運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-05-07 第91回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月七日(水曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 葉梨 信行君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 山崎  拓君    理事 田口 一男君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 浦井  洋君    理事 米沢  隆君       大坪健一郎君    瓦   力君       北口  博君    小坂徳三郎君       斉藤滋与史君    戸沢 政方君       中野 四郎君    丹羽 雄哉君       八田 貞義君    箕輪  登君       湯川  宏君    枝村 要作君       金子 みつ君    佐藤  誼君       前川  旦君    村山 富市君       安田 修三君    山本 政弘君       谷口 是巨君   平石磨作太郎君       伏屋 修治君    梅田  勝君       田中美智子君    小渕 正義君       塩田  晋君  出席国務大臣         労 働 大 臣 藤波 孝生君  出席政府委員         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省労働基準         局安全衛生部長 津澤 健一君  委員外出席者         運輸省自動車局         整備部保安課長 丹羽 一夫君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 四月二十五日  労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣  提出第五四号)(参議院送付) 同日  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願池田克也紹介)(第四七四五号)  同(岩佐恵美紹介)(第四七四六号)  同(金子みつ紹介)(第四七四七号)  同(河上民雄紹介)(第四七四八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第四七四九号)  同(中路雅弘紹介)(第四七五〇号)  同(広瀬秀吉紹介)(第四七五一号)  同(山花貞夫紹介)(第四七五二号)  同(長田武士紹介)(第四八三七号)  同外二件(大久保直彦紹介)(第四八三八号)  同(小渕正義紹介)(第四八三九号)  同(長谷雄幸久紹介)(第四八四〇号)  同(長谷川正三紹介)(第四八四一号)  同(部谷孝之紹介)(第四八四二号)  新鮮血液確保及び心臓病児者内科的医療費  補助に関する請願河上民雄紹介)(第四七五  三号)  同(北口博紹介)(第四七五四号)  同(林保夫紹介)(第四七五五号)  同(井上泉紹介)(第四八四三号)  同(大西正男紹介)(第四八四四号)  同(柴田健治紹介)(第四八四五号)  同(山田太郎紹介)(第四八四六号)  戦後強制抑留者処遇改善に関する請願越智  伊平紹介)(第四七五六号)  同(辻第一君紹介)(第四八五三号)  同(中路雅弘紹介)(第四八五四号)  原子爆弾被爆者等援護法の制定に関する請願  (池田克也紹介)(第四七五七号)  国民健康保険における傷病手当出産手当の実  施等に関する請願外一件(越智伊平紹介)(第  四七五八号)  国立腎センター設立に関する請願西中清君紹  介)(第四七五九号)  健康保険法改正案撤回、良い医療制度確立  に関する請願河上民雄紹介)(第四七六〇号)  同(小林進紹介)(第四七六一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第四八五八号)  同(柴田弘紹介)(第四八五九号)  良い医療制度確立に関する請願広瀬秀吉君  紹介)(第四七六二号)  厚生年金保険法改悪反対等に関する請願外一  件(石田幸四郎紹介)(第四七六三号)  同(市川雄一紹介)(第四七六四号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第四七六五号)  同(梅田勝紹介)(第四八六二号)  同(庄司幸助紹介)(第四八六三号)  同(大野潔紹介)(第四八六四号)  同(大橋敏雄紹介)(第四八六五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第四八六六号)  同(田中美智子紹介)(第四八六七号)  同(谷口是巨君紹介)(第四八六八号)  同(中路雅弘紹介)(第四八六九号)  同(林百郎君紹介)(第四八七〇号)  同(伏屋修治紹介)(第四八七一号)  同(松本善明紹介)(第四八七二号)  厚生年金支給開始年齢引き上げ反対等に関す  る請願瀬野栄次郎紹介)(第四七六六号)  同(長谷雄幸久紹介)(第四八七三号)  同(正木良明紹介)(第四八七四号)  失対事業の新制度確立等に関する請願中西績  介君紹介)(第四七六七号)  労働行政確立に関する請願井上普方紹介)  (第四七六八号)  同(野口幸一紹介)(第四七六九号)  同(柴田健治紹介)(第四八七五号)  放射線診療部門における診療報酬改定に関す  る請願山下元利紹介)(第四七七〇号)  同(大石千八紹介)(第四八七六号)  同(木村俊夫紹介)(第四八七七号)  同(竹内黎一君紹介)(第四八七八号)  同(古屋亨紹介)(第四八七九号)  民間保育事業振興に関する請願長谷川四郎君  紹介)(第四八三五号)  同(横手文雄紹介)(第四八三六号)  良い医療制度確立に関する請願田中美智子君  紹介)(第四八四七号)  同(渡辺貢紹介)(第四八四八号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願浦井  洋君紹介)(第四八四九号)  同(榊利夫紹介)(第四八五〇号)  同(多田光雄紹介)(第四八五一号)  同(平石磨作太郎紹介)(第四八五二号)  原子爆弾被爆者援護法制定に関する請願(長田  武士君紹介)(第四八五五号)  同(柴田弘紹介)(第四八五六号)  看護職員条約批准のための国内法令整備等に関  する請願二階堂進紹介)(第四八五七号)  国民年金法の被保険者で公的無年金者となつた  重度障害者に対し特例納付制度適用に関する請  願(石橋政嗣君紹介)(第四八六〇号)  労災保険法改正案のうち保険給付民事損害賠  償との調整反対に関する請願石橋政嗣君紹介)  (第四八六一号) 同月二十八日  良い医療制度確立に関する請願枝村要作君紹  介)(第四九五〇号)  同(中島武敏紹介)(第五〇一〇号)  同(田中美智子紹介)(第五〇七一号)  同(村山富市紹介)(第五〇七二号)  国民年金法の被保険者で公的無年金者となつた  重度障害者に対し特例納付制度適用に関する請  願(枝村要作紹介)(第四九五一号)  同(安田修三紹介)(第五〇七四号)  労災保険法改正案のうち保険給付民事損害賠  償との調整反対に関する請願枝村要作紹介)  (第四九五二号)  同(安田修三紹介)(第五〇七五号)  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願枝村要作紹介)(第四九五三号)  同(沢田広紹介)(第四九五四号)  同(部谷孝之紹介)(第四九五五号)  同(前川旦紹介)(第四九五六号)  同(榊利夫紹介)(第五〇〇四号)  同(中島武敏紹介)(第五〇〇五号)  同(田中美智子紹介)(第五〇六四号)  同(村山富市紹介)(第五〇六五号)  同(山本政弘紹介)(第五〇六六号)  重度重複身体障害者労働福祉改善に関する請  願(上坂昇紹介)(第四九八一号)  重度重複身体障害者年金制度改善等に関する  請願上坂昇紹介)(第四九八二号)  新鮮血液確保及び心臓病児者内科的医療費  補助に関する請願野間友一紹介)(第五〇〇  六号)  同(山原健二郎紹介)(第五〇〇七号)  同(四ツ谷光子紹介)(第五〇〇八号)  障害児・者の生活保障等に関する請願山原健  二郎君紹介)(第五〇〇九号)  戦後強制抑留者処遇改善に関する請願(山原  健二郎紹介)(第五〇一一号)  同(齋藤邦吉紹介)(第五〇七三号)  健康保険法改正案撤回、良い医療制度確立  に関する請願二見伸明紹介)(第五〇一二号)  同外一件(新盛辰雄紹介)(第五〇七八号)  厚生年金保険法改悪反対等に関する請願(草  野威君紹介)(第五〇一三号)  同(斎藤実紹介)(第五〇一四号)  同(榊利夫紹介)(第五〇一五号)  同(山原健二郎紹介)(第五〇一六号)  同(田中美智子紹介)(第五〇七九号)  同(山本政弘紹介)(第五〇八〇号)  同(村山富市紹介)(第五〇八一号)  放射線診療部門における診療報酬改定に関す  る請願鹿野道彦紹介)(第五〇一七号)  同(塩谷一夫紹介)(第五〇一八号)  重度戦傷病者及び家族の援護に関する請願外一  件(中曽根康弘紹介)(第五〇六一号)  障害福祉年金改善等に関する請願外二件(小  渕正義紹介)(第五〇六二号)  同(村山冨市君紹介)(第五〇六三号)  安全輸送確保のため労働条件改善等に関する請  願(岡田利春紹介)(第五〇六七号)  同(新盛辰雄紹介)(第五〇六八号)  同(山口鶴男紹介)(第五〇六九号)  同(渡部行雄紹介)(第五〇七〇号)  重度重複身体障害者に対する福祉改善に関する  請願安田修三紹介)(第五〇七六号)  重度重複身体障害者のため労働者災害補償保険  法改正に関する請願安田修三紹介)(第五〇  七七号)  医療保険制度改善及び国民負担の軽減に関す  る請願村山富市紹介)(第五〇八二号) 五月二日  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願飯田忠雄紹介)(第五一三五号)  同(大原亨紹介)(第五一三六号)  同外一件(長田武士紹介)(第五一三七号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第五一三八号)  同(高沢寅男紹介)(第五一三九号)  同(高田富之紹介)(第五一四〇号)  同(楯兼次郎紹介)(第五一四一号)  同(玉置一弥紹介)(第五一四二号)  同(藤田高敏紹介)(第五一四三号)  同(枝村要作紹介)(第五二〇四号)  同(佐藤誼紹介)(第五二〇五号)  同外二件(上原康助紹介)(第五二五一号)  同(北山愛郎紹介)(第五二五二号)  医療保険制度改善に関する請願和田耕作君紹  介)(第五一四四号)  同(沢田広紹介)(第五二〇六号)  同外一件(竹内猛紹介)(第五二〇七号)  同(山本幸一紹介)(第五二〇八号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第五二五四号)  同(上田哲紹介)(第五二五五号)  同(吉原米治紹介)(第五二五六号)  安全輸送確保のため労働条件改善等に関する請  願(小川省吾紹介)(第五一四五号)  同外一件(新村勝雄紹介)(第五一四六号)  同(小野信一紹介)(第五二〇九号)  同(北山愛郎紹介)(第五二一〇号)  同(佐藤観樹紹介)(第五二一一号)  同(柴田健治紹介)(第五二一二号)  新鮮血液確保及び心臓病児者内科的医療費  補助に関する請願高田富之紹介)(第五一四  七号)  同(正森成二君紹介)(第五一四八号)  同(矢野絢也君紹介)(第五一四九号)  同(渡辺貢紹介)(第五一五〇号)  同(左藤恵紹介)(第五二一三号)  良い医療制度確立に関する請願大原亨紹介)  (第五一五一号)  同(渡辺貢紹介)(第五一五二号)  同(安田修三紹介)(第五二一五号)  健康保険法改悪反対等に関する請願寺前巖  君紹介)(第五一五三号)  同(西中清紹介)(第五一五四号)  同(玉置一弥紹介)(第五二五八号)  医療費明細書の交付義務づけに関する請願(瀬  野栄次郎紹介)(第五一五五号)  原子爆弾被爆者援護法制定に関する請願柴田  弘君紹介)(第五一五六号)  看護職員条約批准のための国内法令整備等に関  する請願大原亨紹介)(第五一五七号)  健康保険法改正案撤回、良い医療制度確立  に関する請願外一件(長田武士紹介)(第五一  五八号)  同(柴田弘紹介)(第五一五九号)  同(清水勇紹介)(第五一六〇号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第五一六一号)  同(伏木和雄紹介)(第五一六二号)  同(北山愛郎紹介)(第五二一九号)  同(安田修三紹介)(第五二二〇号)  同(山花貞夫紹介)(第五二二一号)  厚生年金保険法改悪反対等に関する請願外一  件(佐藤誼紹介)(第五一六三号)  同(渡辺貢紹介)(第五一六四号)  同外四件(野坂浩賢紹介)(第五二二二号)  同(安田修三紹介)(第五二二三号)  同(上田哲紹介)(第五二六一号)  同(前川旦紹介)(第五二六二号)  放射線診療部門における診療報酬改定に関す  る請願井上普方紹介)(第五一六五号)  同(上村千一郎紹介)(第五一六六号)  同(金子みつ紹介)(第五一六七号)  同(奥田敬和紹介)(第五二二五号)  同(小山長規紹介)(第五二二六号)  同(石田博英紹介)(第五二六三号)  同外一件(熊川次男紹介)(第五二六四号)  医療保険制度改善に関する請願田口一男君  紹介)(第五二一四号)  歯科医療保険制度改善に関する請願沢田広君  紹介)(第五二一六号)  同(新村勝雄紹介)(第五二一七号)  戦後強制抑留者処遇改善に関する請願(根本  龍太郎君紹介)(第五二一八号)  労働行政確立に関する請願田口一男紹介)  (第五二二四号)  同(吉原米治紹介)(第五二六五号)  東北地方等に冬期暖房料療養担当手当拡大適  用等に関する請願北山愛郎紹介)(第五二五  三号)  保育所施設最低基準改定等に関する請願(箕  輪登君紹介)(第五二五七号)  国立腎センター設立に関する請願米沢隆君紹  介)(第五二五九号)  国民年金法の被保険者で公的無年金者となつた  重度障害者に対し特例納付制度適用に関する請  願(米沢隆紹介)(第五二六〇号) 同月六日  こどもの国協会廃止案撤回等に関する請願  (中路雅弘紹介)(第五二九二号)  福祉医療制度改悪反対に関する請願(中島  武敏君紹介)(第五二九三号)  医療保険制度改善に関する請願安藤巖紹介)  (第五二九四号)  同(岩佐恵美紹介)(第五二九五号)  同(工藤晃紹介)(第五二九六号)  同(渋谷利久紹介)(第五二九七号)  同(新村勝雄紹介)(第五二九八号)  同外三件(田邊誠紹介)(第五二九九号)  同(中林佳子紹介)(第五三〇〇号)  同(山口敏夫紹介)(第五三〇一号)  同(渡辺貢紹介)(第五三〇二号)  同(石田幸四郎紹介)(第五三五五号)  同(浦井洋紹介)(第五三五六号)  同外二件(近江巳記夫紹介)(第五三五七号)  同外一件(井上一成紹介)(第五三九五号)  同(高田富之紹介)(第五三九六号)  戦後強制抑留者処遇改善に関する請願(稲葉  誠一君紹介)(第五三〇三号)  健康保険法改悪反対等に関する請願(藤原ひ  ろ子君紹介)(第五三〇四号)  同(梅田勝紹介)(第五三六一号)  健康保険法改正案撤回、良い医療制度確立  に関する請願松浦利尚君紹介)(第五三〇五号)  同外一件(長田武士紹介)(第五三六五号)  同(高沢寅男紹介)(第五四一七号)  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願松本善明紹介)(第五三〇六号)  同(梅田勝紹介)(第五三四九号)  同(浦井洋紹介)(第五三五〇号)  同(沖本泰幸紹介)(第五三五一号)  同外一件(長田武士紹介)(第五三五二号)  同(北側義一紹介)(第五三五三号)  同(矢野絢也君紹介)(第五三五四号)  同外一件(高沢寅男紹介)(第五三九四号)  歯科医療保険制度改善に関する請願山口敏夫  君紹介)(第五三〇七号)  同(渡辺貢紹介)(第五三〇八号)  同(高田富之紹介)(第五四〇〇号)  厚生年金保険法改悪反対等に関する請願(沢  田広君紹介)(第五三〇九号)  同(田口一男紹介)(第五三一〇号)  同(田中美智子紹介)(第五三一一号)  同外一件(松浦利尚君紹介)(第五三一二号)  同(森井忠良紹介)(第五三一三号)  同(浦井洋紹介)(第五三六六号)  同(大橋敏雄紹介)(第五三六七号)  同(谷口是巨君紹介)(第五三六八号)  同外一件(平石磨作太郎紹介)(第五三六九号)  同(伏屋修治紹介)(第五三七〇号)  同外一件(枝村要作紹介)(第五四一八号)  同(佐藤観樹紹介)(第五四一九号)  同(山本政弘紹介)(第五四二〇号)  労働行政確立に関する請願木下元二紹介)  (第五三一四号)  同(寺前巖君)(第五三一五号)  同(中路雅弘紹介)(第五三一六号)  同(中林佳子紹介)(第五三一七号)  同(則武真一紹介)(第五三一八号)  同(林百郎君紹介)(第五三一九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第五三二〇号)  同(三谷秀治紹介)(第五三二一号)  同(村上弘紹介)(第五三二二号)  同(山原健二郎紹介)(第五三二三号)  同(浦井洋紹介)(第五三七一号)  放射線診療部門における診療報酬改定に関す  る請願木下元二紹介)(第五三二四号)  同(藤田スミ紹介)(第五三二五号)  同(中川一郎紹介)(第五三六四号)  同(山崎拓紹介)(第五四二一号)  医療従事者の増員及び医療改善に関する請願  (田中美智子紹介)(第五三二六号)  こどもの国協会の廃止、民営化反対等に関する  請願中路雅弘紹介)(第五三四八号)  新鮮血液確保及び心臓病児者内科的医療費  補助に関する請願浦井洋紹介)(第五三五八  号)  医療保険制度改善に関する請願楢崎弥之助  君紹介)(第五三五九号)  同(渡部一郎紹介)(第五三六〇号)  同(三浦久紹介)(第五三九九号)  医療費明細書の交付義務づけに関する請願(沖  本泰幸君紹介)(第五三六二号)  看護職員条約批准のための国内法令整備等に関  する請願外二件(中川一郎紹介)(第五三六三  号)  障害福祉年金改善等に関する請願田中美智  子君紹介)(第五三七二号)  同(梅田勝紹介)(第五四二三号)  雇用保障及び労働時間短縮等に関する請願外二  件(伊藤茂紹介)(第五三八九号)  医療法第七十条第一項の改正に関する請願(石  田博英紹介)(第五三九〇号)  医療保険及び厚生年金制度改悪反対等に関す  る請願梅田勝紹介)(第五三九一号)  労働基準法改悪反対、男女平等の実現に関す  る請願田中美智子紹介)(第五三九二号)  母性保護男女平等実現のための労働基準法改  正等に関する請願藤田スミ紹介)(第五三九  三号)  障害児・者の生活保障等に関する請願浦井洋  君紹介)(第五三九七号)  良い医療制度確立に関する請願浦井洋紹介)  (第五三九八号)  労働基準法改悪反対等に関する請願岩佐恵  美君紹介)(第五四〇一号)  同(梅田勝紹介)(第五四〇二号)  同(浦井洋紹介)(第五四〇三号)  同(栗田翠紹介)(第五四〇四号)  同(小林政子紹介)(第五四〇五号)  同(榊利夫紹介)(第五四〇六号)  同(多田光雄紹介)(第五四〇七号)  同(中川利三郎紹介)(第五四〇八号)  同(中路雅弘紹介)(第五四〇九号)  同(中島武敏紹介)(第五四一〇号)  同(中林佳子紹介)(第五四一一号)  同(則武真一紹介)(第五四一二号)  同(林百郎君紹介)(第五四一三号)  同(藤原ひろ子紹介)(第五四一四号)  同(三浦久紹介)(第五四一五号)  同外一件(四ツ谷光子紹介)(第五四一六号)  重度戦傷病者及び家族の援護に関する請願(相  沢英之紹介)(第五四二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣  提出第五四号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働安全衛生法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。藤波労働大臣。     ————————————— 労働安全衛生法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 藤波孝生

    藤波国務大臣 ただいま議題となりました労働安全衛生法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  わが国の建設業国民経済の中で大きな比重を占めておりますが、最近の労働災害発生状況を見ますと、特に建設業において多くの労働災害発生しており、その死傷者数は全産業の三分の一、死亡者数では半数近くを占めるという状況となっております。また、その労働災害内容も、他産業と比較して大規模かつ重篤なものが多数見られるところであります。  政府としては、このような状況にかんがみ、建設業における全般的な労働災害防止対策を進めることとし、その具体的方策につき中央労働基準審議会に検討をお願いしておりましたが、そのうち法律改正を要する事項について先般結論が得られたところであります。政府は、その結論をもとに同審議会改正法案要綱を諮問し、全員一致の適当である旨の答申をいただきましたので、ここに労働安全衛生法の一部を改正する法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一は、建設工事計画安全性に関する事前審査制度充実強化であります。  その一は、工事開始の日の十四日前までに労働基準監督署長に対して届け出されることになっております工事計画のうち、特に危険性が高い大規模建設工事計画については、より適正な事前審査を行うため、工事開始の日の三十日前までに労働大臣に対して届け出させることとすることであります。  その二は、危険性が高い特定の建設工事につきまして、事業者が届け出を行うべき工事計画を作成する際に、工事安全性確保するため、安全衛生に関する一定の資格を有する者を参画させなければならないこととすることであります。  第二は、重大事故発生した場合において新たな労働災害発生を防止し、もって関係労働者の安全を確保するための措置を定めることであります。  トンネル工事等を行う事業者に対して、爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられる場合における労働災害発生を防止するため、必要な機械器具の備えつけ、訓練の実施等を行わせることとすることであります。  第三は、下請混在作業現場における安全衛生対策充実強化であります。  その一は、元請と下請労働者混在している作業現場において、混在による労働災害発生を防止するため、元請事業者機械設備等の配置を含め仕事の適切な段取りを行うようにさせることであります。  その二は、元請と下請労働者混在による労働災害を防止するため、一定元方事業者元方安全衛生管理者を選任させることとし、元方事業者の講ずべき措置のうち技術的事項について、統括安全衛生責任者の指揮のもとに、これを管理させなければならないこととすることであります。  以上、この法律案提案理由及びその内容概要を御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安田修三君。
  6. 安田修三

    安田(修)委員 それでは、ただいま上程されております労働安全衛生法につきまして、関係事項の質疑を行いたいと存じます。  まず、ただいま提案された中にもありましたが、今回の改正経緯の中にいろいろと経過がありますが、特に五十三年の九月に中央労働基準審議会の建議がなされて、建設労働をめぐる安全衛生上の諸問題と対策の方向について、かなり詳細に今日の建設業をめぐった労働諸関係についての問題点の指摘とどうあるべきかということを指摘しております。これに基づいて労働省の方では自後いろいろと検討を重ねてこられたようでありますし、また中基審にも今回の改正に至る問題点の諮問等行われてまいりましたが、しかし私はいろいろ労働省の建設業における労働行政を見ておりますと、今日いろいろと労働災害を繰り返しております建設業にメスを入れるという真剣な姿勢がどうも疑わしいように存ずるのです。  そこで、まず、労働省の方では、非常に問題点があり、しかも日本の労働災害の半数を占めている建設業に対して、一体どのような姿勢で臨んでおられるのか、この点局長からお尋ねしたいと存じます。
  7. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 労働災害の防止の重要性につきましては十分私ども認識しているつもりでございます。労働安全衛生行政につきましては、労働行政のうちでも最重点の一つとして取り組まなければならない、かように思っておる次第でございますし、ただいま御指摘のございましたように、建設業につきましてはその災害が非常に大きく、また中身につきましてもいろいろ問題が多い、こういうことでございますが、全体といたしましては災害の発生状況も、数年上昇の傾向にありましたけれども、若干減少を示しております。今後この建設業を中心にいたしまして労働災害の防止を徹底してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  8. 安田修三

    安田(修)委員 局長は、努力しておるから最近建設業の災害が減少傾向にあるということでありますが、しかし私は皆さんのいろいろな数値、もちろん千人率その他いろいろな統計上おっしゃっていることでありますが、ただ建設業の場合に一つ見ておかなければならないのは、皆さんの場合にも指摘されておりますように、非常に下請関係が重層化しておるということから、たとえば皆さんの手元に入ってくる四日以上の傷害という統計、それ以下の統計上にあらわれないもの、またあっても、現実これは行われておりますように労働災害として届けないという、だからこそ建設業に危険因子がたくさんあって絶えず事故をはらむという危険性があるわけでありますから、そういう要素等があることもこれは付加して見なければならぬ。しかし、そういう付加をなぜ現実いま改めて見なければならぬかということは、申し上げておきますと、たとえば公共事業費が非常にふえてきた五十年以後というのが建設業関係の事故というのは急ピッチに上がっているわけですね。ですから、いまおっしゃったように、事故は少ないとおっしゃるけれども、五十年以降公共事業費が急増する、公共事業は四十八年がピークです。そして、それ以後、四十九年下がって、五十年からこれは不況対策でぐんと上がっていく。死傷者数も、建設業は四十七年がピークで、一たん下がりますが、四十九年が上がります。死亡者数も、四十七年がピークで五十年から急増してきます。こういう関係を見ますと、公共事業費いわゆる景気対策の公共事業建設業というものは非常に相関関係にあるのじゃないか。こういう点を見ますと、いま局長のおっしゃったように、いや建設業は減っているということにならないのじゃないだろうか。  たとえば、産業別重大災害発生状況建設業の占める比率は、四十九年が五八%、五十年四五%、五十一年四五%、五十二年四七%、五十三年六一%。建設業の全産業に占める死亡率は、四十九年四七%、五十年四二%、五十一年四三%、五十二年四四%、五十三年四七・六%。この数字を見て、局長のおっしゃるように、建設業は減っておるのじゃないかということはどこから出るのでしょうか。
  9. 津澤健一

    津澤政府委員 建設業労働災害の動向はただいま先生御指摘のとおりでございまして、特に公共事業が伸びました五十一年以降、休業四日以上の死傷につきましてもあるいは死亡につきましても、ほかのいろいろな要素がございますが、死亡について申しますと、約半分がいわゆる公共工事関係でございまして、その辺の影響が出ておりますことは否定できないことでございます。先ほど局長が申し上げましたのは、その後五十四年に入ってから若干減少の傾向が見えてきたということを申し上げたわけでございます。
  10. 安田修三

    安田(修)委員 私たちは五十四年の統計をまだいただいていないものですから、五十四年減ってきたならそれは幸いです。多少ともいろいろな公共事業が引き締まってきた段階で減った。  そうであれば、私そこでお聞きしたいのですが、公共事業建設業の事故発生関係というのは、私はどうも相関関係あり、こう見るのですが、それに限らず、建設業の事故数が全産業のうちの約半数を占める、死亡率も半数近くを占めるというこの一番の原因は、いろいろな問題がありますけれども、いま私言ったように、公共事業の伸びと建設業というような関係からしますと、皆さんの方ではどういう点が災害原因の、たとえば下請契約が重層化しておるとか、そのために安全衛生が徹底せぬとかという問題以外にどういう関係があるだろうか、労働省の方で把握しておられる状況についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  11. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいま御指摘のように、工事量その他との相関関係は別といたしまして、一般の工場、事業場に比べまして、建設業というのはいわば屋外、しかも工事を行います場所が転々と移動する、あるいは非常に山間僻地での工事が多かったり、また最近では、都会におきましていろいろな社会的制約条件下で仕事をしなければならないというような問題はもちろん客観的にはございますが、そういう中で、最近の技術の進歩に伴います新しいいろいろな機械設備を駆使したりいたしながら、かつまた非常に移動性の大きい労働者の方々を使って仕事をこなしていくという場面で、安全衛生について相当な成果を今日まで上げてまいりましたいわゆる工場等に比べまして、その安全管理のやり方等がなおかなりおくれているといった面について着目をしながら、これを強化しなければならない、こういうふうに見ておるわけでございます。
  12. 安田修三

    安田(修)委員 そこで、私はいま部長のおっしゃった、たとえば労働者の移動が激しいとか、そういうことで事業者そのものにも安全衛生管理面で手抜かりがあり、また習熟し得ないという点を指摘されたんだろうと思いますが、もちろんあるのです。一番問題は、労働省の、これは中央地方を通じて基準行政の中でいつも出るのは、安全衛生教育というのが非常に前面に出てくるのです。もちろんこれは大切です。事業者がまずそれを心がけなければならぬ。公害防止と並んで安全衛生を重視する経営者、このことは当然育成しなければならぬし、その気概を当然これは持ってもらわなければならない。それからまた、今日こういう不況、低成長下で減量経営が進む中で、安全衛生面まで減量しておるのじゃないだろうか。だから、決して災害というのは余り急激に減らない、むしろ漸増傾向にここ数年はきておるのじゃないかということからも、従業員の安全と健康を確保する社会的責任が経営者にも必要であるということからも、私はいろいろと、まず事業者安全衛生教育の考え方、また、従業員も安全衛生に対する考え方というものは持たなければなりませんが、ただ、それは相対的にいまの安全衛生に対する、軸に対する周囲を包むものであって、本来は災害を撲滅する、よく労働大臣がおっしゃるように、災害はまずなくすることが先決である、そのためには、どうも私は労働省のいままで進めておられる方向が多少発想の転換が必要なんじゃないだろうか。そのことは、たとえば第五次の労働災害防止計画が今日行われておるわけでありますけれども、しかし、これは五十三年度から施行ですが、たまたま五十三年九月に中基審の「建設労働をめぐる安全衛生上の諸問題と対策の方向」ということが労働省に建議された、しかもこれが具体化されない、その直後に、皮肉にも、たとえば先ほど言いました労働災害防止計画、五十三年三月十日、それから中基審の建議が五十三年九月、五十四年の三月二十日には上越新幹線の清水トンネルの工事事故が起きておる。これが私は今回の法改正諸関係の原因にもなっておると思うのでありますけれども、まさに皮肉と言えば皮肉だと思うのです。どうもこのことは労働省の建設業における安全衛生行政が全く後追いになっておる。しかも、今回出ているものはまさにほんの部分的なものしか出ていないではないか。事故発生の真相にメスを入れることをどうも労働省はサボタージュしているようにしか私は考えられないわけです。その点で、まず皆さんはこの中基審の「建設労働をめぐる安全衛生上の諸問題と対策の方向について」ということについて、これから大体どういうように具体化しようとしておられるのか。いままでの経過とこれから進められるということについては私はあらましわかっておるつもりでありますけれども、どうも中身に立ち至ったということが見られないわけです。そういう点で、まずそのことをお聞きしたいと思います。
  13. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 五十三年の九月に中央労働基準審議会から労働大臣あてになされました建議でございますが、その内容は大きく分けまして四点だと思います。一つは、工事計画段階におきます対策、第二が、労働安全衛生管理体制の関係、第三が、安全衛生に関する技術基準の問題、それから第四が、安全衛生教育の問題、こういったようなことにつきまして建設業の特殊性のある、こういった実態に対応した労働災害防止対策をやるべきであるという方向をお示ししたものだというふうに考えているわけでございます。  今回提出いたしました法律案は、建議で示された対策の中でまず当面緊急に実施する必要がある事項、それから、ただいまも御指摘のございましたように、最近の重大災害の事例にかんがみて措置する必要のある事項で、新たに法律で規制することが適当だという点を取りまとめたものでございます。それから、そのほかの事項につきまして、行政運営により措置すべきものというふうに指摘しているものもございますが、そのほか政省令の関係で二点。一つは、作業主任者の選任節囲の拡大、仮設機材の構造規格の制定、特別教育の対象業務の拡大、こういったようなことが一つ。それからもう一つは、隧道等の建設作業におきます爆発、火災の防止対策に関する規制の強化、こういった二つのグループの問題につきましては、政省令の改正によりまして早急に対策の具体化を現在図っており、進めているところでございます。  それからなお、行政運営により措置すべきものであるとされております建設業者の安全成績の評価の検討だとか、あるいはセーフティーアセスメント指針の策定、こういったようなことにつきましては、現在専門家の御意見を聞いて、この結果によりましていろいろ対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  建設業に対しますいろいろな労働災害防止対策は非常に広範な形で、先ほど御指摘の労災防止計画にもいろいろ述べておるわけでございますが、それらの点の中で特に今回欠けているようなところを法律事項あるいは政省令事項あるいは行政運営事項として措置していこう、こういうようにやっている次第でございます。
  14. 安田修三

    安田(修)委員 先ほど津澤部長さんのおっしゃるのもいまの吉本局長のおっしゃるのも、労働省の皆さん方の答弁の中に一貫性があるのは、問題の本質に皆さんの場合は行政官庁としては触れがたいところがあるのか、それともいまの労働行政の中でそれに触れるということが行政官庁の立場上差し支えるのか、これが問題になるところでありますが、たとえば先ほどの部長も、この下請関係、しかも労働者が移動性があり、そういう点で安全衛生教育関係も欠ける。もちろんそれだけではないでしょうが、そういうことが前面に出る。いまの局長の考え方にもきわめて技術的な問題が前面に出ます。それらはもちろん必要なのです。それも特に皆さんの場合は安全衛生法の法改正、いわゆる公法ですから強行法規としての一面を持たせながら、これを法の桎梏のもとに規制していくという面は特に考えられるし、またそうでない行政部面では、規則その他でかなり行政指導をしようという二つの面を受けながらやられるという狭い範疇もあるかとは思いますけれども、中基審のこの中に指摘しておるところにいろいろないい問題があるのです。  特に中小企業、零細企業の重層下請機構に根差しておる前近代的な慣行ということを指摘しております。労働省がいろいろ出されている建設行政の中にもそのことはいままでも出ておるわけでありますが、ただその中に、労働者を使用する事業者としての適格性を欠く者が工事を請け負っている例も見られることは大きな問題であるという点を特に指摘しておるわけです。このことは幾つの場面にも派生していくわけですが、たとえばそういう労働者を使用する事業者としての適格性を欠く者に工事を請け負わせていいかどうか、あるいはまたそういう者がある以上は、基準法上どのような指導監督を強めなければならぬか、いろいろな問題があるわけですが、特に対策の方向として出されておるように、たとえば日曜週休制の実施、長時間労働の排除、こういう問題が出ております。先ほどもありますように、公共事業の伸びと比例して建設業の事故発生件数が多いということは、単に技術問題ではない。長時間労働、日曜も休まない。現にそうでしょう。建設業のほとんどの中小というのは、公共事業でやっておる河川工事や道路工事、あるいは公共事業がピークであった二年前あたりは補助整備事業なんというのはどんどん設計図が役所から出るわけで、仕事の工期を終われば、たとえば会計検査院の会計の締め切り近くなりますと、後の検査に影響しますのでもうどんどん追われるわけです。そうしたことでもう日曜もない、あるいは長時間労働もいとわない。このことが当然安全衛生の手抜かりになるし、あるいは設備面でも手抜かりになってきておるわけです。したがって、この日曜週休制ですとか、あるいは長時間労働の排除とか、建設業でいま一番問題であるこのことを皆さんがまず規制することが私は先決じゃないかと思うのです。私は前に郵政アルバイト事件のときにも局長に申し上げましたが、いわゆる四週を通じての週休制の問題について、きわめて弾力のある考えというのがいまだに労働省内の皆さんの考えの中に流れておる。こういう建設業あたりになりますと、このことが全部法の目を逃れて脱法するか、あるいはあえて基準法違反をしながらも摘発されないで労働に従事されておるという実態があるわけですから、そういう点では、いま言いましたように、日曜週休制あるいは長時間労働ということについて労働省はまず建設業の中にメスを入れる必要があるのじゃないかと思うわけですが、その点どうでしょうか。
  15. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 ただいま先生の方から建設業におきます日曜週休制の問題あるいは長時間労働の排除の問題について御指摘ございましたが、私どもも建設業の実態から申しまして屋外労働という特殊性だとかあるいは工期の制約、こういったようなことがございまして、一般の産業と比較いたしまして長時間労働になっておるとか、あるいは雨天によって振りかえ休日が多くて休日が特定しない、こういったような実情にございます。また、時間短縮なり週休二日制の問題にいたしましても、他産業と比較いたしますと、そういった点のおくれが目立っており、こういった点についての改善を図らなければならぬと思いますし、また、災害防止それから健康確保、こういうことからも労働時間の適正化が望まれる、こういうことは先生御指摘のとおりでございます。  私どもといたしましては、こういったような趣旨を踏まえまして監督指導を実施してきておるわけでございますが、そのほか休日の特定化、こういうことにつきまして、ここ数年建設省とも連絡をとりながら各業界団体に対しまして、この日曜週休制の確立を指導してきたところでございます。また、いわゆる長時間労働の排除につきましても、監督に際しまして強く指導をしてきているところでございます。また一昨年の十二月には全国的な監督指導結果に基づきまして、建設業界、各七つの事業者団体に対しまして一種の要請を行い、その中でも労働時間管理の適正化について強く要請を行ったというふうなことでございます。現在、各業界におきましても、そういった日曜週休制の問題、また長時間労働の問題について、従来に比べますと、なかなかそういった実態から言いまして遅々とはしておりますけれども、若干の進歩はされてきつつあるというふうに見ておるわけでございます。
  16. 安田修三

    安田(修)委員 いま指導して、あるいは建設省と連携して申し入れるという話ですが、これは一歩進めて、日曜週休制という問題については、やはり皆さんの基準法上の解釈も余り弾力的な考えを持たないで、とにかくその一週には特定の一日は休ませろということ、まずそこから始めないとだめなのじゃないだろうか。四週を通じてとかいろいろなことが出てまいりますと、あるいはこの前の郵政アルバイトで言いましたように、第一週の一番先と第二週の一番しっぽに休日を置くような、実質は二週を通じて十三日間働かせるような、そういうやり方をやらせるような、それでもなおかつ監督署の方では、現地の方ではいいと言っているような基準行政のあり方ではだめだと私は思うのです。ですから、本来必ず日曜なら日曜週休というのは労働基準法改正をやってしかるべきだ、本当の特定した、ごく限られた業種しか除外例はないというくらいにしなければならぬのですが、いまの場合はそうじゃないですから、その点法改正を待つまでもなく、基準行政の方でびっしり進める。この点、局長どうでしょうか、もうシビアに日曜週休制は建設業の場合必ずやりなさいと。特に雨天とかなんとか建設業の場合絶えず出ますけれども、私のように北陸の者は、それはしょっちゅう降りますと大変ですが、こういう東京中心の関東関係というのは、考えてみますと、天気がいいからよけい工事がはかどって事故が多いのじゃないですか。  どうでしょう、雨の降るところ、雪国、雪の降らないところ、雨の降らないところ、事故発生、関係ないじゃないですか。雨天であるとかないとかというのはもういまでは余り関係ないのじゃないでしょうか、局長さん、その点どうでしょうか。
  17. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 先生の御指摘でございます日曜の全休制をむしろ法定化したらどうかという問題でございますが、私ども、労働時間の問題につきましては五十三年の中央労働基準審議会の建議もいただきまして、当面行政指導でこれを進める、こういうふうな御建議をいただいて、その線で進めておるわけでございますが、建設業におきまして、先ほど来御指摘のような実態にございます。そういう意味で、いろいろな形で監督指導を進めておるわけでございますが、昨年の十一月の調査によりますと、日曜の全休制として制度化している状況は、必ずしも全体ではございませんが、業界の方の資料でございますが、三千五百三十の企業の中で六八・七%がそういった制度化しておるというふうに承知しておりますので、こういった線をさらに徹底させていくことによりまして、御趣旨に沿うようにやってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  18. 安田修三

    安田(修)委員 局長のその六八・何%というのは、それは全企業に対する比率ですか。
  19. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 業界におきましてアンケートをいたしまして、それの集計された企業のうちの六八・七%ということでございます。
  20. 安田修三

    安田(修)委員 建設業の……。
  21. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 はい、そうでございます。
  22. 安田修三

    安田(修)委員 では、集計率は何%ですか。
  23. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 集計率は、全体のは出ておりませんが、公共関係で四四・五%、民間関係で二三・九%、双方で三一・六%程度の集計結果でございます。
  24. 安田修三

    安田(修)委員 こういうデータが出されると、私は全くあきれるのですよ。週休をやっているのは六八・七%ですか、そこでその集計を聞きますと、結局公共関係で四四・五%、民間が二三・九%、平均三一・六%。建設業は、皆さんが指摘し、あるいは中基審も指摘しているように、下請関係は重層化しているというのです。全く網の目にかからぬような下請が、しかもそれは人を二、三人使っているのじゃないのですよ。地方なんかへ行きますと、きょう建設業があって、あすはつぶれる。もう雨後のタケノコどころじゃない。しかも、そこに多くの労働者は現に働いているのです。事務部門は建設業は少ないです。だが、俗に人夫と言われる日雇い労働者を集めている実態は非常に大きいのです。ほとんどそれはこういう調査の中に上がってこない。だから、集計率が民間で二三・九%なんというのは、この程度の統計で普通は全体を推しはかるなんてできますか。それはもちろん無差別抽出調査をした場合は別ですよ。ですから、こういう言い方をされるときわめて誤解を招く。だから、私はこれは素直に受け取るわけにはいかない。改めて日曜週休制という問題は本腰を入れてもらいたい。  さらに、先ほど建設省やほかの行政官庁ともいろいろな話をされておるようなことでありますが、そうであれば、いわゆる公共関係で特に安全経費を別枠で計上して、その経費は入札の対象としない、そういうやり方、あるいは安全衛生行政機関とそれから公共発注機関とが連携を強化して、最底価格落札制度とかあるいは発注の時期の平準化等についてのかなりの調整をする、そういう点まで突っ込んだ、特に公共関係機関が民間に先駆けて率先垂範していく、こういう姿勢が必要ではないだろかと思うわけでありますが、まずこれは局長にお尋ねして、後ほど大臣にも、ここらあたりになりますとお聞きしておきたいと思うわけです。
  25. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたような安全経費を工事費の中で見る、こういったことにつきましては、かねがね私どもも行政の中で建設省とも連絡をとりながらやっておるわけでありますけれども、この安全経費を別枠で計上したらどうかということにつきましては、中央労働基準審議会の先ほど御指摘の建議の中でも実は書いてあるわけでございます。ただ、この問題につきましては、いろいろ進めております中で、たとえば請負金額の中には明らかに安全経費とされるはっきりした部分と、それから施工経費との区分が大変むずかしいという部分とがございまして、安全経費とは何かというふうな問題、あるいはその安全経費を別枠計上するということによりまして、建設事業者の安全に関する措置義務が、計上された安全経費の分限りで免責されるという、責任施工を阻害するおそれがあるというような問題などの基本的な問題もございまして、こういったことを鋭意検討をしておるところでございます。  なお、こういったことの一環といたしまして、私ども、安全経費の実態を調べますために、労働災害防止対策用等に関する実態調査というものを昨年末からやっておりまして、こういったものの調査結果を踏まえて、さらにこれを進めてまいりたいと思っております。  それはそれといたしましても、現実にできるだけ安全経費を計上することは、御指摘のように、大変重要なことでございます。私ども、関係の行政機関と私どもの出先とが互いに相協力いたしまして、災害防止対策を効果的に進めたい、こういうことのために、五十三年ごろから、皮切りといたしまして、建設省、運輸省、農林水産省というようなところと本省ベースあるいは地方出先機関のベースで連絡会議を設置いたしまして、災害防止のための情報交換、効果的な災害防止対策の検討ということをやってまいっておりますが、最近はこれをさらに都道府県、市町村という段階にも広げようとしているところでございます。また、本四架橋公団でございますとか国鉄の新幹線工事というようなものを担当するいろいろな公団がございます。こういういわば超大規模工事を担当するところとも本省、地方、それぞれが各段階において協議会を設置しておりまして、いろいろ連携をとっておりますが、先ほど申し上げましたように、最近は都道府県あるいは市町村というところまで手を伸ばす一環といたしまして、そうしたところにおいて発注でございますとか設計、積算というようなことをおやりになります担当の技術者の方々に対しまして、これらの機関と話し合いの上で研修会というふうなものも方々で進めておるところでございます。こういった事柄を通じて、公共工事発注機関との連携を強めまして、御指摘の安全経費の問題や適正な請負契約というような問題についての配慮が十分なされるように一層努力したいと思っております。
  26. 安田修三

    安田(修)委員 部長のおっしゃる中で一つ聞いておきますと、たとえばこの安全経費の別枠という問題については、安全経費としてなかなか分離、見きわめがたいものが出てくる。当然いろいろな工事経費の中には分離しがたいものがあるでしょうが、ただ私は、そのことが安全経費として分離でき得るように見る、あるいはまた、かなり見きわめるということができるようにならなければ、たとえば今回の法改正の中にトップに出てくる提出された書類、計画に対する検討という、いわゆる事前審査制の問題の中にも、これは設備その他安全関係施設に関する問題が当然中心になるにしましても、予算面からもそのことは皆さんは当然見きわめなければならぬことになりますね。そうすると、いまおっしゃったような理屈では通らないわけです。これとは別に、入札の場合の安全経費を別に見なさいということを私は言っているのだけれども、しょせんは労働行政からすれば一緒のことになってしまうのです。ですから、いま部長の言っていることからしますと、今度の法改正をやっても、第一点は余り意味はないということになってしまうのですね。その点ひとつ聞きたいということ。  それからもう一つ、いまおっしゃったように、本四架橋あるいは都道府県等についても、工事発注その他についての配慮をいろいろと労働省がしているなら、たとえば入札参加者を指名する場合に業者の安全成績、あるいは最近、賃金不払いですぐ雲隠れしてしまうという下層の下請業者、特に業者の安全成績等については、まず適正な施工業者を選定するという立場で行政指導の中に強力に織り込めないか、あるいは私たちにすればこれを制度化してもらいたいが、とりあえずいまの法改正に絡んで皆さんはどういう姿勢で臨むか、この点聞きたいと思うのです。
  27. 津澤健一

    津澤政府委員 最初に御指摘の点でございますが、私どもの方で申し上げました安全経費として分離しがたい部分がいろいろあってむずかしいというのは、いわゆる別枠計上という方法をとろうといたしますとそういう問題があるということを申し上げておるわけでございまして、もちろん実態調査等の結果を踏まえて、たとえば仮設のうちどこまでを安全経費と見るかということについての結論を導いていきたいと思っております。しかしながら、別枠計上ということが実現する前でありましても、工事に必要な安全経費をできるだけ見てほしいという要請は、私どももいろいろな場面で行っておるところでございます。また一方、施工業者の方に対しましても、請負契約そのものが対等の立場で締結されておるということになれば、その施工計画を出されました場合に、安全経費が見積もられていないからできないということは必ずしも言えない場合もございまして、その辺のところは私ども施工業者に対して必要な要請をいたしますとともに、さらに必要があれば発注機関に対して通知、協議というようなことも進めてまいりたいと思っておる次第でございます。  それから、第二番目に御指摘がございました入札参加の問題でございます。請負契約におきまして入札参加者を指名する場合に、業者の安全成績などを考慮いたしまして適正な業者を選ぶということは、建設事業経営者の安全に関する意識を高揚させるとか、あるいは自主的災害防止活動を進める上では大変有効であると思っておりまして、その一環として建設事業者の安全成績を評価しまして、その評価の結果を反映させることが考えられ、これは中央労働基準審議会の建議の中にも指摘されておるところでございます。  ところで、建設事業者の安全成績を適正に評価するということになりますと、非常に多くの問題点がございますことから、中央労働基準審議会におきましても、これは当面行政上の運用によって進めるべきであるという旨の結論を得ておるところでございまして、この結論に従いまして、私ども早急に専門家によります委員会を設けまして、公正な評価項目、評価基準というものを十分検討してまいりたいと思っております。
  28. 安田修三

    安田(修)委員 そこで、私先ほどもちょっと予告しておりましたように、中間的に大臣に答弁を聞きたいわけですが、特にいま聞かれたように、建設関係の実態というのは、日曜週休制ももちろんやってない、長時間労働である、いろいろと行政指導をやってあるとおっしゃるけれども、先ほどの統計の中でも、わずかな統計の中で数字が出るだけ。しかも、行政官庁との関係では、公共事業発注ということでは、特に労働省は姿勢を強くしてまずここからやらなければ、とにかくこういう土木建設工事の多いところですから、これを皆さんがいままでの惰性のままで引き締めることは私はとうていできないと思います。これを締めるには、何といっても発注元である行政官庁関係、都道府県が公共事業から示す、私はこれがまず一番有効な作用になってくると思うのです。  そこで、いまも部長が答弁いたしましたが、適正な施工業者の選定という場合に、たとえば不安全なことばっかりやっているからといって業者の指名を外すことは、その業者にとっては死活問題になります。だが、建設業の中の実態で出ているように、使われる労働者というのは絶えず移動性があるということであります。また、建設業には、きょう生きておってあすは倒産というのもたくさんあります。いろいろな実態の中で非常に不安定な事業面を持っておるわけです。もちろん業者を締め上げるだけが能ではないですけれども、とにかく事故を多発している者は入礼に参加さしてもらえない、こういうようなことがあって、業者としてはもう経営はできないのだ、安全なくしては経営の存立はないということが浸透しなければ、私は建設業では絶対災害はなくならないと思うのです。  そういう点で、これらのことはかなり政治的な判断を要しますので、私は労働大臣に、先ほどからいろんな労働省のこれらの業界をめぐるメスの入れ方について問題点を言っておるわけですが、大臣の考えをお聞きしておきたいと思います。
  29. 藤波孝生

    藤波国務大臣 委員から御指摘をいただきましたように、第一次の石油ショック以後不景気に落ち込みまして、この経済の立て直しをしてまいりますために公共事業を中心にしまして景気浮揚策を講じてきた、そのことは経済の運営としてはそれでよかったわけでありますが、労働災害という面から見ますると、公共事業が非常に多くなった中で建設業界の現場の労働災害が非常に多発していく感じになりまして、実に残念なことになった、こういうふうに考えておるわけでございます。こういった一連の公共事業労働災害との関係は、先生がおっしゃるように、よほど思い切って労働行政の中からメスを入れてまいりませんと、あるいはいろんな角度から一つの仕組みとしてこれを絶滅する方向に向かって努力を重ねてまいりませんと、また少し公共事業が少なくなって、少し労働災害の数が減った、それで安心しているとまたその次に同じように景気浮揚などという手を打たなければいかぬ、経済のそういった循環の中で絶えず労働災害が多くなったり少なくなったりするというような不幸を繰り返してはいかぬ、こういうふうに基本的には考えるわけであります。したがいまして、私は、労働行政がいろいろな面でいろんな手を打っていかなければなりませんけれども、その基本として、あるいは前提として労働安全衛生確保ということについては何よりもやっぱり厳しい態度で臨んでいくようにしなければいけない、このように考えておるところでございます。  いろいろと先ほど来御指摘をいただいておりまして、たとえば日曜には週休でしっかり休むというようなことは、これは労働者福祉の行き届いた生活から見ても当然考えられなければならぬことでございますし、また、一気にばあっと公共事業が発注されるというようなやはり特殊な条件下に置かれてはおりますけれども、しかし労働者の立場に立って考えて見ますると、長時間労働などというものはよほど自制した形で取り組んでいかなければいかぬというふうに考えるわけでございます。  ただ、特に御指摘をいただきました指名業者といったようなことに、安全に関する努力であるとか、あるいはそういった従来の評価といったものを基準にして甲乙をつけていく、ランクをつけていくということにつきましては、それぞれ指名をしまする関係官庁のあることでございますので、労働省が一概に私の立場できちっとしたことを言うというのは非常にむずかしゅうございますので、先ほど来政府委員からお答えをいたしておりますように、十分建設省を中心にいたしましてこういった公共事業の発注者の機関の連携を密にいたしまして、それぞれの諸官庁に対して労働省としての考え方を強く要請をし、指摘をしていく。私の気持ちとしては、これは労働災害の多発しているような業者は、いまもお話がありましたように、指名停止にするというところまで持っていくと今度はその業者がやっていけなくなる、労働者がたちまち路頭に迷うことになるというようなことと非常に関係が深いものですから、ただ一面からだけ申し上げることはできませんけれども、気持ちとしては私はそれぐらいの気持ちを持っておるわけで、みんながそれぐらいの厳しい気持ちで取り組んでいかなければ労働災害を絶滅するなどということは演説の材料にしかすぎないので、やっぱり本当に厳しい、労働災害を一つ起こしたらしばらくもう入礼にも参加できないよというぐらいの厳しい態度が、指名をしていく方の官庁にもあるべきだと思いますし、また業界全体にもみなぎっているのでなければいけない、このように考えるわけでございます。  そういった姿勢をさらに厳しくいたしまして、関係官庁やあるいは関係業界団体と十分連絡をとり合いながら、ひとつ労働災害の絶滅を目指しましてきめの細かい行政を推進してまいりたい、このように考えておりますので、今回の法改正の中に盛り込まれている部分もありますし、あるいはもっと積極的に取り組むべきではなかったか、こういう議員の御指摘に対しましては全く私ども心当たりもずいぶんあるわけでありますけれども、今後の行政の中で取り組んでいくことをお誓いをいたしまして、一応いまの考え方の御説明にかえたいと思う次第でございます。
  30. 安田修三

    安田(修)委員 大臣のそういう気持ちをぜひひとつ行政の中に入れていただいて、これからの法整備の中にもぜひ生かしていただきたいと思うわけです。  そこで、今回の法改正に当たって直接的な部分について少しお尋ねするわけでありますが、今度の事前審査制の中で、これを充実強化されるわけですが、提出された書類、計画に対する検討者あるいはいわゆる技術担当の労働省職員の配置ですとか増員計画、こういう関係は一体どういうことになっていくのか、また、それらの予算化ということもどういうぐあいに裏づけられておるのか、局長にお尋ねしたいと思います。
  31. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 今回の大臣に届け出られた計画の審査につきましては、やはり建設工事についての技術的な、専門的な知識もなければなりませんから、そういった知識を有し、また建設工事安全性について実際に監督指導を行った経験のある産業安全専門官が中心になりまして計画審査を進めるというふうにいたしたいというふうに思っておりますし、また、この審査を進めるに当たりましてはその審査基準の整備といったこともございますので、そういった点につきましては専門家の御意見を聞きながらそういった点を定めてまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、そういった専門官の増強なりあるいはその技術のレベルアップということにつきましても今後充実させてまいりたいというふうに考えている次第でございます。  それから、予算の関係でございますけれども、五十五年度の予算におきましては、請負契約時におきます安全衛生対策の強化のためとか、あるいは労働者に対する安全衛生教育の徹底のための問題、あるいは建設労働者の手帳制度の施行の問題、また中小工事における安全対策といったようなこと、それからいまお話に出ました審査制度、その他この対策に関連した費用ということで突っ込んでございますが、これは建設業全体の予算として必ずしも正確でございませんが、現在の予算として組んでございますのは建設関係につきまして大体二十億程度の予算を組んでおるところでございます。
  32. 安田修三

    安田(修)委員 人員の増員は。
  33. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 人員の関係につきましては、監督官につきましては五十五年度三千百七十八人で前年比で十八人の増、それから安全専門官につきましては三百七十六人で六人増、衛生専門官につきましては二百六十人で五人増、こういうふうに考えております。  また、職員の採用に当たりましては、技術系の職員につきましても重視をいたしまして、この三年間、全体の約半分は技術系の監督官を採用することにしております。
  34. 安田修三

    安田(修)委員 でかい世帯の労働省に非常に微々たるものであります。これはいつの場合でも絶えず議論され、また安全衛生法の関係の改正の都度、附帯決議を出されておるわけでありますから、いまさら議論を何遍も繰り返す必要はございません。これは大臣も再三の議論の中でも、今国会でも増員については努力をするというお話が出ておりますので、ぜひひとつ増員に努力をしていただきたい。そうしませんと、これは今回の法改正の一つの意義がなくなってしまうと思います。  さてそこで、第二点の重大事故発生時における安全確保措置でございますが、今度は救護についての規定が中心になっています。しかし、私はこの重大事故発生もしくは発生前に実効性を上げるためにも、一つは、危険な状況あるいは危険な状況が察知されるとき、あるいはまた災害が発生したときに、まず労働者の判断で現場から退避できるということが、もちろんこれはいま急迫したようなときには労働者の判断で退避はできますけれども、しかし、こういうことがいまの二十五条の中にこれは事業者責任があるわけですけれども、労働者自身の判断でも、このことはできる、場合によっては就労拒否権ということも法の中に明記していく必要があるのではないだろうか。  それから、事故が発生したときには退避口を完全に設置されているかどうか、あるいは燃焼物の持ち込みとその管理がどういうぐあいになっているか、あるいは警報装置などの施設面、これらが十分成っているかどうか、特に皆さんの調査の中でも今日までの警報装置関係では不完全なものというのは四〇・四%挙げられております。それから、周知が不十分なものは三四・二%というのが統計の上から出ております。そういう点では警報装置などの施設面をかなり重視しなければならぬ。こういう点等につきまして、私は今回の法改正の中には触れられておりませんが、もちろん安全衛生規則等あるいは省令等の中には、こういうものは将来出てくるだろうと思いますけれども、できるものは私は法の中に整備していってもらいたい。この点、局長の考えはどうですか。
  35. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、まず労働災害発生をいたしまして、急迫した危険がある、こういう場合には、法文上の特段の規定がございませんでも、労働者は退避できることは当然でございまして、労働安全衛生法では、御指摘のように、さらに労働災害発生の急迫した危険がありますときには事業者労働者を退避させるなどの必要な措置を講じなければならない旨の規定を設けているところでございまして、改めて立法措置を講ずる必要は必ずしもないのではないかなというふうに考えております。  それから、救護のことはあるけれども退避の問題でございますとか、燃えやすいものの持ち込みの制限あるいは警報設備、こういった施設面の充実強化が必要ではないかというような御指摘でございます。隧道などの建設工事におきまする労働災害の防止につきましては、これは大きな災害に結びつく可能性もございますので、すでに現行の安全衛生規則の中でもかなり詳細な規定があるわけではありますけれども、大清水の事故などに見られますような爆発、火災などによる労働災害の防止につきましては必ずしも現行の規定は十分ではございませんでした。そこで、今回御提案申し上げております法律案とあわせまして労働安全衛生規則の改正をいたしまして、これを強化したいということを考えております。このことにつきましてはすでに本年の二月、中央労働基準審議会の答申を受けておりまして、ただいま鋭意省令の改正作業を進めておるところでございます。  御指摘のような非常の場合における退避、可燃物の管理、警報設備の設置などにつきましては、ただいま申し上げましたように、中央労働基準審議会の答申の線に沿って規則改正を進めているところでございますが、いろいろな問題がございます中で、たとえば退避に関する規定の充実、これは充実をしてまいりますけれども、たとえば坑内に退避口をつくるというようなことになってまいりますと、これは爆発また火災の場合に避難場所としての効果がもちろんあろうかと思いますけれども、隧道完成後における取り扱いをどうするかとかいろいろな問題がございまして、一遍に直ちに法令で規制するということはなかなかむずかしいのではないかというので、こういった点につきましては今後の検討課題といたしております。  いずれにいたしましても、ただいま申し上げましたように、トンネル内における爆発、火災の防止というのは非常に緊急を要するということで、ただいまこの法律の問題と並行して、急いでおりますことを申し上げておきます。
  36. 安田修三

    安田(修)委員 先ほど言った労働者が退避する場合、この問題についてこれは法令に明記しなくてもということですけれども、これがなぜ必要かという法理論上の問題についてはいずれの機会にまた皆さんと一遍やりたいと思います。  そこで、いま退避口をつくった場合、隧道の中に後の措置をどうするかといういろいろな問題があるというのですが、検討するということでございますからこれはぜひ検討していただきたい。最近の技術、資金面ですればこれらは何ら支障のないはず、そういう点ではこれは検討してもらいたい。  そこで、たとえば安全衛生委員会で皆さんに計画を出される、先ほど一番初め言いました事前審査制度の場合に計画を出される、その場合に安全衛生委員会における調査審議した意見等も添付させるようにできないだろうか、この点、皆さんの方でどういうぐあいに考えておられますか。
  37. 津澤健一

    津澤政府委員 計画の届け出制度は、事業者が危険な工事を開始しようとする場合などにあらかじめ届けるものでございまして、建設工事のみならずいろいろな場合にあるわけでございます。これは行政が独自の専門的、技術的な判断に基づきましてこの届け出られた計画をチェックすることによりまして、未然に災害を防止するということを目的とするものでございまして、そういう意味で審査に必要な書類を届け出書に添付させることになっておるわけであります。  また、御指摘のような安全衛生委員会というのは事業所の内部の安全衛生管理体制の一環といたしまして、安全衛生問題について労使が協力して調査審議をし、意識の高揚も図る、こういう場でございます。したがいまして、計画の届け出に安全衛生委員会におけるその審議の結果を添付させるということは、私ども必須のものとは考えておりませんが、届け出すべき計画内容、要するに届け出されてくるその中身が、安全衛生委員会において調査審議される、そういう結果が十分反映されておるということは大変望ましいことであるというふうに考えております。  なお、つけ加えて申し上げますが、全く初めて事業所がこれからつくられるというような場合でございますとか、建設工事の現場のように一つ一つが新しくつくられてまいるというような場合には、その事業所の委員会がまだできておりませんので、この場合はただいま申し上げましたことは除かれるかと存じております。
  38. 安田修三

    安田(修)委員 後段の全く新しい場合に、組織のない場合はやむを得ないですけれども、これはそこの労働者がやはり参加をして意見を述べる場、そのことはまた労働安全衛生の場合に労働者の意見がこれは何と言っても非常に大切なんでありますから、そういう点でぜひこの意見を入れるような制度を加えて検討してもらいたいと思うのです。第八十八条をぜひ将来改正と、さらに私は、統括安全衛生責任者の問題で、完全に職務を行わない者に、これは現在勧告権があるわけですが、鉱山保安の場合と同じように行政官庁が解任権を持つことが必要じゃないだろうか。これくらいの力がないと、事業者の中に、あるいは現場作業責任者の中に本当に安全衛生についての実感というものは出てこないのじゃなかろうかと私は思うわけです。そういう観点の法改正についての検討ということは皆さんの中で考えておられないか、この点もお伺いしておきたいと思います。
  39. 津澤健一

    津澤政府委員 現行法上では事業者統括安全衛生責任者を選任してこれに協議組織の設置運営を行うこととか、あるいは作業間の連絡調整を行うことなど、そういった事項を統括管理させなければならないことになっておりまして、これに違反した場合は罰則が適用されることになっております。また、統括安全衛生責任者の業務執行が適正でないと認められるときには、個々にその業務の執行について事業者に勧告ができる、こういうことが決められております。また一方、統括安全衛生責任者というのは一般の事業所であれば工場長とか、それら現場においてその事業の実施を統括管理する、こういう者をもって充てなければならないということも法の中に明記されているところでございます。こういった規定にかんがみまして、私ども事業者に対して統括安全衛生責任者の解任を命ずるというようなことは、これは一つには、事業者の人事権に介入すると申しますか、経営に対して重大な影響を与えるということにもなろうかという問題もあるように思っておりますし、現行法によりまして、幾つか申し上げましたようなことによりまして、業務の執行についての監督権を行使して統括安全衛生責任者の適正な業務執行を確保するということなどにつきまして、今後法律の適正な運用を図っていくということに一層努力したいと思っております。
  40. 安田修三

    安田(修)委員 そこで、時間が参りましたので、大臣に最後に聞いて終わります。  本来は、いま部長もなかなか煮え切らぬ答弁なんですが、建設業関係、先ほど言ったように、安全成績の悪い者は入札させないとか、あるいはそれと同じように孫請以下だったらどちらかと言えばもう建設業は請負契約はさせない、そういうくらいのものが労働省から出て、建設省と建設業法の改正までして入札制度全般に影響を及ぼすというようなことまでやらなければ容易に直らない。いわゆる重層化した請負契約そのものを直さなければなかなか安全衛生管理というものは出てこないのじゃなかろうかと私は思うのです。しかし、それはなかなか、日本の今日の業界の中にそのことをやるというのは、皆さんも政治的に非常にできがたいことだろうと思います。しかし、そのくらいの気持ちがあって労働行政が進まなければ絶対に直りません。  そこで、最後に大臣に、いまの労働安全衛生法が基準法から独立して、しかしこれは労働基準法が何といっても軸であって、これと相まって労働安全衛生行政が成果が上がるわけでありますから、その中でいろいろとこれから安全衛生上、法整備の必要なところはたくさんあります。私たちも本来は安全衛生法として独立した以上はもっともっと細かく法で整備してもらいたいことが、先ほど述べている中にも数点あるわけです。したがって、私は、建設業について引き続き皆さんの方で今回の改正を契機に行っていかれるものと思いますし、また、してもらいたいと思いますが、その点、労働大臣に基準監督官その他の増員等もあわせてこれからの施策について最後に一点お聞きして終わりたいと思います。
  41. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御質疑の中で具体的にいろいろな御指摘もちょうだいをしたわけでございますが、御指摘もいただきましたように、今後なお解決をしていかなければならない幾つもの具体的な課題があるということを私どもも痛切に感じておるわけでございます。気持ちといたしましては、繰り返すようでございますけれども、労働災害発生をした業者というものは本当はそのことが非常に大きな原因になって事業さえやっていけなくなるぐらい、それぐらいに深刻に事前に考えていろいろな対策や計画についての十分な配慮が進められるように行政指導をしでいく、これは基本だろうと思うのですが、同時に、建設業界の契約の仕方、御指摘のように、非常に重層化しておって、下請がさらに孫請までずっと下に連なっていくというような形の中で、非常に無責任な感じがどこかで出てくる、間隙が生じてくる、そこで災害が発生をするというようなところはやはり現実に非常に多く見られるわけでございますから、それをなくするということは、御指摘のように、営業の自由という原則から考えて労働省がどれだけ言ってみてもなかなかすぐに通らない話ではありますけれども、特にこの契約のあり方等につきましては今後も継続して建設省を中心とした関係各省庁と十分協議を重ねまして、こういった現場での労働災害が数が減少していくというふうに持っていくようにあらゆる努力をしてまいりたい、このように考えます。  同時に、御指摘をいただきましたように、十分労働基準の監督指導をしていくという体制を整備していくことも非常に大事でございまして、いろいろと時代が移り変わりますと、いろいろな業界の動きでありますとか地域地域での実情等もいろいろ変化をしてまいりますし、そして労働者が働く現場の様子も態様も変わってまいりますので、さらに監督指導に当たります人員の増強を図りますとか、あるいはより機能が発揮されてまいりますように重点的に取り組んでいくとか、あるいは機動力を発揮をして取り組んでいくとかいったことを従来よりもさらに前進させまして、そういった行政の指導監督が、仕組みの上でも整備をされてまいりますと同時に、体制も整えて行政が前進をしていくという中で事故を絶滅をしていくようにあらゆる努力をしてまいりたい、このように考えておりますので、今後ともいろいろとひとつ御指導や御鞭撻をいただき、私ども真剣に取り組ませていただきまして、日本の労働現場から事故を絶滅をしていくことを目標にいたしまして努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  42. 安田修三

    安田(修)委員 じゃ、終わります。
  43. 葉梨信行

    葉梨委員長 次に、田口一男君。
  44. 田口一男

    田口委員 この改正法案に関連をいたしまして三つほどお尋ねをしたいのですが、第一は、先月四月一日に山口県徳山市にあります出光興産の製油所で反応塔という機械が爆発をいたしました。  このことに関連をして私は他の委員会でも、特に災害対策の面で質問をしたのですが、私はその中で、現地へ調査に行きまして一つ気にかかることがありました。それはこの労働安全衛生法の中にはっきり書いてある第十七条の安全委員会というもののあり方について、確かに法文はいまの日本語からいってもこれ以上言えぬだろう、確かに整備をされた言い方をしているのですが、どうもそれが長い年月の間になれといいますか、そういったことから安全委員会そのものを労使とも重視をしていないのじゃないかという気がいたしました。特に出光興産の場合には労働組合がございません。  そこで、これは局長か部長の方でお答えをいただきたいと思いますけれども、御存じのように、十七条第四項に、労働組合がない場合には過半数を代表する者の推薦という言葉がありますね。私はここで言葉じりをとらえてどうこうというのじゃないのですけれども、労働組合のない職場で過半数を代表する者の推薦を得た安全委員をどうして指名するのだろうか、そういったことがどうも脇に落ちなかったわけであります。  なぜそういう気持ちを持ったかといいますと、四月一日二遍きりのああいう事故ならば不可抗力ということもあるでしょうから、私は追及いたしません。ところが、一週間に同じ事故が二度あったのですね。もっと言うならば、徳山コンビナート地帯では、昭和四十一年以降五十三年までの間に二十一回、二十四回と言う人もあるのですが、二十数回この種の事故が起こっておる。そのたびに今後再発防止のためにがんばります、努力しますということを事業主が言っておるのですが、依然として後を絶たない。幸い四月一日の事故は夜中のことでありまして、人命に被害がなかった。大変結構なことだったと思うのですけれども、私がさっき安全委員会のことをなぜ取り上げたかといいますと、二度も同じ工場で事故が起こった、そうすると、だれ、だってひょっとしたら同じようなところで事故が起こるのじゃないかという懸念から点検をするというのは大体人間の常識だと思うのです。今度の事故はその常識を外れた予想外のところで起こったという説明がありますけれども、そうであったにしても、前車の轍を踏まずということでやるのが普通ではないのか、そういう常識がまかり通らない、安全委員会の機能が眠っておったのではないか、こういう気がいたしたわけでございます。そこで、聞いてみると労働組合がない。しかも、四十八年の大災害のときも同じ工場。地元の市役所なり消防署、それから労働基準局などもいろいろ調査に入って、そこで社長か社長に近い首脳が労働組合のないことを指摘されて、そういったことを十分検討しましょうという約束があったそうです。にもかかわらず、依然として同じようなことになっておる。そういうところから、この法文をつくった労働省の立場から、過半数を代表する者の推薦ということは具体的にどうなっているのか。ちょっと変な質問になって恐縮なんですが、労働組合のない職場が多いでしょうから、通常どういうふうにしてやられているのか、そこをひとつ。
  45. 津澤健一

    津澤政府委員 事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合における委員の選出方法でございますが、これは労働者の投票でございますとか、あるいは労働組合ではない、労働者がつくっているいろいろな組織がございますが、そういうものの推薦とかあるいは労働者の話し合いなどによって行われるというのが一般的であろうと考えております。
  46. 田口一男

    田口委員 出先の山口労働基準局の皆さんをどうこう言うのじゃないですけれども、確かに四月一日の事故についてこういう書類ができ上がっておるのです。これは皆さんにも報告があったと思うのです。「出光興産徳山製油所における第二接触水添脱硫装置反応塔破裂事故概況 山口労働基準局」というもので、わずか二枚の報告書です。これをもとにして私が基準局の方々にお聞きをすると、出てくる答えは、さっき言いましたように、幸い人命に損傷がなかった。ところが、通産省所管の高圧ガス取締法のために一歩進んだ調査、追及がやれませんという言い方なんですね。私はそういう面は否定はしませんけれども、一週間に二度あった。前回の事故を聞いてみると、これは下請業者が起こした事故だ、そのように形態は違うのですけれども、そういったところから安全委員会は機能しておるのですか、この種の事故の再発防止のためにはもっと具体的な作業をやるべきじゃないですかということを安全委員会の付議事項として指導すべきじゃなかったのか、こう思うのです。そうすれば、いま言った過半数の推薦を得ているかどうかは別として、これは労働基準局が言われたことだからひとつ点検してみようということになるのじゃないのか。一週間に二度もあったのですから。その辺のところから、安全委員会というせっかくいい条文があるのですからこれを見直す、再確認させる、こういうことがいまいろいろな制約がある中で労働省として安全を確保する一つの方法ではないのかと思うのですが、それについてお考えを聞きたいと思います。
  47. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のように、高圧ガス取締法の適用を受ける容器が破裂したことに関しましては、その容器の検査等が私ども労働省の所管でないという意味でございまして、そうした適用を受けるものであっても工場全体としての労働災害防止を図るという観点からこの問題に取り組むことは非常に重要なことでございます。そうした問題が再発防止という観点から安全衛生委員会におきまして付議されることも大変望ましいと申しますか、そうある方がよろしいことでございますが、私ども、出光徳山製油所の安全推進委員会について調べた結果を承知しておるところでは、構成員四十一名の中で二十五名が各職場から選出され、任命された委員である、この中には係長とか課長とか、それ以上の職制の者は含まれておりません。このために各職場に委員を推薦するための職場労働者の代表が選ばれておりまして、これは投票とか話し合いで決めるようでございますが、これらの者の推薦によって委員が推薦され、決定されておる。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 かつまた、各職場の労働者の代表の書面による推薦を受けて任命されておることからいたしますと、安全衛生法の趣旨には必ずしも反してないのではないかと考えておりますが、最初に御指摘がございましたように、同じことを繰り返す、四十八年当時のような大災害ではないにしても似たようなことが繰り返し起こることに着目して、こういったことを経営者あるいは労働者が一緒になって討議をしていくというような意味において安全衛生委員会が適正に運営されるように私ども今後とも監督指導はしてまいりたいと考えております。
  48. 田口一男

    田口委員 これは済んだことですから、ここでどうだこうだ深く追及しても何ですが、いま部長おっしゃったように、いまある安全委員会というものを、くどいようですけれども、もう一度再確認するというような一大運動を大臣の通達かなんかでやることが、事故防止の一つの決め手になるのではないか。そういう点でそういったことをアクションを起こされるように要請をいたします。  次に、やはり労働安全また労働衛生という面から困った問題があるのですけれども、本年の四月十五日に私の地元、三重県の桑名市で火災がございました。その火災の原因を調べてみると、ここはヘップサンダルをつくっておる。工場ではなしに一般民家の中でつくっておる。これはもう皆さんの方が専門家ですから、ここでどうこう言う必要もないと思うのですが、このビニールとゴムをくっつけるためにノルマルヘキサンという引火性の強い物を溶かしてつける。ところが、私は現場を後から見に行っていろいろと話を聞いたのですが、市営住宅ですから大きさは大体想像がつくでしょう。そこで、ビニールは寒いと御存じのようにかたくなりますから、ストーブをたいてビニールをやわらかくするのです。それでこする。蒸発性のあるノルマルヘキサンですから、それに火がついて家が焼けたということなんですけれども、そこで聞いてみると、そんな危ない物を扱っておって、初めからわかっておるのですから、もっともっと予防に気をつけたらどうだ、こういう話をしたのですが、いや、そのために換気扇を一つつけました。小さい換気扇をつけておるのですね。それで、前よりはよくなったというのです。集まった人にいろいろ聞いてみると、このノルマルヘキサンは引火性が強いだけではなくて、鼻先でやっておるものですから、そのガスをしょっちゅう吸う。そうすると、中毒になってまるで腰が抜けたように立って炊事なんかできぬわけですね。  そこで、これはここの話ではないのですが、一つの参考として聞いていただきたいのですが、一日三百ぐらいのヘップサンダルをつくる。一足十円の手間賃です。三百というと三千円、朝から晩までもう食事をする時間も惜しいぐらいやっておるのですが、自然に吸い込む。それから、ストーブでたいておるのですからいつ火事になるかわからない。こういう危険な状態で、皆さん一体労災なり何なりに入っておるのですかと言ったら、やせたりといえども事業者なんですね。だから、労災なんか関係がない。何とかならぬですかと今度は向こうから逆に陳情を受けたのですが、こういう場合にいかに労働安全衛生法という法律があっても、こういう形態の、私はあえて労働者と言いたいのですが、方々に対してそれを未然に防止をするための方途、それから不幸にして中毒になったりなんかした場合の労災の扱い、職業病の認定、こういうものがないものかどうか、ちょっとお知恵を拝借したいと思うのですが、またあれば、そういう業者も多いでしょうから、積極的に指導をしてもらいたい、こう思うのですが、いかがなものでしょう。
  49. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 ただいま先生から家内労働者の問題につきまして御指摘がございましたが、特に労災の関係でちょっと申し上げますと、危険有害業務の従事家内労働者につきまして労災保険では特別加入の制度をとってございまして、現在五種類の作業が適用の対象となっておるわけでございます。したがいまして、いまお話のノルマルヘキサンを使用してやっておりますヘップサンダルの製造につきましては、この業務は適用の対象になります。ですから、この制度につきましてまだまだ御理解がないというような点もございましょうと思いますので、私どもは毎回家内労働旬間等をいろいろやっておりますが、そういったPRの行き届かない点はさらに徹底さしてまいりたいというふうに思っておりますし、また関係の団体につきましてもそれぞれの指導なり加入促進も図っていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  50. 田口一男

    田口委員 家内労働の対象になるのですね。では、いろいろな手続があると思うのですが、それはまた後で事務的に尋ねてみたいと思います。  ただ、私はこの火災を契機として痛感をしたのですが、それをやらなくちゃ食っていけない、危険を承知でやっておる。換気扇をつけたら多少楽になりましたという言葉から、作業場を改善をするようなことについて、個人営業ですから個人でやればいいじゃないかということになるのですけれども、聞いてみると零細ですから、そういった融資の道もあるのか。これはおたくの方の所管外でしょうけれども、そういう対象になるということとあわせて、環境整備のためのそういう救済の方法もあるのかどうか、ちょっと念のためにお聞きしたいと思います。
  51. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のように、使われておりますノルマルヘキサンというのは労働安全衛生法の施行令の中の有機溶剤というものに指定されておりまして、このノルマルヘキサンを五%以上を超えて含んでおるような、そういう溶剤は、有機溶剤中毒予防規則にいう有機溶剤等ということになりまして、この規則の適用を受けるわけであります。これはもちろん労働者がいる場合の話でございます。こういうことで労働安全衛生法の適用を受ける事業場にありましては、この規則に基づきます環境管理でございますとか、作業管理、健康管理というようなものは行わなければならないことになるわけであります。  また、家内労働者がこの有機溶剤を用いて屋内で作業を行うというときには、家内労働法によりまして有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備でございますとか、局所排気装置、全体換気装置などを設置するように努めなければならない、こういうことになっておりまして、労働安全衛生法適用事業場におきまして有機溶剤中毒予防規則に盛られたいろいろな事項が遵守されるように監督指導に努めてまいりますことはもちろんでございますけれども、家内労働者につきましても、家内労働法に定める趣旨に沿いまして、局排装置でございますとか、あるいは全体換気というようなものが設置されれるように指導してまいりたいと思っております。こういった設備は、国民金融公庫の産業安全衛生施設等整備資金貸し付け、これは通常私どもは安全衛生の単品融資と言っておりますけれども、こういうものの対象とされております。なお、こうした中毒予防の観点のみならず、ノルマルヘキサンというものは非常に常温でも揮発性が高うございまして、御指摘のように、非常に低い濃度でも爆発あるいは引火というような危険がございますので、そういった面からも、私どもあわせて指導したいと思っております。
  52. 田口一男

    田口委員 どうもありがとうございました。私はこの問題はこれで打ち切りますが、なぜあえて労働安全衛生法の法案審議の際に絡めて言うかと申しますと、労働行政全般、これは釈迦に説法でしょうが、はっきり法律的に労働者であるということがわかっておれば指導の対象になりやすいと思うのですね。ところが、法律的には労働者でもない、どっちかというと自家営業の色彩が濃い、こういう人が世の中にはたくさんおるわけですね。そこで、そういった場合にいかにりっぱな通達を出そうとも、それの徹底がむずかしい。     〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕  いまから申し上げる第三の自動車運転者の労働時間の改善の問題ですけれども、昨年の暮れ、新二・九通達とか言っておるそうですが、私はこの通達を見て、従来の行政指導から大きく前に出てきておる、これで長距離運転手なんかの労働時間がある程度規制をされ、人間らしい生活が送れるんじゃないかという期待を持っておる一人です。ことしじゅうが準備期間だそうですからがんばってほしいと思うのです。だが、この問題でもこの通達に、平たい言葉で言いますとひっかからない労働者といいますか、業者が多いんですね。そこで、きょう運輸省も来てもらっておりますからお聞きをしたいのですが、一体この昭和五十四年十二月二十七日基発第六百四十二号で言われておる通達の対象となる運送業者、IIに対象と書いてございますが、この運送業者の実態、ピンからキリといいますか、大中小含めてどの程度あるのか、それを運輸省ではどういうふうにつかんでおるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  53. 丹羽一夫

    丹羽説明員 お答えいたします。  たとえば、先生いま長距離トラックというような御表現でございましたので、トラックの業者について見てみますと、トラック事業者というのは大体三万事業者ございます。それで、規模別といいますか、零細企業とか大企業とかいろいろありますけれども、運送事業者の持っている車の規模で申し上げますと、五両未満の運送事業者が大体四分の一の約七千百八十事業者。それから、六両から十両まで持って事業をしている運送事業者は八千八百ばかり、これで大体半数になろうかと思います。それから、十一台以上二十台まで持っている運送事業者が八千五百十七、中規模以上になりまして、二十台を超えて五十台までの規模で車を持っている運送事業者は四千八百四十七、それ以上大きなのは、二百台以上持っている事業者も百社余りございますが、おおむねの話で申し上げますと、保有台数が二十台までで運送事業を営んでいる事業者が全事業者の大体八割というふうに理解しております。
  54. 田口一男

    田口委員 いまお話のあった数字は、いわゆる青ナンバーというものだけですか。そうすると、事が複雑になってくるのですが、労働省の方でこういった自動車運転者の労働時間を改善しなければならぬという問題意識を持って、まあ、きょうに始まったことではないのですが、青とか白とかというのじゃなくて、いま長距離輸送とかなんとかやるのに自動車運転手は労働時間が長時間にわたりやすい、正規の工場労働者のように八時間とか七時間ということが守りにくい原因、これをどういうふうにとらえておりますか。
  55. 岡部晃三

    ○岡部説明員 御指摘のように、トラック運転手の労働時間は全産業平均から見まして、毎勤統計で見ましても二十時間ないし三十時間多いという統計が出ておるところでございます。  なぜそのように長いのであろうかということでございますが、これは伝統的な問題も一つあろうかと思います。従来から長時間労働の慣行があり、そこからなかなか脱却できないというふうな一つの歴史的な背景もあろうかと思いますけれども、やはりこの業界は非常に競争が熾烈でございまして、そのために荷主に対して多くのサービスを提供しなければならないというふうなこともございまして、お互いに競争し合う、言うなれば過労のような事態になりましてもやはりそのサービスを提供するというふうな業態からそのようなことになっているのではないかと推察しているところでございます。
  56. 田口一男

    田口委員 そういうとらえ方は、私は一面をついておると思うのですけれども、さっき運輸省は青ナンバーのことを言ったが、私は白ナンバーというものを一体どう見るかということなんです。タクシーの運転者の場合には歩合であるとか、そういう異なった賃金形態であるためにどうしても長時間になりやすい。これはタクシーもそれからダンプの運転手も同じだと思うのですけれども、たまたまちょっと調べてみましたら、最近のはやり言葉でドア・ツー・ドアというのですか、そういうことで、物をつくるのは昼つくる、そして、つくられた貨物は翌朝何時までに親工場に運んでくれ、そうすると夜通し走るわけです。これは大臣も御承知だと思うのですが、大臣の地元の紀勢町とか、ああいったところの魚を東京の築地へ持ってくるのに夜中に走って朝着ける。いまのそういう状態で、どうしたって長時間になるのは避けられない。そこを抑えようとする場合に、青ナンバーの運送業者であれば運輸省の方で、いわゆる運送契約を結ぶ際に労働省のこういう通達をはっきり守りなさい、これは言えると思うのですね、いままでやっているかどうかは知りませんけれども。そういう点で、運送契約の中で運転者の労働時間について規制をするようなことが指導できるだろう。ところが、白ナンバーはどこがやるのですか。労働省がやるのですか。その点、ちょっとお聞きをしたいのです。
  57. 岡部晃三

    ○岡部説明員 白ナンバー、いわゆる自家用自動車でございますが、これは二通りあろうかと考えております。一つは、その白ナンバーを運転している者が労働者性がある場合とない場合でございます。白ナンバーでありましてもその運転者が労働者であるということになりますと、このたびの新改善基準は適用になるわけでございます。したがいまして、その面におきまして厳正に監督指導を実施していきたいというふうに考えるわけでございます。ところが、いわゆる一人一車と申しますか、車持ち運転手と申しますか、そのような白ナンバー運転手ということになりますと、これは労働基準法上の労働者概念にはならないわけでございますので、これにつきましては今回の通達の適用外である、こういう関係になるわけでございます。
  58. 田口一男

    田口委員 車持ち労働者という考え方は採用できぬものでしょうかね。これは一つの例ですけれども、ある漁業協同組合が数台保冷車を持っておって、その採用形態を見ると、自動車の所有者はだれかということになると、形式ですよ、たとえば田口であり、何のたれべえであるということになっているわけですね。そして、たとえば私が車に積んで築地まで運ぶ。その場合は労働者と言えぬわけですね。そこの漁業協同組合が車を所有しておって、私が漁業協同組合に雇用されてその自動車を運転し、運ぶのならばこれは労働者でしょう。ところが、いま言ったように、私の所有である。したがって、白ナンバーである。これは運輸省の方でも何ともしがたいわけですね。これは一つの例ですけれども、これに類したのが、たとえば砂利を運ぶ、それから牛乳を運ぶ、あらゆる業種に白ナンバーがついておる。ですから、青ナンバーがそれに負けてはならぬということで競争をする。これはしようがないという言い方は全く無責任なことになるのですけれども、こういった運転者の方々の調査をした資料もちょっと拝見をしましたが、飯なんかろくにうちで食っていない、子供の顔も明るいとき見たことがない。これらを単に通達で取り締まるとかどうとかということはむずかしいと私は思うのですが、これをほうっておいては大きな災害、日本坂のようなことになるかもしれない。そこを白ナンバーは対象にならぬ、青ナンバーでどうだこうだというふうなことじゃなくて、運輸省、それから関係の建設省、農林省もそうですけれども、そこらと協力をして次第次第にここに出した基発六百四十二号にうたっておるようなことが近い将来守られるような状態をつくり出すべきではないか、こう思うのですけれども、大臣、ひとつ御決意のほどをお聞きいたしまして終わりたいと思うのですが、いかがですか。
  59. 藤波孝生

    藤波国務大臣 白ナンバーについて御指摘のような非常に大きな問題があると私も認識をいたしております。車持ち労働者というお話がございました。実態はまさしくそうだろうと思いますが、形式の上では車運転経営者、こういうことになるわけで、労働者としてとらえてそのための措置を講じていくということになかなかなりにくい。しかし、実態がそういうことでありますから、本人はずいぶん無理をする、働く、労働災害なども起こりやすい、衛生安全上もいろいろそこから問題が出てくる、それが青ナンバーと非常に無理な競争状態にもなっていく原因にもなるというようなことも先生御指摘のとおりだと思います。これはいまたまたま委員からはトラックの運転手という業態についての御指摘がありましたけれども、いわゆる一人親方的な形で労働している人々のいろいろな問題も他の職種についてもいろいろあるわけで、労働省としても非常に長い時間をかけていろいろ検討してきている一つの非常に大事な課題でございます。  今後ともそういった形で働いておられる方々のいろいろ働いていく環境であるとか条件であるとかというような問題について、引き続き検討をしていかなければならない、このように考えておりますが、特に白ナンバーの運転手の方の問題につきましては、いま御指摘がありましたように、運輸省を中心にいたしまして関係省庁とよく相談をいたしまして、労働省は労働省としての考え方を述べつつ、どのようにして対策を講じていったらいいか、どのようにうまくそういった方々を包括して行政指導の対象にして、結果としては御指摘のような方向に、御趣旨に沿ったような方向に向かっていけるのかといったようなことについて十分相談をいたしまして、結果としては御趣旨が生かされるような方向に向かって努力をさせていただきたい、このように考えますので、少し継続的な課題になるかと思いますけれども、時間をいただいて真剣に取り組ませていただきたいと思いますので、御理解をいただきたいと思います。
  60. 田口一男

    田口委員 終わります。
  61. 葉梨信行

    葉梨委員長 この際、午後一時四十五分まで休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時五十分開議
  62. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長所用のため、その指名により、暫時私が委員長の職務を行います。  労働安全衛生法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。平石磨作太郎君。
  63. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今回の法改正は、建設業における大規模災害、これを防止するための安全性確保するために法の改正が行われる、これは大変結構なことであって、もちろん近年におけるこういった大規模災害といったものが非常に多く発生しておる、そういったようなこと、あるいは死亡者数の増加等を考えたときはまことに適切な改正である、このように考えるわけですが、作業の実態というものを考えたときに中小企業者、こういった建設業の方々も非常に災害が多い、こういうことの実態等を踏まえたときに、私はきょうは主にそういった中小規模の問題について質問をしてみたい、こう考えるわけです。  中小規模建設業における労働災害という実態について、ひとつ簡単にお答えをいただきたい。
  64. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のように、わが国は中小企業が企業の数におきましても労働者の数におきましても相当の数を占めております関係もございますが、中小企業における災害は全災害の八割を超えるという実態もございますし、また災害の発生率という面から見ましても、たとえば製造業におきましては、規模千人以上の事業所における災害の発生率に比べまして、百人から三百人という規模におきましては実に五倍の発生率になっておるというような事実もございますし、調査時点はかなり古いものでございますが、三年置きぐらいに調査を実施しております実態からいたしますと、さらに規模の小さい三十人から五十人というところにおきましては、規模千人以上のところの災害に比べると十一倍近くになっておるという事実がございます。
  65. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま明らかにされましたように、中小下請企業というものの災害が非常に多くなっておる、このようなお話でございます。私も全国的なことが十分に把握できませんけれども、高知県の建設業者の災害というものも非常に多くなって、五十四年の統計を見てみますと、死者が三十八名出ておる。そのうちで建設業にかかわっておる者が二十一名の死者が出ておる。それから、五十三年を見てみますと、三十七名の死亡者の中で建設業に関係する者が二十四名。これを見てみますと、大体五〇%から六五%ぐらいは建設業者が死亡者が多いということ。こういう実態から考えたときに、これらに対する指導というものはどのように行われておるのか。そのことについてお聞かせをいただきたいのです。
  66. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 中小規模工事につきまして災害が多いということは、先生御指摘のとおりでございます。特にその中でも問題の多いのが上下水道工事とか木造家屋工事等の小規模工事でございます。下水道の水道工事等の発注機関の協力も得まして、工事の施工状況を把握して、工事が実施されております一定の地域とかあるいは期間を定めまして、いわゆる集中的なパトロール監督を実施したり、あるいは建設業のいわゆる店社別の監督指導、こういうことをやりながら効果的な監督指導を行っている次第でございます。  そのほか木造家屋建築工事につきましても関係団体を通じまして自主的な災害防止活動を促進させるとともに、安全な仮設機材の使用促進を図るための融資制度、こういうものを設けていろいろ国等の援助もしていくということで対処しておるところでございます。
  67. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういうことの指導が行われておりましても、数字の上から言いますと、いま御答弁にありましたように、従業員九十九人以下の事故数を見ましても八〇%に達しておる。こういう状態から見たときに、いまそういうような指導のみではなかなか効果が上がらない。一体何なのかということを考えてみるわけですが、今回の法改正の中で、この大規模建設事業の仕事については三十日前までに労働大臣に安全についてのいわゆる届け出に基づいて事前審査が行われる。この安全審査というのはいわゆる元請の大きな会社が、大規模工事ですから元請が出してきた計画というものをまず事前審査をする。事前審査をしたが、実際は工事においては下請があり、孫請があるわけです。その安全審査は下請、孫請の安全審査も含まれて事前審査を行うのかどうか。この点をお聞かせいただきたい。
  68. 津澤健一

    津澤政府委員 工事計画の審査は、請け負いました工事をどのような形で施工するかという計画でございまして、その計画を実際に実行するに当たりましてはもちろん下請を使ってまいるわけでございます。ただ、工事計画の届け出の段階では主として技術的な内容等が盛られておるわけでございまして、その中でおっしゃいますように、下請をどのように指導し、管理していくかという問題は重要でございますので、この点につきましては法律で届け出を大臣審査にした。大規模工事のみならずその他の工事につきましても、事業者が立てますその施工計画自体が、いろいろな角度から見て安全衛生上問題がないようにという意味合いを含めまして、まず事業者の段階で十分な評価検討が行われる必要がございますので、この指針となるべきセーフティーアセスメント指針というものをただいまつくっております。これを公表し、普及してまいりたいと思っておりますが、そういうものの中には、ただいま御指摘のような下請をどのように管理していくか、あるいはどのような教育をやっていくかというようなことも含めてこれを普及し、指導するつもりでございます。
  69. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それを含めないと、工事が行われる三十日前に元請から出てきた、これだけ審査してこれで終わり。実際の仕事については下請、孫請が仕事をしておる、こういう形で、いわゆる工事計画そのものの中に含まれた安全計画といったものが全く切り捨てられた形において下請に出される。現実に下請はいまの不況の中では元請から受けるときには非常に厳しい条件の中でやられるわけです。したがって、その内容等を見ましても採算無視といったような低い単価でもって下請が行われる。下請の業者は生き延びるためには残酷物語ぐらいの厳しい単価でもって下請をしなければならぬ。そして短い期間、こういったような工期の問題、あるいは有害作業、そういったものについては全く下請の方にそのまま回されてしまうというような実態があるわけです。そういう実態の中で、安全性確保するといったような単価そのものが請負単価の中に出てこない。ここに私は問題があろうと思う。だから、そういったような厳しい単価の中で下請、孫請の者が作業をする場合には、どうしてもそういった安全性とかいったようなことについては手が回らない、お金が回らない、そういう実態で事業が行われる。ここに下請企業の、いわゆる中小企業においての労働災害というものが多発しておるという原因があると私は思うのです。この点は、今回の法改正でそれを含めて云々という答弁がありましたが、本当にそこまで労働省は考えてやられるわけですか、もう一回御返事をいただきたい。
  70. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のように、請負経費の中で安全をちゃんと見なければならないということはそのとおりでございますが、私ども、計画の届け出におきましては、発注者、元請が対等の立場で結びましたその契約の中で、安全衛生に関する法律に違反がないように、あるいはより安全な方法というものについての必要があれば勧告等を行うことを考えておるわけでございまして、そのことにつきまして、請け負いました元方の責任で当然行うべきものは行わなければなりませんが、さらに発注との関係におきまして経費の問題等が起こる場合も考えられようかと思いますので、そのような場合には発注者に対してこういうことをやりますという通知を行いますとか、あるいは協議を行いますとかいうような形で個々具体的に進めてまいりたいと思っておりますが、それらとは別に、やはり特に公共事業等におきまして発注官庁のそうした面に対する理解が必要でございますので、私ども、すでに建設省、運輸省、農林水産省等の出先機関と私ども出先機関との間に災害防止に関する連絡協議会を持っておりますが、これをさらに都道府県段階あるいは市町村段階にも広げて接触を持ち、お互いに相協力して災害防止に知恵を出し合う、御指摘のようなことについても配慮していただくということを求めておるところでございます。たとえて申しますと、このために、市町村段階等におきまして実際に設計をなさり、あるいは積算をなさる方、発注をなさる方、こうした方々に対しまして、安全衛生というのはどういうものであるかというようなことについて、私ども、話し合いの上で講習会等も盛んに実施しておるところでございます。なおまた、元請が下請に、そこで段差ができてはいけないことは当然でございますので、今回の改正におきましても、元方の仕事の一つとしていわゆる作業の段取り等をしっかりやるようにというようなことも加えまして、この実効を上げようと考えているところでございます。
  71. 平石磨作太郎

    ○平石委員 どうもぴんときませんが、第三のところにもありますが、混在作業現場における安全衛生対策充実強化、これも改定内容としてございます。仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械設備等の配置に関する計画を作成することを加えるといったようなことが改正内容にありますけれども、私はどうもこれではかゆいところに手が届かない。こういった、形だけはなるほど形式的にとっておりますけれども、現実に請負の実態というものはそんなものじゃない。やはり私が先ほど指摘しましたように、請負単価というものの中にこういったものが含まれるような、これはちょっと行政指導としてはあるいは立ち入りといったような形で、困難かとは思いますけれども、やはりそこは精査するぐらいのことは、私は必要によっては行っていいんじゃないかと。それぐらい強い行政指導で、全く安全に対する単価も出てこないというような、あるいは点滅灯なら点滅灯もつけておかなければいかぬけれども、そういったようなものもできないような単価で仮に請負に出して、そして下請が受けたというようなことになりますと、これはいかにここで法文上きれいな、計画事前審査をし、あるいは大臣は勧告をすると、これは非常に弱い行政指導ですけれども、それでは実効性は上がらない、もっときめ細かに、しかも強力な、そういったところにまで立ち入った指導というものが大規模については行われないと、いろいろ職員の問題やらあるいは機構の問題やら、あるいは監督官の不足の問題等もありましょうけれども、私はそこまでやはり考えていかないと事故の防止はできないのではなかろうか、このように非常に心配をするわけです。  したがって、この点はひとつ大臣からお答えをいただきたいと思います。
  72. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 ただいまの先生の御指摘、一つのお説として大変傾聴に値するわけでございますが、請負単価についての内容についてまで、そこをきちんとさせろと、こういうことでございますが、関係方面等はその点についてのできるだけそういった配慮をするように私どもも心がけておりますけれども、実際の現場になりますとなかなかそういったところまで徹底はしてない、こういうようなところもございまして、実は苦慮しているところでございます。しかし、先生のそういう御指摘もございますので、なおそういった点についてさらに検討さしていただきたいというように思います。
  73. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それは強く要望さしていただいて、次へ進ましてもらいます。  これは私、業者からお話をお聞きしたわけですが、これは製造業の問題でございます。高知県には、あるいはかまとかあるいはなたとか、そういった打ち刃物の業者が非常に多いわけです。昔でいいますと、かじ屋さんです。これが労働省の方の、監督署あたりの、安全施設をつくってやれという指導がなされておるわけです。高知県の西部鍛造工業連合組合という組合がございます。高知県全体では百八十軒程度のこういった業者がおるわけですが、この鍛造組合の業者は大体三十三ぐらいの小さな鍛造連合組合ですが、ここではプレスでやっておる。このプレスによる災害、指が切れたとか、いろいろな形で災害が多いので、当然これは前回の法改正のときに出てきた、規則で言えば百三十一条の問題、これで現場の監督署あたりは業者に対して安全施設をつくりなさいと、こういったパンフレットまで、これは労働省発行のものですが、こういった資料に基づいて業者の指導がなされておるわけです。これは大変結構なことで、当然業者としてもそういった施設をつくろうと、こういう機運にはあるのですけれども、なかなかそれができない。なぜできないかといいますと、安全施設をつけるということになりますと生産能率が落ちるということです。それで、現状としては大体阪神方面に出荷をいたすのでありますが、ほとんどが半製品、だから大きな会社の半製品をつくる形において阪神方面に出荷をしてから完成品になる、こういう状態で行われて、全く昔からの零細企業の集まりなわけですが、これではとても、自分たちがこれをつけることによって生産能率が落ち、それかといって落ちるということになると、単価の引き上げとかいったようなことが可能であればいいのですけれども、それも意のごとくならないというような情勢の中で、一台当たり十万円もかかる。大体平均的には六台くらいプレスを据えておるわけですが、そういったことで、ただ単に文書でもって指導するとか、あるいは集まっていただいてお話をするとかいったような画一的なことではなかなか実効が上がってまいりません。  この指導については、労働省はおわかりかどうかわかりませんが、どのくらいこの安全施設ができておるのか、これは全国的な数字も含めてひとつお答えをいただきたいと思います。
  74. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のプレスの安全対策でございますが、その安全を確保する方法には実はいろいろございます。御案内のとおり、たとえば安全装置というものによってカバーできるものもございますし、安全装置ではなくて、むしろ囲いとか、そうした簡単なもので防護した方がかえって仕事がやりやすくてかつ安全を確保できるという方法もございます。あるいはそうしたものを使わないで自動あるいは半自動送りというようなものによってその安全性確保する方法、いろいろございます。私ども画一的にどのプレスにもこの安全装置をという種類の対策だけでもって押しているということではございませんで、それぞれの仕事の性質に応じて対策がうまくいくようにしたい、このように考えております。したがいまして、私ども個別の事業所に対します監督指導という方法によりまして皆様方にいろいろその対策をお願いしておるばかりでなくて、御指摘の中にもあったようでございますが、いろいろの地域の組合でございますとか団体でございますとか、そういったところと実情をよくお話し合いをいたしまして、どのような対策が一番よいかというようなことを工夫をしながら進めてまいるというような行き方をとっておるわけでございます。  なお、こうした中小零細企業の方々のために労働安全衛生融資という方法、あるいはこれは若干古い制度ではございますが、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫等の窓口を通じて産業安全衛生施設等整備資金貸し付けというものがございまして、こういうものを利用していただくことも考えておりますし、前回の安全衛生法の改正で入ってまいりました特定自主検査というものの普及のために、巡回点検等の予算措置も行っておるところでございます。
  75. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまいろいろと御答弁をいただきましたけれども、どうもすっきりいたしません。これをつけるということについては、みんなが一緒にそろってやらないと、企業者の中ではこれをつけたものは能率が落ちる、つけなかったものは能率が落ちないということで、企業に事業量の格差が出てくる。それは利潤に対しての格差が生まれる、こういう実態があるわけです。だから、何ぼ指導してもそれはできない。そこは大きなネックになっておるのですから、そういった一つの指導といったものが、不況なんかの場合に不況カルテルを通産省あたりは指導しておるのですが、労働省は、これはカルテルということではありませんけれども、共同でやってください、それで一つの組合なら組合で全員が一挙にやっていただきたい、こういう形の共同作業、共同行為、こういった面での指導というものが伴っていかないと、個々ばらばらに話をしたところで、これはいま言ったような利潤の格差が生まれるし、生産の格差が生まれるし、それでもって現在のような状況の中では非常に経営も困難なというところから、いま融資制度の御答弁もありましたけれども、融資も借ろうとしても借れない。高知県の場合にどのような融資状況にあるのか。恐らくつけた者はないのだから融資はないと思います。高知県の実態を見てみますと、製造業あたりでは事業総数で三千五百四十九、この中で三十人未満のものが三千二百八十一です。それから、三十人以上百人未満の事業所が二百三十三というような実態ですから、これは恐らく全国でもこういった状況でないかと思いますが、ほとんど九〇%が三十人あるいは百人未満のものになっておる。こういうような実態の中では、いま言ったようなネックを解消し、そしてこれの効果を上げるためには、もっと現場の監督署あたりが共同で行うように指導すべきだと私は思いますが、どうでしょうか。
  76. 津澤健一

    津澤政府委員 確かに御指摘のように、私どももなるべく業者団体等にお話し合いを持ちかけまして、みんなが納得のいく線でということを考えておりますが、安全衛生融資にいたしましても、私どもの手元の資料によりますと、高知県下で四十八年から五十二年までにこれを利用されましたのが実は九件くらいでございまして、大変少ないことは事実でございます。そういった意味で、共同でいろいろなことを考えるということは確かに重要でございますので、私どもは現在進めております政策のほかに、もう少し幅広くそうした面を検討してみたいと考えております。
  77. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまお話にありましたが、安全融資については職場環境改善資金制度、これを五十三年度で見ましても全国で百三十五億くらい出ておるようです。高知県では、五十三年ですけれども一件のみで五百三十万しか出てない。こういう情勢の中で、ここに労働省の一つの資料がございますが、労働災害の度数率、これを見ましても、全国の平均から見ましたら高知県の場合非常に高い位置にあるわけです。北海道が一番、高知県が二番といったくらいに、この数字を見ますと非常に労働災害は多い県です。これだけ労働災害が多いのに融資もこれだけしか出てきておらないといったようなことについては、ここにいま私が指摘したような問題点があるのだ、これが含まれておるぞ、このことを私申したいわけです。  一方、融資の関係をこの資料で見ますと、先ほど申し上げましたような高知県あたりの零細な、三十人未満がざっと九〇%もおろうかというような業者のところへ職場環境改善資金をお貸しいたしますといったようなことを触れ込んでも、この対象を見ますと、とてもじゃないがちょっと該当しない。千人以下だとか、まあ千人以下ですから一名でもいいということにはなりますけれども、非常にむずかしい条件があるようでございますので、これらについてはもっと考え方を新たにして、そしてこの組合なら組合とか、あるいは法人なら法人、まあ法人にできないかもわかりませんが、組合なら組合へ貸す、そして組合から又貸しをしていく、こういったような融資についての一つの知恵を出して、これらの資金を融資しながら施設の整備ということについて私はもっと強力な指導が必要じゃないかと思うのですが、その点、お伺いしてみたいのです。
  78. 津澤健一

    津澤政府委員 確かに零細な企業が安全衛生融資の中の職場環境改善資金を使うのが非常にむずかしいということは、私も理解できるように思います。ただ、融資制度というのはいわばあくまでも融資制度でございまして、借りようとする事業所の経営の状態でございますとか、資産あるいは償還能力というものをいろいろ勘案して行うということは避けられないことでございます。そういう意味で、共同して何かができるかという問題でございますが、つけられます安全装置その他機械は個々の事業所のものでございまして、組合共同のものではないという問題もありますので、これをどう処理するか、いろいろ研究しなければならない事柄もあろうかと思います。私どももそうした問題を含めて検討いたしてみたいと思っております。  なお、先ほど申し上げましたいわゆる単品融資と私ども言っておりますが、国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫などいろいろございますが、そういったところから、たとえば安全装置を買いたいとか安全プレスを買いたいという場合にも、財投資金を使った融資制度が別にございますので、そうしたものについてのPRもいたしてみたいと思っております。  いずれにいたしましても、御指摘のような点を含めて、いろいろ困難な問題もあろうかと思いますけれども、私どもも勉強してみたいと思っております。
  79. 平石磨作太郎

    ○平石委員 もう時間もなくなりましたが、いま申し上げたように融資の方法の改善ですね。それから、共同で行うといった形での共同行為の一つの指導、これもやっていただきたいということ。それから、法人であればこれは大変結構なことですけれども、そうでないといったような、法に該当しない、いわば法の網からまだ下におるという実態があるということ。しかも、そういう業者が大変多い、九〇%を占めておる。こういう状況から考えたときに、いま労働省が努力をせられてそういった形のものにそれぞれ手を打たれておられますけれども、それではまだ行き届かない情勢があるということ、これはひとつ御認識をいただきたい。労働災害がそういう零細なところにたくさん出てきておる。だから、この面にもっと目を向けて施策を講じていかなければならぬと私は思うわけですよ。  西部鍛造工業連合組合あたりの実態を聞いてみますと、いま答弁にありました国民金融公庫その他から融資を受けて、もう満度でございますというような話もございます。もう借りる能力がないというような話もありましたが、いずれにしても、低利、長期で、しかも借りやすい一つの方法を考えてほしいと思うわけです。大規模なら大規模といったものも大変結構ですが、法の網からまだ落ちておるという実態が一般には多いことを考えたときに、そういった面についての労働施策を今後研究し、検討してほしい。  最後に、大臣の所見をお伺いして終わりたいと思います。
  80. 藤波孝生

    藤波国務大臣 午前中からの御質疑にもお答えをいたしておりますように、労働行政にはいろいろな分野がございますけれども、労働災害を絶滅する、みんなが、労使、業界あるいは地域、いろいろな角度からそのことを何よりも大事に考えて、今後対策を講じていくということにしていかなければならぬわけでありまして、今回の法改正におきましては、委員御指摘のように、大きなスケールの事業に対しまして、特に啓蒙的な意味も含めて対策を講じていく、厳しい態度で取り組んでいくということを内外に宣明していくことになっておるわけであります。しかし、本当によく実態を見てみると、零細な規模事業労働の現場といったところで、そう目立たないけれども、ずいぶんたくさんの災害が発生している。きめの細かい対策を講じていきませんと、大きな網をひっかぶせようと思うだけではやはり絶滅にはならないというふうに考えるわけでございます。特にきわめて地域的なプレス工業に対する対策等、実例を出していただきまして御指摘をいただいたわけでありますけれども、今回の法改正の中では打ち出せない、御指摘のようなきめの細かい対策を必要とする一つ一つの施策につきましては、今後の行政の中で労働省としても、また出先機関としても十分対応していくようにいたしたい、このように心の底から新たな決意をいたしておる次第でございまして、今後とも御指導いただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
  81. 平石磨作太郎

    ○平石委員 では、以上で終わります。
  82. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、伏屋修治君。
  83. 伏屋修治

    伏屋委員 最初に、大臣にお尋ねをしたいと思いますけれども、四十七年に労基法あるいは労働災害防止法を基本にいたしまして労働安全衛生法制定されまして、以後労働災害というものは非常に減ってきておるわけでございます。しかし、近年になりまして、五十二年以降それがかげりを見せ始めまして増加をしているわけでございます。経済成長が非常に著しい場合にあっては、そういう災害があっても一応認められるわけですけれども、安定成長下に入りまして漸増しておるという傾向、これは非常にゆゆしい問題ではないかと私は考えるわけでございます。  今後の労働行政の中でこういう災害防止をどうとらえて、どういう対策を立てておられるか、その基本的な姿勢について大臣の所見を伺いたいと思います。
  84. 藤波孝生

    藤波国務大臣 午前中からの御質疑にもお答えをしてまいりましたように、第一次の石油ショック以後非常な不景気に見舞われまして、その谷底から何とかはい上がっていこうと、経済の運営の面でいろいろな配慮をいたしましたが、その中心が公共事業を中心とした景気浮揚策であったわけでございます。そんなことからどうしても建設現場の数などがふえる、労働者が非常に現場を移動するといったようなことや、また建設業という仕事の実態が下請、孫請等非常に重層化しているということ等もございまして、それらの中で事故数が非常に増加し、労働災害が多く発生したという形になっておりますことは非常に残念なことでございます。御指摘のように、今後安定成長の社会を位置づけていく、その中でそれぞれ労働の環境につきましては十分対策を講じまして、安全をまず第一に考えていくということでなければいかぬ、これは労働行政の基本として私ども取り組ませていただきたいと思っておるところでございます。  さきに、昭和五十三年度を初年度として昭和五十七年度を目標年度とする第五次の労働災害防止計画を策定いたしまして、大型災害の防止対策、また在来型の労働災害を防止する、さらに職業性の疾病の予防対策、四番目に中小企業における労働災害防止対策、どうしても中小企業は労働災害が頻発しがちなものですから、特に中小企業を一つ取り出して防止対策を講ずる、さらに労働者の年齢が中高年齢化してまいりますと、どうしても安全衛生対策などを適切に講じてまいりませんと労働災害が起こりがちである、こういう年齢の面からとらえた対策を講ずる、こういった一つ一つの柱を立てまして対策の推進を図っているところでございまして、特に労働基準監督官による法違反の是正のための監督指導活動を中心にいたしまして、労働災害防止対策を積極的に推進いたしておるところでございます。特に今日行政改革の時期にも当たっておりまして、これは政府としての非常に大事な政治課題でございますけれども、そのために非常に多様化しておる今日の労働行政に対するニーズに十分こたえ得ないということではいけません。特にこの労働基準監督指導といった面につきましては、従来よりもきめ細かく、しかも厳しい態度で取り組んでいく必要がございますので、こういった体制をさらに前進させるように努力もいたしまして、全国の労働現場で災害の発生しないようにあらゆる対策を講じ、予防措置を講じ、事故の絶滅を期して努力をしていくようにいたしたい、こういうふうな基本姿勢で従来も取り組んでまいりましたし、今回の法改正をお願いいたしますことを契機にさらに積極的に取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 伏屋修治

    伏屋委員 いま労働災害絶滅という強い決意でこの行政に取り組まれるという基本姿勢をお伺いいたしたわけでございます。歴代の労働大臣もそのような姿勢で臨んできたにもかかわらず労働災害が絶滅しなかったということから安全衛生法というものが制定されたと考えるわけでございますけれども、いま各事業場における指導監督というものを強化する中で労働災害の絶滅を期したい、こういう大臣の御所見でございますけれども、その指導監督というものの五十三年の実施状況はどのようになっておるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  86. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 建設業におきましては、先ほど来いろいろお話がありますように、災害の実態が非常に多いということにおきまして、監督指導の観点からもそれを最重点といたしております。五十三年におきまして労働基準監督官の行った監督実施総事業場数は約十七万六千でございますが、そのうちの三四・九%に当たる約六万一千五百事業場が建設業でございます。建設業全体の総数のうち約二〇%程度を実施した、こういうことでございます。  その監督実施の結果を申しますと、そのうち建設事業場数の五六・二%について危害防止その他法令違反を発見し、これに対する是正の勧告を行っているということでございまして、特に危険の著しい法令違反の発見された設備等を有します事業場八千に対しましては、当該施設等の使用停止等の処分を行いますとともに、悪質な事業場につきましては八百五十三事業場について司法処分に付した次第でございます。
  87. 伏屋修治

    伏屋委員 私のいただきました資料を見ましても、建設業の違反が非常に多いということでございます。いまお答えがありましたとおり、総括的な対処の仕方ということをお答えになったと思いますけれども、建設業者の中で、労働安全衛生法の全く基本的な、いわゆる安全基準とか労働安全衛生規則というような面での違反事項が二万件を超えておるわけでございます。そういう面につきまして、労働災害絶滅のためのごくごく基本的なところに多くの問題、違反事項が起こっておるということを強く認識されまして、今後それに対して具体的にどのような方法で対処していこうと考えておられるのか、再度お答え願いたいと思います。
  88. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 ただいま御指摘をされましたように、いわゆる法令を知っておれば十分尽くし得たというようなことにつきましても、かなりそういった点が多いところでございます。そういう意味で、監督機関みずからがいろいろ監督指導をいたしますとともに、元方事業主を含めました実質的な安全衛生管理体制、こういったものを確立させていくとか、安全衛生教育の徹底を図っていくというようなこと、また関係の建設業労働災害防止協会、こういったものの育成強化を図りまして災害防止の一層の推進を図っていこう、こういうふうにいたしておる次第でございます。  なお、建設業におきましては、先生御承知のようないろいろな特殊性もございますので、建設省を初めとしまして都道府県あるいは部内の職安機関とも連絡をとって、建設業自体の労務近代化という点についても行政指導の強化に努めてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  89. 伏屋修治

    伏屋委員 先ほど最初にお尋ねしまして、大臣の災害絶滅の強い決意をお聞きしたわけでございます。その基本姿勢に基づきましてこのような指導監督をやった中で、このように違反事業場の数が多い、これでは絶滅を期することができませんので、何としましても、個々の具体的なケースについても事細かく安全、災害防止のための指導監督をさらに強化されることを要望したいと思います。  次に、今回の法改正の中の事前審査制度の強化についてお尋ねしたいと思います。  従来は三十億以上の工事ということで、金額において大規模工事というものを規定しておったわけでございますが、それを今回の法改正によって具体的な工事規模に規定をいたしておるわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、今後安定経済成長下においては、ここで法改正されたような具体的な工事規模のものがこれから多く施工されると認識されておられるのかどうなのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  90. 津澤健一

    津澤政府委員 建設工事、特に公共工事につきましては、大臣からも申し上げましたように、経費の調整のためにこれを伸ばしたりいろいろなことが行われます関係上、御指摘のように、今後そういう大きい工事がたくさんあるのかということにつきましては、私どもも、現在のようにやや縮小ぎみのときには数は少ないのではないかという気がいたしております。しかし、長い目で見れば、経済計画にもございますように、わが国の社会資本全体をこれからまたふやしていかなければならぬという段階でもございますし、さらには、技術の進歩に伴いまして非常に大型の工事というものが今後どんどん出てくる可能性というものも一方において持っております。私どもの試算では、公共工事が非常に抑制されておる時期には年間二、三十件程度ではないかという気もいたしますが、二、三年前のように非常に盛んなころにおきましては四十件を超えるような数になるのではないかと思っております。ただ、数はそれだけではございますけれども、私どもが目指しております工事そのものは、非常に新しい技術も駆使され、また、そうしたものが大きくなることによって危険性そのものも大きくなるというような問題をいろいろ抱えておりますので、私どもが審査をしなければならない内容というものは相当な質及び量に達するというふうに考えております。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕
  91. 伏屋修治

    伏屋委員 こういう大規模工事の見通し等についていま御答弁があったわけでございますけれども、いわゆる中基審の建議の中でも、このような大規模工事もさることながら、中小規模工事における労働災害の多発というものが指摘されておると思いますが、それらに対してはどういうような対策を持っておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  92. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 先生御指摘のように、災害の発生件数から申しますと、中小規模工事におきまして大部分の災害が発生しております。それに対する対策の樹立が必要であるということは、もう御指摘のとおりでございます。問題の多い上下水道工事とか木造家屋工事等の小規模工事につきましては、工期も短く、工事現場も広範囲にわたっておる、しかも多数散在しておる、また、やる施工業者も中小零細の人が多い、こういうようなことでございますので、災害防止に対しましてもこういった実情に合ったやり方をとっていかなければならない、こういうふうに考えているわけでございまして、このためには、そういった発注機関等の協力も得まして工事の施工状況を把握して、一定の期間あるいは一定の地域、そういったところに集中的なパトロール監督を行うとか、あるいは建設業についての店社別という形でまとめて指導する、こういうような形を考えていきたいと思っている次第でございます。  また、木造家屋の建築工事につきましても、関係団体を通じまして自主的な災害防止活動をさせていきたいということでございますが、なお安全な設備の使用については融資制度等も設けてございますので、そういった活用をしていただくように指導してまいりたいと考えています。  また、今回の政省令の改正といたしまして、木造家屋建築工事のいろいろな技術的な点につきまして省令改正も行って、こういったことに対して災害防止に努めていこう、こういうふうに思っている次第でございます。
  93. 伏屋修治

    伏屋委員 建設業に著しい労働災害があるということから、労働災害絶滅を期しての今回の法改正になったと思います。そして、この安全の事前審査というものを強化していくということでございますが、いまお話がありましたように、現実的に中小規模工事現場における労働災害が多いという面から考えまして、その安全の事前審査というものの適用拡大を中小規模に広げていかなければ、労働災害の絶滅を期すことはできないのではないか、このように考えるわけでございます。そういう面で、安全審査の事前申し出は、いわゆる大規模工事労働大臣、それ以下のものは労働基準監督署長あてに提出ということになっておりますけれども、そこにおいての事前審査制度の強化を考えられておられるのかどうか、その辺を再度お尋ねしたいと思います。
  94. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のように、中小規模工事事前審査というものは重要でございまして、現在監督署長が行うこととなっております対象をいますぐに広げるという考えは持っておりませんけれども、たとえば今回の法律の改正の中で、大臣審査のみならず、監督署長が審査する対象につきましても、事業場の内部でそれらの計画を樹立する際に、一定の資格を持った者が、いわば安全衛生がわかる者がその計画に参加をすることを求めておることでございますとか、あるいはそうした計画がつくられます段階で事業者が参考としていろいろ安全の問題を評価しながら計画をつくっていくという指針となるべき、私どもセーフティーアセスメントと言っておりますが、そうしたものの指針をただいま作成中でございまして、こういったものを公表してそれらに資していきたいということも考えております。  なお、大臣審査の対象あるいは監督署長が審査しております対象をさらに拡大するかどうかという問題につきましては、ただいま申し上げましたようなことについての中身の充実を期しながら実際の運用をいたしてみまして、また災害の動向など見ながらさらに検討していきたいと思っております。
  95. 伏屋修治

    伏屋委員 工事計画の審査、安全事前審査というものもさることながら、やはり中小規模建設業者というものは工期の短縮とか、あるいはそういうものが常識化しておるわけでございます。工事のスピードアップ、工期の短縮、そういうところにいろいろな面での労働災害が起こってくる要因があると思います。そういう面におきまして、事前審査と同時に、やはり常識化しておるところの工事のスピードアップ、工期の短縮等についての監視体制あるいは監督体制をどう考えておられるのか。
  96. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 建設工事につきましては、労働者安全衛生はもちろんのことでございますが、一般労働条件を確保する、こういう観点からも事前審査制度のほか、建設工事の施工段階におきます監督指導も行ってきているところでございます。  先生御指摘のように、工事のスピードアップだとかあるいは工期が短縮することによりまして、労働者安全衛生だとかあるいは一般労働条件の確保に支障を来す、こういうことがあってはならないことでございます。そういう意味で、計画事前審査だけで事足りるのではなくて、施工段階におきましてもそういった問題のないような十分厳正な監督指導を行ってまいりたいと思います。
  97. 伏屋修治

    伏屋委員 先ほどの大規模工事事前審査計画書の提出が三十日というふうに日にちが限られておるわけでございますけれども、それによってその工事計画の変更を労働大臣が命ずることができるということになっておるわけでございます。そういうことを加味しましていろいろ考えたときに、三十日ではややゆとりがないのではないか、もう少し余裕のある届け出制というものが考えられてもいいのではないか、こういうように思うわけでございますけれども、そのあたりはどのようにお考えですか。
  98. 津澤健一

    津澤政府委員 労働大臣の届け出がなされる対象というのは、先ほどもお話がございましたように、非常に大規模あるいは特殊な技術を要するというようなものでございまして、こういうものは実は私どもふだんから関係の省庁あるいは大型の工事を施工することの多い公団等と接触を持っておりまして、比較的早期に情報収集が期待できるわけでございます。また一方では、この審査を行いますための基準等も整備をいたすわけでございますし、そういった面で審査の実施体制を強化するということから効率的な審査を行いたいと思っております。  届け出の期間を制度上さらに長くするということにつきましては、これは発注者との関係あるいは事業者の負担というような問題でいろいろむずかしい面がございます。しかし、三十日という法律上の決めではございますけれども、できるだけ早期に届け出がなされるように指導いたしたいと思っておりますし、特に私どもがそれを審査をいたしまして計画の変更命令などを出そうというようなことがあります場合には、それもその期間内であって、かつ、できるだけ早く迅速にこれをやるということに心がけてまいりたいと思っております。
  99. 伏屋修治

    伏屋委員 次に、監督体制の強化ということについて二、三御質問したいと思います。  都営住宅とか住宅公団等の工事現場では監督官が余り来ない、あるいは極端なところでは一度も監督官を見たことがない、そういうような声も現地にあるようでございます。こういうようなことは労働省の監督範囲から除外されているのかどうなのか、それを御回答願いたいと思います。
  100. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 先生いま御指摘の住宅公団等におきます工事現場、これは決して対象から除いているわけでございませんし、特に団地づくりというような形でやっているところにつきましては、出先の監督署として重点事項としてとらえているはずでございます。
  101. 伏屋修治

    伏屋委員 除外されておらないとすると、現地の声が、二度も監督官を見たことがない、こういうことになってまいりますと、労働災害の責任の所在というものは非常に不明確になってくるわけでございます。また、災害の絶滅も期すことができない。そういう面から安全監督者をいま労働省としてどのように割り当て、人数が少ないからそういうところへ行けないのかどうなのか、また今後どのようにしてそれを充当するように対処していこうとしておられるのか、お答え願いたいと思います。
  102. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 労働基準監督官は、現在約三千人の人々が全国各地の監督署に配置されまして、労働安全衛生を重点としながら賃金等労働時間の問題につきましても行っているところでございます。いわゆる建設工事の業務だけのために監督官を配置することは人員等の面から困難でございますけれども、やはり建設工事自体、災害が多発しているということでございますので、それを重点として監督指導を行っているわけでございます。また、そういった監督官の専門的な知識、能力に対応できるような監督体制の整備充実を今後とも図ってまいりたいと思っております。  それから、大変恐縮でございますが、先ほどの監督実施状況のいわゆる使用停止処分等の件数で、私が申しましたのは、五十二年の数字でございました。五十三年は、使用停止を行いましたのが一万二千件、司法処分にいたしましたのが七百八十三件ということでございますので、恐縮でございますが、訂正させていただきます。
  103. 伏屋修治

    伏屋委員 災害防止指導員制度というのがあるわけでございますけれども、いままでこの法改正のたびに附帯決議の中でもこれが言われておるわけでございます。しかし、労働省はこの災害防止指導員の活用というものに余り積極的に取り組まれておらないというようなことを聞くわけでございますが、災害防止指導員の活用状況、またその人々が全国で大体どれくらいいるのか、その辺についてお答え願いたいと思います。
  104. 津澤健一

    津澤政府委員 労災防止指導員は、現在全国で千五百五十四名選任されておりまして、これらの方々が活躍なさいました数は、五十三年について申し上げますと、約三万五千事業所になっております。御承知のように、労災防止指導員というのは民間の方々でありまして、産業安全衛生に関する学識経験が豊かな方でございまして、それらが中小企業等における安全管理の指導をしていただくということで御協力をいただく制度でございます。その活用につきましては、各地の実情に応じて円滑に運用がなされるようにということで、都道府県労働基準局長が定めました指導計画というようなものに沿ってできるだけ実績を確保するように、いま各局を督励しているところでございます。これには毎年その獲得に努力しているところでございますけれども、予算上の制約等もございまして、ただいま申し上げましたような数字にとどまっておるということでございます。  なおまた、これらの方々によりよい指導をやっていただくために必要な研修等も実施するように努力いたしておりますが、こういったものがさらに機能を発揮するように今後とも一層努力をしてまいりたいと思っております。
  105. 伏屋修治

    伏屋委員 その活用が不十分であるということ、あるいはこの制度が余り生かされておらないというようなそしりを払拭するためにも、労働省が今後積極的な運用を図っていかなければならないと考えるわけでございますが、その点は強く要望しておきたいと思います。  次に、労働安全衛生コンサルタントの活用でございますけれども、現在コンサルタントとして登録されておる人々はどれほどいるわけですか。
  106. 津澤健一

    津澤政府委員 安全衛生コンサルタント試験は、四十八年以来七回実施してきておりますが、労働安全コンサルタントの受験者は二千百十人、合格者は五百二十九人、それから労働衛生コンサルタントの方は受験者が二千五百十七人、合格者が八百六十七人、また登録をいたしております者は、労働安全コンサルタントが三百七十八人、労働衛生コンサルタントが四百九十五人、このようになっております。
  107. 伏屋修治

    伏屋委員 いま受験者数、合格者数等もおっしゃっていただいたわけでございますが、現場で経験をしている者にとりましてもこのコンサルタントの資格試験というのは非常に厳しいというような声があるわけでございます。しかし、今後労働災害の絶滅を期すためには、現場で貴重な経験を積んでおられる方々に対する登用の道をもっと大きく開いて災害防止に積極的に努めていかなければならない、このように考えておるわけでございますけれども、そのあたりはどのように考えておりますか。
  108. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のように、確かに非常にむずかしいという声もございます。しかし、安全コンサルタント、衛生コンサルタントと申しますのは、やはり高度な知識をお持ちになって、しかも、その能力によっていろいろな場面からの診断、指導の要求にこたえていかなければならぬという方々でございますので、急にやさしくするというようなことは実は考えておりませんけれども、現在の資格制度というものを堅持しながら、御指摘のように、本当に実力のある方が合格されるようにという意味から、試験のやり方、試験の内容、そういったものにはさらに工夫を要するのではないかという点を私どもも感じておるところもございますので、そういった点について御趣旨に沿うように検討を進めてまいりたいと思っております。  それから、こうしたコンサルタントを積極的に活用すべきではないかということでございますが、確かに新しい技術などがどんどん入ってまいります世の中でございますので、専門的な立場からいろいろ検討すべき問題も多く、かつまた先ほど来御指摘がございますように、中小企業という多くの問題を抱えております多数の対象をこれらのコンサルタントに依頼をいたしまして指導していただくという機会もこれからふえてこようかと思っております。実はこういう情勢のもとで、コンサルタントが積極的に仕事をするというような意味合いで、自分たちの研さんというようなことも含めてひとつ大同団結をしようではないかというような動きもございますので、こういった動きともあわせて、これらの方々の活用についてさらに工夫をしてまいりたいと思っております。
  109. 伏屋修治

    伏屋委員 最後に、労働手帳の発給についてお尋ねしたいと思います。いま試行中でございますけれども、現在どれくらいの労働手帳を発給しておるのでしょうか。
  110. 津澤健一

    津澤政府委員 この手帳制度でございますが、ただいま御指摘のように、昨年の暮れごろから試行に入ったばかりでございまして、発給いたしております数は、ただいまのところ約六千名でございます。
  111. 伏屋修治

    伏屋委員 建設労働者四百万といわれておる中での六千名ということになると非常に低い率であるわけでございます。試行中であるということから、それは一応は肯定するといたしましても、これから労働災害の絶滅を期するために、いわゆる雇用関係というものを明確化するために、この労働手帳というものを考えられたと思いますので、そういう面をもう少し明確にしていただきたいと思いますし、また試行期間が二年ということでございますけれども、この試行が終わった後に、四百万の全建設労働者をこの労働手帳の対象にしていくお考えがあるのかどうか。聞くところによりますと、いまこの六千人という対象はいわゆる長大トンネル労働従事者というふうに限定しておられるようでございますけれども、やはりこれを全建設労働者に広げていかなければ労働災害の絶滅を期することはできないと考えるわけですが、この点について大臣はどういうお考えを持っておられるか、最後にお尋ねします。
  112. 藤波孝生

    藤波国務大臣 建設労働手帳につきましては、現在、建設業労働災害防止協会で手帳制度についての試行を含む調査研究を行ってもらっておりまして、鋭意その試行が進められておるわけでございます。今後の取り扱いといたしましては、これの実施に当たっての問題点というのが幾つか出てくるだろうと思います。その問題点を十分に解明をいたしまして、実施に移していく場合にいろいろな意味で不公平になったりすることのないように、あるいはそのことによって繁雑になったりすることのないように、所期の目的が達成されるように十分こなしていく必要がございます。したがいまして、そういった問題点の解明をいたしまして、その結果を見て対処していくようにいたしたい。  これは省内のことになりますけれども、ぜひ労働災害を絶滅をしていく、特に建設労働者についてそういった配慮を加えていくといった面での労働基準行政の面と、それからやはり職業安定行政としての中でこれをこなしていく、建設業界の雇用関係として一つの仕組みを確立していかなければいかぬというような問題もございますので、省内でのそういった調整も十分進めながら解明を進め、そして実施に向かって前進をさせていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  113. 伏屋修治

    伏屋委員 終わります。
  114. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 次に、梅田勝君。
  115. 梅田勝

    梅田委員 労働安全衛生法の一部を改正する法律案につきまして質問申し上げます。  今回の改正案は、最近の建設工事の大規模化とそれに伴います労働災害増加の傾向に対応する、そういうものでありまして、一応改良法案といたしまして了承できるものではないか、かように考えております。しかし、建設工事計画安全性につきましての事前審査制度にいたしましても、また重大事故発生いたしました場合の安全確保措置といった問題にいたしましても、現在の安衛法を有効に運用すれば防ぐことも可能であろうと思うわけであります。言いかえたら、今度の改正案をやることによってそれでは万全が期せられるのかということになりますと、実際の法律の運用におきましてどういう効果を上げるかという行政の側の積極的な対応というものがなければ、せっかくいい法律をつくりましても効果を上げない、名だけになるということになろうかと思うのです。  現行法におきましても労働基準監督署の権限あるいは場合によりましたら労働大臣の監督ということが規定されておるわけであります。しかし、それでうまくいっておるかということになりますと、そうではないというのが現実に数字で出ておるわけであります。労働省の監督されました資料によりましても、定期監督の実施状況安全衛生法関係でどれだけの法違反があるかということの資料を拝見いたしますと、実に建設業におきましては二万九千四百六十四事業場、五六・二%が違反しておるということが、これは定期に監督された限られた事業場の中で出てきておるということは重大であろうと思うわけであります。とりわけ安全基準で違反しておるというのがその中で約三分の二を占めているという数字が出ております。  それから「建設業における計画の届出及び差止め・変更命令等の状況」というのがございますが、これも五十三年度におきまして八千二百六十五件に対して、そのうち工事着手差しとめ、計画変更命令を出したのは七十五件、わずか〇・九%に過ぎない。労働大臣が審査した安衛法八十九条に基づくものは、要するに審査した事案はない、したがって勧告も要請もないというのが手元の資料にあるわけであります。現行制度でもしかるべく監督せい、できるということになっておりましてもやってないということがあるわけであります。  今度このように法改正をして大いにやるんだと言いましても、労働省の姿勢が積極的でなければこれは実が上がらぬ、名だけになるということになりますので、この点につきまして、事前審査制度そのものについて若干お伺いしたいと思うわけであります。  一つは、先日聞きますと、事前審査の対象と範囲につきましては特に大規模一定のものということになりまして、中央労働基準審議会労働災害防止部会の中間検討結果報告に対象建設工事として七項目具体的に挙げられておりますけれども、その数値は何を基準にして決められたのか。たとえば、最大支間五百メートル以上の橋梁の建設工事というようにありますが、先日伺いましたら、これは本四架橋を想定してやっているようでございますが、大体いままでやったことのないようなでかい工事を新たな対象にしようという考え方があるようであります。現実に災害が起こっておるわけでありますから、それを少なくしていこうという積極的な労働省の姿勢としてはこれではちょっと弱いんじゃないか、もう少し対象を広げていく必要があるんじゃないかという問題が一つ。  いま一つは、それではその審査案件は年間どれくらい出てくるのか。伺いますと、四、五十件ぐらいあるんじゃないかということでありますが、中央の方にそれだけの審査体制があるのか。先ほども議論があったようでございますが、建設関係で中央産業安全専門官として専念できるのは、ことし初めて一人増員をして四人だということです。これは件数を想定した場合、果たして三十日間にできるのか。結局、できるとしてそこから逆算して大体いけそうな範囲の工事に限定をしていく、体制が伴わぬから体制から逆算してその対象を考えていく、こういう発想では今回法改正を大いにやられた趣旨からいたしますと弱いんじゃないかということをまず最初にお尋ねしたいわけであります。
  116. 津澤健一

    津澤政府委員 私どもが今回対象として考えておりますものは、御指摘のように、橋梁などにつきましては非常に新しい、初めて試みられるようなものに近いものを考えております。たとえば、トンネル等につきましてはおよそ三千メートル以上というようなものも考えておりますし、地下発電所のようなものも考えておりまして、これはたとえば大清水の火災事故に見られますような、ああしたものを想定いたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、危険というのは規模が大きくなることによって同じ種類のものが度合いが高くなるというようなこともございまして、私どもは、そういう工事経験のない大規模工事あるいは未知の危険に対する解明というような必要もございまして、高度に専門的な知識によって危険性を予測しながら安全評価を行うというような観点から選んでおるわけでございまして、対象工事は少ないように見えますけれども、その内容の質、量は相当なものと考えております。  そこで、審査体制で、私ども本省の建設担当専門官四人だということをおっしゃいましたけれども、こうした工事につきましては、特に土木工事であるから土木屋ということのみならず、それこそ機械も電気もいろいろな角度から専門家をそろえて審査をしなければならないということも事実でございますので、そうした観点から、審査をいたしますについてはやはり労働省が適当であるという考え方を持っております。また、対象につきましては、こういったことの運用の実績等を見まして考えてまいりたいと思っております。
  117. 梅田勝

    梅田委員 体制は、実際これはスタートいたしまして恐らく追いつかぬということになって、強化を当然しなければならぬということになろうかと思うので、大いに予算要求もして強化をしてもらいたいと思います。  次に、今度は事前審査でどういう基準で審査をするか、審査内容そのものにつきましてお伺いをしていきたいと思うのでありますが、法令に違反している場合、これは当然だめだということになりますが、こういう大きな工事はそれぞれ専門家がついておるのですから、みすみすの見え見えはないと思うのですね。それからまた、高度の技術的検討を要する計画について必要があるときということで、大臣のとるべき措置が定められておりますけれども、問題は、計画が出た際にそれを全面的にどう検討するかということが実際の運用に当たっては大事ではないかというように私は思うわけであります。上越新幹線の大清水トンネルがでかい事故を起こしたわけでございますけれども、あれでもやはり監督署へ事前に計画が出ておったわけでありますから、当然チェックされていたと思うのでありますが、しかし予想せざる事故というものは起こるわけですね。事故を起こしているのは下請だということになりますと、大規模工事というものは有期事業ではありますけれども、非常に長期に工事期間がかかっておる。それから、大量の労働力が必要である。下請、孫請、さらに四重、五重という重層の下請関係が混在しているという状況が出てくるわけでありまして、安全対策がその各段階のどこまで、最後のとことんのところまで徹底するかどうかということが、安全の審査をやります場合の重要なポイントではなかろうかと私は思うわけであります。そういう点で、審査をやられます場合には、元請業者が入札をして、その後に申請が行われるものだと思いますけれども、その大規模工事全体に参加する業者の安全成績を正確に把握をして審査がなされるのかどうか、そこのところをきちっと押さえておかないと私は不安が残ると思うのでありますがいかがですか。
  118. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘の点が多々ございましたが、私ども審査を進めるに当たりましてはもちろん内部でみずからの審査基準というものを持つわけでございまして、これは今日までの経験の中でかなりいろいろな積み上げを持っております。さらに、私ども自身がそうした基準でやりますばかりでなくて、計画をおつくりになる事業者の方で、初めから十分にその内容の評価検討が行われるようにということで、先ほど来申し上げておりますようなアセスメント指針というものもただいま作成中でございます。  多くの下請が入っているという問題でございますが、これはそうした場面での災害防止ということのためにいわゆる混在の事実に着目をしました安衛法上の規定が現在までもいろいろあったわけでありますけれども、さらに元請の計画性といいますか、段取りというものがしっかりしなければならないということ、あるいは安全管理体制がしっかりしなければならないという意味合いにおいて、今回の改正におきまして、そうした段取りを元方が持つべきことや、元方に元方安全衛生管理者を置けというようなことを法案としてお願いしておるわけでございますし、その工事に参加する業者全体の安全成績というものもあらかじめつかまえておくべきであるという御指摘でございますが、これは私ども個々の工事についてのデータというのはある程度持っておりますし、それからまた比較的大きな事業所、大きな業者について、者自体及び下請を含めた災害のデータというものはある程度持ち合わせておりますけれども、さらに一つ一つの企業単位、これはあちらこちらで工事をやっておりますが、その工事のデータというものは私どもはある程度持っておりますけれども、企業電位でより小さな事業所までも含めて把握するということにつきましては、事務的にもなかなか大変な問題でございますが、これを今後どのようにして把握していくかということを含め、またその利用方法を含め、専門家による委員会をつくりまして検討を開始したいと思っておるところでございます。
  119. 梅田勝

    梅田委員 最末端の下請の孫請の安全成績というものがどうなっておるかということまで含めてちゃんと掌握しないと本当に審査したということにならぬということを特に申し上げておきたいと思うのです。  安全教育が法的に義務づけられておりますけれども、これは実際どの程度実施しておりますか。いかがですか。
  120. 津澤健一

    津澤政府委員 安全衛生教育につきましては、法定されております雇い入れ時の教育あるいは作業内容を変更したときの教育、それから職長教育というようなものがそれぞれの事業者に課せられておるわけでございますが、一方元請、下請労働者が同一の場所で混在して作業を行っているような場合につきましては、元請が、その下請事業者が行う安全衛生教育に対する必要な指導、援助を行うというようなことが法律で定められているところであります。元請が工事現場で行われる安全衛生教育についてその徹底を期するため努力することが必要でございまして、この点、工事の施工段階ばかりでなくて、施工の計画の段階でもあらかじめチェックできれば非常によろしいわけでございますけれども……(梅田委員「実施率」と呼ぶ)実施率、この辺は私ども手元にございますデータはやや古いのでございますけれども、五十一年に建設業工事現場を対象にして実施をいたしました調査結果によりますと、そのときのデータでは労働者に対して安全衛生教育を実施した割合というのが七九・八%、それから職長等に対してやった実績が六五・一%、いろいろな機械のオペレーター等に教育をやった割合が五九・九%というような数字が出て、おりますし、また私どもが監督指導を現場に対して行いました際において安全衛生教育の実施について法違反があるという例は比較的少ないわけでございますが、そういう意味では数字の上ではかなりやっておるように見えるわけでありますけれども、要は安全衛生教育の内容が伴っておるかどうかということでございまして、ここの点は今後とも充実を図る必要がございますので、私ども関係の労働災害防止協会というようなものにいろいろ援助、指導を行いながら進めておるものもございますし、たとえば職長教育等につきましては、安全衛生教育センターというものを国がつくりまして、ここでそれらの教育を行いますトレーナーの養成などもやっておるところでございまして、こういった対策をさらに進めて、質、量ともに拡充を図っていかなければならない余地はまだ多分に残されておるというふうに考えております。
  121. 梅田勝

    梅田委員 安衛法の五十九条によりまして安全衛生教育というものは事業者に法的に義務づけておるわけでありますが、その実施もなかなか一〇〇%には至らないというのが現状なんですね。ですから、ましてそういう状況でありますから、労働省の方が積極的に対応していかないと、事前審査といいましてもしっかりとはやれないということを申し上げたいわけです。  それから、いま一つ、前にも労災隠しのことを申しましたが、企業はうまいことをやるのです。そして、安全成績が問題だということになりますと、なるべく事故がないように労災事故を隠す、こういう傾向があるわけであります。  ある事例を申し上げますが、ある大手の建設会社でございますが、孫請に働く労働者がブルドーザーに足をはさまれて二カ月の入院事故を起こした。これは実際にあったのであります。しかし、労災になるとぐあいが悪いので説得して、治療費とそれから六〇%の休業補償を出すから堪忍してくれということで本人に納得さして労災申請をやらせない、こういう事例がある。後ほどその傷んだ足が痛くなってきたが、そのときには労災申請しても時効になってだめだ、こういうことがあるわけです。五十三年九月十九日の中央労働基準審議会の建議がありますが、そこでは適正な施工業者の選定ということで、このような「「かくし労災」の絶滅を期すための措置を強化する必要がある。」ということを強調しております。  これは労働大臣にお伺いしたいのでありますが、こういう悪質なものがどうしても出てくるわけです。ですから、免許の減点方式じゃないけれども、そういう労災隠しをしたら安全成績の方は逆に減点するよということで相当厳しい規制を加えることをぜひ検討していただきたいと思うのでありますが、その点が一つお伺いしたいことであります。  それから、時間がございませんので、もう一問だけ申し上げて終わりにいたしますが、同じように労災事故をなくそうと思いますと、職場の働く環境が明朗でなければならない、明るい職場でなければならぬと思うわけであります。ところが、最近雪印食品におきまして、労使関係につきまして調査いたしましたら、労働安全衛生上にも重大な問題があるということがありますので、きょうは時間がございませんので、問題点を質問して適切な改善のための指導をお願いしたいと思うわけであります。  雪印食品の東京工場に働く労働者の場合でありますが、ある方の例を申し上げますと、昭和四十七年十一月に作業中に右手の指二本を切断した、二カ月の入院の重傷事故であります。ところが、会社は反省するどころか、縁起が悪いと会社の幹部連が寄って機械にお酒をかけてその酒を管理職が回し飲みして清める、とうてい信じられないような事例が起こっているわけであります。組合が怒って問題だということで取り上げましたら、その方は以後労働組合活動につきましても熱心に参加するようになったし、分会員にもなるし、安全衛生委員にもなってそういう問題がなくなるように奮闘するようになった。ところが、会社側は、そういう会社ですからDECという秘密組織といいますか、非公然の組織をつくりまして、そして労働組合に対して不当な介入を行う。そして、一挙に労働組合をひっくり返す、そういう策動をやる。そして、職場におきましては活動家に対していやがらせをやる、あるいは暴力行為を起こす。そして、この人の場合には、いろいろいやがらせをやられて昭和五十二年についに退職せざるを得ないところに追い込んでいるわけであります。最近言われる減量経営、合理化、こういう名目のもとに大量の削減計画を強行していく、こういうことでは職場における安全は保障されないのじゃないかと思うわけであります。当然ここでは労使紛争が激化するわけでありまして、埼玉地労委に対しましては五人の労働者が提訴しております。兵庫の地労委に対しましても二人の労働者がそれぞれ賃金差別是正、不当労働行為救済の申し立てを現在行っておるわけであります。  それから、ここにも新聞を持ってまいりましたが、「雪印食品の職制集団暴行事件 斉藤さん全面勝利」というのが昨年の十一月の埼玉新聞に出ております。この場合は職場で集団暴行を受けるわけです。これに対しましてはもちろん実行行為者十九名が刑事裁判に付せられまして、すでに全員が有罪の判決を受けております。被害者は会社と実行行為者を訴えまして、すでに昨年十一月に全面勝利をいたしまして、会社側も請求全額を支払う、こういうことに相なっておるわけであります。しかも、労働省として見過ごすことができませんのは、DECなる組織と並行いたしまして、会社は小集団サークルというものをつくりまして、五十五年度方針実行委員会というもので会社と労働組合といろいろな人が入って、各職場ごとにずっと細かいサークルを組織する、これは昼休みにやるのです。十二回もやっておりますが、改善提案二百五十件。昼休みというのは労働基準法によって労働者の自由にさせなければならぬわけです。その時間に全部集めて改善提案をやれやれといって締める。これでは労働者はたまったものじゃないですよ。これではいつ大きな事故が起こるかもしれないということになるわけでありまして、先ほど労災隠しの問題についてひとつ新たな問題を検討していただきたい、減点方式などもやるべきじゃないかというように大臣にお願いしたわけでございますけれども、こういった問題を許さないために厳重な調査を行っていただきまして私どもの方に報告をしていただきたい。  以上で、私の質問を終わります。
  122. 藤波孝生

    藤波国務大臣 第一点の建設業者の安全成績の評価制度につきましては、委員から御指摘がございましたように、中央労働基準審議会の答申におきまして、評価基準、対象建設業者、事務処理体制等に検討すべき多くの問題点があることから、専門家による委員会を設ける等によりまして評価の項目や評価基準等について十分な検討を行うようにいたしておるところでございます。したがいまして、安全成績の評価制度というのは評価結果の公平性が担保されない限り成立し得ない制度でありますから、その意味で労災隠しというようなことを行った業者には厳しく評価をすることは当然のことだと考えます。今後における安全成績の評価制度の検討に際しましては、災害防止のために真に努力したものが正当に評価されるような制度の確立を進めていくように努力いたしてまいりたい、このように考えております。  また、第二点目に具体的に御指摘のありました雪印食品等におきますいろいろな問題点につきましては、個別にわたる具体的な問題で、しかもいまお聞きしたばかりでございますので、厳密に調査をいたしたいと思います。ただ、常に労働災害に対する予防対策を講じてまいりますと同時に、常に働く環境が快適で、みんながいろいろな意味で気持ちよく働ける空気がみなぎっておりますことが非常に大事なことでありまして、まさに御指摘のとおりだと思います。そういう意味では、今後全国のそういった労働災害を防止する意味でも、健康な明るい労働現場を築き上げていくように努力するというのは非常に大事なことだと考えますが、重ねて申し上げますが、具体的な御指摘については調査を進めてまいりたい、このように考えるところでございます。
  123. 梅田勝

    梅田委員 終わります。
  124. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 次に、田中美智子君。
  125. 田中美智子

    ○田中(美)委員 東京12チャンネルの三六協定の問題について質問したいと思います。  七月の十七日に、会社と12チャンネルの山沢健一という方を代表者にした三六協定が労基署に提出されておりますが、これには大変な問題点があると思いますので、この問題を少しお聞きしたいと思います。  まず、経過は労働省よく御存じだと思いますが、深夜労働によって非常に健康を破壌しているということで、特に放送局のキー局では常識を逸するほどの長時間の残業がやられている、深夜勤がやられているということで、私が労働省に調査をしていただいたことがあります。この調査の結果を見ましても、一カ月最一局時間が百八十四時間だとか百三十時間だとか百五十一時間だとかというふうな、労働省の調査結果でもこういうものが出ているわけですね。ですから、三六協定というのは大変大事なものだと思います。この調査の中で、12チャンネルが三六協定を結ばずに残業をさせていたという副産物というか、そういうことも発見していただいたわけですね。その中で組合も何とか三六協定を結ぶようにということを働きかけていたわけですけれども、ことしの二月二十五日の団交で、組合側が過半数に達していないから三六協定の当事者になれないということを会社側が言って協定を結ぶことを拒否したわけですね。その翌日の二十六日に今度は全職員に対してお知らせということで趣意書を配ったわけです。この趣意書を見ますと、代表者が、三六協定を結ぶ当事者ですね、その代表者が山沢健一という方になって六十名の発起人の名前が並んで、これが翌日にはきちっと準備されてばあっと出た。そして、ラインを通して一人一人に署名せよという形で過半数に及ぶという人数をそろえて、そして三月の十七日に協定を結んだということで労基署に提出しているわけです。  これを見てみますと、まず代表者になっている方が、この山沢さんという方は編成局次長で管理職であるわけですね。約三百五十六名の人たちをそこに署名をさせているわけですけれども、まず六十名の発起人、この中には三人主任がいますけれども、あとは全部A、B項管理職といって夜勤も該当しない管理職がずらっと並んでいるということです。一体これが三六協定を結ぶ当事者と言える、だろうか。  それで、四十六年に労働省から通達が出ております。これは過半数の労働者代表者を選出する方法については、選挙またはそれに準ずる方法が望ましいんだ。ですから「労働者の代表者としては、法第四十一条第二号に規定する監督若しくは管理の地位にある者は望ましくない」、こう言っているわけですね。それにもかかわらず、この趣意書の発起人は全部が管理職だ。もちろんこの代表者も管理職だということです。  それから、五十三年の労働省の通達があります。これによりますと、「労働者を代表する者を、使用者が一方的に指名している場合」、こういう場合は労働者を代表するものとしての適格性を欠くのだというふうに言っております。この趣意書は山沢健一さん外発起人六十名、これはまさに使用者が山沢健一さんを指名しているのではないかというふうに思えるわけですね。これに対して御本人がある人に漏らしていたそうですけれども、おれは貧乏くじを引いた、こう言っているということはその疑いが非常に濃厚だというふうに思います。  それから、この通達に(イ)(ロ)(ハ)(ニ)といって四つのものに該当する者は労働者の代表にふさわしくないというふうに書かれているわけですけれども、まず第一の、使用者が一方的に指名した代表者じゃないかという疑いがあるということ。それから、(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の(ニ)のところで「一定の範囲の役職者が互選により、労働者代表を選出することとしている場合」、これは適格者じゃないと言っているわけですね。ちょうどこれはまさにこの(ニ)に該当する。一定の範囲の役職者が集まって、その中から山沢さんが選出されている。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕 これは労働者の代表としては適格性を欠くというふうに労働省の通達では出ているわけです。これとぴったりではないかというふうに思います。  これについては、労働省としてはどのような対応をなさろうとしていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  126. 岡部晃三

    ○岡部説明員 三六協定の労働者側の締結当事者の問題、これは大変重要な問題でございます。労働省といたしましては昭和五十四年以来、労働時間対策の一環といたしまして、三六協定の届け出様式の改正等行ったわけでございますが、その中に特に労働者の過半数を代表する者の職制上の地位及び選出方法につきまして適正化を図ることにいたしまして、先生が御引用になった五十三年の十一月二十日の通達と相なったわけでございます。  そこで、この三六協定の労働者側の締結当事者につきまして労働省の考え方は、基本的にまず、事業所全体の労働時間等労働条件の計画管理に関する権限を有する者、こういう者は適格性を有しないというふうに考えておりますが、しかしながら、先ほどまた先生御引用になりました昭和四十六年の通達の中でいわゆる管理監督者、これは法四十一条上の概念でございますが、これが締結当事者となるということは、これによって直ちにその全部が違法、無効となるものではないわけでございますが、しかしながら、技術的な面から望ましくはないというふうに考えているところでございます。  東京12チャンネルにおきます今回の問題につきましては、このような一般的な考え方を踏まえまして、具体的な事実に基づいて判断すべきものでございますので、現在東京労働基準局及び三田労働基準監督署において処理中でございます。
  127. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そんなに長々しくおっしゃらなくても、いまどうしているかと聞いているのに対して、いま処理中ですという答えですか。
  128. 岡部晃三

    ○岡部説明員 さようでございます。処理中でございます。
  129. 田中美智子

    ○田中(美)委員 疑わしいからこれについて考えていただきたいというのに、いま処理中ではこれは話にならぬわけですね。労働者に対して三田監督署はもう一度考えろという、こういう指導をしているというふうに聞いているわけですけれども、そういう指導をしているのですか。
  130. 岡部晃三

    ○岡部説明員 三月十七日に会社から三田署に届け出がなされたわけでございますが、三田署におきましてはこの協定における労働者代表の適格性につきまして労働組合側から疑義が出されているという状況に基づきまして、会社に対しまして関係者で十分話し合いをするようにという要望をしたところでございます。
  131. 田中美智子

    ○田中(美)委員 関係者で十分に話し合えというのはどういうことですか。どうしてそういうことを指導なさったのですか。
  132. 岡部晃三

    ○岡部説明員 先ほども四十六年の通達の話が出たわけでございますが、管理監督者が代表者になるということは、それが直ちに違法、無効ということにつながるわけではございません。しかし、やはり望ましくないという面がございますので、そういう面におきまして、この労働側から疑義が出されておりますのは恐らくその適格性について問題が出されているわけでございますので、その点について十分に話し合う、このような形で円満に解決するようにという趣旨であろうと私は考えております。
  133. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、監督署としては望ましくない、いますぐそれが不適格者だとは言えないけれども、望ましくないからもう一度十分に考えて相談をしなさい、こういう指導をしているということですね。  それで、まずA、B項の管理職が——さっき三百五十六名と言いましたが、三百五十二名ですね。三百五十二名中百七十名も管理職がいるのです。それが労働者の代表ということですね。そうしますと、この人たちは会社としては労働組合に入るなという指導をしているわけですね。その人が半分くらい占めている、三百五十二名のうち百七十名は管理職だというわけですから。この百七十名というのは残業をしても、管理職手当をもらっているわけですから残業手当とは関係ないのですね。この人が百七十名もいる。ですから、これを引きますと、非常に数が少なくなってしまいます。過半数を割る状態にもなりますし、それからこの中にはアルバイトが六十名入っているのですね。アルバイトが五、六十名入っているそうですけれども、この人たちは採用の時期が少しずつずれておりますので、全部とは言いませんけれども、いまの段階では三月末にやめてしまって四月からはいない人たちも入っているのですね。そうしますと、これも数が足らないのではないか、そういう人たちを除きますと。現在いない人たちの名前が連ねられているということです。そうすると、今度は過半数に達していないということは適格者ではないというふうに思いますけれども、その点はお調べいただいていますでしょうか。
  134. 岡部晃三

    ○岡部説明員 三六協定におきます過半数の計算方法でございますが、これは労働者全体をもって判断することにいたしておりますので、いわゆる管理監督者である労働者もその母数に含めるわけでございます。
  135. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そのことは解釈の仕方に問題があり、いま労働法の学者の間でもこれは問題になっていることですから、私はいまここで法論争をしようとは思いません。しかし、管理職が半分以上いて、そればかり集めて、そして管理職の力でもっていま現在もうやめている人まで、それからアルバイトまでみんな署名をさせて、そういう中身のものが、それが三六協定を結ぶ当事者になるということはやはり考えるべきことではないでしょうか。何のために通達というのが出されているのか。最初に言いましたように、この山沢さんという人は使用者が一方的に指名している人じゃないか、そういう疑いもあるのです。だから、それも調べていただきたいと思いますし、互選で代表者が出ているということにも問題がありますし、それから労働者全体の半分だという考え方も三六協定の場合にはおかしいのではないか。これは今後の問題として検討する必要があるのではないかというふうに思うのですね。そういうものの一つ一つというものを当たっているのでしょうか。ただ何となくおかしいからもう一度考えろ、これではきちっとした指導にならない。一体この山沢さんという方はどうして代表者になったのかということをお調べになっておりますか。
  136. 岡部晃三

    ○岡部説明員 東京局及び三田署におきましては、この山沢という方を前後二回各半日ずつお呼びいたしましてその事情などを調べていることを初めといたしまして、いろいろな実情調査をいたしておるというふうに聞いております。  この問題、私どもも地方から合い議を受けまして、現在いろいろと私どもなりにまた調べているわけでございますが、いままで聞いております範囲内では、この問題につきましては労使間の団体交渉の場で取り上げられてきておるわけでございますが、会社といたしましては労働組合側からの要望を受けまして当該労働組合と時間外労働に関する協定を結ぶことについて検討中であるということを聞いております。したがいまして、今後引き続き団体交渉の場で話し合っていく考えであるというふうな会社側の意向を聞いておるところでございます。その成り行きを私どもとしては注目いたしたいというふうに考えております。
  137. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それはあなた方の、この通達による指導というのをしてほしいのですね。内部で労働者がいろいろにやることは構わないことですけれども、この山沢さんという人を、いろいろなことを聞いているというけれども、どういうことを聞いているのですか。山沢さんという人がきちんとみんなから出されて、代表者にふさわしい形で出てきているのか。労働省が言っている、使用者が一方的に指名している人ではないかという疑いは十分だし、また六十名の発起人の中から互選によって出されてきた、こういうことになれば、これも通達に違反しているわけですから、そういうこともちゃんと調べているのかと聞いているのです。
  138. 岡部晃三

    ○岡部説明員 監督署におきます調べは当然その点を調べているわけでございまして、たとえば号、の三百数十名の方の同意を得たというのは一体いかなる手続、いかなる形式において行われたのか、回覧によって署名を集めたというけれども、それはどのようなものかというところまで調べているというふうに聞いております。
  139. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それで、その結果はどうなのかということです。通達に違反していないかということです。
  140. 岡部晃三

    ○岡部説明員 この点につきましては現在局署において処理中と申し上げましたのは、その点についての法的見解はまだ出していない、現在のところ労使に対しまして、労使間でいろいろ話し合うようにということを要望中の段階でございますので、その辺についての法的判断はいまのところ差し控えているという状況でございます。
  141. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、この点を、通達をせっかく出しているのですから、これに沿った形できちっとやっていただきたいし、第一、残業の手当をもらわない人が半数以上いる。そして、その代表者がまた残業手当をもらわない人、こんな者が三六協定を結ぶ対象者になるということは、どう考えたって、どこの労働者が聞いても納得できないわけですので、きちっとした御指導をしていただきたいというふうに思います。  次に、ILOでも夜間労働に関する専門家会議などを開いておりますが、こうした長時間の——私が三六協定に非常にこだわるのは、いま言ったような会社の、極端に言えば、会社がつくった労働者代表と会社側が三六協定を結んで、そして今度の山沢という代表者の場合にも、会社側が出してきた百時間というのと全く同じなんです。労働組合は原則を五十時間ということで言っているわけです。会社側は百時間。そこで、折り合いがつかないと、ぱっと山沢さんを代表にしたグループができまして、これが会社と同じ形で三六協定を結んでいる。これじゃ会社の意のままです。そうすれば、深夜勤というものはもう会社の意のままに労働者が働かされる。この中で健康破壊というものが非常に進んでいる。この問題は私が何回かここで取り上げているわけですが、発達した資本主義国の労働運動の中では、これは大変おくれている部分だというふうに思います。フランスなどでもますます深夜勤の労働者がふえている。それは近代社会になればなるほど、夜中も働いてもらわなければならない人というのは、これはあるというふうに思います。ですから、その人たちに対しては特別な配慮というものが必要なわけです。また、国際的にも、国際の学界でも、また日本の産業御生学会でも、深夜勤というものがいかに健康を破壊するかという結論は出ているわけですね。ですから、これに対して日本の労働省が何らかの手を打たなければならないというふうに思うわけですけれども、これに対してどのような対策をとられよう、どういう努力をしようというふうにしていらっしゃるのでしょうか。
  142. 岡部晃三

    ○岡部説明員 夜間労働をめぐります問題につきましては、御指摘のように、ILOにおける三者構成の専門家会議等々、種々検討が、国際的にも関心が寄せられておるところでございます。  労働省といたしましても、この問題につきましてはいろいろな側面から研究を行うことが必要であるというふうに考えているわけでございます。したがいまして、私どもこの夜間労働をめぐります問題につきまして、本年度予算によりまして実態調査を行いたいというふうに考えているところでございます。さらにまた、内部的な研究体制をつくりまして、各種資料の分析等を進めたいというふうに考えております。
  143. 田中美智子

    ○田中(美)委員 実態調査というのはどういう調査でしょうか。
  144. 岡部晃三

    ○岡部説明員 これは深夜労働を行うことにつきましての労働者の意識調査というふうな形でもって行いたいというふうに考えております。
  145. 田中美智子

    ○田中(美)委員 健康調査というのは考えていないのですか。意識だけですか。健康に関してはどうですか。
  146. 岡部晃三

    ○岡部説明員 意識と申しますのは、健康についての認識、意識も含めてやりたいというふうに考えるところでございます。
  147. 田中美智子

    ○田中(美)委員 夜間労働問題調査研究会というのができているそうですけれども、この研究会では一体何をしているのですか。
  148. 岡部晃三

    ○岡部説明員 夜間労働問題調査研究会といいますのは、実は労働省内部だけの研究会でございまして、関係各課長寄り集まりまして、夜間労働あるいは交代制問題につきましていろいろと議論を交わすという、ごく内部的な非公式な集まりでございます。
  149. 田中美智子

    ○田中(美)委員 日本の産業衛生学会が調査をしていることはもう御存じだと思います。これは七七年に各産業の交代制採用事業所六十九単位個所に健康調査票を配付して、常日勤者と交代勤務者に記入を求めて、常日勤者と交代勤務者、この人たちの回答でもってどう健康が違っているか、それから夜中に働くわけですから生活がどのようになっているか、こういう比較調査をしているのですね。これは日本では初めてだと思いますけれども、非常に注目されている調査になっているわけです。  これは産業衛生学会だけに任せておくべきではなくて、たとえばこのような調査というのを労働省がやるべきじゃないかということを私は思うわけです。いま実態調査をするんだ、こう言われていますけれども、非常にあいまいですので、もう少し、これではたとえば病気で休んだのは何日あるかとか、それから仕事に原因する病気だろうかとか、それから健康に異常があると自分で感じているかどうかとかという自覚症状の訴えだとか、それから生活や労働意識、こういうものに交代制勤務がどういう影響を与えているかというようなことをずっと出しているわけですね。そうすると、非常に夜勤労働者の病気の回数も多いし、家庭生活の破壊というものも進んでいるし、いろんな面で夜勤の長い労働というものが弊害を起こしているということが出ているわけですね。ですから、何もこれと同じにせよと私は申しませんけれども、世界の学界でもまた日本の学会でもこういう非常に注目すべき調査も出ているし、その結論もある程度出ているわけですね。ですから、労働省みずからがやはり自分で調査をしてみて、そうした学会での調査を参考にしながら、労働省自身が夜勤労働がどんなに健康を破壊しているか、生活を破壊しているかということをしっかりつかまない限りはその対策が打てないと思うのですね。ですから、労働省は非常におくれているわけですよ。その間にどんどん労働災害と言われる職業病というものが出ているけれども、いままでの範疇の職業病とは違うということで結局労災の認定がなされないままに、日本テレビの樋口さんのようなひどい問題というものがいまなお解決しないままになっているというのはそこにあるというように思うのですね。ですから、大至急にこの実態調査をしていただきたいというふうに思います。  大臣に、この調査をいつから始めていただくのかということと、それから東京12チャンネルの三六協定を結ぶ当事者の山沢さんグループが果たして代表者と言えるか、あのグループが当事者と言えるかということでの十分な御指導を願いたいということの二つの点についてお答え願いたいと思います。
  150. 藤波孝生

    藤波国務大臣 前半の御質疑にございました12チャンネルの問題につきましては、課長からお答えをいたしましたように、それぞれ調査なり指導なりが進められておりますが、本省とも十分連絡をとりながら進めておりますので、今後さらにその運びを早くかつ明快に進めてまいりますように指導してまいりたいと思います。  それから、夜間労働というのは、やはり夜間に働く職場、これは社会を回転させてまいりますために夜間働く必要のある職場もたくさんにあるわけでございます。しかし、夜間に勤務いたします場合には、それ相応の実態があることであろうということは想像にかたくありませんし、それが深夜に及びます場合には、なお深夜労働の中でいろんな問題点があることも想像にかたくありません。医学的な側面でありますとか、あるいは社会経済的な側面でありますとか、いろいろな面からやはり夜間労働の実態というものを把握してまいりますことは、労働行政を適切に進めてまいりますためにも、あるいは労働者の健康、安全衛生を保全してまいりますためにも非常に大事なことだというふうに考えます。  いつ調査をするかということについては、いますぐにちょっとお答えできかねますが、調査を全くしてないわけではありませんで、いろんな角度から絶えず実態をつかもうという努力はしてきていますけれども、さらにこれを体系立てて調査をしていくように前向きに努力をいたしたい、このように考えておるところでございます。
  151. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いつやるかわからないでは困るので、何も何月何日から調査を始めろ、こういうふうにまでは言いませんけれども、大体の目安としていつごろから調査が始まるのかということをお聞きしたいと思います。
  152. 岡部晃三

    ○岡部説明員 この実態調査、まだ私ども実施時期については白紙状態でございますが、内々の検討ではおおむね十一月ごろ実施をいたしたいというふうな腹づもりでございます。
  153. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、一日も早く調査項目を検討しまして、健康や生活に関する問題を調査していただきたいと思います。  先ほど言いかけてやめたんですが、フランスなどでは、深夜労働者労働者の大体二五%だと言っているのですね。二百万というふうに言って、これが年々ふえているというのです。私は、深夜勤というのは、生活リズムに反した仕事をするわけですから、原則としてはやはり禁止すべきだというふうに思います。しかし、近代社会を維持していくためには、いま大臣が言われたように、最低限どうしても働いてもらわなければならない人たち、それはどうしても働いていただかなければならない人たちなわけですから、そういう観点から、利潤のために機械に合わせてということではなくて、社会にとってどうしても働いていただかなきゃならない人たちに対しては、特別な保護が要るというのは当然だと思うのですね。だからこそ調査をしていただくわけですが、まだ日本の場合には夜中に働いている労働者が何名ぐらいいるかということを労働省がつかんでいないんじゃないですか。
  154. 岡部晃三

    ○岡部説明員 夜間労働問題、私どもの統計情報部の方でも問題を非常に重視いたしまして、昨年に労働時間制度総合調査を行ったところでございます。この集計が六月に上がることになっております。
  155. 田中美智子

    ○田中(美)委員 わかりました。それでは、六月にその集計が出ましたら、ぜひお教えいただきたいと思います。十一月からの調査、できるだけ広く、十分にわかる結果が出るような調査を成功させていただきたいと思います。  質問を終わります。
  156. 葉梨信行

    葉梨委員長 次に、塩田晋君。
  157. 塩田晋

    ○塩田委員 労働安全衛生法の一部を改正する法律案につきまして、労働大臣、基準局長並びに安全衛生部長にお伺いいたします。  まず最初に、労働災害発生状況、態様別にどのようになっているかということ、その対策につきまして、国際的な視野から見てどのような水準にあるかといった点につきまして御説明願います。
  158. 津澤健一

    津澤政府委員 労働災害は、五十一年以降やや上昇ぎみでございますが、五十四年につきましてはやや減少といった傾向も見えております。この中で、産業別にどのような分布を示しておるかということでございますが、五十三年の数値について申し上げますと、休業四日以上の死傷で最もウエートが高いのは建設業でございまして、十一万八千五百六十八人の死傷者、これは全体の三四%に当たっております。次いで製造業、運輸業、林業、鉱業などの順番に相なっております。特にこの中で死亡災害について見ますと、昭和五十三年全体の死亡が三千三百二十六人でございますが、この中で建設業が千五百八十三人、これはパーセンテージにいたしまして四七・六%に当たります。次いで製造業、運輸業、林業、鉱業というような順序になっております。
  159. 塩田晋

    ○塩田委員 国際水準について。
  160. 津澤健一

    津澤政府委員 失礼いたしました。  産業災害の状況を国際的に比較いたします場合の物差しが大変まちまちでございまして、明確には比較できないのでございますが、私ども日本国において、労働災害動向調査という調査をやっておりますが、この対象事業所の災害発生度数率と、それからアメリカの全米安全協会というところの会員の事業所の度数率というものを比較をして、およその物差しを求めておるわけでございます。  この数字だけで申しますと、双方ともに対象事業所は一万数千というところでありますが、わが国の場合、百人以上の事業所の度数率の方が、アメリカの、いま申し上げました全米安全協会会員事業所の度数率よりも低くなっております。しかしながら、これはそれぞれの国々の産業の構成でございますとか、あるいは業種の中の仕事の仕方とか、いろいろな違いがございますので、全体としては日本もかなりのレベルに達したとは思っておりますけれども、一方、建設業等の比較を、ヨーロッパを見てこられましたいろいろな方々に聞いてみますと、けがと死亡を含めた全体では日本はかなり少ないように見えるけれども、死亡者は、全体の工事量との関係でどうも日本の方が多いように見えるというようなことも聞いておりまして、かなりのレベルには達しておりますけれども、世界一であるかどうかということにつきましては、まだ自信が持てないという状況でございます。
  161. 塩田晋

    ○塩田委員 国際的な労働災害の比較が、統計上の制約から十分でないということが述べられたわけでございますが、また感じとしては、日本の場合、死亡者が多いのではないかという御回答でございまして、これは重大なことでございます。より正確にこういった問題を分析する必要があると思いますので、ILO等の国際機関を通じまして統計の水準を合わせるとか調査法を合わせるとか、そういった連携をとられまして、今後この問題の検討を進めていただきたいと要望いたします。  そこで、労働大臣、安全戦争ということを御存じでございますか。交通戦争と同じような意味でございますけれども、一個の生命というものは何物にもかえがたい、人命のとうとさを言うわけでございます。この労働災害によって失われる人命、そして人的な損害、損傷は非常にはかり知れぬ大きなものがあるわけでございまして、ただいまもございましたように、五十三年の分につきましても、休業四日以上の死傷者が三十四万八千人ということになりますと、これは一つの例ですけれども、日露戦争一年八カ月で十二万人の死傷です。ですから、一年間で日露戦争の三倍、そのような人命が損傷しておるということでございます。皆さん方の御努力を得まして減ってはきておる。減っできておりましても、現在の減った数で見ましてそのような日露戦争の三倍ということでございます。戦後三十五年間、日本は国民的努力によりまして、戦争がなく、安全と平和を維持してまいっておりますが、いまのペースでいきますと、日露戦争規模のものが八回あった、それくらいの損傷があったという計算もできるわけでございます。もちろん交通事故はこれよりももっと多いわけでございます。一年間に、五十四年でも交通の死亡は八千四百六十一人。あるいは一番多かった四十五年度におきましては一万六千七百六十五人という交通事故、負傷者を含めますと六十万。五十四年度で五十九万五千六百八十二人という数字が挙がっておりますが、労災の死亡事故、これを昭和二十三年から五十四年まで累計いたしますと、実に十六万二千二百十七人というたくさんのとうとい命が失われておるわけでございます。まさにこれは安全戦争と言うべきもので、これは対策をして減ったらいいというのではなくして、一人もそういった死亡者あるいは傷害者が出ないように、これは金をかけ、国民的努力をすれば必ずできることだ。できない方がおかしい。何としてもゼロ災害に持っていくという不退転の決意でこの問題に取り組んでいただきたいのでございますが、労働大臣、いかがでございますか。
  162. 藤波孝生

    藤波国務大臣 労働災害が、災害を受けられる被災者にとってはもちろんのこと、家族にとりましても、ある日突然労働災害によって不幸のどん底に陥れられる、しかも御指摘のように、人命の非常に尊重されなければならないことを考えますときに、まさに戦後三十五年間、たくさんの人命が労働災害によって損傷されてきたということの不幸さをつくづくと感ずるのでございます。ただ数を少なくするなどということではなくて、いろいろな手だてを講じてこれを絶滅していくというふうに考えてまいらなければなりません。これは若干は不可抗力のものもあるかもわかりませんけれども、それでもあってはならないと思いますが、十二分の対策、予防、そして働く現場のみんなの協力といったような形がとれるならば必ず絶滅させることができる、このように考えていろいろな手を打っていかなければいかぬ、こう考えるのでございます。  いろいろな施設等をもっと安全対策を講ずべきであるというようなことから、年月をかけて融資制度等を中心にいたしましていろいろな安全対策の面では相当に前進をしてきたのではないかというふうに思いますけれども、なかなか労使双方にわたって安全に対する知識を普及させていく、形の上ではいろいろな施設で対策は講じられておっても、そこで働くときの知識、お互いの注意を喚起し合うといったような引き締めた気持ちがどうしても弛緩をしてしまうというようなところがございます。労働省としても、長年にわたりまして労使双方に向かってそのことの重要性を力説してきているところでありますが、正直なところ、さいの河原に石を積むような努力かというような感じさえするぐらいに、なかなか災害事故が絶えない。その中で絶えざる努力を進めてきておるところでございます。  今回、法改正をお願いいたしましたゆえんのものは、その事故の中で特に建設業に関する事故が頻発をいたしますので、その中でも特に大規模なものを中心にいたしましてぜひ真剣な取り組みをしていかなければいかぬということから法改正をお願いをしておるところでございますけれども、いろいろな面できめ細かく実態に即応いたしまして、特に監督指導といった面を強化いたしまして、今後事故の絶滅を期すように、議員御指摘の御趣旨に沿って最善の努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  163. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣の御決意をお聞きしたわけでございますが、ぜひとも人命尊重の立場から労働災害、事故の絶滅を期して全力を尽くしていただきますことを要望いたします。  ところで、この労働災害からくるところの損害というものは、本人、家族その他の直接的な損失はもとよりのこと、経済的な観点から見ましても国民経済にとって大きな損失であるという面があろうかと思います。  この経済的な損失につきましても直接と間接があろうかと思います。直接といいますのは、慰謝料等を含めましての損害賠償、それから保険制度を採用した補償、こういったもの、これは金額的にも計算される経済的損失だと思うのですが、そのほかにやはりかなりの国民経済に対する間接的な影響があると思います。ちょっと考えてみましても、工場あるいは建設現場で事故が起きますと、そこへ同僚が駆け寄る、作業はその期間とまる、そして病院へ運んだりあるいは家族に連絡したり、いろいろな対策をするための間接的な労働時間、あるいは労働賃金を含めての経費の損失があろうかと思います。それからまた、その人が亡くなること、あるいは職場に出られなくなることによりまして、その後埋めをしなければならぬ、直ちにそういった適任者が得られるかどうか。また、訓練もしなければならない。こういったことを考えますと、直接的な経済的損失の何倍かする間接的な損失があろうかと思います。  こういった経済的な損失、これをどのように算定をし、分析をしておられるか、そういう備えがあるかどうか、お聞きしたいと思います。
  164. 津澤健一

    津澤政府委員 労働災害に伴います経済的損失というものを一律に算定するというのはなかなかむずかしい問題でございますが、ただいま先生御指摘がございましたように、労災保険の給付その他直接目に見えるお金のほかに、機械設備その他の財産の損失でございますとか、生産阻害でございますとか、あるいは人の間接的な浪費、その他いろいろな間接コストがあるということは指摘されておるところでございます。かなり古い説ではございますが、米国のハインリッヒという方がいろいろな災害についてこうした調査をやった結果、いわゆる直接補償費一に対して、平均すると、その間接損失は四に上る。したがいまして、直接費の五倍が総損失額になるという試算をいたしております。こういうことからいたしまして、わが国の労働災害に対する労災保険の給付は約六千億ということからいたしますと、その五倍、約三兆円というものが直接、間接、災害コストとして失われたものというふうに推定することができると思っております。  なおまた、こういった計算とは別に、実際に事業所でどのような経費がかかっておるかというようなことにつきましては、いわゆる予防の費用を含めてどのようになっておるかということを、ただいま一部のサンプルではございますが、実態調査も進めておりまして、こうした結果も見て、こうした説に合うかどうかというようなことをさらに確かめてみたいと思っております。過去においてもこうしたことをやってみたことはあるわけでございますが、サンプルが少ない等の問題がございまして、なかなかただいま申し上げました一対四というふうに合わない面もございます。御指摘のような観点から労働災害の問題を見ていくことも重要でございますので、こうした研究も進めてみたいと思っております。
  165. 塩田晋

    ○塩田委員 ただいま外国の例をも含めまして御説明がございましたが、経済的損失が直接損失の五倍、概算として約三兆円というものが、今日労働災害によって直接、間接失われている経済的損失であるという御説明がございました。これは概算で、まだまだ十分な研究が進んでないということでございますので、ぜひともこういった観点から経済的なコスト計算をしてもらいたい。これは最初に申し上げましたように、経済的なそういう銭金でかえられない人命の損失を含んでおるわけでございますから、それを絶滅するためにも、少なくともこの失われた経済的損失に見合うものを、本当は災害絶滅のためにつぎ込んでもいいはずでございます。それでコスト計算上ペイするわけでございますから、経済的な観点からだけの計算をしましてもそうでございます。その裏になお大きな、地球の重さよりも重い、何物にもかえられない人命というものが失われているということを考えますときに、ぜひともそういった経済的な観点から、対策費をこれにかけるという意味におきましても、コストの計算をひとつ十分にやっていただきたい。その上に立って対策を講じていっていただきたいと思うのでございます。安全、これは国防を含めまして金をかける必要がある。また、かければ安全性が高まるという面もあるわけでございます。各種の自然災害にしろ、交通災害にしろ、労働災害にしろ、やはり国民的課題としてこれに知恵を出すということ、そしてコスト計算による十分な金をかけるということにつきまして、ひとつ今後こういった観点から取り組んでいただきたいのでございます。  次に、建設業における労働災害が大きいということにつきましては、先ほど御説明がございました。建設業におきましては、死傷者数におきまして全産業の三分の一強、死亡者数におきましては半数が建設業であるという現状でございます。したがいまして、建設業に重点を置いて労働災害防止対策を強化することは当然であると思うのでございますが、その対策といたしましては、建設業における災害の発生状況ないしは発生の態様に十分対応した形のものでなければならないと思います。  そういった意味で、今回の法改正はそのような対応関係について十分に分析、検討がなされているのかどうか、こういう点についてお伺いいたします。
  166. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 御指摘のような労働災害発生状況にかんがみまして、労働災害の減少を効果的に図るという趣旨で、今回の建設業におきます労働災害対策を強化していくということが当面の一番大きな課題だということで、今回の改正規定を設けた次第でございます。そういうことでございまして、従来からも建設業におきます労働災害につきましては、建設工事現場に対します重点的な監督指導のほか、建設業の特性を考慮しながらいろいろな安全管理体制の問題とか、あるいは機械設備の安全化、あるいは安全衛生教育の推進、自主的な災防活動の促進、こういったようなことを進めてまいっている次第でございますけれども、最近に至りまして、一つは、いわゆる規模の大きい工事におきまして、一たん災害が起きると大変な事故になるというような点、あるいは大清水トンネルのように、トンネル工事等発生をした後、労働者の救護のための素材が不十分でまたまた災害を起こす、こういうような問題があるような点、それから建設業に特有でございます二以上の事業者労働者混在して作業を行っておるというふうな現場、これは実は労働災害の中でも全災害の六〇%を占めておるというような実態でもございます。そういう従来から繰り返されているいわゆる在来型の災害が多いというような点、こういった問題点が多いことから考えまして、それぞれの三つの角度から今回の改正内容点を措置するようにいたした次第でございます。
  167. 塩田晋

    ○塩田委員 今回の法改正に関しましては、そういった対策が必要であるということを私どもも認識するものでございます。ただ、法改正をすれば建設業における労働対策は十分だ、こういったことではとうていないと思うのでございます。建設業におきましては、従来からもいろいろと対策をし、またいろいろと言われてきながら、依然として在来型の災害が繰り返し多発しているという問題点がございます。これは建設業に対する防災対策といたしましては、災害安全対策という面だけでなしに、やはり建設業の持つ特別の事情からくるものがあると思いますので、総合的な対策というものがぜひとも必要だと思います。建設業全体としてどのようなことを考えておられるか、お伺いいたします。
  168. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、在来型の災害が多いということにつきまして、従来、安全管理体制を確立する等いろいろな施策を講じてきたわけでございますが、今回特に建設業を中心にいたしまして総合的な対策を措置していかなければならない、こういうふうなことでございます。五十三年の九月に中央労働基準審議会から「建設労働をめぐる安全衛生上の諸問題と対策の方向について」、こういう建議を受けましたことを受けまして、建設業におきます総合的労働災害防止対策を取りまとめまして、昨年の九月七日に基準審議会に御検討を依頼いたしました。今回提出しました法律案は、その建議で示された対策のうちの、当面緊急に実施する必要のある事項及び最近の重大災害の事例にかんがみ措置する必要のある事項でございまして、それに新たに法律で規制することが適当なもの、こういうことで本年の二月八日に中央労働基準審議会全員一致の答申を得て取りまとめたものでございます。  それから、総合対策のうちのその他の事項につきましては、引き続き中央労働基準審議会に御検討をお願いいたしまして、三月の二十八日に検討結果報告を得て、そのうち建議にかかわる作業主任者の選任の範囲の拡大とか仮設機材の構造規格の制定とか、あるいは特別教育の対象業務の拡大、こういったことにつきましては政省令の改正によって早急に対策の具体化を進める、こういうふうにいたしている次第でございます。  それからさらに、隧道の建設の作業におきます爆発、火災の防止対策につきましても、現在労働安全衛生規則の改正作業を進めているところでございます。  従来からの一連の施策に加えましてこういった対策を総合的に推進をいたしまして、建設業におきます災害の一層の防止を図ってまいりたいというふうな考えでございます。
  169. 塩田晋

    ○塩田委員 そのような建設業の総合対策が必要だと思うのでございますが、どうも建設業におきましては、一般的な観念としまして災害というものは建設業につきものである、死亡事故についても大体五百億円くらいの工費がかかるところには一人くらいの死亡者がやはりその割りで出てくる、こういった漠然とした考え方があるといううわさも聞くわけでございます。ということは、とんでもないことでございまして、やはりそこは業界あるいは業者としての災害に対する認識が甘過ぎる。やむを得ないというような観念、これはぜひとも業界あるいは業者のトップクラスから認識を改めていただかないことにはなかなかなくならない問題だと思います。行政当局初め総力を挙げてこれに取り組んでおられるということは十分理解されるのでございますが、まだまだそういった観念が残っておるというところに大きな問題があろうかと思いますので、今後ともそういった災害防止の思想といいますか、観念というものを十分に正して、災害防止に万全を期していただきますよう要請をいたします。  次に、工事計画の届け出審査の問題でございますが、この大臣審査の対象となる建設工事計画は、数が少な過ぎると対策の意味が薄れますし、また多過ぎますとそれをこなす面におきまして問題も出てまいりますし、適正なものでないといけないと思うのでございますが、大臣審査の対象としておられる建設工事はどのようなものを想定しておられますか、お伺いします。
  170. 津澤健一

    津澤政府委員 確かに御指摘のとおり、実効ある適正な審査を行うためには審査の数というものも適正であることが必要でございます。私ども現在考えておりますのは、ただいまは労働基準監督署長に届け出られております工事のうち、たとえば長さが三千メートル以上のトンネルの工事でございますとか、最大支間が五百メートル以上の橋梁工事、つり橋にありましては千メートル以上を考えておりますが、あるいは百五十メートル以上の高さのダム工事、三気圧以上の圧力を用いる圧気工事、あるいはまた地下発電所の建設、またこれに類するような、将来地下備蓄などが行われますような地穴の建設というようなもの、こういうものを考えているわけでございますが、これらは技術の進歩によりまして非常に大規模なものができてくる、そのことによる危険性の増大というものに着目しておるものもございますれば、大清水トンネルの事故等にかんがみまして、どうしても労働本省自身がそれらの技術を含めて取り組む必要があると考えたものも入っているわけでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、これらの工事が対象として必要かつ十分なものかどうかということにつきましては、なかなか絶対的なことは申し上げられませんけれども、この改正法の施行後におきましても、運用の実績あるいは労働災害の動向、技術の動向というようなものを見ながら検討してまいりたいと思っております。
  171. 塩田晋

    ○塩田委員 工事計画の審査体制につきまして、現状はどうなっておりますか。技術関係の専門官がいると思うのでございますけれども、十分体制ができておりますか。
  172. 津澤健一

    津澤政府委員 大臣審査を行おうとしておるもの、また監督署長が審査を担当いたしておりますもの、それぞれにつきまして体制が十分でなければ制度も生きないということは御指摘のとおりでございます。建設工事計画の審査という仕事はかなり専門的な仕事でございますので、その担当者は建設工事そのものについて、あるいはいろいろな技術的な面について専門知識を有しまして、かつ建設工事安全性というものについて実地に監督指導というようなものも行った経験を通じて知識のある産業安全専門官というものが中心になって、適正迅速な審査ができるように考えております。このためには、その能率を上げるためにチェックポイント等も過去の実績もございますので、これをもとにして基準を整備するというようなことが必要と考えておりますが、そうしたことを行って効率を上げますとともに、担当の専門官などの増強、あるいはその技術レベルの向上というようなものに今後とも努力してまいることによりましてこれをこなしていきたいと考えております。
  173. 塩田晋

    ○塩田委員 形が整いましても、仏つくって魂入れずというようなことになってはなりませんので、そういった体制の充実、運用を十分にしていただきますよう要望いたします。  次に、建設工事計画段階から安全性の審査を実効あらしめるために事業者に対します規制、これは勧告、要請等でなされるわけでございますが、大きい問題は、発注段階からの趣旨徹底が必要であると思います。ともすれば安全衛生労働者あるいは事業者の問題であって、発注者自身、特に役所には関係がないという観念がかなりあるように言われております。特に発注者が工法などを指定するような場合には問題があろうかと思います。こういった問題につきましては中央労働基準審議会の中でも論議されたと聞いておりますが、いかがでございますか。
  174. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 建設工事におきます発注者の責務につきましては、現行の労働安全衛生法におきましても「施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。」こういった規定がなされておるところでございます。労働省といたしましてはこういった規定の趣旨を踏まえまして、本省段階なり地方局署の段階でそれぞれ発注機関との連絡協議を密にすることによりまして、安全経費の積算とか適正な工期の設定等、請負契約にかかわります安全衛生対策について十分な配慮がなされるよう指導、要請に努めているところでございます。  また、工法が発注者から指定された場合につきまして、施工計画の作成は通常建設業者が行うものでございまして、かつ建設業者は施工後の安全という面からばかりでなくて、指定された工法そのものの適否をも検討する必要がある。指定された工法によりまして労働者安全衛生確保できないというような場合には、発注者との調整により適切な措置がとられることが必要であろうと存じます。  それで、今回建設業者が作成し、届け出ました施工計画につきまして安全衛生の面から審査を行い、その結果、届け出を行う建設業者に対して勧告、要請等を行うことになりますけれども、必要に応じまして発注者に対しましても必要な指導、要請等を行い、制度の円滑な運用に努めてまいりたいと思います。
  175. 塩田晋

    ○塩田委員 有資格者の参画の件でございますが、工事計画に当たりまして有資格者による安全性のチェック制度が導入されておりますけれども、その具体的な内容、資格はどのようになっておりますか。このような資格者に任せっ放しにならないように運用に十分留意をしてほしいのでございます。  同じように、下請混在現場におきまして元方の安全衛生管理者を置くということになっておりますが、これは必要であり、評価するものでございますけれども、こういったことによりまして責任が下級に移行しっ放しになってしまうということにならないか、その辺をどのようにチェックをしていかれるかということをお伺いいたします。  また、技術の専門家がやはり監督官として必要だと思うのでございますが、どのような指導監督を行っておられますか。そのような指導監督を十分行う体制になっているのかどうか、お伺いいたします。
  176. 津澤健一

    津澤政府委員 工事計画の作成参画の問題でございますが、施工計画は、工事を請け負いました元請の店社または現場事務所などで実際に工事を行う関係者が、採用される工法、工事用の機械、作業工程というようなものに検討を加えながら作成するものでございます。安全衛生の有資格者というのは、施工計画を作成する過程におきまして安全衛生面からする法令違反がないようにチェックすることとともに、予想されますいろいろな危険性について十分な予防措置、安全が確保される、そういう機械設備の配置や、かつ安全で合理的な作業工程を設定するというような面で、安全衛生施工というものが十分に行われるようにこの人の意見が述べられていくという機能を果たすわけでございます。  資格要件といたしましては、一例を申し上げますと、大学の理化学系の正規の学課を修めて卒業しました者で、届け出を行う工事と同種類の工事の設計監理あるいは施工管理の実務に十年以上の経験を有している者で、同種の工事の施工における安全衛生の実務にさらに三年以上従事した経験を有する者など、学校の程度等によりまして年限を少しずつ変えていきたいと考えておりますが、さらに特別の技能を持った人、たとえば一級建築士、一級土木施工管理技士、技術士等でありまして、届け出を行う工事に係る部門の安全衛生について労働大臣が定める研修を受けた人というような方々でありますとか、これらに類する者で労働大臣の定める者を考えております。  確かに適正な計画をつくり、これを届け出るべき義務を負っておりますのは基本的には事業者でございまして、計画の作成の参画が設けられましても、これは事業者責任をおろそかにするということではございません。こういう点も十分趣旨が徹底いたしますように私どもも留意してまいりたいと思っております。  そこで、下請混在現場に元方安全衛生管理者等いろいろなものが設けられていくわけでございますが、これが設けられたことによりまして責任が下級の者に移るようなことがあってはならないという仰せでございますが、まことにそのとおりでございます。元方安全衛生管理者というのは統括安全衛生責任者の指揮を受けながら、統括安全衛生責任者が統括管理する事項のうちの技術的事項を管理する、こういう立場でありまして、したがいまして元方安全衛生管理者が設けられることになりましても、統括安全衛生責任者の統括管理責任そのものに基本的な変更というのはないわけでありますので、統括管理すべき事項についての責任が元方安全衛生管理者に移っていくということにはならないと考えております。  ただ、御指摘のように、このことが安易に誤解を生みましては大変なことでございますので、今回こういった管理者が設けられます趣旨というものも十分徹底いたして、このような規定の適正な運用が図られるようにしてまいりたいと思っております。  また、先ほども若干触れたことでございますが、なお私どもこれを転がしてまいります体制でございますが、現在も私どもの行政には技術系の職員が千三、四百名おりますばかりでなく、最近は監督官等の採用に際しましても、その採用者の約半数が技術系の者というようなことでございます。そうした面からの素養のある者の充足に努めますとともに、先ほども申し上げましたように、これらの者の研修というようなものも一層強化いたしまして、こうした災害防止に対応できるように努めてまいりたいと存じております。
  177. 塩田晋

    ○塩田委員 最後に質問いたします。  今回の改正で種々の有資格者、まだ名前のついていないものもございますけれども、こういった有資格者を置くことを義務づけるのはよいと思います。その有資格者の確保の道につきましても十分手を打っていただきたいと思いますし、事業者の方はそういった面で義務づけられ、いろいろ努力をしていただくということでありますけれども、単にこれを義務づけ、強制するだけでなくして、やはり一体的にこの安全衛生管理体制を整備するというためには、国からも必要な資金的な援助とかあるいは研修、講習等、公的な機関で行うような指導援助をお考えいただきたいと思います。特に資金力の弱い中小企業におきましては、自主的な活動を促進するような援助措置が必要であると思います。これについてどのような対策を考えておられるか、お伺いいたします。  そして最後に、労働災害の防止のために、先ほど来申し上げましたように、安全対策というものを、人間尊重の立場から戦争防止努力と同等あるいはそれ以上に熱意を持って、労働行政の中心に据えて取り組んでいただきますことを要望いたします。  いろいろ問題としてはあるわけでございますが、大規模な実態調査が必要であろうかと思います。先ほど申し上げましたような経済計算等を含めまして実態調査が必要である。それから、企業に対する監視体制の強化が必要であろうかと思います。大きな災害を起こしたものについては指名停止をするようなことも今後とも強化する必要があると思います。それから、労使におきまして安全衛生対策委員会の法的な地位を確立するような検討も必要ではないかと思います。それから、労働者の就労システムを改善するとかあるいは訓練を強化する、そのためにも労働手帳の拡大あるいは恩典の付与ということが必要かと思います。それから、突貫工事とか、時期が迫って工期を詰めて無理な仕事をするようなことが多いわけでございまして、そのようなことのないように適正な工期による工事発注を検討していただきたい。それから、建設行政全体に対しましても労働者が参加できるような道を、審議会あるいは委員会等への参加の道を検討していただきたい。最後に、コンサルタント制度の活用といった問題についても検討していただきたい。こういったことを要望いたしまして、労働大臣の基本的な取り組み方、姿勢につきましてお伺いいたします。
  178. 藤波孝生

    藤波国務大臣 わが国の社会から労働災害を絶滅をする、先生からいみじくも安全戦争という名前がつけられましたが、まさに私どもそういう認識で、労働行政の中心にこの労働災害の絶滅、安全予防の対策を積極的に講じていくということを大きく据えて取り組んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。  ただいまはまた非常にきめの細かい、非常に各分野にわたる御指摘をちょうだいいたしまして、それぞれの面にわたって検討を進め、対策を講じてまいりたい、このように考えておるところでございます。特に国際的な比較をしていく資料を整えますとか、そうしてそれの経済損失等の経済計算等を綿密に行いまして、これらを労働災害絶滅の一つの材料にしていかなければいかぬ、道具にしていかなければいかぬ、こういうふうにも考えます。こういったことにつきましては積極的に取り組んでまいりたいと考える次第でございます。  なお、これは労働省だけあるいは政府だけがどれだけ力んでおりましてもどうにもならないことでございます。それぞれの業界、それぞれの団体、またそれぞれの企業の中での労使双方、あるいは各地域地域の住民の方々みんながそのつもりになって、わが国から労働災害を絶滅する、こういう一大運動が展開をされてくるぐらいのつもりで取り組んでいくのでなければいけない。もちろん政府はその先頭に立って指導監督あるいは援助等の面につきましても積極的に取り組んでまいりたいと思いますが、特に今朝来のいろいろな御質疑の中でちょうだいをいたしました貴重な御指摘、御指導を私ども十二分にかみしめまして、今後の行政の中できめ細かく対応してまいりたい、このように新しい決意に燃えておりますことを申し上げまして、深い御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  179. 塩田晋

    ○塩田委員 終わります。
  180. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  181. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  労働安全衛生法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  182. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  183. 葉梨信行

    葉梨委員長 この際、住栄作君、田口一男君、大橋敏雄君、浦井洋君及び米沢隆君から、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者からその趣旨の説明を聴取いたします。田口一男君。
  184. 田口一男

    田口委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党・革新共同及び民社党・国民連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     労働安全衛生法の一部を改正する法律に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。  一 建設事業者ごとにその安全成績を適確に把握するための方法について、専門家による委員会を設けて検討し、労働災害の防止に資すること。  二 建設労働者に対する安全衛生教育、健康診断等が適切に行われるようにするため、これらの労働者の移動性を考慮して、安全衛生に関する手帳の交付その他の措置について検討し、その推進に努めること。  三 企業における安全衛生管理体制の充実の促進及び工事計画の審査その他の行政体制の整備に努めること。  四 労働安全衛生水準の向上に資するために、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント制度の活用を図ること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  185. 葉梨信行

    葉梨委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  186. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立総員。よって、本案については、住栄作君外四名提出の動議のごとく附帯決議を付することと決しました。  この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤波労働大臣
  187. 藤波孝生

    藤波国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これが実現に今後とも一層努力をいたす所存であります。     —————————————
  188. 葉梨信行

    葉梨委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  190. 葉梨信行

    葉梨委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時五十四分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————