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1980-04-02 第91回国会 衆議院 建設委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月二日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 北側 義一君    理事 小沢 一郎君 理事 大坪健一郎君    理事 國場 幸昌君 理事 渡辺 紘三君    理事 竹内  猛君 理事 渡部 行雄君    理事 伏木 和雄君 理事 瀬崎 博義君    理事 渡辺 武三君       池田 行彦君    上草 義輝君       大野  明君    谷  洋一君       中島  衛君    中村  靖君      三ツ林弥太郎君    村岡 兼造君       井上  泉君    小野 信一君       中村  茂君    貝沼 次郎君       林  孝矩君    井上  敦君       辻  第一君    中島 武敏君       吉田 之久君  出席国務大臣         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      小渕 恵三君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      清水  汪君         内閣総理大臣官         房管理室長   関  通彰君         国土庁土地局長 山岡 一男君         建設政務次官  竹中 修一君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省都市局長 升本 達夫君         建設省都市局参         事官      吉田 公二君         建設省道路局長 山根  孟君         建設省住宅局長 関口  洋君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    中嶋 計広君         文化庁文化財保         護部長     山中 昌裕君         農林水産省構造         改善局計画部地         域計画課長   川村 浩一君         農林水産省農蚕         園芸局農蚕企画         室長      吉國  隆君         食糧庁管理部企         画課長     松山 光治君         自治省財政局交         付税課長    能勢 邦之君         建設委員会調査         室長      川口 京村君     ————————————— 委員の異動 四月一日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     稻葉  修君   和田 一仁君     永江 一仁君 同日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     上草 義輝君   永江 一仁君     和田 一仁君 同月二日  辞任         補欠選任   松本 忠助君     林  孝矩君   中島 武敏君     辻  第一君   和田 一仁君     吉田 之久君 同日  辞任         補欠選任   林  孝矩君     松本 忠助君   辻  第一君     中島 武敏君     ————————————— 三月三十一日  宅地建物取引業法及び積立式宅地建物販売業法  の一部を改正する法律案内閣提出第五〇号)  (参議院送付) 四月一日  日本住宅公団における民主化促進等に関する請  願(瀬崎博義紹介)(第三一七九号)  同(中島武敏紹介)(第三一八〇号)  同(渡部行雄紹介)(第三一八一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法  律案内閣提出第六一号)  明日香村における歴史的風土の保存及び生活環  境の整備等に関する特別措置法案内閣提出第  一四号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 北側義一

    北側委員長 これより会議を開きます。  都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  3. 竹内猛

    竹内(猛)委員 都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案に関して、若干の質問と現状の問題もあわせながら質疑をしていきたいと思います。  まず最初に国土庁に質問するわけですが、昨日、国土庁土地公示価格を示した。これによると、四十七年から四十八年の石油ショックのときと同様に二けた以上に値上がりをしております。特に大都市近郊においての値上がりが著しい。そしてこれに対する各新聞なり世論は、政府が無策である、こういうふうに厳しい批判をしておるわけでありますけれども、この土地公示価格に対して、どういうわけでこのような著しい値上げが行われたか、こういうことに対してまず御説明をいただきたい。
  4. 山岡一男

    山岡政府委員 地価高騰原因でございますけれども、これにつきまして私どもいままで申し上げておりますことは、大体パターンとして原因が三つあると申し上げております。  一つは、今回の東京における萬西方面値上がり等のように、地下鉄の新駅ができて、そのためにその周辺の品位、品質、品等が上がるというふうな値上がり、いわゆる効用増でございます。今回の値上がりの中には、相当部分これが含まれております。  それからもう一つは、東京圏等を見ましても、東京圏で申しますと五キロ圏から三十キロ圏が相当値上がりしております。この地域マンション等が非常に建つところでございまして、そういうふうな非常に要望の多いところに宅地供給が不足をしておる。そのためにいろいろな買い進みが行われておるというふうなことが一つ原因でございます。需給ギャップというふうにわれわれ申しております。  それからもう一つ値上がり原因につきましては、いわゆる将来の値上がりを楽しむという意味投機的な土地取引によるものでございますけれども、四十七、八年当時の主因はこれでございましたが、最近においてはこれは見られない。言葉をかえて申しますと、やはり今回の値上げ原因といたしましては需給ギャップ主因であって、効用増がそれを助けておるというふうに考えておるわけでございます。
  5. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま説明がありましたが、一般には持ち家制度というものをとっている。それでそのために住宅金融公庫から大幅な貸し出しをしている。それから一方、土地を持っている方は、ときどき公表される地価公示表によって自分の持っている土地の値が上がる、ますます上がるということで、これは後で問題にするように、三全総の場合においてもその目的宅地供給が著しくおくれているし、それから住宅建設についてもダウンしているということは、これは政策の失敗だというふうに言われているわけです。つまり持ち家制度というその行き方、これが問題だというふうに言われているわけなんです。  きのうは閣議大平総理も指示があったように思われますし、渡辺建設大臣からもあるいは国土庁長官からもお話があった。この問題についていままで実際に法律があったけれども、それも使っていなかった。国土利用法によるところの二十四地区規制をするということを言われておりますが、本当に規制をして地価を抑制をする意思があるかどうか、この点について、これは本当は国土庁長官ですが、建設大臣にお聞きしたいわけです。
  6. 山岡一男

    山岡政府委員 国土利用計画法規制区域適用につきましては、法施行以来、そういう状況が起きた場合には、機動的にかつ効果的に行うという指導をしてまいっております。法律構成も、地方公共団体の長はそういう事態が起きた場合には指定をすることができると書いてあるのではなくて、「指定するものとする。」と書いてあるわけでございます。したがいまして、そういう事態が起きました場合には必ずそういうふうにやるという決意については、いささかも変わっておりません。  ただ、先生御案内のとおり、法律構成要件といたしまして、投機的な取引というものが一つの前提となっております。そういうことのために、私ども絶えず全国で二百三十七カ所、ずっと法施行以来いろいろなところにつきましてそういうふうな諸元についての地価動向取引動向等についての調査を続行してまいっております。いまお話が出ました二十四地区と申しますのは、そういうものの中で特にそういうふうな投機の行われそうな気配が見える、もしくは地価が非常に上がったというふうなところにつきまして投機が起きないかどうかということを監視をするために、新しく濃密な一カ月ごとの調査をやりたいということで、全体に約一割につきまして二十四地区分年度予算が計上しておるものでございます。  したがいまして、新年度予算が決まりました場合には、そういうところにつきましていつでも機動的にそういう調査ができるような体制をとっておくというのが現在の態度でございます。したがいまして、法の構成要件に該当するものが出ました場合には遅滞なく規制区域指定を行うという姿勢にいささかの変わりはないわけでございます。
  7. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これだけ値が上がっているのに調査ばかりしていてもこれはしようがないじゃないですか。適用をするかしないかということを言っている。それは知事に任せるということだ。これはいままで投機対象だと言う。ほとんど投機対象になっているんじゃないですか。にもかかわらずそれを抑えないということは、それは行政の怠慢じゃないですか。
  8. 山岡一男

    山岡政府委員 法律の定めております投機というふうな条件でございますけれども、それにつきまして先ほど申し上げましたように全国の二百三十七カ所現在調査いたしておりますけれども、それによります都道府県からの報告によりますと、投機的な取引は行われていないというのが全部の報告でございます。それから国土利用計画法届け出制度というものをやっておるわけでございますが、それの利用目的を見ますと、いずれも利用目的は、いわゆる資産保有というようなものではございませんで、実需に基づく取引ということになっております。  そういう状況等から見ますと、構成要件該当ということを言えるかどうかきわめて問題がございます。したがいまして、そういうふうなことと離れて将来利益を楽しむような投機的な土地取引が起こるかどうか、それを絶えず監視をしておるということでございます。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それはおかしい。三全総によってももう百五十万戸ぐらいのものを毎年つくらなくちゃならないと言っておるのに、それがかなりダウンをしている。あるいはこの三大都市圏の中にも九万ヘクタールから十万を超えるような土地がいまだに保有をされていて、これが供出をされない。現に土地があることはわかっていてこれがそのままになっているということ、これは明らかにその土地を持っている者が値上がり期待をしているからじゃないですか。そういうことがわかっていてそれは投機じゃないという判断は、役所はそうするかもしらないけれども土地を欲しがっている者はみんな投機だと見ていますよ。だからそこを、世論から行政は何をしているかとたたかれるわけだ。  そこで今度は一方においては税金を緩和する。これは土地あるいは住宅に関するための処置というのがあって特別に税金を緩和するけれども、それにもかかわらず土地が出てこない。これは一部の土地持ちに対する期待感を深めるし、土地を欲しがっている市民に対してはきわめてわかりにくいものになっていて、一体この公示価格というようなものは何のためにあるのかということさえいま疑われている。これはひとつしっかりやってもらわなければ困るけれども、どうなんです。
  10. 山岡一男

    山岡政府委員 いまお話しございましたように、三大都市圏の中で企業の持っておる販売用土地というのは現在八千ヘクタールぐらいあると思います。それから市街化区域内農地が九万五千ヘクタール現在ございます。そういうものを大いに活用するということは当然でございまして、私どもそういう方向で、たとえば農地につきましては近く農住法農住組合法等も提案いたしまして、そういう促進を図りたいと考えておる次第でございますが、いずれにいたしましても、先生お話しのように確かに土地を持っておればもうかるかなということで、なかなか土地を手放さないという面はあろうかと思います。しかしやはり規制区域指定要件といたしましての土地取引が盛大に行われるという意味からいいますと、その要件には当たらないわけでございます。したがいまして、規制区域は九万五千ヘクタールの農地があるからといって指定はできない。  それからもう一つ税金お話がございましたけれども、私ども税金につきましては土地対策上から申しますと保有税は強化する、それから有効なものに使われる税制については緩和をするというのが土地対策上は効き目があろうかと思っております。したがいまして今回の税制はそういう方向改正が行われたというふうに考えておるものでございます。  地価公示制度につきましては、これは地価公示法目的に書いてございますとおり、標準地の正常な価格公示いたしまして、公的及び民間の土地取引等におきます適正な地価の形成に寄与するということが目的でございます。何に使われておるのかということでございますけれども地価公示法によりますと、一般土地取引指標とすべきであるというのが一条の二に書いてございます。それから不動産鑑定士鑑定評価を行う場合には、この地価公示規準とするというふうになっております。それから公共事業の実施における土地取得価格算定及び補償金の額の算定の場合にもこれを規準とするということになっております。国土利用計画法におきます土地取引許可制及び届け出制による取引規制の場合の価格についても規準とすることになっております。  ただここで申し上げておかなければなりませんのは、この規準という字は、いつも申しますが規準という字を使っております。基準ではございません。したがいまして、地価公示はいわゆるマル公ではないわけでございまして物差しでございまして、それをもとに比準をしていただいてそれを使っていただくというのが地価公示の趣旨でございます。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)委員 規準にしたり何かしたりしてもそれは全然守られてないでしょう。守らなかった場合には一体これはどうなんです。いままで言ったことは一つもどこでも守れない。守られているところ、どこかありますか。
  12. 山岡一男

    山岡政府委員 たとえば例を挙げて申しますと、国土利用計画法で二千平方メートル以上のものにつきまして利用目的価格とそれから周辺公共事業整備状況等をもちまして審査をしていろいろな指導をし、もしくは勧告をするという制度がございます。それはいずれもこの公示価格規準といたしておりまして、それはかたく守っておる次第でございます。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ずいぶんむなしいですね。あの新聞に出た価格でそれじゃその周辺土地を売ってくれと言ったら、みんな断りますよ。国土庁はそれで売れということが強制できますか。できないでしょう。だからああいうものを出すことはかえっていまは迷惑ですよ、本当に。どこの土地は幾ら上がりました、そしたらおれの土地はこれだけになった、やがて一年待てばまた上がるのだ。これじゃ土地なんか全く出ませんよ。  たとえば裁判所は強制執行するでしょう。あのときは公示表価格でやるのですか、それともそうじゃなくて実勢でいくのですか、その辺はどうですか。
  14. 山岡一男

    山岡政府委員 裁判における強制執行の場合は、国土利用計画法上除外されております。しかし、当然にそういうふうなものとして一般指標ということもございますので、十分に考慮されるというふうにわれわれは理解いたしております。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)委員 では一体、公示表というのは現実にいま何の役割りをしているのです、社会的な役割りは。たとえば土地を欲しい者が、この土地公示表によればこれだからそれで買いたいと言ったときに、そんなものは知りません、こう一発やられたら、それじゃ売らないと言ったらどうなんです。二千平米以下のミニのところで、あの土地を欲しい、公示表がこうなっているのだ、その値段で売ってくれないかと言ったら、それはだめだと言って断られたらそれでおしまいでしょう。そのときに何か発動するのですか。それはどうです。
  16. 山岡一男

    山岡政府委員 現在の届け出制度は契約自由の原則の中で動いている制度でございます。その中で特に大きいものにつきましてそういうふうなチェックをしておけば他へも波及をするだろうというのが当時、国土利用計画法ができましたときの立法考え方でございます。先生がおっしゃいますように確かに土地取引につきましては、現実の問題といたしましてはマンション用地の買い進み、それからミニ開発の買い進み、銀行等によります角地の買い進み等々、特別な取引がある場合がございます。そういうものについては確かに抑える手はございません。しかしながら、先ほど申し上げましたように一般取引指標ということは法の精神として公示法にも書いてあるわけでございまして、そういう点につきましての指導とかその他につきまして大いに今後もPRに努めるということがわれわれの任務であろうかと思っております。  地価公示価格というのは、そういうふうな買い進み価格は除外をいたしております。もちろんいろいろな取引事例も何万件も調べた上で鑑定士が鑑定するわけでございますけれども、そういう買い進みをすべて後追いで時価ということで認めていきましたら、それこそ公示意味がない。そうではなくて、売り手市場でもない、買い手市場でもない、収益還元をしたり原価法をやったり、取引事例の中でも正常の取引を参考としたり、そういうことで皆さんの指標になる一つ物差しを提供する、その物差しと比べていただいて、たとえば現在新聞等では値上がり率とか額しか書きませんけれども地価公示の本物は十一項目にわたって書いてございます。そのそれぞれにつきまして比べていただいて、駅に近いから高いとか、周りの道路が広いからもっと上等だとか、そのために地価公示規準として三倍、四倍の値段があっても構わない、これが地価公示運用でございます。  そういう意味で、そういう物差しを今後も提供していくということにつきましては私は非常に意味があることだと考えております。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)委員 意味はない。全くこれは意味がない。それじゃ税金対象とか、仮に高速道路土地を買う場合に、その地価公示規準になるのですか、それともならないですか。
  18. 山岡一男

    山岡政府委員 公共事業土地買収に当たりましては、そういうふうなものに準拠していただくということになっております。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは新聞からも大いに批判を受けているように、国土庁は少し反省をしてもらいたい。きょうは長官がいないから言ってもしようがないけれども、これは強く要請をしておきます。地価公示表ぐらいいまのところ迷惑なものはない。金をかけて調査をして何の役にも立たなくて、それである一つの思惑のために使われている。少なくとも公示表によって国が公示をしたからには、住宅を欲しい庶民がその公示表によってそこの土地が買える何らかの操作をしなければならない。それを規準にして、もしその地価より高かった場合にはそれに対する補助をするとか、何とかしなければ、ただそういうものを示して十一項目のなにがあるといっても、初めから活用できないものに対して調べる、そんな人間のいいのはいません。だからこれははなはだ迷惑のような感じがいまのところはします。  きのうの閣議の中で渡辺建設大臣も御発言をされておりますけれども、本当にやる気があるのかどうなのかわかりませんが、国土計画法におけるところの規制措置ができるかできないか、それは知事がやるのだというけれども投機でなければだめだというけれども、いまのように長い間土地を確保して、そして値上がり期待をしている人たちが都内にはたくさんいますよ。草を生やして、そして値上がり期待をしている人がいる。こういう者に対して先ほどからも面積の問題があったけれども、何とかあれを出させるような努力がなければ土地対策にはならぬでしょう。税金をまけてやる、それは持っている人間を優遇するだけであって、土地を欲しい者に対しては何の価値もないでしょう。土地を必要とする者に対して、個人であれ公共団体であれ、これに対して本当に安心して土地が手に入るような努力をしない限り意味がないと思うのですね。そういう意味ではこれは国土庁には苦言を呈するけれども、今度は建設大臣からこれに対する感想なり所見なりを述べていただきたい。
  20. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 土地問題特に公示価格の問題につきましては、面接の所管国土庁長官でございますが、これは与野党の理事の皆様がいろいろ御苦労になりまして、議員立法をされたわけでありますが、当時私も一員といたしまして、狂乱物価に対処するという意味におきましては相当成果の上がったものであると思っております。  ただいま竹内先生からいろいろ御意見ございましたけれども公示価格の現在のあり方についていろいろ御意見のありますことは私も十分承知をいたしておるつもりでございます。しかしまた一面、公示価格としてのたとえば公的な土地取得等につきましても一つ規準としてそれなりの成果を上げておるものとは思いますけれども、なお今後とも必要でありますれば検討すべきであろうと思います。  規制地域指定という問題は、指定すること自体非常に重要な内容を含んでおりますから、慎重を要する問題であることは言うまでもありませんが、しかし伝家の宝刀としていつでも抜くぞというところに意味があるわけでございますから、これを抜かない抜かないというのならば、この制度意味のないものだと私は思っております。そういう意味でこれは所管大臣の立場もありますので、われわれがいろいろ言うことは当然慎重を要するわけでございますが、必要であればいつでも抜くという姿勢は絶対必要であるし、そうあるべきだ。したがって、この春長官からも発言がありましたけれども、私は閣議ではそのような意見を申し上げましたし、昨日の閣議におきましてもそういう発言をしております。したがって、それが実際運用ができないような手続上の問題があるとすれば、それは法の改正も必要ではないか。そうでなければ利用法を制定いたしてまいりました意義がないわけでございますから、そういうことがもし必要であれば、私は政府としてもそのような考え方をもって臨むべきであろう、こういうふうに考えております。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)委員 きのうの公示価格を見ますと、平均一〇%以上、多いところでは三三%も上がったところもある。こういうことになりますと、これははっきり言って投機ですよ。そうでしょう。これを投機でなくて何と言いますか。そういう状態の中で、きのうの閣議で幾人かの大臣発言をされて、そして国土庁長官がそれならば発動しようかと言ったという記事が夕刊に大きく載っていた。あれを見て、これは本当にやるかなと思いましたけれども、また何かに恐れおののいて出さないのじゃないか、活字だけ大きくして、出さなかったらこれくらいまた人をばかにした話はない。やるのならいま本気にやる時期じゃないですか。そして本当に住宅を欲しい者に対して土地供給する。  このことと関連しまして、私たち日本社会党では住宅保障法というものを出している。その考え方は、もう個人土地を買っての住宅、マイホームということは理想ではあるがなかなかむずかしい、したがって公共的なものが土地を手に入れて、適正な広さ、家賃、距離、こういうところで本当に安心をして生活ができるような住宅をつくれるようにしていきたいということ、こういうことを私たちは考えておる。もちろん個人が持つことを否定するものではありません。ところが政府の方針というのは、おおむね持ち家制度というものが中心でしょう。その持ち家制度がいま行き詰まっているわけじゃないですか。だからこれは転換する必要があるのじゃないですか。その辺はどうですか。
  22. 関口洋

    ○関口政府委員 ただいま持ち家政策が限界に来ておるので賃貸住宅を重視すべきだという御意見を承ったわけでございますが、私ども持ち家か借家かという問題につきましては、基本的には国民の需要動向に即して施策の方向を定めるべきものと考えております。したがいまして、公的援助による住宅供給に当たりましては、大都市地域を重点といたしまして、低所得者層等につきましては、先生御案内のとおりに公的賃貸住宅を、また持ち家志向の強い層に対しましては長期低利の融資あるいは公的分譲住宅供給する等、地域の特性あるいは国民の住宅需要の動向に即してバランスのとれた供給を図る必要があるもの、かように考えております。  なお、ただいま御指摘のございました持ち家という中に、先生の御意見を承っておりますと、いわゆる庭つき二月建ての住宅を前提としておられるのかというふうにお伺いしますのですが、昨今は先生御案内のとおりマンションもございますので、その点も含めましてわれわれは考えてまいりたい、かように考えております。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 先ほどもちょっとお話がありましたが、これは国土庁ですね、農住組合、この法案を出すことになっていたのですけれども、これがおくれている。まだ出てこない。これはどこに問題があるのですか。
  24. 山岡一男

    山岡政府委員 現在法制局で審議中でございまして、われわれ役人仲間で申しますと第一読会が終わったというところでございまして、なるべく早く提出したいということでいま字句を詰めておるわけでございます。先生もよく御案内だと思いますけれども、年度の終わりの法制局の状況は四月一日目標のいろいろな政省令等が殺到いたしておりまして、その間を縫っての審査でございますので時間がかかったということでございまして、特別の理由があるわけではございません。なるべく早く提出したいと思います。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いい法案ならば早く出さなければ、国会は五月十八日でおしまいですよ。それに長い連休がありますからこれは審議できませんね。できないのなら来年練り直してしっかり出した方がいいのじゃないですか。世論も踏まえてしっかりしたものを出す、いいかげんな法案は出さない方がよろしい、こういうふうに思いますから、ひとつ戻ってしっかりやってください。いまの土地の問題も公示の問題も踏まえて、土地を持っておる者も土地を必要とする者も、これならいけるという確信のあるものを出してもらいたい、このことを要望しておきたいのです。  そこで、本論に入りますけれども、この時期に都市計画法及び建築基準法の一部を改正する、地区計画というものを中心とした法案を出した意義、理由というのは何ですか。
  26. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答え申し上げます。  最近におきます都市化の進展の過程の中で、良好な居住環境に対しまする住民の要請はますます強くなっておりますことは御承知のとおりでございます。また、市街地形成の現状を比較的小規模な地域単位で見てみますと、細街路、小公園等の未整備あるいは敷地の細分化というように、良好な都市環境の形成上は大変問題を生じておるのではないかというふうに思われるわけでございます。  一方、現行の都市計画法に基づきます各種の都市計画制度は、街路などの都市施設にいたしましても、また用途地域などの地域地区制度にいたしましても、都市計画区域全体から見て大まかにその骨格を定めておるのでございまして、地区レベルまできめの細かい計画としては十分なものではないわけであります。このために、地区レベルで良好な市街地の環境形成また保全を図るという観点から、都市計画の一つとして新たに地区計画を創設をする、そして、現行の開発許可制度及び建築確認制度と両々相まちまして、地区計画に従って秩序のある開発行為、また建築物の建築等が行われることになりますように誘導をし、また規制をしていこう、こういうためにこの制度を設けたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  27. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま土地がだんだんミニ開発で、それを防止をするために小学校区程度の広さに地区指定をしてやっていこう、こういう一つの方式が出されたわけでありますけれども、これに伴って、特に土地を持っている所有者と住民との間でも話し合いをしていこう、ある意味では非常に民主的な形がそこではとられております。しかし、これに従わなかった場合には勧告をするという形になっている、勧告を聞かなかったらこれはどうなるか、こういう問題が起きますね。これは先ほどの国土庁公示と同じように、勧告を聞かなかった場合はどうするか。せっかくいいアイデアであって、その広さから言えば小学校区程度でありますから、そういうところに公園をつくったり道路を直したりしていくことはいいわけですが、所有者と利用者の間に一致がなかったときにはこれはどうしますか。
  28. 升本達夫

    升本政府委員 地区計画の内容につきましては、先生、先刻御承知のとおりの内容でございまして、都市計画法に基づきます骨格的な都市施設の配置計画あるいは用途地域を前提といたしまして、地区単位で見ましてさらにいわば上乗せ的な建築物の規制あるいは細街路等の都市施設を定めさせていただく、こういう内容のものでございますので、まず第一次的には、この内容のものを実現を図りますためには、届け出をしていただき、その計画に合わなければ勧告を出し、これに従っていただくという規制で一応は目的を達成し得るのではないかというのが私ども考え方でございます。  しかし御指摘のように、にもかかわらず、さらに権利者が御自分の意見を貫きたいという御要請がございました場合にどう対処すべきかということにつきましては、その区域内の土地利用の現況あるいは見通し、さらに住民のコンセンサスの度合い、計画実現の必要度等を考慮いたしまして、必要があると認められる場合にはこの届け出、勧告制度にとどまりませず、さらに建築基準法に基づく条例によりまして、その条例の定めでこの計画の内容の一部が規制対象に取り上げられることによりまして、建築確認の時点で確認の基準として定めさせていただくという手だてを考慮いたしておりますので、この手続に従いまして建築確認が基準として吸い上げられますと、この規制内容に反しますと建築確認が出ない、したがって建築行為ができないというコントロールが行われることになるわけでございます。  なお、建築行為に至りません土地の区画、形質の変更等の開発行為につきまして、この区域内に開発行為が行われます場合には、一般的に市街化区域内でございますので、千平米以上の開発行為は開発許可を要するという現行都市計画法の規定に従いまして許可の申請をしていただくことになります。その場合には、許可の基準といたしましてこの地区計画の内容がそのまま基準となりますので、この地区計画の内容に即して開発行為が行われるということが担保されることになっております。  それから第二点でおただしの、土地所有者と土地の利用者の間のという御指摘でございましたけれども、これは土地の利用についての規制あるいは誘導プランでございますので、土地所有者であれ借地権者であれ、その計画内容に従ってその実現を図るような建築行為あるいは開発行為を期待をいたしておるわけでございます。  なお、それを利用権者がおやりになるか所有権者がおやりになるか、これは両者のお話し合いでお進めいただくということになろうかと思います。
  29. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いまのお話を聞いているわけですが、学区制単位という形でいくと、期待をしている面積というものは大体どのくらいになりますか。
  30. 升本達夫

    升本政府委員 比較的規模の小さい一まとまりの区域という御説明を申し上げておりまして、必ずしも一律的にどのくらいということを予定をいたしているわけではございません。地区状況によりまして、たとえば既成市街地内であればかなり単位が小さくなりましょうし、あるいは市街化の進行している周辺部におきましてはかなり広がりの大きいものが一般的に予想されるだろうと思うわけでございますが、平均的、標準的に申し上げますと、既成市街地内の街区単位の場合には、長辺で百メーター、短辺で五十メーター、したがいまして、西横でいいますと〇・五ヘクタールぐらいが一つ街区の標準的な規模かなという感じがいたします。それから市街地の縁辺部、周辺部におきましては、いまおただしのように一住区単位というぐらいのものを想定できるかと思います。この場合の住区も、その中の人口密度の変遷によりまして大小ございますけれども、たとえば住区と申しますと、人口一万人という数が住めるような区域ということになりますと、ヘクタール当たり百人という密度で考えますと百ヘクタールという大きさになりますし、ヘクタール当たり三百人ぐらいの密度で考えますと大体三十ヘクタールぐらいというような、地域状況によって大きさが異なるというふうに御理解いただきたいと思います。
  31. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この場合でもやはり問題は土地価格の問題に関係しますね。価格の問題が、いまのような上鼻気流というものがある。一般の物価が上がれば土地が上がるに決まっている。どうしても政府土地価格の問題について何らかの有効な指導をしない限り、ただ減税だけではだめですよ。税金を幾らまけてやっても、それだけではだめなんだ。それはもう学界の論争もあるでしょう。減税か、そうでないかということで、大分やっておりますね。これはだめなんで、もう少し土地供給できるような方策を大胆にとらない限り、せっかくつくったこの法律も、実際は功を奏さないではないかというふうに私は心配をするのです。だからこの価格の問題については、真剣にひとつこれは考えてもらわなければいけない。きのうからきょうにかけて、土地価格の問題についてはあらゆるところで問題になっていますね。そして政府の無策が指摘をされているんですよ。それで渡辺大臣もこの間、日本経済新聞に、非常に快適な生活を願っていると大きな記事で談話が出ておりましたが、大変結構なことだと思うのですけれども、いずれにしても、あのような方向にいくためには、その土地が常に安心をして供給ができるような状態がどうつくれるか、このことを考えない限り、これはどうにもならないと思うのですけれども、この辺はどうなんですか。
  32. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 私ども住宅政策を進めていく場合に、やはり土地問題が、特に宅地供給問題が非常に大きな前提になるわけでございますし、そういうような意味におきましては、地価の安定ということは重要な課題だというふうに私どもは考えております。  ただ、一部に言われますように、持ち家政策を何か政府があふったようなふうに言われている面もありますし、またそれが地価高騰をあふったのではないかというような御意見もございますが、先ほど住宅局長が御説明いたしましたように、私どもは、国民のニーズに従って、それぞれバランスのとれた住宅政策を進めておるわけでございますから、その点、ひとつぜひ御理解をいただかねばならぬと思います。  そういうような意味におきましては、地価の安定ということは重要な課題でございますから、いろいろ申し上げてきておりますように、努力もしておりますし、今回、内閣にも土地問題閣僚協議会を設置することになっておりますので、私もその構成メンバーの一員といたしまして、最大の努力をさせていただきたいと思っております。  そういうような意味では、たとえば今回お願いしております、地区建設計画と、まあ呼びやすく呼んでおりますけれども、これもミニ開発に伴う地価の高騰というものは当然あるわけでございますから、私は、今回のこのお願いをしておりまする法案も、地価の高騰を抑制するという意味におきましては、非常にいま効果のあるものではないかというふうに考えておる次第でございます。  そこで、かねて申し上げておるわけでございますけれども地価の安定なり、あるいは宅地供給促進するためには、たびたび申し上げておりますように、税制もその一環でございますが、税制のみでなしに、税制を含めた総合的な宅地供給策というものを進めておるわけでございまして、第、一番には公的機関による計画的な宅地開発の推進、それから、民間の優良な宅地開発に対しまする政策金融その他の措置、拡充でございます。それから、関連公共公益施設の整備の拡充でございますが、これは、今年度は五割増し、九百億ということで進めておるわけでございますし、近くその配分も決めたいと思っております。  それからもう一つ、都市再開発によりまする土地の有効利用の推進につきましては、先般来お願いしております、いずれ御審議をちょうだいいたしまする今回の都市再開発法の一部改正によりまして、住宅を中心といたしまして計画的にこれを進めていくということをお願いをしておるわけでございます。  なお、その都市計画法の線引きの見直しにつきましても、かねてこれは推進をいたしておるわけでございますけれども、しかし、一番問題である東京都自体が今日まで実施をしておらないような状況でございまして、これは昨年の暮れ、都知事にもお願いをいたしまして、昭和五十五年度には東京都もいよいよ線引きのために御努力を願うということでございまして、今回の土地税制とあわせまして総合的に推進をしてまいりたいと思います。  それで、税制もいろいろやっていただいておりますが、去年は、いわゆる優良宅地状況が非常に厳しかったわけでありますから、それでは成果がないんだ。今回、そういうような意味では、従来の短期譲渡に対する重課の体制は維持しながら、長期譲渡に対してのみ今回のような措置を講じたわけでございますから、私は、むやみに地主を優遇するということではなしに、これが流動を阻害しておる要因を断ち除くことになるのではな  いか。  それから、御承知のように市街地の中の今後の土地の有効利用に役立つ意味におきまするいわゆる買いかえ制度というものも今度は認めていただきましたので、これらをあわせまして、私は今後とも強力に宅地供給を進めていきたい。  それから、調整区域内の農地の問題、市街化区域内の農地の問題、これを宅地に転用する問題につきましても、たびたび申し上げておりますように、次官を中心とする委員会を設けまして、ただいまいろいろ有効な制度がございますけれども、法案の成立の過程でいろいろな枠がはめられまして、そのためには、大変いい制度だけれども、実効が上がっていないものがたくさんございますので、たとえば土地担保つき融資制度であるとか、あるいは農地の利子補給制度であるとかいろいろございますが、そういうようなものも見直しながら、私どもは、農地宅地転換というものにつきましても強力に進めてまいりたいと思っております。  なお、昭和五十六年度から昭和六十年度までの前期五カ年、それから昭和六十一年から昭和六十五年までの後期五カ年間、合わせて十年間を計画期間とする宅地需給長期見通しを策定することにしておりまして、これは五十五年度中に策定できるものと考えておるわけでございまして、なお、さらに現在、住宅宅地審議会におきまして、昭和五十六年度を初年度とする第四期住宅建設五カ年計画を前提といたしました「新しい住宅事情に対応する住宅政策の基本的体系はいかにあるべきか」ということにつきまして御審議を願っておりますが、その一環として審議会の宅地部会におきまして、今後の宅地政策の基本的方向についても検討をいただいておるところでありまして、これらをあわせまして、ひとつ全力を挙げまして宅地供給の推進に努めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  33. 竹内猛

    竹内(猛)委員 要望と、また御答弁をいただきたいのですが、長期の見通しも出されたし、それから新しい法改正も行うわけでありますから、この機会に何としても、宅地が三大都市圏の中でも十万ヘクタールほどあるということは、先ほど国土庁からの報告にあるとおりですね。これが三全総によって大体一万三千ヘクタールぐらいのものが必要なのに、九千とか八千とかと毎年減ってきているわけです。だから、計画は立てているけれども計画どおりに進まない。その進まないところにいまの問題があるのでしょう。その問題を処理するということは、公的な機関が、社会党が言っているように公共性を持った安い賃貸住宅というものを建てろということを主にしろ、それで個人が必要なものについては、これは個人の意思ですから、やる。ところが、一方においては、持ち家制度というものを推進ようという人もある。それはどうでもいいわけだけれども、しかし個人の力にはいま限度があるでしょう。  私は、これ以上このことは申し上げませんが、たとえば現在の二十五歳なり三十五歳ぐらいまでの人の収入で、現在のこの地価で家を建てようとしたら、個人がどれだけのことができますか。これはほとんどできないでしょう。そういうことを見ただけでも、問題はかなりはっきりしている。したがって、いま宅地問題の閣僚懇談会の話がございましたが、ぜひ建設大臣が中心になって地価を安定する。そうして、ともかくこのたまっている土地を——土地があるのですから、これは輸入しなくてもいいんです、現にあるんですから。ある土地をどのように、いまの働いている人々の給料、所得に合った形で活用できるかということをぜひやってもらいたい。それをしなければ、いまの法律改正をしてもやはり活用が十分でないのじゃないか、こういうように私は考えたいわけでありますから、この際、ひとつ大臣の閣僚としての決意を伺って、次に移りたいと思います。
  34. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 大変重要な課題でございまして、私は、土地問題というのは、当面の緊急の問題と長期にわたる計画的な対策とあると思います。当面の問題は、やはり地価の安定という問題が緊急課題だと思いますが、そういう意味で私も全力を挙げてまいりたいと思いますし、またいろいろ事務的にまだ詰めつつあると思いますが、閣僚会議のメンバーにつきましても、私はなるべく関係閣僚の御参加を願って、たとえば従来ともいろいろ言われておりますけれども、鉄道用地の利用地等もあると思いますし、また公用地等で活用すべきものもございましょうし、広範な立場から土地問題に取り組みまして御期待に沿うように努力をいたしたい、かように考えております。
  35. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、この際少し現実的な問題について質疑をしていきたいと思います。  いま茨城県の藤代町で、大和ハウスが十四階のマンションを二棟建てるということについて書類が出されている。この経過について御存じでしょうか。
  36. 関口洋

    ○関口政府委員 茨城県からの報告によりますと、いま先生御指摘の大和ハウスの藤代マンションの経過につきましては、北相馬郡藤代町宮和田七百八十二番地の一に、敷地面積約二万四千六百八十六平米、これに十四階建てのマンションを二棟、現実にはとりあえず一棟ということで建築確認申請が、いろいろ経緯があるのでございますけれども、結果的に五十五年の二月二十九日に県に申請をされて県が受け付けた、かように承知いたしております。
  37. 竹内猛

    竹内(猛)委員 町の議会で、この建築申請については異議があるということで決議をしておる、にもかかわらず書類が県の事務所に届けられたという経過があります。そして、その中に国有地があることがいまはっきりしましたが、それはありますか。
  38. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 いまお尋ねの地域につきましては、いわゆる青水路と言っております水路が三百十七・六九平方メーターあるということを聞いております。
  39. 竹内猛

    竹内(猛)委員 公有地があるにもかかわらず、それを建築の中に加えて申請をするということはぐあいが悪いのじゃないですか、どうですか。
  40. 関口洋

    ○関口政府委員 建築確認は、建築基準法の規定によりまして、当該建築計画が、建築物の安全、防火、衛生等の観点から必要な法令上の制限に適合するか否かということについて確認をするわけでございまして、その敷地につきまして、仮に一部建築主が権利を有するものでないとしましても、そのために建築確認申請の受け付けを拒否することはできないのじゃないかというように私どもは考えております。
  41. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それならば、国有地というものはあっても構わないということですか。もしそういうことが許されるなら、ほかでもどんどんやりますよ。あの場合は宅地の中の横の方に公有地があって、これはじゃまにならない。ところが、そういうことがあっていいというならば、今度はほかのところもやりますよ。いいですか。
  42. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 建築基準法の問題はいま住宅局長からお答えしたとおりでございますが、国有地の問題につきましては、この地域は昭和四十年ごろにいわゆる個人的な区画整理を行ったそうでございまして、そのときに水路はつけかえて別のところにいっているそうでございます。したがいまして、現在は当該地域には水路はないわけでございますが、そのときに当然公用廃止をすべきものを、手続を怠って公用廃止をしていない、したがって国有地のままで残っておる、こういう状況でございます。したがいまして、マンションを建てるということになりますと、当然その国有地は払い下げを受けなければ、その上にはマンションが建たないのは当然のことでございますが、これは建築基準法上の確認の問題とは別の問題でございます。
  43. 竹内猛

    竹内(猛)委員 たまたま広いところだからそこのところは使わなかったけれども、それならば狭いところで公有地が十坪とか二十坪あるときに、申請を出して建築確認をとってつくってしまった、そうしたところが、いつの間にか占有してしまって、無断で公有地を取り上げてしまうということになりますよ、建築基準法のいまのあれでいけば。この場合は、二月の八日に管理者である県知事に向かって公有地の払い下げの申請をしている。その会社が、二月十九日の段階で議会において拒否され、それにもかかわらず二十日にはそのもう一つ上のところの土木事務所に書類を出している、こういうやり方をとっています。まあそういうことでいいということならそれでいいけれども、やはり指導としてはそれはまずいのじゃないですか。払い下げをするならば、許可をするならば、不必要な公有地なら早く払い下げをする、その手続をもう少し早くやって、世間に信用をなくさないようにする方が筋じゃないですか。
  44. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 建築基準法上の問題は別といたしまして、先生のおっしゃるとおりだと思います。この国有地の払い下げがおくれておりますのは、御承知のように、こういう青水路あるいは里道等につきましては、国有財産法上の規定によりまして、知事にその管理、処分を委任しているわけでございます。しかしながら、都道府県におきましても、人員とか予算の関係上、なかなかこのような法定外公共物の管理を適正に行いにくい、こういう面がございまして、当委員会におきましても数回にわたりましてわれわれはおしかりをこうむっておるところでございます。  したがいまして、建設省といたしましては、昭和四十二年度には国有財産事務連絡協議会というものを設けまして、各ブロックごとに建設省、都道府県それから財務局等が入りまして、この適正な管理を行うように努めておるところでございますし、また昭和四十九年からは、境界査定等にいろいろ問題がございましたものですから、地方の法務局でございますが、法務省にもお入りいただきまして、公共用財産紛争処理連絡協議会というものを設けまして適正な管理に努めておるわけでございますが、なかなか思うようにいかないというのが実情でございまして、申しわけないと思っております。  そこで、さらに昭和五十三年度からは、学識経験者、関係各省、これは自治省、大蔵省、建設省でございますが、それから知事会、市長会、町村会から成ります公共用財産管理制度調査会というものを設けまして、法定外公共物をどのように管理していったら最もよろしいか、ことによりましたら法案の御提出もいたしたいということで、現在いろいろと検討を進めておるところでございます。
  45. 竹内猛

    竹内(猛)委員 法定外公有地というのは山梨県全県ぐらいの広さを持っておるということを承知しておりますが、これは至るところにあります。そういうところにいろいろな問題が起こっていますね。問題が出てきて初めて、ああそうだったかということがわかる。これは早急に処理をするように、ぜひ法律を早くつくるように、これは渡辺建設大臣にお願いをしたいと思います。  ところで、もう時間もありませんが、当該の建物については十四階二棟建て、とりあえず一棟でありますが、これにはそれに伴って排水の問題があります。排水については一応一つ方向を見出したようでありますが、風害、日照、電波障害、こういういろいろな問題が出てきていて、その藤代町というのは条例をつくって、その条例はかなり厳しい条例であります。その条例は四月一日、きのうから発動される。県の方においてもその町の条例は少し厳し過ぎやしないかと言われるぐらいに厳しい。これは、人間を大事にするという立場からすればやはり企業の方にもがまんしてもらわなければならぬところはがまんをしてもらわなければならないということでありますけれども、いまの手続の出し方からいっても、町の方で拒否されれば県の方へ出す、そして公有地があるにもかかわらず、それを処理しないで届け出を出すというのは余りにもやり方が企業的であり過ぎる。  ですからそういう点については、悪いところは悪いという指導をして、あるいはまた公有地におけるところの不必要なものについていつまでもそこに残しておくということではまずいわけですから、早急に国の方で処理をしていくということにしていきませんと、お互いによくない結果になって争いが前進をするだけになってしまうということになるから、一つ地域にできた問題ではあるけれども、これはやはり大きな、国自体が取り上げなければならない問題だと思いますから、これを処理するようにひとつ要求したいと思いますが、大臣のこれに対するお考えをいただきたい。
  46. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 経緯はただいまそれぞれ局長、官房長が申し上げたとおりでございますが、建設省として措置をすべき問題につきましては誠意を持って対処いたしたいと思います。  なお、現地の問題につきましては、私は、そもそも最初は町が誘致をしたぐらいで進んでおったように聞いておりましたけれどもお話のような現状になっておりますことは非常に残念でございます。いずれにしてもそこに施設をつくるというのですから、地域の皆様と企業としても円満な話し合いをして進めなければ、現実の問題としては非常に困難でございますから、なるべく円満に事態が進みますように、必要がありますれば私ども努力をさせていただきたい、かように考えております。
  47. 竹内猛

    竹内(猛)委員 なお、法定外公共物に対する、これの処理については法案を出していくという努力を進めてもらいたいと思うのです。私も幾つかの問題に突っかかって非常にこれは困っている。その点はどうですか。
  48. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 できるだけ誠意を持って対処いたしたいと思います。
  49. 竹内猛

    竹内(猛)委員 以上で終わります。
  50. 北側義一

  51. 中島武敏

    中島(武)委員 まず最初に、この間、土地公示価格が発表になりまして土地の異常な高騰が明らかになりました。政府はどのように有効な対策をやろうとしているのか、このことについて伺いたいと思うのです。
  52. 山岡一男

    山岡政府委員 先刻も御答弁申し上げましたけれども、最近の土地値上がり原因として考えておりますのが、効用の増というものが相当ある、もう一つは、旺盛な需要に対して供給が不足しているというふうに見ております。四十七、八年当時に起こりましたようないわゆる投機取引による値上がりというものは影をひそめておるというのが私どもの分析でございます。  したがいましてそれに対する今後の対策いかんということになりますと、長期は別といたしまして当面の対策といたしましては、投機につきましては引き続きこれを抑制することを励行する、それから供給促進をする、この二点に尽きると思っております。そのために、たとえば投機の抑制のためには国土利用計画法を的確に運用する、それから短期重課等の投機抑制税制は堅持をする、それから融資の抑制を厳しく行っていく、こういうことで投機には対抗していく。それから供給促進につきましては、先ほど建設大臣からいろいろと御説明ございましたけれども宅地供給促進のための公的なもの、民間に対する財政的な応援その他が必要だと思いますし、それから線引きの見直し、再開発の促進、それから住宅のために転用されるような農地の活用等々がございます。  特に国土庁といたしましては、引き続き地価監視の強化に努めたい、それから再開発の促進それから農地宅地化の促進、それらに重点を置いて進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  53. 中島武敏

    中島(武)委員 先ほども議論があり、私もきょうは相当議論したいと思うのですけれども、きょうはまた非常に持ち時間が厳しいものですから非常に残念なんですけれども、かつてわが党は生活用地確保法案を提出して、地価値上がりを抑え、同時に生活用地を確保できる措置を提案をしたことがあります。私はもっと議論を詰めなければならないと思うのですけれども、本当に残念なんですが、いまここで非常に大事なことは何かと言えば、思い切った地価の凍結それから大企業による土地投機の禁止、同時に地方自治体の先買い権をこれまた思い切って強化をして生活用地が確保できるようにする、さらに土地税制も思い切った改革をやる、こういうことが必要であると思うのです。私、これはちょっと議論したいところなんですが、このことを指摘して次に移ります。  都市計画法建築基準法の一部改正で十六条の関係、「公聴会の開催等」の問題であります。ここの二項に地区計画の作成方法についてのところがありますが、ここで「意見の提出方法その他の政令で定める事項について」という点があります。この政令内容というのは何を予定しておられますか。
  54. 升本達夫

    升本政府委員 十六条二項の政令で予定をいたしております事項は、地区計画の素案の提示方法それから提示すべき事項、意見の提出方法等を定める予定をいたしております。
  55. 中島武敏

    中島(武)委員 その際、かなり細かく政令でいろいろ指定をしていくというお考えでしょうか。
  56. 升本達夫

    升本政府委員 条文にございますように、政令で定めるところにより、市町村が条例で定めるということにいたしております趣意は、基本的には、このような内容事項につきまして具体のやり方については地域状況を知悉しております市町村にゆだねるのが適当であろう、しかしながら、全国ベースで考えますと、余り内容がまちまちになっても趣意を達しがたいということから、政令では、ただいま条例で定めるべき事項について大枠を設定いたしまして、個々具体の事項につきましては、どのような方法をとるかは条例に一任したいという趣旨でございます。
  57. 中島武敏

    中島(武)委員 その際、条例で定めるという場合に、借家人とか間借り人を意見を求める対象として条例で定めることができますか。
  58. 升本達夫

    升本政府委員 法律の条項の規定によりますと、「その案に係る区域内の土地の所有者その他政令で定める利害関係を有する者」こういうことになっておりまして、この場合「政令で定める利害関係を有する者」の範囲として予定をいたしておりますのは、所有者以外の土地の利用権者、それから担保権者等を考えております。したがいまして、御趣旨のように借家人等につきましては、この際の意見を求める対象としては考えておりません。
  59. 中島武敏

    中島(武)委員 そうすると、「政令で定める利害関係を有する者」というのは、いまの御発言によりますと、土地の所有者、それから地上権を有する者、これは当然入ると思うのです。それから賃借権者も入る。それから先取得権者も入る。それから質権を有する者も入る。それから抵当権を有する者も入る。あとそのほかに入るという者がいるかどうか、大体以上を「政令で定める利害関係を有する者」というように理解してもよろしいですか。
  60. 升本達夫

    升本政府委員 いま先生がお挙げになりました権利者以外には、買い戻しの特約が成立しております場合にその特約に基づく権利者、それから差し押さえ権を有する者の差し押さえ権者という範囲を予定をいたしております。
  61. 中島武敏

    中島(武)委員 後でもちょっとお尋ねしますが、十二条の四の関係で、たとえば一号関係の再開発などを予定している地域というようなところで、この「利害関係を有する骨」ということになりますと、いま局長の答弁で明らかなように、いわば間借り人とか借家人はもちろん除外されるわけですけれども、金融機関が大いにその大部分を占めるというのが実際の内容になろうかと思うのですね。そしてそこに住んでいる住民の意見が除外されるということになってくるのじゃないかと私は思うのですね。大体いまの局長答弁でそういうことがわかると思います。  それで今度は十二条の四の方の関係について伺いますが、ここで三項の一号「市街地開発事業その他相当規模の建築物若しくはその敷地の整備」云々とありますが、この「その他相当規模の建築物若しくはその敷地の整備」という場合は、何を具体的に指しておられるのか伺います。
  62. 升本達夫

    升本政府委員 住宅地区改良事業でございますとか、都市計画法二十九条の許可を受けて行われる一般の開発行為のうち相当大規模な開発行為、それから地区内の関係権利者が法定の事業ではなくて任意に行う広義の再開発事業、そういった事業を予定しております。これらの事業はいずれもその事業によりまして街区単位で建物が形成される、街区が形成されるということが予定されるような事業という趣旨で、「相当規模の」という表現をさせていただいております。
  63. 中島武敏

    中島(武)委員 これはだれがやるかと言えば、民間デベロッパーがやるという場合は当然含まれてくるわけでありますが、その後に「これらと併わせて行う公共施設の整備に関する事業が行われる」この「行われる」というのは現在予定されているという厳格な意味じゃなくて、想定される、考えられる、そういうことを含むものですか。
  64. 升本達夫

    升本政府委員 必ずしも具体の事業が予定されているというところまで考えておるわけではございません。ただ、このような条件のものは、客観的に見ても、そのような地区は既成市街地内であれば再開発を必要とするであろうというような条件を備えた地区であろうかと思いますので、早かれ遅かれ何らかの事業化が予測される地区というふうに理解をいたしております。
  65. 中島武敏

    中島(武)委員 先日の瀬崎議員の質問で、この一号関係のところというのは、いま局長の御答弁にもありましたが、やはり再開発の事業がいわば前提とされるといいますか、そういうことがはっきりしてきたのですけれども、さらに言えば、だれが見てもそこは開発されなければならないというようなことが予想されるところ、こういうことになりますと、言葉をかえて言えば民間デベロッパーが何かやりそうなところという地域、そういうところに網をかぶせるということになって、それで結局再開発の受けざらづくりといいますか、これが地区計画で用意されることになるのじゃないか。その際、さっきの話に連動して言えば、そこに住んでいる住民というよりは、地権者の意見を求めて作成するということになってきますと、このところというのはどうも大企業に投資の場を提供してやるという気がしてならぬわけであります。  もう一つ、十二条の四関係の二号の関係で伺いたい。  いま御存じのように、大都市周辺におきましては、要綱や条例でミニ開発を自治体が規制をするということをやっています。ところでこの法律が発効して地区計画を定めていくというふうにやった場合には、地区計画はうんと大きなものを想定しているわけではないわけですから、狭いところを条例で決める。そうなりますと、いま地方自治体がやっている要綱やあるいは条例に基づいてミニ開発規制をするということが地区計画の網をかぶらないところ、ここは一体どうなるのだろうか。要綱の効力というものは端的に言うと薄くなる、あるいはなくなるということになりはしないかと思うのです。そういう点では、いま地方自治体がやっている要綱が生かされる法の運用の仕方というものについてどんなお考えを持っていらっしゃるか、これを聞きたいのです。
  66. 升本達夫

    升本政府委員 宅地開発指導要綱は、主としてスプロール等のいわゆる開発行為、それから建築行為の規制、抑制ということを目途といたしまして、その行為を律するための基準として定められ、運用されておるわけでございます。他方、ただいま御提案申し上げております地区計画は、先ほど来申し上げておりますように、比較的小さな地区単位でその地区土地利用を総合的に定め、その実現を図るという趣旨を図面に落としたいわゆる即地的なプランでございます。したがいまして、両者は発想も若干違いますし、制度の成り立ちも違っております。したがいまして、地区計画制度ができたから直ちに指導要綱がそれにのみ込まれるとかそれにとってかわられるということを予定しておるわけではございません。  指導要綱については、市街化の進行状況に対応して自治体が必要を感じて指導基準をつくっておるということでございますので、直接地区計画制度がしかれ、それが各具体の地域におろされたからといって指導要綱による規制が変化を受けるということを想定はいたしておりません。ただ地区計画の中でいろいろな規制ができることになっておりまして、その中にたとえば敷地規制等が導入されることによりまして、結果として地区計画の効果として、指導要綱の措定しております効果の一部が地区計画で実現されることになることはあり得ると思いますし、これは制度が異なっても効果としては似たような効果が期待されるような場合もあるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  67. 中島武敏

    中島(武)委員 ただ、そのときに片一方は条例でかっちりと地区計画が決められ、そして建物もどういう建物でなければならないとか、敷地はどうでなければならないとかということが決められていく。それで、これはこの法に基づく条例によって規制をすることができる。片一方は要綱だという問題があるわけですね。だからそうしたときに、そこに住んでいる住民、また何かをしようとする住民にとっては、自分のところはこれは要綱だ、大したことはないということでミニ開発をどんどん進めるということになりはしないか。だから、そういうところをこの法を施行するという場合に十分考える必要があると思うのですが、いまの答弁じゃ、ちょっと余り考えているというふうには聞こえないですね。
  68. 升本達夫

    升本政府委員 先ほど来おただしの第十二条の四の三項で地区計画の成り立つべき区域を掲げさせていただいておりますが、その二号で「現に市街化しつつあり、又は市街化することが確実と見込まれる土地の区域で、公共施設の整備状況土地利用の動向等からみて不良な街区の環境が形成されるおそれがあるもの」この区域については地区計画を予定する、こういうたてまえでございますので、この地区計画制度運用対象となる地域は、当然、先生が御指摘になっております無秩序なバラ建ちスプロールが行われることが予想され、それをまた食いとめる必要がある区域を想定しておるわけでございますので、地区計画の運用でいま御指摘のような状況規制されるということは当然期待されておるところで、われわれとしても期待をいたしておるところでございます。
  69. 中島武敏

    中島(武)委員 その際、現実的な問題ですけれども地区計画を連続してずっとつくっていくということをやればいま局長が言うような効果は果たせられると思うのです。しかし実際問題として、それじゃそういうことが現実にできるのかということが問題になってくると私は思うのですね。そうなってくると、それは意見を求めること自身だって大変な大騒ぎになるわけです。だから実際問題としては非常に困難じゃないのか。一見二号の関係というのはスプロール化されている地域においてミニ開発を抑えるという効果があると見えるのですけれども現実問題としてはそこにも非常に大きなむずかしさがあるのじゃないかということを感じるのです。     〔委員長退席、渡辺(武)委員長代理着席〕 だから、先ほどからお尋ねしておるのはそういう趣旨なんですよ。  それから、東京の中にはいろいろなところがありまして、たとえば世田谷区みたいなところがある。世田谷区なんかは喜多見とか岡本、宇奈根、こういう地域がありますけれども、広大な地域です。広大な地域で結局いま何をやっているかというと、小田急や東急関係の不動産を主力とする民間デベロッパーがどんどん土地の買い占めをやってここをミニ開発しよう、こういうことをやっているわけだ。ところが、意見を聞く相手はだれかということになってくると、ミニ開発をやろうとしている不動産会社の意見を聞くんだ、こうなってくるので、まことにこの法はいいことを言っておるなというふうにちょっと見えるんだけれども、実際問題としては非常な効力は発揮できないような点があるんじゃないかということを感じるわけであります。答弁をどうぞ。
  70. 升本達夫

    升本政府委員 地区計画も都市計画の内容の一部をなすものでございまして、その根本的な目的は市街化区域、市街地内あるいはその隣接地についての土地利用に関する調整を図ろうという趣旨でございますので、当然にこの制度上は、土地利用に関する何らかの権利を持つ者がいわば計画策定に当たっての意見を求めるべき対象というふうに整理をさせていただいておるわけでございますが、おただしの借家人等につきましては重要な関係権利者であることは間違いのないところでありまして、関係権利者としてこの計画決定の手続過程におきまして、たとえば縦覧された案に対して意見書を出していただくとかあるいは公聴会、説明会に臨んで御発言をいただくというような手だてでその権利行使をしていただくことは十分予定をいたしております。その御意見は実際に案を策定するに当たって十分反映させていただくというふうに考えております。
  71. 中島武敏

    中島(武)委員 次に、建築基準法の六十八条の二のことについて伺います。  「市町村の条例に基づく制限」この点なんですが、この際に、たとえば先ほどの一号関連のような地域において建築物の高さの最低限度を高く決める、それから、容積率の限度も高く決めるということがやられる場合には、この法律に基づいて追い出されるというわけではありませんけれども、しかし、実際は自分の持っている土地に家を建てるとするならば、住居の用に供さないような、小さい土地だったらこんな高い鉛筆のようなビルをつくらなければならないというような事態が生まれてくるんじゃないかと思うのですけれども、どうですか。
  72. 関口洋

    ○関口政府委員 条例で決めます事項は特に重要なものということに相なっておりまして、私どもが予定しておりますことは、その制限の程度でございますけれども、従来の建築基準法による制限と同様に、土地を建築物の敷地として利用すること自体を禁止するというものではなくて、建築物の建て方について合理的で必要な限度において定める、こういう原則に立っております。     〔渡辺(武)委員長代理退席、委員長着席〕 それからまた、敷地規模の規制の問題でございますけれども、これは六十八条の二の第三項におきまして、土地の建築物の敷地としての利用を禁止することとはならないように条例に適用除外に関する規定を設けるということにいたしております。したがいまして、いま御指摘のような事態は私どもは想定をいたしていない、こういうことでございます。
  73. 中島武敏

    中島(武)委員 局長は想定してなくても、そういう場合があり得る、実際に出てくるのですね。  それから次に、六十八条の四の予定道路の問題でもう一つ伺いたいのですが、ここの一号でいっている「当該指定について、当該予定道路の敷地となる土地の所有者その他の政令で定める利害関係を有する者の同意を得たとき。」という場合にも、もちろん同意を得る対象著には借家人とかあるいは間借り人は含んでいないと思いますが、そうでございますね。
  74. 関口洋

    ○関口政府委員 この法律のいわゆる「利害関係を有する者」というものの範囲につきましては、先ほど都市局長が御答弁申し上げたとおりでございまして、借家人は予定されておりません。そこで、本件の場合でございますけれども一般的に申しまして、予定道路指定というのは、まず建築物等が余り行われていない新市街地でございます。したがいまして、借家人の方が利害関係人として登板する機会はまず事実上少なかろうと思います。また、予定道路地区計画を前提として定めるわけでございまして、その地区計画の策定に当たりましては、これも先ほど都市局長が御説明いたしましたように、公聴会等の措置が用意されているわけでございまして、そういう場合においては、御発言が可能である、かように担保をいたしておるというのが実情でございます。
  75. 中島武敏

    中島(武)委員 いまのところの二号、三号、ここの場合でも、もちろん土地に関して利害関係を有する者の同意を得たときは、文句なしに道路をつくることができるということになるわけですね。  ちょっと時間がなくなってしまったものですから、ここで質問をやめますけれども、この法律改正、これは良好な居住環境の確保ということを名目としてはいるのですけれども、実際には、しさいに調べると、どうも地権者だけが問題になっていて、そこの住民が本当に主人公としてどういう町をつくっていくのかということの大きな決定権を持ち得ないという仕組みになっているのですね。結局こうなってくると、町づくりがだれのために進められるのかということについても結論が出てくるわけであります。いわば端的に言うと、かなりデベロッパーの利益を擁護する、そういう法律になっているのじゃないかということを指摘をして質問を終わります。
  76. 北側義一

    北側委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
  77. 北側義一

    北側委員長 次に、明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法案を議題といたします。  本案審査のため、去る三月十一日、十二日の二日間、奈良県に委員を派遣いたしました。  この際、便宜私から御報告いたします。  派遣委員を代表して、奈良県明日香村調査の御報告を申し上げます。  本委員派遣は、明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法案の審査に資するため、三月十一日より二日間の日程で、明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等の実情を聴取するとともに、関係の現地視察を行ってきたのであります。  派遣委員には、団長であります私のほか、大坪健一郎君、竹内猛君、瀬崎博義君、松本忠助君、和田一仁君が参加されました。  まず、十一日には、奈良県及び明日香村より本法案の対応並びに明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備状況について説明を聴取いたしましたが、特に、明日香村の貴重な文化遺産と万葉の息吹を良好な状態でいまに伝える歴史的風土を国民的資産として維持し、後世に伝えることは国家的にきわめて重要なことであると考え、地元住民とともに努力を重ねてきたところであり、本法案については、奈良県明日香村及び村民が挙げて賛意を表するとともに、その成立を鶴首している、今国会における法案の早期成立を要望するというものであります。  説明を聴取した後、派遣委員及び説明者の間において、奈良県議会における本法案に関係する質疑の内容、明日香村歴史的風土保存計画及び明日香村整備計画の内容の見通し、農業における未来像、地方債等についての配慮、明日香村整備基金の運用、保存のための土地利用等の規制の見通し等について熱心な質疑と答弁が交わされたのであります。  翌十二日には、明日香村及び住民の代表から意見を聴取しましたが、その内容については、明日香村における歴史的風土の保存の必要性については十分認識されているが、保存のための規制に対する意見、明日香村整備計画に基づく事業を住民のための事業としてほしい、明日香村整備基金については、住民の生活安定のための運用及び物価上昇に伴う目減りが心配である、農業が主な産業である同村の未来像を明確に示してほしい、観光公害を防止するための対策を講じてほしい等の意見が主なものでありました。  続いて同日午後には、国立飛鳥歴史資料館、伝承板蓋宮跡、石舞台古墳、甘樫丘、高松塚古墳等を視察しました。  以上が明日香村調査の概要であります。  最後に、今回の調査に当たり、関係方面から本委員派遣に対して協力を賜りましたことを深く感謝し、御報告といたす次第であります。     —————————————
  78. 北側義一

    北側委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  79. 竹内猛

    竹内(猛)委員 明日香の特別立法に対して質問をしていきたいと思いますが、その前に過ぐる二月二十六日、二十七日と日本社会党の調査団が十人奈良の現地を訪問いたしました。そしてただいま委員長から報告があったように、三月十一、十二日の二日間にわたって本委員会の代表が現地でお世話になったことに対して現地の皆さんに厚くお礼を申し上げたいと思います。  そこで、日本社会党としては、日本の文化を守るために基本的な考え方をまず申し上げておきたいと思います。  わが党は、日本人民の歴史が科学的に実証、解明されるために、歴史的、文化的遺構や有形無形の文化財等が保存、保護されることに積極的に賛成をします。それはわれわれの祖先の生活や技術やあるいは戦いなどを知ることが今日のわれわれにとって非常に大事だからであります。後世にこれを伝えることは日本の文化の発展、社会の進歩に重要だと考えるからであります。こういう点からこの文化を残すことについては賛成でありますけれども、現在出されているところのこの法案そのものについてはかなり多くの問題点があると言わなければならないわけでありまして、まず第一に、この法案をこの時点で出した意義についてお伺いします。
  80. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 明日香村におきます歴史的風土の保存と住民の生活との調和を図るための特別立法の措置を講ずべきでないかという問題は、昭和四十五年ごろから提起をされておりました。当時、佐藤内閣であったかと存じますが、佐藤総理みずから現地にお訪ねをいたしたような機会もあったかと思います。政府といたしましては、昭和四十五年に、飛鳥地方における歴史的風土及び文化財の保存等に関する方策につきまして閣議決定を行いまして各種の施策を講じてきたところでありますが、その後、地元から繰り返し明日香村についての特別立法を要望する陳情を受けてまいりました。特に昭和五十三年八月には、奈良県知事及び明日香村長から、歴史的風土の保存と住民生活が両立し得るような方策を立てるとともに、明日香村における歴史的風土の保存が国家的な意義を有するものであることを明らかにするための特別立法の措置を講ずるよう、内閣総大臣あての要望書が提出されておるわけでございます。各党におかれましてもこの問題大変御関心を深く寄せられておったところでありますし、また与党にも飛鳥古京を守る議員連盟等が設置をされまして、熱心にこの問題の解決に政党の立場でそれぞれ御努力をいただいてきたわけであります。  こうした経過を踏まえまして、昨年、歴史的風土審議会にこのことを諮問いたしたところ、明日香村における歴史的風土の保存が国家的見地からきわめて重要な課題であり、住民の理解と協力のもとに、その保存を図るための立法措置を講ずるべきであるという答申をちょうだいをいたしたわけでございます。地元からの繰り返し行われました要望にこたえ、また、明日香村における歴史的風土を国民的な文化的資産として末永く保存するために本法律案を提出をいたしたような次第でございます。
  81. 竹内猛

    竹内(猛)委員 地元からの要求として出ていたものの主なものはどういうものですか。
  82. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 主なものといいますと、古都保存法が現在施行されまして、それによって村の一部地区がその適用を受けておるわけでございますが、しかし、一方ではそのことによって住民の皆さんに大変御苦労していただいておるわけでございます。したがいまして、地元住民の生活の安定を図るために、現在の法律によっていろいろ規制をされておることを何とか甘受するためには、それなりの国としての諸般の施策を講じていただきたいということで、もろもろの御陳情を実はちょうだいしておったわけでございます。
  83. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その内容の中に、当初八十億あるいは五十億というものがあったと思われますけれども、それは事実そういうのがあったわけでしょうか。
  84. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 この基金を設けることによって得ますところの利益におきまして、年間二ないし三億程度の果実が得られないかというような数字はいただいておりますが、その原資になる総額につきましていまお示しの七十とか八十億とかという数字につきましては、直接承っておりません。
  85. 竹内猛

    竹内(猛)委員 現地では国の責任でこういう文化を守るとするならば、現地の生活に対しては十分にそれが償えるようなものにしてもらいたいという声があり、県議会でも問題になっていたように、八十億の原資によってという要求もあったし、なおそれよりも低いところでもということもあったけれども、何をどうするかという問題が具体的になければ金額の問題だけでは話にならない。これは後でまた御質問しますが、経過を追って質問していきますけれども、第一条の「国を愛する心の涵養」ということと飛鳥の文化を守ることとはどういうつながりがありますか。
  86. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 飛鳥の地を訪ねます方々には、その歴史的風土の中におきまして、この地に国づくりの基礎を築き、当時の国際社会に誇り高く仲聞入りをしていった古代人の姿を思い浮かべ、また外来の文化を吸収、消化してみずからの文化を形成していった過程をたどり、あるいは万葉集にうたわれた古代人のさまざまな感情をわがものとして感じとっておるだろうと思います。このようにしていわばわが国の歴史の始まりというべき時代をしのぶことによりまして人々の歴史に対する認識を深めることとなり、また、そのことが、人々が自分たちが継承している有形無形の資産、伝統、文化等が一朝一夕に形成されたものではなく、長い積み重ねの結果であることを知ることであり、それらのものを大切に思う心につながるものであると考えるわけであります。  したがいまして、明日香村の歴史的風土を保存することによりまして、国民のわが国の歴史に対する認識を深めることは、国民として、自分を取り巻くすべての存在が長い歴史の所産であることを自党させ、自分の国についてより深く知らしめることであり、自然と国を思う心を養うことにつながる、こう考えるわけでございまして、いわばこの明日香村を中心にした飛鳥の地区というものが当時わが国の律令国家発祥の地であり、また万葉のふるさとという意味であの地区が日本人全体のふるさとである、こういう考え方をいたすわけでありまして、日本人であれば、そのふるさとを思う心、これが国を愛する心につながる、こう考えておるわけでございまして、念のため申し上げますが、そのことの涵養を図ることが目的であるわけでありませんので、私どもはそのことを常に念頭に浮かべながらこの法律を執行いたしていくという構えを示したものでございます。
  87. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、問題は、いまの文化を守るということと国を愛することとのつながりが必ずしも一貫をしていない、かなりこじつけているんじゃないかという感じがしてしようがない。最近、元号の法制化の問題や、建国記念日や、あるいは靖国神社表敬法案の推進等に見られるように、非常に天皇制というものが政治的に利用されるようになってきた。それで明日香の立法閣議決定を目前に、昨年の十二月に天皇、皇后が奈良に行って、明日香村を訪問して、相当なキャンペーンをやったということが報道されておりますけれども、これは事実ですか。
  88. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 天皇、皇后両陛下には、昨年の秋に奈良県をお訪ねなされまして、天皇陛下だけがたしか明日香村を訪れたというふうに承知をいたしております。
  89. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この法案の本当のねらいは、古い文化を守りながら、同時に千何百年の長い間文化を守りながら生活を続けてきた住民の生活を守り、より高めるというところに趣旨があるのでしょう。そうじゃないですか。
  90. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 これは目的の第一条にございますように「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法の特例」であるという意味で、歴史的風土の保存というところに一つの眼目がありますし、同時に「及び国等において講ずべき」地元に対する「特別の措置を定める」ということを目的にいたしておりますので、この二つがこの法律目的でございます。
  91. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ですから、古都保存法によれば国土、土、郷土、そういうものを愛するということになっているでしょう。それから歴風審の答申もそうじゃないですか。それがいきなり、国を愛する心を涵養するというようなそういうところに飛躍をしながら一定の行為があるとするならば、それはやはり危険な方向に進めていくものであると言わざるを得ないし、やがてこのものと関連をして予算の問題等についていろいろ質問をしますけれども、どういうような文化をどのようにして守るのか、そしてそれを決める手続はどうなるのか、その点はどうですか。
  92. 清水汪

    ○清水政府委員 お答え申し上げます。  どのような文化かという第一点でございますが、これはこの法律自体の目的の表現の中にも出ておりますけれども、現在、具体的な地域としては明日香村ということを対象に考えるわけでございますが、そこにおいて色濃く良好な状態で保存されているところの歴史的風土ということでございまして、これは全体のたとえば景観的なものもございますけれども、単にそれだけではもちろんございません。地下の埋設文化財に対しても保護の目を及ぼそう、こういうような内容を持っておりまして、いわばそのような遺跡等を初めとした文化的資産、そういうものが周囲の自然的環境等と一体をなして一つの貴重な風土を形成している、そういう意味合いの歴史的風土を保存しようということでございます。  その手法でございますが、ベースといたしましては、すでにあります古都保存法というものをベースにいたしたい。しかしながら、いま申しましたような明日香村における歴史的風土、村全体にわたって保存を考えていかなければならない、そういう特殊な状況にある風土というものにかんがみまして、その保存計画の策定であるとか、そういうようなことにつきましての手法といたしましては、現在の古都法の中の手続よりももう少し特殊性に即したやり方が適当であろうという考え方に立ちまして、その点において古都保存法のその保存手続についての特例をまず今度の法律で定めさせていただいているということでございます。  具体的にはそれではどういうような基準でもってそういう保存措置を講じていくかということは、この法律の中にございますように、第一種地区及び第二種地区というような分け方でもって村全域の風土を把握するということでございますし、その一種地区はどういう基準で定め、運用するか、また二種地区はどういう基準で定め、運用するかということはこれは政令等にゆだねるという体制をとらしていただいておる、こういうことでございます。
  93. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこに問題があるのですね。前々から政令についてはあらかじめ出してもらいたいということを要求してきた。その政令が出ていません。これは大事なことですよ。今度は明日香村全体を規制をするわけでしょう、一種、二種と。その場合に、住民の考え方、一種というものはどういうような形でそれに反映するかということがわれわれは知りたいわけです。いままでにも規制は確かにあったけれども、今度は新しく法律によって規制をされるわけですから、そのときに住民がどういうふうにそれに参加をするのか、自分たちの意思はどういうふうに参加をさせてもらえるのかということが非常に大事なことだ。この点については政令で決めるというが、その政令はどういう形で、どういう内容を盛り込むか、それをちょっと出してもらいたい。
  94. 升本達夫

    升本政府委員 おただしの具体的な規制の内容でございますけれども、第一種の歴史的風土保存地区につきましては、現在行政指導をもってかなりな面御協力をいただいている面にわたりますものを含めまして、現在古都保存法の特別保存地区で実施されているものとほぼ同水準の規制を定めることを予定をいたしております。  それから第二種の歴史的風土保存地区につきましては、住民の生産活動に対する配慮から、現在倉主規制を求めておりますビニールハウスにつきましても、一定の構造規模以上のものは除きまして、原則として認めるという方向で検討をさせていただきたい。風致地区条例によります現行実施されておる規制とほぼ同水準の規制が第二種についてはかかることになろうというふうに考えているわけでございます。  なお、建築物の意匠、形態等につきましては、この法律立法趣旨並びに明日香における現状、風土等にかんがみまして、一種、二種を問わず、いずれの地区におきましても屋根を勾配屋根にすることあるいはまた黒色の日本がわらを使うこと、白壁等の伝統的な外観を保つこと、というていの規制をさせていただくということを考えておる次第でございます。  以上総括いたしまして、第二種の歴史的風土保存地区につきましても新たに許可制をとると言い条、現行実際に行われております規制に比較しまして格段厳しくなるというようなことは、御懸念がないような規制内容になろうというふうに考えております。
  95. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農業の面から考えてみて、もし規制がなかったならばこれだけのものは収穫があるということは、これは農業の問題はわかりますね。奈良県の平均、付近の平均からいってみてわかる、現地の四Hクラブの代表の後継者の声は、三十億の金で明日香を売るのか、こういう話がありました。それを聞いたときに私は胸が詰まった。農協の組合長からも農業委員会の会長からも表現はやや違いますけれども、同じような意味発言がございました。  これは土地改良をやろうとしても深く掘ることができない。したがって大規模の土地改良は不可能だ、こういう話です。土地改良をやればこれだけの米がとれるのに、それを抑えられればそれだけの収穫が減る。ビニールハウスの話がいまありましたが、ビニールハウスも一定のものはよろしいけれども、それ以上のものはだめだということになれば、イチゴにしても野菜にしても生産が落ちることは明らかであります。一定の標準のものから落ちることが明らかになっているという部分については、この規制のためにそうなるわけでありますから、その差損については当然これは読み取ってあるはずだ。しかも昭和四十六年十二月に県の企画部長と前の村長との間に覚書が交わされていて、農業に関する損失等あるいは住民の損失あるいは農業の取り扱い等についての特別な考慮がされるようになっているわけですが、この点について農林省の関係はどういうふうにこの点を考えているのか、まずそれを聞きたい。
  96. 川村浩一

    ○川村説明員 ただいま御指摘の奈良県の企画部長と明日香村の村長の間の約束ということにつきましては、われわれも間接的には承っておりますが、特にその後、明日香村における農業振興を積極的に進めていくという観点から御承知の農振法に基づきます農振地域指定が行われ、さらに農振の整備計画も策定されまして、この法律に基づく市町村農業振興地域整備計画を基本にして、明日香村に対する農業振興施策についても農林省としても県及び村の基本的なお考えを基礎として進めてまいっているところでございます。  具体的に申し上げますと、農業構造改善事業というものが新しく五十四年度から明日香村に導入されておりますし、また農道整備についても農免農道という形で一部着手されておりまして、今後におきましても明日香村の農業振興につきまして県及び明日香村の基本的なお考えというものを尊重しながら、農林省としてもこの法律の特別助成規定あるいは基金の運用益の活用をも含めまして積極的に支援してまいるつもりでございます。
  97. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それじゃ答弁になってないじゃないですか。その差損の問題など何も出てないじゃないですか。  そういうことで三十億の基金をつくって、それの金利二億一千万ぐらいで何とかしょうということはできないでしょう。損失を受けるのは個々の農家なんですよ。明日香村におけるところの全部の農家じゃない。特に一種規制を受けるところの農家というものは明確でしょう。そしてその中の所有反別によって差損が明確になっている。これは個人には補償をしないということになっているようだけれども、基金の問題については後で触れるにしても、そういう米を出すときには明らかに個人個人対象にして抑えておいて、今度はこの問題で規制をして差損があるときにはそれは素通りしてうまくいくなんて、そんなことはだめだ。その点はどうなんです。
  98. 升本達夫

    升本政府委員 農林当局からの御答弁はまた後ほど補足していただくといたしまして、おただしの前提には、今回の区域規制が行われることによって直ちに農業経営者に不利益を生ずるのではないか、その不利益について補償が必要ではないかという御趣旨があるやに承りますので、その点につきまして若干御説明をさせていただきたいと思います。  御承知のようにかなり厳しい規制が第一種の区域については行われるわけでございまして、一般的な受忍の範囲を超えるというようなことも予定されるわけでございます。たとえば不許可処分を受けるというようなことによって現実に行為が行われなくなるというような規制、具体の損失が生ずるような場合には、これは憲法の規定もございますし、現行の古都保存法によります九条の規定によりまして、通常生ずべき損失を補償する。具体の開発行為、開発計画に対して許可を得られなかったということによって生じたような具体の損失につきましては、それを補償すべきことが法律上定められてございますし、あるいは必要に応じまして第十一条によりまして土地の買い入れができるというような補完的な措置を講じさせていただいておりますけれども、単に、この第一種の区域指定が行われた、その区域に取り込まれたということのゆえをもってその区域内の権利者に不利益が生じ、それが損失補てんを要するような不利益が生じたというふうには考えがたいのではないかという考え方に立って、条文構成制度の組み立てをさせていただいておりますということを、念のためでございますが、御説明させていただきたいと思います。
  99. 川村浩一

    ○川村説明員 ただいま建設省の方からも御答弁がございましたが、第一種地区につきましてはこの法案の第一種地区の性格規定にございますように、現状の変更は厳しく規制されるという形で現状の維持という性格を持つわけでございまして、そういう意味でその地区における積極的な農業の振興を図るという場合に、歴史的風土の保存というものとの調和の中でかなり限定的に考えていかざるを得ないという面がございます。しかし、従来から農業振興地域の取り扱いの上におきましても、第一種地区、いわば従来の特別保存地区は国の助成の対象にはしてございませんでしたが、今後この特別立法が制定されました暁におきましては、第一種地区における農業の基盤条件の整備という観点から、県あるいは村からの御要望もございますので、国の助成問題についても農林省としてはできる限り前向きに検討してまいるつもりでございます。  さらに、第二種地区につきましては、民生安定の上に占める農業の振興の重要性という問題が特にこの法案の考え方あるいは県のお考えにもはっきりしておりますので、そういう意味において第二種地区におきます農業振興につきましては、今後農林省は特別助成の対象として新しく基盤整備の問題を取り上げていただくとともに、基金の運用益の活用、さらには村あるいは県を通じての地元の要望事業について優先的に採択をしていくということを通じまして農業振興を図り、特に農業者の所得の確保にもできる限り努力してまいるつもりでございます。
  100. 竹内猛

    竹内(猛)委員 まだ十分ではないけれども、きょうは時間の都合で先の方へ進ませてもらいますが、そういう答弁ではどうしても納得できない。というのは、個々の個人が損失をすることが明らかなんだ。後でも言うけれども、たとえば土地を売買した場合に、明日香の村の人の土地は反当五万円、ところがその隣の橿原市は二十万円ということになったときに、そこに、明らかに同じ面積の土地価格が違うでしょう。そういうふうに現地では言っていますよ。だからそれは個人が損失をするわけだ。そういう場合に運用益というものをどう使うか。だから第四条の整備計画というものは、中身は、どういうことを整備して何をするかということについて説明してください。
  101. 中嶋計広

    ○中嶋説明員 第四条の整備計画におきましては、法律に各項目並べてございますが、それをさらに細かくといいますか、現実に即しまして具体的に決めてまいるということでございます。決め方につきましては現在県の方で腹案を練っている段階でございまして、法律が施行されますと県の方でその案をまとめまして、この段階ではもちろん私どもにも御相談があると思いますし、また村の方にも相談をいたしまして案をまとめました上、所要の手続を経て定めるということになろうかと思います。  中身といたしましては、村民の生活に直接かかわるような公共施設が主でございます。
  102. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこで明日香整備基金の問題に少し触れていきますが、それはゼロから出発したんだから三十億で満点じゃないかという意見もあります。村長さんや県の方から見れば、それはゼロから出発したんだから大変満足かもしれませんが、いま言うように、議論をしてきますと決して満足な内容じゃないと思うのです。たとえば三十億の金が五年後に集まる。そして七分の金利でやった場合に二億一千万。その二億一千万という中でいま言うような農業の差損あるいは土地を売った場合、その他のいろいろな仕事をした場合に、二億一千万という金でやれることはどういうことがやれるわけですか。その二億一千万という中でどういうことができるのですか。
  103. 清水汪

    ○清水政府委員 ただいまの先生の御指摘の問題につきましては、私どもも十分理解できるところでございます。今回ようやくこの法案を定めていただけることになれば基金が緒につくわけでございますが、この基金の果実の使い方につきましては、大きな柱は法律の第八条の中に三つの号に分けて整理をいたしてございますが、具体的にはこれは村の基金でございます。かつ、村といたしましてはこの法律を成立させていただいた暁には、恐らく可及的速やかにこの基金の設定の手続、それから基金の果実の運用についての一定の必要な事項というようなものを条例その他の適当な形でお定めになるものと承知をいたしておりますが、そのような基礎に立ちまして、年々の具体的な使い方についてはこれは村自体でお決めいただくというたてまえをとっております。しかしながら、私どもとしてはやはり国庫金を支出するわけでございますので、その使い方についてはもちろん重大な関心を持ちます。基本は法律で示されておりますけれども、この法律の趣旨にできるだけ適合するということは言うまでもございませんが、できるだけ効率的な形でお使いいただきたいという希望を持っておりますし、また、その点につきましては県及び村の方からも、よくお互いに相談し、意思を通じ合って、遺憾のないように使っていきたいという御決意も伺っているわけでございます。  具体的なものといたしましては三号の具体化ということでございますので、私の方からどれにどれくらいということを申し上げる立場にはございませんが、大きく言えば、その歴史的風土の保存のための施設ということもございますし、あるいはそれと調和する形での、たとえば、建物とか工作物の築造についてのコスト高の部分をめんどうを見るとか、あるいはさらに、先ほど出ました農業の関係で言えば、公共事業対象として取り上げられなかったような分野、つまり言うなれば、きめ細かな措置につきましてもできるだけこの基金を活用していくというようなことが期待できるのではないかというふうに考えております。
  104. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その答弁も十分ではありませんから、これはまた後に譲っておきます。そういうことは不満足ですね。抽象的で内容が一つもない。二億一千万のお金をどこでどう使うかということについては何も出てない。それは次です。  そこで、時間がありませんから、飛鳥財団というものとこの明日香基金というものとの関係について説明を願いたい。
  105. 清水汪

    ○清水政府委員 今度の特別の法律によりまして設置されます基金は、地方自治法の規定に基づきまして明日香村に設置される基金といいますか、この法律によるというよりは明日香村が地方自治法に基づいて設置する基金でございます。そこへ、第八条の規定に基づきまして、国はその基金の造成のための資金を援助するということでございます。  それでその使い方は、ただいま八条等の関係で議論されておるところでございますが、他方、飛鳥財団でございますが、これは詳しくは担当の管理室長から申し上げるべきことでございますが、関係について申し上げれば、こちらの財団の方は民法三十四条に基づく公益法人でございまして、人格は財団法人ということになっております。     〔委員長退席、伏木委員長代理着席〕 ただ、そのいわゆる基金に当たります部分につきましては、国庫からこれまでのところ毎年一億円ずつ、すでに四億円を助成いたしまして、そうして五十五年度におきましても最後の一億円を助成するということにいたしておりますが、この飛鳥財団の寄付行為におきましては、広く規定しておるように承知をいたしております。  つまり文化財と申しますか、明日香における風土の保存、保全自体のための施設等にも使いますし、あるいはそれを国民的に見てもらうというための必要な施策にも果実を運用いたしますが、それだけではなくて、その地元の村民のために必要となる施策のためにも使うというふうに幅広く規定しているわけでございまして、私どもとしては、こういうふうに二つはっきり違ったところに基金がこれからできようといたしますし、今後それは存続していくわけでございますが、両者の間には今後におきましてもやはり緊密な連携プレーと申しますか、そういうことが行われていくことが望ましい、こういうふうに考えております。
  106. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう時間がなくなっちゃったから、また後で質問いたします。  きょうは時間が最後ですから、私はこれは長官にお尋ねしますが、まず規制を受ける。文化を守るためにさらに規制をする。今度は村全体をやる。にもかかわらず文化を守ってきた住民に対してはその生活を高めるために保障していくのだ、こういう話ですね。そこで、先ほどから質問しているように、それでは住民の意思はどこで参加されるのかと言ったら、それに対して答弁がなかった。そこで憲法の九十五条には住民投票ということがうたわれているわけです。一つの村の団体を規制する、それにはそれを使うのだ、こういうことのようですけれども、これは明日香の住民はすべてがこれによって規制をされる、そして自分の財産が凍結をされる、この時点で。家を建てるにもその手続をするには二カ年もたたなければそれが完了しない、あるいは農地の利用についても制限される、こういうことになりますと、これは明らかに村に住んでいる住民の自主権というものが、基本的権利が拘束されるわけなのです。それに住民投票をしないでもいいという理屈はない、この点について長官、どうお考えか。
  107. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、この法律を作成するに当たりましては地元住民の御意見も十分承らなければならぬ、こういう気持ちで奈良県の知事さんまた明日香村を代表する村長さん初め議長さん等しばしば御意見を拝聴してきたところでございますし、また、歴風審におきましても、それぞれ代表者が参加をいたしまして意見の開陳をなされたと聞いております。したがいまして、私どもとしては地元にもそれぞれのお考えもあろうかと思いますけれども、総体的に村ないし県の意思は明らかになっておると理解をいたしておるわけでございます。この法律によって規制を受けるということは地元住民にとっては大変なことでありますが、今日まであの地区歴史的風土として大切に維持してきていただいた地元の方々の立場を十分考えなければならぬということは当然のことでございます。  そこで、御指摘のありました憲法九十五条との関係でございますが、憲法九十五条は地方公共団体の自治権の侵害を防止することを目的とするものでありまして、地方公共団体の組織、権能及び運営について特別の定めをする場合に適用があるものと解されておることは言うまでもないことであります。本法案におきましては、保存計画の作成、保存地区に関する都市計画の決定について古都保存法の特例を定め、また国の補助等、保存のために国が講ずべき措置を定めているものでありまして、明日香村の組織、権能及び運営に対する制約でない、こういうことでございますので、本法案は憲法第九十五条の特別法に該当しないと考えておるわけでございまして、したがいまして、この条項によりましてあえて奈良県民の投票を求めなくてもよろしい、こう解釈をいたしておるわけでございます。
  108. 竹内猛

    竹内(猛)委員 最後にもう一つ、そういう解釈だとすれば、第一条に「国を愛する心」というものを持ってきた。古都保存法によるものであるならば古都保存法のように郷土を愛するあるいは国土を愛する、こういうことにしたり、あるいは歴風審のような答申に沿ったらいいじゃないか。都合のいいところだけは古都保存法をとってくるし、都合の悪いところは今度はそれを抜いて別なものを持ってきてくっつけてくる、そういうところにこの法案の不十分さがあるということを申し上げて、きょうの質問はひとまず終わります。
  109. 伏木和雄

    ○伏木委員長代理 小野信一君。
  110. 小野信一

    ○小野委員 戦前の文化財行政を見ますと、国家的見地から強い政治的顕彰の性格を持っておりまして、したがって、遺跡や埋蔵文化というものはほとんど学問的、国民文化的見地から保存されるということはありませんでした。したがって、埋蔵文化財は史跡に付属する構成要素として取り扱われておったにすぎません。  戦後、文化財保護法が生まれまして、この制定の意義は文化財を保護するという点にあるだけではなくて、文化財保護の理念に決定的な転換を与えたことだと私は思います。その文を見ますと、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」こう規定してあります。初めて世界的視野の中で自国文化の個性、特質を自覚する立場をとったと言えます。したがって、遺跡と埋蔵文化財は、初めて法律の中で埋蔵文化財、遺跡の規定が加えられたわけです。その後四十一年に古都法が定められ、今回明日香法が制定になりました。  私はこういう歴史的な経過の中で、今回の明日香法の制定は大きな意義があるものだと考えます。改めてこの法律の策定の契機、背景、その意義を歴史的に評価しながら、大臣のお考えをお尋ねいたします。
  111. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたが、私どもも今回のこの法律を制定するに当たりましては、文化財保護という立場からも十分検討してきたつもりでございます。  そこでこの経緯は、先ほども御答弁申し上げましたが、おおよそこの明日香村の歴史的風土保存の問題につきましては昭和四十五年ごろにこの問題が提起をされまして、閣議でもこの保存につきまして決定をいたしたわけでございます。その後政府といたしましても古都保存法にのっとりまして種々施策を講じてきたところでございますし、また一方民間におきましても飛鳥保存財団というものもでき上がりまして、地元にいろいろの施設をつくる等のことを行って協力されてきたわけでございます。また本院でも高松塚が発見されました折には記念切手の発行の法律等制定いたしまして、資金的にも御協力をするというような経緯があったわけであります。その後昭和五十三年になりまして、いろいろの問題点ももちろん起こってまいりますし、歴史の見直しといいますか、また飛鳥地区に対する国民の関心が大変に深くなりまして、そのために百万人を超えるような人が現地を訪れるようなことになりまして、いろいろな問題を惹起してきたというようなこともありまして、奈良県あるいは地元としてももう一度この地区についてしっかりとした政府の施策を考えてほしい、こういう要望がありまして、この問題がさらに政治の問題ともなってきたわけでございます。  そこで政府といたしましても、五十四年に歴風審を開催させていただきまして、この明日香村における歴史的風土の保存と地域住民の生活との調和を図るための方策につきまして諮問をいたしまして、国家的見地から明日香村における保存という問題について考えるべきだという結論に達したわけであります。  特に、先ほど来お話がありましたように、地元住民の皆さんがその地区を守るためにいろいろな制約の中で大変御苦心をしていただいてきた、こういうこと、さらにこの地区を将来とも守り抜かなければならないという大変ありがたいお気持ちを持っていただいておることに関しまして、一方ではいろいろな規制がございますので、それに相対するに政府としていかなる施策が講ぜられるべきかということを検討いたしました結果、本案の制定をお願いするに至ったことでございます。わが国の文化の向上、発展にこのことは大きく寄与する、また意義の深いことであるという信念に燃えまして、今回御審議をちょうだいいたしておる次第でございます。
  112. 小野信一

    ○小野委員 この法案を策定する経過についてはいま大臣が申し述べられたようなことだと思いますけれども、文化財保護行政の中で明日香法が制定される、特に財産に対する規制、これらの持つ意義というものはかなり大きいものがあると思います。改めてこの次の質問のときにそれらについて質問いたしますので、保留しておきます。  次は、なぜわれわれが莫大な時間と人間と財力を投入して遺跡や埋蔵文化財を発掘し、これを整理し保存しなければならないかについてです。  文化財を研究し、あるいはこれに興味のある人々にとっては学問上でも歴史的にも十分その意義は理解していただけると思いますけれども、この研究者の意義、目的を一方的に強調しても、国民に訴えたとしても、必ずしも共鳴や共感が得られるものではありません。むしろ研究者のエゴイズムとして見られる場合もいままで多々あったことは御存じのとおりです。文化財の保護が国民の共鳴が得られ地域の人々に積極的に支持されるためには、国民の共有財産として具体的な科学的な意味づけが行われなければならないと考えます。さらにそれは明日香村の中に位置づけられた今日的な課題と結びつかなければならないと思います。改めて飛鳥地方の遺跡はその周囲の環境とともに保存しなければならない理由は国民の今日的課題とどう結びつくのか、担当者の御意見をお聞きいたします。
  113. 山中昌裕

    ○山中説明員 文化財がわが国の歴史、文化の正しい理解に欠くことができないものであって、また将来の文化向上の基礎をなすという面でこれを後世に正しく伝えていくことが大事であるということはもう先生最初に御指摘のとおりでございます。その場合に、具体的にどのような形で遺跡なりあるいは文化財を保存するかという方法で二つの方法がございます。その一つは現状のまま保存しておく、一つは将来日本歴史の研究を行います上でわからないということがないように、調査した上で正確な記録をとって保存しておく、こういう大きく分けて二つの方法があろうかと思っております。  このうち現状で保存しておくという場合をどのように考えるかと申しますと、第一には、もちろんわが国の歴史あるいは考古、こういったものの流れを知る上で研究上きわめて重要で、それはそのまま残しておかなければいけないということでございますが、これだけで、いわば学者の興味だけでこれを残しているわけではございませんで、そういう大事なものについては、いわば由緒ある地域社会づくりと申しますか、諸外国におきましてもいろいろ古い文化財がその町の中に伝えられて、それが住民の一人一人の豊かな生活をつくり上げるという面が多々ございます。日本の場合には残念ながら木や紙でできている文化財がかつて多かったものでございますから、焼失して遺跡にしか残ってない場合がございます。しかし、たとえば史跡公園とか、あるいは城跡の城址公園とか、こういう形でゆかりの深いそういう歴史的な環境をつくっていきますことは、学者だけでなしに市民生活の今後の充実を図る上でも大事なことであるというふうに理解いたしておるのでございます。  そのように考えますときに、いかなるものを現状で残し、いかなるものは学問研究の材料として残すかということを、私ども一つ一つにつきまして斯界の権威者を集めました文化財保護審議会の御審議に願いまして定めているわけでございます。  なお、そういうものを指定いたしますと、御指摘のように同時に行われます公共事業との調整とか、あるいはいま先生御指摘のありました私権との調整というような問題がございます。できるだけその両者が成り立つようにということで、たとえば公共事業等については事前に調整していく、あるいは私権等について、これはどうしても後世に残していかなければならぬ場合には地権者の御納得を得てこれを公有化して史跡として整備していく、それを買い上げてまいるということで私権の調整を図るというようなことで進めているわけでございます。  今回、こういう地下にあります遺跡、これは明日香村の場合には村内にいろいろ点在してございます。遺跡だけ、それを保護いたしましても、点在している遺跡でございますから、それを将来整備いたしました際には、その地区の自然的文化的な景観と密接に関連してまいります。都会地の市街化された中でぽこっと遺跡がございますより、いま残っております自然的な条件がある中でこういうものが保存されていきますならば、文化財の保護の上でもきわめて有効であるということで、今回の法案につきまして、地上のそういう風土にまで古都保存法の特別法がつくられて保護されますことは、私どもが行っております文化財の保護の面でも非常にありがたいし、また有効にこれが進められるものと理解している次第でございます。
  114. 小野信一

    ○小野委員 飛鳥文化の埋蔵文化財を保存することが明日香の人々あるいは日本の国民に対して今日的課題とどう結びつくかについて私は十分答弁をいただいたとは思いません。しかし質問の都合上どんどん前に進みます。  要するに、いまの答弁を聞きますと、文化財の保護は国民的任務であるということだろうと思います。その任務は具体的にはだれが行うかといいますと、国、政府あるいは国会で責任を持って処理しなければならないものだ、こう考えます。文化財の保護が一部の人々の犠牲や一部の地域の人々の犠牲の上に成り立ってはならないはずです。要するに村民の財産の効用が関係のない他の公的理由によって制限されるわけですから、当然具体的な責任を持たなければならない国、政府がこれを補償するのが当然だろうと思います。この明日香法案を見ますと、明日香村に埋蔵されて保存されている文化財を保護する、同時に国民的遺産として保存するために大きな犠牲が明日香村の村民の皆さんの肩にかかっております。とすれば、この補償は国が一切めんどうを見なければならないということになります。したがってこの法律の趣旨は完全にこのことを実行するという前提に立って策定されておるかどうか、策定者の御意見をお聞きいたします。
  115. 清水汪

    ○清水政府委員 御指摘のとおり文化財は国民の共有の資産でございますし、これは一たん失えば二度と取り返しのつかないかけがえのないものであることは申すまでもございません。したがいまして、これにつきましては国ももちろんなすべき責任がございますけれども地方公共団体あるいはそこの地域住民、やはりお互いに協力してこの仕事をやっていくべきものであろうというふうに考えるわけでございます。  明日香村の場合については、先ほど来御議論のございますように、今日までのところは、一方で古都保存法という手が打たれておりました。この中には土地の買い上げというような配慮も織り込まれておりますけれども、やはり住民のサイドからと申しますか、地元から見ますと、住民がこれだけ協力しているのにもう少し国の方でも積極的に考えてもらっていいのではないか、ぜひそうしてほしい、こういう要望がだんだんと強まってきたというふうに思います。これは全くごもっともなことだと思います。先ほど来の大臣からのお話もございますように、そのときどきに応じて政府といたしましても措置は講じておったわけでございますが、今回十年越しのいわば願望が実った形でこのような特別法をお願いしているわけでございます。  この法律は、この法律の条文で明らかなように、そうした文化財と申しますか明日香村における貴重な歴史的風土を将来に向かってよりよい状態で保存しようといういわば国民的要請の立場、それとそこにおります地元住民の、これは現実生活をしておるわけでございます、その生活なりあるいはその生業との間の調和点をどこに求めるかということで、関係者がいわば知恵を出し合ってこういう形のものが実ったというふうに私どもとしては受けとめておるわけでございまして、そのようなことがこの法律をこの際御提案を申し上げております気持ちと申しますか、と同時にその内容のポイントであるというふうに考えております。
  116. 小野信一

    ○小野委員 要するに文化財というのは国民的遺産である、国民全部が守らなければならないと言いながら、明日香村の村民の皆さんに対する被害、財産を制限されることによって起こる損害、これらは国としては十分補償しておらないということを認めたことだと思います。  改めて聞きますけれども歴史的風土審議会は昨年の七月五日に総理大臣に答申を行っております。その中で、こう書いております。「大阪市域までわずか三十分余りという地理的条件によって潜在的な開発の」可能性「が高いにもかかわらず、周辺の市町村に比較して、村の発展の阻害、経済活動の停滞、地価の著しい格差、村財政の脆弱さによる行政サービスの低下等をもたらし、ひいては住民生活の向上発展を阻害することになっている。」としております。隣接町村あるいは類似町村と比較して具体的にその内容はどのようになっておるのか、改めてお聞きします。
  117. 清水汪

    ○清水政府委員 ただいま御質問の歴史的風土審議会においてそのようなことが議論の対象になっており、また答申の中にそのような記述があることは御指摘のとおりでございます。具体的にどのようなそういういわば格差があるという認識であるかという御質問であろうと思いますが、その点につきましては、この歴史的風土審議会自体が県知事及び村長さんにも入っていただいて審議をしているわけでございまして、その際にはそのようなことについても実情が訴えられたということがあったわけでございますが、強いて申し上げれば、いまの風土を保存するために、近郊地帯でありながらある程度の開発の規制があるというところから、たとえば商業なりあるいはそうした生産活動なりというものの発展が停滞しているというようなことが一方で指摘されているということ、それからまたそのようなことといわば回り回る面があろうかと思いますが、村の財政収入というような面にもそれがはね返ってきて、村で行うべき財政措置、たとえば道路整備とか、そのようなものについての行政サービスというのも多少周りに比べて不利になるという点の指摘だろうと思います。  ですから、今回の法律におきましてはそのようなところをまさに受けとめまして、公共事業に対しましては現在の法体系の中でできる限りの計らいをしたというふうに私どもは考えているわけですが、国の補助率の一定のかさ上げということで、村の財政に対して補助を高めるということをまずやるわけでございます。そのようにやるということは、結局はその分についての村としての肩がすくわけでございますから、その余力によりましてさらに直接村民のために村が行うべき施策の方にその力が回るという効果があろうと思いますし、それからさらに、そういう形でなくて直接基金に対して補助をするということによりまして、その基金の果実の運用を通じまして、さらに、たとえば村の方からめんどうは見てもらえないけれども、住民の立場からすればめんどうを見てほしい、そういう分野についてこの果実の運用によってこれを埋め合わせていくというようなことができるわけでございまして、そのような形でわれわれとしてはできるだけの配慮と申しますか、努力をこの法案の中に盛り込んだというふうに考えておるわけでございます。
  118. 小野信一

    ○小野委員 要するに、答申の隣接市町村との格差は具体的な数字としては確認しておらないけれども法律策定者はそのことは知っておる、こういう理解の上に立って質問いたします。  要するにそういう格差を、明日書法の制定によって基金をつくり、その果実で是正をしていくということにならなければならないだろうと思います。そうなりますと、政府二十四億、奈良県六億円、合計三十億円の基金の利息でその格差を何年計画で解消しようとするのか。したがって明日香村整備計画の中で当然三十億の算定の基礎が行われなければならない、こう考えるのですが、その明日香村整備計画の概要について、何年計画で格差を解消しようとするのか、概略を説明願います。
  119. 中嶋計広

    ○中嶋説明員 この整備計画でございますが、整備計画は、言うなれば明日香村におきます村民の生活に日常必要な施設あるいはその事業等につきまして今後どういうふうに持っていくかということを定めるわけでございます。これは明日香の村民が全村にわたりまして歴史的風土を保存するためにいろいろ規制がかかるわけでございますが、その中において将来自分たち生活がどのように営まれるのか、自分たち生活のための環境がどのように整備されていくのかということにつきまして不安を持っているであろうということから、将来安心して生活設計を立て得るためには、自分の村がどのように将来整備されるのかということを明らかにすることが必要であろう、こういうことで整備計画をつくろうとしているわけでございます。  ただ周辺市町村と比べますと、明日香村の置かれますその状況というのが必ずしもほかの周辺市町村と同じ状況ではない。と申し上げますのは、その周辺市町村におきましては宅地開発がどんどん進んでございます。将来市街化するということも予想されるわけでございますが、一方明日香村におきましては歴史的風土を保存するという観点から市街化はそれほど大幅に行われるという見通しはございませんで、農業を主体とする村づくりが行われるであろう。そうなりますと、そこに整備される公共施設あるいはそこにおいて行われます事業につきましてもおのずから差が出てまいるわけでございます。明日香村につきましては、私ども周辺市町村とのバランスということにはもちろん留意をしなければならないとは思いますけれども周辺市町村と必ずしも同じ事業を行わなければいけないという考え方をいたしませんで、明日香村にふさわしい、明日香村らしい村づくりに役立つ整備計画をつくっていただけばいいのではないか、かように考えております。
  120. 小野信一

    ○小野委員 第一の質問からずっと考えて振り返っていただきたいと思うのですけれども、文化財を保護するのは国民的使命である。文化財を保護するために法的に規制しますと、地域の人々あるいは村民に損害を与える。歴史的風土審議会の答申によりますと、明日香村には格差がある。したがって整備計画を立てなければならない。そうしますと、当然格差を解消するための整備計画が行われなければならないはずです。昭和五十五年度から六十四年度までの十年間の整備計画は、当然その格差を解消するために年次計画に実行されなければならないはずなんですけれども、その基礎から逆算いたしまして三十億という基金が設定されなければならないにもかかわらず、三十億がまず設定になって、その果実で整備計画がつくられるというのは本末転倒だと私は考えます。改めて後ほどまたお聞きいたします。  要するに、今回の明日香法が制定になった理由は、埋蔵文化財あるいは遺跡が非常に破壊されておるという社会的背景があったからです。特に戦後の混乱した時代に、文化財が非常に破壊あるいは海外に流出いたしました。その以後ここ十数年来、高度経済成長の時期に文化財が最も危機に瀕したと言われております。また、破壊されたと言われております。現在もまた、進行しておるとも言われております。文化庁ではこの文化財の破壊がどのような要因によって大量に行われたと判断いたしておるのか、お聞きいたします。
  121. 山中昌裕

    ○山中説明員 文化財には幾つかの種類がございます。地上にございます建造物あるいは仏像等の美術工芸品の場合と、いまここで問題になっております地下にございます遺跡、こういうものをまた史跡として保存する。こういう文化財全体がございまして、その原因が何かということはなかなかむずかしいわけでございますが、地上にございますものについて、わが国の文化財そのものの性質から非常に脆弱であるという問題が一つございます。     〔伏木委員長代理退席、委員長着席〕 それからもう一つは、地下にございますものについては、知られていないということが非常に大きな要因でございますので、私どもは、そこにそういう遺跡がある公算が非常に強いんだということをさまざまな文献あるいは地表の調査などから調べまして、埋蔵文化財包蔵地ということで皆様方にお知らせする、そして、そこで工事が行われます場合には慎重にお願いする、また、特に問題のあるところは考古学的な発掘調査をお願いする、こういうような構えをいたしております。  最近でございますと、埋蔵文化財包蔵地の工事が年間に大体七千件ございます。七千件のうち、専門家の立ち会いによって工事を進めて差し支えないというものが、それは大方でございますが、中には重要な遺跡にひっかかって、そこのところで考古学的な詳細な調査を行わなければならないというものも相当ございまして、私ども、そこに力を注いでおるわけでございます。ただ、専門家の行います調査でございますので、その養成体制がまだ整わないうちに、やはり全国的な高度成長の波から調査の方が非常に追われているという現状にあることは事実でございます。ただ最近、非常に県の方の体制も整いまして、一ころに比べますと、まだ忙しゅうございますけれども、相当順調にまいるようになってきた、こういうふうに理解いたしております。
  122. 小野信一

    ○小野委員 埋蔵文化財の大量に破壊された要因について、学術審議会が文部大臣に答申しておるはずです。第一が宅地造成、第二が農業構造改善事業、第三が鉄道、道路の建設事業です。したがって、この法案は建設省にかかっておりますけれども、建設省の仕事である宅地造成と鉄道、道路建設事業が埋蔵文化財の破壊に大きな役割りを果たしておるということを忘れないでいただきたいと思います。  そこで、大臣にお尋ねしますけれども、現在の建設省の建設投資予算と地方自治体、民間、国を含めまして文化財保護のために使われる予算を比較しますと、〇・一%になっております。われわれが土地抜きで一千万の家を建てる場合に、〇・一%を文化財を保護するために使うとすればわずかに一万円であります。国の予算から見ましても、私は文化財保護のために建設予算の〇・一%を使うことは非常にむずかしい問題ではないと考えます。したがって、大量に破壊しておるのが建設事業である以上、一%ぐらいの文化財保護費を常時それに見合って予算化するということは、われわれの国民的な文化財を保護する上に大きな意義があることだと考えますけれども大臣として、大蔵省なり建設大臣にそれぐらいの配慮を要望していいと思うのですが、見解をお聞きします。
  123. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 わが国の文化財というものは、それこそ破壊すれば二度と再生のできない貴重な国民的財産でございます。それをいま御指摘のように、宅地開発とか鉄道建設とか農業構造改善事業とかそういった形で破壊されておるという現状はまことに残念至極なことだと、私も同様の気持ちを持ちます。しかし、戦後、敗戦の中から今日まで、ともかく日本人は生きるためにあらゆる努力をするという過程の中で、残念ながら文化財を十分保護し得なかったということも反省されるべきことだと思います。しかし、現在に至って考えますれば、やはり真に文化的国家としてのわが国の存在を高めるためには、先人が築き上げてきたそうした文化財をそれこそ後世に残すためにも、現代の人間はそれだけの責務を負っていると理解をいたしております。  そこで、その数字が〇・一%が少なく、一%はそれに比べれば多いわけですが、どの程度であるべきかということはなかなかむずかしいことでありますし、予算を査定する方の立場から、大変こう査定をされてきたという経緯もあると思います。しかし、申し上げたように、お考えとしては私、全く同様の気持ちでございますので、今後とも文化賜が真に日本の宝として保護できるように、予算的な措置としては十分配慮していただくべく、大蔵省やあるいは直接担当する農林、建設その他のところにも御配慮いただくように、今度この法律案の審議に当たって、私、専門家でありませんが、御指摘をいただいたことについて十分理解をするところでありますので、御相談してみたいと思います。
  124. 小野信一

    ○小野委員 最後にお尋ねしますけれども、埋蔵文化財は他の文化財と異なる点は次の三つだろうと思います。一つは、埋蔵文化財は価値が未定であるということ。第二は、発掘調査という科学的専門技術的手続が必要であるということ。第三は、言葉のとおり埋蔵されておる、こういうことだろうと思います。したがって、埋蔵文化というものは、調査発掘する場合に個人の力では非常にむずかしい。専門的な総体的な調査、保存が必要であるということです。したがって、専門家の組織的な特殊技術を持った長期的な調査が必要であるということになります。  そこで、明日香村の埋蔵されておる文化財の調査について、現在考えておる調査必要年数、そして予算、人員等の実施計画がありましたらお知らせ願いたいと思います。
  125. 山中昌裕

    ○山中説明員 発掘調査の問題につきましては、飛鳥地区につきましては村だけにお任せしないで、国も奈良国立文化財研究所を持っておりますのでこれも当たる、奈良県も県立で橿原考古学研究所を持っておりますのでそれも当たるということで今日まで進めております。特に昭和四十五年の閣議決定以来、飛鳥地区に重点を注いでまいりまして、たとえば奈良国立文化財研究所の学術調査として申しますと、飛鳥浄御原宮跡の推定地というものを調査し、あるいは四十八年以来、最も古い四大官寺の一つであります大官大寺の調査、こういった十四の遺跡について今日まで調査を続けてきております。それから奈良県の県立橿原考古学研究所におきましては、飛鳥板蓋宮と伝えられる貴重な遺跡、ごく最近には島宮の遺跡というものを発掘する。それから村におきましても、大学の応援を得まして、有名な高松塚古墳、最近ではマルコ山古墳とか檜前宮跡の伝承地の調査、こういうものを行ってきておりまして、四十五年の閣議決定以来今日までこの三者で行いました調査には、ことに中心は奈良国立文化財研究所でございますが、約五億円の経費を投じてきております。毎年、国、県、市町村で行う調査は大体七、八千万円ぐらいであろうかと思っております。  なお、このほかに、いわゆる明日香村で住宅を建てるあるいは道路をつくるという工事がございます。こういった工事が年間で申しますと五十件前後ございます。そのうち、五十四年の実績で申しますと十二件発掘調査いたしました。残りは専門職員の立ち会いで工事を進めて差し支えないという軽易なものでございましたので、調査は必要ございませんでしたが、こういった調査も村だけにお任せしないで、国立の研究所も県立の研究所も一緒に力を合わせて行っておるところでございます。  なお、こういった調査は、地下にございまして、一つ一つ掘って固めていって、学界の研究結果によってさらに必要なところを調査していく。すでに住宅が建っておったり、農地で農耕中であったりということでなかなかむずかしい問題もございますが、たとえば農地については、冬季の間お借りして調査を進める、また埋め戻して耕作に支障ないようにする、それで逐次広げていくということでいたしております。  今後、何年でこれが終わるかということはなかなかむずかしゅうございまして、遺跡の一つ一つの性格によって変わってくるものもございます。あと二年ぐらいで済むと思われるのは川原寺、三年ぐらいで調査が終わると思うのは飛鳥稲淵宮殿跡、それから檜前宮跡、大官大寺はあと五年ぐらいかかるであろうということが想定されますが、一番学問的にも問題があり、不明であってむずかしいのは飛鳥浄御原宮殿の推定地、あるいは最近も問題になりました板蓋宮跡、これは何層にもなっておりまして、どの範囲に出ていくか、まだほんの一部が出ただけでございまして相当年数かかるのではないか、このように考えております。
  126. 小野信一

    ○小野委員 私は八つの質問をしてみましたけれども、七つが不満であります。一つだけ、大臣の答弁だけはありがとうございました。  それで最後に、大臣にお願いしておきます。  遺跡、埋蔵文化が国民の共有財産として非常に大きな価値を認められるようになったのですけれども、問題は、これから文化財を調査していく場合に、御陵が文化財の調査に大きな役目を果たさなければならないのですが、それが制限されまして全然手がつけられないというのが実態であります。これを早急に解決することはむずかしいにしても、文化庁の方からこの問題を調査できるように、日本国罠のために努力をしていただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。
  127. 北側義一

    北側委員長 林孝矩君。
  128. 林孝矩

    ○林(孝)委員 歴史的風土の保全、そして文化遺産を守るということと、そこに住む人たち生活の安定、環境の整備ということとのバランス、これは非常に政治的な意味を含んでおると同時に重要な命題だと私は思うわけです。そうした意味で今回の明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法案というものが提出された、そのように理解するわけです。  そこで、今回の明日香特別法の立法作業に当たって政府は住民の意識をどのように調査され、どのような形でその調査が実施されてきたか、お伺いしたいと思います。
  129. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 本法案の立案に当たりましては、奈良県知事及び地元明日香村長から昭和五十三年八月に内閣総大臣あてに提出されました要望書がございます。その要望書に地元の考え方のほとんどが列記されておったと思いますが、その要望にこたえまして政府といたしましては随時地元との意見の交換を図ってきたところでございます。  本法案の基礎となりました答申を昨年七月に歴風審からちょうだいいたしておりますが、この答申をいただく過程におきましても、奈良県知事が本委員として、また明日香村長が専門委員としてそれぞれ構成員となりまして、その審議で地元の意向を十分伝えていただいておるわけでございまして、歴史的風土審議会に設けられました特別部会にも知事、村長または担当職員がオブザーバーとして随時出席をいたし、意見を開陳いたしておるところでございます。私といたしましても、昨年の秋に現地をお訪ねいたしまして、地元住民の代表の皆さんと熱心な意見の交換をさせていただいてまいりましたし、また、林委員もおられますが、地元の国会議員の各位からもそれぞれ、地元の実情につきまして、その現状に触れてのお考えも承らせていただいたつもりでございます。したがいまして、こうした形で地元の意向のくみ上げにつきましては十分配慮いたしてきたというふうに理解をいたしておりますが、今後とも、お説のように、地元の現在生活しておる方々の立場と歴史的な風土を保存するというこの調和のきわめてむずかしい問題を調和させていく。まさに政治そのものの課題でございますので、地元民の意向というものについては慎重の上にも慎重を期して私ども意見を求めてきたつもりでございます。
  130. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この明日香特別法案は古都保存法の特別法として位置づけられておる。先ほどから答弁があったとおりですが、明日香村だけが中でも特別な地域だとして政府が考えているその立法趣旨、またその立法の背景についてお伺いしておきます。
  131. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 実は私もかねてこの問題は一議員として勉強してまいりまして、その過程では、この法律はまさに飛鳥の問題を中心にした単独立法を制定すべきだという考え方をいたしてきたわけでありますが、総理府に入りましてこの法律の制定に当たりまして、法制局の審査等について政府部内の意思の統一をしてまいります過程におきまして、現在でも御承知のように古都保存法の網がかぶさっておるわけでございますので、この古都保存法の改正というわけにもまたいかぬ。したがって、そこから出ました形での特別法、しかも住民対策という問題が古都保存法の中で盛られにくい、こういうこともございますので、この際は古都保存法を根っこに持った法律で、かつその上に飛鳥という特別な地区についての法律という形で、実はこの法文ができ上がったわけでございます。したがいまして、御質問にありましたように、明日香村だけ特別の地域として考える理由ということでございますが、明日香村というものが何といっても飛鳥文化の中心の地帯でありまして、村内の全域に、先ほどのように種々の文化財等、歴史的文化遺産がたくさん存在しておるということでありますし、また当地が律令国家発祥の地ということで、この点については歴史学者の意見等もほぼ統一されておるようでございまして、いわば今日こうして国会で御論議をちょうだいするわけでありますが、その原点にさかのぼりますと、法律、刑法たる律、令たる諸法規、こういうものが飛鳥浄御原律令というものについては何か歴史的にいろいろあるようでありますが、いわばそこに原点を求めているということになりますと、まさに法治国家としてのわが日本の国の発祥の地とも考えられる。また、万葉の歌のまた最初の地区であるというようなことを考え、当地区は明日香村民の村ではあると同時に、また日本国民のふるさとであるというような考え方に立脚をいたしまして、この際は明日香村にかかわるところの法律を制定をいたしましてお願いをしておるわけでございまして、実は飛鳥ということになりますと、現在の明日香村と全く行政区画が同じかといいますと、これはなかなかむずかしいことでありますが、さりとて飛鳥地区というものを新たに設定するということもこれはできるわけでございませんので、その中心的地区としての現在存在する明日香村に実は規制もお願いをしますが、同時に国民全体が負担をして村の発展のためにもお尽くしのできるように、こういう趣旨で実はこの法律をお願いしておるところでございます。
  132. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま大臣の答弁に、第一条の目的の中にある、律令国家体制の形成された時代における政治、文化の中心的な地域、その時代の社会的背景等が述べられたわけでありまして、またこの律令国家形成の事実というもの、それから立法の背景事情、こうした点について御答弁があったわけでありますが、この歴史的な風土というものが今日良好に維持されてきた、こういうことについて、私は、特にこれは多年にわたってのそこに住まいされている人たち努力といいますか、あるいは理解、協力、こういうものがあって初めて今日の風土をとどめておるという結果を見るわけでございまして、これは非常によるところが大きかった、そのように私は認識しておるわけでございます。その点については政府も同じ理解というものを持っておられると思うのですが、いかがでしょうか。
  133. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 全くお説のとおりだと理解をいたしております。古都保存法によって保存地区として規制をされる、それは日本全体の人々のお気持ちを体して実はそういう形に相なっておるわけですが、一方、地元の方々にいたしますれば、その規制によってみずからの生活権を制約されるということでございますので、村民が、みずからの利害得失のみならず、この地区が広く日本全体にとって大きな存在であるということを認識をいただきまして、忍びがたきを忍んで実は今日までその保存のために非常に御苦労いただいたということについては、まことに敬意を新たにいたしますとともに、感謝をいたしておる次第でございまして、なるがゆえに政府としても、おくればせであると言われればやむを得ませんが、しかし、この際、何らかの形で村民の皆さんの過去の御苦労に感謝いたしますとともに、これからも日本の大切な歴史的風土として保存をしていただくために、政府としてなすべき手段は何があるかという形でのことを実は考慮いたしました結果、今日こうした法律の形で御審議をいただくということになった次第でございまして、御指摘は全くそのとおりであるというふうにわれわれも感じておる次第でございます。
  134. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そのことは一条の目的の「住民の理解と協力の下にこれを保存するため、」ということに明記されておるわけでありますが、いま敬意を表したその次に、国として今後その協力にこたえたいということ、これが第一条の目的の中には明示されていない。  そこで、私はこの際大臣にお伺いをしておきたいのですが、こういう先ほど来大臣政府としての真情を吐露された結果として、今度さらに国としての責務を、この歴史的風土の保存、住民の生活環境の整備あるいは生活を守る意味からどのように考えられておるか。国の果たすべき責務というものについてこの際御答弁をいただきたいと思います。
  135. 清水汪

    ○清水政府委員 国が最大限の努力をしなければならないということは御指摘のとおりに考えております。この法律におきましては、そのような観点から、後段におきまして具体的に、国として村の財政あるいは村全体あるいは村民のためになすべき措置を数カ条設けて規定しておるわけでございまして、その具体的な後段の規定を受けまして、第一条の目的におきまして「国等において講ずべき特別の措置を定めることを目的とする。」こういうふうに規定しておるわけでございます。したがいまして、第一条では抽象的に規定をしておりますけれども、その内容は、二、三条置いてすぐ具体的に各条に並んで出てくる、こういうような形をとっておりますので、このような形で十分御理解をいただけるのではないかというふうに考えたわけでございます。
  136. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その次に、この第一条の中に、先ほど来議論がございましたけれども、「歴史的風土の保存が国民の我が国の歴史に対する認識を深め、国を愛する心の涵養に資するものであることに配意し、」とありますね。「国を愛する心」云々ということに対しての異論というものがあるやに承っております。私は、この「国を愛する心」というものは、もちろん健全な人間として国を愛するということがあることは当然のことだと思う一人でございますが、この法のたてまえというもの、法律にはやはりそういうものがございます。先ほど御答弁があった古都保存法がベースになってこの明日香特別法があるということである場合に、この「国を愛する心」という文言と、またいろいろな意見として聞き及んでおるところは、あるいはその国土というのが古都法にある。国土を愛するということがむしろその法のたてまえとしてはいいんではないかというような意見もあるわけですね。あえてこうした文言にこだわるわけでございますけれども、そういう点に関して政府の統一見解というものをこの際伺っておきたいと思うわけでございます。
  137. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 先ほど来申し上げますように、この飛鳥地区がわが国の国民全体のふるさとであるという認識に立っているわけでありまして、律令国家発祥の地である、また当時初めて、倭と言われた日本の国号が日本というふうに対外的に認められたというようなこと、仏教文化の開花とかそういうことを考えますと、この地区が歴史的に日本人のふるさとであるというような感じがありまして、そのことを歴史的に認識を深くすればするほど、やはりそのことはふるさとを思う気持ちであり国を思う気持ちにつながるものだ、こういうことで歴史的認識を深め、国を愛するその涵養に資するということをうたったわけでございますが、この法律上は「であることに配意し、」こういうことでございまして、あくまでもこのことを十分念頭に入れてこの法律を、成立すれば施行しなさい、こういう趣旨をうたっているものであって、全く私は理の当然であるというふうに理解をするわけでございます。  先ほど古都保存法との関係を問われましたが、古都保存法におきまして「国土愛の高揚」云々という言葉も入っておりますが、実はこれはまさに古都保存法におきましてはこのこと自体が最終目的になる、こういうふうに書かれておるわけでございまして、明日香村に対するこの法律につきましては、あくまでもそのことを念頭に置いて、以下申し述べるように歴史的風土の保存と地元対策をやりなさい、こういうふうにうたっているわけでございますので、目的に国を愛するなどということを明言しておるわけでございませんので、この辺の事情を十分ひとつ御理解を置いていただければありがたいと思いますし、またこの法律をつくることは古都法におきまする国土愛の高揚ということにも当然つながりを持つことでありますので、国土愛の高揚を目的とする古都保存法とも全く相背馳するものでない、こういうふうに御理解をぜひお願いいたしたいと存じます。
  138. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、法案附則の八条で、古都保存法を改正し、同法第七条の二を新設することとしているわけでありますが、これはこの法案、いわゆる古都保存法の特例としてつくることですね。それの根拠を与える条文であると私は理解しているわけです。この明日香立法と同じような措置を他の市町村にも講ずる余地を一定の条件のもとで持たせることにもなる、こう私は思います。この条文の趣旨は、明日香村のケースのほかにも明日香立法のような事業を行うことであるかどうか、その点ですね。これは政府の見解を聞いておきたいわけであります。他の市町村でも行う考えかどうか、いかがでしょうか。
  139. 升本達夫

    升本政府委員 御指摘の条文、七条の二におきましては、市町村単位で見まして、その区域の全部が特別保存地区に相当する地区として都市計画に定めて保存する必要があるような市町村については別に法律で定めるところにより云々とこうなっておりまして、御指摘のとおり当然に明日香に限定的に適用されるという条項ではございません。このただいま読み上げました条文の条項に該当するようなケースがございますれば、その市町村についても同様にこの七条の二が適用されるというふうに御理解いただいて結構かと思います。
  140. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、この法案に盛られている明日香村歴史的風土保存計画、明日香村整備基本方針、明日香村整備計画、こうした計画の、あるいは方針の本法案成立後の実際の策定の段取り、日程というものはどういうふうになっているのか、お伺いしておきたいと思います。
  141. 中嶋計広

    ○中嶋説明員 この法律につきましては、先ほど来何度も話が出てございますとおり、地元の要望に基づきまして立案をいたしましたものでございまして、地元といたしましてはこの法案の成立を一日千秋の思いで首を長くして待っておられるということを私ども承っております。したがいまして、この法案が成立いたしまして公布、施行されますと、できるだけ早く私どもとしましては関係政令を制定し、引き続きまして歴史的風土保存計画、整備計画の基本方針、整備基方方針といったものをお示しいたしまして、もちろん所定の手続がございますので若干の時間はかかると思いますけれども、できるだけ早くそれをお示しいたしまして、その上で県に整備計画をおつくりいただきまして、もちろんこれは作成の段階でまた国とも御相談いただいた上でお持ちいただきますので、お持ちいただきますれば、そう時間を経ずして承認をすることができるかと思います。そのようにいたしまして整備計画をお決めいただきたいというふうに思っております。  これには、地元の方で整備計画を早くつくることによりまして公共事業あるいは整備計画に基づき行われます事業が円滑に行われるようにということを期待いたしておりますと同時に、いろいろな制度が動くことによりまして基金の造成というものも早期に着手できる。したがいまして、その分だけ早く事業にかかれますし、また本年度の運用益におきましても、早く地元に金が交付されますとそれだけ地元の使える金が多くなるというようなことがございますので、私どもとしましてはできるだけ早くいろいろな計画を策定するように努力してまいりたいと思っております。
  142. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この法案に基づく諸事業は一日も早くスタートさせなければならない、そのように私は考えておるわけでございます。いま申し上げました保存計画であるとか、あるいは基本方針であるとか、あるいは整備計画というのは、地域に住んでいる住民にとって非常に重大な関心を持っておることでありますから、この点についての長官の見解を伺っておきたいと思うのでございます。
  143. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 これまたおっしゃるとおりでございますので、できる限り早く法律の御通過をお願いいたしまして、それらの計画その他につきまして具体化するように努力いたしていきますし、また同時にそれを策定する過程におきましては、地元の御意思というものを十分取り入れる形でできるものだというふうに思っております。
  144. 林孝矩

    ○林(孝)委員 現在、明日香村の八九・八%が厳しい土地利用規制を受けているわけであります。そしてその歴史的風土保存地区並びに風致地区については、県及び村の行政指導で法令の規定に上乗せした規制が行われているのでありますけれども、新設されるこの法案の附則八条で、古都保存法八条三項の政令はもちろん全村に適用されることになるわけでございます。それは現行の規制状況と比較してどのようなものになるかということが村民の、地元の地域人たちの非常に心配といいますか、不安な点の一つでありまして、この第二種地区における行為に対してはどうか。たとえばこの許可制のもとで県の規制が現行のものより厳しくなるようなものを考えているのかどうか、あるいは法令の運用のあり方、こういうことについて基本的にどのような見解を持っておるのかということについても知りたいということが地元の声として起こっているわけでございます。この点について本委員会を通して明確にしておいていただきたい。見解を伺う次第でございます。
  145. 升本達夫

    升本政府委員 第一種の保存地区につきましては、現行の特別保存法に基づきます特別保存地区で実施されておりますものとほぼ同水準の規制を定めることを予定いたしております。これは対象地区といたしましてもほぼ現行の特別保存地区が第一種特別保存地区にスライドするわけでございまして、規制の内容もほぼ準じて定めさしていただく予定をいたしております。  それから、ただいまおただしの第二種の保存地区につきましては、全村のその他の区域について等しく規制がかかるわけでございますが、当然に住民の方々の生産活動に対する配慮をいたしまして、現在の歴史的風土と著しく不調和なものを除きまして、原則的に建築等の行為は許可をするという方針で整理をさせていただきたいと考えております。現在自主規制をお願いしておりますビニールハウスにつきましても、ただいまの考え方に従いまして歴史的風土と著しく不調和なものを除きまして原則として結構でありますという方向で整理をさせていただきたい。その他、現行、これらの地区適用されております風致地区の条例規制にほぼ準じた内容で規制を考えておるというふうに御理解をいただきたいと思います。  なお、こういう地域柄でございますので、また法律の趣旨にかんがみまして、建築物の意匠、形態等につきましては、一種、二種のいずれの地区におきましても屋根が勾配を持った屋根にするとか、あるいは黒色の日本がわらを使うとか、あるいは白壁等をもって壁を考えていただくとか、あるいは工作物、施設等の擁壁につきましても、構造上支障がない限り石積みにしていただくとかというような特殊の規制はお願いをすることになろうというふうに考えます。  以上、総括いたしまして、第二種の保存地区につきまして許可制をとることはいたしますけれども、実際に、現実に行われております規制に比べまして格段に厳しくなるというふうなことは考えておりません。
  146. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから五条の特定事業、この特定事業では四条の明日香村の整備計画で挙げられているものから河川、住宅、これが落ちているわけでございますが、これはどういう理由でこの河川と住宅がこの五条では落ちておるのでしょうか。
  147. 升本達夫

    升本政府委員 河川につきましては飛鳥川の中小河川改修事業並びに明日香関連の河川の小規模河川改修事業、いずれにしましても国庫補助のもとに奈良県、県が実施をいたしております。したがいまして、明日香村の財政的な負担はございませんので、この特定事業からは除外をいたしております。この河川事業によって特別に村が負担をこうむるということが考えられないということから除外をいたしております。  それからまた住宅に関しましては、これは明日香村の住宅供給の実態から見まして、ここ当分の間公営住宅というようなものの建設の必要性がないと考えられますので、同様に特定事業から除外をいたしております。  いずれも実態的にその必要がないのではないかということの判断から除外をさせていただいております。
  148. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、たとえば公営住宅の必要性がないという判断が、事情変更ということが起こった場合はどのような手続になりますでしょうか。
  149. 升本達夫

    升本政府委員 公営住宅につきましては、実は昭和三十八年までの間に数年にわたりまして八十戸ほど実施をいたしたわけでございますが、それ以降、三十九年以降全くその需要がございませんので建設が行われておりませんという実態にかんがみまして、先ほど申し上げましたような整理をさしていただいたわけでございます。したがいまして、御指摘のように将来もしそのような状況になり公営住宅建設の必要性が生じてまいりましたならば、その時点でまた御審議をお願い申し上げて、要すればこれに加えさしていただくということになろうかと思います。
  150. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、大都市圏の財政特別措置法の特定事業と比較いたしまして、この五条の助成対象となる特定事業に特に農業関係が取り上げられておりますが、この農業関係が取り上げられた理由というものをお伺いしたいと思います。
  151. 川村浩一

    ○川村説明員 ただいま御質問のございました大都市圏の財政特別措置の場合には、首都圏、近畿圏、中部圏といういわば大都市圏における都市的な環境整備ということに主眼が置かれておりまして、その意味におきまして、農林水産省関係の施策につきましてもいわば都市的な施設としての中央卸売市場のみが対象になっております。一方今回の明日香の特別立法におきましては、明日香村の民生安定対策ということに重点を置いて住民の理解と御協力をいただく、そういう観点からしますと、明日香村における産業の一つの基幹が農業でございまして、現状及び将来におきましてもやはり農業振興を図るということが非常に重要でございます。農業振興におきましては御承知のとおり生産基盤というものをしっかり整備した上でこれを効率的に利用して生産性を高め所得を上げていく、これが農業振興の基本的な考え方になりますので、そういう観点から特にこの明日香特別立法におきましては農業公共投資を特定事業の一部として追加した次第でございます。
  152. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの答弁にありました生産性を高める、そして所得を上げていくという民生安定対策、こういう意味での農業ということでございますが、この五条の一項の一号へ、このへというのは「農地並びに農業用施設及び林業用施設で政令で定めるもの」というふうに規定されております。このへとして取り上げる事業はどういうものを考えられておりますか。
  153. 川村浩一

    ○川村説明員 へで予定しておりますものは、農業関係におきましては農村基盤総合整備事業、それから、団体営の土地改良総合整備事業、さらに団体営の農道整備事業、さらに林業関係におきましては林道開設事業と、この四種類の一番基幹的な農林業の基盤整備に関する事業を、地元の御要望に基づいて政令で指定することを考えております。これらの事業を通じまして明日香村における農林業の生産基盤の整備と農村の環境整備というものを促進してまいりたいというように考えております。
  154. 林孝矩

    ○林(孝)委員 明日香村の経営といいますか、農業立村を基本としていると先ほど来答弁もありました。当然そうした意味でも農業の振興というものは明日香村にとっても非常にウエートが大きいわけであります。ところが、他の地域と同じように農業投資をするということが不可能な状況に置かれている。ただいまこの「農地並びに農業用施設及び林業用施設で政令で定めるもの」ということについての説明があったわけでありますが、明日香村にふさわしい農業振興策と農地並びに農業施設整備のあり方、こういうテーマに対してはどのような考え方をお持ちになっておるか、お伺いしたいと思います。
  155. 川村浩一

    ○川村説明員 明日香村におきます今後の農業振興の方向につきましては、農林水産省といたしましても明日香村及び奈良県における今後の振興方策というものが固まるのを待ちましてできる限りの支援をしてまいるつもりでございますが、当面お伺いしておりますのは、村内におきましても三つぐらいの地区に分けまして、地域の特性に応じてきめの細かい農業振興方策をやっていくというように承っております。やはり農業の問題は地域的な特性ということがございますので、そういうきめ細かい農業振興方策というのが一番適しているのではないかというように考えています。  これらの農業振興方策を具体的に支援していく場合のあり方といたしましては、第一には先ほど申し上げましたような農業の公共投資につきましては特別助成の対象事業に取り上げていただく。それから、この特別助成の対象になりがたい非公共関係の農業近代化施設等の事業につきましては、先ほど総務長官からも御答弁ありましたように、基金の運用益というものをできる限り活用して住民の負担も軽減しながら農業振興を図るようにしていく。三番目には、これら公共事業及び非公共事業につきまして明日香村の要望のありました事業については、農林水産省といたしましてはできる限り優先的に採択していくという配慮をするつもりでございます。
  156. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは強い要望の出ている現行の特別保存地区の水田の生産米の全量買い上げ、それから国有林の村への経営委託拡大、こういうことに対してはどのように対処されますか。
  157. 松山光治

    ○松山説明員 米の全量買い上げについての御要望でございますが、現在の米の政府買い入れ、政府が国民の安定的な食糧供給という観点から買い入れて管理する必要のある米につきまして限度を設けて買い入れていく、こういう形をとっておるわけでございますが、これは御案内のように現在のような米の供給過剰のもとで食管運営の適切を期していく、こういうためにはどうしても必要な措置だということで全国の生産者に御理解をいただいてきておることでございます。具体的な取り扱いにつきましては、県内の予約限度数量の配分、御案内のように過去の販売実績なりあるいは転作の目標数量といったものを基礎といたしまして各地域の実情に応じて配分していただく、こういう考え方をとっておるわけでございます。  明日香村の問題につきましては、明日香村の中で転作が法制上あるいは実態上全くできないというようなことでありますれば、そういう実態が政府買い入れ面に反映されてくるということになろうかと思いますけれども、そういうことでもございませんで、明日香村にも転作目標は配分されていっておる。もちろんその配分に当たりまして県の方が農業の実態を勘案しました配慮は行われているようでございますけれども、そういう形で政府買い入れ面に反映されてくる、このように私どもとしては考えておる次第でございます。
  158. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの米の生産の件に関しましては、やはり現在までの実情、それから、これからの実情について農林省としても現地を調査をして、いままでの認識、理解でいいのかどうかという面についても積極的に農業関係者の意見も聞き、実態も見て考えていただきたいと思うのです。というのは、農業立村という一つの形が非常に保存というものとぶつかっていますからね。その点いかがですか。
  159. 吉國隆

    吉國説明員 ただいま御指摘の明日香村におきます農業振興のあり方につきましては、先ほど来御議論の出ておりましたような振興計画の中で考えられていくべき性格のものと思います。  米の生産調整、現在、水田利用再編対策におきます転作目標面積の配分という問題につきましては、地域ごとの農業経営の実情に即した配分が行われるように都道府県知事、市町村長にお願いを申し上げておる次第でございまして、そういった地区ごとの実情に即した目標配分につきましては、こういった地方公共団体にお任せをするというたてまえになっておるわけでございます。そういうたてまえのもとで、奈良県におかれましては該当の地区に若干の目標の調整をやっておられるというふうに聞いておる次第でございますが、私どもの水田利用再編対策全体の関係で申し上げますと、全国の各地域でそれぞれ転作に困難な諸事情もお持ちなわけでございますが、何と申しましても現在の米過剰を解決する、新しい農業への再編成を図るというためには、全体の御協力をいただくということが非常に大事な要素でございまして、そういった面と先ほどの地域ごとの特別の事情の配慮というものとの調和を地方公共団体の方で御努力をいただくということで今後とも進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  160. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの御答弁は非常に抽象的で不満足でありますけれども、私が指摘した問題に関しては心にとどめておいていただきたいと思います。  それから、明日香村整備計画に基づいて明日香村の行う事業がございますね。この事業に対して国の行う指導、援助、これは村の自主性を尊重しながら具体的にどういう形で行うのか。またこの法案の七条の規定で財政上及び技術上の配慮が国に義務づけられているわけでありますけれども、これはどのように理解しているのか。その点二点をお伺いしたいと思います。
  161. 中嶋計広

    ○中嶋説明員 七条では、明日香村整備計画が円滑に達成されますように財政上の配慮と技術上の配慮と二つのことを国がやりましょうということを書いているわけでございます。このうち財政上の配慮につきましては、明日香村整備計画で国庫補助対象事業がかなりございます。その国庫補助対象事業につきましては採択の順位というものがあるわけでございますが、この明日香村整備計画に盛り込まれました事業につきましては、できるだけ優先的に採択するように努力してまいりたいといったようなことを考えております。  それから、技術上の配慮でございますが、これは特に埋蔵文化財の発掘調査につきまして、明日香村は非常に埋蔵文化財が多いものでございますから、これらの調査をスムーズにやりませんと事業の円滑な実施なり、ひいては住民生活に御迷惑をおかけするということで、できますれば国が埋蔵文化財の発掘調査につきまして技術上のお手伝いをする、場合によりましては技術者の派遣等も考えるといったようなことをいたしてまいりたいというふうに考えております。
  162. 林孝矩

    ○林(孝)委員 明日香村は人口七千人余、財政力指数〇・二二三、財政的にきわめて貧困な地方公共団体です。また、厳しい規制で、今後抜本的に村財政を強化していく方策も直ちに見当たると思われないような状況にあるわけですが、本法案の施行による村財政の長期見通しはどのように考えられておるか、これに対して国は何らかの助言を与えるつもりなのかどうか、この点はいかがですか。
  163. 能勢邦之

    能勢説明員 明日香村の財政についてでございますが、五十三年度の明日香村の決算状況を見ましても、経常収支比率は一〇三、公債費率は一七・六、財政力指数、五十一年から五十三年の平均でございますが〇・二一といったように、確かに御指摘のように余りよい財政状況ではございません。そういうことがございまして、明日香村の特別措置法におきましては御案内のような各種の財政上の特例措置も決められているものとわれわれ理解しておるわけでございます。  ところで、いまお話のございました今後の財政状況ということでございますが、具体の財政状況ということになってまいりますと、今後この法律の制定以降に策定が予定されております明日香村整備計画の内容なり、その具体の実施に影響されるところが非常に大きいだろうと思っております。明日香村整備計画につきましては、現段階で奈良県においても素案の検討中というようなことも聞いてございますが、その整備計画自体の目的といたします地域住民の生活環境あるいは産業基盤の整備水準を確保するという目的を達成することもさることながら、この法律で予定いたしております各種の財政上の特例措置と相まって、県及び明日香村の財政力でこなし得る、負担し得る範囲内のものになるよう定められてくるものと考えております。自治省といたしまして、明日香村整備計画に定められております各般の事業が今後円滑に遂行されますように、必要に応じてできるだけの助言指導といったことに心がけてやってまいりたいと考えております。
  164. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もう一点、村財政収入との関連で、この附則の七条でありますが、地方交付税法改正の趣旨について説明していただきたいと思います。
  165. 能勢邦之

    能勢説明員 固定資産税の減収、いわゆる交付税による減収補てんについてのお尋ねかと存じますが、これは明日香村がその区域内の家屋または土地に対する固定資産税について地方税法の第六条の規定によって課税免除または不均一課税を行う場合に、明日香村の全域が古都保存法に決められます特別保存地区として位置づけられることが予定されているわけでございまして、一定の行為の規制が行われることになるわけでございますが、その行為の規制が行われるという事情にかんがみまして、当該土地なり家屋の所在する明日香村において、その規制の態様に応じて地方交付税の算定基準財政収入額から減収分の補てんを行うような算定を行ってまいりたいというのがこの規定の趣旨でございます。
  166. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間の関係で最後の質問になりますが、村民対策としての基金に関してでございます。  この法案の提出前、予算編成期においては奈良県選出の国会議員超党派で大蔵省にも赴き、また総理府にも赴きながら基金対策等の折衝に当たってきた経緯があるわけでございます。基金の自主的な運営に対して国がどういう助言を行うつもりなのか、それが一点。それから、基金の運用でもって行う事業は初年度においてはどれだけの事業量が期待されるかという点が二点目。それから、三点目は基金の将来における目減りの事態にはどう対処する心づもりか。この三点をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  167. 清水汪

    ○清水政府委員 私から前半のことにつきましてお答え申し上げますが、村あるいは住民の自主性を尊重するという精神でございます。と同時に、国といたしましても村あるいは県当局から御相談を受けることがあろうと思います。それを期待いたしておる面もございます。したがいまして、御相談を受けて十分に協議をしてこの法の目的を達成していくように心がけたい、このように考えておるわけでございます。  それから、初年度についてのお尋ねでございますが、おっしゃいますように初年度は国としては五億円、それから奈良県当局からそれの四分の一相当額をお出しいただくというふうに期待されておりますけれども、それによって生まれる果実はさほど大きなものではございません。しかしながら、県当局におきましてはさらに初年度に対する別途の御配慮も考えておられるように聞いておるところでございまして、具体的に金額をこの場で申し上げるのは余り適当でないかもしれませんけれども、そのようなものも含めた相当の金額になるだろうというふうに承知をいたしております。
  168. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 基金の目減りについてのお尋ねでございますが、申し上げるまでもなく基金でございますので、インフレに対する対応が非常にむずかしい、また現下の経済情勢の中で非常に金利の変動があるということで御指摘の点は大変危惧される点でございます。いまスタートしようという時期でございますので、この際どうしようということは実は申し上げかねますが、経済の相当の変動がありました段階においては再検討なされるべき問題ではないかと考えております。現時点では、まさに出発しようというところでありますので、いまの答弁でひとつお許しをいただきたいと思います。
  169. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その点につきましてはまた別の機会にあれするといたしまして、これで終わります。
  170. 北側義一

    北側委員長 辻第一君。
  171. 辻第一

    ○辻(第)委員 いわゆる明日香立法について質問いたします。  明日香村はいわゆる飛鳥朝、六世紀から七世紀にかけてわが国の律令国家体制が初めて形成された時代の政治、文化の中心地域でございます。そして今日、宮跡あるいは寺の跡、古墳などの地下遺跡を主とした歴史的文化遺産が周辺の自然環境と一体をなしたすばらしい歴史的風土が、明日香村の全域にわたって良好に保存、維持されてまいったわけでございます。明日香村は、私もう何回も訪問をし、調査をさしていただいたわけでありますが、その中で婦人会長さんその他の方々から、この先祖が残してくれたすばらしい歴史的な文化遺産や歴史的風土に誇りを持って、この保存、維持のために努力をしていきたいというお話を聞いて、非常に感動をしたわけでありますが、このように明日香村の方々が代々この保存、維持のために努力をされてきたということが非常に大きな力があったということであろうと思います。そして一方、古都法や県の風致条例などの明日香保存のための規制、このような条件の中で個人の財産が制限を受ける、また村の振興、生活の向上というような夢が打ち砕かれるというようないろいろの精神的、物質的な犠牲を受けてこられた、そしてそれにたえる理解や協力があったから、今日このように保存をされてきたというふうに思うわけでございます。  しかし、いま明日書法が提案をされて審議に入っている中で、村民の方々は、生活対策を中心としてこの法律案に対する大きな期待とともに、逆に規制が強化されるのではないか。また、規制対象区域が拡大をいたします。また、地価が下落をする問題、そして農業や将来の村づくりの見通しなどについて少なからぬ不安や不満を感じていられるのが現状であります。また、今日の文化財の破壊がどんどん進む状況で、文化財を守るために大変な努力を重ねてこられた文化財関係者は、この文化財の保存に関して一定の積極的な評価とともに不十分さも指摘しておられるのが現状であります。政府関係者はこの点を十分認識されるよう強く要望するものでございます。  さて、明日香の歴史的風土を守るためには、そこに暮らしていらっしゃる住民の生活をどう守るのか、規制に対する生活の保障をどう確立するのか、明日香の村づくりをどのように進めていくのかということがきわめて重要な課題であることは言うまでもないと思います。明日香村は歴史的にも農業に支えられてきた村でありますし、現在も約七千人の人口の半数が農業に関係をしていらっしゃる。明日香の中心的な産業が農業である現状の中で、愛水村長も農業立村でなければ明日香を守ることができないというふうに言っていらっしゃることはよく理解ができるわけであります。国はこの村づくりの問題をどのように考えていらっしゃるのか、また愛水村長初め言っていらっしゃるこの農業立村の立場をどのように考えていらっしゃるのか、長官にお尋ねをしたいと思います。
  172. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 この地区が大変すばらしい状況のままに残されておるということは、村民の大変な御苦労と、また県、村当局の力添えのたまものであるというふうに考えております。全く御指摘のとおりでございます。そこで、これが歴史的な風土として保存をされるというためには、これが都市化してビルが林立してしまっては全くその景観を失するわけでございますので、そういう意味ではやはり産業としては第一次産業を中心に立村していっていただかなければならないというふうに考えております。しかし、同じ農業をやるにいたしましても、いろいろな形での規制のあることも事実でございます。  したがいまして、先ほど来農林省からも御答弁申し上げましたが、三つの地区に分けてそれぞれの地区にふさわしい農業の形態を考えながら、村全体が農業を中心にしながら営々として発展のできるようにということで諸施策を講じていくということでございます。具体的な施策につきましては村当局あるいは個々の農家の皆さん、そして行政庁と十分連絡を取り合いながら、すばらしい、この農村としての明日香を形成するために国としても十分お手伝いをしていきたいというふうに思っております。
  173. 辻第一

    ○辻(第)委員 農業立村ということでありますけれども、農業立村もなかなか大変なんですが、ほかに立村をしていく柱になるものがないというのが現状だと思うのですが、その点、総務長官どうでしょうか、ほかに何か適当なものがあるようなことを……。
  174. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 私が村長さんでございませんで、それぞれのこの村のあるべき姿というものを十分描き切っていないことを申しわけなく思いますが、申し上げましたように、どうしてもこの歴史的な風土、万葉の地区としてのこの姿をとどめていくということになりますと、二次産業で工業を興して煙突から煙が出るというようなことではなかなかいかぬじゃないか。したがいまして、ここに二次産業、三次産業を大きく展開するという形にはなり得ないということだろうと思うのです。  したがいまして、農業を中心にして所得を確保しますと同時に、昨今でございますから、交通の利便その他も十分確保されるような時代になってきましたので、これは兼業というような形での所得を得る手段もあろうかと思いますが、賢明な村民のことでございますし、また村当局も十分配慮しておることだと思いますので、知恵をしぼってそれぞれの個々の皆さんが生活を確保できるように御努力いただきたいと思っております。
  175. 辻第一

    ○辻(第)委員 しかし、今日日本の農業はきわめて厳しい状況にあるということは言うまでもないと思います。その上に規制を受けるわけであります。ことに第一種の保存地区ではビニールハウスなども禁止されるというふうに聞いています。施設農業すらできない状況では農業立村もきわめて厳しいということであろうと思います。そこで、私は第一種地域であっても地下遺構を破壊しないという条件のもとでビニールハウスなど園芸施設を認めるべきであるというふうに考えますが、どうでしょうか。
  176. 升本達夫

    升本政府委員 御指摘のとおり、第一種地区につきましても一定の条件を満たす場合にはビニールハウスであるからといって直ちに禁止というぐあいにはなるべきではないというふうに考えております。地下遺構が破壊されることを防止する観点からの配慮は要らないのではないかとおっしゃるわけでございますけれども、一種、二種を問わず、この規制はいわば周辺歴史的風土の保存の観点から、景観上の障害となるかどうかという観点から規制を行うたてまえでございます。このようなたてまえに立脚いたしまして必要最小限の規制を考えていきたいというふうに考えております。
  177. 辻第一

    ○辻(第)委員 それではもう一度お尋ねいたしますが、ビニールハウスは固定的な大層なものではなしにパイプでわれわれの背の高さくらいはある、入れるくらいのビニールハウスはお認めになるということでございますか。
  178. 升本達夫

    升本政府委員 具体にはなお検討を尽くさなければいけないと思っておりますけれども、一種保存区域におきましては、まず、たとえばガラス温室というようなかなり恒久性の強い形のものはやはり無理ではなかろうか。さらに高さにつきましても、やはり一定の制限を設けて、余り大きなものはいかがかというようなことから限度を定めさせていただきたいと思っております。したがいまして、いま御指摘のような背を超えるようなというところまではちょっと一種区域についてはむずかしいのではないかと考えております。
  179. 辻第一

    ○辻(第)委員 第二種地区ではビニールハウス等がこれまで届け出制だったわけですね。それが今度は許可制になるということですが、どうして許可制に変えられるのか。そしてこれでは規制の強化になると私は思うわけでありますが、その点お答えをいただきたいと思います。
  180. 升本達夫

    升本政府委員 歴史的風土の保存という観点から最小限の規制は一定の明確な基準のもとに行われるべきではないかという考え方で、本法の立案の趣旨にかんがみまして二種保存区域を設けさせていただいたというふうに理解いたしております。  具体の適用に当たりまして、御承知のように現在行政措置をもちまして、自主規制でかなりの規制をお願いを申し上げておるわけでございますけれども、やはり自主規制の性格上、基本的には権利者の権利ということで留保されるということで、統一的な実施ということについて、将来にかけて若干不安があると言わざるを得ないだろうと思います。したがいまして、明らかな規制区分を設けまして、最小限の規制を一律に考えていくというのが立法の趣旨にも合う規制措置ではないかというふうに考えまして、御披露申し上げたような規制を考えている次第でございます。
  181. 辻第一

    ○辻(第)委員 第一種地域はこれまで良質の米の生産地だったと聞いているわけですけれども、このようにビニールハウスなどの禁止がされる、こういう規制のある状況ではもうお米をつくるしか仕方がない、稲作の減反に対しても転作することが困難だ、こういう状況になっているわけでありますが、こういう状況のもとで奈良県が明日香村の第一種地域に対する減反率を低く調整をされておるというふうに聞いております。しかしその分だけ、量は大したことはないと思いますけれども、ほかの市町村にかぶっていく、こういうことになっているわけであります。  私は、この第一種地域は厳しい規制を受けるわけで、お米しかつくることができないような状況の中でありますので、国のレベルで明日香村、ことに第一種地域には減反対象から外す措置が適切であるというふうに考えるのですが、その点どうでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  182. 吉國隆

    吉國説明員 水田利用再編対策におきます転作目標面積の配分につきましては、都道府県知事、市町村長にそれぞれの管内での農業経営の実情を勘案しながら適切な配分をお願いしておるところでございます。ただいま先生御指摘のように、奈良県におかれましては明日香村に対します目標配分を奈良県に対する目標の中で調整をしておられるというふうに聞いておるわけでございます。  全国段階でそのような調整ができないかという趣旨のお尋ねでございますが、転作の問題につきましては、全国的にいまの農業条件のもとで稲作志向が強いという状況の中で、また各地にそれぞれ大なり小なり困難な事情のある中で取り組みをお願いをしておるわけでございまして、地域ごとの特殊事情をきめ細かく拾い上げて全国段階での目標配分を行うということは技術的にもなかなか大変でございますし、また、たとえば飯米農家を外せとか山村を外せとか、地域の実情によりましていろいろな要請があるような実情でございますので、国といたしましては、一定の客観的な要素に基づきまして配分をさせていただく、地域ごとの細かい農業事情に応じました調整につきましては、地方公共団体にお願いをするということで運営をしてまいっておる次第でございます。そういった事情にあるということを御理解を賜りたいと思います。
  183. 辻第一

    ○辻(第)委員 現在、農業の機械化がどんどん進んでいるわけですが、せめて耕運機が通る農道に整備をしてほしいという要求がございます。このように農道を整備する、また林道を整備する、用水路や排水路を整備する、こういうことが大変必要なことだと思うわけでありますが、その対策はどうか、お尋ねをいたします。
  184. 川村浩一

    ○川村説明員 ただいま御質問のございました明日香村における農林道の整備につきましては、この法律に基づきます明日香村整備基本方針に基づきまして奈良県知事が明日香村整備計画を作成いたしますが、その計画の上において位置づけられた事業につきましては農林水産省としても積極的に国の補助対象事業として取り上げて指定していくつもりでございます。  具体的に申し上げますと、農道整備の分野につきましては、この特別助成の対象となる三つの事業がございますが、団体営の農道整備事業のほかに団体営の土地改良総合整備事業というのも、たとえば圃場整備事業と農道整備事業を組み合わせてやる、いわば地区の実態において幾つかの工種をきめ細かくやれるような事業でございます。それから、農村基盤総合整備事業におきましても、これは生産基盤と農村の環境条件を一体的に整備していく、この中で農道あるいは集落道というものの整備も可能でございます。そういう意味におきましては、地区の実態に応じましてこれらの事業を地区別にうまく活用しながら全体としての農道の整備を考えてまいりたい。  さらに林道につきましては、地域ごとに地域森林計画というのが作成されておりますが、これに基づいて林業振興のために必要だとされる林道につきまして積極的に助成対象として取り上げてまいるつもりでございます。
  185. 辻第一

    ○辻(第)委員 農業立村ということでございますので、さらに構造改善、基盤整備、こういうのがおくれているわけであります。その対策、また後継者の対策、農産物の価格保障制度、このような問題など多くの問題があると思います。政府は十分な対策をとられるように強く要解するわけでございます。また明日香村には中小商工業を営んでいらっしゃる方もたくさんあるわけでありますが、大変な規制の中でその営業、生活が犠牲にされておられるというような状況であります。その営業と生活の安定のためにどうしても積極的な対策をとっていただきたいと思うわけでありますが、簡単で結構でございますから、その対策についてお答えをいただきたいと思うわけです。
  186. 中嶋計広

    ○中嶋説明員 第一次産業につきましては先ほど農林省から御説明申し上げたとおりでございますが、第二次、第三次産業につきましてはどういう産業がどう立地できるのか、私どもいま具体的にイメージがわかないわけでございますが、村の方で住民とよく御相談いただきまして、自分たちの村においてこういう産業を発展させていきたい、その際にこういう施策が必要だという具体的な施策がまとまってまいりまして、国としてお手伝いできることがございますれば、また御相談いただきましてお手伝いするように努めてまいりたいと考えております。
  187. 辻第一

    ○辻(第)委員 中小商工業についても今後十分な具体策、きめ細かい御配慮をいただくようにお願いをしておきます。  次に、現在でも家の新築、増築、改築などに規制によっていろいろな制限が加わっております。しかも繁雑で長期にわたる届け出手続などが必要になっている状況でありますが、これからの行為制限の内容、許可基準等について、第一種、第二種ごとに簡単に説明をしていただきたい。それは次の二点についてであります。  まず、建築物について新築、改築、増築、移転についてどうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  188. 升本達夫

    升本政府委員 ただいまおただしの点でございますが、第一種の保存地区につきましては先ほど来御説明申し上げましたように、現行の特別保存地区とほぼ同水準の規制を定めることを予定いたしておりますけれども、おただしの建築物の新、増、改築につきましては、移転、除却の容易な仮設建築物、地下建築物、一定の公共建築物等並びに従前の建築物の建てかえ、さらに一定規模以下の増築に係るものについては許可ができる、許可をするということでまいりたいと考えております。  それから第二種保存地区につきましては、先ほど来申し上げておりますように、住民の方々の生活及び生産活動を阻害しないよう、現在の都市計画法に基づきます市街化調整区域等におきます一般的な規制に係るものはやむを得ませんが、それらの規制に係るものを除きまして原則的に許可するということで考えさせていただきたいと思っております。
  189. 辻第一

    ○辻(第)委員 二番目に、樹木とかそれから竹など、こういうものを切るときにはどういうことになるのか、また逆に木を植えていくという場合はどうなるのか、その点について一種、二種ごとに簡単に説明をしていただきたいと思います。
  190. 升本達夫

    升本政府委員 木材の伐採につきましては、一種、二種両地区とも森林の択伐でございますか、間引き、または一定規模以下の皆伐で、周囲の歴史的風土と著しく不調和でないものについては許可することを考えております。また植林につきましては、皆伐の場合原則として伐採後の成林が確実であることを条件といたしておりますので、必要に応じ皆伐後の植林を指導することで考えてまいりたいと思います。  なお木竹の伐採並びに植林関係の規制措置につきましては、農林水産省とも十分協議をしてまいりたいと考えております。
  191. 辻第一

    ○辻(第)委員 いろいろな届け出手続というのですか、許可を受ける手続が、話を聞いておりますと非常に繁雑であるとか時間がかかるということで、うまく合理化をすればもっと簡単にやれる場合も私はあるだろうと思うのですが、そういうことは実際にできることがないでしょうか、ちょっとお尋ねをしたいのです。
  192. 升本達夫

    升本政府委員 現在の古都保存法に基づきます特別保存地区規制につきまして、諸般の手続にのっとって届け出等、許可申請等をやっていただくことになっておりますが、また一面、風致地区規制におきましても、同様な手続をとっていただくことになっておりますが、現在でもこの両手続を、同一の時点で同一の手続に乗せてお願いをしております。そういうような形でできるだけ御負担を軽くするように工夫をいたしております。今後も同じように諸般の規制措置について、できるだけ住民の方々の御負担を軽くするように工夫をいたしてまいりたいと思っております。
  193. 辻第一

    ○辻(第)委員 観光客など他地域からお越しになる人が、畑やたんぼ、いわゆる農地などに、ごみ、空きかん、空きびん、こういうものを不法に投げ捨てるというようなことがたくさんあるようであります。いわゆる観光公害というべき状態が起こっておる。しかもごみを処理するのに村の方々が奉仕によって処理をなさっているような現状もあって、これが村民の方々の深刻な悩みの一つになっているのが現状でございます。またごみだけではなしに、観光客による交通の渋滞だとか、あるいは交通災害もこれまであったことがあるというふうに、観光公害ともいうべき現状に対して積極的な防止対策を考えるべきであると思うわけでありますが、どのような具体策があるのかお尋ねしたいと思います。
  194. 清水汪

    ○清水政府委員 明日香村につきまして、御指摘のような観光公害という言葉が言われること自体私も全く残念なことだと思います。この法案を御審議いただき、さらに成立させていただくということも、全国民的に見ましてそのようなことに対する一つの大きな呼びかけ、あるいは自覚を高めていただくきっかけになるのではないかということも期待をいたすわけでございますが、たとえば、いままでで言えば飛鳥保存財団が何がしかのお力添えはできる立場にあったと思いますし、今後は、この八条に基づきまして村に援助申し上げるその基金の活動の一環といたしましても、たとえばいまの不幸にして出たごみの処理のための経費のようなものとか、その施設のようなものについては相当のめんどうは見られるのではないかというふうに思うわけでございますが、要はそのようなことのないようにするのにはどうしたらよろしいかということでございます。  さりとて端的に大型バスの運行は禁止するとか、あるいはごみを落とした者にはたとえ軽くても何かペナルティーのようなものを科するようなこともいよいよとなれば必要ではないかという議論もあり得ることと私は思います。しかしながらそういうことにならないで、何とか国民的な合意の中でやるにはどうしたらよろしいかということが課題ではあろうと思います。私どもの立場といたしましても、そういう趣旨に沿って何かさらにやれることがないか、これは関係省とも私たちは相談をして、また地元とも相談をして何か知恵を出していきたいというふうには思いますけれども、具体的なことになりますとなかなかいまここで申し上げるほどのことがないということで、大変残念でございますが、そのような状況でございます。
  195. 辻第一

    ○辻(第)委員 消極的なことですけれども、もっとごみ箱をたくさんつくってもらうとか、そういうこともしていただくならば大分また村民の方も助かるのではないかというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。  次に、整備基金の問題でございます。  国は二十四億、県の六億と合わせまして三十億ということでございますけれども、この金額では十分目的を果たすことができないというふうに思います。村や県が要請をされたのは五十億であったと思います。先ほど林議員がおっしゃいましたように、昨年末に奈良県選出の議員が超党派で大蔵省あるいは総理府へ御要請に行ったときもたしか五十億であったと思います。これは掛け値のない要求であったと私は思います。今日の財政事情の厳しさということもわかるのですが、やはり五十億にしていただくということが必要ではないか、強く訴えるものでございます。  それから、昨今の恐ろしいほどの物価高、インフレというような状況で、三十億といってみましても、実際は、去年の暮れから考えてみればもう二十八億ぐらいになっているのと違うかというぐらいの厳しい状況になっております。そういうことでございますので、やはりまず最初に五十億にしていただきたいということを強く要望するものでございますが、政府のお考えをお聞きしたいと思います。
  196. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 奈良県選出の国会議員の諸先生からそのような御要請のありましたことを承知いたしておりますが、いずれにいたしましても、委員御指摘のように、財政状態まことに厳しい折でございまして、この三十億、国費二十四億、奈良県六億という数字につきましても、いろいろ、五十五年度予算編成過程におきまして財政当局との折衝の過程で大変厳しい御議論のあったことも事実でございます。この基金につきましても、七千人を対象にされる基金でなぜ二十四億出るか、もっと大変大きな県の基金を設けるのにそんなに出してないじゃないかというような議論も過程においてはなされましたが、大蔵大臣の政治的決断もありましてこのような数字ができ上がった次第でございますので、この際は、総理府として最善の努力をしたことをひとつお認めいただきたいと思います。  そこで、インフレによる目減りの問題も御指摘ありました。これは先ほども委員に御答弁申し上げましたが、いずれにしても現在スタートしようとしておるところでございまして、将来の方向について確たることをここで明言することは差し控えたいと思います。しかし、基金というものはそのままどんどん増額してくるというものでもありません。利子の果実を使っていくわけでございますので、インフレ目減りということ、インフレが増大してまいりますれば実質的にその使えるお金の効果というものは減衰するだろうと思いますので、そういうことは好ましからざる状況ではありますが、さような事態に相なりますればいずれまた十分検討してみたいと思います。
  197. 辻第一

    ○辻(第)委員 大変な物価上昇、インフレ状況の中で目減りをどう防止していくかということは本当に大切だと思うわけでございます。私どもはこの法案に対する修正案要綱をさきに発表させていただいたわけですが、この法案の第八条に新しく二項を設けて「経済情勢の著しい変化によって、基金に不足が生じた場合、基金の増額をはかる」こういうことを挿入することを提案しているわけでございます。本当にこのインフレによる目減りというのは大変な状況で、大変古い話ですけれども、戦前私ちょっと貯金していたのが、戦争が済んでしまったらもう何にもならへんだったという経験もあるわけです。そういうことが予測されるような状況でもあるわけでございますので、ひとつ目減りを防止する措置を十分考えていただきたいということを重ねて要望をいたしておきます。  それから、この基金の運用をどのように公明正大にするのか、大変むずかしい仕事であろうかと思います。ことに村長さんには大変な御苦労をおかけすることになろうと思うわけでありますが、国や県もどうか十分協力をして適切な対応をしていただけることを強く要望をしておく次第でございます。  次に、明日香村における歴史的文化遺産のことを考えてみますと、貴重なものの多くが地下にあります。しかも、その膨大な遺跡の大部分がまだ地下に眠ったままで、学問的には未解決の問題が多いというのが現状であろうと思います。この埋蔵文化財の保存と活用をどうするのか、重要な課題でございます。  最近も伝飛鳥板蓋宮跡とか島宮跡とか言われる超一級の遺跡が発見をされました。私も見てまいったわけでございますが、本当にすばらしいものだと思います。土地を所有なさって、そしてその土地を利用しようとしておられる方にとっては本当に大変な御迷惑をおかけすることになるわけでありますが、何としても保存しなければならないと考えます。そういうことになりますと、当然史跡に指定をされるべきものであると考えるわけですが、土地を所有し利用を考えていらっしゃる方に対する十分な補償などとともに、史跡に指定していくということについての現状と見通しはどうなのか、お尋ねをいたします。
  198. 山中昌裕

    ○山中説明員 御指摘のとおり、最近お医者さんの医院の増改築に伴いまして、その事前発掘で飛鳥板蓋宮跡と伝えられます遺跡の相当大型な建物遺構が検出されてまいりました。これにつきましては相当重要な遺跡でございますので、建物を建てますと地下の遺構が破壊されるおそれがございます。いま奈良県におきまして、明日香村の協力を得ながら代替地をお示しして、そして別の場所に医院を建築されるようにお話し合いの最中でございます。これは、いまの土地につきましては現在の史跡指定地の外になりますが、相当重要な部分でございますので、追加指定を検討し、それから土地について時価で買い上げてまいる、こういった方向で進めてまいりたいと思っております。  それから同じように、レストランの建築に伴う事前の発掘で島宮跡の庭園の池の堤ではないかと思われる遺構が出てまいっております。これも重要なものでございますが、当面レストラン建築の場所を変えていただいて、一部設計変更していただくということで地下遺構の保存ができます。  それから、島宮の本体がどこにあるか、恐らくこの周りにあるものと思われますが、周りは現在たんぼでございますので、そのまま耕作を続けましても地下遺構は良好な状態で保存されます。しかるべき時期にその周辺農地の所有者の方ともお話し合いをしながら、順次学術調査を進めてまいって遺構の範囲を確認してまいりたいというふうに考えております。その遺構の範囲が確認されました際に、そのまま農地としてお続けになるのか、あるいは史跡として後世に残さなければならぬものでございますので公有化の方向でお譲りいただけるかということが将来の検討事項になろうか、こういうふうに考えております。
  199. 辻第一

    ○辻(第)委員 この伝飛鳥板蓋宮跡や島宮跡と言われるような埋蔵文化財、そして歴史的風土を守るには、現実の問題として歴史的風土の保存行政を執行していく専門職の方、そしてその発掘調査を直接行っていく専門職や技術者の方、そして歴史的風土の景観と調和した建造物の形状、意匠の審査、建築指導を行う技術者など、こういう方々が大変不足しているのが現状であろうと思います。こういう方々を十分充足をしていくということが大変重要であると考えますが、どのようにその点についてお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
  200. 山中昌裕

    ○山中説明員 私どもの方では、ことに埋蔵文化財の専門家の問題が置接の所管でございますが、御指摘のとおり、技術水準の高い専門家の養成ということが大事になってまいります。いま、一つの方法といたしましては各県で置かれております考古の専門職員、これは年々充足されまして、現在では約千七百名になっておりますが、こういつた方々の養成、研修を国が引き受けていくということで、奈良の国立文化財研究所に埋蔵文化財センターを設けましてその養成を図っておるわけでございます。  それと、もう一つは、そういう職員の需要が非常に出てまいりますので、自治省の御協力を得て地方交付税の財政措置の充実に努める、こういうことで体制を充実してまいりたいと思っております。  また、明日香村につきましては、村だけにお任せするというわけにまいりませんので、午前中も御説明申し上げましたが、国の研究所と県の研究所が総力を挙げて協力体制をとる、こういうことで、この整備に伴いますいろいろな調査が行えるようにしてまいりたいと思っております。
  201. 升本達夫

    升本政府委員 並びに建築物の意匠、形態等の指導に当たる技術者の拡充に関する措置をお尋ねでございましたので、お答えをいたします。  建築物の意匠、形態等の指導につきましては、随時的確な情報提供をいたしますほか、奈良県または開口香村からの要請がございました場合には、必要な技術上の助言、指導を行いまして、必要に応じまして技術者の研修等も実施しながら、担当者の充足、拡充、能力の向上等を図ってまいりたいと考えております。
  202. 辻第一

    ○辻(第)委員 この法案の第二条では総理大臣が明日香村の歴史的風土保存計画を決める場合に、また第四条の明日香村整備基本方針を定める場合に歴風審の意見を聞くことになっておりますけれども、私は歴風審の中に明日香特別保存部会とでもいうような部会を設ける、そして、その構成に、その審議会の委員の中に、明日香の保存、研究に従事をしてこられた、あるいは現在従事をしていらっしゃる学者や専門家を複数、そして明日香の村民代表の方も複数入っていただいて、このような部会の意見を聞くことを義務づける、これによって学者や村民の方々の生の声が反映できるようにしてはどうかというふうに思うわけでございます。また法案四条の二項のところを、奈良県知事は公聴会を開き村民の意見を聞くこと、こういうふうにして、本当に住民の方々の意見を十分に聞く、このようなことを提案するものでございますけれども、その点についてはいかがでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  203. 清水汪

    ○清水政府委員 第一の歴風審のことについての御意見でございますが、おっしゃいます御趣旨は私どももよく理解できるところでございますし、現にいままでも歴風審におきましては委員の中に、たとえば奈良県知事が入っていただいておりますし、あるいは専門委員としてさらに村長にもなっていただいております。このような形だけでなくて、随時参考人としてもその御意見を伺うということもいたしておるわけでございます。したがいまして、この問題につきましては今後もそのような御趣旨を十分踏まえさせていただきまして、運用においてさらに適切な処置を期していくことが適当ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  それから後段の問題でございますが、これはただいまの御意見でございますが、たとえば奈良県知事意見を形成して国の方にお届けいただくという問題でございます。その県知事のおやりになる方法につきまして余り私どもの方からといいますか、つまり国の方から、こういうやり方でなければいけないよというようなことを申し上げることはかえっていかがかというふうにも思うわけでございまして、それからまた、いままでの経過から拝察いたしましても、御懸念のようなことでなくて、県当局と村及び住民との間には十分な意思の疎通が図られているというふうにも承知をいたしておりますので、そのようなことで御理解を賜りたいと思います。
  204. 辻第一

    ○辻(第)委員 この運営について十分に民主的な立場が貫かれるよう重ねてお願いをしておきたいと思います。  最後に共産党としてお尋ねをしたい問題がまだ残っておるわけでございますが、後日瀬崎議員ら同僚議員がお尋ねをすることになろうと思います。私はもう時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。御苦労さまでした。
  205. 北側義一

    北側委員長 吉田之久君。
  206. 吉田之久

    吉田委員 ここに三人、奈良県の代議士がそれぞれ並んで御質問できます。大変委員長の御配慮、各党の御配慮に感謝いたします。  同時に、明日香保存特別立法が、きょうこうして衆議院の建設委員会で審議されることになった。考えてみまして、ここ特に十年間、歴代の総務長官初め関係者の皆さん、関係省庁の方々、格別の努力を払ってくださいましたことに対しまして深く敬意を表します。同時に、各党が飛鳥を守ろうということでいろいろ配慮の限りを尽くしていただきまして、また建設委員長初め皆さんが過日わざわざ明日香にまで足を運んでいただきまして、一人の県民としても心から深く感謝をささげる次第でございます。  しかし同時に、この守られるべき飛鳥が現にりっぱに存在している、これは一体だれの功績であろうかということを総務長官初め皆さん方に改めてひとつ御確認をいただきたいと私は思うのです。言わずもがなのことではありますけれども、遠い千数百年の昔から、明日香の人たちはだれにも命令されないで全く自発的に自主的にこの飛鳥を守ってきた、何の保護も受けずに守ってきた。ようやく最近、戦争が終わって、日本も落ちついてかなり豊かになり、経済的にも精神的にも安定してまいりまして、この飛鳥を庁ろうではないか、われわれの歴史的な祖先の遺産をしっかりと継承していこうではないかということになってきたと私は思います。したがって、飛鳥を初め、こうした歴史的な文化遺産を守っていくということは住民の協力なくしてはとてもできることではない、急に政府、上の方から押しつけて、規制を強化するだけでは保存は全うすることができないと私は思うわけでございます。こういう古都を守るあるいは歴史的な文化遺産を守る原点はそこにあると私は考えますけれども長官のお考え方はいかがでございますか。
  207. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 全く異論を差しはさむ余地のないお考えでございまして、私どももそうしたお考えと同じ気持ちを持ちまして本法律案をつくり、御審議を賜っておる次第でございます。
  208. 吉田之久

    吉田委員 同時に、この間、いろいろと具体的な要請をして、地元の歴代の村長、議会の皆さんあるいは知事らが努力してまいったわけでございますけれども、さらに多くの文化人の方々も歴史学者もこれに協力をしてくださいました。しかし、いま明日香は一つの大きな危機に立っていると私は思うのです。全般的に素朴な時代であればそういう村民の自主的な努力によって飛鳥のような古文化財は保存できたわけでありますけれども、時代の急速な変化によりましてもう村の周辺の事情が一変いたしております。数日前の新聞にも出ておりましたが、日本の人口の増加、その中で絶えず人口急増率のトップを走っておったのが千葉県と埼玉県であったようでございますけれども、昨年から奈良県が人口急増のトップになっております。先ほど各委員から御説明もありましたように、京都、大阪からわずかに三十分ないし一時間で到着できる場所でございます。したがって、古来そういう都ができた、まことに立地条件が完全なところでございますから、ほうっておけばどんどん市街化されます。近代都市に変貌してしまう。現に橿原市や桜井市、明日香のもうすぐ周辺までそうなってきておるわけです。地価周辺で急速に高騰しておるにもかかわらず、明日香だけは昔のままで凍結されるような状態にある。この問題がやはり一つ大きな深刻な問題だと思います。この中で住民感情をどう納得させ、どう協力を求めていくかという問題。  いま一つは、飛鳥がクローズアップしてまいるにつれて明日香を訪ねる人たちがどんどんふえてきております。先ほどからもいろいろ御意見がありましたけれども、観光客という呼び方は私も余り感心しないのですが、ともかく明日香を訪ねてくる人たちが急増することが、明日香の住民に対してあるいは村政に対してさらに問題を深刻化させておる。この辺を十分御認識いただかないと、ただ文化財を守ればいいのだ、そのためには規制すればいいのだということだけでは問題は解けないと思うわけでございますけれども、この辺についての御認識もお伺いいたします。
  209. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 甘樫丘に立って私も四方を眺望させていただきましたが、お話にありましたように、まさに行政区画が一線画されたその外、内で全く様相が一変しておるという状態が現在の明日香の状態であることを私自身も確かに拝見いたしました。都市化の波がまさに怒濤のように押し寄せてきておるというところで、村と周辺地区状況が全く変化しておるために、地価を初めとしていろいろの問題を引き起こしていることも御指摘のとおりでありまして、まさにそういう意味でこの法律案をこの時点で国会の御審議を仰がなければならない、おくればせでありますが、そういう時点に達しておるという認識を私もいたしておる次第でございます。村民の今日までの御努力に対して改めて敬意を表しておるところでございますが、なお、この法律によってすべてを救済し得るかどうか、この調和の問題はなかなかむずかしい問題でありますので、御審議を通じましていろいろ貴重な御意見を拝聴しながら、この法律通過の暁におきましては運用努力をいたしてまいりたいというふうに思っております。  もう一点、観光の公害という言葉は、先ほど室長からも御答弁申し上げましたが、大変申し上げにくい言語でございまして、単なる観光地という考え方で行かれる人もおるかと思いますが、最近のいわゆる古代史ブームなどというものもあってか、他の地区に対するような気持ちで現地を訪れる人がすべてではないというふうに理解をいたしております。しかし、大変な員数になっておる現在でございますので、まさにいわゆる公害を引き起こしておるという状態も事実でございまして、そういった現状を考えましたときに、この法律をぜひ成立させていただきまして、きめ細かい配慮を行うことによりまして、また諸施策を十分行うことによりましてこれを解消してまいりたいと思います。また、この法律は、現地の地域立法という気持ちではなくて、やはり日本国民全体が飛鳥に対する憧憬の気持ちを持ってこの法律を制定していただけるものと考えておりますので、村の名前を冠せられたこの法律を国民全体に理解をしていただきまして、この歴史的な財産というものは国民全体が守っていくのだという精神的な気持ちも十分涵養していただきまして、いわゆる観光公害というものが起こらないようにぜひ努力をしていきたいと思います。
  210. 吉田之久

    吉田委員 日本の数多い法律の中で初めて明日香村という固有名詞が冠せられた法律ができるということで、これは村民、県民挙げて大変感激もしているところではございますけれども、同時に、今度のこの立法の中で措置されようとする基金の問題でございますね、まずこれからお尋ねをいたしたいと思うのです。  私ども、そして民社党も、この三十億の基金で決して満足しているものではありません。また、当初、場合によれば八十億、少なくとも五十億というような構想がありましたけれども、今日の国の財政事情、県の財政事情等を勘案するときに、それはひとつ三十億でスタートしようではないか、国から二十四億ということで、まずはそれを了承しながら将来の推移を見詰めておる、これが偽らぬ心境でございます。  そこで、先ほどもいろいろ論議はありましたけれども、諸物価の高騰によって金の価値あるいは生じた利息の価値そのものが非常に軽いものになっていく場合は、当然この法の趣旨とその基金の任務から申しまして、スライドと申しますか、刻々修正されてしかるべきものである。また、それがなされなければつくられた意味がないというふうに考えております。  同時に私は、物価上昇だけではなしに、いま長官お話しになりましたように、いよいよ明日香を訪ねようとする人たちが急増してくる場合、あるいは思わざる特異な遺跡が新たに発掘された場合、こういう諸条件の変化によって物価上昇は考慮に入れなくとも適当なときに、この基金がこれで十分であるか、その果実が十分であるかということが見直されなければならないと思うのですね。したがって、五年間かがってまずは三十億の基金ができるわけでございますけれども、だからというわけではございませんけれども、できれば五年置きぐらいに絶えずこの基金の額とその効果というものを見直していく必要があるのではないかというふうに考えますが、いかがでございますか。
  211. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 先刻来御答弁申し上げておることになりますが、御指摘のお気持ちは十分理解するところでございますが、三十億円の基金につきましては、実はまるまる——この要求額が少なかったと言われれば、これはいたし方ありませんが、私どもとしてはそのままに国費、県費合わせますとそのような数字が出てきたということでございます。  そこで、五カ年たって見直しということでございますが、五年たちますと相当経済情勢も変動するであろうということは私も想像にかたくありませんが、しかしこの際はともかくスタートさしていただきまして、そしてこの運用につきましては、賢明な村当局があらゆることを考慮して最も有利な運用を心がけられるだろうと思いますので、この果実の生みぐあいというものを見て、あわせてそのことによって、事業その他村の方々が御希望されるものを、十分納得し得るかどうかというような状況というものを見て、ひとつ検討をする機会もあろうかと思います。五年後といいますと、ちょうどこのすべての基金がまるまる積み上げられるときでございますので、そういった意味でいまからその時点に必ずということをお約束できませんけれども、ひとつ基金のいままでの積み上がったものがどう使われてきたかというようなことも含めて、全額基金が積まれるわけでございますので、その時点やはり、見直しという言葉がどうかと思いますけれども、検討する必要があるのではないかと私も考えます。
  212. 吉田之久

    吉田委員 長官の御答弁の中に含まれておりますお気持ち、大変地元としても感謝すると思います。  私は、在来あちこちでできております基金というのは、一つ目的が終わればそこで基金も消滅する、これは未来永劫に続いていく基金でございますから、決してこのままでいいということにはならないと思うのですね。同時に、県としても村としても早くつくってほしい、そういうためには余り十分なお願いをするよりもという気持ちも込めて、財政事情をそんたくしての三十億でございますから、その点ひとつ今後とも大いに配慮して、よく見詰めてやっていただきたいというふうに思うわけでございます。  次に文化庁の方にお伺いいたしますけれども、埋蔵文化財が出てきた場合に、これに対する国の対応というのが、やはり著しくおくれております。もはや現地では、どうせ役所の仕事だから、丁寧でずいぶん時間がかかることはもうやむを得ないと半ばあきらめている。そこへ、単に役所仕事だけではなしに、文化人がいろいろと意見、専門家の意見も入ってくるわけでございますから、その間で届け出た時点から許可がおりるまでの間にかなりの歳月がかかっておる。こういう点でようやく最近、おおらかな明日香の人たちも忍耐の限度に来た、受忍の限界に来たというような憾情が見られるわけでございます。現にたとえば伝承浄御原宮跡で家を建てようと思った人が予算二千万円ぐらいで建てようと思ったのが、なかなかに許可がおりない。結局は明日香村の旧役場跡に代替地を見つけてもらって、そこへ移った。家はでき上がりましたけれども、この間にずいぶん日がたちまして二千万の予算の家が三千万かかった。こういう現実的な損害を生じております。こういう通損補償的なものが古都法や文化財保護法の規定の中にもあるはずでございますけれども、もう少し手続を急ぐことによって、これらの住民の苦悩というものを少なくすることができるのではないかというふうな気がするわけでございます。私は一つ考え方として、先ほども伝承板蓋宮跡の病院の建築の問題が出ましたけれども、少し調べてみて、これは確かに問題があるというときにはもう直ちに必要な面積をまず国が買い上げてしまう。そしてそれのお金で代替地を求めてもらう。将来それが調査が終わり国で持つ必要もないと判断した場合には、もとの所有者ないしはその他の人たちに希望があればまた払い下げることもできる。何かそういうことをしないと、じっと審議されて三年も五年もかかったのでは、これは個人生活としてはついていけないと思うのでございますね。何かその辺でお考えはございませんか。
  213. 山中昌裕

    ○山中説明員 埋蔵文化財包蔵地で工事を行います場合には工事着手の六十日前までに届け出て文化庁の指示を受けることにされております。ただ、これに安住することなく、これをできるだけ迅速に行って住民生活に不便が起こらないようにしていく配慮というのは私ども絶えず心がけなければならないと思っております。ただ、何分にも年間七千件に上るというような非常に大量に出てまいっております。そのためにいま御指摘のありましたようにあちこちで時間がかかるという問題がございました。そこで私どもとしては体制充実を図りますと同時に、昨年から軽易なものについては県教育委員会段階で、その専門職員の立ち会いのもとに工事を進めてもらう、こういう措置を行うことにいたしました。  明日香村の状況で昨年一年間五十三件の届け出がございましたけれども、そのうち四十一件はそういう措置でもって県職員の立ち会いで進められております。それで発掘調査いたしましたのが一二件。まず全国的にそういう形でできるだけこれをスピード化する。それから県の中でもあるいは市町村でもそうでございますが、文化庁にまいりましても専門的な検討が必要になる。そのためにある程度の日数はぜひ必要でございますが、問題のないものについてはできるだけ急ぐということで、私どもも相当のスピードアップに努めておりますし、各県の教育委員会に、毎会会議のありますたびにそれを日数をチェックいたしまして促進方を指導しておるところでございます。  なお、調査に当たりまして土地を買い上げるというのは、文化財保護法ではちょっとできませんで、史跡に指定して後世に残すというものについて買い上げるということだけしかできないわけでございます。また現実に工事が行われる、それも全体が七千件の届け出がございますので、実際問題としても工事が行われるときの一時買い上げというのはむずかしいと思いますが、たとえば明日香村のように非常に重要な遺跡があることがわかっており、農地なんかの場合に大官大寺なんかですでに行っておりますけれども、冬場借り上げて調査を続けていく。そういうことによっていざというときに支障が起こらないように学術調査をずっと借り上げで進めるというような措置は現実に明日香では非常にたくさん行っております。  そういうことで、できるだけ私どもも時間の短縮ということを考えておりますが、お話に出ました飛鳥浄御原宮跡の問題はちょうど史跡に指定する重要な遺構が出てまいってしまったわけでございます。それで、代替地の問題で、所有者の方のお気に召す代替地が二転三転してなかなか決まらない、こういう事情がございまして、その場合、最終的には土地を時価で買い上げ、あるいは移転補償をするというようなことで問題が解決されておりますけれども、重要な遺跡にひっかかりました場合について若干の時間がかかるということを御理解いただきたいと思います。  なお、法律上のたてまえでは、土地をお持ちの方の同意を得なくても指定するということはできないわけではございませんけれども、後々そういうことでは問題ばかり多くて守っていただけないということで、御納得いただいて物事を進めるようにしてまいるということで今日までいたしております。本当に重要なものについては若干時間がかかりますので御理解いただきたいと存じます。
  214. 吉田之久

    吉田委員 住民の側から言えば、本当に重要なものが出てくるのか出てこないのか、そのときまで全然わからないわけですね。結局、自分の計画に基づいて大体準備ができた、この辺の予算でさあ家を建てようと思ったところが、たまたま重要な遺跡とぶつかった、そこでもう完全にその人の個人の計画というのはとんざを来すわけでございますね。また、代替地を探せといったって、やはり経済的な問題もありまして、あるいは好みもありまして大変悩むわけでございます。  ですから、そういう点で、単に文化庁だけがこの問題を処理するのではなしに、特に先ほども総務長官に申しましたように、住民の協力、貢献なくしては今日の明日香はあり得なかったわけでございますから、その人たちに対して罰則が与えられているかに等しい今日の出来事というものは、私はどうも納得できないわけでございまして、これは総合的に各省庁が知恵を集め、ひとつ大胆な手法を用いて処理してやっていただかないと、いつまでたってもこの問題は残ってくると思うわけなのです。理屈を言えば、たとえば伝承板蓋宮跡にいたしましても市街化区域でございますから、所定の手続さえ終えればどんな病院でも住宅でも建てられるはずだと思って、そういう思惑で個人がそれぞれ行為をしているわけなのです。ところが、あにはからんや、にっちもさっちも動かすことのできない重要な遺跡だったというようなことになってくるわけであります。  この辺は総務長官、総合的にお考えいただきたい。この市街化区域を決めたころと、古都保存法なんかがいよいよ問題になってきたときと時間のずれがございまして、その辺が非常に個人に支障を与えております。改めていろいろと大胆な発想の転換をしていただきたい。文化庁で買えなければ、建設省やあるいは総理府の方でいろいろと買い上げる手段を講ずるとかいうこともときに必要ではございませんでしょうか。
  215. 升本達夫

    升本政府委員 おただしのように、市街化区域内の開発行為が埋蔵文化財の発掘関係と競合して、なかなか権利者の思うような開発ができにくいという状況があることは私ども十分承知をいたしております。しかしながら、市街化区域と申しましても、およそ市街化区域であれば一切の開発が自由に許されるということでもまたないのではないか。市街化区域という設定をいたしましたのは、私どもの方の都市計画の立場から見まして、市街地の現状、さらに将来の発展動向の見通し等を踏まえて、これは市街化さるべき区域であるという判断のもとに市街化区域の設定をさせていただいておるわけでございます。  他方また文化財保護行政の面からは、埋蔵文化財の保護、発掘という、いわばまた別の法益のために手だてを講じられておることと思いますので、その両法益間の調整ということで若干時間をかけることになりましょうけれども、個々に調整を図っていくということが私どもの対応の本筋ではないかと考えております。しかしながら、御提案のようにこれは単に明日香だけの問題ではございません。あらゆる市街化区域で多かれ少なかれ同じような問題を抱えている大きな課題であることは御指摘のとおりでございますので、これから十分に関係当局とも相談をし検討をし、何らかの具体的な推進が図られるように勉強してまいりたいと考えております。
  216. 吉田之久

    吉田委員 いろいろ理屈や弁解を承ったところで、それは問題の解決になりませんので、皆さん方のポジションからの答弁の限界はわかりますけれども、やはりこういうように本当に特別な立法をして保存していこう、住民の生活を安定させていこうという新しい立法でございますから、その辺は今後大いに協議を進め、知恵をしぼっていただきたいと思うわけです。  建設省にお伺いいたしますけれども、いよいよ今度の計画の中で、特に明日香における下水道の完備促進という点が入っております。ところが、私は大変心配するのでありますけれども、この下水道を完全に普及させていくためには、幹線や支線を地下に埋めなければなりません。しかし、先ほど申しましたように、住宅を建てるのでさえいろいろな遺跡にぶつかってくる。まして地下を掘っていけば何にぶつかるかわからない。この辺にいろいろ困難な条件が予想されると思うのです。同時に、そういう遺構とぶつかったときに、果たして下水道をどういうふうに連結させていくのか。時によってはポンプアップも考えなければならない。そういうことまで配慮しての今度の計画でございますか、どうですか。
  217. 升本達夫

    升本政府委員 先生御承知のとおり、明日香村の下水道は、大和川上流流域下水道に流れ込みます関連の公共下水道事業といたしまして、総事業費三十七億五千万円ということで昭和五十六年度から着手する予定でございます。現在具体的な事業実施計画を検討中という段階でございます。  確かに土地柄でございますから、御指摘のようないろいろな難関、問題が出てくると思います。その時点で個々のケースに当たって具体の設計等で考えていかなければならぬと思いますけれども、御指摘のように、状況によってはポンプアップをしなければならないようなことも出てまいりましょうし、ある程度ほかの地域に比べて事業費が結果としてかさむというようなこともあるいはあろうかと思いますけれども、さればといって、これは両方の要請を満たすような前提で事業を進めるということが必要かと思いますので、極力その条件の範囲内の効率的な事業の実施という観点から私ども考え、事業を進めていきたいと考えております。
  218. 吉田之久

    吉田委員 次に、住宅の問題でございますけれども、今度の立法の規定によりますと、第一種保存地区はいわば完全凍結の状態に持っていこう、したがって、現存する家屋自身には規制をかぶせることはできませんけれども、それ以外にはほとんど住宅を建てることは認めない、こういうのが趣旨だろうと思います。「現状の変更を厳に抑制し、」こうなっております。そうしますと、たとえば市街化調整区域の場合、農村地帯におきまして次男坊、三男坊がおる。当然この人たちが農業を営む用意をしておる。そうすると、いわゆる分家でございますね、その子供たち住宅を建ててやらなければならないという必要に追られてくるわけでございますが、これは今後どうなりますか。
  219. 升本達夫

    升本政府委員 第一種の保存地区につきましては、原則として御指摘ののように現状凍結型の規制をせざるを得ないというふうに考えておるわけでございますが、御承知のとおり、第一種の保存地区として予定されております地区は、おおむね現行の古都保存法によります特別保存地区と一致をした範囲で、それ以上に大きくは広がらないというふうに考えておりますので、現状における御不便がそのままその地区については規制として残るということはやむを得ないのではないかと私ども考えております。  第一種の保存地区につきまして現行の規制にさらに加わりますのは、建築物の意匠、それから形態、先ほど来申し上げております屋根の形でございますとか、あるいは白壁云々というような規制、それからビニールハウスの規制ということが形上は現在の特別保存地区に対する規制に加わるということでございますけれども、これも御承知のように現在行政措置として行政指導で御不便をいただいている範囲と一致するように考えておりますので、特に今回の制度改正によって規制が加重されるということにはならないのではないかと考えております。したがいまして、今日までのところ、第一種地区につきまして、御指摘のように次男、三男という方の家を建てなければならないという御要請が出るようなところは、地区柄まず御懸念はないのではないかというふうに私どもは理解をしております。
  220. 吉田之久

    吉田委員 いままで特別地区でがまんしてきたのだから今後もがまんしろというのは、ちょっと私は答えにならないと思うのです。特別地区というのは確かにありまして、おっしゃるとおりの規制は受けておりました。しかし、住民は、将来明日香特別立法ができるのだ、そういう中で、それならばどういう配慮をしてくださるのだろうか、まずはその辺までしばらく様子を見てしんぼうしようという人たちも私は確かにいると思うのです。特別地区だと申しましても、全部御商売なさっているわけじゃありません。全部お勤め人ではありません。やっぱり農業を営んでいる人たちも多分におられるわけでございますから、がまんしてきたのだからそれが未来永劫にこのままだということはちょっと私はお仕着せもいいところだと思うのです。  したがって、それならば、この人たちが今後いよいよそういう新しい住宅を農村にとどまる形で建てたいと言ってきた場合に、どう対応するかということをもう少し親切に考えてやらなければならない。どうしても第一種地区でだめだというならば、第二種保存地区へ移っていきなさいということになりますね。それならばそれだけの移れるような手だてをしてやらなければなりませんね。そういう申し出があれば直ちに時価ないしはそういう事情も十分に勘案して土地を買い上げます、そしてその資金をもとにして新しい土地を探しなさい。  しかし、実際村民感情として、これは村民に限らず大体日本人というのはそうだと思うのですが、住みなれたところから、同じ村といったって昔あれは三村合併でできている村ですから、その第二種地区の方に行くということは、なかなか精神的にも大変なことだと思うのです。また、同じ村民であっても、隣近所で住んでいるのと比べて受け入れる側も気を使うことおびただしいと思うのです。あるいはもういっそ橿原市へ移っていくか、桜井市へ移っていくか、そこは土地がうんと高騰いたしております。だとするならば、この規制によって、本当の農家の第一種保存地区の次男坊、三男坊というのは、おやじのたんぼや畑の跡に土地を譲ってもらって家を建てられる普通の人たちとは違って著しく制限を受けるわけでございますね。それを無視してはかかれないと思うのです。何かやっぱり今後に向かって配慮されなければならないのではないかと思いますが、どうですか。
  221. 升本達夫

    升本政府委員 御指摘のように、具体に、第一種の保存区域で建築行為が要請にもかかわらず妨げられるという結果になりますれば、大変住民の方々に御不便をかけるわけでございますが、そのような場合のいわば補償的な補完措置といたしまして、現行の古都保存法で、十一条をもちまして、土地の買い入れができる、建築あるいは増築を申請したところがそれが不許可になったということのゆえに御不便を生じた場合には、御要請によりまして府県が土地の買い入れをいたしますということを定めさしていただいております。このような制度を活用をお願いするということも一つ。  それから、ただいまのところでも、そういった特定の方に御不便をかけることを防止するために、村当局におきましてもそういった御要請にこたえるように、宅地造成を一種区域以外のところで計画をいたしておるようでございますし、個々の御不便に対してはそのような手だてが講じられていくことになるというふうに期待をしておるところでございます。
  222. 吉田之久

    吉田委員 宅地造成を村が主体となってやっていかれる、大変新しい知恵だと思います。国としてもそういう事業に対してこそいろんな指導、援助をしていただくべきだと思います。  同時に、私は総務長官にお聞きしたいのですけれども、この今度決められる第一種保存地区、確かに重要な場所だと思います。しかし、その地区が全部それじゃもう重大な遺構の跡ばかりかと言えば、そうとも言い切れないと思うのです。本当にいろんな風土に調和した形で住宅を建てていくならば、いろいろ調査をして、何の変哲もない土地と言えばちょっと表現が悪いかもしれませんけれども、まずはここを配慮して住宅を建てれば、それで十分明日香としての全体的な調和は崩れないではないかと判断できる場合には、せっかくの重要な土地でございますからそれは許可することも将来慎重に考えられたらどうだろうか、ただ形式的に全部凍結ということは私はちょっと行き過ぎじゃないかと思うのですね。  時間がありませんのであとの問題もかためて申しましてちょっと総務長官の御意見を承りたいと思うのです。  私個人といたしましては、飛鳥が守られてきた、飛鳥を守ろうとする国の配慮、それは大変敬意を表しているのですけれども、しかし具体的な守り方についていろいろ首をかしげている点がございます。それは何かと申しますと、これからお聞きしたいのですけれども、ビニールハウスの問題なんです。  飛鳥ブームが出てきていろんな方々が来られました。学者も文化人も政府要人もお越しになりました。そして、どこから出てきたのか知りませんけれども、ビニールハウスは目ざわりだからやめろ、こうなったのですね。それからレンゲ畑にできるだけ変えろ、こうおっしゃったのですね。それから道を舗装しろと言うのですね。飛鳥の昔だから砂利道の方がいいだろうと言ったら、いや、それは完全に舗装しろとこう言うのです。下水道は完備しろと言うのです。間違っても屎尿処理で観光客に醜いところを見せるなと言うのですね。それから、かわらは日本がわらでふけ、そして外からはできるだけ素朴に見せなさい、しかし中は冷暖房を完備した方がよろしい、民宿のためにもその方がいい、こうおっしゃるのですね。私は大変勝手気ままな要求だと思うのですよ。これは本当に飛鳥を守ろうとしているのか、何か飛鳥を観光化しようとしているのか、あるいはそういう優雅な一部の人たちが気随気ままに飛鳥を思うようにコントロールしようとしているのか。  私はやっぱりこの辺を少し、気持ちはわかりますけれども、その思いつき全部が悪いとは言いませんけれども、もう一遍原点に戻って配慮していただきたい。ただ、私が考えますのは、保存と開発と言ったらおかしいですけれども、保存された飛鳥を国民に広く公開しなければならない。公開するためにはやっぱり近代的な手法が必要であることはわかりますけれども、そこに住んでいる人たち生活条件を無視してまでこうしろああしろと言うようなことは、やはりかなり慎んでもらわなければならぬと思うのです。昔飛鳥にレンゲ畑なんてなかったと思うのですよ。もっと豪華けんらんたる都があったはずでありまして、それを学者の恣意によってレンゲ畑の方がきれいだろうとか、ビニールハウスは醜いなんと言われることは、私はどうもいまもって納得できないのです。  直ちにそのビニールハウスの制限を全部撤去しろと言うわけではございませんけれども、ビニールハウスは第一種地区においては一・五メートル以上は行政指導で現にストップされております。それから第二種についてはそれ以上のものでも許可を受ければよろしい、こうなっておりますけれども、むしろ一・五メートル以下のビニールハウスというものは、いわば仮植えと申しますか、露地栽培と申しますか、苗のころにそこで十分に育ててそしてたんぼや畑に植える、こういう性格のものだと思うのです。その最初の過程を無視して明日香に農業立村をやりなさいと言ったって、これは私はできないと思うのです。しかしどうしてもビニールハウスが醜いから何とかいい知恵はないだろうかとおっしゃるならば、ビニールハウスの周辺にたくさん樹木を植えてそしてそれを余り目につかないようにする。それは決して明日香の風情を壊すことにはならないし、むしろ高めることにもなるかもしれない。何かそういう新しい知恵を導入しませんと、目ざわりだからやめろということで住民の生活の根幹に触れる、生産手段に触れるような規制をいつまでも続けることができるだろうかどうか、もっと新しい知恵の出し方はないだろうか、こう思うのですが、長官いかがですか。
  223. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 前段の一種地区におきます構造物についてでございますが、御意見としては理解できるところでありますけれども、本来的にこの法律の企図しておりますところは、歴史的な風土そのままの姿で保存したいという意思が強く働いておるわけでございますので、やはり一部を認めてということになりますと、例外を認めてまたそれが万般に及ぶということになりますと問題になるということでして、なかなかむずかしい問題ではないかと思います。しかし、せっかくの御意見でございますので、さらに検討の余地がないか、建設省を初め当局に考えていただきたいと思いますが、非常に困難性の高いものでないかと思います。  それから、後段のビニールハウス等その他の問題につきまして、一部学者の先生方のお考えがなされ、そのことが反映しておるのじゃないかというお話でございますが、まさに先刻来問題になっておりますのは、この地区あるいはここに残されておる文化的財産そのものが国民全体の財産である、特に学者諸先生方にとりましては、学究的な立場からも非常に愛着深いというために、その地区についていろいろお考えを及ぼしておるためにそのような発言があるいはあったのかもしれません。一方で、申し上げておるように地元住民の生存権をいかに保障していくかというところの兼ね合いの問題がまさに問われておる問題であるわけでございます。この問題につきましても、将来にわたってもこうした兼ね合い、調和、調整の問題というのは、他の問題にあっても起こる可能性がないとは言えないわけでございますので、一つ一つの問題について住民の御理解をいただくようにあらゆる機関が知恵をしぼり合ってその調和点を見出すように努力をしていく以外に道はないのではないか、こういうふうに御答弁するよりこれまたいたし方がないわけでございます。
  224. 吉田之久

    吉田委員 答弁する側もなかなかむずかしいと思うのですが、私が重ねて申しますことは、ただ上から押しつけて住民の理解を求めようとするのではなしに、本当に飛鳥を守ってきたのは住民なのですから、その住民が、なるほど納得できる、ああそれほど国も配慮してくれるならおれたちもそれでやるよ、こういう気持ちで溶け込んでいかないと、どうしてこんなことしなければいかぬのだろうということをいつも首をかしげながら明日香保存だといったって、精神的な明日香保存はできないと私は思うのです。  たとえば、ガレージ。最近家を建てるには必ずガレージが要ります。ガレージががなければ車の許可がおりません。ガレージというのは、家でも大体一番目立つところにあるわけなのです。このガレージを町場のガレージのようにしてはいかぬ。わかりますよ。ではどうするかと言えば、シャッターはだめ、板製のガレージにしなさい。板製はどう開くかといったら、横に開けばよその家の前までいくのですね。観音開きにでもしなければならない、これは大変なのでございますね。だから、時代の変化の中でかつ飛鳥を残そうとするならば最大の知恵をしぼる以外にないと思うのです。  私はいろいろ学者の要望をむげに否定はしません。しかし、学者がおっしゃるからそのとおりしなければならぬということはないと思うのです。その辺を指導するのが知恵ある皆さん方の大事な任務でありますし、また、村民というのは非常に賢明でございますから、守ろうという気持ちは非常に強いものがあります。その中でどう調和しようかということは地元の意見を十分聞いてやっていただければいろいろな知恵が出てくると私は思うのです。だから、ただこうだこうだというふうにぴしっと押しつけてこれで未来永劫にこうだというような保存にならないように最大の御配慮をお願いしたい、こう思うわけでございます。  それから、普通の農村でございましたら、農道とかあるいは畦畔、あぜ道がございますね。それはそれで一つの任務を果たしているわけでございますけれども、明日香に参りましたら、農道はそのまま観光道路でございます。あるいは単なるたんぼの中のあぜ道、畦畔でもそこを散策した方がよほど雰囲気がいい、また訪ねるべき史跡があるということで、たくさんの人がたんぼの中、畑の中を歩かれます。これを歩くなとは言えません。しかも御存じのとおり、あそこは非常に傾斜のあるところで段々畑になっております。そうすると農道をつくるにしても畦畔をつくるにしても、擁壁がコンクリートであってはなりません、できるだけ石積みにしなさいとおっしゃるのですね。これもわかります。しかしそれは今日の農民の負担ではたえられないことです。災害があれば畦畔の復旧には補助が出ますけれども、現在の法律の中ではそれは認められておりません。一体この辺の配慮をだれがどうしてやるのか、基金だけでやれと言われたのでは、この基金ではとても私は無理だと思うのです。そうしたら基金はそこまでやれとは言わぬ、それは国で別に配慮するのだというようなことがあってこそ、私は今度の立法が全体として構成されていく、こう思うわけでございます。こういう、たとえば農道、畦畔、ガレージというような個々の問題について、どういう御配慮をこれからなさいますか。
  225. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 学者の先生方がこの地区について望ましき姿をそれなりにつくり上げるということは、日本国民共有の財産をそのままの姿で持ち、かつ後世にゆだねたいという真摯なお気持ちであろうと思います。しかしそれを実行しようといたしますと、いま申し上げた住民の生活に関して御指摘のような種々の問題が起こってくる。その調和をどこに求めるかということでございますが、今日この法律ができ上がりますについて、昭和五十五年度の段階でこの法律が御審議願えるというようになりましたのも、国民全体の日本の古来の文化というものに対しての認識の深まりがあって財政的負担についても応じていこうという空気があればこそと私どもは認識をしておるわけでございまして、そういった意味で地元の皆さんの困難な問題を解決するためには、いまのような国民全体の意識の盛り上がりがあって財政的負担にも十分たえ得るという時代に来つつある、こう認識しておりますので、われわれ政府といたしましてもこれから財政当局にも十分御相談しまして、それぞれの所管庁とも相談いたしまして、その調和点を求めるためにいかなる手段が講ぜられるか、真剣にこの法律の制定と同時に研究課題として取り組んでいきたいと思います。
  226. 吉田之久

    吉田委員 大変お答えにくい質問をしたようであります。しかし、これは単に私の質問ではなしに、本当に真剣に飛鳥を守ろうと考える人が今後どうしても問い詰めていかなければならない問題だと思うのです。そんなにむずかしいならやめろというわけにいかないのですね。これは壊してしまえばもう永久に戻らない遺産でございますから。しかし本当に行き届いた措置を講じて、そして飛鳥が完全に守れたときに鎌倉も太宰府も日本じゅうのそういうしかるべき場所を守っていくことが始まると思うのです。私は、そういう意味で繰り返し申し上げますけれども、いわゆるお役所的にいろいろながんじがらめの規制で金縛りする保存ではなしに、自由濶達に村民の意見を聞いて、そして大いに知恵をしぼってよりよき方法を考えていく、そういう出発でなければならないと思うのです。  最後に、観光客がいろいろごみなんかを残していく問題があります。これは非常に深刻な問題です。明日香をごみの掃きだめの場所と心得るような観光客がふえてくるようでは、私は明日香を保存した意味がないと思うのです。それは明日香の心を踏みにじるだけであります。それは国を愛する心にも通じないと思うのです。  したがって、一つの例でございますけれども、たとえば根っこの会というのがあります、財団法人根っこの会。これは十年ほど前に、私加藤会長と友達でして、明日香に研修所つくりたい、で、村も協力して非常にいい場所に、目立たないでしかも有意義な研修所をつくってくれました。その根っこの人たちはそこで研修した後全部飛鳥川へ行って清掃運動して奉仕をしてくれます。これはやはり村民に刺激といい影響を与えました。こういう村の中の人たちも、外から来る人たちも、おれたちの先祖のメッカである歴史発祥の地を愛しよう、そしてきれいにしよう、こういう心が養成されたときに、歴史的風土をとうとび、そして歴史を重んじ、国を愛する、そういう心がよみがえってくると思うのです。  そういうためには断じて教育を伴わなければならないと思います。単に文化財を守るだけではなしに、単に規制するだけではなしに、そういう大きな呼びかけを総務長官みずからがやっていただかないと事志と違う結果に終わることを私は恐れるわけでありまして、最後にそういうことについて一言お答えを聞きたいと思います。
  227. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 高邁な御識見に基づく御意見を拝聴いたしまして感銘をいたしておるところでございまして、同時にまた地元に対する愛情深いお気持ちを持ってこの法律案に対して御関心を寄せられておって、大変感謝いたしておるところでございます。  この法律の中にあります「国を愛する」という文言も、これ自体を目的としておるということでないことは申し上げましたが、やはりおっしゃるようなお気持ちを持ちまして、この明日香が、日本国民全体がいまのような気持ちを持ちましてみずからの誇るべき先人がつくり上げた財産を守っていこう、こういう気持ちに立ってこの地区を守るわけでございますから、単なる行楽のための観光地であるというようなことであっては、村民もまた国民全体も納得するわけはなかろうというふうに思っております。  私自身が教育的な立場で行動する、問題を行う立場ではありませんけれども、この法律が投げかけた問題というものはまさに吉田委員御指摘のようなことも十分含まれておると理解をいたしておりますので、この法律施行になりましたら、この第一条の目的を十分達成し得るように、いまのような問題も十分含んで努力をいたしていきたいと思います。
  228. 吉田之久

    吉田委員 一人の国務大臣としてさらに自信を持って積極的にこの保存の対策を進められますことをお願いいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  229. 北側義一

    北側委員長 次回は、来る四日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十四分散会