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1980-04-15 第91回国会 衆議院 決算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十五日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 高田 富之君    理事 津島 雄二君 理事 原田昇左右君    理事 森下 元晴君 理事 井上 一成君    理事 新村 勝雄君 理事 林  孝矩君    理事 庄司 幸助君 理事 中野 寛成君       小里 貞利君    東家 嘉幸君       羽田  孜君    上田  哲君       藤田 高敏君    渡部 行雄君       春田 重昭君    岩佐 恵美君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房領         事移住部長   塚本 政雄君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         外務省中南米局         中南米第一課長 小野 純男君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         厚生大臣官房国         際課長     金田 伸二君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       浜岡 平一君         会計検査院事務         総局第一局長  岩井  毅君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     渡部 行雄君 同日  辞任         補欠選任   渡部 行雄君     藤田 高敏君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十二年度政府関係機関決算書  昭和五十二年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十二年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管)      ————◇—————
  2. 高田富之

    高田委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、外務省所管について審査を行います。  まず、外務大臣から概要説明を求めます。大来外務大臣
  3. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 昭和五十二年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は一千八百六十一億九千六百七十七万円余でありまして、支出済み歳出額は一千七百五十億七千百五十二万円余、翌年度繰越額は七十四億二百六十一万円余、不用額は三十七億二千二百六十三万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額一千七百十六億六千四百九十二万円余、前年度繰越額百十五億一千百三十四万円余、予備費使用額三十億二千五十万円でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、経済開発等援助費百十三億九千二百五十七万円余、在外公館施設費一億一千八百七十六万円余であります。  支出済み歳出額の主なものは、科学技術振興のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として八億六千三百三万円余、並びに各種国際機関に対する分担金等として二十四億九千六百七十一万円余。  次に、経済協力の一環としての技術協力の実施につきましては、コロンボ計画等に基づく技術研修員三千百二十三名の受け入れ及び専門家八百九十三名の派遣事業のほか、青年海外協力隊派遣開発調査センター協力機材供与保健医療協力農林業協力開発技術協力開発協力専門家養成確保等事業アジア諸国等開発途上国に対する経済開発援助及び国連開発計画等の多数国問経済技術協力のための拠出等に要した経費九百二十八億二千五百九十八万円余。  さらに、移住事業につきましては、中南米等への移住者三百七十二名を送出及びこれを援護するため等の経費四十八億九千五百七十三万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰り越しのものは七十二億四千四百七十七万円余でありまして、その内訳は、経済開発等援助費六十八億八千七百八万円余、在外公館施設費三億五千七百六十九万円余。  また、財政法第四十二条ただし書きの規定による事故繰り越しのものは一億五千七百八十四万円余でありまして、その内訳は、国際文化団体補助金一億五千七百八十四万円余であります。  不用額の主なものは、外務本省の項で退職手当を要することが少なかったこと、経済協力費の項で経済開発等援助費を要することが少なかったこと、国際分担金その他諸費の項で為替相場の変動に伴い、経済協力国際機関等分担金を要することが少なかったこと並びに在外公館の項では、職員諸手当を要することが少なかったこと等のためであります。
  4. 高田富之

    高田委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。岩井会計検査院第一局長
  5. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 昭和五十二年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  6. 高田富之

    高田委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  7. 高田富之

    高田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  8. 井上一成

    井上(一)委員 まず私は、アメリカイランの残念な形での外交関係に関連して、わが国の基本的な外交方針を尋ねていきたいと思います。  まず第一点につきましては、対米協調姿勢わが国外交方針、このことから生ずるイランからの石油停止覚悟をした上でその対米協調姿勢を貫く考え外務大臣は持っていらっしゃるのかどうか、まずこの点について聞かしていただきたいと思います。
  9. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本外交は対米外交、対イラン外交とも友好関係の維持に努めてまいりまして、私どもとしてはこの関係を将来も維持したい、また石油問題も起こらないように極力努力することが現在なすべきことだと考えておるわけでございます。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカに対してもイランに対しても友好関係を保持したいというのは、これはもうわかり切ったことなのです。しかし、アメリカから日本政府に対して、対イラン政策要請があったでしょう。それをどう受けとめ、それに対してどう対応するのか、そのことについて尋ねているのです。
  11. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 要請がございまして、その対応については政府内部でもいろいろ協議が行われておるわけでございます。一つ対応といたしまして、せんだってEC九カ国外相の会議がリスボンで開かれまして、この決議におきまして、イラン政府に対して人質解放の時期、段取りについての確答を求める、さらにEC各国大使がそれぞれ本国に帰って報告をするという決定を行いまして、同時に日本政府に対してこのEC決定協力してもらえないだろうかという要請がございまして、日本政府もこれに協力する。それに基づきまして、せんだって日本イラン駐在和田大使も、EC各国大使とともにバニサドル大統領に会いまして、ただいまの決議趣旨イラン側申し入れたという経過がございます。したがって、このアメリカ側申し入れに対しては、とりあえずいまのようなEC諸国との共同的な申し入れの結果を見るということが、まずいまの段階でとるべき措置として対処いたしておるわけでございます。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣は、石油よりもむしろ対米協調だということを言われているのですよ。本気でそういうことをあなたはお考えなのかどうか、そういうことを聞いているのです。もし本気でそういうことであれば、わが国の必要とする石油供給がとまれば、それはどこで補っていくのか、あるいはどういう対応をしようと外務大臣考えていらっしゃるのか。ECとの同調ということですけれども、私はやはりアメリカ日本関係イラン日本関係というものは、必ずしもECアメリカ関係ECイラン関係とは同じでない、こういうふうに思うのです。その辺はどうなのですか。
  13. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私が述べましたのは、先週の金曜日、外人記者会見におきまして、外人記者質問に答えました。日本イラン問題についての対策は石油問題がすべてであるかという質問がございましたので、石油日本にとって死活的な重要性を持っておる、しかしそれ以上に大きな——コーズと申したのですが、問題があるときにはさらに考える必要があると思うという返事をいたしたわけでございまして、対米問題をその場合に取り上げて申したわけではございませんが、いまのような趣旨答弁をいたしたわけでございます。イラン石油日本の現在石油輸入の大体一一%ぐらいになっておりますから、これはもちろん供給がとまれば非常に重大な影響があると考えておるわけでございます。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 より重大な理由というのは、対米関係なんでしょう。
  15. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 対米関係も含まれると思いますが、私は一般的な意味で申したわけでございます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 私はここで、日本外務大臣としてお聞きしているのですよ。一般論質疑をしているのじゃなくて、具体的に起こっている現象に対する外務大臣の取り組みの姿勢を聞いているのですから。その理由とは対米関係でしょう。
  17. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 一般的には、対米関係、対ヨーロッパ関係対ソ関係、いろいろな問題が含まれると思います。しかし、当面の事態から考えれば、御指摘のように対米関係がきわめて重要だろうと考えております。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 まさに外務大臣の言われておるように対米関係、いわゆる石油よりも対米関係を優先する。アメリカカーター大統領は、イラン制裁への協力要請短期間期限づきである、そういうふうに言っているわけなんですね。これは事実なんでしょう。
  19. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 できるだけ速やかにということでございまして、何月何日ということは言っておらないわけでございます。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 もちろん決まった日にちまでは指定はされていないけれども外交上いわゆる政府間同士の常識的な短期間という期限づきというものは、大体どれくらいの日数を指すのですか。たとえば一カ月だとか、二カ月だとか、三カ月——半年も一年もというのは短期間じゃありませんね。
  21. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 カーター大統領ヨーロッパ記者団会見をいたした際には、何カ月という問題ではない、数週問というのも長過ぎるというような返答をされたようでございます。これは記者会見で、そのことについて私どもに正式な連絡があったわけではございませんが、数週間以内と考えるのがいまの情勢では正しいのではないかと存じます。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 正式な要請、通告はなかったけれども、それじゃ外務省としては数週間という期限で受けとめているわけですね。
  23. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 カーター大統領のそういう発言がございますので、私どもとしても一応そういう感じで受けとめておるわけでございます。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、わが国は具体的に何をどのようにしようとお考えでいらっしゃるのですか。
  25. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど申しました、まずイラン側への働きかけ、その結果を見ようということでございます。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 カーター大統領アメリカ立場は、国連安保理決議で盛られていたいわゆる経済制裁をまず実行してほしい、こういうことなんでしょう、それを数週間という期限づきで。そういうことじゃないのですか。ECとの話し合い、そんなことでカーター大統領要請したのじゃありませんよ、外務大臣
  27. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 お話しのとおりでございます。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 お話しのとおりであれば、その経済制裁とは、何をわが国はどのような方法でしようと考えているのですか。さっきの答弁じゃECとの話し合い云々ということだった。私はそうじゃないと思う。カーター指摘をしているのは、イランに対して経済制裁を加えることに同調してほしい、そういう要請協力してほしい。それは一月も二月もではない、数週間だ。わが国石油よりもそのことに重きを置くのだ。こういう論点から、これはわが国経済制裁イランに対して何をしようとしているのか、外務大臣
  29. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカからそういう要請があることは事実でございますが、ただEC諸国なり日本がとる態度というのは独自のものがあってもよろしいわけでございまして、そういう意味イラン大統領に対する申し入れも行ったわけでございます。その結果を見て次のステップを考えるというのがいまの態度でございます。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカに対してわが国のそういう姿勢は伝えてあるのですか。経済制裁をすることはまだ考えておらぬ、それ以前にもっともっと平和的に話し合いで対イラン外交を進めるのだということで、アメリカにはわが国姿勢を伝えてありますか。
  31. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはEC側から伝えたと判断しておるわけでございます。こういう情勢は当然アメリカ側にもわかっておると思います。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 対米外交を基軸にしているのだというわが国基本的外交方針の中で、ECが伝えるであろう、そのことによってアメリカが理解してくれるであろう、そんな頼りない外交では困りますね。わが国の自主的な主体性のある外交というものはそういうものであってはいけない。アメリカカーター大統領要請しているものは何なのかといえば、いま大臣も言われたように経済制裁、このことなんでしょう。それを期限つきで言われているのでしょう。それに対して日本はどうするのだ、やるのかやらないのか、本気でそんなことを考えているのか、こういうことを聞いているのです。
  33. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは日本政府としても目下鋭意検討中でございまして、できることできないこと、検討中でございます。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 できることとできないことを検討中、できることは何なのですか。
  35. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは現在検討中でございまして、結論は得ておりません。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、経済制裁については目下できる部分とできない部分とを検討中である、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  37. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私ども経済制裁という言葉を使っておらないので、対イラン措置というようなことで表現しておりますが、経済問題だけではなくて、大使召還等政治的措置も含まれるわけでございまして、これら全体を含めて検討中でございます。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 それではお聞きしますが、あす和田大使帰国をする、これは召還なのですか、一時帰国なのですか。一時帰国とするならば大体どれぐらいの日時わが国に滞在をするのですか。
  39. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 一時帰国でございます。この点、どのぐらい滞在するかという御質問につきましては、これはEC諸国日本が共同してイラン大統領申し入れいたしまして、イラン側反応等を見ながら、またEC諸国とも相談しながら決めることになるかと思いますので、いまの段階で何日ぐらいということは申し上げることができないわけでございます。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 一時帰国、そして今後の外交を待って判断をしていきたい、ということは逆に、一時帰国本国に帰ったけれども今後の進展ぐあいによっては帰任しないこともあり得るというふうに理解してよろしいでしょうか。
  41. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 報告のために帰国するわけでございますから、たてまえとしては帰任するというたてまえでございます。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 たてまえは帰任するということだけれども、いま進展しつつある外交の中でひょっとしたら、どういうふうにそれは外交が展開されるかわかりませんし、努力したけれどもそれが効果がなかった、場合によっては帰任しないこともあり得る、こういうことですね。
  43. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私ども立場としてはなるべく帰任するように、事実九百七名の在留邦人も現地におりますし、そういう問題も含めて帰任すべきだと考えておりますので、よほど特別な事態が発生しない限りは帰任するというたてまえで考えております。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 たてまえ論では困るわけなんです。どんな事態があろうとも一時帰国であれば再びイランに帰る、どんな状態があろうとも帰る、そうなのか、そうじゃなく、たてまえはそうだけれども外交上いろいろな問題が今後起こり得るであろう、予想されるであろう今日としては、帰国をした和田大使はそのまま帰任しないこともあり得る、それが本音だというふうに理解してよろしゅうございますね。もう一度伺っておきます。
  45. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そうではございませんで、あくまでも帰任することがたてまえでございます。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣イラン制裁措置の中で、時によっては断交もあり得るのだというような発言をなさっていらっしゃいますね。
  47. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いますぐということではないけれども、将来の推移を見て断交ということも友好諸国検討してまいりたいという要請があるということを申したわけでございます。
  48. 井上一成

    井上(一)委員 わが国アメリカに追随して、第三世界の人々を敵に回す、その人たち友好を断ち切る、外務大臣はそういうような考えを持っているのですか。
  49. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう事態に立ち至らないためにできるだけの外交努力をしなければいけない。ECとの協力というのもその一つのあらわれでございます。
  50. 井上一成

    井上(一)委員 いついかなるときでも世界のすべての国と平和友好関係を強く発展、維持さしていきたいというのが日本外交方針日本基本方針でしょう。アメリカからいかに強い要請があろうとも、わが国基本方針をなぜ言えないのですか。あるいは、それだけきっぱりと平和外交に徹しられないのですか。友好関係を持続するんだという強い決意は、外務大臣、持っていらっしゃらないのですか。
  51. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題は状態推移いかんによってはという要請でございますので、いまの状態で断るとか断らないということではないと思いますし、基本的には日本としてはできるだけ各国との友好関係を維持すべきだと考えております。
  52. 井上一成

    井上(一)委員 頼りない答えはだめなんですよ。だから、ただアメリカ外交に下請的にわが国が乗せられているのか、そういう外交をしていくのか、少なくともわが国の固有の自主的な平和外交を推進するのか、どうなんだ。やはりアメリカにも言いたいことはきっちり言わなければだめですよ。断交まではしないのだ、あるいはそういう経済措置をあえてわが国がすることがいいのかどうか検討中だということですけれども、明白にわが国基本姿勢アメリカにも申し上げなければいけないのじゃないのですか。
  53. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本立場は従来からいろいろな機会アメリカ側に伝えてございます。いまの問題につきましては、将来の情勢によってはという仮定の問題でございますから、従来からいろいろな機会での話し合いを通じて米国側にも伝わっておると考えておるわけでございます。
  54. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃここでもう一度確認をしておきますが、国会でのこの質疑を通して、外人記者に語られたことあるいは一般論あるいはたてまえ論、そういうことで過ごされるのではなく、わが国は対米協調のためならあえてイランからの石油供給がとまろうとも覚悟の上であるというお考えを持っていらっしゃるのですか。
  55. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは全般的な日本の国益という立場から判断しなければならない問題でございまして、イラン石油という問題、日米関係に重大な亀裂が入るという可能性の問題、この両者の日本の将来に及ぼす影響というものを考えてみなければならない、検討してみなければならない問題でございます。日本としては、先ほど来申し上げますように、そういう重大な選択に直面しないで済むように、これはある程度ヨーロッパ諸国も同様な問題があるわけでございますので、欧州諸国とも協力しながらそういう重大な選択を避けたいという努力をしておるわけでございます。
  56. 井上一成

    井上(一)委員 そういう重大な選択は避けたいけれども、避けられない場合もあり得るということですね。
  57. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう避けられない事態に至らないようにできるだけの努力をしたいというのがわれわれの考えでございます。
  58. 井上一成

    井上(一)委員 努力をしたい、努力をしていますということ、それはそれとして、努力をしたけれども、結果そういう事態も起こり得る、いわゆる予想的な判断ですけれども、そういうこともあり得る、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますね。
  59. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、いまの段階ではそういうことを断定的に申し上げる段階でもないと思いますし、いまのような事態が万一まいりますときは、やはりこれは国民全体の選択の問題でもある。日本の安全とか経済とか、そういうものも総括的に考えました日本の将来の対外姿勢対外関係という全般的な立場から判断すべきことだと思います。
  60. 井上一成

    井上(一)委員 まさに国民的判断ということ、国民的な判断、合意、開かれた外交という見地からも当然であります。しかし、国民判断しようと思うには正しい情報がなければ、正確な、的確な情報国民に提供されなければ国民判断できないわけですよ。外務大臣、おわかりですか。いままでに十分に国民に正しい、いわゆる的確な情報を提供しているとお考えになっているのですか。私がいまここで聞いたって、たてまえはこうだ。たてまえがそうであれば本音はどうなんだと言ったって——いわゆる和田大使の一時帰国についてだって、国民はこれをどう理解するのですか。国民の正しい判断を求めようとするならば、的確な情報国民に提供しなさい。
  61. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私は、日本のマスメディアに相当的確な情報が伝わっていると考えます。ただ、問題によっては外交関係につきましてはある時期まで明らかにできない、一般に公表することが外交関係自体に非常に重大な影響があるという場合もございまして、ある時期、ある問題については公表できないということもある点は御了承願いたいと思います。
  62. 井上一成

    井上(一)委員 さらにこのイランの問題では、わが国経済協力をしているイラン石化の問題、これの対応策はどうお考えなんですか。すでに二百億円の出資が閣議で決定され、なおかつ一部それが払い込まれた、こういうことなんです。対米協調石油供給がストップすることも覚悟しなければいけないんだ、そういう中でイラン石化の問題はどのように位置づけ、どのように対応されるのですか。
  63. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 従来の政府立場イラン仕事の継続という立場でございまして、現在はその方針で進行いたしておるわけでございます。
  64. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃイラン石化についてはアメリカとの話し合いの中で、いわゆる経済措置の範囲、対象から外しているわけですか。
  65. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは従来からいまの仕事を続けるという方向で来ておるわけでございまして、そういう意味で外す外さないという問題ではございません。もちろん、イランが一体どうなるのか、これは私どもを含め、世界各国を含め、どうなるのか、この事態を的確に予測することはできないわけでございまして、今後の情勢もウオッチしていかなければならないということになるかと存じております。
  66. 井上一成

    井上(一)委員 私は、このイラン石化については角度を変えて、いろいろ問題をはらんでいるということは毎回指摘をしているのです。きょうはそういうことじゃなく、そのことは別にして、イラン石化の問題についてわが国がどう対応していくのか。カーター大統領から経済措置要請され、そして対米協調をしていくんだ、そういう中にあってイラン石化だけは例外としてみなされていくのか、あるいはそれも包括して対米協調姿勢をとっていくのか。そうするならば、わが国の二百億円の出資はどういうことになるのか、こういうことを外務大臣に聞いているのですよ。
  67. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本政府方針は、先ほど来申しましたようにIJPCの仕事を中断させないでいきたい、できる限りその方針を貫くということでやっておるわけでございます。
  68. 井上一成

    井上(一)委員 現実の問題をはっきりしなければいけないのですよ。続けたいというそういう希望、それは持っているとしても、実際にはとまっているし、そして外交上はこの問題だってアメリカとの協調関係の中では包括されている、私はそのように理解をしているのですけれども、そうじゃないのですか。外務大臣はそう理解されないのですか。
  69. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題、やはり日本政府自体が自主的に決めるべきことだと考えております。ただ、その情勢推移というのがかなり不安定、不確定要因が含まれておりますから、その情勢対応して考えていかなければならないということを申したわけでございます。
  70. 井上一成

    井上(一)委員 非常に不安定、不確定要因が多い、そのこと一つをとらえても、そういう不安定なプロジェクトに対して二百億円、これは国の金を投入した。国の金を投入したことが正しい——私は大きな誤りを犯したと思っているのですが、正しいとお考えですか。そして、そのことは効果が生まれると、こういうふうにいまでも御認識をなさっていますか。
  71. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 当時の決定をいたしました段階では、こういうイランの事件の発生以前でございまして、その当時の政府判断としては、産油国がその石油を加工する過程にだんだん出ていくということは、長期的に見て日本のエネルギー確保にもつながるという判断であったと存じますので、その段階におきましては正しい判断をしたと考えております。
  72. 井上一成

    井上(一)委員 当時としては正しい判断だということですが、現時点ではいかがでございますかということです。
  73. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは短期的には判断がかなりしにくい問題でございまして、仮に、将来ある時期におきまして、イランのたとえば人質問題が解決する、そうすれば当然日本イラン関係も正常化すると存じます。そうなってみれば、やはり長期的な観点から見れば、このイラン石化事業というのは日本の国益にもかなうし、また相手の国のそういう石油の加工段階を発展させたいという要望にもかなうことになるだろうと思います。
  74. 井上一成

    井上(一)委員 大臣非常に歯切れの悪い答弁ばかりで、むしろ、そんな歯切れの悪い日本外交であれば先が案じられます。こんな形でいいのかどうか。  さらに私は、時間がありませんから、オリンピック問題について外務大臣考えを二、三聞いておきたいと思います。  アメリカのオリンピック委員会は、モスクワ・オリンピック大会の不参加を十二日に決定いたしました。この決定は、カーター大統領の、国家の安全が脅かされるんだとの、そういう勧告に基づいて、不満ながら従ったのだというふうに報じられております。このことは、スポーツが政治に従わざるを得ないことを如実に証明したものだ、私はそう受けとめるわけです。  政府としては、スポーツと政治とは無関係なのか、あるいはそれとも政治あってのスポーツであるという考えを持っていらっしゃるのか、まずこの基本的な見解から尋ねておきたいと思います。
  75. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 スポーツと政治は無関係であることが望ましいことはもとよりでございます。  ただ、これは昨日のある新聞にも出ておりましたように、いずれにしても政治的になっておるという場合に、どちらの政治的な方が問題かという選択の問題であって、スポーツと政治の選択ではないという面があるように考えております。
  76. 井上一成

    井上(一)委員 スポーツは政治からの独立というものが基本精神だと思うのです。その基本精神からいけば、今回のアメリカ措置というものに対して政府はどう考えていらっしゃるのですか。
  77. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは二月一日の政府のJOCに対する見解表明ということにも盛られておるわけでございまして、そもそもこのモスクワ・オリンピックの問題が起こりましたのは、ソ連軍のアフガニスタンに対する軍事介入という平和に反する行動がとられた、その国が主催するオリンピックであるという問題から発生しておりますので、たとえば、適当な期間にソ連がアフガニスタンから撤兵すれば問題は一時に解消するというのがわれわれの立場でございます。
  78. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、私の質問趣旨を十分踏まえて答えていただかないと、一般的に近い答弁は困りますね。  じゃ具体的に、オリンピックに参加することは政治問題なのか政治問題でないのか。
  79. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これもまたケース・バイ・ケースでございますから、現在のような国際環境のもとではかなり政治的な問題だろうと思います。
  80. 井上一成

    井上(一)委員 現状の認識では、国際情勢では政治問題だ、そういうケース・バイ・ケース——じゃ、これはもうオリンピックに参加してもしなくても政治問題ですね。そうでしょう。
  81. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 たとえば、東京オリンピックに各国が参加するというときには余り政治問題はなかったのだろうと思います。しかし現在のこのオリンピックにつきましては、参加しても参加しなくてもかなり政治的な面があるというふうに思います。
  82. 井上一成

    井上(一)委員 そうなんですよ。そうして、この国会の場での、委員会での質疑は、具体的な事例に対する政府見解、そしてそれに対する質問ですから、一般論をここで論じているのじゃないのですよ。世の中で、世界の中で起こっている問題、いま日本が抱えている問題、そういうことを論じているのですから、私は明確な答弁をここで要求をしておきます。  さらに私は、それでは今度は、出ても出なくても、参加しても参加しなくても政治問題だ、それは私も全くそうだと思う。そうすると今度は、いろいろな意見があるでしょう。それで今度は大臣として、もし仮に競技団体、個人としての資格で参加をする、そういう場合が起こり得た、との場合、外務大臣としては、対アメリカ外交、対ソ連外交、いわゆるそういう外交上から見て、参加することが望ましいのか望ましくないのか、それがいいのか悪いのか、外務大臣の見解を聞かせてください。
  83. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの御質問に対しては、オリンピックの所管大臣が文部大臣でございます。で、この点に関しましては、やはり総理を含む内閣としての見解に従うべきでございまして、外務大臣としていいとか悪いとかいうことをいまの段階で申し上げることは困難でございます。
  84. 井上一成

    井上(一)委員 多分そういうお答えが出るだろうと思って、私は外交上どうなんだという——これは外務大臣の所管ですよ、これは文部大臣の所管じゃありませんよ。オリンピックに参加するしない、個人で参加をするしない、そのことは、その参加することへの直接の決定なりあるいは直接のかかわり合いは文部大臣であるとしても、そのことが影響する対外政策、おわかりですか、対ソ連外交、対アメリカ外交、いわゆる外交上の問題として外務大臣はこれをどう受けとめられるのか、これは外務大臣の所管じゃありませんか。このことがあなたの所管でないとするなら、あなたはみずからその責任を果たすことができないのですよ。そんなことで、いま非常に厳しい世界情勢の中に置かれている日本外交が守っていけるのですか、外交がやっていけるのですか。外務大臣、答えてください。
  85. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 オリンピックに参加、不参加の問題は、国際的にはIOCが決めるということで、レークプラシッドでIOCは参加を決めたわけでございます。しかし、各国がそれぞれ参加するかしないかは、NOC、各国のオリンピック委員会、日本ではJOCが決める。二月一日の政府の見解におきましても、最終決定はJOCがやるべき問題である。いまの御質問の点につきましても、個人参加の問題もJOCが決定権を持っているというふうに考えております。
  86. 井上一成

    井上(一)委員 そのことはよくわかっているのですよ。だから、あなたに決定権があるとか、あるいはあなたが選択をするのだとかいうことを私は問うているのじゃありません。たとえば個人参加あるいは参加をするしない、そういうことは外交上どう影響するのか。それは対アメリカ外交、対ソ連外交、そういう意味でどう影響していくのか、これは外務大臣の見解ですね。これはJOCの会長でもなければ文部大臣でもないですよ。外務大臣の見解をここで聞いておきたい。まず参加をする場合、参加をしない場合、個人で参加をした場合、外交上どういうふうに影響があるのか、こういうことですよ。
  87. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外交上ということになりますと、先ほども申しましたように、ソ連がアフガニスタンから撤兵することがない限り、日本外交上、オリンピックに参加することは望ましくないというふうに考えております。
  88. 井上一成

    井上(一)委員 それは個人参加も含めてでございますか。そういう場合も含めてでございますか。
  89. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その辺になりますと、これはやはり文部大臣、総理大臣と協議しなければ、この場で私の意見を申し上げるわけにはまいりません。
  90. 井上一成

    井上(一)委員 非常に玉虫色というのか、玉虫色外交。大来外務大臣、やはりあなたはしっかりと、きっちりとした意識を持っていただいて、それを表明し、そしてそのことに対して国民がどう判断をしていくか、そういうことを的確に受けとめなければいけないと思うのです。だから、政府としては、行かないでくれ、参加をしないでほしい、ところが競技団体は、それでは個々に勝手に行きましょう、そういう場合、これは一つの非常に現実的なケースだと私は思うのですよ、起こり得るであろう現実的なケース。この場合には、それはそれぞれ各競技団体が勝手になされたことだから、政府としては一応参加をしない方針決定しているのだったら、それで外交上問題はない、こういうふうにお考えなのか。そういう場合でもあえて外交上困るとおっしゃるのか。この点だけ、どちらか一つお答えをしてください。
  91. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはJOCが、各国のオリンピック委員会の動き等を見ながら、五月二十四日が最終のエントリーの期日ということになっておりますから、それまでに判断すべき問題だろうと思います。
  92. 井上一成

    井上(一)委員 いや、競技団体が参加をするしない、それはJOCが判断される問題なんですよ。そんな場合、外交外務大臣としては、そのことについては支障がない、そういうケースの場合は支障がない、そういう受けとめ方を持っていらっしゃるのか、それとも、そういう場合でも好ましくない、それは外交上よろしくないのだ、こういう考えなのか、そのどちらなんですかということを聞いているのです。
  93. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いずれにしても、先ほど申しましたように、国際情勢が平和な雰囲気になるということでないと望ましくないわけでございますけれども、しかし、JOCとして参加する場合と個人的に参加する場合とはある程度ニュアンスの違いがございます。この点はまた国内問題でもございますので、どちらがどうということをいま私から申し上げるのは適当でないと考えておるわけでございます。
  94. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、対米協調という外交の基本を盾に、米国並みにJOCに政府が圧力をかける、あるいはそういうことのニュアンスで対応していくということはあり得ないと私は信じるのですが、念のためにここで聞いておきます。そういうことはあり得ませんね。
  95. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはJOCが決めることだということは、政府立場も明らかになっております。
  96. 井上一成

    井上(一)委員 JOCが判断をし、かつまた、いま私が再三指摘をするように、競技団体の任意の中での参加、そういうことが起こり得る、そういう場合、外交上何ら支障はありませんね。
  97. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 望ましいけれども、JOCとして参加する場合とは程度が多少違うだろうということを先ほど申し上げたわけでございます。
  98. 井上一成

    井上(一)委員 もう一度確認をします。くどいようですけれども、その場合は外交上何ら影響はない、そういうふうに私は受けとめますが、よろしいですね。
  99. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外交上望ましくないけれども、程度の違いがあるということでございます。
  100. 井上一成

    井上(一)委員 さっきは望ましいという表現をされたと思うのですよ。だから私はさっき、JOCで参加するよりもそういう形の方が望ましいんだというふうに大臣はお考えのように受けとめたのですがね。  だけど、もう一度ここで、JOCで参加するよりも、競技団体、個人での参加、そのことにおいて外交上支障がない、しかしそれは、お決めになるのはそれぞれの団体である、ぼくはこう思うのです。そういうことでよろしいですかと聞いている。
  101. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そのこと自体は、やはり先ほど来申し上げますように外務大臣一存で決められない問題でございますが、外交上どうかという御質問でございましたので、JOCとしての参加も個人的な参加も、ともに望ましくない、外交上は望ましくない、ただ程度の差があるだろうというふうにお答えしたいわけでございます。
  102. 井上一成

    井上(一)委員 個人参加の場合外交上望ましくないというのは、どういう点が望ましくないのですか。
  103. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 それは、モスクワ・オリンピック全体として参加、不参加の問題が起こっておるわけでございまして、それはアフガニスタン事件に端を発しているという全般的な状況から申して望ましくないというわけでございます。
  104. 井上一成

    井上(一)委員 認識を改めてもらわなければいけない点も非常にたくさんあるのですけれども、個人参加をしたい、個人で参加をする、世界のそういうオリンピック競技に参加をする、アフガニスタンとその個人との関係というのは何も直接のかかわり合いはないのですよ。モスクワの地でオリンピックが開催される、しかしこのオリンピックは国際オリンピック委員会が主催するのですよ、大臣。おわかりですか。ソ連政府がやるのじゃありませんよ。おわかりですね。どうなんですか。国際オリンピック、ただモスクワというソ連の首都で行われる、そしてそのソ連が政治的に抱える問題がアフガンの問題である、そういうことには私も理解をしますし、その問題はその問題で処理していかなければならない。それは政治での努力である。だからと言って、スポーツまでそれに巻き込むということは私はよくないと思う。こういう判断をしているのです。だから、どうしてもJOCでの参加が望ましくなければ、個人参加の方がより望ましい、こういうふうに受けとめているのですが、もう時間がありませんから、大臣、このことだけでどうですか。JOCでの参加よりも個人参加の方がよりましだ、こういうふうに受けとめているのですが、それでよろしゅうございますね。
  105. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 どうもたびたび繰り返して申しわけございませんけれども、双方とも望ましくない。ただ多少の程度の差があるだろうということを申し上げたわけでございまして、この点についてはやはり政府内部としても検討いたさなければならないと同時に、参加各団体等の関係で、基本的にはJOCの決めるべき問題であるということを申し上げたわけでございます。
  106. 井上一成

    井上(一)委員 それぞれの協議団体からオリンピック参加を強く要望し、参加したいという願いを持つ、そういう希望を持つ選手あるいは関係者がたくさんいらっしゃるわけです。そういう人たちの声というものもやはり大事にしていかなければならないし、そういう人たちに対しても政府としては耳をかす、あるいはそういう人たちとの意見交換、これも必要になるのですよ。大臣、もう全くそういうことは無視をする、そんなことはないでしょうね。この声を大事にしていきたいというお考えは持っていらっしゃるでしょうね。
  107. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 このJOCが各方面の意見を聞くというたてまえ、これは当然あってしかるべきだと考えております。
  108. 井上一成

    井上(一)委員 このことはまた文部大臣にも尋ねますが、外務大臣として、外交上個人参加の方がより支障が少ない、こういうお考えであるという受けとめ方をして、一応この問題は置いておきます。よろしゅうございますね。
  109. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これも繰り返しですが、両者とも望ましくない。程度に多少の差はあるだろうけれども、というのが私の意見でございます。
  110. 井上一成

    井上(一)委員 次に、スパイ防止法案、これについて、ひとつ外務大臣の見解を問いたいと思います。  外務省は防衛庁と同様にマル秘文書が多いわけです。その中には役人が勝手に秘密扱いとした形式秘、形式マル秘が多過ぎるのではないかというふうに私はかねがね思っている一人であるわけなんですが、そこで外務大臣にお伺いをしますけれども、先日、自民党のスパイ防止法案の要綱がまとまったらしい。その法案には、防衛上の問題、防衛秘密、国防秘密ですね、そういうものについては包括をされているということですが、外交秘密は含まれていない、そういうことなんです。このスパイ防止法案というのはとんでもないですけれども外務大臣として、いわゆる外交上マル秘文書の多い省なんですね。このスパイ防止法案を、総理大臣は非常に消極的な意見を述べられています。法務大臣は、これは憲法上問題があるということで真っ向から否定をされております。外務大臣はいままでこのスパイ防止法案に関するコメントが一切なされていないわけでございまして、きょうここで私は外務大臣に、特にマル秘文書の形式的にしろ多過ぎる外務省大臣として、どうこれをお考えなのか、これを聞いておきます。
  111. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外交という仕事の性質上、相手国があることでございますから、すべてを公開するわけにいかない。物によっては秘密を保持しなければならないという点は御指摘のとおりでございます。いまのスパイ防止法案につきましては、これはまだ自民党内部で議論されておる段階でございますので、そのこと自体についてまだ私からコメントをする段階ではないと思っております。
  112. 井上一成

    井上(一)委員 確かに自民党の中での議論ですけれども、大平総理も法務大臣も、このことについては一定の見解を機会をとらえて述べていらっしゃるのです。私は、当決算委員会で外務省の見解をやはり聞き置いておくことが必要である、こう思うのです。全くノーコメントだという、関心を持たないのか、あるいはこんな案なんというのは意味なし、コメントするに足らない、こういう考えを持っていらっしゃるのか、それならそれで結構です、こういうことです。
  113. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外務省立場から言いますと、機密保持ということは仕事の上で重要でございますので、できるだけ外務省自体としてもその点の努力をいたしたい、もちろん公表できるものはできるだけ公表するというたてまえでございますが、どうしても対外的関係等で秘密にしなければならないものは秘密を保持しなければならないという考え方をいたしておりまして、それがスパイ防止法案との関係はどうかということになりますと、これはまだ自民党での検討段階でございまして、政府の方として、各省のそれぞれの意見を正式に表明する段階ではございませんので、いまの段階では意見を差し控えたいという趣旨でございます。
  114. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、中ソ同盟条約の問題について、三十年間続いた中ソ友好同盟相互援助条約は四月十日に失効したわけですね。この条約は、わが国を名指しで敵視をしたものであったのです。この条約が失効したこと自体歓迎するものであります。ところが反面、中ソ間が無条約時代に入る、そのことはわが国にとって一抹の不安もないと言い切れないと思うのです。中ソ条約が失効した今日、外務大臣としてはどう思われるのか、この点についてお伺いをしておきます。
  115. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 中ソ同盟条約は四月十日をもって失効いたしたわけでございまして、いま井上委員からも御指摘のように、この条約の中には、日本に対する中ソの同盟が含まれておりますので、これは日本としては、そういう性質の条約が失効したことは歓迎すべきことだと考えております。  中ソ間の関係がどうなるかということにつきましては、従来から中国側では、同盟条約はあるけれども、中身はもう死んでいるのだということを言ってまいったわけでございます。また、中ソ間で、具体的な問題についての協議は続行するという合意が成り立っておるようでございますので、この二つの大きな国の間で、双方、両国の関係についてはきわめて慎重な態度をとって将来も対処していくのだろうと私ども考えておりますので、この中ソ同盟条約の失効そのものが直ちに両国の外交関係に具体的に大きな影響を及ぼすということはないだろうと判断しておるわけでございます。
  116. 井上一成

    井上(一)委員 確かに、条約が失効したからといって中ソの関係に新しい事態が発生するということはあり得ないであろう、こう思うわけです。しかし、最近の世界情勢をながめてみると、やはり緊張緩和の時代から冷戦への時代というのでしょうか、そういうような方向に入りつつあるという、そういう世界的な傾向に対して、やはり一つの悪材料というのでしょうか、決して世界観からいけばいい方向ではないのではないだろうか。だからといって中ソがその条約を継続せよという意味じゃないし、もちろん、わが国に対する敵視政策であったのですから、これは決してよくない条約であります。むしろ、世界各国が平和友好条約をそれぞれ締結していくという方向に少しずつ回らなければいけないわけですね。そういう意味で、今度は日本の果たす役割り、日本外交の果たす役割り、ただ単に反ソ戦略の中、反ソ戦線の中を強化していくのだというそういうことではなく、いわゆる世界のすべての国と平和友好関係を結ぶのだ、持続するのだ、そういう立場に立つと、私は、この失効を機に対ソ連外交、対中国外交に対して、日本として新しい取り組みを、両国間の友好を、独自の、それは当事国独自でやることですけれども日本がどのような立場に立つべきなのか。これは先ほどアメリカイランの問題でも申し上げたわけなんですけれども、もう少し積極的な日本平和外交を推し進められたらどうだろうか、こういう意見を持っているのです。外務大臣の所見をもう一度承っておきます。
  117. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本は、いずれの国に対しても敵視政策をとらないというのが外交の基本的な方針であろうと存じます。中国に対しましても、昨年十二月、大平総理と訪中いたしました際に、経済建設に対して日本協力するけれども軍事面では協力しないということを明確に先方にも申したわけでございまして、そういう意味では日本平和外交のたてまえ、立場というものは明確に先方にも伝えてあるわけでございます。
  118. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は、ここで難民問題についてひとつ外務省の見解を問うておきます。  事あるごとに、私は、平和と人権を守る、このことの理念を強く訴えてきたわけです。内外人不平等の時代なんというものはもう全くもって前近代的、いわゆる全くいまの世界の中では通用しない。そういうことで国際人権規約が批准をされました。ところが、この難民問題についての、大来外務大臣から意見を伺う機会がなかったわけであります。前外務大臣の園田大臣は、国際人権規約批准のために国連にまでみずから足を運ばれた、そして大変な努力をされてきた。そういう意味では、私は、一定の評価をしてきたわけであります。しかし、まだまだわが国の難民問題、いわゆる難民対策に取り組む姿勢世界の中で非難を受けている、世界各国から非難を受けている、こういう現実にあるわけです。まず、大来外務大臣のお考えを冒頭に聞いておきたいと思います。
  119. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 難民問題につきましては、園田前外務大臣と同じ見解でございます。  難民条約の問題につきましては、また御質問によってお答えいたしたいと思います。
  120. 井上一成

    井上(一)委員 園田前大臣と同じ考え方である、どういう考え方なのですか。園田前大臣はどういうふうな考え方を持っていらっしゃったと受けとめておられるのですか。難民条約に入る前に、私は、いわゆる内外人平等の原則というか、そういう平和と人権を守るという政治理念に立った私の質問を展開する前に、大臣の御意見を聞かしてもらって、それから難民条約も含めて質疑に入ります。
  121. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私の判断といたしましては、国際社会の中で日本は孤立して生きることはできない。従来、島国であったような事情もございまして、移民から成り立っているような国々と、従来やや受け入れ方に違いがあったことは事実でございますが、今後の日本が国際社会に生きていくためには、やはり各国の人々を同じ立場から見る、同じ扱いをするという基本的立場をとるべきだというのが私の考えでございます。
  122. 井上一成

    井上(一)委員 いま、わが国がそういうことを忠実に、いわゆる大来外務大臣のお考えが行政の中に生かされていますか。
  123. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 正直に申しまして、私の立場からは、十分だとは考えておりません。
  124. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、いま何を優先して取り組まなければいけない、こういうふうにお考えですか。
  125. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私ども、特に外務省立場からすれば、難民条約の批准をできるだけ急ぎたいと考えております。
  126. 井上一成

    井上(一)委員 まさにそのとおりなんですね。難民条約を批准させなければいけない。そのことが国際人権規約を批准させた意義にあり、続いて難民条約を批准する、そのことがすべての世界で、すべての国々の人々の権利が保障されていく。そして、そこに平和がつくり出される、こういうことなんですね。なぜ難民条約が批准されないのか、何が支障になっているのか、大臣、いかがなんですか。
  127. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、一番大きな障害は、国内諸官庁との間の調整が難航しておるわけでございまして、特に厚生省関係の所管事項との調整がまだ完全に行われていないということが大きな障害になっておるわけでございます。
  128. 井上一成

    井上(一)委員 後ほど厚生省にもお尋ねしますが、厚生省との折衝がスムーズにいかない、そのことは、やはりわが国国民性の中に、単一民族であるといういい面が逆に閉鎖社会をつくり出さしてきた、そんなことで、日本人しか住むことが許されないんだというような日本になってしまったわけなんですね、現状は。だから、すべての国の人が日本に生きる場所を求めて来られた、その場を選択された、そういうことになれば当然受け入れ、かつその人たちの権利を保障していく、このことは大事だと思うのです。  具体的に、裁判でそういう人たちに冷たい対応をすることはどうか。国会が司法の問題、裁判の問題についてとやかく言うのはよくないことであり、言うべき場所ではないということも十分私は理解をしております。裁判で密入国という形で罰せられる、それは、そこには法はきっちり整備されているけれども行政が不備である。そんなことでその人はむしろ罪を償っていかなければいけない。そんなことを考えていくと、政治がやっぱりもっともっとその分野にまで入って考えていかなければ問題の解決にならない、こういうふうに思うわけです。  ラオス難民で、娘を日本政府に逮捕されたというチャン・メイラン被告、これは有罪判決を受けたわけです。戦乱のラオスから逃げてきた難民ですね。この密入国という事実だけに着目した日本政府の現在の取り組み、人道的な立場というものは全く論外に置かれている。難民という立場は普通の旅行者とは異なって正規な方法で入国するとは限らないわけです。こういう残念な事態が起こっているわけなんですね。これはもう具体的な事例を挙げたわけです。もし、このラオスの難民を救うことができるとするならば、やっぱり難民条約を批准しておけばこれは救えたわけなんですね。そういう意味で一日も早い難民条約の批准を私は要望するわけなんです。  外務大臣も御承知だと思いますけれども、ラオスからの難民のこの事件については、いま私が私なりの考えを申し上げましたけれども、難民条約を締結してこういう人たちを救うべきである、そのために一日も早く難民条約の批准をしたいという、より強い意思を固められたのかどうか、その点についてお聞きをします。
  129. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御質問のケースにつきましては、難民条約の第三十一条におきましては、難民の不法入国または在留について、その難民が自己の生命または自由が脅威にさらされている地域から直接来たこと及び遅滞なく当局に出頭して不法入国または在留の理由を示すことを条件として処罰してはならない旨の規定が難民条約三十一条にあるわけでございまして、御趣旨のように難民条約の批准が終わっておれば、そういうケースに該当する場合には救済措置がとられるわけでございます。ただ、いまの御指摘になりました具体的なケース、これは裁判の問題でございますから私どもからとやかく言うことは差し控えたいんでございますが、第一審の判決は難民条約に言及しておりまして、その部分は、この女性が条約上の難民の要件を備えていると認められないとした上、条約上の処罰免除の要件も備えていないというように裁判の内容はなっておったというふうに聞いておるわけでございます。
  130. 井上一成

    井上(一)委員 現在日本に定住を希望する難民及びその定住している難民は一体何名ぐらいいらっしゃるんですか。
  131. 木内昭胤

    ○木内政府委員 現在定住しておりますのは百三十五名でございます。それ以前に七百二十五名についての申請がございまして、いろいろ辞退された者もございますし、そのうち三百九十八名につきまして許可を与えましたが、結局そのうち現在百三十五名が本邦に定住しておるわけでございます。  それから、それとは別に定住許可の対象に必ずしもならないものとしてボート難民がございますが、そのボート難民としては約千四百名が本邦に現在一時滞在いたしております。
  132. 井上一成

    井上(一)委員 大来外務大臣、園田前外務大臣は難民条約は次の通常国会までに提出するよう努力する、こういうふうに言われてきたわけです。もう今国会も大半を過ぎて残すところ一カ月、三十日ということになるのですが、大来外務大臣も今国会に提出する考え、これは変わりありませんね。
  133. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その目標で努力をいたしておるわけでございます。事務当局間でいろいろ話を進めつつあるわけでございますし、私も特に厚生大臣とはこの問題について意見の交換をいたしておるわけでございます。
  134. 井上一成

    井上(一)委員 先進国で難民条約を批准していない国はありますか。
  135. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 先進国の定義にもよることでございますが、この条約はもともと欧州の大量難民を扱うための条約でございまして、ヨーロッパの諸国はほとんどすべて加入しております。アジアの諸国は加入した国はございません。中南米をどう判断するかということでございますが、これは国名を一々申し上げても結構でございますが、大体半々ぐらいであるというふうに考えております。
  136. 井上一成

    井上(一)委員 先進国、経済大国だというわが国が批准をしていないということは、何ぼ口先でうまいこと言ったって実態はそうじゃない、何ら外交上私は抗弁する余地がない、こういうように思うわけです。この難民条約を批准すること、この問題は、世界に対するわが国姿勢を示す大きな問題だ、こういうふうに思うわけです。外務大臣、人権尊重そして平和推進、そういう意味から、難民条約が批准できなければ、私は外交的に見て世界の中で立場が大変悪くなるというふうに思うし、また偉そうなことは言えないというふうに思うのです。外務大臣は、条約が批准できなければ外交的に見てどうなんですか、別にどうともないのかあるいは批准できなければ大変困るのだということなのか。そういうこともできぬようなわが国では、世界の中で人権問題なり平和問題なり、あるいはその他の論議が率先して言われない、言う資格がないと私は思うのです。そういう点について大臣考えを聞いておきます。
  137. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題は、私ども立場としては、ぜひとも一日も早く難民条約の批准がわが国によって行われることを強く希望しておるわけでございます。ただ、何分にも、国内法規とか国内各省いろいろな立場がございまして、やはり政府各省との話し合いがつかないうちは難民条約の批准が手続上できないわけでございまして、私どもとしては、この促進のために国内関係各省庁とできるだけ話し合いを熱心に続けていきたい、また、現在もやっておるわけでございます。
  138. 井上一成

    井上(一)委員 批准ができない障害の一つには、やはり社会保障だとかそういう問題があろうと思うのです。これは厚生省関係ですね。そういう問題は、国民年金あるいは国民健康保険、児童手当、生活保護もあるでしょう。それはそれなりに、厚生省は一つの理屈をつけていろいろと外務省と折衝するかもわかりません。しかし、さっきも言ったように、この難民条約で、いままで日本のとってきた内外人不平等政策をこの際転換させなければだめだと私は思うのです。そういうことが難民条約を批准することの大きな政策の転換になり、片面ではそのことによって生きることの権利が保障されていくたくさんの人々がある。だから、もっと前向きの姿勢でこの問題に取り組むべきであるというふうに私は思うのです。それで、大臣は厚生大臣とは直にこの問題でお話しになられたことがあるでしょうか。
  139. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 すでに二、三回直接お話しいたしました。それで、事務的にもできるだけ早期加入するための関係各省庁間の話し合いをいたしておりまして、本条約の規定する各種の措置のかなりの部分につきましては関係各省庁との協議が進んでおるわけでございますが、先ほど委員からも御指摘がございました社会保障につきましては、条約の二十三条、二十四条が難民に対する自国民待遇付与を規定しております。他方わが国においては、国民年金、児童諸手当、生活保護、国民健康保険等は、それぞれの根拠法において外国人に対する適用が定められておらないわけでございまして、これが一番難関になっておるわけでございます。そういう点は厚生大臣とも話し合っております。
  140. 井上一成

    井上(一)委員 どうですか、今国会提出を目標に、さらに厚生大臣と今月中にでも詰めた話をなさる用意をお持ちでしょうか。
  141. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 さらに話し合ってみたいと存じます。
  142. 井上一成

    井上(一)委員 ここで厚生省の見解を少し聞いておきたいと思いますが、難民条約批准について厚生省はどういう考えを持っていらっしゃるのでしょうか。
  143. 金田伸二

    ○金田説明員 お答えいたします。  厚生省といたしましても、難民の保護を目的とするこの条約の趣旨には賛成でございまして、わが国といたしまして早期に批准することが望ましいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、この条約の中で、社会保障につきまして、難民に対して自国民と同様の待遇を与えるべきことを規定しておりまして、厚生省所管の社会保障制度のうちで、大部分は、難民を含む一般外国人に対して日本国民と同様に適用されておるわけでございますけれども、社会保障制度の一部の取り扱いにつきまして、外務省を初め関係省と協議をしておるというところでございます。  具体的に申し上げますと、国民健康保険、生活保護につきましては、厚生省といたしましては、わが国に定住する難民に対しましては、一定の条件のもとに日本国民と同様に取り扱うという考え方でございまして、ただ、その実際の適用に当たって、難民の認定の対象者の範囲あるいは難民認定の時期といった具体的な手続問題等の詰めとも密接に絡んでおりますので、この辺はあわせて関係省と調整をしておるということでございます。  それから、国民年金につきましては、この制度が非常に特殊な制度になっておりまして、長期間、最低二十五年間掛金を納めないと年金給付に結びつかない、こういう世界でも例を見ないような非常に特殊な仕組みになっておりまして、外国人に適用するということが、これらの外国人の保険料の掛け捨てを強制することにもなりかねないわけでございまして、こういうわけで現在一般外国人に適用していないわけでございます。  そのほか、国民年金を補完する児童扶養手当、特別児童扶養手当、福祉手当等も、現在外国人に適用がないわけでございます。難民につきましても、これらの制度の適用につきまして他の在日外国人と同様な事情にあるということから、厚生省としては難民に対して適用することが困難であるというふうに考えておりまして、ただいま申し上げました制度につきましては、必要な留保を付して批准をするというような考え方で事務的に検討しておるわけでございます。留保につきましては、他の外国にも例のあることでございます。
  144. 井上一成

    井上(一)委員 厚生省も難民条約についての批准には積極的に取り組んで、いま具体的に二、三言われた部分的な留保はつけますが、今国会に提出をしたい、これに変わりありませんね。
  145. 金田伸二

    ○金田説明員 変わりございません。
  146. 井上一成

    井上(一)委員 最後に、難民条約の今国会提出、そして即批准、これは厚生省もその意向です。今国会提出について、厚生省はそのように言っているのだが、外務大臣いかがですか。確認しておきます。
  147. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま厚生省からの説明がございましたが、留保の具体的な内容について外務省関係省の間の話し合いが煮詰まれば、できるだけ今国会に提出いたしたいというのが私ども立場でございます。
  148. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、あなた何を言っているのですか。留保をつけるつけないというのは、厚生省としてはいま具体的にこの点には——本当はぼくは留保をつけてはだめだと言いたいのですよ。だけれども、この点とこの点については留保せざるを得ないということで、今国会提出に向けて取り組む。肝心の外務省が今国会検討する、あるいは提出することに誠意ある回答を出さなきゃおかしいじゃないの。本当に外務省はその場限りの答弁だ。本当はどんなことがあっても今国会に提出して難民条約を批准したい、そのくらいの意気込みがなければいけないのに、厚生省はちゃんと、今国会に提出します、そのために努力しますと言う。外務省はどうなんですか。
  149. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も詳細は存じませんが、留保の範囲につきまして両省の事務当局の意見がまだ完全に一致しておらないと聞いておりますので、この点については国連局長からさらに答弁を補足させたいと思います。
  150. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 社会保障が最大の問題点でございますが、社会保障について留保した場合において、これが難民条約の加入の意義を失わしめないものであるかどうかということについては、これは慎重に考えなきゃいかぬということははっきり申し上げておく必要があるかと思います。
  151. 井上一成

    井上(一)委員 厚生省、外務省が難民条約を、留保なしで条約批准に向けて今国会提出することを私は強く要望して、私の質問を終えます。
  152. 高田富之

    高田委員長 新村勝雄君。
  153. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 私はまず最初に、大平内閣そしてまた大来外相の外交に対する基本的な姿勢を伺いたいと思います。  戦後の日本外交は、日米安保条約あるいは分裂国家に対する対応等についてはかなりの問題があったわけでありますけれども、一応全方位平和外交という基本的な線は貫かれたということが言えると思います。そして、前福田首相も全方位外交を基本的な方針とするということを鮮明にされて運営されたわけでありますが、新たに大平政権の誕生、そして大来外相の登場ということになって、この基本的な方向がどうなるのか。首相の施政方針あるいは外相の演説等によっても新たな要因がそこに出てきたということは、これは確かに言えると思うのです。まず最初に、基本的な外交方針について、戦後三十年の歴史を踏まえた中で・の外相の考え方を伺いたいと思います。
  154. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私は、日本外交の重要な役割りは、国内的には、国民の福祉と安全を守るということにあると存じますし、対外的には、平和の維持あるいは紛争の平和的解決に寄与する。同時に世界の発展、特に経済的な発展に日本が応分の寄与をしていくというのが基本的な方針であるべきだと存じております。  さらに、日本はやはり自由な社会制度、言論の自由、議会政治というものを基本にしておりまして、こういう制度をともにする国々との友好関係を重視するという点も、外交の基本的な立場一つだと考えるわけでございます。  福田内閣当時の全方位外交、この厳密な定義につきましては私も承知いたしておりませんけれども、私の解釈では、世界各国とのつき合いにおきましてある程度の濃淡はある、これは避けることができない。しかし、日本の置かれました立場、たとえば資源小国それから平和主義というような点から考えましても、世界のどこにも深刻な敵対関係はつくらないという意味での全方位外交であるべきだろうと思っております。
  155. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 全方位外交というのは、これは確かに特定の政治ブロックにも入らない、またいわゆる仮想敵国ももちろんつくらない、そして濃淡の差はあると言われましたけれども、この濃淡の差をできるだけ詰めていくという努力を常に続けていく外交姿勢であろうかと思います。したがって、これは日本の憲法の精神にも沿うわけであります。  ところが、大平総理そして外相もこれは賛意を表しておられるようでありますけれども、新たに環太平洋連帯構想なるものが出てきたわけです。これは総理も施政方針の中で言っておりますし、総理がいままで中国あるいはニュージーランド、豪州等いわゆる環太平洋の国々を歴訪されて、そして外交の形とすると、着々としてこの環太平洋構想を進めておられるような印象を受けるわけであります。しかも、さらに最近では、その同じ圏域の中での、これは重要な問題でありますけれども、リムパックに参加というような事態が起こっております。こういういままでの全方位外交、そして安保条約や若干の問題はあるにしても、一応平和外交という方針を維持をしてきた、それに対して新たに一つのブロックの思想が登場してきたというふうにわれわれは考えるわけでありますけれども、この環太平洋連帯構想と全方位外交、あるいは日本がこれはあくまでも追求をしなければならない全世界との平和外交との関係はどういうことになりますか。
  156. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 環太平洋構想につきましては、これは先般大平総理が豪州、ニュージーランド訪問の際、私も随行いたしましたが、先方の国のそれぞれの首相との会談の中で、私ども考えておる環太平洋構想というのは、あくまでも経済的、文化的なものであって、政治的、軍事的な要素は含まないのだ、それから、この地域協力構想は閉ざされた地域構想ではなくて開かれた地域協力であるということを大平総理も強調されてまいったわけでございまして、私もそういう性格のものであるべきと考えております。
  157. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 文化、経済を中心とすると言われましても、これは先ほどから議論がありましたように、オリンピックのような、ある意味では純粋な平和運動、そしてスポーツ活動であるはずのものが政治の制約を受けるということは現実の事実であります。そうなった場合に、世界の一定の圏域、地域に対して特定の考え方を持つあるいけ構想を持つということは、主観的な意図がどうであろうとも、一つのブロックを形成していくということになることは避けがたいと思うのです。そういった点で、大平総理の言われる環太平洋連帯構想というのは日本外交一つの新しい方向を与える、あるいは一つの時期を画することになりはしないか。そういう点でひとつ外務大臣、どうお考えですか。
  158. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 世界のいろいろな問題を処理いたします場合に、バイラテラルといいますか、二国間の交渉でやるというのが従来の一つ外交の型でございますが、もう一つはグローバル、特に国連機関あるいは国連貿易開発会議等の場におきまして、たとえば南北問題を世界全体の立場で議論したり交渉したりする、あるいはガットというような立場世界的な舞台で交渉する。こういうバイラテラル、二国間の交渉とグローバルな多角交渉とございますが、問題によってはある程度地域的な話し合いをした方がより実際的だということもございます。南北問題でも、これはマニラ会議の経験でもそうでございますが、先進国と開発途上国関係、途上国のアフリカもアジアもラテンアメリカも皆同じ立場ということになりますと、ともすれば一般的、抽象的な議論が多くなってくる。これはある程度地域的に話し合えばもう少し具体性を持ってくるというような場合もあるわけでございます。世界的にもヨーロッパECというようなものがございますし、アフリカはアフリカ、ラテンアメリカはラテンアメリカ、それぞれ地域的協力の推進ということが行われておるわけでございまして、太平洋地域の性質から見ますと閉鎖的な地域取り決めというのは実際的でない。経済の発展段階、政治、社会、文化、あらゆるものが各国の間で非常に違っておりますので、考えられるのは比較的緩い関係、地域的なつながりということではないか。それといまの、あくまでも政治、軍事を除いて経済、文化を中心にしたものであるべきだというのが私ども考え方でございます。
  159. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 いまの世界情勢を見ますと、二極を中心とした体制が崩壊をしておる、中ソの対立も依然として解決をしない、そして中ソ条約も失効して無条約状態になる、米中の接近あるいはそれを中心としてアメリカ世界政策が大きく転換をしようとしておる。こういう中での環太平洋構想というのは、単なる文化的なあるいは経済的なもの以上のものを予想させる一つ考え方あるいは行動ではないかと思うのですけれども、そういう点ではいかがでしょうか。
  160. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、開かれた地域主義といいますか、地域協力というたてまえから申しますと、具体的な内容については各国人たちの意見を持ち寄るという形でさらに今後詰められていくものだろうと思いますが、一つのアイデアとして、たとえばいろいろなテーマ別に参加国を変えることも考えられるのではないか。エネルギーの問題、漁業の問題、海洋利用の問題あるいは交通、通信、ツーリズムの問題、いろいろな予想されるテーマがございますが、そのテーマごとに集まるメンバーを変えるということも考えられるのじゃないか。その場合にやはり門戸は開放された形で考えていく。問題によってはソ連の参加もあり得る、問題によっては中国の参加もあり得る、問題によってはラテンアメリカの国々も参加する、そういうような形での開放的なものであるべきだというのが私ども考えでございますし、総理の考えもいま申し上げたラインであると存じております。
  161. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 全方位外交あるいは平和外交というのは、いわゆる身構えのない、すべての国に同じような姿勢対応するということだと思うのですね。ところが、一つの地域あるいはブロックを想定をした場合には、これは身構えるという形をつくり出していくし、同時にそれはいわゆるパワーポリティックスへの参入ということも印象としてぬぐい得ないものだと思います。いま大臣が言われたようなことであればこれは別に環太平洋構想でないわけですね。ヨーロッパの国にも参加をしてもらうということであればこれは環太平洋構想ではなくなってくるわけでありまして、そうしますと、この環太平洋構想というのは一定の考え方を持った、そして文字どおり環太平洋地域の構想ではないのかどうか、そこらどうなんですか。
  162. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 性格づけとしては緩やかな地域的連帯ということでございまして、世界じゅうのどの国も出てくるということになりますと第二の国連になってしまいますので、やはり重点は太平洋地域に置かれる、しかし具体的な参加国はいまのようにテーマによって違ってもいいんじゃないか、そういう考え方でございまして、それから基本的にはあくまでも経済的、文化的な問題に限るというたてまえでいくべきだと思います。
  163. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この構想のそもそもの発祥というか、この構想が生まれてきた根拠それから経過というのはどういうものでございましょうか。
  164. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは私の承知しておりますところでは、大平総理が総理になられる前に政策構想というものを発表されて、その中にいまのような太平洋構想が盛り込まれておったというふうに承知いたしております。そのほか国際的にはいろいろな方面でこの研究が行われておるわけでございまして、たとえば太平洋貿易開発委員会、これは太平洋地域各国経済学者の集まりでございまして、十年ほど前から毎年会合をやっておるわけでございまして、この委員会でも太平洋協力構想、OPTAD、オーガナイゼーション・フォア・パシフィック・トレード・アンド・デベロプメントという構想を提案いたしております。また、このパシフィック・トレード・アンド・デベロプメントという経済学者の会議にはソ連の学者も参加いたしておるわけでございます。いろいろな背景を持ったいろいろな研究会、その提案というものが行われておりますが、大平首相の環太平洋構想というのは、いまの報告書、構想の中に登場しておるわけでございます。
  165. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、一国の総理が公式の場で表明されるわけでありますから、この構想は単なる構想ではなくて一定の根回しあるいは準備等もなされておると思うのですけれども、この構想を進めるに当たってどういう国とどういう協議をされたのか、その概略を御説明願いたいと思います。
  166. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの政策構想というのは、大平さんが総理になられる前に発表されたものでございますので、総理の立場から発言というか、その構想を発表されたということではなかったと思いますが、その後この太平洋連帯構想についての私的研究グループというものが組織されまして、私もそのグループに参加を要請されたわけでございまして、このグループの中間報告が昨年の十一月に発表になっております。この中間報告は、各国検討のために配られておるわけでございますが、先般一月にオーストラリア、ニュージーランド訪問の際に、この太平洋協力構想が先方との話し合いの中にも取り上げられたわけでございまして、当面オーストラリア国立大学の主宰でことしの秋に各国専門家を集めた専門家会議を開催するという予定でいま準備が進行中でございます。これはASEAN諸国というものも当然太平洋地域の中に入ってくるわけでございまして、これらASEAN諸国でもそれぞれ検討が進められているようでございまして、やはりことしの一月にバリ島でインドネシア側が主宰いたしまして太平洋構想の会議を開いたわけでございます。  いろいろなところでいろいろな案がいま出ておるというのが現状でございまして、これがどういう形でだんだん収斂してくるか、集約してくるかというのは、今後のそういう専門家会議の経過を見ないと現在の段階でははっきりとしておらないといいますか、今後だんだん詰められていく問題になっておると思います。
  167. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 太平洋国家の中で日本を初めアメリカ、中国、ソ連も太平洋国家の一つだと思いますけれども、そういう最も主要な地位を占める国の反応、特にアメリカ、中、ソ、その辺の反応はいかがですか。
  168. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカは、アメリカの上院外交委員会におきまして、太平洋地域協力報告書の作成をオーストラリアとアメリカ経済学者に委嘱した報告が出ております。また、アメリカの下院のアジア太平洋委員会におきましてこの問題についての公聴会をことしの初めに開きまして、その報告書もアメリカの議会から発表されております。中国につきましては、昨年の十二月に北京に参りましたときに黄華外交部長その他とも話し合ったわけでございますが、中国もこの動きに関心があるという発言でございました。ソ連については、いまの段階ではまだ明確な意見は私ども承知しておらないわけでございます。
  169. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この構想が本当に平和外交として実を結ぶためには軍事には絶対に関与しないということが必要でありましょうけれども、同時に、世界の政治の中で環太平洋のブロックをつくるということではなくて、環太平洋の国々が協力して世界の平和に貢献をするということでなければいけないと思うのですけれども、そのためには、やはり太平洋国家の一つであるソ連との調整をどうするか、またこの運動を通じて日ソあるいは中ソとの調整を図るという面もこれはなければならないと思うのですね。そういった面での大臣の構想なりお見通しはいかがですか。
  170. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう問題を含めましてことしの秋にキャンベラのオーストラリア国立大学で開かれます専門家会議でいろいろ議論が行われるのであろうかと思います。ただ、初めから余り多くの国が入りますといろいろ話がまとまりがつかないというので、ある程度ホストカントリーズといいますかコアメンバーといいますか、そういう国々の話し合いもまず行って、それから範囲を広げていくというような段階的なアプローチがこの問題については必要だろうと思います。
  171. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 環太平洋の地域の中にはいろいろのむずかしい要因があるわけですね。日米安保条約あるいは中ソの対立あるいはANZUS条約というようなものもあると思うのです。こういった現実の問題との調和をどうするかということが問題でありますが、特にANZUS条約との関係ではこれはどうなりますか。
  172. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ANZUS条約は軍事的な条約だと承知しておりますので、先ほど来申しておりますように太平洋協力構想というのは軍事的な面は含まない、経済、文化を中心にするというので、関係はないと思います。
  173. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そこで、この環太平洋構想に最初から非常に暗い影を投げたのがリムパックではないかと思うのですね。そういう点で、リムパックはだれから誘われたのか、それからこの構想との関係で、これは全く関係がないとは言えないと思うのですね、実際の現実問題からして。これの関係について、大臣の御見解を伺います。
  174. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 リムパックの参加につきましては、参議院、衆議院の予算委員会その他で防衛庁当局から再三御説明しておりますように、かねてからリムパックというのは二年に一回ハワイの洋上で行われておりまして、防衛庁としましては、アメリカ側からの参加の要請もございましたし、かつ防衛庁自身として練度の向上になるということで、今回初めてリムパックの参加に踏み切ったわけでございまして、いまお尋ねの環太平洋構想ということとは関係ございません。
  175. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 関係あるとはおっしゃらないでしょうけれども、せっかくこういうりっぱな構想に対して最初から水を差すような悪い影響を与えはしないかということを伺っておるわけですけれども大臣いかがですか。
  176. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういうような印象といいますか、あってはならないわけでございまして、先ほど来申し上げますように開かれた地域主義、それから経済、文化の分野についての協力だということをさらに強調していく必要があると思います。
  177. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣が先ほど答弁されたように、この構想が環太平洋地域のすべての国を含んだ平和を追求する一つ外交姿勢として実るように、ひとつ大臣の今後の御努力を特に願いたいわけです。  さらにイラン問題ですけれども、重複しないようにお伺いします。  十四日、これはきのうですが、関係閣僚会議があったはずですね。この会議ではどういうことが議論され、どういう方針決定されましたか。
  178. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この関係閣僚会議はきのうでたしか三回目かと存じますが、主として外務省から関係情報を集めて関係閣僚に報告するという段階でございます。昨日の会合におきましては、このEC九カ国のリスボン宣言といいますか、リスボンの会議の発表ということで、イラン政府に人質の解放についての具体的な段取り及び期日についての回答を求める、それからそういう申し入れをした後でEC各国の駐イラン大使が本国に帰って報告をするという宣言といいますか発表でございまして、同時に、これについて日本の参加を求めるということでECを代表いたしまして駐日イタリア大使から外務省に対して正式の申し入れがございまして、それに参加するかどうかということは前々回の閣僚会議で相談いたして、参加することにいたしました。その後の経過、反響等をきのう外務省から報告し、関係閣僚の間で意見の交換を行ったというのが概要の状況でございます。
  179. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣はスウェーデン国王の午さん会に御出席だそうですから結構でございますが、かわって答弁をされる方いらっしゃいますか。
  180. 高田富之

    高田委員長 千葉中近東アフリカ局長がおります。
  181. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 これは大臣でなければなかなか回答できないと思いますけれども、このアメリカイランの問題で両国の仲裁あるいは解決に有効な行動のとれる国としては、われわれが考えまして、世界じゅうで日本が一番適任ではないかと思うのですね。そういう意味から言いまして、この問題が起こってから今日まで、日本政府特に外務省はどういう手を打ってこられたのか、その主要な経過を伺いたいと思います。その解決について、どういう仲介なり、両国を説得するなりという行動をどうとられたかを伺います。
  182. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 去年の十一月にこの事件が起こりましてから、まず外交チャネルを使いまして、イラン当局に対して、このような国際法違反、国際秩序を破壊するようなおそれのある行動及び人道上容認できないような行動をやめてくれということを申し入れております。これは外交上の問題でございますので、何月の何日というところまではちょっと申しかねますけれども、とにかく事件が起きてからほとんど二日ぐらい後でございますが、和田大使イラン外務省に参りましてそういうことを言ったわけでございます。  その後、若干回同じようなことを繰り返しております。これはなぜそういうふうに、いわば穏密裏と言うと語弊がございますけれども外交ルートを使ってそういうことをしたかといいますと、当時の状況は、今日でも大差ございませんでしょうけれども、非常に複雑なイランの国内情勢等にかんがみて、正面切って公開の場でそういうことをやるということよりは、そのような外交ルートを通じて静かにやる、静かな外交とでも申しましょうか、そういうことの方が効果ありと判断したからでございます。  そこで、それらのアプローチを通じてこちらが得た印象は、大体においてイラン外交当局者はもちろん——狭い意味政府でございます。政府といいましてもいろいろな定義がございますが、この場合は行政府といいましょうか、狭い意味での行政の中においては、人質問題は一刻も早く解決しなくてはならない、そういう考え方があるということが印象として出てきたわけでございます。ただし、これはもちろん何回かにわたってやっておりますから、一々その都度同じような印象ではございませんけれども、大体においてそのような感じを受けたというのが第一点でございます。  次に、今度は公の場におきましては、外務大臣の国会における答弁とかあるいは総理大臣の当時の臨時国会におきます所信表明演説でありますとか、そういったような場におきまして、わが方としてもただいま申し上げたようにこの問題が早く解決されることを望む旨を述べております。  そして十二月の初めになりまして、国連の安全保障理事会におきましてこの問題を審議し、続いて御存じのとおり一応国際司法裁判所への提訴をアメリカはやりましたのですが、そういった一連の広い意味での国連を舞台とする動きがございまして、そこにおきましても日本の代表は発言を求めまして、これは国際司法裁判所は別でございますが、国連の安全保障理事会でございます。なお、日本は安全保障理事国ではございませんけれども、求めれば発言できるような体制になっておりましたので発言いたしまして、やはりただいま申し上げましたような意のあるところを今度は公開の場で述べております。これは国際世論その他を考えて、やはり日本としてもはっきりしなければならないと思ったわけであります。ただし、先ほど委員指摘のとおり、日本は他の先進工業諸国と違いまして、イランに対しては関係がより厚いと申しましょうか、良好という表現もいいかと思いますが、そういうこともありましたので言葉遣いに非常に注意したわけでございます。これは先ほど外交チャネルを通じてイラン側と非常に静かに話したということの延長線上にございます。しかしその後事態がなかなか改善しませんし、また御存じのとおり国際的にもいろいろな波紋が広がるばかりでございましたので、そこで日本としてもまた別の機会にもう少し意見をはっきりさせたわけでございまして、それは具体的には十二月の半ばごろの外務大臣の見解表明といったようなことが御記憶に新たかと存じますが、そういった点で一層はっきりさせたわけでございます。  そのころからはっきりしてきたことは、国際社会というものがやはりこのようなイランの人質事件というものを容認していないということがますますはっきりしてきたわけでございます。日本もそういったふうな流れを看取いたしておりまして、その段階でもってヨーロッパと同じ立場であるということが非常にはっきりいたしたと存じます。そして、年末にアフガニスタン事件が起きたことは御存じのとおりでございますが、年が明けましてからいろいろと動きが急になりまして、初め、アメリカからハビブ元大使が特使として参りまして——これはアメリカが提案し安全保障理事会で否決されましたけれども経済制裁等に日本協力するような依頼も来ておりまして、いろいろと検討したわけでございます。ただし、御存じのとおりいまだに全く発動いたしておりませんで、現在も検討中でございます。  それで、これは先ほど井上委員に対しまして外務大臣から御答弁申し上げましたように、先般ECのリスボン外相会議で、ECがそろってイラン側に対して申し入れをするということで、日本もそれに加わったらどうかという勧奨がございましたので、日本もこれに加わるという決定をいたしまして、先日和田大使が他のEC諸国大使とともにイランバニサドル大統領に会って意のあることを申し入れたことは御存じのとおりでございます。  そしてEC諸国と軌を一にしまして今度和田大使に一時帰国を訓令したわけでございます。大使は明日の午後遅く到着の予定でございます。  大体以上が、きわめて大ざっぱでございますが、日本政府のとりました一連の行動の要約でございます。
  183. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 以上で終わります。
  184. 高田富之

    高田委員長 この際、午後二時十分まで休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  185. 高田富之

    高田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春田重昭君。
  186. 春田重昭

    ○春田委員 私は、午前中の質問と若干重複する点があると思いますけれども、まず対イラン問題につきまして御質問申し上げたいと思っております。  まず、アメリカの対イラン制裁に対するわが国対応といいますか、これをお伺いしたいと思います。
  187. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカの対イラン政策は、昨年の十一月四日、イランにおけるアメリカの大使館が占領されて以来いろいろな変遷をたどってまいったわけでございます。国連の決議等もございましたが、一ころ、国連の調停、ワルトハイム事務総長が入りまして調査委員会を出す、その結果、交渉による人質の解放が実現する可能性も見られたわけでございますが、今月の六日でございましたか、その人質は革命委員会に移管しないで学生の手に置いておくというホメイニ事務所からの声明がまたございまして当分また移管の見込みがなくなったというようなことで、四月七日にアメリカ政府が対イラン国交断絶をいたしたわけでございます。現在、米政府としては、ことしの一月十三日でございましたか、国連の安保理事会に対イラン経済制裁の案を提出いたしまして、これは十対五でございましたか、承認が多数でございましたけれどもソ連のビトー、拒否権がございまして否決になった、その案にのっとった経済制裁をこの段階で実行する。できれば他の友好国もそういう経済制裁イランに対して行うこと、それから大使をできるだけ早く引き揚げること、それから、将来この問題がどうしても改善しないというようなときには国交断絶という措置考えてほしいというような申し入れを西側各国に対していたしたという状況でございます。  その後EC九カ国がリスボンで会議いたしまして、まずEC諸国としてイラン政府に人質の解放を求める、その時期、段取り等について明確な回答を求める、それから同時に、テヘラン駐在のEC大使が報告のために一時帰国するという決議をリスボンで採択いたしまして、さらにその際、このECの行動に対して日本側の参加を求める要請がございました。ECの議長国でございますイタリアの駐日大使を通じて正式に日本政府申し入れがあって、現在ECの八大使、一人は、ルクセンブルクはテヘランにおりませんので、八大使と日本和田大使が一緒にバニサドル大統領に会いましてリスボン会議決定に基づく要請を行ったわけでございます。とりあえず各国の大使もそれぞれ本国報告のために戻る、日本和田大使も明日の夕方一たん帰国いたすことになっております。
  188. 春田重昭

    ○春田委員 当面EC共同体とともに行動する、見守るという形で総理等も発言なさっているみたいでございますけれども、この姿勢といいますか基調というのは、今後とも行動は一にしていく、EC共同体と一緒にやっていく、こういう形で受け取っていいわけですか。
  189. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 EC諸国日本立場イラン問題に関しまして似たような状況に置かれておりますので、日本政府としてもできるだけEC諸国と歩調を合わせて対応をしていきたいという考えでございます。
  190. 春田重昭

    ○春田委員 EC諸国より決して前に出ない、たとえば外交政策、経済制裁面においては決して前に出ない、いわゆる行動はともに一にするかまたは一歩おくれてやっていくかという点でございますけれども、その点どうお考えになりますか。
  191. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 大体一緒に手を打っていくという考え方でございます。
  192. 春田重昭

    ○春田委員 アメリカのつながりといいますか、関係というのはECよりも日本の方が非常に強いように私は思うわけでございますけれども、そうした面で、日本政府が非常に慎重なのはいいわけでございますが、今後、要するにEC側が慎重を期して余りアメリカ側の言うことを聞かなかった場合、アメリカ側日本に一歩前へ出てアメリカ側に協調しろと言ってきた場合、どういう対応をするのか、この点をお伺いしたいと思うのです。
  193. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本アメリカとの間に日米安保条約がございますし、西ヨーロッパの諸国もNATOを通じて米国に国防、安全保障を大きく依存しておるわけでございますが、そういう点や、それから自由な議会制度の国々というような共通している点もあるわけでございまして、ヨーロッパの中でもそれぞれ各国立場の違いはある程度あると思いますが、日本を含めて比較的共通した立場に置かれておる。それで私どもも、日本だけにヨーロッパと違った措置を特にアメリカが求めるということはあるまいと考えております。
  194. 春田重昭

    ○春田委員 外相はアメリカイランの全面対決を避けるための第三の道ということを主張されておりますが、この第三の道というのはどういうことなんですか。
  195. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イランの人質問題の解決に、平和的な交渉によって解決を図る、その際日本としてはヨーロッパ諸国との協力によってそういう努力をいたそうというのが大体においていわゆる第三の道ということの内容でございます。
  196. 春田重昭

    ○春田委員 アメリカイランどちらを支持するかという問題でございます。外交的な措置もだめだった、経済措置もだめだった、こういうことで最終的にどちらを選ぶか、今後、平和的手段でいろいろ模索してこれから解決をされていくと思うのですけれども、どうしても解決の糸が見出せないとなった場合、最終、アメリカイランどちらを支持するか、とっていくかという考え方でございますけれども外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  197. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本立場としてはできるだけそういうぎりぎりな状態に置かれることを避けるといいますか、そのためにも、先ほどの第三の道といいますか、そういう努力を続けるということであろうかと思います。ぎりぎりの立場というのは、もうしばらく模様を見てそういう状況にならない努力を続けていくことだろうと思います。
  198. 春田重昭

    ○春田委員 外務大臣は、四月十一日外人の記者団との会見の席上で、二者択一のそういう選択を迫られた場合はアメリカ寄りといいますか、アメリカ重視をせざるを得ないような発言をされた、こう聞いておりますけれども、この点どうですか。
  199. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イランの人質問題には二つの面がございまして、一つイランが国際法を破る、大使館を占領し、大使館員を人質にとる、これはやはり何といっても容認しがたい行動でございまして、もしこういう大使館の占領というようなことが国際的に広まってまいりますと、明日はわが身といいますか、そういうことはないことを望みますけれども、平和的な国際関係の維持というものが非常にむずかしくなってまいるわけでございまして、この点についてはっきり反対するというのが日本政府立場でございます。もしもイラン政府各国世界的な要請に応じてイランの人質の解放を行いますれば、これはまた再びイラン日本との間に外交上問題はなくなるわけでございますので、できるだけそういうことでイランとの友好関係を維持したいというふうに考えるわけでございます。
  200. 春田重昭

    ○春田委員 できるだけイランとの関係は今後ともつながりを強化していきたい、その気持ちはわかりますけれどもアメリカの意向というのが相当強まってきた場合、アメリカ側の意向をくまざるを得ないと思うのですね。そうした場合、一番問題なのはやはり油の問題、もう一つ昭和四十六年から手がけたイラン石化の問題があるわけでございます。特に最初の油の問題ですけれども日本のシェアは約一〇%だと聞いておりますけれども、たとえ油の供給が停止になったとしてもやむを得ない、このようにお考えになっているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  201. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう事態に至らないように、先ほど来のいろいろな努力を続けていくべきだと考えておるわけでございます。
  202. 春田重昭

    ○春田委員 この問題は仮定の問題かもしれませんけれども、現実的にだんだんそういう形で解決しそうなのがまた悪化していっているわけでしょう。そういう形になってくると思うのですね。そうした場合、油のいわゆる日量五十二、三万バレルですか、これが入ってこないということが考えられるわけですよ。それでもやむを得ない、この辺のいわゆる通産省と外務省話し合いといいますか、政府間の話し合いというのは行われているのですか。
  203. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先般以来、特にイラン、中東の問題に関しまして、関係閣僚の会議を随時開いておりまして、そこには私も出ておりますし、通産大臣、総理、企画庁長官、大蔵大臣等も出ておりまして、こういう場でいろいろ話し合いを行っておるわけでございます。
  204. 春田重昭

    ○春田委員 その油がたとえ停止されたとしてもこれはやむを得ないという政府間のいわゆる話し合いになったとすれば、非常に大きな痛手になると思うのですね。原油一〇%が今後入ってこない。聞くところによると政府としてはもう手当てしているのじゃないか、メキシコから入ってくるのじゃないかといううわさもありますし、その分アメリカ側がカバーしてあげようとかいう話も持ち上がっているとか、いろいろうわさが立っているわけでございますけれども、こうした話というのは閣僚会議で出ているのですか。
  205. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう状態は望まないので、できるだけ外交的な努力を続けなければならないわけでございますが、政府としては起こり得るいろいろな事態に対して、準備といいますか、検討をしていくことは必要だろうということで話し合っているわけでございます。
  206. 春田重昭

    ○春田委員 検討して話し合っているということでございますが、具体的な一〇%カットの分の補給というものは出てきているのですか。
  207. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは一つにはIEA、国際エネルギー機関の緊急融通取り決めというようなものがありまして、IEAのメンバーの国が産油国からの油の相当な量の供給が断たれる場合には、他のIEA加盟諸国が相互に援助するという取り決めに日本も入っておるわけでございます。そのほか国際石油資本といいますか、こういう面からどの程度の追加的な供給が得られるかどうか、あるいは世界石油市場で他の地域から買い付けをする余地がどのくらいあるか、いろいろな要素があるわけでございまして、そういういろいろな方法によってある程度の不足を補うことはできる可能性はあると思うのでございますけれども、しかし、減った分全部補うというのはなかなか骨の折れることだと思います。
  208. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、在留邦人が、イラン石化の工事に行った方大体百名ですかを含めて八百名から九百名おると聞いておるわけでございますが、この人たちの身の危険といいますか、人道上の問題で引き揚げということは、現段階ではお考えになっていないわけですか。
  209. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 現状ではそういう差し迫った状態にないように思います。日本以外にも、ドイツ、イタリア、フランスその他ほぼ似たような在留者がおるようでございますし、さしあたり日本人在留はいま九百七名という数字になっておりますが、在留邦人に危険が及ぶことはないと見ておるわけでございます。
  210. 春田重昭

    ○春田委員 カーター大統領イランに対する国交断絶の問題が一部報道されておりますが、事実わが国に対してもそういう要請があったかどうか、お伺いしたいと思います。
  211. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはすぐにということではございませんで、これからの推移を見て、どうしても人質問題が解決しないというような事態になりますときに、友好国の国交断絶もアメリカとしては希望するという表明はあったわけでございます。
  212. 春田重昭

    ○春田委員 すぐとはいかないまでもということでございますが、一部では、五月初めにとか、この二、三週間の間という形で報道されておりますけれども、その点どうでしょう。
  213. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題についてはそれほど差し迫ってないと思うのです。むしろ経済措置の方を早くやってくれということでございますし、また国交断絶というのは非常に重大なことでもございますので、特にヨーロッパ諸国とも十分な連携をとって対応していかなければならないことでございますので、この問題ですぐということはないと考えております。
  214. 春田重昭

    ○春田委員 わが国の対イラン経済制裁とはどういうことが考えられるのですか。
  215. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 わが国としては、経済制裁と言うよりも経済措置という表現を使っておるわけでございますが、この内容はいろいろ検討中でございますけれども、たとえばイランの人質事件発生当時その以前の石油輸入量を上回らないように努力するということや、新しいクレジットの設定は当分イラン人質解放までは控えるというようなことで対処してきておるわけでございます。
  216. 春田重昭

    ○春田委員 全面的な輸出禁止ということはあり得るのですか。
  217. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは検討課題の一つではございますけれども、全面的というのはそう簡単ではないと思います。アメリカも食糧と薬品は除くということを言っておるわけでございます。
  218. 春田重昭

    ○春田委員 全面的ではなくて、いわゆる一部輸出禁止ということはあり得ると考えていいわけですか。
  219. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはやはりイランをめぐる情勢をもう少しよく見届けなければならないと思っております。
  220. 春田重昭

    ○春田委員 和田大使があす帰国するということでございますけれども、これはどういう理由なんですか。
  221. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど申し上げましたECのリスボン決議に基づきまして人質解放問題についてイラン政府申し入れをした後、各国大使がそれぞれ自分の国に戻って政府報告する、そういう申し合わせの一環として明日午後帰国する予定になっております。
  222. 春田重昭

    ○春田委員 その報告を受けたらすぐ大使は帰るわけですか。
  223. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 報告したすぐ後に帰るかどうか、それはまた情勢によることでもございますし、またEC諸国との話し合いも必要なことかと思っております。たてまえはあくまでも報告に帰るわけでございますから、適当な時期にまた任地に戻るということになるわけでございます。
  224. 春田重昭

    ○春田委員 召還ではない、一時帰国である、こう受け取っていいわけですね。  さらに、ECの大使と和田大使バニサドル大統領と会った、その会談の内容につきましては公表できないという形で言われておりますけれども外務省としては、また外務大臣としてはその報告の内容というものはお聞きになっておるわけでございますか。
  225. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 概要は電信で承知しておりますけれども、詳細はやはり大使から直接聞かなければならないと思っております。
  226. 春田重昭

    ○春田委員 電信の内容といいますか、それによる感触ですね、これは人質解放の希望といいますか、その辺の感触はどのようにお受けになりましたか。
  227. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはEC各国の申し合わせで会談の内容は一切公表しない、それから仮にイラン側から公表があってもそれにコメントを加えないという話し合になっておるものでございますから、いまの状況で私どもから申し上げることはできない事情にございます。
  228. 春田重昭

    ○春田委員 当然この会談の内容はアメリカ側に伝わっていると思いますけれども、それに対するアメリカ側の反応というものはどのようにお受けになっておられますか。
  229. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今日までのところは、まだアメリカの反響というものは聞いておらないのでございます。
  230. 春田重昭

    ○春田委員 確認しますけれども、この会談の内容についてはアメリカ側に伝わっておることは間違いないわけですか。
  231. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 EC側から伝わっておるものと了解しております。
  232. 春田重昭

    ○春田委員 それでは時間の関係もございますので、次に進めさせていただきたいと思います。  次に、在日米軍の駐留経費の問題でございます。アメリカ側の負担と日本側の負担でございますけれども、ここ二、三年の推移を数字をもって御説明いただきたいと思います。
  233. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 全般的な数字で申し上げますと、日本側がアメリカの駐留軍のために負担しております数字は、単に施設あるいは労務費だけでなくて基地周辺対策費その他を含めますと、五十五年度の場合は総額で約一千七百億円でございます。そのうち労務費に限って申し上げますと、たとえば五十三年度でございますけれども、五十三年度で日本側が負担いたしました労務費は約六十一億ドル、それから五十四年度において負担しております労務費は合計いたしまして百四十七億ドルでございます。
  234. 春田重昭

    ○春田委員 ただいまの説明では、労務費の問題がございましたけれども、ドルという話でございましたね。これはドルで間違いないのですか。
  235. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいまの数字は円でございます。繰り返しますと、最初の年度が六十一億円、次の年度が百四十七億円でございます。
  236. 春田重昭

    ○春田委員 ただいまの答弁では労務費の問題だけでございましたけれども外務省からいただいた資料によりますと、いわゆる施設費、労務費を含めて総額として昭和五十年度におきますわが国の負担として約四億ドル、アメリカ側が十一億ドル、大体一対三の割合になっておるのですね。それが五十三年度になりますと、わが国が六億ドル、アメリカ側が十二億ドルということで約一対二に縮まってくるわけでございまして、さらに五十四年度、五十五年度というのはアメリカ側の負担がさらに減りながらその分日本側が相当負担増加になってきておるわけでございます。この問題は日米地位協定二十四条ですか、こういう中ではっきりとその原理原則がうたわれておるわけでございますが、どうも昭和五十二、三年ごろからこの原理原則が拡大解釈されてなし崩し的に崩れていくような感じがしてならないわけでございますけれども外務大臣としてはこの点をどのようにお考えになりますか。
  237. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本政府といたしましては、日米安保条約に伴う地位協定は変えないというたてまえで、その枠の中で可能な分担を考えるということでございますから、無制限にその範囲が広がっていくということにはならないかと思います。  先ほど私の答弁の中で石油の問題についてお話しして、幾つかの対策を申し上げたわけですけれども、これは一般的に石油供給がカットされた場合の考え方というのを述べたわけでございまして、特にイランということで申し上げたわけではございませんので、いま非常にデリケートな段階にもございますし、この点はそういうことで御解釈を願いたいと思います。
  238. 春田重昭

    ○春田委員 確かに地位協定の二十四条の枠の中でということで言われておりますけれども昭和五十三年ごろから、当時の防衛庁長官が金丸さんですか、非常に拡大解釈されて、防衛庁長官も言っておりますけれども、思いやり予算だという形でつけられているわけですね。そういう点で、安保ただ乗りといいますか、いわゆる日本側の防衛費が非常に少ない、GNP一%にすぐ行けないので、この点でアメリカ側の感情を損なわないようにふやしていきたいというのが底流にあるみたいに感ずるわけでございますけれども、労務費が昭和五十四年度は百四十七億出ているわけでございます。昭和五十三年が六十一億ですから、約二・五倍近くになっているわけですね。相当ふえてきているわけでございますけれども、この労務費というのは今後ともずっと、もっともっと上がっていくことがあり得るのか、その点お伺いしたいと思います。
  239. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 日本側が五十三年度、五十四年度等において負担しております労務費は、たとえば福利費であるとかあるいは格差給であるという、駐留軍労務者であるがゆえに特定の費目でございまして、私たちの解釈といたしましては、これが現在の地位協定の解釈の限度であるというふうに考えておりますので、今後、もちろん賃金の上昇の負担分のはね返りとして格差給その他がふえることはありますけれども、新規の項目で駐留労務費の負担がふえていくということは考えておりません。
  240. 春田重昭

    ○春田委員 それで一部の報道では、近い将来には日本側が全面的な負担をしていくのじゃないかということも言われておりますけれども、この点確認しておきたいと思います。
  241. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま御答弁いたしましたように、私たちは、地位協定の枠内ということでございますので、全部負担するということは現在考えておりません。
  242. 春田重昭

    ○春田委員 地位協定の改定の話は出ておりますか。
  243. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 出ておりません。
  244. 春田重昭

    ○春田委員 最後に、時局の問題としてオリンピックの問題についてお伺いしたいと思います。  午前中の外相の答弁を聞いておりますと、オリンピック参加につきましては、JOCであろうと個人参加であろうと、程度の差こそあれ外交上好ましくない、こういう発言があったと記憶しておるわけでございますが、具体的に参加した場合、具体的に行った場合、個人的にも参加した場合、政府の援助を切るという手段もあり得るかどうか、お伺いしたいと思います。
  245. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはそのときの情勢によりますので、いまから、あらかじめどうするということはちょっと申し上げられないように思います。
  246. 春田重昭

    ○春田委員 アメリカの場合には、要するに企業に対する寄付金の抑制とか中止とか、ビザの発行をやらないとかいう強硬的な措置をとるように書いてありますけれども、この問題を御質問してもどうお答えになるかわかりませんけれども、この点どうですか。
  247. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題は、いま申し上げましたように、そのときの情勢にならないと何とも申し上げようがございませんし、また政府としても、オリンピック担当大臣が文部大臣でございますし、予算も主として文部省が計上しておるのではないかと思いますが、さらに総理大臣以下、内閣として検討しなければならない問題であろうかと思います。
  248. 春田重昭

    ○春田委員 それでは私は、海外移住の問題について御質問を展開してまいりたいと思います。  海外移住全般に対する外務省の御見解をまず最初に、簡単で結構でございますから、承りたいと思います。
  249. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、海外移住の理念と実行という面において、時代とともに大変変わってまいっていることは御承知のとおりでございまして、ブラジル移住一つとりましても、七十年来の歴史を持ち、かつアマゾン移植五十年、戦後移住、三つの段階に分かれておりますし、もう、一家を挙げて農業移住というような形の移住は、日本側の送出国もブラジル側の受け入れ側としても変わってきているということは御承知のとおりでございます。しかしながら、現地に百数十万の日系人がおりますことも厳然たる事実でございますので、今後は、そういった意味合いにおきまして、移住の送出それ自体よりも、現地に現地国民として活躍している日系移住者に対して本国側から引き続き、有形無形、直接と間接を問わず援護をいたしていくことが大きな柱になっているのではなかろうか、かように考えているわけでございます。
  250. 春田重昭

    ○春田委員 外相にお伺いしますけれども、この海外移住に対する基本的な見解といいますか、今後どういう面で力を入れていくのか、海外移住に対するどういうウエートを政府としては置いているのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  251. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問は、移住についての政策でございますか、一般的な援助、開発途上国の援助でございますか。——これは、途上国に対して、相手国のニーズといいますか、必要に応じて相手国の経済開発の促進あるいはそのために必要な人づくり、技術の提供、こういうような方面に援助をできるだけ提供していくというのが基本的な方針でございまして、現在は、当時福田内閣のときに発案されました援助倍増三年計画というのがございまして、本年度がその第三年度になるわけでございますが、いまの見通しでは、ODA、政府開発援助が、一九七七年に対して八〇年は倍になる、十四億ドルから二十八億ドルになるという見通しでございます。
  252. 春田重昭

    ○春田委員 ただいまの大臣答弁政府開発援助についてのお話だと思うのですけれども、私が言っているのは、海外移住に対するいわゆるウエート。後で御説明いただきますけれども移住者がだんだん少なくなってきているわけですよ。そういう点で、今後日本政府としてこの海外移住に対してはどういう点に力を入れていくのか、こういう点ですよ。
  253. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その点は領事移住部長から申し上げましたけれども、移民の数そのものはだんだん減っていく傾向がございまして、やはり移住者の現地における生活の安定という面、それから事業の成功という面を含めて、援助をするという面に徐々に重点が移りつつあるかと思います。
  254. 春田重昭

    ○春田委員 そういう抽象的な話じゃなくして、移住者が減ってきておるわけでしょう。そういう点で外相はどういう認識をなさっておるのですか。
  255. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、日本経済の発展もございまして、日本人の生活水準は非常に高くなってきております。それから労働力の需給関係も、一ころのように非常に人が余るという形ではなくて、かなり人手不足の面も出ておるわけでございまして、また、以前のように所得水準の低い段階では農業移民が重点でございましたけれども、相手国の事情も次第に変化してまいりまして、技術、特に工業技術を身につけた移民を歓迎するというような傾向も出ておりますので、受け入れ国側の状況と日本の国内の賃金水準や労働力の需給関係、そういうものを見合って将来の移住問題は考えていかなければならないかと思います。
  256. 春田重昭

    ○春田委員 どうも大臣答弁を聞いておったら、日本の給料が数年前に比べたら相当よくなってきているので、移民も減少してきてもこれはあたりまえだというような、そういう感じを受けるわけですよ。私は、これから展開してまいりますけれども、やはり狭い国土でこれだけ一億一千万人の国民が本当に密集しているわが国にとっては、海外移住といいますか、移民というのは非常に大きな国策としての一つの柱に立てるべきだと思うんですね。そういう面で軒並み減ってきているわけですよ。そういう点で、そうした理由があるかもしれませんけれども、それに対して政府がどう手を打っていくのか、さらに門戸を広げていくのかというのが今後の課題だと思うんですよ。どうも大臣答弁は状況報告だけであって、こうなったからやむを得ないような受け取り方になるわけでございますけれども、基本的に、今後の海外移住に対しては政府としてはこう取り組んでいくという強い姿勢がなかったら、私はじり貧になっていくんじゃないかと思うのですよ。その点、どうですか。
  257. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、従来から自発的な意図に基づいて海外移住を希望する人たちを援助してくるということでまいったと思いまして、希望者が減ってくる場合に無理に出ていけというようなことは、これは政策としてなかなかむずかしいことかと思います。日本もだんだんと高い工業技術を持つようになってまいりましたから、そういう面では、おのずから、人が出ていって相手国で重要な役割りを果たすという面もふえてまいってきておるわけでございますが、従来の農業移民を中心にした形はだんだん変わりつつあるのではないか、そういうふうに申し上げたわけでございます。
  258. 春田重昭

    ○春田委員 移住には自由移住と計画移住があるわけでしょう。計画移住というのは、政府がいろいろな面で手当てをして、援助をして、そしてどんどん積極的に海外移住させていくわけですね。そういう温かい政府の援助が非常に少ないように思うから言っているわけでございまして、どうもいわゆる海外移住問題につきましては消極的といいますか、非常に時勢に任せた、そういう流れになっておるような感じがするわけです。これはどうなんですか、局長局長大臣と同じような考えですか。
  259. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 御指摘のとおり、移住は、国民の創意に基づく福利追求でございますので、ただいま大臣から御答弁がありましたとおり、計画移住で、いままでは先方との折衝でやってまいったわけでございますが、この一例もブラジルでございますが、ブラジル政府の方でも、その種のものはブラジルの国内事情でぐあいが悪いということである以上、やはりわが国としても政策の転換を図らなければなりません。そこで、自由移住ないし資本と技術を身につけて、あるいは経済協力なんかとコンバインしたところの形における移住ということが新たな形で行われるかと思いますし、それからまた、豪州とかカナダというような新たなる国、豪州はすでに白豪主義を撤廃して、日本側のそういう技術者なんかの要請が非常に強いわけでございます。こういうような新部面についても、今後新たなる移住として、政府としては大いに積極的な施策を進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  260. 春田重昭

    ○春田委員 だから、従来と違って、単純労働者というのは非常に望まなくなってきた、いろいろな技術を有した人を望んできているという各国の事情もあるわけですから、それはそれなりに対応しながら、海外移住全般に対してはもっと積極的にやっていくべきだと私は思っているわけですよ。先ほどからの大臣答弁を聞いていれば、どうも消極というか弱気といいますか、力が入っていない、こういう点を感ずるわけでございます。  そこで、移住者の実態でございますけれども、数年前と最近の実態でございますが、戦後間もないころの実態と最近の実態と比較した場合、どうなりますか。
  261. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 これも先ほど来御説明申し上げましたとおり、ブラジル移住、アマゾンの入植五十年前の移住者、あるいは戦後、昭和三十年代、戦後の引き揚げ者その他で人口が膨張して、それを送り出すための移住者などと比べて、最近においてはむしろいろいろ先方の要請、つまり工業的な技術要請、これは旋盤工であるとか自動車工であるとかあるいは電気加工工といったような意味合いにおける技術移住でございますね、この方向に重点が移ってまいり、先方もそれを強く要望しておるところでございます。
  262. 春田重昭

    ○春田委員 数字的にとってみれば、これは全部含めてでございますが、昭和三十年代、特に前半、昭和三十二年は一万六千六百二十人、さらに昭和三十三年が一万六千四百四十人の方が移住しているわけですね。ところが、最近の昭和五十年代に入りまして、五十二年が四千三百六十九名、五十三年が三千六百四十八名、さらに昭和五十四年は三千五百六十四名という形で、約三分の一近くなってきているわけです。これはいろいろな各国の事情もあると思いますけれども、また国内の事情もあると思いますが、これはやむを得ないと見ているわけですか。
  263. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 やはり一応個人のイニシアチブにおいて送出するものでございますから、政府サイドとしては、もちろんそれに対する必要な事前の研修とかPRとかそれから送出に対するいろいろの援護の面においては重点的な施策を強化しておりますけれども、個人その限りにおいての移住者の募集その他について十分積極的な施策は講じているつもりでございますけれども、先ほど来申している生活水準の変化その他から、その送出されている人数そのものがダウン傾向にあるということはやむを得ない事実ではなかろうかと感じている次第でございます。
  264. 春田重昭

    ○春田委員 いろいろな理由があると思うのですよ。それは、その辺のところを勘案すれば、やむを得ないという考え方になるかもしれませんけれども、やむを得ないと考えるか、これではいけない、要するに訓練とかPRとか、またいろいろな渡航費に対する援助とか、そういういわゆる政府援助についてもっと拡大してあげればもっと移住者もふえるのじゃなかろうかという観点のいわゆる積極政策ですね、これでずいぶん取り組み方が違うと思うんですよ。国内の給与がよくなってきて、海外よりも日本におった方がもうかる、生活水準も高くなるというような、ただ単なるそれだけの考え方でこの移住政策をやっておったら、これは軒並み減ってきますよ。そうした場合に、狭い日本の国土の中にどんどん人がふえていっているのに、これからわが国はどう伸ばしていくのですか。私は、長期的な観点に立ったら、この海外移住というのは非常に重要視すべきだと思うのですよ。そういう点で、政府予算としては十分な手厚い対策というか保護をしているかという点でございますけれども、その点どうですか。
  265. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 ありがたきお言葉、御指摘として、今後の施策に十分反映させてまいりたいと考えております。
  266. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、政府援助の一環として渡航費の問題がございますけれども、現在渡航費は一部出されておりますが、これも所得制限があるのですね。そういう点で、本当に海外にどんどん青年が、またその家族の方が行けるように、こうした所得制限も撤廃すべきじゃないかと思うのですけれども、どうですか。
  267. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 これも御指摘のとおり、支給率に所得制限その他がございますけれども一つ検討課題として検討させていただきたいと思います。
  268. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんので、先に進みたいと思います。  そこで、ブラジルの問題でございますが、現地移住者に対する援助制度ですね。これは現在JAMIC、JEMISですか、そういう法人があると聞いておりますけれども、この法人の廃止が最近ブラジル側から言われているそうでございますけれども、これはどういう理由なんですか。
  269. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 対ブラジル移住は、わが方の送出機関が最初民間ベーシス、つまり海外移住振興株式会社、これは昭和三十年にできましたけれども、先ほど御指摘のように、三十年から三十五年が戦後の移住者のピークで、一万数千人のうち、その半数の五、六千人がブラジルに渡ったわけでございます。それで、三十一年に現地の援護機関といたしましてJAMIC、それからこれをファイナンスの面からサポートするJEMISという二つの機関ができました。自来、三十八年の海外移住事業団、越えて四十九年の国際協力事業団、これは現在の機構でございますが、こういうように、わが方のヘッドクォーターが民間ベーシスから国の全額出資の形になりました。他面、JAMIC、JEMISは、昭和三十年以来、現地の法律に基づいて確かに正当なものとして開設されたわけでございます。そして、事実これによるところの援護施策及び金融施策ともに大変な成果を上げて、移住者の安定生業にあずかって力があったことは御承知のとおりでございますし、これについてはブラジル政府側もつとに高く評価してまいったわけでございます。  しかるところ、ちょうど両三年前になりますけれども、ブラジル側から、当該JAMIC、JEMISはブラジル民法序法の第十一条の二項、これはそういうような政府機関あるいは政府のコントロールのもとにある機関、まさにJAMIC、JEMISでございますが、それが不動産の取得とか抵当権その他の財産権の取得をすることができないという条項に抵触するので、これを速やかに解消してほしいという申し入れがあったわけでございます。  ところが、昨年の八月にわが方の園田外務大臣が現地に参りまして、日伯外相会議を開かれました席上において、初めて先方は、JAMIC、JEMISをやめてくれという言い方ではございませんけれども、日伯移植民協定、これがまさにブラジル戦後移住者のバックボーンになっておったわけでございますが、昭和三十五年に締結し昭和三十八年に発効したるところのこの移植民協定の、先ほど来問題になっております計画移住が減ってきたというような点のアウト・オブ・デートになった条項をアップデートにしてほしいという申し入れがあったわけでございます。そこで、園田大臣より、かねて先方から申し入れがありましたるところのJAMIC、JEMISの見直しを含めて、それではひとつ協定の改定交渉を、協定条項に日伯混合委員会という場がありますから、その場で討議しましょうというふうにアグリーした経緯がございます。  越えて昨年の十二月、そのアグリーに基づきまして日伯混合委員会、迎えて十二回目になりますけれども、この混合委員会が開かれまして、私これの代表として参ったわけでございますが、この席上で、まさしく先ほどのJAMIC、JEMISについて、先方の代表から、先ほどクォートいたしました民法序法第十一条第二項に基づいて、そのエクジスタンスそのものがこの条項に抵触するので速やかにやめてほしい、こういう正式の申し入れがあったわけでございます。  そこで、わが方といたしましては、何せ七十年来の対ブラジルの伝統的な光輝ある移住でございますし、先ほど来たびたび申しておるところのJAMIC、JEMISの両機関の今日までの実績にもかんがみまして、これの撤退ということもいろいろ容易ならざる問題があるわけでございますので、これをいかにして撤退するか。先方は大体二年ぐらいでこれをやめてほしい、こういう申し入れがはっきりしているわけでございまして、この二年間に現在までの投下資本四十八億をいかにして回収するか、すでに持っておるところの土地をどういうふうに処分するか、それから今後ともこの移住者に対してどういうふうにして援護をつないでいくか、現在の機関を撤退することと、新たなる機関を興してこれにどういう方向でもって引き続き援護を強化していくか、こういうような問題があるわけでございます。それらのテクニカルポインツを含めまして、現在先方政府と鋭意折衝を重ね、移住者に対するインパクトを極力最小限にして、本件の事業を引き続き進めてまいりたい、以上がバックグラウンドでございます。
  270. 春田重昭

    ○春田委員 部長から詳しく御説明があったわけでございますが、現地移住民、またこれからの移住者になくてはならない現地機関です。JAMICが土地を造成し分譲していく法人だと聞いておりますし、JEMISが農機具等の資金融資の法人である。こうした本当に現地移住民になくてはならない法人を二年以内で廃止しろと強硬にブラジル側が言ってきているようでございます。これは最近言ってきたようでございますが、この協定をつくったのは昭和三十五年でしょう。だからどうもおかしいわけですよ。日伯移民協定は三十五年、いまから二十年前につくっているわけですから、当然そのときから民法序法第十一条二項に抵触しているというのはわかるわけでしょう。それが最近になって騒ぎ出したというのは、どうも解せないわけでございます。どうもブラジル側の勝手気ままなような感じがしてならないわけでございまして、現地二法人は絶対必要な機関でございますから、何とかその辺のところをそのまま存続していくように要求していくか、またこれにかわる機関として国際協力事業団ですか、これが各国に支部があるわけですから、そういう形の支部を持ってくるとか、これと同じような機関を置かなかったら非常に不安だと思うのです。また、今後ブラジルに対する移住者もどんどん減ってくるのじゃないかと思うのです。その辺のいろいろなそういう状態になってきているのを打開するためにどういう対応をなさっているのか。いま模索中であるということでございますけれども、どんなことを考えているのですか。
  271. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 お答えいたします。  ブラジル政府が申しているのは、要するに日本政府の代行機関であるとかあるいは政府色彩の非常に強いそういった機関が現地において行うということは困るということで、これは各国政府の例をとりましても日本のJAMIC、JEMIS方式というものはほとんどないようでございます。しかるところ、日本から持っていく年間十数億のお金とかあるいは現在のような方策によるところの、学校を経営しあるいは診療所を経営し道路をつくったりなんかするという、そういう援護そのものは、先ほど来申しておるとおり、先方は非常に高く評価して、引き続きこれもやってほしい、こういうわけでございますから、私どもといたしましては、今後ともそういう財政資金が流れるチャネルということは、日本政府のそういうコントロール下にある代行機関がいけないというわけでございますので、これが一〇〇%現地政府の、向こうのあれであるならば差し支えないということはわかっているわけでございますから、たとえば、これも先生御案内かと思いますけれども、コチア産業組合だとかあるいは先方の中央銀行を通じての南米銀行に対するところのファイナンスのチャネルを通ずるとかというような、もちろん財政当局の御承認のもとではございますけれども、今後ともそういうふうないろいろな工夫をこらしてわが方の財政資金が現地に流れ、それをもって移住者の援護が引き続き可能になるような方策を検討しているわけでございます。
  272. 春田重昭

    ○春田委員 この二法人の廃止というのは、もう決定的なんですか。
  273. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 実は私どもといたしましても、引き続きこの種機関の存続方を強く要望して、昨年十月の交渉においても申しましたし、つい最近、移住課長並びにJICAの職員を派遣いたしまして先方に当たったわけでございますけれども、先方といたしましては、先ほど来申しているところの日伯両国における移住状況、そういう客観的な情勢が変わったのだということと、それから第三国についても日本みたいなこういう特権的なものは与えていないのだからやめてほしいということを言っているわけでございますので、これの撤退ということは、早晩というか、もう二年以内に撤退しなくてはならぬということは決定的だとわれわれは受けとめております。
  274. 春田重昭

    ○春田委員 それにかわる機関を現地で探すということでございますが、これが、現地のどういう機関になるかわかりませんけれども、JAMIC、JEMISと同じような働きがあるかどうか、いわゆる恩恵があるかどうかという問題ですね。たとえば聞くところによると、現地の金融機関は利子が相当高いみたいですね。聞くところによると、一般では五〇%ですか、営農関係では二四%の金利であるという点で非常に高い利子が取られるわけですね。いままでJEMISとかJAMICでやっておったところの金利は非常に低いわけでしょう。この辺の差というものがあるわけですね。この辺のいわゆる利子補給等はたとえばそういう現地法人、現地機関に任せた場合考えていくのですか。
  275. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 まさにそういうような心配がございますわけで、これまで現地に人を派遣し、あるいは現地公館を通じて先方に当たっているわけでございます。御指摘のとおり、ただいままではわが方としては四年据え置きの四年年賦払いで一二%であったわけでございます。それが先方の営農資金だけでも二四%、これが土地購入資金その他になりますと、長期において、それも八年なんというのはとても持たないで、四五から五〇%ということでございますし、そのほかに為替差損の問題というような問題が起こってくるわけでございますので、単純に利子補給といってもなかなかむずかしい問題がある。われわれとしてはその間に立って出したいわけでございますけれども、後ろにはまた財政当局もあるわけでございますので、そういう移住者にも喜んでいただける、国内施策としてもやっていかれるというようなベストの道をただいま鋭意検討、かつこれの発見に最大の努力をしている、そういう状況でございます。
  276. 春田重昭

    ○春田委員 それに土地の分譲でございますけれども、現在まだ売れてないのが二万三千九百十九ヘクタールあるわけですね。このうちの約一万七千がまだ造成もやってない、造成しているのは約六千ぐらいあるわけでございます。この二万三千の面積でございます、いわゆる未分譲の土地でございますが、当然この二年間で新しい移住者を見つけて売っていかなければならないわけでございますけれども、二年間という期間であれば非常にむずかしい問題があると思うのです。売れないところはどうも条件的に低湿帯であるとかいろいろな悪条件があるみたいでございまして、そういうことを考えてみた場合、二年間という土俵、期間がある、この間にこれだけの土地を分譲してしまうというのは大変だと思うのです。そうしたら当然ある程度安売りやる以外にないわけですね。ところが、いままで売った人と今後新しく買った人の分譲価格が相当開いてきた場合、現地で移住者の間でいろいろなトラブルが起こらないとも限らないと思うのですね。そういう点どのようにお考えになりますか。
  277. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、まだ三分の一ほどJAMICが持っているところの土地が残っているわけでございますけれども、私どものさしあたりの考えは、千六百ほどまだ未定住の移住者があると承知しておりますので、プライオリティー・ナンバーワンとしてはこの人たちに対して、土地を持ちたいという願望にひとつミートさせてあげたい。第二点といたしまして、それでも余った場合は、本件のブラジル側の担当機関であるところのINCRA、これも御案内かと思いますけれども、農務省の管轄下にございますけれども、ここで引き取ってもらいたい。第三点においては、これは一般有償で分かち与えるわけでございますが、これは三十年以降ずっと累積して買ってまいった土地でございますので、当然のことながらそういう悪いところといいところもありますけれども一般的な趨勢としては土地が値上がりしているのが事実でございますので、その値上がりを踏まえていけば何とかなるのではなかろうかと一応は考えておりますけれども、しかし御指摘のとおりのいろいろの問題が起こることも予測されますので、それらを踏まえて十分今後の施策に十全を期したいと考えております。
  278. 春田重昭

    ○春田委員 ことしのブラジル移住でございますけれども、何名の方が応募なさっているのですか、そして何名決定されたのですか。
  279. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 全部で四百七名導入枠として先方に要求して、そのうちの六〇%は工業移住でございまして、四〇%が農業移住でございます。
  280. 春田重昭

    ○春田委員 四百七名ということでございますが、この人たちにつきましてはまだ許可がおりてないみたいですね。例年大体三月ごろ要するに向こうの方から通知があって、そして順次行かれるみたいでございますが、もう四月の中旬になってもまだ通知がないということでございますけれども、この辺の見通しですね。  さらにこの人たちに対しては、現地の法人がそういう形で廃止になっていけば相当悪条件になってくるわけでございますけれども、その辺の徹底といいますか指導といいますか、これはされているのですか。
  281. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 この問題は、ぜひ早きに導入枠の許可を得たいと思いまして、昨年私が十二月に参ったときも先方の担当局長に申しましたし、この四月でしたか、私どもの移住課長を派遣した際も、先方にアプローチいたしました。先方といたしましては関係各省の協議はすでに終わって外務省の許可一歩前というところの情報に接しております。そして今後この人たちが出ていく場合においては、どうかひとつ従前どおりのファイナンスが与えられるようなエクセプショナルなケースとして認めてほしいというような点についても、今後先方と十分話し合いを詰めていきたい、かように考えております。
  282. 春田重昭

    ○春田委員 こうしたことで、ブラジルに対する移住というのは、いまでも相当減ってきているわけでございますけれども、今後減っていくんじゃないかと思います。五十二年度六百八十名、五十三年五百八十四名、五十四年五百名、今回また四百名ですから、百名減ってきているわけですね。そういう形で、ブラジルに対する移住が相当少なくなっていくのじゃないかと思いますが、全般的に海外移住が相当、先ほど言ったように低下してきている、減少してきている。どこに力を入れていくかということでございますね。これは全般的に力を入れていかなければなりませんけれども、特にこの国に対して今後日本としては力を入れていきたい、そういうターゲットといいますか、焦点を決めておやりになっておりますか。
  283. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 ブラジルはただいま申したとおり撤退といいますか、変更せざるを得なくなっておりますけれども、たとえばアルゼンチンのごときは、これもお聞き及びかと思いますが、COLFO計画といいまして、それはその地域の地域開発総合計画でございますけれども、先方政府からこれにぜひ、かの誠実にして勤勉なる沖縄移住者を五十家族入れたい、こういうような強い要望がございます。そのほか、パラグアイ、ボリビア等、やはり従前どおり移住者を入れたいという希望が強いほかに、先ほどもちょっと申し上げました豪州あるいはカナダといったような新天地も開かれておるわけでございますから、今後この方面についても十分移住者の送出国として大切にし、かつ円満によくやっていきたいと考えております。
  284. 春田重昭

    ○春田委員 時間が参りましたけれども、最後に大臣、ブラジルの例一つとってみても非常に険しくなってきておるわけでございます。そういう点で、私は先ほども言ったように海外移住は日本に課せられた一つの宿命みたいなものだと思うのです。これに相当力を入れていただきたいと私は思っているわけでございますけれども、最後に大臣の御見解を聞いて終わりたいと思います。
  285. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま領事移住部長からいろいろ申し上げましたが、日本の国内情勢と先方移住地の情勢、ブラジルに比べてパラグアイとかボリビア等はまだ受け入れの気持ちがかなり積極的な面もあるように存ぜられますし、相手の国の実情に応じて移住政策、これはお話しのように重要な国の政策の一つでございますので、今後も進めてまいりたいと存じます。
  286. 春田重昭

    ○春田委員 終わります。
  287. 高田富之

    高田委員長 岩佐恵美君。
  288. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大来外務大臣は十一日に外国記者団との記者会見で、石油より日米関係が重要というふうに言われた。そして翌日大平首相も、きわめて当然のことを言われたと思うというふうに述べられて、この発言を大平総理が追認をされたというような報道がされています。このことは、たとえイランからの石油供給ストップという事態考えられるとしても、政府としてはアメリカ要請にこたえていくんだ、そういう姿勢を明らかにしたということなわけですね。その点はいかがでしょうか。
  289. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 十一日の記者会見で私が質問にに対して答えましたのは、イラン関係石油がすべてかというような質問がございましたので、日本立場といたしまして石油よりも重要なコーズ、問題があれば、そういう場合にはまたそういう状態に応じて考えてみなければならないというふうに答弁をいたしたわけでございまして、その場合、他のコーズが日米関係というようなことをはっきり申し上げたわけではございません。しかし、当然そういうことも含めて広い意味考えられることかと思います。
  290. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 アメリカから対イラン制裁について四つの要請外交関係の断絶、経済制裁、そして財産の凍結、ビザの発給停止、こういうものが来ているというふうに思いますが、私どもは、政府は大平発言によってこのアメリカの提案を積極的、前向きに検討するというふうに腹を決めたのではないかというふうに思っているわけです。その四つについて政府として具体的に一つ一つどういうふうにされていくのか、そのことをお答えをいただきたいと思います。
  291. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは午前にもいろいろお答え申し上げたわけでありますが、そういう事態に立ち至らないことを日本としては希望するし、また努力をするということでございまして、アメリカ側要請はございましたが、それを無条件に日本側が行うという意味ではございませんので、日本としていま努力すべきことは、できるだけそういう事態に立ち至らないように、その意味ECとの協力も進めておるわけでございます。
  292. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 しかし、大来外務大臣発言及び大平総理の外相発言の追認、こういうものは、アメリカ要請について少なくとも拒否はしない、そういうような態度表明をされたというふうなことで、大変重大な問題点だというふうに考えますけれども、その点はいかがですか。
  293. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは従来私どもも申しておりますが、そういう要求につきまして日本協力できる分野とできない分野がある、そういうことについての検討はいたしておるわけでございます。
  294. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 カーター大統領期限つき要請をしているということについては、午前中同僚議員の質問に対して、その期限というのは数週間だというふうにお答えになっておられますけれども、それは二、三週間ということではないのですか。つまり大平総理が訪米をするその前までという期限になっているのではないですか。
  295. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 期限については必ずしも何月何日という期限はないわけでございまして、今月の二十一日にECの外相会議がございますとか、二十七、八日にECの首脳会議がありますとか、いろいろな区切りがあるわけでございますけれども米国側要請はできるだけ早い機会にということのように了解しております。
  296. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それは大平総理の訪米前にということで了解されているということですか。
  297. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは内容にもよるわけでございまして、たとえば断交というような問題は、いろいろ手を尽くしてもどうにも人質解放が実現できないというような場合にということでございますから、いますぐということでもございませんし、総理の訪米という時期とも関連しないと思います。
  298. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 日本態度というのは、他国に先駆けてはっきりとアメリカ支持を打ち出した、こういうふうに私ども理解をしているわけです。その点先ほどからも議論があるのですが、アメリカ要請に対して、たとえばニュージーランドとかスウェーデンなどは報道によれば不支持である、そしてEC諸国でも西独だとかフランス、そういうところでは、はっきりとアメリカに追随できないということをあらゆる機会に言ってきているというふうに私ども承知をしているのですが、その点はいかがでしょうか。
  299. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これも各国それぞれの事情がございますので、それぞれの事情に基づいて協力できる面と協力できない面を検討しておるのだろうと思います。日本立場としては、対イラン問題につきましては西欧諸国と状況がかなり似た点もございますので、EC諸国と大体歩調をともにしていくのが国益にもかなうのではないかと考えておるわけでございます。
  300. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ただアメリカが自分の国だけで厳しい措置をとっていたのでは、これはどうにも効果が上がらない。だからこそいら立ちを見せて日本EC諸国に何とか協調するようにというような働きかけを行っているわけですね。そういうやさきに外務大臣なり総理大臣がはっきりと、石油を捨ててもアメリカ協力するというような態度を打ち出されたわけで、その点はEC諸国とかなり違うというふうに私ども理解するわけですが、その点はいかがでしょうか。
  301. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはぎりぎりの状態についての質問だったわけでございまして、そういうぎりぎりの状態に至らないようにいろいろEC諸国日本も現在努力をしつつあるわけでございます。あらゆる努力をしても人質が返ってこないというような状態になりますと、これはアメリカとしても次第にがまんがし切れなくなってくるという事態でございまして、そういう極限状態についての問題となれば、これは日本の広い意味の国益を考えざるを得ない。日米関係におきます経済関係あるいは日本の安全の問題、国際的にひとしく自由社会という立場ヨーロッパとともにとっておりますたてまえ、いろいろな問題を全般的に考えなければならないだろうということでございまして、いますぐ選択をしろ、選択をしたということではないわけでございます。
  302. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ただEC諸国のいろいろな報道を見ますと、たとえばECとして一致して経済制裁をするにしても、各国の法律が違うので非常にむずかしいというような発言があったり、それから西ドイツの首相や外相もいろいろな機会に、こういう状態になっても自分たちは協力し切れない面があるというような協調をしている中で、日本だけがかなりはっきりと、たとえ石油は一一%ではあるけれども、しかしアメリカに共同歩調をとっていく、協調していくのだということを真っ先に打ち出している。この点から私ども考えますと、日本EC諸国に対してアメリカの支持を訴えて説得をして回るのではないか、そういうような事態も起こってくるのではないか。あるいはもうされているのかどうかわかりませんけれども、そういう事態についてはいかがですか。
  303. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカの言論機関等にもいろいろな論説等が出ております。あるときにはヨーロッパに比べて日本協力が足りないという意見も出ます。最近はEC及び日本、いわゆる友好国がアメリカ人の当面しているいまの苦しみを十分理解してくれないというような論評も出たりいたしまして、いまの御質問のような日本だけが先走ってやっておるということは決してございませんし、従来からもいろいろな機会日本としての考え方を米国にも伝えておるわけでございます。まして日本が先立ってというようなことではない。ヨーロッパ諸国と共同歩調をとっていくというたてまえにいたしておるわけでございます。
  304. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこのところが私どもの理解と違うわけですけれども一般紙でも先般の両大臣発言をとらえて、政府イランより米国を選択する方向でルビコンを渡った、そういうような解説も出されている、そういう状態であるわけです。その点、極限の状態にならないように努力するけれども、極限の状態になった場合にはアメリカにとにかく協調していくということにならざるを得ないというふうに聞こえるわけでございます。そうすると、たとえば先ほど言っていた四つのアメリカからの提案、確かに断交というのは大変な問題だし、それから経済封鎖というのだって大変な問題だけれども、極限の状態になったらそれも辞さないというふうに私どもどうも考えざるを得ない。そういうことにいま考えられるわけですけれども、もう一度その点、明快にお答えいただきたいと思います。
  305. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外人記者会見における発言は、記録をごらんいただけばわかりますけれども、私は、石油よりも重大な問題があればそれは考慮しなければならないでしょうという返事をいたしましたので、はっきり対米協力が大事だという発言をいたした覚えはないわけでございます。  まあ今後どういう事態になるか、いまの状況では予測がつかない。基本的には、国際法に違反して大使館の占領、人質ということをもう五カ月余続けておるわけでございまして、アメリカとの関係を別にいたしまして、人質問題に対してはイラン態度はどうしても認められない、こういう点は繰り返し強調していかなければならないと思います。しかし一たん人質が解放になれば、日本としてはイラン友好関係を続けていくということに障害はないわけでございます。
  306. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そういう解決の事態があれば、それはカーター大統領もあれだけいら立ちをすることがないわけですけれども、現状のところでは、アメリカ一国ではどうにもならない、そういう中でどうしても日本なりECなりの協力が必要である。そういう事態の中で今回大来外務大臣記者会見で言われた発言というのは、大変私どもは重大な意味を持っているというふうに思います。これはたとえば、もし最終ぎりぎりに政府がそういう腹を決める、それはイラン一国に対して日本がこういう態度をとったということではなくて、それは中東諸国全体に非常に影響を与えていく、そういう問題であるというふうに私どもは思っています。それは確かに今回の大使館の占領という問題についてはいろいろな問題があると思いますけれども、ただ、それが起こらざるを得ないという状況、これはもうアメリカが多年にわたってイラン及び中東諸国に対して石油の支配やらあるいは民族自決を認めない、そういう状態があったわけですから、やはりアメリカに対してイランが持っていると同じように、中東諸国というのは経済的主権を拡大したいとかあるいは民族自決をきちんと主張していきたいとか、多少中東の中でのいろいろな違いはありますけれども、同じような感情的な根底というのはあるのじゃないかというふうに思うわけです。たとえば報道の中では「アメリカの全面経済制裁発表後いくつかの回教諸国がイランが直接外国から買えなくなる物資をかわって買い入れることを提案している」、こういう事態も生まれてきているわけです。ですから、今回のようなアメリカに追随してイランに対して厳しい態度を最終的にはとっていくぞというような腹決めというのは、中東諸国に対しても大きな影響を与えていくというふうに私ども考えるわけですけれども、その点、重大な選択を迫られることになるわけですから、どう考えておられるのか、御意見を伺いたいと思います。
  307. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イランの問題と中東全般の問題とはかなり別の問題だと私ども考えております。中東は御承知のようにいろいろな立場の国もございますし、現にイランとイラクは戦争というか、戦争に近いような状態もございます。しかし、いずれにしても、あの地域に何かの動乱といいますか、不安定な要素があらわれてまいりますと、世界石油の主たる供給地でもございますし、いろいろ外の世界に重大な影響が出てくるわけでございまして、それだからこそ私どもも交渉による人質の解放ができるだけ実現するように、EC諸国とも力を合わせてそういう努力を現在し始めておるわけでございます。  それから、先ほど四つの項目をお挙げになりました中で、査証の拒否ということを言われたように思うのですが、これはカーター大統領アメリカ政府がとった措置一つでございまして、これについて各国協力を求めておるという事実はございません。主な項目としては、国連でソ連の拒否権で否決になりましたが、ことしの一月十三日の経済制裁決議案、それに基づいた経済措置ということと大使の呼び戻しということと、将来どうしてもうまくいかない場合の国交の断絶、こういうのがアメリカ要請の内容でございまして、査証の拒否というのは含まれておらなかったわけでございます。
  308. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いまお答えいただいたイラン一国の問題とそれから中東諸国とは違うんだ、その点については私ども見解を異にする。つまり今回イランに対してとっていこうとすることというのはイラン一国ではなくて中東全体の諸国に及ぶ、だからこそEC諸国だって簡単に態度表明はできないでいるというふうなこともあるのではないかと思われるわけです。こういう観点から私どもは、国民生活を守る、平和と安全を守る、そういう意味からもぜひとも平和的な解決をアメリカに強く要請をしていただきたい、こういうふうに思うわけですが、その点について確認をしていただきたいと思います。
  309. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も三月二十一日でしたか、ワシントンでバンス国務長官に会いましたときも、そういう趣旨のことを申したわけでございますし、これまでにもいろいろな機会に申しておりますし、さらにEC諸国日本協力という立場でもそういう要請といいますか、考え方を示しておるわけでございます。
  310. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 カーター大統領は十二日にも、西欧四カ国の特派員とのインタビューの中で、事態の進展がない場合には遠からず軍事措置を含む強力な行動をとることになる、こういうふうに表明をしておられて、それで、軍事介入の問題についてはたびたび発言をされているわけです。アメリカイランに対する軍事介入の可能性、これが強まっておるのではないかというふうに私どもは心配するわけですが、外務省はその点についてどのように見ておられますか。
  311. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは別に、カーター報道官の発表の中にも、すぐに軍事力を行使する意味ではないという否定的な発言も同時に行われておるわけでございます。現在のアメリカ考え方としては、できれば経済措置経済制裁と言っております措置日本及びヨーロッパ協力要請する。アメリカは事実上すでに石油も貿易も大部分とまっておるわけでございますから、アメリカ一国ではさらに有効な結果が期待できない、もしも友好国が共同してそういう経済面の対策をやってくれれば、それ以上の措置といいますか、軍事力の行使を含むような措置を使わないで済むのではないか、そのことがむしろ交渉によるイラン人質解放につながるのではないかということを期待しておると見ております。
  312. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ただしかし、アメリカはそういう日本とかあるいは西欧諸国が協力していくことを期待はしているでしょうけれども、現状ではそういうことがどっちに行くかなかなかわからないということでいら立っていて、それで海上封鎖やあるいは機雷の敷設、そういうような軍事措置をとる可能性について強調しているという事態になっているというように思いますが、海上封鎖とか機雷の敷設、このようなことについて政府として、そういうところまではすべきでないということで断固反対すべきだ、力による制裁、軍事力による制裁、そういうことはすべきでないということを言うべきだというふうに私どもは思いますが、その点はいかがでしょうか。
  313. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは日本ヨーロッパ諸国も同じような考え方で、できるだけそういう力の行使は避けてほしいということを機会あるごとに伝えておるわけでございます。ただ、一方におきまして人質が余りに長期にわたっておる。ある段階ではまさに人質解放が行われそうな、国連の事務総長の仲介、調査委員会の派遣等もございまして、そういう時期もあったわけでございますし、それに対してアメリカ側もできるだけイラン要請にこたえるような発言どもいたしたりしてきたわけでございますが、それがまたひっくり返るというような状況で、かなりいら立ちが強まる、あるいは人質の家族がアメリカにおきまして非常に強い抗議をしておる、人質を取られた国の国民立場、そういう気持ちが人質を取られてはいない第三国の情勢とまた少し違うという点もある程度理解をしなければならない面があるかと思うわけでございます。
  314. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこで問題になってくるのは、日本を基地にしている在日米軍が軍事行動に関与していく、そういう点だと思います。最近、すでにアメリカの空母コンステレーションが横須賀を出て中東の軍事行動に備えているというふうに言われています。昨年の十一月、アメリカ大使館占拠事件が起こったときにも、すでにインド洋に入っていた横須賀を母港とする空母ミッドウェーを主力とする米第七艦隊が、ペルシャ湾の入り口に当たるホルムズ海峡制圧を目標とする演習に名をかりてアラビア海に急派され、さらに、これに合流するために空母キティーホークがフィリピンのスビック湾基地からインド洋に向かったりする、こういうことが起こりました。  イランを新たな軍事介入作戦で屈服させようというようなカーター政権のやり方は、事態を一層悪化をさせていくと思いますし、中東と世界の平和、安全を重大な危機に陥れるものとして、私どもは断じてこれは認めることができないというふうに考えているわけです。  特に、日本国民にとって重大なことは、政府へもきょう共産党として申し入れをしておりますけれども、沖縄の米海兵隊が緊急投入部隊として派遣される、そういうこともあるわけですし、また、空母ミッドウェーなど第七艦隊の母港である横須賀が、まさにインド洋、ペルシャ湾への出撃拠点の基地になってくる、そういうようなことで大変重大な事態になるというふうに思います。  在日米軍がそれに加わることについて、日本としては、それは認められないということで断固たる態度をとるべきだというふうに私ども考えますけれども、その点いかがでしょうか。
  315. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 最初に御質問がございました、アメリカの空母がまずインド洋に展開したのがイランの危機と直接結びついているのではないかというお尋ねでございますけれども、インド洋にアメリカの空母が展開しておりますのはそれ以前からでございまして、たとえば、ミッドウェーがインド洋に巡航していったのは昨年の十月でございます。イランの人質事件が起きたのが十一月四日でございますので、したがって直接的にその当時は関連しておりませんでした。  第二の御質問の、在日米軍がインド洋その他に投入されることについて日本政府として反対すべきではないかという御質問でございますけれども、私たちは、アメリカがすでにカーターの声明あるいはブラウンの声明にあるように、米軍があらゆる事態に即して展開しあるいは行動しているということ、それ自身抑止力としての効果を持っておりますので、そのことによって戦争をむしろ防止するという役目に着目しておりまして、その限りにおいてアメリカ側の政策については十分理解しているということでございます。
  316. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 在日米軍がイランへの軍事介入に参加した場合、イランから見ればアメリカは直接の敵国、これはもう当然になるわけですけれども日本が黙ってミッドウェーなどの出撃を認めるということは、日本イランから見れば、国際法上も中立国ということではなくて、敵性国として見られるのではないですか、その点は外務省の見解はいかがですか。
  317. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御質問になりましたような事態と申しますと、在日米軍がイランの紛争に参加するというか、投入されると申しますか、ということでございますが、私どもは沖縄におります海兵隊が、中東方面への緊急投入部隊として、沖縄から退いて中東方面に向かうということ自体は、これまでもたびたび国会の御論議で御説明いたしておりますように、移動であって、何ら安保条約上も問題がないし、日本を離れてしまった以上は安保条約の枠組みからは外れているものであるというふうに考えているわけでございます。また、実態上もそういうことであるにすぎないわけでございまして、これについてイラン日本を敵性視するというようなことは、およそ法律的に見ましても、国際法上もちょっと見当外れで正当な議論ではないというふうに考えております。
  318. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ベトナム戦争当時も在日米軍基地が頻繁に使われたわけですが、六六年の六月一日、衆議院の外務委員会で当時の椎名外務大臣は、日本がベトナム戦争の基地として使われているのは、アメリカの相手国である北ベトナム等から見れば、日本は直接の敵ではないけれども、敵性国として認められるのではないかという質問に対して、「一般的に申しまして、安保条約体制にあるがゆえに一種の敵性を持ったと認められて、そして攻撃を受ける、あるいはその他の脅威を受けるというようなことはあり得ると思う。」そういう答弁をされています。これは一般論を述べたものだというふうに言われるでしょうけれども、今回のイラン問題についても、部隊の移動だというふうに言われても、現に在日米軍が日本の基地を使って出ていくわけですから、そういう問題について、ベトナム戦争のあの当時と変わらないというふうに思えますし、同じような理由で、日本イランから見れば敵性国であるというふうにみなされることになるのではないでしょうか。
  319. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ベトナムの場合とイラン——イランと申しますか中東方面、現実の場合、いま当面問題になっておりますのはイランでございますけれどもイランの場合と異なるものがあるとすれば、当時のベトナムという地域は、いわゆる安保条約の、何と申しますか、一つの枠組みの中におきまして、これもかねがね国会で御議論のあります極東の周辺の地域であるという認識があったわけでございまして、イランの場合にはどうもその極東の周辺というようなことにはならないのではないか、つまりアメリカ軍が、日本におきます駐留の基地、施設及び区域というものを基地として使用するというようなことはイランの場合には考えられないということがございます。  なお、最後に申し上げておきたいのは、ベトナムの場合でも、いわゆる作戦行動としてのアメリカ軍の沖縄の施設、区域の使用ということはなかったと思うのでございまして、通常の補給が行われておったというふうに考えております。  したがいまして、最後に、当時の椎名外務大臣答弁の内容でございますけれども、法律的に申しますと、ちょっと、そこのところは政治論として申されたものだと考えておりますので、私といたしましては、それを敵国ないし敵性国と、敵性という言葉がございますから若干憎いやつだという感じはあるかもしれませんが、法律上から申しますと、敵国ないしは敵性国家というようなものには当たらないものであろうと考えるわけでございます。
  320. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 時間がありませんので、次のインドシナの援助問題についてお伺いしたいと思います。  ベトナムに対する七九年度分の経済協力百四十億円の供与が凍結状態のまま年度末を迎え、そして四月一日の新年度に繰り越されたと聞いていますけれども経済協力がこのように年度末を越えたのは異例なこと、初めてではないかというように思いますが、凍結している理由について御説明を願いたいと思います。
  321. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ベトナム援助を凍結したということではございませんで、約束をしておるわけでございまして、その実施について時期を見ておるということでございます。
  322. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 三月七日に、来日されたレ・タン・ギ・ベトナム副首相が、日本政府の援助凍結は両国間の合意に反するものだが、わが国日本政府経済界との協力を引き続き希望するというふうに言っておられます。予算としても、繰り越しができるのは今年度一年間だけだというふうに私ども承知しているわけですが、今年度中に実施されない、そういう場合には、この予算そしてベトナムとの合意は一体どうなってしまうのでしょうか。
  323. 木内昭胤

    ○木内政府委員 でき得れば今年度中に実施したいと思っております。
  324. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 外務大臣にお伺いしたいのですけれども、今年度中にやっていかなければならないというような状態にあると思うのですけれども、どういうことがネックになっているのか、それをどういうふうにして排除して実施を努力されていくのか、その点についてお伺いしたいと思います。そしてまた、ぜひそうしていただきたいというふうに希望したいと思います。
  325. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ベトナムから大ぜいのボートピープルと称する難民が流出するような状態がございましたし、またその後、ベトナムの軍がカンボジアに侵入いたしまして、そこにとどまっておるという状態、ASEAN諸国を含めて東南アジアに不安定な状態を生み出しておるというようなことが、実施の時期を見ておることの一つの背景になっておるわけでございます。
  326. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そういう理由を挙げられても、パキスタンやインドネシアに対する援助はずっと行っているわけで、ベトナムだけの援助を凍結する理由はないと思いますし、先ほど申し上げたように、速やかに実施をすることを再度要請したいと思います。
  327. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 状況が改善してまいりましたら実施を考えたいと思います。
  328. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、チリの大統領の訪日問題ですが、これは私どもは、秋に来るのではないかというふうに伺っているわけですが、外務省の方としては、期日は定かではないというふうに言っておられます。このチリのピノチェト大統領がフィリピン訪問の直前に、これは異例とも言える事態だったそうですが、招待を取り消されて、しかも無期延期というようなこと、そういう措置がとられて、いま両国関係は国交断絶状態というところまで発展しているというふうに聞いています。外務省として、ピノチェトがどうしてフィリピン訪問を拒否されたのか、そういう点聞いておられるかどうか。そしてまた、フィリピン訪問前にフィジーに行ったときにも、やはり大変な事態であったというふうに聞いているわけですが、その点の認識について伺いたいと思います。
  329. 小野純男

    ○小野説明員 お答えいたします。  わが国は従来から、時の政権の性格いかんにかかわりなくチリとの伝統的な友好関係の増進に努めてきておりまして、このような努力の一環としてピノチェト大統領の訪日を招聘しております。ただし、訪日の時期はまだ未定でございます。  それからピノチェト大統領のフィリピン訪問についてでございますが、ピノチェト大統領は、一月二十四日から二十八日までフィリピンを訪問することになっておりまして、フィリピンの前にフィジーを訪問しておったのでございますが、二十二日、フィジーにピノチェト大統領がおりましたときに、フィリピン政府は、マルコス大統領がよんどころない理由でマニラを離れる必要が生じたということで、無期延期ということを公式に発表いたしました。そしてその後二十五日に、フィリピン政府は、ピノチェト大統領のフィリピン訪問の中止は多数の外国テロリストがマニラに侵入し、チリ及びフィリピンの両国の高官の生命と安全を脅かしたためであるということを発表し、そしてこういう異例の措置をとったことにつきまして謝罪を発表いたしました。  その後、フィリピン政府からロムアルデス駐米大使が特派使節としてチリを訪問いたしまして、ピノチェト大統領のフィリピン訪問の無期延期になった理由説明とそれから遺憾の意を表しまして、チリ側は国交断絶ということは行わないで両国の外交関係は維持するということを発表いたしました。したがいまして、チリとフィリピンとの外交関係は現在も継続いたしております。
  330. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いずれにしろ、国交断絶寸前まで行くような大変な事態があったわけですね。  昨年、国連でのチリ非難決議に対して、日本政府は、これまでの賛成の態度から、棄権というような、発達した資本主義諸国としては初めてそういう態度をとっているわけですけれども、チリが民主主義の国である、そういうふうに認識を変えられたということですか。
  331. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えをいたします。  昨年の国連決議についての御指摘でございますが、昨年の国連決議は、チリの状況に一切の改善が見られないということで非難を強めておるわけでございますが、私ども判断といたしましては、チリ政府が政治犯の大量釈放を行っておること、さらには秘密警察組織の解体あるいは戒厳令の解除、国連調査団の受け入れ等を行ってきたために、改善の努力がなされておることは評価すべきであるということを判断の基礎にしたわけでございまして、悪化の事実のみを指摘してその改善の努力に対してこの決議が有効であるかどうかという点については、正直なところ、これに十分納得しないという立場をとったわけでございます。そういう意味で棄権をしたということでございます。
  332. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いま言われたように、チリにおける人権保護についての昨年の国連経済社会理事会の報告では、「治安機関の権限が、その不法な活動からの法的保護の改善をともなわずに、増大したのと同時に、拷問や虐待の状況についてもその件数が絶対数でも逮捕者数でも増加するという悪化がみられた」そういう報告が国連のこういう機関であるわけですね。ますます悪化しているという報告があるのに、日本政府が棄権をする、それには承服しかねるのだということで棄権をする、これはとんでもない態度だというふうに私どもは思うわけです。  フィリピンのマルコス政権も、日本と同じにチリの非難決議には棄権をしております。同時に、野党の指導者を長期にわたってフィリピン国内では投獄する、あるいは戒厳令によって一切の反政府活動を弾圧する、そういう点では私どもは、ピノチェト政権と基本的には変わらない、こういうふうな理解を持っているわけですけれども、このような反動政権でさえ、ピノチェト訪問に対して抗議する国民の世論と運動、そういうものを背景として招待を取り消さなければならなかった。そういうような状態になっていて、ピノチェト自身が国際的に非常に鼻つまみになっているというような状態だと思います。私は、これは大臣にお伺いしたいのですけれども、こうした世界の鼻つまみの人をわざわざ日本に招待をする、そういうことはすべきではないというふうに思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  333. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま国連局長答弁いたしましたように、日本としては状態の改善を認めている。ASEAN諸国も大体そういう棄権の立場をとっておるわけでございますが、すでに招待状も発出されておることでもございますし、先方が希望すれば受け入れるのが国際儀礼であると考えております。
  334. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 しかし、国連の経済社会理事会でそういう報告が出されている、あるいは日本が仲よくしているアメリカもこの非難決議には賛成ということで、発達している資本主義諸国の中ではみんな賛成の態度に回っているわけですね。ですから、私は日本の今回の態度というのは非常に解せないものだと思うし、ピノチェトの訪日については考え直していただきたい。そのことを強く要請を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  335. 高田富之

    高田委員長 中野寛成君。
  336. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私もきょうはイラン問題と、それからもう一つ、日米安保条約の問題についてお尋ねをしたいわけでありますが、その前に、その前提条件となる日本外交についての基礎認識について、まずお伺いをしておきたいと思います。  私がまず最初に申し上げたいことは、日本外交原則を鮮明に打ち出せ、こういうことであります。たとえば自由世界の一員、こういう立場に立って、日米を基軸にしたECとの協力、協調、こういうことを明確にして対応をしていくということが必要であると思います。二番目には、国際紛争に対しては公正な立場をとるという見地から、たとえば今回のイランの国際法違反に抗議する、人質釈放を強く要求する、こういう行為も当然のこととしてなしていく。そしてまた、第三番目に、国際紛争の武力解決に反対をする、こういう立場をとるゆえに、米国に対しては武力行使を何としても思いとどまらせる、こういうことが必要ではないか。国際正義とは何だ。そして、その国際正義を守るために日本はいかなる行動をとるのか。このことを明確にしておく必要があると思うわけです。その上に立って日本の安全だとか、そして石油の確保だとかというふうなものを考えていく必要がある、このように思うわけであります。このことについてまず大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  337. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘の点は、私どもも従来から考えておるラインといいますか、方向と一致するものだと存じます。先ほども申し上げましたが、自由社会、これは人間がいろいろな社会制度を経験してきておりますけれども、やはり言論の自由あるいは政府を批判する自由、選挙によって政府がかわる自由、こういうふうなものはきわめて貴重なものだと思います。そういう制度は守るに値する制度である。基本的には日本や米国、カナダあるいはヨーロッパ諸国等が共通に、社会制度の基礎として、こういう自由な制度を維持してまいってきておるわけでございますし、これを守るという基本的立場をとるべきだという御指摘は、私どももそのとおりだと考えておるわけでございます。  そのほかの点につきましても、国際法の違反に対してはっきり反対の立場をとる、これも日本政府といたしましては、イラン問題についてそういう立場をとってまいりました。それから武力不行使、国際的な紛争に武力を用いないということも、いろいろな機会日本政府が表明してきておるわけでございまして、最近では、アフガニスタンに対するソ連軍の武力介入ということは、国際法上も、それから国際平和の秩序の維持という点から見ても認められないということを、明確に日本政府立場で発表いたしておるわけでございまして、ただいま御指摘のような点については、私どもも大体同じような方向で考えておるわけでございます。
  338. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 基本認識はおよそ同じである、そのことはわかりました。問題は、その基本認識の上に立って日本のなすべきことをきちんと果たすかということがいま世界から問われている。そしてまた、日本国民も同じように、そのことを日本政府が必ずしも積極的に果たそうとしないということに対して、歯がゆさを持っている、私どもはこのように断言できると思うわけであります。すなわち、国際的な無法に対して、それを許さないという態度と行動を日本がとらなければ、先ほど大臣の御答弁の中にもございましたけれども、将来日本が万一無法にさらされたとき、どの国も助けてくれないということになるだろうと思うわけであります。  イラン、アフガン問題、すべてそうでありますが、八方美人的な外交、または、いずれ何とかなるだろうという、大平総理のお得意の待ちの政治、待ちの外交、こういうことであったとしたら、これから日本に対する国際信用というのは、非常になくなっていく、私はそのことを心配するわけであります。みずから少しも犠牲なしでいこうとすることであったとすれば、それは外圧に対してきわめて弱い、おどされてしまえば何もできない国、そういうことになってしまうのではないか。今日の日本経済成長その他のことを考えるときに、日本の果たすべき役割りは大変大きいと思うわけでありますが、その積極的な外交姿勢ということについて、大臣はいかがお考えでございましょうか。
  339. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も外務大臣就任以来、日本外交に積極的な面をさらに強めていくべきだろう、ただ、積極的な役割りと申しましても、日本はあくまでも平和的、建設的な面での積極的な役割りを果たすべきであって、破壊的な面で積極的な役割りを、これは当然でございますが、果たすべきではないという立場でございます。  それで、いろいろプリンシプルを明らかにして立場を鮮明にすべきだという点でございますが、一方におきまして、日本の置かれた立場から見ますと、これも午前中に申し上げましたが、全方位外交ということでも、その中にやはり友好関係の濃淡ができることは、現実の世界としてどうしてもやむを得ない面がある。ただ、日本の置かれた立場から見れば、できるだけ深刻な敵対関係をつくり出すことは避けるべきじゃないかというふうに思うわけでございまして、そういう基本的な立場におきまして、問題の平和的な解決に寄与するというのが日本の役割りだと考えるわけでございます。
  340. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 問題の認識と対策について共通の土俵でお話を申し上げたいと思いますので、幾らかお尋ねをする前の前提としての質問をさせていただきたいと思います。  大臣は、この米国とイラン関係でありますが、この問題を考えるときに、やはり米国の政治情勢とそしてイランの政治情勢、これはやはりしっかり分析しておく必要があると思います。今日の米国の政治情勢、一時に比べれば、特にベトナム戦争等を契機にいたしまして大統領の権限、これはまあニクソンのウオーターゲート事件も背景にあるわけでありますけれども大統領の権限というものが大幅に縮小されて、議会の力が強くなる。そしてその議会の力が強くなるということは、これは当然に国民世論の影響が大きくなるということであろうと思います。最近のアメリカの政治情勢というのはそういうものによって動かされている。まして大統領選挙の、言うならば実質上真っ最中であります。こういうことになりますと、単に冷静な政治判断または国際的な判断ということをわれわれがアメリカに望んだとしても、必ずしも平常の、または今日までのようなアメリカ判断というのは生まれてこないのではないのか、こういう危惧の念を強く持つわけであります。もしそうだとすれば、その新しい政治情勢対応する日本の米国国民に対するPRの仕方というものは、当然新しい方策というものが出てこなければならぬ、このように思うわけでありますが、アメリカの政治情勢とこれに対する日本対応策等について、まずお聞きをしたいと思います。  この際、付言しておきたいと思いますが、先般、きっかけはどういうきっかけかわかりませんけれどもアメリカ国内の各報道機関が、日本は何もしないということで報道してしまって、大変誤解を生んだということがありました。しかし、それとても、今日までの日本政府のいろいろな発言というものが明確でない、このことが外国の記者団等に誤解を受けることになり、それがひいてはあのような報道になってしまったのではないか。このようなことも考え合わせますときに、私たちは、米国国民国民感情をよほど大切にし、そこに焦点を定めながら日本立場説明をしていくということがなければ、これからの米国対策はなし得ないと思いますだけに、この分析をどのようにお考えか、お聞きをしておきたいと思います。
  341. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまのように、アメリカにおきまして、国民の世論と申しますか、それから言論機関の意見、議会の意見、いろいろな要素が影響をいたしてまいることは事実だと思います。それから、やはりそういう制度のもとで、私ども、基本的にはアメリカの社会には一つの軌道修正能力があるのじゃないか。いろいろな動きがございますけれども、批判も自由に行われるという過程を通じて、余り行き過ぎな行き方が避けられるという面も考えられると思うのでございますけれども友好国といたしまして、ヨーロッパ日本立場といたしましては、そういうアメリカの国内の世論の動きを一〇〇%そのままフォローしていくということでもいかない。先ほどもお話しの、自由な社会というものを守る基本的、長期的な利益に立った判断というものがやはり日本にもヨーロッパにも必要であり、そういう立場アメリカ自身の国益にも通ずるというふうに考えられる場合もあるわけでございまして、こういう点については、やはり日本友好国の一つとして率直に発言する必要がある。それは短期的に誤解といいますか、招くようなこともあるかもしれないけれども、しかし長期的な相互の利益に立脚をしていれば、また理解される時期が来る、こういうような基本的立場でいくべきではないかと考えます。
  342. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 大臣がおっしゃったとおりにされて誤解を生んだのなら、われわれはそれなりに納得します。しかし、先般来のいきさつは、むしろ日本の消極的な姿勢、または現在の迷っていること、検討していること、そういうふうなことを、立場はわかりますが、非常にあいまいにおっしゃられたことが誤解を招いたことになったのではありませんか。むしろ積極的に、日本はこうしたい、アメリカはこうあるべきだという発言をなさって、それに対して誤解を生んだというならわれわれはわかります。しかし、それではなかったのではありませんかと、そのことを聞いているわけです。
  343. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本も国会がございますし、言論界もありますし、政府立場もあり、そういう言論の自由のございます社会でございます。いろいろな政策を決定する場合に、政府が一方的に決めるということも必ずしも望ましくない、そういう事情の中でいろいろな異なった意見もあらわれてくるわけでございます。こういうプロセスというのは、基本的にはアメリカからも理解されるものだと思います。やはり日本の置かれました立場から申しますと、必ずしも歯切れのいい外交が一番賢明な外交かどうか、やはり基本的には日本の国益を守る、しかも長期的な国益を守るという立場でなければなりませんので、外交問題につきましては、自分がこうしたいと思うことと、世界がこうなるという客観的な事実との間のバランスをとりながら、その対応を決めていかなければならない。そういうことで、時には歯切れのよくない対策ということもあるかと思うのでございますけれども、また一面、余り歯切れのいい立場ということは——無資源国の日本でござまして、最小限度の自己の防衛能力を備えている、そういう立場に基本的にあるわけでございまして、余りに歯切れがよ過ぎるということが、逆に日本の安全に対してマイナスの影響を及ぼすこともあるわけでございます。基本的な方針は、最初にお話がございましたように、私どもも大体同じ方向を考えておるわけでございますけれども、個々の外交的な決定なり態度表明というのは、いまのような日本の置かれた立場からいたしまして、時に歯切れの悪い場合もある。それはやはりこの外交政策というものを相当な用心深さを持って進めていかなければならないという面が感じられるわけでございますので、いまのようなことを外交上考慮していく必要があるように思っておるわけでございます。
  344. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 しかし、少なくとも米国国民には、たとえ一時的とはいえ日本の歯切れの悪さが、われわれにとって何もしてくれないということ、そして日本に対する強硬措置をとるべきだという不穏な空気が出てきたことも事実であります。私たちは決して歯切れのいいことばかりがいいとは申し上げませんけれども、しかしながら、また同時に、今日までの日本外交というのはその歯切れの悪さが結果的に今日の日本の繁栄を生むために役に立った、こう外務省として自慢したいお気持ちがあることもそれなりに私ども承知いたしております。しかし、いまは時代がそういう時代ではないのではないか、私どもはあえて申し上げたいがために冒頭日本外交五原則をはっきりすべきだということを申し上げたわけであります。  時間がありませんから次に行きます。  さて、米政府がいろいろな態度を表明いたしました。また同時に、ECわが国に対していろいろな要請をしてまいりました。あのカーター大統領が発表した米国政府のとる四つの方策、それとは別に国連で決議なされるべきものが廃案となった諸外国への要望、それをいま改めて国連ではなく日本ECが直接申し入れを受けているわけでありますが、果たしてそれで対イランについて効果を発揮するのだろうか。私どもはそのことについて大変危惧の念を持つわけであります。同時に、それが効果を発揮しなかった場合、今日のアメリカの政治情勢国民感情、大統領選挙、いろいろなことを考えますと、次のエスカレートした手を打つ、それで混乱をすればまた次のエスカレーションが始まっていく、こういうことがあるのではないか。そしてその行き着く先が軍事行動ではないのか、こういう心配をするわけであります。そしてまた、こうお聞きしますと、そうならないように日本努力するのだとお答えになるかもしれませんけれども、しかし、公正な目で見た予測、判断というものはどうなんでしょうか。
  345. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イラン情勢というのは全く予測困難な要素もございますし、いままでこの数カ月の推移を振り返りましても、いろいろな局面がございまして、あるときは人質問題が片づきそうに見える、それがまた逆転する。何度かそういう形を繰り返してまいっておりますので、将来についてもこれはほとんど何人も余りはっきりした見通しを立て得ないという事情があるかと思います。ただ、これはわれわれとしても単に傍観者としてイラン情勢あるいはアメリカ情勢を見てまいるわけにはいかないわけでございまして、今回のような主要なヨーロッパ諸国日本の共同した立場イランとの接触を図るというような努力は、行動によってそういう破局的な事態に至ることを防ごうとする一つ努力だと考えるわけでございます。
  346. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 何人も予測がつかぬであろうというお答えですから、またそれ以上に大臣にお答えを要求するのは無理かもしれません。しかし、いかなる情勢がこれから醸し出されてくるかわからぬということは、最悪の情勢になることをも踏まえてわれわれは常にその対応策を講じておかなければならぬ、こういうことを意味するものだと判断をしたいと思います。  次に、イランの政治情勢であります。たとえば今日までのイランの国内におけるいろいろな情勢等々を分析していきますと、一見すれば強硬派の宗教指導者と穏健な実務派との対立があるような感じを受けます。そして、そういう対立の中で果たしてあのアメリカ大使館を占拠している学生たちはどういう位置づけがなされているのか。ホメイニ師の力は絶対であるように見えるけれども、本当にホメイニ師は交渉能力、統率力があるのか、現在の大統領は、われわれ交渉相手としているけれども、本当に交渉能力があるのか、いろいろな疑問が浮かんでまいります。このことについてどのようにお考えでございますか、お聞きをしたいと思います。
  347. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イランの国内情勢、きわめて複雑なことは御発言のとおりでございます。これはイスラム教に基づいた一つの革命的な動きだと思いますし、その進行過程においていろいろな事態も起こり得る。しかし、だんだん時期の経過とともに秩序といいますか、いろいろな情勢に落ちつきが出てまいるのではないか、その一つのステップが五月の初めに行われる第二回目の選挙、こういうものの成り行きを注意深く見る必要があると考えております。
  348. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 お尋ねした内容についてきちんと分析した上でのお答えというのはなかなか聞けません。ただ、外交問題ですから必ずしもはっきりおっしゃることが得策だとは考えませんので、大変むずかしい情勢である。そして、それぞれの立場考え方の違いがイラン国内において存在することを認識された上で交渉されているものだ、そういう御答弁だと判断をして次の質問に移ります。  さて、そういうアメリカの政治情勢イランの政治情勢を踏まえてお聞きしたいわけでありますが、アメリカ政府からわが国へ要求をされているものとして、先ほど来の御答弁にもございましたが、繰り返して申し上げますと、五つあると思います。輸出の停止、これは事件発生以前の水準に抑えて、火事場どろぼう的なことをやらぬということを意味するのだ、こういう解説もございます。これについて、日本はどのような対応がとれるのか。二番目、石油輸入を人質事件発生以前の水準に抑制をする、これは果たしてどうなのか。三番目、信用供与の停止、新規融資の停止、これについてどう対応できるのか。四番目、大使の召還、これについては日本政府との緊急協議のためということを名目にして和田大使が帰ってこられるわけであります。しかしながら、EC諸国等と協議をした上で帰国決定したわけでありますから、これは明らかに政治的行動であると考えます。大使の召還という明確な行為ではないけれども、実質的な同じような意味を持つのではないか、こう考えますが、どう考えられますか。五番目に、どうしても効果が上がらない場合には国交断絶、こういうことでありますが、果たしてそのことについてどのような考え方をお持ちか。これは時間がありませんから端的にお答えいただきたいと思います。
  349. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 輸出問題につきましては、余り急激な輸出の増加は望ましくないかと存じます。ただ、いまの水準は、一昨年の水準をそれほど上回るものではないわけでございますが、従来から日本政府としては他の国がイランにとっておる措置の足をすくうというかアンダーマイン、それを利用するようなことはやらないと言っておるわけでございますから、いまのような情勢日本の輸出が大幅に伸びることは自粛すべきだということであろうと思います。  石油輸入につきましては、この人質事件発生前の水準を超えないというたてまえで従来からもやってきております。これは特定の一カ月だけをとれば超えるときも現実にございますし、それから過去の約束が現在になって入荷するというような事情もございますから、単に一カ月二カ月の数字だけを見て判断はできないけれども、やや長期にわたって、三カ月とか六カ月とかあるいは一年とかいうことをもとにして人質事件の前の水準を超えない、これは現在政府としてもそういう方針で進んでおるわけでございます。  信用供与につきましては、この人質事件後、新しいクレジットの供与は停止しておるという状況でございます。  大使の召還につきましては、これはEC九カ国のリスボン会議決議に基づいておるわけでございまして、報告のために帰国するということでございまして、いわゆる召還とは違うと考えております。  それから国交断絶ということは、これは本当に最後の最後の手段でございまして、極力そういう事態に至ることを避けるというのが政府方針でございます。
  350. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 石油輸入の問題については、従来からおおよその水準は保たれている、またこれから先の季節的な問題もあって、それなりにできるであろうと思いますし、また三番目の信用供与等の問題については、すでにこのとおりやっておるということであります。  大使の召還も、大臣はそのようにお答えでありましたけれども、また大臣のお答えとしてはそれ以上言えないのであろうと私ども判断をいたしますが、ただこれは日本独自で思いつきでやるわけではないわけでありますから、恐らく先ほど来の答弁でもいつ帰任させるか明確でないわけでありますから、そのことは明らかに政治行動であると私ども判断をして、それなりの効果を期待をしたいと思います。  問題は、やはり輸出の停止の問題であろうと思います。輸出の停止については自粛を図っていくということでありますが、これについては実際上はどうなんですか。昨日もいろいろな協議がなされているようですが、本当にできるのですか。
  351. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題については、政府部内でも目下いろいろ検討中、それ以上のことは申しにくい事情にございます。
  352. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 すべて明確なお答えは返ってまいりません。ということは、大変開き直ったような言い方をしますが、これらの一つ一つの対策を明確に講じることはきわめてむずかしいということを意味していると思います。また、そのことによって、アメリカの国内事情も日本に対して大変厳しい情勢が予測されると私は思います。また、イランに対して具体的な効果を発揮するということについて大変疑問を持ちます。こうなりますと、問題の解決はなかなかできない、そして米国の制裁措置のエスカレーションがますます進んでいくということについて私は心配せざるを得ません。  そこで、念のためにお聞きいたしておきますが、これからそれがエスカレーションしないとしても、ということは何らかの効果を発揮することですが、効果を発揮するような行為をとられれば、イランの方からは石油輸出の停止という問題がくるでしょう。そしてそういう事態にならないで、アメリカのサイドの措置がエスカレーションするとすれば、今度は軍事的行動のもとで、日本石油が入ってくるのがストップするでありましょう。その場合に二つのことが考えられると思います。一つは、イランからの石油だけがストップする場合、もう一つはペルシャ湾の封鎖によって中東諸国からの石油がストップすることであります。こんなことは考えるだにそら恐ろしいことでありますから、そうならないように最大限の努力をしなければなりませんが、しかし現実的なものとして、少なくともイランからの輸入がストップすることは、私は現実性を持った心配の種であると思います。これに対して通産省はいかなる対応策検討されておられますか、お聞きしたいと思います。
  353. 浜岡平一

    ○浜岡説明員 お答え申し上げます。  私どもといたしましては、現在の状況が何とか円満に解決されるということを強く願っておりますし、各方面でいろいろな努力が行われておりますし、また政府の中でもいろいろ苦心惨たんの検討が行われているということだと承知いたしております。  今後いかなる事態が展開するかということにつきましては、私どもとしましてもそれなりにいろいろな検討は行ってみておるわけでございますけれども、現在の段階で、先生お話しのような事態についてどういう対策を用意しているとか、あるいはどういう対応考えているというようなことをはっきり申し上げますと、内外におきまして今後の日本がとるべき方策、進むべき方向につきまして誤った予断等を持たれるおそれがあるというぐあいに思いますので、大変申しわけないわけでありますが、具体的な内容のコメントはこの場では差し控えさせていただければと思っております。当然あらゆる事態についての検討は行っておりますが、基本的には何とか円満に事態がおさまるということを願っておる次第でございます。ぜひ御賢察をお願い申し上げたいと思います。
  354. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 いまわれわれは希望的観測で政治を語るわけにはいかぬと思います。あらゆる国難に対応できるように、国民とともにその対策を講じ、そして用意をしておくことが大変大事だと思います。それと同時に、ある日突然というのはきわめて危険です。国民の間のパニック状態を生むおそれが十二分にあります。地震対策にしても、むしろいろいろな会議が行われている、いろいろな方策が出されている、いろいろな心配が出されている、それが報道される、そのことが大きな地震がきた場合、国民がそれに対応するための心構えをつくるのに大変役に立っていると思います。私はそういう意味で、エネルギー対策もそうでありますし、いまのこの緊急な課題に対してもそうだと思います。国民はいまからどういうことを覚悟していなければならないのでしょうか。もしイランからの石油がストップしたからということの前提でお答えしにくければ、一般論として国民はこれからどういうことを覚悟していなければならないのでしょうか。
  355. 浜岡平一

    ○浜岡説明員 先生のお話しのように、一般論としてお答えを申し上げさせていただきたいと存じますが、先般私どもの発表いたしました八〇年代の通産政策の中でも、やはり経済安全保障の問題が今後の非常に大きな政策課題だというふうに位置づけております。その中でさまざまな方策を打ち出しておるわけでございますが、特にいわゆる危機管理対策ということについては十分配慮を払うべきだというようなことがうたわれております。事前的な一般的な用意といたしましては、御承知のとおり前回の石油ショックの経験を踏まえまして備蓄水準を高めるということに大変力を注いでおるわけでございます。幸いにいたしまして五十四年度中にかなりの備蓄水準のレベルアップがございまして、いわゆる民間備蓄で八十八日分、それから政府備蓄、現在はタンカー備蓄のスタイルをとっておりますが、七日分ございます。合計九十五日分の備蓄を持っておるわけでございまして、この辺が前回の石油ショック当時と比べますと、いわゆる危機への適応のふところの広さというようなものを形成をしておるのではないかというぐあいに考えております。いわゆる危機管理と申しますが、現実の危機が起きました際には、日本の持っております適応力と現実に発生しました事態との間の適合性といいますか、すり合わせにつきまして客観的なアピールをさせていただくということが基本だと思います。まず国民の皆様の間に不安を起こさないというための率直な事態のPRということが必要だろうと思っております。それから具体的な諸対策につきましては、前回の石油危機、それからごく最近イラン革命の時期に一度、三カ月イランからの輸入がほとんどなくなったわけでございます。二度の経験を経ておりまして、さまざまの政策的な手段あるいはメニューというものは用意をされております。これはいわば危機管理の一般論としてお聞き取りいただければというぐあいに存じております。
  356. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 次に移ります。  EC諸国との共同歩調のことですが、新聞報道によりますと、カーター大統領が十三日明らかにされた欧州の各テレビ放送特派員との記者会見の中で欧州共同体諸国に対し、来週まで対イラン経済制裁措置実施を同意するとともに、人質問題がこのまま解決されなければ、五月までにイラン政府断交するよう要請した、こう報道されております。これは一紙だけではありません。これは、日本に対してもやはり同じようになされているのでしょうか。
  357. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 似たような趣旨要請は参っておりますけれども、前段のいついつまでにということははっきり述べられてはいません。
  358. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 この新聞の見出し、これはそれぞれ各新聞社の整理部でおつけになるのでしょうからあれですが、来週までに同調してくれ、大変アメリカの方からは強く要請をされておるようでありますけれども、そういうのは日本に対してないわけですね。
  359. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういうはっきりした期限を切っては聞いておりません。
  360. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 はっきりした期限を切っていないということは、抽象的な期限はあるのですか。
  361. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 二つの面といいますか、違った面もあるわけでございまして、たとえば国交断絶というようなことは、どうしても事態が改善しない、人質の解放のめどがつかないという場合、ある程度先の問題として、現在の、当面の問題としてという意味ではないわけでございますし、大使の召還、あるいは経済措置はできるだけ速やかにという形での要請でございます。しかし、何月何日までという、何週間後にというような形ではないわけでございます。
  362. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 時間がありませんからあと進みますが、たとえば、いまよく言われます第三の道であります。いままでずっとお聞きいたしてまいりましたけれども、実はこの具体的な第三の道について、たとえ具体的と言えないまでも、本当に心の底からこの第三の道を追求をするという心構えについて私は感じ取ることができませんでした。たとえば今月末に大平総理が訪米をされます。私が冒頭に申し上げました、外交原則をきちっと踏まえるならば、イランまたは米国等々に特使を派遣するなどして紛争解決に具体的に努力をする、またそのために日本がなすべき仕事がある、または日本がたとえ幾らかのリスクを背負わなければならないとしても、長期的な日本の国際的位置づけや日本国民の将来にわたっての平和とそして繁栄を守るためにそのようなことをいまなすことが私はどうしても必要ではないか。今日まで日本外交のとってきたいわゆる消極的な外交、そしていずれ何とかなるだろう、その楽観的なとも思える、またそれがややもすると日本人の国民感情の中に、日米安保体制もあったことを含めて、楽観論が日本人の中にいつも内在しておって、そしてそのことが国民の防衛意識や、そしてまた正しい外交認識やそういうものを育てることに対してマイナスになってきたのではないかという危惧の念を私は常々持つわけであります。私はそういう意味から、その第三の道なり、日本がいま果たすべき役割りが何であるのか、もう一度大臣にその御認識とお心構えをお聞きをして、質問を終わりたいと思います。
  363. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 明日和田大使も帰ってまいりますし、事態の認識を政府としても深める。事態がなまやさしいものではないということは私どもも痛感しておりますので、そういう判断に立って今後の方針対応考えてまいりたいと思います。
  364. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 最後の御答弁もついに何のお答えもいただけませんでした。心から強く要望します。日本の役割りを正しく認識し、そして本当に世界の平和に役に立つ外交を展開するための前向きの御検討と行動をお願いしたいと思います。  終わります。
  365. 高田富之

  366. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 アメリカイラン断交するというその事前連絡は、外務省なり総理にいつあったのですか。
  367. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 四月七日の断交措置について、そのこと自体はございませんでしたが、その前の話し合い、大使館の接触等の中で、アメリカとしてはできるだけ人質解放について国連のあっせん等も含めて実現に努力している。その実現を期待するけれども、万一これができないときには、経済問題を含めて一歩進めた措置をとらざるを得ないという連絡は聞いておったわけでございます。
  368. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、断交に進むかもしれないということは予測されておったわけですか。
  369. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その段階では断交ということをはっきり聞いておらなかったわけでございます。ただ、次のステップをとらざるを得ないというふうに聞いておりました。私も三月の二十一日バンス国務長官に会いましたときに、私の方からも全般的な情勢、中東の問題を含めて長期的な観点から対応する必要があるだろうということをるる申したわけでございますが、これに対して長官は、その趣旨はよくわかる、しかしアメリカ国民にも忍耐力の限度があるんですという発言を当時いたしたわけでございます。そういう意味での気配というものはございましたが、具体的な内容については、特に断交ということについての明確な予告はなかったわけでございます。
  370. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ずっときょう一日聞いておりまして、苦悩されておるからむずかしいのでしょうけれども、なかなかわかりにくいんですね。結局は、イラン側立場にも立たない、アメリカ対応の側にも立たない、究極を迎えないように第三の解決方法がありはしないか、そのためにはEC諸国となるたけ同一歩調をとってやりたい、そういうことなんですか、いまの段階は。
  371. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの段階では何とか話し合いによる人質の解放を実現したい。その場合に、すでにアメリカイラン断交いたしておりますので、これはEC日本が力を合わせてそういう努力をするのが適当だろう、この方策をできるだけ進めてまいろうというのが現在の段階でございます。
  372. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただそういう抽象的なことだけで具体的な内容がわからないのですね。いままで入れかわり立ちかわり聞かれましたから、これ以上のものは出てこないのじゃないかとも思うのですけれども、もしEC諸国対応アメリカの希望と沿わないときには日本はどうするのですか。
  373. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ECの八カ国の大使と日本の大使とがバニサドル・イラン大統領に面会いたしまして、人質解放についての段取りあるいは時期等の明示を求めた申し入れをいたしておるわけでございます。その対応を見守りながら次のステップのあり方を考えるというのがいまの段階での行き方だろうかと思うのであります。その会談の内容につきましては、これは非常にデリケートな事情があるわけでございまして、イランの国内にもあるようでございますし、これはECの大使が、しばらく内容については絶対に公開しない、またイランの国営放送はある程度の発表をするかもしれないがそれに対してコメントはしないという申し合わせをいたしたわけでございまして、日本としても、問題がデリケートであり重大でございますので、しばらくこの問題に触れないという立場で行かざるを得ないかと思っております。
  374. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次にオリンピックの問題ですが、政府は参加すべきでないという方針のようですが、きょうの朝のやりとりも、それでもJOCが行く場合と個人が行く場合は外交的に程度が何のかんのおっしゃっていましたが、政府のそういう方針のJOCに対する拘束力と申しますか、何か具体的にあるのですか。
  375. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはやはりJOCが決定権を持っているわけでございますから、法的な拘束力はないと思います。
  376. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 たとえば、これは情勢としてはあり得ないかもしれないが、JOCが独自の判断で参加しようということになったときに、パスポートなんか出さないというようなことを考えておられますか。
  377. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最後のエントリーの時期、五月二十四日までにまだ多少の時間がございますし、各国のナショナルコミッティーの動きも見てまいらなければなりませんので、政府としてはまだいま御指摘のような点まで考えているわけではございません。
  378. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やがて考えざるを得ないようなことになるかもしれない、そういうこともあるのでしょう。
  379. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは午前にも申し上げたことでございますけれども、オリンピックの問題は日本政府では文部省が担当になっておりますし、外交、内政全体を踏まえて最後には総理大臣判断、決断をすべきものだと思いますので、そういう意味での内容についての政府の意見の統一はまだいたす段階にはなっておらないわけでございます。
  380. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に移りますが、三月二十四日付のホノルル・スター・プレティン紙とのインタビューでロング米太平洋軍司令官がこういうことを言っておられるのが新聞報道されておりました。ペルシャ湾岸地域で米ソ対立となった場合には、同時に他地域に飛び火をして米ソ両国以外の同盟諸国も巻き込まれるだろう、新聞のコメントでは日本もその中に入るというような記事が出ておりましたが、安保条約上こういうことになるのですか。
  381. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま委員指摘のロング大将の証言といいますか、記者会見でございますけれども、私たちは新聞だけで承知している程度でございますけれども、その大将が言わんとしたところは、仮にペルシャ湾その他で米ソの対立が起こった場合に、状況によっては米ソの全面対決になるかもしれない、あるいはソ連としてはそれだけの覚悟がなければ行動を起こせないだろう、こういう趣旨かと思います。
  382. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 同盟国にも飛び火する、巻き込まれるだろう、こう言っていらっしゃるのですからどうなんですかと聞いているのです。日米安保条約上そういうことがあるのですか、そういうことになるのですか、そういう可能性があるのですか、外務省はどうお考えになりますか、こう聞いているのです。
  383. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 今国会におきましても沖縄からの海兵隊の緊急投入部隊、展開部隊等の御質問がございまして、その際に政府は一貫してお答えいたしておりますけれども、現実の問題として安保条約の予想する対象になるような問題は起きないだろうというふうに答えておりますし、いまの御質問の点についても、われわれとしてはそういう事態にならないというふうに現在の時点では判断しております。
  384. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、今国会が開かれて、予算委員会から、外交、防衛論議を聞いておったのですが、私どもかれこれ三十年間安保条約をめぐってやりとりしてきて、政府の統一見解も引き出してきた。しかし、今日の事態はそういう過去の解釈の枠を超えるような事態になってきたのではないか。いままでの定着した解釈では律し切れない事態になってきつつあるのではないか。たとえば極東の範囲にしてもそうである。なぜか。兵器が非常に発達した、そして部隊の緊急移動ができるようになった、それも広範囲にできるようになった。そういう中でいままでの解釈では律し切れないように事態の方が先に先行していく。そういうことを感じませんか、外務当局は。
  385. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 人間の社会は絶えず動き変化しておりますし、科学技術の進歩、発達もございますし、いろいろな情勢変化が長い期間には起こってまいることは事実でございます。ただ、日本がとってまいりました基本的な日本自身の安全という問題に対しての政策、これは一つには自衛力で専守防衛という立場を堅持いたしまして、万一外からの侵入がある場合にそれに対応する、それから日米安保条約によって核攻撃を含む攻撃に対しての抑止力を依存する、それから世界各国との友好関係を通じて日本の国際的な立場を有利な情勢に置いてまいる、こういう基本的な方針で対処していくということは、いまのようないろいろな情勢の変化にもかかわらず基本的には変化しておらないと考えておるわけでございます。
  386. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 中部太平洋は、安保条約上、極東の周辺に入りますか。
  387. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  極東の周辺という概念は、これまでもたびたび御議論になったところでございまして、楢崎委員もよく御承知のところでございます。これは、極東というものに対して脅威が加わってきたというときにとる米軍の行動範囲は極東に限られるものではなく、極東の周辺に及ぶことがあるということでございまして、これが具体的にどのような脅威がどこから及んでくるかということについては、これはすべて脅威の性質及び内容いかんによることでございまして、地域的に限定をいたしましてどこが極東の周辺に入るとか入らないとかということは、ここではっきりと明示することは困難なことでございます。そのことは従来もしばしばお答えしているところでございます。  他方、その極東に対する脅威ということでございますから、実際問題として考えてみても、その周辺というものが際限なく広がるということはないであろうということも、これも従来政府が御答弁申し上げておるところでございます。
  388. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃいまの考え方からいくと、オーストラリア周辺、ニュージーランド周辺も時と場合によっては、極東に与える脅威いかんによっては入り得る、入ることもある、そういう解釈でいいのですね、外務省は。
  389. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 答弁といたしましては、極東に及ぼす脅威の性質いかんにかかわることでございますので、地域的に限定することはできないということでございます。
  390. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年の五月二十八日にヘイワード米海軍作戦部長が来日して当時の山下防衛庁長官と会談をした。その中でヘイワード部長は、ソ連極東海軍に対抗するためには同盟国との協力が必要であり、日本、オーストラリア、ニュージーランドとの協力関係を発展させていただきたい——つまりこの協力関係というのはソ連の極東海軍の脅威に対抗する協力ですから、軍事協力です。そういうことは憲法上あるいは自衛隊法上可能と思われますか。
  391. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  憲法上は、先生も御承知のとおり集団的自衛権というものはわが国は行使し得ないということになっておりますので、その意味におきます海上において、ただいま例に挙げられました豪州、ニュージーランドとの協力というようなこともできないということでございます。
  392. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、一九七八年の秋でございましたか、アメリカの国際問題の専門誌にJANZUS構想というのが出た。これは日米安保とANZUS条約を結合させる構想ですね。そして、これを今度は昨年五月、大平総理が訪米されておったちょうどその最中に、アメリカのフィンドレー議員が正式にこのJANZUS構想を議会で提案されましたね。こういう日米安保とANZUS条約の結合、つまりJANZUS、こういうことは憲法上可能ですか。
  393. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 憲法上、集団的自衛権というものはわが国は制約をされているわけでございますから、したがいましてそのようなものを内容とするようなJANZUSという構想と申しますか同盟と申しますか、そういうものはわが国としてできないということでございます。
  394. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすれば、ギン在日司令官が発言をしておりますが、安保条約に基づいて日米の空母機動部隊、そういう部隊の創設は可能ですか。
  395. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 これも御答弁申し上げるとすれば同じようなお答えになると思うのでございますけれども、日米共同の空母部隊でございますか機動部隊でございますか、そのようなものが、現在の日米安全保障条約の枠外でありますもの、すなわち日本国への攻撃のみならずアメリカに対する攻撃に対しても日本が一緒になって日米共同の空母機動部隊で対抗するというようなことは現在の安保条約で考えられていることではございませんので、それはできないことであるということでございます。
  396. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本は、自衛隊は南西、南東航路、シーレーンの防衛構想を持っております。このシーレーンの防衛のためには可能ですか。
  397. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 それもわが国の自衛艦がシーレーンを防衛する範囲として、また一応の目標として構想を持っておるというように聞いておりまして、その間に日米共同して編成をした部隊が存在するというところまでは考えていないものだと思います。
  398. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 考え考えないじゃなしに、そういう創設がもし提案されたとすれば、それは安保条約上可能でしょうか。それを聞いているのです。
  399. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 問題が大変抽象的になってきているのでございますが、これが日本が攻撃を受けたというような場合にアメリカ側の援軍を求めるという形において日米が共同して守るということであれば、それも可能でございましょう。ただし、先生の御質問趣旨は、日本の攻撃を受けたということばかりに限らず、その他の場合においてもそういうことができるのではないかということでございますれば、それはできないことであるというふうに考えます。
  400. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間が来ましたからこれでやめますけれども、明後日防衛庁関係があるわけですね。リムパックの演習について防衛庁は盛んにいろいろな資料を出して、集団自衛権を前提とした演習ではないということを言っていますが、明後日、私は、具体的な米側、オーストラリア側、カナダ側、ニュージーランド側の資料をもって、あなたは抽象的とおっしゃったけれども、私は具体的にそれを指摘したい。そういう方向に向かいつつあるという点を指摘したいと思います。  これで終わります。
  401. 高田富之

    高田委員長 次回は、明後十七日木曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会