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1980-04-09 第91回国会 衆議院 決算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月九日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 高田 富之君    理事 津島 雄二君 理事 原田昇左右君    理事 森下 元晴君 理事 井上 一成君    理事 新村 勝雄君 理事 林  孝矩君    理事 庄司 幸助君 理事 中野 寛成君       石田 博英君    久保田円次君       藤田 高敏君    春田 重昭君       岩佐 恵美君    木下敬之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君  出席政府委員         経済企画政務次         官       堀内 俊夫君         経済企画庁長官         官房長     山口 光秀君         経済企画庁長官         官房会計課長  吉岡 博之君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁物価         局審議官    坂井 清志君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         経済企画庁総合         計画局審議官         兼物価局審議官 戸田 博愛君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁長官官房         会計課長    神戸 芳郎君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁企画調整         局環境保健部長 本田  正君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君  委員外出席者         国土庁水資源局         水資源政策課長 高橋 俊見君         大蔵省主計局調         査課長     伊藤 博行君         大蔵省国際金融         局短期資金課長 藤田 恒郎君         通商産業省通商         政策局企画官  新  欣樹君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      大高 英男君         運輸省航空局参         事官      多田  稔君         運輸省航空局飛         行場部長    山本  長君         会計検査院事務         総局第一局長  岩井  毅君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   石原 周夫君         参  考  人         (公害防止事業         団理事長)   城戸 謙次君         参  考  人         (公害防止事業         団理事)    宮城 恭一君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     河本 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     小里 貞利君 同月九日  辞任         補欠選任   永末 英一君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     永末 英一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十二年度政府関係機関決算書  昭和五十二年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十二年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管経済企画庁環境庁)〕      ————◇—————
  2. 高田富之

    高田委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度決算外二件を一括して議題といたします。  まず、総理府所管経済企画庁について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として海外経済協力基金総裁石原周夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高田富之

    高田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 高田富之

    高田委員長 それでは、経済企画庁長官から概要説明を求めます。正示経済企画庁長官
  5. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 昭和五十二年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  経済企画庁歳出予算現額は九十二億九千三万円余でありまして、支出済み歳出額は八十八億四千六百八十九万円余であります。  この支出済み歳出額歳出予算現額に比べますと、四億四千三百十三万円余の差額を生じますが、これは不用となった額であります。  歳出予算現額につきましては、当初予算額が百十五億九千八百三十七万円でありましたが、関係各省所管へ移しかえた額二十一億八百八十八万円と予算補正減少額二億二千五百七十四万円余を差し引き、関係各省所管から移しかえられた額二百十九万円余と予算補正追加額二千四百九万円余を加えまして、九十二億九千三万円余が歳出予算現額となっております。  支出済み歳出額の主な内訳は、経済企画庁一般経費七十八億六千二百四十五万円余、経済研究所経費三億七千三百三十九万円余、政策推進調査調整費三千四百五十三万円余、国民生活安定特別対策費五億七千四百四十九万円余等であります。  次に、不用額は四億四千三百十三万円余でありまして、その主なものは、国民生活安定特別対策費において、物価対策の効果の浸透等により物価が基調としては安定的に推移したこと等に伴うものであります。  以上、昭和五十二年度経済企画庁歳出決算概要を御説明いたしました。  何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  6. 高田富之

    高田委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。岩井会計検査院第一局長
  7. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 昭和五十二年度経済企画庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 高田富之

    高田委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  9. 高田富之

    高田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 まず最初に、世界情勢の中で、昨日アメリカイランと国交を断交する最悪事態を招いたわけですが、大変残念なことであります。このことによる、わが国が受ける経済影響について、長官からその見解を問いただしたいと思います。
  11. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ちょうど昨日の閣議の席上に、外務大臣から、米国イランとの外交関係断絶の御報告がございました。いま井上委員指摘のように、これは大変重大な事態でございます。私どもといたしましては、最初から、あの大使館の人質問題、これは人道上の見地からも一日も早い釈放を心からこいねがい、また、機会あるごとに関係各国にそういうふうなわが国の意向を伝えておるわけでございます。今日までそれが実現されないことは非常に遺憾でございます。今後とも、そういう事態の一日も早い進展とともに、こうした新しい事態が、良識のある米、イラン両国外交交渉等によりまして平和的に解決されるよう心からこいねがっておるわけでございます。  もちろん、日本といたしましては、米国との深い同盟関係にある関係上、いま申し上げたような筋道において、その限度においてアメリカ政策協力することは当然でございますが、しかし一方においては、いま井上委員も御指摘のように、経済的な面においては、これまたイラン原油を初めとし非常に深い依存関係を持っております。また最近は、イランの開発のために日本側も積極的な協力関係を進めておるときでございます。こうした経済的な関係におきましては、今回の事態によって正常な関係が損なわれないように万全の措置を講じていかなければならぬ、こういうふうに考えられるわけであります。  きのうの閣議は、結論といたしまして、こうした事態に対処していくためには、総理外務大臣中心に、アメリカとの緊密なる関係をもちろん大切にし、またイランとの経済関係等にも十分配慮しながら、アメリカその他西欧諸国の今後の出方について十分注視を怠らず、連絡を緊密にとりながら日本政策を進めてまいるというふうに言ったわけでございます。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 いまお答えがあったわけですけれども、非常に抽象的なんです。きのうのきょうで、まあ具体的な政策を打ち立て切るということは不可能かもわからぬけれども取り組み自身だって、アメリカにも協力をしていきたい、それは当然であるという発言片面イランとは正常関係を損なわぬように、こういうことなんですね。すでにアメリカイランとは正常関係でないわけなんだ。最悪状態なんだ。アメリカ協力するということになれば、イランはそれは反イラン陣営だということで、一つの大きな現象的あらわれとしては石油供給せぬ。アメリカに対して同盟的立場をとる者、協力する者には石油供給せぬ、こう言っておる。日本はいまアメリカ協力するんだ、当然だ、こんな答弁なんです。しかしイランとも仲よくしていきたい、西欧諸国の動向を見守って、連絡を密にして、一体何をするというのですか。それ以前に、今回のこのことで日本経済はどう影響を受けるか、こういうことについては何にも答えてくれていませんね。もう少しそういう点についてお答えをいただかなければいけない。石油の問題もあるでしょうし、イラン石化の問題もあるでしょうし、あるいはもろにそれによって物価の問題にもはね返ってくるでしょう。それに対して経済企画庁はどういうような対応をしなければいけない、あるいはこういうことを考えている、私からこういうことを言わさないでそちらから答えてくれないと、これは質問になりませんね。
  13. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 もう井上委員は十分御承知の上で、日本の国の出方、またわれわれの対応の仕方、これをできるだけはっきりするように、こういうことで、よくお気持ちはわかります。しかしそこが非常に微妙な点でございますので、きのうの閣議結論としては、「今後とも米国および他の友好諸国と緊密な連絡を保ちつつ人質解放を含めた事態早期解決のために努力していく所存である。」こういう結論になりましたので、そのことをありのままに申し上げたわけです。影響はどうか、これはわれわれとしては大変憂慮すべき事態と考えております。大体わが国石油に対するイランの占めるシェアといいますか、これは一割から一割三分くらいの状況になっておりますから、きわめて重要であります。したがって、私どもとしては、イラン石油供給がどうなるかということ、これはやはり十分確保しながら対米協調姿勢をとる、大変むずかしいのですよ。井上委員は一番よく御存じだと思うので、それでこういう御質問になるのだと思うのですが、私どもは、そこの経済的な影響というものを最小限度に食いとめながら対米協調も進めていかなければならぬ、大変選択の幅の狭い道をやっていかなければならぬ。外交当局あるいは通産当局、これから非常にむずかしい施策をやっていかなければならぬ事態であるということを申し上げた。私の方としましては、後で参考人として経済協力基金総裁もお呼びになったようですが、イラン石油化学、これに対して先般来必要最小限度の資金的な出捐を行うということも政府部内で決まっておりますが、これとても十分事態の推移を見ながら慎重に対応していかなければならぬことは当然であります。これを要しまするのに、政治経済、この両面にわたりまして事態は非常に複雑でございますけれども政治的な面においては米国イランの両当事国中心としてできるだけ平和的に解決されるよう、経済的にはそういう制約のもとにおいて日本としてはできる限り悪い影響を受けないように万全の対策を講じていくようにする、こういうこと以外はいまのところ私としては具体的に申し上げるものを持たないわけであります。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 経済企画庁長官に私は外交政策を尋ねているのじゃないのです。それはむしろ政府全体が取り組まなければいけないという連帯の責任感はあるとしても、担当の大来外務大臣がこれは全方位外交だという基本的な立場に立って、いわゆるイランとの外交アメリカとの外交外交政策で円満に事を解決すればそれは一番いいことだと思うのです。しかし、なかなかそうは簡単に——国連ワルトハイム事務総長が入って、あるいは国連がこれに関与しながらも最悪事態になった、こういう事実なんですね。もろに影響を受けるであろうわが国原油供給の問題について、これはどんな見通しを持つのかということですが、緊密な連携をとって円満裏に解決すること身望みます、望みますと言っても、その間にわが国物価というものはどう変化していくかということ、恐らくこれがもろに石油コストにはね返ってくるのじゃないかという心配。あるいはもしアメリカ側協力をして何らかの制裁的行為わが国が加わるとするならば、これは大変なことになりますよ。そういうことは、日本自主的平和国としての立場をこの際やはり強調して、日本が果たせる可能な独自の役割りというものがあるのですから、イランにもアメリカにもわが国意見をきっちりと言うて、そうしてこの問題解決、この緊張を緩和させる、そういう政治をやりなさい。それは経済面からとらえるならば、経企庁長官はだれよりも遠慮なく内閣の中で言える立場と違うのですかということなんですよ。そういう意思があるのかどうか、こういうことなんです。
  15. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 だんだんと私に対しこういう点をやるべきじゃないかというふうな御意見、全く同感です。私は外交の直接責任者である総理外務大臣その他がやっていかれるについて、あるいは通産大臣経済の問題についてやっていかれるについて、いま井上委員がいみじくも御指摘になったような見地——いま日本物価中心に一種の非常事態に直面しあるいは突入しておる、こう申し上げていいと思うのですよ。これにさらに悪条件が重なるということは、とてもとてもわれわれとしては耐え忍ぶことはできないわけですから、それについて十分配慮しながら、外交通商政策を進めてほしい、こういう気持ちでいっぱいなんです。私としても、微力でございますけれども全力を尽くしてそういうことをやっていくということをはっきりお答えを申し上げます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 長官は先日関西方面の市場に出られて、いかに物価高が国民生活を苦しめているかという実情も十分御認識になられ、国民生活を守る第一線で、はだで感じてこられたと思うのです。だから、私の意見がもっともである同感であるというお答えですから、それならそのような方法——今後そういう立場に立って大平内閣の中にあってひとつ十分にその意思を通してほしい。そのことがわが国世界において果たす役割りである。ひいては国民生活を守るという立場国益を守るという立場に立っての私は当然の責務だと期待をします。  さらにこれはもう一点聞いておきたいことがあるのですが、イラン石化わが国は二百億円の出資、すでに三月末までに二十八億円の政府出資をしているのですね。私はこの問題については事あるごとに、非常にゆがんだ、あえて申し上げるならばその中に何らかの疑惑あるいは不誠実あるいは公正でない、あるいはもっと言えばわが国利益追求の代表的な国際プロジェクト、もうあらゆる面からその中はどろ臭いものばかりだ、こういうことを言っているのです。きょうはそのことについて具体的な事例を指摘する時間はありません。二十八億の出資、そしてこの米イ断交の時点で政府としてあるいは経済企画庁長官として、このことについても今回閣議の中で何らかの話題が出たのかどうか、あるいは出ないとするならば、今後長官みずからこの問題についてもどういう取り組みをしていくのか、問題を長官から提起される御意思があるのかどうか、この点についてちょっと伺っておきます。
  17. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 イラン石油化学事業に対する、いわゆるナショナルプロジェクトとしての日本協力の問題は、今回の事態に至る前から、井上委員もおっしゃられましたように、これは非常に特殊なケースとしてアメリカ側にも機会あるごとに理解を求めながら、いまお話しのような段階を踏んで現地の実情に合った程度において協力関係を実行していく、こういうことで進んできておるわけでございます。昨日の閣議では特にイラン石油化学はどうなっておるかというふうには発言はどなたもなさいませんが、今度のアメリカイラン外交関係断絶という事態が、さっき申し上げたように、一日も早く両国の良識ある措置によって、また関係各国のいま御指摘のようなアドバイスといいますか、協力関係で平和的に解決しよう。ということは、一番先にいま御指摘石油化学のようなプロジェクトというものが両国利益のために所期の成果を上げられるようにということの願いを込めて私どもは申しておったわけでございまして、この点については全閣僚みんな同じ気持ちだったというふうに私は思います。  今後の問題といたしましては、米、イラン両国関係がいま非常にきわどいというか、もう最悪事態に立ち至っておりますけれども、この事態を打開しながら、どうしてもイランのためにもまた日本のためにも今度のこの石油化学プロジェクトというものが成功するように、そしてそれがアメリカを含む西洋諸国、いわゆる石油消費国イランを初めとする産油国との間の一つのパイプとしてりっぱな役割りを果たしていけるような、そういう事態に立ち至るように今後ともわれわれは粘り強い努力を探っていかなければならぬ、私はこういうふうに考えている次第でございます。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 このイラン石化の問題については問題がたくさんあるわけです。なぜこういうことをここで指摘をしておくかというと、アメリカ経済的制裁を加えよう、そして日本もいまのところは、そんな考えを持ってはいかぬのだけれども、それに遠慮して、そっちへ半分なびこうか。イラン石化に対してはイラン国益わが国企業のみは利益追求だけれども、あえて私は企業のみと言うが、企業のみは利益追求だけれどもわが国の優秀な技術をイラン国益協力するということは両国友好を深めることである。何かこっちで言っていることとこっちですることとが相矛盾するようなことになるわけだから、両国友好のためにきっちりと整理をして物事に取り組みなさい。わが国の自主的な判断と世界における経済立国平和立国日本の誠意を示すのがこのイラン石化に対する一つ取り組みだ、こういうことなんです。  何ら十分なお答えにはなっておりませんけれども、時間がありませんし、このことばっかりで質問の時間を費やされません。  さて、物価問題は当面何をおいても緊急な課題であります。政府見通しの六・四%、もうすでにそういう見通しなんというものは甘っちょろいものであるということが証左されているのですけれども、ここで六・四%におさまるのですか、そういう自信をお持ちなんですか、こういうことなんです。
  19. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 結論はぜひとも見通しを実現するように全力を尽くすということになるわけですが、そう言っても、それじゃおまえ、そういう自信は一体何を基礎にしておるか、こういうことになると思いますので、簡単に私どもの申し上げることをひとつお聞き取りいただきたいのですが、まず五十四年度でございますけれども、これは井上委員も御承知のように、最初卸売物価なんか一・六%ぐらい上がるだろう、こういう見通しでスタートをしたのです。ところがあのイランの政変が起こりまして原油価格暴騰、円が高値から安値へ転落をしていくという過程をたどりまして、結局修正見積もりでは卸売物価は一二・一%ですね、そのくらいまで上がる、こういうことになりました。そこで消費者物価の方ですが、これは当初、年度を通じて四・九%ぐらいの上昇だろう、こう見ておったのを、卸売物価が上がることはある程度やむを得ないけれども、それを国内の消費者物価に転嫁しちゃいかぬ、できるだけこれを遮断していけということで何回か公定歩合の引き上げが行われる、それからまた総合物価対策を定める、また国会方面からも非常に強いいろいろの御意見等によって御鞭撻をいただく、御協力をいただくということから、消費者、メーカー、それから労働組合国民各層の非常な御努力で五十四年度は四・九を四・七程度に、若干の端数は出ますけれどもおさまる、こういうことでいま進んできたわけで、その結果は四月の半ば過ぎに恐らく発表になるものと考えるわけであります。  そういう実績をもとにいたしまして、今度は五十五年度卸売物価は五十四年度よりはやや上がり方が低くなっていく、こういう見通しを私どもはつけております。そして五十四年度年度末に例の、去年のわれわれの選挙の最中に台風があったり長雨があったりいろいろな自然的条件で野菜が非常な暴騰をした、こういう事態はおかげさまでだんだんと正常化しつつある。電力ガス、その他の応共料金値上がりがございましたけれども、これの消費者物価への直接的な影響というもの、これはある程度のことは避けがたいのですが、しかし、電力を動力とするところの卸売物価から消費者物価への波及、これはひとつ各企業で大いに生産性向上努力をしていただきたい。政府も財政、金融両面にわたってきわめて厳しい抑制的、いわゆる適切なる総需要の管理政策をやる、そして生産性を向上していただく、個々の物資についてもそれぞれ適切なる対策を講じていく、こういうことによってぜひとも六・四という消費者物価上昇見通しをわれわれとしては守っていかなければならぬし、また努力をすれば守り得るものと確信をして、ただいま物価対策を推進しておるところでございます。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 全力を尽くす、あるいは努力をするということなんですが、説得すべき科学的な側面が全く見受けられない。すでに卸売物価は前年比二一・四%、前月比で二・六なんですね。消費者物価は、前月比上昇率が〇・九%、これは二月ですが。このままの状態でいけば十二月には二けたになってしまうわけです。さらに四月から電気、ガスあるいは運賃、たばこ等が大幅な値上がりになる。これが消費者物価にどうはね返るのか。すでにもろにはね返る要素、それはさっきも申し上げたように、長官自身がもうはだで感じてきたのじゃないかということですね。指数が低い。あるいは、努力をする目標としては六・四を設定されたけれども、むしろ現状はそうじゃないし、非常に厳しい上昇率をたどっている。そのことは企業倒産にもなるであろうし、あるいは雇用の問題にもかかわってくるわけなんです。それは後ほどにしても、いわゆる政府見通しの六・四%におさまる可能性というのは現時点で全くない。政府見通しの六・四%におさまるということは全くありませんよ。むしろ、今後どういうような数値を設定して手直しをして、そしてそれにどのような方法、どのような具体的な努力をなさるか。いま、企業努力だとか、抽象論にはむしろ国民は飽きております。だから、公共料金については今後向こう何カ月間、何カ年間どうするのだ、あるいは為替レートをどういうふうに保持していくのだとか。やはり経済なんというものはすべてに波及するんだから、ただ努力します、がんばりますではだめだ。そんなことでは政策にならぬ。率直に、外的要因——あえて申し上げるならば、われわれは政治的な要因だということにとらえておりますけれども、部分的には、国際的な情勢の変化等があって、外的な要因も加味した中で、当初の目標あるいは思惑から大いに外れた。私は、率直にそういう反省をきょうのこの機会になさって、その反省の上に立って、経済政策はどうあるべきだ、こう修正をしていくのだ、こういうことでないといかぬと思うのです。  大臣、いかがですか。あえて私は経済政策の失敗であるということを申し上げたいのですけれども、これは外的な要因も多分にあるので、まあ割引をしてそこまでは申し上げませんけれども、六・四、六・四と、こんなもの、何とかの一つ覚えというのがありますわ、それを言うとったらそれでええという、そんな時代じゃないということですね。だから、このことについては再検討に値するし、これはもう、経済界ではだめだと言っているんですね。担当の大臣だけが六・四、努力します、全力を尽くしますと言ったって、そんなことにならなかったら大したことないな。大臣、腹の中はぼくと同じだと思うんだけれども、ひとつそういう点について答えてください。
  21. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 井上委員最初におっしゃられた、私が大阪へ行ってはだ身で感じてきたろう——はだ身で感じてきたことは、この六・四という政府見通しを何としても守らなければならぬし、これは守り得るものだ、実現し得るものである、こういうことをはだ身で感じてきたわけなんですよ。私は、やはりさすがに大阪は、井上委員の一番よく御存じのところですけれども、まさに経済の問題では本当に日本の先導的役割りを果たしておられると思うのです。ああいうところを見ますと、やはり物価問題にはいろいろと工夫の余地があるんだなということをはだ身に感じ、そしてそういう努力を今後ともじみちにひとつ強化していかなければならぬ、こんなふうに感じておるのです。  そこで、おっしゃるとおりです。外から押しかけてくるインフレの波をどこで食いとめて、そしてそれをいわゆるホームメードインフレにしないか、こういう点でございますから、先ほど来お話のあった原油の価格その他についても、これはもうどこまでも、最大限度努力をして、できる限りこれを安く買うように努力しなければならぬことは当然のことなんです。幸い、ロイター商品指数等も若干頭打ちから下落の傾向というか、鎮静化の傾向は出ておる。それから野菜の価格がそうである。それから春闘。私は日本の経営者、労働者の、組合の方々ですね、そういう点では大変大局的に判断をされておられることに心から敬意を表するのですよ。  そこで、近くアメリカへ、シュルツ経済諮問委員長に私は綿々たる手紙を書きます。第一、カーターさんは、いま井上委員の言葉ではないけれどもアメリカが一八%のインフレなのに、日本は二五%だ、こういうことをこの間言っちゃったのですね。アメリカの方は消費者物価日本の方は卸売物価、しかも卸売物価の中に、アメリカなんかの入ってない原油価格というのが日本の方は入っておるのですからね。これは大変ミスリーディングな発言なんですね。そういうことでは、円が安くなるのも本当に国際的理解が足らぬのじゃないか、私はひとつ綿々たる手紙でもってシュルツ委員長に伝えたい、こういうことを決意をいたしてきたのも、大阪で、はだ身で感じた一つの結果なんです。そういうことで、これから、卸売物価はこうだけれども、内容的に言うたら非常に違うのですよ、消費者物価アメリカとは比較になりませんよ、それから春闘の賃上げ等についても非常な努力が払われておりますよ、財政、金融、両方とも日本はもう最善を尽くしてインフレマインドの払拭ということに全力を挙げているんだ、こういうことを国際的にも国内的にももっともっと理解をしていただく必要がある、私はこう考えて、微力でございますけれども全力を挙げて取り組んでいきたいと思っておるわけでございます。  だんだんのお話でございますが、井上委員はもうその道の大家ですから、経済問題の。ひとつ御協力を賜り、御教示を賜って、物価の安定に全力を尽くしていただきますよう、よろしくお願いしたいと思います。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 何か最後に大臣からほめられる……。ただ、国民の犠牲の上に立って、国民がもう消費量を節約し、生活を縮めて、犠牲の上に若干の上昇率を抑えてきたということもあるわけなんです。しかしもう、国民だって限度いっぱいだ、こういうことなんです。  さらに私はまだまだ質問、金利政策だとか——それはアメリカがプライムレート二〇%だ。ドルは全部アメリカへ寄っていく。わが国は外貨保有高が二百億ドルを割った。何でや言うたら、石油を買うたからと、恐らくそう言うかもわからない。しかし、そのことが円安につながっていく、それがひいては物価上昇にはね上がる、いわゆる悪循環のいまの一つ経済の歯車をどう正常化してインフレを抑えていくか、物価を守っていくか、こういうことについては、午後の委員会でさらに私は担当の政府委員質疑を交わすことにしまして、とりあえず午前の質問はこれで終え、残余は午後に留保します。  どうもありがとうございました。
  23. 高田富之

    高田委員長 新村勝雄君。
  24. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 続いて、やはり経済問題、特に物価の問題について長官からお答えをいただきたいわけですが、現在の情勢は、申し上げるまでもなくインフレ含みということで国民が大変不安を抱いておるわけであります。現在の情勢に対してまず大観された場合にどういう印象をお持ちであるのか、それをお伺いしたいと思います。
  25. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ただいまも井上委員にもお答えいたしましたように、日本物価の現状というのは、海外から押し寄せてくるインフレの波、これはもう大変な力で押し寄せてきておることは新村委員も御承知のとおりだと思うのです。これをどこで食いとめていわゆるホームメードインフレにしないようにするか、波及を最小限度に食いとめる方策いかん、こういうことが日本物価政策のキーポイントだ、こう認識をいたしております。幸いにして五十四年度は各方面の非常な御協力で、先ほど来数字を申し上げたように、当初の卸売物価の見込み等から見ますと卸売物価は大変な上がり方でございますが、それを各製造業の段階において労使の方々が非常に協力をされた、あるいはまた消費者がきわめて賢明に対処されたというふうなことがあずかって消費者物価への影響が非常に小さく済みまして、当初政府見通し消費者物価上昇率を下方修正をして目標達成ができた。このりっぱな実績を基礎にいたしまして、五十五年度におきましても卸売物価については少なくとも五十四年度ほどの上がり方はないという状況にございます。しかし、一方においては公共料金が上がります。そのほか卸売物価の波及がだんだん累積されてまいります。そういう悪条件はございますけれども、私ども国民の総力を挙げてこの外来のインフレの侵攻に対してこれを防ぐように全力を挙げて取り組まなければならぬ、私どもはこういうふうに事態を認識いたしております。
  26. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 いままでの物価の動向を見ますと、高度成長時代には卸売物価は比較的鎮静をしておった。こういう中で小売物価が非常に高騰したということで、その間の乖離があったわけですね。普通は卸売物価に応ずる消費者物価ということが正常の形だと思いますけれども、当時は卸売物価の鎮静ということがそこで遮断されて小売物価が上がっていったという現象があったわけです。これについては生産性の低い部門の事情なんかもあったわけでしょうが、それが昨今は逆の乖離があらわれておるということで卸売物価が非常に高騰しておる。しかし、現在の段階ではまだそれほど消費者物価には影響しないということでありますけれども、今度はいままでのような状況にはいかないのではないか。卸売物価の高騰が一定のずれを持って消費者物価にはね返ってくることはもう必至であるというような見方もあるわけでありますけれども、この両方の乖離の事情を、前の時代の分析をどうなさっておるのか。今回はそれをどう見ていらっしゃるのか。その乖離あるいはその逆乖離の現象についてどうごらんになっているのか伺いたいと思います。
  27. 坂井清志

    ○坂井政府委員 いま先生御指摘のとおり、卸売物価の動きと消費者物価の動き、これが時期によりましていろいろ異なった動き方をしておるわけでございます。たとえば、昭和四十九年度以来の数字で申し上げますと、昭和四十九年度におきましては卸売物価の方は前年比二三・五%アップ、それに対して消費者物価の方は二一・八%アップということで、このあたりは大体そろっておったわけでございます。そろっておったと申しますか、かなり高い上昇率、例の狂乱物価の時期でございますが、それが五十年度になりますと卸売物価は一・九%というふうに急速に鎮静してまいりまして、なお消費者物価の方は一〇・四%という高い上昇を示した。その後五十一年度になりましては、卸売物価五・五%、消費者物価九・四%さらに五十二年度卸売物価〇・四%、消費者物価六・七%というぐあいになりまして、先生もいまおっしゃいましたように、このあたりになりますと卸売物価の方が相対的には上昇率が低くて消費者物価の方がやや高目である、こういう時期に入ったわけでございます。五十三年度卸売物価はさらにこの円高の影響等がきつく効いてまいりまして、むしろ前年度に対しましてマイナスになりましてマイナス二・三%、それに対して消費者物価の方は三・四%の上昇ということで、消費者物価の方にも間接的ながら円高の影響が及んできたわけでございます。特に日本卸売物価につきましては、輸入物資の影響というものがきわめて大きいわけでございまして、したがいまして、一般的に円高の時期になりますと、卸売物価上昇率はきわめて低くなり、場合によっては前年度比マイナスというようなことにも相なる。ところが、消費者物価の方は、輸入要因がそこまで行きますとかなり薄められてまいりまして、国内のいろいろなコスト、生産性、そういうものの動きに支配される面が強くなってまいります。そういうわけで、相対的に見ますと消費者物価の方は為替レートが円安になりあるいは円高になるという変動に対して比較的小さい動きで済んでおる、こういうことが言えるかと思います。御存じのように、ここ一年ないし一年半ほど円安の時期が続いておりまして、こういうことになってまいりますと、そこにさらに原油その他の海外一次産品の影響が重なってまいりますと、卸売物価の方は相当一時期急速に上がってまいるわけでございまして、御案内のとおり昨今は前年同月比で卸売物価二〇%を上回るような事態になっておりますけれども消費者物価の方はそこに波及してくるまでの途中の段階でいろいろ生産性の向上なり合理化なりという要素もございますし、タイムラグもございますし、いろいろ皆様方の御努力のかいもございまして、多少昨年あたりよりは高くなっておりますものの三月の前年同月比で八%、二月の東京都区部速報で七・二%ということにとどまっておりまして、卸売物価とはちょっと違った動きになっておるかと思います。
  28. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 高度成長時代と現在では経済構造は変わっていると思いますけれども、こういう急速な卸売段階での高騰、これを消費者段階の途中で遮断をするということは現在の状況で果たしてできるのかどうか。生産性の向上といいましても、もうそういう工夫の余地が比較的少ないというふうに現在は考えられるわけでありますし、この卸売物価の高騰を遮断できるとさっき長官はおっしゃいましたけれども、できるという理論的な根拠をひとつ伺いたいわけでございます。
  29. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは私どものいわば決め手でございまして、これができないということになると大変、前の狂乱物価のときには、いま御説明を申し上げたように、卸売物価消費者物価も大体歩調を合わして上がっておる。これがいわゆる狂乱物価、悪性インフレ、こうだと思うのです。それをいま申し上げたように、いろいろな各方面の御協力で波及を食いとめておる、こういうところが今日のわれわれの物価政策の決め手になっておる、こういうことでございます。  さて、それができるのか。そこで前回と今回との開きを、いろいろな相違の著しい点を申し上げますと、前回、石油が四倍に上がる。その前からずっとインフレ的な情勢がつくり上げられておりまして、相当物価が上がるような素地ができておった。そこへ燃え上がる火に油を注いだようなかっこうで石油危機が襲ってきた。これがまず第一に違っております。そこで、消費者の方も初めてのことであり、油がこれからどうなるか非常に不安だというところの心理的な問題がありまして、トイレットペーパー騒ぎというふうなことになったことは、もう新村委員よく御承知のとおりでございます。  これに引きかえまして今回は、さっき申しましたように、円高で日本は非常に恩恵を受けておったところへ、黒字をどうして減らすかというふうなことをやっておったところへイランの政変から油の問題が起こってきた。そこで早速公定歩合は引き上げられる。去年三度、ことしになって二度。財政は、この点についていろいろ御意見もあるようですが、とにかく財政再建ということで、行政改革もできる限りやる。こういうふうに民間の経営者の減量経営に対応して財政的にも努力する、こういう姿勢が私は前回と今回との非常な違いになっておると思う。インフレムードを払拭する基盤ができておった。そこで前回の苦い経験をひとつ繰り返さないようにということで、象徴的な出来事は例のかずのこ問題、これは高いものは買わないというふうなことを実践することによって私はできておると思う。その間あらゆる産業分野においては生産性向上ということに全力を尽くしていただいた。消費者には非常に賢明に対処していただいた。これを今度さらに続けることによって、私は五十五年度においても五十四年度と同じような非常に苦しいいろいろな状況はございますけれども、まだまだ努力をすればそれが実る可能性は持っておる、こういうふうな認識のもとにいまもなお努力を続けておる次第でございます。
  30. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 よくわからないのです。国民協力はすると思いますけれども経済の動きというのは、御協力とかそういう気持ちでは解決できないわけでありまして、やはり経済の原則あるいはルールがあるわけであります。そういう中で果たしていま企業なり国民協力だけで克服できる状況であるのかどうか、大変疑問であります。さらにまた、政府の相次ぐ公共料金の値上げ、特に経済の根幹をなすと言われる電気料金、これが大幅に上がったというようなことで、こういうことを考えた場合に、いまの長官の御説明ではとても納得ができないわけであります。そういう波乱含みの中で政府はあえて電力料金の値上げに踏み切ったということでありますけれども、産業のすべての根幹をなすと言われる電力料金の五〇%の値上げ、これ一つとってみても、政府が本当に現在の状況を踏まえてインフレ対策に取り組んでいるかというその基本的な姿勢が疑われるわけであります。果たして電気料金の値上げがどのくらい経済影響を与えるのか、どのくらいの認識を持っておられますか。
  31. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 電灯、電力ガス、これは非常に重要な公共料金でございまして、これの値上げがどういう影響を持つか。新村委員、まあわれわれ好んでこれを引き上げるというようなことは絶対していないわけで、査定は全体で圧縮率は二一・一〇%電気について、そのうち電灯は二二・三〇%、それから電力の方で二〇・六七%、このくらいの圧縮を図っておるのですよ。  それで、余り時間をとったら恐縮ですから一番大事な点だけ申し上げると、原油価格は三十二ドル強で見ておる。それから為替レートは二百四十二円で見ておる。それ以上上がるよ、それ以上円は下がるよ、そういうことは一切あなたの方の生産性向上で吸収しなさい、こうやっておるのです。それから人件費のアップは五・五%と見ておる。それから定率の償却は、原子力その他石油にかわるようなそういう施設について見ておる。相当厳しい査定をやっておる。しかも一年間だけベースで見ておる。こういうふうなことでございますので、消費者物価への影響は、電灯で六・四のうちの〇・七です。それからガスが〇・三ですから、合わせて一です。こういうふうに圧縮をしておるということをまず御理解をいただいて、しかもそれを使ういろいろな業界に対しては、われわれは、いま極力これをひとつ生産性向上で吸収して消費者物価へ波及させぬように努力してくれ、こういうふうにやっておるわけでございます。  また、政府関係の公共料金についても、とにかく財政赤字を出すことを極力抑えるという要請が一方にございますので、国鉄の運賃なんかも最小限度にして認めておる。米価、麦価についてもそうだというふうな点を御理解をいただけば、私は、これから努力をしていけば、なおこれは吸収して、余り消費者物価を押し上げる要因にならぬようにやる余地はある、努力の余地がある、こういうふうに考えておるわけであります。
  32. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 先般の電力料金の値上げによって数字的にどの程度の波及があるのか、その推定をひとつ伺いたいのです。
  33. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 申し上げたように消費者物価へは電灯で〇・七、ガスで〇・三、合わせて一、これが六・四に対する電灯、ガスからの消費者物価への直接の影響でございますから、それだけは食われる。そのほかに電力を原動力とする卸売から消費者価格への波及はプラスアルファー、これは努力の余地によって大いに切り詰めることができる、こういうふうに考えております。
  34. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 主要産業に対する波及だけでも八千億を超えると言われています。それからさらに一般消費者、家計に対する波及効果、これはマイナスの効果と言うとおかしいのですが、波及を考えると、いま長官の言われたような数字ではとうていおさまるまいというのが一つの見方、そういう見方があるわけです。そしてこの料金の値上げに踏み切ったことについては、いろいろと圧縮をし、また企業努力も要請をしておるということでありますけれども、そういうことはあるかもしれませんが、とにかく現在の情勢としてはインフレが最も心配されておる。さらにまた世界情勢イランの情勢を中心として、これは逆睹しがたい情勢にあるわけです。こういう中で政府は、国民生活の安定とそれから物価の安定は最大の課題として取り組まなければいけないわけでありますけれども、その基本的な姿勢について甘さがあるのではないかということを指摘したいわけなんです。たとえば電気料金にしましても、これは国民生活あるいは産業界に最大の影響を与えるわけですから、本当に政府がこの際腹を据えてこの難局、これは難局と言っていいと思うのです。難局になるかならないか、まだ難局まではいっていないにしても、難局に突入する危険性が非常に濃いわけでありますから、もう少し経済の情勢が見きわめがつまで電気料金の値上げを抑える。電気会社の経営については、これは別途考える方法があるわけでありますから、そのくらいの決意が政府になければいけないのではないかと思うわけですね。ところがあえて大幅な値上げを許した。さらにまた健保にしても国鉄にしても、また、たばこにしても、公共料金あるいは公共料金に準ずる値上げが軒並みに予想される。また、政府の地方財政に対する締めつけ、これはあえて締めつけと言っていいと思うのですけれども、これに対して地方自治体では、高校であるとか水道料金であるとか、あるいは細かい点では市役所の諸手数料であるとか、こういうものについてもやはりことしは軒並みに値上げをせざるを得ないような状況になっておるわけですね。こういう状況政府はどう見ておられるのか。これで果たして政府が目指しておる六・四%の消費者物価で抑えることができるかどうか。これはほとんど不可能だと思うのですけれども、それらを総合して政府に本当にインフレに対処する決意があるのかどうかということを非常に疑問に思うわけであります。その点についての御決意を再度伺いたいわけであります。  それからまた、総理はしばしば六月を目途にして、六月を越えれば物価は安定する、こう言っておられるわけですね。そして野菜もそのころになれば安くなるということでありますけれども、野菜の値段なんというものは全体からすればきわめてウエートが低いはずですね。しかも野菜とかそういったものが今後の物価の動向を左右するとは思えないわけですよ。ですから、野菜が安くなったからといって、日本のインフレがおさまるということでは決してないわけでありまして、そういう点からしても政府全体の経済情勢に対する読み方が大変甘いと思うのでありますが、その点について、ひとつもう一回伺いたいと思います。
  35. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お言葉でございますが、まず電力とかガス、これを延ばしたらどうだったかと言われますが、あれ一日延ばすと九十億円ぐらい赤字がふえていくわけです。これは停電をするとかガスを停止するとかという事態は絶対避けなければいけませんので、いずれはこれは上げていくわけですから、その赤字が累積していくと大変大きな負担増になっていく、したがってわれわれはあの時期に各党からもいろいろ御意見を伺いながら、さっき申し上げたような最小限度にしてこれを四月一日から実施していく方が結局消費者にとってもまだ比較的ベターではないか、こういう判断をしたということをまず最初に申し上げておきます。内容的にはさっき御説明したので、これは繰り返して申し上げません。  そこで、いろいろあちこちから雨後のタケノコのごとく値上げ値上げという声があるじゃないか、これで六・四を守れるのか、こういう御趣旨に伺えます。それから野菜は大したことないじゃないかと言われましたけれども、これは大変なものなんです。いま年度末の消費者物価が目標値におさまるかどうか、まさに野菜が決定的な役割りを演じたわけなんです。それでおかげさまで、農村地帯から御供出、御出荷をいただいて、それによって物価の危機を一応乗り切る見通しができておる。これがこれからの新年度においてもだんだん春野菜が値下がりをしていく、そして夏から秋、冬にわたって作付が計画的に行われて、もう野菜不安なしということになればこれは非常に大きな助け船になるわけでございますので、私はそういう点において、農林水産省並びに野菜をおつくりくださる農民の方々の一層の御協力を願っておきたいと思うのです。  それでいろいろ細かい料金の値上げがございますけれども、そういうものに対して国民はどういうふうにこれに対応していくかというと、省エネルギーなんですね。もう電気が上がった、あるいはガスが上がった、ぱちぱちと消していくという国民努力というのは大変なものなんですね。これはまた大きく国策に沿うわけでございますので、そういう点、努力の余地がある、これは最終的な買い手の消費者の知恵です。そしてこれが配給機構、またメーカー、そういう方へずっと波及していって、高くしたら買ってくれない、何とかここでできるだけ安くしなければならぬ、こういう空気が浸透していくことによって日本国民総力のインフレに対する防遏力というものが強まっていくのだ、こういうふうに私は考えますから、決して不可能ではない、やればできるというふうに考えております。
  36. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 物価の動向を決定するのは決して野菜ではないと思うのですよ。確かに野菜は一時高かったですけれども、これは代替性もある程度ありますし、また農家に要請をすれば生産を比較的短期間のうちに上げることもできるわけです。それからまた、同じ野菜でも安いものもあるわけですし、代替性もあるわけですから、経済全体に占めるウエートというのはそんなに高いものではないわけです。野菜とか、あるいは長官おっしゃるように、電気を消すことによって節約できるじゃないか、こういうことは国民に対する精神運動として、あるいは政府協力を要請する一つのPRとしてはそういうことが言えるかもしれませんけれども、これは物価の動向を基本的に決定する要因にもならないし、幾ら電気を消したって電力料の値上げをそこで吸収することはとてもできないわけでありまして、そういうことはやはり政府としての言い逃れにすぎないのじゃないかと思うのですね。政府がこの際本当に決意をするならば、それは五年も十年も延ばせということじゃないのですから、もう少し世界の情勢が見きわめがつくまで、あるいは日本のインフレの動向がもう少し見きわめがつくまでは電気料金を初め公共料金の値上げはこの際一切ストップすべきだという見解であるわけでありますが、これは長官とは見解が違いますけれども、要するに本当に腰を据えて国民の不安を解消できるような政治姿勢をこの際インフレ防止についてとってもらいたいということを申し上げたいわけであります。  それから買い占め売り惜しみ防止法あるいは国民生活安定緊急措置法というような法律があるわけですけれども、この法律の発動についても政府は真剣に考えていただいて、その用意をされることが必要ではないか、もうそういう段階が近づいているのではないかと思うわけでありますけれども、これについての御見解はいかがですか。
  37. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは去年、石油危機がああいうふうに起こったときには本当に真剣にわれわれも考えたわけなんですね。石油供給が需要に足りないという事態になりますと、まず、新村委員承知のように、石油需給適正化法という法律がございまして、これで一種の強権をもって石油の需要と供給を合わしていくという措置が必要になってくる。そこで、おっしゃるように国民生活の安定に関する法律とか買い占め売り惜しみの防止法とか、そういうことも考えていかなければならぬという事態を憂慮したのですが、幸い、御承知のように石油は需要を上回るだけのものを供給を確保できた、これが一番大きな幸いであったと思うのです。しかし値段は上がったということ。そこでさっき申し上げたように外来のインフレを吸収する努力によってこれをやっていく。そのときに、そういう努力をやっていくのには一体この法律とどういう関係になるかといえば、これは競争原理で、いわゆるマーケットメカニズムでやってください、努力してください。できるだけ吸収した安いものを買いましょう、高いものは買いませんよ、こういう競争原理が発動しないと吸収はできないわけですね、これは釈迦に説法ですが。そこでわれわれとしては競争原理、市場機構、これを大事にしながら今日までやってきたわけでございますし、今後もやっていかなければならぬ、こういうふうに考えますが、しかしせっかく国会から与えていただいておる伝家の宝刀ですから、大事にいたします。そして、これを本当に発動しなければならぬような事態になりましたら私どもとしてはいつでもこれを発動するような用意をいまからしておけとおっしゃったそのお言葉は、肝に銘じて十分考慮していきたいと思います。
  38. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 公共料金についてはいま国民の間で論議の的になっておりますが、健保、郵便料金あるいは国鉄と、次々に実施をされあるいは実施をされようとしておりますが、どうですか、この際、公共料金の値上げについて再検討あるいは時間を延ばす、そういうような御考慮は全然なさいませんか。
  39. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 さっき申し上げたように、原価を割っておるような料金体系をそのまま放置をしておきますと、一日一日赤字がふえていくというふうな事実が一方においてはございますので、これは捨てておけないわけでございます。しかし上がり方については、われわれとしても極力これを圧縮する、経営の合理化、徹底した経営の圧縮、冗費の切り詰め、こういうことには努力をいたしたわけでございます。予算の関連の公共料金をいまお挙げになったわけでございますが、結論から申し上げますと、予算編成の過程において経済企画庁は相当憎まれ役を買ったわけです。もっと上げてくれと言われたのですが、このぐらいでひとつがまんしないと、物価が上がってインフレになったら何もかもないじゃないかということを申し上げて、非常に圧縮した原案になっておるわけでございますので、国会におかれましては十分御審議の上、われわれの出しました原案をお認めいただければ大変幸せだと存じます。
  40. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 長官経済というものは各時点で勝負が決まるのじゃないですね。ずっと長い時間的な経過の中で経済政策なり経済の動向というものは決まるわけですから、ある時点でインフレの危険が非常にあるというような場合には、たとえ赤字が出てもそれをたな上げをするなりして、それでもう情勢の好転するまでその値上げを待つ、好転してから値上げをするなり赤字の処理をするなりという方法もあるわけですね。いまの時点でこれはどうもそろばんが合わない、赤字だからすぐ値上げをする、インフレの危険があるのだけれどもしようがないということではなく、長い時間の中で問題を処理していく、こういう考え方が必要じゃないかと思います。ところが政府ではそういうことがないように見受けられます。現存健保が赤字だから値上げをする、あるいは郵便料金についても何にしても現在赤字だから値上げをするのだ、電気料金についてもこのままでいったのではとても赤字がふえてどうにもならないから値上げをするのだということではなくて、もう少し長い時間の中で問題を解決する、こういう態度がおありでしょうか。これはぜひ必要だと思うのですけれども。  それからまた、政府は、大丈夫なんだ、上昇率も六・四で必ず抑えるという自信を持っていらっしゃいますけれども、結果的に抑えられなかった場合にはどういう責任をおとりになるのか。われわれの見方が間違っていて上がらなかったということであれば国民にとって非常に幸いであります。政府がインフレ抑制については大変強気で自信を持っていらしゃいますけれども、仮にこれが外れた場合にはどうなるのか。外れれば被害を受けるのは国民でありますから、そういう場合の責任をおとりになる形、これをまた伺っておきたいわけであります。  それから、時間がありませんので続けてあと一、二お伺いしたいのですけれども、もう少し経済の情報を国民に知らしていただくことが必要ではないかと思うわけです。  最近政府 では物価一一〇番を始められたようでありますけれども、これは単なるこういうことをやっておるという言いわけにすぎない程度のものでありまして、本当に経済の情勢を国民に知らせるシステムにはなっていないようであります。できればこういう物価相談の中へ現在の経済状況、特に在庫の状況であるとか見通しであるとか、それから、できれば物価のガイドライン等をそこで示して、そうして地域的な暴利を抑えるとか売り惜しみ買いだめを抑えるとか、こういう配慮が必要ではないかと思うのです。それから、これはいろいろ論議があるでありましょうけれども、できれば主要な物価については原価の公開をするとか、こういうふうにして国民経済の情報をできるだけ提供する、そういう中で国民の良識による判断を求めるということが筋ではないかと思います。長官よくかずのこのことをお話しになりますけれども、これは確かに国民の知恵であると思います。しかしその知恵も、情報がない中ではなかなか知恵の出しようがない場合が多いわけですね。ですから政府が十分情報を提供していただいて、そういう中で国民の知恵を出してもらうように求めるということでなければ、これは筋が違うと思うのですよ。ところがいまのところ原価はわからないし、在庫の状況はわからないし、地域的な値段の変更等についても国民はほとんど情報がないわけですね。これらについて、ひとつ積極的に御検討あるいはその方法についてお考えになる御予定はございますか。
  41. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まずこの際、公共料金の値上げを、物価の正念場というか危機というか、そういう事態を避けるために延ばしたらどうか。これは先ほど申し上げたように、ぎりぎりの経営合理化によって最小限度のそれぞれ値上げをしなければならぬ理由がございまして、それを圧縮して時期を延ばすとどうなるかという点でも十分配慮して出しておるわけでございますので、この点はぜひ御理解をいただきたいと思います。しかし、国会でもいろいろ御考慮をいただいて、たばこの値上げ等についても最近、時期的な調節を行われたというようなところについては、私もよく理解をしておるわけでございます。しかし、いまわれわれとしては、政府が責任を持って出しておりますものを撤回してどうするということを申し上げる立場にはございませんことをひとつ御理解いただきたいと思います。  それから、インフレ抑制不成功の場合の責任いかん、これは新村委員、われわれは全責任を持ってやるのですよ。いまできない場合なんということを初めから言ったら、これはもうとても努力する意気込みではございません。私どもは成功するという確信のもとにやっておる、こういうふうにお答えを申し上げたいと思うのです。  それから最後に、大変ありがとうございました。物価一一〇番は、来週月曜日からは昼間は担当の者が出ましていろいろお答えを申し上げるように手配をいたしております。いまその訓練をいたしております。りっぱに応答できますような方をお願いしたいと思っています。  それから一番大事な点は、国民協力を求めるなら情報をできるだけ出すべきである、ごもっともであります。この間の電力料金、ガス料金等についても、これは通産当局と一緒になりましてできる限り御説明をするようにいたしたわけでございますが、この間、実は大阪で同じような御要望に接しました。私どもとしては、第一線から情報をいただくと同じように中央からもできる限りの情報を提供いたしまして、本当にコミュニケーションギャップのないような事態を確立することによってお互いの理解と協力関係を強化していきたい、こういう考え方で努力をしていくつもりでございます。
  42. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それではひとつ断固この政府の目標を守るということで御努力をいただきたいと思います。  終わります。
  43. 高田富之

    高田委員長 春田重昭君。
  44. 春田重昭

    ○春田委員 私は、イラン石化事業についてお伺いしたいと思います。  まず基本的に、この種の事業につきましての私の見解を示しておきたいと思うのですが、私は、こうした事業について大いに賛成するものでございます。資源のないわが国石油また石油製品の安価な確保という面におきましても、わが国にとっては欠くことのできない重要な事業であると私は思っているわけでございます。  その上に立っての質問でございますけれども、今回の事業は、手続の上といいますか、また、工事を施行していく上で若干国民に疑問を残しているわけでございますので、そうした面をただしながら、今後のこの種の事業の公平な運営を期してまいりたい、念願したい、こういうことで質問を展開するわけでございます。  まず、この事業を開始されたのはいつなのか、そのときの事業主体はどこなのか、お伺いしたいと思います。
  45. 新欣樹

    ○新説明員 その事業の実施主体は、イラン側、NPCというイラン国営石油化学会社と、日本側、ICDCというイラン化学開発株式会社、これの合弁であるIJPCというものが事業の実施主体でございます。
  46. 春田重昭

    ○春田委員 開始したのはいつですか。
  47. 新欣樹

    ○新説明員 開始と申しますか、一番最初のその合弁交渉が始まったというようなことでございますと、これはもう一九七二年以前ぐらいのところからでございます。
  48. 春田重昭

    ○春田委員 当初三井グループで出発したと聞いております。いわゆる民間事業として出発したわけでございますけれども、その後、後で質問してまいりますけれどもプロジェクト政府支援の形に変わってきたわけですね。ところが、十数年前、民間グループ、いわゆる三井グループで出発したときに、政府出資の参加を申し込んだ、ところが三井グループとしては、それなりの採算面があったと思いますけれども、断ったということが一部では報道されておりますけれども、そういう事実関係があるかどうか。
  49. 新欣樹

    ○新説明員 私どもいろいろな方法を通じまして確認をいたしたわけでございますけれども、私の方ではそういう事実は確認できておりません。
  50. 春田重昭

    ○春田委員 確認されてないということは事実でないということとちょっとニュアンスが違うと思うのですけれども、民間プロジェクトで出発したのが、昨年十月十二日に基金からもお金が出ているわけでございまして、いわゆる政府支援のプロジェクトになったわけでございますけれども、その理由というのはどういう理由なのか、これは経企庁の方から聞きたいと思うのです。
  51. 廣江運弘

    廣江政府委員 その前に、まずナショナルプロジェクトとして取り上げまして、いわゆるナショナルプロジェクトというのはどういうもので考えているかということから御説明させていただきます。  明確な定義があるわけではございませんが、海外経済協力基金出資をいたします場合に、それが両国にとりましてきわめてな重要なプロジェクトであって、非常に規模が大きいというような場合には、通常これから申し上げますような要件を判断基準といたしております。  一つは、経済開発効果が大きくて、相手国政府が当該事業の実施を強く望んでいるということ。それから二番目には、当該事業がわが国と相手国との関係の緊密化にとりましてきわめて重要なものであるということ。それから三番目に、当該事業がわが国の資源確保とか産業立地といったような観点から必要と認められるものであるということ。四番目に、わが国の当該または関連業界の大半の支持、協力が得られるものであるということ。そして最後に、収益性、リスクの度合い等から見まして、基金の出資がなければ当該事業の実施が困難であると認められるものであるということ、こういった条件をおおよその目安といたしまして、いろいろ判断をいたすわけでございます。  本プロジェクトにつきましては、非常に重要な産油国でありますイランとの大型経済協力案件であるといったこと、それから、イラン政府もこのプロジェクトをきわめて重視いたしておりまして、早期完成を要望しておるということ、政府といたしましても、重要な産油国でありますイランとの友好関係の一層の緊密化が必要だといったような観点から、先ほど申し述べましたような五つの条件に照らしましてこの出資を決定したわけでございます。
  52. 春田重昭

    ○春田委員 要するに基金からお金が出た、いわゆる政府支援が決定したのは昨年の十月十二日でございます。閣議でも相当もんだと聞いておりますけれども長官としてはこの点どのように思われていたのか、簡単で結構ですから、お伺いしたいと思います。
  53. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ただいまお答えを申し上げたような判断と、それから、今日の事態については、こういう事態になることはわれわれとしては極力避けていきたい、これは春田委員もどなたもお考えになっておられたと思うのでありますが、不幸にしてアメリカイラン関係は悪い事態になったわけでございます。それにしても、われわれとしてはやはり、先ほども井上委員お答えしたのですが、政治経済、この二つの関係において、できるだけ両方の接点というものをいつも見失わないように、政治的には平和解決、経済的には国内に対する影響、国際的な影響、そういうものを最小限度にしていくような努力というものが必要である。そういう意味から、このイラン石油化学プロジェクトは、私は、日本のためばかりではない、これはアメリカイラン関係、また石油消費国産油国との関係からいっても、こういうことはできる限りやることが、将来いい結果をもたらすものとして推進をしたわけでございます。
  54. 春田重昭

    ○春田委員 一般的な論議ではなくして、この問題につきましては、後でも質問しますけれども、相当事業が進んでいった、あと残り数%で行き詰まった、そこで昨年十月ですが、政府に泣き込んだといいますか知らないけれども、持ち込んでそういう政府支援になったわけでございまして、ちょっと従来の一般的なケースと違う面があると思うのです。こうしたケースにつきましてのいわゆる政府支援については、一般論と違った形の論議を私はやっているわけでございますけれども、どのように思うか、こういうことなんです。行き詰まったから政府支援で、民間グループが持ち込んできたについて、基金から出してきた、こういう点どのように考えるかということです。
  55. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 行き詰まったからそれを政府が救済的に考えたということではなくて、やはり新しい事態のもとにおいてこのプロジェクトをいかに評価したか、また国内の関係業界もそれをどういうふうに評価したか、国際的にもどうであったか、こういう新しい見地から取り上げたのでありまして、行き詰まったから救済したという消極的な考え方ではなくて、積極的にこういうものはやはり国策として取り上げるべきプロジェクトである、そういう判断をしたということを申し上げておきます。
  56. 春田重昭

    ○春田委員 長官は最近就任されたわけでございますが、この事業は四十六年から始まったわけでございまして、十数年前から始まっているわけでございますが、そのときは出資ではなくして、融資という形で始まったわけです。それが昨年出資の方も加わったわけでございまして、当然その意思があるならば、事業の最初から出資してもあたりまえ、こうなってしまうわけですね。先ほど五つの条件が出されましたけれども、その点、最初は融資という形で、出資はされてない、ところが昨年そういう形で急遽変わった、この辺がちょっと違うわけです。いわゆるほかの事業と違った面があるわけです。どうでしょうか。
  57. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 そういう新しい事態においてこれをどう評価するか、そういう見地から判断をされ、また私も判断をした、こういうことを一応申し上げたわけでございますが、最初から平穏無事にといいますか、民間だけのあれでできておったら、これはそういうことはなかったのではないかという点についての御見解は、私もよく理解できるところです。しかし、事態は急転回をいたしまして、そこでこのプロジェクトに対する評価が変わってきたことについては御指摘のとおりかと思います。
  58. 春田重昭

    ○春田委員 すでに他の商社、いわゆる住友とか三菱なんかもサウジやシンガポールでやっているわけです。これは最初から出資として決まっているわけですよ。三井だけが違うわけです。そういう点でちょっと立ち上がりがおかしいのじゃないか、こういうことです。私は事業そのものは賛意を示しているのですよ。きょうは基金の方から総裁においでいただいていますけれども、基金の総裁としては、こうしたことは過去にはないと思うのですね。たとえば、工事がほとんど済んでから出資を決めた、そういう例はありますか。
  59. 石原周夫

    石原参考人 私のただいま記憶しているところでは、中途から入ったケースはないかと思います。ただ、参考に申し上げておきますが、それはいま大型投資ということについて申し上げましたので、いわゆる一般案件というものの中には若干の出資案件がございますので、大型案件でないものの中にはあるいはあるのではないかという感じはいたしますが、正確なことは……。
  60. 春田重昭

    ○春田委員 ということで、いわゆる途中から入ってきたわけでございましょう。ほとんど終わりの方から入ってきたわけですね。そういう点で基金の総裁としてはどういう御見解をお持ちですか。
  61. 石原周夫

    石原参考人 先ほど来るる企画庁長官からお答えをいただいたわけでありまするが、そういうような政府の持っておられます判断、われわれの方の法律に基づきまして、その事業の内容が適切であり、事業の達成の見込みがあるということが書いてあるわけでありまするから、その事業内容から申しまして、たとえば油の随伴ガスを有効に利用して、イラン経済開発に寄与するという点もございまするし、現在立てております計画によります事業の規模あるいは関連誘導品の計画、そういうようなもの、それらのバランス、そういう点が適切であるというふうな点、事業の見込みにつきましては、先ほど来いろいろお話がありますように、イラン側においても非常に積極的な方針でやっておるわけでありまするし、この石油化学関係のいわゆるインフラストラクチュアということになりまするか、住宅でありまするとか用水の関係でありまするとか、そういうようなものも現在着々イラン側の手によって進行中である。あるいは事業の内容につきましても、そういうような評価ができるということを考えまして、その法律の趣旨にも合致し、また閣議了解のお決めになったところに従って、出資をいたすということになったわけであります。
  62. 春田重昭

    ○春田委員 これ以上責めようと思っておりません。  次に、いわゆる今後の建設スケジュール、資金計画、収支計画、また販売路先の確保、こうした問題等が当然残っておるわけでございますけれども、十分調査されたと思うのですが、建設計画についてお伺いします。  現在、全体の何%が完成しているのか、あと何%残っているのか、その残りはいつごろ完成するのか、その辺のところ一括して、簡単で結構でございますから御説明いただきたいと思います。
  63. 新欣樹

    ○新説明員 現在約八五%が完成をいたしておりまして、残る一五%というところでイラン革命に遭遇したということでございます。それで、全体の建設スケジュールとしましては、八一年末完成という予定になっております。
  64. 春田重昭

    ○春田委員 昨日のいわゆるカーター大統領の対イラン制裁の問題が華々しく報道されているわけでございますけれども、順調に行って八一年末完成だと思うのですが、そういう新たな様相が出てきた場合に、この事業に対する影響度といいますか、この辺、ないとは言えないと思うのですね。この辺の見通し、どうお考えですか。
  65. 新欣樹

    ○新説明員 アメリカの対イラン制裁というものに対して、日本全体としてどういうふうに考えるかということについては、私ども答弁する立場にはございませんけれども、私どもといたしましては、もちろんこうした与えられた環境の中で、工事を継続をしていくということで本件を考えてまいりたいと思いますし、現在のところでは、八一年末完成という予定を大幅に変更されるということは考えていないということでございます。
  66. 春田重昭

    ○春田委員 長官にお伺いしますけれども、これは内閣全体の問題だと思うのです。要するに今後いろいろな形でアメリカから要請があると思うのです。そういういろんな圧力といいますか、要請にかかわらず、このイラン石化事業については断固として、基金を通して二百億も出している、その監督官庁である経企庁としては、やっていく、そういう御決意がありますか。
  67. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほど来ほかの委員の方にも申し上げましたように、こういう事態に立ち至る前から、御案内のように、国連の安全保障理事会で、ソ連の拒否権によって、イランに対する経済制裁案というものは一応ストップになっておったわけでございますが、しかしアメリカは、国連の安保理事会のああいう事態にかかわらず、できるだけ足並みをそろえて経済制裁をというふうな動きがずっとありました。そこで、そういうときにも極力このプロジェクトについては、先ほど申し上げたような趣旨で、これはイラン日本との関係だけじゃありません、アメリカとの関係から言ってもまた石油産油国と消費国との関係から言っても、そういうものは非常に大事だから、これはわれわれとしては既定方針でやっていきたい、こういうふうに盛んに理解は深める努力をしてきておるわけでございます。今後におきましてもそういう方向で、極力われわれとしては、この経済的な問題しかもこういうふうな大事な一つのパイプと申しましょうか、こういうものについては既定の方針に従って実現できますように全力を尽くしたい、かように考えております。
  68. 春田重昭

    ○春田委員 最後に全力を尽くしたいというお話がございましたけれども、どうかひとつ断固として、これはわが国の中東における象徴的な事業という形で見ているわけでございますから、いろいろな圧力があろうと推進していただきたい。撤退してはならない、こういう私の感じでございますので、よろしくお願いしたいと思うのです。  そこで、次に資金計画でございますけれども、当初五千五百億でいった。その後追加があって千八百出ておる。その千八百の時点で基金から二百億出費されておるわけでございますが、いわゆる海外の合弁事業というのはいろいろな障害があるし、不測の状態もあるわけでございまして、見通しが若干わからない点があると思うのです。そういう点で、一応二百億円出したけれども、千八百の追加した中で今後需要がおさまるかどうかという問題です。基金として今後これ以上の出資といいますか、これがないとは言い切れない面もあると思うのですけれども、その点どうでしょうか。
  69. 廣江運弘

    廣江政府委員 今後、プロジェクトの所要資金がふえた場合、基金出資はふやすかという御質問でございますが、本プロジェクトの所要資金は、本年三月七千三百億円ということでイラン側と合意したと聞いております。現時点で所要資金が増加するということは一応考えられていないところでございます。将来仮に所要資金が増加したといたしましても、それに応じて自動的に基金出資を増加するということは考えていないわけでございます。
  70. 春田重昭

    ○春田委員 基金の出資はないとしても、たとえば行き詰まった、そこで利子補給を政府の方にお願いしてきた場合、これは政府として何か考える余地があるかどうか、この点どうでしょうか。
  71. 新欣樹

    ○新説明員 現在の資金計画におきましては、先ほど廣江審議官からもお答えいたしましたとおり、七千三百億円というものを前提にして進めておるわけでございまして、現段階でこれが超えるかどうかというところにつきましては、むしろこの範囲内でおさまるというようなところでやっておるところでございます。では、これが仮に超えたらどうなるかということにつきまして、その場合にどういう措置を講ずるかということにつきましては、実はまだ私ども検討の準備はできていないということでございます。
  72. 春田重昭

    ○春田委員 限られた時間でございますので、先に進みたいと思います。  次は採算性の問題でございます。生産がいつ開始されて、いつから軌道に乗っていくのかということで、最初お答えいただきたいと思います。  それから、このコストで一番左右されるのは、随伴ガス、いわゆる原料ガスの問題ですね。これを現在は燃やし続けているわけでございますけれども、恐らく価格が決まってくるのじゃないか、要求されるのではないかという懸念もあるわけですね。この辺の見通しはどうでございましょうか。
  73. 新欣樹

    ○新説明員 製品の販売につきましては、先ほどの計画に従いますと、八一年末完成ということでございますから、八二年当初から本格操業運転に入り、製品も出てくる、こういうことになろうかと思います。  原料ガスの問題でございますけれども、原料ガス供給につきましては、イラン側にNIOCという公社がございますけれども、ここがIJPCに対して供給する。その値段について、いまNIOCとIJPCとの間で値段が決まっておるという状態にはございませんで、今後の話し合いということになっていくわけでございます。ただ、その経済性ということで考えますと、IJPCプロジェクトそのものはイラン側にとっても非常に大事なプロジェクトであるということから、イラン側としても相当国内的な措置によって本プロジェクトを支援するという見地から、できるだけ低廉な価格で供給するであろうということが期待されるところでございますけれども、現実の価格というものは今後の交渉ということになっております。
  74. 春田重昭

    ○春田委員 恐らくこの製品はイラン国内だけで消化できないと思うのですよ。そういう点で、今後三菱とサウジ、それから住友とシンガポール等、いろいろな石化事業があちこちで始まっていますので、本当にこれだけ膨大なお金がかかってきたのに対して、価格競争ができるかという心配の面があると思うのですね。それはさておき、もう時間がございませんので次に進みます。  先ほどの条件の中で、石油の安定的な確保というか供給というものが一つの大きな目玉になっておるわけですね。そこで、昨年イランから日本に対してどれくらいの供給があったのか、また、ことしはどれくらいの約束をされているのか、この辺の見通し、これは通産省にお願いしたいと思います。
  75. 新欣樹

    ○新説明員 私、直接の石油担当ではございませんけれども、本プロジェクト石油との関係ということで申し上げますと、本プロジェクトが、たとえば契約上石油供給と完全にリンクしておるということはございません。むしろ、本プロジェクトイラン側の最優先のプロジェクトである、そこでいま日本協力をするということを通じて、ある意味では間接的に重要な産油国であるイランからの石油の安定供給を期待するという位置づけだろうかと思います。それで、昨年十月十二日の政府支援決定のときに当時の江崎通産大臣イランに参りまして、政府支援を通知をすると同時に、これとは切り離した話ではあるがという前提を置きつつ、イランからの直接取引の増量要請というものを行い、当時のバザルガン前首相から好意的に配慮するということがあったわけでございます。  結果的に申し上げますと、昨年のイランとの直接取引、いわゆるDD取引というのが四十六万バレル・パー・デーの水準でございましたけれども、ことしの一月、まあことし分といいますか、これが約五十三万バレル・パー・デーということで、約一四%程度の増量というものがなされております。これは聞き及ぶだけでございますが、他のメジャー、たとえばBPとかシェル、このあたりは、契約はできたものの量的にはかなり削減を食らったというふうにも聞き及んでおりますので、本プロジェクトの推進というものが間接的にそういう好影響を与えているのではないか、こういうふうに推察される次第でございます。
  76. 春田重昭

    ○春田委員 確かに、量的には昨年よりことしは約束がされているということでは私も評価したいわけでございますが、これは一点確認したいのですけれども、昨年十月、当時の通産大臣だった江崎さんが行って、工事を再開してほしいというイラン側の要請を受けて、こちらとしては、そうしたら対日供給量を三〇%ふやしてもらいたい、それが工事再開の条件だというような話があるわけでございますけれども、一四%も一応ふえてはおりますけれども、三〇%と若干開きがあるわけでございますが、その点どうでしょうか。
  77. 新欣樹

    ○新説明員 まず、江崎通産大臣はこの三〇%増量を工事再開の条件だ、こういうことで申し上げた事実はございません。むしろ本プロジェクトについては日本としてこういう支援をする、これとは切り離した話として増量要請をしたということでございます。  なお、三〇%に対して一四%ではないか、こういうことでございますけれどもイラン自体の生産量が、当時言われておりましたのが四百万BDぐらいのラインということであったわけでございます。現実に、その後イラン側としては公式には三百万ないし三百五十万BDぐらいという言い方をしておりますけれどもイランの産油量そのものの水準を落とした中で、日本に対して増量をしたということは、イラン側の一つの好意ではないかというふうに私ども受けとめておるわけでございます。
  78. 春田重昭

    ○春田委員 三菱とサウジの石化事業に対しては、先日サウジの関係者が、ボーナス原油供給の構想を打ち出していますね。今回のこのイラン石化事業については、そうした話は向こう側から持ち上がっていないのですか。
  79. 新欣樹

    ○新説明員 先ほども申しましたように、契約上の問題として、本プロジェクト石油供給に直接リンクするというような話は一切ございません。
  80. 春田重昭

    ○春田委員 これは長官、サウジ側がそういう形で自分のところの石化事業については非常に配慮しているわけですね。ボーナス原油を出す、こう言っておるわけでございます。イランの生産そのものがぐっと落ちた中で、対日供給が一応前年より上回っておる、それは評価するとしても、サウジもそういう形で打ち出したのですから、わが国としてもイランからさらにそれを上回るボーナス原油といいますか、そういう話を持っていってもいいのではないかという感じを持っておりますけれども長官はどうお考えになりますか。
  81. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 石油供給源をできるだけ多角化していく、これは安定供給を確保していく上で非常に大事なことですね。私どもとしては、あらゆる機会にそういうことの努力はしていくべきだと考えますので、また通産大臣その他とも、十分御意向を伝えて話し合ってみたいと考えております。
  82. 春田重昭

    ○春田委員 先ほどから話しているように、昨年十月十二日に基金から、一応延び延びになっていた出資が決定して、この三月三十一日ですか、二百億のうち二十八億出したということで報道されておりますけれども、それは工事が再開されたというはっきりしためどがあっての基金の出資なのかどうか、この点どうでしょうか。
  83. 新欣樹

    ○新説明員 工事計画といいますか、工事の現状でございますけれども、昨年政府出資決定以来、再開のためのいろいろな調査を昨年中に行いまして、昨年十二月からいわゆる労働者用のキャンプの整備などをずっと行ってまいったわけでございまして、その後三月の初旬から、いわゆるLPGタンクヤードを中心にいたしまして、日本人技術者、現在で約六十名ぐらいが現地にサイト入りいたしまして各種の工事を行っているという現状でございまして、その再開というものは何をもって再開と言うか、これは非常にむずかしゅうございますが、私どもは工事が継続をしておるということで理解しておるものでございます。
  84. 春田重昭

    ○春田委員 最盛期は日本から三千ないし四千行ったと聞いているのです。ところがいまは六十名ということで、私は、これで本当の再開と言えるかどうかという疑問があるわけです。年度内ぎりぎりに、三月三十一日に一応出資したわけでございますけれども、何かあわててやったような感じがしてならないわけでございます。今後工事を再開するに当たっては、当地の治安の状態とか、また九百名のイラン人等の退職金の問題とか、日本側の建設業者の請負代金が非常に低い、もっと上げてくれというような問題も残されていると聞いておりますけれども、そうしたいろいろな問題を解決しなかったら本格的な事業に入っていかないのではないかという懸念を持っているわけでありまして、来年いっぱいで完成するというのがどうも何か、そういう問題が残されたままでいった場合果たして可能かどうかという問題があると思うのです。どうなんですかね。本格的に日本から最盛期の三千ないし四千が行くというのは、そういう状況を乗り越えて全部解決した中で行かなかったらば行けないと思うのですけれども、その辺の見通しは大体いつごろと見ているのですか。
  85. 新欣樹

    ○新説明員 いまの御指摘のような問題につきましては、結局現段階ではIJPCとコントラクターとが鋭意交渉中であるということでしか申し上げられないわけでございますけれども、その中で、IJPCは合弁事業でございますが、そのイラン側とまた日本側との合意というものがIJPCの中でもいろいろ必要なわけでございます。従来のイラン側というのは、聞くところによりますと、原契約そのままで出てこいというようなことであったわけでありますけれども、そのままではなかなかコントラクターとしては行きにくいんだという話なども交渉の中でやってまいりまして、イラン側としては、それでは必要なものはそれなりにチェックをして見ていこうではないかという態度に変わってきておりますので、今後速やかにそういう交渉の中で進展が見込まれるということを期待したいと思っております。ここ一、二カ月のうちにどういう進展になるかということは注意深く見守っていきたいと思っている次第でございます。
  86. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんので、こっちの聞きたいことが全部聞けませんで残念でございますけれども、最後に長官にお尋ねします。  今回のイラン石化というのは、一応大義名分は立てられておりますね。どうもそれがたてまえ上みたいな感じがするわけでございます。先ほどから言っているように、八五%事業が完成したまでは民間でやっていた、残り一五%になっていろいろな障害があって政府に泣き込んできて、結局一日一億円という金利負担を見るような形で政府がいわゆる国民のとうとい税金を出したんじゃないか、出資したんじゃないか。出資したのですからお金は返してもらえますけれども、どうもそういう感をぬぐうことができないのです。そういう感情というのは国民の中に非常に残っているわけですよ。そういう点で、民間の企業がこれについてどれだけ努力していくのかというのが今後の課題だし、またどれだけやってきたかというのも一つの問題だと思うのです。  一つの例として昨年の冬のボーナスですね。こう言っちゃなにですけれども、民間の三井グループの中心的な商社と他の商社を比較した場合、他の商社は大体六十万ないし七十万ですよ。ところがここだけは百万以上出ている。こういう形で、苦しいから政府に泣き込んできて政府支援を仰いだのに、実際企業努力やってないじゃないか、経営合理化やってないじゃないかという国民かとの強い批判があるわけです。そういう点で本当にすっきりしない面があるわけです。だから政治的な配慮があったのじゃないかとかといううわさもありますし、泣き込んだら政府がそういう形でやっていくのかという感じもあるわけですよ。そういう点で一つの基準というかめどといいますか、資金を出すにはそうした基準、めどという一つ線を引かなかったら、今後こうした事業をやっていくときに、行き詰まったら政府に見てもらったらいいんだというような一つの例を悪例として残すか。しれないのです。そういう面を私は心配するわけでありまして、今後こうしたことがないようにしていくためにも長官の御見解を聞いて、終わりたいと思うのです。
  87. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いま、結論的には、こういうプロジェクトはいいことだからひとつやるようにという気持ちを込めて、しかしそれにはいろいろ問題もあるから十分注意をしてやりなさい、大変御好意のある御忠告として、これは私も心から共鳴をいたします。いろいろの問題について疑惑その他、これは極力関係者一致結束して排除していかなければなりません。また、せっかく貴重な国費をつぎ込むわけでございますから、その事業の遂行に当たって責任者一同十分これを心得て努力していくべきことも当然と考えておりますので、ひとつ十分努力していきたいと考えております。
  88. 春田重昭

    ○春田委員 終わります。
  89. 高田富之

    高田委員長 庄司幸助君。
  90. 庄司幸助

    ○庄司委員 長官にお伺いしますけれども、やはり今度のアメリカイラン断交の問題です。イランからの日本に対する原油供給量、一〇ないし一三%といま伺ったのですが、これは一般論で結構ですから、もし日本原油の輸入量が一〇ないし一三%減ったという場合、石油の価格なりあるいは物価なりあるいは景気なり、これにどういう影響を及ぼすのか、経済企画庁として試算か何かお出しになっているのか、あるいはお持ちなのか、その辺ひとつ伺いたいと思います。
  91. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほど来ほかの委員の方にもお答えいたしましたように、私どもは、何とかこのアメリカイランとの関係中心にする国際関係は平和的な解決を図ってほしい、こういうふうに強く熱望して、そしてその線で努力をしていきたいと思っております。特に経済関係、いま御指摘のように石油供給については、これは本当にイラン自身の利益のためにもわが国のためにも、いまお挙げになったような事態は何としても避けていかなければいけない、そういうことを考えておりますので、われわれとしてはイラン供給が停止するなどという不幸な事態は想定しないでやっておる。しかし、それではそんなことを言ってどうなんだと言われますと、御承知のように若干備蓄もございますし、あらゆる努力を払って、いまの事態にさらにそういう新しい困難が加わるようなことは回避していかなければならない、こういう考え方でいっております。
  92. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は長官にそういう希望的観測を伺ったのじゃなくて、一般論として、たとえば一〇%ないし一三%原油が入ってこなくなったといった場合、物価なり石油価格なりあるいはわが国経済見通し、つまり景気の動向、こういうものにどういう影響を及ぼすのか聞いているのです。
  93. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 それは大変な影響があることは申し上げるまでもありませんけれども、それではそれを数字的にそういう前提のもとに何か影響を想定しておるかということになりますと、そういう予想は、いまのところこれを回避していく政策で、われわれとしてはそういう不幸な事態を想定はしていない、こういうふうにお答えをする以外にないわけです。
  94. 庄司幸助

    ○庄司委員 重大な事態になるということは長官も御認識あるようです。それで、カーター政権の外交の方針ですね。これが二転、三転するわけですよ。西ヨーロッパあたりでもその点では大変迷惑しているような新聞論調なりあるいは政府筋の見解も出ているのですね。だから私は、やはり日本にとってイランとの外交が非常に大事だ、何も油欲しさだけではなくても大事だと思う。同時に油の問題もありますから、そういう点でやはりカーター政権の外交姿勢といいますか、基本方向が変わる点ですね、これをやはり的確に見定めていかないと、私は日本経済運営にとっても大事な問題が出てくると思うのです。特にアメリカ政府筋の見解ではないわけですが、一般論として、いまアメリカの大統領選挙が間近いわけですね。この辺でやはりアメリカ外交方針が変わっていく。これにわが国が巻き込まれて、そして何か誤った方向なんかとれば私は禍根が非常に大きいと思うのですが、その点、長官どうお感じになっていますか。
  95. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 大変庄司委員からそういう点も心得ながら、これから外交経済の進め方について配慮していかなければならぬぞという御指摘と受けとめますが、外交は非常に機微でございますから、いま対米外交について私がここでどうする、ああするというようなことは申しかねますが、いまのような点については十分配慮して進んでいくべきであるという御意見は貴重な御提言として受けとめて、私としても十分それを関係各方面にお伝えしたいと考えます。
  96. 庄司幸助

    ○庄司委員 そういうことで、やはりわが国国益を考えた外交、これが非常に大事だ。同時に、もちろん世界の平和ともつながりますから、そういう点はひとつ大いに自主性を発揮すべきだ。この点ひとつ閣議の席上でも、機会があったら大いに主張していただきたい。これは要望しておきます。  そしてイラン石化の問題でちょっとお尋ねしたいのですが、イラン石化日本ももちろん出資していますけれどもアメリカのパートナーもいるやに聞いておるわけですね。このアメリカのパートナーは、特にLPGの関係でかんでいる。このアメリカのパートナーというのはどういう会社で、私が申し上げたとおりLPG関係のあれなのか、その点ひとつお伺いしたいと思うのです。
  97. 廣江運弘

    廣江政府委員 本イラン石化につきましては、アメリカ出資はいたしておりません。すなわち資本参加はしておりません。ただ、御質問イラン側が分担する工事の中に、その相手にアメリカがおるというようなことはあると思いますが、本件に直接資本参加はいたしておりません。
  98. 庄司幸助

    ○庄司委員 イラン側の関係で、アメリカの技術提供か何かわかりませんけれども、パートナーと言うと語弊がありますが、この企業は、今度のいわゆるイラン断交によってどうなるのか、手を引くのか引かないのか、その辺はどう観測なすっていますか。
  99. 廣江運弘

    廣江政府委員 先ほど申し上げましたが、イランのNIOCが原料ガスにつきまして責任を持ってその供給体制をつくるということになっておりまして、イラン側がアメリカ企業と、パーソンズという会社だと思いますが、契約を結んでおる。いま工事が中断しておるわけでございますが、そこはイラン側が責任を持って設備を完成することになっています。現在の段階でイラン側がそれではアメリカ側の契約者とどういうふうにしてやるとか、その見通しはどうかということは定かにはわからないというのが現状でございます。
  100. 庄司幸助

    ○庄司委員 パーソンズというのはガスの掘削を担当しているように聞いているわけですが、わが国出資しているイラン石化の全体の事業に、この会社が手を引けば相当影響を及ぼすのじゃないか。私は、イラン石化の問題では問題点が多々あると思っています。だから善悪の問題はきょうは論じませんけれども、ただ、せっかく協力基金が出資するこういう事業が、アメリカイランへの外交断交によって。パーソンズが手を引く、イランは残念ながらいまのところ自主的にそういう掘削なんかやる技術はお持ちじゃないだろうと思うのです。そうすると、計画全体にも相当の影響を及ぼすようになると思うのですけれども、その点はどういうふうにお考えなのか。だから私は、いま言ったように自主的な態度がますます望まれると思うのですよ。この辺、どう観測なすっていますか。
  101. 廣江運弘

    廣江政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、ガス供給イラン側のNIOCが責任を持つわけでございまして、NIOCから実際にどういうふうにしてガスを出すかということにつきまして、アメリカとの関係で実際パイプライン等が完成しなかったら本事業にかなりの影響があるのではないかという御質問でございます。影響がないとは私どもも考えませんが、実際責任を持っておりますのはNIOCでございますので、NIOCはアメリカとの関係がうまくいかなかった場合に備えて、それでは別途の供給手段というようなものも考えるというようなことを漏れ聞いておりますし、その辺はイラン側の善処といいますか、イラン側が責任を持って遂行してくれることを期待しておるというのが現状でございます。
  102. 庄司幸助

    ○庄司委員 カーター政権は、その別途の方も、日本を含む西欧諸国に対して、ひとつアメリカ政策協力してくれ、つまり経済断交に協力しろ、こう強硬に述べているわけでしょう。だから私はそういう懸念が生まれるわけです。イランが独自の技術を持っているなら別ですよ。私、いまイラン独自の技術を持っているとは聞いておりませんけれども、その辺で重大な計画のそごを来すのじゃないか。私は、自主的な外交姿勢、これが非常に重大だと思っているのです。その点ひとつ長官からお答えを願います。
  103. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いまの御指摘は、最初に庄司委員がお述べになった点で、私の回答と同じように、全体としてのガス供給をどうするか、そしていま建設中のプロジェクトをどうするか、いろいろあるわけでございますが、それが国際情勢によっていろいろ動いてまいりましても支障のないような対応というものをわれわれとしては考えていかなければいかぬ。そういう意味において、先ほど御指摘のような自主性を持ってやっていけという御忠告は、ひとつ十分承りまして努力したいと考えます。
  104. 庄司幸助

    ○庄司委員 次に移りますが、実は昭和四十八年六月の決算委員会だったと思いますが、私が指摘した問題があるのです。それはおたくで委嘱調査員と称して相当多数の民間の企業から、非常勤か何かわからないけれども、採用していた。これは企業と官界のいわゆる癒着の問題があるし、それから経済企画庁経済計画、経済社会発展計画なりいろいろおつくりになってきた、こういう大事な計画が事前に民間企業に漏れていくのはうまくない。ちょうど当時列島改造論華やかなりしころですから、土地の買い占めが起こったりいろいろする。そういう点で御指摘申し上げたのです。これはその後、政府の若干前向きの姿勢で年々減ってはきております。経済企画庁もその点では、当時五十六名おったのが現在二十一名に減っていますが、しかし依然として調査局に十一名、それから経済研究所に十名いらっしゃるわけです。これはわれわれも関心を持っておりましたが、これは新聞の「「たかり」の構造」という連載ものですが、ここでもやはり「「出向することの最大の魅力は、役所が情報の宝庫だということだ」」とある出向者が語っておられる。それからまた、経済企画庁の調査局で経済白書や月例経済報告書づくりに追われる方がいる。この方は某大手メーカーの出向社員だ、こういう指摘もあるわけです。そういう点で、こういういわゆる委嘱調査員、出向者、これはもうできるだけなくしていく方向を今後も閣議の決定に基づいてとっていく必要があるのじゃないか、私はこう思うのです。その点、一言だけ長官の御決意を伺いたいと思うのです。官房長でもいいです。
  105. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 ただいまお話がございましたように、昭和四十九年から委嘱調査員の運営につきましては相当の改善が加えられてきております。いやしくも官民癒着というような批判を招かないように慎重な運営をしております。それから、正式に非常勤の国家公務員として任用いたしておりますので、たとえば国家公務員法百条の守秘義務等の服務上の諸規定の適用も受けておるわけでございます。それから、運用に当たりましては、ただいま仰せがございましたように、政策決定に関係のある部局、たとえばただいまお話がありました計画局でございますとかあるいは物価局でありますとか調整局でございますとか、そういうところを避けて、純粋な調査研究あるいは分析といったような仕事を担当しております調査局、研究所に限定しているわけでございます。  この制度は、かつては企画庁の前身でございます経済安定本部時代に、戦後の経済難局に処しまして官民の衆知を結集して当たろうということでございましたので、かなり民間からも出向されておったわけでございます。その後だんだん現在のような仕組みに変わってきつつありましたのを、先ほど申し上げましたように、国会の御指摘もありまして、四十九年以来ただいまのような運営に変えたわけでございます。  それで調査研究といったような分野につきましては、民間でかなり専門的知識について習熟した人の力をかりるということも役所にとって重要でございますし、それから、恐らく派遣している民間企業の側におきましても、将来有能なあるいは幹部となるべきような職員に対して、一企業の利害を超えた仕事、国家的な仕事に、国家的と申しますか、マクロ的な仕事に参画させることが人材養成の面から言っても広い意味で意義があるということでお出しになっているやに承っております。そういうような両面を考えますと、運営について十分自戒し、反省し、厳正にやらなければいけないとは思いますけれども、この制度そのものはいまのところは弊害なく行われているのではないかというふうに考えております。
  106. 庄司幸助

    ○庄司委員 何かそういう御答弁を聞きますと、経済企画庁は調査に当たる方、研究に当たる方が不足している、そういうふうに感じ取れるわけです。そういう点で有能な人を何か経済企画庁の方からお願いして、ぜひ来てください、こう言っているようなかっこうに見えてくるのですよ。だから、一言だけでいいですから簡単に御答弁願いたいのですが、どっちが頼むのですか。来てくれと言うのか、あるいは行かせてください、こう言うのか、それはどっちがどうなんです。一言。
  107. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 委嘱調査員を使おうとする担当局の方からの希望もございます。それから民間企業からの希望もございまして、この両者を官房で突き合わせて採用しているというのが実情でございます。
  108. 庄司幸助

    ○庄司委員 相寄る魂という言葉がありますが、どうもそんな感じですな。これはお役所ですから、将来こういうものなしに済ますようにぜひやっていただきたい、これは長官に強く希望しておきます。これは後でゆっくりやりますけれども、時間もありませんから次に移ります。  会計検査院法の改正問題ですが、私は経済企画庁長官の態度をお伺いしたいのですが、会計検査院が内閣に要求している院法改正案、この内容については長官は御存じだと思いますが、中身はいいですから、御存じか御存じでないか、それをひとつ……。
  109. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは私ももちろん一応承知いたしておりまして、どういうふうになるか、たしか内閣としては官房長官が中心になりましていろいろ検査院からの御希望等も伺い、また、国会の方からも御意見を伺って調整に当たっておるというふうに伺っております。
  110. 庄司幸助

    ○庄司委員 改正案によりますと、海外経済協力基金の貸付先についても任意的検査対象になるわけです。そういう点で当然経済企画庁意見を聞かれていると思うのですよ。いままで官房長官の御答弁なんか聞いていても、どうも経済関係の省庁の抵抗が強くて、特に貸付先が検査されると借り受ける人がいなくなるから政策推進に不便なんだという抵抗があるという答弁なんです。そういう点、経済企画庁長官も聞かれてそういう意見を述べたのですか、それとも私の方は賛成でございますとおっしゃったのですか。
  111. 廣江運弘

    廣江政府委員 経済協力基金の貸付対象は、主といたしまして外国が多いわけでございます。外国以外のものもないことはございませんが。外国につきましては、私どもが検査院から承っているところでは、対象としてお考えになっていない、こういうふうに考えております。
  112. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうじゃなくて、あなたの方でこれに抵抗したのかしないのか、それを聞いているのです。
  113. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 実は突然のお尋ねでございまして、あるいは記憶に誤りがあるかもしれませんが、たしか昨年の二月ごろでございましたか、検査院の方で各省の担当者を集めて説明会をおやりになり、そのときにいろいろ疑問点を申し上げた経緯はございます。  たとえば私どもの方で申しますれば、経済協力基金の融資先には、いま廣江君が答弁申し上げましたが、外国政府が入っているわけでございます。そういうのは一体どう考えるのかといったような質問を幾つか申し上げたという事実はございますが、その後、検査院の方から特に反応はございません。内閣官房の方で、関係各省の意見を聞きながら政府としての意見調整を進めておられるやに聞いております。私ども聞いておりますのは、たとえば中小企業者とか農民とかといったような場合に、そういう法定化がそれらの借入者に相当の心理的負担を与えるのじゃないかというような問題点が指摘されているという話は漏れ聞いておるわけでございますが、経済企画庁として意見をまとめて内閣官房に申し上げたという事実はございません。
  114. 庄司幸助

    ○庄司委員 最後に、これは国会決議、何回かあって、国会の意思としてはもう改正すべきだ。検査院の改正案は、何も外国政府まで検査するなんて、これはとんでもない話ですから入っていません。問題になるのは、つまり援助する、それを日本企業が請け負ったりする、そういった場合の請け負った企業を検査する対象にするとか、あるいは国内の融資先を対象にする、こういう点なんです。ですから私は、これは何か経済閣僚に抵抗があると聞いていましたから、長官まで抵抗したのじゃないかと思って伺ったのですが、それでは長官は、その外国政府の問題を除けばこれは賛成だ、こういうふうに解していいと思うのですが、どうですか。
  115. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いま政府委員お答えいたしましたように、実はわれわれについては、去年の二月、私は党の方で国民運動本部長というのをやっていまして、全国を飛び回っておったのです。ですから、そのころのことはよく存じませんが、最近、官房長官が中心になりまして検査院法の改正について、まだ具体的な御相談はないのですが、いま政府委員お答えしたような点については庄司委員も、外国の政府まで調べるということは考えていない、こういう御意見であることはよくわかりました。これからもよく相談をいたしまして、とにかく政界浄化というのですか、あるいは倫理の確立というのですか、そういう政策については私はできるだけ協力をしていきたい、かように考えております。
  116. 庄司幸助

    ○庄司委員 終わります。
  117. 高田富之

    高田委員長 中野寛成君。
  118. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 少々じみな質問を二つほど申し上げたいと思います。  物価関係閣僚会議の当面の物価対策について発表されましたあの文章を見ましても、特に個別物資対策等々の部分を読みますと、「きめ細かく調査、監視し、」とか「価格動向を注視し、」とか、調査、監視という言葉等々が大変多く出てくるわけであります。物価の動向につきまして、その監視、調査というのは大変重要な意味を持つと思いますし、それからまた、先般も私、何回か小売業者の皆さん等々とお話をいたしますと、やはり物価に対して一番敏感に反応をする、また、その結果、現象に対して反応するだけではなくて、先の見通しに対しても消費者の皆さんは大変敏感だ、むしろ教えられることが大変多いというふうなことを口々におっしゃっておられるわけでありまして、消費者の皆さんがこれからの物価対策について何らかの形で大いに参加をしていただくということは大変大きな意味があると思うわけであります。また、政府もそのことを期待しておられるというふうに私も感ずるわけであります。  そこで、物価モニター制度のことについてちょっとお聞きしたいと思います。この物価モニター制度について、まず長官の方から、どのように評価し、どのように期待をしておられるか、そのことをお聞きしたいと思いますのと、現在、経企庁関係にとどまらず、政府の各関係機関のもとで物価モニター的な制度を導入をされておられると思いますが、その実態について、御担当の方からで結構でございますから、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  119. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 物価モニターの方々は、これはもう今日の物価政策中心になって、第一線の情報をいろいろいただいております。私どもといたしましても、先ほど来ほかの委員の方にもお答えいたしましたように、常に中央の情勢を情報として提供いたしまして、いわば総力戦体制でございますから、第一線と中央、一体になって、これからも重要な物価政策を遂行していかなければならぬ、こういうふうに評価をいたしております。詳しいことは、ひとつ担当者からお答えいたします。
  120. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 国の関係のモニターにつきましては、経済企画庁関係物価モニター、千百七十八名おります。それから通産省関係では消費者価格モニターというモニター、七百十五名おります。食糧庁におきましては食糧モニター、千五百名おります。それから農林水産省で食料品消費モニター、千三十四名。以上合計いたしまして四千四百二十七名というのが国の関係のモニターでございます。  それから、地方公共団体に対しまして私どもが地方物価安定対策事業ということで補助金を出しておりますが、その中で、都道府県の方で採用されております、民間調査員という名前にいたしておりますが、約七千四百名。  以上が現在のモニターの数でございます。
  121. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 このモニター制度につきまして、今後経企庁としてはどのようにしていったらいいか、たとえば数をふやす、または質の向上を図る、いろいろの課題があろうと思いますけれども、今後このモニター制度の活用についてどのようにお考えでございますか。
  122. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 この間、実は大阪に参りまして、関西各府県あるいは政令指定都市からモニターの代表的な方々にお集まりいただいて、いろいろ御相談をいたしました。大変重要なお仕事に対して熱心に取り組んでおられるわけですが、私は物価問題の重要性にかんがみて、こういう事態に対処するにはどういうふうにしていくべきかという点については、いま非常に重要な問題として十分考えていかなければならぬと思っております。いろいろ各党の方々からも御意見があると思いますし、先ほど申したような懇談の機会に、モニターの方々、あるいは府県知事の方々、その他のまだ政令市の代表者の方々、そういう御意見を伺いながら、今後、いま中野委員が御指摘になったように、量の面、質の面、両面にわたって一層充実していきたい、かように考えております。
  123. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 現在、大体どういう人がモニターに任命をされておられますか。
  124. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 物価モニターの場合でございますが、私どもは、都道府県知事の推薦に係る者ということで候補者を選んでいただきまして、その中から選定いたしておりますが、やはり従来そういうような消費者としての活動に熱意を持ってやってこられた方、そしてさらに、今後そういう活動に参加したい方ということでございますので、そういう意味で経験のある方がまず第一の順位にあるかと思いますが、これから大いに勉強してやろうという方もおられます。いずれにいたしましても、生活関連物資の価格等について十分調査をする能力のある方を対象にして選定をいたしております。
  125. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 このモニターの場合に、単に、たとえば物価モニターだからといって、店頭の物の値段を幾らだと調査すればいいというものでもないと思います。やはり物価に対する、または流通に対するいろいろな識見をお持ちである方が、御本人のその知識や能力をフルに発揮して、そしてその原因追及に至るまでモニターができればこれにこしたことはないと思うわけでありますが、それにつきましても、たとえばこのモニターに対してどのような権限が与えられているか。決して強権発動的なものを大いにできるようにしろということを申しておるのではないわけであります。最小限度の権限的なものはやはり必要なのではないかという気がするわけであります。使い方を間違えれば、これは大変でありますが、十分そのことを承知の上で申し上げるわけでありますが、たとえば勧告、申し入れ、注意の喚起、仕入れ価格や量についての審問権等々、調査をするために必要な権限というものは必要なのではないか。また、能力で言えば、原価計算ぐらいはわかる人であればより一層正確なモニターができるのではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  126. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 実際に私どもがお願いしておりますのは、国ないしは地方公共団体での調査のいわば補完的な仕事であろうかと思いますが、民間人であられるわけでございますので、権限という形で何らかのはっきりしたものをその方々に与えていくというようなことは、現段階ではやっておりません。全体として価格を調べて、そしてその価格についてやや値上がりが大きそうであるということであれば、その店の方に事情を聞くというようなところは現在もやっていただいておりますが、それを、いま御指摘のような形での権限を付与するということについては、当面、そういう形でなくて実効を上げるのではないかなと思っております。  それから能力向上の面については、当然これは大いに努力していかなければなりませんが、現在企画庁モニターとして在籍されている方については、ブロックごとに研修会というものを開いてやっております。ただ、これは全員に対して及んでおりませんので、これは回転をしてやっていくということを考えておりますし、またそれから、特別な調査項目の場合には、これはすべて府県を通じてお願いしているモニターでございますので、府県に集まっていただいて、そこでいろいろ指導をする、ないしは研修をするというようなことをやっておりまして、そういう意味で、私ども企画庁と県と共同でモニターの能力の向上に努めておりますが、これは非常に重要なことでございますので、今後とも、もっともっとこの方面について努力をしていきたいと思っております。
  127. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 立入検査等になりますと、なかなか問題が多うございまして、抵抗も厳しい場合があろうと思います。特に、この物価について問題点が発生をするということになりますと、その問題を持っている企業なり、またその流通機構なりというのは、なお一層この調査に対する抵抗が厳しいのはあたりまえのことであろうと思います。それを乗り越え、克服して、そして的確なモニターが行われるということでなければならないと思います。これは公の権限でありますから、ある意味では、役所の職員の皆さん等をそういう場合には派遣をしてということになるのであろうと思いますが、やはりある程度の権限と言いますと少々オーバーになりますが、ある程度の調査がしやすい条件をつくってやるということは、モニターにとってもやりがいがある。モニターのしがいがある。または、これから役所も、そして一般国民の皆さんも大いに協力をし、そして参加する中でこういうことが行われなければ、なお一層の効果がむずかしい。また、経済の動向の厳しさ、これからのそういう流通機構の複雑さ、そしてまた諸情勢の変革等々考えますときに、こういうことはやはり真剣に、かつ前向きに私は考える必要があるのではないかという感じがするわけでありますが、長官の御見解をお聞きしたいと思います。
  128. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 御指摘の点は、私ども同様に考えております。しかし、権限を付与するということは、これはおっしゃるように本当に慎重でなければなりませんので、せっかくいままでりっぱにお仕事をやっていただいておりますモニターの方々を中心にいたしまして、やはり非常に信頼されるという関係は大事だと思うのですね。信頼されて、相談に応じていく、また実情を把握して、それを中央へ情報として提供していただく、こういう関係を基本に置きまして、これからも一層りっぱな機能を果たしていただくように持っていきたい、かように考えております。
  129. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 その信頼関係というのは、私も確かによくわかるのです。大切だと思うのです。むしろ商店の皆さんと協力して一緒になって物価対策を講じていこうという、そのぐらいの雰囲気をつくらなければいけませんし、たとえばこの前も大臣は大阪へいらっしゃいましたが、そのときの新聞報道のトップの見出しは、長官に対して商店の御主人が、何とか安く売りたいのだ、売りたいのだけれども、なかなかそうはいかぬので、政府の方でも何とかしてくれと、むしろ商店の御主人が逆に陳情しておられるというようなことも、見出しからトップの扱いで報道されておりました。それはそれとして、私は大変大切なことだ、こう思うわけでありますが、やはりこれからいろいろ問題点が出てまいりますと、やはり抵抗も厳しくなる。そういう協力をしてくれる、または協力関係、また信頼関係が結ばれるところはむしろ良質なわけでありまして、そういうところは、ある意味では無理に調査もしなくて済むところばかりだろうと思うのです。私は、むしろモニターに対して過大な期待を持っているように思われるかもしれませんけれども、しかし、どうしたって役所の皆さんの数だけでは足りないわけですから、やはりより一層この対策を充実させるためには、ある程度の裏づけというものが必要なのではないか。金銭的な面だけではなくて、そういう仕事がしやすいようにさせていただくことが大事ではないか。今日までもモニターの何人かの方にお話を聞きましたけれども、やはりいつも歯がゆい思いをするという率直なお声が返ってくるわけでありまして、そういうことからも、できるだけ前向きにお考えいただきたいと思うわけでありますが、いかがでございますか。
  130. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 やはりモニターの方が仕事を進めていかれる上で、やりがいのある仕事にしなければならないということではないかと思います。そういうことで、仕事のテーマの選び方にも一つ問題があろうと思います。さらに、その調査結果がどう使われていくかということについても、私どもは十分にフォローしていかなければならないと思います。それから、全体として、そのモニターが参加された調査について取りまとめたもの等も即刻モニターの方にお送りしていくという形での、私どもの間とのフィードバックというか、そういうことに力を入れてやっていく必要があろうと思っております。そういうことをモニターの方にお願いすることが、仕事が円滑に進むゆえんではないかと思っております。
  131. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それから、これはある意味では役所の機構の方ですが、国民生活センターのことにつきまして若干お尋ねをいたします。  この国民生活センターの設立の目的は、「国民生活の安定及び向上に寄与するため、総合的見地から、国民生活に関する情報の提供及び調査研究を行う」、こういうふうに規定をされておるわけでありますね。国民生活センター法を見ましても、十八条の「業務」のところでは、第一項から第三項までは「情報を提供すること。」という言葉で、第四項は「調査研究を行なうこと。」となっており、また五項は「情報を収集すること。」こうなっておるわけでありますが、結局、国民生活センターの皆さん、または自治体で設けられております同種類のセンターの皆さんも、やはりその部分でとどまってしまうことに歯がゆさを感じている。また実際上は、情報を提供するという形で、苦情処理の場合、相手企業とも欠陥商品等の問題の場合は話をするわけですね。そして、センターからこういう調査が来たとか、または問い合わせを受けたとかいうことが一つの圧力になって、欠陥商品の取りかえができるとかいうことになって、苦情処理がたまたま解決をされていく、こういうケースも多く見られることは事実であります。しかし、それがうっかり行き過ぎますと、または情報を提供するということで、こういうものが欠陥商品でありますとか、こういう問題がありますとか、これが何らかの形で公表をされますと、それがその企業にとっては致命的な問題になって、極論を申し上げますと、その類似の製品が売れなくなって倒産ということが中小企業、零細企業の場合に起きてくる。こういういろいろな問題が派生してくるわけであります。ですから、この国民生活センターの機能等につきましても、やはり的確に苦情処理に対応できる、また同時に、そこには責任も生じてくるわけでありますから、行き過ぎがないようなチェックというものも当然必要になってくる。そのような性格の明確化というものがやはり必要なのではないだろうかというふうに思うわけであります。  時間の関係で、質問をまとめて申し上げますが、あわせまして、そのような個々の苦情処理を行っております場合に、たまたま相手の企業に対して調査をいたします。そうすると、その製品を取りかえてくれる、それで終わってしまって、問題は一件落着、こういう感じで、総合的な対策となって発展していかないという問題が残るわけです。たとえば、「国民生活」という雑誌を国民生活センターが出しておられます。これは去年の二月号ですけれども、この中に対談が載っています。この中でも、実はそういうことに対する悩みが出てくるわけですね。苦情処理委員会というのは果たして機能しているのかどうか。国民生活センターの業務の中には、苦情処理の範囲の中で、たとえば苦情処理検討会だとか苦情処理委員会を開催するとなっているのですが、果たしてどれだけ開かれたのかというと、ほとんど開かれていない。またその機能を発揮するに至っていない。その委員会等を開催をして参考人にいろいろお呼びしようとすれば、ちょっとそこまで出ていくのはということで、この品物が取りかえられればそれでいいのですということになってくると、そこまでいかないということから、なかなかそれが総合的対策を発揮するまでに機能しないという問題等等が残されている。たまたまここでは神戸市生活情報センターの話が出ておりますけれども、一方の当事者が出てこなくても、片方だけでもとりあえずはこれを開いて総合的な対策を考えていくというふうなこと等を前向きにやっているようですが、これもやはり法律的な裏づけ等が、神戸市の場合は条例の裏づけをしているわけですけれども、こういうものが必要なのではないだろうか、こう思うわけです。  そして、そこでは「裁判所と違ってセンターや処理委員会には、社会的、政治的な力はありますが、強制するだけの法的権限はありません。」こう述べておられますけれども、このようなことに対して、皆さん大変歯がゆい思いをされる。ですから結局、問題を解決する場合に、相手の抵抗に遭うと、権限がありませんから、なかなかそれを突破できない。そして裁判に持っていったとしても、裁判は大変時間がかかる。これは公害対策と同じで、やはりそのような問題がきちんと、そしてスピーディーに処理されるための整備というものは、やはり法律の見直しを含めて検討されるべきではないかという気がするわけでありますが、いかがでしょうか。
  132. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは大変いい点を御指摘いただきました。私どもは、このセンターの性格づけは、例の消費者中心とした国民生活の保護立法等の精神によって、賢明な消費者としてやっていただくためのいわば御相談相手、こういうふうな性格をもってやっておるわけでございますので、おっしゃるように、権限というふうなことはできるだけそれを考えていないわけで、もどかしいという感じをお持ちになるのはある程度やむを得ないかと思いますが、十分お互いに意思を疎通させて、いまのような点について少しでもお役に立てば、こういうふうに考えておるわけです。  それから、苦情処理委員会の問題につきましては、神戸市の例等もお挙げくださいましたが、これについては政府委員からある程度お答えを申し上げて、実情と今後の考え方について具体的に申し上げたいと思います。
  133. 小金芳弘

    ○小金政府委員 生活センターの苦情処理委員会のことについて申し上げます。  生活センターで苦情処理の実務に当たっておりますのは相談部の職員でございまして、苦情処理委員会というものが吉国一郎氏を議長にいたしまして五十四年に発足しておりますが、これは個別の案件を処理いたします場合に、非常にむずかしい問題につきまして、学識経験者、事業者代表、それから消費者代表から成ります委員会で、その取り扱いの基本的な方針を検討していただくというのが苦情処理委員会の仕事になっております。  問題は、個別の事例につきまして、こういう学識経験者、この委員会が、おっしゃいましたように強制力を持っておりませんので、大変お忙しい学識経験者の能力を、個別の問題解決にどういうふうにうまく使うかというところでございまして、これにつきましては、どういうふうにやることによってこの能力をうまく使っていくかということを現在検討しておるところでございます。  それからなお、個別の問題が、取りかえその他で落着いたしまして、総合的な対策として育たないということにつきましては、もし落着いたしますとそれはそれで終わりになるわけでございますが、これは経済企画庁といたしまして消費者行政の一環といたしまして、われわれが消費者政策の方向を出していきます場合に、国民生活センターそれから消費生活センターの具体的な事例が非常に豊富にそろっておりますので、それを収集いたしまして基本的な方策を考えて伸ばしていくことになっておりますので、センターと経済企画庁と両方が共同してこの総合的な対策を発展させていきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  134. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 終わります。
  135. 高田富之

    高田委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  136. 高田富之

    高田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総理府所管環境庁について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として、公害防止事業団理事長城戸謙次君、公害防止事業団理事宮城恭一君、以上の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 高田富之

    高田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  138. 高田富之

    高田委員長 それでは、環境庁長官から概要説明を求めます。土屋環境庁長官
  139. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 環境庁昭和五十二年度歳出決算につきましてその概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十二年度の当初歳出予算額は三百五十五億五千四百九十二万円余でありましたが、これに予算補正追加額九千九十万円、予算補正修正減少額四億一千八百八十九万円余、予算移しかえ増加額七百八十万円余、予算移しかえ減少額二十九億二千八百七十一万円余、前年度からの繰越額三億四千二百五十九万円余を増減いたしますと、昭和五十二年度歳出予算現額は三百二十六億四千八百六十一万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額三百十二億九千九百九十万円余、翌年度への繰越額四千九百四十二万円余、不用額十二億九千九百二十七万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、公害防止等調査研究関係経費といたしまして、三十五億三千七百五十四万円余を支出いたしました。これは、化学物質環境調査、窒素酸化物総量規制のための調査検討、廃棄物の海上集中処理と副生資源の有効利用システムに関する研究、光化学スモッグ対策のための調査研究等を実施するための経費及び国立公害研究所の運営等の経費として支出したものであります。  第二に、自然公園関係経費といたしまして四十一億四千六百八万円余を支出いたしました。これは、自然公園等における園路、歩道、野営場等の建設及び管理、交付公債による民有地の買い上げ、渡り鳥観測ステーションの運営、特定鳥類の保護対策等の推進を図るため支出したものであります。  第三に、環境庁の一般事務経費といたしまして二百三十六億一千六百二十八万円余を支出いたしました。これは、公害防止を図るための施策推進に必要な調査費、地方公共団体に対する各種補助金、公害防止事業団及び公害健康被害補償協会に対する交付金、環境行政に従事する職員の資質向上のための研修所の運営費並びに環境庁一般行政事務等の経費として支出したものであります。  次に、先ほど申し上げました翌年度繰越額と不用額について主なるものを御説明申し上げますと、翌年度繰越額は、自然公園等の施設整備事業のうち積雪等の気象条件及び用地問題に関する交渉等に伴う設計変更等により事業が年度内に完了しなかったものであります。  また、不用額は、退職手当等の人件費を要することが少なかったためのもの等であります。  最後に、昭和五十二年度決算につきまして、会計検査院から国立公園における植栽について不当事項の指摘を受けましたことはまことに遺憾に存じております。  指摘を受けた事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後とも指導監督を一層徹底いたしまして、事業実施の適正化に努める所存であります。  以上、簡単でありますが、昭和五十二年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  140. 高田富之

    高田委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。岩井会計検査院第一局長
  141. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 昭和五十二年度環境庁決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。  検査報告番号一号は、西表国立公園における植栽工の監督、検査及び事後管理が適切でなかったものであります。  これは、環境庁が、自然公園法に定める公園計画に基づいて公園利用のための諸施設を集団的に整備するために昭和五十年十二月に西表国立公園内の竹富島を集団施設地区に指定しまして、沖縄県の職員に支出負担行為事務を委任し五十一年度に竹富島に博物展示施設を設置したのに引き続き、この周辺の環境整備等を目的として、五十二年度に沖縄県産のガジュマル、フクギなどの樹木二十五種類百六十九本等を植栽するとともに、植栽した樹木について解説した標識の設置等を行ったものであります。  これら樹木の植栽工について検査しましたところ、仕様書によると、植栽する樹木はあらかじめ根回しをした細根の多い栽培品とし、根元は樹木の直径の五倍程度にはち土をつけ、植えつける穴底には良質土を敷きならすとともに根回りにも良質土を入れ、植栽後は灌水して養生することになっておりますのに、実際の施工状況を見ますと、大部分の樹木は根回しを行っていなかったり、はち土も樹木の直径の二倍程度しかつけていなかったり、植えつける穴底及び根回りに良質土を入れていなかったり、植栽後の養生が十分でなかったりというような状況でありまして、植栽総本数百六十九本のうち七十三本が枯死しておりました。これを植栽工の主体をなす高さ三メートル以上の樹木七十一本について見ますと、枯死したため掘り起こして廃棄していたもの二十本、立木のまま枯死しているもの二十七本で合計四十七本が枯死しておりまして、残り二十四本についても成育するかどうか懸念される状況でありました。  また、このような状況にあるのですから、契約に基づき請負人に請求して植えかえを行わせるべきであるのに、事後の管理を怠り、そのまま放置しておりまして、この植栽工は環境整備という施工の目的を達していないものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  142. 高田富之

    高田委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  143. 高田富之

    高田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  144. 井上一成

    井上(一)委員 社会が発展をしていくその過程に、必ず裏側には何らかの公害がつきながら社会が発展をしていく。たとえば道路をつける。そしてそのことによって地域が利便さを感じる。ところが、その道路による公害を受ける周辺のたくさんの人たちがおる。空港の整備を図っていく、あるいはその利便さの中から便数がふえていく、そういうことによって騒音公害が拡大、拡散されていく。いわば都市の開発、発展の裏側には必ず公害が起こり、環境を悪化する。整備をすると同時にまたそういう事例があるわけです。私は、具体的に公害問題に入るまでに、そういう中で国民生活をしている実態、とりわけ当節、物価の問題について国民が非常にしんぼうしながらも、なお物価高に苦しめられておる、そういう観点に立って、公害に苦しみ、物価に苦しむ、そういう現状をとらえて若干の質問をしたいと思います。  まず、けさほども政府物価見通し六・四%というその見通しには大きな誤りがあるのではないか、この機会にそれを見直し、かつ経済政策の軌道修正を図っていくべきだ、とりわけ四月から公共料金の大幅な一斉値上げがある、そういうことで、これはけさほど経企庁長官には、実感としてどうなんだということを尋ねたのですけれども、当局にひとつ実態はどうなんだということをもう一度尋ねておきたいと思います。  国民、勤労者の所得は、すでに一月の統計によれば、前年同月比で実質丁二%の減少だ、こういう勤労者世帯の実収入が把握されているわけなんです。これは物価値上がりがこういう結果をもたらしたわけでありますが、そのことについてどのように受けとめていらっしゃるのか、まず聞いておきたいと思います。
  145. 坂井清志

    ○坂井政府委員 御指摘のとおり、物価の情勢は非常に厳しいものがございまして、特に卸売物価の方につきましては、二月の卸売物価の指数が前年同月比で二一・四%上昇、三月中旬値まで出ておりますが、三月中旬値で二一・九%の上昇。これに対しまして消費者物価の方は、二月の全国の指数で見まして、前年同月比八・〇%上昇、三月の東京都区部速報で見まして七・二%上昇。こういうことでございますが、五十四年度見通しといたしましては、特に消費者物価の方につきましては、当初四・九%という見通しでございましたが、途中で改めまして、四・七%という見通し、まだ三月の全国の確定値が出ませんので、この四・七がどういうことになったかは確定はいたしませんが、ほぼ四・七%程度というこの見通しに対しては、大体達成できたのではないかと考えております。  問題は、この五十五年度に入りましてさらに厳しい情勢が続くということでございまして、先生も御案内のとおり、特に海外の方から入ってまいります原油その他の一次産品の価格が非常に上がってしまった。そこへもってきて円安という要因がありまして、卸売物価はかなり急騰しておるわけでございます。  もっとも、反面といたしまして、最近ロイターの指数が、二月上旬がピークでございましたが、それ以降やや弱含んでおるというような状況もございます。円安が今後どういうことに相なりますか、なかなか予断を許さないわけでございますが、こういった卸売物価の高い状況がおいおい消費者物価の方に波及をしてくるという要因が一つと、それからもう一つは、いまもおっしゃいました電気、ガスその他を含めます公共料金の影響が出てまいりますので、五十五年度は、私どもとしては消費者物価見通し、六・四%程度という見通しを立てましたにつきましては、前年度の四.七%に対して、卸売物価の波及並びに公共料金の影響、そういったもろもろの要因を見て多少とも高くならざるを得ない。いろいろ政府対策を立てまして各界の御協力も要請をし、何とかこの六・四%程度という見通しを達成いたしたいということで、目下全力を傾けておるところでございます。
  146. 井上一成

    井上(一)委員 数字的な問題は、二月時点まではもうすでに報道もされている。だから、これはいわゆる前月比〇・九の上昇を続けるならば、六・四を何ぼ努力したって、それは実際不可能じゃないか。全く、そんな当てにならぬ数字をいまもなおかつ努力しますで、具体的にどのように努力するのかと言ったって、その策はない、公共料金が上がっている、そんな中では不可能である。むしろ次の手だてを考えていくべきである。たとえば外貨準備の問題一つをとらえても、やはり物価とかかわり合いがあるんだというような認識を私は持っているわけなんですよ。それについて、外貨準備を政府としては今後どのように取り組むのか、そういうことの具体的な策が示されない限り、物価抑制についての努力の方向をすらつかめぬじゃないですか。どうなんです。ただ五十四年度はこうだとか、あるいは数字が出ているのだから、これでもなおかつ六・四を強調され、かつそれを——こんなもの、六・四なんというものは全く実のない、魂のないただ単なる思いつきの当て数字だったと言われてしまいますよ。だから、物価抑制というものの具体的な例として、私はいま外貨準備を一つ挙げたわけですね。このことも物価影響しますよということ。どうなんですか。
  147. 坂井清志

    ○坂井政府委員 いま例に挙げられました外貨準備、あるいは為替レートということがその裏にあるのかと思いますが、これは確かに先生御指摘のとおり、物価に及ぼす影響のかなり大きな要素でございまして、昨年来、日本銀行の方で公定歩合を数次にわたって引き上げてまいりましたのも、一つには国内のインフレ期待を未然に防止をするということと同時に、その副次的な効果として、そういった為替レートへの好影響というものもある程度期待をしておったことと思います。御存じのとおり、わが国の場合、原油の輸入が輸入額全体の中で非常に大きなウェートを占めておりますために、昨年来の原油の高騰、その他物資もいろいろございますが、そういったことの影響が非常に大きゅうございまして、経常収支がここのところずっと赤字になっておる。しかし、これもまだそれほどはっきり統計の上に表面化しておりませんけれども、経常収支の月々の足取りは、大体もうボトムは過ぎたのではないか、これから徐々に改善をしていくというふうに私どもは見ております。一方において、原油は、昨年のような急速な値上がりはもうここ当分はない。まあ多少は上がるにいたしましても、そう急激な変動はない。輸入額の方も比較的いまのところ伸びがとまっておりまして、一方、円安ということもあってか、輸出の方はかなり大きな伸びを月々示しておりますので、そういった経常収支の改善基調というものを一番基本的な足がかりにして、いま先生もおっしゃいました外貨準備、これが残念ながらいままでのところは減少をたどってきておるわけでございますが、一日も早くこれがまた改善の方向に向かうという方向に向けて、これは政府全体の話でございまして、特に外貨ということになりますと直接には大蔵当局の政策にまつところが大きいわけでございますが、そういった努力を重ねていくことによりまして、外貨準備の方もいまのような状況から少しでもよい方向に持っていく。同時に、円レートの方も少しずつ改善の方向に持っていくということによって、それが物価に与える好影響を期待するということ。若干時間はかかるかと思いますが、そういう方向に向かって政府全体として努力をしてまいりたい、このように考えております。
  148. 井上一成

    井上(一)委員 急激な変化は起こらない、原油のコストもこれ以上そう上がらないだろう、と。経企庁がそういう認識をされるのはむしろ誤りますよ。むしろ、昨日のアメリカイランの国交断交から派生するところの世界経済というものは、非常に変化が、もう本当に予測できないほどの急激な変化が起こり得る可能性があるということです。そういう要因をはらんでいるということです。だからこういうときだからこそ、しっかりとした見通しと緻密な計画をきっちり立てなされ、そうでないとだめですよ、こういうことなんです。経企庁だけの問題でない、大蔵もだということであれば、私はそれぞれの省の見解をここで聞いておきたい。  すでにもう二百億ドルを割ったというなにでございまして、外貨準備を一体どのように考えているのか。それは、いま言うように、物価にはね上がるということを私は前段で申し上げておりますから、これは非常に重要な施策の一つである。ただ少なくなれば借金をすればいいというような、そういうような安易な財政運営でいいとお考えなのか。私は、そういう安易な方法ではだめですよということを言いたいわけなんですけれども、このことについて、もし大蔵省がそういうお考えであれば大蔵省に私は反省を求めますし、経企庁がそういう考えであれば、経企庁にそれは警鐘を鳴らしたい。五十四年、去年の一月には三百三十億ドルあった外貨が、すでにことしの三月ですか百八十五億ドル、まさに円安は物価にはね返った。なぜこのような状態になったのかといえば、必ずあなた方は、原油値上がりだ、そのことによって外貨保有高が減ったんだ、と。むしろ基本的に、二百億ドルを割ったことが大きな円安の原因にもなっておるし、そういうことで小手先の円防衛策なんというものはだめではないか。やはり本格的に円相場を回復させる、そういう抜本的な政策をこの際検討すべきである。  先ほども言っておったのですが、これは一緒にお尋ねしますが、経企庁もそうですけれども、大蔵自身も、売れない国債を金融機関なり証券会社に押しつけている。特に国家財政が赤字だ、そういうことを考えると、その国債の乱発が何を生んだか、これは赤字財政、国家財政のそういう不健全さを証明することであり、インフレ、物価高を引き起こした、そういう要因でもある。さらに社会問題を引き起こしているのではないだろうか、こういうことです。これはもう御承知のように、金融機関なり証券会社に売れぬ国債を押しつけて引き取らせておるから、その無理が、たとえば特定の証券会社の次長がそのことで自殺をせんならぬ。そういう社会問題にも波及していかなければいけない。これは政府政策が世の中に大きな公害を出したということですよ。そんなことを考えたら、物価問題一つをとらえましても、政府のつかみ方、把握の状態、そして対応のまずさ、これは全く何を考えていらっしゃるのか、どのようにしようとしていらっしゃるのか。そこに責任という言葉が、責任ある政治というものがここには存在しない。だから本当に責任を感じるならば、私がいま挙げた具体的な事例に対してどう対応していくのだということをやはりきっちりと示していただきたい、こう思うわけであります。このことについて経済企画庁の見解、そして大蔵の見解を聞かしていただきたいと思います。
  149. 坂井清志

    ○坂井政府委員 この物価という面から見ました場合も、やはり財政というのはかなり大きなファクターでございまして、一ころは、日本経済がいわば一つの不況期にございまして、ここを脱却するために財政、特にその中の公共事業、そこに期待をする面が非常に大きかったと思います。しかしながら、もう申し上げるまでもなく、ここ一年ほどの状況は大分変わってまいりまして、景気と物価の両にらみということが一ころ言われましたが、特に今年に入りましては、物価の方に相当重点を置いた経済政策政府全体として志向せざるを得ないという状況にあるわけでございます。したがいまして、この財政の中での大きな重要項目でございます公共事業につきましても、これも御案内のことと思いますが、先般、政府の中におきまして、今年度上半期の契約の目標を全体として六〇%程度にとどめる、抑制的な事業執行を図る、こういう方針を決めたわけでございまして、このことは、実は先月の三月十九日の新しい総合物価対策七項目の中にも基本的に織り込まれておったことでございますが、そういった方向でいま具体化しつつあるわけでございます。そういう抑制的な財政の運営ということが、一面では、国債発行という問題につきましても、ある程度影響を及ぼすことと考えますが、その辺の詳細につきましては、むしろ大蔵省の御見解をただされるべきかと思いますが、なお国際収支の方につきましては、先ほども申し上げましたようにいろいろむずかしい問題がございますが、一日も早くこの経常収支を中心とした国際収支の回復を目指すことによって、円レートの改善を図り、それによって海外から入ってまいります物価高騰の要因を一日も早く軽減をいたしたい、こういうことで関係各省とともに努力をしてまいりたい、このように考えております。
  150. 藤田恒郎

    藤田説明員 外貨準備の関係につきまして国際金融局の方からお答え申し上げますが、確かに御指摘のように、外貨準備は、為替レートあるいはそれを通じまして物価に非常に大きく影響を及ぼすということは事実でございます。しかも、このところ外貨準備が大幅に減少していることも御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、国際収支あるいは外貨準備の現状を基本的に立て直すためには、先ほども指摘がございましたように、まず財政金融政策を通じて経常収支あるいは物価の安定、いわゆるファンダメンタルズの改善が必要であるということは申すまでもないところでございまして、ただいまの御指摘に全く異存はございません。  ただ、財政金融政策経済の実体に影響を及ぼして、経常収支の改善が実現されるまでの間のいわゆるつなぎの措置といたしまして、われわれは為替、金融政策をいろいろ講じておるところでございます。したがいまして、外貨準備の減少、まあ私どもは外貨準備の現在の水準が、外貨の水準としては非常に不足しておるというふうなことは考えておりませんけれども、なおこれを補充するために、先般三月二日の円対策の中で、アメリカのニューヨーク連銀との五十億ドルのスワップをいつでも発動できる体制にいたしましたし、それからまた、先般スイス中央銀行と日本銀行との間で八億ドルのスワップを締結していただきました。さらにわれわれも、現在事務当局では、オイルマネーの流入その他の問題についていろいろ検討を進めておるところでございます。こういった措置は、先ほど先生から御指摘がございましたように、われわれはあくまでもつなぎの措置として考えているということでございます。
  151. 伊藤博行

    ○伊藤説明員 財政の関係につきましてお答え申し上げます。  財政赤字の現状は、先生御指摘のように、大変な赤字を抱えております。これは特に改めて申し上げるまでもないことでございますけれども、四十八年の第一次石油ショックを契機といたしました世界的な不況、それが財政面にも反映いたしまして、相当幅の歳入欠陥が生じたわけでございます。その際の対応のしぶりとして、それに見合った歳出を削るというのも一つのやり方であったかと思いますけれども国民生活の安定、それから不況の克服といった問題を考えた場合に、やはり従来の水準を維持しながらという使命があったことも事実でございます。そういったことで、歳入欠陥を補いつつ、その後の税収の伸び悩みという中で、一定の歳出水準を維持するということの結果、相当大幅な公債依存の体質にならざるを得なくなったという点が基本的な原因であろうかと思います。  その結果として、景気自身も相当いい方向に動いてまいったかと思いますが、財政につきましては、御案内のように、五十四年度の予算で一般会計で約四割を公債に依存する、五十五年度で約三分の一を依存するということで、大変深刻な事態になっております。こういった状態を放置するということが、先生お話しのような物価との関係では必ずしもいい影響を持つものではないという認識を持つものでございます。その意味で、五十五年度の予算編成におきましても、公債の発行額を五十四年度の当初に比べまして一兆円減額するということで、ともかく従来ふえる一方であった公債発行額を減らすという方向で、歳入歳出両面の見直しを通じて減額の方向をとったわけでございます。もちろん、五十五年度措置は第一歩でございまして、今後とも引き続きその努力は続けていかなければならないというふうに考えております。
  152. 井上一成

    井上(一)委員 この論議だけで時間を費やすこともできませんけれども、五十四年度年度収支では、自然増収等があって、当初の予想よりは決して悪くはならずに上向いているのです。これは物価、景気両にらみの中に立っての、少し頭を持ち上げてきたという経済政策です。ところが、私は五十五年度は全く逆であって、五十四年度と同じようなパターンで五十五年度が進行していくかといったら、進行しない。むしろ公共事業の抑制などということは、景気をより沈滞させる。仮に景気浮揚のために公共投資をやるといったって、国家財政にしたって地方財政にしたって、これ以上起債が発行できるわけじゃなし、財政的な裏づけができないとなれば、国内的には景気の上昇というものはいまの段階では非常に期待が薄い。そうなると、今度は国際的な中で日本の国内経済をどう好転させていくか、あるいはいま抱えている問題の中で、日本の国内の経済問題を一つずつ処理していかなければいけない。だから、経企庁も大蔵も何か通り一遍の答えはしているけれども、今度新しくこういうことも検討するのだ、こういうことも改善することによって、あるいはこういうことも政策として取り上げることによって、少しぐらいは物価の安定につながるのじゃないかというようなことは、いまのところ何もお答えの中になかったわけです。国債の乱発も、私は三点を言ったが、これは当然私の見解が正しいから、あなた方も反発できないわけです。だから今度は、そういう意味では、中小企業の倒産の実態はどうかということは御承知でしょうね。
  153. 坂井清志

    ○坂井政府委員 御指摘の中小企業関係の倒産、これがかなりの高水準になっておるということは私ども承知をいたしております。公定歩合が数次にわたって引き上げられてきておりますが、いままでのところは、金融面からの影響そのものによって、そのことのみによって倒産をしたという企業はそう多くないように伺っておりますけれども、今後こういう厳しい情勢をさらに進めていくということになった場合に果たしてどうなるかということにつきましては、私どももかなり心配をいたしておりまして、直接には中小企業の問題は中小企業庁等でいろいろと施策を講じておられるわけでございますが、今回の総合物価対策を立てるに当たりましても、そういった中小企業の面での問題というものを十分意識しながらやってほしいという非常に強い要望が通産当局からございまして、私どもとしてもそういうものを念頭に置きながら、千編一律の政策の施行ではなく、きめの細かい配慮を加えていきたい、このように考えております。
  154. 井上一成

    井上(一)委員 主管が、財政的なものは大蔵だ、あるいは個々の中小企業は通産だ。主管する省はそうであり、直接の行政はそこで行われるとしても、国全体の経済見通しなりあるいは計画立案というものは非常に大事であるということなんですね。大事だから、そのことが一つ狂うと、物価高になり、中小企業の倒産を引き起こし、いろいろな意味で国民生活はそれこそ自然環境以上の大きな政治的公害をもろにかぶるのだ、こういうことなんですね。そういうことだから、私は経企庁にあえてこれを集約して質問しているわけなんです。おわかりいただけますか。そういう認識に立っていただけますか。
  155. 坂井清志

    ○坂井政府委員 たとえば今度、電気、ガス料金等も上がりまして、そういった要素も中小企業の経営にはやはり響いてくるということは、私ども痛いほど痛感をいたしております。景気が昨年ほどそう大きく上昇するという局面にはございませんし、他方ではそういったコスト面の影響というものが徐々に強まってくるということで、そこへそういう金融面からの引き締め要因というものも重なってまいりますと、中小企業としては相当つらい場面になるであろうということは私どもも心配をいたしておりますが、やはりこういった分野につきましても、基本的には、従来以上に生産性の向上、企業経営の合理化ということに努めていただいて、そういったコスト面その他からくる影響、負担というものをできるだけその企業の中でこなしていただく。そうしていただきませんと、今度は、そういった企業の生産いたします製品の価格なりサービスの価格なりそういうものがまた高くなって消費者の方に転嫁をされるということにも相なってまいりますし、これは、企業消費者も現在はそう容易でない状況になっておるわけでございますが、政府企業消費者もみんなが協力をしてこのむずかしい局面を切り抜けていくということ以外にはないのではないか、このように考えております。
  156. 井上一成

    井上(一)委員 消費者はもういやというほどみずからの生活を切り詰めてもおりますし、消費量もぐっと減らしておりますし、これ以上切るということは不可能に近いわけで、むしろ政策的な問題がこの不況、インフレ、さらには物価高を解消するんだ。さっきも申し上げたように。アメリカは二〇%の金利になる、そこへ全部ドルは集まってくる、日本石油に外貨を使ってドルは減る、外貨準備はがくっと減ってしまう、そのことは円安、円安は物価にはね返る。こういう悪循環があっていまの経済の歯車が回っておるから、これはひとつ経企庁で、大蔵なりあるいは通産なり、政府としてちゃんときっちりと正常な歯車に直さなければいけませんよ、こういうことです。これは具体的にどれをどうせいとか、あるいはこれについてどうだと言うことはきょうは避けておきますけれども、いま企業努力あるいは消費者努力、いろいろなことを言っていましたけれども、中小企業の倒産が非常にふえつつあるわけです。これは金融引き締めあるいはその他の要因があろうと思います。ところが雇用指数というものは全然変わらないのですよ。おわかりですか。企業の倒産はふえ雇用指数が変わっていない。このことが何を意味するんですか。
  157. 坂井清志

    ○坂井政府委員 企業の倒産と雇用指数の問題と直接に関連する部分もあると思いますが、また別の要因によって動かされている面もあろうかと思います。いま御指摘のように、雇用がはかばかしくふえていないという点は確かにそのとおりでございます。昨年から少なくとも現在に至るまでは、景気はそう急上昇はいたしませんが比較的堅調に推移をしてまいりました。その割りには雇用がはかばかしく改善をしていないということかと思いますが、これは企業の経営方針といたしまして、御案内のように、前回の石油危機の前後、それ以前の高度成長経済になれてどんどん経営の規模を拡大していったということが石油危機で若干大きな壁にぶつかりまして、世にいう減量経営というものを余儀なくされた。したがいまして、多少景気が上向いてきた場合でも簡単に人をふやすということを企業としてなかなかやりにくい、そういう場面にいまあるのかと思います。したがいまして、常用雇用をそうはかばかしくふやさずに、あるいは別の形態の雇用をふやすといった対応をしておる企業もあるかと思いますし、あるいは労働時間等の面での操作でつないでおるという企業もあるのかと思います。  一方の、倒産の方につきましては、これは先ほども申し上げましたが、いままでのところは比較的金融面からの影響は少ないように思いますし、それぞれの企業の個別の要因によって倒産をしておるというものが従来までのところは比較的多いように思われます。そう申し上げても、だからといって今後金融引き締めの影響で中小企業の方を心配しなくてもいいということを申し上げているわけではなしに、今後はそういった面の影響というものも十分考えていかなければならない、このように思っております。
  158. 井上一成

    井上(一)委員 何か丁寧な答弁をいただいたようであるけれども、ぼくは率直に言ってもっと明瞭に、明確に答えてもらいたいし、そしてあなたの答えの中にそれはちゃんと入っていると思うのです。  なぜ雇用指数をここで私が持ち出したか。それはまさに時間外労働の指数が逆にふえているわけですね。このことは、企業が人を採用することにちゅうちょしている、反面時間外労働でカバーするのですから労働強化につながっていく。それは雇用の確保というのでしょうか、そういう観点から考えても好ましい状態ではない。むしろ政府は、経企庁がこういう数字を把握したならば、時間外を減らして雇用の拡大を図るという意味からも、私のいま指摘したような方向で指導を徹底しなければいけない。そのためには、一つの具体的な事例としては時間外手当、現在二五%ですね。それを諸外国のように五〇%にするとか、企業負担がふえるわけですから高い労働力になる。そういうことがむしろ、おしなべて一人でも完全失業者なり潜在的失業者を少なくしていくといういわゆる雇用の確保にもなり、そのことが内需の拡大にもつながっていくであろうし、物価の問題についても、むしろ雇用も絡んで、そういうことまで拡大をして物価政策というものを検討しなければだめだ。このことは労働力の問題にも直接かかわり合って雇用の問題も解決するのではないだろうか。非常に幅広いと思うのですね。だから、いま坂井さんがなさっている分野だけの、そのフィールドだけでは物価問題は決して解消しません。この問題だけでは抑制できませんよ。非常に広い分野で、その中心に経企庁の物価局がなるべきだ、こう思うのです。私の指摘をしたこと、あるいは私の求めるその方向づけ等も踏まえて、もう一度ここで経企庁としての取り組みだけ聞かしてください。私の指摘していることに疑問があれば、あるいはそれは不合理である、それは間違っているということであればそれを具体的に指摘をしてもらったらいいし、全く私のとおりであればそのとおりに今後努力をしていただきたい、こういうことです。
  159. 坂井清志

    ○坂井政府委員 私ども直接には物価の方面を所管をしているわけでございますが、御指摘を待つまでもなく、雇用という問題、これが今日の経済政策の中でかなり大きなウエートを占める問題であるということは十分承知をいたしております。ただ、一方におきまして、現在の企業経営の中で人件費という要素はかなり大きなコスト要因でございまして、私ども、公共料金あるいは一般の商品の価格なりサービスの料金なりいろいろそういうものをチェックしてまいります場合にも、人件費の動向というものは非常に大きなファクターでございます。したがいまして、雇用をできるだけふやす、それによって皆様方の福祉を増進をしていく、その問題の重要性は非常によくわかるわけでございますが、一方において、それが人件費という形でコストとなり、商品なりサービスの価格にはね返ってくるという問題もまた考えなければならないということで、その両面を見ながらどのようにそれを調整をしていくのが最もよいのかという問題につきましては、今日私がここでお答え申し上げるにはやや大きな問題かと思いますが、御指摘の問題は十分わかりますので、そういった問題も含めまして今後物価政策を推進していきたい、このように考えております。
  160. 井上一成

    井上(一)委員 物価問題はいずれまたの機会にし、ここで今度は、生活する、住まいするにふさわしい状態を損なっている、いわゆる環境公害ですね、環境公害の代表的な一例として、私は、現大阪空港周辺の問題を取り上げたいと思います。  環境庁にお尋ねをしたいのですけれども、大府国際空港における公害対策の現在までの進捗状況の中でどれほど進展をしたのか、期待どおりにそれが進展をされているのかどうか、まずそのことについてお尋ねをしたいと思います。
  161. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  大阪国際空港周辺における環境基準の達成のため、これまで運輸省において発生源対策及び周辺対策を進めてきたところでございますが、昭和五十三年十一月の中間改善目標の達成状況は八四・三%でございまして、必ずしも十分とはいえない状況にございます。
  162. 井上一成

    井上(一)委員 環境庁としては、住まいするにふさわしい環境条件を保障するために最大の努力をしていらっしゃる、そのことについては私も認めたいと思います。しかし、いまも大臣からお答えがありましたように、すべてが完璧あるいは十分とは言い切れないので、今後ともなお一層の努力を願いたいわけです。  具体的な問題に入ります。周辺対策として、移転補償あるいは防音工事、地域整備等があるわけです。それと同時に、発生源対策、大阪空港に離着陸するいわゆる時間帯、これは七時から九時までということで、すでに住民裁判を通してそういう判決が出たわけでありますし、このことについては環境庁長官として当然尊重すべきだと思うのですが、ここで念のために確認をしておきたいのです。
  163. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 尊重いたします。
  164. 井上一成

    井上(一)委員 現実的に九時を回ってまだ外国航空会社も含めて離着陸が行われておるということはお聞き及びでしょうか。
  165. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 まだちょっと聞いておりません。
  166. 井上一成

    井上(一)委員 環境庁は全くそのようなことはお聞きじゃありませんか。
  167. 三浦大助

    ○三浦政府委員 伺っておりません。九時過ぎて発着陸があるということは、私ども伺っておりません。
  168. 井上一成

    井上(一)委員 伺ってない。
  169. 三浦大助

    ○三浦政府委員 はい。
  170. 井上一成

    井上(一)委員 そういうことがあることはけしからぬことですね、大臣、そういう離着陸があるということは。
  171. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 事実といたしますれば、まことに遺憾にたえません。
  172. 井上一成

    井上(一)委員 私は、事実をさらに詳しく申し上げましょう。  三月七日ノースウエスト、三月十二日PANAM、三月十六日キャセイ、三月に入ってこの三回、一月にもあるのですが、三月に入って三回。この航空会社に地元の地域の人たちが抗議を申し入れた。ところが、抗議を申し入れたのだけれども、それぞれの航空会社はAIP、いわゆる航路情報というのでしょうか、そういうものを運輸省で出しているわけです。その運輸省のAIPでは、禁じられた時間は十時までだと言うわけです。そういうふうにちゃんと明記しているわけです。環境庁は九時までで、当然それを守っていくという精神にもかかわらず、運輸省はそういうことをしておる。一体どういうことなんですか。
  173. 三浦大助

    ○三浦政府委員 私どもの方は、午後九時から午前七時まで、やむを得ない場合を除いては制限していただきたいということを申し上げておるわけであります。
  174. 井上一成

    井上(一)委員 環境庁は九時まで、運輸省はこういう国際的なインフォーメーションに十時。やむを得ない場合というのは緊急の場合ですから、私がいま指摘したのは別にやむを得ない場合じゃないのですからね。事実、住民が抗議すれば、AIPで違反でないと言う。私は、この際、このAIPの時間を直すべきである、そのことが地域住民に対する誠意である、こう思うのです。前回の委員会でも、運輸省に対する地域住民の不信感がなぜ起こったのかということを再三指摘しておきました。こういうことをしておるから地域住民は運輸省に対する信頼をなくしていくわけです。  さらに、去年の六月四日には、すでに大阪国際空港長から、午後九時以降の発着の防止について、周辺住民の生活環境の保全の立場からこれはきわめて慎重でなければいけないということを国際空港の議長団に申し入れをされておるのです。ところが片方でこんなことをしておる。これがいまの政府のでたらめ公害対策、二元にも三元にもまたがってのでたらめ公害対策だ。地域住民はたまったものではない。環境庁長官、こういう事実がある。どうですか。環境庁長官から運輸大臣に、環境庁としては好ましくないし、方針が狂っているのじゃないかということで十分連絡をとって、地域住民の立場を尊重する取り組みをしていただけますか。
  175. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  環境庁といたしましては、大阪国際空港周辺の騒音問題が先ほど来先生がるるお述べになられましたとおり大変深刻な問題であると考えまして、午後九時以降翌朝七時まで航空機の離着陸が原則として行えないよう引き続き適切な処置を講ずるように、運輸省当局に強く要請をいたしてまいります。
  176. 井上一成

    井上(一)委員 運輸省に要請をしてきたけれども、運輸省は聞かないということですか。
  177. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 先生の御意見を踏まえて、運輸省並びに運輸大臣に対しましても強く要請いたします。
  178. 井上一成

    井上(一)委員 要請をする——ぜひ環境庁長官から運輸大臣にその趣旨を十分伝えかつ強力に推し進めていただきたいと私は思います。  そこで、運輸省は、いま私が指摘しましたが、環境庁長官も明快にお答えになられました、きょうの国会での質疑を通しての、地域住民を守るという立場に立たれますね。一言だけでいいです。
  179. 山本長

    ○山本説明員 一言だけということでございますが、この点について若干御説明したいと思います。
  180. 井上一成

    井上(一)委員 この件はいまの質疑を通してどうするのだ、大臣から運輸大臣に言うと言っておるのだから、尊重するかしないかということだけです。
  181. 山本長

    ○山本説明員 環境庁長官の御要請、御要望を受けまして、誠意をもって対処いたしたいと考えます。
  182. 井上一成

    井上(一)委員 その趣旨に沿ってすぐに改めるべきだと思います。あなた方は、運輸省は恐らくこのことについては、国の方が控訴をしておるから、その裁判中だからとか、住民の苦しみということをはだで感じてわかっておらぬからそういう言いわけで、できればそれまで置いておこうというようにお考えかもわかりませんけれども、いま環境庁長官が言われたように常に地域住民の環境保全のために行政は努力すべきであるということを、駄弁ですけれどもつけ加えておきます。  さらに環境庁にお尋ねします。  この大阪国際空港の問題に絡み関西新空港の建設というものが提起され、現在事前調査が進められておるわけであります。もうすでに百億からの国家予算が投入されて、事前調査が部分的には終了したものもあるでしょうし、あるいは中間的な報告しか得られないものもあるでしょうし、これから取り組む問題もあるでしょうけれども環境庁は運輸省から地域環境にかかわる資料あるいは調査の結果の報告を受けられましたか。
  183. 金子太郎

    ○金子政府委員 現在までのところ連絡をいただいておりません。
  184. 井上一成

    井上(一)委員 環境庁長官、これは政府として——環境庁というのは常に手足があるわけじゃありませんから、独自の調査というものはそれぞれの主管でやられるわけですね。そして環境保全の窓口を環境庁がやっていく。それを事前調査の中間報告も含め、あるいは何ら国際空港の環境調査の報告を受けていないということでは、これはなめられ切った行政じゃないですか。失敬な言い方をすれば、運輸省は環境庁をどのように位置づけているのか。私は当然環境庁に部分的な報告があったものと思っておったのですが、ないということです。報告を受けてないのにそれ以上の質問はできませんので、このことについてはきょうは留保します。きょう環境庁の所管をすべて質疑を終えたいと私は思いましたけれども、関西新空港建設に絡む環境調査については質問を留保します。  さらに運輸省に、なぜ事前調査の中間報告あるいはその他の環境庁との関連の問題を報告しなかったのか、お答えを願います。
  185. 山本長

    ○山本説明員 現在運輸省におきましては、この環境影響に関する調査を全般的に取りまとめ中でございます。この環境影響に関する基礎調査は、空港計画というものに対しまして、いかなる空港計画をすればいかなる環境影響を与えるかということを研究するものでございまして、空港計画について現在運輸省は航空審議会の意見を聴取をいたしておる最中でございます。この空港計画の検討と相まって環境影響調査をも同時並行的に取りまとめてまいりたいと考えております。現在はその取りまとめ中でございます。取りまとめが終わりましたならば関係省庁にもお諮りしたいと考えております。
  186. 井上一成

    井上(一)委員 いつごろ終わるのですか。
  187. 山本長

    ○山本説明員 取りまとめが終わりますのは、やはり空港計画というものが決まりませんと最終的な取りまとめは終わらないと存じます。その空港計画につきましては現在航空審議会で慎重に審議中でございますので、その審議が終わってからということになると思います。
  188. 井上一成

    井上(一)委員 それは大体いつごろなんですか、めどは。
  189. 山本長

    ○山本説明員 現段階で何月ということを申し上げられる段階ではございません。
  190. 井上一成

    井上(一)委員 答弁ができなければできないでいいのですよ。でたらめな答弁をすること、それはよくないことでしょう。責任の持てぬ答弁なんというのは要りませんよ。私がいま指摘したことに対してあなたは責任を持って答弁できるのですか。すでに関係官庁あるいは運輸省内だけでの地域整備大綱の考え方等については、あるいは関西新空港のアクセス対策については、もうすでに作成しているじゃないですか、内部の一つの試案として。そのことは環境庁とも非常に深いかかわり合いがあるのですよ。それを私はここに持っていますよ。カク秘だ。丸の中の秘じゃなくして角の中の秘。どういうふうに取り組んでいくのだとか、あなた方はちゃんともうすでにたたき台をつくって、そのことについて検討に入っているじゃないですか。環境庁ともこういう問題こそ連携をとって、どのようにしていこうか。それを、審議会が云々、いや建設計画がきっちりと固まらなければとか、そんなことじゃ遅いじゃないですか。調査の段階の中から起こってきた問題に対しては環境庁あるいはその他の省庁、農水省に関係があることは農水省にそれぞれ報告をして相談をしなければいけないのじゃないですか。あなたはそんな答弁でいいと思っているのですか。それがまともな運輸省の答弁ですか。
  191. 山本長

    ○山本説明員 先ほど申し上げましたように、この環境影響評価につきましては取りまとめ中でございまして、取りまとめが終わりましたら関係省庁にも協議をいたしたい、このように考えております。
  192. 井上一成

    井上(一)委員 そうしたら、いつなんだ。いつ取りまとめるのですか。
  193. 山本長

    ○山本説明員 この環境影響評価案とでも申すべきものは、やはり空港計画というものが固まりませんと固まらないという性格のものでございます。たとえば現在航空審議会でこの建設工法につきまして、浮体工法をとるか埋め立て工法をとるかということで慎重な審議がなされております。環境影響というものもこういった空港計画と密接な関係がございまして、それによりまして環境影響評価の結果というものが異なってくるわけでございますので、それとの関連でまとめたい、かように考えておる次第でございます。
  194. 井上一成

    井上(一)委員 そんなばかな答弁をしてはだめだと言うんだ。確かにぼくは失礼な言い方をする。あなたがそんな答弁をするからこっちも。いま埋め立て工法の問題に入ってないわけなんですよ。これは工法云々以前の問題です。そこに空港を建設するについてどのように地域環境が変化するか、社会環境の変化がどのようにもたらされるか、そのことはどのように環境を損ねていくのか。工法は、自分のところが埋め立てをしたかったら埋め立てがいいとか、浮体工法に関連する者は浮体工法を推進しているのですよ。みんなそれぞれの企業じゃないですか。要は、決まったら自分のところの企業が仕事を受けるようなことを運輸省がやらしておるわけだ。運輸省、これはもっともっと時間をかけて、私は次の機会に事実関係をはっきりさせる。きょう、ぼくが問うているのは、工法だとかあるいは予算だとか、そんな問題じゃないんですよ。だから、あなたが答弁できなければ結構ですと言っているわけ。むしろ空港建設をするかしないか。そのための事前調査でしょう。建設をするかしないかのための事前調査でしょう。どうなんですか。事前調査は何のためにやっているのですか。
  195. 山本長

    ○山本説明員 現在までやってきております調査は、空港を建設するかどうかの可否を判断するための調査でございます。
  196. 井上一成

    井上(一)委員 そうでしょう。工法は、建設をするという段階から始まる問題なんだ。だから、きょうはそこまで論じませんから、環境庁長官、このことにおいても、環境庁が運輸省にいままでの事前調査の中間報告を含めて報告を求めるべきだ。そして求められたものを当委員会、いや、私だけでも結構ですから、私はそれを知りたいから、出してください。お約束いただけますか。
  197. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 新大阪国際空港の問題は、国を挙げての一大プロジェクトでございますので、環境庁といたしましても、この問題につきましては重大な関心を持っておるような次第でございます。ただいま先生の御指摘の件につきましては、運輸省当局ともよく相談いたしまして対処してまいりたいと思います。
  198. 井上一成

    井上(一)委員 委員長、そのことについては理事会でお諮りをいただいて、委員会に提出を私は求めます。
  199. 高田富之

    高田委員長 そのように取り計らいます。
  200. 井上一成

    井上(一)委員 時間がなくなりましたので、あと大きく分けて二つの問題。  一つは、これはもう公害環境委員会でも論じられているわけですけれども、アセス法案はいつごろをめどに提出をするのか。あるいは現在、そのことにおいての中身の問題で、すり合わせの段階で、どこが、どのような点でむずかしいのか、どこにネックがあるか、このことについて一点は聞いておきたいと思います。  それから、地方自治体に非常に関係する問題でございますけれども、地域の環境を破壊させない、あるいは地域環境を保全していく、そういう意味から環境庁が大変力を入れていらっしゃる公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、これは五十六年三月三十一日で切れるわけですね。さらに、この法案がどれほど役立ったかというか、この法案で地方自治体が、それなりの財政負担を国と応分な配分をして支えてきた、その財政投下効果が出ているわけですけれども、まだ残余の自治体については、さらにこれを延長して、この法の精神を生かしていくべきである。これが一点。  もう一点は、水質保全、いわゆる上水道、水道の水源の確保のためからも、ダム建設等については、ダム建設地域外の上流地域における十分な手だてが必要である。そういうことについても格段の配慮を願いたい。こういうことであります。  さらにもう一点は、ごみ処分の問題については、それぞれの地方自治体が苦労をしているわけです。自治体固有の業務ではありますけれども、国もこのごみ処分については積極的に協力をされて——厚生省は、十分な努力をするということを当委員会で明確に答えられているわけです。直接の担当は厚生省でありますけれども環境庁も、環境保全の意味から、そのような自治体の抱える問題に積極的に協力していただきたいと思うのですけれども、その用意があるかどうか。  この点をひとつお尋ねして、とりあえずの私の質問を終えまして、留保した質問については次回の委員会でやります。
  201. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 まず第一点のアセス法案の進捗状況につきまして申し上げます。  さきの自民、社公民三党との話し合いによりまして、自民党の方から内閣に話がございまして、三月四日に関係閣僚協を設置していただきまして、それから三月の十三日に第一回の閣僚会議を開いていただき、それに並行いたしまして十二回にわたって関係省庁局長会議を開催して鋭意検討していただき、そして去る三月二十八日に要綱を閣議において決定していただき、現在、それに基づきまして原案づくりのために関係省庁、法制局におきまして鋭意検討がなされておるような次第でございます。  それから、法案作成上ネックになった点について申し上げますが、法案調整上特に重要な事項といたしまして、関係省庁局長会議におきまして詰めてきました六項目がございます。まず第一に対象事業の範囲。それからまた、基本的事項及び指針についてでございます。それからまた、地方公共団体のあり方につきまして。それから本法案と条例との関係についてでございます。それから免許等の行政処分との関係でございます。それから都市計画法の一部改正については、先月二十八日に大筋の合意に達し、現在法案の要綱に基づきまして、鋭意原案を国会に出すべく最善の努力がなされておるような次第でございます。  それから、いつごろ国会に出せるのかというお尋ねでございますが、私といたしましては、でき得れば今月の中ごろまでに、まあ多少延びても二十日ごろまでには何とかひとつ出させていただきたいということで、ただいま最大限の努力をいたしておるような次第でございます。  それから、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関するお尋ねであったかと思いますが、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する問題は、もう、先生御専門家でございますからよく御理解をされておられると思いますが、五十五年度でその効力を失うわけでございますが、私といたしましては、先生の御意向につきましては、関係地方公共団体の意見等も徴しながら、自治省初め関係省庁とも十分連絡をとりまして対処してまいりたい、かように考えております。  それから、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の成果ということでございますが、この問題は、内容は先生御案内のことであろうかと思いますので、省略させていただきますが、昭和四十六年に公防財特法が制定されまして以来、これまでに公害防止策定地域を中心といたしまして、公防財特法の適用により各種の公害防止対策事業の促進が図られてきているところでありまして、一定の効果を上げてきたと認識をいたしておるのでございますが、公防財特法の期限が切れることが本年度末に控えていることから、現在公防財特法等に関する所要の調査を関係都道府県に依頼をしておるところでございます。したがいまして、公防財特法の成果等の詳細につきましては、その調査結果がまとまるまで、いましばらく御猶予いただきたいと考えております。  それから、水源となっておりまするダムにおける水質保全の問題であったかと思いますが、水源となっておりますダム流域の水質保全対策は重要な問題でもございますし、特に屎尿処理施設等の生活排水処理施設の整備を図っていくことが必要であると考えておりますので、関係各省とも十分連絡をとってまいりたい、かように考えております。  それから、廃棄物の処分について環境庁の考え方はどうかというお尋ねであったかと思いますが、廃棄物は御案内のとおり毎年膨大な量が発生いたしまして、その最終処分場等の確保は年を追って大変困難になっておりまして、各自治体におきましても大変頭を痛めておる問題でございますが、特に産業、人口の集中しております大都市圏におきましては最終処分場の確保がきわめて困難な状況にあることは、御案内のとおりでございます。環境庁は廃棄物行政の分野におきましては、最終処分の基準を所掌いたしておりますが、廃棄物の最終処理場の確保につきましては、環境保全の観点から重要な問題であるとの認識を持っており、関係省庁及び地方自治体等と連絡を密にいたしまして適正な対策が推進されますように、今後とも誠意を持って努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  202. 井上一成

    井上(一)委員 どうもありがとうございました。
  203. 高田富之

    高田委員長 新村勝雄君。
  204. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 昭和五十二年度決算に関連をしまして、まず環境庁の環境保全行政に対する基本的な考え方を伺いたいわけです。  五十二年度決算、これは決算によって完結するものではありませんで、その後ずっとその行政が続くわけでありますので、それに関連をして後の五十三、五十四、五十五年度の予算について見てみますと、環境保全経費、この総額において五十三、五十四年度は相当の伸びがあるわけでありますが、五十五年度においてはその伸びが非常に低下をしておる。総額においてわずか四百十億しかふえてないということでありますが、高度成長から低成長、安定成長に移行するに従って一層この環境保全行政施策が要請されるはずでありますけれども、それが逆に縮小の傾向をたどっておるということは、現政府の環境保全に対する政治姿勢なり熱意なりがそこにおいて疑われるということになるわけでありますけれども、まず長官の基本的な考え方を伺いたいと思います。
  205. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、わが国は、廃墟の中から立ち上がって世界に誇る繁栄をなし遂げたわけでございますが、昭和三十年代から後半にかけまして、人類の敵と申しましょうか、公害が発生いたしまして、そこで政府におきましても、昭和四十二年に公害対策基本法なるものを制定し、さらに四十五年に一大改正をいたし、また四十六年には環境庁の設置を認めたわけでございます。政府、地方自治体また国民一体となって、かつてのような危機的状態から脱却をすることができ得たもの、私はかように考えておるような次第でございますが、ただ、先生御指摘の点につきましては、環境庁長官といたしましても反省しながら今後環境行政に取り組んでまいらねばならぬという決意を新たにいたしたわけでございますが、何と申しましても、これからは単なる公害の防除にとどまらず公害の未然防止に力を入れてまいらねばならぬ、かように私は確信をいたしておる次第でございます。そして、環境庁の使命である人間の健康と自然環境の保全、生活環境の保全、そしてまた公害の防除にとどまらず公害の未然防止、それからまたよりよき環境をつくる、このために全力を傾けて努力をしてまいりたい、かように考えております。
  206. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この数年間の経過を見ますと、五十二、三、四と一貫して環境行政の充実がある程度見られたと思います。ところが、五十五年度に及んで急激に伸びが落ちた。これでは実質的な事業そのものがかなり縮小せざるを得ないのじゃないかと思うのですね。これは五十五年度予算説明でありますけれども、環境保全経費の合計が一兆一千六百六十三億、伸びが四百十億ということで、これは環境庁の予算ではなくて国の予算の中で環境保全経費として上げられているものがあるわけですけれども、これによりますと、五十五年度はほとんど停滞ということですね。そうしますと、これはいままでの経過からして、どういうわけでこういう状況になったのか、あるいはどういう面でどういう変わり方をしたのかということですが、この点を伺いたいと思います。
  207. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 先生、恐れ入りますが、事務当局からちょっと御説明させていただきます。
  208. 神戸芳郎

    ○神戸政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の伸び率の関係でございますが、環境保全経費の大部分は下水道などの公共事業でございます。本年度の予算編成方針が公共事業の投資的経費、それが抑えられましたものですから、そういう関係で伸び率が低くなったわけでございます。なお敷衍いたしますと、環境庁の予算につきましては、伸び率が五・五%でございますが、政府のこの種の経費は約五%の伸びになっておりまして、そういう点からしますと、環境行政に対する配慮が平均点以上の配慮を政府としてはしている、こういうことが言えると思っております。
  209. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 五%ということになりますと、これは平均の伸び率をはるかに下回るわけでありまして、しかもインフレということを考えますと、事業費そのものはかなり縮小せざるを得ないのではないか。もちろん下水道事業という特殊事情はありましょうけれども、それをも含めてこれはやはり環境保全事業であるし、国民の福祉を守る施策であるわけでありますから、その国民の福祉を守る施策あるいは環境保全の施策がとにかく減っておるということについては問題があるのではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  210. 神戸芳郎

    ○神戸政府委員 もう一度お答え申し上げます。  公共事業費は、御承知のように本年度は全くの横ばいであったわけであります。一兆円のうち七千億円とか八千億円という数字がほとんど公共事業でございますので、そこの伸び率が低いということはよその伸び率を抑えている、こういうかっこうになるわけでございます。なお、私が申し上げました五・五%というのは環境庁だけの予算でございまして、環境庁だけの予算について見ますと五・五%という、国の平均よりも伸びている、こういうことを申し上げたわけでございます。
  211. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それはわかるのですが、環境庁は性格上、環境庁だけではなくてやはり国全体の環境保全事業について、所管ではないにしてもそれを充実をしていく責任があると思いますよ。ですから、そういう意味でこれからもひとつ、国政全体の中における環境保全事業の総量あるいは施策の総量という観点から御努力をいただきたいと思うわけです。  それからもう一つ、各部門にわたって環境保全事業があるわけですけれども、これらを環境庁の指導のもとに、あるいは環境庁中心として環境庁の構想のもとに進めていくことが必要だと思うのですが、こういう各会計も違うあるいは省庁も違う仕事があるわけですけれども、それらを環境庁の指導のもとに有効に進めていくその方法ですね、どういう手段でどういう手順で進められておるのか、それを伺います。
  212. 金子太郎

    ○金子政府委員 環境保全関係の予算につきましては、たとえば下水道整備費につきましてはほかの公共事業に優先して配慮していただくように、閣議の席におきましても環境庁長官から強く要請をしていただくという意味のことをしていただいておりますし、その他関係経費につきましては、指導というわけにはまいりませんが、関係各省に対して私どもから連絡をとりまして、優先的な配慮をしていただくよう努力をいたしております。また、本件につきましては、大蔵省当局に対しましても、環境保全経費に対し優先的に配慮するようにしばしば要請してまいっているところでございます。
  213. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 環境行政の有効な、能率的な運営のために、各省庁間あるいは各会計間のもっと緊密な連絡調整を図る機関等をおつくりになるお考えはございませんか。これは長官、いかがでございますか。
  214. 金子太郎

    ○金子政府委員 先に細かいことを少し答えさせていただきたいと思うのですが、現在までも担当者レベルで会議を開くということはございますが、御構想のような、もう少し高いレベルで定期的にというような会議はまだ持っておりません。
  215. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 私も、今回長官を拝命いたしましてそういう点も身をもって痛感をいたしておりますので、ひとつ先生の御意見も踏まえて勉強させていただきたいと思います。
  216. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 先ほどからの論議にもありましたけれども、空港の問題については運輸省だ、あるいは下水道については厚生省あるいは建設省。一、二の例を見てもこういう状態でありまして、これではなかなか環境庁主導型の強力な環境行政がむずかしいのではないかと思うのですけれども、ひとつ長官もその点を御研究をいただきたいと思うわけであります。  次に具体的なことに入りますが、一つは地下水の問題であります。  地下水は表流水と並んで重要な資源であるし、また同時に、その対処の方法を誤ると重大な公害を起こす、こういう性格を持っておるわけでありますけれども、まず最初に、地下水及び表流水あるいは内水面、それらを含めた水一般についての立法なりあるいは行政方針なりを確立する必要があるのではないかと思います。ところが現在の法制を見ますと、確かに地下水くみ上げの規制をする法律あるいは生活用水等のくみ上げ規制等はございますけれども、あるいはまた局部的な水の汚染を防ぐというような法律はありますけれども、水一般についての立法がないわけですね。これについて環境庁の御見解をまず伺いたいと思います。
  217. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 ただいま先生おっしゃいますように、水全体を統括した法制度はないわけでございますが、水資源に関しましては国土庁を中心にいろいろな調整がとられておるわけでございまして、その他利水によりましてそれぞれ関係各省が持っておるわけでございますし、また水質汚濁なりあるいは地下水問題につきましては環境庁も含めましてそれぞれやっておるわけでございます。全体を統括する問題につきまして環境庁お答えするのが適当かどうかということはあるわけでございますけれども、水の問題はいろいろな側面を持っておるわけでございますので、現在の中でいかに連絡調整をよくしながら進めていくかということがより現実的ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  218. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それでは、幾つかの個別の問題をまず伺って最後に御見解をさらに伺いたいわけです。  地盤沈下の問題です。これは地下水との関係が深いと思います。地下水の過度のくみ上げによって起こる場合が多いと思うのです。そしてまた、地盤沈下という問題が住民の生活にも重大な影響を及ぼすわけであります。そしてこれは一種の公害あるいは環境破壊という性格があるわけですが、地盤沈下の実態についてまず伺いたいと思います。
  219. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 地盤沈下につきましては、かつて大変沈下量が大きい地域があったわけでございますが、各種法制あるいは自治体の条例等によります規制あるいは各代替水の供給事業等によりまして最近かなり落ちついてきておるわけでございます。かつては年間二十センチ程度の沈下量を示しましたような東京湾なりあるいは伊勢湾なり、そういう周辺地域があったわけでございますが、現在最大のところが関東平野の埼玉、茨城を中心にいたします一部地域でございまして、約十センチ程度の沈下量になっているわけでございます。そういう意味で若干鎮静化はいたしてきておるわけではございますが、住宅等の建設等によります都市の拡張等によりますそういうものの地下水依存、あるいは渇水時におきます農業用水の地下水依存、そういうような地域がまだあるわけでございます。したがいまして私ども、それに対する対策関係各省で進めておるわけでございまして、そういうものを漸次強化をしながら地盤沈下の防止のために努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  220. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そこで、地下水をどう考えるかということですけれども、地下水には表流水と違って公的な管理が全然いまないわけですね。そこで、地下水が果たして公水なのかあるいは土地に付属をする私物であるのか、そういう点の明確な法的な位置づけもいまないわけですが、こういった点についてはどうお考えですか。
  221. 高橋俊見

    ○高橋説明員 地下水の法律的性格につきましてはいろいろ御見解があろうかと思いますが、私ども国土庁で考えております法案につきまして考え方を述べさせていただきます。  一般的に申しますと、地下水の公的性格につきましては民法第二百七条で「土地ノ所有権ハ法令ノ制限内ニ於テ其土地ノ上下ニ及フ」という規定がございまして、土地の所有権者が地下水に対しても所有権を有しているというふうに考えられているわけでございます。  私どもの法案は、現在地盤沈下等の地下水障害を防止するためにできております二つの法律がございます。工業用水法と建築物用地下水の採取の規制に関する法律、これはビル用水法と一般に言われておりますが、この二つのの法律による地下水採取の規制は、全国の地下水一般を対象とするわけではなくて、地域を指定いたしまして、その地域内での地下水の採取の規制をしているわけでございます。そういう特定の地域を対象としております。  国土庁の現在考えております地下水の保全及び地盤沈下の防止に関する法律案、仮称でございますが、このような二つの法律の規制方式を引き継いだような形を考えております。したがいまして、地下水に対する法律的な考え方にしましても、現行の地下水関係の二法と違った取り扱いをしようというわけではなくて、基本的には同じような考え方で対処しようというふうに考えております。
  222. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この民法の規定は、現在のように工業が発展しない前の原始的な一つの考え方だと思うのですね。土地の上下に及ぶ、土地に付属するというような考え方では現在の状況には対応できないと思うのですね。そして、土地を持っていて、その土地に井戸を掘れば、その地下は無制限に、あるいは独占的に土地の所有者に帰属するということでは、これは現在の状況としてはきわめて不合理であると思います。特に小さな地域に水を大量に使用する企業等が立地をした場合には、その土地の住民はそれによって公害の被害を明らかに受けるわけでありますから、そういう点で水一般、特に地下水の基本的な性格づけ、あるいは地下水を公水として規定をして、それを公的な管理のもとに置くということが時代の要請ではないかというふうに私は考えるわけです。  それともう一つは、国土庁あるいは建設省のお考えと環境庁のお考えは違うようですね。国土庁のお考えは、言葉は別としても、地下水法ということでの検討だと思いますし、環境庁では地盤沈下防止という観点からの地下水の管理という方向になろうかと思いますけれども、そこにかなりの性格の違い、あるいは対処の仕方の違いがあると思いますけれども環境庁としては地下水に対して今後どういう基本的な態度でお臨みになりますか。
  223. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  地盤沈下は、公害対策基本法において典型七公害の一つに入っておるわけでございますが、一たん地盤沈下が起こりますとほとんど回復でき得ないようなものでございます。また、その原因は地下水の過剰な採取によって生ずるものでもありますし、地盤沈下防止対策といたしましては、工業用水法あるいはビル用水法及び条例による地下水採取の規制、代替水供給事業、地下水利用の合理化、災害対策事業等が行われており、その効果を上げておるようなわけでございますが、環境庁といたしましては、地盤沈下対策をさらに強力に今後推進するために、四十九年十一月の中央公害対策審議会の答申に基づきまして、未然防止を考慮しつつ、かつまた、各種の用途の地下水の採取の規制を内容とする総合的な法制度の実現に向けて、関係省庁との協議を続けてまいったような次第でございます。  しかしながら、先ほど先生御指摘のとおり、地盤沈下にかかる法案につきましては、公害防止の観点に加えて、地下水の公的管理、あるいはまた水資源の確保、代替水の供給等、地下水の採取に対する各種の行政上の立場からの主張がございまして、関係省庁間で率直に言って難航をいたしておるような次第でございます。  かつてこのことは閣議でも問題になりまして、そして今後官房長官が間に入って調整をしていただくというようなことに相なっておるような次第でございますが、環境庁といたしましては、今後とも関係省庁との調整に努めてまいりたい、かように考えております。
  224. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 公害という観点からの地盤沈下の防止、あるいはまた別の観点から、地下水というのは水のうちでは最も良質な水資源でありますが、その水資源をどのように有効に利用するか、あるいは、ある意味では保全をしながら利用しなければいけないわけですけれども、こういったいろいろの観点からしまして、どうしても統一的な水法をつくらなければならない段階にもうなっていると思うのです。そういう意味で国土庁さんとしてはどうなんですか、この立法に対する取り組みは。
  225. 高橋俊見

    ○高橋説明員 ただいま環境庁長官からお答えもありましたように、私どもも従来から取り組んでまいりまして、しかしながら関係省庁間での調整がなかなかまとまらなかったという経緯でございます。今後も一層法案の国会提出ができますように努力してまいりたいというふうに考えております。
  226. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 伝えられるところによりますと、国会ごとにこの問題は大なり小なり報道されておるわけですね。環境庁あるいは国土庁、建設省と各省の立場によってニュアンスの相違はあるでしょうけれども、立法化が言われていながら依然としてできないということであります。これはやはり何といっても環境庁、国土庁あたりが緊密に連絡をしながらその合意を得なければなかなかできないと思うのですけれども、今後の見通しはいかがでしょうか、長官
  227. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、各省にまたがる問題でございまして、直ちにというわけにはまいりまいりませんが、関係省庁とも十分話し合いながら、また官房長官の御協力をいただきながら、ひとつ結論を出すように最大限の努力をいたしてまいりたいと思います。
  228. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 各省庁にまたがるだけにその重要性は大きいということになりますね。ですから、ひとつ長官、主導権を握って、できるだけ早期に水法、水の基本法の制定を実現できるように御努力をいただきたいわけであります。  それから、もう一つは飛行場の問題であります。  飛行場の騒音の問題で、いわゆるうるささ指数、WECPNL、この指数によって空港の騒音に対する対処が行われておるようであります。しかし、これは御承知のように、航空機騒音が地域に与える総量をこの指数によってあらわしておるわけですから、瞬間的な騒音は相当に大きなものが出てもこの指数には、あらわれてはくるのですけれどもあらわれ方が非常に弱いわけですね、総合的なものですから。  そういうことで、これの具体的な例を申し上げますと成田空港の問題でありますが、開港以来この地域は騒音について多くの問題を提起いたしておるわけです。運輸省あるいは公団においても努力はされておるようでありますけれども、まだ住民を納得させることができない面が多々あります。  その一つには、WECPNLという指数によって対処をされております関係で、騒音コンターが必ずしも住民の実感と一致をしないという面があるわけであります。確かに騒音コンターが描かれまして、その中は民家の防音が実施をされる。さらに九十以上については買収というような施策はとられておりますけれども、このWECPNLの指数にあらわれるものと実際に住民が耳で感ずる感覚とにかなりずれがあるということですね。ですから、環境庁としても、これはひとつ十分御配慮をいただいて、この指数を採用されるということは、これは万国、多くの国で採用されておるようでありますけれども、これだけではなくて、瞬間的に発生する高音についても配意をするということがなければ、住民としてはたまらないという声が強いわけでありますが、その点についていかがですか。
  229. 三浦大助

    ○三浦政府委員 航空機騒音の環境基準、騒音指数、非常に長いものですから、WEという省略名で申し上げたいと思いますが、先生御承知のように、四十八年の十二月に環境庁から告示いたしました航空機騒音の環境基準につきましては、WEの七十あるいは七十五、これを環境基準の値としておるわけでございまして、いわゆる航空機騒音防止法におきましても、WEで算定した値の大きさによって周辺対策を行ってきておるというのが実情でございます。  このWEという騒音指数につきましては、これは航空機の騒音の特徴から取り入れられたものでございまして、国際民間航空機関において提案されました国際的な評価の単位でございます。これを中央公害対策審議会で御審議いただいて、答申として採用されたということでございまして、御存じのようにWEというのは、一機ごとのピークレベルのパワー平均を基本として、これに時間帯ごとの機数を加味して算定しておるわけでございまして、ピークレベルの要素も反映されているものと私ども考えておるわけでございまして、環境庁といたしましても、環境基準の達成、維持に向けて対策が進められるとともに、低騒音機の導入とかあるいは騒音低減運航方式の採用によりまして、一機ごとのピークレベルの大きさが低減されるような対策を積極的に進めていくようにということで関係機関にお願いをしておるところでございます。
  230. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それはわかるのですよ。しかし、実際に住民の立場からすれば、それは瞬間的な高音についてはここへあらわれておりますけれども、そのままはあらわれない。調整された形でしかあらわれないわけですから、そういう点についての環境維持の点からの考慮がなされなければならないのではないかと思うのです。これ一点張りでは困るというのが事実上住民の声ですけれども、その点について考慮されるかどうかということです。
  231. 三浦大助

    ○三浦政府委員 時間帯ごとの機数を考慮しておりますので、たとえば成田空港におきますと、WEとピーク値というのはだんだん近づいてきておるのではないかというふうに私ども考えておるところでございます。と申しますのは、便数が多くなればなるほどだんだん近づいてくる、こういうことでございますので、成田空港はWEとピーク値が近づいてきておるのではないだろうかというふうに私ども見ておるわけでございます。
  232. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 いや、それは傾向としてはそういう傾向はあるかもしれませんけれども、実際に地元の測定値や何かを見ると、必ずしもそうではないわけですよ。  それともう一つは、これは運輸省の方かもしれませんが、航路の偏向があるということですね。これは両側へ五百メートルぐらいずつ偏る場合があるそうですから、幅が一キロぐらい偏るのですね。そうしますと、それをもとにして、直進をするという仮定のもとに騒音コンターがつくられておるわけですから、両側へ五百メートルずつ振れますと、コンターもこれは当然再検討していただかなければまずいわけですが、その点は運輸省、いかがですか。
  233. 多田稔

    ○多田説明員 飛行コースのずれの問題につきましては、これまでもいろいろ地元からそのような御指摘がございまして、私ども関係の航空会社等に対しまして飛行コースを守るようにいろいろ指導してまいりました。最近では、地元の方々からも、かなり改善されたというお話を承っておる次第でございますが、今後ともさらに努力をしてみたいと考えております。  それで、騒音対策を行う上につきまして、お話のような騒音の実態調査をすることが基本であると考えておりますが、これまでの何回かの調査、かなり数多く空港公団あるいは地元市町村において行っておりますが、その調査結果によりましてはまだ、開港前あるいはその後も騒音コンターの改善を行っておりますが、その当時において予測しておりました騒音コンターよりも乖離した大きな騒音という値は出ておりません。もしも、御指摘のように騒音区域を判断する上での予測値よりも大きな騒音が実際問題として出ました場合には騒音区域の是正を行いたいと思っておりますけれども、現在の段階ではそういう事実はございません。
  234. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 時間が参りましたので、以上で終わりますけれども、騒音コンター及び騒音の測定値あるいはWEの適用については、今後ともさらに検討いただいて、住民の納得のいくような対処の方法をぜひひとつお願いしたいと思います。  終わります。
  235. 高田富之

    高田委員長 林孝矩君。
  236. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最初に、先ほど同僚委員から議論のございましたアセス法案に関しまして、長官の答弁にもございましたように四月二十日をめどにということでございましたけれども、この法案が過去の例からいって何回となく流産してきた、そういう経緯がございますので、重ねて確認の意味でお伺いしておきたいと思うのです。  今月の一日の決算委員会で、この問題に関する官房長官に対しての質疑を行いました。そのときに官房長官は、一刻も早く国会へ提出するために、今週中、いまから言えば先週ですね、先週中に政府案を作成すべく督励している旨の答弁があったわけでございます。その官房長官の答弁からすれば、現時点においては作成がおくれているわけでございます。そういう作業がおくれているという事実。内容の点について六項目にわたっての詰めが急がれているという状況については先ほど伺ったわけでありますが、いずれにしても、国会には法案提出のタイムリミットというのがございますから、今国会でこの法案を提出し、審議をし、採決するという手続からすれば、長官として、タイムリミットに対して、十分それに間に合わせるという自信がおありなのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  237. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 先生御指摘のとおり、この法案に対しましては環境庁歴代の長官も、何とかして国会に提出をしたいということで大変な御努力をなされてまいったわけでございますが、今日までついにその日を見るに至らなかったようなわけでございます。昨年、私が暮れに長官を拝命いたしまして、上村前長官からの引き継ぎ事項の中でも冒頭に取り上げられた問題でもございます。また、昨年の四月の中公審の答申におきましても、速やかに法制度化をすべきであるという答申もいただいておりますし、また、全国地方自治体八〇%以上からも、国において法制度化すべきであるという御要請も受けておりますし、さきの予算修正における自民、社公民三党との話し合い等々もこれあり、私といたしましては、一日も早く、何といたしましても国会に法案を提出させていただきますように、ただいま最大限の努力をいたしておる次第であります。
  238. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それで、一日にそういう官房長官の答弁があって、四日に自民党の部会が行われた、その席においても、やはり非常に議論が百出したといいますか、反対という立場の議論もこれあり、ここのところは、やはりどれだけリーダーシップを発揮するかという長官立場からして、相当の決意を持って臨まないと、過去の例に見るような結果に終わりはしないかという心配があるわけでございますから、その点の長官の決意を伺っておきたいと思います。
  239. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 御案内のとおり、わが国におきましては初めてつくるような法律でございまして、さようなわけで、従来、各省庁間の話し合いも入り口でストップしまして、ついにその話し合いがなされなかったのでございますが、今回は、おかげさまで各省庁間におきましてもテーブルに着いて、各省庁間の局長会議もすでに十二回も開かれまして、その内容についての詰めが行われたようなわけでございます。おかげさまで、去る三月二十八日に正式に閣議において要綱が決定をされまして、現在その原案づくりに各省庁間で前向きで話し合いがなされ、またこれに合わせて、法制局におきましても事前審査と申しましょうか、法的な面についての検討がなされておるようなわけでございますが、先般、四日に自民党の環境部会におきましても、今日までの経緯について私も御報告を申し上げたのでございますが、わが自由民主党は非常に幅の広い政党でございまして、いろいろ反対、賛成ございますが、原案ができましたならば、何といたしましても党の了承をいただきまして国会へ提出させていただきますように、私といたしましては最大限の努力をいたしてまいりたい、かように決意を新たにいたしておる次第でございます。
  240. 林孝矩

    ○林(孝)委員 じゃ、二十日までは大丈夫ですか。
  241. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 二十日ごろまでには何としても出させていただきたいということで、幸い、官房長官も非常に精力的に、熱心に間に入っていろいろ調整等をしていただいておりますものですから、関係閣僚の御協力もいただきまして、二十日までには何とか出させていただきますように、重ねて最大限の努力をいたしますことをお誓い申し上げます。
  242. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、次に燐対策の問題について長官に伺いますが、環境庁が先月の二十四日、富栄養化対策というものを打ち出されたわけです。今日まで環境庁として、この富栄養化対策に対してどのように取り組んでこられたか、また、今回の対策の位置づけをどう考えられておるか。さらに、この対策を年次計画として行うつもりなのかどうか。そうだとすれば、目標年次はいつなのか。また、予算措置の計画等について説明願いたいと思います。
  243. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答えさせていただきますが、富栄養化対策に取り組んでいく決意を冒頭私から申し上げまして、今日まで取り組んでまいりましたことにつきましては、担当局長の方から御説明をさせていただきたいと思います。  実は私、昨年の暮れに長官を拝命いたしまして、霞ケ浦、それからまた続いて東京湾を視察いたしまして、ちょうど時期的に冬場でございましたものですから、アオコだとか赤潮だとかをついに見ることができなかったのでございますが、私は近いうち、改めて再度訪問しようと思っておりますが、現地でいろいろ実情を伺ったりいたしまして、この富栄養化防止対策の重要性というものを深く痛感をいたした次第でございます。環境庁といたしましては、この富栄養化防止のために従来からいろいろ検討会を設けるとか行ってまいっておるような次第でございますが、この海域につきましては、特に瀬戸内海においては瀬戸内海環境保全特別措置法に基づきまして、富栄養化によるところの被害防止のための燐削減対策を行ってまいっております。それからまた、東京湾、伊勢湾におきましても富栄養塩類削減のための具体的な検討をただいま行っておるところでございます。それからまた、湖沼につきましては、私申し上げましたとおり五十四年の十二月に専門家から成る窒素、燐等水質目標検討会を設けまして、窒素、燐等の水質目標についての検討を進めておるところでございます。環境庁といたしまして、なお一層これらの閉鎖性水域における総合的な富栄養化防止対策を図っていくために、先生御指摘のとおり、先月二十四日に水質目標の設定、湖沼対策と海域対策の推進、各種の発生源対策、下水道整備等の要請などを柱とした総合的な富栄養化防止対策に関する環境庁としての基本的な考えを取りまとめたような次第であります。
  244. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 ただいま長官の御答弁に若干補足をさせていただきます。  富栄養化防止の対策につきまして、先般考え方を発表したわけでございますが、そこで、これを実施する上におきまして、私どもも幾つかの年次的なめども考えておるわけでございます。  そこで、まず湖沼の燐につきまして水質目標を決めたいということで検討会を開催をしているわけでございますが、これにつきましては、ことしの夏をめどに一定の結論を出したいというように考えておるわけでございまして、それが終わりましたら、海域における燐の水質目標について検討を進めたいというように考えておるわけでございます。そういうものも踏まえまして、燐につきましての環境基準の検討を進めてまいりたいというように思うわけでございます。  それから、湖沼に関連をいたしまして、やはり湖沼の汚濁を防止するために、各湖沼の特性に応じてその水質の管理のための指針、いわば診断書をつくろうじゃないかということを言っておるわけでございますが、これにつきましては、本年度から約四カ年計画で進めてまいりたいというように考えておるわけでございます。  それから琵琶湖につきましては、五十六年度をめどにCODにかかります総量規制の導入を検討してまいりたい。また、瀬戸内海は今年度から燐の削減対策を実施しているわけでございますが、これは五年計画で、五十九年を目標に一応の削減の方針を決めておるわけでございます。伊勢湾、東京湾につきましても、本年度早々に具体的な検討に着手するということでございまして、そういう基本的な考え方のもとに関係各省、自治体と連絡を密にしながら対策の充実を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  245. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この燐の規制として合成洗剤対策が挙げられているわけでありますが、燐を含む洗剤、これは現在国内でどれだけ使用されていると把握されておりますか。それから、この製品の抑制についての具体的な計画をお伺いします。
  246. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 合成洗剤の使用量でございますが、使用量につきましての統計はないわけでございまして、それにかわるというか、出荷量で見ますと、五十二年に四十七万八千トン、五十三年に五十万八千トン、五十四年に五十八万八千トンと漸次増加傾向をたどっておるわけでございます。  そこで、低燐化なり無燐洗剤の今後の見通しでございますけれども、御承知のように、従来、合成洗剤の中の燐の含有率は二〇%以上あったわけでございますが、五十年の一月から一五%以下、その後一二%以下、現在は一〇%以下というように漸次低燐化が進められておるわけでございます。私ども、富栄養化防止の観点から、環境へ出ます燐を削減をしていくという考え方のもとに、より一層の低燐化あるいは無燐化等につきましていろいろ要請をいたしておるわけでございまして、無燐の製品につきましても、すでに一部は市販されておるわけでございます。今後とも無燐製品の開発等につきまして、さらに関係方面に強く要請をしてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  247. 林孝矩

    ○林(孝)委員 たとえば大手洗剤メーカー、こういうところでは無燐洗剤を、一部市販されているといういまの話がございましたように、発売する動きが事実ございます。この原料となるゼオライトなどの珪酸アルミ物質、これは非常に入手困難であると言われておりますけれども、それが事実であれば、当然無燐の洗剤の普及というのも、その結果として疑問視されてくるわけでございます。その点について、事実こういう原料が入手困難で、将来の見通しもそうした面で普及困難ということになるのかどうか、それはいかがですか。
  248. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 環境庁立場から的確な御答弁はなかなかしにくいわけでございますけれども、いずれにいたしましても、無燐洗剤の原料の一つに考えられておりますゼオライト等につきましても、急激な増加につきましてはいろいろネックはあるのであろうというふうに思うのでございまして、やはり漸次ふやしていく、そういう生産体制を整えていくということは可能であろうというふうに思うわけでございます。私ども、その辺の詰めはなお通産省ともいろいろしなければならぬというように考えておるわけでございます。
  249. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これは早急に通産省との詰めをやっていただきたい。  それと同時に、一番大事なことは、合成洗剤が無燐である、こういう状態になったとしても人間の健康に悪影響を及ぼすという指摘もあるわけです。この無燐の合成洗剤が人間の健康に影響を及ぼすかどうかということについての環境庁としての情勢分析がなされているかどうか。低燐化、無燐化の洗剤というものを方向性として打ち出されているわけですね。ですから、打ち出した環境庁が、いま申し上げましたような確かな見通し、それから人間の健康に与える影響、こういうものに対しても的確なる判断というか分析をされないと、これは非常に片手落ちの状態になりますから、私はそれを指摘するわけでありますが、それはどうなっておりますか。
  250. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 私ども低燐化、無燐化ということを要請をいたしておるわけでございますが、低燐化、無燐化は、現在合成洗剤に含まれております燐をほかのものに代替をしていこうということでございまして、その代替が、ただいま申し上げましたゼオライトであるとかそういうものでございまして、ゼオライトそのものは人体に対する悪い面の影響はないというふうに私ども考えておるわけでございます。  世上言われております合成洗剤に対します健康影響の問題は、燐をほかのものに置きかえるということではなくて、むしろ界面活性剤の問題であろうかと思います。それにつきましては、厚生省の方におきましていろいろ御検討もされておりますし、また検討されるということになっておりますので、私どもも厚生省の方と十分連絡を密にしながら進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  251. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、現段階では、厚生省とそうした人体に与える影響等についての協議は行われていないわけでございますか。
  252. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 先ほど申し上げましたように、無燐化、低燐化に伴って、そのことが新たに問題になるということではないと私ども思っておるわけでございます。世上言われておりますのは、合成洗剤一般の問題でございますので、私ども今回の無燐化、低燐化に伴って、そのことが特に問題になるという認識には立っていないわけでございます。  私ども現在の合成洗剤につきましても、厚生省の方の調査の結論等から見まして、通常の使用では特に問題はないというように言われておるわけでございまして、そう思っておるわけでございますけれども、なおいろいろ疑問がございますので、厚生省の方と連絡をとりながら、その辺はなお検討を進めてまいりたいと思うわけでございます。
  253. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私はこの機会をとらえて、環境庁としての問題意識というか受けとめ方として、この際、合成洗剤の有害性について、他省庁とも協議して、科学的なデータを踏まえて、それで環境庁としての役割りを果たしていく、それが国民の健康を守るということに通ずれば、環境庁としてはすばらしいことをやったということになるわけでありますから、そこまで積極的に取り組むべきではないかという意味を含めて申し上げておるわけであります。そうでなければ、この辺は赤潮であるとか、あるいは水の透明度がだんだんなくなってきた、あるいはダムなどの場合に、これは上水いわゆる飲料水に使われる水源地がそういう状態であったり、いろいろな形で合成洗剤が与えている影響というものは非常に大きいと今日まで指摘されてきておるわけです。ですから、われわれが飲む水、それから海だとかあるいは湖だとか河川、そうしたところの水質の問題に関しましては、やはり環境庁が各省庁に積極的に働きかけて、健康を守るのだ、環境を守るのだ、そういう姿勢で積極的に取り組んでいかなければならないのじゃないか、こういうことでいま申し上げたわけです。ですから、この無燐化、低燐化ということ、これがいまの時点の問題だから、健康ということに関してはこれはもう前々からの問題だから、いま始まったことではない、こういう受けとめ方ではなしに、この機会をとらえてそういう姿勢を持たれたらいかがか。どうでしょうか。
  254. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 厚生省の方とよく連絡をとりながら対処してまいりたいと考えております。
  255. 林孝矩

    ○林(孝)委員 環境庁長官はいかがですか。
  256. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 今回富栄養化の対策の一環として取り上げたわけでございますが、人間の健康にかかわる問題でございますので、厚生省とも十分連絡をとりながら対処してまいりたいと思います。
  257. 林孝矩

    ○林(孝)委員 消費者に選ぶ権利があるから、どういう洗剤を使うかというフリーハンドが与えられている。ただ、一つの洗剤が、厚生省だとかあるいは環境庁が協議して、こういう規格に合ったものであるべきだという話になっていかなければうそだと思うのです。そうなっていった場合に、消費者で選びなさいということも一つですが、今度はメーカー側に、こういう規格に反する、あるいはこういう基準を超える洗剤についてはこれは規格違反であるとか、物差しをつくり出していくということ、これが大事だと思うのですが、そういう考え方はお持ちになっておりますか。
  258. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 現在、合成洗剤につきまして、通産省の所管になるわけでございますが、日本工業規格におきまして燐酸塩の含有率なりあるいは生分解性等につきまして規定が置かれておるわけでございます。さらに家庭用品品質表示法によりまして、洗剤の容器に界面活性剤の名称であるとかあるいは燐酸塩の含有率等の表示が義務づけられておるわけでございます。したがいまして、富栄養化防止のために消費者がいろいろ選択をされるという場合にこれらの規格が十分活用いただけるものと考えておるわけでございます。
  259. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、現在の規格、この三月二十四日の対策が打ち出されてからこれから先に目を向けての判断と、それから今日までの規格というものが消費者に非常に参考になっているという考え方と二つあると思うのです。そうすると、現在までの状態でずっと行くという考え方ですか、それとも、三月二十四日にこういう対策を打ち出した、これからさらにその内容について分析をして新たな規格というものを立てて対処していくという考え方なのか、その辺はいかがですか。
  260. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 これも通産の所管になりますので申し上げるのが適当かどうかあれでございますけれども、今後新しい製品が開発された段階においてこの規格等をどう変えていくか、あるいは改善をしていくかという問題は、将来の課題としてはあるのだろうと思いますけれども、現在において直ちにこれを変えなければならぬというふうには、私どももいま考えてはいないわけでございます。
  261. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、将来はその可能性があるけれども現時点ではそういう判断には立たない。それで私は、所管が厚生省の所管の問題もあり、また通産省の所管の問題もこれあり、その所管所管でこうした問題に関しては結論を出していかなければならない問題だと思いますが、環境庁立場としてそうした通産省に対する提言あるいは厚生省に対する提言、こういうものは大いにやるべきだという考え方に立っておるわけです。ですから、今回の三月二十四日に打ち出された対策が結果的に大きな効果を呼び起こすということに対して期待もしているわけです。それだけに、通産省に対してもあるいは厚生省に対しても、いま指摘してきました問題に関してぜひとも環境庁として提言をして取り組んでいってもらいたい、これは要望をする次第でございます。と同時に、富栄養化対策、これは非常に大きな社会的課題に対する対策ですから、閣議決定の内容といいますか、そう持っていくべきではないか。ということは、これだけの関係省庁があって連絡を密にしてやっていかなければならないということであればあるほど、これは政府として閣議決定としての決定事項、こういうことで処理をすべき内容の問題ではないか、このように思いますが、環境庁長官いかがでしょうか。
  262. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 この問題につきましては、私、先般の閣議におきまして特に発言を求めまして、各閣僚に対しまして強く要請をいたしたような次第でございます。今後関係各省庁ともよく連絡を密にしながら、先生の御意見も踏まえて前向きで対処してまいりたい、かように考えます。
  263. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私申し上げているのは、これは総合対策を立てなければいかぬという意味で、環境庁長官として閣議意見を述べる、この意見がきっかけになって総合対策として政府の中に関係省庁として同じ立場で、たとえば環境庁だけが一生懸命提言したりしてそれを通産省がただ受けてそれに対してチェックするとかあるいは物を言うとかあるいはそれに対して取り組むとか、そういう関係ではなしに、総合対策を立てなければいかぬ問題だと私は思うのです。ですから、関係省庁が一体となって取り組んでいくという意味での閣議決定、そして実際稼働していくような組織をつくってやっていくぐらいの取り組みが必要な問題ではないか、こう思います。
  264. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 この燐の問題につきまして大変御理解ある、力強い御意見をいただきましてまことにありがとうございます。富栄養化対策の推進に当たりましては、関係省庁で構成する富栄養化対策連絡会議等がございますので、これらを通じまして今後強力に推進をしてまいりたいと考えております。
  265. 林孝矩

    ○林(孝)委員 しっかりやっていただきたいと思います。  その次に、公害防止事業団の事業に関してお伺いいたします。  この公害防止事業団の業務について環境庁長官の評価、またどういう姿勢で指導、監督をされておりますか。
  266. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生御承知のように、公害防止事業団は、共同の公害防止施設やまた共同工場等の建設、譲渡業務、それからまた、大気汚染や水質汚濁等の公害防止施設に対する融資業務を行っておりまして、公害防止上大変大きな役割りを果たして今日までまいっておる次第でございます。今後とも、中小零細企業等における公害の防止、それからまた、一九八〇年代の課題である都市公害の防止を図る上でも、事業団の役割りは一層重要なものである、私はかように考えておる次第でございます。  また一方、事業団といたしましては、かかる業務の遂行に当たりましては、債権の保全に適正を期する等、事業体といたしましても健全な運営を図ることが肝要である、かように私は考えています。環境庁といたしましては、かかる事業団の果たすべき役割りを認識しつつ、事業体としての健全な運営が図られますように、今後厳正に指導をいたしてまいりたい、かように考えています。
  267. 林孝矩

    ○林(孝)委員 事業団の貸付業務における五十二年度、五十三年度、五十四年度の貸付実行件数、金額、また五十四年度までの実績累計について説明願いたいと思います。
  268. 城戸謙次

    ○城戸参考人 ただいまの数字でございますが、五十二年度におきます貸付業務の実績でございますが、二百二十一件、三百七十二億八千百五十万円、五十二年度は百二十四件、百六十七億八千四百七十万円、また五十四年度は百十二件、二百三十五億二千百十万円となっております。  また、四十年度から五十四年度までの累計でございますが、三千百二十二件、五千百七十三億八千三百二十万円となっております。  なお、残高でございますが、五十四年度末残高は現在整理中で出ておりませんが、五十三年度末を申し上げますと二千五百四十三件二千六百五十六億五千三十二万六千円となっております。
  269. 林孝矩

    ○林(孝)委員 貸付金が不正に流用されたり、あるいは目的外に使用されたり、こういうことがないように十分な審査を行う、これはもう融資の基本であると私は思います。不正流用等の事例のチェック、これを検査院は行っておりますかどうか、お答え願いたいと思います。
  270. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 お尋ねの件につきましては、かつて私ども昭和四十六年度決算検査報告におきまして、是正、改善の意見を表示したところでございます。その後も折りに触れ、貸付金が適正に使用されておるかというような見地で見ておりますが、その後は事業団の指導よろしきを得ましたか、私どもといたしましては検査いたしました範囲内ではそのような事態は把握いたしてないと聞いております。
  271. 林孝矩

    ○林(孝)委員 問題指摘の内容を簡単に説明していただきたいと思います。
  272. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 御説明申し上げます。  公害防止事業団では、事業団法に基づきまして、ばい煙処理施設、汚水処理施設等の公害防止施設を設置しようとする者に対しまして、これらの施設の設置に必要な資金を貸し付けておるわけでございますが、このうち百三十四件、百十四億四千三百万円につきまして貸し付けの適否、貸付対象施設の設置状況等を四十七年に検査いたしましたところ、貸付金の一部が貸し付けの対象とならない施設の設置に使用されておりましたり、貸付対象施設が貸付対象外の用途に転用されておりましたり、貸付対象施設が計画事業費より少額で設置されておりましたりして、繰り上げ償還を要すると認められるものが見受けられましたほか、貸付金が貸付先の資金の需要に応じて交付されていないために、貸付目的以外の用途に一時使用されているなどの事例も見受けられたものでございまして、受託金融機関に対しまして、貸し付けに当たっての審査及び貸付後における貸付金の使用状況の把握を十分行うよう指示いたしますとともに、事業団におきましても、受託金融機関及び貸付先に対して適時、適切な監査、指導を行い、貸し付けの適正を期する要があると認められましたので、会計検査院法第三十四条の規定により処置を要求したものでございます。
  273. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その後、事業団が内部の監査を充実させたということで問題がないというような先ほどの説明でございましたけれども昭和五十年、五十一年において不正流用されたという事件がその後勃発しておるわけですね。これについてはどういう内容のものであったか説明願えますか。
  274. 城戸謙次

    ○城戸参考人 御指摘の点は、京阪金属工業に対します貸し付けの件であろうかと思いますが、公害防止事業団は京都信用金庫を代理店としまして、京阪金属工業に対しましてアルマイト製造工程からの廃水処理施設等の設置資金としまして、五十年三月三十一日に八千万円を、それから着色工程からの廃水処理施設及び騒音防止施設の資金としまして、五十一年十二月二十七日に四千四百万円の貸付契約を締結しまして、代理店はこの貸付契約に基づく資金の払い出しにつきましては、工事契約書、領収書等をチェックした上で行っております。また、融資対象施設は昭和五十一年八月二日に完成していることを実地に確認しているわけでございます。  ところが、その後、京阪金属工業の工事請負契約書等が実は虚偽であったということで、五十三年の十月二十二日に京都地検は京阪金属工業の社長を詐欺罪で起訴しております。  当事業団では、事実関係確認のために、貸付先、工事業者等から事情聴取いたしましたが、工事関係の書類が地検に押収されているということ等によりまして正確な実態把握はなし得ない状況にあったわけでございます。  この間、京阪金属工業は、信用不安に陥りまして、五十三年十月三十日、地裁に商法によります会社整理の申し立てをして倒産いたしましたため、事業団は、十一月二日に金銭消費貸借契約の特約条項に基づきまして、貸付金の全額繰り上げ償還を請求いたしました。  その後、事業団は、代理店であります京都信用金庫と交渉しまして、五十四年三月十五日、貸付金の残額九千四百七十二万円につき代位弁済を受けたわけでございます。  以上が経緯でございます。
  275. 林孝矩

    ○林(孝)委員 こういう問題がなぜ起こったかということに対して、事業団はどういう受けとめ方をされておりますか。具体的に……。
  276. 城戸謙次

    ○城戸参考人 先ほど先生がおっしゃいましたが、一つは融資の審査の問題でございます。もう一つは、代理店及び貸付先に対します監査の問題だと思います。この二つの点を充実していくことによってこういう問題が相当程度避け得る。ただ、それでも詐欺なんかで避け得ないケースもあろうかと思いますが、相当程度は避け得ると思っております。  その点、若干敷衍してお話し申し上げますと、審査に当たりましては、これは事業団と代理店と両方で行っております。まず借入申し込みを受けました代理店は、事業団の定めます審査要領に基づきまして、一定の事項につきまして審査をいたしております。  公害の発生状況、貸付対象となります施設の公害防止効果が適切かどうか、それから借入申込者の償還能力、担保の有無、工事金額の内容、支払い予定、こういうことでございます。この結果、その貸し付けが適当であると認めた場合には貸付協議書等の資料を添付しまして事業団に提出することになっております。事業団は代理店から提出された書類をもとに、代理店の審査結果が妥当であるかどうかさらに審査を行いまして、妥当と認めた場合には貸付決定する、こういうことになっておりまして、私どもこういうシステムを適正に運用することによりまして相当程度が押さえられる、こう考えております。  事後の問題でございますが、事業団は、融資実行後に資金が適切に使用されるかどうかにつきまして、監査計画によりまして代理店、貸付先に対して立入監査を行い、次のような事項につきまして確認をいたしております。貸付対象施設が借り入れ申し込み時に計画されたとおり建設され、所期の効果を上げているかどうか、資金が確実に目的どおり使用されたかどうか、それから債権保全措置が適当に行われているかどうか、こういうことでございます。  実は事業団では、先ほどの措置要求の後を受けましたいろいろな措置の一環としまして、五十二年十一月一日から総務部に監査室を発足させて専任の者にこういう監査の業務をやらせて、実績もおいおい上がって件数もふえてまいっておる、こういう状況でございます。
  277. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから事業団は、五十二年に産業廃棄物の処理施設に関しての問題が起こった組合があったわけでありますが、その事件に関しては把握されておりますか。
  278. 城戸謙次

    ○城戸参考人 ただいま御指摘になりましたのは融資の案件でなしに、私どもの方としましては造成建設業務の案件だと思いますので、大阪環境事業協同組合の申し込みに対しまして公害防止施設をつくった件だと思います。そういうことでお話し申し上げますが、この施設は、五十一年二月十六日付で、当時は名前は違っておりまして、大阪浄化タンク協同組合から申し込みを受けまして、三月末に譲渡契約を締結し、建設したものでございまして、五十二年六月二十一日付で事業費総額二億七千四百八十万円で確定契約を結び、組合に引き渡したものでございます。
  279. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この組合の三代目の理事長、産業廃棄物の収集業をやっておったその代表でありますけれども、これは不法投棄を千数百回にわたって繰り返した、こういう事実については把握しておりますか。
  280. 宮城恭一

    ○宮城参考人 無許可の収集等の事実があったことは聞いております。しかし、この問題は組合の理事長としてのことではなくて、自分の会社の仕事——仕事といいますか、利益のためにそういう悪いことをやっておったということでございます。
  281. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この組合の施設譲渡代金の返済、こういうものはどうなっておりますか。
  282. 宮城恭一

    ○宮城参考人 返済状況は、事業費総額が約二億七千四百八十万円でございます。すでに譲渡契約、最初の契約を結んだ際に頭金としまして六千万円はいただいておりました。それを控除しました二億一千四百八十万円を、機械または装置につきましては十年間、その他のものにつきましては二十年間で均等半年賦支払いということで回収することになっております。  その償還状況でございますが、割賦金につきましては、当初二回分、五十三年三月及び九月分ですが、これにつきましては操業開始後日も浅く、ベントナイトの受け入れ量が少ない状況にありましたので、事業団としては償還を猶予する措置をとりました。五十四年三月期以降の割賦金千四百七十九万円、これは延滞いたしております。そういう状況でございます。
  283. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、延滞が千四百七十九万円で、支払い猶予額はどれだけになっておりますか。
  284. 宮城恭一

    ○宮城参考人 猶予額は、元利合計いたしまして約五百二十三万円でございます。
  285. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この譲渡契約の際、担保登記あるいは添え担保というものを取っておったかどうか、その点はいかがですか。
  286. 宮城恭一

    ○宮城参考人 これにつきましては、譲渡契約のときには添え担保の念書を取っております。しかし、これは検査院の御指摘では不完全なものでございますが、添え担保は出しますという書類は取っております。
  287. 林孝矩

    ○林(孝)委員 取引先の信用調査は、この組合との取引の場合、具体的な調査を行ったのでしょうか。
  288. 宮城恭一

    ○宮城参考人 この大阪の組合に対しましては、信用調査でございますか、譲渡契約時におきまして組合並びに組合員の収益状況、資産状況等につきまして所定の書類を提出させましたり、現地で面接調査を行うなど、他の案件と同じように信用調査を実施いたしております。ただし、その結果は必ずしも芳しいものではなかったわけでございます。そういう状態でありましたが、これは共同してベントナイト排水の処理をやる施設を持つわけでございまして、その事業の見通しがうまく進みましたならば、これは返済は十分に行われるというふうに思い、また、当時大阪地方におきましてはベントナイトが不法投棄されまして粉じんが生じ、また下水道が詰まるとかいろいろな公害が発生しました。その公害対策を重視いたしまして実施したわけでございます。
  289. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでこれは、こうした代表者が自分のことだけを考えて真剣に組合経営というものに取り組まない、そういう状態の中で起こった事件だと私は思いますね。そうした同じような事件が発生しないために事業団として現在どういう対策をお考えになっておるか。それからこの債権回収の手だて、これについてはどういう取り組みをされておるか、この二点お聞きします。
  290. 城戸謙次

    ○城戸参考人 組合の責任者が添え担保の提供をせず返済を行わないというような、組合運営に真剣さを欠くきらいがあったということは事業団としてまことに残念に思っておるわけでございます。  なお、昨年理事長も交代しまして、今後、組合運営のあり方をいろいろ考慮中のようでございますので、事業団としては、なお一層の取り組みを望んでいるところでございます。  それで、今後のことでございますが、事業団としては、こういう事例が起こりませんように努めることが肝心であると考えておるわけでございまして、組合の健全な発展のためには、責任者の信用力とともに、特に経営能力、責任感ということが非常に重要であると考えております。したがって契約に当たりましては、信用力について十分調査しますとともに、経営能力とか経営の見通し等についても慎重に審査することとしたいと思っておるわけでございまして、契約後におきましても、組合の経営状況を適宜把握するなど、所要の指導を行ってまいりたい、こう考えているわけでございます。  本件の債権回収につきまして、事業団として今後どうやっていくかということでございますが、現在一番問題になっておりますのは、でき上がり物件、譲渡施設の中で、建物につきましては抵当権設定の登記ができたわけでございますが、土地につきましては所有権移転登記ができません関係で、まだ抵当権設定登記が未了になっておるわけでございます。何としてもこれを速やかに済ませるということが第一だと思うわけでございます。  それから、添え担保の確保及び債権回収につきましても、譲り受け人であります組合側と精力的に交渉を重ねているところでございまして、現在までのところ、組合の経営努力、それから大阪市の協力もございまして、処理量が増大してまいっておるということ。それから、処理手数料の値上げ等の見通し等もございまして、債権回収にとってやや有利な事実も出てきておりまして、このような客観情勢を踏まえながら、組合再建策を慎重に検討の上、改めて納付方法の変更等を行って債権回収を図ってまいりたいと考えているわけであります。
  291. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が制約されておりますので、問題をしぼって最後にお伺いいたしますが、検査院が事業団の建設譲渡業務のうち、中小企業対象のもの百十五件、七百六十九億余円について調査を行った。二十件、百三億円余に相当する債権の保全措置、これが講じられていないことを処置要求事項として昨年十一月に指摘しております。この指摘に対して、事業団はどのような受けとめ方をされて対処されようとしておるか。具体的な改善措置の要求を会計検査院は事業団に対してしているわけでございます。このことに関してお答え願いたい。と同時に、こうした事業団の問題点、私はいま二つの事例を通して指摘いたしましたが、この業務運営が円滑に進むように、環境庁長官として今後どのような行政指導を行っていかれるか、この二点についてお伺いして終わりたいと思います。
  292. 城戸謙次

    ○城戸参考人 会計検査院からそのような措置要求を受けたわけでございまして、私ども、まことに遺憾なことだと思っているわけでございます。したがって、指摘を受けまして後、早速、緊急にその対応策を講じてきたわけでございまして、すでにこれまでにおきましても、添え担保の確保とか譲渡施設の抵当権設定登記等につきまして、御指摘の線に沿うような努力をしてまいったわけでございます。ただ、これは内部規程という形で制定するまでに至りませんでしたが、先月の二十八日の理事会で、建設譲渡細則を定めまして、本年四月一日から実施し、一層の徹底を図ることにいたしておるわけでございます。  なお、指摘を受けました案件二十件につきましても、添え担保が不足しているというもののうち、相当部分につきましては徴収済みもしくは徴収手続を進めておりますし、それから抵当権設定登記が未登記とされた案件につきましても、大半につきまして処理済みでございます。今後こういうような問題が起こりませんよう、造成建設事業もそうでございますし、貸付事業につきましてもさらに努力をしてまいりたい、こう思っております。
  293. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  事業団がこのたび会計検査院から、債権の保全につきまして適切を欠く旨の指摘を受けましたこと、それからまた債権保全上種々の問題があったことにつきましては、監督官庁といたしましてまことに遺憾に存ずる次第でございます。  先ほど来質疑のございました添え担保の確保等の債権保全につきましては、あらかじめ十分調査をし、厳正な審査を行うこと、事前に所要の措置を講ずることが重要であろうかと、かように私は考えておる次第でございます。  環境庁といたしましては、今後とも、中小零細企業の公害防止等の事業団の任務を念頭に置きつつ、事業団が債権保全に万全を期すよう、厳正に指導いたしてまいりたい、かように考えております。実は私、ことしの一月九日に、公害防止事業団が行いました横浜とそれから羽田の沖合いにおける建設譲渡事業現場を視察いたしまして、零細企業と申しましょうか、中小企業の皆さん方から、職場環境が非常によくなり工場も近代化されたということで、挙げて喜ばれまして、私も非常に胸を打たれたわけでございますが、今後、中小企業の公害防止や都市公害の防止のために、公害防止事業団が果たすべき役割りの重要性を深く痛感をいたした次第でありますが、先ほど来御論議のございましたような問題が起こらないように十分監督しながら、事業団の育成にも力を入れてまいりたい、かように考えております。
  294. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  295. 高田富之

    高田委員長 岩佐恵美君。
  296. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 先ほども論議がありましたけれども環境庁の三月二十四日付の、燐を含んだ合成洗剤の使用についての本庁、出先機関など全施設での使用禁止、そしてまた、他の二十三省庁に対しても協力を要請する、こういう措置について、私どもは大変評価をすべきだというふうに思っているわけでございますけれども、先ほどの論議の中で、湖沼あるいは港について燐の調査をするというようなお話がありましたけれども、たとえば、七五年に、滋賀県が独自に琵琶湖の実態調査、「リンの負荷発生量の部門別比率」というような調査資料を出しております。これによると、合成洗剤の比率というのは一八・二%、これは、工場排水二九・三%、それから屎尿一九%に続いて大きな比率になっているわけでございますけれども、こうした形での調査を行われるのかどうか、それからその際に、あわせて窒素も行うのかどうか、その点具体的にお答えをいただきたいと思います。
  297. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 富栄養化に関連をいたしまして、主な閉鎖性水域におきます燐、窒素の発生源別の負荷割合と申しましょうか、そういうものの調査を行っておるわけでございます。現在進行中の段階でございますけれども。  そこで、琵琶湖につきましては先ほどお話しのようなことがあったわけでございますが、瀬戸内海等につきましてはすでに行っておりまして、瀬戸内海につきましては、本年度から環境庁が方針を示しまして、各県段階で行政指導によって燐の削減を図っていくという措置がとられているわけでございまして、東京湾、伊勢湾等につきましても過去のデータがございますけれども、若干古くなっておりますので、新しいデータを関係県の協力を得ながら調査を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  298. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この調査については、そうすると大体ここ一年ぐらいのうちに終わる、そういうことでございますか。
  299. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 大体私どももそのように考えております。過去にもいろいろございますので、そういう調査もさらに分析をし、新しい要因も取り入れて、より完全なものにしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  300. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 全国の自治体で、合成洗剤の燐追放についていろいろな措置をとっていることが報道されておりますけれども、この点について、措置状況別に大体どういうふうになっているか、お答えをいただきたいと思います。
  301. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 全国の各自治体におきます燐を中心にいたします対策概要でございますけれども、都道府県に限定させていただきたいと思いますけれども、私どもで現在時点でつかんでおりますのは、三十三都道府県におきまして何らかの対策を実施をいたしておるということでございまして、その中で琵琶湖につきましては、滋賀県につきましては、御承知のように県条例によりまして燐の使用禁止をやっておるわけでございますが、その他の府県におきましては、若干地域によって相違はございますが、ごく概括的に申し上げますと、府県等の施設におきまして燐を含む合成洗剤の使用の自粛等の措置が行われているところが多いようでございます。
  302. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 長官にお伺いをしたいと思いますけれども、このように三十三都道府県で何らかの措置をとるというような全国的な大きな動きになってきているわけですけれども、やはり国としても何らかこういう措置に対して統一的に指導していかれる、そういう必要がもう出てきているのではないかというふうに思うわけです。とりわけ閉鎖性水域、琵琶湖のようなところについては、滋賀県は条例をつくっているわけですが、私は、芦ノ湖などについても、ああいうところもずいぶん汚れているという話を聞きますし、こういう閉鎖性水域の規制ということも具体的にしていかなければならない、そういうような考えを持っているわけですけれども、その点、いかがでございましょうか。
  303. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  地方自治体に対しましては、先生御指摘になられましたどおり、現在すでに行われておりまする瀬戸内海関係府県の連絡会議、また、近く設置を予定しておりまする東京湾の関係都県との連絡会議の場を通じまして、この富栄養化対策推進のための指導を行ってまいる予定に相なっておる次第でございますが、他の閉鎖性水域を有する地方自治体につきましても、必要に応じまして、同様の連絡の場を設けまして所要の指導を行ってまいりたいと考えております。さらに民間に対しましても、チラシ等をつくりまして配布したらどうかということで、ただいま検討いたしております。
  304. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 通産省にもきょうお越しいただいているので伺いたいと思いますけれども、家庭用品品質表示法、そしてJIS規格でもって、合成洗剤のいわゆる燐を含むいろいろな規格があるわけでございますけれども、今回の富栄養化の問題がこういうふうに大きくなっている中で、一体通産省として、これら品質表示法やあるいはJIS規格を具体的に変えていく、そういう予定があるかどうか。また、そういう場合には何年ぐらいの間に検討していく、そんな見通しを持っておられるのかどうか、その点をお答えをいただきたいと思います。
  305. 大高英男

    ○大高説明員 お答え申し上げます。  通産省におきましては、従来から消費者の利便を損なわない範囲内で燐の低燐化という方向で業界を指導してまいっておるところでございます。お話にございました、家庭用品品質表示法は、その製品の品質を表示することによって消費者の利便を図る、こういうことでございますし、また、JIS規格につきましては、生産者、ユーザーあるいは中立者、そういった方々が集まりまして、この品質を検討しておる場がございます。御指摘のようなことにつきましては、そういったような場で検討されることかと存じます。
  306. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 何か通産省は、実際いま燐の含有が一二%という規格になっているのですか、それは実際自主規制では一〇%になっている。しかし、それ以下に落とすのはなかなか大変なんだ、あるいは無燐ということについては非常に厳しいんだというようなこともあるようでございますけれども、その点、ぜひ積極的に低燐、あるいは低燐というか無燐の方向、そういうことに努力をしていただきたいというふうに思うわけですが、さらに具体的にその点についてはいかがでしょうか。
  307. 大高英男

    ○大高説明員 現在、お話のございましたように、業界の自主規制におきまして一〇%以下ということで生産をしておるわけでございますけれども、この富栄養化の問題の、こういった最近の状況を踏まえまして、燐の一層の低減化につきまして業界に指導していきたいと考えております。この低燐化のためにはいろいろな技術開発が必要かと思いますけれども、現在業界自体が自主的に技術開発を進めておるわけでございますが、もしこの問題に関しまして、業界から技術開発のための補助金等の要請がありました場合には、そういった面で考えていきたい、かように考えております。
  308. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、合成洗剤の中で非常に一般的に普及されているLASの汚染について、五十三年九月四日に環境庁がまとめられた五十二年度化学性物質環境追跡調査では、分解性のいいはずのLASが水質中で魚に影響を引き起こすレベル以上と見られる最高二・九PPmを検出した、あるいは底質でも最高二六PPmを検出した、こういうことが明らかにされているわけですが、このLASの問題については、東京都も昭和五十年十一月に合成洗剤に関する研究報告という形で東京都の調査を発表しているわけですが、この中で、一般にLASは河川水で高水温期、十五度C以上のときにはある程度生分解している。しかし低水温期十五度C以下になるとほとんど生分解していないと推察できるというような研究結果が報告をされているわけです。このLASの問題というのは大変古い問題であるわけですが、水道水にも入ってくるということでは、国民全体の健康にかかわる問題であるわけで、このLASの問題についてさらに厳しく規制をしていくべきではないかというふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
  309. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 合成洗剤の界面活性剤の中にLASを取り上げられたわけでございますが、その中で先ほど御引用になりました環境庁の化学物質調査でも調査をいたしておるわけでございますが、問題は二つあろうかと思いますが、一つは、環境を通しての影響でございますけれども、これにつきましては、環境調査の結果、現在検出されている段階におきましては、魚やあるいは水生の生態系に及ぼす影響を直ちに考慮するというレベルではないわけでございますけれども、なおこの点につきましては、モニタリング等監視を続ける必要があろうというように考えておるわけでございます。  それから人体影響等、健康面の安全性の問題につきましては、厚生省におきまして関係の省庁と連絡をして検討するということになっておるわけでございまして、環境庁といたしましては、厚生省の方とも連絡をとりながら、また知見の集積を図りながら進めてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  310. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 最近無燐化を実現するためにゼオライトを使った合成洗剤が使用され始めていますが、これはゼオライトが粘土のようなものなので、下水道に詰まるおそれがあるのではないかと言われているわけです。西ドイツの化学会社ヘンケルがまとめたフィールド実験報告書では、下水処理能力を妨げる原因にはならないという結果があるとされています。しかし、日本ではそういう実験データがないので、昨年十一月に環境庁が建設省とタイアップして、入居者千人程度日本住宅公団の団地一カ所を選んで、五十五年四月から一年がかりで大規模なフィールド実験を行うことを決めたということが大きく報道されているわけですが、この計画は一体どうなっているのか、この点をお伺いしたいと思います。
  311. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 燐の代替品といたしまして、ゼオライトが一つの大きな代替品になっておるわけでございますけれども、御承知のように、粘土のような鉱物でございまして、そういうものなので人体への安全性につきましては特に問題はないと考えているわけでございますが、御指摘の下水処理場等にどういう影響を与えるかという問題があるわけでございます。西ドイツのヘンケルの調査の御披瀝がありましたが、それほどの問題はないだろうというのがあるわけでございますけれども、私ども何らかのそういう面の知見の収集を図る必要があろうというふうに考えておるわけでございます。そこで、いま団地の話がございましたけれども、私どもはそれをやることを決めたということではございませんので、どういう調査をやったらいいのかどうか、その辺をまだ検討中でございます。
  312. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それはいつごろまでに検討を済ませ、どういうふうに実際にやっていかれるのか、その見通しについてお伺いしたいと思います。
  313. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 一つは、フィールドでやる前に実験室や何かのデータもいろいろ要るのではなかろうかということも考えられるわけでございます。したがいまして、そういう点もこれから収集をしなければならぬという点がございますし、フィールドでやる場合に、相当大きな規模の団地の選定の問題これはいろいろなところの御協力を得なければならぬわけでございますけれども、いろいろ問題があるわけでございますので、その辺も慎重に検討している段階でございます。
  314. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 実際には、ゼオライトそのものが使用されていくわけでございますから、その点、西ドイツの確かな実験があるなら、別に新たにお金をかけて日本でやる必要があるかどうかという問題もあるわけで、その辺は早く結論を出さないと、これは日本にとって特殊な環境、下水道が完備されていないとか、人口密度が非常に高いとかいう特殊な環境があるわけですから、やはり国民の要望としては、そういう問題について早く結論を出してほしいというのが正直な考えだろうと思うのです。ですから、もう少し具体的にこの点の展望をお聞かせいただきたいと思います。
  315. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 先ほど申し上げましたように、またいま先生がおっしゃられましたように、西ドイツのデータもございますが、やはり国内における実験室的なデータ等も早急に集めなければならぬというように考えておるわけでございますので、そういうような点も含めてなるべく早く結論を出したいと思っております。
  316. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、公害保健福祉事業についてお伺いしたいと思います。  この事業は、四十九年から実施されているということでございますが、これは年度別に予算額決算額、実施率、そういうものについてお答えいただきたいと思います。
  317. 本田正

    ○本田政府委員 手元にございます資料でお答えさせていただきます。  まず年度別の予算額でございますが、昭和五十一年度が九億六千万円、五十二年度が九億七千万円、五十三年度九億四千四百万円、五十四年度七億一千万円でございます。  実績額は、五十一年度が一億三千二百四十七万三千円、五十二年度が二億四千九百十五万一千円、五十三年度が三億三千九十二万五千円、五十四年度が三億五千六百四十五万二千円、こういうふうに相なっております。  予算に対します実施率でありますが、五十一年度につきましては一三・八%、五十二年度が二五・七%、五十三年度が三五%、五十四年度は五〇・二%と相なっております。五十四年度は見込みでございます。
  318. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いまの答弁のように、五十一年度からずっとお答えいただいている中で、実施額は確かに上がっておりますけれども予算額がだんだん下がってきている、こういう点は非常に問題だと思うのですね。それは予算がありながらそれが使われないという実態があったからだと思いますけれども、ではなぜ使われないのか。それはいろいろな問題があるのではないかと思います。この問題については、すでに五十一年の五月に参議院でわが党の沓脱タケ子議員が質問をし、環境庁の答弁があるわけですけれども、この中の一つについて患者自体が、実施主体である市や区自身がこの事業に非常に消極的なんだ、こういうふうに言っているわけです。では、地方自治体が消極的になるのは何なのかというふうに見ると、超過負担が非常に多い、それがちっとも改善をされない、こういうような実態があるから、なかなか実施状況が進まないのだということがあるわけですけれども、この点について環境庁はどう考えておられますか。
  319. 本田正

    ○本田政府委員 公害保健福祉事業は、大きく四つに分けられておりまして、リハビリテーション事業、転地療養事業、療養等に要する器具の貸与、それから家庭療養指導、こういうふうに相なるわけでございますが、これらの事業につきましてはそれぞれ予算化いたしまして、そして法に基づきまして、これは県または市の責任においてやっていただく、それに対する助成をいたしておるわけでございます。  現在四十一の指定地域がございまして、県、市におかれてはいろいろ知恵をしぼって実施に努力をされております。それからまた、その四十一の指定地域が全部同じ方式によって同じことをやっているとは限りません。いろいろ医師の確保の問題とか、あるいは転地療養をする際の行き先、あるいはその編成の問題等々、実は非常に大事な事業であるにかかわらず、大変苦慮いたしているわけでございます。これの実績がなかなか上がらないということは、そういった各種の保健事業に対しますところの努力が足りないということの御指摘も確かにそうだと存じますけれども、いろいろ申し上げたような理由でやりにくさが従来あったということから、そういうふうにせっかく予算計上いたしましても大変たくさんな不用額を出す、こういう残念な結果に相なっているわけでございます。原因と言われましてもいろいろまたあろうかと思います。先ほど御指摘のありました昭和五十一年の御議論、その後に実は環境庁におきましても、名古屋保健衛生大学の梅田教授を座長にいたしますところの、この公害保健福祉事業を一体どうすればいいのか、どう分析すればいいのかという検討会をつくっていただきまして、その御報告もいただいているわけでございます。そのような線に沿いまして今後とも努力を続けていかなくちゃいけない、こういうふうに存じております。
  320. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私、実際に東京の幾つかの区の担当課長さんから話を聞いてきたわけですけれども、たとえば転地療養事業というのは大体五十人単位で実施することになっている。この事業を実施する場合に、医師が一名、看護婦が二名、生活指導員十名、保健婦一名、事務局五名、これを同行させるということです。お医者さんは実際一日五万円ぐらい支払わないと来てもらえない。ところが国の補助金の算定基準では二万五千円ぐらいにしかならない。あるいは看護婦さんは一日一万円ぐらいかかるのに国の基準では五千円しかない。このように国の基準では実施費用の半分ぐらいにしかならない。ある区の例では五十四年度の実施費用が六百五十万円から六百六十万円であったのに対して国の補助金が三百四十万円から三百五十万円でしがなかった。これは、自治体がやりたくてもやれない、そういうような理由づけを政府みずからが与えているということになっていると言われてもどうも仕方がないような実態がここにあるのではないか。公害健康被害補償制度のお金というのは全額原因者である企業が負担してもおかしくないはずだし、被害者が当然自分の権利として使ってよいお金のはずです。それが実際には自治体の超過負担が高過ぎるという実態から当然使えるお金にいろいろ制約が加わって使えなくなっている、そういう点が大変大きな問題ではないかというふうに思います。環境庁がこの超過負担の問題について実際に自治体の実態を調べたことがあるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  321. 本田正

    ○本田政府委員 超過負担といいますと、これは非常にいろいろ言葉上使い方があろうかと存じます。と申しますのは、この事業にかかる費用は、市と国が持つ分が二分の一で、そのほかに二分の一相当分がいわゆる企業者負担になっております。したがって市が持つのは四分の一でございます。これを決めますときに、国のお金でございますから当然事業計画をとるわけでございます。年度当初に、どういう事業をやるか、たとえば転地療養の場合は何回やって、お医者さんを何回雇って、そして延べ何日で、単価幾らでどうだということ。そして私どもの予算の補助金を出すときの交付要綱といいますか、それに照らして見ますと、若干オーバーしているところもございますが、大半の地域では、県、市において計画される事業の方が私どもの単価を下回っているわけでございます。いま御指摘のような非常に超過負担があるという実態は、そういう事業計画を審査する段階において年々単価も改正されておりますので、もう現時点ではないものだと私どもは存じております。
  322. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 これは私がきょう質問するに当たって調べたことでございますので、そう古い話ではないというふうに思います。四十一市の指定都市の連名によって昭和五十四年八月三十日付で環境庁長官に要望書を出しているのです。これは四十一市指定都市の連名による公害補償地域連絡協議会、こういう名前で出しているはずですが、その中で「事務費の超過負担解消について」ということで「人件費についてはなお超過負担が多大であるので補助対象人員及び基準額を実態に則したものにされたい」こういうふうに述べているわけです。それからあと東京二十三区の特別区長会も昭和五十五年度政府予算に対する要望書の中で「公害健康被害補償事務費及び公害保健福祉事業については、職員配置基準や基準額が低いため大幅な超過負担」——ある区の例で言えば先ほどの場合四分の一が超過負担になると思います。「超過負担を余儀なくされている実情から補助制度の抜本的改善を図られたい」こういう要望が出ているわけで、この点について環境庁は、もう少し実態を調べられていろいろ意見を聞かれて改善していく必要があるのではないかというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  323. 本田正

    ○本田政府委員 いろいろ要望なり御指摘をそうやっていま例に挙げられましたようなことで受けていることは承知いたしております。もちろん私どもは、公害保健福祉事業というのは、ただ単に公害患者の方々に補償金を出したりあるいは医療費を見たりすることだけじゃなしに、これが一番大事な仕事の一つだと存じております、一刻も早く健康になっていただくという大事な仕事だと思います。そういった観点から、この事業がやりやすくなるようにいろいろ調査もし検討もしていきたいと存じます。  先生御指摘の超過負担の問題は、保健福祉事業に関して私どもは、先ほど申し上げたような認識を持っておりましたが、これはなお調査いたします。ただ、先生おっしゃった中で人件費の問題は、公害保健福祉事業だけをやるのではなしに、市町村にはたとえば給付をやる職員とかいう方々がおられます。そういった方々の補助対象人員というのは確かに御指摘のように少のうございます。実は昭和五十一年の段階では全国で百四名であったわけです。指定地域はそのころは四十一ではなくてもう少し少なかったわけでございますが、五十三年度になりましてようやく百五十六人に増強しました。それから五十五年度つまり今年度はこれは百九十五人まで持ち上げました。私どもは、このように地域、自治体のそういった御苦労なさっている実態に合わせて計画的にこういうふうに今後とも増員を図っていきたい、確かに人件費の問題では超過負担という言葉は当てはまっていると存じますので、今後とも努力していきたいと存じます。
  324. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 前向きの御答弁をいただいたので、その点ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。  それから環境庁のこの事業に対する計画、指導、この問題について幾つかの要望が出されております。たとえば転地療養を希望する場合、患者さんたちの中には、発作などの病気が出るときと出ないときがあるので、グループに拘束されないで好きなときに行きたいという人が多いわけです。このような人たちのために一定期間ある施設を借り切って、その期間中なら好きなときに療養に行けるという指定施設利用事業があると聞いています。しかしこの事業を実施するには医師、看護婦、保健婦など一定期間その施設に張りつけにする必要があるし、適当な場所を確保することが自治体が実施するには非常にむずかしい。そういう点で転地療養やあるいはリハビリテーション事業のための国営施設を設置する、そういうようなことはできないか。これは何も新しく施設を設置してくださいということではなくて、国立病院等のすいている病棟あるいは国立病院内の敷地の中に簡単な施設を設ける、そういうような何らかの方法が考えられるのじゃないだろうか、そういう事業の実施を促進させる意味でもこういう具体的な提案が出ているわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  325. 本田正

    ○本田政府委員 御指摘のように、この事業の対象になるのが健康人ではなくて患者さんであるために、やはりいろいろな事業をやるのに、細心の注意を払って、責任を持ってやる必要があろうかと存じます。そういった意味で、確かに少なくとも医師とか看護婦とかの同伴がなければなかなかむずかしい。したがって、いつでもだれでも行けるときに気楽に行けるということは、実は各所に持ってあげたいわけでございますけれども、効率的にその運営というものを考えましたときに非常にむずかしゅうございます。これも御指摘の国の機関といえば、もちろん厚生省の国立療養所とか国立病院とかございますが、こういったことがお得意なところもございますし、私ども日ごろから厚生省の方にもひとつ協力方をお願いしております。地域によりましては、国立の療養所でそれを実施しているところもあるわけでございます。そういったことについて、また厚生省にもずっとお願いを続けていかなくてはならないと存じております。
  326. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それから転地療養事業について、自治体がなかなか実施できない。それで民間の医療機関が、あるいは患者さんのグループなどが、自主的にサマーキャンプなどを実施しているケースもあるわけです。これは患者さんからも非常に喜ばれているわけですが、国からの補助金が現在では受けられないことになっています。こういう計画について、何らか現在のもとでも補助金を出すというような方向がとれないかどうか、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  327. 本田正

    ○本田政府委員 先ほどちょっと申し上げましたように、この公害健康被害補償法に基づきまして、これは具体的には四十六条でございますが、「公害保健福祉事業」という項目がございます。そこにも法律で示されておりますけれども、これの実施責任というものは都道府県知事、またはその関係の市長だ、こういうふうに相なっているわけなのです。民間でいろんなことが行われていることは承知いたしておりますけれども、そこに国の補助金を直接出すということは、法律の仕組み上どうしてもできないわけでございますので、その辺はぜひ御理解賜りたいと思います。
  328. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 自治体とタイアップする、この計画を自治体の計画の一つとして位置づける、そういう点でやるという方向ではいかがでしょうか。
  329. 本田正

    ○本田政府委員 自治体がその事業計画を立てまして、そして自治体が責任がとれるという体制でいまやっているわけでございますから、自治体で、そういう事業であれば、検討の価値があろうかと存じます。
  330. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それから転地療養事業で、未就学児童について二泊三日でもいいというふうになって、これはすごく改善をされてきていると思いますが、十五歳未満のグループあるいは十五歳以上のグループとも六泊七日という長期間の宿泊、これが条件となっているわけです。実際の運用ではもう少し緩和されているようですが、もっと一泊二日でも何とかやりたいというような希望も出ているわけで、その辺についてもぜひ配慮をしていただきたい、こういう要望が患者さんの中から強く出されているわけです。  それから、時間がありませんので、ちょっとまとめてお伺いをしていきたいと思います。  いま東京都の場合には、指定区域は二十三区内に十九しかない。四つが外れているわけです。三多摩地域も未指定になっています。この未指定地域の患者さんについては都が条例をつくって救済しているわけです。特に東京都の場合には、SO2の濃度だけじゃなくてNOxの濃度も入れて都内全地域を対象にしているわけです。NOxの影響というのは、大都市圏では非常に大きな影響があるわけです。国としては尼崎と川崎の高速道路の沿道住民の影響調査を行ったけれども、明確にされなかったというふうなことがあるようですけれども、東京都ではNOxの健康影響調査というのを五十三年度からやっているわけです。ぜひこのNOxの問題について国としてもっと前向きに、大都市の場合には大きな影響を及ぼしておりますので、取り組んでいただきたい。  こういう具体的な要望と、それから最後に、環境庁長官から、公害の患者さんたち大変苦しんでいるわけで、その点、環境庁の行政に期待するところが大きいわけで、きょう申し上げました要望、御提案につきましてぜひ積極的に推進していただくようお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  331. 本田正

    ○本田政府委員 転地療養事業の一つといたしまして六泊七日というのをもっと短くできぬかということでございますが、これは先ほど申し上げました名古屋保健大学の先生の御指摘の中にも、医学的それから教育的効果ということから見れば、一泊二日というのはそういう医学的効果、教育的効果というのは、この疾病の性格からちょっと期待できない。少なくとも六泊七日ぐらいが原則である。しかし、患者の方々によっては三泊四日という希望が非常に強いので、それは例外的に認めたっていいのじゃないかという御意見、御指摘があったわけです。     〔委員長退席、井上(一)委員長代理着席〕 通知自体は、原則は変えられませんので六泊七日にしておりますけれども、補助の中では三泊四日までは現在見させていただいているということで御理解賜りたいと存じます。
  332. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 現にわが国の環境大気中に存在する程度の濃度の窒素酸化物等々、健康被害との因果関係は明らかにされておらないわけでございますが、このことにつきましては、両院におきましてすでにしばしば取り上げられておる問題でもございますので、公害健康被害補償制度をめぐる問題の一つといたしまして、今後ともひとつ検討をしてまいりたい、かように考えております。  それから、先ほど来先生から、公害保健福祉事業を通じまして患者さんの問題について本当に真剣にいろいろ御指摘なされました。私もよく理解できますので、この問題と今後真剣に取り組んでまいりたいと思います。
  333. 井上一成

    井上(一)委員長代理 木下敬之助君。
  334. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 国立水俣病研究センターは、昭和四十八年五月、当時の三木環境庁長官が水俣市を訪れた際、同センター設立を約束、総工費十三億六千二百万円をかけ昨年七月二十五日完成と伺っております。同センターはどのような目的のために設立なされたのでしょうか。
  335. 本田正

    ○本田政府委員 国立水俣病研究センターは御指摘のような経緯で実はできたわけでございますけれども、どういうセンターにするかということにつきまして、昭和五十年十二月に水俣病研究センター建設の基本構想を実は設立準備委員会から出していただいたわけであります。その構想に基づきまして建設に着手し、御指摘の去年の七月に開所式を行った、こういうことに相なっております。  その目的と申しますのは、いわゆる水俣病に対しますところの認識、すなわちこれが公害の原点である、それからその深刻な歴史的背景あるいは社会的な重要性、そういったことにかんがみまして水俣病対策の一層の推進に資する、そういう目的をもって水俣病に係る総合的な医学研究を推進する、そしてもって水俣病患者の医療の向上を図る、こういった目的で発足したものでございます。
  336. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 この研究センターが設立されたことによりまして、水俣病対策を進める上において現在までにどのような効果がありましたか。
  337. 本田正

    ○本田政府委員 現在、研究センターの組織は臨床部、それから基礎研究部、疫学部の三部門から成っておりますが、非常に残念ながらいまだ研究スタッフが十分でございません。ようやく基礎研究部門におきまして、去年の七月から基礎研究の一部が実施できるという段階に至っているにすぎないわけでございます。特に臨床部におきましては、研究協力者という一名の医師がおりますけれども、それ以外は残念ながらまだ一名も確保されない現状でございますので、現在のところこのセンターの活動によって水俣病対策に寄与するというところまでまだいっていないのははなはだ申しわけなく、残念に存じております。
  338. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 大変残念なことですが、そのように順調に運営されていないのに五十五年度予算が三億二千万円も計上されているのは何にお使いになるおつもりでございますか。
  339. 本田正

    ○本田政府委員 これは、およそこういったたぐいの研究所というのは年次計画をもって実施すべきものだと存じております。人の確保の問題につきましても、定数増につきましても、年々定数をふやしていって、第一次計画と申しますか、そういったものを完成する、現在こういった段階にあるわけでございます。今年度計上いたしましたものはいろいろ、たとえば研究に必要な機器の整備というのが必要でございますが、これも一度に相そろえるわけにはいきませんでした。と申しますのは、研究者に必要な器具というものは研究者による場合もございます。そういったことから、少なくともどなたが見えても基礎的に要る機械器具というものはあるわけでございます。そういったものを中心に従来整備を進めてきているわけでございます。そのような観点から、来年度も年次計画の一つとして機器整備が必要でございます。そういったものも含んでいる予算だと御解釈いただきたいと存じます。
  340. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 何か研究スタッフが足らなくて増員を考えておられるようですが、現在何名の研究員、事務職員がおられますか、現在実際にセンターで働いておられる方。
  341. 本田正

    ○本田政府委員 研究センターの臨床部の内科に、これは非常勤でございますが、医師が一名、それから基礎研究部の生化学室及び生理室に三名の研究者を配置いたしております。そういったことで基礎的研究に着手しているという段階でございます。なお、事務部門につきましては総務課長以下経理六名を確保しております。
  342. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 五十四年度末の定員はたしか十八名くらいの御計画だったのじゃないですか。五名増員ということは、この十八名にまた五名足した二十三名を目標にしておるということでございますか。
  343. 本田正

    ○本田政府委員 御指摘のとおり五十四年度の定数は十八名でございまして、五十五年度に五名さらに定数をふやさせていただいたということでございます。計二十三名でございます。
  344. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 現在もまだ予定どおり運んでいないのにまたふやされるようですが、具体的な要員確保の対策とか見通しというものはもう立っておるのでしょうか。
  345. 本田正

    ○本田政府委員 水俣病に関します研究所でございますから水俣病に造詣の深い研究者、しかも地元水俣は熊本県で、熊本大学は従来から、鹿児島大学、新潟大学もそうでございますけれども、この水俣病の解明、研究につきまして非常に力を発揮していただいているわけです。できますならば、現地水俣に研究施設があるわけでございますから、熊本大学を中心に研究スタッフを相そろえたいということで、私ども機会あるごとに熊本大学にも行き、協力方を要請してまいっているわけでございますが、なかなかいろいろ事情がございまして、現在のところ申し上げましたような残念な状況でございます。今後、鹿児島大学とか新潟大学あるいは熊本の近郊の大学、そういったところにも声をかけまして協力方をぜひ要請し、一日も早く一人、二人ずつから整備していかなければいけない、こういうふうに存じております。
  346. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 五十四年度も十分な研究員の確保ができなかった。また、いまもそれほどはっきりとした見通しはないようです。私はこのセンターのことを考えますと、その定員でも規模の割りにはまだ少ないのではないかと思うのですが、当初は、中の人員的なものの予定ですね、最終的にどういう利用をしようと考えておったのか、そういったことがあったら聞かしていただきたい。
  347. 本田正

    ○本田政府委員 これは先ほど申し上げました建設準備検討会の、臨床部と基礎研究部とそれから疫学研究部、この三つの部を設けるということ、さらにはその部にそれぞれ室を設けて研究体制を推進すべきであるという御検討の結果に基づいてつくったセンターでございます。そういったことで組織の上からどういったところに研究者を、たとえば部長はどうしても要ります、室長も要ります、それから研究員というものも要る、そういったことを積み上げてみました結果、第一次計画と申しますか、当初の要員は三十八名は要るのじゃなかろうかと私どもは存じておりました。
  348. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 その三十八名の計画を立てた時点で人材の確保の見通しというのはどうなっておったのでしょうか。
  349. 本田正

    ○本田政府委員 何とか努力いたしまして、各大学それから国立病院等の協力を得て人材の確保に努めるべきであるというふうに思っておりました。ただ、この施設ができますときには、何と申しましても人材確保はもちろん、いま苦慮いたしておりますけれども、どういった研究体制を組めば力が発揮できるか、目的が達せられるかという観点から組織をつくったわけでございます。そこに張りつけたのが三十八人、こういうことでございました。当初から三十八人が容易に集まるとは思っておりませんでしたけれども、実はいままで努力いたしまして、努力不足もございますが、これほどむずかしいという、苦慮いたさねばならないという状態になるということは残念ながら想像はいたしておりませんでした。
  350. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 その辺ちょっと理解に苦しむのですが、十三億六千二百万円もかけ、また、その目的としてどうしてもつくらなければならないという目的があったわけでしょうけれども、三十八名の人員の確保の見通しがはっきり立ってない。人がいなければ運営がうまくいかないのがわかっているような施設でありますが、その見通しがはっきりしないままつくったというのは私どもには納得がいかないのですが、その辺もう一度御説明願えませんか。
  351. 本田正

    ○本田政府委員 この施設をつくりますときに、どういう施設が一般的にできるかわからぬような状態のときに人に集まってほしいと言うことはできないわけでございます。まずこちらで採用できる定数の設定をやりまして、そこに合う方々を採用すると言いますか、そういう仕組みに相なっているわけでございます。三十八名の構想を持ちましたときには、何とかその三十八名は確保いたしたいということから発しているわけでございまして、その辺、最初に要員を決めて定数化するという仕組みじゃないということを御理解賜りたいと存じます。
  352. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 私は、国民の税金の使われ方がそういった形で使われていいのだろうかと聞いておるわけでございます。お金をかけてつくるときに、その運用が完全になされるかどうかの見通しが立っていないうちにこれだけのお金を投じて施設をつくるということには大変疑問があるのではないかと考えて発言いたしておるわけでございます。どうか、重要な国民の税金を使うわけですから、環境庁のやり方が、これだけ必要だからつくったのだ、つくった後から考えるというやり方でいままでやってこられておるのなら、ぜひ変えていただきたい。こういうあらゆる予算を削ってやっているような時期に、そんな金があったらほかに使いたいことはたくさんあると思います。その辺は後ほど会計検査院の考え方もぜひ聞かせていただきたいと考えております。  研究員が現在余りにも少なくて、内科などの臨床部の専任医師が一人もいないようなために、患者は一人も訪れていないと聞いております。当然のことながら、水俣病被害の実態をつかんだからこそセンター建設となったと思いますが、なぜ患者が来ないのか、検討なされていると思います。お答え願いたい。
  353. 本田正

    ○本田政府委員 ちょっと先ほどの御質問のところで補足させていただきたいと思いますが、三十八人というのは、見込みが全くないのに三十八人を考えたということでございませんで、三十八人は集まっていただけるという観点から三十八人という設定をしたのでございますので、その辺、説明が至りませんで申しわけありません。  それから、患者が一人もセンターを訪れていないというのは、これも事実でございます。このセンターの機能の一つとして、臨床部におきましては、地元の開業医さんの協力を得て治療方法を開発するために、患者さん方に一日通所というリハビリを中心とした施設が設けられております。申し上げましたように、いま専任の臨床部の医師が確保されておりませんので、まだ患者をお迎えするという段階になっておりませんが、一刻も早く専任の臨床部の先生方の御参加を得て、一日も早く患者さん方に活用していただき、またはその成果を治療方法ということに向けていきたい、かように存じております。
  354. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 話が戻りますけれども、当初見通しがあったというのなら、その見通しが現在運ばれていない、その辺の原因があったらお聞かせ願いたい。
  355. 本田正

    ○本田政府委員 施設をつくり、人員を設定し、その機能を生かすには、当然その人が要るわけですから、確保に努力しなくちゃいけないと存じます。私どもも、実はまだ実質的に発足して一年でございますけれども、何といっても要員の確保が大事だということから、いろんな機会にいろんなお願いを通じて、熊本大学等にもお願いしたのでございますけれども、水俣病という疾病が神経内科の領域のきわめて特殊な、たとえばスモン病とか脳卒中とか、その他神経内科ございましょうが、その中の一つの領域であるということから、実は研究者の層が非常に薄いということもございます。それが一番大きい原因だと思います。  しかしながら、水俣病というのは、神経内科の領域においても決して事が済んだ疾病ではなくて、まだまだ新しい展開というものも神経内科領域であると私ども思いますし、そういったことも訴えながら、現在まで医師の確保ということに努力してきたわけでございますけれども、その努力がまだ足りませんでこういう状況にあるということは、はなはだ残念に存じております。今後とも努力を続けていきたいと存じております。
  356. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 しつこいようですけれども、水俣病だから確保が大変むずかしい、層が薄い、そういった言われ方をされておりましたが、それは設立の前からわかっていたことで、もし三十八人という計画を立てたときにそこまで思いが至っていなかったというのなら、これも相当重大な怠慢だし、まだなかなか納得いかないのですね。それだけの原因で、当初三十八名がいま十八人にもとても及ばないような確保の仕方というのは、私は大変残念だと考えております。余り過去のことをさかのぼって言うのが私の務めでもありませんので、もし甘い見通しでやっていたのなら、今後こういったものを立てるときにそういった甘い見通しでされては困るということを申し添えまして、その辺にさしていただきたいと思います。何か答えられますか。
  357. 本田正

    ○本田政府委員 医師の層が薄いということも原因の一つだと存じますが、私どもの研究センター、私どものPR上も問題があろうかと存じます。たとえば水俣センターというのは一体どういう研究をするのだということがなかなか理解していただけない。私どもは、説明するときによく、どういう研究をどういう部門についてやるのか、できますならば具体的な研究テーマ、そういったことをまだ明示できない現状でございます。そういったところ、臨床的な治療方法の開発とか、それに要する基礎研究あるいは疫学的研究ということは、総括的には言えますものの、臨床部についてはたとえば漢方医学をやるのかやらぬのか、そういう具体的な研究テーマの設定もお示しできないために、むしろ医師の方々の興味をこっちに向けるまでにまだ至ってない。私ども努力不足もあると存じます。
  358. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 どうも話が前後してやりにくいのですけれども、宣伝をしたり、そうすれば三十八名まで確保できる見通しがあるとおっしゃるのか、見通しがないけれども、ただそれをやるしかないのでやるとおっしゃるのか、この辺が私、きょう一番聞いてみたいところなんですよ。どうなっているのですか。現実にこれだけのことをやって、いまのような研究の課題等を公にすることによって必ず確保できると信じているでは、困るのですよ。見通しが立っておるというのか、それとも見通しがないというのか、そこをお聞かせ願いたい。
  359. 本田正

    ○本田政府委員 この研究センターの設立の目的を達するためには、私どもは何としても集めなくちゃいけないわけでございます。見通しを持って、いずれの日か——いついつまでにということは、そういう意味での見通しというのはなかなか言えませんけれども、必ずやこれに参加していただけるものと確信いたしております。
  360. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 私は、そういった見通しのもとに十三億六千二百万円もかけていいのだろうか、ここに疑問を持っておるわけです。確かに、やらなければならないことはこのようにたくさんあるし、それはどんなに時間がかかろうと、信念を持ってそこに進まなければならない問題もあるでしょうけれども、現実に施設を建てるというのは目の前の問題だと思うのです。だから、そんな遠い先のことなら、見通しが立った後に建ててもいいじゃないですか。この予算の使われ方が当初そんな甘い見通しでやったのならば、やはり国民の税金の使い方としていい使い方ではなかったと申し上げるしかない、私はこう考えております。  それでは、この問題、大変むずかしい問題になると思いますが、実際に動きが現在なくて、設立してしまったから動かすというのでは、本当に研究活動ができるかどうか、理解に苦しんでおります。研究機関の必要性は十分理解できますが、国立公害研究所との統合によって、より合理的な運営をし、研究成果を上げることができるのではないかと考えるのです。現に公害研究所では、五十四年度から大気、カドミウム、PCBなどの人体への影響を研究する慢性影響特別研究機関をつくり、活動を行っていると聞いております。この機構の中で水俣病の水銀についても研究活動ができるのではないかと考えます。将来、計画を変更して、国立公害研究所と合併してむだのない運用を図るなどは考えておられないでしょうか。
  361. 本田正

    ○本田政府委員 この研究所の設立のときに、そういう問題も検討されたやに聞いております。ただ、国立公害研究所で、確かに環境保健部におきましていろいろな慢性影響の研究等やられておりますけれども、この水俣病の研究というのは、患者さん方の——特に水俣病の研究で何が大事かといいますと、治療方法を開発するということが一番大事なことじゃないかと思います。神経を侵される疾病でございますので、治療方法の的確なものがなかなかございません。しかし、何かいい方法はないか、そういったことをやりますにはやはり独立の機関として現地にあることが望ましいという観点から、国立公害研究所とは独立した別の、環境庁直轄の研究機関ということに相なっているわけでございます。  そういったことでございますので、現状でそれを合同して国立公害研究所の中に含めるということは不可能だと存じております。
  362. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 会計検査院の方にお聞きいたしたいのですが、このように建設費八億一千二百万円、医療機器設備費五億五千万円、計十三億六千二百万円の費用を使い、開店休業状態であります。税金のむだ遣いと思われる中、会計検査院はどのような検査をいたしましたか。
  363. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 お答え申し上げます。  私ども、本年の二月二十六、二十七日の両日にわたりまして、調査官四名をもちましてセンターにつきまして検査をいたしたわけでございますが、この検査は、結局五十三、五十四両年度に施行されました工事、それから機械並びに物品等の購入、その他庁費等、こういったものにつきまして検査をしたわけでございます。  なお、ただいま御指摘がございましたように、確かに、本件水俣病センターは研究者等が集まりませんので、多額の投資をいたしました建物や購入いたしました医療機器等が必ずしも有効に活用されていないといった、予算執行上適切ではないと認められる事態がございまして、私ども会計検査院といたしましても、重大な関心を持って注目しておるところでございますが、研究者の充足につきましては、環境庁におかれましても、ただいま御説明もございましたように、現在鋭意努力を続けておられる状況でございますし、また、センター開設後一年余、その調達機器等が据えつけられてから一年足らず、こういった事情もございますので、いましばらく事態の推移を見守っていきたいと思っております。  しかしながら、このような事態がこのままなお将来にわたって続くとなりますと、これは国費の使用上まことに憂慮すべき事態でございますので、私どもといたしましても、早晩、何らかの意思表示をせざるを得ないか、そういう事態も起こるかもしれないと思っております。
  364. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 現在の運用も十分満足でない点はわかりますが、設立のときに、先ほど申しましたように、大変甘い見通しのもとにやっていたのじゃないかと私どもは思うのですが、その辺についてお聞かせ願いたいと思います。
  365. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 確かに、おっしゃるように設立当初、計画段階におきましては、見通しが多少甘かったという点があるかもしれませんが、しかし水俣病患者を救済するという至上命題もあったわけでございまして、その辺はやはり了とせざるを得ないのではないかと思っております。
  366. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 国立水俣病研究センターの設立の趣旨というものは大変とうといものだと思っております。どうかこの趣旨に沿うように、早期実現を図っていく必要があると思います。国民の税金の使われ方も十分にしなければいけませんけれども、この公害の問題というのは、また格別に考えていかなければならない点もあると思います。どうか今後の運用というものを、最後にその決意をお聞かせ願いたいと思います。
  367. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  国民のとうとい税金でつくられましたセンターが、水俣病で苦しんでおられる方々に利用されておらないということはまことに申しわけなく、心から深く反省をいたしておる次第でございます。今後全力投球いたしまして、研究体制の整備、特に先ほど来御論議のございました医師の確保の問題につきましては真剣に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  368. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 終わります。
  369. 井上一成

    井上(一)委員長代理 次回は、来る十一日金曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十五分散会