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国務大臣(
大平正芳君) 田中さんの御
質問にお答えいたします。
第一の御
質問は、
先進国首脳会談の開催といい、今度の私の
訪米といい、全体として
アメリカの
世界戦略の
枠組みの中に巧みに組み込まれておるのではないかという御懸念の表明がございました。私は、この
共同声明をごらんいただきましても御
理解いただけますように、新たな
防衛協力の
約束はみじんもいたしておりません。今日
日本がやっておりまする
防衛政策というものについて丹念に説明をいたして、それを
共同声明にうたったまでのことでございまして、また、
アメリカから
防衛努力に対する注文も一切ありません。その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
しかし、
世界経済の場におきましては、
相互依存の高まっておりまする今日におきまして、
経済力を持っておる
日米両国の
協力ということは、
両国のためばかりでなく、
世界経済全体の安定、繁栄にとりまして致命的に大事なことだと
考えておるわけでございまして、それぞれの持つ
経済的活力をどのようにして
協力して
世界の安定に役立てるかということについて
話し合いまして、それを
共同声明にうたったわけでございまして、一方が他方に押しつけたというような性質のものでないことは御
理解をいただきたいと思います。
それから第二に、今度のことを通じて
国民経済への影響をどう
考えるか、国際
経済社会との
調和を図らなければならぬ、一層の市場の開放をいたさなければならない、
内需を
中心といたしまして
経済の
発展を図ってまいる、そういう
意味で、産業構造の転換も結果することになるが、そのことは
国民経済、
国民の生活、
経済にどういう影響を及ぼすものであり、
政府はそれに対してどういう方針で対処しようとするかという
意味の御
質問でございました。
日本が資源を持たない国といたしまして
世界に名誉ある生存を確保いたしまするためには、やはり国際
経済社会のルールを守っていかなければならぬと思います。その
意味で、国際
経済社会との
調和、それから一層
わが国の市場を開放していくという
方向について
責任を持たなければならぬと思うのでございます。したがいまして、われわれといたしましては、
経済政策の軸を、これまでのように輸出と設備投資主導型から漸次
内需中心、生活
中心に置きかえていく、これはかねがねわれわれが主張をいたしているところでございますし、また、あなたの属する社会党からもたびたび
要請されておることでございますけれ
ども、こういう政策の軸心を漸次生活
中心に置きかえていくという
方向はすでに示しておるところでございまして、そういう
方向に沿ってわれわれの
経済構造を
考えていかなければならぬと存じておるわけでございます。
もちろん、その過程におきましては、中進国の追い上げ等がございましたり、いろいろな
発展途上国の
要請もございまするので、産業構造の転換に当たりましてはいろいろな国内的困難が伴うことと予想いたしております。したがって、
わが国の産業構造は漸次知識集約的なものに移していかなければならぬと思いますが、その道程におきましては、十分現存の産業構造、
貿易構造というものに急変を与えないように周到な配慮を加えながら行っていくつもりでございます。
それから第三の御
質問は、
政府調達についての
お話でございました。
政府調達問題は、いま電電公社、国鉄等を
中心に論議されておるわけでございますが、私
ども政府といたしましては、これらの
政府機関がそれぞれ持っておる
責任、
国民に対する
責任、廉価にして安定したサービスを供給せなければならぬという
責任を持っておることを承知いたしております。そして、そういう
政府機関はそれぞれ非常に緻密な技術のシステムを持っておることも承知いたしておるわけでございまして、そういうものを守りながら、しかも開放
経済下の
日本の
責任にこたえていかなければいかぬわけでございますので、その間の
調和をどのように図ってまいるかというところに苦心をいたしておるところでございまして、との
解決には二つ
段階がございまして、
解決いたしまして、実行は八一年の一月一日からでございますから、詳細な、具体的なプログラムはゆっくりやっていいわけでございますけれ
ども、これを
解決する軌道だけは設定しておこうと、方法とか手順とかということだけは
サミット前にできたら
合意したいものだという
双方の
考え方で、いませっかく折衝をいたしておるところでございまして、われわれは、こういう内外の
要請を十分わきまえた上で、現実的な対応策を
用意してまいりたいと
考えております。
それから、
日本の
防衛問題、
防衛責任がなかなかグローバルな広がりを持つに至ったのではないかという田中さんの懸念でございますが、先ほど申しましたように、私は、いまの
防衛大綱でやっておる
日本の
防衛政策をみじんも変えたつもりはないわけでございまして、もしありとすれば御指摘をいただきたいと思うのでございます。
朝鮮半島の問題でございますが、これは、基本的には半島における両当事者の間でその運命を決めるべきものと思うのでございまして、私
どもといたしましては、朝鮮半島をめぐる国際環境、平和的な国際環境の形成ということに
協力をするというのがわれわれの任務であろうと
考えております。それでは具体的に何をやっているんだという
お尋ねでございますが、われわれは、米中ソを初め
各国首脳との
会談の機会に、朝鮮半島の
緊張緩和の
必要性をその都度強調する等努力しておりますけれ
ども、今後ともなお精力的に努力をしてまいるつもりでございます。
金大中事件についての
お尋ねでございました。本件に関する
米国務省の文書が公開されたことに対しまして、目下
政府は、
米側に公開された文書の提供を
要請して、その
内容の調査を行っておるところでございます。今後の対応ぶりにつきましては、その調査結果を踏まえて、捜査当局の
意見も十分徴した上で、慎重に検討していきたいと
考えております。しかしなお、この金大中事件につきましては、田中さんも御承知のように、すでに政治的決着をいたしておりまして、その当時の
政府が大局的な
見地から決断をしたことでございますので、これを軽々に見直すということは差し控えなければならぬと私は
考えております。(
発言する者多し)
中東政策についての
お尋ねでございました。私
どもは、
中東政策につきましては、継続性と独自性を堅持しておるつもりでございます。
中東という地域は、戦略的に重要であるばかりでなく、資源の供給地といたしまして、
わが国とも相当高度の依存
関係にありますることは御指摘のとおりでございますから、
中東政策についての対応は非常に慎重にやっておるつもりでございます。エジプトばかりでなく、この周辺の
国々に対しまして、われわれは、そういう状態を考慮いたしまして、
経済、社会開発、民生の安定を
中心といたしましての
経済協力を進めておるわけでございまして、今後も着実に進めていかなければならぬと
考えておるわけでございます。
今度の
日米会談を通じまして、
アメリカからエジプトに対する援助の
要請を背負い込んできたのではないかという御懸念でございますけれ
ども、いま申しますように、
中東政策は
わが国死活の問題でございますので、
わが国が継続性と独自性をもって判断してやることでございます。すでにエジプトにつきましては相当程度の
経済協力をいたしておりますが、今後これを積み増しをいたすにつきましても
日本の独自の判断においていたすつもりでございまして、このことにつきましては周辺のアラブ
各国も
理解をしていただいておることと確信をいたしております。したがいまして、御懸念のように、そのために石油の安定供給に支障を来すようなことはないと承知いたしております。
それから、パレスチナ問題についての
政府の対処方針についての
お尋ねでございました。
わが国は、パレスチナ問題が
中東問題の核心をなす問題の
一つであるとの
認識に立っております。で、パレスチナ人の民族自決権を含む
国連憲章に基づく正当な権利が承認されて尊重されることにより公正かつ永続的な和平が達成されるべきであるとの
立場を一貫してとっております。
国連の審議におきましても、同様の
立場で終始一貫当たっておるわけでございます。
わが国は、かかる
立場に基づきまして、包括的な
中東和平が一日も早く実現されることを希望いたしておる次第でございます。
UNCTADについての
お尋ねでございました。
まず第一は、
UNCTADの機構強化、専門家グループの設置等に対して冷淡ではないかという
意味の御
質問でありましたが、
UNCTADは、
総会のほかに毎年開催される
貿易開発理事会、TDBというものがございます、また、各種常設
委員会もございますし、相当有力な事務局も持っておりますので、機構面では十分整備された
会議体であると私は承知いたしております。十分機能できる状態にあると思っておりますので、この機構が非常に弱いとは
考えていないのであります。
それから第二の御
質問でございまする
ODAでございますとか
共通基金に対する
日本の対応でございますが、先ほど
吉田先生の御
質問にも答えましたとおり、
ODAにつきましては、三年間
倍増という方針に基づいていま鋭意努力いたしておることは御承知のとおりでございます。
共通基金につきましては、十分われわれとしては
協力する
用意があるけれ
ども、この
共通基金の
内容、それからどれだけの国が参加するか、そういった点がまだ明らかになっておりませんので、それが明らかになれば
日本といたしましては
応分の
協力をいたすつもりであるということを申し上げておるわけでございまして、いずれにいたしましても、
わが国は一番最近近代化を遂げた国といたしまして、
開発途上国の気持ちが一番よく
理解できる
立場にあるわけでございまするので、そういった精神をもって今後も精力的に
協力していきたいと思っております。
人づくりの問題でございますが、これは先ほど
吉田さんにお答えしたところで御
理解をいただきたいと存じます。
最後に、航空機疑惑についての
お尋ねでございました。こういう事件が起きまして、あらわになりまして、まことに残念でございます。為政者が廉直で公正でなければならぬということは田中さんが御指摘のとおりだと
考えます。
政府といたしましては、まず、こういう事件が起きました以上、刑事
責任を問わなければならぬというので、十分の調査を遂げて、先般その結果を発表いたしたわけでございます。残るところは政治的道義的
責任の追及問題でございます。これは、いまの
日本の制度といたしまして、国会の国政調査の場しかございません。この国会の国政調査権の発動につきましては、従来申し上げておるとおり、
政府といたしましてできる限り御
協力を申し上げるつもりでありますことで御
理解をいただきたいと存じます。
最後に、
インフレの問題、
国民生活の問題についての
お尋ねがございました。確かに、
エネルギーの量的確保、価格の不安定――確保が不安になってまいりましたし、価格が不安定になってまいりましたといったような事情、国際商品市況が活況を呈しますとか、あるいは為替市場が円安に傾斜してまいるとか、いろいろな事情がございまして、ことしに入りまして卸売物価の上げ足が非常に激しくなってまいりましたことは御指摘のとおりでございまして、この問題につきましては、
政府は、これが消費者物価につながることのないように万般の処置を講じて
国民生活を守り抜かねばならぬと
考えておりまして、これからの施策につきましては、また十分の御
批判と御
協力を願わなければならぬと存じております。(
拍手)
〔
国務大臣古井喜實君
登壇、
拍手〕