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政府委員(佐々
淳行君) 海上自衛隊のリムパック参加について御説明を申し上げます。
海上自衛隊は、
昭和三十一年以来日米共同訓練をすでに八十三回にわたって行っており、護衛艦は
昭和五十一年から、潜水艦は
昭和三十八年から、対潜哨戒機は
昭和四十一年からハワイに派遣をいたしまして、米海軍の協力を得て訓練を実施してきたところでございます。特に、ハワイ派遣訓練につきましては、
昭和五十一年から今日まで
予算をお認めいただきまして、毎年護衛艦二隻と対潜哨戒機八機のハワイ派遣を行って訓練を行ってまいりましたが、従来の訓練では個艦の訓練に終わり、総合的な訓練が実施できないところから、わが方といたしましてはもう少し程度の高い訓練をやらしていただけないだろうかという希望を抱いておりました。
たまたま御指摘のようにリムパックと呼ばれる訓練の第七回目が明年春行われることになりまして、アメリカ側から、この訓練はアメリカ海軍で実施をしております外国艦艇の参加を認める訓練の場であるが参加の意思ありやなしやという照会がございました。御指摘のように、リムパックには過去六回、
昭和四十六年以来カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの部隊が訓練に参加をいたしておりますが、御承知のように、これはそれぞれ条約が違いまして、カナダはNATO条約により、ニュージーランド及びオーストラリアはANZUS条約によりましてアメリカとの共同
関係はございますけれども、カナダとニュージーランド等は直接の条約、同盟
関係にございません。こういうリムパックの性格につきましては、アメリカ側はハワイにおります第三艦隊が
計画をいたして実施をしておるところでございまして、参加艦艇の能力評価を行って練度の向上を図ることが目的でありまして、対水上、対潜、対空総合訓練並びに電子戦闘の訓練、洋上の補給訓練等を総合して行う訓練だということで承知をいたしております。
この訓練参加につきましては、ただいま御指摘のように、これまでアメリカとは八十三回やっておりますけれども、他の国が参加をする訓練の場に参加をすることは海上自衛隊として初めてでございましたので、このことの可否につきまして、ただいま御指摘のような集団自衛権行使を前提とするところの訓練であるのかないのか、もしそうだとすればこの訓練に参加することについてはいろいろ問題があろうということから、防衛庁といたしましては慎重に審議をいたしました。
特に、主催国であるアメリカに対しましてこの訓練の目的、性格等について問い合わせをいたし、
確認をいたしましたところ、この訓練は、たとえばわが国の防衛政策上必ずしも容認されておらないところの攻撃兵器、これを使用しての攻撃訓練であるとか、あるいは特定の国が特定の国を攻撃するのに対して共同して守るという、いわゆる集団的自衛権の行使を前提とした訓練ではないと。先ほど申し上げましたように、アメリカ海軍の訓練には三段階ございます。個艦訓練、応用訓練、そうしてフリートエクササイズと呼んでおります総合訓練とございまして、このリムパックは、巷間言われておりますような太平洋諸国が集団的自衛権行使のための共同防衛をするための具体的なシナリオを持った訓練ではなくて、これらの個艦訓練、応用訓練を終えた米国の艦艇が、第一線の艦隊配備になる前にその練度の最終的な仕上げを行うための訓練であり、かつこれに外国艦艇の参加を認めておる訓練であるということでございます。
特にこの点、私どもといたしましては、これらの国々と、たとえば指揮権の問題等も含めまして十分検討いたしましたが、従来の日米共同訓練と同様、指揮権は対等でありまして、各国の参加練習艦の指揮官がそれぞれ指揮権を持ち、連絡調整によって行っておること、あるいは先ほど申し上げましたような
一つのシナリオに基づいてやるものではないということを十分
確認をいたし、戦闘技術の向上のための訓練であるという判断をいたしました。
わが国の自衛権は、御承知のように国連憲章五十一条の集団的自衛権と個別的自衛権のうちの個別的自衛権だけを前提として認められておる自衛力を整備しておるわけでございますが、この法的根拠につきましては、防衛庁設置法五条の二十一号「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行うこと。」ということで防衛庁長官に権限が付与されております。それでは歯どめがないではないかというお尋ねでございますけれども、「所掌事務の遂行」というのは、解釈上、わが国に対して武力攻撃が行われた場合、個別的自衛権を行使する、そのための戦術技量の向上の訓練がこの五条の二十一号であろうかと私ども解釈をいたし、以上のような諸般の事情を主催国であるアメリカに十分
確認をした上で、外務省等の
関係省庁にも御連絡をした上で、防衛庁長官の
責任において設置法五条二十一号を法的根拠として決定をいたしたものでございます。
またリムパックの参加が太平洋巡察艦隊の前提ではなかろうかというお尋ねでございましたが、多分、これは十一月の一日の毎日
新聞の夕刊に出ましたアメリカ下院のポール・フィンドレー議員の
発言であろうかと存じます。もし間違っておりましたらお許しいただきますが、もし、このフィンドレー議員の
発言であるといたしますれば、このフィンドレー議員の
発言は、米下院議員の一議員であるポール・フィンドレー氏、共和党でございます。野党共和党のフィンドレー議員の個人的な
提案にすぎず、米国
政府の正式な見解ではないと、さように承知をしております。
それから発表の手続でございますけれども、海幕長がこのような重大な発表をしたのは、文民統制のルールに反するのではないかというお尋ねでございますが、この決定は先ほど来申し上げましたように、防衛庁長官の
責任において内局、海幕ともに十分検討をいたした上で決定をしたことであり、海幕長はたまたま海上自衛隊の共同訓練にかかわることでもありますし、
昭和五十一年以来ハワイ派遣訓練を従来実施をして、その発表を海上幕僚長が行っておった経緯もございまして、防衛庁長官の
指示により海幕長が発表をしたものでございまして、文民統制上の問題はないのではないだろうかと、かように
考えております。以上。