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1980-04-18 第91回国会 衆議院 商工委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十八日(金曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 塩川正十郎君    理事 中島源太郎君 理事 野田  毅君    理事 渡部 恒三君 理事 清水  勇君    理事 渡辺 三郎君 理事 近江巳記夫君    理事 神崎 敏雄君 理事 宮田 早苗君       天野 公義君    浦野 烋興君       越智 通雄君    大塚 雄司君       粕谷  茂君    辻  英雄君       橋口  隆君    原田昇左右君       深谷 隆司君    水平 豊彦君       粟山  明君    渡辺 秀央君       石野 久男君    後藤  茂君       上坂  昇君    渋沢 利久君       中村 重光君    山本 幸一君       木内 良明君    中川 嘉美君       森田 景一君    小林 政子君       安田 純治君    中井  洽君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐々木義武君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局取引部長 劒持 浩裕君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         通商産業政務次         官       梶山 静六君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業大臣官         房審議官    尾島  巖君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省貿易         局長      花岡 宗助君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁次長     古田 徳昌君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         中小企業庁長官 左近友三郎君  委員外出席者         大蔵省国際金融         局総務課長   宮本 一三君         農林水産省農蚕         園芸局肥料機械         課長      松居  努君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      山梨 晃一君         労働大臣官房参         事官      田代  裕君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      澄田  智君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ――――――――――――― 四月十八日  中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第八九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十八日  石油製品安定供給及び価格適正化に関する  陳情書(第一五三  号)  工業配置補助金制度の改善に関する陳情書  (第一五四号)  家庭用灯油流通確保等に関する陳情書  (第一五  五号)  エネルギー対策の推進に関する陳情書  (第一五六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 塩川正十郎

    塩川委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  これより質疑を行います。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、大臣がおくれているようですから、新エネルギーの問題について最初お尋ねしましょう。  この新エネルギー開発計画というのは遅々として進まない、さらにまた、計画倒れというものが非常にあるわけなんですが、私はこれからの新エネルギーとしては地域開発地域産業振興といったような面から、ローカルエネルギーというものに相当重点を置いて進めていかなければならないと思うのですが、その点に対する基本的かつ具体的な考え方についてお示しをいただきたいと思います。
  4. 森山信吾

    森山(信)政府委員 これからのエネルギー考えます場合に、従来の考え方相当大きな考え方転換をしていかなければならぬということは、基本的な考え方のベースになるわけでございまして、ただいま中村先生からお話のございましたローカルエネルギー等がまさにその考え方一つではなかろうかと思っておる次第でございます。  そこで、従来、石油に過度に依存しておりました日本エネルギー構造というものを、できるだけ多くのエネルギー源に分散をしていこうという基本的な課題の中で、いまのローカルエネルギーという問題をとらまえていくわけでございますが、具体的な項目といたしまして考えられますものは、たとえば太陽関係あるいは地熱関係あるいは水力関係等もございますし、いわゆる自然エネルギー的なものもございますし、それから廃棄物あるいは廃熱あるいはバイオマス等エネルギーというものを利用し得るエネルギーに変えていくというような考え方も出てまいるんではないかということでございます。  そこで、そういったものを総称いたしましてローカルエネルギー的なアプローチをしたいと思うわけでございますけれども、これはローカルエネルギーという違う次元での意見考えますと、地域に密着したエネルギー開発という考え方もございますので、これはエネルギーというものを身近にとらまえていくという観点からいたしますと、有意義なことではないかというふうに考えておりまして、ローカルエネルギーにつきましてはこれを強く推進するという考え方で今後取り組みをさせていただきたいと考えております。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 ローカルエネルギー開発を促進するということになってくると、これは地方自治体が開発を進めていく、あるいは小規模エネルギーの、たとえば電力の場合においてもそうなんですが、今度の五十五年度の予算で調査費をつけたりあるいは若干の補助金を出すといったようなことが考えられているようですが、もっと抜本的な考え方が必要になってくるんじゃないだろうか。御承知のとおり、現在の電気事業法、これによると、発電送電あるいは変電、配電、こういう形で、そういうシステムの中で九電力体制ということになっているわけですね。ところが、私は、それがまたローカルエネルギーあるいは地域小規模発電等をやっていく場合に、手かせ足かせということになってブレーキをかけるということになっていくと思う。だから、この際相当思い切ったバイパスをつくっていく必要がある、現在のシステムをひとつ改めていくことが必要ではないだろうか。地熱開発の問題にしても、電力会社がやる場合は問題じゃないのです。そうでない場合において、地熱発電をやると環境の問題ということもあり、その地域還元をしていくというようなことも必要であろうし、あるいはその地域に対して、地域住民の利益を図るために電力供給なんというものをしていく場合、従来の九電力の中の一つ電気事業者がこれをやるというようなことだけでなくて、もっと弾力的にやっていく必要があるんじゃないかというようなことなんですが、これは非常に重要な問題なんで、エネ庁長官が現在のシステムをひとつ改めましょうとかということはなかなか言えないんでしょうけれども、この際検討課題というようなことであってもよろしいんじゃないか。  それから、例の電発ですね。九電力というものはこの電発存在というものに対して、何というのか、余りおもしろくない存在であるというような、電発事業範囲を拡大していくということに抵抗すら持って、これをチェックしていくというような形がある。私は、もうそういう時代は去ったと思う。ですから、現在の電発が長い歴史の中で相当安い電力生産をして、そしてこれを九電力に対していわゆる売電という形の供給をやってきた。ところが、この電発に対しても、モデル的な一つ事業体ということによって、もっと事業範囲を拡大をさしていくというようなことがあってもいいんじゃないのか。御承知のとおり九つの電力会社というのは五十人とか六十人という役員を持っている。電発は現在七名ぐらいの役員だ。それをまた一名減らされるということさえ聞いているわけです。もちろんこれは発電だけなんです。これは一部送電もやっているようですけれども配電なんということもやっていない。人というものは配電段階において非常に多く要るというようなことになってくると、規模の面において違うけれども電発相当苦労をしながらコストの安い生産をやって、九電力に対してこの供給をやっている。そしてまた最近は、好む好まないは別として、代替エネルギー開発に乗り出そうということに対してもこれをチェックするという傾向すら見受けられる。私は、これに対して通産省は相当思い切ったシステム転換をやっていく、この電発を活用していくといったようなことがなされなければ、今日のエネルギー事情の中において旧態依然たる態度をもって気がねばかりしていくというようなことであっては、エネルギー問題の抜本的解決に結びつかないのではないかという感じがするわけです。この点に対しては長官答弁を求めることには若干の無理があると私は思うのですが、大臣も入られましたから、佐々木通産大臣からひとつお答えをいただきたい。途中でしたから、先に長官から答えていただいて、続いて大臣答弁を求めます。
  6. 森山信吾

    森山(信)政府委員 九電力体制電発関係につきましては、中村先生もうよく御承知のところでございますので、私からあえて云々することもないわけでございますけれども、基本的な考え方といたしまして、エネルギー安定供給という観点に立ちますと、スケールメリットということがこれまでのエネルギー政策で追求をされてきたわけでございまして、いわゆる九電力体制スケールメリットを追求しながら安定供給を図っていくという考え方があったわけでございますが、ただ、そこにメリットもございますしデメリットもあるという面もございますので、その調整的な機能あるいは補完的な機能を果たすべき一つ存在が必要とされるという考え方から電源開発株式会社ができてきたわけでございまして、そういうパターンをこれまで二十年以上にわたってとってまいったわけでございますが、御指摘のように電発存在価値はますます重要性を持っておる、こういった新しいエネルギー開発に取り組むという姿勢エネルギー構造を変えていくという姿勢の中で、九電力体制調整的な機能を果たすあるいは補完的な機能を果たすべき存在というものの存在価値がますます強まってきているのではないかという基本認識を私どもは持っているわけでございます。  逆に言いますと、ある意味電源開発株式会社一つ組織体といたしまして、それによって九電力体制に欠けておるような点についての調整を十分させていくという必要も出てきておるのではないか、こういう考え方を持っておるわけでございます。それが未来永劫にわたって九電力体制プラス電発体制がよろしいのかどうかについてはまた違った意見も出てこようかと思うわけでございますが、現段階においては私どもはそういう基本的な考え方を持っているわけでございます。
  7. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いま長官の申し上げたとおりだと思います。  私も、当時日発を解体して九電力に分割するその際に、ほとんど同時に電源開発促進法を通していまの電発をつくった一人でございます。当時の状況を思い起こしますと、九電力に分割した場合、大水力発電は数県にまたがる河川でございますから、恐らくこれを開発するのに非常に無理が出てくるのではないか、あるいは水利権の処理あるいは費用の配分等に関しても九電力会社相互にいろいろ大変な問題が起きてくるだろう、果たせるかな只見川の開発なんというときには東京電力と東北電力で大騒ぎしたことは御承知のとおりでございまして、そういう点を考えまして、いま言ったようなそういう大開発電源で九電力にまたがるような大きい問題は、むしろ新しい機構でということでつくったのが電源開発株式会社承知しています。  したがいまして、大規模発電に関してはほとんど電源開発が手がけまして、いままで目的どおりやってきたものと思います。と同時に、九電力関係の補完的な任務と申しますか、補強的な任務と申しますか、新エネルギー開発とか地域的な、公益的な役割りをどう果たすかとか、まだいろいろな問題があるわけでございますので、そういう意味電源開発株式会社任務といいますか、新しい任務はまだまだあるもの、むしろこれを強めていくべきじゃないかという感じを持っておる次第でございます。
  8. 中村重光

    中村(重)委員 前向きの答弁ではあるのですが、電発が補完的なものとして発足した、今日時代は大きく変わってきた、今日の時代において国策会社必要性はそれだけ重要性を増してきた、だからこの国策会社をもっと積極的に活用していくということでなければ、いつまでもこれが補完的なものであるという考え方から一歩も出ないということになってくると、これは時代の大きな流れに対応していくことができないということになってくると私は思う。発想の転換が強く要求されていることをこの際私は申し上げたいと思うのです。それと、工業技術院もお見えですが、工業技術院所管の問題としては、いま緊急なのは高効率タービン研究、これも私はけちをつけて、せっかく熱心にやっておられるのを、何をしているのだというようなことで批判をしようとは思いませんけれども、御承知のように大規模発電というのは熱効率は四〇%を割って三八%程度でしょう。高効率タービンということになってくると五五%の熱効率を上げることができるわけだ。だから、この点に対してはどうお考えになっておるのか、もっと積極的にこの研究が促進されないだろうか、隘路はどこにあるのかという点、いつごろになったらこれが実用段階に入っていくことになるのかということについてお答えをいただきたい。  それから、地熱発電の問題については、所管が別になるわけですけれども、先ほどちょっと触れましたが、地域開発それから地域産業振興といったような面、地域住民の福祉といったような点からしても、この際現在のシステムにとらわれないで、そこで電力供給といったようなものも必要になってくるであろうし、さらに熱水は地下に還元をしていく。砒素熱交換をすると公害は除去されることにもなるわけだから、そのお湯をハウス栽培等に使っていくことになってくると石油の節約にも大きく役立つことは言うまでもないわけですから、これらの点に対して弾力的に、そして実用に即するような体制の中で、これから積極的な開発を進めていくという必要があるのではないかと考えるのですが、これらの点についてそれぞれお答えをいただきます。
  9. 石坂誠一

    石坂政府委員 ただいま高効率ガスタービン、それから地熱の問題について御指摘があったわけでございます。  高効率ガスタービンでございますが、ただいまムーンライト計画の中でこれを取り上げております。当面、ガスタービン効率を上げるためには高温になればなるほどよろしいわけでございますが、現在技術ということも考えて、千三百度ぐらいの温度に耐えるタービンをまず実際につくってみて、同時に高温材料等研究いたしまして、千五百度という温度まで持っていこうという二段構えの考え方をとっておるわけでございます。最終的には昭和六十年ごろには先ほどおっしゃいましたように効率五五%というものに、いままでのコンベンショナルな発電所と結びつけて発電ができるように実験計画を仕組み、それに向かって邁進をしているところでございます。ですから言いかえますと、いま急いでやりたいのは少し効率が低くとも、いままでの火力発電所よりも効率を上げるということをまずやって、そして少し中期的に効率を五五%まで持っていくための努力を積み上げていこう、こういうことを予定しておるわけでございます。  それから地熱でございますが、御指摘のようにローカルエネルギーとしての地熱位置づけは非常に高いものであると考えておるわけでございますが、特に新しい問題として、いわば火山のそばにある水蒸気を使った地熱とは別個に、深いところにある温かいと申しますか、温度の高い水を利用しよう、いわゆる深層熱水という研究を本年度から実施しようという計画になっておりまして、こういうものができますと、ローカルエネルギーとしての位置づけが非常に確立してくるのではないかと考えているわけでございます。  なお、砒素除去技術等相当程度現在発達してまいりましたので、そういった意味のいわゆる環境に対する影響というものはかなり解決しつつあるというように考えておるわけでございまして、そういうこともあわせ、またそれから出る温かい水の利用法というものもあわせて考えていきたいと思っておるわけでございます。
  10. 中村重光

    中村(重)委員 それでは経企庁長官物価経済見通しについてお尋ねするのですが、御承知のとおり、卸売物価上昇に次ぐ上昇、これは当然消費者物価にもはね返ってくる。四月の消費者物価は九%になるんじゃないかということすら伝えられているわけなんです。このように卸売物価上昇し、消費者物価がまた公共料金の値上げとあわせてこれに拍車をかけるという形になっていく。これは国民生活に対して重大な影響を及ぼす。産業の発展、国民経済に深刻な影響を及ぼす。経済見通しというものは当然変えていかなければならないというように思うのですが、大臣は、物価の問題には相当重点を置いた施策を閣内においても強調しておるということは報道等においても承知をしているわけですが、大臣見通しと、それからこれに対する今後の対応策ということについてお聞かせをいただきたい。
  11. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 御指摘のように、卸売物価大変上げ足を大きくしておることは最近の指標等でも明らかでございます。その原因は、やはり原油価格、それからそのほかの海外から来る原材料価格、そしてまた円安影響、こういうものが相乗的に働いておりまして、卸売物価大変上げ足を速めておるわけでございますが、一方消費者物価波及しておることも事実でございます。私ども物価政策は、この卸売物価上昇消費者物価に対する波及度をいかにして最小限度にするか。こういうことで最善を尽くしてまいったわけでございますが、若干そういう影響も出始めておることも御指摘のとおりかと思います。しかし、いま御指摘年度末及び新年度に入ってからの動向を見ますと、卸売物価の方につきましても、原油価格も去年のようなことは、年間を通じて二倍あるいは三倍近くというふうなことはとうてい今度は考えられないところでございますし、その他ロイター商品市況等も若干鈍化傾向を示しておりますし、また最近は、円安についても若干明るい面が見られておりますので、私としては今後の卸売物価動向についてもおいおいと落ちついてくるもの、こういうふうに期待をいたしております。  一方消費者物価については、いま申し上げたような波及の状態はございますけれども、しかし、一番大きな影響はやはり去年からまいりました野菜価格、いわゆる季節的な野菜価格の暴騰が影響しておりましたが、これについては関係当局が非常な努力をしてくださいまして、いまもなお通常の場合よりは高目でございますけれども、徐々に正常化に向かっておる、こういう点がございますので、年度末からの影響は、消費者価格の面においてそういう特別のものがだんだんなくなるというふうに私は考えております。  ただ、御指摘のように、四月から電灯、電力ガス料金改定、その他公共料金改定もございますし、先ほど申し上げたような卸売物価波及という問題もございますので、決してこれは楽観を許さないのであります。私どもとしては、先般の総合物価対策で申しましたような総需要の適切なる管理体制、これが財政、金融の両面から、そしてまた生産性向上によるいま申し上げたようなコストの吸収、個々の物資に対する適切なる需給の適合を図るような政策、こういうふうなことを総合いたしまして、今後の重大な物価の局面に対処していきたい。またそれによって大体において、相当苦しい努力をいたしまするけれども、まあまあ政府見通しを——いま改定というお言葉がございましたが、とんでもない。これは改定どころか、厳重にこの目標を達成すべく、また経済の成長についてもそれを確保していくためにはまず物価の安定である。こういう認識に徹して、一層の努力を続けてまいりたいと考えておる次第であります。
  12. 中村重光

    中村(重)委員 原油価格の問題については、長官の見解のように四倍、二倍という形で上がらないにしても、原油価格上昇するということは避けられない。先般エネ研エネルギー討論会出席をして、どちらかと言ったらエネルギー価格上昇の問題については私が一番悲観的な見方を余りしなかった。むしろあなたのいまの考え方に近いような発言をしてきたわけなんだけれども、決してそう甘く見てはいけない。これは後で通産大臣から考え方についてもお聞かせをいただきたいと思っているのだけれども、OPECの五月の臨時総会、六月の定期総会等において統一価格というものが実現するのかどうかといったようなこともあり、価格というのは消費が少し緩んでくると、需要が緩んでくると、今度は生産を少なくして価格を上げていこうとする減産体制をとっていくということにもなるわけなんで、あなたが言われるように、いままで上昇してきたようないわゆる二倍、三倍、四倍というようなことで跳躍はないにしても、決して甘く見てはいけないということ。それは円の問題にしても、アメリカ高金利というのは、いわゆる超高金利時代でピークである。それが世界的な高金利時代になってきた。アメリカは若干これを抑えていこうとするカーター政権大統領選挙を前にしてのいろいろな施策から、金利も若干下降ぎみになってきた。それらの関係から円に響いてくるということは当然であるわけなんですが、これとても甘く見るということはできないのではないかといったような点。それらのことを考えてみると、五十五年度卸売物価あるいは消費者物価に対する政府見通しというものは修正は避けられないと私は考えている。この点に対しては端的に長官はどうお考えになっていらっしゃるのですか。
  13. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 経済にお詳しい中村委員からいまそういう御発言があること自体が、インフレに対するわれわれの対処策に非常に影響が大きいと思うのです。私は最近の春闘を見ましても、経営者労働者皆さんも、また消費者皆さんも、春闘が適正なところで落ちついていけるのならば、日本の本命のインフレに転化させないのだという国民の総意の結集した体制が確立するものと私は思うのです。また、だんだんそういう方向になっておるわけです。そのときに、いまから卸売物価はとても見通しどおりにはいかないぞ、消費者物価もそうだ、これはちょっとお返し申し上げたいという気がいたします。私は、今度の春闘に対処した関係者の意気込みは、アメリカやイギリスやフランスやイタリアのようにインフレにしない、日本は西ドイツと肩を並べてちゃんとした、落ちついた労使の関係消費者の賢明なる対処、これによってインフレを乗り越えていくのだ、こういう決意が非常にはっきり示されておるということに大変心強いものを感じております。卸売物価は確かに五十四年度政府見通し、最初一・六%という見通しでございましたから、それが一二・一%、若干それより上回る、しかし消費者物価は依然として四・七台というものはわれわれとしては守っていきたい。五十五年度についてもいま申し上げたような基本的な物価対策という線は崩さずに、何とかして目標を達成すべく全力を挙げるということでやっていきたいと思っております。
  14. 中村重光

    中村(重)委員 その決意はわかるのだ。しかし、具体的な一つの動きの中で、国会の場においてあるいは閣内においていろいろな議論をする、そしてそれに対する対策を講じていくということが必要になってくる。だから、卸売物価は上がる、消費者物価は上がるおそれがあるといったようなことでこれの見通しを修正しなければならぬというようなことになってくると、むしろ心理的にこれに拍車をかけていくであろうといったようなことをお考えになるならば、五十五年度の予算が成立して実施に入ったそのときに予算の一部を留保するとか削減するといったようなことをやらざるを得ないのだろう。これが現実なのだよ。閣議においてそういうことまでやるということは、これは卸売物価とか消費者物価に大変な影響が起こってくるだろう、あるいはインフレになるのだろうか、非常な不景気に陥っていくことになるのではないか、そういう懸念、不安を国民は持っている。だから、大いに議論しなければならぬ。そして、あなたも単に決意ということだけではなくて、具体的な施策を国民の前にこういう国会の議論を通じて明らかにしていくという態度が、物価長官である経企庁長官の責任であり、姿勢でなければならぬと私は考える。どうです、違いますか。
  15. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 私は前に財政、金融の両面から適切なる総需要管理ということを申し上げて一応触れたつもりでおりましたが、もう少し詳しく申し上げなければならなかったのだろうと思います。  公定歩合九%、そしてそのほかの窓口指導等で、またマネーサプライの状況等から見て金融面では金利の引き上げ、相当強い政策がとられておったことは、本当にどなたもよく御理解いただいておることだと思うのです。やや金融に偏しておった物価政策、これが先般の、公共事業を上半期六割程度に抑えて前年度より四・三%ぐらい実際に金額が減るというところを打ち出して、公共事業の執行を進めることになったわけであります。また、財政上の必要に備えるということでございますけれども、今後の財政の執行については、公共事業以外も相当引き締めぎみでやろうというので、ただいま大蔵省を中心に各省庁で財政支出についても適切な管理政策をやろうとしておられるわけであります。私は財政、金融の両面から見まして、適切な総需要管理体制は一応整っておる、こういうふうに見るわけでございまして、その点について、まだたとえば国債消化の問題とかいろいろございますけれども、漸次これは正常化していくものと考えておるわけでございます。  そしてまた物価政策については、われわれはもう本当にうるさいほど個々の値上げの動きに対して通産省にお願いしたりあるいは農林水産省、運輸省等にお願いして、安易な値上げというものについてはできる限り売り手と買い手の間の厳しい競争体制というものをはっきり打ち出して、インフレコスト要因を生産段階において吸収するように全力を挙げてくれ、消費者もまたその点においては賢明で、きわめて敏感に値上がりしたようなものについてはそっぽを向く、こういう態度でいこうじゃありませんかと言っておるわけです。  こうして言えば簡単でございますが、これはなかなかむずかしいことです。しかし、そういう基本的な態度を崩さなければ、私は諸外国のようなインフレに陥ることはない、インフレを克服できる、そういう考え方でやっておるということを一応申し上げておきます。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 あなたの方で公共料金改定に伴う国民生活に対する影響という試算をお出しになっていらっしゃる。その中で国公立の大学の授業料の改定、その家計に及ぼす影響は百十円、この数字で、国民は正確な数字であるということで説得力のある受けとめ方をするだろうか。しかし、国公立だからこうなるのですよというのはうそじゃないかもしれない。この際国民が、またこういうところで議論をし、聞かなければならないことは、高校も値上がりをした、幼稚園も上がった、それから大学はほとんど私立が多いわけだから、私立の大学の、これは高校なんかも同じなんだけれども、授業料とその他の学校に納入する金額は非常に引き上げられた。これは当然あなたの方は物価関係だから調査をしていらっしゃると思う。これらの影響はどの程度押さえていらっしゃるのか、それをひとつお聞かせをいただきたい。
  17. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これはいろいろな委員会で御議論があるわけでございますが、公共料金というものは一体どういう範囲のものであるか、また、公共料金の引き上げに伴うCPIの影響という場合にどういうやり方をやってきたか、それからいまお話しの生計費の負担というときの考え方とどう違うのか、それらについてはいろいろ議論があると思うのでございますが、やはりいままでとってきましたフォーミュラ、方式というものを一応われわれはずっと継続的に取り上げまして比較をいたしておるわけでございます。  いま御指摘の国立大学の授業料あるいは公立学校の授業料等の問題については、政府委員から一応詳しく御説明させます。
  18. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 先般お出しいたしました公共料金影響の数字でございますが、これは予算関連の公共料金ということでまず範囲を区切っております。そこでその中で国立学校の授業料につきましてはどういう出し方をするかということでございますが、国立学校に通っておられる家計で見ますと、確かに三万六千円ということで負担額がふえるわけでございますが、われわれといたしましては、その他の公共料金でもそうでございますが、その関係する人だけの世帯についての計算をしていくということになりますと非常に困難でございますので、全家庭平均というふうに考えて全部の数字を取り扱っております。そういうことでやりましたときに、国立学校授業料について総収入額が三十八億円程度ふえるわけでございますので、全家庭で割った数字が百十円ということになるわけでございまして、この公共料金からの影響についての算定のやり方をどうするかということからくる違いではないかと思いますが、一応現在の段階では各料金通じて全国の家庭にどの程度平均的な負担が課されていくかということで計算いたしましたので、そういう数字になったわけでございます。     〔委員長退席、渡部(恒)委員長代理着席〕
  19. 中村重光

    中村(重)委員 それは予算関連というのは一万八千円弱なんだね。民間の航空運賃であるとかあるいは電気、ガスであるとか、そういった民間関係で三万一千円、一世帯当たり四万九千円というわけなんでしょう。ところが、それ以外に、私が先ほど例を挙げたように、私立大学であるとかあるいは公立の大学であるとかあるいは高校であるとか、これは私立も含めてそうなんだが、相当授業料なんというものも上がってきているのだから、一それがどの程度世帯に影響を与えるというように試算をしていらっしゃるのか。そういった点をひとつこの際明らかにしてほしいということをお尋ねしたわけです。  それから、電力ガスの値上げ、電力の場合において八社平均五〇・八三%値上がりを認められた。この波及的効果というものを当然これは試算をしておられるであろうから、それらの点もこの際明らかにしてほしい。
  20. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 公共料金といたしましては、教育関係では国立学校授業料のほかには、公立高校等の授業料も入ってまいります。ただ、公立高校の授業料につきましては、各地方団体が独自の判断でやりますので、その全体を明らかにすることは現在の段階ではまだできないわけでございまして、この四月の一カ月の数字がまとまってまいりますればその集計ができますので、それによりましてどの程度消費者物価影響しているか、また家計に対してどのような負担増になっているかということがわかるわけでございます。これにつきましては、そういう実態が明らかになった段階で、その数字については申し上げさしていただきたいと思います。  それから、私学等につきましては、これはまさに教育費という点では国公立と全く同じでございますが、これは私立学校の自主性に基づいて決めていくべきものであるということでございまして、政府としての介入はいたしませんので、公共料金の範囲からは外れております。ただし、これは当然のことですが、家計費の負担にもなるし消費者物価上昇にもなっていくわけですから、これも四月の時点で明確になった段階でその計数を取りまとめたいと思っておりますが、全般的に見ますと、私立大学等につきましては最近上昇率が・鈍化の傾向にございます。これは、一つには全体の人件費、物価等の上昇率が落ちているということもあると思いますが、同時に、私学に対する経常費助成の増加ということもその鈍化に影響しているのではないかというふうに考えております。  それから、つけ加えさせていただきますと、電灯、電力の件でございますが、私ども、全体として四万九千円というふうに申し上げた中で、電灯につきまして、電力は直接関係ございません、電灯でございます。それからガスでございますが、これにつきましては今回の改定されました料金の電灯の十社平均の改定率、それからガスにつきましては大手三社の改定率に地方ガス上昇率を仮定いたしまして、家計調査の毎月の額にその上昇率を掛けて算定いたしまして、四万九千円の中に計上しておるわけでございます。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 それはその答弁でいいのだけれども、正示長官に聞きたいのは、問題は電力料金の値上げというものが、これはアルミ関係は言うまでもなく、電力というものを中心としてやる産業なんというものは非常に多いわけだから、だからあなたは卸売物価をできるだけ抑えていこうと考えておっても、今回の電力料金の値上げというものの波及効果というものは大変大きい。その電力料金が上がったということをもってその他の製品の引き上げ等が行われることは、便乗値上げであるというような形で簡単には抑えられないのであろうと私は思っているので、それらの波及的効果といったようなものはどう見ているのか。これは卸売物価というものにも響いてくることは避けられない。そのことが好況になるのかあるいは不況に陥っていくのかといったようなことも、これは先ほどお答えになりました、また、政府が進めていこうとする、公共事業というものをできるだけ抑制をしていくとか、財政の一部の流用であるとか削減であるとかいったような問題と相まって、その影響は非常に大きいわけだから、それらの点をどう抑え、今後どう対応していこうとしておるのかということを伺いたいわけです。  それから、時間の関係もありますから、中小企業庁長官にこの際お答えをいただきたい。  いわゆる公定歩合九%、高金利になった。金融は引き締めていく。そうなってくると、これも親企業というものは下請企業に一切しわ寄せをしていく。それからどうしても弱い中小企業というものは、高金利時代になってくるとこのしわ寄せというものは非常に受けることになる。これは倒産というものにさらに拍車をかけていくということになっていくのではないか。この見通しはどうか。これらに対してどのような対応策を中小企業全般に対し、あるいはまた前段申し上げた下請対策ということに対していろいろなことを想定しているであろうから、これを今後どう進めていこうとお考えになっているのか、正示長官に続いてあなたからもお答えをいただきたい。
  22. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 電灯とガスはストレートに消費者物価に響きますので、これは私どもも素直に〇・七と〇・三と合わせて、六・四のうちの一を食われてしまう、こういうふうに申し上げておるわけでございます。問題は、電力がいまお話しのように製造段階においてどの程度吸収されて、これが消費者物価にどう波及してくるか、こういう点でございます。ここが勝負のしどころと私は考えておるのです。  そこで、安易に電灯も電力もこれはもう上がったものなんだ、そのまま転嫁していくのだというなら、これはいわゆる努力なし経済、何も努力をしないでインフレを受け入れる経済で、こういう経済は私は世界の競争場裏で生き残っていくことはできないと申し上げていいと思う。ところが日本経済は違うのですね。日本経済は、あの敗戦の中から立ち上がって世界のナンバーツーというところまで上がってきた、この力というものは私は大変なものだと思う。去年の実績、今度の難局に処する心構え、こういうものから言いまして、その波及は一体、どのくらいか、私はこれに対してはいまのところ、皆の努力によってその波及度というものは比較的小さくて済むのじゃないか。これは私のあるいは希望的な念願かもしれませんが、大体において私はあの産業連関表等で、電力も電灯と同じように〇・七というのと同じぐらいのものが出てくるのじゃないかというのは、非常にイージーだと思うのです。これを極力圧縮することによってプラスアルファというものは相当吸収されていくもの、こういうふうに考えておりますし、ガス等についてはそれはネグリジブルである、こういうふうに考えて、一層の努力をしていただきたいと思っております。  なお、景気につきましては、まずそういうインフレ的なぐらぐらした土台というものをしっかり一応固めて、その上に経営計画あるいは生活設計、こういうものが築かれていくという、私はいま重大な段階だと思います。これがうまく成功するならば、私どもの想定しております四・八%程度経済成長は、これは必ず達成できますし、円のレートも、先ほど来御指摘のようにアメリカの超高金利の状態等もおいおい是正されつつございますので、今後の国際情勢が非常に心配でございますが、国際情勢に激変がない限りは、われわれとしては景気は堅実なる歩みを続けていけるもの、かように考えておるわけでございます。
  23. 左近友三郎

    ○左近政府委員 金融引き締めとか原材料の値上がりというふうな事態が発生をいたしてまいりますと、過去の事例から見ましても、これが下請中小企業者等にしわが寄せられるという例が非常にあったわけでございます。現実の状態はまだその事態が顕著にはあらわれておりませんが、われわれとしてはそういう事態に備えて予防的な対策を講ずる必要があるというふうに考えております。実はこの三月二十一日付で親事業者の団体に対しまして、下請への不当なしわ寄せを行なわないようにと特に注意を喚起いたしました。さらに、現在公正取引委員会と協力をいたしまして、下請企業に対する不当な値引きとか買いたたきというものについて、具体的にこういうことをやればそういう不当な買いたたき、値引きに該当するんだというふうな運用基準をつくりつつありまして、これは近くできまして、関係方面にも十分通達をいたしたいというふうに考えております。そしてこれを確保する手段でございますが、下請代金支払遅延等防止法にのっとりまして中小企業庁が各通産局を指揮いたしまして、全国で年間、昨年では三万六千件、今年では四万件の調査をいたします。そのほか、公正取引委員会も年間約二万件ぐらいの調査をしていらっしゃいます。この調査を通じましていまのような事態を厳しく取り締まっていきたいというように考えております。  それから、一般的な下請対策以外の問題といたしましては、やはり金融対策だというように考えております。民間金融機関が引き締まりますと、また中小企業にしわが寄るという問題がございますので、政府系の中小企業の金融機関、商工中金、中小企業金融公庫、国民金融公庫というようなものにつきましては極力弾力的な貸し付けがやれるように指導いたしたいということで、これも各機関に文書をもって通知をしておりますし、それから資金枠も、五十五年度は前年に比べまして約一割程度の増枠をいたしております。昨年はその前年に対しまして約八%強ぐらいしか資金増がなかったのですが、ことしはさらに大きくしておりまして、しかもその資金枠をなるべく上期の方に寄せて出すというふうな対策を講じておりまして、しわ寄せを政府金融機関の運用によって極力解消していきたいというようなことを考えております。  以上が現在実施しつつある施策でございますが、今後の情勢の変化につれてわれわれとしてはさらにまたいろいろな対策を講じていきたいというように、いろいろ検討しておる段階でございます。
  24. 中村重光

    中村(重)委員 正示長官コストというのは、これは賃金も当然コストになるわけですね。それから原油であるとかあるいは円安という形になって輸入原材料が非常に値上がりする。輸入価格というものはいわゆる川上、川中、川下というそのいずれの場合といえどもコストという形になっていくわけです。同時に、利潤コストというものが相当ウエートを占めている。佐々木通産大臣、正示長官にしましても利潤インフレというものに鋭い目を向けなければならぬ。賃上げは、私鉄の場合においては労働者は予想した賃金であり、なおかつそれでも不満であったということかもしれない。しかし大方の予想からするとこの賃上げは非常に高かった、こう言われている。このことを長官はどう評価をするか。要するに賃上げであるとかあるいは社会福祉であるとかはもちろん程度があるけれども、購買力が高まらなければ消費というものは堅調にならないわけです。そのことが設備投資にも影響してくるということにもなっていくわけだから、これらの評価をどうしているのか。今後の見通しとしては、消費、設備投資をどうあなたは見ているのか。それからインフレを抑えていくために最も重点を置かなければならぬのは、先ほど申し上げたように利潤インフレ相当大きいウエートを占めるんだから、この点に対しては佐々木通産大臣も正示長官もどう対応していこうとお考えになっておられるか。この点、設備投資、消費見通しの問題等を含めて利潤インフレに対する対応策をお聞かせいただきたい。
  25. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いまの御指摘はそのとおりだと私は受けとめております。生産物一単位当たりの中に賃金と利潤がどういうふうに織り込まれていくか、これが非常に大きく変わっていくということになるとGNP全体のデフレーターが変わっていくということにならざるを得ないわけで、その点において第一次石油ショックのときは、日本は物が上がる、労賃を上げる、利潤もとにかくそれを払える、また十分カバーするように上げるというような値上げ競争が正体であったわけですね。その貴重な教訓を生かして第二次石油ショックにおいてはああいう過ちをやってはいかぬということで、今度はお互いにインフレを克服することに一番貢献する者はだれであるか、こういう空気が少なくとも五十四年度においては各界各層に相当強く浸透していった、こういうふうに私は評価をいたしております。  今度の春闘のあれにつきましてはまだ未解決のところもございますし、私としてはこれはもうどこまでも経営者、労働組合の方々の自主的な交渉によって決まることでありますから、その結果をどうこうということは申し上げませんが、とにかく先ほども申し上げたように、第一次の苦い経験から来る教訓というものは十分に守られておるのではなかろうか、少なくともそう期待をいたしておるわけでございます。  今後における日本経済の堅実な歩みを左右するものは一にかかってそういうことでございまして、目先のエゴにとらわれて、とにかく一時的に賃上げさえやればいいんだとか、あるいは利潤をほかより若干よくすればいいんだという考え方というものは相当大きく排除されておるのじゃないか、こういうふうに考えます。  なお、個人消費の伸びが今後の堅実な経済の歩みの上に大変必要であるという御説もそのとおりと考えております。私どもは大体において五十五年度経済見通しのときに、個人当たりのいわゆる雇用者所得の伸びと全体としての雇用の伸び、これを合わせまして大体二%余りの実質的な雇用者所得の伸びというものを想定いたしておりますので、国民所得全体の中の半分以上というものが個人消費であることは申し上げるまでもございませんから、その点はきわめて大事な要素になっておることは御指摘のとおりと考えまして、今後においても物価の安定と労働者、勤労者の生活内容の充実、この二つがバランスのとれた形で推進せられるような経済の状態を確保していくべく政府はあらゆる努力を払っていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  26. 中村重光

    中村(重)委員 佐々木通産大臣にはエネルギー問題でひとつ十分お答えをしていただきますので……。  それでは、正示長官、時間の関係がありますから駆け足でお答えをいただきたいんだが、電気料金は五〇・八三%の上昇ということになった、これは原価主義というのを貫いたのかということを聞きたい。それから、電力各社の値上げの今後の条件というのはどういうものか。期限的なものも入るのか。今回は一年間の原価計算という形で申請がなされていたんだから、今後料金値上げの申請をする場合の当然の条件というものがあるであろう。だから、その点に対してはどのような認識を持っているのかということをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  27. 森山信吾

    森山(信)政府委員 今回の料金改定に当たりましては、御指摘のとおり一年間の期間を見通しました原価を計算いたしまして算定を行ったわけでございます。  今後の見直しの条件あるいは見直しの期間等に関しまして申し上げますと、まず見直しの条件といたしましては、原価主義という考え方がございますので、その原価主義を貫く範囲内におきまして、見直しというものは相関関係が出てくるのではないかと思うわけでございます。原価計算期間が一年間といま申し上げましたこととの関係から申し上げますと、こういった公共料金という性格のものはできるだけ長く据え置かれるべきものだというふうに考えておりますので、確かに計算の根拠となりました期間は一年間でございますけれども、原価主義とのバランスにおきまして、一年以降におきまして原価主義が十分達成されておるということでございますれば、一年間にこだわることはないというような考え方を持っておるわけでございます。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 指摘をしておくのみにとどめますが、今回の値上げに当たっては、いわゆる原価主義ということに基づいての申請、これを抑えるということについて通産省も経企庁もずいぶん努力をされたということは、従来の場合と比較して申請よりも認可の幅を今回は相当抑えているということによって、努力はしたのであろうということは私もそれなりに認めることにやぶさかではない。しかし、政策配慮というものが依然として相当強く働いているということを指摘しておきたい。この事業報酬八%として査定をしている建設勘定あるいは燃料費勘定等をお考えになって、じくじたるものがあるのではないだろうか。建設勘定ということになってくると、東北電力の女川原発建設に対する協力費として百十億出ているのです。これは社会的な批判というものが相当強かったということは御承知のとおりです。これも建設勘定としては五〇%と評価をされたのでしょうから、だから、そのとおりであったとするならば、原価主義そのものが今後に大変大きな問題を残していくであろうということを指摘しなければならない。それから電力会社にいたしましても、土地の買い占めをやったとは言わないが、効率的に利用していない土地の保有が相当あるのではないか。この場合におきましても固定経費という形によって事業報酬八%をお認めになっておられるということになってくると、この点はいかがなものであろうかといったような点。それからウラン燃料、これは十五年、二十年分、当時ドル減らしという形によって、政府が強く電力各社に対してウランの買い付けをやりなさい、そしてドルを減らすという国策によって、むしろこれは強要するという形で行われたわけだから、この点に対して一概に電力各社を責めようとは私は考えていない。しかし、これとても十年、二十年のそういうストックといったようなものも事業報酬として、たとえば東京電力で言いますと四千三百七十六億円、これに対して三百五十億というものは事業者に負担させなさい。こういうことが原価主義という中において査定をせざるを得ないといったような点等々をお考えになられるならば、私は現在の原価主義のあり方、地域独占の公益事業というもののあり方にメスを加えて、改革を進めていかなければならないという点があることは否定できないのではなかろうかという感じがいたします。  まだいろいろこの点についてお尋ねをしたいわけですけれども、あとの質問の関係がありますから、もし私のいまの指摘に対して、いやそうじゃないのだと言われるならば、それをお答えをしないと、私が一方的に決めつけるということは当を得ないと思いますが、これらの点に対して反論があるならばお聞かせをいただきたい。なければ次の私の質問に進ませていただきたいと思います。
  29. 森山信吾

    森山(信)政府委員 反論があれば言えというせっかくのお申し出でございますから、私どもの見解をるる申し上げたいと存じますけれども、時間の関係もございますので簡単に申し上げます。  原価主義の考え方でございますけれども一つの基本的な考え方は、料金改定の都度いろいろな角度で査定をしていくというやり方ではなくて、一定のフォーミュラというものを決めて、毎回同じような方式でやっていくことが一つの原価主義ではないかと思うわけでございます。ただ、その項目の中で、いま先生の御指摘のようなたとえば補償の問題あるいは建設仮勘定の問題等々いろいろな御意見があろうかと思いますけれども、それにつきましては極力皆さんに納得していただけるようなやり方でやっていくのが原価主義ではないかということでございますので、そういった方式を御都合主義によってその都度変えていくのではなくて、一定のルールを決めまして、そのルールの枠内で査定をしていくという原価主義を今後とも貫かせていただきたい。ただ、一つ一つの項目につきましては検討の余地はあるということでございます。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣、米イ断交に対してアメリカの制裁はエスカレートして、食糧とか薬品なんかまで抑えるというようなことになってきている。日本に対しても相当強い姿勢で同調を求めてきているわけで、情勢としては二者択一を迫られているという感じが実はするわけなのです。この点私をして言わしむるならば、いままで米イの関係相当長期間にわたって大きく対立抗争というものが発表をしてこなかったということは、日本を含めてそれぞれの西側諸国というものが緩衝地帯的な役割りを果たしてきた、その効果というものは私は認めなければならぬと思うのです。その点から考えてみると、この際日本に対して同調を求めてきている、大平総理もアメリカに行く、それに対するところの対応策といういわゆるアメリカ中軸の外交政策経済政策という面から非常に気を使っておられるようでありますけれども、私は決してこの二者択一、アメリカの言うとおりになるのか、いやそうではなくて石油の問題があるから、石油が欲しいから、だからアメリカに対して、言うことを拒否して、イランの要請に対してのみ日本が偏っていくというような、アメリカかイランかという二者択一といったようなことでは行くべきではない。当然言うべきことは言う、やるべきことはやる。そして横ばかり見ないで、日本がリーダーシップを発揮して問題の解決に当たっていくということでなければならないんだというように考えているのですが、政府としての考え方、どう対応していこうとしておられるのか、お聞かせをいただきたい。
  31. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 マンスフィールド大使が先般外務省に参りましてアメリカの申し入れをしたわけでございますけれども、それは御承知のように、また何遍もお話し申し上げましたように、三つでありまして、一つは、今回とった措置を詳細に述べまして、そしてイランの問題、いま始まった問題ではございませんから、従来から日本アメリカと協調してとってくれました措置に対して感謝の意を表しておりまして、三番目といたしましては、ことしの一月に国連に対してアメリカ側は経済制裁の決議案を求めたわけですけれども、御承知のようにソ連のビトーに遭いまして決議にならなかった。その案をそのまま今度は実施しますよというのが主として経済面に対する問題でありまして、従来なかった点は、それに付加して政治面として、大使を召還してもらいたい、情勢を見て国交断絶も要すればしてもらいたいという申し入れでございました。もちろんわが方といたしましては、イランの人質問題というのは国際条約違反であることは明瞭でございますし、国際社会の基本的な秩序というものを阻害し、脅威を与えていることもこれまた明らかでございますから、アメリカのとった措置に対しては十分理解ができます。  したがって、わが方としては、まず人質問題の解決にできるだけの努力を払いますという基本方針は従来から変わっておらないわけでございますけれども、そう言っている際に、ちょうどリスボンでECの外相協議会ですかがございまして、そこで決めましたのは、経済政策等の対応の前にまず九カ国、実際は八カ国でございますけれども、八カ国のテヘランの大使が共同してイランの大統領に申し入れしようじゃないか。     〔渡部(恒)委員長代理退席、委員長着席〕 その申し入れの内容は、いつ、どういう方法で人質を解放するんだ、これを明確に教えてもらいたいということを決めまして、そして日本にもこれに参加してもらおうじゃないかということを決めまして、幹事国がイタリーでございますから、イタリーの駐日大使がその申し入れに参りました。政府といたしましては、総理を初め関係閣僚が集まっている会議がございますので、そこで諮りまして、日本も同歩調をとるべきだという結論に達しましたので、現地の和田大使にその由を伝えまして、それで九カ国の大使が大統領にお会いして、その申し入れをしたわけですね。  その内容は、九カ国の外相同士の話し合いで一切外へ漏らしてはいかぬ、重大な問題であるのでということで、内容は実は詳細にはわかっていませんでした。そこで、申し入れが済んだそのてんまつを、イランの国内情勢を伝えるためにそれぞれの大使が本国に帰りまして、決して召還ということではなくて、事務報告ということで帰ってまいりまして、それを聞いた上で事後の対応策考えようじゃないか、いままでの経過を申し上げますと、こういうことです。  そこで、和田大使はおとといの晩遅く帰ってまいりましたけれども、私どもちょうど関係閣僚はスウェーデン国王の晩さん会に呼ばれておったものですから、きのうの朝、和田大使から詳細に内容は承知いたしました。  それを踏まえまして今後の対応策考えていくわけでございますけれども、EC、ヨーロッパ側は、各大使が本国に帰ってその様子を聞いたわけですから、それを踏んまえまして、アメリカの要請等も考えつつその対応策を二十一日に協議するはずでございます。それが済んで、要すれば二十六、七日だと思いましたが、ヨーロッパの首脳者会議を開きましてさらに対応策を練るということになっておりますから、わが方といたしましてもそのヨーロッパ側の動向というものをよく連絡をとりつつ、今後の対応策を決めていきたいということで、ただいま慎重に対処しているところでございます。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 人質事件が国際法違反であるということでイランを責めている。なるほど人質事件というものは国際法違反であるかもしれない。しかしこの事件の本質というものは、パーレビ王朝に対してアメリカが無理やりに後押しをした。これにイラン側の国民が反発をして、その憤激というものがここへ吹き出してきた、そして人質という形に発展をしてきたという、これは否めない事実なんです。だから、それらの点から考えアメリカがなぜにあのような強硬策をとろうとするのか。これは大統領選挙というものとは切り離して考えられない。そういうことに日本が振り回されていく、西側がこれに振り回されていくということは正しくない。もっと毅然たる姿勢をもって物申すということでなければいけないということを私は強く申し上げておきたいと思う。  いずれにいたしましても、政府筋からあるいは業界筋から、イランから石油が入ってくるのがストップされた、こういう場合は実は備蓄で切り抜けていくんだ。政府は二年間は大丈夫だと、こう言っている。なぜにいまごろそういうことを言うのだろうか。外交的な面からいっても問題があるだろう。また、できるだけ石油を節約していかなければならないというときに、その及ぼす影響というものはどういうものだろうか。もちろんこれはイラン問題がある、これは大変だというので石油パニックを起こしたら大変だといったことも、そういったような発言と情報を流すという形になっていったんであろうけれども、私は軽率のそしりは免れない、そのように申し上げざるを得ません。  いずれにいたしましてもイランからもし石油が入ってこないといったようなことが起こって、最悪の事態になった場合に、私どもが主張してきたところの石油需給適正化法、国民生活安定緊急措置法というものの発動ということにならざるを得ないのではないか、この点に対してのお答えを伺いたい。  それから、省エネというものが非常に重要なんだから、現在の五%、その節約は千五百万キロリットル、だということでありますが、ただそういう発表のみか、本当にそれだけの節約がなされたのか。七%節約ということになってくると二千万キロリットルということになるわけでございますが、これに対しての自信があるのか。具体的にはどういう方法をもってこの節約を実施するということになるのか、それらの点に対してお答えをいただきたい。
  33. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 行政府のことでございますから、いろいろ想定をして、それに対する対処方法を勉強するというのは当然でありまして、勉強はしつつございます。しかし、最悪の事態など起こらぬように問題をおさめたいというのが私どもの念願でございまして、そういうことのないように、先ほどお話しいたしましたようにヨーロッパ側とも協調し、イラン自体の情勢等もよく判断してただいま対処しているわけでございまして、問題が起きたらどうなるんだ、どういうことなんだということは、まだ研究段階でございまして、皆様にお諮りしてどうこうという段階ではございません。御了承のほどをお願いしたいと思います。  それから、第二段目の省エネ、節約の問題でございますけれども、五%の節約は、五十四年度に関しましては貫徹したと思っております。これは要するに石油消費量がむしろ若干減りぎみであるにもかかわらず生産は増加してきたわけですから、あるいは国民の生活費が上がってきたわけですから、これであんばいしてみますと大体五%の水準の節約ができたというふうに判断できるわけでありまして、それを輸送、産業あるいは民生等にブレークダウンしてみましてもほぼ同じような比重になりますから、五%の節約ができたものと考えております。  ことしはそれを七%に上げようというので、二%積み増ししたわけでございますけれども、その積み増し分は一体何で積み増ししたんだ、自信があるのかという御指摘でございますけれども、主として三点ございまして、一つは、国民の皆様には少し寒い思いをさせますけれども温度を十九度から十八度までに下げます。もう一つは、去年の秋に決めていただきました省エネ法によりまして、主として産業に原単位を下げると申しますか、同じ油消費量でも生産はより以上上がるというふうな原単位を下げる、いわゆる省力法を実施してまいりたいということで、工場等を指定いたしまして呼びかけておること。それからもう一つは、油を使っておったのをほかに切りかえる。主としてこれはセメントあるいは電力等でございますけれども、ボイラーを石炭に切りかえていく。こういう点をあわせて考えていきますと、大体二%積み増しできるのじゃないか、しかも確実にフォローできるじゃないかということで、実はただいま進めているところでございます。
  34. 中村重光

    中村(重)委員 節約の問題についていま触れたわけであります。私は、イランから石油が入ってこないということを前提として石油需給適正化法とかあるいは国民生活安定緊急措置法を言うのではないのであって、原油の便乗値上げであるとか、そういう傾向が非常に強い、だからこれを抑えるためにはこの両法律の発動というものがなければいけないのだということを強く主張してきたわけなんです。だから、政府としては、今度はそうではなくて、イランから石油が入ってこないといったような場合についてどうするのだということについては、業界筋も備蓄でやるんだ、切り抜けるんだ、通産省筋からは二年間大丈夫だということを言っている、それらのことを検討しておるということを言わざるを得ない。ならば、この需給安定適正化法にいたしましてもあるいは生活安定緊急措置法にいたしましても、これについては当然検討しておられるであろうから、これをどうお考えになっておられるのかということ、これを検討しているのかどうか、どうあるべきかということについてお聞かせをいただきたい。
  35. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど申しましたように勉強はしつつございます。しかし、そういうことのないようにというのが念願でございまして、いままでの態度は、御承知のように何といっても第一次オイルショックのときとは違いまして、まず数量の需給関係を確保しようというのが根本原則でございまして、需給さえ確実であればおのずから価格は市場操作で決まっていくはずのものでございますから、もしそれを超えたとすれば便乗値上げ的な疑いが濃厚になりますので、それに対しては十分な手を打とうじゃないかということで、一貫して数量の確保ということに努めてまいりました。いままでの傾向から申しますと、CIF等に値上がりした分がそのままあるいはそれ以上に卸、小売の方に反映したかと申しますと、そうなっておりませんので、むしろそれよりはずっと低い数字で値上がりしておるようなかっこうでございますから、部分的な問題はあるにしても、大局的にはそういうものでございますから、その方針のままでよろしいのではないかということでいままでやってきております。お話しのような法律、規制法を発動すること自体が輸入を阻害しあるいは価格をスティックして、大変無理な、いびつな経済体系にもなりかねませんから、それは努めて避けようということでいままで避けておったわけでございます。法律には先生もよく御存じのようにそれぞれ発動する要件がございますが、その要件はいままでのところ満たしておりません。でございますから、いかなる場合には発動すべきかというふうな点等もあわせて検討しているところでございます。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは一般質問の日でありますけれども、関連があるので、石油代替エネルギー開発及び導入の促進に関する法律案の中の、第二条と第三条についてお尋ねをするのですが、私どもは、この法律は新エネルギー開発のための立法であるという理解をしているわけなんです。ところが第二条、これは時間がありませんから読みませんが、第二条の定義では、「石油を熱源とする熱に代えて使用される熱」と規定をしているわけですから、当然に原子力発電というものが含まれることになる。第三条第三項には、原子力の開発及び利用に関する基本的な政策について配慮せよ云々というように書いてあるわけですが、この第三条第三項は何を意味するのか、この点に対してお聞かせをいただきたい。  それから、この法律の性格というものは、私どもの解釈のとおりなのか。どうもこれは第一章は何か基本法のようになっている。そして第二章に具体的な、この法律案の機構というようなことで、ここでは新エネルギー開発をやっていくんだというように、二つになってきているんだな。なぜに第一章の基本法のようなものがここで必要であったのか。そして第二条、第三条、特に第三条についての考え方を聞かせてください。
  37. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 御承知のように原子力基本法がございまして、第二条に、原子力の利用は平和の目的に限る、あるいは安全を確保する、民主、自主、公開の原則があるというふうな、二十数年来、日本が原子力を始めてからの一つの原子力憲法みたいなものがございます。これには、内閣総理大臣が原子力委員会でそれを決めることになっておりまして、したがいまして、その根本的な原則というものは崩すわけにいきません。  そこで、いまの三条との兼ね合いでございますけれども、通産省といたしましては、いままでの原子力開発のやり方といたしまして、おととしからですか、研究開発は主として科学技術庁、実用段階に入ったものは通産あるいは運輸というふうに規定が変更になりまして、そういう体制にいまなっております。  そこで、いまお話しの実用段階に入った原子力発電をどのくらいやるかということになりますと、その発電に伴っての燃料の上流、下流ともどもそれをどうするかとかといったような問題が出てきまして、実用とは言いながら、担当は通産であってもこれまた原子力基本法にも関連を持ってくることでもあり、あるいはさっき申しましたような平和の目的といったようなことで、やはり厳格な管理をしないと、毎日と言ってもいいほどウィーンのIAEAの査察官が数名日本に来て査察しているわけでございますから、これに対して国内としても十分吟味しなければいかぬし、あるいは国際法、特に相互条約、たとえば米国との相互条約等でもはっきりそういった点をうたっているわけでございますから、国際的にも責任を持っているわけで、そういう点もやはり総理大臣の基本的な政策の一番のもとになっている問題でございますから、通産省で原子力発電計画をつくった場合には、それを、具体的に言えば原子力委員会、根本的には内閣総理大臣、これにお諮りして、これでよろしいかと言って進めるのが当然のことでございますから、そういうふうにうたった次第でございます。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 第三条の「原子力の開発及び利用に関する基本的な政策について十分な配慮を払わなければならない。」というこの意味は、原子力基本法の第二条、いわゆる民主、自主、公開の原則をうたっている平和利用の基本方針、これを踏まえた、このことを十分配慮しなければいけないんだというようなことがこの三条の「十分な配慮」ということにいまのお答えからはなるわけなんですか。
  39. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まず一番の基本としては平和利用の問題だと私は思います。国内、国外とも原子力利用の基本原則でございますので、それにはもとらぬものだということを立証する必要があると思います。同時にまた、原子力開発の進め方といたしましては、お話のように民主、自主、公開という線もございます。たとえばATRが実用炉になったかならぬか、これはまだ研究段階かあるいは実用段階かといったような認定をどこで下すかと言いますと、やはりこれは通産独自にやってそのままどんどん進んでもいいというものではございません、燃料にはプルトニウムその他も必要でございますし。そうなってきますと、どうしてもこれは原子力委員会の持っております開発方針、開発計画というものがかかわってくるのは当然でございますので、発電だから通産だけで決めてこれでいいんだというわけにはいかぬ性格の問題でございますので、そういうふうに規定しているんだと心得ております。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 どうも私は妥協の産物のような感じがしてならないんだね。要するに通産省がCANDUの問題のときに独走しようとした、これに対して科学技術庁は相当反発した、原子力委員会もそのとおり。そういったようなことがこのいわゆる代替エネルギー——代替エネルギーということになれば原子力も入るわけだから、この法律によって通産省がいわゆる独走することになってはならないということから、これをチェックするためにこの三条三項を入れたというようにも考えられるし、また一方、この法律は石油代替エネルギーの法律でありながら、原子力は石油代替エネルギーなんだから、これが入っていないのはおかしいではないか。これを推進する側の要求もこれによって満たそうとした、何か妥協の産物のような感じがしてならないのだが、だからわれわれがこの法律を審議するに当たっても混乱というものが起こってくるわけだ。だからあなた方がこの「十分な配慮」、この三条三項をここに特に入れたのはどういうことか。それから「十分な配慮」というのは何を意味するのかということを、いろいろ広くおっしゃらぬでもいいから、的確にひとつこのことをお答えいただけばいいのです。
  41. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 的確に申し上げますと、原子力基本法との関連というものを配慮して進むべきだ、こういうことでございます。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 終わります。
  43. 塩川正十郎

    塩川委員長 これにて中村重光君の質疑は終了いたしました。  引き続き上坂昇君の質疑に入ります。上坂昇君。
  44. 上坂昇

    ○上坂委員 化学肥料の問題について質問いたします。  週刊朝日に十五回にわたって立花さんがいわゆる全農の解剖をしているわけです。その解剖の中で、昨年の十二月十四日の週刊朝日にいわゆるバルクブレンディングというものが出ています。いわゆるBB肥料というふうに言われているわけでありますが、化成肥料であります。私はあれを読んでいま非常に心配をしているわけでありますが、化学肥料につきましては昨年の一月二十四日、通産省と公正取引委員会が協議をして指不カルテルをやらせることになっているという記事があったわけです。アンモニアの場合は二六%、尿素の場合は四五%、燐酸で二〇%、それぞれ設備廃棄を行う、そして昨年の六月までにこの構造改善を終わらせるということでしたが、事情によって延びる場合にはことしの六月まで一年延ばすことができる、こういうことになったように伺っております。  そこで、現在のこの構造改善事業はどこまで進んでいて、どういうことになりそうであるかということについてまず御説明をいただきたいと思います。
  45. 大永勇作

    ○大永政府委員 構造改善の内容につきましてはただいま先生御指摘のとおりでございますが、現在までの進捗状況は、アンモニアにつきましては百十九万トンの設備を処理することになっておりますが、これは現在までに八十六万トンの処理をいたしましたので、処理率は約七二%、それから尿素につきましては百七十九万トンの処理をいたすことになっておりますが、現在までの処理は百三十六万トンで、処理率七六%、それから湿式燐酸につきましては十九万トンの処理目標に対しまして十五万トンでございまして、処理率八〇%ということになっております。  それで、アンモニアと尿素につきましてはことしの六月三十日まで、それから湿式燐酸につきましては来年の六月三十日までということになっておるわけでございますが、現在の見通しといたしましては、多少おくれるものがあるかもしれませんが、おおむねその程度の処理が行われるのではないかというふうに考えております。
  46. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、ことしの六月を大体めどにしていたわけですね。それをいまの状況ではもう少し先へ延ばすということがあり得るかどうか、これが第一点の伺う点です。  それからアンモニアと尿素と湿式燐酸の場合、この三つとも、これはもし延ばすとすればどのくらいの期間を考えておられるか。
  47. 大永勇作

    ○大永政府委員 アンモニアと尿素につきましては、残っておりますのは実は三菱系統の日本化成、鹿島アンモニアのうちのいずれか一つを休止または廃止するということになったわけでございますが、これが現在のところまだ行われていないということで残っておるわけでございます。最近の会社側の情報によりますと、日本化成の小名浜西工場につきまして、これを近く休止したいというふうな意向を持っているようでございますが、これにつきましては、先生も御承知のようにいろいろ地元との関係等がございますので、その話し合いによっては若干ずれるのではないかという意味で、先ほど申し上げましたように、六月末ということになっておるけれどもあるいは少し延びるかもしれませんというふうに申し上げた次第でございます。  それで、安定基本計画におきましてはことしの六月三十日までということになっておりますので、延びた場合どうなるかということでございますが、いまのところは個別の問題でございますので、安定基本計画そのものを変えるということは必要はないんではないかというふうに考えてございます。  それから湿式燐酸につきましては、これは実は設備の共同廃棄の共同行為というのは行っておりませんで、各社が自主的に廃棄をするということになっておりまするし、かたがた来年の六月でございますので、あと一年程度ございますので、しばらくは様子を見てまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  48. 上坂昇

    ○上坂委員 いまお話が出ましたから申し上げますが、日本化成の西工場の問題です。これは鹿島アンモニアと合併をするというのが三菱の一つの方向として進められておりましたが、それが途中でやめになって、残った三菱のアンモニア、尿素工場の方の設備廃棄がこの構造改善の中でどうするかという一つの問題になっていたということは御承知のとおりであります。それが最近のナフサの値上がりによって何とも方法がないということで、これは日本化成の小名浜工場の西工場は単独で廃棄をせざるを得ないという方向で、いまいろいろ労働組合との間に折衝が行われ、また地域的にもいろいろ了解を得るような状況が続けられておるわけであります。ただ、やはり百人以上の労働者がその工場で働いておって、それがやめることになりますし、それからそこにいる下請の人たちがまたかなりの影響を受けるということは事実であります。そこで地元としては何とかしたいと思っているわけですが、なかなかいい考えがないというところから、地元で非常に気をもんでいるのは、何とかして関連工場の人たちが生きていく道をつけたい、その見込みをつけたいんだけれども、なかなかそれがうまくいかないので何とか行政的にも援助をしてもらいたいという意向、希望が非常に強いわけであります。そこで、もし西工場がやむを得ず休止になってしまうというような場合には、何とかその下請関連工場に対しては特定不況地域といったような措置とか、いろんな形での援助をひとつやってもらいたい、こういうふうに思うのですが、その点はいかがでしょう。
  49. 大永勇作

    ○大永政府委員 先生ただいま御指摘のように、西工場の尿素、アンモニア工場の事業をやめますと百数十名の雇用に対する影響が出てまいりますし、それから地元の関連企業にもいろいろ影響が出てくるわけでございますが、この点につきましてはかねてから会社側に対しまして、よく組合それから地元と話し合いをしながら進めていくようにということで、要請をしてまいっておる次第でございまして、会社としても大体そういう方向でやっていただいているものと理解しております。対策として一番よろしいのは、尿素、アンモニアにかわります新しい事業を何とかその地域に持っていけないかということで、現在三菱化成を中心にいたしまして、非常に重要な課題といたしまして検討いたしておりまして、ある程度のめどはつけつつあるやに聞いております。まだ全部とはいきませんが、一部の事業につきましてはある程度のめどはつけつつあるというふうに聞いております。これを行います場合には、どういう事業をどういうふうに持っていくか、新しい地域につくるか、いまの西工場の跡につくるかというようなことで助成措置の内容はいろいろ変わってくるわけでございますが、仮にいまの西工場の跡に設備をつくるというふうな場合には、たとえば北東公庫の融資の問題でございますとかあるいは産炭地域振興融資の問題でございますとか、あるいは税制面では特別償却あるいは地方税の特別土地保有税の免除とか、いろいろな恩典がございますので、こういった恩典につきましては最大限に利用するように配慮してまいりたいと思います。  労働関係につきましては、先生御承知のように不況地域としてそういった指定がありますので、十分にそれらの面につきましても労働省と連絡をとりまして、遺憾なきを期したいというふうに思っております。
  50. 上坂昇

    ○上坂委員 お答えをいただいて非常にありがたいわけですが、装置工業ですから新しい企業、仕事をやるということは非常にむずかしいわけですし、かなり投資をしなければならぬと思うのですね。ですからそういうときには、企業ですからいろいろ立地を考えると思いますが、やっぱり三菱化成の場合にはどうしても主力がいわゆる西の方に向けられてくる傾向が強いわけですね。親工場といいますか、それが黒崎の方にありますから。そこで三菱もいろいろ考えているようでありますけれども、できるだけひとつ、余り大きな影響がない限りは小名浜の方に誘致をして、何とか福島県のいわゆる新産都市の中核である小名浜地一区の経済というものをできるだけ縮小にならないように、発展をさせるように通産省としてもいろいろと御相談をいただきたい、これは要望をいたしておきます。  そこで先ほどの問題になるわけでありますが、このように肥料業界が何とも方法がなくて設備廃棄を行っているという折から、全農といいますか、各県の経済連といいますか、これがいわゆるBB肥料工場をつくっていくということについては、私は非常に納得がいかないわけであります。それは農家と密接に関係しているんですからつくりたいと思うでしょうけれども、現実にいまいわゆる二次加工メーカーと言われていて、BBのような肥料をつくっているところが実は八十社もあるわけですね。これはみんな中小肥料工場、この中小肥料工場が、こうしたBB工場があちこちにできてくるということになれば、これはまた大変なことになってしまう。立花さんの生態ルポによると、二十六県につくって七十八万トンに持っていきたいということになっているわけです。これは大変なことですね。しかも全農の場合には燐酸カリの原料の主たる輸入者になっておりますね。ですから燐鉱石にしてもカリの原料にしましても、大分向こうから輸入をする力を持っている。そういうところがこういう業界に乗り出すということについては非常に心配があるわけです。これらについて現状の把握をどういうふうにしておられるか、まずお聞きしたいと思います。
  51. 大永勇作

    ○大永政府委員 いわゆるバルクブレンディングと言われております粒状の配合肥料でございますが、五十三暦年について見ますと、二十万六千トン、三十四社、三十八工場でつくっております。そのうち県の経済連によるものは八万三千トン、四社、四工場でございます。全体の化学肥料生産に占めます割合から見ますと、こういった粒状配合肥料の生産量のウエートは二、三%でございまして、うち経済連による分は約一%でございますので、全体的なウエートから見ますと非常に大きいとは言えないわけでございますが、ただ、高度化成肥料の中核をなします湿式燐酸につきましては、現在構造改善を実施中でございまするし、またいわゆる二次加工メーカーは先生御指摘のように中小企業関係が非常に多いわけでございまして、今後の動きいかんによってはこういったものに影響を与えるおそれがあると考えますので、従来から農林省とは十分連絡をとってやってまいっておりますが、今後とも農林水産省と十分協議いたしまして、現在進められております構造改善事業の円滑な実施に支障を生じないように配慮してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  52. 上坂昇

    ○上坂委員 そういうお答えをいただいて幾らか安心するわけでありますが、何といっても全農というのは日本の商社で伊藤忠、丸紅に次ぐ第五位の力を持っている商社、住友商事を凌駕してしまったといって、そのうちに三菱商事まで食っちゃうのではないかと思われるような大変な大企業でありますから、そこがいろいろなことをやられますと、これはえらいことになって日本産業界を混乱させてしまう。全農は全農で、立花さん農協を切るというふうに書いているけれども、本来の姿に返ってやはり生産を主体にしたところに持っていって、その機能を発揮するのがたてまえであるわけです。ところが最近はホテルを経営してみたりガソリンスタンドをあちこちにどんどんつくっていくわ、何でもかんでもやって、スーパーはどんどんつくるわというので、これは大変なことですね。これじゃいま非常に成長率も安定経済に入っているような状況の中で、あんまりのようなやり方はなるべく控えてもらわなければならぬのじゃないかと私は思うわけですね。  そこで、いまのBB肥料にしてもある程度の反省といいますか、どうしようかなというところへはきているように聞いてはおりますけれども、しかし企業というのは一度動き出すと何でも拡大してみたくなる、大型店舗と同じになっちゃうから、そこで私はいまのうちにいまおっしゃったように十分農林省と連絡をとって、肥料業界を混乱させないように、構造改善に支障を来さないような形で配慮をしていただくように、大平内閣の主要な閣僚である佐々木大臣の方からそのことに対しての決意のほどを伺いたいと思います。
  53. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 農協の業務範囲の拡大問題は、商工関係から見ますと重大な関心事でございまして、お話しのように、できますれば本来の目的の範囲内でおさめてくだされば大変ありがたいと思っておりますけれども、それじゃ法規的に云々というようなことが許されるかというと、そういうようにもなっておりませんので、やはり良識に訴えて本来の姿に返ってもらうのが一番正しいのじゃなかろうかと私たちは考えております。
  54. 上坂昇

    ○上坂委員 いまのは決意じゃなくて、希望的にそういうように思っているという程度だろうと考えざるを得ないわけでありますが、その程度ではなくてやはり政策としてそういう点は十分配慮されるように、これはお願いをしておきたいと思います。  そこで、農林省の肥料機械課長にお聞きをしたいと思いますが、いまの問題について農林省としてはどのようにお考えになっているか。
  55. 松居努

    ○松居説明員 現在のBB肥料でございますが、経済連主導型のBB肥料につきましては、本来は土壌なり地域に合った肥料ということで進められているわけでございますが、先ほど先生御指摘のように現在化成肥料メーカーにつきましては構造改善事業実施中でございますので、これに悪影響のないよう、通商産業省とも十分連携をとりながら適切に対応してまいりたいというように考えております。
  56. 上坂昇

    ○上坂委員 次に大型店舗の問題についてお聞きをいたしますが、こういう記事が最近出ているのですね。読みますと「金で買う大型」というのです。「なんとロッキード・グラマン疑惑ばりの秘密コンサルタントまで現われるようになって、大型店の出店をめぐる調停に大金が乱れ飛びはじめた。全国至るところで燃え上る大型店反対運動の中で一刻も早く開店をと焦るスーパー側が、反対運動を懐柔するために出す「商品街近代化資金」、「地域振興資金」という名目のカネがエスカレート。その名目の通りなら地域商業、消費のためになるのだが、中には欲得ずくの“使途不明金”も」飛び出している。「そして、そのツケが消費者にまわって、「スーパーは安くない」経営構造をさらに増幅」している。こういうふうに出ています。このとおりなんですね。ここに出てくるコンサルタントというのは、スーパーから出店計画を請け負って地元に根回しをして成功報酬、コミッションを受け取っているのです。一種のフィクサー並みなんですね。そして大型店の家賃の一カ月分を手数料としてもらうのだそうですから、大体一つ引き受けて地元に誘致すると一回で千数百万円になるのだそうです。そういう状況が実際出てきているのです。そのときに今度はダイエーが、ことしの一月十七日に京都の国立国際会館に九百名のグループの管理職を集めましてことしの基本方針を発表した。それによると、グループ全体で六十年までに四兆円の売り上げをやる、そのために企業合併を行うということで発表したわけです。ところが、もう二月二十七日になりますとダイエーが成田市でホテルに進出、こうなって、早速始まったわけですね。そうしたら、二月二十九日には中堅食品スーパーの青楓というチェーン店があります。これも系列下におさめてしまって、いわゆる食品産業にぐんぐん乗り出して、そして、いままた一生懸命でやっている業界というのは、教育産業に乗り出して、何をやるのかと思ったら学習塾のチェーンをやるあるいはスイミングクラブを経営をしている、それから映画制作も始める、こういう状況でありますから、何とも手がつけられないわけです。そして、そのダイエーに負けないようにということで、ほかのナショナルスーパーがまたどんどん進出を始めてきているところに問題があります。  したがって、このナショナルスーパーのいまの流通に対する戦略というものをどういうふうに考えているのか。どうも通産省のあり方というのは、いままで見ていても、何と考えても大型店舗をどんどん誘致することに賛成するような気がしてならないわけです。法律上は、建物の面積だけは縮めて、五百平米まで何とか規制するような状況にはなってきたけれども、現実のやり方としてはそうじゃなくて、どうも指導面はかなり大きな店舗をつくらせるという方向に向いているのじゃないか、そういう方向で政策を立てているのではないかというふうに私は考えざるを得ないわけです。  そこで、基本的なナショナルスーパーに対する考え方、あり方に対する認識をここで発表をしてもらいたいと思います。
  57. 神谷和男

    ○神谷政府委員 ナショナルスーパーあるいはチェーンストアというものにつきましては、先生御高承のとおり、戦後一つの新しい流通形態、特に末端流通を担う一つの主体といたしまして、急速に発展をしてきておることは事実でございます。これは私どもといたしましては各種のいろいろな流通チャンネル、その中の一つの比較的新しいものといたしまして、従来の流通チャンネルあるいはさらにこれらとは異なったあとの形の流通チャンネル等々と、おのおの消費者に対する利便あるいはその他の営業活動における効率といったようなものを競いながら、日本の流通を近代化、合理化していく一環、担い手として発展をしていってもらうことを希望はいたしております。ただ、それらの発展の急速さあるいはそれが他に与える影響によりまして、中小企業その他に非常に大きな摩擦その他の弊害を与える場合には、それに着眼をいたしまして、その限りにおいて調整をしていく、こういう考え方でございまして、私ども、やはりナショナルスーパーのみではなく、すべての流通チャンネルがおのおのの持ち分を最大限に発揮して、競い合いながら発展していくことを希望しておるわけでございまして、どれか一つの流通チャンネルの発展のみを期待しておるというようなものでもございませんし、それらのどれが急速に発展し、栄えていくかは、結局は国民全体あるいは消費者が決定するものであるというふうに考えております。
  58. 上坂昇

    ○上坂委員 そういううまいことを言って突っ放すからぼくは疑わざるを得ないのだよ。国民が選択するとかなんとか言ったって、国民の方をスーパーの方が選択しているのですよ。そして、何でもかんでも買わせるようにもっていっているんだよ。大体大型スーパーというのは、高度経済成長のいわゆるマスプロの中でつくられた多くの商品、それを売る先兵としてこれが育ってきて、大企業の製造工場とそれから大ショッピングが表裏一体になって物を買わせて、このぜいたくな時代が出てきたのですよ。そこで長生きしなくなるような状況が出てきているのだ、この間言っているように。  そこで問題なのは、そういうふうな通産省のあなた方の考え方というのは、やはりどこから考えても大型店を擁護するものである。いま現実にあの混乱をしている状況は御存じでしょう。至るところで混乱しているのですよ。先ほど言ったように、ここに読み上げましたけれども、物すごい膨大なお金を使って進出するわけですよ。たとえば店舗建設費の五%は事前の運動費に使うというふうに言っているのですよ。そうすると、三十億のショッピングセンターをつくれば、一億五千万かけるのですよ。大変な金ですね。それからまた、ある面では一平米当たり一万円をかけると言われているのですよ。一平米当たりこんなお金ですから、それが一万五千平米の店舗をつくったり、二万平米とかと出すわけでしょう。そうなると、これはどういうことになるのですか。地域経済を混乱させるばかりではなくて、いろいろな面で問題になっているところの、いわゆるロッキードがらみのそうした汚職にもつながるような状況というものが出てくる。そうすると、これはまさに人心の退廃につながってくるのですよ。そこまでいま問題化しているというのが私はナショナルスーパーの動きだろうと思うのです。これを本当に規制していかないでどうするのかということです。地域の人たちも、それぞれ地域の中で、流通の中で生きようとすれば、やはりいままでの小さな小売店舗では何ともしようがないからというので、小型、中型のスーパーをつくって、そこで生きようとします。ところが、そこへ乗り込んできて、それも一つじゃない、一つのナショナルスーパーが乗り込んでくれば必ず二つ、三つ乗り込んでくる。そこで競争が行われて、みんなだんごにされちゃってつぶされていくという状況なんです。それで、口を開けば中小企業は九九%を占めていて日本経済の大宗をしょっているのだから、これに対しては温かい処置をしなければならないなんてうまいことばかり言うのだけれども、実を言うとなかなかそういうことになっていない。商業に携わる者だって五百万人あるわけでしょう。この五百万の大産業をつぶすようなかっこうに向けていくということは大変な問題だと私は思うのです。そういう意味で、ナショナルスーパーに対する考え方を改めてもらわなければいけないと思うのです。私はやはりこれは許可制にして、調整なんかしたってもうだめだから、許可制にもっていくような形でやるべきだというふうに思いますが、そういう考えがあるかどうか、お聞かせいただきたい。
  59. 神谷和男

    ○神谷政府委員 立法府の中にもいろいろなお考えがおありになるということは承知いたしておりますが、私ども政府といたしましては、現在私どもにその執行を命ぜられておると申しますか、任せられておると申しますか、現在の大店法、届け出、勧告、命令という体系になっております法律で、地元の実情に基づきながら適切な調整を行っていくことが最も適しておるというふうに考えております。もちろん生き物でございますから、これらに関していろいろな御意見、御議論があるということは十分承知しておりますし、またそれらの御意見に関しても私どもとしては常に耳を傾けながら、現在の与えられた法律で最大限の効果を上げてまいりたいと考えております。
  60. 上坂昇

    ○上坂委員 与えられた法律で最大限の効果を上げて、どんどんナショナルスーパーの方に味方していくという考え方だからこれは問題なんですよ。だから、困っちゃう。  そこで、一つの例として申し上げますが、三月に通産大臣に対しまして岩手県の北上市の商店の代表から異議申し立てが行われておるわけです。これはジャスコの進出でありますが、最初北上市へ進出しようと思ったらやはり反対があったんだろうと思うのですね、商店が密集しているから。そこで、それは一回やめたのです。やめて、今度はどこへ行ったかと思ったら、川一つ向こうの、本当に隣村の、北上市に一番近いところに土地を買って、そこへショッピングセンターをつくるということになって、一万八千ぐらいの申請を出したわけです。それが最終的には一万一千五百平米ですか、そこに落ちついたわけです。現在北上市にあるいわゆる既設のスーパーというものの面積は七千平米で、今度一万一千五百平米許可になりますと一万八千五百平米の売り場面積になるわけです。したがって、北上市の隣の江釣子という村にそれをつくったにしても、当然最初のねらいは北上市を中心にしてその周辺を含めた商圏といいますか、このシェアをねらっていったということは紛れもない事実です。北上市がだめになったからというので、同じ発想のもとに江釣子という村につくったわけですね。北上市の中心街よりは江釣子村の方がずっと土地は安いわけです。しかも、余りいろいろな企業を誘致しないんだからそういうものが来るとなれば喜ぶのがあたりまえですね。そこでできた、私はこう解釈していますね。これがジャスコの戦略である、こう思いますが、それはそうでないというふうに言い切れますか。
  61. 神谷和男

    ○神谷政府委員 かつて北上市の中で、ジャスコの関連でどのような具体的な動きがあったか、私完全につまびらかには承知いたしておりませんが、若干北上市の中で新しいスーパーの計画があったりあるいはその主体がかわったりといった歴史的経緯があるということは承知をいたしております。ただ、いずれにいたしましても、江釣子村の一つの小売商の集団化計画というものがございまして、その中核テナントとしてジャスコがそこに招致されたか、あるいはその裏返しとして進出を決意いたしまして、そこに一つ計画ができ上がったことは事実でございまして、私どもはそれに関連した地元の意見というものを聴取いたしながら、大規模小売店舗審議会の審議を通じて、その商圏の中に与える影響といったものを全体、もちろん江釣子村のほかに北上市等も含めまして審査をして、調整を行ったわけでございます。したがいまして、先生御指摘のようなジャスコの主観的意図がどうであったかということに関しましては、私ここでお答えする資格はございませんが、それらとはかかわりなく、客観的にそれの与える影響圏の中でどのように中小企業との調整を行っていくか、そういう観点からもっぱら調整を行わせていただいたわけでございます。
  62. 上坂昇

    ○上坂委員 審議官にお聞きしますが、あなたが持っている異議申立書の十一ページ、江釣子村の人口は八千名で北上市は五万三千名なんですね。ですから、ショッピングセンターをつくれば当然隣の町を対象にするしかないわけですよ。そこで、小売売上高実績といいますと、江釣子の方が二十七億円というふうに言われてますね。北上市の方は二百十五億円の年間売り上げがある。これは自動車とかスタンドを除いてなんですね。ところが、今度できるジャスコの岩手中部ショッピングプラザというのは百十五億円を見込まれるというふうに出ているのです。そうしたら、江釣子と北上を合わせましても二百四十余億円ですね、二百四十億円をちょっと超す、その大体半分ですね。これをさらってしまうということになれば地元の商業、商店は混乱するだろうと思うのです。そうすると、それは構わない、そういう混乱はあたりまえなんだ、商業近代化をやるのにはやむを得ないんだというふうにお考えなんですか。商業近代化をやってもどんどんつぶれていったんでは、せっかくやっても何にもならぬでしょう。先ほど全農の問題を取り上げて、片っ方で構造改善事業をやっているのに片っ方で肥料をどんどんつくっていったら何にもならないじゃないか、これと発想が同じなんですね。ですから、この点では私は非常に疑問に思いますね。こういう点は、具体的に数字があらわれたことをあなた方は調べて、それを検討しているのですか。もし検討してないとすれば、地元で調べたこの数字を信用するしかないと思うのですよ。そうなれば、いま言ったように半分を占めてしまう、このことについてどういうふうにお考えになりますか。
  63. 神谷和男

    ○神谷政府委員 先生御指摘の異議申し立ての中に、ただいまお示しになりましたような数値並びに考え方が記載されておることは事実でございます。現在手元にもございますので、おっしゃったとおりのことが記載されておるというふうに承知いたしております。ただ御承知のように、先般、三月十二日に事実行為として受理をいたしまして、その取り扱い並びにその内容についての判断というものは現在私どもの中で慎重に検討中でございます。したがいまして、ただいまお示しになりましたような数値に関して私どもここで意見を申し述べますと、これに関連した異議申し立ての内容の一部について公式の場で私ども意見を申し述べる形になりますので、その点明確に申し述べさせていただくことは差し控えさせていただきたいと思いますが、御指摘のような数値は、私どもも一応どのような計算方法に基づいて異議申立書が書かれておるのかということは分析をさせていただいております。また、商調協あるいは特に大店審の場におきましてはこれとは別な考え方に立ちまして、現実的ないろいろな数値、指標、類似都市の指標等を勘案いたしながら地元の中小企業に、お示しになったような壊滅的な打撃を与えるようなことはもちろんのこと、相当程度影響が出ることを回避するような形での調整、勧告を行った次第でございます。
  64. 上坂昇

    ○上坂委員 神谷さんの言うことはよくわからないのだね。ぼくは現実に混乱をするのじゃないかと聞いているのですよ。混乱しないと思いますか。というのは、この異議申し立てというのは大店審で結審しちゃったわけですね。そして勧告を出しちゃったわけですよ。だから、その勧告に不満だからといってこれが出ているのですよ。それだったら決まったことじゃないですか。いまさら何ですか、詳細な検討をしているとか調査をしている、一体どこに行ってどんな調査をしているかということが第一点。それから、何で結審したものについて、あなた方仙台通産局が入って認めたんじゃないですか、認めたことについて何が秘密があるのですか、どこに秘密があるのですか。認めた立場から何を言ったって構わないじゃないですか。何で言えないの、私の言うのがわからないの。もう一回言ってください。
  65. 神谷和男

    ○神谷政府委員 まず、私どもの立場といたしましては、私どもは本異議申し立てに係る案件につきましていわゆる大店法に基づく手続を正確に踏み、かつわれわれとしては最も客観的かつ公平な立場に立って審査をし、大規模店舗審議会におきましても公正な審査を行った上で勧告を出した、こういうふうにわれわれの立場からは信じておりますし、またそのように確信しておりますので、われわれは十分な調査を行うといいますか、適切な調整を行って勧告を出したと考えておるわけでございます。  しかしながら、それに対して異議申し立てが出されておりますので、この申立書の取り扱いに関しての法律上の考え方並びにその次に来るものとして、この申立書に述べられております内容についていろいろわれわれが審議をし、あるいは判断の基礎としたものとどのような関係になっておるかということを現在調査をしておるわけでございます。したがいまして、内容そのものに関しましては別に秘密とかいうものではございません。ただ、異議申立書に関してお答えをしてない段階で、その内容のものに関して余り断定的なことを申し上げることは差し控えた方がよかろう、こういう観点から申し上げたわけでございまして、先生の御質問の江釣子村の件、特に江釣子村並びに北上市の商圏に与える影響につきましては、類似都市指標その他を使いましてわれわれとしては十分調査をした、こういうことでございます。
  66. 上坂昇

    ○上坂委員 公式の席ではいろいろなことを言えないと言うなら、私の部屋へ来たら何でも言ってくれますか。その辺はちゃんとしてくださいね。私の部屋へ来たらもう秘密なしに、ここの席で議事録にとれないものは全部言ってくれるというふうに私は受け取ったのだよね。  それはそれとして、私は混乱をしないかと聞いているわけですよ。混乱をしないかということは、適正な調整を私たちは行ったのです、こうあなた方は答えている。適正な調整なんだからこれではもう絶対混乱はないと考えているのですという答えがあるのかと思ったら、これから調査するんだというのですね。そうするとやはり混乱のおそれがあるということですか。ちょっともう一度。
  67. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御承知のように、大店法は事前調整というたてまえの法律でございますので、事前に法律に基づいた手続並びにそれで許された範囲内において最大限の調整を行うわけでございます。したがって、予見でおそれがあると思われる場合にそういう事態が起こらないような調整を行うわけで、われわれは現時点で予見し得る限りにおいては最大限の調整を行った、こういうふうに考えておるわけですが、異議申し立ての申立人の方々はそうではないとおっしゃっておるので、その申し立ての内容あるいはその根拠となっておる事項につきまして、さらに審議の過程をたどりながらわれわれとしては一つ一つ検討してまいる、こういうことでございまして、われわれの見方と異議申立人の見方が異なっておるというところについて検討し、判断を一つ一つ固めておる、こういうことでございます。
  68. 上坂昇

    ○上坂委員 聞けば聞くほどわからなくなりますね。  それじゃこれからずっと検討しますね。検討した上でおかしなところが見つかった、これは大変だな、商圏が混乱するだろう、そういうことが大体考えられるような状況になったらこの勧告について取り消して、そしてまた調整をやりますか、どうですか。
  69. 神谷和男

    ○神谷政府委員 余り形式的かつ断定的なことを申し上げたくないものでございますからかなり包括的に申し上げたのでございますが、先ほど来申し上げておりますように、法律上の取り扱いの問題並びにその後の問題も含めて現在検討中である、こういうふうに申し上げております。  したがいまして、まず第一の問題といたしまして、あの異議申し立てを正式に受け取りまして、その内容について判断し、何らかの行為を行うことになるか、あるいは異議申し立ての対象になっておる勧告がいわゆる行政不服審査法で言う行政処分に当たるかどうかといった問題について別の判断を下すかについても、これらは現在すべて検討中でございまして、まだ結論を出しておりません。
  70. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、その行政処分まで含めてこの異議申し立てについて検討するというのは、これは全部通産省でやるということなんですか。
  71. 神谷和男

    ○神谷政府委員 現在私どもの方に異議申し立てが出ておりますので、私どもといたしましては行政不服審査法に基づいて申し立てについての勘案あるいはその前の法律要件を満たしておるかどうかについての検討を行います。もちろんこれは処分庁としての私どもが行うわけでございまして、別途これに不服がある場合にはむしろ行政訴訟の段階の問題になってまいると考えております。
  72. 上坂昇

    ○上坂委員 しまいの方はよけいわからないね、小さい声だから聞こえなくなってしまう。余りうまいこと答えないで、もう少しばっと答えてもらいたいです。いいですか。  検討して、この申し立てがなるほど信用性がある、信憑性があるということになった場合はどうなりますか。
  73. 神谷和男

    ○神谷政府委員 これは実は非常にむずかしい問題を含んでおりまして、大店法の中では御承知のように届出、勧告、変更命令とございます。変更命令に関しましては、当委員会においてもしばしばお答え申し上げておるように行政処分であることは間違いございませんで、行政不服審査法の対象になることも間違いございません。したがいまして、この場合は処分たる命令を取り消しまして別途の命令を出すということは可能になろうかと思いますが、勧告に関して行政処分であるかどうかという問題について現在検討中であることが一点。  第二に、勧告に関して同様の処分を行った場合に、いわゆる大店法のたてまえが一貫性をもって不服申立人を救済するような形で作用するかどうかという法律の仕組みの問題がございます。したがいまして、これについてもさらに検討を行わなければならない、こういうことでございまして、いろいろぐだぐだ申し上げましたが、一言で申し上げますと、勧告を取り消して次に簡単にやるかと言われても、やりますと答えてすぐ問題が済むような形にはなっていないので、非常にむずかしい問題があるのでいろいろ勉強させていただいておる、こういう状況でございます。
  74. 上坂昇

    ○上坂委員 またわからなくなってしまった。  異議申し立ての方を検討して、これがなるほどと納得できたら変更命令を出すんでしょう。それでも出さないの。どうですか。
  75. 神谷和男

    ○神谷政府委員 これが行政処分であるというふうにまず第一に仮定しなければいけませんが、議論を進めるために仮定して、なるほどということでこれを取り消しましても、それが直ちに変更命令にはなりません。別途、別の勧告という形にもし行政処分と仮定すればなるのかと思いますが、その場合に大店法の体系がスムーズに作用するかどうかについては、われわれとしてはもう少し詰めなければならないところもあるというふうに考えますし、その大前提として行政処分であるかどうかの判断を行わなければなりません。これは現在までのところ結論を出しておりません。
  76. 上坂昇

    ○上坂委員 ここでばかりやりとりになってしまうようでありますが、勧告を出して、そして異議申し立てがあって、この異議申し立てがなるほど妥当だなと感ぜられたときには、それに変更命令を出すかどうかわからない、また再び勧告になるかもしれない。その勧告が不満だった場合はまた繰り返しになるわけですね。そうなった場合には三条と五条の関係というのはどうなるか、ここもまた疑問になってきますね。ですから、その辺をひっくるめてわかりやすく言ってくれませんか。
  77. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のように三条との関連、五条との関連、その後の命令との関連等がすべて問題になってまいります。したがいまして、これをわかりやすく説明するためには、十分検討をした上でお答えしなければなりませんし、そのことは異議申立書に対しての回答をすることになると思いますので、その時期には——異議申立書を横に置いて、異議申立書の答えは出さぬでおいて、ここで明快なことを言っておるというのは異議申立人に失礼でございますので、そのときは異議申立書に対しても何らかの形でリアクションを行うということになると思います。ただ、現段階ではそこまで至っておりませんので、異議申し立てを出してこられましたので、われわれとしても慎重に検討をいたしております。したがいまして、それについて回答を出した段階では明確にお答えできることになろうかと考えます。
  78. 上坂昇

    ○上坂委員 いままでこういったケースで、異議申し立てが行われたケースは何件くらいありますか。そして、それについてはどういう措置をとってきましたか。お答えをいただきたい。
  79. 神谷和男

    ○神谷政府委員 大店法に関しては、異議申し立てば初めてでございます。
  80. 上坂昇

    ○上坂委員 そうすると、地元からどんどん異議申し立てを出させるようにわれわれも指導をしなければならぬということだね。これからはどんどん異議申し立てを出させるようにやりますから、どうか慎重に、それに対してどういう対応をするかという基本的なものをつくっておいてくださいね。そして、異議申し立てが妥当であるならば、これは地域経済を混乱をさせるのだから、商店街を混乱させてつぶすような結果になるのだから、そのときには地域振興という面からそれを変更させるように、今度検討する以上はそういう検討をしてもらいたいと思うのです。そうでないような検討をしたんじゃ何にもならないからね。  そこでもう一つ、商調協でありますが、広域商調協をつくったわけですね。先ほど言ったように江釣子につくって、そして大きな商圏というのは北上市に求めているという事実があるわけですね。ところが、広域商調協の場合には北上市の方からは三人しか出ていない。江釣子の方は十五人出ている。これでは大きな影響のある北上市は、意見を言っても通らないということになっちゃうんですね。それが一つ。  しかもそこへ今度は、仙台の通産局に、いわゆる特別委員というのですか、その人に出席をしていろいろ聞いてくれと言っても全然出席しない。七回とか八回やってようやく出席をしたというようなことまで言われているわけですね。そして、今度は出席すると、どういう知恵をつけるのかどうか知らぬけれども、とにかく八カ月なんかやらないぞ、四カ月くらいでいいからということで、商調協の会議が四カ月で済まされちゃったんですね。それで結論を出させられちゃったわけですよ。そういうところに非常に大きな問題が存在していると私は思うのです。しかもこの商調協の委員の中にはいわゆる利害関係人が入っているんですね。そういうことについての指導といいますか、勧告といいますか、それも通産局はやってない。こういうことだとすればこれは行政としてはおかしいのじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
  81. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のように広域商調協は、隣接する商工会議所あるいは商店会地区がかなり影響を受ける、別の言い方で申し上げますれば商圏の中に含まれる人口のかなりのものが隣接する商工会あるいは商工会議所地区に含まれておるような場合、その両者の意見のすり合わせといったものも必要でございますし、影響を受けるところの意見をできるだけ吸収した形で地元の商工会あるいは商工会議所の意見をまとめていただくことがよかろう、こういうことで広域商調協と称します仕組みというものを指導してつくってもらっておるわけでございます。  ただ、一般的に申し上げれば、隣接商工会あるいは商工会議所地区でございますので、そこへは消費者関係、公益関係、それから中小小売商業関係、おのおのを代表する方々一人ずつ出ていただきまして、地元の商調協あるいは商調協メンバー、商工会議所関連のメンバーの方々に隣接地区の意見をいろいろ述べていただいて、すり合わせをしていただこう、こういう趣旨でございます。この人数の構成につきましては、隣接地区は代表という形でお願いをしておりますのでこういう形になっておるわけでございます。もちろん本件のような形で影響がかなり大きいような場合には、当然大店審その他では別途隣接地区でどのような意見があるか、あるいはこれらの三名の代表の方々がどのような意見を述べておられるかというようなことを、審議会の委員の方々に十分披露をして審議をしていただいておりますので、私どもとしては公正な調整ができ得るものと考えております。  また、委員の選任については公正を欠かないよう種々指導をいたしておるわけでございまして、本商調協メンバーの中につきましても、異議申立書の中でもいろいろな御意見が出ておりますが、われわれとしてはその結果といったものが結論をきわめて不公正なものにするようなものとは考えておりませんし、異議申立人が申し述べられておるような事実に関しましては、審議会においてわれわれ事務局の方から披露をいたしておりますので、それも十分勘案の上の審議が行われたものというふうに考えております。  ただ、先生御指摘のように、できるだけ公正を担保することが必要でございますし、こういうものの調整というものはやはり皆さんの信頼をできるだけ得られるように努力しなければならないと思っておりますので、諸先生のいろいろな御意見を伺いながら、今後もできるだけ公平を確保し得るような商調協になるよう、具体的な形での行政指導を進めてまいりたいと考えます。
  82. 上坂昇

    ○上坂委員 私は質問を終わりますが、いまの江釣子の問題、北上市のショッピングセンターの問題については、まだまだお聞きしたいことがたくさんあります。納得もいきません。あなたの言ったことをよく議事録で検討して、そしてもう一回ゆっくりお聞きしたいと思います。  そこで最後に、いまSCを売りますという言葉があるんです。SCを売りますというのは、ショッピングセンターじゃないのです、スイミングクラブを売りますというのです。そして、いまのスーパーというのは下が売り場で、四階とか五階にプールをつくるのです。すると、普通の人が地面にプールつくりますと、土地が高いから非常にたくさんお金がかかるのです。土地代を含めると大変な金額になるわけです。そこでショッピングセンターをつくって、その上につくっちゃう。そうすると土地代が要らないから三億円くらいでできる。そういうものまでやり出してお客を吸収しちゃうわけですよ。これは都会地だろうと思いますが、田舎の方にだってそういうものができないわけじゃないのです。これは、五万、六万の人口を持っているところを対象にすれば可能であります。そこまで来たらもうこれは何をかいわんやで、本当に地元はまいります。  そういうことを十分考えていただいてこの対策を立ててくれるように希望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  83. 塩川正十郎

    塩川委員長 これにて上坂昇君の質疑は終了いたします。     —————————————
  84. 塩川正十郎

    塩川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁澄田智君に出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 塩川正十郎

    塩川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後三時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後三時五分開議
  86. 塩川正十郎

    塩川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず私は初めに、問題になっておりますイランの問題についてお伺いしたいと思います。  きょうはこのイラン問題につきまして関係閣僚会議が朝開かれた、このように聞いておるわけでございますが、その閣議において当然和田大使も帰国しておるわけでございますし、そうした報告を踏まえて真剣な検討がされたと思うのでございますが、このイラン問題につきましてどういうような話し合いが行われたのですか、まず報告をお聞きしたいと思います。
  88. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 けさの閣議でないのでございまして、イラン関係閣僚会議と申しますか、ございました。ただ時間が、閣議が済んだ後でございましたので二十分近くしかございませんでしたので、すぐ委員会も始まりますので、きょうの会議の内容は、カーター大統領の追加制裁措置の報告と、それからその後の欧米諸国の本問題に関する動向と申しますか、状況等報告ございまして、そうこうしているうちに時間が過ぎました次第でございます。二十一日にはヨーロッパの外相会議も開かれますので、きのうはまた和田大使が帰ってまいりましたからその報告もちょうだいしました。そういうイランの現状あるいはヨーロッパの動き等勘案しながら日本の今後の対処方法を決めたいと思っていますけれども、きょうはそういういとまはございませんでした。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまアメリカがとろうとしておりますこの制裁措置、先行き考えますと軍事行動まで含んだそういうことをにおわしておるわけです。実際にこういうことが行われるということを考えたときに、わが国としてもかつて味わったことのないきわめて厳しい局面に立たされると思うのです。いまほど真剣に取り組まなければならない大事な時期はないと私は思うのです。いままで総理なり外相の話を聞いておりますと、極端に言えば油よりも日米関係が大事なんだというような、そういう発言をなさっておられるわけですね。この点通産大臣は総理なり外相のこういう考えと同じなんですか、いかがですか。
  90. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 繰り返すようでございますけれども、米国側からは今度とった措置の内容並びにいままで日本が協力してきたことに対する感謝、それから国連決議に出して、決議にはならなかったわけでございますけれども、それをそのまま断行したいということが経済関係では主でございまして、同時にいままでありませんでした政治面として大使の召還、その後の状況によっては国交断絶まで進んでもらえないかという協力方が来てございまして、わが方としては、人質問題はこれはもちろん国際法違反でもあり、また国際秩序を乱す脅威でもございますので、アメリカがそういう措置をとったということはよく理解できますけれども、まずもって問題は人質の解放問題でございますから、これに対する対処は十分ひとつ努力して、一日も早くこの問題が片づくようにということを第一原則にしておったわけですけれども、ちょうど、たまたまECの外相協議会でございますか、ございまして、その結果、向こうでも九カ国、実際は八カ国でございましたが、それぞれのテヘランにおける大使に訓令をして、そして大統領に共同して面会を求めて、いつどういう方法で人質を解放するか、それを明示してもらいたい、その結果を各大使が本国に持ち帰って、そしてそれを基礎にして今後の対処方法等を判断し、進めようということを決めた、日本もひとつそれに一緒にやってもらえぬかという話もございまして、先ほど申しました関係閣僚が集まりまして、ぜひひとつわが方も加えてもらいたいということで、和田大使がヨーロッパの大使ともども大統領にお会いいたしました。その結果は極秘にされておったのですけれども、和田大使が、召還というのじゃなくて、その報告に一時帰ってまいりまして、おとといの晩帰ってまいりまして、きのうの朝私どもが和田大使から大統領に会ったてんまつ、イランの国情、内容、状況等よく聞きまして、きのうはそれを聞いただけで実は終わりましたが、私も途中で委員会が始まるものですから参議院の委員会に参りまして、最後までは私おりませんでしたけれども、きょうはそういう点も踏んまえまして、そういうものを相談をしようということになっておったのですが、これまた時間がありませんので対応策までいかなかったのですけれども、要するに、和田さんの報告を聞き、またヨーロッパなどでは各大使が本国に帰って、それを基礎にして二十一日に外相会議を開くことになっておりますので、その結果等も見守りまして、日本としては慎重な態度でこの問題に対処していきたいというふうに考えておるのでございます。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府姿勢としては、ECと歩調をそろえてこの人質解放の道を探りつつ共同歩調でやっていきたい、こういうことですね。そして二十一日の外相会議というものを非常に期待されておるわけですね。  ところが、御承知のように、きょうヨーロッパ議会がストラスブールで開かれておるわけですが、これは人質が解放されなければイランとの断交を考慮すべきであるということを決議しておるのですね。これはきわめて重大なことだと私は思いますし、こういうことになってきますと、外相会議におきましても、いわゆるヨーロッパ議会のこういう意思というものに非常に拘束されるということになってくるわけですね。そうすると、わが国はECと共同歩調をとるということになってきておるわけですから、その点についてはどのように考えますか。
  92. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 よく聞き取れなかったのですが、EC議会というのですか……(近江委員「ヨーロッパ議会」と呼ぶ)外務省の方からお答えさせていただきます。
  93. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 ただいま御言及の欧州議会の議決というものは、先生御案内のとおり、これはEC自体に対する拘束力というのは、まだそこまでいっていないわけでございまして、その点、ECを構成する国々の首脳はきわめて慎重にいろいろと対策を検討し続けるものと存じます。
  94. 近江巳記夫

    ○近江委員 当然議会とそれとは違うといいましても、やはりそういう決議をしたということについては、これは非常に大きな影響があると思うのですね。わが国として、このイランとの問題については、これは御承知のように一〇%ないし一三%の石油を仰いでおるわけでございますし、貿易関係においても、いろいろなアクシデントがあったから上下はございますけれども、これは大事な国でもあるわけです。当然日米関係も一番大事であるということはよくわかるのです。それだけにわが国としてはやはり仲介の労をとるという、ECともそれだけの共同歩調ということをおっしゃっておるわけでありますから、非常にこれは精力的にそういう努力をやっていかなければいかぬと思うのですね。そういう努力というのがいま見れないのですね。ただ和田大使を召還していろいろ報告を聞いておる、そしてECの外相会議を見守っておる、これだけなんですね。アメリカの言うがままに、対米追随でそのままいくのだ、こういう、そのまま本当に流され、ただようておるという感じなんですね。いまのこういう状況でそういうアメリカ任せ、待ちの姿勢でいいのですか。わが国としてできるべきことについて、いかにあるべきか、それを進言するのが通産大臣であり、経企庁長官なんですよ。違いますか。
  95. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 行政府でございますから、国益を損なわないようにあるいはいろいろな問題が起きた場合に、それにどう対処するかという研究をしていることはもちろんでございまして、ただ、その研究をもとにして、それを対外的に発動するまで対応策を決めているかと申しますと、さっきからお話しするように、これはいろいろ欧米諸国との、特にヨーロッパ諸国の動向等見きわめた上あるいはイランの国情等も考えた上対処していくという慎重な態度をとっておりますので、研究はしておりますけれども、いますぐ対応するというのには、先ほども申しましたような状況でございますから、ヨーロッパの動向等見定めてということで、慎重に構えておるところでございます。
  96. 近江巳記夫

    ○近江委員 自民党内すら首相経験者の三木さんであるとか福田さんがいるのだから、どんどん訪米してもらうとか、わが国の立場も説明する、そういうことをやるべきじゃないか、それだけの非常に深刻な場面であるということはわかりつつ、政府の対応というものは非常に生ぬるいということを閣僚みずからが、お互いにそういうようなことを場所を離れれば言っているのですよ。国民だって私は同じ気持ちで見ていると思うのですよ。しかも、私は今度の総理の訪米日程を見ましたときに、びっくりしておるのですがね。アメリカの予定というのはわずか一日ですね。当然あなたも聞いておられると思いますけれども、三十日に日本をたって米国に着いて、五月一日にはメキシコ到着ですよ。五月四日メキシコ発カナダ着、五月七日カナダ発、五月八日日本着、こんな、一日で大事な話をできるのですか。こういう日程のとり方一つ見たときに、アメリカのおっしゃるとおり日本はついていきます、こういう追随外交きわまれりという姿ですよ。実際にアメリカがこのままでいけば軍事行動までとるというような、こういう非常に不気味な影というものが見えるわけです。ホルムズ海峡の封鎖であるとか、そういうことになってきたらわが国の油の輸入というのは一体どうなるかということですよ。これは対イランだけの問題とは違いますよ。死活問題になってきている問題です。いまのようにただ待っております、そういう姿勢でいいのですか。総理の訪米等につきましてもあなたはどういうように総理に話されているのですか。日程を組むことに対しては通産省として強硬に申し入れをやっているのですか、いかがですか。
  97. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 やっていること、研究していること、しゃべること、一々言わにゃいかぬというのでは外交になりません。慎重に構えておるのはそういう意味でございます。
  98. 近江巳記夫

    ○近江委員 だが、これはやはりぼくらとしては、あなた方はやっていると言うかもしらぬけれども、こういう日程を見たときに、それだけでも本当にこんなのでいいのかという気持ちを持つのはあたりまえでしょう。このままでどのように推移していくか、政府としてはいろんな形の予想も立てておられるだろうし、対策も立てておられると思うのですね。その点についてはどういう見通しをなさっているのですか。今後のことについては、それはあくまでも仮定ということになるかもわかりませんけれども、どうなんでしょう。
  99. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 繰り返し申し上げるようで恐縮ですけれども、いろいろ研究をしたり対応を考えつつはございますけれども、しかしそれをいろいろ発動したりする場合には慎重を要する問題ばかりでございますから、この席でそれをどうこう言うのは差し控えさせてもらいたいということでございます。
  100. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは微妙なこともわかりますが、何でもかんでも差し控えさせていただきたい、国民はみんな心配しているのですよ。われわれも国民を背景にして出てきているのですよ。最悪の場合、いわゆるアメリカの要請は断交も含むそういう協力もせよということを言ってきているわけですね。また、向こうもそういう軍事行動にまで走るということになってきた場合一体どうなるかということですよ。最悪の場面、こういうイランとの断交になったとした場合、わが国のエネルギー供給というものについてはどういう対策をとっていかれるのですか。
  101. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いろんなケースを考えて対策を練って勉強しておるということは行政府として当然の話でございまして、それをいまどうだこうだ、まだそんなこと起きているわけでもなし、また起こらないように念願し措置していくのが外交でございますから、いまからこれをどうこうと言うのは、対内的にも対外的にもかえって事柄を進める上において必ずしも有利な方向とは思えませんので、その話はしばらく控えさせてもらいたい、こう申しておるのであります。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 控えさせてもらいたいと言ったって、それは言えないこともあると思いますよ。ありますが、現実にこれでアメリカと同調してそのままいくとなった場合、だれしも国民皆思うわけですよ。そうすると現在の一〇%ないし一三%という石油は一体どうなるのだ、そうでしょう。何とかこの問題、事態をいい方向に解決していきたいという、政府のそういう姿勢はわかりますよ、気持ちも。当然そうしてもらわなければ困るわけですからね。万一そうなった場合どうなるか、その不安に対してはどう答えるのですか。
  103. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ですから、その問題は研究はしておりますけれども、その研究がどうなっているのだということはしばらく言うのは控えさせてもらいたい、こう申しておるのでございます。
  104. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたは朝の答弁のときに何か備蓄を取り崩すのだ、そういうようなことを言っているじゃないですか。昼からの委員会ではそういうことも言えないのですか。
  105. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 どこでですか。
  106. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは言わなかったですか。ぼくは出たり入ったりしておったから、そういうことを言っていませんか。
  107. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 言っていませんよ。
  108. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃエネルギー庁長官、こういう重大な危機にいま来ているのですよ。国民は皆不安を持っている。そうでしょう。最悪の場合どないするのですか、どういう手当てをあなたは長官として考えているのですか。
  109. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、私どもエネルギー政策を担当している部局といたしましては、いろんなケースのケーススタディーはやっているわけでございますけれども、いま一番肝心なことは問題をできるだけ円満に解決してもらう。問題と申しますのはアメリカとイランの関係の問題、こういう意味でございますけれども、そういう重大な時期であるわけでございますので、私どもエネルギー政策を担当している部局といたしましてはいろんなことを考えますけれども、政治的、経済的な全局面を判断いたしますと、いま御指摘の最悪の場合にどういうことを考えているかということを申し上げること自身が、全局面の展開に必ずしもいい影響を与えないのではないか、こういう配慮があるものでございますから、いまここで申し上げないこと自身がエネルギー対策一つというふうに御理解を賜ればありがたいと思う次第でございます。
  110. 近江巳記夫

    ○近江委員 われわれもこれはマスコミを通じてしかいろんな情報が余りとれないわけですが、いまアメリカは何を要求してきているのですか、どういう項目を要求してきているのですか、ちょっと教えてもらいたい。
  111. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 いろいろ新聞等にも出ておりますので、種々国民の間で憶測その他不安が起きていることは十分承知いたしておる次第でございますが、詳しく一つ一つまで申し上げることはちょっとはばかられます。  ただし大ざっぱな筋を申し上げますと、大体においてことしの初めに安保理に出して否決されました経済制裁のいろんな内容がございます。それから、その他別途アメリカの方で友好国にいろいろ頼んでおることもありまして、こういったようなことをひとつ実施に移すことを検討してくれ、こういったことでございます。なお、よく世上伝えられておりますとおり、イランとの断交をやってくれ、そういう要求があるやに新聞に出ておりますけれども、それはそうじゃございませんでして、余りいつまでたっても問題が片づかなければそういうことも検討せねばなるまい、そういったようなことでございます。なるまいと向こうが言ったわけでございます。
  112. 近江巳記夫

    ○近江委員 私もかつてイランに行ったことがありますが、向こうのいわゆる国民性あるいは国情等からいきますと、確かに人質問題というのは人道上許せることじゃないのですね。これはもうぼくらも同感なんです。ただ、その解決の場合、いわゆる力、北風でいくか太陽でいくか、これは非常にむずかしい問題があるのですが、いまアメリカがとろうとしているのはパワーで押し切る、そういう面を非常に強く感ずるのですね。果たしてこれで本当に人質問題が解決するのかということを考えますと、むしろ一番心配しておる、そういう方向にぼくはどうも突っ走りよるような気がして仕方がないのですよ。その点どう思いますか。
  113. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 確かに種々危険な方向に向かう徴候もあり、またその要素もございますが、しかしながらまだ決定的にそうなっておるのではないということは客観的に言えると思いますし、ここでわが国といたしましてもそういう最悪の事態をもたらさないように最善の努力を尽くさねばならない。このことはアメリカに対してもあるいはイランに対しても、あるいは欧州諸国、特に欧州共同体諸国とのいろいろな話し合い、協議その他によってやっていきたいと思っております。その具体的ないろいろな手段につきましては現在いろいろ検討されており、また物によっては外交上のことでもありますので、いまここですぐに申し上げるわけにはまいらないと思いますけれども、種々考究されておることは事実でございます。
  114. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、EC外相会議の結論を待ちたい、こういうことですね。ECと同一歩調をとる。やはりECと日本の対イランとのそういう関係考えますと、一番強い影響を受けるのは日本なんですね。そうした場合、たとえばその外相会議で決めたことをそのまま日本としては受けるのですか。日本は対等でコンセンサスを得てやっていく、こういう姿勢でおられるのですか。どうなんですか、それは。
  115. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 もとよりECが一方的に決定するものを日本がただ追随するというものではございません。また、これにつきましても種々EC側とのあるいはECを構成する個々の国との話もございます。その内容につきましてはただいま申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、決して一方的にECに追随するといったようなことはございません。もとよりアメリカに一方的に追随することもございませんし、日本が一方的にイランに譲歩するということもございません。
  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはひとつECの諸君にも日本の置かれた立場というものを本当に徹底してよく説明してもらいたいと思うのですよ。まだまだECなんというのは遠い国ですからね。ましてや日本は一国ですよ。これにつきまして後どういうようになさるかわかりませんけれども、その点はひとつ本当に真剣な努力をやっていただきたいと思うのですね、そして日本の置かれた立場を真剣に考えますと、この問題の解決のためにいまこそ必死の努力をしなければいかぬ。これはまあ政府全体の問題でありますけれども、中でもエネルギーを扱う通産大臣の使命と責任というのは大きいとぼくは思うのですよ。あなたはいま総理に次ぐ立場ですよ。さらにそれを支える経企庁長官だと思うのですよ。どういう決意でいまこの問題に臨んでおられますか、お二人から心情を聞かしてもらいたいと思うのです。
  117. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど来申し上げましたように、人質問題の解決は、これは早期に解決してもらいたい、これはもう当然の話でございまして、最大の努力を払うわけでございますけれども、それに伴っての経済、政治的な対応問題等に関しましては、円満に事がおさまればべターでございます。それを願うわけでございますけれども、しかし問題は動いていくわけでございますから、それに対処するのにわが方だけで先走るのもこれはいかがかという問題もございますし、ヨーロッパ等の、いわば同じ立場に置かれておる友好国でございますから、動向等をよく見きわめまして、緊密な連絡をとってこれに対処していきたい、こういうことでございます。
  118. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 事態の平和的解決によりまして、日本経済が現在直面しておりますこの難局に対しまして、できるだけ外部からの撹乱的な影響を受けないように心からこいねがっておるわけであります。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど外務省の方から貿易面におけるいわゆる規制といいますか、そういうことは言われておるという御答弁があったわけですが、それはどういう検討をしておるのですか、通産省としては。
  120. 花岡宗助

    ○花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  イラン向けの輸出の取り扱いにつきましては、政府としては、先ほど大臣も言われましたように、あらゆる事態を想定いたしまして必要な研究は進めている次第でございますけれども、事態はきわめて流動的でございますし、十分慎重に取り扱う必要があると考えております。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは慎重に取り扱うのはあたりまえでしょう、これだけの問題を。  マスコミの報道等を見ますと、貿管令の発動であるとか、それではどうも根拠が薄い、特別立法しなければいけないのじゃないかとか、そういうことも伝えられておるのですよ。そういうようなことをいまやっているのですか。
  122. 花岡宗助

    ○花岡(宗)政府委員 先ほど申しましたように、あらゆる事態を想定して研究はいたしておりますけれども、現時点におきましてはまだ貿管令等を考え段階には至っておらないということでございます。
  123. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、これからもちろん外務省中心の政府全体の対応ということになるのですが、この解決のために具体的にこういう行動をとっていきたいということについては大体意見が一致できているのですか。ECとの協調ということは先ほど答弁ありましたが、そのほかに。
  124. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 日本の立場は、原則的にアメリカの置かれている立場を理解し、かつこの国際法上のルールを破った人質事件についてはこれを容認しないということでありまして、一日も早く人質の釈放が実現し、事態が正常に復することを願い、またそのための努力もする、こういうことであります。そしてその過程におきまして欧州、特にECとのいろいろな協調ということも当然含まれておるわけであります。それ以外に具体的にどういうようなことをするのかという点につきましては、日本がただいまいかなる措置を講ずるかあるいは講じないかといった点の検討は、ただいま通産省当局から御答弁申し上げたとおりでございます。  その他外交努力としましては、先ほど私もちょっと触れましたが、イランに対しまして、アメリカに対しまして、またECに対しましていろいろと話もし、また相談もするということでございます。したがいまして、ただどういうふうな経済措置をとるかということだけを検討しているわけじゃもちろんございませんが、その他、先ほどもたびたび申し上げましたように、事態は流動的であり、かつ外交上のことにも関しますので、ただいまの点はこのくらいにとどめさせていただきたいと存ずる次第でございます。
  125. 近江巳記夫

    ○近江委員 本当にむずかしい問題だと思います。しかし、国民がいま非常に心配しているのですね。  もう一度確認しておきますが、いま現在で備蓄は何日あるのですか。
  126. 森山信吾

    森山(信)政府委員 三月末現在で民間備蓄が八十八日分、国家備蓄が七日分、合計いたしまして九十五日分ございます。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう情勢が非常に緊迫してきておるということで、スポット買い等また非常に値段をつり上げて、それに日本の商社が食いついておるというようなこともちらほら言われておるのですが、これはまた別の角度で、いわゆる価格の高騰ということについて諸外国から強い批判を浴びることにもなるわけですね。この辺についてはどういう指導をしているのですか。
  128. 森山信吾

    森山(信)政府委員 スポット物につきましては、従来から国際的なスポット市場価格を上回らないことということが基本的な行政指導の基準でございまして、同じような趣旨は今後とも継続してまいりたいというように考えております。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 指導方針はそれであって、現状はエネルギー庁としてはまだそういう動きはないという認識をしておるのですか、そういう動きがあるからきちっと指導しておるというのですか、どちらなんですか。
  130. 森山信吾

    森山(信)政府委員 スポット市場は、昨年末をピークにいたしまして急速に狭まってまいっております。いまはかつての四分の一以下程度になっておるのではないかという判断をいたしておりまして、スポットに殺到するというような形には現在なっていないということでございますので、日本が特にこの際スポット市場に殺到いたしまして国際的なスポット価格上昇に大きな影響を与えることのないような姿勢で臨んでいただきたいということを、常々石油業界に対して指導をしておるところでございます。
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう点もやはり冷静に対処してやってもらいたいと思うのです。  それから、総理の日程につきまして、これだけの問題を抱えておるときでございますので、これについては外務省としてはよく詰めたのですか。アメリカは一日しか入っていない、これについてはどういう見解ですか。
  132. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 私どもが承っておるところによりますと、そもそも最初アメリカへ行く計画はなかったのでございます。これは、ただいまのようなイランの問題が非常に先鋭化する以前にメキシコ及びカナダに行くことが計画され、内定していた、そしてアメリカを通過していくのでアメリカにも寄って話をしていこう、こういうことで、大分前から決まっておったというふうに聞いております。こういうものは御存じのとおり向こうの首脳の日程にも関連するものでございますから、なかなか簡単には変えられないというふうに私ども聞いております。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 せっかく総理が行かれるわけでございますが、こんなたった一日で重要な話が本当にできるのかという危惧を非常に持つわけです。確かに外交日程というのは変更とかそういうことはむずかしいと思いますが、国会でこういう話があったということについて総理の方によく伝えていただきたい、このように思います。  この問題は問題として、今後わが国のいわゆる安定供給という点においては、やはり多角的な、各地からの供給ということが非常に大事なんですね。メキシコについては今後十万バレルというのを合意したとかなんとか言われておるわけですが、これははっきり契約したのですか、いつから入るのですか。
  134. 志賀学

    ○志賀政府委員 お答え申し上げます。  メキシコからのいわゆるGG原油の輸入につきましては、今年度十万バレルということで話がついているわけでございますが、当初はこの十万バレルに持ってまいります時期について必ずしも明らかでなかったわけでございますけれども、最近メキシコ側と話をいたしまして、ことしの十月ないし十一月ごろには十万バレルまで増量するということで了解がついております。
  135. 近江巳記夫

    ○近江委員 十月、十一月ごろには十万バレルにこぎつける。そうすると、第一次の積み出しはいつごろから始まるのですか。
  136. 志賀学

    ○志賀政府委員 第一回の船は今月中に入ってくる予定でございます。量は二万五千ということで了解しております。
  137. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは総理も行かれるわけですし、外務省は当然総理を守って行くわけですが、メキシコ関係は将来ともに非常に大事な関係だと思いますし、さらに固めていただきたいと思います。  それから、アメリカを見たとき、アラスカ石油というものについては非常に日本とも近いわけですね。いままでアメリカは国内法において輸出しないというようなことを決めておるようでございます。こういう点について通産省は交渉を当然やってきたと思うのですが、状況はどうなんですか。
  138. 志賀学

    ○志賀政府委員 アラスカ原油日本への輸入につきましては、従来スワップで持ってくるとか、何度かそういう話があったことは聞いておりますけれどもアメリカ側に正式に話をしたことはないというふうに承知しております。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうことは話したらどうですか。ただこちらの方からむずかしいということではなくして、それだけの協調路線をとっていくならば、どうなんだろうかということについて政府は今後アメリカと一回話を煮詰める作業をしますか。
  140. 森山信吾

    森山(信)政府委員 大変微妙な問題であるわけでございますけれども、御指摘のような考え方が従来からわが国にもあったわけでございまして、先ほど担当の石油部長からお答え申し上げましたとおり非公式な話し合いは従来もやっておったわけでございますけれども、御指摘のようにアメリカの国内法は大変厳しい規制がございますので、現実の問題といたしまして果たして可能かどうかということにつきましては大変むずかしいのではないかということを日本側は考えておるというのが実情でございます。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 ただガードがかたいから、壁が厚いからということではなくして、そういう点についても、何も悪いことをするのじゃないんですから堂々とひとつ交渉してもらいたい。交渉しますか。
  142. 森山信吾

    森山(信)政府委員 アラスカの原油そのものにつきましてダイレクトな交渉をするということにつきましてはいろいろ問題点があろうかということでございますけれども、総合的な判断におきます日本安定供給の問題につきましては十分なる話し合いはしてみたいと思います。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 大いにやっていただきたいと思います。  それから中国の問題でございますが、最近内陸油田につきましても日中共同開発をやりたいと中国が要請してきておるということをちょっと聞いておるわけですが、そのことにつきまして御報告をいただきたいと思います。
  144. 志賀学

    ○志賀政府委員 中国の原油につきましては、先生御案内のように、現在、昨年の末に石油公団と中国側との間で基本的な合意に達しました渤海の南部、西部海域の探鉱開発につきまして、細目の詰め、準備を行っているところでございます。聞くところによりますと、その過程におきまして中国側から陸域の華北の一部につきまして日本側に対して打診がございました。現在のところ、中国側からその陸域につきましての探鉱開発についての正式のお話というのはございませんで、いままでのところでは、ただいま申し上げましたように渤海の探鉱開発の交渉過程で、華北の一部地域について打診があったという程度でございます。ただ、いずれにいたしましても、私どもといたしまして石油安定供給の確保あるいは日中友好の促進という観点から、中国の原油の探鉱開発について、中国側から協力、要請というようなことがあった場合には、積極的に対応してまいりたいというふうに考えております。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は一つ具体例を出したわけでございますが、今後そういう多角的な供給ということにつきまして、さらにひとつ力を入れていただきたい、強く要望いたしておきます。  それから、問題になっておりました日米自動車問題、日産が小型トラックの進出、トヨタが調査をやっておる、また本田はすでに決定しておるわけですが、日米間の自動車問題の摩擦、そういう一連の懸案につきましてはこれで解消したと見ておるのですか、いかがですか。
  146. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 私、先般ワシントンでこの関係のお話し合いをしてまいったわけでございますが、そのうち投資の方のただいまお話しの点でございますが、これにつきましては、私どもといたしましては、当初はやはり最終的には民間の、企業判断の問題であるという点につきまして強調いたしまして、先方の理解を求め、これについては先方としても特に異論はなかったということでございます。ただ、先方といたしましては、やはり議会の一部あるいは業界の一部あるいは労働組合の一部というところでは、非常に輸入規制についての意見が強うございまして、こういった輸入制限的な立場に立つ人々を説得したいという見地から、もう少し日本側についても前向きの対応ができないかということで、日本側としても、ただいまお話しのような本田なり日産なりトヨタなりの対応について話をいたしまして、先方もこれを一歩前進というふうに評価をいたしたわけでございまして、もう少しという気持ちは先方にもありましょうけれども、ここは企業の判断の問題であるということで終わっておるわけでございます。したがいまして、この投資の問題については一応そこで話が終わっておるわけでございまして、来週残りの問題、むしろ投資以外の輸入拡大の問題を中心にいたしまして、東京で残った話し合いを詰めるということになります。全体として投資の問題、輸入拡大の問題あわせまして、そこでわが方としてもできるだけ一つのパッケージとしての合意に達したい、現在こういう時点にあるわけでございます。
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 この輸入拡大の問題、いろいろ伝えられておるところを見ますと、検査手続の簡素化、自動車部品の関税引き下げ、大型車の物品税引き下げ等について具体的な要求をしているようでございますが、これに対して政府としてはどう対処するのですか。
  148. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 輸入拡大の点の中心は、私ども通産省の問題というよりも、むしろ主として運輸省なり大蔵省の問題でございます。したがいまして、私からこの点について明確なお答えをすることは困難でございますが、運輸省につきましては、車検制度につきましてより一層の改善をという先方の希望に対して、積極的に努力したいということでいま詰めておる最中でございます。  関税なり物品税の問題につきましては、それぞれ難色、難点がございますので、これについては、私どもといたしましては日米自動車摩擦解消といった観点からひとつぜひ配慮を願いたいということで、大蔵省にも要望申し上げておる、こういう段階でございます。
  149. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのほか、日米間には電電公社の問題だとかたばこの問題だとか、いろいろありますね。これについては政府としてはどういう対応を考えておられるのですか。
  150. 手島れい志

    ○手島政府委員 先生御指摘のように、日米間の貿易関係がこれほど大きくなった場合に、幾つかの問題点が起こるのは若干やむを得ない面もあると思います。  いま先生が御指摘になりましたうちで、電電公社政府調達の問題につきましては、これは昨年の六月に牛場政府代表とストラウスUSTR代表とが話しをいたしましたラインに従いまして事務的に協議を続けてきておりまして、今後ともこの問題を政治化することなく、お互いに協力して解決の方途を見出していこうということで、いまだ話し合いが続けられているということでございます。  たばこの方につきましても、たとえば葉巻たばことか何かにつきましてはガットの方で現在協議が行われておりますし、また広告、宣伝等の日本国内における外国たばこの販売に関係した問題につきましては、最近日米間で事務的な協議を行ってきておるところでございます。
  151. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは限られた時間の中で、経企庁長官、公取委員長も来ていただいておりますので、お聞きしていきたいと思います。  景気の問題でありますが、米国、ECの場合を見てまいりますと、今後景気の後退というものが移ってくるわけですね。経企庁としてはわが国の今後の景気の見通しについてどういう見方をなさっているのですか。
  152. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 端的に申しまして、私どもはいま物価についてインフレ克服を一番当面の重要問題と考えて、これに全力を挙げております。その意味は、もはやいろいろ御議論もありましたように、ここでインフレがいわゆるホームメードに展開していくということでは、これはあらゆる経済の経営計画あるいは生活の設計というふうなものが立たないわけでございます。そこで、その点をまず克服することに先般も総合的な政策を取りまとめまして、財政、金融の両面から適切な総需要の管理をやる、また生産性を向上してコストの吸収を図っていただく、さらに、個々の物品についても関係各省において極力需給の適合するような方策によって価格騰貴の機運をできるだけ抑制をしていただく、こういうことで物価対策を進めておりますのも、ひとえに経済の堅実なる成長ということを目指してやっておることでございます。目下のところ、そうした事態のもとにおきましても日本経済はきわめて堅実な足取りで、底がたい成長を続けておるものと私は考えます。しかし、こういうふうに総需要の適切な管理政策によっていろいろと若干の摩擦的な現象が起こってくる。これにつきましてはけさほども中小企業庁長官からも、極力そういう面についての対策を講じていくということについてお話がございました。私どもは、こうした物価の難局を切り抜けまして、経済を堅実な成長に持っていけるという見込みのもとに、まず当面、五十五年度の上期についていまのような政策を進め、下期につきましてもなだらかな成長は期待できるもの、かように考えております。  また、いま近江委員が申されました諸外国の関係でございますが、これは確かにいまどの国もインフレの克服ということに全力を傾倒しております。ただ、ヨーロッパ各国、特にドイツあるいはフランス等におきましては相当底がたい経済の成長が見られる、こういうふうな状況を私どもとしては認めておるわけでございまして、諸外国とともにインフレ克服ということに一層の努力をいたしますれば、思わざる事態が展開せざる限り、五十五年度においてもわれわれの見通しのごとき成長は達成できるもの、かように考えておるわけでございます。
  153. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま世界的に非常に高金利時代に入っておるわけです。しかしまた、長官インフレについては一番恐ろしいし、抑える、私はその姿勢はもう本当にそのとおりだと思います、努力していただきたいと思うのですが、現実はやはり卸売物価のそういう騰勢を見ましても、これが消費者物価にはね返ってくる心配をみんなが持っておるわけですよ。特に勤労者の立場からいきますと、政府は六・四だとかいろいろなことを言っていますが、たとえば生鮮食料品なんかは毎日買わなければならないものですね、こういうものがべらぼうに上がってくる、そうすると、政府のそういう数字なんというものは一体本当なのかという、常にそういう疑心暗鬼で、日常不安な生活をしているわけですね。春闘で引き上げになったといったって、こんなものは物価が上がれば帳消しだ、そういう不安というものが国民に浸透しているわけですよ。ですから、このインフレ対策ということについては全力を挙げなければならぬ。ところが、現状は卸売物価だってこれだけ上がってきておるし、インフレの心配というものは刻々と迫ってきておるわけですね。そういうことで、世界全体もそういうような傾向がございますし、インフレあるいは高金利、スパイラル現象というのですか、こういう渦巻き現象といいますか、そういうようなことは今後心配ありませんか、どのように見ておられますか。
  154. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 御指摘のように、野菜等は昨年のいろいろな天災、自然的な災害によりまして一時非常に暴騰いたしまして、御心配をかけたわけであります。そこで政府は、全力を挙げて野菜の対策に手を尽くしまして、農林水産省等の御努力で、また生産者及び流通業界等も非常な協力をいただきまして、私はああいう事態のもとにおいては相当の成果を上げたもの、こういうように見ておるわけでございます。しかし何といいましてもまだ全体の水準は確かに高いことは仰せのとおりでございます。そこで、五十五年度の予算を実行に移しました段階におきまして、新年度においては野菜の作付、供給計画その他万般にわたりまして昨年の苦い経験を参考にいたしまして、これから野菜の安定的な供給という点については万遺憾なきを期していこう、こういうふうな対策も講ぜられております。私は、これが功を奏しまして新年度においては漸次安定した、また正常な供給を見込み得るもの、こういうふうに考えますので、一方では電気とかガスとかその他公共料金の値上げあるいはいま御指摘のような卸売物価からの波及というふうな新しい要素がございますけれども、これらについてもさっき申し上げたような総合的物価対策を強力に展開することによりまして、物価についてはこれは非常にむずかしいときでございますけれども、国民の総力を結集していただいて、政府見通しておりますような水準におさめるべく全力を尽くして進んでまいらなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  155. 近江巳記夫

    ○近江委員 物価は、公共料金もこのように四月から引き上げになりますし、そういうことで、四月、五月、六月にかけて一〇%ぐらいくるんじゃないかという観測もあるわけですよ。この点、物価につきましても非常に心配しているわけですが、六・四という達成は本当にできるのですか。どういう根拠でできますか。
  156. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まず、いまちょっとお漏らしになったような二けたの事態というものは、これはもう絶対に避けるという決意のもとに進んでおるわけでございまして、先ほど申し上げたように、一番大きな瞬間風速を形成いたしました野菜等についてははっきりと改善の傾向を見ております。農林省ではいまでも高いもの、若干改善をしたもの、それから引き続き安い、安定的に供給されたものというふうに類別をいたしまして、それぞれ対策を講じていただいておるわけで、これに対して絶対に油断はできないということで、総理も、農林水産大臣には常にしっかり頼むということで督励をしていただいておるような次第でございます。私は、これがこれからの消費者物価の安定の上における一番大きな要因になってくる、こういうふうに考えております。あとは電気やガスその他公共料金あるいは外的な卸売物価の高騰が内的な消費者物価波及する度合いについての、生産段階における経営者労働者、また政府当局の適切な指導、管理、こういうことによってやっていかなければならぬわけでございますから、ここでけさほど中村議員にも申し上げたのですが、どうももうせきは切られた、インフレだというふうなムードが私どもにとっては一番こわいわけで、しかし今回の、いま進行しておりまする賃上げ交渉等においても、そういうムードよりはやはりインフレは絶対に御免だ、インフレを起こさないようにみんながひとつ努力をしよう、こういう機運がみなぎっておるものと私は認識をいたしておりますので、それがわれわれにとっては一番大きな救いであり力でございますから、これを力といたしましてわれわれの物価見通しの達成に努力していけばできないことではない、こういうふうに考えておるわけであります。
  157. 近江巳記夫

    ○近江委員 原油がこのように上がってきておるわけですが、石油関連製品ですね、これは便乗値上げというものがやはりあるわけですよ。ですから、これにつきましては所管大臣である通産大臣はよほど腹を決めてかからないと大変だと思うのですよ。経企庁長官がいま言いましたけれども、これまた非常に大きな要因になってくると思うのです。その監視について大臣のいまとっておられる対策なり決意をお伺いしたいと思うのです。
  158. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 大変重要な問題でございますし、また従来も便乗値上げに関しましては総力を上げましてその対策等を講じてきたわけでございますので、今後ともさらに一段とその努力を払ってみたいと思っております。
  159. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは澄田さんも来ていただいておりますので、景気の見通し、また物価動向につきまして、日銀としてはどういうようにごらんになっておられますか。
  160. 澄田智

    ○澄田参考人 景気の見通しにつきましては、日本銀行の情勢判断といたしましても、景気の現状はかなり根強いものがある、かように判断をいたしております。その根強い原因は第一は設備投資でございます。次は輸出でございます。  設備投資につきましては、省エネルギーの投資でありますとか、合理化投資でありますとか、そういう投資が数年の投資の低調の後を受けまして、このところ非常に旺盛になっておりますし、さらには、生産能力の増加というような投資もこれに加わっているという状態で、金融の引き締め等にもかかわらず、そういう情勢はなお続くのではないかというような判断ができると思っております。  輸出は、円安とか海外物価高等を原因とする競争力の強化ということで、これは非常に堅調になっております。輸出摩擦というような問題に対する配慮は必要でございますが、しかし、産油国等を含めて各地域に対して根強いという状態でございますので、これも景気を支える力としては非常に大きいものがある、かように考えられるわけであります。  消費につきましてもいまのところは堅調と申し上げることができると思います。日銀の支店等を通じて各地の景気の見方等を総合いたしましても、初めは、年前半、六月ごろまでは根強い、こういうことでありましたが、最近は年度の上半期、九月ごろまでは現状のような根強さというものが考えられるんではないかというような声が高いようでございます。もちろん、消費の先行きというようなものは今後の物価情勢にも影響されるところがございますし、石油価格のこれだけの上昇によって、それだけ日本の所得が産油国に移転をするという、そういう経済現象があるわけでありまして、そういうことに伴って先行き景気がある程度スローダウンをしてくるということは当然考えられることでございますし、また、経済界においても、そういう先行きの警戒感ということがあることは事実でございますが、現状はそういうことでありますし、今後につきましては、今後のそういう情勢を十分に注視をしていかなければならない、かように考えております。  物価につきましては、いま企画庁長官の方からいろいろとお話がございましたが、私どもの方といたしましても現在これが最重点でございますし、金融政策としては、すでにことしに入りましても二度にわたって公定歩合を引き上げておりますし、その都度預金準備率の引き上げもいたしております。さらに、窓口指導等におきましても金融の引き締めの強化ということを図っておりまして、そのため、マネーサプライも逐次低下をしてまいっております。昨年の初めごろには一二%台でございましたのが、現在は一〇%台というような状態でございまして、こういうような状態を通じて輸入物価上昇がホームメードインフレに転化をしていくということにならないように、そういう環境を抑えるようにということでやっておる次第でございます。  卸売物価につきましては、なお一、二カ月、電力あるいはガスの値上げの影響等が指数の上にあらわれてくるということもございますので、大幅な上昇ということは避けられないのではないかと思いますが、その影響が出尽くしますと、後は上昇率は鈍化をしてまいりますと判断いたしておりますし、また、そういうふうに全力を尽くして持っていかなければならない、かように思うわけであります。  消費者物価につきましては、このような卸売物価波及というようなこともございますので、なお情勢は厳しいわけでございますが、いまもお話のありましたように、生鮮食料品、ことに野菜等については改善されてまいっておりますし、季節商品による上昇というようなものが逐次抑えられてきているというような状態であります。季節商品を除く面につきましては、ホームメードインフレというようなものを抑える引き締め措置の効果、あるいは財政面あるいは個別物価対策、そういうようなものを動員するというようなことによって、今後これも卸売物価よりは若干のずれはございます。当然これはそういうずれを伴う性格のものでございますが、そういう若干のずれを持ってやがては騰勢も鈍化をしていく、そういうふうに判断をいたしております。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間があればもう少しお聞きしたいのですけれども、公取委員長にお伺いしたいと思います。  私は、常に中小企業問題を取り上げてきておるわけですが、最近中小企業の問題につきまして、下請代金支払遅延等防止法という法律もあるわけですが、手形にしても非常に長期間になってきておるし、現金支払いにつきましても、現金は非常に少なくなってきておるというようなこともいろいろと聞くわけでございます。それからまた、納品をしましてもいろいろと検査をするわけですが、それが、検査済みのそれがなければ支払いを受けられない、それを何カ月も放置しておくというようなことで、そういう声が最近非常に強まってきておるのです。  そういう点で、これは中小企業庁、公正取引委員会、両庁所管でございますけれども、こういう点については積極的な監督、取り締まりをやっていただかないと、非常に苦しい立場に置かれておるわけですね。  そういうことで、公正取引委員会がいまどういう取り締まりをなさっておられるのか、今後どのようになさっていかれるか、この点についてひとつお伺いしたいと思います。
  162. 橋口收

    橋口政府委員 経済の現況につきましては、先ほど来いろいろお話があったわけでございますが、生産、投資、消費、いずれも比較的高い水準で推移をいたしておりますので、いまお話がございました下請事業者の経営環境につきましては、少なくとも現状までのところはそう大きな問題はないというふうに私ども考えておるわけでございまして、具体的に申しますと、ことしの一月時点までの調査の結果から見ますと、そう大きな問題はないというふうに考えております。  ただ、経済は生き物でございますし、最近になりまして、原油価格の高騰やあるいは電気、ガス料金の引き上げあるいは公定歩合の引き上げ等、経営環境は逐次厳しさを増しておりますので、いま先生がおっしゃいましたような支払い条件の面についても、将来はいろいろと問題が出てくる可能性もございますので、われわれとしては十分監視をいたしておるところでございます。  多少具体的に申し上げますと、三月二十一日でございますが、親事業者の団体百八十団体に対して公正取引委員会事務局長中小企業庁長官の連名によりまして、電気、ガス料金の引き上げに伴って、いかにも当然であるかのように親事業者のコストアップを下請事業者に転嫁することがないようにという、注意喚起の通達をいたしておるところでございまして、こういう考え方は一本の通達によってすべてが実現するものではございませんけれども、まずそういうアクションをとっておるところでございます。  それから、いまお話がございました支払い条件の問題のほかに、検収期間の引き延ばしとか契約単価の切り下げとか不当値引きとか、実際取引の面におきます苦情が比較的強くなっておるわけでございまして、これは円高の事態が生じました当時から下請事業者からの強い要望でございまして、われわれといたしましても従来の支払い条件の改善のほかに、そういう取引の実態面における条件の改善是正についても努力をいたしておるところでございまして、近く不当値引き、不当返品、契約単価の切り下げ等に対します行政機関としての運用基準を発表いたしたいと思っております。これによりまして契約の実際面におきます親事業者と下請事業者とのトラブルは相当程度改善されるのではないかと考えておるところでございます。  さらに具体的に申しますと、不当値引きにつきましては、公取委で勧告いたしました場合には現金を返還するという規定がございます。これに基づきまして、昨年の暮れからことしの初めでございますが、会社の名前は答弁を御容赦いただきたいと思いますが、ある会社について総額七千九百万円を下請事業者に返還するという措置がとられたわけでございまして、これは一下請事業者当たりで申しますと約百七十万円程度でございます。今後ともそういう事実が調査の結果判明いたしますれば、われわれとしてはそういう取引の実態面の改善にも積極的に力を注いでまいりたいと考えております。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありましたらまたいろいろもっとお聞きしたかったのですけれども、余りありませんので、ひとつ十分目を光らせていただいて弱い中小企業を守っていただきたい、このようにお願いしておきます。  それから、きょうは大蔵省も来ていただいておりますので、最後にお聞きしておきます。  経常収支の赤字につきまして、数年前までは黒字をどのようにして減らすかということで本当に政府皆さんも知恵をしぼってやったわけですね。これが一転してこれだけ赤字が来てしまった。こういう点では非常に心配があるわけです。外貨準備高にいたしましても二百億ドルを割ってきておるというようなことを聞いておるわけです。いまの時点で経常収支の赤字、外貨準備は幾らになっておるか、また、今後の改善の見込みについてどういう見方をしておられるか、この点についてお伺いします。
  164. 宮本一三

    宮本説明員 国際収支の現状でございますけれども昭和五十四年度、昨年度、経常収支で先生御指摘のように非常に大きな赤字になっております。百三十九億ドルの経常収支の赤字になっております。これは五十三年度の実績百十九億ドルと非常に大きな変化でございます。一昨年度は黒字でございましたから、きわめて大きな変化でございます。これも一つには原油価格が大幅に引き上がったことが非常に大きな原因になっております。また同時に、輸出が過去の円高の影響で伸び悩んだということでございまして、最近円安になっておりますけれども、五十四年度全体としては輸出は過去の円高の影響がかなり出ておるということでございます。  こういうことでございまして、その影響もございまして外貨準備高は先生御指摘のように大幅に減っておりまして、三月末現在では百八十五億四千三百万ドルという状況でございます。これは御指摘のように五十三暦年末、つまり十二月末の三百三十億ドルから比べますと百四十五億ドルという大幅な外貨準備の減少になっております。  こういうふうな大幅な外貨準備の減少を踏まえて、今後国際収支はどのような改善が必要かということでございますけれども、御承知のように円安がかなり進んでおりまして、こういった面からわが国のこれからの輸出についてはかなり明るい見通しが持てるのではないか。現実に最近数カ月の輸出数量面の動きを見ますと、昨年度の同月と比較いたしましてかなりな伸びになっております。たとえばことしの一月は一〇・九%、二月は二三・二%というふうに、かなり強い輸出の伸びが数量面で出てきております。そういうことで、今後改善の方向に向かうのではないかと期待をいたしております。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんから終わりますが、輸出ばかりドライブかけますとまた経済摩擦が起きるわけでありますし、いろいろその辺は総合的に、もう時間がありませんから終わりますけれども、そういう点はむずかしいわけですが、こういう不安もあるわけですから、摩擦を起こさずに、しかもどういうように改善をして国民に安心をしてもらうか、ひとつ最大限の努力をしていただきたい、このように強く要望いたしまして、質問を終わります。
  166. 塩川正十郎

    塩川委員長 これにて近江巳記夫君の質疑は終わります。  引き続いて神崎敏雄君の質疑に入ります。神崎敏雄君。
  167. 神崎敏雄

    ○神崎委員 まず、金の取引の問題について伺います。  政府はいわゆる金の延べ取引など、ブラックマーケット業者は撲滅すべきものだと考えておると聞いております。そうして、その手段として、一つは金の知識を普及して、悪徳業者の勧誘にひっかからないように一般消費者、国民に注意を呼びかけるPRをあらゆる手段を尽くして行うこと、いま一つは、現物取引による健全な業者を育成し、流通の整備を図るというものだと理解しております。  私は、通産省当局がブラックマーケットを撲滅する手段として努力されているこの二つの方法を全く価値のないものだとは思っておりません。しかし、最も重要なことは、現に存在するブラックマーケットを合法的なものとして認めるのか、不法なものとしてその存在を許さないという判断に立つのかという点であります。この点、通産省独自の見解は打ち出されていないのか、出されておるのか、これを伺いたいと思います。
  168. 神谷和男

    ○神谷政府委員 いわゆる金のブラックマーケットと称せられるものの取引に関連いたしまして、種々のトラブルが起きておるという事実がございます。しかも、かつその頻度がかなり高いということでございますし、一般にそれらの被害を受けている者あるいはそれに関連して種々の相談を寄せられる方々が、これらの取引あるいは契約に関して必ずしも十分な知識あるいはそれを理解する素地を持っていないケースも多い。こういう現状を踏まえまして、この種の金の、延べ取引というような表現で言われているものが多いわけでございますが、このような形での金の取引に関して十分関係者に注意を喚起すると同時に、違法な取引等に関しましては、捜査当局あるいは司法当局等に連絡をとり、告発をするというような形で対処をしていく、これが必要なことではないかと考えておりますが、先ほど申し上げましたようにこのような事態が起こる頻度がかなり高いという取引でございますので、できるだけこの種の取引で一般の大衆の受ける被害が少なくなるよう、かつ健全な取引が発展し得るような方法で指導をしてまいりたい、あるいは啓蒙普及をしてまいりたいというのが私ども考え方でございます。
  169. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それは私の方から言うたことと同じなので、そういうことは許さない、ブラックマーケットのようなものは不当なものだ、不法なものだ、こういう形でその存在を許さないというような形に判断を下されておるのかどうか、その点を聞いているのです。
  170. 神谷和男

    ○神谷政府委員 具体的に個別の取引が違法なものであるかどうかの判断は、司法当局の判断によらざるを得ないというふうに考えております。ただ、先ほど申し上げましたように、この種の取引においてトラブルの起きるケースが非常に多いということから一その被害を未然に防ぐ指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  171. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それではこちらの方からいろいろと御紹介しますが、商品取引所法の第八条一項の対象になるのかならないのか、これについての政府の見解が統一されていないことが国民的被害を広げている。その責任は否定できないのであります。これはひとつはっきりさせていただきたいと思うのですが、どうですか。
  172. 神谷和男

    ○神谷政府委員 まず、商品取引所法八条関係の問題でございますけれども、まず第一に、商品取引所法第八条におきましては、「先物取引をする商品市場に類似する施設を開設してはならない。」という規定があるわけでございますが、他方、金のいわゆるブラックマーケットと称せられる業者の契約内容等から判断をいたしますと、先物取引をする商品市場の類似施設には該当しないというふうに判断せざるを得ず、したがいまして商品取引所法第八条による取り締まりは困難であるというように考えておるわけでございます。
  173. 神崎敏雄

    ○神崎委員 通産省が金の現物取引を行う健全な業者としてその育成を図っている社団法人日本金地金流通協会についてであります。  ブラックマーケット業者がこの協会に入会してくることを防止するために、厳しい資格条件を定めていますね。
  174. 古田徳昌

    ○古田政府委員 日本金地金流通協会の登録店の資格要件について御説明いたしますが、この協会の定款によりますと、第八条におきまして、まず第一に「金地金予約売買取引を一般消費者との間に行っていないものであること。」となっております。それから第二に「金地金予約売買取引を一般消費者との間に行うものに対し、人的、資金的、物件的な援助を与えていないものであること。」それから第三に、以上二点のほかに「一般消費者との間の金地金予約売買取引に関与していないものであること。」というふうになっております。さらにこれに加えまして、第五十条におきましては、第一に「一般消費者との間の金地金現物売買取引が行われる店舗が確保されていること。」第二に「店舗には、金地金が展示され、店頭売買に従事する者が確保されていること。」第三に「店舗には、安全な店頭売買に要する金地金及び資金が確保されていること。」というように幾つかの条件が決められているわけでございます。
  175. 神崎敏雄

    ○神崎委員 大体いま言われたことになるのですが、少し大事なことは、この協会の定款によりますと、会員になる要件として第八条で「金地金予約売買取引を一般消費者との間に行うものに対し、」いまおっしゃった「人的、資金的、物件的な援助を与えていないものであること。」とあります。これはブラックマーケット業者に資金的援助などを与えていないものでなければならないということですか。そういう意味も含んでいる、こう理解していいですか。
  176. 古田徳昌

    ○古田政府委員 まず第一点が先生御指摘のとおり「金地金予約売買取引を一般消費者との間に行っていないものであること。」ということになっておりまして、さらにそれに関連いたしまして、それを行うものに対しまして「人的、資金的、物件的な援助を与えていないものであること。」ということでございますから、この物件的あるいは資金的な援助は行っていないということが前提になろうかと思います。
  177. 神崎敏雄

    ○神崎委員 第八条に定める要件を備えている期間は問題にしないのですか、わかりますか。つまり、たとえば二カ月前まではこの要件に該当しなかったがいまはよいということでよいのか、実績を積まなくてもよいのか、この点はどうです。
  178. 古田徳昌

    ○古田政府委員 この協会につきまして入会または登録店の登録の申し込みを受けましたときは、所要の要件に合致しているかいないかについて詳細な書面審査を協会として行うこととしております。さらに書面審査で不十分な場合には、企業の取引先等を通じまして、周辺の聞き込みとかあるいは直接企業の実地調査とかいうことを行った後で、登録店につきましては登録審査委員会を経まして理事会にかけますし、会員につきましては理事会を経まして総会に諮っているわけでございます。そういう形で金の悪質取引業者の入会等の防止を図っているわけでございますが、この際、いわゆるブラックマーケットに関与していたものにつきましては、入会または登録店の登録は認めないこととしております。入会等は現物売買取引業者として相当の実績を有しているものであることとしている、そういうことで審査しているというふうに私どもとしても承知しております。
  179. 神崎敏雄

    ○神崎委員 雪印商事株式会社、本社が東京都港区、東京金属地金市場、これの正会員、この雪印商事株式会社について通産当局はどういう評価をしておられますか。健全な現物取引業者と見ておられるのか、それともブラックマーケット業者の大手と見ておられるのか、いろいろと消費者から苦情が持ち込まれることが多い業者ですが、それは承知しておられますか。
  180. 神谷和男

    ○神谷政府委員 雪印商事という会社名については承知をいたしております。当該企業の詳細な内容は承知しておりませんが、たてまえといたしましては金の現物取引あるいは金加工品の取引を行っておるということになっておりますが、他方、ただいま先生御指摘のように一定の市場に加盟しておる社であるというふうにも承知をいたしております。したがいまして、これがいわゆる延べ取引あるいはそれに類似した取引も行っておる業者であろうというふうに推察をいたしております。ただ、これが悪質業者であるかどうかということに関しましては、個別事案ごとの司法当局の判断に基づいてなされるものというふうに考えておりますが、少なくとも先ほどの資源エネルギー庁の方の登録要件の際に勘案されるべき取引を行っておると推定される業者であろうと考えております。
  181. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ここに月刊「新世相」という雑誌があるのです。この五十三年六月号で「“黄金”インターナショナルな価値」ということで特集が行われているのです。そうして重要なことは、この中でブラック業者の大手雪印商事社長山本公一氏と通産省の大臣房審議官松村克之氏の対談記事が掲載されておるのです。そのテーマは「日本金市場の確立を!」というのでありますが、当局はこのことを御存じですか。
  182. 古田徳昌

    ○古田政府委員 「月刊新世相」の五十三年六月号におきまして、御指摘の対談が行われたことは私ども承知しております。
  183. 神崎敏雄

    ○神崎委員 承知しておられますね。それであなたの御見解はどうですか。
  184. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先生御指摘のような誤解を受けないように十分慎重に行動すべきではないかというふうに私ども考えますが、現在につきましては、特に金取引に関係しましていわゆるブラックマーケット業者であるおそれがある企業の関係者との対談あるいは座談会とか、あるいはその企業がメンバーとなっております会議等には一切参加しないということで、慎重に行動するように現在私どもとしても留意している次第でございます。
  185. 神崎敏雄

    ○神崎委員 雪印商事株式会社は消費者から苦情が多く持ち込まれておる、こういう商社であるということを承知しておって、いやしくも通産省大臣房審議官がこういうような形で業者と対談等をやられるということについての社会的影響については、これは重要なことだというふうに思わないのかどうか。承知しておるのにただ好ましくないというような形の見解だけでとどまっていいのかどうかと思うのであります。というのは、通産省の広告誌である「通産ジャーナル」にブラックマーケットの広告が掲載されたのは五十三年四月号でした。これに対して通産省は、この広告が利用されないようにしかるべき処置をとったと聞いております。しかしその二月後に、今度は広告でなく、大臣房審議官と対談しているのです。これは一般消費者を信じ込ませる役割りを果たした、こういうふうに思うことは否定できない。なぜこういうことがしばしば行われるのか、責任ある答弁をしていただきたい。
  186. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先ほども申し上げましたように、この種の対談を行います場合には、本人が相手について問題があるおそれがあるか否かを十分に確認してから行うようにすべきではないかというふうに私ども考えている次第でございます。
  187. 神崎敏雄

    ○神崎委員 五十三年四月に広告をしたことでも、社会的によい影響にならないという形で通産省は警告的な処置をとられたのでしょう。その前と違うのですよ、二月後に、少なくとも一般の学者とか社会人が対談したというなら問題にしませんよ。そういう処置をとった通産省の大臣房審議官がそういう人たちと対談をやったことを堂々と雑誌に載せて、それが巷間ばらまかれたら、ますますこのブラックマーケットを保護しているという形に客観的には理解するのが当然であり常識だと思うのですね。そういうことについては本人が判断してやるべきであったということになれば、省としてはこれについては責任も感じないし、本人だけにとどめていいのですかね。通産省の審議官だから社会的影響があって、その付近の貴金属店の店主がやったらそういうことにはならない、そういう観点で問題にしているのです。それを本人がよく判断をしてやるべきだと、これは適当な答弁でしょうか。
  188. 古田徳昌

    ○古田政府委員 この対談につきまして、相手方につきましての十分な確認を行わないままに対談に応じましたことにつきましては、あえて申し上げますればやや適切を欠いたのではないかというふうに考えております。
  189. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そういう一般的な評価を聞いているんじゃないんだよ。それについてあなた方はそれは不注意であったで済ますのか。初めて見たのじゃなしに、二月前に広告したことすら注意しているのに、それから二カ月後にそういう業者と対談をやっているのは本人が注意してなかったと言って、それは個人的な形で済ましていいんですか。責任ある通産省の審議官だよ。
  190. 神谷和男

    ○神谷政府委員 先ほど先生御指摘になりましたように、「通産ジャーナル」に、五十三年四月にいわゆる金の取引市場と称するものの広告を掲載いたしまして、これにつきましては先ほど先生が御指摘になりましたように、私どもといたしましては、この発行元に広告に関しても厳重に注意するよう指導をいたしたところでございます。その後ただいま御指摘になりましたような問題が生じましたことはきわめて遺憾なことでございまして、私ども現時点におきましては、先ほど資源エネルギー庁次長から御答弁申し上げましたように、ブラックマーケット業者あるいはブラックマーケット業者であるおそれがあるような者との座談会あるいはその他、先生が御指摘のように、一般の人に疑義を与えるようなケースに利用されるおそれがあるような形での接触というものは、厳に慎むよう関係者に指示しておるところでございまして、ただいまの御指摘を踏まえて今後さらに徹底して、このような誤解が生じないよう関係方面によく指示をし、連絡をいたしたいと考えております。
  191. 神崎敏雄

    ○神崎委員 この審議官を統轄するというのですか、審議官に物を言える人というのはどなたですか。審議官は大臣直轄ですか。注意をするにしてもほめるにしても怒るにしても、だれが責任者なのですか、審議官は。通産省官房審議官といったら、官房長の指示下にあるのですか。
  192. 神谷和男

    ○神谷政府委員 指示していただく一番偉い方は大臣でございます。それから、大臣房審議官でございますので官房に属しますが、ただ審議官はいろいろ分掌いたしておりまして、流通関係につきましては私が分掌いたしております。それから金の現物、生産並びに流通に関しましては資源エネルギー庁が所管いたしておりますので、両者で相談いたしまして関係方面に私ども所管に基づいてよく連絡をし、指示をいたしたいと思っております。
  193. 神崎敏雄

    ○神崎委員 大臣お聞きのようですから、この人に対しては大臣からも適当な対処、処置と言って言い過ぎだったら対応をしてください。  それでは次に、通産省が育成すべき方向として認可した社団法人日本金地金流通協会の会長である田中淳一郎氏、この田中氏が社長である田中貴金属工業株式会社は、ブラックマーケット業者の大手、先ほど言いました雪印商事と金の売買関係を持っているということであります。先日、法務委員会でわが党の木下議員も少しこれに触れましたが、その際当局は好ましいことではないと答弁しております。この田中貴金属と雪印商事の取引は、店頭に訪れた客ということではなく、私ここにその取引の明細を示した記録と計算書のコピーを持っております。これによりますと、雪印商事が田中貴金属から買った量は五キログラム、金額にして六百二十一万八千円であります。雪印が今度は逆に田中貴金属へ売った量は、五十四年一月から五十四年の十二月十日まで、この間に何と七十五回にわたり取引をし、九百五十四キログラム余り、金額にして二十六億九千四百十三万円になっております。重要なことは、ちゃんとコード番号が九九九九〇三と設定されている。すなわち、田中貴金属にとっての固定的、恒常的取引先であるということであります。しかも雪印商事の社長は、つい最近田中貴金属から金を買った量はもっと多いということを本人みずから語っております。雪印商事はこの取引で利益を得たとも語っておる。田中貴金属としても協会設立を前にしてこの関係はまずいと判断したのでしょう。協会設立の日、すなわち十二月二十八日の直前、十二月十日で取引を打ち切ったようであります。当局はこの事実を承知しておられるでしょうか、伺いたいと思うのであります。
  194. 山梨晃一

    ○山梨説明員 先生ただいま御指摘のございましたように、先月の法務委員会で木下先生の御質問に対してお答えしているわけでございますが、そのとき御指摘を受けまして、私どももその後田中貴金属の方に問い合わして事実をある程度確認しているわけでございます。ただし、そのときにもお答えしましたように、金の現物の売買とか取引というものは原則として自由でございまして、この売買について政府が何らかの干渉をするということは基本的にはできないと考えているわけでございます。ただし、いわゆるブラックマーケット業者ということで明らかにはっきり社会的に問題となっているという企業と取引することは現実問題として好ましいことではございませんので、現在金地金流通協会の方で対応策を検討しているという段階でございますし、私どもといたしましても必要な指導を進めてまいりたいと考えている次第でございます。
  195. 神崎敏雄

    ○神崎委員 一般論じゃなしに、ここに資料がみなあって、全部こしらえているのです。みなこちらに入っておるのだが、単なる一般的にそういうことではいけませんと言うのじゃなしに、何だったら見せてあげますが、こういう資料がきちっとあって、帳簿の写しまであって、それでこういう形でやって、できそうだというので前日にあわててやめてやってくるというようなことが一般論としておさまって、そんな抽象的なことでいいのだろうか。
  196. 山梨晃一

    ○山梨説明員 ただいま一般論として検討はしているということでございますが、現実にいわゆるブラックマーケット業者ということで問題になっている企業は即刻取引を中止する方向で、先生おっしゃいましたように田中貴金属と雪印商事との取引は昨年十二月で打ち切られておりますし、今後ともそういうことがはっきりした段階では個別には取引をやめるように、指導を協会の方でやっているわけでございますが、一般的にもルールづくりをしていきたいということで現在対応策を検討いたしている、こういうことでございます。
  197. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ずっとやっていたことを突然やめるということは、その明くる日に協会員になるために切ったのであって、これが正常なものであったら切らないでずっとやっているのです。ここで、書類で裏づけられている金額は一年間に二十六億円である。しかし、雪印商事の社長が私ども調査に答えて語った金額は五十億円になるというのであります。通産省も直接社長から事情を聞いておられると思いますが、もし売りと買いを合わせて五十億とすると、雪印商事へ売られた額も二十億を超えることになる。これは大切なことだと考えるのですが、そう思いませんか。
  198. 山梨晃一

    ○山梨説明員 先生おっしゃいますように、金の現物の取引市場を整備するためにまさにこの協会を発足させたわけでございまして、そういう意味でも、この協会発足に当たってその辺厳に注意するようにということを私どもも新発足する協会に当時申し上げた次第でございます。
  199. 神崎敏雄

    ○神崎委員 この協会の定款の第八条で定める会員資格要件では、いわゆる先物取引を一般消費者との間で行う、すなわちブラックマーケット業者などに対して資金的援助を与えたものは入会できない、先ほども言われたように、私も指摘したように。先物取引を一般消費者との間でやったらブラックマーケットだ、入会できない。つまりできないのにこの協会の会長みずからが資格の点でやや疑わしいことをやっているんだ、この点を私は言っているのです。これはあいまいにできますか。
  200. 山梨晃一

    ○山梨説明員 この協会の定款にございます文章では「人的、資金的、物件的な援助を与えていないもの」というふうになっているわけでございまして、この資金的な援助を与えているということと、現物取引をやっているということによって結果的にブラックマーケット業者を利するということとイコールかどうかという問題だろうと思います。取引と資金的援助というのは私どもは若干違うのではないかと思っていますけれども、現実に好ましい事態では必ずしもないということで、取引をやめるようにということを現実に指導しているということでございます。
  201. 神崎敏雄

    ○神崎委員 資金的援助というものの文言をここで解明、解釈、そういうことをしようとしているわけじゃないのですよ。これをやらしてもらってずいぶんもうかりました、ここに書いてあるよりももっとよけいにもうけていますということと資金的援助ということとは違うんだ、こういう理屈も成り立ちますね。しかしながらもうけさしてもらったということは客観的には資金的援助を受けたということにもなる、そういうことをやっちゃいけないという会長が買うたりあるいは売ったりする、それに類似したことに関係する、そういうこともそれは取引の中に入る、取引というのは売るだけが取引なのか買うだけが取引なのか、こんな理屈を言うておったらどこまでいったって平行線ですよ。売っても買うても取引なんだから、いいですね。  時間がないから走りますが、さらに通産省が健全な業者と認定する日本金地金流通協会の会員業者として、今度は共和貴金属、これは有限会社ですが、これがあります。これは北九州市小倉北区の業者です。この会社がある新聞に出した広告によりますと、「金の先物取引で利の出た方」というのですから利益だと思うのですね。「利の出た方は肩替りします」と書かれているのであります。その際グラム当たり四十円から五十円の手数料を取っていたのであります。要するに先物取引を利用していた業者なんですね。この事実は御承知でしょうか。
  202. 山梨晃一

    ○山梨説明員 承知しておりません。
  203. 神崎敏雄

    ○神崎委員 してなかったら見せてあげましょう。これはYという大新聞ですね。この新聞に広告している会社が日本金地金流通協会の会員としてここに登録している。いいですか、そっちあるんですか、承知していませんと言ったじゃないですか。見比べてたってしょうがない。なかったらこれを見せてあげるから、これを見なさい。これが名簿でこれが新聞広告。この業者の場合は一段と資格の点で欠けると言うべきであります。先物取引で利益の出た者から手数料を取っていたのです。これでは先物取引業者とぐるになっていたと言われても仕方ないじゃないですか、どうでしょう。
  204. 山梨晃一

    ○山梨説明員 先ほど私どもの次長がお答えいたしましたように、現在の定款によります登録店の資格要件というのは比較的厳しく私どもつくったというふうに考えておりますし、これによっていわゆるブラックマーケット業者を厳しく排除することを主として審査しているわけでございますが、万一この要件を満たしていない企業が登録店となるということも考えられないことではございませんので、こういうことがあった場合には登録の取り消しを行うこととしておりますので、したがって御指摘の点につきましてはいますぐ調査いたしまして、事実であれば登録の取り消しを行うよう私どもとしても強く協会を指導していくことといたしたいと思います。
  205. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ぼくはここで検察官のように、悪い者はすぐ監獄に入れいとかそういうことを言っているんじゃないですよ。重点は非常にあいまいなことをやっている、指導するいわゆる通産省の関係当局は。そのことを厳しく糾弾しているんです。通産省が善玉の典型のように強調してきた流通協会も、よく調べてみたらいろいろきずを持っていたということであります。しかし協会もブラックマーケットも同じだという、そういうことを言うとこれは不正確です。だからそういうことを言っていない。私は協会とブラックマーケットの業者を全く同列に扱ってはおらないのです、指摘しているのとは別なんだから。しかしブラックマーケットの撲滅という使命を持ったいわゆる社団法人、この加入業者は当然それにふさわしい体質や対応を要求される。結成後間もないいまのうちにあいまいさを許してはならぬ。真にブラックマーケットの存在を許さないという場合、大切なのは口先で繰り返すだけではなしに、実際の行動でそういうことをやらせないようにしなさいということを言うているんです。そうでなかったら巷間起こっておる被害者はますます広がる。先ほどから紹介するように、大臣房審議官というような立場の人がブラックマーケットの大手と思われる人と親しく対談したり、そういうようなことをやっておったら、世間では通産省はブラックマーケットを後援しておる、こういうことになるんですよ。片一方では取り締まる、撲滅すると言いながら、そのしなければならぬ人が業者と対談してそれが雑誌に載ってばらまかれるということになればそういうことになる。この協会の加入者の業者に対して、またまじめな人に対してはそういうことがたまたまあったらこれは報いられないですね。こういうことだから問題に取り上げているわけなんです。  そこで、協会加入業者に対して徹底的な再調査の措置を私は求める。同時にこのブラックマーケット業者にとりましてこれに対する法的処置、これを早く考えなさい。うちの所管でない、うちの係ではないというようなキャッチボールみたいな形で責任転嫁をしている。そういうことがやられている中で、ちまたではこれがために自殺をしたり倒産したり一家心中したり、いろんなことが起こっていることは私が紹介しなくてもずいぶん皆さん新聞で御存じのとおりでしょう。だから、いま要求をいたしましたこの二つですね、早く法的処置をとることとそれから現在加入するあるいは加入しようとする人、している人、これに対して徹底的な調査をやりなさい、会長がこんなことになっておるのだから、名簿に載っている人がそういう広告出しているのだから。どうですか。
  206. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のように金のブラックマーケットの被害を未然に防止するための措置は、われわれ各方面にわたってさらに一層強力に進めてまいりたいと考えております。  当面は啓蒙、普及、PRを徹底的に行うと同時に、先ほどいろいろ御指摘がございましたが、やはりわれわれ、先生も御指摘のようにいいものを育てていく、こういう意味で金地金流通協会は、ただいま御指摘になりましたような観点からメンバーその他につきましても一度よく調査をいたしまして、やはりりっぱなものが今後りっぱな現物取引市場を形成していくよう、資源エネルギー庁の方で育成してもらうようにしてまいりたいと考えております。これらの方法で当面やはり消費者の選別効果というものが際立ってあらわれてくるよう期待をいたしておるところでございます。  もちろん御指摘のような問題につきまして、われわれ全面的にこれを前向きに受けとめまして、種々問題点の検討は進めてまいりたいと思っておりますが、やはり一介の法律によってすべて根絶できるような単純なものではございませんで、これにかわるりっぱな市場を育てるという正道をできるだけ強力に歩んでまいりたいと考えております。
  207. 神崎敏雄

    ○神崎委員 商品取引所法第八条がきちっとあるのに、なぜそれを法律どおりに適用しないか、なぜ先物的な言葉を許しているかというところに問題があって、それさえ正確にやらせればいいのであって、だから直ちに調査に入りなさい。そこでもう時間が迫ってまいりましたので、金の問題は離れます。  次に、問題を変えまして、情報処理産業の問題について伺います。  昨年十二月、通産省の機械情報産業局に設けられた情報化対策委員会、これの部会が情報処理技術者問題総合調査報告書をまとめております。この調査の対象企業の規模別分布を見ますと、従業員五十人未満の企業が四%となっております。しかし情報処理産業の実態は、従業員五十人未満の企業が六八%を占めると聞いております。その意味で、この調査結果は一定の問題点をつかむ上で価値が少しはあるでしょうけれども、業界の技術者問題を正確に、リアルに反映したものとは言えないと思うのですが、この点どうでしょうか。
  208. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 ただいまお話しのように、昨年十二月に報告書が出されておりますが、これは御承知のように、技術者の問題が情報処理産業施策考えます上できわめて重要であるという観点から、私どもとしてこの報告を取りまとめていただいたわけでございますが、その調査に当たりまして、やはり調査の手法等から見まして、どうしても少し大きな企業に偏らざるを得ないという点があったことはいま御指摘のとおりでございます。全般的に非常に小さい業界の中で、小さい企業ではございますけれども、そのうち大きなところに主として調査の対象が偏ったということはあろうかと思います。ただ、この報告は今回一回限りのものではございませんで、さらに問題点の所在によりまして、それぞれ今後とも検討していきたいと考えておりますので、これ限りで結論を出すといったような性質のものではないということでございます。
  209. 神崎敏雄

    ○神崎委員 さて、一つの具体的な問題として技術者の高齢化の問題が指摘されています。近い将来の問題として、政府として可能な対策があるのか、考えておられる点があれば示していただきたい。
  210. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 今回の調査におきましても情報処理産業技術者、これは現時点ではまだまだ比較的若い層の方が多うございまして、高年齢層の方は比較的少ないということで、当面の問題といたしましてはそれほど大きな問題にはなっておらないかと存じますけれども、いずれにいたしましても、今回の調査におきましてやはり技術者あるいは経営者双方からこの高齢者の問題についていろいろな問題が提起されております。したがいまして、経営者のサイドから見ましてもやはり高齢者についての能力アップといったような問題も考える必要があるというようなことも言われておりますし、私どもといたしましてもこの問題につきましては引き続きもう少し突っ込んだ検討も行いまして、必要に応じまして適切な指導を行ってまいりたい、かように存じております。
  211. 神崎敏雄

    ○神崎委員 次に、この問題での重要な問題点を申し上げたいのは、要員派遣の問題があります。ついに最近ではコンピューター要員派遣業なるものが登場してまいりました。メーカーやユーザーの求めに応じて要員として技術者を派遣するという行為は、職業安定法第四十四条に定める労働者供給事業に該当する違法行為ではないのか、こういう点でいろいろ論議がされておりますが、この四十四条の運用について、職業安定法施行規則四条の第一項で、認められる場合の四つの条件を定めております。その二には「作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。」と明記しております。コンピューター要員派遣の場合は、通常従業員を派遣する会社と受ける会社との間に契約、念書などが交わされておるのであります。派遣する側が、派遣従業員は相手会社の指揮監督のもとに入り、相手会社の諸規則を守らせることを誓わせております。また、片一方は誓っておる。そうして派遣された労働者はいつ、どこで、どんな作業をやらされるのか、すべて派遣先企業の指示に従わされるのであります。もちろん残業、休日出勤、深夜労働も強制されるのであります。極端な例になりますと、A社からB社に派遣され、B社からまたC社に派遣され、C社からさらにD社に派遣されるという事例さえ実際に起こっているのであります。その労働者は、自分がどこの企業の従業員かわからなくなった、こう語っております。身分上の指揮監督を派遣先企業にゆだねたこうした行為は明らかに法違反だと私は考えます。また、賃金のピンはね、中間搾取も行われております。労働者の利益を確保することがそもそもの立法の趣旨であるはずです。情報処理産業で蔓延しているこのような実態について、労働省当局は違法の疑いがあると判断されておられるでしょうかどうでしょうかという点を伺いたいのであります。
  212. 田代裕

    ○田代説明員 ただいま先生御指摘がありましたように、情報処理産業におきましては、産業の性格上から、実際に要員が派遣をされるというような現象が起こっていることは私どももよく承知しております。ただ、この情報産業界の方では、先生からお話がございましたように、常に一定の業務処理に関する請負契約ないしは委託契約というものを締結しているように承知しております。私どもが一般的に承知しておりますのは、いま申し上げましたように業務の処理を請け負うという形の内容になっているというふうに承知しておりますが、大変数多い中でございますので、一般的な言い方で申し上げますれば、先生も御指摘になりますように職業安定法四十四条で禁止しております労働者供給事業に類似する場合あるいはそれに触れる場合も起こり得る場合があろうかと思います。したがって私どもとしましては、個々のケースにつきましてその内容を調査した上で、そういった労働者供給事業に触れるような場合につきましては当然現在それに対する是正指導を行う、こういう考え方を持っております。
  213. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それは、いま指摘したような違法行為である、違法行為的と的をつけてもいいが、そういうことで対応していかれる、こういうように理解していきます。  この種の問題については、ちゃんと五十三年七月に行政管理庁行政監察局が勧告を行っているのです。この勧告の中で、労働者の派遣先企業等での就労状況等から見て、現行法令に言う労働者供給事業に該当する疑いのあるところも見られる、労働省では実態を十分把握していない、こういうように指摘しているのですね。この勧告を受けて労働省では労働力需給システム研究会なるものを設けて、労働力供給事業に対する行政のあり方を検討していることも承知しております、りっぱななにが出ていますから。  そこで労働省に要求したいことは、第一に、労働省として実態調査を行うべきである、第二に、現行法令を守らせる責任を果たすという立場から、情報処理産業などで違反の疑いのある企業についてもっと立入調査を強力にやるべきだ、こう思うのです。さきの方の実態調査をやるということは言われたんですが、第二の方の、違反の疑いのある企業に対して立入検査等を強力におやりになりますか。
  214. 田代裕

    ○田代説明員 先ほど調査をすると申し上げましたのは、現実にそういった疑いが出てきた場合にその個別について調査するということを申し上げました。それから、いま先生お話がございましたようにこの四月に労働力需給システム研究会から提言を受けました。その前に、やはりお話がございましたように五十三年七月に行政管理庁からもいろいろ指摘を受けております。そういった観点から、私どもこの事業の実態につきまして十分よく承知していきたい、こういうふうに判断をしておりますし、また労働力需給システム研究会の提言につきまして、私どもがその趣旨を尊重して具体化を考えます場合においても、当然そういった実情を捕捉する必要があろうかと思います。そういう点では私どもの方も近くそういった意味で、単に情報処理という観点だけでなくて、そういった派遣を伴うような業態について実態の調査をいたしたい、こういうように考えております。  なお、その後で先生からお話がございましたように、違反の疑いがあった場合につきましては、個々のケースに従いまして実際にその事業所から実情を聴取いたしますし、また必要に応じて是正措置をとってまいりたい、こういうように考えております。
  215. 神崎敏雄

    ○神崎委員 もう金の方で時間を食い過ぎて時間がないと言うてきましたので、こっちからかためて言いますからもう一回だけお許し願いたい。  労働者供給事業のあり方について検討、研究されることはともかくとして、その結果が職安法四十四条を骨抜きにすることは許せない。労働者への強制労働や中間搾取を防止して、労働者の権利、利益確保を原則とすることはもう崩さないということが明言できるのかどうか、この点をひとつはっきりしてほしい。  最後に、通産省としても情報処理産業の健全な発展を図る立場で、技術労働者の質の向上、量の確保は欠かせない問題であります。労働省任せにせず、業界の実態把握に努め、必要な場合はその是正を指導するなど、一層の努力を要求しておきたい。通産省としても実情調査と、法令に抵触する行為の是正に着手すると約束ができるかどうか、労働省と通産省と答弁をいただいて終わります。
  216. 田代裕

    ○田代説明員 職業安定法四十四条の趣旨は、先生おっしゃられるとおりに中間搾取とか強制労働とか、そういったものから労働者を保護する観点からつくられているものだとわれわれも考えております。したがって、今後にわたって検討する場合におきましてもこの観点を貫いてまいりたいというふうに考えております。また、需給システム研究会からの提言もそういった観点のもとにあるというふうに考えておりますし、その中で、現在問題になる労働者に対する保護について十分留意をするという前提にも立っております。したがって、今後こういう問題につきましては関係の労使双方からも意見を十分聞きつつ、いまの観点に立って進めてまいりたい、かように考えております。
  217. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 情報処理産業施策考える上におきまして、この技術者の問題がきわめて大きなかぎであるというふうに私ども考えております。そういった情報処理産業所管する立場から、先ほど御指摘のありました点につきましては労働省ともよく連絡をとりまして、今後必要に応じまして適切な指導を行っていきたいと考えております。また、必要な調査も行ってまいりたいと存じております。
  218. 神崎敏雄

    ○神崎委員 どうもありがとうございました。
  219. 塩川正十郎

    塩川委員長 これにて神崎敏雄君の質疑は終わります。  次回は、来る二十二日商工委員会石炭対策特別委員会連合審査会を、二十三日商工委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十六分散会