○近江議員 ただいま議題となりました
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する
法律案について、その
提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
本法は、取引関係で弱い
立場にある下請
事業者の利益の保護を図るため、下請代金の支払いの期間及び支払い条件等について基準を定めておりますが、実際には不況の深刻化等、経済変動の影響が下請
事業者に著しくしわ寄せされ、親
事業者から不当に不利な取引条件を押しつけられる場合が少なくないのであります。
たとえば不況により親
事業者は減産に追い込まれると、下請
事業者に対する発注量を大幅に減らすのみならず、自社の操業率の低下を食いとめるために、それまで外注に出していた
仕事を社内生産に切りかえる内製化を進めることにより、下請
事業者の一方的な切り捨て、あるいは自社生産の減少分をはるかに超える
仕事量の削減を行うのであります。
さらに、親
事業者は
資金繰りが苦しくなると、下請代金の支払い条件についても現金比率を引き下げたり、納品から支払いまでの期間、さらには手形の決済期間を延長して下請
事業者にその負担を転嫁することになります。
言うならば、親
事業者は下請
事業者を景気変動のクッションとして利用しており、景気がよいときは生産費の節減を図るために多くの外注を出す一方、不況時にはこれらを切り捨てて不況の影響を少しでもやわらげようとするのであります。
このように親
事業者は下請
事業者を利用して不況に対処することができますが、下請
事業者にとっては、自己防衛の手段は全くありませんので、その利益を保護するためには法的に十分な
措置が必要なのであります。
この点から見ますと、現行法は一部にざる法とも言われるように、下請
事業者の保護対策としてはきわめて不十分な
内容であります。
そこで、本改正案は下請
事業者の置かれている現状にかんがみ、支払い条件について規制を強化して、親
事業者と下請
事業者との公正な取引を
確保し、もって下請
事業者の経済的利益の保護を図ろうとするものであります。
次に、改正案の
内容について御説明申し上げます。
第一は、下請代金の支払い期日を現行の六十日以内から四十五日以内に短縮することであります。
本来、下請代金は給付受領後遅滞なく支払うべきものであります。しかしながら、
現実は不況となり、
資金繰りが苦しくなると代金の支払い期日を繰り延べる傾向が見られます。
この際、下請代金を速やかに支払い、下請
事業者の保護を図るため、支払い期日を給付受領後四十五日以内に短縮することといたします。
第二は、下請代金のうち、現金支払い
部分の比率を新たに定めることであります。
親
事業者は
資金繰りが苦しくなると、下請代金について現金支払いの比率を下げる傾向が見られます。手形の場合は
金融機関で割り引くとき
一定の割引料がかかりますし、また実際には
金融機関により手形金額の百分の十五ないし百分の三十を歩積みとして強制的に預金させる場合が少なくありません。さらに、手形が不渡りになった場合には、下請
事業者は
金融機関からそれを買い戻さなければならず、それだけ危険負担を負うことになります。
このように、手形による支払いは下請
事業者にとって相当不利な面がありますので、公正な取引を
確保するため、親
事業者は下請代金のうち親
事業者の現金支払い比率の実態及び支払い能力を勘案して、百分の五十以上を現金または小切手で支払うよう努めなければならないことといたします。
第三は、都道府県知事に
中小企業庁長官と同様に本法違反事実に関する立入検査、報告の要求、公正取引
委員会に対する
措置の請求の権限を与えることであります。
現行法ではこれらの権限は都道府県知事に与えられておりませんが、膨大な下請取引の実態について十分に把握し、それに関して必要な
措置を講じて下請
事業者の保護に遺憾なきを期すためには、これらの権限を都道府県知事にも付与することが必要であります。
第四は、親
事業者は下請
事業者との継続的な取引関係を維持するように努めるべき旨の規定を新たに設けることであります。
これは、経済変動により、親
事業者の生産が縮小されると、外注
部分を大幅に減らして一方的に下請
事業者を切り捨ててしまう場合が少なくありませんので、下請
事業者の
立場を保護するために、親
事業者は継続的な取引関係にある下請
事業者に対しては引き続きその取引を維持するよう努めるべきことといたしました。
以上が本
法律案の
提案理由及び要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)