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1980-05-14 第91回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月十四日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 瀬野栄次郎君   理事 小宮山重四郎君 理事 塚原 俊平君    理事 石野 久男君 理事 上坂  昇君    理事 貝沼 次郎君 理事 中林 佳子君    理事 米沢  隆君       狩野 明男君    玉沢徳一郎君       中村 弘海君    船田  元君       関  晴正君    日野 市朗君       木内 良明君    瀬崎 博義君       吉田 之久君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     下邨 昭三君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君  委員外出席者         参  考  人         (東京商船大学         教授)     竹村 数男君         参  考  人         (日立造船株式         会社代表取締役         社長)     木下 昌雄君         参  考  人         (前むつ市長) 菊池 渙治君         参  考  人         (長崎県議会議         員)      速見  魁君         参  考  人         (日本原子力研         究所労働組合中         央執行委員長) 井坂 正規君         参  考  人         (全国造船重機         械労働組合連合         会産業対策局         長)      中川 幹雄君         特別委員会第二         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   上田  哲君     関  晴正君   林  保夫君     吉田 之久君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     上田  哲君   吉田 之久君     林  保夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出第二六号)  日本原子力船開発事業団法及び日本原子力研究  所法の一部を改正する法律案石野久男君外四  名提出衆法第三七号)      ————◇—————
  2. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本原子力船開発事業団体法の一部を改正する法律案及び石野久男君外四名提出日本原子力船開発事業団法及び日本原子力研究所法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人として、東京商船大学教授竹村数男君、日立造船株式会社代表取締役社長木下昌雄君、前むつ市長菊池渙治君、長崎県議会議員速見魁君、日本原子力研究所労働組合中央執行委員長井坂正規君、全国造船機械労働組合連合会産業対策局長中川幹雄君、以上六名の方々から御意見を承ることにいたします。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございました。  両法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  議事の順序について申し上げますが、最初に、先ほど御紹介いたしました順序で御意見をお一人十五分程度に要約してお述べいただき、次に、委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際には、その都度委員長の許可を得て御発言願います。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、最初竹村参考人にお願いいたします。
  3. 竹村数男

    竹村参考人 ただいま御紹介いただきました東京商船大学竹村でございます。  大学では機関学科原子力船工学講座に属しておりまして、原子炉の理論、原子力機関並びに原子力船構造、配置、性能、特性、そういったものを教授、研究しております。また昨年、原子力委員会に設置されました原子力船研究開発専門部会に一員として参加いたしまして、討議に加わりました。  本日は、日ごろ考えておりますところを若干述べさせていただきたいと思うわけでありますが、まず最初に、原子力船特徴から原子力船研究開発必要性を述べたいと思っております。  まず第一に、原子力船は一度燃料を装荷しますと、二ないし四年というものは補給なしに運航を続けることができるわけであります。このことは、原子力船をどの航路にも投入できるというメリットがございまして、船隊を構成する意味において定期航路確保の上に非常に有益であります。在来船は、この点、燃料油とかボイラー水等を積み込むスペースというか容量のために制限を受けて、そう有利さのあるものではございません。また、長期燃料を補給しなくてもよいということは、外地燃料油が補給できなくても立ち往生するようなことはないということであります。このことは、昭和四十八年のオイルショックのときに、日本船外地経験したことであります。  第二に、高速馬力の船、長い距離航海する船にとって原子力船はきわめて有利であるということであります。  最近建造されました最も大きな馬力の船は、アメリカシーランド社の十二万馬力コンテナ船でありますが、この程度の船になりますと、重油は一日に約五百トンたきます。したがいまして、日本からニューヨークまで直行いたしますと、一万トンの燃料を使うことになります。欧州直行ではもっと多くなるはずでございまして、それだけ荷物のほかに油のタンクを持たなければならないということで、積み荷減という影響が出てくるわけであります。  船では、スピードを上げますと、馬力スピードの三乗に比例して必要になります。したがって、燃料もまた三乗に比例して減る、燃えるというかっこうになります。高速になればなるほど、また距離が長ければ長いほど原子力船が有利ということになるわけであります。  第三番目に、燃料費用在来船に比べて安いということであります。在来船では、先ほどのシーランド社の十二万馬力級では、一時間一馬力を出すのに、燃料油が上がってまいりましたので、いまの値段でいきますと、多分十円ぐらいかかるのではないかと思います。一方、原子力船の方は、同じく一時間一馬力を出すのに二円程度ではないかと予想されております。原子力船はずいぶん割り安でありまして、これで日本からニューヨーク直行になりますと、片道で約三億円以上の燃費の節約ということになります。  もう一つ特徴を申し述べますと、原子力船では燃料が燃えても重量は変化しないということであります。このことは、結果的に船の喫水が変わらないということでありますので、在来船のように、航海中に喫水を直すために、あっちの燃料をこっちに移し、こっちの水をあっちに移しというようなことは不必要になります。つまり、人手も設備も要らなくなりますと同時に、非常に安定した運航ができる、こういうメリットがあると思います。  以上のほかにも、原子力船化した場合の経済的なメリットはありますけれども、一方デメリットの方はどうかと言いますと、何と言っても船の値段が高いということであります。原子力船価格は、先ほどのシーランド社の十二万馬力コンテナ船級になりますと、在来船の二倍程度になろうかと思います。このように価格割り高になりますのは、当然、建造期間が長かったり、あるいは高級な材料を使ったり、あるいは精密な装置を用いたりということでありますけれども、もちろん、その根源は放射能の存在、こういうことであります。船を運航するための経費というものも、やはり在来船よりも割り高になります。  以上の経済的なメリットデメリットを総合しますと、シーランド社の十二万馬力級では、原子力船在来船よりもかなり経済的に有利になるという結果が、計算でありますが、出されております。  船に限りませんけれども、輸送機関では、やはり安く、早く、確実に荷物を運ぶということがモットーでありましょうから、どこかの国でそういう船を走らせますと、よその国は全部敗退するわけであります。特に国際場裏海運においてはそうだと思います。したがいまして、よその国も、それに追従してそういうものを走らせなければならないということになるのだろうと思います。燃料油高騰によりまして、そういう状況の素地というようなものがますます到来しつつあるのではないかというふうに思っておりますので、原子力船研究開発というのを大いにやっていくべきだ、こういうふうに思っておる次第であります。  燃料油の問題は、私が申し上げるまでもありませんで、これはエネルギーの問題として非常に大きく叫ばれておりますので、その方面からも、やはり油をたく船にかわるものということで原子力船の出現を望むわけであります。  以上、私は、原子力船研究開発必要性を述べましたが、原子力船のように非常に技術の高い船は、また高い運航要員がなければ運転ができないわけでありますので、わが国のような優秀な船員がたくさんいる国に非常に向いているわけでありまして、御承知のように、発展途上国の急追をかわすためには、好個の素材であるのではないかというふうに思っております。海運国であるわが国としては、原子力船研究開発する必要性一つとして、いまの点をつけ加えたいと思うものであります。  次に、原子力船実用化時代に備えて、原子力船研究開発をどう進めるのかという点について少々述べたいと思います。  やはり目標をちゃんと決めまして、一貫した理念のもとに着実に進めるべきであるということは紛れもないことであります。  その意味におきまして、まず第一に、原子力船研究開発を進めるというには、原子力船実用化時代というものを一体どういうふうにとらえるかということがポイントになるかと思われます。船の設計から解体までの一生にわたって何よりも安全性を十分に確保しつつ、在来船に競合できる船が多数出現する時代、こう想定すべきではないかと考えております。多数とは十二万馬力級コンテナ船が少々出てくるというものではなくて、各国の海運界が現在、原料や素材を運搬している船、大体三ないし四万馬力が多いわけでありますけれども、そういうものまで含めるというふうに私は解釈したいと思います。この程度馬力原子力船も、現在のような燃料油高騰が続けば、二十一世紀に入るころには、在来船より経済的に有利になる可能性がある、一応こういう計算が出ております。したがいまして、実用化時代は三ないし四万馬力程度船隊を組んで動き得る二十一世紀の初めごろ、こういうふうに考えております。  第二に、それでは実用化のために必要な研究開発は、一体どういうものであるかを明らかにすることが必要じゃないかと思っております。  御承知のように、アメリカではサバンナ号ソ連ではレーニン号アルクチカ号シビーリ号、西独ではオット・ハーン号、こういう実船による運航経験を踏まえまして、さらに研究開発をした結果、原子力船実用化に必要な基礎的な技術基盤というものを確立しているのではないかと思っております。またフランスイギリスも、艦艇の経験もとにしまして、同様に商船用原子炉プラント研究開発を積み重ねまして、実用化に必要な基礎的技術基盤確立していると言われております。  わが国も、まず、この域に達する必要があると考えるわけでありますが、先進国の例に見るまでもなく、「むつ」により設計建造運航経験を得ることは欠かせない過程であると思っております。とりわけ「むつ」は、国産技術による設計建造でありますので、自主技術確立を目指すわが国研究開発に寄与するところが非常に大きいものと思っております。「むつ」は、経済性に力点を置いてつくられた船ではございませんので、実用化時代に向けての研究開発の非常な寄与にはなりましても、それだけで済むものではありません。経済性に富んだ、しかも安全性信頼性を前提とした商船用原子炉プラント開発というのが、やはりこれからの研究開発計画の中心になると考えております。  それで、わが国としてどのようなタイプの舶用炉プラント実用化のために最適であるか、こういう検討から始める必要があるのではないかと思っております。この検討は、先進国との技術格差を考えますと、できるだけ早く着手する方がよいと思っております。幸いにして最適な舶用炉プラントについて選定されましたとしても、多分それはわが国で未経験技術分野がかなり含まれてくるのではないかと私は思っておりますので、そうしますと、個々の機器とか装置について、徹底してゆすってみたり、いろいろなことをしてみて、実験をやってみたとしても、それだけですぐに実用船につなげるというのは、やはり十分ではない、こういうふうに私は思います。どうしてもプラントをつくって運転してみることが必要だと考えております。このゆえに原型炉の建設のステップが必要であると思っております。  なお現状では、低馬力原子力船においては、在来船に対し経済的に優位に立てるかどうか、まだ不透明なところもありますので、長期計画を固定できかねる点もあるように私は思っております。したがって、計画を立てても、経済情勢や国際的な技術の動向というものに照らして適宜見直すことが望ましい、こういうふうに考えております。  以上申し述べましたことは、原子力船研究開発専門部会報告書に記載されている内容の考え方と多分合致するものであろうと思いますが、報告書は、原子力船実用化のための研究開発がますます必要な状況になりつつある、そういう認識のもとに、しからば何をどうすれば実用化時代に備えることになるのか、こういうことを検討したものと理解しております。そういう意味におきまして、報告書との関連ももちまして一言私の考えている意見を申し述べさせていただきました。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 ありがとうございました。  次に、木下参考人にお願いいたします。
  5. 木下昌雄

    木下参考人 ただいま御指名いただきました日立造船社長木下でございます。主として産業界立場から意見を申し上げることになろうかと存じます。  私は、かねてから世界エネルギー事情、特に石油供給量的不足並びにその価格高騰の問題、なかんずく石油資源が、戦略物資ないしは政略物資として国家間の不当な要求押しつけの道具として使用されることに対して深い関心を持っておりましたが、今回、去る四月二十六日から一昨々日、五月十一日まで、ロンドンを初め西欧数カ国を歴訪いたしまして、その間、四月二十八日と二十九日の両日、ロンドンで開催されましたコール・ファイアード・シップス・コンファランス、すなわち石炭だき船国際会議に出席いたしました。ただ一人のシップビルダーとしての立場から、本問題に関する見解を講演する機会を得ました。私と前後して同じく講演されましたイギリスの前総理大臣のヒース氏の、政治的立場からの見解や、また世界の大船主や海運業者英国政府石炭庁専門家方々等の多角的な立場からの見解を聞くことが同時にできまして、その討議に加わることによりまして、最近、北海油田開発成功によって新しく産油国の側に加わることになりました英本国ノルウェー等でも、かえってわが国以上に石油にかわるべきエネルギー源に深い憂慮と関心を持って真剣に検討し、実質的な研究開発を進めている実情を私は目の当たりに見、はだで感じることができた次第でございました。さしあたってすぐに実用化し得る代替エネルギー石炭でございますが、その次には、必ず現状よりもさらに安全化された核分裂による原子力平和利用であることにつきましても、私ども話し合うことができましたし、また有識者の一致した見解でございました。  海運界及び造船界を含めまして、わが国産業界原子力船開発意義並びにその必要性に関する考え方につきましては、お手元昭和五十四年二月二十八日付の日本原子力産業会議によります「原子力船懇談会報告書」という中に、その一ページないし三ページに詳しく述べておるとおりでございます。  詳しくは省略さしていただきますが、要するに、原子力船開発は、単に石油資源節約のみにとどまらず、一たん装荷されました核燃料のすぐれた持続性のために、石油供給の不安等緊急時においても、原子力商船によりまして、国民の生活必需物資の円滑な輸送を確保しまして、国内に生じるおそれのあるパニック状態を未然に防ぐ、すなわち、広義のナショナルセキュリティーのためにも意義が大きいと考えておる次第でございます。  一方、わが国海運界は、従来、常に船舶大型化専用化及び高性能化を図りまして、世界第二位の船腹量を保有するに至っております。また、わが国造船界は、常に新しい技術開発向上に努めまして、多年にわたって世界第一位の建造実績を堅持してきております。  このような海運造船界技術革新が、わが国経済発展にきわめて重要な役割りを果たしてまいりましたことは、衆目のひとしく認めるところではなかろうかと存じます。しかし、過去数年間にわたりまして、世界海運造船界が深刻な構造不況に苦しみましたことも、また御承知のとおりでございまして、そのため、特に造船業界において、中長期的な視野に基づく原子力船等研究開発に対する人的、物的投資を幾分差し控えざるを得なかったことは事実でございます。確かに、最近は多少クールダウンしておったことは、この構造不況に悩んでおりました期間、認めざるを得なかったことでございますが、しかし、長期的な展望におきましては、世界貿易の拡大と、それに基づく海運造船界発展につきましては、何ら疑いを差しはさむ余地のないところと信じておりますので、造船各社とも、原子力船研究開発人材費用等の面で、決して火種を絶やすことなく温存し続けて、いつ何どきでも、必要とあらばこの火種もとに急速に燃焼拡張せしめる準備を整えておる現状でございます。  今後、わが国海運造船界先進工業国に伍しまして発展途上国造船業を援助しつつ、今後とも安定した発展を遂げますためには、高付加価値技術集約型船舶に活路を求める必要がございます。原子力船開発がその重要な柱となることは明白と存じます。  さて、米国、ソ連英国フランス等における原子力艦船——軍艦でございますが、その建造実績の積み重ねが原子力商船建造技術に応用され得ることを考慮いたしますと、西ドイツとともに原子力平和利用に徹しておりますわが国といたしましては、これら国情の違いから来る彼我技術格差を克服するためには、国を挙げて、官学民真に一体となって研究開発及び関係技術者の育成を強力に推進いたしまして、十分に国際競争力のある原子力商船建造運航技術基盤を早急に確立しない限り、今後のわが国海運造船市場発展はおろか、現状維持すら期しがたいことは明らかと存じます。  また、日本と同じく原子力平和利用に徹しておりながら、官民一致の努力によりまして、独自の原子力商船オット・ハーン号完成運航させることに成功いたしました西ドイツにつきましては、かつて日独共同で八万馬力原子力コンテナ船試設計と、その経済性評価作業を、二年間にわたりまして実施いたしたことがございますが、当時オット・ハーン号は、すでに就航いたしておりました。わが「むつ」は、盛んに建造中で、船台で建造しておるという状態でございました。  私は当時、日本郵船、大阪商船三井、三菱重工、石川島播磨重工及び日立造船の五つの会社から成ります日本側チームのチェアマンといたしまして、この共同作業に当たった者でございますが、その当時、原子力船に関する彼我技術力格差は、ごく限られた一部につきましては、確かにわれに五年ないし十年の立ちおくれが見られたのでございますけれども、総体的に見ますと、彼我の知識、技術は、互いに補完し合う状態でございました。共同試設計共同評価に際しましても、まことに彼我対等のきわめて気持ちのいい共同作業ができた次第でございます。  これらの事実から類推いたしますと、米ソ英仏を含めたいわゆる原子力船先進国との間の技術ギャップも、とうてい追いつけないほどの大きなものではなくて、今後のわが国における官学民一致協力体制及びその運営によろしきを得ますならば、比較的容易に追いつき得るほどのものと確信を深めております。  今後、わが国におきまして行われる原子力船開発目標といたしましては、海運界在来船以上に大きな制約を受けることなしにその運航する船隊に加え得るような原子力商船実用化を図ることでございます。原子力船だからといって特別の配慮、何か特別のことをしないで従来の船隊にそのまま加え得るような船を、原子力船をつくること、これが究極の目的でございます。  そのためには、細かい技術的な説明は、先ほど竹村参考人からも若干ございましたし、時間の関係上省略させていただきますが、とどのつまりは、安全性運航性及び経済性において全く疑念の余地を残さない原子力船建造し、運航する技術をソフト及びハードの両面確立することでございます。  そのためには、まず信頼性のある舶用炉技術開発安全性確保のための船体構造等開発及び運航技術確立などを、幅広くかつ整合性をもって行う必要がございます。そのためには、ぜひとも自主技術確立に重点が置かれた開発姿勢が必須の要件と存じます。  次に、原子力船研究開発のスケジュールについて申し上げますと、冒頭において、さしあたりは一部特定の航路石炭だき船時代が来ることは必至であると申しました。その次に原子力船時代になるとの予想を申し上げました。すなわち、お手元にございます「原子力船研究開発専門部会報告書」という昭和五十四年十二月二十日の日付の報告書によりますと、二十一世紀に入りますころには、三万馬力程度以上の出力商船分野原子力商船実用化時代に入るとの予想を立てているのでございますが、この報告書完成後生じましたイラン紛争及びその後の経過をあわせ考えますと、その時期は相当繰り上がってくるのではないかと予想されるのでございます。したがって、それに備えて、造船界さらには海運界が何どきでも設計建造運航し得る体制を、いまから整えておくことがぜひとも必要となってまいりました。  これらを勘案いたしますと、今日ただいま直ちに改良舶用炉プラント研究開発に着手するとともに、「むつ」の総点検、改修を、関係企業事業団の労使間で安全確保その他に関して事前に十分な検討、合意が得られました上で、全力を挙げて急いでいただき、機能試験出力上昇試験並びに実験航海を、若干繰り上げてでも完全かつ急速に行うことがぜひ必要と考えられるのでございます。  最後に、原子力船研究開発を推進いたすためには、長期にわたる総合的な研究開発と多額の資金、人員が必要でございます。したがって、わが国原子力船開発に当たりましては、他のいわゆる先進工業諸国におけると同じく、その安全性経済性が実証され、実用化見通しが得られます段階までは、国が主体となって研究開発を推進することが望ましいと存ぜられます。造船界海運界原子力機器産業界等を初め、民間産業界におきましては、当面主として人材の面、技術の面、この両面において積極的にこれに協力いたしまして、実用原子力船建造見通しを得ました後は、内外の諸般の情勢を勘案しつつ、国の適切な援助のもとに、今度は民間主導によって開発を進めるという筋書きが適当ではないかと考えられます。  私は、今後、わが国の恒久的な研究開発機構として、原子力船研究開発機構として、技術ノーハウの蓄積伝承が完全に行われ、若い大学卒業生が競って入所を希望し、また民間企業が心から喜んでその人材を出向派遣し得るような、また研究開発の分担にも喜んで応じられるような、そして本当に企業の経営者も企業内の研究者、技術者もひとしく心から協力し得るような民主的運営がなされる新しい原子力船研究開発機構ができますことを心から期待しておる次第でございます。  以上で私の陳述を終わります。(拍手)
  6. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 ありがとうございました。  次に、菊池参考人にお願いいたします。
  7. 菊池渙治

    菊池参考人 ただいま御紹介をいただきました菊池でございます。  思いますと、昭和四十九年九月十日の本委員会において、放射線漏れ直後の審議に参考人として意見を申し述べる機会をいただきましてから、すでに長い期間を経過して、なおかつ「むつ」が当時言われましたように、漂流しているかのような状況を呈していることを非常に残念に思う次第でございます。  先ほどここにお見えになっておられました小宮山先生も、その際御出席いただいておりましたが、その際、小宮山先生の御発言の中に責任問題の強い要請がございましたが、その責任問題も今日なおうやむやになり、また今後の進め方についても、必ずしも明らかになっていないという時間の経過と、その経過を追いながら何ら実体的に進んでいない、そういう感懐をここに立って一層深くするものでございます。  私たちは、そのとき参考人として呼ばれた後に、鈴木総務会長の提案を入れて四者協定を結びまして、母港撤去という条項がその中に加えられておりますが、今日なおその実体を見ておりません。そして議事録その他を拝見しますと、新定係港の選定を行っておるかのような御発言が政府当局から行われておりますけれども、五十四年度の原子力白書を拝見しますと、四者協定によって新定係港を選定しなければならない、その新定係港は日本原子力船開発事業団によって行われている、こう原子力白書は説明しておりますが、一方、日本原子力船開発事業団の五十四年度次報告会において、予稿集も拝見しましたし、実際その場において参加をさせていただいて、各報告者の報告も伺いましたけれども、一言半句新定係港の選、定について触れるところがございませんでした。政府は、事業団に定係港の選定をさしていると言い、事業団の報告の中には何一つないということは、いまの「むつ」にかかわる環境を物語っているようにも私は思います。  ただしかし、一方考えてみますと、五十年の三月に片山政務次官が、協定の当事者である鈴木善幸氏、それから竹内青森県知事、杉山県漁連会長と私を八戸に呼びまして、説明をしたその説明資料の中には、五十年三月末をもって選定作業が終了しているようなスケジュールを示しております。それを受けたもので、もう決まっているのかもしれませんけれども、しかし、その間、新定係港に対する説明はどこからもなされていないということを考えますと、その作業終了というのは何を示したのか、私は非常に疑問に今日も思っております。  私は、参議院のこの前の法改正の最終的な参考人意見聴取に際しても参りまして、四者協定の実施が原子力船並びに原子力行政の信頼回復の第一歩ではないか、国が約束をしたことを守れないようで、どうして関係住民に理解と協力が得られようか、こういうことを申し上げた記憶がございますが、その際、ある委員の先生が、政府並びに事業団には当事者能力がないのではないか、いまの政府に、科学技術庁に、新定係港を選定する能力がおありだとお考えですかと、これは私に対する問いではございませんでしたが、問いかけをされております。  そういう中で原子力船むつ」がいま漂流しているということは、先ほど木下参考人から必要性、あるいは竹村先生からもいろいろお話がございましたが、そういう実態の中では、こういう行政が進められていいはずがなかろうと思います。ここからまず正していくことをひとつお願いしたいと思います。  そこで、事業団法のまた五年延長でございますが、すでに二回、約十年の延長が行われて今日のような状況でございます。果たしてこれからの五年でどれだけの成果を責任をもって果たし得るのか、その辺の見きわめが、この五年延長に対する一つの決め手ではなかろうかと思います。必要であればあるほど、時日のむだな空費は許されないと思いますし、また国費の浪費も許されないと思います。きわめて少ない研究費をいかにして有効に、将来を見きわめていかに早急に対応していくかということを考えなければならない、そういう時期であろうかと思います。  先ほど来出ております研究開発専門部会の報告も拝見いたしましたが、船のデータを次の炉に活用を、これもする、あれもするというふうに書いてございます。しかし、竹村先生すでに御承知のように、次の炉を何にするかによって、このデータが使えるか使えないかということが大きくあるだろうと私は素人ながら存じます。  事業団において二次炉心の調査をすでに始めておりますが、これは年次報告によりますと、オット・ハーン型炉、それからCAS炉という炉の調査を始めております。CAS炉というのは、私は、全然わかりませんで、いろいろ調べてもらいましたが、資料がわりあいに乏しいようでございます。フランスの海軍、原子力潜水艦用の炉として検討をしているが、実際まだつくられていない中濃縮用の一体炉だ、こう発表されているのだそうでありますが、いずれにしろ、一体炉を中心とした炉型を二次炉心として事業団が考えているということは、一応政府でも考えていることととってもいいと思いますが、その場合、果たして「むつ」のデータというものが一体どれほど寄与するのかということも、私は、技術的にもっと詰めた御検討をされたならば、当面する原子力船むつ」の扱いについても、いろいろもう少し本音が出てくるのではなかろうかというふうに存じます。先般の委員会で、今後約三百二、三十億の開発費がかかる、こういうお話があったようでございますが、その際、定係港については若干の幅があるというふうに出ているようでございます。それは何を意味するのか私にはわかりませんが、少なくとも先ほど申し上げました五十年の三月二十七日か八日に示されたスケジュールから申しますと、今後の「むつ」の開発については、ドックを持つというスケジュールが出ておりますが、そのためには、やはりそのドックを勘案した定係港の未確認というものであろうかと私は善意ながら解釈しますが、もしそうだとするならば、三十二、三億どころではなくて莫大な経費がかかり、しかも二次炉心をどうするかということによって、これからのデータがどれだけ使えるかということとも関連すると思いますと、そういう点をもう少し具体的に詰めてみる必要がこの際あるのではなかろうかと思います。  それから、「むつ」の炉についてはいろいろと風評がございます。大山委員会のメンバーであったというような方々がこう言っている、ああ言っているということも、その関係方々から別々に二、三聞いておりますが、いずれも余りいい情報ではございません。また大変失礼ですが、木下参考人も学術会議の会員として前期まで長い間御苦労されたわけでございますが、学術会議における本音とも受け取れるような御感懐をもよそから伺ったこともございます。私は、この際、既定の概念にとらわれることなく、もう少し具体的に本音をもって詰めた原子力船開発というものをやってみる必要があるのではなかろうかと思います。また、原子力行政にかかわる重要なポストにあるある方も、いまのような委員構成を持った専門部会だとか審議会だとか懇談会だとか、そういうものをつくっても本当のものは恐らく出てこないだろう、こういう御心配をされた方がございます。さらに現日本学術会議の会長である伏見先生が、ちょうど五十年の秋に、「むつ」問題についての科学者による呼びかけのシンポジウムがございました際に、みずから御出席になりまして、御意見を述べられたことがございますが、その中に、どうしても私たちはお互いをかばい合うというようなことがある、このことがこういう事態を生んだのではなかろうか、これをいかにして排除していくかということが、今後の「むつ」を、あるいは原子力行政を進める上で非常に重要だという御発言を、当時副会長ではございましたが、されてございます。その私に言われた方も、同じ意味で、ほとんど同じような方々で構成される委員会ではなかなか思い切った意見を出し発言をすることができない、もうそろそろこの辺でだれかがどこかで言わなければならないだろう、しかし、なかなかその適任者が見当たらないという感想を漏らされたことが、つい最近でございますが、ございました。  非常に膨大な国費と時間を要します「むつ」の問題について、私は、それらの方々のお話のように、お互いをかばい合うことも、それは確かに美徳かもしれませんけれども、科学の真実を追求するためには、言いにくいことも言い、そして明らかにしていかなければならないと思いますし、また各般にわたる問題の追求も必要であろうと思います。  たとえば、先ほどの木下参考人の御意見のように、どこにでも入れるような原子力船をつくることが前提でおありのような、そういう時代を願うような、そういう技術開発をしなければならぬようなお話がございましたが、しかし、そういうことは、リコーバーの懸念を一層懸念させるものでないのかという疑念を、私はこの場で一層深くしましたし、また原子力損害賠償法が厳として存在し、商業的な損保ベースに乗らないということ自体からも、いろいろ私たちの当面する問題として、それをいかにして危険を無視しながら排除するかということではなくて、そういうものがなければ成り立たないということを前提とした当面の物の考え方をしていかなければならないのではなかろうかと思います。  同時に、この問題については、私は、TMI事故直後、昨年の四月三日の閣議の大平総理の指示として新聞紙上に伝えられておりますように、原子力災害の総合対策を、従来の災害基本法の枠にはまることなくやるようにという指示が出されたということは、従来の原子力行政のかなり大きな転換を示す御発言だと受けとめておりますが、そういうTMI後の科学技術的なものも、あるいはまた、そういう政治的な判断の問題、そういうものもひっくるめてこの際洗い直し、十分な検討の上で五カ年延長がいいのかどうか、それから、さらに「むつ」をどうすべきなのか、十分に御検討を国会の先生方にお願いしなければならないと存じて、きょう参りました。  四者協定の定係港については、次に速見参考人からお話があると思いますが、長崎においてあと一年半で期限が切れようとしております。そしてまだ本格的な改修工事には入っておりません。これも入港前の詰めの甘さがこういう結果を生んでおるのであって、決して放射線漏れ事故を起こした、そのことに対応する事業団なり科学技術庁なりの体質が改まった結果ではなかろうと思います。従来のような行き当たりばったりな行動が、いまの佐世保における苦境を生んでいるのであろうと思いますが、むつにおいてそういう事態を重ね、いままた佐世保でそういう事態を重ねております。そして、その行きつくところは、また、新定係港を選定すべき作業がどうなっているかわからないままに、いよいよ佐世保で困るからもう一度返してくれなんという行き当たりばったりな事態に至るならば、私は、原子力行政がこれまた数段後退するであろうと思います。また「むつ」の扱い、「むつ」の安全総点検が、もし間違いがあって、再びトラブルが起こるような事態を安易に招くようなことがあったならば、原子力行政はTMI以上に日本の場合は影響してくるだろうという懸念を、私は、四十九年以来持って訴えております。  今後こそ、「むつ」はトラブルのない開発をし得るという確信を持って、また、そのことに対する責任を明らかにしてやるべきだと思います。安全委員会は責任がないと申します、あるいはまた科学技術庁も必ずしも責任がない、また事業団も必ずしも責任がないというような事態で進めるならば、私は、再びその過ちを繰り返すことは、火を見るより明らかであろうと思います。そういう反面教師としての「むつ」としてお使いになるというのであれば、話はまた別でございますが、それでは余りにも「むつ」が悲惨でありましょうし、また国費をこれまでかけたもの以上にかけるという、そのことへの問題も大きく展開してくるだろうというふうに存じます。  時間のようでございますので、以上、概括的に申し上げまして、御質問がございますならば、後刻ちょうだいして、私の考えていることを申し上げたいと存じます。非常にありがとうございました。(拍手)
  8. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 ありがとうございました。  次に、速見参考人にお願いいたします。
  9. 速見魁

    速見参考人 ただいま御紹介いただきました長崎県議会議員、佐世保選出の速見魁でございます。  ただいまは、同じ苦悩を続けておりますむつの前市長から切実な訴えがありました。私も、現実苦悩をしておる一人として、いろいろ科学的な問題については先ほどからお話があっておりますので、それは省きまして、現実の生の問題を意見として申し上げてみたいというぐあいに考えます。  先ほどから先生方が必要性というものを述べられてまいりました。その中で、特に私は、安全性信頼性というものについての強調がなされたというぐあいに考えます。このことについては、お互いに共通する問題だと思います。問題は、安全性信頼性に欠陥のある「むつ」をつくったこと、そして、その欠陥船を政治的に佐世保に回航したこと、このことが、三年間の約束にかかわらず、今日なお「むつ」が修理工事に着工さえできない現状をつくったというぐあいに考えます。要するに、佐世保では原子力船とは言っておりません。政治力船と言っております。ここが大キなポイントだろうというぐあいに私は考えます。やはりこの辺を、今後は国会の先生方の方で十分ひとつ審議をお尽くしいただきたいというぐあいに考えるわけであります。  そこで、問題を幾つかにしぼって意見を申し上げてみたいというぐあいに私は考えます。  まず第一は、基本的な問題でありますが、今日的段階で、原子力開発というものは、その廃棄物の処理方法、このことが完全ではございません。やはりこのような廃棄物の処理方法が明確にならない今日の段階で、人類に危険をもたらす原子力開発は、陸上であれ船舶であれ中止をすべきである、私は、このような基本的な考え方を持っておるわけでありますし、むしろそういう立場からは、この原子力船むつ」もやはり廃船にすべきである。廃船というのは、ただつぶしてしまうということではなくして、社会党の方から修正法案が出ておりますように、やはり当面は、研究する状況の中で原子炉を取り外して、そして陸上で十分な研究をする。もともとつくるときに陸上でそういう実験をしないで船に積み込んだことが、要するに運航もしないで事故を起こしたわけでありますから、やはりまず原点に立ち返って考えてほしい。このことは、ただ単に科学的な問題ばかりではございません。御承知のように、長崎県は世界でただ一つの被爆県であります。現在なお苦しんでおる原爆の被災者がおるわけであります。やはりこのような生の声に率直に政府も事業団も耳を傾けてほしい。このことを、まず基本的に第一に申し上げておきたいというぐあいに考えます。  第二は、原子力基本法に示されております自主、民主、公開の原則が踏みにじられておることであります。これは後で、私は、具体的に申し上げますけれども、要するに密室開発をやっておるところに、今日の原子力開発の大きな事故が起こっておる、「むつ」の事故が起こっておる、こういうことが言えるというぐあいに考えます。  十二日の新聞でありましたけれども、国立である東大核研で汚染の事故があった、こういう新聞を私は現地で見てまいりました。大体、研究をやっておる国の機関から率先をしてこのような事故を起こしたのじゃ、経済性を持ってやっておる企業、産業が事故を起こすのは、もうこれは当然と言えば当然だろうというぐあいに考えます。問題は、やはりここら辺から抜本的になくしてもらわなければ、本当の原子力開発はあり得ないのではないか、このように考えるわけであります。  これらの事故の反省もなく、「むつ」のように臭い物にふたをするように、とにかく原子炉はそのままにしておいて、遮蔽物だけを厚くして、放射線が外に漏れないようにしよう、こういう改修計画でありますから、現地ではむしろこれに対する不信がますます高まっております。とにかく、さっきから言われております安全性信頼性二つとも、採点してみれば、これはもうゼロであります。こういうようなことでは、私は、今後の原子力行政はますます破綻をするばかりであろうと思います。むしろ、もうメンツを捨てて一から出直してほしい。どうも原子力船むつ」の場合は、メンツだけで佐世保で強行されようとしておる、実はこのように考えられてしょうがございません。  そこで、「むつ」問題について、若干具体的な問題について触れてみたいというぐあいに考えるわけであります。  政府は、五十一年の三月に長崎県に対して原子力船むつ」改修についての説明書というものを送りました。私も審議を尽くしてまいりましたし、五十一年の五月十九日には、この衆議院科学技術振興対策特別委員会で私も参考人として意見を述べました。問題は、原子炉プラント機器の健全性を確認して設計上の機能が維持されているかをチェックする、要するに設計には問題がないのだ、したがって、この設計されたものの機能が維持されておるかどうかということをチェックするということが、そのときの説明でありました。ところが、五十四年十一月三十日にまた説明書が参りましたが、この中には、原子炉プラント設計の再検討を追加項目に入れました。最新の設計思想と事故経験を考慮して改良、改善を図る、これが今回の改修計画の概要であります。  要するに、具体的に言うならば、前の段階では設計には問題がなかったけれども、今度はスリーマイル島の事故の問題もあるので、設計面においても検討し直すという条項であります。その結果、必要であれば改良、改善を図る、こういうことになりますと、当然、原子炉プラント系統にまで手を入れなければならぬという事態が起こってくることは必然であります。  第二点は、一昨年の十月十六日、強行入港されまして、一年半も契約がなされないまま今日に至っております。ようやくSSKとの間にドックの使用、岸壁の使用、これが契約になっただけであります。主たる契約者である石播、三菱原子力工業、この契約も全然なされておりません。しかも私は、佐世保に入港するときに、そういう契約もしないで政治的に逃避的にむつから佐世保に持ってきたところに問題があるというぐあいに考えるわけであります。  先ほど菊池むつ前市長は、五者協定の問題を言われました。長崎県の場合でも四者協定がございます。四者協定は三年間であります。実質的にはあと一年半しかございません。こういう段階の中でまだ工事の認可がおりておりません。工事の工程、方法、それから工事に対するいろいろな諸問題についての問題が解明されておりません。ここに長崎県、特に佐世保は疑問と不安を持っておるわけであります。  そこで、一つだけ図表で申し上げますが、これが要するに三十六カ月、三年間の工事日程表であります。赤線が引っ張ってあるのが現在の五月であります。右と左でもうこれだけの違いが生じております。ところが、私たちが行ってもまだ説明してくれませんけれども、佐世保の市長から「むつ」改修の主要工事という形で原子力船開発事業団から示された工程表が出ております。これは後で具体的に御説明申し上げたいと思いますけれども、この中で一つだけ申し上げますと、要するに格納容器の下に今度は船底を含めて遮蔽装置を入れるようになっております。れんが詰めであります、コンクリート詰めでありますが、この期間が、当初の説明では約十四カ月であります。今度のこの改修工事の説明では、四カ月ないし五カ月であります。大体、十四カ月かかる工事を四カ月や五カ月で工事をしようとしても、果たしてできるのでしょうか。この疑問が実は現地であります。いま申し上げましたのは、格納容器の下の部分だけでありますが、すべて約三分の一に短縮しようとしている、当然、その中には無理な作業も出てくるでありましょう。  しかも、圧力容器の上ぶたを取り外さないで今度やる、要するに核封印方式でやるということになりました。これは以前は、圧力容器の上ぶたをとって、上ぶたの部分は船外で、十分な広場と時間をかけてやるという説明でありましたが、今度は船内でやるわけでありますから、当然、これに対しては空間がございません、危険がございます。これは政府、事業団も認めておりまして、この点については作業姿勢、作業空間等が非常に制限されるので、作業効率が悪いということを言っておる。作業効率が悪いのに、要するに三分の一の期間で、三年間でやろうとしておるわけでありますから、むしろ私は、そのような無理な作業をすれば、当然、簡略に作業を進めるのか、あるいは途中で打ち切るのかそれ以外にないと思います。事業団は盛んに、三年間で約束を守ると言っておりますけれども、このこと自体実は私たちも信頼ができないわけであります。仮に五者協定を守ると言われるとするならば、青森県むつ市のように、青森県の五者協定のように後からずるずる、行き先がないから居座ることがないようにはっきりした証言が欲しいわけであります。来年の十月十六日には、修理が終わろうと終わるまいと、いかなる条件があろうとも必ず佐世保からは出港させます、こういう証言があれば信頼します。努力をします、協定を守ります、このことだけでは、青森県の例がありますから信頼はできないわけであります。定係港の問題でもしかりであります。とにかく何もかもうそでつくられた「むつ」でありますから、はっきり申し上げまして、信頼はできません。  以上申し上げまして意見といたしますが、いずれにいたしましても、もうこう薬張りではなくて、ひとつ一から出直してほしい。メンツよりも一から出直していただいた方が国益に適しているし、そして新しくつくろうと思えば新しい船をつくった方がいいのじゃないでしょうか。そして一番初めから失敗をした船ですから、こういうものは取りやめて、舶用炉の研究を進められた方が、財政的にも非常に苦しい国家財政のようでありますから、要らぬ金を使うよりか、そういうふうに出直してやった方がむしろ国民の幸せになるのではないか、このように考えて、私の意見の陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  10. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 ありがとうございました。  次に、井坂参考人にお願いいたします。
  11. 井坂正規

    井坂参考人 井坂でございます。  私は、現在、日本原子力研究所労働組合の中央執行委員長であると同時に、JRR4という原子炉で運転及び保守の業務に携わっております。そういう立場から発言させていただきたいと思います。  まず初めに、原研の労働組合が、これまで「むつ」の問題につきまして、いろいろと労働組合として検討してきまして、その検討してきたことがパンフレットあるいは報告書という形でまとめて報告されておりますので、それについて若干紹介させていただきたいというように思います。  一九七四年の九月に「原子力船むつ」放射線漏れ問題に関する報告書」というのを出しておりますが、これは原研労組として放射線漏れの問題につきまして検討した結果をまとめたものであります。この報告書によりますと、問題点は五つぐらいに要約してまとめてありまして、まず設計資料が非公開であるという点です。これは労働組合として、そういう原子力船の放射線漏れの問題につきまして、いろいろ調べようとしても、データが公開されていないということによって、調査自身も非常に困難を来す、そういうことでは研究にとっても非常に問題なのではないかということが指摘されているわけであります。二番目として、研究者の意見が非常に軽視されているという点が報告されております。これは設計の再評価というような声が、研究者の間から出されておりましたけれども、そういった声が実際には取り入れられなかったといった問題であります。それから次に、自主研究の放棄といった問題であります。これは日本の原子力開発が、発電炉からの導入技術によってずっと進められてきたという経過の中で、基礎研究の基盤がないのにいきなり船をつくったというようなところに大きな問題点があったのではないかというようなことであります。四番目は、事業団体制の問題であります。事業団体制として、事業団は出向者で占められておりまして、長期に一貫して責任を持ってやれるような体制にはなっていないということであります。こういう事業団体制では、本当の研究というのはできないのではないかということであります。次に、安全審査の問題であります。安全審査の問題につきましては、専門のスタッフがいないというような問題で、検査官がパートタイマーとしてやっておるといったような問題が報告されております。  それから、この報告書に続きまして、一九七六年五月に原子力船むつ」の遮蔽改修に関する共同研究についての調査報告書というのを出しております。これは昭和五十一年の三月ごろから、原船団、原研、船舶技研、三者共同研究ということで、私の働いている四号炉で共同研究が行われたということになっているわけでありますけれども、それについて調査検討した結果、これは共同研究というのは名ばかりで、原研の研究者の意見を反映させる余地はきわめて少なかったということが報告されております。  さらに、その年の六月に、原子力船むつ」問題を解明するということで、これがパンフレットになっておりますけれども、科学者会議と共同編集ということで「むつ」問題は、単なる技術的な問題ではなく、原子力開発のあり方の本質にかかわる重大な問題であるということで、各方面から分析した結果がいろいろまとめられております。この資料は各党の方にはお配りしておりますけれども、ここに若干持ってきておりますので、必要があればお配りしたいというふうに思います。  続きまして、今回の法改正についての問題点、原研労組が特に問題だと思っている点について述べさせていただきたいと思います。  それは、原子力船事業団の統合先がどうも五年以内に原研に統合されるというような予定になっている、そういう予定になっているにもかかわらず、原研の研究者、技術者、こういった人たちの意見を十分聞くという努力が現在なされていないという点であります。  この点について労働組合では、何回か研究者の意見を聞く集会なども持っておりますけれども、その中で出てきた意見を紹介しますと、まず一つの問題として、原子力船むつ」が研究材料として本当に活用価値があるのかどうかという点であります。労組の企画した討論会の中で、研究者の意見として出てきたものとしては、「むつ」の原子炉は、非常に古いタイプの炉であって、今後の舶用炉開発の研究材料として役立たないのではないか、そういう意見が多かったわけであります。そして、むしろ「むつ」は邪魔になるのではないかといった意見も多く出ております。  また、政府の法案では「むつ」を動かして、今後の資料にするデータをとるというようなことを言われておりますけれども、陸上での基礎研究、そういったものの積み上げ、そういうものがなしに船でデータをとると言っても、本当に有効なデータが果たしてとれるのであろうかということであります。どういうデータが必要なのかということは、基礎研究の段階からそういうことを予想して検討していかなければならないもので、ただやみくもにデータをとっても、データがたくさん集まったというだけで、それが役立たないということになるという可能性があるということであります。  続きまして、最近、スリーマイル島の原発事故がありまして、安全審査を厳しくする必要があるということが各方面から言われているわけでありますけれども、「むつ」を遮蔽、改修して、安全上の問題で果たして今後本当に解決できる見通しがあるのかどうか、これはきわめて疑問だという点であります。  さらに、研究開発をやる体制の問題として、たとえば原研で舶用炉の研究をやるというようなことをわれわれは否定するわけではありませんけれども、そういう舶用炉の研究をしてほしいというのであれば、事前に研究者、技術者の意見を十分聞いて、基礎からやり直す、どういう体制でやるのかということも、きちんと研究者の討議の中でつくっていくという点が必要だという点であります。  さらに、人員と予算についても十分な保証が必要だということであります。  それから、研究をやるに当たりましては、研究者の自由の問題、基本的人権、それから研究者の権利の保障といったような問題も必要であるということです。  次に、原子力船事業団法が統廃合の問題として出されておりますけれども、今後、統廃合がどのように進むかという点であります。  今度の法案が通れば、「むつ」の結果がどうあろうと、それに関係なく統廃合が進められるというふうに私たち思っているわけでありますけれども、安易な統廃合がきわめてまずい結果を招きかねないということをわれわれ心配するわけであります。  かつて原研の大阪研究所が、高分子研究所より原研に統合されましたが、この大阪研究所の運営について、いまきわめて憂慮すべき状態になっているということが、大阪研の組合員から報告されております。この大阪研についてもどういう状況になっているか、ぜひ政府としても調査していただきたいというふうに思います。  また最近、原研のJPDRの廃炉の方針が新聞で報道されております。この新聞発表を見ますと、現場のJPDRの上司の方々が説明されていることと大分違った内容が報道されているということがあります。これは一般の国民かあるいは現場の職員か、いずれにしろ、どちらかを欺くことになるのではないかというふうに思います。  「むつ」については、一切そういった説明はなされていないというのが現在の状況であります。こういった状況では困るということであります。  このようなもろもろの点を含めて今後どうすべきか、研究者、技術者の意見を十分に聞く必要があるという点であります。  政府が「むつ」問題を本当に解決したい、そういうふうに思っているのであれば、現時点で「むつ」をどうするかというのは、白紙の状態にして、研究者、技術者の検討にゆだねるというそういう態度をとられたらいかがなものでしょうか。それだったら、原研の労働組合としても、そういった政府に協力してやっていく、そういう用意はあるということを言っておきたいと思います。そうでなくて、いまの法案を通した後で後始末だけをわれわれ原研の労働者に押しつけられるというようなことになるのであれば、われわれは組織を挙げてこれに反対せざるを得ないと言わざるを得ないのであります。  最後に、原子力船が外国では軍事利用と表裏一体という中で開発が進められてきているという中で、わが国が平和利用を貫くということは、重要な問題でありますし、原子力三原則を厳格に守り、軍事利用など絶対にしないと、そういうことを約束していただきたい。そのために国会でぜひ非核三原則を法制化していただきたい、そういうことを申し上げまして発言を終わります。(拍手)
  12. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 ありがとうございました。  次に、中川参考人にお願いいたします。
  13. 中川幹雄

    中川参考人 御紹介いただきました中川参考人であります。  私たち造船重機労連は、労働組合の立場から原子力の平和利用ということを積極的に打ち出しております。原子力の平和利用といいますと、発電、さらには、ここで議論されておりますところの原子力船になろうかと思います。  なぜわれわれが原子力の平和利用を願うのか、それは端的に申し上げまして、ちょっと天井を見ていただきたいのですけれども、この天井には十二カ所の蛍光灯がついておりますが、この十二カ所の蛍光灯の中の二カ所はもうすでに原子力発電によって賄われている、それだけ原子力はわれわれの生活に結びついてきているというところが、われわれが関心を持たなければいけない大きな問題ではないかと考えているところであります。  そこで、原子力船にかかわる問題について推進する背景について若干申し上げますと、先ほど来議論されておりますけれども、一つは、エネルギー対策だと思います。さらには、われわれ造船、海運の将来の産業政策としての大きな課題ではないか、さらに原子力船技術、それに波及して出てまいります技術開発、そういったことを通じながら、新しい分野の産業開発をしながら、そのことから雇用を拡大していただく、雇用を拡大させ、われわれの働く道を求めてもらう、そういう単に造船、海運のみならず、国民的な課題ではないかと考えているところであります。  細かく申し上げますと、エネルギー問題は、世界各国共通の大きなテーマになっております。一週間前ですか、国際エネルギー機関IEAで、事務局レベルでの話を聞いておりますけれども、石油需要抑制のために、石油から脱皮して原子力を活用していこうではないかという提言がなされたようであります。とりわけ、われわれ日本という国は、ほとんどのエネルギーを輸入しておるわけであります。私が言うまでもありませんけれども、イラン問題を含めて供給不足、供給の不安定、さらには高価格といったことを考えますと、石油の有効活用、石油からの脱皮が、単に専門家だけではなくて、われわれ労働組合も率直に関心を持たなければならない問題ではないかと考えているところであります。特にわれわれ海運業においては、石油のおよそ一〇%を消費していると言われております。これをすべて原子力にということにはいかないと思いますけれども、少しでも原子力への移行ということを通じて国民に対するわれわれの責任を果たしていくことも一面必要ではないかと考えております。  また、世界の産業分野は、発展途上国の工業化の進展に伴いまして、われわれの働く基幹産業というのは、工業国間の国際競争が非常に激化しているところであります。したがいまして、そのこととの関連も含めて、国際分業の傾向が一層高まっているわけでありますけれども、こういった中で、何とかわれわれ日本世界的工業国としていままで以上にその役割りを果たしていこうとするならば、さらに国際競争力を維持していこうとするならば、いままでやってきた産業ではなくて新しい産業、それも技術集約的な産業あるいは付加価値の非常に高い分野への産業構造の転換がおのずから求められなければならないし、また求めていかなければならないと考えているわけであります。  われわれ海運、造船は、世界の中でもリーダーシップを持っている国であります。その海運造船業も、この五年間非常にめちゃめちゃな不況を経験してまいりました。何とか政治、さらには労使の努力によりまして立ち直りのきっかけをつかみつつありますけれども、発展途上国の追い上げという非常に厳しい状況の中に置かれております。これからわれわれ造船が目指す一つの方向は、技術集約度の高い、しかも付加価値の高い船といったところに、われわれの視点が生まれてこようかと思っております。  さらには、船のみならず、海洋構造物への開発も、いま私どもはその代表的なものとしてここで取り上げられております原子力船なりセミサブ式浮体空港、今国会でいろいろ御議論いただいておりますけれども、こんなところもわれわれの目指す一つの方向だということを御理解いただきたいわけであります。  さて、原子力船状況でありますが、多くは申し上げませんけれども、すでにアメリカあるいは西ドイツソ連においても、原子力船時代に備えながら着実にその実績と経験をかなり積んできているようであります。米国ではサバンナ号完成させながら、もうすでに運航する上での技術的な問題はないというところまで来ているようであります。西ドイツについても、オット・ハーン号を中心にしながら、もうすでに実験船としての機能を果たして、原子力船としての実験を完了しているように聞いております。ソ連についても全く同様であります。  一方、わが国の造船ないし海運における状況から考えますと、その原子力船についての方向がまだまだ定まっていない、さらには、その力がないわけでありますけれども、そのことにおけるわが国開発を急がなければならないのではないか、そういう立場に考えているところであります。原子力船むつ」があのような状態の中に置かれておるわけでありますけれども、何と言ってもこの責任は、われわれも政府に大きく求めるところであります。  原子力船実用化は二十一世紀という提言が一つ行われておりますけれども、もっと早い時期にその状況が生まれてくるのではないか。つまり、石油の供給が非常に不安定である、非常に高いといったことを考えますと、この二十世紀後半には、そういった需要を通じながら建造に取りかかる国があらわれてくるのではないか。したがいまして、われわれは一日も早く安全確保を第一にしながら、信頼性なり経済性等のノーハウを確立するために、政府主導型で積極的に推進していただきたいと思うわけであります。  そのためには、当面「むつ」が議論されておるわけでありますけれども、何と言っても早急に工事契約を結び、安全にしかも確実に修繕をし、完成した上で試験航海を行い、あらゆるデータを集めて実用化に向けての前進を図っていただきたい。特にここで言及しておきたい点は、われわれは船を修理する側でありますから、修理に際しては、十分な費用と時間と労働者の安全対策に万全を期してやっていただきたい。われわれ労働組合としても、みずからの問題として点検をし、監視体制を整えていくつもりでおりますけれども、そういったことについてぜひともお願いをしておきたいと思います。  一方、先ほど来の議論の中にも、私の受け取り方が悪かったら御訂正いただきたいわけでありますけれども、原子力船開発を否定するような動きがあるわけであります。しかし「むつ」は、国民の財産であるという立場に立ちながら、政府は積極的に運動を進めていくことが必要ではないか、すでに世界の趨勢は、原子力を中心にして動いてきている、こういったことに目をつぶることは果たして国民にとってプラスなのか、やはり国民の期待する方向に持っていくことが必要ではないか。御案内のとおり「むつ」の開発は、国会でその必要性が認められ、推進をされてきているわけであります。その費用は、私が言うまでもありませんが、すでに五十三年度末までに二百六十億強の税金が使われているわけであります。この船を廃船することは、二百六十億円をどぶに捨てることにつながる、こう言明しても間違いはないのではないか。政府は責任を持って修理をして完成させ、国民の期待にこたえることが必要ではないかということを私は申し上げておきたいわけであります。  改めて次の点をひとつ政府に申し上げ、要請をしたいと思います。  一つは、原子力基本法の三原則でありますところの自主、民主、公開の原則を徹底していただきたい。やはり自主技術開発する、そのことによって国産技術確立することが非常に必要ではないか。われわれ産業にはその技術力と労働力はあると断言するにやぶさかではございません。さらに原子力開発は、国民の合意が第一義であることは論をまちません。そのためには、原子力の正しい知識を積極的にPRする、さらには、企業は企業の持つ社会的責任というものを果たす、そういう状況の中で、安全にかかわる問題を初めとして、政府主導で積極的に国民に公開していく、消極的な公開ではなくて前向きな公開ということをぜひともお願いしたいところであります。  二つ目には、わが国で蓄積されている発電用原子炉技術、さらには造船技術を十分生かして、原子力船技術確立する中で、関連する産業の開発、さらには新分野の産業拡大をして、われわれ労働者に新しい雇用をつくってほしい、このように考えるところであります。  三つ目には、現在、原船団におる職員を見てみますと、非常に哀れな状態に置かれているようであります。やはりそこで働いている人たちの労働条件なり雇用の保障ということを積極的にやりながら、そこに働く人たちが一生懸命仕事ができる環境をつくってやることが、私たちは、その周りの人として必要ではないかと思います。  四つ目に、先ほども若干出ておりましたけれども、この原子力船むつ」というのは、政治がすべて先行しております。原子力というのは、われわれの目に見えないところにも技術的な大きな問題があろうかと思いますけれども、やはり技術者、科学優先の開発、そのためには優秀な人材が世の中にはいっぱいいるわけでございますから、政府の主導の中で、そういう学者諸士に積極的に原子力開発に向けての方向で問題提起をしていくことが必要ではないか、そういったことのために法の整備は当然必要だと思います。さらには十分な予算措置も必要だと思います。そのためには、国民、さらにわれわれ働く側は、拍手を贈って、そういったことに十分対応する考え方を持っております。  最後に、安全対策について言及したいと思います。  先ほど来私たちは、労働組合の立場からいろいろ申し上げましたけれども、安全を第一義として初めてその選択の対象になることは言うまでもないわけであります。原子炉の事故、さらには海難事故、あらゆることを想定しながら、そのときの安全対策を二重三重に、さらに四重に講じながら、政府の主導のもとに、国民の合意の得られる原子力船づくりを推進していただきたいことを申し上げておきたいと思います。  われわれ労働組合としても、事前協議を通じながら積極的に参加し、協力していくことを申し上げまして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  14. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 ありがとうございました。  午後零時五十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後零時五十四分開議
  15. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、木下参考人は都合により午後三時までに退席いたしたいとの申し出がありますので、あらかじめ御了承を願っておきます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塚原俊平君。
  16. 塚原俊平

    ○塚原委員 参考人の諸先生には、本当にお忙しいところ、本日は貴重なお時間をお割きいただきまして、また大変に役に立ちます御意見をお聞かせをいただきまして、本当にありがとうございました。私、諸先生方の本当にすばらしい経験あるいは実績、キャリアからいたしますと、はるかにすべての点で劣るものでございますので、多分にして的を外れた、あるいは失礼な御質問もあるかもしれませんけれども、どうぞお許しをいただきたいと思います。  自由民主党の塚原俊平でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、本日の参考人の人選、各党がいたしまして、諸先生方にお集まりいただいたわけでございますけれども、あらゆる角度の皆様方にお集まりをいただきまして、それぞれのお立場、それぞれの角度からのお話が伺えたわけでございます。木下参考人は、特に現実の問題といたしまして、諸外国とよく内容の見比べをなさった上でのお話があったわけでございますけれども、その木下参考人のお話の中に、ちょっとこれは竹村参考人の方への御質問なんでございますけれども、諸外国の現状というものから、日本はもう平和利用に徹して原子力船研究開発を進めてきたわけでございますが、世の中、世界は戦争とともに飛行機もよくなれば船もよくなる、やはり戦争目的ですと何かにつけて技術の進歩が早いのだということがいままでよく言われているわけでございますけれども、そういった中におきまして、本当に平和目的というもので今日まで原子力並びに原子力船技術研究開発してきた日本といたしまして、原子力船技術現状及びその比較において、原子力船技術が、諸外国に比べて果たして日本技術がどのように評価をされているのかという点が一点でございます。  それから、お時間を詰めたいと思いますので、もう一点あわせて竹村参考人の方に御質問でございますけれども、自主技術のお話の中に、それを開発するよりも外国からの技術をそのまま導入してしまえばいいのじゃないかという議論もあるようでございますけれども、その二点について御所見をお伺いしたいと思います。
  17. 竹村数男

    竹村参考人 ただいまの質問にお答えいたします。  諸外国等の技術の評価をして日本現状がどうであるかという御質問だとただいまの先生の質問を解釈いたします。  先ほども私、触れましたように、先進五カ国といいますか、アメリカではサバンナ号を運転した後、すでに十二万馬力原子炉プラントを、政府のといいますか、これは海事局でありますけれども、海事局の安全審査まで通っておるというような詳細設計を持っております。そのほかに三つほどの標準タイプを用意しておるというくらいに、注文があれば対応できるという現状かと思います。  ほかの国の特徴としまして、特に西ドイツでございますけれども、平和利用一本でオット・ハーン号運航をやってまいりまして、先ほど木下参考人からのお話にもありましたように、日独の八万馬力コンテナ船の研究がございました。この八万馬力に搭載する原子炉について、やはり検査機関の安全審査をパスしております。ほかに二十四万馬力プラント設計詳細も終わっておるという状況であります。  フランスも、百五十メガワット、二百五十メガワット、三百五十メガワットサーマルの三タイプについて、すでに標準型を設計して受注に応じれる状況だそうでございます。  御承知と思いますけれども、カナダの砕氷船は原子力とガスタービンのハイブリッドを計画しておるようでございまして、この原子炉プラントアメリカイギリス西ドイツフランスが応札を求められ、設計図面を提出しているように思います。  そういうことからしますと、日本には何もないのでありまして、あたりまえかもしれませんが、かなり差はあるというふうに思います。  しかし日本も、陸上発電炉ではかなりの技術蓄積がありまして、御承知のように、発電機数でも第二位というくらいでございますから、その蓄積技術は相当なものだと思います。原子力船といえども、発電炉の技術といいますか、そういうものは多分に応用できるわけでございまして、プラス船の特質、こういうことになる。そのプラス船の特質というのは、やはり実船の経験ということじゃないかと思いますので、「むつ」を動かすというようなことになれば、その技術格差はぐんと縮まる、こういうふうに思っております。  大体、大ざっぱで恐縮でございますけれども、五年から十年ぐらいの技術格差があるのではないかと思っております。それが最初の質問のお答えでございます。  それから二番目は、自主技術についてどうかという御質問でございますが、船というのは、非常に自己完結的な孤立移動体でありまして、そういう意味では、まことに信頼性に富んだものでなければならないわけであります。私たち大学で学生に教える場合には、そういう点が一番のポイントであります。自主技術ということになりますと、やはり中身は自分の手の内で何でもわかるというようなことでなきゃならない、こういうふうに思うのでございますけれども、とりわけて重要なポイントは、そういう意味からは、船は孤立移動体の自己完結体でありますだけに、自主技術をぜひ進めていただきたい、こういうふうに思います。−お答えになりましたでしょうか。
  18. 塚原俊平

    ○塚原委員 どうもありがとうございます。  続きまして、菊池参考人速見参考人に同じ質問でお伺いしたいわけなんでございますけれども、木下参考人のお話の中に、すぐに実用し得る代替エネルギーというようなことで、石炭であるとかというようなお話が出て、その後に原子力の平和利用がくるというのが世界のいわゆる有識者の一般的な見方であるというような御指摘がございました。私は、これは恐らくかなりの数の方がこれについては御賛同をいただけると思うのでございますけれども、その御意見についてどのようにお考えになられるか、ちょっとお伺いを、端的な御答弁で結構でございますので、お教えをいただきたいと思います。
  19. 菊池渙治

    菊池参考人 塚原先生にお答えをいたします。  私は、原子力の平和利用を必ずしも否定はしませんが、現状においてそのまま実用化することについては、若干懸念を持っております。と申しますのは、先ほど竹村先生のお話だったと思いますが、コストの計算、十円とか二円とかというようなコストの計算もされておりますけれども、そういうコストの計算上でも、私はきわめて不確実なものを内在していると存じます。たとえば原子力発電所、いまの船にしろ、廃炉の処理費というようなものが計算に入らないコスト計算をしております。それから廃棄物の処理の関係のコストも計算に入っておりません。そういうようなものを一体コスト計算を抜きにしてコスト云々ということで安い安いと言っていいのかどうか。それから石油が上がるけれども、原子力関係のものは上がらないような印象を受けるような御発言がきわめて多いわけですが、そういうものをもう少し詰めて、経済性について見て、どこにネックがあるのか、そのネックをどう解決するのかということが、いまの時期ではなかろうかと思います。  同時に、省エネルギー関係に絡んで、現状原子力平和利用が、果たしてエネルギー収支なりエネルギー効率の関係からいって、どれだけエネルギー消費、石油消費につながるのかということも、少なくとも現段階においては検討をもう少しすべきではなかろうかと思います。  エネルギー収支が非常にいいという計算は、三十年の耐用年数、それから廃棄物の処理、管理をきわめて短時間か、そうでなければそれを無視することによって計算されている例が非常に多いのではなかろうかというふうに思います。  そういう未解決の問題をもう少し詰め、石油に関してはきわめて詳細な議論があるわけでございますけれども、原子力の場合、進める進めると言いながら、そういうものに対する確固たる考え方というものがいま欠落をしているのではないか、そういう実は懸念を持ちます。  中には、エネルギー収支からいってマイナスだという議論もなさっている方もあるわけですし、経済コストについてはアメリカの議会での報告もあるわけでございます。それに対して生田日本エネルギー経済研究所長は、不確定要素を持ち過ぎている、こう言っていますが、しかし不確定要素を無視してコストが安いと言うことは、これまた不確定要素を大きく見て計算するよりも、もっと私は経済というものを無視していやしないかと思う。  ですから、原子力の平和利用を進めるについて、経済的にもエネルギー収支の関係から言っても、もう少し真剣に詰めた上で、いまやることがいいのか悪いのか、もし問題があるとすれば、どれをどう解決して、その上で積極的にやろうかという視点を持つべきではないかというふうに私は思います。  一概に私は平和利用をも否定は現在しておりません。ただ、そういう欠落した議論があるということに対しては、非常に懸念を持っております。
  20. 速見魁

    速見参考人 お答えいたします。  私は、平和利用という言葉の意味をどのように受けとめるかによって違ってくると思うのです。戦争利用、平和利用、こういうぐあいに短絡的に考えれば、平和利用、これはだれしも否定するものはないというぐあいに考えます。ただ、原子力の場合には、核分裂という問題から生じてくることでありますから、当初の陳述に申し上げましたように、やはり廃棄物の処理というものが確実に、しかも安全に処理されないという現状のことを考えていくならば、私は、むしろ核分裂によるこのエネルギー政策あるいは原子力発電を含むこの平和利用、このことはむしろない方がいいのではないか、このように思います。  と申しますのは、やはり石油にしても石炭にしても、確かに、いろいろ公害面における防止策はできます。しかし、核分裂によるこのエネルギー政策作成ということについては、それなりに、当面は目に見えないものが、十年先、二十年先、百年先にその障害というものがあらわれてくる。害全面においても、現状では非常に安全だということを科学の進歩の中で言われてみても、そのことが将来果たしてその当時の安全というのが、将来ともに保たれていくのかどうか、このことについては、やはり原爆を経験している私たちとしては非常に疑念を持っておるところであります。  したがいまして、一概に、短絡的に平和利用そのものを否定するわけではございませんけれども、やはり核分裂によるそういうエネルギーの作製ということについては、むしろ避けた方がいい、どうしても避けられない事情があるとするならば、やはり安全性信頼性というものをもっと重視して、当面のところ研究、実験段階にとどめるべきではないか。日本のいままでの事故の教訓その他を踏まえて考えるならば、まだまだ実用化というところまでには行けない、このことはかえって人類に対する非常に大きな危害といいますか、被害をもたらす結果に陥っていくのではないだろうか、このように実は考えております。
  21. 塚原俊平

    ○塚原委員 速見参考人にもう一つお伺いしたいのでございますけれども、一番最後に中川参考人から、最初現状エネルギー一つのお考えというものがございまして、たとえば電気、ここに十二あるうちの二が原子力発電であるというようなこと、それでエネルギー自体がいま大変苦しい立場にあるというようなこと、これはかなりよく言われるし、現実の姿であると思います。やはり核分裂というものはできるだけやめた方がいいという御意見を拝聴いたしたわけでございますけれども、それでは速見参考人としては、これから先、果たしてエネルギーはどのようなものでやっていかれたらいいという、もし腹案でもございましたら、簡単で結構でございますからお教えいただければと思います。
  22. 速見魁

    速見参考人 お答えいたします。  私は、地方議会の一県会議員でありますから、むしろ逆に国会の先生方に実はお聞きしたいことでありますけれども、いままで議論した過程の中で私、意見を申し上げてみたいと思うのです。  まず第一に、日本に非常に欠かせない、しかも埋蔵量のある石炭をつぶしてしまったという状況、ここら辺をどう考えるかということも、やはり今後のエネルギー政策の中では反省する一つの大きな点ではなかろうかというぐあいに私は考えます。  たとえば、外国において石炭価格は安いというこのことと、日本石炭の採掘の状況というものは若干事情が違うことは私もよく知っております。特に長崎県は石炭県でありますが、百二十ぐらいの炭鉱があったのが現在二つしか実は炭鉱はございません。それでは炭が全然なくなって炭鉱がなくなったのかと言えば、そうではなくして、やはり問題は採算の問題採算性で石炭を掘らなくなった。いまどのくらいあるのか知りませんけれども、日本でやはり石炭を本当にもう一度見直してやるということになれば、相当のエネルギーを国内で生産できるのではないだろうか。このことについては、ただ採算性といいますか経済性といいますか、安くつくから油を買う、それで油に切りかえていって、そして今度、中近東の情勢があって油が高くなると石炭を買う、そして最近はどうやら石炭石油と変わらないような高い値段になりつつある、こういうことも実は聞いておるわけであります。  だから、やはりエネルギー問題については、石炭政策をもっと根本的に見直して、日本の国内にあるエネルギー開発、発掘、このことがまず基本的になされるべきではないだろうか、このように考えます。  第二は、日本の場合には地形的に山岳地帯が非常に多いわけであります。やはりこの地形を利用した水力発電、このことをもっと真剣に考えていくべきではないだろうか。ただしかし、この水力発電の場合でも、現在のように九電力資本に分割されておる段階では、小さな水力発電所をつくったのでは採算が合わない。こういうことで、この水力発電も規模と場所によってでき得ない、こう言われておりますけれども、ただニュージーランド等の——ニュージーランドは、日本と地形が非常に似ているところでありますけれども、あそこでは小さい山々、谷間を仕切って、発電と灌漑用水に使っておる。これもやはり全部国家が投資をしてやっておるということを、私たちも視察の中で聞いてまいりましたし、見てまいりました。  そういうようなことで、日本は特に海外に依存をしなければならない国でありますから、私は、ある程度の国家投資をやってでも、そういう石炭あるいは火力、水力、それから日本は火山列島が通っておるところでありますから、地熱、これもいま非常に研究されておられるようでありますけれども、やはりそういうところに目を向け、国の投資をやるべきではないだろうか。そうすることによって、私は、やはり将来におけるエネルギー問題の解消ということはできるのではないか、このように考えております。
  23. 塚原俊平

    ○塚原委員 どうもありがとうございました。  ちょっと話をもとに戻さしていただきまして、今度は、本日の参考人の先生方に来ていただいた「むつ」の問題で、具体的なことで、まず技術面で竹村参考人にお伺いしたいのでございます。  これは本日の菊池参考人のお話の中にも、井坂参考人のお話の中にもあったわけでございますけれども、原子力船むつ」が非常に旧式である、開発をしても役立たない、開発意義はないというような趣旨の御意見の陳述がたしかあったように思うのでございますけれども、この点について先生の御所見はいかがでございましょうか。
  24. 竹村数男

    竹村参考人 塚原先生の御質問にお答えいたしますが、先ほどの参考人の言葉に旧式という言葉がございました。しかし「むつ」の原子炉は旧式じゃないのです。古いだけなんです。いまでも私たちは、タイプの一つとして研究をしよう、こういうふうに思っております。ですから、そういう意味では旧式ではないと、こういうふうに申し上げたいわけでございます。  それで、「むつ」は役立たないのじゃないかということですけれども、幾ら陸上でいろいろなことをやっても、ゆすってみて、ついでに負荷変動をかけられるということは、船でしかあり得ないわけです。陸上にそういう装置をつくるというようなことは、ちょっと考えられないのではないかというふうに技術的には思います。それで、そこから出てくるデータというのは、やはり設計のデータと比較されるのだろうと思いますが、当然、設計はあるいは古いかもしれませんけれども、その考え方というものが、そのデータのあり方で、なるほどこれでよかったとかどうとかいうことになるわけでございまして、そういう意味では、データそのものもさることながら、やはりその結果が得られるということが何よりも大事だと考えております。でき得れば、いろいろな計測装置もうんと、もっともっとこれからでもつけて、それこそ徹底的に「むつ」をやはり使っていくのが、原子力船開発の一番の捷径だと私は思っております。大いに使い道はあるというふうに思っております。  以上でございます。
  25. 塚原俊平

    ○塚原委員 あわせまして、いまちょっと御発言の中にもあったのですけれども、これは速見参考人から御指摘があったことで、もう一つ竹村先生の方にお伺いしたいのですけれども、「むつ」の原子炉を船体から取りはずして陸揚げをする、陸上で舶用炉の研究を行うという、これはたしか石野先生の方のお出しになった法律も、この案であったような——そうでございましたね。このようなことが果たして技術的に可能なものであるか、あるいは技術的に有意義なデータがとれるものかということで、いまちょっと御答弁があったわけでございますけれども、もう一度、竹村先生の御意見をお聞きしたいと思います。
  26. 竹村数男

    竹村参考人 先ほどちょっとこっちの方まで触れてしまって申しわけありませんでしたが、船をずばり切って陸上に原子炉を固定するということは、やってやれないことはないのではないかとは思うのでございますけれども、あれだけの重量を陸上に固定するということは、ちょっと大変な難事であろうと思います。  それにも増しまして、先ほども申し上げましたように、今後の原子力船開発のために陸上に固定して、その炉を研究に使うということの意義は、私にはわからないのであります。陸上と違った舶用炉技術のポイントは、何と申しましても、動揺と振動と負荷変動の重なったところだと思っております。そういうものは何もとれないわけです。したがいまして、陸上に固定するというようなことは、私の技術的な考えでは、ちょっと意義は薄いように思われます。
  27. 塚原俊平

    ○塚原委員 木下参考人にお伺いをしたいと思います。  大変に、世界全体の流れ、あるいは現実のエネルギー情勢からのお話がございました。その中に、参考人の方から、原子力船実用化時期の見通しにつきまして、相当繰り上がってくるのではないか、当初は二十一世紀に入るころというようなことであったわけでございますが、相当繰り上がるのではないかというような説があったわけでございます。  木下参考人としては、相当繰り上がるという範囲が一体どの程度のところの目算で御意見を陳述されたのか、お聞かせいただきたいと思います。
  28. 木下昌雄

    木下参考人 ただいまの御質問に私見を申し上げますが、二十一世紀に入るころには実用化時代に入っておるであろうというのが従来の予測でございまして、これは一隻や二隻動いているという状態ではございませんで、ある程度の数が動いている状態実用化時代と私どもは言っておりますので、したがって、従来の予測から申しましても、やはり一九九〇年代の後半には数隻の船は浮いていないと、二十一世紀には実用化時代に入れないわけでございます。そして、それがさらに繰り上がるのであろうと私は感じて帰ってきたわけでございますが、これはいまから準備いたしましても、また設計期間その他全部考えますと限度がございますので、やはり繰り上がるといたしましても、五年ないしは十年は繰り上がるという程度に漠然と考えた次第でございます。
  29. 塚原俊平

    ○塚原委員 やはり木下参考人にお伺いしたいのですけれども、わが国の造船産業の将来というものを考えてみましたときに、原子力船技術のような高度な技術造船業界で修得することは、きわめて有意義なことであると考えております。  これは参考人の御意見の中にも、造船界技術革新経済発展に貢献をしたのだというような、まさに御正論があったわけでございますけれども、ここに参りまして、海運不況というようなお話がございましたが、「むつ」の開発を始めた当初に比べて大分戦意が喪失をしたのではないか、原子力船研究開発に対する熱意が薄れてきたのじゃないかというような意見があるわけでございます。  きょうは、せっかくおいでになったいい機会なものでございますので、その辺のところを参考人からお伺いできればと思います。
  30. 木下昌雄

    木下参考人 先ほど申し上げましたように、海運界造船界が過去四、五年間非常に不況であった、したがって、普通の船の、従来型のディーゼルエンジンあるいはタービンを積んだ船の発注、建造意欲すら喪失されていた時代でございまして、まして新しい開発を必要とする原子力船建造に対しては、やっぱり目が向きにくかったことは事実でございます。しかし海運界からは、常にいつでもつくれるようにしておいてほしいのだ、したがって、研究開発の段階まではやっておいて、いつでも実用化できる状態までには準備を整えておいてほしいという要求は、過去一番つらい時期の中でもわれわれ造船界は、常にそういう強い要求を受けておりました。  したがって、先ほど若干申し上げたかと存じますが、造船界も非常に経営が苦しゅうございました中でも、火種を絶やさずに人材の温存に努めまして、ただ前向きに積極的にそういう部門を広げるとかいうような余裕は、経営上したくもできなかったというのが実情でございまして、こういう面が、あるいはよそからごらんになって、熱がさめたのじゃないかというふうにお受け取りいただいた原因になっておるのではないかと思います。しかし、いまでもやはり少数の人数、また、その跡継ぎはどんどん入っておりまして、たとえば日立造船はことし大学を数十人採りましたが、そのうちの原子力の技術者はかなりの数を占めておりまして、これは決してそういうものに対して熱意が下がっているわけではございませんので、御了解願いたいと思います。
  31. 塚原俊平

    ○塚原委員 続きまして木下参考人にお伺いするわけでございますけれども、御意見の中に特に強調された点で、国を挙げて官学民の研究体制をとることが必要である、若い学生が希望して、そして皆が協力し合えるような機構が必要であるというようなことを、二回ほど繰り返されて大変に強調されたわけでございます。この点について今後、原子力船研究開発における国と民間との役割り分担並びにその機構等について、ここでもし参考人からの具体的な御意見でもございましたら、お聞かせをいただきたいと思います。
  32. 木下昌雄

    木下参考人 よく真の研究開発はどういう体制でやるべきかという議論がございまして、資金から言えば政府の資金でやる方が潤沢である、しかし、それを運営して本当にやる気を起こさせるという点から言うと、やはりその運営は民間的な運営でやった方が非常に成果が上がるということを言われます。これは決してここにいらっしゃる参考人の官の研究所に対して非難を申し上げているわけではないのでございまして、一般論としてどうしても官営、国立の研究機関では、研究の速度なりモラールといいますか、いろいろな点でもう一つ力が入らないということをよく聞くのでございます。  私は、この両者のいい点をこきまぜて、新しい特殊法人形式と申しますか、そういうのができれば一番いいのではないかというふうに思うのでありますけれども、民間の創意を上手に使ってやっていただくということは、単に民のいいところをとると言うと、民間がただ自由に使える金だけ出すというようなとられ方が従来ございますので、そこで運営は、むしろ官から出てこられた方がおやりになるといったような、事実はちょっと反対のかっこうになるおそれがあるように私は思うのでございますが、ただ何か物をつくっていくということでなしに、みずからやる気を起こした精神活動に基づく研究開発というか、各研究者の、開発技術者の創意に基づくやる気がなくてはできない精神労作でございますから、そういうものが本当に生かされるような特殊な組織でないといけないと私は思うので、ましてそれが時限的な、時間を限って存在するような機構ではうまくいかないのではないか、例を挙げますとそういったようなことで、そこに入った以上は、その仕事を本当に一生懸命やっていれば研究開発完成の喜びを味わい得る、そして研究者個々の意見が全部十分反映され、研究のテーマの選択についても、あるいはそのやり方についても、研究者自身の考えが一〇〇%反映されるような組織で運営される、どうも見渡したところ、それが一〇〇%実現されておると思われるような組織はまだ日本にないようでございますけれども、できるだけそれに近いものが望ましいのではないか、過去においては、たとえば理学研究所、理研でございますが、ああいったところにかなりその理想に近い姿があったのではないかというふうに思われるのでございまして、あるいは昔のものはすべて美しく見えるというような弊かもしれませんけれども、何かそういったような感じがいたします。  お答えになっておりませんで恐縮でございますが……。
  33. 塚原俊平

    ○塚原委員 終わります。
  34. 瀬野栄次郎

  35. 石野久男

    石野委員 参考人の皆さん御苦労さまです。大変失礼なお願いですけれども、持ち時間が非常に少のうございますので、御答弁の方はなるべく二分間ぐらいでやってくださるようにお願いいたします。  最初に、速見参考人にお尋ねいたしますが、速見さんは、今度の「むつ」の修理について、現状では非常に作業効率が悪い、しかも協定の期限の半分も空費してしまっているという実情のもとでは、来年の十月までに果たしてそれができるか危ぶまれるという意味のお話がございましたが、これは五者協定の内容を実行するに当たって、もしこれが実行できなかったとか、その期限内に作業が終えられなかったというようなときの現地状況はどういうふうになるのだろうか、それを実は私どもは非常に心配するのですが、現状ではどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。
  36. 速見魁

    速見参考人 もし仮に来年の十月十六日までに出港が事実上できないということになれば、現地としては相当な混乱が起こることは必至だと思います。  まず具体的には、青森県むつ市における出港当時のあの状況、佐世保港に入港したときのあの状況、これ以上の行動が現在予想されます。
  37. 石野久男

    石野委員 いま一度お尋ねしておきますけれども、そういう状況もとで、その後の作業を佐世保のドックでやれる可能性の問題ですが、まあ、これはわかりませんけれども、現状からいってそういうことの可能性を期待できるでしょうか。
  38. 速見魁

    速見参考人 このことは、先ほど私は一つの例だけを申し上げましたけれども、あと幾つかの例が実はございます。一つには、五十三年の五月八日に「むつ」総点検・改修技術検討委員会で承認されました、俗に言う核封印方式の改修の問題があります。このことについては、技術的にはできるけれども、非常に空間が狭い、作業の姿勢の問題が非常に憂慮される、そういうことで作業効率が悪い、このことが原子力船開発事業団から提示され、これが「むつ」改修検討委員会で承認されております。したがいまして、当初の三年間三十六カ月の計画の中では、圧力容器の上ぶたを外しまして船外に持ち出して、船外で圧力容器上ぶた上部のブロック遮蔽をするようになっておりました。これは格納容器内でやるわけでありますから、私ども原船事業団とも再三にわたって話をしましたけれども、上部と下部での同時作業は格納容器内では不可能です、こういうふうにはっきり言われております。そういうような面等から考えてみて、いま建屋だとかグレーンの移設だとかやられておりますが、私の方でいろいろお聞きしているのは、実質的にはこれが大体七月いっぱいぐらいかかるであろう、そして八月ごろから格納容器の上ぶたを取り外して具体的な改修計画に入る、こういうぐあいにスケジュールを言われておりますが、改修工事が終わるのは、来年の十月ではなくして、実質的には二カ月前に終わらなければなりません。八月中には改修工事を終わりませんと、あと点検あるいは制御棒の駆動試験等がありますから、そうしますと、実質的には十カ月ないし十二カ月の工程しかございません。そういうような観点からいきますと、もしもこれが完成するということになると、相当簡略化した修理になってしまうのではないか。  その一つの例がブロックの積み合わせ方であります。いま検討されているという話でありますけれども、従来は三段でありましたブロックの積み合わせが今度は二段になっております。この二段の積み合わせの方法も、長崎県や佐世保市に提示した内容と違うことが検討されておるということを実は聞いているのですが、非常にゆゆしき問題だと思っております。時間があれば図面等で詳しく説明をしたいわけでありますけれども、いずれにしても三段を二段にしたのは、圧力容器の上ぶたを外さないで格納容器内で修理をするためにできるだけ二段にするということであったのですが、今度はその二段にしたものを、実際的に期間が短くなったから二段の積み合わせの方法を変えよう、こういうぐあいにいま計画検討がなされておりまして、そういうことで詳細設計がおくれておるというぐあいに私たちは聞いておるわけであります。  そうしますと、実質的には期限内での修理は不可能である、不可能であるとすれば当然居座る可能性がある、これは四者協定、五者協定に違反をする、したがって、いま直ちに中止してもう一度練り直してくれ、こういうことを、実は先般、原船事業団の方には強力に申し入れをしたという経過がございます。
  39. 石野久男

    石野委員 もっとお聞きしたいことがありますが、時間がありませんので、菊池参考人にお尋ねしますが、参考人は、青森での四者協定の完全実施に国が責任をとれ、政府、科学技術庁は当事者能力がないというような意味のちょっとお話がございました。当時の事情と現状とを考え合わせて、そしていま佐世保の状況がそうだとすると、新定係港がどうなるかということも含めて、やはり青森に全然無関係ではなさそうに私たちは思っている、そういうようなことも含めた上でひとつ参考人の四者協定に対する責任のとり方、今後出てくるだろうと思うようなことについて若干御所見を承っておきたいと思います。
  40. 菊池渙治

    菊池参考人 当事者能力云々というのは、私がそう思っているというよりも、この前の法改正の際の参議院科技特の委員会で、保守系のある先生のお言葉として私は申し上げたのでございます。私も、むしろ同感の感じを持っております。四者協定というようなものを国が締結して、それを守ろうともしない、守らないということになったらどういうことになるか、これはもう私が言うよりも国会の先生方なり国自体がひとつお考えいただきたいと思うのです。そう軽々しい行政なり政治の運営が行われるともししますならば、これは大変なことだろうと思います。これは単に個人の契約であっても、契約をした場合履行の責任があるわけですから、それが国なるがために履行しなくてもいいということはあり得ないだろうと思います。私は、そういう点ではやらないだろうというふうにいまのところ信じております。
  41. 石野久男

    石野委員 定係港の問題で菊池参考人にもう一度お聞きしますが、やはり入港前の詰めの甘さということを、佐世保の場合についてお話がありましたが、科学技術庁は行き当たりばったりの行政をやっておる、こういうことでは原子力行政はむしろ後退するのではないだろうかというような意味のお話でございましたが、もうちょっとそのことの本質的なことをお聞きしたいと思います。
  42. 菊池渙治

    菊池参考人 そもそも佐世保というものは、科学技術庁なり事業団最初に考えたところだというよりも、辻市長がある新聞にアドバルーンを上げたのか、ある新聞がやったのか、そういう点から突然のように佐世保の問題が出て、当初は定係港もよさそうなことで、ずるずる佐世保に行ってしまったというのが私の印象でございます。  現に私は、辻市長にもお目にかかっておりますし、その事業団の話があってからの国、事業団の取り組み方の不信感と申しますか、不道徳さというようなものをむしろ嘆きながらも、最後にあそこへ行っております。同時に、係船料だとかそういうような事務的に事前に処理すべきものを何にもやっていないで行ってしまったということは、やはり従来のように行き当たりばったりにやってきているその習性というものが直っていない。そうするならば、いま法改正して五年たったってまた同じことでその間の時間と経費がどうなるのか、木下先生のお話のように、二十一世紀じゃなくて二十世紀の末ごろかなりの船がつくとするなら、あと五年ということは、十年も間隔がその中にはないわけです。二十一世紀が遠い話のようですけれども、あと二十年なんです。本当にそれに対応するというなら、もうきょうから第二船をやらなければならない。国の計画にも第二船というのは全く出ていない現状において、計画だけはもう二十一世紀の前ごろこうでこうでという計画をお立てになっているということは、私は、これ自身もまた行き当たりばったりだろうというふうに思います。
  43. 石野久男

    石野委員 井坂参考人にお尋ねしますが、「むつ」の研究材料としての価値の問題で、果たして今後の舶用炉として役に立つかどうか、むしろ邪魔になるのじゃないかというような意見もあるというお話がございました。その間の運航データということと、それから陸上での基礎データとの関連の問題、これは先ほど竹村先生からは、やはり負荷変動の問題等について陸上固定ということは無意味だ、これは私ども陸上固定とは言っていないのですが、炉を切り離せということを塚原さんがそういうふうに言ったのですけれども、私たちはそういうふうに言っていないのですが、とにかく負荷変動との関係でやはり陸上での基礎データというものが非常に大事じゃないかという御所見ございましたので、その点についてもうちょっと、すぐに船につけちゃうことと陸上で基礎データをとるということの意味の違い等についての意見を聞かしていただきたい。  それからいま一つ、これは時間があまりありませんのであれしますが、今度の法案の問題でどうも労働組合としては後味が悪い、そういうような意味のお話がございましたが、原子力船というものの処理の仕方等について、やはり現状のままでいきますと、なかなかこれは処理ができないということから、いろいろな対応が考えられておりまして、どういうような場合に後味がいいと受けとめられるかということについて、もう一度簡単な御所見だけ聞かせていただきたいと思います。
  44. 井坂正規

    井坂参考人 まず最初に、研究者の意見として今後の舶用炉の研究ということで「むつ」は役立たないのじゃないかという意見があるということを最初に述べましたけれども、これは原研の労働組合として主催した会議の中で、そういう意見が出されてきたということを紹介したわけで、それが唯一のものであるというふうに考えているということではありません。そうじゃないという意見も含めて研究者、技術者の意見を十分聞くべきであるというのが、私の主張の要旨であります。  それから、陸上でのデータを積み重ねる必要があるという点につきましては、私は、専門家でありませんから、そう詳しいことはわかりませんけれども、海上でのデータをとるということになりますと、海上での動きというのは、きわめて複雑な動きをするわけで、その解析というのは非常にむずかしいと思うのです。そういう意味で、解析をやるのには、陸上で固定するのじゃなくて、陸上で単純な振動といいますか揺れを与えるとかそういったことを重ねて、複雑な動きに対しても有効なデータをとっていくという、そういう積み重ねが必要であろうということを、研究者の意見として私は受けとめているわけであります。そういうことを言いたいと思います。  それから最後に、法案の扱いですけれども、原子力船の問題につきましては、いままでこれだけ国民を騒がせるというようなことを起こしてきているわけですから、そのことについて十分な反省をして、新しい法案をつくっていかなければならないのではないかというふうに思います。そういう意味で「むつ」をどうしたらいいのかというのは、さっき私が申し上げた意見のほかにもさまざまな意見があると思いますので、そういう意見を十分に出し合って、本当にどういった方向がいいのかということを、もっと広い層を集めて研究して決めていくべきであるということを申し上げたいと思います。
  45. 石野久男

    石野委員 中川参考人にお聞きしますが、「むつ」の問題について、これは国民の財産であるから、とにかく二百六十億かかったものをどぶに捨てるようなことをするな、こういうお話でございましたが、原子力船むつ」については、私たちまだ相当金がかかると思うのですけれども、この点、あとどのくらいかけた場合に本当に国民の財産として役に立つというお考えでいまのような御発言があったのか、そこをひとつお聞かせ願いたい。
  46. 中川幹雄

    中川参考人 国民の財産であるかどうかということについては、きょうここで議論していることが今後どう生きるかということにつながるのではないかと私は思います。つまり、廃船にすることと、「むつ」そのものは、十数年前に日本独自の技術なりノーハウでつくったものでありますので、これを本当に一つの捨て石として十分活用する、そのことが十年、二十年先に財産になるということで、ひとえにわれわれの判断の問題ではないか、私は、このように考えています。
  47. 石野久男

    石野委員 最後に、木下参考人竹村参考人にお尋ねしますが、竹村参考人は、とにかく、今日の「むつ」の炉でもそうですけれども、新たにプラントをつくってやる必要がある、そして、それの原型炉の建設が必要だ、こういう御所見がございました。その意味は、やはり研究のあり方の問題として、たとえばすぐ「むつ」のような船へぱっとつけてやることなのか、何か別途に炉の研究所をつくれという意味なのか、そこのところをひとつお聞かせ願いたい。  それから木下参考人には、今度の「むつ」の共同設計共同作業等に参加をされた経験と、それから今日的な意味を含めて、やはり技術ギャップは、それほど各国との間に大きいものはないのだから、官学民の協力を得ればやれるのだ、こういうお話がございましたが、現在の「むつ」の炉の問題については、どういうふうにお考えでございましょうか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  48. 竹村数男

    竹村参考人 石野先生にお答えを申し上げます。  私の最初の御説明の中に、確かに原型炉という言葉がございまして、非常に理想的に申し上げれば、当然、コンポーネントサイズで徹底的に揺らしたり、負荷をかけたりというようなことをやりまして、そして、それで炉を組み立ててみて、動かしてみる。その炉というのは、原型炉ということになるかと思います。しかし、技術者のとことん胸の中、良心的におまえはそれで一〇〇%か、とこう言われた場合には、やはり船ですから、もう一度船に乗せてくださいというのが理想だと思います。  しかし、そう言っていますと、いまのところ大変になるかと思いますので、その辺は私は触れませんでしたけれども、まあ「むつ」を動かすというその貴重な経験は、たとえば動いてみると、修繕というようなものあるいはメンテナンスというようなものにどういう手だてが必要でありコストがかかるかということが初めてわかることなんでありまして、そういう余り重要ではないかもしれませんけれども、一例で申し上げましたが、要するに動かすということにより得られるデータを「むつ」でできるだけ積み重ねますと、あと、これからみんなで寄ってたかって勉強する原型炉と、この両方で日本での原子力船技術というものをほぼやれるのではないかというふうに私は考えております。——よろしゅうございますでしょうか。
  49. 木下昌雄

    木下参考人 お答え申し上げます。  現在の「むつ」の炉について、その利用価値あるいはどう考えておるかという御質問と考えてよろしゅうございましょうか。——先ほど旧式であるということと、ただ古いのだという二つの御意見がございましたが、私は、型が古いということも、やはり否めないことかと思うのでございます。それと同時に、いまならばこういうものをあらかじめつけておいたろうといったような、現在の知識をもってすれば設計がこういうふうに変わっていたろうというような意味で、やはり古いということもございます。  しかし、だからといって、それによって得られる、今後、実船実験航海実験のデータが役に立たないとは言えないと私、思いますので、一〇〇%現在の最新の知識でつくったもので実験をやるほどはございませんけれども、やはり非常に多くの知見が得られる。たとえば諸外国に入港いたします際のいろいろな諸外国の、あるいはローカルな港の出入港の規則等にどういうふうに抵触していくか、それをどう改めてもらわなくちゃいけないかといったような問題をどんどん提起していって、実際、実用化時代が来るまでにはそういうものを解決していく、国際法を変えたり国内法を変えたり、いろいろなことをしてもらって出入港を楽にさせてもらうような法規的な改善をしてもらわなくちゃならない。これは海運業界にとっては、むしろ非常に大事な経験でございます。こういったことは、やはり航海をしてみないとわからないことだと存じます。  また先日、私ヨーロッパで、いまオット・ハーンはどうするのかということを聞きましたら、あれはこれからデコミッショニングをやるのだ、船体を解体いたしまして、舶用炉も解体いたしまして、それと放射能を帯びた部分をどう処分するかということを実際にやってみるのだ、これは非常に貴重な経験でございまして、発電炉については、一、二前例がございますが、舶用炉については、これはコンクリートでつくっているわけじゃなくて、スチールでつくった構造物の中に納めたものでございますから、かなり条件が変わってまいります。  「むつ」についても、できれば実験航海の後、いまドイツがオット・ハーンについて考えているようなデコミッショニングのことをやらなくちゃいかぬと考えております。そういう意味で非常に貴重ではないかと考えます。
  50. 石野久男

    石野委員 どうもありがとうございました。
  51. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 日野市朗君。
  52. 日野市朗

    ○日野委員 まず木下参考人に伺います。  いませっかくオット・ハーンのデコミッションの話が出ましたので、そこから入らせていただきましょう。  造船業界海運業界に非常に原子力船に対する期待が高いというお話だったのですが、私、一番問題になるのは、やはりそれが廃炉になったときの舶用炉、これの処分だと思うのです。これからドイツではオット・ハーンをどのように料理されるのか、そこらを私は十分に検討していきたいと思うのですが、現在、陸上の発電炉なんかについてのいろいろな経験から言うと、廃炉の処理が何といっても頭の痛い問題でございますね。ここのところにきちんとした見通しがつかないうちは、参考人がおっしゃる造船業界の望みも海運業界の望みも、これは見果てぬ夢に終わるのではなかろうかというような感じがするのです。廃炉の処理の見通しがつかないような船をだれも注文される方はないと思いますし、これを海運に用いようというような奇特な方もおられないと思うのですが、いかがでしょう、そこらのお見通し
  53. 木下昌雄

    木下参考人 お答えになりますかどうですか、思いついたままに申し上げますが、廃炉の処理と申しますか、廃棄処分につきましては、どういう方法が一番安全を確保しながら一番経済的であるかということの検討が大事なものでございまして、方法があるかないかということが問題になっておるわけじゃございませんで、方法は不可能ではないわけで、したがって、あらかじめこういう設計をしておけばどのくらい安く廃棄処分ができるか、しかし、そういうことを考えずに最初からつくっておくと、廃棄処分にするときに非常にお金がかかる。したがって、あらかじめつくるときから廃棄処分にもしやすいような設計にしておくというようなこと、たとえばコバルトとかいろいろ半減期の長い元素を含んだような鋼材で物をつくっておいては後困るのだといったようなことから発想をして、新たにつくるときにはそうしておくのだといったようなことにわれわれは関心がございまして、決してその方法がない、廃棄ができないというようなこととは考えておりません。したがって、どのくらい廃棄処分に金がかかるかということは、まだはっきりはわかりませんですが、だからといって、それをつくらないというような、量といいますか大きさの問題とは私、考えておりませんのでございますが、お答えになりましたかどうでございますか……。
  54. 日野市朗

    ○日野委員 私の認識するところでは、廃炉を処理するというのは、非常にむずかしい問題で、決定的な方法というのはいまないだろうというふうに考えているのですが、方法はあるのだ、あとはいかにそれを安く実現していくかというのが問題だとおっしゃるのでは、ひとつその方法というものは、木下参考人どのように認識しておられるのか、お聞かせいただきたい。
  55. 木下昌雄

    木下参考人 現に廃炉よりももっと放射能の強い使用済み燃料の処理処分の方法についても、現在検討が進められておりまして、これも非常に溶けないように固めて海洋投棄するとかいろいろな方法があるわけでございます。舶用炉の場合は、発電炉ほどに大きくはございませんけれども、やはり使用済み燃料に比べますと、容積が大きゅうございます。ですから、その処理処分の方法についても、一段の工夫は要るかと存じますけれども、決して私、技術的にはいまお手上げだというような問題とは考えておりません。
  56. 日野市朗

    ○日野委員 廃棄物の処理等をやる過程なんかと炉そのものを廃棄する場合と、これは根本的に概念が違うというふうに、私もこの委員会におりまして、その道をやっていて考えているのですが、その程度の、失礼ですが、しかし問題が問題ですから、失礼をいとわずに言わしていただきますと、その程度の御認識でこれからの原子力船舶用炉を考えていただいては、私は実に困ると思います。この点は、私の認識が誤っていればおわびをすることになりますが、苦言を呈さしていただきたい。  それから、これは船でございますので、当然、沈没というような事態、それから遭難という事態、暗礁に乗り上げるという事態、こういうような事態というのは常時ございます。しかも統計が教えるところによりますと、これらの事態というのは、ずっとオフショアの、沖合いで起こるというようなものよりは、むしろ近海であるとか沿岸であるとか、そういったところで起きることが十分に予想されるわけでございますね。そうしますと、勢い、船の乗組員の安全ということももちろん考えなくちゃいけない、それから海洋に対する汚染、これも考えなければなりません。それから、そういう事故を当然考えなければならないということから、それの航行する海域またはそれに近い地域の人たちの同意を得るという、非常にむずかしい問題がございますね。これらの問題についての一つ一つの突破が可能と考えておいでになりましょうか。  具体的に言えば、遭難一つにしぼってみましょう、遭難があったときに、船が沈没した、こういうような場合の原子炉の回収、原子炉を収容する、そういうことなんか、現実に可能なものでしょうか、いかがでしょうか。
  57. 木下昌雄

    木下参考人 これは船でございますので、浮いたものは必ず沈むということはあり得るわけでございますが、私ども、戦争中もよく不沈戦艦というのをやれと言われて、それはできませんという回答をしたことがございます。同じように、原子力船もこれは海難事故等はあり得ることかと存じます。しかし構造上、陸上の炉と異なりまして、横になって沈みましても、あるいは真っ逆さまになって海底に沈みましても、放射性物質は一切船体の外に出ないように、しかも暴走が起こらないように、炉の反応がとまりまして、船体外に放射能が漏れるようなことは一切ないような設計にすることは、これはもう原子力船設計の第一要件とわれわれ考えておりまして、私、直接「むつ」その他の設計にはタッチしておりませんので、詳細に御説明申し上げる資格はございませんけれども、設計のクライテリアとしては、浅いところへ沈んでも、全く水面に没してしまうように深いところへ沈むとむしろ安全なんでございますが、半分まだ水上に出ておるような浅いところで横倒しになるというような、最も危険なというかむずかしい状態においてもそういう放射能事故が起こらないような設計にすること、これは第一の条件としてわれわれ考えさせられておりますので、このことはまず第一に達成すべき最大の要件でございますから、御心配がないのではないか。あるいは衝突にいたしましても、あるいは座礁事故にいたしましても、これは船体に高速で他の船がぶっつかりましても、決して相手の船のへさきが炉体に達しないような設計条件がございまして、そのための防壁が十分な弾性値をもってつくられておりますし、また座礁についても、三重底にして、幾ら海底の岩が突起しておりましても、炉体は安全であるといったような構造にしておりますので、これは私、日独共同で八万馬力の船を共同設計いたしましたときにも、日本の案が一番いい、ドイツよりもよくて、ドイツもその案に従ったというほど、そういうことについては、私ども非常に御安心いただけるような設計ができるものと思っております。
  58. 日野市朗

    ○日野委員 極限に対する信仰をお持ちのようですが、そういったものは、絶対に大丈夫だということに対する信用は、私、余りできないだろうと思いますし、そういったことに対する信仰というのは、現代人はちょっと持っていないのじゃないでしょうか。低レベルの放射性廃棄物を海洋に投棄するということについても、非常にきめ細かい研究をし、海底から水の流れからずっと海洋学的ないろいろなアセスメントをやって、そして捨てるかどうかということに、なおかつ一歩一歩本当ににじり寄るような細かい調査をやって、廃棄物の投棄を決めようということでいろいろ検討しているときに、多少は——多少じゃないですな、かなり荒っぽいお考えではなかろうかなというふうに私、思うのです。その点、参考人原子力船研究開発専門部会に入って検討なされたときに、これは重々失礼かと思いますが、お許しいただいて申し上げれば、その程度のことでこの報告書が出されたのかなと思いますと、いささか心に寒々とした風が吹いてくるような感じが実はいたします。  それで、実用化見通しのことについて伺います。実用化については、大分先の方に先の方にと延びてきているということはすでに御承知かと思います。(発言する者あり)委員長、ちょっとうるさいので、静粛にするように御注意願います。大きな声で言ってもらうのだったら、こっちもぱっと胸が晴れるのですが、ごもごも言っているので……。  まず、オット・ハーン号とかレーニン号、少なくともこれは経済的に合わなかったことだけは間違いございませんね。もちろん経済性最初は抜きなんだとおっしゃれば、それっきりかもしれません。しかし、それにしても、私は、ずいぶんいろいろ聞いてみたのですが、これらの国ですらまだ第二船への展望は開けていないように思います。その中で日本海運業界、造船業界、これの要求がさほど強いというふうには私はどうしても理解できないのです。参考人は、もちろん造船業関係から出ておられる方でございますから、そういうものの安全性が確保されて、技術的にも可能で経済的にも合うものができれば、それにこしたことはないというお考えになることは当然かと思われます。海運業界もそうでございましょう。しかし現在、それほど強い意向があるのでしょうか。あるとしたら、具体的にどんな発言形態をもってそれがあらわれておりますか、お聞かせいただきたいのです。
  59. 木下昌雄

    木下参考人 先ほどの御質問の前段の部分につきましては、私は、ここでお答え申し上げる時間が非常に限られておりますので、技術的にこの程度の確信を私が持っております根拠につきまして、詳細な技術的なバックグラウンドを申し上げることをいたしませんで、結論だけを申し上げたことで、そんな大ざっぱなことでというおしかりを受けたことで、ごもっともかと思うのでございますが、実はこういうことは、私だけではなくて、多くの研究者、技術者がこれまで検討いたしまして、その結論としてこういうふうに考えていいというような合意に達したことを、私は、結論だけを申し上げましたために、非常に大ざっぱなことのようにおとりいただいたことを恐縮に存じておりますが、なお造船業界としてあるいは海運界として、いまのような原子力船に対して将来どこまで熱意を持っておるのかといったような御質問かと思いますが、昨年、海運業界でつくっております船主協会の理事会で、いまお手元に差し上げております原子力船に対する原子力産業会議の意向、考え方については、全面的にこのとおりで行こうということが、公式に決議されておりまして、私は、そのことを踏まえて申し上げておる次第でございます。  また、造船業界においても、同じように常任理事会等で、いつでも海運界からの要請に応じられるようにしておかなければいけない、造船業界は、現実の問題としては、そういう御注文がないと船はつくれないものでございますから、みずから主体的に船をつくるというわけにいかないわけでございまして、これは船主の海運業界の活動に従って造船業界が動いていくということでございますが、しかし考え方は同じでございます。
  60. 日野市朗

    ○日野委員 実は私、この報告書を前にちょうだいいたしまして、この法案の審議に当たって、熟読玩味をしているところでございます。それを読みましても、どうも参考人がおっしゃられるほどの熱意、特に民間が原子力船に積極的に取り組んでいこうという熱意のある記述というものは見られないような感じがいたします。参考人がきょう熱意を込めておっしゃられた話し方と、この報告書の中に書かれている、いま民間ではこんなことをやっているのだというようなことが書いてありますが、十三ページあたりに載っておりますけれども、この間にはかなり大きな差異が見られるような感じがしてなりません。  民間ではいまどのようなことをやっておられるのかを伺っておきたいと思いますが、特に参考人は、先ほどから官学民ということを非常に強調されておられます。しかし、うちの会社では原子力関係技術者を何人採りましたということが、そのままその熱意を表明するものではございません。いま参考人が御承知の民間の取り組み、具体的なものがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。  それから、竹村参考人にも最後に伺っておきたいのですが、竹村参考人もこの専門部会のメンバーでございますね、竹村参考人は、先ほどのお話の中で、原子力船在来船に対して優位に立てるかどうか不透明なところがあるのだ、こういうふうなおっしゃり方をしておられるわけですが、その不透明なところというのを、もう少し具体的にお示しいただきたいと思います。  これについても、やはり報告書の内容と若干そごするのじゃないかなというふうにも思いまして、これは竹村参考人承知の上だったのかなというようなことも考えたわけでございますが、お願いいたします。
  61. 木下昌雄

    木下参考人 原子力船懇談会の報告書の内容を抜粋いたしまして、ほぼその線に沿った冒頭の意見陳述を申し上げたつもりでございまして、私の原稿をお読みになると、ほとんどここからとっておるじゃないかとむしろ逆におしかりを受けるのじゃないかとすら思うのでございますが、この原稿そのものも、私は、この報告書の作成の責任者でございましたので、そうせざるを得なかったかっこうでございます。これから逸脱して意見を述べたりしたことは、石炭に関してちょっと申し上げた程度のことで、ほぼこの線に沿って申し上げたつもりでございました。あるいは私、口が下手でございまして、若干強く言い過ぎたかもしれませんが、よくお読みくだされば、このとおり申し上げたつもりでございます。
  62. 竹村数男

    竹村参考人 日野先生にお答えを申し上げます。  先ほどの不透明なところがあるからという言葉についての御質問ですが、報告書の方、先生方はどれをお持ちでございましょうか。専門部会報告書をお持ちでございますか。——これの十四ページから十五ページにかけまして「経済的側面」ということで、「原子力商船実用化見通し」というところがございますが、ここの辺を読んでいただきますと、二十一世紀になったら絶対に三万馬力の船でも在来船に勝てるのだというふうな断定はまだしておりません。そういう意味合いを含めまして私は不透明というふうに申し上げたので、そごはしておらないと自分では思っておりました。その根拠というのは、こういうふうに考えておりますが、年間に燃料油価格が五%くらいずつ他の物価よりも上昇しますと、十年間で約一・六倍になります。それから年に七%ずつ上がりますと、一・八倍になります。一〇%ずつ年に余計油の価格が上がりますと、諸物価よりも十年間で二倍以上になるわけです。二十年間にしますと、一〇%ですと四・五七倍になるわけです。この辺で確定である、こう物を言えるかというと、やはりそうでもないというふうに慎重に考えるわけでございます。私自身の基本的な考え方は、在来船原子力船経済計算をやって、たとえば在来船一に対して原子力船の方が〇・九円だ、安いのだ、この程度ではちっとも透明だとは思っておりません。少なくとも数字上で云々するには、ファクター二は必要だというのが技術者の考えであります。  以上でございます。
  63. 日野市朗

    ○日野委員 時間がありませんので終わります。
  64. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 関晴正君。
  65. 関晴正

    ○関委員 先にお帰りになられる木下参考人にだけお尋ねいたします。  木下参考人の御意見によりますと、官学民の協力一致が何よりも望まれることである、そういう御意見になったということは、これまでの仕事ぶりが官学民において欠ける幾多のものがあったのだろう、これはこういう裏返しの御意見なのじゃないか、こう思うのですが、そういう点からいきますと、官においても学においても民においても、協力上どういう点においての欠陥あるいは非協力、そういうものがあったのかということが一つ。  いま一つは、御意見の中にやはり研究というものが大変必要であるということが非常に力説されておったわけですし、二十一世紀に向かってのなお一層の研究が必要だという点を、私は強調されたのじゃないだろうか、こう思うのです。そういう御意見からいきますと、今度出されておりますところの法律案、特にわが社会党の出しておる法律案、これが最も参考人のお気に召す法律案になるのじゃないだろうか、こう思うのですけれども、その点については、またどうお考えになっておられますのか、伺っておきたいと思います。
  66. 木下昌雄

    木下参考人 第一の、官学民研究開発における本当に心からなる協力一致ということにつきましては、これは必ずしも事原子力船研究開発だけにとどまらず、日本の学術体制全体においてもそういうことは望まれておる。それの一つの例として、原子力船研究開発においても、そういうことが若干問題になっておるというふうに私は考えておるわけでございまして、たとえば例はどうかと言われますと、これは非常に差しさわりのあることもあろうかと存じますけれども……(関委員「どうか遠慮なく」と呼ぶ)それではあえて、先ほどどなたかおっしゃった、かばい合いのようなことがあってはいけないというようなお話でございますから、過去のことを若干申し上げますと、たとえば「むつ」の遮蔽の研究において、これは実験は原研に御依頼申し上げたのですが、実態としては原船団その他の協力体制でやっていただいたわけでございますが、これがやはり、それに参加しておった研究者全員の総意に本当に基づいて、しかも、その意見が全部集約されて、その結果が設計に反映したかというと、必ずしもそうなっていなかったように私自身も承っておるわけでございます。こういう点でやはり、そういう協力が本当になされておったなら、そういうことはあり得なかったのではないかと思うわけでございまして、これは先ほども御指摘のありました一例なので、余り差しさわりがないかと思いますので、一つだけ例を挙げろということでございますと、このことを申し上げさせていただきますが、そういったようなものはかなりあります。  それから、特にテーマの選び方につきまして、官学民で十分フリートーキングをやって、次は何をやるのだといったようなことを本当にディスカッションをやった上で、採択していくといったようなことが望ましい形態ではないかというふうに考えております。  従来民は遊んでおったのじゃないかというふうに、先ほど日野先生からもお話がございましたが、決して官学民の中で民が一番遊んでおったというわけではございませんで、日本造船研究協会の組織の中に加わって、各企業からそれぞれ優秀な研究者が出てチームをつくって、科学技術庁からの原子力平和利用の委託研究費をいただいて、毎年舶用炉あるいは原子力船の研究を、従来われわれ自社の費用も出して続けております。そういったところは官学民がわりあいうまく協力をしておった一つの例かと思うのでございます。  ですから、必ずしも全部が全部悪かったわけではなくて、ときどきそういう不完全な点があったというふうに申し上げておきたいと存じます。  それから二番目のこと、ちょっと……。
  67. 関晴正

    ○関委員 二番目は、私ども社会党の出している今度の法律の改正案、これは参考人の意に沿うようなものじゃないだろうか、こう思うのですが、どうですかと聞いているのです。
  68. 木下昌雄

    木下参考人 わかりました。「むつ」の炉を船体から切り離してやるというお考えでございますね。——確かにこれは研究者が多数集まって、そういう議論をいたしました中に、私どもの知っている中でも、そういう意見が出たことがございます。しかし、やはり先ほど申し上げたような出入港の経験とか、その他動揺した中で急激なロードの変動をさせた状態とか、いろいろなことから見ますと、やはりできれば現在の「むつ」を完成させて、それでやる方がいいというふうな結論に達したわけでございまして、私どもは、やはり現在の「むつ」を完成させた方がよりいいのではないかというふうに考えておりますが、もしこれが余り長くもたもたが続くようでございましたら、これはやはり時間が貴重でございますから、先ほど申し上げましたように、もういますぐにでも次の舶用炉設計を始めなくてはいけないというふうに思っているわけで、次の新しいタイプの舶用炉設計に着手しなければいかぬはずだと思っておるわけでございます。余りそちらが長引くようでございますと、おっしゃったようなことにわれわれも考えを変えなくちゃいかぬのかなという気に、本心は若干この辺でちょっと考えざるを得ないわけでございますが、しかし、幸いうまくいけばありがたいことだと思っております。
  69. 関晴正

    ○関委員 私は、官学民ということについて、民という意味を企業だというふうにとらないで、民間でも民間企業ではなくて一般国民、そういうものの協力かしらと実は初め思っておったのです。その協力がないからうまくいかないのだなと聞いておったのだが、そうじゃなくて、お話の内容は、官は金を出せ、学は研究を出せ、民には運営を任せろ、こういうのが御趣旨のようであったと思うのです。そういう点からいきますと、いまのこの国の法律というものについては、やはり抜本的に改正して、単にこれまでのものを継続するということではなくして、きちんとやった方がいいのじゃないのかというのが、いまの参考人の御趣旨に沿うことになるのじゃないだろうか、こう思っておるわけです。  そこで、参考人は、造船会社社長さんですから、船の発注があれば一番いいわけだろうけれども、これまでの原子力船にかかる経費というものが二百二十五億かかっておるわけです。しかも十八年もかかってかけられている。これからの期間またこれを超える三百億の金が使われるようだと言われているわけなんです。そういうことを見ますと、やはりこの際研究というものと開発というものを区別して、実用というものと研究というものを区別して、そうしてじっくりここに研究の母体というものを重くするのが、いま一番必要な時期にあるのじゃないだろうか。とにかく誤ったものをまた直そうということに力こぶを入れるよりは、新しい方に道を開いていった方がいいのじゃないだろうか、こういうふうに思うのですが、参考人はいかがお考えになられますか。
  70. 木下昌雄

    木下参考人 ただいまおっしゃいました、ことに最後の御議論につきましては、私も、もともとそういう感じがしておりますので、非常に共鳴を感じるところでございます。しかし、新しく炉をつくる際に、やはり「むつ」の経験を少しでもそれに取り入れたい。すでに「むつ」でここまでつくりました経験は、ずいぶん多量なものでございます。非常にたくさんの技術経験、データを取り入れてしまっておりまして、それが今後新しい炉を研究開発しようとすれば、もうすぐそのまま役に立つものがすでにたくさん得られておるわけでございます。  しかし今後、あれを完成して運航してみる、実験航海してみることによって得られるデータは、これまた本当にはかり知れない非常に大きなものが期待されるわけでございますので、これをむげにこの際あきらめてしまって新しいものだけにしようというのは、ちょっともったいないような気がいたしまして、私は、おっしゃるように経営者でございますから、お金の勘定、得るところと出費との兼ね合いをいつも考えるくせがございますが、いまのところは、今後「むつ」から得られるべきゲインの方が、今後まだ三百億出すにしても、それよりも大きいのではないかというような計算が成り立っておりますので、これは相当すれすれのところかもしれませんけれども、まだやはりあれを完成させた方が得だというように私は考えたもので、そちらの説をいまだにとっておるわけでございますが、余りこれがこじれるようでは、もうあきらめた方がましだというような感じはいまだに持っておるわけでございます。
  71. 関晴正

    ○関委員 終わります。
  72. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 貝沼次郎君。
  73. 貝沼次郎

    貝沼委員 参考人の方には、本当に御苦労さまでございます。木下参考人が早く退席されるそうでありますので、そちらの方の質問をいたしたいと思います。  その前に、一つだけ竹村参考人に伺っておきたいと思うのですけれども、本日このように各界の専門家の皆さんからのお話を聞いておりますと、どの意見もなるほどなという感じがするわけでございます。これほどいろいろな意見を持っておる方々がいらっしゃるのに、どうして国としてはこれを一つの場で議論することがないのだろうか、あるいはあってもなぜそういう結論が出るような話にならないのかということが実は率直な疑問でございます。  そこで、今回たとえばこの専門部会の報告書を作成されたメンバーを見ましても、確かに労働組合の代表とか、そういう専門家の方は入っておりませんし、そういう面ではもっと幅広くそういう議論をなさった方が、ただ安全という言葉よりも国民全体が安心できるようなものができ上がるのではないか、こういう感じがいたしますので、この報告書作成あるいはこのメンバー等について竹村参考人の御意見がありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  74. 竹村数男

    竹村参考人 貝沼先生の御質問は大変むずかしいので、なかなか答えにくいかと思うのですが、やはり広く意見を聞くにこしたことはないとは思います。いろいろな制限事項によって、やはりピラミッド式にいろんなことが上へ上へと意見が持ち上げられまして、そして、できるだけ大幅に意見を聞きながら遅滞のないようにしようというようなことで、こんなふうなメンバーが構成されたのではないかというふうに思っております。
  75. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、その問題はまた後でいたします。  木下参考人にお尋ねいたしますが、今回この法律案によって、とりあえずこの原子力船むつ」を改修するということになるわけでありますが、これが先ほどのいろいろな方の御意見では、たとえば速見参考人からはとうてい間に合わないという御意見もあったようでありますし、そういう専門家でおられる木下参考人から見て果たしてこの改修ということは間に合うか間に合わないか、この点についてはどうお考えでしょうか。
  76. 木下昌雄

    木下参考人 お答え申し上げます。  私は、今度の「むつ」の改修の当事者ではございませんで、石川島播磨重工と三菱原子力が担当しておる、造船所としては佐世保さんがやっていらっしゃることでございますので、私は、現地に行ったこともございませんので、非常に迂遠なことを申し上げるかも存じませんが、あの図面を拝見して、造船技術者として判断いたしました限りにおきましては、事前に会社側と作業者と両方で十分検討をして、安全を確保しながら最短の手段を選んで検討してやっていく上においては可能なことではないか、ぎりぎり可能ではないか。しかし、相当努力を要しますので、いわゆるIE手法あるいはVE、バリューエンジニアリングと申しますが、そういったような手法を、これはむしろ組合の協力をうんと得て、事前に全部こうやってやるのだということを示して、その協力を得た上でバリューエンジニアリングの手法を使ってやる上においては、私は、決していまのところ絶望とは考えておりませんが、相当むずかしいのではないかというようには思います。
  77. 貝沼次郎

    貝沼委員 専門家であられる木下参考人から、絶望とは言わないが、ぎりぎり可能、それもかなりの協力を得て、非常に厳しいことだという意味だと思います。これはやはり今後、委員会でも詳細に検討しなければならぬと思いますが、非常に参考になると思います。  それからもう一点は、先ほど参考人は、日本原子力船に対する技術のギャップ、これが相当おくれておる、しかしながら追いつけないものではないというお話がございまして、さらに信頼性のある舶用炉安全性のある舶用炉、これは自主技術開発によることが必須条件であるというふうにおっしゃったと思います。したがって、この点につきまして、あくまでも国産技術でやっていく方針がいいのか、それともある程度は外国の技術も入れるということが考えられるのか、また、これが必須条件であるという理由はどこにあるのか、この点を伺っておきます。
  78. 木下昌雄

    木下参考人 私、長年研究開発の業務に従事しておりまして、自主技術というものについては一つ考え方を持っておるわけでございますが、必ずしも自主技術というのは一〇〇%すみからすみまで自分で開発した技術だけで純粋に成り立つものとは言えない、それのみが自主技術とは言えないので、設計の思想が自分で考えたものであり、基本的な部分がわが国で、あるいは日本の国民が考えた技術であれば、それをより効率よくするためのいろいろ付属した部分、それらは外国のものを買ってつけようが、技術を買ってきてつけようが、これは決して自主技術の定義から外れるものではないと私は思うわけでございます。  特に原子力につきましては、これが大衆の健康あるいは生命に影響を及ぼす、あるいは遺伝的にまで影響を及ぼすものでございましょうから、これについては、どこにもブラックボックス、わからない部分を残してはいけないという鉄則、これは鉄則だと思うもので、したがって、そういうブラックボックスを残さないという意味で、肝心の部分全部が自分でやったものであるということは絶対必要な条件かと思います。これが安全確保の最大の条件かと存じます。
  79. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一点は、初めは国でもって主体となって研究を進めていかなければならない、その後民間であるというお話がございました。——これは時間がありませんのでやめますが、一つだけ、それじゃ船そのものの研究、今度は炉とは別に原子力船の船、炉の部分はいまいろいろ議論がありますけれども、船そのものについての特別な研究が必要と考えられますか。
  80. 木下昌雄

    木下参考人 舶用炉というものは大体背が高い、どうしても燃料交換するようなものが上についておりますので、かなり背が高くなります。それを覆う遮蔽がかなり大きゅうございます。したがって、これを小さい、比較的小型の船に積みますときには、トップヘビーになりまして、船の安定性に非常に影響をもたらします。大きい船でございますと問題はございません。したがって、原子炉運航される船は、船のかっこうからあるいは他の部分の重心点の位置からして、載せるべき炉の重心点及びその遮蔽の重心点とマッチした設計にしなくちゃいけない。これをどういうふうに持っていくかという問題、また炉については、やはり振動、動揺等が少なければ少ないほどいいわけでございますから、そういうような船体構造、なるべく船体振動が少ない、また同じ船の長さの中でも、振動の少ない部分を選んで炉を置くといったような研究もされなくちゃいけませんし、先ほど申し上げました万一他船から横っ腹に衝突された場合に炉を守る必要がございますので、船体部分が外の衝突船の衝撃を受けて炉体まで影響が及ばないような耐衝突構造の研究がなされなくちゃいかぬ。この点は日本世界でも一流と申しますか、一番よく進んでおると言っていいかと存ずるのでございます。それから座礁についても同じでございまして、船は大体どこが一番弱いかというと、腹が弱うございますので、そこから座礁した場合に、炉に危害が及ばないような構造にしておくということも船体の構造でございまして、そういった意味で、まだあるかも存じませんけれども、炉だけではなくて、いろいろやらなくちゃいかぬことが多うございます。
  81. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 瀬崎博義君。
  82. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間の関係で、まず木下参考人に集中してお伺いをいたします。簡潔な御答弁をお願いしたいと思います。  木下参考人は、大企業の経営者でもいらっしゃいますが、同時に、学術会議にも縁の深い造船の権威者として、かねがね科学的には良心に満ちた御発言が多いということを、木下参考人も交際を持っていらっしゃる学者の方から聞いておるわけでありますが、期待をしてお尋ねするわけであります。  先ほど、余りこじれるようならあきらめた方がましだという場合もあるかもしれぬとおっしゃいました。それはいま一歩手前ということかなと思ったりするのですが、具体的に言いますと、修理をする長崎においては地元と五者協定というふうなものがあります。そういう制約があります。一方、現在、定係港の機能は一応喪失したことになっておりますが、定係港らしきものが存在する青森には四者協定が存在します。そういうものとの関係で地元の合意を得る上でいろいろこじれが起こる、そういう場合はあきらめた方がよい、こういうお話でしょうか。
  83. 木下昌雄

    木下参考人 いろいろな仮定のお話を伺ったわけでございまして、どういう場合がどうかということで——時間的にやはり余り延びるようだったら、それにかかずらわっていては、本来の目的が達せられなくなるということで、見切り発車というような感じにならざるを得ないのではないか。惜しいけれども、それをやめて、新しい炉の開発をやってしまうということの方が早いのではないかというように私は思っております。
  84. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 昨年起こりましたスリーマイルアイランドの事故の教訓から、不十分ではありますけれども、一応陸上の方では、設計技術面、装置の改良等、手直しが行われつつありますね。また安全審査基準についてもレベルアップが図られつつある現状であります。そのときに、では「むつ」の原子炉がその例外であっていいのかどうか、とりわけ今回の改修の対象外にあります炉心部分の問題であるとか、あるいは燃料体の問題、ECCS装置等の問題こういうものを全く陸上とは別個の扱いでいいものだろうか、いかがでしょう。
  85. 木下昌雄

    木下参考人 私は、決してアメリカの一部の技術を悪く言うわけじゃございませんが、アメリカにおけるいまの品質管理技術などに非常に欠陥が生じつつあることは、いろんな例がこれを示していると思うのでございまして、幸いにしてわが国の工業技術は、いまだそういうことの弊害に陥っていないように思うのでございますが、しかし、やはり他山の石としてわれわれは常に新しい——今度の「むつ」の炉心部分その他についても見直しをして、その設計がいいかどうか、それから設計どおりできているかどうかを見直す必要は十分あると考えております。
  86. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 実は私、一昨日、長崎県に参りまして、県の責任者の方ともお会いしたのですが、長崎県では修理に当たって二つの条件の厳守を要求していらっしゃるのです。  一つは、核封印に触れる周囲は一切お断わりする、その中には、圧力容器に穴をあける、こういうことも含まれている、そういうことは一切お断わり、こうおっしゃっておった。いま一つは、三年間の修理期間を超えるような修理は一切お断わりする。残る実質修理期間は約一年半であります。速見さんのお話では実態は一年、こういうことですね。  そうなりますと、いまおっしゃいました炉心部分の設計を見直す、あるいは設計どおりであるかどうかを見直すというような、TMIから学んだ改良とか、あるいは科学は時間とともに進歩いたします、この間の原子力船原子炉に対する技術の進歩を取り入れた改良というものはできないのではないか、こういう心配を一つ持つのですが、御意見を承りたいと思う。  もう一つ、それは研究開発船であるという以上は、事故とか故障もまた貴重な研究対象だと思うのです。そうなれば時間をかけて入念にやることが大事だと私は思うのですが、そういう点でも、この長崎県から課せられている制約というものは、研究開発にとっては非常に相反する条件ではないか、こう思っているのですが、いかがでしょうか。
  87. 木下昌雄

    木下参考人 もし、もう一度「むつ」で、原因は別のことであっても、何かそういう事故に似たようなものが起こったら、これはひとり原子力船開発のみではなくて、原子力の平和利用すべてに非常に大きな、しかも、それは日本だけではなくて世界の原子力の平和利用に対して非常に大きな迷惑をかけることになると思っております。これは私ども口に出して平生言っていることでございます。したがって、もしできるならば、今後、何月何日までにきっちりやれといったようなしりを押さえて無理をする、もし無理ならば、無理をするといったようなことではなくて、やはり納得のいく慎重さを持ってやるのが本当ではないか。これは私、当事者ではございませんから、協定の内容とかいろいろなことを詳しくは存じませんけれども、技術者としては、あるいはもし、私が会社社長としてうちの船にそれをやるのだという場合には、これはもっと納期を延ばしてでもやれというふうな言い方を私はするはずだがと思っております。しかしこれは、これまでのいろいろな行きがかりがあって、どうなっているのか存じませんけれども、余り拙速に一しかもそれは、従来十分時間があったときに何もしないでおいて、最後になってからばたばたとやって時間が足りませんといったようなことは、やはりこの際もうちょっと慎重にやるべきではないかと純粋には思うわけでございます。
  88. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それと、いろいろないきさつはあったのでありますが、最終的にはどうやら、修理をやる場合の形態は、SSKは場所を貸すだけ、若干エネルギーのサプライズは行う、そして実際の修理は、一次遮蔽部分は三菱重工が、そして二次遮蔽部分と船体部分は石川島播磨がやる、こういうふうな分担になるようですね。こういうことは造船業界の修理の場合の常識なんでしょうか。
  89. 木下昌雄

    木下参考人 新造のときからあれを分割発注ということは、問題でございまして、非常にまれなことでございます。
  90. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その上に今回は、せっかく入れた先のSSKは、直接的には修理の契約当事者としてあらわれない、場所を貸すだけ、全く別途の会社が修理をやるわけですね。こういうこともまた造船界では余り例がないというふうに聞くのですけれども、いかがでしょう。
  91. 木下昌雄

    木下参考人 外国等のドックを借りまして、特殊な部分を修繕いたしますときに、日本から専門家を向こうへ派遣して場所だけ借りてやるといったようなことは全くないわけではございません。それは非常に特殊な計器の修繕とか特殊な部分の修繕でございますが、そういったことはないわけではございませんが、今度のような場合はかなりやりにくいのじゃないかなあというような、常識的に、そういうふうに非常に複雑で、やりにくいのじゃないかなあという感じはいたしております。
  92. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、当事者でないからという条件つきでのお話ではありますけれども、もし日立で引き受けた場合には、やはり期間の点でもある程度十分なものをとって慎重な修理はしやい、こういう御希望を表明されました。裏返せば、いまの長崎県から課せられている制約は、なかなか修理上重荷になりそうなお話であります。そこへいまの、場所を貸す企業と直す企業が別々だということもまれで、うまくいきにくいのではないかというお話があるのですが、こういうやり方の結果として、一応佐世保重工での修理は済んでみたものの、実際運航する、あるいはちょっと動かしてみたら、改めてまた追加の修理、改修が必要になるというふうなことは全くないと言えるでしょうか。起こり得るのではないかという心配を持つのですが、いかがでしょうか。
  93. 木下昌雄

    木下参考人 こればかりはどうも私、自分でやるわけではございませんので、ちょっとお答え申し上げかねるのでございますが……。そういうことがないようにすべく万全を尽くせということは私なら言うと思うのですけれども、しかし、立場上、申し上げかねるのでございます。
  94. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、これは率直に、国民の素朴な疑問としてお答えいただきたいのですが、大体これまで、曲がりなりにも原子力船開発に取り組んでこられた会社といえば、直接「むつ」に関係しているのは三菱、石播ですね、それから木下社長日立造船などはその代表格なんです。そこが今回の「むつ」の修理を引き受けないで、これまでの原子力船については全くかやの外におったSSKに持っていった、これは全く矛盾もはなはだしいではないか。もし造船界が「むつ」をそれほど必要としていると言うならば、なぜもっと責任を持って住民の説得にもこれ努めて、そういう原子力船開発をやってきた造船会社が引き受けなかったのか、こういう点があるのです。そういう点の責任はお感じになりませんか。
  95. 木下昌雄

    木下参考人 今度の事故を含めまして、新造の当初からああいう分割発注せざるを得なくなったいきさつも全部含めまして、これは日本造船業界が新しい原子力船開発の際に多少しり込みをしておったと申しますか、それ以後のあり方についても反省をすべき点がなくはないと私は思っております。
  96. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほどの木下さんのお話の中には、いまの研究体制のあり方として、金は民間が持て、運営は役人がやるのだ、こういうことはどうも好ましくない、うまくいってないのじゃないかというお話がありまして、その逆の金は官の方で持て、運営は民間で、これが能率のよい研究体制のような御意見と伺ったのです。そうでなかったら私の聞き違いですが、そこで、事実上国が金をかけましたこの「むつ」を、たとえば日立造船に無償で貸与するからどうか研究開発に使ってくれ、こういうふうに言われたとき、社長はお引き受けになりますか。
  97. 木下昌雄

    木下参考人 船の維持というのは非常にお金のかかることでございまして、しかも原子力船開発というものは国家事業だと考えますので、一企業だけがこれに責任を持ってみたり、手を出したりすべき性格では現在のところないと判断いたしまして、これは造船業界なり政府の援助のもとに業界で取り組むべき仕事だと思いますので、一企業がこれにちょっかいを出すということは、厳に慎むべきではないかと私は思っております。
  98. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間がないので詳しくお聞きできないのは残念ですが、「むつ」は総トン数八千トン、こういう船を通常日立なら日立で岸壁に係船してお預かりになる場合の係船料は、月額でどのくらいのものだろうかということが一つ、それとこの間一年半「むつ」はSSKの岸壁につながれたまま無為に日を送ったわけでありますが、その一年半ちゃんと月額四千万円の係船料は、SSKというよりは坪内社長に取られたわけですね。その理由の一つとして、国会でも政府の答弁が出ているのですが、SSKには労働争議等もあってやれなかったのだ、こういうお話だが、これは私、会社の責に帰するべき問題だと思う。その場合でもなお船主にその間の係船料を請求するようなならわしが造船界にあるのだろうか、この二点を伺ってみたいと思うのです。
  99. 木下昌雄

    木下参考人 非常にむずかしい、お答えしにくい問題でございますが、普通、契約の場合に不可抗力という条項、何をもって不可抗力とするかということがございまして、それを厳重に決めるわけでございます。「むつ」の場合に、あの事態を不可抗力の事項の中に入れてあったか入れてなかったか、私、その契約を存じませんのでわかりませんが、いまのような状態は、必ず決まっていてこっちだというのじゃなくて、その契約次第で、あるいは外国との契約の場合、国内での契約の場合、官と民との契約の場合、いろいろな場合で若干ニュアンスが違う場合がございますから、その辺、しかとあの場合にはどうだということは、ちょっと私から申し上げかねるものでございます。残念でございます。
  100. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間ですので終わります。ありがとうございました。
  101. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 吉田之久君。
  102. 吉田之久

    吉田委員 木下参考人に、大変お急ぎのようですから、ちょっとだけ御質問したいと思うのです。  原子力船開発というのは、まさに国家の命題だと私たちは思います。皆さん方も、きょうの御意見を聞きますと、もう一遍一から出直せという御意見もありますけれども、基本的に絶対やめろという御意見はないように私、思うのです。一方でそうおっしゃりながら、いま社長は、もしも佐世保で修理で再びトラブルが起こるようであるならば、これはもう思いとどまるべきであろうかというような悩みをおっしゃいましたけれども、私は、そんな重要な国家の命題ですから、人間のなすことですから、すべて完全に完璧とは言い切れないと思うので、とんでもない事故が起これば別でありますけれども、もっと自信を持って時間をかけ、金をかけてやるべきだと思うのです。今度佐世保でやること、これはそれで結構でありますけれども、やはり将来はもっと伸び伸びと自由にできる新しい場所を国が用意しなければならないのじゃないかと私は思うのですけれども、その点、いかがお考えでしょう。
  103. 木下昌雄

    木下参考人 ただいまのお話のとおりに私も考えます。現在は非常に不自由な状態でやむを得ずやらされている状態で、おっしゃったとおりが将来は望ましいことだと存じております。
  104. 吉田之久

    吉田委員 諸外国の場合は、大体この種の原子力の開発というのは産軍一体でやっておりますね。ところが、わが国の場合はそれぞれの事情がありまして、軍がこのことに手をつけるわけにはまいらない。それだけにこのハンディを圧縮するためには、やはり政府自身がよほど思い切った大胆な援助をしなければならないと思うのです。民間にとりましては大変リスクを伴う問題でございますから、これはお説のとおり、民間だけでどんなにがんばってみても限度があると思います。その辺で特に御要望があれば承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  105. 木下昌雄

    木下参考人 こういう長期間にわたって、しかも投資額の非常に大きい研究開発の場合、しかも市場のマーケットの状況も非常に高低があって、できたからといってすぐ売れるとは限らない、非常にディプレッションになっているかもしれない、そういったようなものの開発は、非常にリスクの大きいものでございますから、おっしゃるように、それが商業用の実用性が確認されるまでは国が主導性を持ってやっていただく。これは具体的に申しますと、研究開発費は、国費をもって支弁していただければ一番いいと思うわけでございます。そして民間は、もっぱら技術力及び人材をこれに提供しまして、でき上がった人間をそこへ出向させるなり転職させるなりして協力していくということが本筋でございます。しかし、長期間でございますから、将来はこれから利益を得るわけでございますから、利益者負担という意味研究開発費は、当初からやはり民間も何がしか応分の負担をするのが当然ではないかと考えるわけでございますが、そういう意味で、やはり国立の研究機関あるいは国が大部分を支弁する特殊法人形式の研究開発機関がこれをやっていただくということが最も望ましいように存ずるのでございます。
  106. 吉田之久

    吉田委員 時間がないようでございますが、言う一つだけ。  先ほど「むつ」が余り時間がかかるようであるならば、別な新しいのでと、こういうお話がありましたけれども、私どもとしては、許すことならば、それもやりながら、なおかつ新しいのも並行してやる。もちろんいろいろ予算もかかることでありますけれども、それはできるのでしょう。こちらができなければ、これができないというものじゃないですね。
  107. 木下昌雄

    木下参考人 決してそうじゃございませんで、両方並行してやっていくべきもので、また「むつ」が終わらぬと新しい炉の設計が始まらぬということではございません。もうすでにたくさん実績、データは得られておりますから、それをもって大部分の新しい近代的な実用炉の設計は始めることができるわけでございます。そのうちに「むつ」のデータが出てくれば、それによって修正を加えていくというのが私どもの理想案でございまして、並行してやっていただくのが一番最良の道だと存じております。
  108. 吉田之久

    吉田委員 ぎりぎりの時間までありがとうございました。
  109. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 この際、木下参考人に申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。  上坂昇君。
  110. 上坂昇

    ○上坂委員 参考人の皆様御苦労さまでございます。若干質問をさせていただきます。  最初に、竹村先生にお伺いいたしますが、今度の法案の中身ですね、これに「研究」という文字をタイトルに入れました。それから第二十三条で、いままであった研究の項、第三号を一番前に出しただけのものなんです、法律としては。あと「廃止するものとする。」というのを、いろいろ問題があるものだから、統合ということを考えて、いつか五年後か六年後にはどこかと統合する、こういう法案でありますが、長くいろいろ「むつ」の事業団に携わっておられた先生の考え方として、この今度の法案で研究体制から何からすっかり中身が変わるとお考えになっておられるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  111. 竹村数男

    竹村参考人 研究の中身は「むつ」に関しましては変わらないことが前提であろうと思います。当然、建設し運航する、そして所期の目的を達するということが一番の主眼でありますから、主体的に「むつ」に関しては何も変わっていかない、むしろ付加されるものが多々あるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  112. 上坂昇

    ○上坂委員 そうすると、事業団は、いままでどおりのことをやるということになると思いますが、事業団という体制の中で、先ほど井坂参考人からも御指摘がありましたが、果たして本当の研究体制というのが一体できるのかどうか、こういう疑問を私も持っております。というのは、先ほども指摘がありましたように、プロパーの人たちでやるのではなくて、全く外部からいろいろ助力をしていただいて研究開発をする、こういう中で本当の研究体制ができるものかどうか疑問に思います。その点はいかがでしょう。
  113. 竹村数男

    竹村参考人 事業団内部での実際の作業その他に私は深いかかわりがあるわけではございませんので、一般論として申し上げさせていっていただきたいと思うのでございますが、やはりいつでも指摘されておりますように、時限でおまえはいつどうなるかわからないというようなたぐいのものでは、当然、熱が入らないと言ってはなんですけれども、引き継ぎなんかが非常におかしくなるのではないかというふうに思いますので、でき得べくんばもう少し永久的なものでというふうには思っております。
  114. 上坂昇

    ○上坂委員 もう一点お伺いします。  先生は、原子力船の船体工学の専門でいらっしゃると聞いておりますが、今度の遮蔽装置や周辺部の補強あるいは部分的な取りかえ、そういうものをやる場合に、非常に多くの資材が使われている、私たちの聞いている範囲では、数百トンの重量が新たにかかってくる、こう聞いておるわけでありますが、私は、船体に合わせて炉がやはりつくられているのじゃないかというふうに思いますが、今度の「むつ」に使用されている炉に、新しくそれに数百トンもよけいに重量を加えるというふうなことで、果たして船全体に対して影響がないのかどうか、また運航するような場合に一体どうなるのか、そういう点が非常に危惧されるわけでありますが、この点はどんなふうにお考えになるのでしょうか、お伺いをいたしたいと思います。
  115. 竹村数男

    竹村参考人 数百トンふえるかということは、詳しい数字までは私、いま存じ上げませんけれども、相当ふえるということを聞いておりますが、本船は、特殊貨物船ということで貨物を積めるスペースといいますか喫水はまだあるわけでございますので、満載喫水線まで沈むのにはまだ数百トン以上あるのだろうと思います。したがいまして、多分今度の遮蔽その他の重量がふえても、まだまだその満載喫水線までは十分余裕があるように聞いております。したがいまして、運航上は若干喫水が沈むかと思いますけれども、それほどの支障はないと思います。  それから、問題になるのは、集中的な重さがかかることでございましょうと思いますのですが、それは船体が、普通はりとして計算いたしまして、一番端と端に波の山が来て、そしてたわんで、あるいは波が真ん中へ来てこうなってというふうな力の計算で少なくとも数倍の安全率をとっておりますので、集中荷重に対しても多分全く問題ないというふうに私は思っておるわけでございますけれども……。
  116. 上坂昇

    ○上坂委員 井坂参考人にお伺いいたしますが、研究資料がなかなか公開をされないのですが、専門家立場では、あらゆるところで行われた研究材料といいますか、そういうものは、特に原子力の一番もとの研究をされている原研の皆さんに提供される、これはあたりまえの話であります。それが非公開になっているということは、一体どういうことなのか、非常に疑問でありますが、これはあなたのいわゆる労働組合の組織だから、資料提供をしないという形になって解釈されているのか、それとともやはり研究者であることは事実で、その研究者としても提供されないのだ、こういうことなのかどうか、その点一点お伺いいたしたいと思います。
  117. 井坂正規

    井坂参考人 研究者自身に提供されてないということであります。私も、なぜ提供されないかということを、非常に疑問に思っているわけなんですけれども、発電炉でのいろいろな事故、故障などがたくさん起こっていて、それによる貴重なデータというのがかなりあると思うのですけれども、そういうのが集積されて、原研の研究者に提示されれば、貴重な研究材料になるのではないかというふうに思うわけです。「むつ」においても放射線漏れが起きた時点でいろいろなデータをとっているわけですから、そういうデータをきちんと公開していただいて、研究者に示していただいて、研究材料にするというのが必要なのではないかと思うのですけれども、そういうことがなされてないというのが、非常に問題点だと私も思っております。
  118. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの研究資料とかそういうものについては、これは要求しなくても、本当に専門的な立場で研究をされている原研には、国家機関なんですから一番最初にどんなささいなことでも出して、そして検討をしてもらうということが一番必要じゃないか、こう思っているわけですが、それがなされないということになりますと、いまの原子力行政というのは一体どういうことなのか、非核三原則なんと言っても、これは絵にかいたもちにすぎない、こういう感じがいたします。  そこで、お伺いをするのですが、今度の改修は遮蔽だけになるわけでありますが、私たちは、圧力容器内部にも恐らく欠陥があるのではないか、こういうふうに考えておるわけです。前の意見開陳のときに、非常に古い型である、確かに古い型で、たとえば燃料棒の被覆管にしましても、ステンレスの被覆管でありまして、最近はほとんどなくなってしまいまして、みんなジルカロイになっているわけでありますが、こういうことを見ても、恐らく内部にも欠陥があるだろう、こういうふうに私たち思っておるわけであります。その点についてはいかがでございましょうか。
  119. 井坂正規

    井坂参考人 当然、炉にも問題があるのではないか、それはそう思います。先ほど研究材料として余り役立たないのではないかといった意見が出てくる背景としては、第二船以降の原子力船、これは当然「むつ」と同型ではないということは確実だと思うのです。それから陸上炉の実績があるという話がありますけれども、陸上炉と舶用炉では制御方式が違うといった点もありますし、そういった点も考慮しながらいろいろ研究をしていかないと、実際の研究というのは進まないわけで、そういった姿勢に立って政府が進めるかどうかというところにあるのじゃないかというふうに思います。
  120. 上坂昇

    ○上坂委員 速見参考人にお伺いいたしますが、先ほど御説明がありました中の工事日程の部分について、もう少し詳しく御説明をいただけませんでしょうか。
  121. 速見魁

    速見参考人 お答えいたします。  これは先ほど私、図表でお示しいたしましたように、当初の核封印方式以前のときの改修スケジュール表がこれであります。これは全部三十六カ月で、実はこのようになっております。これはまだ私も佐世保の市の政策調整室、とりわけ四月十六日の佐世保臨時市議会のときに佐世保市長が、一体改修はどうなっているのだという質問に対して、改修工事の主要工事についての日程があります、こういうことでちらほらしましたので、後で具体的に資料の提出を要求して、実はこちらに持ってまいったわけであります。  この中で、先ほどは二重底、要するに格納容器内の底の部分について申し上げましたが、これが大体当初の予定では十四カ月、そして今回の場合には大体四カ月ないし五カ月ということに相なっております。それから一番重要な部分でありますストリーミングを起こして、これを重要に考えております圧力容器のふた部の遮蔽体、これが当初の計画では十三カ月であります。今回の場合の計画は大体四カ月であります。しかも当初の十三カ月の計画のときは、圧力容器の上ぶたを取り外して、船外で広い場所をとってやる、こういうことに実はなっておりましたが、今回は圧力容器の中でやらなくちゃならぬ、そういう困難な作業があるものだから、要するに原子力船開発事業団も非常に効率が悪い、このように言っておるわけでありまして、効率が悪いにもかかわらず、今回はこのように約三分の一、半分以下に全部短縮をしておるということが具体的な数字の上から出てまいっております。  それからもう一つは、格納容器の上ぶたの修理、それから二重底底部の修理が同時並行的に実は計画されております。この線表でありますけれども、前のときには大体差をつけておりました。上と下とはやはり同時にしない、非常に危険だからということでしておりましたけれども、今度の計画表の中には大体三、四カ月、全部集中をしておる、こういう線表に実はなっておるわけであります。  そこで、これは現在の核封印方式による修理の場合は、特に安全性に問題があるのではないか。この遮蔽改修の主要工事というのは、佐世保市長に先般事業団の方から出しておるわけでありますから、間違いないと思っておりますけれども、私が直接これを要求しても、現在事業団提出もしてくれませんし、また佐世保に来て具体的な説明をやってくれということは再三要求しておりますけれども、その説明すら実は断わっておる。非常に不思議な「むつ」改修だ、このように思っております。
  122. 上坂昇

    ○上坂委員 研究資料は出さないし、工事日程すら知らせないということになると、これは大変な事業団だと私も思わざるを得ません。  そこで、これは速見参考人に実は私も参考として申し上げるのですが、要するに長崎の五者協定、この五者協定というのは、一項目から九項目まで全部「するものとする。」となっておりまして、国の論法で言いますと守らなくてもいい、こういうものになっているわけですね。いまの法律と同じであります。ここのところは、私は非常に大切な問題だと思うのです。むつ協定の場合には「するものとする」という言葉は一切使われていないのです。ところが、長崎の場合には使われているというのは、今度の法律と非常に関連があると私は解釈せざるを得ないのです。そういうところに非常なごまかしがあると思いますので、現地でいろいろな問題にするときには、注意をしていただくようにお願いをいたしたいと思います。  ところで、先ほど五者協定を完全に守るということが一番大切だとおっしゃいましたが、これは守れないおそれがありますから、一体どこで守らせたらいいのか、やはり一札入れなければ信用できないかどうか、この辺のところをちょっとお伺いしたい。  それからもう一点、佐世保の地元の市民の感情というものは、この入港とそれから係留、そして今度の改修についてどんなふうにお考えになっているか、その点……。
  123. 速見魁

    速見参考人 第一の点でありますけれども、努力をするだとか三年間で修理を終わりますだとか約束を守ります、こういうことだけでは信頼はできません。したがいまして、正式に文書で出すことができないとするならば、やはり正規の国会の機関で来年の十月十六日には出港させます、この明言があれば、これは最高の国政機関の中での発言でありますから、それなれば信頼してもいい、このように考えます。  第二点の問題の市民の世論でありますけれども、はっきり申し上げまして、当初は賛成、反対の渦が巻いてあのような入港時の状況が出ました。賛成派の人たちは、政府なりあるいは県知事、市長の経済浮揚論、とにかく「むつ」を入れれば佐世保の経済は浮揚するのだ、こういうようなことでありましたし、SSKも安定するのだというようなことでありましたけれども、「むつ」が入った途端に、SSKは非常にピンチになりまして、労使紛争が起こるという逆な現象が起こってまいりました。むしろそういう意味では、現在の佐世保市民の感情としては、商工会議所の人たちまで含めて、「むつ」は入ってきたけれども、何もなかった、あったのは騒動だけだ、こういう市民感情がいま根強く残っておるということであります。
  124. 上坂昇

    ○上坂委員 菊池参考人にお伺いいたします。  定係港撤去の問題でありますが、私が質問しましたら、一部は撤去をしてということで、しかし、定係港でなくなったという言葉は一切使わないのです。幾ら質問しても使わないのです。そのかわり新定係港を見つける、こういうことになっていくわけなんですね。ですから私は、むつを定係港としてやはり考えている、こういうふうに解釈せざるを得ないのです。そうなりますと、新定係港が見つからなければ、当然むつに帰っていく、そういう意図が全くありありとあらわれている、こう思うのです。  そこで、そのおそれが非常にあると思いますが、いろいろ苦労をされておる前市長さんのこういう点についての御意見はいかがでしょうか。
  125. 菊池渙治

    菊池参考人 どうもそういうふうに国が考えているとすれば、ゆゆしい問題であろうというふうに思います。先ほども申しましたように、撤去をすると向こうが明言をしているわけでございまして、それがだんだんおかしくなるということは、何度も申し上げますように、方針の定まらないその場限りの行き当たりばったりな行政をいまなお続けている証拠以外の何物でもなく、そういう事態に再びなったときのこれに対する反発というものは、努力を重ねてそういう事態になったときと比較して格段の違いが出てくるだろうというふうに存じます。
  126. 上坂昇

    ○上坂委員 どうもありがとうございました。  お伺いしたいことはたくさんあるわけでありますが、時間が参りましたから終わります。いろいろ御教示をいただいてありがとうございました。
  127. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 関晴正君。
  128. 関晴正

    ○関委員 竹村参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  わずか一・四%の出力試験で放射線の漏れが生じたわけであります。そういうものを、単に遮蔽措置さえ講ずればよろしいのだというふうに言われておるのですけれども、参考人もまたそのように考えておられるものであるのかということが一つ。  一〇〇%出力試験が行われた場合にはどんな結果になったと想像されるのか、この点ございましたら、お話をいただきたいと思います。  三番目には、今度の私ども社会党の出しておる、まず研究に徹すべしというところから来ておるわが党の法案については、どのようにお考えになっておられるか。  その次は、菊池参考人にお尋ねをしたいと思います。  先ほどのお話の中に、「むつ」の炉については、いろいろと好ましくない風評あるいは情報があるというお話があったのですが、もしその内容等について御発表できるのであれば、これをひとつお聞かせをいただきたいということと、いまこの時点にあってわが国のとるべき原子力船むつ」の問題についてのあり方、単に法律を改正すればそれで済むというようないまの政府の考え方について、もっと端的にこれはこうすべきものなりという御見解がありましたならば、ひとつ御発表いただきたい、こう思います。  長崎県の速見さんにお尋ねしたいことが一つございます。  それは佐世保に入港させる際に、あるいは修理だと言って持っていく際に、いろいろのメリットあるいはおみやげ、そういうえさをつけてお話が出されたようでありますけれども、そういうようなメリットはそれぞれあったものなのかどうか、この点についての御報告等ができましたらお聞かせいただきたい。  以上です。
  129. 竹村数男

    竹村参考人 関先生の第一の質問は、遮蔽改修について、一・四%のところで漏れて遮蔽改修をやって大丈夫か、こういう御質問だったと思うのですが、もちろんそれから以後、原子力船開発事業団では、実物大のモックアップもつくりまして、新たに原研の炉を使って実験もやり、計算コードと合うかどうかというところもチェックなすったと聞いております。したがいまして、そういう新しい知識、技術を用いまして遮蔽改修をされるのでありましょうから、多分、以後の目標である線量率は十分達せられるのであろうと思います。  それから、二番目の御質問でございますが、一〇〇%まで上げたら漏れでどうなったかというふうな御質問でございましょうか。——私も、全く間接的でございますけれども、一・四%で漏れた線量率の値、数字については伺っております。船の最上甲板といいますか、そこで多分一〇〇%になったら数けたぐらい違ったのじゃないかというふうな数字が出ていたかと思います。これで、そこに人がおれば当然、かなりの被曝になったかと思いますし、また船内居住区の方でも直接の放射線量率はかなり上がったと思います。それでどうなったかということは、多分あっちこっちのモニターのメーターがばんばん鳴ってということで応急対策がとられたのだろうと思います。そういうふうなお答えでよろしいのでしょうか。あるいは答えがちょっと。ヒント外れしておるのかもしれませんですが……。  それから、三番目の御質問であります社会党から提案なすっておられる、研究専門に「むつ」を使ったらどうか、それに対しての意見はどうかということですが、先ほど来私が申し上げておりますように、船というのは動揺、衝撃、しかも急速な負荷変動があるというのが陸上と決定的に違うところであります。これはどうしたって船以外にはあり得ないというふうに思います。どこかで私も、仮にポンツーンみたいなものに載っけて揺すぶったらどうか、こういうことを聞いたことがございますけれども、揺すぶる方が揺さぶられてしまうのではないかというくらいなものだと私は理解しております。したがいまして、そう簡単に負荷変動と揺さぶられる方と振動と全部、なかなか船のようにはまいらないというふうに思います。
  130. 菊池渙治

    菊池参考人 御答弁申し上げます。  「むつ」の炉の欠陥に対する情報が何かあったらということでございますが、詳しいことではなくて、大山委員会にかかわった方々からのまた聞きとして二、三伺っているだけで、詳しい内容については、その方もお話しにならなかったようでございます。しかし、一人ならずそういうお話が、これは出どころは別々のようでございますので、あるとするならば、私は、こういう点をもう少し詰めて考えるべきだと思います。そして詰めて考える場合、どういう方法かということについては、私は、四十九年の九月十日の委員会におきましても、各界の推薦する学者による検討委員会を持って検討すべきではないかという御意見を申しましたが、それについては、それは市長の意見であって国は知らぬという御答弁をその際なされておりますが、私は、今日でもそういう検討、たとえば今回のTMIにおけるケメニー委員会のようなものをつくってやるべきだと思います。そうでないならば、いま竹村先生お話のように、原子力船技術の評価という研究グループの主査をされた竹村先生がいまのような御答弁では、まことに心細いお話ではなかろうかと私は思うわけです。ですから、そういう形だけのものではなくて、本気になった検討委員会をつくって、そこで「むつ」の評価と原子力船開発を今後どうすべきかということをもう一度洗い直すべきだというふうに存じます。  先ほどお帰りになりました木下さんのお話にも、遠慮しがちではございましたけれども、まことに自賛の多い、私たちにとっては重大な御発言がたくさんあったように私は受け取ってございますが、やはりもう少し、身内をかばうことではなく、真理の追求のために、そして、それがよりよい国家の前進のために、しかも今世紀末に原子力船のある程度時代が本当にくるとするならば、いまのようなのんきな研究体制なり「むつ」の扱いをしておくということ自体が私は罪悪だと存じます。
  131. 速見魁

    速見参考人 まず第一点のメリットの問題でありますが、はっきり申し上げまして、佐世保に修理入港要請があったときには、SSKが契約をしてSSKが仕事をするのだ、こういうことでございました。そういうために、SSKは、わざわざ原子力船開発技術部まで設けて、あるいは事業団あるいはその他の船会社まで出向させて研究をやった経過が実はございます。しかしその後、SSKの事情も実はありますけれども、これは私、内部の事情だと思います、要するに入港するときに契約していなかったという歴然たる事実が、やはりその後のこのような複雑な事情をつくり出してきた。SSKの労使紛争でこういうように作業がおくれているとは私は絶対思いません。これは明らかに政府、事業団の責任であろうかと思うわけであります。  そういうことで、そのことを実は佐世保の市民は期待をしておったというのが事実でございます。当時は造船界も不況でもございました。そういうことで、SSKを救わなければ、佐世保の場合にはSSKは基幹産業でありますから、SSKを救済しなければということで、漁民も泣く泣くあの条件で納得したというのが実情でありますが、このように事情が変わった以上、私は、いつも知事には言っておったわけでありますけれども、要するにSSKで修理する必然性、理論がなくなったのではないか、だから、そういうことで断るべきだということを申し上げてきましたが、そういうような事情であります。したがって、メリットというものは全然ないと言った方がいいと思います。  ただ、この入港して修理をすることによって、メリットじゃなくして、要するに修理港を引き受けさせるための漁民対策として佐世保に漁民センターが建設されました、あるいは魚価が暴落した場合の安定基金という形で二十億の安定基金が出、五億の振興資金が出ております、この二十億の安定基金は運用益で漁連が利用をする、こういうことでありますから、これはただ単に入港したためにメリットがあったのじゃなくして、無理やりに入港させるための要するに裏金であるというぐあいに私たちは見ておるわけであります。  それから、先ほど菊池参考人の方にお尋ねのありましたいろいろな問題と定係港の問題でありますが、これは私、今後、先生方にひとつお願いをしたいのでありますが、私たちも、正式に公式な場では知事でも市長でも申し上げません、しかし非公式の場では、とにかく定係港は一体どうなるのだ、定係港をつくるとなれば、それぞれの施設が必要になってくる、施設をつくるためには三年、五年かかるよ、一体どうなるのですかと話を聞くと、いや、それはもうむつに戻っていくよ、個人的な話はそういうぐあいにいたします。このことは、やはり上京したたびに、長官なりあるいは知事なり、長官なり市長なり、二人で会って、何かそこら辺の、とにかく私たちの知らない、本当に不明瞭なそういう話があっているのではないか。  とにかく、むつ市も佐世保も被害者でありますから、絶対、定係港は共同してでもこれは断っていく、闘っていく、そういうつもりであります。
  132. 関晴正

    ○関委員 終わります。
  133. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 各参考人に申し上げます。部屋が暑くなってまいりましたので、暑ければ遠慮なく上着をとられて結構でございます。  貝沼次郎君。
  134. 貝沼次郎

    貝沼委員 初めに、竹村参考人にお尋ねをいたします。  原子力船の研究に対する態度でありますけれども、諸外国では、これは軍事との結びつきというものが非常に強いと言われております。したがって、わが国の場合は、これはあくまでも平和利用ということでありますので、当然、その担保というものが技術的にも政策的にも必要でありますし、また、納得の得られるものでなければならないと考えるわけでございますが、この点については参考人はどのようにお考えでしょうか。
  135. 竹村数男

    竹村参考人 もちろん、非軍事といいますか民主、自主、公開で、非核三原則のああいうもので進められるべきだと思っております。
  136. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、もう一度委員会でこの点は確認をしておかなくちゃならないと思いましたので、直接こういう専門の方々意見として実は聞いておきたかったので一言聞いたわけでございます。  もう一つは、先ほどから何回か話に出ております、かなり古いとかあるいはただ古いだけであるとか、いろいろ言葉が出ておりますが、諸外国の大半は一体型であるわけでありますが、その研究開発状況というものは、どういうふうに認識なさっておられるか。  それから日本の場合、「むつ」は分離型でありますが、このような状況を考えますと、今後、実験船として利用価値は果たしてあるのかないのかという議論もあったようでありますし、どの程度この実験船としての利用価値というものを認めたらいいのか、この点に対する考え方を教えていただきたいと思います。
  137. 竹村数男

    竹村参考人 貝沼先生の最初の御質問は、諸外国で「むつ」と違う炉型の一体型が進んでおるけれども、それに対して、その一体型をどう見るかという御質問かと思います。  一体型と申しますと、「むつ」で申しますと、蒸気発生器が原子炉の圧力容器の中に入っているものと、それから一次系の循環ポンプが原子炉圧力容器のところにくっついているもの、こういったふうな御理解かと思うのでございますけれども、いま申し上げましたように、横にパイプでつながっているような機器、蒸気発生器とかポンプが原子炉圧力容器の中に、あるいはそのところにくっついてまいりますので、当然、スペース的には、一体型でない「むつ」タイプのものに比べますとスペースは少なくなる、こういうふうに思います。そういう点からしますと、一体型は小型で軽量という船向きの原子炉であることは、その点からは事実言えるかと思います。  ただ、まだ日本として実際に詳細に検討を加えられるだけの資料がないわけでございますので、たとえばTMIのようなああいうような事故、事象が起きた場合には一体どうなるのだろうというようなことは、検討しようにもまだ資料がないということで、今後、先ほど申し上げましたように、「むつ」の使っておる分離型も含めて、やはり日本で一体型その他比較検討を徹底的にすべきだ、こういうふうに思っております。これが第一の質問に対するお答えでございます。  それから、二番目の御質問は、分離型に対して「むつ」の利用価値がどうかというふうなことかと思いますが、確かに一体型に即利用できるというようなことは少なかろうとは思うのでございますけれども、かなりの部分はやはり船という特殊環境の中で使われるということ、これはもうすでに十分利用価値があるわけでございます。また、先ほども触れましたのですが、分離型でいろいろとシミュレートして計算したそのコードと実際のデータとが合うか合わないかというような、そういう考え方の利点というのは、やはり分離型であろうと一体型であろうと十分利用できるものではないか、こういうふうに思います。
  138. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、先ほどのお話の中で、個々の機器装置わが国には未経験な部分もあるということで、そういうものは必ずしもなじまないから、どうしても原型炉のステップを踏む必要があるというようなお話があったと思いますけれども、そういう場合、確かにコンピューターであるとかその他の機器システムというものが、つくった時点から考えますとかなりたっておりますので、そういう部分においても、日本はあるいは原子力船むつ」はかなりおくれておる面があるのではないかと心配するわけでありますが、この点についてはいかがなものでしょうか。
  139. 竹村数男

    竹村参考人 ちょっと聞き漏らして申しわけございませんが、「むつ」の機器装置が古い、こういうふうに質問を了解してよろしゅうございますでしょうか。(貝沼委員「はい」と呼ぶ)御指摘のように、「むつ」にはコンピューターでもって運転するようなものは積んでございませんし、機器等も、昭和四十二年当時の設計、現在見直しておられるようでございますけれども、そういうものでございますので、やはり古いということは免れません。現在、事業団の方で、これらの機器等については、詳細に安全総点検をおやりになるということでございますので、間違いなくその性能は把握されて、どの程度まで運転可能かというところの確認はなされるかと思いますが、それは当然されるべきだと思います。
  140. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう古い機器を使って、これから実験船としていろいろデータをとるということなんですけれども、そういう場合に、こういうおくれた機器でそのままやっていってりっぱなデータになるのか、それとも、こういうおくれたものを少しかえて、より新しくしてデータをとろうという方がいいのか、その辺のお考えはいかがなものでしょうか。
  141. 竹村数男

    竹村参考人 データについては、機器が古からうが新しかろうが、それ相応にデータは出てくるものと期待しております。たとえば一時間百トンというようなポンプであれば、当然、それは百トン出るのであって、そのポンプによる流量の測定というようなことがデータとしてとられる、動揺によってそれがどう変わるかというようなことがとられる、そういうようなものは古かろうが新しかろうが、ほとんど関係はないというふうに思います。  ただ、先生の御懸念は、それが今度の新しい日本原子力船開発にどう本当に使われ得るのかというふうな御懸念での御質問ではないかというふうにも推察申し上げるのですが、先ほど申し上げましたように、ずばりの利用価値というのは、そういう点からは幾らか推測されるかと思います。
  142. 貝沼次郎

    貝沼委員 その辺は、やはり考える必要があるのじゃないかと私は思ったものですから、それでちょっと伺ったわけです。  それから、先ほど井坂参考人から、もう白紙状態に戻して、技術者、研究者にゆだねたらどうかというような結論めいたお話があったと思いますが、この意見に対しては竹村参考人はどういうお考えをお持ちでしょうか。
  143. 竹村数男

    竹村参考人 申しわけありません。いま水を飲んでおりまして、ちょっと質問を失念いたしました。
  144. 貝沼次郎

    貝沼委員 先ほど井坂参考人がるる述べられましたが、いわばその結論ともいうべきこととして、はっきり言って、もう原子力船の研究は白紙状態に戻して、そして技術者とか研究者にゆだねたらどうかというような趣旨のお話があったと私、思っております。とにかく第一歩からやり直す決意が必要である、そうしなければだめだというような御意見ではなかったかと思いますが、これについて竹村参考人はどういうふうにお考えでしょうか。
  145. 竹村数男

    竹村参考人 先ほどもたしか、これに関連した御質問が先生方からあったのではないかと思うのでございますけれども、研究の進め方として、私の観点は、やはり何としても船ということから離れるのは、開発上非常に効率が悪い、やはり動かせるというものであれば動かして、そしてデータを大いに利用すべきであるという立場に立っておりますので、研究者、技術者に任せということは、いま多分、事業団も一生懸命になって、そのつもりでやっておられるのだろうと思いますので、動かす方向で今後とも進めていただきたいというのが私の念願でございます。
  146. 貝沼次郎

    貝沼委員 次に、菊池参考人にお尋ねしたいと存じます。  まず、先ほど協定の話がいろいろ出ておりましたが、端的に現在、この問題について地元の動きといいますか、考え方、一番気にしておることはどういうことなのか。  先般の当委員会で、この協定の今後の取り扱いについて政府の答弁としては、「地元三者の御意見も十分尊重しまして、よく御相談をしてまいる、」、こう言っておるわけでありますが、この言葉がどれほど信頼性があるのかないのか、地元としてはどう受けとめるのか、また今後、具体的な解決しなければならない問題として提起するのはどういうことなのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  147. 菊池渙治

    菊池参考人 お答えを申し上げます。  協定をどう考えているかということであろうと思いますが、協定は守られないままに現在なお生きているというふうに受けとめていると思います。そして、あくまでもこの協定は守られるべきである、この協定が守られるならば、新定係港がどこかにできているわけですから、次の問題は向こうとしてはなくなるわけになります。しかし現況として、現在、新定係港の選定が終わったか終わらないかはとにかくとして、発表になっておりませんし、また、工事のそれとして行われているような気配はございません。  そこで、いま諸先生から御懸念が出ておりますように、再びむつへということが出てきはしまいかという懸念は持っておると思います。これについて知事及び現市長は、何をおいてもそういう問題はいまどうのこうのという問題ではなくて、原子力船として安全性確立することが前提問題だという言い方をしてございます。その安全性をどうとらえるかによって、これはまた中身がいろいろ違ってくるだろうと思いますけれども、一般住民としては、もうこういう問題にはかかわりたくないという気持ちが一般的であろうというふうに受けとめてございます。  それから、先ほど先生から、こういうふうな発言を大いにやる場がなぜなかったのかというお話がございましたが、私も全く同感でございまして、こういう機会をむしろ国会がつくっていただいて、きょうのように三十分だ、聞く先生が何分だ、また参考人は質問してはならぬとかいうような制限なしに、自由な討論の場をひとつ持っていただけるならば、私は、もう少し合意が出てくるのではないかというような感じがします。恐らく木下先生と私とは正反対のように受けとられている先生方が多かろうと思いますけれども、もう少し詰めたら、そんなに違わないところまで行ったのではないかというふうに私は感じております。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
  148. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、菊池参考人にもう一点お尋ねしておきたいと思います。  先ほどのお話で、この「むつ」を反面教師として使うのであればそれなりの意味もある、これ以上国費をかけるのはいかがなものかというような内容だったと思いますが、この反面教師として使うということでありますが、この内容をもう少し説明願いたいということと、それからもう一点は、じゃ、原子力船むつ」そのものを一体どうしたらいいのだろうか、それに対してもしお考えが述べられればお願いしたいと思います。
  149. 菊池渙治

    菊池参考人 反面教師として使うということは、強行出港してああいう事態になったということが、すでに第一回目の反面教師として十二分に作用しておると私は思います。あれが当時としては、原子力行政に対する慎重さを幾らかは付与したのではなかろうかと思います。時がたつに従ってだんだん忘れてきておりますが、いまのような技術検討だとか、いろいろ内輪だけでやっていたのでは、本当の中身は出てこない、そうすると、また問題が必ず出てくるような懸念を私は持っております。そして、そういう事態を積み重ねてブレーキをかける、そうでなければ、安全確保の道がとられないような体制でいま進められているのではなかろうかという非常に強い懸念を持ちます。しかし、そうであってはならないと私は思います。しかし、木下先生のお話にもございましたように、事故はあるものという前提のもとに物を考えながら事を進めなければならない性質の原子力開発について、余りにもそういうものが無視された形で進められているという懸念を持っていることでそういう発言をいたしました。(貝沼委員「「むつ」そのものをどうしたらいいかについて」と呼ぶ)申しわけありません。「むつ」をどうするかということでございますが、この「むつ」をどうするかということでは、状況としてはいろいろ言えると思いますけれども、その状況にどう理屈をつけるというか、いろいろな問題があると思う。  それで、私が市長に在職中にも、科学技術庁の高官といろいろ話をしてみました際にも、科学技術庁は、三菱原子力工業が必要な資料を出してこないで困るというような発言をされているわけなんです。そういう中で厳密な科学的な点検作業だとか検討作業というのは出てこないだろう、そのときもそう私は申しました。ところが倉本専務は、いや、ある程度はできるよと、こういう話です。ある程度ということであって、私は、こういう科学の世界においてある程度ということは慎むべきことだと思います。そういうことを積み重ねていきますと、私は、状況としては、現状のまま進むことによって危険が内在してくるであろうと思います。しかし、それだけでこの問題は直ちに廃船にしろとかなんとかということは私は言いかねます。  そこで、そういう一切合財を本当に洗い出す機関を設けて、だれに遠慮もない、科学に対する良心的な発言のもと検討する機関がもしでき得るならば、そこでもう一度やるべきだ、そう存じます。  ただしかし、行政の側の人に言わせれば、それはきわめて困難だと申します。どうしても選ぶ委員はそういうことのできかねるような委員構成になってしまうだろうという御意見が、私の耳に返ってくるのが強うございます。しかし、こういう場で本音ではないたてまえの話をしたりしているのでは、この問題は解決はついても、いい結果は出てこないだろうと私は思います。やはりお互いに本音を吐いて、そして不明の点は一つ一つ洗い直して問題の解決に当たるべきだと思います。単にいままで金かけたものが惜しいからというだけで、また、いま日程が詰まっているということだけから一挙に進むことは非常に危険だと思います。  ですから、そのために、四者協定の撤去期間がそういうまじめな行動で若干おくれるのならば、私は、容認するにやぶさかではないと存じます。
  150. 貝沼次郎

    貝沼委員 次に、井坂参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど私は、竹村参考人に対しまして、こういう専門家がたくさんおって意思の疎通がなかなかうまくいかないのは、むしろ不思議なことであるということを言ったわけでありますが、研究者の立場から、どういうふうにしたらそういう意見が盛り込んでもらえるのか、議論の場ができるのか、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  151. 井坂正規

    井坂参考人 それは原子力開発に取り組む政府の姿勢にかかっているのではないかと思います。原子力研究所などでそういうことをぜひやってほしいということで、そういう姿勢で政府が研究所の方にも言ってもらうというようなことをされれば、そういう機会はできるのではないか、そういう点が欠けているのではないかと思います。
  152. 貝沼次郎

    貝沼委員 その次の問題は、先ほど法改正についての問題点というお話の中で、一つの問題は、「むつ」が研究材料として価値があるのか否か疑問である、古いタイプなので役立たないのではないかというお話があったように聞きました。これに対しましては、一方で旧式ではないと考えるという意見もあり、設計と比較し計測装置もつけて大いに使い道があると思うという意見もありましたし、それから古いが旧式ではないという話もございました。  そこで井坂参考人は、要するに古いタイプなので役立たないのではないかというお話でありますが、これはもう全く意味がないということなのか、それとも何か別の条件があるならばいいということなのか、その辺をもう少し御説明を願いたいと思います。
  153. 井坂正規

    井坂参考人 全く意味がないことだというふうには思っておりません。ただ、研究をやる場合に、単に「むつ」のことだけを考えていろいろ進めるというのは、問題があるのではないかと思います。そのほかの研究との関係とか、そういう総合的に検討をされて、それで今後「むつ」を改修して動かすというのだけれども、三百三十億もかけてやるだけの価値があるのかどうかということを考えた場合に、それほど価値がないのじゃないかということだというふうに御了解願いたいと思います。
  154. 貝沼次郎

    貝沼委員 それはわかりました。  それからもう一点、白紙状態にして技術者、研究者にゆだねたらいかんということでございますが、この白紙状態にしてという意味でございます。私としては、とにかく第一歩からやり直すのだということで出発すべきではないかというようにも聞けるわけでありますが、これはどういう意味が含まれておるのか、それについて御説明願いたいと思います。
  155. 井坂正規

    井坂参考人 第一歩からやり直せという結論を出しているわけではありません。現在の状態で全くその第一歩からやらなければならないか、あるいはいまの船を有効に使う道があるかということも含めて検討してほしいということであります。
  156. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう一点は、統廃合の問題でございますが、どうも行革の面から政府は統廃合を言ってきているようであります。私は、私個人の考えとしては研究所になっても、それ自体である方がいいと思っておったのでありますけれども、いま統廃合という話が出ております。  そこで、これは根本的に統廃合というものはやるのがいいのかやらぬ方がいいのかということなんです。たとえば、原子力船というのは、新しい研究分野でありますから、こういう特殊性から、独立してやる方がいいという考えなのか、それとも行政という面からの統廃合という安易な考え方はいけないという考えなのか、その辺をもう少し御説明願いたいと思います。
  157. 井坂正規

    井坂参考人 それは後ろの方の安易な考え方で統廃合をされることが問題であるということで、統廃合そのものにすべて反対しているということではありません。
  158. 貝沼次郎

    貝沼委員 それならば、統廃合ということがいいか悪いかは別として、統廃合を考えるとするならば、最低どういうことが条件になるのかということですね。研究所に勤めておられるあなた自身から、たとえば少なくともこれくらいのことはきちっとしなければ、統廃合なんということは考えられないというようなものがあるのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  159. 井坂正規

    井坂参考人 統廃合してどういうメリットがあるのか、それから、そういう統廃合するためには、当然メリットを考えて統廃合するのだろうと思いますけれども、そのことが現在の状態では非常にあいまいな形で統廃合されようとしているのではないかという点が危惧されているわけであります。ですから、事業団を原研に統合してやる場合に、舶用炉の研究をやるというのであれば、どういう体制舶用炉の研究をやっていくのか、人員の問題もありますし、予算の問題もあります、それからほかの研究との関連の問題もありますので、そういう点が非常にあいまいな形でただ持ってこられるということになると、原研の中に非常に混乱をもたらすことになるのではないかということで発言しているわけであります。
  160. 貝沼次郎

    貝沼委員 確かに私は、あなたのおっしゃることは理解できます。研究所としては当然そうだと思います。したがって、もしそれをやるなら——やるかやらぬかわかりませんが、また、それが原研であるかどうかも私にはわかりませんが、お互いに納得のいく線でなければそれはまずいことだろうと思っております、将来のためにはよくないだろうと思っております。  それから、もう一点だけ井坂参考人にお伺いしておきたいと思いますが、この舶用炉の研究は、恒久法でなければならないというふうに私は前々から持論を持っておりますが、いままでは原子力船開発事業団法は時限法であったわけですが、これが恒久法でなければならないという考え方は果たしていいものかどうか、私の考えをちょっと聞いておるわけでありますが、そちらのお考えはいかがでしょうか。
  161. 井坂正規

    井坂参考人 舶用炉の研究をやるということにつきましては、小型で重量が軽くて性能も非常にいい、そういった炉を開発していかなければ余り意味がないことだと思うのです。そういった点から考えて、長期にわたってそういう炉を開発していくために、責任のとれる体制をつくっていかなければならないのではないか、そういう意味では事業団は、出向者がかなり占めているような状況でもありますし、非常に入れかわりも激しいというような状況の中で、継続した研究を進めるのは大変むずかしいのではないかと思っている次第です。
  162. 貝沼次郎

    貝沼委員 確かにそうだと思います。  それから、これは最後に竹村参考人一言だけお伺いしておきたいと思いますが、今後、研究開発というものを進めていく上において、ただいまも出向者の問題が指摘されておりますが、人的資源の確保が非常に重要でございます。したがいまして、この点についてどう考えていったらよろしいのか、見解を承っておきたいと思います。
  163. 竹村数男

    竹村参考人 原子力船開発に関しての技術者がいまどこにおるかということになりますと、私は、やはり一番おるのは造船所じゃないかと思っております。したがいまして、そういうところの協力なしには、私も討議に加わりましたあの計画を進めることはかなりむずかしいと感じております。ですから、そういう意味におきまして今後の研究機関のあり方を御審議いただければ大変ありがたいと思います。
  164. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  165. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 瀬崎博義君。
  166. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 順不同になりますが、まず菊池参考人にお伺いしたいと思うのです。  四者協定の現在の当事者間で「むつ」を修理した後に再び話し合うというふうなことが仄聞されるのでありますが、当時の四者協定の当事者でもいらっしゃる菊池さんは、何か修理後にもう一遍話し合うのだというふうな約束をされているのでしょうか。
  167. 菊池渙治

    菊池参考人 そういう約束はございません。
  168. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、もし四者が集まって話し合うとしても、協定内容を履行すべきだという話し合いはあったとしても、その内容を逆に変更するというふうな話し合いは、趣旨から言えばあってはならないということでしょうか。
  169. 菊池渙治

    菊池参考人 これはあってはならないと思いますし、二年六カ月のちょうど期限切れの際は、守ります守りますという説明だけで、いつ守るということについては、委員会の報告が出ればとか、何が済めば、選挙が済めばというようなことだけで延ばされて、期限が切れてしまったらもうナシのつぶてで具体的には何もなかったというようなことで終わっております。
  170. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほどお話の中に、五十年の三月二十七日か二十八日、八戸市のパークホテルに呼ばれて定係港選定のスケジュール等を示された、その新定係港にはドックも含むのだというふうなことも説明されたというお話でしたが、このときには政府代表も来ておったのでしょうか。
  171. 菊池渙治

    菊池参考人 先ほども申し上げましたけれども、鈴木善幸氏も臨席してございます。
  172. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 鈴木善幸氏の当時の立場は非常に微妙でして、閣僚ではなかったわけですし、政府関係者と言っていいのか、単に自民党を代表しておったと言っていいのかなんですね。  再度お尋ねしますが、いわゆる政府関係者の出席というのは、そのときあったのでしょうか。
  173. 菊池渙治

    菊池参考人 そのときは政務次官が監理官その他を帯同して来ておりました。  それから、鈴木善幸氏が政府代表かどうかということでございますが、これは閣僚懇を東京で開いている、そのときそのとき情報をとりながら、相談しながら、そこで、閣僚懇の了解のもとに一切の作業を進めてございます。
  174. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そのとき、その定係港選定のスケジュール等について文書で何か受け取っていらっしゃるでしょうか、どうでしょう。
  175. 菊池渙治

    菊池参考人 そのときに参考資料として手渡された資料を今日持ってきております。
  176. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 菊池参考人のことですから、われわれが要望すればきっとお示しいただけるとは思うのですが、政府関係者が正式に参加して渡している文書でありますから、これはやはり当委員会として政府側から提出を求めるのが筋ではないかと思うのですが、委員長の善処を求めたいと思います。
  177. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 後刻理事会に諮りまして、協議いたします。
  178. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 事故を起こしました四十九年当時のことでありますが、八月末に「むつ」が強行出港するときの模様ですけれども、当時の菊池市長さんのところへは、その出港通知はいつごろ、どういう形で届けられたのでしょうか。
  179. 菊池渙治

    菊池参考人 八月二十一日の深夜と申しますか二十二日のと申しますか、正確に言うと、たしか二十二日の午前一時ごろであったろうと思います。
  180. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それはだれがどういう形で通知したのでしょう。
  181. 菊池渙治

    菊池参考人 これは当時のむつ事業所長でもあり、理事でもあった木堂氏が単身参りました。
  182. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 実は、そうあってはならないと思いますけれども、最近の国会での審議状況や現地でいろいろとうわさされます報道あるいは先ほどの速見参考人のお話等々つなぎ合わせれば、何はともあれ、現在「むつ」の定係港の第一候補は、大湊港であることは間違いないと思うのですね。それが、それなりの手続を踏み、地元の了解を得てというのなら、ある意味で、われわれあえてとやかく、ということになるのでありますが、しかし、ただいまのお話を伺っておりますと、そういう地元の合意が得られない場合でも、相当強引な手段ということも考えられないでもない。佐世保入港もそうでした。  そういう点で、そういうことを直接体験されている菊池さんの方から、今後、大湊港の母港、再定係港化を目指すのであるならば、政府としては最低このぐらいのことを心得ておけという御意見があれば承っておきたいと思うのです。
  183. 菊池渙治

    菊池参考人 私は、最低こういうことというよりも、約束したことは約束したこととしてきちんとやる、そういう姿勢がない限り、新幹線だとかそういうようなことでは、一時は糊塗されても、やはり必ず破綻が来るだろうと思います。
  184. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから、これは全く仮定の話としてお聞きいただきたいのですが、よしんば大湊港を再定係港にする場合、まあ誘致の声もごく一部にあるそうでありますが、従来は一応十年間の「むつ」のスケジュール表というのがあったんですね、今度は五年間しかなくなりまして、そこから後、目指すは原子力研究所だと思いますが、そこであとお願いするのだ、検討を願う、こういう話なんですね。ですから、先ほどから非常に反発されて、それならなぜいま相談せぬかということになるのだろうと思うのです。たった五年間「むつ」の定係港にしてもらって、むつ市にとって何かメリットが考えられるでしょうか。
  185. 菊池渙治

    菊池参考人 何も考えられないと思います。各種の政府関係の資料を見ましても、観光に幾らか役立つだろうという程度のことが示されているにすぎませんので、私は何もないだろうというふうに存じます。
  186. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、井坂参考人に伺いたいと思うのです。  原子力委員会原子力船研究開発専門部会には、原研からは福永理事が名を連ねていらっしゃるわけですね。ですから、今後の「むつ」の研究開発問題、方針の問題、さらには科技庁所管の他の研究機関、つまり原研などとの統合問題も当然この方は承知だと思うんですね。  そこで、そういう原研の当局者から労働組合が何らか相談を受けたとか報告があったとか、そういう点はどうでしょう。一切ないのでしょうか、多少ともあったのでしょうか。
  187. 井坂正規

    井坂参考人 労働組合としても、研究所の意見を聞きたいと思って、申し入れをしたいと思っているところですけれども、そういう話は一切研究所からは聞いたことがありません。
  188. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先般四月二十三日の委員会において、遮蔽問題で倉本事業団専務理事の発言があるのです。これは遮蔽についてですが、「数は少のうございますけれども、原研にJRR4という遮蔽の実験炉がございまして、ここで遮蔽の勉強は進められてきております。また「むつ」の問題が起きましてから、私どもの方で、この「むつ」の遮蔽改修をするに当たりまして、原研での模型実験というものもいたしました。」、「大型計算機の開発とともに「むつ」の問題が契機になりまして、遮蔽についての研究開発というものが、以前に増して行われるようになってきたということは事実でございます。」というふうに倉本専務理事は言っているわけですね。  そこで、では事実どのように原研の内部で遮蔽の研究開発体制が充実されてきているのだろうか、ちょっと伺ってみたいと思うのです。
  189. 井坂正規

    井坂参考人 私は、いまJRR4という原子炉で働いているわけなんですけれども、JRR4は、現在遮蔽の実験というのは非常に少なくて、照射が主な仕事になっているわけであります。それで、同じ部屋に遮蔽研究室があるのですけれども、そこには研究員が二人いるだけで、遮蔽関係の予算はほとんどゼロに近いというふうな状況の中で、他の研究予算をもらってきて研究を細々と続けているといった状態であります。
  190. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういたしますと、今後、小型軽量の経済性の強い舶用炉開発しよう、どうもそういうことを原研に期待されているようでありますが、その下準備的な要素というものは、いまのところ全然見られないということでしょうか。
  191. 井坂正規

    井坂参考人 舶用炉の研究をやるという研究テーマは与えられていると思うのですけれども、実際に研究者が力を入れてそれを十分やれるような体制になっていないというのが現状だと思います。
  192. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまおっしゃった遮蔽以外に、具体的に原子力船研究関係の部門というのは何かあるのでしょうか。また、もしわかれば、原子力船関係の研究にどの程度予算が使われているか、御説明いただきたいと思います。
  193. 井坂正規

    井坂参考人 詳しくは存じておりませんけれども、JPDRの設置目的の一つに、舶用炉研究開発という研究テーマがついているというふうに聞いております。しかし、このJPDRは、JP2に改造後事故、故障などが相次ぎまして、舶用炉の研究というような形での研究は進めていないといった状態ではないかと思います。  それから、このJPDRの故障を修理する費用ですけれども、年間二、三億あるいはそれ以下ではないかというふうに聞いております。「むつ」の今後にかけるお金に比べると、大分けたが違って少ないように思っております。
  194. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、もう一遍復習すると、要は現在の原研の原子力船関係の研究と言えば、お二人いらっしゃる遮蔽研究室と、それから、いまは使われていないというお話ですが、一応そういう任務を持ったJPDR、これだけだ、そういうふうに受け取ってよろしいのでしょうか。
  195. 井坂正規

    井坂参考人 大体そのように受け取ってよろしいのではないかと思います。
  196. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今回の法改正で、多分原研だと思われるのですが、そこに研究の主力を移そうとしているにしては、木に竹を接ぐような話である、土台の準備も全くしないで押しつけるような感じを私は受けたわけであります。  そのJPDRなんですが、私も、先般この委員会でちょっと質問をしているのですけれども、これまで十七年間日がたっているのでありますが、その間実働わずか一万七千時間、つまり二年ほどしか動いていないわけですね。こんなに効率が悪い上に、五十一年にストップしてそのまま廃炉の方針とかということを聞くわけでありますが、常識的に考えて、JPDRが何でこういうひどい状態になっているのでしょうか。
  197. 井坂正規

    井坂参考人 四十七年の二月にJP2の改造工事が終わりまして、運転が開始されたわけですけれども、その後の大きな事故としては、五十年の十二月、五十一年の一月にダンプ系の減圧管の破断、それから五十一年三月にはクリーン・ドレーン・サンプの水漏れ、五十二年の春には制御棒が動かなくなったというような事故とか故障が続きまして、五十四年の八月にJPの検討委員会というのが発足いたしまして、その委員会の中で検討されてきた結果、竣工しないまま廃炉の方向にいくということにいまなっているようであります。
  198. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 せっかくのJPDRがついに廃炉の方向に向かいつつあるということを、お聞きしながら私ども思うのですが、この「むつ」の原子炉も古さにおいてはまさるとも劣らないわけであり、その点は、先ほど来竹村参考人もお認めになっていらっしゃるとおりですね。  そこで、JPDRは廃炉で「むつ」の原子炉の方はこれから大いに研究に役立つのだ、そこがわれわれには理解しがたいのですが、原研の労働組合の方でその点の御論議はどうなっているでしょうか。
  199. 井坂正規

    井坂参考人 十分に論議したというところまではまだいっておりませんけれども、現在の段階で現場からの報告として聞くところによりますと、JPDRは、今後改修していっても新しい安全審査の審査基準には合格しないであろうから、動かすのは無理なのではないかということで廃炉という方針が出されたという説明が現場でなされているということを聞いております。
  200. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 非常に大事なお話をいただいたと思うのですが、「むつ」の原子炉も同じ古さであるとすれば、当然、安全審査に合格し得るものかどうかの検討が必要になるように思うのです。これはまた貴重な御意見に基づいて国会の方でわれわれは追及したいと思います。  井坂さんに対する最後の質問として、先ほど来、特に木下参考人から非常に示唆に富んだ話があって、私も、質問しながら聞いておりまして、確かにそう思いました。そういうことを含めて、原研労組が中心になって民主的に「むつ」問題を御論議いただくことを大いに期待したいのでありますが、逆にまた原研労組の方からも国会に対する注文があればお聞きしたい。  特に、先ほど木下参考人の研究体制についての御意見の中に、とかく官が主導の研究所は能率が悪い式のお話がありましたね。ただし原研は違うがという条件はついておったのですけれども、そこで、そういう木下さん式の根本的改組が原子力の研究に必要なのだろうか。それからもう一つは、いや、いまの原研の体制を根本的には否定しない、それはそれで結構任務を果たしているのだが、なお、こういう点を改善すれば、もっと国民の期待にこたえられるような研究ができるのだというのがあれば、そういうことも国会に対する希望としておっしゃっていただきたいと思っております。
  201. 井坂正規

    井坂参考人 先ほどJPDRの問題で廃炉にする方向が決まったということを申し上げたと思うのですけれども、実はこれは五月十日に新聞報道されていまして、ここで原研の天野所長が、JPDRはいつでも使える状態にあるのだが、廃炉技術開発が大切なので廃炉にするのだというようなことを言っているわけであります。これは先ほど話した現場での話と全然違うわけで、国民あるいは現場の者どちらかを欺くということになるわけですけれども、そういったことはないようにぜひお願いしたいということが第一点であります。  それから、研究所の研究体制の問題でありますけれども、現在、原研の予算を見てみますと、プロジェクト関係の予算が非常に多くて、プロジェクト関係といいますと軽水炉の安全性実証試験、多目的高温度ガス炉、核融合、環境安全というのがプロジェクトということになっているのですけれども、その予算は原研の総予算の約七割を占めるといったような状態で、ほかの重要な基礎部門の研究予算が圧迫されているといったような状態があります。それから、こういったプロジェクト部門では、予算はたくさんつくのであるけれども、人員が非常に少なくてなかなか思うように研究ができないといった問題があるわけであります。そういった点をぜひ国会でも聞いていただきまして、改善されるようお願いしたいと思います。
  202. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間がないのでできるだけ簡潔にお答えいただきたいのですが、竹村参考人にお伺いいたします。  先ほど、日本ニューヨーク間の一航海で、原子力船だと燃料費が三億円安くつくと言われたと思うのです。私、そういうふうにメモしているのですが、これは一体どのくらいの規模、総トン数で言えば、あるいは馬力で言えば何馬力ぐらいの船のことをおっしゃっているのでしょうか。
  203. 竹村数男

    竹村参考人 先ほど申し上げたかと思うのですが、十二万馬力でございます。一航海ではございませんで、片航海でございます。
  204. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうすると、その十二万馬力で、原子力船でない普通の船ですと船価はどのくらいにつくでしょう。
  205. 竹村数男

    竹村参考人 五十二、三年ごろのデータに基づいての計算でございますけれども、三百二、三十億ぐらいが原子力船の船価だと思っております。
  206. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほどのお話では、普通船に対して原子力船の船価は倍とおっしゃったと思うのです。ですから、いまの先生のお話からいきますと、普通船はその半分の約百六十億、こう見ていいのじゃないかと思うのです。そうしますと、普通船と原子力船の船体価格の差額は、現在百六十億ということになります。それでニューヨーク日本間を一往復いたしますと、燃費で六億円安くつくわけですね。そうしますと、ものの二十航海余りしますと、結構現在でも原子力船の方が安くなる。つまり船体の投資額プラス運航費全体で見ればそういう感じがするのです。そうして一方、エネルギー危機でしょう。まさにこういうときにこそ、経済性から見ても、それからエネルギー事情から見ても、原子力船時代に入っていなければいけないのに入らなかった。どうもそこで先生の御説明と矛盾が起こっているように思うのですが、いかがでしょう。
  207. 竹村数男

    竹村参考人 計算上のことはこんなふうになっております。差額が百六十億ばかりありますので、それは全額銀行なり何なりから借りるということになりますと、その金利があるわけでございます。当然、年一割ですと十六億ばかり金利でなくなる、こう思います。そのほか、船体保険とか修繕費とか廃船処理のための費用とか船員費とか、あらゆる運航のための経費がぐっとふえてまいりますので、プラス、マイナス相殺でそう有利とばっかりにはなりませんけれども、十二万馬力ぐらいですと原子力船の方がやはりかなり有利ではないか、こういうふうに思います。
  208. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間がないので大変残念なんですが、さっきのお話では、普通船だと、バランスをとるために水をあっちからこっちへ移したり、あるいは油をこっちから移したりいろいろ人もよけい要るのだ、原子力船は逆に人が少なく済むのだというお話もあったと思うのです。だから、どう見ても、先ほどの先生の御説明からいけば、まさにただいま原子力船時代でなければならないように思うのです。これが二十一世紀にならぬとこないというのですから、その点では、どうも失礼な言い方ではありますが、私は、率直に矛盾を感じたということを申し上げたいと思うのであります。  最後に、速見さん、中川さんに伺いたいのでありますが、この一年半全く無為に過ごしながら「むつ」の係船料として月四千万ずつSSKに払われたわけであります。SSKと言うよりは坪内社長に払ったと言った方がいいかもしれません。これが多少ともSSKの労働者を潤したというなら、われわれも多少とももって瞑すべしだという気持ちがするのですが、現地へお邪魔しますと、現在三十歳台のSSKの労働者で年収が百五、六十万にダウンしている。全く悲惨だ。下請も非常にいじめられているという話を聞きました。しかもきょう、実はそういう事情もあって坪内社長参考人に来ていただきたいと私もお願いしましたし、他の同僚議員からもそういう要望が出ておったのですが、何か病気とかでおいでになれない。じゃ、かわりの責任者と頼んだのですが、坪内社長以外に「むつ」のことはわからないというので、おいでにならないのです。そうなりますと、結局先ほど責任問題とおっしゃいましたが、今日こういう事態を起こしたのは、もちろん政府、事業団の責任が第一義的だけれども、坪内氏も絡んで、この三者でこういう「むつ」を悪用しているのじゃないかという感じがしてならないのです。そういう意味から、結局いまの坪内体制というのは、労働者の生活を守り、地域の発展に役立つというSSKの真の再建にも役立っていないし、政府が願った「むつ」の修理にも役立っていない。そういう点では、本来「むつ」問題と切り離してこのSSKの民主的な再建問題は改めて議論されなければならない問題ではないかと私、思っているのですが、いかがでしょうか、速見さん。
  209. 速見魁

    速見参考人 「むつ」問題とSSKの再建問題、これは完全な別の問題、次元だと思います。それはもう先生のおっしゃるとおりだと思うのです。  それから、もう一つの岸壁使用料の問題等についてはどうなのか。実際それが適当な価格であるのかどうかわかりませんが、佐世保の市民の世論としては、ごねて得をしたのではないかという世論はございます。しかし一方、SSK側の人たちの話を聞きますと、「むつ」をあそこに係船することによって三年間その岸壁が全然使用されない。しかもクレーンも使用されない。そこに修繕船を入れて利用すれば、岸壁使用料ということではなくて、岸壁を使用して工事をすることによる収益がもっとあるのだ、むしろ迷惑である、こういうような意見がSSK側から返ってくるのが現状であります。
  210. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 中川さんに伺いますが、先ほどの木下さんの御意見、これは日立造船のの社長という立場としては確かにぎりぎりの話をされたというふうに思います。それだけに、われわれはやはり表面の言葉以外に含蓄のあるところをくまなければならないという気もしているのですが、自分の会社が引き受けるとすればというえんきょくな言い方で、残された期間が少なくなった、そういうところへその残された少ない期間に合わせて無理な修理のスケジュールを組めば、必ず問題を起こすというような話もありましたし、また、場所はSSK、修理は石播と三菱というようなことは、将来非常にむずかしい問題を醸し出すだろうという御忠告も出ているわけですね。  たしか中川さんの御意見の中にも、これは労働者の立場からのお話ですが、やはり修理は十分な時間を与えてもらいたいのだ、こういうお話があったと思うのです。そうなりますと、いま長崎県の態度というのは、この五者協定の線、これは県議会も議決されているそうですから当然だと思いますが、厳重に守ってもらう、残された期間を超えるような修理は一切まかりならぬというようなお話で、大変矛盾を感ずるのですが、その点中川さん、こういう県の制約の中でいま政府がやろうとしておる無理なスケジュールの修理をやってよいとお考えでしょうか、ここは検討すべきだとお考えでしょうか。
  211. 中川幹雄

    中川参考人 お答えしたいと思います。  先ほど木下参考人も申し上げておりましたけれども、われわれ労働組合も、政府、事業団と契約を結ぶ側にございません。つまり経営側としてみれば、石播にしても三菱にしてもあるいはSSKにしても、契約が結ばれた段階で労働組合にこういう形でひとつやりたいのだ、そのときにはわれわれ十分受けて立つつもりでおります。したがいまして、軽々にその工期についてのお答えはできない、このように考えております。  先ほどの「むつ」とSSK闘争と坪内の三つぐるみの問題でありますけれども、われわれは「むつ」が入ってからSSK闘争が起きたのではない、このように考えております。さらに、皆さん方の御協力によりまして、例の三つの労働条件低下という問題についてはブレーキもかけましたし、何とか再建に向けて労使が取り組んでいる、このように報告しておきたいと思います。
  212. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 本当に言われるとおりだと思いますね。坪内流の経営のしわ寄せとして労働争議が起こった。起こると、今度それを利用して、いや「むつ」がおくれたのだというふうに政府は弁解し、また、それが種になって、いまおっしゃった係船料のごね得的なことも起こってくるという点では、二重、三重の無責任なことが行われていると思うのであります。  これは本当に最後として速見さんにお伺いしたいのですが、第一義的には、国会が中心になって、大いに「むつ」問題について議論を深めて、いまの修理問題も慎重を期すようにしたいと思いますが、ただ長崎県の態度についてなんです。いかに五者協定があるから、あるいは県議会の議決があるからとはいいながら、SSKで行われる修理が十分なものになるのかならぬのか、これは一切国の原子力行政の責任なんだ、県は関知しない、こうおっしゃるんですよ。そして要は、修理がもし残ったとするならば、できない部分はほかでやってもらったらいいのだ、こういうお話なんですね。ほかでやるところがいますぐ見つかるかどうかも疑問でしょう。そうしますと、莫大なお金をかけて、中途半端な、もともと不完全修理の計画が、さらに中途半端になった場合の損害を考えますとこれは非常に大きい。いかに県とはいいながら、こういうことが薄々わかっていて、むだとわかっていて指をくわえて見逃す法はないと思いますので、国会もがんばって論議をしたいと思うのですが、何か参議院選挙後に県議会が開かれると聞いておりますので、その点の十分な御論議もぜひお願いしたいなと思っているのですが、お答えをいただいておきたいと思うのです。
  213. 速見魁

    速見参考人 お答えします。  その点については、十分に審議も尽くしたいと思います。しかし、これはあくまでもやはり五者協定で守られてきた問題でありますし、また「むつ」の修理を受け入れる要請時の政府側としてのきちっとした答弁もございます。ただ私が言いたいのは、やはりそれならそれなりにうそを言わないで本音を出してほしいと思います。とにかく修理の内容、改修の計画すべてがうそで固められておる。私たちがやはり非常に不安なんで、心配なんで中身を教えてくれと言っても教えてもくれない、こういうことではもう議論の余地はないと思います。
  214. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、何も五者協定の期限を延ばすように論議してくれと言っているのではありませんで、いまの残された期限あるいは核封印という状況で満足な修理にならないことは、先ほど権威者もお話しのとおりであります。皆さんも大体そういう御意見だ。それならば県もそういう無謀な修理はこの際思いとどまって、もう一遍いまおっしゃったような精神で国とも折衝し直すべきではないか、ここら辺が妥当な線のように思うんですね。お願いしたいと思うのです。  最後に、委員長に要望して終わりたいと思うのですが、きょうおいでになりました参考人というのは、専門部会の先生方あるいは四者協定、五者協定の関係の地元の方あるいは「むつ」の引き受けを要望されている研究機関の方あるいは労働者に関係ある方、そういう方々ばかりですが、その方々の御意見が一致していないわけです。大きく隔たりがありますね。しかも非常に重大な示唆に富んだ御意見もあったわけであります。  ですから、本委員会としても、本法案の審議は慎重の上にも慎重を期すべきではないか、こういうふうに思いますので、委員長の適切な運営を心からお願いをいたしまして、終わらせていただきたいと思います。
  215. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 米沢隆君。
  216. 米沢隆

    ○米沢委員 参考人の皆さん、本当に御苦労さんです。  まず最初に、竹村先生に御質問をいたします。先ほどから原子力船実用化の時期についての議論もありました。二十一世紀の初頭にはかなりの原子力船実用化されておるだろう、そういう判断のもとに御承知のとおり国内での研究体制を固めて、間に合うように何とかしたいということがいま議論をされておるわけであります。しかし、木下参考人がおっしゃいましたように、私は、石油事情等の急変によって実用化スピードはかなり早まってくるのではなかろうかという感じがしてなりません。いまのところ欧米の技術水準等は、いろいろ問題があるにせよ、日本よりかなり進んだところにあり、石油値段等との関係もありますけれども、もし実用化した方がメリットがあるとなったならば、かなりのスピード実用化に向けて進んでいくであろう。そのときには日本は約十年ぐらいおくれ、十五年ぐらいおくれて研究が進められておるわけでありますから、他国は少々コストは高くなるかもしれませんが、原子力船がすでに実用化されておる、日本の場合には、さあ、いまからだ、こういう段階になりますと、私は、海運国日本という地位は世界的に完全に没落してしまって、貿易立国としての日本経済のあり方にも大きな影響が与えられるのではなかろうかという危惧も一面にはあるのではなかろうかと思うわけでございます。そういう意味研究開発というものがもう少しスピードアップされなければならないし、もう少し欧米の技術水準に早く追いつくような何か工夫がなされなければならない、そういうふうに私は考えるわけでございます。  そこで、このような欧米諸国の技術水準に果たして十年くらいでキャッチアップできるのか、追いつくことができるのか、追いつくためにはどういう研究体制が確保されねばならないのか、そのあたりからちょっと御説明をいただきたいと思うのです。
  217. 竹村数男

    竹村参考人 米沢先生にお答え申し上げます。  イラン情勢等からもっと早くなるかもしれないというようなことは、先ほど木下参考人もたしか御指摘なすったかと思うのですが、十年くらいの差をどうやって埋めるかということは、多分、原子力船研究開発専門部会報告書は、十年くらいの予想技術のタッチアップといいますかそれを見込んでおる報告書になっているのではないかと私は理解しておりますが、何せ実船が全然経験がございませんわけですから、とにかく実船の経験を早く得ること、それからもう一つは、次のいわゆる実用化のための舶用の原子炉プラント設計、評価、研究に早く着手して、日本として自主開発をどういうものを進めるかということを並行的に進めるというようなことではないかと思います。そういうものを有効に進めるといいますか、組織上のことではやはり一貫した指導精神といいますかそういうものがないと、なかなか思うようにはいかないのだろうと思いますので、新機関に移行された後も、そういう外国の企業に追いつくというような姿勢であの報告書ができているかと思いますが、あの趣旨が生かされるように組織を運営できるようにお願いしたいと思います。  先ほども申し上げましたように、一番のやはりポイントは、技術者の問題だと思います。なかなか適切な技術者を一遍に大量に得るということができませんので、どうしても造船関係の人に頼らざるを得ないといいますか、そこから人を引っ張ってくる、あるいは転籍、向こうの会社をやめてもらってきてもらうというようなことがない限りは、はなはだむずかしいのではないかというふうに思います。
  218. 米沢隆

    ○米沢委員 この報告書を作成されたメンバーの一人でもありますけれども、非常に何か心もとない感じがちょっとしますね。確かに原子力というのは、大変政治的に云々されている向きもありますが、結果的には御承知のとおり、「むつ」の建造まで含めて従来から約一千億になりませんね、こういう投資は。五、六百億程度のものじゃなかろうか、そう思うのです。そういう五、六百億くらいしか金を投入せずしてすぐ原子力船をつくれとか、「むつ」をうまくやれというのは、やはり間違っておったのじゃないかという私は気がします。  そういう意味で、将来的に基礎研究も含めて研究開発体制が、本当に原子力というものに対する国民の信頼性を得られるような研究というものが確保されるためには、かなりの金を投資しないとどうしようもないことだと私は思う。その分は財政状況等にもよりますけれども、われわれもこれから改めて、そのあたりはちょっと考え直していかねばならぬ、私は、そう思っておりますが、しかし、いまのお話を聞かしていただいておりますと、これから先のことで技術者の養成から始まるなんということを聞いておりますと、十年とか十五年おくれているものが、二十一世紀の初頭くらいに日本実用化できるなんということは、私は信じられなくなりつつあるのですが、しかしながら、またこの報告書によりますと、二十一世紀には陸上炉もあることだし、優秀な研究要員もおることだし、何かできそうなということ、ですから、何かこれは政府が何とかうまくやってくれというそういう話に乗って、本当に科学者の良識というものが正直に入っておるだろうかなということを——いまこういうものが達成されなければできぬものはできませんと言うてもらわないと、この十年間ぐらいで何かできそうだというようなイメージを与えるのは、ちょっとこれは問題だという気がするわけですね。その点いかがでしょうか。正直に書いてあるんでしょうか、これは。
  219. 竹村数男

    竹村参考人 そういう印象を与えましたのは、私のせいで大変申しわけなく思いますのですが、私は、先ほどどなたかの参考人がおっしゃられましたように、研究開発計画ワーキンググループの主査をやりまして、どういう技術日本で残っておってやらなければならないかということを、二十名近くの人たちを集めて徹底的に論議したわけでございます。それで、こういうものは陸上のものが使えるはずである、こういうものはやはり船独特のものであるというような仕分けをしまして、それならばこういうものの項目については一体何年計画でこれはできるのだということの一応洗い出しをやりまして、その積み上げで計画書をつくったわけでございまして、もちろん木下先生も部会の方の委員でございまして、もう少しこれは早くできぬかというような御意見もございましたけれども、私としては、やはりじっくりやるべきであるという態度をとっておりましたので、少し木下参考人との意見は食い違っておりましたが、延びたかっこうで実際には最終的にワーキンググループの報告が出してありますので、私としては、十分できるというふうに思っております。もちろん先生おっしゃられますように、それには多額の金がかかることだと思いますので、その方のことは何分御配慮いただければというふうに思います。
  220. 米沢隆

    ○米沢委員 もう一点、竹村先生にお尋ねしたいのでありますが、いまからいわゆる舶用炉の、改良舶用炉等の研究をされて開発されていく、これがおっしゃいましたように、未経験技術が入った新しいものになるであろう、そうなったら、それはどうしても船に積み込みたいという欲望に駆られる、また、そうでなければならぬかもしれません。そういう意味で、完全に「むつ」を修理したとして、それを運航していろいろなデータをとられたとしても、この新しく改良された舶用炉開発された舶用炉を実際に船に載せてうまくいくかどうかというのは、「むつ」の実験データからは部分的には得られたとしても、得られない部分があると私、思うんですよ、これは専門家じゃないからわかりません。そうなった場合には、研究者としてこれは本当に原子力商船としての炉として利用できるかどうか、経済性は一体どうなのか、技術的には問題はないのかということを詰めていくことになりますと、やはり第二の「むつ」というようなものをつくって、それに載せて実験データをまた得たいというような気持ちになるのが当然だろうと思うのですが、その部分まではこれには書いてないですね。その点は先生としてはどういうふうにお考えですか。
  221. 竹村数男

    竹村参考人 もちろん理想的に申しますと、やはり徹底的に船に載っけてやってみたい、こう思います。また買う方にしたって、実際に船にも載らないものが、大きな買いものですから買えるというふうなことは、なかなかないのじゃないかというふうにさえ思っている次第なんで、でき得るならば当然、私の立場としては、将来のことでこの計画書には乗っかっておりませんのですけれども、そういうことがあれば、なおいいというふうに思います。
  222. 米沢隆

    ○米沢委員 それから、もう一点お尋ねしたいのですが、ちょっと判断しかねることかもしれませんが、この原子力商船の問題だけではなくて、原子力のいろいろなノーハウとか技術に関しましては、もともと軍艦利用から始まったものでありますから、各国ともかなり秘密性があると私は思うのです。そう簡単に見せない、そう簡単に教えない、あったとしても金出しても教えてくれないかもしれない、そういうかなり秘密性を帯びたものもあるのではなかろうか、そう推測します。普通の企業でも、企業秘密みたいなものがありまして、特に技術、ノーハウ等々は本当に仲のいいところにも教えない。それをうまく使って早くもうけよう、それが企業家ですから。そういう意味で、この原子力のいろいろな技術等についても、国家間にはかなりの秘密性を保持したいという気持ちの人と、オープンにして、特に研究者はそうですよね、オープンにして何もかも調べてうまくやればいいという、そういう欲望と、かなり対立する部分があると私は思うんですね。  先ほど井坂さんの話にもありましたように、もう少し、たとえば事故を起こす、そのとき一体どうなったかというデータぐらいは研究者に見せてくれ、それは実際研究される方は見せてほしいだろうと思いますよ。しかし、見せたがゆえにどんどん漏れていく、そういうものを危惧するという人もおる。そういう意味で、原子力の技術とかノーハウについては、高度な判断というのかな、しかし、同じ仕事をしながらも、かなり対立した意見を持たざるを得ない、何かそういうジレンマに陥るたちのものではなかろうか、こういう気がするわけですね。  したがって、すべてをオープンにしたならば、ひょっとしたら進むかもしれない、しかし、オープンにしたがゆえに、何か世界各国に日本技術を盗まれているという危惧もひょっとしたらあるかもしれない、そういう点は原子力委員会の中では何か議論をされた経緯があるのでしょうか。
  223. 竹村数男

    竹村参考人 そういうオープンにして秘密漏洩とか企業秘密とかいうようなことに関しては、何も専門部会では論議しておりません。
  224. 米沢隆

    ○米沢委員 先生はどうお思いですか。
  225. 竹村数男

    竹村参考人 日独の共同研究でも、中心である炉部分はドイツがやはり担当しておりまして、日本はその原子炉を積み込む、そして船を日本設計してというふうなことで、共同研究をやって両者で比較したのではなかったかと思っております。そういうふうに結局、最終的になりますと、他国にまで出るようなそういうものは、やはりお互いに警戒はするのではないかというふうに思います。
  226. 米沢隆

    ○米沢委員 それから、一番国民の信頼性を確保するためには、安全性について、普通の素人の国民もそれならわかったというような、少なくとも国民としたら絶対的な安全性を確保してもらいたいというものが、実感として、また、あるいは科学的に説明されてわかってきたら、原子力の平和利用というものはかなりスピードを増すのではないかと私は思いますね。しかしながら、安全性の確保について、「むつ」の例でもあるように、現時点での科学の知識でわからぬ部分もある。ひょっとしたらミスでそういうことをやっておられるかもしれないという意味で、安全性の確保で要請されるのは絶対的な安全性である。しかしながら、科学の一つの限界みたいなものもあるかもしれませんし、金を投入すればほぼ絶対的に安全だと言われるような装置はできるのかもしれない。そういう意味で、安全性の確保というものに対して、先生、いまから今度は安全性の確保についても研究されますよね。「むつ」のやつについても安全性の総点検をやられますよね。技術の粋を尽くして考えられると思いますけれども、科学の限界みたいなものはあるような気も私はするんですよ。神様だけしかわからない、そういうものは科学者の目としてどうでしょうか。
  227. 竹村数男

    竹村参考人 大変むずかしいお話でございますけれども、お答えになるかどうかわかりませんが、人間というのは、普通こういう状態——まあちょっと私なんかは、きょうは大分ストレスがかかっておりますから、ミスは多いのだろうと思いますけれども、普通の状態で約千に一回はミスするという統計数字があるのだそうでございます。そういうことからしますと、一つのものをつくっていく場合に、三人なり四人なりで次々とそれをチェックして、千に一回、その次またミスしたものを次の人がまた千に一回ということで、なくなっていくのではないかと思いますけれども、最終的にゼロにはならないということではないかと思います。
  228. 米沢隆

    ○米沢委員 菊池参考人にお尋ねしたいと思います。  先ほどのお話の中で、たとえば原子力委員会とか原子力船研究開発専門部会とか、ある程度その中身、委員のメンバーの改組をしたならば、もっと皆さん方のおっしゃるような気持ちが入るのかもしれないというような話をちょっとされましたね。そういう意味で、国のこういう原子力を扱う行政の委員会とかいろいろありますが、そういうものに対して、どういうメンバーが入り、あるいはどのような改組がなされたら、皆さん方の意見が少なくとも、無視はされても、あるいは無視される扱いに結果的になったとしても、言いたいことは言えるというものができ上がるのでしょうか、ちょっとお尋ねしたい。
  229. 菊池渙治

    菊池参考人 まず第一に、私は、政府から金をもらっていない研究者ということが一つ条件になるだろうと思います。政府から研究費をもらっている方は、どうしても制約を受けます。現に受けるという話を聞いております。  それからもう一つは、行政にかかわっている方々を入れない、従来の行政の行きがかりに左右されるようなことのないような人たちを中心に考える、そういうようなことを重ねていくならば、私はできるだろうと思います。  それから、それに関係の深い方々もまたそのほかにもいらっしゃるから、そういう方でもまたむずかしい点もあろうかとは思いますが、それにしても、ケメニー報告あたりは、不満だと言われながらも、かなりのところまでやっていっているわけですから、やろうと思ってできないことはないだろう、そういうふうに思います。  ただ、少なくとも行政に関与している学者、あるいは政府から研究費をもらって研究している方には、遠慮してもらった方がいいだろうというふうに思います。
  230. 米沢隆

    ○米沢委員 井坂参考人にお尋ねします。  将来的にはこれが統合されるということで、原研か動燃かなんて言われていますが、まあ原研の方が近いのじゃないか、そう思います。だから、決定的じゃありませんから、その部分について皆さんに相談はなかったかもしれません。まだ何も決まっておりませんし、少なくとも腹の中にはあったにしても、われわれにはオープンにされておりません、たてまえはいまからの話だということになっておりますから。したがって、先ほど御不満がありましたけれども、もう相談があったときには、決まったようなものですからね。そういう意味では、私はまだ決まっておらぬと思います。しかし、可能性としては、そちらに統合される可能性が強い。しかし、統廃合については、安易な統廃合はだめだ、こうおっしゃいましたが、統合されるとしたときに、皆さんが受け入れられる条件というのは何ですか。むずかしいですが、細かいことは別にして、考え方として、どういう条件が整えられたら統廃合でも積極的に賛成するということになりますか。
  231. 井坂正規

    井坂参考人 むずかしい質問でありますが、まず、どういう状態にするかが満足されれば賛成するかという点については、そういう点について研究者、技術者集めて検討さしていただくような措置をとっていただきたい。特にその中でやはり言わなければならないことは、研究目的がどういうもので、それに対してどれだけの人員が必要で、どういう体制が必要なのかというようなことについては、それをやるために各方面の研究者を集めて検討して、どういう組織が必要なのかということを検討していく必要があるというふうに思います。
  232. 米沢隆

    ○米沢委員 もう時間がなくなりましたが、中川参考人にお尋ねします。  原子力の平和利用について、労働組合としても関心と責任を持とう、私は、大変りっぱな態度だと思います。しかしながら、現に皆さんの組合員が今度はこの遮蔽工事等を請け負わねばならない。先ほどから話が出ておりますように、まだ工事契約も締結されていない、そして期間は、協定によればもうあと一年半しか残っていない、その中で突貫工事を強いられるであろう、労働者の労働条件はもとより、そうなったときにかなり労働組合の方からも不満が出るだろうし、いわゆる原子力の平和利用という観念はわかったとしても、具体的にこんな行政のやられ方で、こんな調子で仕事させられたらかなわぬということで、逆にまた汚点を残すことになるかもしれない、そういう意味では、おっしゃったように、事前協議というのを徹底させなければならぬと思うけれども、この点に関して、皆さんの方に何か労使関係の中でサウンドがあっておるものかどうか。そういうものに対して、労働組合としてどういう対処をせねばならぬということの大体結論を得て、少なくとも使用者の方で極力のむようにそういう議論が起こされておるのかどうか、その点を聞かしてもらいたいと思います。
  233. 中川幹雄

    中川参考人 お答えしたいと思います。  石播にしても三菱にしても佐世保重工にしても、まだ正式な議論は労使間で行われていないようであります。ただ、きょうここに来るときにも、佐世保重工労愛会に対しまして、現状を聞いたわけでありますけれども、かなり注文を持っていることも事実であります。つまり佐世保重工で言いますと、先ほども申し上げましたけれども、できるだけ早く着工させてほしいということで、結果的に五十六年十月ということが一つの歯どめになっておるわけでありますから、佐世保労愛会としても、できるだけ積極的に協力したいという姿勢でのそういう注文ではないか、このように私たちは受け取っているわけであります。  そこで、労働組合として、組合員がそこに従事をするわけでありますから、工事をするときの限界というのはどの程度かということになりますと、その状況をつぶさに見ながらお答えすることが妥当かと思いますが、想定される範囲、われわれが個別に聞いている範囲でお答えいたしますと、非常に狭いところで限られた工程がかなりあるということで、そうなってきますと、突貫工事といいましても、かなりむずかしい問題もあるのではないかということも一面あるようであります。しかし、経営側としてみれば、できるだけひとつ協力をしていきたいということでシフトをしきたいという、そんなことも内々に議論されているようでありますけれども、先生おっしゃられたとおり、われわれは事前協議を通じて協力していくところは協力していく、こういう姿勢に立っておりますので、その程度でひとつ御勘弁いただきたいと存じます。  以上であります。
  234. 米沢隆

    ○米沢委員 まだ御質問したいことはたくさんありますけれども、時間が来ましたので、これで終わらしていただきます。
  235. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を承り、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十五分散会