○河田賢治君 大体あそこは県立の公園の方が主要な土地を占めておりますし、したがって博物館は一種の小さなところですからね。まあ間借りのようなものですかな。ところが、地方自治体というのは、必ずしもそうどこもここも熱心にいまこのマツクイムシを本当に退治しようというところは少ないわけですよ。山を持っている人も、一遍かかったらもうこんなものはしようがないとあきらめちゃう。ですから、地方自治体も財政的にも困難ですし、なかなか積極的にやってないところが
かなりあるわけです。たとえば京都あたりでも、ずいぶんと嵯峨野あたりにいまどんどん土地を買い上げてそこを保存しようとしておりますが、その近くの山なんかは、
かなり小さい木ですけれ
ども、やっぱり皆赤くなっているんですね。しかし、御所とか宮内庁の管理のところは
かなりきちんとやって、赤くなればそれを切っちまうという
方針をとっております。
ここで非常に相違を私は見たわけなんですけれ
ども、とにかく余り地方自治体に重きを置いて、これはやってくれるだろうとか、これはやるだろうというようなことは、ちょっとなかなかいまの自治体の状態では大したことはないと思うんです。ことし京都でも京大の先生その他を集めて、つまりマツクイムシの何か審議会かなんかつくっておりますけれ
ども、ことしやるんでしょう、それは。もう
法律の出たのはおととしですから、ずいぶんおくれているわけですよ。
かなりもう松はあっちこっち早くから大分マツクイムシにやられております。マツタケの出る丹波方面へも、どんどんいま侵攻しているわけですね。ですから、いま地方自治体に余りこの問題の処理を頼るということはなかなか進捗しないだろうと、こう思うわけです。
ところで、まあ
大臣も文化庁の方もひとつよく聞いておいてもらいたいんですが、あそこの松が枯れておりますね。ところが学校の子供がたくさん来るわけです、あそこは。まあ
外国の人も来ますし、いわゆる京都、奈良といえば昔の観光地の
一つです。だから学校の子供さんが来て、まあ
かなり青い松もあるわけですが、赤い茶褐色のやつがぱかっとあって、これはどういう松ですかと生徒が聞くというわけですよ。先生答えに困っちゃうんですね。それで、宮内庁へ行って宮内庁の博物館の人々に聞いても、まあ十分それを説明し切れぬというわけですね。本当はこれは松の、植物の伝染病ですからな、そんなものをいつまでも置いておくわけにもいきませんし、ほうっておくということはまたおかしいんですから、非常にその答弁に困るということですね。
それほど、いま学校の
教育の中にもこういう問題が大事に取り扱われていないし、また一般の人の中にも、たとえば和歌山県を通りましても、一本の木だけを庭に植えていて、その木が真っ赤になっているんですよ。それを大事そうにほうっておくわけです、とっているわけですね。あるいは京都でも見ましたけれ
ども、植木屋さんですね、庭師、この人らが自分の家のところに、やっぱり赤くなった松をそのままにしているんですね。それほど一般には、この問題に対する認識というものが非常に低いと思うわけですね。
だから、こういう点で私はこの問題を
一つ取り上げたわけですが、ところがこのお切りになった後、ことしのこれは五月でしたか、私の秘書が行ってちょっとその辺を撮ってきたんですよ。そうすると、やっぱりこれを見ますと赤いのが大分残っているんですね。新しくこれはマツクイムシにやられ出したころだと思うんですよ。これは後で見ておいてください。林野庁の方もお願いします。
そこで、私はこういう点で、まあ予算もなるほど庭を掃除するぐらいの予算は大抵ああいうところへは行っているんですけれ
ども、本当に松の木を切り出すとか大がかりで消毒するとか、あるいはマツクイムシを本当に退治するというような、そういう予算はそう組んでないと思うんですな。だから、やはり大事なところは、特に観光
都市なんかにある問題、それから鉄道の沿線なんかもありますが、とにかく重要なところですね。特にこのごろは国民宿舎や山のレクリエーションのいろんなそういう設備を各文部省や厚生省その他も持っていますが、ところがそういうところには余り
林業の専門官はいないわけですね、専門の方は。だから、マツクイムシにちょっとやられ出したといっても、そう気にせずに大体ほうっておくところが多いのじゃないかと思うんですよ。ですから、こういう点は、まあ学校の子供の
教育の点から見ましても、本当のこの地域地域のそれらの緑を守るという点から見ましても、やはり相当林野庁の方々が地方にそれぞれ営林署があったり、それから地方の営林局もあるわけですから、そういうある程度専門の知識を持った人がそういうとんろと連絡をとって、とにかく国がまともにこういう緑の樹木を残さんならぬと、山は樹木で緑にしなくちゃならぬと、こういうことをお考えなんですからね。
特に今度の私、白書を読ましてもらいますと、非常に美文調で書かれておるわけですね。まあ時間がないですが、ちょっと読みますわ。「豊かなな
森林は、四季の
変化と織りなして緑美しい自然を形成し、長い歴史を通じて人と自然との
一体的なつながりという我が国に独特の自然観を育んできた。美しい屋敷林につつまれた民家、庭園、鎮守の森、山岳信仰、社寺有林等に見られるように、
森林と人との結びつきはまことに深いものがある。」と、それからちょっと飛びまして、「満山の緑、清く豊かな水、澄んだ空気にみるとおり、
森林は、自然を構成する代表的な要素である。」と、きわめて美文調でお書きになっているんですよ。それで、非常にこういうふうに緑を愛し、山を愛しておる、こういうところが林野庁の方にはあるわけなんですよ。しかし、これがやっぱり自分の所轄するところ、特に国が、お互いの官庁も国家の所有として
森林なり樹木を持っているわけですね、そういうところにやはり相当の援助を与えませんと、ここに書かれたようなあれが映っていかぬと思うんですね。
ですから私は、もうすぐ結論に入りますが、とにかくいま各地方機関に必ずしも
林業に詳しい人あるいはこのマツクイムシとかそういう問題について詳しい専門的な方がいないわけですから、博物館なんて、まあ昔からの人間のいろんな歴史を、そういうつくった品物なんかを飾って保存するところが
中心なんですから、そう庭の木が古くなって松林が枯れて赤くなっているっていっても、そんなもの余り気をつけぬと思うんですよ。そこをやっぱり気をつけるように、林野庁の方々あるいは営林署の方々、そういう人々が行って、そしてそんなにしょっちゅう回らぬでもいいわけですから、回ればレクリエーションにもなるわけですね、仕事の都合でそういうふうに分けて、どこどこはどこが持っていくと、そして国家機関がとにかく率先してこういう問題を防いだり、あるいは処理したりすることをやっぱりおやりにならぬと、地方自治体というものはなかなか率先していまはやらぬというふうに思うわけです。
ですから、私はやかましいことは言いませんけれ
ども、少なくとも林野庁
関係の役所の方々のそういう樹木に対する、特にこういう虫害なんかに対する問題をやはりちょいちょい見て歩いて、自分の管轄をつくっておいて、そしてそこと緊密な連絡をとりながら、必要なところは予算をあなたのところは出しなさいと、来年は切りましょうとか、いつになったらどうしましょうというぐらいなことをやりませんと、事は単に庭にある木が一本枯れるとかいうだけのことでなく、さっきも申しましたように子供の
教育のためにも、また一般の民家のためにも、やはり私は林野庁というものが、どんなに
日本の一木一草についても責任を持ってこの緑を保っていこうとしているかという意気込みを示すのが、私は必要じゃないかと思うわけです。そういう点で、余りかた苦しい行政的なことを私は言いませんけれ
ども、
一つの町におきましても木が枯れたり、あるいは去年あたりツツジなんかずいぶん枯死しました。もう全然そういうところ、同じ役所に勤めている人でも考えを持たぬわけですね。
ですから、いま官庁というものは非常にセクショナリズムの仕事になっていますから、やっぱり専門家は専門家の
立場でそういう緑を保っていくことに、やはり私はもっと融通をきかしたやり方でひとつやってもらいたいと、そういうことをひとつ林野庁の方々に、実は忠告と言うと何ですが、仕事の
関係、また
日本のいまの
林業が非常に今日ひどい状態になっているところを見ましても、やはり国の機関が率先してマツクイムシなんかを退治する、あるいは処理する、それからまた緑を残していく、こういう問題についてもっと積極的に働きかけるということがいま必要じゃないかと思うわけです。特に国が、横の線を仕事の上でもつなければつないでいくということが、大事じゃないかと思います。この点、ひとつ
大臣と
長官からお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。