○
知野会計検査院長 昭和五十二
年度決算検査報告につきまして、その
概要を
説明いたします。
会計検査院は、五十三年十月十三日、
内閣から
昭和五十二
年度歳入歳出決算の送付を受け、その
検査を終えて、
昭和五十二
年度決算検査報告とともに五十三年十二月十五日
内閣に回付いたしました。
昭和五十二
年度の
一般会計決算額は、
歳入二十九兆四千三百三十六億二千二百八十二万余円、
歳出二十九兆五百九十八億四千百七十三万余円でありまして、前
年度に比べますと、
歳入において四兆三千五百七十六億六百二十二万余円、
歳出において四兆五千九百二十二億二千九百六十九万余円の
増加になっており、各
特別会計の
決算額の
合計額は、
歳入六十兆五千六百二十億八千五百八十三万余円、
歳出五十二兆二千六百八十四億二千七百四十一万余円でありまして、前
年度に比べますと、
歳入において十一兆二千七百二十九億五千二百二十二万余円、
歳出において九兆五千六百七十八億五千二百二十三万余円の
増加になっております。
また、
国税収納金整理資金は、
収納済額十七兆九千五十三億三千九百九十四万余円、
歳入組入額十七兆二千七百八十四億二百八十七万余円であります。
政府関係機関の
昭和五十二
年度の
決算額の総計は、
収入十七兆二千七十六億八千八百九十二万余円、
支出十六兆五千六百十七億九千七百四十一万余円でありまして、前
年度に比べますと、
収入において二兆七千七百七十三億千九百三十八万余円、
支出において二兆七千七百五十三億二千五百二十六万余円の
増加になっております。
昭和五十二
年度の
歳入、
歳出等に関し、
会計検査院が、国、
政府関係機関、国の
出資団体等の
検査対象機関について
検査した実績を申し上げますと、
書面検査は、
計算書二十三万三千余冊及び
証拠書類六千四百九十二万余枚について行い、また、
実地検査は、
検査対象機関の官署、
事務所等四万千九百余カ所のうち、その八・四パーセントに当たる三千五百余カ所について
実施いたしました。そして、
検査の進行に伴い
関係者に対して、約千四百五十
事項の
質問を発しております。
このようにして
検査いたしました結果、
検査報告に
掲記した
不当事項等について、その
概要を
説明いたします。
まず、
不当事項について申し上げます。
不当事項として
検査報告に
掲記いたしましたものは、
合計九十三件であります。
このうち、
収入に関するものは、三件、十三億三千六百九十五万余円でありまして、その
内訳は、
租税の
徴収額に過不足があったものが一件、十一億八千六百五十六万余円、
保険料の
徴収額が不足していたものが二件、一億五千三十九万余円であります。
また、
支出に関するものは、七十九件、四十九億千七百四万余円でありまして、その
内訳は、
工事に関するものとして、
予定価格の
積算が適切でなかったため、
契約額が割高になったもの、及び
監督、
検査が適切でなかったため、
設計と相違して施工したものが五件、二億五千八百二十三万余円、物件に関するものとして、
契約処置が適切でなかったため
購入価額が著しく高価となっているもの、及び購入した
用地が遊休しているものが二件、三十五億二千六十二万余円、役務に関するものとして、
計画が適切でなかったため、不
経済になったもの、
予定価格の
積算が適切でなかったため、
契約額が割高になったもの、
契約処置が適切でなかったため、不
経済に支払われていたもの、及び
監督、
検査が適切でなかったため、
支払額が過大となったものが五件、四千六百七万余円、
保険に関するものとして、
保険給付金の
支給が適正でなかったものが二件、一億六千八百三十五万余円、
補助金に関するものとして、
補助事業の
実施及び
経理が適切でなかったものが六十一件、五億八千八百十九万余円、
貸付金に関するものとして、
貸し付け後の
管理が適切でなかったため、
貸し付けの目的に適合しない結果となっているものが三件、三億千九百五十七万余円、
不正行為に関するものとして、
職員が、
障害補償一時金及び
障害特別支給金を領得したものが一件、千五百九十九万余円であります。
以上の
収入、
支出に関するもののほか、
施設等の
管理が適切でなく、かつ、
国有財産及び
物品が
損害を受けたものが一件、八百七十六万余円、繰りかえ払い
現金等について
職員の
不正行為による
損害を生じたものが十件、一億九千九十六万余円ありまして、これらの
合計は、九十三件、六十四億五千三百七十三万余円になっております。これを前
年度の七十四件、四十三億千九百七十七万余円に比べますと、件数において十九件の
増加、
金額において二十一億三千三百九十五万余円の
増加になっております。
次に、
意見を表示し、または
処置を要求した
事項について
説明いたします。
五十三年中におきまして、
会計検査院法第三十四条の
規定により
是正改善の
処置を要求いたしましたものは八件、また、同法第三十六条の
規定により
改善の
意見を表示しまたは
改善の
処置を要求いたしましたものは二件であります。
このうち、
会計検査院法第三十四条の
規定により
是正改善の
処置を要求いたしましたものは、
総理府の、
地籍調査事業の
実施に関するもの、
文部省の、
東京大学医学部附属病院精神神経科の
管理運営に関するもの、
農林水産省の、
管水路等の
建設に伴う
地上権の設定に関するもの、
農業近代化資金利子補給補助金の
経理に関するもの、労働省の、
失業給付金の
不正受給金返納金債権に係る
延滞金債権の取り扱いに関するもの、
日本電信電話公社の、可
搬形交換装置設置のための
敷地造成及び
基礎台工事の
工事費の
積算に関するもの、
日本道路公団の、
高速道路新設工事における
土工工事費の
積算に関するもの、
中小企業振興事業団の、
中小企業高度化資金の
貸し付けの
適正化に関するものであります。
また、
会計検査院法第三十六条の
規定により
改善の
意見を表示しまたは
改善の
処置を要求いたしましたものは、
農林水産省の、
水田買い入れ事業の
実施及び一時
貸し付け水田に係る
水田総合利用奨励補助金の交付に関するもの、郵政省の、
郵便局における
窓口職員の責任に関するものであります。
次に、本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項について
説明いたします。
これは、
検査の過程で
会計検査院法第三十四条または第三十六条の
規定により
意見を表示しまたは
処置を要求すべく
質問を発遣するなど検討しておりましたところ、
当局において、本院の
指摘を契機として直ちに
改善の
処置をとったものでありまして、
検査報告に
掲記しましたものは十一件でございます。
その
内訳は、
総理府の、P2
J航空機用燃料セルの仕様に関するもの、C1
航空機用メーンタイヤの
所要量の算定に関するもの、
文部省の、
合板型枠費等の
積算に関するもの、厚生省の、
外国製医療機器の
購入契約に関するもの、
建設省の、
下水道工事における
開削工法による
管渠布設工事の埋め戻し
工費の
積算に関するもの、
日本専売公社の、
建築工事における鉄骨の
工場加工費等の
積算に関するもの、
日本国有鉄道の、
東北新幹線高架橋工事における
排水設備の
設計及び
鉄筋加工組み立て費の
積算に関するもの、
日本電信電話公社の、
洞道工事における
材料費の
積算に関するもの、
日本住宅公団の、
学校等の
用地に対する
固定資産税等の
負担に関するもの、
日本道路公団の、
舗装工事における
下層路盤工費の
積算に関するもの、
日本鉄道建設公団の、
上越新幹線高架橋工事における
鉄筋加工組み立て費の
積算等に関するものであります。
最後に、特に
掲記を要すると認めた
事項について
説明いたします。
この
事項は、
事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図り、または今後の
事業運営、
経理執行等の参考に資するために
掲記しているものでありまして、
昭和五十二
年度決算検査報告には、次の六件を掲げてございます。
すなわち、
農林水産省の、
国営静清庵灌漑排水事業ほか二
事業の施行に関するもの、
建設省の、
大滝ダム及び
川辺川ダムの
建設に関するもの、
日本専売公社の、葉たばこの生産及び調達に関するもの、
日本専売公社、
日本国有鉄道及び
日本電信電話公社の、
直営病院の
運営に関するもの、
日本国有鉄道の、
経営改善に係る
投資設備等の
建設状況、
稼働状況及び
投資の
効果に関するもの、年金福祉
事業団の、大
規模年金保養基地の
建設計画に関するものであります。
以上をもちまして
概要の
説明を終わります。
会計検査院といたしましては、機会あるごとに
関係各
省庁などに対して、適正な
会計経理の
執行について
努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、
関係各
省庁等においてもさらに特段の
努力を払うよう、望んでいる次第であります。また、特に
掲記を要すると認めた
事項につきましては、国や各
機関の
財政の
健全化のために、または投下した多額の
資金が
効果を発揮するよう速やかに打開策が講ぜられ、事態の進展が図られますことを切望するものであります。
昭和五十二
年度国有財産検査報告につきまして、その
概要を
説明いたします。
会計検査院は、五十三年十月二十七日、
内閣から
昭和五十二
年度国有財産増減及び現在額総
計算書及び
昭和五十二
年度国有財産無償貸付状況総
計算書の送付を受け、その
検査を終えて、
昭和五十二
年度国有財産検査報告とともに五十三年十二月十五日
内閣に回付いたしました。
五十一
年度末の
国有財産現在額は二十三兆千六百三十二億五千二十七万余円でありましたが、五十二
年度中の増が二兆二百九十一億九千五百二十九万余円、同
年度中の減が五千百八十八億四千二百五十一万余円ありましたので、
差し引き五十二
年度末の現在額は二十四兆六千七百三十六億三百五万余円になり、前
年度末に比べますと一兆五千百三億五千二百七十七万余円の
増加になっております。
また、
国有財産の
無償貸付状況につきましては、五十一
年度末には、三千七百八十億三千九百五十五万余円でありましたが、五十二
年度中の増が四百二十二億六千六百九十一万余円、同
年度中の減が三百八十三億六千九百五十九万余円ありましたので、
差し引き三十八億九千七百三十一万余円の
増加を見まして、五十二
年度末の
無償貸付財産の
総額は三千八百十九億三千六百八十六万余円になっております。
検査の結果、
昭和五十二
年度国有財産増減及び現在額総
計算書及び
昭和五十二
年度国有財産無償貸付状況総
計算書に掲載されている
国有財産の
管理及び処分に関しまして、
昭和五十二
年度決算検査報告に
不当事項として
掲記いたしましたものは、
総理府の、西表国立公園における植栽工の
監督、
検査及び事後
管理が適切でなかったもの、
文部省の、移転統合のため購入した
用地が、校舎等諸施設の
建設の目途も立たないまま遊休しているもの、
施設等の
管理が適切でなく、かつ、
国有財産等が
損害を受けたものの三件でございます。
次に、五十三年中におきまして、
会計検査院法第三十四条の
規定により
是正改善の
処置を要求いたしましたものは、
文部省の、
東京大学医学部附属病院精神神経科の
管理運営に関するものの一件でございます。
また、本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項として
掲記しましたものは、
総理府の、P2
J航空機用燃料セルの仕様に関するものの一件でございます。
以上をもって、
概要の
説明を終わります。
引き続きまして、
昭和五十二
年度決算検査報告に
掲記いたしました主な
指摘事例について
説明いたします。
まず、
不当事項のうち、
収入に関する批難
金額十三億三千六百万円の大部分を占めておりますのは、大蔵省において
租税の
徴収額に十一億八千六百万円の過不足が生じたというものであります。この徴収過不足額につきましては、本院の
指摘後、いずれも徴収決定または
支払い決定の
処置がとられました。
次いで、
支出に関する批難は、件数で七十九件、
金額は四十九億一千七百万円となっておりますが、一件で三十四億円余に上る
指摘があったことなどもあって、前
年度の批難
金額二十六億九千七百万円を大幅に上回る結果となりました。ここで、その主なものについて
説明いたします。
まず、
国有財産の
管理、利用が適切を欠いているという事例が
文部省関係に二件あります。その一つは、大阪教育大学で、現在三カ所に分散している校舎を一カ所に移転統合するため、
用地を購入し、
敷地造成工事などを一部
実施したところで移転統合することについて、学内に消極的な
意見が起こり、いまだに学内における意思統一ができない状況で、五十年三月に購入した大阪府柏原市旭ヶ丘地区の土地約六十六万平米、これに投入いたしました三十四億八千七百万円が、その効用発揮の目途も立たないまま遊休しているというものであります。
もう一つは、東京大学で、五十三年一月から文学部長室等を一部の学生によって占拠されるに任せていたため、同年九月二十二日には火災が発生し、
国有財産や
物品約八百七十万円が焼損するなどの事態を招くに至ったもので、
施設等の
管理について責任を有する
職員が適時、適切な
措置を講じていなかったばかりでなく、その結果、火災が発生し
損害を受けるに至ったのは著しく適切でないというものであります。なお、これらの事例のほかにも、
国有財産等の
管理、
運営に関する不適切な事態として、東京大学で、医学部附属病院精神神経科病棟が、四十四年以来、部外の医師等により占拠され、外来患者の入院、学生の臨床実習及び教官の研究施設としての機能が全く発揮されていないという事態がありましたので、これにつきましては、このような異常事態を速やかに解消するよう、
会計検査院法第三十四条の
規定により
是正改善の
処置を要求いたしました。
また、
工事の施工が
設計と相違した不良なものとなっている事例として、
日本住宅公団の中部、関西両支社が、
合計二億一千八百万円で施工しました団地
建築工事の基礎ぐい
工事があります。この
工事は、
設計図書でセメントミルク工法——これは、くいを埋め込む位置を、あらかじめ掘削し、その穴の中にくいを建て込んで、穴とくいの間にセメントミルクを注入硬化させて、地盤とくいを一体化させる工法でありますが、この工法で施工することにしておりましたが、現地に行き書類により、または実地に調査いたしましたところ、セメントミルクが全くなかったり、セメントミルクがあっても粘土状の質の悪いものであったりなどしておりまして、基礎としての強度が
設計に比べて低いものとなっていたというものであります。
次に、
補助事業の
実施及び
経理が適切でなかったものは六十一件、五億八千八百万円あります。件数では
農林水産省関係の二十九件、
金額では日本私学振興財団の私立大学等経常費
補助金三億三千三百万円が、それぞれ過半を占めておるわけでありますが、この両者について、それぞれ一例ずつを
説明いたします。
まず、
農林水産省関係では、島根県が
事業主体となって
実施している上野山地区の農地開発
事業に関するものであります。この
事業は、七十八戸の農家がブドウ栽培を行うことを目的として、四十六
年度から五十四
年度までに総
事業費五億円で丘陵地を開発し、畑地百十七ヘクタールを造成することとし、五十
年度までに国庫
補助金七千五百万円を含む
事業費計一億一千五百万円を投入したものの、造成予定地がブドウ栽培に適さないものであったり、予定した
用地の確保ができなかったことが原因となって、結局、
事業を廃止せざるを得ない事態となったものであり、このような安易な
事業執行を不当としたものであります。
また、日本私学振興財団
関係では、福岡歯科大学に対する私立大学等経常費
補助金の事例であります。同大学には、財団から経常費
補助金として、五十一、五十二両
年度に計二億九千九百万円を交付しておりますが、同大学の
経理の状況を調査いたしましたところ、同大学において後援会組織に行わせていた巨額に上る入学寄付金等の別途
経理があり、
当局の厳重な勧告があったにもかかわらず、依然としてこれが解消されておらず、大学
運営が正常に行われていないと認められる状況でありましたので、このような
経理その他の事務処理が著しく適正を欠く学校法人に対して交付した
補助金の全額を不当といたしました。
次に、
会計検査院法第三十四条または第三十六条の
規定により
意見を表示しまたは
処置を要求した
事項計十件のうち、その主な事例について
説明いたします。
まず、国土庁
関係で、
地籍調査事業の
実施に関する
指摘について
説明いたします。
地籍調査事業は、国土の開発等に資するとともに、あわせて地籍の明確化を図るための基本的な調査
事業として、主として市町村が
実施し、国土庁は調査に要する経費の三分の二を
補助金として交付しておりますが、現在行っております五十四
年度を最終
年度とする第二次十カ年
計画における五十二
年度までの
事業の進捗状況を見ますと、
計画末期に至っているのに、進捗率は約三六%にとどまっている状況であります。そして、このたび、
事業の
実施状況及びその後の処理状況について、二十都道府県管内の百九十市町村を抽出して調査いたしましたところ、六十四市町村において1せっかく、原図、地籍簿案等を作成しながら、その段階でとめたまま、
補助事業の
内容となっている公告、閲覧等の手続を行っていないもの、2せっかく
補助事業で得た成果品、すなわち地図及び簿冊を、主務大臣または都道府県知事の認証を経て、登記所へ送付するという処理を行わないまま
事業主体で保管しているため、
補助事業実施の
効果が上がっていないと認められるものが見受けられましたので、今後は
地籍調査事業の目的、趣旨を
事業を
実施する市町村に十分認識させるなど、適正な
事業の遂行を図り、その
効果を上げる必要があるということで、
是正改善の
処置を要求したものであります。
次に、
中小企業高度化資金の
貸し付けの
適正化に関する
指摘について
説明いたします。
中小企業振興事業団では、中小企業者が協同組合などを組織して、協同で高度化
事業を行うことを目的として、土地、建物その他の施設を取得するのに必要な
資金を、都道府県を通じ、あるいは直接に、中小企業者に対して、長期かつ低利に
貸し付けております。この
貸し付けについて、北海道ほか十八府県下の三百七十八件、約五百五億円を対象に調査いたしましたところ、1
貸し付け対象施設が必要以上の規模のものであったり、
貸し付け対象者が
貸し付け対象となる協同組合としての資格要件を欠いていたりなどしていて、
貸し付けの対象にならないものに
貸し付けているもの、2
貸し付け対象共同施設が特定の組合員によって分割占有されていたり、一組合員または組合員以外の者によって制限範囲を超えて利用されていたり、遊休していたり、その一部が転売されていたりなどしていて、
貸し付けの目的を達していないもの、さらには、3借り受け者が事実と相違する書類を作成するなどして、
貸し付け対象
事業費より低額で
事業を
実施しているもの、いわゆる不適正な
貸し付けの事例が四十七件、
事業団の貸付額にして二十二億円余もありましたので、今後はこのような事態を防止するため、本
貸し付け制度の趣旨の周知徹底、
貸し付けの審査の充実、
貸し付け対象施設の事後
管理の徹底などに努め、
貸し付けの適正を図る要があるということで、
是正改善の
処置を要求したものであります。
次に、
水田買い入れ事業の
実施及び一時
貸し付け水田に係る
水田総合利用奨励補助金の交付に関する
指摘について
説明いたします。
農林水産省では、米の生産調整、稲作転換対策を推進し、農地保有の合理化と農業構造の
改善を図るため、四十八
年度に、農地保有合理化法人に水田を農業者から買い入れさせ、これを稲作転換を
実施することが確実と認められる農業者等に売り渡しさせる
事業、すなわち、
水田買い入れ事業を
実施させ、これに対する助成として、農地保有合理化法人の水田の買い入れ
資金に係る借入金の利子の全額を国が補助することとし、五十二
年度末までに二十七億二千万円に上る利子助成
補助金を交付しています。これについて、北海道ほか八県における買い入れ水田八百七十八万八千平米を
検査いたしましたところ、五十二
年度末までに売り渡したのは二百七万三千平米にすぎず、買い入れ水田の約七七%に当たる六百七十二万八千平米を保有しているばかりでなく、保有中の水田の中には、無断で水稲が栽培されていたり、雑草、幼木が繁茂して荒れ地と化していたり、転作を
実施することを条件としている一時
貸し付け中の水田に水稲が栽培されていたりなどしていて、買い入れ
事業の目的が十分達成されていないばかりでなく、買い入れ、売り渡し後の
管理も適切でないと認められました。したがって、これらについて売り渡し促進の
措置を講ずるとともに、道県に農地保有合理化法人をして
管理を適正にするよう指導し、本
事業の
効果を上げる要があるというものであります。
また、前に述べました一時
貸し付けした水田で、四十九
年度から五十二
年度までの間に、延べ千七百二万八千平米について転作が
実施されておりまして、これに
水田総合利用奨励補助金七億円が交付されておりました。しかし、この農地保有合理化法人に買い入れさせた水田は、転作を
実施することを条件として無償で農業者に
貸し付けているものでありまして、これについてまで稲作転換の奨励
補助金を交付しているのは、本来、米の生産調整のため設けられている、この稲作転換の奨励
補助金創設の趣旨を没却するもので適切でないと認められました。したがって、この稲作転換の奨励
補助金の交付対象から、これらを除外するよう
措置する要があるというものであります。
以上、米の生産調整、稲作転換に関しまして、二つの態様から成る事態について
是正改善の
処置を要求いたしました。
次に、本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項について
説明いたします。これは、
会計検査院が、
検査の過程で不適切な
会計経理を発見し、その
是正改善の
処置を要求しようとして検討を進めている間に、本院の
指摘を契機として
当局が
是正改善の
処置を講じたという事例でありまして、十一件を
掲記いたしておりますが、その主な一、二の事例について
説明いたします。
まず、厚生省
関係の
外国製医療機器購入に関する
指摘であります。国立病院等では、近年、ガンマカメラや、自動生化学分析装置などの高価な
外国製医療機器の購入が目立って
増加しておりますが、その購入方法を見ますと、国内における輸入代理店が提示した見積もり価格に基づいて契約
金額を確定し、これによって代金を支払うこととしておりました。しかし、輸入機器の納入は一般に長期間を要し、代理店と海外メーカーとの決済は外国通貨建てで行われ、しかも、外国為替相場は常に変動するわけでありますから、輸入契約の場合には、代理店からインボイスなどの輸入価格を証明する書類を提出させて輸入原価を確認することとし、契約
金額を適正なものに変更でき得るような契約条項を設けておく必要があるわけで、今回
検査いたしました輸入機器十八件約九億円についてもこのような購入方法をとっていれば、約八千三百万円は節減できたと認められました。この点を
指摘いたしましたところ、厚生省では五十三年十月に新たに
外国製医療機器購入契約基準を設けまして、
予定価格決定の適正を図るとともに輸入原価を具体的に確認して最終的な
支払い額を決める契約方式がとられるようになったわけであります。
もう一つは、
日本国有鉄道と
日本鉄道建設公団に関するもので、新幹線高架橋
工事における
排水設備の
設計と
鉄筋加工組み立て費の
積算が適切でなかったという
指摘であります。高架橋の雨水を地表に排水するための
排水設備として、国鉄及び公団では、国鉄規格品である硬質塩化ビニール角型管を使うことにしておりましたが、本院で調査しましたところ、排水機能、強度ともすぐれ、価格も安い一般市販品の丸型管を
使用しても何ら支障がないことがわかりました。また、高架橋のコンクリート
工事に大量に
使用されます鉄筋の加工組み立て費は、鉄筋一トン当たりに要する工数を定めて
積算されておりますが、実際の作業形態について調査いたしましたところ、近年では、高架橋の
設計が標準化されていることもあって、定尺物の鉄筋を切断しないで
使用する場合も多く、また、重量のかさむ太径の鉄筋の加工は機械で効率的に行われているなど、
積算で想定しているものよりも作業能率が著しく向上している実態がわかりました。以上の二点、
排水設備の
改善、鉄筋の加工組み立て費の是正を行うものとすれば、五十二
年度中に施行中の
工事だけでも、国鉄と公団を合わせ三十五億二千三百万円程度節減できたと認められましたので、この点を
指摘いたしましたところ、国鉄及び公団では、五十三年十月に、以後に契約する
工事から本院の
指摘の線に沿って
是正改善の
処置をとったものであります。
以上、
説明いたしました
事項のほかに、
事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図り、または今後の
事業運営、
経理執行の参考に資するため、特に
掲記を要すると認めた
事項として、六件を
掲記いたしておりますが、その主な一、二の事例について
説明いたします。
その一つは、
日本国有鉄道関係で、
経営改善に係る
投資設備等の
建設状況、
稼働状況及び
投資の
効果に関するものであります。
日本国有鉄道では、経営の近代化、合理化を図るとともに、輸送設備の
改善を行い、旅客及び貨物の輸送力を増強するなどのため、線路設備、駅設備及び貨物ターミナル等の設備を新増設し、業務
改善のための機械装置等を購入するなど、毎年多額の
投資を行っております。そこで、これらの
投資のうち、大きく赤字経営となっております貨物営業
関係の施設、設備を中心に、施設、設備、機械、装置等に対する
投資の
効果を検討いたしました。その結果、1貨物
関係等の施設、設備の
建設工事が
計画に比べて著しく遅延していたり、完成した施設、設備がきわめて非効率に
使用されているものが、五十二
年度末現在の
投資額で千四百五十七億円に上っている状況であり、また、2配備された機械、装置が全く
使用されていなかったり、使われ方がきわめて非効率となっているものが百二十四億円ある、というように、多額の
資金を投じた
施設等が、その効用を発揮しないまま、いたずらに年月を経過している状況であり、これらの
投資額に係る五十二
年度末までの利息だけでも推算して四百三十二億円に上っておりまして、これら未稼働設備等に係る経費
負担は年々累増している状況であります。この原因について考えてみますと、
建設工事がおくれているのは
用地の取得、支障物件の移転、損失補償など、権利者との交渉や、
設計についての地元公共団体等との協議が難航していることなどが主な原因と認められ、また、機械、装置が未稼働、非効率
使用となっている原因は、これらの導入が
職員の労働条件の変更を伴うものであるところから、それの
使用に関して労使間でなかなか合意が得られないことなどのためと認められますが、このようにせっかく多額の
投資を行いながら、その
効果があらわれない状態が今後も解消されないということになりますと、目下の急務とされております国鉄の
財政再建にも大きな支障となるばかりでなく、輸送需要の変化に対応した的確なサービスの提供が図られないということにもなるわけであり重大問題であると考えます。
次は、大
規模年金保養基地の
建設に関する問題であります。年金福祉
事業団では、厚生年金
保険の被
保険者等の余暇利用を図るということで、大
規模年金保養基地を全国に十一基地
建設することにしておりまして、四十八
年度から五十二
年度までに延べ三千八百八十九万平米の土地を
総額三百八十億円で取得しておりますが、五十三年九月現在、基地の
建設に着手しているのは二基地だけで、残りの九基地は、
用地取得後長期間を経ているにもかかわらず、基本
計画について厚生大臣の承認を受けた後長期間
建設に着手していないものや、極端なものには基本
計画の策定すらないものがあるなど、いずれも
事業の進捗が著しく滞っておりまして、多額の
資金を投じて購入した基地
用地が、その効用を発揮する見込みもないまま、休眠状態を続けているという実情にあります。これは、この
用地取得に着手した四十八年当時、一般的に土地に対する需要が非常に旺盛であったことから、将来大きな面積の
用地取得ができなくなると予想して、全体
計画の策定に先行してとりあえず
用地取得が行われてしまったという事情にもよりますが、石油危機以降は、
経済的な
理由などから余暇活動の
内容に変化の傾向が見られ、また、ほとんどの基地が利用者の居住地域から離れた不便な地域にあるなどのため、当初の構想どおり基地を開設しても利用見込が立たないことなどから
事業団が
事業の推進をちゅうちょしていることによると認められます。しかし、一方では、基地
用地のある大部分の道や県が、基地が開設された場合の地元での消費需要の拡大ないしは雇用の
増加の期待が大きいとして、当初の構想どおりの周辺整備
事業を積極的に進めているという現状があります。以上のような現状にかんがみまして、大
規模年金保養基地の
建設については、現在の社会情勢に適合した基地の
建設及び
運営が図れるよう、当初構想の早急な見直しを行う必要があるわけでありますが、この
事業について
用地取得、周辺整備
事業の両面で、同
事業団が地元公共団体に協力を仰いできたというような経緯もありますので、この事態の打開には困難な状況があるというのが実情であります。
以上、概括的でありますが、
昭和五十二
年度決算検査報告の主な事例について
説明いたしました。
会計検査院といたしましては、
関係者がこれらの事態を深刻に受けとめ、適正な
会計経理の
執行に一段と
努力されますことを希望いたします。
また、目下の国家
財政は、きわめて厳しい環境の中にあり、その
財政運営に各位の強い関心が寄せられておりますとき、
会計検査院といたしましても、その職責の重大であることを認識し、各般の期待と要望に十分こたえられるよう会計
検査の充実に一層の
努力を傾注していきたいと考えております。
せっかくの機会を与えていただきましたので、私の所信を述べさせていただきました。