○村上(弘)
委員 お尋ねしてないことまで答えられて、尋ねたことについてはお答えになっていないように思うのですが、栃木県の各署の統計報告の
状況は、第一に
交通事故についての判断を誤らすものだし、第二にはそれに対する対策をも誤らせるものだし、道義的に言えば亡くなった方や世間をも欺くものだと思うんですね。まるで事務上のミスであるようにいまお答えになりましたけれ
ども、そうじゃないんじゃないですか。九年間連続死者減という
キャンペーン、これは善意からも作用しておると思いますけれ
ども、しかしながら、そういうことの期待にこたえんとして、成績主義というんですか、事実を隠す、そして成績が上がっておるかのように見せかける、こういう風潮があるからではないのかということ、その点については一言も触れられなかったけれ
ども、そういう点は厳しく見る必要があるんじゃないか。しかもそれは第一線の警察署だけじゃなくて
警察庁自身にそれがあるんじゃないか。
たとえば、同じく読売の四月二十五日付によると、
交通事故死者の警察統計は実数を三割も下回っておるというように出ているんですね。いま先回りして
答弁されましたが、厚生省の方は当該年、その年に
交通事故が原因で亡くなった人の数を出している。
警察庁の方は二十四時間以内の
交通事故による死者の数を出しておる。この間に非常に誤差というか、誤差というよりも実態の開きがあるんですね。
昭和五十三年度の
数字を見ますと、
警察庁の方では死者八千七百八十三人、厚生省の方では一万三千六百八十六人、これはすべての
交通事故の死者の場合の
数字ですが、これを比較すると、片っ方が百人とすれば片っ方が百五十七人、こうなるのです。一・五七倍という実態の大きな開きが
数字の上で出ているわけです。私は、特に重視しなくちゃならぬと思うのは二十四時間以後に亡くなる人の数、率が年々ふえてきているということです。これは救命救急体制が一定度前進してきているということも作用しておると思うんですが、であるがゆえに、二十四時間以内に応急措置でとりあえず一命取りとめても、しかしそれ以後亡くなられるという
状況がふえているわけですね。
ですから、よく交通安全白書などで何年間連続死者減と大いに言っているわけですけれ
ども、負傷者数の方は横ばいなんです。あるいはふえているときもあるんです。ですからこの点は非常に重要だと思うのですよ、
交通安全対策を立てる上で。特に二十四時間以後の死者の
増加という
状況から実際の死者の減少率というのは鈍化しているわけですね。これも
警察庁の統計と厚生省の統計を比較してみますと、
警察庁では
昭和五十二年に死者八千七百七十八人、
昭和五十三年には八千五百十八人で、二百六十人減ったということです。厚生省統計でいきますと、五十二年には一万二千九十五人、五十三年には一万二千三十人と、減ったのは六十五人なんですよ。つまり二百六十人減ったと一方では言い、片っ方は六十五人減ったと言っているのです。二百人近い差がここにはあるんです。減少率も片っ方では三%減ったと言い、厚生省の方では〇・五%減った、こういうことになっているんですね。さきの栃木県などで見ますと、この厚生省統計と
警察庁統計の開きは
昭和五十二年には一・四六倍の開き、
昭和五十三年には何と一・七倍の開きがある。それから、東京都はさらに格差が大きいですね。
昭和五十三年の
数字を見ますと、厚生省で六百二十八人、
警察庁で二百九十四人、二・一四倍の開きがあるんですよ。これでは
交通事故の実態を反映しているとはとても言えない。こういう白書だとか計画、このデータを
基礎とする計画で対策を立てるというんではとても実効ある現実的な対応ができないんじゃないか。
いま二十四時間単位をとることの必要性や意味も言われましたね。私、それを全部否定するものではありません。しかしながら、
交通事故が原因でなくなったという、そこに
交通安全対策の根本があるはずですから、少なくともこういう
交通安全対策基本計画を立てるとか、白書を出すとかいうような場合には、二十四時間単位だけを
基本にするんではなくて、もっと根本的には一カ月単位だとかあるいは一年単位のものをあわせて出していく。基準をどこに置くかと言えば、やはり長期のものに基準を置くというふうにすべきではないか。私は一カ月にしようとか一年にしようとか断定的には申し上げませんけれ
ども、二十四時間単位というのは全然問題にならぬじゃないかということですね。そういう点で、こういう最も根本になる死者の統計の出し方について再
検討すべきではないか、お答えをいただきたいと思います。