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1979-02-27 第87回国会 参議院 法務委員会 第5号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
五十四年二月二十七日(火曜日) 午前十時七分開会
—————————————
委員
の
異動
二月二十三日
辞任
補欠選任
内藤
功君
宮本
顕治
君 二月二十七日
辞任
補欠選任
阿
具根
登君
安恒
良一
君
—————————————
出席者
は左のとおり。
委員長
峯山
昭範
君 理 事 上田 稔君 平井 卓志君 宮崎 正義君 委 員 大石 武一君
熊谷太三郎
君 佐々木 満君 丸茂 重貞君 秋山 長造君 寺田
熊雄
君
安恒
良一
君 橋本 敦君 円山 雅也君 江田 五月君 国務大臣 法 務 大 臣 古井
喜實
君
政府委員
法務政務次官
最上 進君
法務大臣官房長
前田 宏君
法務大臣官房司
法法制調査部長
枇杷田泰助
君
法務省民事局長
香川 保一君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局民事局長
西山 俊彦君
事務局側
常任委員会専門
員 奥村 俊光君
参考人
東京地方裁判所
執行官室執行部
長
田中
利正
君
東京執行官室労
働組合書記長
田中
一志
君
—————————————
本日の会議に付した
案件
○
民事執行法案
(第八十四回
国会内閣提出
、衆議
院送付
)(
継続案件
) ○
民事執行法
の
施行
に伴う
関係法律
の
整理等
に関 する
法律案
(
内閣提出
)
—————————————
峯山昭範
1
○
委員長
(
峯山昭範
君) ただいまから
法務委員会
を開会いたします。
委員
の
異動
について御報告いたします。 去る二月二十三日、
内藤功
君が
委員
を
辞任
され、その
補欠
として
宮本顕治
君が選任されました。 また、本日阿
具根登
君が
委員
を
辞任
され、その
補欠
として
安恒良一
君が選任されました。
—————————————
峯山昭範
2
○
委員長
(
峯山昭範
君)
民事執行法案
を議題といたします。 本日は、本
法案
について
参考人
から
意見
を聴取し、
質疑
を行います。 この際、
参考人
の方に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は御多忙中のところ、本
委員会
に御
出席
をいただきまして、まことにありがとうございました。
民事執行法案
について
参考人
の方から忌憚のない御
意見
を拝聴し、
本案審査
の
参考
にしたいと存じております。 つきましては、
議事
の進行上、
田中利正参考人
、
田中一志参考人
の順で、お一人十五分程度御
意見
をお述べいただき、その後
委員
の
質疑
にお答えいただきたいと存じます。 それでは、まず、
田中利正参考人
にお願いいたします。
田中利正
3
○
参考人
(
田中利正
君)
東京地方裁判所執行官田中利正
でございます。 長い
間改正
が叫ばれておりましたわが国の
強制執行法
が、
皆様方
の御
努力
によりましてここにその完成を目前にいたしまして、私
ども執行
の
実務
に携わる者といたしまして、まことに感慨の深いものがございます。この
法改正
に当たりましては、われわれ
執行官側
といたしましても、その基礎的な
実態調査
の
段階
から協力してまいりました。また、第一次、第二次試案を経まして今日に至るまで、
機会
あるごとに
意見
を述べ、微力ではございますが、われわれとしましていささかは寄与しておるというふうに考えておるのでございまして、
新法
の
制定
には心から賛意を表し、
早期成立
を期待するものでございます。 さて、
新法
におきましては
執行官
の
職務
並びに
権限
が
拡大
強化されておりますので、
執行官
の
事務
は
量質とも
に増大するものと予想されております。そこで、これらの点に関しまして若干
意見
を述べさせていただきたいというふうに思うのでございます。 まず第一といたしまして、
執行官
の
権限
の
強化拡大
についてでございますが、
新法
では、
執行官
の
職務権限
が
拡大
され、
民事執行
の一翼を担う
執行官
にふさわしい
職務内容
となっていると考えるものであります。
動産執行
におきましては、
動産執行
の
対象
が
拡大
され、これまで
執行裁判所
が
執行機関
として
差し押さえ
をしていた
手形
、
小切手等
の
有価証券類
や二十トン
未満
の
船舶
が
動産執行
として
執行官
においてこれを
差し押さえ
、競売することになっております。また、
執行官
が
差し押さえ
をした物件に対しましては、
債務者
に
差し押さえ物
の使用を
許可
し、またはその
許可
を取り消す
権限
が与えられております。次に、適正な
売却
の
実施
を妨げる者を、
売却
の
場所
、いわゆる
競売場
でございますが、
競売場
から退場させる等、
執行官
に
売却
の
場所
の
秩序維持
に関する
権限
が与えられております。さらにまた、
配当関係
におきましては、これまで仮
差し押さえ債権者等
未
確定債権者
があるときは
執行官
が
配当
の
協議
をさせることができなかったのでございますが、このような場合にも
執行官
が
協議
配当
することができるようになっております。
不動産関係部門
におきましては、これまで
強制権限
を与えられておりませんでした
賃貸借等取り調べ
につきまして、次元の高い
現況調査
として装いを新たにしたものとして登場し、これにつきましては、
執行官
に
質問権
、
強制立入権等
を与えております。さらに、
不動産
の
売却
に関しまして、
動産
の場合と同様、いわゆる
競売場
の
秩序維持
に関する
権限
を与えております。そのほか、
保全処分
の
執行
におきましては、これまで
目的動産
につきまして著しい価格の減少のおそれ等があるときは
執行裁判所
の
命令
によってこれを換価すべきものとされておりますが、このような場合には
執行官
が自己の
判断
に基づいて換価すれば足りるというようなことになっております。 次に、第二といたしまして、
事務
の
合理化
という面からながめてまいりますと、
新法
は、
運用
に不都合を表していた
現行
の
規定
を
改正
し、
執行官
の
事務
の
合理化
を所々で図っております。すなわち、
現行法
は、
執行官
が
職務
の
執行
に当たり抵抗を受けるとき、または
債務者不在
の場合には、市町村の吏員または警察官を
立会人
とする場合は一名、その他の場合は
成年者
二名を立ち会わせなければならないというふうになっておりますが、
新法
では、
立会人
の人数を定めないということにいたしましたので、相当と認められる者一人を立ち会わせれば足りるということになっております。 次に、
現行法
は、休日または
夜間
に
執行行為
をする場合には
執行裁判所
の
許可
が必要であるということにされておりますが、
新法
では、人の
住居
に立ち入って
職務
を
執行
する場合だけに
限り許可
を要するということになりましたので、
住居外
で
職務
を
執行
する場合には、たとえば
執行
が長引きまして午後七時を超えるというような場合でも、特に
許可
を要せず、
執行官
限りの
判断
で
執行
を続行することができるというようなふうになっております。 次に、
現行法
は
債務名義
を有しない
債権者
の
配当要求
を無制限に認めておりますけれ
ども
、
新法
は、
優先権
を有する
債権者
に
限り配当要求
を認めるということにいたしましたので、
虚偽債権
による
配当要求
を防止すると同時に、
配当申し立て事件
は激減することが予想されますほか、
配当要求認否
を
債務者
に問う
手続
も不要となりましたので、
執行官
の
配当事務
は著しく軽減されたものと考えます。 次に、
新法
は、
差し押さえ物
につきまして相当な
方法
により
売却
を
実施
しても、なおかつ
売却
の
見込み
がないときは、職権により
差し押さえ
を取り消すことができる旨の
規定
を新設いたしました。そこで、これまでのように
売却
の
見込み
がないのにいたずらに
売却期日
を重ねるというようなことがないように
配慮
されております。 さらに、
現行法
は、
不動産
の
明け渡し執行等
におきまして、
執行官
が
執行
の
目的外動産
、いわゆる
遺留品
でございますが、を
売却
するには、その都度
執行裁判所
の
許可
を要するものとされておりますが、
新法
は、右の
売却
については
執行官
限りで行うことができるようにしております。 また、
動産
の
任意競売関係
につきましては、
新法
は明確な
方法
を示しておりますので、
現行法
のように
競売期日
に
目的物
が提出されるかどうか確認できないまま
競売手続
を進めなければならないというような不合理さが一掃されました。 以上のほか、いろいろな
改正
がなされているわけでございますが、これらの
改正点
を通じ、特に
現況調査制度
や
執行官
の
裁量権
の
拡大等
、
新法
が
執行官
を信頼し、これに期待する姿勢を示していることに対しまして、私
ども
はこれを高く評価しているものでございます。 次に、第三といたしまして、
新法
の
施行
により
執行官
の
事務量
はどの程度
増加
するのであろうかという点につきまして申し上げたいと思います。
改正法
によりまして
執行官
の
事務量
が
増加
するであろうということは間違いのないところであると思うのでございますが、私
ども
の見方を申し上げますと、今次
改正
によりまして
執行官
の
事務量
が
増加
すると思われる部分は、法第五十七条のいわゆる
現況調査
の
事務
並びに法第百二十二条の
動産執行
の
対象
の
拡大
、この二点にしぼられるのではなかろうかと思います。 まず、
現況調査事務
でございますが、
新法
の
趣旨
から見まして、この
現況調査
のための
事務
は、現在の
賃貸借等取り調べ
の
事務
に比し、
法定地上権
の成否とか
賃貸借関係
以外の
契約関係等
に関する
法律知識能力
を必要とするものでありまして、質的に見て相当高度な
事務
となると思いますほか、これを
事務量
の観点からながめますと、
現況調査
は現在の
賃貸借取り調べ
よりはるかに詳細な
調査
を要します。また、
調査
のために面接する人の範囲も
拡大
し、
調査
のための見聞あるいは
質問
のための時間、
報告書
の
作成等
、その
事務量
は
量質とも
に増大することは明白であります。ただいまその
事務量
を正確に数字的に申し上げることはできませんけれ
ども
、
事件
には取り調べに困難なものから比較的容易なものもございますので、私は、この
増加量
は大体現在の一倍半ないし三倍ぐらい、平均いたしまして二倍以上になるであろうと推定しております。しかしながら、この取り調べ
事件
の数は、
東京
におきましても、
執行官
の全
取り扱い事件
から見まして約一割にしかすぎません。したがいまして、
取り扱い事件
の多い
東京
などの場合は
格別
、
係属事件数
の多くない庁におきましてはそれほどの影響はないのではなかろうかというふうに考えております。 次に、
動産執行
の
対象
の
拡大
の点でございますが、新たに
対象
となりました
手形
、
小切手等
の
差し押さえ
についてでありますが、
実務
上の
経験
に照らしまして、現場においてこれらの
有価証券
をそう数多く発見できるとは考えられませんし、二十トン
未満
の
船舶
に至りましては、
東京地裁
におきまして過去二十年間に一件というような実績しか持っておりません。したがいまして、本条による
事務量
の
増加
につきましては、さして心配する必要はないのではなかろうか。もちろん、将来の
運用
を見た上でなければ正しい申し上げ方はできませんけれ
ども
、現
段階
ではそんな感じがいたしております。 以上、二つの点について申し上げましたが、他面、今次
改正
によりまして
事務
の
合理化
を図っている面も相当ございますので、これらを総合的に
判断
いたしますと、もちろん、特別な場合は別といたしまして、
新法
の
施行
に当たり、
執行官側
は現在の
人員
をもって一応これに当たり得るであろうというふうに推測している次第でございます。もっとも、
執行官
の
事務量
が従来に比し
量質とも
に
増加
することは、これは間違いのない事実と思われますので、
執行官
といたしましても、
新法
の負託にこたえるため一層の
努力
と十分な勉強をしなければならないと思っておりますけれ
ども
、同時に、
当局側
におかれましても、有効適切な
配慮
をぜひともお願いしたいと思うのでございます。 そこで、第四といたしまして、この
機会
に次のように要望したいと思います。 一、
民事執行
は、
国民
の財産上の紛争を公正な立場で解決する本来明るいカラーのものであるべきと思うのでございますが、これに対する一般の認識が必ずしも十分ではなく、常に暗い面でとらえられているというふうに思います。そこで、この際、
民事執行
の正しい意義につきまして
国民
の理解を深めるような
措置
、いわゆるPRですが、を講ぜられるよう提案いたします。 二、同じ
趣旨
におきまして、
執行官室
の
執務環境
の改善、特に
競売場
につきまして——は、その位置、
施設等
につきまして
新法
の
趣旨
に即応した
配慮
がぜひとも望ましいというふうに考えます。 三といたしまして、
新法
における
職務
の
遂行
に必要な
知識
を修得するための
協議会
とか、あるいは
研修
の
実施
、
執務資料
の刊行というようなことをこの際要望いたします。 四、
現況調査
の
手数料
の額につきましては、これは特段の
配慮
をお願いしたい。また、この際、その他の
手数料
につきましても、再検討の上、
職務
に見合うような
改正
を望みます。また、
執行官
の
地位
、待遇につきましても、新しい
執行官
にふさわしい
方向
に改善されるよう要望いたします。 五、
執行官室
に勤務する
職員
についても、これは間接的かもしれませんけれ
ども
、できるだけの
当局
の御
配慮
をお願いしたいと思います。 六、
送達事務
につきましては、
執行官
の
負担
が増大している実情にかんがみまして、
民事訴訟
の
送達制度
全体につきまして、この際ぜひ再検討してくださるようお願いいたします。 以上、雑駁でございますが、私の発言を終わらせていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。
峯山昭範
4
○
委員長
(
峯山昭範
君) どうもありがとうございました。 次に、
田中一志参考人
にお願いいたします。
田中一志
5
○
参考人
(
田中一志
君) ただいま御指名いただきました
東京執行官室労組
の
書記長
をやっております
田中
でございます。 本日は、
委員
の
皆様
の御協力により、
参考人
として
意見
を述べる
機会
を与えていただき、ありがとうございました。 早速本論に入りたいと思いますが、私の方は、
執行官室
の
職員
における
実態
について
お話
をさしていただきたいというふうに思います。 冒頭申し上げたいことは、
昭和
四十一年の
衆議院法務委員会
における
附帯決議
のことであります。詳細は同
委員会
の
議事録
四十四号をごらんいただければおわかりになりますが、ここで次のように決議しておるわけです。「
執行吏代理
をはじめ
執行事務
に従事する
職員
の処遇並びにその
地位
の安定と
雇用条件
について
格別
の
配慮
を行うこと、なお
執行吏代理
の
執行官
への
登用
については、その
経験等
を参酌してできる限り有利な取扱いを行うこと。」、また、「
執行官
以下
執行事務
の
処理
に当る
職員
の教育並びに
研修
について、予算上の手当その他必要な
措置
を講じること。」とあるわけですが、十余年を経過した今日、
職員
に関しては全くほごにされている
状況
であります。
東京
の場合、
労働組合
があります。したがって、私
ども組合
では、
職員
の
身分保障
と
地位
の向上のため
職員
の
公務員化
、
執行官
への
優先的採用
を主張してきました。
職員
の
執行事務
、
送達業務
、
賃貸借取り調べ
等、その
内容
は
国民
と直接に接触する、まさに公権力の
行使
であります。当然、
職員
の
職務
について
収賄罪
あるいは
公務執行妨害等
が適用されると理解しております。ところが、これらの
職務
に従事する
職員
は、
国家公務員
である
執行官
に私的に雇用され、
公務員
ではありません。十年前の
執行官法制定
、今回の
民事執行法案
の審議により、
法律
は一歩一歩前進しておりますが、
執行官制度そのもの
は、明治以来一歩も前進しておりません。幾らりっぱな
法律
がつくられても、そこに働く者の
環境
が整備されなければ、絵にかいたもちに等しいのではないかというように思います。
手数料制執行官
を改めない限り、法の
趣旨
は全うできないと言っても
過言
ではないというふうに思います。
手数料制
は、必然的に能率のみを要求します。また、常に
収入
の不安を伴います。
国家権力
の
行使
をつかさどる
執行官
がこの
状態
で、果たして十分な機能をなし得るか、私
たち
は疑問を投げかけてきた次第であります。
国会決議
の
実施
と私
たち
のこの主張に
最高裁当局
は一べつも与えませんでした。 以下、私
たち
は今日どのような
状況
になっているかについて、三つの
職務
にわたって
お話
を申し上げたいと思います。 まず最初に、
職員
の
送達業務
について申し上げます。
昭和
四十一年当時、
東京
二十三区、この全域が
対象
で仕事をしておりました。二十七名の
送達代理者
が
民事
、
刑事
の
書類
を
処理
しておりました。しかしながら、
執行官法制定
により
代理制度
が
廃止
されました。その結果、
代理者
の
定年退職
、あるいは健康上の障害、
内勤事務
への
人員補充等
によって、
送達業務
に従事する
職員
が減少してまいりました。同時に、
人件費節減
あるいは
送達区域
を漸次縮小し、
昭和
四十五年十月より今日までに
都内
二十三区のうち二十区が
廃止
となり、現在は千代田、中央、港の三区だけになっております。これによって、
廃止区域
については
執行官
が
執行事件
を
処理
する合い間に、それも日曜、
祭日等
を利用して
処理
に当たっています。休日も満足に休めず、
当事者
からも催促される等、まさに今日の
社会
の
生活観
、
労働観
とはほど遠い
状態
です。また、
廃止区域
の
通常送達
が
裁判所職員
によって
郵便送達
に切りかえられましたので、
裁判所職員
に対して
労働量
の
増加
となっているように思います。反面、
通常送達
で不可能な
書類
、
夜間送達
と
送達
困難な
書類
のみが
執行官室
の方に回ってくるという
状況
です。
都内全区
を担当していたころは、
送達件数
も多く、
手数料収入
と
送達
のために要する諸経費との収支の採算がとれていたわけですが、
区域
が減少した現在では赤字となっております。
刑事送達
に至っては、
旅費
だけで全く
手数料
がありません。現在残っている三区についても、
旅費
すら取れない警視庁の
関係
を初め、
警察署
及び
拘置所
など、
手数料
のない
刑事送達
の
業務
だけを残して、年内に
廃止
していくという
方向
が考えられているようです。 次に、
新法
で
現況調査
となる
賃貸借取り調べ
と
不動産競売
について述べたいと思います。
賃貸借取り調べ
は、
新法
によって、
調査
と
報告書作成
に相当な時間が必要になってくると思われます。実際の
調査
に当たっては、現在、テープレコーダーやあるいは
カメラ等
を使い、必要に応じて写真を添付したり、
陳述
を録音し、その要旨をまとめ、
報告書
を作成するわけですが、
執行裁判所
の
命令
に基づく
提出期限
までにほとんどが報告できません。こうしたことは、
不動産競売
の
迅速性
という面から見れば、決して好ましい
状況
ではないというように思います。 また、
新法
によって
報告書
には、さらに細目にわたる
調査内容
が要求されております。また、
権限
が強化されますが、
当事者
や
利害関係人
の
陳述等
を的確に把握するためには、相当な
経験
と
人間関係
の微妙な情感を感じとる人格が要求され、
調査
にも相当な時間を要するわけで、
権限
を強化するだけではすべてを
処理
できない面が出てくるものと思われます。こうした
職務
に従事している
臨時職務代行者
の歩合は、
交通費
も含めて
職務遂行手数料
の三〇%であります。現在の
手数料
も大変安い、このように感じておる次第です。これら
送達
や
賃貸借取り調べ
に従事している
職員
は、自転車、
バイク等
も自費で使用しており、
労災補償
の
制度
もなく、危険な
状況
で
職務
に当たっております。
不動産競売
については、
新法
によって、入札、競り売りのほかの
競売方法
として、
最高裁規則
で定めることになっておりますが、この
内容
の
一つ
として
郵便
による
方法
も考えられているようです。これに関与する
人員
の点で私
ども
不安があります。また、
競売場
における
権限
も強化されますが、これに従事する
職員
の
人員
やあるいは
身分
の点も考える必要があるのではないかと思います。 最後に、
執行事件
に携わる
職員
について述べます。 現在、外勤の
執行官
が十三名、これに、
職員
である
執行代理
としての
臨時職務代行者
が一名、
内勤
には
執行官
が二名おり、そのうちの一名は
事務員
と同じような
執務
に当たっております。ほかに
事務員
が十一名、アルバイトが五名おります。
職務内容
は、
執行事件
の
受付
、取り下げの
受付等
、
法律事務
の
遂行
に当たっておりますが、まさに
書記官並み
の
職務
を行っているわけです。
執行事件
は、
当事者
間の
トラブル
、
債務者
と
執行行為
の
トラブル
もあり、苦情、問い合わせが電話で殺到し、一日数百件に及んでおります。これから
一つ一つ
に
法律的知識
と
社会的道義的態度
をもって説明に当たらなければなりません。以上が
東京
の
現状
です。 さて、私
ども組合
で
全国
の
地裁管内
に昨年アンケートをとりましたが、その
労働条件
は、ほとんどの人が高
年齢
で、しかも
賃金
は十万円以下という
状況
であります。
具体的報告
の二、三を申し上げますと、長崎からは、
裁判所職員
の二倍から三倍の労務をしておる、
年休
もとれない、また、
刑事送達
は
手数料
をつけてほしい、
裁判所職員
にしてもらいたいと報告されております。また松江では、
昭和
四十一年の
附帯決議
が何ら進展しないまま高
年齢
になるばかりですと、不安を訴えております。さらに
沖繩
からは、
病休
、産休、
生理休暇
などきちんと決めてほしい、このように訴えているわけであります。こうした
状況
を直視するとき、
公務員化
はまさに切実な声であります。 以上が
職員
と
執行官室
の
実態
です。しかも、その
経済的基盤
が
手数料収入
だけに依存しているということです。この
手数料収入
は
安定度
を欠き、この
収入状況
によって
職員
の
賃金
を初めとする
労働条件
が左右されるのであります。
東京
の場合、
手数料収入
の半分以上が
不動産競売
の
収入
で占めており、これによって一時金の財源が捻出できると言っても
過言
ではありません。しかも、
不動産競売
は
不安定要素
を持っており、
執行事件
同様、
社会情勢
の変化によって大きく影響されます。たとえば、
高度成長期
の
昭和
四十八年、四十九年はおよそ一億七千万の
収入
があり、
昭和
四十九年六月に
手数料
が
改正
され、
昭和
五十年には若干
収入増
の傾向となりました。
昭和
五十一年以後三億九千万、三億四千万、五十三年には三億六千万という高
収入
を得てきております。
手数料そのもの
は
債務者
の
負担
に帰すべきものであり、かつ、
公共料金的性格
を持っております。したがって、
手数料改正
もたびたび行うわけにはいかないようです。しかも、
手数料
が
改正
されても、
事件数
が少なければ必ずしも増収にはなり得ません。
手数料制
のもとでは
執行官
の
収入
にも
地域差
があり、安心して働く
環境
にはならないということであります。 昨年七月に、
全国書記官協議会主催
で
最高裁民事局
との
座談会
において、
山田課長補佐
が次のように述べております。「
執行官
の給源が枯渇している。しかも、七十歳を超えた
執行官
が多く、六十歳以上は半数いる
現状
である。」また、
昭和
四十一年、
衆議院法務委員会
では、
菅野最高裁判所長官代理者
は、
執行吏代理
の
経歴等
を
調査
した結果新しい
執行官
に採用できる人もいる旨発言しております。ところが、
現状
は
執行官登用
の道は全く狭き門となっておるのでございます。また、幾つかの
裁判所
では、
書記官
や
事務官
によって
執行事件
の
受付等
をしております。これによって、
執行官室
に従事する
職員
が退職せざるを得なくなったという話も聞いております。
裁判所
の
職務
として取り込んでいくことが可能であるならば、現在の
職員
を
事務官
なり
書記官
にすることも可能ではないか、かように考えます。
新法
はかなり
改正
され、確かに進歩しましたが、
法律
に基づく
執務処理
に従事する
職員
が不安定かつ劣悪な
労働条件
のままでよいのか、このような
執務体制
で
国家機関
の重要な
公務
を十分
処理
できるのか、大変疑問であります。また、不安も出てくるのであります。さらに、
公務員
が
職員
を雇用して利益を上げるということが近代日本の法体制のもとであるべき姿なのでしょうか。私は、
制度
改正
に着手することなく
新法
は決して生かされないということを再度申し上げたいと思います。
人員
補充、資格の認可等、
昭和
四十一年の
附帯決議
をさらに具体的計画をもって考えていただき、一日も早く
制度
改正
に着手していただくことを要望して、私の発言を終わりにします。 どうもありがとうございました。
峯山昭範
6
○
委員長
(
峯山昭範
君) どうもありがとうございました。 それでは、これより
質疑
に入ります。
質疑
のある方は順次御発言願います。
寺田熊雄
7
○寺田
熊雄
君
田中利正参考人
にお尋ねをします。 いま、
田中一志参考人
の
意見
陳述
とあなたの
意見
陳述
と、多少観点も違いますし、それから結論にも異なる面があるように思うのでありますが、それぞれのお立場がありますので、私
ども
として、いまどちらをよしとし、どちらをあしとするわけじゃないのですが、将来の
制度
の改善に資するために率直なお考えをいただきたいと思うのです。
田中利正参考人
は、
昭和
四十一年の
執行
法案
の成立当時における衆議院の
附帯決議
、これはあなたも御存じでしょうけれ
ども
、
田中一志参考人
のいまの御
意見
では、この
附帯決議
が
実施
に移されておらないと、そういう結論でしたね。あなたはこれについてはどんなふうにお考えになりますか。
田中利正
8
○
参考人
(
田中利正
君)
田中
でございます。 あの
附帯決議
の最も根幹的なところは、
執行官
の
制度
は将来俸給制にすべきであるというようなところにあったかと思うのでございます。もちろんそれ以外にもございますけれ
ども
、そういった意味におきまして、私
ども
執行官側
といたしましても、俸給制是か非かというようなことにつきましては、これまでいろいろと検討してまいりました。私個人の考えといたしましては、現在の
手数料制
公務員
というような
制度
は、
国民
の感情にも合いませんし、また、一般の方々の共感を得られるということにはなりそうもない。また、もちろん
手数料制
にはいろいろな長所もございますけれ
ども
、そうしたものがすでに一般の
国民
に受け入れられるようなものではないというようなこと、それから、
執行官
の
手数料収入
が、すなわち
当事者
の、最終的には
債務者
の
負担
になる、それがストレートに
執行官
の
収入
になるというようなところに、いろいろすっきりしない面がございます。そういったようなこと、並びに、
執行官
の
収入
そのものが
事件
の多少によりまして非常に安定性を欠いている、また
全国
的に見ましても、大都会と地方とでは
収入
のアンバランスが非常に大きい、というようないろいろな面もございます。それからさらには、現在の
執行官
の独任制、一人の
執行官
が
執行
を行うという基本的な体制、もちろんこれは現在でも援助
執行官
という
制度
がございますけれ
ども
、将来の
執行
のあり方としましては、やはり複数制の
執行官
が
事件
を
処理
するという方が、公正的な観点からしましても望ましいというようなことから考えまして、やはりこの
制度
は、好むと好まざるとにかかわらず、いずれは俸給制
執行官
に移行せざるを得ないのではないかというふうに考えております。 しかし、反面、この俸給制の問題につきましては、結局俸給制となった場合にどのように格付けされるかということによりまして、われわれの仲間でも賛否が分かれるわけでございます。そこで、これを
全国
的な意味で賛成か否かということになりますと、たとえば
昭和
四十八、九年ごろには相当、半数以上の俸給制賛成者がございました。しかし、現
段階
は、幸いといいますか、比較的
収入
が安定している時代でございますので、この時点でいま一度アンケートをとりますと、必ずしもこの前のアンケートと同じような結果が出るとは限らないというふうに思いまして、非常に微妙なものがございます。それはそれとしまして、私個人といたしましては、いずれは俸給制に移行すべきものである、また、そういったことによりましてあらゆる懸案が解決するであろうというふうに考えております。 なお、あのときの
附帯決議
には、もちろんそれ以外にもございまして、たとえば先ほど
田中
参考人
も言われましたように、
執行官
並びに
執行官
の
職員
に対していろいろ注文もございます。これにつきまして、恐らく
当局
といたしましても、いろいろな
努力
はされたと思いますけれ
ども
、私
ども
に関しましても、たとえば
執務環境
の整備あるいは備品の充実というような点につきまして、
当局
は御
当局
なりの御
努力
はされていると私
たち
は理解しておりますけれ
ども
、
事務
職員
につきましては、何分にも私
ども
がプライベートにこれをお願いしているというような
関係
がございまして、どうしても国との間には間接的なことになります。それにしましても、たとえば
執行官室
の
事務
職員
の定期健康診断は
裁判所
で一緒にお願いしているというようなこと、あるいは
執行官室
の
職員
を
裁判所
の
職員
に吸収していただくというようなこともやっておりまして、現に
東京
の場合でも、過去にすでに十人近くの人々が
裁判所
に移動しております。そうしたようなことで、あの
附帯決議
が十分な守られ方をしているとは思いませんけれ
ども
、それはそれなりの
努力
はされているというふうに私
ども
は考えております。
寺田熊雄
9
○寺田
熊雄
君 確かに、いま
東京
などの
執行官
はかなりの
手数料収入
を得ていらっしゃるからして、これが一般の
公務員
のように俸給制になった場合に、その格付けをよほど考えませんと
収入
減になるという、これは避けなきゃいけませんので、大変むずかしい面があることは事実だと思うのです。ことに、
執行官
の
制度
が、まあどちらかというと人にいやがられる
職務内容
を持っていますから、それだけに、普通の
公務員
と比べて、何らかそういう、いやな仕事をすることに対する手当を俸給の中に見込まないと、それは不公平になる、
社会
的な不公正という批判を免れないと私は思うのです。しかし、その一面、それは非常に精神的に、さっきあなたもおっしゃったけれ
ども
、精神的な満足感というのがそこにあると思いますね。
手数料
という
債務者
から取り立てるものによってみずからの利益が増大するという、精神面で何かいやな面を持ちますね。そういうものはなくなりますし、それから、
不動産競売
が仮に経済情勢の変化によって減少したときの
収入
減を避けることにもなります。安定性が得られるということから、私はやっぱり俸給制に踏み切るようにするのが当然だと思うのですが、いまあなたは、
全国
の
執行官
にアンケートをとったということをおっしゃったのですが、何か
執行官
には全体で
一つ
の組織的なものができておるのでしょうか、それとも、ばらばらなんでしょうか。その点は、
公務員
としての性格で、
労働組合
をつくるわけにはもちろんいかないけれ
ども
、いまの
現行法
ではね。何か、集まって、意思の統一を図るような機関というのはできておるのかどうか、その点をちょっとお尋ねしたい。 それから、
田中一志参考人
の御
意見
の中で、いまの
職員
が、四十一年決議の
趣旨
が実践せられずに
登用
の道がふさがれているということだけでなくして、たとえば、いろいろな
社会
保険、労災保険のことを言われましたが、労災保険が得られないという、そこに入れないという、そんないろいろな面がある。これは入らないことはないのだと思うけれ
ども
、現実に入ってないようですね。任意加入の道はあるのじゃないかと思うけれ
ども
、しかし、
東京
のように
労働組合
があって、みずからの権利を主張し得るところはいいけれ
ども
、地方の
裁判所
で、
執行官室
にただ一人女性が
執務
しているというようなところは、これはもう完全にあらゆる
社会
保険の権利というものが奪われておるのですね。これはやはりこういう
職員
の
労働組合
が
全国
的なものになるか、あるいは
執行官
が人道的な立場で
配慮
するか、国がそこに介入してそういう権利の実現を図るか、どちらかでないと、そういう面が非常におろそかになりますから、その点はあなたはどう考えるか。 この二点について、
田中利正参考人
の御
意見
を伺いたいと思います。
田中利正
10
○
参考人
(
田中利正
君)
田中
でございます。 それでは、まず
執行官
の
全国
組織の点につきまして申し上げたいと思います。 日本
執行官
連盟というものを
全国
の
執行官
でもって組織しております。これは
昭和
三十八年の一月に結成いたしまして、もうすでに満十六年を経ております。性格としましては、親睦団体、一種の任意団体でございまして、親睦を主としておりますけれ
ども
、相互の親睦と
地位
の向上、福祉の増進というようなことを目標にしております。現在、会員数は本年の一月一日現在をもちまして三百二十三名でございます。これを
年齢
層的に見ますと、四十代の者五十八名、五十代の者百二十二名、六十代の者百三十二名、七十歳を超える者十九名、もちろんこの中には連盟に入っていない人々が若干含まれますけれ
ども
、平均
年齢
として五十八歳というようなことが言われております。 それから、その次の待遇の問題でございますけれ
ども
、
東京
におきまして、労災保険につきましてはそういったことをやっておりませんけれ
ども
、普通の
社会
保険には加入しております。 そのほか、私
ども
といたしましては、先ほど
田中
参考人
からも言われましたように、何といたしましても、
職員
の
職務内容
は、いわば
公務
、強いて申し上げれば
公務
に従事する者とでも言えるかとも思いますので、私
ども
も、給与のあり方につきましては、一般の
公務員
に準ずる待遇をぜひしたいというのを目標にしておりまして、
東京
におきましては、現在の
職員
の平均給与はたしか十九万九千五百円ぐらいに当たるかと思います。これに対しまして、全
公務員
の平均は、昨年度におきまして十九万八千円ぐらいでしょうか。そして昨年の九月にベースアップをいたしましたから、ベースアップが三・八%というふうになっておりますので、現在の
公務員
の給与は恐らく二十万五千円ぐらいに上がるのではなかろうか。十九万九千円対二十万五千円というようなところでございまして、若干遜色はございますけれ
ども
、おおむね一般
公務員
と同じか、それに近づけるという
努力
をいままでもしてきておりますということを申し上げたいと思います。ただ、
東京
以外の
全国
各庁におきますと、大体これはもう平均的に申し上げますと、
執行官
とほぼ同数の
事務
職員
がございます。と申しますことは、
執行官
一人に対して一人というふうなところになろうかと思うのでございますが、これは外国の例もございますけれ
ども
、その
執行官
の奥さんとか娘さんとか、そういったような家族の方が
職員
になっておるというような場合もございまして、なかなかこれを
全国
的に統一的な処遇というような観点から申し上げますと、非常にむずかしい
現状
にあるというようなことが言えるかと思うのでございます。 以上でございます。
寺田熊雄
11
○寺田
熊雄
君 さっき私が
労働組合
の結成は
現行法
上困難かもしれぬと言ったのですが、
法律
的には
労働組合
をつくっても一向差し支えないわけですね。警察官でもないし、刑務所の
職員
でもないし、消防
職員
でもない。
現行法
上あなた方が
労働組合
がつくれないという
法律
的な制限は全くないと思うのですけれ
ども
、現実の問題として、なかなか
労働組合
を結成するというのは困難かもしれない。しかし、親睦団体である
執行官
連盟というものができているということですが、そこで、いまあなたの
お話
では、現在では
公務員化
、一般の俸給制にするということですね。一般の俸給制にするということ、これはむしろ多数
意見
にはならないかもしれないという
お話
があったようです。それからまた、
社会
保険には加入しておるという話もあった。これは、
職員
が
社会
保険に全部加入しているという、そういう
趣旨
でおっしゃったのでしょうか。ひとつその点。
田中利正
12
○
参考人
(
田中利正
君)
社会
保険につきましては、まさに
東京
の
執行
宮室の
職員
に対してでございます。私
ども
は
国民
健康保険に入っております。
寺田熊雄
13
○寺田
熊雄
君
国民
健康保険に入っているという点が、あなた方自体につきましても、ちょっと普通の
公務員
とは違う点ですね。それから、もちろん恩給
制度
はないですね、
執行官
としての。その点はどうなんですか。
田中利正
14
○
参考人
(
田中利正
君) 私
ども執行
官のそうした給与
関係
につきましては非常に特異な
状態
にございまして、まず、
執行官
に任命される最低
年齢
基準は、四十歳でございます。したがいまして、四十歳以上、すでに前職におきまして恩給もしくは年金受給資格がある者が
執行官
になるという事例が非常に多いわけでございまして、現在、
執行官
の中で、このように前職の恩給または年金を受給している者は約八〇%ぐらいあろうかと思います。そして、この恩給あるいは年金はもちろん
年齢
制限もございますけれ
ども
——をいただきながらこの仕事に携われるというところに独特なメリットがございます。 私
ども
も、かつて、
国民
健康保険ではなく、あるいは政府の共済組合的
制度
に何とか加入させてほしいというような
方向
におきまして、これは
最高裁当局
とも御一緒にいろいろと検討させていただいたことがございます。一方、
執行官
は、
執行官
となりまして十七年間を経過いたしますと、今度は
執行官
の恩給が別につくことになっております。ただ、この
執行官
恩給は、これはいわゆる一代限りのものでございまして本人が在世中だけいただく、普通の場合ですと、本人が亡くなりますと遺族扶助料的なものが継続されますけれ
ども
、
執行官
の恩給に関しましては一代限りのもので、なおかつ金額的に申し上げましても余り高額なものではございません。そうしたようなこと、もし仮に一般
公務員
と同様に、共済組合
制度
における短期給付というようなものがございますけれ
ども
、ああいったようなシステムに入った場合は、当然従来いただいておりました恩給は、これはもらうわけにはいかなくて、ただ従来と継続していくというような形にどうもなるようでございます。そうしたこと並びに恩給受給者が——いわゆる平均余命というものがございまして、大体七十何歳というようなふうにこれは考えられているようでございますけれ
ども
、そうしたようなこと、すべてのことを勘案いたしまして、いまの
制度
をやめて全面的に共済組合
制度
に加入した場合と、
現状
維持でした場合、一体どちらが全体的に言えば得なのか損なのかというようなことを検討しました結果、どうもこれを変更しても余りメリットがないというような結論が出まして、この問題につきましては、さらに将来に向かって検討していこうというようなことで考えておる
段階
でございます。
寺田熊雄
15
○寺田
熊雄
君 いま、
田中一志参考人
の言われた
送達業務
、これは現実には代理の方がやっていらっしゃることの方が多いのじゃないかと思うのですけれ
ども
、
刑事送達
の場合、警視庁に
送達
する場合には
手数料
もない、
旅費
もない、
拘置所
に行く場合には、いま
拘置所
が大分離れているのでありますが、これは
手数料
はなくて
旅費
のみだという、そういうちょっと非近代的な労務管理といいますか、そんなものが行われているようですが、これはあなたとしても、当然
廃止
せらるべきか、もう
廃止
が不可能とすると
手数料
がつかなくてはいけないというふうにお考えになるのだろうか、その点いかがですか。簡単に結論だけ。
田中利正
16
○
参考人
(
田中利正
君)
送達
の問題につきまして、私
ども
も常に頭の痛い問題でございまして、まず、現在の
執行官
が
送達
を担当するということが果たして
職務
の
内容
から見て適当なのかどうかというようなことをまず出発点として考えておるわけでございまして、先ほ
ども
ちょっと要望事項として申し上げましたけれ
ども
、われわれの考えといたしましては、できれば
執行官
の
職務
の中から
送達事務
は取り外してほしいというのが長年の念願なんでございます。しかしながら、やはり
民事訴訟
法の
規定
もございますし、どうしてもこれはある程度やらざるを得ない。また反面、私
ども
のこの考え方は
当局側
におかれましても十分理解されておりまして、
裁判所
といたしましては、
送達
に関しましては、もう原則として
郵便送達
でやるというような方針が打ち立てられたかに伺っておりまして、
東京
におきましても、
東京
都二十三区中、
郵便送達
に逐次切りかえをしていただきまして、現在まだその切りかえが終わっていないのは、残り三区だけになっております。あとの二十区は全部
郵便
に切りかえられた次第なんです。この三区につきましても、近い本年中、恐らく八月ごろと思いますが、
廃止
されるであろうというふうにわれわれは期待しているわけなんでございますが、そうなりますと、この
送達業務
というのは激減いたします。しかし、それにしましても、結局は、
郵便
でできない、不可能な、たとえば相手方が不在で、あるいは相手方が拒否して、実際上
郵便
では行い得ないというようなものは、やはり依然として
執行官
の方に
送達
の依頼が参ります。これらはおおむね
夜間送達
的な
方向
で依頼があるわけでして、これがまた最近
執行官
の大きな
負担
となっているわけです。 一方、
刑事送達
につきましては、昨年度におきまして、
東京地方裁判所
の
執行官室
では約二万件の
事件
を
処理
しております。そのうち約一万件が、先ほど申し上げました残り三区のところから出ているわけでございます。でございますので、この三区が近々
廃止
されますと、
刑事送達
事件
は恐らくその半分、一万件になるだろうというふうに
判断
しておりまして、しかも、この一万件は実は小菅の
東京
拘置所
あてのものが大部分なんでございます。しかも、この
東京
拘置所
あての
送達
書類
はある程度まとまって物を
送達
いたしますので、その
事務
の
処理
という観点からすれば、さほど骨の折れるものではないというふうに考えられるわけでございます。私
ども
も、
刑事送達
が
手数料
がないという点につきましては、長年有料化を主張してまいりました。けれ
ども
、現在ある
刑事送達
事件
は、ほとんど
全国
的に言いましても激減しておりまして、もうすでにこの問題を論議するだけのメリットがなくなってしまっておるというふうに考えている次第でございます。 以上でございます。
寺田熊雄
17
○寺田
熊雄
君 それから、いまの
田中利正参考人
の
意見
は、ちょっと
田中一志参考人
の
意見
と違うようですね。
田中一志参考人
の方は、
刑事送達
の無料制というのは不合理だという
意見
を持っておるようですね。その点、もう一遍
田中一志参考人
にその点をお尋ねしたいのと、それから、いまのいろいろな
執行官
の
職務
の
遂行
に当たって、現実に
職員
が大変その
負担
をかぶるというようなものがあると思うのです。たとえば、恐らく
現況調査
報告書
の作成なんというのも、現実には
執行官
なり
執行官
代理が現場に臨んでいろいろ
調査
をされる。しかし、
報告書
の作成だというようなことになると、おのずからやはり
事務
的にそれが
事務
職員
にかかってくるというようなことも考えられないではない。それから、
競売場
の問題でも、あるいは
競売手続
の
遂行
の問題でも、
送達
の問題でも、あるいは電話の応接でも、すべて
職員
に
負担
がかからざるを得ないと思うのですけれ
ども
、そういう点、あなた方の
事務量
の増大は同時に
職員
の
事務量
の増大にはね返るというようなことはないのかどうか、その点。それから
田中一志参考人
にはいまの
刑事送達
の問題も含めて、ちょっと両
参考人
に最後に御
意見
を聞かしていただきたい。
田中一志
18
○
参考人
(
田中一志
君) まず、
刑事送達
の件ですが、先ほど
田中
参考人
の方から話がありましたように、件数としては減少してきているということで、確かに論議するような性格にあるいはなってないかもしれません。しかし、
手数料制
度のもとにおいては、こうした
刑事送達
の
手数料
も
収入
源としてやはり請求すべきではないかというふうに考えるわけです。 それから、
現況調査
、現在、賃貸借ということで
職務
をしておりますが、現在これに関与している者が、
職員
では
執行事件
を
処理
している
職務
代行者が
執行事件
の
処理
の片手間に
賃貸借取り調べ
もやっておる。それと、賃貸借専門に従事しているということで二名ほどおります。これらの
職員
は自分で現地に行って
調査
等をするわけですが、
報告書
の
段階
では単に
利害関係人
あるいは
当事者
の発言をそのまま書くというわけにはいかないで、やはり
法律
的な
内容
に基づいて要旨簡潔にして要を得た
内容
にして
報告書
をまとめなければならないということになると思います。 それから、
競売場
の
手続
、
不動産競売
の
手続
の点ですが、具体的な
内容
として最高裁の規則で決められるということで多少伺っておるわけですが、細かい点がまだわれわれ
職員
の方には知らされておりません。したがいまして、具体的にどういうふうになるのかという点が細かくわからないわけですが、いまわかっている範囲では、
郵便
等の入札の申し込みを受け付けするということで伺っております。これが
全国
的に窓口を広くするということになりますと、そういう窓口に対する、知らせるという仕事と、さらにその
郵便
物を
処理
するということで、かなり仕事がふえるのではないかというように思うわけです。この仕事を
裁判所職員
の方にやらせるか、あるいは
執行官室
の従業員の方にやらせるかという点についても現在不明でありますが、恐らく
執行官室
の従業員の方で全部
処理
に当たらせるのではないかというふうに思われるわけです。 最後に、
不動産競売
場の秩序の問題ですが、
新法
によれば、かなり
権限
も強化され、それに伴って
秩序維持
にいろいろな面で
改正
されていくということがうかがえるわけですが、それに要する
人員
——先日
不動産競売
場の方をごらんいただいたわけですが、普段はもっと、八十名なり百名近い競売ブローカーといいますか、そういう人間がたくさん入ってくるわけです。そうした多くの
人員
を整理し、秩序を保つということになりますと、現在
競売場
に入っております
職員
だけではちょっとむずかしいのではないかというふうに思うわけです。
田中利正
19
○
参考人
(
田中利正
君)
現況調査
報告書
の作成の点でございますけれ
ども
、現在、私
ども
の方にも、いま
田中
参考人
が言われましたように、二人、
執行
職務
代行者
職員
なる者がございます。しかし、私
ども
の方はこの人々は
執行官
として一応は考えておりまして、いわゆる
事務
職員
の
事務
処理
というような方面では考えていなかったわけでございます。その方々が現況の取り調べをいたしますと大変骨が折れますし、同時に、
報告書
が従来よりまさに労力の多いものになろうかというふうに存じます。ただ、一般的に言いましても、
現況調査
の取り調べ
報告書
は、これは
事務
職員
にしていただく事柄でございませんで、その担当の
執行官
がすべてそれまでは作成することになります。したがいまして、それによりまして
事務
職員
の方にしわ寄せがいくというようなことはあり得ないというふうに考えます。 それから
刑事送達
の有料化の点についてでございますが、私、先ほどメリットがないというような表現のいたし方をしましたけれ
ども
、もちろん、
刑事送達
が有料の
方向
にいくべきであるということに関しましては同感であります。 それから、
不動産競売
手続
につきまして、従来の競り売りまたは入札のほかに、最高
裁判所
の規則によりまして、いろいろな有効適切な換価の
方法
が定められるものと思われ、なかんずく、その中では、同じ入札でも期間入札と言いまして、ある一定の期間の間に、
郵便
でもよし、あるいは直接
裁判所
に届けてもよいけれ
ども
、あらかじめ入札書を届けるというようなことの
方法
も考えられているようでございます。その場合に、そうしたものの入札書を
執行官室
の方で保管することになるということはまず間違いないというふうに考えますので、これらの
事務
も
増加
することは否めないと思います。ただ、さてそれではその仕事は一体どんな形で行われるかといいますと、たとえば、そういった書面が参りますと、それを一定の金庫におさめまして、そして入札期日のときまではこれはあけないと、当然、あけてはなりませんから、あけないことになろうかと思います。そうしますと、量的に言いますと、そうした書面が来ましたらそれを金庫にしまうというようなことが、いままでよりふえるのじゃないかというようなことは考えておりますけれ
ども
、
事務量
がそれによって非常に
増加
するというような
方向
では実は考えておらないのでございます。 それから最後に、
競売場
の
秩序維持
の問題なんでございますけれ
ども
、私
ども
も現在、
東京
の場合におきましては、
執行官
一名に
事務
職員
二名で、皆さんごらんになりましたような形でやっておりますけれ
ども
、随時その
競売場
に
執行官
を増員いたしまして、場合によっては
執行官
二名と
事務
職員
というような構成で今後やってみる必要があろうかというふうに考えておりますし、現に、
全国
のほかの庁では
執行官
全員でやっているというところが非常に多うございます。そういうようなことを考えまして、その部分につきまして特に
事務
職員
側に多大の
負担
をかけるというようなことはないであろうと思いますし、また、してはならぬというふうに考えております。ただ、これに関連しまして、
執行官
が
競売場
の
秩序維持
の
権限
を与えられましたけれ
ども
、真にこれを
実施
するためには、
執行官
みずからが行きまして退場をがえんじない者を退場させるということは実際上はできないのじゃないかと思います。そこで、どうしても、たとえば警備員に常に巡回していただくとかいうような
裁判所
側のバックアップが必要ではなかろうかというようなふうには考えております。 以上でございます。
宮崎正義
20
○宮崎正義君
田中利正
さん、また
田中一志
さん、
参考人
としての御
出席
、本当に御苦労さんでございます。 まず最初に、
田中利正参考人
にお伺いいたしますが、日本
執行官
連盟が三十八年の一月に発会式を行ってこられて、今日までそのことをおやりになっているようでございますが、この会合は年にどれくらいおやりになって、
全国
からお集まりになって、そして、親睦が目的というものの、いろいろな
意見
交換等が行われるんじゃなかろうかと思うんでございますが、この
内容
等について、まずお伺いをいたしたいと思います。
田中利正
21
○
参考人
(
田中利正
君) お答えいたします。 日本
執行官
連盟の組織を申し上げますと、一番末端に、まず各地方
裁判所
ごとに分会というものがございます。そういたしまして、各高等
裁判所
ごとに支部がございまして、そして
東京
に本部を持っておるというような形でございまして、この連盟の運営は、
東京
におきます
全国
総会を年に一回開きまして、そこでいろいろな議案を練ることにしております。また、その下部組織の各支部の総会は、それぞれ年一回ないし二回開かれております。そして、その末端組織の各分会がこの支部総会に集まりまして、そしていろいろな問題を提案し、そして、これを最終的には
全国
の連盟総会に提案するというような形をしております。もともと、この連盟を発足させました最初のねらいは、それまで
全国
各地にばらばらに存在しておりました
執行官
が全く横の連絡もないというような点からかんがみまして、どうしてもこれはそうした
全国
的なものをつくる必要があるということで出発をしたものでございますけれ
ども
、そういうわけで、まず最初のねらいは、
全国
の
執行官
がお互いに仲よくしよう、要するに親睦を深めようというのが最大のねらいでございましたけれ
ども
、その後、
執行官
の
制度
が
手数料制
というようなことがございまして、どうしてもそういったようなことから、総会の議題では、
手数料
を何とか上げてもらうような
方向
でお願いしようじゃないかというような、ある程度要望的な要素が次第に深まってきて現在に及んでいるというようなふうに考えております。
宮崎正義
22
○宮崎正義君 そうしますと、
全国
総会のときには
全国
の事情が……。そのときばかりじゃなくて、随時報告はお互いに支部総会とかいうようなことで、報告なんてのは
東京
の方にみんな集合されるわけでありますか。
田中利正
23
○
参考人
(
田中利正
君) さようでございます。
宮崎正義
24
○宮崎正義君 そうしますと、地域の
状態
というものが、たとえば連盟の会長さんと言われますか、各地域の
実態
というものが全部会長さんのもとに報告があり、それを掌握されていると、こう解釈してよろしゅうございますか。
田中利正
25
○
参考人
(
田中利正
君) そのとおりで結構だと存じます。
宮崎正義
26
○宮崎正義君 そうしますと、同時に、
執行官
の様相はもちろんでございますが、
事務
的なことにつきましても、どれだけの
事件
件数があったとか、こういう
事件
があったとか、こうだとかああだとかいうその
内容
の具体性、それから
事務
職員
の
状態
なんかも、そういうところでいろいろ
お話
がありますか。私が先ほどからお伺いいたしておりますと、
東京
の
関係
を中心におっしゃっておられるように承ったものですから、地域における、地方における、地裁における
状態
というものを掌握されておるかいないかということがお聞きしたかったので伺っているわけですが、いかがでしょうか。
田中利正
27
○
参考人
(
田中利正
君) 実は、本日は
東京地方裁判所
の
執行官
の一名として参上したつもりでございましたので、できるだけその立場に立ちまして申し上げたわけでございますが、まあ連盟として、あるいは
全国
的な観点から申し上げますと、また若干違った面は出てくると思います。私
ども
、
全国
八つの支部総会が開かれますと、本部役員としてこれに参加いたしております。その席上で各地方庁のいろいろな実情は承りますけれ
ども
、先生が御指摘になりましたように、たとえばその庁に
事務
職員
がどのくらいいるかとか、その
事務
職員
がどのような処遇を受けているのかとかというようなことまでは実は存じておりません。その支部における非常に大きなといいますか、比較的大きいような問題についてはいろいろ発言もございますし、たとえば寒いところですと、ほかの庁と違いまして、特に冬季になりますと雪の
関係
でほとんど
執行
ができなくなってしまうというような実情、まあ、そういったような観点からしますと、当然そういったような地域のところには寒冷地手当とか、あるいはそういったようなものが必要ではないか、それを要望するというような声は聞いておりますけれ
ども
、余り詳しいことまでは存じておりません。
宮崎正義
28
○宮崎正義君 お立場で、きょうはお立場は
東京地裁
の方の
関係
、
東京
を主体にしてのお考えでございますということは私も承知はいたしておりますけれ
ども
、この会長さんはたしか
田中利正参考人
であったと私は思っておりますが、そうでございますか。
田中利正
29
○
参考人
(
田中利正
君) いかにも昨年七月から会長に就任しております。
宮崎正義
30
○宮崎正義君 私はここで要請をしておきたいことがあるわけなんですが、
全国
の
地域差
によりましては、相当
事件
のあるところとないところと、まちまちだと思います。
東京
もやはり同じだと思うんです。
東京
は最も多いと、こういうふうに解釈しているんですが、非常に
事件
件数のない方々の
執行官
の
収入
というものは、これは国庫補助によって最低限度は決められておりますが、そういう面と、それから
事件数
の多い、一口にわかりやすく言えば
収入
の多いというところと、相当の差があると思います。そういうところであるがゆえに、
執行官
の方々のところにやはり
事務
職員
の方がおれば、それに伴って同じようなことが想像されるわけなんですが、そういうふうな面をどんなふうに今後とらえていかれるか、また、そういう
全国
的な総会等がおありになったときに、また、支部の総会のときに御
出席
をされるというような
お話
もございましたので、特にそういう点につきまして今後御高配をいただいて、じっくりと相談をなさっていって、先ほど寺田
委員
の方から種々御
質問
がありましたような
一つ一つ
のことについて御
調査
を願えれば、
全国
的な話がストレートで会長さんの回答によってできるんじゃなかろうかと、こうも思えますし、と同時に、
事務
職員
の人
たち
がどういうふうな
環境
の中にあられるかということも当然わかってくると思います。
お話
にありましたように、北国になりますとこれはまた特別な事情がありますし、そういうところの
事務
職員
も
執行官
も相当苦労の度合いが違うと思うんでありますが、そういうふうな面も考慮をいただいて、そしてその
全国
的な掌握をしていただくことが今回の大きな
新法
ができます上において処置をされていく態度じゃなかろうか、このように私は思うわけでございますが、そのお考えのほどを伺っておきたいと思います。
田中利正
31
○
参考人
(
田中利正
君) まことにごもっともな御
意見
でございまして、われわれ
執行官
は、
全国
的にも特に
取り扱い事件
数あるいは
収入
の面について非常にアンバランスがございます。また、それに伴いまして、
事務
職員
の方につきましてもそれなりの影響があるということは、まさに御指摘のとおりでございます。これは私個人の考えということになるかもしれませんけれ
ども
、私、少なくともこの
執行官
の
収入
の格差につきましては、できるだけ平均化するような
方向
に
努力
をしていきたいというふうに考えております。その
一つ
の
方法
といたしましては、少なくとも地方
裁判所
単位に
執行官
が収受
関係
におきまして一体化するというようなこと、あるいはもっと細かい点におきましては、ある部分をお互いにプールしていくというようなことを当然考えられた方がいいんじゃないかというようなことを考えておりまして、そういったような観点から、各支部におじやましましたときには、そういうような
方向
でぜひとも考えてほしいというような発言の仕方をいままでもしてきておりますけれ
ども
、ただいま宮崎先生のおっしゃいましたようなことを十分体しまして、今後もそうした
方向
に向かいまして
努力
したいというふうに考えます。
宮崎正義
32
○宮崎正義君 そのようにしていきますと、勢い、
職員
の方々も同じような形で、待遇、処遇の問題につきましても同時に考えていかれるのじゃないかと思います。呼吸が合って初めて
一つ
のことが達成できるということは御案内のとおりでございますし、
執行官
の方々と
職員
の方々が一体の大事な仕事をなさっているわけでありますので、
執行官
のその生活の問題は、即それが、もっと厳しく言うならば
収入
の少ない
職員
の方々に目を大きく向けられて、いつもお互いが喜び合って、励まし合って、その
執行事務
すべてのことが整ってできるようにいくのが私は今後の大きな課題だというふうに思うわけであります。 それから
田中一志参考人
にお伺いいたしますが、
手数料
のことについて、最近のいろいろな
社会情勢
の変化によりましてどういう点をどのようにしなきゃならないかという、何か詳細の記録でも、また、こういうふうに願いたいというような要望でも一覧表にできておれば、それこそ
参考
に見せていただければありがたいと思っていますが、それにつきまして、
田中一志参考人
にも申し上げたいのは、
全国
的な
職員
の方々の生活
状態
といいますか、処遇
状態
といいますか、そういうふうな、先ほどアンケートをおとりになったという
お話
でございますが、私もアンケートの
参考
、これ、いただいておりますけれ
ども
、一部分の人
たち
がまだアンケートを出されてないように思われるわけですが、こういう
全国
組織としての考え方というものをどんなふうにしてお考えになっているのか、その点も伺っておきたいと思います。
田中一志
33
○
参考人
(
田中一志
君) まず、アンケートの件ですが、私
ども組合
の方で、
地裁管内
及び支部を含めて、
執行官
と従業員に対して百通余りのアンケートを出したわけです。その結果、
執行官
の方からは四通、それからそのほか従業員の方からは十何通か届いたわけでありますが、先ほど
執行官
である
田中
参考人
の方からも話がありましたように、
執行官
の家族が
事務員
として雇われているという場合も多いので、そういう
関係
の
事務員
の方からはアンケートが来なかったのではないかというふうに推察されるわけです。組合の方に集計しましたアンケートの中身を見ますと、いわば、現在の
労働組合
法とか労働基準法とか、そういうものに基づいて、
執行官
の家族ということじゃなくて、全く別なところの人間が雇用されているというふうに思えるわけです。そういう
関係
がありますので、私
ども組合
としましても
全国
的組織をつくりまして、もう少し
地位
の安定あるいは
身分
の安定、そうした
方向
に
職員
一体となって
努力
する方が望ましいのじゃないか、こういうことも論議されたわけですが、先ほど申したように、そうした
職員
の
関係
もありますので、なかなか
全国
統一組織、単一組織をつくるというわけにいかないのであります。しかしながら、四十一年の衆議院の
附帯決議
の問題とか、あるいは今回審議されております
民事執行法
の問題とか、こういった
状況
等については
機会
あるごとにそれぞれの
執行官室
の従業員の方に連絡をとりながら、また報告を伝えながら、いろいろ
職員
の
状態
を把握しているわけでございます。 今後も、この
機会
を契機にしながら、さらに
全国
的に連絡を深めて強化していきたいというふうに思っています。これはまだ私の私案という域を出ないわけですが、できれば
公務員化
実現の連絡会議とか、あるいは
協議会
とか、そういったものを
全国
的に呼びかけていきたいというふうに考えておる次第です。
宮崎正義
34
○宮崎正義君 お二人の
参考人
のいろいろな御
意見
は、また私
ども
同僚の
委員
の
質問
は、後ろの方に法務省の方々がいらっしゃいますので、将来に向けての大きな
改正
がなされるのじゃなかろうかという私は確信を持っているわけでありますが、ともあれ、
田中利正参考人
、
田中一志参考人
のそれぞれの御
意見
、また要望等、後ろの方で全部お聞きでございますし、将来に向かってのお二人のそれぞれのお考えが実現できるように、私は特に声を大きくして要請をしながら、お二人のきょうの御苦労のことをお礼を申し上げます。 ありがとうございました。
橋本敦
35
○橋本敦君 両
参考人
、本日はまことにありがとうございました。いろいろ貴重な御
意見
を伺いまして、大変
参考
にさしていただきました。 一、二点私も
質問
したいと思うのですが、まず、
田中利正
執行官
に御
意見
として伺っておきたいのですが、今回
執行官
の
権限
が
強化拡大
をされた、そのこと自体私は異論はございませんが、そのことは、同時に、この
執行
という問題が、
債務者
、
執行
される側との
関係
で、人権にかかわるいろいろな問題があるわけでございますので、法全体が
執行官
の
権限
を強化して
執行
体制の早期促進ということに向かっておりますが、一面では、
差し押さえ
を受けたり、あるいはいろいろ立入検査ないし
質問
を受けるという側の人権をどのようにバランスをとっていくかという問題があるように思っておるのです。たとえば、現場に臨んで
動産執行
を行う場合、
差し押さえ
禁止物件というのは一応法ではそれなりに出ておるわけですが、しかし、実際の現場の
判断
は
執行官
の裁量
判断
に任される、こういうことになるわけですね。あるいは
質問
ということを
一つ
とってみましても、不当に
質問
を拒否すれば制裁もあるわけですけれ
ども
、受ける側にとっては、身体
状況
、精神
状況
、病状、いろいろな
関係
がありまして、実際はなかなかやっぱりむずかしい、御苦労なさると思うのです。そういう意味で、今回の
執行
法の整備、
執行官
の
権限
強化と、一方、人権に
配慮
するという、そういうお考えが特に必要かと思いますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
田中利正
36
○
参考人
(
田中利正
君)
権限
が強化されるということは、まさに御指摘のような懸念が生ずるおそれがあるということは間違いないところでございます。しかしながら、現在、私
ども
の基本的な精神と申しますか、基本的な
執行
実施
の精神は、
債権者
の権利を守ると同時に
債務者
の立場も保護するということを常に念頭に置いて、その両者の中間に立って公正に行うというようなことをモットーにしております。そういったような意味におきまして、
執行官
たるべき者は、それにふさわしい
知識
が必要であると同時に、そうしたことを十分理解できるようなりっぱな人格が必要である。
知識
と人格であるというようなことで私
ども
も常々後輩を指導しております。そういったようなことでございますので、いま御懸念のあるようなことにつきましては十分留意いたしまして、そうしたことのないように今後とも一層指導をしていきたいというふうに考えております。
橋本敦
37
○橋本敦君 そういう立場でお仕事をなさっていただくという、そういうお考え結構でございますが、実際の、たとえば
動産執行
、
不動産
調査
、それに
執行官
がお行きになる場合に、
債権者
側の代理人といいますか、人間が一緒に随行いたしまして、そして、たとえば
動産執行
の場合でも、
執行官
がこれは
差し押さえ物
件から排除したいというお考えがおありの場合でも、ぜひそのものを押さえてほしい、これを押さえてほしい、こういう要求を現場でする場合がありますね。
執行官
がお困りになる。そういう場合に、暴力団的な、あるいはそれに
関係
する者が
債権者
となった場合に、強引に
執行官
に、
執行官
の意思に反しても、これを
執行
せよとか、いろいろなことを強要的にやるという事例が、これまでもないわけじゃないし、
執行官
がお困りの場合がある。そういう場合は、私は、断固としてそれを排除していただかないと人権侵害という問題も起こると思うのですが、現実に
執行
にお行きになる場合に、不当な要求ないし、あるいは暴力団が強引にやるということを排除するために何らかのいい
方法
というのはないものでしょうか。そういう者は連れていかないとか、立ち会わせないとか、そういうことはできませんか。
田中利正
38
○
参考人
(
田中利正
君) 実際問題といたしまして、なかなかむずかしい問題でございます。現在、
東京地裁
におきましては、日々百数十カ所といいますか、百数十件の
事件
を二十三区にわたりまして
処理
しておりますので、その中にはいろいろな問題が起きます。あるいは
債権者
側が強硬に
差し押さえ
を主張するというような場合もありますし、逆に
債務者
側が強烈に拒否するというようなことがございまして、往年と違いまして、現在の強制
執行
はなかなか思うようにスムーズにはいかないものでございます。 いま先生から御指摘ありましたように、暴力団的な者があくまで強硬に主張したといたしましても、いま私
ども
では、とにかく
当事者
に振り回されるなというようなことをモットーにしておりまして、
一つ
の例を申し上げますれば、ある日本人以外の第三国人の
債権者
が
差し押さえ
に行きまして、そして、
執行官
の目から見ますときわめて善良な
債務者
であろうと思われるのですけれ
ども
、トラックを一緒に持ってまいりまして、何が何でも引き揚げてほしいというようなことがあったのですけれ
ども
、その場合、それを直ちに引き揚げるということは、なるほど現在の
法律
でいきますと、運搬に困難な事情があるときにはその
債務者
のところに置いておいてよろしいと、逆に、運搬に困難でなければ何が何でも引き揚げなければならないというような
規定
になっておりますですね。そういうような場合、トラックを持って、何が何でも引き揚げてくれと言われますと、実は
執行官
としても困るわけです。ただしかし、そういうことをいたしますと、まさに過酷な
執行
というようなそしりを免れませんので、まず、そのような場合に、引き揚げて保管する
場所
が果たして適当かどうかというような点にかんがみまして、まず保管する
場所
が適当であるかを見きわめない限りそれはできないというような形で、そうした申し立てを却下したという事例もございます。そのようにいたしまして、過酷な
執行
というようなことにつきましてはできるだけ避けるというふうな
努力
を常に重ねておるということを申し上げることができると思います。
橋本敦
39
○橋本敦君 大変御苦労願っておることはわかりました。 たとえば、
競売場
なんかで
秩序維持
の
権限
がある、これはわかるのですが、
動産執行
の現場に臨んで、不当な要求をする
債権者
もしくは代理人を、過酷な
執行
排除もしくは人権侵害になることを排除するために、
執行官
が
権限
を持って排除できるということが具体的に行われていきますと一層いいと思うのですが、逆に、不当な
執行
妨害には
公務
執行
妨害ということで警察官を要請するということができるのですけれ
ども
、私が言ったのは、逆に、最近暴力金融等がふえておりますので、そういう点での具体的な
執行官
の公正な
職務
執行
について何らかの考え方なり方針を監督官である
裁判所
ともやっぱり相
協議
していただく必要が
社会
的にはあるのじゃないかということを心配しておりますので、今後御検討をいただきたいと、こう思います。 それから、
田中利正参考人
の方から六点にわたりまして要望が述べられました。私はいずれも妥当な御要望だと承っておりますが、その問題と
田中一志参考人
の御
意見
とあわせて考えますと、要するに、
執行官
及び
職員
の皆さんも含め、
民事執行法
体制が大きく前向きに進んだ現
段階
において、実際の
実務
を扱っていらっしゃる皆さんの待遇あるいは
手数料制
も含めて、具体的な
執行
段階
における近代化といいますか、そういう
関係
をみんなで知恵を集めて大きく進めねばならぬということが最大の課題ではないか、結論づけて言えばそういう気がするのですが、結論的に私はそう理解しておるのですが、私の理解に間違いがあるかどうか、
田中利正参考人
の御
意見
はいかがでしょう。
田中利正
40
○
参考人
(
田中利正
君) まさに先生のおっしゃるようなことが理想でございまして、われわれといたしましても、そういった
方向
にぜひ進めていきたいというふうに考えております。
橋本敦
41
○橋本敦君 次に、
田中一志参考人
に若干お伺いしたいと思うのですが、先ほど給与の問題が出まして、私もいただいた資料で地方の方の
現状
を見ますと、十万円以下という基本給の方がたくさんいらっしゃる。
東京
の場合、いま
田中利正参考人
から
お話
がございまして、平均いたしまして十九万六千何がしということになっているという
お話
がございました。このアンバランスというのはぜひ解消しなきゃなりませんが、この解消に実はやっぱり
手数料制
ということが
一つ
は根幹にあるということは否めないと思うのですね。だから、やっぱりこれを解決するには、
田中一志参考人
も強く主張された
公務員
体制化への移行ということが大きな課題だろうと思うのです。たとえば
東京
の場合でも、十九万何がしという平均数値は一カ月給料として出ていますが、平均
年齢
を見ますと五十一・七歳、平均勤続年数二十四・八年、つまり二十五年という長い勤務、この平均
年齢
と平均勤続年数がこれほどにまで及んでいるということを考えますと、一カ月の平均給与が
東京
でさえ二十万を切れるというのは、これは私は低いと、どう考えても低いと、こう思うわけですね。ですから、そういうことと、私的契約
関係
に置かれている中で、いわゆる年次休暇あるいはその他休暇が確実にとれるようにしなきゃならぬといういろいろな
労働条件
の問題を考えますと、私は、この問題はやっぱり根幹としての
手数料制
は近代的に
合理化
するということに大きくメスを入れないと、なかなか
田中一志参考人
の言われる要求も実現しないのじゃないか。大きな根は
一つ
はそこにあると、こう考えておりますが、
田中一志参考人
の御
意見
はいかがですか。
田中一志
42
○
参考人
(
田中一志
君) まさに先生のおっしゃるとおりであります。 先ほ
ども
話しましたように、
手数料収入
は、大都市と地方においてはかなりの
収入
のアンバランスがあります。したがいまして、そこにいる
執行官
はもとより、その
執行官
のもとに働いている
事務員
についても、やはり
賃金
水準が大都市と地方ではアンバランスとなってあらわれております。同時に、そのアンバランス自体も、きわめて低い
賃金
水準になっているというのが実情ではないかというふうに思います。昨年のアンケートの結果も、
全国
の
執行官室
から把握されているわけではありませんが、その幾つかを見ても、そのことが言えるのではないかというふうに思います。 それから、
東京
の場合、
賃金
水準、先ほど
執行官
である
田中
参考人
の方から発言がありましたが、私
ども
の平均
年齢
あるいは平均勤続という点から見れば、やはり低いと言わざるを得ません。特に二十三年、二十五年勤めている
職員
は、
送達
事件
が何万件という多大な件数があったときに採用された者で、その
人員
が今日そのまま就業しておるという
状況
になっております。 終わります。
橋本敦
43
○橋本敦君 先ほど
田中利正参考人
も、
執行官
自体の地方の皆さんの
収入
と、それから大きなところの
東京
、大阪等との
収入
のアンバランスを連盟の会長としてもできるだけ格差をなくしていく
方向
で
努力
したいという御
意見
がございました。私はぜひそれは
努力
をしていただきたいと思うのですが、そういう問題について連盟として
最高裁当局
と
お話
し合いなさるような
機会
がこれまでにありましたでしょうか、いかがでしょうか。
田中利正
44
○
参考人
(
田中利正
君)
田中
でございます。 こうした問題につきまして正式にそのような
協議
をしたということはございませんけれ
ども
、いろいろな場面で、個人的といいますか、公の
協議
の後でいろいろ雑談をするというような
機会
にはこうした問題が間々出ておりまして、最高裁の御
意見
も私
ども
の考えている
意見
も、ほぼ同じ
方向
を示しているというようなふうに感得いたしております。
橋本敦
45
○橋本敦君 それならまたいずれ最高裁にもお伺いして、同じ
方向
ということなら実現の可能性、
見込み
もあるやに伺いますので、最高裁の御
意見
も別の
機会
にまたお伺いしたいと思います。 最後に、
田中一志参考人
に
一つ
だけお伺いをして終わりますけれ
ども
、さっきあなたの
お話
の中にありました、
職員
の皆さんが、バイクだとか自転車だとか、そういうものを自分であがなって、たとえば
送達
の場合ですが、それでお行きになる。
旅費
は支給されるとしても、
刑事送達
の場合は
手数料
がない。そういうことで、持ち出しということも実際は多いかと思うのですね。で、
職員
の皆さんに交通手当とか実費の請求とか、そういうものは
制度
化されているというようなことがあるのでしょうか。あるいは、先ほどおっしゃったカメラ、テープレコーダー、こういうものによって
調査
や
職務
の正確性を期するという、こういう意味では、それは
職務
に付随した大事な道具であるわけですが、こういったものについて
制度
的に
執行官室
に整備をしておくとかなんとかいう
制度
的な体制になっているのか、
職員
の自前なのか、この点はいかがですか。
職務
の
実態
についてお伺いしておきたいと思います。
田中一志
46
○
参考人
(
田中一志
君) テープレコーダー、
カメラ等
の機器については、昨年から
執行官
の方から支給され、これは自費ということではありません。 それから自転車等については、これは自費で購入するわけですが、修繕する費用あるいはそれに伴う諸経費等については、いわば
職員
の歩率という形でそれを手直ししながら、そういうかかった費用の補助をするという形で行われておるわけです。
社会情勢
の変化、特に公共料金等が値上げ
改正
されますと、それに伴って、労使ということで
執行官側
と
協議
しながら適正な価格にしていくということで、そういった
関係
の是正は少しずつやられてはおります。ただ、はっきりとした
制度
ということでなく、その
社会情勢
の必要を見ながら
協議
し決めていくということでやっております。 なお、カメラ、テープレコーダーの支給の点についても、別に
制度
というわけではなくて、仕事の必要上これは組合あるいは仕事の
関係
で必要と思われるというように労使の間で
協議
が調えば、その
方向
で進んでいくということになるわけです。
橋本敦
47
○橋本敦君 ありがとうございました。終わります。
円山雅也
48
○円山雅也君 長時間お疲れと思いますが、最後に一点だけお尋ねをさしていただきます。
送達事務
に関してですけれ
ども
、まず
田中利正参考人
にお伺いします。先ほど、何といいますか、
送達事務
は
執行
業務
からむしろ外してもらいたいというのが
執行官
の意向であるという
お話
をされましたが、これは、いわゆる理論的というか、理念的に、本来そういう
送達事務
は
執行官
のやるべきことではないという意味で外してもらいたいと言われたのか、それとも、そういう
送達事務
は採算に合わないというか、メリットがないという意味でおっしゃられておられるのか、その点、まずお尋ねをしたいと思います。
田中利正
49
○
参考人
(
田中利正
君)
送達業務
を
執行官
の
職務
から外してほしいというわれわれの希望は前者にございまして、要するに、現在、
公務員
の四等級七号俸といいますと、大体一般
公務員
の課長、係長クラスでございますね、の資格を最低限とする
執行官
が
送達
、まあ郵政
事務
に近い
送達事務
を行うというようなことは、どうもその
職務内容
から見て、ふさわしくないと、そういうような観点から、できるだけこれを外してほしいというふうに申し上げている次第でございます。
円山雅也
50
○円山雅也君 そうしますと、
送達事務
を扱うことは、採算には合う、つまり実益はかなりあるということでございますか、やれば、
収入
には。
田中利正
51
○
参考人
(
田中利正
君) 現在、
送達
の
業務
につきましては、
収入
の面におきましては全く赤字でございまして、そういう意味では
収入
の実益はございません。
円山雅也
52
○円山雅也君 そうしますと、
田中一志参考人
にお尋ねをいたします。私の聞き違いかもしれませんが、先ほど
田中一志参考人
は、
東京
の場合、たとえば二十区の
送達
が
廃止
されたことによってかなりの減収を来しておると、また、残りの三区さえもなくなってくる、これが非常に何か経済面を脅かしておるというような御発言があったように記憶しますが、その点まず……。
田中一志
53
○
参考人
(
田中一志
君)
昭和
四十一年当時は、
都内
二十三区全区を担当しておりました。したがって、その全区にわたってかなりの
送達件数
が出ておったわけです。したがいまして、そこに従事する
職員
の人件費との
関係
で言えば採算がとれたということでして、現在は
区域
も縮小され、また、それに伴い
送達件数
も減少してくるということで、それに関与している人件費の
関係
では赤字になっていると、先ほど
執行官
の
田中
参考人
の方からもありましたように、そういう
状況
になっているということであります。
円山雅也
54
○円山雅也君 最後に
田中利正参考人
にお伺いします。 そうしますと、経済面からいけば、
送達事務
を返すよりも、逆に二十区の方の
送達事務
を復活さしてもらった方が経済的には
執行官
の方々のあれは豊かになるということになりますか。
田中利正
55
○
参考人
(
田中利正
君) その点に関しましては、仮にそういうことになりましても、とうてい人件費を賄って余りあるようなことにはならないと思います。
円山雅也
56
○円山雅也君 終わります。
峯山昭範
57
○
委員長
(
峯山昭範
君) 以上で
参考人
に対する
質疑
は終了したしました。
参考人
の方には、本日は長時間にわたり貴重な御
意見
をお聞かせいただき、まことにありがとうございました。
委員会
を代表して、厚く御礼を申し上げます。 本案に対する午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。 午後零時三分休憩 —————・————— 午後一時五分開会
峯山昭範
58
○
委員長
(
峯山昭範
君) ただいまから
法務委員会
を再開いたします。
民事執行法案
及び
民事執行法
の
施行
に伴う
関係法律
の
整理等
に関する
法律案
を便宜一括して議題といたします。 まず、
民事執行法
の
施行
に伴う
関係法律
の
整理等
に関する
法律案
について政府から
趣旨
説明を聴取いたします。古井法務大臣。
古井喜實
59
○国務大臣(古井
喜實
君)
民事執行法
の
施行
に伴う
関係法律
の
整理等
に関する
法律案
について、その
趣旨
を御説明いたします。 この
法律案
は、現在御審議をいただいております
民事執行法案
が可決されました場合、その
施行
に当たり、
民事訴訟
法外六十の関連する諸
法律
について、字句の修正、条文の整理その他関連事項の
改正
を行う必要がありますので、これら所要の
改正
を一括して行おうとするものであります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
峯山昭範
60
○
委員長
(
峯山昭範
君) 以上で
趣旨
説明の聴取は終わりました。 これより両案についての
質疑
に入ります。
質疑
のある方は順次御発言願います。
寺田熊雄
61
○寺田
熊雄
君 一昨日
競売場
の視察をいたしまして、
不動産
の買い受けの申し出をしようとする者は
現行法
で大体一〇%の現金による保証金を積むということが行われておるようであります。今度の
改正法
によりますと、六十六条で「
不動産
の買受けの申出をしようとする者は、最高
裁判所
規則で定めるところにより、
執行裁判所
が定める額及び
方法
による保証を提供しなければならない。」という
規定
になっておるわけでありますが、何らか現在のあり方を改めようとする意図のもとの条文なのか、その点ちょっと御説明いただきたいと思います。
香川保一
62
○
政府委員
(香川保一君)
趣旨
におきましては、特に
改正
する意図ではございませんので、その態様におきまして、やはりケース・バイ・ケースで合理的な扱いができるようにということで弾力的な
規定
に変えたと、かような
趣旨
でございます。
寺田熊雄
63
○寺田
熊雄
君 ただ、現金をかばんに入れて持ってくるというのが非常に手間ですから、また、危険も伴うので、そこで「最高
裁判所
規則で定めるところにより、」というのが、そういうことに対する何らかの修正を意図したものなのでしょう。そういう点をちょっと。
香川保一
64
○
政府委員
(香川保一君) 現金を原則にいたしますと、いろいろの問題がございますので、さような点はケース・バイ・ケースで弾力的に
処理
できるようにということで、その額につきましても、あるいはどのような保証を提供するかにつきましても、
最高裁規則
に委任いたしておるわけでございまして、ただいま最高裁の
事務
当局
において御検討中の規則案を承りますと、現金のほかに銀行振り出しの小切手あるいはいわゆる保険会社とのボンドでございますが、そういったいわば現金と同じようなものを中心に考えておられるようでありまして、額につきましては最低競売価額の十分の二程度を原則にしてはいかがかというふうな案を準備されておるように承っております。
寺田熊雄
65
○寺田
熊雄
君 一昨日
競売場
の視察に参りましたときには、再競売のときには五〇%だということを
執行官
が告げておりましたね。これもやはりそういう
趣旨
は貫かれるわけでしょうか。
西山俊彦
66
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) ただいま法務省の
民事
局長の方から御説明申し上げましたことは、最初の
段階
におきます保証の提供の
方法
また額でございまして、ただいま寺田
委員
御指摘がありましたような、再競売のときに十分の幾つとかいうふうに高額なものを提供する場合に、なお同じ
方法
でやるかどうかということにつきましては、現在規則を立案するに当たって検討中でございます。
寺田熊雄
67
○寺田
熊雄
君 これは、競売
制度
をスムーズに行うという観点からいたしますと、余り高額の保証を必要とするということになりますと若干障害になるおそれもありますし、さればとて、余り安くしますと、これはいたずらに競売
制度
をいじるにすぎない、そういう結果にもなるわけで、その辺のあんばいが非常にむずかしいのでしょうけれ
ども
、そうして結局そういう保証を積みまして、そして競買の申し出を履行しない、みずからがその入札した価額を支払わないという場合は、その保証金をどういうふうに処置するということになりますか。
香川保一
68
○
政府委員
(香川保一君) お尋ねの場合におきましては、その保証金をいわば没収いたしまして、それを代金に算入するということにして、それを
配当
財源にするわけでございます。
寺田熊雄
69
○寺田
熊雄
君 そうといたしますと、再競売の場合に五〇%もの保証金を必要とするという点、ちょっと首をひねる余地もあるようですが、これは検討するという——何もいま最高裁の
民事
局長が言われたことを、そのとおりにならないからといって責任を追及するわけじゃないので、安心してお答えいただきたいのですが、どういうふうに考えておられます。その再競売のときの五〇%の保証金という問題について、あなたはどういうふうに思っておられるか。
西山俊彦
70
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 現在の十分の一というのを、私
ども
が現在考えております規則では、これを十分の二に高めたいというふうに考えておるわけでございますが、その場合に、再競売になりましたときにその額をさらに高めるかという点につきましては、先ほど寺田議員が御指摘になりましたように、あるいは競売をしにくくするという面があるかと思われますので、そこまでは高くしないで
処理
するということは考えなければいけないというふうに思っております。
寺田熊雄
71
○寺田
熊雄
君 きょう御答弁になって、そしてそれと違った結果が生じたからといって、私があえてあなた方の責任を問うということはいたしませんから、この問題に関する限り。これは非常に技術的な
法案
だから、何やかや非常にいろいろな面を考えて結論を出さないと過ちますので、慎重によく考えてください。 それから、今度の
法案
によりますと、
最高裁規則
で定めることが非常にふえました。これはまあいいことか悪いことか、私
ども
実務
に携わる者としては多少首を傾げる面もあるのですが、その中の
一つ
で、
不動産
の
売却
方法
、これをやはり
執行裁判所
が定める——先ほど
執行官
並びに
執行官
事務
所に働いておられる
職員
の代表の
参考人
意見
の
陳述
を聞いたのですが、
執行裁判所
の定める
売却
方法
の中で
郵便
による入札の
方法
も考慮しているようだという話がありました。そういうものも考慮しておられるのか。それから、入札、競り売りのほか、随意
売却
を考慮しておられるということのようですが、そういう点の抱負をちょっとお聞かせいただきたいと思います。これは最高
裁判所
。
西山俊彦
72
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 御指摘の
郵便
による入札の
制度
は、今回の
改正
に当たりまして導入しようというふうに考えておるわけでございます。その
趣旨
としましては、
場所
的あるいは時間的な入札についての制約をなるべく克服して、広く買受人を募るためのよい
方法
ではないかということから、そういうことを考えておるわけでございます。 それから
売却
の
方法
としましては、今度の
改正
では入札を原則にしたいというふうに考えておるわけでございますが、競り売りがその次の順位として上がっておるわけでございます。そのほかに、
法案
では、その他の
方法
というのを最高裁の規則にゆだねられておりますので、それについての手当てをいたすつもりでございますが、これについては具体的に
売却
の
方法
を一々掲げるということではなくして、物件に応じて柔軟な
売却
方法
をとることができるという程度の
規定
にとどめて、あとは
運用
に任せていきたいというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
73
○寺田
熊雄
君 そうすると、ここに言う「最高
裁判所
規則で定める」というのは、現実には
執行裁判所
が適宜
判断
をして決めるということで、
執行裁判所
の
権限
あるいは裁量というものが非常にふえてくる、こういうことになりますね。私は、いま局長の言われた
郵便
による入札
制度
の導入ということは、確かに、競売ブローカーなどが蝟集するところに一般の素人がなかなか入りにくい、威圧されるというような
実態
にかんがみますと、なかなかおもしろい
制度
だと考えるのですが、まあ
差し押さえ
られて競売に付せられるということは、
関係
者はかなりよくこれを了知することができる。しかし一般には、
裁判所
の掲示場にそのことが掲示されるということ、あの掲示場に行って
裁判所
の掲示を見るというのは、やはりこれは職業的な
事件
屋、競売屋、ブローカーなどに限られるように思うのですが、たしか前回の
質問
でしたか、法務省の
民事
局長は、落札価額が恐らく高額になるであろう、そういう
不動産
については日刊新聞に掲示することも考慮するというような御答弁があったと思いますけれ
ども
、これは一般に周知させる
方法
について何らか考慮する余地はないのか、現在ではもうそれしかないのか、その辺のところはどうでしょうかね。これは両
民事
局長、ちょっとお考えを聞かしていただきたいと思います。
香川保一
74
○
政府委員
(香川保一君) 個人的な考えで恐縮でございますけれ
ども
、確かに周知する必要はまさにあるわけでございまして、その手段は、金をいとわなければいろいろ考えられると思うのですけれ
ども
、何分そういった費用というものが
債務者
に結局は
負担
させることになる
関係
がございますので、おのずとその
負担
の面から限度があるだろう。私、思いつきでございますけれ
ども
、たとえばいろいろ
不動産
の取引の
状況
等をニュース的に出しておる新聞があるわけでございまして、そういった新聞に掲載するということになれば比較的安価に掲載できるだろうと思いますし、場合によっては、各市町村あるいは役所等のわりあい人が出入りするようなところに掲示させてもらうというふうなことも考えていいのじゃないかと、いろいろ地域によりましてはこの問題は真剣に考えれば、おのずといろいろの知恵が出てくるだろうというふうに考えているわけでございますけれ
ども
、それを
法律
なり規則で、こうでなきゃならぬというふうに余りきめつけないで、やはり
執行裁判所
の費用の面を考慮しながらも徹底するような
方法
を弾力的に考えてもらうというのがいいのじゃないかというふうに思っております。
西山俊彦
75
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 公売物件を広く一般の人に知らせるという
方法
につきましては、
裁判所
の方でも長年にわたっていろいろの手を尽くして苦労しているところでございますけれ
ども
、なかなかうまい
方法
が見つからないというのが実情でございます。現在の取り扱いといたしましては、
裁判所
の掲示板に公告をするというのを原則にして、そのほかに市町村の掲示板に掲示してもらうという
方法
をとっております。それから、日刊新聞に公告をするというのは御指摘のとおりでございますが、そのほかにどういうふうな
方法
があるかと申しますと、いろいろ考えてはおりますが、たとえばパンフレットをつくってそれを配布することはどうかというふうなことも考えてみましたが、それをどうやって一般人がわかるようなところに配布するかという問題それからその配布の
事務
あるいは各所に郵送するというふうな場合に、その
事務
をだれがやるか、その印刷費はどうするかというふうな問題にぶつかって、なかなか実現が困難であるという
状況
にございます。
一つ
の考えられる
方法
としましては、各市町村が出しております広報がございます。それに掲載してもらうというのが一般人に対する知らせ方としては非常に広く行き渡るものではないかということで、そういうことを考えておりますが、そのほかの点につきましてもいろいろ知恵をしぼりまして、これから一層充実さしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
76
○寺田
熊雄
君 あなた方のいろいろ御苦心のほどはよくわかったけれ
ども
、
一つ
は、やはり
民事
事件
というものは、私益と私益の追求であるとか、あるいは衝突であるとか、そういう見地からだけつかまずに、やはり私法秩序を維持するということは国家にとっても非常に大切な問題である。したがって、そういう私法秩序を維持していく、それから、私権が侵害されずに救済を得るということは私人の問題であると同時に国家の問題である——これは裁判
制度
をそのために置いているわけですから、そういう考え方から出ていることは当然だけれ
ども
、したがって、
民事訴訟
の分野においても競売
制度
というものを円滑に理想的に行うためには、多少の費用はかかってもそれはやはり国の方から支出してもらう、全部
債務者
の
負担
にすべきではないのだという考えで、費用が要る場合にもあなた方が胸を張って財政
当局
にこれを請求していただくという態度をやっぱり希望したいですね。ですから、いま最高裁の
民事
局長の言われた市町村の広報というのは、これは恐らく市町村が無料でやってくれるのではないかと思うけれ
ども
、それ以外に、もし多少の経費が必要だという場合には、それはやはり予算を請求するということであってほしいと思います。これは要望として申し上げておきます。 それから、先ほど
執行官
並びに
執行官
役場の
職員
の代表の
参考人
意見
を伺って、ちょっと
お話
があったですね。
執行官
の
田中利正
氏の
意見
でありましたが、現実には私
ども
が三人ぐらいの
執行官
で
競売場
に臨むと、したがって、今度この
法案
で与えられた
秩序維持
の
権限
を
行使
する上においてはそう困難はないと思うけれ
ども
、しかし、現実に退場を命じた人間が動かないときに実力でこれを出すというわけにはいかない。したがって、警備員の巡視というものをやってもらいたいというような
意見
をさっき述べられました。しかし、
裁判所
には、警備員というのは、一般には、
東京地裁
なんかはあるのかもしれないけれ
ども
、小さな
裁判所
では、どうも警備員なんというのは、あるのかもしれないけれ
ども
、巡回する姿など私は見たことがない。多少の
配慮
をそこにしなければいけないように思うのですけれ
ども
、この点はどうなんでしょうね、どういうふうにお考えですか。
西山俊彦
77
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) まず、入札場あるいは
競売場
にそういうふうないかがわしい者が入り込まないようにするというのが第一の
方法
でございますが、その点につきましては、従前からも、
執行官
の監督官であります裁判官あるいは監督官の補助官であります首席
書記官
あるいは
執行
部の主任
書記官
というふうな者が
競売場
に臨席をして、そういう者が入って来ないように、いわば無言に圧力を加えるというふうなことをするようにわれわれの方としては要望しておるわけでございます。 しかし、それにしても、いろいろ雑多な人が自由に出入りできるという場でございますから、そういう人が入り込まないとも限らないということでございます。そのために、
法案
では
秩序維持
の
規定
が設けられましたし、それに対応して規則の方でもその具体的な
方法
を考えなければいけないわけでございますけれ
ども
、それをどうしたらいいかということについては、本当のところは、まだ固まっていないというのが実情でございます。 まず、
執行官
としては、自分で、競売というか、競り売り、入札の
手続
をしながらそういう者に退場を命ずるということは、これは事実上困難であるということは否めないと思います。そのためには、
事務員
の人を使うとか、あるいは他の
執行官
の援助を受けるとかというふうなことで、手分けをして処置をしなければならないということになろうかと思いますが、それで処置できない場合も当然考えなければならないことで、その場合には、私
ども
としては、必要に応じて
執行裁判所
に援助を求めることができるという
趣旨
の
規定
を設けたいというふうに思っておるわけでございます。それでもなおかつ退場しないというふうなことになりますれば、これは庁舎管理権の発動を促して排除するということにならざるを得ないかと思います。しかし、いま御指摘のように、大きな
裁判所
では警備員がおりますけれ
ども
、小さい
裁判所
ではそれは実行困難ではないかというふうな御指摘て、その点になりますと若干心もとない面もないわけではございませんが、庁舎管理権の実行に当たっての
事務官
の応援といいますか、そういうものによってその点は遺憾なくやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
78
○寺田
熊雄
君 これは、
執行官
のいろいろな
権限
を妨げる者、これに対する罰則の問題にも
関係
を持ってくるわけですね。
現況調査
に関しては、
執行官
がたとえば
質問
をするのに答えなかった、あるいは虚偽の返答をしたというような者に対しては、今度新たに罰則を設けたようですね。ところが、そのほかの点については案外罰則というものを、どうしてか非常に謙抑的に、余り設けることをしなかったということがうかがえるわけであります。まあ、暴行、脅迫を伴う場合には
公務
執行
妨害になるので、それ以外の点に余り罰則を設けるのもどうかという
配慮
をなさったのだろうと思いますから、余り私としても
民事
事件
で罰則を厳しくするのはどうかという、そういう考え方もあります。しかし、何分にも相手はかなり海千山千のすさまじい人物が多いわけで、これがもし暴行、脅迫に至らざる程度の妨害あるいは不退去というような問題こういう場合にはこれは不退去罪になるということなんだろうか、不退去罪にはならないけれ
ども
罰則まではそれを処置する必要はないというのだろうか、その点の
配慮
はどうなんでしょう。これは法務省の
民事
局長に。
香川保一
79
○
政府委員
(香川保一君)
刑事
関係
でございますが、不退去罪には一般的にはならないように思いますけれ
ども
、
公務
執行
妨害に至らないような妨害の場合に、
業務
妨害罪が成立するということは考えられると思うのであります。やはり、
執行官
が現地に臨んでいろいろな
調査
をする等のことは、
業務
妨害罪における「
業務
」でございますから、それを妨害するということになれば、
業務
妨害が成立するということは十分考えられるだろうというふうに思っております。
寺田熊雄
80
○寺田
熊雄
君 しかし、
業務
妨害罪は、あなたも御存じのように、威力を用いなければならない。威力を用い、あるいは欺計を用いる。したがって、威力も用いない、欺計も用いない、そして退去せよと言っても動かない、あるいは、威力や欺計には至らないけれ
ども
、その他の
方法
で、たとえば
現況調査
に対して、
執行官
が家に入ろうとするのをはいれなくする、それは壊す
権限
はあるだろうけれ
ども
、しかし壊せないようながんじょうな鉄のとびらでロックしちゃった場合、これは威力ではないし、欺計でもない、したがって威力
業務
妨害罪にはならないと思いますが、そういう場合に、何らかの
民事
罰を考慮する必要はないでしょうか。
香川保一
81
○
政府委員
(香川保一君) 過料の
民事
罰も検討したのでございますけれ
ども
、やはり私
ども
の
一つ
の感覚的なものとしまして、目的を達成するほかの手段があればそれによってやるのが本筋で、いたずらにと申しますか、そういった
民事
罰にしろ、過料の制裁をふやすことはやはり慎重でなければならない、基本的にはそういうように思うのでございまして、ただいまお尋ねのような場合に、仮に
業務
妨害罪が成立しないというふうな程度のもののときには、やはり
執行官
は門扉を開く
権限
もございますし、そういう妨害を排除する
権限
もあるわけでございまして、それが自力ではなかなかできないというときには警察力の援助も得られるわけでございますので、そういった
方法
によって妨害を排除することに努めるのが本筋じゃなかろうかということで、あえて
民事
罰を設けなかった次第でございます。
寺田熊雄
82
○寺田
熊雄
君 この点はどうですか。最高裁の
民事
局長は、
民事
罰を設ける点についての考慮はなさらなかったのですか、また、その必要はいまはまだないというふうなお考えでしょうか。
西山俊彦
83
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 私
ども
の立場としては、そういうふうにいろいろ注文していいかどうかということは疑問であるわけですが、いま問題になっておりますような程度の妨害というのは、いままでぶつからなかったのじゃないか、したがって、それがそういう罰則を設けてくれという要求というか、希望までにはいかなかったのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
84
○寺田
熊雄
君 そんなことはないので、かなり
執行官
も現場では苦心をしておられるようですよ。なかなか言うことを聞かないやつもおるし、それから私
ども
が一番
経験
していますのは、明け渡しの強制
執行
の際に、私が現実にぶつかったのは、これは暴力団が家に入っていて、なかなか
執行官
もはいれない。警察官の援助を求めたのだけれ
ども
、警察がなかなか来ない。小さい巡査が一人来てまごまごしておって、これはだめだというので、さらに請求して、今度は
刑事
課長が来たけれ
ども
、この
刑事
課長が来てくれるまでにもなかなか手間が要って、
裁判所
の
事務
局長から署長にかけ合って、やっと
刑事
課長が来た。それでも結局らちが明かずに、しょうがないから私が先頭になって入っていった。それで
執行官
が後からやはり入ってきた。これはかなりお年寄りの
執行官
でしたけれ
ども
、そういう現実の事例もある。しかし、そういうような具体的な事例がすべて法務省なり最高裁の方に
一つ一つ
上がっていくものとは思われない。だから最高裁のお耳に入らないから、そういう事例がないのだというふうにちょっと即断していただいては困る。やはりそれは検討していただかなければいけない。 それから、いまの警察官の援助を求めることができるというのは第六条に今度はあるわけで、これは先ほど
執行官
がこの
委員会
にお見えになったのだけれ
ども
、時間がなくてこの点の
質問
をすることができなかったのですが、警察の援助を求めることができるといって、
執行官
は現実にこういう援助を求めてスムーズにいままで援助が得られているのかどうか。その辺の
実態調査
はなさっておられますか。これはどちらの局長でも結構ですから。
西山俊彦
85
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 特に
実態
的な
調査
をしたわけではございませんが、そういう
事件
がありました場合には事後的に報告を受けているわけでございますが、その報告の限りでは、仮に時間がかかったにしても、どうやら
執行
は終わっているというふうな結果になっているようでございます。
寺田熊雄
86
○寺田
熊雄
君 そうなんですね。確かにいろいろ苦心惨たんして——私もそういう意味では非常に苦心したのですが、自分がどんどん入っていって、そして私には暴行を加えなかった、暴力団が。それでどうにか皆を出して、そして
執行官
に頼んで、今度は簡単に出入りのできないような厳重な材木で扉を新しくつくってもらって、そして立入禁止の仮処分ですか、それが完成したということなんですね。ですから、これは
執行官
の方々がそういうことをすべて詳細に
裁判所
に報告をしているのかどうか、私
ども
としては疑いなきを得ないわけです。その点はひとつよく
実態
をこれから
調査
されて、
執行官
が警察官の援助を得やすいように、また、警察はそのときに即応して援助の態勢をとることができるように、たとえば最高裁の
民事
局長と警察庁の
刑事
局長との間でそういう点の合意をするとか、あるいは法務省の
民事
局長でも結構ですが、警察庁の
刑事
局長との間で十分な意思の疎通を図るというようなことも考えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
香川保一
87
○
政府委員
(香川保一君) もちろん、これは実効あらしめるためには、そういった行政的な取り決めと申しますか、そういったことも十分考えなきゃならぬわけでございまして、実は、この
法案
作成のときも、私
ども
の耳に入っておる限りでは、大都市は別といたしまして、所によってはなかなか警察の援助が得にくいというふうなことも十分承知いたしておるわけでございますが、この辺のところが、いろいろの
方法
を講じまして、いま御指示のありましたような警察庁と
協議
をするというふうなこともその
一つ
の
方法
かと思いますが、いろいろのことを考え、
方法
を講じて実効あらしめるように
努力
してまいりたいというふうに考えております。
寺田熊雄
88
○寺田
熊雄
君 第六十八条は、「
債務者
は、買受けの申出をすることができない。」ということがありますね。これは、現実には
債務者
が自己の計算で他人に買い受けの申し出をさせることが多いのではないかというふうに私
ども
は考えております。これは結局七十一条の第三号に当たるわけでしょうか。もちろん、そのことがはっきりすれば、すぐこれは不
許可
の決定がなされると思うのですけれ
ども
、現実にはそういうことを一々
調査
はなさらないわけでしょう。その点どうでしょうか。
香川保一
89
○
政府委員
(香川保一君)
執行裁判所
が
売却
許可
決定をいたします場合には、もちろん、買い受け申し出人が買い受ける資格があるかどうかということは、当然これは
調査
すべきことだと思うのであります。ただ、表面には
債務者
があらわれないで、
債務者
の計算において第三者が買い受けの申し出をするというふうなときは、なかなかそういった内部的な計算
関係
というのはケースによっては
裁判所
にわかりにくいことがあろうかと思いますけれ
ども
、しかし、やはりそういったことも含めて、たてまえとしては
調査
すべきことだろうと思うのであります。したがって、そういうことがわかりますれば、七十一条の三号によって不
許可
にし、また、一たんそういうことが確知できなくて
売却
許可
決定をいたしました後に明らかになれば、その
許可
決定を取り消すということも当然すべきだろうというふうに考えております。
寺田熊雄
90
○寺田
熊雄
君 第八十三条の「引渡
命令
」に関してちょっとお尋ねをしますが、この引き渡し
命令
というのは、これは
債務名義
としての効力を持つのでしょうね。これに対しては
執行
抗告をすることができるということになっておるようですね。そうすると、第五項で、これは確定するまでは効力を生じないということがあるので、
命令
が出てから一週間というのは
執行
ができないと、こういうことになるわけですか。
香川保一
91
○
政府委員
(香川保一君) そのとおりでございます。
寺田熊雄
92
○寺田
熊雄
君 今般の
改正
で、
執行裁判所
の
権限
を
裁判所
書記官
の
権限
に移した。これは
裁判所
書記官
の
地位
の向上にも大変役立つし、また、
手続
が簡素化して大変よかったと思うのですね。実際上は練達の
書記官
がやってしまって、私
ども執行
部の裁判官をしたことがあるけれ
ども
、余り細かい
実務
というのはむしろ
書記官
の方がよく知っておられるということを
経験
したわけですが、しかし、それにしても、やはりこの
民事執行
の
関係
というのは非常に技術的なものですから、
執行
関係
の
書記官
にはある程度やはり
研修
その他の
制度
を徹底さしていただく必要があると思うのですね。これはいまでもやっておられるわけでしょうか。
西山俊彦
93
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君)
書記官
に対する
研修
につきましては、
裁判所
書記官
研修
所におきまして
執行事務
研修
というテーマでたびたび催しております。そういう点につきましては、今後も同じようなことで、あるいは今度の
改正
でそういう
権限
が直接自分のものとして委譲されるようになりましたものですから、そういう点も考慮いたしまして、一層の
研修
の充実を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
94
○寺田
熊雄
君
動産執行
の
段階
で、今度、
手形
、小切手その他
有価証券
を
執行官
が
差し押さえ
る場合が非常にふえてまいりましたが、午前のこの
委員会
で、
田中利正
執行官
もその点について言及をせられたわけであります。しかし、それを
執行官
が押さえる場合に、その
手形
の提示をする義務が生じた、これは従来もそういう場合がなかったわけではないようでありますけれ
ども
、今回は、これは一般的に、
手形
、小切手その他の
有価証券
を押さえる、そうして
手形
、小切手の提示をしなければいけない、
債務者
にかわって提示をすると。そういうことになりますと、これは
執行官
の
事務
がやはりそれだけふえることになります。忙しくなるというだけでなくして、その
事務
は、支払い
場所
に臨んで、そうしてそれを現実に提示するということになりますと、その
事務
はやはり
一つ
の独立した
執行官
の義務としてとらえることができるわけですね。そうすると、それに対する
手数料
な
ども
当然考慮しなければいけないということになるわけですが、その点の考慮はなさっておられるのでしょうか。
枇杷田泰助
95
○
政府委員
(
枇杷田泰助
君)
民事執行法
の
施行
に伴う
関係法律
の
整理等
に関する
法律案
の中で
執行官
法の
改正
を考えておるわけでございますが、その中の八条に、
手数料
を受ける
事務
単位の
規定
がございます。これにつきまして、
現行
の
規定
の上では、ただいまの提示の
関係
については必ずしもはっきりいたしませんで、
実務
的には、八条の二号の
差し押さえ
の
執行
に付随する
事務
としてその中に一括評価されておったようでございます。今度は少し様相が変わってまいりますので、そのものを明記してはございませんけれ
ども
、そういう
趣旨
も入れまして、新しい
法律
の方の八条の六号に、「
売却
又はその他の換価の
実施
に係る
事務
」というふうな
規定
を設けまして、この六号の
事務
の中で、その提示にかかる
手数料
を評価しようという考えでおるわけでございます。したがいまして、この六号の
規定
を受けました最高
裁判所
の
執行官
手数料
規則の中でそのようなことが織り込まれるというふうに考えておるわけであります。 なお、費用の
関係
につきましては、
執行官
法の第十条に、その受けられる費用のことが決められてございますけれ
ども
、そこには、十条の第五号といたしまして、ただいま御指摘の「
民事執行法
第百三十六条又は第百三十八条に
規定
する
事務
を行うための費用」、これは当然に
執行官
が支払いを受けられるというふうに明記いたしておる次第でございます。
寺田熊雄
96
○寺田
熊雄
君 そうしますと、それだけを独立してとらえないで、換価全体の中の
手数料
で、それを加味して定めようと、こういうことになるわけですね。
枇杷田泰助
97
○
政府委員
(
枇杷田泰助
君)
手数料
につきましては、そうでございます。
寺田熊雄
98
○寺田
熊雄
君 それから、その評価が問題でありますけれ
ども
、
執行官
がその評価をみずから定める場合も出てくるわけですね。それはどうでしょうか。 それからまた、その評価を
執行官
にやらせるということは、これは
執行官
に困難を強いることにはならぬのでしょうか。この点いかがです。
香川保一
99
○
政府委員
(香川保一君) まあ、いろいろ
差し押さえ
いたします場合にも、当然その評価というのが問題になってくるわけでございまして、たとえば超過
差し押さえ
の禁止の
規定
の
関係
から、どの程度押さえれば超過にならないかというふうなときには、
差し押さえ
の客体について
執行官
が当然評価しなきゃならぬわけでございます。お尋ねの場合の小切手、
手形
につきましても、
執行官
というのはそういった仕事の当然の要請としていろいろの財産についての評価能力を持っているものだということを前提にいたしておるわけでございまして、実際問題としてもさして困難だとは聞いておりません。
寺田熊雄
100
○寺田
熊雄
君 いや、実は非常に私は困難だと思うのですよ。
執行官
が万有についてその適正な価格を知っておるという、そういうことを肯定し得ないことは当然なんで、それをやっているわけでしょう、彼らは。だから、それは
執行官
にはむずかしいことだと思うので、
執行官
なかなか大変なんです。それでまた私
ども
も
執行
の場合には、よに道具屋というものをどうしてもやっぱり用いざるを得ない。よき道具屋に聞きますと、
執行官
の評価は高くて困ると言ってこぼしておる。それからまた、
債務者
の方は安過ぎると言って怒るし、なかなかむずかしいので、決して、
民事
局長、あなたの言われるように、
執行官
は楽々とやっているわけじゃありません。それはよく聞いてみてください。ことに貴金属なんというものの評価を
執行官
がやるということになると、これは大変なことになりますが、これはどういうふうにしますか。
香川保一
101
○
政府委員
(香川保一君) まあ、私も実は
執行官
の評価能力というのはそんなにないだろうと思っておったのですけれ
ども
、ただいま寺田
委員
のお言葉を返すようでございますけれ
ども
、意外に精通しているようでございます。もちろん、それは楽々とという意味じゃございません。平素のいろいろの訓練もございましょうし、
知識
の修得もあってのことでございますけれ
ども
。ただしかし、いろいろの
差し押さえ物
があるわけでございますから、物によっては初めてぶつかるような物もあるということは当然考えられるわけでございます。そういった場合に、自分がやはり適正な評価がやりにくい、あるいは困難だというときには、鑑定人に評価させるというふうな道も規則の方で設けられるように承っております。
寺田熊雄
102
○寺田
熊雄
君 貴金属の評価なんというのは、どういうふうに評価するか。これは規則で定めるということですが、これは、最高裁の
民事
局長、どんなふうにやりますか。
西山俊彦
103
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君)
現行法
では鑑定人による評価が義務づけられておりますが、ただいま考えております
執行
規則案におきましては、貴金属については地金以下で売ってはならないという原則的な制限を設けているだけでございまして、そのほかの一般的に必要があった場合に鑑定人に評価させることができるという
規定
を設けるつもりでおるわけでございます。
寺田熊雄
104
○寺田
熊雄
君 そうすると、たとえば鑑定人なんというのは
執行官
が選任するわけですか。あるいは鑑定人の名簿なんというのをあらかじめつくっておくのか、
執行官
としても迷わざるを得ないわけでしょう。たとえば、その土地の有名な貴金属商とか、あるいはデパートがあればデパートの宝石部長、鑑定士の資格を持っている宝石部長なんかを選ぶとか、そういう点、
執行官
に一任しちゃうのでしょうか、どうでしょう。
西山俊彦
105
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 結論から申し上げますと、
執行官
に一任するということになるかと思いますが、それにつきましては、
執行官
にその鑑定評価をするにふさわしい評価人が得られるようにリストアップをしてもらうようにお願いして、そのリストアップについては
裁判所
の方も協力していくというふうにしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
106
○寺田
熊雄
君 それから、法務省の
民事
局長、非常に
執行官
を、都下と言っちゃ何だけれ
ども
、
関係
者だから高く評価しておられるけれ
ども
、しかし、
執行官
といえ
ども
、たとえば
手形
の評価なんというのはきわめてむずかしいので、
手形
の振出人あるいは為替
手形
の引受人の支払い能力なんというのは、とうていそれは察知すべくもないし、小切手の場合は一々銀行に問い合わせないと預金があるかどうかもわからないし、なかなかこれは評価といっても
執行官
は困るのじゃないかと思いますが、こういう点も、最高裁としては、もう
執行官
に一任しちゃうわけですか。
西山俊彦
107
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) ただいま私
ども
で考えておりますのは、
手形
、小切手の場合には、これはもちろん評価しなければなりませんけれ
ども
、その場合の評価をどうするかという点は、ただいま御指摘のように非常にむずかしい問題がございますので、原則としては額面額をもって評価額とせざるを得ないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。ただ、そうしますと、先ほど来問題になっておりますような超過
差し押さえ
の問題が起こってきます。実際には
債務者
の支払い能力がないというのに、額面で評価をするというふうなことで超過
差し押さえ
の問題が起こってまいりますけれ
ども
、そういうことが仮に
債権者
の方から指摘された場合には、やはり実価を評価しなければならないのではなかろうかと。その場合には、やはり評価人を選任して評価をしてもらうということにつきましては、先ほどと同じように、評価人のリストをつくっておいてもらって、その中から適任者を選ぶという
方向
でやっていくことになるのではなかろうかというふうに思っております。
寺田熊雄
108
○寺田
熊雄
君 百二十五条の、仮
差し押さえ
の
執行
があったものについてはさらに
差し押さえ
ることができないと、この点はどういう見地からこういう条文を設けておられるか、ちょっと説明していただきたいと思います。
香川保一
109
○
政府委員
(香川保一君) 御承知のとおり、
現行法
におきましては二重
差し押さえ
ができることになっておるわけでございますけれ
ども
、やはり二重
差し押さえ
を前提としましての後続のいろいろの
手続
を考えますと、やはり初めの
段階
で二重
差し押さえ
を禁止いたしまして、そうして第二の申し立ての
関係
は、併合して
事件
の後続
手続
を進めるということの方がむしろ合理的ではないか。その方が
法律
的にもよくわかるし、
現行
の御承知のとおりの照査
手続
というのはなかなか厄介でございますし、いろいろ
方法
があろうかと思いますけれ
ども
、いろいろ議論いたしまして、やはりこの案のような二重
差し押さえ
の禁止のうらはらとしまして、
事件
を併合するという形で
手続
を進めた方がわかりがいいと申しますか、合理的ではなかろうか、それだけのことでございます。
寺田熊雄
110
○寺田
熊雄
君
配当要求
の問題に移らしてもらいますが、今度は、先ほど
田中利正
執行官
が
配当要求
をすることができるもの、これは今度は制限をいたしましたので、
配当
手続
が非常に楽になったという話がありました。そうして、
民事
局長も、この
民事執行法案
を作成する場合に、労働者の立場を非常に考慮したということで、
賃金
債権のような一般の先取特権者は、
債務名義
を有しない場合といえ
ども
配当要求
をなし得るのだという点を特に挙げておられたわけであります。そこで、私
ども
も、没落に瀕する、あるいは倒産に瀕する企業なんかの場合、たくさんの労働者から遅配
賃金
の支払い、獲得について相談を受けることが多いわけでありますが、そういう場合の証明資料といいますか、これはどの程度のものを要求しておられるのか。これを余り厳格にせられると労働者としては非常に困る場合があるのですが、そこをちょっと説明していただきたい。
香川保一
111
○
政府委員
(香川保一君) 先取特権者が
配当要求
をいたします場合の、その先取特権の存在、つまり、先取特権で保護される当該債権の存在を証する書面を提出しなければならぬわけでありますが、この書面としてどういうものがあるか。一番典型的なと申しますか、通常考えられるものは、雇用会社の方からの幾ら幾らの賃料が不払いだということの証明書があれば一番いいわけでございますが、そのほかのものとしまして、私
ども
、たとえば直接役所の仕事ではございませんけれ
ども
、労働基準監督署あたりは、そういった
実態
をわりあい知っておられるわけでございますので、そういったところから証明してもらえないだろうかというようなことをいろいろお願いもいたしておるわけでございまして、これは具体的にどういう書面、現在でも競売法では、先取特権についての競売を認めているわけでございますけれ
ども
、そういった
実態
を踏まえて、どういう書面が一番適当かということを考えなければならぬわけでございますが、実際問題としては、そのものずばりの入手できる書面というのはむずかしい場合があろうかと思うのであります。これは、したがいまして、
執行機関
におきまして、その権利を証する書面なりや否やというところは、ある程度そのものずばりの明白なものでなくとも、存在が推認できるというようなものであれば、この書面として扱うというふうな
運用
を期待したいわけでございます。
寺田熊雄
112
○寺田
熊雄
君 これは最高裁の方では
実務
上把握しておられますか。どの程度のもので一般に
執行官
なり
裁判所
がその申し出を許容しているか。なるべく余り厳格にいろいろな書面の要求をしないで、スムーズに労働者の
賃金
債権が得られるように、その
趣旨
はできるだけ徹底していただきたいと思うのですけれ
ども
、その徹底の
方法
は、先ほど最高裁の
民事
局長が言われたような司法
研修
所における教養の課程でなさる場合もあるでしょうし、そういう点はいかがでしょうか。
西山俊彦
113
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 先取特権を証する文書の種類については、
実務
の取り扱いといたしましても特に制限をしているわけではございませんで、
執行官
あるいは
執行
手続
でどういう証明文書が多く用いられているかということは実際にはわかりませんが、仮に
賃金
支払いの仮処分の
事件
なんかの例によって考えてみますと、倒産をしたという企業であってもまだ会計係が残っている場合がございまして、その会計係の人が給与に関する証明を出してくれるという例もありますし、それから
賃金
台帳を持参してくるという例もございます。それから、そういうものがない場合でも、過去に毎月毎月
賃金
をもらっていたその
賃金
の明細書を各人労働者持っておるわけでございまして、それを提出してもらって
賃金
額を決めているというのが実情でございまして、かなり融通的な取り扱いがなされているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
114
○寺田
熊雄
君 いまの御答弁、大変満足する面もあるし、不満足な面もあるのですよ。だけど、細かいことだから、余り言わずに、できるだけそういう点で余り厳格な証明を要求しないで、心証が得られた場合はできるだけ寛大な処置をとってもらいたいという要望をしておきます。
配当
について、譲渡担保権者の権利
行使
の
方法
が従来の取り扱いと変わるのか、あるいは従来の取り扱いと一緒なのか、この点の御説明をいただきたい。
香川保一
115
○
政府委員
(香川保一君) 譲渡担保権の場合には、通常はその
動産
を占有していない場合が多かろうと思うのでありますが、それを
債務者
の所有の物ということで
差し押さえ
られました場合には、当然譲渡担保権者はいわゆる第三者異議ということでその
執行
を排除する、こういう
方向
でいくべきだろう、したがって、譲渡担保権者自身をいわゆる担保権者として優先弁済権の
行使
を認めるというところまでは考えておりません。
寺田熊雄
116
○寺田
熊雄
君 そうすると、これは
配当要求
は認めない、訴訟で異議を申し立てて自己の所有権を主張しろと、こういうことですか。
香川保一
117
○
政府委員
(香川保一君) そのとおりでございます。
寺田熊雄
118
○寺田
熊雄
君 百五十二条の「差押禁止債権」の問題に入りますが、この第一項の括弧書きの部分ですね。一般には給与その他の給付の四分の一だけが
差し押さえ
を許されるとなっておりますが、この括弧書きで「(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)」、これは現実には、最高裁としては——これは法務省かな、どちらでも結構ですが、どの程度の額、たとえば一定の給与の場合には二分の一までいいのだとか、あるいは四分の一を三分の一にするのだとか、そういう具体的なお考えをすでに持っていらっしゃるのか、そして標準的な世帯の必要生計費というのはどういう資料で認定をされるのか、この辺のところをちょっと説明していただきたい。
香川保一
119
○
政府委員
(香川保一君) これは、たとえば現在生活扶助の
関係
、五十三年度の数字でございますが、これが親子四人の世帯で大体十三万三千円ぐらいが標準生計費というふうになっておるわけでございます。他方、国税徴収法の
関係
で、同じような
差し押さえ
禁止の
関係
から、標準的な世帯の必要生計費というものを現在のところでは十七万円ぐらいに決めておられるわけでございます。それこれ勘案しながら、二十万円程度あるいはそれ以下のところで政令で決めたいというふうに現在考えておりますが、
関係
各省いろいろ御
意見
を承って、
実態
に合った額を見出していきたい、かような考えでございます。
寺田熊雄
120
○寺田
熊雄
君 それはわかりましたが、その二十万円を一応標準とされるという、何らかの数字で限りませんとやっぱりいかぬので、その二十万円が適当かどうかという点は皆さんの御認定にまつ以外にないのですが、それをオーバーした場合にはどの程度まで
差し押さえ
を許容しようとするのか、その
差し押さえ
許容範囲についても何か具体的な抱負をお持ちですか。
香川保一
121
○
政府委員
(香川保一君) この
関係
は、仮に政令で二十万円というふうに決めますれば、二十万円を超過する部分は全部
差し押さえ
ていいと、こういうことになるわけでございます。
寺田熊雄
122
○寺田
熊雄
君 二十万円と決めた場合、それを超過したら全部
差し押さえ
ていい——はあ、そういう
趣旨
か。そうすると、ずいぶんこれはあれですね、たとえば百万円の所得があるという人は五分の四は
差し押さえ
られちゃうという、そういうことになりますね。一般は、たとえば二十万円以下であれば四分の一しか
差し押さえ
られない、ところが、二十万円超過したらこれは五分の四までを、あるいは二百万円の所得の人だったらほとんど全部を、十分の九まで
差し押さえ
ていいということになってしまう。ちょっとこれは、なるほど二十万円あれば人並みに生きていけるじゃないかという考えだろうと思って、多少理解できないわけではないけれ
ども
、あんまり
差し押さえ
許容範囲が一挙に
拡大
し過ぎるような印象を受けますが、その点どうでしょうね。
香川保一
123
○
政府委員
(香川保一君) この問題はすぐれて政策的な問題でございますので、そんなに私
ども
自信があるわけじゃないのですけれ
ども
、こういうふうにいたしました基本的な考え方は、やはり一方で
差し押さえ
債権者
の保護と申しますか、極端なことを申し上げますれば、あしたの生活にも困るために
差し押さえ
をするということもあるわけでございまして、したがって、やはり他人様に迷惑をかけておる、借金しておるということになりますれば、それは百万円の所得者であろうと、やはり最低の生活でがまんすべきだ、借金は先に返すべきだと、こういう簡単な
一つ
の倫理観と申しますか、そういうことで踏み切ったわけでございまして、そこのところは、百万円の給与所得のある人が——月額でございますから、そういう人が他人から借金して
差し押さえ
られる場合に、五十万円だけは残してもらうというのは余りにも虫がよ過ぎるのじゃないかと、こういうふうな、簡単に申しますれば、感じでございます。
寺田熊雄
124
○寺田
熊雄
君 こういうものは、あなた方がいろいろ想定なさることが、アリストテレスじゃないけれ
ども
、世間の森羅万象を全部掌握できるものじゃないので、たとえばこれは最高裁の
民事
局長の御答弁についても言えることなんですけれ
ども
、やっぱりあなた方が把握なさる事象というものは全部じゃないわけです。一部分なんだから、余りそれだけでもってすべてだというふうに断定なされますと、ちょっとやっぱり結果的におもしろくないことが起きるのじゃないでしょうか。 たとえば、好悪な
債務者
が善良な
債権者
の追及を避けようとするということになりますと、
民事
局長のおっしゃるような、それはもう十分の九まで押さえてもいいじゃないかということになりますが、たとえば、サラ金業者が保証人を立てさせるということが絶対条件のような場合がありますね。その保証人がサラ金業者のために、もう毎月の
収入
のほとんどを持っていかれちゃうというようなことを考えますと、これはやっぱりある程度制限した方がいいという考慮も成り立つので、私は、それは本当にそういう場合は強者が弱者をいじめるに等しいことになりますから、ですから、
民事
局長のように、二十万円の場合は、たとえば医師の優遇税制の場合大蔵省がとったような
段階
的な
差し押さえ
の許容範囲を定めるというようなこともお考えいただいた方が現実に即応するように思いますが、その点どうでしょうか。
香川保一
125
○
政府委員
(香川保一君) ただいま例示されましたサラ金の場合なんかは、むしろ現在利息制限法がございますし、最高裁の判例は御承知のとおりでございますので、その判例の
趣旨
から考えますと、なるほどそのサラ金業者というのは酷だということはあるにいたしましても、現在の利息制限法のもとにおける元本と利息合計したものについては、これは酷な
債権者
ではないはずでございます。だから、むしろ、そういう超過する利息部分等は私法上無効だということで、
差し押さえ
そのものをはねのけるように
債務者
の方で
努力
すべきじゃなかろうかと思うのであります。それも含めまして、いま御提示のような
段階
的にというふうなこともいろいろ考えたのでございますけれ
ども
、やはり高額所得者はそれなりの、何といいますか、所得に合った——ぜいたくなとまでは申しませんが、生活をしておる。そういった生活を勘案して、その生活を維持するに足る部分だけは残しておくという考え方と、一方、
差し押さえ
て債権を回収しなきゃならない
債権者
の立場というものを比較考量いたしますと、少々生活は窮屈になっても払うべきものはやっぱり払うということの方が筋ではなかろうかと。しかし、
差し押さえ
られたためにあしたの生活が困るというふうな窮状になっては、これはやはり人道上も問題でございますので、そこのところを、標準生計費というふうなものを、必要生計費というものを持ってまいりまして、先ほど申しましたように、大体二十万程度というふうなことでがまんしてもらう、そういうところしか知恵がなかったわけでございますが、いろいろのことが議論されたようでございますし、私
ども
考えたのですけれ
ども
、どうもやはりこう一律的な形にしないと、高額所得者が
差し押さえ
を免れる部分が多くなるという説明はどういうふうにできるか。 〔
委員長
退席、理事上田稔君着席〕 つまり、必要生計費というものが所得によって高低があるのだという考え方を取り入れることが果たして
差し押さえ
債権者
の立場から考えまして適当かどうかといろいろ考えたわけでございますけれ
ども
、結局、やはりそれは最小限の生活ができる程度は残されても、それ以上のものはやはり返すべき借金に充てるべきだと、こういうふうな考えになったわけでございまして、あるいは知恵のないやり方かもしれませんが、私
ども
としてはそれが精いっぱいでございます。
寺田熊雄
126
○寺田
熊雄
君 確かに、あなた方のそういうお考えもできると思いますよ。ただ、親戚から頼まれて保証を余儀なくされたというような場合に、それが主
債務者
が倒産してしまって保証人が一身にその債務を引き受けるような場合がどうしてもありますね。われわれはもう常にそういう相談をよく受けますから。そういう場合に、二十万を超えたものは全部取られちゃうということになりますと、たとえば最近でも俸給生活者が二十万ぐらいの給与を取っているのはざらにあります。そうして、奥さんもやはり共かせぎをして十五万取っていると、合わせて三十五万になりますね。そこで両方が元気を出して銀行からローンを借りて家を建てたというような場合に、今度は全部押さえられちゃうとローンが返せないという家庭がずいぶんありますよ。いまはもう非常に俸給生活者がかなり若い者でもどんどん家を建てている。見てみると、みんな銀行や住金からお金を借り入れている。そういうような家計のやりくりでやっているものを、たまたま保証したから三十万円を超えたら全部
差し押さえ
られちゃうと、返せなくなっちゃう。今度は、その建てた家を取られなければいかぬ。そこはやはりあなたのおっしゃるように、
民事
秩序を守るのですから支払いはさせなければいかぬ。しかし、それには漸次返還さしてもいいわけですからね。一挙に返還させなくたって目的は達するのだから。だから、もしも
民事
局長のおっしゃるように全部その
差し押さえ
を許容するのだということになりますと、それは二十万じゃちょっと余りにも低額過ぎますよ。これはもう三十万ぐらいにしてもらわないといかぬ場合も出てくるかもしれません。ですから、その点はもうすでにお決めになったのじゃないでしょうけれ
ども
、いろいろな事情を勘案しておやりくださることか、あるいはさっき
お話
ししたような
段階
的な
制度
を設けるか、その点は考えていただきたいと思います。どうでしょうか。
香川保一
127
○
政府委員
(香川保一君) ただいま私が申し上げましたのは、原則的にこの百五十二条の考え方を申し上げたわけでございまして、ここで
段階
的な手当てをするのも
一つ
の
方法
かと思いますけれ
ども
、そこまでなかなか知恵が、いい
段階
的な
方法
を考えることができなかったわけでございますが、おっしゃるように、そのケースによりましては非常に酷な場合が出てくることはもう百も承知いたしておりまして、そういうときに備えまして、百五十三条の
規定
を設けまして、ここで範囲の減縮、拡張を
執行裁判所
がケースごとに考えて
判断
していただいてやるというふうな弾力的な支えを
一つ
設けておるわけでございまして、これが寺田
委員
のおっしゃるようないろいろのケースを賄うことができるかどうか、これは
運用
の問題かと思いますけれ
ども
、一律的に所得幾らの方は幾ら残すというふうな形よりは、やはり最低のところを原則的に押さえておいて、そしてケースごとに減縮伸長のこの
規定
を
運用
して、よろしい結果が得られるようにしていただくというふうな
配慮
をしたつもりなのでございます。
寺田熊雄
128
○寺田
熊雄
君 いま、最高裁の
民事
局長、お聞きいただいておったと思いますが、この百五十三条の
運用
について、非常に過酷な場合が生ずる場合を救済できるように、その点は裁判官なり
執行官
が
運用
について過ちがないように、よく全体を御監督くださるように、その点を特に要望いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
西山俊彦
129
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君)
差し押さえ
禁止の範囲の変更につきましては、
現行法
でも
規定
があるところでございまして、多分、御指摘のようなことは誤りなく行われているのではなかろうかというふうには考えておりますけれ
ども
、御
趣旨
の点は、この
新法
の
施行
に先立ちましてのいろいろな
研修
、それから会同、そういった際にそういう議論があったということを紹介して、誤りのないようにしていきたいというふうに考えております。
寺田熊雄
130
○寺田
熊雄
君 百六十八条の「
不動産
の引き渡し等の強制
執行
」、これは明け渡しの強制
執行
の場合に私
ども
がしばしば遭遇する問題でありますが、
債務者
が
執行
妨害のために他人をその家屋に住まわせた場合、この場合は、その他人を確認して、やはり承継
執行
文をとって
執行
するという
手続
をしておるようですが、これはこの
改正
民事執行法
でも従来の
執行
方法
と変わりありませんか。
香川保一
131
○
政府委員
(香川保一君) 特に変わりございません。
寺田熊雄
132
○寺田
熊雄
君 その場合、
執行官
に聞きますと、その他人を確認することに非常に苦心をしておられるようであります。昼間行ったら絶対いない。表札は立っておる。たとえば山田なら山田という表札はあるので、山田何がしがおるということで確認しようと思って行ってみても、なかなかおらない。仕方ないから夜行くと、夜も非常に遅くなってからでないと帰らないということで、
夜間
にのみ把握し得るような場合があるようであります。そういう場合、これはやはりいまでもそうですが、
現行法
でも、たとえ
夜間
といえ
ども
そこに臨んで、そしてやっぱりその人間に会って氏名を確かめ、そして占有の事情などを聞いて、その上で
債権者
に承継
執行
文をとらして、それから
執行
するということにならざるを得ないわけですね。
香川保一
133
○
政府委員
(香川保一君) そのとおりでございます。
寺田熊雄
134
○寺田
熊雄
君 それから第四項でありますけれ
ども
、これは家屋明け渡しの際に、中にある
動産
をどうするかというので現実的にはいろいろな問題が起きてまいります。この第四項によりますと、まず
債務者
に引き取らせる、これはまあ一番自然な
方法
でありますけれ
ども
、
債務者
がいない場合はその代理人。この「代理人」というのは、またこれ非常に範囲が広いようで不明確でありますが、この「代理人」というのは一体何を考えておられるのか。それから「同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。」、これはずいぶん
民事
局長御苦心の作だと思うのだけれ
ども
、「相当のわきまえのあるもの」、なかなかこれは苦心をされたなあと思って読んだのだけれ
ども
、これはどういうことを意味したのか。私は現実にこういう場合に出くわして、この条文ではどうしても賄えない場合に遭遇したことがあるので、これは後にお尋ねをするけれ
ども
、まずそれについてお答えいただきたいと思います。
香川保一
135
○
政府委員
(香川保一君)
債務者
の代理人と申しますのは、これはまあ自然人の場合に余り問題にならないと思いますが、強いて考えますれば、その
執行
関係
で委任を受けておる弁護士が考えられるわけでございますけれ
ども
、これはほとんど問題にならないと思います。主として会社の場合なんかに代理人というのが物を言ってくるのじゃないかというふうに考えております。 それから、「従業者で相当のわきまえのあるもの」と申しますのは、これはやはり
執行官
がその
債務者
の
動産
を取り除いて、それを引き渡すわけでございます。あくまでも他人の、つまり
債務者
の固有の物でございますので、めったやたらに不適当な者に引き渡したのでは
債務者
が損害を受けることがあるわけでございますので、したがって、抽象的ではございますけれ
ども
、やはり善管義務が尽くせるような者に渡すべきだということをこういう表現であらわしておるわけでございます。
寺田熊雄
136
○寺田
熊雄
君 この第四項に、たとえばこういうものを、「その他
執行官
において適当と認めるもの」というふうにすると、余りにも広くなっちゃって乱用の危険があると思ったのかどうかしりませんけれ
ども
、私が遭遇したものは、「同居の親族」という、「同居」というのが邪魔になる場合があったわけですね。つまり、単身で居住しておると。ただ一人の娘が他に嫁しておると、しかし、娘に引き取らしたら一番いいという場合。しかし、これは同居してない。そういう場合、この「同居」なんという条件がかえって邪魔になっちゃうのですね。もうちょっとこれを広げた方がよかったのじゃないでしょうか。
香川保一
137
○
政府委員
(香川保一君)
現行法
におきましてもその問題は確かにあるのでございますが、さればといって、この「同居」を取り外しますと、現実の
執行
の場面を想定いたしましたときに、
動産
を取り除いて、それをどこか親族を探してそこまで
執行官
が持っていかなきゃならぬ、あるいは親族にそこへ来てもらって引き渡すというふうなこと、そういうことが実際問題としてなかなかできにくいのじゃなかろうかと。したがって、まあ、これは簡易なと申しますか、その場でともかくしかるべき者に引き渡しておく、それができないときにはむしろ
執行官
みずからが保管するということにした方がベターではなかろうかと、こういうふうに考えたわけでございます。
寺田熊雄
138
○寺田
熊雄
君 そういう、いろいろお考えになったのだろうけど、いまは御承知のようにもう核家族化しちゃって、同居の親族なんていうのは夫婦以外にはおらぬのですよ。もう息子、娘もみんな独立して家を持っている。だから、余り「同居」にこだわらない方が現実に即応するわけで、同一の市内に娘も息子も居住している場合があるのです。それでまた明け渡しなんというのは現実には非常に困難なんで、
債権者
の方でもいきなりそういう
執行
をするわけじゃありません。いついつまでに出るかとか、荷物をもういいかげんに引き取れとか、息子にも要求したり娘にも要求したり、いろいろそういう準備
段階
があるので、いきなり強制
執行
をして明け渡しちゃうなんていうのは希有なんですがね。だから、むしろ局長がおっしゃるように、その場でなんというのじゃなくて、やはり現在の
社会
の
実態
に合うということを考えますと、「同居」というのは私は取った方がよかったと。ただ、これも「同居」を取ったからやたらに何でもというのじゃないので、
執行官
にその幅を持たせるわけですから。私はそう思いますよ。こだわるわけじゃないけれ
ども
、どうですか。
香川保一
139
○
政府委員
(香川保一君) これは、実際の便宜といいますか、そういうことをあるいは強く考え過ぎておるのかもしれませんけれ
ども
、たとえば細かなことで恐縮でございますけれ
ども
、「同居」を取りました場合に、やはり
執行官
としては、この
規定
の
関係
から親族を探さなきゃならぬわけでございまして、その親族がおるのにその者に引き渡さないで、みずから保管したというふうな場合を考えますと、その保管はむしろ違法だということになってくるおそれがあるわけであります。それから、さらにまた、離れたところに住んでおる親族がおりましても、そこへ運搬していく、そういった費用は一体どうなるのかというふうないろいろの問題が派生的に出てまいるわけでございまして、それやこれや考えますと、実際の
執行
の場面においては、やはり身近におる者で適当な人に渡すということを限度にいたしまして、それができないときには
執行官
の責任において保管するということの方が実情に合うのではなかろうかというふうに考えたわけでございます。
寺田熊雄
140
○寺田
熊雄
君 こういう問題を論議していくと無限に時間がかかっちゃうので、もう余りこだわらぬけれ
ども
、同居の親族が一緒に出ちゃうのだから、その出ている者に預けるというのがそもそも矛盾なんで、それは他に一軒構えて、その物を収容し得る能力のあるところにやっぱり預けないと、おやじと一緒に追い出される子供に預けるというのは矛盾なんで、それはやっぱり……。それでまた
債権者
は、こういう場合、よく探すわけですよ。 〔理事上田稔君退席、
委員長
着席〕 それで、もうわれわれ実際問題として明け渡しなんという強制
執行
をやる場合に、いわば悪しき
債務者
の場合でも、やはり相当情けをかけて、できるだけ損害を少なくして明け渡させようとしますね。ですから、もうちょっとそれは局長、考えていただきたかった。それで、これを修正しろといったって、いま無理なことだから、あえて修正しろということをあなたに
お話
しするわけじゃない。ただ、やはりこの場合は
執行官
にもう少し幅を持たして、
執行官
が一々運ぶというのも大変なことで、親族が来て引き取ってくれれば一番いいので、物も丁寧に扱いますしね。私は、これは少し
配慮
が足りなかったのではないかというふうに考えているのですよ。しかし、よろしいわ、そう大きな問題じゃないから。このことでまたあなたといろいろやりとりしてもしようがないから、この程度でおさめておくから。 それから、
現行法
では、任意競売の場合に、抵当権の存在を争う者は、まず抵当権設定登記の抹消登記請求を本訴で起こして、それから
競売手続
の停止を仮処分によって求めていくという
方法
をとっておりますね。これは今度の
改正法
でも
現行法
どおりなんでしょうか。その点いかがでしょうか。
香川保一
141
○
政府委員
(香川保一君) 同じでございます。
寺田熊雄
142
○寺田
熊雄
君
現行法
でも、即時抗告や
執行
異議の問題で、限界ですね、その境界をどの辺に置くのかという点で、われわれもずいぶんわからないことがあったのですが、この
改正法
で、「
執行
抗告」、これは第十条。それから十一条の「
執行
異議」、これは条文を見れば大体わかるようだけれ
ども
、現実の問題でこの境界というのははっきりしていますか、どういうふうにわれわれが理解していったらいいのか。
執行
抗告と
執行
異議と。
香川保一
143
○
政府委員
(香川保一君)
執行
抗告は、特にそれぞれの
執行裁判所
の
執行
処分について
執行
抗若ができるという
規定
があるものに限るわけでございます。したがって、
執行
抗告ができない
執行裁判所
の処分については
執行
異議ができると、こういうことになるわけでございますので、したがって、今回の
改正
によりまして、そういった限界と申しますか、区分がややこしくなるということは解消されたというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
144
○寺田
熊雄
君 百五十二条の問題にまた戻って——あちこち戻るのだけれ
ども
、生活保護を国から受けているその給付金というものは、これは
差し押さえ
ることはできませんね。ところが、実際には、これをずいぶん現実にはサラ金業者が
差し押さえ
と同じように、その支給のところへ行ってすぐ取り立てるというような事象が行われているようですね。これは御存じですか。
香川保一
145
○
政府委員
(香川保一君) そういうことは耳にいたしておりませんけれ
ども
、
法律
的にはできないことだと思います。
寺田熊雄
146
○寺田
熊雄
君 その
法律
的にはできないことを、現実にそこへ臨んで、まあ恩給でもそうですけれ
ども
、恩給証書を取っちゃって、そして支給を受けているものを事実上取り上げているということが多いわけで、生活保護の場合が一番悲惨なんですけれ
ども
ね。これは、事実上そこへついていって、支給を受けたらすぐそこから取り上げてしまうというようなサラ金業者が現実におるわけで、これは
現行法
の舞台に上ってこない、事実上の行為だから。これはどうしようもないわけでしょう、
民事
局長の手腕をもってしても。
香川保一
147
○
政府委員
(香川保一君) 支給する方の側は、もちろんこれは
法律
的には直接払いでございますから、当然生活保護を受けている方を確認して渡すわけでしょうから、そのところへついていって、そこで生活保護を受けている人が任意にそれを渡せば問題ありませんけれ
ども
、強制的に取り上げるとなると、これは強盗か何かになる問題でございまして、やはりそういうことはしかるべき
方法
で防除しなければならぬ問題だと思います。
寺田熊雄
148
○寺田
熊雄
君 暴行脅迫だと強盗になるけれ
ども
、暴行脅迫に至らない強制で取っちゃうんだから、それは強盗にはならぬけれ
ども
、これはどうしても
法律
のあれに上がってこないのかね。それとも、
民事
局長の快腕をもってしてもどうしようもないかな、これは。 百五十七条の第五項、ちょっと私
ども
が読んでもこれはわかりにくい条文で、これをもうちょっとわかりやすく説明してもらいたい。
香川保一
149
○
政府委員
(香川保一君) これは原則的には
現行法
と変わってないところでございますが、債権を
差し押さえ
まして、そして
裁判所
——今回は、債権
差し押さえ
によって取り立て
命令
もくっついておる形にしておるわけでございます。したがって、取り立て権を
行使
して任意に払ってくれればそれで済むわけでございますが、任意に支払えないというときに取り立ての
方法
で
執行
しようとするならば、取り立て訴訟というものを起こさなきゃならぬことになってくるわけでございます。その場合に、本来の取り立て訴訟の相手にするのはもちろん第三
債務者
であるわけでありますけれ
ども
、
差し押さえ
債権者
は先ほど申しました
差し押さえ
命令
によって取り立て権能を取得いたしておりますから当然原告適格はあると、こういうことにもなるわけでございます。しかし、第三
債務者
の立場になりますと、ほかの
債権者
で
差し押さえ
をしてくる者があるわけでございまして、そういう者を除外して一方で取り立て訴訟だけ進行いたしますと不利益になりますので、したがって、第三
債務者
が受訴
裁判所
に申し立ててほかの
差し押さえ
債権者
を共同訴訟人として原告に参加させるという道を開いておるわけでございます。そういうことにしまして、結局、その取り立て訴訟の判決の既判力は、命じられたのに参加してこなかった者に対しても効力を及ぶことにいたしまして一律に
処理
されるというふうな手当てをいたしておるわけでございます。 そこで、取り立て訴訟で結局原告勝訴判決がなされますときには、通常ならば当然支払えということで済むわけでございますけれ
ども
、この場合には共同訴訟人もおるわけでございまして、したがって、直接に支払うのではなくて、供託の
方法
で支払いなさい、つまり、第三
債務者
は支払いを命じられた額を供託をしなさいということを主文に併記するということにして、そして、供託されますれば、それがいわば
執行
財産になりまして
配当
という形に進んでいくと、こういう構造をとっているわけでございます。
寺田熊雄
150
○寺田
熊雄
君 従来、これは
現行法
でも債権の
差し押さえ
と転付
命令
は同時に申請することが許容されておりますね。これは今度の
民事執行法
でもやはり同じですか。
香川保一
151
○
政府委員
(香川保一君) その点は同じでございます。
寺田熊雄
152
○寺田
熊雄
君 この第三項で「転付
命令
が第三
債務者
に
送達
される時までに、転付
命令
に係る金銭債権について、他の
債権者
が差押え、仮差押えの
執行
又は
配当要求
をしたときは、転付
命令
は、その効力を生じない。」、こうなっておりますが、同時に申請することが許されるということになりますと、ほかの
債権者
がまごまごしている間に、あるいは情けをかけている間に、強力な
債権者
があっという間もなく
債務者
の持っておる第三
債務者
に対する債権をひっさらっていってしまう、ほかの
債権者
はもう何にも取れないという場合に私
ども
よく遭遇するわけでありますけれ
ども
、これは「転付
命令
は、確定しなければその効力を生じない。」というのが第五項にありますね。したがって、この第三項と第五項とのいろいろな比較考量からいたしますと、第三項は「第三
債務者
に
送達
される時まで」でなくして、確定するまではやはり
配当要求
やそのほかの
債権者
の
差し押さえ
を許容することができるようにした方がよかったのじゃないかというふうな考えを持つのですが、この点はどうでしょう。
香川保一
153
○
政府委員
(香川保一君) おっしゃるようなことも
一つ
の
方法
であり、あるいはできるだけ平等主義と申しますか、他の
債権者
も加えて
配当
という形に行った方がいいのか、あるいは早い者勝ちということの方が債権に対する
執行
としてはいいのか、その辺は非常に問題だと思うのであります。現在、御承知のとおり、転付
命令
の
制度
は非常によく利用されておるわけでありまして、ほとんど転付
命令
によるものと言っていいかと思うのであります。それを、もしもおっしゃるように確定するまでほかの者が
差し押さえ
してきたときには転付
命令
の効力を失わしてしまうというやり方にいたしますと、早い者勝ちという意味の悪さは残るかもしれませんけれ
ども
、かえって非常に
執行
を膠着させるといいますか、転付
命令
なんという
制度
があっても意味がないといいますか、さような結果になるのではなかろうかと。結局のところは、もう取り立て
命令
一本の
執行
ということになってしまうような
実態
ではなかろうかと思うのであります。したがって、早い者勝ちといういやさは残りますけれ
ども
、やはり現在そういうことが
一つ
のメリットで転付
命令
の
制度
が非常に利用されているという
実態
を考えますと、やはり利用しやすいと申しますか、それだけのメリットがあるような形にしてやはり残さざるを得ないのではないかと、そういうふうに考えたわけでございますけれ
ども
、おっしゃるような
方法
をとるとすれば、恐らくは転付
命令
は使われなくなるだろうというふうな見通しのもとで、やはり非常にこれは早い者勝ちといういやさは残るにいたしましても、非常に簡便な
執行
でございますので、そういうことをあれこれ考えまして、このような形で残すことにしたわけでございます。
寺田熊雄
154
○寺田
熊雄
君 すばしっこい人間に味方する
法律
であると、どうもそういうそしりは免れないけれ
ども
、まあ、いたし方ない。 それから第六項で、この「裁判を留保」するという
規定
がありますね。これは留保してどうするのでしょう。その点ちょっと説明していただきたい。
香川保一
155
○
政府委員
(香川保一君) これは結局三十九条の一項七号、八号をごらんいただきますとわかりますように、そちらの方でつまり勝負はついてくるわけでございますから、したがって、
執行
抗告について裁判をしても意味がないと言っては誤弊がございますけれ
ども
、留保しておきまして三十九条の方の結末を待つと、こういうふうな意味でございます。
寺田熊雄
156
○寺田
熊雄
君 そうすると、第一項八号の場合は四週間待つと、それから弁済猶予の場合、これは二回に限って六月を超えることができないという
規定
が第三項にあるので、まあ待っても六月だと。で、自然に解決がつくと、それまで待っていると、こういうことですか。
香川保一
157
○
政府委員
(香川保一君) そのとおりでございます。
寺田熊雄
158
○寺田
熊雄
君 第三者が強制
執行
の
目的物
を占有している場合、これはわれわれが
実務
でも大変厄介なことで、実際によくもうあきらめるような場合が多いわけですけれ
ども
、この百七十条によりますと、引渡請求権を差し押える、そうして
債権者
にその請求権の
行使
を許す、そういう
命令
を発すると、こうありますね。そして、これは
債務者
が、つまり第三
債務者
がその請求権の
行使
に従わず物を引き渡さないときは、これはやはり本訴を起こすということなんでしょうか。この点いかがでしょう。
香川保一
159
○
政府委員
(香川保一君) この場合は物の引き渡しの強制
執行
でございますから、したがって、
債務名義
が当然要るわけでございまして、だから、この
規定
でその引き渡し請求権を
差し押さえ
ただけで強制的に取り上げるというわけにはやはりまいらないわけでございまして、本訴を起こさなきゃならぬということになるわけでございます。
寺田熊雄
160
○寺田
熊雄
君 なお、
執行官
の
実務
の場合、入札が非常に——この間も私現地に臨んで、まあ、あのときはわれわれが行ったので大分おとなしかったのだという人もありましたが、それから人数も非常にいつもよりは少なかったということが先ほど
参考人
から
意見
が述べられたわけで、入札
制度
というものは競りと比べると非常に平穏に行われる、雰囲気がね。そういうよさがあるのだけれ
ども
、何か入札で一字違うともうそれがペケになっちゃうので困るなんて言う人もあるのだけれ
ども
、そういうことはないんですか。実際の
実務
はどうなんでしょう、ちょっとお伺いしたい。
西山俊彦
161
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 実情を正確に把握しているわけではありませんので、明確なお答えはできないので恐縮なんでございますけれ
ども
、一字程度違っていることでペケにするということはないかと存じますけれ
ども
、入札の正確性と申しますか、その物件の表示あるいは金額の点等について正確に記載してもらわないと、要するに買い受けの意思表示が明確でないという点で入札を認められないという例は、ないわけじゃないというふうに聞いておりますが、……。
寺田熊雄
162
○寺田
熊雄
君 余り細かいことを局長が一々御存じないとしてもこれはしようがないので、よくお調べいただきたいと思うのですが、何か
事件
番号をちょっと間違えたらもうだめなんだと。なかなか素人にはできにくいですよというようなことを言う人もあります。この点はよく実情を把握されて、
実務
の指導の場合にどうあるべきかということをよく考えていただきたい。これは要望しておきますから。よろしいですね。
西山俊彦
163
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 余り硬直な取り扱いはしないようによく指導してまいりたいというふうに考えております。
寺田熊雄
164
○寺田
熊雄
君 それから、私
ども
現実に強制
執行
いたします場合に、われわれがやはりその
執行
の現場に臨むというのは、これはよほどの場合であります。たとえば、暴力団がおってなかなか忠実な
執行官
といえ
ども
やはり一気に踏み込めない、もたもたしてはかどらないので私
ども
が行って先頭に立って入っちゃうと。よほどの場合でなければわれわれは行きません。そこで、ふだんは非常に善良な道具屋といいますか、これはもう弁護士仲間で定評のある善良な道具屋というのはおるわけで、との弁護士も皆それを頼むと。
立会人
なんでしょうねあれは。そうすると、
動産執行
でも家屋明け渡しの
執行
でも非常にスムーズにいくというのでありますけれ
ども
、これはやはり法務
当局
なり最高
裁判所
当局
でも
実態
を把握しておられて、そういうやはり善良な道具屋というのはやむを得ない存在であるというふうに認めておられるのでしょうかな、どうでしょうか。
香川保一
165
○
政府委員
(香川保一君)
動産
の強制
執行
について、
売却
がうまくいくかどうかということが一番の大きな問題でございまして、公設の
売却
場を設けるというふうなことも議論されたわけでございますけれ
ども
、なかなかすぐにはそういう
制度
をとり得ない
状況
がございまして、そうなりますと、結局、私
ども
聞いている限りでは、なかなかその買い手がないために
動産
というのは二束三文に売り飛ばされてしまうと。そのときに、いまおっしゃいましたような善良な道具屋が一緒に来てくれれば、買い手がないときにはそれが適当な価格で——適当というよりは適正な価格で引き取ってもらえるということで、
執行官
が非常に助かっておるというふうに聞いておるわけでございまして、だから問題は、連れていくといいますか、同行する道具屋の善良かどうかということが
一つ
の大きな問題になるわけでございまして、この点はそれなりのメリットが十分あるわけでございますから、したがって、
執行官
がそういう善良なという認定を十分いたしまして、そういうものに援助を受けるといいますか、同行してもらうということは、これは残して一向差し支えないやり方ではなかろうかというふうにいま考えておるわけでございます。
西山俊彦
166
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君)
裁判所
の方でも同じように考えておりまして、道具屋すべてが悪いものだと直ちにきめつけて排斥をしなければならないというふうには考えておりませんで、適正な価格で買ってくれる人、あるいはよく、
動産
の場合ですと、その場でまた
債務者
が買い戻すというふうな場合があるわけでございますけれ
ども
、そういう場合に余り暴利をむさぼらないで買い戻しに広じてくれるような、いわば
執行
の迅速、円滑な
遂行
に協力してくれるような人を道具屋の中でも従前からも認めておりますし、これからもやっぱりそういう人
たち
の協力がなくしては円滑な
遂行
ができないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
寺田熊雄
167
○寺田
熊雄
君 これはもうすでに各
委員
の御
質問
の中で出た問題でもあるのですけれ
ども
、もう一度、最高裁の
民事
局長、法務省の
民事
局長、御両人にお尋ねをしたいわけですけれ
ども
、現在の
執行官
法が生まれたとき、
昭和
四十一年の
附帯決議
ですね。先ほ
ども
田中利正参考人
は、
手数料制
度の所得よりもこれは俸給の方が望ましいのだと、しかし現在の
収入
を下回るというようなことではやっぱり
執行官
の同意というものは得にくいだろう、したがって格づけが問題であるというような
意見
が述べられたのでありますけれ
ども
、これは相当な事実上の困難を伴うけれ
ども
、やはりあの四十一年の決議というものは正しい
方向
を示しているとわれわれは考えざるを得ないわけです。いまの所得が飛び抜けて多いといたしますと、その飛び抜けて多い一部の
執行官
のために、あるべき姿が実現できないというのもいかがであろうかとわれわれは考えるわけですね。この点相当むずかしいけれ
ども
、やっぱりこういう
方向
に向かって
努力
していただかなきゃいかぬ。これは
執行官
の問題です。 それから、
執行官
を補助する
職員
の問題。これは確かに、きょう
参考人
としてここへ
出席
した
職員
である
田中
参考人
、論旨も非常に整然としておるし、言いたいことも言うだけのなかなか気力もあるし、
公務員
としての資格は十分に備わっておるように私は思うのですが、
公務員
としてこれを採用して
執行官
の
事務
を補助させるということがやっぱり望ましいように思う。それから、まあそこまでいかない、純粋に窓口
事務
程度のことで、あるいは帳面をつけるという程度で、これは
執行官
の奥さんやお嬢さんがやってやれないことはないという程度の仕事をしておる、その程度の
事務
をとっておられる
職員
としても、やはり
社会
保険、たとえば失業保険であるとか、あるいは労災であるとか、あるいは健康保険であるとか、そういう
社会
保険をつけるというぐらいの
配慮
が当然これはあってしかるべきではないか。しかしそれができていない。こういう点についてはもう少し御
努力
があってしかるべきではないかと思うのですが、これは最高裁の
民事
局長と法務省の
民事
局長と、御両人にお考えを述べていただきたいと思います。
西山俊彦
168
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 午前中は各
参考人
からも非常に有意義な指摘をいただきました。特に問題になっておりますのは、
手数料制
から固定俸給制への移行の問題でありますし、それに関連しての
事務員
の
公務員化
という二点であったろうかというふうに思われます。いずれも私
ども
が
執行官法制定
以来常に考えてきたことでございますが、何分にも、毎々申しておりますが、八十年以上の歴史をしょっている
制度
を急に変えられるものかという
一つ
の歴史的な重みというものもございます。それから、先ほど御指摘のような地域的な面での
収入
の格差という問題もございます。それからまた、
執行官
の
年齢
の問題そういったようなことが現実の問題として直ちに
公務員
に切りかえるということが非常に困難な問題として残っておるわけでございます。ただ、そういう点は、
執行官法制定
当時は、少なくとも
執行官
法の
執行官
の
制度
自体を幾らかでも新しいものにして、それをもって
執行
手続
の
改正
の基礎にするし、また、その
執行
手続
が変わったらそれにふさわしいような
執行官
制度
をつくっていくのだと、こういうふうな因となり果となるような形の問題提起をしてまいりまして、それが今日までに及んでいる
状況
でございます。先ほどの
田中利正参考人
の御
意見
にもありましたように、あるときには
執行官
の中でも
手数料制
がよろしいという考え方の人もおりましたし、あるときには固定俸給制が望ましいという
意見
の人が多数を占めているというふうなことでございまして、経済事情の変遷に応じてそういう希望の有無というものが変わっている
状態
にございます。 そういうことから申しますと、経済的な問題
収入
の問題だけを考えてやっていたのではいつまでも決着はつかないと、むしろ非常に不況で競売
事件
が少ないという時期が俸給制への切りかえのチャンスであるということにもなってしまいますが、そういうことは全般的に好ましくないことはもちろんでございまして、そういう時期にならないで、しかも俸給制に切りかえられるような下地というものをつくる必要があるということは言えるのではなかろうかと思います。そういう点につきましては、
執行官
法が
制定
されましてから十数年の
経験
を経まして、
執行
宮室及び
競売場
等の
環境
の整備ができましたし、いろいろな設備も改善されてまいりました。それから
執行官
が
裁判所
の
職員
としていろいろな面で本来の
裁判所
の
職員
と交流をすることになって、お互いの意識がよそ者扱いということから同僚的な意識になってきておるという、そういう意識の上の変革というものがこれは見逃せない
状況
であろうかというふうに思われます。そういう点で、かなり俸給制に移るための検討の下地というものは熟してきたのではないかというふうに考えておるわけでございます。 しかし、問題は、
執行官制度そのもの
だけを考えて済むものではなくして、現在の
執行官
が五十八・余歳という
年齢
層に平均的にあるわけでございまして、これを
公務員
として
裁判所
の同じ枠の屋根の下に、そのまま同じような意味で、資格で取り込んでいくということになりますと、ほかの
職員
との、何といいますか、格づけといいますか、位置づけの問題もあります。多くは
執行官
に任用されるのが、一応主任
書記官
なりあるいは首席
書記官
というところまでを終わったような人が、いわば第二の御奉公として
執行官
に任命されるというのが実情でございます。そういう人
たち
が再び同じような俸給制の
執行官
になってきて、それとほかの
裁判所職員
との間の交流がどうなるのかという問題も考えなければならないということになります。そういういろいろなむずかしい問題があるかと思いますが、そういう問題点も考えながら法務省の方とも御相談して、そういう切りかえについての問題点を検討して、前向きの姿勢で進めるようにしていきたいというふうに考えておるわけでございます。 それから
事務員
の問題は、これは俸給制に切りかえることが
公務員化
の前提と考えざるを得ないわけでございますが、その場合に、現在の
事務員
になっている人がそのまま横すべりで
公務員
になれるかということになりますと、これもやはり
年齢
の点、その他一般
公務員
としての任用資格という面で非常に特例的な
措置
を大幅に設けないと全面的な救済はできないのではないかという感じを持っておるわけでございます。その点の問題をどういうふうに克服するかということが問題になろうかと思われます。 そういうことで、俸給制あるいは
公務員化
ということについての今後
努力
をやっていきたいというふうに考えておりますが、御
参考
までに、従前、この
執行官
法が
制定
されましてからも、若干ではありますが、
執行官
の
事務員
の中から能力、資格において
裁判所職員
としてふさわしい者は
職員
に任命している、それからまた、
執行吏代理
と言われている人も、その資格がある人は
執行官
に任用しているというふうなことで、救える人といいますか、そういう資格のある人はなるべくそういう形で救済していくという
方法
がとられていることを申し添えておきたいというふうに思うわけでございます。
枇杷田泰助
169
○
政府委員
(
枇杷田泰助
君)
法務省民事局長
にという御
質問
でございましたが、
執行官
法は司法法制
調査
部の所管になっておりますので、私からお答え申し上げたいと思います。 御指摘のとおり、
執行官
は
公務員
でありながら
手数料制
をとっておるということから、いろいろすっきりしない問題がたくさんございまして、
附帯決議
にもたびたび御指摘を受けているわけでございます。私
ども
も十分その問題点は認識しておりまして、
方向
としては、
附帯決議
にございますとおり俸給制に移行すべきものであるという考え方は持っておるわけでございます。しかしながら、ただいま最高
裁判所
の
民事
局長からも
お話
がございましたように、現実問題といたしますと非常に多くの問題を抱えておるわけでございます。
手数料制
が八十年の歴史を持っておるということは、それなりのメリットも一方にあるわけでございまして、諸外国の例を見ましても、
手数料制
をしいているところもかなりございます。俸給制に切りかえたというところも、西ドイツの州あたりにもあるようでございますが、それはまた切りかえにつきましていろいろな問題を
経験
しておるようでございます。私
ども
といたしましては、白紙で新しい
制度
をつくるわけにはまいりませんので、
現状
からどのような
段階
を経て理想的な形に持っていくかという道を発見したいということでかねがね苦慮いたしておるわけでございます。今後また、
民事執行法
が成立されまして、
執行官
の責任等も変わってまいりますのを
機会
に、もう一度検討してみたいと考えておりますけれ
ども
、相当実際上は困難な問題が多かろうと思っております。 なお、
執行官
のところにおられます
事務
職の方々の処遇につきましては、これもまた、ただいま最高
裁判所
の
民事
局長が御指摘になったような問題があるわけでございますが、基本的には、まず
執行官
の
身分
あるいはその
収入
というものをどういう形態にするかということが先決問題であろうと思いますので、
執行官
制度
の抜本的なあり方というものをこれから十分検討を進めてまいりたいと思います。
寺田熊雄
170
○寺田
熊雄
君 やはり
執行官登用
の道というのは、最高
裁判所
当局
におかれては
裁判所
書記官
から
登用
する、それを原則として考えておられるわけですか。いまの
東京地裁
の
執行官
役場に働いておられる
事務員
の中では、代理もまだ残っておられる。その代理を
執行官
に
登用
するとか、あるいはまた
事務員
に対して代理の資格を与えるということも考えていいのではないかと思いますが、その点はどうなんでしょうか。
西山俊彦
171
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君)
執行官
の任用資格といたしましては、
執行官
規則で、一般職の行(一)の四等級以上の職にあった者またはこれに準ずる職歴を有する者で最高
裁判所
が定める基準に該当する者というふうになっておるわけでございます。それで、
規定
の上からは
裁判所職員
であることを原則とするということはございませんが、何分
職務
の
内容
から申しまして、いろいろ
法律
的な素養を必要とするという
職務
でございますので、どうしても給源が
裁判所
書記官
になってくるという実情にあるわけでございます。ただ、
裁判所
書記官
ばかりで構成されておるかといいますと、そういう者ばかりではございませんで、検察
事務官
あるいは警察
職員
というふうな人も来てもらっておるわけでございます。現在、
執行官
職務
代行者と言われております——昔、
執行官法制定
前には
執行吏代理
と言われていた人でございますが、そういう人
たち
の中からも適格の人は数十名
執行官
に
登用
しておるわけでございます。 それから、現在
執行官室
で
事務
をとっている人
たち
の中から
執行官
に採用することはどうかという御
質問
がございましたが、先ほどの行(一)の四等級に相当するような人、それに要するに準ずる者として最高
裁判所
が認める者であれば、資格としては受験資格がございますものですから、筆記試験その他の試験を受けて
執行官
に
登用
するということは道が開かれておるわけでございます。ただ、
執行吏代理
あるいは
執行官
職務
代行者というのは
執行官
法で認められました暫定的な
制度
でございますので、
事務員
の人を
執行官
職務
代行者に任用するというのは現在では道がないという
状況
になっておるわけでございます。
寺田熊雄
172
○寺田
熊雄
君 先ほど、
送達業務
は
執行官
の
職務
としては
廃止
してもらいたいと、
執行官
という、まあいわば非常に
法律
的な素養を持った重い
地位
のある者が純粋の事実行為である
送達
というようなものまで引き受けなければならないのだろうかという疑問が
執行官
によって提起されましたね。これはやはり最高裁なり法務省としましても次第に
廃止
していくというお考えなのか、あるいは、やはりどうしてもこれは残しておくべき合理性があると考えておられるのか、その辺はどうでしょう。
西山俊彦
173
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君)
民事訴訟
法で「
送達
ハ
執行官
又ハ
郵便
ニ依リ之ヲ為ス」という
規定
がございますので、そういう
規定
から申しますと、
執行官
に
送達
の
事務
をやってもらわないというわけには
法律
上のたてまえとしてはいかないのが
現状
でございます。しかし、先ほど
田中利正
執行官
の
お話
にもありましたように、いわばそれは執達吏という
制度
であった当時の名残といえば名残であるということで、
執行官
の
現行法
における
地位
の向上にかんがみますと、それをいつまでも民訴に
規定
があるからといって仕事として残しておいていいかどうかということは、これはわれわれとして検討しなければならない問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。 事実、
送達事務
と申しますのは非常に単純であり、しかも苦労の多いものでございます。そういう点ではなるべくそういう雑務から軽くして、本来の
執行事務
に専念してもらいたいということで、そういうふうな
方向
を
裁判所
としては考えておるわけでございます。そのほかに、
送達事務
と申しますのは、あっちに
一つ
送ったら今度別なところへ行かなければいけないというふうに、本来の
事務
としては非常に費用と手間がかかるわりには効率が悪いという面がございまして、それに見合うだけの
手数料
、あるいは費用もそうですが、そういう費用、
手数料
を含めて、
送達事務
に従事する人の
収入
が安定し、かつ十分なものと言えるかどうかという点になりますと、これは非常に
趣旨
には沿わないというのが実情でございます。そういう面からいきましても、いたずらに労多くして効の少ない
事務
はなるべく
執行官
の仕事から除いていきたいというふうに考えているのが実情でございます。
枇杷田泰助
174
○
政府委員
(
枇杷田泰助
君)
現行
の
民事訴訟
法の
規定
によりますと、
執行官
が
送達
機関というふうに定められておりますので、
現行法
を前提とする限り、
執行官
が
送達
をするということはやむを得ないことでございますけれ
ども
、しかし、
執行官
が
送達事務
からは、いわば解放されて
執行事務
の方に専念したいという御希望は理解できないわけでもないわけでございます。しかし、そのためそういう観点で
制度
の
改正
を考える場合には、
送達
方法
そのものをどういうふうにしていったらいいかということの改善が検討されなければならないということだろうと思いますので、
執行官
の実情、それからまた
送達
の意義というようなものも総合勘案して将来検討すべき課題であろうと考えております。
橋本敦
175
○橋本敦君 いま寺田
委員
から御
質問
がありました同じ問題については、当
委員会
のすべての同僚
委員
も深い関心を持っておる問題でありまして、そういう意味では、この
民事執行法
の
制定
に当たりましてきょう
田中
参考人
等から貴重な
意見
を聞いたことは、本院における審査として私は非常によかったと思っております。 いまも
お話
がございましたが、四十一年の
国会決議
がなされて今日まで十数年、最高裁もあるいは法務省の
調査
部におきましても、それなりの
努力
をなさったという
お話
でございますけれ
ども
、しかし、実際はなかなか
執行官
及び
職員
の
公務員
体制化への移行というのは、これは目に見える形では全然手つかずであるわけであります。きょうも
参考人
からその点について大変強い要望が出されたわけですが、私は、これはいま
最高裁民事局
長並びに
調査
部長の
お話
を聞いておりましても、そういう決議が示された、まあ言ってみれば
執行官
体制の近代的な
方向
へ向けての思い切った施策の前進というものが要るように思いますし、その
方向
づけについては御異論がないというように伺います。 問題は、八十年続いてきたこの
制度
を一挙に変えるということがなかなか容易でないという困難な面をいろいろ弁解的に御指摘になった。それはそれなりに私
ども
理解するわけです。しかし、この
民事執行法
がこの世に整合あるものとしてつくられました。恐らくこれは長年にわたってこういうことで特段の
改正
なしに進められるでしょう。
執行官
法は四十一年にできまして今日までずっと来ておる。過去八十年と言いますけれ
ども
、やっぱりこれを
機会
に思い切った近代的な体制への移行ということを真剣にやりませんと、私はこれは残されていってしまうという心配をぬぐい切れないのです。 そこで、
最高裁民事局
長も、いろいろな意味で下地はできつつあるという
お話
でもありますし、思い切ってこれはやっぱり具体的な
協議
機関を設け、そして五年先にとか三年先にとか、こういっためどをつけた研究と体制について議論を進めていただかなくちゃならぬと、こう思うわけです。そういう意味で、具体的なめどを持って、そして困難な条件は困難な条件として解決の善後策をも研究をするということで、最高裁としても積極的にこれについての研究
協議
実現の体制をこの際思い切ってとると、こういうお考えはありませんか。
西山俊彦
176
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) 先ほど申し上げましたようないろいろな問題点を検討することも含めまして検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
橋本敦
177
○橋本敦君 これは法務省の
調査
部長にお伺いしますが、これは
法案
ということで出てくるとなれば、最高裁は直接
法案
をお出しになりませんし、法務省のそれなりの御尽力、お力添えもいただかなくちゃなりませんが、いま言ったような問題を法務省
調査
部としても最高裁と定期的に継続
協議
するという体制をこの際おつくりになるお考えはありませんか。
枇杷田泰助
178
○
政府委員
(
枇杷田泰助
君) この問題は、従来からも最高
裁判所
と
協議
をいたしておる点でございます。最高
裁判所
の
民事
局におきましても、この
民事執行法
が成立いたしますと、その
施行
のための準備、規則の
制定
をも含めて準備が成り終わるだろうと思いますが、そういうことが一段落ついた
段階
で、その次は
執行官
の問題について私
ども
も積極的に
協議
を進めてまいりたいというふうに考えております。
橋本敦
179
○橋本敦君 実情は、
執行官
もお年ですし、
東京
サイドで見ましても、
職員
の皆さんは長年これに従事をされて平均
年齢
は五十二歳ぐらいにおなりになっている。だから、やっぱり長年苦労された方に報いるという意味でも、これは私は急がなくちゃならぬと思うのです。だから、いま
調査
部長がおっしゃったように、この
法案
が通った後、
最高裁規則
の
制定
、それが片づけば、こういうことでありますけれ
ども
、めどとして、私は、今後三年をめどに一定の方針を立てるとか、あるいは具体案をつくるとか、やっぱりめどなしには進まぬと思うのです。そこらあたり、今後どれくらいのめどでおやりになる御決意があるのか、最高裁並びに法務省の
調査
部にお伺いしたいのです。
西山俊彦
180
○
最高裁判所長官代理者
(西山俊彦君) にわかな御
質問
でありますので、何年先ということは直ちにはお答えできませんけれ
ども
、少なくとも五十五年の十月には、スムーズに
執行
法が成立いたしました暁には、新
執行
手続
が
施行
されるということでございます。そのときには屋台が新しくなっておりますものですから、そこに働く立て役者としての
執行官
というものも当然近代的な装いを持った役者でなきゃいかぬというふうに考えますので、そう何年も先というふうにはまいらない問題であろうかと思われます。そういう
施行
の時期を踏まえて、直ちにというわけにはいきませんけれ
ども
、なるべく早い時期にそれにふさわしい
執行官
になり得るような
努力
を続けてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
橋本敦
181
○橋本敦君 五十五年十月、まさにその発足の時期に
執行官
並びに
職員
の皆さんの
公務員
体制化への移行ということに窓を切り開くという決意でぜひやってもらいたい。 法務大臣は午前中いらっしゃいませんでしたので、
意見
はお聞きになっていらっしゃらないわけですが、寺田
委員
の
質問
に対する答弁その他を通じても御理解はいただいておると思いますが、まあ私は、五十五年十月、そのときには次の、きょう指摘されている
執行官
、
職員
の体制の合理的近代化ということにも同時にやっぱり方針をきっちり出すということぐらいで——私はそれで結構だと言いません、もっと早くやってほしいのですが、法務大臣としてもせっかくの御指導と御協力をぜひお願いしたい、そういうことを法務大臣にお願いをして、大臣の御見解を伺って、
質問
を終わります。
古井喜實
182
○国務大臣(古井
喜實
君) 正直なところ、私は十分な
知識
と素養がないものですから、軽率なことを言ってしまうわけにもいかぬようにも思います。私もまあちょっとの間弁護士などをいたしましたが、その当時は
執行
吏という
制度
でありまして、お願い申して仮
差し押さえ
しに行くとかやった
経験
もありますが、
経験
も少ないし、
知識
もそう十分でありませんので、ちょっとすぐさまこの問題について自分の腹の底からの考えというものが正直にまだ立たないのでございますから、研究したいと思いますが、まあ
執行
吏の処遇を
合理化
するということは必要なよいことだと、これはそう思うのであります。それを
公務員
にするとか、
公務員
という鋳型にはめてしまうことがよいのか悪いのか、また、うまさが失われるというような一面もないものだろうか。そこで、そういう辺が十分私は、さっき申すようなわけで、自分なりの考えも正直言って、いま立っておらぬ
状況
でありますので、午前中のことや、そのほか皆さんの御
意見
、御論議などをよく聞きまして、その上で、なるほどこうだと、こういう考えを立ててみたい。どうもきょうの
段階
では私はそれ以上のことを言う自信がありませんもので、そういう辺で御了解願いたいと思うのであります。 私はどうも個人的に言うと、画一主義が気に食わぬので、何でも同じかっこうにしてしまう便宜主義で、まことに便宜な一面もあろうけれ
ども
、うまみもなくなるというようなこともありまして、これは個人の趣味ですからそんなことを言いはしませんが、一遍よく研究さして考えを立てたいと思いますので、御了解願いたいと思います。
橋本敦
183
○橋本敦君 これは大臣の
意見
聞かぬ方がよかったような話もありました。(笑声)これは大臣の言う八十年前の
執行
吏時代に引き戻される危険がある。これはまあしっかり御勉強いただくということで、終わります。
峯山昭範
184
○
委員長
(
峯山昭範
君) 両案についての本日の
質疑
はこの程度にとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時四十八分散会 —————・—————