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岩動道行君
予算委員会地方
公聴会仙台班につきまして御報告申し上げます。仙台班は、
上田委員、
鈴木委員、福間
委員、吉田
委員、
藤原委員及び
下田委員、それに私、
岩動の七名で構成、去る二月二十三日、仙台市において
公聴会を開催してまいりました。仙台班の公述項目は、不況問題宮城県沖地震問題、農林水産業及び地方財政の四項目でありまして、それぞれ各界の代表から意見を聴取した後、
出席委員から熱心なる
質疑が行われました。
以下、公述の要旨につき簡単に御報告申し上げます。
まず不況問題につきましては、東北経済連合会会長若林彊君、釜石市長浜川才治郎君、鶯沢町長高橋正人君の三
公述人から意見を聴取いたしました。
まず若林
公述人は、東北地方の経済は公共投資の進捗、在庫調整の進展などから、昨年秋口以降生産活動か上向き、個人消費も底がたい動きを示しているほか、減量経営の効果が上がり、企業収益にも改善が見られ、全体として緩やかな回復過程にある。しかし依然として設備投資は盛り上がりが見られず、また、雇用情勢は産業構造の脆弱さを反映して、有効求人倍率が青森〇・一倍、秋田〇・一七倍など全国水準の〇・六三倍を大きく下回っている、他地域に比べ一層厳しい状況にある。
政府は雇用安定及び雇用創出の強化を図るほか、東北への公共事業費の傾斜配分に努力すべきである。また、公共事業の推進によって
物価問題が懸念されるため、その防止に努め、前倒し一辺倒から時期と地域の選定に配意し、学校、病院など波及効果の高い事業に比重をかけてほしい旨の意見が述べられ、次に、浜川
公述人から釜石地区について昨年八月以降日鉄鉱業釜石鉱業所の閉山、新日鉄釜石製鉄所の合理化計画が相次いで打ち出され、市民に大きな衝撃を与えた。市では対策本部等を設置し、また県、労働組合等とともに、両社に対し、波状的回避運動を展開するなどしてきた結果、最も影響の大きい新日鉄から雇用対策を含む前向きの回答を引き出すことができ、最悪の事態は回避できた。今後、釜石市が発展するためには、産業基盤の整備が緊要で、用地の確保と道路網の整備が緊急の課題である。幸いにも釜石湾口防波提の着工が始まり、これを機に岩手県沿岸部の流通港とすべく県内陸と直結する高速自動車道の建設を推進していかなくてはならない。これらの事業は、市の存亡をかけた大事業であり、広い理解と支援をお願いしたい旨の意見が述べられました。
また、高橋
公述人から鴬沢地区について、町は細倉鉱山と農業の半々で生きてきた町だが、近年細倉鉱山が円高、市況の低落等により極度に経営が悪化し、崩壊の危機に瀕している。このため零細な農業だけでは
生活が苦しく、人口は三十年度の一万三千人が五十四年度には五千人を切るほか、五十四年度の町税収も三十年度対比四倍にしか伸びず、町財政の運営は困難を来している。そこで、特定不況地域振興に係る要望として、独立国家として鉱業政策を強化するため、鉱山基本法を制定すること。田園都市構想が単にバラ色とならぬよう過疎地域への工場分散を推進すること。過疎法の期限延長と不況地域指定に係る起債の償還に過疎債並みの援助を講ずることの意見が述べられました。
次いで、宮城県沖地震問題につきましては、宮城県副知事石井亨君、仙台市第一助役佐々木美徳君から意見を聴取いたしました。
石井
公述人は、先般の宮城県沖地震は、仙台市を中心に個人住宅被害の比重の高い、都市型災害の様相を呈した。県としては災害対策本部を設け民生の安定を基本に、国及び関係機関と協力しつつ復旧に努めた結果、現在では平常の県民
生活が確保されるに至っている。今後の地震に対する教訓としては、道路交通の確保、高層建築の耐震性、室内備品の安全性などが挙げられるが、県としては激甚災指定基準の緩和、地震保険制度の再検討、建築構造、宅地造成地の耐震基準の改善、さらには微小地震の頻発地帯につき、大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域の指定などを国に対して要望する旨の意見が述べられ、次に佐々木
公述人から仙台市における地震被害に伴う対策として、仙台市緑ケ丘地区における防災集団移転事業に関する
予算措置について補助基本額を一戸当たり五百三十万円から八百九十八万円に引き上げる措置をとっていただいたが、これを全額単年度で交付できるよう配慮されるとともに、宅地造成業者による被害負担の措置を検討すること。また、仙台市のガス復旧につき、全国から延べ一万二千人に達する応援をいただいたが、災害復旧に要した費用は十八億円に達し、その負担に窮している。このため、大規模災害復旧費用の補助制度の早期確立のほか、水道の復旧に関しても補助制度の改善を行うこと。さらに、宮城県沖地震の教訓を生かした防災都市づくりのため、仙台市を防災モデル都市に指定し、国の助成に特段の力添えを要望することの意見陳述がありました。
次いで農林水産業につきましては、岩手県農協農政総合対策本部副本部長小野寺十治君、東北大学教授菅野俊作君、青森県漁業協同組合連合会会長植村正治君、秋田県仁賀保町農業協同組合長
佐藤喜作君、福島市飯坂町
中野農業協同組合参事斎藤茂君の五
公述人から意見を聴取いたしました。
小野寺
公述人は、米穀政策を中心に、農林水産省では食管制度の見直しを検討すると聞くが、いま以上、自由米の位置づけを強化し、競争原理を導入することは、究極的に日本農業の衰退を招く。まず、現行食管制度を強化し、全量買い上げの方向で検討すべきである。また、今日の米の消費は良質米への選好が強く、品種別、等級別、地域別の米買い上げの大幅な格差をつけることはやむを得ない。特に良質米の地域指定を国が定め、農民と国が責任ある米の生産をすべきである。さらに、現在の米の検査制度は作業的、時間的に農家に負担をかける形になっているので、抽出検査法を取り入れることなどの意見が述べられ、次いで菅野
公述人から、農林水産
予算について
予算の施策の記述はすばらしく、これが実現されれば結構だが、中身は減反対策でしかない。特に、農林
予算のうち新規の施策は、定住圏構想のわずか六百億円、二%の比率で目玉とは思えない。しかも定住圏構想の実現を期待はするが、今日までそうした方向を壊す政策がとられてきており、農業をここまで追い込んできた。その枠組みでの定住圏構想の実現には限界があろう。また、東北農業は全国の約二〇%を賄っているが、東北を食糧基地とする考え方は、東北を植民地として位置づけているとしか思えない。しかも、農産物の自給の
現状は、輸入依存が高く、その枠組みを放置した中での水田再編対策が実行可能であるか、
予算の見直しを含め検討すべきである旨の意見が述べられました。次に植村
公述人は、二百海里時代の漁業問題について四面海をめぐらす二百海里対策
予算は三千億円と少ない。特に、二百海里宣言以降、家族漁業化の顕在化と沿岸整備の促進が緊要となっており、これらに対応する
予算の大幅増額を図るべきである。また、栽培漁業に係る
予算には工夫の跡が見られ、漁民の期待も高い。しかし北海道に比べると国や県の措置に格差があるので配慮を求めたいなどの意見が述べられました。
また、
佐藤公述人からは、人間の健全な生存と食糧の重要性について、現在のわが国農業は
生活のため現金収入をいかに増加するかが目的となっており、健康食糧を生産するという意識は薄れ去っている。特に、農業が人類の生存、日本人の健康に適した形で再生されることが重要で、現在問題となっている余剰米の発生も日本人来の食体系に戻せば余剰は発生しない。自然体系に即した食糧生産、日本人の健康に即した食糧消費を基本に農業を見直すことが大切で、日本人の食糧は日本の農民に任せる政策を特段に要望したいとの意見が述べられ、最後に斎藤
公述人から落葉果樹問題について、五十四年度果樹振興対策
予算は、柑橘八割、落葉果樹二割の財源配分で不均衡きわまりない。特に、外国産柑橘果実、果汁の輸入は落葉果樹農家に大きな影響を与えるほか、ミカン園転換促進事業によって落葉果樹への転換が行われると、東北の落葉果樹生産との競合が生じるなど、東北の果樹農家は外圧内圧によって押しつぶされようとしている。
政府は果樹農業基本方針を見直し経営の安定向上に努めてほしい。また、果樹生産安定対策として農災法による果樹共済制度の見直し、果樹農家経営維持安定資金等に対する利子補給の実施、落葉果実に対する国の価格補償制度の創設などの意見が述べられました。
最後に地方財政について御報告申し上げます。
地方財政では、宮城県知事山本壮
一郎君、仙台市長島野武君、寒河江市長武田
房雄君の三
公述人から意見を聴取いたしました。
山本
公述人は、地方財政は借金の占める比重が高まり量質ともに限界に達している。この際、地方分権に基づいた行財政の抜本的見直しが必要である。また、地方独自の財源である地方税の充実強化を図り、少なくとも国・地方五対五の財源割合とすべきである。交付税制度は五十年度以降毎年財源不足を来し交付税の機能を喪失している。交付税率の引き上げはぜひ必要であるとともに、新税創設の際はこれを交付税の対象とすべきである。地方債が財源不足を反映し、五十年度以降六兆円を超える累積発行量となっているが、将来の償還財源の確保を考えてほしい。今後はこうした行財政の見直しとともに、地方の時代に向けて特色ある地方をつくるべく県民とともに努力したい旨の意見が述べられ、島野
公述人からも、第一線の市
町村の行財政が健全化されなければ、国の政策目標も十分に達成できず、
国民、市民の不満が増大するとして、地方税等の充実強化、交付税率の引き上げ、地方債制度の改革、国庫補助金制度の改善などが要望されました。この中で、仙台のような地方中核都市は中枢管理機能の集積度が高く、行財政需要も複雑であるため、地方交付税の算定方法を、人口十万人の標準団体とは別に、別個の標準団体を設けて人口五十万ないし六十万都市の実情にかなった算定方法を行ってほしい等の意見が述べられ、最後に武田
公述人から、地方税制度、交付税制度、地方債及び国庫補助金制度の根本的見直しこそが田園都市構想実現の主要課題である。特に、交付税制度の
現状は交付税法本来の趣旨を没却し、借り入れなどの応急的措置とされたことはまことに遺憾で恒久的な改善策を講ずべきである。また、超過負担については、最近の財政悪化の状況下では重大問題であり、国は地方と共同の実態調査を行うなどにより、
現状把握と補助負担基準の改善を適切に行うような方策を講ずるべきである旨の意見が述べられました。
以上をもちまして仙台班の御報告を終わります。