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1980-03-04 第91回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月四日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 河野  正君    理事 玉生 孝久君 理事 戸沢 政方君    理事 西田  司君 理事 島田 琢郎君    理事 馬場  昇君 理事 古川 雅司君    理事 則武 真一君 理事 中井  洽君       天野 公義君    池田  淳君       田原  隆君    中村正三郎君       橋本龍太郎君    畑 英次郎君       吹田  愰君    宮下 創平君       土井たか子君    野口 幸一君       竹内 勝彦君    森田 景一君       木下敬之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁企画調整         局環境保健部長 本田  正君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君  委員外出席者         通商産業省立地         公害局公害防止         企画課長    佐藤 素祥君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   山本 幸雄君     玉生 孝久君 三月四日  理事山本幸雄君二月二十日委員辞任につき、そ  の補欠として玉生孝久君が理事に当選した。     ――――――――――――― 二月二十一日  公害健康被害補償法に基づく指定地域解除反  対等に関する請願木原実紹介)(第一〇二  〇号) 同月二十六日  公害健康被害補償法に基づく指定地域解除反  対等に関する請願松本善明紹介)(第一四  五二号)  同(坂口力紹介)(第一四八九号) 三月三日  公害健康被害補償法に基づく指定地域解除反  対等に関する請願馬場昇紹介)(第一八二  四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七号)      ――――◇―――――
  2. 河野正

    河野委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  去る二月二十日、理事山本幸雄君の委員辞任に伴い、現在理事が一名欠員になっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野正

    河野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、玉生孝久君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 河野正

    河野委員長 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野口幸一君。
  5. 野口幸一

    野口委員 今回のこの法律改正は四回目ということでありますけれども、単なる期間延長をするという表づらは非常に簡単な審議であるように見えるのでありますが、今後もこの租税特別措置法によりますところの重量税税率特例延長に合わせて、このように期間延長を繰り返していくだけにとどまるようなこの法の改正というのを繰り返されるのかどうなのか、まず、この点を長官からお聞きしたいと思います。
  6. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、昭和四十九年度から五十四年度までの間、自動車重量税の収入から相当額引き当て措置がとられてまいりましたが、五十五年度以降につきましても、この方式が合理的で現実的な措置であると考えまして、財源を引き当てるべきこの自動車重量税現行税率特例措置延長期間を踏まえて、三年間の延長を行うことといたした次第でございます。
  7. 野口幸一

    野口委員 いまもおっしゃいましたように、すでに昭和四十八年の、本制度の創設に関しまして、中央公害対策審議会答申におきまして、移動発生源にかかる費用負担については原燃料賦課方式それから自動車重量税引き当て方式のいずれかを選択しなさいということであったのでありますが、政府自動車重量税引き当て方式を選択したわけでありますなれば、この方式を恒久化するために必要な措置が当然とられてもいいのではないだろうかと一応思うのでありますが、その点についてはいかがなものでありますか。
  8. 本田正

    本田政府委員 この制度を恒久化するということにつきましては、これはたまたまいわゆる自動車重量税からの引き当てということをやっているということでございまして、現時点では、先ほど長官が申し上げましたように、重量税から引き当てるという方式がよろしいということでございますけれども、その他関係団体等からも、いろいろほかに方式があるのじゃなかろうかということで検討せよ、また検討する必要があると私ども思っているわけでございます。  そこで、いろんな方式というのが考えられるわけでございますけれども、それらを逐一検討いたしました結果、現時点ではこの方式が一番よろしいというふうに御意見もいただき、私どももそう思っているわけでございますので、いまのところこれを恒久化するということまではまだ検討が至ってないというふうに御理解していただきたいと思います。
  9. 野口幸一

    野口委員 そういう現時点における見解はわかるのであります。  それで今度は、移動発生源として自動車だけを考えておられるわけでありますけれども、ほかに航空機船舶などがあると思われますが、これに対して費用負担というものをさせたらいいのじゃないか、こういうふうに思われますが、単に自動車だけに限っておられるという今日時点考え方についてお聞きをいたしたいと思います。
  10. 本田正

    本田政府委員 ほかにいろいろ検討することがあると申し上げました中に、いま御指摘航空機とかあるいは船舶とかいうものがあるわけでございます。ただ、いろいろ検討いたしてみますと、日本国全体から出るいわゆる大気汚染物質と、それから飛行機とか船舶とかというものから出る量というものは、いまのところ非常に低い比率だと存じます。そういったこととか、あるいはそれを対象にした徴収技術ということを考えてみますと、たとえば船舶にしろ航空機にしろ、領海の問題とか、飛行機で言えば飛び上がるときとおりるとき、そういったところをどこからどうとらえたらいいのかというようなことで、汚染負荷量というものの把握が非常に困難であるわけです。そういったこともいろいろ検討いたしました結果、これもちょっと現時点では断念せざるを得ない、こういう見解に達しているわけでございます。
  11. 野口幸一

    野口委員 それではいまの御発言は、取りたいと思うけれども技術的にそういうことはむずかしいので結局取らないのだ、こういう意味ですか。
  12. 本田正

    本田政府委員 技術的にも負荷量というものをキャッチすることができないし、それから全体に占める量も、これはあえて技術を乗り越えて徴収するというところまでにまだ至っていないのじゃなかろうか。その全体の量との比率の問題、さらにはいま御指摘徴収技術の問題、そういったところにまだまだ現時点では問題がある、こういうふうに考えているわけでございます。
  13. 野口幸一

    野口委員 それでは次に、汚染負荷量賦課金の単価であります。年々上昇の一途をたどっておりまするが、SOx排出量は減少しておりましても、被害患者数におきましては減るどころか増加をしている地域もございまして、費用負担は増加する一方だという事例が当然見られるところであります。しかし一方、大都市や幹線道路の周辺の大気汚染の現況を考えますと、どうしても工場等排出するNOxに対して費用負担を求めるのが常識ではないだろうか、こういうような考えに立つわけでありまするが、この点について環境庁はいまどう思っておられますか、お伺いいたします。
  14. 本田正

    本田政府委員 SOxだけじゃなしにNOxからも費用徴収すべきじゃないかという御意見だと存じます。  NOx大気汚染に非常にかかわり合っている、寄与しているその度合いというもののキャッチは、NOxが示す悪さと申しますか、そういったことはいまだ明確ではございませんけれどもNOxをひとつ指標にしたらどうだということにつきましては、NOxは、先生御存じのとおりSOxと違いまして、SOxはあるいは燃料を押さえることによって大体その排出する量というものがきわめて的確につかみ得るわけでございます。ところがNOx御存じのとおり、その燃料にもよりますけれども燃焼条件といった温度を高く燃やす、低く燃やすという条件によってずいぶんと変わってまいるといったことがございまして、いま直ちにNOx賦課金徴収についての指標化をするということがきわめて困難であるわけでございます。そういったことから、NOx排出というものを踏まえながらいまSOxというものを物差しにして賦課金を決めている、こうせざるを得ないという現状をひとつ御理解賜りたいと存じます。
  15. 野口幸一

    野口委員 現状わからないこともありませんけれども、しかし、NOxに対しての費用負担を求めるということについて、もう少し環境庁自身が一歩進んで、現状把握というものをもっと科学的にといいますか、検討をしてとらまえていく必要があるのではないかと私は思うのであります。  しかし、さらに問題は、汚染負荷量賦課金指定地域の問題に移りますが、その他の地域負荷量率との比がいま九対一ということであります。どういう理由で九対一というようになったか、ひとつ教えていただきたいと思います。
  16. 本田正

    本田政府委員 まさに御指摘のとおり、その他地域とそれから指定地域賦課金単位当たり金額というものが九対一に相なっております。これは中公審が四十九年にいろいろその辺のことを検討した中に、その他地域とそれから――これはこの制度そのものが、一つ汚染者負担原則を踏まえながら、しかも、個々因果関係というものにつきましてはなかなか特定できないという制度にこれが発足しているという前提一つございまして、つまり共同責任においてこの補償を行うというそういった原則がございます。それに成り立った制度を踏まえまして、発足当初の検討に当たりまして大気汚染状況格差というものがその他地域指定地域の中にあるわけであります。そういったことも踏まえる。それからこの制度そのものが、その他地域指定地域の持つ賦課金金額が大体二分の一が適切であろう、こういった御答申もいただいているわけなんです。そういった現時点での汚染のその他地域指定地域状況と、それからお金の面ではおおむねその半分半分持つがよかろう、こういった考え方基盤にいたしましていろいろ計算をいたします結果が一対九という金額に相なるわけでございます。
  17. 野口幸一

    野口委員 現在もこの比率が正しいといいますか、現状に適していると思っておられますか。
  18. 本田正

    本田政府委員 申し上げましたようなこの制度の基本を踏まえますならば、現状では一対九が適切であろうというふうに考えております。
  19. 野口幸一

    野口委員 指定地域発生源がかなりの部分を負担すべきであるという趣旨があるわけでありますから、その意味から考えまして再検討する必要があるのじゃないだろうか、こう思うのですが、いかがですか。
  20. 本田正

    本田政府委員 現時点では、九対一ということが現時点に合う数字だと思っております。しかしながら、御指摘のようにいろいろ汚染の態様というものが変わってくるわけでございます。したがいまして、そういった現状を踏まえつつ、この数字というものは未来永劫にして九対一というものじゃないというふうに思っております。当然検討一つの重要な課題だと存じております。
  21. 野口幸一

    野口委員 それに関連しまして、指定地域から移転をした工場がありまして、過去に著しい汚染があり、公害病を多発させたというようなことがあった場合におけるところの特別負担といいますか、そういうものを、移転した後においてでもいわゆる負担を求めてもよいと思うのでありますけれども、こういう制度についてはいかがなお考えを持っておられますか。
  22. 本田正

    本田政府委員 こういう趣旨だと解してよろしゅうございましょうか。指定地域工場があって、そしてその他地域工場が移転した場合に、もと指定地域にいたのであるから、たとえば一対九の九を取ったらいかがだろうか、こういう御指摘だと存じますけれども、この制度が、先ほどちょっと申し上げましたように、いわゆる個々企業責任というものが明確に因果関係が問えないということを一つ基盤にいたしまして、その他地域からも含めまして全国的に、そういう排出量からその費用負担していただくという制度上の割り切りがあるわけでございます。したがいまして、工場個々については因果関係を特定しない、こういう前提に立っておるものですから、やはりその他地域に移りましたならば、そういった割り切りのもとでの費用徴収ということに割り切らざるを得ないのじゃなかろうかと存じます。  しかしながら、地域によっては、たとえば四日市とか、その他一、二の地域においてはそういうこともやっておるということを聞いております。これはどうしてかといいますと、その指定地域内にいたときの工場が、過去から現在に至るまでの排出量というものが小地域でございますからわりと的確にキャッチできるということです。これが全国的にそういうことになりますと、その工場の過去も含めましてのそういった排出した量というものが非常につかみづらくなるわけであります。こういった二つ理由によりまして、転出した企業からもとのとおりに取り立てるということは技術的にも非常に因難な面があるのじゃなかろうか、こういうふうに存じております。
  23. 野口幸一

    野口委員 いまの問題につきましては、少しく環境庁の方も御検討をいただいて、この負担のあり方についても御検討をいただきたいと思うのでありますが、いかがですか。
  24. 本田正

    本田政府委員 公害健康被害補償法をめぐりますいろいろたくさんな問題が現にあるわけでございます。その中の一つとして検討していきたいと存じております。
  25. 野口幸一

    野口委員 次に、これはちょっと事例が変わっておるのでありますけれども指定地域を全く抱えていない県や市、いわゆる地方自治体が、ごみなどの焼却施設やまた下水汚泥焼却施設等賦課対象になっているわけでありますけれども、これらの場合、この地方自治体がその地方住民生活に欠くべからざる施設を運営するものでありますから、その他地域住民のためにいわば公費を支出しなければならないという状況になっているわけですね。こういうことを考えますと、これらの賦課対象になっているということについて特別な配慮が必要なのではないだろうか、こういう一つ考えを持っているのですけれども、この辺についてはいかがな見解をお持ちでしょうか。
  26. 本田正

    本田政府委員 この制度が、いわゆる汚染物質といいますか、大気汚染する物質を出す企業からその費用をいただくのだ、こういうふうな制度で、これも制度一つ割り切りでございます。  確かにいま先生指摘の非常に公共的なといいますか、あるいは住民生活に密着したような施設もあるわけでございます。いま御指摘になりましたごみ焼き施設とか、そういったものがそうだと思います。しかしながら、汚染物質排出するということにおいては、やはり出しているのは確かでございますので、そういった割り切りのもとにこれはやはりいただかざるを得ないということでございます。  ちなみに、ほかにもいろいろ住民生活に密着したという施設、どこまでどう取るのか非常にむずかしゅうございますけれども、たとえば病院とか、そういったところからも実際いただいているわけでございます。そういったことから、その他地域は、先ほど指摘のように九対一の格差もそのために設けている――そのためにじゃございませんけれども、そういったことも勘案いたしまして、汚染物質排出しているという観点からやはりいただかざるを得ないのじゃなかろうか、こういうふうに存じております。
  27. 野口幸一

    野口委員 直線的に物を解釈した場合には、それはそのとおりだと思うのでありますけれども、少なくとも地元住民生活に密着しているといいますか、欠くべからざる施設などが、いまおっしゃったように病院もそうなんですけれども、そういうふうなものについては、なるほど法のたてまえからいえばそういう形になるかもわかりませんけれども、今後いわゆる特別な配慮をもって賦課対象から除外をしていくといべ考え方をお持ちになるような考えはないでしょうか。今後そういう検討をしていただくということは、いまの時点では考えられませんか。
  28. 本田正

    本田政府委員 先生の御指摘趣旨はよくわかる気がいたします。けれども、やはりこの制度そのものが、汚染物質を出している者の共同責任という非常に大きな割り切りのもとに補償ができているわけでございます。九対一の比率問題も含めまして、それは当然検討はいたしたいと思いますけれども、それを外してしまうという直接的な検討ということは、制度がある以上、なかなかやりづろうございまして、全体のいろいろな割り切りに基づきましたこの制度検討の広い意味での一環として、特に比率問題を中心に検討はいたしたいと存じております。
  29. 野口幸一

    野口委員 先ほど来の話とは少しく変化をいたしますが、去る二月ですか、新聞等で非常に騒がせました認定条件にかかわる問題ですが、環境庁は、指定地域解除要件設定について検討を進めておられると聞いておるわけですけれども、どのような検討をしておられるのか、その辺について、まず検討を進めるいわゆる視点というのはどこに置いておられるのか、お聞きしたい。
  30. 本田正

    本田政府委員 地域指定解除要件についての御指摘でございますが、これは四十九年にこの制度発足いたしましたときにも、地域指定だけじゃなしに、解除というものがあり得るんだということから発足しているわけでございますが、現状においては、指定要件の方は相当細かくはっきり規定がございますけれども解除要件については、中公審答申を見てみますと、大気の著しい汚染がなくなること、それから患者発生が他の地域に比べてほとんど同じになること、この二つ条件が示されているだけでございます。できますならば、もう少しこの解除要件というものを明確にしたいということから、そういったいわゆる物差しと申しますか、地域指定解除をもしするならば、そういった物差しがどうやったらできるだろうか、そういう検討はいたしております。しかしながら、公害健康被害補償法をめぐりますいろいろな問題点がこのほかにあるわけでございます。そういったこともあわせてやっているのでございまして、地域指定解除要件だけを特に取り上げてやっているということでもございませんので、その辺は御理解賜りたいと存じます。
  31. 野口幸一

    野口委員 いま世上伝えられているように、経団連意見というものを非常に尊重して、汚染と無関係患者制度から除外することを――こういうためにやっているとは言わないでしょうけれども、そのように感じられるような、大気汚染状況だけに着目したり、あるいはまた患者新規発生状況健康回復状況等健康被害実情を全く無視したような形で検討をしているのじゃないだろうか。もしもこういうような検討の仕方をしているとするならば、結果的には患者を切り捨てていこうという考え方につながるのではないか。非常に心配をするわけでありますが、今後この地域指定解除要件というものの、いわば先ほどおっしゃったような物差しといいますか、それは十二分な配慮のもとで、単に経団連意見というものだけが、その物差し設定に当たっての重要なものになっていくということにならないようにしていただきたい。このような点について、もう一度御説明いただきたい。
  32. 本田正

    本田政府委員 公害健康被害補償法は、非常な割り切りをもって発足しているために、いろいろと割り切りをめぐる問題があるわけでございます。地域指定解除要件だけでございませんで、たとえばNOxをどういうふうに地域指定要件の中に取り入れていくか、そういった問題、あるいは暴露要件といいますか、それを見直す必要があるのじゃなかろうかとか、私どもこの制度を預かっている者として、当然制度がうまく運営していくようにという視点からいろいろ検討いたしているのは事実でございます。しかしながら、先生指摘のように、経団連がいろいろ言ってきたから、あるいは患者切り捨てを図ってとか、そういうことではさらさらございませんで、あくまで制度主管者として、せっかくの公害健康被害補償法が、その目的であります公害患者の迅速かつ公正な保護を図るという目的に沿ってうまく運用されるように、そういう視点から検討いたしているということを御理解賜りたいと存じます。
  33. 野口幸一

    野口委員 それで、環境庁はどの部局調査あるいは検討され、あるいはまたプロジェクトチームなどをおつくりになってこの種の問題を検討されているのか、実情はどういうぐあいに進めておられるのか、ちょっとお聞きしたい。
  34. 本田正

    本田政府委員 地域指定解除要件設定のための委員会とか検討、そういった直接的なことはやっておりません。しかしながら、たとえば指定地域追跡調査とか、これは毎年やっておりますが、それから非常にいろんな地域での患者発生をどうキャッチしたらいいか、これは方法論的にきわめてむずかしゅうございます。そういったことについて、幾つかのテーマごと専門家にお願いして、検討は進めております。したがいまして、申し上げましたように、地域指定解除するとか、あるいはこれをどうする、あるいは暴露要件をどうする、そういった目的に従った検討じゃなく、いろんな科学的な知見というものが要るわけでございます。またそれは、あるいは検討事項のどれにでも通用するかもしれない、そういった視点から、きわめて科学的な、基礎的な調査ということをお願いしているのは事実でございます。
  35. 野口幸一

    野口委員 そうすると、部局で単独にこの調査をやっているんじゃなくて、あるいはまたプロジェクトなどをつくってこの種の協議をしているという実態はないわけですね。
  36. 本田正

    本田政府委員 申しおくれました。これを担当している部局は、環境庁企画調整局環境保健部、私のところでございます。
  37. 野口幸一

    野口委員 私は、この解除要件設定の問題というのは非常に重要な問題だろうと思うのであります。したがって、いま調査研究をやっておられる部局で一定のプロジェクトなどをつくって、この種の協議というものをもっと多重的に、各種の意見検討して今後進めていただきたい、こういうことをお願いをしておきたいと思うのであります。  次に、地域指定要件の中にNOxを加えるべきだということについては、先ほどからいろいろと言われておりますし、またこの制度発足以来、すでにたくさんの方々が、このNOx問題については議論されているところであります。できるだけこのNOxについても実現を地域指定要件に入れるように努力をしていただきたいと思いますが、環境庁、この環境基準というものを〇・〇四から〇・〇六という間で、それぞれの自治体に対して指示しておられるようでありますけれども、どういう理由でこの〇・〇四から〇・〇六という幅の中で御指定をされておるのか、指示をしておられるのか、その辺のところをちょっとお聞かせいただけませんか。
  38. 三浦大助

    三浦政府委員 ただいまの御質問でございますが、五十三年の環境基準の改定に際しましては、幅で示されました窒素酸化物専門委員会の指針を踏まえて行ったものでございます。このゾーンの上限でございます〇・〇六PPmでも、国民の健康が十分に保護できるということでございますが、しかし、現実に〇・〇六PPmを下回る地域がかなり存在しておるわけでございます。それで、汚染の防止を図ることが可能であるにもかかわらず安易な汚染の進行を許すことは適切でない、こういう判断のもとに、環境基準を〇・〇四から〇・〇六PPmまでのゾーンとして、ゾーン内では私どもが申し上げていますいわゆる非悪化原則考え方で運用をしていこうということで、幅で示したわけでございます。
  39. 野口幸一

    野口委員 わかりました。  次に、先ほどちょっと先走りましたが、ぜんそく性気管支炎の認定要件を六歳未満とすることについて、環境庁は今後どのように取り組むつもりか。これはひとつ大臣からきちっとお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  40. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  一昨年来、この問題につきましては、七人の専門家先生方に御依頼を申し上げましていろいろと検討をお願いし、さらに実務医家と申しましょうか、第一線で御活躍をいただいておりまする先生方にもお願いいたしましていろいろ検討をいたしておるところでございますが、この問題につきましては、いま直ちにどうこうするというわけではなくいたしまして、いろいろと医学的立場から検討がなされておるということでございます。
  41. 野口幸一

    野口委員 そうしますと、環境庁としてはそういうものが出されただけということで、実質的にこの問題がいわゆる地域解除につながる補償法の見直しの第一段だというようなことで今後これに取り組んでいくことはないということですか。
  42. 土屋義彦

    土屋国務大臣 いま直ちにどうこうするという考えは持っておりません。
  43. 野口幸一

    野口委員 その直ちにということはどういうことなんです。
  44. 本田正

    本田政府委員 私から補足させていただきます。  これは長官も申し上げましたように、認定審査に当たっている先生方からは、かねてから、ぜんそく性気管支炎というのは病名として非常にあいまいだし、範囲が明確でない。しかも、いまやっている、四十七年に私どもが出しました通知によると、ぜんそく性気管支炎というのは非常に幅が狭いわけでございます。反復性気管支炎だけに限っているような通知でございます。そういったいろいろ医学的なことを検討してほしいというかねてからの要望がございまして、長官も申し上げましたように、一年かかって七人の委員からの意見が出てきたわけです。きわめて医学的な内容でございまして、これについて四十一の全国の審査会の先生方にまず御報告をし、意見を徴したわけでございます。  その意見の集約というものは、医学的な事項については、たとえて言いますと、ぜんそく性気管支炎というのは二歳以下に多い病気である、それからもっと疾病の範囲を広げるべきであるといったこと、それからおよそ年齢が大きくなればなるほど鑑別がしやすくなって正規の正しい病名がつくはずである、そうなると医学管理が適切になるので、できるだけ鑑別をすべきである、こういうきわめて医学的な内容、こういったことにつきましては、各審査会の先生方の御意見は全くと言っていいほどなかったわけです。ところが、六歳以上の取り扱いについてはいろいろな意見があったのは事実でございます。それでいいという意見とか、それではちょっと厳し過ぎる、六歳以上だってぜんそく性気管支炎というのはあり得るのだからもう少し考えたらどうだという意見、あるいはもっと年齢を下げたらどうか、こういった意見がいろいろございましたのも事実です。そこで、長官が申し上げましたようにそれらの意見をいただいたばかりでございますので、その意見を集約いたしたい、こういうふうに考えておりまして、全く検討をやめたということでは決してございません。
  45. 野口幸一

    野口委員 全国公害患者の会連絡会の太田事務局次長ですか、この人が新聞に「不当な救済もれの患者が、一人でも出ることは許されない。今度の改定の動きは、四十八年に現補償法が制定された際の“指定疾病は広く認定対象に加えるよう”という国会の付帯決議にも反する」ものであると訴えているわけでありまするが、それに伴ってこの改定の問題の周辺にきな臭い話が飛び交っている。先ほど来の話にもありましたけれども、いわば産業界の圧力によって、環境庁補償法の見直しの中でこの問題についても取り組んでいくのではないだろうか、補償法の原点を問い直す必要がある、こういうように新聞等で書かれて、この種の問題に関心を持っている多くの諸君が心配をしているところであります。したがって、環境庁として、今日の時点といいますか、今後この種の問題についてはどういう方針で対処をするのかということをもう一度きちっと御答弁をいただいておきたい。
  46. 本田正

    本田政府委員 申し上げましたように、その中身がきわめて医学的な事項にわたることでございます。お医者さん方が患者を診断し、治療をする場合に、現在のぜんそく性気管支炎という定義では非常にやりにくいということに発した問題でございます。したがって、私どもは、いまの疾病範囲が狭いという意味もあるわけでございますから、これはそういった意味で当然検討すべきであると存じます。ただ、当然救済されるべき患者を切り捨てる、そういった観点からの検討は決していたしておりません。申し上げましたような医学的な事項でございますから、その辺はひとつ誤解のないようにお願い申し上げたいと存じます。
  47. 野口幸一

    野口委員 それでは、それに関連をして、指定疾病の続発性の範囲につきまして目、鼻、のどの炎症性疾患を加えるという、この範囲の拡大について検討は進められておりますか。その辺の進み方、あるいはまた今日の状況をお聞かせください。
  48. 本田正

    本田政府委員 大気汚染によって目とか鼻に何らかの症状が出てくるのではなかろうか、こういった研究もたくさんございます。また検討もいたしております。ただ、いままでのところは、目とか鼻にくるというのはきわめて急性の疾患といいますか、症状であるということ、しかも一過性であるということから、それを直ちに疾病として取り上げるということは、少なくとも現時点では困難ではなかろうかと存じております。
  49. 野口幸一

    野口委員 わかりました。  それでは、現在いわゆるランク外患者というのがあるわけですね。このランク外患者というのは本来はあり得ないのだけれども、いわば等級に当てはまっていないということで放置されているのですが、それぞれ適切な等級を当てはめて、そして対処すべきではないだろうか、環境庁はそういった点についても少しく親切に指導をすべきではないか、こういうように思うのですが、この点についての御回答をいただきたいと思います。
  50. 本田正

    本田政府委員 公害患者が認定されますと、いま御指摘のように一級、二級、三級というような等級ランクづけといいますか、それをやるわけでございます。それで、等級での一番軽い三級というのは、政令によりまして「日常生活にやや制限を受けるか、」あるいは「日常生活にやや制限を加えることを必要とする程度」のものを三級と言うのだ、こういうふうになっております。ところが公害患者さん方の中には、そういった日常生活に制限を加えることが必要でないという方もおられるわけでございます。どういうことかといいますと、医療だけが必要であるというような患者さん方もおられるわけでございます。したがって、すべてを一級から三級までに当てはめてしまうということにつきましては、そういった患者さん方もおられるわけですから、ランク外と申しますか、等級外の患者さん方もあり得るということを御理解賜りたいと存じます。
  51. 野口幸一

    野口委員 次に、障害補償費の給付水準の問題ですが、平均賃金の八〇%ということになっているわけですけれども、障害補償費を受けている人々というのは大体都会地といいますか、そういうところに偏っているような状況でありますし、指定地域実情から見ましても、必ずしも適切でないと思うのですけれども、改善をする考え方はないのか、ひとつその辺……。
  52. 本田正

    本田政府委員 この制度発足いたしますときに、中公審においてもいろいろ御議論をいただいておりまして、その結果、現在みたいに障害補償費等につきましては八〇%ラインに相なっておるわけでございます。これの当時の議論の根拠、それから現在におきます考え方につきましては、八〇%と決めますには、たとえば公害裁判における判決の中身、水準あるいは社会保険のいろいろな制度の水準、たとえば労災六〇%、そういったものを勘案していただきまして議論を賜ったわけでございます。そして総合的にそれらを勘案いたしまして、全労働者の平均賃金、これは一〇〇%に当たるわけでございますが、それから社会保険諸制度の給付水準というものがおおむね六〇%である、そういったことからその中間をとった八〇%というのが適切であろうという御答申に基づきまして、現在八〇%ということが決まっているわけでございます。これについてもいろいろ検討いたしておりますけれども、少なくともこのラインが適切じゃなかろうかと私どもは存じております。
  53. 野口幸一

    野口委員 そういう説明をしていただければそれでわかると言いたいのですけれども実情は、御存じのように都会地に偏っているわけであります。地域給というのは現在ありませんけれども生活費の問題から考えましても、実情に余り即しているとは考えられない。ひとつ今後の検討の課題として加えておいていただきたい。いま本当に補償を受けている人の生活地域というものの立場から考えて、この問題を少しく検討するという立場をおとりいただきたいということを申し上げておきます。  さらに、補償給付における介護加算料の問題がありますが、介護の実態に即して支給をされるように、特に患者や家族の負担にならないように実態に即したやり方を、いま申し上げました障害補償費の給付と同じようにお考えをいただきたいと思うのでありますが、この点についてちょっと現状をお聞かせください。
  54. 本田正

    本田政府委員 介護手当につきましては、補償給付の中の、特に先ほど先生ランクづけとおっしゃっていただきましたそのランクの特級の方々に介護料を差し上げているわけであります。ところがこれもこの制度のいろいろな検討のときに、介護料というのはどういうふうにとらえたらいいのかということを御検討いただきまして、これも答申の中にあるわけでございますが、他のいろいろな福祉制度がございますので、そういったものと並列的に考えていくのが適切であろう。現在は原爆被爆者に対します特別措置法の介護手当、この横並びということで私どもは予算的な措置をさせていただいておりますけれども、いま御指摘のように、介護の実態というものを踏まえまして、私どもはその実態に沿えるように今後とも努力をしていく必要があろう、こういうふうに思っております。
  55. 野口幸一

    野口委員 以上、私、この公害健康被害補償法の改定に当たっては、全体的に制度発足以来今日までの状況を見せていただいて、私自身が感じた諸点を申し上げたのですけれども、どうも実情に合わない部分といいますか、現在の生活環境に適切でない部分も決して少なくないと思うのであります。  先ほど来項目別に環境庁に対して今後この改定をしていく用意があるのか、あるいはまた現状はどうなっているのかということなどを申し上げてきたわけでありますが、全体的にこの問題について再度環境庁の方から検討する、さらにそれは少なくとも健康被害補償されている人々の立場に立って考えていくということをひとつお示しをいただきたいと思います。
  56. 本田正

    本田政府委員 いろいろ御指摘受けました。きわめて重要な事項をたくさん含んでいるわけでありますが、公害健康被害補償法目的は、公害被害者の迅速かつ適切な保護を図ることであります。もとより私どもはその制度主管者といたしまして、そういった先生指摘公害患者の迅速かつ公正な保護を図る、言い直せば本来患者サイドに立った法律であるはずでございます。ただ、そういう視点からいろいろ問題があることはいま御指摘いただいたとおりでございますし、この法律がより適切に運用されるという方向で私どもはぜひ検討を進めていきたい、かように存じております。
  57. 野口幸一

    野口委員 質問を終わります。
  58. 河野正

    河野委員長 島田琢郎君。
  59. 島田琢郎

    島田委員 引き続き公害健康被害補償法について若干の質問をいたしたいと思います。  いまさら言うまでもないのですけれども、公害健康被害補償をやらなければならないというのは、未然防止といいますか、そういう環境上の対策がないからこういう問題が起こってきている、その事後措置としてこういう補償制度を法制化して取り組む、こういうことになっているわけでありますから、何といってもこういうところに、環境にどういう影響を及ぼすかということが十分調査もされず、また対応策もないままに企業が立地されてまいりますと、当然環境に与える影響が大きい、こういうことになるわけであります。  いま、巷間いろいろな取りざたがされておりますが、私は何といってもこの際環境アセスメントの法制化が急がれるという観点に立って、この健康被害補償法を考えているわけでありますが、どうも長官や幹部の皆さんの意気込みにもかかわりませず、いまひとつぴしゃっとした環境アセスメントの法制化の動きが出てこない。前回も大臣の所信表明に対する質疑の中で繰り返し、しつこいくらい私どもはこの点を聞いたのでありますが、その後もいろいろな角度からいろいろな意見が出されておって、どうも私どもまたひとつ心配でならないわけであります。その後の動きは一体どういうふうになっているのでしょうか、まず、そこのところをひとつお聞かせをいただきたい、こう思います。
  60. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  公害の未然防止の問題につきましては、私ども全く先生と同意見でございます。環境アセスメントの法制化の問題につきましては、去る一月二十三日に自由民主党の政務調査会の環境部会におきまして、各省庁と話し合いに入ってよろしいというゴーサインをいただきまして以来、今日まで十八省とテーブルに着きまして、各省と真剣にただいま話し合いを行っておる次第でございます。そして今回の自由民主党と野党との予算修正の話し合いの中でも、自民党の方から内閣に対しまして、この問題についての閣僚懇談会のようなものを設けるように党に要請するといったようなことから、けさの閣議におきましても、官房長官の方からアセスメントについての閣僚懇談会的なものを設けたいというような発言がなされたような次第でございまして、私どもといたしましては、何といたしましても、この環境影響評価法案の制定、国会提出に対しまして、環境庁挙げて全力を傾けて、ただいま努力をいたしておる次第でございます。その点はぜひひとつ御理解、またあわせて御協力、御支援を賜りますよう心からお願いいたします。
  61. 島田琢郎

    島田委員 おっしゃられるまでもなく、私どももひとつ大いに長官を応援いたしまして、この実現について私どもなりの努力もしたい、こう思っておるわけでありますが、しかし、もう一つ心配がありますのは、これもこの間から繰り返し言っておるので、えらいしつこく聞こえるかもしれませんけれども、せっかく出すと言ったって、出されてきた法案が骨抜きじゃどうにもならぬわけでありますから、その辺のところも前回の質疑の中で私どもすとんと胸に落ちて、理解をするというところには実はいっていない。したがって、何とか早く法案を出せるという状況が出てまいりましたら、少なくとも原案の原案ぐらいは私どもにひとつ事前に示してもらいたい。そうでないと、出すというのは、オリンピックの参加じゃあるまいし、出せばいいのだといったようなものであってはいかぬわけでありますし、せっかく私どもも大臣の意気込みに応援をしたいという気持ちでおるのでありますから、出されたときに大臣とけんかをしなければならぬようなことではどうもおもしろくない、こういう感じがいたします。  今度の予算の問題に対しましても、われわれ社公民三党は、この環境アセスメント法の今国会提出を強く迫って、自民党の方もこれに応じてまいりました。そこまではいいのでありますけれども、しかし、各方面からまたアセスメント法をめぐりますいろいろな注文がついているということを考えますと、その注文がどこまで今度の法案の中で、後退といったような形になってあらわれてくるのか、私どもはいま非常に心配をいたしているところであります。せっかくの応援のしがいのある法案であるように、私はそのことを強く願っているのでありますが、その点は心配ないのかどうか、金子局長からで結構でありますが、いかがでありますか。
  62. 金子太郎

    ○金子政府委員 アセスメント法案につきましては、現在各省庁と調整中でございます点は島田委員御存じのとおりでございますが、私どもといたしましては、昨年四月に中公審からいただきました答申趣旨を最大限尊重しながら、今後とも各省との調整に当たってまいりたいと思っております。  なお、閣議に法案を提出できるような状況になりましたときは、その内容につきまして御報告いたしたいと思っております。
  63. 島田琢郎

    島田委員 私どもにその大綱が示される、要綱であればなおいいのでありますけれども、大体いつごろそれをわれわれに示してくれますか。
  64. 金子太郎

    ○金子政府委員 それは閣議で大綱等が決定される時期ということになろうかと思いますが、なるべく早く努力いたしますとお答えする以上、現在のところは御容赦いただきたいと思います。
  65. 島田琢郎

    島田委員 十四日が一応政府側の重要な法案の提出期限、こういうことに通例なっているわけであります。そうすると、この一週間ぐらいの間にもう要綱ぐらいはわれわれに示すということと理解していいかどうか。
  66. 金子太郎

    ○金子政府委員 私の方も十四日というのは大変な気がかりのポイントになっておりますが、そういうことができる状態になりますように、できるだけの努力をいたしたいと考えております。
  67. 島田琢郎

    島田委員 しかし、もうそんなにもったいぶらぬでもいいじゃないですか。私ども反対すると言っているんじゃない。出せと言ってきているのですし、ぜひ今国会で成立させようというところまでわれわれは言ったわけですから、何か隠すというか、まだ要綱も示されない、いつごろ出せるかもまだお示しできない、こういう答弁では、どうも前回のあの議論を通しての疑いが私どもとしてはまだ残るわけですね。この公害環境委員会は、与野党挙げてアセスメント法のこの国会における成立に対する合意は私は得られると思う。問題はその中身ですから、そういうものがぎりぎりのところに出てきて、残念ながらわれわれはこんな法案では賛成するわけにまいらぬということになりますれば、まことにこれは遺憾なことではないでしょうか。長官が今国会で成立をと一生懸命努力された、それに対して私どもも納得して、すんなり今国会で成立させるような法案であるということを願っている立場から、もうそんなにもったいぶらないで早う出して、ひとつお互いにりっぱな法案に仕上げて、目に物見せてやるというぐらいの気持ちの法案が一刻も早く提案されてくることを私は重ねて強く要求したいのですが、まだめどとしてははっきりさせることができないと言い張るのでしょうか。
  68. 金子太郎

    ○金子政府委員 私どもといたしましては、もったいぶるような気持ちは全然ございませんので、その点は御理解いただきたいと思いますが、実際の折衝の状況は、非常にむずかしい折衝を毎日毎晩続けておる状況でございますので、その点につきましても、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  69. 島田琢郎

    島田委員 もうずいぶん長いこと、各方面にわたって説明あるいは折衝が繰り返されておる、毎日毎晩といま言ったわけでありますけれども、一体そのアセスメント法の中身について、あるいは提出の期限等も含めて、どこがそんなにいちゃもんをつけているのですか。
  70. 金子太郎

    ○金子政府委員 この法案は、御承知のとおりわが国には余り例のない行政手続法的な性格を帯びたものでございまして、それだけに、私どもが御相談申し上げております関係各省におかれても、いわば初めての経験と申しますか、前例がないと申しますか、そういう点がございまして、御理解をいただくのに非常に時間がかかるという要素がございます。その上、関係省庁が非常に多いものでございますから、その一つ一つと御相談申し上げるのにまた時間と手間がかかる。現在のところ、三、四の省庁との折衝が残っておるわけでございますが、いずれも大きな省庁でもあり、いろいろな種類の事業を抱えておられる省庁でございますので、若干時間を必要としているという実情にございます。
  71. 島田琢郎

    島田委員 しかし、時間がかかり過ぎるにもほどがありまして、もう今度で五回目の法案をめぐります問題がこうやって沸騰しているわけですね。つまりもう五年目に向かったわけです。三百六十五日の五倍掛ければ、一体幾日になるのでしょうか。毎日毎日やっているのだが、それでも納得しないということは、どうも理解に苦しむのでありますが、その間、恐らく努力がなされていなかった。いよいよ今度はまあ何とか、与野党の間の予算の問題でも出てきたことでもあるしということで、やっと環境庁としては本腰を入れる、こういうことになったのではないか。そうすると、いままで努力していなかったのではないかというような感じがしてならぬのであります。しかし、相当の時間をかけてきている法案であります。環境アセスメントといったら、もうずいぶん地域の人たちでもその中身について知っているんですね。私は北海道でありますが、北海道では条例としてやっておりますから、特に関心が高いのでありますけれども。そうすると、どういうところが一体今後どのように変わっていくのか、変わったら大変なところと、変わっていくべきところ、そういうものも住民の人たちの方がはるかに知っている。ですから、そういう意味では住民のコンセンサスの方がはるかに高い、こういう点が一つ背景としていまもう出てきておると私は思う。だとしたら、あなたの手元で、幾らむずかしい折衝の中であなたが後退しようと思っても、後退はできないという背景がいまつくられつつあるわけです。だとしたら、何にもいまおびえる必要はないではありませんか。堂々とこの一線は守らなければならぬとして、折衝に折衝なんということはもうおやめになって、思い切って、国民のあるいは住民のコンセンサスを求めることのできる最大公約数というものはきちっとあるわけですから、それでお出しになって国民世論に問うべきではないですか。そんな陰でこそこそ、こそこそと言うと言い方は悪いけれども、毎日毎晩交渉をやっていると聞いているけれども、どうも私はそんな交渉は不毛だと思う。もうこの際思い切ってお出しになるべきだ。その決意はどうですか、大臣。
  72. 土屋義彦

    土屋国務大臣 島田先生、重ねて御激励をいただきましてまことにありがとうございます。  実態は金子局長から御答弁申し上げたような次第でございまして、各省庁間でまだ十分話が詰まっておりません。大変日時がかかりましてまことに申しわけございませんが、ただいま政府・与党一体となりまして全力を傾けて努力いたしておりますので、ぜひとも御理解を賜りたいと思います。
  73. 島田琢郎

    島田委員 それじゃ私は一つ提案があります。その物わかりの悪い省庁がどこかわからぬが、はっきりさせてもらえば、ここの委員会へ呼んで参考人としてどういうところが問題なのか聞こうじゃないですか。私のこの提案はどうですか。私は委員長に提案するつもりですが、いかがですか。理事会で検討いただくようにしてはいかがかと思いますが、いかがでしょうか。
  74. 河野正

    河野委員長 それでは後刻理事会でお諮りをして相談をいたします。
  75. 島田琢郎

    島田委員 私は、この被害補償法の審議に入るに先立って、アセスメントの問題を重ねてまたこんなにくどくどと、それこそ聞きづらいかと思うほど意地悪い質問もしているわけでありますけれども、被害が起こって補償するというのは言ってみれば本筋じゃないわけですから、それを未然に防止するという、そこのところがしっかりしていればこういう悲劇は起こらないですね。まさに悲劇であります。水俣病にしたって、イタイイタイ病にしたって、あるいはそのほかの非常に問題になっていますこういうのどの被害にいたしましても、こういうものが環境アセスメントによってきちっと担保されておれば起きなかった病気だということも一面では言えると思います。そういうことを考えますと、実は変則なんですね、起こってきた被害を救済する方が先になっているわけですから。それを未然に防止することが先決だということを考えますときに、この期に及んで――この法律だって今度の場合はお金をもらう方の延長だけでありますから、中身については大きな提案はされていないのでありますけれども、しかし、実を言うと、こういう法律だってもう何回も改正がされている。こういうふうに移り変わっているわけでありますから、このような状態の中でなお環境アセスメント法というものが日の目を見ないでいるというのは、文明国と言われる日本の一つの恥部であり、一つの悲劇ではないか、こういうふうに思うのです。ですからこの際、この法案の審議に入るに先立って、環境アセスメント法のしっかりした国会提出と成立が期せられるということの条件がいまきちっと示されないと、私はこんなものを幾ら議論したって――それはちょっと言い過ぎでありますけれども、議論は私にとってはまさに本末転倒みたいな話になってしまう、こう思うのですね。ですから、私はこんなに長い時間をかけて、環境アセスメント法を本当に出すのか、出すのなら一刻も早く出してくれ、こういうことを要求しているわけであります。  そこで、いまから指摘をいたしてまいりますが、残念ながら公害健康被害関係につきましては、その補償も次第にふくれ上がってまいっておりますし、それは一面では行政施策のおくれとかあるいは企業の責任、こういったものについても先ほど来いろいろ議論がされておりますような状態の中にあるわけであります。また地域指定解除の問題などもいま社会問題として非常にクローズアップされつつあるわけであります。こういういわゆる公害被害患者を救うのは国や企業の義務だということになるわけでありますが、患者の救済に当たって現行法の中で十分対処し得るとは思えない部分もこれはあるわけであります。そこにいろいろ改正あるいは改善というものが要求されてくるわけでありますが、今次の法案の中身では、こういう救済をさらに広げていくといったような改正は提案されていないのでありますけれども、これで十分だというふうに長官はお考えになっていらっしゃるかどうか。この法律にかかわります基本的な考え方というのを大臣からぜひこの際伺っておきたい、こう思います。
  76. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  環境庁といたしましては、この主管者といたしまして制度をめぐるこの諸問題につきまして検討を進めておるところでございまして、今後も公害による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図るというこの補償法の趣旨に沿って制度の改善に努力をしてまいりたいと考えております。
  77. 島田琢郎

    島田委員 そこで、先ほど野口委員からいろいろ経団連あたりから出ております意見についての質疑もなされていたようでありますけれども経団連は、この補償法をめぐります中身の改正方についていろいろな意見が毎年のように出されているわけであります。依然公害たれ流しの状況というのが続いていると見なければなりません。いまの状態というものの理解がどうも私は大きく食い違うように思うのです。  たとえば経団連の環境安全委員会が出しておりますこの制度改正について、いろいろな「産業界の環境対策努力により、SOxをはじめとした大気汚染は総合的に著しく改善されてきた」こういうふうに実は言い切っておるわけでありますが、これは認識面において私は非常に違うと思う。さらにそれにもかかわらず逆に認定患者が増加しているのはうなずけない、こう言っておるようでありますが、これはどういう問題提起をしようとしておるのか、この冒頭ではよくわからないのでありますけれども、よく読んでまいりますと、たとえば暴露の問題であるとかあるいは直接の病気の問題についても、これはどうもおかしいのではないかといったようなかなり専門的な立場に立ち入って実は意見が述べられているのであります。私は、そもそもこの経団連の環境安全委員会というものはどういう人によって構成されているのか聞きたいのでありますけれども、その中でも、たばこをのむということについて、指定疾病の肺気腫や慢性気管支炎、こういうものはたばこをのむ人に非常に大きくあらわれるといったようなことが言われておる、したがって喫煙というものは、喫煙者本人のみならず家族等周辺の疾病の発生、あるいは増悪要因となるとも考えられる、したがって、これは除外すべきだ、こういうふうな意味のことを言いながら、除外ができなければたばこの関係からも費用負担させるべきだ、拠出させるべきだといったようなところまで実は言及をいたしているのであります。どうもこういう一つ意見を読んでまいりますと、この制度のより強化を目指すのではなくて、とてもたまったものでないから、なるべく中身は弱めてもらいたいというふうに聞こえるのであります。これは何回かにわたってもうすでに環境庁にもこの意見が提出されているのでありますが、この辺のところは、大いに事実をもって明らかにしながら指導すべきだ、こういうふうに私は考えているのでありますが、まず最初に環境庁から、この経団連意見書に対する考え方、引き続いて通産省から、これらの問題に対する見解とその行政指導の問題について伺ってまいりたい、こう思います。
  78. 本田正

    本田政府委員 私どもは、費用企業から徴収している徴収事務等も、たとえば商工会議所を通じて費用を取る、そういったことから、その際にいろいろ意見を聞いているのは事実でございます。いろいろな、こうあってほしい、あああってほしいという意見を聞いているのは事実でございます。しかしながら、長官も申し上げましたように、幾つかの割り切りをもって発足しているこの制度なるがゆえに、施行後五年半もたちますと、いろいろと現状に合わない、つまり法の目的であるところの公害患者の迅速かつ公正な保護を図るというその趣旨に向かって、円滑な運営にややもすれば事欠くようなことも起こりがちだという観点から、運営を適正に図っていくという観点から、これは大いに検討を進めていくという必要があろうかということで検討をいたしております。しかしながら、いま御指摘のように、経団連からそういう声があるから、それについて特に検討する必要があるんだとか、そういう認識は全然ございません。あくまでも制度主管者として、これを適正に運営していくという観点から、この制度をいろいろ検討しているということをぜひ御理解賜りたいと存じます。
  79. 島田春樹

    島田政府委員 お答え申し上げます。  いま環境庁の方からもお答えがございましたけれども、産業界の方でも、この制度が施行されてある期間たちましたということもありまして、いろいろ意見があることも私どもも聞いております。これにつきまして、いま環境庁の方からお話がありましたように、制度のあり方についていろいろ検討をされるというのに際しまして、こういった意見というのも一つ意見としてあるわけでございます。     〔委員長退席、馬場委員長代理着席〕 私どもといたしましては、そういった意見も頭の中に置きながら、やはりいろいろな観点というものを十分判断して、環境庁と相談をしていくというふうに進めてまいりたいというふうに考えております。
  80. 島田琢郎

    島田委員 本田部長からのお話は、割り切りをやったから、その割り切りのところで、時間がたつといろいろな意見実情から生まれて出てくるのであります、こういうことでありますが、割り切りという問題は、疑わしきは補償する、こういうところでこの問題というものは救済されていくんだ、こういうふうに私は考えているわけです。それは大気汚染にいたしましても、環境汚染にいたしましても、なかなか割り切らなきゃむずかしい問題がありますよ、常に動いているだろうし。大気なんか、ある一定のところでとまっているとは限らないし、動けばまたもとに戻ってくるというふうになかなかとらえどころがない。こういう問題がありますから、この法案を運用していく限りにおいては、割り切りという問題は常に起こるものであります。画一的にきちっと箱の中に入れてしまうなんということはとうてい不可能だと私は思う。  ですから、そこで私どもが一番警戒しなければならぬのは、その割り切りをめぐっていろいろな利害関係が出てきますと、それに対して弱めるような意見が出てくる、あるいは改正せいといったような意見が出てくる。そこのところ、きちっと法律でも説明できない、あるいは割り切りという分は非常に幅も広いし抽象的ですから、これに対応ずる環境庁の姿勢というものは、物すごく強くないとできないということが言えると思う。ですから、私どもは常に国会で本田部長の応援をしながら、こんなところでくじけてもらっちゃ困るぞ、ひとつしっかり――何たって疑わしきは救済するという原則に立って進めていくのが、この公害健康被害補償法の最大の柱なんだというふうに、きちっと理解してもらわなければいかぬわけですから、そういう指導はしておるというお話であるし、決して意見に惑わされることはありませんとおっしゃっていますから、これ以上のお話はいたしませんけれども、だんだんこういうものがかなりの文書になって出ていくわけですね。これはあなたのところへの意見書だけではなくて、全国の商工会あるいはそのほかの関係のところへずっと回っていくわけです。そうすると、いまの公害健康被害補償法、この制度というものは実はいかがわしいものなんだといったようなことになってまいりますと、この制度は、そういう意味で大変ぐらつくという心配がありますから、この点については、いまの通産省の御答弁では、私は満足できない。やはりきちっと専門的な立場からおやりになっているような、環境安全委員会といったような組織の中で検討いたしましたということでありますけれども、そもそも環境安全委員会とは、どういう人たちによって構成されているのですか。わかっていたら示してもらいたいし、もしわからなければ、これは私も要求しておりませんでしたから、後ほどこのメンバーを教えていただきたい。その中に専門的なお医者さんなんかもいる、のかどうか。あるいはこういう公害、環境の問題に取り組んでいらっしゃる学者も入っていらっしゃるのかどうか。こういう点で私はこの検討の経過というものも知りたいし、少なくとも経団連の環境安全委員会というものが設置されているとすれば、一体いつから設置されて、どういう検討がなされてきたのか、それはどれくらいの期間、何回くらいにわたってなされたのか、さらにまたこの中身についてもどういう検討がなされてきたか、この点について、後ほどで結構でありますが、資料としてひとつ提出していただくよう委員長を通じてお願いをしておきたいと思います。
  81. 佐藤素祥

    ○佐藤説明員 突然の御要求でございますが、経済団体連合会の方の業務でもございますので、いまのような御要請があったことを、とりあえず経団連の方に取り次いでおきたいと思います。
  82. 島田琢郎

    島田委員 次に、対馬のイタイイタイ病についてお尋ねをしたいと思います。  何日か前の新聞であったと思いますけれども、いままで大変問題になってまいりました対馬のイタイイタイ病、これは富山のイタイイタイ病とやや似ているそうでありますけれども、これに対してこの地域住民企業との間にいろいろ話し合いが進みまして、今回、補償の一部だそうでありますけれども、これを出すということで妥結をしたと報道されておりました。本来は、この対馬のイタイイタイ病そのものに対して、やはり政府としては認定を急がなければならなかったのではないか。それを待っていられなくて、こういう話し合いの妥結を見るに至った。もっとも、これで全部解決するということではなくて、一応の前進だというふうに受けとめている向きが多いようでありますけれども、なぜ対馬のこのイタイイタイ病がこんなに認定がおくれるのか、その点についてひとつ説明を願いたいと思います。
  83. 本田正

    本田政府委員 御存じのとおり、イタイイタイ病と申しますのは、富山の神通川流域に発生している疾病でございます。原因がカドミウムに関係しているのではなかろうかということから、カドミウムの汚染地域というのは全国にたくさんあるわけでございますので、そういうところにイタイイタイ病がいないかどうかということを従来から環境庁でも調査してまいったわけです。  いま先生指摘事例につきましては、たまたま昭和五十一年から三年間かかりまして、七地域汚染地域を含みます県にお願いいたしまして、八千数百名の人たちを対象に健康調査を行ってきたわけでございます。その結果の取りまとめを、かねてございますイタイイタイ病および慢性カドミウム中毒に関する総合的研究班という、長ったらしい名前で恐縮ですが、そういった研究班にその評価の検討をお願いして、それが昨年の末に結論としてまとめられて公表された、こういうことでございます。  その評価の結果報告の中では、七県にはイタイイタイ病患者は発見できなかった。それからまた、カドミウムと特に腎機能異常との関連に中心が置かれたわけでございますけれども、そのカドミウムと腎臓機能異常との関連性については、七県のうちある県にあっては関連性がある、しかしない県もあった。こういうことから、研究班全体の報告といたしましては、カドミウムと腎機能異常というもの、それからイタイイタイ病というものを今回の調査では特定できなかった。因果関係はまだわからない。したがって、それに他のいろいろな重金属等の関与はどうかとか、あるいはその他の諸要因の検討を今後鋭意進めるべきであるというのが結論であったわけなんです。  いま御指摘事例の、長崎県の対馬で患者さん方と東邦亜鉛との間で数日前に何か話し合いが持たれて、そして確約書が交わされたという事例は私どもも報告を受けております。しかし、かねてから対馬という地域住民の方々と東邦亜鉛との間にいろいろな協定書もできているみたいでございます。そういったことに基づくところの今回の支出なのかどうかというその趣旨については、まだ私は明確に聞いておりませんけれども、これは決して補償費の一部であるというふうなことではない、こういうふうに聞いております。
  84. 島田琢郎

    島田委員 いま調査の経過についていろいろお聞きをいたしました。そうすると、地域指定をおやりになる考えですか。
  85. 本田正

    本田政府委員 先ほど申し上げましたように、研究班の報告自体がまだカドミウムと腎機能異常どの因果関係というのはわからない、断定できないということでございます。そういったことから、地域指定をやりますには公害健康被害補償法に基づきまして、この事例ですと、カドミウムと疾病との因果関係というものがまず明らかにならなくてはいけないという要因がございます。それからまた、その腎機能異常というものが果たして疾病であるかどうかという検討も他方要るわけなんです。しかも、それが非常に多発している、こういう条件を満たして初めて疾病として取り上げ、かつは地域指定できるという仕組みになっております。そういった事情がまだ解明されておりませんので、直ちにこれの地域指定する、あるいはまた疾病を公害病として認定するという段階には至っていないということを御理解賜りたいと思います。
  86. 島田琢郎

    島田委員 全く絶望的ですか。
  87. 本田正

    本田政府委員 検討会におかれましても、それではいつになったら、どういうことをやれば特定できるのかという御指摘があるわけなんです。いつになったらということはもちろんございませんけれども、他の重金属との関係とか、あるいはその地域住民のさらに詳しい追跡あるいは調査、また言い漏らしましたけれども、研究班の報告の中に、ある老齢の御婦人が死亡なさっておりまして、解剖をした結果、骨軟化症という症状が出ているわけでございます。しかしながら、骨軟化症というのは他のいろいろな要因でも来るものですから、これをカドミウムによると特定ができない。もう少し剖検例、解剖の例を重ねるべきである、こういった御意見等々、今後やるべきことがいろいろ指摘されているわけでございます。そういったことをまた研究班にお願いいたしまして、私どもも予算的に措置をいたしまして、鋭意研究及び検討を続けていただく必要があろう、そういうふうに存じております。
  88. 島田琢郎

    島田委員 本田さんとしてはイタイイタイ病ではないと思っているのですか。
  89. 本田正

    本田政府委員 研究班からはイタイイタイ病は発見されなかったという報告を受けておりますので、現時点ではイタイイタイ病は富山以外にはない、こういうふうに思っております。
  90. 島田琢郎

    島田委員 確かに東邦亜鉛は、補償ではありません、住民保健対策に協力するためであります、こう言って七百万円を――七百億じゃないのですね。七百万円なんです。七百万円を出しました、こうなっているわけでありますけれども、しかし、イタイイタイ病でもない、環境庁としては地域指定考えもない、公害病でもありません、こういう報告の経過の中にあるとすれば、東邦亜鉛は、地域住民の保健のための協力費であります、こう言って出したにしたところが、その根拠はまことにあいまいだと思うのですが、何か詳しい報告を受けているのですか。
  91. 本田正

    本田政府委員 私は、県からの報告によりまして、当日交わされました確約書というものの聞き取りの写しをいまここに持っておりますが、ちょっと読ませていただきますと、「長崎県が佐須地区において」――これはその当該地域を言うわけですが、「佐須地区において実施している保健対策の主旨を体し、これに側面的に協力するため貴組合に一金七百万円を預託することを確約する。なお今後必要が生じた場合は別途協議する。」それで年月日が書いてございまして、東邦亜鉛と佐須地区の組合長の名前、こういうふうな確約書に相なっております。
  92. 島田琢郎

    島田委員 しかし、そもそも東邦亜鉛というのは、その企業の体質、仕事から言うと、カドミウムの汚染という問題は十分起こり得るという企業であることは間違いないですね。それで、汚水の処理といったようなものは一体どういう状況になっているのかも、あなたの方では現地の実態を正確に把握していることになっていますか。
  93. 本田正

    本田政府委員 きわめて正確にという把握はしておりませんけれども、東邦亜鉛の長年の活動によって、相当カドミウムを含みますところの重金属のあの地域への汚染があるということは、県のデータを通じて若干は存じております。カドミウムの汚染があるということは確かでございます。
  94. 島田琢郎

    島田委員 両者の間でそういう確約書がすでに取り交わされているということで、七百万円を預託して今後どのように使うか、あるいは今後の問題としても別途話し合いを続けるのだ、こういうことでありますが、両者の話の焦点というのは、やはりイタイイタイ病だという疑いを十分持った上で話し合いがされているということではないのですか。
  95. 本田正

    本田政府委員 説明を幾つか漏らしましたけれども、この七百万円の性格というのは、これは預託したというだけのことであって、中身はよくわかりません。しかし今度の研究班の報告の中の、十数名の医師の指導を必要とする者、または医師の指導は必要でないけれども観察が必要である者、そういった者を含むわけでございます。まだ因果関係は特定していないけれども、多分その人たちに対する腎機能異常というものを踏まえ、しかも、長崎県が従来からその地域に対するいろいろな対策をやっているわけでございます。たとえば健康診断、それから保健指導といったものをやっている。そういったことに側面的に協力をしようという意味で出てきたお金ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  96. 島田琢郎

    島田委員 私はいまのお話を聞いていまして、亡くなった人までいるそうでありますが、その因果関係あるいは病気の本体、そういうものがまだ判明しない中に置かれているというのは、住民にとっては大変不安だろうと思う。現に亡くなられた遺族の方々にとっては非常にお気の毒な感じがいたします。やはりイタイイタイ病であるのかないのかという判定は急ぐべきだ、こう思うのですが、何か急がれない条件がありますか。
  97. 本田正

    本田政府委員 イタイイタイ病とは、現在の見解では、カドミウムの汚染によって腎機能障害が起こり、それに骨軟化症が起こる、その間に妊娠とか分娩とかがいろいろ加わる、こういうふうな定義に相なっておるわけであります。そういう視点から総合研究班において、そういったものが全国で富山以外にあるということは大変なとでございますので、この数年ずっとその研究が続けられている。今回もそういったことを視点にし、かつはむしろイタイイタイ病よりもその前である腎機能異常、障害、そういったことの関連が従来の研究から非常に深いという視点に立って、五十一年から先ほど申し上げた調査が行われたわけでございます。  そういったところでこれを解明するのに幾つかの問題点がその調査を通じて指摘されている。そういったメカニズムなり機序なりというものは、恐らく未来永劫に解明はできぬかもしれません。しかし、そういった疫学的な調査にいろいろな疫学以外の学問的な検討を加えることによって、これはおいおいと明らかになってくると思います。しかしながら、まだ現時点ではそこまで研究がいっておりません。しかし、私どもは年間数千万円の研究費をお願いして、これの解明のためにうちの研究班にお願いしているわけでございます。研究班においても、毎年きわめて広い範囲の研究者がこれに参加し、これの解明のために研究を続けておられるわけでございます。そういった研究成果を私どもは待ちたい、こういうふうに存じております。
  98. 島田琢郎

    島田委員 八千九百人の健康調査の結果というのはどうなっているのですか。その中で腎臓機能障害といったような疑いのある人は何人ぐらいいたのですか。
  99. 本田正

    本田政府委員 ちょっと細かい話をして恐縮でございますが、腎機能異常を呈するものが五十七名おりました。その前にわが国で、世界でもそうでございますが、一体腎機能異常というのは何かということが学界で決まっていないわけでございます。と申しますのは、低たん白が出るとか燐の腎臓における再吸収率がどうであるとか、その数値が幾つであれば機能異常というかという物差し、定義というものがないわけでございます。そこで研究班は、今度の八千数百名の人たちを対象にする分析、評価をするに当たりまして、研究班で独自に腎機能異常という定義をつくられたわけです。腎学会に出してもまずは異存はないだろうと言われる一つの枠をつくられまして、そこに当てはめていかれました結果、五十七名の者が医師の指導を要するか、あるいは医師の指導は要しないけれども経過観察等が必要である、こういった者でございます。御存じのとおり、腎機能異常でございますから、これは腎障害ではございません。その中からどういう頻度、確率によって腎障害を起こすかということも現在学界でつまびらかじゃございませんけれども、腎障害の前と思われる腎機能異常が五十七名出た、こういうことでございます。
  100. 島田琢郎

    島田委員 現在日本の国内でこの種の疾病、障害が地域的にまとまって起こっているというのは、ほかにどれくらいあるのですか。
  101. 本田正

    本田政府委員 この種の異常とか障害は全国的に健康調査をやらないとキャッチできないわけでございます。そういうことがわからなかったために、この五十一年からカドミウムの高濃度汚染地域に当てましてそこでやったわけでございます。恐らくどこを探しても全国的なこういった種類の数値はないと存じます。あるいは各大学、研究者によりましてごく小範囲の調査研究はあるかもしれませんけれども、これほどの大規模な調査はこれだけだろうと存じております。
  102. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、十分イタイイタイ病と疑ってかかってもいい、こういうふうに感ぜられるわけですが、そもそも東邦亜鉛について、その後こういう問題に対する行政上の指導は強力に行っていると思うのですけれども、いまの状態では引き続きこういう患者が起こってくる危険性はないというふうになっているのですか。
  103. 本田正

    本田政府委員 起こるかもしれない、また起これば当然これは救済しなければいけないという視点から私ども研究もお願いしているわけでございます。起こることを希望しておるわけじゃございません。決して起こってはいけない。しかし、もし起こっているとすれば一刻も早くそれをキャッチすることが必要だ、そういう視点から行っているわけでございます。
  104. 島田琢郎

    島田委員 それじゃ次に移ります。大気汚染について、NOxの問題でありますけれども、なぜ地域指定要件に加えていないのですか。私は早急に加えるべきだと思うのですが、この点いかがですか。
  105. 本田正

    本田政府委員 昭和四十九年九月にこの制度発足いたしましたときに、中央公害対策審議会から地域指定要件等についての答申がございます。その中に、いま御指摘NOx指標として取り上げるべき検討もなされております。しかしながら、現時点ではNOxというものは調査も非常に少ないし状況がよくわからない。それからNOxそのものの健康被害に対する寄与度もわからないということから、当面SOx指定地域物差しとする、こういった答申が出ているわけでございます。いま御指摘NOxにつきましては、その後相当のデータもそろっております。直ちにこれを地域指定要件の中に入れるかどうかということは、その前にやはりNOxが健康にどう影響するかという評価を公害健康被害補償法上やらなければいけないと私ども存じております。全然無視しているわけじゃございません。そういった評価をまず行うことにいま取り組んでいるところでございます。
  106. 島田琢郎

    島田委員 この問題はだんだん詰まりつつあるという印象でありますけれども、そもそもNOxの最も高い排出車はどういう機種になるのですか。
  107. 本田正

    本田政府委員 直接担当でないので詳しくは存じませんけれどもNOxというのは物が燃焼すれば出るということ、しかも、高温燃焼になるほど非常に急激に増加するということでございます。
  108. 島田琢郎

    島田委員 その定義は知っているのですけれどもね。いま走っている車の中にはどういうものがあるのだ、こう聞いたのですが、きょうその係の方が見えてなかったですか。それじゃ仕方ない。これは質問してもわからないな。通告してあるから答弁できる人がそこにいなければいかぬのですが……。三浦さんいないの。これには出席をしていることになっておるがな。それではまあこれはちょっとおきましょう。  次に、ぜんそく性気管支炎、ぜん気の問題について、公式の場所でありますから、本田部長とは大分いろいろこの問題については六歳をめぐるやりとりをやりましたけれども、改めて、経過がどうなっている、今後の対処の仕方、まずそこを伺っておきたいと思います。
  109. 本田正

    本田政府委員 ぜんそく性気管支炎の認定につきましては、現在昭和四十七年の通知に基づきまして、それを参考にして、全国四十一の審査会において認定業務が行われております。その四十七年の通知といいますのは、いまから考えますと、その通知にも指摘されておりますけれども、小さい子供でも、ぜんそく性気管支炎という束になった病気の総称でございますが、鑑別できるのだ、きちっと正しい病名に鑑別できるのだという前提のもとにいまつくられていて、非常に無理があるわけでございます。そこで各審査会の委員先生方から、毎年私どもが行っております認定審査会の連絡協議会がございます。そこからぜんそく性気管支炎の定義をもう少し明確にしてくれないと認定業務が非常にやりにくいという御意見が頻繁に起こりまして、ようやくそれを受けまして、実は一昨年の十二月に七人の専門家からなる検討会をつくっていただきまして、そこで検討を進めてもらったわけです。その結果が出てまいりまして、それを、かねてそうやって何とかしてくれとおっしゃっている認定審査会の方に御報告をし、かつはその御意見を徴しつつある、また徴したという段階であるわけです。  さて、その中身はどうかと言いますと、きわめて医学的なそういったことに発しているわけでございます。大変誤解を受けておりますけれども、医学的な中身でございます。と申しますのは、どういうことかと申しますと、ぜんそく性気管支炎と総称するのは、本来は名前はないのだけれども、二歳以下の子供であれば、かぜを引いたり、あるいは本当のぜんそくかどうかまだわからない。そういったいろいろな症状といいますか、本来の病気について明確にその鑑別診断ができないということから、二歳以下であれば、ぜんそく性気管支炎という名前を使ってもやむを得ないだろう、使ってよろしいという、それが一つ。それから、年齢が長ずるに及び、かつは六歳ぐらいになると、大体人間の体もわりとはっきりしてくるので、またいろいろな検査にも耐え得るので、鑑別診断ができるであろうということ。さらにはいまのぜんそく性気管支炎というのは、反復性気管支炎という病名だけイコールぜんそく性気管支炎といまの通知ではなっているのは範囲が狭過ぎる、もっと広げるべきだ。たとえばアレルギー性気管支炎とか小児期ぜんそくあるいは乳児期ぜんそく、そういったものも含んで、やはりぜんそく性気管支炎というものは考えるべきだという、その疾病の範囲を広げる、そういった医学的事項については、まずはどなたも異存はなかったわけです。ただ、六歳以上はぜんそく性気管支炎というものをつけるのがおかしいのだというような鑑別ができるのだという意見については、これはいろいろ鑑別ができぬ者もいる、ごくまれにはやはりぜんそく性気管支炎と呼称せざるを得ない患者がいるのだという御意見もございました。それからいやいや全部できるのだという意見もある。そういった意見二つに分かれているわけです。医学的中身については、ぴしゃっと意見が一致しているのですけれども、こちらについていろいろ意見があるということです。そういう状況ですから、私どもは、その意見を踏まえて、そして、これをどうするかということを現在検討している、こういう段階でございます。     〔馬場委員長代理退席、委員長着席〕
  110. 島田琢郎

    島田委員 部長はいま法律の運用上非常に無理がある、こういうことを言ったわけでありますが、そもそもあなたの御認識は、無理があって、いままで無理なことをやってきたから、この際いろいろな意見を徴した中で六歳未満で切って、六歳以上はぜんそく性気管支炎の対象にしない、こういうふうなお考えに立っているような印象にしばしば私どもに聞えるのですが、いまのお話の中にも、いろいろ医学界の意見というのは、臨床上のそういう考え方というものは一致できるということがあるようでありますけれども、しかし、実際には人間の体は、同じようであって、個人個人の体のつくりというのはみんな違うわけですから、それを医学的な立場だけで割り切ってしまうのは、私はそれこそ非常に無理があるのじゃないか、こういうふうにも考えているわけで、やはり当分は現行の制度のままに運用を進めていくべきではないか、実はこういうふうに考えているわけでありますけれども、いま現に認定患者というのはどれくらい指定地域の中におられるのか。
  111. 本田正

    本田政府委員 四十一地域の全部の認定患者は七万五千名強でございますけれども、この中でぜんそく性気管支炎と名前がつく疾病名四つの中の一つでございますが、これは約九千五百名だと記憶しております。
  112. 島田琢郎

    島田委員 これはなかなかたくさんの患者がいるわけですね。しかもそれは全国というのじゃなくて指定地域内でありますから、限られた中にこれだけの人がいるというのは、これは容易ならぬことであります。そんなに無理して別に年齢を切ってやらなくたって、その地域でこういうのどの病気にかかられた、こういう状態にある人は救済していかなければならないというふうに私は考えるので、余り世論に疑問を与えるようなそういうやり方はおやめになった方が私はいいと思うのです。環境行政をお進めになる上で。何も画一的にこんなに一つの中に閉じ込めて無理やり運用しなくたって、いまのままだって結構やっていけるわけだし、その方が住民の理解はより高まっていくわけですし、環境行政というのは厚生省と違うのですから、そういう意味では、さっき割り切りの問題でいろいろ議論がありましたけれども、やはり割り切っていいと思うのですよ。何もそれを箱の中に詰め込んで、五歳以下、六歳以上というようなことをやらなくたって、そういう意味で救済をしていくのだ、これがこの法の精神なんだ、こういうふうに理解をしているわけですから、無理やりそれを一つのレベルで切ってしまうというようなことは、むしろ環境行政というものを進めていく上で障害になりこそすれ、それはプラスにはならぬ、私はそう思っているのです。大臣、いかがですか、私の考えは、間違っていますか。
  113. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど本田部長から御答弁がございましたとおり、医学的立場からいろいろ検討がなされておることは事実でございますが、先生お説のとおり、人間の健康にかかわる問題でございますので、慎重に対処してまいりたいと思います。
  114. 島田琢郎

    島田委員 慎重にというのは最も便利な答弁でございまして、どこまでが慎重で、どこまでが慎重でないのかと言われれば一番逃げられるので、それこそ、そこはきちっと割り切ってもらわないと、こんな広い話にされたのでは困るのであります。まあこれはまた専門で、専門といいますか、この問題に意欲を燃やしている馬場委員も後に控えておりますから、これはまたひとつ本田さんとやり合ってもらうということにして、きょうは時間がだんだんとなくなってまいりましたから、次に、水俣病について伺います。  二月二十四日の水俣病の認定審査会の結果というのは発表になりましたか。
  115. 本田正

    本田政府委員 多分臨時水俣病認定審査会のことだろうと存じますが、実は正式な答申というものはまだ出ておりませんで、正式にはきょう答申いただけるという段階にあると聞いております。
  116. 島田琢郎

    島田委員 伝えられるところによりますと、県に対する認定申請者は非常に多いんですね。ところが国に対する認定申請者が少ない。従来どんなことになっていますか。
  117. 本田正

    本田政府委員 この特別措置法の対象になりますのは、四十九年九月以前の旧法時に申請をした方々であるわけです。三県一市におきまして、主として熊本県でございますけれども、現在未処分者というのが、旧法時代に申請した方々が千八十五名ございます。その中で、実は現在のところ国の方に申請している方は四十七名でございます。まだきわめて少のうございますが、今後とも私どもはこの制度目的等をPRすることによりまして、こちらの方にもぜひ審査に申請をしていただきたいという努力をしていきたいと存じております。
  118. 島田琢郎

    島田委員 切り捨てるような考え方でやれば当然及び腰であって、積極的な指導とかあるいはアピールといったようなものはできないわけでありますが、そういう点が不足しているのじゃないですか、うんと善意に見て。
  119. 本田正

    本田政府委員 十名から成る認定審査会がございますが、この審査会におきましては、この法律ができますときの御意見にもございますように、各県の審査会と並列であるということから、上下の関係ではございませんで審査を行っていただくわけでございます。この審査に当たりましては、昭和五十二年でございますか、環境庁から出しました「後天性水俣病の判断条件について」、その「判断条件について」というものを踏まえながら審査をお願いする、こういうことであるわけです。あくまでも疫学的に、それから医学的な審査をお願いして、そこで判断が下ることだと存じます。
  120. 島田琢郎

    島田委員 水俣病もまた同僚の馬場委員の専門とするところでありますから、私は若干の質問にとどめておきたいと思うのです。  そこで、行政上の指導を進めるというような場合に、私は、制度の持っている意味といいますか、そういうものをまだ十分知ってないというふうな方がいはしないだろうか、水俣病であれだけ騒いだ地域ですから、そういう人がいるなんてことは考えられないことでありますけれども、しかし、意外に国の認定と県の認定が分かれていたり、それはどういう尺度でやられるのかといったようなことまで詳しく知らないということもあって、その点での戸惑いがあるのではないだろうかというふうな気がするわけでありますけれども、この点については十分だというふうに考えておられますか。
  121. 本田正

    本田政府委員 この制度発足いたしましたときに、申請の様式等を各申請対象者にお送りしたわけでございます。そういったことで各申請の資格のある方々に何とかしてもらおうということをやったわけでございます。恐らく一応は存じておられると存じますが、なお趣旨の徹底ということは当然私どもやらなくてはいけないと思います。具体的な方法について即刻また検討してみたいと存じます。
  122. 島田琢郎

    島田委員 この臨時審査会の認定の結果というものはどのような形になって答申されてくるのですか。それはいつごろの見込みですか。
  123. 本田正

    本田政府委員 判断条件に従いまして審査いただいた結果が、正式にはきょう答申があると聞いております。
  124. 島田琢郎

    島田委員 水俣病の研究センターがありますね。ところがなかなかこの研究者になり手が少ないのだ、こういうふうにも聞かされているわけでありますが、あるにはあるけれどもさっぱり機能していない、つまり開店休業のありさまだ、こういうふうに私ども聞かされていますが、これはどこに原因があるのですか。
  125. 本田正

    本田政府委員 研究センターが一昨年十月に発足いたしまして、それ以来研究要員の確保ということに私ども及び所長ともども大変努力してきたつもりではございましたけれども、まだ努力が足りませんで、ただいま所長以下研究者が二名、合わせて三名、それにごく最近非常勤の医師が参加してくれることになりました。しかしながら、いずれも基礎研究部だけにとどまっておりまして、患者さん方が御期待なさる臨床部の医師というものは非常勤の医師一名だけでございます。そういったことから、非常に開店休業という御批判を受けているわけでございます。私ども、できるだけ早くこの研究要員を確保したいために、できますならば熊本大学の、実績のある大学でございますから、そこの大学から要員をお迎えするということでお願いを続けてきているわけでございますけれども、なかなか御参加願えないというのが現状でございます。そこでこれから先は、主として近郊の大学にもお呼びかけ申し上げまして、そして一刻も早く一人でも二人でもこの研究要員の確保ができるようにしたいと存じております。  なお、現在は何もやってないかというと、そうではございませんで、申し上げましたように、基礎研究部におきましてようやく水俣病に関する基礎研究の一部に着手をしているというような状況でございますので、御理解賜りたいと存じます。
  126. 島田琢郎

    島田委員 いまいろいろ理由が述べられているようでありますけれども、どうも余り熱心でない、こういう感じがいたします。これはひとつぜひ善処されたい、このように希望だけ申し上げておきたいと思います。  時間がもうなくなってきましたから、最後に、八十四通常国会、五十三年の三月でありますけれども、この法律改正に当たりまして附帯決議が八つつけられております。一番最後の八項目のところに、「本制度対象となっていない騒音、振動等による健康被害及び財産被害についても、その実態の把握に努め、被害者の補償措置を早急に確立するよう検討すること。」という一項がつけられてこの法律が成立をしたという経過がございます。  そこで、あれから二年たちました。この附帯決議に基づいて環境庁としてはどういう努力をされましたか、どういう措置をとってまいりましたか、それをまず説明願いたい、こう思います。
  127. 金子太郎

    ○金子政府委員 公害による物的被害は、御承知のとおり種類が非常に多い上に、あらわれる態様がさまざまでございますので、その救済は個別具体的に行うべきであるというふうに考えております。このことは、専門家にお集まりいただきました検討会におかれましても、個別具体的に考えるべきであるという御意見を寄せられております。  それで、個別具体的な問題に関係しております各省庁におかれましては、この物的被害についていろいろ調査を進めておられまして、その実態はどういうことであるか、あるいは加害と被害との間の因果関係はどういうことであるか、そういうようなことを徐々に解明することを通じて問題が少しずつ解決に向かっているということとか、あるいは建設業におきますくい打ち機のように、油圧式に切りかえることによって被害そのものがかなり軽減されてきた、そして残った問題については、業者あるいは施主と被害者との間の民事上の問題で解決される例が多くなっているというような実態があるというふうにも聞いております。  このように、加害者がはっきりしているとか、因果関係が比較的明らかになっているものはそれなりの対応が進むわけでございますけれども、加害者がはっきりしない、あるいは因果関係がはっきりしないものについては、なお大きな問題が幾つか残っているように思われます。そういうものにつきましては、たとえば赤潮による漁業被害のように、漁業共済という制度の中で解決していく、こういうような方向も出ているような状況でございます。  私どもといたしましては、個別具体的な問題について関係しております省庁で、今後とも調査検討を進められて、必要に応じて共済制度等による救済なども検討いただきたい、こういうふうに考えておる立場でございまして、必要があれば調整機能を発揮することといたしたいというふうに考えている次第でございます。
  128. 島田琢郎

    島田委員 局長の話を聞いていたら、人ごとのようなことを言っておるが、これはこの法律の附帯決議なんですよ。関係省庁で必要があればおやりになったらいい、うちの方は、なかなか対象も原因もつかみづらいし、そう附帯決議で言われても困るといったような話になっているのです。附帯決議をそもそもつけたということは、それなりの一つ審議経過を踏まえ、これは法的な措置、位置づけというものがないものですから、そういう意味で附帯決議の中でこれを担保するということで、八項目のところでこれが明記されたというふうに私は考えているのです。あなたは、こういう国会の附帯決議というものに対してそういう認識しか持ってないのですか。これはえらいことじゃないですか。
  129. 金子太郎

    ○金子政府委員 どうも説明が不十分で申しわけないと思います。  私が申し上げました真意は、公害健康被害補償制度のように、全国的に統一的な制度を物的被害等についても考えるということは、確かに検討課題でございますけれども、現在までのところ、そういうような統一的な制度を確立するという方向での検討は非常にむずかしい状態にございまして、さしあたり個別的な問題ごとに対応していく、こういうやり方をやっているということを御報告申し上げた次第でございます。
  130. 島田琢郎

    島田委員 そこで、私が尋ねていますのは、いまのお話だと、全く何にもやってないでしょう。そもそも附帯決議でそういう国会の意見というものがあるのに、環境庁としてはどういう対応をしたんですかということが私としては聞きたいところなんですよ。附帯決議は勝手におやりなさい、そんなことは私は知りませんよ、そんなことでは国会の権威にもかかわる。いまの説明では私は納得できないのです。どう対応して、どのように今後進めようとお考えになっているのか、改めてもう一遍聞きたいと思います。
  131. 金子太郎

    ○金子政府委員 各省庁に大きく依存してまいりました点は確かに申しわけないと思っておりますが、政府全体といたしましていままで進めてまいりました調査状況、あるいはそれに対する対応等につきまして、取り急ぎ、取りまとめて御報告申し上げたいと思います。
  132. 島田琢郎

    島田委員 だったら率直に、やってない――やってないんですね。附帯決議はあったけれども、今日まで実態の把握もやっておりません、したがって、どういうことをやろうかもまだ決まっておりません、そうですね。
  133. 金子太郎

    ○金子政府委員 具体的な対応が不十分であります点はおわび申し上げたいと思います。
  134. 島田琢郎

    島田委員 頭下げておわびされているのに、また言うのもおかしいけれども、そもそも国会の審議、国会というものを一体何と心得ているのか。附帯決議というのは、これは大変な重みを持つわけです。そして附帯決議というのは、必ずしも一方的にわれわれがつくるものではないですね。必ず政府側もこれに参加して意見を出す。表向きはそうならないのが本当なんですけれども、やっぱり実行できるかできないかというところを確かめて、それが十分担保できて初めて附帯決議というものはでき上がり、権威を持ち、実行可能になるわけなんです。当時の局長でなかったのかもしれないが、それにしても、附帯決議に対する認識がその程度のものであるとしたら、私は環境行政そのものを疑わざるを得ない。住民意見も、そんなことなら聞く耳持たぬというのも平気で言える状態であるとも言えますね。しかし、これは私はおかしいと思うんですよ。まあ、やっておりませんでしたから今後善処しますということでありますから、それ以上私は追い詰めはいたしませんけれども、そういう姿勢そのものにまだ心配があるから、私は冒頭で環境アセスメントの問題に触れたときにも念を押したのであります。国会の論議というものを軽はずみに受け取るようなことがあってはなりませんし、そういう軽視するということであっては、われわれはこの公害委員会における審議には一切応じないという考え方で今後も臨みますから、その辺はひとつ十分腹に据えてもらいたいと思います。  私は、その点を厳重に忠告をいたしまして、時間がまだ少しありますけれども、大体質問が終わりましたので、ここで終わらしていただきます。
  135. 河野正

    河野委員長 この際、午後一時四十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十五分開議
  136. 河野正

    河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案の質疑を続行いたします。森田景一君。
  137. 森田景一

    ○森田委員 公明党・国民会議の森田景一でございます。私は、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案につきまして、ただいまから質問をいたします。  大気汚染公害病患者に給付される公害補償費及びそれらの患者の健康回復のために実施される公害保健福祉事業に要する費用については、八割を工場等の固定発生源負担し、残りの二割は自動車排ガスの汚染寄与分として自動車重量税からの引き当て分が充当されているわけでございます。この八対二という負担率は、工場等の固定発生源自動車等の移動発生源汚染寄与率が昭和四十八年当時おおよそ八対二であったということから定められた、このように承知しております。しかし、現時点におきまして、両者の汚染寄与率が変わりつつありまして、いまのまま八対二でよいのかどうか、ここに問題があると思います。両者の汚染寄与率はどのように変化をしてきているのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  138. 本田正

    本田政府委員 公害健康被害に要します費用の中で、いま御指摘がございましたように、固定発生源からいただく分を八割、それから自動車分として自動車重量税から引き当てる分が二割ということを御指摘いただきました。その比率というものが、工場、固定発生源から出る排気ガスというのはSOxNOxNOxもたくさん出ます。それから自動車から出るものはSOxも出ますけれども、多くはNOxでございます。その両方を勘案いたしまして、そしてその排出する両方の量を割り出すわけでございます。そうしたときに、いま御指摘がありましたように、四十九年では八対二。この八対二というのをもう少し細かく積み上げてみますと、固定発生源が八二%、それから移動発生源が一八%、これを丸めまして八対二ということから出発したわけでございます。その後、その比率が御指摘のように徐々に変わっておりまして、五十三年度におきましては、固定発生源が七七、それから移動発生源が二三でございます。したがいまして、現状ではやはり八対二という数字、四捨五入いたしましてその比率に相なっているわけでございます。御指摘のとおり、年々徐々にそれは変わってきておりますが、少なくとも現状では八対二という割合が適切じゃなかろうか、こういうふうに存じております。
  139. 森田景一

    ○森田委員 現状では適切ではないか、こういうお答えでありますけれども、それでは今後どのような状況になったらこの八対二という割合を変更するお考えであるのか、検討する時期というのは大体どういう割合になったときに検討するのか、それについてお答えいただきたいと思います。
  140. 本田正

    本田政府委員 これは実はなかなかむずかしい問題でございます。と申しますのは、そのときどきの、やはり先ほどから申し上げました比率というものを忠実に積算いたしまして比較していくことが必要だと存じます。これから先、ではどうなるのかということは、特にエネルギー問題等の問題もございますし、それからまだはっきりはいたしておりませんけれども汚染に対するNOxSOxのいわゆる寄与度と申しますか、そういったものを勘案しながらいくわけでございます。そうやって出した比率によりまして、これは変更していくべきものだと存じております。したがって、どの辺までどう来たらということは、やはりその辺もあわせて検討しないと言えないわけでございます。そういうふうに御理解賜りたいと存じます。
  141. 森田景一

    ○森田委員 自動車発生源にかかる費用負担のあり方、すなわち二割を自動車重量税から引き当てる、こういうことについて補償法の附則第十九条の二で規定しております。しかも、これが二年間という時限つき立法でございますので、法的に不安定な状況が続いていることは、もう先ほどから論議されているところでございますけれども昭和五十三年の中央公害対策審議会意見具申に基づきまして、附則第十九条の二の期間を「当分の間」とするということについてどのようなお考えをお持ちでありましょうか。
  142. 本田正

    本田政府委員 御存じのとおり、これは重量税からの引き当て方式をとっているわけでございますが、これが果たして最終的に一番いい方法であるかどうかということは、他にもこれはいろいろ方法があるわけでございます。たとえば現時点ではどういう方法かといいますと、重量税からの引き当てじゃなしに、いま走っている各車ごとに徴収したらどうであろうかというようなこととか、あるいはいっそのことメーカーに持ってもらったらどうだろうか、あるいは使用される燃料を単位としていただくのはどうだろうか、いろいろ方法論的にあるわけでございます。しかしながら、少なくとも現時点では、どれをとりましてもなかなかこれといった決め手がまだ見つからない。ということになりますと、現時点では重量税から引き続いて引き当てることが一番適切な方法であろう、こういうことでございまして、他にも検討すべき事項があるという現状におきましては、期限を切らずに「当分の間」とするということは、これはちょっと無理じゃなかろうか、こういうふうに存じております。
  143. 森田景一

    ○森田委員 しかし、この法律は、二年ごとに何度もこうやって改正されてきているわけです。その都度、二年ごとに期限をつけてきているわけでございます。それならば、いまお話がありましたように、この問題がきちんと解決されるまでは現状でいかざるを得ない、こういうことなら「当分の間」ということで妥当だろうと私は思うのです。そしてそういう問題がきちんと解明された時点で、改めてまた改正をすればいいじゃありませんか。その辺の見解、どうなんでしょう。
  144. 本田正

    本田政府委員 自動車重量税からの引き当て方式というのは――自動車重量税の現行の税率は、特別措置になっているわけでございます。それは租税特別措置法というものによっている、それが今度三年間延長された、こういうことでございます。それで過去においては二年になっておりますけれども、そういった租税特別措置法特例措置というものが二年ごとに改定されていたのが、今回はそれが三年になったということを私どもは踏襲いたしまして、その三年間に合わせているわけでございます。
  145. 森田景一

    ○森田委員 どうも話がおかしくなってくるわけです。最初のお答えでは、いろいろと自動車の排ガス量を規制するといいますか、検討する、そういう手法がなかなか確立しないから「当分の間」とすることはできない、こういうお答えで、いまお尋ねしましたら、租税特別措置法の方が三年延長するからこちらも三年延長するんだ、こういうことで、やはりその辺のところははっきりして、租税特別措置法の方は三年ごとに変更するならするにしましても、こちらとしては、そういう手法がいまのところ確立されていない、将来確立された時点自動車重量税から引き当てるか引き当てないか、これは問題にすべきだと思います。こういう点で、二年ごとという不安定な状況でなくしてやるべきではないか、こう私は考えるわけです。もう一度お答えいただきたいと思います。
  146. 本田正

    本田政府委員 どうも説明があちこち飛びまして失礼いたしました。  まず根底は、現状では自動車重量税からの引き当て方式が、いろいろ検討事項はあるけれども最も適切であるということが前提でございます。しからば、その引き当て方式をとるとすれば、当然これはお金をいただくわけですから、そのもとが三年間の延長であるということなので、三年間に合わせざるを得ない、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  147. 森田景一

    ○森田委員 それでは、移動発生源からの徴収方法について適切な方途を講ずるということを、環境庁はいままでずっと約束してきているようでございます。どのような検討がなされてきているのか、お答えをいただきたい。
  148. 本田正

    本田政府委員 先ほど申し上げましたように、自動車重量税からだけが適切な方法で、少なくとも現時点ではそれによらざるを得ないと判断いたしておりますけれども、ほかにいろいろな取りようがあるんじゃなかろうかということは検討いたしております。また、いたしました。  その一つは、自動車は走り回るわけでございまして、大気汚染物質を出すわけですから、自動車ごとに取ったらどうだろうかという検討をいたしました。ところが各自動車ごとに取るとなりますと、取り方自体、技術的に非常にむずかしい。したがって、日本にはいま三千五百万台ほどあるそうでございますが、それらから個々に取るということになりますと、その徴収コストをはじき出してみますと、これがまたべらぼうに高くなる、そういった問題が現時点であるわけでございます。  それからまた、次の問題として、いわゆる自動車メーカーから取ったらどうだろうかというような検討もいたしました。ところが自動車メーカーから年度ごとに取るということになりますと、新車分だけしか取れないわけでございます。いままで売られ、かつはいま走り回っているいろんな車ということになりますと、こっちの方が多いわけでございますが、そうなりますと取れないというような問題がございます。新車だけから取るということは、それ自体非常に矛盾がございますので、それも現時点ではどうかなということ。  さらには、燃料ということを考えましたときに、各車が使用する燃料という観点から取るということも、燃料というのは車だけに使われるわけじゃございませんから、そういったことからなかなか取りづらいということから、自動車重量税からの引き当て方式現状よらざるを得ない、こういうふうな検討をいたしております。
  149. 森田景一

    ○森田委員 それじゃこの自動車重量税から引き当てるということにつきまして、いままでいろいろと問題があったようでございますが、どのような団体から、どのような意見が出てきているか。もし強い反対がなければ、恒久的措置、たとえば自動車重量税引き当て方式を恒久化するため、法第四十九条を改めることについては、どう考えておいででございましょうか。
  150. 本田正

    本田政府委員 特に強い、こうすべきだという意見はないと存じますけれども、少なくとも自動車重量税を担当している道路関係者からは、そういったほかの検討もあわせてやるべきじゃなかろうかという御意見をいただいております。そういうこともあって、先ほどから申し上げます検討をいたしたわけでございます。
  151. 森田景一

    ○森田委員 先ほどの答弁と関連しまして、こちらだけの法律ではないから、三年ということに時限を切らざるを得ない、こういうお話でございます。いまのお話ですと、やはり自動車重量税から引き当てることについて、あんまり強い反対はない、担当者の方も、それもやむを得ないだろう、こういう考えだというわけですね。ですから、それならば何もこちらの法律だけじゃなくて、租税特別措置法の方でも当分の間、三年と時限を切らないでやっていけばいいじゃありませんか。その辺、どうなんでしょう。
  152. 本田正

    本田政府委員 租税特別措置法によるところの自動車重量税は、またそれなりに使用目的自動車関係者にはあるわけでございます。そういったところから、現状これはやむを得ない、こういうことでございますので、やはりもとに合わせざるを得ない、また合わせるのが一番円滑な方法ではなかろうか、このように考えておりますので、御了承を賜りたいと存じます。
  153. 森田景一

    ○森田委員 ですから、そのもとの方もこっちに合わせればいいじゃないですか。これは担当が違うからできないということですか。
  154. 本田正

    本田政府委員 もとの方は、建設省におきます道路五カ年計画に基づくところの計画でございます。二年が三年になったということは、その計画の変更があったやに聞いております。
  155. 森田景一

    ○森田委員 その辺のところはまた後でやることにいたしましょう。  それで、移動発生源と固定発生源費用負担割合はSOxNOx排出量に基づいて計算されているわけでありますけれども工場等固定発生源から徴収する汚染負荷量賦課金SOxのみを対象としておりまして、最近、燃料の転換指導などによりまして重油以外の燃料を使用し、大量のNOx排出している工場等がほとんど賦課金を免れている、こういう状況でございますが、これは不合理ではありませんか。速やかにNOxに対する賦課徴収について検討すべきではないかと考えますが、この点についてどうお考えでございましょう。
  156. 本田正

    本田政府委員 御指摘のとおり、SOx賦課金賦課の積算根拠にいたしておりますが、これは、固定発生源から出るのはSOxだけではございませんで、NOxも出るわけでございます。しかし、NOxの方は、燃焼条件とか燃料によりましてなかなかつかみにくい。たとえば温度が低く燃えますときにはNOxは少なく出るし、同じ量でも高い温度で燃やすときには高く出る、そういったことで、NOx指標にして取るということは、いまのところ技術的に非常にむずかしいわけでございます。したがって、SOxを代表にせざるを得ない、こういうふうに御理解賜りたいと存じます。
  157. 森田景一

    ○森田委員 公害健康被害補償制度昭和四十九年から施行されて、約六年を経過しているわけでありますけれども、今日においては制度上さまざまな問題が発生しております。それに伴って、企業及び被害者の両サイドから制度改正や見直しが要求されるに至っております。これは御存じのとおりであります。  そこでまず第一点、環境庁制度の見直しについていまだ正式に中央公害対策審議会に諮問していないようでありますけれども、その準備や検討も進めているものだと考えますが、環境庁はいつごろ諮問する御意向でありましょうか、お答えいただきたいと思います。
  158. 本田正

    本田政府委員 公害健康被害補償法目的であります公害患者の「迅速かつ公正な保護を図る」という観点から、公害健康被害補償法を担当している私どもといたしましては、患者救済対策が円滑に運営できるようにという観点からいろいろ検討いたしております。ただ、その検討の中身も、公害健康被害補償法が幾つかの割り切り、たとえば個々因果関係を問わないとか、地域指定をするとかあるいは暴露要件を決めるとか、そういった幾つかの割り切りのもとに発足しているために、検討すべき事項というのは実はたくさんあるわけでございます。しかも、科学的に、また医学的にそれらを検討するということが必要でございます。現在そういったことを検討しているのであって、その科学的データといいますか根拠がまとまりませんことには、これは諮問とかそういったことにはなかなかいかないわけでございます。現在そういった検討を鋭意続けている段階でございまして、いつ諮問をするというふうなことにつきましては、まだ決めておりません。
  159. 森田景一

    ○森田委員 昭和四十九年の中央公害対策審議会答申にあります地域指定解除要件について、環境庁はどのような点について検討を加えていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  160. 本田正

    本田政府委員 幾つかの検討をしている中に、いま御指摘解除要件検討というのもやっておりますが、解除要件だけを取り上げた検討ということはやっておりません。と申しますのは、この解除要件というのは、いま御指摘の四十九年の答申の中にもほんの数行書いてございます。この中では、著しい大気汚染がなくなることと、その影響による疾病が多発しないこと、この二つ条件を明示していただくにとどまっているわけでございますが、このいずれをとりましても、相当の科学的根拠というものが要るわけでございます。著しい大気汚染がなくなったということは、一体どういう目安で判断するのかとか、あるいはその影響による疾病が多発しなくなるというのは、一体どういう調査に基づき調査すればそれが把握できるのかというような方法論もございます。そういったことを、たとえば指定地域追跡調査等を通じましておいおいと詰めている、そういう段階でございます。
  161. 森田景一

    ○森田委員 私は制度の見直しについて、合理的な理由があれば堂々とやればよい、このように思っております。しかし、環境庁制度見直しの動機には不純なものがある、このように言わざるを得ないわけであります。なぜならば、制度の改善、見直しについてはこれまで公害病患者からも幾たびか要求されてきましたけれども、それらの被害者からの要求には余り耳を傾けないのに、財界や企業からの制度見直し要求となりますと、すぐ対応しようとする姿勢がありありと見受けられるわけであります。  制度の見直しについては、公害健康被害補償法の根本精神や理念を見失ってはならない、このように私は考えております。法の精神とは、御存じのとおり第一条の目的にもありますように、「健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図ること」でありまして、この観点から、被害者の救済を第一義として見直しが行われるべきである、このように私は考えておりますけれども、この点につきまして環境庁見解をお伺いしたいと思います。
  162. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  環境庁といたしましては、この制度主管者といたしまして、この制度をめぐる諸問題につきましては、先ほど先生がお述べになりましたとおり、あくまでも「健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図る」という趣旨に沿って科学的、合理的な根拠に基づいて検討いたしておるところでございまして、今後とも、関係方面の意見を聞きながら制度の改善に努めてまいりたいと考えております。
  163. 森田景一

    ○森田委員 財界や企業から、たとえば指定地域解除を要求されるとすぐさまこれに飛びつく、あるいは指定地域解除要件をつくろうとするところに環境庁の財界、企業寄りという姿勢が見られる、このように私は判断しているわけでございます。制度の改善、見直しにつきましては、制度発足の基礎となった中央公害対策審議会答申を実行することが基本であるべきである、このように私は考えております。  たとえばNO2や浮遊粒子状物質指定地域指標化を今後の課題としていることには、私はいままでの資料をいろいろ調べました結果では、環境庁は言を左右にして拒否し続けてきているようでございます。これなどは被害者の立場には消極的であり、企業の都合のよい方には積極的であると言われても弁明のしようがないだろう。このように私は判断をしているわけでございます。この点について長官、いかがですか。
  164. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先ほど先生がお述べになりましたとおり、法が施行されましてから六年目を迎えたわけでございますが、環境庁といたしましては、この制度をめぐる諸問題について検討を進めているところであり、その中にはNOx地域指定要件指標として具体化するための検討も含まれておる次第でございます。「被害者の迅速かつ公正な保護を図る」という法の趣旨に沿って今後とも検討を進めてまいりたいと考えております。
  165. 森田景一

    ○森田委員 指定地域解除要件設定については、公害病患者の激増している現状から言いましても、この設定を急ぐことは適切ではない、こういうふうに私は考えます。それ以上に優先して行うべき仕事がたくさんあるではありませんか。こういうことで幾つか例を申し上げてみたいと思います  一つはNO2の地域指定指標化であります。第二番目が幹線自動車道沿道地域の呼吸器系疾患の救済を図るために健康調査の実施地域指定。第三番目がぜんそく性気管支炎の認定要件の改定による六歳以上の患者切り捨ての問題。四番目が障害等級を細分化することによるランク外患者の解消。五番目が現行の二級五〇%、三級三〇%の給付率の改善。六番目がぜんそく等の呼吸器系疾患の治療及び予防に関する研究。七番目が公害保健福祉事業の充実強化。特に施設を設置し、運営することができるような助成措置を講ずること。いずれも緊急な課題であるはずであります。そういうことでございますから、ただいま申し上げました項目につきまして一つ一つ細かくお尋ねしたいと思います。  まず第一番目のNO2の地域指定指標化についてはどのように対応をしていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  166. 本田正

    本田政府委員 NO2の指標化につきましては、NO2が少なくとも現状の線ではどういう害があるかということはまだわかっておりませんけれども、NO2を指標化するためにいろいろ科学的なデータの収集が必要でございます。まずは公害健康被害補償法においてNO2はどう評価したちいいのかということから始めるべきだと存じております。そのための調査も行っております。誤解をいただかないために、指標化をするのだということでやるのじゃなしに、その前にNO2が人体被害にどういうふうに影響があるのかという評価をしませんと、たとえば指定要件の中に入れるにいたしましても、大体どの単位のものでどういうふうに――たとえば指定要件にあるSOxのごとく決めていけばいいかということがわかりませんので、その辺の検討をするようにいたしております。
  167. 森田景一

    ○森田委員 どうもその辺のところが財界、企業寄りと言われる大きな要因の一つじゃないだろうか。後でも私は論議するつもりでございますけれども、財界、企業の方からはNOxについては指標化しないでほしい、こういう要請がたびたび出ておりますね。どうですか。
  168. 本田正

    本田政府委員 私はそういう直接的な要請といいますか、話は聞いたことがありません。むしろ指標化してほしいということを住民側から聞いております。したがいまして、申し上げましたような科学的な検討が必要であるという認識は持っておりますので、御理解賜りたいと思います。
  169. 森田景一

    ○森田委員 お気持ちのほどはわかります。その線でひとつしっかりとがんばっていただきたいわけでございますが、最初に御説明ありましたように、自動車の排ガスではSOxの方はいま大して出てない。NOxの方が大量に出ているのだ、こういうお答えであったわけであります。しかし、自動車重量税から八対二の割合で負担金を出している、こういう状況でありますから、NOx住民に相当大きな影響を与えている、こういう事実は認識なさっていらっしゃるのでしょうね。
  170. 本田正

    本田政府委員 五十二年に行いました自動車道沿道の健康調査におきましては、明らかな健康被害は出なかったわけでございます。しかしながら、大気汚染自動車は非常に関係が深うございます。そういう認識のもとにさらに調査をする必要があろうと思います。しかしながら、その調査をやるのに調査のもとになるいわゆるBMRCという方式を実はとってきたわけでございます。ところがBMRCというイギリスで開発された方式によりますと、もう一つ日本の国情に合ったものが的確に出てこないといううらみもありますために、BMRCにかわる調査票といたしまして、これはアンケート調査でございますけれども、そういった方法を現在専門家に依頼いたしまして開発しつつある、こういう状況でございます。
  171. 森田景一

    ○森田委員 このNOx関係は後でもまたやるつもりでございますが、第二番目の幹線自動車道の沿道地域におきましては、最近におきまして走行量が非常に多くなってきた。またトラックの大型化、交通の渋滞傾向などを背景にいたしましてNOx、粉じん等を指標とする環境の悪化が憂慮されております。このような地域に対しまして総合的な交通公害対策を早急に実施することはもちろんでありますが、とりあえずこのような地域に多いと言われる呼吸器系疾患の救済を図るため、健康調査の実施及び地域指定に踏み切る考えはおありかどうか、この辺の御説明をお願いしたい。
  172. 本田正

    本田政府委員 先ほど申し上げましたように、五十二年に沿道調査を一部行ったわけでございますが、申し上げましたような理由、つまり調査票が、もとがしっかりしていませんと正確なデータが出ないわけでございます。そういったことで、差し当たっては早く調査様式を固めませんことには調査にかかれないわけです。したがって、そういう必要性は認めているわけでございまして、その調査方法の検討をいま取り急いで行っていただいているところでございます。
  173. 森田景一

    ○森田委員 どうももとができない。もとができなければ周りもできないわけでありますけれども、その辺の見込みはいつごろ出ると考えていらっしゃるのですか。いつごろをめどにして取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
  174. 本田正

    本田政府委員 昨年から始めておりまして、二年くらいを目標に検討を完遂していただくように専門家にお願いいたしております。
  175. 森田景一

    ○森田委員 ぜんそく性気管支炎の認定要件につきまして、環境庁専門家検討結果に基づいて改定を考えていると言われておりますけれども、これはいつごろ実施しようとなさっておられるのか、また現在ぜんそく性気管支炎の認定患者は約九千五百人と言われております。そのうち六歳以上が約六千人と言われておりますけれども、これらの人々を円滑に他の疾病に振り分けるためには、まず認定審査会及び主治医の全面的な協力が不可欠であると思われますが、この点についてはどうお考えでございましょうか。
  176. 本田正

    本田政府委員 ぜんそく性気管支炎につきましては、現在、四十七年の通知で、その認定作業がそれを参考にして行われているわけでございますが、いま御指摘の六歳以上が五千七百人ぐらい確かにおります。それをしゃにむに分けるということじゃございませんで、いま御指摘のように、やはり主治医がそれをごらんになって、もし適切な疾病に分類できれば分類してほしいというのが一昨年から一年かかって検討いただいた検討委員会意見でございます。それも六歳ぐらいになれば鑑別がつくはずであるということでございます。そういう医学的な意見に基づくものでございます。これについては賛否がたくさんあるわけでございますので、それらを整理いたしまして、どうすればいいかということをいま私ども検討しておるところでございまして、いつこれをどうするということは決めてございません。
  177. 森田景一

    ○森田委員 そういうことから結果的に患者の切り捨てということが起こり得るのではないかというこれも大きな心配でございます。そういうことはないと理解してよろしゅうございますか。
  178. 本田正

    本田政府委員 もとより、当然認定さるべき患者を切り捨てる、これが患者の切り捨てだと思いますけれども患者を切り捨てるというようなことは考えてございません。
  179. 森田景一

    ○森田委員 それでは第四項目目でございますけれども、障害等級をいま特級、一級、二級ですか、こういうように分けているようでございますけれども、これをもう少し細分化することによりまして、ランク外患者というのがいるようでございますが、このランク外患者の解消を図るべきではないかと思いますが、その点についての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  180. 本田正

    本田政府委員 ランク外患者といいますか、ランクというのがいま御指摘のように特級、一級、二級、三級とあるわけでございます。それぞれその障害の程度に応じて張りつけられるわけでございます。ところが確かに現在等級外の患者というのもいるわけです。どういった方々かといいますと、いわゆる障害として疾病を見たときの程度は軽いけれども、しかしながら、医療が必要だという患者さん方がおられるわけでございます。そういった方々が等級外に相なるわけでございますので、医療費とか医療手当、そういったものを支給しているのが現状でございます。
  181. 森田景一

    ○森田委員 それでは、その等級による補償といいますか、現行の二級が五〇%、三級が三〇%、こういう給付率の改善について検討するお考えはお持ちでございましょうか。
  182. 本田正

    本田政府委員 中公審答申、御意見に基づきまして、一級の場合、特級もそうでございますが、一〇〇%支給、それから二級がいま御指摘の五〇、三級は三〇ということは、これは障害の補償でございますので、障害の程度に応じてそういった数字が決まっているわけでございます。現状、私どもそれは、中公審意見もございますとおり、適切な数字じゃないかと存じております。
  183. 森田景一

    ○森田委員 環境庁の方は適切だと考えているようでございますが、患者の立場から見ますと、五〇%、三〇%というのは、労働者の平均賃金の八〇%がいわゆるここでは一〇〇%と見るわけですね。その八〇%の五〇%ないし三〇%、こういうことでございますから額としてはかなり落ちてくるわけでございます。そういう点につきましては、現時点では適切だ、こういうお考えのようでありますが、これからの推移を見てまたひとつ十分検討していただきたい、こう思います。  次が、ぜんそく等の呼吸器系疾患の治療及び予防に関する研究につきましてどのような推進策を講じていらっしゃるでしょうか。患者にとりましては健康の回復が第一でありまして、これらの研究の成果が一日も早くもたらされることが望ましいわけであります。近い将来においてどのような研究の進展が期待されているのでありましょうか。この点につきましてお知らせいただきたいと思います。
  184. 本田正

    本田政府委員 およそ疾病の治療に関しましては、これはなかなかどの辺までどうやって進んでいるということが率直に申し上げて言いづろうございます。特に年齢にもよりますけれども、ぜんそくとかあるいは慢性気管支炎、そういったものはお年寄りになるほど治りにくうございます。そういったこと等ございまして、治療方法の開発というのは御指摘のようにきわめて大事なことでございます。この制度の終局的な目的と言っても過言ではないと存じます。そういった観点から、専門家に治療方法の開発、さらにはリハビリテーションの方法、そういったものも御意見を聞く、専門家の方々にそういうことをお願いしているところでございます。しかしながら、では一体、当初申し上げましたように、どういう患者だったらどこまでやれば必ず治るとか、そういったことまで、なかなか医学というのはむずかしゅうございまして、隠しているとかそういうことじゃなしに、現実になかなか表現できぬ分野でございますので、何とぞ御理解賜りたいと存じます。
  185. 森田景一

    ○森田委員 医学のお立場というのは、どうもわれわれ素人の分野ですから、向こうがだめだと言われますとそのまま引き下がらざるを得ない、こういう点があります。しかし、患者の立場に立ちますと、やはり一日も早く治療方法あるいは予防方法というものを確立してほしい、これは当然な願いでございますので、ひとつこういう問題につきましては、環境庁として、お医者さんの方に、研究機関に極力早期に確立してもらうような努力をぜひお願いしたいと思うのです。  次に、公害保健福祉事業の一層の充実強化を図るため、機能回復訓練、検査、診断、応急措置及び療養相談等を行う施設の設置、運営につきまして助成を行うお考えはありませんか。また地方自治体でこういう施設を設置している例を御存じでございましょうか。その点についてお答えいただきたい。
  186. 本田正

    本田政府委員 公害福祉事業というのは非常に大事な事業でございます。これらにつきましては、いわゆるこの法律に基づきまして県知事あるいは市町村長が行うということに相なっております。そういったことから、私どもはその助成を県市に実施している。先ほど指摘ございましたような項目につきまして県市にやっているわけでございます。  施設をつくったらどうかということでございますが、多くの場合は、そういった専門の施設を利用するというようなかっこうで県市が責任持ってやっているというのが現実でございますが、実際には四日市とか尼崎等がそういう施設を持っているということは聞いてございます。
  187. 森田景一

    ○森田委員 そんな遠くまで行かなくても、横浜市と川崎市で、これは両市で共同しまして公害保健センターというものをつくっておりまして、まあ御存じと思いますが、結局いまお話しのように、そういう建物のあるところへ行って、先ほど申し上げました回復訓練とかそういうことが助成の対象になっているわけですけれども、建物をつくる、施設をつくるということについての助成がないわけですから、それをまた建物をつくっただけではしようがありません。運営しなければなりません。施設をつくることについて、またその運営をすることについて助成するお考えはお持ちじゃありませんかということです。
  188. 本田正

    本田政府委員 そういう施設について、現在、運営費も施設費も出しておりませんが、やはり保健福祉事業の重要性にかんがみまして検討させていただきたいと存じますけれども、実際は施設費等を出します場合は、普通既存の施設を活用するという方式を従来までとってきておりますので、なかなかむずかしいと思いますけれども検討はさせていただきたいと思います。
  189. 森田景一

    ○森田委員 検討するということでございます。いままでそうであっても、現実には地方自治体ではもう建物をつくり、そこでやらざるを得ないわけです。ないところではできません。ひとつ検討するというお話でございますが、御参考までに申し上げますけれども、私は千葉の県会議員を十年ほどやってまいりました。ほかの県は知りませんけれども、千葉県では議会でいつも問題になりますのが、役所仕事というのは、検討三年、やります二年、始めましたはぼちぼちと、これが千葉県の役所の定評になっておりまして、何か事あるごとにこれが問題になってくるわけでございます。国は、特に公害患者の被害を守ろうという環境庁は、そんなことはないだろうと私は思います。私はきょうが初めての質問でございますので、いま検討するとおっしゃったお言葉はよく胸にとどめておきますから、ひとつよろしく御配慮いただきたいと思います。  次に、経団連等の財界諸団体は、公害健康被害補償制度の見直しを要求しておりますけれども、国や環境庁に対しまして何度ぐらい要請しているのか、お知らせいただきたいと思います。
  190. 本田正

    本田政府委員 文書等による正式の要望というのは、少なくとも私が在任いたしましてからはございません。ただ、いろいろパンフレットをつくられたり、各県の商工会議所等にも、そこを窓口にして費用徴収をお願いしてあります。そういった事務指導等に当たりまして、いろいろ意見を聞かされるということは多うございます。
  191. 森田景一

    ○森田委員 別に回数は問題ではありません。いずれにしても、かなりしばしば要請されているという事実はお認めいただいて差し支えないと思うのでございますが、それでは、経団連等から要求されている見直しの内容というものはどういうものでしょうか。
  192. 本田正

    本田政府委員 先ほど申し上げましたような、いろいろな機会を通じまして聞いておりますのは、たとえば暴露要件というものは、過去に比べれば大気もずいぶん改善された。そういった条件における暴露要件というのは適切であるかどうかということ。それから指定地域解除要件、いわゆる物差しでございますが、それの設定とか、あるいは喫煙者に対する喫煙の害というものを明確化する。喫煙者に対してというよりも、喫煙の害というものを医学的に明確にしてほしいということとか、自然有症率のものを公費で持ったらどうだろうかという御意見は拝聴いたしております。
  193. 森田景一

    ○森田委員 何も経団連の見直し要求が全部不合理だ、こういうふうには思いません。ある程度合理的だと思われる内容もあるわけであります。私の方に幾つか資料が来ております。しかし不当だと思われる問題もあるわけであります。こうした要求に環境庁がどのような態度をとっていくか、これは最初に申し上げましたように、非常に大事なことだ、このように私は考えております。たとえば財界等では、大気汚染が改善されているのに公害病認定患者が増大することはおかしい、大気汚染関係ない者は認定から除外すべきであると主張しております。そういうのがこういう文書になっていたり、「公害健康被害補償制度考える」こんなきれいなパンフレットでありますが、こういうものを使って盛んにPRしているわけです。こうした財界等の主張につきまして、環境庁はどうお考えでこざいましょうか。
  194. 本田正

    本田政府委員 御指摘のように、私どもはこの補償法が円滑に運用されるという観点からいろいろ検討しておると申し上げましたけれども、その中にも、それと合致するものが検討事項としてございます。しかしながら、いま御指摘患者が増大しているということは非常におかしいとかいうこと、これについては異議がございます。と申しますのは、これは非特異的な疾患でございますので、どこにでも一定の率である疾病でございます。そういった疾病を地域指定する、暴露要件を決める、そういった割り切りのもとにある制度の上での話でございますから、それが増大していくのがおかしいということは、医学的にもちょっとおかしいのではなかろうかと私は思います。そういったことを含んでおります。
  195. 森田景一

    ○森田委員 経団連等財界の主張がおかしいという意味ですね。そういう強い態度でやってもらいませんと、これもおかしくなってしまいます。  それからまた、自然発生患者大気汚染による患者を明確に区別することが可能であるかどうか、こういう問題があるわけであります、先ほどもいろいろありましたけれども。現実には可能でないからこそ、指定地域の中では自然発生患者大気汚染による患者も、ともに救済する、これを前提としてこの制度が成立しているはずでございます。この根本前提を覆すような財界の主張は不当でありますから、環境庁はこうした主張をきっぱりと拒否すべきである、このように私は申し上げておきたいのでございますが、もう一度答弁をお願いします。
  196. 本田正

    本田政府委員 意見の中に文言の不適切なところを幾つか私も感じます。その御指摘一つがそうだろうと思います。公害患者も、おおよそ公害である患者なのか、それから公害でない患者なのかと区別することはできません。できないという前提に立っている制度でございますので、どだい無理な話だと存じます。もともと非汚染地域公害患者がおられましても、汚染地域に見えれば、たとえば発作の回数がふえるとか、そういったことは医学的にも考えられるわけでございます。もし区別ができるはずだという御意見であるとするならば、それは私はおかしいと存じます。
  197. 森田景一

    ○森田委員 これもまた財界の言い分ですけれども大気汚染、特にSO2の排出量が改善されている中で、大気汚染公害病が増大している、こういう意見があるわけです。こういう意見に対して環境庁はどういう見解をおとりでございましょうか。
  198. 本田正

    本田政府委員 過去の非常に高濃度汚染をもたらしましたSOxにつきましては、公害病患者との関係は疫学的にはっきりしているわけですが、では公害病というものはSOxだけで来たのかということになると、これは非常にむずかしい問題です。いまだに解明されない問題もあるわけでございます。ただSOxが下がったからといって公害患者がなくなるというたぐいのものでもないかもしれませんし、またあるいはそうかもしれません。これはいろいろ議論があろうかと存じます。したがいまして、SOxが下がったのにまだ患者がおる、こういうことはちょっと理論的にもおかしいのではないかと思います。先ほど申し上げましたように、非特異的な疾病であるということを念頭に置きませんと、そういう議論はできないのではなかろうか、こういうふうに存じております。
  199. 森田景一

    ○森田委員 そういう態度を明確にしていけばいろいろと問題はなかろうと思います。  もう一つお尋ねしますが、過去の汚染が現在の公害病の発病となっている、こういう説と、SOxNOx、浮遊粒子状物質等の複合汚染によるもので、この複合汚染が解消しない限り公害病の増大は抑えられない、こういう説があります。これについてどうお考えでしょうか。
  200. 本田正

    本田政府委員 いろいろ研究者の間にはそういう説も提唱されているということは承知しております。しかしながら、これは端的に、そういう説を唱えたからそれに賛成とかというわけではございませんで、反対の説もあるわけでございます。たとえば現実にある地域SOxは下がった。患者発生率も下がった。SOxは高濃度では非常に悪い影響を与えたということは確かでございますから、それが下がって現時点でない、こういうことになりますと、いわゆる過去の暴露というものは関係がないんじゃなかろうかというような研究報告もございます。しかし、その反対に、いま御指摘のようなものもあるわけであります。これは非常にむずかしい問題だと思います。ちょっと結論はなかなか言えないことかと存じます。  それから、後段御指摘になりました複合的な汚染の問題も、これはやはり物が世の中に、空気の中に一つあるというわけじゃございません。その辺の複合的な絡みというものはどうなっているか、これもきわめてむずかしい問題でございます。いま幾つかの環境基準が決められてございますけれども、たとえばSOxについての環境基準というものは、そのほかのNOxとか浮遊粉じんというものを横目に見ながら決められたものであると私聞いております。またNOxもそういうものを横目に見るというのはちょっとおかしゅうございますが、配慮しつつそういったふうに決められていると解しております。したがいまして、ある意味では、おのおのの環境基準を達すれば、そういった複合的な因子をそれ自体が含んでいるんだから、複合汚染というものは、環境基準を満足すればないんじゃなかろうか、こういう説も実はあるわけでございます。この問題は非常にむずかしゅうございまして、これが定説だ、確立された説だということはいまだないということを御理解賜りたいと存じます。
  201. 森田景一

    ○森田委員 いまのお答えにもありましたように、定説がない、いろいろ複雑な世の中、定説がないのがたくさん出てまいりまして、対応に困るわけでありますけれども、たとえばいまのお話、これを経団連の方では、SOxが減って公害患者がふえてくるのはおかしいということをこういう図表で示しておるわけですね。ごらんになったかどうか知りませんが、こちらがSOxの量です。こちらが公害患者の人数です。こうなってこうなっているのはおかしいじゃないか、こういうことで経団連では盛んに揺さぶりをかけているんじゃないか。環境庁の方に何回来ましたかとお尋ねしたのはそういう意味であります。  部長さん、部長さんが、先ほど来私がお尋ねしましたそういう問題につきましてお答えになりましたような姿勢で対処をしていただければ、問題なかろうと思います。どうかひとつあくまでも法律の基本目標に沿って今後とも対処されますように、私は強く要望いたしまして質問を終わります。  以上です。
  202. 河野正

    河野委員長 則武真一君。
  203. 則武真一

    ○則武委員 私は、法案の公害健康被害補償法問題について質問をする前に、先ほどから問題になっておりますアセスメント法案につきましての環境庁の基本姿勢について再度お尋ねをいたしたいと思います。  前回の委員会のちょうど直後でございましたが、私の部屋へ二月二十日に届けられた手紙でありますが、経団連からの手紙で、土光会長名で「衆議院議員則武真一殿環境影響評価制度の立法化問題についての意見御送付」結論は、要するにこの法律をつくらないようにしてほしいというような、非常に積極的に国会へ経団連として、この法律をつくらないようにしろというような働きかけのようにお見受けするわけです。全国会議員にお配りになったのかどうか知りませんが、この時期と時を全く同じくして、二十二日付の新聞に一斉に載っておりますが、二十一日には自民党内で櫻内幹事長と安倍政調会長が協議をして「党内の意見調整が難航しており、法案の国会提出はしばらく見合わせた方がよいのではないか」こういう点で意見が一致した、こういうふうに報道をされているのであります。再三の長官の言明にもかかわらず、こういう報道が事実であるならばきわめて重大な事態ではなかろうかというふうに思います。  私は、前回の質問で、この法案が再三にわたって流産をした経過からも、今度こそは本当に環境を守り、よりよい環境をつくっていくにふさわしいアセスメント法案でなければならない、ただつくればいいというものじゃなくて、少なくともこういう内容を持つものでなければならぬということを、内容を挙げて若干質問をし、また長官も、あなたの御意見を含めて十分検討しましょうというふうな御返事をいただいたわけであります。しかし、その後、前回の委員会でそういったお話があった直後に、こういうあわただしい経過があったわけでありますので、重ねてアセスメント法案についての決意をお伺いいたしたいというふうに思います。
  204. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  けさほどの御質問でもお答え申し上げましたとおり、環境影響評価の法制度化は時代の要請でもございますし、現在、政府・与党一体となって、これが法制化をすべく全力を傾けて努力をいたしておる次第でございます。  新聞報道の真意のほどはよく存じておりませんが、けさほどの御答弁でも申し上げましたとおり、今回の予算修正の折衝の過程における自民党からの申し入れ等もこれあり、その趣旨に沿って、けさほどの閣議におきましても、官房長官からこの問題について閣僚懇談会を設けてもらいたいという発言もなされておるような次第でございまして、私といたしましては、何といたしましても、これが法制度化に最善の努力をいたしてまいりますことをかたくお誓い申し上げる次第であります。
  205. 則武真一

    ○則武委員 そうしますと、具体的にはいつごろこの法案が出されるのか、そのスケジュールもお伺いしておきたいと思います。  特に、他の委員の質問にもありましたが、この法案の大筋なり中身についてかいもくわれわれにお知らせがないわけであります。そういう意味では全く極秘のうちに折衝が進められておるような気もするんですけれども、いつになったらわれわれのところへ見せていただけるようになるのか、具体的な期日をひとつ明確にお答えいただきたい。
  206. 金子太郎

    ○金子政府委員 予算に関係のない法律の国会提出期限は、一応政府部内におきまして三月十四日ということになっておりますので、私どもそれに間に合うように最大限の努力をしているところでございます。  また、その内容につきましては、なお数省庁と折衝中でございますので、その折衝を了することができますれば、何らかの方法でお届けいたしたいと考えております。
  207. 則武真一

    ○則武委員 そうすると、三月十四日以前に私どもにそのお知らせをいただける、こういうふうに理解していいでしょうか。
  208. 金子太郎

    ○金子政府委員 現在のところ三月十四日ぎりぎり間に合うかどうかということで、鋭意やっているところでございますので、以前というのはちょっと自信がございませんが、いずれにいたしましても、政府部内の調整が了すれば直ちにお届けいたしたいというふうに考えております。
  209. 則武真一

    ○則武委員 どうもぎりぎりのところへくると歯切れが悪いのが特徴なんですけれども、だれがどういう点で反対しておるからこの法律が出ないのか。いろいろな方がいろいろな意見を持っているでしょう。十八省庁の意見の調整ということも聞きました。そのすべてを話していただかなくてもいいのですけれども、その中で一番難渋しておる問題、相手はどこの省で、どういう意見の違いがポイントなのか、そのさわりだけひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  210. 金子太郎

    ○金子政府委員 なお関係省庁の間で折衝中でございますので、余り具体的なことは御容赦いただきたいと思います。本件の非常にむずかしい点は、同じ一つの問題につきまして関係省庁の間で正反対の意見があるということでございまして、そのどこかに歩み寄ってもらわなければならないという場合に、その歩み寄りがなかなか進まない、こういうようなことが非常にむずかしいポイントでございます。長い時間をかけているのだから、そろそろ結論が出てもいいのではないか、こういう御意見もございますけれども、それぞれのお立場からなかなか歩み寄っていただけないという問題が一つございます。具体的には、たとえば法律と条例との関係をこの法律でどのように規定していくかというような問題が、非常にむずかしい問題の一つでございます。
  211. 則武真一

    ○則武委員 重ねてひとつお願いをしておきます。御回答は要りません。こういう法律は、環境庁が毅然とした姿勢で、国民の良好な環境を守るという立場で各省庁を説得してこそ意味があるわけであります。各省庁との間で調整をして――結論的には調整といいますか、大きな意味では一定の統一した見解が出てくるのでありましょうけれども、機械的に各省庁との間で足して二で割るような法案を提出されるということであるならば、これはとうてい実質的な効力がないと見ざるを得ないわけであります。そういう意味では、環境庁の初心を貫かれるということがどうしても必要じゃなかろうか、こういうふうに私は思っております。前回長官から答弁をいただきました。あなたの御意見を含めて検討しますということでございますので、ぜひひとつ良好な環境を守るに足るようなアセスメント法案を十四日までに提出を願いたい、こういうふうに思います。  二つ目の問題として、健康被害補償法の一部改正について若干の質問をさせていただきたいと思います。  私どもの党は、改正のたびに問題にしてまいりましたが、大気汚染自動車の分担についての関係、特に重量税の一部をこの補償法の財源に引き当てるということについて問題があるのじゃないかというふうに思うわけであります。こういう点で、特に自動車のユーザー負担という問題については、一般の国民の中からも、一定の批判なり意見もあることは御存じのとおりであります。そういう点で国民一般は、公害をまき散らす自動車を買おうと思って買っておるわけじゃないのであります。残念ながら自動車の排ガス規制が十分なされていない、こういう状況の中でやむを得ずいまの自動車を購入をし、その自動車へ乗って走っておる、こういう関係にあるわけでありますから、現在の科学の到達点をもってやろうと思えば、相当程度規制ができるにもかかわらず、この自動車規制が進んでいないということがはね返ってユーザー負担というふうになるとするならば、これは国民一般の側から言うならば大変迷惑な話であります。そういう点で、私どもの党は、重量税引き当てるという問題について反対をしてきたわけでありますけれども、重ねてひとつこの問題について、環境庁としてはどういう論議をなさって国民一般の負担ということにお決めになったのか、お答えをいただきたいというふうに思います。
  212. 本田正

    本田政府委員 この制度ができますときに、中央公害対策審議会におかれましても御審議を賜りまして意見をいただいているし、その後も、この改正をお願いするたびに、あるいは意見具申、あるいは部会長メモとして意見をいただいてまいったところであります。いま先生指摘の、自動車を持っている人に持たせるのはおかしいんじゃなかろうか、そういった意見も承知いたしております。しかしながら、意識的でないにしろ、もし現に公害をまいているというようなことでありますならば、やはり持っている人が負担するということも、これは考えの中に当然あってしかるべきじゃなかろうかと存ずるわけです。  一方、あるいはメーカーに持ってもらう、これも一つの策であろうと私は思います。しかしながら、そういったものをどうやって持たせるのか、持たしたときにどういうお金が取れるのかということを検討いたしております。それによりますと、メーカーから年度ごとに取るということになりますと、新車だけしか対象にできないわけでございます。その新車というものの規制が厳しくなりつつございまして、大気汚染する度合いというものはむしろ新車の方が少ない。どちらかと言えば使用過程車といいますか、現在動き回っている車の方がよりまき散らす。そういったことになりますと、いい車だけを対象にして取るということに、どうも一つ矛盾があるわけでございます。そういったこと等々検討いたしまして、自動車重量税にかわってメーカーに費用負担させるということはちょっとどうであろうか、現状そういうふうに検討はいたしたわけでございます。
  213. 則武真一

    ○則武委員 自動車メーカーから取ることについても考えておるということでございます。しかし、どうも先ほどからずっとお答えを聞いておっても、この法律割り切りの上にできた法律だということを何回か繰り返しておられるのですけれども、どんな法律であっても、一定の割り切りなり線引きということはどこでもあるわけであります。この法律に限らない。しかし、そこまでいろんな要素が検討できるならば、なぜ自動車メーカーからも、つまり一定の割り切りをして負担をお取りにならないのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  214. 本田正

    本田政府委員 これは、取る方法について、たとえば燃料から取ったらどうであろうかとか、いま御指摘のメーカーから取ったらどうであろうかとか、いろいろあるわけでございます。しかしながら、いろいろ検討していただいた結果、やはり排出ガスといいますか、大気汚染する寄与の度合いというものは当然考えなくちゃいけないということから、固定発生源とそれから移動発生源という問題が出てくるわけでございますけれども、いろいろやっていただいた結果、ほかにかわる案というものが、どれをとってみても非常に現状問題があるということから、自動車重量税の導入、これが現在一番いい方法であろうという中公審の部会長からの意見もいただいたわけなんです。そういったことに論拠を置きましてこの制度をお願いしている、こういうふうに御理解いただきたいと存じます。
  215. 則武真一

    ○則武委員 やはり完全に科学的な基準ということは、これを絶対的に追求するなら私は不可能だと思います。いずれにしても、いまの一つの合理的な方法の到達点に立って、いわゆる割り切って一つ法律なり負担を決めるべきだろうと思いますけれども、少なくとも一般国民、自動車のユーザーというものは、公害をまき散らして負担金まで取られようと思って自動車を買っておるわけじゃないんで、まさに不可抗力、メーカーによってほとんど指定されたエンジンのついたものを購入するわけでありますから、こういう点において、こういうユーザー負担ということがあたりまえだということにもしなるならば、やはりこれは間違いだと私は思うのです。そういう点で、本来自動車の排ガス規制等をかっちりやっていくということが前提になり、選択の余地のない、国民におまえが発生源だから負担をしろというような形での押しつけというのは、やはり改めるべきじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、そういった考え方なり、排ガス規制を徹底的にやるという見通し等についてはいかがでしょう。
  216. 三浦大助

    三浦政府委員 自動車の排ガス規制につきましては、昭和五十三年度に乗用車の非常に厳しい規制が実施されておりまして、その後軽量、中量ガソリン車につきましては、昨年告示して、五十六年から規制に入りたいということになっております。  なお、重量ガソリン車、これはNOx量が多いわけでございますが、重量ガソリン車あるいはディーゼル車につきましては、五十年代中に第二段の規制に入るということになっておるわけでございますけれども、非常に問題が重要でございますので、私どもといたしましては五十年代のできるだけ早い時期、一年でも二年でも早くという気持ちで、いま技術評価の検討を急いでいる段階でございます。
  217. 則武真一

    ○則武委員 ぜひひとつそういう意味で、本来責任を負わされるべきでない国民が自動車を持っているということで全面的に費用負担をしなければならぬということは早急に改めていただきたい、これはお願いしておきたいと思います。  さて、改正のたびに合理的な負担方法を検討するとか、これはあくまで暫定的な措置というふうに言われてきたんですけれども、何が合理的な方法なのか。暫定的な措置と言っておるんだが、いつまで暫定的措置でこういう費用負担でいくのか、この合理的な負担方法ということと暫定的措置の内容と見通しですね。それではいつから暫定でなく本格的な措置になるのか、この辺についてひとつお伺いしたいと思います。
  218. 本田正

    本田政府委員 自動車重量税引き当てるという方式は、現状最も適切な方法であろうということを言うわけでございまして、先ほどから申し上げておるように、いろいろそのメーカーからいただく方法、その他にも方法がある、そういったことは引き続いて検討しなくちゃいけないと存じます。  今回、三年間としてお願いしております理由は、一つはそういった検討期間というものは三年間は必要であろう、また引き続いて三年は少なくとも検討しなければいけない、こういうことにもよる三年でございます。また別な理由は、自動車重量税のいわゆる特別措置というものが租税特別措置法によりまして三年間延長になった、そういうことにも合わせたのがその三年でございますけれども、申し上げました三年にはそういうふうな意味も含まっているということを御理解賜りたいと存じます。
  219. 則武真一

    ○則武委員 だとするならば、まさにこの暫定措置はこの三年で終了する、こういうふうに了解をしていいでしょうか。
  220. 本田正

    本田政府委員 少なくとも三年間は検討いたしたいということでございます。終了するとかしないとかというのは、その検討の結果によるわけでございますので、その辺までは終了するというふうな、たとえばそういった検討をして、本当にいい方法が見つかればそういうこともあろうかと存じますけれども、御理解賜りたいと存じます。
  221. 則武真一

    ○則武委員 どうも相変わらず検討検討ということになるのですけれども……。三回も法律延長して同じことを検討するというのは一生同じことを検討するみたいなことになるのですね。少なくとも一つ一つ検討した結果、ベストじゃないがベターな到達点というものを法律へ盛り込んでいくべきだろう、施行規則等へ盛り込んでいくべきだろう、私はそう思うのです。そういう意味で、ぜひともひとつもっと積極的な、具体的な、ゼロか百という方法じゃなくて、一歩ずつどう改善するのかという点の努力をいただきたいというふうに思います。これは御返事は要りません。  それからもう一つ、この費用分担について、先ほどの御質問にもあったようですけれども汚染者負担原則ということで、自動車大気汚染に与える影響を認めていらっしゃる、八対二だと。ところが健康被害補償法で言うところの公害病地域指定要件には加えていらっしゃらないということは、以前にも私お聞きしましたが、非常に大きな論理上の矛盾だと思うのです。お金を負担するときには二〇%負担しなさい、しかし、そのお金――窒素酸化物が公害の原因になっているのだという、そういう前提に立ちながら、いざ地域指定のときには窒素酸化物はネグレクトするということでは、やはり首尾一貫しないというふうに思います。そういう点で、先ほどからもいろいろこの窒素酸化物、NO2等が健康にどういう影響を与えるかが定めがたいから、健康に影響があるということはわかるけれども地域指定要件にしていないのだ、こういう趣旨の御返事があったと思うのですが、そういう理解でいいですか。
  222. 本田正

    本田政府委員 おおむねそういう御理解を賜りたいと存じますが、自動車が出すNOx大気汚染物質大気汚染しているということは事実でございます。そういった観点から費用徴収をそちらの方に向けるということでございます。  地域指定の方は、一定の量に達しますならば健康被害が出てくる、こういったことに相なるわけです。その辺のことはなかなか、少なくとも現在、日本であるような汚染の程度と疾病との因果関係というのはわかっておりません。しかしながら、この指定基準の中にどういうふうにNOxを評価するのかということにつきまして私ども検討はいたしております。
  223. 則武真一

    ○則武委員 そこを私も昨年の委員会でお聞きしたと思いますが、経団連のパンフレット等に出てきた例の、大気はよくなったが公害病患者はふえているというような何か問題提起とも関連しますけれども、やはり現実に公害病患者NOxが関与しているということは、そういった公害病患者がふえておるということから、そして依然としてNOxについてはいろいろな地域指標を拝見しても一進一退、横ばいであるという状況等から言えるのじゃないかというふうに私は思うのです。そういう点で、私はこういう機会に重ねて早急にNOxについても地域指定要件に入れるべきだというふうに思うのですけれども、その見通しについてお伺いしておきたいと思います。
  224. 本田正

    本田政府委員 地域指定要件の中にSOxと同様にNOxを入れるということに関しましては、その前に、申し上げましたように、やはりこのNOx健康被害上どういうふうに影響してくるのかという評価をやる必要があろうかと存じます。その結果を見て、必要とあらばその指定要件の中に組み入れる、こういう段取りに相なるんじゃなかろうかと存じます。現在その評価をしつつあるところでございます。したがいまして、いつこの評価ができ上がっていつどうするということは、現状そういった視点から目標を掲げてやっているというんじゃなしに、とにかくNOxの評価が当面必要なんだということを現在やっているということを御理解賜りたいと思います。
  225. 則武真一

    ○則武委員 あなたの答弁の中に割り切りという言葉が何遍も出るのは先ほど私言いましたけれども、割り切ることがお好きなようであります。一定の健康に被害があるということをNOxについて評価なさるならば、やはり一定の科学的なデータもあるのですね。ということは、やはり一〇〇%入れるのか、何%入れるのかという論議は別として、一定の影響があるということについて地域指定の中に組み込んでいくということは私は可能だと思うのです。そういう点で、いつまでこのNOx指定要件問題を論議なさるのか。やはりもう少し煮詰めた結論を聞かしていただきたいと思います。
  226. 本田正

    本田政府委員 どうも言葉足らずで、割り切り先ほどから申し上げておりますのは、いわゆる制度としての割り切りの問題を言っているわけでございます。たとえば因果関係個々に問えないから、全国から、企業からお金をいただくんだとか、あるいは地域指定をして、指定地域の中は非常に空気が悪いし、指定地域以外は空気はきれいだ、そういった割り切り、そういう制度上の割り切りを主として言っているつもりでございます。ただ、NOxが何PPmになるとどういう被害になるのかということは、いまはつまびらかでございません。あるかもしれないということは言われております。でございますので、科学的な根拠が必要な、たとえばPPm単位であらわすようなそういったものについて割り切りができる、こういうふうに私申し上げているのではございませんので、その辺ぜひ分けて御理解賜りたいと存じます。
  227. 則武真一

    ○則武委員 時間がありませんので、次へ移りますが、公害保健福祉事業の運用について二点ばかりお聞きしたいと思います。  私は、資料をお願いいたしましたところ、環境庁の方から公害保健福祉事業費の年度別推移という一覧表をいただいております。結論的に言うならば、昭和五十二年度の予算に比べて五十四年度の予算は六〇%ほどに予算が減っています。いまどき、わずかずっといえども予算が伸びるというのが普通なんですけれども、これだけ騒がれている公害の被害者を救済するための保健福祉事業予算がこの二年間で六〇%に減ったということの原因について、ひとつ簡単にお答えいただきたいと思います。
  228. 本田正

    本田政府委員 御指摘のように予算は減っております。と申しますのは、実はその前に問題があるわけでございまして、この保健福祉事業というのは県なり市町村が実施主体となって実施をするわけです。ところがいろいろ四十一の指定地域の中で、なかなか何といいますか、制度としてやることがむずかしいというような地域、ある地域ではできているけれども、ある地域ではできないというような、いろいろな要因がございまして、実は予算に対しますところの予算の執行率というのが当初からきわめて低うございます。はなはだ残念なことでございますけれども、実施率が、たとえば四十九年は一八%だったとか、あるいは五十年は%だったとか、こういう状態が続いておるわけです。もちろんこの実施率は年々非常に改善はされております。私どもも県、市を督励いたしまして、非常に大事な事業であるので、事業をうまくやってほしいということでお願いしているわけです。年々余りにも不用額が多くなりますので、少なくとも実施率の伸び率等勘案いたしまして、あえて五十四年度には予算を減らした、また減らさざるを得なかったということを御理解賜りたいと思います。
  229. 則武真一

    ○則武委員 私が質問しようと思うことまで先にお答えいただいたんですが、予算が年々大幅に縮小していくということは、基本的にその予算の執行の仕方に問題があるということは、後でお聞きしますけれども、やはり環境庁として、本当に公害によって苦しんでいる患者の方々を健康な体にしてさしあげよう、こういう姿勢が欠如しているんじゃないかと私は思うのです。先ほどあなたの答弁で、年々消化率が向上するようにがんばっておるというふうにおっしゃいましたけれども、それはがんばっておるんじゃなくて、年々予算が減ったから消化率が高くなった、そうですね。たとえば五十三年度の予算から今度の予算はずいぶん減っています。だから五十三年度は三五%の消化率しかなかったけれども、五十四年度の消化率は五〇%ぐらいになるだろう、こういうふうにお聞きしておるんですけれども、これは五〇%予算を使えるようになったということじゃなくて、予算の総額が大幅に減ったということにすぎない。こういう数字のマジックはどうでもいいんですが、要は予算の執行率といい、予算そのものが年々後退をしておる姿といい、まさに公害保健福祉事業は風前のともしびだというふうに思うのですが、本気でもっとおやりになるつもりはないのか、ここら辺ひとつまず明確にしていただきたいと思います。
  230. 本田正

    本田政府委員 いろいろの事業の中で公害福祉事業、保健事業というのは非常に重要な仕事だと考えております。と申しますのは、やはり公害患者の方々の苦しみというのは、リハビリテーションとかあるいはそういった福祉事業を通じて、まあ医学的な治療も当然でございますけれども、そういったことによって治っていってほしいということはもちろん願っているわけでございます。年々予算が落ちるじゃないかということでございますけれども、実施金額というのは年々ふえているわけでございます。予算は落ちましても、ただパーセントは、おっしゃるとおりぐんと実施率は見かけ上伸びますけれども、実際に各県市が行った事業というものは、これは年々徐々にではございますが、伸びているということを御理解賜りたいと存じます。
  231. 則武真一

    ○則武委員 まさにそれは数字の操作にすぎないというふうに私は思います。  あなたがさっきちょっと先回りをして回答いただいたんですが、なぜこの予算が使われないかということをお聞きしたいんですが、やはりこの事業の主体が公共団体、県や市町村になっておるということ。ところがこの公害病患者の方々のような大ぜいのめんどうを見て、転地療養をしたりいろんなお世話をするような保健福祉事業というものが県や市町村がやる事業になかなかなじまない。お医者さんや看護婦さんや世話をする係の人、莫大なスタッフを抱えて朝から晩まで公害病患者のお世話ができないという自治体の悩みというものが一つあるというふうに思うのです。  それからまた、これはわが党の東中委員が大分以前、五十二年の国会で質問しておりますけれども、この実施に当たっての局長の通達、ここへ私いただいておりますけれども、環保業第八十七号、その後若干改正されておるようですけれども、この中に、たとえばおおむね五十人のグループで転地療養に行きなさいとか、おおむね六泊七日、まる一週間かけて療養しなさい、こういうふうに指定をしてある。ところがなかなかこういうふうな時間を大量にとって大ぜいの人が転地療養へ行けない、また自治体としてもそれだけの人を集めるお世話ができない、こういうところにこの予算が消化をされない原因があるんだから、この点を改善したらどうか、こういうことを当時東中委員が質問しております。当時の石原環境庁長官は、文言を変えることでこの制度の効果を上げることにこしたことはない、積極的に検討させる、こう言っておられるのですが、五十二年からいまだに肝心なそのところは、おおむね五十人という規模、六泊七日という規模、こういうふうなことが全然改善されていない。やはりもっと自治体が積極的に活用できるようなふうにこの通達をお変えになるつもりはないのですか。
  232. 本田正

    本田政府委員 この通達の中におおむね六泊七日と指示といいますか、通知しているわけでございますけれども、当時、いまお話にございました東中委員が御質問になりました当時、その直後でございますけれども、実は公害保健福祉事業基本問題検討会からの検討結果をいただいておりますものの中に、こういうくだりがございます。「転地療養事業の期間については、医学的並びに教育的効果から見て一週間は必要と考えるが、実施体制及び参加者の実情等を考慮するならば若干の短縮もやむを得ない。」こういう御意見をいただいております。したがって、普通医学的な効果を考えますならば、ちょいちょい出入りするような体制じゃなしに、少なくとも一週間ぐらいかかって集団的に、また治療を、リハビリを受けるということは、これは原則であろうと思うわけでございます。ただ、いま御指摘のように、たとえば三泊四日とかいうことなら参加できるというような方々もおられるのは事実です。またそういう場合に三泊四日でも事によったら効果があるかもしれぬし、そういうことを踏まえて、実は実行的にはすでに、三泊四日の計画が上がってくれば、それも見て差し上げているわけです、承認しているわけでございます。ただ、通知を何で変えないかといいますと、これはやはり原則はどうしても原則として、おおむね一週間ということは医学的に、また教育的にも踏襲したいという考えがあるから、あえてこれを改正しない、こういうふうに御了解賜りたいと存じます。
  233. 則武真一

    ○則武委員 もう一つは、公害病患者の方が日ごろ大ぜいいらっしゃるところへ自治体がはがきを差し上げて、いつ幾日転地療養を組織しますから参加くださいみたいなことをやっても、なかなか集めにくい。そこに患者の自主的な動きや患者会等のような自主的な組織もあるわけでありまして、そういう点でこの事業主体が市町村でなければならぬということについても、もっと弾力的な、そういう人集めのしやすい、お世話のしやすい単位というものを考慮されたらいいんじゃないかというふうに思うのですが、この点はどうでしょうか。
  234. 本田正

    本田政府委員 これは対象になる人たちが健康者じゃなくて患者であるわけでございます。そうなりますと、やはり事故とか、あるいはそういったことに万般配慮をする必要があろうかと思います。そうなりますと、やはり県とか市町村というものが、あるいは区というものが責任を持ってやるという体制がないと、これはできかねるわけでございます。そういう意味において、これは民間でいろんないい事業と思われる事業をやっておられることは承知いたしておりますけれども、直ちに民間にその事業を認めるというわけにはいかないということでございます。
  235. 則武真一

    ○則武委員 そこで、私はひとつ、ペアランテクトミーという治療方法があるようですが、訳して難治性小児ぜんそく患者特別入院施設療法というふうに言われておるようですが、ペアラソテクトミーの治療が非常に効果があるというふうに小児科の何人かの方の論文も私ここへいただいておりますが、それぞれ相当権威のある学者の方が、親から子供さんを隔離して、難治性小児ぜんそくの子供さんを治療し、相当顕著な効果ないしは有効な効果を上げていらっしゃるという実例を拝見しております。ところがこの問題が、それぞれの病院で自主的にやられておるけれども、ここで言うところの公害保健福祉事業に指定をされていないという問題があるわけです。  学者の方々、お医者さんの御意見を総合しますと、今日におけるいろいろな難治性小児ぜんそくの患者の治療方法の一つとしてペアランテクトミーがあるのじゃなくて、少なくともそのどれよりも効果がある有効な治療方法だ、こういうふうに言われておるわけであります。したがって、私はここでぜひひとつこのペアランテクトミーをやっているような病院の実態をよくつかんでいただいて、こういう治療方法をやっていらっしゃるところへこの公害保健福祉事業を積極的に当てはめていただいたらどんなものだろうか、こういうふうに思うわけであります。  そういう点で、施行令の二十五条に五つの項目があるようでありますけれども、その第五号にはちゃんと「前各号に掲げるもののほか、被認定者の福祉を増進し、又は指定疾病による被害を予防するために必要な事業で環境庁長官が定めるもの」こういうふうに、こういうきわめて特殊な、しかし顕著な効果を上げる治療方法について、まさにうってつけの項目があるわけですね。ですから、早急にこの公害保健福祉事業を定めてあるこの第五号の環境庁長官指定をいただいて、こういうところへ積極的に予算を活用いただきたい、こういうふうに思うのですが、その点いかがでしょうか。
  236. 本田正

    本田政府委員 ペアランテクトミーは、これは非常にいい治療の方法の一つであるということを私承知しております。つまり難治性のぜんそくというものが、いわゆるぜんそくそのものが多分に精神的な要素を含んでいるために、親から切り離すというのがペアランテクトミーだと聞いておりますが、つまり親と子を引き離してしまうということ、そういったことで強い精神力によりまして治療効果が上がるという方法は聞いております。  ただ、これを一つの治療方法として認知するかということになりますと、いろいろまだあるわけでございます。一体その治療効果はどうなのかということを、普通の治療方法がそうであるように、しかも安全かどうかとか、そういった効果、しかもその本体というものはどういうものかということをある程度広く一般に認めませんと、これを医療として、これは医療の一種でございますが、医療として、治療方法として確立されない、まだそういう段階じゃなかろうと思います。そういういいことがあるということは私も承知しておりますけれども、まずはその治療方法というものを確立していかなくちゃいけないということが先決であろうかと存じております。
  237. 則武真一

    ○則武委員 あなたはお医者さんなんですから、私は素人なんで、医学論争をここでしょうとは思いませんけれども、私が拝見をしましたこのぜんそく児童に対するリハビリテーションの学会における実践的な一つの結論は、五つか六つの方法があって、もうちゃんとペアランテクトミーの内容、「心理療法」であるとか「脱緊張療法」であるとか「気道洗浄」とか「呼吸練習」とか「肉体的適合能力を増進するための運動方法」とか「ぜんそく児童並びに彼の家族に対する教育」とかいうふうに、約六項目によってもう集大成されている。医学部のテキストにももう載っておる、学会等でも大体認知をされておる、こういうふうに伺っております。したがって、何かそれが医療としての方法であるかないかをまだ検討するみたいなお言葉にちょっと聞こえたのですけれども、それは相当認識不足じゃないかというふうに思うのです。早急にこういうものを積極的に取り入れて、重症の難治性小児ぜんそくの方が中等また軽症というふうに非常に有効な効果を上げている例を、私も倉敷の水島にある協同病院のペアランテクトミーをつぶさに見学をして見ております。そういう点で、ぜひひとつこういうものを長官指定をする施行令二十五条第五号の中身に指定されたらいかがなものだろうか、重ねてお聞きしたいと思います。
  238. 本田正

    本田政府委員 これは、そういった申し上げましたような医学的といいますか、そういう理由とともに、指定するにしても、やはり実施主体というものが、実施主体というのは法律の第四十六条によりまして、これは県知事または市長であるということも考え、でき得るかどうかということも考える必要があろうかと思うわけでございます。責任問題がその背後にあるわけでございますから、それも含めて御理解賜りたいと存じます。
  239. 則武真一

    ○則武委員 片方では予算が三五%しか使えない、使えないから年々予算を下げて、消化率を五〇%に高めたんだというようなマジックみたいなお答えがありながら、片方ではそうやって厳しく、せっかく公害病に苦しむ少年少女をプレイルームに収容してあげて、一生懸命お医者さんや看護婦さんが有効なペアランテクトミーという治療方法を追求して効果を上げていらっしゃる、しかもこれは病院の自己負担でやっていらっしゃる、そういうところに対しては予算は使われない。これではやはり私は何のための公害保健福祉事業かと言いたいのです。  しからば、それでは一体そういう治療をやっていらっしゃる方には何かいい援助ができるのか、こういう点についてもひとつお聞きしておきたいのですが、公害医療機関の療養に関する規程というのがありますね。この規程の第十二条に「診療を担当する医師は、特殊な療法等については、環境庁長官の定めるもののほか行ってはならない。」つまり環境庁長官指定をすれば、特殊な治療方法をすることができる、密度の高い治療方法を、こういうふうに理解できるのです。私が見学いたしました倉敷市水島の協同病院のペアランテクトミーは、医師、看護婦、生活指導員等を含めて六人の専任のスタッフが九人の子供のめんどうを見ているというような非常に密度の高い中で、全員が水泳ができるようになり、全員がマラソンができるようになるというふうな顕著な効果を上げておるわけであります。だから、そういう点で、こういう医療に対して、健康補償法で言うところの公害福祉事業に該当できないなら、こういう指定もできるわけでありますから、そこで、ひとつ長官が、ぜひそういう有効な方法なら国としても積極的に援助して取り組もう、こういうふうにお考えをいただいてしかるべきじゃないか、こういうふうに思うのです。そこで、ひとつ御返事をいただきたいと思います。
  240. 本田正

    本田政府委員 医学的にそれを医療として取り上げるということになりますと、先ほど申し上げましたように、やはり一般的に確立された方法というものの認知が必要だろうと思うわけでございます。私どもは、よくその内容については積極的に検討してみたいと思いますけれども、どういう形で認知されるかということが重要なことではなかろうかと存じております。
  241. 則武真一

    ○則武委員 時間がもうありませんので、最後にその認知云々についてお聞きしておきたいと思いますけれども、ここへ私、その病院が発行している「あおぞら学園のあゆみ」というパンフレットを持っております。これは環境庁へも送付なさっておるようですから読んでいらっしゃると思いますけれども、九人の難治性小児ぜんそく患者個々の症例の訓練と回復の状況が述べられております。「小児科臨床」という本の中にも浅野知行さんという方が「気管支喘息の心身療法」という論文を発表になっていらっしゃいます。また「小児科診療」という本の中に「小児期気管支喘息の施設入院療法の問題点」「外泊・行事参加前後の発作」「入院中の経過について」こういう論文にもまとめられております。「臨休と研究」という本の中には、「難治性喘息一六一〇例の考察」、永吉康祐さんの論文も拝見しました。「アレルギーと小児保健」という本の中には「アレルギー疾患の治療と養護教育」という論文も載っております。これも読ましていただきました。「小児心身症の検討」という中では、久徳さんという方が書いた論文も、私拝見しました。いずれにしても、私が素人で見てもわかるようにちゃんと書いていらっしゃいます。こんなものがどんどん出されているのに、このペアランテクトミーという、医学部の教科書にも載っている治療方法が認知されない。何かめかけの子だみたいに言わぬばかりのあなたの言い方は、私は全く腑に落ちない。そういう点で早急に勉強をしていただいて、こういう日本じゅうの内科、小児科の方々を中心に積極的に、もう内科医も外科医もさじを投げたと言われる難治性小児ぜんそくの患者を治療して効果があるという方法を開発していらっしゃるのですから、早急にこれを健康被害補償法に言うところの公害保健福祉事業に指定をするか、それとも、先ほど申し上げました公害医療機関の療養に関する規程の特殊療法に指定をなさるか、いずれかの方法でぜひ前向きに善処をしていただきたいと思います。そこら辺の結論だけ、ひとつ御返答いただきたいと思います。
  242. 本田正

    本田政府委員 なお不勉強の点がありますので、私どもはペアランテクトミーについてもよく勉強したいと存じます。ただ、医療費に載せるということになりますと、確かにそういう項目はあるわけでございますけれども、言い漏らしましたけれども、載せるなら載せるで、たとえば原価計算、そういった作業も実はあるわけでございまして、含めまして検討してみたいと思います。
  243. 則武真一

    ○則武委員 終わります。
  244. 河野正

    河野委員長 中井洽君。
  245. 中井洽

    ○中井委員 法案に入ります前に、大臣に一つ二つお尋ねをいたします。  先ほど他の議員から御質問のありましたアセスメント法の現在の状態でございます。御承知のように予算の修正問題で自民党、社会党、公明党、民社党、話がついたように聞いております。その中に、閣僚会議等をつくって取り扱うというのですか、協議をするという御返事があったように私どもは聞いております。この閣僚会議、どういう形で構成をされ、いつごろ開かれていくのか、そういう見通し等おわかりでしたら、御答弁をいただきたいと思います。
  246. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  けさほどの閣議におきまして官房長官から、今回の自民党対三党との折衝の過程において自民党の方から政府に対してアセスに対する閣僚懇談会なるものを設けてもらいたいという要請等これあり、そこで、いずれ関係閣僚に対しましてお願いをすることになると思いますので御了承願いたい、こういうことでございました。
  247. 中井洽

    ○中井委員 そうすると、どういう閣僚にするかも決まっていないし、どういうかっこうでやっていくかも決まっていない。とにかく閣僚会議をつくってその中で協議をする、こういうことですか。
  248. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  官房長官から、いずれ関係閣僚に御連絡を申し上げますと、こういうことでございました。
  249. 中井洽

    ○中井委員 それでは
  250. 土屋義彦

    土屋国務大臣 ちょっと済みません。その席上、私の方から、関係各省とただいま精力的に折衝をいたしておりますという発言をしておきました。
  251. 中井洽

    ○中井委員 金子さんにお尋ねをいたしますが、そういう閣僚会議ができて、いま企画調整局が環境庁全体でやっておりますいろいろな調整がすぐ閣僚会議に上がっていくような段階にありますか、それともまだ上がらずに、もう少し各省間での折衝に時間がかかりそうな様子でありますか、どちらですか。
  252. 金子太郎

    ○金子政府委員 各省庁との折衝状況は、主な四つぐらいの省庁を残しましては終わりに近づきつつあるかあるいは終わったかという状況でございます。ただし、その三つ四つの省庁が非常に大きい省庁でもございますし、主として公共事業をあるいはこれに準ずる事業を実施しておられる省庁でございますが、そういうところとの折衝の問題点が一省庁で数十項目、こういうような状態でございました。それを連日連夜精力的に詰めてまいりまして、いわば薄皮をはぐような感じで少しずつ問題点が減ってきております。そのために時間がかかっているという状態でございますが、その中でだんだん大きな問題とそれ以外の問題とが振り分けられつつあるというのが現状でございます。したがいまして、その大きな問題につきましては閣僚懇談会の方に一たん上げていただいて、そこで御協議いただき、それ以外の問題については引き続き事務的に、先ほど申し上げました薄皮をはぐような感じで説得なり了承をいただくなりの努力を続けてまいりたい、こういうように考えております。
  253. 中井洽

    ○中井委員 大臣、閣僚会議が設置されるということは、法案提出に向かって大きく前進をした、こういうふうに理解をさしていただいて、待たしていただいてよろしゅうございますか。
  254. 土屋義彦

    土屋国務大臣 私も先生同様に理解をいたしておるのでございますが、現実には非常に厳しい面もあるということも御理解を賜りたいと思います。
  255. 中井洽

    ○中井委員 それじゃ他の党の皆さん方と一緒にせいぜい御努力をいただきますようお願いをいたしまして、法案の方に入らしていただきたいと思います。  いわゆる第一種地域として指定をされております地域が四十一あるわけでありますが、この地域の全体の汚染状況、大体おさまっているのか、直っているのか、あるいはまだ汚染が進んでおるのか、これについてざっとお答えをいただきたいと思います。  それから、日本全体を見て、現在の汚染状態が進めば地域指定というものがこれからも考えられるという地域がまだあるのか、それともいまの状態で公害対策というものをやっていけば、この四十一の地域指定というものがもうほとんど終わりで、ほかはもう考えられない、こういう状態にいま日本の大気汚染状況というのがあるのか、そこのところをお答えいただきたいと思います。
  256. 本田正

    本田政府委員 四十一の地域指定を受けたところは、かつて非常に高濃度の汚染を来したところでございます。関係機関がすべて大変な努力をいただいておりまして、大気汚染は年々急速に改善されております。かつての危機的な状態というものはもはやなくなっていると解しております。  それから、四十一地域以外に指定するのかどうか、見込みはどうだということでございますが、現在、日本国じゅうを見てみまして、ただいまの指定要件に合致するという地域はもはやないと存じております。
  257. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、地域地域でいろいろ変動はあろうとも、患者さんの発生率というものも大体これから減っていく、このように考えてよろしゅうございますか。
  258. 本田正

    本田政府委員 患者発生状況というのは、過去の例を見てみますと、地域指定をしてから数年間というものは非常にふえるわけでございます。これはなぜかと申しますと、非特異性の疾患であるということもさることながら、一度に申請者が出てくるわけじゃございませんで徐々に出てくる、五年ぐらいになると横ばい状態に入っていく、こういうことでございます。したがいまして、地域指定というのは、一番新しいものは一昨年の六月でございましたか、行ったわけでございますが、それまでは逐一指定が続いてきたために、患者の増加率というものは大変多かったわけであります。しかしながら、現在では、伸び率というものは横ばい状態になって、多分一番新しい資料では、パーセントで言って一けた台にとどまるのじゃなかろうか、そこまで横ばい状態に近づいてきたということが言えるのじゃなかろうかと存じます。
  259. 中井洽

    ○中井委員 この法案、制度というものは大変思い切った割り切りの上につくられておる、こういうたびたびの御答弁があるわけでありますけれども、それらの割り切りについて幾つかお尋ねをしたい、このように思います。  日本全体の固定発生源賦課金をかけているわけでありますから、一地域地域で赤字、黒字というのも大変変な話でありますが、たとえば私の郷里四日市あたりでは、四日市の賦課金を課せられた工場が出しておるお金、患者さんのところへいわゆる給付金として出てくるお金、あるいは保健の方のお金を合わせても大変な――赤字、黒字と言うなら黒字であろうと思うわけであります。赤字の地域、その地域の固定発生源金額だけで患者さんの費用というものが賄えていない地域というのはどことどこでございますか。
  260. 本田正

    本田政府委員 四十一地域の中のその企業からいただくお金と、そこにおられる患者さん方に給付するお金の差を、たとえばおっしゃるように黒字、赤字と表現しますとすれば、出る方が多いいわゆる赤字地域というのは大阪、東京それから名古屋でございます。
  261. 中井洽

    ○中井委員 たとえば五十三年なら五十三年、五十四年なら五十四年で結構でございますが、大阪、東京、名古屋、この三つの地域重量税のその地域の割り当て、これも足してどのぐらい足りないのか、そういった数字をお挙げいただけますか。
  262. 本田正

    本田政府委員 賦課金賦課料率というものを決める際に、私どもいろいろ作業をしておりますけれども、その作業の過程に属するいろいろな統計資料を駆使しまして、その他地域からどこに幾ら持ってくるというようなことをやっているわけであります。決して秘密ではございませんけれども、そういう過程にあるものでございますので、数字を申し上げることはお許しいただきたいと存じます。
  263. 中井洽

    ○中井委員 五十三年とか過去のものならいいでしょう、過程ということじゃなしに。どうなんですか。保健部長、膨大なお金でございますからね。私どもは、どういう形で配分をされておるのか、詳しくお聞かせをいただきたいと思います。
  264. 本田正

    本田政府委員 ちょっと資料がございませんので、後刻また詳しいことを申し上げたいと存じますが、考え方とすれば、その他地域からいただくお金と指定地域からいただくお金が大体二分の一だということでございますから、二分の一としてざっと計算してみますと、全体の量が六百二、三十億をその固定発生源からいただいておるとすれば、その他地域からとなりますと三百億ちょっとになるわけでございます。――ちょっと失礼いたしました。数字は後刻申し上げさせていただきたいと存じます。
  265. 中井洽

    ○中井委員 たとえば私の郷里の四日市の方で、五十三年十八億二千五百万円賦課金を払っておる、給付されたお金が十一億三千四百万円だ。五十四年では二十四億六千万円払っておるけれども、給付されたお金が十二億六千五百万だ、こういうことであります。この数字、大体間違いないですか。
  266. 本田正

    本田政府委員 大体間違いございません。
  267. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、給付されたお金の中には重量税の分も入っておるわけですね。どうですか。
  268. 本田正

    本田政府委員 自動車重量税からの引当金が入ってございます。
  269. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、四日市だけではなしに、他の地域においてもこの問題が少し出てくるのじゃないかなという気が私はするのです。もちろん大阪と四日市ではその率が違うのかどうかわかりません。四日市あるいは四日市地区の患者さんから見れば、そんなお金を出しているのだったらもっとこっちへ返してくれたらいいじゃないかというような不満の声等も出てこようか、こう思うわけであります。たとえば患者さんの金額を一人一人地域で変えるというわけにはいかなければ、そういう赤字地域に関しては公害保健の福祉事業費を少しがまんをしていただく、そのかわり黒字的な地域に――黒字的な地域というのはどっちにしろ公害が出ているわけでありますから不幸なことでありますが、こういう地域には思い切って公害保健の福祉事業費というものをたくさん出して、リハビリの施設だとか転地の施設だとか病院施設というものを充実させていく、そういったことをお考えになっていただけませんか。
  270. 本田正

    本田政府委員 赤字地域、黒字地域をめぐります問題は非常に重要な問題と存じております。そこで、これは中井委員御存じだと存じますが、中公審の御意見を聞きましたところ、赤字、黒字の差を二分の一までは是正しても差し支えないということから、五十二年、五十三年度二年かかりまして、実は赤字、黒字の幅を、指定地域の中での差というものを縮めたわけでございます。これ以上また縮めますと、現在組み立てられているこの公害補償制度の根幹を揺さぶることになるので、二分の一是正までが限度であろう、こういう御意見に基づいて二分の一是正までやったわけであります。そういうことでございます。  それから、黒字地域に対しまして福祉事業等を出したらどうかということでございますが、御存じのとおり、福祉事業は市長の事業となっておりますので、いわゆる障害補償費等とは別になっておりまして、直接患者さん方に渡るというシステムじゃございませんので、ちょっとそこはいきなり持ち出すということはできないのじゃなかろうかと存じております。
  271. 中井洽

    ○中井委員 逆にお尋ねをいたします。東京や大阪や名古屋は何でそんなに、その地域の固定発生源から出るお金と、大都会でありますから大変な重量税の割り当てのお金も来ると思うのですが、それで足りないのですか。
  272. 本田正

    本田政府委員 この制度そのものがいわゆる個々因果関係が問えないということから、全国から、指定地域のみならずその他の地域からもお金をいただくという仕組みになってございます。当然その率は指定地域とその他の地域では違うわけでございますけれども、そういういわゆる共同責任ということを踏まえた制度であるために、地域ごとにそれを行うということがこの制度の上に立つ以上できないわけでございます。そうなりますと、東京やら大阪というところは非常に患者さんが多いということから支出の方もふえていく、こういうことに相なるわけでございます。
  273. 中井洽

    ○中井委員 おっしゃることはよくわかります。  一つ考えとしてお聞きをいただきたいのは、日本じゅう各地域あるいは各工場不景気で財源もないあるいは各工場も余りもうからない、こういう時代であります。そのときに余り格差があるということについて、地域患者さんあるいは地域の町村、そして企業、非常に不満がたまっているわけでございます。もちろん、こういうことでありますから、東京の患者さん、大阪の患者さん、名古屋の患者さんが何にも悪いわけではありません。その人たちを日本じゅうのお金で見ていかなければならぬのはあたりまえのことであります。しかし、何か非常に不公平感がよけいたまっているなという感じが残っているわけであります。これが余り単純に割り切り割り切りだということでおっしゃらずに、何かいい形の方法というものをお考えいただきたい。  それで、大変微妙な質問で私もどうしようかなと思うのでありますが、たとえばこの東京、大阪、名古屋の三つの地域の認定の仕方と、他のたとえば私の郷里、四日市なんかの認定の仕方の違いか何かがあって、患者さんがこの三つの地域だけが多いということがあるのですか。たとえば申請をした人は、私も記憶がないのですが、ほとんど一〇〇%認定すべきだという御意見の方もいらっしゃるし、四日市なんか八〇%か九〇%くらいの認定率であろうと思うのです。そういう差というものがこういうところにあらわれてきているのですか、どうですか。
  274. 本田正

    本田政府委員 直接的にはそういう差はあらわれていないと存じますけれども、四十一ある指定地域の審査会におきましては、これは地域的に患者がそういうふうな構成になっているのかどうかも分析してみないとわかりませんが、確かに四つの指定疾病の比率というものが各地域によって違います、疾病の構成でございますね、そういうことがあります。それから、認定率というものも違いがある。(中井委員「どのくらい違う」と呼ぶ)これはおおむね一〇%あるいはもう少しの違いがあろうかと存じます。十数%の違いが認定率についてはあろうかと存じます。ただ、これは審査会の審査にゆだねているわけでございます。明らかにこれは医学的な意味においてその差はないと存じますけれども患者の統計から見てみますと、少なくとも構成比において明らかな差がある地域はたくさんございます。
  275. 中井洽

    ○中井委員 認定基準に違いはないと思いますがという御答弁であったわけでありますが、違わないわけですか。違わないという形で御指導なさっていらっしゃるということですか。
  276. 本田正

    本田政府委員 認定審査というのは、主治医が診断書を書きまして、そしてその診断書に基づいて認定申請を患者さん方がするわけでございます。その一定の検査機関で検査をいたしまして、その検査成績が出そろったところで認定審査会において審査が行われるわけでございます。そういったことでございますので、こちらから、たとえば主治医が一番もとになるわけでございますから、その辺に対する指導というものは環境庁としてはできかねる現状にあるわけでございます、医療行為に関することでございますので。
  277. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、その医療の認定の違いというものの一つの中に、この間から問題になっておりますぜんそく性気管支炎というものに対してどう考えるかという考えの相違がある、このように理解しても間違いではない、その一つにそれがあると理解してもよろしゅうございますか。
  278. 本田正

    本田政府委員 ぜんそく性気管支炎は、審査会の先生方自体が非常に取り扱いに困ったぐらいでございまして、その認識の差というものは地域によってあることは確かでございます。
  279. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、ぜんそく性気管支炎の患者さんが九千人ぐらいいらっしゃるのですか、これらの患者さんがどこか幾つかの特定の地域にかたまって多いということがあるわけですか。
  280. 本田正

    本田政府委員 構成比を見てみますと、ぜんそく性気管支炎につきましては四十一地域で非常に差がございます。多いところもあるし、少ないところもございます。
  281. 中井洽

    ○中井委員 本田部長は、過日の委員会でお尋ねしましたときに、幾つかの割り切りの中に四つの疾病ということを言われた。また先ほどの御答弁でもあったわけであります。この割り切りの中に結果としていまのようなことが出てくるということも入っておるのか。たとえばどこかの地域でぜんそく性気管支炎ということについての認識というものが全く他の地域と違っておる。その地域においては違った認識のもとにどんどん患者さんが認定をされていく。私はそれはそれでいいと思うのです。しかし、他の地域ではそれは患者じゃないという形ではねられておる。こういう形が不公平な被害の補償制度一つつくってやしないか、そういう気がするのです。そういう形の不公平というものがあると思いますか。
  282. 本田正

    本田政府委員 これは医師の診断に基づくこと、それから発するわけでございます。したがいまして、構成比を見てみると、確かにぜんそく性気管支炎が非常に構成比として多いところ、それからきわめて少ないところとあるのは事実でございます。しからば、少ないところの人たちが、いまおっしゃるように認定されないということになっているかどうかということはわかりません。正しいといいますか、医学的な鑑別がぴちっとついて、たとえば気管支ぜんそくという病名であれば気管支ぜんそくのところで認定されているわけなんです。そういったことでございますので、病気の考え方というのは、ぜんそく性気管支炎ととるか、あるいはぜんそく性気管支炎というのはいろいろな病気の集合だ、ちょっと荒っぽく言えば。よく見れば正規の疾病に分類されるわけでございますから、そういったことも加味してこの多い、少ないということは見なくてはいけないと思います。ただ単に、ぜんそく性気管支炎だけをとらえてそこの認識の差があるということも言えないんじゃなかろうかと存じております。
  283. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、ぜんそく性気管支炎の比率の多い地域においては、ぜんそく性気管支炎の六歳以上の患者さんというのが多くて、少ない地域においては六歳以上の患者さんがほとんどいらっしゃらない。おられるとしたら六歳以下である。こういう私自身の認識というのは間違っておりませんか。
  284. 本田正

    本田政府委員 大体そのとおりでございます。
  285. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、その地域その地域の主治医さんが違うとおっしゃられればそうだけれども、お医者さんが違えばぜんそく性気管支炎という病気について全く解釈、理解が違うわけであります。しかし、患者さんの治療ということに関しては、ぜんそく性気管支炎ではこういう治療がある、こういう薬を使うんだというのが私あろうかと思うのですよ。ある地域ではぜんそく性気管支炎というのは六歳以上ではもうないから、そういう病気はないのだ、こう言って、あるところでは、あるんだ、それの薬もどんどん出しておるんだ、こういうことじゃ、それは医学の世界だとおっしゃっても、全く私ら素人から見たらわかりにくいことで、何とかそこらは日本じゅうで、たとえば小児学会なら小児学会というところを使って、きちっと統一見解というものが出てこようかと、私はこのように思うのです。もし六歳以下が大半で、六歳以上の方々は他の三つの疾病に識別できるんだということであるならば識別して、そして正しい治療法で医療費等をおもらいになる、それがあたりまえの姿であろう、私はこう思うわけです。そこのところはどうでございますか。
  286. 本田正

    本田政府委員 いま先生指摘なさいますようなことが、審査会の先生方の中にまさにそういう問題があったわけでございます。それで全国の四十一の審査会、十五名以内で成っておる審査会の先生ですから、全国で数百名おられます。そういった先生方の中からそういう声が出てきて、環境庁としても何とかぜんそく性気管支炎というあいまいな名前は整理してほしい、四十七年の通知ではどうもやりにくいという御意見に基づいて、七人の専門家から成る検討会をつくっていただいて、小児科が中心でございますが検討をしていただいた。それを先般、実は認定審査会からの要望であったために、それを御報告申し上げ意見を聞いた、こういうことでございます。
  287. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、その七人のお医者さん方の結論、認定審査会の意見というものの集約が大体出て、ぜんそく性気管支炎というのは六歳以下にほとんど多いんだ、それ以上の公害病患者の方々は、ほかの三つに全部漏れなく認定をしますという形で是正するのがあたりまえとなったら、大臣、是正なさいますか。
  288. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど本田部長からも御答弁がなされました、一昨年七人の専門家の医家にお願いいたしまして検討していただきました報告書の医学的内容につきましては、おおむね賛同を得られたような次第でございますが、六歳の年齢制限等につきましては、種々の意見が出されたようなわけでございます。環境庁といたしましては、これらの意見を整理いたしまして、慎重に検討をさせていただきたい、かように考えております。
  289. 中井洽

    ○中井委員 個人的なことを申し上げて恐縮なんですが、私の女房の親も小児科でございまして、これは何ぼ説明しても、環境庁は何でそんなことをやっていたかわけわからぬというふうな意見が返ってきて、そんなもの、六歳以下あたりまえだよ、こういうはっきり物を言う人でありますので言うのであります。私が申し上げると誤解を招いてはいけませんが、何もいま公害患者さんとして認定されている方々を取り消せとかそんなことではないのであります。この方々はこの方々で疾病にお悩みになっていらっしゃるのですから、きちっともし三つに分類をされるなら分類をして、先ほども申し上げましたように正しい治療を受けていただく。そして四十一地区で六歳以下の子供さんでぜんそく性気管支炎という形で認定される人はどんどん認定していく。こういう形で、科学が本当にそういうことを正しいとするならば、私は勇気を持って進めていくべきだ、このように思います。それをいろいろなお考えがあって、後退だとかなんだとかいろいろな御意見もあろうかと思いますが、私自身はあたりまえの形であろう、このように考えております。ぜひそういった意味で、科学に基づいて御判断なり修正をしていただきますよう重ねて要望をしておきたい、このように考えます。  他の割り切り、幾つかの割り切りがございます。これらの割り切り制度の中で、これからも一番検討をしていかなければならない――この法案は三年間延長という形で出てきておるわけでありますが、これから三年の間にこの制度のところはどうも少し割り切りがきついんじゃないかという形、あるいはもっときちっとできるぞという新しい形が出てくるというような形で見直しをしていこうとしておるのにはどんなものがありますか。
  290. 本田正

    本田政府委員 公害健康被害補償法を適正に運営するという観点からいろいろな検討をしておりますが、検討の項目とすれば、地域指定要件の中に入れるとか入れぬとかいう前に、NOxをどういうふうに評価すべきであろうかという問題が一つ。それから大気が危機的な状態からずいぶんと改善されていると思いますが、そういったさなかにおいて、現行の暴露要件を見直してみる必要があるのではなかろうかということ、さらには地域指定解除要件を、中公審の四十九年の答申の中にもあるわけですから、それをどういうふうに設定すべきであろうかということ、さらには患者さん方の予防とか、あるいはリハビリテーション、治療、そういった医学的なことについての研究の促進もぜひ図らなくてはいけない。それからまた、御議論いただいております自動車重量税負担のあり方についてどうであろうか。その他ございますが、そういったもろもろの検討事項がございます。どれが真っ先かということはございません。それはいずれも科学的根拠が必要でございますので、そういった科学的根拠をいま収集している段階であるということでございます。
  291. 中井洽

    ○中井委員 私自身、その暴露要件の相違あるいは割り切りということについて少し勉強不足なものですから、その点もう少し詳しくお答えをいただけませんか。どういう点、あるいはどういうふうに見直していくのか。
  292. 本田正

    本田政府委員 暴露要件一つ割り切りであるわけです。指定地域の中に住んでいる住民大気に暴露される、その時間によって――赤ん坊の場合は、たとえば生まれて半年たって症状が出れば認定患者としての申請ができる、それからそこに生まれ育っている人たちは住みついてから三年だとか、まあ年齢によって違いますが、あるいはよその地域の人がこの地域に通勤をしてくる。ここで何時間か過ごすが、またきれいないところに帰っていくというように、人それぞれに大気に暴露される要件があるわけなんです。そういったものを細かくつくった表がございます。それを私ども暴露要件と称しております。
  293. 中井洽

    ○中井委員 たとえばそういうデータを集めますときに、公害認定患者の皆さん方にもいろいろと御協力をいただいておりますか。
  294. 本田正

    本田政府委員 直接患者の方からのデータ収集はございませんけれども、いろいろな機関を通じまして、たとえば指定地域追跡調査なんかをやっております。そういったさなかには、患者直接ではありませんが、物によってはいわゆる聞き取り調査、アンケート調査等がございますので、そういった意味においては関与いただいているということが言えるかもしれませんけれども、一般的には別な研究者による調査、こういうことで進めさせていただいております。
  295. 中井洽

    ○中井委員 私は過日環境庁患者さんのことで、こういう資料はありませんか、こうお尋ねをいたしましたら、それはないと言う。どうしてだと言ったら、直接にアンケートをいただいたりということをしていないし、なかなかできにくい状態だというふうな御返事がございました。私は、本当に不幸な形で認定をされておる患者さん方のことを考えると、なかなか言い出しにくいことかもしれませんが、今後のこと、あるいは現在の医療でできる限り何とか治る方法というものを見つけていくといった意味でも、患者さん方の団体にも御協力をいただいていろいろなデータをそろえていくべきだ、このように思うのであります。私がそういう患者さん、たとえば肺気腫の方々の中で何%ぐらいたばこをお吸いになっていたのですかというようなことをお尋ねしたら、それはわからないのだというようなことでありまして、私はそういうことで患者さんをどうこうだということではなしに、御病気になって本当にお気の毒だし、これからの世代のこと、次の人たちのことを考えて、ぜひそういう医学的なデータづくりというものに御協力をいただくべきだと思うのです。そういった意味で大臣、患者さん方とたびたび会われているようでありますが、ひとつ御要望をいただくなり、あるいはデータを一緒になってつくるというような機会を、あるいは考えというものをお出しいただきたいと思うのですが、その点はいかがですか。
  296. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申します。  先生の御趣旨に沿うように努力いたします。
  297. 中井洽

    ○中井委員 終わります。ありがとうございました。
  298. 河野正

    河野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時十五分散会