○木島則夫君 大変前向きなお言葉をちょうだいしてありがたいわけでございます。農林水産省にこういう問題を私
どもずいぶん御提言を申し上げてきたんですけれど、お立場があるんでしょうか、百年河清を待つと言っては失礼ですけれど、なかなかガードがかたいんですね。ですから、ひとつ
消費者のお立場に立つ
長官からも大いにアプローチをしていただきたいということを私からも切にお願い申し上げたいと思います。
そこで
長官、ひとつ下馬生協つまり世田谷区下馬にございますこの下馬生協が行っております産地直輸入——産直によって牛肉か大変安くなっているという例がございます。これはもう申し上げるまでもなく
長官のおひざ元でございますから、すでにお耳に入っているかとは思いますけれど、ひとつ私のレポートを聞いていただきたいと思います。
これは下馬生協の牛肉産直の実例でございます。生協規模約一万五千人のものでございます。牛肉の産直を始めたきっかけは、これはもう牛肉が余りにも高過ぎるという生協員の
実感でございます。主婦の
実感から始まったわけでございます。百グラム約千円もするようないい牛肉はとてもとても一般家庭では手に入らない、何とかならないものか、生協として
対策を練っていた折に、宮城県から岩手の短角牛を試食をしてもらいたいという話がきたそうでございます。五十一年春のことでございます。この岩手の短角牛は草食、草を中心に肥育をされているため、和牛の
代表である黒毛和種というものに比べて脂肪の入りが悪い、肉が若干かたいんじゃないかという想像もされていたそうでございますが、
組合員の試食の結果、決して味の点で問題はないということで
意見が一致して、昭和五十一年預託肥育を決定して五百万円の出資でこの短角牛三十頭を購入したのがそもそもの始まりであったということです。この岩手の短角牛は市場においてどうかといいますと、安く買いたたかれているのが実情だそうです。というのはこの牛肉の取引はサシ、つまり脂の入りが依然として
価格形成の基準になっているからで、競りは一見合理的に見えるけれど、
消費者サイドから見ると合理性に欠ける、こういううらみがあるということであります。現存の牛肉の取引の実情では
価格形成は大変不安定、
需給関係によっていては
価格の乱高下も防ぎ切れない。生産者も投機的であれば、また
消費者もコストがわからず、流通の不明朗な実態と相まって投機的にならざるを得ない。
食料品の
価格形成が果たしてこういうものによって決まっていいのかという大きな疑問がここに生まれてくるわけでございます。仮に生産費を計算をして適正な利潤を見つけ、つけ加えた安定
価格で
消費者が購入できるようになれば、これはもう生産者にとっても
消費者にとっても納得のいく合理的な
価格形成ができるはずでございます。さらにこの下馬生協では五千万円をかけてミートセンター、屠畜場をつくりまして枝肉から
部分肉から精肉にして生協員に配分することにした、大変安くいま売っておりますね。百グラム
相当いい肉で二百五十円、したがって、市場の三〇%から四〇%も安いということであります。
さてそこで、こういう実験を通して生協員、つまり主婦たちは
経済の末端は
消費者が支えている、
消費者サイドからの積極的なアプローチこそ市場機構の改革に道を開くという確信を得たそうでございます。この人たちはこのほか、牛肉に関する知識を広げるためにパンフレットの作成であるとか、学習会であるとか、料理講習会を通じて
消費者の啓蒙を続けている。何にもわからないところから出発をして、いまや大変なつまり権威をお持ちになっている、こういう例を私は御紹介をし、下馬生協のこういう産直に対しまして、主として既成ルートの食肉
関係者からはいろんなやはりそねみとか、いやみとか批判が寄せられていることはこれは私は当然で、むしろそういうものがあることはこの生協が育てた産直というものが、確実なルートを持つようになってきたという一方の証左ではないかというふうにも私は見るわけでございます。
農林水産省は初め、こういう態度、こういう行き方に対してはやや冷ややかではあったけれど、五十三年度の予算で産直ルート援助の予算が事業団から生協連合会に四億一千万円おりておりますね。そしてそのうちいま私が申し上げた下馬生協には三百万円おりています。これは格段な進歩であると思います。いろんな話を聞いてきたんですけれど、牧草地が余りないために飼育を預託をしましてもその牧草地を転々とせざるを得ない、大変な手間と経費がかかる、これはもう当然であろうと思います。そして下馬生協の三年間に及ぶ実験を通しまして多くの問題点と牛肉行政の改革すべき点が
指摘をされています。これは一生協の問題ではなくて、
消費者の共通の願いであり、私は共通の御
指摘であるというふうに受け取らしていただきたい。
そこで、以下五点について問題点が浮かんでまいりました。
一つは、従来の肉牛生産はさっきから申し上げているように、サシの入りが、つまり脂身というんでしょうか、霜降りとでもいうんでしょうか、このサシの入りがいい高級和牛肉中心の取引である市場を反映しまして、飼料効果の悪い濃厚飼料を多く与える肥育形態をとっている。これは
消費者の間でも疑問が持たれてくるのは当然だと思いますね。
日本では霜降り肉が診重されまして、濃厚飼料はたくさん食べさせる、時によってはビールも飲ませる、マッサージもさせるというようなことですね。これはもう高くなるのは私はあたりまえだと思う。これは
消費者の間で疑問が持たれてくるのは当然でございます。そこで、その
消費者の側に立つてさっき私が申し上げた岩手の短角牛であるとか、乳牡牛のような大衆肉中心の格付けとか、
価格形成に転換するよう経企庁として御指導がいただけないだろうかというのが第一点でございます。いかがでございましょうか。