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1980-05-13 第91回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月十三日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 河野  正君    理事 玉生 孝久君 理事 戸沢 政方君    理事 西田  司君 理事 八田 貞義君    理事 島田 琢郎君 理事 馬場  昇君    理事 古川 雅司君       池田  淳君    中村正三郎君       橋本龍太郎君    畑 英次郎君       吹田  愰君    宮下 創平君       竹内 勝彦君    森田 景一君       中島 武敏君    木下敬之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁企画調整         局環境保健部長 本田  正君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君  委員外出席者         国土庁地方振興         局総務課長   清水 英明君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   杉戸 大作君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     山本 雅司君         運輸省港湾局環         境整備課長   高田 陸朗君         建設省都市局下         水道部公共下水         道課長     玉木  勉君         日本国有鉄道新         幹線建設局長  吉村  恒君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   中島 武敏君     東中 光雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件      ――――◇―――――
  2. 河野正

    河野委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場昇

    馬場委員 私は、水俣病問題についてと健康被害補償法について、さらに時間がありましたら環境アセスメントについて、以上三点についてお尋ね申し上げたいと思います。  まず、他省庁からもおいで願っておりますので、水俣病対策の問題からお尋ねいたしたいと思います。  まず、その第一点は、水俣病認定業務促進対策についてお伺いしたいわけでございますが、その前提として、今日の認定業務現状滞留者がどうなっておるのか、あるいはどのくらいさばかれておるのか、将来どういう展望が持たれるのか、そういう認定業務現状と将来計画について実情をまずお知らせいただきたいと思います。
  4. 本田正

    本田政府委員 まず水俣病申請状況でございますが、五十五年三月末現在で、熊本県を含みますところの新潟県、新潟市、鹿児島県、このトータルで現在までに一万一千六百八十一名の申請がございました。そのうち取り下げられた方もございますので、処理を要するものは一万一千四百七十名となっております。現在までに認定されましたものが二千三百名、それから棄却されましたものが三千六十三名。したがいまして、処理済み件数が五千三百六十三名となっております。未処理件数は六千百七名、そのうち保留が千七百二十二名と相なっております。  熊本県だけ申し上げてみますと、申請者数が八千四十五名。それから取り下げを除きまして要処理件数が七千九百五十一名。認定が一千三百四十八名、棄却一千三百四十二名。未処理件数が五千二百六十一名、うち保留が一千四百八十五名と相なっております。  問題は、現在熊本県だけでも五千二百六十一名の未処理があるわけでございますが、熊本県におきましては、月々百五十人を検診し、百三十人を審査対象にするということで、毎月審査が行われておりまして、もちろん全員を処分できるわけじゃございませんで、保留となって残る方々もございますが、おおむね処分率は六〇%くらいだろうと存じます。したがいまして、またこれの月々申請者もございますけれども、少なくとも現状におきましては、熊本県においては年間千二、三百名の処分ができるのじゃなかろうかと存じております。したがいまして、大体四年以内で現在の滞留者処分できるのじゃなかろうかと存じております。  なお、国の審査会におきまして、旧法時代の国に申請してもいい方々が、熊本県の場合、千二十一名が対象になっております。その方々につきましては、できるだけ国の審査会申請していただくように、またPRお願いを続けていきたい、かように存じております。
  5. 馬場昇

    馬場委員 大臣も御承知と思いますけれども昭和五十一年に実は熊本地方裁判所は、こんなに滞留者が多いということは水俣病認定申請処理業務について不作為状態、違法の状態だ、こういう不作為違法の確認の判決を出しておるわけです。言うならば、環境庁委任事務ですから熊本県がやっておるわけですけれども熊本県知事違法状態をこの認定業務で犯しておるのだ、こういうふうな判決があったのは御承知のとおりでございます。  そこで、いま五千二百六十一名熊本県だけで未処理がある、こういうことですが、実は五十四年度の未処理も大体五千件を超えている。五十四年度の未処理も五千件、五十五年度の現在の状況でも五千件、その滞留者は減っていないのです。いま部長は、百五十人検診、百三十人審査体制でいきますと、四年後には現在おる者は解消するということでしょうが、実はどんどんふえておるわけです。だから、ふえたら速やかに救済するというのが精神ですよ。ところがもう全然申請が減らない、こういう違法状態が続いておるという状況でございます。これは一日も早く解消しなければならぬわけですが、やるやると言って全然進んでいないわけですよ。こういう点、違法状態行政がこんなに犯しておる――五十一年に判決が出たわけで、その前も犯しておる、判決が出た後でも五年間もこういう滞留者がおるということ、この違法状態を続けているということは、行政の怠慢だという裁判所の判決ですから、こういうことについて一日も早く解消するような手だてをやはり講じて、熊本県と一緒になって環境庁はやるべきだと思うのですが、その辺について、具体的には長官なかなかお考えにならないと思うのですが、行政姿勢として一日も早く違法状態を解消するよう努力する、そのことを事務局にも命じて、熊本県にも援助してやるという抜本的な解消策というのをつくっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  6. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  馬場先生から大変おしかりをちょうだいいたしましたが、本当にそのとおりでございまして、責任というものを私自身深く痛感をいたしておる次第でございます。認定業務促進はわが環境行政の重要な柱でございますので、今後、口先だけじゃなく、熊本県側と十分連絡をとりながら、御期待に沿うように、私自身が先頭に立って事務当局を督励して最大限努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  7. 馬場昇

    馬場委員 具体的に国の責任の部分は、これは部長でもいいですけれども、こういう不作為違法の状態を続けてはならぬというので、いわゆる特別な法律をつくって臨時審査会を設けたわけですね。ここで旧法の千何百人を対象にして早く不作為違法状態を解消したいということでやられておるわけですが、何と、この臨時審査会は一年たってたった九人しか処分していないのですよ。それで申請している人がまだ五十人にも達していないんじゃないかと思うのです。国の臨時審査会申請しておる人はいま何人か。処分したのはだれでも知っている。いまたった九人です。この臨時審査会は何でこんなに申請が行われないのか、そして何で九人処分するのに一年もかかるのか、この臨時審査会展望というのが果たしてあるのか、この辺についてちょっと環境庁考えを聞いておきたいのです。
  8. 本田正

    本田政府委員 全くそのとおりでございまして、現在四十七名しかございません。対象は申し上げましたように一千二十一名でございます。これは発足してから一年かかりましたけれども、この間に審査会の運営をどうするかということ、そういったことでいろいろと時間をとりまして、ようやく最近、御指摘のように九名の処分を行ったわけでございます。一千名対象で四十七名、まことにお恥ずかしいと存じます。私どもは今後できるだけこの制度PRに努めまして、できるだけ患者さん方の御理解を賜りまして、この制度に乗っかっていただくよう最大限努力をしていきたい、かように存じております。
  9. 馬場昇

    馬場委員 長官、いま聞かれたとおりですよ。五千人も滞留しているから、特別立法をつくってバイパスをつくられたわけですよ。ところが、いま言ったように四十七名しか申請していないし、一年かかって九名しか処分できない。該当者は一千名以上おるわけです。これでは実はお話にならないわけですが、これは法律を審議するときもこの委員会で私もそのことを言ったわけですよ、申請者はありませんよと。ここにやはり行政不信感があるわけですよ。たとえば、この問題についてこういうことをして不信感をなくしなさいということで、この委員会でも、たとえば審査員の任命に当たっては患者の信頼できるような人をやりなさいということを意思として決定しているのです。そういうことも実は行われてなくて、抗議も行われたのですが、信頼感がないところにだれも申請しませんよね。そういうことで、これはいまのような不信感があれば、この臨時審査会というのは、この後は開店休業になると私は思います。このことについては、私は、これはもうあったって同じだ、ない方がかえっていいんだと思っているのです。直接あなた方がやっておられるのに対しても、こんなに不信感があるわけですから、これは十分考えていただきたいと思うのです。その辺は長官もわかっておられると思いますけれども……。  そこで、やるやると口ではおっしゃるのですが、具体的には何にもやらない。具体的に申し上げますと、たとえば熊本県に対して、検診する常駐医を、皆さん方の力で予算をつけてどれだけずっとふやしていかれましたか。検診医はどうふやされたかということ。それからもう一つは、認定業務にかかわる事務費補助を、現在、補助率が二分の一だ、これを四分の三にふやしてくれ、県も困っているんだというような要請が毎年あるのですけれども、これにもあなた方こたえておられないようです。さらに、この認定業務にかかわる職員給与費補助、これは五十四年度八人おったのを五十五年度、ことし五十人ぐらいふやしてくれ、そうしたら申請業務も進むよというような要望があるのですよ。この八名から何名にふやされましたか。この辺について、検診医の数のふえ方、事務費補助額のふえ方、さらに人件費を何人分ふやしたのか、このことをちょっとお聞かせいただきたい。
  10. 本田正

    本田政府委員 熊本県の水俣にございます検診センターは、これは私ども常駐医を少なくとも五名早期に確保したい、そういうことで、熊本ともども努力をしているわけでございます。熊本大学にお願いし、また近郊の国立病院等にも、また私どものサイドでは、厚生省医務局にも実はお願いに上がっているわけです。常駐医はなかなか確保できませんが、五十四年の一月になりましてようやく一名ふえまして、現在二名でございます。今後ともまた努力を続けていきたいと存じております。  それから、県に対しますところの補助でございますが、確かに現在二分の一補助でございまして、これを四分の三にするということは、予算措置といたしましてなかなか厳しい状況にあって、努力はいたしておるのでございますけれども、四分の三の補助率にするということはきわめて困難じゃなかろうかと存じております。しかしながら、二分の一の補助の中で超過負担がないようにということ、それから事務費補助が若干余りますならば、できるだけそれを適正な中で運用いたしまして、熊本県にできるだけ御迷惑がかからない、熊本県の持ち出しが少ないように、より少なくなるようにということで努力をいたして、現在、二分の一の補助単価で、それを割っているものはないと存じます。その範囲内では十分見て差し上げていると存じておりますが、なお、この補助率等の問題については努力をしていきたいと存じます。  それから、人件費につきましては、事務費交付金補助金の中の人件費は、御指摘のように、現在、熊本県は八名見ております。これは私どもでは、ぜんそく系統大気汚染の第一種地域、それから第二種地域を合わせまして、いままで百五十六人の補助対象となる人員を確保していたのですけれども、今年度、予算をお認めいただきまして、三十九名ふやして百九十五名と相なっております。これは御存じのとおり、第一種地域は四十一地域ございますし、第二種地域も、水俣以外にもあるいは慢性中毒等ございます。そういったところに全部配る人数でございます。今年度三十九名増になりましたけれども、そういった地域も見なくちゃなりませんし、その辺の配分につきまして、どの県に何名割り当てるかという配分につきまして、現在作業を詰めている段階でございます。
  11. 馬場昇

    馬場委員 私は、実はこの水俣病については三十回ぐらいこの委員会で質問して、何か同じ問題でそんなにたくさん質問したのは国会始まって以来ですよ。これがレコードだという話ですけれども、何でそんなに言わなければならぬかということを私は実は残念に思うのです。何回でもやるのを決して誇りに思わないし、残念に思うのですよ。たとえば大臣は、あなた方は違法行為を犯しているわけですからね、この認定業務については。裁判判決が出ているわけです。そして抜本的にその違法行為を解消するようにやりますと口ではおっしゃいますけれども、いま言われましたように、常駐医を五名は要るとあなた方言っておられるのに、まだ二名しかいない。これじゃ話になりませんし、補助率だって、二分の一から四分の三ができぬなら三分の二にするとか、そうして金をつぎ込む。いま本田さんは三十九名全国でふえたけれども――私は、予算のときも、あと十四、五名ぐらいはやりなさいよというようなことを話をしたことがあるんですよ。しかし、そういうことで配分もまだ決まっていない。これでは不作為違法をしている皆さん方に対して損害賠償の請求、訴訟がまた起こりますよ。その前に何とかやはり一生懸命がんばってもらわなければ大変なことにまたなる。そんなことがまた水俣病行政を混乱させるということになるわけでございますから、これは言葉だけじゃなしに、いま言った項目は全力を挙げて、できれば大臣、ふえました三十九名の人数の中で、これは今度は予算は要らぬのだから、もらっているわけだから、もう全部あるいは半分ぐらいやりますよ、そして全力を挙げますよ、こういう気持ちはございませんか。これは事務局の方から、あなたははっきり言わなかったけれども、大体何名ぐらい熊本にやりたい、大臣は、それじゃ少ないからもう少しふやせ、この辺の――たとえば補助率をいまの段階で引き上げる、来年度はお願いしたいんだけれどもできないかもしれませんが、この配分はいまでもできるわけですから、これはどうですか、この配分について。
  12. 本田正

    本田政府委員 今年度純増で三十九名ふえたわけでございますけれども、これを配分する地域が、水俣重要性ということは重々承知いたしておりますけれども、四十一地域プラスの五地域ぐらいございますので、その辺いずれも人が足りぬということで強い要望も受けておりますので、何県にどれくらいずつ配分するかということを現在詰めて、まだ決めておりません。そういうふうな角度で検討いたしておりますが、そういう状況でございますので、たくさん希望されるほどの人員熊本県だけにやるというわけにもまいりませんが、その辺苦慮いたしておりますけれども、ともかく鋭意詰めを進めたいと存じております。
  13. 馬場昇

    馬場委員 あなた方はとにかく違法行為を犯して、その状態がもう何年も続いているんですから、長官、これはやはり自分らが違法行為をしながら人に向かって法を守れなんかというのはもう言える立場にないですよ、いま環境庁は。その辺はぜひ一日も早く違法行為を解消するような積極的な対策を立てていただきたいということを希望しておきたいと思うのです。  次に、第二の問題は、水俣湾ヘドロ処理の問題でございます。  御承知のとおりに、これは五十二年の十二月に水俣病患者人たち沿岸住民人たち二千四百九十五人から水俣湾ヘドロ処理事業差しとめの仮処分申請熊本地方裁判所になされました。そして二年四カ月たった去る四月十六日に判決が出されたわけでございます。これはもう大臣も御承知のとおりでございます。この不知火海沿岸住民というのは、不知火海をいつまでも死の海にしておくあるいは汚染源水銀ヘドロをいつまでも抱え込んでおく、これはもう耐えられないわけでございまして、実は私も沿岸住民の一人ですけれども、このヘドロを除去して海をきれいにしてくれというのがすべての沿岸住民願いでございます。実は三木元総理大臣環境庁長官時代水俣に来られまして、私も一緒に行きまして、患者住民の人と一緒にこの海をきれいにしてくれ、ヘドロを除去してくれという陳情を行いまして、除去しましょうという約束をなさったのが事の始まりでございます。だから、はっきり申し上げておきますけれども、一日も早くきれいな海にしてくれ、死んだ海を生き返らせてくれ、汚染源をなくしてくれというのがすべての住民願いだということははっきり理解しておいていただきたいと思うのです。ところが、問題は二次公害が出るか出ないかという、そこに差しとめの仮処分というものが行われたという原因があるわけでございます。  そこで、これは担当局長からでも結構でございますが、この間、四月十六日に判決が出ました。この判決が出たことによって、二次公害は出ないと考えておられるのかどうか。余りたくさんのことは時間がありませんから言いませんが、この判決に対する感想といいますか、ポイントは二次公害が出るか出ないかということでございますが、あの判決を見られて、二次公害が出ないと安心されたのかどうか、その辺の裁判判決に対する環境庁感想をまず聞きたいのです。
  14. 馬場道夫

    馬場政府委員 先般水俣湾ヘドロ処理事業に対しまして御指摘のような判決が出たわけでございますけれども、あの判決の中におきまして、国が決めておりますあるいは県がそれを適用して決めておりますいろいろの基準値なり工事方法等につきまして、一応私ども主張が認められたわけでございますけれども判決が出たから安全ということではなくて、私ども安全性には十分配慮しながら今後とも工事を進めてまいらなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  15. 馬場昇

    馬場委員 ちょっとわかったようなわからぬようなお答えですけれども長官にもお聞きしたいのですけれども、これはさっき言いましたように、ヘドロ処理には異論はないのです。ヘドロ処理には異論がない住民差しとめの訴訟に踏み切ったというのは、いま言ったように二次公害が恐ろしいからです。とともに、もう一つ原因水俣病に対する行政不信があるのです。こういうヘドロ除去基準がありますから安全ですよとかなんとか言われたって、いままでずうっとだまされ続けてきていますから信用できない。やはりこういう行政不信訴訟に踏み切らせたという一つ原因になっているのです。これはもう長い、二十年、三十年、奇病と言われ伝染病と言われたころからずうっと患者がみずからこの弾圧の中で切り開いてきた経験から、水俣病問題について行政加害者だ、本当に加害者だったと私は思うのですよ。そういうことに対する不信、それが安全性と言われたって信用できない。今日だって不作為違法状態違法状態をあなた方行政が続けておる、信用できぬじゃないか。さらには、私もここに法律を提案しているのですけれども、三十年もたって今日総合的な水俣病実態というのは明らかになっていないのです。総合的な実態というものが明らかになっていなくて、こういうヘドロ除去だけをやるということでは話にならないわけでございます。  そういうことでございますから、この判決局長主張が認められた、まあ非常に喜んでは言わなかったようですが、安全性は配慮すると言ったようですけれども、私はここで長官に言っておきたいのは、裁判で確認されたんだからもう正々堂堂とやっていいんだ、勝ったんだ、安全性があるんだ、こういうような態度はこの問題については絶対にとってはいけない、私はそう思います。そういうものに対する長官一つの物の考え方と、もう一つは、チッソは三十年余りずっと水銀をたれ流しているわけですよ。そんなに深いものです。それで、今度のヘドロ除去工事なんかは世界に例がないわけですから、前例のない大規模な環境復元工事ですよ。世界で初めてのことです。だから長官お願いしておきたいのは、安全性は一〇〇%というのはないと私は思うのです、世界でも初めての例ですし。だから、本当は安全性というのは実はやってみなければわからないんだ、そのくらいの謙虚な、また被害を発生しないというものに対してはおそれを持ってやるべきじゃないか、こういうことを思うのです。だから、この判決を受けとめて次の行為に移る前には、そのような姿勢が必要じゃないか。私はかつてこの問題で、担当運輸省だものですから、運輸大臣田村さんのときに質問したことがあるのです。田村さんと話が一致したのですけれども、結局心臓の手術をするというのより以上に慎重にこのヘドロ工事はやらなければならないんだということは一致したのです。だから長官についても、私がいま言いましたようないきさつから、こういう判決が出たという中で当然皆さん方工事を始めるという方向で進めていかれると思うのですが、その工事を始める基本的な物の考え方というのについていま私が申し上げたのですけれども、これに対する大臣の御所見を聞いておきたい。
  16. 土屋義彦

    土屋国務大臣 基本的には全く私は先生の御意見と同感でございます。私は裁判の結果は尊重いたしますが、この事業を進めるに当たっては、何と申しましても地域住民理解と協力を得ることが第一である、かように確信をいたしております。  それからまた、安全性確保の問題につきましては、人間の英知と今日得られておりまする最高の技術を駆使いたしまして、問題が起こらないように、これは命がけで最善の努力をいたしてまいらねばならぬ、かように考えております。
  17. 馬場昇

    馬場委員 担当運輸省にお尋ねしたいのですけれども、この水俣湾ヘドロ処理工事はいつごろ着工なさいますか。実は熊本県の沢田知事は、判決があった後と、この五月二日ぐらいに記者会見をいたしまして、もちろん運輸省の第四港湾建設局環境庁、その他関係者と打ち合わせをするわけでございますが、特にまた熊本県の職員の配置の問題や、あるいは大分長くなったから単価の改定だとか業者の選定だとかいうことで二カ月以上ぐらいかかるから、どういう意味で言ったのか知りませんけれども、報道されたところによりますと、参議院選挙の告示の六月六日前後ごろ着工したい、こういうことを言っておるんですが、こんなことはよけいなことでしょうけれども、そういうことですが、あなた方が担当ですから、いつ工事に着工する予定ですか。
  18. 高田陸朗

    高田説明員 工事事業主体である熊本県から委託を受けて運輸省の第四港湾建設局が行うことになっております。  それで、工事の内容は、仮締め切り堤を設置するという、いわば準備工的なもので、汚濁防止膜の設置あるいは敷布を海底に敷設すること、あるいは一部基礎捨て石を投入する、その程度のことを当面考えておりますけれども、これらについては五月十二日、ですから昨日、工事入札を終えたところでございます。それで、その後落札者が現地に乗り込んでいろいろ準備をしたりいたしますので、実際着工するのは六月初旬と私ども見ております。そういうことでございます。
  19. 馬場昇

    馬場委員 これは運輸省にもお願いしたいのですが、特に長官も聞いておいていただきたい。  いま言われましたように、もう六月初旬には工事を始めるわけです。実は患者あるいは住民は控訴を断念しました。控訴を断念したというのは、熊本地方裁判所判決が正しいからそれを受諾するという意味で控訴を断念したのじゃないのです。これは訴えた側の考え方ですけれども、こういう間違った判断を出す司法にはもう頼らない、こんな裁判所に訴えたって間違った判決をする、もう当てにならない、自分たちの力で安全性を求める闘いをするという意味で控訴を断念したのであって、判決に服したわけではないのです。  そういうことですけれども、いよいよ工事が始まるわけでございます。そこで、こういう経験を持っているのです。私はこういう姿勢をとっていただきたいということをお願いしたいのです。世界に類例のない最大の工事をするわけですから、そしてこれはまかり間違えば二次公害水俣病を引き起こすわけですが、住民とか患者、特に漁代は経験があるのです。いままであそこは三回ぐらい小規模なしゅんせつが行われたのです。それが行われたときに、そのたびにヘドロが撹乱されて水銀が海に広がって患者が多発しておる。そういうことを地域住民はよく知っているのです。漁民が海の底も一番知っているのです。そういうことですから、住民とか患者、特に漁民なんかが前例のない最大な工事の最大の科学者だ。言葉はちょっときざに聞こえるかもしれませんけれども、この人たち住民こそ、漁民こそヘドロ処理事業の最大の技術者、科学者だ。そこから学ばなければならないという姿勢はぜひとってもらいたいと思うのです。それをとらないと、工事は必ず間違えます。そういうことをまず一つ申し上げておきたい。  それから、これは工事担当の方に申し上げますけれども、まだまだいまの監視体制を信用していないのです。心臓手術のときにいろいろな計器をつけて監視体制をとるような、そんな十分な監視体制がまだないと現地の人は思っております。だから、この監視体制を住民が納得するように、たとえば自分たちを加えてくれとか私たちの信頼する科学者も入れてくれとか、とにかく納得するような監視体制をつくり上げなければ大変なことになる。  それから、いま言われたのは本工事ではないようでございますけれども、いきなり本工事をやったってだめだと思うのです。やはり小さい規模の中で試験をし、ああここは大丈夫だったということで次に広げていくとか、小さい枠の中で実験的な試験工事を繰り返し繰り返しやりながら、それを全体的に広げていく、こういうようなテストなんかをして、安全性を確認しながらやっていかなければならないというぐあいに思うわけでございます。そして資料はみんな公開する。賛成する学者、反対する学者もおると思います。住民もおります。そういうすべての人に逐一資料を公開しながら、批判を受けながら仕事をしていくという態度を、やる場合にはぜひやらなければならない。その前に、まず納得していない訴訟をしたような住民の人とはぜひコンセンサスをとるような話し合いをしなければならない。たとえば着工を強行したと言われるようなことが絶対にないようにしなければならぬ、私はこう思うのですが、このことに対して長官運輸省の方の見解を聞いておきたい。
  20. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先ほども先生に御答弁申し上げましたとおり、何と申しましても世界に類例のない大事業でございますので、地域住民皆さん方がこの地域のことについては一番よく熟知しておるわけでございますから、これらの理解と協力を得てやりますように、事業主体である熊本県に対しても強力に指導をしてまいりたいと思いますし、また、強行に工事を着工することは避けてまいらねばならぬ、かように考えております。
  21. 高田陸朗

    高田説明員 関係住民方々のコンセンサスを得るということでございますけれども、今回準備工に着工するに当たりましても、熊本県は地元の新聞あるいは市の広報あるいは水俣市の各戸に工事内容、監視体制等を明記したパンフレットを配るといったことで、事前になるべく十分な御理解をいただくような措置をとることになっております。  それから、試験工事のお話でございますが、今回はとりあえず準備工でございまして、そのうち本工事に着工するわけでございますが、それに先立って当然小規模な試験工事を行うよう計画しております。  それから、監視体制の件でございますが、すでにメンバー構成されております監視体制の中には、学識経験者あるいは関係行政機関の方あるいは地域住民の代表者の方々、そういった方々から成っている監視体制の委員会が設置されておりまして、工事が始まりますれば常時観測に当たるわけでございます。この観測結果は常に一般に公開するというたてまえをとることになってございます。
  22. 馬場昇

    馬場委員 本当に深い三十数年の歴史を持った中で世界最大の仕事を初めてするわけですから、ぜひ地元住民と十分話し合いをしながらやっていただきたいと思うのです。  次に、チッソ水俣工場の再建中期計画の問題について御質問を申し上げたいと思います。  これはまず指導なさっております通産省にお聞きしたいのですが、最近のチッソ株式会社の経営状況についてつかんでおられる点についてお知らせをお願いしたいと思うのです。
  23. 山本雅司

    ○山本説明員 最近のチッソ株式会社の経営状況でございますが、実は三月末が決算期になっており、この決算の役員会が五月の末に行われることになっておりまして、株主総会は六月の予定でございます。したがいまして、まだ最終的に公表された数字は出ておりませんが、私どもが現在のところ会社から聴取している実態によりますと、昨年度は非常に経済的な好況もございまして、特に石油化学関係が好況だったわけでございます。したがいまして、チッソとしても一昨年の大幅な赤字から大分改善いたしまして、売上高でまいりますと、通期で千二百億を超す形になるかと考えております。それから経常利益段階では、これも赤字から黒字に転換いたしまして、額はまだ未定でございますが、一億を超す黒字が出ることは確実と考えております。  以上でございます。
  24. 馬場昇

    馬場委員 私は二月十九日の当委員会でもこのチッソの中期計画について質問をしたのですが、これは熊本県も議会決議もしておりまし、県知事名でチッソの社長にも要望しておるわけですし、また政府にも要望書なんかも出しておるわけでございますが、たくさんの県債を実は熊本県は出しておるわけでございます。また、県債を発行するに当たって、いろいろと附帯決議が県会で行われ、それに基づいて知事も要望書を出しているのです。その中で、チッソ水俣工場につきましては存置、強化、発展させてもらいたい、これが議会、知事並びに県民の要望でございますが、具体的な表現としては、チッソ水俣工場の再建計画については、地域経済に絶対に悪影響を及ぼさないようにしてもらいたい。第二の問題は、地域の雇用の減退を来さないようにしてもらいたい。この二木の柱を強く要望しておるわけです。  私も、この点について当委員会でも二月十九日にやりましたし、その以前にもやりまして、通産省はそのような立場でチッソを行政指導していただきたいということを申し上げました。通産省も、そのとおり行政指導するとお答えになりまして、じゃこの中期計画というのはいつ出るんだというような質問をいたしましたら、通産省の方から、二月十九日段階ですから、もう最終段階に来ております、近い時期にチッソ株式会社の方から、国とか県に中期再建計画の問題について相談があると思います、二月中かあるいは三月にかかるかもしれませんが、その時期にはこの計画が出ると思います、こういうことを答弁なさっておるわけでございます。ところが、現在はもう五月ですけれども、五月になってもまだ出ておりません。熊本県民も、無責任だと言って怒っておるのです。チッソ水俣工場がどうなるのか。この県債を発行するためには、この水俣工場をどうするという計画がなければだめなんだ。ここをつぶしたり、小さくしたり、雇用を減退さしちゃだめなんだ。そういう計画をチッソが出すというものだから、それならば県債を出そうと決まっているのに、そう約束した計画を全然出さない。この前も、副社長が熊本県に行って、知事から相当強く口頭で言われておるわけです。実は出ていないのです。通産省も、二月か三月に出ると指導されているのに、それも裏切っているわけです。こういうことで、何で五月になってもまだその計画が出てこないのかということを、行政指導をしながらどう把握しておられるのかということが第一点です。  第二点は、これはいつごろ出てくるのか。その内容は、さっき言った雇用の減退のないようにということ。それから私ども要望としては、新規事業をきちっと入れて強化、発展するという方向の内容にしてもらいたいと言っているのですが、この内容についてまずお答えいただきたい。
  25. 山本雅司

    ○山本説明員 ただいま馬場先生の御指摘のとおり、私は、二月の段階では二月中か三月には計画が出る見込みであるということをお答えしたわけでございます。当時はそういう情勢であったわけでございますが、最終段階に至りまして――水俣の工場の再建問題は、地域経済の発展ということもさることながら、やはり雇用の確保という問題が非常に重要な問題でございます。特に水俣工場では、塩化ビニールとか肥料をやっておりまして、このような部門をどうするかということで、最終段階になって結論を出すのにつまずいている、あるいはちょっとおくれているというのが実態のようでございます。  しかしながら、いつまでもこういう状態でいけるわけはございませんし、各方面からも強い要請があることは事実でございます。  私どもといたしましては、いろいろむずかしい問題があることは理解できますけれども、ある時点でやはり計画をぴしっと固めて踏み切らなければ実行できないという考えから、近々、多分今週の末か来週の初めになると思いますが、最終的な計画でなくても、現時点における計画の概要なりとも話しに来るようにということで、昨日も会社に強く要請した段階でございます。したがいまして、現段階における計画の内容を見まして、できるだけ早く正式な計画をつくるように、強力に要請する考えでおります。
  26. 馬場昇

    馬場委員 いまあの会社はなかなかしたたかなところがございまして、人をだましたり、もちろん何千人、何万人という被害者を出して、おれは水銀流してないと、うそばかり言っておった会社ですから。しばらくは反省しておったけれども、最近また反省が薄れて、社会的責任余り感じてない風潮があります。  そこで、いま通産の方から、今週末か来週初めに、現時点の案でもいいから相談に来いと言ったと言われますが、これには向こうがはいと言ったのかどうかということが第一点。  第二点は、これはこの前、二月十九日にも通産の方で約束していただいたんですが、熊本県の常識は、少なくとも千人体制を維持した計画をつくってくれというのが雇用の減退を来さないことですということをこの間申し上げまして、課長も、千人から一人とか二人とか減ったということは許してもらいたいけれども、そんなに減らないような千人体制というものを指導いたしますというような御答弁をいただいておるのです。今度来たときに、その答弁を踏襲されて、たとえば減らすものは減らす、新規事業はこうするということで、千人体制は維持していくという、この熊本県の要望に従った指導をしていただきたいと思うのですが、その二点についてお答えいただきたい。
  27. 山本雅司

    ○山本説明員 まず第一点でございますが、会社の方といたしましては、現時点の内容であっても必ず説明に来るということで確約しております。  それから、第二点でございますが、この点は先ほどもちょっと言及いたしましたように、塩化ビニールなり肥料というのは、構造的に採算が非常にむずかしい業種になっております。しかも、水俣の立地条件を考えますと、これから将来あれを改善していくというのは非常にむずかしい事態でございます。したがいまして、そのような問題をどう扱うか、それからそれに従事している従業員を減らさずに、どのように新規事業を出していくか、企業の運営として非常にむずかしい事態になっているのは事実でございます。したがいまして、そういう非常にむずかしい内容でございますが、そこを何とか雇用の安定に悪影響を来さないように、新規事業を含む再建計画を立てるということで、私どもも鋭意計画の内容を聞いて、必要な助言もするし、関係方面への協力も要請したいということで現在考えている段階でございます。
  28. 馬場昇

    馬場委員 ちょっとくどいようですけれども、実は県債は四年計画でございまして、ことし三年目なんですよ。何十億とか何百億になるわけで、来年が四年目になるわけです。これは毎年熊本県議会にかかるわけです。この計画いかんによっては、この県債が発行できないという状況さえ想像できるんです。そういうことでございますので、相当大きい問題だし、また具体的に言うと雇用の問題ですから、大変な問題です。そういう点で、この前も山本説明員は、改善計画の中で千名体制というのは、一人も減らないかどうかはわかりませんけれども、この千名体制のところで指導しておる、詰めに入っている、こういうことを答弁なさっておるわけでございますが、この基本姿勢はお変わりございませんね。
  29. 山本雅司

    ○山本説明員 いま先生の御指摘のとおり、基本的な姿勢ば変わっておりません。ただ、再建計画の段階によって、年次計画で多少のでこぼこが出てくる可能性は否定できませんけれども、基本的な将来の見通しとして、現在の御指摘のような体制を守るという基本姿勢で貫きたいと考えております。
  30. 馬場昇

    馬場委員 あそこはいまは自然退職が月にずっと出ているのですよ。だんだん自然退職が出て小さくなるのを待って計画を出さない、実はそう言われてもおるのです。そういうことのないようによく指導してください。  次に、水俣病患者の代理人の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  これはこの前も御質問申し上げたのですけれども、去る四月十五日に水俣市の文化会館で環境庁が行おうとした水俣病認定申請棄却処分に関する説明会が川本さんの逮捕という中で流れたわけでございますが、実はこのときの模様を一つ二つ聞いておきたいのです。四月十五日に水俣水俣病認定申請棄却処分に関する説明会を開くということを環境庁は東京の代理人の安川栄さんに連絡をなさって、安川さんが水俣患者さんに連絡をした、こういうことを聞いておるのですが、この東京の代理人の安川さんに、患者さんに言うてくれ、説明会をするぞというような手続をとられたのかどうか、この辺をまず最初に聞いておきたいのです。
  31. 本田正

    本田政府委員 臨時水俣病認定審査会の意見に基づきまして、長官が、先ほどおっしゃいました処分に関する説明会をしたわけでございます。そのとき棄却者には棄却の通知を出すと同時に、御希望の方は、理由の説明をいたしますので、お申し出くださいという手紙を同封いたしております。多分それを持って、八名棄却されたわけですが、そのうちの四名の方が説明を求められてきた、こういう経緯でございます。
  32. 馬場昇

    馬場委員 いや、私が言うのはそうじゃなしに、結局その四名の方は代理人をもって説明を求められて、代理人の方からあなた方に申し出があったわけでしょう。だから、説明会をしますよということを代理人に言われて、代理人が患者さんたちに、環境庁から説明会がありますよ、こう連絡がありましたからということを言われた、こういうことを聞いているのですが、事実ですか。
  33. 本田正

    本田政府委員 代理人が見えたときにそれを言ったかもしれませんけれども、その前に、私ども、いつやりますという通知を改めて出すと同時に、申し出た方々には電話もいたしております。
  34. 馬場昇

    馬場委員 代理人にも言われたのは事実ですね。
  35. 本田正

    本田政府委員 その後、環境庁に訪れられました代理人数名の方がおられますけれども、それにお伝えしたのも事実でございます。
  36. 馬場昇

    馬場委員 これは当然のことですけれども、質問に入る前にもう一つ聞いておきたいのは、異議申し立てとか再審請求とかいろいろ法律的に求めたのに対して、代理人を患者さんたちがつくるということは、当然のことながらお認めになっておられるわけでしょう。
  37. 本田正

    本田政府委員 患者さん方というのはそういう知識がございませんので、えてして代理人を立てられまして、そしてそれに基づく法的な手続をなさったり、あるいは弁明書をお書きになったりすることは、もちろんやっていいことだ、当然のことだと存じております。
  38. 馬場昇

    馬場委員 だから、たとえば説明会のときに本人が説明を求めたい。あなた方が説明をする。ところが本人が患者ですから、やはり身体状況でその説明を受けるような状態ではない。だから、おれのかわりに代理人を指定するから、この人に説明してください、こう言われたときには、その代理人に説明をなさるわけですか。
  39. 本田正

    本田政府委員 きわめて医学的事項にかかわることでございます。プライバシーにかかわることでございますので、代理人という形では説明できないと存じます。そういうことで御理解賜るべく努力したわけでございます。  ただ、いま御指摘のような事例につきましては、付添人という形で――普通付添人と言いますのは、主として家族とかあるいは親戚の者でございますが、そういった付添人をつける。これは患者さん方の理解能力というものも当然あるわけでございますから、付添人は認めるという方針で対処いたしました。
  40. 馬場昇

    馬場委員 私は、この間の話じゃなしに、一般論を言っているわけですけれどもね。たとえば瀕死の重症の患者が、もちろんどこにも出られない、聞いたってわからない、家族の人もまだ言葉がわからない、医学用語がわからない、あるいは理解がしにくい、そのときに環境庁が企画した説明会に来てくれ。あなた代理で説明を聞いてくれ。そうすると、代理人が説明を聞くのは当然のことじゃないですか。あなたが言ったのは、本人がおって付き添いというようなことをいま言われた。それもわかるのですよ。ところが、全然本人が説明を聞く状態じゃないときに、代理人を立ててその人に聞いてもらおうというのは、これは当然のことじゃないですか。
  41. 本田正

    本田政府委員 プライバシーにかかわるいろいろな症状、患者さんによって違いますけれども、そういったことをいろいろ申し上げるわけでございます。本来、本人だけに言うべき筋合いだと存じます。ただ、代理人ならばそれが聞けるかとなりますと、これはちょっと法的にも問題があろうかと私ども思うわけです。したがいまして、御本人がどうしても理解できないということになれば、自分を代理する者、いわゆる代理人ということじゃございませんで、私どもそれを付き添いと呼んでいるわけでございますが、その方々を選んでいただくということは、ただし一人でございますが、結構だと存じます。
  42. 馬場昇

    馬場委員 えらい本田さん、あなたは代理という言葉にこだわっているようですけれども、この人は付添人だから聞いてくださいと普通言わぬですな。自分が行くなら付添人と言うけれども、自分は寝て動けないのだから、代理人ですからこの人に言うてください、プライバシーでも何でも言うてよろしいですと言う。代理ですから、それは。本人がそれを言うわけですから、何も付添人とかでなしに、そういう代理人は認める。ただ、あなたの場合、そんなのは一人だと言われるのは、そう言うのはわからぬことはないですよ。そういうことですから、この間のと違って、たとえばだれかが説明に行きたいと言っても、私は、どうもできない状態だから、この人を代理としてやりますから、プライバシーでも何でも結構ですから、この人に言ってくださいといって代理人を立てたら、その人にあなたたち言うのがあたりまえじゃないですか。
  43. 本田正

    本田政府委員 いろいろ法的手続を代行する代理人に――代理人というのは、多くの場合複数でございます。個人の症状を言うということはプライバシー上問題があろう、こういうふうに思っているわけです。したがって、患者さん方がぜひこの人に聞いてほしいという方を、これはたまたまそれが代理人かもしれませんけれども、私どもはそういう方を付添人、こう言っているわけでございまして、代理人イコールプライバシーにかかわることをしゃべっていい、こういうふうにはつながってこないと解しております。
  44. 馬場昇

    馬場委員 代理人が通常複数ということは全然関係ないです。複数を頼むときもあるし、一人の人に頼むこともある。単数であることもあるわけですよ。だから、この辺についてはどうもぼくもよくわからぬから、もうちょっと検討してもらいたいと思うのですが、何かほかのことを考えて付添人と代理人にえらいこだわっておられるようですけれどもね。  そこで、では具体的にはこの間の例をとって申し上げますと、この間の患者さんは、川本さんを代理人に頼んでいるわけですよ。ところが、あなた方は代理人には言わないということで外してトラブルが起こったわけです。いまは本田さんの答弁によりますと、その患者さんが付添人として川本さんを頼む。川本さんはその患者さんの代理人でもある、これは結構いまの答弁によると認められるわけですね。どうですか。
  45. 本田正

    本田政府委員 代理人をちょっと外していただきまして、患者さん方が自分のそばにいて、そして症状についての詳しい説明を受けたいというその付添人を御指名なさるならば、それがたまたま代理人であっても、それは結構だと存じております。
  46. 馬場昇

    馬場委員 時間があればもう少し明らかにするのですが、私は了解できないのですけれども、あなたの言われるのはわかります。たとえばさっきの場合、川本さんを患者さんが付添人として一人置いておいてあなた方の説明を受ける、これは認めるのだ、たまたま川本さんがその人の代理人であった、それは当然関係ないことで、代理人であろうがなかろうがいいのです、こういう答弁で、あなたの言われる内容はよくわかりました。しかし、それは付添人になんかこだわらぬで、一人と言われるのもわからぬでもないですけれども、代理人に言いますと素直に答えていい問題だと思いますけれども、いまの段階のあなた方の見解はわかりました。しかし、代理人にするように、長官、この間私が質問しましたら、馬場先生の御要望を踏まえながら前向きにこの問題は検討しますという大臣の答弁もあっているわけですから、言われる意味はわかったけれども、いま少し私は了解できない問題がありますから、さらにひとつ検討を加えていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  47. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  部長と同じような御答弁になって大変恐縮でございますが、何と申しましても個人の症状等きわめてプライバシーに触れる問題でもございますので、私は、これは慎重に検討してまいらねばならぬと思いますので、先生の御意見も踏まえていろいろ勉強させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  48. 馬場昇

    馬場委員 それは検討してもらって、また後で議論いたします。  次の問題は、水俣芦北地域振興対策についてお伺いしたいのですが、これはまず国土庁の方にお尋ねしたいと思います。  昭和五十三年六月二十日の閣議で了解事項ができ上がりました。これは水俣芦北地域振興についての了解事項でございます。  この水俣芦北地域というのは、高度経済成長がよかったか悪かったかは別として、水俣病によりまして、その高度経済成長政策にも乗りおくれた、地域の発展の面において、社会的あるいは経済的に非常におくれております。脆弱です。だから、本当の水俣病対策の一環として、この水俣芦北地域を振興する必要があろう、そのためには必要な重点施策を推進して豊かな地域に再生を図る、こういうような目的を持ちまして閣議了解が行われたわけです。  これはどういう了解事項かといいますと、御存じと思いますけれども、必要性を認めるから、熊本県の具体的提案を待って水俣芦北地域振興対策を練る、こういう決定でございます。だから、熊本県は直ちに水俣芦北地域振興計画というのを策定いたしまして、これを国に提示して実施を求めてきておるところでございまして、五十四年、五十五年の要望事項もたくさんの実施計画に基づいて出されているわけです。こういう面あるいはああいう面、たくさんの面があります。国土庁関係だけでもない部門もあるわけですね。しかし、主管の庁が国土庁でございますので、どのくらいのお金をこの計画につぎ込んだのか、主にどういうものが進行しておるのか、今後どのくらいの予算をつぎ込んでどういうものを振興したいと考えておるのか、こういう計画の実施状況や今後の展望について説明をいただきたいと思うのです。
  49. 清水英明

    ○清水説明員 水俣芦北地域につきましては、御質問にございましたように、五十三年の六月に熊本県が計画を策定しております。この計画策定によりまして、国土庁が窓口になりまして関係各省庁の説明会など行いまして、各省庁の御配慮によりまして、五十四年度分につきましては、県計画の総額約九十八億円でございますが、これに対しまして総予算額約九十九億円でございまして、その計上率一〇一%ということで、県の計画を上回る事業が推進されております。  五十五年度分につきましても、すでに関係各省庁につきまして個別に説明を終えまして、協力方を依頼しているところでございます。さらに、近近また全体計画につきまして再度関係各省庁に対しましての説明を行う予定、こういうことにしております。  そういうことで、五十三年の閣議了解の線に沿いまして、国土庁といたしまして、今後とも当該地域の開発状況の把握に努めますと同時に、国の窓口といたしまして、必要に応じまして関係各省庁に御協力をお願いするようにいたしたい、このように考えております。
  50. 馬場昇

    馬場委員 これは五十五年度予算は大体どのくらいになりましょうか。
  51. 清水英明

    ○清水説明員 計画総額百十四億でございまして、個別の事業につきましては、国全体の予算という事業が多うございまして、まだ個所づけが行われておりませんので、水俣芦北地域につきましては幾らというのはまだ出てまいりません。もう少しお待ちいただきたいと思います。
  52. 馬場昇

    馬場委員 本当に悲惨な被害を受けながら、こういう点おくれておるわけでございますので、ひとつがんばっていただきたいと思うのです。  水俣病の問題はこれで終わりまして、次に、公害健康被害補償法の問題について御質問を申し上げます。  この公害健康被害補償法は、いわゆる環境アセスメント法案と取引される問題が大分ここで議論になりました。金子さんの文書なんかには、産業界から要請があれば検討するとか言って、魂の一部を売るような取引が行われておったわけでございますが、ここで大分問題になりまして、私も二点について質問したことがございます。まず第一点は、大気汚染地域の指定の解除を行うのじゃないか、指定地域を小さくするのじゃないか、そういうことによって産業界におもねるのじゃないか、こういうことを言いましたら、これにつきましては、そういうことは絶対いたしませんという答弁があっておったわけでございます。  第一点として御質問するのは、いま言いました指定地域の解除、縮小はしない、こう約束されたのに変わりございませんか。
  53. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、法が施行されまして六年目を迎えたわけでございますが、現在、地域によっては、大気が大分きれいになったから、環境もきれいになったから指定地域の見直しをすべきではないかとか、あるいはまた窒素酸化物などを地域指定要件にしていないのは不合理であるといったような批判があることを私は十分承知をいたしておるのでございます。  ともあれ、環境庁といたしましては、この制度の主管者といたしまして、これらの制度をめぐる諸問題について、やはり科学的、合理的根拠に基づいて検討を進めておるところでございます。今後とも関係方面の意見を聞きながら、制度の改善に努めてまいりたいと考えておりますが、ただいま直ちに指定解除するとかいったような考えは持っておらないことを明確に御答弁を申し上げておきます。
  54. 馬場昇

    馬場委員 次は、ぜんそく性気管支炎の六歳以上の患者認定切り捨て問題についてでございます。  これはこの委員会でも各委員から取り上げられて、私も取り上げてきたのですが、これは終始検討中というような答弁になっておりました。これについて現在どうなっておりますか。
  55. 本田正

    本田政府委員 ぜんそく性気管支炎の取り扱いに関しましていろいろ七人委員会で検討いただきました報告の中に、いま御指摘の六歳未満の者を認定対象にするという一項がございます。これをめぐりましていろいろ議論があるわけでございます。私ども認定審査会、全国の先生方の意見をもうあらかた聞き終わっております。それによりますと、医学的事項は別といたしまして、これは賛成でございますが、六歳問題につきましては、それでいいとする意見とか、もっと厳しく年齢を下げろという意見とか、いやいやもう少し延ばせという意見、実はいろいろあるわけでございます。それらの意見を踏まえまして、一体どうしようかということで現在おいおい検討中でございます。
  56. 馬場昇

    馬場委員 本田部長は検討中、検討中ということでございますが、実は、長官にお聞きしたいんですけれども、私どもは、この六歳以上の切り捨てというのを絶対すべきじゃないということを終始当委員会でも主張してきておったわけでございますし、ましていわんやアセスメントの取引材料にこんなのを使うのはもってのほかだということでやってきておったわけでございますが、実は、伝えられるところによりますと、六歳を限度として患者認定を打ち切るという年齢制限は実施すべきでない、そういうことはやらないんだ、六歳以上はぜんそく性気管支炎を打ち切る、そういうことをいま本田さんのところで研究しておるけれども、それはすべきでないという判断を大臣がしたということを漏れ承っておるわけです。そういう判断をなさいましたか。
  57. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先般、一部新聞、テレビ等でさような報道がなされたようでございますが、私の関知しないところでございます。しかしながら、先ほど本田部長からも御答弁ございましたとおり、一昨年来、七人の専門家の医家に御依頼いたしまして、いろいろ検討いたしました報告書の医学的内容につきましては、認定審査会等におきまして大方の賛同を得られたような次第でございます。この六歳の問題につきましては、それらの御意見を踏まえまして、年齢制限は実施をしないということに私はいたしたい、かように考えております。  しかしながら、現行の通知には、先生も御案内と思いますが、医学的に幾つかの問題が指摘もされておりますので、報告書のこの医学的見解を踏まえ、近く通知を改正したい、かように考えております。  以上でございます。
  58. 馬場昇

    馬場委員 新聞報道は関知していないということでございますが、ただいま本委員会で、念を押して聞くのは申しわけないのですけれども、六歳を限度として、それ以上をぜん息性気管支炎として患者認定をしないという検討をしておったことはもうやらない、年齢制限は実施しない、六歳という言葉は使わない、こういうことに決断なさった、こう考えていいですか。
  59. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  さようでございます。
  60. 馬場昇

    馬場委員 これは本田さんもえらく検討、検討でしたが、いま大臣が結論を出したようでございますので、これについてはもうあなたの検討もその結論に従うのは当然だと思うのです。通達を出したいということでございますが、これはもちろん通達に入らない、こう考えていいかということが一点。  実は現在は、昭和四十七年七月二十二日の環境庁企画調整公害保健課長の通知でもって、ぜんそく性気管支炎の認定は、補償法上の指定疾病は、学術上の疾病区分の反復性気管支炎のみだ、こうなっているようでございますね。この反復性気管支炎のほかに、アレルギー性気管支炎、乳児期気管支ぜんそく、初期小児期気管支ぜんそく、慢性気管支炎、こういうのが学術上の疾病区分になっているようでございますが、これだけ五つあるのが、現在のこの通知では、その中の反復性気管支炎のみだとされておるようでございますが、今度の「喘息性気管支炎の認定要件について」という報告書を見てみますと、いやほかの、いま言いました四つ、これもぜんそく性気管支炎として認定していいのだ、こういうふうなことになっているようでございます。だから、今度通達を出されるときには、ぜんそく性気管支炎というのは、その反復性気管支炎だけでなしに、他の四つにも幅を広げてよろしい、疾病の範囲を拡大してよろしい、こういうぐあいに拡大した通達を出されるのかどうか。六歳以上は出されないということと、出す場合には疾病の範囲を拡大してよろしい、こう出されるのかどうか、その点についてお伺いしておきたいと思うのです。
  61. 本田正

    本田政府委員 第一点の、ただいま長官からお答えございました、六歳以上は認定しない、六歳以下を認定対象とする、同じことでございますが、そういったことは、ただいま長官から、何といいますか、御指示といいますか、そういうことで私ども事務当局としては当然その線に沿って、六歳線引きはやめるという線で作業を進めていきたいと存じます。  それから、第二点目の、確かに先生指摘の四十七年の通知では、反復性気管支炎だけをぜんそく性気管支炎と言うとあります。特にゼロ歳とか一歳、二歳という小さい子供になりますと、いま先生に挙げていただきましたようなアレルギー性気管支炎とかあるいは慢性気管支炎、乳児期気管支ぜんそくあるいは小児期気管支ぜんそく、そういったものの病名がはっきりわかればその病気になるのですけれども、ゼロ歳、一歳、二歳、年齢が低いほど判然としない、つまり鑑別診断ができない。それを四十七年の通知では、鑑別診断ができるのだという前提のもとにきめつけているわけでございます。したがって、非常に疾病の範囲が狭くなっております。これも御指摘いただきましたように、今度の委員会の報告では、もう少し鑑別診断に努力しなければいけないけれども、しかし、それを反復性気管支炎だけにしぼるということは医学的に問題がある、疾病の範囲を広げろという提言もいただいているわけでございます。ですから、もちろんこの前提になるのは、鑑別診断の重要性ということになります。しかしながら、鑑別ができない低年齢層においては、これは反復性気管支炎だけに限るのでなしに、疾病の範囲を広げるべきであろう、私どももそういった広げる方向で検討いたしたいと存じます。
  62. 馬場昇

    馬場委員 実は、この公害健康被害補償法の問題につきまして大分ここで質問もしましたけれども環境アセスメントを出したいということで、この補償法を人質にとるとか、あるいは操を売るというか魂を売るというか、だんだん悪くなっていくのではないか、こういう心配をして質問したのですが、いまの答弁をずっと整理いたしますと、六歳線引をやらぬ、そして指定疾病の範囲を拡大した、悪いところはなくなっていいところが出てきたようで、これはやはり長官ががんばったなという感じが実はいたします。余りほめなかったのですけれども、これはいいことですね。この前も私ここで質問しましたが、これは物すごく後退していますよね。あなた方が、たとえばNO2の問題とか水俣の問題とか、それからまたこの問題も後退しているのではないかと思ったら、これは大体押し返していただいたということで、私は評価をしたいと思います。しかし、環境行政はずっと後退していると言われておるわけですから、そのほかのこともこのように前向きに押し返して環境行政を進めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  もう時間が余りございませんが、アセスメントの問題について。実は聞くところによりますと、大臣もよく御存じと思いますが、この間国会対策委員長会議とかいろいろな会議で、この国会は会期ももう残り少ないから、与野党一致しない法律はもう上げないとか、そういう状況になってきておるわけですが、何か自民党の政調審議会というのですか総務会というのですか、いまこれを議論なさっているということでございますが、現在のこういう政治情勢の中で議論なさっているという意味はどういう意味でしょうか。
  63. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま自民党の政務調査会の審議会が開かれておりますが、いまメモによりますと、まだほかの案件でいろいろ論議がなされておりまして、アセスの問題には入っておらないという報告を受けたような次第でございます。
  64. 馬場昇

    馬場委員 他党のことにぼくはとやかく言おうとは思いません。しかし、環境庁長官にはとやかくどころか大いに物を言いたいわけでございますが、もうその審議のことは聞きませんけれども、そう時間がございませんが、今度で本当に五回流産するわけです。一回流産、二回流産、ずっと五回流産、同じ手法をとったら六回目も私は流産すると思います。いま皆さんが検討なさっているのも、環境アセスメント法律というのはもろ刃のやいばでして、本当に環境を守るというアセスメントもあれば、環境を破壊するのに免罪符を与えるというようなアセスメントもあるわけですが、いま皆さんが議論されているのは、われわれが知っている範囲においては、これは環境を破壊する方のアセスメントだ、免罪符を与えるアセスメントだと私たちは思います。だから、もうそんな悪いのは――桃太郎が生まれるのだろうと思って、鬼退治をするだろうから産め産めと言っておりましたけれども被害を与えるような鬼が生まれてはいかぬというので、いまでは産むなと言っておるわけでございますが、そのわれわれの要望はもう御存じと思うのです。  そこで、この段階で私が再度申し上げておきたいのは、この問題はもう一遍原点に戻しなさいということです。原点というのは国民ですよ。住民です。その住民の手に戻す。何か行政措置をとらなければならぬと思うその一番近いところは、やはり地方自治体です。だから住民、そしてその一番近い行政機関、地方自治体に、本当に環境を守るにはどうするかということでもう一遍そこにおろしていただく。そして環境庁のやる仕事というのは、私どもは四原則と常に言っておるのですけれども、やはり住民の参加をきちっとやるようなアセスメントでなければだめなんだ、すべて公開の原則というものを守らなければいけないんだ、そして第三者の機関というものをはっきりして、そこで審査するということがなければだめなんだ、また地方自治体なんかのつくるのを上から抑えてはいけないのだ、こういうことを私どもは申し上げておるわけです。  だから環境庁としては、環境アセスメントの原則というか、あるべき理想的なもの、こういうものでやりなさいよという指導をする、そうして地方自治体、地方住民からぐうっと上がってきて、その中でもう一遍中央でアセスメントを考えるということがいいのではないか、これが一つの方法です。そして具体的に早くやりたいということであれば、社会党がこの国会に提案をしているのですから、社会党の出しておりますこのアセスメント法の審議にわれわれも努力する、環境庁もそれについて大いに協力していただく、こういうことがいいのではなかろうかというぐあいに私は思います。  そういう点については、いま向こうで審議するときに、自民党員たる環境庁長官もなかなかしゃべりにくいと思うのですけれども、いま私の言った原則を踏まえながら、もうこの国会ではやめた、いま先生が言われたようにがんばる、そういうところでぴしゃっとすっきりしたらどうですか。
  65. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  馬場先生、流産、流産と言われていますけれども、まだ流産までいかないのですよ。その手前でございまして、その点はまず御理解を賜りたいと思うのでございます。先が見えているのに、何で国会提出にそんなに努力しておるのかとおしかりを受けるかもわかりませんが、実は一月二十三日に自民党の環境部会の御了承をいただきまして、そしてその間、自民党と社公民三党との話し合いによって、これに関する関係閣僚協を内閣に設けていただき、閣僚協におきましてもいろいろ御討議をいただき、それに合わせて関係省庁におきましても、十七回にわたって内容等についていろいろ御討議をいただきまして、そして五月六日に正式に政府案なるものが環境部会に提出されて了承され、今日に至っておるようなわけでございますが、その間、環境庁職員もさることながら、関係省庁の職員も不眠不休というか、徹夜、徹夜で本当に大変な御努力をいただきまして、やっと法案までこぎつけたようなわけでございます。  私どもといたしましても、社会党さんが御提出になりましたような内容の法律をつくりたいことは、心から念願いたしておるような次第でございますが、現在、私ども考えておりますのは、手続法と申しましょうか、全国的な一つのルールをつくりたい、こういうような内容の法律でございまして、ともあれ法案を国会へ出していただいて、そして国会の場を通じて大いに論議をしていただき、その内容についても御検討をいただきたい、これが私どもの心からの念願でございまして、私といたしましては、国会へ出させていただくべく最後の最後まで最善の努力をいたしたい、かように心から念願いたしておる次第でございます。  ちなみに、米国の国家環境政策法におきましては、人間環境、歴史的、文化的、社会的、経済的な範囲を含めた幅広いものと定義をいたしておるようなわけでございまして、私も、でき得ればアメリカで行われておるような法律をと考えておったようなわけでございますけれども、なかなか関係各省、党の了承を得るに至らないで、今日に至っておるような次第であります。
  66. 馬場昇

    馬場委員 長官努力なさっているのはよくわかるのです。その努力には敬意を表するのですが、中身には全然敬意を表しません。流産というのは間違っていると言うが、まさに流産ですよ。これだけは言っておきます。  もう一つ、最後に念を押しておきたいのは、これは流産どころか、皆さん方の案というのは、力を持って日本全国を歩き回るのですよ。流産したものは歩き回りませんけれども、幽霊じゃない、何と言いましょうか歩き回るのです、そして影響を与えるのです、皆さんの案というのは。そういうことで、影響を与えるから慎重に取り扱わなければならぬ。また、影響を与えさせるためにやっておられるのかもしれませんけれども、悪い影響を与えさせるような処置の仕方はしていただきたくないということを最後に申し上げて、ちょうど時間が参りましたので、質問を終わります。
  67. 河野正

    河野委員長 森田景一君。
  68. 森田景一

    ○森田委員 私も先般環境アセスメント法案についていろいろ質問いたしましたが、けさの新聞報道によりますと、自民党首脳部は環境アセスメント法案の国会提出を断念した、このように報道されておりますけれども、この辺の真意はどうなのでしょうか。
  69. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  新聞報道におきましてはさような報道がなされたかどうかわかりませんが、現実には、自民党の政策審議会におきましてきょうじゅうには討議される、かように確信をいたしております。
  70. 森田景一

    ○森田委員 先ほども長官、答弁がありましたけれども、この環境アセス法案は、予算修正の際の社公民と自民党の合意で、今国会には出す、こういう約束があるわけですし、また予算委員会でも私どもの正木政審会長あるいは二見議員等の質問に対して、大平総理大臣も今国会に提出をします、こういう約束をしている法案でありますから、とにかく残り少ない日にちであったとしても、やはり今回提出がなければ、またこの次も同じ轍を繰り返さなければならない、こういうことだと思いますので、自民党の政調審議会で検討中ということでございますが、長官としては、政調審議会の方でどういう結論が出るかわかりませんが、仮にノーという結論が出たときは、どう対処されますか。
  71. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  手続上、やはり党の了承を得なければ国会へ出すというようなわけにはまいりませんが、お尋ねの、もし仮にノーというような場合には、私といたしましては、再度国会に提出させていただきますように、今後さらにじみちに粘り強く、しんぼう強く最大限努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  72. 森田景一

    ○森田委員 長官としては精いっぱいの答弁だろうと思います。私どもも、とにかく国民の環境を守るという立場から、一日も早くこの法案が提出されることを期待しておるわけでございます。内容についてはいろいろ論議がありますけれども、とにかく提出された段階でいろいろと検討していこう、こういう姿勢でおりますので、重ねてひとつ要望しておきたいと思うわけでございます。  次に、水質総量規制の今後の方針ということについて、私はお尋ねしたいと思います。  東京湾、伊勢湾、それから瀬戸内海の三水域にかかる水質総量規制がいよいよ本年六月から実施される、こういうことでございますが、CODの規制自体も実施可能な限度にとどめられております関係から、最終年度の五十九年までに、現状よりも東京湾ではわずかに六十二トン・パー・デー、伊勢湾で四十三トン・パー・デー、瀬戸内海で百三トン・パー・デー、これだけを減らすだけでございます。したがって、この程度の削減しかできないものかどうか、あるいはこの程度の削減で果たしてどの程度の水質改善が期待できるのか、これは非常に疑問であるという意見などもございます。環境庁としての考え方、対応についてまずお聞かせいただきたいと思います。
  73. 馬場道夫

    馬場政府委員 水質の総量規制制度がいよいよ実施に移されることになったわけでございますが、ただいま御指摘のように、五十九年度を目標に一定の削減をするということで出発をいたしておるわけでございますが、たとえば、東京湾の場合には六百六十トン・パー・デーということになっておるわけでございますけれども、現実には、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海もそうでございますけれども、やはり周辺におきます人口の増加なりあるいは産業の伸び等がございまして、汚濁負荷量は今後五年間にかなり増加する見込みでございます。私どもの試算でまいりますと、このまま推移いたしますと約一五%ぐらい増加する。それを現在に比べて一〇%程度減らすということでございますので、実質的には約二五%の削減というようなことになるわけでございます。  そこで、私ども法律の際にもいろいろ論議があったわけでございますが、やはり水質保全のためには各種の対策を総合的に実施しなければならない。産業排水もそうでございますし、最近とみにウエートを増しております生活排水対策も非常に重要でございます。そういうものを実施するためには、やはり実現可能な限度で実施をするということでないとなかなかうまくまいらぬわけでございます。ただその実現可能な限度も、五十九年度において実現可能な限度でございますので、私ども現在のあれでも相当の努力を要するのではなかろうかと思うわけでございます。
  74. 森田景一

    ○森田委員 先ほどの数字を具体的に申し上げますと、現在の東京湾の環境基準達成率が約六一%ということになっております。この達成率がどの程度向上する、このようにお考えでございましょうか。
  75. 馬場道夫

    馬場政府委員 総量規制の実施によりまして、環境基準の達成率はどの程度かというお尋ねでございますけれども、実は残念ながら現在までの科学的知見におきましては、まだ十分解明されてない部分もございまして、数字でもってどの程度よくなるということを明らかにすることは非常に困難でございます。と申しますのは、一つは、燐、窒素等のいわゆる富栄養化の問題がございまして、これがやはり水質に影響する、この辺の解明が必ずしも十分でない点がございます。それからもう一点は、底質から溶出をする汚濁という問題がございます。この辺の問題も、今後なお十分詰めなければならない点でございます。したがいまして、現在数字でもってどの程度の向上が見られるかということは、大変むずかしいわけでございます。ただ、この総量規制を実施することによりまして、東京湾へ流入いたします汚濁負荷量を一定量以下に抑えるということによりまして、水質を着実に改善をしていくと考えておるわけでございます。
  76. 森田景一

    ○森田委員 総量規制は環境基準の達成を目的としてつくられたわけでございまして、わが党は五十九年度時点で環境基準を達成することを強く要望しているわけでございますが、この三水域におきまして一〇〇%環境基準を達成させる時期としていつごろを目標としていらっしゃるのでしょうか。
  77. 馬場道夫

    馬場政府委員 御指摘のように、水質総量規制制度も環境基準の達成を目的といたしておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、まだ科学的知見が非常に十分でない面もございまして、いつ環境基準を達成するかという点につきましては、明確にお答えいたしにくいわけでございますが、私ども五十九年度を第一期の目標にいたしているわけでございまして、その時点で全水域環境基準を達成するということは大変困難であろうと考えておるわけでございますが、今後五年あるわけでございますので、その時点におきまして、さらに得られた知見なりあるいは富栄養化対策なり、そういういろいろな面をもう一遍そこで見直しをいたしまして、より強力な対策考えてまいりたい。そういうことによりまして環境基準の達成をなるべく早くやってまいりたいというように考えるわけでございます。
  78. 森田景一

    ○森田委員 環境基準達成がいつになるかわからないけれども、早く達成したい。これは立場上そういう答弁にならざるを得ないと思うのです。しかし、この環境基準の達成が延びるということは、環境庁の水質改善に対する熱意と意欲が問われるということになるわけでございまして、もっと主体性を持って、自動車の排ガス規制のように、いつまでに達成をするということを明示して、関係業界を説得するということが大事じゃないかと思いますが、その点についてはいかがでしょう。
  79. 馬場道夫

    馬場政府委員 時期を明示するという御指摘、これもごもっともでございますけれども、ただ、御理解いただきたいと思いますのは、水質の場合に、たとえばCODで東京湾の場合を見てまいりますと、六〇%強のものが生活排水でございます。したがいまして、自動車の排ガスのようなわけにはなかなかまいらないという実情が一つございます。それにはいろいろ下水道の整備であるとか、あるいはその他雑排水対策であるとか、産業排水以外にそういう問題が非常にウエートが大きいわけでございますので、そういう問題を推進しながらやっていくということでございまして、私ども先生のおっしゃる御趣旨はよくわかるのでございますけれども、なかなか現実問題といたしますと、時期を明示して、いつまでに達成をするというのが非常に困難であるという点を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  80. 森田景一

    ○森田委員 そこで、対象物質がCODということでございますが、CODのみでは水質改善の効果が余り上がらないとされておるのは、先ほどの御答弁のとおりであります。環境庁は、去る三月二十四日富栄養化対策を発表しておりますが、その中で、燐についても富栄養化に係る諸対策の効果を見つつ総量規制の導入について検討を行うとしておりますけれども、燐について、新聞報道によりますと、昭和六十年にも総量規制を行う、このように報道されておるわけでございますが、具体的に総量規制を行うことを決定しているのでしょうか。
  81. 馬場道夫

    馬場政府委員 先般富栄養化対策につきまして総合的な対策考え方を発表したわけでございますけれども、御承知のように、総量規制につきましては現在CODだけでございますけれども、やはり水質を根本的に改善をするというためには、富栄養化対策が大変重要なわけでございます。  たとえば、東京湾で見ましても、冬場は非常に水質がいいのでございますけれども、夏場が非常に悪いというのは、やはり燐、窒素等のそういう富栄養化問題が根底にあるのではなかろうかというような分析もあるわけでございまして、そういう意味で、富栄養化対策を強力にやらなければならぬというふうに思うわけでございます。  そこで、燐につきましての総量規制ということは一つの検討課題でございまして、私どももまず燐につきまして環境基準なりあるいは排水基準を策定し、必要があれば総量規制を実施するということは、今後の検討課題であるというふうに考えておるわけでございますが、なお、そこに至る過程にはいろいろまだ検討しなければならぬ問題が残っております。  そこで、私どもは、水域中における燐の目標レベルというものを決定をしたいというようなことで、現在専門家に集まっていただきまして、鋭意検討いたしているわけでございます。そこで燐の目標レベルというものを設定いたしまして、それに向けて燐を削減するための行政指導で総合的な対策を持っていきたい。まずそれから進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、これは瀬戸内海で現にそういう行政指導による燐の削減をやっておるわけでございますけれども、東京湾につきましてもまずそういうようなことから始めて、逐次より充実した対策をとってまいりたいというように考えているわけでございます。
  82. 森田景一

    ○森田委員 千葉県が昭和四十九年から五十三年にかけて行いました「東京湾岸栄養塩類調査」というのがございます。これは注目すべき調査結果や科学的知見を発表しております。それによりますと、次のようなことが明らかになったということでございます。  すなわち、一、プランクトンの異常増殖の主因は窒素より燐にある。二、富栄養化によって、流入汚濁が一時的に十倍にふくれる二次汚濁が起こる。三、したがって、東京湾の浄化には、燐の流入量を大幅に削減する必要がある。四、合成洗剤に含まれる燐によって、東京湾の汚濁は増幅されている。  大体以上のような調査結果でありますけれども、こうした結果や知見に対して、環境庁はどのように考えていらっしゃるでしょうか。
  83. 馬場道夫

    馬場政府委員 千葉県で東京湾の栄養塩類調査を実施しておるわけでございますが、その中でいろいろ出ておるわけでございますけれども、私どもも千葉県と、それからまた関係の都県あるいはまた環境庁もいろいろやっておりますし、また今後ともやる計画があるわけでございますけれども、そういうような調査につきまして、先般実は、先生も御承知かもしれませんが、四月十八日に、東京湾の富栄養化対策につきまして検討するための連絡会を設置いたしたわけでございまして、その場におきまして、各県のいままでの調査等につきましてもいろいろ意見の交換をし、検討をしてまいろうというようなことにいたしておるわけでございます。したがいまして、ただいまの段階で、千葉県の調査の個々の項目につきまして環境庁の見解を申し述べるのは差し控えたいと思いますけれども、いま先生のお述べになりましたような傾向は、これは東京湾についてあるというふうに考えております。
  84. 森田景一

    ○森田委員 このような千葉県の調査結果でも、燐の削減あるいは総量規制が早急に必要であるということを示しているわけでございます。  千葉県の調査によりますと、富栄養化による二次汚濁によって、河川や事業場から流入したCODは一時的に十倍となっているわけでございます。さらに、分解、沈でん、溶出を繰り返し、二次汚濁は、一次汚濁に対し、湾口部で六倍、湾央部で五倍、湾奥部で三倍になって測定されているわけでございます。このため、水質の保全、浄化にとって燐の流入量削減は不可欠となるわけでございます。千葉県沿岸地域から東京湾に流入する燐の負荷量は、一日三千七百四十一キログラム、このように言われておりますが、汚濁が最も進む夏に環境基準を達成するためには千四百七キログラム、三七・六%の削減が必要である、このようにしているわけでございます。  このことは、全閉鎖水域における燐の削減が早急に必要であるということを物語っているわけでございます。現在、燐の削減を予定しているのは、瀬戸内海と県条例による滋賀県の琵琶湖のみでございまして、東京湾については六十年から総量規制を行う、まあこれもまだはっきりしているわけじゃありませんけれども、仮に六十年から行うというような悠長な態度では、水質改善の効果は上がらないと思うわけでございます。本格的な総量規制はともかく、東京湾等においても瀬戸内海並みの燐の削減が早急に必要であると思われるわけでございます。  また、長い間の懸案になっている燐、窒素の環境基準、排出基準の設定は本年夏ごろまでにできる、こういうふうに言われておりますけれども、それに基づく規制はいつごろ行われる予定でございましょうか。  さらに、環境基準、排出基準の目安はどの程度になる見込みでありましょうか。  以上の点についてお答えいただきたいと思います。
  85. 馬場道夫

    馬場政府委員 私どもも東京湾の燐の削減対策は早急に実施をしなければならぬというように考えておるわけでございます。  そこで、いわゆる制度に基づきます総量規制等につきましては、今後なお検討しなければならぬ問題が多いわけでございますけれども、私どもやはりその前に何らかの形でできることから手をつけなければならぬというように考えておるわけでございます。先ほども申し上げましたように、東京湾におきます富栄養化対策につきまして、四月十八日に関係都県等から成ります東京湾富栄養化対策連絡会を設けたわけでございまして、ここで燐の削減対策等について検討することといたしておるわけでございます。私どもは、この連絡会の場で鋭意検討を進めまして、各自治体の意向等も十分尊重しながら対策を取りまとめてみたいというように考えておるわけでございます。したがいまして、これは先の話ではなくて、来年じゅうくらいには何とかその辺の対策考えてまいりたいというように考えるわけでございます。  それから、第二点の環境基準等の問題でございますけれども、先ほども申し上げましたが、環境基準、排水基準を設定するにつきましては、なお検討を要する点があるわけでございまして、いまいろいろな知見の集積に努めているところでございます。そこでその前の段階、環境基準の一歩手前の段階といたしまして、燐につきまして環境中の水質の目標レベルを設定したいということで、昨年の末から鋭意関係者の方に集まっていただきまして検討を進めているわけでございます。まず第一段階といたしまして、これは湖沼でございますけれども、湖の燐につきましてことしの夏までに一定の結論を出したい。それから、それが終わりまして直ちに海の燐につきまして検討を始めまして、これもなるべく早い機会に結論を出したいというように考えておりまして、その目標レベルを設定いたしまして、それに向けて当面は行政指導で総合的な燐の削減対策を講じてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  86. 森田景一

    ○森田委員 環境庁の某課長もある研究集会で同じような発言をしておりまして、この課長の発言によりますと、「水質総量規制による汚濁負荷量削減は、とくに閉鎖性水域については窒素、リンの削減と同時に進めなければ効果があがらないことが最近になって明らかになっている。」中略してありまして、「閉鎖性水域では河川が浄化されても海の汚濁は一向に改善されない実情だが、これは海に流れ出た窒素、リンが藻の栄養分となり、その死骸が汚濁物質になったり、硫酸還元バクテリヤを経て硫化水素を発生したりするためと考えられる」、こういうことを述べているわけでございます。CODと燐、窒素を同時に進めていかなければ効果は上がらない、このように言っているわけでございます。閉鎖性水域における燐、窒素の削減を、燐については、湖沼についてことし、湾については来年、こういうことでございますが、これは極力早く進めていかなければ防止対策、効果が上がらないわけでございますので、ひとつ早急に進めていただきたい、こう思うわけでございます。  総量削域基本方針は昨年の六月二十二日に定められまして、その際、CODの水域別の削減目標量が定められました。それを生活排水、産業排水、その他に分けますと、一日当たりの削減目標量は次のとおりであります。  東京湾が生活排水で五十四年度が四百二十八トン、五十九年度で三百八十六トシ、産業排水が五十四年度で二百トン、五十九年度で百八十トン、その他で五十四年度が九十四トン、五十九年度も一変わらず九十四トン、こうなっております。伊勢湾では生活排水が五十四年度で百九十八トン、五十九年度で百七十九トン、産業排水が五十四年度で二百二十五トン、五十九年度で二百八トン。瀬戸内海で生活排水が同じく五百六十九トンに対して五百十七トン、産業排水が七百九トンに対して六百六十六トン、こういうことになっているわけでございます。これを見ますと、産業排水についてはそれほど削減率が高くなっておりません。企業は資力も技術力もありまして削減率をもっと高くすべきではないか、このように考えるわけでございますが、この点についていかがでしょうか。
  87. 馬場道夫

    馬場政府委員 総量規制におきます削減の率でございますけれども先生いま御指摘のとおりでございますが、総量規制を実施する段階におきまして、私ども総量規制基準というものを中央公害対策審議会に諮問いたしまして、専門委員会あるいは部会等におきまして相当長期間にわたって専門家の方々に御審議をいただきまして答申をいただいたわけでございます。そこで、現在の法律の趣旨に照らして実施可能な妥当な線ということで設定をいたしたわけでございますが、最近の傾向から見ますと、生活排水のウエートが大きくなってきているわけでございます。     〔委員長退席、島田委員長代理着席〕 と申しますのは、産業排水につきましては四十年代におきましてかなり大きな投資をしておりまして、相当程度改善をされてきておるわけでございます。たとえば瀬戸内海で見てまいりますと、四十八年から五十一年にかけましてCODの二分の一カットというようなことを産業排水についてはやっているわけでございまして、特定の業種なり中小企業等を除きますと、かなりの程度まで水準が来ているということでございます。  そういう面からいきまして、産業排水につきましていろいろ積み上げてみますと、どうもあの程度しかならない、あれでも非常にきついという実情でございますし、それから生活排水につきましては、下水道の整備等が中心でございますけれども、今後の下水道投資の伸び等を勘案いたしまして、最大限の見積もりをいたしてやったわけでございます。したがいまして、確かに産業排水、生活排水とも一〇%程度の削減率でございますけれども、それぞれ相当むずかしい問題を含んでいるというように考えるわけでございます。
  88. 森田景一

    ○森田委員 伝えられるところによりますと、各有力企業では、たとえばCOD対策はもうとっくに卒業した、あるいは総量規制本番と言われても特別の対策考えられない、こういった有力企業の担当者の発言があるようでございます。こういうことからわかりますように、総量規制と言いましても、こういう有力企業は悠々としている状況でございます。まだ大きな余力を残していると見られても差し支えないと思います。今回の総量規制は工程排水を対象としておりますが、その濃度は、たとえば化学工業で六〇ないし二〇〇PPm、石油精製業で二〇ないし六〇PPm、鉄鋼業で六〇ないし八〇PPmと企業にとりまして比較的緩い数値ではなかったかと思われるわけでございます。したがって、ほとんどの企業では総量規制だからといって特別の対策も金もかける必要がなかったのではないか、このように考えられるわけでございます。企業の技術力、資力から見まして、さらに厳しい規制値を設定すべきではなかったでしょうか。
  89. 馬場道夫

    馬場政府委員 いま産業排水についての規制値の問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、総量規制基準につきましては、中央公害対策審議会におきまして慎重審議され、現在の科学的知見をもとに十分な検討を尽くされたわけでございまして、この基準に基づいて設定をされたものでございまして、私どもやはり妥当な数値であろうというように考えておるわけでございます。  いま御指摘になりました、一、二例を挙げられました数字でございますけれども、あれもさらに私ども、中では業種によって細分をしておりますし、たとえば鉄鋼業の場合に六〇からとございましたけれども、あれはコークスを途中のプロセスに含んだものでございまして、これはどうしてもCODが高くなる。それ以外のものは二〇PPmというふうにいたしておるわけでございまして、大変きめ細かくやっておるつもりでございます。  そこで、産業排水につきましては、各総量規制の対象になっておりますような地域につきましては、非常に厳しい上乗せ排水基準が設定をされておるわけでございまして、そういう地域に立地する事業場等におきましては、ほかの地域に比べまして相当進んだ処理技術を採用しているわけでございまして、恐らく世界の最高水準をいっている処理技術ではなかろうかというように考えるわけでございます。したがいまして、そういうような処理技術を採用しておる事業場等につきましては、総量規制の発足によりまして、新たな処理施設を付加する等の対応をしなくても、維持管理をさらに十分に徹底するというようなことによって総量規制に対応できるというようなところがあり得ることは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、私ども考えました総量規制基準は、目標年度において実施可能な線でということでございますので、実施可能な処理技術ということでございまして、五年後において実施可能な処理技術ということを目標に定めておるわけでございまして、一般的にはやはり相当の努力が必要ではなかろうかというように考えておるわけでございますし、それからまた、新増設の施設につきましては、非常に厳しい基準を採用しているような状況でございます。
  90. 森田景一

    ○森田委員 この総量規制の目標達成のためには、最初にお答えがありましたように、公共下水道の整備が必要だ、こういうお話でございました。  建設省もおいでだと思いますので、お尋ねしたいと思いますが、東京湾の浄化のために公共下水道の建設を早急に進めていただかなければならないわけでございます。たとえば千葉県では、手賀沼流域下水道あるいは江戸川左岸流域下水道、こういう大きな流域下水道の事業が進められておりますけれども、一日も早くこの完成が望まれておるわけでございます。そのためには、どうしても国の方の補助金がたくさん交付されていきませんと、事業は思うように進まないわけでございます。本年度のそれぞれの補助金配分額とこれからの見込み、こういうものについてひとつおわかりでしたらお答えいただきたいと思います。
  91. 玉木勉

    ○玉木説明員 お答えいたします。  現在千葉県では、先生おっしゃいますように、印旛沼では印旛沼流域下水道、手賀沼では手賀沼流域下水道、それから江戸川では江戸川左岸流域下水道を実施しております。  県下の公共下水道の実施状況について申し上げますと、現在三十一都市で公共下水道を実施しておりまして、このうち供用開始をしておる都市が十五都市でございます。五十四年度末の下水道の県下の普及率が二一%という状況でございます。したがいまして、われわれといたしましては、できるだけ下水道が早急に整備されますように努力をしているところでございます。  五十五年度、五十四年度の流域下水道等の予算状況を申し上げますと、昭和五十四年度は、たとえば印旛沼について申し上げますと、事業費が七十一億八千万、五十五年度は若干減っておりますけれども五十五億でございます。それから手賀沼につきましては、六十五億八千五百万が五十四年度でございましたが、五十五年度は八十二億八百万の事業費を予定をいたしておりまして、五十五年度に供用開始ができるように努力をしているところでございます。それから江戸川左岸につきましては、五十四年度に九十億三千八百万の事業費を実施しておりましたが、五十五年は百九億三千五百万の事業費を予定をいたしております。  なお、このほかに、公共下水道についても予算の重点的な配分を行って、事業促進を図っているところでございます。
  92. 森田景一

    ○森田委員 この手賀沼流域下水道、江戸川左岸流域下水道、事業費という御説明のように聞いたのですけれども、これは事業費ですか、それとも国の国庫補助金がこうだということですか。
  93. 玉木勉

    ○玉木説明員 ただいま申し上げましたのは事業費でございまして、国費で申し上げますと、印旛沼が五十四年度が四十九億八千百万でございまして、五十五年度が三十八億一千三百万でございます。それから手賀沼の国費が、五十四年度が四十七億八千六百万でございましたが、五十五年度は六十億二千五百万でございます。それから江戸川でございますが、五十四年度が国費が六十五億五千七百万でございましたが、五十五年度が七十七億五百万でございます。
  94. 森田景一

    ○森田委員 昨年度よりも本年度の方が国庫補助金も、額もふえているようでございまして、御存じのとおりあの千葉県市川、松戸、野田方面、日本一の人口増加地域でございます。そういうことで、この公共下水道、流域下水道ができないと、あの地域の都市の公共下水道も排水ができない、こういう状況でございますので、ひとつ今後とも完成に向かって建設省も鋭意努力を重ねていただきたい、このように思います。これは要望しておきます。  そういうことに関連しまして、実は千葉県の手賀沼という沼がございまして、この沼が日本じゅうの湖沼の中での汚染ワーストワンだというのですね。これは事実でございますか。
  95. 馬場道夫

    馬場政府委員 残念ながら事実でございます。
  96. 森田景一

    ○森田委員 こういう状況で、しかも、いま建設省の方からも御説明がありましたように、千葉県の公共下水道の普及率は二一%、神奈川、東京からもうんとおくれているわけでございまして、しかも人口は日本一急増地帯、この生活汚水が手賀沼という沼に流れ込んでくるわけでございまして、非常に大変な状況になっているわけです。千葉県では、こういう問題に対処して、何とか解決していきたいということで、千葉県の環境部が、河川や湖沼の大きな汚染源である家庭雑排水の抜本的対策として、家庭雑排水の集水及び処理システムというのを開発したわけでございます。  千葉県からもらってきました資料がございますので、これを差し上げたいと思います。委員長、よろしゅうございましょうか。
  97. 島田琢郎

    ○島田委員長代理 はい。
  98. 森田景一

    ○森田委員 この方式は、道路側溝や農業用水路を利用しまして、一般家庭の台所や風呂の水あるいは浄化槽で処理した屎尿水を集め、百世帯から数百世帯の小規模集団ごとに処理して、BODが一〇〇PPmの家庭雑排水をBOD二〇PPmに浄化して放流するというシステムでございます。このシステムでは、下水管建設のように大がかりな経費がかからず、しかも何年たってできるか予測できない公共下水道の建設を待っていたのでは、河川の汚濁は防止できないという現状を大幅に改善するというシステムでございます。  千葉県では、この方式による都市型モデルプラントを柏市高田地区というところに、それから農村型モデルプラントを成田空港に近い富里村にそれぞれ建設中でございます。柏市のプラントは、処理人口約六百人の百五十戸が対象でございまして、回転円板処理方式で建設費用が五千四百万円ということになっております。富里村のプラントは、処理人口八百四十人の二百二十二戸が対象でございまして、接触酸化処理方式で建設費四千九百万円ということでございます。  この方式が予定どおりの機能を発揮するならば、家庭用雑排水の処理方法に画期的な手法が導入されることになると私は期待するものでありますが、こういうことにつきまして、環境庁長官はどういう御感想をお持ちでございましょうか。
  99. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来先生の御質疑を聞いておりまして、私全く同感でございます。実は私、昨年の暮れに長官を拝命いたしまして直後、霞ケ浦、東京湾を視察いたしましたが、たまたま時期的にアオコだとか赤潮が見られなかったのでございまして、いずれ再度訪問することを約束いたしておるわけでございますが、いろいろ現地において実情を承りまして、富栄養化対策とあわせて、それぞれの地域に合った総合的な対策というものを立てていかなければならないということを深く痛感をいたしたようなわけでございます。  特に生活雑排水による水質汚濁防止対策に当たりましては、下水道の整備が基本でございますが、下水道未整備地域における家庭からの生活雑排水がほとんど未処理のまま放流されておりまして、特に都市部及びその周辺地域では、水質汚濁の大きな要因となっておるような次第でございます。生活雑排水対策といたしまして、すでに一部自治体におきましては、地域住民に対しまして雑排水による汚濁負荷の軽減のための啓発、家庭雑排水処理施設に対する助成制度、それからまた生活雑排水処理調査研究等を実施してきております。  環境庁といたしましても、この生活雑排水対策は、水質汚濁防止上非常に重要なことでもありますので、生活雑排水処理について調査研究を進めるとともに、このような処理システムをどのように普及させるかということにつきまして、助成措置も含めまして、今後、関係省庁と連絡を十分密にいたしまして検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  100. 森田景一

    ○森田委員 同じことを建設省、厚生省の方にもお尋ねしたいと思いましたが、時間の関係で次に進みます。  厚生省では現在、家庭雑排水処理対策調査検討会というのを設置して、家庭雑排水の水質等の保全システム指針というのを策定する方針であると聞いておりますが、この検討会で千葉県の共同処理システムは検討の対象になっているのでしょうか。なっているとするならば、どのように評価されているのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  101. 杉戸大作

    ○杉戸説明員 お答えいたします。  厚生省では、五十四年度に国土庁の国土総合開発事業調整費によりまして、印旛沼周辺地域をモデルといたしまして、家庭雑排水処理対策調査を実施してきているところでございます。この調査は、厚生省ですでに補助事業として実施しております下水道の整備が当面なされない地域におきます屎尿と家庭雑排水を合わせて処理するところの地域屎尿処理施設、それから長野県におきます雑排水対策、それから先生御説明の千葉県における共同処理システムを対象といたしまして、その効果とか費用等につきまして評価をし、地域別の処理対策案を作成しようとするものでございます。  そのようなことでございまして、現在検討の対象になっておりますし、千葉県の方に委員にも入っていただいております。その評価の点につきましては、まだまとまっておりませんが、地域の特性、たとえば地形とか集落、人口の密集度合い、そういうようなことによりまして効果がいろいろ違ってまいろうかと思いますが、それなりの効果があると思っております。
  102. 森田景一

    ○森田委員 それなりというのはどういう意味だかちょっと理解に苦しむのでございますけれども、私はこういう家庭雑排水共同処理システムというものが全国的に採用、設置されるようになれば、河川、湖沼等の汚濁は相当大きく改善されるのではないか、このように期待しているわけでございます。これは先般わが党の古川先生が流域下水道、公共下水道等について質問した際にもいろいろと指摘されている問題ですから、ここで繰り返しませんけれども、ぜひひとつこういうものを進めて、現在汚濁の進んでいる河川、湖沼の浄化を早急に進めるように努力をしていただきたいと思うのです。問題なのは、私はいい方法であると思っておるわけでございますけれども、新しい方式なものですから、残念ながら国庫補助対象事業に入っていないわけです。国庫補助ということになりますと、財政再建とかあるいは行財政改革だとかということで補助金を削減しなければならないという課題もあろうかと思うのですけれども、しかし、この削減というのは、不要不急の補助金を削減しろということでございまして、国民生活を守るこういう大事な事業については補助金をつけるべきだと私は思うのです。環境庁長官は、関係各方面と折衝をして、助成措置を講ずるように格段の努力をする――いつも努力努力でお気の毒でございますけれども、こちらの方はできることだと私は思いますので、ひとつ進めていただきたいと思いますし、同時に、私は国の所管というのはいろいろと本当に大変だと思っているのですけれども、この所管が何と厚生省だということでございます。厚生省としてこれを補助対象事業にしていただきたいと思うのでございます。どうでしょうか。
  103. 杉戸大作

    ○杉戸説明員 厚生省の現在補助対象といたしております地域屎尿処理施設は、管路を通じて流下しました屎尿や家庭雑排水を処理施設で処理するという方式でございます。千葉県の方式は、側溝を通してオープンの水路に流れました家庭排水を処理施設で処理しようとするものでございまして、このシステムは現行の厚生省補助制度では対象とすることは困難でございます。しかしながら、先ほど申し述べましたように、今後どのようなシステムが経済的で効果的かにつきましては、現在調査を行っているところでございまして、この家庭排水処理システムについての国庫補助の導入につきましては、今後この調査結果を参考にしつつ、地域採尿処理施設の国庫補助制度の拡充を含めまして、検討してまいりたいと思います。
  104. 森田景一

    ○森田委員 時間がほとんどございませんので、最後に申し上げておきますけれども、どうも国の対応というのは何かにつけて遅いと私は思うのです。たとえば環境アセスの問題にしても、地方の方から火の手が上がってきて国の方がもたもたしておる、こういう状況だと思うのです。この問題も同じです。目的は何か、日本の国土を守る、国民の健康を守る、生活環境を守る、これが政治の基本だろうと思うのです。そういう基本に立って、やはりベストのものが出なければベターなものでもやっていこう、こういう積極的な姿勢で取り組んでいくのが政治の仕事だと思うのです。そういう点で、ここで、大臣でないと、補助事業にできますとか、また自民党の方でいじめられるとか、いろいろあるかもしれませんので即答はできないかもしれませんけれども、ひとつ早急に検討して、実現できるように私は要望して、質問を終わりたいと思います。
  105. 島田琢郎

    ○島田委員長代理 中島武敏君。
  106. 中島武敏

    中島(武)委員 東北、上越新幹線の工事実施計画が運輸大臣から認可されたのは、たしか昭和四十六年十月十四日だと思います。それから八年余、国鉄は沿線住民に対して、高架通過による騒音、振動、日照、電波障害など、公害によるはかり知れない不安を与えてきました。しかも、これら住民の不安にまじめにこたえないで、工事を強行あるいは強行しようとしてきたわけであります。きょうは私は、この問題について国鉄並びに環境庁に対して質問したいと思います。  まず第一は、環境破壊、特に騒音問題についてお尋ねしたいと思います。  国鉄は、昭和五十一年十一月十一日付で東京第三工事局長名によって東京北区長あてに「環境対策については、環境庁の環境基準及び指針をじゅん守いたします。」と回答しておられます。これをもとに東京北区長並びに北区議会議長は、七項目の条件つきで東北新幹線の北区通過を認めたわけであります。この間、東京北区議会における不当な強行採決などがありましたけれども、きょうはこれは主題ではありませんので省きます。  七項目の条件の第一が「新幹線公害について」であり、この項目の中で「環境基準及び指針を達成することはもちろん」云々と、環境基準と指針の達成を条件としている。国鉄は、北区長の条件つき賛成に対して、一括了承、詳細は別途協議と回答をしておられます。そしてその後も繰り返し環境基準の遵守を言明してきておられます。たとえば、昨年十一月二十二日付の東京第三工事局長から東京北区長及び区議会議長あて文書でこのことを言っておりますし、また、ごく最近で言いますと、先月三十日付で東三工の局長から北区長及び区議会議長あての文書で同じことを繰り返しております。  そこで、まず国鉄にお尋ねしたい点は、国鉄が、環境基準を遵守いたします、こういうふうに繰り返し言っておられますけれども、この環境基準値七十ホン、これを遵守できるという根拠があるのか、あるならば、これをお示しいただきたいと思うのであります。
  107. 吉村恒

    ○吉村説明員 お答えいたします。  国鉄は、既開業いたしております新幹線、東海道、山陽の中でもいろいろの調査をいたすとともに、環境施策を講じてまいっておるところでございます。また最近では、小山の総合試験線というところで環境問題を主体といたしまして大々的なテストをここ数年にわたりまして続けてきたところでございます。これらの結果を工事に反映いたしておるわけでございまして、たとえば構造物の寸法を大き目なものにする、あるいは構造物と一体となった十分な高さの防音壁をするというようなことを実施に移してきておるわけでございます。いまお話のございました東京都内につきましても、当然これらの施策を講じ、技術的に最も新しいものを適用していくわけでございます。小山の試験線でいままでに判明をいたしておるところのもの、これはただいま詳細はデータを解析中でございますが、大体東京都内における新幹線の列車速度は、すなわち最高速度より大分低いわけでございます。これは、線路が都市内を通過いたしますために、線路の線形等に制約を受けておりますので、たとえば東海道新幹線における東京駅-多摩川間と同様の線路規格になっておるわけでございます。これらの速度の範囲内のところでは、いままでやっております構造物にいろいろ手当てをいたしまして、また防音壁に手当てをいたしまして、またさらに、軌道構造につきましても各種の工夫を加えたわけでございますが、これらのところでの数値は基準値に近いものが得られておるわけでございます。基準値をおおむね達成できるところまできておるわけでございます。したがいまして、さらに改善をいたしまして、詳細な調査の上で個々の構造物を設計いたしまして適用いたしますと、基準値が達成できると思っておるわけでございますが、さらには、環境基準には開業後三年ないし五年の達成期間が示されておるわけでございます。先生承知のとおり、すべての線路のすべての部分が同じ条件になりませんで、ところどころ思わぬ影響からぴょっと悪いところが出たりするわけでございます。そういうようなところはこの期間内に十分手直しをいたすつもりでございます。さらに、今後も技術開発を進めまして、それらを適用することによりまして環境基準は達成できると申し上げておるわけでございます。
  108. 中島武敏

    中島(武)委員 いまのお話ですが、環境基準は達成できるというふうに言っていらっしゃるのですけれども、私がお尋ねしたのは、環境基準が達成できる根拠、これを示していただきたいということを申したのです。いまお話もありましたし、またこれまでも環境基準は達成できるということを繰り返し、先ほど申したように言ってきているわけなんです。言ってきているのであるならば、そしてその達成ができると言うのであるならば、その資料をお示し願いたい。絶対大丈夫だということを関係の自治体にもあるいはまた住民にも千分納得がいくという措置をとる必要があると思うのです。ところが、いまのお話を伺っておっても、基準値を達成できるとは言うのですけれども、なぜできるのかということがなかなかはっきりしないのです。構造物に改善を加えたということ、軌道に改善を加えたということ、それから防音壁に改善を加えたということを抽象的に言っておられるだけなんですね。重ねて資料に基づく説明を願いたいと思います。
  109. 吉村恒

    ○吉村説明員 お答えをいたします。  詳細な最終的な資料は、先ほど申しましたように解析中でございますので、近いうちにまとめてお示しできるようにしたいと思っておりますが、いままでの試験の経過の中でも、私どもだけで閉鎖的にやっているわけではございませんで、県あるいは市、区等の関係の公害担当方々、多くの方々にごらんをいただいてきておるわけでございます。それらの数値、若干生のままのものがあり、あるいは各種の補正等の必要があるものが出たケースもございますけれども、従来から進めております全体の実験の中でかなりの方々に御理解をいただけているものと思っております。
  110. 中島武敏

    中島(武)委員 東三工の案内で北区における新幹線対策特別委員会のメンバーがこの実験の測定に立ち会ったということがあります。私その資料を持っておりますが、これによりますと、百十四キロで走って十二・五メートルのところが七十九ホン、あるいは百十キロで走って八十ホン、同じく十二・五メートルのところ、これは昨年の十二月十三日のことであります。そんな遠い昔のことじゃないのです。あるいはまた別の個所でその翌日はかったら七十ホン以下であったということもあります。ところが、これはいま局長の話なんですけれども、こういうのは、さあいらっしゃいというので、実際に新幹線対策委員会のメンバーを連れていった、はかってみたらぱあっと驚くべき高い数値が出た、こっちの方は低い数値が出た。一回こっきりだし大変不安定なんですね。だから全く資料なしに、そうなりますからひとつ信じてくださいというふうに言われても、これは現在解析中ですからというだけではだれしも納得ができないのですね。それで私は、この資料をこの委員会に提出してもらいたいと思うのです。これはどうですか。
  111. 吉村恒

    ○吉村説明員 お答えを申し上げます。  いま先生からお話がありましたように、騒音関係の測定をやっておりますと、実際にかなりばらつきがあるデータが出てくる場合がございます。しかし、先生がお話しになりましたような低速の範囲内で八十、七十九というようなところはきわめてまれで、きわめて特殊な例でございまして、平均いたしますと七十でございます。いま全体としてはそういうことでございますが、さらに先生おっしゃいますように、その辺につきましては、今後解析が終わり次第、その資料を方々に――御要求があれば本委員会でもさらに御説明をさせていただきたいと思っております。
  112. 中島武敏

    中島(武)委員 それじゃ資料は出していただくとして、また現在までの条件の中でわかっている範囲でお答え願いたいと思うのですが、国鉄は小山試験線区でいろいろと実験を繰り返しておられるようですけれども、まだばらつきがあるというのは局長が言っておられるところなんです。  私はここでお尋ねしたいのは、たまたまそういう基準値を満足するような数値が出た、あるいはさっき局長が異常に高いのはたまたま出たんだ、こう言われるのですけれども、さあいらっしゃいと連れていって、さあ見てくださいとやったら、ぱあっと百十キロ八十ホンも出てしまう。国鉄は恐らく自信があっておやりになったのじゃないかと思うのですよ。そういう場合でも百十キロで八十ホンというような高いものが出てしまう。どうひいき目に見てもばらつきがあるということは事実なんですね。実験段階でたまたま低い数値が出た、しかしそれが本当に実用にたえられるものなのかどうなのかという問題ですね。ここは厳密によく考えなければいけない点だと思う。この点は国鉄としてはそういうふうに実験を積み重ねているのですか。実用にたえられるものですか。私たちは、いらっしゃいと言うものだから行った、行ってはかってみたらこんなに高いものが出てくる、こういうのを現実に体験しておりますと、一体その実験は果たして実用にたえられるものなのかどうなのかという点を非常に疑問に感ずるのです。
  113. 吉村恒

    ○吉村説明員 お答えをいたします。  せっかくお見えいただけるという機会に、実際にはかったら高い値が出るということ、あらかじめ私どももそういうふうになると思いませんからお呼びをしておるわけでございまして、ある意味ではうちのばか正直さを少し暴露しているというふうにおとりいただいてもいいのじゃないかと思うわけでございます。先生お話しのとおり、そういう特異点は出ておりますけれども、いま私が申し上げております七十ホン近辺につきましては、多くの数の資料を統計処理いたしました結果を予測して言っておるわけでございます。  なお、この実験でございますけれども、車両の種類につきましては、実験線に二種類の車両を入れておりますけれども、これは多少構造が違いますが、ほぼ同様でございまして、ことに九六二という電車は実際の営業用電車のモデルとしてつくった車でございますので、今後の営業運転の車と全く同一の性能並びに公害等の性能を持っておると思われるわけでございますので、車両性能の点では全く現物でやっていると言えると思います。お客が乗ってないじゃないかというような点につきましては、車両重量が六十トンぐらいございまして、お客様の重量は五トンか六トンでございますから、この程度の軸重変動では騒音関係はほとんど影響がないことが過去の例で確かめられておりますので、この点でも実験は正しいと思っております。  また、車両の編成が短いからトータルの音が少なくて、実験では正しい値が出なくて本当のときはもっと大きいのじゃないかという御指摘もあるかと思いますが、線路の横で一番問題になりますような距離のところでは、この六両編成、長さ百五十メートルという列車長で十分実験できるものでございます。そのほか、風向きでございますとかその日の気象条件とか、いろいろ変動要因がございますが、そこいらもデータを補正いたしまして、平均値をとるという解析作業をいま行っておるところでございます。したがいまして、いまやっております実験は、今後の営業開始後の状況を十分実現しておるものと思っております。
  114. 中島武敏

    中島(武)委員 いま小山の試験線区でやっておる実験についてなんですが、局長の方からいまお話がありましたが、同時に東北線は非常に多雪地帯でありますし、また上越線は豪雪地帯です。したがって、耐寒耐雪の装備を施さなければならない、いわば重装備をしなければならないということがあろうかと思うのです。車両の編成につきましては、いま局長が言いましたが、実験は六両でやっておられるようですけれども、開業時には十二両、後には十六両編成でというふうに私聞いておりますけれども、こういう点では、車両の編成数、それから重さという点につきましても、実際に営業に使う場合と非常に大きな開きがあるのじゃないか、果たしてそういう実験の仕方で正しい営業をした場合の値が出るのかということについて大変疑問に思うのです。その点は、やはり営業するときの実際の状態で繰り返しの試験ということをやらなければならないのじゃないでしょうか。それで一回や二回の実験というだけじゃなくて、これは四季を通じてこれだけやってみた、何年間これを何回走らせてみた、だけれども、これについては十分耐えれる、こういうデーターであれば説得力があると思うのですけれども、そうでなければ説得力を持ち得ないのじゃないか、そういう点はどう考えておられるのかという点をお聞きしたいと思います。
  115. 吉村恒

    ○吉村説明員 先生お話しになりました軸重が雪のための重装備で重くなるのではないかというお話、先ほど申し上げました、私どもがいま走らせております車両は、いずれも重装備を終えたものになっております。すなわち、重装備と申しますと、雪国を走りますために雪を排除するためのモーターのパワーが大きくなっておりまして、モーター関係が重量が大きくなる、あるいは雪が飛び込まないための各種設備が要るというようなこと、あるいはスノープラウがつくとか、さらには車体の下に雪がつきませんようにボデーマウントになっております。そこらの重量増は、この試験に使っております車両いずれも済んでおるわけでございます。そのような車両を使い、ここ三年来実験をしてまいったわけでございます。  先生お話しのとおり、三年といえども必ずしも十分とは言えないような、騒音関係の問題というのはむずかしい問題でございますけれども、これなりの実験としてはほとんど世界にも類例を見ない大規模なものをやってきたわけでございますので、相当の信頼度が期待できるわけでございます。  なお、今後ともこの区域あるいは他の開業区域での試験も繰り返して、技術開発に努めていく所存でございます。
  116. 中島武敏

    中島(武)委員 新幹線の高架橋をつくった場合に、在来線に沿ってつくるという場合に、在来線の騒音がどれぐらい高くなるというように認識しておられるか。それから、たとえば新幹線が同じスピードで同じ騒音ですれ違うという場合に、騒音の大きさはどうなるというように認識しておられるか、この点をお尋ねします。
  117. 吉村恒

    ○吉村説明員 お答えを申し上げます。  二つの線路から騒音が同時に出た場合、これはお互いの線路の構造物、構造のあり方あるいはその高さ、それから列車の種類、速度、周辺の地形等によってかなりいろいろ違ってまいるわけでございます。何もない、全く理論的な、一般的な場合で申しますと、たとえば八十ホンと八十ホンの二本の列車が同時に来たらどうなるか、これは指数法則での算術でございますから、八十プラス八十で百六十になるわけではございませんで、八十ホンに一ないし二ホン程度積まれる程度でございます。片方の列車がもし七十ホンのレベルを達成していたといたしますと、七十と八十という組み合わせでございますと、これはやはり八十がちょっと上がるという程度でございます。ニアリー・イコール八十一ぐらいになるというようなことでございます。したがいまして、二つのものが並びますと、そのときにはやはりどうも悪い方側に引っ張られるというのが実情かと思うわけでございます。(中島(武)委員「高架橋は」と呼ぶ)  高架橋の場合、先生お話しなのは、片一方の線路が地平にございまして、その横に新幹線の高架橋ができたというようなケースをおっしゃっているかと思いますが、その場合には、純粋の音の点だけで申しますと、先ほど申し上げました計算になるわけでございますが、そのほかに若干問題になりますのに、過去の例で見ましても、高架橋に反響するという問題が起こるときがございます。この辺もすべて反響が起きて騒音が大きくなるということばかりではございませんで、たとえば高架橋の高さが十分な高さでございますと、反響したものがほとんど天空に逃げていってしまって並行した影響がないというようなケースも多うございます。したがいまして、小山の試験線で高架橋が併設しておりますところで、高架橋のある側、ない側両方はかったケースが幾つかございますけれども、右と左とで顕著な有意差が出ない、すなわち、反響の影響が余り大きくないというふうなデータもございます。  そのほかに、これは反響によるピーク値の問題でございますけれども、新幹線が開業いたしますと、並行する在来線での列車本数は、トータル的には減ってまいるわけでございます。ことに高速列車の本数は十分な対策をやった新幹線側に置きかわるのが大体原則でございますので、トータル的には特段悪化することはないと思っておりますけれども、なお、先ほど申しましたように、線路構造物の条件、立地条件等を見まして、反響するようならば吸音材を入れるとか、あるいは反射壁をつくるとかいうようなことも施策のうちには考えておるところでございます。
  118. 中島武敏

    中島(武)委員 いまのお話の中で、どうも納得できないなと思う点があるのです。それは高架橋をつくった場合に在来線の反響音というのは相当になるということは、そうならないという実験結果もあるというお話ですけれども、相当になるのじゃないか。私自身がずいぶんとこれは体験しておるものですから、そうじゃないかということを思うのです。しかし、それは指摘にとどめておきます。  そこで、環境庁にちょっとお尋ねしたいのですけれども、いま局長がお話しのように、環境基準を守ることはできる、一生懸命努力もしておられるということですけれども、しかし、今日まだ資料を提出して大丈夫という域にまでは達しておられないんじゃないかと思うのです。解析中だというお話もありました。それで、大宮以南は環境基準値を守るということを何度も繰り返し言っておられるわけです。しかし、いまの報告から見ても、私が思いますのは、大宮以北ということになりますと、列車のスピードとの関係からいっても、環境基準は守れないということは、まず間違いない。だから、局長は、新幹線鉄道の騒音に関する環境基準の三年ないし五年ということをあらかじめ言われたんだと思うのです。だけれども、大宮以南については、七十ホンなり七十五ホンなりということを言っておられるのですから、これは環境庁が決めた環境基準とはいささか違うんですね。つまり基準値はそのとおりなんですけれども、達成の期間とか方法というものにおきましては違うわけであります。  そこで、環境庁にお尋ねしたいのですけれども、約束をしたこの基準をきちんと国鉄は守るべきであると私は思うのですけれども環境庁としてはどう考えられますか。
  119. 三浦大助

    ○三浦政府委員 東北、上越新幹線の例がいま出ているわけですが、これは工事中の新幹線でございます。したがいまして、屋外で八十ホンを超えることが予想されるような地域につきましては、これは開業時直ちに環境基準を達成するように努めなければならない、こういうことになっておるわけでございます。したがって、当然八十ホンを超えるような地域では、開業時に環境基準を達成していただく、こういうことで私ども考えております。
  120. 中島武敏

    中島(武)委員 説明の趣旨が違うんです。環境基準は環境基準として環境庁は告示されておられます。しかし、国鉄は地元の自治体あるいは住民に約束をしておられる、環境基準はその基準値を守りますということを約束しておられるのです。そうした場合には、その達成の期間とか方法とかということは抜きなんです。そのときには当然環境庁としても、国鉄は約束どおりきちんとやるべきだ、そういうふうに考えられるだろうと私は思うのですけれどもどうかという質問なんです。
  121. 三浦大助

    ○三浦政府委員 大変失礼いたしました。  国鉄が地元に対しまして環境保全上約束されたことがありますれば、これを誠実に履行することには十分配慮してやっていかなければいかぬというふうに私ども考えております。
  122. 中島武敏

    中島(武)委員 時間の関係で次の問題に移りたいのですけれども、この国鉄の住民に対する態度の問題なんです。新幹線工事の着手という問題についてなんです。  五十三年の七月十八日に北区と束三工が「新幹線工事の着手については具体的協議の成立を待って実施することとし、あらかじめ区並びに関係地元に対し工事の方法、着手時期等について説明を行うものとする。」と相互に確認し合っているわけであります。ところが、五十四年の十一月八日の北区議会新幹線対策特別委員会に対する報告では、この「具体的協議の成立を待って」がなくなって、「あらかじめ区並びに関係地元に対し」の「あらかじめ区並びに」もなくなって、さらに四月三十日に東三工の局長から北区長と北区議会議長にあてた「東北新幹線建設に係る条件並びに請願及び陳情に対する回答について」という文書の中では「地域の御了解をいただいて実施いたします。」というのもなくなって、「地域住民の御了解をいただいた地域から工事に着手したい。」となっているのです。これはもう完全に区と具体的な協議とかあるいは工事の方法、着手時期の説明もなくて、地域住民の了解をいただいた地域から実施する、こういうふうに変わってきているのです。これは重大な問題じゃないかと思います。  というのは、先ほどから御質問申し上げて回答いただいておりますけれども、まだ資料の提示もない。したがって、言葉では環境基準は守ります、守れます、こうは言うのですけれども、実際にそれはだれをもまだ納得せしめていないわけであります。工事の方だけはどんどん進めます、こういう姿勢なんですね。私はこれは全く正しくない態度だと思うのです。  私は長官にひとつお尋ねしたいのです。この環境基準が守れるという保証がいま現在においてはないわけですね。あると言っておりますけれども、まだ納得せしめるようなものは何も出てないわけなんです。そこで、ただ一方的に工事だけは着手していく、こういう姿勢というのは、環境防衛の立場にある環境庁長官として、この国鉄の態度についてどう考えるかという問題についてお尋ねしたいのです。
  123. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生も御案内のとおり、この交通公害問題は今日の大きな社会問題であり、また一九八〇年代の環境行政の大きな、重要な柱の一つであると私は考えておる次第でございます。何と申しましても、この新幹線鉄道の建設に当たりましては、沿線住民方々理解と協力を得て工事を進めていくということが基本であると考えております。  環境庁といたしましては、昭和五十三年八月に環境庁大気保全局長から運輸省鉄道監督局長にあてまして、対策促進を図るべく所要の措置を講ぜられるよう要請をいたしております。今後環境基準の速やかな達成に向けて、振動対策とあわせて関係機関に強力に働きかけてまいりたいと考えておりますし、先生指摘の大宮以南の問題につきましては、私の地元でございますから私も深い関心を持ちまして、昨年大臣になりまして県庁へごあいさつに参りましたときの記者会見におきましてもこのことを取り上げ、また私自身が十二月十九日に国鉄の技師長に直接電話いたしまして、環境基準を守っていただくように強く要請をいたしたところでございます。
  124. 中島武敏

    中島(武)委員 環境基準を守るように長官も要請している、それはよろしい。だけれども、環境基準を守れるということが区においてもあるいは自治体においても、それから住民においてもまだ十分納得できないというのはなぜかと言えば、先ほどから局長が言っておられるように、守ります、守れるということは言うんだけれども、しかし、資料を出しているわけじゃありません。ただ、工事の方は一方的に進めます、こういう姿勢ですね。長官、こういう姿勢についてはやはりもっと考えてもらわなければならぬと私は思う。運輸省、国鉄に係る問題ですから、長官は直接の答弁を避けておられるのかもしれませんけれども、ここは環境保全という立場から言うならば、しっかり考えなければならないところじゃないかと思うのです。  さらにお尋ねしたいのですけれども、この新幹線の現在の計画に対して反対する沿線住民のすべてを組織している最大の組織は北区新幹線対策連合協議会、こういう組織です。ところが、これが何度国鉄総裁に会いたいということを言っても、一向に国鉄総裁は会わぬわけであります。東三工と会えということなんですね。これは一番大事な組織なんですね、しかも一番大きな組織なんです。ところが、一向に会おうとしない。こういう態度は国鉄総裁としても間違っているというように私は思うのです。環境庁長官大気汚染による公害患者患者団体の代表としばしば会っておられる。環境庁もそういうふうにやっておられる。国鉄はおまえら東三工と会えばよろしい、こういう態度というのは即刻改めなければいけないというように私は思うのです。どうですか、ちょっとはっきり答弁してもらいたいですね。
  125. 吉村恒

    ○吉村説明員 お答えを申し上げます。  北区内における現在の状況でございますけれども先生先ほどお話のありましたように、五十三年六月に区議会の御決定をいただきまして以来、私ども地元の御了解、区議会の御了解等を得ながら地元での説明会を逐次開かせていただいておりまして、今日現在では九九%と言っていい延長の御説明に入っているわけでございます。先生指摘の北新連はその一%のところでございまして、この一%の北新連のところとは、私どもの現地の東京第三工事局長あるいは私自身も数度お目にかかっていろいろ説明させていただきたいというお話を申し上げておるところでございます。しかしながら、現段階でこの方々は私どもの説明を受け入れていただく、聞いてやるというところまで至っておりません。言われることは、絶対反対だということと、それから総裁に会わせろということだけでございますものですから、私どもとしましては、ほかの多くの御納得をいただき御説明に伺っている方と同様のところまでの御説明をさせていただきたいというお願いを申し上げておるところでございます。いまの段階で総裁にお会いいただいても、どうも前進が見込めないばかりでなしに混乱すら予想されるわけでございますので、したがって、事務的な話し合いをさらに進めた上で、理解を得た上で次の段階に行くことが先決問題であると思っているわけでございます。決して私ども総裁に会わせないというような官僚的なことをやっているわけではないのでございまして、いまのような事情にあることを御理解賜りたいと思うわけでございます。
  126. 中島武敏

    中島(武)委員 いまの答弁は納得できないのです。その一%と言いますけれども、これは沿線の大部分ですよ。新幹線ができた場合に一番被害を受けるのは沿線の住民なんです。この沿線の住民の最大の組織であるところと会う。それは心配するからいろいろなことを言いたいわけです。それに対して、会っても前進がないからということを頭から決められて会わないという態度は、私は全く住民無視の態度ではないかと思います。この点は総裁にも、態度を変えて、十分に国鉄の意のあるところを会って言うぐらいの態度があってしかるべきではないですか。そういうことを重ねて要求したいと思うのです。  時間がなくなってきておりますから、まとめて二、三お尋ねします。  一つは、北新連、こういうところの住民が十分納得していない。区においても、区議会においても、まだ資料も提出されておりませんから当然のことですけれども、だれもまだ、賛成と思っている人も十分納得できるという状態にはないわけです。そういう状態のときには、特に沿線住民の組織の納得と合意を得てボーリング調査とか測量あるいは工事に着手することが必要なんだと思うのです。そういうふうに本当に態度を改めてこそ初めてうまくいくのじゃないかと思います。  それから、もう一つお尋ねしますのは、一体いつこの東北、上越新幹線は開業するのかという問題であります。  この点でも、私どもいろいろな話を聞いておりますけれども、来年の秋開業ということを表向きはいままで言っている。だから必要なんだ、だから早くやらなければならぬのだと言って工事の着手をどしどし納得を得ないで進める、こういう態度をとっておられる。これは本当に正しくない態度だと私は思うのですね。こんなことをやって新幹線を建設して、どうして国鉄と住民が、また自治体との間がうまくいくでしょうか。そういう点では、一体いつから開業するのかという問題についてもはっきりしたことを言ってもらいたいと思うのです。  どうも私が聞いているところによりますと、来年の秋開業ということを表看板にして工事の強行を図っておるようでありますけれども、しかし、今月に入りましてから、国鉄本社と国鉄労働組合における協議によれば、これは団体交渉の席上において国鉄当局から明らかにされていることですけれども、「本日東北、上越新幹線開業についての団体交渉を行なった。この席上で当局が明らかにした内容は、次のとおりであった。」ということで「開業時期および開業の形態については五十六年十月大宮駅からの暫定開業となる。(但し、)」とただし書きがついておりますけれども、外部に対してはそういうことは言わないのだ、こういう態度を国鉄の労働組合に対しては言っておられる。私はこういうのは明瞭にもっとはっきりすることが必要じゃないかと思うのです。  以上三点、お尋ねします。
  127. 吉村恒

    ○吉村説明員 お答えいたします。  北区内の仕事の進め方でございますが、先ほど先生からお話がございまして、長官にお答えいただいたところでございますけれども、私ども仕事の進め方としましては、あくまでも五十三年の北区議会が御了承いただいたときのことを基本に考えておるわけでございまして、その後順々に言葉が抜けていって工事を強行しようとしているのではないかという先ほどのお話でございますが、これは先生いささか誤解でございまして、そのときに用地の説明とか用地の取得とかボーリングとか、これは個々の御納得を得て進める、土木工事の着手についてはさらに区議会との協議をせいというお話であるわけでございます。したがいまして、昭和五十三年から今日までの間に、先ほど申しましたように私ども担当者、各地区、各戸に伺いまして、協議が成立したところからボーリングをさせていただいたり、あるいは家屋の立ち退きすらやっていただいているところが相当数出ておるわけでございます。それらの推移がございますので、逐次文章が変わっておるわけでございまして、終局的にはやはり前の五十三年のお約束のとおり、地元の大多数の御同意を前提として、区議会の御同意を得た上で今後進めたいと考えておるわけでございます。  それらでございますので、決してごり押しをして進めてしまおうと考えているわけではございません。調査等につきましても同様でございます。  それから、東北、上越新幹線の開業はいつかというお話でございますが、ただいまのところ、上野-盛岡間全体について昭和五十五年度内に工事を完成させるという運輸省からいただいた御認可の線に従いまして鋭意努力をいたしておるところでございますので、五十六年度に練習運転とか試験とかを終わりますと開業というかっこうになるわけでございます。先生指摘のとおり、都内あるいは埼玉県南三市におきましていろいろむずかしい状況が起きておりまして、必ずしも望ましい予定どおりの状況にないことはだんだん明白になってきつつあるわけでございますが、現在としましては、工事開始以来九年にもなり、早期開業についての御希望も非常に強いわけでございますので、がんばっていきたいと思っておるわけでございます。  なお、団体交渉の席上で出たというお話でございますけれども、これはいわゆる労働条件として中を示せるようになったものが工事の進捗率の高い北の方でございますので、その範囲内に限って、そういう表現の上でしたものと思われるわけでございまして、御了解をいただきたいと思います。
  128. 中島武敏

    中島(武)委員 いまの新幹線建設局長のお話は違います。あなたが言っておられるのは、ボーリングや土地の買収の問題、それについてはこういうふうに言っておられるのですけれども、私はそこを言っているのではないのです。これはこの文書にも非常に明瞭にはっきりしているのですけれども、「新幹線の建設計画につきましては、引き続き地元の方々の御理解を求めるとともに、工事の実施に当たっては、事前に工事の内容をよく説明して、地域の御了解をいただいたところから実施いたします。」こうなっているのです。つまり工事の問題なんです。工事の問題について、以前に言われておりましたようなことの協議はやられておりますか。やられていないのです。それから時期、方法を明示するということについても、これはやられておりますか。やられていないのです。それで、ただ着手するというふうに言っておられるのでありまして、もう時間ですから終わりにしたいと思っているのですけれども、間違った答弁だけでおしまいにするわけにはいきませんので、私はそういうことをきちんと指摘したいと思います。先ほどの局長の答弁は間違っている。  それから、こういうところにもあらわれておりますように、ちゃんと住民と十分話し合うという姿勢をとらなければいけない。そのためには、北新連の代表が総裁にも会わせろと言っているのであるから、そういう点をはっきり国鉄の態度として改めてもらいたいということを私は重ねて要望します。
  129. 吉村恒

    ○吉村説明員 お答え申し上げます。  地元と十分協議をせよというお話、先生の御指摘のとおり私どもも胸にこたえて、今後とも十分御協議を申し上げ、御納得を得て仕事を進めたいと思っております。現在、先生お話しのありましたとおり、区議会の了承等が得られておりませんので、北区内におきまして新幹線工事はまだ施行しておりません。施行しておりますのは、赤羽線の通勤改良に伴う赤羽駅の工事、あるいは道路改良に伴います車坂の改良工事等は着手しておりますが、そのほかの新幹線工事は、お約束のとおり、今後地元の御了承を前提とする区議会の御了承を得た上で進めたいと思っておるわけでございます。
  130. 島田琢郎

    ○島田委員長代理 中島君に申し上げます。本会議の関係がありますから、取りまとめてください。
  131. 中島武敏

    中島(武)委員 時間ですから、終わります。
  132. 島田琢郎

    ○島田委員長代理 次回は、来る十六日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十分散会