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1980-04-08 第91回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月八日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 葉梨 信行君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 山崎  拓君    理事 田口 一男君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 浦井  洋君    理事 米沢  隆君       大坪健一郎君    瓦   力君       北口  博君    小坂徳三郎君       斉藤滋与史君    戸沢 政方君       中野 四郎君    丹羽 雄哉君       八田 貞義君    船田  元君       牧野 隆守君    箕輪  登君       山下 徳夫君    枝村 要作君       金子 みつ君    佐藤  誼君       前川  旦君    村山 富市君       安田 修三君    山本 政弘君       谷口 是巨君   平石磨作太郎君       伏屋 修治君    梅田  勝君       田中美智子君    小渕 正義君       塩田  晋君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         労 働 大 臣 藤波 孝生君  出席政府委員         経済企画庁物価         局審議官    坂井 清志君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労政局長 細野  正君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 寺園 成章君         労働省婦人少年         局長      高橋 久子君         労働省職業安定         局長      関  英夫君  委員外の出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  武智 敏夫君         文部省大学局医         学教育課長   川村 恒明君         労働大臣官房統         計情報部長   田中 清定君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 四月二日  辞任         補欠選任   塩田  晋君     横手 文雄君 同日  辞任         補欠選任   横手 文雄君     塩田  晋君     ————————————— 四月三日  母子保健法の一部を改正する法律案平石磨作  太郎君外二名提出、衆法第三三号)  児童福祉法の一部を改正する法律案平石磨作  太郎君外二名提出、衆法第三四号) 同月一日  健康保険制度拡充等に関する請願(浦井洋君  紹介)(第三一二三号)  医療保障制度の改善に関する請願(林百郎君紹  介)(第三一二四号)  指定自動車教習所における労働条件確立等に関  する請願(岩佐恵美君紹介)(第三一二五号)  同(木下元二君外一名紹介)(第三一二六号)  同(柴田睦夫君紹介)(第三一二七号)  同(不破哲三君紹介)(第三一二八号)  同(三浦久君外一名紹介)(第三一二九号)  同(三谷秀治君紹介)(第三一三〇号)  医療保険制度及び建設国民健康保険組合の改善  に関する請願(岩垂寿喜男君紹介)(第三一三  一号)  同(梅田勝君紹介)(第三一三二号)  同(工藤晃君紹介)(第三一三三号)  同(小林政子君紹介)(第三一三四号)  同(沢田広君紹介)(第三一三五号)  同(高沢寅男君紹介)(第三一三六号)  同(中村正雄君紹介)(第三一三七号)  同(不破哲三君紹介)(第三一三八号)  同(松本善明君紹介)(第三一三九号)  同(八木昇君紹介)(第三一四〇号)  同(渡辺貢君紹介)(第三一四一号)  同(岩佐恵美君紹介)(第三一九〇号)  同(小林政子君紹介)(第三一九一号)  同(沢田広君紹介)(第三一九二号)  同(中路雅弘君紹介)(第三一九三号)  同外一件(井岡大治君紹介)(第三二三七号)  同(上田哲君紹介)(第三二三八号)  同(金子満広君紹介)(第三二三九号)  同(神沢浄君紹介)(第三二四〇号)  同(沢田広君紹介)(第三二四一号)  同(渋沢利久君紹介)(第三二四二号)  同(新盛辰雄君紹介)(第三二四三号)  同(中路雅弘君紹介)(第三二四四号)  同(不破哲三君紹介)(第三二四五号)  同(松本善明君紹介)(第三二四六号)  同(山花貞夫君紹介)(第三二四七号)  同外二件(山本政弘君紹介)(第三二四八号)  民間保育事業振興に関する請願(藤原ひろ子君  紹介)(第三一四二号)  児童福祉法に基づく学童保育制度化に関する  請願(辻第一君紹介)(第三一四三号)  同(藤原ひろ子君紹介)(第三一四四号)  同(深谷隆司君紹介)(第三二四九号)  医療保険制度の改善に関する請願(浦井洋君紹  介)(第三一四五号)  栄養士法の一部改正に関する請願(三ツ林弥太  郎君紹介)(第三一四六号)  良い医療制度確立に関する請願(梅田勝君紹  介)(第三一四七号)  同(多田光雄君紹介)(第三一四八号)  同(横山利秋君紹介)(第三一四九号)  同(渡辺貢君紹介)(第三一五〇号)  同(安藤巖君紹介)(第三一八九号)  同外二件(小川国彦君紹介)(第三二五〇号)  同(木原実君紹介)(第三二五一号)  同(新村勝雄君紹介)(第三二五二号)  医療保険制度の大改悪反対等に関する請願(岩  垂寿喜男君紹介)(第三一五一号)  歯科医療保険制度改善に関する請願(瀬崎博義  君紹介)(第三一五二号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願(寺前  巖君紹介)(第三一五三号)  同外一件(三浦久君紹介)(第三一五四号)  医療保険制度改善措置に関する請願(柴田睦  夫君紹介)(第三一五五号)  腎臓病患者の医療及び生活の改善に関する請願  (梅田勝君紹介)(第三一五六号)  戦後強制抑留者処遇改善に関する請願(久保  三郎君紹介)(第三一五七号)  同(小林進君紹介)(第三一五八号)  同(庄司幸助君紹介)(第三一五九号)  同(渡部行雄君紹介)(第三一六〇号)  労働基準法改悪反対等に関する請願(高沢寅  男君紹介)(第三一六一号)  看護職員条約批准のための国内法令整備等に関  する請願(角屋堅次郎君紹介)(第三一六二  号)  同(田中美智子君紹介)(第三一六三号)  同(新盛辰雄君紹介)(第三二五三号)  同(馬場昇君紹介)(第三二五四号)  国立腎センター設立に関する請願(玉置一弥君  紹介)(第三一六四号)  医療保険制度改悪反対、良い医療制度の確立  に関する請願(田中美智子君紹介)(第三一六  五号)  同(辻第一君紹介)(第三一六六号)  良い医療制度の確立に関する請願(浦井洋君外  一名紹介)(第三一六七号)  同(木下元二君紹介)(第三一六八号)  国民年金法の被保険者で公的無年金者となつた  重度障害者に対し特例納付制度適用に関する請  願(岡田利春君紹介)(第三一六九号)  同(武部文君紹介)(第三二五五号)  労災保険法改正案のうち保険給付民事損害賠  償との調整反対に関する請願(岡田利春君紹  介)〈第三一七〇号)  同(武部文君紹介)(第三二五六号)  厚生年金保険法改悪反対等に関する請願外一  件(浦井洋君紹介)(第三一七一号)  同(田中美智子君紹介)(第三一七二号)  同(中路雅弘君紹介)(第三一七三号)  同(田口一男君紹介)(第三二五七号)  厚生年金支給開始年齢引き上げ反対に関する  請願(塩田晋君紹介)(第三二一六号)  医療保険制度改悪反対、医療の改善に関する  請願(新村勝雄君紹介)(第三二一七号)  医療費明細書の交付義務づけに関する請願(青  山丘君紹介)(第三二一八号)  同(小沢貞孝君紹介)(第三二一九号)  同(大内啓伍君紹介)(第三二二〇号)  同(岡田正勝君紹介)(第三二二一号)  同(春日一幸君紹介)(第三二二二号)  同(河村勝君紹介)(第三二二三号)  同(神田厚君紹介)(第三二二四号)  同(木下敬之助君紹介)(第三二二五号)  同(小平忠君紹介)(第三二二六号)  同(小渕正義君紹介)(第三二二七号)  同(近藤豊君紹介)(第三二二八号)  同(佐々木良作君紹介)(第三二二九号)  同(高橋高望君紹介)(第三二三〇号)  同(竹本孫一君紹介)(第三二三一号)  同(玉置一弥君紹介)(第三二三二号)  同(塚本三郎君紹介)(第三二三三号)  同(中井洽君紹介)(第三二三四号)  同(中野寛成君紹介)(第三二三五号)  同(中村正雄君紹介)(第三二三六号) 同月三日  医療保険制度及び建設国民健康保険組合の改善  に関する請願(中路雅弘君紹介)(第三二六九  号)  同(不破哲三君紹介)(第三二七〇号)  同(正森成二君紹介)(第三二七一号)  同(村上弘君紹介)(第三二七二号)  同(枝村要作君紹介)(第三三九〇号)  同(山田耻目君紹介)(第三三九一号)  良い医療制度確立に関する請願(不破哲三君紹  介)(第三二七三号)  同(渡辺貢君紹介)(第三二七四号)  同外一件(枝村要作君紹介)(第三三九二号)  同(新村勝雄君紹介)(第三三九三号)  医療保険制度の大改悪反対等に関する請願(中  路雅弘君紹介)(第三二七五号)  医療保険制度改悪反対、良い医療制度の確立  に関する請願(辻第一君紹介)(第三二七六  号)  国立腎センター設立に関する請願(稻村左近四  郎君紹介)(第三三八三号)  新鮮血液の確保及び心臓病児者内科的医療費  補助に関する請願(江藤隆美君紹介)(第三三  八四号)  看護職員条約批准のための国内法令整備等に関  する請願(江藤隆美君紹介)(第三三八五号)  同(増岡博之君紹介)(第三三八六号)  厚生年金保険法改悪反対等に関する請願(枝  村要作君紹介)(第三三八七号)  同外一件(佐藤誼君紹介)(第三三八八号)  同(前川旦君紹介)(第三三八九号)  医療保険制度改悪反対、医療の改善に関する  請願外一件(新村勝雄君紹介)(第三三九四  号)  原子爆弾被爆者等援護法の制定に関する請願  (大原亨君紹介)(第三三九五号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願(佐藤  誼君紹介)(第三三九六号)  老人医療費有料化反対及び老人の保健、医療  の総合的制度確立に関する請願(佐藤誼君紹  介)(第三三九七号)  民間保育事業振興に関する請願(川俣健二郎君  紹介)(第三三九八号)  戦後強制抑留者処遇改善に関する請願(川俣  健二郎君紹介)(第三三九九号)  同(細谷昭雄君紹介)(第三四〇〇号)  療術の制度化阻止に関する請願(野中英二君紹  介)(第三四〇一号)  児童福祉法に基づく学童保育制度化に関する  請願(葉梨信行君紹介)(第三四〇二号)  良い医療制度の確立に関する請願外一件(藤田  高敏君紹介)(第三四〇三号) 同月七日  老人医療費の有料化、財源の住民負担反対等に  関する請願(梅田勝君紹介)(第三四一六号)  医療保険制度の改善及び国民負担の軽減に関す  る請願(中林佳子君紹介)(第三四一七号)  医療保険制度改悪反対医療制度の確立に関  する請願(藤原ひろ子君紹介)(第三四一八  号)  医療保険制度改悪反対医療制度拡充に関す  る請願(渡辺貢君紹介)(第三四一九号)  全国一律最低賃金制確立に関する請願(金子満  広君紹介)(第三四二〇号)  同(工藤晃君紹介)(第三四二一号)  同(小林政子君紹介)(第三四二二号)  同(榊利夫君紹介)(第三四二三号)  同(柴田睦夫君紹介)(第三四二四号)  同(中島武敏君紹介)(第三四二五号)  同(松本善明君紹介)(第三四二六号)  医療保険制度及び建設国民健康保険組合の改善  に関する請願(浦井洋君紹介)(第三四二七  号)  同(榊利夫君紹介)(第三四二八号)  同(田中美智子君紹介)(第三四二九号)  同外一件(中路雅弘君紹介)(第三四三〇号)  同(東中光雄君紹介)(第三四三一号)  同外一件(不破哲三君紹介)(第三四三二号)  同(村上弘君紹介)(第三四三三号)  同(渡辺貢君紹介)(第三四三四号)  同外一件(飛鳥田一雄君紹介)(第三五七七  号)  同外二件(伊藤茂君紹介)(第三五七八号)  同(大出俊君紹介)(第三五七九号)  同(長田武士君紹介)(第三五八〇号)  同(金子みつ君紹介)(第三五八一号)  同(川崎寛治君紹介)(第三五八二号)  同外三件(小濱新次君紹介)(第三五八三号)  同(小渕正義君紹介)(第三五八四号)  同外一件(佐藤観樹君紹介)(第三五八五号)  同(柴田弘君紹介)(第三五八六号)  同(瀬野栄次郎君紹介)(第三五八七号)  同外一件(多賀谷真稔君紹介)(第三五八八  号)  同外一件(野口幸一君紹介)(第三五八九号)  同外一件(村山喜一君紹介)(第三五九〇号)  同外四件(山本幸一君紹介)(第三五九一号)  同(湯山勇君紹介)(第三五九二号)  同(和田一仁君紹介)(第三五九三号)  同(和田耕作君紹介)(第三五九四号)  同(渡部行雄君紹介)(第三五九五号)  新鮮血液の確保及び心臓病児者内科的医療費  補助に関する請願(浦井洋君紹介)(第三四三  五号)  指定自動車教習所労働条件確立等に関する請  願(浦井洋君紹介)(第三四三六号)  同(村上弘君紹介)(第三四三七号)  厚生年金保険法改悪反対等に関する請願(工  藤晃君紹介)(第三四三八号)  同外一件(津川武一君紹介)(第三四三九号)  同(寺前巖君紹介)(第三四四〇号)  同(中路雅弘君紹介)(第三四四一号)  同(中島武敏君紹介)(第三四四二号)  同(渡辺貢君紹介)(第三四四三号)  同(伊藤茂君紹介)(第三六一〇号)  同(金子みつ君紹介)(第三六一一号)  良い医療制度確立に関する請願(渡辺貢君紹  介)(第三四四四号)  同(大出俊君紹介)(第三五九六号)  同(金子みつ君紹介)(第三五九七号)  同(木原実君紹介)(第三五九八号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願(渡辺  貢君紹介)(第三四四五号)  同(飛鳥田一雄君紹介)(第三六〇〇号)  医療保険制度改善に関する請願(瀬崎博義君紹  介)(第三四四六号)  国民健康保険傷病手当出産手当実施等に関  する請願(藤原ひろ子君紹介)(第三四四七  号)  厚生年金支給開始年齢引き上げ反対等に関す  る請願(川口大助君紹介)(第三五六〇号)  同(神沢浄君紹介)(第三五六一号)  失業対策事業の新制度確立等に関する請願(斉  藤正男君紹介)(第三五六二号)  同(細谷昭雄君紹介)(第三五六三号)  保育所職員配置基準改善に関する請願(新村  勝雄君紹介)(第三五六四号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願(  池田克也君紹介)(第三五六五号)  社会保障社会福祉拡充等に関する請願(池  田克也君紹介)(第三五六六号)  原子爆弾被爆者等援護法の制定に関する請願(  池田克也君紹介)(第三五六七号)  原子爆弾被爆者援護法制定に関する請願(柴田  弘君紹介)(第三五六八号)  国民年金法の被保険者で公的無年金者となった  重度障害者に対し特例納付制度適用に関する請  願(小坂徳三郎君紹介)(第三五六九号)  国立腎センター設立に関する請願(松浦利尚君  紹介)(第三五七〇号)  療術の制度化阻止に関する請願(三原朝雄君紹  介)(第三五七一号)  看護職員条約批准のための国内法令整備等に関  する請願(飛鳥田一雄君紹介)(第三五七二  号)  同(池田克也君紹介)(第三五七三号)  同(大出俊君紹介)(第三五七四号)  同(森田景一君紹介)(第三五七五号)  同外二件(下平正一君紹介)(第三五七六号)  医療保険制度の大改悪反対等に関する請願(伊  藤茂君紹介)(第三五九九号)  医療ソーシャルワーカー配置財源保障に関す  る請願(金子みつ君紹介)(第三六〇一号)  健康保険法改正案の撤回、良い医療制度の確立  に関する請願(斉藤正男君紹介)(第三六〇二  号)  同(渋沢利久君紹介)(第三六〇三号)  同(関晴正君紹介)(第三六〇四号)  同(田口一男君紹介)(第三六〇五号)  同(楯兼次郎君紹介)(第三六〇六号)  同(春田重昭君紹介)(第三六〇七号)  同(村山喜一君紹介)(第三六〇八号)  同(渡部行雄君紹介)(第三六〇九号)  医療保険制度改悪反対、医療の改善に関する  請願(新村勝雄君紹介)(第三六一二号)  戦後強制抑留者処遇改善に関する請願(赤城  宗徳君紹介)(第三六一三号)  同(荒舩清十郎君紹介)(第三六一四号)  同(石川要三君紹介)(第三六一五号)  同(石田博英君紹介)(第三六一六号)  同(鹿野道彦君紹介)(第三六一七号)  同(梶山静六君紹介)(第三六一八号)  同(久野忠治君紹介)(第三六一九号)  同(近藤元次君紹介)(第三六二〇号)  同(佐々木義武君紹介)(第三六二一号)  同(佐野嘉吉君紹介)(第三六二二号)  同外一件(櫻内義雄君紹介)(第三六二三号)  同(椎名素夫君紹介)(第三六二四号)  同(田名部匡省君紹介)(第三六二五号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三六二六号)  同(竹内黎一君紹介)(第三六二七号)  同外一件(竹下登君紹介)(第三六二八号)  同(津島雄二君紹介)(第三六二九号)  同(塚原俊平君紹介)(第三六三〇号)  同(中尾栄一君紹介)(第三六三一号)  同(中川一郎君紹介)(第三六三二号)  同(中村喜四郎君紹介)(第三六三三号)  同(丹羽雄哉君紹介)(第三六三四号)  同(葉梨信行君紹介)(第三六三五号)  同(長谷川峻君紹介)(第三六三六号)  同(八田貞義君紹介)(第三六三七号)  同(原健三郎君紹介)(第三六三八号)  同(細田吉藏君紹介)(第三六三九号)  同(三塚博君紹介)(第三六四〇号)  同(武藤嘉文君紹介)(第三六四一号)  同(村岡兼造君紹介)(第三六四二号)  同(村田敬次郎君紹介)(第三六四三号)  同(毛利松平君紹介)(第三六四四号)  同(粟山明君紹介)(第三六四五号)  同(森下元晴君紹介)(第三六四六号)  同(山崎拓君紹介)(第三六四七号)  同(山崎平八郎君紹介)(第三六四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第三七号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝村要作君。
  3. 枝村要作

    枝村委員 私は、ただいまから八〇春闘問題について集中的にお伺いしていきたいと思います。  大臣も御承知のように、四月の二週から三週にかけてこの春闘山場とされるような一つの行動が仕組まれております。後から逐次聞いていきますけれども、こういう一つの動きに対し、あるいは春闘全体に対して、労働大臣は基本的にどういうふうな考え方を持っておるか、あるいは対応措置を講じようとしておるのか、その問題について答えていただきたい。
  4. 藤波孝生

    藤波国務大臣 委員御指摘のように、いよいよ春闘のいわば最盛期に入ろうとしておるわけであります。春闘につきましては長い歴史がございまして、その間に御高承のようにいろいろな経緯があって今日まで来ておるわけでございますけれども、特にこの八〇年春闘について考えますときに、わが国の経済が第一次石油ショックの後大変な不景気の中をくぐり抜けてまいりまして、経営側労働側も非常に苦しい思いをしてまいりました。そんな中から景気浮揚政策政府あるいは国会としてもいろいろ御論議をいただいて進めてまいりまして、徐々に景気は回復をしてきておるわけでありますが、昨年はさらに石油価格がはね上がるといったような事態もございまして、いまそのために物価が上昇してきている。政府としてもこれをできる限り抑制していくように努力をしているところでございますが、そんな中でのいわゆる春闘でございまして、経営側としてもいろいろと考えるところがございましょうし、労働側といたしましても、日本経済そのものをインフレに持っていってしまったのではどうにもならないというような観点から、いろいろと表現はございますけれども、八%という数字を中心にいたしました要求が出そろいまして、そのような中で労使話し合いが進められており、かつこれからも進められていく、こういうことになっているわけでございます。  政府といたしまして、その労使交渉に介入をしていく立場でも、また気持ちも持っておらないわけでありますけれども、広く今日の日本経済が置かれておる立場などを考えて、国民経済的な広い視野で労使話し合いが進められていくように心から念願をいたしておる次第でございます。  なお、従来も賃金の決定をめぐって春闘というのが進められてまいりましたけれども、御高承のように、今日ではいろいろな政策制度要求といったようなものも春闘の時期に話し合われるということで進められてきておりまして、政府としてもこれらに対応しなければならない部分もたくさんにあるわけでございますし、また、労使話し合いの中でいろいろな制度等について一つ妥結点を見出していくといったようなことも中にずいぶん取り込まれておるわけでございますので、これらにつきましても十分話し合いが進められるように期待をいたしたいと思いますし、政府として対応しなければならない部分につきましては誠意を持って制度等について対応していくようにいたしたい、このように考えて今日の春闘を見守っておるところでございます。
  5. 枝村要作

    枝村委員 それでは、春闘の現状はどうなっているかということを、概略でよろしゅうございますから、説明していただきたいと思います。
  6. 細野正

    細野政府委員 今次の春闘でございますが、先ほども大臣から申し上げましたように、労働組合の方は実質賃金維持向上ということを非常に重視しまして、各団体によりまして表現の差はございますけれども、賃上げ八%という要求基準で足並みがそろいまして、現在労使の間で交渉を行っているという状況でございます。  労働組合の方の方針では、これは先生からもお話がございましたけれども、四月の第二週、第三週を交渉山場と考えておりまして、この時期に回答も集中して行われるのじゃないかと考えておるわけであります。したがいまして、昨年に比べますと比較的早い時期に賃金交渉というものが収束に向かう可能性が強い、こういうふうに考えておるわけでございます。
  7. 枝村要作

    枝村委員 それで、大体いま先行組合がそれぞれどんどん妥結していっております。きのうは総評、春闘共闘がコンピューターではじき出したものが新聞に載っておりました。私の方に知らせることになっておったのですが、新聞を見て承知したのですけれども、ホテル労連などが大体そういう方向で進んできております。それから、マスコミ関係、こういうのが妥結方向に向かっている。数字でいきますと、先行二十六組合妥結したが、その内容は加重平均で一万七千百九十六円、率にして九%、それから四百五組合が第一から第二次の回答を出しておりまして、現在交渉中ですが、これは加重平均で一万百三十六円、率にして五・六%、それから同盟関係でも、新聞に載っているものによりますと、加重平均が一万一千百六十八円、率で七・〇%、こういうことになっている。いま春闘共闘系の百五組合はあすの鉄鋼労連や金属産業の回答を横目で見て、その結果によって一挙に妥結方向にいくというふうに伝えられております。  こう見てまいりますと、ことしの春闘は、いまもあなたが言われた短期の決戦で片がつく傾向がいまのところ見られます。しかし、それはすべて、後から申し上げますけれども、やはり政府の側の対応の態度、姿勢にあると思うのです。  ですから、そういうことを中心にいまから質問をしていくわけでありますが、いま言いましたように、先行組合妥結の条件はまあまあこれならよかろうという程度のところになっております。ですから、いまからどうなるかはわかりませんけれども、その姿勢で臨んでいけば、政府が考えておりますように事態解決が短期決戦で、しかも大きな混乱もなくいくのじゃないかと思う一つの理由が出てくるわけであります。  ですから、その問題に入ります前に、大臣も言いましたように、八%の要求が今度の春闘では出されました。最低ですね。最高は一三%程度になるわけでありますが、この要求そのものについて、大臣、いまはっきり言いませんでしたけれども、これは高いのか低いのか、あるいは妥当なものかどうか、こういう点で言葉の上でお答えできますか。できたらおっしゃってください。
  8. 藤波孝生

    藤波国務大臣 せっかくの御質問でございますけれども、いわゆる労働側要求が高いか低いかということについて政府が所見を申し上げることは控えさせていただきたいと思います。ただ、数字をとにかく大きく構えてかち取っていくといったような時代も正直あったわけでありますけれども、非常に国民経済的な視野に立って、労使が本当に理解の上に立って話し合いを進めていくことが大切であるというふうに、良識的にいろいろ計算をされて要求をしていくというような態度でこの春闘に臨んだ、こういう労働側のおっしゃってみえる御意見に対しましては、私どもも非常に高い評価をさせていただいておるわけでありまして、そういった姿勢をどうか春闘話し合いの中でも堅持されて、労使が理解の深い相互の話し合いを進められるように心から念願をしておる、こういうふうに申し上げることで御理解をいただきたいと思うのでございます。
  9. 枝村要作

    枝村委員 いま三つ言いましたけれども、高くはない、低くもない、おおむね妥当な要求だということを大臣は言外にやはりおっしゃっているように見ます。ところが、私どもやはり当事者でありませんから、それこそまた介入する必要もありませんけれども、この要求の額、率について一般の労働者はそう思っていないのですよ。これは認識の問題ですからひとつ大臣もよく聞いていただきたいと思うのですけれども、この決定に至るまではやはり大変な問題提起がされたし、あるいは組織の中でもある程度ごたごたや困難な条件があったようでありますけれども、これは一口で言うなら要求の率、額が低いという不満ですね。それと今日の生活の実態、あなたは経済全般を見て良識だと言われましたけれども、実際に生活する労働者、サラリーマンは、その実態の中からこんな低い要求でどうなるか、こういう不満やら批判というものが当然出てくると思うのですね。それは言うまでもなく石油の値上げやらそれから公共料金の引き上げなどが一斉にこれから行われるのですから、いまですらも大変苦しい生活なのに、いまから賃金要求するのですから、それに対していま言ったような諸物価が上がってくる、インフレ傾向にもなってくる、それにもかかわらず最低八%だとは言いながら不満だということになってくるわけであります。まあそういう気持ちがありますけれども、そして、そのために非常に不安を感じたり心の中では怒りを感じております。そういうことを百も承知で労働者側の方は、先ほどあなたが言われたようなこともあるかもしれませんが、とにかくぎりぎりの要求だとしてそういう率を決めたといういきさつがあるわけです。ですから私どもは、このナショナルセンターのレベルではそういう要求の統一をした、これも大変大きな意義がありますけれども、しかし内容はいま言ったような気持ちで労働者はおりますから、はっきり言えばびた一文もこれからまけられぬ、満額回答を引き出す、獲得するという、こういうことに全体としてならざるを得ぬことになるわけですね。ですから、結局下手をすると、下手な取り扱いをすると、ストなしの春闘だと言われておったこの闘いがやはり大変な状態になることも予想されるのであります。言葉で言えば物情騒然たる一大重大な事態が起こらぬとも限らぬ。ですから、そのためには経営者側もそれから政府の側も、やっぱり八%が妥当とするのなら少なくともこれを下回らないように、いろいろの形でそれこそ良識を持って対応しなければならぬという場面に今日すでに来ておる、こういうふうに私は思っておるのであります。  それから、ある学者などはそういうことについていろいろ皮肉った物の見方をしておりますが、それとはまた別に、少なくとも八%がやっぱり基準で、金額については一万三千円ぐらいになりますかね、これをやったそのこと自体によって、実は使用者、経営者側はもうその段階で一定の主張した役割りが果たされた、こういうふうに見ておる。たとえば、石油が一バレル三十ドルになれば、これは国民一人当たりに換算していきますと年に五万円の負担増になるのであります。四人の世帯でしたら二十万円、これだけ負担増がかかるわけです。石油だけですよ。そういう状況の中で、いま言いました八%の、最低ですけれども要求となると、使用者側、日経連がいつも言っておりますように、こういうことを言っておりますね。海外要因による物価上昇分は国民ひとしく負担すべきであるから賃上げに反響させるべきでない、こういう主張を日経連は常々言っておりますが、その主張に全く最初から合っている。われわれから言わせれば、経営者はこれで心の中ではにたにた笑っておる。笑いがとまらぬ、こういう状態にあるという皮肉り方を学者は言っております。私ども全く同感とは言いませんけれども、まさにそれは指摘されておるとおりだと思います。  そういうことですから、先ほど労働大臣言われましたように、この要求に対して、はっきりは言いませんが、妥当性をある程度認められたのでありますから一応私もそれでいいと思いますが、しかし実際にはどうかという問題がここへ出てきておるのです。大臣はそういうふうに言っておりますけれども、たとえば電力あるいは鉄鋼の会社側の回答に対して、労働大臣は言っておらないと思いますが、政府の筋から賃上げ抑制の働きかけがされておると聞くのですよ。ところが、幾ら国会で追及してみましても、その証拠がどこにあるかといったらそれはないのです。ないのですが、全体の感じとしてそういう政府のやっぱり、インフレ、物価の問題に対する安定策が最大の政策だと大平総理は言っておりますが、その意向に沿ってそういう動きがされておる。大平さんも、いま言ったようなことを事あるごとに言っています。物価安定が最大の私の仕事だ、それは聞き取りようによればやはりこの春闘の賃上げを抑えようとする意図に基づく発言でもあるような気がするのです。  そういうことからいろいろ考えてみまして、それから政府の中のいろいろな部署におる人たちの動きを見ておりまして、いま企業が回答しようとするものに対して、政策的にやはり抑えようとする動きがあるのではないか。それは労働大臣、あるかないかと言ったって、ありゃせぬと言うのでしょう。それは政府としていままでとった態度でありまして、第一次石油ショックのとき以後長谷川労働大臣が福田内閣の中でいろいろとった行動が本当に目に見えてはっきりしております。たとえば、労働大臣が講演する場合に賃上げは抑制しなければならぬ、インフレ防止のために絶対必要だということを堂々としてお話をしておられながら、ここに立つとそういうことは言ったことはないとか、そういう考え方は毛頭ないというようなことをしらっと言って回答されておりますが、まさにそのとおりであります。だから、あなたにどうかという答弁は求めませんが、そういうのがやはりいま労働界、これは春闘共闘だけでなくて同盟の側も同じだと思いますけれども、政府が何かしらん、不当とは言わぬにしても介入し過ぎる、そのために経営者がいろいろ粘る、こういうふうに見ておるのですよ。それは一つ政府に対する非常な不満であるし、労働者はそれを見ればいつどうなるかわからぬという一つの原因、理由をつくっておるような気がしてならぬのです。  ですから、私はここで申し上げたいのは、そういうことがもしあるとするならば大変けしからぬことでありますし、直ちにやめてもらわなければならぬです。そして、われわれが考えればそういう政府の介入がなければ、先ほど言いましたように、回答は、いま妥結しました先行組合は大体九%と言いましたね。少なくとも七%以上は回答しているのですから。だから、ほうっておけば、そういう介入がなかったら鉄鋼でも電力でもその他の金属産業でも、あるいは私鉄でも、それくらいの数字は常識として出てくるものだというように私は考えておるわけであります。ですから、しかも先ほど言いましたように、経営者自体も別に政府から介入されなければそれくらいのことは考えております。それは史上最高の利益を上げておる、減量経営によって上げておる、労働強化によって上げておる。仕事は三分の一に減ったにもかかわらず利益は倍になっておる、こういうのがいまの日本の中の企業経営者にざらにあるのですから、そして自分だけの生産性を上げるためにも賃上げをここで認めなければならぬという気持ちに経営者もなっているのです。  そういうことですから、あなた回答できないかもしれませんけれども、ひとつそういう介入の事実が他の省庁にあったとするならば、労働大臣立場でそれはさせないようにしていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思いますが、その点よろしゅうございますか。
  10. 藤波孝生

    藤波国務大臣 あくまでも賃金問題は労使の自主的な話し合いによって決められるべきものでございますので、政府がどういう形であれそれに介入していくといった事実はないと確信いたしておりますし、今後もそのようなことがないようにあらゆる配慮をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。  ただ、物価問題、物価を抑制していくという政府政策がともすると賃金を抑制していくという方向を示唆しているのではないかという先生の御意見でございます。この物価の問題は、経営側労働側も、ともに政府としてとにかく額に汗して物価を抑制するというあらゆる努力をするようにという強い要請がございまして、労働大臣の私的諮問機関であります産労懇などにおきましても労使双方からそういう声が高まってまいりまして、政府物価抑制に対するアピールを産労懇始まって以来十年目で今回行ったという経緯がございますように、これはもう政府としてやるべきことは今日とにかく物価を抑制するためのあらゆる施策を講ずることである、こういう強い御指摘もございまして取り組んでいるところでございまして、これはある意味では今日の時期に政府が、やはり労使ともに自主的にいろいろな広い視野からお考えいただいて交渉を進めになっておられるその時期に、政府として額に汗して努力すべき一番大事な課題である、こういうふうに考えまして、政府全体の最も大きな今日の行政課題として物価の抑制に取り組んでおるところでございまして、そのことが賃金を抑制するということを示唆しているということではないということをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。あくまでも交渉して決めていく当事者があります場合には、それには政府はいたずらに行政の介入をしない、少し大平正芳という政治家は介入しなさ過ぎるのではないかと思うくらい介入しないことを非常に大事に考えている政治家でございまして、私ども労働省としての立場もその大平内閣の中にありましてそんなことを大事に考えてこの春闘を見守らせていただいておる次第でございまして、他の省庁においてもそういった事実があったら労働大臣として注意をしろ、こういうことにつきましては十分今後とも留意をいたしまして、先生の御趣旨の線に沿うように、あくまでも労使の自主的な話し合いを尊重するという立場で進んでまいりますことをお答えを申し上げたいと思う次第でございます。
  11. 枝村要作

    枝村委員 労働大臣は大変りっぱなことをおっしゃいまして、私もいいと思います。しかし、大平さんは余り政府部内の問題に対してくちばしを入れてないというのは知っているんですけれども、しかし、あのおとぼけがかえって老獪さを出しておりますので、この春闘に対しても大平さんの言うああいうやり方で抑制をするということに力を入れているようにしか見えぬのです、先ほど言いましたように。それは物価安定、物価安定と言いますけれども、それは国民がみんな望んでおるし、労働者側もことしの春闘は賃上げよりも物価安定の方を望んでいるというふうに見受けられる節々もあるんですから、それは確かにそのとおりですけれども、しかし、じゃ言うなら物価安定のために一体何をしたかという不満が多いんですよ。  ことしの春闘、いま言ったような目標が、むしろ物価の問題に重点を置いてはおりません。重点は賃金ですけれども物価にも力を入れておりますだけに、その上賃金が抑制されて物価はどうにもならぬ、政府は何にもしてない、むしろ物価の引き上げのために、先ほど言ったように、石油の値上げはこれはもう海外要因ですけれども、少なくともそれを口実にしていろいろ企業の中の製品をそれに転嫁さして高くするという動きも出てくるでしょうし、現にどんどん出ております。それと、やはり公共料金を軒並み上げるということ、それは物価安定のために決して施策としていいことじゃありませんですよ。できればそんなものは上げないのが物価安定を唱える側とすればあたりまえなやり方ですけれどもそれはやってない、むしろ上げる方向に力を入れている。それで、ことしのお正月ごろは野菜なんかべらぼうに高うなりましたね。それに対して最終的には少し出荷促進のための手当てなんか出しておりますけれども、ずいぶん放置したものですよ。そういうことを見ますと、やはり労働者の人たちはもう大変な怒りを持ってくると思います。それから、指導者もそういうことを言っているのにそうでないということになれば、やはり下から突き上げられてどうにもならぬことになります。  そこで、ちょっとお伺いするんですけれども、物価賃金の関係でずいぶんわれわれは論争してまいりました。賃金物価、インフレの関係、私どもこれを全面的に否定はしません。やはり賃金が上がれば、コストも上がる、それが物価に影響してそうしてインフレへの一つの要因にならぬとも限らぬという、こういうことは考えておる。しかし、今日の物価の問題と賃金の問題を考えたときに、賃金が上がったからインフレ傾向になる、物価高になるという、こういう説にはやはり納得できぬのですよ。先ほど言ったように、何にも条件がないにもかかわらず、ほかの要因がないにもかかわらず、たとえば円安になったらそれはやはり大きく国内経済に影響するということでして、これは何にも賃金と関係ないです。あるとすればインフレになったときに賃金をそれ以上上げたらますます高進するからといって、福田さんのときに長谷川労働大臣一生懸命言っておりましたが、それぐらいのもので、いま物価高なんか、これは世界的に見ても日本はまだ一けた台ですからね。もう少しすると二けた台になるかもしらぬ。アメリカその他と比べると日本は安定しておると思うのですけれども、その中で賃金を上げたらインフレになるからという、そういう予防措置かもしれませんが、そういうことで労働者が犠牲にされたらたまったものではありません。いまのぎりぎりの自制し切った八%以上の最低の要求というのは、今日の中で、先ほどあなたは日本経済全体を見ながら良識ある要求をしたと言われましたが、まさにこのたびの賃金要求は、物価が上がって、公共料金がそういうように上がって、生活実態が苦しくなったからぎりぎりの要求として八%が出てきておるということに対して認識していただきたいのです。そうせぬと、物価安定のために、インフレ防止のために賃上げ抑制という一つの理屈がここで堂々とまかり通るようではいかぬ、私はこう思っておりますから、その点について労働大臣、どう思いますか。
  12. 藤波孝生

    藤波国務大臣 賃金問題を決定するについて、経営側には経営側のいろいろな意見がありますし、労働側にも労働側のいろいろな要求をしていく立場に立っての要求の論拠、御意見もあるわけでございます。それはそれぞれに御意見があって、それが賃金交渉の中でそれぞれ歯車がうまくかみ合って交渉妥結をしていく、こういうことになると思うのでございます。物価賃金の問題をめぐりましても、いろいろな立場によっていろいろな御意見があるわけでございますので、直接的な表現で私から御意見を申し上げることはこの際控えさせていただきたいと思うのでありますけれども、いまお話しのように、物価が上がっていくという今日の状態はやはり海外の原材料が上がったこと、円安によるもの、こういった非常に大きな海外要因であるとか、日本経済全体の中で一つのうねりとして出てきているというようなことから物価が上昇していくという形にいまなっているという御指摘は、まさにそのとおりだと思います。そういう意味では、それを抑制をしていくためにいろいろな努力をしていかなければなりませんけれども、石油が上がったからといって、それがそのまま商品に価格をかさ上げして転嫁していくということでなくて、経営は経営でひとつがんばってもらいたい、生産性を向上させて、そして材料が上がった分だけはそのまま商品を上げるということに連関させないで、ひとつふところの中にのみ込んでもらいたい、こういった努力を経営側にも要請もしているということも今回の総合物価対策の一つの特徴にもなっているわけでございます。その中で経営側にも経営側のいろいろな言い分もあろうと思いますけれども、やはり質の高い、しかも労働者の福祉のこと、あるいは生活のいろいろのことを考えた配慮が当然なければなりませんし、労働側にもまた企業の立場経済界全体の動きを十分頭に置いた立場に立っての要求話し合いでなければなるまい、こんなふうに考えておる次第でございます。  政府政府としての立場であらゆる物価対策を講じていく、そして労使がそれぞれ話し合いのもとに合理的な解決を見出して、結果としては物価が上がっていかない、インフレというような最悪の状態にならないようにみんなで配慮し合いながらこの非常に厳しい時代を乗り越えていく、こういうそれぞれの立場でそれぞれの役割りを分担していくという気持ちでこの時期を乗り越えていかなければならないのではないだろうか、こんなふうに考えておる次第でございまして、先生の御質問にそのままお答えすることにはならないかもわかりませんけれども、このインフレになっていくことをみんなが心配し合って進んでいこうという状態に置かれております今日の情勢をどうか御理解いただきたい、このように考える次第でございます。
  13. 枝村要作

    枝村委員 ですから、私の質問したことに直接明快な回答はなかったにしても、今回の賃上げは、私は良識に基づいてされた。そのことによって、たとえ満額獲得はできてもインフレ、物価高、そういう問題には波及するような問題じゃないということにあなたが認識されたと思うのです。まあいいですよ、答えぬでも、私はそう思いましたから。  だとすれば、あといろいろ問題があるのですけれども、先ほどから言いますような状況の中で、やはりいま春闘がどんどん山場に近づこうとしておりますが、きわめて冷静な態度で労働側は臨んでおるようです。しかし、労働者は、先ほどから言っておりますように、非常に不満、怒りを込めておる。それから問題は、最初にもちょっと言いましたけれども、それに対応する政府と経営者の態度にかかっておる、こういうふうに私は思っております。ですから、短期決戦で早く解決する、しかも政府が望むようにこれが余り重大な混乱状態にならないように、いわゆる国民に迷惑がかからないようにするとするならばいま言ったことが必要でありますが、問題は、あしたの鉄鋼を中心にする金属産業の回答ですけれども、いろいろ新聞に伝えられておりますが、労働省はどういうふうにこれを見ておりますか。
  14. 細野正

    細野政府委員 先ほど来大臣からも申し上げておりますように、賃金交渉に当たりましての組合側の要求あるいは経営側回答、これにつきましてあくまでも労使がそれぞれのお立場で主張され、またその主張を話し合いの中で調整をしていくという過程の問題でございまして、そういう意味で私ども、たとえばあしたの金属労協関係についての回答等に対しましても、これを予測したりあるいは所見を言ったりということについては、賃金交渉の性格上、私どもとしては差し控えるべきもの、こういうふうに考えておりますので、ひとつその点は御理解をいただきたいと思います。
  15. 枝村要作

    枝村委員 それはわかりました。  引き続いて十一日に私鉄の第一次回答がありますね。その後十四日に電力の回答があるのですが、これは密接な関連がありますからね。その後に十六日からの交通ストライキを構えておる。そういうふうな緊迫した事態になっておることは百も承知ですから、少なくとも私は最初質問して、大臣はそんなこと絶対ありません、もし他の省庁であったら、それは厳重に注意しますと言われた介入の問題、これがなくなればある程度スムーズに常識的な回答が、いまの先行した組合妥結の額、率から見てあり得ると思うのです。そうしたら、今度の春闘もあなた方が言われた称賛に値するような収拾がやられるかもしれない。  その中の一つとして私が言っておきたいのは、公企体に対するいわゆる有額回答、これはいつでしたか、いつやられるのですか。
  16. 細野正

    細野政府委員 御指摘の有額回答は、各当局から行われるべきものでございまして、この点について現在まで、いつごろというふうなことについて各当局からの申し出を聞いておりません。したがいまして、私どもとしても有額回答がいつになるかという点について、そういう見通しを持っていない状況でございます。
  17. 枝村要作

    枝村委員 それは事実ですか。有額回答の期日なんというものは全然決めてないのですか。それはあなた、当事者がということになろうけれども、全体の問題ですからね。労働省や政府がそれこそ介入しなくてはどうにもよう回答しませんよ。ないのですか、まだ。いつかはわからぬですか。わかっているのでしょう。世間ではいろいろ話していますよ。——わからぬ。まあいいです。  それで、その有額回答ですね。今年度の予算には公務員や公企体は大体どれぐらいのものが組まれておるのですか、ベア分。
  18. 細野正

    細野政府委員 予算に計上されております給与関係費は二%でございます。
  19. 枝村要作

    枝村委員 定昇は幾らですか。
  20. 細野正

    細野政府委員 二%強でございます。
  21. 枝村要作

    枝村委員 定昇を含めて大体四・二%ぐらいですね。  有額回答をいつ出すかというのははっきり答えられぬのですが、少なくとも公労協側は、全造幣、全林野、アルコール専売、ほかにもう一つありましたね、現業の四単組が調停申請というのをしました。した原因は、はっきり言って政府に対する不信です。二%しか組んでいないのですから、どうせ有額回答してもこれくらいのものだろうということで早く出したのです。だから、この春闘で有額回答することで政府に対する不信が解除されるとは思いませんが、とにかく春闘に真剣に取り組んでおる、誠意を持ってこの解決に当たろうという態度を示すなら有額回答を早くする。有額回答の内容にもよりますよ。いま予算で二%しか組んでいないということで、そのままぽんと出すようなとぼけたやり方をしたらますます、いまですら出さぬ前から出すだろうといって腹を立てているのですから、そういうことをなくするためにも、むしろ先ほどから言いましたような世間一般の相場とか、調停にかける前の有額回答ですから、それなどを基準にして、われわれから言えば最低でも八%以上の有額回答を出す気持ちを政府は持ってみなさい。春闘全体に大きな紛争そのものが回避できる要因をつくることになるのですよ。一昨年ですか、政府は五%組んだときには、不況だから、いろいろ問題があるからといってわずかな回答しか出さない。あったときに出さぬ、なかったときにはそれを上回るものを出したらどうですか。もし有額回答を出すとするなら、私の要望は、いまの予算化にこだわらず、常識的な、これならまあまあ有額回答してよかろうという感じを受ける程度の額やら率を示してもらいたい。  どうですか、労働大臣、それぐらいの勇気を持って、労働大臣が決めるのじゃないでしょうけれども、政府部内で何でもない二%ぐらいの有額回答を出しておこうという、人をばかにしたようなことをせずに、私がいま言ったような態度を誠意を持って示したらどうかと思うのです。私は助言をしているのです。
  22. 細野正

    細野政府委員 有額回答につきましては、先ほど申しましたように、各当局が行うべきものでございますが、同時にこの有額回答についてはあくまでも民間の回答の状況を見ながら行うという性格のものであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、各民間の回答の状況というものを踏まえて回答が行われるものというふうに私ども考えておるわけでございます。
  23. 枝村要作

    枝村委員 これはいいことを言われたのですが、予算にこだわらず有額回答するとするならば、民間の賃上げの状況を見ながら出すということですか。調停じゃないのですよ。
  24. 細野正

    細野政府委員 ただいま申し上げましたように、従来の回答、それに本年における民間の状況等を踏まえまして、各経営の実態等ももちろん総合的ににらみますけれども、そういう考え方で従来から出されていたというふうに考えておりまして、また、そうあるべきではなかろうか、こう考えておるわけでございます。
  25. 枝村要作

    枝村委員 大体そうでなければいけませんね。予算にこだわらずに五%か二%か何ぼか出したときもありますから、上も下もあるということでしょう。その根拠はいまあなたが言われたようなことだということですね。いま民間も大分妥結してきて、決定しておりますから、その時期でそれが本当のものになるかどうかは別にして、少なくとも私鉄の回答が十一日にあれば、電力との関係もありましてないかもしれませんが、そういうものを勘案しながら、有額回答のときには予算にこだわらず決めて対処するということになるわけですね。  それから、この際聞いておきたいのですが、まだ決まりもせぬのにだめだと言えばそれまでですけれども、たとえば今度調停、仲裁に移行して公企体に裁定が出ます。その場合には、従来政府は完全実施の方針を貫いてまいりました。だから今回も、将来の問題になりますが、仲裁裁定の完全実施を堅持していくということで考えていいですね、労働大臣
  26. 藤波孝生

    藤波国務大臣 公労委の仲裁裁定につきましては、昭和三十二年以来裁定どおり実施されてきたところでございまして、本年の仲裁裁定についてはまだ行われていないわけでございますから、いまの段階で具体的に申し上げることはできませんけれども、政府の実施努力義務を規定する公労法三十五条の精神を踏まえて、政府としてその実施のためにできる限りの努力をすべきものである、このように考えておりまして、従来もそういう考え方できておりますが、今後についてもそういう姿勢で臨まなければいけない、このように考えておる次第でございます。
  27. 枝村要作

    枝村委員 これは私はそういう確認を求めることもないのですけれども、ちょっと心配がありまして、たとえば去年の人事院勧告も完全実施でありませんし、一部が不履行でしたね。それに対して労働省は、新聞などで見ますといろいろ抵抗したという話は聞きますが、最終的にはいま言ったようなことになった。それが一つ政府の方針だとすると、人事院勧告だけでなくて、いまの仲裁裁定もそういう政府の態度変更がなされやしないかという心配があったから尋ねたのでありまして、この際ですからついでに触れておきますが、人事院勧告に労働省はどれくらいのところまで関与したのですか。
  28. 細野正

    細野政府委員 人事院勧告も、先生御案内のように、一般職員については完全な実施をいたしているわけでありまして、これにつきましては当然政府全体として人事院勧告に対する対処というものを決めるわけでございますが、労働省も政府の一員としてこの問題の対処については参画をして意見を申し上げている、こういうことでございます。
  29. 枝村要作

    枝村委員 それから、春闘に大いに関係があるし、スト権の問題にも関連するのですけれども、八〇春闘がどこまでどうやるかわかりませんが、去年の例を引きますと、残念ながらストライキをやりました。ところが、政府は国鉄やその他の当事者に対して処分は凍結しろという指示をしている。それが実行されました。私はスト権の将来の問題について関連して考えてみて、大変いいことだ、一歩前進したと思っております。そういう方針はことしもできれば堅持して引き続いてやってもらいたいと思うのですけれども、これはいまからやることで、いま言うのはおかしいでしょうけれども、去年の精神をいささかでも変えるというようなことがないようにお願いしたいと思うのです。それはあなたの方から労働者側にも言うだろうけれども、ストライキをするなと言うかもわかりませんけれども、ともかくそういう一歩前進的な、労使が今後よく、それこそスト権のときに中山伊知郎先生が言われましたように、あのときはああいう結論でしたけれども、スト権そのものを頭から否定したものでないという言外の御意向もありましたし、いまのこの時期では労使の関係が余りよくないから、そのための環境づくりをいまからやれというようなことでした。われわれはそのときのこの委員会の質問の中でも時の藤井労働大臣に対していろいろお伺いして、そういう環境づくりに本気になろうというようなことも言われておったのですね、時間がかかるかもしれませんけれども。それで、労働の側もそういうことなどいろいろ考えて、いわゆるストライキをもってスト権を奪還するという考え方はあっても実際の行動ではある程度変更するようなことにして、いわゆるスト権の立法化という運動をいま始めております。この問題は労働四団体も大体一致しておりますし、それから国会の中でも野党は大体一致していく方向にいま話を進めていっております。そういう一つの動きの中から、昨年の決定は大変いいことだと私は思っております。ただ、これに対して、それこそ運輸大臣がひとりでやったように書いてありますが、この問題にも労働省はどれくらい関与したのですか、これをちょっと聞いておきたいのですよ。
  30. 細野正

    細野政府委員 昨年の春闘の際におきましての処分の凍結問題というのは、あくまでも運輸大臣が国鉄再建という問題に対する期待と熱意を込められて非常に政治的な御判断で実施をされたものというふうに私ども理解をしておるわけでございまして、そういう意味でいわば労働省がこれに参画するとかなんとかいう性質のものではございません。
  31. 枝村要作

    枝村委員 それはそうかもしれませんが、しかし他の公企体にもやはりその影響があったのでしょう。他の公企体は首切りがありましたか。
  32. 細野正

    細野政府委員 当時の森山運輸大臣のこの御措置が直接的に他の公共企業体等に影響を及ぼしたというふうには私どもは承知をいたしておりません。
  33. 枝村要作

    枝村委員 しかし、一省の決定でやられぬことはないでしょうし、極端に言えば国鉄総裁がその措置をしても、しかられはするけれどもどうにもならぬのでしょうけれどもね。しかし、こういう問題はやはり少なくとも労働省の関係にないとは言えませんからね。  それならちょっと伺いますが、あの措置はよかったと思うか、どうですか。
  34. 細野正

    細野政府委員 先ほど申し上げましたように、当時の森山運輸大臣が国鉄の再建のためにはかくあるべきである、そういう今後のあるべき姿に対する非常な期待と、それから情熱を込められてとられました政治的な措置でございまして、私どもからこれをとかく御意見を申し上げるという性質のものではないのじゃなかろうか、こう思っておるわけでございます。
  35. 枝村要作

    枝村委員 御意見じゃないのですよ。ああいう措置がスト権など労使の関係の正常化というようなことから見て、労働省の観点から見てよかったか悪かったか、悪いと言いはせぬ、どういうものかという意見ぐらい述べられるでしょう。
  36. 細野正

    細野政府委員 一般的に違法行為が行われた場合に、これに対して処分するという一般的な、基本的な態度というものは、これは全く当然のこととして私ども考えているわけでございますが、その中で先ほど申しましたように、国鉄再建という、異常事態に対する労使の協力、将来における協力までも期待を込めて、非常な熱意を持って、非常に高度な政治的な判断で行われたものでございます。したがいまして、これについていいとか悪いとか、そういう意見を申し上げるというのは差し控えるべきものじゃなかろうか、こう考えておるわけでございます。
  37. 枝村要作

    枝村委員 余りくどく聞きませんが、同じ政府大臣がやったのですから悪いとは言えぬし、いいということは言えぬことはないのですよ。何も言わぬということは運輸大臣に失礼に当たります、せっかく本人は本気になってやったのに、関係のある労働省はそんなこと知るかいということでは。いいですか、そんな態度で。それこそしかられますよ。あれがまた何か大臣になって戻ってきたら大変なことになると思う。だから、私とすれば今度の春闘に臨んでも、そういう態度を運輸大臣がやった、今度は労働大臣がやりなさいな。  それで、将来の労使の関係、スト権の付与なんかの問題、スト権の問題はきょうはやりませんけれども、今度の春闘の中ではこれも入れておるのですからね。それから、いま言った立法化の運動がどんどん進められておるのですから、労働省もこれに対応する何かの準備をしておかなければならぬのじゃないですか。いま全然放置でしょう。労働省はスト権の問題については全然関知せずにほっておるんでしょう。どうですか。
  38. 細野正

    細野政府委員 スト権の問題につきましては、これはもう先生も十分御案内のように、五十三年六月に公共企業体等基本問題会議から、現時点において争議権を認めることは適当ではないという意見書が提出をされたわけでございます。これを受けまして、政府としては、同年の六月二十三日の閣議におきまして、この意見書の趣旨を尊重してこの問題に対処するという了解になっているわけでございます。したがいまして、その意見書の中で指摘されましたいろいろな事項につきましてはその後大きな変更はございませんので、現在私どもは政府全体としていまのような意見書の考え方で対処をしている。同時に、意見書の中でいろいろ改善点の指摘がございまして、そういうものにつきましては、たとえば三公五現関係の労使の方々の意思疎通、そういうものを積極的にやることによって労使関係の改善というものを図るべきじゃないかというふうな御指摘につきましては、たとえば公労懇というふうなものを開催いたしまして、そういう形で意見書の趣旨というものを生かす方向で努力をしているわけでございますが、そういう対処を現在いたしておるわけでございます。
  39. 枝村要作

    枝村委員 もう時間がありませんから、そろそろ早めていきます。  それから、先ほど労働大臣が答えたからいいんですけれども、春闘は賃上げだけでなくして政策制度の要求も同時に掲げておりますし、それからわれわれ社会党、野党もいままでもやってきましたが、それと呼応して、短期に決まるか長期にわたるかわかりませんけれども、雇用の安定とか雇用開発とか、それから中高年齢者の雇用促進の問題などについて真剣に取り組もうとしておりますし、この国会にもそういう関係の法案を提案するつもりであります。ですから、労働大臣もこれに対しては真剣に対処すると言われておりましたから、ひとつ行政の面でもわれわれの出すこの法案に対して、いままでのように出すことに意義があるという態度をわれわれはとりませんから、やはり真剣に討議をして、できるものはどんどん取り上げていくということにしていただきたいと思う。あなた、答弁がありましたから要りませんけれども、そういうことでひとつ春闘の中でも解決できるものがあれば話し合いその他を通じてやってもらいたい、こういうふうに希望しておきます。  それからその次に、労働省労政局の労働組合課が毎年出しております「民間主要企業塔春季賃上げ要求妥結状況」というのがあるのですよ。これは何の目的でつくり、どういうものに利用しているのですか、答えられれば答えてください。
  40. 細野正

    細野政府委員 この民間主要企業の賃上げ状況の調査でございますが、これは春闘がおおむね一段落をした段階におきまして主要企業につきましての賃上げの実情を把握いたしまして私どもの行政判断の材料にさせていただこう、こういう趣旨でつくられているものでございます。
  41. 枝村要作

    枝村委員 行政サイドの何か知りませんけれども、たとえばこれが公労委や人事院になるかわかりませんが、そういうところの賃上げのための勧告、裁定、調停ですかの参考資料にされておるのですか、どうですか。
  42. 細野正

    細野政府委員 そういう趣旨でつくられているものではございません。
  43. 枝村要作

    枝村委員 きのう公労委の事務局にも聞きましたら、そんなものは参考にしないとはっきり言えばいいのに、答えられませんと言ったから、これはしておるなというふうな感じを受けるわけです。民間のたったこれだけですけれども、これだけといったって二百八十七社ですからね。これがやはりいまの仲裁裁定、調停ですか、それから人事院の勧告の査定をする場合に参考にされておるとすればやはり問題がありますし、また、これ自体もちょっと見て決して適切な調査によりはじき出した数字ではないというふうに——数字は出ておるでしょうけれども、実態に合っているかどうか、若干の疑点があるわけですよ。  だから、簡単に言えば、私の方からこういうところがあるということを言っておきますから、改めるところがあればあるいは抜本的にもう一遍再検討をしてみるかということはあなたの方に任せますから、考えておいていただきたい。  たとえば年齢はさまざまですね。二十八歳から大きいところは四十八歳まで年齢の差がありますね。それを一緒くたにしたものだというふうに聞いておるのですが、本当ですか。
  44. 細野正

    細野政府委員 あるいは先生お尋ねの調査と私どもいま承っておる調査とちょっと食い違いがあるのかもしれませんが、私ども先ほどお答え申し上げました労政局で行っております主要企業の賃上げ状況は、各企業全体の賃金のアップ額とそれからアップ率を調べているものでございまして、そういう意味で、たとえば年齢別等にわたる調査等は全く行っていないものでございます。あるいは賃金構造基本調査か何かについてのお尋ねなのか、ちょっとそこは私どもは御質問の趣旨が十分理解いたしかねまして恐縮でございますが、できればもう少し詳しくおっしゃっていただければ。
  45. 枝村要作

    枝村委員 余り時間がないですから。年齢が平均はこうかもしれませんけれども、とにかく若い人と古い人、こういうのがごっちゃになって、必ずしもここに平均で出されておるのが正しいかどうか、やはり疑問があるようですよ。それは答えぬでもいいです。  それと企業の数があるでしょう。化学なら四十九、これはずっと昔といったって、十年もさきかどうかわかりませんけれども、昔の企業を選んでその数でやっている。その後、不況その他によって倒産しかけたり、経営内容が非常に悪いところもある。それを依然として使ってここに挙げておるというところは、やはり全体のバランス上適切じゃないじゃないかという意見があるのですよ。改めてやる、そうせぬと、本当のベースアップの賃上げ率や何やらが出てこぬ、こう言っていますね。出てきても、これは極端に言えば安い平均しか出てこない。それがいろいろなところで採用されて参考にされると、これは大きな間違いが起こりはせぬか。われわれから見ると、特に最近だったら、大変賃上げ率はいいことはないにしても、企業によってはいいところもあります。ところが、たとえば銀行とか保険会社とか商事会社みたいに、景気の変動によらずむしろどんどん伸びておるようなところは、これからみんな除いてあるのですよ。これで平均値をとられたら処置なし、こういう意見が出ます。  労働省から言わせれば、そこから報告がないから載せぬのだと言うけれども、そんなことで本当の調査ができるか。報告しないからそれは載せないということでは真の調査にはなりません。そういうことなどやはりもう少し厳格にするとか、もう一遍再調査するとか、企業を選ぶ場合にもそういう配慮のもとにやられたら、もう少しりっぱなものができやせぬか。どこに持っていってもこれなら恥ずかしくないということになりはせぬか、こういう意見があるのですよ。ですから、私もよう知りませんから、あなたの方でひとつよく調べてみて、これはやはりいけないならいけないというように判断して、いまのものを抜本的に改正するか何か知らぬけれども、改めてもらいたいと思います。  もう一度言いますけれども、やはりこれは実勢より低い数字が出てきておるというのが労働者側の実感として受けとめられておりますから、そういう意味で言っておるわけです。いいですか。
  46. 細野正

    細野政府委員 この調査は、御案内のように、一定の調査対象としての要件がありまして、原則として東証なり大証の一部上場企業、それで資本金二十億円以上、従業員千人以上というものの中で労働組合のある企業、こういうふうな中から一定の抽出でもって選ばれているものでございまして、そういう意味で、ある意味ではその当該企業が浮き沈みが生ずるということ自体も、調べなければならない調査の内容にも関連する問題で、したがって不況状態に入ったからすぐこれは落とすべきだということには必ずしもならぬわけですが、ただそれが全体から見て非常に特異な状況にあるかどうかというのは、確かに御指摘の問題はあるかと思います。一方、調査自体としての継続性という問題も一方においてございまして、その辺よく事情を調べまして総合的に判断させていただきたい、こういうふうに考えております。
  47. 枝村要作

    枝村委員 質問を終わります。
  48. 葉梨信行

    葉梨委員長 次に、佐藤誼君。
  49. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、八〇春闘に関連して質問いたします。  先ほどわが党の枝村委員からもありましたけれども、この八〇春闘、九日の金属労協の回答、それから私鉄の十一日の第一次回答、この辺を中心にいよいよ前段の山場に入ると思いますが、そこで私は、この八〇春闘は、労働者が文字どおり生活防衛をかけた春闘であると思うのです。つまり、それは現在の労働者の生活の実態及び今後の消費者物価の動向が、この春闘を大きく左右するというふうに私は見ております。  そういう観点から、以下質問いたしますが、第一点は、去る四月四日総理府統計局が発表した一月の家計調査報告、これによりますと、勤労者世帯の実収入は消費者物価上昇による目減りで、一年十カ月ぶりに前年同月より実質減少した、こういう発表をしております。これは御存じですか。
  50. 細野正

    細野政府委員 承知いたしております。
  51. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 これは昭和五十一年十月以降ずっと実質的な増加を続けてきた。ところが、五十三年三月の一時期に実質的に減少したわけですが、それを除けば、実質的に減少したのは初めてというふうに見られていると思います。ただでさえ厳しい労働者、勤労者の世帯から見れば、きわめて重大な内容だと思うのです。  そういう意味で、労働省としてこのような事態をどのようにとらえているか、その辺の見解をお聞きしたいと思うのです。
  52. 田中清定

    田中説明員 先生御指摘のように、ことしの一月の総理府の家計調査によりますと、名目では五・三%の増加になっておりますが、野菜その他の値上がり等によりまして、物価上昇との関連では一・二%の目減りをしておるわけでございます。ただ、今年度に入りまして、昨年四月以降本年一月までの平均をとりますと実質二・六%の上昇を維持していることは維持しているという状況であるわけでございますが、従来比較的安定的に増加を続けておりました家計収入も一月に至って実質目減りをしたということで、私どもも今後物価動向について大変重大な関心を抱いておるわけでございます。あらゆる機会をとらえてこういう事態ができるだけ早く改善されるように努力したいと考えております。
  53. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 事態を重大に受けとめて、そういう事態から一日も早く脱却できるようにあらゆる努力を続けたい、こういうことですね。
  54. 田中清定

    田中説明員 さようでございます。
  55. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それじゃ、次に経済企画庁に質問いたしますが、昭和五十五年に入ってから一月、二月、三月の消費者物価、卸売物価はどうなっているか、また昭和五十四年度の平均値は幾らであるか、まずこれをお聞きしたい。
  56. 坂井清志

    ○坂井政府委員 最近の物価動向でございますが、まず卸売物価の方につきましては、御存じのとおり、このところ原油等海外産の原材料価格が非常に上がっておるということと円安が進んでおるという、主としてこの二つの原因でかなり上昇を続けておりまして、前年同月比で見ますと一月が一九・三%、二月が二一・四%、三月はまだ中旬の値までしか出ておりませんが、三月中旬値で二一・九%、こういう上昇になっております。  それから、消費者物価でございますが、この方は野菜の価格が最近、三月、四月やや低下傾向を見せてはおりますけれども、依然高水準でございますし、また卸売物価上昇の影響が次第に及んできておりますので、前年同月比で見まして一月が六・六%、二月が八・〇%、三月は全国はまだ出ておりませんで東京都区部の速報だけが出ておりますが、これが七・二%の上昇になっております。  そこで、お尋ねの年度平均でございますが、卸売物価、消費者物価とも三月の確定値がまだ公表されておりませんので、現在時点で正確な算定はできないわけでございます。ただ、若干の仮定を置いてみますと、たとえば卸売物価につきましては三月の中旬値がそのまま三月の値になる、また消費者物価の方は三月の東京都区部の速報値が二月に対して〇・五%上昇しましたので、全国の方もそれと同じ動きをするという仮定をしてあえて計算をいたしますと、五十四年度の平均上昇率は、卸売物価が一二・八%、消費者物価の方は四・七六%、こういうことが一応計算の上では出てまいるわけでございます。
  57. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、やや推計が入っていますけれども、昭和五十四年度、政府が言う四・七%を上回るというこの状況は紛れもない状況ですね。
  58. 坂井清志

    ○坂井政府委員 政府物価見通しは四・七%程度という見通しを立てておりまして、私ども、四・七六というこの数字どおりになるかどうか知りませんが、仮に四・七六となった場合にも、四・七%程度という見通しは達成されたものと考えます。
  59. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そこで、大体の数字はわかりましたが、次に、三月末時点ということになりますが、経済企画庁等でも使っているいわゆるげた、これは何%になりますか。
  60. 坂井清志

    ○坂井政府委員 消費者物価の方につきましては、申し上げるまでもなく、例の野菜価格が異常気象でいっとき非常に高騰をいたしたわけでございまして、これが三月までの時点では十分に是正をされないまま年度を越す、こういう結果になるかと思います。したがいまして、新しい五十五年度に入りますと、恐らく例年の例からしまして、この野菜の異常な高値の修正場面が当然予測されるわけでございまして、その結果、季節商品の部分のげたにつきましては、そのかなりの部分が間もなく消滅をすると私どもは考えております。したがいまして、季節商品のそういう異常な要素を除きました総合で消費者物価を見る方が、げたという観念にはより適すると考えますが、この季節商品を除いた総合で見ますと、五十五年度へのげたは二・〇%程度になると私どもは見ております。それは、先ほどの三月の仮定の上に立ってのことでございます。  それから、卸売物価でございますが、卸売物価の方は、消費者物価と多少色合いを異にいたしまして、過去の例を見ましても、いっとき非常に上がるかと思うとまたかなり下がるというように、かなり大きな上がり下がりを繰り返しております。最近は、先ほども申し上げましたように、輸入品価格の高騰、円安ということでかなりの高水準にあるわけでございますが、たとえば海外産原材料価格の指標としてよく用いられておりますロイター指数などを見ますと、二月の前半にピークに達しました後弱含みにずっと推移をしております。これは世界景気との関連で変動する可能性が大きいわけでございます。さらに、原油の国際需給も緩和ぎみである。円レートにつきましても今後の動きを見ていく必要があり、さらに国内需給につきましても、私どもの講じております総合物価対策なり公定歩合引き上げといったものの効果が期待されるわけでございまして、卸売物価につきまして消費者物価と同じような意味合いでげたというものを論ずるのは適当ではないのではないかと私どもは考えております。
  61. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 ちょっとおかしいと思うのですが、消費者物価に焦点を当てますと、昭和五十四年度、つまり五十年を一〇〇とした指数、これは私の方の計算では一二九・三、それから五十五年の三月では、同じパターンで指数をとった場合には一三三・四か五になると思うのです。そうなりますと、げたが二・〇でおさまるというはずはないと思うのですが、この辺どうですか。
  62. 坂井清志

    ○坂井政府委員 消費者物価のげたにつきましては、先ほどの野菜とかその他の季節商品、これを入れるか入れないかで考え方がかなり変わってくるわけでございまして、仮に野菜もその他の季節商品もすべてひっくるめて計算をいたしますと、さらに、先ほどのああいう三月の東京の動きが全国の動きにもそのままいくと考えますと、三月の消費者物価の指数は一三三・四ないし一三三・五になるという計算が出てまいりまして、この場合には五十五年度へのげたは三・二%強、こういう結果になると思います。  先ほど申し上げましたのは、この三・二%強のげたの中で野菜を中心といたします季節商品のげたの寄与しておる分が一・二%強ありますので、それを引きますと二・〇%になる、こういう御説明をしたわけでございます。
  63. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それは、そういう野菜のことをネグるということになればそういうことでしょうけれども、まともにそれをとらえれば、三・二というのはあたりまえだと思うのです。だから、三・二というふうに一般の人も押さえておりますから、私もその数字で押さえていきたいと思うのです。  そこで、次にお尋ねしますが、現時点で見た場合に、公共料金等の値上げが消費者物価に与える影響はどうか。つまり簡単に言うと、何%ぐらいの影響力を持っておるか。
  64. 坂井清志

    ○坂井政府委員 公共料金の中で、まず予算関連の公共料金をとってみますと、御案内のとおり、五十五年度におきましては国鉄、それから国立学校の授業料、郵便料金等の公共料金の改定が予定されておるわけでございますが、これらをひっくるめまして、消費者物価への全体の影響は〇・八%程度になるというふうに試算をいたしております。  それから、予算関連以外でございますが、先般、これも御案内のとおり、電気、ガス料金の改定が行われました。先に行われました北海道、沖繩も含めました十の電力会社、それから三つの大手のガス会社、この改定の影響を見ますと、電気につきましては〇・七%強、ガスにつきましては〇・三%弱、こういう影響が出てくるものと試算をされます。
  65. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、例の予算関連の公共料金、それから電気、ガス、それから公立高校等をひっくるめますと、影響率は二・二ですか。
  66. 坂井清志

    ○坂井政府委員 国立学校等は先ほどの予算関連の中に含めてございまして、予算関連全体で〇・八でございます。いまの電気、ガスを両方合わせますとちょうどれくらいになるかと思いますが、単純にそれらを算術で合計をいたしますと、予算と電気、ガスと全部合わせて一・八程度、こういう試算になるかと思います。
  67. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私の方が入手した数字によると、予算関連で〇・七八、それから電気、ガスその他私鉄運賃含めて一・三〇、高校授業料が〇・一九、したがって二・二七というふうな数字を押さえているのですが、これは間違いですか。
  68. 坂井清志

    ○坂井政府委員 先ほど申し上げましたもの以外に、たとえば地方の私鉄であるとかバスであるとか、あるいはいまおっしゃいました地方の学校の授業料その他といった案件があるわけでございます。これらにつきましてもある程度の改定は避けられないというふうに予想をいたしておりますけれども、政府といたしましては、こういった公共料金の改定については、申請を待って査定をする立場にございますので、そういったものを年度全体としてどの程度改定をするかという見通しをこの際申し上げることは、差し控えさせていただきたいと思います。若干のものが出てくることは避けられないと思います。
  69. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 その立場はわかりましたけれども、いま私は春闘との関連で聞いているのですから、今後の見通しというものも重要な意味を持つと思うのですね。ですから、現時点でそういう状況であるにしても、当然いまわれわれの中に、私鉄であるとかあるいは公立高校であるとか、いろいろなものが予想されますから、それらを入れると、見通しとしての影響率はどのぐらいになるか、こういうことを聞いているのです。
  70. 坂井清志

    ○坂井政府委員 大変恐縮でございますが、私ども、それらについては内部的にも特に試算をしたものを持っておりません。
  71. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうしますと、大体げたが三・二%、それから、いま推定のことは、予断については言えないということですが、私の方の計算によれば、すでに公共料金の上がったもの、それから現在ほとんど確実に想定されるもの、こういうものを入れますと、公共料金等の影響率は二・二七、つまり二・三%ぐらいだと思うのです。そうしますと、げたの部分の三・二と、二・二七をざっと二・三にしますと、五・五%ですね。そうなりますと、政府としては昭和五十五年度の物価上昇率の見通しを六・四%と言っていますから——それは間違いありませんよね。そうすると、いまのげたの三・二%と、現に公共料金の上がったもの、それから一部予想されるもの、これらを推定して影響率を見ると二・二七、二・三%、この合計が五・五%になります。そうなりますと、政府の方が六・四%の経済見通しを立てても、すでに現在上がっているもの、将来の見通しも入れますと五・五%になりますから、そうすると残るのは〇・九%しか幅がないわけですよ。そうすると、この〇・九%の中で、公共料金が上がればこれに関連するものが当然上がってくる。これは常識です。電気やガスが上がれば、それが家計に直接影響するだけではなくて、当然関連する製品やその他もろもろのものが影響を受けます。これは明らかです。それから、卸売物価が先ほどのように上がっていますね。しかも、これは中間段階が非常に大きな影響をこうむっていますから、これが消費者物価に与える影響は必ず出てくると思うのです。そうすると、いまのような公共料金の消費者物価値上げに対する波及効果、それからいまの卸売物価が消費者物価に与える影響等を考えていったときに、この〇・九ないし一%の以内で物価を抑えることができるのかどうか。この辺どう見ていますか。
  72. 坂井清志

    ○坂井政府委員 いま先生御指摘のとおり、そういう計算をいたしますと、確かにげたと公共料金を合わせて五・五近くなる、こういう結果が出るかと思いますが、繰り返して恐縮でございますが、私どもとしては、野菜を含んだ季節商品の動きというものは、げたという観念になじまないものというふうに考えております。それで、一・二という部分がそれでございまして、そこがいわば見方の相違ということになるわけでございますが、したがいまして、私どもとしては、仮にいま先生がおっしゃいましたように公共料金が二・二七ということになった場合にも、消費者物価の方の通常の意味のげたは二、両方合わせると四・二から四・三程度がそこに出てくるのではないかびそうすると、六・四とそれとの差額が大体二%くらいございますので、その分は五十五年度中のすき間としてまだ残っておる、こういうふうに考えております。
  73. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 ここで物価論争だけが焦点じゃありませんので、大体この辺で打ち切りますが、いずれにしても、私の方で入手した資料の試算によれば〇・九%、つまり一%ぐらいですね。あなたの方で、季節商品である野菜その他いろいろなものを除いたそれにしても大体二%ぐらいの幅、真ん中をとったって一・五%でしょう。いま現にこういう物価上昇の中にあって、私たち常識から考えたって、一・五%前後でこれからの物価上昇を吸収できるなどとは、恐らくだれも思っていないと思うのです。政府が六・四%の見通しを立てていますけれども、これは極端なことを言えば、神わざということは言わぬけれども、不可能に近い数字だろうというのは恐らく大筋の一致した見方ではないかというふうに私は思っておるのです。  以上で、私は経済企画庁に対する質問は終わります。  そこで、労働省にお伺いします。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕  先ほど見たように、勤労者世帯の実質収入は減少した。それに、現に電気、ガスを初めとする公共料金は上がったし、関連するものも上がるであろう。それから、昭和五十五年度の消費者物価上昇率、これは政府は六・四%と言いますが、いま経済企画庁の見解でも明らかなように、若干の食い違いはあるものの、これが確実に六・四%に抑えられるということは断言できないような気がする、これは私の受けとめ方ですがね。いまの趨勢から見れば、これは大体の常識だと思うのです。したがって、労働者がいまそういう厳しい経済環境の中で、みずからの生活防衛を図る立場でそれ相当の賃上げを要求するのは私は当然だと思うのです。そしてまた、当然労働組合は団結権を持っていますから、その団体行動の発露として、その要求を実現するために要求行動を強めることも、これは無理からぬものだというふうに私は理解するわけです。その辺、労働大臣はどのような所見をお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
  74. 藤波孝生

    藤波国務大臣 物価の、特に五十五年度の見通しについて、いろいろ御心配になっておられます数字等を先ほどから拝聴させていただいていたところでございます。それぞれ経済企画庁から答弁がございましたけれども、いまちょうど年度をまたいでおるところでありますし、なかなか数字の把握のしにくいところもありましょうし、それから、次から次へと物価対策をいま講じておるところでございます。きょうも朝の閣議で、農林水産大臣から、野菜に関してのいわゆる高値基調は完全に収束をした、これから大体この下がってきたところで落ちついていくという報告もありまして、さらに後を追っかけて、ぜひ一つ一つ手を打っていってもらいたいという強い要請を閣議でもしたところでございますが、そういった手も一つ一つ打っているというような中で、非常にこの五十五年度の消費者物価の上昇率をめぐって御心配をいただいているわけであります。昨日も、金属、エネルギー労協の皆さん方が首相官邸にお見えになりましたときにも、いろいろな御要望の中で、とにかく政府が六・四を守れるのかどうか、そのことによってことしの春闘というものは非常に考え方を異にしなければいかぬ、そのことを一つの基準にしているので、そこをひとつ政府として責任を持ってもらいたいという強い御要請等もございました。これはもう二月以降の労働界の政府に対するあらゆるお申し越しの中で、必ず触れられてきた中心点だと思うのです。  そういう意味で、総理も何回も予算委員会等で、必ず五十五年度の消費者物価の上昇の見通しについてはできる限り抑制をしてまいります、六・四という数字をとにかく守るようにあらゆる努力をしてまいりますと、こういうお答えをしてきておるところでありまして、今後ともこの物価対策を非常に重視して進んでいかなければならぬという政府全体の強い姿勢を持っておりますことを御理解をいただきたいと思うのでございます。  そこで、そういう中での春闘でありますから、労働者の要求については当然大きな理解を持って見るべきではないかということでございますが、先ほど来の枝村委員の御質問に対してもお答えをしてまいりましたように、非常に広い国民経済的な視野に立ってことしの要求額を掲げておられるということについては、労働界がそのことを評価しろという御意見については、私どももそのことについて非常に良識的に要求をお出しをいただいて取り組んでいただいているという感じを申し上げてきておるところでございます。ちょうどこれから労使のいろいろな話し合いが進められていく時期でございますので、その要求が高いか低いか、あるいは労働者としてこういう経済情勢の中で強い姿勢で臨んでいくことは当然と思わないかということについては、具体的にお答えをすることは政府としての立場で控えさせていただきたいと思いますけれども、どうかそういう情勢の中で労使が広い国民経済的な視野に立って合理的な解決を見出すために良識のある話し合いが進められていくように心から念願をしておるものでございまして、経済情勢がそういうことであればなおさらのこと、広い視野に立って話し合いが進められていくように念願をしておるところでございます。  なお、政府としては今後とも物価対策についてはあらゆる努力を講じて、御心配のような線が出てこないように努力をしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  75. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 物価抑制にも努力をしていきたい、こういうことですが、ただ、いまの状況を労働者の側から見ると、かなり不満と、生活の見通しに対する危機感のようなものを持っておると思う。それはある程度やむを得ない点もありますが、次々と公共料金あるいはそれに関連するものが上がっていく、これは足元をすくわれる状況ですわね。理由はともあれ、これは何と言ったって、政府の責任でやっていることですから。それから、今回の物価の上昇が、言うなれば外的要因という、先ほどもありましたけれども、これは確かにあると思うのです。ただ、それが大平首相の発言などによれば、一つの市場経済のメカニズムに乗せて末端で負担してもらうやの発言もあったり、それからこの間の新聞報道によれば、官房長官は、昭和四十八年の狂乱物価のときにできた例の生活関連二法の適用はやらないということを終始言っているわけです。この辺あたりは、いまの異常な物価上昇から言えば何とか考慮しなければならぬ手の打ち方だと思うのですよ。これも手を打っていない。  それから、いま労働大臣も言われましたけれども、政府物価見通し六・四、努力をすると言っているけれども、正直な話、労働者側ではなかなかこれを信頼するわけにはいかぬという状況ですね。つまり、労働者から見ると、物価をめぐる環境が非常に悪いわけです。  ところが一方、そういう状況の中で、先ほど枝村委員も言ったように、日経連はその労働問題研究委員会報告の中でるる言っておるわけですけれども、これへの対応の仕方、物資使用の節約、すなわち生活レベルの調整以外にないという、つまり簡単に言えば、物価が上がったからといって、外的要因によって上がったから賃金を上げれば、どんどん物価が上がって狂乱物価の状態になりますよ、したがって生活レベルの調整以外にないのだと、こういうようなことをはっきり言っているわけです。つまり、労働者から見れば、非常に厳しい経済環境に置かれているし、ほうり投げられている。そういう中で、一方日経連の方は、こういう趣旨でもって、私から言わせれば生活レベルの調整ということで賃金を抑えようとしてきている、こういう状況にあるわけです。  そういう状況にあって、私はいま政府賃金を何%にするのがいいなどということは、これは越えていますから、そんなことは言いませんけれども、こういう厳しい経済環境の中で労働者が生活防衛のために賃上げを要求しているし、またそれを実現するための要求行動を強めているのだ、このことについては深い理解を持ってもらいたいし、ましてや、そういう賃金抑制の方向に介入するなどということはぜひやってもらいたくないし、またもう一つは、労働省としても、先ほども言われましたけれども、物価の安定を中心とした労働者をめぐる経済環境をよりよい方向に、関係省庁とも協力して、その点については今後最大の努力をしてもらいたい。  以上の点について、重ねて労働大臣の見解をお願いします。
  76. 藤波孝生

    藤波国務大臣 こういう非常に厳しい情勢の中で、できる限り良識的な労使話し合いが進められるように心から期待をし、念願をしておる次第でございます。  なお、名目の話はともかくとしまして、実質的に労働者の生活が守られる、そして福祉が増進をしていく、同時に賃金の問題やいろいろな制度等もそれぞれ組み合わされて労働者の生活が前進をするというような方向でことしの春闘一つのシーズンを終わるというふうに念願をしておるわけでございます。御指摘がございましたように、あくまでも労使の自主的な話し合いによって賃金交渉は進められるべきものでございまして、それに政府が介入するというようなことは毛頭考えておりませんし、どうかあくまでも自主的にかつ広い視野で話し合いが進められるように心から期待をしておるところでございます。  なお、物価の抑制につきましては今後ともあらゆる努力を進めて、いま申し上げましたように、六・四%ということを基準にして、政府政府としての責任を果たせという労使双方からの強い御要請に厳しい態度で取り組んでいくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  77. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、次に最賃制の問題について質問をします。  まず第一に、労働省あるいは労働大臣は、最賃制の意義についてどのように考えているのか、その見解を聞きたいと思います。
  78. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 本来、賃金は、労使が自主的に決定すべきものでございます。最低賃金制は、国が法的強制力をもって賃金額について最低限度を定め、それより低い賃金の支払いを許さないという制度でございまして、このことによって低賃金改善し、働く人々の生活の安定を図ることを基本的なねらいとしながら、同時にそれを通じまして労働力の質的向上、事業の公正競争の確保ということに資するというような意義を持っておると考えております。
  79. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 後で労働大臣の所見も伺いたいと思いますが、私は、最賃制は次のような原理の上に立つものと考えております。  その第一点は、いまもありましたけれども、企業間の公正競争の原理、二番が労働者の生活保障の原理、三番目が総需要を喚起し、拡大する原理、少なくともこの三つの原理の上に立つのが最賃制の本来持っている意義ではないかというふうに私はとらえております。  そこで、一、二の企業間の公正競争の原理、労働者の生活保障の原理は言うまでもないことですが、経済政策との関係から言うと、第三番目の、とりわけ不況克服、安定成長という経済政策ですね。そういう観点から言うと、最賃制は総需要を喚起し、拡大し、景気にてこを与えていくという意味を持っておると私は思います。と申しますのはこの総需要、つまり公共投資、民間設備投資、輸出、そして個人消費、こうありますけれども、特に個人消費がGNPの五〇%以上を占めておるということを考えますと、この最賃制は、五〇%を超す個人消費に大きな影響を与えると思うのです。そういう意味で、私は最賃制あるいはとりわけその水準は、個人消費の拡大、ひいては総需要の拡大、景気の刺激、安定成長、雇用の拡大に影響はずっとつながっていると思うのです。  私はそういう観点で、これから中賃で目安を決めると思うのですが、その場合に決定には三つの要素がありますけれども、とりわけ個人消費につながるところの労働者の生計費、ここに重点を置いて、いま申し上げたような日本経済をより安定的に成長させるという観点で、この最低賃金の水準の引き上げを今後考えていく必要があるのではないか、経済政策立場からいって私はそう思うのです。その点を労働大臣はどうとらえて、経済政策との関連をどう考えているのか、この辺をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  80. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いわゆる雇用者の所得がどのような水準に置かれていくかということは、経済政策的な側面からとらえて、非常に大きな関連があるというふうに私は考えます。したがいまして、広い角度からはそういうことが言えると思うのでありますけれども、ただわが国においていわゆる最低賃金法が定められまして、非常に低廉な所得に置かれがちな労働者の生活を守っていくという第一義的なねらいで定めております最賃につきましては、それがそのままたとえば経済政策に非常に深い直接的な関係があるというふうにはとらえていないわけでありまして、低廉な条件になりがちな労働者を守るということに第一義を置いた法律に基づいた制度である、このように考えておるわけでございます。  何回も申し上げますけれども、しかし雇用者全体の所得がどういうふうな状況に置かれるかということは、経済政策的に非常に深い関係があるというふうには考えておるわけであります。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 労働大臣の大体の考えはわかりましたが、これから具体的に最賃の目安を出していくわけですから、したがって本来の最賃法の制定の趣旨から言うと、これは先ほど言ったような企業間の公正競争であるとか、あるいは労働者の生活の維持であるとか、低廉な労働者賃金を引き上げるという意味であると思うのですけれども、私はやはり労働省の今後の政策的な観点で考えますと、日本経済を安定的に成長させるという非常に重要な課題がありますから、それにどうつなぐかということは忘れてならない側面だと思います。ですから、そういう観点からぜひこの通称目安賃金を出すに当たっても十分配慮していただきたい。これが唯一だとは思っていませんよ、十分配慮していただきたい。その点どうですか。
  82. 藤波孝生

    藤波国務大臣 委員が御指摘のような趣旨は十分理解させていただくことができるわけでございます。それをどういうふうに今後生かしていくかということについては、そのときにその資料をどういうふうに使っていくかということによるわけでございますから、それがどういう形になってあらわれてくるかということをいまここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、先生のおっしゃるような側面があるということには理解を持たせていただいて、今後取り組ませていただきたいと思います。
  83. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 次の質問に移りますが、主要先進諸国、主としてアメリカ、イギリス、フランス等というふうに考えているのですが、それに比べて日本の最低賃金の水準はどうであるのか、簡単に言えば高いのか低いのか、大体匹敵しているのか、この辺の状況についてお尋ねいたします。
  84. 寺園成章

    ○寺園政府委員 先進諸国の最賃の絶対額とわが国の最賃の絶対額を比較いたしまして、それ自身が高いか低いかという議論はなかなかしにくい議論でございます。したがいまして、諸外国におきます平均的な賃金と最低賃金との割合を見てみますと、それぞれの国における最低賃金額の状況というのがわかるかと思いますが、そういう観点から申し上げてみますと、アメリカにおきましては全国的な州際最賃と各州ごとの最賃がございますが、州際最賃で見ますとその割合は約四三%でございます。それから、フランスで見ますと六一・五%から四九・二%、イギリスにおきましては六二・一%から三八・九%ということになっております。  そこで、わが国の最賃がどのような状況にあるかということでございますが、三十人以上の全産業男女計の所定内給与を二十五分の一にいたしましてそれを日額といたしますと、地域最賃におきましては四二・〇から三五・六、産別最賃におきましては六九・八から三七・六という割合になっております。  この割合から見ますと、諸外国に比べてわが国が特に見劣りをしておるということにはならないのじゃないかというふうに思っております。
  85. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 最賃そのものをずばり比較した数字はないのですか、たとえばドル、フランを円に換算して。
  86. 寺園成章

    ○寺園政府委員 アメリカの州際最賃につきましては今年の一月に改定をされておりますが、時間当たり三・一ドルでございます。一ドル二百三十九円九十五銭で換算をいたしますと、時間額が七百四十四円ということでございます。  フランスは昨年の十二月に改定をされておりますが、時間当たり十二・九三フランでございます。一フラン五十八円六十銭で換算をいたしますと七百五十八円ということになっております。なお、フランスにおきましては年齢によって減額措置がとられております。  イギリスにおきましては週当たり三十七・二八ポンドから二十三・三五ポンドの問で定められております。一ポンド五百四十二円四十九銭で換算をいたしますと、時間当たりが五百六円から三百十七円になるということでございます。
  87. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 アメリカを一〇〇とした場合に日本は大体どうなりますか。
  88. 寺園成章

    ○寺園政府委員 アメリカの今年一月に改定されました最賃の時間額は、先ほど申し上げましたように、七百四十四円でございます。わが国の地域最賃、昨年の九月、十月を中心に改定をされましたが、それの平均額は三百二十八円でございます。したがいまして、アメリカを一〇〇といたしました割合でまいりますと、日本は四四・一となっております。
  89. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 国際比較というのはなかなかむずかしいのですけれども、また、とらえる角度でいろいろ違いが出てきますから、それはわかるのですけれども、いまの説明でも明らかなように、アメリカを一〇〇とすれば日本が四四・幾らですからかなり差がありますね。それから、先ほどの平均賃金との比較からいっても、そんなに極端にあの数字では下がっているとは言えないにしても、離れているということは言えると思うのです。ですから、なかなかむずかしいので一言にまとめることはできませんけれども、どっちにしても国際水準から言えばこれは必ずしも均衡しているとは言えない、むしろ低い状態に置かれておると私は思うのです。  そこで、時間がありませんから、これは私の方の見解を述べて労働大臣に聞きたいのですけれども、大体日本の工業製品というと、これはいろいろな言い方はありますけれども、低賃金によるダンピング輸出ではないかという批判がときどきあるわけです。これが当たっておるかどうかは別ですよ。いまの最賃というものを比較してみた場合、日本の最賃が上回っているとか拮抗しているとは必ずしも言えない、むしろどちらかといえば下がっていると私は思うのですよ。そういうことは日本の国際的地位を経済的にも考えたときに、やはりこういう差というものがあるとすれば縮めていかなければならない。やはりこの国際間における公正競争の原理に立って、これが正当な国際間の貿易なり経済的な取引の前提だと思うのです。  そういう観点からも、いまの最賃について私は差があると思うのですけれども、その辺を縮めていくべきだというふうに考えるのですが、その点どう考えられるか。
  90. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いろいろな各国間の利害の摩擦などが出てまいりますと、必ず労働者の労働条件の比較のような話が出てくることはいま御指摘のとおりでございます。賃金の問題あるいは労働時間の問題、労働の生活の質の問題、いろいろな角度から論ぜられてまいりますが、御指摘のように、最低賃金というのが、いま御答弁申し上げましたようになかなか比較はしにくいところがございますけれども、今後それらは十分頭に置いて検討していかなければなるまい、このように考えておるわけでございます。  最低賃金の水準をさらに上げていくことができるように、いまお話がございましたように、額についても賃金の動向などを見ながら目安を立てるときの配慮をいろいろしていかなければならぬというふうにも思いますし、また同時に基本的には中小企業の生産性の向上であるとか、あるいは労務管理の近代化であるとか、あるいは個々の労働者の職業能力の向上であるとかといったようなことも総合的にやはり努力をいたしまして、最低賃金そのものをかさ上げするという努力をいたしますと同時に、総合的な対策によって国際的に見ても非常にレベルの高い労働の構えというものをつくっていくように努力をしていかなければいけない、このように考える次第でございます。
  91. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、質問を次に移します。  同じく最低賃金の問題ですが、この最低賃金の周知の徹底及び違反事業所のないように監督指導する、このことは政府の責任だと思うのですが、どうですか。
  92. 寺園成章

    ○寺園政府委員 御指摘のとおりでございます。
  93. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、法第十九条に基づく周知義務の履行について具体的にどのように指導しているか、またその実態はどうか、これが一点。  二点目は、年度別に監督件数と監督率、つまり対象事業所の中でどれだけ監督したか、及び五条違反事業所の件数、違反率、これがどのぐらいか。
  94. 寺園成章

    ○寺園政府委員 最低賃金につきましては、決定された最低賃金がそのように守られるということをもって初めてその目的を果たすものでございますので、その履行の前提になります周知徹底、それから履行の確保のための監督指導に力を入れておるところでございますが、周知の一環として法律の十九条では使用者に周知のための義務をかけております。これにつきましては、集団指導あるいは個別指導の場におきまして、この十九条の趣旨に沿って使用者が適切な措置がとられるように指導をいたしておるところでございます。  それから、監督の状況でございますが、五十四年度の監督の件数は、最賃の履行確保を主眼とした監督につきましては二万五千三十八件でございます。そのうち違反事業所の数は四千四百四十一件、違反率にいたしまして一七・七%という状況になっております。
  95. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 こういう言葉はあるかどうかわかりませんけれども、対象事業所のうち一年間に何%くらい監督していますか。監督率と言ってもいいです。もちろんこれは基準監督官による監督ですよ。
  96. 寺園成章

    ○寺園政府委員 適用対象事業所数は約三百万強でございます。そのうち五十四年度で監督をいたしました件数が二万五千三十八件ということでございます。  監督をいたしますに際しましては、この適用事業所の中でいわば大きいようなところは最賃違反ということもほとんど考えられないという事情もございますので、問題のある地域、業種に重点をしぼりまして監督をするということで実施をいたしております。限られた監督官の数でございますので、全体の適用事業所に対する監督の実施率というのは必ずしも高くはございませんけれども、監督の手法といたしまして、重点的監督ということを志向しながら効率ができるだけ上がるような監督手法を使っておるというところでございます。
  97. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 大体五%くらいですか。
  98. 寺園成章

    ○寺園政府委員 五%弱でございます。
  99. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 時間も迫りましたので、端的に申し上げまして労働大臣の答弁を求めます。  私の方がいろんな方面から入手し、労働省の方からもらった資料によりますと、まず例の十九条に基づく周知義務ですね。これに関しての意識調査、これを見ますと、昭和五十四年度適用される賃金を知っているというのが三〇・八%、それから賃金の額は知らないが適用は知っている、つまり端的に言えば適用される最賃の賃金を知らないということですね、これが五四・二%、それから最賃の適用自体を知らない、これが一五%。そうなりますと、周知義務との関連から言って、使用者側の意識がどうなっているかといえば、最賃の適用される金額を知らないというのと、最賃の適用自体を知らないというのが合計六九・二%あるわけです。これは大変な数字だと思うのですね。適用されること自体知らないで実施されるはずがないわけです。こういう問題が一つある。  それからもう一つは、違反率が一七・七%ですか、ずっと五十年以降見ると大体一八%前後ですね。これは御案内のとおり五条適用、五条の条項については罰則規定があるわけでしょう。罰則規定があるにもかかわらず年々一八%の違反が出ているというのは、これは大変な数字だと思うのですね、罰則規定があるがゆえに。  ですから、周知徹底、実施状況、違反率、この辺から見ると、かなりこの施行の状況は悪いというふうに私は言わざるを得ないのです。したがって、その辺どう見解を持たれ、どう今後是正していくつもりか、労働大臣に伺いたい。
  100. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御指摘のように非常にこの違反件数が多い。しかも、それは意図的に違反をしているというのもあるでしょうけれども、非常にその趣旨が周知徹底しないで違反になっているという形のものが多いことを私ども非常に遺憾に思います。したがいまして、今後、労使双方に対しまして旬間にそういった、特に周知徹底をするような運動を起こしますとか、あるいはいろいろな文書等を通じてもっと周知徹底をするとかといったようなことを強力に展開をいたしまして、少なくとも最賃というものを知らないで知らず知らずのうちに違反しているということのないように努力をしていきたい。  なお、第一線の監督官もやはり非常にたくさんの事業所を抱えて、巡回指導など監督ができる体制が整えばいいのですけれども、これもなかなか限られた人員で非常に厳しい条件の中でがんばっておるわけでございますが、今後こういった面でももっと機動力を行使したり、あるいは特に問題のあるところをさらに重点的に監督をしたり指導をしたりするというようなことによって行政の実を上げていくように努力をしていかなければいかぬ、そして少なくともその法律なりあるいは最低賃金というものの周知徹底を欠くことによってこういった事件が起こるということのないように絶滅を期してあらゆる努力をしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  101. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 周知徹底、簡単に言えば実効の上がるように努力をしたいという労働大臣の答弁ですが、当然そういう答弁が出てくると思うのです。しかし、そう労働大臣が答弁したって実態はなかなか事が運ばぬと思うのです、実情を見ると。それは先ほどの周知の問題も一つありますけれども、同時に、先ほど部長も言われましたが、対象事業所のうち監督するのが二万五千ですか、大体一年問五%というのですから、これは小さいところをねらい撃ちしているのだということは質的な点でわかるのですが、概数でいえば一事業所に回ってくるのが二十年に一遍ということでしょう。これでは違反を取り締まったりそれを徹底することは率直に言って私は困難だと思うのです。ですから、これはやはり監督官をふやすとかあるいは何らかの方法をとらなければ、幾ら労働大臣ががんばったってそれはなくならぬと思うのです。しかも、監督官に一定の権限がありますからだれでもやれるというわけじゃない。そういう意味で、この監督官をいかにしてふやすか、それにいかにして効率的に当たってもらうか、こういう問題がやはりどうしても客観的にある。  それからもう一つは、周知つまり認識の問題、先ほど六九%ということを言いましたけれども、これは使用者にすれば、率直に言えば、やはりなかなか最賃は上がらない方がいいわけですし、何とかそっと通りたいということなんですから、それを使用者に義務づける限りは使用者にそれを徹底的に理解してもらわなければならぬわけです。そうすると、これは私見ですが、二つ申し上げておきたい。  一つは、たとえば地方の労働基準監督局ですか、ここでもって一定の、所定の決められた用紙にその周知徹底の意味と金額とをぴたっと書いて、そして監督署が判こを押して、事業所に必ず労働者の見えるところに張りなさい、こういうように義務づけて、それが張られているのかどうか監督官がさあっと見て歩く。たとえばそんなようなことでもやらないと、使用者が印刷の足りない部分については自分でつくって張れなんと言ったってなかなかやらぬのではないか。その辺をもう少し徹底の方法について知恵を出す必要があるのではないかということが一つです。  それからもう一つは、この周知徹底のために何らかの権限を付与した指導員制度といいましょうか、そういうものでもってこの周知徹底の指導を図るとか、この辺ひとつ知恵を出して検討しないと、労働大臣の決意と意気はわかるのだけれども、地方の実情を見るとなかなか上がらないのじゃないか、その辺、労働大臣の見解を聞いて、私の質問を終わります。
  102. 藤波孝生

    藤波国務大臣 最低賃金の趣旨をもっと徹底をするようにということについての先生の非常に建設的な御意見を拝聴させていただいたところでございます。従来も監督官を増員するために政府部内にあらゆる働きかけをいたしまして、労働省としては努力をしてきておるところでございますけれども、今日行財政改革を進めてまいります中で非常に重要な意義を持っております労働基準監督行政という立場要求はいたしてきておりますけれども、なかなか厳しいものがございます。しかし、今後ともその努力を重ねていきまして、第一線の人員並びに機動力等を充実させまして所期の目的を達成するように努力をしてまいりたいと思います。  指導してまいります仕組みについての御提言をいろいろとちょうだいいたしました。業界でありますとか地方別にとか、いろいろな知恵は出してみておるわけでございますけれども、なかなかもう一つというところがございます。いま経営者の方に一つの用紙を持ってこさせて、それを労働者のわかるところに貼付させろというようなことも確かに一つの建設的な御提言であると私ども考えさせていただきますが、こういった仕組み等につきましてはさらに私どもも研究をさせていただきたい、このように考えております。最低賃金というのは、労働者の権利と生活を守る最も基本的な初歩的な、労働行政の中での最も大事な課題であると私どもとしても考えておりまして、そのことの周知徹底を欠いておることに非常に大きな責任を痛感しておる次第でございます。今後とも御指摘の方向に向かってあらゆる努力を講じてまいりたい。決して力むだけではなしに、実質的にこの行政の中でどうこなしていくかという仕組み等については研究をさせていただきつつ前進をさせていただきたい、このように考えておりますので、しばらくお見守りをいただきますようにお願いいたしたいと思います。
  103. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 時間になりましたので、最後に一言要望だけして終わります。  と申しますのは、時間がありませんので質問しませんでしたけれども、最賃の決定の手順と、地賃及び地方における産別、業種の最賃の効力発効なのです。これは毎年見ると、大体十月、十一月、十二月、言うなれば春闘の賃上げから六カ月、九カ月おくれています。これは罰則規定もある関係上なかなか遡及ができないと思うのです。したがって、いかにしてこの発効の時期を早めるかということが最大の課題の一つだと思う。そのためには、中賃の目安の諮問の時期、作業過程、この辺を能率的にして、そして地賃が早く諮問をし、決定ができるように、この辺労働省としても格段の努力と指導をしていただきたい、このことを最後に要望して、私の質問を終わります。      ————◇—————
  104. 葉梨信行

    葉梨委員長 内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は、去る三月二十七日終了いたしております。  この際、委員長の手元に、竹内黎一君、森井忠良君、大橋敏雄君、浦井洋君及び米沢隆君から、本案に対する修正案が提出されております。  提出者からその趣旨の説明を聴取いたします。竹内黎一君。     —————————————  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  105. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議日本共産党・革新共同及び民社党・国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、特別手当の額について、月額六万四千五百円を六万七千五百円に、月額三万二千三百円を三万三千八百円にそれぞれ引き上げること。  第二に、健康管理手当の額について、月額二万千五百円を二万二千五百円に引き上げること。  第三に、保健手当の額について、月額一万八百円を一万千三百円に引き上げること。以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  106. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればこれを聴取いたします。野呂厚生大臣
  107. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府としては特に異存はございません。     —————————————
  108. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより原案及びこれに対する修正案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、竹内黎一君外四名提出の修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  109. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいまの修正部分を除いた原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  110. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  111. 葉梨信行

    葉梨委員長 この際、竹内黎一君、森井忠良君、大橋敏雄君、浦井洋君及び米沢隆君から、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者からその趣旨の説明を聴取いたします。森井忠良君。
  112. 森井忠良

    ○森井委員 私は、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議日本共産党・革新共同及び民社党・国民連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   昭和五十三年三月の最高裁判所判決などにより、国家補償の精神に基づく原爆被爆者援護法の制定を求める声は、とみに高まっている。このため政府は、社会保障制度審議会の答申及び国会での附帯決議に基づいて、昨年六月、原爆被爆者対策基本問題懇談会を発足させ、制度の基本的なあり方について、再検討を加えてきたところである。   よって、政府は、原爆被害者の老齢化が進むなど、事態は緊急を要するものであるという認識に立ち、可及的速やかに同懇談会の答申を得るよう、最善の努力をするとともに、次の諸点についてその実現に努めること。  一 制度の基本的な改正が、次期通常国会までに行われるよう、資料の収集や調査など必要な作業を直ちに開始すること。  二 このため、放射線影響研究所、広島大学原爆放射能医学研究所、科学技術庁放射線医学総合研究所など第一線研究調査機関相互の連絡を密にし、その成果を基礎的資料として活用するよう、万遺憾なきを期すこと。  三 放射線影響研究所の研究成果を、被爆者の健康管理と治療に、より役立てるため、運営の一層の改善、同研究所の移転、原爆病院との連携強化などにつき検討すること。  四 原爆病院の整備改善を行い、病院財政の助成に十分配意するとともに、その運営に当たつては、被爆者が必要とする医療を十分受けられるよう万全の措置を講ずること。  五 被爆者に対する諸給付については、生活保護の収入認定からはずすよう検討を進めること。  六 原爆症の認定については、被爆者の実情に即応するよう、制度と運営の改善を行うこと。  七 被爆者に対する家庭奉仕員制度を充実するとともに、相談業務の強化を図ること。  八 被爆者とその子及び孫に対する放射能の影響についての調査、研究及びその対策について十分配意するとともに、二世の健康診断については、その置かれている立場を理解し、一層の充実を図ること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  113. 葉梨信行

    葉梨委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  114. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立総員。よって、本案については、竹内黎一君外四名提出の動議のごとく附帯決議を付することと決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野呂厚生大臣
  115. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。     —————————————
  116. 葉梨信行

    葉梨委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  118. 葉梨信行

    葉梨委員長 労働関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。大橋敏雄君。
  119. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私も、八〇年春闘に関連する問題としまして、若干お尋ねしたいと思います。  まず初めに、労働者が憲法に保障されていた権利を、もともと持っていたにもかかわらず、ある理由によって剥奪をされた。そうなると、当然その労働者はそれを取り戻そうといういわゆる奪還闘争を展開すると思うのでありますが、ストをするとかしないとかいうのは別問題としまして、そういう闘争を起こす労働者の姿について、大臣の見解をまずお尋ねしておきたいと思います。——いやいや、違うんだよ。いまのは大臣、気持ちを聞くわけですから。
  120. 細野正

    細野政府委員 とりあえず事務的にお答え申し上げます。  労働者に対して憲法上労働基本権が一方において保障されておる。一方、一部の非常に業務が重要性を持っている方々につきまして、これについて制約があるという事態自体につきましては、先生も御案内のように、そのこと自体は憲法に違反するものではない、こういう累次の裁判例が最高裁初めあるわけであります。そういう中で、先生御指摘のように、主として公共部門関係の労働者につきまして、スト権をわれわれに与えるべきじゃないか、こういう御議論のある点は、私どもも承知しているところでございます。
  121. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私はそういうむずかしい話を聞いているのではなくて、憲法に保障されていて、もともと持っていた権利をある理由によって剥奪されたら、当然それを取り戻そうという運動は起こるでしょう、それはおわかりになりますかと、それだけを聞いておる。それは当然のことですから、大臣は非常に正義感の強い方だし、勇気のある方だから、まず基本的なことを聞いておこうというだけの話なんです。
  122. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いろいろな問題が、それぞれ歴史的な経緯があるわけでございますけれども、労働者の権利をめぐりましても、いろいろな経緯があって今日に至っているということは、先生の御指摘のとおりでございます。権利をぜひ自分たちのものにしたいという要求があるということ自体については、それはもう当然そういう要求があるだろうというふうに考えますが、それをどのように考え、どう対応するかということはまた別の問題であるということをお答えをしておきたいと思います。
  123. 大橋敏雄

    ○大橋委員 当然の行動であるというふうに私たちは認識するわけです。勤労者にとりまして、賃金が高いとか低いとか、いわゆる賃金の多寡ですね、それが家族の生活水準に直結するということはきわめて重要な問題であると私は思うのです。それだけに、春闘の意義は大きいと私は思うわけですね。最近の春闘は、労働者の単なる賃金問題のみならず、国民的な政策あるいは年金問題などの福祉向上等の要求を掲げた、すなわち国民共闘春闘とでもいいますか、そういう姿で展開をされているわけですね。現在も、御承知のとおり大変な低成長時代に入った、それで石油危機、物価高騰のその背景の中で、真剣な春闘がいま展開されているわけです。しかしながら、労使相互の利害というものは相反することが多いと思うわけですが、その労使間の紛争も当然予測されるわけですね。そうしますと、この労使間の紛争について、当然原則的には労使双方が自主的にこれを調整していく、これは労調法で当然示されているわけでございますが、賃金の引き上げあるいは労働条件などの要求、あるいは労働協約を結ぶときなど、しょせん弱い立場にある労働者が労働者として生きる権利を守るというのがいわゆる労働基本権だと私は思うわけです。憲法第二十八条には、「勤勞者の團結する権利及び團體交渉その他の團體行動をする権利は、これを保障する。」と規定しているわけでございます。ですから、私は当然労働者のこの憲法に保障されている労働三権、もともとの権利である、このように理解しているわけですけれども、もう一度この点、当然のことだと思いますけれども、大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  124. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先生御指摘のように、労働者が非常に弱い立場から出発をして、それぞれ権利が付与されたりかち取ったりしながら、歴史的経過を経て今日に来ている。そういう中で、賃金交渉を中心にいたしまして、いろいろな制度政策要求などもともに論じられながら、今日の春闘の時期を、年に一回、非常に大事な時期を一つ通り越えよう、こういうふうになっておるわけでありまして、それらの中でもいろいろ論じられていくわけでありますけれども、一つ一つ具体的にはいろいろな論議がありますけれども、常に労働者の権利が守られるということを非常に大事に考えて従来も進んでまいりましたし、今後もそういったことを非常に大事に念頭に置かれて進んでいくのでなければいけない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  125. 大橋敏雄

    ○大橋委員 一本の矢は折れても三本の矢は折れないというたとえがありますように、弱い立場にある労働者は、当然団結をしまして、そして経営者との団体交渉を行う。その団体交渉を行うときに、特に行き詰まった場合、そうした団体交渉の際の不可欠な武器というものは、私はその打開策がいわゆる団体行動権ではないか、つまりスト権というやつですね、争議権というやつです。こう信ずるわけですけれども、この点について、大臣はどう思われますか。
  126. 細野正

    細野政府委員 先生のお尋ねのように、民間労働者につきましては、おっしゃるように、まず労使が自主的に交渉する、それから、それが不調になった場合には、場合によっては適正な第三者にあっせん、調停をお願いする、こういう仕組みで問題が解決をされていく。その過程におきまして、労働者が争議権を行使するというふうなことがある、これは当然なことであるわけであります。ただ、その場合に、先ほど申しましたように、一部の公共的な部門におきましては、やはり仕事の重要性あるいは国民に対する影響その他のいろいろな関連から、これに制約があった場合には、今度は適正な第三者の判断によってこれを解決をしていくということによって、スト権が民間にある場合の代償的な役割りを果たす、そういうこともまたわが国のみならず、各国においても広く行われておるところでございまして、そういう意味で、やはり部門部門によってそういういろいろなあり方があるというのが私どもの考え方でございます。
  127. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、弱い立場にある労働者は、だからこそ組合をつくったりして団結をして、そして、要求をかち取るために団体交渉をするわけですね。ただ団結して交渉するだけだったら、これはもう痛くもかゆくもないわけでありまして、だから、弱い立場にある労働者にとっては、もしこの要求をのまないようだったらわれわれもこういうことをやりますよという、要求を満たすための補完的なものとして争議権が憲法でも認められているということだと私は思うのです。したがいまして、必ずや交渉の裏にはそれらしきものを構えるわけですね。労働組合あるいは労働者の皆さんというものは、必ずそういうことは当然のこととして構えるわけでございます。  今度も春闘の中で、十六日から交通ストというものを計画をしているようでございます。これはもう新聞報道等でごらんのとおりでございます。もし、こうした中で解決ができない場合は、その問題は中労委あるいは地労委等にゆだねられていくわけでございます。当然あっせん、調停、仲裁という内容で処理されていくわけでございますが、私ここで申し上げたいことは、わが国は職業によっては、この基本権の一部が制限され、あるいは禁止されている、御承知のとおりです。そこで、公益事業、公共性のあるものについてのスト権というものは、私はやはり野放しで与えてよいとは考えません。しかし、現在私鉄等に与えられているような、つけられているような条件つきといいますか、そういう条件をつけたスト権というものは、これは当然であろう、こう思うわけですね。  したがいまして、公労協等が、先ほど申しました、もともと持っていたスト権の奪還について、長い長い闘争を展開しているわけでございますが、その闘争の中に非常に印象的に心に焼きついている問題がございます。それは、昭和五十年の十月十五日、電電、専売公社の当局が、条件つきでスト権を認めるべきであると見解を表明いたしております。御承知のとおりだと思います。その明くる日、十六日に、国鉄当局が全国の総務部長会で、条件つき付与が現実的と、これまた表明いたしました。その翌々日の十八日ですが、国鉄諮問委員会が国鉄再建のための提案の中で、条件つき付与論を示唆しております。そして、三日後の五十年の十月二十一日、衆議院の予算委員会で、三公社の総裁が条件つきでスト権を認めるのが望ましいと発言をしたわけです。これはもう皆さんも御承知のことと思います。確かに公共部門を担当する者には、スト権をそのまま与えるということは問題かもしらぬけれども、三公社五現業等の現場の責任者は、条件つきで与えるのが当然ではないか、妥当である、こういう意見を表明しているわけですね。これに対して、労働大臣はどのようなお考えをお持ちか、その所感を承りたいと思います。
  128. 藤波孝生

    藤波国務大臣 三公社五現業等の労働基本権問題につきましては、五十三年の六月に公共企業体等基本問題会議から、現時点におきまして争議権を認めることは適当ではないという意見書が出されておりまして、政府としては意見書の趣旨を尊重して対処することとして、この問題についての結論を出したところでございます。五十三年六月二十三日に閣議了解になっておるわけでございます。  労働省といたしましては、意見書も指摘をいたしておりますように、三公社五現業の労使関係の改善こそ急務である、こういうふうに考えておりまして、公共企業体等労働問題懇話会の開催を初めといたしまして、そのための環境づくりに従来も努めてまいりましたし、今後もそういう努力を重ねてまいりたい、このように考えておる次第でございます。条件つきでスト権を付与したら、こういう御意見も各方面にあることは十分仄聞をいたしておりますけれども、当面、政府としていま申し上げましたような態度を変更する気持ちは持っていないということをお答えを申し上げたいと思います。
  129. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いま答えられたとおり、公共企業体等基本問題会議意見書の結論は、争議権を認めることは適当ではない、こういうことになっているわけですけれども、私はこれを見まして非常に残念な思いがしてならぬわけです。とにかく労使協調のかぎというものは何だ、それは私はやはり信頼感だと思うのですね。労使関係の正常化、信頼感こそその基本であるという、いまお話があったとおりでございますが、不信というものが先行すれば、何をやってもやみじゃないか、つまり実らない、私はこう思うわけですね。大体この労使の不信感がずっとつのってきまして今日までその成果が出てこなかったのではないかと私は思うのでございますが、それでも昭和四十九年の七四春闘収拾に当たりまして、政府春闘共闘委員会が五項目の合意をしたことがあるのですね、これは四月だったと思うのですけれども。私はこのときは、ああよかったな、やっとこれで信頼感の回復が急速に進んでいくのじゃないか、このように大変な期待を寄せたわけです。しかし、いま言われたような結果になって、残念でなりません。  政府は、公労協あるいは総評等のスト権奪還闘争運動に対しては、昭和四十年の七月二日に公務員制度審議会を設置したわけです。言うまでもなく、八十七号条約批准に伴う官公労働者の団交権、スト権や、三公社五現業の当事者能力問題の審議が目的で設置されたわけです。その間ずっと私は委員会でこの問題をいつも取り上げてきましたけれども、当時の労働大臣は、必ず公制審の答申を待ってから、公制審、公制審ということで、逃げたという言葉は妥当でないかもしれませんけれども、言を左右にしてきたわけですね。それだけにまた、われわれもその公制審の答申に大変な期待を寄せたわけでございますが、八年もかかって出ました四十八年九月三日の答申は、御存じのとおり三論併記だったわけですね。全面禁止、そして一部付与、条件つき一括付与、このように辛うじて三番目の条件つき付与で期待をつないだわけでございますが、その後、労働者の反発が高まりまして、四十九年の四月九日、公労協は百二十時間の統一ストへというようなかっこうになろうとしたわけです。ところが、その明くる日、四月の十日には、公共企業体等関係閣僚協議会設置を閣議決定したわけです。その翌々日の四月十二日に公労協などが決戦ゼネストだというふうになってきたところ、その明くる日の四月の十三日、政府春闘共闘委は、先ほど申し上げましたような五項目、つまり七四春闘収拾に当たりまして、閣僚協の結論は、昭和五十年秋を努力目標とするという五項目に合意したわけです。そのときの労働側の喜びといいますか、期待は絶大なものでございました。その気持ちが、公労協の春闘共闘委員会のパンフレットの中にこういう言葉で見られます。「一九七四年四月一二日春闘共闘委員会政府との間で五項目の了解をとりかわし、「三公社・五現業等の争議権等と当事者能力の問題について五〇年秋を目途に結論をだす」ことを約束させました。政府に明確にスト権を認めさせるには至りませんでしたが、「スト権決着」の土俵にはじめて政府をひきずり出した意義は、きわめて大きいといえます。」ここに大きな喜びと期待が込められた言葉だと私は思うわけでありますが、先ほど申し上げましたように、信頼感の回復への大きな糸口だと私は見たわけでございます。しかし、この辺の事情は、私はいまも忘れていないのですけれども、さてその後その約束はどうなったのか、果たされたのか、こう言えば、先ほど説明があったような内容になっているわけですね、与えません。こういうことになれば、理由はどうであれ、今日までそのスト権問題が実際に解決していないということについては、つまり政府のやる気のなさに対する労働者の不信感が再びどんどんどんどんとつのってきている。  いまでこそスト権の問題は余り論じられていませんけれども、これはいつかまた必ずや大きな火を噴くのではないか、このように思うわけでございますが、これまでの結論は結論としまして、これまでの状況を素直にまじめに見てきた場合、少なくとも三公社五現業には条件つきスト権を与えるべきであるという前向きな方向で努力をしてもらいたい、こう思うのですけれども、大臣のお気持ちを聞いておきたいと思います。
  130. 藤波孝生

    藤波国務大臣 ことしの春先から公共企業体等の労働界の方々が政府に対していろいろお話におみえになりましたときにも、やはりスト権問題について政府と協議を始めようではないかというような強いお申し出がございました。政府としては一つの結論を出しておりますので、いろいろな御意見は伺います。大平内閣は各界各層の御意見を承って政治に誤りなきを期していかなければならぬわけでございますから、どんな御意見でも伺います。しかし、そのことについて意見を申し上げたり、従来の態度をいますぐに変更するということにはなりません。したがいまして、協議をするということについては、いまのところそういう気持ちを持っておりませんというお答えを申し上げたところでございます。いま先生からまさに御指摘をいただきましたように、やはり労使の信頼関係が一番大事なことだというふうに思います。そういうふうに考えますと、正常な労使関係が確立をされていくということが一番大事なわけでありまして、そのための環境づくりに努力をしていくということは最も大切なことである、こういうふうに考えておりまして、先ほど御答弁申し上げましたように、そういった環境づくりのためのいろいろな懇談会等を開催いたしまして、努力を重ねてきておるところでございまして、政治といたしましては、今後ともそういった環境づくりの努力をとにかく続けさせていただきたい、このように考えておる次第でございます。
  131. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今回の春闘が、その結論が、いま予想されております十六日より前に決着がつけばいいがなと、私も一生懸命念願しておるわけでございますが、不幸にして十六日にもつれ込むことがあったとすれば、いわゆる予想どおりのストが展開されると私は思うわけです。そうしますと、その中で特に気になることは、国鉄などもこれに合わせて七十二時間ストを計画しているわけですが、現状のままでいけば、これはやはり違法ストになりますから、そうするとまた処分しなければならぬ。スト、処分、ストというこの悪循環だけは繰り返したくないと、それこそ政府側も何回も繰り返して言ってきております。われわれもそうしたい、そのためにはやはり合法的な条件つきスト権を与えるべきであると私は思うのです。もし、十六日前に結論が出ればいいようなものですけれども、もしもつれ込んだ場合、もう一つ気にかかることは、五十四年の春闘の処分がいま凍結されていると私は思うのです。できたらその凍結内容を示してもらいたいわけでございますが、これとの微妙な関連がまた出てくるのではないか、このように思うのでございますけれども、その五十四年春闘処分が凍結されている内容を差し支えなければ言ってください。
  132. 細野正

    細野政府委員 お話がございましたように、五十四年の春闘の場合の処分問題については、御案内のように、当時の運輸大臣の処分凍結という助言を受けまして、国鉄当局が凍結の措置をとったものというふうに聞いておるわけでございます。なお、その場合に対象者等がどれくらいになっておるかということについては私どもも承知をいたしておりません。そういう状況でございます。
  133. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私が調べた内容からいきますと、国鉄は処分しなかったので凍結も何もないということですが、専売、郵政、国有林野、これにはかなりの処分がなされようとしているが、一応いま凍結になっているということでございます。この辺にも大きな影響が出てくるような感じがしてならぬわけでございますが、いずれにいたしましても三公社五現業に条件つきスト権を与えたらしょっちゅう何か国民に迷惑をかけるのではないかというような心配は私は必要ないと思うのです。労働組合も本当にすばらしい立場に成長なさっておりますし、国際的な立場もございますし、そんなむちゃなことはなさるわけがない、むしろ条件つきスト権を与えることこそが正常な政府の考えではないかと改めて強い要望をしておきます。  もう時間があと一、二分でございますので、最後に要望を申し上げておきます。  これはスト権問題とは話は違いますけれども、いわゆる定年延長法案でございますけれども、社会党、公明党、民社党三党が相協力しまして、法制化への努力をいたしまして、先般法案がまとまりまして、自民党、共産党さんにも同意を呼びかけました。共産党さんの方は同意をしていこうということのようでございますが、自民党さんの方はいま検討中ということでございますけれども、どうやら労使の基本問題にかかわる問題だから、また定年延長の法制化を含めていま雇用審議会で検討中だから、にわかに返事をするわけにはいかないということで、いまのところはっきりしておりませんが、いずれわれわれは自民党に対しても、その必要性、また当然の内容であることを説得し、努力していく気持ちでございますが、簡単に言えば、政府は六十年六十歳の方向ですけれども、われわれの案は一年早い五十九年六十歳の内容になっているわけです。私は当然この法制化の必要性を感ずるわけでございますが、その点についての政府の考え方を聞きまして、質問を終わりたいと思います。
  134. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いま議員御指摘のように、最も実効のある定年延長の方策について、雇用審議会でいろいろ御意見を承っておるところでございます。特に、わが国のように終身雇用慣行のもとで定年延長を図っていこうといたします場合に、年功的な雇用、賃金慣行の見直しがどうしても必要になる。したがって、法制、法律によって一挙に上からおっかぶさるような感じで定年の延長をという形をとっていくよりも、やはり労使がお互いに工夫をし合い、お互いに努力をして定年延長に持っていく、そして名実ともに労使話し合いのもとに定年が延長になっていくという形をとっていくことの方が、実質的に意味が大きいのではないか、当面そう考えまして、六十年度六十歳定年を目指しまして、労使の円満な話し合いを中心として努力を積み上げていくように努力を重ねてきておるところでございます。  法制化についても雇用審議会でぜひ意見を聞かせてもらいたいというふうにお願いをしておるところでございますが、まだ三党の合意になられました法案の中身も具体的に詳しく拝見をしておりませんけれども、今後この雇用審議会でいろいろ議論をしてまいります際に、当然各党の御意見であるとか、あるいは国会での御論議であるとかといったようなことも十分参考にして、実効のある方策についての結論が導かれるもの、こういうふうに考えておるわけでございます。国会の御論議がどんなふうに動いていくかということ、これは私がいま申し上げる立場ではありませんけれども、今後も十分参考にさせていただきながら、当面は政府としては雇用審議会の御議論の推移を見守っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  135. 大橋敏雄

    ○大橋委員 では最後に、近く野党共同提案という形で国会に正式に提案する予定であります。しっかり中身を検討してもらいたいと思いますが、いまの答弁の中で、大臣の法制化に対する意見は非常に消極的でございますので、その辺認識を改められることを強く要望いたしまして、終わります。
  136. 葉梨信行

    葉梨委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後四時一分開議
  137. 葉梨信行

    葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。伏屋修治君。
  138. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私は、午前中に引き続きまして春闘に関する問題を若干質問してまいりたいと思います。  まず最初に、八%賃上げ統一要求、これはまことに今年の春闘の特色とも言えるわけでございますけれども、このような春闘の統一要求に対しまして、これからの春闘のいろいろな交渉経過を経てどういうような見通しを持っておられるのか、まず最初に労働大臣にお聞きしたいと思います。
  139. 藤波孝生

    藤波国務大臣 ことしの春闘は、いま先生が御指摘になられましたように、八%要求で出そろって春闘に入っていく、そういう意味では非常に大きな特徴を持っているわけでございます。午前中の御質疑にもお答えをいたしましたように、第一次の石油ショックから、その後非常に不景気に突入をいたしまして、さらに景気を回復していくために時間をかけてきたわけでございますが、従来の経緯の中で、やはり生活の向上あるいは生活の防衛といったような観点から、できるだけ高い数字要求を掲げてそれを闘い取るという形で春闘に臨むといった労働界の姿勢というのが、ともするとなきにしもあらずであったと思うのでありますけれども、今回の春闘に関しましては、いろいろと従来の経済の動き等も勘案し、そして将来も展望しながら、そんな中で八〇年の春闘をどのように構えていったらいいか、労働側としても広い深い角度からお考えになった結果、八%要求というような形の要求が出てきた、こういうふうに言われておるわけでありまして、私どもといたしましても、そのことについては高い評価をしておるわけでございます。  まだこれからでございますので、ことしの春闘がどんな形になっていくのかということは予測しがたいものがございますけれども、日本経済が非常に大事なときに来ている。昨年も石油が二倍にはね上がるといったようなことから、アメリカ、ヨーロッパなどの例を見ましても大変なインフレ状況が覆いつつある中で、わが国として海外要因をどのように乗り越えていくかということをいろいろ考えてみますると、ことしの春闘がどんな姿で動いていくかということの意味は、日本経済にとって非常に大きなものがある、このように考えまして、広い角度から良識的な労使話し合いが進められるように心から期待をいたしておるわけでございます。  政府といたしまして、労使賃金交渉に介入していく気持ちはありませんけれども、特にこういう時期でございますので、政府といたしましては総合的な物価対策を打ち出しまして、とにかく物価を抑えるためにあらゆる努力をする。労使はそれぞれの立場を十分理解し合って、良識のある話し合いによってこの春闘を乗り越えるというような運びにしていっていただきたいものだということを心から念願をしておる次第でございます。
  140. 伏屋修治

    ○伏屋委員 いま大臣のお答えになったとおりだと私も思います。一にかかって今後の物価の抑制策に対する政府の積極的な手だて、こういうものが大きく労働側に期待されておることだと思いますし、そのことが今後における労使間の信頼というものにつながっていくのではないか、このようにも考える次第でございます。  そこで、これは余りよくないニュースなんですが、私の耳に入ってまいりましたところによりますと、いわゆる使用者側の見通しというのが、日経連の調査によると、四%台に抑え込んでいきたい、こういうようなお考えがあるやに聞いたわけでございます。こうなりますと、せっかくいろいろ日本の今後の国内経済というものを考えながら統一的に八%を要求する中で、その要求の半分にも満たないというような使用者側の意思がうかがえるわけでございますけれども、そのような状況を御存じかどうか、お尋ねしたいと思います。
  141. 細野正

    細野政府委員 いまお尋ねがございました四%という具体的な数字につきましては、私ども全く承知いたしておりません。いずれにしましてもそれぞれの労使のお話し合いの過程でそれぞれのお立場でいろいろな御意見が出ることは想像されるわけでございますが、私どももそういう点、いろいろな角度から労使が相互に腹蔵なく問題を話し合っていただいて、その中で総合的に見て妥当なところに平和裏に落ちついていただくことを祈念しておるわけでございます。
  142. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私どももそのように念願をしたいわけでございますが、このように、仮に日経連の調査によるところの四%というような低い額で妥結を見ようという意思があるとするならば、労働側にとっては非常に厳しい条件ということになってまいります。勢いそれに対する反発が強くなってくるのは当然であろうと私は思うわけでございます。  そこで、ここのところで私は経企庁に諸物価の高騰についていろいろとお聞きをしたいと思いましたけれども、先ほど午前中の佐藤委員の御質問等がございまして、具体的な数字があらわれておりますので、あえてここではお尋ねをいたしません。ただ、こういうような物価の上昇、けさの経企庁のお話によりますと、いわゆる消費者物価が東京区部で七・二%、卸売物価は二一・九%、まさに四十八年の狂乱物価時よりもさらに高騰する気配があるわけでございます。それに追い打ちをかけるように、電力、ガス、私鉄、国鉄等の料金の値上げがもう決定しておるわけでございます。そうなってきますと、政府の消費者物価上昇率の見通し、六・四%というものが崩れざるを得ない、こういう状況になってくると思います。これに対しまして、先ほどの四%ということが経営者、使用者側の意思であるとするならば、労働者は踏んだりけったりというような状況にならざるを得ないのではないか。また、ひいてはいわゆる政府の施策の失敗というものが厳しく批判されることになってくるのではないか、このように考えるわけでございます。  そこで、先ほど労政局長はそういうお話は聞いておらないということでございますが、この四%台というようなことは、火の気のないところに煙は立ちませんので、そういうような意思も使用者側にあると考えるとするならば、このような低い賃上げ率を決定しなければならないという背景、それはどういうふうにお考えになっておりますか。
  143. 細野正

    細野政府委員 先ほども申し上げましたが、労使それぞれのお立場交渉の過程においていろいろな御意見があるわけでございます。したがいまして、いま御指摘の数字につきましても、それがどういう背景から出てきたかというのは、私どもは全く承知をいたしていないわけでございます。ただ、いずれにしましてもそれぞれのお立場について、反対側の方も、相手側に対するいろいろな問題に対する理解を持っていただいて、相互に意思疎通をする中で問題の合理的な解決を図っていただくということが私ども一番望ましいし、そうありたいというふうに感じておるわけでございます。
  144. 伏屋修治

    ○伏屋委員 それではちょっと背景のつかみようのない説明でございますけれども、労政局長はそういう四%というお話を聞いておらないということでございますので、それぐらいにしておきたいと思いますけれども、八%の統一要求という労働者側の要求額を、四%という情報が労政局長のお耳に入っておらないとしましても、いわゆる使用者側としては八%以下に抑え込んでいきたい、こういうような御意思がそこに働いておるのではないかと思います。そうなってまいりますと、せっかく物価抑制あるいは国内の経済情勢というものを配慮しつつの統一要求というものが崩れざるを得ない。そしてまた、さらに生活が非常に厳しい状況に置かれる、こうなってくれば、当然労働側の反発としては、具体的には来週の十六日を山場にしての統一ストライキへの突入が避けられない、こういう状況にならざるを得ない。一般的にはそういう判断しかしようがないと私は思うわけでございます。  このように、動労とか国労が、現在のところ私どもが知る限りでは七十二時間、それから私鉄が四十八時間のストの計画、これを実行するようになってきたならば、国民に非常に大きな迷惑をかけるのではないかと思いますし、また当事者、政府の方にしましても、違法ストとしての厳しい態度で臨まざるを得ない、そういうようなことも考えられるわけでございます。それは労働側に対する批判として集中するかもしれませんが、現在の日本の置かれた国内の経済情勢から見ていきまして、いまだかつてない八%という統一要求を出した労働者側の背景というものも国民はよく理解しておると思います。そうなってくれば、一面、ストをやった者に対する批判と同時に、そのようなストに追い込まざるを得なかった政府の指導性のなさというところにも大きな批判が集中すると私は考えるわけでございます。  このような状況の中で、政府としてストを回避するためにどのような方法を今後考えられようとしておるのか、また、どのように対処していこうとしておられるのか、その辺の御意思をお聞きしたいと思います。
  145. 細野正

    細野政府委員 春闘におきます賃金問題につきましては、やはり労使が腹蔵なく話し合っていただいてよく意思疎通を図るという中で問題を合理的に解決していただく、これが基本であるというように考えるわけであります。そういう意味で、民間につきましてはそれがどうしても不調になるという場合には、労働委員会その他の第三者機関を活用するということもお考えいただく場合もございますし、それから三公社五現業等の公共部門につきましては、まさに法律上ストライキというのは禁止されておるわけでございまして、ルールに従って公労委という場を活用していただいて、そこで調停の場を通じて労使が意見の一致点に到達するということを強く私どもは期待しておるわけでございます。そういう意味で、そういうルールに従って労使とも問題の解決に当たっていただくように、折に触れまして私どもは助言をし、あるいは指導をするということをやっているわけでございます。  なお、基本的には物価という問題が今日の賃金問題を一層むずかしくしているという面がございますので、労働省は物価関係についての直接の権限があるわけではございませんけれども、担当の各省に御協力をいただいて、たとえば五十四年度の四・七%程度という目標、あるいは五十五年度の六・四%程度という見通しについて、その実現に全力を挙げて当たるというふうなことが、また同時に賃金問題の解決が比較的円滑にいきやすい環境づくりになるというふうに考えまして、そういう意味での環境づくりにも全力を挙げているという状況でございます。
  146. 伏屋修治

    ○伏屋委員 公労委の調停、中労委の調停ということもよく理解できます。それからまた、労働省としましては、日本のいまの、労働大臣からお答えになりましたような国内経済情勢のもとでの統一要求ということを勘案しながら、物価抑制ということに対して積極的な、いま局長が御答弁になりましたように、労働省としても他の省庁に働きかけて物価抑制を強力に推進していかなければ、スト突入というのは避け得ない、このように私は考えるわけでございます。昨日のテレビのニュースを見ましても、公労委に三公社五現業がいろいろと申し入れをしておりますが、その会議の内容等にも大きく期待したいわけでございますけれども、現況から言いますと、いま新聞等にいろいろと記事として扱われておるような方向に行かざるを得ない、スト突入に行かざるを得ないという状況に刻々と迫りつつある、こういうように私は認識しておるわけでございます。  そういう面から、スト回避というものを公労委あるいは中労委にお任せをするという政府の姿勢でございますけれども、その辺、労働大臣の御意思も聞かしていただきたいと思います。
  147. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先ほど来いろいろ御指摘をいただいておりますように、経営側には経営側のいろいろな意見がありますし、企業収益は上がっておるじゃないかということについては、いやそれは一過性のもので企業は少し収益が上がっておるからといって、ことし賃金を大幅に上げたのでは、来年からもうもたないというような御意見もありますし、また、労働側には八%要求ということで横並びに出そろった。ところが、その後どんどんと物価が上昇してくるので、下からじりじりと、ふろの下から煮え立ってくるような中につかっておるようなもので、とてもじゃないけれども、下部のいわゆる労働者の方々からの突き上げがきつい。とても八%では守り切れないというような御意見もある。それはいろいろな御意見がそれぞれの立場から出ておるわけでございます。それぞれの御意見にはそれぞれ理由のあることでありますけれども、先ほど来お答えをいたしておりますように、全体としては国民経済的な視野に立って、労使が平和裏に自主的な話し合いが行われて合理的な解決を見出すというふうにぜひお願いをしたいと思っている次第でございます。  なお、ストライキにつきましても、違法のストライキは許されるわけではありませんので、これはぜひ自粛をしてもらいたいという立場に立っておるわけでございますが、政府がスト回避のために何かやることがあるのか、あるいはそれを積極的に取り組んだらどうだ、いろいろなご意見がございますけれども、それぞれ当事者が労使話し合いを進めていくことでございますので、労働省といたしましては、それらの話し合いの中で平和裏に、しかもできる限り国民に迷惑がかかるということのないような形で合理的な解決を得られるようにぜひ話し合いが進むことを期待をしている、こういうふうにお答えをする以外にないわけでございます。こういう時期でございますので、ぜひともそういうような形の新しい八〇年代の本当に良識的な話し合い春闘という形でこの時期を推移をすることができたらと心から念願をいたしておる次第でございます。
  148. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そこで、少しスト権について私も触れてまいりたいと思うわけでございます。  過日、東京地裁のいわゆる日教組槇枝委員長に対する判決が下ったわけでございますが、その後、公労協あるいは公務員共闘の代表がスト権付与について政府側に申し入れたと聞いておりますが、それは事実でございますか。
  149. 細野正

    細野政府委員 政府側に対し、公労協等の皆さんが会見をされた際に、そういう点について触れられたという事実がございます。
  150. 伏屋修治

    ○伏屋委員 その際、労働大臣がいわゆる労働大臣発言として、スト権についてはもうすでに決着がついておる。いわゆる五十三年の公共企業体等基本問題会議の結論で、スト権については決着がついておる、こういうような発言をされたやに聞いておるわけでございますが、そのとおりでございますか。
  151. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いま御指摘のとおりでございます。政府としては、閣議了解が行われておる線に基づきまして、いまのところその態度を変えるという、その後何か事情が変化したというふうには考えておりません。むしろ三公社五現業等につきまして、十分労使が信頼関係に立っていろいろな交渉が行われ、あるいは話し合いが行われるというような環境づくりを進めていくことが非常に大事であるという形で労働省としても努力を重ねているところでございます。
  152. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私もこの基本問題会議の結論を読んだわけでございますけれども、確かに「総合的に勘案すれば、現時点において争議権を認めることは適当ではない」こういう結論が出ておるわけでございますけれども、同時に、争議権は認めないというその前段には「現時点において」という断りがあるわけでございます。ということから、その後文にも続きまして、「争議権のあり方についての考え方は上述のとおりであるが、正常とは言えない三公社五現業等の労使関係の現状を放置しておくことは国民的見地からも許されないという点に関しては、各委員とも異論のないところであった。」こういうふうに書いてあります。それに続きまして、「労使関係の正常化こそが本来の課題であるとの認識のうえに立って、」違法なストを行うことに対する注意の喚起と同時に、「政府に対しては、労働組合のもつ社会的機能のより深い理解の下に組合との間に相互信頼を基礎とした対話を積み重ねることを、それぞれ要請したい。」労働側政府側にも要請しておるわけでございます。それに続きまして、先ほど労働大臣の御答弁にありましたように、政府が積極的に三公社五現業の関係労使が正常化するような環境をつくっていかなければならない、このようにも明記されておるわけでございますが、さてそのような努力をいままでどのように回を重ねて積み上げてこられたのか。  これは五十三年の基本問題会議の結論でございますので、すでにそれからでも、はや二年を経ようとするわけでございますが、その間どのような努力をなさったのか、その辺の経緯もお聞きしたいと思います。
  153. 細野正

    細野政府委員 基本問題会議の意見書の指摘している中で、特に労使関係の改善のための話し合いの促進についてお尋ねがございまして、先生すでに御存じと思いますけれども、私どももその基本問題会議の意見書の趣旨に沿いまして、三公社五現業関係の労使の全くのトップレベル、それから日本でも著名な学識経験者に御参加をいただいて、いわば三者おそろいでの、私ども公労懇というふうに略称をしておりますが、公共企業体等労働問題懇話会というものを開催いたしまして、その場で腹蔵なくいろいろな意見交換をしていただくということを実施しているわけでございます。つい先般もこの会議をやりまして、余り組織とかなんとかにとらわれないいろいろな御意見が出て、参加しておられました学識経験者の方からも、こういうお話が出るようになるのがこの懇話会等を開催する一つの大きな意味なんだというようなことで、大変学者側の方からは評価をされたという経緯もございます。  それは一つの例でございますけれども、そういう意味で私どももこういうものを中核にしながら、労使の間あるいは労労の間、いろいろ問題がございますので、その辺についてのお互いの意思疎通、相互理解が進むように努力をしてまいりたい、こう考えているわけでございます。
  154. 伏屋修治

    ○伏屋委員 このスト権に対しては、自民党の皆さんの中にも非常に神経を過敏にしておられるグループがあるというように聞いておりますけれども、このスト権というものは労働基本権の中のまことに重要な権益であると思います。そういう面から考えましても、いま御答弁ありましたけれども、この環境づくりを今後ともに積極的に労働省が進めていかなければ、いつまでたってもこのスト権の問題は解決しないと私は考えるわけでございます。そして、五十年に行われたスト権ストのような悪循環ではなくて、お互いの信頼の上に、労使の正常な姿の中でスト権というものを積極的に考えていく。このスト権は日本の国内的な問題だけではなくて、国際的な労働環境の上からいいましても、国際的な一つの時流に沿うべき問題ではないかと私は考えるわけでございます。それがどうもスト権ストというあの非常に強烈で悪いイメージが定着して、スト権となると何かそれにアレルギーを感ずるというようなお考えがあったとするならば、今後の正常な労使の信頼関係というものも取りつくろえないのではないか、このように考えるわけでございます。憲法で認められたスト権でありますし、三公社五現業といえども労働者でございますので、正常な姿に返すように、その環境づくりをするために今後積極的に推進をしていただきたい。その辺を労働大臣に確認したいと思いますが、いかがでしょうか。
  155. 藤波孝生

    藤波国務大臣 公企体等の基本問題会議の意見書で、現時点においてスト権を付与すべきではないという一つの線を出したについては幾つかの前提があるわけでございます。先ほど来御指摘をいただいているとおりであります。それらの前提条件が、国民の目から見ても改善したというような前進が見られるような形にならないと情勢は変化しないだろう、この問題に対する考え方は変わらないだろうというふうに私は思います。  しかし、御指摘のように、正常な労使話し合いがいろいろ行われる、お互いが理解をする、お互いが信頼をし合う、そういう形でいろいろな問題が討議されていくという関係になっていくことが、何といいましても一番大事なことでございます。スト権の問題そのものが今後どういうふうに動いていくかということは別にいたしまして、労働省としてはそういった環境づくりを積極的に推進をしてまいりたい、このように考えておるところでございまして、いま労政局長からお答えをいたしましたように公労懇などのテーブルを十二分に活用いたしまして、今後とも正常な労使関係が確立されるようにあらゆる努力をしてまいりたい、このように考えております。
  156. 伏屋修治

    ○伏屋委員 いま労働大臣から積極的に推進したいというお答えがございました。その御答弁に私は全幅の期待をしたいと思います。ただ、いままでとかくこのスト権に対する政府の考え方が後退に後退をしておったということは否めない事実だと思います。予算委員会における三公社総裁のスト権付与は現実的であるというような答弁、それを受けて三木総理がスト権の付与というような発言もされておりますし、またその当時の長谷川労働大臣も、いわゆるスト、処分、ストというような悪循環は断ち切っていきたい、こういう発言はあったものの、その後の進展はいささかも見られておらない。このスト、処分、ストというような悪循環を何としても断ち切っていかなければならないということからも、いまの労働大臣の御答弁を私は全幅的に信頼し、御期待を申し上げたい。そして、そういうような悪循環を断つために、労働省としては全力を挙げて積極的に取り組んでいただきたい、このように強く要望する次第でございます。  そこで、労働大臣にお尋ねしたいのですが、これは仮のお話なのでまことに申しわけございませんが、仮にスト権を認めた場合、認めない場合に比べてストが頻繁に起こるというようにお考えになられるかどうか、その辺をちょっとお尋ねしたいと思います。
  157. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先ほども申し上げました意見書では、事業の公共性との関連あるいは争議行為に対する経済原則による判断、抑制力の欠如、財政民主主義の見地からの当事者能力強化の限界あるいは将来の労使関係への影響といったような諸点が総合的に判断された上で、「争議権を認めることは適当ではない」こういう意見が述べられておるわけでございます。  そこで、スト権が与えられたらストが頻発することになろうかという御質問、これはなかなかむずかしい御質問でございまして、いま私が、いや、めったに起こらぬだろうと言ったら、それならスト権を付与すればいいではないか、こういうことになるわけでございますし、いや、それはストは頻発するでしょうと言ったら、そんなに判断力、抑制力というものを無能呼ばわりするのか、こういうふうになったのでも、これまたつらいことでもございますし、従来この意見書で考えられてきておるような線で、政府としましては非常にその点を心配をいたしまして、現在なおスト権を付与するというような段階にはない、こういう一つの結論を出しておりますので、何回も申し上げますけれども、今後理解と信頼の上に立った労使関係がもっと確立をされていくように環境づくりにあらゆる努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  158. 伏屋修治

    ○伏屋委員 労働大臣、非常に苦しい答弁をされましたけれども、そこらあたりの発言が労働大臣から出てくるというところに、やはりスト権ストの悪いイメージというものが非常に底流にあるように私は思うわけです。  こういうようなスト権というようなものをいまお尋ねしたのは、国際的に西ドイツとかフランスとかアメリカとかイタリーとか、いろいろな国々は、公共企業体に対しましてスト権を付与しておるわけでございます。アメリカにおいては一部その規制はございますけれども、スト権は付与しておる。そういうような流れの中で、スト権の行使というものがいわゆる国民の合意のもとに行われておる。ただいまもニューヨークで今月の一日から交通のストライキが現実に行われておるわけでございますが、きのうの新聞等を見ましても、非常に市民はさわやかな顔つきで徒歩で自分の仕事場に向かっておるというようなことも報道されております。こういうような状況がつくられなければならないと私は思うわけです。何となくスト即悪というような考え方でなくて、もっとおおらかな気持ちでやはり考えていくべきではないか。また、国際的にもそれが一つの大きなスト権に対する流れだとするならば、日本もかたくなにそういう固持をするのではなくて、そういう流れに沿ってスト権というものも考えていくべきだ、このように私は考えるわけでございます。このようなスト権というのですか、全面的に国民の合意を得られるようなスト権ということになりますれば、勢いそこにはいろいろな規制がはめられてこなければならない。そして、事前の予告制とか、いろいろな労使話し合いがスムーズに持たれるような機会とか、いろいろなことが行われる中でスト権が行使されてくる、そういうストを経験する中で初めて国民の中にも理解されてくる、このように私は考えるわけでございます。そういうような面で、労働大臣の心の片すみにでも悪いイメージがある、スト即悪というような、そういうお考えは完全に払拭していただいて、もっとおおらかな気持ちでスト権というものに対するお考えを改めていただくよう、またそれを積極的に推進していただくように強く要望したいと思います。  そこで、私ども公明党としましては、一貫して五十年からずっとスト権について、憲法の二十八条に示されました労働基本権、それと憲法十三条の公共の福祉、この調和を図らなければならない、これが重要な問題だと把握して、一貫していままでスト権は条件つきで一括付与すべきである、このようなことを主張してまいりました。その主張が、最近になりまして社会党、民社党、両党との共同案として、ことしに入りまして一月にそういうような条件つきの具体的な要綱まで考えられてくるようになってまいりましたし、また総評、同盟の労働組合政府に対してそういう基本要求、そういう条件つきの一括スト権付与、こういうような方向に進んでまいったわけでございます。  そういう面で、このスト権の問題の最後の質問といたしまして、こういう条件つきのスト権一括付与に対する労働大臣のお考えを最後にお聞きしたいと思います。
  159. 藤波孝生

    藤波国務大臣 当然民間におきましては、労働者の権利といたしましてストライキ権が付与されておるわけであります。決して私はストライキとは暗いものなりというイメージは自分では持っているつもりはありません。労働者の権利が守られて、しかも労使が本当にそのストライキ権というものを労働者が持っているということも含めて、平和裏に自主的にいろんな話し合いが進められていくことを心から期待をしているわけでございます。ただ、公共的な性格を持った事業につきましては、これはあくまでもやはり国家国民に対してサービスを行っていく仕事に携わる方々の立場といたしまして、おのずからその労働運動のあり方についても深く自制し、広く配慮するところがなければなるまい、こういうふうに考えるわけでありまして、そこのところをどのように信頼ができるかどうかということによってスト権が付与されるかどうかということになるのだろう、こういうふうに思うわけであります。それがそのまま話が通らないということならば、いろいろ制限をつけてその上でスト権が付与されたらというふうな御意見も従来もいろんな角度から出てきておることも私ども仄聞はいたしておるわけでございますし、また国会におきましても各党の御議論の中にそういった御意見のあることも十分承って今日に至っているわけでございます。いまのところ、政府として一つの結論を得ております線を変更するという気持ちは持っておりませんけれども、今後とも各方面の御意見は十分承っていきたい。スト権問題についてぜひテーブルについて協議をしないかという各方面の御意見がございますのに対しまして、いま一つの結論を出したわけでありまするから協議をするという気持ちは持っておりません。しかし、いろいろ御意見があったら、大平内閣はいろんな方々の御意見を聞きながら政治の誤りなきを期していきたいという考えでやりますから、意見は十分承ってまいりたいと思いますというお返事を申し上げておるところでございますが、今後も国会でいろんな御議論が展開されるのでございましょう。政府はその御議論も十分拝聴させていただいて勉強してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  160. 伏屋修治

    ○伏屋委員 もう少しその問題について突っ込んでお尋ねしたかったのですが、時間がありませんのでスト権についてはこれで一応終わりたいと思います。  そこで、労働時間短縮と週休二日制という問題について少しお尋ねしたいと思います。  五十年以降現在まで、労働時間及び週休二日制の実施状態の推移はどうなっておるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。時間がございませんので、簡潔にお答えください。
  161. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 労働時間の短縮につきましては、先般の第一次石油ショック以来必ずしも順調に進んでおりませんで、徐々にこのところ推移をしておるというのが実態でございまして、私ども、それにつきましていろいろ今後の施策を考えているというのが現状でございます。
  162. 伏屋修治

    ○伏屋委員 労働省は五十二年十一月の公労使一致の中央労働基準審議会の建議を踏まえて、一として過長な所定外労働時間の削減、二として週休二日制の推進に重点を置いて行政指導を進める、こういうようにしておるわけでございますが、今後もこの方針で進めるつもりですか。
  163. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 ただいまの御指摘どおり、私ども、そういった次官通達を基本にして行政指導で進めたい。特に昨年第四次の雇用対策基本計画におきまして、昭和六十年度までに週休二日制を含めた労働時間の水準を欧米諸国並みの水準に近づける、こういう目標で今後の施策を進めていきたい。特に先ほど先生の申されました三点を中心に置きながら行政指導を進めたいということでございます。
  164. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そこで、五十年以降の四年間というものを見てみますと、所定外労働時間というものは非常に毎年ふえておりますね。それから、週休二日制というものもほとんど横ばい状態であります。となりますと、いままでの行政指導というものは失敗ではなかったのか、行政指導の限界というものがそこにあるのではないか、そういうように私どもも懸念するわけでございますが、そのあたりはどのようにお考えですか。
  165. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 先ほども申しましたように、この推移に応じまして昨年政府としての第四次雇用対策基本計画をつくりまして、それに基づく行政指導を推進していこう、こういう決定でございます。それに向かっていろいろ施策を進めておるわけでございますが、たとえば中央におきましては主要産業の労働時間会議を開催して今後の時間短縮の方向を論議したり、あるいは地方段階におきましても地場産業を中心にしながら、もっときめの細かい、具体的にどこに隘路があり、どういうところを推進したらいいか、こういうところを、本年度の予算の裏打ちもしながら進めてまいりたいと思っております。
  166. 伏屋修治

    ○伏屋委員 最後の質問ですけれども、週休二日制にしましても、事業数にしても大企業中心でございますし、従業員にしましてもほとんど九〇%以上が大企業でございます。大企業と中小企業との間の格差というのは非常に大きいわけでございますが、行政指導の主体をどう見ておるのか、そのあたりをお尋ねしたいと思います。
  167. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 確かに中小企業を中心にこの点を進めてまいりたいということでございますが、最近の週休二日制等の時間短縮の具体的な事例をそれぞれの労働基準局で時間会議を通じながら把握しておる資料によりましても、必ずしも大企業ばかりでなく、中小企業におきましてそういった成績をおさめておるところもございますので、そういったデータを中心にしながら中小企業関係につきましてもこういった点を開拓してまいりたいと思っております。
  168. 伏屋修治

    ○伏屋委員 さらに積極的に中小企業を対象にしながら手厚い行政指導を推進していただきたい、最後に要望申し上げまして、終わります。
  169. 葉梨信行

    葉梨委員長 次に、梅田勝君。
  170. 梅田勝

    梅田委員 先ほど来スト権問題が議論になっておりましたが、以前私も運輸委員会におきましてスト権問題を取り上げまして政府に対して要求したことがございますが、わが党の基本的立場は明快でありまして、憲法第二十八条によります勤労者の団結権、ストライキを含む団体行動権というものは保障しなければならぬ、これは無条件に認めていくべきである、こういう見解を持つものでございます。しかるに、今日なおこの問題が解決されていない、非常に遺憾でございます。ただ、きょうはその問題を議論するだけの時間的余裕がございませんので、わが党のこの問題に対する基本的な立場要求、これだけを明確にしておきたいと思います。  いよいよ八〇年春闘山場が近づいてきておるわけでありますが、こういった中で、労働運動の中でしばしば不当労働行為等々が起こるわけであります。  最初に、労働大臣にお伺いをいたしたいわけでありますが、労働省として勤労者の団結権あるいは団体行動権というものをしっかりと守っていくという立場で、資本の側による不当な支配介入あるいは労働基準法違反というものは許さないということで強力な行政指導をすべきだと思うのでありますが、まずこの点をお伺いいたしたいと思います。
  171. 藤波孝生

    藤波国務大臣 労働者に与えられております権利がそれぞれ大切に守られてまいりますように平素からいろいろな角度から行政指導を進めて努力をいたしておるところでございます。  いろいろな形の不当労働行為、実例をいろいろ勉強させていただいたりもしておりますけれども、それらについてはそれぞれ適切に指導もしてまいらなければなりません。あくまでも憲法に保障せられた労働者の権利が守られてまいりますように、そして快適な労働環境で労働を進めて、いろいろな意味で豊かな勤労者の生活が確保され、充実されてまいりますようにさらに政府として努力をしていかなければいけない、このように考えておる次第でございます。
  172. 梅田勝

    梅田委員 そこで、きょうは具体的に財団法人和進会における労使問題につきまして質問いたしたいと思います。  この財団法人和進会というのは、京都大学の付属病院の中におきまして給食あるいは寝具、それから薬局、喫茶、売店、食堂等を経営している法人でありますが、これは文部大臣の認可による公益法人でございます。きょうは文部省にも来ていただいておりますので、後ほど質問申し上げたいと思うわけでありますが、問題は、昨年八月に、ある会社で労働組合つぶしを行ったという経歴を持つ人物が、これは柴田国男という名前の方でありますが、理事に就任して以来、職場におきまして混乱がつくり出され、そして第二組合をつくるなど目に余る支配介入をやっております。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 あるいは団体交渉拒否、それから協定破棄、こういったいわゆる不当労働行為を重ねているわけであります。そればかりか、労働基準法違反などの不法行為を行っているわけであります。これが文部大臣認可の公益法人のもとにおきましてまかり通っているということは非常に重大であろうと私は思うわけでございます。  ここの和進会労働組合というのは、それまではそんな大きな紛争を起こしたことはございませんで、組合も患者、職員に喜ばれる和進会にしよう、こういう立場に立ちまして、たとえば車いすで利用できるようにということで食堂の前にはスロープを実現するとか、あるいは寝具部におきましては気持ちよく療養していただけるように毛布を新しい品にかえるとか、あるいは薬局で、待合室におきましていつでも薬が飲めるように飲料水のスタンドを設置するとか、こういった患者さんのいろいろな要望、こういうものも機敏に取り上げて、そして明るい職場づくりというものを推進してきた労働組合であります。ところが、この柴田国男理事が労務担当で就任をいたしまして以来、非常に紛争が起こってくる。手下のアルバイトを入れまして職場で挑発行動を起こして紛争を起こさせるというようなこととか、あるいは柴田理事自身がなべをぶつけて暴言を吐くという事件も起こす。さらに重大な問題は、非組合員であります職制、労務係長あるいは事業係長といった職制を使いまして、そして一月十六日には第二組合をつくる。非常に重大な支配介入をしているわけであります。また、この柴田理事自身が組合員に対しても直接働きかけて、そして第二組合に入れというそそのかしをしているわけであります。  さらに重大なことは、ある職場のAさんといたしましょうか、この人の例の場合には、お金を貸して、そしてその後で第二組合に入れというそそのかしをする。しかも、三十万円柴田は貸したようでございますが、これを一月から今後三カ月ぐらいは休みなく働けということで、給料から天引きをしているわけです。給料日にもらうのは明細表をもらうだけで、そして、ちっともなかったら困るだろうということで、三万円だけ別に渡すというようなことをしているわけであります。これは明らかに労働基準法の十七条あるいは二十四条違反というように思うわけでございますが、こういったこともやっている。  また、いよいよ三月十二日には、いままでありました協定を一方的に破棄して、そして四月三日には、ここの労働組合組合長、書記長並びに活動家一名を含む三名を不当解雇しているわけであります。  労働省におきましては、このような事実に対して、どのように行政指導で正していくのか、お考えを承りたいと思います。
  173. 細野正

    細野政府委員 お尋ねございました財団法人和進会の問題でございますが、昨日先生から承りまして、現在早急に調査中でございまして、まだ詳しい内容について私ども承知をいたしておらないわけでございます。ただ、今後とも府を通じまして、私ども実情そのものの調査をしてまいりたい、こう考えておりますが、いずれにしましても、個々の行為自体が不当労働行為に該当するかどうかという問題につきましては、これは行政機関が直ちに判断できる問題でございませんで、こういう問題につきましては、必要がございます場合には、労働委員会等の権限ある機関で御判断をいただくべきものじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  174. 梅田勝

    梅田委員 いずれ地労委へこの問題は提訴されるだろうと思うのでありますが、一般的に言いまして、第二組合をつくる際に、理事者が呼びかけてやるということは、明らかに第七条における不当労働行為になるのじゃないか、どうですか。
  175. 細野正

    細野政府委員 具体的な行為自体については、先ほども申しましたけれども、まだ私ども実情をよく把握しておりませんので、個々の行為自体が不当労働行為になるかどうかということについての判断は差し控えさせていただきます。  一般的に言いますと、使用者側が組合の結成等に関して介入するような言動をするということは、不当労働行為の疑いを持たせることになるというふうに考えます。
  176. 梅田勝

    梅田委員 それはもう一般的に言って——あなた労政局長でしょう。労働者の権利を守るという立場で、もっと明快に、それは違反だと、疑いじゃないですよ。何のために労働組合法があるのですか。そういうことは第七条の不当労働行為に該当することだ。個々の実例が該当するかどうかについての審判は労働委員会でやるということになっておるのであって、理事者が呼びかけて労働組合をつくるようなことはいけないのですよ。はっきりしてくださいよ。
  177. 細野正

    細野政府委員 組合法では、御案内のように、労働組合の結成、運営その他に対して支配介入することを禁じておる。どういう行為が支配介入に該当するかということについては具体的な事実に基づいて判断しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  178. 梅田勝

    梅田委員 基準局長、来ておられますか。——それなら、給料を労働者に直接払うというのは原則でしょうが。これを労務担当の理事が、おまえはこれだけだということで、紙切れしか渡さない。どうでしょう、基準法違反じゃないですか。
  179. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 具体的な事実は承知しておりませんが、そのようなことが事実であれば、当然基準法違反であると思います。
  180. 梅田勝

    梅田委員 基準局長の方が明快な答弁をしている。労政局長、もっとしっかりしてもらわなければ困りますよ、大変な事実なんですから。  文部省にお伺いしたいのでありますが、この和進会における不当労働行為の問題につきましては、かねて御存じかと思うのでありますが、この不法行為をやっている理事会に対してどのような指導をなされたのか。それで、この理事会というのは、実態は大学病院と一緒だと思うのですね。会長は病院長であるし、会長が事実上任命するところの評議員二十四名全員、病院の理事者あるいは病院の関係者、そして理事自身も八名中五名までが大学病院の関係者であります。実態はまさに大学病院がやっている。その大学がもともと下請させる財団法人の理事会機構というものが、大学病院と実態が変らないことは問題だということは、予算委員会でも議論されたところでありますが、そういう実態のところで先ほど申し上げたような不当労働行為が行われておる。私はこれは非常に重大だと思うのですね。そして、三人の組合の幹部も不当解雇したわけでありますが、一体これはいつの理事会で決定されたのか。それは事前に報告されておったのかどうか。それから、いま改組されて、新しい理事長がおいでになって、労働組合は撤回を求めて交渉しているようでありますが、新しい理事長は、前の理事会で決めたのだから撤回できないというような意味のことを言っているようでありますが、私は非常に無責任だと思うのですよ。  だから、ここの事態収拾のためには、これはもう撤回して白紙に戻して、そしてどう正常化するかという話し合いをやる以外にやりようがないのじゃないかと思うのでありますが、いかがですか。
  181. 川村恒明

    ○川村説明員 和進会の理事会がいつこの解雇を決定したかということでございますけれども、これは先生御承知のように、大変長い経過がございまして、本年一月以来、理事会では再三そういう議論をしてきたということで、四月三日に解雇の通告をしたわけでございます。  ただいま御指摘の個別の事項が不当労働行為かどうかということにつきましては、先ほど労働省からお答えがございましたように、私ども個別の事項についての判断は差し控えたいと思っているわけでございます。  ただいま御指摘がございましたように、この和進会を含めて、いわゆる病院財団といっておりますのは、現在文部省所管で三十幾つあるわけでございまして、その病院財団のあり方については、さきにこの衆議院の予算委員会等でも御指摘をいただいておるところでございます。したがいまして、その理事会の構成につきましてこれを改めるように現在指導しているわけで、ただいま御指摘になりましたように、理事八人中五人が大学職員ではないかということでございましたが、これはこのたび改組いたしまして、全部で六人、そのうち大学関係は二人というふうに、それは減らすように指導しておるということでございます。これはやはり文部大臣の所管に属する財団法人でございますから、私ども、その財団法人の運営についてこれが適正に行われるかどうかということについては重大な関心を持っておりまして、その限りにおいて、従来からも財団に対して適切な指導をしてまいりたいと思っているわけでございます。今後とも、この問題につきましても必要に応じ、理事者側から意見を聞くなり、実態を掌握をいたしまして、しかるべき指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  182. 梅田勝

    梅田委員 一応改組したと言いますが、紛争は前の理事会でずっと続いておるのですから、これは文部大臣の認可ですから文部省としての責任は非常に大きいと思うのですよ。先ほど言われたように、基準法違反の問題にしても、それから労組法違反の問題にしても、これほど明快な事実はないと思うのですね。文部省がこんなものを放置しておっては重大ですよ。  これは労働大臣、先ほど来、これから調べると言っておりますが、実態は大変なんですよ。文部省の指導監督下にある財団法人ですけれども、同じお役所の悪いやつをということじゃなしに、これは厳重に指導監督をする、行政的に正していくということについて御意見を承りたいと思います。
  183. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先ほど来の先生の御指摘のいろいろな事実を拝聴させていただいておったところでございます。いろいろな御指摘がそのまま事実であるといたしますと、これはいろいろ問題があるというふうに考えるわけであります。決して私は先生を信用しないわけではないのですけれども、常に行政というものは実態を調査する、調査をまずして、そこから調査をした結果に基づいて、それはどういうような問題を含んでおるかという問題点を摘出し、それに対してどのように対策を講じていくか、こういう段取りで常に冷静にかつ積極的に対処するようにいたしておりますので、労政局長から申し上げましたように、よく実情を調査させていただきまして、それに基づいて適切な指導をしていくようにいたしたい、こう考えますので、どうかひとつ時間的に少し猶予をいただきますことと、そういった方針で進みますことを御理解いただきたいと思います。
  184. 梅田勝

    梅田委員 ここはユニオンショップ協定もやっていたわけでありますが、協定破棄を三月十二日にやっているのですね。そして、一方的に破棄しておいて、ばっさり首を切っているのですね。これはまことに重大な問題だと思うのですが、どうですか。
  185. 細野正

    細野政府委員 先ほど申しましたように、調査が十分でございませんので、ユニオンショップ協定の破棄という問題を私どもまだ承知しておりませんでした。何か協議約款があるというふうなお話はちょっと聞いたことがございますが、いま申しましたように、ショップ制自体については私はいままでのところその話は聞いておらなかったので、その点については調査の後にまた判断をさせていただきたい、こう思っております。
  186. 梅田勝

    梅田委員 ここは雇い入れから解雇に至るまで協議して決めることになっているのですよね。ところが、一方的破棄でしょう。期間を定めていないものにつきましては、九十日以上たたないと破棄が有効にならないわけだな。ところが、やってしまう。全く不当なんですね。そういう労働組合の権利をじゅうりんする経営者だということを十分に認識していただいて、いずれ提訴されていくと思いますけれども、大臣も言われましたように、厳しい態度で臨んでいただきたいことを要望しておきたいと思います。  時間がございませんので次の問題に移りたいと思いますが、新しい二・九通達の問題につきまして質問申し上げたいと思います。  昨年十二月二十七日に労働省労働基準局長より「自動車運転者の労働時間等の改善基準について」といういわゆる新二・九通達、これが出されておりますが、これは果たして昭和四十二年の二・九通達よりも改善されているのかどうか、むしろ後退ではないかという疑問が出ているわけでございます。私どもいろいろ検討してみましたけれども、確かにそういう点があるわけであります。  現在、先ほども出ておりましたが、週休二日制もだんだんふえてきている、それから総労働時間につきましても改善はされてきておるわけでありますが、事自動車運転者の場合は依然として改善されてないんじゃないか、その賃金、労働条件というものはきわめて悪い。たとえば、これは昭和五十三年に労働省がお調べになった労基法等違反事業所に対する監督の実施結果というものが出ておりますけれども、これによりますと自動車運転者関係の事業所は基準法違反等が非常に多いということですね。七九・一三%という数字が出ております。特に一般乗用旅客の関係、いわゆるハイタクの関係につきましてはきわだって違反事業所が多い。これは千二百九十七事業所を監督実施されまして違反が発見された事業所数は千九十七、八四・五七%に達しておる。そのうち労働時間は六百九十六で五三・六六%、違反の事業所に対する数から言いますと六三%ですよ。恐らく割り増し賃金を払っておらないという違反でしょう、これは三百五十五件、二七・三七%ですね。非常にえげつないわけです。しかも、これらの賃金は非常に安いということで、ハイタク労働者の五十三年の年間賃金は二百三十一万五十六円という数字が出ておりますが、男子常用労働者の全平均二百八十二万八百七十四円というものと比較をいたしますと、ハイタクの関係は八割ちょっとです。労働時間だけがハイタクは月間二百二十八時間、男子常用労働者は百九十九時間ということで一四・五%も多いわけですね。よけい働いて賃金は少ない、これが実態だと思うのですよ。  これをやられて実際この問題が改善されるのかどうか、どうですか。
  187. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 自動車運転者の労働時間等改善基準、いわゆる新二・九通達についてでございますが、これは昭和四十二年にいわゆる二・九通達を出しましたが、その際は実作業時間規制方式を中心にして基準を定めたわけでございます。しかし、ただいま先生御指摘のように、労働時間が非常に長い、こういうような点、また過労防止の見地からもその改善が求められているわけでございます。こういった現状を踏まえまして、昨年ILOの第六十五回総会におきまして路面運送における労働時間及び休息期間に関する条約、百五十三号条約と言っておりますが、その条約が採択されたことでもございまして、国際的にもそういった自動車運転者の労働時間の改善が問題になっている。そういうことで、この新しい改善基準につきましては、こういった最近の情勢なり過去におきます行政指導の経緯等をいろいろ検討を加えた上で新しく拘束時間を中心にした規制をとってきたわけでございまして、これについては一年間近く関係者といろいろ協議をしながら定めてきたものでございまして、今後これを実施に移す中でこういった点の改善に努めていきたいという趣旨で述べたものでございます。
  188. 梅田勝

    梅田委員 そう言われますが、拘束時間が長過ぎるのです。きょうはもう時間が来ましたから残念ながらやめなければならぬですけれども、これはまた別の機会にとことんやりたいと思うのです。  実労働時間、休憩時間、時間外労働時間、この三つを入れて拘束時間の問題について、日勤、隔日勤、それから最大の拘束時間というものをそれぞれお決めになっておりますけれども、実態としては、休憩時間も含めての拘束時間ということでいきますと、実際ハイヤーやタクシーの場合は、休憩するといったってするところがないですよ。あなたはいろいろ休憩所をつくっていると言うけれども、どれだけあるのですか。それは運輸省の仕事だと言われるかもしれぬけれども、あらへんのです。実際は拘束時間をこれだけだと、二十一時間なら二十一時間と決めた途端にそれが合法的になって、そして事実上休憩時間も働いて、いわゆる割り増し賃金ももらえないえげつない労働が行われているのです。そして、夜中じゅう走って、眠たいから、しようがないから道路にとめて、足を上げて運転者は寝ているという実態があるわけです。あなた、実際に町へ行って見てみなさい。大変な事態ですよ。だから、実作業時間に対して規制していたのを拘束でやるようにしたら、これは今後一層悪くなるのじゃないか。これは大変重大な問題だと思うのです。  私は、きょうは残念ながら時間がないのでここで質問をやめますが、最後に大臣に、こういった事情も踏まえて、この問題については十分に検討を加える、また新しい内容については何ら周知徹底する手段が与えられていないので、これらの点について今後改善するということについて、御決意のほどを伺って質問を終わりたいと思います。
  189. 藤波孝生

    藤波国務大臣 従来のいろいろな実態も調査いたしまして、新しくより改善をするための通達を労使双方に御相談も申し上げてまとめて通達を出した、こういうことになっているわけでございます。御意見ございますように、いろいろなところで改善をしなければならぬ部分はあると思います。しかし、いまとにかく通達を出してその実施を見守っていくというふうに指導しているところでございますから、また別の機会にいろいろお教えいただきたいと思いますけれども、いまのところこの通達の線に基づいて実施されていくように強力に行政指導していきたいと考えておりますので、具体的にこんな例はどうだ、こんな場合はどうだということがあったらぜひお教えもいただきたいと思います。みんなでよくしていくように努力してみたいと思います。
  190. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 田中美智子君。
  191. 田中美智子

    田中(美)委員 まず最初に、パートの問題を質問したいと思います。  五十四年度に、労働省は第三次産業の三万事業所の調査をやられたと思います。前の国会のときに、私が、パート労働者が就業規則も結ばれていないという状態がありますので、こういうものもあわせて調査してほしい、そういうところで調査をしていくというふうにお答えになっていらっしゃるわけです。  いまパート労働者は非常にふえています。三人に一人が、いま二人に一人というふうにパート労働者がふえていると言われているわけですけれども、この就業規則というものが、これは作成して行政官庁に届けなければならないという八十九条があるわけです。これが守られていないということですが、どの程度だというふうに見ておられますか。
  192. 岡部晃三

    ○岡部説明員 就業規則の締結率につきましては詳細なデータがございませんが、たとえば東京中央労政事務所が先般行いました中小企業についての締結率でございますが、臨時、パートという人たちについては、端数は忘れましたが、約四九%台のものが就業規則の適用がありますが、五〇%強の人についてはないというデータを得ております。
  193. 田中美智子

    田中(美)委員 この三万事業所の調査をやられているわけですから、その調査結果を後でお教え願いたいのですけれども、五〇%以上、いまあなたがおっしゃる——私はもっと多いと見ているわけですけれども、就業規則さえ適用されていないということは八十九条違反なわけですから、今後これをどのようにしていくのか、一日も早く就業規則がきちっと適用されてパート労働者の無権利状態がなくなるように労働省はこれから一体どのようなことを計画してやっていかれるか、ぜひ強くやっていただきたいと思います。
  194. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 先生御指摘のように、最近三次産業を中心にパートタイマーが増加しておりますが、その就業規則の適用関係が明確にされていないといったような問題が指摘されているところでございます。  そこで、基準行政といたしまして、本年度において、パートを含めて第三次産業労働者等の労働条件の明確化に資するために、雇い入れ時の労働条件の明示それから就業規則の作成などに関する資料といったものを作成いたしまして、こういったものを大いに利用していろいろ監督指導をしてまいりたいと考えております。
  195. 田中美智子

    田中(美)委員 いろいろ監督などと、そんなことを言わないで、第三次産業、特にパート労働者に力を入れていくと言っていらっしゃるわけですから、具体的にどうするかと聞いているわけですよ。いろいろやりますじゃ、子供の返事じゃあるまいし……。
  196. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 ただいまも申し上げましたように、就業規則を作成させていくことが重要でございますから、そういったデータ等、資料に基づきながらいろいろ就業規則作成について指導をしてまいりたいということでございます。
  197. 田中美智子

    田中(美)委員 指導するということはどういうことをするのかと聞いているのです。いままでやったってできていないわけでしょう。だから、新しくどうするのかと聞いているのです。
  198. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 いわゆる行政的な形としてモデル就業規則といったようなものをすでに現在用意もしてございますが、そういったものを使って指導していくということでございます。
  199. 田中美智子

    田中(美)委員 いまのお答えは、結局やる気がないということですね。実に私は不誠実だと思うのです。どういうふうにやるのかということです。  では、モデル就業規則をつくってどういうふうに事業所をやっていくのかということですけれども、本気でやる気があるなら徹底的に、パートが就業規則の適用になって、そうしなければ労働基準法というものは、パートに対してはあってなきがごとしでしょう。ですから、このことを強く具体的にやっていただきたい。それを聞きたかったわけですけれども、幾ら言ってもおっしゃらないので、次の質問に移ります。結局お返事がないという形で、パート労働者をそのままにしていくのかという感じで非常に不満なお答えですけれども、次に進んでいきます。  次は、障害者の雇用の問題ですけれども、これも大臣御存じのように、五十三年度と五十四年度を比較してみても、雇用率は本当に横ばいです。一・一一が一・一二になるというような横ばいですし、雇用率未達成の企業はむしろ多少ふえている。これも横ばいなのかもしれませんが、多少ふえている。これでは何の実効も上がっていないではないかというふうに思うわけです。それで大臣は、参議院の予算委員会で共産党の橋本議員に対して、十五条を発動するというようなことを言われたというふうに聞いておりますが、この雇い入れ計画の作成命令を一日も早く出して、未達成のところを達成させるようにしていただきたいというふうに思うわけです。  そのときにぜひお願いしたいことは、中高年の作成命令を出されるときに、これはやっていただいたので、その点は評価するわけですけれども、六%を達成しなきゃならないのに二%しか達成していない、こういう特に悪質なところだけに作成命令を出しているというふうなけちったやり方をしないで、やはり一・五%をきちっと守っていないところ、ここにはきちっとした計画の作成命令を出していただきたいというふうに思うのですけれども、大臣のお答えをお聞きしたいと思います。
  200. 関英夫

    ○関(英)政府委員 大臣のお答えの前に、ちょっと御説明申し上げたいと思います。  身障雇用促進法に基づきます達成計画の作成命令は、すでに一定の基準に基づきまして命令を出しております。その基準は、当面身障者の雇用割合が著しく低く、かつ雇用しなければならない者の数が多い、そういうところを中心に命令を出して、たしか千何社に及んでいると思いますが、そういうところにすでに命令を出しております。  けちっているというお話がございましたけれども、やはり行政として悪いところを重点にまず改善していく、限りある職員で達成指導をしていくわけでございますので、重点的にやっていくという考え方でございます。
  201. 田中美智子

    田中(美)委員 悪いところと言いますけれども、大きいところが完全に達成するというのは数が大きいわけですから、大臣、そういう意味で、けちらないでぜひやっていただきたいと思います。
  202. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御指摘のとおりでございまして、大きなところは、やはり数も多いわけでありますから、そういったところも厳しい態度で臨んでいかなきゃいかぬと思います。けちけちしないで、秩序立てて徹底をしていくようにあらゆる努力をしていきたいと思います。
  203. 田中美智子

    田中(美)委員 その次に、納付金が二百億近くたまっている、これをこれから一体どのように具体的に使っていくのかということを伺ったわけですけれども、まだ活用方法が十分に決まっていないというようなお話でした。  ここのことでは、大臣にお願いの質問をするわけですけれども、障害者を雇うということは、雇う側からしますと、障害者のことを非常に知らないわけなんですね。ですから、なかなか職安に雇いに行かないわけです。行っても、どんな障害者が来るんだろうという、理解の度合いが悪いものですから、不安になるということがあるわけですね。その気持ちもわからないわけではありません。しかし、そういう状態を放置しておいたら、いつまでたってもいまのように雇用率は上がっていかない。それで、納付金が結局どんどんたまっていくということでは、決して改善していかないと私は思うのです。特に障害者の場合には、一本釣りというような言い方はおかしいかもわかりませんが、企業に出ていって、そして目の不自由な人でもこういうふうにすれば非常に役に立つんだとか、重度の障害者でもこういうふうにして働いているんだということを具体的に話して、いまこういう人が来ているんだ、こういう人を使ってくれないか、こういうふうに言いますと、案外できているんですね。ですから、養護学校の先生などは、一生懸命になって歩いているのですけれども、非常に数が少ないわけです。一人としては、相当実効ある成果を上げていられるんですね。それで、私は大臣にお願いしたいということは、労働省で五十一年度から職安の再編整備構想というのをお聞きしたわけですね。これでいけば、たとえば障害者のところですと、特殊援護の窓口をつくるとしますと、そこに三人を置いて、一人は中高年、一人は障害者、一人は外へ出ていくなり何なりして開拓するという形で行っているわけです。これはその数は少ないかどうかわかりませんけれども、これが完全にやられていけば、一歩前進であることは間違いないと私は思うんですね。しかし、実際にやられているところというのは三分の一にも満たないくらいだ。ことし五百人人数をふやせばこれが全部達成できるけれども、これは労働省自体が立てた案というものを労働省があきらめなければならないというところに来ているわけです。  これは、いまここの問題で人数を五百人ふやしてくれと言っても、言うだけのことになってしまうので、そこでお願いをしたいわけですけれども、この再編整備計画というものに私は一定の評価をしているわけなんです。ですから、これを何とかモデルケースででもいいですから、納付金の使い方、この納付金でもって特別の職場開拓の人を職安に配置してもらえないか、置いてもらえないかということです。制度化するということは、もともと納付金というものは、長い目で見たらあってはならない金なわけですから、こういうもので制度化せよというふうに私は言いません。しかし、いまあるお金、これはもしインフレになれば目減りしていくわけです。利子はついているかもしれませんけれども、それ以上物価が上がれば目減りするわけですから、何はともあれ障害者が就職できるようにするために使ってほしい。ですから、いま活用する道がないというならば、せめてモデル的にでも、五十五年度、幾つかの大きな職安なりに、何人かはそちらの方にお任せしますので、置いてもらえないか。そして、その成果というもの、一体その人たちが兼任じゃなくて専任で外歩きをして、一本釣りで探してくる、それがどれくらいできるか。それは事業団としても、セミナーをやったり何かしていろいろやっています。それも大きな網をかけていくということですけれども、一本釣りをしていくという人をやってもらえないか。そうしないと、いまの状態で行けば、全部三人置いていくやり方というものは十何年かかってしまう。それから仕事が始まるとすれば、一体障害者はいつになったら仕事があるのかというふうに思いますので、緊急な問題としてこれはぜひやってほしいというふうにお願いをするわけですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  204. 藤波孝生

    藤波国務大臣 納付金が積み立てられているということにつきましては、今度のこの国会の御議論の中でもいろいろ御指摘があったところでございますが、五十四年度につきましては、重度障害者等の雇用管理助成金制度などというのも出発をさせておりますので、そういったところでもやはり支出はふえていくということになろうと思いますし、釈迦に説法でございますから、短い時間の中で余りくどくど申し上げませんが、調整金の性格を持っているわけでありますから、ある程度の調整の作用のためにも積立金は必要であるということは、ぜひ申し上げておかなければいかぬと思うのでございます。  御心配をいただいておりますその金を使うということが主じゃなしに、いまのお話は、一人一人の身体障害者に対応する職場の開発、一人一人はマン・ツー・マンでやっていかぬと、心身障害者の場合はなかなかいかぬというふうに思います。そのことの重要性を御指摘をいただいたものであるというふうに考えるわけでありますが、お話がありましたように、職業安定所の窓口等も機能別に、いろいろひとつより機能的に動こうということで、たとえば従来課長さんというのは一番後ろの方におって判こだけついていたというのが、一番窓口に出て、あんた、一番長い間人に接してきているのだから、ひとつ高齢者対策の仕事、あんたが引き受けませんかね、係長さんはいつも係と課長さんの真ん中にいて調整の作業をやってきたんだけれども、あんたは調整の作業がいいんだから、ぜひひとつ婦人のパートを担当してやってくれませんかねということで、それぞれの安定所で工夫をいたしまして、機能をもっとフル回転していくというふうに打ち出していこうとしているわけで、そんな中で、特に今日の雇用政策上大切な心身障害者の雇用対策につきましては、重点的にその機能を発揮していくようにしようという方針を第一線まで徹底をさせておりますので、いま金があるからひとつこれ使ってみないかという御提案は、一つの御提案としては聞かせていただきますけれども、これを公共職業安定所の職員の人件費に回すということは調整金としての性格上なかなかすぐには活用できないと判断をいたします。ただ、御指摘は、あくまでもそういった仕事を大切に考えて取り組んでいけ、こういう意味であろうと思いますので、そういった点につきましては、従来も第一線の人員の強化等について努力をしてきておるところでありますけれども、来年の国際障害者年といった大きな看板のかかっておるようなことから考えましてもさらに重点的に取り組んでいくということでいまお答えにかえさせていただきたい。ただ、御提案は、きょうは御意見として伺わせておいていただくということで御理解をいただきたいと思います。
  205. 田中美智子

    田中(美)委員 私がいま言っていることは、こういう障害者がいるからマン・ツー・マンでやるということもありますけれども、もう一つの問題は、調整金とか奨励金とか助成金というのがあるわけでしょう。こういうのがあるのですよということによって、それじゃ障害者が雇えるなということなんです。納付金は何も調整金だけではないわけですから、これはちゃんとやったところにやる金だけではないわけですね、事業団でそうやるようにするためのお金ですからね。ですから、企業を回って、調整金がありますよ、あなたのところは報奨金がもらえますよ、完全にやればちゃんと助成金も出るのですよ、こういうことを言ってもらうこと自体が、一人ずつそこで契約してくるというのじゃなくて、今度は向こうからの求人があるということですので、このお金は何ら違ったものに使うのではない。ただ、障害者はいま共同ホームとか共同作業所、こういうものにも回してくれということは国会でも話題になっていますけれども、いや、これは企業が出した金だから企業の方に使うのだ、こういうふうに言ってみたり、いや、そうじゃないじゃないか、この金はもともとペナルティーなんだから何に使おうといいじゃないか、こういうふうな言い方をする人もあります。しかし、そこにはいま私触れませんけれども。いま言ったことならば、企業に行って、調整金がありますよ、奨励金がありますよ、助成金がありますよ、こう開拓することは事業団の仕事の一つになっているわけですから、それを職安のところで連携をとりながら、行く人に使わしてくれ、こう言っているわけです。ですから、単なる一本釣りのために職安の職員の人件費に充ててくれ、そういうのと違うわけです。  ですから、大臣が十分に理解していられないのじゃないか。調整金だけの金でありませんので、その点もう一度検討し直していただきたいと思います。
  206. 関英夫

    ○関(英)政府委員 先ほど大臣がお答えいたしましたように、もし職安の仕事としていろいろな助成制度をPRして事業主に雇用を訴えていくということになりますと、これは職安の職員の人件費の肩がわり的なことになってまいりますので、そういう点で大臣のお答えがあったものと思いますが、いずれにいたしましても、助成制度そのものにつきましても今後さらに検討を加えていきたいと思います。  ただ、先ほど大臣のお答えにありましたように、重度障害者のための抜本的な雇用奨励策が非常に活用されておりまして、今年度相当の支出になると思いますし、来年度は恐らく収支との差額は本当に少なくなってくるのじゃないか、こんなふうに思います。  それからもう一つ、実際に現場へ行ってみると、使えるじゃないかと事業主の方も安心されるというお話がございました。本年度から職場適応訓練というものを、いままでは非常に長くて、ややこしい手続が必要だったものをごく短期間に簡単に、試しにちょっと使ってみる、こういう制度を新たにつくりまして、職安に登録されている身障者をちょっと使ってみていただいて、そして雇用の促進に努めたいと思っております。
  207. 田中美智子

    田中(美)委員 この納付金の問題は、聞けば活用する道がないというお返事ですし、障害者にとってもだれにとっても、このお金を私たちが当てにするということは非常に悲しいことです。もともとあってはいけない金なんですね。しかし、それを当てにしなければならないほど障害者は追い込まれているのですね。それをまるまる余るぐらい余らせて、それを何に使うか聞けば、わからない、こう言う。そして、こういう提案はどうかと言っても、検討するということですから、ぜひ検討していただきたいということを強くお願いしておきたいと思います。私は、実に情けないと思います。促進法が改正されてから、障害者はこんなにまで期待したにもかかわらず、実際にはそれほどの成果が上がっていない。来年障害者年を迎えるに当たってこのお金の使い道がないということは非常に悲しいことだと思いますので、その点で、ぜひ十分な御配慮を願いたいと思います。  次の質問は、婦少局の問題ですけれども、労働基準法の百条の二には、労働大臣の指揮監督のもとで労働基準局長に婦少局長が勧告することができるようになっている。そういう権限が婦少局長にはあるわけですけれども、いままでそのようなことがなされてきたでしょうか。簡単にお願いいたします。
  208. 藤波孝生

    藤波国務大臣 各都道府県の婦人少年室は、御指摘の労働基準法百条の二に基づきまして事業場に対して調査等を行っておる。その際把握した問題については、労働基準監督機関に是正指導等を申し入れるとともに、婦人少年局におきましても、それら調査等に基づき、必要に応じ労働基準局に対し労働基準法の適正な施行について適宜申し入れを行っているところでございます。これらによりまして、勧告権の発動という形ではないにいたしましても、実質的に法令の規定が遵守されるよう鋭意努めているところでございまして、今後とも婦人及び年少労働者の実働実態の把握等に努めまして、それら労働者について法定最低労働条件の確保を図るために一層努力するよう両局を督励をしてまいりたい、このように考えております。
  209. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、余り優等生みたいに読んでもだめですよ。申し入れとか監督署と婦人少年局が連携をとり合っていくということはあたりまえのことです。りっぱそうに読み上げられたわけですけれども、いま私が聞いているのは法律で決めている勧告権を発動するということで、いまのお答えでは結局発動していない。婦人少年局長にそれだけの権限があるのにどうしてそれをしないのか。いま高橋さんはなったばかりですから高橋さんにがみがみ言っても仕方がないわけですけれども、やはりこれは労働大臣の責任があると思うのですね。もう少し基準局長に対して権限を施行するようにきちっと——たとえば国会で前の森山局長が東京の支払い報酬基金、東京基金の問題のときに、こういう実態だったらどうだと言ったら、先生のおっしゃることが事実であるならばこれは差別でございますという答えをしているわけですよ。そうだったら、基準監督署がどう言おうと、局長の権限で私の言ったことが事実かどうか調べて、どうもこれは差別だというのだったら、そこでちゃんと勧告権を発動する、そうすることで婦人少年局の存在価値があるわけですよ。それが何にも一度もしないで、申し入れば常にやっています、いや啓蒙もやっています、これでは、私は盲腸みたいなものだとは言いません、しかしそういう批判が出てきて、戦後婦人少年局ができたときに婦人がどんなにそれを大きく期待したか、一体だれがこんな婦人少年局にしたのかと言いたくなるわけですよ。もうちょっと婦人少年局というものをきっちりと位置づけて、局が持っている権限、持たない権限までやれとは言っていません、持っている権限をフルに活用できるようにするということは、局長の責任でもあります、しかしそれは労働大臣の大きな責任だと思います。  ここで強く要求したいことは、今後婦人少年局が自分の持っている権限をフルに活用できるように、圧迫されてどんどん底が小さくなって、実際にはどんどん縮小されていって盲腸みたいだなどというような悪口を言われないような婦人少年局にするように、大臣若いのですから、戦後のあの婦人解放の波が高まったときの婦人少年局に対する婦人の期待がどんなに大きかったかをもう一度思い起こしていただきたいと思うのです。その後、何遍も婦人少年局が縮小されるのじゃないかというときに、思想信条を超えて超党派の婦人議員が、市川房枝さんらも含めて婦人少年局をつぶしてはならないといって、私自身も議員になりましてから八年目になりますけれども、このためには全力を挙げてやってきたわけです。しかし、じゃ婦人少年局は実際に何をやってきたかといいますと、局長はそうならば差別だといっても勧告一つ出さない。労働大臣がもっときちっと出すようにしてほしいし、そして高橋局長が、改めて戦後の婦人少年局に婦人が期待したようなものにこたえるような婦人少年局としてのあり方を確立していただきたいと思うのです。婦人少年局長になったら、その肩書きで自民党の国会議員に出るというようなことは婦人をいかに——自民党支持者の婦人はどうだかわかりません。しかし、どんなに多くの婦人たちががっかりしているか、それをよく胸に入れて、まだまだ婦人のポジションは少ないのです。そういう点では思想信条に偏らないで本当に広い婦人の立場を、世界に恥ずかしくないところへ持ち上げていくための婦人少年局であってほしいということを強く高橋さんにも要求したいわけです。  一言、高橋さんの決意を述べていただきたいと思います。
  210. 高橋久子

    高橋(久)政府委員 ただいま先生からお励ましを受けまして、私もいまのお言葉をしっかりと胸にとめまして、婦人が泣かないで済むような社会になっていくように、私なりに精いっぱい努力をいたしたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
  211. 田中美智子

    田中(美)委員 それで、いま行管、来ておられますね。お答えを聞いても決まったお答えしか出せないことはわかっていますから結構ですけれども、聞いていていただきたいと思うのです。大臣には激励をしたいわけです。  婦人少年室を縮小されるのではないかという心配が非常に高まっているわけです。それを別にいま男女雇用平等法をつくるべきだというので、共産党・革新共同でもその法案をつくっておりますし、社会党もそうですし、民社党も大綱を出しておられますし、公明党も近く出されるというふうになっているということは、思想信条を超えて平等法が欲しい。労働省でもいまその平等法の準備をしておられる。これは本当に思想信条を超えて平等法が欲しいという婦人の願いなわけです。これをつくってもらう一番中心になるところは、婦人少年局がしっかりして、ここでやってもらわなければならない。そういう時期にこんな変なうわさが立つと——これはうわさの段階ですが、うわさが立つということ自体おかしいのですね。ことしはデンマークで国際婦人年の折り返し点の世界の会議があるわけです。そういうところに日本からも何人か行かれると思いますけれども、そういう中で、どうも日本では婦人少年局を縮小するのじゃないかというようなことが言われること自体が恥ずかしいことだと私も思うのです。ですから、ぜひ大臣はそんなことが絶対にないように、もしそのようなことになれば、これは婦人の意思に対する大きな逆流した動きだと思いますので、そういうことにならないように大臣はうんとがんばっていただきたいと思うわけです。もちろん局長にもがんばっていただきたいわけですが、行管にもその点を十分踏まえた上で、ただ行政改革をやらなければならない、何でもかんでもつぶしやすい、弱いところをつぶしていこう——婦人少年室は数は四十幾つかあります。しかし、そこの人数は少ない。数をつぶしていけば数字の上では実績が上がるなどというようなこそくな考え方は一切しないでいただきたいということをお願いしたいと思います。  一言ずつちょっとお願いしたいと思います。それで私の質問を終わります。
  212. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いろいろ御激励をいただきましてありがとうございます。婦人少年局はずいぶん従来がんばってきましたし、現在もがんばり続けておりますし、将来にわたってがんばり続けていくだろう、このように考えます。  特に婦人少年室の改廃等に関しまして意見が出ていて非常に残念だというお話でございます。今日政府の非常に大事な課題は、一つは行財政の改革をやっていくことであり、一つは綱紀の粛正を進めていくことだということで第二次の大平内閣は出発いたしております。そういう意味では、できる限り安い政府、という言葉は語弊がありますけれども、できるだけ経費を節減して国民に対する行政需要に対応していかなければいかぬというこの政治の姿勢は、やはり厳正に今後も進めていかなければいかぬと考えておりまして、そういう意味では労働省もその例外ではないと考えております。  ただ、その行政改革が単に幾つの機関を改廃するとか、あるいは単なる員数合わせであるとかいうようなことで終わるなら、これは逆に言うと国民不在の行政改革ということになるだろうと考えます。そういう意味では、いま動いている行政の中身を十分考えてみて、何が重要であるか、何がもっと節約できて、ほかのところと一緒になってより機能を発揮することになるか、広い角度から全体を見回してみて、そして行政改革が成果をおさめていくというふうに持っていかなければならないわけでありまして、行政管理庁としてもそういった点に十分配慮して、各省庁と相談をしながら進めているところでございます。  各都道府県において婦人少年室が非常に重要な役割りを果たしてきているというふうに私どもも当然理解をしておりまして、社会的に婦人の進出が著しい今日の情勢を踏まえて、さらに八〇年代から二十一世紀に向かうこの日本の社会の姿を展望しましたときに、婦人少年室の機能をより充実して進んでいかなければいかぬ、そのように労働省としては考えておる次第でございます。  そういった立場に立ちまして今後とも関係省庁と十分ひとつ相談をしていきたい、このように考えておりますので、今後とも御鞭撻をいただきますようにお願いをいたしたいと思います。
  213. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  この問題につきましては、三月二十八日に行われました参議院の予算委員会におきます婦人問題の集中審議の際にも、市川先生あるいは安武先生あるいは渡部先生からの質問に対しまして宇野大臣からも答弁いたしたところでございますけれども、昨年末の閣議決定におきまして、府県単位に設置されております機関につきまして、これは婦人少年室もそうでございますし、労働省で申し上げますと、あと都道府県の労働基準局があるわけでございますし、それから私どものところの地方行政監察局もありますし、あるいは大蔵省の財務部、あるいは農林水産省の食糧事務所、あるいは統計情報事務所、あるいは法務省の地方法務局といったような数たくさんの府県単位機関があるわけでございまして、これらを一律に新しい角度、現在の社会経済情勢に照らして全部見直そうという趣旨でございます。したがいまして、婦人少年室だけを取り上げてやるというように一部で誤解もあるのじゃないかと考えておりますけれども、そういう趣旨でございませんで、全部をもう一度見直していこう、必要なものは存続させなければならないしというようなことでございますので、そのときに大臣も答えておりますけれども、現時点では全く白紙の状態でございます、イエスと言えと言ってもイエスとも言えないし、ノーと言ってもノーとも言えない、全く白紙の段階でございまして、まさに行政管理委員会の審議結果を待って六月末までに結論を出していきたいということでございます。
  214. 田中美智子

    田中(美)委員 質問を終わります。
  215. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 小渕正義君。
  216. 小渕正義

    小渕(正)委員 もう時間もかなりたっておりますので、できるだけ要点をしぼって簡単にやりたいと思いますが、早速ですが、定年延長問題で、雇用審議会においての定年延長の審議状況でございますが、この前、去る二月十八日の予算委員会において、現在の審議状況は毎月一回程度業種別のヒヤリングを進めておる、こういうふうな答弁があったわけでありますが、それ以後も現在そのとおり実施されているかどうかということと、あわせて今秋末までにヒヤリングを終える予定であるということがあったようでありますが、そういうことから、答申のめどをどこに置いているのか。昨年の当時の栗原労働大臣のときの状況から考えますと、あとまだ一年先のような感じもしますけれども、ここらあたりについての状況をひとつよろしくお願いします。
  217. 関英夫

    ○関(英)政府委員 御指摘ございましたように、昨年六月、雇用審議会に対しまして立法化問題を含めて定年延長の実効ある方策について諮問いたしました際に、労働大臣といたしましては、この問題は業種別にいろいろな問題をはらんでおりますので、相当実態の解明に時間がかかる、そういう意味において二、三年をめどに審議をお願いしたい、こう申し上げたところでございますが、雇用審議会自体は、これからのその日程につきまして定年延長部会で業種別その他中小企業にいろいろな形のヒヤリング、そういうものをやっていただいて、ことしの秋に総会に報告をしてほしいというところまでの日程を決めておるだけでございまして、その先の日程はまだ審議会自体としては決まっておりません。
  218. 小渕正義

    小渕(正)委員 そうしますと、栗原労働大臣が当時約束されためどというものはいまのところかいもく予想が立たぬ、こういうことになるのでしょうか、その点いかがですか。
  219. 関英夫

    ○関(英)政府委員 大臣といたしましては、先ほど申しましたように二、三年をめどというふうに申し上げましたが、いずれにいたしましても政府としては昭和六十年六十歳定年一般化ということを閣議決定をもって目標を定めておるわけでございます。そういうこともございまして、ただいたずらに雇用審議会の審議を続けていただきたいというようなことを政府として考えておるわけじゃございません。いずれにいたしましても雇用審議会におきましては、定年延長部会の審議の状況をことしの秋報告して、総会の場でそれを検討した後、その後の審議日程を決めていくことになろうかと思います。
  220. 小渕正義

    小渕(正)委員 それでは、いまもちょっと触れられたわけですが、現在進められている第四次雇用対策基本計画では、要するに六十年度に六十歳定年が一般化することを目標にしてやられておるわけですね。  そういう中で一般化ということの意味でございますけれども、何を指して一般化というふうに言われるのか。もう少し具体的にその一般化の中身を、労働行政当局として言われている一般化とは具体的にどういうことなのか、そういうことをちょっとお尋ねしたいわけであります。
  221. 関英夫

    ○関(英)政府委員 具体的にということになりますと非常にむずかしい問題でございまして、たとえば企業数にして何%ぐらいになったら一般化かというようなことを数字でもって申し上げることは非常にむずかしい問題でございます。私ども、昭和六十年六十歳定年の一般化という目標を掲げましたが、それは大部分の企業において昭和六十年には六十歳の定年制というものがしかれている状態、そういうふうに持っていこうということでございまして、何%とかなんとか、そういうことは別に決めているわけではございませんが、大部分の企業においてはそういう定年制度が確立している状態に持っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  222. 小渕正義

    小渕(正)委員 このことで議論する気持ちはありませんが、やはり各企業がほとんど六十歳を大体採用するようになったという、その対象企業をどこに見るかによって違うでしょうけれども、しかし、たとえば企業別といいますか、企業数から見て五〇%程度いったら大体一般化したのか。五百人以上の企業を対象にして、または千人以上を対象にして、または五千人以上、いろいろありますが、やはり一般化したと見るからには少なくともそういう千人以上の企業あたりをめどにしておって、そこらあたりでどの程度なったか、そこらあたり見ないと、ただ一般化といっても普通は何で、一般化といっても大多数がなった、大多数は何かといったらやっぱり普通常識的には七割か八割ぐらいだと思うのです。何かそういうものじゃないかと思うのですけれども、そういう意味で見ましたならば、六十年までにそういう状況に果たしていまのような状況の中でいけるかどうかということを考えますと、労働省としてはいろいろ助成措置その他いろいろ環境づくりとかなんとか努力されておるようでありますが、事の持つ性格からいって、非常に私はそういうことだけではむずかしいんじゃないかと思うのですけれども、その点いかがでしょうかね。
  223. 関英夫

    ○関(英)政府委員 一般化と私ども考えます場合に、企業規模別に見まして大企業だけを対象として考えておるのではなくて、企業規模は小さくても定年制という制度を持っている企業全部を考えまして、その全部の企業の大部分が昭和六十年には六十歳定年制という制度を確立するということを目標に進めていきたいと考えております。もちろん行政の重点として、個々の企業を指導していきます場合に大企業というものは非常に影響力も大きいわけですので、大企業については特に重点的な行政指導をし、そして大企業においてこそ六十歳定年制というものを確立していかなければならないことは先生御指摘のとおりでございまして、そういう意味では重点的な行政指導をしなければならぬと思いますが、考え方としては、企業規模にこだわらず定年制を有する全企業を対象に考えております。  昭和六十年までにとっても無理じゃないかというお話でございますが、先生よく御承知のとおり、昨年の鉄鋼あるいは私鉄、そういった大どころの労使間の合意、その影響力ということは非常に大きいものがございます。今春春闘におきましても、多くの産別におきまして定年延長というものを大きな要求事項として掲げております。最近世間一般に高齢化社会に向けて定年制を少なくとも六十まで延長しなければならないだろうということは使用者側においてもコンセンサスができつつあると思いますので、私ども行政指導を強めて、何としてもこの目標は達成していきたいと考えておる次第でございます。
  224. 小渕正義

    小渕(正)委員 意欲的な取り組みの中でそういう期待感を持たれると思いますけれども、特に中高年の定年制六十というのは、一般的に見た場合に非常にハンディキャップというか、非常に不利な条件をどうしても中高年層は持っているわけですから、そういう意味では何か強力な指導をやらぬことにはなかなか一般化は困難じゃないかということを私はそういう意味で感じておるわけであります。もちろん鉄鋼とか電力とか私鉄あたりが今度やっと重い腰を上げたわけでありますが、そういう意味で大きな産業の中ではそういう傾向が非常に出てくると思いますが、しかしいま先ほどから言われているような本当の意味での一般化ということになると、やはり特定のところに限られてくる。社会全体としてそういうことになるのは、中高年層の持っているいろいろ特殊的な条件等を考えれば私はやはりむずかしいんじゃないかと思いますし、そういう点だけ見ますと、欧米諸国においては特に中高年齢者に対する雇用は法律的な立場から手厚く保護していくという政策が実はとられているわけであります。そういう面をもっとひとつ突っ込んで考えていかないことには、果たしていまの局長の御答弁のような、きわめて期待、意欲的なあれであると思いますけれども、私は限界があるのではないかという感じがするわけです。  したがって、われわれとしてはそういういろいろな状況を判断しながら定年延長の法制化という問題を実はいま検討して、雇用問題も一部問題提起しておると思いますけれども、中高年の持っているそういう特殊的な条件等考えれば、やっぱりそういった角度からの強いある程度のプッシュをせぬことには——期待感はわかりますよ。また、努力しようとする意気込みはわかりますけれども、それだけではちょっと困難じゃないか、こういうような感じがするわけでありますが、ここらあたりのそういう法制化という問題についてはどのようにお考えでございますか。その点をお聞かせいただきたいと思います。
  225. 関英夫

    ○関(英)政府委員 法制化問題につきましては、現在雇用審議会で論議も行われておりますし、大臣からもたびたびお答えいたしておりますように、わが国のように欧米諸国と違いまして年功的な賃金、退職金あるいは人事管理、そういった雇用慣行のあるところにおきまして定年年齢だけを法律で強制する、賃金、退職金、人事管理についてはこれを法定するということはちょっとむずかしい問題になりますので、そういったところにおきましては法制化についていろいろ問題があろうかと思いますが、今国会におきましてもまた各党共同の御提案もあると承っておりますので、そういった動きあるいはこの社会労働委員会における御論議、そういうものも逐一雇用審議会の検討の場に私ども御説明して、そういうものも含めて今後の雇用審議会の審議を進めていただくことを考えている次第でございます。
  226. 小渕正義

    小渕(正)委員 確かに西欧諸国と違った日本独特の年功序列賃金体系の長い間のそういう中ででき上がっている人事管理その他の状況ですから、法制化はそういう意味ではちょっとためらっておられるということはわかりますけれども、結果的にはそういう人事管理の問題年功序列賃金体系を今後どうしていくかという問題、そういうことがいろいろ絡み合って結果的にそれがすくんでしまって前に一つも進まぬのじゃないか、こういう感がなきにしもあらずだと思うのですよ。そういう意味では一つのインパクトというか、法制化ということをぴしゃっと与えてやって、それを一つの機会にみんなが割り切って、ある程度こういうふうに変更せざるを得ぬということを、やむを得ないとか、人事管理についてもある程度お互いが相互に理解し合ってそういう新しい体制に切りかえていくとか、そういうことの一つのきっかけというものはやはりそういう土壌の中でみんなでつくり上げていく、そういう情勢をつくるということになると、かなり私自身の体験からいくと困難があるのではないかと思います。そういう意味で何かのきっかけというか、一つの強力なインパクトを与える意味での法制化という問題が必要ではないか、かように思うわけでありますが、この点は現在それぞれ三党で検討してまたお願いすることもあろうかと思いますが、ただいまのところ一応意見として申し上げておきますが、ぜひそういう角度からも十分な御検討をひとついただきたい、かように思うわけであります。  次に、今度今年度予算案検討の中で結果的には自民党、社公民一緒になった修正問題が出まして、その中で特に中高年齢者の雇用開発給付金の期間指定の基準の緩和、またこういったものについては関係審議会に諮り、指定期間の延長に努力する、こういうことが申し合わせ事項といいますか、自民党と三党との間に一つできているわけでありますが、これは現在どのように進んでおるか、ひとつその点についての状況をお願いしたいと思います。
  227. 関英夫

    ○関(英)政府委員 予算審議の過程でお話しのようなことがあったことは私ども承知いたしておりまして、五月ころの中央職業安定審議会に諮りましてこの中高年雇用開発給付金の期限延長問題の御審議をいただこうと考えております。これは六月七日までに決めるべき問題でございますので、五月ころの中央職業安定審議会にお諮りしたいというふうに考えております。
  228. 小渕正義

    小渕(正)委員 確かにこれは六月七日で期限切れますから五月ころにやっても間に合いはしますけれども、しかし、じゃその審議会に諮られるということは労働省といいますか、行政当局としては一切白紙の状態で審議会にあとの検討をお願いする、こういう形なんですか。それとも前年度も雇用状況その他によって基準の一部変更等をやっておられますけれども、そういう何か一つの考え方を持ちながら中央職業安定審議会の方に諮問していくのか、そこらあたりはどういうようになっていますか。
  229. 関英夫

    ○関(英)政府委員 安定審議会にお諮りする場合には、六月七日で切れるこの制度をもう一年実施したらどうか、こういうことで与野党間の話し合いが行われたわけでございますので、その経緯を十分踏まえてそういう方向で安定審議会にお諮りしたい、こう考えております。
  230. 小渕正義

    小渕(正)委員 これは延長もですけれども基準の緩和というのも入っているわけですね。だから、そういう意味でお尋ねしたわけですけれども、やはりこれは「期間指定の基準の緩和については、関係審議会に諮り、指定期間の延長に努める。」というのがこの申し合わせ事項なんです。したがって、私といたしましては、延長もあわせてですから、その基準緩和という問題をどの程度どういうふうに考えられておるのかということが実はお聞きしたいわけでありますが、その点についてお願いします。
  231. 関英夫

    ○関(英)政府委員 指定基準と申しますのは、その発動するかしないかを考える場合の基準として、全国的な失業率とか有効求人倍率について一定の基準を中央職業安定審議会にお諮りして決めてあるわけでございます。で、これから五月ごろ中央職業安定審議会にお諮りした場合に、その基準に該当するような雇用失業情勢であるかどうかということが問題になる、もし問題になって指定基準に合わなくて期間延長ができない、延長して実施することができないような場合には、基準の緩和問題を含めて十分論議するようにというような御趣旨であろうというふうに私ども考えておりまして、ともあれ御趣旨を踏まえてもう一年この中高年雇用開発給付金制度を延長して適用できるような方向で中央職業安定審議会にお諮りしようと考えております。
  232. 小渕正義

    小渕(正)委員 いまのお話でわかりましたけれども、要するに制度の延長をしたけれども基準が変えられなかったら結果的にはこれは利用できなかった、活用されなかったということになりますので、そういう点では基準を状況の中に応じて、そういう中での延長が一番好ましいわけでありますが、ただ私が申し上げたいのは、これはかなりいい制度ですから、何といいますか、そういういろいろ基準をどうのこうのというのは確かに必要でしょうけれども、中高年層の雇用促進にはわりあい大きくあれが活用されていると思います。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕  そういう意味で、現状はこういう状況ですから、そういう基準のことに余り触れないでこの問題はしばらくはやはりこれが恒久化するような形の中でずっと延長して見ていくということが、いまの場合に中高年齢層の雇用促進の中の一つの大きな要因になるのじゃないかと私は思いますので、そこらあたりのこれは私の見解でございますけれども、そういうことについて行政当局としてはどのようにお考えか、お尋ねいたします。
  233. 関英夫

    ○関(英)政府委員 中高年雇用開発給付金制度は、確かに発足以来非常に活用されて、この制度により就職した中高年齢者の方は従前に比べると非常にふえているという状況になっております。もっとも景気の着実な拡大傾向によりまして、企業におきます雇用に対する態度も以前と多少変わってきたというところにちょうどうまくこの制度が適用されたということもありましょうが、やはり緊急雇用対策として発動した手厚い助成制度が非常に活用されたと言えるんじゃないかと思います。しかしながら、これはたとえば中小企業につきましては賃金の五分の四を助成するというような非常に手厚い制度でございます。こういう手厚い制度をずっと恒久的な制度にするということについては私ども問題があろうかと思います。石油危機以後の非常に雇用失業情勢の厳しい情勢において、特に就職困難な中高年齢者についての緊急雇用対策として私ども考えたものでございます。したがいまして、今後恒久的な中高年齢者の雇用促進策としてどういうものを考えるべきか、非常に大きな問題でございますので、私どもいま内部でプロジェクトチームを設けましてそういう点も含めて十分検討していきたい、こういうふうに考えております。
  234. 小渕正義

    小渕(正)委員 恒久化というか、恒久的と言うと、言葉で非常に永続的なものになるような感じがしますけれども、ねらいとしては趣旨はやはり当分は一年とかいう時限立法的なものでなくて、少なくとも三年ぐらいの、六十歳の目標でいま六十年までやっておるわけですから、それと並行的に、それぐらいまではまあまあもっとこうしておいていいんじゃないかというのが私の一つの考え方だったわけであります。そういう意味で、恒久という言葉は適切でないかもしれませんけれども、私たちはそういう意向を持っておるということで、また次の議論する機会もあると思いますが、そういうことで申し上げておきたいと思います。  次に、雇用関係法の整備ということでありますが、これはいつか別な機会に私申し上げたと思うのですけれども、ちょっとあれを申し上げますと、労働省の方ですから御承知だと思いますが、実は政策推進労組会議というのがあるわけですね。これは労働組合の鉄鋼とか合化とかゼンセンとか機械とか造船重機とか海員とか、いろいろ民間を中心にした、食品とかゴムとか、そういうのが参加した協議会があるのですが、この中で、実は今回の石油ショック以後の五十二年ごろからの離職者の追跡調査をやっておるわけです。自分たちのもといた組合の人たちに対しての、対象組合員九百人ぐらいでありますが、実際に追跡調査の数は七百八十六、回収率は約八七%ぐらいの中で、いろいろな事例が出ておるわけです。その中で実はこういう問題がございます。  雇用保険の失業給付の追加延長分の受給者に対しての調査をやっておるわけですね。要するに失業給付の受給票で追加延長分の支給を受けたかどうかを調べてみたところ、総計で見ると、個別延長給付を受けた人はたった六・二%、訓練延長給付を受けた人が三・六%、広域延長給付を受けた人はゼロ、特定不況地域離職者臨時措置を受けた人は二%ということで、わずかに特定不況業種離職者臨時措置を受けた人が一五%程度の二けたになっておるわけでありまして、非常に、統計から見ましても、こうした付加的な保険給付制度がいろいろ複雑なために、一般の人になじんでないという、統計資料だけですけれども、そういう具体的な離職者の追跡調査の中ではっきり出てきた中で、こういうものが出ておるわけです。そうして、少なくともこういう給付というものが、意図とは別に、結果としては余り効果を発揮していないという一つ数字が出ておるわけでありますが、要するにこういう制度を知らなかったという人が七割ぐらいになっておるのですね。  これは一つの事例ですが、要するにそういうことで、前回も私は別の機会で申し上げましたが、こういう雇用保険法の雇用安定事業の中の給付金が何種類ですか、特に高年者雇用奨励金等については、特定求職者雇用奨励金制度の中には九つの奨励金があるわけでありますが、要するにこういうものをもっとまとめて、複雑なものをもっとわかりやすくしたらどうかということを申し上げておりましたが、前回その点についてもひとつ早急に取り組んで検討を進めておるというお話でございましたけれども、そこらあたりは大体現在どういう状況になっておられるか、そこらあたりをお願いしたいと思います。
  235. 関英夫

    ○関(英)政府委員 各種の給付金制度につきましては、それぞれその時代の御要請に応じてつくってきたものでございますが、結果として考えてみますと、いろいろな制度が積み上げられた結果、御指摘のように非常に複雑多岐になりまして、わかりにくく利用しにくいという問題が指摘されているわけでございます。もちろん私どもの周知徹底が不足しているという点も反省しているわけでございますが、先生初め国会でもいろいろ御指摘ございました。  そこで、従来もこの簡素合理化あるいはある程度の統合に努めてきたわけでございますが、やはりこの際抜本的に今後の時代に対応するような、本当に活用されるような給付金制度に抜本的に考え直してみたらどうだろうかということで、いま行政の内部にプロジェクトチームをつくって鋭意検討をしているところでございます。  この作業はまだ続行中でございまして、いまここでどういうところまでというふうに申し上げる段階ではございませんが、ともあれ従来の経緯に余りこだわらずに、自由な立場で今後の高齢化社会なりあるいは国際的な影響で産業構造が転換していかなければならぬ、そういったようなことに伴います雇用問題に対して有効に機能し、本当に活用されるような給付金のあるべき姿を検討してみようじゃないかということで、現在鋭意検討を進めておるところでございます。
  236. 小渕正義

    小渕(正)委員 それから、これもやはりこういう実際の追跡調査のそういう事実関係の中で問題が浮き彫りになったのは、分類の仕方なんですよ。たとえば中小企業というのは、いまのあれでいきますと、三百人以下ですかね。あとはもう三百人以上は全部大企業と一緒の中に分類されるわけですね。だから、こういういろいろな制度の中でいろいろ調べてみると、中堅企業、要するに三百人から千人以下ぐらいの俗に中堅企業と言われている、こういうところの対象者が大企業の中の分類に入れられてしまうものだから、そっちの方での制度の適用ということになってしまっている。ところが実際は、実態から見るならば、ちょっとその方は無理じゃないか。そうかといって、中小企業ということになるとちょっとまたあれですけれどもね。そういう意味で、いまの分類の仕方に無理があるのじゃないかという問題指摘が実はこの結果から、いろいろのデータの集計の中から出ておるのです。だから、労働省としては、中小企業基本法なんかを基準にして分類してしまっておるのでしょうけれども、それにこだわらないで、労働省だけで、一つのそういう統計その他つくるとき何かほかに——やっぱり横通しの関係でむずかしいかどうか知りませんけれども、やっぱりもう一ランクそういうものが必要じゃないか。そういう意味でこれはぜひ考えてほしいと思います。  それで、これからそういう制度をいろいろつくられるときには、やっぱりそういう中堅的な、もう一つ、二ランクじゃなく三ランクが要るのだということで、これからの政策を考えるときにはしてもらわないことには、そういう人たちが結果的には何か谷間みたいになっている。これは民間中心で出ておったデータですけれども、実はそういう問題提起が私たちのところに出ているのです。したがって、これはいますぐどうしろということじゃなしに、ぜひひとつこれからのいろいろやられる場合にこの問題を検討課題にして、私としては問題提起をしますので、ぜひひとつこれも十分参考にしながらこれからの政策の中に生かしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、これはちょっと素朴な質問ですけれども、私たちの聞いておる中では、大体公共職安を通じた職業紹介で就職している人たちは、全体の再就職した人たちの二〇%以下ぐらいじゃないかというふうな数字をわれわれは聞いておるわけでありますが、これはどこをデータにしてそういうことを言うたかということになると、またとり方がいろいろあるでしょうけれども、ただ、お尋ねしたいのは、公共職安を通じずに再就職した人たちについては、こういういろいろな制度の恩典は一切受けられないのかどうか。そこらあたり、まあ私はだめだということではないかという気がしますけれども、何かそこらあたりに配慮ができないのかという気がするのですが、その点いかがでしょうか。
  237. 関英夫

    ○関(英)政府委員 ただいまの安定所を通じて就職したかどうか、あるいは縁故とかいろいろな就職経路の調査につきましては、恐らく労働省で実施しております雇用動向調査数字だろうと思うのでございますが、これは主な就職経路を調査したものでございますが、たまたま会社あっせんであっても、雇用保険の受給者であって、会社の口ききではあっても安定所紹介でもあるというような場合に、会社あっせんの方に分類されたりというようなことで、この数字自体にはいろいろな問題があろうかと思いますが、次のお尋ねの安定所紹介でないといろいろな助成の制度の適用が受けられないのじゃないか、それを安定所紹介でないものにも適用したらどうかという御指摘だろうと思うのですが、その助成制度の内容にもよろうかと思いますが、要するに非常に就職困難な人を助成して就職させていこうという助成制度につきましては、安定所に求職申し込みをしなくても、たとえば会社あっせんとか知人とか縁故とかで直ちに就職することが可能な人までいろんな助成制度をして適用する必要があるかどうかという問題になるわけでございまして、本当に就職困難な人であるかどうかということは、やはり形式的に職業安定所に求職申し込みをし、職業紹介をしているかどうかというようなところにどうしてもよらざるを得ないということから、職業安定所の紹介ということにいたしておりますが、ただ私どもそこを余りかたくなにするつもりはございませんで、雇用保険の受給者等については、大体は安定所に求職申し込みをしているわけでございまして、話のきっかけが組合紹介であろうと会社の紹介であろうと、安定所を通じて安定所の紹介という形をとって就職しておれば、助成制度の対象としていくというような運用もいたしておるところでございます。
  238. 小渕正義

    小渕(正)委員 あと一つお尋ねしますが、中高年齢者等の雇用促進に関する特別措置法が昭和四十六年にできましたね。その中で、事業主は常用労働者の六%相当以上の高年齢者、要するに五十五歳以上の者の雇用に努めなければならないということで、一定の雇用率を決めておるわけですね。これが実際には、私がいただいたデータでは必ずしもなかなか達成されてない、こういう状況だろうと思うのですが、これが達成されてないことに対してどのような対策を立てられておるのか、そこらあたりの状況をひとつ御説明いただきたいと思います。
  239. 関英夫

    ○関(英)政府委員 昨年の六月一日現在で全国的な達成状況は五・八%ということで、六%に非常に近づいてきて改善されつつあると思っておりますが、先生の御指摘は、個々の企業について見ると達成してない企業がまだ半数以上あるじゃないか、そこを改善していけという御指摘だろうと思います。  私どもといたしましては、この雇用率の達成状況の非常に悪いところで、しかも大企業に対しまして、雇用率達成のための計画を作成するように命じまして、計画の作成をしていただいております。今後はその計画どおりの雇用の促進に向かって、個別企業に対しまして行政指導を強めていきたい、こんなふうに考えております。
  240. 小渕正義

    小渕(正)委員 行政指導として特に低位にあるという卸売、小売業または製造業、こういうところなんかが産業別に見るとまだ達成されてないわけでありますが、その計画書を作成させて個々の企業別にそういう指導をされておるわけでありますが、それはたとえばその計画が短期の計画なのか。たとえば何年間の計画でそういうことを計画としてはつくらせておるのか。そこらあたりはどの程度のどういう状況の計画なんでしょうか。
  241. 関英夫

    ○関(英)政府委員 雇用率達成の計画は、五年間で雇用率六%まで達成していただく、そういう計画をつくって出すように命じております。
  242. 小渕正義

    小渕(正)委員 五十五歳以上の関係ですから、五年ぐらいの経過は必要かどうかわかりませんけれども、したがって、それではぜひそういう計画書を全部まず提出させることが第一。それから、提出されて五年後、それができませんでしたではちょっと机上プランだけで余りにもなんになりますから、ひとつ計画書が達成できない場合にはどうするんだということも含めて、ある程度そういうそれぞれの企業側にも指導しておかないと、結果的には五年たってみたらだめだったということでしり抜けになっては私はいかぬのじゃないかと思うのですが、そこらあたりは何かお考えお持ちでございますか。
  243. 関英夫

    ○関(英)政府委員 個別企業を指導していきます場合に、計画に示された達成方法、それに応じて指導していかなければならぬだろうと思っております。たとえば、定年延長により達成していきますというものもあれば、あるいは中途採用をふやしますという形で達成しようとしているものもあれば、両者の併用もあれば、あるいは雇用延長とか再雇用という形で達成していこうというものもあるわけでございます。実際問題としては多くの方法の併用の計画が多いわけでございますが、私どもの指導といたしまして、まず定年延長を達成方法の一つとして掲げておる計画に対しましては、具体的に定年延長を進めてもらう、そのために企業内に検討委員会を具体的につくっていただく、そして何とか計画の期限内に達成するような指導をしていくというように、一例を挙げればそういう計画の中身に応じた個別企業への指導を強めて、目標年次までに計画を達成するように強力に指導していきたいと考えております。
  244. 小渕正義

    小渕(正)委員 では、ひとつその努力を期待いたしまして、最後にこれは予定外の質問になりましたけれども、先ほどから同僚委員の質疑を聞いておりまして、労働省のあり方ということについてちょっと疑問を感じたものですから申し上げるようなわけでありますが、先ほどの御質問の中で労使紛争の問題がいろいろあったと思います。それはそれなりに結構だと思うのです。その中で労働省のいろいろな答弁が、すべて実態をいまから調べてみましょう、そういう上で判断をしていきたい、こういうことでしたけれども、それは確かにいいことですけれども、労働省が全国で年間何百件とあるそういう紛争の状態を持ち込まれて、それを一応調べてみましょうというようなことで果たして労働行政はできるのか、私はそういう意味での疑問を感じたわけです。したがって、少なくとも地労委とかそれぞれの設けられたいろいろな機関があるわけですから、そういう機関が機能を発揮しておらぬとかということでどうなのか、そういうことで労働省がそれをなにするならわかるのですよ。しかし、全国の労使関係の問題を全部、これはどうなのか、これはどうなのかということで持ち込まれて、それは調べてみましょうということでは、労働省の本来の仕事じゃないと私は思う。それにもう忙殺されてしまうのじゃないか。そういう点で、現行制度の中でそれぞれの機能を持った機関があるわけですから、そういう機能を持った機関が機能を停止するとか生かされてないとか何か問題があるなら、そういうことを労働省としては監督官庁としてどうするか、こういうことが私は一番大事な問題だと思うのですね。  そういう意味で、先ほどからの大臣の御答弁を聞いておりまして、問題がそっちにばかりいってしまって、では本来の労働行政どうなるのかなという不安を私は非常に持ったわけです。それは何でも知ってもらうことは結構ですよ。労働省が全国のいろいろな労働問題を全部知ることは結構ですけれども、それは実際問題できぬでしょう。また、そのためにそれにかわるいろいろな機関があるわけですよ。だから、そこらあたりはぴしゃっとわきまえてやってもらわぬと、労働省自身がいい答弁ばかりしておって結果的には何もできなかったということになりかねないと思いまして、それでは本来の労働行政が間違った方向にいく可能性もありますので、そういう意味でひとつ大臣の御見解を承って私の質問を終わりたいと思います。
  245. 藤波孝生

    藤波国務大臣 労働行政を進めてまいりますについて、一つ一つの柱を立てて行政を推進しているわけでございます。個別の具体的ないろいろな問題について一つ一つ御意見を求められたり、あるいは対策を早急に確立をするように御指摘をいただいたりするわけでございますが、そのことについてはやはりその実態をよく把握をしませんと、お答えをするということにもなりませんし、また誤ったことになってもいかぬ、こういうふうに思いまして、個別の問題につきましてはよく実態を調査をいたしまして速やかに対策を講じていくというふうにお答えをしているところでございます。そのことによって全体が振り回されるようなことになるとも思いませんし、全体は全体としてそれぞれ大事な柱を立てて進めてまいりますと同時に、やはり個別の問題についても十分対応していくという形の中で初めて労働行政がいろいろな角度から見て非常に行き届いた行政ということで進めていくことができるのではないかというふうに考えて、そんな態度をとらせていただいておるところでございます。御忠告につきましては大変ありがたいと思いますが、今後とも十分いろいろなことを考えながら行政を円滑に進めていくように努力してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  246. 小渕正義

    小渕(正)委員 これで終わります。
  247. 葉梨信行

    葉梨委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十分散会      ————◇—————