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1979-03-29 第87回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月二十九日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————    分科担当委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      粕谷 照美君     松前 達郎君      松前 達郎君     吉田忠三郎君      矢追 秀彦君     塩出 啓典君      市川 正一君     内藤  功君      井上  計君     田渕 哲也君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         瀬谷 英行君     副主査         下条進一郎君     分科担当委員                 林  ゆう君                 八木 一郎君                 福間 知之君                 松前 達郎君                 塩出 啓典君                 矢追 秀彦君                 市川 正一君                 内藤  功君                 井上  計君                 田渕 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山下 元利君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂徳三郎君    政府委員        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁参事官   佐々 淳行君        防衛庁参事官   古賀 速雄君        防衛庁長官官房        長        塩田  章君        防衛庁防衛局長  原   徹君        防衛庁人事教育        局長       夏目 晴雄君        防衛庁衛生局長  野津  聖君        防衛庁経理局長  渡邊 伊助君        防衛庁装備局長  倉部 行雄君        防衛施設庁長官  玉木 清司君        防衛施設庁総務        部長       奥山 正也君        防衛施設庁施設        部長       多田 欣二君        経済企画政務次        官        野田  毅君        経済企画庁長官        官房長      山口 光秀君        経済企画庁長官        官房会計課長   及川 昭伍君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁調整        局審議官     廣江 運弘君        経済企画庁国民        生活局長     井川  博君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       佐々木孝男君        外務大臣官房会        計課長      後藤 利雄君        外務省アジア局        長        柳谷 謙介君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君    説明員        内閣審議官    末次  彬君        内閣審議官    黒木 忠正君        総理府恩給局次        長        藤井 良二君        警察庁刑事局国        際刑事課長    水町  治君        環境庁企画調整        局環境影響審査        課長       大塩 敏樹君        法務大臣官房参        事官       藤岡  晋君        法務省刑事局刑        事課長      佐藤 道夫君        外務省アメリカ        局安全保障課長  丹波  実君        外務省情報文化        局文化事業部外        務参事官     平岡 千之君        文部省学術国際        局学術課長    植木  浩君        厚生省援護局庶        務課長      水田  努君        厚生省援護局援        護課長      田中 富也君        農林水産省農蚕        園芸局審議官   小島 和義君        資源エネルギー        庁長官官房省エ        ネルギー対策課        長        高沢 信行君        資源エネルギー        庁石油部計画課        長        箕輪  哲君        海上保安庁警備        救難部航行安全        指導課長     中山  忠君        消防庁地域防災        課長       中川  登君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十四年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十四年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十四年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  昨日、馬場富君が分科担当委員を辞任され、その補欠として矢追秀彦君が分科担当委員に選任されました。     —————————————
  3. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 昭和五十四年度総予算中、経済企画庁所管を議題といたします。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 福間知之

    福間知之君 企画庁長官に、昨日夜報道されました政府としてのOPEC値上げに伴う国内原油価格を軸にした卸売物価の上昇を抑制するという趣意の方針が決定されたようでございますが、あらかた御説明をいただければと思います。
  5. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 今回のOPEC値上げ決定分と昨年十二月の決定と両方合計いたしまして、従来は消費者物価に対する影響が〇・三程度に考えておりましたが、それが〇・四%程度影響するであろう、それから卸売物価に対しても、前回の分までは〇・七%程度というふうに考えておりましたが、それが〇・八%程度になるようにわれわれは予測をいたしております。しかし、問題は、サウジその他は同調しないようでありますけれどもサーチャージを取ろうとしているところもあるし、こうしたことが今後どのような具体的な契約の中に盛り込まれるか、その点われわれは非常に憂慮をいたしておるところでありますが、まあ幾らになるかということのまだ決定されない以前にわれわれがそれを基盤にしていろいろ計算するのは、内部的にはいたしておりますが、それは公表する必要もないことだと思いますので、一応当委員会におきましては、現実値上がりの決まった分についての御報告といたしまして、消費者物価に〇・四%程度、それから卸売物価に〇・八%程度影響があるということでおります。しかし、石油はやはり御承知のように日本経済にとりましてもエネルギーの根源でございますし、また国民生活にとりましても非常に重要なものでありますので、われわれといたしましては、こうした値上げが直ちに卸売物価あるいはまた消費者物価にわれわれの計算以上な影響を与えるような事態になりますことは、これは極度に警戒しなければなりません。  先般二月の二十六日に物価対策総合的推進ということで、いわゆる狂乱物価以来初めてでございますが、やや早目であると思いましたけれども物価対策の完遂を期するために決定をしておりまして、現在それを作動させながら政府、もちろん日銀も、あるいは公正取引委員会も、ともども物価の抑制のための努力を続けておるところでございまして、便乗値上げ等が具体的にあらわれる場合にはよく事態をさらに詳細に調査し、必要があるならば関係各省とも連絡をして業界に対する注意を促すということで対処してまいりたいと思います。
  6. 福間知之

    福間知之君 まだ各国ごとのプレミアムがどうなるかわからないし、あるいはまた六月のOPECの総会でも再値上げが行われる可能性を残しているということでございますね。さしあたって他の物価への影響もさることながら、石油各社価格値上げというものがどういうふうになるのか、これは長官でなくてもエネルギー庁でも結構でございますが、今後さらに値上げがあるという一応の予想がかなり確度が高いわけですね。そういう前提で考えるだろうと思うのですね、業界は。したがって、私はその他の物価影響がやっぱり出てくるのじゃないのかとかという危険を感ずるのですが、まず石油各社価格がどうなるのかと、それが一点ですね。  それから長官のお話で、すでに五%節約を軸としたいろいろな施策を考えていると、こうおっしゃっているわけですけれども、果たしてそれでいけるのかどうか。西独のように、政府がリーダーシップをとるよりも、各自の市場動向に対応する心構え節約心構えというものを徹底することがより望ましいと思うのですが、その点はいかがなものですか。
  7. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 前段の御質問に対しましては担当者からお答えさせますが、後段の分のいわゆる五%節約につきまして、われわれは現在一番大きな戦術目標としましては物価の安定ということ、同時にまた物価の安定の中での雇用拡大ということを最大経済の運営のテーマにしておりますので、こうしたことから見ますると、やはり自発的な五%節約ということにはぜひひとつ協力してもらいたいと思っております。見方によりますと、値段を高くしてしまえば使えなくなるんだからそれで節約になるじゃないかという議論もございますが、しかし、これは非常に大きな影響物価に与えると思いますので、われわれとしましては、それも確かに一つの方法だと思いますが、物価の安定というたてまえをとる場合にはやはり自主的な消費節約ということに特段の関心と協力国民から得たいというふうに考えております。
  8. 箕輪哲

    説明員箕輪哲君) 先生ただいま御指摘のように、石油企業各社は三月になりましてからそれぞれ値上げ希望価格というのを示しております。これはいつからというのは全部ばらばらでございますし、それから値上げの幅というのもそれぞれの実態に応じてばらばらなのが実態でございますけれども、ただいままでのところでは希望を表明しました価格のとおりまだ実現しているわけではございません。これは需要家との間のネゴでもって決まっていくものが多いわけでございますので、これがその希望どおり実現するかというのは今後の市場実態から決まってくるものと思われます。  ただ、OPEC値上げに伴いまして一月一日からあるいは二月の十五日から追加値上げというのが実は行われておるものでございますから、実態的にコストの面に反映してまいりますのは大体二カ月から三カ月たってから反映してくるわけでございますので、今後コストアップ分値上げというかそのとおりになるかどうかは別としまして不可避であろうというように考えております。したがいまして、今後の石油製品価格動きにつきましては、値上がりというのはやむを得ないという情勢であろうと、このように考えております。
  9. 福間知之

    福間知之君 かねがね言われているわけでございますけれども国民全体がどちらかというと節約をしようという気持ちになることはもちろん大事ですけれども、そうは言ってもなかなか毎日の生活を通じてそういう緊張感を持ってエネルギー節約ということを持続することは非常にむずかしいという、かねがね言われていることでございまするし、事実過般五年前のオイルショック以降はこれは理屈抜きにそういう傾向が普遍化しましたけれども、やはりそれはのど元過ぎれば熱さ忘れるのたぐいで、その後常態に戻ってしまっているということですね。したがって、産構審でもかつて議論があったようでございますけれども省エネルギーというものの本命は、使用合理化効率化だと、こういうことが基調だと言われているわけでありまして、そういう点で、日本のこれからの省エネルギーというものの政策はより具体的ミクロで進めていかなきゃならぬのじゃないかと、そういうように思うわけです。政府のかけ声はもちろん必要ですけれども、より具体的なエネルギー消費の場面に即した施策は、ある場合は国民経済的に見てあるいは国益にとって必要だという立場から、一種の規制をあるいはペナルティーを課すとか何かそういう手法を必要とするのじゃないのか、まあ漠然とした話ですけれども。  そこで、アメリカが、過般もう大統領かなり何度かにわたってエネルギー節約政策国民に訴えているのですけれどもアメリカの場合どういうところに重点を置こうとしているのかということ、それから今回の値上げ影響というものはアメリカとしてはどのように受けとめているのかということ。
  10. 高沢信行

    説明員高沢信行君) まず、中長期的な省エネルギー政策につきましては、アメリカカーター大統領が進めております中心的な考え方は、産業効率化一つと、それから民生部門で申しますと住宅断熱構造化ということがもう一つの柱かと思います。それと、もう一つは、輸送部門での自動車効率アップ——アメリカは御承知のとおり大型車燃料消費型の車でございますから、しかもガソリン消費割合が大変高いものでございますから、その意味では自動車効率アップというのがかなり力点を置かれた対策になっているというふうに考えていいかと思います。そういったことをアメリカにおきましては法律それから金融財政上の措置などによりまして推進しているわけでございますが、わが国におきましては、先ほど先生がおっしゃいました使用合理化に関しましては、昨年の五月にエネルギー使用合理化に関する法律案、私ども通称省エネルギー法案と申しておりますが、産業部門における効率化、それから住宅それからビル省エネルギー構造化、それから自動車家電製品などのエネルギー使用機器効率改善と、こういったことを内容とした法律案でございますが、現在国会に提案をしておりまして継続審査中でございます。私どもとしましてはできるだけ早期にこの法案が成立しますことを強く期待しているわけでございます。  あわせまして住宅断熱構造化であるとか、産業における省エネルギー化のための金融財政上の措置、税制上の措置などを講じておりまして、またこういったもののPR、それから一般に対する啓蒙普及活動も大変重要だと思っておりまして、財団法人省エネルギーセンター、これは昨年の秋に設立いたしましたけれども、その省エネルギーセンター中心となりまして中小企業に対する診断指導事業であるとか、一般に対する啓蒙活動、そういったものを行ってきておるわけでございます。  それから何と申しましても省エネルギー化のためには技術開発が大変重要でございますので、ムーンライト計画、これはもう御承知かと思いますが、工業技術院が中心になりまして、国が全額その資金を負担いたしまして、民間とも共同研究で高効率ガスタービン開発であるとか、それから廃熱効率的な活用、そういった省エネルギー技術開発につきまして研究開発を進めているところでございます。  いま申し上げましたのは中長期的ないわばエネルギー使用効率化の問題でございますが、イラン情勢に伴います短期的ないわば節約対策といったものにつきましては、アメリカが一月に自動車速度制限、これは五十五マイルでございますから、時速に直しますと八十八キロでございますが、自動車速度制限暖房温度を華氏六十五度、これは摂氏に直しますと十八・三度ぐらいでございますが、そこ以下に抑える、それから不必要なドライブを控える、この三項目につきまして国民に呼びかけを行ったわけでございます。その後三月の一日に週末のガソリン販売禁止、それからビル温度規制、それから広告灯規制、それからガソリン割り当て制に関する計画案議会に提出したわけでございまして、現在議会審議中と聞いております。これは恐らく二カ月程度が成立するまでにかかるのじゃないかというように聞いているわけでございます。  他方、わが国は、御承知のとおりイラン情勢の変化に伴います節約対策といたしまして、三月の  一日、二日のIEA理事会における合意に基づきまして五%の節約対策を三月十五日に決定をしたわけでございます。この中では、御承知のとおり、事務所、一般家庭における暖房温度調整、それからマイカーの使用自粛、それからあと産業部門におきます燃料転換、そういったものが主要な内容になっているわけでございます。
  11. 福間知之

    福間知之君 これからのエネルギー見通しというものは財界でももうすでにかなり厳しさをもって見詰めているようですし、政府当局はもちろんそれに間違いはないのですけれども、事柄が大きいだけに私なかなかこれが思うに任せないということではないかなと思うのです。すでに資料によりましても、わが国の一人当たりの石油消費量エネルギー消費量というのは世界でも経済大国のわりには低い方に属していますし、これは大変喜ばしいことだと思います。産業部門でも、そういう意味では、製鉄にしても、発電所にしても、かなり効率のよいエネルギー消費を行っている。民生部門でも輸送部門でもそうだと、こういうように承知しておりますけれども、しかし全くエネルギーがないと言っていい国柄でございますので、いわんや石油の将来の見通しがそう長期でもないと仮定するならば、まさに代替エネルギーというのはわれわれにとって欠くことのできない大きな開発課題であると思います。ぜひこれは、いままでの行政面でのエネルギー対策機関があろうとは思うのですけれども長官、何かこれを機会に気持ちを思い直してみて、改めて新しい決意で取り組んでいくというふうな心理的転換を画するような知恵が欲しいものだなと、こう思うのです。これは政府の責任ということじゃないんですよ。国民全体が民族の将来のために何かそういう気持ち転換、それを持続的に具体的な改革に結びつけていく、こういうことですね。予算委員会総括でも私やったのですけれども、たとえば公務員の週休二日とか、あるいはその他民間でもおくれている部分週休二日とか、そういうことによってエネルギーそのもの消費にも結びつける、あるいは雇用拡大にも結びつける。アイデアとしてはこれはだれも反対する人はないのですが、その結果エネルギー効率がどこまでよくなったかということはこれは大きなものは期待できないかもしれませんけれども、冒頭申し上げたようなみんなの気持ちをずっと転換していく、それが省エネルギーの具体的な推進一つ勢いをつけていく、あるいはまた雇用の問題についても改革へのひとつ勢いをつけていく、あるいはまあ経済諸システムの転換というものを促していくということのよすがになっていく。私はこのエネルギー問題一つとっても、それは単にエネルギーだけの問題ではない、いわゆる日本経済の体質、構造そのものを基盤的にどう転換していくかということのきっかけにもなる課題ではないかな、こんな見詰め方をしているのですが、長官の御所見を伺ってエネルギー問題を終えたいと思います。
  12. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 福間委員の仰せられる意味、またそうした御意図は、十分私も理解できます。これをどのような形で具体的に運営していくかという問題につきまして、われわれもすでに昨年末からいろいろと政府内部でも話し合いをしているところでございますが、きょうの御質問をまたきっかけにしまして十分に現実事態を踏まえながら、国の将来にこれは経済的な安全の最大の問題だと思いますが、努力をしてまいりたいと思います。
  13. 福間知之

    福間知之君 じゃ、経済企画庁の方と少し論議をしてみたいのですけれども、最近アメリカかなり厳しくわが国に対して貿易上の摩擦海外黒字の圧縮、内需拡大、その他やや内政干渉がましいような主張、要求というものをしているように感ずるのですけど、内需拡大のためには、電電の例の調達物資拡大、国鉄の調達物資拡大など、目の先の具体的な要求と合わせまして、やや長期的に見て経済的な対日本戦略というようなものを構えているような気がしているのですが、企画庁の方では最近の動きをどういうふうに受けとめておられますか。
  14. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) もちろんこの貿易摩擦に関連しまして米国側がいろいろな希望を申し述べていることは事実でございます。また、われわれといたしましても、こうした希望を、対米関係のみならず、世界に対する日本役割りというものを今後もっと積極的に果たす形の中で解決をいたしたい。貿易摩擦だけの改善ということはなかなかそれ自体困難でございますし、また日本輸出力というものは非常に強いわけでありまして、先方はインフレでもあるし、こちらはきわめて安定的な物価水準にある、また品質もいいというようなことでございまして、このバランスの改善ということはもちろん努力しておりますし、また昨今は円高に伴いまして輸出は多少減少しておりますが、輸入が大幅にふえてきておりまして、そうした限りにおきましては先方のいういわゆる貿易摩擦の解消の第一ステップはすでに切られていると思います。また、内需拡大につきましても、これはやや私から見ましては急速であると思いますが、昨今の情勢は異常に内需拡大しておりまして、こうした過去において世間に発表しておる数値よりもはるかに高い水準内需拡大しておることも事実でございます。こうしたような事実を先方にも私側からよく伝えてありまして、問題としましてはだんだんと内需拡大あるいは市場開放等々につきましてはアメリカ側理解を縛るような方向と努力をいま積み重ねているところでございます。
  15. 福間知之

    福間知之君 最近アメリカ側が言っている言い分の中で、これは報道されたところですけれども経済構造内需主導型に転換しろとか、国際的な経済協力費をもっとふやせとか、硬直的な財政金融構造にメスを入れろとか、余りにも保護主義的な農業を開放的にしろとか、中長期的に非常に大きな課題であるけれどもきわめて具体的にこう指摘しているんですよね。もちろん、これはそう気にとめないでさらりと考えれば、言いたいことを言っているなあと、これで済むんですけれども、翻ってみて私ども国内で今日までの国会その他での議論は、やはりアメリカ側の言っているところに符節するわけですよね。そうすると、アメリカの言い分がけしからぬとも一概に言えない面がある。ただ、実態についての理解度、認識の相違というのはあるにしましても、それは説明をし、説得をしてもらう部分があるわけですけれども、しかしいままでになくきわめて端的に問題点を指摘してきたなあと、こういう気がするわけですね。そういう受けとめ方をしてこれから国内的な転換施策を積極的にやっていかなきゃいかぬわけですけれども、きょうはその一つ一つについて深い議論をする場でもありませんし、できませんけれども、大いにこいつはお互いに勉強をしてやはり緊急の度合いに応じて一つ一つ解決をしていかなきゃならぬと思います。  ところで、その総括としてアメリカ側がここ五年間ぐらいの内需拡大具体策を示せと、こういうふうに言っているんですが、これをどう政府部内では受けとめて、サミットもありますし、外相も四月にはおいでになりますし、ある程度わが方のやっぱり考え方をまとめて行かなきゃいかぬだろうと思うのですが、これは準備を進めておられますか。
  16. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) 先生御指摘のように、現在日米間にいろいろ経済摩擦がございます。それで、アメリカの考え方と申しますのは、もちろん日米間の摩擦というのはグローバルな観点で考えなければいけない、解消しなければいけないという感じを持っているわけですけれども、それにしましても、アメリカから見て日本の国際収支の黒字が大きい、アメリカから見てアメリカの赤字が大きいと、こういう問題がございまして、それは日米間の経済構造の差異に基づくものだと、こういう認識があるわけでございます。したがいまして、アメリカ側日本に対する要求というのを整理いたしますと、一番最初になるべく高い成長、特に内需拡大によって輸入をふやすということでございますが、この点については日本かなり努力をいたしまして、実際にもう内需が非常に拡大をしているわけでございます。その次の要求としましては、市場開放と申しますか、いろいろ輸入についてもう少し開放努力をしなければいけないと、こういう注文があるわけでございますけれども、それもいろいろの形で今日問題の解決の方途が見出されつつあるわけです。そこで、なおかつ日米間の不均衡が生ずるということで、いま御指摘の構造政策と申し要すか、構造調整をやらなければいけないという話があるわけで、この構造調整と申しますのは、産業あるいは貿易調整ということだけではなくて、いま御指摘のような財政金融ですとか、あるいは流通ですとか、そういう経済の仕組み、組織に関する問題も含んでいるわけでございます。先方の言い分の中には、御指摘のようになるほどと思われるところもあるわけでございますけれども、しかしこれらの構造的な調整というのは大変時間がかかる問題であります。内需拡大というようにことしの財政金融政策ですぐに解決ができるというようなものでございませんので、先方には特にこの構造問題については時間がかかるということを強調しているわけでございます。  それからアメリカ要求は、どちらかといえば経常収支の均衡ということを非常に重要視しておりまして、これは先進国全体がOPECを通して赤字を背負っているときに、特定国の経常収支の黒字が大きいというのは、そのほかの石油消費国の赤字が大きくなるということで不安定要因になるからそれは望ましくないという考え方と同時に、経常収支の中の一番大きな項目であります貿易収支の不均衡ということは、アメリカから見れば日本は失業を輸出してきていると、こういうふうにとられるわけでございます。しかし、最近の日米間の輸出入を見ますと、数量ベースですでに失業の輸出というような状況はとまっているわけでございまして、私どもは全体の国際収支の流れというのは国際的に望ましい方向に動いているというふうに考えております。したがって、その点をアメリカ側に説得をしている、話をしているわけでございます。  もう一つ、その関連で問題になりますのは、アメリカ側は、経常収支というのは均衡あるいは場合によっては赤字にしなければいけないということを以上のような議論を踏まえて行っているわけですが、日本としましては、御案内のように、資源を確保するために対外投資をしなければいけないとか、あるいは対外援助をふやさなければいけないという要請がございますので、国際収支としては基礎収支で考えるという感じを長期的には持っているわけでございます。したがって、長期的には基礎収支ということを踏まえまして先方と話をしているわけですが、当面の問題としては国際的に非常に問題になっております経常収支の黒字を縮小するということで努力を続けているということでございます。
  17. 福間知之

    福間知之君 いまの経常収支と基礎収支の関係は、私もそのとおりだろうと、そういうふうに思います。そこで、アメリカ側が言うところの貿易摩擦、経常収支を解消するために、日本側が今日まで輸出主導型のいわば経済構造をとってきている。おっしゃったとおりですね。それは確かにそうなんですね。たとえば、いま雇用の問題一つとりましても、造船などはその典型ですね。輸出主導型の産業、そこに一定数量の雇用が確保されてきて、それがいま構造不況ということで産業、企業の生産がなくなると同時に職場からも労働者がほうり出される、そういう姿ですね。これは、したがって、アメリカが言うだけではなくて、私ども日本自身が、造船だけじゃありません、全体として輸出主導型の高度成長経済を続けてきたわけです。加えて、最近、これは宮崎局長にお聞きしたいのですけれども、中進国からの追い上げが重なってきていますですね。私は軽機械だとか繊維だとかはその代表だと思うのですけれども、あるいは電機製品にしても、中クラス以下はほとんど中進国の手でこなせるものですから、これは海外市場におけるわが国との競争と同時に国内市場にも流入してまいっているわけですね。そういうように考えますと、先進国あるいは大きなマーケットを持っているアメリカとあるいはECとの摩擦だけじゃなくて、中進国の追い上げに伴う日本側の構造転換の必要性というものが重なり合ってきていると思うのですね。したがって、なすがまま成り行きままというわけにも少しいかないんで、あるそういう将来的な見通し転換を必要とする分野については、これはこういう混合経済体制の場合ですね、行政の果たす役割りというのはどこまでのものと見ていいのか、どういう手法があるのかということですね。これは知恵がなければもう成り行き任せでどうにもならなくなったところはどうにもならないところで野たれ死にしてしまえ、そこにはある一定の期間必要最小限の政府の援助をいたしますと、それは雇用給付金その他雇用調整に関する助成とかその他ということ、そんなことでいいんだろうかと、これが私のかねがねの疑問なんですよ。要するに、ある程度計画的に業種の転換あるいは雇用転換というものを促していく場をつくり出していく、後ろ向きの助成策じゃなくて、前向きの新しい器というものを用意する、そこに前向きの資金を投下する、そこへ仕事と人を吸収していく、こういうことが目的意識的に追求されなければ、これはもうまさに構造転換というのはおっしゃるとおりむずかしい課題ですから、アメリカから急に言われたって、目の先どうにもなるものじゃない、これはもうそのとおりなんです。だけども、いま言ったような角度で中進国の立場を考えてみても、やっぱり日本の場合は私は先進国の輸出構造と中進国の輸出構造と両面持っている国だと思いますので、そこにどういう意識的リーダーシップを発揮できるか、すべきじゃないのかという意味で考えているのですけれどもね。
  18. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) 担当の計画局長からあるいはお答えすべきかもわかりませんが、せっかくの御指名でありますので簡単に申し上げますと、戦後日本経済というのは非常に多くの人口を抱えて、しかも資源がございませんので、できるだけ輸出振興ということでやっていこうという政策をとってきたわけでございます。その輸出振興を中心にしました経済の近代化というものがある程度成功し、その成功したゆえに現在いろいろ問題を抱えているということでございますが、この高度成長の過程で内外の環境というのは非常に変わってきております。先ほど御質疑がございましたエネルギー事情というのが非常に大きく変わってきている。それに合わせて日本産業構造を変えなければいけないという問題が出ておりますし、あるいはいま御指摘の国際分業を進めていく上で、特に南側の中でも中進国と呼ばれている最近急速に工業力をつけてきている国との調整の問題がございます。あるいは国内の中でも国民のいろいろのニーズが変わってきているということで、その点でも産業構造わが国としても自主的に変えなければいけないという状況でございます。したがいまして、政府の長期計画もそういう点を踏まえて産業構造あるいは経済の仕組みを変えるという構想を持っているわけでございます。わが国はもとより自由経済でございまして、統制経済ではございませんから、政府が直接的に指導し得る、あるいは行政でできるという範囲は限られているわけでございますけれども、たとえば社会資本の整備を通じて産業構造を誘導するとか、あるいは大型の技術、研究開発等については政府がめんどうを見るとか、あるいは経済外交の側面では情報活動あるいは経済外交を積極的に進めていくというふうに、いろいろの間接的な行政手段を持っているというふうに考えております。したがって、それらを駆使するということでございますけれども、先ほど先生が御指摘になりましたように、雇用構造を変えるというようなことについても個別にできることがいろいろあろうかと思います。全体としまして、産業調整というのを、防御的、防衛的と申しますか、後ろ向きに行うのではなくて、OECDでも最近言っておりますけれども、積極的な産業調整ということで、できるだけ国際分業あるいは国民のニーズにこたえるような前向きの産業構造に積極的に持っていくという一つ政策体系が必要であるというふうに考えております。
  19. 福間知之

    福間知之君 おっしゃるとおりだと思います。問題は、だから、具体的にいわば産業構造転換のための目的意識的な立場からプランニングを私はぜひやっていただきたいんですよ。これは私提案であり要望なんですけれども、通産省レベルでは例の構造審議会での産業構造転換のビジョンですね、これはまさにビジョンの名を出ないものでございますが、それを今度企画庁という立場でフォローしていく、あるいはまたバックアップしていくという歴史的な任務を背負っていただきたいなあと私は思うんです。通産省がやったところで、まさに自由経済体制ですから、目的意識的に必要だと思ってやろうとしてもなかなかできるものじゃない。むしろ内圧、外圧の力をかりなければできない。それじゃちょっと能がありませんので、まさにいま厳しい外圧を感じる時期ですから、しかもそれはわれわれとしても当然踏み越えなければならない歴史的なハードルなんで、企画庁の方でそういう産業調整を、国際的、国内的両面にわたって調和を保ちながらある程度の道筋をつくっていただきたいなあと。したがって、そういうプランを立てて、第一期目にこういうことをやっていく、第二期目はこういうことまで踏み込んでいく、こんなことがあっていいのじゃないかなあと、こういう気がしているわけです。  それで、時間がありませんので先へまいりますが、かねがね言っていることで、いまのことと関連して、特に雇用面から見ても、いま第三次産業部門雇用が非常にふえていますですね。そういう点で第二次産業よりも第三次産業に今後は期待をかけていかなければならぬということはこれはもう否定すべくもないと思うのですが、その場合の、例の民間の第三次部門だけじゃなくて、公的なサービス部門、これを充実していくということに私はやはり思い切って転換をしていかなければならぬと思うのです。  私の調べたところによりますと、七五年当時で、日本の教員は百万人、医療関係者が七十万人、社会福祉の関係が五十万人、都合二百二十万人、これは全就業者の四・一%程度にとどまっています。あるいは第三次産業就業者の八%にとどまっています。これは私は公的な一つの分野だと思うのですね。民間の分野はもっとありますけれども、三次産業部門における公的な分野の就業比率は八%程度であります。今後この第三次産業部門の増加がどういう傾向をたどるだろうかと一定の推定をしますと、七五年から八五年に至る十年間で六百五十万人ぐらいが見込まれているようであります。その増加率は二・一五%であります。十年タームで見ますと、この増加率を社会的なサービス活動従事者二百二十万人に適用しますと、一九八五年には二百七十二万人ぐらいになるようであります。そういう一つの見方があるのですけれども、この数値の是非はともかくとしまして、いずれにしてもこの中で高齢者がかなり含まれていくということとあわせまして、いままでのように輸出主導型のいわば第二次製造部門で量的にも雇用拡大するということがむずかしいとなれば、第三次部門、なかんずく公的部門、こういうことを真剣にひとつ創造していく政策をとってもらいたいと思うわけであります。これは御答弁は時間の関係で要りませんけれども、何となく私はそんなことを考えてきたわけです。  ミクロの話に移りますが、先ほどちょっとお話がありましたけれども、最近、長官、製品輸入、半製品の輸入がふえているということ、これは非常に結構な傾向だと思うのですが、その実態ですね、最も近々の事情を参考までにお聞きしたいのと、それは果たして一時的なものなのか、やや長期展望としてとらえていいものなのかということを関係者の方からで結構ですがお伺いしたいと思います。
  20. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) 製品輸入は、最近、内需拡大ですとかあるいは円高によりまして大変ふえております。前年同月比の数字で見ますと、昨年の四—六月が一五・二でございますが、その後七—九月が二六・八、十—十二月が三・七、ことしの一月が二六・三、二月が二八・九とふえておりまして、年間でくくりますと、その結果、製品輸入の総輸入に占める比率は五十二年の二一・五から五十三年二六・七とふえております。内容は、一般機械、あるいは繊維製品、あるいは化学製品というような品目が多くなっております。ただし、このシェアにつきましては、今後とも長期的に見てだんだん上がってくるというふうには考えられますが、御案内のように、日本の輸入では食料品あるいは原燃料というものが非常にウエートが高うございまして、今回のようにOPEC石油の値段を大幅に上げるというようなことになりますと、その部分の輸入の金額がふえますので、シェアとしては製品輸入が若干抑えられるということがございます。短期的にはそういう動きが考えられますけれども、長期的には少しずつ製品輸入の割合がふえていくというふうに考えております。
  21. 福間知之

    福間知之君 やっぱり、先ほどの話との関連でも、ある意味じゃ日本の場合は長期的にどうしても高度な加工品というようなものを輸出して、それから中程度あるいはそれ以下の加工品は輸入にゆだねていくというふうな方向で国内的な産業調整も考えていくべきだろう、そういうふうに思うのですね。  よく私どもも関係者との議論で西ドイツが一つの見本になるわけでございますけれども日本の半分強の人口の西ドイツと比べてみても一概にそれがいいとも言えませんし、周囲島国で立地条件もかなり西ドイツとは違いますから、すぐに西ドイツのまねをするというわけにいきませんけども、参考までに、西ドイツの輸出入の中における製品のウエートですな、日本とちょっと簡単に数字だけ教えてくれませんか。
  22. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) いまの御質問構造の問題でございますが、輸入構造を西ドイツとそれから日本と比較いたしますと、幾つかの特徴があるわけでございます。わが国の輸入中の原材料——日本の場合は原材料の構成比が一番高い、これが二〇%でありまして、西ドイツはそれが一〇%でございますから大体わが国の二倍ぐらいです。それから鉱物性燃料が非常に高うございまして、これはわが国が四四・一%、西ドイツは一七・一%で、これはわが国エネルギーの供給が石油に依存するという比重が非常に大きいということでございます。最後に工業製品でございますが、これはもうほとんどの製品におきましてわが国における比重の方が西ドイツよりも小さくなっております。たとえば、典型的な例でございますけれども、繊維、織物及び織物類、こういうものを見てまいりますと、西ドイツの場合は全体の中で四・一%、日本が一・二%であります。それから機械類で申しますと、電気機械、これをとりましても、西ドイツが五・四に対して日本が一・九というように、工業品におきましては日本の比率が非常に低いのが目立っております。
  23. 福間知之

    福間知之君 だから、局長がさっきおっしゃったように、特にアメリカとの経済環境というものは厳しくなってきていますし、輸出構造というか製品構成をやはり考えていかなきゃならぬ、こういうことはもう必然的に私は強まってくると思います。そういうことを政府としてもひとつ勧奨していかれるようにこの点は要望いたしまして、製品輸入がふえてきているということはいい傾向でございますので、そいつを昔流で言えば災い転じて福となすで、内部の産業調整に結びつけていく御努力を少しやっていただきたい。日本は、概して太平洋戦争のときから言われているのですけれども、頭を打って血でも流さぬとなかなか日本人というのは考え直しよらぬという見方がどうもアメリカあたりではあるようでして、私はこの多国籍企業問題で議員になる前にアメリカその他海外の労組指導者とずいぶんつき合いをしてまいりました。教えられるところがあったのですけれども、まあいま言ったような感想を私自身も持っているような次第でして、この機会に、厳しいですけれども、みずからにむちを打つ気持ちで少し転換を促していく、こういう努力をする必要がある時期だと、こういうことを感じております。  最後に、時間がありませんので、ちょっと事前にお願いをしておったのですが、私の方で提供した資料に追加しまして事務局にお伺いします。  最近、大臣、減量経営ということを言われていますでしょう。減量経営というのは、ミクロでは確かに不況の中で企業が生きていくためのやむを得ない、背に腹はかえられない手段の一つだと思います。しかし、マクロでは、これは決して景気にプラスになるわけじゃなし、雇用にプラスになるわけじゃないんで、そこに一つの乖離があるわけですね。そういう点で、これは皆さんにもひとつ御理解をいただくという意味で、私、日経のNEEDSの資料から、昭和四十八年から五十二年に至る東証一部上場企業の従業員の変化数を提供したんです。それの新しい、五十三年までカバーした員数がある程度業種別に出ているはずなんですよ。こいつをちょっとお知らせを願いたいとお願いをしておいた。というのは、あれでしょう、去年の九月期、ことしの三月期、ことしの九月期、それぞれ企業の業績はもう順調に回復をしているわけですね。しているわけですけれども、実際それはまさに言うところの減量経営で、人員を減らしちゃってマクロ経済としては一つもプラスになっていないんですよね。そういうことを象徴する意味で、従業員の減っている状態をお互いに認識をしたいと、こういうことで資料提供を要求しておったんですが、その御回答をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  24. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) いま福間先生から御指摘のありましたように、五十二年度のものまではあるわけでございますけれども、五十三年がまだ計算されて入手ができませんでございましたので、後で整理してお届けしたいと思います。
  25. 福間知之

    福間知之君 じゃ、大臣、その減量経営についての御感想を伺って終わりたいと思います。
  26. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 日本のように企業内組合、終身雇用、そうしたことを主体にしている民間産業におきましては、この減量経営ということは本当に大変なことであるわけでありまして、過去の五年間にわたる非常に長い不況の中でも私はよく耐えてきたと思うのであります。それがいよいよ耐え切れないという段階でこうしたことが始まり、また組合の方もそうしたことに理解を示された結果だと思うのでありますが、そうした時点から円高が始まったり、いろいろないわゆる回復と申しましょうか、非常につらいと思ったものがかえって逆に大変幸せな形になって動き始めて、それで民間経済も非常に活力を持ってきて現在のような状態になってきていると思うのでありますが、もう大体ここら辺で減量経営というものも、ごく特殊な部門以外はもう打ちどまりになっているし、最近私も労働大臣あたりとよく話し合っておりますが、こうした傾向の中で、有効求人倍率等も、もちろんその同じ産業ではないにいたしましても、やや増大しておるし、また製造業自体がやや上昇しているという事態を認識しておりまして、まあここら辺で減量経営も一応打ちどめになって、正常な形での運営が今後可能な経済運営にようやくなってきた。これが結局内需拡大であるとかあるいは景気回復というものになるというふうに考えておるわけです。
  27. 福間知之

    福間知之君 輸出主導型に戻らないで、減量経営に打ちどめをして、早く正常な雇用状態というものの水準を維持してもらうように強く指導を要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。     —————————————
  28. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 分科担当委員異動について御報告いたします。  本日、粕谷照美君が分科担当委員を辞任され、その補欠として松前達郎君が分科担当委員に選任されました。     —————————————
  29. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 質疑を続けます。
  30. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は、初めに卸売物価消費者物価の動向についてお伺いをいたします。  現在卸売物価の急騰が見られるわけですが、昨年の十月まではどちらかというと下がっておりましたのが、十一月から非鉄金属あるいは木材等、海外市況が騰貴したこと、あるいは円高というものが終わりを告げまして円安傾向が出てきたこと、さらにトラックの過積み規制、また公共事業関連資材の需要が好調である、そういったことから四カ月連続して急騰しているわけです。三月上旬を入れますと、もう五カ月連続と、こういう状況にあるわけですが、しかもことしに入りまして一、二月からは素原材料だけではなくて製品の値上がりも出てきておる、こういう状況下にありまして、大体卸売物価においては素原材料価格の上昇が製品価格に転嫁するのは六カ月程度と言われておりまして、すでにいま申し上げたように製品価格上昇の傾向が出てきているわけですが、今後の問題としてこの波及はどうなるのか、その点の見通しをお伺いしたいと思います。
  31. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) いま先生御指摘になりましたように、卸売物価の上昇のテンポは十一月から非常に急でございます。それで、十一月に〇・二、十二月〇・六、一月〇・六、二月〇・九ということでございまして、三月に入っても上旬で〇・四という上昇を示しております。要因で見ますと、大きいのは海外要因でございまして、海外要因につきましては、各月その上昇率の半分ないし六割ぐらいのところが海外要因、たとえば一月でございますと、総平均〇・六上がりましたうちで海外要因は〇・三、約半分でございます。二月になりまして〇・九のうち海外要因は〇・六ということで、三分の二ということになっておりまして、どちらかといえばやはり海外要因の方のウエートが高い。これは、一つには、海外の価格が上昇したということと同時にやや円安ぎみにあるということで、契約価格の要因と為替の要因と両方でございます。特に二月で見ますと、海外要因〇・六のうち為替要因が〇・二で、かなり大きかったわけでございます。こういう状況を見てまいりますと、契約単価の問題でこれからどうなるかということがまず一つ問題になるわけですが、これについてはなかなか予測がむずかしいのでございますが、少なくとも石油を除きましたところでは非鉄金属についてはやや強含みの傾向が残るのではないか。しかし、木材等についてはいままでのような上昇というのはこれから見込まれないのではないか。これは産地の事情その他から見ましてそういう状況ではないかと思います。それからロイターの中でも食糧関係は、わりに、一部大豆等強含みのものもありますけれども、小麦その他落ちついているわけでございまして、それから繊維原料についても、綿花はやや落ちつき、羊毛は強含みというようなことで、それぞれ様子は違いますけれども、そういう昨年の暮れからの海外物価の上昇のテンポというものが今後も続くかどうかということについては、必ずしも明確ではございません。それから石油の方はもうすでに発表されたところでございまして、これは四月からまた上がるというふうな、まあそういうことでございます。それから円レートの要因についての見通し、これもなかなか困難なことでございますが、全体としてそういう海外要因の動きが国内にどう影響するかということがわれわれの非常に大きな関心事でございまして、その国内要因についての問題は、やはり海外要因からの波及について国内の需給がタイトになればどうしても影響しやすくなるということがございますので、できるだけ供給の確保によって需給のバランスを確保してそして価格の安定を図っていくという、そういう方向を現在とっておるわけでございます。また、石油につきましては、石油製品そのものもそうでございますけれども石油の関連製品の価格上昇がこれからどうなっていくかということについて十分目を配らなくてはならない。そういうことで、そちらの方について十分な監視をしていくということで対処しているところでございます。
  32. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大臣ね、いまのお話を聞きますと、余り見通しが立たないような感じを受けるのですが、もちろんそれはなかなか予測はむずかしいことはわかりますが、このままいきますと私は大変心配をしておるわけです。いま言われたように、石油以外についてはそうめちゃくちゃな上昇はないというような予測に立つと思いますが、今回石油がこのようになってまいりましたのでこれが引き金になる可能性が十分ある。ただわからないというだけではなくて、ある程度の、こういう場合はこうなる、こういう場合はこうなるからこうしなきゃいかぬということは政府としてはもう少しきちんとしていかなきゃいかぬのじゃないかと思うのです。最近の政府のいろいろな発表を見ておりますと、いま石油については五%削減ということばかり言われておりまして、もう少しきめの細かいもっと物価に対する配慮というのがあってしかるべきだと思うのですが、その点はいかがですか。
  33. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいま御指摘のような問題はわれわれもいま非常に憂慮しているところでございますが、さしあたりは現在の卸売物価の上昇の要因が海外要因がほとんどであるということが非常にわれわれとして政策の打ちにくい点でございます。また、卸売物価を安定させるためのたとえば国内的な金融を締めればその海外要因が断絶できるかどうかということにつきましても、果たしてそうなるかどうか。いまそのような海外要因による卸売物価の上昇というものをどのような形で防ぎ得るかということ。したがいまして、その問題とあわせて、やはり前々から申し上げているとおり、日本経済自体を多少成長経済の中で雇用の安定を図ったり、あるいはまた海外摩擦調整を図ったり等々のこともしていかなきゃならぬというところで、いまその判断を決めてまいるのにちょうど中間的な事態でございます。しかし、御指摘のように卸売物価の相当な上昇というものについてわれわれは決してそれをただ見ているだけではございません。したがいまして、その影響を可能な限り抑え込むという意味で、二月二十六日来、政府機関を挙げて、物価抑制と申しましょうか安定化のための努力をいまやっているところでございます。
  34. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 今回の上昇については、長官は、異常と考えられておるのか、それとも、いままでむしろ下がってきたのが適正水準へ回復したと、こうお考えなのか、その点どちらですか。
  35. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 率直に申し上げますと、その両方ではないかと思います。卸売物価が前年マイナスを繰り返していくということでは、これはやはり日本経済運営そのものにとっては、特に民間経済においては非常な打撃であると思いますが、と申しまして、現状のような形で上昇が余り激しく続くということもこれは物価政策上厳に戒めたいところでございまして、まあ私として強いて申し上げるならば、現状の上昇はやや異常に警戒水域に来ているという認識でございます。
  36. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま警戒水域に行っておると、こう言われましたが、やはり経企庁という物価の監視役としてはある程度の判断を持っていなければいけないと思うわけでして、適正水準を超えたか否か、そういった点の基準といいますかその判断が私は大変大事だと思いますので、まあ一応警戒水域と。私はもう少し厳しい見方をしておるんです。というのは、まあいろいろこれから申し上げたいと思いますが、先に、まだ余り現在マスコミ等にも出てきておりませんし、議論されていないのですが、実はもう現状では買い占め、売り惜しみが始まっておる、現場においては。この事実はどこまで政府として認識をされておるのか。もちろん海外要因だ、円安である、いろいろなことを言われております。景気も回復してきておる。しかし、最近私が町で聞きますいろいろな声は、もう石油製品がなくなっている、買いに行ってもないんだと、しかし在庫はあるんだと。そんなことで、まあ例を挙げればシンナーなぞは去年の十月ごろから比べるともう三倍にもなっている、一番最先端の小売ですけれども。そんなんで実際の業者の方は大変困っている。もう塗料なんかもぼつぼつ買い占めが始まっておる、こういう状況でございまして、これは案外まだ目を向けられているような感じを私は政府施策として受けていないのですが、現在始まりつつあるこの買い占め、売り惜しみについて、政府はどれぐらい事実を認識され、監視をされ、手を打とうとされておるか、これをお伺いしたいと思います。
  37. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 昨年の暮れからの卸売物価の上昇に際しまして、合板の一部に仮需に伴う在庫手当てといいますか、そういう動きがございまして、さらに繊維の一部、それから鋼材、棒鋼等の一部にもそういう動きがあったようでございますけれども、その後、合板等につきましては備蓄の放出によりまして冷却をしているということでございまして、繊維、棒鋼等についてもそういう動きは一段落したように私どもは考えております。  そこで、石油及び石油関連製品の問題でございますけれども、これは一—三月、それから四—六月、ともに昨年同期に対してやや増加している、そういう供給量が出てまいっております。そういう意味で、現状においてそういう物が足りなくなるということが石油関連について起こるということは全くないわけでございます。そういうことでございますので、そういうものが足りなくなるというような形での買い占めというようなことについての動きはないものと思っておりますが、ただ、いずれにいたしましてもこれから石油製品の価格が四月以降また値上がりするということでございますので、そういうことに対応しての関連製品の需給の動向とか価格動き、こういうものについては十分フォローして対策に万全を期していきたいというふうに考えているところでございます。
  38. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私、まだ細かい実態調査はしておりませんのでわかりませんが、いま言われたのは確かに理屈の上からいくとそんなものが足りなくなる状況じゃないのですが、現実には買いに行ってもないという現実があるわけです。そういった点が、卸売物価の上昇の動き、それから小売の製品の動き、そういった点から、わりあい早い時期に経企庁としてデータの中で買い占め、売り惜しみが始まったのじゃないかというようなことがわかるのですか。要するに、その実際現場へ行って調べないとわからないのか、データを見てわかるのか、その点いかがですか。
  39. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 二月二十六日の対策の中でも、生活必需物資とか、それから国民経済上重要な物資というものについての需給の動きを監視するということを打ち出しておりますが、これは関係各省もさることながら地方団体においても一緒になってやっているわけでございまして、私どもはそういうこの前の狂乱物価の経験等から地方団体に対して、やっぱり全国的な目で見ていかなきゃいけないものですから、監視をお願いしてきております。そういうことでございますので、中央でも把握し、なおかつ地方での動きについても異常があれば全部報告をしてもらうという形で、できるだけ実態を把握して対策を立てていきたいと、そういう体制をとっております。
  40. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この前のオイルショックの教訓があるからと言われますが、逆に言うと、教訓があるからなかなかわからないようにうまくやっておるわけです、現実は。政府の方も賢くなられたんでしょうが、悪徳業者というのはもう一つ賢くなりましてその先を打っておるわけでして、私実はこの一週間ぐらいかなりいろいろな人からいまの話、ちょっと申し上げたことを聞いたわけなんです。それでこれは大変だということで、私自身としてもいろいろ調べたいと思っておりますけれども、ぜひ政府として、この前のようなトイレットペーパーを買いに主婦が殺到するとか、そういうふうなことにはならぬと思います、洗剤に走るまでには。しかし、そうでない形でまたじわじわと高騰が起こる。その中で、倉庫の中はいっぱいである、しかし物は出してくれない、値段がつり上がってきている。現実に倉庫関係の株は上がっていますよね、いま。そういうような状況も一つの目安になるのじゃないかと私は思うのですけれども、大臣、ひとつ早目にこれはやっていただかないと、後からやったのではこれは間に合わないので、この点は具体的にどうされますか。
  41. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいまの御指摘は、まだわれわれ具体的にそうした事実をつかんでおらないと思います。しかし、御注意のほどは非常にありがたいことでございまして、またできますならばわれわれの方にもそうした関係者をおよこしいただいて実際具体的にお話をいただければわれわれとしても動きやすくなると思いますが、先ほども申し上げましたように、今度の物価対策はもちろん中央官庁のいろいろの行動よりもむしろ地方自治体における物価監視というものに非常に重点を置いておりまして、そのために、総合推進の中では、特に自治省からも各地方自治体に対してこの旨を十分通達してございます。それをさらに機動的に動かすということはそろそろわれわれも必要な時期だと思っております。そうしたちょうど時点でございまして、委員と私も認識を同じくいたしておりますので、また今後もよろしくお願いしたいと思っております。
  42. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、三月上旬値で五十三年度指数を計算いたしますと一〇四・一、前年度比マイナス二・四%、政府の実績見込みマイナス二・六を上回ることになります。また、最近五カ月、三月上旬を含みまして、上昇を年率に換算いたしますと六・九%に達するが、五十四年度見通しの一・六%はこうなりますと変える必要が出てくると思いますが、その点はいかがですか。げただけでも一・三%になりますので、今後卸売物価が鎮静していかなきゃこういうふうになっていかないわけですから、その辺の判断材料が大変厳しい状況であるとしますと、これを変えていかなくちゃならぬと、こういうことになるのですが、これはいかがですか。
  43. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 現時点で五十四年度の一・六%という数値をいじくる意思はないんです。われわれといたしましては一応こうした目標を掲げておって、それを可能な限り達成をするという努力をまずしていくことが先決ではないか。もちろん、この事態の推移の中で、先ほども委員が仰せられましたように、石油であるとかいろいろの問題の海外要因の動向というものも果たして今後現在のような形でなお継続するのかどうか、これは私はやっぱり世界の全体の政治動向、軍事動向、いろいろなものに左右されている面が多いと思いますので、こうしたような事態がなおかつ長期にわたって今年度継続するかどうかというような見通しをやはり立てた中での考え方も一方にはしなければならぬと思いますが、まだ今年度のスタート前のことでございますし、また現時点においての卸売物価の動向というものにつきましてもわれわれとしていま知恵をしぼってこれの安定化のためにいかなる措置をとるべきかということを検討中でございますので、そうした政策を打ちまして後になおかつ現状のような上昇傾向が続くかどうか等々をよく見きわめて行動さしていただきたいというように思います。
  44. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、消費者物価ですが、これも上昇の懸念があるわけです。五十三年四月以降は七、八月の夏場を除いて大体前年同月比で三%台で推移をしてまいりました。二月の東京都区部の速報は、前月比マイナスの〇・六%、また三月も野菜等季節商品の値上がりという報道もありませんので、このまま推移すれば政府の五十三年度実績見込みの四・六%の達成は可能だと私は大体思いますけれども、ただ、問題は、マネーサプライの動向、あるいは原油値上げの動向などが不安材料としてあるわけです。実際値上げの方がOPEC値上げ決定しておりましたのでそういった点で少し不安があるかもわかりませんが、まあ大体政府見通しまでいくと私は見ておりますが、ただ、五十四年度にこれが持続するのかどうか。特に、先ほども少し申し上げましたが、昨年五十三年度の安定した原因というのは、やはり一つ円高の効果、これは電力、ガソリン、灯油等に余り影響が上がらなかったということ、それから季節用品が落ちついておったということ、それから公共料金の大幅な引き上げが五十三年度はなかった、しかも先ほど申し上げました卸売物価がむしろ下落傾向にあった、あるいは賃金の伸び率が実質的に大変少なかったと、こういうことで五十三年度の消費者物価は大体政府見通しのとおりになってきたと思うのですが、これがそのまま五十四年度は来ない。特に公共料金というものも今度は入っておりますし、卸売物価がさっき言った状況です。それから円高効果がいまの状況ではちょっと期待できない。季節についてはわかりませんのでこれはまあ仮に中立としておきましても、あとの方はすべて上がる要因があるわけです。そういった点で、この消費者物価の動向というのはなかなか厳しいのじゃないか、四・九%の見通しはむずかしいのじゃないかと、こう私は思うわけです。その点についての見通し。  それから円レートですね、百九十円で想定されていますよね。これがいま二百円を突破しておるという状況ですから、これがどう影響してくるのか。  それから公共料金、これが五十四年度では一・五ないし一・六ぐらいだと見込まれておりますが、その程度でおさまるのかどうか。というのは、普通の安定したときであればこれでいけるかと思うのです。昨年が一%前後と言われておりますから、影響がですね。しかし、今度は、大変に上がる中での公共料金の値上げ。公共料金が引っ張るのじゃなくて、ほかのものがどんどん上がる傾向にあるところへこれが入るということは少し加速的になるのじゃないか。それは〇・五とか〇・六程度におさまらぬのじゃないか。だから、一・五、一・六にはいかないのじゃないかと、こう思うわけです。その点どうお考えになっておるのか。  それからもう一つは、卸売物価上昇の波及効果のタイムラグ、これは大体六カ月から九カ月前後と言われておりますけれども、そうしますと、ことしの四月ごろから早くて五、六、七月ごろ、秋にかけてぐっと消費者物価への影響が出てくると、こういうことになるわけですが、このタイムラグをどういうふうに考えておられますか。  あと、マネーサプライ等ございますけれども、時間がありませんのでこれで終わりますが、以上の点についてまとめて御回答いただきたいと思います。
  45. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 毎々申し上げておりますように、われわれはレートは一応百九十円、計画として当時のレートでやっておるわけでございます。これがいま二百円ちょっとになっておりますが、この予測で将来さらに二百十円なり二十円になるかどうか、この辺のところは全くわれわれも予測がつかないわけでございますが、大体現状の程度、二百円から百九十円の間ぐらいのところが今年度の大体のベースになるのではないかというふうに期待はいたしております。  それから公共料金でございますが、毎々申し上げておりますように、われわれの計算の基礎に入っておりますものは、予算審議でお願いをしておるものを全部足しましても〇・八程度、その他を合計いたしまして大体一・五%程度影響というふうに考えておりまして、もちろんこの中で国鉄運賃はまあ一応このまま実現するといたしましても、たばことか、あるいは健保法改正等がいまどうなるのかわかりませんが、これらを両方合計しましても〇・五以上になっておりまして、このような事態もございますが、問題はその他の地方自治体等によりまする一般的な公共料金的なものの引き上げにつきましては特に関係自治体に対しまして慎重に審議してもらいたいということ、それらを要望いたしております。まだそうした要望が具体的には出てきておらないところもたくさんございます。そうしたような部門に対しましてもなるべく自重を求めるということで、〇・六%程度影響があるであろうという予測もできる限りこれを引き下げてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、卸売物価消費者物価の関連でございますが、この相関はなかなか従来のいろいろなデータを見ましても相関があるようでないようではっきりいたしません。しかし、私は個人的に考えておりますのは、大体ことしの六月ごろの時点が一つの判断材料になるのではないかというふうに考えておるわけでございますが、これとても確たる方針ではいまないわけでございまして、六月ごろの事態がやはりものを考える場合の非常に重要なポイントになるというふうに私個人は考えておるわけです。
  46. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 さっきの円レートのことは、百九十円であるから、いま二百幾らに上がっていますので、結局それだけ政府の見込んでいたものよりもいわゆる物価上昇への影響が強くなるというようにそういった点は考慮に入れられているかということをお聞きしたかったわけで、ちょっと言葉が足りなかったので、その点はいかがですか。
  47. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 円高物価への効果でございますが、一番はっきりいたしますのは卸売物価の輸入品でございまして、これは円高、円安になればすぐに響いてまいります。そういう意味で、百九十円で見ていたのがいま二百円ということになりますと、その分で五%ぐらい円安になっているかと思いますが、それは卸売物価の中の輸入品の価格の上昇になってまいっております。そこで、先ほど申し上げましたように、卸売物価の要因の中で為替レート要因というのはかなりあるということを申し上げたわけでございます。ただ、これは今後のレートがどうなるかということも十分よく見ていかなきゃなりませんし、それから海外物価動きと一緒になってまいりますので、それも見なくちゃいけませんので、年間全体でどうかということになりますと、なかなかこうなりますということを申し上げるわけにいかないわけでございますが、現時点で見ますと、それが卸売物価の押し上げ要因になっていることは事実でございます。
  48. 市川正一

    市川正一君 OPEC値上げ問題など新しい事態の進展の中で、エネルギー問題について真に正しい意味での国民的合意という問題が非常に大事になってきているというように私思いますが、その一つとしての電源開発問題について、きょう午後から電源開発調整審議会いわゆる電調審が行われる予定というふうに伺っております。そこで、この電源開発問題に関連して電調審の幹事役としていろいろ調整の任務に当たっておられる経企庁に若干の御質問をいたしたいのであります。  最初に、大臣の基本的な姿勢をお伺いしたいのでありますけれども、これまでの電源開発問題をめぐって多くの汚職事件が残念ながら続発して、いわゆる電力会社の強引な立地推進に社会的批判が寄せられております。たとえば、この数年をとってみましても、四十八年関西電力による和歌山県の那智勝浦、五十二年には四国電力の徳島県の阿南火力発電所、五十三年には中部電力による三重県の芦浜原発問題等々、汚職事件が出ております。私ここに写真を持ってまいりましたが、ある週刊誌に出た写真を伸ばしたものですが、この記事の中にはこう書いてあるんですね。「ニガ虫をかみつぶした顔の河本通産相の前で、背をまるめ、深々とアタマを下げた。」加藤中部電力会長の写真なんですが、決定的瞬間でなかなか名作だと私は思いますのですが、かくのごとく、これは去年のことでありますけれども、いろいろの問題が起こっております。また、電力会社のこうした札束攻勢なるものが世上いろいろ問題になっておりますが、政府としては厳重に改善指導をなさるべきだと思いますが、現状はどうなっているのか、こういう問題について経企庁長官としての見解をまずお伺いしたいと思います。
  49. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいま御指摘になりました電源開発に関連した汚職というものは、これは私は非常に残念なことだと思います。もちろん、日本の現在のようなエネルギー事情のもとにおきまして、電源開発ということが将来の国の全体に対する影響がきわめて大きいということはだれも理解できるところでございますが、しかし、問題は、やはりこうした立地をめぐっての地元の人々の合意というものが何よりも重大なものだと私は考えます。そうしたことを飛ばしていくというようなことのために起きた疑惑あるいはまたそうした汚職ということであるのかと思います。今後われわれは特にそうした問題について厳正にその事態の正常に行われるように特に関係方面とも連絡をいたしまして、また開発を担当する電力事業者等に対しましても十分注意をして、こうしたことがさらに繰り返して起こらないように十分の注意をしてまいりたいと思っております。
  50. 市川正一

    市川正一君 いまの大臣のおっしゃった地元住民との合意、言いかえれば関係自治体をも含めて住民との十分な納得を得る努力というのではなしに、かくのごとく逆に寄付金とかあるいは献金とかいうさまざまな名目によるまさに金権的な方法で各地で立地工作が行われている、ここに私は問題があると思うんですが、こうした実態を放置したままで発電所の立地を強行するやり方はやはりこの際根本的に改める必要があるというふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  51. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 私は個々のいろいろな方々の御意見があるのはよくわかります。しかし、一つのまとまった自治組織としての町村あるいは県、こうしたところの責任者が適当な方法によって住民各位の御理解をいただく、そうしたことが過半数あるいは大多数になったような場合には、さらに反対される方々を十分説得してもらって可能な限りの幅広い合意を得るという努力を積み重ねてもらいたいと思うわけでございますが、しかし、私は、こうした電源開発ということの持つ日本の全般に及ぼす影響というものに対しても、さらに地域住民の方々に本当によく御理解を賜るような努力を、ふだんから政府筋あるいは自治体筋として、あるいはまた電源開発を担当する企業体において、行っていかなければならないというふうに思っております。
  52. 市川正一

    市川正一君 いわゆる半数あるいは過半数とおっしゃったその数自身が札束攻勢的なものによって構成されたいわば虚数であるという実態を私後で少し触れたいと思うのですが、さらにこの機会にお伺いしたいのは、電調審が電源開発促進法に基づいて設置されたのは一九五二年、昭和二十七年でございます。いわば戦後の復興期とも言える昭和二十七年当時と現在との間では、その経済的社会的背景や条件が大きく変化しております。したがって、電源立地のあり方についても根本的に見直す必要がある段階に来ているのじゃないか。たとえば、単に電源開発の促進ということだけでなしに、環境への影響とか、あるいはまた、大量消費産業省エネルギーを含めた調和のとれた長期のエネルギー政策の確立とか、こういう社会的な経済的な要請とも関連して問題を洗い直す必要がある。ところが、実際には相変わらず電源立地の促進だけが一面的に強調されている。こうしたことも要因の一つになって現実にアセスメント法案がいまだに提出されないという事態にまで続いておるわけでありますが、私は、政府のこうした姿勢が、逆に電源立地難といいますか、いろいろいまの障害に拍車をかけているというふうに思うのであります。  そこでお聞きしたいのでありますが、電調審の審議でも、単に開発促進の必要性という見地だけでなしに、環境への影響、また住民との合意、あるいは調和のとれたエネルギー政策の確立という幅広い視点から審議される必要がある、こう考えるのですが、いかがでしょう。
  53. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 詳細にわたりましては計画局長からお答え申し上げますが、基本的に私の承知いたしておりますところは、特に環境問題につきましては十分なる合意が成立したもののみを電調審にかけることになっております。
  54. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) 基本計画を決定いたしますに当たりましては、法律に基づきまして三点考慮すべき事項が明記されておりまして、国土の総合的な開発、利用、保全、電力の需給のほかに、電源開発の円滑な実施ということが書かれておりまして、この内容は、実は先生が仰せになっております環境問題でありますとか、地元の方々の状況でありますとか、そういったものを踏まえて基本計画を立案するということにいたしておるわけでございまして、ただいま大臣から御答弁がございましたように、そういう方向でやっておるわけでございます。
  55. 市川正一

    市川正一君 そこで、きのうの幹事会でも議論され、冒頭申しました本日午後の電調審に付議される予定と聞いております関西電力の和歌山県御坊市で計画中の御坊火力発電の問題について具体的にお聞きしたいのでありますけれども、これについては、電調審に付議されることになったものの、多くの問題点をいまだに未解決のままこの事態は進んでいるというふうに思います。  第一に、私は去る二月十五日の商工委員会でもこの問題を取り上げたのですが、関西電力は、立地推進工作の一環として関係住民の協力理解を得るためと称して、四国電力の阿南火力発電所の見学を組織しております。そのときに、一泊二日の見学会なるもので、夜は芸者をあげて大宴会をやっている、そしてその費用はすべて関西電力が持っているのだということをただしました。通産大臣は、こうしたやり方は容認できないとおっしゃって調査をお約束になり、私はその調査結果をいただいたのですが、これによって見ますと、明白に宴会費ということで三十万円が計上されている。あるいはそのスケジュールを見ましても、結局あとは観光旅行であって発電所に二時間おられただけだというような実態、これは一例でありますけれども、こういういわば供応まがいの住民工作というものが行われている事態について、長官としては、こういう御報告は受けておられるのか、またこういう事態についてこれで結構だというふうにお考えなのかどうか、お伺いしたいのであります。
  56. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) ただいま先生のお話しございました事実については承っておりますが、十分に知悉いたしておりません。私どもそれについて十分調査をしたということではございませんが、そういうことがもしありますれば、先ほど大臣が仰せになりましたように非常に残念なことであると思います。
  57. 市川正一

    市川正一君 これは関電からの文書報告を私はいただいておりますので。ですから、単に残念ということだけでなしに、こういう形で先ほどおっしゃった長官の半数、過半数、いわば多数の虚構的世論なるものが構成されているというのでは、まさに供応、買収まがいのやり方だ、札束攻勢、金権的なやり方と言わざるを得ぬのでありますが、そこに私は冒頭の、たびたび繰り返すようですが、こういうようないわば汚職事件の温床があり土壌があるということを率直にこの際指摘いたしたいのであります。それだけに、私、経企庁としてもこういう実態を正確に把握されて電調審にも臨まれるということをぜひ強く望みたいし、電調審自身の判断を根本的に誤ることになるということを重ねて強調いたしたいのであります。  そこで、私、この問題について特に再三取り上げております御坊の火力発電所の問題に対して、関西電力のやり方に対して厳重な注意をなさるとともに、これをそのままにして電調審にかけるようなことはなさるべきでないというふうに考えますが、この点いかがでしょう。
  58. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) 経済企画庁が電調審のお世話をいたしております立場から申しますと、関係各省のこれから電源開発を行っていきますに当たりまして許認可権限を実行する一つの先鞭的なものとして電調審を行っておるわけでございますので、関係各省の御意見、あるいはその内容となっております権限というものを十分に尊重して運営してまいりたいと思っております。
  59. 市川正一

    市川正一君 以下申し述べるようなことも踏まえて臨まれることを私は重ねて要望いたしたいのでありますが、一般的に事前環境調査というのはこれは企業みずからの負担と責任で行うというのが言うまでもなく原則でございます。この御坊の場合には、この点がきわめてあいまいになっておるのであります。これは環境庁もよく御承知のところだと思いますが、たとえば、昭和五十三年に関西電力が御坊市長あてに文書を出しておりますが、これを見ますと、「貴御坊市におかれましては、広く環境調査を実施され、そのご提供資料に基づき当社の発電所建設計画および環境保全対策が策定できましたことを、誠に幸いに存じております。」というふうに関西電力自身が実はこれは御坊市が環境調査をやってくれたおかげでうまくいったんだというふうに感謝をいたしております。さらに、五十三年の十二月の御坊市の定例議会では市長が質問に答えまして、「それから事前調査だとか補完調査は市が独自で行ったものであるのかどうかというお尋ねでございましたが、市が独自で行ったものであってその行ったものの費用は関電をして、こちらからツケを回して向こうに支払わせた、こういうことでございます。」と、まことにその意味では明快に答弁をいたしております。また、ここに私関電がまとめました環境影響調査書を持ってまいりましたが、ここに、すべて調査者は御坊市というふうに明記されております。一つ一つ私ここにお見せする時間の余裕がございませんが、全部御坊市が調査をしたということをこの膨大な文献の中で明記している。加えて、五十二年の三月の御坊市議会で市当局は、事前調査の一環として近大農学部に委託契約を行ったということも答弁をいたしております。等々を見ますと、結局こういう事態は、通産省に言いますと、これは関電の責任と負担で行ったもので御坊市は関電を指導しただけだというふうに言っておられますのですが、もしそういうことならば、御坊市長は、御坊市当局あるいは住民に対して、市議会並びに住民に対して、うそをついたことになる。また、関電がまとめたこの環境影響調査書はいわば虚偽事項が記載されているということになるわけであります。この点は衆議院の公害特別委員会で社会党の委員からも地方自治法違反になるのではないかというふうに追及されておりますが、この問題について経企庁並びに環境庁はどのように認識されているのか、御質問いたします。
  60. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) 御坊発電所にかかわります環境調査でございますが、いま仰せになりましたように環境公害対策特別委員会で問題になりましたのでよく存じておりますが、通産省の見解によりますと、御坊市の指導監督のもとに関西電力がみずから実施したものである、こういう見解をとっておりまして、私どももそのように理解いたしております。また、御坊市が積極的にそれでは環境調査に関与した理由は何かということでございますが、これは御坊市が火力発電所立地を円滑に進めるためには地域にとって信頼できるデータによって環境影響評価がなされることが必要であるということを考えたということを聞いておりまして、環境影響調査につきましては通産省の省議決定に基づいて事業を指導しているものと私ども理解いたしております。
  61. 大塩敏樹

    説明員(大塩敏樹君) お答えいたします。  この問題につきましては、衆議院及び参議院の公害環境特別委員会で再三取り上げられましたので、その内容につきましては私ども承知いたしております。その件につきましては、私どもといたしましては、審査を円滑に推進する立場から、この問題について調査の主体を明確にしていただきたいという要請をいたしまして、これにつきまして三月の半ばに通商産業省から実施主体は関西電力であるという旨の説明を受けました。そこで、私どもは、通商産業省を通じてその資料を取り寄せまして審査した次第でございます。
  62. 市川正一

    市川正一君 そうすると、いまのことで明白になったように、いわばこの文書はやっぱりペテンなんですね。御坊市がやったというふうに出して、実質は主体は関電でやったというふうにいわば訂正、手直しされた。これは明白に、看板を御坊市が貸してそして実態はそういう関電がやったという意味においても、いわば公文書偽造あるいは虚偽の記載というふうに言って差し支えないとあえて私は言いたいのであります。だから、現に、お隣に美浜町というのがありますが、ここの町長は、御坊市長に対して、御坊市がやる自治体の調査だからということでいろいろ協力もしていた、しかしもしそういうことであったとするならばこれは話が違うということで正式に抗議までやっているのであります。こういう点で、私は、事態は依然として責任不明確であるというままで進めることは相ならぬというふうに思うのでありますが、長官、以上のような経緯のもとでこういうアセスメント実施の仕方は全くアンフェアであるというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  63. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 私の承知いたしております限りにおいては、ただいま環境庁並びに通産省からの当方の計画局長に対する連絡等で承知しておるわけでございまして、その限りにおいては別にそう問題はないのではないかというふうに思います。
  64. 市川正一

    市川正一君 いま明白になっただけでも、突如としてこの調査主体が変わっているということ一事を取り上げても、いかにこれがあいまいな責任のもとにやられているかということを立証していると私は思いますが、さらにこの調査内容についても、あそこに名田という漁村がありますが、この名田の地先、こういう海域のモ場、一番漁場として大事なところでありますが、ここの調査は結局現地漁民の反対もあってできなかったんです。やっていないんですよ。こういう関電のアセスメントは、その手続においてもまた内容においても大きな問題がある。いわば重大な疑惑もある。これを基礎にして電調審にかけるようなことは断じてすべきでないと思いますが、重ねてお伺いいたしたい。
  65. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 企画庁といたしましては、地元の情勢の把握はやはり総合的に判断をなし得る立場にある都道府県知事にゆだねるのが適当だと思うわけでございます。
  66. 市川正一

    市川正一君 冒頭おっしゃった地元との十分な合意と納得という大前提から見て、私はただいまの長官のお答えはその基本的姿勢と矛盾すると言わざるを得ないのであります。具体的に申しますと、この御坊市においても、最大の当事者である名田の漁協、ここでは百四十七名のうち百二十八名が反対であるという見解を表明しています。また、隣の美浜町では、ここでは有権者の過半数を占める三千六百人が反対署名に参加して、そして意思表示を行っております。また、広川町、湯浅町——隣接の町でありますが、ここでは町長がみずから上京して、そして環境庁長官にも会って反対の意思表示と現地調査の要請を行うというふうにやっております。また、同じ隣接の印南町の町当局も反対しておるというふうに、こぞって一番の地元及び関連の町村が、町長も挙げて反対をしておる。これだけの反対世論というものを無視してまで電調審での審議を強行すると、言うならばこれはまさに住民不在、住民無視、長官の冒頭基本姿勢として述べられたそういう立場といわば矛盾するというふうに思うのでありますが、こういう地元のいわば住民の意向を十分反映し、それに耳を傾け、また配慮を行って決定さるべきである。事はきょう午後からも始まるということでありますので、私は重ねてそういうことを強く要望いたしたいのでありますが、そういう基本的な観点についてはいかがでございましょう。
  67. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) 地域にいろいろ御議論があることは知っておりますが、私どもは電調審に付議いたしますに当たりましては、都道府県知事の地元事情を勘案した上で御回答願いたいという文書を出しまして、文書によりまして回答をいただいております。なおかつ文書以外で御説明を聞いておりますので、地元事情に一番詳しく、また一般的、また有権的に判断できます知事の御意見を尊重いたしたいと思っております。
  68. 市川正一

    市川正一君 では最後です。私、同時にこういうふうに具体的事実に基づいて、また時間をかけまして現地の声あるいは要望を反映いたしましたので、この点も十分勘案されまして、お含みの上、慎重な御検討を賜りたいことを重ねて要望いたしまして、質問を終わらさしていただきます。
  69. 井上計

    井上計君 大分時間がおくれておるようですから、できるだけ簡単に質問申し上げて、また早く終えていただきたいというふうに思います。  最初に、先ほどちょうだいしておる資料の十三ページ、まあいろいろありますが、十三ページだけじゃなくていいんですが、十三ページに「長期経済計画策定等に必要な経費」というものがここに計上され、その説明がなされております。そこで、数字じゃありません、お伺いいたしますけれども、経企庁のこの長期経済計画の策定等とは、要するに長期とは何年先といいますか、何年間それらのものをお考えになっておりますのか、お伺いいたします。
  70. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) 長期が何年であるかということを明確にはいたしておりませんが、少なくともいままでの経験上から申しますと、五年ないし十年ということで計画が組まれております。
  71. 井上計

    井上計君 そこで、きょうOPECの臨時総会等による石油価格値上がり、それに伴っての影響、いろいろな点でもう質問かなり出尽くしておりますので、重複するかと思いますけれどもお許しをいただきましてお尋ねをいたしたいと思いますが、まず、二十七日のOPECの臨時総会で新価格決定された。さらに、各国独自にこの価格に上積みすることを付加する権限を与えられておる。この価格水準は六月の定時総会までの暫定的な決定であって、その後については六月の総会で決定すると。このような合意がなされた、このように報道されております。それからそういう情勢の中でもう二十ドル時代は必至だというふうなことが言われておりますし、原油高価格時代と、このようなことがもう常識だと言われておりますけれども、さらに、OPEC関係者が、将来原油価格代替エネルギーコストであるバレル三十ドルに持っていくべきだと、このように言っておるそうでありますが、そのようなことにつきましてはどのようにお考えになっておられますか、大変お答えにくい問題かと思いますけれども、これは長官ではお答えがお立場上問題がありますれば、政府委員から御見解を承りたいと思います。
  72. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) 長期にどの程度のバレル当たり何ドルになるかということについては私ども推測ができないような状態でございまして、いまのところは、そんなに高くなりますれば、経済成長率あるいはいろいろな経済事情に影響してくるだろうということを憂慮するものでございます。
  73. 井上計

    井上計君 予測できないいろいろな問題があります。先ほど長官も今後予測しがたいいろいろな国際情勢等があるというお話であります。しかし、予測できないわけですけれども、まあ幾つかの予測はしながら、それを発表するとかどうとかは別でありますけれども、それについてのやっぱり対応策というものを考えていかなくてはいけないというふうに私は思っております。従来でもそうでありますけれども国民が実は気がついてみたらとんでもない価格になっておったと、こんな価格になって、こんな状態になるならもっと早く知らしてくれればよかったと、まあこれは石油の問題だけではありませんけれども物価問題等につきましてそういうふうな声あるいは批判がずいぶん多いわけでありますから、やはりある程度の予測というものも、こういうことがあり得ると、しかしそのような状態にならないようにするためにはこうだというふうなことで国民に少し啓蒙する必要があるのではなかろうかと、このように私は個人的には考えております。  そこで、もう一つ次にお伺いしますけれども、けさの新聞報道によりますと、きのうでありますか、経済企画庁が原油値上げによるわが国経済への影響をまとめておられるようでありますが、それにつきまして御説明をお願いいたします。
  74. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) すでに十二月にアブダビにおける決定がございまして、これは十四ドルラインヘの値上げでございますが、これは年間平均いたしますと大体一〇%の値上げになる、これの影響消費者物価には〇・三%、卸売物価に〇・七%影響するだろうということで、これは現在の五十四年度の消費者物価並びに卸売物価見通しに組み込んでおります。昨日報道されました値上げ分、これを合計しますと、現在まで時点の中で値上げが一〇%と思ったものが一二・一%になるということでございまして、この一二・一%原油価格が上がることによる消費者物価への影響は〇・四%、卸売物価に対しましては〇・八%、言うなればわれわれの計画予測に〇・一%ずつ上乗せになるという程度影響があるというふうにわれわれは試算をいたしたわけでございます。
  75. 井上計

    井上計君 そこで、新聞を見ておりますと、割り増し金が一バレル一ドルアップの場合、さらに消費者物価〇・二%、卸売物価〇・四%という数字が新聞に出ておりますが、そうでありますか。
  76. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) これは何%サーチャージがつくのかわかりませんものですから、これからの契約によってそれが実現していくと思いますが、まあ一応の試算といたしまして、一バレル一ドルということで考えてみた場合に、いまおっしゃいましたような程度影響がさらに加わるであろうということをわれわれは考えております。
  77. 井上計

    井上計君 そこで、長官ね、まあこれはもう私自身が大変悲観的な先入観に立っての質問になるかと思いますけれども、ジュネーブの二十七日発共同によりますと、OPECが原油の新価格上乗せ分の上限を一バレル四ドルと決定したと語っておるが、最終決定ではこの上限が外され無制限になったと、こういう報道が来ておりますね。仮にしかしそこで四ドルアップと考えますと、当初の一〇%値上げ、それから今回の一二%、それから割り増し金バレル四ドルと計算しますと、一つの計算ですが、消費者物価一・二%、卸売物価二・四%という影響が出るという数字になるかと思います。まあこの数字はともかくといたしまして、そこで、そうなりますと、実質の経済成長率への影響というのはどのようになりますか。
  78. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) 政府の五十四年度の経済見通しは一〇%程度石油値上がりということを前提にして計算しておりまして、今回決まりましたのがサーチャージの分を除きますと一二%強ということで、それが消費者物価並びに卸売物価に対する影響は先ほど大臣からお話があったとおりでありますが、経済成長率について見ますと、その分、つまり一二%強の原油の値上げと、当初政府が考えました一〇%との間の二%強ということになりますと、国際収支で約五億ドルぐらいの負担増になるわけですが、これを直接的にGNPで換算いたしますと〇・〇五という程度で、それほど大きな数字にはなりません。しかし、いまお話しのサーチャージということになりますと、これもどれぐらいサーチャージが課せられるかいまのところわかりませんが、仮にバレル当たり一ドルだといたしますと、直接的な効果だけで〇・一五ということになります。したがって、四ドルということになると、その倍になるのが直接的な効果でございますけれども、しかし、これは間接的にいろいろの要因を考慮しなければいけません。国際情勢について言いますと、これで世界のインフレがどうなるか、あるいは世界貿易がどうなるかということを考慮しなければいけませんし、国内的にもそれに対して在庫あるいは企業家の心理によって設備投資がどうなるかということを計算しなければいけませんが、従来進められておりましたいろいろの節約努力等ということを考えましても、このサーチャージの分が大きければ大きいほど限界的な産業あるいは成長に対する影響というのは大きくなるというふうに考えております。
  79. 井上計

    井上計君 サーチャージにつきましては全く予測しがたいということがありますので、いまこれを別にお伺いしたりまた論議するというつもりではございませんが、ただ、二十ドル時代というふうなことが公然と言われ出してまいりますと、サーチャージ四ドルということもやはり予想しなければと、こういうふうに感じるものですから、それでお伺いしたわけです。  いま局長お話しのことから考えますと、もちろん国際要因その他いろいろな問題等の間接的な影響等がありますから、必ずしもそう数字どおりいきませんけれどもサーチャージが仮に四ドルといたしますと、実は経済成長率へのダウン予想一%を超えるというふうな数字が一応出てくるわけでありますから、これはかなり目標値の修正ということも来年度あたりはお考えになる時期が来るのではなかろうか。それらのこと等につきまして、これが現在の雇用不安等の中で与える影響が非常に大きいと思いますので、この点については慎重にやっていただかないといけませんが、しかし、同時に、やはり早い目にといいますか、そういうふうなことについてのまた方針等をお示しいただくことがよろしいのではなかろうか、これはまあ希望いたしておきます。  そこで、仮定の数字を取り上げて恐縮でありますけれども、いろいろとお伺いしたいと思いますが、六十年度ですね、これはエネルギー庁にお伺いする方がいいかもしれませんが、まあ経企庁としてお考えでありましょうから、原油の輸入量が現在のベースでずっと進んでまいりますとどれぐらいを想定をしておられるのか、それからまた、したがいまして、価格をどれぐらいに、この場合二十ドルに見るのか二十五ドルに見るのか、あるいはOPECの関係者が言っておりますように三十ドル時代というふうなことになるのかわかりませんけれども、一応仮に幾らと想定した場合にどの程度の外貨を必要とするかということ等については、何か全くラフな試算でもお持ちではないのでしょうか。
  80. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) 総合エネルギー調査会から出されました報告がございますが、これは昭和六十年度の石油輸入量を、六%強という成長のもとで四・三二億キロリットルと想定しております。  ただし、この場合の原油価格がどの程度であるかということはその中には含まれておりませんので、全体として輸入総額として幾らになるかという推定はございません。
  81. 井上計

    井上計君 私、実は、もう昨年の春ごろからいろいろな資料等をつくりまして、私なりの資料であります、これは誤っておるかしれませんが、いまおっしゃった四・三二億キロリットル、これは発表された数字であります。それで、五十三年度今年度から年率一〇%程度上昇するといたしますと、昭和六十年には、これに必要な、現在のべースで計算をしてありますけれども、原油輸入に必要な外貨が八百七億ドル必要だと、こういう計算が出てくるんですね。これはもう全くラフな計算でありますけれども。そこで、私大変危機感を持っておりますのは、五十二年度の通関実績からまいりますと、総輸入額の七百十七億ドルのうち石油の輸入額が三七・四七%ですね。この計算でまいりますと、実は昭和六十年度原油輸入だけに八百七億ドル必要とする。大変なことになる。これは年率一〇%の計算でありますけれども、大変なことになる。昨年来私はこういう大変危機感を持っておりますが、その場合もう貿易収支のバランスなんというのは全く崩れて大変な赤字に転落をするということになりますと、物価への影響といいますか、もう大変なインフレ、混乱、円レートがどうなるか、これらの、もうこれは全く予測しがたいことでありますけれども、そういうことが起きても不思議はない、こういうふうな見通しに立たざるを得ないというふうに思うのでありますが、数字のこと等は別にいたしまして、長官はどういうふうにお考えでありましょうか。
  82. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いま御指摘のような石油事情というものはわれわれも非常に心配をしているところでございますが、まず第一義的にはやはり消費国がもっとより強い団結をして、そして石油取得に関してのあらゆる連合動作と申しましょうか、そうしたことをそれぞれの国の防衛ということに関連し、また世界経済全体の破滅的な状態を守るという意味できわめて重要な連合を組む必要があると私は思います。  これはやや余分でございますが、先般来アメリカあるいはECの代表が来日しまして、私はそのときまだこのOPEC値上げの具体的な数値は全然出ていない事態でございましたが、これからの一番重要なことは個々の国の収支がどうであるとか何とかいうこと以上に、この石油価格対策というものをどうするか、これこそ全世界消費国がいままで以上の強い連携の中でこれに対応する政策を決めるべきではないか、このような提案をいたしておるわけでございまして、先方もそうしたことの重要性は十分認識しているということでございます。特に、そうしたことのためにも、大平総理の訪米とか、あるいはサミットとか、こうした場において私はより世界的な問題として石油価格問題、数量の方はいずれにいたしましても節約も可能であるし、あるいは他のエネルギー源への切りかえというものももちろんどんどんと進めておるところでございますから、数量の方はともかくといたしまして価格だけはこれは世界共通の目的としての安定確保ということに努力をすべきであると考え、またわれわれはそうした方向で努力を惜しまないつもりでおります。
  83. 井上計

    井上計君 国際的な価格防衛策等につきましては十分お考えいただいているようでありますし、ぜひまたそれらのものは強力にお進めいただかなくてはいけないというふうに思います。  そこで、いまお答えの中にありました代替エネルギーの問題でありますけれども、それからもう一つ消費の問題であります。通産省では、あるいは総理府では、先般来五%の節約の徹底というふうなことをかなり打ち出しておられますけれども国民の間にまだ実はエネルギーに対する危機感が大変薄い。それからもう一つ率直に申し上げまして、通産省の発表は、国民が本当だというふうに受け取らないというふうな、これはオイルショックのときの動きの先ほども他の委員からもいろいろお話がありましたが教訓が、逆に、オーバーな発表だ、オーバーな指導だというふうなふうに、何かそんなふうな面があるんですね。その点では経企庁の発表あるいは経企庁の指導というのは比較的国民が素直に受け取っているのではなかろうかと、こういう点がありますので、経企庁としてさらにそれらの節約等につきましては十分周知徹底ということについてもお考えいただく必要があるのではなかろうか、こう思います。それから同時に、やはりいつまでも石油オンリーというふうなわが国の状態を少しでも改善をしていく。したがって、かわりエネルギー資源ということになりますけれども、先ほど市川委員からも火力発電所の汚職の問題等についてのいろいろ御発言がありました。汚職は絶対にあってはなりません。しかし、だからといってそれに恐れてそれがあったから、いわば必要な計画をちゅうちょするとかあるいは猶予するとかということがあったのではますます大変なことになるわけでありますから、そういう面についても強力にお進めをいただく。特に、原子力発電等につきまして、まだ国民が一部のいわば誤った指導といいますか、誤った考え方によっての反対が非常に強いんですね。だから、そういうようなことについても十分ひとつ周知徹底をしていただいて、国民が将来にエネルギー危機に向けてどう対応していくかということを国民の間に理解認識が高まるようなそのようなことをお考えをいただきたい、これは要望しておきます。  それからもう一つは、現在、古い家具、古いとは言えませんけれども、まだ使えるような家具でも、みんなどんどん捨てておる。持って行き場がない。聞きますと、おふろ屋さんあたりでも、前は喜んで持っていった、その前は幾らか金も出して古材等を持っていった、現在ではお金を払っておふろ屋さんまで持っていって実はいやがられてやっと引き取ってもらう、こういうふうな状態が続いております。その意味では大変むだなエネルギーの消耗あるいはエネルギー源の消耗というふうなことがずいぶんあると思うのですが、そういうふうな民間にありますところの廃物等からエネルギーを活用するということもこの際もう一度見直しをするというふうな指導も必要ではなかろうか、このように考えております。  時間がありませんので、その他お尋ねをしたいこと、あるいは要望もたくさんございますけれども、要は国民に真実を知ってもらう。オイルショックのときのようなあのようなパニックが来ることを恐れて、真実を知らさない、あるいは何か楽観的な指導をしておるということは、逆にそのときになって大きな混乱が起きる、このような点を懸念いたしますので、以上要望いたしまして質問を終わりますが、御所見がありますれば承りたいと思います。
  84. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいまの委員からの御要望につきましては、まことにわれわれ意を強くするところでありまして、そうした御理解を幅広くいただきまして目的を達成する努力をいたしたいと思います。
  85. 井上計

    井上計君 終わります。
  86. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 以上をもちまして経済企画庁所管に関する質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      —————・—————    午後一時十七分開会
  87. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) ただいまから予算委員会第二分科会を再開いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  本日、矢追秀彦君、市川正一君及び井上計君が分科担当委員を辞任され、その補欠として塩出啓典君、内藤功君及び田渕哲也君が分科担当委員に選任されました。     —————————————
  88. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 昭和五十四年度総予算中、外務省所管を議題といたします。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  89. 八木一郎

    ○八木一郎君 私は、シルクロードに関連をして、日中条約締結後の文化交流の動きに触れて、外務省の御説明を受けたいと思うのでありますが、動機は、今月の二十日からいま開催されておるんですが、東京の博物館で、政府の外務省、文化庁後援のもとで、中華人民共和国シルクロード文物展が開かれています。そこで、その目的、その由来、その状況、また、その背景、そして日中文化交流を中心にした最近の動き等に関しまして、まず御説明を受けたいと思います。
  90. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいま御発言をされましたシルクロード文物展は、御発言のとおり、東京国立博物館で開催中でございまして、中国の古い文物を展示をしております。これは日中文化交流協会と読売新聞の共催でありまして、日中両国の相互理解促進に資するために、中国古代の貴重な文化遺産を展示、紹介するものでございます。したがいまして外務省としても文化交流の意義を深く認め、この文物の貴重なる価値を認識して後援をしているわけでございます。  詳細については、事務当局からお答えいたします。
  91. 平岡千之

    説明員(平岡千之君) 大臣の御説明を補足さしていただきます。  この展示会は、御承知のとおり、東京ではことしの三月二十日から五月十三日まで東京国立博物館、その後五月十九日から七月八日まで大阪市立美術館でそれぞれ開催されることになっております。  この目的は、大臣もお話しになりましたように、日中間の文化交流の一つの最も重要な計画の一つとして行われているわけでございまして、このシルクロード展を通じまして、日本の文化のルートの一つと申しますべきシルクロードに関しまして中国の三つの重要な博物館からの作品百五十六点を展示し、これによりまして深い文化の源泉にさかのぼっての日中間の文化交流を顧みる機会とすることでございます。三つの重要な博物館と申しますのは西安の陳西省博物館、敦煙に近い甘粛省博物館、さらに西域ウルムチの新疆ウイグル自治区博物館、この三つから持ってくるわけでございます。  この話は、昨年、東京において行われました中国関係の美術展におきまして日本側から中国側にお願いして始まった件でございまして、特に読売新聞と大阪商工会議所の会頭、このお二人の方からのお話を日中文化交流協会がまとめまして中国側に申し入れ、今回、実現の運びに至ったわけでございます。もちろん、この背景といたしましては、昨年八月の日中友好条約締結も一つの大きな起動力になったと思います。御承知のとおり、一九七二年の日中国交正常化以来、七三年から毎年のようにかなり重要な中国関係の展示会が本邦において開かれておるわけでございますが、このたびのシルクロード文物展は、その規模におきましても、内容におきましてもずば抜けて重要なものでございまして、外務省、文部省はこの七三年以来の各展示、毎年一回ございましたこの種の展示に対して後援名義を与えております。このたびもこの後援名義を与えて賛同の意を表しておるわけでございます。主催は、東京におきましては東京国立博物館、日中文化交流協会、読売新聞、大阪におきましては市立美術館、文化交流協会、大阪商工会議所、読売新聞でございます。  いままでのところ、最初の七日間で、すでに四万人近く入っているという、この種の美術展としては非常に大きな成功をおさめていることが明らかでございまして、今後ますます大阪に至るまで大きな成功が期待されるわけでございます。  以上をもちまして、大体、本件の目的、由来、状況、背景等を御説明したわけでございます。  なお、最後に、八木先生の御質問でございます最近の日中関係の交流につきまして申しますと、本件は非常に美術の面、展示会として最も重要でございます。他方におきまして、同じ文化芸術関係で申しますれば、演劇面におきまして歌舞伎の訪中がございました。御承知のとおり、ことしの一月に東京から北京、上海等数都市に歌舞伎が参りまして、大変な成功をおさめたということは新聞等にも報道されているとおりでございまして、なお、いまそれに対する中国側の措置といたしまして、京劇をわが国に送る計画があるわけでございまして、細目はなお詰めている途中でございますが、九月、日本に参りまして、東京、大阪等で古典的な京劇を上演する予定となっております。  その他、広い文化交流といたしましては、留学生の大量の受け入れ等のあることはこれまた新聞で報道されているところでございます。  以上をもちまして御説明を終わります。
  92. 八木一郎

    ○八木一郎君 私がこの問題に非常な関心を持っておるのは、実は、この数年来、日中関係の文化交流の動きの中に——かつて私自身が蚕糸業を通じて、絹を通じて、上海を拠点とする国際競争場裏において、不幸な状態がだんだん迫ってくる時点において、その商売の競争が闘争になり戦争になっていくということを防止せよということで、農林省、政府から特に専門家だという派遣を受けて、十年前後、中国の蚕糸業をめぐる情勢の中に明け暮れしたことがございます。そのためでもありますが、二度と再びあのような不幸な事態にさせないためには、こういう歴史と伝統のあるルートを生かしていくようにと思っております。そういう注目をして見てきたせいか、最近のテレビや、日中条約締結後は、特に新聞の記事その他、シルクロードに関連したものが数多く目につくのであります。  文部省、その他、政府関係におかれても、こういう目的を意識してではないことはもちろんですが、学術調査あるいは東西文化交流の歴史学者その他の方々が数多く、派遣せられておるやに見受けるのであります。またNHKでは、さきには平山芸大教授の先生が「私のシルクロード」と題して三日間にわたって茶の間のテレビを通じて、大変興味深く、親しみ深く中国のいまお話しのありました西北地方の実態に触れた放映を見ることができましたが、承ると、NHKはさらに過去二カ年の歳月をかけて制作してきたマルコ・ポー口とシルクロードの関係のものを連続放映するという予告をしております。  私がこういう話をしますと、ある人がこれは中国のピンポン外交というようなもので、これはシルク外交じゃないかと言う人さえあるのでありますが、結構なことだと。いずれにしても平和的な民族的な、古い、そして新しいこの情勢の中に、文化的な国際交流を深めていくという好影響のある問題はその動きに乗って大いに歓迎をして、いま読売は意図しておられるようでありますが、けさも新聞を見ると、大型の取材団が二十三日にわたって調べてきて、これを連続新聞やあるいはテレビで放映していこう、こういう企画があるようでございます。私は、博物館でこの文物展を主催された場合のように、交流協会と適当な団体の中で、シルクに関係して、蚕糸、絹に関する団体なども、いたずらに商売がたきで輸入規制のことばかりにこだわらないで、もう少し広く目をあけて、こういう問題には協力をしていくおおらかな姿勢が必要じゃないか。きょうは農林省からも来てもらいましたが、そういう姿勢を農林当局にも要請いたしたいところであります。  いずれにしても、私がこのような時期にこの問題を取り上げましたのは、蚕糸、絹は紀元前三百年前に、博物館で見ればわかりますが、このような絹とお茶と陶器というのが東西文化の橋渡しになっておったことは確かであります。それから流れ流れてこちらの方に来ておるというふうにうかがわれるのでありますが、先ほど私が申しましたように、戦前、不幸な事態が勃発しそうだという情勢では遅かったんです。その当時は、中国の図書館へ入って文献を調べますと、あらゆるところに抗日運動の材料にされておる蚕糸の状態が書き出されてある。日本側では、眠れる獅子、競争相手だといったような言葉で学校の教科書にまで載せられておるというようなことがだんだん集大成されていっておるというので、専門的に国際分業として東洋、アジアの特産品を分け合って発展さしていく方途がありそうなものだということで参った経験を通じて見ましても、わざわざ私のところへいまそういうことを言ってくださる人があるところを見ますと、ああいうことにならないようにという配慮から、いろいろな問題が考えられます。  たとえばオランダにあります国際裁判所から、全世界から特産品を集めてこの国際裁判所をつくったときに、日本はシルクだ、絹だというので絹製品を持っていったが、これももう半世紀過ぎて傷んできたから何か配慮してもらう道はないだろうかという声が私のところへ来ておりますし、また、そんな話をしておりますと、国産品で築き上げたこの国会議事堂の御休所、あの広間に絹のじゅうたんが敷かれておるのであります。なるほど明治、大正の貿易の大宗、輸出の大宗だといったシルクの全盛時代の面影が文化の流れの中に遺産として残っておるということを思いますと、私は、後ほど農林省に対して提言かたがた御質問申し上げたいと思いますが、外務省もひとつ、話は違いますけれども、食糧を農林省に言うて特段の配慮を外務大臣もなすってベトナムへ手配をされたように、農林省所管で生糸の滞貨があるわけです、その滞貨生糸を使って国際交流の親善に寄与するような御配慮をしてもらってもおかしくはないじゃないかとさえ思うわけであります。  こういうようなことを考えますと、学界で広く専門の歴史家、考古学者、その他が派遣されて現地へ行っておられる状況について、わかりますれば、文部省の担当官から御説明を求めたい、かように思います。
  93. 植木浩

    説明員(植木浩君) お答え申し上げます。  シルクロードの研究につきまして、先生御案内のとおり、このシルクロードがわが国の文化に非常に深い歴史的な意味を持っておるということで、学術研究という点につきましても大変関心のある研究対象にもなっておるわけでございます。東洋史学あるいは東洋考古学、文化人類学、さらには美術史、いろいろな方々が研究をしておられまして、これに関連して海外調査等にも種々出かけておる、こういう状況になっております。  その全貌を私どもとしても必ずしも把握をしておるわけではございませんが、主なものについて申し上げてみます。  国立大学の研究機関がいろいろございますけれども、東大に東洋文化研究所というのがございます。それからさらに東大の文学部に文化交流研究施設というものが付属をされております。たとえばこの東洋文化研究所におきましては、昭和三十四年度から本年度にかけてすでに過去五回にわたりまして、科学研究費補助金という文部省の方からの補助金によりまして、東亜及び日本古代文明の源流としての古代イラン文明の研究ということで現地での発掘調査などを行っておるという点で、これもシルクロードに関連をいたしておるわけでございます。それから、そのほか京都大学にも人文科学研究所というものがございまして、ここでもいろいろとシルクロードに関連したさまざまな研究を行っております。研究所のほかに、大学等のいろいろな研究者がおられるわけでございますが、ここでも中国あるいは中央アジア地方の考古学的な研究であるとか、さらに東西の交渉史の研究、こういったシルクロード関連の地域あるいは事項につきまして研究を行っておりまして、先ほど申し上げました科学研究費補助金によります海外学術調査のほかに、さらに個々の研究プロジェクトにつきましてもいろいろな助成をしておる、こういう状況でございます。  実際に海外に調査に行った例というお話でございますが、たとえば昭和五十年度でございますと、大阪に国立民族学博物館という、これは文部省関係の国立大学共同の研究所でございますが、ここの民族音楽を専門にしております教授の方がイランであるとかトルコの民族音楽の学術調査に出かけております。さらに東京外国語大学の教授の方がモンゴル学術調査という観点で、やや広い意味でシルクロードと言えるかもわかりませんが、こういう学術調査にも出かけております。同様に、昭和五十一年度あるいは昭和五十二年度、イラン、イラク、中央アジア、アフガニスタン、パキスタン、インド、さらに西アジア、そういったところにいろいろと海外学術調査に出かけております。現年度の昭和五十二年度におきましても、イラン、中央アジア、中央エジプト、イラク、そういったところに海外学術調査に文部省の科学研究費補助金を得て出かけておると、主な例を申し上げますと、こういった状況になっております。
  94. 八木一郎

    ○八木一郎君 以上のような文化運動の中にシルクも包まれておるんだという意味で、私は、農林省に対しても若干の意見を提言しながら伺ってみたいと思うことがあるわけです。  それは蚕糸綿業の伸展に資する方策はいろいろあります。ありますが、この際、ずばり具体的に申しますならば、政府、特に蚕糸事業団の助成事業の中で、消費拡大、需要増進のために若干の予算を計上してやっていらっしゃる、このやり方を考え直してみないか。夢よもう一度ではないけれども世界の蚕糸業、世界の絹の大きな市場の六割も占めておる日本だという意味で、日本の六割の市場の中で自給自足させようということばかりに夢中にならずに、もう少し広めて、機会を得て、これだけ歴史のある世界的な民族的な産業だから消費拡大運動を広めてみたらどうだと、そういう方へ、同じ消費拡大を使うならば、それも必要ではないか。現にそういう状態の中であればこそ宣伝事業の増進、実績が上がってくる。シルクロード、シルクロードという声があちこちにあるだけに、私のところへ、さっき紹介したように、国際裁判所においてどうだとか、国会議事堂の中にどうだとか、あるいはそのほかいろいろ来ています。一、二拾えば、たくさんありますけれども、たとえば有楽町にある蚕糸ビル、あれも政府の滞貨生糸の、つまりいまで言うと事業団の差金でできた金を対象にしてつくられたとか、あるいは横浜のシルクセンターも何かのちなみがあるとか、いろんな話が入ってくるところを見ますと、もう少し目をあけてやったらいかがですかということを一口申し上げたいわけであります。  わが国は、改めて言うまでもありませんが、資源のない、市場のほとんどを海外に持たねばならないという、こういう国にとっては、いまも昔も貿易立国に力をいたしていくことは当然なんで、生きていく上で当然だと思いますが、戦前の蚕糸絹業はなるほど明治の文明開化の先駆けになって素早く文明開化の取り入れを蚕糸を通じてやってきた。そうしてイタリーやフランスあるいはイラン、イラク、あの方面にあった蚕糸を席巻して中国を経て日本に来た、こういう歴史があるんですから、そういう国運の消長にも大きな影響を持っていた当時の夢が全部なくなってしまうはずがない。これだけ文明開化の進んできた時代になっても、なお絹のよさというものがあればこそこういうふうに残っておるわけだ。  私が中国に行ったのは二、三十年前の話ですけれども日本の国では、娘がお嫁に行くときは、おじいさんの植えた屋敷のキリの木を切ってたんすをつくり、おかあさんのつくった蚕で着物をつくり、その着物を持ってお嫁に行くという風習があるが、中国ではどうですかと言ったら、よく似たような話がある、こう言っておるほどアジアはアジアで、東洋は東洋で儒教やその他いろいろな関係でしょうが、似たところがあるわけですね。似通ったところに心を寄せ合っていけるような一つの運動として、そういう立場から蚕糸の振興についても考えてみたらどうだと、農林省さんへきょうはすぐ返事を求めようとしませんけれども、お帰りになりましたならば、その点をよくよくひとつ御協議くださいまして、戦後の蚕糸業の復興の跡を振り返ってみてもそう思うんです。戦後、マッカーサー元帥が厚木の飛行場へおり立つと占領政策の第一声に何と言ったか、東洋のスイスだと。スイスには時計があるが、日本には蚕糸工業がある、これを中心に復興をしていく政策をやりたい、こういうことを言われたほどでありまして、もう宣伝費を使わなくても日本の顔になっておるわけです。  そういう意味で、自来三十年の歩みを振り返りまして、今日的な課題について何が必要であるかと言えば、近く決定します政策価格で決めることももとより大切ですけれども、もう一歩需要の増進、消費拡大の販路を世界に求める、少なくとも東洋に求めていく、お互いに求めながら話し合いの中に競争をしていけるような、こういうムードづくりに当然配慮すべきではないかということで、これにまつわる諸問題についてはどうお考えになっているか、それを伺って私の質問は終わります。
  95. 小島和義

    説明員(小島和義君) まず、中国との絹を通ずる最近の交渉でございますが、決して相争うということではございませんで、過去三年間、政府間の取り決めに従いまして計画的に買い付けをするということで仲よく運用をいたしておるわけでございます。  それから、お尋ねの絹の需要拡大の問題でございますが、今後の日本蚕糸業の発展のためには、生産性の向上と並んで需要の維持、拡大ということは非常に大事なことであるということは私どもも重々承知をいたしております。事業団の助成事業におきましても、これは二、三年前に蚕糸業振興審議会の需要増進部会というところの御報告をもとにいたしまして若干の助成事業をいたしておりますが、従来の内容といたしましては、とにかく日本の絹消費の九割が御婦人の着物である、着物に対するイメージアップ、知識の向上ということで、学生や一般婦人を対象といたしました着物の着つけ教室でありますとか、あるいは絹織物の展示事業といったことを中心といたしまして、金を、若干ではございますが、応援をいたしておるわけでございます。  お話しございましたように、そういう即物的な需要増進というだけではなくて、絹の持っております文化史的な意義ないしは文化の交流の中において占めておった意義というものを強調することが絹自体のイメージアップにつながり、ひいては需要増進にもつながっていくんではないか、こういう御趣旨であろうかと思いますが、私どもも従来そういうことを中では議論したこともございますが、具体的な手段としてどういう手だてがあるのかということになりますと、余り思い至らないで今日に至っているわけでございます。シルクロード問題というのも、そういう意味におきましては絹の全体的なイメージアップにつながる手法であると思いますので、十分検討をさしていただきまして、将来の絹の需要増進事業の中においても活用できるものは活用していく、こういう方針で対処いたしたいと思います。
  96. 八木一郎

    ○八木一郎君 いままでのやりとりの中で大臣に感想を伺いたいわけですけれども、さっき言ったように、ベトナムのお米のように、聞けば滞貨生糸とは言わぬでも手持ち生糸が相当ある、これを活用してみないかと、農林省としては外務省から働きかけてくれば動き出そうという空気のようですから、大臣のこの問題について——もっと具体的に言えば、たとえば有楽町の蚕糸センターの五十年の歴史のあるビルを建てかえるわけで、私は、その一フロアを開放して、シルクロード研究学者の皆さんが集めてきたたくさんあるものを陳列する場所をひとつ提供するだけでもいいんじゃないか。そういうことがムードアップになる、イメージアップになる。そういう方面や、議事堂においてもそうなんですね、先人がそう言って御休所にこうした、これは大変な苦労をしたらしいんです。絹はたくさんある、政府からくれるというが、これを織りなす技術が伴わない。海外のドイツかどっかから持ってきて、機械だけは輸入して、それで織りなして国産記念堂だからというのでつくっておる。こういうのも新しい生糸と取りかえればいい。とにかく外務省から、広い視野からひとつ協力する気持ちはあるか、どうだやらぬかと言って働きかけてくれるのを持っておるように見えるので、率直なお気持ちを大臣から伺うことができれば私の要望はかなえられるわけですが、ちょっとお伺いしてみたいと思います。
  97. 園田直

    国務大臣(園田直君) 大変貴重なありがたい御意見をいただきまして御礼を申し上げます。早速、農林省とも相談をして、御発言の趣旨に基づいて検討したいと考えます。
  98. 松前達郎

    松前達郎君 最近は厳しい時期を迎えていると思いますが、そういう感じを私自身も持っておるわけなんですが、政府としても、その問題に対して対応に全力を挙げているんだと私は解釈をいたしておりますし、大変御苦労さんだと思いますが、その厳しい時期というのは、こういう問題だと思うんです。ガット東京ラウンドの問題、さらに東京サミットですね、こういったような問題を考えますと、どうも人に言わせると黒船が来たんじゃないかというふうな表現をする人さえいるようなそういう厳しい時期じゃないかと私は思っておるんですが、この問題を冷静に見てみますと、非常に重大な基本的な問題が含まれているんだと、こういうふうに考えておるわけです。  そこで、ガット東京ラウンド、東京サミットに関連した問題として、特に政府調達の問題、これが一番大きな問題としてクローズアップされておると思いますが、これに関連して質問をさしていただきたいと思います。  最初に、ガット東京ラウンドにおいて、わが国が現在米国から政府調達品について非常に力強いといいますか、協力な圧力がかけられつつあるというのはもう周知の事実でございますが、この主な原因、さらにその主な理由。これはよく言われるものは日米の貿易の不均衡がその原因である、こういうふうに一口で言われておるわけなんですけれども、その直接的な原因はそうかもしれませんが、私は、ただ単にこれが日米の金額的な貿易不均衡問題として受け取りたくない、かように思っておるわけです。特に、その中で電電公社関係の問題ですね、情報通信分野、この分野における、特にシステムまで含めた部門における門戸開放という問題、これはどう考えましても、わが国の国益上の問題としてもきわめて重大な問題ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけです。  そこで、これは外務大臣にお伺いしたいんですが、一月に外務大臣がシュミット西ドイツ首相を訪問されたとき、西ドイツの首相からアメリカの圧力に屈するな、こういったような励ましがあったというふうな報道も聞いておりますが、これは事実でございましょうか。
  99. 園田直

    国務大臣(園田直君) 率直に申し上げますが、シュミットと会談した際に、いろんな経済問題の意見の交換をやったわけでありますが、そのときに核燃料についての問題が出たわけでありまして、その問題については安易な妥協はするな、日本が妥協されたらドイツの方も困る、こういうような好意的な助言というか発言があったことは事実でございます。
  100. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、経済全般にわたっての励ましというふうな意味ではないということでございますね。  それと同時に、また同じときだと思うんですが、日本の成長率がいま目標の七%に達していない、しかし、これは先進国の中でも群を抜いたものであるから批判する気にはなれないというふうな旨の発言があったというふうに報道されておりますが、これも事実ですか。
  101. 園田直

    国務大臣(園田直君) そのとおりでございます。
  102. 松前達郎

    松前達郎君 そういったようなことはやはりドイツも日本も全く経済的な面、たとえば輸出入の問題にしましても似通ったような問題を抱えているんじゃなかろうか、そういう意味でシュミット首相が激励されたんならこれは意味が大分違うんだと思うんですけれども、いま伺ったところによりますと、原子力の問題あるいはその他、外国の経済成長の問題ですから、これは余り触れたくないということだったというふうにおっしゃいましたけれども、それだったら別に問題ないと思うんですが。  そこで、特にわが国の、先ほどもお話が出ましたけれどもエネルギーとか資源とか、そういったようなものを考えてみますと、非常に乏しい。これはもう物理的条件といいますか、地理的条件から当然のことですが、しかも人口が多いわけです。そして面積も狭い、農業用の面積にしたって一六%ぐらいしかない、そういう国が今後いまのような繁栄を維持し、あるいはさらに繁栄をしよう、こういうのが政治の目標であろうと思います。そういうふうな目標に向かって進み、また生活レベルもダウンさせたくない、こういったような要望を満たすためには、外交としてやはりその基本に考えておかなきゃならない基本的な配慮というものがどうしても必要なんじゃないか、こういうふうに思うんですが、その点について、ちょっと漠然とはいたしておりますが、大臣お考えをお伺いしたいと思います。
  103. 園田直

    国務大臣(園田直君) 松前先生からドイツのシュミットの話が出ましたから、その際の会談の中に出たことを御報告申し上げたいと思いますが、シュミットが言った大筋は、いま松前先生がおっしゃいましたとおり、ドイツと日本は資源がない、資源を買ってこれに加工して商品として貿易で立っておる、したがって、その貿易で得る黒字というものは、これはそれがなければドイツも日本も立っていかぬのだ、ただ、それで得た黒字というものをどう世界経済のために使うかということについてお互いが知恵を出すべきだ、こういう趣旨の発言がありましたが、私もそれに似たような感じを持っております。
  104. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、その貿易の基本になってくるのがやはり産業の問題だと私は思うんです。油が出たらただそれを売ればいいわけじゃありませんし、その他外国に輸出するような資源というのはほとんどございませんから、当然、付加価値の高いものをつくり上げてそれを外国に出していく、そういう産業構造の問題、これがやはり重要な問題だと思うんですけれども、よく産業構造転換という言葉で言われておりますが、これについてはいかがお考えでしょうか。
  105. 園田直

    国務大臣(園田直君) エネルギー価格の高騰、中進国の進出等の世界経済構造変化に対して、わが国を含む先進諸国は産業構造転換及び産業の高度化、こういうものを通じて積極的に調整を図る必要があると考えております。この関連で、わが国産業構造の中で頭脳産業というものが今後一層産業の重要な地位を占めるものではなかろうか、きわめて簡単でありますが、かように考えております。
  106. 松前達郎

    松前達郎君 いま大臣のおっしゃった頭脳産業といいますか、付加価値の非常に高い製品を生み出すその基本になる頭脳による新しい技術の開発ですとか、そういう問題も含めておっしゃったのだと私は思うんですけれども一般的に言うとソフトと言っていいかもしれません、このソフトの生産というもの、これについては、今後われわれ資源がない国として生きていくべき一番基本問題だと私は思っておるわけなんです。  そういう面から考えてみますと、どうもいま現在の日本の状態では、中枢のすべての問題、たとえばエネルギーの問題ですとか、あるいは資源の問題ですとか、食糧ですとか、あるいは防衛ですとか、あるいは民間の航空、こういったような中枢の問題を見たときに、どうもエネルギーは輸入石油に頼らざるを得ない。また、今度はそれにかわるものと言われておる原子力はアメリカからのほとんど導入である、その原子力にしましても核燃料というのはアメリカの支配下に入っておるんじゃなかろうか。防衛一つ挙げても、また航空機その他については、陸上のものは別としましても、アメリカに依存しなければいけないし、民間航空もそのとおりである、こういうふうな状況なんで、アメリカ依存が非常に高いわけなんですね。しかも、その上、今後、情報通信関係、システムを含めた情報通信にしても、どうも政府調達の問題からアメリカに握られてしまうんじゃないかというふうな感じを私は持っておるわけなんですが、その点はいかがでしょう。
  107. 園田直

    国務大臣(園田直君) これは西独も日本も同じでありますが、貿易で働かなきゃならない日本でございますから、貿易の自由化、貿易のための関税障害、貿易障害、こういうものは取り除く方が貿易という点から考えればきわめてやるべきことだと考えております。しかしながら、また、一面から言うと、そのためにすべてを開放して、日本の特殊なもの、あるいは将来日本産業中心となり、現在中心であるべきもののポイントと申しますか、大事なものを壊されてはかなわぬ。もっと具体的に言うと、これが電電公社の問題でいま一番私が悩んでいるのはこれでございます。  一方には、関税非関税障害というものを取り除くことが自由化という本来の目的からは大事である。しかしながら、一面から言うと、金額問題ではなくて、非常に日本が苦労して育ててきた通信産業というか電気技術というか、そういうものの中枢神経というものを抜き去られては困る。この両面から非常にいま苦労していることでございます。
  108. 松前達郎

    松前達郎君 そういうふうな御理解であれば、私も何も申し上げることはないんですけれども、どうも今回の貿易のインバランスを解消する対策として、アメリカ側から言ってきている背景をずうっと探ってみますと、どうもそれだけの金の問題じゃなさそうだ、まあ金の問題ももちろんマクロの面ではありますけれども、ミクロに考えますと、その裏に何かあるんじゃないかという気もしないではない。  特に、最近は、情報産業というのは、どっちかといいますと国の中枢といいますか、これは軍事にしろ、あるいはその他も含めて、非常に重要な部分になってきつつあるわけなんで、そういう面から見て、対日貿易不均衡を解消する対策政府調達物品にアメリカが焦点を当ててきている理由は私はただ単に簡単な理由じゃなさそうな気がするんですが、その点いかがお考えでしょうか。
  109. 園田直

    国務大臣(園田直君) 概略はすでによく御承知でありますから、簡単に申し上げますと、日米の貿易の不均衡ということを背景にして、特にアメリカ議会内で保護貿易というのが台頭してきて、そしていろいろ問題が折衝されて最後に残ったものが、ほかにいろいろありますけれども、大きな問題はこの問題でございます。  そこで、米国の方の表向きの言い分は、自分の方も政府調達の門戸開放をする、百二十億ぐらい開放する。したがって、これに応じて日本も当然日本経済の力に応じて門戸開放をすべきだ、こういう言い分で、そこでいま表面上の問題は、金額の問題で押したり引いたりやっているわけでありますが、結局、金額の問題を押されてきますと、どうしても技術面であるとか、重要な日本の通信産業、電気技術の組織の中に食い入られるおそれがある、こういったものがいま一番大事なむずかしい問題であると考えて、最後の努力をやっているところでございます。
  110. 松前達郎

    松前達郎君 金の面だけでいくと、どうしても残されたものということで、その対象になってくるというのは、これは表面的にはそういうふうになってくるわけですが、さっきからの大臣のお考えの中にも盛られているように、やはり基本的なわが国の頭脳産業というもの、将来それで生きていかなきゃならないその一番重要なものということをやはりそこの裏に考えておかなきゃいけないんじゃないか、かように私は思うんで、その点はそういう考え方のもとにできるだけがんばっていただきたい、かように思うわけなんです。  政府調達品の輸入可能額の拡大のため、アメリカ側からたしか七十五億ドルですか、七十五億ドルの要求、これを政府調達として要求があったというふうに聞いておるんですが、それは具体的にどういうものというふうに内容を指定されて要求があったのでしょうか。
  111. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまちょうど折衝中でございますから詳しくは申し上げられませんけれども、概略を申し上げますると、自分の方では百二十億ぐらい開放する、したがって、それから大体計算すると日本も七十五億くらいは開放できないはずはないと。したがって、その対象は政府中央省庁及び三公社並びにこれを含めて百二十の場所を指定してきておりますが、これは何か刊行物の政府関係の外郭団体まで含めた百二十の名前を挙げたような、ざっくばらんに言えば、ずさんな百二十の品目でありまして、やはり米国がねらうと言ったらおかしゅうございますけれども、見詰めておるのは中央省庁及び電電公社を初めとする三公社、これが重点じゃないかと私は判断をして、これに対応してやっておるわけでございます。
  112. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、その百二十億ドルですか、アメリカが開放しようという、自分の方で開放するから日本も開放しろと、そういうふうな論拠だと思うんですが、その中で七十五億というものに対する数字の根拠というのは余りはっきりした根拠がないと、ただ全体の数字から言ってあと割り振っただけだと、こういうふうに考えていいんだと私は思いますが、そのとおりでしょうか。
  113. 園田直

    国務大臣(園田直君) そのとおりだと私申し上げる意見もありませんけれども、少なくともアメリカの百二十億という数字がずさんであるということを私の方はまず主張しているわけであります。
  114. 松前達郎

    松前達郎君 このデータですね、アメリカがその百二十億という数字を出すときのデータというのは、彼ら、アメリカの方で自分でそのデータを集めて判断したのか、それとも日本側からデータを提供したのか、恐らくそういうことはないと思いますが、その点いかがですか。
  115. 園田直

    国務大臣(園田直君) アメリカ側から出してきた数字でございます。
  116. 松前達郎

    松前達郎君 どうもこれははっきりした情報じゃないんですけれど、こういういわゆる貿易の問題になってきますと、必ず商事会社が絡んできておるんですね。商事会社の場合は、出入りがあれば、取り扱い数量、取り扱い額に応じて手数料が入るわけなんで、一説によると、どうもそのデータの基本は商事会社が提供しているんだと、積極的に。そういう話があるんですが、そういう情報も私聞いたことあるんですが、確実ではありませんけども、その点何かキャッチされておりますか。
  117. 園田直

    国務大臣(園田直君) これに対して私が返答するわけにはまいりませんけれども、御承知のテレビのダンピング問題にしても、いろんな問題にしても、米国政府が出す数字というものは、往々にして、そういう業界から出された数字をそのまま出すという傾向が過去にはなきにしてもあらずでございます。
  118. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、今度はアメリカとECの問題なんですが、これもまたいろいろと問題があって、EC・アメリカ間のある程度の合意がたしか三月ごろできたんじゃないかと、それでアメリカはECを自分たちの方に引きずり込むのに成功したというふうなことも言われておるわけですが、現在、アメリカとECの貿易に関して、EC側の態度というのは一口で言うとどういうことになりますか。
  119. 園田直

    国務大臣(園田直君) ECの副委員長がちょうどただいま来ておりますが、日本に対するECの言い分は、一言にして言えば、日本貿易の不均衡あるいはMTNの問題でいろいろやる場合でも、アメリカのことばっかり考えてECのことは考えていないじゃないか、片手落ちである、もっとアメリカと同等にわれわれと話そうというのが一番眼目の言い分でありますけれども、御承知のとおりに、日本と米国、ECと米国の関係は企業、産業の関係が非常に違うわけでありまして、ECと米国との関係は日本よりも話が通じやすい。たとえば、いまの電機部品その他につきましても、すでにECの中の企業の中にアメリカの企業が入っておりまして、随契等で品物を納めておる、あるいは諸種の会社には米国の投資もあれば、あるいはECからの投資もあるという関係で、日本とは大分違っておる関係でございます。
  120. 松前達郎

    松前達郎君 情報通信関係で、これは本当は通産省の方がよく御存じかもしれませんが、情報通信関係で機材調達に関し、現在、公開入札をやっている国は先進国の中でどのぐらいありますか、現在でございます。
  121. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) 現在、在外公館を通じて調査いたしましたところでは、フランス、スイスは指名入札が大部分、オランダでは指名入札が原則になっております。また、スウェーデンでは公開入札を原則としておりまして、米及びカナダにおきましては、電気通信事業は民間事業でありますので、特にこういった指名化とか公開化ということはございません。実態におきましては、それぞれの各系列会社から随意契約により購入しておるものが大部分でございますけれども、系列会社以外からも指名入札によって入札しているものがございます。そのほかドイツ、イギリスについては目下調査中でございますが、余りまだ情報が入っていない段階でございます。
  122. 松前達郎

    松前達郎君 大体、いまの御答弁でわかりましたけれども、英国の場合、現在は恐らくこれは公開入札じゃないんだと思うのですが、いかがでしょう。
  123. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) イギリスについては、まだ確たる情報が入っていない段階でございます。ただ、実態におきまして、われわれが聞いておるところでは、随意契約によって購入している部分が多かろう、公開されている部分が少ないのではないかということでございます。
  124. 松前達郎

    松前達郎君 イギリスについては、最初一時、公開入札にしたことがあるということを聞いているんです。公開入札をしたけれども、情報通信関係の内容から言って、これがどうも英国の情報伝達メカニズムの中に非常に大きな問題を与えた、それでまた再びその公開をやめたというふうな、こういうことを伺っておるのですけれども、そういったようなことから見ても、どうも情報関係の通信に関する機材の問題というのは非常に重要な意味を持っているのだと、こういうことになるのじゃないか。何もイギリスの例だけじゃなくて、日本においては十分そういう意味があるということはもう御承知のとおりなんでございます。  それでは、ジョーンズ・レポートというのがあるのですが、このジョーンズ・レポートについては内容について御承知だと思います。これは米下院歳入委員会貿易問題小委員会、この中に設置された特別調査委員会、委員長がジョーンズという方なんですが、このレポートについて私自身もこれずっと読んでみましたけれども、非常に表面的なことしか見ていない。アメリカから来て調査したのですから、当然、奥まで深く入って調査されるそういう機会がなかったのかもしれませんけれども、このレポートについての御感想といいますか、これについてちょっとお願いいたします。
  125. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいまの御報告は、中には二、三点は日本の状態を知り得たところもありますけれども、事実誤認というか誤解というか、人の話を聞いているとか、あるいは表面だけ見て帰ったという間違いが多々あるような気がいたします。わが外務省としては、こういう点については一々間違っている点を指摘をして向こうの理解を深め、過ちを訂正するよう、それぞれ処置をしているところでございます。
  126. 松前達郎

    松前達郎君 これはアメリカ側として調査したものですから、こちらからその結果に対して何だかんだと言ってもなかなか通用しない問題かもしれませんけれども、どうもその中で、ジョーンズ・レポートそのものの問題、そのレポート自身じゃなくて、調査に対する日本側の対応が余り芳しくなかったというふうなことまでちょこちょこ出てきているようなので、こういったような問題が今後いままで起こっている問題の基本になるのじゃないか。ですから、これらの問題についてもどうか今後は少し神経をとがらしてやっていただきたい。この辺でちょっと間違いますと、後で取り消すなり、もみ消すのに大変時間がかかるしエネルギーがかかる、かように思うわけなんで、非常に重要だったと言わざるを得ないのです。  もうこれは過去のことですから、いまさらとやかく申し上げることはないのですが、この中で貿易障害として特に強く撤廃を求めているものは、円高による効果に対する規制ですとか、輸入カルテルですとか、また、ちょっとこれも神経をとがらさざるを得ないのが外国銀行に対する規制というのがあるのですね、これもまた非常に大きな問題になるのじゃないかと思います。さらに自動車輸入行政措置の問題、それから政府の調達政策の問題、あるいは農産物の輸入制限の問題、こういった問題が含まれているのがこのレポートなんですが、しかも電電公社の調達に関して言いますと、研究開発段階から公開されるならアメリカも食い込めるのだ、こういうことを報告しているのですね。それからさらに情報伝達システムのメーンライン、この品質に直接影響を与えないもの、たとえばコンピューターや研究設備、そういうものはいいだろう、そういうことは直ちに公開できるのだ、こういうふうなことも言っておるので、その辺が取り上げられて今度の問題に発展したのかどうかそれはわかりませんけれども、しかし、こういった面からいくと、少しは望みがあると言ってはおかしいのですが、たとえば防波堤をつくるなら、どの辺でつくったらいいかという一つの大きな示唆を与えているのじゃないか、こういうふうに私は思うんです。  しかし、いずれにしても、たとえばオレンジですとか自動車の輸入というのは、その場の問題であって、何年もたてばその自動車はなくなるし、オレンジは食べてしまえばなくなってしまう。後からもとに戻すというか対処ができる問題なんですが、先ほどから申し上げたような、いわゆる頭脳を売るというようなことになるとすれば、これはちょっとそう簡単にはいかない重要な問題だと、こういうふうになるので、恐らくそのレポートの中でもそういうことを考えながらつくられているのじゃないか、かように感じるわけなんです。  そこでまた、これも一つのうわさというか情報なんですが、この問題の裏に、最近、コンピューター関係が非常に世界的にシェアといいますか、大きな問題になってきつつあるのですが、一説によると、IBMが裏からしり押ししているのじゃないか、IBMの国際戦略じゃないかと。あるいはアメリカの電話会社であるATT、これもこの前もたしか議員団が向こうにお伺いしたときの報告によりますと、ATTと会った感じというのは非常に冷ややかであって、政府側に立っている、そういうことも言われておるのですけれども、こういったIBM並びにATTの国際戦略が裏にあるのじゃないか。これは勘ぐりかもしれませんが、私はそういうふうに思うのですが、その辺どうお考えでしょうか。
  127. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) 政府調達につきましては、東京ラウンドの一環として行っておりまして、わが国のそういった政府調達をなるべく公開するようにということは、まず全体として、アメリカのみならず、各国から強い要望が出ておりまして、ただ単なるアメリカの一会社の要求というものをはるかに超えたものであるということがまず第一として言えるかと思います。  第二の点は、アメリカについてでございますけれども、これは米国が全体として、先ほど大臣からも申し上げましたとおり、いろいろな観点から強く要求しておりますことで、単なる一会社とかなんとかは、もちろん日本に進出したいという要望があって米国政府に対してそれなりの要望は提出しておるでございましょうけれども、米国政府日本に対し要求してくる段階におきましては、すべての点を考慮した上で、米国政府としてSTRを通じて日本に正式に要求してまいってきておるというのが実態ではなかろうかと考えます。
  128. 松前達郎

    松前達郎君 恐らくそういうことはないのじゃないかと私も思うのですが、しかし、最近、どうも危ないものですから、いろいろとお伺いをしたわけなんです。  アメリカに通信機械、通信電線線材のアメリカ派遣団というのが行かれたのですけれども、その報告を私手に入れて読んでみたのですが、その報告によりますと、アメリカの国務省と商務省、この両者の意向がどうも少し食い違っているのじゃないか。国務省は七十五億ドルを固執して産業別特殊要求を認めないんだと、とにかく金額だけで押さえていこう、そういうふうな考え方であり、商務省は七十五億ドルを満たせばよい、ただそれだけ、通信設備は除外してもよろしいというふうなことを言っているんだというふうな報告になっているんですが、ただ、それをやったからといって貿易の通信分野における不均衡、これは解消しない、今後また問題が再燃するんだということを言っているようでございますけれども、この辺は国務省、商務省の感じ方、今度の問題についての意見というものの食い違いについては何か情報がございますでしょうか。
  129. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) わが方はそのようなことは何ら聞いておりません。また、政府調達の問題は、申すまでもございませんが、アメリカでは商務省とか国務省ではございませんで、大統領の特別通商代表部というところがアメリカ政府を代表してわが方と交渉をするというたてまえになっておりますので、アメリカ政府のたてまえといいますか、代表的な立場はSTRを通じてわが方に表明されるものであるというふうにわが方は理解しております。
  130. 松前達郎

    松前達郎君 それからもう一つ国会議員団が訪米されたわけですね、つい最近でございますが、三月だったと思います。この報告書も私読ましていただいたんですが、総括的な印象としては、アメリカは東京ラウンドの成功を第一と考え、電機通信に関する事情は無視するんじゃないか、そういう報告なんですね。それからアメリカの関係者は日米貿易のインバランスのみを考えておって、政府調達問題に関する——さっきから私が申し上げているようなことは理解に欠けているんだ、それからさらにアメリカ業界政府による圧力のもとにあるんだ、こういうふうなことが報告をされておるんですが、さて、これが今度東京ラウンドの最終段階に入り、こういうことを踏まえて政府の対応が一体どういうふうにされようとしているのか、その点をまた後でもお伺いしますが、いまお伺いしておきたいと思います。
  131. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) まず最初の点でございますけれどもアメリカの方は、先ほど来大臣も答弁しておられますように、全体の百億ドルにもなんなんとする対日経常収支赤字、こちらから言えば黒字ですが、それを非常に問題にしておる。それからまた、政府調達が最後に大きく残った問題として、これは現在そのコードはできておるんですが、そのコードの適用体をどこにしぼるかということで日米間の大きな懸案になっておるということでございます。それで、現在のところにおきましては、できるだけ話し合いをつけて、四月の初旬にも仮署名等々の手続によって一応の締めくくりをしたいというような各関係国間の考えがございます。その前に、できるだけアメリカとも話し合いを詰めたいということで、牛場政府代表が現在アメリカに行ってアメリカとの話し合いを詰めておるという段階でございます。そしてできればその四月初旬までに関税及び非関税につきましてできるだけのものを、全部が全部完全にまとめる必要はあるいはないかもしれませんけれども、まとまったものだけでも一つのパッケージとして仮署名なり何なりの段階に持ち込みたいというように考えております。
  132. 松前達郎

    松前達郎君 それでは、アメリカにEIAという組織があるのを御存じだと思うんですが、このEIAのこれは責任者ではないと思いますが、ソドルスキーという人がおりますけれども、この人がEIAの要求というのは政府間交渉とは無関係だと、EIAはEIAで別にまた団体として強力な要求をしているわけですね。無関係であると言いながらも、通信機器は公開入札になじまないということを言っているんですね、これは自分たちがその生産に携わっているそういった業界で成り立っているわけですから。そういうふうに言っておりますけれども、今後、重要な研究開発に対しては米国メーカーを参加させるんだというふうな主張をしているわけですね。これはEIAですから、政府直接じゃありません。あるいは日本のNTT——電信電話公社ですね、これは外国品の採用スケジュールを公表しろとか、あるいは、もしかそれをしないときはEIAは報復手段をとるんだ、そういうふうなことをソドルスキーという人が言っておるんですが、これがやはり民間の声としてほうはいとして上がっているんだということ、やはりこれが背景になっているんだという解釈をしなきゃいけないんじゃないかと思うんです。  そこで、また、それに追加して、そのソドルスキーという人は、大平首相がブルメンソール・大平会談でNTT日本電信電話公社の開放について約束をした、そしてそれは五月訪米のときに発表するんだというふうに言っているんだということをそのソドルスキーが言っているんですが、これは事実でしょうか。
  133. 園田直

    国務大臣(園田直君) よく存じておりますが、そういう事実はございません。かつまた、大平総理が訪米されたときに、この問題を発表することもございません。
  134. 松前達郎

    松前達郎君 それじゃ恐らくソドルスキーというのは民間の、いわゆるそういった責任ある立場じゃないものですから、適当なことを言ったのかもしれません。  そこで、牛場代表がいまアメリカに行っておられるわけですね。新聞の報道などによりますと、アメリカ側の納得を得られそうな線というのが言葉として出てきておるんです。これはどのくらいの金額かと言うと五十億ドルだ、そういうふうに報道もされておりますが、これは全部電電公社の調達品を対象に考えておられますか。
  135. 園田直

    国務大臣(園田直君) いままさに到着をして、これから折衝をするところでありますから、その金額は申し上げられませんけれども、持っていった腹組みというのは全部が電電公社の分ではございません。
  136. 松前達郎

    松前達郎君 それから東京ラウンドの八項目のコードですね、この中に政府調達に関する問題として三年以内に見直すんだということが言われているんですが、これがちょっとようわからぬのですが、どういう内容のものでしょうか、見直すというのは一体どういう意味を持っているんでしょうか。
  137. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) 現在、その政府調達のコードとしてテンタティブに合意されておりますのは、発効後三年以内に相互主義に基づいて規約の拡充及び改善を図るという文言になっております。これは政府調達分野の門戸開放ということは今度の東京ラウンドで初めて試みられたことでありまして、いままで国際規約としての経験がございません。それで発効後でございますけれども、三年以内の間にそれを見直そう、その見直すたてまえは相互主義に基づくものであって、目的は規約の拡充及び改善を図るということでございます。この種の、レビュー条項と言っておりますけれども、条項は、その他の今回合意されるはずの国際規約、たとえば規格とか基準に関する国際規約等にも設けられております。
  138. 松前達郎

    松前達郎君 それと、これは大体大詰めにきたと思うんですが、来月上旬合意に達することになったと言われているわけですが、東京ラウンドですね、これに関して合意書がいまの八項目で合意されたんですか、されようとしているんですか。
  139. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) まだ、されたわけではございません。  それで八項目と言われておりますのは、大部分コード類でございまして、そのコードにつきましての草案が大体固まっておる。ものによってはなお若干詰めを要する点もございますけれども、その八項目のコードについてはほぼ合意ができておる。しかし、四月初旬に仮署名になるか署名になるか、その辺もまだ詰める必要がちょっと残っておるわけでございますけれども、一応の締めくくりをするというのは、そういったコード類のみに限るのか、できれば関税類も含める、そうしますと関税及び非関税の両面にわたるパッケージができるという考えでおります。
  140. 松前達郎

    松前達郎君 それから政府調達の物資の中で国防上の理由に基づくものを除外するというのがあったと思うのですが、これは一体何を指すのでしょうか。
  141. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) 国防のものは除外するということで初めからやっているわけでございます。それで各国とも、大体、戦略及び国防物資については政府調達の門戸開放ということから原則的には省くという考えでおりますけれども、その本体にかかわるものでないような、たとえば被服とか、そういったものならば門戸を開放してもいいというものは、門戸の開放ができるというふうに判断した国がそれぞれ追加的にオファーをするという形でおさまっております。
  142. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、主として防衛庁関係の購入調達物品だということになるわけですか、いまの国防上の理由に基づくものが除外というものの対象になるのは。だとしますと、いまの防衛庁のたとえば通信システムですね、そういうものは除外になるということになるんでしょうか。
  143. 園田直

    国務大臣(園田直君) ちょっと補足説明をさしていただきますが、国際規約の中で、武器、弾薬、軍需物資の調達、または国家の安全保障もしくは国家の防衛目的のために不可欠である調達、これは協定を適用しなくてもよいという趣旨の規定がございます。したがいまして各国とも艦船、航空機、武器、弾薬等は除外されるものであると解釈をいたしております。
  144. 松前達郎

    松前達郎君 これは除外しなくても、ほとんど買っているわけですね、もう現に。ですから、除外の規定に入るものとなっておっても現実には買わざるを得ない、そういうことになるんじゃないかと思います。  それから東京サミットの問題ですが、どうもピントがばけていて、この東京サミットで最も論議をされる重要課題というのがなかなか表面にクローズアップされてこない。エネルギー問題であるのか、あるいはどういう問題であるのか、その辺がどうもクローズアップされてこないようで、いろいろとこれは問題があるかもしれませんけれども、その辺もうすでに前哨戦が始まっているわけですから、その接触の結果から、どういう問題が主体になって東京サミットで論議されるであろうかという、そういう見通しが大体おつきになったでしょうか。
  145. 園田直

    国務大臣(園田直君) 第一回の準備会議を終了いたしまして、これに出席した各国の代表は各国の首脳の個人の資格を代表してきたわけでございます。したがいまして、ここで決まりましたことばそれぞれ国へ持ち帰って首脳者の了承を得て、本日、各国同時に発表をすることになっております。  その内容というものは、第一は開会期日。次には、主として論議すべき大筋、昨年は第一回の会合で議題が正式に決まったわけでありますが、ことしは議題がまだ決まっておりません。二回、三回で決まると思いますが、大筋は大体決まっておりますが、第一は、この前のボンのサミットに引き続いて、これの今後の経過、これに対応する策をどうやるかということ。それから二番目には、順番は記憶でありますから違うかもわかりませんけれども、南北問題、それからエネルギー問題。それからもう一つは、世界経済に対する対応の策、こういうようなものが大体論議されたようでございます。
  146. 松前達郎

    松前達郎君 東京ラウンド及び東京サミットの問題でいまお伺いしたわけですが、東京ラウンドについては大臣も十分頭脳産業については御理解になっておられることですし、また、これが日本の将来の問題にとって、金額の問題じゃなくて、非常に重要な問題だということの御認識もお伺いいたしました。また同時に、政府調達についてまだ細部まで、細かいところまでは合意決定をしていないという段階ですから、まだ防波堤を築く余地が少しはあるだろう、少しでも努力していただいて、そのほかに何か開放して金額的な穴埋めができるんだったらそれにこしたことばないわけなんですが、その辺非常に苦しい立場にあるだろうと御推察はいたしますが、その防波堤をできるだけ築いていただきながらがんばっていただきたい、かように思うわけです。大変な問題、経済的な面の問題ですけれども、これは国の将来の大げさに言えば浮沈にかかわる問題で、いまは出てこないけれども、将来必ずそういうのが影響してくるということだと私思いますものですから、その点について質問をさしていただいたわけで、その点の所感をちょっとおっしゃっていただいて、質問を終わらしていただきます。
  147. 園田直

    国務大臣(園田直君) 私が非常に心配をし苦悩をしております点をいろいろ具体的に御注意をいただいて厚く御礼を申し上げます。  いま松前先生がおっしゃった点は、私が非常に注意をしておるところでありまして、したがいまして、正面に言って、いま御指摘されたようなことはなかなか素人にはわからぬわけでありまして、意外なところでかぎを外されたり、意外なところで将来に踏み込まれたりするおそれがあるわけでございまするので、牛場君には郵政大臣に相談をして専門の技術屋についていってもらっておるのは、いま松前先生から御注意いただいた点を私心配しておるからでございまして、今後とも十分御注意の点を守りながら、最後の折衝をやりたいと考えております。
  148. 松前達郎

    松前達郎君 終わります。
  149. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、きょうは戦後強制抑留者の補償に関する問題について、外務省のお考えあるいはその他をお尋ねしたいと思います。  私、先日、この関係者の会合に出席をいたしまして、ソ連抑留の実態等のお話をいろいろお聞きしたわけであります。三百グラムの黒パンと岩塩の入ったスープで、長い人は十年以上も抑留をされ、その当時の厳しい実態については関係者の間で抑留記をつくっているようであります。私たちは、ただ一つの会合でそういう話を聞いただけでそのすべてを知るわけではありませんけれども、強い印象を受けたことは事実であります。そして団体ができておるわけでありますが、全国戦後強制抑留補償要求推進議会、これの陳情書を私はいろいろ読まさしていただいたわけでありますが、この要求書等に関連をしてお尋ねをしたいと思うわけであります。  昨年、国会でもいろいろ論議をされ、先般の衆議院の分科会におきましても取り上げられた問題で、多少重複する点もあろうかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。  そこで外務省にお尋ねいたしますが、いわゆるソ連への抑留あるいは強制労働というものは、これは国際法上はどういう意味を持つものであるのか、これをお尋ねしたいと思います。
  150. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  戦後、四五年、四六年当時でございますか、ソ連による捕虜のシベリア抑留ということが行われたわけでございますが、当時の国際法のもとにおきましては、捕虜を捕らえた場合、その捕らえた場所から後送、移送と申しますか、したり、抑留をしたりすること自体が国際法上の明確な違法な行為であるということは断言できなかったにいたしましても、ポツダム宣言がございまして、その第九項には「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」ということが書いてございまして、ソ連が不当な長期間抑留を続けていたというようなことは、このポツダム宣言の条項に明瞭に違反した行為であるということでございます。  ただいま申し上げましたのは軍人の捕虜のことについてでございますけれども一般邦人も、同様に、抑留され移送され、抑留生活の運命にあったわけでございますけれども、この文民と申しますか、一般の邦人がソ連領域に強制的に移送されたというようなことはやこれは人道上から申しましても、また国際法上から言っても、問題がある措置であると考えておるわけでございます。
  151. 塩出啓典

    塩出啓典君 いまポツダム宣言違反ということを言われたわけでありますが、このポツダム宣言はソ連は入ってはいないわけでありますが、それはどういうことになりますか。
  152. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ポツダム宣言にソ連は参加いたしているわけでございます。
  153. 塩出啓典

    塩出啓典君 この団体の人たちの意見として、戦後、戦争が終わってからソ連に連れていかれて強制労働をさせられておる。これは「敵国に対し賠償に代る意味をもつ労務の提供」である、こういう外務省の見解であるというように言っておるわけなんでありますが、私も確かに「賠償に代る意味をもつ労務の提供」ということであれば、ある程度理解もできるわけなんですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  154. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ただいま塩出先生は賠償にかわるものであれば理解ができるというお言葉なのでございますが、私どもが考えますのに、軍人捕虜にいたしましても、あるいは一般邦人の被抑留者にいたしましても、それらの者が強制労働に従事せしめられたということ、それによって提供いたしました労働が賠償にかわるものであるというふうには観念いたしておらないわけでございます。
  155. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、確かに国際法上は違法である、だから違法をした方が悪いのだという、それだけでは非常に済まないのじゃないか。やはりそういう違法をするようになってきたのは国際関係の上においてそういうような状態になったわけで、そういう戦争が終わってから異国に捕らわれた人たちに対して国として何らかの救済をするのが筋ではないかな、そういう気がするわけでありますが、そういう点で戦後、軍人とか軍属とか海外に行かれた方についていろいろな処置がなされてきたと思うんですが、戦後のいわゆる抑留者に対する処置としては今日までどういう処置をとられてきたのか、これをお尋ねしたいと思います。
  156. 田中富也

    説明員(田中富也君) シベリアに抑留されました方々につきましては、戦後の法制におきまして戦傷病者戦没者遺族等援護法という法律がございますが、その法律に基づいてシベリア抑留のときに傷病にかかり、あるいは死亡された方々に対して遺族年金、障害年金等の支給を行っております。
  157. 塩出啓典

    塩出啓典君 これはいわゆる病気になった方とかあるいは死亡したとか、そういう人がその対象になっておるわけでありますが、いわゆる抑留をされて元気で帰ってきた人には何ら対処がなされていない、このように判断していいわけですね。
  158. 藤井良二

    説明員藤井良二君) 抑留者が旧軍人だとか、あるいは官吏等の恩給法の公務員である場合につきましては、それぞれ恩給法の適用を行って、年金恩給を払い、あるいは公務傷病にかかった場合には傷病恩給なり、あるいは死亡された場合には公務扶助料を支給しております。
  159. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから、いわゆる民間の人たちもかなり抑留者として連れていかれておるわけで、そういう人たちについては元気で帰ってきた人ですね、元気というか、体が悪くても生きて帰ってきた人については何ら処置はなされていない、こう判断していいわけですね。
  160. 藤井良二

    説明員藤井良二君) 少なくとも恩給法についてはやっておりません。
  161. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで、彼らのこの団体の要求として「ソ連抑留者とその遺族に対して強制労働に相応する賃金補償をなされたいこと。」こういう要望が出されておるわけでありますが、こういう問題について政府としてどういう見解を持っていらっしゃるのか、これをお伺いしたいと思います。
  162. 末次彬

    説明員(末次彬君) 賃金補償という話でございますが、一般的に戦争損害の問題というふうにとらえてお答えをしたいと思います。  シベリアで抑留されました方々の御苦労というものははかり知れないものがあったというふうに私ども理解するわけでございまするが、今次の大戦と申しますのは未曽有の経験でございまして、日本のいままでの歴史上その様相から見まして、この大戦の戦中あるいは戦後にかけましては、日本人のほとんどすべてが、程度の差こそありますが、それなりにいろんな意味で犠牲を払ってきているわけでございまして、そうした戦争損害と申しますものは国民の一人一人が受けとめているわけでございまして、その中でシベリア抑留の問題だけを取り上げまして、これにどうこうするということにつきましては問題があるのじゃなかろうか、かように理解しております。
  163. 塩出啓典

    塩出啓典君 確かに戦争の被害は何もシベリア抑留者だけではなしに内地にいる人もそれぞれ被害は受けておるわけであります。しかし、私は、ソ連の抑留者の場合は、特に戦争が終結した後、こういう状態に遭っておる。新しい憲法ができまして、憲法の中にも、憲法第何条でありますか、こういう強制労働にはゆえなくされないという、こういう憲法のできた中でなおかつソ連に抑留された、こういう意味でやはり国内の戦災に遭った人とソ連抑留者の立場と一緒に考えて、国内の戦災者に対してもできないからこちらにもできない、そういう点では私はソ連の抑留者の皆さんのこの実態に対してちょっと説明が不十分じゃないか、こういう感じがするんですけれどね。そういう点は今日までいろいろ政府内においても論議のあったところだと思うんですけれども、いま言っただけの論理ではちょっと説明がむずかしいんじゃないかなと、こういう感じがするんですが、その点はどうなんですか。
  164. 末次彬

    説明員(末次彬君) 戦後処理のあり方ということでございますが、日本のこれまでやってきましたあり方といたしましては、先ほど少し答弁ございましたが、傷病にかかった方あるいは死亡した方、こういった特別の事情にある方につきまして軍人、軍属あるいは一般民間人を問わず恩給法なり援護法で所要の措置を行う、こういうことを必要な措置として真っ先に講じてきたわけでございます。こういった本当にそういう特別の事情のある方に対してこういう措置をとるということが日本のとりました戦後処理のあり方ではないかというふうに考えております。  一般的な戦争損害につきましては、これはいろいろ御議論があるかと思います。確かに大変な状況であったということを聞いておりますが、それを一つ一つつかまえまして、ここがどうだあそこがああだというような議論をすることにつきましては若干問題があろうかと思います。
  165. 塩出啓典

    塩出啓典君 西ドイツでは、戦後いち早く、そういう捕虜とか、それから強制収容者に対する年金制度、救済というものをつくっておる。私は、そういう点から考えてやっぱり戦後の抑留というものは戦時中のいろいろなものとはまた別個に考えるのが通例ではないか、こういうような気がするんでありますが、西ドイツのそういう法律の立法の経過とか、あるいは特殊な事情、そういうものについてもしおわかりであれば、教えていただきたいと思います。
  166. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいまお尋ねの立法の経過あるいは特殊事情という点につきましては、私、実は十分な資料を持ち合わせませんが、ただいま御指摘のとおり、一九五四年一月に、第二次世界大戦中に外国の捕虜となったドイツ国民に対しまして、捕虜となった期間に対する補償、それから社会復帰のための各種融資、たとえば住居の購入のための融資、援助、それからたとえば家計の援助、それから帰国者援護財団を設立し貸し付けないし資金援助を行うこと等を内容といたします戦争捕虜補償法、四章五十七条から成る法律ができまして、これが三度の改正を経て、現在も運用されておるわけでございます。
  167. 塩出啓典

    塩出啓典君 やはり私たちとしては、行政というものは公平でなければならない、しかし、本当の完全な公平というものは現実にはあり得ないと思うんですけれども、できるだけ公平でなきゃいけない。恩給法一つ見ましても、軍人で、いろいろ計算をして、十二年に満たない者は、十一年九カ月、十一カ月でもこれは年金をもらえないという、こういうようないろいろな問題も一つあるわけですが、しかし、完全にそういうすべてに公平ということはできないにしても、このソ連抑留者の問題についてももうちょっと政府としてもいろんな場合を比較検討して、本当にこれはいまのままでいいものなのか。私はソ連抑留者の人たちの生活というものはつぶさに知りませんけれども、実際一割の人がもう死んでいるわけなんですね。これは戦争に行って死ぬ率よりもはるかに高い率の人が死んでおるという、こういう状況から見ても、ある面から言えば戦争以上に悲惨な状態ではなかったか。それをただ法律がないからとか、あるいはほかとのバランスの関係だからという、そういう説明では異国の地に十年近くも過ごしたそういう人たちを説得するものにはぼくはならないんじゃないかと思うんですね。  私たちは、決して賃金を補償しろ、あるいは慰謝料を出せという、こういう要求、これも大事ですけどね、彼らが要求しているのは、いわば、まず第一に、そういう人たちに対する国としての姿勢と申しますか、何とかやはり検討しなきゃいかぬと、非常に検討した結果やっぱり財源的にもこれはできないとか、これだけしかできないとか、こういうような姿勢があっていいんじゃないかなと、戦後すでに三十年たったわけですけど、シベリヤ抑留者の問題あるいはその他の問題を含めて検討すべき問題ではないのかなと、そういう気がするんですけれども、その点、これは外務大臣は担当じゃございませんけれども、内閣閣僚の一人としてどういう御見解であるのか承っておきます。
  168. 園田直

    国務大臣(園田直君) 非常にごもっともな御発言があったわけでありますが、いま塩出先生の御発言と事務当局の答弁とがかみ合わないのは、事務当局の答弁は、いまの法律体系では何ともいたし方がございませんという意味の答弁であると私は聞いておるわけであります。御発言のとおりでありますから、所管ではございませんが、所管の大臣にも申し上げて検討すべきことであると存じます。
  169. 塩出啓典

    塩出啓典君 抑留期間中の恩給法上の抑留加算を二年に改正をしてほしいという、こういう要望が出ておるわけであります。で、お聞きしますところ、戦地に行った場合は戦地加算二年と三年の二種類がある、ところが、抑留者の場合は一年であると。しかし、現実には、先ほど申しましたように、日露戦争の場合は従軍者総数の約四・六二%が死亡しておる、第二次世界大戦の場合は五・六三%が死亡しているのに比べまして、シベリヤ抑留の場合は約一〇・八九%が亡くなっておる。このシベリヤでの戦死者の数もこれはきちっとした数字はないわけで、この数字が果たしてどの程度まで正確かどうかわかりませんが、いずれにしても、先ほど申しましたように、戦争、戦地以上の厳しい状況であったことはひとしく皆認められるところじゃないかと思うんですが、そういう点で、せめて戦地並みに抑留加算というものを二年にはできないものかどうか、その点の御見解を承っておきます。
  170. 藤井良二

    説明員藤井良二君) いま先生御指摘の抑留加算の制度というのは、昭和四十年の法改正によって新設されたわけでございますけれども、戦後の抑留の状態と申しますのは、地域により時期によりまして、また占領国の違いによりまして、かなり千差万別であったということは十分に推察し得るわけでございますけれども、その中でも特にシベリア抑留者が大変な苦労をされたということは理解できるわけでございますが、南方諸地域や中国大陸におきましても、時期あるいは場所によりましては、これと同様に大変苦労された方もあるように聞いております。  この加算制度を創設するに当たりまして、このような実態を踏まえるとともに、戦後のこの時点において新たな加算制度を設けることの是非を含めまして、いろいろ議論したわけでございますけれども、抑留期間というのは、公務員としての勤務期間そのものではない、その勤務の延長と見る特殊な期間でございまして、その間非常に苦労されたということもございましたので、恩給制度上のきわめて特例的な措置として抑留期間一カ月につき一カ月の割合で割り増しをつけたわけでございます。したがって、この抑留中の個々の実態に応じてその割り増し率に差をつけるということはちょっと適当ではないんじゃないか。したがって、この割り増し率を全地域一律に二カ月加算にすることも、一般抑留者あるいは他の加算制度との均衡から言って適当ではないんじゃなかろうかというふうに思っております。
  171. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから、その低い方に横並び式で下げるんじゃなしに、これはシベリアだけを二年にしろというんではなしに、ほかの全抑留者を二年にしていく。これは確かにいろいろ戦地でも大変なところと大変でないところとあるわけだけれども、それは一律にやっておるわけですから、いい方に線を合わすのはみんな納得できると思うんですね。そういう意味で、私は、せめて抑留加算二年ぐらいは、これはそうむずかしい問題ではないんじゃないか。それを実現した後に、やっぱり恩給制度に適合しない民間人の問題、これはまた別途考えていくべきじゃないかと思います。この点を強く要望しておきたいと思います。  総理府といたしましても、ぜひ先ほど申しましたように、西ドイツのこういう状況等も調査をしていただいて、もうちょっと国民を納得させるような、そういう結論を出していただきたい、このことを要望しておきます。  それから現地墓参あるいは遺骨送還を早期に実現をされたい、こういう要望が出ているわけでありますが、遺骨送還もなかなかむずかしい問題と思うんですが、厚生省としては、この問題についてはどう考えておるのか、これをお伺いしておきます。
  172. 水田努

    説明員(水田努君) お答え申し上げます。  海外における遺骨収集あるいは慰霊墓参というものは、外交ルートを通じて相手国の許可を得て、それから初めて実現ができるわけでございます。概括的に申し上げますと、アメリカの統治しております地域はおおむね私どもの要望が原則的に受け入れられて実現ができるわけですが、その他の地域は、軍事上あるいは宗教上あるいは治安上その他のもろもろの事情がありまして、必ずしも私どもの方の希望するとおりに実現しない場合もかなりあるわけでございまして、たとえば旧満州地区では二十万を超す方が亡くなっておりますが、戦後三十三年経過した今日、まだ遺骨収集も慰霊墓参も実現を見ていないような状況のところもあるわけでございます。  お尋ねのシベリア地域でございますが、ここにつきましては、外務省の御努力によりましてソ連地域に埋葬個所二十六カ所あるということがソ連側から通報を受けておりまして、その二十六カ所のうち二十一カ所、すでに過去八回慰霊墓参に参っております。  お尋ねの遺骨収集の件は、非常にソ連側は難色を示しておりまして、ソ連はソ連なりに、言うなればソ連方式で死者に対して礼を尽くしているということでございまして、この遺骨収集の点については、これまでの経過から見て、かなり困難なものであるというふうに考えております。  したがいまして、私どもは、墓参を中心に今後も努力を続けてまいりたい、このように考えているわけでございますが、昨年も外務省を通じまして、ソ連側から示されております二十六カ所のうちすでに二十一カ所へ行きまして、あと五カ所残っておるわけでございまして、この残りの五カ所の地域について墓参ができるように、粘り強く交渉をしていただいたわけでございますが、許可できないという結果を得ております。  そのほか、このソ連側から提起されております二十六カ所以外に、引き揚げて来られた方の証言等で、まだ多数埋葬地があるということで、具体的な地名も挙げて、昨年やはり外交ルートを通じてその調査確認をお願いしたわけでございますが、すでに提示した二十六カ所以外に該当地があるとは当方は考えていないという答えが来ております。  私どもは、また外務省の方を通じて、外務省、厚生省ともども、残りの五カ所の墓参が非常に遺族の方々あるいは御関係の方の要望の強いことを承知いたしておりますので、今後も粘り強く努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  173. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、ベトナム難民対策について、外務大臣初め関係部署の方々に質問をしたいと思います。  このベトナム難局の問題は、人道上の見地からはもとより、日本はアジアの一員でもあるわけであります。しかも、このアジアの中では経済力が比較的大きい方でありまして、その意味で、このベトナム難民に対しては、わが国とすれば、より積極的な姿勢をもって取り組むべきだと思うんです。ところが、いままでの経緯を見てみますと、わが国のこれに対する対応は非常に消極的である。そういう意味で、国際関係におきましても日本に対する批判が高まっておる、これは外務大臣も十分御承知のことだと思います。まず、この点についての基本姿勢について、外務大臣としてこれからどう考えられるのか、お伺いをしたいと思います。
  174. 園田直

    国務大臣(園田直君) ベトナムの難民問題に対しては、残念ながら御指摘のとおりでございまして、各国の非難を相当強く受けておるところでございます。  しかし、問題は、非難を受けるからということではなくて、これが人道上の問題であり、ほかの非難と違う。それからもう一つは、アジアの安定の一つの要因をこれで壊すわけでありますから、難民対策問題は総理府が所管されておるところでございますが、関係各省と相談をして、御承知のごとく高等弁務官に対する基金は相当出しているわけでありますが、金は出しているが、ほかのことはやらないじゃないかということでございますので、まず第一は、難民条約の批准の準備、それからこれに対する国内の対応——これは対応を待っておっては間に合いませんので、幸い各省の御了解を得ましたので、日本がいままで一番ひどく言われておった定住の受け入れ、これは他国と比べて格別の差があるわけであります。したがいまして、これを法改正を待たずして、とりあえず各省の協力によって数を五百ぐらいに開こうじゃないか、そしてこの人道上の問題について日本も非常に熱心であるというようなことにしようという決意のもとに、いま逐次努力をしているところでございます。
  175. 田渕哲也

    田渕哲也君 この定住者の枠の問題はかなり重要な問題でありまして、昨年の十二月にジュネーブで行われた国連の東南アジア難民問題関係国間協議において各国がその受け入れ枠というものを示しているわけであります。このときは、わが国はこの受け入れ枠というものを示していないというふうに理解をしております。アメリカが五万一千、フランスが一万二千、オーストラリアが一万五百、その他の国を入れて合計が八万二千二百五十という、こういう数字が示されておるわけでありますけれどもわが国の場合は、そのときには何らこれに対しては積極的な態度を示していない。  いま外務大臣が大体五百ぐらいの枠で検討すると言われましたけれども、これは枠を決めても、私は条件というものが必要だと思うんですね。五百の定住を受け入れるような条件が果たして整うのかどうか、この点について大臣はどうお考えですか。
  176. 園田直

    国務大臣(園田直君) いま応急に、法律を改正しないで、各省の協力によってやれる数ば五百であるということで、まず当面五百を目標としてと、こういう意味でございます。
  177. 田渕哲也

    田渕哲也君 実は、この難民の定住許可については、昨年の四月に閣議了解が出ておりまして、三つの条件を示して、この条件に合う者は定住を認めるという方向が出されたと思うのでありますけれども、その後、これによって定住が認められた者は一家族三名にすぎない、このように言われておるわけですね。私は、これはむしろこういう条件というものが厳し過ぎるのではないか、だから幾ら五百というふうに枠を広げてみたところで、この条件を変えなければ私は定住者は出てこないのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  178. 園田直

    国務大臣(園田直君) それも御指摘のとおりでございますから、十分考慮をして話を進めております。
  179. 田渕哲也

    田渕哲也君 外務省の大川国連局長は、日本でも定住の道は開かれている、ところが日本への定住希望が少ないというふうな発言をされておるようでありますけれども、これは私は事実に反すると思うんですね。上智大学の社会経済研究所が在日ベトナム難民を対象に行った調査によりますと、約三分の一は日本に定住をしたいと希望しております。それから日本に定住を希望していないあとの三分の二でも、なぜ日本に定住を希望しないかというと、日本は定住を認めていなし、また条件が非常に厳しいからできない、だから定住を希望しないという答えなんですね、大部分が。だから、この大川国連局長の認識は誤りだと思いますが、この点はどう大臣は考えられますか。
  180. 園田直

    国務大臣(園田直君) 一つの受け入れの体制をつくって、そして定住されることが少ないということなら通用しますけれども、そういう受け入れ体制をつくらないでおいて、したがって定住される方が少ないという理由は通用しないと私は考えております。
  181. 田渕哲也

    田渕哲也君 大臣の御答弁からしますと、早急にこの条件についても再検討を加え、より定住が容易になるようにするという決意と受け取っていいと思いますけれども、いつごろ、そうすると、この条件というものは改善されますか。
  182. 園田直

    国務大臣(園田直君) 条件のほかに、職業訓練、あるいはとりあえず受け入れる施設等もございますので、これは関係省庁の協力を得て、いろんな法律改正等はやらないでできるだけやりたいと思っております。
  183. 田渕哲也

    田渕哲也君 いま施設とか職業訓練のお話も出ましたけれども、実は難民収容のための施設確保、それから医療供与、それから難民に対する職業技術訓練の供与、こういうことは五十二年九月の閣議了解でその方針が出されておるわけであります。その後、こういう問題について政府は具体的にどういうことを実施されたか、お伺いをしたいと思います。
  184. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 昭和五十二年の九月に閣議了解をもちましていま御質問のような方策を決めたわけでございますが、その処理の状況につきまして御説明いたしますと、まず収容施設の確保という点につきましては、赤十字に補助金を出しまして、その補助金の中に施設借り上げ費というものが入ってございまして、実は赤十字に五百人相当の施設を確保するようにという措置をとっております。  それから、次に医療供与の問題でございますが、これにつきましても国公立の病院、それから大学病院等に対しまして難民の医療供与について措置するようにという通達を各省から出しております。  それから職業訓練でございますが、その五十二年九月当時の発想では、第三国、たとえばアメリカとか南米に移住するための必要な技術を訓練するという趣旨であったわけですけれども、実際日本で訓練しましても余り役に立たないということで、現在は、行っておりませんが、ただ、今後は、定住を許可すると、日本の社会に溶け込んでいく上に必要な技術の訓練等はやらなければならないということで、目下、立案中でございます。  それから、つけ加えますと、これに関連しまして、一時滞在中の難民につきましては、いわゆる職につくことは手続的に困難であるということになっておりましたけれども、この点につきましても整理をいたしまして、いわゆるアルバイト的と申しますか、臨時就労を認めるという場合の手続を整理いたしましたので、職業訓練の意味も兼ねまして相当数の人たちが現在臨時就労をしておる、こういう状況でございます。
  185. 田渕哲也

    田渕哲也君 それと同時に、私は、日本に定住しあるいは日本で職につくということをするためには語学研修というものが不可欠だと思うんですけれども、この点についてはいかがですか。
  186. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) お尋ねの点、まさしくそのとおりと思います。それで、現在、難民の中で先ほど来定住希望が少ないというお話は、まあ事実かどうかという問題は別といたしまして、やはり日本語ができなければ日本の社会に溶け込んでいけないという点は私どもも認識しておりまして、目下、これをどのような措置をとっていくかということを検討中でございます。
  187. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから留学生の問題についてお尋ねをしたいのでありますけれども、現在、六百名余りの留学生が日本にいるわけであります。この留学生というものは、これは難民というふうなことで解釈していいのか問題があろうかと思いますけれども、しかし、現実にはこの日本へ留学に来て祖国へ帰れない、こういう人たちでありまして、そしてこれらの人たちは現在在学中の者も何らかのかっこうで働かないとなかなかやっていけない、それから学校を卒業した人もやっぱり就職しなくてはならない。ところが、現在は、これは出入国管理令の四条一項十六号の三によって三年を超えない範囲で法務大臣が定めるということになっておりますけれども、大体、半年の期間、六カ月の期間で、六カ月の期間でありますと就職する際にも雇い主はきわめて不安定な感じがしてなかなか就職先が見つからないのであります。だから、これのビザの期間というものについてもっとこれは延長をすべきではないか、少なくとも三年という枠、範囲があるわけでありますから、その範囲の中で最大限に延長すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  188. 藤岡晋

    説明員(藤岡晋君) 現在、留学生として在留を続けておりますベトナム出身者と、それから当初留学生として在留をいたしておりましたけれども、予定した学業が終わりまして今日では留学生としての在留資格はなくて、ただいま御質問にございましたような法務大臣が特に在留を認める者としての在留資格を持って在留している、言うなれば元留学生と二通りあるわけでございます。  前者、つまり現になお留学している者、在留資格を持って在留いたしております者につきましては、これは一般の留学生と同様に在留期間は一年、もっとも当然のことながら学業が継続している限り一年が満了いたしました都度一年ずつ期間を延長してまいっているわけでございます。  さて後者、すなわち元留学生であって現在四、一、十六の三と申しておりますけれども、特定の在留資格を持って在留いたしておる者につきましては、この総数のかなりの者が、御指摘のように、いわゆる百八十日の在留期間を持って在留をしておる。もっともすでに在留期間一年になっておる者もございますが、大半が百八十日という期間でもって在留している実情にあるのは御指摘のとおりでございます。そこで、さような百八十日という一見中途半端な在留期間を持って在留しておる者は、生計を立てていく、食べていくために働く上でどうも雇い主の方で信用が薄いではないか、もう少し、たとえば一年というようなきちっとした在留期間を与えるように期間の伸長を考えたらどうかという御指摘でございますが、私ども法務当局といたしましても、かねがねその辺に問題があるということを認識いたしておりまして、御質問の趣旨を尊重する方向でなるべく速やかに結論を出したい、かように運用してまいりたい、かように考えております。
  189. 田渕哲也

    田渕哲也君 それと同時に、在留期間の更新の手続の簡素化という要望が非常に強いわけです。大部分の人はスムーズに更新が受けられるようでありますけれども、中には非常にしちむずかしいことを言われるという例もあるようであります。だから、これについてもう少し簡素化できないだろうか。特に留学生の場合は、元留学生はもう国に帰れないわけですし、それから一般の留学生については在学期間というものは必要なわけでありますから、もっとこれは簡素化できないかと思いますけれども、いかがですか。
  190. 藤岡晋

    説明員(藤岡晋君) 在留期間の更新手続の簡素化に工夫の余地がないかという御指摘でございますが、具体的に申しますると、いわゆる身元保証書というような書類を通常提出してもらっておるわけでございます。大方の場合は、書類の提出に困難、支障のないのが一般でございますけれども、時として人によりまして提出できないというような事情のある人もあるようでございますので、そういう特殊な事情のあるベトナム元留学生等につきましては、その辺も何とか特殊事情を勘案いたしまして簡素化ができないかと、簡素化を図る方向で、これも鋭意目下検討中でございます。
  191. 田渕哲也

    田渕哲也君 先ほどの定住者の問題にも関連してくるわけでありますけれども、去年の閣議了解では、日本人の配偶者、親もしくは子、これが第一条件ですね、それで第二は里親のある者、それから第三は確実な身元引受人、このうちのいずれかの条件がなければならないということになるわけですけれども、もともとベトナムから難民として来られる方は日本に知り合いがあって来られる方は少ないわけであります。行きどころがなくて日本に来られるわけでありまして、なかなか確実な身元引受人というものが探しにくい。したがって、これは個人の身元引受人でなくて、何か団体とか機関とか、そういうものが身元を引き受けるというような制度にできないものかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  192. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 御指摘のような事情があろうかと思いますが、その辺も今後の対策一つといたしまして検討してみたいというふうに考えております。
  193. 田渕哲也

    田渕哲也君 なかなかいつまでも検討ばかりでは日本は消極的姿勢と言われるので、できるだけ早急に結論を出していただきたいと思います。  それから、外務大臣は、二十六日の予算委員会で、民社党の柳灘委員の質問に答えて、難民条約の批准は来国会、次期通常国会でやるというようなお話でしたけれども、この難民条約というものが批准された場合に、現在のベトナム難民の方々にこれは適用されるのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  194. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 田渕委員のただいまの御指摘の点でございますが、定住許可を与えられれば、これは人権規約、難民条約、いずれも適用になるわけでございます。
  195. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから、その場合、ベトナムの元留学生に対してはどういうことになりますか。
  196. 藤岡晋

    説明員(藤岡晋君) 私は国際法は専門でございませんが、私の考えておりますところを一言申し上げたいと思います。  難民条約という条約には、難民とはいかなるものであるか、いわゆる難民の定義を定める条項が御案内のようにございます。その骨子を申し上げますと、人種、宗教、社会的集団への所属ないしは政治的意見等を理由として迫害を受けるに十分な根拠のあるおそれがある、そういう人が難民条約で言うところの難民である、かように相なっておることは御案内のとおりであります。  さて、その難民条約上の難民の定義に照らし合わせまして、お尋ねのいわゆるベトナム元留学生がこれに該当するや否やということでございますが、これはやはりただいまの定義に該当するか否かという角度から一人一人のいわゆるベトナム元留学生につきまして、その立場、境遇、果たして本国に帰れば、ただいま申しましたような迫害を受けるおそれがあるというふうに認定できるかどうか、この辺を詰めませんことには、一概に該当する該当しないということを申し上げるのは早計ではなかろうか、かように考えます。
  197. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうすると、留学生につきましては、一人一人調査をした上、いわゆる本国へ帰れない、そういうような人については適用すべきだと思いますが、そういうことになりますか。
  198. 藤岡晋

    説明員(藤岡晋君) 認定を十分にと申しますか、きちっといたしまして、その結論として該当するということになるならば、当然、わが国は難民条約にまだ加入しておりませんけれども、仮に締約国であるならば条約の適用を受ける存在、人物として処遇をしていく、かように相なろうかと思います。
  199. 田渕哲也

    田渕哲也君 外務大臣は四月の初めに訪米されます。そのときに、このベトナム難民の問題がアメリカとの間で話題になろうかと思います。わが国としてもかなり前向きの一つの方針というものを持っていなければ困るのではないかと思いますけれども、これについてどう考えておられますか。
  200. 園田直

    国務大臣(園田直君) 私の訪米の際に、いまのところ難民問題は議題にはなっておりませんが、当然、本質上話題になると思いますので、話題になった場合には、ちゃんとした話ができるようにして出発したいと考えております。
  201. 田渕哲也

    田渕哲也君 定住枠を五百人ということはかなりの大きな前進だと思うんです。ただ、先ほど申し上げましたように、受け入れるための施設、それからいろいろな援助、それから定住条件の緩和、こういうことが伴わないといけないと思いますけれども、このことはやっぱり閣議了解というかっこうで決定されるわけですか、当面は。
  202. 園田直

    国務大臣(園田直君) これからのことでございますから、はっきり申し上げるわけにはまいりませんが、そういう方向で処理するつもりでおります。
  203. 田渕哲也

    田渕哲也君 具体的な時期はわかりますか。
  204. 園田直

    国務大臣(園田直君) 後で申し上げようと思います。
  205. 田渕哲也

    田渕哲也君 それからインドネシアのモフタル外務大臣が難民救済センターをビンタン島につくるという構想を出しておられます。これに対しても政府は積極的に協力するというような態度を表明しておられますけれども、これの構想の見通しとか、今後の政府の対応というものがもしありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  206. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) インドシナ難民の流出がアジアの周辺諸国に非常に深刻な経済的社会的影響を与えているということでございますので、人道上の問題ということでASEAN等の諸国はこの問題をかねてきわめて真剣に取り上げて対策を考えていたわけでございます。特にマレーシア等はもうこれ以上流入があっては受け入れ切れないというような状況まできていたわけでございます。そういう中でインドネシアがほかのASEAN諸国とも話し合いまして、しかるべき島を提供して、そこに一時的な難民センターというものをつくってはという構想がまとまってきたようでございます。  ただ、この場合、幾つかの条件をとっておりまして、これはあくまでもこれらの難民が最終的にいずれかの国に定住のために行くまでの一時的な場所であって、そこにそのまま居つかないということが前提であるとか、あるいはUNHCRがこれに対して必要な措置をとるとか、先進国もこれに対していろいろ財政上の負担をとるとか、幾つかの条件が満たされることを前提にいたしまして、こういう島を提供して、そこに収容センターをつくろうという構想でございまして、先般、来日いたしましたインドネシアのモフタル外務大臣がこのASEANの立場を代表して説明がありまして、大平総理大臣、園田外務大臣との会談の際にも説明がございまして、わが方からは、この具体的な内容をさらに詳しく確めた上で、できる限りの前向きに考えたいということを応答した次第でございますが、その後、主としてインドネシアにおきまして、これが具体的に、どこの島であるのか、あるいはUNHCRとの間の話がどういうふうに煮詰まっていくのかという点が目下詰められている段階でございます。いまのところ、どのぐらいの人数を収容するセンターであるか、あるいはどのぐらいの建設費がかかり、どのぐらいの運営費がかかるか等の点はまだ具体的に詰まっておりませんので、この詰まりぐあいを見きわめまして、わが方として、これにどの程度の対応ができるかということを研究したいという段階でございます。
  207. 園田直

    国務大臣(園田直君) 面接、私が話を聞きましたので。  インドネシアの島を提供する、ただし、この島はインドネシアの分としてではなくてASEAN全部の分として島を提供する、したがって先進諸国はこれに対する施設その他の応分の金額の協力を願いたい、その他の協力も頼む、こういうことでありましたから、私は、具体的な構想を出してもらえるならば、進んで応分の協力をいたしますという約束はいたしてございます。
  208. 田渕哲也

    田渕哲也君 最後に、この難民問題は本質的にはベトナムの国内事情というものに原因があるわけでありまして、難民に海外へ逃れてきた理由を聞いてみますと、自由がないということが一番多い、それから次には生命の危険を感ずる、こういう人が大部分であります。したがって、これは言うならば人権問題でありまして、私は、ベトナム政府に対して、国連として、あるいは日本政府として、人権問題について何らかの措置要求しなくてはならないというふうに思うわけですけれども、この点についてはどうお考えですか。
  209. 園田直

    国務大臣(園田直君) ベトナム政府には、ただいまの御発言のような趣旨のことを要請いたしてございます。
  210. 田渕哲也

    田渕哲也君 終わります。
  211. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 以上をもちまして外務省所管に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  212. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 分科担当委員異動について御報告いたします。  本日、松前達郎君が分科担当委員を辞任され、その補欠として吉田忠三郎君が分科担当委員に選任されました。     —————————————
  213. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 次に、昭和五十四年度総予算中防衛庁所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  214. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは最初に、防衛庁の永野陸幕長が、昨日、東京丸の内の日本工業倶楽部で開いた防衛懇談会で講演をし、その中で、昭和五十一年の防衛計画大綱の見直しに言及をしたと、こういうことが報道されておるわけでございますが、その発言の真意はどういうことであるのか、長官にお尋ねをしたいと思います。
  215. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 私が永野陸幕長より聴取いたしました当該講演における発言の趣旨は、わが国をめぐる情勢の変化から見て、防衛計画の大綱において前提とした情勢が根本的に変わったとは思わないが、ここ一、二年ということでなく、将来における防衛計画の修正についてぼつぼつ頭を向けなければならないだろうということでございまして、いま直ちに防衛計画の大綱を見直すとか改正するとかいう考えを述べたものではないと承知いたしております。
  216. 塩出啓典

    塩出啓典君 新聞の報道等から受けるニュアンスでは、いま長官の言われたような考え方とは非常に違う。国際情勢の変化、特にソ連の軍事力の増強等から考えていますぐにでも必要性があると、こういうような印象を受けるわけでありますが、そういう点、いままでの防衛庁長官等の国会における答弁と変わったのか変わらないのか、その点をお伺いしたいと思います。
  217. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 私は、国会で御答弁申し上げておりますが、最近のわが国をめぐる諸情勢は厳しい情勢でございまして、したがって十分に関心を持って注視しなければなりませんとは申しておりますが、いま直ちに防衛計画の大綱を改正することは考えておりませんということはもうはっきり申し上げておるのでございまして、その考え方については現在も変わっておりませんし、先ほど申しました永野陸幕長の発言も、私の発言と決して矛盾するものではございません。従来と変わったことではないということでございます。
  218. 塩出啓典

    塩出啓典君 従来と変わらないと、また長官の考えとも一致をしておると、こういう御答弁で、われわれも理解できるわけですけれども、かつて栗栖統幕議長の発言もあり、シビリアンコントロール——コントロールという上から考えて、やはり国民の側から見て何かシビリアンコントロールが崩れていくのじゃないか、こういう印象を与えることは非常にまずいのじゃないか。もちろん、世界情勢の変化に対応してわが国の防衛力のあり方というものも当然検討していかなければならない、そういうことは私たちも十分認めるわけですけれども、ただ、いま言ったように、栗栖発言といい、また今回の発言といい、国民の心配を招くようなこういう発言は私は注意すべきではないかなと、こういう感じがするのですけれども長官のお考えを承っておきます。
  219. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 御指摘いただきましたように、いろいろ情勢に対応して防衛力のあり方を検討せねばならぬことは当然でございますし、われわれとしてもいたしております。  ただ、また、お話もございましたように、文民統制ということは非常に大事な原則でございます。そして文民統制の一番大事な点は、私は国会における御審議であろうと思います。国会におきます御審議におきまして、文民であります防衛庁長官である私が申し上げていることは、これは責任を持って申し上げていることでございまして、国民の皆様にもそうしたことにおいて御理解を賜りたいと思っておる次第でございまして、今回の永野陸幕長の発言がございましても、基本的には私どもと矛盾しないということは私が申し上げたとおりでございます。  ただ、確かに昨今の情勢は厳しゅうございますので、十分に注視し検討を怠ってはならないとは思いますが、ただ、いま御指摘のございましたように、文民統制のあり方につきまして、国民の皆様が不安を抱かれるようなことになってはなりませんので、その点は私は責任を持って国会でも御答弁申し上げておりますので、その趣旨に従って御理解賜りたいと思う次第でございます。
  220. 塩出啓典

    塩出啓典君 わが国にとって防衛をどうするかということは、国家の存立の上からも非常に大事な問題だと思います。私たちはそういう点から絶えず情勢を分析し検討していく、国会でもどんどん論議をしていく、こういうことは非常に必要じゃないかと思うのでありますが、しかし、国の防衛は、外交とか、国境を越えた人間の交流とか、いろいろなそういうトータルな面で考えていかなくてはいけないのではないかと思います。そういう意味でこれは軍事力増強だけで対応できるものではない。そういう意味で、今回のこういう問題がありますと、どうも軍事力増強だけで防衛を対応していこうという、こういう印象を与えることになるのではないか。私たちもそういうトータルな面で総合的に考えていかなきゃならないのじゃないかと、このように思うわけですけれども長官の御所見を承っておきます。
  221. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 御指摘のとおりと考えております。
  222. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは次に、私は広島県におるわけでございますが、江田島には元海軍兵学校もあり、先般山火事等があって、全国的にもそういう意味で非常に有名なところでございますが、昭和四十八年十月に江田島町から防衛施設庁に陳情書が出されております。呉防衛施設局長あてに「油田島湾の大原地先海面の防波堤新設」という問題でありますが、この陳情書の内容と、それから防衛庁としてこれについてはどういう対応をされたのか、そのあたりの事情を御説明いただきたいと思います。
  223. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 御質問の陳情書は、十月の十二日付になっておりますが、呉施設局にこの陳情書を持って町長がお見えになりましたのは十月の二十日か二十二日ぐらいの間のことのようでございます。  陳情書の内容は、先生言及されましたように、江田島湾の中に二百メートルほどの長さで旧海軍が石を積んである。それが最近の開発の模様から見て、あるいは漁業の方法が変わったというようなことで危険を伴う状態になっておるし、また、江田島に防衛庁の施設があるということで産業の発展にも少なからず影響を与えておる。ついては、これを防波堤にするような補助金支援はできないかと、こういう趣旨の陳情でございました。  私ども呉施設局長の方では、この陳情を受けまして即座にその席で町長に対してお答えをしたようでございますが、その際には、この石をそこに設けたのは旧軍の行為によるものでございまして、現在の防衛施設庁の所管するところではありませんし、また、防波堤の設置を現在われわれがやっております周辺整備事業という形で採択いたしますことは、防衛施設である術科学校、幹部候補生学校等との因果関係がどうも立証することが困難であるというような趣旨で、そういう意味の周辺整備事業を採択することもできませんということで、陳情の趣旨は理解できますが、お断りをしたという経過になっておる、こういう報告でございます。
  224. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま説明がありましたように、この捨て石は、旧海軍が埋め立てをするために捨て石をした。しかし、戦争が終わったために埋め立てができないで石だけ残っちゃった。この石が大体長さ二百四十メートル、それから幅二十四メートルで、これは捨て石を積んだときは旧海軍のものであったわけでありますが、それが現在潮が引くと水の上にあらわれる、潮が満ちると水の下に没する。そのために、町長からの陳情書では、「暗礁となって附近を航行する漁船がしばしば接触、乗り上げ事故が多発し、漁船の破損、沈没があとをたたず漁民は不安な毎日を送っております。海上自衛隊の艦船にも、しばしば事故が生じていると聞いています。」と、こういうことで、願わくば、漁民の要望でもあり、この捨て石を利用して防破堤をつくってもらいたいと、こういう要望が出されたわけでありますけれども、いま申しましたようにこれは現在の自衛隊には関係がないと。  ところが、漁民の皆さんの立場からすると、あそこに大原飛行場というのがあるわけですね。ああいう土地は、戦時中もう有無を言わさず海面を埋め立てられた、それで補償は何もない。ところが、埋め立てたのはやはり旧海軍が埋め立てたわけですからね。旧海軍が埋め立てて使える方は自衛隊が引き継いで、海の中に捨てた石は捨てておいてこれは自衛隊は関係ないと。自衛隊は関係ないんなら、じゃ、飛行場も自衛隊は関係ないのだから返してくれと、こういうように私たち参りましたときに大分私もつるし上げられましてその気持ちも非常にわかるわけでありますが、恐らく旧海軍のものは何らかの手続で現在の自衛隊に移管をされたと思うのですけれども、そのときに結局飛行場だけ、いわゆる埋め立てた利用価値のあるところだけ移管をされて、海の底にあるものはそのままになっておる。そうすると、その間の手続はどう行われたのか、そして、いまの捨て石というのは一体どこの所属になるのか、それはどうなるんですか。
  225. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 御指摘のように、戦前は海軍兵学校の施設として大変有効に使われてきたところでございますが、その後、先生承知のように占領軍の使用するところとなり、占領軍が撤収いたしましてから国の財産の公正な使用という角度から防衛庁の海上自衛隊で利用してはどうかというお話がありまして、海上自衛隊の方がそれを利用さしていただくということで財産の受け渡しが行われてきておるわけでございます。ただ、その受け渡しを受けましたのは、漁民の皆さんからごらんになりますと御指摘のような点があるかと思いますが、筋立てた継承といたしましては、国有の財産を継承したわけでございまして、海中にある石のことまでは知ることもできなかったという状態が現実の過程でございます。  なお、御指摘ございましたが、いま海中にある石の上には、その後江田島町で同和対策事業ということで灯台をおつくりになって事故の防止に当たっておられるというふうなことは承知しております。
  226. 塩出啓典

    塩出啓典君 江田島町長さんも余り事故が起きるものですから、思い余って、海上保安庁にも相談をしたようでありますが、海上保安庁の方も予算がなくてなかなか標識も立ててくれない。そういうことで、やむを得ず同和対策事業で標識は立っておるんですね。だから、地元の漁民の人は大分なれていますのでそう事故はないわけですけれども、しかし二百四十メートルの中に二カ所だけぱっと標識があるだけですから、やはり年間で何件かのこういう事故は起きておるわけであります。  そういう点で、私はまず緊急の問題として、これは海上保安庁にお願いをしたいわけでありますが、海図にも載っていないわけですね。潮が引くと出るわけですから、これはもう海図の上から見れば陸上になっちゃうと思うんですけれどもね。そういうものがない。そういう点でやはり、緊急としては海図に記入するなりあるいは航路の問題にする通達を出すなり、こういうようにすべきではないかなと。この点海上保安庁の見解を承っておきます。
  227. 中山忠

    説明員(中山忠君) 私、実は水路関係の担当でございませんので、持ち帰りまして、水路の方で十分検討させていただきたいと思います。
  228. 塩出啓典

    塩出啓典君 長官、実はこの捨て石は大蔵省も関係ないんで、国有財産じゃないわけですから、現在。で、帝国海軍のやったことですから現在の自衛隊も関係ないわけだ。防衛庁も関係ないんです。それから、ここは漁港でもないから農林水産省も関係ないわけなんですね。港湾でもないから結局運輸省も関係ないわけなんです。どこも関係がないわけなんです。それは確かに法理論的にはよくわかるんですけれどもね。しかし、われわれはそういう法理論ということよりも常識的に考えて、帝国海軍のやった、帝国海軍というより旧海軍がやったものが放置されておるんですからね、それは当然やはり国が責任を持つべきじゃないか。まあ各省のお役人の方、いろいろ聞いてみましたけれども、それぞれ法律に基づいて厳正に執行している結果なんですから、結局責任はどこにあるかと言えば、やっぱりそういう法律がないというか、われわれ政治家に責任があるんじゃないか。まあいろいろありますけれども、やっぱり第一義的には防衛庁長官が責任を持って、何かいい方法はないかと。のければ、航行上は心配はないわけなんですけれども、現在漁業組合の皆さんたちは、のけるよりも防波堤つくった方が非常に安いし、しかも地元の漁民としてはみんな、避難港としてそこに漁港をつくってもらいたいと、こういう要望で、先般わが党の農林水産委員の古川議員も現地へ参りましていろいろそういう方面の努力はしているわけなんですが、少なくとも第一義的にはやっぱり防衛庁長官が責任を持って防衛庁の所管の方に、あるいはほかの省ともいろいろ相談をしてこの解決努力をするように、私はもっと責任を持ってやってもらうのがいいんじゃないか。特に江田島という町は、非常に防衛庁に対しても友好的な関係にありまして、また江田島町長を初めとして非常に協力をしてやってきておる点から考えまして、ひとつ防衛庁長官として、また閣僚の一人として、これは早急に解決をしてもらいたい、このように思うわけでありますが、その点どうでしょうか。
  229. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) この問題については、漁港の整備については逐次整備中であると聞いておりますけれども、まあ確かにいろいろと御指摘もございましたが、行政の権限であるとか、いろいろ所管の問題につきましては御理解をいただいておるようでございますけれども、確かに仰せのとおり、地元の皆様のお気持ちをただいま承りましたわけで、私もその解決努力さしていただきたいと思います。
  230. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、もう時間もございませんので最後に。  あそこの隣に大原飛行場という飛行場があるわけでありますが、約百万平米あります。で、あそこに津久茂小学校という小学校があるんですが、非常に老朽校舎で、その校舎を建てかえるためにこの旧海軍の使った百万平米の訓練飛行場の一万平米を払い下げてほしいと。どうもその学校には、自衛隊の官舎も反対側にできますのでその子弟も入れるための小学校をつくるわけでありましてね、町からも非常に強い要望が出されておるわけなんです。そして、急がなければならないのは、あの地区は離島振興法の適用を受けておりまして、これがもう五十四年度で切れるわけなんです。というのは、あそこは音戸大橋とか早瀬大橋という橋ができて陸続きになりましたので、これが指定が外されますと、校舎建築の場合三分の二の補助が二分の一に減るわけなので、財政の苦しい町としては早く払い下げていただいて、この年度に間に合わしたいと、こういうことでございますので、この払い下げの見通しと手続を速やかにやっていただきたい。このあたりの大体見通しについてお尋ねをしたいと思います。
  231. 古賀速雄

    政府委員(古賀速雄君) 先生のいまお話しの土地でございますが、大原訓練場の南の端の土地だと思うのでございますけれども、昨年来江田島町長からも大変熱心な御要請を受けておりますので、私どもとしましては、地元の事情もよく理解をいたしておりますので、財務当局とも相談の上措置をしたいということでございます。五十四年度で離島振興法から外れますと補助率も変わるということでございますので、それに間に合わせたいというつもりでおります。
  232. 内藤功

    内藤功君 永野陸幕長が三月二十八日防衛懇話会での講演で、防衛計画の大綱の修正の方に頭を向ける必要があると、こう述べました発言は、陸幕長が事前に防衛庁と打ち合わせをしたり、あるいは事前に了承を求めた上での発言でございますか。
  233. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 特に事前に了解を求めたというものではございません。
  234. 内藤功

    内藤功君 防衛庁長官は、従前国会の答弁におきましては防衛計画大綱の修正の必要は認めないと、こう言ってこられたと思います。そうしますと、国会での長官の御答弁、政府の答弁としてははっきりその必要を否定していることを、制服のトップの地位にある陸幕長が国会の外の、しかも防衛関係産業のトップクラスの経済人の方々の重要な、これは公的な場と言ってもいいと思うんですね、そういうところに出て——防衛庁長官は修正の必要はないと、こう言っておる、しかし陸幕長の方は頭を向ける必要があると。明らかにこれ違うんですね。矛盾という言葉をどう解釈するかは別として、違うんです。これは長官はどういうふうに見ておるかお尋ねをしたい。
  235. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 私は、従来この防衛計画の大綱を当面修正する必要はないと申しておるわけでございます。ただ、御承知いただいておりますが、防衛計画の大綱というのがございまして、その中には、これは私ども防衛計画の大綱に従っていたしておるわけでございますが、この四の「防衛の態勢」の中に、「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意された基盤的なものとする。」というふうに、情勢に重要な変化が生じたときには云々というふうには書いてあるわけでございまして、私どもはいまの防衛計画の大綱に従って進めておりますけれども、こうしたことがすでに書かれておるわけでございます。したがって、いま直ちに修正をどうするということは私どもは御答弁申し上げておるとおりに考えておりません。その点につきまして永野陸幕長も、いま当面修正するということを考えているということを申したわけではございません。  ただ、率直に申しまして、現在の情勢はまことに厳しいということは私も御答弁で申し上げておるとおりでございまして、特にそうした意味において重大な関心を持って注視し、分析検討を怠ってはならないと申しておるわけでございまして、したがって、いま直ちに修正を考えるということではないのでございますが、こうした防衛計画の大綱にもございますようなこともございますので、私どもは十分注意していかなければならぬということでございまして、したがって永野陸幕長の申しましたのも、決していま直ちに修正をするということを考えているわけではございません。しかし、こうした情勢の変化に対応するということは、われわれは不断に考えておかなければならぬことでございますから、そうした趣旨に出るものと思うわけでございます。したがって、基本的にと申しますか、決して矛盾しているわけではないと、かように考えるわけでございます。
  236. 内藤功

    内藤功君 やや苦しい答弁のように拝聴いたしました。防衛計画の大綱というものを修正の方向に頭を向ける必要があると幕長は言う。長官はいままでどおりその必要はない、ただ情勢はよく監視をしておく必要があるんだと。明らかにこれは違うのでありまして、私はこの二人の答弁、一致しているところもあるんですね、共通しているところもあるが、修正という点についていうと明らかに違うと、こう思います。これは押し問答になりますから先に進みますが……。  ところで、私は去年の栗栖発言以降の防衛庁の取り扱い、政府の扱いなどの動き、栗栖さんが統幕の最高トップとしてああいういろんな発言をする、それを受けて防衛庁長官なり総理がいわば追認的な発言をしていくというような一つのパターンが今度の場合もあると、こう見ているんです。つまり、これは制服主導、制服を前面に立てて物を言わすという形で軍事力増強、この場合は防衛力整備計画、防衛計画の大綱修正の方向に世論づくりをやっていくと、こういう動きだと私は見ておるんですよ。  それでいま問題なのは、こういう手続上の問題だけじゃないんだ。私は、それ以上に大きい問題は、陸幕長の言っておる内容ですな、おなかの中です、考え方、こういうものだと思う。さっきあなたは同僚議員の質問に対して、頭をこっちの修正の方向に向けたという程度のことだと言ったけどね、陸幕長はそれなりの制服としての——私らと考え方は違うけど、見識もあり判断もしておると思うんですよ。で、永野陸幕長がきのうの講演で、二十八日の講演で、恐らく防衛計画大綱の修正をする場合には、その前提には情勢の大きな変化、場合によっては重要なる変化というものがなきゃいかぬということは知っての発言だと思うんですね。これはもう聞くまでもない。そうすると永野陸幕長がきのうの講演で、これが情勢の変化だと、大きな変化だと言うたことがあるはずなんです。新聞では拝見しております。しかし、新聞の記事は短いところで記者さんが苦労して書くんですからいろいろでございます。そこで、永野陸幕長が言っておる情勢の大きな変化、あるいは重要な変化というものは何でございましたでしょうか。
  237. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 私どものいま手元にございますのは、職員が聞いたメモでございますので正確ではございませんけれども、永野陸幕長がいま申し上げました情勢の変化についておっしゃいましたことを要点だけ申し上げてみますと、たとえば極東ソ連軍のD改編、Dというのは師団のことでございますが、師団の改編がかなり進んでおるというようなことも申しておられます。それから国後、択捉の情勢も申しております。それからミンスクの配備の予想といったようなこと、あるいはまたバックファイア、航空機でございますが、バックファイアの配備といったようなことも指摘しておるというふうに聞いております。
  238. 内藤功

    内藤功君 それだけですか。こういうのは、極東ソ連軍のD、これが改編されるというのはもう毎年のようにやっているわけです。言うなればソ連が建国以来、日本の旧陸軍もソ連の師団は一番これ重視しておったわけなんですね。ですからこんなことはもう毎年やっていることなんです。「個々の事象」です、これは。この防衛白書の言葉をかりて言えば。個々の事象じゃないでしょう、情勢の変化というのは。国後、択捉だってそうだ。国後、択捉の問題は、すでに先般の問題で長官が答弁したとおり、大きな変化ではないということはもうはっきり言っているんですね。空母ミンスクの問題にしてもあるいはバックファイアの問題にしても、これはやはり日本をめぐる大きな情勢の、防衛計画の大綱に修正を加えるほどに至る変化として、もし陸幕長が言ったとすれば、日本の陸上自衛隊もずいぶんこれは程度が低いということになるわけです。もっと大きな、計画の修正に至るべきものがあるはずなんだ。それは何でございますか。はっきり言ってください、そこは。
  239. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほど直接的なことを申し上げましたが、そのバックといたしまして永野陸幕長が最初にお話しされたことは、一つは、ソ連軍事力の質量にわたる充実ということを一般的に申されたようでございます。それからその中身としましていま申し上げたようなことが触れられたと思うんです。それから全般的な軍事情勢の変化といいますか、たとえば中東情勢の問題あるいはベトナムを中心とする変化といったようなことを述べられたように聞いております。それからアメリカの最近の国防白書に触れられて、アメリカの対ソ対応の問題あるいは最近発表されましたアメリカの上院の軍事委員会の報告、そういったようなことにも全般的に触れられて、先ほど申し上げた具体的なことに触れていかれた、こういうふうに聞いております。
  240. 内藤功

    内藤功君 非常に重大なことなんですね。ソ連の軍事力の増強、これは単に軍事力の、火砲の射程が延びたとか、戦車の性能がよくなったとかいうことではないんですね。ソ連のやはり戦略的な問題、さらにアメリカが——いまあなたはちょっと落とされたけど、新聞によるとアメリカの方向が中東指向している。第五艦隊をつくって第七艦隊の一部をそっちに回している。中東にアメリカの戦略方向が指向しつつあるというようなこと。それからアメリカの国防白書、そしていま最後に言われたアメリカのナン上院議員を代表とする太平洋研究班の報告書、こういったものが防衛計画の大綱を修正すべき情勢として彼は話したと、こういうふうにあなた方は見ているわけですね。
  241. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 政府委員からも御答弁申し上げましたいろんなことにつきまして、私どもは、そういうことがございますから、十分注意して見なきゃならないと。また私は、御答弁におきましても、要するに最近のソ連軍の増強に伴いますところの米ソの軍事バランスについては厳しい情勢だと申しておるわけでございまして、これらにつきましては私ははっきり申し上げておるわけでございます。しかし、そういたしましても、決してそれは防衛計画の大綱を修正する必要はない。防衛計画の大綱の前提となるべき基本的な枠組みについて変わったとは思わないと、こういうふうに申し上げておるわけであります。  また、いまお触れになりましたナン上院議員の報告書につきましても、私どもはそのようなことのためにどうするということではございませんで、そういう考え方もそれはあるということはその報告書で言っておりますけれども、私どもはそれをもって防衛計画の大綱を修正すべき変化であるとは考えておりません。  以上でございます。
  242. 内藤功

    内藤功君 長官のお答えは一応わかりました。ただ、やっぱり残るのは永野陸幕長の発言と考え方ですね。  永野陸幕長の考え方は、幕長がここにいないから塩田官房長がかわって述べられましたが、かなり世界的な政策的な規模で考えて話しているようだ。ただ、先ほどから繰り返しているように、防衛計画の大綱によれば、「情勢の大きな変化とは、個々の事象の変化を指すものではなく、」、こう言っておる。そして、しからば大きな変化とは何ぞや。ア、イ、ウ、エ、オとしてあって、日米安保体制の問題、米ソ関係、中ソ関係、米中関係及び朝鮮半島の現状、——詳しくは言いませんが、この五点に分けて、こういう指標について変化があった場合、たとえば日米安保体制が有効に維持されるとか、米ソ関係が核戦争またはそれに発展するおそれのある大規模な武力紛争を回避しようとするであろうとか、中ソ関係が対立の根本的解消に至らないとか、米中関係は、今後とも相互の関係調整が続けられるだろうとか、朝鮮半島はおおむね現状で推移するであろうとか、こういういわば防衛計画大綱に挙げている例示としての大きな変化の問題と、その定立と永野発言の関係はどう理解したらいいですか。永野発言との関係。
  243. 原徹

    政府委員(原徹君) いま先生が御指摘になりましたそれぞれの関係につきまして私どもが考えますると、それぞれが少しずつ変わっているというところは私どももあるとは思っております。しかし、全体の枠組みと申しますか、そういう点についてはまだ変化がないという判断をいたしているわけでございまして、個々の点について私どもも全く変化がないというふうには考えていないわけでございます。  で、陸幕長も、そういうことでありますから、いま直ちに防衛計画の大綱を修正すべきであるということを申しているのではございません。ただ、現在から、これから先しばらくの間は非常に重要な時期であり、長官が申します非常に厳しい時期であるということでございますから、それを注意深く見守って、今後の推移を見定めなければ、それは防衛計画の大綱を修正するという段階にはならない、そういうことでございまして、その点については私は永野陸幕長と私どもと全く意見が違っているということはないというふうに考えております。
  244. 内藤功

    内藤功君 ところで、アメリカ軍との関係について一つ伺いますが、きょうは陸上でありますので陸上に限って言いますが、先日陸上自衛隊が米軍座間基地で行われた米軍の作戦図上研究に、図上演習に参加をしたという報道がされましたが、事実関係はどうですか。
  245. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 昨年の十月三十一日から十一月の二日にかけまして、在日米軍が座間基地でいわゆる指揮所演習を行いました際に、陸上幕僚監部の幕僚が見学をいたした事実がございます。
  246. 内藤功

    内藤功君 何名ぐらいですか。階級それから部署は。
  247. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 階級その他はちょっと詳細に記憶しておりませんが、十数名だったと記憶しております。
  248. 内藤功

    内藤功君 この予定戦場、対象地域はどこですか。日本列島の一部ですか、違いますか。
  249. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 日本列島でなく、その他の戦場を想定した図上訓練だったというふうに了解しております。
  250. 内藤功

    内藤功君 その他の地域はどこですか。ヨーロッパですか、アジアですか、どこですか。
  251. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) ヨーロッパと聞いております。
  252. 内藤功

    内藤功君 ヨーロッパのどこですか。
  253. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) アメリカの指揮所演習から——私ちょっと詳細には現時点において掌握しておりませんけれども、NATO正面ではなかろうかと考えます。
  254. 内藤功

    内藤功君 日本にいる部隊が、日本にいるアメリカ軍がNATO正面での戦争の図上演習を日本でやると、これは不思議なことですね。日本とNATO、確かに政治的に経済的に関係がある。しかしNATOで起きた戦場の訓練を日本にいる部隊がやる。ヨーロッパと言うけれども、これは日本に近い、ずばり言ってヨーロッパロシア、あるいはシベリアとかあるいは朝鮮半身、ぼくの言ったこの三つの中に入るんじゃないですか。
  255. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 私の聞きましたのは、どうもその三つは入っておらないように聞いております。
  256. 内藤功

    内藤功君 これは、いまぼくの言った三つに入っているという答えをしたらば大変なこれは問題になると思うんで、参事官が答えにくいのも無理はないかもしれないけれども、私はこれは違うと思います。NATO正面じゃないというふうに思います。  それじゃ、ヨーロッパの戦場での戦争を日本の陸幕の幹部はなぜ見に行くんですか。何でも見に行くんですか。
  257. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 見学の目的は、アメリカの指揮幕僚体制の研究ということで、このテーマはたまたまヨーロッパのようでございましたが、アメリカが実際に図上演習をどういうふうにやるのか、指揮幕僚の体制をどういうふうにやっておるか、これを見学さしていただいたと承知しております。
  258. 内藤功

    内藤功君 今後もこういうことが、いろんな区域を対象にしたものが行われる、そのときにはこういうことが行われるんだろうと思います。  それで今度は米側が、陸上自衛隊のCPXといいますか、図上演習に参加または見学するということもいま行われているわけですか。あるいはこれから行われるわけですか。
  259. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 新聞記事には、陸上自衛隊が日本の地形を想定した図上作戦演習に初めて米陸軍の幹部の参加を求めるというふうに報道されておりましたが、防衛庁としては、いまはこういう具体的な計画を持っておりません。
  260. 内藤功

    内藤功君 これは、共同防衛のガイドラインの実施の中で恐らく問題になってくると思います。引き続きこれは追及をしたい。  さて、この問題の最後に私は一言申し上げておきたいんです。  私は、永野言明の動機というのは、最近のやはりアメリカの極東アジア戦略へのいわば追随的な対応だと思うんです。いま日米防衛ガイドラインに基づく共同作戦計画の作業が進んでおると聞いております。さらに、防衛庁長官は七月に訪米をされてペンタゴンとの戦略協議もやられると聞いておる。ナン議員のレポートというのは、非常にぼくは、ナン議員の上院における地位からいって重要な内容を持っていると思う。第七艦隊のインド洋、中東進出のいわば穴埋めに自衛隊がアメリカから期待をされていることも事実である。こういうアメリカの要請で日本の軍事分担の増強を図る考えで、私は、まず制服組の幕長をして発言をさせ、あるいはこの発言を突破口にして漸次軍事力増強、防衛計画大綱修正の方向に世論を誘導していくんじゃないかと、きのう来のことを、いままでの歴史的な動きを考え合わせて感じておるところだということを申し上げたい、率直に。  今後引き続きこの問題追及していきますが、陸幕長のきのうの講演の内容は、今後の質問を正確にする上で必要なので、これはぜひ私に資料全文を御提出願いたいということをお願い申し上げますが、いかがですか。
  261. 塩田章

    政府委員(塩田章君) テキストがございませんものですから、どういう形で御要望におこたえできるか——テープをとっておると思いますので、それを起こしてみて、できます限り御要望に……
  262. 内藤功

    内藤功君 テープでもいいから。
  263. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 御要望におこたえできると思います。
  264. 内藤功

    内藤功君 では、残念ですが、次の問題がありますので、問題を進めます。  これは一九七七年九月二十七日の横浜でのファントム機墜落事故の問題、それに関連する航空事故の問題。はや事故より一年半たちました。警察並びに法務省来ておられると思いますが、まず法務省には、椎葉寅生さん、悦子さん御夫妻から、五十三年一月二十日付で横浜地方検察庁に、業務上過失致死罪等の告訴状が提出されておりまするが、この処理状況いかん。まずこれだけお聞きします。
  265. 佐藤道夫

    説明員(佐藤道夫君) お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの事件につきましては、事故直後から警察当局におきまして捜査中であったわけでございますけれども、昨年一月、被害者の方二名から横浜地方検察庁に告訴がなされまして、検察庁としても所要の捜査を進めておるところでございますが、いずれにいたしましても、現在警察当局において捜査中の事件と同一の事件でございますので、いずれ警察から送致がなされるかと思いますので、この事件とあわせまして適正な捜査を行うということになろうかと思います。
  266. 内藤功

    内藤功君 実務上の処理のお話を伺いました。  そこで、そうすると警察であります。警察にお伺いしたいのは、交通事故でも何でも、自動車事故でも何でも、その運転手をまず調べなきゃならないのに、この事件では不思議なことに、パイロット、整備士など米軍側の関係者から、いわば加害者の方から直接事情を聞けというのに、まだ聞いていないようです。それから、直接事故原因とされるいわゆるライナーの組み立て場所、組み立ての日時、それから組み立てを行っている人間、その実施している部隊、そういったものがだれかということについてもまだはっきりしていない。  園田外務大臣は、去年の三月二十四日の予算委員会で、わが党の山中議員の質問に対して、たしか、外交交渉も必要なら行うと、こういう頼もしい答弁もしているわけですね。これ、どうなりましたですか。
  267. 水町治

    説明員(水町治君) 警察といたしましては、事故の重大性を十分認識しておりますので、関係者の刑事責任の有無につきまして鋭意捜査を進めているわけでございます。この捜査の過程におきまして米側との協力関係が必要でございますので、すでに米側から各種の資料も得ておるわけでございますけれども、さらに必要な資料につきましては、外交レベルの交渉によりまして、現在米側に対して協力を要請しているところでございます。
  268. 内藤功

    内藤功君 質問に答えてないんですね。パイロット、整備士などの事情聴取、それからライナーの組み立て場所、日時、部隊、これはどうですか。
  269. 水町治

    説明員(水町治君) ただいま御指摘の点につきましても、アメリカ側に対しまして、外交レベルにおいて協力の要請をしておるところでございます。
  270. 内藤功

    内藤功君 ちょっと大きい声出して失礼ですがね、何年かかっているんです。これは足かけ三年ですよ、まる一年半。普通の交通事故の事件だって、お巡りさんすぐ来て巻尺でぱっとやりますよ。どういうことです、これは。回答書が米軍から来たんですか、来ないのですか。このお話もないんですが、この点どうなんですか。
  271. 水町治

    説明員(水町治君) 本年の二月の初めでございますが、米側から回答は得ておるところでございます。
  272. 内藤功

    内藤功君 その回答の内容を言ってください。また、十分なものかどうかという点。
  273. 水町治

    説明員(水町治君) 内容につきましては捜査の中身になりますので答弁は差し控えさしていただきます。しかしながら、その回答につきまして私ども検討いたしましたところ、さらに米側に対して協力を要請すべきであるというふうに考えまして、再度協力の要請をしておるところでございます。
  274. 内藤功

    内藤功君 再度やったということは、中身が捜査上不十分、不満足なものだったからですね。
  275. 水町治

    説明員(水町治君) さらに必要な事項があると、こういうことでございます。
  276. 内藤功

    内藤功君 ということは、不満足だということであります。  外務省に伺いますが、園田外務大臣ここにはおられませんが、そういう答弁をしておられるのは御承知と思いますが、これは外交交渉をもってしても行うと。この後追いはどうなりましたですか。
  277. 丹波実

    説明員(丹波実君) お答え申し上げます。  園田大臣が先生のおっしゃる趣旨の答弁をしておられることは十分承知しております。本件につきまして経緯を御説明いたします。  ただいま国際刑事課長からも申し上げたところですが、昨年の七月、警察庁の方から事故機のパイロット及び整備員からの直接の事情聴取並びに米本国におけるアフターバーナー部の組み立ての状況、時期、場所等について米側の協力を得たいと、この協力がなければ必要な事故の調査が進められないと、こういう要請がございまして、私の方から、昨年の七月の二十日及び昨年の九月、二回にわたりましてこの要請をアメリカ側に伝達いたしました。その際、本件事故についてのわが国国民感情について詳細るる説明したつもりでございます。これに対しまして、先ほども課長の方から申し上げましたけれども、本年の二月米側より回答があったわけでございますが、これを警察当局の方に伝達いたしましたところ、さらに再び米側の協力を求めてほしいということでございましたので、先般二月二十三日に再び米大使館及び横田の代表者を外務省に招致いたしまして、国際刑事課長とともにわが方の必要な事情をるるさらに説明の上協力を求めて現在に至っておると。  本件につきまして時間がかかっておることにつきましては、私たちとしても遺憾に思っておりますけれども、さらに今後米側に協力を強く求めていきたい、こういうふうに考えております。
  278. 内藤功

    内藤功君 ファントム墜落事故に対する刑事責任は、いまの答弁のように決着がついていない。しかも非常なおくれであります。厳重にやはりアメリカ合衆国政府に対して協力を申し入れるべきである。アメリカ軍にも申し入れるべきである。  私は外務省と警察にお願いをしたい。あなた方の考え方を聞いておきたいんですが、これは日米合同委員会の正式議題にすべきであると思う。日米地位協定の処理に関する問題は、合同委員会に提起することができるんです。最近では沖繩米兵の交通事故問題なども合同委員会にかけておる。これが独立国の政府として、行政機関としては私は当然の責任だと思う。ひとつこの正式議題にするということについてどう考えるか。少なくともこの問題を外務省、警察庁は真剣にやはり検討する必要があると思いますが、どうです。
  279. 丹波実

    説明員(丹波実君) 先生承知のとおり、本件の事故の原因究明に関しましては、合同委員会の下にある事故分科会におきまして日米間で協議した結果、一応の結論は去年の初めに出しておるわけでございます。で、現在問題になっておりますのは日本の警察当局の、日本独自の捜査過程において米側の協力が必要だと、こういう問題でございますので、本件はやはり外交ルートで取り上げるのが適当ではないかと、こういうふうに考えております。
  280. 内藤功

    内藤功君 警察はどうですか。
  281. 水町治

    説明員(水町治君) ただいま丹波課長からも申し上げましたとおり、今回私ども協力の要請を行っております中身でございますが、これが米本土における状況でございますので、やはり外交交渉を通じて協力の要請をしていきたい。そのように外務省にお願いしておるわけでございます。
  282. 内藤功

    内藤功君 これはもうやはり、言葉は悪いけれども責任のなすり合いのような感じがしますね。  ファントム墜落事故は日本国民に、さっき国民感情というお話があったが、非常に大きなショックを与えたわけですね。このファントム事故、私は四つの大きな問題があると思う。一つは、自衛隊のヘリが日本国民の被害者を救出せずにまず加害者であるアメリカのパイロットの救出に向かったということ。二つ目は、原因究明のために日本政府機関アメリカ軍関係者から直接事情を聞いていないということ。聞けないということ。三番目は、米軍機の機体を米軍は勝手に本国に持ち帰ったということ。四番目は、米軍のファントム機が引き続き厚木基地を使用しておって撤去も移転も何の遠慮もしてないという問題です。  これらについて、事故後どのような改善措置をとったのかということを、まず防衛庁、防衛施設庁にお伺いしたい。
  283. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 御承知のように、昭和五十二年九月二十七日に事故が起こったわけでございますが、その三日後から合同委員会の下部機構であります事故に対します特別委員会を開催いたしまして、両国の間でまずとりあえず原因究明に取りかかったということは御承知のとおりであります。そしてその後、原因が究明されましてから後は、米軍は実際に事故の起こりました技術的な原因を追求をして、それの対応策をとることを実施いたしました。それは内容としましてはアフターバーナーの組み付けの不良原因を除去するというために必要な措置でございます。  それと並行しまして、その委員会で結論されましたもう一つの結論は、厚木付近におきます飛行経路の修正によって、万一技術的な原因で事故が発生いたしました場合にも住民に対する被害を最小限に食いとめる方法として、飛行経路の問題を取り上げられて、その結論が出たわけでございますが、この結論に従いまして、厚木飛行場の管制を行っております海上自衛隊と米軍との間で検討を行った上で、昨年の七月三日からレーダー誘導経路、飛行高度について改正を行うことといたしまして、航空機の整備点検、飛行安全について一層の十分な配慮をしておるという状態でございます。  さらに、分科委員会で取り上げられました問題といたしましては、事故の発生直後の地上におきます被災者の救急において欠くるところなかったかという反省の問題がございます。それにつきましては、被害者の迅速でかつ適切な救難を一層確実に実施するために、米軍も含めまして現地の日本側の関係諸機関すべての緊密な連携活動を一層高めなければならないということで、いまそのための措置を続けておるところでございます。  一方におきまして、被害者に対します賠償その他につきましてはわれわれの方で担当いたしまして、賠償も現時点において進むべきところまでは進捗をしておるというのがその後の状態でございます。
  284. 内藤功

    内藤功君 私がわざわざ四点にわたって指摘をした最も大きな問題については、何もやっていないということがこれではっきりしたわけです。私は、まずその一つだけ言いますが、住民の救出について、自衛隊の航空救難に関する訓令第二条によりますと、航空救難というのは自衛隊の航空機の乗員の救難だけだと。つまり、それと航空機の誘導護送と情報収集だけだと。住民の救援はこれに入っていない。航空救難に関する訓令を住民も救難できるように変えるという話が当時の長官からちょっとあったようですけれども、その作業はやったのかやらないのか。やってないですね、これは。
  285. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) ただいまお尋ねの航空救難に関する法的な根拠並びに関係法令のことをちょっと御説明申し上げますと、根拠は、御承知のように自衛隊法第八十三条の「災害派遣」に関する規定でやっておるわけでございますが……
  286. 内藤功

    内藤功君 それはわかっているんですが、やっているのかやっていないのかという質問ですから。
  287. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) はい。——それで、御指摘の航空救難に関する訓令のほかに——これは自衛隊機にかかわる航空機救難の訓令でございまして、自衛隊に属さない航空機事故が発生した場合、捜索、乗員の救助等につきましては自衛隊の災害派遣に関する訓令、これは昭和二十九年防衛庁訓令第一二号というのがございまして、自衛隊機以外の航空機にかかわる救難業務を災害派遣という形で実施をいたしております。
  288. 内藤功

    内藤功君 訓令自体には手をつけてないということはもう明らかですね。  しかも、もう一つ言いますと、米軍機、自衛隊機の事故防止と災害対策の問題ですが、これは施設庁に伺いますが、三月五日に防衛施設庁は東京都福生市において、米軍横田基地、自衛隊立川基地、入間基地、そして関連の地方自治体、消防、警察など約三十八の関係機関を集めまして会議を行っておりますが、これはどういう会議ですか。
  289. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 先ほど御答弁の最後に救難救急体制の問題について申し上げましたのですが、実は、この横浜事故の反省といたしまして、事故直後の関係機関の緊密な連携による動作が大変重要であるということを改めて思い知ることがございましたので、昨年の九月の二十一日に防衛事務次官及び米軍関係につきましては施設庁長官からそれぞれ部内に指図をしたところでございますし、また関係各省にもその御依頼を申し上げましたが、事故発生周辺の地域にあります関係各公共機関は一体となって事故の直後における対策をしようと、そういうことについて防衛庁、防衛施設庁は関係機関に対して積極的に働きかけて、皆さんの御協力のもとでその効果が効果的に上がるように措置をしたいということを考えて、指示をしたところでございます。  その次官通達あるいは施設庁長官通達を受けまして、末端機関であります東京防衛施設局におきまして、三月五日に横田周辺におきます御指摘の関係機関の方々を御参集いただきまして、われわれの意図するところを申し上げ、この問題についてそれぞれの立場での御意見を寄せていただいて、ひいては事故発生直後の全機関の総合力が有機的に効果を発揮するようにという措置を進めておる、そういう次第でございます。
  290. 内藤功

    内藤功君 いまお話しの、米軍及び自衛隊基地周辺で米軍、自衛隊機の航空事故に関する救援活動での協定案なるものができておりますね。協定案、規則案というものを出しておるわけですが、問題はその内容であります。  まず、協定案の名称は、そちらからお出しになった資料を拝見しますと、「米軍又は自衛隊の航空事故及び航空事故に伴う災害が発生した場合の連絡調整に関する協定案」と、こうありますが、つまり航空事故と航空事故に伴う災害の二つの内容があるわけですが、その航空事故の方、つまり飛行中の航空機が故障をしたり火災を起こしたり緊急に不時着するというような場合ですね。わが国ではこれはもう非常に危険でありますが、この協定書についておるところの航空事故通報経路図という——「米軍機の例」って、こういう図がついているのですよ。これは防衛施設庁のつくった案です。これを見ますと、米軍や自衛隊から各機関、各自治体への通報がなされるようになっていない。横浜の事故の場合も米軍からは緊急連絡が日本には入ってこなかった。消防や警察に入ってこない、都道府県に入ってこない。ここが改善されない限り、私は航空事故対策にはならぬと思うのです。いまの図面をでっかくしますと、これが——被害の関係で一番大事な消防と警察に入ってくる情報経路は、目撃者から一一九番、それから警察へは一一〇番。飛行機が、爆弾を積んでいるかもしれないのが落っこってこようとするときに、これが結局活動の端緒になる。そうして米軍、自衛隊、その当の飛行機を飛ばしている大もとである米軍や自衛隊からは、消防に情報がいくような経路は、この図では書いてないのです。これは協定案についているものを拡大したわけです。そういうことになっているのですね。  私は、ここの米軍から——米軍はしょっちゅう演習をやっているわけですよ。いま爆弾積んだ、それから原爆積んだ飛行機が事故を起こしたと。それ逃げろとか、それ消せとか、それ何やれという演習をやっておるわけです、米軍、自衛隊の連中は。ところが、日本人の上に差しかかってきた災害に対して、情報を的確に消防、警察に知らせるということが何の規定も法制的な保障もないということでは、これはもう根本が欠けているというふうに思うのですね。この点は一体どう考えておられるのかという点です。
  291. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) いまお示しの航空事故経路図、それと類似のものを確かに防衛施設局において会議の資料として配付しておる次第でございますが、これはその列席関係者に一つの共通の認識を得るための便宜として、たたき台として提供した素案でございまして、このとおりするというような関係のものではございません。  ただ、御指摘の、そこで米軍からの通報の経路がないではないかと、事故の目撃者からの経路だけしかないではないかというお話でございますが、事故の目撃者から通報するのはこれは当然起こることでございますが、それ以外に米軍自身、事故を起こした場合に防衛施設局ないし関係の警察等に通報するのは当然でございまして、たとえばこの図表でごらんいただきましても、米軍から防衛施設事務所との間では常にやりとりができるようになっております。防衛施設事務所と申しますのは米軍基地の最寄りにございまして、最もその内容がお互いにわかっているというところでございますので、とりあえずの窓口はそこになろうかと思います。
  292. 内藤功

    内藤功君 それではだめなんですね。やはり消防というものに正確な情報を与えなければね。私は、被害救出のまず第一歩は、消防への情報、さらに警察への情報、市町村、都道府県への情報だと思います。それは米軍が施設局に言うのはあたりまえでしょうが、それではもう後手後手だということを申し上げたい。——ちょっと時間超過しましたが、もう少しで終わりますから。  そこで、いま話が出ましたので自治省にお伺いしたいのですが、自治省、特に消防庁は、昭和五十三年十二月十二日付で通達を出されたやに承っております。この内容は、「自衛隊又は在日合衆国軍が使用する飛行場の周辺地域における航空事故に関する連絡調整体制の整備について」というものであります。この中で、「緊急連絡体制の整備に関する事項」の中で、「航空事故発生時における自衛隊からの連絡要員の派遣希望場所(消防現地指揮本部等)」という項目がございます。消防の現地本部が置かれ、その場合「自衛隊から連絡要員を派遣する」となっております。また、「現地の消防機関等の責任者は、派遣部隊」、これは自衛隊の部隊ですね、「の長と作業内容、担当部署等について調整のうえ派遣部隊の長に対して必要な指示を行う」となっております。  そこでお伺いしたいのは、消防庁がかような通達を出したについては、防衛庁、防衛施設庁と十分連絡了解を得た上で出されておるものと思いますがどうか。  それからもう一点。これは消防がこういう航空事故を処理をする上で最も合理的な方法としてここに記載したものと思いますが、その点について自治省消防庁の御見解を伺いたいと思います。
  293. 中川登

    説明員(中川登君) いまの点、二点あったと思います。一つは防衛庁、防衛施設庁の件ですけれども、これは十分に協議して行われております。  もう一つの点におきまして……
  294. 内藤功

    内藤功君 いいですか、ちゃんと覚えてくださいよ。消防として、必要にして最も合理的な対策として書いたものだろうと、こういうことですよ。
  295. 中川登

    説明員(中川登君) そのとおりでございます。
  296. 内藤功

    内藤功君 そのとおりですね。ところが、防衛施設庁がさっき私が言った、三月五日に関係自治体機関の打合会で出しました分担表というのがあります。この分担表によりますと、連絡事務所設置の主務機関は自治省消防庁じゃなくて、自衛隊機が落ちた場合は自衛隊、米軍機の場合は施設庁になっておるわけです。消防の方の言われるのは、消防のつくった本部に自衛隊の幹部に来てもらってそこで十分打ち合わせをして、自衛隊も災害救助のために動いてもらいたいと。これは防衛庁、施設庁と十分協定連絡の上、必要合理的なものとして出したと、こう言っておるんです。しかし、実際三月五日に配られた分担表によると、これはもう自衛隊あるいは施設庁が主務機関として連絡所を設置して、そこに関係機関いらっしゃいと、消防庁もいらっしゃい——逆なんですね。火を消す消防の方、救難の消防の方からいけば、消防がつくった本部に防衛庁いらっしゃい、自衛隊いらっしゃいと、これは話がついていると言うんです、いまのお話では。ところが一方では、防衛庁、防衛施設庁が連絡本部を主務機関でつくって、そこにお医者さんもいらっしゃい、警察もいらっしゃい、消防もいらっしゃいということになっている。これは私は総括質問で、閣内の問題として聞いてもいい問題だと思うんですね。一番大事な問題がかように分かれておるということが私は非常に不思議でならない。一体これはどういうわけかお伺いしたい。
  297. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) たびたび申し上げておりますように、三月五日に席上で配付しました資料は、私どもの方で、関係機関の方々の初めての会合に際して、認識を一つにするために一つのたたき台として原稿を提出したというだけでございまして、これによって取り決めてそれに従うというところまで熟しておるわけのものではございません。今日これを各機関においてそれぞれ主体的な御判断を願っておるという性質のものでございます。  その次に、御指摘の連絡事務所の問題でございますが、いま内藤委員のお話しは、連絡事務所においてあたかも関係機関を統制指図するセンターの連絡事務所というふうな御認識のような御質問でございますが、これは全くそういうことを考えておるわけではございませんで、早く来るものもあれば遅く来るものもある、あるいは一方の情勢がどうなっておるかということを承知したいものもある、そういう混乱の火急の時期におきまして、情報のセンターとしてそこに事務所を設置し、お尋ねいただく方々にそれをお知らせする、あるいは皆さん方の御要求に応じて便宜を提供するという性質の連絡事務所でありまして、統制指揮、そういう性質の任務を持ったものとは私どもは考えていないわけでございます。
  298. 内藤功

    内藤功君 時間が超過しましたので、最後に一つ。  この横浜のファントム事故の教訓は、さっきも私が言いましたように、大きく四つの教訓があると思うんです。  一つは、米軍機がいまこの日本国民の上空を、爆弾——その中には原爆もあるかもしれぬです、爆弾を抱えて飛んでおります。本当にこういう状況であります。しかもその米軍機はよく事故を起こすんです。新聞報道にはあんまりされないかもしれないが、エンジンの不調、エマージェンシーというものが起きて飛んでいる。そして、それは米軍の方は施設局には知らせるかもしれないが、肝心の日本国民に、主人公である日本国民にはこの情報を知らしめる方法がない。しかも、これをとれと言っているのにまだとられていない、この問題です。特に、消防なり警察なり市町村にどのようにこれを連絡するか。何にもとられていないということ。  二点目は、事故が起きた後の市民の保護というものについての規則がこれが十分でないという問題です。  それから三つ目は、再発防止のための事故後の保障措置、事故調査の徹底というものが、軍事秘密優先のためにこれが非常におくれておるということです。  四番目は生活補償、きわめて不十分だということです。  私どもは、こういうもとになっておるアメリカ軍、外国の軍隊の基地というものが日本にないことが一番いいと、これを要求しておるんです。しかし当面は、こういう基地に伴う人間の命の侵害に対して、緊急な最小限の是正措置をとるべきだということで申しておるわけでございます。今日のような対策のおくれというものは、横浜事故の被害者のとうとい経験から見て、こんな程度のものをやれということで横浜の事故の被害者は亡くなったわけじゃないと思うのであります。もっと真剣にこの航空事故の対策をやることこそ横浜事故の被害者の霊に報い、そして、この経験を繰り返さない方法であるということを私は最後に申し上げまして、まだ申し上げたい質問がありましたが、これは後日に譲りまして、私の質問を終わりたいと思いますが、何か長官その他から御答弁があれば最後に承っておきたい。
  299. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 御指摘、一つ一つそれぞれ私どももよく理解できるところでございます。  ただ、お話の中に、情報が米軍から出されていない、あるいはそれを修正する措置がとられていないという御指摘がございましたが、情報は出されておりますけれども、それが横浜の反省では、被害者の救済のためにはもっと早く伝達をされて関係機関協力が結集されなければならなかったという反省のもとに現在とっておる措置でございまして、出されておる情報をさらに一層速やかにどうすれば行き渡って被害を最小限に食いとめられるかと、このための道程の問題でございますので、その点は御理解を賜りたいと思います。
  300. 内藤功

    内藤功君 重ねて努力要求いたします。
  301. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほど内藤先生のお尋ねの最後に、陸幕長の発言につきまして要旨を提出してもらいたいという御要望がございまして、私、テキストはないけれどもテープを起こして御要望にこたえられるんじゃないかということを申し上げましたが、まことに恐縮でございますが、私どもの職員が現場に行ってメモはとっておりますけれどもテープはとっていなかったそうでございますので、この点をまずお断りを申し上げたいと思います。  それからまた、この行事そのもの、講演そのものが民間団体の行事として行われたものでございますので、私がこの席でその取り扱いをお約束することもいかがかと思いますので、この点もひとつ取り消しをさせていただきたいと思います。恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。
  302. 内藤功

    内藤功君 そうなりますと話が違ってきたのでもう一遍ぼくは言わざるを得ないんですが、メモに基づく発言のできるだけ正確な内容を、今後の質問を正確に——きょうで終わったわけじゃないですよ、後まだやりますから。その質問を正確にするために出していただきたいんです。
  303. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 主催者ともよく相談さしていただきたいと思います。
  304. 内藤功

    内藤功君 主査の方でもしかるべきお取り計らいを願います。
  305. 瀬谷英行

    主査瀬谷英行君) 以上をもちまして防衛庁所管に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会