○大来
国務大臣 アメリカの対日感情、いろいろな世論
調査がございますけれども、二年ほど前に経済問題を中心にしてかなり激しい時期がございましたが、その後は
改善に向かっておったと思います。そこへまたイランの事件が起こりまして、非常に
アメリカの一般の人々の感情が高ぶっている時期でございましたので、これは一時的、比較的短期間に火が燃えて、その後はある
程度おさまった状態になっておるかと思います。
アメリカにつきましては、
日米関係で火がつきやすい条件は存在しておって、いろいろな折に触れ事に触れ、その火が燃え上がる。燃え上がると両国の責任者が鎮火に
努力して、ある
程度おさまるというような経過を繰り返しておる
状況があると思います。
火がつきやすい原因として、
日米関係のアンダーカレントと申しますか、
一つには経済的には日米の
貿易のアンバランス、二年前には特にこれが激しかったわけでございますが、大幅な
日本の輸出超過、これは一般大衆については消費者の利益になる面もいろいろあるわけでございますけれども、
アメリカが
世界のナンバーワンと思っておったいろいろな分野、テレビ、鉄鋼あるいは最近は自動車、こういう面で次々に
日本に追いかけられる、追い越されるというような感じが
一つあると思います。
第二には、
先ほど来議論のありましたフリーライダー、どうも
日本は自分の果たすべきことを十分やってない。
アメリカのタックスヘイヤーの負担で
日本は楽をしているのではないかという感じが相当広い
範囲にある。
第三には、エレクトロニクス、ICなどの分野であることでございますが、ハイテクノロジー、そういう分野で
日本はだんだん
アメリカの競争者になってきたのではないか、
アメリカにとっては競争力があるのは農業とハイテクノロジーしか残されていない、そういうハイテクノロジーの分野に
日本が競争者になって対米輸出も急激にふやしてくるのではないか、こういった心配とか、いろいろまじりあっておると思います。
また、
アメリカの
世界における役割り、十年、十五年前までは圧倒的な比重を持っておったわけでございますが、相対的な比重がだんだん下がってまいる。
世界の問題について
アメリカの一存ではまいりかねるようなことがふえてきておる。これに対しては欧州及び
日本の協力を求めなければならない。しかし、その協力が必ずしも
アメリカが
考えるように十分には行われない、それに対するいら立ちというようなもの、いろいろな面がまじりあっておると思うのでございますが、しかし、基本的には
日米関係の重要性ということ、これは指導層から相当広い
範囲に基本的な認識はあると思うのでございます。それだから、ときどき火がつくけれども、しかしその火がまたおさまってくるということになっているのではないか。
そういう
意味では、
日米関係というのは絶えず日米双方で気をつけて、この緊張が余り激しくならない
努力が必要だと存じます。
日本側、
日本国民の
考え方、これは私が申し上げるよりも、いろいろな方々の御
意見があると思うのですが、戦後三十年にわたりまして、戦争によって徹底的に貧困化したところから何とか経済の建て直しをやろうということで経済再建に一心不乱にやってまいった。しかし、自分たちは貧乏だし、
世界の中で小さな役割りしか持っていないという気持ちが一般的だったと思うのでございますが、どうも一生懸命にやっているうちに
GNPも相当なものになって、
アメリカの
GNPの半分に近いところになる。
世界のうちでも
アメリカに次ぐ。あるいは
ソ連、これは統計のとり方がむずかしいのですけれども、
GNPということになると、いまの
日本と
ソ連とほぼ同じくらいな水準かと思いますけれども、そういうようなことで、単に自分の国の経済の復興再建だけで役割りは済まない。何か
世界に対しての役割り、責任というものを持たなければならないだろうという気持ちも出てまいったと思います。
そういう
意味での役割りといいますか、意識の
変化がございまして、対米
関係におきましても、占領時代あるいはその惰性、
日本がまだ経済的にも非常に貧しい時代の
考え方と少しずつ最近は
変化してきておるように私も感じておるわけでございます。