○千葉
政府委員 去年の十一月にこの事件が起こりましてから、まず
外交チャネルを使いまして、
イラン当局に対して、このような国際法違反、国際秩序を破壊するようなおそれのある行動及び人道上容認できないような行動をやめてくれということを
申し入れております。これは
外交上の問題でございますので、何月の何日というところまではちょっと申しかねますけれ
ども、とにかく事件が起きてからほとんど二日ぐらい後でございますが、
和田大使が
イランの
外務省に参りましてそういうことを言ったわけでございます。
その後、若干回同じようなことを繰り返しております。これはなぜそういうふうに、いわば穏密裏と言うと語弊がございますけれ
ども、
外交ルートを使ってそういうことをしたかといいますと、当時の状況は、今日でも大差ございませんでしょうけれ
ども、非常に複雑な
イランの国内
情勢等にかんがみて、正面切って公開の場でそういうことをやるということよりは、そのような
外交ルートを通じて静かにやる、静かな
外交とでも申しましょうか、そういうことの方が効果ありと
判断したからでございます。
そこで、それらのアプローチを通じてこちらが得た印象は、大体において
イランの
外交当局者はもちろん
——狭い
意味の
政府でございます。
政府といいましてもいろいろな定義がございますが、この場合は行
政府といいましょうか、狭い
意味での行政の中においては、人
質問題は一刻も早く解決しなくてはならない、そういう
考え方があるということが印象として出てきたわけでございます。ただし、これはもちろん何回かにわたってやっておりますから、一々その都度同じような印象ではございませんけれ
ども、大体においてそのような感じを受けたというのが第一点でございます。
次に、今度は公の場におきましては、
外務大臣の国会における
答弁とかあるいは総理
大臣の当時の臨時国会におきます所信表明演説でありますとか、そういったような場におきまして、わが方としてもただいま申し上げたようにこの問題が早く解決されることを望む旨を述べております。
そして十二月の初めになりまして、国連の安全保障
理事会におきましてこの問題を審議し、続いて御存じのとおり一応国際司法裁判所への提訴を
アメリカはやりましたのですが、そういった一連の広い
意味での国連を舞台とする動きがございまして、そこにおきましても
日本の代表は
発言を求めまして、これは国際司法裁判所は別でございますが、国連の安全保障
理事会でございます。なお、
日本は安全保障
理事国ではございませんけれ
ども、求めれば
発言できるような体制になっておりましたので
発言いたしまして、やはりただいま申し上げましたような意のあるところを今度は公開の場で述べております。これは国際世論その他を
考えて、やはり
日本としてもはっきりしなければならないと思ったわけであります。ただし、先ほど
委員御
指摘のとおり、
日本は他の先進工業諸国と違いまして、
イランに対しては
関係がより厚いと申しましょうか、良好という表現もいいかと思いますが、そういうこともありましたので言葉遣いに非常に注意したわけでございます。これは先ほど
外交チャネルを通じて
イラン側と非常に静かに話したということの延長線上にございます。しかしその後
事態がなかなか改善しませんし、また御存じのとおり国際的にもいろいろな波紋が広がるばかりでございましたので、そこで
日本としてもまた別の
機会にもう少し意見をはっきりさせたわけでございまして、それは具体的には十二月の半ばごろの
外務大臣の見解表明といったようなことが御記憶に新たかと存じますが、そういった点で一層はっきりさせたわけでございます。
そのころからはっきりしてきたことは、国際社会というものがやはりこのような
イランの人質事件というものを容認していないということがますますはっきりしてきたわけでございます。
日本もそういったふうな流れを看取いたしておりまして、その
段階でもって
ヨーロッパと同じ
立場であるということが非常にはっきりいたしたと存じます。そして、年末にアフガニスタン事件が起きたことは御存じのとおりでございますが、年が明けましてからいろいろと動きが急になりまして、初め、
アメリカからハビブ元大使が特使として参りまして
——これは
アメリカが提案し安全保障
理事会で否決されましたけれ
ども、
経済制裁等に
日本が
協力するような依頼も来ておりまして、いろいろと
検討したわけでございます。ただし、御存じのとおりいまだに全く発動いたしておりませんで、現在も
検討中でございます。
それで、これは先ほど
井上委員に対しまして
外務大臣から御
答弁申し上げましたように、先般
ECのリスボン外相
会議で、
ECがそろって
イラン側に対して
申し入れをするということで、
日本もそれに加わったらどうかという勧奨がございましたので、
日本もこれに加わるという
決定をいたしまして、先日
和田大使が他の
EC諸国大使とともに
イランの
バニサドル大統領に会って意のあることを
申し入れたことは御存じのとおりでございます。
そして
EC諸国と軌を一にしまして今度
和田大使に一時
帰国を訓令したわけでございます。大使は明日の午後遅く到着の予定でございます。
大体以上が、きわめて大ざっぱでございますが、
日本政府のとりました一連の行動の要約でございます。