○杉原
政府委員 お答えをいたします。
先生先ほどお尋ねがありました、あるいは御意見等につきましては、私も全く同感でございます。
この
免許行政あるいはドライバー行政に対する基本的な認識の問題でございますが、
お話がありましたように、もうすでに四千百万人を超えるドライバーでございまして、しかも年々二百万人の新たなドライバーが
年間に誕生する、こういう
時代でございまして、この八〇年代というのは、本当に国民皆
免許時代の幕あけとも言える年代になった、こういう基本認識で
仕事を進めていくべきだろうと私
ども思っております。
特に国民皆
免許ということになりますと、かつてのような一握りのドライバーに対する行政ということではなくて、国民の
皆さん方を
相手にして、しかも交通の安全というものを確保していくには、どうしてもドライバーの理解と協力というものがないと不可能であるという認識に立って物事をやっていくためには、それ相応の行政施策というものがなきゃならないはずであるということでありますが、そういう世の中で、四千万も対象にしながら、その四千万の人が一回こっきりでなくて、常にわれわれ日ごろ接触をし、しかも何の事故も違反もなくても、三年に一遍は必ず更新という形でわれわれ接触をする、そういう行政というのは、他のどんな行政を考えてもない行政でございます。それだけに、私
どもは、そういったドライバーの方の理解と共感を得るような、いわゆる本当の国民行政としてドライバー行政というものを考えていかなきゃならない
時代になったというふうに思うのでございますが、いまの
免許行政というのは、必ずしもそういう考え方で成り立ってない、いまの
免許制度というのは、本当に過去のドライバー行政、
免許行政、一握りのドライバーというものを
相手にしておった
時代の行政の考え方をずっと踏襲しているだけなんでございます。そこで、いろいろ交通警察の交通安全問題に対する従来の手法というのが、街頭監視とか、取り締まりというものから安全施設みたいなものにぐっと力を入れてきた、これが大体七〇年代までの施策の方向でございましたが、やはり八〇年代というのは、いよいよドライバー
対策の
時代だという基本認識にいま立っておるわけでございます。
そういう認識のもとでいろいろ考えてみますと、その中の
一つの大きな問題が、先生御指摘の更新でございます。更新でも、県によりますと、何回も足を運ばないと
免許の更新がしてもらえないところがあるのも実態でございます。そういうことで、こういう忙しい日常生活の中で、安全面を考えながら、しかもドライバーにも合理的に更新ができる方策がないかということで考えたのが、このリアルタイムシステムの導入でございまして、これは幸いに国の方、財政当局でもそういう点が御認識いただけまして、
昭和五十七年、再来年までに全国的に
免許のリアルタイムシステムというものを導入することで、更新に行っていただきますと、更新時講習等を含めまして二、三時間で、その場で
免許証を更新してお渡しすることができるというふうろなことも、いま制度として実現の方向に進んでおるわけでございます。これは
一つの例でございますけれ
ども、そういうふうな形で抜本的な改善措置を講じていかなきゃならないというふうに思っております。
それから、ドライバー
対策の中での無事故、無違反ドライバーに対する
対策でございますが、これは先ほど申し上げましたこと等に関連をいたしますが、従来の私
どもの交通警察の対応の仕方というものが、非常に警察的な処理の仕方であったと言えばそれだけでございますが、取り締まりというものが前面に出ておりますので、事故を起こした、違反をしたというもののしかる方の処理はちゃんとやっております。そういう、これだけ混雑した交通
状況の中で、まじめにこつこつ安全運転をずっと続けてこられた方をほめる方の
仕事については、全く手が抜けておるのでございます。やはりドライバー
対策あるいはドライバー教育というものを考えていきますと、教育効果というのは、あるときにはしかる、しかし、いいことをしている場合にほめるという、両面がなければ、ドライバー
対策にならない。しかもこれだけの、四千万のドライバーということになってまいりますと、いいドライバーが悪いドライバーというものを排除していくような車社会に仕立てていかなきゃならない。
だとすれば、そういう無事故、無違反のいいドライバーというものを社会的に慫慂する仕組みというものを基本的に考えていかなきゃならないし、同時に、そういうドライバーは、それなりにきちっとした特典がある
——いま
一つの特典の例が、強制保険にはありませんけれ
ども、任意保険には、いわゆる無事故、無違反の人にはだんだん料率が下がっていく、そういうメリット、デメリットシステムというものが保険行政に導入されておりますけれ
ども、ドライバーの他のいろんな資格の面あるいは社会的な身分の面で、こういう無事故、無違反というのが善良なドライバーの
一つの象徴として格づけができるような方策などは、ぜひ考えてみるべきではないか。
その
一つの方策として、現在自動車安全運転センターでSDマークという、セーフティードライバーのマークを、本人の御要請によりまして発給をいたしておりまして、あなたはいつからいつまで無事故、無違反というのをカード化したものを出すようにいたしておりますが、これなどをもっと制度化していくというふうなこと、あるいは表彰をもっと体系化していくというふうなことを考えていくべきだろうと思いますし、また、その
免許証をいわゆる級別でだんだん、いい
免許証の色分けとかいうふうなものを考えたらどうかという御意見につきましても、非常に示唆に富む
お話だと思います。
現在私
ども、この前の道交法の改正の際に、本院からもいただきました附帯決議の趣旨にのっとりまして、これからの国民皆
免許時代に対応したドライバー行政のあり方をどうするかということについて、民間の識者等で研究会をやらしていただいておりますが、そういう研究テーマの
一つに取り上げて、これからのドライバー
対策のあり方というものを基本的に検討をし、また先生方の御意見をいろいろ承って、よりよいドライバー行政に仕上げていきたいというふうに考えておるわけでございます。