○平石
委員 そのようになるべく拡大するように現行法の中ではやっていただきたいということと、今後ひとつお考えをいただきたいということであります。
それから、これもお聞きしようと思いましたが、時間がございませんから申し上げますが、市町村が結局自衛手段として、労働保険法が余りにも
実態に合わないから、全国で二十三カ所、二十数カ町村がみずから農業者
労働災害共済
制度というのをつくっておるわけです。それによるいわゆる医療費あるいは休業
補償、障害、死亡等の一時金とかあるいは
葬祭料とかいったような
制度が、自己防衛するという
立場で全国に拡大されていっておるわけです。こういう
実態等を考えたときに、農林省も
労働省も今後ひとつ緊密に連携をとっていただいて、この保険
制度に加入され、
被災者が十分報われるように御配慮願いたい。これは要望して、終わらせていただきたいと思います。
次にお伺いを申し上げたいことは、いわゆる請負です。大きな親会社の下請をやっておる場合に、労務者に
労働災害が起きたときに、請負と目されておる者が
事業主である、いや私は
事業主でない、
労働者なんだ、こういった問題が大変多く出ておるわけです。私はこの問題について、時間がございませんけれ
ども急いでお伺いをしたい。
これは具体例としましては、現在審査会において審査がなされておる
ケースでございますが、高知県安芸市の佐伯幸夫さんという方が、昭和二十年代からずっと北越製紙という製紙会社の山の木材を切って搬出をしてきた。そして、出かせぎに行くような地帯でございますから、農閑期のときにはグループとしてその
仕事に二十数年従事してきたわけです。そして、製紙会社の要請に基づいて、いわゆる特別加入という形の処理がなされて、この佐伯さんはやっておったわけです。形式的にはそのようになっておりますけれ
ども、その
実態については、これは請負主、
事業主ではない、そのような本人の申し立てでございますし、私も本人にいろいろとお聞きをし、
資料等もいただいてみますと、
労働省の判定では
事業主だという判定が出ておるわけですが、この件についてはどうもおかしいじゃないかというように考えられるのです。
ここに高知労働基準局長の「林業の皆さんへ」というパンフレットが出ております。これを見てみますと、「請負業者」という欄のところに、「山主又は買主から、いわゆる「請負った」というだけで、その者が直ちに
事業主ということはできません。すなわち、
法律上、有効な請負と認められる場合です。よく、「何某に請負わせた」と言いますが、その
実態を調べてみると、形式上は民法上の請負契約の形がとられていても、実は、請負った者が一般
労働者と同様に、自から労働に従事しているのみであるとか、
労働者の一団の代表者に過ぎない場合が大
部分です。このような事態では
法律上その者が山主又は買主から「請負った」とはいえません。請負が
法律上有効に認められるためには、つぎの四点すべての要件を満たす必要があります。」そして、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と要件がございまして、「(イ) 山主又は買主と書面で請負契約がむすばれ、請負った
事業の完成について、
事業主としての財政上並びに
法律上のすべての責任を負うものであること。(ロ) 作業に従事する
労働者を指揮監督するものであること。(ハ)作業に従事する
労働者に対し、
使用者として
法律に
規定されたすべての義務を負うものであること。(ニ)自から提供する機械、設備、器材、その作業に必要な材料、資材を使用し、企画もしくは専門的な技術、専門的な経験を必要とする作業を行なうものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。」このように出ております。
私は、なかなかよくできておると思うのです。したがって、これに基づいていまの
ケースを見てみますと、なるほどそういった請負契約は結ばれておりますけれ
ども、山の
仕事が終わって、切り出しが済んでから請負契約としての形式がとられている。
それから、もう
一つ極端な例、これは時間がありませんから続けて申し上げていきますが、昭和五十一年にやった菖蒲山という山で、一人の
労働者が振動病にかかった。そして、田舎へ引き揚げておった。それが五十三年に振動病の認定が出たわけです。さあ、そうしますと、北越製紙はこれは何とか救済してやらねばならぬから、この佐伯さんに、あなたが
事業主としてやってもらわないとこの
労働者の
災害を救済することができないから、あなたが
事業主としての契約書を結んでほしい、こういって二年も過ぎてから高知県へ送ってきた。これがそうなんです。五十三年四月一日付で会社から送ってきて請負契約書をつくっておる。そして、その一緒にグループとして働いておった
労働者が振動病の認定を受けて
労災保険の適用が済んだわけです。
そして、この佐伯さん自身も現在振動病の認定を受けておるわけです。ところが、あなたは
事業主だから
給付額その他において違いが出ることは当然ですと言われる。私はグループ長としてやっておったもので、会社の方から、後からそういう整理をするために請負主としての判をつかされた、こう申し立てておるわけです。
私はこの件について、いま審査会で審査が行われておる
ケースでございますからやかましくは申しませんけれ
ども、
労働省のいわゆる
労働行政の中でこういった事例がたくさんあろうと思うのですが、判定をする際は、
実態はどうなのか、形式はどうなのか、そしてこの形式というのは
実態に合った形式になっておるのかどうか、こういうことを十分精査をしていただかなければならぬと思うのです。
このことを考えたときに、そういった大きな会社はたくさんの山をやっておるわけですが、私の会社には報告をする事故はありませんと、そういう危険負担は全部これらの人に任すのです。いわゆる切って捨てると言ったら
言葉が悪いのですが、形式上そういう形をとって、私の現場には
労働災害は起きておりません、非常に安全な
仕事が行われております、実際は起きておるけれ
どもそういう形にして全部伏せられていく、こういう
実態があるのではないか、その
一つの犠牲者になっておるのではないか、このように考えられるわけですよ。
ひとつ
労働省の見解をお伺いしたい。