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1980-04-18 第91回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十八日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 奥田 敬和君 理事 佐野 嘉吉君    理事 志賀  節君 理事 高沢 寅男君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 野間 友一君 理事 渡辺  朗君       池田  淳君    石原慎太郎君       木村 俊夫君    鯨岡 兵輔君       栗原 祐幸君    小坂善太郎君       中山 正暉君    宮澤 喜一君       宮下 創平君    粟山  明君       渡辺 秀央君    岡田 利春君       河上 民雄君    武藤 山治君       浅井 美幸君    草川 昭三君       瀬野栄次郎君    榊  利夫君       柴田 睦夫君    林  保夫君       田島  衞君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君         農林水産大臣  武藤 嘉文君  出席政府委員         外務政務次官  松本 十郎君         外務大臣官房審         議官      山田 中正君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      井口 武夫君         通商産業省貿易         局輸出課長   北川  正君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     宮下 創平君   佐藤 一郎君     粟山  明君   中川 一郎君     渡辺 秀央君   中山 正暉君     池田  淳君   浅井 美幸君     草川 昭三君   玉城 栄一君     瀬野栄次郎君   榊  利夫君     柴田 睦夫君   山口 敏夫君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   池田  淳君     中山 正暉君   宮下 創平君     石原慎太郎君   粟山  明君     佐藤 一郎君   渡辺 秀央君     中川 一郎君   草川 昭三君     浅井 美幸君   瀬野栄次郎君     玉城 栄一君   柴田 睦夫君     榊  利夫君   田島  衞君     山口 敏夫君     ————————————— 四月十八日  北西太平洋における千九百八十年の日本国のさ  け・ます漁獲手続及び条件に関する議定  書の締結について承認を求めるの件(条約第四  二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  北西太平洋における千九百八十年の日本国のさ  け・ます漁獲手続及び条件に関する議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第四二  号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 まず、イラン問題について少しお尋ねを進めたいと思いますが、対イラン制裁について、アメリカ側からわが国にどのような要請を持ってまいっておりますか、ひとつ外務大臣からこの席で改めて具体的にその点をお聞かせいただきたいと思うのです。
  4. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 第一には、ことしの一月十三日の国連安保理事会米国案として提案されました対イラン制裁措置、これは十五カ国のうち十カ国が賛成したわけでございますが、ソ連の拒否権がございまして否決になったわけでございます。大体その案に沿う措置を友好国にとってほしいということでありますが、そのほかに各国の駐イラン大使をできるだけ速やかに召還する措置をとってほしい、それから、いますぐではないが、今後の状況推移を見て、人質問題が依然として解決できない場合には、将来国交断絶措置もとってほしい、大体そういう趣旨でございます
  5. 土井たか子

    土井委員 いま具体的には大臣は、大使召還国交断絶の問題だけをお取り上げになったわけですが、それじゃまず最初にその点について少しお尋ねますけれども、国交断絶について日本としてはどういうお考えをお持ちなんですか。
  6. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはいま当面の問題でもございませんし、その後のイラン状況欧州各国状況アメリカ状況等をにらみながら考えるべきことでございまして、いまの段階でどうするということは申し上げられないと思います
  7. 土井たか子

    土井委員 確かにいろいろ外交関係というのはその段階が大事であろうと思いますが、国交断絶という問題は、どういう状況であろうとすべきでない、そういうお気持ちで臨んでいらっしゃるのか、事情推移によったら国交断絶もやむを得ないというお気持ちで臨んでいらっしゃるのか、そこのところでずいぶん違うと思うのですよ。大臣はその点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  8. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカ側要請は、もう少し正確に申しますと、国交断絶可能性を検討してほしいということでございます。これはやはり先ほど申しましたように、可能性の検討ということでございまして、その状況によるということを申し上げるよりほかないと思います
  9. 土井たか子

    土井委員 非常に歯切れの悪い御答弁なんですが、大臣先ほど、具体的なこととしてはいまの国交断絶と、さらに大使召還しかおっしゃいませんでしたが、イランへの輸出入の制限という問題については、アメリカ側からの要求があったのですか、なかったのですか、どういうことなのですか。
  10. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの経済措置については、先ほど申しました一月十三日の国連制裁決議案の中にそれぞれ含まれておりますので、その点で一括的に申し上げたわけでございますが、その決議案の中には、食糧医薬品を除く対イラン輸出停止ということも含まれておるわけでございます。したがって、その案の趣旨に沿ってということは、イランに対するいまのような輸出規制措置協力してほしいという要請も当然含まれておるわけでございます
  11. 土井たか子

    土井委員 昨日からきょうにかけてのニュースによりますと、いまそれを除くと言われました食糧医薬品についても、禁輸アメリカ側としては勧めているようであります日本側はその要請というものを受けたのか受けないのか、どういうことなんですか。
  12. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 けさの連絡によりますと、カーター大統領は、いまの食糧医薬品についても禁輸という項目はドロップしたようでございます。その発表のときには、その項目を含めないという形で発表したようでございます
  13. 土井たか子

    土井委員 そうすると、医薬品食糧ということを禁輸の対象から除くということは日本としても確認をした上で、アメリカ側からのいろいろな声を聞いておられるという立場だというふうに理解してよろしいですね。
  14. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 さようでございます
  15. 土井たか子

    土井委員 ほかにまだ経済協力制限についてアメリカ側からの要求があったやに私たちは知っておりますけれども、これはいかがでございますか。
  16. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 経済協力という形ではなくて、イランに対して新たな信用供与とか新たな口座の開設とか、そういうことについてもやらないという面で協力してほしいという、これは国連決議案趣旨に沿ってということの中に含まれるわけでございます
  17. 土井たか子

    土井委員 国連決議というふうなことでいま御答弁の中では集約されていらっしゃるようでありますけれども、具体的にアメリカ側からどういう要求があったかということを、いま私はお尋ねをさらに続けたいと思うのですが、新たな信用供与というものをやめるというふうなことについてアメリカ側からの要求があったのかなかったのか、この点いかがでございますか。
  18. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そのアメリカにとります国連決議の案の中では、「イラン当局に対し、またはイランにおけるいずれかのものに対し、またはイラン政府機関によって支配された事業に対し、新規の信用供与または融資を行ってはならないこと」そういうことが書かれておったわけでございまして、従来、日本西欧諸国もこの線はすでに実施済みになっておるわけでございます
  19. 土井たか子

    土井委員 制裁について期限というものを限られているようにアメリカ側から日本に対しての提示があったようにわれわれは受けとめておりますが、この中身はどういうことになっておりますか。
  20. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど申しましたように、今回の場合には国連の案に沿ってということで、制裁のための米国案、これは国連で否決されたわけですが、その案に沿ってということでございまして、一々詳細な内容を指示してまいったわけではございません。
  21. 土井たか子

    土井委員 一々詳細な内容を指示してきたわけではないとおっしゃいますが、一応この制裁に対しての協力を求めるのについて、いつくらいまでにという期限ということが問題にされているということを私たちはお聞きしておりますし、先日来国会の中でも決算委員会の席などで外務大臣の御答弁の中にもそれが出てまいっているわけでありますが、この点はどうなんです。
  22. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは決算委員会でも答弁いたしましたが、何月何日までにという表現はないわけでございます。できるだけ早くということと受け取れるわけでございますけれども、何月何日という特定の日付についての要請はなかったわけです。この点は、アメリカ側も多少、海外でのそういう反響といいますか、何か期限つき要求したというような話がワシントンから一時流れまして、これに対して各国からそういうはっきりした日付要請はなかったというニュースがまた伝えられて、アメリカ側もそういう形では言ってないという訂正といいますか、補足説明をいたしたという経緯がございます
  23. 土井たか子

    土井委員 いろいろアメリカ側補足説明をするという経緯があったにしろ、大体この制裁をするのについて、できるだけ早くといってもおおよその目安というものはどのくらいに考えるかということで初めて、アメリカにして言わしめれば、制裁意味があるだろうと私は思うのですが、その間は大臣としては一体どれくらいということを目安考えるのがアメリカ側考えに合致するのではなかろうかとお考えになっていらっしゃるのか、その辺はどうですか。
  24. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御承知のように、EC九カ国のリスボン決議がございまして、とにかくできる限り人質解放、さらにEC諸国、それから日本の参加も求めて努力をしようということで、御承知のようにいろいろな動きがあるわけでございまして、とにかくこの動きの結果を見きわめることがまず第一であろうかと思います
  25. 土井たか子

    土井委員 それは見きわめは結構なんですけれども、しかし、その見きわめについても、いつまでもずるずると見きわめられるまで待つということでは恐らくないだろうと思うのです。やはりある一定の期限というものを意に含めてこそ問題に対してやってみようという制裁意味があるだろう、アメリカ側の言い分からすればあるのじゃなかろうか、当然これは常識論として考えられるわけなんです。  四の五の大臣はおっしゃいますけれども、先ほどの、決算委員会の場所では、この制裁協力期限というのを数週間というふうにおっしゃったんじゃないですか。どうです。
  26. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 何月何日ということではないけれども、数週間と受け取ることはできるだろうというふうに申したように思います。しかし、何月何日ということは申さなかったわけです。
  27. 土井たか子

    土井委員 要するに、このイラン問題というのは、その原因はほかにもいろいろあるんでしょうけれども、せんじ詰めてまいりますと、人質がまず解放されることが問題の解決であるというふうに考えられますわが国イランとの間は友好関係でございまして、いつもいつもアメリカ側に対して追随するばかりじゃなくて、何とかこの人質解放について努力するアクションというものを紀こす必要があろうということを私自身考えるのですが、先日、朝日新聞の記事によりますと、朝日の記者の方がバニサドル大統領と会見をされた席で、この人質問題についていろいろとアメリカ側イラン側と交渉が重ねられたその中身についてアメリカ側が違約をしたということを、イラン側もこれは具体的に述べておられるようでありますが、日本として人質解放努力するというアクションを起こす考えはおありになるのですか、ないのですか。いかがですか。
  28. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そのアクションはすでに起こしているわけでございまして、現地で和田大使ECと、これは八カ国でございましたが、共同バニサドル大統領に会って人質解放の段取り及び期日について明示してほしいという要請を行ったわけでございまして、そういう形ですでに行動しておるわけでございます
  29. 土井たか子

    土井委員 すでに行動しているとおっしゃっても、そのことが現実の問題としてわれわれの間で認識できるようなものでないと、これはなかなかむずかしいんですね。行動していると口先でおっしゃっても、なかなかそれは理解できない。具体的に行動しているとおっしゃることが、これはどういう方向に動いているか、具体的にどういう努力をなさっているか、ひとつ差し支えない限りにおいて、ここでその間の御説明をいただきたいと思うのです。いかがですか。
  30. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはEC各国の申し合わせもあるわけでございますが、何しろいま非常に通信も発達しておりますから、何か一言言ったことが世界じゅうに直ちに伝わるわけでございまして、その伝わったことの影響がまた現実事態の進展に影響を及ぼすというようなことがございますものですから、そういう立場EC各国が申し入れの内容その他については一切口外しない、日本もその共同措置をとるについてはその同じ約束を守るという立場に置かれておるわけでございまして、そういう関係で具体的な内容について申し上げるということが、いまの段階ではできないわけでございます
  31. 土井たか子

    土井委員 それはいまの段階においてはできない、できないということが、しょっちゅう当外務委員会における答弁中身として出てまいりまして、果たしてここの席でおっしゃらないことが、日本国益ということを具体的にし得ることになるのかどうか、その辺はもういつも問題なんです。これは言わないで済ませたらそれにこしたことはない、そういう姿勢でしかおありにならないんじゃないかと、ときに私たちは思うわけでありますが、大来外務大臣になってから、その感をいよいよわれわれは強くしているのですよ、実は大臣。何かにつけてきっぱりおっしゃらない。事言わなきゃならないことまでおっしゃらない。そして、まだこれは発展段階であるからいま言うべき時期でない、このことは大来外務大臣の御答弁の中ではしょっちゅう出てまいります。われわれは、外交関係からすると、そういう重要な時期にある程度まで言えてもそれ以上言うことができないという事情は百も承知いたしておりますけれども、しかし、大来外務大臣になりましてからは、いよいよこれは、ここらぐらいまでは言うことが可能でありまた言うことが国益にかなうのではないかという点についてまでも、いまは言うべき段階ではないという、この一言で何もおっしゃらないというのがその特徴であるというふうに、われわれは受けとめているのです。どうもこれは困った話ですね。やはり外務大臣としては、その辺はきっぱりと言うべきことは言うという姿勢をひとつこれはお願い申し上げたいと思いますよ。  対イラン制裁について、その措置を数週間以内に行うということでございますけれども、一体、先ほど種アメリカ側からの要請ということを私がお尋ねした中で、何をなさるお考えなんですか。EC共同歩調をとるというふうにいまもお答えでございますけれども、これも具体的に何をEC共同歩調をとるということをお考えなんですか。結局、大来外務大臣は具体的にどういうことによって日本意思を表明しようとなさっているのか、そのところをひとつお答え願いたいと思います。いかがですか。
  32. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私は、ただいま土井委員からのお話がございましたけれども、でき得る限りのことを申し上げておるつもりでございます。時には少し勇み足と申しますか、他の閣僚からの注意を受けるような場合もございまして、しかしそれはやはり申し上げた方がいいと思うことについては従来から申し上げてきておるつもりでございます。  その具体的な内容については、御承知のように関係閣僚、連日会議をやっておりますけさもいままでやってまいりました。その内容については、何しろ外にいろいろとかかわる問題でもございますし、まだ決まってないことでもございますし、ECもまだ決めてないという状態で申し上げるということは非常に無理と申しますか困難な事情に置かれるわけでございます。その辺の事情は御了承願いたいと思います
  33. 土井たか子

    土井委員 言いわけだけをいま聞かされたわけでありますが、果たしてこれ、大臣経済制裁というのはイランに対して有効というふうにお考えになっていらっしゃいますか。いかがですか。
  34. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これにつきましては、各国日本国内も含めていろいろな見方がございます。何らかの形でイランに対する圧力がかかる、それがむしろ人質解放の促進につながるという見方もあるわけでございまして、これは余りに過度な圧力になると今度はまた逆効果が起こるかもしれないわけでございますが、また何もないとそのままずるずるといってしまうという状況でもございますので、適当な強さの圧力はある程度人質解放のために必要だという状況ではないかと思います
  35. 土井たか子

    土井委員 マンスフィールド駐日大使が今月の八日でございましたか高島外務次官にお会いになって、そして米国の対イラン制裁措置について協力要請をされたようでありますが、その中の一つに、いまの制度の中で有効な輸出抑制ができない場合は新たな立法措置をとってほしいとの要請があったやに、われわれは知っておりますが、これは事実でございますか。
  36. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう趣旨日本を含め西側諸国にも申し入れたと承知しております
  37. 土井たか子

    土井委員 対イラン輸出中身について、通産省にきょう御出席を求めているわけでございますが、対イラン輸出、それからイランからの輸入、こういうことが、この二、三年来どういうことになっておりますか。日本イランとは友好関係にございまして、大変大事な貿易相手国であるというふうにわれわれは承知いたしておりますが、ひとつその点お答えをいただきたいと思います
  38. 北川正

    北川説明員 お答えいたします。  わが国のまずイラン向け輸出でございますが、昭和五十三年暦年においては、イラン向け輸出の総額は一十六億九千百万ドルでございまして、その主要なものは繊維品が三億一千万ドル、それから化子品が七千四百万ドル、それから金属品九億一千万ドル、特にこの中では鉄鋼が多うございまして、五億八千万ドル、それから機械類が十三億千九百万ドルというような状況になっております。  また、五十四年暦年におきましては、イランの革命というような動きもございまして、イラン向け輸出、船積みが一時期とまったというようなこともあって大幅に減少しておりますが、その、結果として五十四年暦年においては九億二千五百万ドルの輸出が行われておりまして、その中では主要なものは繊維品の八千三百万ドル、それから化学品が大体五千万ドル、金属品が三億四千四百万ドル、その中では鉄鋼が二億四千六百万ドル、機械機器類が三億四千九百万ドルというような状況でございます。  また、ことしになりましての動きでは、五十工年一月のイラン向け輸出は九千三百万ドル、また二月は一億七千三百万ドル、三月は速報で大体一億四千万ドルという輸出が行われております。  他方、イランからの輸入でございますが、五十三年暦年におきましては四十二億四千四百万ドルの輸入が行われ、この大宗を占めておりますのは原粗油で、これが三十九億六千九百万ドルでございます。  また五十四年暦年においては四十二億七千百万ドルの輸入が行われておりますが、その中の大宗を占める原粗油は三十七億三千二百万ドルというようなことになっております。  また本年に入りましてイランからのわが国輸入は、通関におきましては五十五年一月八億三千万ドル、二月は七億一千四百万ドル、三月の速報では七億八千五百万ドル、大体以上のような状況になっております
  39. 土井たか子

    土井委員 特にこれは鋼材関係なんかが主要な問題を占めているというふうなことがいまの御発言でもうかがえるわけですが、政府はただいま、日本現行制度の中でイラン向け輸出を規制する方法としてどういう措置考えておられるのか、そうしてその行政指導だけで輸出抑制効果が上がるとお考えになっていらっしゃるのか、この点いかがでございますか。
  40. 北川正

    北川説明員 お答え申し上げます。  現在、私ども行政府といたしましてはあらゆる可能性というものを考えていろいろ研究をいたしております。ただ現在のところ、先ほどから外務大臣答弁されておりますように事態はきわめて流動的でございまして、本件については十分慎重に考えるべきであると思っております。どういう方法考えるべきかということにつきましてはいろいろ研究をしておる段階でございます
  41. 土井たか子

    土井委員 研究段階とおっしゃいますが、非公式な形にしろ業界に対して何らかの行政指導たなすったという過去の経緯は全然ないわけですか。
  42. 北川正

    北川説明員 お答え申し上げます。  昨年人質事件が起こり、あるいは本年になりましてアメリカからの各国に対する要請、これは国連決議案を踏まえての要請でございますが、そういう要請がございました。したがって、通産省といたしましても、その段階において、わが国としては他国がとった措置に便乗するようなことがないように、その他、現在人質事件というものがある以上、イラン向け輸出については十分慎重に対処するようにということを、関係業界に申し上げております。自今、そういう考え方について現在も変わりがないということを機会をとらえて申し上げてきたというのが現状でございます
  43. 土井たか子

    土井委員 いまの御発言のとおり、いろいろ非公式な形で業界に対して行政指導と言えば言えるんじゃないかと思われるようなことをいままでやってこられているのですが、いわばこれは自主規制要請されている中身だろうと私は思うのです。しかし、何らこれには法的拘束力はございませんよね。ないでしょう。現に、鋼材なんかを見てまいりますと、むしろ駆け込み輸出にドライブがかかっておるような状況だというのが私は現状だと思います。  そこで外務大臣、お伺いしますけれども、イランに対しまして、輸出現状から考えてまいりますと、輸出貿易管理令の発動もやむを得ないというふうに外務大臣はお考えになっていらっしゃるかどうか、ここの点どうなんですか。
  44. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題は、やはり政府全体として意思決定をすべき問題で、特に国内官庁が判断すべき問題だと存じます
  45. 土井たか子

    土井委員 それは国内主管省というのが判断すべき問題だと思うと言われる外務大臣は、しかし、外交問題に対しては主管大臣でおありになる。十三日のNHKのテレビ座談会の中で、いろいろな可能性を常に検討しておくのが政府の責任であるというふうに、外務大臣自身お述べになっていらっしゃる。これは国民が見て知っているわけでありますが、こういうふうな御発言から考えまして、それではどういう場合にこの貿易管理令を発動させるべきだというふうに外務大臣はお考えになっていらっしゃるのですか。
  46. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは一つには、先般来リスボン会議ECの行動に協力するという政府の方針を決めたわけでございまして、これはやはり、各国共同歩調ということがそれによって要請されることになるかと思います。どういう段階というようなことは、いまの状態で外務省の立場として申し上げることはできないわけでございますが、それぞれの所管のところで、いろいろな事態に対する対応についてそれぞれ検討しているというふうに承知しております
  47. 土井たか子

    土井委員 輸出貿易管理令の別表第一の二のところに南ローデシアというのがここに書いてあるのですが、きょうもニュースで出ております、独立いたしましたジンバブエなんですが、これが掲げられた理由というのはどういうところにあるのですか。これを一つお尋ねます
  48. 北川正

    北川説明員 お答え申し上げます。  昭和四十三年に国連決議がございまして、南ローデシアに対する国連制裁決議が安保理において議決されました。それに基づいてわが国としては、南ローデシアに対する輸出を禁止するという措置をとるための手段として、輸出貿易管理令の別表第一の二で雨ローデシアというものを掲示をし、自今ごく最近まで、南ローデシアについては食糧医薬品等を除いて禁輸措置を講じてきたということでございます
  49. 土井たか子

    土井委員 そのかつての南ローデシアの問題は、白人少数支配による人種差別に対する、いわゆる国連からしたら経済制裁という意味が具体的にあったということなんですね。対イランの貿易管理令というものを発動する場合には、この別表第一の二にイランを掲げればいいわけでありますか。いかがでありますか、外務省。
  50. 北川正

    北川説明員 所管の通産省から答弁させていただきます。  輸出貿易管理令の改正の仕方と申しますか、全くテクニカリーにどうするかということになれば、先生ただいまおっしゃっていますように、南ローデシアのように別表第一の二のところに掲げるという方法がございますが、これはあくまでも仮定の議論でございまして、そういう方法が法令上はあり得るというふうにお答えさせていただきたいと思います
  51. 土井たか子

    土井委員 技術的にはそういう方法があるという通産省側のお答えなんですが、さてこれから、通産省じゃないのです、外務省にお尋ねますよ。かつての南ローデシアは、先ほど申し上げたとおり、白人少数支配による人種差別に対する経済制裁ということで国連決議に基づいてそういう措置がとられたということを、われわれはよく承知いたしておりますイランに対する制裁については、ソ連の拒否権が発動したとはいえ、国連の安保理においては決議は否決をされているわけですね。また、輸出貿易管理令第一条の六項を見てまいりますと、通産大臣輸出承認しない場合、それは「国際収支の均衡を維持し、並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため必要がある」場合に限られているわけです。対イラン輸出承認しない場合の措置ということになってまいりますと、これは一体、いまの問題にいたしました輸出貿易管理令の別表第一の二にイランを掲げるということが技術的にはできるとしても、外務省のお立場からしたらこれはどうお考えになりますか。
  52. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この法律はやはり通産省の所管でございますから、その法律の運用、解釈についてはやはり所管の省からお答えする方が適当だと思います
  53. 土井たか子

    土井委員 外務大臣、おかしいじゃありませんか。いま私が取り上げた、なぜこの別表第一の二にかつての南ローデシアが入れられたかといういきさつは、通産省の判断によって入れたんじゃないですよ。国連決議に基づくという前提があるのです。その国連に出ていっていろいろ物を言っているのはどこなんですか。外務省じゃありませんか。しかも、その事情推移に対して判断するのはどこなんでしょうか。通産省じゃない。外務省じゃありませんか。いまイラン問題に対して一体どこが日本の国家を代表してその対応を国際間において種々問題として提起し、そして日本意思決定をしていっているのですか。外務省じゃありませんか。  外務大臣、この問題に対してどうお考えになります。大事なことですよ。関係通産省だからなんというのはちょうとおかしいのじゃないですか。
  54. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 別表にどうするとか、そういうことになりますと、やはり法律の所管の官庁から答えた方がよろしいと思います。もちろん、大きな政策につきましては国内問題と国際問題、外交問題が絡み合っておりまして、先ほど申し上げましたように、総理大臣を含む関係閣僚で連日協議を行っておるわけでございますので、もちろんそういう意味での責任といいますか判断は、関係閣僚共同して行っておるわけでございます
  55. 土井たか子

    土井委員 それならば、共同して行う場合の外務大臣のお立場はどうなんですか。輸出貿易管理令の別表第一の二にイランを入れることに対して賛成なんですか、反対なんですか。外務大臣としては、これを入れることは日本としてはしてよいこととお考えなんですか、これはやめるべきだとお考えなんですか。いかがですか。
  56. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 繰り返しになりますけれども、内外が非常に関連してまいります政策の意思決定は、いま申しましたように内閣として総理大臣の判断に基づいて関係閣僚が協議してやるよりほかに方法がないわけでございまして、そういう意味の決定をまだしておらないいまの段階で、外務大臣がこう思うとかああ思うということは言うわけにもまいらないと思うのです。
  57. 土井たか子

    土井委員 事これは対イラン問題ですよ。閣僚の中で一番これについて、どうなのかということをお考えとして披瀝されるべきは外務大臣じゃないですか。その外務大臣が、決まらない限りは言うことができないなんというふうな情けないことを言われるのはもってのほかだと思います。少しはそこのところで考えをはっきりさせてください。外務大臣、いかがですか。
  58. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も余り貿易管理令の詳細を知らないわけですが、国内の権利義務その他にもかなり関係のあるものであるというふうに承知しておるわけでございまして、これを担当の官庁の検討を十分経ないで私の立場で申し上げるわけにはいかないということでございます
  59. 土井たか子

    土井委員 国内措置とは別にこれをどういうふうにお考えになるかということで私はいまお尋ねをしているわけです。国内情勢についての判断は通産大臣を初め他の関係大臣がお考えになるでしょう。対イランということで国内措置をどういうふうに外務大臣としては取り扱いをされるかということによって、これは立法措置の問題ですから、イランに対する輸出の問題は日本としてこうなのだということに具体的になるのです。したがって、この問題について外務大臣としてどうお考えかということをもう一度私は聞きます。いかがですか。
  60. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本政府としての方針は、EC九カ国のリスボン会議の決定と同調してイラン問題に対処するということまで決めておるわけでございますが、ECが何をやるか、いまの段階ではまだわからないわけでございます。その段階日本の方がこういうことをやるのがいいのか悪いのかということについて申し上げることはまだ困難だ、いろいろなケースについての検討は各省それぞれやっておると思いますけれども、いまのような情勢でございますので、外務大臣としてどうだということは、やはり内閣としての意思決定が行われるまでは言えない状況にあるわけでございます
  61. 土井たか子

    土井委員 国内立法措置に対しては、外務大臣としては消極的な御態度と御認識をお持ちになっていらっしゃる、このように理解してよろしゅうございますか。
  62. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 それはやはり、とるべき措置内容が明らかになってこないと立法が必要となるのか必要でないのかということは判断できないわけでございまして、そういう意味では消極的とも積極的ともいまのところは言えない段階でございます
  63. 土井たか子

    土井委員 経済制裁が有効でなかった場合に、アメリカ側は海上封鎖をも考えていると言われておりますが、もしアメリカが海上封鎖をやるということになってまいりましたら国際法上の法的根拠が問題になるだろうと思うのですが、これはどういう法的根拠がございますか。
  64. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 海上封鎖というようなことが言われておるわけでございますけれども、実際上、米国が具体的にどういう措置をとるかということはまだわかっておりませんし、この場合、それを仮定して国際法上コメントをすることは差し控えたいと思います
  65. 土井たか子

    土井委員 伊達さん、条約局長でしょう。海上封鎖についての国際法上の法的根拠をあなたはおっしゃればいいのですよ。いまどういう御答弁だったのですか。アメリカがやる気があるのかないのか、状況について私は聞いているのじゃないのです。海上封鎖についての国際法上の法的根拠は何なのですか。
  66. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 海上封鎖というのは実力の行使、武力の行使と考えられるわけでございます。したがって、国際法上武力を行使することが許される場合というのはいかなる場合であるかということになりますれば、それは国連憲章の四十一条、四十二条等に定めてございます安保理の決議による国連加盟国の義務としての平和維持のための武力の行使、それからもう一つは、自衛のための武力の行使という二つのことが考えられるわけでございます
  67. 土井たか子

    土井委員 平時において海上封鎖をすることはできるのですか。
  68. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 むずかしい問題でございます。と申しますのは、戦前の、かっての国際法におきましては、戦争というものが国家間の紛争解決の合法的な一つの手段として認められていたわけでございまして、その限りにおきまして戦時封鎖というものもございましたし、もう一つは、戦争でない、宣戦布告に至らないような場合でも、平時という言葉を使いまして平時封鎖ということがあったわけでございます。ところが、現在の国際法におきましては、戦争というものが非合法化されていまして、戦争法規というものがいま変化を遂げている過程にございます。  したがって、旧来の意味において戦時封鎖でございますとか平時封鎖というような区別が果たしてあるのかないのか、その辺私としてもここで明確にお答えするわけにはまいりませんが、先ほども申しましたように、自衛権の行使によって正当化されるということになりますと、必ずしも戦争ということではなくて自衛権の行使として海上封鎖というようなことも正当化される場合があるであろう。これは平時封鎖であるか戦時封鎖であるかという区別は必ずしも現在の国際法下においては該当しない、区別を特にすることは余り適当ではないのかもしれませんが、先ほども申しましたように、いわゆる戦争宣言が行われていないで自衛権の行使として海上封鎖が行われることはあり得るであろう、それは現在の国際法において排除されるものではないであろうというふうに申し上げられると思います
  69. 土井たか子

    土井委員 現在の国際法において排除されるものではないといま言われましたね。宣戦布告をするに至っていない状況の中で自衛権を行使をするという状況というのは、それは何に基づいてやるのですか。どういうわけで自衛権を行使するのですか。
  70. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 これは、自衛権に基づいて行う武力行使というものは現在の国際法、国連憲章下でも認めているわけでございまして、これはどういうことに基づいて自衛権を行使するかと申しますれば、それは自衛権の急迫不正な侵害に対してほかに手段がない場合に、その侵害を排除するに必要な最小限度の武力を行使するという根拠でございます
  71. 土井たか子

    土井委員 いま、イラン側からアメリカに対して、いま伊達さんが言われましたような武力行使が現にあるのですか、ないのですか。
  72. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 武力の行使はございません。
  73. 土井たか子

    土井委員 そうすると、先ほどから言われたことからいたしますと、海上封鎖についての国際法上の根拠というのに乏しいわけですね。国際法上考えまして、アメリカ側がもし経済制裁が有効でなかった場合に海上封鎖もあえて辞さないと言っている物の考え方というのは、国際間においては通用するものとは考えられないと私は思いますが、いかがでございますか。
  74. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 自衛権の行使の要件を先ほど申し上げたのでございますが、私の言葉が少々足りなかったためにちょっとおわかりいただけなかったと思うので、補足させていただきますが……
  75. 土井たか子

    土井委員 説明は結構ですから、私の質問にだけ答えてください。
  76. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 それに関連することでございます。  自国及び自国民に対する侵害ということでございまして、必ずしも自衛権の行使の根拠が相手の武力行使ということには限らないわけでございます。国際法の本などを読みましても、自国民に対する生命、身体、財産等に対する侵害、これが気迫不正なものであって、他の先ほど申し上げました自衛権の行使の条件というものに該当するものであれば、これは自衛権の行使として、それを排除する武力の行使が認められるということでございまして、たとえばまさにこの例なども、国際法の本に挙げてあるわけでございますが、自国民が他国の領域において非常な急迫不正な侵害を受けているという場合も、これは武力の行使というものが自衛権の行使の一態様として正当化されるものであろうということは、日本の国際法でも、外国の国際法でも、一つの通説と申しますか、そういうことになっておるわけでございます
  77. 土井たか子

    土井委員 実にわかりにくい説明なんですね。国際法の通説とおっしゃるが、それでは国際法上の法的根拠をひとつ明示していただきましょうか。
  78. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 国際法上の法的根拠は、したがいまして、先ほど来も御説明申し上げておりますように、自衛権の行使として正当化される場合もあるであろうということでございます
  79. 土井たか子

    土井委員 そういう一般論で、自衛権の行使として正当化される場合もあるであろうなんというふうな論法をおっしゃるのならば、恐らく逆に言えば先日のあのソビエトのアフガンに対する侵攻、これだって恐らくソビエトに言わせればいま伊達さんがおっしゃったような論法で国際的に正当化される理由があると言うに違いないと思うんですよ。したがって、このソビエトのとった行為はけしからぬと言ってソビエトに対して制裁をする資格は、いまアメリカがもしこの海上封鎖というものをとったときにはなくなる。  アメリカがいま海上封鎖をとろうというふうなことを問題にしている際、したがって私たちは——なぜ私がこういうことを言うかというと、アメリカ日本に対して、イランに対して経済制裁をとれということを要求してきた節も、何の時点の相談もなしに一方的に持ってきているわけでありますから、この海上封鎖の問題についても日本に何の相談もなしにこのことを勝手に決定して勝手に行うということも懸念されて当然だと私は思うのです。したがって、こういうことからすると、よほどこの問題に対してしっかりと見きわめを日本として持たなければいけない。したがって、先ほど来の条約局長の御答弁ではどうも納得いたしかねるのですよ。  条約局長として、この海上封鎖という問題に対して、いまアメリカがとろうとしている、また、とろうとしているということを外国に対して言っているというこのこと自身は、果たして国際法上認め得ることなのかどうなのかということを、もう一度はっきりおっしゃってください。
  80. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  先ほどお答え申し上げたところでございますけれども、外国にある自国民の身体、生命等に対しまして重大な、そして急迫した侵害がありまして、ほかに救済する手段がないというような場合に、その自国民を保護、救出するために自衛権の行使として本国が必要最小限度の武力を行使するということは、国際法上認められているものでございまして、この自衛権の行使というものは、当然のことながらそれは厳密に解釈されるべきものであろうと思うわけでございます。  したがって、ただいま先生の例に挙げられました米国による対イランの海上封鎖というようなものにつきまして、一体その態様がどのような規模で、どのような目的で、どのようなぐあいに行われるのであるかということをよく検討いたしませんと、実際問題としてそれが自衛権行使として正当化されるものであるか正当化されないものであるか、その範囲でございますね、自衛権の行使の限度、というものとの関連におきましてわからないわけでございまして、一般論として申し上げる以外になく、一般論としては先ほど私が申し上げたところでございます
  81. 土井たか子

    土井委員 その一般論がよくわからないのですが、規模の大小を問わず海上封鎖というのは国際法上認められるのか認められないのか。このことについては私は根拠がないと思っているのです。アメリカ側が現にそれを制裁として行うということに対して、一体これを認めてよいのか、認めることができるかできないかという問題を考えていった場合に、これは大変疑義なしとしない。そこで質問をしたわけであって、いまの伊達局長の御答弁を承っておりますと、規模が小さければいいようなふうにも聞こえてくるような御答弁ですよ。事情推移を見ないとそれもしかしわからない、だからそれに対応するような海上封鎖の規模であるかどうかというのをひとつそのときになって判断してみようというふうな御答弁の向きのように聞こえるのですが、これはそのように受けとめていいのですか。
  82. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 自衛権行使の条件と申しますのは、必要最小限度、侵害を排除するために必要な最小限度ということでございまして、これは規模が小さければいいとか規模が大きければだめだということでなく、やはりその目的、侵害の大きさ、それを排除する必要最小限度という相対的な観念でございますので、これはやはり現実事態に即して判断をしていく以外にはないであろうと考えるわけでございます
  83. 土井たか子

    土井委員 これはさらに次の時間に私はまた詰めたいと思います。  時間が経過しましたが、ただ一点だけ私はさらにお尋ねをしたいことがあります。オリンピックの問題なんですが、先日外務大臣は、文部大臣や、さらには総理と相談をするということをおっしゃりながら、個人参加も好ましくないということを衆議院の決算委員会の席で御答弁になったようであります。個人参加をどのようにして規制できるのですか。現に昨日あたりの新聞を見ますと、JOCの委員の過半数が、参加すべきだというふうな意見を出しておられるようであります。こういうことを規制する法的根拠というのは果たしてあるのですか。これはJOCが参加したいということを決定されれば、それを一〇〇%尊重すべきであって、実は私は、オリンピック是か非か、参加することが是か非かということを政党という立場で取り上げることすら好ましくないと思っているのです。つまり、政治が介入すべき問題ではないと思っているのですね。だから、そういうことからすれば、大臣が、個人参加も好ましくないなんというふうな向きを国会で答弁されるということ自身がおかしいな、いかがかと思うという立場でいま私はお尋ねしているわけでありますが、これは一体どうなんですか。
  84. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 決算委員会で井上委員の御質問に対しまして、私は、これは参加の問題は、オリンピックの担当は文部大臣でございますし、やはり総理を含める政府全体としての意思決定が必要なので申し上げられないということを答弁いたしましたところが、外交上望ましいか望ましくないかということで返事をするようにというお話でございましたので、外交上は、そもそもこのオリンピック参加不参加の問題が起こりましたのは、ソ連軍のアフガニスタンに対する軍事介入ということから発しておるわけで、その事態が解消すれば当然この問題は解消する、ただ現状においてはその事態が解消していない、そういう点から言えば、外交上ということであれば好ましくないということを申し上げたわけでございます。  さらに個人参加、個別参加の問題についての御質問があったわけでございまして、これもJOCが元来決めることでございまして、私の立場では答えにくい、しかし重ねて外交上また望ましいか望ましくないかということでございましたので、やはり外交上ということであれば、JOCの正式参加あるいはそうでない個人あるいは個別的な参加の場合も、多少程度の差はあるかもしれないけれども、外交上から見れば望ましくないだろうということでお答えしたわけでございます。  現行のIOCの規約では、個人参加は認められていないと承知しております。ただ、ローザンヌで今度IOCの会議がございまして、そこでそういう問題が論議されるという情報もございますので、そこの決議の模様も見てみなければならない。従来のIOCの規約では、個人参加、個別参加というのは認められてないというふうに承知しております
  85. 土井たか子

    土井委員 これで終わりますが、最後に一言だけ、これは確認をさせていただいて終わりたいと思います。  いま大臣がおっしゃったとおりJOCが決定すべき問題なのです。したがいまして、JOCが決定をされれば、日本政府が何とおっしゃろうと、このJOCの決定に従って、政府としては何も脅えない、このようなことだろうと思いますが、このことは確認させていただいてよろしゅうございますね。外務大臣、どうです。
  86. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その点は二月一日の政府の見解表明と変わっておらないわけでございます
  87. 土井たか子

    土井委員 終わります
  88. 中尾栄一

  89. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三であります。私は、きょうの質問の時間を与えていただいたわけでございますが、ちょっと最初に質問の立場を申し上げておきます。  三月二十一日から三日間、アラブ連盟の二十五周年記念総会がチュニジアで行われまして、私は実はアラブ連盟の方から招待を受けましてアラブ連盟の総会に参加をしてまいりました。その間、PLOの幹部にも会い、あるいは湾岸諸国の方をずっと回ってまいりまして、アラブを単なる石油の市場としか考えていない日本というのは、アラブというものの心をつかむのにいまいかに立ちおくれておるかということを、実は身をもって体験をしてきたわけであります。もちろんイランはアラブではございませんけれども、イスラムという次元でとらえれば一体として見てもいいわけでございますけれども、いまの外務大臣の御答弁を聞いておりましても、あちらを立てればこちらが立たず、本当に基本的なスタンスというのですか姿勢というものがないものですから、アラブ側からの日本に対する期待を大変裏切っておるのではないかということを痛感して帰ってきたわけであります。  私は、たまたま昨年の国際児童年の愛知県の集中行事に、パレスチナの難民の戦災孤児を二人日本に呼ぼうではないかということを計画いたしまして、戦災孤児を中心としました児童展だとか文化展などいろいろなことをやった。そういうことにアラブ側の方が非常に喜んでくれまして、今回私を招待してくれたわけでありますが、そういう立場から、私は外交問題は素人でありますけれども、素人なりの立場からの質問をさせていただきたいと思います。  まず第一に、和田大使の帰国の報告の問題でございますが、国際赤十字がテヘランの人質と面会をするということを和田さんはかなり評価をしておみえになりまして、わが国制裁政策をとることに必ずしも賛成ではないというような趣旨を表明されておみえになります。いまの大臣のお話によりますと、制裁はある程度人質解放に役に立つのではないかというきわめて重大な御答弁をなすっておみえになりますが、その点について一体どのようにお考えになっておみえになりますか。
  90. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 人質がとられましてからすでに五カ月以上経過いたしておりまして、一つは大使館を占拠して外交官を人質にするということは国際法に認められるところではございませんし、そういうことが自由に行われるようになりますと、世界の秩序というものは非常に乱れる。この点では、従来から日本政府もそういうことを許容できない。これは世界的な世論でもございまして、昨年十二月の国連の決議におきましても即時の人質解放、あるいは国際司法裁判所でも十五人の判事が全部同意見で発表しておるわけでございます。そういう意味で、国際世論で認められないということの表明がイランに対して人質解放する動きを強めることになるのではないかということが一つの期待でございます。  どうしてもそれが効果がないということになりますと、さらにもう一歩進んだ対応が必要になるかもしれない。これは経済制裁という形で人質解放に有効であるかどうかという点は先ほど土井委員からも御質問がございまして、これは判断がなかなかむずかしいわけでございますけれども、しかし何らの圧力がない場合には人質解放がさらにおくれるような情勢がありますれば、追加的な措置人質解放促進に役立つ場合もあり得るのではないか、そういう意味で申し上げたわけでございます
  91. 草川昭三

    草川委員 私どもなかなか理解しがたい御答弁でございますが、日本なりEC諸国米国圧力経済制裁をさらに強めていくという方向になると、目には目というような一つの発想もあるわけでありますから、対日報復というものはかえって非常に強まっていくのではないだろうか。物の本質的な、抜本的な原点での解決をしないわけですから、対立のエスカレートだけが出てくるわけであります。そういう意味で、特に日本には石油供給の全面中止だけではなくてその他の対抗措置もとるということを向こうは表明をしておるわけでございますが、一体その他の対抗措置というものはどのように予想をされるのか、あるいはまた、この全面供給の中止というものをどう受けとめたらいいのか、御答弁願いたいと思います
  92. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 その他の措置とおっしゃいますのは、多分きのうの某新聞に出ましたバニサドル大統領日本のその特派員とのインタビューにおける発言についてかと存じますが、あのインタビューはもとよりわれわれはよく読んでみましたのですが、いかなるほかの措置考えておるかという点は、大統領の発言からだけではなかなか明確には読み取れないきらいがございます。  われわれといたしましては、イランとの間の友好関係の保持、特に相互依存関係が非常に深まっております。特に革命後深まっておるのは委員もよく御存じのとおりでございますが、これらをぜひともわれわれとして守っていきたいということは再々政府首脳が申しておりまして、またイラン側に対しましても外交ルートを通じまして述べておるところでございます。これは御承知のことかと存じます。  そこで、われわれとしましては、イラン側に対していろんな制裁措置云々という言葉が——われわれとしては余りそういうものはしなくて済むようにしたいというのがこれは本当の気持ちでございますが、さりとて、やはりああいうような国際法違反というのが行われている以上は、われわれとしても国際社会の一員としての責任を果たしていかなくちゃいけないのである。ただ、それを具体的にどうするかというのは、これはまたいろいろと考慮があるわけでございまして、御存じのとおり、いまEC諸国と緊密な連絡をとって対応策を考究中でございます。  そこで、どのような策を行うかということについてはまだ全く決まっておらない次第でございますので、われわれとしてもイラン側がどういう対応を示してくるのかよくわからない。いままで言っておることは、もちろん石油の供給をストップするあるいはカットするといったような趣旨のことはいろんな発言等からわれわれも読み取っておりますけれども、それ以上のことは、いままでイラン側としては少なくもわれわれの知る限り何も申しておらない次第でございます。そういうわけで、現実にはどのようなことを向こうの人が考えておるのか、ちょっとまだよくわかっておらないということを申し上げたいと思います
  93. 草川昭三

    草川委員 じゃここで少し通産省の方にお伺いをいたします。  アメリカの追加制裁というものがいずれ具体化してくると思うわけでございますけれども、通産省として、先ほども出ました貿易管理令の発動というものをどう見ておみえになるのか、ひとつ通産省の方から見解を賜りたいと思います
  94. 北川正

    北川説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御質問でございますが、先ほどからの当委員会における論議でもおわかりいただけますように、現在事態はきわめて流動的でございます。しかも、本問題はきわめて微妙かつ重要な問題でございますので、私ども十分慎重に取り扱う必要があるというふうに考えております。いずれにいたしましても、これは政府の最高方針というものが前提になると考えておる次第でございます
  95. 草川昭三

    草川委員 いまの御答弁ではございますけれども、とりあえずいまのイランとの貿易の輸出関係先ほどもいろいろなデータが出たわけでございますが、そのデータの原点が非常に資料にならないような条件というのがあるわけですね。たとえば対前年度の比率ということを考えてみますれば、特に前年の数字というものは通常な状況ではないわけであります。だから、急激に伸びておる。急激に伸びておるからひとつ何らかのアクションを起こさなければいけないというようなことが出るかもわかりませんが、そうではなくて、平均的な年度でとれば、必ずしもそんなに大きいものではないだろう。だから、行政指導なら行政指導というものをとりあえず中心に、通産お得意の行政指導でいくならば、何も非常に相手側をいら立たしめるような貿易管理令の発動というようなことはしなくてもいいのではないだろうか、こう思うわけでございますが、こういう考え方について外務省の方の見解を賜りたいと思います
  96. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう範囲でとどまれれば望ましいことだと思うわけでございます。ただ、情勢は御承知のように相当厳しいわけでございまして、一方におきましてアメリカ国内の情勢、五カ月以上人質問題が解決しない。人質の家族等からは再三大統領と政府当局に対しての要請がある。また、最近のニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト等の主要な言論機関の論説等を見ましても、これだけアメリカが屈辱的な扱いを受けこういう状態に置かれておるのにこのままにほっておけるのか、一体同盟国とは何か——ワシントン・ポストの最近の論説には、同盟国とは何かという論説で、これだけアメリカが困っているときに同盟国あるいは友好国というものが協力をしないならば、これらの友好国が困ったときにアメリカ協力する筋はないのだというようなかなり激しい見方なども、ワシントン・ポストというような代表的な新聞に出ておるわけでございまして、日本の置かれた立場から見ますと、人質という国際法上の問題があり、さらにアメリカイランという関係がございまして、イランにおける反響と米国における反響と両者を踏まえながら日本国益のために誤りのない対応をしていかなければならないということが、いま日本政府の置かれておる立場であろうかと考えておるわけでございます
  97. 草川昭三

    草川委員 われわれは答弁を聞いておりましても非常にいら立ちを感ずるわけですけれども、要するに問題は、根本的には米国イラン関係なんでしょう。そして、イラン人質の問題をやっておりますけれども、モサデクが出た当時の干渉の問題だとか過去の米国の対応も間違っていたわけですよ。そういうものにわれわれがいまとばっちりを受けておるという姿勢を明らかに外務大臣が示すことが、国民にも非常にわかりやすい問題なんです。  同時に、アラブの方々にとっても、日本というのは一体どちらを向いておるのか、アメリカの方に対して経済的なり軍事的な関係があるということは見ていてもよくわかる、しかし、それにしても、われわれは非常に日本というのは信頼しておった、あるいは経済的にも大きな交流があるわけだから、もう少しアラブの気持ちがなぜ理解できないのかということがあるから、どんどんどんどんエスカレートするわけです。  本来ならば、国会審議も大切ですけれども、外務大臣だとか外務次官なんというのはこういうときにこそアメリカに飛び、アラブのいろいろな国々に飛び、仲介の労をとるべきが日本の役割りではないでしょうか。これがわかることが国民が外務省を信頼することになり、そして中東和平の根本的な問題の解決になると思うのです。そういう姿勢が全然ない。軸足がどこにあるかわからぬわけでしょう。どっちを向いているかわからぬからわれわれがどういう質問をしたって明快な答弁が出ない。明快な答弁を必ずしもわれわれは期待をするわけではないけれども、もっとはっきりする立場を示すことを国民は期待をしておるわけです。特に今日的な重要な問題ですから。いま大臣が言われたように、ここの一言が世界じゅうに飛ぶ。世界じゅうに飛ぶことがこわいのではなくて、基本的な姿勢を明らかにすることがいまわれわれの願いではないだろうか、こう私は思うわけであります。  そして、EC諸国の話が出ましたが、われわれも現地でいろいろな話を聞いておりますし、ジスカールさんがいろいろな意味で湾岸諸国を訪問されて、五月二十六日でございますかパレスチナ問題の和平交渉が行き詰まると見ておるわけでございますが、私はこの和平交渉が行き詰まると、一挙に中東和平の問題はヨーロッパ主導型に移るのではないだろうかと思います。だから、EC外相会議が二十一日から開かれると言いますけれども、決してそんなに、対米的な追従と言うと言葉が悪いわけですけれども、アメリカが期待するような制裁には踏み切らぬと私は見るわけです。素人ではございますが、そういう私なりの判断があるわけですから、もう少しいまはアラブ全体に理解を示す態度を日本は示した方がいいのではないだろうか、私はこういう意見であります。  さて、きょうは時間がございませんので、ついせんだって大平総理の特使として中東、南西アジアを訪問した園田特使が、三月十八日、日本記者クラブで講演をしたパレスチナ問題の発言が、予想外に現地では不評を買っておるわけであります。不評ということよりも怒りに近いものがございます。園田特使はPLO議長のアラファト氏も来日するだろうとか、村田大使を通じてア首連でいろいろな動きがあるからということも申し上げておみえになるようですけれども、パレスチナ問題が第二義的な問題であるということ、PLOがこわもてであるというような発言、いろいろな問題をつくりまして、日本人の顔を見たくないというぐらいにPLOの本部側は激高いたしております。情報局あるいは政治局の受付の係の人間でも、園田の発言はノーグッドだ、これはアンチパレスチナだ、そしてそれはアンチジャパンにつながるのではないだろうか、一体日本は中東というものをどのように理解しておるのかということで、激高というよりも怒り心頭に発しておるという形で、現地に園田発言というものは伝わっておるわけであります。  ここで一言、園田さんは特別に外務大臣の辞令を持って中東に特使として行かれ、そして公式の記者会見をやられておるわけでありますから、あれはあくまでも日本政府考え方であるのかないのか、明確に御答弁を願いたいと思います
  98. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 園田特使の日本に帰られての発言でございますが、パレスチナ問題は重要な問題であって中東和平の核心であるけれども、包括的中東和平実現のためには、このほかにもイスラエルのゴラン高原占領地からの撤退など、そういう問題もあるという趣旨発言されたと了解しておるわけでございます。いずれにしても日本政府のPLOあるいはパレスチナ問題に対する態度は、全然従来から変わっておるわけではございませんで、先般も、この数年来日本政府として公式の場でPLOの問題、パレスチナ問題についての意思表明、これは国連会議その他いろいろな場合がございますが、あるいは国会における総理の答弁等もございまして、こういう資料の要点を収録したものを作成いたしましてアラブ諸国等にも届けておりまして、これに対して好意的な反響も現地からいろいろ得ておるわけでございまして、私どもとしてはそういう方針を将来も堅持してまいりたいと考えておるわけでございます
  99. 草川昭三

    草川委員 私の聞いておるのはそういう経過ではなくて、園田特使が発言をされてその報道が向こうに伝わり、そして向こうの方では激高しておるという事実の認識の上に立って、あれはやはり外務省の正式見解として裏打ちをされるのか、いま何かパンフレットを出したからどうのこうの言っておみえになりますが、パンフレットを出して了解を得たというのは、園田発言は外務省としての正式な見解でないからああいうものを出したのか、明確にお答えを願いたいと思います
  100. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いろいろ現地におきまして日本政府の中東問題に対する政策あるいはPLOに対する立場、明確でないような点がある場合も見受けられるものですから、できるだけそういう点を明らかにするという趣旨でいまのような資料も配付したわけでございまして、先ほど申しましたように、日本の対中東態度には従来の方針からの変更はないわけでございます
  101. 草川昭三

    草川委員 では、わざわざ園田発言があってからこの「パレスチナ問題と日本」というのを中近東の各大使を集めて配ったということは、誤解があったから、あの園田さんの発言は外務省の見解と違うから、昔からの見解はこうですよという意味で否定のためにこれを出されたと受け取っていいわけですか。
  102. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 ただいま御言及の紙を出しましたときにアラブ諸大使説明したのは私でございまして、その説明を繰り返して申し上げますと、この資料の発出のタイミングについては特段の意味はないということを申しまして、第二に、何ゆえ出したかという理由につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、そもそも日本のパレスチナ問題に関する関心及びこれについてのいろいろな態度表明はずっと昔にさかのぼるわけでございます、もう十年近くにもさかのぼっておるわけでございまして、この点がやはりなかなかよく知られていない、そういうことであるから、この際ひとつ手ごろな資料としてまとめてお届けします、こういうふうに御説明申し上げたわけでございます。  そしてアラブ大使の中に、ただいま委員が御指摘になりました園田発言との関係を質問される方もございました。それに対して私からは、それは特段の関係はない、そしてただいま大臣答弁いたしましたようなラインで、改めて私からも非公式ではありますけれども説明いたしまして、この小冊子につきましては別に園田さんの御発言関係はないのだけれども、しかしこの小冊子をよく読んでいただければ、日本国日本政府のいままでずっと堅持してきた政策というものがよくおわかりでありましょう、そういうことを御説明いたしましたところ、大使方は御納得いただいたというのが私の印象でございます
  103. 草川昭三

    草川委員 そういう中途半端な態度をとっておるから、御存じのとおりトリポリでいまアラブの最強硬派といわれる方々の首脳会談というのが開かれておるわけでございますが、このトリポリで開かれております首脳会談の結論は以前にも増してかなりラジカルな結論を出しておるようにも見えるわけであります。そしてイランに対する問題もここの中でずいぶん出ておるようでございますけれども、私はもう少しパレスチナ問題にしろあるいは中東全体の問題としてこれに取り組まないとだめだと思うのですが、たとえばこのトリポリの問題についてはどういうように外務省は判断されておみえになるわけですか。
  104. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 ただいま御指摘のトリポリにおける会議におきましては、イラン革命に対する支持、支援といったようなこと、それからアメリカがもしイランを侵略するようなことがあれば断固としてこれに対抗する、大ざっぱに言えばその二つが柱であったかに承知いたしております。  われわれといたしましては、これらの国々のそれぞれよってもって立つ立場あるいは政策等に一つの特色があることは、御指摘のとおり認識いたしております。また、これらの国々がただいま置かれました状況のもとでいろいろな事情を考慮してそういう意図を表明することに合意したということも承知いたしております。これらの国々と日本との考え方が必ずしも一致しておるわけではないことも御存じのとおりでございますが、いずれにしましてもわれわれ一々他の主権国家のとった態度あるいは表明した意図について論評をするのは差し控えたいと存じております。  ただし一つだけ言えることは、われわれとしても、イラン革命の本質といったようなことについてはわれわれなりに認識を持っておるつもりでございまして、現に、御存じのとおり、イラン革命が成就しました翌日、和田大使日本国は新しいイラン政府承認するということを申し述べに行きましたときに、その当時の総理大臣でありましたバザルガン氏は欣然としてこれを受け入れて、日本と革命イランとの長きにわたる良好関係が続くことの希望を表明されたことは当時報道されたとおりであります
  105. 草川昭三

    草川委員 そういうような理解を示しておられるならば、いまの中東の問題の中で非常に重要なパレスチナ問題で、特にPLOの東京事務所の開設等の問題についていろいろな意見が出ておるわけでございますが、もう少し前向きの姿勢があっていいのではないだろうか、こう私は思うわけであります。いまのように回りくどいことではなくて、正式に訪問をするとか会うとか、対応が立てられてしかるべきだと思うのです。  園田さんが記者会見でちらっと三つの条件というようなことを漏らされたそうでございますけれども、多分これはPLOの東京事務所の問題等を含めてのことではないだろうかと思いますが、この点についてはどういう内容を示唆されたのか、お答え願いたいと思います
  106. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 園田前特使の発言されました、報道にある、PLOの要人の訪日実現に必要とする三つの条件というのが具体的に何であるかは実はわれわれもよく承知いたしておりません。しかしながら、従来からのPLOとの接触を通じまして、先方の態度等をおもんぱかってみますと、恐らくは、終局的な目的は、日本政府からのいわゆる公式承認、これは御存じのとおり、国際法上の承認といったものではなくて政治的な承認であることは御理解いただけると思いますが、それを取りつけるということであろうと考えております。  したがいまして、それから出てきますのは、具体的には、たとえばPLOの要人の日本政府による公式の招待、それからPLOの東京事務所への外交特権・免除の付与、さらにはPLOをパレスチナ人の唯一正統な代表と認める、恐らくこの三つの点ではないかと想像されます。われわれとしては、一応右を想像しているのみでございますけれども、そんなところかと存じます
  107. 草川昭三

    草川委員 最後の質問になりますが、それだけおっしゃっておみえになるわけでございますし、先ほども、特使としての立場と外務省の見解という問題についてもいまのような見解でございますので、あるべきときの決断ということが非常に重要なときが迫っておるのではないだろうか、そういう問題がアラブ諸国全体に対する印象をまた変えていくことになるのではないか、こう私は思うわけであります。  最後になりますが、現在東京にありますPLOの東京事務所というものに対して、たとえばいまパレスチナの難民の子供さんたちに、絵だとかあるいはまた善意の意味での基金もずいぶん集まっておるわけでございますので、そういうもので仏この東京事務所を通じてパレスチナの方々にお渡しすることができるように、アラブ全体に好感を持って受け入れられるようなことをもう少しとるべきではないだろうかと私は思うわけでございますが、ひとつ大臣の方から見解を承って、終わりたいと思います
  108. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは先ほどの「パレスチナ問題と日本」の資料にもございますが、日本としては、パレスチナ人の自決権、その自決権の中には独立の国家をつくる権利も含めて日本はサポートしておるという、従来から前向きの立場をとってきておるわけでございます。いま御指摘の問題等についても、将来さらに検討を続けていくということで御了承願いたいと思います
  109. 草川昭三

    草川委員 これで終わります
  110. 中尾栄一

    中尾委員長 榊利夫君。
  111. 榊利夫

    ○榊委員 私は、まずイラン問題について質問申し上げます。  大平首相と外相は四月三十日から訪米を予定とれておりますが、カーター政権が、御承知のように、イラン断交加えて制裁、その制裁協力各国要求するとか、オリンピックボイコット要求とか、いわば目が血走っている状態でございます。そういうときに、火中のクリを拾う結果になるんじゃないか。火中のクリを拾いに行くようなものではないか。どうも時期が悪過ぎる、こういう声がマスコミにも出ておりますし、政府筋に近いところでもそういう声があるというふうに聞いておりますけれども、そのことについて大来外務大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  112. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本アメリカ関係はやはり日本の外交の一つの重要な柱でございまして、日本の経済の問題のみならず、日本の安全保障その他、国民の安全と福祉に大きな関係のある外交関係が日米間にございます。そういう意味で、問題がある場合に避けるということはあってはならない。問題があればなおさら直接顔を合わして話し合う必要がある。そういう意味では、こういう時期に総理が行かれることは非常に大きな意味があるというふうに考えております
  113. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、公正に見まして、今日大変国際情勢の緊張が目立っておりますけさのテレビによりましても、日本時間のけさ六時、カーター政権はイランに対して全面禁輸措置をとったようでございますけれども、アメリカの場合は、パーレビ時代の輸出、大体月額三億ドル程度、それがすでに激減しておりまして、食糧輸出なども、二月、三月はゼロという状態でございます。だからそこは大して大きな問題ではないわけでありますけれども、差し迫って重要なものは、そういう制裁協力日本など同盟諸国に求めているということ、しかもみずからも海上封鎖とか武力行使を云々しているありさまでございまして、しかも、それに大統領選挙が絡んでいる、これはもう公知の事実でございます。  そこで、お尋ねいたします。  イラン大使館の占拠あるいは人質作戦、これはもちろん国際法上正当だと言えない、これは当然でございますけれども、アメリカのそうした要求日本がもしも同調していく場合、中東諸国をいわば敵に回す。産油諸国からも大変不信感を招く。イラン側からも当然、依存率一一%の石油の供給停止を含めまして、あれこれの報復措置を受けることは必至だろうと思うのであります。この問題であります。もちろん情勢はいろいろ流動的でしょう。しかし、この関係における傷口が拡大するということは必至だろうと思うのであります。どっちに転んでも、経済的損害を受けるのは日本ということになります。  私は、そういうときに一番妥当で一番賢明な日本外交のあり方を根本的に考えますと、制裁協力することでなくて、アメリカ政府に対しても話し合いの解決を堂々と求めるということ、それが人質の人命を助ける上からも重要である、こういうように思うのでありますけれども、どうでしょうか。
  114. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの問題につきましては、三月に私ワシントンに参りましたときにも、バンス国務長官に対しまして、イランの問題については、人質問題に対するアメリカ人の心情はよく理解するけれども、全体的な中東情勢等を考えて、長期的な立場から判断し行動してほしいということも申したわけでございます。     〔委員長退席、佐野委員長代理着席〕 これに対して国務長官は、それはよく自分も理解するんだけれども、ただ、アメリカ人の忍耐心にも限度があるということについても理解してほしいという発言がございました。その後、いろいろ国連調査委員会等の活動もございまして、交渉による人質問題の解決の努力アメリカとしても相当やってきたと思うのでございますが、四月に入りましてこれが成立しないという状況になったわけでございます。  西欧諸国日本とはやや似たような立場に置かれておるわけでございまして、従来からも西ヨーロッパの諸国と密接な連絡をとってまいりましたが、今回はリスボン会議EC九カ国の協議決定に日本の参加を求めてまいりまして、日本も参加して共同歩調をとることを決定いたしました。その目的は、一方においてイランにおける人質の速やかな解放、他方において余り危険な状態が出てまいらないように友好国の立場からアメリカ側にも働きかける、双方の意味をもってEC諸国共同してわが国努力をしておるわけでございます
  115. 榊利夫

    ○榊委員 ずばり言いまして話し合い解決を要望するということですか。その用意があるのか。どうでしょう。
  116. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは従来から話し合い解決を要望しておるわけでございます
  117. 榊利夫

    ○榊委員 ところで、九日のこの委員会で同僚の野間議員が、八日にマンスフィールド駐日大使高島外務次官に会った際の要求内容を聞いた際に、外相から、一般的な協力を願うということだったという答弁がございました。ところが、十六日、西側外交団筋によりますと、マンスフィールド氏は対イラン輸出を規制する立法措置要求した、非常に具体的になっているわけであります。外相答弁によりますと、先ほどもそうでございましたけれども、西側だけにそういう要求をしたかのように受け取れますが、日本には西欧と差をつけた要請だったのでしょうか。その点どうなんでしょうか。
  118. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはその後欧州各国等からも情報をとりました結果、全く同一の要請であったようでございます
  119. 榊利夫

    ○榊委員 だとしますと、対イラン輸出を規制する立法措置をとれという要求でございますか。
  120. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは先ほど土井委員の御質問に対してもお答えしましたが、経済面の措置については国連制裁決議案、これはソ連の拒否権で否決になりましたが、その案に沿ってということでございます。この中には食糧医薬品を除く輸出の規制という問題がございますし、また、必要ならばそれに対しての国内の立法的な措置という問題、それに新たに大使召還問題、それから、いまではないけれども、将来依然として問題が解決しない場合の国交断絶可能性について検討してほしい、内容は大体こういうことでございまして、それは日本だけでなくて、西側諸国に同じ趣旨要請を行ったようでございます
  121. 榊利夫

    ○榊委員 いま話を伺ってみますと大変な内容だったということを改めて知るわけであります。これは断交まで含む大変な要求であります。しかも立法措置まで含むわけです。日本の場合には国内の法的措置という手順を踏まなければいけないわけですけれども、その中で一つ浮かび上がってきているのが貿易管理令発動だと思います。これについては新聞でもすでにいろいろ論議をされておりまして、質問に答えて所轄の佐々木通産大臣は、貿易管理令の発動は絶対にしないでほしいということを述べておられるわけであります。そういう立場通産省、同時に政府立場ではないかと思いますが、そのことを外務大臣は御存じなのか、あるいはまたそれをアメリカ側に伝える意思はあるのかどうなのか、御答弁をお願いします
  122. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの問題は、貿易管理令は所管が通産省でございますので、通産省が直接の意思決定をすべき立場にあると存じます。同時に外交問題、財政問題その他いろいろな関連がございまして、従来からも関係閣僚、総理を含めて連日のように協議をしておるわけでございまして現段階でどういう対応をするか明確に決定する段階にはまだ至っておりませんので、ただいまの御質問についてお答えはむずかしいわけでございます
  123. 榊利夫

    ○榊委員 貿易管理令、さらには断交、大使召還、こういった問題についてはどういう検討をなさっていらっしゃるのでしょうか。そのおつもりなんでしょうか。
  124. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう問題については、今後のイランの動向、共同歩調をとるという約束をいたしましたヨーロッパ各国の動向、アメリカの情勢等を踏まえて検討していくということであろうかと存じます
  125. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、和田大使はいま東京に来ていらっしゃるわけですけれども、イランに帰任される見通しはどうでございましょうか。
  126. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはいまの段階ではまだ決まっておらないわけでございます
  127. 榊利夫

    ○榊委員 いずれにしましても、対イラン外交は非常に重要な問題でありまして、一歩誤ります日本の本当の意味合いでの国益に重大な損害をもたらすものだと私は思います。  イランの邦人の数は九百人くらいだと、私、承知しております。それから、これまでの投資資産はどうでございましょうか。もしわかったら教えていただきたいのですが、恐らく千五百億くらいの民間のドル建てのシンジケートローンとか円建てローンといったものがあるのじゃないかと思います。そのほか政府の融資であるとかプラント輸出代金の未払い分とかいろいろあるわけでございます。そういう点では非常に国益が絡んでおる。この点については真剣に考えていかないといけない問題であることはもちろんでございますけれども、外務省としてはどういう御認識でしょうか。
  128. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 在留邦人の数はいま委員がおっしゃいましたとおり約九百名ということでございます。  それから、わが方の資産関係でどれくらいのものが含まれるかということにつきましては、いま手元に正確な数字を持ってまいりませんでしたので、後ほど正確な数字をそろえまして先生の方へ提出するようにいたしたいと思います。  それから、考え方でございますけれども、そういった邦人とか資産、あるいはイランに現在ある資産でない場合におきましても、日本イランとの経済関係自体をどういうふうに考えるかということは、おっしゃるとおりきわめて重大な問題であります。石油自体をとってみましても、日本の依存度は現在でもなお二%とか一三%とか言われておりまして、かなりの依存度でございますので、そういったものをきわめて重要視していかなければならないという点は、まことにおっしゃるとおりかと思います。  それで、これに関しましてはヨーロッパの動きも見て同調、協調していきたいということでございまして、二十一日にヨーロッパでECの外相会議が行われますので、その動きも見まして日本としてとるべき態度をとりたいというのが、先ほど来申し上げておりますとおりわれわれの考え方でございます
  129. 榊利夫

    ○榊委員 最近のカーター政権の外交を見ますと、一種の砲艦外交ですね。アラビア海にいま集結している米海軍の艦船が二十五隻と伝えられておりますし、ペルシャ湾封鎖あるいはイラン石油集積地の機雷封鎖、いつでも着手できる態勢にある、こう伝えられております。しかもそれらが、重要なのはそういう海上封鎖などをやる場合でも、横須賀を基地にした第七艦隊がその任務につくということであります。そうしますと、仮にそこで軍事行動が起こった場合にイラン側がそれに対して軍事的、経済的な報復をやっても、それは国際法上日本としてはいたし方ない、こういうことになるわけであります。このことはベトナム戦争のとき椎名外相もそういう脅威を受けるということは国際法上はあるのだとお認めになっているところでありますけれども、そういう点から言いますと、経済的だけではなく軍事的にも政治的にも大変な危険をはらんでいる。  そこでお尋ねいたしますけれども、日本の基地を通るのじゃなくて、そういう海上封鎖や軍事行使に使用しないようにアメリカ側に求めるべきだ、これは私は国民の声ではないかと思うのですけれども、その点はどういうお考えでしょうか。
  130. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま委員御指摘の点につきまして、アメリカ側は、報道によれば機雷封鎖、そういう報道はございます。しかし、アメリカ政府当局の現在の立場は、経済措置あるいは外交関係の断絶ということによってイラン側に対して人質解放を求めるということで、軍事的措置について具体的に実施するというようなことを言っているわけではございません。  さらに、いまお尋ねの安保条約との関係でございますけれども、したがって、アメリカ軍が日本の基地を使って中東方面に出動してどういう措置をとるかということが具体的に明らかになっていない時点で、そういうアメリカの行動に対して日本の基地を絶対使わないでくれと申し上げる段階ではいまないわけでございまして、問題は、そういうような軍事的措置によって問題が解決するのでなくて、外交的あるいは平和的手段によってこのイラン人質問題が解決するということをわれわれは期待し、また日本としてできる限りの努力をしておるというのが現状でございます
  131. 榊利夫

    ○榊委員 いまの答弁をお聞きしますと、言うつもりはないということのようでありますけれども、実際に、現在横須賀から出ていっているわけですよ。しかもそれが軍事封鎖等々軍事行動をとる場合には使われるという問題、これは冷厳な可能性の問題としてあるわけでありますし、その点ではやはり今度せっかくアメリカにいらっしゃるのだから、日本に災害が及ぶような、危険が及ぶような、日本の基地を使うようなことはやめてもらいたい、それくらいのことは言ってよさそうだと思うのです。どうでしょうか、私はそれが日本の外交だと思うのです。
  132. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 人質問題の平和的な交渉による解決ということを私どもとしてもあくまでも望んでおりますので、そういう立場で従来も発言してまいりましたし、今回もそういう趣旨は先方に伝えることになると思います
  133. 榊利夫

    ○榊委員 しっかと伝えてもらいたいと思うのです。  それと関連しまして、イラン問題がきのうの決算委員会でもちょっと論議されたようでございますけれども、例の三海峡封鎖の問題で、外務省当局というふうに報道されておりますが、その際に、わが国としては事前協議の問題でイエスもあればノーもある、イエスを言うことがあるんだという答弁をされているようでございます。これはだれの答弁でございましょうか。あるいは政府の統一見解でしょうか。
  134. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 昨日、決算委員会においていまのような御趣旨の質問がございまして、外務省の北米局の安全保障課長が答弁しております。  私の承知している限り、答弁は二つございまして、第一は、日本に対して武力攻撃が行われた場合に、機雷封鎖について日本はどういう態度をとるか、これは自衛隊が関連してくる問題でございます。これは委員承知のように、安保条約第五条において、日本に対して武力攻撃が行われた場合には日米共同して対処するということになっております。したがって、その限りにおいて自衛権の発動として自衛隊が機雷封鎖に動くなり、あるいはアメリカ側が三海峡封鎖に赴くということは、そのときの状況によってあり得るかと思います。  第二の点において丹波課長の答弁は、日本に対して武力攻撃はない、しかし、日本に対して武力攻撃はないけれども極東の安全が脅かされた場合に米軍が機雷封鎖を行った場合に、日本政府としてはどうするかという御質問に対して答えまして、それは理論的に説明すれば、その機雷封鎖の行為が軍事行動の一環として、あるいは戦闘作戦行動の一環として行われるということであれば当然第六条に言う事前協議の対象になる。事前協議の対象になれば、その場合にはもちろん理論的にイエスもありノーもある、こういう答弁をしているわけでございます
  135. 榊利夫

    ○榊委員 少なくともそういう際にイエスを言う、こういう政府統一見解はいままで出ていないのだと思うのですが、どうでしょう。
  136. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 従来、沖縄特別国会以来、事前協議に対して日本政府はどういう態度をとるかということにつきましては、日本国益その他を判断して、日本政府の態度はイエスもありノーもある、これは従来から政府が繰り返し答弁している立場でございます
  137. 榊利夫

    ○榊委員 時間がありませんので深くは論及しませんけれども、私はそのことでどうしてもここに皆さん、大臣を含めましてお聞きしたいと思っておりますのは、最近、外務省首脳とかあるいは高官とかいう形でいろいろな発言が、国会で論議をされる前に報道されるという例が多いわけであります政府の公式の答弁とは違った先走った答弁がなされる、あるいは説明がなされる、私は、いまのも一例だと思いますが、もっと重大なのは、去る二月二十一日に、いわゆる軍事費GNP一%論、この問題に関連いたしまして、一般新聞でGNP〇・九%では十分とは言えない、一%を実現すべきだという意向だということが大きく報道されました。     〔佐野委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、これは総理の答弁とも、あるいは外相のこれまでの答弁とも違うわけなんであります。調べますと、大臣官房の山崎審議官がその発言をされているわけであります日本国際問題研究所の講演、二月二十一日。しかも午後二時から一時間半講演されている。職務時間中であります政府の公式のそれとは違うことを外務省の一高官が仕事時間中に外に行って、しかもそれが一般新聞でも大きく報道される。それが一体上司の命令なのか、それが外務審議官の職務なのか、あるいは独走権を持っているのか。これは重大な問題です。この事実を御存じでしょうか。
  138. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 事実は承知いたしております。一%の問題につきましては衆議院の予算委員会で、これは大内委員でございましたか、質問に対して私から、できるだけ早く達成することが望ましいという答弁をいたしたこともございまして、山崎審議官発言は、従来の政府なり外務省の方針を超えるものではないと私としては考えておるわけでございます
  139. 榊利夫

    ○榊委員 実現すべきだということは明らかに違います。そういう答弁を大平総理が国会でなさっているでしょうか。どうですか。
  140. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その正確な表現については記憶しておりませんけれども、大体の趣旨としては、政府、外務省の従来の方針を超えるものではないという当時の印象でございました。
  141. 榊利夫

    ○榊委員 違いますよ。国会答弁だって、当面GNP一%以下でやっていく方針だというのが公式の答弁じゃありませんか。一人の外務官僚が一%を実現すべきだと言っているのですよ。明らかに違いますよ。そういうことが許されるでしょうか。
  142. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 昭和五十一年の国防会議及び閣議決定で、一%以内をめどとしてということを申しておるわけでございます
  143. 榊利夫

    ○榊委員 一%以内でしょう。ところがこの方は、一%を目指すべきだと言っているのです、一%を実現すべきだと。明らかに違うじゃありませんか。時間がありませんので切りますけれども、こういうことはあってはならないことだと私は思います。この問題についてはしかるべき措置をとっていただきたい。取り消すなり、あるいは措置について国会に報告するなり、でなければ私また次回に質問させていただきますけれども、この点しっかりと調査もしていただきたいと思うのです。最後に、いかがでしょうか。
  144. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 なお当時の発言について内容を検討した上でお答えいたしたいと思います
  145. 榊利夫

    ○榊委員 終わりますけれども、そういう点では外務省の高官が国会を抜きにして、あるいは政府のそれさえも抜きにして、先走って、いわばアメリカ要求日本にスピーカーとして伝える、こういったことは本当に差し控えるべきだと思います。そのことを含めまして、イラン問題についてもしっかりとした見きわめを持って、日本の進路にかかわる問題として自主的な態度で臨んでもらいたい、このことを希望いたしまして、質問を終わらせていただきます
  146. 中尾栄一

    中尾委員長 渡辺朗君。
  147. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 先ほどからお話を聞いておりますと、本国に帰られた和田大使、任地へ戻られる日取りはまだ未定のようであります。ただ、新聞その他で拝見しておりますと、和田大使が、イラン政府の一部にある柔軟な姿勢を配慮してわが国の対イラン措置を決めるべきだと政府の方に要請したということがありますけれども、それがわが国のいまとっている態度、あるいは、それに基づいてとっているのがわが国の現在の方針というふうに理解してよろしいのでしょうか。
  148. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 わが国政府の態度といたしましては、イラン国内の動向それからEC諸国動きアメリカの情勢等をにらみながら、できるだけ人質の円満な解放についての努力協力するという立場で来ておるわけでございます
  149. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 イラン政府の内部にある柔軟な姿勢、一応そういう要素があることを評価しておられますか、いかがでございましょうか。
  150. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この辺につきましては、いろいろな可能性考えてみなければならないわけでございまして、特にイランの情勢も国内的にもいろいろむずかしい問題があるようでございますので、私の立場では、この問題についての直接のコメントは避けさせていただきたいと思います
  151. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 しかし、少なくともアメリカがとっている態度あるいは持っているイランの認識、これと日本政府がとっている態度、認識というのは、どうも開きがあるように思います。そうでなければ、日本時間のけさでございましたか、四月十七日のアメリカ政府のとってきた追加措置、こういったものが出てこないのではあるまいか。  その点については大臣、どのようにお思いになりますか。人質問題、釈放の可能性、これらについてアメリカの持っている認識と日本政府の持っている認識の違いはございますか。
  152. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 情勢判断につきましては、米国の情勢判断、日本の情勢判断あるいはヨーロッパ各国の情勢判断、いろいろあると思います。その間に、すべての情勢判断が一〇〇%同一だということは申せないと思います。  今度のとられました措置につきましては、主としてアメリカが直接関与する、関係する問題、つまりアメリカ人のイランへの旅行を禁止するとかイランヘの送金をとめるとかその他の措置でございまして、これは主としてアメリカ自体の措置であろうと見ておるわけでございます
  153. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 認識のずれもあるということを含んだ上での御答弁であったと思います。  ところで、ちょっと視点を変えまして、外務大臣いつも、いまの時点、今日までの状態という言葉をお使いになりますが、いまの時点でイランと断交をしている国、あるいはまた大使召還を行った国、これはどことどこでございましょう。
  154. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 大使召還を行った国は、EC及び日本では召還という形ではやっておりませんで、本国政府に対する報告という形で、これはEC九カ国のうちルクセンブルクは現地に大使館がないと承知しておりますので、八カ国の大使プラス日本大使は、いずれも本国に報告に帰っておると了承いたしております。  国交断絶は、アメリカ国交断絶をいたしたわけでございますが、そのほかにあるのか、ないのか、いまのEC諸国にはないと理解いたしておりますが、なお他にあるかどうか、これは早急に調べて、正確なお答えをしたいと思います
  155. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまの時点において、オーストラリア初めいろいろな国がそういうような大使召還とかあるいは召還でなくとも送らないとかいうような形になっているようでありますが、きちっと調べておいていただきたいと思います。  ところで、大臣先ほどの御答弁の中でも、日本の置かれている状態はEC立場がやや似ている、また政府としてはECと同調する、こういうことを再三述べておられます。ところが、どうもECの方は、ローマ条約に基づく法的根拠を持ってのイランに対する制裁措置というふうに考えているようだと聞いておりますけれども、日本の場合は、制裁措置を講じていくということになってきた場合、どこに法的根拠を見出してそのような態度をとっているのか、ここら辺について大臣お答えをいただきたいと思います
  156. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いま御質問のような点も含めまして、いろいろな情勢に対応する日本政府立場なり措置、これは連日総理以下関係閣僚が協議をいたしておる段階でございまして、まだ結論に達しておらないわけでございます
  157. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それではいつ、どのような決定をされるのか。特に私は、いつ日本政府として最終的決定をされるのか、大臣の心づもりをお聞きしたいと思います
  158. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはEC九カ国に対しまして、リスボン会議の決議と同調するということを、在京イタリア大使を通じて、これはECの議長国でございますので、正式に回答いたしておるわけでございまして、そういうEC側における決定と連絡をとりながら日本政府としての立場も能度も決めるということになるかと存じます
  159. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 どうも聞いておりますと、根拠というのは日本ECと同調することを約束したからというふうにも受け取れます。もしそうであるとするならば、大臣先ほどもおっしゃいました二十一日に開くECの外相会議の決定というのは非常に重要になってくるわけであります。当然ここにおいては日本はこの会議に参加し、そしてまた発言もし、どちらの方向にいくのか、アメリカ日本政府の認識にずれがあるとするならば、柔軟な要素があり得るのだということを踏まえての態度をとるのか、あるいはまたそうではない、アメリカと同じような認識にたっていくのか、ここら辺も重要なことでありましょう。私は参加して日本政府としての立場を表明することは非常に重要なことになってくると思いますけれども、大臣、いらっしゃいますか。
  160. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 現在のところ私は出かける予定はいたしておりません。鹿取審議官がヨーロッパに参りまして、関係日本大使を集めまして日本側の当面しておるいろいろな問題について十分に現地の大使状況を徹底して、それに基づいてそれぞれの大使が先方の各国政府と密接に話し合いをする、日本側立場も同時に伝えるということを指示したわけでございます
  161. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そこら辺で実は不安感が出てくるわけであります。一応ECの外相会議で最終決定される、日本はそれに同調するということは決まっている。しかしながら、それでは日本側はというと、その外相会議の枠外にあって外の方からいろいろ働きかけなどもするのでしょうけれども、その中に入っていって態度決定をするということではない、そういう立場だというふうに理解されるわけであります。まことに大事な決定がそこで行われる。その点、強い姿勢なり厳しい決定が行われるという場合にも日本は同調するということにもなりかねない。大臣、それで本当にいいのでしょうか。大変不安になりますけれども、いま一度そこら辺について大臣の御見解、個人的な願望でも希望でも結構でございます。どうお考えになります
  162. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま非常に重要な御示唆もございました。ルクセンブルクで二十一日、二十二日に開かれる会議ECの外相会議でございまして、そこに日本からだれかが出席するかどうか、座敷が違うという面もあるかと思いますけれども、ただいまの点につきましてはさらに検討させていただきたいと思います
  163. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 確かに座敷が違うでしょう。しかしながら、違うにもかかわらず日本ECと同調するという態度を決めたわけでありますから、私はそれだけの配慮というものは当然やっておかなければならぬし、そういう行動をとるべきだと思います。  私、一つお聞きしますけれども、そこで今度は、いま心配なのは、より厳しい方針がECで出されるという可能性もあるわけでありますが、もう一つは、アメリカに対して自制を求めるという行動をとろうとECが決めた場合、これは日本も当然同調するわけですね。
  164. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 もちろんECが決めたことを自動的に全部日本が行うということにはならないと思います。これは日本の独自の認識なり見解なり立場もあるわけでございますから、ただ、大きな筋について同調するというふうに考えた方がよろしいと思いますが、ただいまのような考え方がECを中心にして出てまいります場合には、大きな方針として同調するという立場になるかと考えます
  165. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、大変言いにくいであろうと私も重々察しますけれども、重ねて申し上げますが、強い態度をとるにしろ、あるいはアメリカに今度は逆に自制を求めるような行動を起こすにせよ、私は、日本はそこにおいてはっきりした発言を行っておかなければいけないであろうと思いますので、重ねて検討をしていただくように申し上げておきます。  ただ、いま大変重要な事態に差しかかっている。まして二十一日、二十二日というのは日本のこれからの動きにとっても決定的なものにもなってくる。外務大臣としては、当然事前にあるいはいまの時点でも、日本政府が態度をいろいろと検討する中において党首会談でも開くべきだというような立場はお考えでございましょうか、あるいはまた総理大臣に対しても提言をされるお気持ちはございますか。
  166. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの点につきましては、これは総理の判断によることかと思いますので、御質問の点はできるだけ早く総理に伝えたいと思います
  167. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 予鈴も鳴りましたので簡単に終わりますが、もう一つ、二つ。  いまの、万が一イランの問題においてイラン側の方も報復措置をとってくるというような事態が起こってくる、そうした場合に、どうも西ドイツなどでは家族に帰国勧告も出したようでありますが、日本政府ではそのようなお考えはおありなのか、あるいはまた、万一の事態に備えての準備というものは、在留邦人の帰国をどのように取り運ぼうとしておられるのか、そこら辺は用意はおありかどうかをお尋ねしておきたいと思います
  168. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 情勢の判断といたしましては、いま御指摘のような深刻な事態に立ち至るとは考えておらないわけでございますけれども、万一の場合に備える手はいろいろ講じておるわけでございます
  169. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、どうもそんな深刻な事態に至らないというふうに思っておられるらしいのですけれども、いま私どもが心配してお尋ねしているのは、そういう事態もあり得るのじゃないかという、毎日、新聞や何かを見ておりますと、そのような不安感の方が大きくなってくるので聞いているわけであります。楽観論なのか悲観論なのか、どっちかびしっと割り切ることはもちろんむずかしいとは思います。しかしながら、この事態が来たらこうするのだということだけははっきりと体制は整えておいていただきたい。これは要望しておきます。  それから、もう時間がありませんから、最後に一つだけ。  三月のココム定例会議で、アメリカはソ連向けの輸出規制強化を図るというような新しい提案を行ったと聞いておりますけれども、本当でしょうか。またどんな内容でしょうか、簡単にひとつ御説明ください。
  170. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えいたします。  ソ連に対するココムの規制を強めようという提案をアメリカが行ったことは事実でございますが、その審議は引き続きココムの中で行われておりまして、ココムとしての結論がまだ出たわけではございません。その内容とか審議の模様というものにつきましては、ココムの中で外に出さないことになっておりますので、その具体的な内容については答弁を控えさせていただきたいと思います
  171. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 アメリカが提案したことも、中身は外に出せませんか。外務委員会においてすら出せませんか。
  172. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 アメリカが提案したということはもう外に出ておりますし、これはココムの申し合わせの中で特に言ってはいけないとか、それについてどうこうというようなことはございませんで、その具体的な内容については言わないというのがココムの中の申し合わせでございます
  173. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 たとえば、新聞で報道されておりますが、ソ連に対しては禁輸措置を厳しくする、中国に対しては緩和をずるということは、それでは事実でしょうか、事実でないのですか、そういう提案があったという事実。
  174. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えいたします。  中国に対しましては、やはり緩和しようといいますか、具体的な内容がちょっと入ってしまいますけれども、要するに、一般の審査の際の立場よりはもうちょっと幅を持たせて考えていいのではないかというようなことが論議されておることは事実でございます。  ただその場合に、ココムの対象物資全部についてわたるのか、一部について考えるのかというような点がございまして、まだそのいわゆる緩和案というほどの具体的なものではないというふうに理解していただいた方がよろしいので、考え方と申しますか、一々の案件に対する審査の立場といったようなもので、一つの具体的なそういった案というものが出ているものではないというふうに申し上げた方が正確ではないかと思います
  175. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、いまお話しのように、何か余りはっきりとおっしゃいませんけれども、たとえば、ソ連に対しては規制を強化する、中国に対しては幅を持たせる、緩和するような考え方というようなことになりますと、これは本来ココムというものの性格からもう外れてしまうのではあるまいか。新しい対ソ制裁というような観点がそこに強く出てきて、たまたまココムというものをいわば籍口いたしまして、そしてソ連制裁というものがこれから打ち出される、その一つの行動だというふうにも理解されるわけでありますけれども、そうすると、ココムというものは実際には、名前は使われているけれども、違った対ソ制裁の行動がとられようとしているというふうに理解してよろしいのでしょうか。  また日本は、そういうことが出てきた場合に、それに同調するということになると理解してよろしいのでしょうか、確認をいたしたいと思います
  176. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 ココムで討議されておりますのはあくまでココムの物資に限ってのことでございまして、先生がただいまおっしゃいましたような、対ソ制裁とかそういった全般的な経済分野あるいは貿易分野をカバーするものではなくて、ただココムのカバーしている品目のみについてでございます
  177. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣はいかがですか。
  178. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまのココム問題が今回新たに出てまいりましたのは、アフガニスタンに対するソ連の武力介入を契機としておりますので、高技術、特に軍事技術に転用されるような技術の移転をできるだけ控えたいという西側諸国考えが背景にあることは事実だと思います
  179. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間がなくなりましたので終わりますが、これは中国の方には緩和、そしてどうもソ連に対しては厳しくということになると、先ほど私が申し上げたように、ココムという観点、これから外れた地点での行動基準がいまつくられようとしているというふうに理解されてならないわけであります。これについては改めてまたお尋ねもしたいと思います。  時間が参りましたからこれにてやめます。ありがとうございました。
  180. 中尾栄一

    中尾委員長 午後三時委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後三時六分開議
  181. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日付託になりました北西太平洋における千九百八十年の日本国のさけ・ます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府より提案理由の説明を聴取いたします外務大臣大来佐武郎君。
  182. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま議題となりました北西太、平洋における千九百八十年の日本国のさけ・ます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和五十三年四月二十一日にモスクワで署名された漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連政府との間の協定に基づき、北西太平洋の距岸三百海里水域の外側の水域における本年の日本国のサケ・マスの漁獲手続及び条件を定める議定書締結するため、本年四月二日以来、モスクワにおいて、ソ連邦政府と交渉を行ってまいりました。その結果、四月十五日にモスクワで、わが方魚本駐ソ大使と先方カーメンツェフ漁業大臣との間でこの議定書の署名が行われた次第であります。  この議定書は、北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域における本年の日本国のサケ・マスの漁獲について、漁獲量、禁漁区、漁期、議定書の規定に違反した場合の取り締まりの手続等を定めております。なお、本年の北西太平洋のソ連邦の距岸二百海里水域の外側の水域における年間総漁獲量は、昨年と同じく四万三千五百トンとなっております。  この議定書締結により、北洋漁業において重要な地位を占めるサケ・マス漁業の操業を本年においても継続し得ることとなりました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります、、何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします
  183. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。     —————————————
  184. 中尾栄一

    中尾委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  185. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今日、日ソ関係は、アフガン問題を中心にして微妙な情勢にもあるわけです。こういう情勢の中で、従来にない十二日間の交渉で、今回のサケ・マス漁業協定が締結できたわけであります。  私は、この条約締結に当たって、外交の責任者であります外務大臣の所感をまずお聞きいたし^いと思うわけです。
  186. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今般の交渉結果は、対ソ漁業磁力費が前年に比べて五億円増加いたしました以外は前年どおりでございまして、減船を回避し得る内容になったわけでございまして、まずまずの成果であったと考えます。  今回の交渉は、昨年と同様に終始実務的な雰囲気のもとに進められて妥結に達したものでございまして、サケ・マス漁業を含めて最近の日ソ漁業関係は全体的に相互的、互恵的な関係へと発展しておりまして、今回の交渉もそのような従来の線の延長線上のものであったわけでございます。  今般の早期妥結につきましては、日ソ関係状況等政治的考慮がソ連側にあったか否かにつきましては、今後のソ連の出方をしばらく見ませんと何とも言えないと考えております
  187. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 農林大臣はどういう所感をお待ちですか。
  188. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま外務大臣からお話がございましたように、昨年日ソ漁業委員会でいろいろ議論いたしましたときも、資源状態がよくない、こう言われておりましたし、ことしはマスの不漁年でもございますので、相当厳しい態度で来るであろうということは十分予測をいたしておったわけでございます。最初、案の定、相当厳しい態度でございましたし、また何とかという通信社の記者の論文などもなかなか厳しい政治的な問題を絡めての話でございましたし、また今回の交渉の当初に当たりましては、多少政治的なものを絡めていると思われがちな相手側ソ連側のあいさつもございましたし、そういう点で非常に心配をいたしておりましたが、私どもとしては、私どもの方から参りました者に対しましても極力事務的、実務的にこれは解決をするという方向で話し合いをするようにということも指示をいたしておきました。  結果的にはそういう方向で進んだのではなかろうかと私は感じておるわけでございまして、結果についてもまあまあそういう状態の中で昨年並みの漁獲量が確保できたということ、協力費については日本円で言えば確かに五億円の増加でございますけれども、ルーブルで見れば去年と大体同じよりは去年よりはまだ低いというふうにも計算主なるわけでございますので、そういう点で評価をいたしておるわけでございます
  189. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今次交渉に臨むに当たって、日本側としては北洋のサケ・マス資源についてはどういう評価をされて臨まれたか。また今度の交渉の場合には資源論については、前年突っ込んでやっておりますから、そう議題にはなっていないわけですけれども、この交渉を通じてソ連側は一体資源状況についてはどういう認識を持っておるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います
  190. 今村宣夫

    ○今村政府委員 資源状況につきますソビエトの見解でございますが、総論的に申し上げますと、ギンザケ、ベニザケ及びアナディール系を除くシロザケのほかの系統群のすべてはいずれも不漁な状態にある。カラフトマスは西カムチャツカ系のみ比較的良好であるが他の系統群はいずれも減少するので、総体として数量低下は存続する。良好な状況にあるのはマスノスケだけであるというソ連の見解でありました。
  191. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近のソ連側の漁獲の実績というのは、昭和五十年八万二千九百トン、そして五十一年が六万九千七百トン、五十一年は七万八千四百トン、五十四年は十二万三千九百トンですね。またわが国がサケ・マスを輸入しているアラスカ、カナダ、これらの地域においても資源の状況については漁獲実績から見れば良好である。また、わが国の場合においても、昨年の沿岸のサケ・マスの漁獲量は八万六千トン、いわば史上最高のような形で記録されているわけです。  したがって、全般的にサケ・マス資源については増養殖あるいはまた国際的にこの資源について十分配慮を払ってきた、こういう経過が今日の北洋における全般的なサケ・マス資源の良好な状態を生み出しているのではないか、こう判断せざるを得ないのですが、いかがでしょうか。
  192. 今村宣夫

    ○今村政府委員 今回のサケ・マス交渉におきまして、当方としては、資源の状態としましては大体過去五年間の平均的水準かあるいは一九七八年の水準と同程度であろう、ことしは御存じのとおり不漁年でございますから、ソビエトとしては資源状況が非常に悪いということを主張いたしたのでございますが、私たちとしては少なくとも、九七八年の水準と同程度である、こういうことを主張いたしたのでございます。  確かに御指摘のように資源状況は徐々に回復しつつある、こういうふうに私たちは見ております。特にアメリカにおきましてはサケ・マスをそうとっておりませんから、資源状況は相当回復をいたしておるというふうに見ております
  193. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今回の交渉に当たって、日本側は当初四万五千トン、あるいはまた禁止区域の問題、あるいは三角水域操業規制等についても日本側の案を提示されたと思うわけです。しかし、結果的に昨年並みの漁獲の量で今回の交渉が妥結をしたという点についての評価が先ほど大臣から述べられたわけでありますが、いわば、これらの諸点についてはそれぞれ関係漁民、業界の非常に強い期待があるわけです。したがって、わが国の当初の提案があったわけでありますから、これらに対するソ連側のそれぞれの見解も述べられたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  194. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ソビエトは当初、御存じのように三万五千トンで一千万ルーブルの協力金、こういうことを言っておったわけでございます。私たちといたしましては三万五千トンということになりますれば大変なことになるわけでございますか、ら、これは最低四万二千五百トン、昨年並みの水準を維持したいということを強く主張いたしたのでございますが、交渉の過程におきましては、ソ連側はサケ・マス資源が非常に悪い、したがって、ソビエトも今年は九万トンしかとらないのであるから日本側漁獲数量を減らして三万五千トンであるべきであるということを強く主張をいたしておったわけでございます。  同時にまた、ソビエトは漁獲数量と漁業協力費は密接不可分の関係にある、こういうことを主張いたしまして、漁獲数量を上げたいならば、まあ端的に言いますと漁業協力費をうんとはずめ、そういう態度でございました。
  195. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 不漁年である五十三年は先ほど数字を申し上げましたように七万八千四百トン、今回はソ連は九万トン、こういう数字を示しておるわけですから、自国の生産についてはやはり生産量は伸びている、また今年も伸びるということを向こう側の方も述べられておる、こう理解できるのだと思うのです。したがって、不漁年と豊漁年いずれにしても三年間この四万二千五百トンで妥結ができたという意味は、今後豊漁年あるいはまた不漁年にかかわらず大体今日の北洋海域における資源の状態からいって日ソの関係では四万三千五百トンというものがほぼ将来にわたって定着していける、こう判断されますか、見解を承りたいと思います
  196. 今村宣夫

    ○今村政府委員 本年、不漁年でありましたときに四万二千五百トンを確保できたということから考えてみますと、来年のことはいろいろな諸般の状況がございますから一概には言えないわけでございますが、通常のベースで進むのであれば、来年は豊漁年ですから四万二千五百トンを確保することができるであろうと見込んでおります。そういたしますと、四年間続けて四万二千五百トンの水準ということでありますから、これが一つの事実として定着をしていくことを私たちとしては期待をいたしておるところでございます
  197. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 日ソ漁業協力協定は八二年まで、あと二年間期限があるはずですね。したがって、この三条に基づいて協力金というものがソ連側に支払いをされるということになっているのだと私は思うわけです。したがって、少なくとも日ソ漁業協力協定の期間内である今後二年間は大体一つのパターンができ上がった、こう考えることは無理でしょうか。
  198. 今村宣夫

    ○今村政府委員 確かにお話しのようなことが言えるかと思います
  199. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この漁業協力金の問題でありますけれども、ソ連側はこの性格をどう言っているのでしょうか。
  200. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ソビエトは母川国としてふ化放流事業とかあるいはサケ・マスの帰ってくる河川をきれいにする、そういう事業を行っておるのである、それに要する経費としては総額として四千七百万ルーブルを要しておる、日本もソ連系のサケ・マスをとる以上はそういうソ連の増殖に関する経費を分担をするべきである、その分担の割合は、ソ連がとる総体に占めます日本漁獲量ということで物を考えてしかるべきである、こういう主張でございます
  201. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、もう少し端的に言いますと、この協力金というのはサケ・マスの沖取りに見合う補償金であるというのがソ連側としての本音だと思うのですが、いかがでしょうか。
  202. 今村宣夫

    ○今村政府委員 沖取りに見合う補償金という明確な表現は向こうは使っていないわけなんで、サケ・マスをふやすためには相互に協力して努力をしなければいかぬ、ソビエトだけが金を出してやるということではなしに日本も応分の負担をなすべきであるということを言っております。そうしまずと、ことしの場合ですと、四千七百万ルーブル掛けることの九万トン足す四万三千五百トンに占める日本側漁獲比率が日本の負担部分になるということで、これは相当大きな金額になるわけでございます。当方といたしましては、そういう相互に協力してサケ・マスを増殖することについては異議がないけれども、しかしそれはおのずから限度があるべきものであるということを主張いたしたわけでございます
  203. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 一昨年のこの外務委員会での答弁の中で、いまわが国が沖取りをしているサケ・マス資源の九七%はソ連の母川に遡上するサケ・マス資源である、こう松浦部長が答弁をされておるわけですが、この認識については今日も変わりはありませんか。
  204. 今村宣夫

    ○今村政府委員 その認識については変わりございません。
  205. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 あとの三%は日本、アラスカ、カナダに分けてどういう判断でございますか。
  206. 今村宣夫

    ○今村政府委員 大体アメリカ系とか日本系がまじっておるものだというふうに思っております
  207. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年の四万二千五百トンに対するわが国漁獲の遂行率は、漁獲量でどの程度でありますか。
  208. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ほとんど一〇〇%に近いものでございます
  209. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年の協力金三十二億五千万に対して、一隻当たりにしますと三百五十万円程度になるのでしょうか、そのうち政府は四五・三%、十四億七千万、他の五四・七%は民間でこれを負担いたしておるわけです。今回、日本の金額で五億円程度上積みになるわけでありますから、この三十七億五千万も前年と同じこういう比率で政府及び民間で負担をするということになるのでしょうか。
  210. 今村宣夫

    ○今村政府委員 お話のように、昨年の三十二億五千万円は大体漁業者の方が五五%、政府が四五%という比率で負担をいたしたわけでございます。これのことしの分の三十七億五千万の取り扱いをどうするかということにつきましては、これは財政当局ともよく協議をして決めたいというふうに考えておるわけでございます
  211. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 一応、税金を使う場合には国民の合意を必要とするわけであります。昨年の場合には四五・三%、十四億七千万円、この政府関係はいわばサケ・マスの関連プラント類に限る、きわめてサケ・マスの関係に限定するという形でこの額がはじき出されたと聞いておるわけです。もしそういう判断であれば、そのプラント類がふえれば政府の分担はふえる、こういうことを意味することになるだろうと思うのですね。そうではなくして、この分担については何らかの基準があって決められたのか、この点がどうも国民の側から見てわかりにくいのですけれども、いかがでしょうか。
  212. 今村宣夫

    ○今村政府委員 漁業協力費に対します政府の助成でございますが、これは「ソ連に供与する機械及び設備に関する政府助成基準」という農林水産事務次官依命通達がございまして、それによりまして政府として助成するにふさわしい機械、設備、飼料工場設備であるとか、公海用の生けすでありますとか、自動給餌機等、そういう施設、機械を選びまして、これをソ連側に供与するための経費の一部を負担するという形になっております。その他、一般的にそういうことについて政府が助成すべき品目というのはどういうものであるかということもあわせて定めておるところでございます
  213. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、私が先ほど述べたように、今回の三十七億五千万もその基準に基づいて、いわばサケ・マス関連のプラントその他の関係が多くなれば政府の負担が昨年と同様ではなくして率としてもふえる、少なくなれば政府の分担が率として下がるということを意味するのではないでしょうか。
  214. 今村宣夫

    ○今村政府委員 その辺はなかなかむずかしいところでございまして、御存じのようにソビエトの方から要望リストが出てまいりまして、その中でどういう形で機械、施設を供与するかということは、大水が中心になりましていろいろ協議をいたすわけでございまして、その辺のところはそちらをふやせば片一方が減るではないかというぐあいにもなかなかまいらない非常にむずかしい点があることを御了承賜りたいと思います
  215. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 だがしかし、政府、民間でそれぞれ負担をいたすわけですから、これから詰めるとおっしゃいますけれども、大体大まかな感触ですね、大体こういうような方向、こういうところでさらに詰めて決めることになるだろうというぐらいのことは何らかあるのでしょう。いかがですか。
  216. 今村宣夫

    ○今村政府委員 政府の負担につきましては、実は私も交渉に行く前に大蔵省のしかるべき者といろいろ協議をいたしたわけでございますが、大蔵省としてはいまなかなかきつい状態でございますから、長官、それはなかなかというお話がございまして、必ずしも詰め切らないままに訪ソをしたというふうな状況もあるわけでございますから、政府の負担を昨年よりも減らすということはいかがなものかと私は思いますけれども、ふやすということにつきましてもこれまたいろいろと問題がございますので、その辺のことは今後十分検討さしていただきたいと思っております
  217. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 しかし、協力金については、政府が負担しようと民間が負担しようと、金には変わりがないわけですね。民間の方は、どちらかというと魚探とかあるいはまた魚肉ソーセージのプラントだとか、いわばサケ・マスに関連のない面に実際はお金が支出をされておる、そういう内容になっているんだと思うのです。しかし、民間であろうと政府であろうと、これはサケ・マスの沖取り、そして先ほど長官が述べられた趣旨協力金が支払いされるわけでありますから、そういう意味では一応政府資金の方はそういう関係で筋を通しておくが、民間を含めるとどうもソ連側の言っている趣旨とは違った何かの面がこの中に含まれておるのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  218. 今村宣夫

    ○今村政府委員 協力費は、四千七百万ルーブルをサケ・マス増殖その他川をきれいにするためにソ連が使っておる、こういうわけでございますが、それはソ連の国家予算に組み入れておるわけでございまして、金で出すのならばそれの一部ということになるのですけれども、資材等をもって供与するということになっておりますから、必ずしもどんぴしゃりいくということでない部分もございます。そういう部分について、ソ連の希望があった場合に、これに応ずるか応じないかということは一つの判断の問題でございますが、いままでのところは、先生御指摘のようにそうでないものもあるじゃないかというと、必ずしもそうでないものもないとは言えないのでございますが、全体的な観点からソビエトの要請になるたけ合うように取り扱っていったらいいじゃないかという考え方があるわけでございます。  そこで、今後それについてどういうふうな扱いをしたらいいかということについて、先般大水の亀長会長も向こうへ行きましたときにその話が出まして、ソビエトの要望にできるだけ即応するように、しかも金が、機材がサケ・マスのふ化放流という問題にできるだけ効果的に使われるように、そういう観点から少し専門家同士の相談をさしてみたらどうかということが話に出まして、私としては、今後どういう形でそれを具体化していくかどうかは大水においてさらに検討をなさるべきものだと思いますけれども、そういうことの扱いをすることが、私としても適当ではないかというふうに思っておるわけでございます
  219. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 沖取りするサケ・マスは、大体突っ込み平均して一匹一・一七キロでしょう。そうしますと、沖取りしているサケ・マスはソ連の母川に帰るわけですけれども、一体ことしとる魚は、いつ秋になったら帰るのか、ソ連の河川に上る魚であるか。同時にまた、この魚は川に上る場合には、大体平均突っ込みでどの程度の目方になるものでしょうか。
  220. 今村宣夫

    ○今村政府委員 魚種によって違うものですから、いま数字の方は検討させますから、ちょっとお待ちください。
  221. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大体常識的に言って、ことしとる魚は来年の秋口川に上るのじゃないでしょうか、サケならサケを基準にしますと。そうすると、一・一七キロの魚は一年間で大体三・七、八キロになるわけですね。そういう資源的な理解でいいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  222. 今村宣夫

    ○今村政府委員 そのとおりでございます
  223. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そこで、今度の協力金を尾数当たりで換算しますと、一匹大体百円につくんじゃないでしょうか。
  224. 今村宣夫

    ○今村政府委員 三十七億五千万円を三千六百四十万尾で割りますと、お話しのように百三円ぐらいになります
  225. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そこで、昨年の沖取りサケ・マスの魚価平均は、どの程度の水準で推移をしましたか。     〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕  同時に、今年はどうかということなんですが、今年の場合には御承知のように在庫も相当あるようでありますから、また最近はダンピングが行われておるという傾向も非常に顕著に出ておるわけですから、魚価は低迷する、こう見ざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  226. 今村宣夫

    ○今村政府委員 昨年の水揚げしました平均魚価がキログラム当たり大体七百五十六円ぐらいになっております。  需給の状況でございますが、御指摘のように本年はふ化放流事業の強化の効果によりまして、わが国の沿岸漁獲量は相当増大をした。それから北米におきます豊漁等による輸入量の増大によりましてかなり緩和をいたしまして、そのような状況を反映して価格は弱含みで推移をいたしておるわけでございます。  今後の需給価格の見通しでございますが、これはなかなかむずかしいのでございますけれども、わが国の沿岸漁業の漁獲量は、ことしほど来年はいかないと私は思っております。ことしは八万五千トンぐらいいきましたけれども、恐らく来年は六、七万ぐらいの水準になるんではないか、六万五千トンぐらい、その辺の水準になるのではないかと思います。     〔奥田委員長代理退席、志賀委員長代理     着席〕  それから輸入状況はどうなるかわかりませんが、相当慎重に輸入の方も構えておるということもございまして、私は、そんなに大幅に低下をすることはないので、まず大体ことしくらいの水準ではあるまいかというふうにも見ておるわけでございますが、これは非常にむずかしゅうございます
  227. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年はサケ・マスの輸入実績は五万五千トンであり、沿岸の漁獲量は八万六千トンであり、沖取りが四万二千五百トンでありますから、合計しますと十八万三千五百トンですね。そういう数字になるはずであります。そして今日、国内在庫は五万ないし六万トンあるだろう、こう言われておるようであります。そうしますと、五万ないし六万トンは、沖取りあるいは輸入、そして国内生産、こういう三つに分けてどういう水準にあるのでしょうか。
  228. 今村宣夫

    ○今村政府委員 なかなかお答えをしにくい問題でございまして、サケ・マスの全体需給というのはなかなかっかむことがむずかしゅうございますので、全体として考えれば昨年ぐらいなことではないかと思っておりますけれども、非常にむずかしゅうございまして、御了承を……。
  229. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど長官は、今年の秋サケの生産量は六万トンか七万トンは切れるだろう、こういうお話でしたね。だけれども、この量のとり方も非常にむずかしいのですね。私は、国が発表する数字よりも七千トンないし多い場合には一万トン近く、これは別に市場を通らないサケ・マスがある。これは普通国内生産の場合、常識だと思うのですが、いかがでしょうか。
  230. 今村宣夫

    ○今村政府委員 なかなかむずかしくて、ちょっと私にも答弁をいたしかねる点でございます
  231. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私ども北海道では、たとえば一千七百万匹とれる、あるいは一千六百万匹揚がるという場合には、二百万ないし三百万匹は、密漁があるでしょうし市場を通らないのもあるでしょうし、そういうものは大体それぐらいの数字があるというのが常識化されているのですね。だから、政府として答えづらいだろうと思うのです。そういう点で、いわば昨年は十八万三千五百トンと、こう申し上げましたけれども、これより多い数量というものが出回っている、こう理解をされる方が正しいんだろう、こう思うのです。これは答弁をもらうことは非常にむずかしいでしょうけれども、実態認識としてのお尋ねを実はいたしたわけでございます。  そこで、私は先ほど聞きましたように、一匹当たり大体百三円につく、そうしてキロ当たりの価格は大体低迷する、横ばいか低迷という状況も、そう間違いのない状況だと思うわけです。そうしますと、今次サケ・マス操業が行われるのでありますけれども、採算の見通しはどう判断されておられるでしょうか。     〔志賀委員長代理退席、奥田委員長代理     着席〕
  232. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御存じのように、石油価格は相当高騰いたしております。幸いにして、サケ・マス操業をいたす漁業は、北洋に行きます割合には石油コストの占める比率は少ないのでございますが、それでも十数%に達するわけですから、それが今度のような石油の値上がりということになりますと、その部分のコストアップも相当なものであろう。魚価が非常に上がるとすれば当然カバーされるわけでございますが、いま先生おっしゃいましたような需給を念頭に置きますれば、ことしのサケ・マスの操業採算というのは、昨年のようなものではないのではないかと考えております
  233. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ことしの操業については、特に水産庁としても大きな関心を持ってもらいたいと私は思うわけです。そして、採算の状況は一体どうなっているのか、燃費は一体どういう水準で、また協力費の問題もありますし、共補償もあるわけでありますから、実際、サケ・マス沖取り漁業というものがどういう採算のベースになるか、もちろんこれは母船式もあるでしょうし、基地独航もあるでしょうし、そしてまた二十トン、十トン未満の小型サケ・マスもあるわけですから、これは将来の北洋におけるサケ・ヤス漁業というものが一体どうなっていくのかという意味において、今年のコストの計算は非常に重要視しなければならないのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  234. 今村宣夫

    ○今村政府委員 お話のように認識をいたしております
  235. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年と同じ漁獲の量でありますから、言うならば母船式、基地独航、そして以西、以東の小型サケ・マスのそれぞれの操業の割り当て量は昨年と全く同様だと思いますけれども、念のためにお聞きしておきます
  236. 今村宣夫

    ○今村政府委員 協力費を除きましては、ソビエトとの関係ですべて昨年と同様ということでございますから、先生の御質問の件も昨年と大体同様に扱うつもりでございます
  237. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 全度の交渉の中で、昨年からわが国とソ連との間において民間協定で行われている共同事業について、何か非公式にでもお話し合いはされなかったでしょうか。
  238. 今村宣夫

    ○今村政府委員 今次の交渉が終わりました後、私とクドリャフツェフとの間で共同事業について意見交換をいたしました。クドリャフツェフ次官の方としては、昨年認めた共同事業についてはソ連としてもこれを大体認めるつもりであるけれども、日本としての方針はどうかというふうな話がございました。それからもう一点は、共同事業そのものについて、日本としてはどういう方針で対処をしておるのかということでございました。  第一点目につきましては、当方としては、去年はそういうことでスタートいたしておるわけでございますから、その件については日本としても異存はないところである。同時に、その共同事業の全体的な扱いにつきましては、先般渡辺大臣とカーメンツェフ大臣との間で話ができたラインにおいて当方としては取り進めるつもりである。特に政府間の協定に影響を及ぼさない。同時にまた、民間の関係業界においてその調整がついておるものということについて思量するつもりであるという意見を申し述べたところでございます
  239. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年は共同事業は七件であります。今年、七件のうちソウヤケガニは申請いたしておりませんから、昨年の七件のうち六件が申請になっているはずであります。そして、二十五件程度の案件の希望がすでに水産庁に出されておると私は思うわけです。いま述べられましたように、昨年許可された共同事業が優先されて政府も認めるという方針については、私も賛成であります。  ただ、ことしは、さらに昨年の七件に追加して共同事業をやろうという気持ちがソ連側にはあると承っておるわけです。その点、共同事業の案件については、昨年の七件にプラスどの程度の案件が考えられておるのか、そういう点の感触はいかがでしょうか。同時に、その場合、昨年の六件プラスアルファで共同事業を許可するということになるわけですが、その場合の基本原則といいますか、政府の方針についても承っておきたいと思います
  240. 今村宣夫

    ○今村政府委員 日ソの共同事業につきましては、水産庁として、ソ連の三百海里内のわが国漁船の漁業実績の維持に悪影響を及ぼさないということ、それから関係業者間において十分な意見調整が行われておるということを基本方針として対処をいたしてきているわけでございます。  私たちとしては、こういう基本方針の上に立って共同事業が秩序正しく進められるようにいたしたい、こう思っておるわけでございます。いたずらに競争をいたしまして混乱を生ずるようなことは避けるべきであるという基本的認識でございますが、具体的には、事業の実施希望者は水産庁に申し出をしてもらいまして、関係業者間の調整について大水等にも意見を聞き、また水産庁においても、関係業界の意見の聴取の手続を経まして、その調整が終わったものについてソ連と交渉をしてもらうという手続をとりたいと思って、その手続をとっておるところでございます。  ソ連の方としまして、具体的に追加案件にどうするということについては、話し合いをいたしたわけではございませんが、昨年認めた案件について触れておりました際に、クドリャフツェフ次官は、自分としてはそれを認めるつもりだけれども、日本政府・水産庁としてそれを認めないというようなことになると非常に混乱が起こるから、どうだという意見の聴取でありました。そういう観点から推測をいたしてみますると、ソ連としても十分渡辺・カーメンツェフ合意のラインに従って、比較的実務的にといいますか、物事を処理したい、そういう意見を有しておるやにうかがえたところでございます
  241. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは外務省になると思いますが、懸案事項の貝殻島のコンブ採取の民間協定の問題です。  これは、裁判管轄権の問題については、違反船は操業を取り消す、許可証の出し方は、どういう内容にするか若干問題があるようでありますけれども、問題点は、水域の協定の表現の仕方が双方了解できれば、貝殻島の懸案事項は、民間の協定は大体成立をして、外務省も口上書は出せるものと判断をいたしておりますが、いかがですか。
  242. 武藤利昭

    武藤政府委員 コンブ漁につきましては、貝殻島のコンブ漁の話と承知いたしますけれども、北海道水産会の方で、民間ベースの話として先方と相談しておられると承っております。その内部の詳細につきまして、現時点において私どもの方から申し上げることは必ずしも適当ではないと思うわけでございますが、昨年は残念ながら操業するに至らなかったわけでございます。ことし、再び話し合いを再開しておられると承知いたしておりまして、私どもといたしましても、できるだけ早くこの民間ベースの話し合いの結果交渉が妥結いたしまして、コンブ漁が再開できるようにということを期待いたしているのが現状でございます
  243. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この際、外務大臣に、対ソ外交関係の問題として、特にオリンピックの問題は午前中にも問題になりましたけれども、経済協力関係ですね、主としてエネルギー関係が多いわけです。南ヤクート炭田とかサハリンの天然ガスとか。改めてこの点についてのわが国の方針について承っておきたいと思います
  244. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 わが国の外交にとりまして、対ソ外交はきわめて重要な地位を占めておるわけでございます。近年の情勢は、北方領土問題あるいはその領土に対する基地の設定、また最近ではアフガニスタン問題等で、必ずしも好ましくない関係といいますか厳しい情勢が出ておりますけれども、日本としては粘り強く筋を通して日ソ関係の交渉を続けてまいりたい。  サハリンの問題その他の案件につきましては、アフガニスタンの問題もございますが、新規に大きなものというものについては慎重にいたしつつあるわけでございますが、継続的なもの、非常に高度な技術を伴うようなことがないようなものについては続けるように話をいたしておりますし、一部米国からの資材が組み合わさっておるものもございますので、こういうものについては米国側の了解を求めるように話し合いを続けておるわけでございます
  245. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 第九会期の春の海洋法会議がすでに終わって、ジュネーブ会期に今度は移るだろうと思うのです。伝えられるところによると、来年は、八一年にはカラカスで本調印が行われる見通しではないか、私もそう見ておるわけでありますけれども、このジュネーブ会期の見通しについて、この機会に承っておきたいのであります
  246. 井口武夫

    ○井口説明員 海洋法会議第九会期は、確かに四月四日にニューヨークで終わりまして、七月二十八日から五週間ジュネーブで再開される予定でございます。すでにもう大陸棚の問題も漁業も片づきまして、深海海底開発の問題とそれから条約の発効あるいは改正等の最終条項といいますか、そういう最後の法技術的な問題が残されておりますので、深海海底の開発と最終条項が固まれば条約は終わるという段階でございまして、見通しとしては、今度の夏五週間やりまして、来年採択にこぎつけたいというふうに考えておりますし、またそういう早期妥結という体制で各国とも前向きに考えているということでございます
  247. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、大体来年末には条約草案が合意されるものと見られるだろうと思うわけです。わが国は海洋国家として、これが合意されれば率先垂範して批准されるものと思いますけれども、大臣いかがですか。
  248. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 できるだけ速やかに批准をいたすように、これは国会の方にお願いすることになるかと思いますが、そういたしたいと思います
  249. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、いま国際的に漁業の暫定水域の取り決めが行われてそれぞれ二国間で協定がなされる。ソ連なんかは八十カ国以上の国と二国間の漁業協定を結んでおるようでありますけれども、そうしますと、今度の場合はエコノミックゾーン、いわゆる経済水域でありますから、地下資源まで含むわけですね。そして境界について若干問題がありますけれども、いずれにしても、これは隣接のところの問題でしょうから、大筋は、これはもう問題は解決していると思うわけです。したがって、今度は漁業専管水域二百海里の時代からエコノミックゾーン二百海里時代に直ちに入るものと思うわけです。そういう認識でいいわけですね。
  250. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そう心得ております
  251. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そこで、韓国漁船の操業の問題について、大臣はきのう韓国の朴外相と会ってその解決について強く要請をされたという報道がなされておるわけですが、大体、どういう話がなされて、どういう向こう側の反響だったのか、この機会に承っておきたいと思います
  252. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 北海道沖の操業問題、深刻な問題でございまして、今回朴外務長官に対しまして日本の漁民がこの問題で非常に困っておる状況を詳細に伝えまして、先方の善処方を求めたわけでございます。     〔奥田委員長代理退席、委員長着席〕 その結果、双方とも早期の解決を目指して誠意を持ってこの交渉を続けるということで、五月上旬に実務者協議が開催されることになる見通しでございます。なお、本件については、外務長官が総理を表敬訪問いたしましたときにも総理からも特に話がございまして、これに対しては朴長官はよい解決策を見出すよう努力いたしますという返答をいたしております
  253. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先般開かれた実務者会議では、これも報道の関係の情報でありますけれども、わが国の主張は、北海道周辺はいわゆるオッターラインの規制ライン、これを守ってもらえば、済州島周辺の禁漁措置についてはわが国は認める、いわばこういうレベルの話し合いがなされたと聞いているわけです。しかし、まだ結論が出ませんから、これをまた五月の連休明けにやるのでしょうけれども、そういう理解でよろしいですか。それとも、この交渉の第一回目、実務者会議が終わったわけですから、見通しについて、これを五月の連休明けには解決できるという見通しをお持ちですか、いかがですか。
  254. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先般の実務者会議におきましては、外務省からも出席をいただきまして協議を行ったわけでございます。その実務者会議で話の進展をどの程度見たかということでございますが、具体的にこうこうこういう結論が出たという状態にはなっておりません。問題が問題でございますから、そこのところは非常にむずかしい話し合いが行われなければならないと思っております。  そのときにやはり北海道沖問題だけを取り上げて、オッタートロールから出ていけ、出ていけという話で物事が片つくだろうかということを考えてみますと、やはり日韓関係全体の漁業の問題をどうしていくのかということがどうしてもベースにならざるを得ないという問題がございます。これは北のために西の方を犠牲にするとか、西のために北が犠牲になるとかいう問題ではなくて、今後の日韓の漁業関係全体を考えますれば、韓国の方としても資源保護その他について意見があるでしょうから、そういう意見も十分踏まえて協議をする必要があるのではないかというふうに考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この問題は緊急に解決を要する問題でございますので、私たちとしては、できる限りあらゆる機会をつかまえて、また実務者会議も取り進め、その他の所、要の協議を重ねまして、できるだけ早く解決をいたしたいと考えております
  255. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど私が海洋法会議の問題について聞いたわけですが、いわばもう近い時期に新たな国際的な海洋秩序ができ上がって、わが国も積極的にこれを批准するということになるわけです。恐らく、世界の情勢からいって、韓国も批准をすることになるのではないでしょうか。そうすると、日韓の漁業協定すべてについて、新しいこの経済水域という観点で協定をしなければならぬ時期はそう遠くはないわけです。そうしますと、日韓のこの漁業関係の問題の解決は、そういう国際的な新しい海洋秩序、その時期ですね、こういうものを意識しながら整理をして、そして解決をしていくということを考えなければならぬのではないか、こういう感じを私は持つわけです。  あるいはまた、もちろん日韓の間には竹島問題もあります。ソ連との間には北方領土の問題もあるわけです。今度の二百海里、すなわち百八十八海里には地球がつくわけですからね。いままでは水産物資源だけでありますけれども、今度は地球がつくわけでありますから、いわゆる領海、領土と同じような形で二百海里まで経済水域になりますと、今度は地下資源もつくわけでありますから、そういう情勢をもいまから踏んまえて、すべての問題について対処していかなければならぬのではないかと私は思うのです。だから私は、ここまで来ると、日韓の関係は、いわば一つの低いレベルで事を処するという考えではなくして、そういう情勢も踏まえて、今日この問題を解決するということが姿勢として大事ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  256. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど来の御意見で、海洋法をわが国も批准をして、そういうルールのもとに行われるようになるときは、従来とはまた変わった考え方で漁業に対処していかなければならないだろう。そうなると、韓国との関係においてもいまいろいろのトラブルが起きておりますが、そういう観点からいけば、これは当然解決もなされていくであろうということでございますが、私といたしましては、先ほど水産庁長官答弁をいたしておりますように、海洋法の批准を待つまでもなく、いまの北海道漁民の立場考えるならば、いっときも早く解決をしたい、こういう気持ちでいまいるわけでございまして、海洋法の批准を待って解決をするんではなくて、もうことしじゅうにでもできるだけ早い機会に解決をしたい、こう考えておるわけでございます
  257. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近、残念なことが起きているのですが、三菱商事と北海道漁連の出資している北菱というのがあるわけですね、その北菱と三菱商事の合弁会社、東遠産業というものがあるわけです。そして、わが国から昭和三十三年、三十四年、いずれも四月にそれぞれ漁船が輸出をされているわけです。福岡のオリエント丸と長崎のゲンプク丸、そしてこれが東遠産業のいわば所有船になった。輸出をするときには明確な規制があって、操業の区域、トン数、用途、こういう関係がぴしっと条件が付されて、少なくとも日本の沿岸では操業してはならないという前提をつけて工船が輸出をされたものが、今日ユンヤン号あるいはシンヤン号ですか、そういう形で北海道周辺で操業しているわけですね。そして主なるものはスケトウをとっておるわけです。もちろん底魚も当然入るでしょう。そして、そのとった魚を道漁連、三菱商事が出資している北菱に渡して、ここで加工するわけです。もちろん韓国の国民はスケトウを好んで食べるわけでありますけれども、ここは主としてフィレーあるいはまたフィッシュブロックにしてアメリカ輸出をされておる。そういう点も今日明らかになっているわけですね。先般参議院でもこの問題が出ているわけであります。  したがって、その後政府調査をし、これに対して対処をされたと思うのですが、いかがですか。
  258. 今村宣夫

    ○今村政府委員 中古船を輸出いたします場合には、無制限にこれを認めるということになりますわが国の漁船と競合関係が非常に激しくなりますので、主管の運輸省、通産省からの許可、認可に当たりまして、両省からそれぞれ照会がありましたときには、私たちその当該漁船のトン数とか漁業の種類、輸出後の用途等を勘案して、差し支えないと思われるものの輸出のみを認めるようにしてきているわけでございますが、この二隻につきましては、韓国は二隻の譲渡の後、北洋トロールの許可を与えたということがございまして、そういう関係で北海道沖に操業に来ておるわけでございます。オリエント丸、第八ゲンプク丸が直ちにユンヤン号、シンヤン号であるかどうかということにつきましては、私たちは船型その他から見てきわめてその疑いが濃いというふうに思っております。  したがいまして、今後の扱いとしてはどういうふうにすればいいのかということでございますが、一遍輸出を許可してしまって、そしてその後韓国なりほかの国が水域の操業許可をやりますと、ちょっと私どもとして打つ手がないわけでございます。  そこでそれでは許可のときにそういう政府のたとえばこういう地域に許可をするつもりであるというふうな、早く言うと許可内示書みたいなものをつけてこさすかどうかという問題になりますと、これもなかなか相手のあることで、相手国の行政に関する問題でございますから、これがどこまで話ができるかどうかということは、法律的にもあるいは交渉上もなかなか問題があるわけでございます。  いずれにいたしましても、今後そういう問題を回避するにはどういう方法があるかにつきましては、私たちとして鋭意検討いたしておりますが、なお韓国に対しましては、そういうことでございましたので、昨年七月以降は輸出許可をいたしておりません。
  259. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この東遠産業には三菱商事、そして北菱が大体一〇%程度の出資をしておるわけですね。わが国の資本も参加しておるものであり、なおかつ北菱の合弁の相手側企業であるわけですね。そして北海道漁連は日本最大の漁連であります。そしてそこの所有した条件づきの船が、チリの沖あるいはまたニュージーランド、こういう方面にトロールをするんだと言いながら、一そうは二年間、もう一そうは一年間、とにかく北海道周辺に張りついて操業しておるわけです。そこに漁民の代表である漁連の出資が行われておるわけです。そして北海道で、御承知のように、漁民はこの韓国のトロール船の被害を受けて、まだ補償も解決していないわけですね。  だから私は、当然何らかの形でこの問題については具体的に確かめるなり、善処方を要望するなり、対処すべきだと思うのです。漁民の感情をこれほど逆なでする事件はないと思うのです。そういう意味で、大臣、この事件を、率直に感じられて、どう考えますか。
  260. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私に対する報告では、いまの東遠産業でございますか、そこへ出資がなされておるということは実は聞いていないわけでございまして、これは日本からの外国への出資ですから調べればわかることでございますが、先生はどうも出資がある、こうおっしゃるのでありますが、私の方の情報ではどうも出資がない、こういう判断をいたしておるわけでございます。  その点が基本的に、だからこれは考え方が違ってくるわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど水産庁長官答弁いたしましたように、運輸省でそういう船の許可を与える場合によほど慎重にしていただくように、これからは私ども対処していかなければならないと思っております。またあわせて北菱の方がそういういろいろの関係を持っておる点についても、私はこの際極力そういうところは手を引くように、道漁連から北菱に対する点については、できるだけ結果的に北菱が手を引かざるを得ないような形で道漁連を指導していきたい、北菱自身は私どもなかなか指導できませんけれども、道漁連に対してはそういう指導をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます
  261. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、いま北海道のそういう漁民の感情を考える場合に、少なくとも日本からは条件づきで輸出した船であるし、そういう関係のある会社でもありますから、それが北海道沖で操業するという点については確かめられて、向こうの方も遠慮を願うというぐらいのことは要望することができるのではないかと思うのです。またそのことがやはり今日の漁民の人々に与える感情からいってもその程度の措置はぜひ配慮してほしいということを強く要望いたしておきたいと思います。  最近の韓国漁業の状況でありますけれども、政府もいろいろ敏感にこの情報は得られておるのではないかと私は思うわけであります。もちろんいま山陰とかあるいは北陸沖の問題もございます。しかし、最近は太平洋岸においてトロールもしくはまき網漁業、これにも進出する準備が進められておるという情報もすでに出ておるわけです。あるいはサケ・マスの流し網、この問題についても試験的に行われたという形跡もあるということが言われておるわけです。あるいは先般の台風の結果漁船が座礁した関係でイカ流し網の問題、これも明らかになった。だからやはりソ連、日本に次ぐ世界第三位の遠洋漁業国の韓国でありますから、企業は日本の好漁場でいろいろな漁法で魚をとる方向にどんどん向いてくるのは、公海でありますから当然だろうと思うのです。このことは避けられないと思うのです。  こういう情報については敏感に対応されておるのかどうか。いま述べた点について杞憂であるということであれば結構でありますけれども、私はそう思っていないわけです。こういう情報も得ているわけです。そうしますと、この問題は基本的に問題を解決する方向を目指す以外に解決の方法はないことに私はなるのだと思います。この点いかがですか。
  262. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のように韓国の底びき網の漁船は、北海道沖のトロール漁船のほかに、九州沖でありますとか山陰沖、福井、京都沖においても操業が見られるところでございます。また、まき網漁船は九州沖、山陰沖で操業をいたしております。イカ釣り漁船につきましては、大和堆を中心とする日本海西部で操業が見られるわけでございます。御指摘のサケ・マスの操業を行っておる、あるいは行う計画を持っておるということにつきましては、私はまだ承知をいたしておりません。そういうことで、日本周辺におきます韓国の最近の操業隻数は大体八百隻ないし九百隻に及んでいるのではないかと推定をされております。  御指摘のとおりいまの日韓漁業協定は、韓国の漁業がいまのように発展することを想定したものではございませんで、確かに韓国の水産業の発展は非常に目覚ましいものがございまして、しかもまた同時に、ソビエト海域あたりから締め出されておることもございまして、どうしても日本海周辺にたむろをするということでございまして、この問題につきましては、やはり韓国との漁業関係全体の見地から私たちは問題を検討していかなければいけないと考えておるわけでございます
  263. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間が来ましたから最後に、道漁連の負債が二百五十億に達するだろう、こう言われているのです。釧路における北市は倒産をいたしたわけです。もう相当内部検討も進んでおるわけでありますから、そういう意味で北海道漁連の再建について、水産庁は今日の再建計画をずっと検討するに当たってどこまで指導されておるのか、再建計画のできる見通しは一体どうなのか、まず第一点伺っておきたいと思います。  同時に、いまの韓国の問題については、いずれ外相会議も、きのう大体日程の打ち合わせをされたようでありますから、外務大臣として、もし実務者レベルで解決できないとすれば、日韓の外相会議でもこの問題は重要な日韓の懸案事項として討議されるものと思うのですが、いかがですか。この点お答えを願いたいと思います
  264. 今村宣夫

    ○今村政府委員 第一点の道漁連の再建問題でございますが、道漁連の欠損額は二百四十五億ぐらいに達する見込みでございます。空取引と言われておる事件によりまして大体百三十億、その他北市関係あるいは北商関係を入れまして大体いま申し上げたような金額になるわけでございます。これはなかなか大変な金額でございまして、私たちといたしましてはこのような事態に立ち至ったことをまことに遺憾に存じております。  この再建は大丈夫かというお話でございますが、私たちはこれは相当苦難の道を歩まなければ再建はきわめて困難な事態であると思うのでございます。したがいまして、いま鋭意北海道におきまして再建計画を策定いたしておるわけでございますが、一つには北海道の漁民の方々の連合会を再建しようとする熱意がどうしてもベースにならなければいけませんし、そういう関係におきましては今後の経営体制をどうしていくのか、あるいはまた不急不要の資産の処分等、あるいはまた利用率の向上でありますとか、あるいは場合によっては出資という問題も理解を得なければいけませんし、同時に金融機関であります農林中金等におきまして今後どういうふうな援助をいたしてまいるのか、その辺全体を通じまして、私たちといたしましても今後の再建の過程におきまして十分指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます
  265. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日韓閣僚会議につきまして、参議院選挙後適当な時期に開催いたすことに合意いたしまして、この漁業の問題も、情勢によりまして重要な議題になり得ると考えております
  266. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります
  267. 中尾栄一

  268. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 北西太平洋における千九百八十年の日本国のさけ・ます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件について、大来外務大臣並びに武藤農林水産大臣に質問いたします。  大来外務大臣に最初にお尋ねますけれども、アフガン問題に関連して、日ソ両国間の国際関係は必ずしもよいとは思われない中でのサケ・マス交渉であったわけでございますが、このような国際間の状況が今回の交渉にどのような影響があったと判断しておられるか、まず見解を承りたいのであります
  269. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘のように、現在における日ソ関係はかなり厳しい環境のもとに置かれておると考えるわけでございますが、事前にもいろいろ通信報道等もございましたが、結果的には今回の会議は実務的な会議になりまして、量的にはほぼ昨年と同じ線を同意いたしたわけでございまして、まずまずの結果であったというふうに見ておるわけでございます。これが一体どういうソ連側の方針によるものか、これはこれからの各年における出方等を見ないと判断いたしかねる状況でございます
  270. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大来外務大臣にさらにお伺いしますけれども、このサケ・マスの政府間交渉については、過去昭和五十三年以前は百日交渉とも言われました。また政治交渉とも言われてきたわけでございまして、今回はわずか十二日間で、昨年の十八日間より六日間も短い異例のスピードで、去る四月十三日に妥結を見たわけであります。こういった異例のスピード妥結になったということについて、この裏にはソ連側において何か意図ありと受けとめておられるのか、その点さらに御見解を承っておきたいと思います
  271. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御指摘のように、ことしの交渉は昨年よりも一週間も早く妥結いたしたわけでございます。一つには、この交渉が昨年あたりからかなり実務的な交渉になってまいった、そういう交渉のスタイルが反映されておるのではないかと思いますし、また双方相互的といいますか、日ソ漁業関係が互恵的なものになってきておる、そういう背景もあったように存じます。そこにアフガニスタンの問題が起こりましたので、これがどういう影響を及ぼすか、私どもも非常に関心がございましたけれども、結果的には政治的な問題が実際の交渉には反映しなかった、むしろ実務的な形で短期間に交渉が終わったという結果になったかと思います
  272. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大来外務大臣は、ことしの秋にもまた交渉があるわけですが、今回の交渉を見て実務的な交渉で今後推移していく、こういうふうに見ておられるのか、その点は全然見通しは立たないとおっしゃいますか。その点どうですか。外務大臣からの意見を承っておきたいと思います
  273. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は、アフガニスタンに対するソ連の軍事介入という問題がひっかかっておると申しますか、その問題がございますので、必ずしも楽観を許さない面もあるかと思いますけれども、今回の例などから見ますと、実務は実務という面も見受けられますので、いまから予断することはできませんけれども、もし今回と同じような態度をソ連側がとるのであれば、秋から暮れの交渉も同様なスタイルになる可能性もあるというふうに考えております
  274. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産大臣に伺います。  私は、この日ソサケ・マス政府間交渉については、去る四月三日及び四月十五日、農林水産常任委員会政府に一時間以上にわたって意見を述べ、また政府の強押しによる交渉を期待したわけであります。また交渉経過についてもいろいろ水産庁長官に見解を求めたところでございますが、本日は農林水産大臣出席しておられますので、主として農林水産大臣にお伺いします。  今回の交渉で、総漁獲量において昨年と同じく今回も四万二千五百トンと決まったわけでございますが、これについて半ば長期的にこのサケ・マスの漁獲量が固定化したものと考えておられるのか、その点の大臣としての見通しはどうですか。
  275. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この三年間、不漁年、豊漁年を通じて同じ漁獲量で決定をできたということについては、私どもといたしましては、安定した形で漁獲量が決定し得る背景ができた、こういうふうに期待をいたしておりますけれども、しかしいずれにいたしてもこれは相手のあることでございますし、この三年間のそれぞれの年の交渉を振り返ってみても、それぞれその最終的な合意に達するまでには相当私どもの代表もみんな苦労をいたしてきておるわけでございまして、果たしてこれはソ連側も安定した形で来年以降の漁獲量にそういう態度で臨んできてもらえるかどうかということについては、私は全くわからないわけでございます。しかし、私どもとしては、そういう不漁年であるときも豊漁年であるときもそういう形で合意を見たということにおいては、安定した形で今後漁獲量が確保できるという期待を持っておる、こういうことだけ申し上げておきます
  276. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの件について今村水産庁長官お尋ねますけれども、長官は今回の交渉に途中から急遽赴かれたわけです。大変御苦労もあったわけですが、異例のスピード妥結を見たわけでございますけれども、いま農林水産大臣から答弁がありましたように、あなたは直接その衝に当たってきた、いわばはだで接した方でありますので、いま大臣答弁なさったとおりであるか、また大臣にはそのように報告なさったのか。あなたの受けた感触を率直に私もこの機会に改めてお伺いをしておきたいと思います
  277. 今村宣夫

    ○今村政府委員 結論的に申しまして、ただいま大臣から申し上げたとおりでございますが、ことしは不漁年であった年に四万二千五百トンを確保できたということは一つの意味を持っているんではないかというふうに思っておるわけでございます。来年は豊漁年と言われるわけでございますから、そういう意味合いにおきまして少なくとも来年につきましての一つの足がかりという点はできたんではないかと私は思います。しかし、今後安定的に四万二千五百トンがずっと続いていくかどうかということにつきましては、これは相手のあることでございますし、またいろいろな状況の変化もございましょうから、一概にそういうことは言えないと思います。ただ私たちとしましては、ただいま大臣が申し上げましたように、三年連続して四万二千五百トンであったということは、そういう基盤の上に立って今後交渉し得るという事実関係ができ上がったということではないかと考えておるわけでございます
  278. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ソ連は当初から短期決着をほのめかしておったわけでありまして、政治的駆け引きを一切取り入れずに実務的な交渉に終始したというような結果をわれわれも日本にいて感じたわけであります。  そこで、二百海里時代の日ソ漁業関係は大枠ですでに固まってきた、また日本の北洋サケ・マス漁をつぶすよりは協力費の増額で実利を取る方が得策というソ連の判断、こういったのがあったのじゃないかとわれわれは見たわけでございますが、そういったことから今回の交渉経過を見てみまして、今後のサケ・マス交渉の性格が純経済的なもの、いわゆる経済ベースでの交渉の可能性が大きくなってきたのではないかとも考えられるわけでございますけれども、これについて農林水産大臣はどのように考えておられるか。同様のことを大来外務大臣はどう考えておられるか、順次お答えをいただきたい。
  279. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 新聞論調などを見ておりましても、いま御指摘のような論調もあるわけでございます。しかし、これは先ほども申し上げましたように、私どもとしては今回の交渉に当たりましてもできるだけ実務的に交渉し政治的問題は絡ませないようにという形で努力をしてもらいたい、私どもから参ります最初の代表の佐野部長にいたしましても、また後から出かけてもらった水産庁帯官にも、その点は私は強く希望をいたしておいたわけでございまして、私どもはそういう考え方で今回の交渉に当たっても対処してきたつもりでございます。  しかし、それじゃこれからともそういう経済的なベースだけで、あるいは実務的な話し合いでいけるかどうかということは、やはり相手国のあることでございまして、私どもはそういうふうに期待はいたしましても、なかなかそうなるかどうかということについては見通しはいまの段階で立てるということは非常に困難ではなかろうかと思っております
  280. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も、いま農林水産大臣答弁された趣旨と同様に考えます。ソ連の対外政策には場合によるとかなり政治優先の場合もございますので、全く将来経済ベースだけというふうにも予測できない。情勢の変化によってはまた変化するということもあり得ると思いますが、今回の場合はいわゆる実務ベースでまいったということであろうかと思います
  281. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣に次の問題をお伺いする前に、水産庁長官に数点お伺いをしておきます。  まず一点は、サケ・マスは昭和五十四年で日本沿岸から八万数千トン水揚げされたわけであります。これは年々ふえる傾向にあることは御承知のとおりです。さらにアメリカなどから五万数千トンも輸入されております。このために国内の在庫は現在五万ないし六万トンに達しておるということはせんだっても指摘したところでありますが、現在どのくらいの在庫が確かにあるのか、それを明確にしてもらうと同時に、値下がりが大変いま激しいわけですけれども、一番最近の新しいデータでどのような値下がり状況であるか、その点どう認識しておられるか、明らかにしてください。
  282. 今村宣夫

    ○今村政府委員 現在の在庫は最新どのくらいの数字かということのお尋ねでございますが、実はこの在庫をつかまえることはなかなかむずかしゅうございまして、私もこれだということを申し上げる確たる在庫数量を把握をいたしておりませんが、巷間五、六万トンという話がございますけれども、まずまずそれに近いぐらいな在庫があるのではないかということは推定されるところでございます。  なお、価格につきましては、最近は、そういう需給状況を反映いたしまして、低迷をいたしておるところでございます
  283. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 在庫については五、六万トン、価格については歯切れが悪かったわけでございますが、それでは水産庁長官、漁業協力費については、昨年の場合北洋で三千六百四十万尾のサケ・マスをとっておるわけですが、一尾当たりの漁業協力費は九十円前後で、魚価の七%近くに上っているというようにわれわれは認識をしております。今年の漁獲量が昨年並みでございますから、物価の値上がり等、いろいろ燃油の値上がり等もございますから、恐らく一尾当たり百円は超えるのじゃないかと思いますけれども、その辺はどういうように政府は検討しておられるか、お答えください。
  284. 今村宣夫

    ○今村政府委員 昨年の一尾当たりの漁業協力費の負担額は、大体八十九円でございます。そのときの水揚げ価格は大体七百五十六円でございますから、先生のおっしゃいます一〇%強の水準であったわけでございます。ことし三十七億五千万円を三千六百四十万尾で割りますと、その一尾当たりの負担が約百三円に相なります。一九八〇年の漁業協力費をいま申し上げましたように計算をいたしますと、大体一尾当たり百三円でございますから、ことしの一九八〇年の魚価はどの程度になるかということによって負担の割合は違ってきますけれども、その比率は恐らく一九七九年よりもふえるのではないかというふうに見通されるわけでございます
  285. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 当然ふえることは、もう言うまでもないわけです。  それで、さらに水産庁長官にお伺いしますが、対ソ漁業協力費が五億円上乗せされたわけでございますが、すなわち三十七億五千万円になったわけですけれども、一隻当たりの負担はどのくらいになるかということをお尋ねするわけです。ちなみに昨年の例で言えば、この協力費のうち四五%を日本政府が負担しておりまして、残りはサケ・マス業界で負担したわけです。このことは、去る四月十五日にも私は指摘して、いろいろ政府の見解を求めましたが、補足的に見解をお聞きするわけですけれども、一隻当たり昨年は三百六十五万円相当になったわけですが、ことしはどういうことになりますか、お答えください。
  286. 今村宣夫

    ○今村政府委員 一九七九年の一隻当たり負担額全部平均をいたしまして、百二十二万七千円でございます
  287. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ことしはどういうことになるのか、その点はどうですか。
  288. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ことしは恐らく昨年の総隻数と変わりませんでしょうから、総隻数は母船四隻を含めまして千四百四十九隻に相なりますから、五億円分をその千四百四十九隻で負担をする、それだけ増加をする、こういうことでございます
  289. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この辺で農林水産大臣にお伺いしますけれども、いまいろいろ若干数字的なことを聞いてまいりましたが、北洋サケ・マス漁は、石油の値上がりがあることはもう言うまでもありませんで、高い燃料を使って割り高な操業を強いられておるわけでございますから、かなり魚価に反映することも言うまでもないことでございますけれども、加えて、国内在庫の過剰ということから、魚の値段が先ほど答弁にありましたように低迷をしている。これにいま水産庁長官から説明がありましたように協力費が上乗せされてくると、一隻当たり、またサケ・マス一尾当たりのペイというものがかなり上乗せされることは言うまでもありません。  したがって、今年は昨年並みというけれども、諸物価の高騰その他から見まして、果たしてサケ・マス業界は黒字操業が可能であるかどうか、漁民は一段と厳しい採算状況に追い込まれていくのじゃないか、かように思っておりますが、この点大臣はどういうふうに見通しておられるか、また、どう対処しようとしておられるのか、お答えをいただきたい。
  290. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ちょっと御説明を申し上げたいと思いますが、三十二億五千万円の昨年の漁業協力費は、先生おっしゃるように、業界が五五%、政府が四五%を負担をいたしたようなわけでございます。今後の政府負担問題をどうするかということは、これは財政当局とも十分相談をしなければいけない問題でございまして、その点は今後十分財政負担問題について協議をいたしたいと思いますが、仮に五億円を昨年と同じように負担をいたしたとしますれば、五億円の五五%でございますから、業界の負担は二億七千五百万になるわけでございます。  御存じのような財政状況でございますから、政府負担をふやすということはきわめて困難な状況にあるわけでございます。あわせて、ことしの魚価はどうなるか、それからことしのコストはどうなるかということは、私たちとしましても十分注視をして検討いたしていかなければなりませんが、総体として申し上げますならば、サケ・マス漁業はまだ相当な負担力を持っておるというふうに私たちは見ておるところでございます
  291. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで水産庁長官にお伺いしますが、漁業協力費について、御存じのように五十三年は十七億六千万で国の負担が七億九千六百五十万、四五・三%、業者の負担が九億六千三百五十万で五四・七%であったわけですね。五十四年は三十二億五千万の協力費に対して国の負担が十四億七千二百万、四五・三%、業者の負担が十七億七千七百八十万で五四・七%でございました。  そこで、五十五年度はどうなるか、三十七億五千万に対してどういう負担になるかということが大変問題になっていくわけですけれども、また、五十二年度の漁業協力費の積算は、ソ連漁業省の経費のうちの四分の一を負担したわけでありますが、五十五年は、今次政府間交渉に当たって積算の根拠はどういうふうに見ておられたのか、また検討されたのか、その根拠はどこに置いてやられたのか、どういう理由で三十七億五千万の協力費を支払うことになったか、その点もこの機会に明らかにしてください。
  292. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ソ連は、漁業協力費につきましての考え方は、サケ・マスふ化その他に要する経費として、ソ連政府としては四千七百万ルーブルを支出をいたしておる、それについて、ソ連の漁獲の割合と日本漁獲の割合で分担すべきであるということを主張いたしておるわけでございます。ソ連は、ことしの漁獲量は九万トンということを言っておりますから、九対四・五という比率で計算をいたしますと千四百万ルーブルくらいに相なります。そうなりますと、円への換算率をどこをとるかということがいろいろ問題になりますが、最近時点の円の換算率で計算をいたしますと、約六十億に相なるということでございます
  293. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いまいろいろ水産庁長官からサケ・マス業界においてはまだ余裕がある、心配ないという意味答弁がございましたが、実際には相当な負担で業界も圧迫を受けるということで、われわれも陳情、要請を受けて大変心配をいたしておるわけです。昨年並みの漁獲量の割り当てでことしは減船の心配はないというものの、負担が大変問題であるということになっております。そういった意味で、漁業者にとって協力費五億円の負担増というものは、経営悪化しつつある・業者の皆さんに対してかなり圧迫になると私は思うのですけれども、農林水産大臣はその点はどう見通しておられるか、お答えをいただきたい。
  294. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 確かに燃料は上がってきておりますし、魚価もわりあい低迷をいたしておるわけでございますから、漁業者の側から見ればできるだけ負担が少ない方がいいという気持ちがあることはよくわかりますけれども、今回の交渉に当たりましては漁業団体の代表の方々もモスクワへ行っておったわけでございまして、その交渉の過程にあっては十分私ども政府の者とその辺のところも話をしておるわけでございまして、まあまあ負担をある程度することについては了解を得られておるということで私ども判断をいたしておるわけでございます。  民間の商売をやっておられる方でございますから、極力少ない方がいいという気持ちはわかりますけれども、私どもといたしましては、国の方もいまの財政状態は大変なことでございますので、お互いにそういう点では同じことでございますから、少なくとも昨年並みの比率での負担ぐらいはしていただきたい、こういう気持ちを持っておりますし、私ども昨年並みの国の助成の割合ぐらいは私どもで確保しなければならないのではなかろうか、こう考えておるわけでございます
  295. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 くどいようですけれども、漁業関係者は割り当てについては減船を免れて、ともかくそろってことしは出港できるということで、一応安堵の心をなでおろしておるわけでございます。そういうことは現地から電話その他で、われわれも現地の模様が目に映るようによく掌握できたわけでございますが、こういった協力費の増によってコストアップ要因がまた加わることになる。そこへ先ほどから申しますように、五、六万トンの在庫がある。しかも諸物価の値上がり、こういったことで果たして吸収がどうであろうかという不安を持ちながら出漁するというようなことになっております。  そこで昨年並みの負担は考える。まあ昨年並みだけでは物価も上がったりしておりますので、大臣はいま大変含みのあることを最後の方でおっしゃいましたが、どうかひとつ安心して漁民が操業できるように、政府負担分についてはぜひ引き上げを望む声が強いわけでございますので、今後の業界状況その他を見て十分政府としてもまた相談に応ずる用意がある、こういうふうな答弁はできないものかどうか、改めて大臣お答えを伺う次第でございます
  296. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今度のこの議定書のサインに関する閣議決定のときにも、私から特に大蔵大臣に要望をいたしておるわけでございまして、私といたしましては、先ほど申し上げましたように四五・三という過去二年間の国庫助成負担割合、これは今後も守っていかなければならない。それが下がるようなことはできないと思いますけれども、私どもの四五・三の割合をここで高めていくということは、なかなか国の財政状態からいってむずかしいのではなかろうか。だから五億上がったものの二億七千万は民間に持っていただき、二億三千万は国が去年よりは多く持つ、これだけは何とか確保しなければいけない、私はこう思っておるわけでございますが、それ以上に国の方で持てということはなかなかむずかしいことではなかろうかと思っているわけでございます
  297. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 北洋漁業の今後の厳しいことを思うと、この機会に農林水産大臣にも特に力を入れていただきたいし、またあわせてお願いするのですが、日ソサケ・マス交渉もさることながら、人工ふ化放流に大いに力を入れてもらいたいと思う。先日もテレビで放映しておりましたが、三年前から千曲川でも稚魚を放流して四年後には回帰してくるようにということで、小学校の生徒たちが願いを込めて放流しているところの映像が映し出されておりました。最近河川の浄化とともに、東北地方から至るところでサケが遡河してくるという状況が見られております。こういったことから今後国内でも大いに力を尽くしていくことは当然大事だと考えますので、こういった問題について強力な対策を講じていただきたいと思いますけれども、この点についてもこの機会にあわせて大臣から御見解を承っておきたい、かように思います
  298. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま五十八年度までの五カ年計画で人工ふ化について相当稚魚の放流をやっておるわけでございまして、この事業については強力に今後も進めてまいりたいと思っております
  299. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大来外務大臣にお伺いしますけれども、時間がわずかになってまいりましたので、最終的にはしょって御意見を承っておきます。  今後の日ソ間の漁業交渉についてでございますけれども、モスクワ・オリンピックの参加、不参加をめぐり、日本政府として不参加を決定した今日、このような対米追従姿勢が今後の日ソ間の漁業交渉にも大きく影響を及ぼすのではないかと国民ひとしくいろいろと懸念するところであることは、これはもう言をまつまでもございません。  そこで、われわれは農林水産委員会に所属して、常にこういった問題を抱えて委員会で検討、審議をしてまいっておりますが、今年末も日ソ、ソ日の漁業協定があるわけでございます。日ソ両国関係のこういった緊張の中で今後の交渉がどう進展していくであろうか。まだ年末に行われる日ソ、ソ日の漁業協定がさしずめあるわけでございますけれども、日本の動物性たん白質を確保するために、日本の漁民が、特に北方においては先祖が長い間命をかけて開拓してきた漁場を確保するために、また国民の食糧確保のために、今後外務省としても力を尽くしていただきたい、また日本漁民を守るために強力な外交交渉をしていただきたい、かように思うわけです。アフガン問題はソ連が起こした問題であって、われわれがこうして従来からやってきた漁業とは直接にどうというわけではない。それはそれ、これはこれとして、われわれは日本食糧を守るためにも先祖が築いた漁場を守るためにも、力を尽くしていかなければならないということは常に考えていることであります。  そういった意味で、今後とも足腰の強い外交姿勢でもって、農林水産省とともに日本の漁民を守るために強力な外交交渉をしていただきたい、このことをこの機会にお願いをするわけですけれども、どうかひとつ外務大臣の力強い決意を含めた見解を承りたい、かように思います
  300. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今年秋から暮れにかけて、ただいま御指摘のように、漁業暫定協定の延長という問題が出てまいります。日ソ交渉は、やはり粘り強く当方の主張を十分に通してまいるように、外交面でもできるだけの努力をいたしたいと思います
  301. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 残余の問題は、時間が参りましたので次回に見解をただすことにしまして、留保しまして、一応質問を終わります
  302. 中尾栄一

    中尾委員長 野間友一君。
  303. 野間友一

    ○野間委員 日ソサケ・マス議定書に関しまして私も質問をしたいと思いますが、時間の関係がありますので、前置きは省略して端的にまずお伺いしたいと思います。  妥結の内容の評価について、外務大臣農林水産大臣はどのように評価されておるのか。量とか漁獲の区域あるいは協力費について、ひとつ評価をお答えいただきたいと思います
  304. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 全般的に見て日ソ関係はやや厳しい状態に置かれておるわけでございますが、その情勢のもとにおきましては、今回の交渉は比較的実務的な形で一応の成果を上げたのではないかというふうに見ております
  305. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、ことしはマスの不漁年でございますし、昨年暮れの日ソ漁業委員会での経過を見ておりますと相当強い姿勢で出てきておりましたので、ことしは相当厳しい状況の中で交渉を行わなければならないと考えておったわけでございます。そういう中で、少なくとも豊漁年であった昨年と同じ漁獲量が確保できたということ、また協力費についても、確かに日本円でいけばちょうど五億の増加でございますけれども、一千万ルーブルという計算でいけば、これは結局円安のために三十七億五千万であって、いまの円換算でいけば大体三十八億三千万ぐらいになるのではないかと思うわけでございまして、それが円の計算でいけば三十七億五千万でできたということについてはやはり評価すべきであろうと考えておるわけでございます
  306. 野間友一

    ○野間委員 早期決着についてはいろいろと言われておりますけれども、このように早期に決着をした理由についてどういうことが考えられるのか、端的に農林水産大臣からお伺いしたいと思います
  307. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは私もよくわからないのでございますが、私どもとしては、水産庁長官以下私どもから出てまいります者には、とにかくいろいろの政治問題を極力絡めてもらわないように、できるだけ実務的に処理をするようにということで努力をしてもらいたい、こういうことを指示いたしてまいりましたし、私は私なりに非公式に、いろいろのルートと申しますか、いろいろ働きかけをするときも、極力漁業交渉に政治的問題は絡ませてもらいたくない、こういうことを強く要請いたしておりまして、そのために早く決着がついたのか、あるいはソ連側の事情で決着がついたのかは私はよくわかりません。よくわかりませんが、私どもとしては、そういう実務的に処理をされたということにおいてだけ見るならば、それは短期間でできるわけでございますから、そういうこともあったのかなと感じておるわけでございます
  308. 野間友一

    ○野間委員 サケ・マス資源が回復傾向に向かいつつあるというような評価がありますけれども、この点はいかがですか。
  309. 今村宣夫

    ○今村政府委員 私たちは、サケ・マス資源は安定的であり、かつ回復の基調にあるのではないかということは強く主張いたしておるわけでございますが、ソ連に言わせますと、いずれの海域、水域においても資源状況はきわめて悪い、いいのはマスノスケだけだという主張をいたしております日本の科学者の観察によれば、アメリカ水域等におきますサケ・マス等におきましては、漸次回復機運が見られるのではないかということを申しております
  310. 野間友一

    ○野間委員 今後の見通しについてですけれども、沖取り安定化への道を開いたのではなかろうかという考え方があるわけですが、この点について農水大臣はどのようにお考えでしょうか。
  311. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ソビエトは、沖取りを認めるといいますか、沖取りはいいのだと言っていいのかわかりませんが、そういう立場はとっておりません。やはり沖取りはやめるべきであるということを強く主張いたしております現実問題として、日本との間で話をして一定数量をソ連が認めておるということは事実でございますし、最後には、本年においても日本の沖取りを認めることとしたという言い方でございますが、ソビエトとしては決して、日本の沖取りをいいものだと考え、また恒久的にこれを認めるという立場はとっていないわけでございます
  312. 野間友一

    ○野間委員 供給量に関して少しお伺いします。  先ほども質問がありましたが、北洋の沖取りが四万二千五百トン、輸入の冷凍品が五万五千トンですか、国内の沿岸物が八万六千トン、合計十八万トン以上というふうになるようですが、わが国の場合、需要と供給の関係考えますと、これらの量についてはどのように評価をしたらいいのでしょう。
  313. 今村宣夫

    ○今村政府委員 サケ・マスの需給でございますが、最近、御存じのようにふ化放流事業の効果があらわれまして、わが国の沿岸漁業の漁獲量はことしは相当大幅な増大を見たところでございます。また北米におきます豊漁ということもありまして、輸入量は五万四千六百トンぐらいに相なっておるわけでございます。  今後の需給はどうであるかということはなかなかむずかしい問題でございますが、一つは、北洋におきますサケ・マスの漁獲量は、本年妥結の結果、大体昨年と同様と見ていいかと思います。ただ、わが国の沿岸漁業の漁獲量は恐らく来年は六万トンないし七万トン程度でいくのではないか。といいますのは、四年前に相当多数の放流をいたしたわけでございますが、来年度帰ってくるサケ・マスについての放流量は少のうございますから、恐らくことしの水準をいくということはないと思っております。  そうしますと、今後輸入はどういうことになるのかということでございますが、大体これが今年ぐらいの水準であるというふうに考えますならば、達観してみまして今後のサケ・マスの需給はおおむね昨年の水準ぐらいではなかろうかというふうに推定をいたしておるわけでございます
  314. 野間友一

    ○野間委員 時間の関係で次に移りますが、協力費の問題ですね。三十二億五千万から三十七億五千万にふえたわけですが、これはルーブルに換算して昨年と比べて必ずしも多くはないという評価も答弁としてあったと思います。ところで、この協力費は、資源の再生産あるいは魚族の保護ということのために使われるようですが、これはどのような効果を上げておるのか、その点についてお伺いしたい。     〔委員長退席、志賀委員長代理着席〕  それから、サケ・マスに限らず魚族の保護のための共同研究がどこまで到達しているのか、効果を上げているのか、上がっていないとすれば政府はどう対応するのか、これらの点についてもあわせてお答えいただきたいと思います
  315. 今村宣夫

    ○今村政府委員 漁業協力費でございますが、これは一九七八年をとってみますと、サケ・マス用の飼料工場の施設でありますとか、ふ化の施設でありますとか、そういうものに使われておるわけでございまして、これはこれとしてソビエトのふ化放流事業に非常に役立っておるものと私は思っております。あと、共同ふ化事業をやろうじゃないかという提案を日本がいたしておりますけれども、これはソビエトは評価をいたしておりませんので、日本とソビエトの共同ふ化放流事業というのはいたしておりません。同時にまた、共同試験研究ということもいたしておりませんが、それぞれ技術研究者がソビエトから日本に技術交流ということで参り、日本からもソビエトに行くというふうに、技術者の技術の交流はいたしております
  316. 野間友一

    ○野間委員 それは一定の効果、成果が上がっているという評価でしょうか。
  317. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ソ連の国内のことでございますから、私がどの程度効果を上げているかということを評価して申し上げることは、なかなかむずかしい状況にございます
  318. 野間友一

    ○野間委員 協力費がふえた、先ほどの論議にもありましたが、これが具体的に漁業関係者の負担の増加として出てくるわけですね。     〔志賀委員長代理退席、委員長着席〕 しかも、漁業経営と申しますか、特に中小の経営を見ますと、燃費のアップは昨年の二・五倍とまで言われておりますし、共補償を一隻当たり約一億円も背負っておると言われております。中小の漁業経営者にとってみますと大変苦しいわけであります。こういう点から考えまして、昨年に比べてさらに漁業関係者への負担が大きくなるということになりますと、経営を考えてみた場合、非常に深刻になるのではなかろうか、こう思うわけであります。  そこで、この四五%の問題がいま出ておりますけれども、農水大臣はこれ以上は無理だというふうにお答えのようですが、大手はともかくとしても中小の漁業経営者の実態、これに即して、しかも負担部分が非常にふえてくるということになりますと大変なことになると思いますので、もしいろいろなこういう不安や経営上の問題が具体的に出た場合に、これに対してはそれなりの特段の手だて、措置をするべきじゃないかと思うのですけれども、いかがでしまう。
  319. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどお答えをいたしましたのもお聞きで、いまそういうお話があったわけでございますが、私は先ほどから申し上げておりますように、確かに漁業者の立場考えれば、燃料費が上がってきておりますし、また魚価も低迷をしておる状況の中で、こういう負担が金額的によりふえていくということに対しては、なかなか御苦労であることはよくわかるわけでございます。  しかし、先ほど申し上げましたように、業界の代表もモスクワに行ってくれておったわけでございまして、そこでいろいろと話も出ておるわけでございますので、また、私ども国の財政は財政で非常に窮屈な現状でございますので、従来の四五%程度の負担は国としてしなければならないと思っておりますけれども、今年度の場合にこの割合を変えて国の負担割合を多くしろということは、たとえ中小企業の問題といえどもなかなかむずかしいのではなかろうか。  ただ、業界の配分の問題は、これは業界の中でやってもらっておるわけでございますので、いま御指摘のような点は十分踏まえながら業界の中でそれぞれ配分をしていただくような形に、私どもとしてはできるだけ話はしていきたいと思っております
  320. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、そういう趣旨を踏まえて行政指導をされる、こういうことですか。
  321. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 業界内部のことでございますから、私どもが強制はできませんけれども、実情は業界の中もわかっておるわけでございますので、負担割合についてはできるだけそういうような趣旨を踏まえながらやってもらえるように、私どもとしては極力努力をしてまいりたいと思います
  322. 野間友一

    ○野間委員 その四五%の割合を上回ることは困難だというお話のようでありますけれども、私は、いろいろな問題が出た場合には実態に即してさらに検討することを強く要求して、次に質問を進めてまいりたいと思います。  遠洋あるいは沿岸に限らず、漁業用の燃油対策に特別の施策が必要ではなかろうか、こう思いますが、これらに対していま具体的な対策を立てておるのかどうか。立てておるとすれば、その中身についてひとつお答えいただきたいと思います
  323. 今村宣夫

    ○今村政府委員 石油の需給でございますが、全体的に言えば量的には現在のところまずそう心配はないといいますか小康状態、そういう状況になっておるわけでございます。もし量的手当てで円滑を欠くような場合がございますれば、その都度、個別的、具体的にエネルギー庁に連絡をして片づけていきたいというふうに思っております。  石油の価格でございますが、これは全体的に値上がりをいたしておるわけで、漁業用の燃油価格につきましても、系統のものは現在大体一キロ七万七千円ぐらいいたしておるわけでございまして、前年の水準から見ますと大体二倍ぐらいになっております。そこで私たちとしましては、昨年の十二月に燃油対策として三百億の低利融資を行ったどころでございますが、今年度も、通過した予算では五百億円の燃油資金を手当ていたしておるわけでございます。当面これらの融資によって対応してまいりたいと思います。  同時にまた、いままでの漁業というものは、石油を使って魚をとってくる、そういう形のエネルギー多消費型の漁業構造であったというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、こういう情勢になれば、今後省エネルギー型の漁業ということに考え直していかなければいかぬ、こういうことで、現在研究会を開きましていろいろと検討いたしておるところでございます。この問題につきましては、やはり民間と官と、関係者が一体になって、今後どういうふうに取り進めていくかということを真剣に検討し、対応していくべきものであるというふうに考えておるわけでございます
  324. 野間友一

    ○野間委員 特別融資の金利あるいは償還期間はどういうふうになっていますか。
  325. 今村宣夫

    ○今村政府委員 貸付期間は、三百億分につきましては、五十四年十二月に貸し付けまして、五十五年三月までが貸付期間であります。償還期限が三年以内、うち据え置きが一年以内で、末端金利は中小につきましては四%、大きいものにつきましては五・六%ということでございます
  326. 野間友一

    ○野間委員 融資の問題もそれなりに結構かと思いますが、いま漁業経営者にとってみますと、先ほど申し上げた共補償あるいは燃費、さらに資材の高騰の中で相当な借金を抱えて漁業経営をされておる、しかも魚価は低迷しておるというような状況で、返済能力がない、そういう方が非常に多いわけです。そうなりますと、融資だけではどうにもならぬというふうになってくると思うのです。特に、先ほど申し上げた共補償ですが、これは大体一船当たり一億円というふうに私は聞いておるわけであります。  そこで、私は農林水産大臣にひとつ要求したいのですけれども、一つは、石油三法の発動、これは武藤大臣、商工委員会の中で私たちはともに苦労してつくったものですけれども、あるいは原価の公開と申しますかディスクロージャー、こういうものを含めまして、やはり資材やあるいは燃費の安定的な供給、こういうものを図る必要があるのではないか。したがいまして、これらの点について、いま水産庁の長官は融資の問題あるいは省エネの問題について当面の施策について話をされたわけですけれども、こういう点で抜本的に漁業の経営の安定を図るという点から、何らかの施策が必要ではなかろうか。このことをひとつ要求するわけであります。  それから、時間の関係で引き続いて質問しますが、省エネ対策、これを考えてみましても、先ほど船体ですか、船型をスマートにするというような趣旨答弁があったと思いますが、いま二百海里時代を迎えまして、以前の大型化あるいは遠洋用というふうなことで大変に大型化しておる。しかもこれは、やはり一つの農林水産省の施策としてやむを得ずこういうことで対応し、そして借金をためておるというのが実態だと思うのですね。しかも、今回はこれについて、資源が有限であるのに設備が大変肥大化している、省エネ対策ということでスマート化というような問題がありますけれども、これらの点について、率直に申し上げて私は政府にも大きな責任があるのではないか、こういうふうに思わざるを得ないと思うのですが、これらに対してどう対応していくのか。単にかけ声だけの省エネ、これの対策はかけ声だけでいいのかどうか。これらの点についての農林水層省の御見解をひとつ求めたいと思います。  それから三つ目は、北洋のサケ・マス漁業に関して言いますと、母船式操業ですね、これは四隻の母船と独航船が千四百四十九隻、この中で母船形式がこれだけを占めておるわけでありますけれども、これまた中小の漁業者への優先的な操業許可、これを中心に検討し直す必要があるのではないか。水産庁にお聞きしても、中小でもここでこの漁業に従事することは十分可能だということも伺っておるわけでありますけれども、このあたりについての、三点いま挙げましたけれども、これを私の方で要求したいと思いますけれども、ひとつ農林水産省の見解を聞かしていただきたい。
  327. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 最初の点について私からお答えいたしますが、これは何も漁業だけではないので、いまの野間さんのお話はいろいろ燃料を使わざるを得ないそれぞれの業界に対して何らかの形で安定した価格で燃料が供給されるようにしなければいけない。そのためにはディスクロージャーも考えろとか、いろいろ御指摘があったわけでございますが、これは正直、私の所管だけの問題ではなくて、政府全体としてそういう問題を研究していくべきであろうと思っております。中には石油関係をもう国全体でまとめてやった方がかえっていいのではなかろうか、民間企業に任せるべきではないというような意見もあるようでございますし、また逆に言えば、かえって、そうなってくると今度はいまの石油公団のようになかなかうまくいかない点もあるのではなかろうかとか、いろいろ意見がございまして、私はなかなかむずかしい問題であろうと思いますけれども、私、個人的には石油の問題は相当勉強しておるつもりでございますので、そういう立場で検討をひとつこれからとも加えていきたいと思います
  328. 今村宣夫

    ○今村政府委員 沿岸から沖合いへということに伴いまして漁船が大型化し、何とかということについての問題でございますが、確かに沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へとそういう経路をたどりまして現在の漁業が発展してまいったわけでございます。その過程において漁船が大型化していくということもこれまた必要なことであったわけでございますが、ただ、そこのところで、やはり漁業経営者というのはできるだけスピードの速い、しかもまた大型の船でできるだけ早く漁場へ行って、できるだけ早く魚をとって、できるだけ早く持って帰ってくるという、そういう競争関係が非常に強く働いたこともまた事実であろうかと思います。  したがいまして、今後省エネルギーの問題を考えます場合におきましては、たとえば経済的な運航速力を考えるとか、あるいはまた省エネ的な船を考える、あるいはまた機械、器具につきましても省エネ的な物の考え方をしていくということで、いずれにいたしましても、そういう全体の問題についてやはり関係者挙げて取り組んでいく必要があるかと思っておるわけでございます。  それからサケ・マスの割り当ての場合に中小漁業者への配慮をしてはどうかということでございますが、これはなかなかむずかしゅうございまして、やはり従来の実績主義によって配分をしなければ、これを変えるということになりますれば大変な混乱を起こすわけでございまして、私はやはり従来の実績によって対処していくことが最もいいのではないかというふうに思っておるわけでございます
  329. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたので、これ以上はできませんが、重ねていま私の方で要求をしましたこと、さらに別の機会にこれを詰めて、ひとつただしてみたい、こういうふうに思います。  終わります
  330. 中尾栄一

    中尾委員長 林保夫君。
  331. 林保夫

    ○林(保)委員 最後の質問になりましたので、端的にお伺いをいたしますから、率直にお答えいただきたいと思います。  日ソの漁業交渉はかつては百日交渉といわれており、漁期が近づいても交渉がなかなか終わらぬという状況もございましたが、今回わずか十二日間という短期間で妥結した。このことに対しまして交渉をなされました御担当の皆さん方にまず敬意を表したいと思います。  しかし、なおここにいろいろな問題があろうかと思います。まず、アフガン問題が一番焦点になっておりますが、これらと関連いたしまして非常に両国関係がむしろ冷え込むといったような状況の中での交渉であったと存じます。このように短期間に妥結したのはどういう事情によるのか。たびたび本日も質問が出ておりましたけれども、改めてこのことを外務大臣にお伺いいたしたいと存じます
  332. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもも、今年の場合は日ソ関係、かなり厳しい環境にあるというふうに見て、まいったわけでございますし、そういう環境のもとで今度の漁業交渉がどういうふうになるか多少心配もしておったわけでございますが、結果的にはいま林委員からの御指摘のように短期間に終わりまして、内容的にも、数量は減らない、金額はややふえたというようなことでございますが、まずまずという結果を得たわけでございます。  どういうわけかという点はいまの段階ではまだわからないわけでございまして、今後のいろいろなソ連側の動きも含めて判断してまいらなければならないと思いますが、一つには、漁業交渉が実務的なものにこの一両年なってまいった、お互いの利益が絡んでおるというような点もあるのではないかと考えております
  333. 林保夫

    ○林(保)委員 同じことでございますが、農林水産大臣にこれまた率直にその問題について、早期妥結の背景、と同時にもう一つ農水大臣には、今村水産庁長官が語っておられるところでございますが、不漁年にもかかわらず今年も四万二千五百トンの漁獲割り当て量を確保できたことで来年はいわゆる交渉がやりやすくなったんだというような意味のことを述べておられましたが、大臣、どうお考えになられますか、お答えいただきたいと思います
  334. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 第一点の、短期間で交渉妥結をしたということは、いま外務大臣からも御答弁がありましたのと同じことでございまして、私も佐野部長なりあるいはその後今村水産庁長官が出かけますときには、とにかく政治問題を極力絡ませないでほしい、実務的にやろうではないかという姿勢でがんばってこいということをそれぞれ指示をいたしたわけでございますし、また、いろいろの非公式のルートを通じても、私は相手方にそういう私の気持ちを率直に伝えておったわけでございます先ほども申し上げましたが、それが結果的にプラスになったのかどうかはわかりませんけれども、相手側も相当そういう点には気を使って、実務的にやろうという気持ちでやってくれたようでございまして、それで結果的には短期間で交渉が妥結したのではなかろうかと思っております。  第二点の問題でございますが、来年という問題でございますけれども、これは去年が豊漁年、ことしは不漁年、また来年は豊漁年、こういうことでございまして、この三年間を振り返って豊漁年も不漁年も同じ四万二千五百トンで妥結ができたということは、少なくとも来年においても、来年豊漁年でございますから、この線でいけるのではないかという意味で、水産庁長官は来年はある程度見通しが立つのではないかということを申し上げておることでございまして、私もできる限りそういう方向でいけるように期待をいたしております。  ただ、ソ連という国が相手でございますので、こちらがそう思っておっても、その年に果たして相手がそう出てきてくれるかどうか、これはわからないことでございますので、ここで私どもは期待をいたしておるということだけは確かでございますけれども、必ずそうなるという見通しが立っているということではないわけでございますので、その点は御理解をいただきたいと思うわけでございます
  335. 林保夫

    ○林(保)委員 水産庁長官にお伺いしたいと思うのでございますが、事実そのようにやりやすいような印象を私どもに与えておりますが、その根拠はどういうところにございますか。ソ連側の交渉姿勢が変わってきたのかどうか、端的にひとつお答えいただきたいと思います
  336. 今村宣夫

    ○今村政府委員 一つは、ことしソ連が三万五千トンと言っておった当初から比べまして、結果的に不漁年で四万二千五百トンになったということでございます。したがいまして、豊漁年ということになりますと、この四万二千五百トンをさらに削減をするということは、資源問題からはソ連は主張が弱くなるということは想定をされるわけでございます。  それからもう一つは、ソ連が漁獲量と漁業協力費の関係は密接不可分であるという主張をし始めたことでございます。漁業協力費の三十二億なりあるいは三十七億なりという金額は、これはソビエトはいろいろ沖取りはいかぬとかなんとかいう意見はございましょうけれども、それに一つの評価をしておるということは確かなことでございまして、そういう意味合いにおきまして、いろいろ問題が絡めば別ですが、これを実務的に処理をするということになれば、来年は豊漁年ということで、漁獲の数量について言いますならば、交渉はことしよりもやりやすいのではないかというふうに想定をされるわけでございます。  これはあくまでも想定でございますから、その点はいま大臣が申し上げましたように、どういうふうになるか、これは相手のあることですからわかりませんけれども、一応の現在のベースに立って物を考えてみれば、そういう想定ができるのではないかという意味におきまして、来年はクオータについてはことしよりもやりやすいのではないかというふうに思っておる次第でございます
  337. 林保夫

    ○林(保)委員 外務大臣にお聞きしたいのでございますが、ただいま大臣も長官も同じように、実務的に決まったということでございますが、実務的にソ連とはなかなかいかぬというのが外交上の常識だとしばしば承っておりましたけれども、どうしてそういうふうに実務的になったのか、御専門の立場でひとつ承っておきたいと思います
  338. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 余り的確にはつかめませんが、やはりソ連側にとっても相当利益があるという認識が出てきておるのではないかというふうに想像いたします
  339. 林保夫

    ○林(保)委員 ただいま大臣の言われました、ソ連側にかなりの利益があるという。水産庁長官は御専門の立場でどういうふうにそれを裏づけられますか、承っておきたいと思います
  340. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先ほども申し上げましたように、クオータの問題と漁業協力費の問題は密接不可分であるということをソビエトが主張するということは、日本がクオータが欲しいんならば漁業協力費をたくさん出しなさいよ、こういう意味と受け取れるわけでございます。と言いますことは、今度それを裏返して言いますれば、三十二億五千万なり三十七億五千万なりの協力費というものは相当値打ちがあるということを考えさせられるわけでございます
  341. 林保夫

    ○林(保)委員 それと関連いたしまして、本年の漁獲量四万二千五百トンでございますが、これはいわゆる総水揚げ、こういった形でどのくらいの総額の漁獲収益になるのか、それと今回払うべき漁業協力費三十七億五千万円はどういう割合になるのか、水産庁長官から御専門の立場でお聞きしたいと思います
  342. 今村宣夫

    ○今村政府委員 四万二千五百トンを昨年の水揚げをしたときの魚価で計算をいたしますと三百二十一億円に相なります。漁業協力費は三十二億五千万でございますから、その割合は一〇・一%になります。それから三百二十一億で、民間の負担が十七億八千万円でございますから、民間がどれだけ負担したかということで計算をいたしますと、総水揚げ高に対しまして民間の負担割合は五・五%に相なります
  343. 林保夫

    ○林(保)委員 漁業協力費の一〇・一%、この率は他の漁業権といったよその国との関係で見ました場合に、高いのか低いのか、過分なのか過小なのか、お答えいただきたいと思います
  344. 今村宣夫

    ○今村政府委員 アメリカ等の入漁料は大体三%ちょっとぐらいでございますから、それに比べれば、入漁料的に比べれば、これは非常に高うございます。オーストラリア、ニュージーランド等への入漁料も三%ないしせいぜい四%でございますから、そういう観点から見れば、漁業者の負担する五・五%は高うございますし、しかも、そういう入漁につきまして国が四五%を負担をしておるということは、これは相当のものでございます
  345. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほどお話のありましたように、ソ連側にとってそのように大変メリットのある結果になっておる。このことは実際に行政を担当される立場から、どういう論拠で他の国が三%であるにもかかわらず一〇%以上のものをソ連に与えるのか、国民的な立場からはっきり承りたいと思いますので、お答えいただきたいと思います
  346. 今村宣夫

    ○今村政府委員 これは一つは漁業協力費の考え方でございますが、サケ・マスはふ化放流をいたしますれば、これは何パーセントか帰ってくることは確かなことでございますから、普通の魚と違いまして、やはりふ化放流に力を入れなければいかぬということでございます。力を入れればその成果が出てくるものである。したがいまして、そういうふ化放流に力を入れて資源を維持培養していくということは、ソビエトだけでやるべきものでなしに、そのソビエト系サケ・マスをとる日本としてもその応分の負担をなすべきであるという考え方に立っておるので、ただ単に入漁料その他という観点だけから物事を考えてはいけないのではないかと思うわけでございます。入漁料という観点から考えますれば、私が申しましたように負担の割合が多うございますけれども、先ほど申し上げました資源の維持培養について相互に協力するという観点から考えますならば、この程度の負担というものは必要なのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます
  347. 林保夫

    ○林(保)委員 前年の三十二億五千万円でございましたか、これは実際上どういう計画に基づいて現在どの程度向こう側に納まっておるのか、この辺の実績を御報告いただきたいと思います
  348. 今村宣夫

    ○今村政府委員 一昨年の分につきましては、現在全部引き渡しが完了いたしております。昨年の事業については一部案件について成約はしておりますが、まだ事業は実施途中となっております。  この手続につきましては、御存じのようにソビエトの方から希望リストが出てまいりまして、それを大水が受け付けて、いろいろと協議をして、現物的な機材及び設備で供与するということに相なっております
  349. 林保夫

    ○林(保)委員 このサケ・マスの資源保護のために使われる、今度は何かえさ工場を中心にして協力するというようにも聞いておりますけれども、またほかの方の話によりますと、何か目的外に使われているのじゃないだろうかという疑いも出ているやに聞いております。たとえば魚肉のソーセージプラントなど一体どういう関連があるのだろうか、ひょっとしたら河川改修にまでいろいろ使われておるのじゃないだろうかという疑いを持つ向きもございますが、私の情報が不的確かもしれませんので、ひとつ水産庁長官からその実態についてお伺いしたいと思います
  350. 今村宣夫

    ○今村政府委員 これはたてまえとしてはサケ・マスのふ化放流のために金を使うということでございまして、えさ工場もサケ・マスに供与するえさ工場でございまして、そういう意味合いにおきましては、えさ工場というのは非常にぴたっとマッチしておる施設であろうと思います。  それで昨年の供与内容を見ますと、確かにソーセージプラントが一カ所入っておるわけでございます。これはソーセージプラントというのはおかしいのじゃないかというお話もあるのでございますが、一つはソビエトの希望という問題もございまして、そこら辺の取り扱いをどういうふうにするかというところがなかなかデリケートな問題があるわけでございます。必ずどんぴしゃりとえさ工場のように使わなければいかぬものであるかどうかということにつきましては、必ずしもそうではないのではないかという考え方もあり得ると思います。  しかし、いずれにしましても、たてまえがサケ・マスの増殖のためにということでございますから、今後ともそういう観点から、私たちはよくソ連の希望を聞きながら、同時にそういう趣旨に従うような機材の供与ということに留意してまいりたいと考えておる次第でございます
  351. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほど来質問も出ておりましたけれども、今回の三十七億五千万円、五億円増、これに対しまして国がどの範囲で負担なさるのか、そしてこれは本予算で賄うのか、あるいはまた、補正予算という手もあろうかと思いますが、その辺のところをはっきりひとつお答えをお聞きいたしたいと思います
  352. 今村宣夫

    ○今村政府委員 三十二億五千万円の政府と民間との負担の割合は、政府が四五%で民間が五五%ということで分担をいたしておるわけでございます。三十七億五千万円の分担をどうするかということは、これは今後財政当局とも協議をして決めなければいかぬことでございますが、先ほど大臣が申し上げましたように、国としては昨年を下回らない、昨年と同程度は負担をしなければいかぬだろうけれども、それを超えて負担するということはきわめて困難な事情にあることは申し上げたわけでございますが、財政当局に言わせますと、三十七億、恐らく五億ふえた分につきまして昨年同様の負担をするということについてもきわめて難色を示すのではないかと私は考えております。しかし、大臣のいまの御答弁もあり、その点については十分大臣の御答弁趣旨を踏まえて財政当局と折衝をいたしてまいりたいと考えておるわけでございます
  353. 林保夫

    ○林(保)委員 いずれにいたしましても、大変大ぜいの人に関連いたしました、千六百隻でございますか、一万六千人の雇用の問題とも関連いたすことでもございますし、市況の状況必ずしもいいとは言えない、こういう問題もあろうかと思います政府におかれましては十二分な体制をおつくりになられますよう、そしてまた一方、消費者の立場から申しますと、必ずしも安い魚をわれわれは食べておるわけじゃございませず、それなりの展望を持った魚価の安定に尽くし得るような交渉成果、称賛いたしますので、ひとつそのかわりとしてでもしっかりやっていただきたいと思います。  時間がございませんので、もう一つだけ承っておきたいのでございますが、今回の日ソ交渉で、私ども日本人から言わせますと、禁漁区が余りにも多過ぎる、どうにもならないような形になっておりますが、禁漁区の縮小について政府はどのように努力なさったか、御報告いただきたいと思います
  354. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ソビエトの立場から言いますと、禁漁区をできるだけ広げたいということでありますし、私の方の立場とすれば禁漁区をできるだけ狭めたいということでございます。  昨年は、アメリカ水域に入っていきます回廊のようなところにつきまして最後までもめたわけでございますが、ことしは幸いにしてその回廊を閉鎖されなかったということがございます。ただ、同時にまた、漁期につきましては、約半月繰り上げるべきだということをソビエトは主張いたしたわけでございますが、全体おさまりぐあいとしては全部昨年どおりということに相なっております。  私たちといたしましては、禁漁区の縮小等につきましてはいろいろとこれを主張いたしておるわけでございますが、実際問題としてこれを縮小させることは交渉上非常にむずかしい状況にございます。しかし、現在よりこれを狭められるようなことになりますと操業は非常に困難になりますから、その辺の兼ね合いをよく見て、今後とも折衝に努めたいと考えておる次第でございます
  355. 林保夫

    ○林(保)委員 来年の交渉見通しについていろいろ御答弁がございましたけれども、なおやはり明るそうだという印象でもございますし、そしてまた魚の量もふえてきつつある。いろいろと交渉努力をなさいまして、これが永続性のある、まさに先ほどおっしゃったような実務的な交渉、これをこのまま拡大発展させていかれるよう特に希望いたしたいと思います。と同時にまた、今日いわゆる政治問題でソ連との間にはいろいろな問題がございますが、これを克服されるような努力を、この漁業交渉の結果を基礎としてでもやっていただきたいと思います。  最後に、大臣のこれからの対ソ外交、特に漁業に関してでも結構でございますし、大きく言えば対ソ交渉でございますが、交渉の仕方など御決意を承りまして、私の質問を終わりたいと思います
  356. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 対ソ外交は、日本にとって重要な外交の分野でございますので、今後も粘り強く筋を通した交渉を続けてまいりたいと考えるわけでございます
  357. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。以上で終わります
  358. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  359. 中尾栄一

    中尾委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  360. 中尾栄一

    中尾委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  361. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  362. 中尾栄一

    中尾委員長 次回は、来る二十三日水曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十一分散会      ————◇—————