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枝村委員 いま三つ言いましたけれども、高くはない、低くもない、おおむね妥当な
要求だということを
大臣は言外にやはりおっしゃっているように見ます。ところが、私どもやはり当事者でありませんから、それこそまた介入する必要もありませんけれども、この
要求の額、率について一般の労働者はそう思っていないのですよ。これは認識の問題ですからひとつ
大臣もよく聞いていただきたいと思うのですけれども、この決定に至るまではやはり大変な問題提起がされたし、あるいは組織の中でもある程度ごたごたや困難な条件があったようでありますけれども、これは一口で言うなら
要求の率、額が低いという不満ですね。それと今日の生活の実態、あなたは
経済全般を見て良識だと言われましたけれども、実際に生活する労働者、サラリーマンは、その実態の中からこんな低い
要求でどうなるか、こういう不満やら批判というものが当然出てくると思うのですね。それは言うまでもなく石油の値上げやらそれから公共料金の引き上げなどが一斉にこれから行われるのですから、いまですらも大変苦しい生活なのに、いまから
賃金要求するのですから、それに対していま言ったような諸
物価が上がってくる、インフレ傾向にもなってくる、それにもかかわらず最低八%だとは言いながら不満だということになってくるわけであります。まあそういう気持ちがありますけれども、そして、そのために非常に不安を感じたり心の中では怒りを感じております。そういうことを百も承知で労働者側の方は、先ほどあなたが言われたようなこともあるかもしれませんが、とにかくぎりぎりの
要求だとしてそういう率を決めたといういきさつがあるわけです。ですから私どもは、このナショナルセンターのレベルではそういう
要求の統一をした、これも大変大きな意義がありますけれども、しかし内容はいま言ったような気持ちで労働者はおりますから、はっきり言えばびた一文もこれからまけられぬ、満額
回答を引き出す、獲得するという、こういうことに全体としてならざるを得ぬことになるわけですね。ですから、結局下手をすると、下手な取り扱いをすると、ストなしの
春闘だと言われておったこの闘いがやはり大変な状態になることも予想されるのであります。言葉で言えば物情騒然たる一大重大な事態が起こらぬとも限らぬ。ですから、そのためには経営者側もそれから
政府の側も、やっぱり八%が妥当とするのなら少なくともこれを下回らないように、いろいろの形でそれこそ良識を持って対応しなければならぬという場面に今日すでに来ておる、こういうふうに私は思っておるのであります。
それから、ある学者などはそういうことについていろいろ皮肉った物の見方をしておりますが、それとはまた別に、少なくとも八%がやっぱり基準で、金額については一万三千円ぐらいになりますかね、これをやったそのこと自体によって、実は使用者、経営者側はもうその段階で一定の主張した役割りが果たされた、こういうふうに見ておる。たとえば、石油が一バレル三十ドルになれば、これは国民一人当たりに換算していきますと年に五万円の負担増になるのであります。四人の世帯でしたら二十万円、これだけ負担増がかかるわけです。石油だけですよ。そういう状況の中で、いま言いました八%の、最低ですけれども
要求となると、使用者側、日経連がいつも言っておりますように、こういうことを言っておりますね。海外要因による
物価上昇分は国民ひとしく負担すべきであるから賃上げに反響させるべきでない、こういう主張を日経連は常々言っておりますが、その主張に全く最初から合っている。われわれから言わせれば、経営者はこれで心の中ではにたにた笑っておる。笑いがとまらぬ、こういう状態にあるという皮肉り方を学者は言っております。私ども全く同感とは言いませんけれども、まさにそれは指摘されておるとおりだと思います。
そういうことですから、先ほど
労働大臣言われましたように、この
要求に対して、はっきりは言いませんが、妥当性をある程度認められたのでありますから一応私もそれでいいと思いますが、しかし実際にはどうかという問題がここへ出てきておるのです。
大臣はそういうふうに言っておりますけれども、たとえば電力あるいは鉄鋼の会社側の
回答に対して、
労働大臣は言っておらないと思いますが、
政府の筋から賃上げ抑制の働きかけがされておると聞くのですよ。ところが、幾ら国会で追及してみましても、その証拠がどこにあるかといったらそれはないのです。ないのですが、全体の感じとしてそういう
政府のやっぱり、インフレ、
物価の問題に対する安定策が最大の
政策だと大平総理は言っておりますが、その意向に沿ってそういう動きがされておる。大平さんも、いま言ったようなことを事あるごとに言っています。
物価安定が最大の私の仕事だ、それは聞き取りようによればやはりこの
春闘の賃上げを抑えようとする意図に基づく発言でもあるような気がするのです。
そういうことからいろいろ考えてみまして、それから
政府の中のいろいろな部署におる人たちの動きを見ておりまして、いま企業が
回答しようとするものに対して、
政策的にやはり抑えようとする動きがあるのではないか。それは
労働大臣、あるかないかと言ったって、ありゃせぬと言うのでしょう。それは
政府としていままでとった態度でありまして、第一次
石油ショックのとき以後長谷川
労働大臣が福田内閣の中でいろいろとった行動が本当に目に見えてはっきりしております。たとえば、
労働大臣が講演する場合に賃上げは抑制しなければならぬ、インフレ防止のために絶対必要だということを堂々としてお話をしておられながら、ここに立つとそういうことは言ったことはないとか、そういう考え方は毛頭ないというようなことをしらっと言って
回答されておりますが、まさにそのとおりであります。だから、あなたにどうかという答弁は求めませんが、そういうのがやはりいま労働界、これは
春闘共闘だけでなくて同盟の側も同じだと思いますけれども、
政府が何かしらん、不当とは言わぬにしても介入し過ぎる、そのために経営者がいろいろ粘る、こういうふうに見ておるのですよ。それは
一つの
政府に対する非常な不満であるし、労働者はそれを見ればいつどうなるかわからぬという
一つの原因、理由をつくっておるような気がしてならぬのです。
ですから、私はここで申し上げたいのは、そういうことがもしあるとするならば大変けしからぬことでありますし、直ちにやめてもらわなければならぬです。そして、われわれが考えればそういう
政府の介入がなければ、先ほど言いましたように、
回答は、いま
妥結しました
先行組合は大体九%と言いましたね。少なくとも七%以上は
回答しているのですから。だから、ほうっておけば、そういう介入がなかったら鉄鋼でも電力でもその他の金属産業でも、あるいは私鉄でも、それくらいの
数字は常識として出てくるものだというように私は考えておるわけであります。ですから、しかも先ほど言いましたように、経営者自体も別に
政府から介入されなければそれくらいのことは考えております。それは史上最高の利益を上げておる、減量経営によって上げておる、労働強化によって上げておる。仕事は三分の一に減ったにもかかわらず利益は倍になっておる、こういうのがいまの
日本の中の企業経営者にざらにあるのですから、そして自分だけの生産性を上げるためにも賃上げをここで認めなければならぬという気持ちに経営者もなっているのです。
そういうことですから、あなた
回答できないかもしれませんけれども、ひとつそういう介入の事実が他の省庁にあったとするならば、
労働大臣の
立場でそれはさせないようにしていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思いますが、その点よろしゅうございますか。