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1980-03-28 第91回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十八日(金曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君    理事 稲村 利幸君 理事 高鳥  修君    理事 綿貫 民輔君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 坂口  力君    理事 正森 成二君 理事 竹本 孫一君       麻生 太郎君    大村 襄治君       熊川 次男君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    玉生 孝久君       中村正三郎君    林  義郎君       坊  秀男君    村上 茂利君       毛利 松平君    山崎武三郎君       伊藤  茂君    川口 大助君       島田 琢郎君    塚田 庄平君       堀  昌雄君    柴田  弘君       古川 雅司君    宮地 正介君       多田 光雄君    渡辺  貢君       玉置 一弥君  出席政府委員         大蔵政務次官  小泉純一郎君         大蔵省銀行局長 米里  恕君  委員外出席者         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  関  正彦君         参  考  人         (長期信用銀行         代表)         (株式会社日本         興業銀行取締役         頭取)     池浦喜三郎君         参  考  人         (社団法人信託         協会会長)  田代  毅君         参  考  人         (社団法人全国         地方銀行協会会         長)      吉國 二郎君         参  考  人         (社団法人全国         相互銀行協会会         長)      長谷川寛雄君         参  考  人         (社団法人全国         信用金庫協会会         長)      小原鐵五郎君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   玉置 一弥君     神田  厚君 同日  辞任         補欠選任   神田  厚君     玉置 一弥君 三月二十七日  所得税法の一部を改正する法律案福間知之君  提出参法第四号)(予)  租税特別措置法の一部を改正する法律案(竹田  四郎君提出参法第五号)(予)  法人税法の一部を改正する法律案和田静夫君  提出参法第六号)(予) 同月二十六日  一般消費税新設反対に関する請願池田克也  君紹介)(第二九三三号)  同(坂井弘一紹介)(第二九三四号)  同外一件(柴田弘紹介)(第二九三五号)  不公正税制是正等に関する請願北側義一君  紹介)(第二九三六号)  同外一件(権藤恒夫紹介)(第二九三七号)  同(坂井弘一紹介)(第二九三八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第三〇六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として全国銀行協会連合会会長関正彦君、長期信用銀行代表日本興業銀行取締役頭取池浦喜三郎君、信託協会会長田代毅君、全国地方銀行協会会長吉國二郎君、全国相互銀行協会会長谷川寛雄君、全国信用金庫協会会長小原鐵五郎君が御出席されております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  銀行決算の問題と大口貸し出し規制について、参考人各位それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、御意見の開陳は、委員質疑お答え願う形式で進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 本日は、いま委員長お話しのとおり、大変朝早くから参考人皆さんには御出席いただきまして、どうもありがとうございました。  本日、いま委員長がお述べになりました問題のほかに一つ、現在当委員会におきましては、金融機関週休二日制の問題について各党間において話し合いが進められておるわけでございます。  御承知のように、この金融機関週休二日に関する問題は、もう十年余りも前から実は当委員会における主要な課題の一つでございました。しかし、ようやく明るさが見えた時期に、御承知のような石油ショック等の問題がありまして、日本全体が不況に入るということがございましたので、それらの状態もはね返って、私どもが当初期待したより大変大幅におくれて今日に至っておるわけでございます。  しかし、昨年OECDの方で、日本人というのは少し働き過ぎではないのかということが問題になりました。現在、世界は、経済的には競争条件の中にあると私は思うのでありますが、競争というのは、すべてイコールフッティング競争でなければ公正な競争が行われておるとは私は認めがたいわけでありまして、欧米においては、金融機関はもとより主要な企業はいずれも週休二日というのが常識になっておるにもかかわらず、わが国においては先進国に例を見ない、実は金融機関も週六日就業するという形になっております。  私どもは、この金融機関週休二日を、これらの全体の企業週休二日の中で重要なファクターと位置づけております。  最近、ようやく各党間の話し合いが進んでまいりまして、野党各党は何とかこの国会で、金融機関に対する週休二日という仮称の特例法によって、銀行法十八条だけではなく、手形法八十七条、小切手法七十五条、銀行法十八条とあわせて国税通則法地方税法その他をひとまとめにして、この法律が通れば金融機関週休二日に法律的には入れるという特別立法議員立法によって処理をしたいということで、実は私ども努力いたしておるわけでございます。自民党の方も、財政部会の中に金融機関週休二日に関する小委員会というのを設けていただきまして、いま週二日は御勉強いただいておる、こういう情勢でございます。今後の問題は、挙げて自民党対応にかかるわけでございますが、きょうは金融機関の各界の代表皆様にお越しをいただいておりますので、まず最初に、この金融機関週休二日について伺いたいと思います。  ただ、私どもは、いまこの法律ができたら即座に週休二日に入っていただくというふうには考えておりません。やはり、御承知のように小零細企業というものが日本にはたくさんございますし、この方たちが、銀行が土曜日休みになったために営業に多くの障害がもたらされるということでは、金融機関だけが先行してやっていただくというわけにもまいらないと思いますので、私の考えでは、仮に法律が成立をいたしましても、その実施の時期は、金融機関におけるこれらの企業に対する対応が整った時期を見定めて、それは政令等に委任をしてもいいので、あるいは二年なり三年なり多少の時間を要することがあり得るかと思いますが、問題は、できるだけ現実的に対応できる措置考えていけばいいと思うのであります。  しかし、何としても、いつまでもこのままでは、諸外国から見て日本競争条件というものは著しく自分たちと違うのだということになりますと、これから円安情勢でありますし、また、すでに輸出は相当に伸びておるのでありまして、私は与党の方にお考えいただきたいのは、これからベネチア・サミットがあり、総理も出かけられるわけでありますから、そういうときに、日本はここまでやっていますと胸を張って言えるようにひとつ野党としても協力したいな、こういう気持ちでいまやっておるという現状でございますので、これらの問題を含めてひとつ各関係皆様から順次お答えをいただきたいと思います。
  4. 関正彦

    関参考人 本日はこの席にお呼び出しを受けまして、各般の御質問に対する機会を与えていただきましたことをまずもってお礼を申し上げます。  それでは、ただいまの堀先生週休二日に関します御意見を承りまして、われわれの現在取り組んでおります状況につきまして一言申し上げさせていただきます。  顧みますと、と言いますとちょっと長くなりますけれども、この国会におきまして、私ども歴代銀行協会連合会会長が、この問題につきましては何回も意見を開陳いたしております。私もまとめてずっとこれを見たわけでございますが、着々として前進をしておる跡は、もう堀先生もよく御存じだと思います。  私として申し上げますことは、まず第一に、金融機関における週休二日制の導入ということにつきましては、決して消極的ではございません。前向きにと言ってはなんでございますが、非常に前進に努めております。その証拠といたしまして、まず週休二日制に関する委員会というのは、私の方の銀行協会の中にもつとに設けてございます。この中で非常な議論をしておりますし、特に事務処理ということが銀行の使命でございますので、先生御指摘のように、いわゆる社会的コンセンサスという言葉であらわしておりますが、特に週休二日制をすでに御採用になっている向きは別といたしまして、まだまだそこまでいっていない部分もたくさんあるわけでございます。この方面方々、特に中小企業とかあるいは零細企業とか申します部分、あるいは個人の多くの方々、この方々がいまたとえ法制の整備ができましても、果たしてすぐ週休二日制を完全に実施するというようなことを抵抗なくお受け入れいただくかどうかということについては、もう常々関係の各方面でも調査なさっていらっしゃいますが、これにつきましても、十分に情報を見ましてこれに対する体制を備えるつもりでおります。  その情勢が展開してまいりましたときに、われわれの方の受け入れ体制が整わないというようなことであってはまことに申しわけないわけでございまして、これらにつきましては、非常に技術的な問題になって申しわけないのでございますけれども、土曜日に扱います事務でございますね、何とかこれをいまのうちから土曜日に扱わないで済むような方策も寄り寄り協議をいたしておりまして、具体的に申しますと、いわゆる公共料金関係の振りかえ業務というのが非常にたくさんございますが、これなどはやはり土曜日に扱いがないように御配慮いただきたいということを関係方面にもうすでにお願いを申しておりまして、これが具体化いたしますと、事務的にはその素地が非常に大きく前進するという期待を持ってやっております。大変じみな動きではございますけれども、私ども姿勢を御理解いただきます上においてぜひお聞き取りいただきたい、かように思います。  基本姿勢のことにつきましては、他の金融機関、はっきり申し上げまして特に郵便局がわれわれと一緒にこの週休二日制に踏み切っていただくということはわれわれの脳裏を離れない関心事でございますので、堀先生もこの辺はどうぞひとつよろしくお願いいたします。  以上をもって終わります。
  5. 池浦喜三郎

    池浦参考人 池浦でございます。堀先生の御質問お答えいたしたいと思います。  私ども長信銀行も、いま関さんのおっしゃいましたように、全銀協一員でございます。申し上げることは、同じことを申し上げるということになると思うわけでございます。ただ、先生のおっしゃいますようなことは、私ども市銀連ですね、これの組合の方からも常に言われておるわけでございます。国会皆様、また政府当局、監督御当局等の御理解を得まして、段取りができましたらそういう方向に進めていただくということは基本的に全然異論がございません。
  6. 田代毅

    田代参考人 田代でございます。お答えいたします。  私ども信託銀行信託協会といたしましても、全国銀行協会連合会一員といたしまして、全銀協委員会でも一緒に勉強させていただいております。そして、いま関会長からお話がございましたように、前向きの姿勢でぜひ何とかこれを早く実現したい、ただし、その場合に御利用者皆様方に御迷惑をかけないように極力その受け入れ体制の準備も進めてまいりたいということで鋭意努力いたしております。やはり社会的コンセンサスと申しますか、皆様の御理解を得た上でスムーズに実施いたしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  7. 吉國二郎

    吉國参考人 吉國でございます。地方銀行協会長といたしましてお答えをいたします。  地方銀行協会会員全銀協会員とダブっております。したがいまして、考え方は全く同じ下ございます。銀行側として、週休二日制を自分から積極的に推進するという立場にはないと思います。やはり銀行側だけで週休二日制をやるという問題ではなくて、社会的な全体のコンセンサスの上に立って、官公庁その他との整合性のある上でやるべきことだろうと思いますので、銀行側からだけこれをやるということではないと思いますが、いよいよそういうコンセンサスができたときに、それに対応して協力をするという体制にはあるということをはっきり申し上げたいと思います。
  8. 長谷川寛雄

    長谷川参考人 長谷川でございます。  手前ども相互銀行協会も一昨年から週休二日制委員会をつくりまして、現在前向きに検討いたしております。しかし、最近の事情、事実を申し上げますと、平生は女性の来客者が非常に多うございますが、土曜日に限りまして夫婦連れ住宅ローン相談が急にふえるわけでございます。これを閉めると住宅ローンに相当影響するのじゃないか。やはり奥さんだけでは決めにくい問題でございます。先生どうぞ御一考いただきたいと思います。
  9. 小原鐵五郎

    小原参考人 小原でございます。  お答え申し上げます。  私ども信用金庫協会といたしましては、週休二日制というものは時代の要請であるということは心得ております。ただ、私ども取引先中小企業一般国民大衆という立場でございまして、先ほど関さんからお話のございましたように、その人たちが私ども週休二日制をやっても差し支えないというふうなお話がございますれば、私どもも結構だと思っております。  それから、先ほども全銀協の方からお話のございましたように、もしも私どもがやるということになりましたならば、一緒金融機関である郵便貯金さんもやっていただく、それから農協さんもやっていただくということで、全部の金融機関一緒にスタートするというふうに御配慮願いたいということを申し上げておきます。
  10. 堀昌雄

    堀委員 大体前向きに受け入れ体制を整備しながら実施がなされることを期待しているという御答弁のように思いますが、長谷川参考人お話は、なぜ夫婦ずれで土曜日に住宅ローンに来るかというと、そのところは週休二日になっているのですね。週休二日になっているから、要するに、お勤めの方が休みだから来られるのですよ。ですから、週休二日という問題は、広がれば広がるほど、ふだんの日に行けない人たちが土曜日に来るという問題はあろうかと思います。ですから、もしそういうことのためのサービスというものが非常に重要であるならば、これは何も一般銀行業務そのままでなくて、まさに相談業務だと思うのですね。相談業務は別途何らかの方法での対応もあろうか、こう考えますので、そこらはまた金融機関側でもひとつそういう問題を含めて御検討をいただきたいと思います。  それから、いま小原参考人お話しになりましたし、関参考人お話しになりましたが、金融機関週休二日で土曜日を休んでいただくときに、郵便局農協や漁協がやっておられるということでは、私がさっきちょっと申し上げました、これは競争条件の中にありますから、イコールフッティングでなければ、これはそういう点で不公正を招くことになります。郵便局は御承知のように郵便業務でありますから、郵便局を閉めるわけにはいきませんけれども郵便局における貯金業務は、金融機関の一環として何らかの対応をしていただくということでなければイコールフッティングにならないと思いますし、農業協同組合漁業協同組合等もその点は十分お考えをいただくような方向で私ども考えておるわけでございますので、その点はひとつ私どもにお任せをいただきたいと思います。  それから国民コンセンサスを得るということは、現状では国民代表しております国会におけるコンセンサスが得られることをもって国民コンセンサスが得られたという御判断をいただく以外には、これは国民投票にかけてやろうなどということにはなかなかならないので、そういう形で私どもは今後努力をしてまいりたい、かように思っております。  ただ、さっき私が申し上げたように、法律ができたから直ちに施行というのではなくて、一定の期間国民十分PRをしまして、国民皆さんがそういうことが実施されることによって不要な混乱やお困りになるようなことがないようには十分努めてまいらなければなりませんし、そのための期間も当然必要だと考えております。  理想的に言えば、現在キャッシュディスペンサーがかなり普及してまいりましたけれども、これが単に引き出すだけではなくて預け入れも確実にできる——最近、大阪の梅田の地下街でにせものキャッシュディスペンサー事件がありまして、これが時効になったというようなことがありますから、そこらは慎重な対応が必要かと思いますが、何とかこのキャッシュディスペンサーがより合理的に使えるような研究開発が行われて、いま申し上げましたような広くお金の出し入れという問題については零細企業皆さんにも国民皆さんにも御不自由をかけないような対応についても金融機関皆さんの方で御検討をいただいて、そういう意味での受け入れ体制を進めていただくようにお願いしたい、かように考えておるわけでございます。  次に、先ほど委員長お話しになりました今回三月期に行われます決算問題について少し御意見を伺いたいと思います。  実は、銀行局が十二月二十八日だったと思いますが、御承知統一経理基準に関して、国債評価をこれまでは低価法でやってまいりましたのを原価法低価法のいずれを選択してもよろしいという通達を出したわけでございます。  少し古いことでございますけれども、ちょうど私は先般亡くなられました高橋俊英さんが銀行局長でおられましたときの大蔵委員会で、銀行局長に二つの宿題お願いいたしました。一つは、私、ずっと金融の問題を調べております中で、金融機関の序列というのは常に預金量が多いものからつくられているという問題でございます。いろいろと勉強した結果、金融機関預金量が多ければランクが高いということは必ずしも適当でないのではないか、金融機関をはかる物差しはサウンドバンキング程度いかんによるべきではないかということが私が考えついた一つの問題でございます。よく山高きがゆえにたっとからず、姿よしをもってたっとしとするという日本には古来の言葉もございますけれども、こういうようなことで金融機関サウンドバンキング程度によって統一的に並べてみて比較ができるような、言うなれば新格づけ基準とそのとき私は申しておりましたが、新しい格づけ基準をつくることによってこれまでの預金量による配列を変えたらどうだろうかということを検討してみてくださいと、当時の高橋銀行局長お願いしました。高橋銀行局長検討されて、高橋さんのときにはできませんでしたが、やがて高橋英明さんが銀行課長のときに私のこの提案は統一経理基準というかっこうで実は具体化されることになったのでございます。ですから、私はそういう意味ではこの統一経理基準というものについては非常に深い関心を持って今日までまいっておるわけでございます。  もう一つそのときに宿題を出しましたのは、金融機関大口貸し出し規制という問題をひとつ高橋さん検討してみていただけませんかと、これはアメリカや西ドイツを調べましてもそうでありますし、日本では相互銀行法の中にきちんと法定されておることでありますから、相互銀行法昭和二十六年でありましたか新しい法律であり、銀行法昭和二年という法律でありますから、これは時代の違いがありますので、当然銀行法を改正するときにはこの項目法律要件となるべきだ、こう考え高橋さんにお願いをしましたが、いろいろ御検討いただいた結果、堀さん、これはもう商社の問題にぶつかって、ちょっといまはどうにもなりません、こういうお話でございました。どうにもならないことを無理にお願いできませんから、時期のたつのを待っておりましたけれども、御承知のように、いまから五年前に、これは私が申し上げているような金融機関健全性という問題から問題が出たわけではございませんけれども、いずれにしても、通達をもって、向こう五年間に普通銀行は二〇%、長期信用銀行信託銀行三〇%、為替銀行四〇%という対資本金比率でこの三月三十一日に処理をしてほしいということになってまいったわけであります。そういう意味では、たしか昭和三十八年ごろだったと思いますけれども、いまから十八年前に私が当委員会で問題を提起したことが今日いろいろな形で具体化されておるということは大変いいことだと思っておるのであります。  そこで、前段の統一経理基準でありますけれどもアメリカの制度は、有価証券については商品有価証券投資有価証券というふうに区別をされて、商品有価証券については低価法投資有価証券については原価法、こういうふうになっているようであります。私、これは大変合理的な評価方法だと考えておりますので、まずこのような処理がされておれば統一経理基準における評価問題は問題がない、こう思っておるのでありますが、実はそういう問題ではなしに、ある金融機関国債は十把一からげに原価法にする低価法にするか、いずれかの選択というのが今回の通達の趣旨でございます。  そこで、実は株式会社貸借対照表損益計算書及び附属明細書に関する規則というのが昭和三十八年三月三十日法務省令三十一号というので出ておりますのをちょっと見てみますと、十一条に「短期保有株式等」というのがございまして、「取引所の相場のある株式及び社債(国債地方債その他の債券を含む。以下同じ。)で決算期後一年以内に処分する目的保有するものは、流動資産の部に記載しなければならない。ただし、当初一年を超えて保有する目的で取得したものは、投資等の部に記載することができる。」これは商法の規定の細則だと思うのでありますけれども、これともう一つは、商法の二百八十五条ノニ、二百八十五条ノ四、二百八十五条ノ五というような項目がありまして、これらをずっと見ながら考えてみますと、いまの決算方法の中で仮に全部原価法ということになって、それがその債券を購入されましてから償還まで持っておられれば、これは原価法は当然のことなのでありますけれども金融機関の様態によってはなかなかそうはいかないというのが現状ではなかろうか、こう考えるわけであります。  特に、いま政府金融機関国債をある意味では押しつけているわけでありますが、たとえば長期信用銀行とか信託銀行は本来が長期資金を扱っておられる金融機関でありますから、どちらかといえばそういう長期的な債券保有をするのには適した構造であろうか、こう思うのでありますけれども都市銀行地方銀行あるいは相互銀行信用金庫、いずれもそうでありますけれども、これは本来が短期資金を扱う金融機関でありますから、この短期資金を扱う金融機関が十年という長い期間債券を持つということは、これは全体として見て、その国債そのものの全体の資金量に占める割合が非常に小さければ、これは償還まで保有が可能であろうと私は思うのでありますが、いまの長期関係金融機関に比べて、一般短期資金を扱う金融機関が最後まで持つということは大変不可能で、どうしてもこれはいま申し上げたような流動資産としての部分にかなりのものを入れておかなければ、それは固定資産として貸借対照表に挙げるというわけにはいかない性格ではないだろうか、こう考えているわけであります。  そこで、私は、銀行局に対しては、ともかくもう少しリーズナブルな対応をやるべきではないかと、この前当委員会で、一月二十九日でありますか、かなり長い時間をかけてこの問題の論議をいたしました。私が恐れておりますことは、要するに、そういうふうに売却されるというふうな前提のある国債、言うなれば商品有価証券としての国債原価法によって評価をされるということは、少なくともその時価と原価との差額だけは含み損として実は計上されておるということになってくるわけでありまして、その比重が小さければいいのでありますけれども、これがかなり大きいということになりますと、これはやはりかなり問題があるのじゃないだろうか、私はこういう感じがいたすわけであります。  都市銀行の五十四年九月期の国債の残高、増加額、引受額、これをずっと計算いたしてみまして、そこから売却額を計算して、一体、五十四年九月期における国債売却額が幾らあったかと言いますと、都市銀行では二兆五千八百二十億円実は売却をされておる。この二兆五千八百二十億円というのは、まさに五十四年九月期の残高の七兆六千八百五十七億円の三三・六%、三四%に当たるということであります。これが一〇%以内であるというようなことならば、これはグロスで見て、これを全部原価法でやったらそんなに支払い準備の中における含み損が大きいということではないので、銀行健全性をそう損なうものではないと私は思うのですけれども、やはり三〇%を超えるような実は売却が行われるという情勢、これが経過的に見ますと、五十三年九月期は一〇%、五十四年三月期は六%、五十四年九月期は突然としてこれが三三・六%になっておりますが、さらに今後これが減る方向にあるかというと、ふえはしないかもしれませんけれども、三〇%台というのは余り減らないのではないだろうか。減るように政府国債発行をやれば、これはもう一番いいことでありますが、どうも最近の情勢を見れば、国債発行について政府は必ずしも真剣さを持っているとは言えないというふうに私は感じておりますので、これが三〇%、四〇%というようなことになって、そしてこれを全部原価法処理をしていくということは、銀行健全性にも関係があるし、同時に、今期は銀行法の改正案が参議院選挙の時間的な関係で審議ができないということだろうと私は思うのでありますけれども、私は、いま金融制度調査会が答申をされておりますこの銀行法改正に関する答申内容というものはすべて賛成なのでありまして、そういう意味では、来年の通常国会においてこの銀行法は法制化される、こう考えるわけであります。  そういうふうな時点に立って考えますときに、この銀行法の中では、健全性一つ主張し、社会的責任を主張し、ディスクロージャを主張している、こういうふうになっておりますと、この間の当委員会において大臣でも粉飾と紛らわしいようなことは望ましくないという答弁をやっておられるわけでありまして、ですから、そういう意味では、私は、ただ皆さんのいろいろなお立場がありますから、それに応じて原価法を今度採用されてけしからぬと言うわけにはいかないと思います。それは皆さんは被害者でありまして、加害者は政府でありますから、責めるならば加害者を責めるべきで、被害者を責めるわけにはまいらないと私は思いますが、しかし、それはそれとして、何らかの合理的な決算に対する対応をやっていただくことが、この原価法低価法の問題に前向きに対処できる道ではないだろうか、こう考えております。  そこで、私はいま銀行局に対しては、ともかくアメリカの方式をもう一偏少し検討してもらいたいという注文を実はつけておるわけであります。これはもう原理的に正しいのでありまして、商品有価証券低価法で、それから投資有価証券原価法で、これはいま私が読み上げた流動資産はともかく低価法で、固定資産は原価法でというのは当然のことでありますから、それを何らかの方法でやってほしい、こう考えておるのであります。  そこでもう一つ、ちょっとこれは私のお願いでございますけれども、御答弁をたくさんにしていただきますので、質問を一点にしぼっていたしたいと思うのでありますが、実は有価証券報告書の問題でございますけれども、この有価証券報告書を私ども拝見をしておりますと、損益勘定の方には有価証券の償却という欄が設けられていて、ここにいまの評価損が立ってくる、こう見ておるわけであります。一つ、これが正規のものでありますけれども、きょうはお願いでございますが、当大蔵委員会に対しては、原価法でおやりいただいた損益計算書でありましても、それに一つ別項を設けていただくといいますか、仮に低価法国債評価したときにはわが方の決算はこういう形になりますというものを——低価法でお出しになっているところはもう結構でございますけれども原価法をこの三月三十一日以降お使いになります金融機関は、そういう、もしこれが低価法であったらどうであろうかというものをひとつおつくりをいただいて当委員会に御提出が願えないだろうか。そうすれば、私どもは、この低価法のものは並べて見れば金融機関の状態がよくわかるのであります。私はいま大蔵省に言っておりますのは、国債勘定というのはどこか別建てにできないのか。いまの国債評価損というものは皆さん方の努力をもってしては何ともできないことでありまして、これは国の対応によって皆さんのところへしわが寄るわけでありますから、銀行プロパーの勘定だけを一つ全部立てて、言うなれば、これでまいりますと有価証券償却という部分だけが何か別建てになっていて、その他のところは経常利益その他にずっとはね返るというような形で、何とか国債勘定だけを別建てにすれば、実はいまの問題は起きてこないわけであります。そうすると、今度はこの国債勘定における評価損というものは皆さんの方で一定の話し合いをしてルールを決めていただいて、これが一定の評価損比率ですね、要するに、全体の資金に対する評価損の比率のようなものを、一定の線を引いて、これ以上評価損が超えましたら金融機関はもう国債は購入できませんと、皆さんで全体でひとつそういうコンセンサスをつくっていただきたい。もう幾らでも国債を増発して、低価法であって、それでだんだん皆さんの方では大変な償却をされて、これは拝見をしますと、実は都市銀行の場合には経常利益とこの償却がほとんど同じぐらいになっておるようでございますね。きょうは都市銀行の方では三井銀行がおいでになっておりますが、五十四年九月期の経常利益は百四十六億八千万円、国債評価損は百三十二億五千七百万円、まさに評価損がなければ経常利益は倍であったというようなとんでもない経理をいま皆さんは強制されておる。ですから、実はこのまま低価法でおやりになるとすれば、経常利益がある一定のものがなければ配当もできないし、いろいろ問題がありましょうから、結果としては含み益のある債券を売られるとか土地を売るなどして国のために起きておる国債による評価損を金融機関プロパーの資産をもって償うなどというまことにばかげたことが起こるわけであります。ですから、このままでいいとは私は思っていないのでありますけれども、しかし、あわせてそういうことによって起こる含み損をそのままにして支払い準備として対応するということは決して望ましい姿ではない、こう考えておりますので、私は銀行局に対してはこの九月期決算までに何とかそういう点ではもっとリーズナブルな決算方法考えるべきであるし、もしそれが法律を必要とするならば、これはひとつ当委員会においてまた皆さんと御相談をして、議員立法によって対応してもいいから、要するに、どこから見てもリーズナブルな決算方法というものをつくりませんと、安易な国債発行を助長することになる。  私は現在の状態を見ておりまして、まことに遺憾だと思いますのは、御承知のように、証取法によりましてそういう債券類の価格操作は法律で禁止しているわけであります。法律で禁止をしておるにもかかわらず、いま国は国債整理基金で市場に買い出動して実は価格操作をやっておる。なぜ価格操作をやるのか。それは三月三十一日の時点で低価法評価が決まるものですから、少しでも低価法でやっていらっしゃる皆さん評価損を少なくしようと、気持ちはわかりますけれども、やっていることは、国民一般あるいは企業一般に禁止をしておることを国がやらざるを得ないようなそういう国債を発行する政策、この根源を改めないでこの根源から出てきたところの結果についてだけ対応しようとしておるのが現在の大蔵省の対応だと私は思っているのであります。ですから、何としてももとのところを減らすことなくしてこの問題の解決はないということを考えておりますので、その点において私は本日御出席金融機関代表皆さんと問題意識においては全く同じだ、こう考えておるのでありますが、各金融機関におきましては、いろいろお立場があろうと思いますので、ひとつこの点について、そういうことになりますと、たとえば長信銀行のように三行で全部原価法とおっしゃるところはいいのでありますが、金融機関のグループによっては低価法原価法というものがございましょうから、これはグループを代表してという御発言ではまずうございますので、御自身の金融機関低価法原価法かということに基づいて御答弁をいただきたいのであります。いま私が申し上げました国債評価問題についてのそちらの銀行対応とあわせて、この問題について私はいま大変時間をかけて申し上げましたが、この問題に対する対応についてお答えをいただきたいと思います。
  11. 関正彦

    関参考人 お答え申し上げます。  ただいまは堀先生から現在の私どもの置かれました立場において苦渋に満ちた決算をせざるを得ないその事情につきまして、まことに深い御理解、それから大変な御研究の結果を承りまして、これは決してお世辞を申し上げるわけではございません、真にそう思っております。  それで、ずいぶんたくさんのことをおっしゃいましたけれども、御質問がしぼられております。私は、全銀協会長という立場を解いた形で返事をせよということでございますので、自分のおります三井銀行考え方といいますか、これにつきまして申し上げさせていただきたいと思います。  私の方は、実は今期の決算は低価法をもって乗り切ることを現時点におきましてはほぼ決定ということでございます。それだけに、最初御指摘のありましたように、今期の国債を主とする有価証券の償却というものは非常な多額に上ります。その多額に上りますものをそのまま何らの対策をとらずにいきますと、極端な場合は赤字というような異常な決算も覚悟せねばならぬような状況でございまして、大変残念なことではございますが、従来からございますいささかの含みもこれに対応していかなければならぬものと覚悟しておるわけでございます。  実は商品有価証券勘定あるいは投資有価証券勘定というふうな区分という問題をお話しございましたけれども、これはわれわれの業界におきましても、異常な国債の多額の引き受けに伴います価格の変動、特に下落という問題に対応いたしまして、このような考え方について何か研究をし、取り入れる方法はないのだろうかという意見の交換は、すでに昨年の前半でございましたか、あったわけでございます。ただ、それがなかなか実を結ばなかった理由というものは、非常に技術的になるかと存じますけれども、まずどれだけのものを投資勘定に持っていき、どれだけのものを商品勘定に持っていくかというこの区分が、まず大きく申しますと、どのくらいの比率でどういう勘定に引き当てて、それからいまの保有する期間というものも考え合わせて区分しますこの問題がまず非常にむずかしかったということ。  それから、ただいま私ども保有しております国債の銘柄というのは非常に多岐にわたっております。何回ごとにレートも違います。発行価格も多少差もございます。これをある銘柄を半分に割るとか、そういうようなこともなかなかむずかしいという技術的な問題もございます。  それにも増して、先ほど御引用のございました商法の会計原則に適合した処置というものが相当配慮を要する部分が多いわけでございまして、実は早急にこれだといって飛びつくわけにもなかなかいかなかったというのが実情でございまして、その辺のところもすっかりお見通しのようなお話でございましたので、まことに敬服いたしておるわけでございます。  最後に、一番われわれとしてそういうことに踏み切りにくかったという事情は、御指摘のとおり、調達資金と申しますか、われわれの場合は預金の増加ということを常に仕事にしております。その範囲で貸し出しあるいは有価証券保有というものを賄うのが健全な姿であるにもかかわらず、昨年の九月におきましては、概数で申しわけございませんけれども、一兆二、三千億の預金の増加に対して、いわゆるわれわれの引き受けシ団としてお引き受けいたしました国債は一兆八千億ぐらいに上っておりまして、そこですでに資金じりのつじつまが合わないような状態でございます。そのほかに貸し出しを円滑に実行しなければならぬという非常な苦境に立ったわけでございます。したがいまして、御指摘のような多額の国債を売却してこの窮境を乗り切る以外に方法がなかった、こういう事態になりますと、流動性を保つためにきゅうきゅうとしておる事態において投資勘定であるとか商品勘定であるとかいう区別をするゆとりを実は喪失したというのが実情でございます。  そして、私どもは、先生のおっしゃっております被害者という言葉が適当であるかどうか存じません。それはもちろん国債のこれだけの多額の保有につきましては、平素減額努力につきましてもいつも財政当局お願いをしておりますけれども、何分にも財政執行という国家的な使命に対する御協力というものを忘れてはならないことでございますし、思い返せば、全般の景況が非常に停滞をいたしましたときに公共投資、財政資金によるてこ入れが行い得たということは大変な評価すべき事態でございましたので、そういう時期において国債保有を渋って不円滑になるということはやはり国民の一人として黙視することのできなかった事情というのがございまして今日に至ったわけでございます。  したがいまして、ただいま御質問のございました部分につきましては、そういうふうな事情を踏まえながら、やはりそういう方向にやっていくという努力をわれわれとしても払わざるを得ない事態であるというふうに考えておりますが、何分この問題は、低価法原価法がすでに都市銀行の中で実は半分に分かれてしまったような状況でございまして、それぞれのお立場というものもございますので、これらの状況の中で、ある程度意見統一を図りますことはなかなかむずかしい事情もありますことをひとつ御理解をいただきたいと思います。  それではこれで終わります。
  12. 堀昌雄

    堀委員 委員長、時間が制約されておりますので、できるだけ答弁を簡単にお願いして、まだあとちょっと質問がありますので、よろしくお願いします。
  13. 増岡博之

    増岡委員長 時間の制約がございますので、できるだけ簡潔にお願いします。  池浦参考人
  14. 池浦喜三郎

    池浦参考人 お答えいたします。  いま堀先生から国債評価法につきまして大変よく御研究していただいて、私ども金融機関につきまして私ども立場を大変よく御理解していただいておりますことに感謝申し上げたいと思います。  先ほど先生お話の中にもありましたような趣旨から私ども長信銀行原価法を採用させていただくことにいたしましたわけで、その際、先生の御指摘のように、ディスクロージャーというようなこと、またいろいろ損益関係を明快にする、これが非常に多額な評価損ということで、一般の営業活動で出ますものを超しますような金額になっておりますので、この点につきましていま御当局にもいろいろ御意見を伺いまして、何か計算書類規則、また銀行法の施行細則というようなことの絡みで、計算書類に、私の方はこういう基準評価をいたすことに変えました、前の評価法でいたしますとこういうようなことになりますというようなことを表記した方がいいのじゃないかということで、適当な文言を考えまして、いま先生の御指摘のような線に、全くそのとおりなんでございまして、そういう方向で何か方法考えなければならぬということで、御当局にいろいろ御指示を仰いでいま検討中でございます。
  15. 田代毅

    田代参考人 お答えいたします。  いま池浦参考人からお話のございましたように、私ども信託銀行長期資金を主として扱っておりまして、国債投資有価証券としての性格を多分に持っておりますので、先生重々御承知のような事情によりまして、われわれ信託銀行全部原価法を採用することにいたしております。したがって、長期的に見ました場合には、いまの損益の問題も最終的には問題はないのではないかというふうに思っております。ただ、その期その期の評価損の問題ということはございます。しかし、これはいま池浦参考人からお話のございましたような線でわれわれも善処いたしたいと思っております。
  16. 吉國二郎

    吉國参考人 私の銀行原価法を今回採用したわけでございます。これについては、いま堀委員から短期の資金を扱っている銀行として不適当ではないかという御意見がございましたが、御承知のとおり、銀行、ことに商業銀行は短期の資金を集中することによって長期の金融もできるという機能を発揮するわけでございます。もし長期の資金が供給できないといたしますと、住宅金融などということもできないわけでございます。現に、金融制度調査会で一遍調べましたところが、普通銀行の定期預金のうち相当部分はかなり長期にわたって保有されているという実績もございます。  そういう意味では、私は必ずしも普通銀行低価法でなければいけないとは思っておりませんし、実は地方銀行協会といたしましては、従来からたくさんの地方債を持たされていた地方銀行といたしまして、この地方債国債についての経理問題については非常に深刻に考えておりました。地方債につきましては、実は御承知のとおり上場されておりませんから評価損というものは出ないわけで、非常にたくさん地方債を持った時期におきましても、幸いにして経理上の問題はなかったわけでございます。しかし、地方債がだんだん減ってまいりまして、逆に国債がふえてまいりましたが、国債は上場いたしておりますので、これは評価損が当然出る。一時的な金利の高騰あるいは低下によって長期債というものは当然価格が変わるわけでございますから、そういうときに一々影響を受けるようでは困る、むしろ銀行のポートフォリオのあり方によっては原価法でも低価法でもそれに適応した選択をすべきであるにかかわらず、統一経理基準低価法を強制しておる、これは非常に不便であるから直してほしいというのを一昨年から申し上げておったわけでございます。今回それが改正になりましたので、私どもといたしましては従来の主張でもございますし、原価法に変えたということでございます。  それからいま御指摘がございましたそれでは統一経理基準の持っておった比較性というものがなくなるのじゃないかという御心配でございます。これもごもっともだと思うのですけれども、ただ、いまの銀行の施行細則によります経理のやり方によりますと、実際は、低価法をとっておりましても、原価法をとっておりましても、どっちかにたとえ統一いたしましても、内客は決して比較性がないという問題がございます。たとえば、低価法の場合でございましても、有価証券の持ち方によりましては評価損が出たり出なかったり、評価損が出たにいたしましても売却益というものを立てるということで、結局どんなやり方をしても結果においては経常利益はみんな同じだというのがいまの姿でございます。たとえば、都銀さんでもこの五十四年九月期に大変な評価損を出されましたが、その評価損の九割相当額ぐらいの売却益を出しておりますから、結局それを通じて考えれば全体の有価証券としては原価法をとったと結果は同じになっておる。そういう点から申しますと、いまの経理基準は決して比較性は非常に強いというものではなくて、むしろ、先生の御指摘のように、もう少し改良する必要があるのじゃないかと私は思っておるわけでございます。  それから、いまも評価損の額を表示することはどうだというお話がございましたが、これにつきましては、いまも私が申し上げましたように、低価法をとっている銀行でも評価損に対応して含み益を吐き出しておりますから、決算の結果は評価損をそのまま実現してはいないわけでございます。ですから、原価法をとった銀行がその未実現の評価損だけを表示するということになりますと、非常な誤解を受けるおそれがある。たとえば、評価損が百億あるということを申しますと、恐らく一般の方はこの銀行は赤字になるなとごらんになる。ところが、同じ評価損が百億あっても、低価法をとった銀行はそのときにはこれを百億近い売却益を出しまして相殺しているわけです。ですから、最後はちゃんと経常利益は普通に出ているわけですから、それと比較されて、原価法をとっているところは評価損がこれだけあるからそっくりそのまま赤字になると見られては、これは非常に困るわけでございます。そういう意味で、御指摘の点、いろいろ考えるべき点があるとは思いますけれども、にわかには私は賛成しがたいと思うのでございます。むしろ、いまの有価証券規則でまいりますと、原価法以外の評価法、ことに低価法をとっている場合には、その低価法をとったものについての評価減の額を明らかにしろというのがたてまえでございまして、原価法がむしろ原則でございますので、原価法をとったものが特に注記をするという理由は私はまたその面からもないのではないかというふうに思いますので、この点は、私は大変遺憾ながら賛同いたしかねるということを申し上げます。
  17. 長谷川寛雄

    長谷川参考人 ただいまの原価法低価法の問題でございますが、私の銀行は、私が今回上京する前日に原価法に決めてまいりました、それまでは低価法でやるつもりだったのでございますけれども。業界全体で申しますと、三分の二が原価法でございまして、三分の一ほどが低価法でこの三月期の決算を行うのじゃないかと思います。来期についてはまだ予想は立ちかねております。いま堀先生からお話のありましたように、そういう事情でございますので、来がけには原価法低価法との相違点、そして影響度というものについて検討しろ、こう言ってまいったわけでございます。  それから、先ほどございました有価証券の商品と運用という問題でございますが、私たちのような小規模の銀行で申しますと、また相手が中小企業ということになりますと、所有いたしております株式というものがほとんど取引先の株でございまして、その上、非上場の株が非常にたくさんございまして、商品というわけには少々いきかねるのではないか。また、国債の方から申しますと、いま先生のおっしゃったように、非常に御同情のあるお話でございますが、無防備で被害を受けているようなかっこうでございます。これについて、そういうような選択はちょっとしにくいのじゃないかと思います。この点、どうぞよろしゅう御推察をお願いいたします。
  18. 小原鐵五郎

    小原参考人 小原でございます。  私ども信用金庫協会といたしましては、大蔵省の方のお達しがございましたので、原価法にしてもよし、また低価法にしてもよしということでもって、自由というふうな通知を出しました。しかし、信用金庫協会会員の中から、私に、しからば両方あるけれどもどっちがいいんだ、こういうふうな質問が多いのでございます。そこで、いまから十二、三年前ですか、先ほど堀先生から御指摘のありました四十三年度の決算から統一経理基準というものを金科玉条に守ってきたのです。私どもいま統一経理基準という大蔵省から示されたものを一生懸命忠実に守ってきたということで、今日でもこれは非常にいい基準であるというふうに私は考えております。そういう意味からいきまして、私自身としましては、問い合わせられますと、どうも原価法でやるという気持ちにはなれない。どうしても低価法でやる。つまり金融機関に持っておりまする財産目録に示された有価証券が、そこに何か含み損のあるようなことをして、つまり決算報告を出して、そこでいままでのような配当をし、役員賞与をもらうということはちょっとどうか。どうも私どもには割り切れませんで、私どもはやはり金融機関健全性ということからいきましても、私は、低価法がいいんだ、こういうふうに答えておるというのが現状でございます。私どもの城南信用金庫としましても、無論この低価法でやるというふうなことでございます。  それから、一つ申し上げておきますと、どうも統一経理基準が何かちょっと崩れてきたような気がします。そういたしますと、今後の金融機関のあり方について私ども心配することは、もしも統一経理基準がどうもちょっと変わってきたなんということになりますと、国債評価損は別問題として、また固定資産の償却であるとか、あるいは滞り貸しでとれない貸付金の償却というふうな面がどうもこれに絡んで、少し緩むような気持ちを起こさせたのじゃいけないというふうに考えまして、私ども業界としましては、私はできるだけ低価法でやることがいいんだというふうに答えておるということでございます。  以上申し上げまして、お答えといたします。
  19. 堀昌雄

    堀委員 それぞれのお立場の御発言をいただいてありがとうございました。  最後に小原参考人がお触れになりました点は、私がかねてから主張しておる方向にもう完全に一致するわけであります。私も何も金融機関をいじめようと思ってこんなことを言っているわけではないのでありまして、国民の側からいたしますと、やはりたくさんの金融機関の中でどういう金融機関が一番信頼できるのか、そのために新しい銀行法健全性の問題ディスクロージャーの問題、これらをやるわけでありますから、いま小原参考人がお触れになったように、私が一番問題にしておるのは、現実に含み損があるものをそのままにして、いま小原参考人がおっしゃったように、ぬくぬくと配当もやり、それから役員賞与も取るなどという姿勢が、果たして金融機関としての社会的責任を果たすことになるのかどうかという点が問題である。  ただ、この制度に矛盾があることを私は認めておりますから、これを何とか矛盾なく、いま関参考人がおっしゃったように、国債といえども大変多様なあれでございますから、問題があろうかと思いますが、ちょっと私がさっき読み上げました貸借対照表規則のように、向こう一年間において一応どういうポートフォリオを持つかということは、金融機関のビヘイビアとしてお考えいただいて、そしてその中でひとつ流動資産と固定資産に分けるような処理は、私は必ずしも不可能ではないのではないか、こう思うのであります。ですから、アメリカがやっておりますような式になれば、吉國さんといえども、それは困るというお話にはならないんじゃないだろうか。ちょっと吉國さん誤解があるといけませんが、私が言ったのは、短期資金を扱っている銀行に長期の国債をたくさん持たせるというのは無理だということを構造上の問題として触れたわけでありまして、長期の貸し付けをやってはいかぬという話をしているんじゃないのです。要するに、国債は十年ですから、それはもっと長い住宅ローン銀行でやっていただいておる、これは国民のために大変結構なんですが、ある一定の範囲なら十年債を持ったっていまのローリングシステムの中で処理できますけれども、それができないほどに持たされるから、結局売らざるを得ない。売るということは、本来なら投資として持つべきものがそうなっていないということに触れているわけで、構造上私は長信銀行あるいは信託銀行長期資金を扱っておるのでややこういうものを受けやすいが、一般銀行短期資金が主体だから、大量の国債に一番耐えられない体質だということを申し上げたのですから、そこは誤解がないようにお願いしたいと思うのです。  何にしても、さっきおっしゃった点で、確かに評価損が出たものを片方の評価益で埋めておられるから、いまの財務諸表の形で問題を処理すればおっしゃるようなことが起こりますが、私はさっき申し上げたように、国債勘定というかっこうで、国債についてだけ一なぜ私がこれを言っているかというと、銀行健全性の問題もさることながら、歯どめがなくなると私は思うのですよ。原価法に全部なってしまえば評価損が出ないから、どんどん銀行に持たせればいい、あなた方が声を立てたって、決算上もプラスじゃないか、持て、こう言われたときに、それは抵抗できなくなるんじゃないか。だから、どこかに一つそういう計上をして、要するに、われわれはこれ以上は国債を持てませんという姿勢にならなければ、問題はなかなか片づかない。下からそうやって国債が発行できない状態になったときに、それでは財政はどう考えるのか、財政としてそれだけ発行できなければ、それなら増税しなければならないじゃないか、要するに順次問題が、国民の中にコンセンサスができる条件をつくるためには、やはり金融機関の今日の対応ということは、単に金融機関健全性だけではなくて、日本の財政再建に非常に大きな関係があるということを私は強調しておるからのことでございます。その点、私は低価法をとっていただくことは、金融機関としては大変勇気の要ることだと思うのであります。しかし、勇気を持ってやはりこれに対応していただいておることが、私はいまの広い意味での社会的責任を果たしていただいておるというふうに理解をするものでありますから、そういう意味では、構造上の問題として、長信銀、信託銀行は別でございますが、短期の資金を扱っておられる銀行の中で、先は別としても、特に今回低価法でがんばろうとやっていただいている金融機関には、そういう意味での敬意を表したいという気持ちでございます。  時間がございませんが、最後にちょっと大口貸し出し規制の問題について申し上げて終わりたいと思います。  いま大口貸し出し規制、この三十一日まででどうやら各金融機関は大変御努力をいただいてクリアにされたようでありますが、残念ながら三井銀行はクリアができないということのようでございます。いろいろと理由があることは私も十分承知をいたしておりますけれども、ただしかし、残念なのは、一つのルールが執行されておるときに、他のすべてはいろいろ努力してそれはクリアできたときに、一つだけ残ったというのは何としても遺憾なことだというふうな気持ちがございます。  そこで、ちょっと私の割り当て時間が過ぎておりますので、簡単にお答えをいただきたいと思うのでありますが、一番肝心なことは、今後の問題だと思うのでございます。この時点ではやむを得ません。もし今度の国会銀行法が成立をいたしておりますと、銀行法の中にはこれが書き込まれる予定になっていたと思うのでございます。そうしますと、ことし法律ができて施行されますと、来期の三月期からはこの法律によって対応しなければならぬということになるわけでございますが、いまの情勢では、実は来年の通常国会における成立ということになりますから、これから約二年間ほど先の決算が法律による拘束性を持つ状態になるだろう、こう予測しておるわけであります。やはり私は、いろいろ御意見がありましょうとも、三井銀行を除いた他のすべての金融機関がクリアをされてきたことでございますので、ひとつこの際、法律が施行されるかどうか、それは来年のことになってみませんと問題でございますが、いまの私どもの予測からすれば、来年の通常国会で、この銀行法だけではなくて、相互銀行信用金庫、労働金庫、すべての金融機関の諸立法を一括して当委員会で審議をして成立をさせるようにしたいと私も委員の一人として考えておるわけでございますので、来年この法律が成立をして二年後の三月という時期には、三井銀行としても、これは法律マターでございますので、尊重していただかなければならない、こう思っておりますので、このことについての心構えだけをお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  20. 関正彦

    関参考人 お答えをいたします。  ただいま大変御理解のあるお言葉の中に厳しい御指摘がございました。しかと受けとめております。  御発言にございましたように、この局長通達が出ましてから今日に至る五年の間に、他の金融機関におかれましては、特別の事情というものを勘案されたものを除きまして、私どものところが一つ残ってしまったということは、私といたしましてもまことに残念でございます。遺憾に存じます。  ただ、ここで細かい数字を並べ立てて、これだけ努力したんだということをちょうちょう申し上げる時間もないようでございますけれども、簡単に非常に象徴的に申しますと、やはり先ほど冒頭にお話しになりましたように、商社というものの金融が相当問題なんだということは歴代の銀行局長もよく御理解で、この三井物産につきましても五十年の三月期の年商というのは八兆六千億でございます。五十五年三月の見込みというのは十一兆を超しておるわけでございます。この間における商いの高というものは相当に膨張いたしておりますし、これにつれましてそれに必要な増加運転資金というのが当然発生してくるわけで、これはこの局長通達その他の面でもこういうふうな事態についても十分理解を示された文言も出ておりますけれども、その間にわれわれの規制超過額というもの、特に規制を超過しておりました金額は二千八百億ございましたが、これを二千億以上解消いたしました。これは、他の、規制超過分以外の金融機関からこの増加運転資金に対する協力並びに規制超過解消に必要な資金の援助を仰いだ。これは何か非常に怠けておったんじゃないかというようなことも御指摘もあるようでございますが、わが国の金融環境の中におきましては血の出るような努力であったということを私は率直に申し上げたい。御理解いただきたい。  そうでございますので、今後二年ということでございますが、ただいまの超過額、残りました分につきましては、さらに努力を傾けまして何とか超過というものをなくする努力を続けます。ただ、法律が出ました暁はというお言葉でございます。もとより日本の国の中で公共的な事業を営んでおります私ども立場としまして、法律違反をするようなことはもう論外でございまして、決してそのようなことはいたすつもりはございません。  ただ、お答えの中でこのようなことを申し上げてどうかと思いますけれども、法案の御審議の際には、われわれの立場から出ました幾つかの要望がございます。これは端的に申しますと、商社に対する貸し出しの内容が単純に無担保の貸し出しのほかに、貸し出し内容としてきわめて健全であるとわれわれの確信しております商業手形の割引であるとか、貿易取引に基づく諸取引を裏づけるための金融であるとか、あるいは国家金融機関健全性をお認めになって御融資になっておりますものに対する協調融資の参加分であるとか、こういうふうなものが一律に扱われておることにつきましては、これは何としても心残りでございます。ぜひ、この委員会におきまして法案の御審議の暁には、この点につきましてはさらに論議を尽くしていただいて——これはアメリカなどの例も見ましても、明らかにそういう措置をとっております。この点を御列席の皆様にもお願いをいたしたいと思います。  また、これもいささか私ども立場のことを申すのでございますが、それぞれの金融機関の業態別に自己資本に対する規制額としてのパーセンテージが示されておるわけでございますが、これにつきましても、局長通達の出ましたときのいろいろな算定根拠あるいは算定数字があるやに承っておりますが、これは事態の進展に伴いまして相当に変動も予想されるわけでございます。これらにつきましても、ひとつ掘り下げた御審議をぜひともお願いいたしたいという気持ちを強く持っておりますので、この点につきましてぜひ御勘案をちょうだいいたしますということを心の中で念じつつ、この法律ができましたときは、それは必ず遵守いたしますと申し上げます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 御要望は当委員会で当然論議をされることだと思うのでありますが、ただ、ちょっといまのお答えに一点だけ。  五年間にわたって一つのルールが決まって、それで全体の金融機関がそれに従っておいでになっておりますので、法律をやりますときに、それじゃ皆さんがせっかく努力してやってこられた基準が動かせるかというと、問題はやはり歴史的な経過というものを踏まえた上で私どもも論議をしなければなりません。おっしゃるような問題があるだろうことも私も承知をいたしておりますから、論議はいたしたいと思いますけれども法律ができる際に、これまで二〇%でできたものが二五%になったりするというようなことは、大変努力をされてきた金融機関のお立場もあり、私どももやはり行政当局がそういう方針で来たものを崩すということではちょっと適切ではないのではないかという私の感想をちょっと申し上げて終わりたいと思います。  本日は、大変どうも御苦労さまでございました。また吉國参考人は大分まだお話しになりたい点もあろうかと思いますので、日を改めてまた当委員会にお越しをいただいて少し論議をさせていただきたいと思います。  きょうは時間が十分ございませんで、大変時間を超過して申しわけございませんでしたが、どうも御苦労さまでございました。ありがとうございました。
  22. 増岡博之

    増岡委員長 宮地正介君。
  23. 宮地正介

    ○宮地委員 参考人皆様方には、大蔵委員会にお越しいただきまして、心から敬意を表したいと思います。  私も、限られた時間が三十五分ということで、六人の参考人皆さんに全部お聞きができるかどうか、その点についてはあらかじめ御理解をいただきたいと思います。  先ほど来から、本日のメーンテーマでございます大口規制の問題あるいは決算の問題ということで、きょうは各協会皆さんにおいでいただいたわけでございます。るるこの二点についてはお話が細かにありましたので、私は後にこの問題を回しまして、特に今回の公定歩合の引き上げに絡みまして少し皆様方の御意見など伺っていきたいと思うのであります。  政府として今回の公定歩合の引き上げ、このねらいは何といいましてもインフレの抑制というところに眼目があったわけでございますが、この金利の引き上げに伴いまして、さらに追い打ちをかけますように日銀の窓口規制がいよいよまた締めつけられてくるわけでございます。そうなってまいりますと、何といいましても一番厳しい立場に追い込まれますのが中小零細企業のいわゆる資金繰り、資金需要、運転資金の問題に大変大きな影響が出てくるわけでございまして、それが逆に今後の中小企業の倒産につながっていくということになりますと、かえってインフレ抑制という名のもとに公定歩合が引き上げられたり、あるいは日銀の窓口規制が強化される、その反面弱い立場のそうした中小零細企業に大きなひずみが出てくることに対して私たちは大変危惧をしているわけでございます。そういう点について、銀行協会皆様方、きょうは大口の融資から、五人、十人の中小零細企業皆さんと本当にひざ詰め合って融資の相談などを受けておる信用金庫会長さんも来ているわけでございまして、お立場、お立場で融資の額また融資の内容、いろいろと違うわけでございますが、日本銀行のいわゆる窓口規制が今後そうした中小零細企業の経営の大きな圧迫といいますか、そうしたところにひずみが出ないように、何とかその対応に現場の銀行皆さんが努力していただきたい、こう私は思うわけでございますが、この点についての御見解をまず各参考人方々から簡明に短時間によろしくお願いしたいと思います。
  24. 関正彦

    関参考人 お答えを申し上げます。  ただいまは金融引き締めあるいは公定歩合の引き上げ、こういう環境下においての中小企業金融の円滑化につきましての御懸念のお話がございまして、われわれの考え方というもののお確かめがあったわけでございます。  中小企業金融という部分につきましては、すでに銀行が種々社会的責任を問題とされますときの常に変わらざるテーマでございまして、世論あるいは国会の中における論議の過程を通じまして、われわれはその方面に向かっての努力というものはずっと続けておるわけでございます。これは数字が非常にございますけれども、繁雑を避けまして、この十数年の間に中小企業に対して振り向けております融資の額というものは、比率としましても大体倍くらいになっております。非常な努力をしておる。融資の半分にはいっておりませんけれども、もう半分近いところまで来ておる。この姿勢は、金融の繁閑、引き締めがあろうがなかろうが終始一貫して努力を続けておるつもりでございます。統計上、ときにそれにちぐはぐな姿が出ておる場合がございますけれども、これは特殊な事情がそれぞれございまして、全般としてはわれわれの中小企業に対する関心は変わらないわけでございまして、これは、先般ある場所で、中小企業の御金融を専門にお扱いになっておりますサイドから、一体、普通銀行都市銀行は少し中小企業金融に入り込み過ぎるのじゃないかという御批判まであったケースもございますので、そのくらい熱心にやっております。繰り返し申しますけれども金融の繁閑にかかわらず、中小企業金融の円滑化につきましては変わらざる課題として取り組んでおります姿勢には、いささかの変わりもございません。  以上でお答えといたします。
  25. 池浦喜三郎

    池浦参考人 宮地先生お答え申し上げます。  私ども銀行の一貫した設立以来の考え方といたしまして、大中小というような区別をいたしません。むしろ、いま先生の御指摘のように、中小というものがややもすればそういった境遇にあるということも十分理解いたしまして、また日本の経済におきまして中小企業の持っております意義というものはきわめて高く、また大企業といえども中小企業なくしては成り立たないものと考えておりますので、その点につきまして、いま先生の御指摘のように、やはり全体に資金がタイトになりますと、いろいろこれをどういうように配分するかということは銀行の機能でございます。したがって、その際、先生の御指摘の点につきまして一層十分に配慮いたしてまいりたいと考えております。
  26. 田代毅

    田代参考人 田代でございます。私ども信託銀行といたしましても、最初先生の御指摘がございましたように、最近日銀枠の引き締めはかなりきつうございます。一方、われわれは従来から電力とか住宅公団とかそういった大口の御融資もずっと続けてまいっておりますので、資金枠の配分には非常に苦慮いたしておりますが、その中にありまして、中小企業に対して優先的に枠を配分するという方針で臨んでおります。そして現実にここ数年来、われわれの中小企業融資の比率というものも順次上がってきております。したがって、今後とも引き続きそういう努力をいたしまして、いま池浦参考人からお話もございましたように、大企業中小企業、これは一体となって日本の経済を支えていくものでございますので、そういったつもりで努力いたしてまいりたいと思っております。
  27. 吉國二郎

    吉國参考人 御承知のとおり、地方銀行と申しますのは地方の経済の中枢金融機関というふうに位置づけられておりまして、したがいまして、地方経済のいわば基礎をなしております中小企業に対する金融というのはいわば本命と申してもいいものかと思います。金融の繁閑にかかわらず、その点は私ども中小企業金融というものをまず第一義に考えてやってきておりますので、現在大体中小企業金融に対する比率と申しますか、全体の企業金融のうち七割は中小企業金融に向けているわけでございまして、最近の金融引き締め、公営歩合の引き上げあるいは窓口指導というものは、確かにこの物価抑制という意味から非常に緊急なものだと存じますので、それをできるだけ忠実に守りながらも、その中で効率的な融資、本当に中小企業に対して必要最小限度のものは確保するけれども、本来の物価対策としての考え方もそこの中で守っていこうということで、いわば私ども知恵を出す正念場として努力いたしております。
  28. 長谷川寛雄

    長谷川参考人 手前ども銀行中小企業専門金融機関でございまして、ただいま関会長以下のお話を聞いておりますと、全部が中小企業に非常に力を入れておいでになる、私たちの出る幕がたいような感じでございます。  最近引き続いて公定歩合が引き上げられました。相当引き締め感が強く出てまいっております。業種によりましてはまだ余裕のある業種もあるようでございますが、長引くようでございましたら全般に中小企業金融は引き締まってくるんじゃないか。また先生が御心配のような倒産多発のケースも予想できるわけでございますので、私たち持てる資金を全部傾注しても中小企業金融に最善の努力を傾けたいと決意をいたしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  29. 小原鐵五郎

    小原参考人 お答え申し上げます。  私ども信用金庫といたしましては、その設立の目的といたしまして中小企業を育てるということが第一の目的でございますし、国民生活の安定を図るというのが二番目の趣旨でございます。そういう意味からいきまして、現在私どもに預金という形で集っておりますのが昨年の暮れで三十一兆五千億でございますが、これは全部中小企業者がお使いになる金でございます。そこで、先ほどお話のございました金融引き締めによりまして中小企業にもこれからだんだんと金融の道が若干骨が折れるような時代に来たんじゃないかということは感ぜられます。  そこで、われわれが扱っておりますのは、同じ中小企業の中でも大中小ございますが、その中の中小というのがわれわれの信用金庫が扱っておる階級でございます。これらの面でまじめに一生懸命やっておる中小企業は今回の引き締めとかいろいろな面で、金の面で破産、倒産のいくようなことが少なくなるようにできるだけそれを防ぐために私どもは努力してまいりたい、こういうふうに思っております。  ことに、こうなりますと、大きな銀行さんと言っちゃ失礼ですが、やはりどうしても下の方にめんどうを見ていただくことが少なくなるんじゃないかというふうにも考えます。また、政府系の金融機関にいたしましても、予算関係中小企業のために心配する金が減るんじゃないかということも懸念されます。そういう際でございますので、私どもは挙げていままじめな中小企業がつぶれないように一生懸命努力を重ねる所存でございますので、よろしくどうぞお願い申し上げます。
  30. 宮地正介

    ○宮地委員 中小企業の問題については地方銀行相互銀行信用金庫と、大体左の方にいく参考人の方の御発言の方が非常に積極的で迫力があり、中小企業を何とか守っていこうという熱意が感じられたのですが、右の方の参考人の方はどうもための御答弁のような感じがするわけです。特に私が心配する点は、都市銀行皆さんの場合、どうしても担保の能力とか保証人だとか、そういう点の非常にシビアな面、こういう面が大変にあるわけでございます。また最近言われていますように、こうした金融の引き締めあるいは日銀の窓口の規制強化、こういうものが強くなってまいりますと、特に都市銀行を中心といたしまして期限前に返済を求めて貸出枠の御苦労をしているようでございますが、それがやはり弱肉強食の原理で中以上のところに回されて非常に弱い中小零細の方々に対して切り捨て的なことが行われてはならない、こう思うわけでございます。特に、そういう点では小原参考人は大変いま誠意を持ってお答えいただいたわけでございます。せめて小原参考人程度の熱意と誠意を都市銀行皆さんに持っていただきたいし、そうした中小零細企業切り捨てになるような融資のあり方というのは断じてあってはなりませんし、どうか、そういう点もう一度関会長から銀行業界を代表して誠意ある積極的な答弁を求めたいと思います。
  31. 関正彦

    関参考人 お答えいたします。  ただいま宮地先生から、これまた大変厳しいお話でございました。確かに、御指摘のように昭和三十年代、四十年代のころは復興金融に続く後の繁栄、そして現在まで、高成長の終了という時点でございましたけれども、その過程におきまして、やはり私どもの対象としておりますお取引先というものはどうしても中小企業というよりむしろ大企業の方に目が向いておったということは事実でございますから、その事実に基づいた御感想というか、御感触はぬぐい去るのはなかなかむずかしいと考えております。しかし、これは何を申しましても数字をもって私ども姿勢を御理解いただくほかにどうも御説明のしようがございませんので、口だけで幾ら言ってみたところで御理解いただけないかと思いますので、あえて先ほど融資のウエートという問題を申し上げたわけでございますが、これは四十一年の三月における都市銀行の融資比率というものは二三・八%にとどまっておったことは事実でございます。それが五十年に至ります間に逐次上昇しております。その過程におきましては中小企業金融ももっと尊重すべきであるという世論もございましたし、またわれわれもその考え方についてもっともといいますか、理解をいたしまして、先ほど池浦参考人も言われましたように、日本経済の中における中小企業の果たす役割りというもの、これは何としても非常に大きいわけでございます。だれもこれについて異論を差しはさむものではございません。したがいまして、いわゆる融資の配分シェアというものもさらに四十年から今日五十四年の九月に至るまで努力に努力を重ねまして、現在、具体的に申しますと、九月期で四六・九%というのは融資のほぼ五〇%に近いところまでやっております。この努力というのは、結局、毎期毎期現在の貸し出しのシェアというものより、増加額の中におけるシェアが常に上昇しておるということの証左でございまして、この数字でもって御理解をいただく以外にはどうも、私も一生懸命やっておりますという抽象的なことを申し上げましても何の御理解にもならないと思います。  ただ、先ほどちょっと一言申し上げましたけれども、この間に中小企業に対する区分の変更もございましたし、ときに統計数字が異常に動いておる部分がございます。これは確かにそのとおりでございます。しかし、これはやはり国全体として中小企業というものの考え方を拡大をされるし、また拡大されるだけの成長もなさったということの裏づけでもございますので、この点は今後このウエートがさらに上がることによって、私のきょう申し上げましたことを裏づけたいという気持ちでいっぱいでございますので、口頭で誠意、熱意と申しますよりは今後の数字の推移をよく御監視いただきまして、そのときどきにまた御高見をちょうだいいたしますということでありますとありがたいと思っております。  以上でよろしゅうございますでしょうか。
  32. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、先ほど来からも関会長からお話ありましたように、日本経済の戦後の、今日の繁栄、発展を目立たない、本当に陰の中で支え、築いてきたのは、やはり多くの中小零細企業方々の大変な御努力というものがあったことは周知の認めるところでございます。しかし、そうした日の当たる、目立った融資あるいは税制上の大変な温かい特別措置、こういうものは、国としても租税特別措置法などの適用の中で、どうしても大企業が優遇されているきらいがあるわけです。こういう中で、いま会長がおっしゃったように、中小企業のこれからの繁栄というものは日本経済の発展に欠かせない重大な問題でございますので、こうした金融引き締めのひずみをそうしたところに出さないように、各会長さんはぜひ十二分な御努力をしていただきたいと思います。  そこで、もう一点だけお伺いしておきたいのは、いわゆる選別融資ですね。こうした、資金枠が逼迫してきますと、どうしても融資にセレクトが大変厳しくなされてまいります。特に、融資の貸出金利の問題あるいは融資額、条件、こうした問題で、ひずみが、目に見えない形で中小零細企業にどうしてもしわ寄せされてくるのがこうした金融引き締めを行ったときのいつも通る過程でございます。どうかそういう点のないように、特に選別融資が中小零細企業に大きなひずみとならないように、そういうことをしない、そういう点に十分心がけていただきたい、こう思うわけでございますが、これも銀行業界を代表しまして、それでは関会長吉國地方銀行会長に一言ずつお話を伺っておきたいと思います。
  33. 関正彦

    関参考人 お答えをいたします。  ただいまの御指摘の点は、私どもとしてもひしひしとして感じておることでございます。そういうことの起こりませんように努力を重ねておりますし、また本部の方からも現実に、審査部というところからの通牒であるとか指令であるとかいうものにつきましても、そういう面に関する通牒類は非常にふえております。そして、この厳しい窓口規制の中でございますけれども、私どものこれからの融資の運用上の配分などの比率につきましても、大企業が、特に原油の値上がりの影響をまともに受けまして、資金繰り上どうしても非常な資金を必要とする部分があることは確かでございますが、それはそれといたしまして、総体の資金の配分の中では、中小企業という部分に向けております資金量というものは、私の記憶では六〇%に達しておるということでございます。  なお、取引条件その他もございますけれども、これはそれぞれ金融機関としての使命とか、中小企業に対する融資ウエートのお高いところ、それから私どもの方と、これは取引条件につきまして、どうしてもきめの細かさにつきまして小回りがきかない、と言っては申しわけないのですけれども、そういう面があることは否定はいたしません。しかし、これも、担保問題にしても、これはあらゆる信用補完という制度が完備しております。こういうものに対しては行内で非常にいわゆるきめの細かい研修をいたしまして、その制度の利用につきましては日一日と向上しております。この点はひとつぜひ御認識をいただきたい、かように思うわけでございます。  お答えといたします。
  34. 吉國二郎

    吉國参考人 地方銀行と申しますと、そのフランチャイズと申しますか、その地域の中にはとんどの支店を持っているわけでございまして、そういう意味では、その地域の中小企業の内容については非常に細かくよく知っておるのが常でございます。そういう意味で、こういう時期になりますと、本当に枠が締められ、ずいぶん苦しい思いをいたしますけれども、その中で中小企業が本当に必要とするものをどうやって確保するか。少なくとも最小限度のものは確保しながら、中小企業がこの苦しい時期を切り抜けていく、この時期を切り抜けることがいわば今後のインフレに対する大きな防波堤にもなるわけでございます。その辺の理解を得ながら、しかし、やはり中小企業一つ一つ立場というものをよく十分に知り抜いて、努力をしていくということを今後も強くやっていく必要があると考えておりまして、これは六十三行みなそのつもりで努力をいたしております。
  35. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、住宅ローンの問題について少し伺っておきたいと思います。  さきの第四次の公定歩合のときは〇・六%の引き上げで、それに対しては、住宅ローンについては四月一日から新規のものについては〇・三%、八・二二が八・五二、こういうような形になっていく様相でございます。第五次の今回の値上げに対してさらに新規分の住宅ローンについても十分検討されておると思います。この第四次については、銀行関係皆さんの方では、たしか〇・四なり〇・五ぐらい新規引き上げをしてもらいたいということを大蔵省に要請していて、結果的には〇・三になったという経緯があるようでございます。今回の大幅な一・七五という引き上げは住宅ローンの足を大変引っ張る作用に連動するのではないか。また、むしろ今回政府としても租税特別措置法の中で土地税制などの緩和をして、宅地、土地の供給を進めようという配慮があったわけでございますが、こうした公定歩合の引き上げが今後住宅ローンに及ぼす影響について、現段階で結構でございますが、銀行としてはどのようなスケジュールといいますか、今後について対応をしていこうとされているのか。庶民のマイホームを進めるということ、また宅地供給をする住宅産業というものはやはり日本の景気を今後支えていく非常に大きな産業の一つでございますので、できるだけ圧縮した形で、住宅ローンというものはある意味では政治的にも抑制すべきではないか、私たちとしてはこういう感じがしているわけでございますが、この点について関会長さん、現在の状況について御説明いただければありがたいと思います。
  36. 関正彦

    関参考人 お答えを申し上げます。  ただいまの宮地先生の御質問でございますけれども、まず住宅ローンのいわゆる金利の問題が一つございました。これは、御存じと存じますけれども、公定歩合の引き上げに連動するというよりは、むしろ預金金利の動きと、それからあわせていわゆる長期プライムと称する長期金融の金利水準がございます。こういうものをあわせ勘案いたしまして、それによって適当なレートを適用することが妥当であるという金融制度調査会の一つの答申もございます。それはまことにもっともなことでございまして、それによって大体動いておるわけでございますが、第四次の公定歩合の引き上げに伴う預金金利あるいは長期プライムの引き上げの際には、確かにわれわれの希望のレートというものはそういうふうな意向も出た部分もございますけれども、政策的な御考慮、御配慮をされる御当局の意向というものにも十分私どもも協力をいたしましてあのような引き上げに落ちついたわけでございまして、これは上げ幅としては非常に住宅ローンの重要性を配慮した措置であったかと思うのでございます。  なお、それではこれから先どうなるかという問題になりますと、やはり同じような考え方をベースにいたしまして、近いうちに上げ幅という問題につきましても結論を出すわけでございますが、現時点においては、私の口から幾らになるであろうということはちょっと申し上げる時期ではございませんので、これはひとつ結果をごらんいただきまして御批判もいただきたいと思いますが、何と申しましても、住宅ローンの重要性というものはよくわかっておりますので、その点につきましては、われわれとしては十分考慮をいたします。  なお、今度はローンの金額の配分の問題でございますが、これもわれわれは非常に努力をいたしておりまして、五十四年の十二月の数字が、全国銀行ベースで申しますと、貸し出しに占める比率は九・三%ということになっておりまして、十年ほど前の四十四年三月がわずかに〇・七%であったということから考えますと、格段の進歩と御評価いただきたいのでございます。なお、十月から十二月までの間の限界の増加額を見ましても、増加額の中における比率は現在のシェア以上に増加率は高くて一三・六に上っておるわけでございます。  また、私ども銀行の方の住宅ローンに対します取り扱いは、実は審査部の方の所管ではなくて、業務部というところに預けております。なお、この枠につきましては、支店の枠として措置することなく、本部として全体の枠として勘案しておりまして、枠が足りないからおまえのところは住宅金融をしてはいけないというような管理方法は現在とっておらないわけでございますが、これにつきましてもひとつ御理解をいただきたい、かように思います。
  37. 宮地正介

    ○宮地委員 特にこの枠の問題については、今回の日銀の貸出枠のしぼりですね、窓口指導というものの影響が一段と出てくると思うのです。  そこで、最近、これは三菱銀行さんと日本生命ですか、いわゆる生保との提携によって実質的な枠を拡大して住宅供給に資していこう、こうした新手の住宅ローン方式といいますか、銀行枠の実質的な拡大を目指したものが検討されているようでございますが、こういう点については、銀行協会としては今後こうした一つの新手の方式をどんどん採用していくという考えがおありなのかどうか、この点についてちょっとお伺いしておきたいと思います。
  38. 関正彦

    関参考人 お答え申し上げます。  ただいまお話のございました生命保険との提携の方式、これは確かに非常に評価すべき方向であろうと思います。われわれ金融界におきましては、なかなか新しいアイデアというものを出しにくい業界でございますけれども、三菱銀行さんの御措置については私は敬服いたしておりますし、われわれといたしましても、親密な生命保険あるいはその他の金融機関との提携を通じまして、住宅ローンというものの円滑な取り扱いにはさらに力を向けていくつもりでございますし、現在、すでに当局のお許しも得まして住宅抵当証書という制度をとっております。われわれのところでお預かりいたしました住宅ローンの資金の負担というものを、さらに住宅抵当証書という形にして他の金融機関にお譲りをいたしまして、それを新たなる貸し出しファンドに向けるということは、すでに都市銀行の中では相当普及したやり方であるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  39. 宮地正介

    ○宮地委員 この住宅ローンの問題については、庶民のマイホームに非常に大きな影響が出るだけに、政策的にもできるだけ圧縮をしていくべきではないかという気持ちを私は持っておるわけでございます。今回の長期プライムあるいは公定歩合の引き上げによって預貯金の金利も恐らくこれから上がってくると思いますが、いままでの八・二二%が九%台に乗ってまいりますと、たとえば一千万円二十年間返済という場合、毎月二千五百円、ボーナス時には一万五千円、年間にしますと約六万円金利だけで負担がアップする。これが二十年になりますと百二十万円。今回の総理府のサラリーマン家庭の貯蓄の実態などの報告を見てみますと、平均四百万円程度の貯蓄をしていると言われておりますけれども、その反面、住宅ローンなどの負債によってほとんど借金で家計を賄っている、そういう実態がすでに発表になっておるわけですね。ですから、今回の公定歩合の引き上げから長期プライムの引き上げ、預貯金金利の改定などの連動に伴って住宅ローンの金利が引き上げられるということは、国民生活にとっても大変に厳しい試練に立たされるわけでございますし、また、これから日本の景気を浮揚させていくという観点から見ましても、住宅産業というものは非常に重要な位置を占めておるわけです。ですから、私はそういう面では、住宅ローンの金利の取り扱いというものは慎重かつ政策的な配慮が十分行われてもいいのではないかという感じを持っておるわけでございます。そうした政策的な面は大蔵省としても今後検討されるでありましょうし、また大蔵省に私たちからも強く要請をしていきたいと思いますが、何といいましても受けざらの銀行当局皆様方理解なくしてはこうした問題の解決はできないわけでございますので、そういう点の御配慮、御理解を強く要請いたしまして、限られた時間が参りましたので、私の質問を終わりにしたいと思います。  本日は、大変ありがとうございました。
  40. 増岡博之

    増岡委員長 渡辺貢君。
  41. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 参考人皆さんには、きょうは早朝から大変御苦労さまでございます。幾つかの点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほどからの論議でいろいろの問題が解明されてきていると考えますが、昨年の九月期の企業の決算を見ますと、いわゆる大企業の決算は昭和四十九年以来最高というふうに出されております。いろいろ減量経営など、大変な御努力があったということを伺っておるわけでございますけれども、それに比べて金融機関の決算は、軒並み、前三月期に比べて、経常利益、当期利益とも六〇%あるいは七〇%台というきわめて低率な決算になっているわけです。その主要な原因として国債評価損が大きく出されているというふうにも伺っているわけでございますけれども、その点について関会長さんからお答えをいただきたいと思います。
  42. 関正彦

    関参考人 お答えをいたします。  確かに、御指摘のとおり、昨年の九月期の決算は大変苦しい決算でございました。これは先ほど来堀先生お話にもございましたように、相当の部分がやはり保有国債の値下がりを償却することによって起こった部分もございます。  なお、公定歩合というものの上昇の過程におきましては、貸し出しの金利も上昇いたしますけれども、預金の金利もほとんど期を同じゅうして上がるわけでございます。ただ、貸出金利が浸透するタイミングと預金金利が上がってまいりますタイミングというのは、どうしても預金金利の方が先でございまして、いわゆるはさみ打ちの形になる部分も確かにあったわけでございます。     〔委員長退席、稲村(利)委員長代理着席〕 これは、しかし、現在の物価抑制の見地からとられます金利の政策というものの妥当性をわれわれは十分承知いたしております。この辺につきましては、何とか歯を食いしばって耐えていかなければならないものだと思いますし、今次の四次、五次という公定歩合の引き上げにつきましても、同じような現象がなお続いていくものと覚悟をいたしております。それでございますので、ごらんのとおり他の産業に比べましていささか傾向の変わりました決算が出ました事情はそういうところにあるわけでございまして、一つにはやはり先ほど申しました、この企業の業況回復のための公共投資の原資をわれわれは血の出る思いで引き受けたわけでございますので、それがちょうどこういうところに対照的にあらわれてしまったという感じを私は個人的に持っております。決してこれは間違いではないと思うのでありますが、これは社会的責任と申しますか、日本の経済全体の運営の上に財政執行の果たす責任と、それに対しましてわれわれがどの程度御協力できるかという一つのあの時期の現象として出たわけでございますが、何と申しましても、やはり国債に関しましては、この評価損を生ずるような価格の変動というようなことは国債の管理政策のいかんによりましては相当防げるわけでございますので、こういう点については引き続き当局の御措置、あるいはそれに加えての要望を続けるつもりでございます。  ただ、銀行といたしまして、それではただ外部的な要因だけで決算が苦しくなるのだということで済むわけでございません。あらゆる努力をやはり経営努力というものに注がねばならぬわけでございますが、経費、人件費であるとか物件費であるとかいうふうな部面につきましても、これは私のところでもやっておりますが、どこの銀行さんでもやはり効率に関する特別の組織をほとんど持っていらっしゃいまして、この面については従来はルーズであったと思いませんけれども、さらに一般企業の血の出るような減量経営をなさっている過程においてこれに呼応した工夫を重ねておりまして、私どものところにおきましても、毎期毎期やはり物件費につきましては相当の工夫の跡が如実に出ておることは間違いのないところでございまして、その金額は総体の決算の中に占めるウエートから申しますと、なかなか目に見えないかもしれませんが、このような努力は続けております。  そして、ひとつ、ぜひともここでお聞き取りいただきたいことは、欧米先進諸国の金融機関としての預金と貸し金のいわゆる利ざやと称するものがございますが、この利ざやにつきましては、われわれ日本金融機関は世界でも最高のレベルにまでこの利ざやを詰めた経営をしてこの経営を成り立たしておるという事実がございますので、ぜひひとつ御理解をいただきたい、かように存じます。
  43. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 かなり外的な要因が強いというお話でございますけれども都市銀行においてもそうでございますから、中小の金融機関としてとりわけ地域性も持っている相銀や信用金庫の場合にはなお大変だというふうに考えます。確かに、金融機関は社会的な責任あるいは公共性を持っておりますし、そういう中で国債の大量発行の相当部分を受け持っているわけです。     〔稲村(利)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、この社会的な公共的な責任というのは、国に対してもそういう一面ではシ団としての引き受けをするでございましょうけれども、同時に、前提になるのは預金者の保護であり、あるいは金融機関の機能として、資金がそれぞれ努力をされている企業あるいは消費者に円滑に配分されるといいましょうか、そういう機能、役割りがあると思うのです。そうなりますと、決算の上で外的な要因、圧迫感があってマイナスになってくる。同時に、一方ではそうした預金者保護の立場からも、あるいは預金をしてぜひお金を借りたいという各企業中小企業立場から見ると、二律背皮といいましょうか、矛盾が生じてくるのではないか、こういうふうに考えられるわけです。そういう点で、とりわけ地域で大変苦労していらっしゃる地銀、相銀、信金の代表皆さんに一言ずつ、ひとつその点のお考え方を承りたいと思います。
  44. 吉國二郎

    吉國参考人 ただいま御質問がございました最近の決算のふるわない点でございますけれども、確かに国債評価損という問題ももちろん大きな問題でございますが、同時に利ざやが非常に縮小しているということも事実でございます。四十八年のピークに地方銀行では預貸利ざやが一・七、現在が〇・三でございます。つまり、ある意味では日本企業がこの五年間に第一次オイルショックから立ち直りました裏にはいろいろな要素がございますけれども、たとえば為替が高くなって原材料が安くなったとか、いろいろ理由がございますけれども、その中の一つには金融負担が減ったという問題が大きくあるわけでございます。そういう意味では、さっきの堀委員お話ではございませんが、金融機関が犠牲になって企業の回復ができている面もあると思います。二重の意味で、一つ国債を持たされて、それによって公的な資金が散布されたという点と、それから貸付金利が非常に下がって金融機関の利ざやを圧迫しながら、一面においては企業の内容をよくした、こういうことがございます。そういう意味では、金融機関としてはいま考えようによっては利益は出しておりますけれども、利益は四十八年からほとんど横ばいみたいなものでございまして、ほかの企業がぐっとふえているのに比べれば、相対的には非常に不振だということだと思いますが、こういう時期に金融機関がそういう点で全体の経済に寄与するということは金融機関の本来の使命だと思いますので、いま全銀協会長が言われましたように、金融機関独自の努力はもちろん極限までやってまいる必要はございますけれども、こういう客観的条件が耐え得るところまではやはり私ども耐えていかなければならぬ。  しかし、いま御質問の御趣旨は、恐らく国債を余り引き受け過ぎていると、クラウディングアウトではございませんが、中小企業に貸す分が減りはしないか。こういう問題があると思いますので、その辺は、私どもも本来国会のカで国債を大いに減らしていただいて、そしてバランスのとれた運営をしていただきたいというふうに思うわけでございます。
  45. 長谷川寛雄

    長谷川参考人 ただいまの御質問でございますが、去年の九月期が最低じゃないか、この三月期は大分回復いたしております。やっと明るみが差してきたような感じがいたしております。しかし、このたび公定歩合が二回引き上がりまして、大企業方面はプライムレートについて非常に御理解があるわけでございますが、中小企業段階はなかなか金利の引き上げを御理解いただけません。私たちは泣く泣く低い金利でおつき合いさせていただいております。身を削るような思いがいたしております。どうぞよろしくお願いいたします。
  46. 小原鐵五郎

    小原参考人 小原でございます。  お答えいたします。  ただいまお尋ねの問題でございまするが、私ども信用金庫といたしましては、この三月期決算の見込みが、いろいろな要因からかなり減益になるというふうにも思っておるわけでございます。  そこで、最近の利ざや問題、ただいま長谷川さんからもいろいろお話がございましたけれども中小企業人たちにわれわれは取引しておりますので、たびたび公定歩合が引き上げになり、預金金利が引き上げになります。なりますけれども、それに対応して、先ほどお話のありましたように、おいそれと貸付金利を上げるというわけにもいかない事情がいろいろございます。現在われわれの方で、たとえ〇・〇一でも二でも利ざやがあれば結構ですけれども、金庫によっては逆ざやというふうなこともあります。それはどちらかというと、いろいろと金融機関競争というものもございますよ、競争原理もございますが、逆ざやの面もかなりございます。しからば逆ざやでどうしてやっていくかといいますと、われわれの信用金庫としましても、長年にわたって金庫、金庫が一生懸命積立金をふやすとか、それから償却を一生懸命やるとかいたしまして、利息の出ない、配当金の必要のないただの金が若干蓄積がございますので、その運用益によって剰余金を出しているというのが現状でございまして、収益の面は非常に減ってまいったということだけは御報告を申し上げておきます。  以上でございます。
  47. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 それぞれ大変な御努力をされていらっしゃると思うのですけれども、ぜひ預金者などの期待にこたえられるように一層の御努力をいただきたいと思います。  先ほどから決算上で問題になっております銀行の経理基準の一部改正という通達が出ているわけですけれども、私はこの通達を見まして、なるほどこれが通達なのかというふうに改めて感じたのですが、「昭和五十五年三月期から実施することとしたから、了知されたい。」終わりの方には「今回の改正」云々、「継続性の原則を尊重し、みだりにこれを変更することのないよう念のため申し添える。」こういう通達なんですね。なぜ評価方法を変えたのかという十分な分析といいましょうか、理論づけは行われていない。大変失礼ですけれども、地銀の吉國会長さんなど、ぱっとこの通達の真意をはかられて地銀の中で一番初めに原価法を採用されたというふうに聞いているわけなんですが、しかし、それぞれ質問に対するお話がございましたけれども評価方法についても決算のあり方についてもかなりの違いがあるのではないだろうかというふうに思います。それだけに、こうした通達が出される前提、これに至るやはりコンセンサスなどが今後必要ではないだろうかというふうに考えておりますので、こういう問題についてはひとつ協会代表皆さん、積極的な大蔵省に対する御見解を十分に反映させていただく必要があるのじゃないかというふうに考えるわけです。これは要望になったと思うのですが。  それから、長銀の興銀さん、池浦さんにちょっとお尋ねをいたしたいと思うのですが、国債の今後の発行の中で、大体金利も八・五あるいは八・六というふうに言われております。そうしますと、興銀などが発行しておりますいわゆる金融債、金利の水準はほぼ同じくらいになるのではないか、こんなことが新聞でも報道されておるわけですが、そうなると、国債とも競合するでしょうし、資金の需要は依然として後を絶ちません。一つの問題が起こるのではないかということが一つ。  もう一つは、いろいろの資料を見ますと、興銀の融資先の中にはいわゆる欠損会社、七七年の決算の資料を見させていただいたのですけれども、ほぼ内部留保と同じ額ぐらいの欠損会社への貸し出し残が残っているというふうな資料を最近見ました。あるいは無配会社への貸し出しが多い。これは、戦後の資本主義の発展の過程の中で興銀の果たした役割りもあろうかと思うのですが、こういう厳しいときだけに、かなりきちっとした見直しを両面からしていく必要があろうかというふうに考えます。そういう点で、金融債の問題と後者の問題について、簡単で結構ですけれども、ひとつ。
  48. 池浦喜三郎

    池浦参考人 お答えいたします。  まず、国債金融債との条件といいますか、採算と申しますか、この点につきましてお答えいたしたいと思いますが、銀行国債をどういう資金で保有しているかということは、なかなか仕分けがむずかしい問題なんであります。ただ、常識的に考えますと、五年の利付債を出しましたものは、これは長期の貸し出しに回します。短期の金融も、ある程度、長期の金融の効率といいますか、短期資金の融資もあるわけであります。これは取引先からいただいております——私ども一般の方から預金を預かれないようになっております、取引先の預金を、そういう短期資金を短期貸しに充てる。これはレート関係でそう考えた方がいいのじゃないか。そういたしますと、国債は割引債の一部、つまり長期貸しに回しました割引債の一部と自己資金で持っておるというような形に考えるのがまあ常識的ではないかと思っておるわけでございます。  御存じのように、割引債は預金じゃないわけでございますが、条件につきましては一年定期というものを横にらみにして、御当局の御指導も伺いながら一般の金利の水準ということで設定いたしておるわけであります。最近のことで、定期性の預金がかなり上がります。割引債もそういう意味で上がるわけでございますが、それほどに国債が上がりにくい、条件がよくならないというような形になりますと、採算が悪くなるということでございまして、私どもいろいろ計算してみますと、六・一国債というのは非常にレートが低いわけなんでございますけれども、その当時全体に金利水準が低うございましたから、あのころはまあ何とか形はついていたのじゃないかと思うわけでございます。決していい投資物件でもないわけなんです。これから、最近の情勢からしますと、ますますこれは採算のよくないものになるということは間違いないと思います。  それから融資内容が悪くなっているのじゃないかという御指摘でございます。御理解のあるお言葉をいただきました。私ども、もちろん無配であるとか欠損というようなものは、信用調査とか企業の将来の発展性というようなことで大きなあれではございます。しかしながら、融資をしておりますゆえに、欠損になったり無配になったというようなこともあるわけでございますが、しかし、これは企業でございますのでいろいろ浮沈もございますし、企業の社会的な価値、また企業としての生命力というようなものも検討いたしまして、その企業の生命を維持させるものは積極的にそれを援助していくというような形で臨んでおるわけでございます。  先生のおっしゃったほど余り内容は悪くございません。これは何でしたら大蔵省の方へ、定期的にいろいろ検査をいたしておりますので……。普通ジャーナリズムなどでいろいろ欠損会社、無配会社を検討しておられますけれども、それほどあれでございませんから、どうぞ。
  49. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 それなら結構ですが、人員の派遣も一勧に次いで多いということで、一層の御努力をいただきたいと思います。  時間がないので、最後に二つだけお尋ねしたいと思うのですが、最近新聞を見ますと、預金の獲得のための過当競争が激しいということがいろいろ報道されております。都銀の中でも、創立百周廣とかあるいは新社屋完成記念とか、そういうこともございますし、何とかプラン運動、こういうふうなことが言われておりますが、これは皆さんの内部でも自粛しようという御見解があったというふうに聞いております。当然こうなると、ややもすると、私ども資料を幾つか持っておりますけれども、期末における預金の粉飾なども出かねませんし、あるいは労働者に対する無理な労働強化が行われているという事例もございます。この点についてひとつ吉國さんから。  それからもう一つは、先ほども問題になりましたけれども、大口融資規制の問題です。相銀、信金の場合には法的な規制がすでにございまして、十年間余り、いろいろの努力を法的な規制の中でされているというふうに思います。  ただ、私は考えるのですが、法的な規制があった、通達があったからこれをやるということではなくて、金融機関本来の性格あるいは目的、役割りからいっても、やはりみずからの努力、限界は設けてやらなければならないのではないだろうか、こういうふうに考えております。そういう点で、三井の関さん、一言簡単に御見解を承りたいと思います。
  50. 関正彦

    関参考人 お答えをいたします。最後の方の御質問お答えをいたしてよろしゅうございますね。  先生御指摘のとおり、大口融資規制の精神といいますものは、銀行の貸し出し内容の健全性というものを守るために、偏って一つの先に融資を集中させるということは金融機関の経営上最も戒むべきことでございます。これは私どもは、通達があろうが、法律があろうがなかろうが、もう念頭に置いて離れない一事でございます。  むしろ、極端なことを申しますと、私ども銀行のかつての歴史の中では、貸し出しどころか預金も余り大口に集めることは、金融機関の経営として、資金繰り上極端なところに偏るということについて戒めたというようなことまであるわけでございまして、これはやはり私どもとしてはもうお話のとおりでございます。  したがいまして、われわれが、残念でございますけれども、この三月にどうしても守り切れなかった部分の貸し出しにつきましても、基準の規制のスタートのときは、実は自己資本のたしか七八%オーバーしておりますが、それ以前の時期におきましてもっとオーバーしていたものを、あらゆる努力を傾けることと、それから貸出先の協力を得まして縮めておる過程においての局長通達でございます。ですから、もう当然そのことにつきましては、われわれは以前からこの努力は続けておりまして、ただ、いまここで数字を、何年何月からどうだということを申し上げられませんのが残念でございますが、これは間違いのない事実であります。  私は実は若いころに審査の課長を務めておりましたときに、これは一取引先というよりはむしろ業種に対してでも、総貸出額のウエート配分が余りにも偏っておるのではないかというようなことについても、上司に対しまして意見の具申をした経歴の持ち主でございまして、この点はさらに工夫を重ねてあらゆる努力を傾けまして、きょうの本席におきましてのいろいろな御指摘につきまして、これを十分取り入れた経営をいたすつもりでございます。
  51. 吉國二郎

    吉國参考人 私には競争の問題でございましたね。  確かに、いま各方面で、何周年記念というようなことがよく耳に入るようでございます。しかし、それによって非常に世論の批判を受けるようなことをいたしておりますと、金融機関に対する信頼も薄れるということで、銀行協会自身が自粛の申し合わせをして通達もいたしておりまして、何周年記念とか頭取就任記念というような預金運動はやめる、あるいはまた、実質的な預金増加にならない単なる計数操作はやめるとかいうことは厳しくお互いに努力し合っておりまして、私ども銀行でも何遍かそれは通達もいたしております。  結局、期末に預金を上げてみても、実際に預金として活用できるものは平残でなければならないわけでございますから、これはじみちな毎日の努力によっているものでございまして、一時的に預金を上げるということをいたしますと、昔ずいぶん若労したものでございますが、一遍末残を上げてしまいますと、後、毎回そういうことをやらなくてはならないので、お互いにいわばそういう欠点はよくわかり合っておりますので、今後も自粛を続けてまいりたい、かように考えております。
  52. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 どうも参考人皆さん、御苦心さまでございました。ありがとうございました。終わりたいと思います。
  53. 増岡博之

    増岡委員長 竹本孫一君。
  54. 竹本孫一

    ○竹本委員 参考人皆さんには、きょうは大変御苦労さまでございます。また、平素は日本金融機関の責任者として大変な御苦労をいただいておりまして、心から敬意を表します。  さて、先ほど来同僚委員方々からいろいろと御意見が出まして、もうお尋ねする問題は余り残っていないように思いますが、そこで、私は、前段階の問題として、インフレの問題について一言意見を述べてみたいと思います。  公定歩合が九%に引き上げられましたのも、インフレをいかにして抑えるかという当局の苦心のあらわれの一つだと思います。しかし、油を中心とした海外の輸入インフレその他がありますときに、公定歩合を引き上げたことがどれだけインフレを抑圧するかということになりますと、非常に限界がある。まあ心理的な、あるいは政治的な意味において私は評価をしておりますけれども、インフレを抑えるということについては余り多くは期待できないと思っております。  そこで、インフレの問題について、実は私が外国に行った機会等に各国の政治家からいろいろ言われたことで、印象に残っていることを一、二言ってみたい。  まず第一に、ドイツの政治家が、竹本さん、インフレは最も悪い増税である、モースト・アンジャスト、こう言いました。御承知のように、去年の選挙のときには、一般消費税の問題が大変な論争を巻き起こしましたけれども、私も確かにインフレは一番悪質な増税だと思うのですね。一般消費税のうちの特に悪い消費税増強である、モースト・アンジャストであるということは正しいと思いますね。したがって、このインフレにいかに取り組むかということがわれわれの最大の課題であり、これは金融機関皆さんにもひとつ共同に努力をしていただいて、インフレ抑圧のためにお互いに努力をしなければならぬのではないかと思っておる。  それから第二番目に思い出しますのは、イギリスの政治家が言いましたけれども日本人はインフレに対して無知である、無関心であると言いました。それだけならまだいいんだけれども、もう一つ形容詞がつきまして、犯罪的に無知である、要するに、無知の程度が犯罪を構成するくらいに無知である、こう言うのですね。これも私は非常に当たっておると思いますね。いまごろになってインフレ、インフレと言って心配したようなことを言っているけれども、一体インフレはだれが起こしたか、責任者はだれであるかということをいま本当は真剣に論議しなければならぬので、私は、これは歴代政府の責任が大きいと思うのだが、これは犯罪的に無知であるために毎年毎年予算も二〇%、二五%伸ばしてきたでしょう。吉國さんも大蔵省の責任者だ。そういう意味においてこのインフレの責任ということを、後で言いますが、犯罪的な無知のために高度成長だとかなんとかうまいことを言いまして、とにかくやってきた。もちろん、野党にもそれをとめ得なかった点において大きな責任があると思っていますよ。しかし、いずれにしてもインフレほどこわいものはない。しかも、もう一つ思い出しますのは、これはスイスの人が言ったのですが、インフレを抑えるについて一番大事なことは何か、タイミングである、こう言った。これも大変肯綮に当たった御意見だと私は思うのですね。タイミングである。モースト・アンジャストなインフレが、いまの日本のようにもう二〇%以上卸売物価が上がるというようになって、それから改めてインフレとは何ぞや、インフレをどうするかというようなことを言ったのでは、これこそ少し遅過ぎると私は思うのですね。  しかし、遅いからといってやらぬわけにいかないし、やるべきことでありますから、やることについて大いに協力もしなければならぬと思いますが、いずれにいたしましても、これはタイミングが大切である、こういうふうに、これは外国の人の言ったことをただ御紹介をしたわけですけれども、しかし、おおむね外国の政治家というものはインフレに対して真剣に取り組んでおるし、そしてまたタイミングを誤らないように取り組んでおる。それに対して、日本はインフレに対する認識が甘過ぎたし、そしてまた取り組みも少し遅過ぎた、こう思うわけです。そういう意味から申しまして、インフレというものが一番こわいんだということが大前提で、これは金融機関皆さんにもひとつ共同の責任においてこれを抑えるようにやってもらいたいものであるというふうに思うわけであります。  国債が六・一国債を初めとして八十円だ、七十七円だというようなことになって大騒ぎになりまして、きょうは低価法だとか原価法だとかいうことになっておるわけですけれども、その前の問題が大きい問題だ。要するに、国債の増発、発行条件、さらに言うならば償還計画が一体どれだけはっきり立っておるかというと、ペーパープランだけで何もないでしょう。こういう状況を国民が批判し、そして国民が審判を下しておる、あるいは市民の抵抗、けさの新聞には市場の反乱とかいうようなことが書いてあったが、その市場の反乱、市場のレジスタンスというものが国債の暴落という形になってあらわれておる、こう思うのですね。しかし、これは市場の反乱程度で済んでおるからよろしいのだが、この上インフレがどんどん進んでいきますならば、それこそ市民の反乱になるということを私は憂えておるわけです。そういう立場に立ちまして、インフレ問題に対する認識が甘過ぎはしないか、取り組みが遅過ぎはしないか、取り組みが不徹底ではないかという点を私は心配しておる。  そこで、まず池浦参考人に、経済界の論客でもありますから、オピニオンリーダーとしてのあなたのこの問題に対する感想をひとつ伺いたい。
  55. 池浦喜三郎

    池浦参考人 お答えします。  インフレにつきましての先生の御意見につきましては、いま外国の方の御意見も教えていただいたわけでございますが、全く異論がございません。これはある意味で、いま犯罪的というお話がありましたが、インフレは一つのどろぼうといいますか盗賊といいますか、そういうものだというようなことが言われておるわけでございます。しかしながら、いろいろいま御指摘がございましたけれども、それにしましても世界の総体的なあれからいたしますと、国会政府の御当局、また経営者、また特に私は労働組合、そういった賃金問題とか物価問題とかいうことにつきましてインフレというものがどういうことで出てくるかということにつきまして、世界的なあれからしますと、かなり総体的にはうまくやってきているのじゃないかと思うわけでございます。しかしながら、最近のようなオイルの状況、また各国がインフレにつきまして非常に鈍感になっておるというようなことからの日本のいまの経済のありようからいたしまして、インフレの脅威といいますか、そういうものにさらされやすい形になっていると思いますので、従来にも増してこのインフレの問題、この芽を早く摘み取って、先生いまタイミングのお話がありましたが、これも非常に大きな要素だと思います。タイミングよく、またその本源をよくつかんで断固としてこれを摘み取る、その根を摘み取るということで、これは国民全体の努力と英知で処理していくということが、今後の経済の発展、国民生活の安定、また世界への日本一つの政治的な役割りを果たします上におきましても、インフレをうまく処理していくということが世界に対して貢献できるゆえんであるというふうに考えておるわけでございます。  ともかく大ぜいの国民がこういう狭いところで住んでおりますので、インフレというものをまともに受けますと一たまりもないような要素があると思います。そういう意味で、私ども金融機関としましても、また国民一員としてできるだけの努力をしてまいりたいと思うわけでございます。いろいろまたお教えを願いたいと思っております。
  56. 竹本孫一

    ○竹本委員 前回の場合も、石油インフレに取り組み方はある意味で成功したと思うのですね。しかし、取り組まなければならないような三十何%といったようなインフレ態勢に前回もなりましたが、私が言っているのは、そのこと自体が問題だということを言っているのですよ。池浦さん少し遠慮しておられるのじゃないかという気もしますが、やはり金融機関は、後で申しますが、インフレに対して一番敏感でなければならぬ。一番真剣でなければならぬ。そういう意味で、もちろん皆さんからは政府に対し、あるいはいまの政治に対して、そんなばかなことをやっているとインフレになるぞということをもっともっと強い声を出していただきたいと思うのです。きょうはそういう意味で申しますと、原価法低価法だと言いますけれども、ぼくは政党の評価というものも低価法でやっていくか原価法でやっていくか、政党のあるべき姿に対してそれは原価法評価する、しかしインフレを爆発させたような政党に対しては時価の安いところで評価してもらわぬと困りますよ。政党はこれからは時価で、安い低価法評価してもらうということをひとつきょうは要望しておきますから、覚えておいてもらいたい。  そこで、本論に入ります。きょうは、いまの低価法原価法の問題、これは先ほど来ずいぶん議論がありましたから、大口融資規制の方から一口入ります。  この問題につきまして二つ三つ言いたいこともあるのですが、私が銀行法の改正を言いましたのは、昭和四十九年十二月の予算委員会における代表質問であった。それを言いましたモーチブは何かということにつきまして、終始一貫して、インフレを抑える責任がお互いにあるんだということが私の発想の原点なんですよ。ついでに申してもいいですが、ドイツの国立銀行の総裁のフホッケさんが、インフレを抑える立場に立って、中央銀行総裁というものは、国民から何とたたかれようとも、ドイツのマルクの通貨価値の維持安定ということが最大の使命であって、そのためにはどんなひどい目に遭っても覚悟しなければならぬし、総裁になったときはそれを覚悟しておるということを言った。このことは佐々木さんにも森永君にも私は言いました。しかし、これは中央銀行だけの責任ではなくて、貸し出し競争云々が言われる金融界全体の問題として取り上げてもらいたいと思うのだけれども、とにかく通貨価値の維持安定、物価の安定ということは最大の責任である、そのことを忘れてもらっては困るということ。そして、銀行法が、今度の改正はまだ案を見ておりませんからわかりませんが、公共性とか社会性とかいうことが強調されるけれども、そのことの一番大事な点は、共同してインフレを抑えるんだ、先ほど来中小企業のための御苦心のほどもいろいろ承りましたが、その問題と、それ以前に、インフレを抑えるためには金融界は全体として共同責任があるんだということを本気で私はひとつ理解していただきたい。そのことを私の言う銀行法改正における社会性、公共性の第一条に掲げておるわけなんです。そういう意味で、銀行法改正は、何としてもインフレに対して、金融機関といえどもあるいは金融機関こそが大きな責任があるということが一つ。それからもう一つの問題は、資金の再配分の問題として、これは先ほど来中小企業に対する問題がいろいろ出ましたが、またそういう点での大きな責任を感じてもらわなければ困る。この二つの大きな柱を立ててもらいたいというのが私の銀行法改正に対する願いである。  そういう意味から、いま大口融資規制の問題についていろいろ議論が出ましたが、まず第一に、これは関さんにお伺いしたいのですけれども、あの当時、商社性悪説が言われたときに、商社だけが悪いのではない、銀行も共同正犯である、これに融資をして、あるいは無担保でどんどん貸してやっていった銀行も共同の責任があるということを私は主張いたしました。のみならず、銀行は、そういう特定商社の資金部であってはならぬのだということを言ったわけですが、それとともに、大体生産の半分、貿易の半分を担当している中小企業にも重大な役割りがあるんだから、中小企業にもそれに相当するだけの資金を回さなければ困るのだということをわれわれは強調いたしました。その当時における三井銀行さんの中小企業に対する貸し出しのシェアは平均点よりも低かったと思うのですね。先ほど関参考人からは、最近における中小企業への融資の努力とシェアの拡大についてお話がありましたが、全体としての金融機関の努力のほかに、三井銀行さんとしても相当あるいは相当以上の御努力があったと思うが、三井銀行に即して言えば、中小企業のためにシェアの拡大についてどういう努力をなさったか。これは数字を一々細かく聞こうとは思いませんが、その努力の経過をちょっと伺いたい。
  57. 関正彦

    関参考人 お答えをいたします。  ただいま竹本先生から、インフレ抑制が金融機関として何よりも大切に考えるべき事柄であるというお話、まことに同感と申しますか、われわれはその問題につきまして日々いろいろ努力を重ねておるつもりでございますけれども、なかなか思うようにいかないことについて残念に思っておる一人でございます。そういう気持ちをもちまして銀行経営の責任に当たっておるわけでございますけれども、御質問の、商社に対する私ども金融のあり方、これは極端に申しますと、商社があのときに非常に社会的な批判を受けたわけでございますが、それはあえて商社だけが悪いのではなくて、その商社にそういう行動をとらせるために必要な資金を供給した銀行にも責任があるのではないか、こういうふうな御意見でございます。  この点につきましては、商社行動というものの日本の経済の中において占める機能と申しますのは、これは、もちろん竹本先生も御評価いただいておると私は思っておりますが、そういう部分に対する融資というものは、終戦後今日までに至る日本経済の復興過程あるいは高度成長過程あるいは現在に至る過程においてそれぞれに意味のあった部分もずいぶんあると私は思っております。それで、それなりにそういうものに対する資金供給というのも、長い取引の関係あるいは社会的判断、銀行サイドの経営判断というものから御融資をしておることは事実でございまして、資金の使途、商社行動というものにつきましても、決して癒着しているわけではございませんけれども、それぞれにそのときにおきましては厳しい意見の交換をした上で融資機能を果たしておる、こういうふうに思っておりますので、御批判の点はよくわかりますけれども、そういう気持ちでやっておるということでございます。  それから、これは資金配分面の問題として、中小企業融資は三井銀行は他の銀行に比べて平均点以下ではないか。これは、御指摘のとおり、比率で見ましても残念ながら、まだ今日平均を上回っておるという状態になってないことは率直に私は認めます。しかし、従来の開き方を相当に縮めてきた努力はいたしたつもりでございまして、ここで数字を羅列する材料もちょっとございませんけれども、これは間違いのないことでございまして、中小企業といいますか、国民の大きな部分を占める、大企業のみならぬそういう方向に対する融資行動あるいは取引行動というものに対する私どもの経営努力というものはその都度中央銀行あるいは大蔵の監督当局の検査、考査を受けておるわけでございますが、そのときにおきましても、それぞれの時点において、まだ、完全にトップランクにあるという評価は受けておりませんが、努力の過程における評価はずっといただいておる。つい最近の、一月におきます日銀の考査におきましても、そういう部分についての御評価はいただいておるという自信を持って今後さらに、平均点以下ではないかというような御批判をいただかないような努力を傾けるつもりでおりますことをここで表明いたしておきます。
  58. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一つ関さんにお伺いしたい問題は、これは先ほど来お取り上げいただきました例の大口融資規制二〇%のクリアの問題です。八〇%近くか、あるいは一時は八〇%を超えたようですが、それを四〇%まで減らされたその過程における御努力は評価しなければならぬと思います。しかし、それにもかかわらず二〇%になっていたいということについていかなる責任を感じておられるかというような問題について先ほど来お話がありました。新聞で見ると、大蔵大臣が、クリアしない場合には他の銀行に対するバランスもあって、制裁措置考えるというようなことを言ったように書いておったのだから、よく読んでみますと、それは、制裁措置と言わなくて、適当なる措置ということになっておるようですね。私どもは実は初めから、大口融資規制を行政指導でやるということ、通達でやるということ自体にいかなる根拠があるかということで大いにその点を問題にいたしました。私は、やはり今度の法律じゃないが、法的根拠をもってやるべきことだ、こう思います。したがって、法的根拠のない行政指導が、仮にそれに違反した場合にも制裁措置に法的根拠がないわけですから、できる範囲には非常におのずから限界がある。そういう点で、大蔵大臣が、ゼスチュアは別として、とにかく適当な措置考えたいと言うこともそうでしょうけれども、何ができるかということになると大きく限界がある。しかし、三井銀行さんの立場から考えますと、大銀行立場として、制裁があるからないからとか、法的に規定があるとかないとかいう問題ではなくて、やはり自主的あるいは自発的に対応をとられて、国民が納得する形にまとめていかれるのが本当ではないか。先ほど来その向きの御答弁もあったようですが、念のためにもう一度、きわめて簡単に結論だけ御答弁を願えればありがたいと思います。
  59. 関正彦

    関参考人 お答えいたします。  まことに厳しい御指摘でございます。私も、そのような考え方は、企業の中で、経営責任を含めまして、あるいはそういう行政に対する姿勢といたしましても、何らかのことは考えなければ相たらぬという気持ちでおりますけれども、本日ただいま、このような措置をいたしますということは、残念でございますがまだ申し上げるまでに至っておりませんが、そのような気持ちは強く持っておることを申し上げます。
  60. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後になりましたけれども原価法低価法という問題でございますが、先ほど来いろいろと御指摘も、また御答弁もありました。私自身の結論を一口述べておきますが、私は、原価法によるか低価法によるかということは、結論としてはそれぞれ銀行の自主性に任せればよろしいという意見なんです。確かに、理論的に議論をいたしますと、原価法でやっていくのが正しいかと言えば、健全性の問題あるいは公債に対する歯どめの問題、いろいろ考えると、低価法でいく方がベターなような気もいたします。しかし、堀さんからも御指摘がありましたが、それでは低価法でいくということになればすべてが解決するかというと、そうでもない。さらにまた、原価法でいくということにつきましてもいろいろとやり方がありまして、私は、これは非常に言葉が悪いですけれども原価法でいっても低価法でいっても、途中でいろいろ操作があるものですから、結果においては大差ないという意見なんです。操作を全然やらないで、厳格にここだけは本当に銀行の実態をあらわすのだという約束ができるならば、それはそれで一つ方法ですよ。しかし、なべて、いろいろの経理をやる場合に、知能犯的操作とまでは申しませんけれども、いろいろな技術的な操作が細かくあるものですから、見たところではそのまま結論が出てくるはずはないのですね。でありますから、個別審査をやらなければわからないような経理のあり方である以上、いまそういうことですから、それを一方にきめつけてみるよりも、それこそ自主的な、各銀行金融機関の家庭の事情に対応できる形の結論を出していただけばよろしい。また、私としては、そのことによって自主的に問題を解決し対応されるということを通じて、よく言われる金融の自由化、マーケットの原理を入れるというそれぞれの自由化の方向へこれを契機にむしろ一歩前へ出てもらうというような大蔵省の行政であってほしい。そういう立場から、私はどちらの方が絶対的だということにはどうも旗を上げかねる。そういう意味で、それぞれの事情でひとつ自主的にやってもらいたいと思います。  しかし、せっかくこういう機会でございますから、時間もありませんので一口だけで結構ですが、原価法の方から一人、低価法の方から一人、原価法の方ではひとつ吉國さんにでもやってもらいますか、それから低価法の方は関さんからでも結論的なところを言っていただいて終わりにしたいと思うのです。
  61. 関正彦

    関参考人 非常にむずかしい御質問のように思います。先ほど小原さんからお話がありましたように、われわれが統一経理基準というものを経営の健全性を維持するための一つの大きな柱として考えてきておったことは事実でございます。そして、これを守り通していくという気持ちを非常に強く持っておることも事実であります。ただ、竹本先生の御指摘のように、原価法低価法という現象的な選択の岐路に迷うような現象が別のところから出てきているわけですから、これを根治しなければ、私がいま、低価法をとりますとこういうメリットがありまして、これの方がいいのですということを申し上げても、これは余り意味のないことではないか、実は最近の気持ちはそういうことでございます。ただしかし、過程から申しますと、企業健全性、特に短期金融というものを主体として運営をしていかねばならぬわれわれといたしましては、どうしても償還のときまで国債保有し得ることについてのめどがほとんど立たない場合には、何としても耐え得る限り低価法方式を堅持していきたいという気持ちはいまでも変わりはございません。  いろいろとその間において、会計的な処理という御示唆が堀先生からもございましたので、これもまた十分考え合わせまして今後の方針を決めるつもりでございますけれども、ただいまのところ、どうやらこの三月期は低価法をとりまして、過去の含み益というものを一部残念ながらこれにぶつけまして、そして発表いたしましても、金融機関の決算が赤字に転落するなどという、信用不安をも呼びかねないような結果にはならないで耐え得る、そういう決算を何とかこの時期にやり通したということは、自分たちとしましてはよくぞ乗り切ったものだ、しかし、これから先はさらに苦難の道が続くであろうということを十分頭に置いて、きょうの各先生方の御意見も改めて考え合わせまして、今後の方針を慎重にかつ綿密に、長期展望に立った根本的な姿勢でもって対応していきたい、このように思います。
  62. 吉國二郎

    吉國参考人 時間がございませんので簡単に申し上げますけれども、いま竹本委員が言われました原価法低価法の選択が一番いいのじゃないかということには、私は全く賛成でございます。これは企業会計原則の基本的立場でございますし、また、いまいろいろ議論がございましたように、原価法にいいところがあるとか、低価格法にいいところがあるとか、そういう主張はそれぞれの経営者が自分で具体的判断をして自主的責任をとるべき問題である。私は、経理基準が余りに縛り過ぎである、銀行行政が余り企業の中に入り過ぎることは反対であるというたてまえをとっておりますので、そういう意味からも今回の経理基準の改定には大賛成でございます。ただし、原価主義がいいと言っているのではございません。選択がいいということでございます。
  63. 竹本孫一

    ○竹本委員 どうもありがとうございました。終わります。
  64. 増岡博之

    増岡委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十九分散会