思を示されたという点では意味のあったことではないか。しかし、われわれ入札者のサイドがだんだんなれてまいりますと、そういうことは必要なくなるはずでありまして、今後そういうことは逐次なくなっていくのではないか。  それから、全面的な公募入札いかんという問題、これは過去のわれわれの長岡におきます国債発行入札に対する要望の中には余り具体的に出ておりません。しかし、すでにもう昨年からは皆会合いたしますとこの問題出ておりますので、この点については十分前広に検討していくべきものと存じます。
  40. 村田宗忠

    村田参考人 それでは公募入札の問題についてお答えいたします。  先生のおっしゃいますとおりに、中期債公募入札につきましては、若干先生おっしゃいました足切りと申しますか、そういうことも——近ごろ胴切りという言葉がありますが、まさか胴切りはオーバーでございますけれども、多少は足切りといったふうなこともあったかと思いますけれども……。それはそれといたしまして、五十五年度中期債をかなり多くやっていくというふうなことにおのずからなるのではないかと思います。そういったことから、なるべく実勢に沿った素直な自然体の入札をやっていっていただきたい、かように思います、全面的な公募入札、長期債を公募入札制にするということは理論的には非常に結構なことでございますが、なかなか実際論としてはちょっと一挙にはいきがたいところがあるかもしれません。しかし、御趣旨としては、実勢を全くそのままに反映するということで公募入札が私は結構だろうと思いますが、それに至ります一つのプロセスというものもございますから、その過程といたしましてはこういうふうなことも考えられるのではあるまいかということを御参考までに申し上げたいと思いますけれども、外国でやっておりますように、一部を入札制にいたしまして公募入札いたしまして、そこで適正なる実勢に沿った価格、条件というものをまず探り当てまして、その探り当てた条件に基づきまして引き受け、募集をする、こういうふうなことも考えられるかと思うのでございます。  以上でございます。
  41. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 時間が参りましたので、どうもありがとうございました。
  42. 増岡博之

    増岡委員長 正森成二君。
  43. 正森成二

    ○正森委員 関参考人にお伺いしたいと思います。  国債引き受けのシンジケート団の会長として種々御苦労なことだと思います。新聞紙上で拝見いたしますと、あなたの御発言として市場実勢を見ながら今回はじっくり発行条件を詰めるべきで、場合によっては国債発行を一時取りやめる休債もやむを得ない、四月についてですね、そういうように御発言になったように新聞には出ております。あるいは御発言の真意はそういうことでなかったかもしれませんが、そういうように出ておりますので、この際、プレスにそういうぐあいにおっしゃったとすれば、その御真意をお述べいただきたいと思います。
  44. 関正彦

    関参考人 お答え申し上げます。  確かに、何か新聞には休債というようなことを私が発言したかのような表現でございましたが、これはそういうことを具体的に申したわけではございませんけれども、その前の話は、御指摘のとおり、四月、新たな年度国債発行条件をいよいよ決める段階に、予算案が成立すればなるわけでございますが、それにつきましてはまず市場実勢尊重という立場というのは、当然、従来からのことでございますが、これを十分考えていただきたい、特に三月末の相場動きなどというものは従来に変わりました様相を呈しておりますので、市場実勢というものをつかむには一つのいい時期であったという時期的な判断が一つ。それから財政執行状況資金繰りと申しますか、そういう状況を考えましても四月には国債を早急にどうしても発行しなければならぬという緊急さというか需要の強さというものがある程度ゆとりがあるのではないか、これは私のそんたくでございますが、そういう時期こそこういう問題はじっくり話し合うべき時期ではなかろうかということを考え合わせますと、あるいは条件交渉の時間がかかるようなことがあれば発行が行われないというようなことを考えても適当な時期ではないだろうかというようなことは申しておりますので、そういう意味でございます。休債という言葉は非常に刺激的でございますけれども、そういうことは具体的には申し上げたことはございません。
  45. 正森成二

    ○正森委員 関参考人が先ほどの基本的に御意見をお述べになった中で、資金吸収力の増強拡大をしてほしいという意味のお言葉がございました。これは簡潔に結論だけおっしゃったわけですが、具体的にはこのお言葉によって何を市中金融機関が望んでおられるのか、率直にお述べいただければ幸せです。
  46. 関正彦

    関参考人 お答えいたします。  この資金吸収力の問題と申しますのは、民間金融機関資金の配分といいますかお貸し出しをする上におきまして、あるいは債券を引き受けますにつきまして十分な力を持っていることが必要なことは御理解があると思いますが、特に全銀協の会長といたしましての立場も多少離れさせていただきますと、やはりある部分の金融機関につきましてはいろんないわゆる取り扱い商品の関係がございますのと、税制上のいろんな条件というのが、これは当然金融資産として有利不利の判定のもとになります。そういうふうな点につきまして範囲を広げさせていただきたい。  具体的ということになりますと、この場で申し上げるのは適当であるかどうか知りませんが、御質問でございますので、当面私どもはすでに当局においても昨年から認められましたいわゆる譲渡可能の預金、NCDと申しておりますが、これの発行が認められましたし、それの制限がございましたものがまた今度拡大をされておりますが、さらにこれを拡大をしていただくことも御配慮を当然していただきたいということと、一般の預金者のためにやはり有利な商品として巷間言われておりますところの複利貯蓄と申しますか、そういうものもぜひ手がけさせていただきたい、このようなことも考えておりますし、さらにいわゆる債券の発行に及ぶ広い業務分野の拡大ということもあわせて展望して考えておる、そういうことでございます。
  47. 正森成二

    ○正森委員 いまの御発言はごもっともではございますが、ほかの業界との兼ね合いもあってなかなか大変な問題もあろうかと存じます。  おととい私が質問の中で取り上げたのですが、昭和四十九年までは国債の買いオペ適格のうち九八ないし九%までが日銀が買いオペで買っておられた。それが市中金融機関資金繰りを一定程度緩和していたということなんですが、最近はその買いオペが減りまして、おとといの澄田日銀副総裁のお説ではたしか昭和五十年から五十四年は一二、三%国債の買いオペというようになっていると聞いているわけですが、これは成長通貨の範囲内でというインフレ防止という意味も大いにございますが、全銀協としては、一般的にM2の一〇%というふうに考えられている通貨の供給について、御自分の国債引き受けの額がどんどんふえてきて、五十四年度では、前期では資金増加量の八五%という大蔵当局の資料もございますし、ならしますと、先ほどのお説では一〇〇%をはるかに超えておるという状況の中でいろいろ御苦心だと思いますが、率直な御意見を一度聞かしていただきたいと思います。
  48. 関正彦

    関参考人 適切な御質問かと存じます。お答え申し上げます。  確かに、日本銀行におかれますオペの問題は、先ほど澄田参考人がおっしゃいましたとおり、成長通貨に見合う供給、これが正しい姿勢であろうと思います。それがたまたまこういうことで、国債発行額との関係におきましては大分率が下がってきておることは事実でございまして、マネーサプライというのが一体どのくらいであっていいのかという問題は常に固定的に考える必要はないわけでございまして、私の記憶によりますれば、数年前はたしか二〇%以上の増発が続いておったわけでございますが、これは同時に物価高騰を招いたということも事実でございますので、現在の一〇%台というものは現時点においては非常に支障があるというふうには思っておりませんけれども、今度はマネーサプライのふえます内容というものについて改めて民間資金関係でどうなっておるか。民間金融機関の貸し出し増加がどのくらいマネーサプライ増加に寄与をし、それから財政資金がどういうふうな寄与をしておるかというバランスも当然お考えをいただきたいという気持ちを持っております。  御質問は大体それでよろしゅうございましょうか。
  49. 正森成二

    ○正森委員 ただいまの問題について日銀当局はどういう御意見をお持ちでございますか。
  50. 澄田智

    澄田参考人 通貨の供給量につきましては、そのときどきの経済情勢によりましてどのくらいの通貨の発行高が適正であるかという判断をするほかはないわけでございます。現在は逐次低下をしてまいりまして、二月においては前年に比べまして一〇%台の発行増という形になっておるわけでございます。それの供給の方法につきましては、これはきわめて抽象的な言い方になりますけれども、そのときどきの金融情勢に応じ、あるいは市中のぐあいによりまして手形あるいは債券、国債中心でございますが、債券の売買ということもございますし、あるいは貸し出しということもございます。あるいは日本銀行に積んでおります準備預金の積み増しあるいは取り崩し、こういうような方法もございまして、こういった方法を総合的に毎日毎日の状況に応じてやっていっているという次第でございます。
  51. 正森成二

    ○正森委員 それでは村田さんに伺いたいと思います。  先ほど同僚委員も少しお触れになりましたが、表現は適切かどうかわかりませんが、ある新聞では、暴落公社債売れず自殺という大分刺激的な見出しで、名前を申し上げては悪いのですが、ある中小の証券会社の公社債部次長が自殺をなさるということが出ておったわけです。これがもし事実だとすれば非常に痛ましいことだと思うのですが、引き受けの方の会長としてはどういうようにお感じになられ、また見ておられますか、簡単に一言お答え願いたいと思います。
  52. 村田宗忠

    村田参考人 お答えいたします。  私も、それを聞きまして非常に痛ましい、特に国債がもとでありましただけにひとしおその感を深くしておるわけであります。ただ、どういうふうな実態、内容であったのかということが実はまだ調査中でございまして、よくわかっておりません。私、想像いたしまして、あるいは国債の引受量から来る圧迫からそういうことが生じたのかなと思いまして、一体どのくらいの引受量かと調べてみましたら、そう大きな引受量ではないのです。年間を通じまして四億六千万というその会社の引受量でございますから、月に割ってみました場合四千万足らずということでございますので、そこから、経営的な面から圧迫感がそこにいったというふうなことでもなさそうに思います。ただリスク商品でございますから、リスク商品を扱っておりますと間々そういうことも残念ながらなきにしもあらずなんでございます。しかし、事国債でございますから、やはり国債のクレジビリティーそのものと、それから国債の市価は変動するものだということの区別がしっかり立っていないといかぬなということを感じておりますのと、それぞれの企業におきまして経営面、管理体制に十分気をつけていかなければいかぬなというふうに感じております。
  53. 正森成二

    ○正森委員 続いて村田参考人に伺いたいと思いますが、これは率直に申し上げて、引き受けをなさる方としてはやはり売れる国債でなければいけないわけですね。国債というのは、端的に言えば財政当局あるいは国が資金を融通してもらう、それの借り受け証書です。ところが、残念なことにといいますか因果なことに、国債だけは資金の調達者が国なものですから、この国、端的には銀行局なり証券局は逆に貸してくれる方を監督する立場にあるわけです。普通なら貸す方にもう辞を低くして借りに行くわけですが、こればかりは借りる方が、文句を言えばおまえのところのあれをああするぞこうするぞと言っては非常に悪いですけれども、そういう権限を持っているわけです。だから、そこが非常に御苦心なさるところだと思うのですね。それで、非常に言いにくいことかもわかりませんが、借りる方が相当大きな顔をしてああしろこうしろ、あるいは江戸のかたきを長崎で討つといいますか、こっちではおまえの方に譲歩しても今度はこっちで締めてやるぞというようなことは間々あると思うのですね。それで、何もかもおたくの重役室で腹をぶちまけて言っておられるようなことを全部ここではおっしゃれないかもしれませんが、おっしゃれる範囲のことを村田さんどうぞ御遠慮なくおっしゃってください。
  54. 村田宗忠

    村田参考人 お答えいたします。  正森先生から胸のすくような質問をしていただきまして心情的にうれしく存じますが、これで言うことを聞かなければこうしてやるぞというような脅迫はございません。しかし、私が常々思っておりますことは、たまさか発行当局が監督当局であるという点で——率直に申し上げまして、やはり発行並びに引き受けというものは経済行為であるという事実でございます。したがいまして、その経済行為をいたします場合には、両方の当事者が経済行為の当事者として相対さなければならないということなんでございます。しかし、これはたまさかその経済行為の当事者が監督権を持った権限官庁であるというところがございますが、これはしようのないことで、それをどうこう言うても始まりません。ただ、その際の発行当局のお心構えといたしまして、経済行為の当事者であるということで、ネゴシエートするような気持ちで相対していただきましたならば非常に物事がスムーズにいくのではあるまいか、かように存じます。
  55. 正森成二

    ○正森委員 財政当局の方ももちろんネゴシエートという立場でいきたいのでしょうが、そもそも国債というのは大量に、しかも安価に、優先的に資金を調達して国の費用に充てるという宿命を持っているわけですね。ですから、安価にやろうと思えばネゴシエートの態度が大分御用金的になってきたり、そういうようなことになってくるわけで、そこには常に矛盾があるわけですが、その矛盾ができる限り適切な財政政策やあるいは調達の態度にあらわれて円満にいくことをわれわれは非常に望んでおりますし、国会としてもそういう条件づくりをしなければならないというように思っているわけです。  時間が参りましたので、一問だけ関さんにつけ加えさせていただきます。  関参考人が、明治あるいは昭和の先人のとった対策のうち、考えて点検し、実行できるものは全部実行してほしいということを言われました。それはごもっともな御意見でもございますが、ただ、私らが見ているところでは、われわれの先人、特に昭和の初期から二十年に至る間に財政当局がとりました態度の中には、どうしても学んではならないものもあると思うのですね。それをやりましたために、わが国がある意味では破滅的なことになったというものもあると思うのです。  気になりますのは、関参考人が先ほど国債を担保の貸し付け、それの利率というようなことも少し御発言になりました。しかし、これはたとえば昭和十二年の七月盧溝橋事件が起こりました直後の七月十五日に国債を担保にして日銀が貸し付けをする、その利率を日歩九厘に下げたわけですね。そうすると、当時の国債は三分五厘国債で九十八円で発行しておりましたから、日歩一銭に当たるわけです。ところが、日歩一銭の国債で日銀から九厘でほとんど無制限に金を借りるということになれば、借りたということだけで、順ざやですから幾らか銀行には利益が残るということで、結局インフレを招く端緒になったわけですね。ですから、私は学ぶべき先人の国債についての諸策もあると思いますが、無条件、無制限に学んではならない面もあると思うのです。それについて銀行協会会長のお考えを承って私の質問を終わらせていただきます。
  56. 関正彦

    関参考人 正森先生の御指摘、まことにごもっともでございます。私、最初の発言をいたしましたのは、わざと昭和から後の話はしておりません。というのは、一部確かにそういう部分があったわけでございますから、そのときのことを全部やるということはやはり財政破綻に導く過ちのもとになると思いますので、そのように考えております。  それから、ちょっと私の発言がはっきりしなかったので申しわけなかったのですが、国債担保の貸し出しというのは、利率と申さないで私は掛け目と申しました。それでございますから、百円のものが九十五円にされても、そのときに市価が七十円だということになった場合のその配慮という意味を持っておりますので、ちょっと申し上げさせていただきます。
  57. 正森成二

    ○正森委員 わかりました。私の聞き誤りですね。  それでは終わります。
  58. 増岡博之

    増岡委員長 竹本孫一君。
  59. 竹本孫一

    ○竹本委員 参考人の皆さんには、きょうは御苦労さまでございます。時間も余りありませんし、大体同僚の委員の皆さんからの御指摘がポイントはされておりますので、なるべく重複を避けながら一、二の点を伺いたい。  まず第一は、いまも正森委員からもいろいろ御質問、御意見がありましたけれども、いろいろ議論をいたしますけれども、私は百悪の根源は公債発行量が多過ぎる、発行条件が不自然だということがすべての根本だと思うのですね。したがいまして、きょうの委員会参考人の御三人にえらく文句を言って問い詰めてみても、問題は政府に責任があるのだから見当違いになりはしないかと私は若干ためらいを感じておるのです。しかし、せっかくのチャンスでございますから少しお伺いしたいのだが、この間、実は私、友人の皆さんと話をしておったときに、ガバナビリティーというのはどういう意味だろうかという話をしました。これは三木さんが言われたんですが、どうも意味がとり違っておるのじゃないかという話なんですね。要するに、それは統治能力ということなんだけれども、統治する能力か統治される能力かということは実は問題があるのですね。それで私の友人に、いま私のところに辞書がないからあなたのところで調べてくれと言って頼みました。そして調べてみると、やはり統治する能力ではないのですね。言うならば統治される能力なんだ。統治されやすい状態なんです。そういうことが書いてある。それではいままでわれわれが言っておるガバナビリティーは間違っておった、こう思うのです。  ところが、いま御三人の方々からいろいろ御意見を拝聴いたしましたが、日本の金融機関、証券界、先ほど来いろいろ御意見がある中で大いに政府協力をすると盛んに言っておられまして、非常にありがたいし結構でございます。しかし、常に無条件に政府協力することが国策に本当に協力することになるのかどうか、そこが問題だと思うのですね。たまには、先ほど来も御意見が出ておったけれども政府発行量が多過ぎる、発行条件市場原理に沿わないというときにはノーを言うことも必要ではないか。村田さんも先ほど言われましたけれども、ノーを言うことが必要ではないかと私、思うのですよ。  日本の金融機関が統治されやすい状態という意味のガバナビリティーが余りあり過ぎると、公債政策に対して歯どめがかからない。もちろん、これは野党も歯どめをかけなければなりませんし、われわれの責任も大きいと思いますけれども、しかし、現実に六・一国債が七十円台になって大騒ぎをする、低価法、原価法をわれわれがここで論議をしなければならぬ、すべての根本は発行量が多過ぎる、政府政策に、インフレに歯どめがかかっていないということが根本だと思うのですね。そういう意味で、たまにはノーを言っていただきたいということをまず申し上げたいのです。  ドイツでは、子供を育てるときに一番最初に教えるのはナインという言葉だそうですね。ナイン、要するにノーですね。私はどういうわけでそういうことになるかとちょっと聞いてみたのです。そうしますと、市民革命を行って——基本的人権尊重ということをわれわれは簡単に言いますけれども、どちらかというと日本人はノーが言えない国民だと思うのですね。ところが、ドイツではナインということを子供に教えることによって子供の自己確立ができる、基本的人権を尊重さるべきその主体ができるということを言っている。私は日本の、これは日銀が一番大事なことだけれども、日銀にしろ金融機関にしろ、政府に対してナインを言うことによって、先ほど経済法則という話が出ましたが、経済法則に立った自己確立をやってもらいたい、こういうことを言いたいのです。その点について御三人からひとつお考えを簡単にお伺いしたい。
  60. 澄田智

    澄田参考人 ただいま政府に対して、私ですから日本銀行立場から申しますと、日本銀行はあえて自分の意見を率直にあるいは強く堅持して主張すべきである、こういう御趣旨と拝聴いたしました。そういう意味におきましては、日本銀行としてはそういう必要のあるときにはそうしなければならないもの、当然の覚悟だと思っております。  ただ、国債の場合の問題といたしましては、その国債発行を必要とする前提予算が国会の御審議によって成立をいたしているわけでございまして、そういうもとにおける国債がいかに円滑に発行され、そして金融市場、資本市場において、あるいは国民の消化状態においてこれが円滑に行われていくか、やはりそういう見地で考えなければならないものと思いますので、そういう意味において日本銀行立場のみならず国債というものに対して広く対処していかなければならないもの、かように考えております。
  61. 関正彦

    関参考人 お答えいたします。  私たまたまノーに近いようなことを言ったばかりでございますので、その点、あの姿勢で一つの、問題の善悪、是非という問題は別でございましょうけれども、そういうことはあったわけでございます。そういうことでございますけれども、いまの澄田参考人のおっしゃいますように、やはり国債の問題というのは背後に国民経済全体を運営する財政運営について原資として必要なという認識は、どうしてもわれわれの頭からとれませんので、つい財政当局とのお話し合いにおいて、確かに先ほど正森先生御指摘の、監督されているのだから弱いのだろうという御指摘もありましたけれども、それとは別に、やはり財政協力という何か国家に対する一つの貢献といいますか協力といいますか、むしろいまは社会的責任を果たすという気持ちがあることも事実でございます。  ただ、もう一つ私の経験を申し上げましてお答えの終わりにしますけれども、昨年、実は全国銀行協会連合会会長に就任いたしまして二カ月目くらいの新聞記者会見におきまして、やはり国債発行条件につきまして言及いたしましたとき、そのときは間違いなく私は休債もやむを得ないという発言を自分でしております。しかし、その発言がいかに勇気を要するものであるかという環境といいますか、風土というものをその後二カ月の間しみじみ感じさせられたことも事実でございますけれども、あれは半分やはりノーの姿勢を打ち出したつもりでございますので、これをもってお答えとさせていただきます。
  62. 村田宗忠

    村田参考人 お答えいたします。  ただいま関参考人から非常に意を強くするお言葉がございました。ひとつあれでシ団代表として大いに突っ張っていただきたい、言葉だけでなしにひとつ最後までお突っ張りいただきたい、かように存じております。  竹本先生の御質問は、何か入社試験を受けているような気がちょっといたしましたが、ナインという言葉は日本には余りないかもしれませんが、横に寝るという言葉もございます。決して横に寝るつもりはございません。われわれも引き受け者といたしまして、国と一緒になって何とかこの難局を切り抜けていかなければならぬと考えておりますけれども、われわれの場合、銀行さんと多少立場が違います。われわれの場合には売る立場でございます。売れない条件、売れないようにしたものではどうしても売れないという事実が残ってまいります。これはわれわれいかにどうしようと思っても、主観的なものでは何ともならないわけでございまして、あるいはそういった事実がノーということを示す、そういうふうな事態がないようにということを切に思っております。  以上、お答えいたしました。
  63. 竹本孫一

    ○竹本委員 国債が売れなかったり、最近のように値下がりしておることは、ある新聞は市場の反乱という言葉を使っておりましたが、なかなかいい表現だと思いますね。要するに、ナインを言わないでぐるぐるぐるぐる、ずるずるべったりにいった結果、最後の市場の反乱といいますかレジスタンスが値下がりという形になってあらわれておる。したがって、低価法、原価法とわいわい言いましても、その前の根本の問題が解決されなければ問題は解決されないと思うのです。経済原則で取引はやるのだというお話も先ほどございましたし、結構だと思うのです。しかし、私はもう一つそれにプラスして、要するに、金融機関において一番重要な問題、特に日銀において重要な問題は、日本にインフレを起こさせないことだ、通貨価値の維持を懸命に守ることだというふうに思うのですね。  そこで澄田さんに一つ伺いたいのだが、前回のインフレのときに、私はちょうどこの予算委員会で当時の日銀総裁佐々木さんにずいぶん文句を申し上げたのだけれども、日銀券の増発が何%になっても日銀は黙っておる、そんなことで日銀の総裁の重責が務まるかということで大いに文句を申し上げたのですね。私はあの当時の情勢の中においても一七、八%までは何とかがまんする、しかし、もう日銀券の増発が一八%になれば警鐘を乱打すべきだと思うけれども、余り警鐘を乱打しなかった。名古屋へ行って一回何か言いました、そんなことではだめだ、東京の真ん中で言いなさい、しかも総理に向かって言いなさい、それでなければインフレを阻止することはできませんよということを言って、一体あなたは何のために日銀総裁をやっているのだとまで言ったのですよ。御承知のように、あのとき日銀券は二五%以上の増発になったでしょう。そして狂乱物価になったのですよ。先ほど来通貨供給量、マネーサプライの話も出ておりましたし、M2の話も出るわけですけれども、私はやはり通貨の調節、通貨価値の維持ということについて日銀が一番重大な責任を持っておられるので、先ほどナインの話をしましたが、最も大事なときに最も勇気を持ってナインを言っていただかなければならないのは日銀だと思う。  そこで、もう一つ伺うが、いま日銀券の増発は九%前後ですか。一体これが何%くらいになれば、先ほどもお話があって、その時期、その情勢によってということじゃ話にならぬが、やはり一つの大きな客観的な目安があるべきだと思うのですね。職を賭しても守るべき一線があるべきだと思うのですよ。私の結論からざっくばらんに申し上げますと、ぼくは一三%以上になるともう危なくなる、警戒を要する。日銀券の増発が前年同月比で一五%になったら相当勇気を持って警鐘を乱打してもらわなければ困ると思うのですよ。日銀はその辺について目安を持っておられるかどうか、どういう目安を持っておられるか、その辺を伺いたいと思う。
  64. 澄田智

    澄田参考人 いろいろいままでの経験、諸外国の中央銀行のやり方等を参考にいたしまして、そして近年におきましては日本銀行マネーサプライ、日銀券のみならず、これに預金通貨等を含めまして現在においてはいわゆるM2という指標を用います。それにプラスいたしまして、昨年からCDが出ておりますので、M2プラスCDという形でその伸び率がどのくらいになるかということをマネーサプライの指数としてこれに注視をいたしまして、そして四半期別にマネーサプライの目標ではございません、予測値——目標値と予測値という言葉の違いのみならず、そこにおいてはわれわれとしてはいろいろな経験を積んで、そしていま現在これをやりつつある、こういうところで目標として掲げるというよりは予測を立てまして、その予測というようなところに持っていくことを一つの金融調節の心がけとしている次第でございます。  いま日銀券の発行の数字を挙げてお話がございましたけれども、そのときの経済情勢によって日銀券がどのくらいであるべきか、あるいはマネーサプライがどのくらいであるべきかということはそのときそのときの情勢において決まる、これは当然でございまして、いかなる場合でも一つの目標を設定するということは、これはかえって硬直的になって経済運営を害する、そういうことがあるのではないかと思います。現在の状態においては、御承知のとおり昨年来マネーサプライのM2プラスCDの予測値を逐次下げてきておるわけでありまして、昨年の初めごろは一二%台でございました。それが現在は一〇・五とか六とか、そういうような数字のところまでなってきておりまして、これは一年間に逐次下げてきている。それから銀行券で言えば九%台、こういう状態でございます。現在の状態前提にして申し上げれば、現在、先ほども申しましたように金融引き締めをさらに強化し、その効果浸透を注視している段階でございますので、さらにこれが少しずつ下がっていくということを目途に考えておるところでございます。したがって、現在の状態においておっしゃるように銀行券が一三%とか一五%といったら、これは断固としてそういう増発は不可である、こう申し上げるほかはございません。
  65. 竹本孫一

    ○竹本委員 M2プラスCDで結構ですし、それからまたいま数字を言うておることが適当であるかどうか、もちろん、慎重に考えなければなりませんから、澄田さんのおっしゃることもよくわかります。ただ、私が申し上げたいことは、インフレーションとよく言いますけれども、本当に文字どおりインフレが爆発したらもう間に合わないのですよ、すべて終わりなんだから。この前のドイツの大戦のときの後でわかるように、インフレが爆発したら話にならない。だから、インフレに対してわれわれが一番賢明でかつ慎重に対処しなければならぬ問題は、いわゆるクリーピングインフレーションですよ。そのクリーピングインフレーションの段階において適切に手を打たなければならぬから、そのためにはここで数字を言う必要はもちろんありませんが、総裁、副総裁においては腹はちゃんと決めておいてもらいたいという要望にとどめておきます。それでないと困りますよ。  まだいろいろと、窓口販売の問題からあるいは資金運用部資金の活用の問題から公開入札の問題を申し上げたいと思ったのだけれども、また村田さんの中期国債意見も承りたかったけれども、時間がありませんから最後に一口だけ、これは危機の警鐘を鳴らす意味で申し上げるのですが、大体皆さん方、政府の首脳部、自民党の首脳部とよくお会いになるんだから、朝飯会も結構、昼飯会も結構だが、そこで一遍は真剣に、日本の経済はどうなるのだ、日本の財政は破綻はしないかということを論議してもらいたい。参議院の選挙資金ばかり話したってだめですよ。本格的な国策を論じてもらいたい。というのは、私が見るところ、いまの政府経済政策財政収支試算、全部ペーパープランで何の役にも立たぬですよ。極端な言い方で恐縮ですけれども、裏づけはほとんどないのですよ。たとえば五十九年度に赤字国債は終わりにします、赤字国債の借りかえはやりません、こう書いてありますね。果たして借りかえはやらぬで済むかどうかということが一つの問題、果たして五十九年度はゼロになるかどうかということが大問題ですよ。というのは、私の見るところ、まず第一に新経済七カ年計画というのは、これも全く油の上に乗った机上の空論で、成長率から始まって、物価の問題もどうなるかということはほとんど机上の空論です。これは問題にならぬ。それからまた、新しい収支試算には五兆八千五百億円の増税をやると書いてある。それで財政収支試算が出ておる。この五兆八千五百億をどうするなんて言ってみても、首相も大蔵大臣もほとんど何も言わないで、ただ国民のコンセンサスを求めたいとか、そればかり言っておる。具体的な案を出さぬで、どうしてコンセンサスができますか。しかも、たばこ一つ考えても二年間かかった。あの勢いのなさで、これからの財政再建を考えた場合に、五兆八千五百億どうしてできるか。  それから国債の償還については、収支試算では二十八兆円の繰り入れをやらなければならぬようになっていますよ。多いときは六兆円の繰り入れをやるんですよ。一般会計からそれだけの繰り入れをする余裕が一体どこから出てくるかということを考えてごらんなさい。増税もペーパープランです。繰り入れもペーパープランです。成長率もペーパープランです。やや確実なことは、租税弾性値は一・二であるということだけはまあまあ確実だ。それ以外は全部不確実ですよ。そういう基礎の上に立っている。五十九年度に赤字国債はなくしますというような議論はどの程度皆さんは真剣に考えておられるか。どの程度に皆さんは信頼しておられるのか。その問題で十分党の首脳部、政府の首脳部とも相談してもらいたいし、論議をしてもらいたいが、きょうはそれに対する感触だけで結構です。五十九年度に赤字国債は本当に政府の言うとおりの計画でなくなると思っておられるか、思っておられないか。結論だけ簡単に聞きたい。お三人から。
  66. 澄田智

    澄田参考人 私は、やはり財政再建が、当面、しかも目標を決めてその目標までに達成をするという決意で臨んでいただかなければならない最も重要なことである、かように思うわけでありまして、その場合に、特例国債をなくす目標として五十九年度という目標が掲げられておるわけでありますから、その前提政府が最大の努力をされるということはかたく信じているものでございます。ただ、経済情勢自体が、国際的な環境から申しましても非常に流動的でございますので、そういう情勢に応じて今後その中で最大限の努力を払っていただきたい、かように思っております。
  67. 関正彦

    関参考人 竹本先生の御指摘というのは、非常にこの問題の所在を指摘されておられると思います。私は、この赤字国債をゼロにしようというこの決意ですねやこの決意が計画の中に盛られた。それならば、われわれはよく自分の企業の中の計画という問題について議論をいたしますが、二年、三年、五年先のことは、現在数字としてこうだということは思うことはできても、それについての保証というのはないわけでありまして、この時点において思い定めたことを数字としてあらわした、大変むずかしい難事中の難事であるという厳しさというものは非常にこの数字の中に感じられるわけでございます。これから先、容易ならぬ財政節度というものをもって臨まなければならぬ。もう対策であるとか、おまえどう思うかと言いますと、そういうことしかお答えができない。  以上でございます。
  68. 村田宗忠

    村田参考人 計画の基礎になっております数値についてはいろんな見方があるだろうと存じます。また、先生のおっしゃいました、できると思うかできぬと思うかと。非常に困難だろうとは思いますけれども、まあできると思って努力せにゃしょうがないじゃろうという、正直そういう感じでございます。  以上をもちまして……。
  69. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで終わりますが、信ずる者は救われるという言葉が昔ありましたが、経済がむずかしくなりますと、信じたり祈ったりすることがはやるのですけれども、私は、経済は非常に厳粛なる経済法則がありますから、具体的な数字の裏づけのない政策論、経済論はナンセンスであると思います。そういう意味で、経済界の代表の皆さんでありますから、生きた数字を本当につかんだ上で、ひとつ経済再建のためにも、インフレにならないようにするためにも、御健闘を祈りたいと思います。  きょうは、ありがとうございました。
  70. 増岡博之

    増岡委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る八日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十六分散会