○木間
委員 都市再
開発法が提起をされまして、本
委員会でもそれぞれ論議を行ってきたところであります。私は、この
都市再
開発法の一部を改正する
法律案につきまして、日本社会党を代表して反対の立場で討論を申し上げたいと思います。(拍手)
わが国は、これまで著しく不均衡に国土を利用してきたことから、今日、地方圏では過疎化現象が進行し、大
都市圏では人口、産業の集中化が進み、加えて計画的な
都市建設が行われなかったため、
都市の生活環境はきわめて劣悪となり、とりわけ住宅問題は深刻となっています。
このような現状の中で、
都市に改造を加えて勤労者にゆとりと生きがいのある生活環境を保障しようと行われたのがこの再
開発事業であります。
都市において勤労者が安全で安心して暮らせる地域づくりを進める、良好な広さと設備を備えた住宅建設を進める、狭い道路を広くしたり、公園をつくり、町に緑と子供たちの遊び場をふやしていく、そうした意味においてわが党はこの再
開発事業に賛成であり、その推進は大いに図るべきであると考えております。
しかしながら、その
事業の前提となるのは、まず第一に、
都市施設、
都市環境の整備について国は責任を持って行うべきであります。
第二に、地域で生活する住民の意思と権利を尊重し、民主的に計画を策定し、
事業を施行することであり、少数意見者、特に零細権利者や借家人の意見と居住権、生活権を尊重することであります。
第三には、何よりも現に居住している勤労者の生活を豊かにするとともに、住宅に困っている人たちに住宅を供給していくことであります。
このような観点でいま行われている
都市再
開発事業を見るとき、現状はきわめて不十分だと
指摘せざるを得ないのであります。
また、この
都市再
開発法は、一九六九年に野党の反対を押し切って強行採決、制定を見、一九七五年の法改正も野党反対の中で成立したいわくつきの法律でもありました。
本法の持つ基本的な問題として、これまで国会においてもしばしば
指摘されてきたことは、まず第一に、
目的が
都市における
土地を合理的かつ健全な高度利用をして
都市機能の更新を図り、もって、公共の福祉に寄与することとしながら、
事業に要する
資金は、地方公共団体や地域住民の負担を原則として
事業の独立採算、受益者負担の思想でもって国の責任負担を回避していることであります。
第二には、その
事業計画の策定、権利変換が民主的な住民参加で行われず、また零細権利者や借家人の生活保障もきわめて不十分であることです。十分な国庫補助
制度がないことと相まって、零細権利者は多額の負担を強いられています。また、借家人は、法律上は権利者としての扱いを受けず、そして、生活権が保障されていないことを理由に、仮に反対しても多数意見によってあるいは公共の福祉の美名のもとに少数意見は圧殺されています。
そして第三には、法律の
目的に明記されていないことでおわかりのように、現にその地域に居住している勤労者の生活の安定向上、
都市勤労者の住宅確保の視点が軽視されていることであります。
零細な権利者や借家人は、結果的には他地域へ移転せざるを得ません。再
開発事業の実績でも住環境整備、住宅の確保よりも駅前再
開発が多く行われている現状であります。安くて住みよい公共住宅の建設は、一部地域を除いて進まず、周辺地域をも含めて地価、家賃の上昇をもたらしています。現状の
制度、
事業は、大きな地権を持つ者、資本力を持つ者にとりまして有益でありましても、弱い者や
都市勤労者にとっては、逆に生活
条件の悪化をもたらす結果となっていることがしばしば見受けられます。
そして第四に、今回の改正案審議の中でもこのような脆弱性は改善されておりませんでした。個人
施行者の拡大、
施設建築物の建築の特例など、
事業主体の拡大や施行要件の緩和など、
事業を進めやすいように改正を行うということでありますが、
事業を本当に進める
条件である国庫負担の強化、借家人を含めた権利者の生活権の保障、また、
都市における勤労者の住宅困窮を解決する唯一の道である安くて住みよい公共賃貸住宅の大量供給を再
開発の柱とするための改善策などは現状の隘路であり、これらの
事業を推進するための解決策は今回改正案には何ら含まれておりません。個人
施行者の拡大は、
制度創設時に心配された採算主義の先行の危惧を大きくさせ、二種
事業等の要件緩和は、その
事業手法の持つ問題をさらに拡大させるおそれがあります。
施設建築物についても国庫負担強化を図るべきであり、民間デベロッパー等の活用を一面のみで重視していくことは、再
開発事業がその趣旨からますます離れていくことにもなりかねません。
以上のように、
都市再
開発法の一部を改正する
法案に対する政府のいまの姿勢は、
制度の基本的欠陥を放置し、そこに住む住民を無視し、単に公共の福祉の美名のもとに
事業の強引な推進を図ることのみ
目的としています。また、政府は、
都市圏への人口の集中と、
都市におけるスプロール化に対する何ら有効適切な施策を実施せず、
土地問題に対する取り組みもきわめて不適当なものであります。そして再
開発を行った後の権利者の生活や負担の変化に対する実態把握は全くと言っていいほどなされていませんでした。
したがって、日本社会党は、本案に対し反対であることを表明いたしまして、私の討論を終わらせていただきます。(拍手)