○
参考人(
前川春雄君) 大量国債が発行されるもとで、財政需要と、それから民間経済の資金需要といかに調和さしてまいるかということは、一番これからわれわれが当面する大きな問題でございます。この調整はなかなか容易なことではないわけでございまするが、私
ども、マネーサプライの最近の状況を見ておりますると、マネーサプライの増加の要因の中で、大量国債発行に伴う対政府信用の要因がだんだんふえてきております。したがいまして、将来景気の回復に伴いまして、民間の資金需要が出てまいりまするときには、早速この両者が衝突することになるわけでございます。マネーサプライを適当に、適切にコント
ロールしてまいるということは、私
ども中央銀行に与えられた非常に大きな職務だと思っておりますので、今後ともその点につきましては十分な配慮をしてまいりたいと思うわけでございまするが、マネーサプライの増加要因の大きなものは対政府信用ばかりでなしに、対民間信用、金融機関の民間に対する信用供与、これが要因としては大きいわけでございます。私
ども、そういう事態になりましたときは、両部門の要請をできるだけ調和、調整してまいりまするために、民間資金需要が余り過度に大きくなるというようなことでございますれば、窓口規制あるいはその他の金融政策を活用いたしまして、そういう調整をしてまいりたいというふうに思います。また同時に、もし経済の回復が行われまして、民間資金需要をまた順便に図っていかなきゃならないという場合には、やはり政府の面におきましても、国債発行の量的な調節をしていただくとか、あるいは財政の規模についてお考えいただくとかいうことも私
どもはお願いをしなければいけないというふうに考えております。
先ほど御質問がございました国債消化の方向として、民間資金需要を全部抑えて、国債だけを消化するという方法はどうかという御質問ございました。私
ども全体の経済の運営のために金融はあるわけでございまするので、民間資金需要を全部抑圧するというようなことはとうてい行うべきでもございませんし、また行えないというふうに思っております。
もう一つの方法といたしまして御
指摘のございました、
日本銀行が国債を買い支えることによって消化の促進を図るという点でございまするが、
日本銀行は確かに年々必要に応じまして国債の買いオペレーションということをしております。昨年も一兆二千億ぐらいでございますか、いたしたわけでございまするが、これは金融調節の
目的のためだけにしておるわけでございまして、国債の価格支持あるいは国債消化を順便ならしめるためにしておるわけではございません。そういう意味で、国債消化あるいは国債価格支持のために
日本銀行が買い支えをいたしますることは、それだけ通貨、マネサプライの増加を来すわけでございまして、必ずそれはインフレにつながるということでございますので、私
どもはそういう手段に訴えることはどうしても避けるべきであるというふうに確信しております。要は、政府面の要請と民間の資金需要といかに調和してまいりまするか、これはなかなか数字的には申し上げることができませんけれ
ども、そのときどきの情勢に応じて調整していくほかには方法はないというふうに考えております。