○内藤功君 これは、天下の人が、たとえばあなたの例と全然別ですが、たとえとして申し上げるのですが、
裁判官がある刑事
事件を裁いておったときに、その
裁判官が過去においてその被告と同じような
事件をみずから犯したことがある、それがどういう理由にせよ。そういう場合に、その
裁判官の言うこと、その
裁判官のやることを
国民は大いに信頼しますかね。これはしないですよ。ですから、昔から李下に冠を正さずと言って、
裁判官なんかの場合にはその人がどういう
事件についてのかかわり合いを持つかということは非常に重大なことなんですね。
警察の
最高の長、あるいは公明
選挙の
最高の長というのは、
裁判官ほどじゃないですが、公正、
厳正中立が要求される人なんです。ですから、自分は、おれは知識がある、おれは
経験がある、おれは
厳正にやると、そう思われるでしょう。そう思っても、世間というものはそうじゃない。世間というのは
国民世論はどう見るか。そういう
国民世論はどう見るかというのは感じの問題じゃない。
国民の信頼というものの上に
民主政治というものはつくられるのです。そういうものなんです。ですから、そこがわからない人は
民主政治のもとで
大臣にはなれない。天皇から任命されるかつての
大臣や大将にはなれるでしょう。他がどう見ようとおれは任命される。つまり上向きの、上に責任を持つ
大臣ならそれでよろしいでしょう。いまは下に責任を持つというか、
国民に責任を持つ
大臣ですから。これは私ごときが説教がましく申し上げるまでもないと思います。私はいつまでやっても切りがありませんから、このぐらいにとどめておきます。
私の聞きたいことがきょうは実はあるわけです。これは選
挙部長で結構です。戸別訪問の問題ですが、先ほ
ども公明党の多田理事の御質問な
どもありました。戸別訪問の問題について最近ずっと判例の傾向を見てみますと、
昭和四十二年から四十四年の間に、下級審ですが、憲法
違反、戸別訪問禁止違憲、無罪という判決が四件ございまして、そうして四十四年四月二十三日に
最高裁判所で憲法
違反ではないという判決が下って、それからどういうわけか約九年ぐらいの間は憲法
違反だという判決はなかった。ただ、憲法
違反ではない、有罪だけれ
ども、いまのこの法律は立法的に再
検討すべきだということを判決の傍論で言うような判決はかなり出てきた。しかし、
昭和五十三年昨年の三月三十日の西条支部の判決、ことしの一月二十四日の出雲支部の判決、九月七日の柳川支部の判決、いずれも地裁の支部でありますが、こういう支部の判決であるが、下級審でずっとまた憲法
違反という判決が出てきているわけですね。これは下級審の動向というものは、
最高裁よりは審級は低いけれ
ども、下級審というのは実際に被告なり証人なり、生の人証、書証でもって調べますから、非常に事実に即した判断ができるという面を持っている、フレキシビリティを持っている。ですから、下級審といえ
どもこの動向というのは無視することはできないと私は思うのですね。
最高裁では書類の上だけで判断しますから。そういう点では、これらの判決の動向が、
一つ二つならともかく、これだけの動向がある。一たん
最高裁判決で打ち切られたかに見えたその違憲、無罪の傾向がまた最近三件続けて出てきておる。ここらあたりの動向については十分注意を払っておられると思うのですね。
それで、私はこういう前提に立って、しかも、最近自由法曹団という法律家の団体が、これは
新聞にも出ましたが、アンケートを
衆議院総
選挙の前に
候補者全員に出したんです。回答者は二百八十二名であって、内訳は約九〇%に当たる二百五十二名の
候補者から戸別訪問自由化は賛成だという回答が出ております。そうして、
各党の政調、政審、あるいは
選挙制度関係の
責任者は、ほとんど賛成されております。それから
選挙の一方の当事者である
候補者から戸別訪問自由化への圧倒的意思が示されているということは非常に重要なことだと思うのですね。
賛成理由を見ますというと、大体三つありまして、
一つは
候補者や
政党の政策について有権者と直接
意見交換ができる、二番目はだれでもできる身近な
選挙運動であって
政治参加のよい
機会になる、三番目は
政治に対する
国民の関心を高め言論中心の明るい
選挙になると、大体そういう三点に要約できるのであります。これは
国民からもおおむね共感の得られることだと私は思うのですね。
それからさっき触れました松江地裁出雲支部の憲法
違反の判決に対して、島根県における
各党、特に自民、社会、公明、民社及び共産、この
各党はいずれも島根県の県連あるいは県本部は判決支持というコメントが地元紙によると報道されております。
こう見てくると、大勢としては戸別訪問自由化ということが大きなやっぱり流れだと思う。いろいろな
意見があることはわかりますけれ
ども、それが多い少ないというのはここで論ずるあれではないんで、流れとしては戸別訪問を自由化するという大勢に裁判所の
考え方も変わってきているし、それから
各党の
考え方も変わってきているし、ということになると思うのですが、ここらあたりの大勢についての認識はどうか、
自治省の解釈論をいま聞くんじゃなくて、こういう大きな流れについては、どうです。選
挙部長、お認めになりますか。