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政府委員(
香川保一君) 配当要求につきまして有名義主義をとるかどうかというのは大問題でございます。御
承知のとおり、現行法におきましては債務名義のない者の配当要求も認めておるわけでございますが、その結果、非常に虚偽
債権の配当要求があったり、あるいは当事者間に争いがある
債権の配当要求が出てくるということから、勢いそういったものの決着をつけなきゃなりませんので、どうしても
競売手続そのものが長期化するということに相なってくるわけであります。他方、有名義主義をとりますと、そういった問題は一切解消するわけでございますけれ
ども、やはり債務名義がたまたまそのときない者は配当要求できないということから、
債権の実現が困難になるという問題があるわけでございます。したがって、大ざっぱに申し上げまして一長一短あるわけでございますけれ
ども、全体としてどちらが
メリットがより多いかという比較考量の問題としまして、今回は有名義主義を採用したというわけでございます。
ただ、その場合も、御
承知のとおり、この
法案におきましては、債務名義がなくても仮
差し押さえ債権者については配当要求を認めておるわけでございますので、そういった仮
差し押さえすることによって配当に参加するという
方法が
一つ考えられるわけでございます。これもしかし、仮
差し押さえそれ自身はやはりそれなりの
手続と
費用を要するわけでございますから、問題がないとは決して
考えておりません。
他方、債務名義の中で、判決は、これは訴訟ということでございますので、時間もかかれば
費用もかかるというような
実態があるものですから、そこで、補完的な
意味で、現行法どおり、
執行証書と公証人の作成する公正証書を債務名義に入れておるわけでございます。御
承知のとおり、公正証書の報酬
手数料というのは、これは政令で定めておりまして、それ自体、私
どもといたしましては、できるだけ
国民の
法律生活というのは後で紛争にならないようにということから、公正証書の活用をむしろ期待しておるわけでございます。
〔
委員長退席、理事上田稔君着席〕
そういう観点から、公正証書の作成の
費用につきましては、少額の
債権についてはきわめて低廉なところで政令で抑えておるわけでございまして、そういった
意味から、先ほど申しましたような予防手法と申しますか、そういう見地からは公正証書の活用を期待いたしておるわけでございますけれ
ども、なかなかこれ、いろいろの
事情から余り活用されないという面があるわけでございまして、今回
民事執行法案におきまして有名義主義をとったことから、公正証書がさほどふえるかと申しますと、私
どもとしては現状どおりじゃなかろうかというふうに
考えておるわけでございまして、現在でも、公正証書をつくっておきますればそれだけの
メリットはあるわけでございますけれ
ども、少額の
債権については特殊な場合を除きましては活用されてないわけでございまして、
民事執行法の
施行に伴って公正証書が大幅にふえるというふうなことは
考えていないわけでございます。