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参考人(
中川幸次君)
日本銀行の
中川でございます。
いまの
お尋ねにつきましての答弁、私
ども趣旨としては全く企画庁
長官の言われたことと同じでございますが、若干敷衍して申し上げてみたいと思います。
十一月の
卸売物価、もうしばらくすると出ると思いますが、十月現在で申しますと、前年比一四・五%上がっておるわけでありますが、そのうちで為替が
円安になったために直接
値上がりしました要因は大体三%でございます。これは全く直接でございまして、ドル建ての輸出入のものがかなりございます。大体
卸売物価の中で一五%ぐらいのウエートを占めておりますが、したがいまして相場が動けば、それはすぐに円建ての
価格には影響を及ぼすわけであります。その直接的な影響で三%ぐらい
卸売物価が上がっております。そのほか、間接的にそれが製品になって上がるものがあるわけであります。それはよくわかりませんけれ
ども、正確なところはなかなかはっきりつかめませんが、おおよそそれに近い、あるいはそれと同じ程度の
値上がりがあったかと思われます。したがいまして、お話しのように確かに
円安による
物価押し上げ要因というのは非常に強いように思います。特に十一月上中旬だけわかっておりますが、その中で一・一%上旬で上がりましたけれ
ども、そのうち
円安による分は〇・六%、半分も上がっておりますので、非常に
円安が大きな押し上げ要因に最近の場合にはなっているということであります。
その
円安の原因でございますが、やはり何と申しましても、最近におきまして国際収支、特に経常収支が七月以降大幅な赤字を続けている。季節調整いたしました数字で大体毎月十億ドル以上の赤字になっております。そのほか、まだ長期資本の流出が相当ございます。したがいまして、国際収支全体としてはもっと大きな数字になっているわけであります。それに加えまして、いま
長官からのお話もございましたように、どうも日本は石油に弱いという、私は個人的にはそれは誤ったイメージではないかと思いますけれ
ども、そういう感じが市場にございます。したがいまして、石油情勢の不安定なニュースが入るたびに円が売られるというふうなことになっております。市場が、円がまだ安くなるというふうな感じが先月には大分ございましたので、輸入の方は予約が大変出てくる、輸出の方は予約が非常に少ないというふうなことで、ドルの需給がドル堅調になりまして、それが円相場の
円安を加速したんではないかというふうに思っております。八月に二百二十円台をつけまして、十月十六日に二百三十円台、十一月の初めに二百四十円台、いまの十一月二十七日に二百五十円台と、急速に
円安になってまいりましたが、私
どもここへきてそう格別大きな材料が出たわけではございませんし、こういった急速な
円安は明らかに行き過ぎであるというふうに思っております。そういうこともございまして、十一月は相当果敢な介入をいたしまして、介入の金額は申し上げるわけにまいりませんけれ
ども、外貨準備が十一月中に三十一億ドル減りましたということ、実際にはそれを上回って介入しているというふうにお
考えいただきたいと思います。
それも
一つの
対策でございますが、
円安対策はそういうふうな直接の市場に対する
対策のほか、間接的にはやはり何と申しましても基礎的諸条件、たとえば国際収支、それからインフレ率、こういうものが非常に影響するわけであります。
物価抑制につきましては、
日本銀行としましては、ことしの七月から金融引き締めに転じまして、これまで三回公定歩合を引き上げまして、ある程度の輸入インフレが、国内に影響が出てくるのは仕方がございませんけれ
ども、その波及ができるだけ少ないようにということで金融引き締めを実施いたしております。
そういうふうな間接的な手段、それから直接的な手段、こういうものがだんだん効果を上げてきているように私は思います。市場でも最近の非常に大幅な赤字はいまがピークではないか。これから十二月、石油がどれくらい
値上げされるかということが非常な大きな不確定要因ではございますが、仮にそれがそう大きなものでないとすれば、いまが赤字のピークではないかというふうな感じもございまして、イラン情勢その他でドルが相対的に弱くなっているということもございますし、あるいはまた当局がいろいろな
対策をやっているというふうなこともございまして、ごく最近におきましては、
円安が行き過ぎているというふうな感じが徐々に生まれ出しているんではないかというふうに思います。私がこちらの方に出てまいりますまでの相場を聞きましたら、いまは二百四十一円台まで円が強くなっているようでございます。私個人といたしましては、もともといままでの
円安は行き過ぎであるというふうに
考えておりましたし、ここで期待を込めて峠を越したんではないかというふうに思っている次第でございます。