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参考人(
近藤トシ子君)
近藤トシ子でございます。
まず、
消費者の立場で、一般的なことについて
考えを述べさせていただきます。
昭和四十六年の二月のことでございましたが、私
どもの会で
食料品等表示基準設定調査というので、
食酢を選びましてこれを取り上げてみました。東京及び近県から約六社の
製品を
主婦たちが買い集めてきまして、その
表示の実態を調べてみたわけでございます。
表示というのは、御承知のように、
食品の顔であり
履歴書でございますから、それを見れば中身がわかるはずでございますが、その当時のお酢は
大変お粗末で、しかも非常に不親切なものでありました。たとえば、
健康食品で
食餌療法をしている人に効くのでそういう人にお勧めするとか、あるいは
特選米の酢で秘伝の味、そういったことでは何のことかわからない、そういう
表示のものが非常に目立っておりました。
次に、
食酢を
原料にした
加工食品、これには
JASがあります。たとえば、マヨネーズにしてもドレッシングにしても
JASがありますが、この
主原料になっているお酢に
JASがないということ
自体、非常に片手落ちではないかということ。
さらに、
日本人に多い脳卒中や高血圧の原因になっている
食塩の
過剰摂取の対策として、いま私
どもは一生懸命
塩減らし運動というのを実施しておりますが、その際に
減塩増酸、つまり塩分を減らして
酸味をふやすということですが、これが調理上に非常に大事なことで、
食酢の果たす
役割りということは、これから非常に一層見直されてくる現状だと思うんです。
そういったような三つの点から、私
ども栄養改善普及会では、七年ないし八年がかりで
食酢の
JAS化ということで役所にも
業界にも働きかけをしてまいったわけでございます。そうして非常に楽しみにしていた
JASでございますが、これを、私
どもは、きょうもう一人後ろに付き添いでいらしております
消費科学連盟の
戸田委員と二人が、
専門委員会に
消費者として
消費者団体を代表して出ておりました関係で、きょうお呼びいただいたときに
戸田さんにもいらしていただいているわけでございますけれ
ども、この
過程を見ますと、決してすんなりこの内容が決まったわけではなくって、
専門委員会も三回持ちました。普通ならば一回ないし二回で済むところですが、三回持ちました。
その間、
資料が不足しておりましたので、もっと小さな
メーカーの、いわゆる地元の
メーカーの
資料なんかも出していただくように要求いたしました。あるいは、良心的な酢をつくっているような小さな
メーカーさんにしわ寄せがならないようにというような、これはほかの
委員会では一切発言もしなかったようなことをここでは出さざるを得ないほど、何かお酢
業界というものに対する
体質というもの、この
業界の
体質に非常に何か疑問というか、意思統一のできていないというようなことが感じられたわけで、何か自分の社の利害だけが先に立っていて、
消費者の利害は後回しにされているような、そんな感じを私
どもは受けたわけでございます。
また、実はおとといまで、ある
地方の
メーカーからはこういう
資料が私
どもに送られてきているわけなんですが、われわれの個人にあててこういう
資料を送らないで、せっかく
業界の
委員会があるんだから、中央会、これを通してこれを出さないと、他社の商品の誹謗に終わるだけであるからということで、私ははがきをその
メーカーに送ったこともございますが、いまもってこういうものが出て個人に送られてくるというのは、どうも私にはすっきりできないわけでございます。
そういうようなことがありまして、こういう
業界では
JASが非常に手間取ったということもむべなるかなということを自分で直感いたしまして、とにかく
JASをつけようということでテーブルに皆さんが着いたわけですから、この機会を逃したらもうまた再びこの
JASをつけるということは遠い将来に延びるんではないか。いまとにかく粗い網でもいいから網をかけておいて、そして今度は
消費者が網をかければ、
表示の
基準がちゃんとあるわけですから、きちんとした
表示が出るわけです。その
表示をわれわれ
消費者がよく読んで、そして読んだ段階で改正のすぐ手を打てばいいわけですから、とにかく何が何でもこれは通すべきであるということで、私
ども消費者は、まあ問題はあったわけでございますけれ
ども、通すことに賛成したわけで、もうそろそろ官報にも載るころ、だと思っていましたら、こんな一こんなと言ったら申しわけないんですが、
参考人になって、こういうところへ呼ばれて、政治的にまたこれをもう一遍何か御
審議なさるようなことで、何か私はけさから割り切れない気持ちでここの会場へやってきたわけでございます。
こういうことは、いま
農林水産省でも伺ってみますと、
JASについては初めての経験なようでございますが、こういうことが前例になるということは、私
ども消費者が忙しい時間を割いて
農林水産省に何回も何回も集まって、四回、五回ぐらいですか、自分でも工場へ行って、お酢の工場でいろんな見学をさしてもらったり、
資料を集めたり、相当わからないながらもわかろうとしてやっていたわけですが、それが何か非常にむなしいものにされるというふうなことでございますが、これはやっぱりぜひ一日も早く通していただきたいということが、全般的に私のいま思っている
意見、感想でございます。
で、個々の問題について少し申し上げてみます。
エキス分のことでございますが、私もたてまえとしては、お酢というものは基礎
調味料でございますから、何も味つけをする必要はないので、
酸味調味料としてすんなりしたものを出すべきではございますが、さきに、四十六年に私
どもが
調査いたしました——主婦が
調査したものですが、それで大変おいしいという評判のいいお酢を、特に分析センターで分析をしてみたところが、その
エキス分が十とか十一とかというものがおいしいということに出てきたわけでございます。そうすると、この
エキス分が高いことは
消費者にもやっぱり責任がある、いわゆる甘味ということ、甘味嗜好に
消費者がなれているということの問題で、これは
消費者をもっと教育することも一方でやらなければならないということを感じたわけでございますが、やはりたてまえとしては、できるだけこういうものを減らしていくということを進めてほしいと
考えております。
それから、その次の問題ですが、
米酢の定義についての
公正競争規約を
JASが踏襲したという点についてでございますが、これもさっき
お話が出ましたように、四十五年に
公正競争規約がつくられまして、当時は「
醸造酢」と「
合成酢」の区別がはっきりつけられて、私
ども消費者は青天のへきれきのような気持ちで迎えたわけでございますが、このものもいまとなっては大変時代おくれになっております。しかも、この
専門委員会でも私は発言いたしましたけれ
ども、
米酢と言えば、一般の
消費者は米一〇〇%だと受け取っているわけでございますね。それから、表を見ても米が上に書いてあって、その次が一括
表示で、現行のものは米が上で、その次が
アルコールになっているわけですね。
一リッターについて米が四十グラムであれば、これは
アルコールが先になって米が下にくるのが普通の
表示の順序じゃないかと思うのですけれ
ども、まあそれは今度改正になれば改められると思いますけれ
ども、
農林水産省は一方で余っている米の対策を
考えていて、一方でお米を四十グラムしか使わない。できれば、私は素人でわからないけれ
ども、百グラムか百二十グラムお米を使って、なおかついわゆる
米酢のあのぬか臭い、ああいうくせがないようなさわやかなお酢をつくることができないだろうか、そういう技術革新を
専門委員会で私は出しております。で、そういうふうにすべきであるけれ
ども、しかし、公取で一たんこの
米酢の定義があって、また
農林水産省が違った定義をつくると、今度また
消費者が混乱をするというようなこともありまして、この際これは一応通して、次の段階で早くこれを変えてほしいということを出したわけです。
私は、常々ここで
考えを持っていますことは、これは
食品添加物についてもそうでございますけれ
ども、たとえば公取は
公正競争規約のための
表示をやっておりますね。それから厚生省は安全衛生のための
表示をやっていらっしゃる。それから
農林水産省は
品質保持の
表示をやっている。みんな縦割りでやっていらっしゃる。そこに何にも関連がないので、この行政のダブっている面もあって、非常に不合理もありますし、
消費者にとっては非常にこれは不便でございます。やっぱり
食品の
表示というのは、
専門官がいるのは
農林水産省でございますので、こういう省に優先的にこの
食品の
表示というものをやらせるというルールができておれば、この際でも公取は後でこれに追従しなさいということで、逆に米をもっと使ったものが、新しく
JASをつける場合にもうすでにこの作業ができたと思うのですね。そういうルールができていないことが問題だと思うのですが、この席を借りて先生方にこういう問題、こういうルールを確立していただく問題を、
消費者のためにもう少し
研究をしていただいて、そういう方向へどうぞ働きかけていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
それからその次に、「「
天然」、「自然」」の文語の使用のことでございますが、私
どもはもう四百近い種類の
JASが出ておりまして、一括
表示を見るという習慣が大分
消費者の間では行き渡っております。必ず一括
表示を見て、
原料は何であるか、
添加物は何であるか、いつつくったかというようなことを全部見ることになっておって、むしろ「「
天然」、「自然」」という方がわかりやすい
表示に現在ではなっているわけですし、また用心をしてかかるというようなこともあるほどでございますので、私は、むしろお酢については「
醸造酢」、「
合成酢」の
表示があればそれで十分だと
考えます。
これはついででございますが、五十一年に大田区の
消費者の会で、この「「
天然」、「自然」」の文語の使用についての一般公開質問状をとりました。これのデータを見ますと、ほとんどすべての
消費者団体は
加工食品について「「
天然」、「自然」」ということは一切使わない、
禁止すべきであるという
意見に期せずして統一されていたということを、ここで申し上げておきたいと思います。
それから「
静置発酵」、「全面
発酵」の
表示のことでございますが、送られてきましたこれは「味の化学」というもので、文部省の教科
調査官の金原先生が推薦の言葉を出していて、これは高校の
家庭科の先生向けに
食物指導でつくられた本でございます。これのどこを見ましても、「
静置法」だとか「全面
発酵」だとか、全然出ていないわけなんですね。その副読本にも出していないような
専門的なことを
表示に出したところで
消費者を惑わすだけでございまして、
消費者がよほ
どもっと教育を受けていろんな知識を持つようになった段階ではいざ知らず、私は、いまこういうものは
表示をしない方がいいし、感応テストをしてみても、明らかに、私
どもの舌が悪いのかどうですか、余りわからないわけです。
中には、「静置」というのを大きく
表示をして、非常に大きな字でそれを
健康食品売り場で売って、そのために非常に値が高く売られている。
健康食品売り場で売ったというだけで値が高くなる。私
どもは、いまこういう時代でございますので、やはりそのものに相応した値段のもので、余り故意につり上げた高いものを買わない、そういうような
運動をかねがねやっておりますので、そういう面でも、私
どもはこの「静置」ですが、こういうことは入れる必要がない。
いままで私が出しましたことは、今度の
JASの条項でありました問題点になろうかということについて、
消費者としての個々の
考えを述べさせていただいたわけでございます。ありがとうございました。