○島田
委員 どうもメンタルテストみたいなお話をして、
大蔵大臣でございますから、環境庁
長官に尋ねるようなことを聞いて、わからないと率直におっしゃるのは、これはやむを得ないことでございますが、実はこの運動が
相当大きく輪を広げつつございます。
昨年の十一月四日に朝日新聞が「天声人語」欄でこれを取り上げておりまして、新聞の記事が全国的に反響を起こしまして、その後加速的にこの運動が広がってまいりまして、また引き続いて同じ朝日が暮れの十二月二十八日になってこの運動に対する全国的な動きを報道し、「天声人語」でこの問題が取り上げられて今日に至っているわけであります。
そこで、現況をちょっとお話ししておきますと、ずいぶん大きな運動に発展しつつある、こう言ったって、じゃ、どれぐらいになっているのかということになるわけでありますが、その前にちょっと、パンフレットが
一つございますから、
大臣これをごらんください。きょう現在でありますけれ
ども、この「しれとこで夢を買いませんか」という運動は自然保護運動から起こっておりますから、一口百平方メートルで分譲をし、そこに建物を建てたり、あるいは極端に言えば別荘を建てたりできるという仕組みのものではもちろんございません。あくまでも環境保護の
立場からの運動であります。
経緯をちょっと申し上げますと、実はいま皆さんに参加を願っております土地というのは、かつて食糧増産の名のもとに戦後開拓者がここに入りまして、鋭意開拓し、食糧の増産に励んだところであります。しかし、歴史の推移とともに開拓者の人たちも、非常に山奥でありますし、国立公園の中にあるへんぴな場所でございますから、いわゆる近代的な動きについていけず、残念ながらほとんど大半、いやもう全部ここから離農せざるを得なくなった。その離農跡地が実はそのままに放置され、年々荒廃を続けているというところに、この町の人たちは非常に心配をいたしました。とりわけ前町長でありました藤谷豊さんという方は、この実態に対して深い憂慮をいたしまして、このままでほっておいたら大事な
国民の財産である国立公園の一部に荒れ地ができたり、あるいは乱開発が行われたり、また、せっかくの緑もどんどん枯渇をしていくというような
状態では、これはいかぬ、こういうふうに考えて、先ほど冒頭でお話ししましたイギリスの市民運動に着目をいたしまして発想したのがこの百平米運動であり、「しれとこで夢を買いませんか」というこのパンフレットになってあらわれたのであります。
現在は、読売新聞等のキャンペーン等も非常に助けになって、きょう現在では全国から七千三百三十八人の
方々にこの運動に御参加をいただいております。一口百平方メートルであります。百平米で実は
皆さん方に御協力をいただいております金額は八千円でありますが、現在七千六百三十万円という大変なお金がここに寄せられて、大事なわれわれの国立公園、知床をともに守りましょうという運動に発展をいたしました。
しかし、まだまだ目的が達成されているわけではありませんで、第一次目標のまず八〇%にしかなっておりません。第一次目標が達成しましたら、ぜひ第二次目標を立てて、積極的にひとつ町が中心になって大事なこの資源を、自然を守っていこう。こういう運動はこれから先も長く続いていくわけでございますが、せっかくここにこれだけのたくさんの
皆さん方が、しかも八千万に達しようとするような大きな浄財をお寄せになっていただいたということをむだにしてはいかぬ、こういうことの二つのねらいを持って、実はこれを何とか財産としてしっかり保有すると同時に、新たに、離農跡地がまだ残っておりますものも皆さんの御協力をいただいてこれを買い入れて、ここに木を植え、あるいは手入れをして緑をひとつしっかりつくり上げていこう、こういうふうにも考えているわけであります。
ところで、そこで考えられましたのは、これを単なる町の財産というだけにしておくわけにはまいらない。言ってみれば、全国と言いましても、北海道が一番多いわけですけれ
ども、ちなみに他の府県の御協力をいただいております参加者の皆さんの数を申し上げますと、大どころでは、東京都内では千三百十二人の方が参加されている。次いで神奈川、大阪、兵庫、千葉、埼玉、そして九州の皆さん、中には沖繩の方も参加をされていますが、外国からの参加もあって、イギリスの方が一人、ベルギーから二人の方も、ぜひこの百平米運動に私も参加させてください、こういうことで参加がなされております。
そしてまた、最近では、傾向として学校の子供たちが、小学校や中学校や高校の人たち、こういう人たちがグループで参加をする。また、大学ではサークルをつくりまして、これに積極的に参加をして自然保護をやろうではないか、こういうふうに、実は力強く協力がなされているわけであります。年齢的にも、お年寄りの
方々から、いま申し上げました小学校の子供、また中には大学の卒業記念にとか、また結婚記念にとか、就職の記念にとかいったような名目ででも、また私の誕生の記念のためにもと、いろいろな目的や
趣旨をもってこの運動に御参加がいただけるという状況に実は相なっています。これは単に市民だけではなくて、中には、大
企業と思われるような人も、社内で寄り寄りグループをつくって、こんないいことであるならば、われわれは毎日毎日コンクリートの中で生活しているんだから、大事な緑に直接触れることはできなくても、参加をしているということによって、われわれも緑と毎日接触ができるというそういう夢を持とうではないかという考えで、こういう
方々も御参加いただいている実態にあるわけであります。
そこで、これほどの大事な、しかも多くの
皆さん方の浄財を含めた御意思というもの、これをむだにしてはいけない、こういう
立場から、何とかこれに対して今後の仕事も、たとえば開拓跡地のなお残っている部分の買い上げであるとか、あるいは植林とか、それから緑をつくる仕事だとか、こういうことをやっていくための費用はもちろんこの中から使わしていただくわけでありますけれ
ども、だからといってこれを無益にするわけにはまいりません。したがって、この際何らかの形で、皆さんのものでありますと同時に、これは永久にだれも個人的には手をつけることができないようにということの方法をとりたい、こう考えた中から出てまいりましたのが公益信託という問題であります。
ところが、いろいろ調べてみますと、信託法に基づきます公益信託というのには
一つの制約があるということが言われておりまして、事実いろいろ調べてみますと、どうも法律的な解釈と実態とが実は必ずしも整合していないという面があるということがわかりました。したがって、この際、信託法に対します
一つの法解釈と、それから実態をスムーズに進めていくために必要な
省庁におきます手だてというものを講じていただかないと、せっかくいままで申し上げてまいりましたこうした大事な市民運動、そして緑と自然の環境を守っていくということの目的が達せられなくなるというおそれも十分ありますので、この際、ひとつぜひこの公益信託がスムーズに実現できるような御配慮が欲しいというのが現地の声であり、市民運動を進めてまいりましたリーダーの諸君の言い分なんであります。したがって、いろいろと関係
省庁とも接触をし、この法解釈や運用をめぐって議論を私自身させてもらってまいりましたが、この際、大蔵
委員会において
大臣からひとつ最終的に御判断を仰ぎ、必要な手だてと措置をとっていただかなければならないということで、きょう実はこの問題を取り上げた、こういうことでございます。
ところで、信託法によりますと、実はその第一条に、読み上げるまでもございませんが、定義がございまして、「本法二於テ信託ト称スルハ財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的二従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ」と、こうあるわけであります。この法律はずいぶん古いと
見えまして、かたかなになっておりますが、この信託法の第一条の定義をめぐります問題でも、各省といいますか、所管
省庁におきます
意見というのは必ずしも一致していないのではないかという印象を私は持っているのであります。つまり、いま私が申し上げますのは、お金の問題ではなくて、いままで参加していただきましたこの大変な面積と、参加の
皆さん方の御意思を信託することによって、今後ともこれを維持し、発展させていきたいというのがねらいでありまして、つまり、町がいまこれを
皆さん方の御協力で取得をしているわけでありますが、これがそのまま財産として信託できる道が欲しいというのがねらいであります。
そういう面で、この第一条の定義は財産権という問題に触れておりますが、ここで財産を信託することができるというふうに私は考えているのですが、この定義をめぐります大蔵当局の御見解をまず承りたいと思うのです。