○大来
国務大臣 ただいまの渡部委員の御
質問につきまして、まず
日本の外交の方針でございますが、これは
先ほども申しましたが、一方において
日米関係というのは
日本の外交の重要な柱でございます。同時に、
日本の経済の生存のために海外からの資源が円滑に入手できるような条件をつくってまいる、これもまた
日本の外交にとってきわめて重要な柱になるわけでございまして、たまたまその
アメリカとイランがきわめて緊張した状態になっておるということは、現在の
日本の置かれた立場にとってまことにむずかしい問題を提起しておると思うわけでございます。
イランにおける米大使館の人
質問題につきましては、従来も
外務省からイラン
政府に対する申し入れを行ってきておりますし、また
国連安保
理事会における
日本代表の
発言等も行ってまいったわけでございますが、基本的に、大使館を占領して大使館員を人質にとることは
国際法に反する行為でございますし、また人道的に見てもきわめて望ましくないやり方だと考えるわけでございまして、
政府も従来からそういう立場を
外務省としてもとってきておるわけでございますが、その点についての誤解を避けるために昨日も
外務省見解というものを出しておるわけでございます。
第二の、原油の禁輸についてどう対処するか。これは
アメリカがイランからの輸入を禁止し、イランが対米輸出を禁止しておるということでございますが、
日本としてもエネルギーの確保というのは、
先ほど来申しましたように国民生活、経済にとって欠くべからざるものでございますから、何とかして必要量の入手をしなければならないわけでございますが、同時に、その入手の仕方につきましては、現在のような米国とイランの厳しい対立状態のもとで十分な注意を払っていかざるを得ない。それから、ことしの六月の東京サミットにおいて、各国、高値のスポット買いを自制、自粛するという申し合わせが首脳
会議でも行われておりますので、この申し合わせを守っていかなければならない。そういう点を考慮しながら
日本の必要とする油をできるだけ入手しなければならない。そういう考慮になってまいるわけでございます。
この点については、特に
日本の置かれている立場に困難な面がございまして、従来かなりの量をいわゆる
国際石油資本、メジャーに依存してまいったわけでございまして、このメジャーの対日供給がこの一年間に急激に減少するという事態に対処しなければならない。この点は後ほどの御
質問の中にあります
アメリカの誤解に基づくと――この点は誤解かあるいは
理解不足かわかりませんが、
日本側としては再三
アメリカに申し入れるといいますか、話をする必要のある点だと考えております。
第三の金融制裁にはどう対処するか。これは先般
アメリカ政府もカズウェル財務副長官あるいはクーパー国務次官、ソロモン財務次官、こういう人たちをヨーロッパに派遣しまして、各国を回っております。で、その一環として私も
パリでカズウェル財務副長官、クーパー国務次官と会談いたしたわけでございますが、金融問題につきましては
アメリカ側が凍結措置を行っておるわけでございまして、世界の金融問題というのは
国際的にいろいろな形でつながっておりますから、
アメリカのイラン資産の凍結が世界各地に影響を及ぼしてまいるわけでございまして、これについてそれぞれの国の立場、国益というものを当然考慮しなければならない。同時に重要な友好国としての
アメリカの立場に対するある程度の
理解も必要なわけでございますが、いまのところ、
政府の内部でも金融面における問題点の検討をやっておる段階でございます。
資産凍結という問題については、
日本政府としては、法的な裏づけも不十分でございますし、なかなかとりにくいことでございます。民間金融機関がクロスデフォルトの宣言をすることも、これは各銀行、金融機関の
判断にまたなければならない点がございますし、また物の流れ、貿易の流れに伴う一般金融について、これはどちらかというと受け身の金融になるわけでございまして、これに対して特別な手を打つということもなかなか困難であるという状況でございますから、
政府の方としてもこういう
日本の
事情を率直に
アメリカ側に話をしておるわけでございます。
商社の
行動につきましては、これは企業経営者のそれぞれの
判断があるわけでございますが、こういう微妙な世界情勢のもとにおきまして、やはりできるだけ大局的な立場からの
判断をしていただきたい、全般的な
日本の
国際関係に対して与える影響というようなものも経営者の面でもできるだけ御考慮願いたいということが私どもの希望でございます。
アメリカの対日非難に誤解に基づくところがあるのではないか。これはすでに申し上げましたが、私どもとしても、こういう点についてできるだけ先方に率直に話をいたしまして、対日非難を少しでも減らすようにいまもやっておりますが、今後も
努力を続けてまいりたいと思います。
先ほど申しました
国際石油資本からの
日本に対する、
日本の独立系の石油会社に対する原油の供給が、昨年の暮れには百四十万バレル・パー・デー程度ありましたものが、最近では四十万バレルに、その間に約百万バレル、七〇%の減少を起こしたわけでございますし、来年に入るとこれがほとんどなくなる。これは
国際民間企業のことだから仕方がないというわけでございますが、しかし、こういう点については余り
日本の責任ではないことでございまして、やはりこういう実情についても十分他の
外国に周知をし、
理解をしてもらわなければいけない。
今後のとるべき方向としては、そういう
努力を積み重ねて
日米関係等につきましての出てまいりました緊張を少しずつ緩和していく、この
努力を続けてまいると同時に、
日本と中東地域の
関係、これにつきましても、重要な産油地域でございまして、できるだけ円満な
関係を維持していくように
努力してまいる、それが今後の対策の方向だろうと考えるわけでございます。