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関参考人 現在、
全国銀行協会連合会の
会長のお役目を承っております関でございます。
本席におきまして、
昭和五十五毎度の
公債の
発行の
特例に関する
法律案に関しまして、私
どもの
意見を述べるようにということでございますので、これから申し上げたいと思いますが、私
どもは、従来、
国債の
引き受け、
消化につきましては、
財政執行に要する原資の調達に御
協力をするというために懸命の
努力を尽くしてまいりました。しかしながら、昨年以来、
国債自体にいろいろ問題が起こってまいりました。特に
相場の急落というような
事態に直面をいたしまして、われわれとしてはきわめて深刻な
影響をこうむっておりますので、この機会に、
国債に関しましての
問題全般につきましても、私
どもの
意見あるいは要望にわたることがあると存じますが、これも申し述べさせていただきたい、かように存ずる次第であります。
先ほど
澄田参考人の方から、
わが国経済の現状というお話もございましたけれ
ども、多少重複にわたるかと思いますが、その面から申し述べさせていただきます。
現在は、
景気が底が
たい動きを見せておることは事実でございますが、
物価の光行きは一段と警戒を要すると申してまず間違いはないと思います。申すまでもなく、現在の
物価騰貴は、原油を初めといたしまして、このところ多少下落の
傾向はございますが、
海外の一次産品の
価格の
上昇というようなものの
影響を受けておるという点が非常に大きいのでございまして、このために、これら原材料の
値上げに伴います
コストアップというものを
わが国の
企業の
合理化によりまして全部吸収し切るということは、言うべくしてまことに困難な
状態であろうかと存じます。しかし、そうかと申しまして、
コストの
価格転嫁というものを最小限にとどめることに総力を挙げて取り組むことは、何と申しましても
わが国国民経済的には絶対に必要な
努力でございまして、そのために総
需要を管理するというようなことも当面の
施策の重要な
課題であろうと存ずるのでございます。
このような
見地に立たれまして、
日本銀行におかれましては、
金融政策の面におきまして、昨年の四月から今日まで
公定歩合を都合五回にわたって引き上げられたわけでございます。そして、厳しい
金融引き締めの
措置がとられておるわけでございますが、この
政策の
運営に当たりまして留意せねばならぬことを私
どもから考えますと、
財政政策、
金融政策、これがともに完全な
整合性を持って機動的、弾力的に
運営されることが必要である、わかり切ったことかもしれませんが、その
気持ちが非常に強うございます。この点、
政府におかれましては、去る三月十九日に総合的な
物価対策を御決定になりました。これはまさに評価できることであると存ずるのでありまして、今後これらの
政策が着実に実行に移されまして、所期の目的ができるだけ早く達成されることをわれわれも大いに
期待をいたしておりますし、また
協力もいたすつもりでございます。
以上、
わが国経済の当面の
課題及び当面の
施策についての御
意見を申し上げましたけれ
ども、これをさらに長期的な
観点からながめてまいりますと、この間、
財政の
再建を図ることがきわめて重要な
課題になっておることはもう申すまでもないのでありまして、
財政政策が、
昭和四十八年秋の第一次
石油危機以降におきまして
国内の
民間需要の極端な落ち込みを下支えし、
景気回復の
牽引車であるという
役割りを果たしてきたことは、これまた紛れもない事実でございます。それはそれとしてまさに高く評価すべきでございますけれ
ども、その間、一方、
財源不足が相当に生じまして、
財政収支に不
均衡が生じましたこともやむを得なかったこととは考えられるのでございますけれ
ども、いまや
民間経済が自律的な
成長力をほぼ回復いたしました今日におきまして、
財政再建に対する
国民経済的な要請というものは緊急にして重大なものとなっておると思うのでございまして、仮に
財政収支の大幅な不
均衡が今後とも長期的に続くようなことがあるとするならば、
財政インフレーションは必至でございましょう。
民間資金の調達困難の
事態、すなわち、いわゆるクラウディングアウトの問題が
現実の問題となってくるというようなことが起こりまして、
国民経済に大きな弊害を与えるおそれが多いということも考えねばなりません。
経済の各分野におきまして
均衡のとれた
安定成長を実現するためには、
財政再建こそが必要不可欠であるという認識を強く保持して対処すべき
事態であるかと存じます。
そして、
現実にこれをわれわれの手につかみ取らねばならぬと思うのでございますが、このような
考え方に立ちまして五十五
年度予算というものを見ますとき、このような大変厳しい
財政事情の中での御
努力の跡はうかがえると私は思うのでございます。
まず、
一般会計の
歳出におきましては、
財政再建を志向いたしまして全体の
規模は極力
抑制をされておると思います。特に
需要創出効果の高い
公共事業関係費につきましては、現下の
経済情勢に即応して、きわめて低い
伸び率一・七%にとどめられておる一方、必要な
エネルギー対策費や
経済協力費などの
施策については、限られた
財源の中で重点的、
効率的配分を図っておられます意図が十分くみ取られ、まことに
苦心の跡がうかがわれるのでございます。
また、
歳入面におきましては、
歳出規模の
抑制もございまして、
国債の
発行額が五十四
年度当初
予算比では一兆円の
減額ということになっております。
このように
財政健全化の
方向に踏み出されたということは、まさに
当局の御
苦心一方ならぬものがあったということであろうかとお察しする次第でございます。しかしながら、私
どもは、なお、さらに竿頭一歩を進める
努力を
財政執行の過程におかれましてもぜひ注いでいただきたい、かように存じます。
さて、ただいま当
委員会で御
審議されております
昭和五十五
年度の
公債の
発行の
特例に関する
法律案は、五十五
年度予算と表裏一体をなして、しかも
財源的にこれを裏づけるものでございますので、この
措置はやむを得ないかというふうに考えますけれ
ども、なお、七兆四千八百五十億円という多額の
特例国債の
発行は、五十四
年度の落ちつき、これは当初八兆円を超えていたものが
当局の御
努力によりまして七兆円を切る
見込みと伺っておりますので、昨年
発行額を今年の
発行額は超えるということでございまして、
既往最高ということになりますので、まさに異例の
事態ではないかと存じます。
特例国債の
発行は、あくまでも当面の
緊急的措置でありまして、可及的速やかに圧縮、
解消を図るべきものであることは論をまたないものと思いますが、さらに、
特例国債の
解消は当然のことでございますが、
建設国債につきましても、これを極力圧縮し、
財政の
健全化を図り、
国債依存を脱却するということが何よりも必要なことであろうと存ずるのでございまして、このためには、
行政機構の
簡素化など
行財政面の改革にも手を及ぼし、さらに推進されることが強く要望されるところでございます。
次に、私
どもの
立場から申し上げまして、大量の
国債発行が
現実にお
引き受けをいたしております私
ども民間金融機関の
経営を深刻に圧迫しておるということにつきましては、すでにいろいろな面で
皆様方の御理解をいただいておるところでございますが、ある程度具体的に申し上げますと、われわれ
都市銀行というのに例をとりますと、まず
資金の面でございますが、五十四
年度の場合には
実質預金の
増加額を超えてしまったわけでございます。この
実質預金の
増加額は、
見込みをもちまして申しますと今年間で三兆三千億の増でございますが、これに対して
国債の
引受額は三兆五千八百七十五億に及んでおりますし、
中期国債の落札についてもさらに四千億はどの
協力をいたしております。そういう
実情でございます。したがいまして、そのほかの
公共債の
引き受けであるとか、
企業、
個人等に対する貸し出しのための
資金の供給は、現有しております債券の売却とか、外部からの
借入金取り入れによりましてようやく
資金を捻出せざるを得ないというような
状況に追い込まれておるのが
実情でございます。また、これを
収益面から見ますと、御高承のごとく
国債相場が大幅に下がっておりますために、巨額の
償却損の計上であるとか、あるいは含み損の包含のやむなき
事態に至っておりまして、従来の
経営状態と比べますと、非常に苦しい
決算内容であるという
状態でございます。
このように、私
ども民間金融機関にとりまして
国債の重圧はますます増大をしております。すでに
経営の根幹を大きく揺るがしてくるという容易ならざる局面に立っておるのでございまして、このままさらにこの
事態が改善されずに推移するようなことがありますると、まず、この
国債の
引き受け自体、
消化自体にもわれわれの
協力の意思が実現できないようなことに陥るやもはかりしれないという懸念すら私は抱いておりまして、このような
事態にございますこと、そしてこれを打開するための方策を次に申させていただきたいと思います。
その第一は、前年同様たとえ
年度の途中にありましても、
財政事情が許す限りにおきまして極力
国債の
減額にぜひ努めていただきたい。五十五
年度におきましても五十四
年度とほぼ同額の
国債が
民間において
消化される
予定というふうに承っておりますが、仮に
年度途中におきまして
増収、これは
大変期待はむずかしいと思いますが、
増収あるいは特に
支出不用、節減というような余裕が生じましたときは、ぜひこれを優先的に
民間引き受け国債の
減額に振り向けていただきたいことを申し上げておきます。また、
資金運用部によります
引き受けにつきましても、現在二兆五千億円の
引き受けということを御
予定になっておられるように承っておりますが、これは五十四年の
実績二兆六千六百四十一億を下回るというようなことになるわけでございますので、さらに弾力的に
拡大をしていただきまして、
民間の
引き受け負担を極力軽減していただきたい、かように存じます。
第二には、
国債発行条件の
弾力化、特に
市場実勢重視の
姿勢を強く打ち出していただきたいのでございます。すでに前年から
中期国債の
発行に
公募入札制を導入されました。これなどは大変な御
努力の結果でございますけれ
ども、当初二兆七千億円の
公募入札という御
予定でございましたけれ
ども、
実績はこれに及ばない一兆三百五十九億円にとどまっておるわけでございますし、また、期間十年の
長期国債につきましても、
発行条件の改定は五十四
年度におきましては四月、八月、この三月、三回ございましたわけでございますけれ
ども、われわれ
引き受け側といたしますると、
市場の
実勢を完全に反映していただいたというふうにはなかなか受けとめるような
気持ちになれないというのが率直な現在の感じでございますので、ぜひこの面につきましても一層の
弾力的配慮をお願いいたします。
このような
市場原理の尊重の
姿勢を
わが国におきましては貫き通すことが困難な
事情がいろいろあったとは察するのでございますけれ
ども、
引き受け側の
期待するほどに貫徹をされなかったというような
気持ちを強く持っておりますので、引き続きこの点につきましては御
配慮を要望するところでございます。また、
公募入札の拡充にも力を注ぎまして、真に
金利機能を活用した
発行体制をぜひ継続していただきたい、さらに強化していただきたい、かように思います。
第三に申し上げたいことは、
流通市場の整備のことでございまして、大量の
国債の
円滑消化というためには、何よりも
市場での
取引価格が
需給の
実勢を反映して適正に決定されることが必要である、かように思いますので、そのためには
国債の
保有層もさらに多様化し、
市場の
拡大もさらに
努力をし、
金融機関の
保有国債の
流動化の余地を十分に
拡大をしていただく、このことが肝要である、かように存じておる次第でございます。
国債の最大の
引き受け手でございます私
ども民間金融機関の
資金吸収力の強化というものにつきましても、さらにわれわれも十分
努力いたしますけれ
ども、その道を
拡大をしていただきたいということについてもお願いをしたいわけでございます。今後とも
当局の御
努力ございますと思いますが、なおある期間相当の
国債発行というものが継続されざるを得ないということも覚悟をしておかねばならぬと思います。私
どもといたしましても引き続き
政策の
運営に
協力するという
立場からは極力その安定的な
消化に
努力をしてまいる所存ではございますけれ
ども、なお税制面についても各種
金融機関の資産間の権衡を図るということにつきましても、新たな調達手段の開発ということで、
資金吸収力の増強をぜひぜひ御
配慮をいただきたい、かように存ずるわけでございます。
以上、いろいろ申し述べましたのでございますが、
昭和四十年の
国債発行が開始されましたとき以来のわれわれの要望というものは何回にもわたっております。一々これを全部申し上げる時間の余裕はございませんけれ
ども、その要望をさらに
現実のものとしていただきまして、われわれの
協力の意のあるところを行動で
現実に示されるように御
配慮をいただくこと、これを何よりも私の念願といたしまして
意見の陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)