○
国務大臣(
大平正芳君)
相沢さんの御
質問にお答えいたします。
第一の御
質問は、過般の
解散から今日に至るまでの
政治的混迷、
行政の停滞についてどうこれを受けとめ、これに対してどういう
責任を感じておるかという御
質問でございました。
私は、過般の
解散は時期を間違ったものとは
考えておりませんし、この
解散に伴う
選挙が秩序正しく行われまして、
国民の厳粛な
審判が下りました。これを厳粛に受けとめて、鋭意謙虚な態度で
国政の
運営に当たらなければならないものと
考えております。この
審判をどのように受けとめ、それに伴う
政治責任をどのように処理するかということにつきまして、自由民主
党内で
論議が沸いたことは御案内のとおりであります。これは
党内民主主義の
立場からは御理解いただいて差し支えないことだと思うのでありまするけれども、問題は、この
論議の収束が大変長引いたこと、そしてその結末を
国会に持ち込まざるを得なかったことでございまして、その
責任は、挙げて
総裁である私の
責任でございまして、私は深く
反省をいたしまして、このようなことを繰り返さないように今後戒めていくつもりでございます。
私が
政権の
延命に狂奔したのではないかという御意見でございましたが、私は何も
政権に恋々とするものではございません。
総理・
総裁という
立場におきまして私の進退は
大変国政に
影響を与えるものでございますので、あくまで慎重でなければならぬと存じ、筋道の通った去就を行わなければならぬと
考えたわけでございまして、その点につきましては御理解をいただきたいと思います。
党内で
決着をつけるべき
首班指名を
国会に持ち込んだことについての
政治責任についてお尋ねでございました。
本来、
党内民主主義で片づけなければならぬ問題であることは御指摘のとおりでございまするけれども、問題は、
特別国会が開かれまして議題がすでに上程されておるときでございますので、時間の制約がございまして、やむを得ずああいう異例の
措置に出ざるを得なかったわけでございます。そのことにつきましては、私の
責任であるということはたびたび申し上げておるとおりでございまして、今後こういうことを繰り返すことのないように十分戒めてかかるつもりでございます。
相沢さんは、さらに、
政治資金の
規制強化を含む
政治浄化とどう取り組むかというお尋ねがございました。
政府といたしましては、そのために
政治倫理の
確立を図ることが必要であると
考えまして、
さきの
再発防止協議会の御提言も十分尊重いたしまして、
政治資金の明朗化を図る
措置を初めといたしまして、
企業の自主的監査機能の整備、
行政の
責任の明確化を図る
措置、さらには制裁法規の整備
強化を図る
措置等につきましていま諸般の準備を進めております。成案を得次第、
国会に御審議をいただくつもりでおります。
また、公正で金のかからない
選挙制度のあり方につきましても、
国会と緊密な連携のもとに検討を進めてまいりたいと
考えております。
政治家の資産公開等につきましては、事の性質上、
政府から提起すべきものではなくて、
国会の審議検討にまちたいと
考えております。
国際電信電話株式会社の事件につきましてのお尋ねでございました。
政府としては、このような事件が再発されることがないよう、鋭意この事件の真相の究明、解明に当たり、
再発防止のための人事の刷新を初めといたします具体的な改善方途を検討いたしておるところでございます。さらに今後厳正な指導監督を
強化してまいるつもりでございます。
鉄道建設公団問題も同様、まことに遺憾なことでございまして、今後公団等特殊法人に対する指導監督につきましても、この
事態の究明を通じて得られましたデータを活用いたしまして指導監督に万全を期したいと
考えております。各
責任者につきましていろいろ厳正な処分をすることは当然でございますが、同時に、
予算の計上、執行につきましても再点検を図ってまいる所存でございます。
各省庁の
公費接待の廃止でございますとか、綱紀の粛正、再発についてどう取り組んでいくかということでございます。
官庁間の行き過ぎた接待につきましては、
予算の厳正な執行に当たるべき公務員といたしましてまことに遺憾なことでございます。早速各省庁に対しましてその廃止を指示したところでございます。各省庁におきましても、十一月二十六日の綱紀粛正の申し合わせの中に、仰せの官庁間接待の廃止を取り決めておるところでございます。
政府といたしましては、二度とこうした批判を受けることのないよう厳しく自戒してまいりたいと思います。
不祥事件、
不謹慎発言などについて、
任命権者である私の
責任をただされたのでございます。
私といたしましては、各
閣僚の人格と識見を信頼し評価いたしまして御入閣をいただいたわけでございます。各
閣僚におかれては、
政治倫理の要請を厳しく受けとめられて職責を十全に果たしていただけることと確信をいたしておりますが、何をおきましても
任命権者である私自身が自粛自戒してまいることが第一であろうと思います。御指摘のとおりでございまして、内閣を率いて遺漏がないように十分周到に注意してまいるつもりでございます。
次には、
財政再建策についてのお尋ねでございました。
現在の
財政は大変異常な状態になっておりますことは
相沢さんも御承知のとおりでございまして、
財政の公債依存体質を改めまして、将来にわたって
財政の
対応力の
回復を図ることが
財政再建の緊急な課題であることは御案内のとおりと思います。このため、
政府は、歳入、歳出両面を通じまして幅広い角度から
再建の手だてを検討いたしております。
まず
増税をというような
考え方は毛頭持っていないのでございまして、五十五年度
予算の編成に当たりましては、
財政再建の具体的第一歩として、第一年度にふさわしい
予算案を編成いたしたいといま全力を挙げておるところでございます。
今後の
財政再建の具体的手段、五十五年度以降、五十六年度以降の
財政再建の具体的手だてといたしましては、この
財政再建の趣旨にかんがみまして、いろいろな手段をどのような方法でやってまいるか、幅広く検討をしなければならぬと
考えております。
財政再建につきましての
国会の決議についてのお尋ねがございましたけれども、
国会の決議は
国会の御判断にまつべきであると
考えております。
それから
財政長期計画策定作業の進捗
状況はどうかというお尋ねでございました。
財政計画につきましては、
財政制度審議会における
論議等を踏まえまして現在
政府部内で鋭意検討を行っておるところでございます。何分大変むずかしい仕事であり、かつ広範にわたる作業でございますので、いつまでに作業が終了してまいるか、現在の段階ではまだ確定的なことを申し上げる自信がございませんが、今後とも鋭意検討作業に精力的に取り組んで御期待にこたえなければならぬと
考えております。
行政管理基本問題研究会の提案をどう受けとめるかということでございました。
この
研究会の御提言の中心は、
政府公共部門の担うべき役割り、すなわち
行政の守備範囲について深く検討をされて、数多くの有益な示唆が盛られておると思っておりまして、学界等第一線の方々の御提案でもございまして、
政府としては十分勉強さしていただき、尊重さしていただいて、生かすべきものは積極的に生かしてまいるように努めたいと
考えております。
行政改革と
補助金整理は
財政再建の柱である、これについての
基本的な
考え方はどうかというお尋ねでございました。
これは、仰せのとおり、われわれといたしましても
行政改革を現内閣の最重要な課題として受けとめて、強い
決意で取り組んでおるところでございます。そのためには、先般
策定いたしました定員削減
計画を着実に実行いたしますとともに、特殊法人、省庁の付属機関及び地方支分部局について年内に
整理計画を作成いたしまして、積極的にこれを進めてまいる
方針でございます。
補助金につきましては、年内に
整理合理化の
計画を
策定いたしますとともに、当面の五十五年度
予算におきましても、従来にも増して積極的に廃止、減額等の
整理合理化を図るべく目下鋭意検討をいたしておるところでございます。
三
K赤字解消策についてその
方針を示せということでございます。
国鉄
関係で申しますと、国鉄は五十四年度末に累積
赤字が六兆円を超えるという深刻な
財政状況にあることは、
相沢さんも御承知のとおりと思います。国鉄
財政再建問題につきましては、五十二年十二月の閣議了解がございまして、五十四年度中に新しい
再建案を
確立することとされておりまして、
サマーレビュー以来鋭意検討いたしておるところでございます。国鉄
再建のためには国鉄自身の徹底した
経営改善が必要でございまして、これが達成されないまま国の助成を漫然と続けても抜本的な問題解決にはならないと
考えております。したがって、国鉄がいかなる合理化
計画を講ずるかを見きわめながら、厳しい
財政事情の中ではありまするけれども、国鉄の収支改善
措置を助長するよう必要最小限度の助成は行っていかなければならないと
考えております。
食管
関係でございますが、先般の五十四年産米の
価格決定に当たりましては、米の需給事情にかんがみまして、その
水準を据え置くことにいたしました。また、食管
運営に市場原理を
導入するとの観点から、
生産者への急激な
影響の緩和にも配慮しながら、新たに品質による
価格差を
導入いたしたところでございます。
なお、米に係る
財政措置につきましては、今後
予算編成過程で
サマーレビューの成果を生かしてその節減合理化を図る
方向で最大限の努力を払っておるところでございます。
医療保険につきましては、今後の安定
成長経済下における人口の急激な老齢化、医療の高度化の進展に
対応いたしまして、給付、負担の両面にわたりまして制度の
基本的
改革を進めることといたしておりまして、まずその第一段階として、給付と負担の適正化、家計の高額な負担の軽減等を
目的とする健保法の
改正の早期実現を図ることとしてお願いをいたしておるところでございます。また、指導・監査の充実
強化等により適正な医療費支出
対策を推進することにより、
国民医療の確保と保険
財政の
長期的な健全化を図りたいと
考えております。
租税特別措置の改廃についてのお尋ねでございました。
租税特別措置につきましては、年々これを見直してきておりますけれども、ことしはさらに
財政事情の厳しいこともございまして利子・配当の
総合課税への移行の具体的
措置を講ずるほか、
企業関係の
租税特別措置につきましては抜本的な見直しを行い、その
整理合理化を進めておるところでございます。
相沢さんは、五十五年度
予算編成における
福祉・教育
予算の
後退を戒められておるわけでございます。
たびたびこの議場でも御説明申し上げておりまするように、
わが国の社会保障は制度的にはいますでに国際的に遜色のない
水準にまで達しておると思いまするけれども、今後の高齢化の進展に伴いまして、現行の
水準を維持していくだけでもその費用負担は相当大幅な増大が予想されております。したがって、社会保障を今後推進していくに当たりましては、従来にも増して制度の合理化、給付と負担の
公平化等を着実に図っていくことが必要であることはたびたび申し上げておるとおりでございまして、五十五年度の
予算編成に当たりましても、そういう
考え方に立ちまして、
国民福祉に配慮しながら、制度、施策の適正化の検討をいま行っておるところでございます。
教育
予算につきましても、
財政再建の緊急な要請の中にありながらどのようにして確保してまいるか、いま鋭意検討を行っておるところでございまして、五十五年度の
予算でごらんいただきたいと
考えております。
財政再建特別委員会を
国会に設置せよという御意見でございますが、これは
国会の問題として各党間の御検討に期待したいと思います。
それから
物価並びに
景気の
状況をどう判断し、これに対してどういう
対策を持っておるか、いま示しておる
対策で十分かというような御意見でございました。
去年の暮れ以来、内需を中心といたしまして
経済の
拡大は順調に進んでおるように私どもは認識いたしております。雇用も漸次改善の跡が見られるわけでございます。
消費者物価もおかげさまでどこの国よりも安定した足取りを示しておりますることもありがたいことと思っておりまするが、問題は、
卸売物価と国際収支に大きな狂いが外的要因等から出ておりまするわけでございます。これがどのように今後の
消費者物価に
影響をしてまいりますか、これに対してどのように備えてまいるかが当面の
物価政策の核心であろうと
考えておるわけでございまして、
政府は先般八
項目から成る
物価対策を決めて実行に移しております。日銀当局も四月以降三度にわたりまして公定歩合の引き上げを行っておりますることも御案内のとおりでございまして、われわれは緊張した
姿勢で
事態に
対応いたしますならば、第一次
石油危機に見られたような
状況を招来することなく
物価の
抑制に成功するのではないかと
考えておりまするけれども、なお一層緊張した
姿勢で
物価政策には
対応してまいるつもりでございます。
公共料金値上げの
抑制について、公明党の御主張もあわせて御披露いただきながらの御
質問でございました。
われわれといたしましては、
公共料金を定めるに当たりまして、
経営の徹底した合理化を図ることが
基本でありますが、その負担につきましては受益者負担を原則とするという
考え方にのっとって、最小限度にその
値上げを抑えるようにやってまいったわけでございます。公明党の、受益者負担原則、所得
応能負担原則、あるいは生活必需的サービスの最低保障の原則、この三つの原則を適宜あんばいして当たれという御意見は、一考に価する御提案と思いまするけれども、われわれといたしましては、これを支える財源その他いろいろ検討すべき問題がございまして、ただいまわれわれが堅持しておりまする
方針を厳しく徹底して
対応してまいることが現実的であると
考えております。
それから
中東産油国と
米国との間に立って微妙な
立場にある
わが国の
石油買い付けのあり方についてのお尋ねでございました。
現下の流動的な国際
石油情勢のもとで、
わが国といたしましてはスポット
原油の高値買いを自粛しながら、新たな安定的な供給ルートの確保に努めておるところでございます。
また、
世界の
石油需給の改善に資するためには先進消費国間の協調が不可欠でございますし、
わが国としても
IEA等の場を通じての協力に積極的に参加してまいる
方針で臨みたいと
考えております。
その次は、
中東外交についてのお尋ねでございました。
わが国が
中東、中近東
外交を進めるに当たりましては、
石油安定供給の必要のみでなく、パレスチナ問題を含む
中東和平問題の重要性を十分考慮する必要があると
考えております。さらに、これら諸国の国づくりや人づくりのための
経済技術協力を初めといたしまして、人的文化的交流等、広範な分野にわたりましてこれら諸国との友好協力
関係を積極的に進めていく必要があると
考えております。
また、
わが国の
立場及び
世界における
わが国の地位にかんがみまして、
中東和平の実現に向けて応分の貢献をしなければならぬと
考えております。特にパレスチナ問題につきましては、
中東紛争の核心をなすものとしてきわめて重視いたしており、パレスチナ人の民族自決権を含む国連憲章に基づく正当な権利が承認、尊重されることが必要であると
考えております。パレスチナ人の民族自決権につきましては、
わが国は独立国家を樹立する権利も含まれておると解釈をいたしております。また、これまでもすでに機会あるごとに明らかにいたしてきたとおり、PLOをパレスチナ人を代表するものとして認識しておりますが、今後とも
わが国としてはPLOと行っておる対話をさらに推進していく所存であります。
産油国、非産油国を問わず、中近東諸国と諸分野において緊密な
関係にある
わが国といたしましては、今後ともこれら諸国との相互理解、友好協力
関係の増進に努める
考えでございまして、首相レベルの交流は仰せのようにきわめて大事だと
考えております。このような観点から、できるだけ早い機会にこれらの諸国を私が訪問できる機会を持ちたいと念願をいたしておりますが、今後のスケジュールもございまして、まだ具体的にスケジュールを決めるまでには至っておりません。
エネルギーの需給暫定
見通しについての
中間報告をどのように受けとめておるかということでございます。
総合エネルギー調査会の
長期エネルギー需給暫定見通しは、
東京サミットの合意に基づく国際的
責任を果たし、かつ中
長期にわたる
エネルギーの安定供給を確保するという観点から立案されたものと承知いたしております。
御指摘のとおり、この
見通しに基づく
目標を達成することが容易でないことは私もよく承知しておるつもりでありますが、今後とも
わが国経済社会の発展を図ってまいりますためには、官民を挙げてその達成に最大限の努力を払わなければならないものと
考えております。
政府としては、
石炭、
原子力等の
石油代替エネルギーの開発、省
エネルギーの促進、
石油の安定供給確保に一層強力に取り組んでこの期待にこたえてまいりたいと
考えております。
次に、
農業、
食糧問題についてのお尋ねでございました。
農村は、
食糧の安定供給、地域社会の発展、国土の保全等重要な役割りを果たしておると承知いたしております。このような役割りにかんがみまして、
農業の
生産性と総合的な
食糧の自給力の
向上、活力のある農村の建設は、
政治にとりまして核心的な重要な課題であると心得ております。
六十五年を
目標といたしました
長期需給見通しにおける
食糧の
自給目標をできるだけ早く明らかにせよという御
質問でございました。
農業の将来展望を
確立するため、現在
農政の見直しを行っておりますけれども、その一環である
農産物の
長期需給見通しにつきましては、国土
資源の有効利用と自給力の維持
向上の観点に立ちまして、来年春を目途に検討を進めておるところでございます。
米の
生産調整についてのお尋ねでございました。
せっかく
政府も米の消費
拡大に努めておるわけでございますが、なかなか思うに任せませんし、一方、米の
生産力の
向上が予期以上に出ておる
関係もございまして、米の過剰の度合いはいよいよ強まっておることは、御案内のとおりでございます。したがって、こういう
事態に直面いたしまして、
生産者を初め
関係の方々の特段の御理解を得て米の需給のバランスを早く
回復しなければならぬと存じております。
こういう
状況でございますので、転作
目標を改定せざるを得なかった事情につきましては御理解と御協力を得たいと思います。
今後、
農業の将来に明るい展望を切り開いていくためにも、需要に即した
農業生産への転換は避けて通れない課題であると
考えております。今後、関連施策につきましては一層の充実を図ってまいりたいと
考えております。(
拍手)
〔
国務大臣竹下登君
登壇、
拍手〕