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黒田参考人 全国鉱業市町村連合会の会長をいたしております
大牟田市長の
黒田でございます。
産炭地域振興施策につきまして、諸
先生方にはかねてからその
実態を十分御理解をいただきまして、今日まで積極的な御指導と御
配慮を賜っておりますことに対しまして、厚くお礼を申し上げたいと思います。
また、本日は、
石炭六法の中でも、まず
産炭地域振興臨時措置法が期限切れとなる時期に当たりまして、切実な
地域課題あるいは行政課題を持っております
産炭地市町村長の立場から発言する機会を与えていただきましたことに対して感謝を申し上げたいと思います。
私は、
石炭鉱業政策全般の中でも、本日は、
産炭地域振興臨時措置法の関係に限って
意見を申し上げたいと思います。
産振法は施行以来十八年を経過してまいりましたが、今日までの経過とその
現状の
実態を見てみますと、およそ次のような理解を持つことができるのではないかと思います。
まず、
産炭地振興施策の成果といたしましては、まず、閉山によります人口の急激な減少と
地域経済の低下による人口減も、
地域差はありますけれども、全般としては下げどまりをしたということでございます。
それから二番目といたしましては、
産業基盤整備が促進されまして、
企業誘致がある程度成果をおさめて、少なくとも全般的には工業
生産の伸びの率が逐次上昇しているということでございます。特に、これは六条
地域に顕著にあらわれております。
さらに、シビルミニマムとして道路等の公共施設が
整備されまして、
産業環境あるいは
生活環境としても相当の
改善がなされているということでございます。
こういう点は、
産炭地域振興施策が他の
地域開発施策に比較いたしまして、幅広く、しかも手厚く
実施されたということでありまして、そのプラスの評価は素直に認められるところでございまして、国会における諸
先生方あるいは関係各省の方々の御支援、御指導に感謝をいたしているところでございます。
しかしながら、
現状の
実態はどうかと言いますと、すでに
先生方も御承知のとおりでございまして、
産炭地域の疲弊と申しますか、
後遺症というものはいまなお現実に存在しているという事実でございます。
これは現象の面から申し上げますと、人口減は下げどまりはしたと言いますけれども、
地域住民の年齢構成は極度に老齢化を来しております。したがって、所得水準も他の
地域に比較いたしまして極度に低位にあります。これは
生活保護率等にも顕著にあらわれているわけでございます。さらに、
鉱害、
炭住あるいは危険
ボタ山というような、
地域イメージとして暗い現象が目に見える形で残っているということでございます。さらに、
企業誘致の成果はある程度得られたとは言いますものの、余りにも急激な
工場立地のために、
産業構造が
地域全体と調和を持っていないということでございます。たとえば、女子雇用型の
企業が偏在をしているということ、あるいは
企業が相互に相互性を発揮する、そういう土壌がつくられていないというようなことのために、
地域全体としての
経済力の支える力が弱いというような点であろうかと思います。こういう点につきましては、
実施計画が
地域ごとに作成されておりますけれども、
予算措置等の面からその
実施がおくれているということに起因するのではないかと思われるわけでございます。
さらに、他の一面からこの
現状を見てみますと、特に私どもの立場から見ました場合に、地方
財政という面から見てみますと、
財政力、これが極度に低下をいたしております。したがいまして、他の地方自治体と同様に、そしてまた幅広い福祉行政を初めとする行政
需要にこたえることができないという点でございまして、こういう点の立ちおくれというものを痛切に感じております。
これをここで数字の上で申してみますと、御承知と思いますけれども、九州の六条
地域の
市町村の
平均の
財政力指数の推移を申し上げてみますと、
昭和三十五年に〇・六二でございました。これが
昭和四十五年には〇・三一と低下をいたしまして、五十三年に至りまして〇・三三ということになっております。
全国平均がおおむね〇・六台で推移しているとの比較におきまして、非常にはっきりと
産炭地の特徴をあらわしているものと思います。
以上の点を総合いたしますと、住んでいる住民にとりましては、生きがいを感ずる、いわゆる喜びの少ない暗い町であるということと、このことが客観的にもきわめて活力に乏しい
地域となっているということが言えようかと思います。
それでは
産炭地域振興施策とはどういう形で行われたかという反省の中に立ってみますと、いわゆる閉山による荒廃の中からの脱却の
施策というのがとられたということが言えるのではないかと思います。言いかえますれば、餓死寸前の状態にある者に対しまして、食糧を与えて命を取りとめさせるということではなかったかと思うわけでございます。これは確かにそれなりの成果はおさめております。しかしながら、曲がりなりにも自分自身の
努力によって一本立ちできる体力をつけるところまでは立ち至っていないというのが
現状ではないかというふうに思います。今後はまさにその体力をつくるという
施策が必要ではないかと思うわけでございます。
産炭地政策は、他の
地域振興策に比較して、先ほども申しましたとおりに非常に濃密であるということは事実でありますし、あるいは
政府の各省によりまして有機的な
協力体制の中で
実施されてまいりまして、また
財源措置としても、ほかとの相対的な見方をすれば、相当のものが
措置されておるわけでございます。
それなのに、なぜ十八年もの長期にわたってこのような
施策が講ぜられたにもかかわらず、曲がりなりにも一本立ちできる
地域体力というものを持つことができなかったかという点でございます。客観的にもおかしいではないかと思われますけれども、その理由は端的に申しますと、
産炭地政策というものが、閉山という一気に
地域の落ち込みを来した、その荒廃から脱却させる
政策そのものであったということではないかと思います。もちろん一九六〇年代の高度成長の時期に乗りおくれたということもありましょうし、オイルショックによる
経済全体の冷え込みの影響を受けたというタイミングのギャップもあろうかと思いますけれども、いずれにしましても、
産炭地振興施策が長期にわたり行われたにもかかわらず、それなりの成果を上げ得なかったという点は、やはり反省せざるを得ないと思うわけでございます。
したがって、今後は、いわゆる発展に向かわせるための体力づくりということが
政策の中に十分に取り入れられる必要があろうかと思います。これは
産炭地振興施策が、どちらかと言えば鉱工業の
振興に片寄り過ぎているという点にもあるのではないかと思われます。
地域全体が調和のある発展を遂げるためには、農業との調和あるいは
生活環境づくりということも当然に
配慮されなければならなかったのではないかというふうに考えるわけでございます。
産炭地のいわゆる疲弊の
現状は、
地域ごとに特性を持っていることも明らかとなってまいりました。したがって、今後の
産炭地施策としては、
地域ごとにその
実情を分析いたしまして、そのカルテに応じた処方せんをつくりまして、リハビリテーション的な体力づくり
施策が講ぜられることが必要であると思います。さらに、この計画自体が確実に
実施されるための
財政的な裏づけが明確になると同時に、年次計画に基づいたその実現のフォローがチェックされるような機関も必要ではなかろうかと思うわけでございます。
産炭地域振興のための
条件整備はすでに整ったわけでございます。先ほども申しますとおりに、道路その他についても
整備されたわけでございます。今後の
開発の可能性は確実に期待できるものと確信をいたします。今後は、従前の画一的な
施策から、より具体的な、そしてまた総合的なアフターケア
施策というものによりまして、
地域自体が自助
努力で立ち上がれる
条件づくりに御尽力をいただくよう
お願いをいたしたいと思うわけでございまして、いまこそその時期に来ていると思います。
全鉱連といたしましては、このような考え方に立ちまして、このたびの法律の期限切れに際しまして、ぜひ
延長をしていただくことを
お願いするのはもちろんでございますけれども、これからのさらに実効性を期するためには、より具体的な
改善策といたしまして、ただいまお手元に資料として要望書を差し上げておりますけれども、時間がございませんので、この点をごらんになっていただきたいと思うわけでございます。
最後に、重ねて
お願いをいたしますけれども、私どもは
政策への甘えというものを
お願いしているものではございません。現実の厳しさを素直に直視しながら、みずからの
努力で立ち上がっていく決意であります。しかしながら、
政策の力強いお力添えを
お願いしなければ、先ほど知事も申されたとおりに、国の力をかりなければ立ち上がれないという中でございますので、よろしく
お願い申し上げたいと思うわけでございます。