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1980-05-09 第91回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月九日(金曜日)     午後三時八分開議  出席委員    委員長 河村  勝君    理事 越智 通雄君 理事 國場 幸昌君    理事 村上 茂利君 理事 山花 貞夫君    理事 玉城 栄一君 理事 部谷 孝之君       大城 眞順君    菊池福治郎君       村田敬次郎君    山下 元利君       上原 康助君    榊  利夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 原   徹君         沖繩開発庁総務         局長      美野輪俊三君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省条約局長 伊達 宗起君  委員外出席者         議     員 岡田 利春君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  深作 和夫君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  箭内慶次郎君         科学技術庁原子         力安全局防災環         境対策室長   穂波  穰君         外務大臣官房審         議官      堂ノ脇光朗君         農林水産省食品         流通局野菜計画         課長      鎭西 迪雄君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員異動 四月一日  辞任         補欠選任   上原 康助君     山花 貞夫君 五月九日  辞任         補欠選任   芳賀  貢君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     芳賀  貢君 同日  理事上原康助君四月一日委員辞任につき、その  補欠として山花貞夫君が理事に当選した。     ――――――――――――― 四月三十日  北方地域漁業権者等に対する特別交付金の支  給に関する法律案岡田利春君外四名提出、衆  法第四八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十八日  那覇空港の民間専用空港として開放に関する陳  情書外一件  (第一七九号)  北方領土返還に関する陳情書  (第一八〇号)  B52核戦略爆撃機沖繩県飛来阻止に関する  陳情書(第一八一  号)  F15イーグル戦闘機嘉手納飛行場配備反対  に関する陳情書  (第一八二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  北方地域漁業権者等に対する特別交付金の支  給に関する法律案岡田利春君外四名提出、衆  法第四八号)  沖繩及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 河村勝

    河村委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河村勝

    河村委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、山花貞夫君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 河村勝

    河村委員長 岡田利春君外四名提出に係る北方地域漁業権者等に対する特別交付金支給に関する法律案議題といたします。  提出者から提案理由説明を求めます。岡田利春君。
  5. 岡田利春

    岡田(利)議員 ただいま議題となりました北方地域漁業権者等に対する特別交付金支給に関する法律案につきまして、提案者を代表いたしまして、その提案理由並びに主な内容について御説明申し上げます。  御承知のように、北方地域は、わが国固有の領土であるにもかかわらず、昭和二十年八月にソ連軍により占領されて以来、事実上同国の支配下にあり、戦後三十五年を経た今日においても、小笠原、沖繩など、第二次世界大戦の結果他国の統治下に置かれていた地域がすべて返還されたにもかかわらず、いまなお返還の見通しすら立っていないことは周知の事実であります。  このため、北方地域地先漁場漁業を営んでいた漁業権者、そのほか北方地域の元居住者北方地域漁業権者等)は、いまだに父祖の墳墓の地であるこれら諸島に復帰することができず、また、わが国でも数少ない大漁場であるこれら諸島周辺漁場漁業を営もうとすれば、しばしば拿捕の危険にさらされ、安全に操業できないという困難な状況にあるのが現状であります。  このような北方地域だけにある特殊事情及び北方地域漁業権者などの置かれている特殊な地位等にかんがみ、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律の施行後約二十年を経過した今日、同法に基づく制度見直しを行い、融資制度にかえて、現存している北方地域漁業権者等に対して特別交付金支給し、生活の安定に資するため、この法律案を提案する次第であります。  以下、この法律案の主な内容を御説明申し上げます。  第一は、特別交付金支給の規定であります。  国は、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律第二条第二項に規定する北方地域漁業権者等である者に対し、特別交付金支給することとし、特別交付金支給を受ける認定は、これを受けようとする者の申請に基づいて内閣総理大臣が行うものとしたことであります。  第二は、特別交付金の額であります。  北方地域漁業権者等支給する特別交付金の額は九十万円とします。ただし、昭和五十四年分の所得税額が八十万円を超える者については十五万円としました。  第三は、貸付業務の廃止であります。  現在、北方領土問題対策協会が行っている業務のうち貸付業務を廃止し、この貸付業務にかかわる権利義務政府関係金融機関に承継させるものとしております。  以上が、この法律案提案理由と主な内容であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いします。
  6. 河村勝

    河村委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。      ————◇—————
  7. 河村勝

    河村委員長 沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村上茂利君。
  8. 村上茂利

    村上(茂)委員 私は、外務大臣とそれから防衛庁に対しまして、幾つかの点について質問を申し上げたいと存じます。  大きな内容は二つでございます。  第一は、日米首脳会談日本防衛力強化に関するいろんな話し合いが行われた、その問題についての真相を明らかにしていただきたい。それに関連いたしまして、防衛庁は今後どのような姿勢でこれに対処していかれるか。これが第一でございます。  第二は、今月七日、外人記者クラブソ連ポリャンスキー大使がいろいろ発言をされておりますが、その発言に関連して政府の所信をただしたいと存じます。  第一の、日米首脳会談での日本防衛力強化に対する話し合い内容でございますが、八日のある新聞の朝刊を見ますると、外務大臣防衛庁の「中期業務見積り」を前提にいたしまして、その計画を五十六年度から三カ年で繰り上げ処理をする、GNPの一%まで防衛費を引き上げるというような意味記者会見での発言がございまして、これが具体的な内容だというような報道がされておりました。  この点について、私の推測を申し上げまして、外務大臣答弁の際にひとつ含んでお考えをいただきたいと思います。  大平総理が行かれましても、会見時間はそう長くなかった。トップ会談話し合いでございますから、その前段階におけるいろんな話し合いの積み重ねを前提にして会談が行われたというふうに私は考えざるを得ないんでありますが、つまり総理会談をなさる前に、外務大臣ブラウン国防長官その他といろんなお話し合いをなすっておられるわけであります。その過程におきまして、防衛問題についていろんな話し合いもあったと思うのでございます。恐らく「中期業務見積り」についてもあるいは触れられたかもしれません。ただ、しかし、大統領総理との会談においてそういった内容のものがストレートに出てくるということは、ちょっと私は考えられないのでございますけれども、その点についてきのうの外務委員会でも外務大臣は御答弁になっておられますから、私はあの答弁のように理解をしたいのでございます。  しかし、問題の考え方といたしましては、総理カーター大統領との話し合いやりとりだけじゃなくて、その前段階における国防長官とのやりとり、そういうものもひっくるめまして総体として判断せざるを得ないだろう、かように私は推測をしておるわけでございます。  アメリカから言われたから日本政府はこう受けとめるというようなことは、私ははなはだ心外に思うのであります。つまり日本の自衛の問題、防衛の問題は、これは日本国が自主的に判断すべき問題でございまして、カーター大統領総理とのやりとりの間に、恐らくは日本防衛努力を多とする評価もあったのではないか、あるいは日本の憲法あるいは経済、財政制約その他を考えまして、理解ある態度を示しつつ、一般的に日本防衛力強化というものを期待しておったのではなかろうかというふうに私は思うのでございますけれども、この点につきまして、この沖繩及び北方問題に関する特別委員会でこの問題を質問するということについてはいささかためらいも感ずるのでありますが、しかし、私は、北方領土も含む北海道の立場あるいは沖繩立場考えますと、この防衛問題についての日米最高首脳者話し合いというものは非常に大きな関心が持たれるわけでございますから、あえて私の推測も交えつつ、外務大臣首脳会談における内容の正確なる御発表をひとつお願いしたい、かように存ずる次第でございます。
  9. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお尋ねの防衛問題についてのワシントンにおけるカーター大統領大平総理会談でございますが、もちろんその首脳会談内容をそのまま申し上げるということは困難でございますけれども、概要について申しますと、まず大統領の方から、日本防衛力増強努力していることを多としており、また日本国内的制約は十分理解しているところであるが、今後とも、新しい状況に対応するために、政府部内にすでにある計画早目に達成するならば、アジアの平和と安定のために有益と考える、ということを大統領が述べたわけでございます。  これに対して大平総理よりは、第一に、われわれとしては、従来より精いっぱい努力してきたところであるが、今後とも自主的にその努力を続けていく、第二に、日本防衛力を整備する上でいろいろな制約があることを米側理解してくれていることを評価する、第三に、われわれとしても、同盟国として何をしていくべきかを真剣に検討していきたい、第四に、またアジアの政治的、経済的安定はこの地域安全保障のために最も重要であり、われわれとしては、この地域の安定に寄与するためにこれらの諸国への協力につき一層努力していきたい、対パキスタン、対トルコ、対タイへの援助も、これらの諸国安定強化のためにやっているわけだという趣旨のことを総理から言われたわけでございます。  ただいま村上委員から御指摘がありました一昨日ですか、八日ですかの一部の新聞に、たとえば「防衛費GNP一% 米、三年で達成要求」というようなことについての記事がございますけれども、これはバンクーバーで今度の旅行全般についてのブリーフをいたしましたときの話が土台になっておるように思いますけれども、多少誤解を招くような表現が使われておるように思います。  たとえば「三年で達成要求」ということはいままで言われたことはないわけでございますが、計算するとそういう計算にもなる。つまり「中期業務見積り」でございますが、それは防衛庁内部計画で、もともと五十五年から五十九年までの五年間の計画見積もりになっておると承知しておりますが、それを一年程度前倒しにできないかというのは、三月に私がブラウン長官に会いましたときの先方の発言であったわけでございます。新聞の方では、恐らく、五十五年はそういう意味で余り動いてなかったから、五十六年から五十八年まで、五十九年を一年繰り上げてということになると三年になるという意味で「三年」という見出しをつけたのじゃないか、これは私の想像でございます。ただ、従来ブラウン長官からありました話は、五年の業務見積もりを四年でできないか、そういう趣旨でございまして、それをわざわざ「三年」と書くといろいろ誤解を生ずる面もあるのじゃないかと存じます。  それから総理カーター大統領会談は、ただいま申し上げましたような趣旨で何ら具体的なことを総理発言しているわけではございませんで、カーター大統領発言も「中期業務見積り」ということは一言も触れておらないわけでございまして、「すでに日本政府内部にある計画」というような言い方をいたしておるわけでございます。これは多分「中期業務見積り」のことだろうという推定はできますけれども大統領がはっきりそういうことを申したわけではございませんで、総理のお答えの方も、防衛の問題について真剣に検討していきたいという一般的な返事をいたしたわけでございます。  それから一%問題というのは、これは昭和五十一年の「防衛計画大綱」と、もう一つ防衛費についてはさしあたり一%以内をめどとする」という国防会議及び閣議決定がございまして、それをめどとするということでございますが、最近四年だ、五年だ、一%だといろいろな議論がございますけれども、仮に一年繰り上げて五十九年を五十八年に達成する。これも防衛庁の問題でございますから、私どもから余り内容に立ち入って申し上げることはどうかと思いますが、ただ、それにしても一%という昭和五十一年における閣議決定国防会議決定の線を越えるものではございませんで、私どもも、近ごろのいろいろな論議についての報道等を見ますと、何か非常に大きな変化が起こるというような報道ぶりも多いのでございますけれども、これはどうも事実と反するように印象を受けておるわけでございまして、五十一年のそういう国防会議閣議決定の線を決して逸脱するものではございません。米側要求も、五年というのを一年ぐらい繰り上げることはできないか、もちろん日本の持っておるいろいろな制約について十分承知しているのだがということで、ここに来まして何か急に従来の方針が変わって、防衛費を非常に大幅にふやして、それによって福祉、厚生等を大きく圧迫するような方向転換が行われるのではないか、しかもそれがアメリカ側要求によって行われるのではないかというようなことが一般に伝えられているようにも思うのでございますが、いま申しましたようなことで、その枠として従来の考え方を決して踏み出すものではございませんし、また、外からの要請ということもございますが、確かに日米安全保障条約を結んでいる相手方でございますし、相手方防衛についての、これは世界全体にわたる国防という問題を考え立場アメリカ側考え方というものはございますけれども、本来、これは総理も繰り返していろいろな機会に述べておることでございますけれども防衛という問題は、国際情勢とそれからわが国財政事情とそれから国民コンセンサス、こういうものに基づいて自主的に決めるものであるということの立場は変わっておらないと存じます。  以上が大体の考え方かと存じます。
  10. 村上茂利

    村上(茂)委員 詳細な御答弁をいただきまして、トップ会談の話の内容も大体了解をすることができましたが、防衛問題につきましては「中期業務見積り」というものが何か非常に大きくクローズアップされたようでございますけれども、これは政府正式決定のものではない、防衛庁内部一つ作業案であると私は理解しておるわけでございます。その一年繰り上げとかいろいろございましても、内容的に果たしてそれが適切なものであるかどうかという点については、五十一年の作成にかかるものでありますからいろいろ問題もあるだろうと思うのであります。  そこで、防衛問題が昨今特に重視せられ、いろいろな議論もあるわけですが、けさのある新聞を見ますると、アメリカ側文書日本防衛体制欠陥指摘したという内容のものが、ほとんど全文とも見られるような形で掲載をされておりました。実は私は、この内容はプライベートにある程度聞いておりまして、その内容とほとんど同じなものですから、これは新聞の伝うるような米政府提出した文書であるとか、そういう種類のものではないと私は想像しておるわけでございます。  そこで申し上げたいのは、国民立場から見ますると、防衛庁では「中期業務見積り」の検討をやっているようだが、ところがアメリカ側から、いまの防衛体制なり防衛力の問題についてずばり欠陥指摘された。一体「中期業務見積り」でいいのかどうか、大変どうも、ずばっと適切なことも言っておるじゃないか。今後の日本防衛考えます場合に一体どっちでいくのだろうかというような、錯乱したような理解の仕方を国民が持ってはならない。私どもとしましては、防衛というのは、世界的なあるいは日本を取り巻くいろいろな情勢に対応いたしまして、必要に応じて防衛力強化とかそういうものを考えるべきでありまして、固定概念で事を処理しようとしましても、流動する変転きわまりないいろいろな情勢に対応できない、むしろ必要性前提にしまして着実なる検討をすべきだと考えておるのであります。その「中期業務見積り」の前倒しとかなんとか言っておりますけれども、一方においては、アメリカ政府正式文書じゃないと思いますけれども、こういうものが明らかにされて、日本防衛体制欠陥指摘しておる。さまざまな考え方がありますけれども、そういう二重写し、三重写し議論ではなくして、防衛庁としてはこんな考えでいきたいのだ、そういう考えを明らかにすることができましたならば、可能な限り表明していただきたいと思います。
  11. 原徹

    原政府委員 まず最初に、けさの読売新聞に出ました記事、これは米国政府防衛庁に何か文書指摘をしたというようなスタンスで書かれておりますけれども、それは事実に反します。あるアメリカ軍事専門家が特定のグループの中で講演をされたものであると承知をいたしております。  その中身につきましては、いろいろ書いてございますけれども、私どもは、例の「中期業務見積り」をつくりました際、自衛隊においていま何を改善すべきかという点がいろいろございますので、そういう点を中心に「中期業務見積り」をつくったわけでございまして、いろいろ指摘されている点の多くの点について私ども認識とそれほど違いがない、したがってそれは改善を要すべき点である、そういうふうに認識をいたしております。  自衛隊の全体を見ましたときに、大きく申しまして、一つ装備が非常に旧式なものが多い、新式のものもありますけれども、旧式なものが多い。たとえばいまの護衛艦につきましても、六十隻ぐらいのうちミサイルを積んでいるのは現在四隻しかないというようなこともございます。あるいは、いわゆる継戦能力と申しまして、弾をどのぐらい持っているかということ、昔はかなりと申しますかあったのでございますけれども、食いつぶしてしまって非常に少ない弾しかないというような継戦能力の問題。あるいは抗たん性と申しまして、たとえばいまのレーダーサイトあるいは基地について、たとえば戦闘機がシェルターに入っていないというようなところは世界じゅうほとんどないというように、いろいろ改善を要すべき点があるわけでございます。  したがって、装備近代化をしなければならないことが第一点、継戦能力をつけなければいけないこと、それから抗たん性を増していくというような点について、私どもはできるだけ努力をしてまいりたい。  私どもはまさにそういう見地に立ちまして、アフガン以後の国際軍事情勢につきまして非常に厳しくなっているという認識を持っており、その認識につきましては、アメリカもそうでございますし、NATO諸国もみんな同じ認識を持っている。要するに、ソ連軍事力の増大はグローバルなわけでございまして、そのグローバルの一環として極東においても非常に増加をされているということでございます。そういう同じ認識に立っているわけでございますから、同じ認識に立って、しかもアメリカは非常な努力をする決心をいたし、そうしてまた、NATOにおいてもそういう決心をいたしておるわけでございます。  となれば、私どもといたしましても、当然のことでございますけれども、できるだけ早い機会に、少なくともいまの「防衛計画大綱」の水準には持っていく必要があると考えておりますので、そういう見地に立って、これは制度上そうなっているわけでございますが、「中期業務見積り」の見直し作業をいま進めておる、そしてその作業に基づいて来年度の概算要求をしていきたい、そういう考え方でございます。
  12. 村上茂利

    村上(茂)委員 防衛問題につきましては申すまでもなく日本の特殊な制約もあるわけでございますが、問題は、内容的に国民コンセンサスを得られまして、そして、現在の激動する国際情勢に対処し得るような内容のものを確立していただきたいと私どもは希望するわけでございます。  時間の関係がございますので、次の問題に移らしていただきます。  ソ連大使ポリャンスキーさんが七日の外人記者クラブ発言がございまして、新聞報道されておりますが、国会におきましても、かねてから、北方領土問題の解決促進に関する決議を、わが委員会におきましては三月七日、また本会議におきましては三月十三日に決議をいたしておるわけでございますが、国民的な要望であります北方領土問題解決促進という観点から見ますると、まさにこれを完全否定するような発言と私どもには受け取られるわけでございます。  私個人といたしましては、一昨年の訪ソ国会議員団として訪ソもいたしております。ポリャンスキー大使とも話をしたことが数度ございまして、日ソ親善をこいねがうことにかけましては何人にも劣らないという気持ちで私はおりますけれども、ただ現下の情勢から見まして、報道の伝えるところの内容を見ますると、北方領土の問題につきましてはかねてから強硬な態度を持しておるわけでございますけれども日ソ間には領土問題は存在せず、そのことについて議論するのはむだだ、こういう立場を繰り返し主張しておるようでございますが、今回の記者会見における発言におきましては、極東地域でのソ連防衛能力強化は、この地域軍事政治情勢と結びついていないと考えてはならない、こういう発言があったようでございまして、この極東地域防衛強化が日中あるいは米中接近に対する対抗措置であるかのような印象を強く与えるわけであります。  この発言に関連しまして、本委員会におきましても、衆議院の本会議におきましても、北方領土問題の解決促進に関する決議を採択しておる立場上から見まして、このポリャンスキー大使発言については、このままにしておくのかあるいは外交的な何らかの抗議措置をとるのかどうか、私はその点を聞きたいのであります。  いかに親善関係にあろうとも、日本立場から主張すべきは堂々と主張すべきである。事なかれ主義で、何を言われようとも黙っておるという態度は、かえって将来の真の友好関係を確立するために阻害要因になる。言うべきことははっきり言ったらよろしい、私はかように考えるものでございますが、この発言に対して何らかの外交的な措置をとられるかどうか。  それから、この発言に関連いたしまして従来、択捉、国後さらには色丹島に軍事力強化した、これをわが国はどう受けとめるのかという点について、潜在的な脅威が増大したとかいろいろな発言をしておりますけれども、果たしてそれでよいのかどうか。その認識につきまして、私は、外務省のみならず防衛庁に対しましても、この点をただしたいのであります。  時間の関係上もう一つ質問をいたしますが、佐藤内閣時代は、国連総会におきまして、北方領土返還につきまして、代表の演説に必ずと言っていいほどこれが挿入されておった。ところが最近、国連総会における発言におきまして、北方領土返還要求発言がだんだんなくなってきたということを私ども承知しておるのでございますが、国民要求である北方領土返還問題につきましては、国連総会という場をとらえまして、繰り返し繰り返しわが国の主張の正当であることを強調すべきであると私は考えておる次第でございます。今後における国連総会において北方領土返還問題について発言をする意思があるかどうか、この点もお尋ねしたいと思います。  質問は以上でございます。
  13. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御発言のありましたポリャンスキー大使外人記者クラブにおける発言でございますが、この発言の中では、かなり具体的に、ソ連極東における防衛問題について触れておるように存じます。ただ、これに対して抗議を正式に申し入れるかどうかということにつきましては、これはそういう記者クラブでの発言でございますから、そのものをとらえて政府から正式に申し入れをするということは、現在のところは考えておらないわけでございます。  それから、国会の御決議もございまして、この北方領土返還問題について、この前、モスクワの日本大使からフィリュービン・ソ連外務次官に、正式に国会の御決議を先方に伝達をいたしたわけでございます。これに対して、領土問題解決済みという同様の返答があったわけでございますけれども政府としても、いろいろな機会をとらえて粘り強く、この問題はソ連側に申し入れを行っておるという状況でございますし、また、北方四島のうち三島における軍事基地の設定についても強く抗議を提出いたしておるわけでございます。  国連の場における発言、これは最近では、昨年の総会の第一委員会で、日本の代表から北方領土の問題に触れた発言をしておりまして、佐藤元総理の御発言も当時あったわけでございますが、その後も折に触れて発言をいたしておるわけでございます。昨年の分は大川大使からの発言の中に、この軍事行動の自制ということに関連して、わが国の例を挙げて、わが国返還を求めている日本の固有の領土において、最近新たな軍事力の配備が行われ、日本国民の不信と不安を増大させているということを国連の第一委員会発言いたしております。将来におきましても、機会を見ながら、国連の場でも発言する適当な機会がございましたら、そういう努力を続けていきたいと考えております。
  14. 原徹

    原政府委員 北方四島にソ連軍が地上軍を配備をいたしたということでございますが、その点につきましては、私どもは先ほども申しましたが、グローバルな意味ソ連軍の増強をされている一環であるというふうに考えておりまして、それは潜在的脅威の増大であるというふうな認識を持っているわけでございます。  この「潜在的」という字をつけますのは、「脅威」というのはもちろん意図と能力の問題で、意図は必ずしも明白でない。したがって軍事能力を十分注目して、あるいは警戒的な態度でそれは見るというのが「潜在的脅威」という意味でございまして、「潜在的」という意味をつけたから、それで別に安心しておってよろしいという意味で言っているのではございません。ただ、意図は明確でないから「潜在的」とか、こう申すわけでございまして、そういう認識に立っているわけでございます。
  15. 村上茂利

    村上(茂)委員 ちょっとそれに関連して。ところが、今度のポリャンスキー大使発言というのは、従来ソ連防衛問題については何ら発言がなかった。今度はきわめて明確な発言があって、しかも日中あるいは米中の接近と関連をして、対抗的な意味防衛力強化しているんだ、こういう考え方を私はくみ取れるわけであります。これは、情勢いかんによっては将来軍事力を行使するぞという予告宣言のような、穏やかならない理解の仕方もできるわけでございます。したがいまして、こういったソ連考え方につきましては、絶えず正確な認識国民に与えながら、事を処理していただきたいと私は考える次第でございます。  時間がございませんから答弁は必要ございません。  質問はこれで終わりにいたします。
  16. 河村勝

  17. 上原康助

    上原委員 きょうは時間がちょうど三十分しか割り当てられていませんので、お尋ねしたい点はたくさんあるのですが、なかなかうまくいきそうもありませんが、若干お尋ねをさしていただきたいと思うのです。  まず冒頭、いまの御質問者の内容とも関連するのですが、北方領土問題について最初にお尋ねさしていただきたいと思います。もちろん北方領土返還問題、あるいはわが国固有の領土であり、そこにソ連が軍備的措置といいますか配置をするということに対しては、私どもも一貫して反対する立場をとっておりますし、最近その軍備力の配備というのが強化をされている傾向にあるということにつきましても、承服しがたいという立場をとっております。しかし、同時に、この問題につきましては、冷静かつソ連の意図なりあるいはアジア情勢、いろんな面で、客観的にも主観的にも十分な判断をした上での外交措置というものを講じなければいけないと私は思うのです。  そういう立場で少しお聞きをしてみたいわけですが、まず最初に、防衛庁は、五十四年の二月一日に「国後・択捉島地域における最近のソ連軍の動向について」というのを発表いたしました。これも実際内容をある程度検討してみますと、なかなか断定したことは言っていないわけですね。ソ連軍の動向について国後、択捉に対しても。  たとえば「現状」というところでは「防衛庁は、各種の情報から判断して、昨年夏以降、国後・択捉両島地域に相当規模のソ連地上軍部隊の配備及び基地の建設が行われているものと推定している。部隊の規模、種類等の詳細については、なお、確認の努力中である。」こういう表現をとっておりまして、さらに、これは今年の予算委員会提出をされたもので、五十四年の十月に発表されたものですが、「北方領土に配備されている部隊の規模は、現段階において正確に判断できないが、師団規模に近づきつつあると推定している。」、実際問題としてあくまで推定の域を出ていないわけですね。にもかかわらず、いまにも北方領土ソ連の大軍が軍事措置を行われて、あたかも北海道なりわが国に対する侵攻なり、軍事的な何らかの措置がとられかねないかのような印象国民にこの二年前後与えてきている。さらに、昨年末のアフガン問題に加えて、国民に非常に危機感を与えて、意図的に自衛力なり防衛力強化ということにいま突っ走ろうとしている。ここに私たちはなお注目をせざるを得ないわけですね。  したがって、いま私が二つほど指摘をいたしましたが、一体北方領土に対して、数量的にも実態としてどういう軍備の配置がなされているのか。これは明確にできますか。
  18. 原徹

    原政府委員 わが国北方領土に地上軍が配備をされたそのことについては、別に推定ではないのであります。数量がどのくらいかというところについては師団規模程度であろうという推定をいたしておりますが、いろいろの情報を総合すれば配備されたことは確実でございまして、それを私ども極東ソ連軍の増強の一環であるというふうに考えておりますし、それはまた客観的な事実であろうと私ども考えておるわけで、何かこう意図的にそれで防衛力の増強を図ろうということではないのでございまして、非常にクールに判断をいたしておるつもりでございます。
  19. 上原康助

    上原委員 私も、配備をされているそのことを全面的に否定しようという立場はとっていないのです。それは冒頭申し上げたように、配備されているかもしらぬ。それから、皆さんのものだって断定じゃないわけですね。そうしますと、きょうは時間がありませんので、これは短時間ではとてもできない議論なんですが、師団規模といいますと、ソ連の地上軍の兵員数から言うと一万三千名ですよね。あなたは数量的にも否定しないと言うのだが、一体どのくらいの地上軍がおって、どういう装備をしておってという、そういう中身も明らかになっておるのか。それはなっていないわけでしょう。あくまでそういう面は推定でしょう。そこが問題だと言うのですよ。師団規模というと一体地上軍としては兵員数はどのくらいで、その兵員はどういう装備をしているのですか。
  20. 原徹

    原政府委員 兵員数は一万人弱ぐらいというふうに推定をいたしております。  それから、どういうものを持っているかと申しますと、戦車とか火砲とか対空火器、それから通常の自動車化狙撃師団では持っていない百三十ミリのりゅう弾砲、あるいは攻撃用のヘリコプターでMI24、ハインドと言っておりますが、その他対空ミサイル等も配備されている、そういうふうに考えております。
  21. 上原康助

    上原委員 色丹にはどういうふうな配備だと見ていますか。
  22. 原徹

    原政府委員 色丹島におきましても、火砲あるいは対空火器あるいは装甲兵員輸送車、そういうようなものが配備されていると考えております。(上原委員「人員は……」と呼ぶ)人員につきましては、これはまだ詳細わかりません。施設の規模等で推定をすると、二千人ぐらい入るような施設ができつつあるということでございますけれども、どのくらいになるかちょっと確認はできておりません。
  23. 上原康助

    上原委員 そこで、これは後日の議論に譲らざるを得ませんが、そうしますと、皆さんが、そういう配備をしているという推定なりいろいろ情報収集というのがあるわけですが、どういうルートでそういう確認はなさっているのか。その点については明らかにできる範囲でやっておいてください。
  24. 原徹

    原政府委員 大変恐縮でございますが、いろいろな各種の情報を総合して判断をいたしておりますので、その情報源を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  25. 上原康助

    上原委員 何も情報源を明らかにせよと言っているのじゃないですよ。少なくとも防衛庁が公にする、国民の前にこういうソ連軍の配備がなされていると言った以上は、ある程度信憑性がなければいかぬわけでしょう。肝心なところになるといつもごまかすようではだめですよ。
  26. 原徹

    原政府委員 防衛庁の情報体制は、監視あるいは通信情報その他ございます。また、米軍とも情報交換はいたしております。そういう各種の情報を総合いたして、そういう判断をいたしているわけでございます。
  27. 上原康助

    上原委員 少なくとも、日米合作であるということはいま少しわかった。  そこで、後ほど外務大臣にお尋ねしたいわけですが、先ほどの御質問者への御答弁にもあったのですが、潜在的脅威だ、意図は定かでない、しかし警戒は怠っていない、もちろんそれは軍事論というか防衛論の立場ではわかりますよ。固有の領土である一部にそういう他国の軍事展開がなされている、したがってそれに対しては何らかの関心を払わざるを得ない、あるいは予防措置を講じねばいかぬということは、論理的にはわかる。しかし、問題は、この動きということは、先ほどもありましたが、ソ連側は、日中の接近、米中の接近、場合によっては日中米といういわゆる三国のソ連に対する対抗措置として、そういう展開をやらざるを得ないという発言もあるわけですね。  そこで、防衛庁は、潜在的脅威だということで、この北方の脅威を想定しての何か大規模の軍事演習といいますか、自衛隊の配置がえ、そういうものを近々行うというような報道もなされておりますね。そうしますと、ますます北方領土をめぐって、北方をめぐっての緊張の新たな創出にならないのか。そういう計画があるのですか。あるのかないのかだけきょうは明らかにしてください。
  28. 原徹

    原政府委員 これは毎年やっております、他方面の部隊が、北海道に矢臼別という非常に大きな演習場がございますが、その演習場を使ってやる演習でございまして、その際、ことしでございますと、西部方面隊の第八師団の中の約人員三千名を輸送するということが一つの訓練でございます。輸送して、それで着きましたら、矢臼別で演習をするということでございまして、これは毎年やっている演習でございまして、特別そういうことを意識したものではございません。
  29. 上原康助

    上原委員 そこで外務大臣にお尋ねしたいわけですが、いま北方領土返還については、ソ連側は、そういう領土問題についてはもう日ソ間に外交課題として残っていないと言い切っておるようですが、われわれはそういう立場はとらない、その点は少なくとも、その面では政府の見解と一致しているわけですね。  そこで、アフガン問題あるいはオリンピック問題、いろいろあって、日ソ間の関係も一時期より相当冷え切っていることは否定できないと思うのです。しかし、一方においては、せんだっての日ソ漁業交渉等においては、やはり友好関係を両国とも維持していこうという外交努力もなされていることは、これは御承知のとおりです。だから私は、やたらに防衛力強化とか、北方にソ連軍が配備をされたからそれ大変だというような、そういうナショナリズム的な宣伝とか感覚じゃなくして、いまこそ冷静に対ソ外交というものを、外務省は積極的にこれらの問題を含めてやらなければいかぬのじゃないのか。新たな緊張状態を北方地域につくるということは、私はやはり日本のとるべき外交の道じゃないと思うのですね。軍事対抗措置でこの問題は解決できないと思うのですよ。その点に対してどのような御見解を持って、今後対ソ外交をどのようにお進めになろうとしておるのか。懸案事項を解決をしていくための一つの糸口をつかむ、むしろある意味ではチャンスでもありますよね。私はそう思いますよ。どのように御努力をいただこうとしておるのか、北方問題に対する所信をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  30. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外交の大きな基本的な役割りといたしまして、国民の安全を保障するということ、それから国民の経済、生活を守るということが日本にとって特に重要な外交の役割りだと思います。時代により、国によっては、軍事力を背景にした外交を進めるという場合もあるわけでございますけれども日本にはそういう意図は全然ございませんで、専守防衛に徹するというたてまえでございます。  ただ、国民の安全を守るという重大な政府の責任がございまして、これはやはりある程度万一の場合に備えなければならないという点は、一つ国民が存続していく以上、重要な政府の役割りでもあるかと思うわけでございます。各国の公正と信義に依存して、とにかく日本に対する武力攻撃は絶対ないということであることが願わしいわけでございますけれども、現実の世界情勢、まだ人類はそこまで発達してないと申しますか、世界各地でいろいろな形での武力行使が行われているということも事実でございまして、やはり日本国民の安全をどうして図るかということは、これは単に政府だけではなくて、日本国民一人一人が真剣に考えなければならない問題だと思います。  同時に、お話のようにこういう問題については冷静に取り組んでいかなければならない、このことはもちろんでございますし、対ソ連の外交関係におきましても、冷静にしかも粘り強く交渉、話し合いを続けていくということがきわめて重要だと思いますし、今後もそういう方針でまいらなければならないと確信いたしておるわけでございます。大体の筋としてはそういうふうに思います。
  31. 上原康助

    上原委員 それは、外務大臣失礼ですが、思っているだけじゃだめなんですよ。私がお尋ねしているのは、大臣のお考えはわかる。外交哲学というか姿勢というのは、この間の安保特別委員会でも言っておられたし、予算委員会等でも聞いたから、私でもある程度わかる。私が申し上げているのは、相手は日中あるいは米中の接近、場合によっては日本を含めた、よく言われている対ソ連包囲網をさせちゃならぬという、そういう対抗措置があると判断される材料もあるわけでしょう。しかし、日本は、そういう立場で日中平和友好条約を結んだのじゃないのですよね。日本の外交姿勢としてはそうですね。だから私は、この時点で、北方問題を含め、またそういった軍備的配置を含めて、それに対して新たに外務大臣が出向くか、場合によっては特使を送るか、対ソ外交のアクションを起こす必要があるのじゃないかということをお尋ねしているのですね。ただ、向こうがそういうことをするかもしれぬ、それならわが方も構えようということでは問題解決にならないのじゃないですか。それはまだその時期じゃないという御判断ですか。この北方問題、対ソ関係については、少なくとも何らかの行動を起こす必要があるのじゃないですか。そこをお尋ねしているのですよ。
  32. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本の外交といたしましては、世界の国々との友好関係の維持というものはやはり一つの大きな基本でございますし、機会を見出しつつあらゆる国との話し合いをするということは、私もきわめて大事なことだと思っております。  ただ、現状におきまして、特にアフガニスタンに対するソ連の直接的な軍事力の行使ということは、やはり世界に大きなショックを引き起こしたことでございますし、国連総会でも、多数の第三世界の国々を含む百四の国が、即時撤兵を求める決議に賛成をいたしたような状況でもございますので、やはり相互の信頼というものが必要でございまして、日本は相手を信頼する、相手は日本を信頼しないというような関係での交渉というのでは、これまた話にならないわけでございます。やはり、たとえばソ連がアフガニスタンから撤退するというような、平和的な意図を行動で示してくれることがあれば、これは日本としてもソ連との関係話し合いが非常にやりやすくなるわけでございます。  いまのような情勢で、もうしばらくこの世界情勢、これはヨーロッパの動きも最近いろいろございますが、その他第三世界の動きなども見ながら、日本としてのとるべき手を考えてまいりたいと存じておるわけでございますが、いますぐがそれに適当な時期かどうかという点では疑いを持っておるわけでございます。
  33. 上原康助

    上原委員 もう少し議論を深めたいのですが、いますぐというとらえ方の問題もありますが、アフガンからの撤退が明確にならないと対ソ関係の修復というか、そういう話し合いの場は持ちにくいのだという言い分かと思うのですが、それも一つの言い分でしょうが、しかしそれは、アフガンからの撤退をやりなさいという点も含めてやるという手もあるのですよね。いまのそういう消極論ではだめですよ。外務大臣のフレッシュさも、だんだん大平内閣の何か変なところに染まって後退してしまっている。そういう消極的なことでは私はこれは解決策にならぬと思うんで、特にわが国は、中近東問題だけじゃない、アフガン問題だけじゃないでしょう、目の前に北方領土という重要課題を抱えているのですよ。しかもそこでの緊張状態というものがややもすると大きくなっていく、激化していくという状況の中では、いま少しそういった多角的といいますか、多方面の立場で外交姿勢というものを確立してもいいんじゃないのか。アメリカがやるからとか、欧州が、ECがどうだからということだけでは、それは自主外交ではないですよ。そのことは強く指摘しておきたいと思うのです。  そこで、時間がありませんから次に移りたいのですが、先日の安保特別委員会でもわが党の石橋委員からお尋ねがあった点ですが、きのうの外務委員会でもちょこっと出たようですが、例の四月二十五日でしたかのイランの米大使館の人質救出作戦といいますか救出出動との関連で、いわゆる沖繩の嘉手納基地からC130が出動といいますか、出動したとわれわれは推定をしているわけですね。そこで、もう一遍事実関係を調べて報告をするということになりましたので、その報告を改めて受けたいわけですが、一体この救出作戦に出動したのはC130なのかMC130Eなのか、この点についてまずお尋ねしたいと思うのです。
  34. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 過日、安保特別委員会でいま御指摘のような御質問がございました。その際、政府側から、情報収集してその点を御回答申し上げるというお話がございました。外務省といたしましてもアメリカ側に対して直ちに照会いたしました。その結果、アメリカ側は、イラン救出活動に参加したのはC130だということで、それがMC130かあるいはHC130かということは明言しておりません。ただC130であるということを言い、かつ、救出活動との関連で、救出活動に従事したC130はすべてアメリカの本土から出たものであると理解して差し支えない、ということを当方に回答してきております。
  35. 上原康助

    上原委員 その回答はいつで、どこからですか。
  36. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 回答の時期は五月二日でございます。回答の経路は、ワシントンのわが方の大使館に対してございました。
  37. 上原康助

    上原委員 そうしますと、沖繩の嘉手納空軍基地から出動といいますか出撃したものではないということをはっきり答えたわけですか。それが一つ。  いまC130とは言っているけれども、MC130Eとは言っていないということですね。この第一特殊戦飛行隊に配属されているMC130Eというのは——第一特殊戦飛行隊はフロリダ州ハルバードフィールドの空軍基地に司令部を置いておりますね。戦術航空軍団の第一特殊戦航空団に所属をしている。これは五個特殊戦飛行隊の一つなんですね。それで沖繩に配備されているMC130E、これは特殊部隊の敵地降下、回収を隠密裏に行うために、特殊装備を施したC130戦術輸送機改造型なんですね。したがって、私たちは、C130と言っているけれども、やはりこのC130の改造型のMC130Eと見ているんです、あくまでも、いまでも。このことについては、その四月の二十三日ごろから二十九日ごろまで、現に嘉手納空軍基地からこの飛行機が姿を消したという事実、これについてはではどう弁解なさるのですか。  この二点について……。
  38. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 日本側がアメリカ側から得ている情報は、人質救出に従事したC130はすべてアメリカ本土から飛来したものであるというふうに理解しております。  第二点の、それではその沖繩との関連で、特定の日に沖繩の飛行機がどこに行き、どこに飛来したかということについては、アメリカ側としては、オペレーショナルな理由から日本側に対して明らかにできないということを言っております。従来からアメリカ側は、具体的な日時、場所におけるアメリカ側の飛行機の一機あるいは一つの艦の行動については、作戦上の理由から明らかにできないという態度をとってきておりまして、その関連で、今回も、特定の日にちにおける嘉手納基地のMC130の動静については明らかにできないということを言ってきております。わが方としても、このような軍隊の属性という点からも、アメリカ側立場理解できるというふうに考えております。
  39. 上原康助

    上原委員 時間がなくなってしまったので、あと二分か三分くらいしかありませんが、そうしますと、一つだけ確認しておきたいのですが、オペレーショナルな行動だということで明らかにできない、それは、従来から皆さんがそういうふうに回答を拒否してきたことなんです、重要なことになると。少なくとも二十三日から二十八日ないし九日ごろまで嘉手納のMC130Eが姿を消したという事実は否定しませんね。
  40. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 現在、いま御指摘の日時において嘉手納飛行場から一定の飛行機がいなくなったということについては、私たちとしては新聞報道以上には承知しておりません。
  41. 上原康助

    上原委員 それはアメリカ側に確かめてくださいよ。  それでは外務大臣、この件については、せんだって大平首相の訪米に同行なさって、米側話し合いなさったのですか。あれだけ国会で問題になって、皆さんは事実関係は明らかにして報告するという約束をなさっているわけですよ。どうなんですか、それは。
  42. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 総理大統領会談にはこの問題は出ませんでした。別途、先ほど北米局長から申し上げましたように確認をいたしたわけでございますが、その場合に、このイランにおける人質救出作戦に出動した130は本土から発進しました、という回答を得たわけでございます。
  43. 上原康助

    上原委員 時間が来ましたので、これで終わります。
  44. 河村勝

    河村委員長 玉城栄一君。
  45. 玉城栄一

    ○玉城委員 最初に外務大臣にお伺いしたいのですが、昨日お帰りになられましたので、基本的な点についてお伺いしておきたいわけであります。  認識の問題として、今回の日米首脳会談というものは、これは私の受けとめ方でありますけれども、歴代の内閣が訪米されまして首脳会談をされたということと今回の首脳会談というものは、基本的な面で、二つの点において違いがあるのではないかという感じがするわけです。  その一点は、従来は、超大国であるその米国を訪米されたという報告あるいはパートナーシップの関係であった。しかし、今回はワン・オブ・ザ・パワーズということを総理が訪米前におっしゃっておられるわけであります。いわゆる強国の一つであるという意味でしょうか。大臣もやはりそういう御認識でおられるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  46. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカの国力といいますか力と申しますか、これはいろいろな見方があると思いますが、経済の方から見れば、いまから二十年ほど前には世界GNP、共産圏を含めました経済力の大体三分の一でございましたが、近年ではこれが大体四分の一弱に下がっておるという点は事実としてございます。第二次大戦後しばらくの間のアメリカは、経済力におきましても軍事力、技術力あるいは政治力というようなあらゆる面で、圧倒的な強さと重みを持っておったことも事実だと思います。そういう時期に比べれば、相対的に見てアメリカの力というものが当時より下がっておることは事実でありまして、一方、日本は、その同じ期間に、GNPで見ますと、共産圏も含めて世界全体の三%から八%にふえておるということで、相対的に経済力が世界の中で大きな比重を示すようになった。この間に、日米の経済力の相対的な比率は十対一から二・五対一ぐらいの比重関係に変わったという事実はあるわけでございます。そういう意味で、総理が、アメリカは強国の一つであるという発言をされたのではないか。広島で総理発言されたわけでございますが、趣旨は恐らく、アメリカが圧倒的に大きな力を持っていた時代と現在は大分情勢が変わっておる、日本人自身も日本自身の将来なり安全についてももりと考えてみなければならないのではなかろうか、という趣旨発言をされたものと了解しておるわけでございます。
  47. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまのお答えからしますと、当然外務大臣総理と同じような認識であるということでよろしゅうございますね。
  48. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまのに一つだけつけ加えたいのでございますが、ただ、あれだけの大きな大陸で両方海で隔たれて、食糧におきましてもソ連を含めて年々一億トンもの穀物を外に供給する力がございますし、エネルギーにつきましても必要ならば国内の資源で自給できる、軍事力におきましてもとにかくソ連と並ぶあるいは見方によってはソ連を超える力がある、こういう意味でのアメリカの持つ力というものも、かつてと比べれば相対的に下がっておりますけれども、しかし、現在の世界の中で最大の強国の一つであることは間違いないと思います。
  49. 玉城栄一

    ○玉城委員 端的にいわゆる超大国というお言葉を使っておられましたけれども、そうではないんだ、ワン・オブ・ザ・パワーズという認識外務大臣もいらっしゃるということで受けとめていいわけですね。そのことだけをお伺いしたいわけです。
  50. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私は、どちらかというとまだ超大国だ、ただ昔ほどの圧倒的な力はもうない。
  51. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、昨日外務大臣がお帰りになりまして、外務委員会で「同盟国」という言葉が今回頻繁に使われたわけでありますけれども、それはどういうことなのか。いわゆる日米安全保障条約があるからということなんですが、そのとおりで受け取ってよろしゅうございますか。それも簡単に……
  52. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その点は、外務委員会で土井たか子さんの御質問にお答えした場合に、日米安保条約も一つの要素であるけれども、もっと広い意味での関係だと思うということを申し上げたわけでございます。たとえば自由な言論機関の存在とか、選挙によって政府が交代し得る民主的な議会制度の存在とか、そういうものを共通にしている国の関係だということも含めて同盟国ということが言えると考えるわけでございます。
  53. 玉城栄一

    ○玉城委員 従来は友邦あるいはパートナーシップとか、それがなぜ今回同盟国であるという言葉を使われたのか、簡単におっしゃっていただけませんか。
  54. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは総理発言でありますから直接にはお確かめ願った方がいいと思うのでございますけれども、私の解釈では、いまのような自由な議会主義、民主制の国々、その主要なものとしてはアメリカ日本、ヨーロッパ諸国があるわけでございますけれども、それらの国々の力がばらばらにお互いに分裂してしまった場合には、自由な民主主義制度そのものも危険な状態に置かれるのではないか、やはり協力してそういう制度というものを守っていく。自由な言論もない、野党もないという政治制度は、これらの地域に住む人々、いわゆる自由な民主制度を持つ国々の人々の大多数にとっては、好ましくないというような意味での共同の価値観があるのではないか、そういう点がアフガニスタン問題等を契機として意識されるようになってきた、というようなことが背景にあると考えるわけでございます。
  55. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっとお伺いしたいのは、自由な民主主義制度とか、おっしゃったようなそういう危険な状態に置かれたら困るということで、ばらばらではなくて協力し合ってそういう制度も守っていこうというようなことになりますと、やはり軍事的な側面も出てくるということも考えられるわけですけれども、いかがでしょうか。
  56. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど日米安保という関係も含めてと申し上げたわけでございますが、ただNATOの場合などと根本的に違いますのは、軍事的な面では片務的と申しますか、日本が外敵によって攻撃を受けたときに米国がこれに対しての防衛協力をするということになっておりますが、その逆の場合は安保条約の中にはないわけで、アメリカが攻撃された場合に日本がこれを軍事的に援助する義務は全然負っておらない。これはまた、平和憲法のもとで日本にとって集団的な自衛には参加できないという基本的な立場があるわけでございまして、こういう意味では他の国々の場合と違うと考えておるわけでございます。
  57. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、今後は友邦であるとかパートナーシップという言葉は使われずに、わが国同盟国である、そのようなことになっていくわけですね。その点いかがでしょうか。
  58. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 総理も、同盟国と言われた場合に、それほど厳密な意味で言われたわけではないと思いますので、明後日帰国されますし、私もその点についての総理の意向も確かめてみたいと思います。
  59. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっとこだわりますけれども、簡単でいいですが、中国の場合は、わが国同盟国あるいは友好国、どちらというふうに受け取っていいわけですか。
  60. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 友好国だと思います。
  61. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、先ほどの御質疑にもございましたけれども、今回の日米首脳会談における国民の非常に大きな関心の問題は、防衛費の増額の問題なんですね。きのうの外務委員会で、大臣はたしかこういう趣旨の、わが国防衛費を増額しないということは約束違反になるんだという趣旨のように承りましたけれども、それでよろしゅうございますか。
  62. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 たしかあの際の質問は、全然防衛費の増額がない場合をどう思うかという御質問がありまして、それについては、日米間の状況からいって、日米の関係にある程度の影響があるのじゃないかと思うという趣旨で申し上げたわけでございます。
  63. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、いまおっしゃいましたように、次の予算におきましてわが国防衛費が増額しないということになると、日米関係にある程度の影響があるというようなお答えですけれども、増額しないと当然アメリカから文句が来るわけでしょうね。日米関係に影響が出てくるわけですね。そのように理解してよろしゅうございますか。
  64. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 当然日本経済もある程度の成長がございましょうし、その成長の中で来年度の予算も考えられるわけでございましょうが、たとえば名目で仮に防衛関係が横ばいだということになれば、実質的には減少になるわけでございますが、現在の日米関係から考えますと、もしそういう事態になりますと、やはり日米間にある程度の緊張が生まれるということは考えられるように思います。その場合に、それがどういう形になるのかわれわれにもわからないわけでございますが、いろいろ経済問題の面における日米関係もございますし、両国間の総合的な関係において、何らかの形で影響が出てくる可能性はあるというふうに考えております。
  65. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、もうすでに、わが国としては、防衛費の増額という米側の要請にこたえなくちゃならないという筋書きが決まっているわけですね。  そこで、ちょっと伺っておきたいのですが、中国人民解放軍の伍修権副総参謀長が、中曽根さんに対して「日本軍事費、GNP二%は可能だ」という、これは大臣のお留守のときですけれども外務省のコメントは、これは非常に内政干渉だというようなことが報道されておったわけですが、大臣もやはりそのようなお考えですか。
  66. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは私の不在中でございましたが、この点につきましては、日本としては戦後軍事大国の道を歩まないということを国際的にも誓ってきておるわけでございまして、必要な限度の防衛力と、それから日米安保による核の抑止力、こういうものによって日本国民の安全を図っていくという基本的な立場をとっておりまして、その基本的な立場は現在も変わってないと思いますので、そういう意味で、他の国が、日本の国内の状況国民感情、戦後の経緯等について十分な理解をなしに、軽々しく、防衛費にはこのくらい使うべきだというような発言は一種の内政干渉だということは言えるかと思います。
  67. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、時間がございませんので、ちょっと整理しますが、先ほどの中国と日本は友好国である、日米間は同盟国である、中国側のそういう発言は内政干渉である、あるいは今回の日米首脳会談での防衛費の増額問題等について、この点はまた次の機会にお話し合いもしたいと思うのですが、そこで、いまの問題に関連してお伺いしておきたいのですが、今回大臣も御同行されておられるわけですから、防衛費の増額ということで、施設費の増額という問題についても話が出たのか出なかったのか、その辺はいかがでしょうか。
  68. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点については、施設費についても検討してみたいということを、一言大平総理が言われたわけでございます。
  69. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは施設費についても検討したいということでありますと、これから具体的に、その総理の向こう側に表明した点が検討されてくると思うわけです。  そこで、私ちょっとこの機会にお伺いしておきたいことは、施設費の増額の問題ですが、古い建物を取りかえて修理したりとかというようなことでなくて、米側要求というものは、いわゆる継続的な費用の肩がわりを要望しているのではないか、そのように受けとめているわけですが、いかがでしょうか。
  70. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカ側が具体的に何をこれから提案してくるかということでございますので、その点を待って検討したいわけでございますけれども、もちろん地位協定がございます。その範囲内で、日本側が持つものとアメリカ側が持つものは截然と区別されている点がございますので、私たちとしてはアメリカ側の提案を待ちまして、地位協定の枠内でできることをやっていくということでございます。
  71. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで伺っておきたいのですが、これから米側の具体的な提案を待って、地位協定の枠内でやっていきたいということですが、たとえばガス、水道あるいは電気あるいは電話等の料金、光熱費、日常的に使うそういう費用ですね、そういうことは、よもや日本側が負担するということはないと思うのです。その辺、いかがでしょう。
  72. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは地位協定の解釈からいたしましても、アメリカ側が米軍を維持するに必要な経費ということでございますので、私たちがそれを肩がわりするという考えは現在のところございません。
  73. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは、大臣、確認しておきたいのですが、先ほどは提案があったら検討していきたいということですが、いま申し上げました、そういう通常使われる費用についての要求があった場合は、明確にわが国としてはこれは持てないのだ、負担できないのだということは、きちっとされるわけですね。
  74. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいまお尋ねの件については、すでに従来私たち事務レベルで、いろいろなアメリカ側との協議のチャンネルがございますので、その日本側の態度はすでにアメリカ側に対しては明らかにしてございます。
  75. 玉城栄一

    ○玉城委員 したがって持ちませんと、そういうものについては負担しませんと、地位協定上もこれはできませんということは、そういう要求が出てきた場合も、もちろん外務省としても政府としても、きちっとそういうことはやりませんということをおっしゃるわけですね。
  76. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 そのとおり理解していただいて結構です、現在先生の御指摘されている問題は施設費ではございませんので。
  77. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、防衛施設庁に伺いたいのですが、過般来ちょっと問題になっております米軍の水道料金未払いの問題がずっとあるわけですね。ちょっとその経過とそれからその後どうなっているのか、その辺を簡単に御説明いただきたいのです。
  78. 箭内慶次郎

    ○箭内説明員 ただいまお尋ねの沖繩の下水道料金の問題でございますが、これは沖繩県と米軍との間で下水処理業務契約というのが締結されております。この契約によりますと、下水の計量は、上水道のメーターによるかまたは汚水メーターによるか、いずれかの方法によって行うというふうに記載されております。  それで、嘉手納飛行場から下水管を沖繩県の管理しております流域下水道に接続しようとした場合に、沖繩県の要望によりまして防衛施設庁が汚水メーターを設置したわけですが、その汚水メーターによって米軍が計量したところ、その計量値が上水道の使用量よりもはるかに少ないということがわかったために、米軍としましては、下水道料金を汚水メーターによる計量に基づいて算定すべきだというふうに主張するようになったわけです。一方、県の方としましては、従来どおり上水道の使用量に基づいて料金を算定すべきであるということを主張いたしまして、両者の間で意見の食い違いが生じておるというのが問題でございます。  本件は契約上の問題でございますので、両当事者間で円満に解決されることを希望しているわけでございますけれども沖繩県知事からその解決について援助方の要請を防衛施設庁としては受けておりますので、現在沖繩県に対しまして詳細な資料の提出を求めつつ、沖繩県と米軍との主張を整理しまして、具体的な解決策を見出すべくいま検討を行っているところでございます。
  79. 玉城栄一

    ○玉城委員 いま沖繩県側から施設庁に対して援助方の要請が来ているということですが、これはどういう内容のものか、ちょっと簡単に……。
  80. 箭内慶次郎

    ○箭内説明員 沖繩県知事から要請が来ておりますのは、この下水道料金の問題につきまして、過去一年以上にわたりまして、現地つまり米軍と沖繩県との間で交渉を行ったわけですが、円満な解決に至らないということですので、この問題を合同委員会に提案しまして解決してほしい、こういう要請でございます。
  81. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは一言外務省の方にも伺っておきたいのですが、いま日米合同委員会に上げて、水道料金を払っていない、まあ契約等のいろいろな解釈の問題等があるようですけれども外務省としてはどのように臨まれるのか。
  82. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま施設庁から御答弁いたしましたように、現在施設庁で実態調査中でございますので、仮に合同委員会にかけたいということが施設庁からも話がございますれば、外務省としても合同委員会に上げて解決を図っていきたいというふうに考えております。
  83. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、もう一点ちょっと施設庁の方に伺っておきたいのは、これは例の読谷補助飛行場の移設問題ですけれども、これは三月十八日、施設分科委員会に上げてあるわけですが、その後の経過、どういうぐあいに進んでいるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  84. 深作和夫

    ○深作説明員 読谷補助飛行場におきます落下傘降下訓練につきましては、三月十八日、米側に提案いたしました。現在のところ米側において検討中でございまして、まだ具体的な回答はいただいておりません。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは米側検討中ということは、当然こちら側の要望、現地の要望も含めて伝えられていると思うのですが、いつごろまでこれは検討されるのですか。
  86. 深作和夫

    ○深作説明員 施設の地元の要望によります返還とか移設とかというふうなことは、非常にむずかしい問題でございますし、非公式に聞いている範囲でも、米軍も非常に真剣に検討しておりますので、具体的にいつごろまでというふうな回答の期限を予定することは困難であろうというふうに考えております。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういう状態だったら、これはなかなか結論は出てこないのじゃないでしょうか。それを一日千秋の思いで地元関係者は待っているわけですから、米側に「検討中」ということで、いつまでもこれはほったらかしておくわけにはいかないと思うのですね。これは外務省も当然関係するわけですから、淺尾さん、ひとつ決意のほどを聞かしてもらえますか。
  88. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 現在、施設委員会におきまして、日本側の提案に対してアメリカ側の回答を待っているというのは、いま御答弁ございましたとおりでございます。いま先生の御指摘のように、何もしないで待っている、いつまでも待っているというわけにはいかないと思いますので、この点についても施設分科委員会、これは施設庁が中心になって話をしておりますけれども、その話し合いを見ながら、外務省としてできる限りの解決ができるように考えていきたいと思います。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後に、時間がございませんので、一点大臣にお尋ねをしておきたいわけですが、先ほどの上原委員の御質疑の中にもありましたとおり、この間の米側のテヘラン米大使館人質救出作戦に在沖米軍が出動した疑いが非常に強いということで、その点についてのお答えがあったわけでありますけれども、あのとき四機行きまして、一機はヘリと衝突、墜落、炎上、いま三機しかいないわけです。これはもう私たち現地ですからよく知っているわけです。ですから、これが参加したかしなかったかということは、この可能性も十分あり得るわけですね。それまでは否定はできないということだと思うわけです。  そういうことで、沖繩の米軍基地というものが、いわゆるペルシャ湾一帯、中近東、そういう紛争とかかわり合いがない、あるいは関係がない、条約上は別にしましても、一般的に常識的に、そういう過去の経緯、現在のそういう問題等をとらえましても、いわゆる沖繩の米軍基地というものが、そういう地域の紛争と非常に常識的に見て全く関係がない、あるいはかかわり合いは全くありませんよということは言えないと思うのですが、その点、いかがでしょうか。
  90. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 関係がないという、内容にもよるわけでございますが、軍隊の属性として、いろいろ移動する、基地から基地へ移動するということは当然考えられますし、また、アメリカ国防力というのは全世界に関連しておりますので、その沖繩の基地にいるそういう軍の航空機なり、艦船なりが未来永久に沖繩に張りついているということは予想されないわけでございますので、世界じゅうどこかに移動するということは当然考えられる。そういう意味での関係があると言えばあるということかと思います。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  92. 河村勝

    河村委員長 榊利夫君。
  93. 榊利夫

    ○榊委員 まず最初に、きのうの外務委員会の論議を引き継ぎまして、少し同じ種類の質問をさせていただきたいと思います。  今度の首脳会談及び外相会談には相当幅広い話題があったと思われますが、公式発表後も、カーター氏が韓国の内政問題に触れたとか、ブラウン国防長官が日米合同演習の強化を主張したことが明らかになっております。そのほかにどんなことが話題になったでしょうか。たとえば中国との関係とか朝鮮半島の問題とか、いろいろな問題が話題になったと思われるのですが、いかがでしょうか。
  94. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 主な会談の項目といたしましては、イラン、アフガニスタン問題、わが国防衛力の問題、日米経済関係、石油問題、第二パナマ運河の問題、朝鮮問題、難民問題、エネルギー問題、大体こういう項目でございました。
  95. 榊利夫

    ○榊委員 いままで発表されてない、しかしその後いろいろなルートで明らかになる、こういうふうになっているわけでございますが、それでは外務大臣、いままで発表されているものだけが話題になって、そのほかに話題になったものはない、こう理解していいのでしょうか。
  96. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 主な題目はただいま申し上げたようなことで、きわめて雑談的に、たとえば日本のリニアモーターというのはどういうものなんだ、非常に役に立つのかというような話が出たことはございますが、それは会談のテーマと関係のないことでございまして、主なテーマは先ほど申し上げたとおりでございます。
  97. 榊利夫

    ○榊委員 主でないテーマではどうでしょうか。
  98. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その主でないものの一つがリニアモーターで、国鉄が実験して非常にスピードが出るということで、アメリカにも興味があるのだというような発言がございました。
  99. 榊利夫

    ○榊委員 主な問題でないところで、たとえば先ほど言いました韓国の内政問題とか、日米合同演習の強化の問題といったものが出ているわけでありますね。これは小さいようで、しかし実は非常に大きな問題でございますけれども、この種の問題はほかになかったのでしょうか。
  100. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 朝鮮問題に関してはこれは先ほど申し上げましたが、話が出たわけでございますし、主な問題でほかにというか、先ほど数え上げました中に朝鮮問題は入っておるわけでございます。  あと中国については良好な関係にあるという話は出ましたが、それが、いま数え上げましたほかには、中国問題に簡単に触れたということが一つ言えるかもしれません。米国と中国の関係は友好的な関係だ、しかし、これはしばしば明らかにしておるように、中国に対して武器の提供は行わない方針であるという先方側からの発言がございました。
  101. 榊利夫

    ○榊委員 それではイランの人質奪還作戦、これについてはだれからも発言はなかったのでしょうか。
  102. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これについては発言はございません。
  103. 榊利夫

    ○榊委員 いまさっきの発言、これまでのやりとりもございましたけれども、イラン人質奪還作戦は大変大きな軍事作戦でありまして、これが沖繩から出動した疑いが濃厚であるということで、疑問が持たれておるわけでありますけれども、先ほどの淺尾さんの答弁によりましても、C130であるという返事をアメリカ側から得ているということでございます。どうでしょうか、MC130はC130の改良型であって、広義のC130の中に入っているのじゃないですか。
  104. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカ側説明は、イランの人質救出作戦活動に使われたのはC130である、かつ、そのC130はすべてアメリカの本土から出ていったものであるというふうに理解していただいて結構であるということに尽きております。
  105. 榊利夫

    ○榊委員 としますならば、そのC130の一つのタイプであるMC130も含まれていると見てもおかしくはないわけです。そのことにつきましては先ほども質問がありましたけれども沖繩配置のMC130E四機、これが作戦に参加していない、こういうふうに言ってはいないわけですね。しかし現地では、直前に消えてそして四月二十九日に三機帰還している、一機は欠のままである、こういう実情があるわけであります。それに対しては当然責任を持っている政府外務省としては、国民が重大な不安と関心があるこういう問題について、もう一歩突っ込んでアメリカ側に問い合わせをやる、これは当然ではないかと思うのであります。MC130EつまりC130の一つのタイプ、それは参加していないかというふうに、問い合わせてみられましたか。
  106. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 若干繰り返しになって恐縮でございますけれどもアメリカ側の回答は「人質救出活動に従事したのはC130であって、それはアメリカ本土から出ていったものである」それから「特定の時期に嘉手納にいるMC130の動静については米軍の機密上答えられない」この二点が、私たちが四月二十六日にアメリカ国防省に対して照会を行って、五月二日に回答を得た結果でございます。
  107. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、そういう説明で引き下がってこられたということでありますけれども、しかしいま申し上げましたように、明らかにC130の中に含まれていると解してもおかしくないのですよ。しかもいろいろな新聞でも、琉球新報あたりはトップで掲げていますよ。「帰ってきた」そして「飛行場に黒い翼をたたえている飛行機」ということで。したがいまして、多くの疑問が出されているのですから、その中に日本の基地から飛び立ったものはないのか、MC130Eは含まれていないと断言できるのか。  あるいは、もともとアメリカ製の飛行機ですから、初めはみんなアメリカから出動しているのです。それがどこを中継するかが問題なんです。したがってそのことについてはもう一歩突っ込んで確かめる、これがやはり日本国民に責任を負う態度ではないかと思うのです。これをやってください。いまからでも遅くない、やっていただきたいと思います。
  108. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まさに私たちとしてもその点に関心を持っておりましたので、アメリカに照会をしたところ「人質救出作戦に従事したのはC130であって、それはアメリカの本土から出ていったものである」という回答を得ておりますので、この点について私たちの得ている疑惑は晴れたということで、現在のところ、それ以上アメリカ側に対して、しかしあなた方の情報はおかしいじゃないかということを言う立場にございませんので、さらに米側に対して調査するということは考えておりません。
  109. 榊利夫

    ○榊委員 おかしいですよ。現に沖繩の県民が日ごろから目にしているものが消えてなくなって、しかも事件が報道された数日後に帰ってきている。MC130Eとはっきりその名前も出ているわけであります。しかも、いろいろな面からもそれが含まれてもおかしくない。だから、C130という説明はございますけれども、その中に含まれていませんかと、これは問い合わせてみるぐらい当然じゃないでしょうか。国民への責務じゃないでしょうか。通り一遍の説明で「はい、そうでございましたか」では、お人よしでなければ、本当に自主性のない態度と言われてもこれはいたし方ありません。どうですか、やってくれますか。
  110. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 救出活動に使用されたC130が嘉手納配備のMC130と同じ機種かどうかという点でございますが、すでにアメリカ側から、その点については軍隊の機密ということで答えられないという点がございます。ただし先ほど申し上げましたように、実際に救出活動に従事したC130は米本土のC130であるということでございますので、私たちとしては、この回答で、米側との関係から、現在のところさらに照会するという考えはございません。
  111. 榊利夫

    ○榊委員 そういうふうな答弁をなされれば、国民の目から見るならば、ああ日米合作でこの真相にふたをしようとしておるのかな、こういう疑問がますます広がるばかりだと思うのであります。  その問題はまた後で触れることにいたしまして、次に進みますが、第一特殊作戦中隊、MC130Eの部隊でありますけれども、これが、対イラン軍事作戦に関連をいたしまして、パイロットから整備員まで出動したという関係者の発言もすでに報道されております。また、アメリカの人質奪還作戦が失敗した直後に、軍医、看護婦が出動したことも明らかになっております。この点ではまさに沖繩軍事行動の根拠地にされている、こうも見て差し支えないと思うのです。だからこそ、沖繩県民やあるいは日本国民すべてが深刻な不安を持っているわけであります。その点では事実をはっきりさせてもらいたいと思うのです。事実をはっきりさせたいという気持ちはお持ちでしょうか、御答弁願います。——これは外務大臣にお聞きしたい。
  112. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま北米局長答弁いたしましたような事情でございますので、いまのところは一応米側からの回答を得たということになっておるわけでございます。
  113. 榊利夫

    ○榊委員 きのうの外務委員会で、わが党の金子議員が、アメリカのイランに対する軍事行動は支持しないということを明らかにしてもらいたいという質問をしたのに対しまして、大来外務大臣は、安保条約の趣旨に従って考えるという答弁でございました。私はこれは大変重大な答弁だというふうに思います。これでいきますと、アメリカの対イラン軍事行動を支持する場合もあるという態度なのかな、こうも思うわけであります。  ちなみにちょっとコメントをいたしますけれども、この軍事行動を支持するかしないかというのは、安保条約第六条のいわゆる事前協議で、イエスと言う場合もあるしノーと言う場合もあるが、このイエス、ノーの問題は別として、つまり政治論としてその軍事行動を支持しない、こう言えないのかどうなのか、このことを重ねてお尋ねいたします。
  114. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回の日米首脳会談におきましても、大平総理から「人質問題の平和的解決のために自重を求める」ということをはっきり先方に申し入れしておるわけでございます。その点では日本立場ははっきりしておるわけでございます。  機種は先ほど申しましたけれども、航空機や艦船が移動していく、それで、米国のそういう機材は全世界的な配置があるということは事実でございまして、そういう意味では一々その行動について確かめる、あるいはそれに対しては米国側からの回答ができないという先ほどのような場合もあるわけでございまして、そういう点では支持するとかしないとかいう問題ではございませんで、軍隊の属性上、そういう艦船、航空機等が移動することはあるということは、事実として認めざるを得ないということでございます。
  115. 榊利夫

    ○榊委員 私がお尋ねいたしたいのは、アメリカにいらっしゃって、少なくとも平和的解決ということは要請されたと承っております。ということは、平和的解決に努力しないで軍事行動に訴える、それは好ましくないということになるでしょう。そのことをはっきりと言えるのかどうなのかということでございます。どうでしょうか。
  116. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 カーター大統領も、この前の救出作戦の後で、これは純粋に人質を救出するための人道的行動であるという声明をしておるわけでございまして、今回の行動が軍事行動であったかどうかということは立場によって判断も違うわけでございますが、米国政府の責任者は、人質救出のための人道的行動であるということでございますので、やはり一応軍事行動と区別して考える必要があると思います。
  117. 榊利夫

    ○榊委員 いや、何も民間服をまとって行っただけじゃないので、軍用機が出動して軍隊が参加しておるのですから、軍事行動ですよ。それはきわめて明白だと思うのです。しかも今度の作戦は、これが失敗していなければ、テヘラン爆撃を含む大規模な軍事行動になるのですよ。しかも、私特にお尋ねいたしたいのは、イランにはいま邦人が約九百名生活しておられます。その他借款など資産も約一千五百億ぐらいに上ると思います。日本石化のプロジェクトもいろいろ進行はしておりますけれども、難点も生まれております。そこで、このような大軍事作戦が本当に実行されたときに、九百人の邦人の中から犠牲者は出ないでしょうか。財産も損害を受けないでしょうか。もしも沖繩から出動した米軍機がその作戦をやったとした場合には、悲劇的なことに、日本から出動したものが日本人を殺す、殺傷する、こういうことにすらなりかねないわけであります。そういう事態を前にして、軍事行動は控えてもらいたい、私は日本立場からこのことは当然言うべきだし、それが日本政府立場でなければならない。日本人がすべてそこを望んでいる、そこを求めている、こう思うのであります。いかがでしょうか。
  118. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その点は日本だけではなくて、西欧諸国世界の大多数の国々も、そういう点を求めていると思います。
  119. 榊利夫

    ○榊委員 だから、その求めていると思われることを実行していただけばいいのです。「思っております」「……だろう」こういうことだけじゃなくて、政府として公式にはっきりと言ってもらいたい。しかも、第二次作戦が立案中だと言われます。秋の大統領選挙を前にして、九月ごろには恐らく大規模な軍事行動にもう一度移るのではないか、こういうことがきのう、きょうの新聞報道などでも報道されております。あるいはもっと前かもしれない。したがって、ますますその点では「軍事行動については支持できませんよ、控えてもらいたい」少なくともそれくらいのことは言ってしかるべきだ、こう思うのです。どうでございましょうか。
  120. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 平和的手段によって解決するように、自重してほしいということは同じ意味でございます。
  121. 榊利夫

    ○榊委員 同じ意味ということは、つまり軍事行動を差し控えてもらいたいということを意味している、そういう趣旨だというふうに解しますが、その点了解をいたしました。  私、予定してなかったのですけれども答弁を求めるのではなくて、一言だけ述べさしてもらいますが、いわゆる同盟国の問題で、民主制度を守るとか、共通の価値観をともに守るということで、しばしば触れられておりますけれども、私はこれは理論上の混同があると思うのです。私たちも、たとえば一党政治は不賛成ですけれども、そういう外国の問題に外国がくちばしを入れるということは好ましくないことでありまして、この制度の問題、共通の価値観をともにということで、力を出し合って共同行動をやるということになりますと、悪名高いダレス理論と申しましょうか、これはそのまま内政干渉論になってまいります。やはり、どういう制度なりあるいは価値観という問題は、これはもう憲法上明記しておりますように、主権在民の大原理に従って、その国の国民自身が選択をすべきものであります。これと国際間の問題というのは峻別しておかないと、とんでもないことになるわけであります。その点では、非常に気安くこの問題を使っておられますけれども、以後、私は希望といたしまして、慎重な使い方をしていただきたいと思うのです。憲法の根本にかかわってくる問題でありますし、これは改めて私も議論をさせていただきたいと思っているのですけれども、きょうは答弁をいただかないで結構でございますから、次に移ってまいります。  もう一つは、やはり沖繩の問題で、ホワイト・ビーチ軍港の放射能異常問題ですけれども、三月に沖繩ホワイト・ビーチ軍港で放射能異常が発見されまして、県民の大きな不安と怒りを巻き起こしてきたのでありますけれども、この原因が何であったか、政府の対応はどうもあいまいなように思うのです。現在までの調査と、調査結果についてお知らせ願いたい。
  122. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 最初に私の方から答弁させていただいて、あと科学技術庁からもお見えになっておりますので、補足させていただきます。  ホワイト・ビーチに寄港いたしましたロングビーチが、三月十六日から十七日まで、それから同じく二十一日から二十二日までの間寄港したわけでございますが、その際に、平常のカウントよりも若干高いカウントの放射能が検出されたということで、外務省としては、科学技術庁からの御依頼もございまして、直ちにアメリカ側に対して事情を調査するように要請いたしました。  その結果として、アメリカ側から四月九日に回答がございまして、第一点は、三月十六日から十七日及び二十一日から二十二日までの間、ロングビーチの原子炉装置の運転には何ら異常は認められなかった。第二点として、原子力艦船の運航に関し、アメリカ日本政府に与えた保証が今般のロングビーチの寄港においても厳格に履行されており、かつ、日本の港においては、米国原子力軍艦によって、すべての放射性廃棄物の取り扱いについては、従来に引き続いて今後とも厳重な管理が行われることを確認する。さらに第三点として、今次測定されたような低いレベルの放射線の表示値の変化の解釈については注意深く行う必要があって、その際に、最も重要なことは、港の海水であるとかあるいは海底土という、環境媒体の試料を分離して試験することであるが、科学技術庁がロングビーチ寄港直後に行ったこれらの海水試料の分析では、何ら異常な結果を示しておりませんし、また、米海軍自身が寄港後行った分析の結果においても、寄港以前に比べ変動は認められなかった。したがって、第四点として、科学技術庁さらに米海軍が行った分析の結果、及びロングビーチの艦上操作の徹底的な調査の結果から見ても、アメリカ側はロングビーチの寄港がホワイト・ビーチの環境に影響を及ぼしたというふうに考えていないという回答を、先ほど申し上げましたように、四月九日付で外務省は受け取っているわけでございます。
  123. 榊利夫

    ○榊委員 いまのこのアメリカ側の回答ですけれども、それは科学技術庁の発表とも文面が違うんですね。「全く通常の環境変動に起因する」などという文言は科学技術庁のそれにもないのです。にもかかわらず、それが何も大したことはないのだというふうにして、全く通常だというふうにして言っているわけで、要するにアメリカの回答というのは、大したことはない、ここにもう尽きるわけであります。しかし、やはり変化があったからこそいろいろな問題が出てきているわけでありますし、しかも、これまでのいろいろないきさつを見ましても、原子力艦船が、軍艦が放射能たれ流しをやっている疑いは非常に濃いわけであります。  その点で、第一次冷却水の放出等がなされなかったのかどうなのか、ここは問い合わせていただきましたか。
  124. 穂波穰

    ○穂波説明員 お答えいたします。  私どもが変動値を測定しましてから、米側調査を依頼しました。その結果の回答の中にございます「放射性廃棄物の管理が厳重に行われる」、それから「いままで米国政府日本政府に保証していた事項は守られていた、それも今後も守られる」という項目がございます。  この項目につきまして、一次冷却水の放出をしないという約束は、四十三年当時の三木外相とジョンソン大使の会談米側が約束している事項でございます。  したがいまして、この回答を見る限りにおきましては、一次冷却材は放出されなかったとわれわれは理解しております。
  125. 榊利夫

    ○榊委員 時間がありませんので余り突っ込めませんけれども、回答はそうだった、しかし実際には放射能異常が出ているわけであります。そこに一つの大きな問題があるわけです。仮に低線量のそれだと見ましても、最近の科学研究の発表によりますと、低線量被曝であっても、これが繰り返されるとがん発生につながる率は最も高いのだということが出ているわけであります。そういう点では、人体への影響あるいは環境悪化への影響等々、非常に低度のものであってもこれは重視をしていかなければいけませんし、ましていわんや原子力軍艦の原子炉というのは、そういう点では安全性という点からも多くのリスクを伴っております。しかも、そもそも原子力軍艦というのが核兵器プラス動く原子炉でありますし、しかも最初からこれが日本のコントロールがきかないようになっているというところに大きな問題があるわけであります。  この問題は、最後に国民的な要望として、ひたすらこの事故の起きないことを祈るのみということでは余りにも惨めでありまして、そういう危険性を持つ原子力軍艦の日本の港への入港は認めるべきでない、認められない、そういう態度をとることがやはり非核三原則の立場からも正しい、こう思うのであります。この点だけお伺いいたします。
  126. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本は非核三原則を持っておるわけでございますが、日米安保協定によりまして基地の使用を認めておるわけでございまして、何か他の国から日本に対する武力攻撃があった場合には、米軍が自己の犠牲を払っても日本の領土を防衛するという義務を約束をしておるわけでございます。そういう立場考えた上でいまのお話のような点について対処していかなければならないわけでございまして、かなりの量の艦船が原子力をいま使っておる世界の現実でもございますので、御趣旨のようなことは事実問題としてはむずかしいと考えておるわけでございます。
  127. 榊利夫

    ○榊委員 せっかく農水省の方に来ていただいておりますので、あと一分ほど時間をかりまして、一つだけ質問さしてください。  沖繩の農業問題なんですけれども地域特徴を生かした農業振興ですね、そういう点では、沖繩の場合亜熱帯という自然条件を生かした多角的な農業振興という、非常に大きな可能性を持っていると思うのです。その点で水利、土地改良などの農業基盤の整備、これをどう進めていらっしゃるのか。  それから、特に最近キャベツが二つ、三つに切って買うような不足を来しました。ところが、ここは大変野菜に適している、野菜供給地としても有望視されている、こういう状況がございます。そのことと関連して地元の那覇市が、野菜生産出荷安定法による指定消費地として指定していただけないかという要望が強いように承っております。この点についてどういうふうなお考えを持っていられるのか。  この二点、簡単でよろしゅうございますので御答弁願います。
  128. 鎭西迪雄

    ○鎭西説明員 お答えいたします。  現行の野菜生産出荷安定法におきましては、指定消費地域の要件といたしまして「野菜の消費上重要であり、かつ、相当の人口を有する都市及びその周辺の地域であって、政令で定めるもの」こういうことになっております。  野菜価格安定制度は四十一年に始まりまして、そのときは京浜、中京、京阪神、北九州、四大消費地域、十一都市でございましたが、現在は三十一地域、百二十九都市、人口で大体五割強、野菜の入荷量で約四分の三をカバーするまでに制度を拡大してきております。  那覇市につきましては、具体的に沖繩県当局から私どもにお話がまだございませんけれども、恐らくそれは、一つは、指定消費地域に野菜を安定的に供給する体制にございます集団産地がまだ未整備であるという問題と、それから、価格安定の対象に具体的になります市場でございますけれども、これは現在中央卸売市場または地方卸売市場でございまして、一定の取り扱い規模を持っているものということになっておりますので、現在の那覇市におきます市場の整備の実態から見まして、まだそれに該当する流通施設がないというようなことがあるのではないか、こういうように私ども考えております。  いずれにいたしましても、これは沖繩県当局、総合事務局等と具体的な問題について十分御相談いたしまして検討していきたい、こういうように考えております。
  129. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、市場整備など条件が整えば指定することができる、こういうふうに解してよろしゅうございますね。
  130. 鎭西迪雄

    ○鎭西説明員 そういうぐあいに御理解いただいて結構でございます。
  131. 榊利夫

    ○榊委員 どうもありがとうございました。
  132. 河村勝

    河村委員長 部谷孝之君。
  133. 部谷孝之

    部谷委員 きょうは北方領土問題を中心として、主として外務大臣にお尋ねをしてまいりたいと思います。  ポリャンスキー駐日ソ連大使が七日に外人記者クラブで行いました講演の中で、北方領土におけるソ連軍事基地の正当性を主張したことにつきましては、すでに同僚委員からも質問が行われたところでありますが、今日までソ連は、北方領土におけるソ連の軍備増強に関する日本政府の抗議に対しまして、事実関係そのものを認めようとしないで、そして内政干渉だということで突っぱねてまいりました。ソ連は、日本が固有の領土として主張しておる北方領土をクリール諸島に含めて扱ってきたわけでありまして、したがって大使は、クリール諸島を含む極東地域という表現で、北方領土における軍事力配備の正当性を主張したものであります。しかもその正当性を日中、日米、米中、こういう関係の接近など、極東の新しい軍事政治情勢と絡ませて強調しておりますことは、きわめて注目すべきところであります。ポリャンスキー大使講演に対する大臣の見解をまずお尋ねしたいと思います。  また、こうした大使の発言に対する対応措置につきましては、先ほどの質疑応答の中で、記者クラブでの発言であるから抗議は考えていない、すでに国会決議も伝えてあるし、また国連第一委員会の場においても発言をし、折に触れて抗議をしておるという答弁をされましたが、さっき申しましたように、新しい立場の主張がなされたと私は思うのでありまして、こうした主張に対しましては、政府は意思表示をする必要がある、このように私は思うのでございますが、この点につきましてもお尋ねいたしたいと思います。
  134. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ポリャンスキー大使発言につきましては、ただいま御指摘のあったとおりでございます。ただ、先ほども答弁いたしましたように、日本政府に対しての発言ではございませんで、外人記者クラブにおける発言でございます。これは、政府としてもその発言を十分検討してみることはきわめて必要だと存じますが、直接その発言に対して抗議するということは現在考えておらないわけでございます。ただ、今後の対ソ関係考える上の一つの材料であることは事実かと思います。そういう意味でさしあたり対処していく、いまのところ抗議を申し込むということでは考えておらないわけでございます。
  135. 部谷孝之

    部谷委員 大使の発言に対する大臣の御見解も私はお尋ねしておるのですが、あわせてお願いいたします。
  136. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は、たとえば北方領土における軍事基地の設定について、ソ連側の責任のある大使という地位にある人の見解が示されたということでは注目すべきことだと思っております。しかし、それだからといって、北方領土返還されない、領土問題は存在しないというソ連側の立場を正当化するわけでもございませんし、また、日本にきわめて近いところに基地を設定する、しかも日本が従来から日本固有の領土であると主張しているところに基地をつくるということは、友好的な行動だとも言えないわけでございまして、こういう点については、日本側としては、従来どおり粘り強く繰り返し繰り返し交渉していく、あるいは抗議を行うということでまいるべきだろうと考えております。
  137. 部谷孝之

    部谷委員 どうも、私のお尋ねに対するすかっとした御答弁でないと思うのですが、ソ連北方領土に関しまして、ソ連の駐留というものを、日中の接近に結びつけた発言が出てきた、このことは非常に注目すべきところだろうと思い、私は先ほどお尋ねしたわけであります。そうした日中接近の問題につきまして、ソ連側の方からそうした発言が出てまいりましたのは、昨年十二月に日ソの円卓会議が開かれ、そこでソ連側の出席者発言の中で見られたというふうに、私は報道を見ておるのであります。しかし、ポリャンスキー大使として発言されたのは初めてではないかと思うのであります。  一九六〇年に一個師団が引き揚げまして、あと国境警備隊だけだった北方領土ソ連の軍備が、再び増強され始めましたのは一九七八年の秋というふうに理解をいたしております。そして、その決定がなされましたのは一九七七年の秋ごろだと見られておるのでありますが、日中条約が調印されたのは七八年の八月でありますが、外務省は、北方領土におけるソ連の基地の強化と日中条約とが関連があるというふうにお考えなのかどうか、まずその辺はそういうふうな分析をしておられるのかどうか、お尋ねします。
  138. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 なお詳細につきましては事務当局から答弁させたいと思いますが、ただ、ポリャンスキー大使の最近の発言、私ども承知しておるところでは「極東におけるソ連防衛力強化問題を当該地域における軍事政治情勢と切り離して考えてはならない、」次のように言ってもよいと思うが、「その主要なものは、明瞭に反ソを基盤とした米中の接近、日米軍政同盟の強化日本国領土における米軍の直接的プレゼンスであり、」というふうに言っておりまして、日中の地位についてはここでは触れておらないのであります。
  139. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇説明員 ただいまの大臣の答弁に補足させていただきますが、御指摘ポリャンスキー大使発言は、七日の外人記者クラブでの演説に続きます質疑応答の中で出てきたものであります。そして、ただいま大臣から申し上げましたとおり、直接的に日中条約に結びつけた発言はなかったと了解しております。  ただし、日中条約と北方領土におけるソ連軍の配備の問題との関連で見ますと、日中条約は一九七八年の八月に調印されておりまして、他方、北方領土におきますソ連軍の配備はその以前、七八年の初夏にこれが現実に開始されたと見られております。したがいまして、そのためにはかなり前からの準備期間があったというふうに考えられます。そういうことから、今回のポリャンスキー大使発言が、極東における日中、米中云々、そういった新しい情勢に対応してとられたものであるという説明には、われわれは釈然としないものがあるわけでございますが、いずれにしましても、北方領土におけるソ連軍の存在、軍備の展開といったことは、とうていわれわれとしては容認できないことであるということで、数次にわたり、これに対しては抗議をしておるというのが実情でございます。
  140. 部谷孝之

    部谷委員 確かにそうなんです。日中についてダイレクトな表現はしておりませんけれども、その発言は「極東地域でのソ連防衛能力の強化は、この地域軍事政治情勢と結びついていないと考えてはならない」というふうに答えておる。私はその内容そのものずばり見ておりませんので、報道によらざるを得ないわけでありますが、そういうふうに答えまして、そうして「米中の反ソ同盟の動き、日米軍事同盟関係強化、朝鮮半島、インドシナ半島の情勢などが重要な要素だ」、そういうふうに指摘しておるわけでありまして、そうしたことの絡みから、当然日中の問題がそういう中に含まれておるというふうな形で私は受け取っておるから、そういうふうな質問をしたわけでありますが、重ねていかがでしょうか。
  141. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私の先ほど読み上げました部分がポリャンスキー大使のこの問題に対する発言部分でございまして、先ほど申し上げましたように日中ということに直接言及してない。言及しないことにも意味があるのではないかということも考えられるわけでございまして、こういう点についてはさらに、今後も、ソ連側の発言等よく検討した上で、日本側としてもその解釈といいますか、反応というものを考えていかなければならぬかと思っております。
  142. 部谷孝之

    部谷委員 こうした発言の背景として考えられますことは、ソ連のアフガンへの侵攻以来高まってまいりました対ソ批判、こういうものに対する一つの巻き返しと申しましょうか、そういうふうな気がしてならないわけでありまして、いわばそうしたグループに接近する、あるいはそういうグループの中で行動するということ、そういう形で日本が外交政策を進めていくということになると、ソ連は黙っておらぬぞ、こういうふうな威嚇をかけてきておるような気がしてならないわけでありますが、政府はどのような見解をとっておられるでありましょうか。
  143. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 北方領土における軍事基地の建設ということについて、その動機についてのいろいろな推測は行われておるわけでございますし、その一つとして、たとえばそれによって北方領土問題は終わっているという発言を行動によって示すと言いますか、日本国民に対してあきらめさせるという意味のねらいも一つにはあるのかもしれない。これは推測でございますからわかりませんけれども、いずれにしても、日本国民にとりまして気持ちのいいことではないということは事実であると思いますし、日本に対する友好的な行為でもないことは事実だと思います。
  144. 部谷孝之

    部谷委員 去年の末のアフガンヘのソ連の侵攻に続きまして、そのころからまた、特にソ連の北海道に対する工作あるいは対日諜報工作、そういうものの数々が一挙に出てきた感じがいたします。  日本列島を震憾させました宮永元陸将補とそのグループによる自衛隊スパイ事件、あるいはまた清水一巳の逮捕が明らかにいたしましたレポ船によるソ連の情報工作、しかも清水グループのソ連船の問題はまだ氷山の一角だ、こういうふうに言われております。また、公安調査庁の船山課長の自殺事件にまで発展したのでありますが、こうしたレポ船の摘発の後に、ソ連の臨検攻勢によって罰金被害に遭う漁船が急増しておる、こういうふうに、根室の海上保安部の資料はそういうことを示しておるのであります。  まあこれは余談でありますが、戦場の宣撫工作にいたしましても、また後方の政治文化工作にいたしましても、即効効果を上げるにはあめとむちを使い分けることが必要だ、こういうふうに言われておりますし、このことは古今東西を問わずいろいろとそういうことがされてきたわけであります。ソ連は、漁民にとりましてかけがえのない生活権あるいは漁場、その安全操業、こういうものをある面で支配しておる、そういう立場にあると私は思うのでありまして、したがって、ソ連軍事的脅威やあるいは政治的、心理的な圧迫の力もきわめて大きいものがある、こういうふうに私は思うわけであります。  こうした臨検攻勢の一方では、日ソ友好の船という何か制度がありまして、その会員は、領土返還運動から手を引くというそういう誓約を一札入れることによって、臨検に会っても罰金その他は減免されるばかりか、ソ連二百海里以内の漁場に特権的な操業さえ許されておる、こういうふうに報じられておるわけであります。  工作の第一段階はまず領土返還要求の粉砕にある。先ほどいみじくも大臣がそうした一連のソ連の動きは日本人にあきらめさせるというそういう効果をねらったものではないかという、これは個人的な見解としてお述べになったところでありますが、そうしたまず領土返還要求の運動を粉砕するという、これが一つある。  そしてさらに、工作運動の目標の一つには、いま次々と建設されております日ソ友好会館の建設、こういう問題があると私は思います。すでに札幌、釧路では建設をされておりますし、稚内でも近く完成されるようであります。また函館でも建設の動きがあるように聞いておるのでありますが、私は、そうした次々と建設されていく日ソ友好会館は、次の目標には根室が挙げられるのではないか。これは全く私の推測でありますけれども、いまそういうことになりますと、政府あるいは北方領土問題対策協会がいろいろ進めておりますこのシンボル像の問題、こうしたものにも非常に大きな悪影響を及ぼしてくるのではないか、こういうふうな気がするわけであります。  そして、こうした一連の動きというものは、極論するならば、ソ連のいわゆるフィンランド方式を可能にする動きではないか、こういうふうな心配を私は強く感ずるのでありますけれども、こうした実態を大臣はどのようにとらえていらっしゃるか、御答弁をいただきたいと思います。
  145. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお話のありました中で、レポ船の問題につきましては、三月十二日に外務省からソ連側に申し入れを、注意喚起を行っておるわけでございますが、いろいろな一連の動き、友好会館の問題もございましょう、それについては十分注意を払ってまいる必要がある。これについては、やはり政府及び国民の一貫した動きといいますか、あくまでも粘り強く返還を求める運動を続けてまいる。同時に、自国の国土を守るということについての真剣な気持ちといいますか、こういうものができておりますれば、そういういろいろな工作があっても、その工作は恐らく成果を上げないということになると存じますので、そういう点については、やはり日本人自体の心構えというものが基本になると存ずるわけでございます。
  146. 部谷孝之

    部谷委員 日ソのサケ・マス漁業交渉が四月十三日に妥結をいたしました。漁獲割り当て量は三年連続四万二千五百トン、そして漁業協力費が三十七億五千万ですか、そういうことで妥結したということでありますが、この数字を少し分析してまいりますと、サケ一キログラムについて約九十円、これを国が負担しておることになる。漁船一隻について三百六十万円、国民一人当たり約三十七円を負担しておる、こういうことになるわけであります。  ところで、総理府の外郭団体として北方領土返還運動を推進しております北方領土問題対策協会、先ほど申しましたが、この協会の年間予算が四億円であります。つまり、魚をとらせてもらうために国民ソ連に対して一人三十七円を支払っておるのでありまして、一方、そのソ連から固有の領土を返してもらう、返還するという国家的な課題を解決するためには、そのわずか九分の一の四円を負担しておるにすぎない、こういう計算になるわけであります。漁業協力費の負担増を初めといたしまして、国産サケの見直しなど、日ソ漁業交渉の問題点が指摘されておりますが、より大事なことは、北方領土返還という根本的な問題を解決するために何をすべきかということでありまして、国の尊厳と民族の主権にかかわる問題として、それにふさわしい対策を実務的に実施すべきであると思うわけでありますが、その点について御見解をいただきたいと思います。
  147. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今度のサケ・マス漁業につきましての協定は、御指摘のようなことで比較的短期間に締結に至ったわけでございます。それに三十七億五千万円の金を払うということがどうだろうかという御指摘がございましたが、これは関係漁民の生活問題とも結びついておるわけでございまして、一応円満にサケ・マス漁業が続けられるということは、関係の方面、漁民の生活という問題を含めて望ましい点がございます。将来どのようなことになるのか、これは国内の河川におけるサケの生産も大分成功しつつあるようでございますし、また他の地域からのサケの輸入ということもだんだんふえているようでございますし、将来はある意味ではソ連との間の経済的な交渉という意味が強くなる、双方の利益という立場から交渉するという問題でもあるかと存ずるわけでございますので、これを直ちに領土返還の予算に結びつけるのは少しむずかしいことでございますが、基本的には、われわれの方のバーゲニングパワーを強くしていくということが一つ考慮すべきことだろうと思います。
  148. 部谷孝之

    部谷委員 いま私は、ソ連に対する漁業協力費を出すことはばかばかしいという意味で申し上げたのではないのでありまして、それより以上に大事なこと、これはいまの協会に対する事業費四億円、これは外務省の所管ではございません、これは総理府のおやりになることだと思いますので、それを大臣にお尋ねし、要求するわけではないのですが、片や三十七億、片や四億というそういう非常に金額の差がある、その小さい方が国家的な一番大きな問題、それを遂行していくのに四億しかない、そういう取り組みの姿勢、そのことを私は問題にしてお尋ねをしたのです。  もう時間がないようですからもう一点だけ。  いまいろいろ北海道における道民の不安の問題、先ほど上原先生の方の見解もありましたけれども、私はかなり道民の不安というのはあると思うのですよ、いろいろマスコミで喧伝されていますから。だからひとつ、そういう道民の不安を除くために、大臣みずから現地に乗り込んでいただいて、そうして、大きな国の外交方針を道民の人たちに力強く訴えることによって、そうした道民の不安を除去し、さらにまた返還を推進していく必要があると思うのですが、そういう御計画はございませんか。このことをあわせてお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。
  149. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほどの四億円の問題は、御発言趣旨よく了解いたしたわけでございます。これは外務省の所管でございませんが、外務省としても「北方領土云々」というようなパンフレットをいろいろつくりまして、この問題の背景、歴史、日本側の正当性、従来の経緯等などもいろいろ詳細に説明して、各方面に配布いたしておるわけでございますが、この点はあくまでも粘り強く、根気よく、あくまでもあきらめずにやっていくということが非常に大切だと考えておるわけでございます。  私に北海道の方へ行ってはどうかというお話がございましたのですが、いろいろ国会の議事、外国等に行かなければならぬ問題などいろいろございますので、今後の日程等も考えさしていただきまして、検討いたしたいと思います。
  150. 部谷孝之

    部谷委員 ありがとうございました。
  151. 河村勝

    河村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会      ————◇—————