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説明員(前田光治君) お答えいたします。
この電気通信設備を競争入札で購入した場合には、どういう点が困るのかという御質問かと思いますが、これはいろいろな点で公衆電気通信サービスの提供ということに非常に大きな支障を来すことになると存じております。
まず第一点でございますが、競争入札で買うということになりますと、いろいろな国のいろいろな会社から物が入ってまいりますので、その製造会社によってまちまちな品物で国の中の電気通信設備が構成されるということになるわけでございます。そういたしますと、当然のことながら公社の行っております大きな仕事でありますこれらの機械を保守する、メンテナンスの作業でありますとか、その機械あるいは電話局を設計したり建設したりする公社の主たる
業務、これが著しく能率が低下をするということがございます。それから、新しいサービスをわれわれ次々と追加をしていきたいと思っておるわけですが、こういった場合にも
全国にあります装置がいろいろまちまちになりますと、改造いたします場合の方法がいろいろさまざまになってまいりまして、ある
地域はあるサービスができるけれ
ども、ある
地域にはできないというような、あまねく国民に平等にサービスをするという公社の目的が達成できなくなるという問題がございます。
では二番目といたしまして、しからば非常に厳重な仕様書をつくって、もうそれに合わないものは一切買わないという形で機械の標準化、統一化ができるではないかという議論もございますが、しかし、そのようにいたしますためには、この入札に使います仕様書というものに機器の詳細をすべて記入せざるを得ない。そういたしますと、結局製造図面そのものを仕様書につけるというような形にならざるを得なくなりますので、そういたしますと、電電公社自身が長年蓄積してまいりました通信
関係の技術のノーハウ、それからさらに公社に協力をして相当な投資をして蓄積しました製造会社の持っておるノーハウというのが、それの競争会社へただで全部流出してしまうという問題があって、これでは製造会社としては公社に協力して、より安くより優秀な電気通信設備を開発していこうという意欲がなくなってしまうという問題がございます。
それから三番目といたしましては、電気通信設備、これは非常に多種類の機械、多くの機械から成り立っておりますが、その
一つ一つの機械にはしたがいまして非常に高い信頼度が要求されるわけでございます。これを
確保いたしますためには、購入する時点ででき上がった品物の購入検査を幾らしてみましてもわからないわけでございまして、高い信頼度を
確保いたしますには、現在のテクノロジーではその工場へ行きまして原材料の購入検査の仕方、それから各工程での加工のやり方、それの成績の実績でありますとか、そういったものを詳細に監査する必要がございます。現にわれわれはそのようにやっておるわけでございますが、競争入札ということになりますと、買ってくれるかくれないかわからない人に
自分の工場の中のはらわたまで全部見せるということは、実際上これは拒否をされて、不可能でございますし、世界的な商習慣としてもこれは受け入れられないと思っております。それからなお、受け入れられたといたしましても、相当な技術水準を持った技術者を世界各地のいろいろな応札してくる工場すべてに派遣をして、その検査をやるということは実質上ほとんど不可能に近いという問題点がございます。
それから四番目の問題といたしましては、電気通信設備は長年にわたって逐次増設をしてまいります。われわれの使っておりますものは、機械によっていろいろ違いますが、まあ二十年とか長いものは三十年という期間にわたって使ってまいるわけでございますが、これが競争入札ということになりますと、一遍納めてもその次にはいつ買ってくれるかわからないという問題がありまして、二十年、三十年にわたってそれの補修用部品、増設用の機器というものを製造できる製造ラインでありますとか技術を温存しておくということは、会社にとっては事実上不可能なことでございまして、ということは、
実態上なし得ない。したがいまして、後で補修用の部品、増設用の機械の調達に非常に大きな困難を来すという問題点がございます。
それから五番目の問題といたしましては、電気通信の設備といいますのは、
先ほど申し上げましたとおり、大体ヨーロッパあるいは日本でもさようでございますが、一国でその国の電気通信主管庁あるいは公社一カ所しか買い手がない、市販性ゼロという品物でございます。それから国々によりまして、先進国の間ではすべてその規格、仕様、設計、基本設計思想というのが異なっておりますので、日本の物をそのままドイツに持っていってもこれは動かないということになりますので、そういった市販性の全くない品物、これを競争入札で買うということになりますと、これはその製造側にとりましても非常に受注が不安定になる。落札し損なえば一切その品物の持って行き先はないという形になります。一たん落札しますと、その期間全量を一社でつくらなければならぬという問題がありまして、もし一回落札をして設備投資をし、人員を雇って製造を始めましても、次の機会に落札に失敗しますとそれらの設備、人員が浮いてしまうという、経営上非常に不安定になるという問題がありますので、どうしてもこれをコストに上乗せせざるを得ないということになります。したがいまして、一般市販品の場合は競争入札というのは大変合理的な購入方法かと存じますが、電気通信設備のように極端な特注品というものの場合には、随意契約で買うということの方が買う側にとりましても製造する側にとりましてもきわめて合理的で、コストの安くなる方式であるというふうに
考えております。
それから六番目といたしましては、競争入札によります、かつ世界じゅうにこれを公告し、それの応札を待ってそれの審査をし云々ということは、随意契約に比べまして非常に膨大な手続と人員を必要といたしますし、そればかりではなく、その調達期間が大変長くなるという問題がございます。これは特注品でございますから、落札が決定してから製造の準備を開始するということにならざるを得ないということで、現在後進国等で行っております競争入札のケースを見ますと、大体納期が三年から四年というものはざらでございます。現在、われわれは随意契約で
計画的な生産発注をしておりますので、製造業者も
計画的な生産ができるということから、調達期間は六ヵ月以下ですべて品物が買えるわけでございまして、それによって電話の需要変動あるいは
地域的な需要の変動、そういうものに対応して非常に弾力的なわれわれの建設工事の執行が可能となるわけでございますが、調達期間が数年に及ぶというような品物が参りますと、現在のような弾力的な建設工事並びに
予算の執行はきわめて困難になるというふうに存じております。
以上、大変時間をとりましたが、入札で電気通信設備を購入した場合の問題点を申し上げたわけでございます。