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菊池参考人 ただいま御紹介をいただきました
菊池でございます。
思いますと、
昭和四十九年九月十日の本
委員会において、放射線漏れ直後の審議に
参考人として
意見を申し述べる機会をいただきましてから、すでに長い
期間を経過して、なおかつ「
むつ」が当時言われましたように、漂流しているかのような
状況を呈していることを非常に残念に思う次第でございます。
先ほどここにお見えになっておられました小宮山先生も、その際御出席いただいておりましたが、その際、小宮山先生の御発言の中に責任問題の強い要請がございましたが、その責任問題も今日なおうやむやになり、また今後の進め方についても、必ずしも明らかになっていないという時間の経過と、その経過を追いながら何ら実体的に進んでいない、そういう感懐をここに立って一層深くするものでございます。
私たちは、そのとき
参考人として呼ばれた後に、鈴木総務会長の提案を入れて四者協定を結びまして、母港撤去という条項がその中に加えられておりますが、今日なおその実体を見ておりません。そして議事録その他を拝見しますと、新定係港の選定を行っておるかのような御発言が政府当局から行われておりますけれども、五十四年度の原子力白書を拝見しますと、四者協定によって新定係港を選定しなければならない、その新定係港は
日本原子力船開発事業団によって行われている、こう原子力白書は説明しておりますが、一方、
日本原子力船開発事業団の五十四年度次報告会において、予稿集も拝見しましたし、実際その場において参加をさせていただいて、各報告者の報告も伺いましたけれども、
一言半句新定係港の選、定について触れるところがございませんでした。政府は、
事業団に定係港の選定をさしていると言い、
事業団の報告の中には何
一つないということは、いまの「
むつ」にかかわる環境を物語っているようにも私は思います。
ただしかし、一方考えてみますと、五十年の三月に片山政務次官が、協定の当事者である鈴木善幸氏、それから竹内青森県知事、杉山県漁連会長と私を八戸に呼びまして、説明をしたその説明資料の中には、五十年三月末をもって選定作業が終了しているようなスケジュールを示しております。それを受けたもので、もう決まっているのかもしれませんけれども、しかし、その間、新定係港に対する説明はどこからもなされていないということを考えますと、その作業終了というのは何を示したのか、私は非常に疑問に今日も思っております。
私は、参議院のこの前の法改正の最終的な
参考人の
意見聴取に際しても参りまして、四者協定の実施が
原子力船並びに原子力行政の信頼回復の第一歩ではないか、国が約束をしたことを守れないようで、どうして
関係住民に理解と協力が得られようか、こういうことを申し上げた記憶がございますが、その際、ある
委員の先生が、政府並びに
事業団には当事者能力がないのではないか、いまの政府に、科学
技術庁に、新定係港を選定する能力がおありだとお考えですかと、これは私に対する問いではございませんでしたが、問いかけをされております。
そういう中で
原子力船「
むつ」がいま漂流しているということは、先ほど
木下参考人から
必要性、あるいは
竹村先生からもいろいろお話がございましたが、そういう実態の中では、こういう行政が進められていいはずがなかろうと思います。ここからまず正していくことをひとつお願いしたいと思います。
そこで、
事業団法のまた五年延長でございますが、すでに二回、約十年の延長が行われて今日のような
状況でございます。果たしてこれからの五年でどれだけの成果を責任をもって果たし得るのか、その辺の見きわめが、この五年延長に対する
一つの決め手ではなかろうかと思います。必要であればあるほど、時日のむだな空費は許されないと思いますし、また国費の浪費も許されないと思います。きわめて少ない研究費をいかにして有効に、将来を見きわめていかに早急に対応していくかということを考えなければならない、そういう時期であろうかと思います。
先ほど来出ております
研究開発専門部会の報告も拝見いたしましたが、船のデータを次の炉に活用を、これもする、あれもするというふうに書いてございます。しかし、
竹村先生すでに御
承知のように、次の炉を何にするかによって、このデータが使えるか使えないかということが大きくあるだろうと私は素人ながら存じます。
事業団において二次炉心の調査をすでに始めておりますが、これは年次報告によりますと、オット・ハーン型炉、それからCAS炉という炉の調査を始めております。CAS炉というのは、私は、全然わかりませんで、いろいろ調べてもらいましたが、資料がわりあいに乏しいようでございます。
フランスの海軍、原子力潜水艦用の炉として
検討をしているが、実際まだつくられていない中濃縮用の一体炉だ、こう発表されているのだそうでありますが、いずれにしろ、一体炉を中心とした炉型を二次炉心として
事業団が考えているということは、一応政府でも考えていることととってもいいと思いますが、その場合、果たして「
むつ」のデータというものが一体どれほど寄与するのかということも、私は、
技術的にもっと詰めた御
検討をされたならば、当面する
原子力船「
むつ」の扱いについても、いろいろもう少し本音が出てくるのではなかろうかというふうに存じます。先般の
委員会で、今後約三百二、三十億の
開発費がかかる、こういうお話があったようでございますが、その際、定係港については若干の幅があるというふうに出ているようでございます。それは何を
意味するのか私にはわかりませんが、少なくとも先ほど申し上げました五十年の三月二十七日か八日に示されたスケジュールから申しますと、今後の「
むつ」の
開発については、ドックを持つというスケジュールが出ておりますが、そのためには、やはりそのドックを勘案した定係港の未確認というものであろうかと私は善意ながら解釈しますが、もしそうだとするならば、三十二、三億どころではなくて莫大な経費がかかり、しかも二次炉心をどうするかということによって、これからのデータがどれだけ使えるかということとも関連すると思いますと、そういう点をもう少し具体的に詰めてみる必要がこの際あるのではなかろうかと思います。
それから、「
むつ」の炉についてはいろいろと風評がございます。大山
委員会のメンバーであったというような
方々がこう言っている、ああ言っているということも、その
関係の
方々から別々に二、三聞いておりますが、いずれも余りいい情報ではございません。また大変失礼ですが、
木下参考人も学術
会議の会員として前期まで長い間御苦労されたわけでございますが、学術
会議における本音とも受け取れるような御感懐をもよそから伺ったこともございます。私は、この際、既定の概念にとらわれることなく、もう少し具体的に本音をもって詰めた
原子力船開発というものをやってみる必要があるのではなかろうかと思います。また、原子力行政にかかわる重要なポストにあるある方も、いまのような
委員構成を持った専門部会だとか審議会だとか懇談会だとか、そういうものをつくっても本当のものは恐らく出てこないだろう、こういう御心配をされた方がございます。さらに現
日本学術
会議の会長である伏見先生が、ちょうど五十年の秋に、「
むつ」問題についての科学者による呼びかけのシンポジウムがございました際に、みずから御出席になりまして、御
意見を述べられたことがございますが、その中に、どうしても私たちはお互いをかばい合うというようなことがある、このことがこういう事態を生んだのではなかろうか、これをいかにして排除していくかということが、今後の「
むつ」を、あるいは原子力行政を進める上で非常に重要だという御発言を、当時副会長ではございましたが、されてございます。その私に言われた方も、同じ
意味で、ほとんど同じような
方々で構成される
委員会ではなかなか思い切った
意見を出し発言をすることができない、もうそろそろこの辺でだれかがどこかで言わなければならないだろう、しかし、なかなかその適任者が見当たらないという感想を漏らされたことが、つい最近でございますが、ございました。
非常に膨大な国費と時間を要します「
むつ」の問題について、私は、それらの
方々のお話のように、お互いをかばい合うことも、それは確かに美徳かもしれませんけれども、科学の真実を追求するためには、言いにくいことも言い、そして明らかにしていかなければならないと思いますし、また各般にわたる問題の追求も必要であろうと思います。
たとえば、先ほどの
木下参考人の御
意見のように、どこにでも入れるような
原子力船をつくることが前提でおありのような、そういう
時代を願うような、そういう
技術開発をしなければならぬようなお話がございましたが、しかし、そういうことは、リコーバーの懸念を一層懸念させるものでないのかという疑念を、私はこの場で一層深くしましたし、また原子力損害賠償法が厳として存在し、商業的な損保ベースに乗らないということ自体からも、いろいろ私たちの当面する問題として、それをいかにして危険を無視しながら排除するかということではなくて、そういうものがなければ成り立たないということを前提とした当面の物の
考え方をしていかなければならないのではなかろうかと思います。
同時に、この問題については、私は、TMI事故直後、昨年の四月三日の閣議の大平総理の指示として新聞紙上に伝えられておりますように、原子力災害の総合対策を、従来の災害基本法の枠にはまることなくやるようにという指示が出されたということは、従来の原子力行政のかなり大きな転換を示す御発言だと受けとめておりますが、そういうTMI後の科学
技術的なものも、あるいはまた、そういう政治的な判断の問題、そういうものもひっくるめてこの際洗い直し、十分な
検討の上で五カ年延長がいいのかどうか、それから、さらに「
むつ」をどうすべきなのか、十分に御
検討を国会の先生方にお願いしなければならないと存じて、きょう参りました。
四者協定の定係港については、次に
速見参考人からお話があると思いますが、長崎においてあと一年半で期限が切れようとしております。そしてまだ本格的な改修工事には入っておりません。これも入港前の詰めの甘さがこういう結果を生んでおるのであって、決して放射線漏れ事故を起こした、そのことに対応する
事業団なり科学
技術庁なりの体質が改まった結果ではなかろうと思います。従来のような行き当たりばったりな行動が、いまの佐世保における苦境を生んでいるのであろうと思いますが、
むつにおいてそういう事態を重ね、いままた佐世保でそういう事態を重ねております。そして、その行きつくところは、また、新定係港を選定すべき作業がどうなっているかわからないままに、いよいよ佐世保で困るからもう一度返してくれなんという行き当たりばったりな事態に至るならば、私は、原子力行政がこれまた数段後退するであろうと思います。また「
むつ」の扱い、「
むつ」の安全総点検が、もし間違いがあって、再びトラブルが起こるような事態を安易に招くようなことがあったならば、原子力行政はTMI以上に
日本の場合は影響してくるだろうという懸念を、私は、四十九年以来持って訴えております。
今後こそ、「
むつ」はトラブルのない
開発をし得るという確信を持って、また、そのことに対する責任を明らかにしてやるべきだと思います。安全
委員会は責任がないと申します、あるいはまた科学
技術庁も必ずしも責任がない、また
事業団も必ずしも責任がないというような事態で進めるならば、私は、再びその過ちを繰り返すことは、火を見るより明らかであろうと思います。そういう反面教師としての「
むつ」としてお使いになるというのであれば、話はまた別でございますが、それでは余りにも「
むつ」が悲惨でありましょうし、また国費をこれまでかけたもの以上にかけるという、そのことへの問題も大きく展開してくるだろうというふうに存じます。
時間のようでございますので、以上、概括的に申し上げまして、御質問がございますならば、後刻ちょうだいして、私の考えていることを申し上げたいと存じます。非常にありがとうございました。(拍手)