○藤波国務大臣 ただいま議題となりました中小企業退職金共済法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
中小企業退職金共済法は、中小企業の労働者の
福祉の増進と中小企業の振興に寄与するため、
昭和三十四年に
制定されたものであります。この法律に基づきまして、現在、中小企業の常用労働者を対象とする一般退職金共済
制度と、建設業及び清酒製造業に期間を定めて雇用される労働者を対象とする特定業種退職金共済
制度の二種類の
制度が設けられております。
これらの
制度に加入している事業主の数は約三十一万、加入労働者数は約三百十万人に達しており、本
制度は、中小企業労働
福祉対策の主要な柱の一つとなっております。
ところで、中小企業における退職金
制度の現状を見ますに、その普及状況及び内容は、いまだ必ずしも十分なものとは言いがたい実情にあります。このため、本
制度をさらに充実強化し、中小企業にとってより魅力あるものとすることによって、その積極的な普及を図ることが要請されております。特に本
制度における掛金及び退職金等の額については、
昭和五十年の法律
改正以降の一般の賃金及び退職金の水準の動向に対応して
改善を図る必要があるものと考えております。
政府は、このような観点から、本
制度について所要の
改善を行うこととし、先般中小企業退職金共済審議会に諮問し、その答申をいただきましたので、ここに中小企業退職金共済法の一部を
改正する
法律案を提出した次第であります。
次に、この
法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
第一は、本
制度の対象となる中小企業者の範囲の拡大であります。
現行
制度では、本
制度の対象となる中小企業者の範囲は、その雇用する従業員の数が三百人以下であること等従業員規模によって定められておりますが、中小企業施策としての整合性を高めるため、中小企業基本法等に合わせ、これに資本金規模を加味し、本
制度の対象となる事業主の範囲を拡大することとしております。
第二は、一般退職金共済
制度における掛金月額の引き上げ、国庫
補助の増額等による退職金給付の引き上げであります。
その一は、掛金月額の引き上げであります。
現行
制度では、掛金月額の最低額は八百円、最高額は一万円となっておりますが、賃金の上昇等に合わせ、掛金月額の最低額を千二百円、最高額を一万六千円にそれぞれ引き上げることとしております。
その二は、退職金給付に対する国庫
補助の増額であります。
現行
制度では、退職金給付に関し、掛金月額の最低額である八百円に対応する退職金について掛金納付月数に応じ一定率の国庫
補助を行っておりますが、掛金月額の最低額の引き上げに対応して、この国庫
補助の対象を掛金月額千二百円に対応する退職金に引き上げることとしております。
その三は、掛金月額が増加された場合のいわゆる掛け捨て、掛け損の解消であります。
現行
制度では、加入後に掛金月額を増額した場合に、被共済者が増額後二年未満で退職したときは、増額部分に対応する退職金は、その年数に応じ不支給または掛金総額を下回る額の支給となっておりますが、このような掛け捨て、掛け損の解消を図るため、原則としてそのような場合にも掛金に相当する額を支給することとしております。
なお、これに伴い退職金給付について所要の調整を行うこととしております。
第三は、一般退職金共済
制度における加入前の勤務期間の通算
制度の新設であります。
現行
制度では、事業主が本
制度に加入した後の勤務期間のみを対象として退職金が支給されることとなっておりますが、実際の勤務期間に応じた退職金を
確保できるようにするため、新規に本
制度に加入する事業主が、その雇用する従業員の加入前の勤務期間について所定の過去勤務掛金を納付した場合には、十年を限度として加入前の勤務期間を加入後の掛金納付月数に通算して所定の退職金が支給されるようにすることとしております。
第四は、特定業種退職金共済
制度における掛金日額の範囲の引き上げであります。
特定業種退職金共済組合が定款で定め得る掛金日額の範囲は、現行
制度では六十円以上三百円以下となっておりますが、賃金等の上昇に合わせて、これを百二十円以上四百五十円以下に引き上げることとしております。
この
法律案の主たる
改正内容は以上のとおりでありますが、この法律の附則におきましては、この法律の施行の際被共済者である者に関して、最低掛金月額までの掛金月額の引き上げについて一定の猶予期間を置くこと、本
制度加入前の勤務期間を加入後の掛金納付月数に通算することができることとすること、退職金についての国庫
補助の引き上げは施行日以後の期間について行うこととすること等の経過措置を定めるとともに、その他これらの
改正が円滑に実施されるよう所要の経過措置を規定しております。
以上、この
法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。