○大来
国務大臣 ただいまお尋ねの
防衛問題についてのワシントンにおける
カーター大統領と
大平総理の
会談でございますが、もちろんその
首脳会談の
内容をそのまま申し上げるということは困難でございますけれ
ども、概要について申しますと、まず
大統領の方から、
日本が
防衛力増強に
努力していることを多としており、また
日本の
国内的制約は十分
理解しているところであるが、今後とも、新しい
状況に対応するために、
政府部内にすでにある
計画を
早目に達成するならば、
アジアの平和と安定のために有益と
考える、ということを
大統領が述べたわけでございます。
これに対して
大平総理よりは、第一に、われわれとしては、従来より精いっぱい
努力してきたところであるが、今後とも自主的にその
努力を続けていく、第二に、
日本が
防衛力を整備する上でいろいろな
制約があることを
米側が
理解してくれていることを評価する、第三に、われわれとしても、
同盟国として何をしていくべきかを真剣に
検討していきたい、第四に、また
アジアの政治的、経済的安定はこの
地域の
安全保障のために最も重要であり、われわれとしては、この
地域の安定に寄与するためにこれらの
諸国への協力につき一層
努力していきたい、対パキスタン、対トルコ、対タイへの援助も、これらの
諸国の
安定強化のためにやっているわけだという
趣旨のことを
総理から言われたわけでございます。
ただいま
村上委員から御
指摘がありました一昨日ですか、八日ですかの一部の
新聞に、たとえば「
防衛費の
GNP一% 米、三年で
達成要求」というようなことについての
記事がございますけれ
ども、これはバンクーバーで今度の
旅行全般についてのブリーフをいたしましたときの話が土台になっておるように思いますけれ
ども、多少
誤解を招くような表現が使われておるように思います。
たとえば「三年で
達成要求」ということはいままで言われたことはないわけでございますが、計算するとそういう計算にもなる。つまり「
中期業務見積り」でございますが、それは
防衛庁の
内部の
計画で、もともと五十五年から五十九年までの五年間の
計画見積もりになっておると
承知しておりますが、それを一年
程度前倒しにできないかというのは、三月に私が
ブラウン長官に会いましたときの先方の
発言であったわけでございます。
新聞の方では、恐らく、五十五年はそういう
意味で余り動いてなかったから、五十六年から五十八年まで、五十九年を一年繰り上げてということになると三年になるという
意味で「三年」という見出しをつけたのじゃないか、これは私の想像でございます。ただ、従来
ブラウン長官からありました話は、五年の
業務見積もりを四年でできないか、そういう
趣旨でございまして、それをわざわざ「三年」と書くといろいろ
誤解を生ずる面もあるのじゃないかと存じます。
それから
総理と
カーター大統領の
会談は、ただいま申し上げましたような
趣旨で何ら具体的なことを
総理が
発言しているわけではございませんで、
カーター大統領の
発言も「
中期業務見積り」ということは一言も触れておらないわけでございまして、「すでに
日本政府の
内部にある
計画」というような言い方をいたしておるわけでございます。これは多分「
中期業務見積り」のことだろうという推定はできますけれ
ども、
大統領がはっきりそういうことを申したわけではございませんで、
総理のお答えの方も、
防衛の問題について真剣に
検討していきたいという一般的な返事をいたしたわけでございます。
それから一%問題というのは、これは
昭和五十一年の「
防衛計画の
大綱」と、もう
一つ「
防衛費についてはさしあたり一%以内を
めどとする」という
国防会議及び
閣議決定がございまして、それを
めどとするということでございますが、最近四年だ、五年だ、一%だといろいろな
議論がございますけれ
ども、仮に一年繰り上げて五十九年を五十八年に達成する。これも
防衛庁の問題でございますから、私
どもから
余り内容に立ち入って申し上げることはどうかと思いますが、ただ、それにしても一%という
昭和五十一年における
閣議決定、
国防会議決定の線を越えるものではございませんで、私
どもも、近ごろのいろいろな論議についての
報道等を見ますと、何か非常に大きな変化が起こるというような
報道ぶりも多いのでございますけれ
ども、これはどうも事実と反するように
印象を受けておるわけでございまして、五十一年のそういう
国防会議、
閣議決定の線を決して逸脱するものではございません。
米側の
要求も、五年というのを一年ぐらい繰り上げることはできないか、もちろん
日本の持っておるいろいろな
制約について十分
承知しているのだがということで、ここに来まして何か急に従来の方針が変わって、
防衛費を非常に大幅にふやして、それによって福祉、
厚生等を大きく圧迫するような
方向転換が行われるのではないか、しかもそれが
アメリカ側の
要求によって行われるのではないかというようなことが一般に伝えられているようにも思うのでございますが、いま申しましたようなことで、その枠として従来の
考え方を決して踏み出すものではございませんし、また、外からの要請ということもございますが、確かに
日米安全保障条約を結んでいる
相手方でございますし、
相手方の
防衛についての、これは
世界全体にわたる
国防という問題を
考える
立場の
アメリカ側の
考え方というものはございますけれ
ども、本来、これは
総理も繰り返していろいろな
機会に述べておることでございますけれ
ども、
防衛という問題は、
国際情勢とそれから
わが国の
財政事情とそれから
国民の
コンセンサス、こういうものに基づいて自主的に決めるものであるということの
立場は変わっておらないと存じます。
以上が大体の
考え方かと存じます。