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1979-06-05 第87回国会 参議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年六月五日(火曜日)    午前十時三十分開会     ―――――――――――――    委員異動  六月一日     辞任         補欠選任      佐藤 三吾君     野田  哲君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         桧垣徳太郎君     理 事                 岡田  広君                 林  ゆう君                 山崎  昇君                 向井 長年君     委 員                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 塚田十一郎君                 西村 尚治君                 林  寛子君                 原 文兵衛君                 堀江 正夫君                 片岡 勝治君                 野田  哲君                 村田 秀三君                 和泉 照雄君                 黒柳  明君                 山中 郁子君                 森田 重郎君                 秦   豊君    委員以外の議員        議     員  市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   大平 正芳君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       三原 朝雄君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山下 元利君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長内閣総        理大臣官房審議        室長       清水  汪君        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第二        部長       味村  治君        総理府総務副長        官        住  栄作君        総理府総務副長        官        秋富 公正君        内閣総理大臣官        房総務審議官   大濱 忠志君        総理府賞勲局長  川村 皓章君        宮内庁次長    山本  悟君        防衛庁長官官房        長        塩田  章君        防衛庁人事教育        局長       夏目 晴雄君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        自治省行政局長  柳沢 長治君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        宮内庁長官    富田 朝彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件元号法案内閣提出衆議院送付)  (派遣委員報告)     ―――――――――――――
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る六月一日、佐藤三吾君が委員を辞任され、その補欠として野田哲君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 元号法案を議題といたします。  まず、去る六月一日及び二日の両日にわたり実施いたしました元号法案審査のための現地聴聞会について、各班の派遣委員から順次報告を求めます。林君。
  4. 林ゆう

    林ゆう君 元号法案についての大阪における現地聴聞会のための委員派遣について、簡単に御報告申し上げます。  派遣委員は、桧垣委員長団長とし、向井理事片岡黒柳、秦の各委員と私の六名であります。  現地における会議は、大阪商工会議所内会議室において六月一日午後二時から開かれ、五名の参考人から一人十五分程度ということで、忌憚のない意見が述べられた後、派遣委員との間で自由な意見交換が行われました。  まず、全日本労働同盟大阪地方同盟会長片岡馨参考人からは、元号は長い歴史に根差した民族固有の時間尺度として国民生活に定着していること、元号文化的価値を有していること、元号法制化象徴天皇制及び民主主義を変更するものでないことなどから、元号法的根拠を与える意義はあるが、元号及び西暦併用現状から見て、元号法制化を急ぐ必要は疑問であること、そしてまた元号法制化がなされた場合には国民元号使用強制しないことを要望する旨の意見が述べられました。  次に、関西経済連合会常任理事亀井正夫参考人からは、元号制度国家体制の一部であり、千年以上の歴史を持ち、国民統合象徴である天皇の名をあらわすものであることなどから、元号国民主権主義のもとでの国民代表者である国会によって決定するのが本来の姿である。また、一方では国際化時代に対処する必要から、西暦併用が望ましい旨の意見が述べられました。  次に、兵庫県議会議長北野秀雄参考人からは、元号が長い歴史的伝統の上に乗って、広く国民一般に普遍化している事実は、単なる慣習を超えた国民の率直な合意に基づくものであること、国民が長い間昭和という元号生活の中に自然な形で受け入れ、国民感情の中にも深く浸透し、定着している意義を尊重するとともに、時の流れに節目をつけて時を表示する元号制度法律根拠を与えることはきわめて適切なことである。しかし、法制化に当たっては、国においても広く国民理解合意が得られるよう一層の努力を払うよう要望する旨の意見が述べられました。  次に、福井県出納長木甚左衛門参考人からは、元号わが国歴史文化と密接に関連し貴重な文化的遺産であり、国民が尊重し存続すべきことは当然であり、現に国民の間に元号慣習上事実上定着しているので、たとえ法制化しても、元号使用に関しては現状を変更しないことが望ましい。元号制度は現に行われている現状をそのまま秩序立てることが国民の声であり、これが元号法案意義ではなかろうかとの意見陳述がありました。  最後に、総評大阪地方評議会議長中江平次郎参考人からは、元号存続元号法制化とは必ずしも結びつくものではないこと、天皇在位期間に応じて年号を変えるという法律憲法の定める主権在民精神と矛盾すること、君が代を国歌とし、教育勅語を復活し、伊勢神宮、靖国神社を国家神道として位置づける等、天皇を超越的な存在として権威づけしようとする一連の動きの中に元号法案が提案されたということ、さらに、国際化社会を迎え、すべての国民との政治経済文化における相互理解平和協調時代に、元号国民生活及び意識ばかりでなく学問、思想の自由に広範な規制的影響をもたらすのではないか等の意見が述べられました。  以上の参考人意見陳述の後に、参考人と当内閣委員会委員との間で自由な意見交換が行われました。  詳細につきましては、別途、文書をもって委員長に提出いたしますので、本日の会議録に掲載されますようお取り計らいいただきたいと存じます。  以上でございます。
  5. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 山崎君。
  6. 山崎昇

    山崎昇君 元号法案についての、北海道における現地聴聞会のための委員派遣について、簡単に御報告申し上げます。  派遣委員は、私を団長とし、岡田理事、原、山中森田の各委員の五名であります。  現地における会議は、六月二日午前十時から、北海道庁赤レンガ会議室で開かれ、四名の参考人から一人十五分程度発言がなされた後、派遣委員から参考人に対し質疑が行われ、滞りなく議事を終了いたしました。  以下、四名の参考人発言内容について、簡単にその要旨を申し上げます。  まず、北海道議会議長西尾六七参考人からは、道議会における元号法制化問題にかかわる案件について、審議経過説明されました。審議対象となった案件は、元号法制化推進北海道連絡会議代表外四十二名より提出された元号法制化促進に関する請願及び札幌市の住民三名から提出された元号法制化反対に関する請願の二件の請願と、自由民主党及び道政クラブ所属議員六十名より地方自治法第九十九条第二項の規定に基づいて提出された元号法制化促進に関する要望意見書案であるとのことでありました。  これらのうち、請願につきましては、昨年十月二十三日に総務委員会で協議されましたが、結論が得られず、十一月七日の委員会委員より意見開陳後、採決され、元号法制化促進に関する請願賛成多数で採択することと決定され、また、元号法制化反対に関する請願賛成少数をもって不採択と決定され、本会議においても委員会の取り扱いと同様の決定となっているとのことでありました。また、元号法制化促進に関する要望意見書案は、昨年十二月二十三日の本会議において、討論の後、採決され、賛成多数をもって可決されているとの説明がありました。  次に、全北海道労働組合協議会情宣道民運動部長古川則雄参考人からは、現在、西暦元号がともに慣習的に使われているが、法制化されると元号使用強制され、西暦になじんできた部分での混乱が予想される。特に、一世一元のもとでは、天皇の交代による国民生活の不便の押しつけが問題だとし、元号使用強制が進むと、私人相互間で、経済的弱者思想、良心の自由から元号使用を拒否すると生活を圧迫されるおそれがあると述べられ、また、元号法制化の背景は、天皇制とは無関係ではなく、元号法制化を推進している諸団体は、憲法を改正し、天皇元首化天皇中心政治の実現を目指しており、平和主義人権の尊重、国民主権を特徴とする憲法の立場からも元号法制化反対するとの意見が述べられました。  次に、北海道商工会議所連合会副会頭の川合一成参考人からは、西暦世界共通暦のように考えられているが、紀年法一つでもあって、回教暦ユダヤ暦を使っている国も多い。現在、わが国では何らの抵抗もなく元号が用いられ、また、国際的に物事考えるときは西暦が用いられていて、何の不自由、不便も感じていない。元号という年の数え方の思想中国大陸に始まりわが国へ伝わったが、わが国最初の大化の年号は、中岡の支配や強制を受けたものではなく、日本独自の考え方に基づいたものであり、以来、千三百年日本民族に親しまれ、日常化されて今日に続いているかけがえのない文化遺産である。このような貴重な年号を失うようなことがあれば、民族伝統歴史を断絶させることとなり、民族文化、生命を失うことともなると述べられ、現に、多くの自治体で議決され、世論調査でも八〇%以上賛成していることから言っても、この際、元号法律的に明確にしておくことは絶対に必要なことと信ずるとの意見が述べられました。  最後に、日本キリスト教団札幌北光教会牧師川谷威郎参考人からは、元号制は君主が国土、国民だけでなく、時をも支配することをあらわすものであるから、主権国民に存することを根本原理とする憲法精神に反する。元号法制化することは、これを国民強制することにつながり、憲法精神に反することを法的に強制することは、国民基本的人権の侵害でもあると述べられ、存続希望する者が多いことを法制化理由としているが、これは使用強制した自然の成り行きであるにすぎず、また、世論調査の結果も、法制化希望する者は半数にも満たないところから、法制化には反対するとの意見が述べられました。  以上の意見が述べられた後、団長から当委員会における元号法案審議経過説明し、派遣委員から、天皇制元号法案との関係元号使用問題、世論の動向、経済活動及び宗教活動元号との関連、並びに日本文化伝統元号との関係等について質疑が行われました。  詳細につきましては、別途、文書をもって委員長に提出いたしますので、本日の会議録に掲載されるようお取り計らいいただきたいと存じます。  以上でございます。
  7. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で派遣委員報告は終わりました。  なお、両君から要求のありました会議録の掲載については、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  9. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) それでは、これより前回に引き続き質疑を行います。  この際、お諮りいたします。  市川房枝君から本案に対する質疑のため委員外議員として発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認めます。  それでは市川君に発言を許します。市川君。
  11. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) まず最初に、委員長並びに委員の方々にお礼を申し上げたいと思います。二院クラブは内閣委員会に席を持っておりませんので、先般、議員一同で話しましたところ、委員外発言をもしお許しいただけるならということでお願いをいたし、私が担当することになりましたのを、皆さんで御相談の上お許しをいただいて、ありがとうございました。  委員会でのいままでの質疑を伺っておりませんので、同じことをお聞きするかもしれません。また、きわめて常識的な質問を申し上げることになるかもしれませんが、それもあらかじめ御了承いただきたいと思います。  最初に伺いたいのは、本案の提案の理由として、国民の多数が賛成していると、こういうことをお挙げになっておるようですが、その多数という数字根拠を伺いたいと思います。
  12. 清水汪

    政府委員清水汪君) お答えを申し上げます。  ただいま御指摘のように、この法案を提案いたしました際に、国民の大多数の者が将来における元号存続希望している、政府としてはそれにこたえるということからこのような法案を御提出して御審議をお願いするという趣旨を申し上げているわけでございますが、その際の政府として考えておりますことでございますが、ただいまの点について二、三申し上げます。  まず一つは、元号存続ということにつきまして国民一般考え方世論調査の形で調査いたしました。これは総理府が行いましたものは昭和三十六年、四十九年、五十一年、それから五十二年と、四回にわたっております。この調査は、対象が二十歳以上の男女一万人ということで調査をいたしました。この調査の結果明らかになりましたことは、次の天皇の代になっても年号制度――ここでは言葉年号という言葉を使いましたから、その点はお断り申し上げますが、年号制度はあった方がよいと思うか廃止した方がよいと思うかという聞き方で、四回とも同じような聞き方でございまして、その答えは、昭和三十六年のときには、あった方がよいというのとどちらかといえばあった方がよいという二つの選択肢でもって、これを合計いたしますと五九%でございますが、四十九年のときはこれが八〇%、それから五十一年のときはこれが七六%、それから一番新しい五十二年のときはこれが七九%ということになっております。したがいまして、この推移等から見ますると、おおむね大多数の国民が次の天皇の代になっても年号制度存続希望しているという意思はおおむね確認できたのではなかろうかと、このように受けとめているわけでございます。  それからもう一つこれとよく比較されますのは、一般新聞社が行っております、あるいはNHKも行っております世論調査の結果でございますが、この世論調査におきましても、存続希望するという点におきましては、おおむね政府調査と同じような大多数の国民存続希望しているという結果は得られているわけでございます。  もう一つの問題は、それに続く第二問と申しますか、第二問の形で、それではその法制化というようなことについてどう考えるかという質問がなされているわけでございます。その質問に対する答えがございまして、それはまず最初法制化自体賛成だというふうに非常に単純に賛成しているのがまず最初に出てまいりますが、これはよく言われますように約二二、三%というような数字が大体のケースでございます。一社だけは五七、八%というケースが出ておりますけれども、あとの多くは二〇%台ということですが、その次に、その質問の二番目といたしまして、元号はあった方がよいがその方法についてはという設問になっておりまして、そこの選択肢に、ある場合には選択肢一つだけ、つまり法制化するほどのことはないというような選択肢もありますし、ほかの調査では、元号はあった方がよいが、たとえば慣習にゆだねればよいとか、あるいは内閣告示でもよいのではないかとか、あるいは政令で定めればよいではないかというような選択肢が提示されているわけです。そこに、合わせまして約五〇%あるいはちょっとそれを上回るような回答が寄せられている。このことがしばしば取り上げられてきたわけでございます。  この点につきまして、私どもとしてはこのように考えているわけでございます。つまり、いまの設問におきましてもやはり昭和の後の元号というものはあった方がよいがということが前提になっているわけでございます。その方法につきまして幾つかの答えに分かれているわけでございますが、それにつきまして若干御説明申し上げたいと思いますが、まずその一つの、慣習にゆだねればよいではないかという考え方があるわけでございますが、このお気持ちはわかるわけでございます。ただ、現在昭和という元号は事実たる慣習ということで存在しているというか使われている、このように理解されているわけですが、こうした慣習の中には、後のその次の元号をじゃどうするか、どういうふうにして決めるのかということについては、その慣習内容といたしましてそういうルールはないわけでございます。昭和というものが現在使われているということは慣習としてそうなっておりますが、昭和の次をじゃだれがいつ変えるのだ、あるいは決めるのかという点についてのはっきりした慣習はございません。そうなりますと、慣習にゆだねればよいというか、慣習的にやっていけばよいというふうに仮に考えたといたしましても、その前提となっている存続という願望は満たされないことになるのではないか。そういうふうに考えますと、慣習という方法というのはどうも実際問題としてはそれでは希望を満たすことにならないというふうに考えられます。  そこで、あと残りますのは、たとえば政令でやったらいいじゃないかというようなお考えの方もいらっしゃるわけですが、これは現在の法制度のもとにおいては、法律根拠というものがなしに政令、これは内閣が出すわけですけれども政令内閣限りで決めてその物事をやっていくということは普通はございません、できないという考え方になっております。それからもう一つ、じゃ内閣告示でどうかと、これはつまり言っております意味は、要するに特定の法律という根拠はなくても内閣が自分の判断である必要な場合においては何かそういうことをやったらいいじゃないかという考え方意味するわけですけれども、そこで政府として考えますことは、そのような行き方、これはまあ不可能とは考えておりません。従前国会審議の場におきましても、いまとっさにどうかと言われたような場合においては、そのような方法考え方としてできるというふうにお答えを申し上げていることはあるわけでございますが、しかしながら、いろいろ検討いたしました結果、やはり元号というものは国民が広く使っておるという意味においては非常に重要な影響のあるものでございます。そういたしますと、やはりこういうものは、国会、つまり国民を代表すると申しますか、国権の最高機関である国会の定める法律の形で、そうしてその法律に基づいて具体的な名称自体政府が決めなさいというような、つまり今回の法案のような形でその改元のルールを明らかにしていただくということの方が事柄といたしましてもはっきりいたしますし、それからその手順と申しますか、やり方といたしましても民主的な手法にかなっていると、このように判断するわけでございまして、結局政府といたしましても実質的に国民存続希望というものにこたえる方法といたしまして、やはり御提案申し上げておりますような法案の形でお願いするのが最も妥当であろうと、このように考えたわけでございます。
  13. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) いまのお答えのその調査の結果は、いただきました元号制度関係資料の中で数字が出て拝見しておりますが、総理府調査なすったのは元号を存在したいということであって、それを法定化するという調査ではないんですね。それで、法定化することについての調査が、いまもお話しありましたけれども読売の五十三年七月の調査でははっきりと「元号法制化すべきか」ということで答えが出ている。それには、「法制化した方がよい」というのはわずかに一五・一%しかない。そして、「元号はあった方がよいが、法制化するほどのことはない」というのが六四・五%、過半数なんですね。そこで、私は、調査をなすったのが法制化でなくて単に元号を残したいと。これはいま生活しております者が元号になじんでおりまするから、残したいという気持ちは私はそれが多数を占めるということは当然だと思いますけれども、それを法定化するかどうかということになるとこの読売調査のように非常に少ないということになりますと、私は、八〇%は賛成しているから賛成しているからといっておっしゃるのは少し違うのじゃないかと、こう思うのですが、いかがですか。内閣はもう一遍内閣自身法制化することでいいのかどうかという調査をなさる御意思はないのですか、調査をしようとお考えになったことはないのですか。
  14. 清水汪

    政府委員清水汪君) 私どもとしては改めて調査をするということは考えておりませんですけれども、いまの御指摘の点につきましては、先ほども申し上げましたので詳しくは繰り返しませんけれども、たとえば去年の七月段階のいま御指摘新聞調査の場合におきまして「元号はあった方がよいが、法制化するほどのことはない」というお答え、これも表現が非常に漠然としておるといいますか、あるいは非常に広くとれると思いますが、このときに一つ考えられましたことは、これは私の推測でございますけれども元号法案自体がまだ明らかになっておらなかったわけでございます。したがいまして、法制化した場合というのは一体どういう状態になるのかということが必ずしもはっきりしていなかったのではないかと思います。同時に、そのようなはっきりしていないという状態の中では、法制化するとたとえば元号使用法律的に義務づけるというようなことも入ってくるかもしれないというような漠然とした疑念も持たれたのではないかと思います。しかしながら、これはもう現在明らかでございますように、政府として御提案申し上げました法律は全くそのような使用の問題について拘束するとか義務づけるとかいうような内容は含んでおりません。そういうようなことでございますので、ややこの辺には実態と申しますか状況と申しますか、そこにずれがあったかと思いますが、もう一つ、私は当委員会でも一度申し上げましたが、私どもがやや昨年の秋の段階におきましてはちょうど臨時国会段階でございましたが、政府として法制化の方針を大体内定したと申しますか、そのような段階になりましてから、実は、じゃ政府が何かそのことについて調査するということをやるべきかどうかということも内部的にはいろいろ検討はいたしました。いたしましたけれども、これは従前もいきさつがあるわけですけれども、その法案の性格によると私は思うのですけれども一種の何といいますか反対がはっきりしているようなそういう法案について政府広報室の手で調査をするということ自体一種世論操作ということでございましょうか、何かそのような意味合いを持ちかねないというような御批判も従前ありまして、そのような段階になった暁におきましてはむしろ差し控えるべきであろうというような判断をいたした、そのようなこともございます。ございますけれども、いずれにいたしましても、私は、この実態論といたしましては、存続希望するという国民の願望、問題はそれに対してはどういうふうにこたえたらよいかということはある意味では政府としてもこれを考える責任と申しますか、そのような立場にあると思いますし、それからかたがたただいま申しましたように、たまたま世論調査で出ておりますその選択肢、それに回答した方がどういう気持ちで回答されたかということの問題にもなるわけでございますけれども、いまのような場合でもやはり「元号はあった方がよいが、」ということが前提になっているというふうにそれぞれの設問があるわけでございますので、国民の実質的な意思は非常に明確である、問題はその方法ということになろうかと思います。そこで、それは国会で御審議いただけるのではないか、このように考えたわけでございます。
  15. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) いまの御説明はちょっと納得できませんけれども、後でまた伺います。  この法案に対して民間で賛成している団体とそれから反対している団体というのはそちらでおわかりになっているんでしょう、それをちょっと伺いたいと思います。
  16. 清水汪

    政府委員清水汪君) 賛成をしております団体といいましても網羅的に把握しているというわけにはちょっとまいりませんですけれども、たとえば私どもの手元に直接来ております例として申し上げますと、四十七都道府県の中で四十六の都道府県が元号法制化要望という決議をしているように聞いておりますが、私どものところへ正式の文書で現在までに手元に到達しておりますものはその中の三十八都道府県でございますけれども、まあそういう現象。それからよく申し上げておりますように千を超える市町村の議会が元号法制化促進の決議を行っている。これは現在までのところおおむね千二百九十ほどの市町村からその市町村議会の法制化促進要望の決議というものを地方自治法の規定に基づいて送付してきており、それを受け取っております。そのようなことがございます。  これは公的機関の現象でございますけれども、そのほかいろいろな団体から法制化を望む御意見をいただいているということでございます。その名前は一々はちょっと省略させていただきたいと思います。  それからもう一つ、これに対しまして元号法制化反対する団体が種々あることもよく承知をいたしております。私どものところに直接見えられた方々だけをここで例示的に挙げさせていただきますと、日本キリスト教協議会、あるいは日本キリスト教団、日本科学者会議、あるいは歴史科学協議会、あるいは安保破棄諸要求貫徹中央実行委員会というようなところの方々が見えております。ことに、この最後の安保破棄諸要求貫徹中央実行委員会というのは、その構成メンバーは非常にたくさんあるというふうに承知をいたしております。
  17. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) 私が特に知りたいのは、賛成をしておいでになる団体の名前といいますかその性格というものをある程度知っているものですから、それを伺いたいのですが、その前に、いま反対している団体については若干名前をお挙げになったのですが、その反対している団体の中で、いま名前が挙がりませんでしたが、私が関係を持っておりまする団体が、これは中立の婦人団体四団体が反対の陳情を、ここに書類を持っているはずなんですが、元号法制化に関する要望書ということでまあ内容は省きますけれどもしておる。それは日本看護協会、日本キリスト教女子青年会、日本婦人有権者同盟、日本キリスト教婦人矯風会という四団体でございますが、これは総理府へ伺って差し上げたらしいんです。そのときに、反対という団体というか、反対の陳情はあんまりありませんよと、こうおっしゃったというのですが、事実そうだろうと私も思うのですが、反対している団体はたくさんあっても一々総理府まで反対の陳情には行っていないのじゃないかと思いますから、その点を申し上げておきたいし、それから賛成としていま地方の自治体の議会の数をお挙げになったのですが、これが相当多数であることは私もある程度承知しておりますけれども、この地方の団体の賛成の決議といいますか、議会での決議というものを、実はこの間私の関係している団体の全国の支部長会議をやりまして、その中でこの問題についての各地方での模様を報告しておったようですが、それでは、地方の自治体の議会がその地域の住民の意見を聞くことなく、突如としてといいますか、議会が多数決で決定をしなすったと、こういう報告も聞いておるので、だから、たくさんの自治体の議会が法制化賛成の陳情をしているといっても、その実態がどうであるかということは私は総理府の方は御存じであるべきだと思いますが、だから、その点をやはり法制化を立案なすったその理由一つに地方議会が大変賛成しているのだと、さっきは世論調査の結果は八〇%賛成しているというお話がありましたけれども、この点もちょっと申し上げたいのです。  それからいま申しましたように、賛成しておる団体のお名前がわかっておるでしょうから、それは全部とまでいかなくても、有力な団体のお名前をちょっと伺わしていただきたいと思います。
  18. 清水汪

    政府委員清水汪君) ただいまの先生のお話を私としてもよく理解できるわけでございまして、ちょっとお言葉の中にございました婦人有権者同盟あるいはキリスト教矯風会がお見えになったときに云々というのは、たまたま私は元号反対という問題ではお会いしなかったように思うのです。ただ、私いまの二つの団体には別の仕事もございましてよくお会いするのでございますが、それからいまの場合以外には私はできるだけ反対を言ってこられた方にもできるだけお会いするようには努めておるわけでございます。  それからいまの地方議会の問題につきましては、これはたまたま本日の地方聴聞会におけることについての御報告がありましてそれを先ほど拝聴したわけでございますが、私どもといたしましては、正式に議会の手続を踏み、地方自治法の規定に基づいて政府に提出されてきましたというその点におきまして、これは厳粛と申しますか、公の意思ということで受けとめさせていただきたいというふうに考えているわけでございます。  それから最後に御指摘でございました賛成の団体の方の名前ということでございます。私は先ほど実は個別の名前をあえて申し上げませんでしたが、それは御案内かと思いますが、おおむねそのような団体は元号法制化実現国民会議というような形の連絡会議のような形をとって最近においては運動しておることは御案内だと思います。その構成メンバーということに事実上はなりますわけでございますが、たとえば神社本庁とか、あるいは全日本労働総同盟とか、遺族会とか、そういうようなもので、全部では七、八十に達する団体があるわけでございます。
  19. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) そのことも後で触れたいと思っておりますが、次に、元号の決定は法律で決めるけれども、しかしこれの使用は自由だと、いや強制しないという御説明委員会でももちろんですけれども一般にも伝えられていますけれども、ちょっとそれがよくはっきりわからないといいますか、どの程度まで強制されないのか強制されるのかということも少し疑問がありますし、それを御説明をいただきたいと思います。
  20. 清水汪

    政府委員清水汪君) この元号法案は、ごらんいただきまするように、元号のことに関しまして、皇位の継承があった場合に限って元号を改めるということ、その元号政令の形で定めるということだけを内容にしているわけでございますが、つまり、じゃそういうふうな定められた元号というものを一体一般国民は無理やり使わなければならないのか、あるいはいやそれはもうどっちでもいいのかというような、およそ紀年をする、つまり年を表示する場合の紀年の手段としてこの元号を使うときの使い方の問題についてどうなのかという点については、法律の上では全く触れておりません。触れておりませんということは、つまり使用の問題は全く国民の判断にゆだねている、法律自体では全くそこについては触れる考えがないということでございます。したがいまして、現在わが国においては大部分の場合には昭和という元号を使って年の表示が行われておるのは御案内のとおりでございますが、これはわが国における一つの事実たる慣習と申しますか、慣行としてそういうことは確立しているのだろうと思いますが、そのような慣行の問題、そういう実態の問題だろうと思っております。したがいまして、元号法案がない今日においてもそういう状態がございますし、元号法案が成立させていただいた後においてもその点は全く同じである、変わりませんということを申し上げているわけでございます。
  21. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) せんだって、ある有権者から私に電話で、せんだって子供が生まれたので届け出に西暦を書いて区役所の窓口へ持っていった、そしたらそれを消されてやっぱり昭和の年月を入れられた、強制されているんだということを伝えてきたんですが、これはまだ法制化されていない現在の問題ですから、まあ現在は年号の問題は法定されていないけれども、一体どういうふうに扱われているのか。いま、現在と大して法定されても変わらないということをおっしゃったのですけれども、現在の元号との関係は一体どうなっているか、その辺をちょっとはっきり伺いたいと思います。
  22. 清水汪

    政府委員清水汪君) 先ほども申しましたように、わが国におきましては年の表示の方法として元号を使うということが大勢と申しますか、それが大体確立された慣行となっているというふうに思うわけでございまして、そうしてそのようなことのいわば一環と申しますか、あるいはそれの反映というふうにも私は思うわけでございますが、公務、つまり役所の文書の面におきましては、外務省のような特殊なケースとか、つまり外交関係のようなケースとか国際関係のような場合とかというそういう特定の場合を除けば、つまり原則的な意味では元号によって年を表示しておる、そういう元号によって記帳をしていると、こういうことでございます。そして、問題は、いまおっしゃいましたように、その役所の事務が個々の国民との接触する場面、まあよく窓口業務と、こういうふうに申し上げているわけですが、たとえば届け出というような例でございますが、そのような場合のことにつきましては、役所の方がそのような元号による記帳の整理ということをやっておりますので、できるだけお届けいただく際にもその届け人が書く届け出書の方の記入も元号の方でやっていただけばその方がありがたいわけでございますから、そういう意味で、元号によってこちら側がそういう事務をやっているということに対して御協力をいただくという意味で届け出書の方も元号の方で記入してくださいということを協力を要請しているというのが現在の姿だと思います。しかしながら、そういうようなことでございますので、どうしても元号でなくて西暦で書きたいという方の場合には、それはそれでも結構でございますということで受理をするということでございます。届け出をしていただいてきたものを拒否をするというようなことはすべきでない。ただ、まあできるだけ御協力をいただきたいという立場でお願いをしていると、こういうことでございます。それが現在の状態だというふうに考えているわけでございますが、そういう実態的な姿、ということはこの法案ができるできないにかかわらず、今後もそういうふうに続けていくことになるのだろうというふうに考えているわけでございます。
  23. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) 法案が成立すると、役所の方も自由でいいと、ただ協力してほしいということなんだと言うのですが、協力してほしいとおっしゃっても、届け出本人が、いや、元号はいやなんだと、西暦というふうにもし書いて出したら、それをちゃんとそのまま受け付けますか。やっぱり、役所に関することは、自由だといってもそれは民間で自由に使っている間のことであって、役所関係では一極の元号強制されると、そう解釈していいのか、どっちですか。
  24. 清水汪

    政府委員清水汪君) これはやはり公務の統一的な処理をしておるというそういう立場から申しまして、できるだけ役所に出す書類は元号の方で記入していただきたいという要望は将来とも私はこれは持ち続けるだろうと思います。しかし、あくまでもそれは協力が得られるかどうかという問題でございますので、しゃにむに強制するというようなことにわたってはいけないと、そのようなことはるる当委員会においても御指摘をいただきましたし、私どももそういう点は十分注意をいたしますということを申し上げているわけでございます。結局は、わが国における公の一つの年の表示の問題ということについての国民全体の御理解と申しますか、そのような良識を前提にしてやはり解決をしていくべき問題だろうというふうに考えておりますが、あくまでもいまの趣旨については今後もよく注意をしていくということはしばしば申し上げているとおりでございます。
  25. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) ちょっとよくわかりませんが、私は、はっきりと協力してくれと言ったって、やっぱり協力しないという人もだんだん出てくる、あると思うんですよ。そういう場合には、それでいいというのでなく、直しちゃう、届け出は受け取っておいても戸籍簿に書くときには年号で書いちゃう。やっぱりそうなると強制ということになりますけれども、それはむしろはっきりと私は国民におっしゃっていただかないと、何だか自由みたいな自由でないみたいなようにいまのお言葉でもちょっと受け取れるのですけれどもね。だから、それは法が成立したときには私はそれこそはっきりとおっしゃっていただきたいというふうにお願いをしておきます。   〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕  次に、文部省にちょっと伺いたいのですが、文部省では義務教育である小学校、中学校のいわゆる教科書では一体元号というものは現在どういうふうに扱われているのか、伺いたい。
  26. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 教科書のうちでも元号とかかわりの深いのは、日本歴史、あるいは現代社会、あるいは地理といったような教科書でございますが、現在の教科書は御承知のように検定制度でございますから、民間の著述者が書いた原稿を文部省が検定をする。そこで、具体的に教科書の中で、たとえば日本の歴史で言えば西暦の六百四十何年ですか、孝徳天皇が初めて元号というものを立てられて大化元年としたというような記述、これは西暦元号を併記してございますから、そこで日本で最初元号が立てられたのはいまから千三百年ぐらい前だというようなこともわかりますし、元号というのはどういうものだということもそこで一応知識として授ける。そういうようなことで、また明治になれば、明治維新というのは初めて東京へ都を移して元号を慶応四年から明治元年にした。それが西暦で言えば千八百何年ですか、いまから約百年以上前だということによって、日本のいわば近代の夜明けがいまから百年ぐらい前に始まったと。そこから明治四十五年まで明治という時代が続いて、その中で明治二十三年にたとえば国会が開かれたというような記述がございますから、そこで明治維新後近々二十年くらいで日本がいまの議会制のたてまえをとり始めたのだというようなことを理解するということで、言ってみれば、日本歴史等を勉強する場合には、年号西暦もともに必要であり、またそれぞれの必要に応じて適切な記載がなされておるというのが現状でございます。
  27. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) そういうときに、西暦を先へ書いてそして括弧して元号を書いておる、それが現実ですね。そうすると、生徒たちは二つ覚えなきゃなりませんね。それは私は子供たちには負担になるのじゃないかと思うし、それから西暦の方が先へ来ているのだし、その方が子供としては覚えいいですね。だから、子供たちとしては、やっぱり西暦というものの方になじみが深いといいますか、それを覚えやすいというか、年号年号というのは、それこそ明治、大正といいますか、あるいは昭和の初めという人たちは、それこそさっき申しましたように、それで育ち、あるいはそれで教育を受け、それでいろいろな事業をしてきているから、それはやっぱり西暦で言われたって私なんかよくわからぬですよ。一遍勘定してちゃんとしなきゃわからないんですが、私は、子供たちはそうでなくて、やっぱり西暦の方が覚えいいというか、いわゆる生徒たちの元号に対しての反応は一体どうなんですか。
  28. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 子供たちの反応というのを現実に調べたことはないわけですけれども、ただいま先生おっしゃったように二つ覚えるのは負担だというのは私初めて聞く御意見でございまして、やっぱり日本の歴史を勉強する上で元号というものを全然勉強しないのではぐあいが悪いのじゃないでしょうか。   〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕 明治時代をとりましても、明治維新というのは千八百六十何年かですね。それで、それから始まって明治の四十五年間というのはいろいろな歴史的事実があった。それは、明治十年に西南の役があったとか、明治十七年に初めて内閣制度ができたとか言う方が、われわれだけでなしに、やっぱりいまの勉強でも理解しやすい。ただ、長期的なあれから見ますと、先ほど申しましたように、大化の改新というのは西暦で言えばこうだからいまから千何百年前だと、こういうような理解もありますので、教材の内容によってそれは西暦を使うこともある、あるいは元号を使うこともある。それで表記の仕方としては、先生がおっしゃるように、教科書を見ますと、明治以前は大体西暦を先に書きまして、主な事項については大化元年とかあるいは元禄何年とかというこういう記述になっておるわけでございまして、その結果として、私は現場の方などの御意見を聞きましても、いまのようなやり方でやるのが日本歴史の勉強などの場合はまあ妥当なところではなかろうかと、こういうふうに聞いております。
  29. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) 二つ考えるのは子供たちに負担だということを初めて聞いたとおっしゃるんだけれども、私は年寄りなせいか二つ覚えるのは骨ですよ。まず年号でやってそれから西暦を勘定するんですが。いままでの歴史としては、それは日本の歴史は日本の年号で来ているから、年号は当然出てきていいはずだけれども、将来の問題ですね、将来また年号をくっつけてそれで二つずつ子供たちに教えなきゃならぬのか。いや、将来は、日本の過去と違って非常な国際的なというか、世界的に世界が狭くなってきているんだと。したがって、西暦を使う場合が非常に多いし、その方が便利というか、あるいは物を考える場合でもその方がいいんで、将来元号を私は改めてまたいつまでもというか使う必要はないのじゃないかという感じが起こるのですが、ただ、さっき御説明を聞きますと、どこも年号を決めるところがないんだと。現在がそうなんだけれども、それだからやっぱり法的な根拠といいますか、あるいは国会賛成を得て新しく年号を決める場合に備えなきゃならぬのだと、こうですね、理由は。ところが、私は、年号を後を続けなくていいじゃないですか。それは郷愁があるけれども、それは過去のことに対する郷愁であって、将来、ことに若い人たち、子供たちが日本をしょっていくんだから――いまの人はみんな執着を持っていますよ、私ども執着を持っているんだけれども、将来のことを考えると、私はその必要はないように思うのですけれども、どうですか。これはひとつ長官にお答えいただきたい。
  30. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) 御意見は拝聴いたしておるところでございますけれども、先般も森田委員さんかの御意見にございましたが、子供さんが四、五人遊んでおられた。そこで、そのお子さんに、皆さんにあなたは何年生まれですかとお尋ねをいたしたところ、皆さんが昭和何年だということをお答えになったというようなお話があったわけでございますが、しかし、それがいまの市川委員お答えになろうとは思いませんけれども、やはり日本人として長い間愛用をしてきましたなじんでおります元号という日本にとりましては独特な一つの遺産的なものになって年の表示をあらわしておるわけでございますけれども、そういう意味で私は一つ意義があるし、また愛用いたしてまいっておりますが、しかし、いままた一面言われますように、西暦について、これは国際的なものであるし、世界の幅も非常に狭くなったと目されるような状態の中では、国際性の涵養ということもあろうしするから、また通年的な計算をするというようなところから見ても西暦というものがやはり愛用されていく点も私どもわかるわけでございますけれども、しかし、それはそれなりに私は両者とも大事な一つ意義を持つものであると思うのでございます。したがって、長い将来のことは私は国民の英知がおのずから解決するといたしましても、現状におきましてはいずれも尊重すべき持ち味を持ったものであると考えておるところでございます。
  31. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) 子供に聞いたら昭和何年生まれと答えたとおっしゃる。それはもう現行法ではというか届け出はそうなっているから、子供たちだって何年に生まれたということはみんな覚えていますから、そう答えるのはあたりまえで、別に年号に子供たちが執着を持っているとかなんとかいうことは何にもないわけであって、現状でそう答えるのはあたりまえで、そういう中にあるいは千九百何年と言うのがいたらそれはむしろ珍しい方だと思います。年号に対しては、歴史といいますか、日本の伝統といいますか、まあ私も年寄りなだけにそれに郷愁を感じているというか、しかしそれはいままでの歴史ということであって、そしてそれにはちゃんと年号がくっついてそれを消すというわけじゃないのであって、むしろ将来の問題として私はいまのように考えるのですが、これはまあ考えの違いとしてそれをおきまして、最後に、私はさっき支持しておいでになる団体の名前をと伺ったんですけれども、ちょっとおっしゃいましたけれども、余りおっしゃいませんでしたね。いや、私もそれは陳情もありいろいろでどういう団体がということもある程度知っているつもりですし、あるいは国会だの街頭で盛んに運動しておいでになる団体のことも知っておるわけなんですが、それで、私は、現在の憲法国民主権の立場から、天皇一世一代というところに問題があるということももちろん考えますが、いま申し上げたようなこれを支持しておる団体の多くの団体は、私が承知している範囲内では、いわゆる天皇制を支持しておいでになる、あるいは憲法を改正しなくちゃいかぬということを主張しておいでになり、あるいは自衛隊をちゃんと認めなくちゃいかぬとか、あるいは有事立法をつくらなきゃいかぬというような御意見をお持ちになっている団体が多いように私は思うのです。そうなると、元号法制化天皇一世一代ということから将来のまた前来た道、いわゆる戦争への方向に向かってこれが突破口となって、そしてそっちへ進んでいくのではないかということを実は心配する。これは私の杞憂なら結構なんですけれども、どうもいままでの歴史、自分の体験を通して私は非常な心配をしておる一人なんでありまして、そこで特にこの際法で制定しなくてもというか、現在の状態で行き、それからもしこれを改正する必要があるときにはやはりそのままで自由にするということで一向差し支えないのじゃないのかと、こういうふうに思うのですが、私のこれは杞憂でしょうか。杞憂なら大変にうれしいのですけれども、これも長官からちょっとお答えを願いたいと思います。
  32. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたしますが、法制化の経緯等につきましては清水審議官がお答えをいたしましたので、全く私も同じ立場に立つものでございまするので、それは省略をいたしますが、しかし、いま御指摘の積極的に元号法制化を推進する団体が右翼的な団体が多いぞと、あるいはまたこれが、何と申しますか、タカ派的ないろいろな言辞を弄し、神聖と申しますか大事な新憲法まで曲げていこうという魂胆のグループではないかというような点で、将来法制化の結果というようなものがそうした方向に行くことは心配でならないという御指摘でございました。いままでの審議の中でもやはり大きな柱としてそういう御指摘があったことを承知いたしておるわけでございますが、私どもといたしましても先ほど申し上げましたように国民大多数の御意思あるいは動向というものを踏まえてこの法制化に踏み切ったわけでございまして、これを推進する実力行使などをやっておられる方々の御意見を踏まえて法制化に踏み切ったわけではございません。  なお、今後の使用、運用について、いま御指摘のありましたような点を、憲法に違反をしたり、あるいは義務化し拘束するというようなことのないように、これを私ども今後政令を制定したりまた使用、運用をやってまいります立場といたしましては、十分なひとつ配慮をしてやってまいりたいと考えておるところでございます。
  33. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) その強制しないということですね、いつもおっしゃっている。しかし、政府関係の届け出はやっぱり強制するということ、それはどうですか。それもちょっとついでにおっしゃってください。
  34. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) 公的機関、国なり地方公共団体等の窓口業務についてのそうした御心配の点であろうと思うのでございますが、これも先ほど申し上げましたように、公的な機関なり地方公共団体等におきましては現状のままの元号使用を続けていただきたいということは考えておるわけでございますけれども、しかし、窓口で届け出あるいは申請書等をお書きになる場合は、先ほども申し上げましたように、できれば統一的な行政事務の合理的な運営の立場から、政府なりあるいは地方公共団体においては元号使用をいたしておりますが、御協力願えませんかということを相談をいたしましても、なおかつ、いや、おれはやはり信教、思想の自由で西暦で届け出をすると言われまする場合は、それはそのまま受理をするということでございます。決してその際にも西暦でお届けになりますれば、認めない、あるいは却下をしますというようなことは私どもはいたさない、またしてはならないということで、将来ともそうした使用、運用等につきましては特別の注意をするというようなことを考えなければならぬかなあというふうなこともいま私どもといたしましては将来の法制化が行われました際には準備してまいらねばならぬかなあという考え方に立っておるところでございます。
  35. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) くどいようですけれども、さっきは、現在のもとでさっき申しました届け出を西暦で書いたところ、役場の窓口でそれを消して昭和にされちゃったと、こういうのですけれども、そういう事態が今度この法成立の後も一体出てくるかどうかですね。いまの長官のお言葉だと、そういうことはさせないと、協力してくれとは頼むけれども、しかし協力しない、自分は西暦で届けたいというんだったらそれをちゃんと受け付けると、こうおっしゃったのですが、本当にそれが履行できますかどうですか。
  36. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) 問題は、文書の受理は西暦で受け付けますということをここで率直に申し上げますが、公の機関の公簿でございますとかあるいは地方公共団体の公簿等に対しましてこれを移帳をするというか写しかえるような場合におきましては、西暦で出されたものを国の事務あるいは地方公共団体の事務といたしましては行政の統一的な処理上、公簿には西暦元号に書きかえてやらしていただくことは御了承願いたい。この点につきましても、再三委員会で御指摘がございました。私は、そういうことができれば、公簿までそういう西暦欄と元号欄とが一つにならぬかなということを率直に申し上げたことがございますけれども、実際上のいまの事務処理規程等を見ますと、それはそういう気持ちはございましても実際上はできないことでございまして、やはり行政の統一的な簡素化あるいは合理化のためには元号で処理することでやってきておりますことをいま変えることは困難でございますということでございましたので、先ほどはっきり申し上げましたように、窓口の手続は西暦でお出しになりましてもあるいは元号でお出しになりましても自由に受け付けますが、公簿に記載する場合はそれを書きかえて記録をさしていただきますということで私はお答えをしてまいっておるところでございます。
  37. 市川房枝

    委員以外の議員市川房枝君) それじゃ自由じゃありませんね。やっぱり強制ですわね。これは本当は法務省関係、戸籍法の関係かもしれませんけれども、届け出て、それで元号に直されちゃって、今度戸籍抄本とか謄本を取るときには西暦なんか入っちゃいない、やっぱり元号が入っていると、こういうことになるわけですね。だから、そういうことをお考えになっているのなら、そういう官庁関係の届け出については元号なんだということをもっとはっきりとおっしゃる方が、私はやっぱり国民を何だかだまかすといいますか、あるいは国民を心配させる、どっちなのかなあという気持ちを持っているんで、そこのところはやっぱりはっきりおっしゃった方がいいと思うんですよ。まあきょうはこういうお答えで、私が申し上げていれば、もうこれは速記録に出ましょうから、ある程度読んでくださる方にはわかると思いますけれども、それをひとつ申し上げておきたいと思うのですが、それじゃ、委員長、ありがとうございました、これで私の質問を終わります。
  38. 片岡勝治

    片岡勝治君 十分ばかり時間が残っているそうでありますので、再度若干の質問をしたいと思います。  過日私の提起した問題は大変奇抜な発想と受けとめられておるようでありますけれども、私の申し上げました内容を奇抜と受けとめる方がむしろ奇抜な発想ではないか。というのは、私が申し上げておりますのは、日本の元号制度は、まあ長い歴史はありますけれども、明治になりまして制度的に確立をした、旧皇室典範、それに基づく行政的な措置によって確立をしたわけでありますが、それが新憲法施行によってすべて廃止をされた、こういうことでありますね。それはなぜかといえば、新憲法によって主権者はわれわれ国民だと、われわれが今度は主権者になったのだ、こういうことになったわけでありまして、もし仮に元号法というもの、元号制度というものをもう一度つくる場合には何が一番大切かといえば、今度は主権者の立場、われわれ国民の立場に立って、さてどのような元号をつくったらいいか、もし元号制度をつくるということであればどのような元号にしたらいいか、こういう発想でなければならぬと思うのですね。ところが、今度の元号法案を見ますと、一体内容的に旧皇室典範時代元号とどこが違うのか。私は、全く同じじゃないかと、こう思うのですね。もし違うところがあったら――制定者は違いますよ、制定者は違うけれども元号制度そのものを見たときに、どこが違うのですか、これをちょっと一言お答えいただきたいと思います。
  39. 清水汪

    政府委員清水汪君) 御指摘のとおり制定権者が違うということでございますが、これがきわめて重要な点であろうと思います。  それからもう一つは、国会法律の形で政府に具体的な名称の決定というようなことについて御委任をいただくわけでございますから、これはいわば国民元号という性格もその面からはっきり言えるかと思いますが、そのような点が違っている点だろうと理解をいたしております。
  40. 片岡勝治

    片岡勝治君 元号制度は何かと言えば、その一つは名称であり、一つは改元、つまり元号を改めるにはどういう方法で改めるか、これが一つの制度であるわけですよね。そういう点から考えれば旧皇室典範の場合と全く変わりがない、この法文から見る限りね。私はそう思うんですよ。ですから、もしあなた方が言うように、いや主権者が国民であるということであれば、さて元号をつくるときにそれでは何を一番先に考えることが必要かと言えば、国民の利便ということでしょう、どういう年号をつくったら一番便利か。これから長い将来、何百年、何千年仮に続くとすれば、どういう元号をつくったら一番便利かというそういう発想がなければならぬでしょう。ということを考えれば、一つの試案として出されておる百年を単位に元号をつくったらこれは大変便利じゃないか。特に西暦で一世紀、二世紀、二十一世紀というふうに百年単位で略称をやっている。あるいは西暦二〇〇一年を期して元号を改正したらば西暦元号とがジョイントできる。そういう国民の利便ということをまず第一に私は考えてしかるべきじゃないかと思う。ただ政府が非常に固執をする天皇在位期間をもって一つ元号にするというそういう発想は、明らかにこれは旧皇室典範、旧憲法に基づく発想なんですよね。ですから、どんなに言い訳しても旧憲法意識というものから抜け出ない。特に政府あるいは今度の法律案を熱狂的に支持している神道の皆さん、あるいは右翼の皆さん方は、やっぱりかつての権威主義から抜け出ない。ちょうど幼児がいつまでも乳房にしがみついて、そうやっていなければ安心できない、そういう権威主義というものが私は皆さんの気持ちの中にあるような気がする。やっぱり主権者たる国民、その自覚、誇り、そういうものを私たちが持つということが新しい憲法精神だと思うんですよ。そのことはいささかも象徴天皇制を侵すものではない。むしろ、つまり天皇というものをこうした政治の舞台に持ってこない、そういうことが象徴天皇制を維持する私は道だろうと思うのですね。  大変長い間審議をいたしました。大阪の聴聞会に行ったときにもこういう意見が出されました。今度の元号法で大変大きな政府理由として、地方議会が決議をしたと。私も地方議会の経験を持っておりましてその決議そのものを否定するものではありません。しかし、この間の参考人はこういうことを言っておりましたね。国会のように何時間も何十時間も何日も、元号とは何か、どうしたらいいかということを真剣に時間をかけて論議したかと言えば、必ずしもそうではない。そういうことからすると、果たしてこの議会の決議というものの数だけでこれを見ることがいいかどうかということは私は大変問題になろうと思うわけです。これまでも地方議会でずいぶんいろいろなことを決議しましたね。その都度、率直に言って政府は非常に冷たい態度をとっております。たとえば一般消費税、これはもうほとんどの議会は決議しているのじゃないですか。こんな悪い税金はやめてもらいたいと。しかし政府はなかなかあきらめようとしない。もし元号と同じように、もう全国の県会、市町村議会が決めたんだと、そうか、それじゃもう一般消費税はやめましょうと、そういうことを一方でやっておれば私は信頼するんですよね。そういうことはもう何にも手をつけないで、これだけは地方議会の決議だ決議だということで押しつけてくる。もしそういうことであれば、端的に、またちょっと皮肉に聞こえて申しわけないのですが、いま証人喚問で非常に騒がれている。これを地方議会で決議をするといったら、恐らく九九%決議するでしょう。あの人を証人喚問しなさい、あの人を告発しなさいと。それじゃやりますか、政府は、自民党は。ですから、元号だけは地方議会の意見を尊重しますよ、そのほかのことはだめですよという政府の態度は、やっぱり国民として私たちとしては納得できないんですよ、そういう理由だけを非常に強調されるということは。  いずれにいたしましても、大変長い審議を通じて私はむしろ多くの疑問を持ってまいりました。同時に、主権者たるわれわれは何をなすべきかということを元号問題を通じて私自身も大いに勉強さしていただいたわけであります。なおまた、元号使用の問題につきましても、法文に何ら触れていないだけに、ますます多くの疑惑を感ずる。したがって、国民世論も、法制化する必要はないじゃないか、そういう声が依然として大変強い。もうお答えは結構であります。私はこの質問を終わるに当たって、よくよくひとつ政府も、また関係者も、この元号問題の審議を通じて、私たちを初め多くの国民の声、いわば隠れた声かもしれません、今後そうした声にもひとつ耳を傾けてやっていただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  41. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十六分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  42. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  元号法案を議題といたします。  午前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  43. 山崎昇

    山崎昇君 四月の二十七日に元号法案が参議院に回ってまいりましてからやや一月半近く議論が進みまして、それぞれ各党からもいろいろな点にわたりましての質問がございました。私が最終でありますために、最初つくった原稿がもうほとんどずたずたになりましたから、少し飛び飛びになったりする点があろうかと思いますが、聞いておきたいと思います。  元号に入ります前に、一つ防衛庁長官に聞いておきたい問題がございましてお答えをいただきたいと思うのですが、実は昨年の六月に北海道の護国神社あるいは旭川の護国神社の例祭等をめぐりまして自衛隊員の参加あるいは市町村会議員の出張による参加等々がございまして、憲法二十条との問題が改めてまた提起をされてまいりました。  そこで、まず防衛庁にお聞きしますが、昨年の六月にこの例大祭に制服の自衛隊員が約五十名ほど出席をしたと言われておりますが、まずその事実とどういう形であったのかの報告を求めたいと思います。
  44. 山下元利

    ○国務大臣(山下元利君) 北海道護国神社は自衛隊の旭川駐とん地の前にございまして、昨年の例大祭の日には、式典に参列した隊員のほか、ちょうどそのときに音楽大行進に音楽隊が参加いたしております。あるいは境内で行われた銃剣道大会に参加した隊員等もおりましたので、相当数の自衛官を見かけられたものと思いますけれども、そのどのような人数かということにつきましては、政府委員の方から御説明させていただきます。
  45. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 当日、護国神社の祭典に際し、自衛隊側で参拝した者の数は、方面総監以下各師団長等十数名というふうに聞いておりますが、ただいま大臣からお話がありましたように、当日音楽大行進がございまして、これに音楽隊関係が約三百数十名参加した。それから同じように当日境内で行われた銃剣道大会というのがございまして、これにも二十四チーム約二百五十名が参加しておるというふうなことから、いま先生御指摘のように相当数の自衛官が当日この周辺に目についただろうというふうに思われます。
  46. 山崎昇

    山崎昇君 私はきょうこれが本題でありませんから、余り多くのことを聞く時間がないのが残念なんですが、私は調べた資料をいまこれだけ持っています。これは現地新聞、それから護国神社で出しておりますもの、さらには各市町村の支出の内容から、すべてここに資料を持ってあなた方にいまお聞きをしているわけなんですが、この自衛隊員の参加というのは、これは一体公務なんだろうか私人なんだろうか。私がかわりに皆さんに申し上げれば、私の資料で参加した者は、自衛隊第二師団音楽隊、北部方面音楽隊、第七師団音楽隊、第十一連隊音楽隊、名寄連隊音楽隊、第一戦車団、第一特科団、第二音楽隊、第五上富良野と、これだけのものが私人として参加するということは私はあり得ないと思う。部隊として参加しているのじゃないか。そうなれば、当然これは公人として参加することになる。宗教法人でありますこれらの例大祭にどういうわけでこういう自衛隊員の制服がこれだけの者が参加しなきゃならぬのか、この点がどうしても私ども納得できない。さらに、時間を節約する意味で私は言っているのですが、あなた方が出しております昭和四十九年十一月十九日の事務次官通達に明らかに違反する。これを読んでみますというと、どの項目にもすべて違反いたします。一体こういうことが許されていいのかどうか、もう一遍ひとつ答弁してもらいたい。
  47. 山下元利

    ○国務大臣(山下元利君) たまたま当日北海道音楽大行進というのが旭川市初め報道関係の主催で行われておりまして、いまお読み上げになりました音楽隊がこの音楽大行進に参加いたしましたことは事実でございますが、私どもは、すでに、いま御指摘ございましたように、事務次官通達を逸脱しないように十分指示いたしておりますところでございますし、このたびもそうした音楽大行進に参加いたしたと、このように承知いたしておる次第でございます。
  48. 山崎昇

    山崎昇君 本当はあなたの方にこれを読んでもらったら一番いいのですが、この事務次官通達を見ても、たとえば「部外行事への協力について宗教的色彩を帯びた行事(神官、僧侶、牧師等の主宰する祝典、儀式等)に溶込んだ形で、自衛隊の音楽隊、ラッパ隊、儀じょう隊等が参加することは、主宰者が宗教団体、非宗教団体のいずれを問わず、宗教的活動に関与したことになるので、厳に慎むべきである。」これがあなた方の通達じゃないでしょうか。また、その下にも、非宗教団体が主催する慰霊祭、追悼式であっても参加しちゃいけません、こうあります。また、部隊等で実施する葬儀は原則として非宗教的形式によるものでなければならぬとか、大変りっぱな通達をあなた方は出されておる。しかし、現実的には、いま私が申し上げただけでも、ざっとこれだけの制服自衛官が参加をしておる。これは承服できる仕掛けのものではないと私は思っています。一体長官はこれに対してどういう考え方を持つか、今後一体どうされるのですか、重ねて聞いておきます。
  49. 山下元利

    ○国務大臣(山下元利君) 音楽隊につきましては、ただいま申しましたとおりに、北海道音楽大行進というのが当日行われまして、それには学校や中学校やなんかの音楽隊も参加されておりますが、自衛隊の音楽隊もいまお読み上げになりましたような音楽隊が参加いたしておりますが、これはあくまでそういう旭川市並びに新聞社等の主催によりますところの北海道音楽大行進に参列したわけでございまして、これはもういま私どもも事務次官通達につきましてはこの趣旨を十分徹底いたしておりますので、いま申し上げましたとおりの次第で、これは決して事務次官通達に逸脱しているものではないので、御了承賜りたいと思う次第でございます。
  50. 山崎昇

    山崎昇君 長官ね、そういういいかげんな答弁をしちゃいけませんよ。ここにありますのは、例大祭は六月四日の合祀祭に始まり五、六両日にわたり、葬儀には北海道知事、陸上自衛隊北部方面総監、あるいは市町村長、遺族会、そういう形のものでやられて、二日目になるほど武術大会、音楽大行進もありますよ。ですから、第一の初日にはこういうものにも自衛隊の幹部が出席をされておる。明らかにこれは一宗教法人の行事に対してあなた方は出席しているじゃありませんか。どうやったってこの次官通達にどこから読んでも私はこの範囲内なんということにはならない。そういう詭弁を弄さずに、やっぱりあなた方はやっちまった、これは実は。もうやりませんとか、通達は厳重にやりますとか、そういうことがきちんとしたあなたの答弁でなければ、三軍の指揮官としてのあなたの識見を私は疑わざるを得なくなってくる。そういう意味でしかとした答弁をしてもらいたい。
  51. 山下元利

    ○国務大臣(山下元利君) 音楽隊は先ほど申しましたとおりでございますが、なお例大祭に総監等自衛隊員が参加いたしておりますが、これは個人として参列いたしておる次第でございまして、これは事務次官通達の趣旨に反することにはならないと、かように考えておる次第でございます。
  52. 山崎昇

    山崎昇君 そんなことになっていません。北海道知事も堂々と自分で知事として出席していますと書いてある。そういういいかげんな答弁をあなた方は繰り返すから、同じことが国会で論じられなければならぬのです。  文部省にもお聞きしますが、こういうものに学校の生徒が、小学校、中学校、高校の生徒が何百人も出席をして道路を歩くわけでありますが、一体これは教育活動の一環なのか、学校を休ましてこういうことをやっていいものかどうか、この点について文部省の見解も聞いておきたい。
  53. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) けさほどの御指摘で詳細あるいは十分調査ができていない点があろうかと思うのですが、私が聞いてある範囲内で申し上げますならば、旭川の護国神社の例大祭に音楽大行進をやるというその大行進の部分に小中学校の子供が参加をしている、何でそういうのへ参加をするかといいますと、この大行進というのは主催者の一つが旭川吹奏楽連盟というので、要するに小中高等学校には子供のうちに音楽を特に愛好する子供が部活動等として音楽隊を組織しておるというのがあるわけでございます。そこでそういう子供の部活動を助長発展させるというのが学校の教育活動の一つでございますから、たとえば、先生御承知のように、野球の対外試合であるとか、その他各種の試合などの場合は、部活動の一環として学校が計画して遠くの土地まで遠征をさせるということをやるわけで、それと同じように、音楽の活動につきましても、何らかの機会に子供が日ごろ練習した成果を一般の市民に聞いてもらって、それに対する評価を高め、子供の熱意をあおるという、これもやっぱり教育活動の一つだと思いますので、恐らくそういう趣旨で北海道旭川の例大祭のときの北海道音楽大行進に各学校から参加の希望があるものを募ってこれに参加させておるということだろうと思いますので、そういう場合の扱いは通常は部活動に従事する子供のうち希望者を募ってそれに参加させる。それで、学校教育の一環として考えますから、学級の扱いとしては出席ということでやるのが通常の取り扱いだろうと思います。
  54. 山崎昇

    山崎昇君 そんな美しいことばかりじゃありませんよ。当日の記録によりますと、こういうことになっている。まず軍歌が歌われて、その後に旧陸海軍礼式歌「海行かば」の歌詞及び「同期の桜」が歌われている。その後に天皇制思想、軍国主義思想を強調する国のための美名のもとにいろいろな人のあいさつがあって、その後に音楽隊が並んで自衛隊の音楽隊を先頭にしてジンタジンタ歩くんですよ。これは子供の教育の一環なんということにはなりませんです、そんなものは。ですから、私どもはこれはいずれ憲法二十条の公権力の宗教への介入の問題として議論せねばなりませんが、少なくともこういうものに対してはもう少し政府は慎重でなければならぬと思っています。その点をきょうは時間がありませんから指摘をしておきます。  自治省にお伺いしますが、実はこれらのものについて、たとえばいま一番問題になっておりますのは留辺蘂の町役場の問題でありますが、職員に出張命令を出して町から代表に引率をさしてこれに参加をする。そこでこれが問題になって町長と組合との間に団体交渉が持たれて、ことしはついに町長は、それは職員はやらせません、社会福祉協議会とか民間の団体に引率させますということで一応の収拾を図っているようでありますが、一体これはどういうことになるんだろうか、公費の支出になりゃせぬだろうか。さらに、この予算書をずっと見ますというと、大変だ、補助金、賛助金その他で最近は遺族会に対して助成金という形で出して、もらった遺族会の大半は何に使うのか。それは北海道護国神社参拝負担金として大半が使われる。言うならば、支出の仕方は間接でありますけれども、公費が堂々と一宗教法人のこれらの行事に支出をされている、こういうことがまかり通っている。一体こういうことが許されていいのかどうか、自治省の見解を私は聞いておきたいと思うのです。  さらに、留辺蘂ではいまそういうことになっておりますが、これらの行事について職員が拒否をすると、それに対していろいろな町側の問題提起が出されている。明らかに私どもから言えばこれは憲法違反なんです。こういうことについて一体自治省はどう考えられるかということと、あわせて防衛庁長官に聞きますが、この留辺蘂町の職員組合から防衛庁に対して、二月だと思いますが、質問書が出されておりますが、いまだに回答がないという。事務次官通達との関係について質問書が出されておりますが、いまだに回答がないという。一体これはどういうことなんだろうか、まずこの二点をお聞きします。
  55. 柳沢長治

    政府委員(柳沢長治君) 留辺蘂の問題につきましては、詳しく存じませんので、ただいま電話照会で概略を聞いてみたわけですが、この町の遺族の四十一名を町の職員二名が旭川市の護国神社の例大祭に引率をしていったと、こういうことのようでございますが、遺族会と申しますと高齢の方がおりますので、いろいろ身の回りの世話をしたり、あるいは連絡事務をするというふうなことで、町の職員が同行しましたのは大祭に参加する遺族会の方々のお世話をするという意味で援護業務として参加したのではなかろうかと、このように考えております。そうしますと、先ほど御指摘憲法と直接抵触するということには必ずしもならない、援護業務として町の事務として職員が同行したと、このように考えております。
  56. 山崎昇

    山崎昇君 そんなあなたいいかげんなことを言うんじゃありませんよ。きちんと公務の出張命令が出て引率者として行っているんですよ。ここに出張命令簿もありますわ。支出の帳簿もあります。それからいま申し上げましたように助成金、賛助金その他という意味で遺族会に出される。その遺族会は全部そういうものに使われる、ほとんどが。これは公費として宗教問題にかかわるということに私はなると思う。そういうものについて、あなた方もう少しやはりきちんとしてもらいたい。きょうは突然の質問ですからそう多くのことを私はやらないつもりでおりますが、今後自治省としては全国のこの種の問題について十分なひとつ調査を願いたい。私がいまここに持っておりますのは、北海道におきます網走、北見、滝川、滝ノ上、美幌、置戸、白滝、遠軽、留辺蘂、中標津等々、何人が引率者で出て、何人が旅費をもらって、どれだけの予算が議会にかかって、支出をして、どうなったかというのが全部ここにあります。しかし、時間がきょうはありませんから一々は申し上げませんが、この点はひとつ調査をして明確に今後してもらいたいと思います。
  57. 山下元利

    ○国務大臣(山下元利君) 御指摘の点につきましては、本年二月留辺蘂町の職員組合執行委員長から北部方面総監あて質問状が届いていることは事実でございまして、それに対してお返事を差し上げておらないようでございます。一般論としてはいろいろ書面をいただけば回答いたすことにはいたしておりますけれども、この問題につきましては、先ほど申しましているように、隊員個人が参拝したことであり、また音楽隊も宗教的色彩のない行事への参加ということと考えておりまして、特にお答えする必要はないと考えたものと聞いておるわけでございます。
  58. 山崎昇

    山崎昇君 先ほど私が言いましたように、明らかに事務次官通達違反ですよ。これはあなた方が自分で決めたことを自分で自分の部隊が破っているんですよ。そして、それに対して質問書が出れば、いまだに答弁ができない。これは許されていいことではないと思います。早急にあなた方の見解をやはり答弁をすべきだと思います。  そこで、宮内庁に私はお聞きしますが、二重橋というのは、あれは一体どこの財産ですか。
  59. 富田朝彦

    説明員(富田朝彦君) いまお尋ねの二重橋という橋、橋梁についてのお尋ねと存じますが、橋梁そのものは宮内庁のいわゆる所管するものでございます。
  60. 山崎昇

    山崎昇君 そこであなたにお聞きしますが、この護国神社の報告によると、「昭和三十八年、造営中にあたり宮内庁より旧二重橋御旧材の御下賜も頂き社殿前の高欄として設置、光彩をそえている」と、こうある。一体宮内庁は、二重橋のそういうものを護国神社にこれを「御下賜」と、こうなっていますから、宮内庁がやったんだと思う。これは一体どういう理由で、これは財産処分なのか。しかし「御下賜」といいますから、そうはならない。これはわれわれどういうふうに理解したらいいんだろうか、長官の答弁を求めます。
  61. 富田朝彦

    説明員(富田朝彦君) ただいま急のお尋ねでございますので、詳細な事実については存じておらないのが大変残念に存じますが、二重橋はいわゆる鉄橋、石橋でございまして、木材その他を使っている部分は、補強その他そう多くの部分に木材が使われているとは存じません。ただ、この二重橋が非常に古くなりましたために補強をいたしましたことは事実でございます。その際に、当然のことでございますが、これはいわゆる記念品というような記念のものというようなものは、たとえば財団法人明治村に、当時の鉄橋にかかっておりましたいわゆる燈、これが財団法人明治村の博物館の希望によりまして譲り渡されておりますが、私は無償でいわゆる下賜ということはまず財産管理上ないと存じます。
  62. 山崎昇

    山崎昇君 これはあなたに調べてもらいますが、この文章が正しいとすればですよ、もう一遍読んでおきます。その前にいろいろ書かれていますが、なお書きで、「なお、昭和三十八年、造営中にあたり宮内庁より旧二重橋御旧材の御下賜も頂き社殿前の高欄として設置、光彩をそえている」と、こうなっている。だから、少しばかり記念品として上げたものではない。高欄として設置をされている。そして、護国神社としては、それによって光彩を放っている。だから、あなたの方は宮内庁の財産だと言う。宮内庁が財産を処分したのかどうか知りませんが、これによると「御下賜」と、こうあるから、私は、この文章からいけば、天皇陛下が賜ったのかなあと、こういう気もします。これは調べてもらわなきゃなりませんが、いずれにいたしましても、こういうことがやっぱり現行憲法上でまかり通っている。自衛隊もしかり、自治省も満足に自治体の実態を知らない。学校は、教育と称してこういう軍国主義的なあいさつやら歌やら、その後について子供がラッパや太鼓をたたきながら何百人とついて歩く。こういうことが私は許されていいものかどうか。きょうは時間がありませんから、一方的に私の方で事実を申し上げていますが、ぜひひとつこういうことのないようにしてもらいたい。そうでなければ、防衛庁に重ねて言いますが、幾らあなた方がこんなりっぱな通達を出したって紙くずにしかすぎない、こんなものは。  ですから、今後一切こういうことのないように、宗教的な活動にかかわらぬように、誤解を受けないようにしてもらいたい。そういう意味で、重ねて防衛庁から文部省、自治省、そして宮内庁の答弁を求めて、この問題は終えておきたいと思います。
  63. 山下元利

    ○国務大臣(山下元利君) 憲法二十条の精神を守っていることはもうわれわれ申すまでもないところでございますが、宗教的活動につきましては、事務次官通達の趣旨を逸脱することのないようにさらに注意いたしたいと思う次第でございます。
  64. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 学校教育における宗教上のあり方あるいは政治教育のあり方というようなことは、憲法なり教育基本法にその基本原則の示されてあるとおりでございますから、御指摘の点等を念頭に置きながら今後の教育内容の充実に努力をしてまいりたいと、かように思います。
  65. 柳沢長治

    政府委員(柳沢長治君) 御指摘の実態を十分調査しました上で、必要があれば適切な指導をしたいと思っております。
  66. 富田朝彦

    説明員(富田朝彦君) さらに実態を十分調査をいたしてみたいと思っておりますが、その上で誤解を生ずるようなことのない取り扱いに十分注意をいたしたい、かように考えます。
  67. 山崎昇

    山崎昇君 そこで総務長官にお尋ねいたしますが、この間わが党の委員からも質問がありましたように、靖国神社に戦争犯罪人、特にA級戦犯が合祀をされた。これに大平総理大臣が参拝をしたわけですが、この靖国神社に合祀をされているということと直接的に私は関係ないと思いますが、政府が主宰をいたします八月十五日に全国戦没者追悼会という追悼式があります。これで追悼される方々と靖国神社に合祀されている方々と、一体ダブっているのかダブらぬのか、もしダブるとすればどういう点で共通点があるのか、おわかりでしたら答弁してほしい。
  68. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたしますが、詳細についてはつまびらかにいたしておりませんが、ダブっておるのではないかとも思われる点もございますが、厚生省が所管をいたしておりますので、ひとつ十分連絡をした上で確実な御返事を申し上げたいと思うのでございます。
  69. 山崎昇

    山崎昇君 実は、私、先日、靖国神社の合祀基準の変遷と合祀手続についてというものを伺いました。私の手元に印刷されたものが回答として参りました。これが戦前と戦後と分かれているわけでありますが、戦前は各陸海軍省で個別の審査をしてそして大臣から上奏といいますから宮内庁を通じて天皇にその名簿が出されて、そして天皇が裁可をして、官報で発表されて合祀というものが決まっておったと説明されています。じゃ戦後はどうなっておるかというと、「第一、第二復員省の資料及び厚生省経由各都道府県に照会して得た資料に基づき、旧陸海軍の取扱った前例を踏襲して、合祀の取扱いを決定した。」、こう報告になりました。やり方は大体同じだというんです。そして、最後に、「毎回合祀に先立って合祀者名簿奉呈上奏の手続をとる。」と、こう書いてあります。  そこで宮内庁に聞きます。戦争前も、合祀の名簿については、宮内庁を通じて天皇に出されて、天皇がそれに裁可を与える、それによって靖国神社に合祀をするという手続になる。戦後は、確かに御裁可という言葉はないが、「合祀者名簿奉呈上奏の手続をとる。」と、こうある。したがって、宮内庁を通じて天皇陛下まで行くのかどうか知りませんけれども、そういう形でこの靖国神社の合祀というものが決まっておる。そして、合祀をされている者は戦後だれかと言えば、「昭和二十年十一月二十日、臨時大招魂祭(将来靖国神社に祀らるべき満州事変以降大東亜戦争に至る陸海軍軍人軍属等を招魂奉斎のための祭典として執行される。)」言うならば、祭られている人は、あの第二次大戦まで亡くなられた方々等が祭られたことになる。したがって、靖国神社の性格というのは、戦後一宗教法人にはなったけれども、ずうっとやっていることは続いておるのですね。そういう意味で、一体、宮内庁はこの上奏の手続というのをどういうふうにとらえておるのか、聞いておきたい。
  70. 富田朝彦

    説明員(富田朝彦君) 戦前の扱いにつきましてはただいま委員からお話があったので、古い記録は存じませんけれども、恐らくそういうことであったかと存じますが、戦後の問題につきましては私そういう形があることは存じません。ただ、いまお話の中で、いわば奉呈という、神社側の用語かとも存じますが、奉呈という言葉があったように存じますが、あるいは例大祭の後等にそういう名簿を侍従の方に届けるというようなことを行っているかもしれませんが、これは決して上奏とかそういうものとは一切性格を異にするものであり、陛下にそれを一々申し上げたり、あるいは、言うまでもないことでございますが、その御裁可を受けるというような性格のものでは全くないと、かように存じております。
  71. 山崎昇

    山崎昇君 そうじゃないのじゃないでしょうか、この文章からいけば。私はいま靖国神社の問題を例に出しておりますが、実際にやられていることは、憲法では、政教分離だとか、宗教には介入いたしておりませんとか、靖国神社は一宗教法人ですからそこで自主的にやっておりますとか、こう言う。だが、実際に文章をもらっていろいろ見るというと、そうはなかなかならない。この辺がやっぱり元号問題でも幾ら政府がいろいろな説明をしてもでき上がったらそうではないのじゃないか、そういう心配が国民から取れないのはこういうところにも一つ問題が私はあると思っているのです。  そういう意味でいま例題として出しているのですが、そこで、総務長官、これは入江さんの「宮中歳時記」という本です。私どもは宮中のことについてはほとんど知る由もありません。努めて最近入江さんの書いたものだとかそういうものを読みながら宮中というものについて知ろうと私ども努力しているつもりです。これによりますというと、八月十五日に全国戦没者追悼式というのをこれは昭和三十八年に初めてやられたということになっておりますが、祭られている人はだれか、これがまたやっぱり問題の一つです。これもこの入江さんの本によりますというと、「式典の戦没者の範囲は、日華事変以降の戦争による死没者(軍人・軍属・準軍属二三〇万人、外地死没一般邦人三〇万人、内地戦災死没者五〇万人、計三一〇万人)とする。」と、こう説明されています。そうすると、私は、冒頭お聞きしましたように、靖国神社で合祀されている者と政府が主催で行いますこの内容とはほぼ一致してくるのではないのか。ことしの八月十五日もやられると思うのです。そのときにはA級戦犯だって入ってくるおそれがないとは言い切れないのじゃないのか、こうさえ私どもは思わざるを得ない。そういう意味では、これは非宗教的なようでありますけれども、きわめて私ども疑いの目で見ざるを得ない。この点で、この本に間違いがなければ私がいま読み上げたとおりでありますが、総務長官の主管ではないようでもありますけれども政府としてはこの種のこういう問題について一体どういうふうなお考えを持つのか、この機会に聞いておきたいと思います。
  72. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) 先ほど申しましたように、八月十五日の祭典は御承知のように厚生省が主管をしてやるわけでございますが、いま御指摘のございましたような点でいろいろ問題があるという御指摘でございますが、ひとつよく厚生省とも連絡をいたしまして慎重に対処してまいりたいと思います。
  73. 山崎昇

    山崎昇君 きょうはもう時間がありませんから問題は移りますが、とにもかくにも、重ねて申し上げますけれども、この靖国神社の問題は、いま申し上げました名簿の問題から始まって、関与の仕方が憲法上疑義があるようなやり方になりつつある。単に菊の御紋章だけの問題ではありません。そういう意味で、政府も宮内庁もひとつ慎重に扱うように私はこの機会に警告をしておきたいと思うのです。  さて、法制局長官にちょっとお伺いいたしますが、今度の元号法案提案に当たって、盛んに新しい言葉として事実たる慣習、事実たる慣習という言葉が使われる。そこで、あなたは法律の専門家でありますから、いま日本に事実たる慣習というのはどういうものがあって、どのぐらい存在するのか、それから事実たる慣習と少し違う概念に慣習法がありますが、一体この慣習法に基づいて存在するものはどういうものがあるのか、説明を求めておきたい。
  74. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 事実たる慣習と一口に申しましても、これは日本国民が社会生活を行うについてのしきたりということでございますので、日本に一体どれだけの慣習法あるいは事実たる慣習があるかというお尋ねにお答えすることは不可能でございます。  それから事実たる慣習慣習法との区別につきましては、国民の社会生活を行う上においてのしきたりのうち、法的な確信を伴うもの、これが慣習法でございまして、そこまでは至らないがしきたりとして行われているもの、それを事実たる慣習というふうに区別しているわけでございまして、慣習法として一体それではどういうものが法律上あるかということになりますと、たとえば商法をごらんいただきますと、商法には、この法律に特別な規定がない場合には商慣習法による、商慣習法もない場合には民法によるというふうに書いてございまして、法律の世界でも慣習法という概念はりっぱに採用されているわけでございます。
  75. 山崎昇

    山崎昇君 事実たる慣習を全部あなたに挙げれなんて、あなたの知っている限りでいいですわ。一体どういうものがいま存在するのか。まず、あなた方の説明によれば元号ですな、いま提案されております。これが事実たる慣習だと。それじゃ、そのほかに事実たる慣習としていま世の中で行われているものはどんなものがあるのか、あなたの知る限りでいいです。述べてみてください。
  76. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 非常にお答えのむずかしい御質問でございまして、一体どういうものが事実たる慣習として現に国民の間に定着して行われているかということになりますと、これは本当にお答えするのが困難なわけでございますが、たとえばお正月に門松を立てるとか、あるいはクリスマスにいろいろなお祭りをするとか、そういったものはこれはまさしく事実たる慣習ではなかろうかと思う次第でございます。
  77. 山崎昇

    山崎昇君 私は、あなたは法律家だから、法律的なことを聞きたいと思って聞いているんですよ。それじゃ、私の方から挙げていきますが、これは事実たる慣習ですか、この存在は。たとえば日の丸、君が代、法律の公布を官報でやるということ。首都東京というのはこれは根拠もない。公法におきます時間の計算も何にも規定も根拠もない。だがしかし、現実的にはこれによってわれわれの生活が縛られているんですね、ある意味で言えば。だから、私はあなたに聞きたいのは、法律的な分野で一体どういうものが事実たる慣習としてあるのだろうか、絶えず疑問を持っていました。元号が事実たる慣習、事実たる慣習と言うものだから、元号だけが何か事実たる慣習で、あと何にも日本に事実たる慣習がないような錯覚になるのじゃないだろうか。一体、法制局というのは、これだけ法制化すればいいんで、あとのことはほったらかしていいものかなあという疑問も持っています。そういう意味でいま聞いてみたのですが、私の挙げましたこれは一体どういうものだろうか、あなたの見解を聞きたい。
  78. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) いま山崎委員がお挙げになりました幾つかの事例のうち、法令は官報で公布するということはこれは最高裁判所の判例もございまして、官報で公布をするということはいま公式令という法律はなくなりましたけれども、官報に載っけなければ、これは普通のテレビやラジオで放送をし、国民に知らせるということだけでは効力が出ないという意味においては慣習法と言っていいのじゃなかろうかと思います。  それから日の丸、これは日の丸につきましては部分的に商船規則なりというような規則、明治三年に出たその規則では、日の丸を日本の船舶は掲げなさいと書いてあります。それから商標法というような法律がございまして、国旗は登録を受けつけないというような規定もございます。ですから、そういう限られた分野においてはこれはりっぱに法的な効果を持っているわけなんですが、そうじゃなくて、およそ日本を標章するシンボルとしての旗は日の丸であるということにつきましては、これは事実たる慣習だと私は考えております。  君が代についても同じでございまして、日本の国歌は君が代であるというようなことを定めている法律はございません。ございませんが、日本国民の理念として日本を標章する歌は君が代であるということは一般に通用しておるし、世間でも事あるごとにいろいろな場合に国歌として君が代が歌われておるという事実は、これはもう歴然たる明らかなことでございますので、そういう意味におきましてやはり事実たる慣習であるというふうに考えておる次第でございます。
  79. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、いまのあなたの説明では、日の丸も君が代もこれも事実たる慣習ですな、事実たる慣習。そうすると、政府としてはこれをどうこうしなきゃならぬという規制する何物もありませんね、逆に言えば。それはそうでしょう。事実たる慣習だから、私は君が代を歌いたくないといえば歌わなくたっていいんだし、そうでしょう。だから、なぜ私これ聞くかというと、この間学校の卒業式で君が代をジャズ風にしてピアノを弾いたら首になったという、そういう記事が出ていた。もし事実たる慣習で、何も強制するも何もなければ、本人が君が代をジャズ風で歌おうが、ポピュラーで歌おうが、それは処分の対象になるようなものではないのではないか、こうさえ思うのだが、ただ世間の人が笑うとか笑わないとかは感情論の問題です、そんなものは。だから、私がなぜいまあなたにこういうことを聞いているかというと、法制局がもしやるとするならば、事実たる慣習ということをたくさん拾い上げれば――私は主としていま拾っておりますのは、これはあなたの先輩の法制局長官の佐藤達夫さんがいろいろ書いている。ずっとあの人のものを読んでみるというと、たとえば私がさっき申し上げました官報によるんだってこれは何も根拠がない、かつての公式令がないんですから。あるいは公法関係の期間の計算についても何もない。中央政府の所在地東京を首都と、こう言うけれども、これも何にも根拠がない。ただ、東京が首都だ首都だと言っているだけの話だと。だから、私は、法制局なんかは一番最初にやるべきことは、国の物の考え方が二分するようなこんな元号一つの事実たる慣習ならば、そんなものをこれだけあわててやる必要がないのではないか。言うならばやることがもっとさきにあるのじゃないか、法制局に聞きたいということは。そういう意味で私は聞いているわけだ。ところが、そういうことをあなた方は一向に何にもせぬで、そしていま問題になっているような元号だけは事実たる慣習だ事実たる慣習だという形で進めてくるというやり方に対して私が承服できぬものだから、いまあなたにあなたは法律の専門屋だから聞いているわけだ。どうですか。
  80. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 君が代が日本の国歌であるということについては事実たる慣習としてりっぱに通用していることだと思います。ただ、ジャズ風に歌ったから首になったんだというそういう事実関係は、これは私がここでお答えすべき筋合いのものではございません。そのほかにいろいろな事由があって分限処分を受けたのだろうと思うというお話もついこの前当委員会で文部省の局長さんから御説明がありました。  それから東京が首都であることについて法令上の根拠が一体何にもないではないかといういまお話でございますが、首都圏整備法とか首都に関する法律は幾つかございます。その中には、東京都の区の存する区域は首都圏であるというふうに書いてございますし、それから裁判所法の条文をごらんになりますと、最高裁判所は東京に置くという明文の規定もございます。ただ、国会は東京に置くとか内閣は東京に置くという規定はございません。ございませんが、東京が日本の首都であるというそういう確信は、これは日本国民だれもが疑いなくそう信じていることであろうと存じます。
  81. 山崎昇

    山崎昇君 だから、事実たる慣習というのがそういうものであれば、それを拒否したからといってそれによってどうこうされるべき性質のものではありませんね。だから、私がいま挙げましたのは、事実たる慣習だとあなたは言っても根拠はまるっきりないんです。元号法案をこれだけ根拠を与えるとあなた方が法的にやるならば、なぜこういうものについて真剣に法制的にやらぬのか。何とはなしにそうなっているからそれでいいじゃありませんかというのはあなたの考え方、それなら元号だって同じことじゃないですか。だから、そういう意味で、法制局の私はとるべき態度でないという意味でいま申し上げているわけなんです。  そこで、いよいよ元号の問題について聞いていきたいと思うんだが、まず宮内庁長官にお聞きします。  先ほどちょっと私は申し上げましたが、戦前の天皇制とそれから現行憲法上の天皇制ではもうまるきり違う。これはもう私からいまさら申し上げるまでもない。なぜかと言えば、立法権は国会に、行政権は政府に、司法権は裁判所に。かつてはこの三つが全部天皇に集中しておった。さらにまた、統帥権といって、いまの言葉に直せば自衛隊の指揮権も、全部これは天皇に集中しておった。それが全部なくなって、天皇のやることは限られた国事行為しかできなくなった。言うならば、天皇制というのは、戦前の憲法と戦後の憲法ではまるきり違う。一変している。そこで宮内庁に私はまず聞いておきたいのは、入江さんのこの本を読んでみても、一月から十二月までの行事が少し書いてある。一体皇室というのは民主化されたのかされないのか。天皇陛下の行事とか儀式とかそういうものは戦前と戦後で変わったんだか変わらぬのだか、まずそこから聞いていきたい。もし変わったとすればどういう点がどういうふうに変わったのか、それを聞いておきたい。
  82. 富田朝彦

    説明員(富田朝彦君) ただいまお尋ねの戦前の天皇制と戦後のそれとの関係において民主化されたのかどうか、あるいはいろいろな諸行事、諸儀式がどうなったかと、こういうお尋ねのように承ったわけでございますが、これは陛下のあれをそれとなく拝見しておりますと、常に国民とともにあって国民の中にあるべきだということがいろいろな場合に拝察ができるわけでございますが、そういう現在の皇室、法律制度を離れまして考えます場合に、そういう皇室のいわば色合いであろうかと存じますが、その「宮中歳時記」に挙げられておりますいろいろな行事、儀式、これを私も全部まだ通読をいたしておりませんが、いわば、たとえば民間にも伝えられておりますおひな祭りとか、そういうようなものをずっと続けてやっておられるというようなこういう事柄、あるいは行事、儀式の中でも、いわば戦前からずっと続いておるものもございますけれども、戦後のいわゆる法律制度に伴いまして、あるいは総理の任命につきましては国会の議決によってその国事行為としての任命儀式が行われているというような、あるいはその他認証官の任命の式というようなことにも臨席をされておるわけでありますが、そういうのは戦前にはなかったと存じますし、そういうものは新しく戦後の法律制度というものに基づいていわばとり行われているというもので、さらには、戦前でありますれば外国との交際というのは非常に限られた交際しかなかったかと存じますが、戦後、ことに最近に至りますと、外国との交際というような象徴たる天皇の立場での国際親善のための外国交際、これも非常にまたふえてきておりますので、そういうふうにふえている分もかなりあろうかと思います。
  83. 山崎昇

    山崎昇君 あなたはこれを全部読まれていないそうなんで私もちょっとやりにくいのですが、私はまあこれを一通り読みました。このほかに、入江さんは、「日日是好日」というたしか本だったと思いますが、それも最近書いております。そのほか二、三読ましてもらいました。これは、先ほども紹介しましたように、一月から十二月までの主なる行事といいますか、そういうものを全部書いてありますね。いまあなたの言われたように、憲法で決められた国事行為に基づく行動については確かに変わった点は私どももあると思う。だが、宮中をめぐります儀式といいますか、そういうものについては、これを読んだ限りではもう全く変わりがありませんね。ほとんどと言っていいぐらい変わりがありません。だから、そうなると、われわれの目に映ずるところでは、確かに、植樹祭へ行ったり、園遊会に出て話しされたり、あるいは外国の方々とお会いして話しされたりという面では何か民主的な人間的なような様子を受けるけれども、こういうものでわれわれの日に見えないところでやっていることは、もう連綿と続いて天皇制そのものはほとんど変わっていないのではないのか、何にも変わっていないのじゃないだろうか、こう私ども考えざるを得ない。あなたはおそばにおられるわけですから、したがって、これは読まれなくても、少なくともこれは宮内庁におられる一流の方々が執筆したようでありますけれども、あなたはずっとおそばにおられてずっといろいろなことをやられるわけでしょうからわれわれより詳しいわけなんですね。そういう意味では、一体皇室の民主化というのは、いまあなたが説明あったほかに、こういう儀式の面からいったらどういうふうに民主化されたのか、説明してほしいと思います。
  84. 富田朝彦

    説明員(富田朝彦君) いまそこに盛られておりますいろいろな儀式、行事、これは非常に長い歴史上の時点から、その当時いわゆる天皇というお立場が旧憲法下のようないろいろないわゆる力の源泉あるいは力そのものをお持ちであったというような時代でないいろいろな時代を経て今日に来ておるわけでございますけれども、そういう時点から引き続いて皇室に伝わり代々それを皇室の内輪の行事として伝えられてきたもの、これについて現時点で全くそれは意味を失っておるとか、そういうものについてはずいぶん改廃があったと存じますけれども、そういうものを現時点において皇室の内部の行事として行われておる。これは、私は、私の個人の考えでございますけれども、直ちにそれが民主化に反するとかそういうようなものではないのではないか、そういうふうにして受け継いで、改廃すべきものはしながら今日さらに古い昔からのものを伝統ある行事としてとり行われておると、かように存じております。
  85. 山崎昇

    山崎昇君 私は少し遠回りして物事を聞いているわけなんですが、なぜいま天皇のそういうことをお聞きするかというと、この元号法案審議をめぐって、憲法の条文の上ではなるほど昔のような天皇制に戻るなんということはあり得ませんと、こう再三再四長官が言う。しかし、国民気持ちの中には、憲法はみんな承知の上で、それでもなおかつ、かつてのような方向に向かうのでないかという心配がたくさん出されてくる。この委員会でもかなりこれは議論になった。それはなぜかと言うと、一つには皇室の民主化ということがほとんど進まないで、われわれの目に映じないところでやられていることは全く昔と同じだ。形の上にあらわれてくるもので昔に返りつつあるようなものは何かと言えば、一つはいまの元号制度の問題もありますし、あるいは総理の伊勢参りだとか、あるいは靖国神社の参拝だとか、紀元節の設定だとか、君が代を行事といえば歌わせるだとか、あるいは何かといえば日の丸の旗を揚げさせるだとか、そういう一つ一つは点ですが、そういうものが全部結ばされてくると、ああ、やっぱり天皇制というのは昔のままなのか、憲法はなるほど条文は違っても一つも変わっていないのではないかと、こういう心配が国民の中にかなりあります。だから、絶えず国会でも、かつての軍国主義に向かうのじゃないかとか、あるいはかつてのような天皇制にまた逆戻りするのではないかという言葉になるのはそういうことなんです。そういう意味で少し遠回りしていますが、宮内庁長官に、一体皇室というのはどう民主化されたのだろうか、新憲法によって人間天皇になったんだがどういう変わり方があるのだろうか、この辺のことがもう少し国民にこういう行事を通じてでも明らかになってこないというと国民のそういう心配というのはなかなか取れない、そういう意味で私は遠回りですがあなたに聞いているわけです。しかし、あなたは天皇のそばにおられる人ですから、なかなかそうここで言えない点もあるでしょう。それは察しておきます。察しておきますが、そういう意味できょうはこれらの問題を聞いているということだけあなたは頭に入れておいて、これからのこの種の問題の扱いについては慎重にしてもらいたいという気持ちを持っておるわけです。  そこで、これに関連をしてお聞きをしたいわけなんですが、今度の元号法案が出されるに当たってずいぶん議論されてまいりました。特に太政官布告の有効・無効論から始まってずいぶん議論がありました。私もまだ釈然といたしませんから、もう一遍ひとつ法制局長官に聞いておきたいのですが、この明治元年に出されたと言われる太政官布告というのは旧皇室典範に吸収されてそれがなくなったからこれもなくなったというんだが、私は、この太政官布告の決めている内容と旧皇室典範の内容とは必ずしも一致しない、だから皇室典範がなくなったから太政官布告も全部なくなったと解釈するのは少し無理があるのではないのか、こういう考え方をいまだに疑念として持っているんですが、もう一遍あなたの見解を聞いておきたい。
  86. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 明治元年九月八日の行政官布告が御指摘の問題の布告だろうと思いますが、この効力につきまして、かつて金森大臣が、この行政官布告は生きているのじゃないかという説をお立てになったことがございます。しかし、私の方でいろいろその後慎重に検討いたしました結果、明治二十二年の旧皇室典範の十二条ができたことによって明治元年のその布告はそれに吸収されて、独立して効力を発揮しているというふうには解釈できないという結論に達しまして、それで旧皇室典範の十二条がこの元号制度の支えであったというふうに見ておるわけでございます。  そこで、昭和二十二年に旧皇室典範が廃止になりまして、新しいそれにかわるべき元号法案というのが未成立のまま現在になっておりますので、先ほど来申し上げておりますように、現在においては元号制度は事実たる慣習として国民の間に通用しているにすぎないと、法的根拠はなくなったというふうに考えている次第でございます。
  87. 山崎昇

    山崎昇君 それは、私がまだ釈然としませんのは、美濃部達吉さんの憲法論を読んでみると、あなたのような見解ではないのですね。それは、かつての憲法上は、片っ方皇室典範というのは宮務法だ、太政官布告の方は国務ですね。したがって、宮務法によって国務の命令というようなものが吸収されてそれがなくなるということはおかしいではないかと、こういう論も一つやっぱりある。それから規定されております内容が、必ずしも太政官布告で決めたことと旧皇室典範の十二条で決めたこととは一致しない点がたくさんある。だから、その部分だけ吸収されて皇室典範の十二条がなくなったからこの効力がなくなったということにはならないという説明になる。そういう点を考えますと、私は、せっかく法制局で出された見解のようでありますけれども、少し無理ではないのだろうか。それはなぜかと言えば、有効説をとると、この元号法案を出すのに不便である、何か無理が生じてくるのではないかというような考えがあって、途中から無効説に変わっていったのじゃないかなという疑いも幾らか持っているんです。これは私の疑いです。だから、この有効・無効説についてもう一遍ちょっと説明してほしいと思います。
  88. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 美濃部先生のお書きになった本の中に、元号制度つまり元号を立てるというのは国務であると、したがって皇室典範の中に入れたのは実は誤りではなかろうかというふうな節の個所がございます。まあそれはそれといたしまして、旧皇室典範の十二条によって明治元年の行政官布告が吸収されて皇室典範が元号制度根拠となったというふうな考えは、実は最近立てたわけじゃございませんので、昭和二十一年に実は新皇室典範から十二条該当部分を削除いたしましてそして単行法にして国会に御提案するというふうな動きもあって、その方向で手続を進めたこともございます。ただ、当時占領中という特殊な事情のために日の目を見ないで今日に至っておりますけれども、そういうことから見ましても、最近元号法案を提案するについて行政官布告無効論といいますか旧皇室典範十二条吸収論を持ち出したわけではございません。
  89. 山崎昇

    山崎昇君 いまあなたから美濃部さんの解釈が出されましたね。私もここに持っています。結局、「元号は、先ほど申し上げましたように宮務というようなかっこうのものではなく、国家全般の問題として純然たる国務等に関する事項でございますので、皇室典範の規定事項とすることは性質上適当でない、」旧皇室典範第十二条に規定していたことは誤りであった、無効の規定であると言っても恐らく弁解の言葉はないであろう、こういう……。だから、もし美濃部達吉さんのこの解釈がですね、当時は憲法の美濃部といえば大変なものでした、この論でいくならば、太政官布告がこれに吸収されてこれがなくなったからしたがって無効でございますと、これは少しやっぱり法律論としてはとりがたいものではないのだろうかという気がするんです。あなたの再三再四の答弁なんだが、私はどうしてもやっぱり釈然としないものがある。だから、もし金森さんのとったように有効説をとったとすれば、ちょうど皇紀二千何百年のあの太政官達と同じようなもので、結末は政令で改正するという、あるいは内閣告示という内閣の行為として出てくるということにもなりかねない。法律論としては私はそういう筋道の方が正しいのではないのだろうか、こう思うものだからあなたにいま法律論として聞いているわけなんですが、重ねて少しくどいようですけれども、この太政官布告の無効論については何としても私はまだ釈然としないものを持つので、もう一遍ひとつ答えてほしい。
  90. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) いろいろな学説があり得ることはこれは法律の世界ではしばしば見られるわけでございますが、何といいましても旧皇室典範時代つまり旧憲法時代元号制度天皇がお決めになったということは間違いないのであって、そういう制度がいまの憲法下においてまかり通るとはとうていわれわれは考えておるわけではございませんので、したがいまして、旧皇室典範の廃止によって元号制度根拠は失われたというふうにわれわれは考えている次第でございます。
  91. 山崎昇

    山崎昇君 これは平行線をたどるんで、私はまだ釈然としないものがありますが、もう一つ、関連して、明治五年の太政官布告に、神武天皇暦とその法的根拠というのがありますね。これは「神武天皇御即位ヲ以テ紀元ト被定候」と、こうある。この太政官布告は一体それじゃどうなっているのか。これは旧皇室典範に入っておりませんから当然生きているということになる。ただ、使っているか使っていないかは別ですよ。使っているか使っていないかというのは別ですが、明治五年のこの太政官布告は一体どうなっているのか、法律的な見解を聞いておきたいと思います。
  92. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 御指摘の、皇紀紀元の定め方についての問題であろうと思いますが、これは明治五年十一月十五日太政官布告によって決められたわけでございますが、これはいわゆる元号制度とは違いまして、日本の建国以来何年というふうな表現をするときには神武天皇御即位をもって紀元としなさいというふうに書いてあるわけでございまして、この点につきましてはいろいろやはり歴史学者の間でも問題もございますし、現在、日本国民の間で、いわゆる事実上の慣習としても、現在二千六百何年になるか、私自身ここですぐに計算できないくらい、完熟しているものとは考えておらない次第でございます。
  93. 山崎昇

    山崎昇君 あなたに法律論を聞いているのは、これは生きているんですね。これは事実たる慣習でも何でもなくて、太政官布告として生きている。だから、これももちろん紀年法一つです、言葉をかえて言うならば。私は元号法案審議していますから昭和年号を使いますが、昭和十五年に私も中学校を卒業した。そのときには皇紀二千六百年というので記念式典があった。そのころは、昭和というよりも、むしろ皇紀二千六百年、もう二千六百年という歌ができて世の中はそれであふられた。私は、そういう自分の中学時代の経験から言うと、この太政官布告というのはやっぱり生きていると思わにゃいかぬ。法律的には死んでいない。そうだとすれば、仮にこの元号法をあなた方がやったとしても、これが死んでいなければ、当然書式には昭和何年という不動文字をつくると同時に、皇紀何年ということを書くこともまた必要になる。そういうことについての法制的な処置というのは一つもなされていない、こう私は思うのですが、どうですか。
  94. 味村治

    政府委員(味村治君) この太政官布告が現在法的効力を持っているかどうかということにつきましては、この太政官布告は旧憲法制定前のものでございますので、旧憲法下においてどのような効力を持っておったか、さらにそれが新憲法下においてどのような効力を持っておったかという二つの問題を解決しなければならないわけでございます。ところが、その前に、そもそもこの太政官布告というものが一体どういう意味内容を持っているかということを確定しなければなりません。何しろ明治五年のものでございますので私どもの現在の法律常識から申し上げますと、非常に簡単でございます。先ほど長官が述べられましたように、「神武天皇御即位ヲ以テ紀元ト被定候」と、これだけなんでございますね。そういたしますと、神武天皇の御即位のときが建国の日であるぞということをここで宣明されたというふうに考えられるわけでございますが、そうなりますと、したがいましてこれは年の数え方というのを決めたのではございませんで、建国の日から何年かということを数えるときには神武天皇の御即位のときが始まりなんだということを書いてあるわけでございます。したがいまして、元号のように年の数え方を書いたというものではございません。そして、これが一体現在どのような意味内容を持っているのか、これは一体国民に対して強制力を持っていたのか持っていなかったのか、さらに、現在の科学的知見でもって神武天皇の御即位というのは一体いつであったのかというようなことを確定いたしませんと、どうもこの太政官布告の現在における効力というのは確定はできない。ところが、私どももいろいろ調べてはみたのでございますが、何分古いものでございまして、文献等もございませんし、さらにその神武天皇の御即位の時期がいつかというようなことは歴史的事実に属しまして私どものまだ何とも確定できる状況ではございませんので、現段階におきましてはなかなかこれの法的効力というものにつきまして断定ができるような状況に立ち至っていないということを御了解いただきたいと存じます。
  95. 山崎昇

    山崎昇君 私がこれを聞くのは、片や紀元節を決めるときには、何の科学的な根拠もないけれども、神武天皇だとかそういう歴史を持ってきてあなた方は二月十一日を紀元節に決める。そして、これも一つ紀年法みたいなものですよ、それは。私が文書をいま読み上げたように、「神武天皇御即位ヲ以テ紀元ト被定候」ですよね。太政官布告です。だから、極端に言うならば、私が昭和十五年のときに紀元二千六百年、そう私ども学校で卒業式でも言わされた。いま二千六百三十九年ですよ。これでもしあなた方に私が窓口で書類を出したときにどうしますか。法律的にはあなた方死んだとも生きたとも言い切れない、何分古くてわかりませんと言う。何分古くてわからないような紀元節をあなた方は決めているんだ、根拠もないのに。科学的根拠もなかった、あのときの議論でも。片っ方ではそういうことをやっておって、片っ方では聞けば、そういうことはわかりませんと、こう言う。これは私は納得できません。できませんが、時間がありませんからこの程度に打ち切りますが、いずれにいたしましてもまだまだ法制的には多くの問題を含んでいるということだけ指摘をしておきたいと思います。  その次に私がお聞きをしておきたいのは、今度の元号法案法律政令関係について聞いておきたいと思うのです。今度のこの元号法案というのはわずか二十九文字です。しかし、私が多少でも法律的に検討する限り、この法案は立法技術としては無理があるのではないのだろうか、そう思うのですね。もし私が仮に元号法案をつくるとすれば、法律の第一条に元号とは何か、昭和なら昭和。これを改正するのは皇位の継承なら皇位の継承。第三条ではその手続は政令に譲るんなら譲る。附則で公布の日から施行するなら施行する。こうでなければ、法律を設定して法律を施行するという政令意味というものが今度のこの元号法案からは出てこないのじゃないか。包括していきなり政令に決め方を譲るというやり方は、学者の指摘するところでもあって、政令法律関係からいけばやはり無理があるのではないのだろうか、こう指摘されているんです。特に、片岡委員から言いましたように、附則の第二項で昭和という元号はこの政令で定められたものと思えと、こうなっています。これは法定ではありませんよ。ですから、私は、いまのこの元号法というのは、法律的な技術論から言っても無理があるし、法制的に誤りとまでは言い切れぬまでも、考え直さなけりゃならぬのじゃないかと、こう思うのですが、法制局長官、どうですか。
  96. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 幾つかの点を御指摘になりました。  まず第一に、元号とは何かという定義を書いたらどうかという御指摘がございましたが、われわれの考えでは、元号というのはこれはもう法律で定義を書くまでもなく、国民の間に元号とは何かという観念はもう慣熟しておるので、わざわざ法律元号の定義を書く必要はないというふうに考えた次第でございます。  それから元号政令で決めると、これはいかにも委任としては無制限といいますか、幅が広いじゃないかという御感覚のようでございますけれども、これは元号という事の性質上――なるほど立法技術としては法律でその都度国会元号の呼び名といいますか呼称をお決め願うということだってそれは立法技術としては考えられますけれども、これはしかし事柄の性質上、政令にお任せ願うのがやはり一番事の処理上適当であろうということで元号政令で決めるというふうに委任をしていただくという形の法案にしたわけでございます。
  97. 山崎昇

    山崎昇君 だから、いまあなたの言っていることが、先般来あなた方の説明によれば、これは元号と改定の手続を決めるんですと、こう言うのですね、あなた方の説明では。これは政令の性格から言って法律との関係から言って無理があるのじゃないかということを私は法制面から言っている。なぜかといえば、憲法及び法律の規定を実施するために政令をつくる。政令なんというのは実施命令ですよ。法律で規定すべきようなことを包括して政令で決めるなんということにはなりませんよ、法制的には。だから、法学者は、こぞって今度のこの政令案について、ある意味ではこの間の高柳先生みたいに、法規範から見れば国民を保護するという規定が何もないではないか、これが大変心配ですという意見にもなってくる。立法技術論からいけば、私のように、包括的に政令に委任するというやり方は政令の性格から言っておかしいのではないか。国民の感情の中に昭和というのがあるからいいじゃないか、そんなことを言ったら、一般法律はみんなそういうことになります。何のために法律を制定する目的、それから改定するならどういう場合に改定するということを一般法律はつくるのですか。そういう意味で言うと、今度のこの元号法案というのは、法制的に見てきわめて欠陥があるのじゃないだろうか。改めるべきではないか。改めて、元号とは何か、そしていまの元号はどうするんだ、改定するときはどうするんだ、その手続は政令に譲るとか、そういう仕組みでなければ私は法制的にはおかしいと思うのです。  さらに、これは総務長官にもお尋ねしますが、この政令を施行する政令については何もないんです。一つもない。ただ漠然と、総務長官の見解として、審議委員を委嘱いたしますとか、そのときにはなるべく広範囲に公正にやりますとか、あるいは速やかにやりますとか、それは一総務長官の構想でありまして、きちんとした政令事項ではありませんよ。もし法制的に言うならば、あなた方はこの元号法と称せられるこの政令の施行令について明確なものをこの国会に示して、それを審議して、われわれは初めて、ああ、政府がこれによってこういう手続によってこういうときにこういう元号ができていくんだなあということが理解できる。単なる一担当者の構想だけで私ども議論するわけにはいかないと思うのです、法制的には。  そういう意味で、実は私もずいぶんいろいろなものを読んでみましたが、一番簡単に書いたのはこの「内閣と官僚」という本でありますが、これによってもかなりその点は指摘をされています。さらに、いずれかの時期に私はやりたいと思っていますが、憲法にあります栄典制度についても法律はない。いきなり憲法を実施するために政令であの栄典制度というのができているところにも学者が痛烈な批判をしておる。こういうところから見ると、今度の元号法案というのは、法律的側面から見ても欠陥があるし、全貌が明らかにならない。そういう点について、法律の専門であなたはいるわけだから、法律的な意味でひとつ答弁してほしいと思います。
  98. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) いろいろおっしゃいましたけれども、結局、この法案の第一項は元号の具体的な呼称の決め方は政令に委任するということが明瞭に書いてあるわけでございまして、その委任が非常に広いじゃないかという御感覚は確かにおありかもしれません。しれませんが、これは事柄の性質上、先ほど申しましたように一々その都度法律元号の呼び名をお決め願うということだってそれはもちろん理論上は考えられるわけなんですけれども、事柄の性質上、やはり政令に委任をしていただく方が事柄の処理上便利であるということで委任をしていただくというかっこうになっているわけでございます。
  99. 山崎昇

    山崎昇君 それはおかしいですよ、あなた。法律家として言うべきことじゃない、そんなものは。ですから、私は、さっきあなたに具体的に言ったように、元号法というなら、法制というならば、やっぱり第一条で――私は賛成するわけじゃありませんよ。ありませんが、立法技術論で言うなら、第一条に元号昭和なら昭和ときちんと明記すべきですよ。そして、その昭和という元号を変えるのはどういう時期でございますとか、その手続は政令に委任いたしますとか、そうでなければなりませんね。いまあなた方の出しているこの法制というのは、附則でこっそり昭和というのはこの法律に基づいている元号でございますと。附則ですよ。少なくとも私は立法技術論でいったらこの法制のあり方は誤りだと思う。そして、先ほども申し上げたように、その手続を決めるような政令案とか一つも何もない。かいもく見当がつかない。ただ総務長官の見解だけ述べられている。だから、繰り返し繰り返しこの委員会でも議論になる。そういう意味で、私はどうしてもいまの法律家としてのあなたの答弁には納得できない。特に、政令に対する委任は個別的具体的でなければならぬので、白紙委任はすべきでないというのが法律家の見解ですよ、これは一致した。だから、先ほど例に申し上げた栄典制度についても、いきなり憲法の条項を執行するために政令で栄典制度が決められていることは痛烈に学者が批判している。根拠法律がない。だから、そういうやり方は私はやっぱり法制局としてはとるべきではない、この点だけは重ねてあなたに明確にしておきたいと思うのです。  さらに、だんだん私の時間がなくなってきましたから、先般来議論になっておりますように、一体国民に対してこれが強制になるのかならないのか、きょう午前中の市川さんの質問の中でもまた出ました。もう各党一致してこの点がやっぱり議論になりました。そこで重ねて私も聞いておきたいと思うのですが、それはなぜそれを聞くかというと、かつて、ここに源田さんがおいでになりますが、源田さんが一世一元の法制について質問書を出された。そのときに内閣から答弁がありまして、「元号制度は、新憲法実施後、法令上の根拠を失ったが、事実たる慣習として広く国民の間に定着している。もし元号使用国民強制しようとするのであれば、法律を必要とすることは当然であるが、そうでなければ、必ずしも法律によることを必要としないものと考えられる。」と、これが政府の答弁であります。あなた方は、かつて与党の議員から質問書を出されたときに、国民強制をしたいということがこの背後にある。そのために法律でなければならぬというので告示案というのが退けられたと私ども考える。一体この政府の源田議員に対する答弁はどういうふうに私ども理解したらいいのか、お聞きをしておきたい。
  100. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) まさしく、ただいまお読みになりましたように、元号使用国民強制するのであれば法律が必要であるというふうに書いてあるわけでございまして、これは立法政策にわたるわけでございますが、もし国民使用強制するのならば法律が必要である、しかし強制をしないというのであれば必ずしも法律でなくてもよろしいという見解を出しているわけでございまして、したがって、それは理論上は内閣の告示でも結構でございますと。しかし、いまの憲法のもとにおいてどういう手段をとるのが一番憲法に忠実であるかということになれば、これはやはり国会法案としてお出ししてその委任を受けて政令で決めるというのが元号制度の将来にわたる安定性なりあるいは憲法が定めている民主的な思想にも適合するということでこの元号法案を提案するという道を実は選んだわけでございます。
  101. 山崎昇

    山崎昇君 質問にまともに答えなさいよ、質問にまともに。安定性があるとか必要があるとかなんということを私は聞いているのじゃないんです。源田さんが政府に対して質問したのは二点ある。一点は、「政府は、元号存続、改変に関する法的根拠の必要性についてどのように考えているか。」二は、「その法的根拠確立のために、どのような具体的案をもっているか。例えば、次期通常国会政府提案として、関係法案を提出する考えはないか。」という質問です。それに対して、あなた方は、私が先ほど読み上げたように、「事実たる慣習として広く国民に定着している。もし、元号使用国民強制しようとするのであれば、法律を必要とする」からあなた方はいま元号法案を出したのじゃないですか。じゃ、この元号法案というのは何なんですか。何なんですか、これは。そうでなければ、使っても使わぬでもよろしいというならば、それは事実たる慣習でいいじゃないですか。法律は要らぬじゃないですか。だから、かつての西村長官も、あるいは当時の植木さんも、藤田正明さんも、歴代の総務長官は、これは告示でやるつもりだということを再三再四述べておったじゃないですか。だから、あなた方は、かつてこういう政府が見解を出して、これがいまあなた方通る見解ではない。これは修正なんです。こういう考えは通りません。あくまでも元号使用については自由なんでございますというならば、この答弁は撤回しなさいよ。これは総務長官から答えてもらいたい、政府が答弁しているわけですから。
  102. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) 当時の政府答弁についてお尋ねでございますが、当時源田委員お答えをいたしましたのは、改元の時期あるいは改元の意思等について尋ねられたようでございますが、その際には、使用上の問題について強制的な面についてのお尋ねというようなところが政府側に受けとめられたのではないかと思うのでございます。また、御本人もそういう御意思があったのではないかと思いますが、私どもといたしましては、決して元号国民強制化したりするという意思はございませず、現在の事実たる慣習として使われておる年の紀年方式として使われておるこのままの状態国民存続希望という点で受けとめてまいったのでございまして、したがって、私どもといたしましては、告示でもよろしいと言われた当時のこともわからないわけではございません。特に緊急を要するような場合にとらなければならぬ処置というようなことを考えておられたことも伺っておるわけでございまするが、そういう点においては内閣告示でやってもやれるではないかというような御意見等がその当時あったことを承ってまいっておるのでございますが、そこで、私どもといたしましては、先ほども法制局長官が申しましたように、元号の改元の基本的ルールがないということを内閣の告示でやるがいいか、あるいはその改元の時期、あるいは改元をだれがやるか、何によってやるか、政令でやるというようなそういう全く事務的な措置だけを処置いたしますについて、告示でやるか法律でやるかというようなことを検討いたしました場合に、そういう点だけを考えてまいりましても、その基盤を明確にし安定させるためには法律の方がベターではなかろうか、そうしてしかもそれは国民の代表である国会の場において民主的に御決定を願うということになればなお安定的なものになるのではなかろうかと、そういうような見解から法制化に踏み切ったわけでございまして、全く内閣告示を否定してかかったということではなくて、よりベターではなかろうかという立場で法制化に踏み切ったところでございます。
  103. 山崎昇

    山崎昇君 長官ね、源田さんの質問はそんなことを聞いていないんです。「元号存続、改変に関する法的根拠の必要性についてどのように考えているか。」それについて、あなた方の方は、第一項は、「元号制度は、新憲法実施後、法令上の根拠を失ったが、事実たる慣習として広く国民の間に定着している。」と、まず現状認識を伝えて、続いてその次に、「もし、元号使用国民強制しようとするのであれば、法律を必要とすることは当然であるが、そうでなければ、必ずしも法律によることを必要としないものと考えられる。」と、こうなっている。だから、これがいまもあなた方の見解だとするならば、この元号法案を出したということは、どのように三百代言みたいに説明しようとも、国民に対して強制をするという考え方がにじみ出ているということにわれわれがとるのは誤りでしょうか、これは。なぜじゃこんな答弁をあなた方はやったんだろうか。第二項は、「将来の元号制度の在り方については、国民世論の動向を見極めつつ、なお慎重に検討する」ということも述べています。しかし、一番の問題はここなんです。だから、あなたが口が酸っぱくなるほど、入れかわり立ちかわり立って委員質問しても、強制はしません、そう言いつつも、われわれが釈然としないのは、あなた方のこういう意思が過去に示されたという、実績にわれわれは基づいているわけなんです。だから、これはそのときのことであって、いまはそうでありません、この政府答弁は誤りでありましたと、修正いたしますと言うんなら、修正してくださいよ。
  104. 清水汪

    政府委員清水汪君) 先ほどの大臣の答弁を補足させていただきたいわけでございますが、この四十九年の源田議員に対する政府の答弁の一番大事な点は、御指摘の「元号使用国民強制しようとするのであれば、法律を必要とすることは当然である」と、このことがあると思います。しかしながら、ここで申し上げておりますことは、もう少し言葉を足して言えば、強制しようとする場合には、法律をつくって、その法律の中に、元号を用いなければならないとか、あるいは用いるようにしなければならないとかというように、まさに使うという問題について法律の中に書く、そのことによって法律国民元号使用強制することになると、こういうことを当然に念頭に置いてこれは申し上げていることだと思います。逆に、したがって、言いかえますれば、まさにそういう考えはないわけでございますので今回のような法案になっているわけですけれども、その点は強制しないという考え方自体はこのときからも一貫して持っていたということも申し上げられると思いますし、そういう意味でここではこういう表現が使われているということをぜひ御理解賜りたいと思うわけでございます。
  105. 山崎昇

    山崎昇君 それは強弁というものですよ。私はいま二回ほどここで読み上げました。ここにたくさんの人がおられますよ。あなたのような解釈でこの政府の答弁を解釈するなんという人はおりゃせぬですよ。そうでなければ、いまの元号法案は直接法律では政令に譲っていますよ。それは先ほど私は法制的に欠陥があると述べた。しかし、法律であなた方がやっぱり元号をつくろうというのはこれが基礎じゃないでしょうか。だから、あっさり、総務長官、このときはこういう考えを持っておったが、そうでないんならそうでありませんと、これは修正するんなら修正する、撤回するんなら撤回するということを明確にしなさいよ。そうでなければ、百万遍あなた方が強制しないと言っても、国民は納得しませんよ。私も納得できない、それは。もし室長の言うようにこの文章がそんなふうに一々説明しなければ国民はわからぬようなことを、ここの議場ならば、これはいま議論をやっていますから、ここにいる人は、ああ清水さんてそういう考え方だったのかとわかる。一般国民にはわかりゃせぬです、そんなものは。だから、あなたはやっぱり国務大臣だから、これは違うんなら違うということをここで明言をして、国民には強制を本当の意味においてしないんならしないということをきちんとしてください、これは。
  106. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたしますが、かつての政府答弁の中に強制をしようとするならば法律によりますというようなことを言われた当時の本旨というようなものが、もしも法制化することが使用上の義務づけをするということにあるとするならば、それは私は現在私ども考えておりまするのはそういうような考えは持っておりませんということを明確にひとつここでお約束をいたします。
  107. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、あなた方はかつて答弁したこれは修正したものと私は受け取っておきます。  そこで、具体的にお聞きをしますが、この強制の問題というのは大変いろいろな場面を含んでおりまして、公務員が窓口で受け付けるときに、あなた方は書式をいっぱいつくります。まあこれは戸籍法でも議論になりました。だから、そういう書式をつくるときに、それならば、たとえば昭和何年月日、括弧して西暦も書けるように書式というのを初めからつくってしまえばそれでいいんですね。何も西暦で出したものをあなた方が元号に直して別な帳簿に書くなんという必要はない。どっちの記載例を選択するかは、それは本当に自由だと言うならば、国民が選択すべきです。そうしなければ、あなた方の説明というのはやっぱり強制にわたるというようにしかとられなくなってくる。私は多少公務員もやりましたから行政法もやりました。法制局長官ほど勉強したわけじゃありませんが幾分やりました。現場で私どもも事務を扱った。一つ法律ができて、通達が来て、それに基づいて要式行為というのができ上がって、それに書いて出すと、受け付ける者は勝手気ままに自分でそれを直すなんということはできない。要式行為というのは、行政法でいえば法律要件制定の一つの条件でありますから。そういう意味で言うならば、この様式そのものも併記するような様式につくるということが正しいのじゃないだろうか。いまあるものを直ちにそれができないならば、多少時間がかかってそれがなくなって次の様式をつくるときには当然併記できるような様式をつくって、その選択は届け出をする国民が自由に選ぶということにすべきではないのだろうか。そうすれば、何も公務員が受け取って自分でまた書き直して帳簿に入れるなんということはあり得ない、必要がないのじゃないのだろうか。そういう意味で、私は、この書式とか様式というものについて一体総理府はどう考えられるのか。事務の簡素化だとか能率化だとかと言うならば、当然それぐらいのことを考えていいと思うのですが、どうですか。
  108. 清水汪

    政府委員清水汪君) その問題につきまして、まず一つは、行政庁の内部の書類の作成事務という面におきましては現在までも元号ということで統一的に処理をしておるわけでございまして、このようなやり方というものはやはり今後も続けさせていただきたいと、このように考えているわけでございます。そこで、今度は、その役所の帳簿に記入される前提としては、個々の国民の方から届け出なり何なりが書類として出されてくるわけでございます。ただいまのお示しの件は、その届け出書の様式の問題だろうと思いますが、ただいま申しましたような公務の立場と申しますか、そういう立場から言いますと、やはり原則的には元号の方で記入をするということに御協力をいただきたいと、このように御説明を申し上げているわけでございます。ただ、それは強制ということではございませんので、どうしても西暦でという場合に西暦で御記入があっても、それはもちろん適法なものとして受理をいたします。ただ、受理をした後は、そこにたとえば一九七九と年の項に書いてあれば、それはこちらの内部の帳簿の方に書くときには昭和五十四というふうにそれは表示していくわけでございますが、そのような事務のやり方ということで当分は行かざるを得ないのではないかと考えておりますので、この点につきましてはぜひ御理解を賜りたいと思います。ただし、あくまでもそれは強制にわたるということのないように、協力の要請という問題については十分部内にも注意を徹底させていかなければならないだろう。その点はるる御指摘をいただいているところでございますので、十分心得てやらしていただきたいと思っております。
  109. 山崎昇

    山崎昇君 だから、私の方からいま提案しているんです。あなたの方は統一的に事務を扱いたいと言う。扱うについては国民の要望も入れるような様式を最初からつくったらどうですかというんです。それがなぜできないのですか。それがなぜできないのです。だから、最初から、たとえば届け出用紙なり何でもいいです、簡単なもので言えば、「昭和何年何月何日(西暦何年)」と括弧書きに一つ様式の中に入れるだけで国民の要望というのは通るのじゃないですか。その中で、出した方が西暦だけで書いて、あなたの方で帳簿上整理する上で年号も必要だというんなら、ここで年号を書き入れておけばいいのであって、なぜ事務的にそれができないのだろうか。私も公務員をやったけどわからぬよ、それは。様式をつくるときになぜそれができないのよ。なぜかたくなに、昭和だけ印刷して、そして、くれるものはもらうが、もらったら違ったもので帳簿をつくりますよ、そんなばかなことをやらなきゃいかぬのか。これは、長官ね、これからあなた方事務を進める上において少なくてもこれだけ国民からこの点は指摘をされて、各党からもこれだけこの点は集中した質問になっているんです。その点は十分ひとつ考えて、いまあるものをすぐそうせいということはできないかもしれない。しかし、少なくともこれからやる部分についてはそれだけの配慮はあってもいいのじゃないんですか、強制しないと言うんならば。これは私が提案するのですが、どうですか。
  110. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたしますが、私は、この問題が野田委員から御指摘があった際にも、姿勢、精神といたしましては両方の元号でお出しになりましてもあるいは西暦でお出しになってもそれは御自由でございますということを申し上げ、なお、整理の点においてもというようなことにもそういう精神でまいりたいというようなことを申し上げましたが、現実問題は、いま御指摘のように、現在の統一的な行政事務の処理というような点から、法務省におきましてもあるいは自治省におきましても様式が決定をしておってそれは困難であるぞという御意見がございました。後ほど申し上げましたように、窓口の手続といたしましてはどちらをお出しになりましても結構でございますが、国の事務なり地方公共団体の事務として規定によって統一をいたしております点につきましては書きかえをいたすことをお許し願いたいということを申し上げました。  ところが、いま先生から、そういうことであろうが、しかし、将来の問題としてそういう点もひとつ窓口で両方を認めるというならば整理の方でも考えることを検討せぬかという御指摘でございましたが、これはすでに事務取り扱いの規則としてやっております省庁もあることでございますので、十分そういう点について検討をさしていただきたいと思うのでございます。
  111. 山崎昇

    山崎昇君 総務長官が検討したいと言うんですから、私はそれ以上申し上げませんが、しかし、少なくとも行政事務を扱う者は、それだけの配慮はこれだけの法案の議論を踏まえて言うならば当然すべきであります。まあ将来の問題といったってこれはいつになるかわかりませんが、少なくともいま使っております様式がなくなったら、そこからでも改めて、少なくとも国民の要望というものをそういう形でも入れて、強制になりませんぞということを政府みずから証明しなきゃいかぬでしょう。そういう意味で、総務長官はいま検討さしていただきますと言うから、政府が各省に指示してそういう様式ができ上がってくるものと私はこれは希望しておきますし、強く要請をしておきたいと思うのです。  そのほか、私は、皇室経済法でありますとか、あるいは皇室会議の組織の問題でありますとか、たくさんの問題について質問しようと思っておりましたが、もうすでに時間でありますからこの程度で打ち切っておきたいと思いますが、繰り返しいまの点についてはひとつ善処を願っておきたい。それは、つけ加えて申し上げますというと、窓口の公務員が大変なんです、長官ね。人間でありますから、ものの言い方一つで大変なけんかにもなったり笑顔にもなったりする。法律でこうなっておりますからだめですと一言言われたら、これはトラブルになるしけんかになる。だから、担当する窓口の公務員というのが大変だと私は思います。そういう意味では、この様式の問題というのが単に様式という簡単なものではないんだということを重ねて長官に要望しておきますので、十分ひとつでき上がりますように心から申し上げて、私の質問を終えておきます。
  112. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  113. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
  114. 山崎昇

    山崎昇君 いよいよ元号法案も大詰めに来まして、総理にこの法案の問題点等について集約してお尋ねをしておきたいと思うのです。ただ、最初に一点お聞きをしたいのは、この二日に、読売新聞でありますが、内閣の支持について発表になりました。これは一社でありますから私はすべてだとは言いませんが、ただ、その中で注目しなければなりませんのは、汚職追放に真剣でないというパーセントが物すごく多くなってきている。大平内閣を支持するしないの一つのバロメーターとしてこれが注目を浴びている。そういう意味で言うならば、これから松野さんやその他の問題がまたあると思うのですが、いま起きておりますこの汚職追放についてまず最初にこの世論と関連をして総理の決意を聞いておきたい。
  115. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 航空機の輸入をめぐりまして国民の間に深い疑惑がございまして、その刑事責任と政治責任が強く問われておるということは私もよく承知いたしております。したがいまして、まず政府として一番大事なことは、不幸にして起きました事件の真相を徹底的に究明するということが第一の任務であると心得まして、捜査当局は捜査当局として刑事責任を問いただしていったわけでございます。最近その結論が出たようでございます。捜査当局以外の国税当局その他関係当局はこれに関連いたしまして疑惑の究明に当たりまして、政府がこれに関与した事実はないという報告を受けております。  国会は、精力的に国政調査権の発動によりまして政治責任、道義責任というものの解明にいま当たられておるわけでございます。政府の任務は、これに対しまして最大限の協力をするという立場でございます。これは現にやっておるわけでございます。  それから第三の問題は、再発防止について精力的に措置するところがなければ国民の期待にこたえられないわけでございます。ロッキード事件のときも内閣でそういう方針を決めまして今日まだその仕事は続いておるわけでございますが、私の内閣の場合には、それはそれとして続けますけれども、視点を変えて政治倫理の確立の上から何かなすべきことが火急にありはしないかという問題について有識者の御意向をいま承っておるところでございます。  山崎さんの御指摘をまつまでもなく、真相の究明ということは政府の一番大事な任務と心得ておるわけでございまして、いささかもこれを怠るというようなことはないつもりでございます。国民にまだその気持ちが十分御理解いただいていないことは残念でございますけれども、今後の私どもの行動で御判断をしていただくより道はないと思います。
  116. 山崎昇

    山崎昇君 それでは、元号法案に関連して総理の所信を聞いておきます。  信頼と合意を政治姿勢とする大平総理の、憲法改正問題を含めた憲法についての所信をまずお聞きをしたい。
  117. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 憲法に対する所信は、申すまでもなく国の基本法でございまして、われわれが遵守しなければならないものと心得ております。その基本法である憲法の改正でございますが、憲法自体にも改正の道をつけてある以上は、改正ということが論理的にないわけじゃない。改正を論議することも許されておることと思うのであります。したがって、国内にはいろいろ改正論者もあられるようでございます。改正論議があって差し支えないと思いますが、私自身は、改正ということが当面それでは国民世論の支持があるかというと、そのようにはいま受け取っていないわけでございまして、基本法の改正などということは慎重の上にも慎重でなければならぬと考え憲法を改正するような方向でものを考えるというようなことは一切慎んでいかなければならぬと思っております。
  118. 山崎昇

    山崎昇君 第二点としてお聞きをしたいのは、国論を二分し日本民族の間に対立を持ち込んでいる元号法案については、もっと世論が熟するまで慎重を期すのが信頼と合意の政治姿勢だと思いますが、総理の所見をお聞きをしたい。
  119. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま、元号法案について、国論が二分しておるのではないかという御指摘がございましたが、私ども、国論を二分するというようなことは、できるだけ本来慎まにゃいかぬことと思っております。私どもが提案いたしておりまする元号法案というのは、たびたび本院におきましても政府側から御説明申し上げましておるとおり、国民生活の中に元号が定着しておる、国民の多くはその存続を望んでおると、そこまでは山崎さんも御異論がないだろうと思うのでございますが、法制化につきましては、法制化すべきであるすべきでないという御意見はありますが、多くの府県あるいは市町村等から法制化の要請が届いておるわけでございまして、私どもそういう事実を素直に踏まえて、しかも改元の手順等が明らかでないようでございますから、その点を明らかにしておこうということでいま元号法案をお願いしておるわけでございまして、いやしくもイデオロギー的にこの問題をいささかも考えようというような趣旨のものでは決してないのでございまして、国論が二分するのでなくて、国論がそういう方向で理解していただき、まとまっていただくことを期待いたしながら御提案申し上げて、鋭意説明をいたしておるわけでございます。したがって、今日そういうことを御提案申し上げても、それは決して時節柄適当でないアンタイムリーであるというように私ども考えていないわけでございまして、そのことはたびたびの論議を通じて十分お聞き取りいただいたことではないかと思っております。
  120. 山崎昇

    山崎昇君 いませっかくのお答えなんですが、元号についてはなるほど政府世論調査でも存続についてはあった方がいいという意見の多いというそういう報道について私ども承知しています。しかし、反面、法制化したり、あるいは法律そのものがこれに介入するということについては、これまた賛成者がきわめて少ないのです。したがって、総理はこの現実というものをどういうふうに理解されているのか、第三点目として聞いておきたい。
  121. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先ほどもちょっと触れたわけでございますけれども元号が現実の生活の中で定着をいたしておる、国民はその存続希望しておるという場合に、それでは改元に立ち入ったという場合に一体それは法制化によらないでどういう方法があるかというと、選択の道は、内閣があるいは政令で決めていくというようなことが一つの選択としてあるのではないかと思うのでございます。けれども、そういう国民的な改元の仕事という問題を一内閣の告示あるいは政令というようなもので決めていいかというと、民主政治のもとにおきましてはやっぱり国会を通じて決められた法律によって改元の手順を決めていただくということの方が民主的ではないかと思うのでございまして、政府がとりました方途は私は間違っていないのではないかと考えております。
  122. 山崎昇

    山崎昇君 いまの答弁でわかったようでわからないんですね。私の聞いているのは、片っ方では存続という意見もあるが、片っ方では法制化というのはする必要がないじゃないかと、このギャップについてどういまあなたはお考えになるかというのを聞いたわけなんですが、あわせて、盛んに政府は今日まで自治体がずいぶん決議をしていると、こう説明いたします。私は、総理府からもらった資料によりますというと、全国の市町村の数が三千二百五十五だと記憶しています。そして、決議をしておりますのが千二百九十ですから、ざっと三九%ぐらいですね。それはもう数字でありますからそのとおりだと思う。ただ、これを各県別に見るときに大変なばらつきがある。たとえば私の出身であります北海道は五%前後、沖繩は三%前後、それに続いて低いのが広島の九%前後ですね。高いところは六〇%、七〇%というところもあります。言うならば、平均でものを言うと三九だが、各県別に言うと住民の意思というものは全く違う。そういうものを土台にして世論世論だ、自治体の決議だ決議だというやり方が私どもどうも納得できないわけなんですよ。こういうことについて一体総理はどういうふうにお考えになるのか、この点も聞いておきたい。
  123. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 市町村や府県からそういう要請が出てきておるからこの法案を提出して御審議を仰いでおるとは申し上げていないわけでございます。そういうこともあるということを申し上げておるわけでございまして、政府の見識におきまして改元の手順というようなものを内閣の告示とかあるいは政令などによるよりは法律で決める方がよろしいと、それが民主的な行き方ではないかという判断で法制化をお願いいたしておりますことを御理解願いたいと思います。
  124. 山崎昇

    山崎昇君 私は、それが全部だという意味じゃありませんが、政府が提案説明する、あるいは説明の中の相当部分が、一つ総理府世論調査、そしてもう一つがいま私から述べました議会の議決ということを大変重要な要素にしているわけです。それが、いま私から述べましたように、平均で言うと三九%ですから半分以下、各県別に見たらものすごいアンバランス、それが住民の意思だということなんです。そういう意味で言うならば、それを基礎にして相当部分の条件にして法制化に踏み切るということは少しおかしいのではないのでしょうかというのが意見だった。それは唯一でないと言うから、そのとおりだと思うのです。  そこで、重ねてあなたにお聞きしますが、総理が福田内閣時代、私どもの承知する限りには、元号法制化についてはきわめて消極的であったと当時私どもも承っています。しかし、今度法律第二号で何にもまして元号法案を出してきたという総理は心境の変化を来したのかどうかとさえ思っているわけなんですが、法制化に踏み切った総理の所信というものを改めて聞いておきたい。
  125. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 福田内閣時代は私は党の方におったわけでございますけれども、そのときと今日と全然心境の変化はありません。あのときに自民党といたしまして元号法案臨時国会にも提案して御審議をお願いすべしというような議論も相当強かったわけでございますが、この種の法案はやっぱり通常国会にゆっくり御審議をいただくべき性質のものであろうということで、これは野党の方面にも御通知申し上げて次の通常国会には御提案するということを意思表示いたしておったわけでございまして、そういう方向で問題の処理をいたしておるわけでございまして、あの当時は消極的でいまは積極的であるという、そういう便利になかなかいかない男でございまして、御了承をいただきたいと思います。
  126. 山崎昇

    山崎昇君 しかし、時には器用なこともやるんじゃないかと思ったりしましていまお聞きをしたわけですが、そこで、この法案審議に当たりまして各党から出ました意見の中心点の一つに、法案自体に皇位の継承のあったときに改めると、こうあるものですから、事実上は一世一元の元号法制ではないか、この点が大変議論になりまして、いまの主権在民を決めております憲法とは相入れないのではないか、理念的にこの憲法精神に反するのではないかというのが大変な議論の一つであります。その意味で、総理から、この一世一元の元号法案というものが主権在民憲法の理念とどういうふうにかかわっているとお思いになるのか、その点について見解を聞いておきたい。
  127. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私は、御批判があるかもしれませんけれども、二つの立場からいまの御質問答えたいと思います。  一つは、いまの憲法が施行されまして三十年余りたっております。この新憲法のもとにおきまして昭和年号というものが変わることなく国民の間に生きた年号として定着をしてきておるという事実、これは事実でございますから、つまり、現行憲法下におきましてそういう慣行が定着しておるということは一つも不自然なことでないという事実がここに一つあるということでございます。  もう一つは、新憲法では天皇の立場というものが統治権を総攬されるという立場でなくて、象徴という立場になられたのでございますが、国の象徴であられる天皇である以上、元号天皇の在位と結びつきましても決してこれは許されないことではないのでないか、理解されることではないかというようにきわめて常識的に素直に考えておる次第でございます。
  128. 山崎昇

    山崎昇君 私どもは、この元号法案というのは、一世一元という理念からいけば、戦前の憲法と同じことであって、国民主権憲法と相入れないという見解を持つものなんですが、総理は象徴天皇のいまの憲法と矛盾はしないんだという見解をおとりのようでありまして、私は、この点はこの委員会でもずいぶん議論されてすれ違いに終わっているのじゃないだろうか、また別な機会にこれらの点については議論されるものと思っております。  そこで次にお聞きしたいのは、この元号法案は二十九文字で、たった二条なんですね、本則は。したがって、この元号がどういうふうに使用されてどういうふうに運用されていくかということが全く不明確なわけです。ただ、総務長官のいろいろな見解は示されておりますが、それも見解だけでありまして、こうなるというものではありません。そういう意味では、この委員会においでいただいた参考人の主として憲法学者、法律学者の皆さんから、大変不安を述べられております。そういう意味で、この元号使用について、あるいは運用について、不安のないように私どもしなければいかぬと思いますから、それに対する総理の決意をお聞きしておきたい。
  129. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) この法案は、たびたびこれは説明があったことと拝察しますけれども、改元の基本的なルールを決めておるものにすぎないのでございまして、その元号使用につきましては何ら規定するところがないわけでございます。したがって、国民元号使用強制するというようなことは全く考えていないわけでございます。今後とも一般国民元号西暦の使い分けは自由にできることを重ねてここで明言しておきます。
  130. 山崎昇

    山崎昇君 法律そのものにもないから元号使用については西暦併用さしていくのであって全くそれは国民の自由であります、こういう御答弁でありますから、そのように確認をしておきたいと思います。  続いて、今日までの政府答弁で、国の機関はもとより自治体もこの国の方針に従って事務の統一的な点を維持するという意味において元号というものを使用していきたいと強い意見が出されておるわけですが、これらの問題になってまいりますというと、これはある意味ではやっぱり思想、信条、あるいは学問の自由とか、あるいは表現の自由とか、そういうものとかかわってくるのではないか、こう私ども考えます。そういう意味では、これらの点について一体総理はどのようにお考えになるのか。あくまでもいま元号使用については自由だと、こういうお話でありますから、これらの憲法上の思想、言論、表現の自由等については、それは侵すものではないんだと、こう確認をしておきたいと思うのですが、改めて総理の見解を聞いておきたい。
  131. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 現在においても国、地方公共団体は元号を用いておって、元号によって表示する慣行が定着しておると思いますけれども、これを強制するというようなことはいたしていないわけでございまして、今後もそういうことをするつもりはございません。ただ、地方公共団体の方で、事務の簡素化の見地からあるいは御協力を求める場合がないという保証はございません。そういうことがあるかもしれませんけれども、しかしそれはあくまで協力をお願いするという場面でございまして、これを強制するというようなことでございませんので、それに従わなけりゃならぬというものでもないわけでございまして、強制しないというのはそういう意味でございますことを御理解をいただきたいと思います。
  132. 山崎昇

    山崎昇君 重ねて強制しないという御意見でありましたから、確認をしておきます。  次にお聞きをしておきたいのは、この委員会参考人として日本キリスト教団の牧師の方においでいただきました。そして、この牧師の方から、一世一元のかつての元号制度国家神道と結びついたり、あるいは神社神道と結びついたりして、宗教的な弾圧の歴史であったということをるる述べられました。そして、いまもクリスチャンとしては信教の自由というのが侵されるのではないのだろうか、こういう御意見の開陳等がございました。  そこで、総理もお聞きするところクリスチャンだそうでありますが、宗教とのかかわり合いについて信教の自由という問題について総理はどのようにお考えになっておるのか、この機会にお聞かせをいただければと、こう思います。
  133. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) このことは宗教とはかかわり合いは一切ない法案と心得ております。
  134. 山崎昇

    山崎昇君 もちろんそうあっちゃならぬのですが、ただ、私ども、あの日本武道館の行動でありますとか、あるいはそこにおいでになりました方方の演説でありますとか、あるいはその後の神社本庁の行動でありますとか、そういう賛成されている宗教家の方々の行動、意見等々を見ると、必ずしも総理がいま一言で片づけるような単純なものでないようにもわれわれは受け取るわけです。それがそうではないという総理のいまお話でありますから、一国の総理の答弁でありますから、私はそのとおり信用したいと思いますが、あくまでもこの信教の問題についてはやはりきちんとしておきたい、こう思いますので、大変恐縮でありますが、重ねてひとつ総理の信念のほどをお聞かせいただければと思います。
  135. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 多くを申しませんで、きわめて単純明快にこれは宗教とはかかわり合いないという法案であるように御理解いただきたいと思います。
  136. 山崎昇

    山崎昇君 次にお聞きをしておきたいのは、この元号法案そのものは全く簡単な法案で、強制するものでもないし、悪用するものでもないんだと、こう御答弁になりました。ただ、最近の政治動向を見ますと、有事立法でありますとか、教育勅語の礼賛でありますとか、あるいは総理自身が靖国神社に行かれる、あるいはその他元号法案反対する者に対する暴力的な事件でありますとか、まあ私のところにもいろいろ電話が来たり手紙が来たりいたしますが、そういうようなことを考えるときに、一つ一つは点でありますが、これが結んで考えてみるというと、何か今度の元号法制化というのは民主主義に逆流していくのではないのだろうかという国民のまた危惧があります。そういう意味では、この元号法案が通ってもそんなことはないんだ、あくまでいまの憲法民主主義というのは守るんだ、国民主義は守るんだ、この点を明確にしておきませんと私は大変じゃないのだろうかと思います。したがって、総理の現状の認識と、いま何かしら右傾化しつつあるというような新聞報道も多くなってまいっておりますが、それらの政治情勢に対する政府の見解、総理の見解をお聞きをしておきたいと思います。
  137. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私は、日本の歴史を回顧してみますと、明治以後の短い歴史考えてみましても、ほぼ二十年ぐらいの時間帯で開放の方向に向くときと収斂の方向に向くときとがあったように思うのです。明治の初年は開放的に開国の精神が横溢して、明治二十年ごろから日露戦争が終わるごろまでは比較的収斂の方向に歴史が向いていった。それから後二十年ぐらいは大正デモクラシーの花が咲くというような時期を経過しまして、それが終わると今度満州事変を契機としてだんだんとまた収斂の方向に向いてきました。昭和二十年を境といたしましてまたこれは開放の方向に向いていった。昭和四十年過ぎからやや収斂的な方向にいま御指摘になったような傾向が若干見えないわけじゃございません。私は日本の国民は非常に平衡感覚を心得た民族だと思っております。一方の方向に非常に行きがけると、待てしばしということになりまして、決して行き過ぎることのないようにちゃんと中心は見定めて行動しておる非常に賢明なバランス感覚を持った国民だと思っておるわけでございまして、私は日本の国民の常識、英知を信用したいと思っております。私ども、今日の一部に見られる現象が日本の国運の向かう方向のようにはそんなに過大に評価していないわけでございまして、これはお互いそういった平衡運動というものをよく見定めながら政治指導に当たらなければならぬのでないかと思っております。まあこれは一般論でございますけれども、いまの状態におきまして時流に流されて中心を見失うようなことのないようにわれわれは心がけなきゃいかぬと思っておるわけでございます。民主主義の本義というものはどんなことがあっても失ってはならない。われわれはこれをかち取るためにどれだけの犠牲を払ったかしれないわけでございますから、この点は十分気をつけていけば間違いないと私は確信しております。
  138. 山崎昇

    山崎昇君 いまの総理の言葉ね、私は大変重要だと思うのは、実はここに私が持っておりますのは吉田茂さんの「激動の百年史」という本であります。この中の一節に、「明治天皇はみずから政治の中心であり、政治や軍事を好まれた。今上天皇はこれに対して、君臨すれども統治せずという立憲君主として育てられ、生物学を好む静かな人柄であった。」と、こう述べられている。そのときの政治の頂点に立つ人の行動やものの考え方でやはり国の盛衰というものは大変なことになる。いみじくも吉田茂さんが天皇の性格に基づいてこういうことを述べられておりますね。そういうことを考えるときに、いま、一つ一つは点でありますけれども、一連のものとして考えるときに国民がやっぱり不安を感ずるわけです。いま総理からそういうことのないようにこの平和というものを守っていきたいという決意でありますから、私はそのとおりとっておきたいと思うのですが、ぜひひとつその点は右傾化にならぬようにお願いをしておきたいと思います。  それから続いてお聞きをしておきたいのは、きょうも私から日の丸の旗や君が代というのはこれ何なのかと聞いたら、事実たる慣習一つだというようなお話でありました。しかし、これもまたあるグループは、これを国歌にするとか、あるいは国旗にするとか、言うならば元号と同じように法制化をしたいという考え方がやはりあります。したがって、この機会に、事実たる慣習で何の不便もないとするならば、あえてそういうことは必要ないのじゃないかと思いますから、それらについての総理の見解をお聞きしておきます。
  139. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおり、そういうものを法制化するつもりは毛頭ございません。
  140. 山崎昇

    山崎昇君 次にお聞きをしておきたいのは、これは先ほど法制局長官と法理論でかなりやった問題でありますが、今度のこの元号法案というのは政令に対する包括委任であって、私ども政令の性格に多少法律的にはなじまないのじゃないかという見解をとっておって先ほど議論したわけでありますが、平行線でありました。そこで、総理にこの法律見解を改めて聞くのもどうかという気もいたしますが、しかし、施行する施行令的な政令案が何にもないものですから、したがって今度のこの法案のやり方に対して、総理は、出された側でありますから、当然だというお答えだろうかとも思いますけれども、改めて政令に包括委任をしたというやり方に対して総理の見解をこの機会に聞いておきたいと思います。
  141. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私の理解では、政令に包括委任はしておると思いません。法案において政令に委任しておる事項は、新元号の名称を定めること、それといつからその新元号とするかという二点でございまして、そのことを委任しておりますけれども、包括的に委任しておるというようには理解していないのであります。
  142. 山崎昇

    山崎昇君 次にお聞きをしておきたいのは、改元の手続について、総務長官からは、何人かの学識経験者にお願いして元号名等の候補を挙げてもらう、そしてそれをまた政府部内にあります総務長官でありますとか法制局長官でありますとかそういう少数の方々で議論されて、その上にまた国会の正副議長さん方とも相談されて、最終的には内閣でお決めになるというような説明になっているわけでありますが、これは一総務長官の見解として私どもお聞きをしたらいいのか、総理もまたそのようにこの改元の手続というものを進めていかれるというのか、改めて内閣を代表しての見解としてお聞きをしておきたいと思います。
  143. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) この法案のもとで新しい元号を選定するに当たりましては、事情の許す限り速やかに定めるという法の趣旨を体すると同時に、国民のためによい元号を選ぶということに留意していかなければならぬと考えております。  具体的な決定手続につきましては、仰せのとおり三原総務長官のもとで検討が進められておりまして、その構想の骨子は、これまでの国会審議の場において三原君から申し述べているとおりでございます。私としてもおおむねそのような考え方に全然異論を持っておりません。
  144. 山崎昇

    山崎昇君 それに関連をして、この改元手続というのがどうも私まだよくわからないのですが、これは改元に関する政令というようなものが出るのか、あるいは何かその他の方法でやられるというのか、この手続規定というのがどうも明確でございません。いまの御説明や総務長官の御説明では、最終的にはこれは内閣で決めるというのですから、当然そのとおりだと思うのですが、それは一体政令という形をとられるのか、あるいはその他の方法をとられるのか、どうも私にはまだわからぬものですから、その点についてのひとつ御見解をお願いしておきたい。
  145. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、法案におきまして政令に委任されておりますのは、新元号名を定めること、いつからその新元号にするかという二点でございます。したがって、改元の手続については政令で規定することは考えておりません。しかし、元号というものの重要性にかんがみまして、手続に関する規定につきましてはこれを明確に定めておくことが必要であり、またこれを一般国民にもわかるようにしておくことが望ましいと考えられますので、総理府におきましてそのような方向で措置することになろうかと考えております。
  146. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、政令総理府令か何かわかりませんが、ある意味で言うと法制的な手続というものをきちんとしておきたい、こういうふうに理解をしておきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  147. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いまも申し上げましたように、国民にもよくわかるように明確に定めておく必要がございますので、そういう方針できちんと処理していくようにしたいと思います。
  148. 山崎昇

    山崎昇君 次に総理にお聞きをしておきたいのは、元号と追号の関係についてお聞きをしておきたいと思うのです。この点もこの委員会でずいぶん議論になった論点の一つでございます。今日まで元号が追号になったというのは明治と大正と二つしかありません、最近では。したがいまして、この元号天皇の追号になるということになれば、これはまた問題が別ではないかというのでかなりな議論になっておりますが、追号との関係についてお聞きをしておきたいのです。なるほど、追号というのは、これは新しい天皇が皇室の行事として儀式として決めることだからこの元号法案とは直接関係ないんだという答弁もございましたけれども国民から言わせれば、一体昭和というのはそれじゃ天皇が死んだ場合にどこへ行くんだろうか、別な年号は出るけれども、それは天皇との関係はどうなっていくんだろうか、こういう点がまたやはり不明確であります。そういう意味で、元号と追号との関係についてお聞きをしておきたい。
  149. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 天皇の追号と元号との関係につきましては、制度上は元号天皇の追号となるというようなルールはないわけでございます。追号は天皇が先帝に対して贈られるものと承知しております。
  150. 山崎昇

    山崎昇君 法制的には総理の言うとおりなんです。それはもう何遍もここで議論になったわけなんです。しかし、どうも私どもから言うと、明治という元号は亡くなられた明治天皇ということになる。大正は大正天皇になる。昭和いま五十四年でありますが、これがあと何年続くかわかりませんけれども昭和天皇ということになっていくのではないかという議論も、そういう発言はありませんでしたけれども元号と追号との関係がやっぱり憲法上大変問題がある、皇室典範上でも問題があるというので大変議論になった点なんです。法制的に別ということは私も承知しています。しかし、これは皇室が決めることだからこの場で内閣がどうこう言えないという点もわからぬわけでもありませんが、重ねて総理にこの点はひとつお聞きをしておきたいと思います。
  151. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いまお答え申し上げている元号法案による元号と追号とは全然関係がないと承知いたしております。
  152. 山崎昇

    山崎昇君 最後の方がもやもやっとして春がすみみたいなもんでよくわかりませんでしたが、どうも私どもぴんとこない点があります。  次にお聞きをしておきたいのは、強制をしないということは何回も述べられましたし、また総理からも述べられました。しかし、一説では、公務員は職務命令でこの元号使用しないで窓口へ持ってきた場合にその方々に対して説得活動をするということになる。それによっては公務員法上その他で処分の対象にもなり得るというような法制局長官の答弁等もございまして、これがまた大変私は問題の存するところだと思うのです。一番困るのは窓口の公務員だと思うのです。私は、先ほども申し上げましたけれども、人それぞれ感情もありますから、ぶっきらぼうに言う人もいるし、丁寧に言う人もいるし、それはさまざまだと思いますね。たとえば、これは法律で決まっておりますからこれでなければ困りますと言うと、半強制的になっちゃう。ああそうですかって話は聞いているようで結局は聞かなかったというのは、懇切丁寧なようだけれども、これは結果からいえば強制になっちゃう。そういう意味で言うと、私は公務員というのは大変だと思います、これをこれから運用するに当たってですね。そこで、窓口におります公務員が説得のいかんによって処分の対象になるなんぞというがごときは、これは言語道断ではないかと私は思っております。そういう意味で、総理から、これからこれらの問題を扱う公務員に直接関連する問題でありますだけに、そんなことはないんだ、公務員に対してそんなことで処分するなんということは考えておらないんですと、そういう点をひとつ明確にしていただきたい、こう思うのですが、どうでしょうか。
  153. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いまやっていることと今後やろうとすることとそう変わることはないのでございまして、今後とも円滑に行政事務が処理できるように賢明な公務員の諸君はやってくれると思いますけれども、窓口業務に関与する職員の的確な理解、良識ある行動で処理していただくようにして問題が起こらないように政府として気をつけていきたいと思います。
  154. 山崎昇

    山崎昇君 問題が起こらないように気をつけるのは、総理もそうでありますが、窓口の職員が大変なんですね。ですから、私は、協力を求めるという責任が窓口の職員に集中されるようなことはあってはならぬし、そうはならぬと思うのです。そういう意味で、そんなことによって職員を処分するなんという考え方政府にはないんだと、総理大臣としてはないんだと、この点はひとつここで明確にしてほしいと思うのです。重ねてひとつ総理の見解をお聞きしたいと思います。
  155. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 協力を求める場合、しかし、そういうことは、私先ほど申しましたように、今後皆無であると、そういうことはないだろうというようなことを予想するわけじゃなくて、そういうこともあり得るだろうと思いますが、それだからといってそれをどうしても聞かなければならぬという義務は国民の側にないわけでございます。協力と強制とは違うんだということでございます。協力を求めるという関係は、政府と公務員との間でこれはひとつ協力を求めていこうじゃないかということ、そういうことはあり得ると思うのでございますけれども、しかし、それは何も国民を縛るわけではないわけでございますから、そのあたりはよく徹底させていきまして、問題が起こらぬように円滑な処理をできない相談ではないと思っております。
  156. 山崎昇

    山崎昇君 総理の答弁ですから、私は何かわかったようなわからぬような気もしますがお聞きをしておきたいと思うのですが、私は、ただ、全国に都道府県も入れ、東京都の区も入れますと、自治体というのは約三千五百くらいになるんですね。そうすると、自治体の長のあり方いかんによりましてはやっぱり相当なトラブルが起きないとは限らない。特に自治体の職員が大変だと思うのです、これはもう日常的に全部受け付ける窓口にいるわけでありますから。そして、その職務命令との関連いかんによっては どうも上司からいろいろなことをやられないとは限らない。そういう意味では、そういうことがないというふうに私は確信いたしますが、総理としても、そんなことはやらせない、そんなことで処分なんてあり得ないんだと、その点については重ねてでありますが明確にしてください。
  157. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 御指摘のような事態にならぬように徹底させます。
  158. 山崎昇

    山崎昇君 私は、大体ずっとこの委員会で討議されまして主題になりましたような論点について、いま総理ともう時間もまいりましたが整理をしたつもりであります。いずれにいたしましても、この元号法案はこれだけ国民の注目を集めて、また反対賛成もありますが、重要な問題であり、将来に向かって憲法が変わらない限りこの法律の改正ということはないのではないか。そういう意味ではこの法律の運用いかんによっては大変な事態を引き起こすであろう、こう判断する一人であります。どうか、政府では、あくまでも慎重にこの法律の運用に当たっていただきますように心からあなたに対して期待をし要請をして、社会党を代表しての質問を終えておきたいと思います。
  159. 黒柳明

    黒柳明君 私ども法案について賛成の立場ですけれども、いままで参考人あるいは地方聴聞会等に出まして、賛成の人の中でも、どうしてこんなに早く今国会で成立させなければならないのか、あるいは、先般大阪におきまして、これも賛成の人です、全面的に大平内閣に対して賛意を表しながらも、全くこの元号法案について認識がない、もうちょっと時間をかけて勉強もさしてもらいたいし、さらに私なんか政治に関心がある一人だけれども、それでもこういう状態である、まして国民はと、こういうこともおっしゃっていらっしゃいました。私たちも賛成になるまで非常に勉強もしましたし、各方面からの意見も聞きました。結局、法制化を含めての本案賛成なんですが、ただ、いま社会党の先生からあったように、今後の運営の仕方は非常に問題点も起こると思うのです。そこで、三原総務長官がいままでいろいろ苦労されましたが、物理的にあと二時間数十分たつとここで成立しまして、あした夜が明けて十時から一時間ちょっとたつと成立して、もう間もなく成立は目の前であります。総務長官としては苦労されたわけです。私たちもやっと解放されるんで、うれしいやら悲しいやら、悲喜こもごもなんです。  そこで、総務長官は、この次のことでまた具体的に考えをめぐらしている。国会審議の中でも、この次の具体案についても若干改元の手続等について出ました。ただし、全くその具体的なものは出ていないんです。どんな諮問機関をつくるのか、学識経験者あるいは文化人、評論家、いつごろつくるのかというようなことですね。元号については、いままでのパターンがあるので、簡単なもの、二字ぐらいなもの、国民理解を得られるもの、いままで使っていないものと、こういう常識的なものが出ました。しかしながら、この諮問機関がいつごろできるか、ここからやっぱり作業を始めると思うのですけれどもね。総理としても、長官を指揮する最高責任者ですから、あした成立した後ということではなくして、もうすでにいままでの時点において、その経験者を含めての国民の皆さん方に最大の御理解をいただくような方途というものを考えるそのスタートになる諮問機関というものについて、いつごろ設置するのか、このぐらいのめどぐらいはもういまの段階ではお考えになっているのではなかろうかと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  160. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、なぜこんなに急ぐのかということ……
  161. 黒柳明

    黒柳明君 そこは質問していない。それはいいです。賛成ですから、私ども
  162. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) それから第二の決め方の場合の審議機関等についてどう考えているかということでございますが、それは先ほどいみじくも黒柳先生御自身が言われたように、国民にわかりやすい、またいままでないことをできるだけ早く決めるということにしなければならぬと思うのでございます。総理府を中心にそういう趣旨に沿いましていま準備を心構えておると思います。成立させていただきましたならば、早速その方面の仕事を急いでいただくようにいたしたいと思っております。
  163. 黒柳明

    黒柳明君 それで、機関のあり方も、総務長官の話ですと、国民に広く理解をいただく、国会に、その責任者である衆参議長あたりにと、こんなお話があったのですが、どうなんでしょうか、もうちょっと権威がある独立機関。昔ですと、お上のごきげんを伺ってと、こんなこともありましたけれども、いま完全にこれは国民のための理解が得られるようなものを決定するのですから、そうなりましたら、もっと権限がある、何も政府のごきげんをうかがわなくて、あるいは衆参議長なんてそんなところの諮問を得なくても、もっと独立的な、衆参議長をメンバーに加えたっていいでしょう、決定権を持ったそういう機関をつくってこそ、本当に民主的な元号の設定の仕方というものを国民に対して理解を得る機関になるのじゃないですか。往々にして諮問機関とか審議機関なんというと、何か政府の御用機関のような感じがするんです。往々にしてじゃない、私の認識するのは大多数がそういう感じがします。ところが、この元号だけにつきましては、そうあっちゃいけないと思いますよ。これはもう日本の政治史上、大平内閣元号を制定したなんというのは、これはもういままでの各歴代内閣の及びもしないぐらい大平内閣の足跡というものは日本政治史上にさん然と輝くことは間違いない。と同時に、万が一これが制定後に下手なことがあったら、またマイナスも大きいと思いますよ。その面、私たちも賛成するという面で、大平さんが泥をかぶった日には公明党はたまりゃしません。そういうことからも、いままでの審議機関、諮問機関というのは、何か政府にものを言う、政府にごきげんをうかがうという感じが強かった、私はそういう感じが強かった。この元号につきましては、政府なんかもう意見を聞かない、むしろ政府も当然入ってもいいですよ、国会代表も入ってもいいですよ、その機関において独立で国民の多くの御意見も聞きながら認識を得るようなそういう独立機関、決定権がある機関にしたらどうなんですか、こういう考え方もあるのですけれども、総理、どうでしょう。
  164. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 元号法で法制化が認められますと、これによってどういう元号にするか、いつから実施するかというようなことを政令が決めるわけでございますが、その政令政府の責任においてこれをやるわけでございまして、特別の機関にこの法律が委任したわけではないと私は承知いたしております。  しかしながら、あなたが言われたように、事国民が日常常用してまいる元号である以上、全国民が納得するような手順を経てやらなけりゃならぬ、御意見を承るにしても納得のいく方々から聞くようにというようなことは、十分心して政府として対処して御期待にこたえなければならぬと思っております。
  165. 黒柳明

    黒柳明君 そこで、やっぱり大平総理の一言動というものが当然国民注視の的であったし、今後も言動に絡んであるいは政治姿勢にも絡んで問題になるんです。そこで、要望しておきたいこと、あるいは総理大臣も考えていただきたいことは、靖国参拝です。これは何も私は大平総理大臣が個人として参拝するんだ、公用車は乗ったんだ、これがいいとか悪いとか論議するつもりはないんです。ただ、くしくも総理が国民世論を二分しちゃいけないんだと、こうおっしゃったですね、ただいま。そうすると、総理の行動というものが要するに反対派にインパクトを与えて、さらにその反対を助長するような言動をとっちゃこれはうまくないことは間違いないんです。そこで、私は年に一回靖国神社へ行かなくったって、靖国神社から、大平、おまえ何をやっているんだと文句が来るわけじゃないと思いますし、そこのところは大局から政治判断をして、よく総理が言動というものをこれからも、まあ当分であるのか暫定的であるのか、中期的将来であるのか、やっぱり注意してかかっていただかないと、事すべて元号法案に原点を求められて、そして大平総理の行動と元号と結びつけられて、反対反対という可能性もあるのじゃないでしょうか。ひとつ、その点、いま申しましたように、靖国参拝について、どういう資格で何を使ってそれが賛成であるか反対であるかという論議をするのじゃなくしまして、この元号が成立した、さらに国民世論というものが二分されるのか、五対一になるのか、三対二になるのか、相当の期間というものはやっぱり分断され、反対意見がさらに行動に起こす可能性もある。それについて、総理が国民世論を分断しちゃいけないと言ったことがそのとおりならば、ひとつ行動も慎重にしていただきまして、文字どおり総理の言動というものは国民により深い理解を与えるための慎重にも慎重な政治配慮を考えていただかないとうまくない、いたずらに反対派の意識、行動を高めるだけだと、こう思いますのですが、ひとついかがでしょう。年に一遍の伊勢神宮へお参りすることがいいとか悪いとか、靖国神社へ行くことがいいとか悪いとか、それだけのことじゃないと思いますよ、この元号と総理との兼ね合いというものは。その点、ひとつ慎重な政治配慮をしていただきたいと思うのですが、いかがです。
  166. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 民主主義を選択している日本でございまして、いろいろな意見があることは結構なことと思うのであります。そういういろいろな意見がある中で政府一つでございますし、総理大臣は一人でございまして、どういうように行動すること、どういうように行動しないか、それはやはり一番国民のコンセンサスに近いところを考えながらやるべきでないかと私は思っておるわけでございまして、いま黒柳さんから御注意をいただきましたことは十分肝に銘じまして慎重に行動してまいるつもりです。
  167. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、いまの靖国神社参拝も、国民のコンセンサス、より多くの国民意見に近いと、こういう御判断でやられたということだと思います。――あれですか、総理大臣はクリスチャンで、洗礼は受けたクリスチャンですか。洗礼というのは受けられたんですか。済みません、元号から変な方へ飛んじゃって。いつもこれを聞きたい聞きたいと思って、いまいい機会だから、洗礼は受けられたんですか。
  168. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 洗礼を受けておりますからクリスチャンであるということになっております。
  169. 黒柳明

    黒柳明君 済みません、変な質問で。洗礼を受けられたクリスチャンが他宗派にお参りしたら破門なんじゃないでしょうか、キリスト教というのは。まあこれは別に論議するつもりはありません。私の宗教知識の中で出た疑問でありますので、別に論議するつもりはありません。  そこで、また今後の問題についてお伺いしたいのですけれども元号法案も非常に簡明なものでありまして、むしろあれの何百倍というものの意見が闘わされたわけですよ。政令もこれから決められるでしょう。ただ、元号を制定されましてマイナス面がまだ――地方自治体でも元号に対して賛成決議をしましたね。大阪にいても聞きました。ところが、賛成決議はしたんですけど認識がない。要するに審議はしてないというんですよ。ただあるところから陳情が来たから、それに対して賛成を求めて、賛成が多かったから賛成決議、こういうことなんだと。それに対して私はいろいろのマイナス点を言ったんです。これから検討して、私ここで論議しなかったので大平総理、隣の長官に聞きたいのですが、たとえばパスポート。国内で元号を使うのはいいんですが、外国では元号は通用しない。当然パスポートなんか西暦になっているんです。ところが、まあいろいろな例があるんですけれども、自動車免許証、これはもう当然国内のものですから。ところが、外国に行ってインターナショナルの免許証、これは免許証じゃなくて、こちらじゃサーティフィケート、向こうへ行くとパーミットですね、許可証。そのときこちらは通用しないわけですよ、当然。それに対して公文書をもらうと一万三千円かかる、こういう手続があるわけですね。これは元号を制定したからということじゃないですよ。いままでもあるわけですよ。元号を制定して当然その延長線であるわけですよ。元号問題と若干離れます。ですけど、外国に行きまして国内の自動車免許証は通用しない。国際免許証を取るためには公文書をつける。その中で特に外国の役人がわからないのは元号だというわけですよ、元号。あれが全くわからない。そういうことなんですね。その元号だけの裏づけじゃないんです、国内の自動車免許証の裏づけをとるために、一万三千円の公文書を手数料を払って持っていくわけです。こういう面は、今後、どうでしょうか、検討してできればなくすということになれば、元号制定から、従来そういう免許証で金がかかったものがこの際は非常に考慮してくれたという面で、国民の、あるいはそういう国際的なインターナショナルな活躍をしている方には、むしろこの法制化を契機にしてそういうマイナス面について政府は考慮してくれたと。これは学者の人には非常に多いんです、こういう意見が。これは総務長官はこういうお話をお聞きになっていらっしゃるでしょうから、総理は初めてかとは思いますけれども一つそういうマイナス点があるんです。いままでもあったんです。その点、ひとつ、この元号制定で国民世論が二分している、反対の方が相当いる、しかも有識者で自動車免許証一つを外国に持っていくだけでも非常に金がかかってという問題があるので、そこらあたりも元号制定と同時に政府が多分の考慮を払っていただく。そうなると、この反対ということについても、あながちそうじゃないなと、こういう面が改善されたなと、こういうこともあるのじゃないでしょうか。ひとつ、総理大臣が総務長官に命じていただきまして、各省庁に命じていただきまして、いま言ったことも含めて、この際国民の皆さん方の理解と同時に、いままで習慣的に来たマイナス面もよく洗い直して、それを国民の皆さん方にプラスになるようにしていけば、あながち元号反対とばかり言っていられないのじゃないでしょうか。政府の姿勢は元号制定によって一歩国民の方向へ向かってきたと、こういうことにもなるのじゃないんでしょうか。いかがです、総理。
  170. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) そういった点、よく検討させます。
  171. 黒柳明

    黒柳明君 そういった点なんてそう簡単に言わないで。それじゃ、総務長官、どうですか、いまの。
  172. 三原朝雄

    ○国務大臣(三原朝雄君) これを機会に、そうした国際面において非常に不便を与え、また経済面にも負担をかけておるというような、いま一例を挙げられましたが、そういう点について、具体的にそういう事案がございますれば、改革をしてもらうように各省庁連絡をして対処してまいりたいと思います。
  173. 黒柳明

    黒柳明君 これはいままで続いたことですし、収入の問題もありますし、ひとつ総務長官が言って各省庁がそのとおりというわけにはむずかしいかと思いますけれども、いまも申しましたように、具体的な提案を、有識者、国際的に活動するまあインテリ層と言っちゃ失礼ですけれども、そういう人からもう非常に多大の意見がありました。この点ぜひとも御考慮に入れていただきたい。  それからいろいろあるんですが、たとえば、先ほど、窓口になる公務員の方が非常に苦慮をされると。そのとおりだと思うのです。それに対して懲罰なんかさせないようにと。これはそのとおりだと思うのですが、たとえば今後も窓口の手続で、ここでもさんざん論議されたんですが、西暦で言ったのが事務の関係で一本化で元号で返ってくる。そうすると、訴訟という問題が起こるですよ、きっと。可能性があると思いますよ。もうこれはあした十一時ごろ成立すれば、もう十二時に訴訟を起こそうなんて待っている人が中にいるかと思いますよ。それに対して総務長官が被告になりまして、まあ共犯に総理大臣がなるのか、そうなる可能性が十二分にあるのじゃないですか。これはもう冗談事じゃないと思います。当然そんなことを法制局長官も考えていなきゃならない。総理大臣もそういう局面に対処する可能性があるのじゃないですか。まあいろいろな国民運動、いいか悪いか別にしまして、ささやかな、あるいは真剣な反対運動というものがありました。ただ単に体制に盾を突くというだけの運動じゃない場合もありました。あるいはいやがらせの運動もあったでしょう。まあこれがどっちであるかというのはわかりません。しかしながら、自由なんだと。窓口から向こうは自由じゃないんですよ。確かに一本化されているんですよ。そこで、訴訟に持ち込むと、こういう可能性がもう目の前に出ていると、こう思うのですが、どうですか、総理大臣、その場合には受けて立って勝つ自信がありますか。
  174. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) しばしば申し上げておりますように、国民の方が窓口へお出しになる文書紀年法は、これは西暦であっても当然適法なものとして受理します。受理しますが、役所でつくる公文書は、これは事務の統一的なあるいは効率的な運用のために元号で統一して公簿はつくります。そうすると、おっしゃる意味は、その公簿の謄抄本を国民が受け取った場合に、当初西暦を用いて届け出をしたのにかかわらず、謄抄本としては元号の表示が返ってくる、交付される、そこで訴訟になるじゃないかというようなお話ですが、それは謄本なんですから、原本と同じものでなければこれは法律的に謄本とは言えないわけなんで、これはいたし方がないんで、それでこの前も申しましたように、戸籍のような場合はこれは同一人でございますからそういう問題が起きますが、たとえば訴訟で原告は西暦を用いたと。ところが、被告は元号で答弁書を書いたと。近ごろのようにマンモス訴訟になりまして、だれとだれとだれは西暦を用いた、だれとだれとだれは元号で書いたというようなことになりますと、これはもう裁判所の事務としてはやり切れないわけなんで、恐らく裁判所も判決を書くときには判決の原本は恐らく元号でお書きになるのであろうと思います。そうすれば、当事者に送達される判決の正本はこれはやはり元号で表示された判決書が交付されるということになるわけなんで、その辺はやはり事務の統一的な処理という観点からある程度しんぼうしていただかなければならぬのではなかろうかというふうに私は考えるわけでございます。
  175. 黒柳明

    黒柳明君 それは法制局長官の考えで、裁判の判決までも勝ちの方でもう結論づけちゃっていますけれども、実際に訴訟され裁判がずっと上級になった場合どういう判決を下すかわかりません。ですけれども、今後の問題としまして、政府側は事務の一本化はあたりまえだと考え、あるいは法制局長官がそんなことがあったってそんなことはもう当たりまえ、こちらが勝つに決まっているじゃないかと思っていましても、現実問題としてこれからはやっぱりそういう行動が起こる。その場合には総務長官なり総理が受けて立たざるを得ない立場であり、それも覚悟の上でこういうものを国会において政府提案して採決するわけですから、ですから私たちも賛成に回るわけです。それに対して最高責任者である総理がどういう意思を持っているのかということまではっきりしませんと、私たち賛成に回った者は心持ちだってふわふわしちゃうですよ。法制局長官のとおり裁判がいくかどうかわからない。そのときに長官だってどういう身分になっているかわかりゃしないじゃないですか。反対派になって総理を突き上げる立場になっているかわかりませんよ。そこで、総理は、今後起こるであろう一番シビアな問題について、それにはどうしてもまあ厳しい言葉で言えば腹を固めて対処しなきゃならなかろうと、こういう意味で、総理、こういう問題が起こったときには堂々と受けて立ってそうして訴訟で闘っていくんだと、こういう御用意はあるんでしょうねと、こう失礼なことかと思いますが確認をさしていただきたいわけです。
  176. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 大変御心配いただいておるようですけれども、現在の事態と今度法案が通りまして成立しましたときの事態と私は少しも変わらないと思うのでございまして、またこれを強制するものでも決してないわけでございますので、めんどうな法律問題が起こるということは私にちょっと理解しにくいのでございますけれども、しかし、あなたが憂慮されおるような事態があるかもしれませんで、そういう場合はこれは逃げ隠れするわけにまいりません。それは政府として受けてきちんとした処理をしてまいるつもりでございますが、これはこの法案の趣旨を踏まえて、あくまでこれは強制するものではないという政府の立場を踏まえて対処してまいります。
  177. 黒柳明

    黒柳明君 時間がありませんので、最後に、わが党の主張でありまして、長官は非常に前向きに踰年制度について取り組む取り組むがもう間もなく成立の時期を迎えますが、成立してもその後にやっぱり御検討いただく問題かと思うのですが、わが党の最後の締めくくりの質問でありますので、元号の踰年制につきまして今後ともひとつ真剣に考えていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。
  178. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 皇位の継承があった場合におきまして改元するというのが法の内容でございます。具体的にその場合どうするかについては、先ほどもお話し申し上げましたように、事情の許す限り速やかに改元するという法律の趣旨を踏まえまして、公明党の主張されている踰年改元などの御意見を参考として、皇位継承の時期、国民の感情、改元に伴う国民生活への影響等各般の事情を考慮いたしまして今後慎重に決定したいと考えております。
  179. 山中郁子

    山中郁子君 四月二十七日の本会議元号法案の趣旨説明が行われました際に、私は総理に靖国参拝問題についてお伺いをいたしました。その時点でA級戦犯十四名が合祀されているということが明らかになった、そしてその上でなおかつ靖国神社に参拝されたことはA級戦犯の戦争犯罪を免罪するものであって、侵略戦争の肯定につながるものではないか、そういう立場に立っているのかどうかということをお伺いしました。その際総理は、国の犠牲になられた方々の霊に対して私人として参拝したと、それからまたいろいろな人たちが一緒になっているから分けて考えることはできないんだという趣旨の答弁をされましたけれども、それは一種のはぐらかしであって、私がお尋ねをしたのは、A級戦犯の戦争犯罪を免罪するのか、この侵略戦争を肯定するのか、そういう立場に立たれるのか、このことをお尋ねしたので、この機会にぜひはっきりしたお考えを伺っておきたいと思います。
  180. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 第二次世界戦争、わが国におきまして大東亜戦争でございますが、これをどう見るかという見方につきましてはいろいろな見方がありまして、これの評価は後世の歴史が決めていくものではないかと考えております。ただ、太平洋戦争、大東亜戦争への反省からわれわれは戦後平和に徹することがわが国の基本の国策でなければならないし、そういうことで憲法も制定されておるわけでございまするので、その精神を踏まえて公私にわたった生活を律してまいるということがわれわれの任務であろうと考えております。私はそういう考えで、先般靖国神社に参拝いたしましたのは、お国に殉じました多くの方々の霊に対して、あなたにもお答えしたように、感謝と哀悼の念を純粋に捧げたものでございまして、それは別にとがめられるべきことであるとは考えておりません。
  181. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ、A級戦犯の戦争犯罪を免罪にするということではないと、このようにその立場にちゃんと立っていらっしゃると、こういうことですか。
  182. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) わが国平和主義に徹して戦後経営をやらなければならぬということは申し上げたわけでございますが、戦争犯罪人並びに大東亜戦争に対する具体的な措置をどうするかという制度は別に日本の法制の上であるとは私は承知いたしていないのであります。今後の日本国家の運営については新憲法精神にのっとってその条章に従ってやるんだということがわれわれの義務であると心得ておるわけでございまして、A級戦犯あるいは大東亜戦争というものに対する審判は歴史がいたすであろうというように私は考えております。
  183. 山中郁子

    山中郁子君 先ほど、日本の国民は良識ある平衡感覚を持っているから開放の時代と収斂の時代とというふうにおっしゃいました。私は重大な総理のお考えの問題がそこに含まれているというように承りました。つまり、大正デモクラシーの後を受けた収斂の時代、それはアジアの数千万の人人の命を犠牲にした侵略戦争です。それが日本人の平衡感覚を発揮した収斂の時代だなどということが、いま総理がA級戦犯のあの戦争犯罪を免罪にしないということをこの国会ではっきり明言しないということと深くかかわっている。だからこそ、この元号法案に関して、多くの国民の皆さんが、私どももこの委員会で数々の問題を提起いたしましたけれども、幾ら政府が何十回、何千回目を酸っぱくして昔の軍国主義に引き戻すものではない、天皇元首あるいは憲法改悪に導き入れるものではない、強制するものではないと言っても、そこにいま総理が言われた考え方の本質がかかわっているということを私は申し上げざるを得ません。  もう一点、靖国参拝の問題について伺います。その本会議質問におきましても私はクリスチャンである総理がなぜ参拝されたのかということを伺いました。私個人の信仰については私にお任せくださいとこれも総理ははぐらかされましたけれども、その後たとえば朝日新聞の五月二十二日にクリスチャン議員団が元号法案やあるいは靖国参拝は背教であるというふうにして迫るというような記事が出ておりますけれども、まあどのようにして呼びかけがあったのか、迫られたのか、私は存じませんが、これが結局私個人の問題じゃない、つまり総理の言う個人の信仰の問題じゃないということは、私がそこで問題にしてまいりましたし、いまもこの点について大きな問題だと思いますことは、いままでたとえば三木総理あるいは福田総理の時代に、靖国参拝を個人の信仰心のあらわれであるということを一つ理由として私人の行為であると、こうおっしゃってこられたわけです。それにもかかわらず、クリスチャンである総理が、御自分の信仰に反してまで靖国に参拝される。しかも、かつて法制局が見解として出された公用車は使わないとか、あるいは総理大臣として記帳はしないとか、そうしたことにも反して総理大臣としての記帳もされ、あるいはまた公用車も使われる。さまざまな言い逃れをしてきましたけれども、現実の問題として公的な立場で靖国参拝をされたということは私は余りにも明らかだと思います。御自分の信仰とのかかわり、現実に法制局が見解を示されたことに反していらっしゃる今度の靖国参拝の問題について総理の見解をお伺いいたします。
  184. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) どういう神様を信仰するかという問題は個人の問題でございまして、あなたのお指図は受けないつもりでございます。問題は、多くの戦争で犠牲になられた方々が合祀されておるということでございますので、それに対しまして私が敬虔な気持ちで参拝をするということは私は決して間違っていないと思うのであります。これにはいろいろな批判もございますけれども、先ほども山崎さんにもお答え申し上げましたように、何をすべきか、何をすべきでないかということを私は公私にわたりましていろいろ考えていまして、一番国民の多くの方に御理解がいただけるような選択をその時点時点でやりながらやってまいる以外に分別がないわけでございます。その場合にどういう車を使うかということ、どういう署名をするかというような点、政府でも十分検討をお願いしたわけでございますけれども、まずまずいままでの慣例に従ってやっておくということが一番支障がないのではないかと考えたにすぎないわけでございまして、国会で御論議をいただくような問題と私は考えておりません。
  185. 山中郁子

    山中郁子君 国民の声を謙虚に聞くべきであるということは私は申し上げておきます。  元号法案につきまして、内閣委員会審議の中でも、あるいは四月二十七日の本会議の私の質問に対しましても、総理は、元号法案は改元のルールを決めるにすぎない、皇位継承を改元のきっかけにするにすぎないということをいろいろさまざまな方が繰り返し答弁をされています。ところが、一方では、たとえば三原総務長官が、国民理解や心情が天皇にかかわっているんだから天皇と強くつながっているのは否定できない、だから一世一元の制度を考えたのだというようなこともおっしゃっていられる。これはおっしゃっておられます。だから、私たちは関係ないどころか、いろいろな意味で強く結びついているではないか、現憲法国民主権のもとでの憲法の理念に反するではないかということを長時間かけて問題にしてきたところです。まずこの点について、一切天皇とは関係がないんだと、単に皇位継承を改元のきっかけにする、改元のルールを決めるにすぎないんだということを再度言明されるかどうか、総理の見解をお尋ねいたします。
  186. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先ほど山崎さんにもお答え申し上げましたように、二つの観点から天皇制とかかわり合いを持っておると思うのです。一つは、新憲法が施行されて以来三十年間新憲法のもとにおきましてこの昭和元号国民の間で定着して使用されてまいったという事実があるということでございます。支障なくそういう事実が生きてきておったということを踏まえて考えてよろしいのではないか。第二は、新憲法では天皇は国家統合の象徴であるというお立場をとられておるわけでございますから、その御在位とそれから元号とを関連させることが憲法に違反するとも思いませんし、むしろ憲法の趣旨に素直に沿うておるゆえんじゃないかと。そういう意味天皇制と全然関係がないということを私申し上げておるつもりはないんです。
  187. 山中郁子

    山中郁子君 象徴天皇制のもとでできるんだと、おのずとそういう関係が出てくるんだと、こうおっしゃいます。そういう論理だと、天皇の権限でやることでなければ、多くの問題について天皇と結びついてさまざまな道徳律を国民に強いることができるということに発展していくんじゃないかということを私は委員会でもその点を解明を迫りましたけれども政府の答弁は明確に示されませんでした。たとえば、大平総理もよく御承知だと思いますが、戦争中天皇の写真を奉安殿というところに飾りまして、そして小学生にそれを拝ませるわけですわね。これは、調べましたら、明治二十四年に文部省令四号ということで「紀元節、天長節等のお祭の際、校長、生徒などは左の儀式を行うべし」となっていて「天皇、皇后の御えい」これは写真ですね「に対し奉り最敬礼を行い、かつ両陛下の万才を奉祝す」と、こういうことがちゃんと文部省令でできていたわけですね。それに基づいて私らそれをやらされていたわけですけれども、そういう理屈からいえば、象徴天皇だったら、天皇が直接権限を持たなければ、象徴たる天皇に対して小学生におじぎをさせるとか、そういうことだって理屈でできることになるではないか。私は、象徴天皇だから改元の問題も皇位継承をきっかけとしてできるんだという理屈が、大きなそういう問題点に広がっていく、エスカレートしていくという問題点を指摘いたしました。この点についての見解をお伺いいたします。
  188. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 天皇を利用する、あるいは天皇の地位に変改を加えるとか、そういうようなことは一切考えていないわけでございまして、したがってこの法律の運用を注意深く今後も見守っていただきたいと思うのでございます。かりそめにもそんなことがございますならば、それは許されないことでございますので、政府は厳重に運用上注意してまいりたいと思います。
  189. 山中郁子

    山中郁子君 天皇に結びつかないといいましても、審議経過でも明らかになったのですけれども一つは皇統譜令の問題がございます。皇統譜令の中に天皇の戸籍というべき大統譜があって、その中に一つの項目として登録すべき事項として元号名、それから改元の年月日を登録するようになっているのです。私はこれはずいぶん政府に見解をただしました。政府は、たとえば、現憲法にはなじまないと思うとか、憲法及び皇室典範との関係も配慮し速やかに結論を出したいとか、こういう答弁を宮内庁、総務長官、法制局長官、それぞれ最終的になさいました。私は、これは天皇元号が全く一体となる基本的な問題として重視をしております。この点を政府がちゃんとこの元号法案審議の過程で削除をするということを国会国民に対して言明されなければ、この問題についての政府の責任が果たせないと私は思っておりますので、改めてこの機会に総理大臣の、この問題はちゃんと削除をするということを確認をしていただきたいと思います。
  190. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 前回にも私からお答えしましたように、現在の皇統譜令は新憲法施行早早の間につくりましたので、それで当分の間従前の皇統譜令の例によるというかっこうになっております。それで、その皇統譜令のもとになりますのは、ただいま御指摘になりましたように、皇室典範の中の天皇及び皇族の身分に関する事項を皇統譜に登録すると、こうなっておって、それを受けて皇統譜令ができているわけでございますので、いまの天皇及び皇族の身分にかかわりのないことは、これは皇統譜令の登録事項にはなじまないというふうに私は考えておる次第でございます。
  191. 山中郁子

    山中郁子君 総理の見解を伺います。
  192. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま法制局長官がお答え申し上げたとおり心得ております。
  193. 山中郁子

    山中郁子君 ちっともはっきりしていないじゃないですか。だから私は問題にしているのです。  それと、追号の問題もあります。先ほども御論議がありましたけれども、端的にお伺いいたしますけれども、いままでの審議経過の中で、皇室が決めることである、新しい天皇が決めることであると。しかし、いまの天皇が亡くなられて昭和天皇というふうに絶対にならないということはあり得ない。明治、大正の慣習も尊重して対処していきたいと、こうおっしゃっているわけです。つまり、まさに元号が追号になるということは十分あり得るという観点で答弁がされていると私は理解をいたしました。この点については、まさに天皇元号が一体になるものではないか、いまの皇統譜令の問題と関連して、この点についての総理の見解をお伺いいたします。
  194. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) これは先ほどもお答え申し上げたつもりでございますけれども元号と追号とは全然これは別問題でございまして、追号の方は天皇が先帝に対して贈られるものでございます。政府のかかわるところではございません。
  195. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ、重ねて端的に伺いますが、いまの天皇が亡くなられたら、昭和天皇となることは絶対にないとおっしゃるわけですか。結びつきを聞いているのです。
  196. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) それは先のことでございまして、どのような態度を天皇がおとりになりますか、まだいまのところわかりません。
  197. 山中郁子

    山中郁子君 慣習を尊重されて対処するとすれば、当然そういうふうになるんです。だから、それが問題だということを、国民の声と、それで元号天皇の重要な問題点として論議されてきたということを私は重ねて申し上げておきます。  もう一つ強制問題について一点だけ伺います。公務員に対する職務命令があり得るということを何回も言われてきました。元号を使えとか、それから国民元号を使うよう協力を求めよなどという一般的包括的な職務命令を出せる、これに従わぬ場合は懲戒処分もなし得るなどですね、そういうことの答弁がいままでされていました。片方では使用は絶対に強制はしないんです、大丈夫なんですということを何回もおっしゃる。この辺が一つの大きな解明されない問題として残されています。私は総理に御確認をいただきたいのですけれども、いかなる意味においても元号使用について公務員にそうした不当な職務命令を出すことは絶対にしないということをいま約束をしていただけるのかどうか。これがやはり強制問題についての政府のちゃんとした、本当に強制しないのかという姿勢の証明になりますので、お答えをいただきたい。
  198. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 行政事務をやってまいる上におきまして、仕事の簡素化効率化を図る上におきまして協力を求めていこうじゃないかというようなことを行政府部内におきまして話し合って国民の協力を求めるようなことは、私はないとは言えぬと思います。その場合、しかし、それに随順しなければならぬという義務は国民にはないわけでございます。国民と第一線の行政事務に携わる方々との間にトラブルが起こらぬようにこれは十分配慮してまいるということは先ほど山崎さんにもお答えしたとおりでございますが、全然協力するようなことをお願いすることがないとここで断言することは、いささか行き過ぎじゃなかろうかと考えております。
  199. 山中郁子

    山中郁子君 国会審議を通じて、いまの強制問題、あるいは天皇との結びつき、憲法の理念に反する問題の惹起されてきている数々のことが出てきて、国民的な批判や疑問や危惧というものはこの審議を通じて高まってきているのが現状で、国論を大きく分けた議論になっております。私は、こういうときにあって、国会国民的な合意が未成熟のままに、合意がなされないままに、多数をたのんでこの元号法案を強行して成立させるということは、後世にも大きな禍根を残すことであるし、信頼と合意ということをおっしゃるならば大平内閣としてすべきことではないと私は考えております。いずれにいたしましても、こうした審議の過程を通じて、いま政治の行く末の問題、つまり戦時立法を初めとする一連の思想反動攻勢、こういうものの一環になるそういう重要な内容を持っているからこそ大きな議論がわき起こっているんだということを最後に私は指摘をいたしまして、質問を終わります。
  200. 向井長年

    向井長年君 総理、本院におきましては長時間にわたってこの元号法案審議してまいりましたが、その間にいろいろと意見なり質問が出ておる中で、ただいまも出ておりますように、靖国問題が非常にいろいろと論議されるわけです。これはあくまでも宗教法人であるという立場、それから憲法の二十条、これによって疑惑が持たれるという中で、先ほどからも出ておりますように、総理が参拝した問題も出てみたり、いろいろ疑惑を招いておるわけです。そうかといって、国民感情としては、少なくとも国に殉死した人たちを国が守るのはあたりまえではないかという国民感情は多くの国民は持っておりますよ。私自身も持っているわけです。ところが、憲法二十条の精神から考えて、これはできない。そうなれば、政府はこれに対応して、どう靖国の問題をとらえていくかという問題を今後問題にしなきゃならぬのではないか。先般、私はこの問題について三原長官にお聞きいたしましたところが、三原長官は、なるほど国民感情はそういう感情がありましょう、したがって政府としても慎重に検討すべき貴重な意見ですと、こういう答弁があったように思うのですね。したがって、私は、この問題について若干提起いたしました問題は、現在靖国神社という一宗教法人になっているから、これは国が祭れない、あるいは国の援助もできない、あるいは総理が参るとすれば疑惑を招くとか、あるいは天皇さんも参れないとか、こういう問題がいま国民の中に何と申しますか感情と含めてぎくしゃくしておるのじゃないかと、こう思います。したがって、この際、政府が検討されることは、少なくとも靖国神社というのを改めて、そして言うならば靖国の森というか、靖国の廟というか、こういう形において、国民の先輩諸君が国に殉職したこの人たちを国民総意の中から祭る、あるいはまた自由にお参りできると、こういう形が望ましいのじゃないかと思うのですね。これは国際的に見てもそうでしょう。われわれが議長に随行して行った場合においても、どの国に行っても、無名戦士の墓でしょうか、そういうところへそれぞれ皆花輪を持ってお参りしておりますね。わが国はそれはできないんですね、現状の中では。したがって、こういう問題について、私は、靖国神社を改め、いまの宗教法人をなくして、新しく国が森なり廟なり、あるいは場合によっては無名戦士の墓と申しますか、こういう形で祭る方をとらなければならぬ時期がそろそろ来ているのではないかと、こういう感じがいたします。なるほど八月十五日に戦没者の慰霊祭があるようでございますけれども国民はそういう形でそれだけで受けとめていないのですよね。したがって、私はこの問題について政府の見解を聞きたいのですが、これは当然そういう切り分けた形でやることによって国民感情にこたえられるのではないか、こういう感じがいたしますが、その点総理はどう考えられますか。
  201. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 靖国神社の国家護持の問題につきましては、過去数回にわたりまして議員提案が国会になされてまいりましたけれども成立を見なかった経緯がありますことは、向井さんも御承知のとおりでございます。これにつきましては、いろいろなあなたがいまお示しになったような御意見も有力な意見としてあることも私は承知いたしておりますが、これがまだコンセンサスを形成するまでには至っていないようでございます。この問題につきましては、世論の動向を十分踏まえて今後慎重に対処していかなければならぬ問題であると思っております。
  202. 向井長年

    向井長年君 なるほど慎重に対処するなり世論の動向を見なければならぬと思いますが、国民はすべて、恐らく素朴に考えるならば、自分たちのおやじ、あるいはきょうだい、そういう人たちが国に召されて亡くなられた、これは国が祭ってくれるのがあたりまえじゃないかという感じは大多数持っていますよ。大多数というか、ほとんどじゃないですか、感情としては。しかし、憲法二十条がございますから、これは事実われわれもできないということも知っておりますし、あるいは国民もそろそろそれを知りつつあると思うのですね。それにこたえることは、やはり政府自身が腰を上げて、いま申しました趣旨に従って祭れる形の検討をそろそろしなければならぬ。ただ国会で論議してくださいだけではいかぬと思うのですね。その点はやはり前向きで政府自身がこの問題について検討を始める、こういうことでなければならぬと思いますが、いかがですか。
  203. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま御提示になりましたような、宗教法人性をだんだんなくしてまいる形において解決することは一つの有力な方法でないかというような御提案でございますが、そういう御意見もあることは承知いたしておりますが、また一方においてそういうことをすべきでないという議論も非常に強いわけでございまして、まだ統一した、熟したところまで行っておるように私には受け取れないのでございますけれども、せっかくの御提案でございます。政府といたしましては、先ほどお答え申し上げましたように、世論の動向を踏まえましてこの問題については慎重に対処してまいることにいたします。
  204. 向井長年

    向井長年君 大体検討されるようですからこの問題は私は結構だと思いますが、反対という人たちがおるというのは私も知っておりますよ。やっぱりあの名残ある靖国神社を残したいという遺族会の皆さんなり、あるいは場合によっては宗教団体の皆さんもおるかもわかりません。しかし、これは、気持ちはわかりますけれども国民総意の中から決めなければならぬ問題だと思いますから、これは先ほど言われたように慎重にひとつ検討をお願いいたしたいと思います。  そこで、もう一点、先ほどから論議されておりますように、元号法制化について国論が二分しておるというような意見がどんどん出ておりますが、なるほど反対賛成となれば二分になりますけれども、必ずしも私は数字的に二分だとは考えていないのですよ。確かに、一部においては、法制化を将来天皇制復活に結びつけようとする一部右翼団体があることも知っておりますよ。あるいはまた、一方においては、法制化が一世一元という皇位継承の中で決められるという中で、いまの一連の経過の方向である、あるいは憲法精神に反する、こういう形での反対論者もおることもこれ事実であります。そういう形で、いま二つの論がこの法案審議過程において各所でちまたでそういう運動が行われておる。したがって、国民は、悪い法案だろうかどうなんだという感じで、素朴な国民をかえって惑わしているのじゃないかという感じがするんですよ。一般国民は私は素朴だと思います。いま政府が提案されておるように、これは長い慣習と申しますか、生活に溶け込んでおる。したがって、その法律根拠があるかないかということは知らないのですよ。いまわれわれが法律根拠をつくろうとする、あるいは今後の改元をこういうところにつくろうとする、こういうことが十分国民に知らしめられていないというか、理解されていないのが現状だと思うのです。しかしながら、大多数の諸君は、元号はあるべきだと。そしてまた、これに対して説明すればわかる。だから、いかにも国論が二分しておるような意見が出ておりますけれども、私は、そういう数字的な二分じゃない。なるほど反対賛成の二分はありますけれども。そういう立場から、政府は、特にそういう誤解、曲解、これを招かないように、今後この法案が通った後、総理は、一連の経過、問題を十分頭に置きつつこの法の運用を図っていただきたい、こう私は思いますが、いかがでしょうか。
  205. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私も、数字的に二分されておるとかイデオロギー的に二分されておるとかいうものではないと思うのでございまして、事実を踏まえて素直に改元のルールだけを国民を代表する国会でお決めいただくということを考えておるにすぎないわけでございまして、そういう態度に徹しまして現実の慎重な運用を通じて国民理解を得たいと、そのように考えております。
  206. 森田重郎

    森田重郎君 賛否両論の伯仲する中で私はあえて賛成派の立場で幾つかの点を総理に御質問させていただきたいと思います。  その前に、大平総理、連日の激職大変御苦労さまでございます。敬意を表します。  実は、私は、前回の委員会でも申し上げたのでございますけれども、またまたここで賛成論者の立場に立ちましていささか同じようなことを申し上げることにつきまして若干汗顔の至りなんでございますけれども、およそ自国の歴史文化伝統、こういうものに誇りを持つということは、これは世界各国において大体共通した現象じゃないかと、こういうことでございます。どこの国に行きましても国旗というものがあり、国歌というものがあり、同時にまたその国を象徴するような民族衣装というものもございましょう。そういうものを何らかの形で若いゼネレーションの方々に継承させていくというのは、やはり日本人、日本国民としての責務でもあろうかと思うのです。実は、先ほど来、市川先生が、たまたま私が前回の委員会におきまして、ちょうど九歳と十一歳と十六歳と十九歳の青年子女に対しまして、少年でございましょうか、年を聞いた、その例を三原長官がおとりになって、それに対する市川先生の御発言が、それは親から強制された、親から教えられたものだからと、こういうようなお話がございましたけれども、政治というのは、やはり現実の面をとらえ、現実の場からスタートするというのがあえて政治ではなかろうかと、かように思う者の一人でございます。したがいまして、九歳の子供、十一歳の子供らが無雑作に昭和生まれだと言って出ることは、あながち、仮にそれは親から教えられ、また親から言われたことであっても、それが現実の私は言うなれば国民、そしてまた小さい子供たちにも定着したところの一つ考え方ではなかろうかと、かような意味であえて賛成の立場をとらせていただいているわけでございますけれども、かといって、私自身も元号そのものの存続には賛成論者の一人でございますけれども、それをあえて法制化するかどうかということ自体につきましては、みずから顧みて大変苦慮をいたした者の実は一人なんでございます。  そこで、総理に幾つかの点をお尋ね申し上げたいと思うのでございますけれども、まず総理の本元号法案に対します基本的な姿勢とともにその考え方をお聞かせ賜りたいのでございますが、このことは、私、実は本法案が提案をされます折におきまして、総理みずからが顧みて、この法案の提案の時期、あるいは内容、あるいは目的、そういったものについて、多少時期的に、あるいはまた内容の面から、さらにはまた地方自治体に対する行政指導のあり方の問題、ないしは戸籍法との絡み、そういったような点から考えまして、総理が多少時期的にまずった、あるいは大いに勉強不足であったというような点がございましたならば、あえて率直に総理の御心境をお聞かせ賜りたい、かように思うものでございます。
  207. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私は、日本国民でございますけれども、日本の歴史に非常に精通しておるという自負は持っていないし、あなたの言われた文化伝統についての深い理解があるとこれまた誇示できないわけでございますけれども、今度の元号法案考えるに当たりまして、たびたび申し上げておりますように、現に使われておる、国民もまたそれを抵抗なく使われておるし、それがあることが望ましいのではないかというように考えられておるのがいまの元号制度だと思うのです。それで、あなたが言われる法制化すべきかどうかという点はその次に問題になるわけでございますが、私は、そういうものだとすると、実際の現実をそのままわれわれが保持していけばそれでいいんだと思うので、ところが一つ困ることは、いまの元号は改元の場合どうするんだという手順が全然決まっていないということでございます。ほっておいたらだれかが適当にいたすであろうということはいかにも無責任なことでございますから、せめて改元のルールだけは何か決めておくということは政府の最小限度の責任ではなかろうかと思うわけでございます。それだけをお願いするということはそんなに間違ったことだとは私は考えない。これを強制するというようなことになりますと、確かに論議を呼ぶ、よほどの検討を必要とするわけでございますけれども、現在のままあるがままを維持していこうという場合の手順だけを決めるというきわめて謙虚な法案だと思うのです。ですから、これをお願いいたしましてもそう無理でない、またこの時期にお願いいたしましても別におとがめを受ける筋合いのものではないのじゃないかというように考えたわけでございまして、そんなに深い思想的に言っておるわけではないので、ごくきわめてあたりまえな素直な気持ちをこの法案に盛ったつもりでございます。
  208. 森田重郎

    森田重郎君 ただいまの総理のお話を伺っておりますと、表現が適当ではないかもしれませんけれども、総論においては一応とにかくまとまっておる、無理のない法案である、しかし各論の部分については若干問題があるというような意味合いに私なりに理解をしたわけでございますけれども、実はこれはあくまでも想定に立ってのお話でございますけれども、この法案が仮に実現したような場合を想定いたしまして、この法制化の問題につきまして十分否十二分に国民の方々に納得、理解していただけるような、またそのための方途方策というふうなものをどのように考えておられるか、総理として行政各省庁に対しましてどのような形でその辺を浸透させていただけるか、多少具体的なお考えがございましたら御答弁をちょうだいいたしたいと思います。
  209. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) これがイデオロギー的なものに走らぬように、また利用されないように、政府として十分戒めてかからにゃいかぬと思うのでございまして、また、政府がこういうことをやってこれは大変お手柄だなんて考えるほどのものではないと思います。これはもう改元のルールを決めさしてもらったにすぎないというそういう立場を堅持して、それ以上のものでもない、それ以下のものでもないということに徹していく。それから強制の問題、強制をするものでは全然ないわけでございますから、その点も誤解を生まないように、また問題を生じないように気をつけていかなければなりません。したがって、国民には万々私は間違いないと思いますけれども、そういう趣旨はよく徹底してそごのないようにいたしたいと考えております。
  210. 森田重郎

    森田重郎君 次に、これは戸籍法に関連をいたしまして衆参両院間におきまして何回かにわたりましてすでに質疑が尽くされたような問題でもあろうかと思いますが、一方、自然人とは逆に、法人企業の立場から私は幾つか気にかかる点があるわけでございますけれども、自然人の誕生というのが、言うなれば会社で言えば会社が設立登記をされて法人がそこで誕生した。自然人の結婚、婚姻というものが、会社で言うなればある意味ではそれが合併であるかもしれません。あるいはまた、不幸にしてわれわれが死んだというような場合、この死亡というものは、会社にしますれば一つの解散であり、同時にまた最終的な意味では清算の結了登記というようなことにつながるかと、かように思うわけです。五十二年の調査で私法務省にお伺いしたんですが、全国に約百九十万の会社があるそうでございます。これは確たる数字ではないようでございますが、五十二年でございますから、あるいは五十四年の現在は二百万社ぐらいになっておるかもしれません。あるいはなっていないかもしれませんが、こういった法人が、要するに人間で言いますれば戸籍、法人は登記所とでも申しましょうか、そちらに対してそういった非常に煩瑣な登記関係というふうなものが行われる。あたかも人間の出生であり、婚姻であり、また死亡であり、住居の移転であり、選挙権の問題でありというような形で、もろもろの事務が登記所において行われる。そういった意味の煩瑣さと申しましょうか、あるいは事務の停滞と申しましょうか、その辺の混乱等を若干心配する者の一人なんでございますけれども、そういった点につきまして、担当ないしは関係御当局で若干の詰め等をされておられるような事実があるのかどうか、御答弁を願いたい、かように思います。
  211. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 基本的な考え方は現在と少しも変わらないということと私は承知いたしておりますけれども、なお念には念を入れて、いま御指摘の点につきましては、詰めるべき点があるかないか、あるとすればどういう点に気をつけにゃならぬか、十分精査いたして対処してまいります。
  212. 森田重郎

    森田重郎君 これは最後質問にいたします。最後に、この法案法制化された場合といえども元号西暦使用というものが同時並行的に結局国民の自由意思の中で使われていくというようなことに相なっておるわけでございますが、この辺をどうぞひとつ担当行政府に対しまして、総理の強力な御指導によりまして、今後の行政事務運営のために支障のないように十分な御配慮をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  213. 秦豊

    ○秦豊君 総理ね、私は元号法案反対の立場ですから、森田先生との間には見えない一線があるわけですから、その立場で伺います。  先ほどから総理を中心にしたこの席をながめていると、総務長官は、連日奮闘されてかなりげんなりしておられたが、先ほどからみけんのあたりが明るい。ほっとしている。法制局長官は、してやったりというふうなお顔に見える、私にはね。総理の表情は余りよくわからない、日ごろと同じぐらいにしか見えない、私には。それで、私たちにとりましては、確かにこの委員会でも十四対六ではないかと、もしあの席が満たされれば。圧倒的に少数だ。だんだん急速に急坂をころげ落ちるような局面になりつつある。ぼくたちとしては非常に不本意です。それで、残されたわずかな時間ですけれども、きょうは総理に対する質問としては私が最後になります。そういう観点で伺います。余り具体的なことはもうあえて大平総理に伺いたくない心境です。やや概念的、つまり大平正芳総理の政治観と元号法案というふうな観点で少しあなたの、どこまで聞き出せるかわからないが、伺ってみたいと思います。  どうなんですか、総理、総理の御認識の中では、この八十七国会はほとんど三けたに近い法案があったんだけれども、この中でこの元号法案というのは、最重要、最もという字がつくくらいの最重要法案ですか、どんなふうな位置づけになっていますか。
  214. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) この法案を重要法案と見る、そのように評価する人もありましょうし、そうでないという評価もあり得ると思います。私は、先ほどからも御説明申し上げているように、これは改元のルールを決めたにすぎない、何か新しいことをしでかそうというものとは評価していないわけでございますので、格別重要法案であると特にそういう力んで対処すべき法案とは考えていないのです。
  215. 秦豊

    ○秦豊君 私も長い間ジャーナリストの生活をしたから、あなたをニュースの対象として、失礼だが素材として客体としてクールにながめてきたつもりですよ。あなたは、大きなこと、どんなことをなすっても、さりげなくされるから、だからさっきから伺っていると、謙虚な法案です、さりげない素直なものですとおっしゃりながら、やはりこの元号法案というのは私は大きな意味合いを持った一種の画期というふうな、私も大げさに肩に力を入れているつもりじゃないんですが、やっぱり大きな法案だと私は思うんです。大したことをやるつもりはない、あなたはそうおっしゃる。あなたはいつもそうおっしゃる。そうおっしゃりながら、だんだん足元を固めていくという方ではないかと私は思うのだけれども、それならば、あれですか、総理御自身の中では、大平正芳総理における思想的ないし政治的な信条に基づくものですか、この元号法案というのは。能動的なんですか、あるいは受動的なんですか、どうなんですか。
  216. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) これは私が党におりましたときから出てまいりました問題でございます。これをどのように処理していくかということについて私は私なりに考えたわけでございますけれども、先ほど申しましたように、この法案は、元号強制しようというように持っていってはいけないわけでございまして、いまのあるがままの事態を素真に認めて、そしてその存続を図る最小限度のことを政府としてまた与党として考えるということであればこれは特別にとがめられる性質のものではないのじゃないかというように考えまして、前内閣時代、党と内閣の方で相談いたしまして提案することにいたしたのでございます。そして、その打ち合わせに従いまして今日まで来ておるわけでございまして、推進する側から言えば能動でございましょうけれども、私が問題を持ち出して皆さんにお願いしてここまで持ってきたというものではなくて、自由民主党内にそういう世論が出てまいりまして、それをこのような姿にまとめて国会に提案したということでございますから、まあその辺のところで御理解をいただきたい。
  217. 秦豊

    ○秦豊君 だんだん大平ばりのレトリックというか、ニュアンス、水墨山水画の境地になってきたんだが、あいまいもこ、そこはかとないという、それがあなたの一つのトーンですね。これに類した質問としてはこれで最後にしますが、そうしますと、大平政治というのがあるわけですよね。ぼくはぼくなりにあなたの政治を政治家の一人として見ているわけです。大平政治全体の脈絡の中では、この元号法案というのは、どうなんでしょうか、総理、大平政治にとっては非常に骨格的なもの、基本的なもの、ないしは非常に根本的であるから譲れないもの、こういうふうな位置づけになるんですか。さりげないんだからそんな取り方はするなよとおっしゃりたいかもしれないが、ちょっと念を押しておきたいのですが、どうでしょう。
  218. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 民主主義の興廃にかかる問題とか平和主義の採否にかかる問題とかいうようなことであれば大変なことだと思いますけれども、この法案はそういう大それた問題の法案とは考えておりません。
  219. 秦豊

    ○秦豊君 よく総理はこう言われますね、政治に過大な期待を持たないでほしいと。これは大平語録の中でもちょっと印象に残る言葉なんですよね。このことを考えてみたんですけれども、これは大平正芳総理、大平さんお一人の謙虚さの反映なのか、あるいは逆に国民有権者、市民の皆さんを突き放した言辞なのか、私にはまだよくわからない面があるんです。まだよくわかっていない、理解ができていない。ところが、私の主観からすれば、この元号法案というのは、まさに元号推進派の一部の声には過剰にこたえた。一方では、きょうもたくさんの方がいらしているし、恐らくこの審議がマスメディアを通じてとうとうそこまで来たのかと落胆する方々も決して少なくはない、むしろ圧倒的に多いでしょう。そういう反対派の人々にとっては、むしろ政治の強引さを印象づける結果になりはしないのかと、私は法案審議のこの段階で改めてそう思うのですが、総理、どうですか。
  220. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、山崎さんが最初に天下を二分するような状況でというようなことに対して私が反論を申し上げておいたのでございますが、私はそういうものにしたくない。国会の場を通じまして国民の多くのコンセンサスをできるだけ得て事をなしていくように努力したいと思うのでございますが、いま完全にこのわれわれが出しました元号法案というのは国民の圧倒的な支持、圧倒的な評価を受けておると私は思いません。しかし、先ほど向井先生もおっしゃったように、これが天下を二分しておるとか、これがイデオロギー的に非常に亀裂を起こしておるとかいうようなことにも考えていないわけでございまして、そういうことにならないようにできるだけイドオロギー性を持たぬように、天下の世論に亀裂を起こさぬようにできるだけ多くの方に御理解を得られる姿においてやってまいったわけでございますが、これからの成立をさしていただきました後の運用にいたしましてもそういう趣旨でやってまいるつもりでございます。これを利用していくとか活用していくとかいうようなことは慎まにゃいかぬということは当然のことでございまして、政府はあくまで謙虚な立場に終始したいと思っています。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 国民強制はしない、公務員は別枠だよ、次元が違うんだと、範疇が。これはまあ真田答弁にもあったわけです。これは際限のない論議になると思うんですよ。時の政権が、つまり大平さんの政権が、総理の率いる内閣が、有権者からどういう信頼関係にあるか、どう見詰められているか、どのように位置づけられているか、どう見られているか、つまりざっくり言えば。これによって変わってくるんですから、それはもう議論の範疇をやや超えると思います。言いません、私は。  ところが、総理、これは根元にある問題だからしつこく繰り返しますが、この元号というたぐいのものは、明治と明治以前ではもう全然それこそ質が変わった。それでそのことも長くなるから繰り返さないけれども元号というたぐいのものは本来制限漢字とか送り仮名のような類するもの――もちろん質は違いますよ。全く違いますよ。だけれども、本来法制化になじまないものだという意味で私はたまたまこう並列している。つまり、ぼくはそれこそ大平さんならわかってもらえると思うから言うんだけれども、本来元号というのはやわらかいままで保っていけばいいのではないかと私は思うんですよ。併用だと、事実たるの慣習だと。私は西暦、あなたは元号、これでいい。これが実は知恵ある選択ではないかと私はいまだに思うのですよ。これからも思い続けるでしょう。一体これだけ議論をして、恐らく幾十時間じゃないですか、これだけ議論をして、一番素朴なそこのところにまた返っていかざるを得ない。知恵ある選択が併用方式なんだと。一体、いまのままでどんな差しさわりが、総理、おありなんですか。
  222. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 元号というのは法制化になじまないと、私もそう思いますよ。だから、元号の本体なんかに触れていないんです。決める手順だけを法律にしておるわけですからね。だから、私は秦さんとそんなに考え方が違っておるものとは思っておりません。
  223. 秦豊

    ○秦豊君 もう一歩ですね。この一歩は大きいですね、しかし総理。決定的な一歩ですね。しかし、総理ね、それならば、あえてそういう無理をこの時期にどうされたかなんてまたがんがんと言いたくなる。それで時間がそれを許さなくなる。しかし、こういうことをお考えになったことはありませんか、総務長官も法制局長官も。あなた方が万言を費やされてもなぜ説得力が根本的に欠落しているのかをお考えになったことがありますか。それは、あなた方の言う世論と私たちが背負っている世論が違うんですよ。法制化にはつまり圧倒的少数、二二、三%、これがあらゆるマスメディアの調査結果です、民間の調査機関の。これは清水室長も認めておられる、答弁の中で。だから、圧倒的に国民の皆さんがたとえば八十数%が法制化促進と、肯定とおっしゃるならば、あなた方の一言一句の答弁は俄然迫力と説得力を備えてくる。そうじゃない、逆なんですよ。存続が圧倒的、法制化は慎重にと。ここのところを根本のところをすりかえていらっしゃるから、総理、あなた方のおっしゃることに迫力がないんです。説得力がないんです。無理が高じているんです。そうはお考えになりませんか。
  224. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 存続する以上はやっぱり改元の手順を決めておかなきゃならぬ、何かの形で決めておかなきゃならぬので、それは内閣の告示で決めるというようなことよりは、やはり国会審議を経て法律で決める方が堂々として主たる民主的なルールじゃないかと私は考えておるわけでございまして、これはそういうことを決めたにすぎない法律でありますことは繰り返すまでもないことと思います。
  225. 秦豊

    ○秦豊君 総理、やっぱりそうじゃないと思いますね。なるほどこの委員会はもうこれは確かに圧倒的ですよ、この委員の数からすれば。十三対六とか十四対六に近い。それであすの本会議がもしスムーズに開かれてもかなりな票差をぼくたちは背負わなきゃいけない。それも客観的な事実でしょう。しかし、この国会審議を見詰める世論というマクロの中では、むしろ総理の方が、ここに並んでいらっしゃる皆さん、ここにいらっしゃる皆さん、あとは点々と座っていらっしゃるこちら側の政党の皆さん、この皆さんは少数派なんですよ、逆に。そうはお思いになりませんか。だから、大平ばりの政治、大平政治に一番なじまないことをあえて総理はさらっとさりげなくくぐり抜けようとされている。世論が違う。踏んまえている世論が違うんですよ。世論を踏まえない政治というのは驕慢の政治、おごり高ぶった驕慢の政治、あるいは胸を反らした傲慢の政治だと私は思うんですよ。総理、私の言うことは果たして極論でしょうか。
  226. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) できるだけ秦さんと私との間にも距離がないようにしていかにゃいかぬと思いまするが、同時に、マイノリティーと申しますか、どちらが多数でどちらが少数であるなんという議論は差し控えますけれども、民主政治は多数を制する者がおごっちゃいけない、いつも少数に耳を傾けていかなければならぬということは当然のことでございまして、この国会制度自体が野党のためにあるようなものですから、これだけの時間をかけて、これだけの経費をかけて論議をしておるわけでございますから、そのあたりはここで皆さんが展開された御議論は、単に徒事ではなくて、国民世論形成の上で非常に力もあったことでございましょうし、また、政府が成立さしていただきました後の運営につきましても、十分の注意すべき指針を与えられたものとして私どもはこれを受けとめていくつもりでございまして、賛成反対、少数多数というような割り切り方ではなくて、やはり一つのできるだけコンセンサスを今後とも求めていくように努力をお互いにしたいものだと、その点を秦さんにもお願いしたいと思います。
  227. 秦豊

    ○秦豊君 さっき総理から一八六八年、つまり藩閥政権からほぼ一世紀を超えていま十一年だが、この間二十年周期で開放と収斂という大平正芳における現代史観を伺った。ああいう展開をされているときの総理は大変楽しそうだ。しかし、いままさに収斂期にあるという認識も実はその点だけは大平さんと私は認識が一致しました。いま収斂期、それもきわめて危険な収斂期にある、大きな逆流の中にある。さっきから山崎さんが言った、山中さんが言った、みんなこれは反対意見を持った方です。私もそうです。大きな逆流の中にある。一つ一つをとらえるとまるで脈絡がないかに見えるが、実は大きくつなぎ合わされている。それは偶然ではないという認識を、これが偏見と独断に満ちているものであるとは決して思わない。むしろ、私たちの認識の方がクールだと思うんですよ。  そのことを踏まえて、最後にあと一問だけ総理にぜひ伺っておきたいことは、いまたまたまこの元号についての賛成反対と同じパターンで一つ請願運動が起こっております。それは金鵄勲章復活に関する請願と申しまして、たまたま元号法案賛成をしていらっしゃる自民党、そして新自由クラブ、公明党、民社党の議員の皆さんに対して請願が寄せられている。これはもちろん純然として純粋な個人的な行動ですから、あながちとがめる資格は持っていません。しかし、確かに旧憲法の廃絶とともに、失効とともに失われた金鵄勲章の叙賜規定ですね、政令四号ですか、これを御承知の上で、なおかつこの金鵄勲章復活を求めるような請願行動が、この永田町にもう浴びせられているというこの事象ですね、これも一つの現象でしょう、総理。さっきのこの二十年周期ですね、ほぼ。歴史のサイクル、収斂と開放という。私によれば逆流というとらえ方の中での金鵄勲章というふうに私はすぐ受けとめたが、総理の認識の中ではそういうふうな請願行動、動きはどういうふうに映じておられますか。最後にこのことを伺っておきます。
  228. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 日本人の一つ歴史的周期をこう歩んできた過程を見ておりますと、やはり極端に走っていかずに、やっぱり中心にまた回帰する賢明さがあるということを申し上げたわけでございまして、私は極端に日本人というのは走るようなことなく、非常に賢明な平衡感覚を持っておるのではないかと。地方政治選挙を見ておっても、それから参議院の選挙、衆議院の選挙をじっくり考えてみると、意外に私は日本の国民というのはすぐれた平衡感覚を持っておるのじゃないかというような感じがするんです。ですから、いま若干収斂に向かいつつある傾向が見えますけれども、またそれに対して皆さんから非常に警告が発せられておりますけれども、それは極端に行くことはないであろうというように私は見ておるわけでございます。  いろいろな動きがありまするし、いろいろな請願もございましょうけれども、それは日本の民族の政治的力量におきまして、十分これまでの経緯を踏まえて、また今後の世論の動向も見ながら慎重に対処していって、大きな誤りがないようにはやりおおせる国民でないかと私は考えておりますし、また、われわれお互いにそういうように努力しなければならぬのじゃないかと思っています。
  229. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  230. 片岡勝治

    片岡勝治君 私は、日本社会党を代表して、元号法案反対の立場で討論を行いたいと思います。  まず初めに、問題は、この元号法案が長時間衆参両院を通じて審議が行われてきましたが、なおかつなぜ法制化しなければならないのか、その使用の自由が依然として明確にならず、強制の歯どめができていないではないかとの新聞論説に象徴されているように、疑問が一層大きくなったということです。これは元号賛成する人々も、何も法制化してまでやる必要がないという世論が圧倒的な多数を占めている以上、きわめて重大であると言わざるを得ません。  元号は七世紀ころより始められたものでありますが、天皇主権国家が確立された明治改元を契機に明確に制度化されたものです。そして、その使用は権力支配の重要な手段として、特に軍国主義、全体主義の思想的踏絵としての役割りを果たしてきたことは何人も否定し得ない歴史的事実でございます。したがって、主権在民、平和と民主主義基本的人権を保障した新憲法はこの元号制度を許さず、帝国憲法に基づく皇室典範の失効と同時に元号制度は廃止されたのであります。今日の年号は、国民が自主的に、単なる慣習として使用しているのです。  さて、新憲法の理念になじまない元号制とは、第一に勅定であること、第二は一世一元であること、第三は使用強制であるということでしょう。したがって、もし仮に元号希望にこたえるとすれば、この点の是正がなされなければなりません。すなわち、一世一元制の廃止であり、その使用にいささかも強制があってはならないことである、したがって法制化すべきでないとの結論が引き出されてきたものと思います。一たび法制化されれば、これは未来にわたって法的拘束をもって国民に対応することになるでしょう。そうした後世に大きな影響をもたらすこの種の問題は、それこそ慎重に、かつ国民のあらゆる意見をも受けとめ、その合意によって対処すべきであって、多数をもって事を急いではなりません。新憲法の指し示す主権在民の自覚と誇りを持って、誤りない未来の進路のためにもここにとどまってみるべきでありましょう。そして、ますます国際化が進められ、ややもすれば孤立化の危険なしとしない日本は、諸国民理解と協力を得るためにも、日本のみの元号法制化してこれを使用することは決してよい印象を与えるものではないと考えてみる必要があるのではないでしょうか。よって、主権者たる国民慣習に権力をもって影響を与えるような法制化には賛成するわけにはまいりません。  やがて歴史がこの元号法制化への批判を鮮明にすることでしょう。そして、近い将来国民の英知がこの批判にこたえていくことを確信いたしまして、私の討論を終わりたいと思います。
  231. 岡田広

    岡田広君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております元号法案に対し賛成討論を行うものであります。  元号は、大宝元年として再出発以来現在まで約千三百年の久しきにわたり、国家及び国民紀年法として用いられ、連綿として続いてきております。  さらに、明治以降は法制化に伴ってこれに一世一元が加えられ、明治、大正、昭和と続いてきました。終戦後旧憲法の廃止に伴い、昭和二十二年皇室典範が改正され、元号制度は法令上の根拠は失いましたが、それにもかかわらず、国家、公共機関はもとより、ほとんどの国民元号によって年の表示を行ない、一切の法律は依然として元号を用いておりますとともに、世論調査でも明らかなように、多くの国民元号存続を強く望んでおります。また昭和四十七年、沖繩は本土復帰と同時に被占領時代西暦を改めて、直ちに元号制度を採用いたしております。  もともと元号は、その創始者である中国歴代の国家を初め、これを使用した各国の独立の象徴でありました。日本はこの独立国日本の象徴である元号制度を長きにわたって保持してきているのであり、いまさらこれを放棄する必要は毫も存しないのであります。  現在、世界には、西暦以外、独特の紀年法をとる国はあります。しかし、本家の中国が、清朝まではこれを用いていたのですが、中華民国になってから廃止しております。日本のような独自の元号制度をとる国はなくなったのであります。けれども、古い伝統を持った独立国である以上、由緒ある独自の制度を保っているのは当然であって、日本はむしろ誇りをもって独立国の象徴である元号を制度として存続させるための方策をとるべきことは当然であります。  人の一生には幾つかの節がありますように、日本の長い歴史にも多くの節々があります。そして、その時代の顔もあり、最近では明治の気骨、大正のデモクラシー、昭和一けた生まれなどと言えば、各時代相と一緒に実に豊富なイメージがわいてまいります。  今日、失われつつある幾多の貴重な文化、道義は、われわれの時代で終わるのでなく、よいものは子々孫々まで残さなければならないことも当然でありますと同時に、昭和時代に生きている者の義務でもあります。  元号を将来にわたって存続させるために、だれがどのような場合に改元を行うかを明確に定める必要があります。  その方法としては、民主政治の世の中では、国民の代表機関である国会の制定する法律によって行うのが最も民主的であることは言うまでもありません。  一世一元は、憲法違反ではないことは明確であり、象徴天皇に最もふさわしいものであります。  このような見地から、元号を制度として明確にして、かつ安定したものとするため、その根拠法律で定めることはまことに適切なものであると考えまして、本法案に対する私の賛成討論を終わります。
  232. 山中郁子

    山中郁子君 私は、日本共産党を代表して、元号法案反対する討論を行います。  反対理由の第一は、元号法制化が、現憲法の人類普遍の国民主権原理に真っ向から逆行するもので、憲法改悪、天皇元首化の企てと結びつくものであるという点にあります。これは国会審議の過程でますます明らかにされてきたところです。  明治以来の一世一元の元号制が、絶対主義的天皇制の専制支配を支える役割りを果たしてきたことは、政府自身も認めざるを得なかったところであります。だからこそ、戦後、国民主権の現憲法施行と同時に、その法的根拠が失われたのです。政府は、この法案は改元の時期を皇位継承に合わせるだけで、天皇元号とを結びつけようとするものではないなどと繰り返し強弁してきましたけれども、これがいかに欺瞞に満ちたものであるかは、たとえば元号天皇の追号になることや、元号天皇の身分に関する事項として大統譜に登録することを明確に否定し得なかったことによっても明らかです。  さらに、政府みずから君が代の国歌化、教育勅語や軍人勅諭の礼賛、靖国神社問題等々、天皇を政治的に利用してその戦前における役割りの復活を進めており、元号法制化はまさにこの政治・思想反動攻勢の重大な一環をなすものとして強行されようとしているのであります。  反対の第二の理由は、法制化によって元号使用強制されるという国民の不安と危惧が何一つ解明されていないばかりか、政府の判断一つで公務員はもとより、一般国民まで広く使用強制が及ぶことが明らかになった点であります。  政府はこれまで、法制化しても一般国民には強制しないと繰り返し答弁してきましたが、一般国民使用強制が及ばない保障を何ら示すことができませんでした。そればかりではなく、法解釈としては、各省庁が公務員に対し元号を使えとか国民元号を使うよう協力を求めよという一般的、包括的な服務規定を定めたり、職務命令を出すことができ、これに従わなければ懲戒処分もなし得るという重大な答弁をしています。こうした公務員への強制をも背景として、国民に対して役所の窓口で協力という名で事実上の強制が行われる事態が起きてくることは明らかです。これは、現憲法の支柱をなす国民思想、良心、信教、表現の自由を侵すものであり、絶対に容認できないところであります。  第三は、歴史に逆行する非文化的な元号法制化の本質についてです。  そもそも紀年法というのは、時を表示する方法としてつくり出され、歴史文化の発展とともに、政治的宗教的色彩の強いものから弱いものへ、孤立的で特殊なものから共通性の高い普遍的なものへと推移してきました。今日、西暦が世界共通の紀年法として用いられていることは周知のとおりであります。国民主権の政体をとっている国で、こうした古い紀年法法律によって国民に押しつけようとしているのはわが国だけです。  政府は、元号伝統文化だということを一つ理由にしてこれを法制化しようとしていますが、文化とはおよそ国家権力の介入する法制度になじまないものであり、法制化しなければ存続し得ないものは将来にわたって受け継ぐべき文化の名に値しないとさえ言えるのであります。わが党は、元号慣習使用反対するものではなく、昭和後も元号存続させるというのであれば、現在の慣習使用の延長として、憲法の枠内で適切な措置を講ずればいいのであり、将来国民がいかなる紀年法を用いるかは、歴史国民自身の選択にゆだねるべきものであるとかねてから主張しているところです。  最後に私は、法案審議を通じて、元号憲法及び天皇との関係元号法制化と政治反動との関係元号使用強制問題など、本法案の核心に触れる問題に関して政府が正面からの論戦を回避する態度に終始したことを問題にせざるを得ません。また、自民党とこれに同調した賛成勢力は、広範な国民の慎重かつ徹底審議の切実な要求を踏みにじって審議を推し進めてきました。これは国民の声を裏切り、国会の権威をみずから落としめ、その責任を放棄したものであることを指摘し、改めて強く抗議するものであります。  国論を大きく分け、国会審議を通じてますます批判や疑問が高まっている現在、無理やりに成立を強行することは日本の将来に大きな禍根を残すものであることを強く指摘し、重ねて本法案に断固反対することを表明して、私の討論を終わります。
  233. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました元号法案に対して賛成の討論を行います。  以下賛成理由について申し述べます。  第一に、元号に対する国民の認識は、最近の世論調査の結果等から見ても明らかなように、元号使用国民の日常生活の上に確実に定着しているということであります。  現在、国民の大多数は生活の知恵として西暦元号を何の抵抗もなくうまく併用しています。昭和をなぜ国民の大多数が元旦の年賀状に用いているのか。また、世論調査で大多数が、あった方がよいと回答するかを考えてみなければなりません。そこには日本民族伝統的な心情というものを考えざるを得ません。新年を祝い、心新たになったときに大多数の国民がやはり昭和と記す奥底には、民族の紀年としての元号があることが日本人にとっては一つの共感となり、時代の移り変わりをながめる民族独自の時代観があると思うのであります。  第二に、現在存在している元号は事実たる慣習としての元号であって、法的根拠のない元号であるということであります。  昭和という元号は、明治憲法時代における旧皇室典範及び登極令などがその法的根拠とされていました。  しかし、昭和二十二年、日本国憲法が施行されると同時に、旧皇室典範及び登極令は廃止され、元号制度については、異論はあるものの、その法的根拠はなくなり、現在の昭和は単に事実たる慣習として使われている状態であります。  したがって、元号を制度として明確にして安定したものとするために、その根拠法律で規定することは当然であると思います。  第三に、本法案から見る元号は、明治、大正、昭和前期の天皇制の復活につながるものではないということであります。  旧憲法下における元号の制定権者は天皇でありましたが、今回の元号法案自体国会で決め、それに基づき元号の選定を内閣にゆだねるというものであり、制定権者は国会であり、別な意味で言えば国民が制定権者であると言えるわけであります。  これをわざわざ混同させ、天皇制への回帰である、あるいは天皇の元首化だと言うのは、憲法をむしろ意図的に曲げて解釈し、国民を混乱させるものであります。  現憲法には、天皇の地位を日本国民統合象徴と明記しており、憲法の定着に伴い象徴天皇制国民に広く理解されていることは間違いなく、元号の制度化がかつての旧憲法下の天皇制への回帰につながらないことは明白であります。  第四に、本法案により元号法制化されても国民への元号使用強制につながることはなく、いままでどおり国民は自由に西暦元号使用ができるということであります。憲法で保障されている基本的人権、表現の自由からも当然であると言わなければなりません。  ただし、官公庁における文書上の取り扱いについては、事務処理上の便宜さから言って、元号に統一することはやむを得ないと思われます。  しかし、このことが直ちに国民基本的人権、表現の自由、思想、信教の自由を侵すことにはならないと見るべきであろうと考えます。  最後に、わが党は、この元号法案国民主権主義象徴天皇制の調和の上に民主的基盤に立脚しているという認識のもとに、元号名の決定に当たっては、参考人意見陳述にもあるように、元号名に関する選定委員会方式のごとき民主的な制度を設けることを、さらには新しい元号の実施時期に際しては、国民の社会生活における無用の混乱と不便を招来しないよう、より合理的な踰年改元の方式を採用されるよう政府に対して強く要望いたしまして、私の討論を終わります。
  234. 秦豊

    ○秦豊君 私は、社会民主連合を代表し、元号法案について反対の討論を行います。  周知のごとく、元号法案をめぐる各種の世論調査は、いずれもが法制化促進を厳しく戒めております。法制化をよしとする数字は平均してわずかに二二%にすぎないことは、政府側の再三にわたる答弁の中にさえ散見されております。元号についての最大の選択は、まさにこの現状そのものを保つことであると私たちは考えております。  西暦元号併用し、事実たる慣習の枠内で何らの摩擦も混乱も生じさせていないこの現状のやわらかさが、一つ国民的な知恵ある選択であることを忘れてはなりますまい。政府・与党を初め、法制化をしゃにむに急ごうとする人々は、あえてこの成熟した世論に背を向け、市民社会の中に無用の混乱と対立を招き入れようとしております。  私たちはまた、今度の元号法案が、神社本庁や生長の家政治連合を初め、象徴天皇制現状には飽き足りない一部の極端な勢力によって、きわめて積極的に推進された事実を見逃すわけにはまいりません。この人々にとっては、この元号法案はまさに大きな一つのステップであり、一つの大きな成果であることは疑いを入れないでしょう。  昨年以来、政治は大きな逆流の中に置かれています。再三論議されましたように、有事立法をめぐるきわめて悪質な、計算されたキャンペーンを初め、最近では防衛庁制服組による相次ぐ過剰な発言、靖国や元号、果てはいわゆる金鵄勲章復活の請願など一連のこうした動向は、それぞれが有機的な連関を保ち、強く結びつけられた意図的な政治行動であることは自明のことでありましょう。  今回、元号法案賛成の立場をとった方々は、国会の中では確かに一種の多数派を形成してはおりましょう。しかし、国会を見詰めるより広範な市民層の中では、むしろ逆に際立った少数派にすぎないことに謙虚に思いをいたすべきではないでしょうか。  大平総理は、先ほどの論議にもありましたように、この元号法案についてきわめて基本的な対応を示しましたけれども、このことによって国民の多くは、昨年の大平政権発足以来、そこはかとなく抱いてきたかに見えるやわらかく慎重な大平政権というイメージと虚像を恐らくためらいもなく打ち砕くでしょう。  政府は、元号法案審議に当たって、繰り返し市民への強制は行わないことを明言しておりますが、時の政権が信頼されていない以上、一片のこのような形式答弁によってこれほどまでに広くわだかまっている不安や不信の解消されるはずはありますまい。  元号法案のこのような強行は、世論に挑戦し、合意の形成を怠ったきわめて驕慢な、きわめて傲慢な政治手法の典型であることを重ねて強く指摘をし、社会民主連合の反対討論を終わります。
  235. 向井長年

    向井長年君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となっております元号法案に関し賛成意思を表します。  今日、元号法案は、時代を表徴する意味として国民に広く親しまれ、生活慣行としても定着した文化的な所産となっております。  国民の一部には、この法案を契機に天皇制復活、憲法改正への足がかりにしようとするゆえをもってする一部右翼団体の動きもなきにしもありません。  また一方、現行憲法下の象徴天皇の地位と権能は、明治憲法下における統治権の総攬者とは全く異なり、現行憲法を正しく解釈するならば、主権在民が大原則であることは明々白々であります。にもかかわらず、そうした古い天皇制復活について夢を見たり、はたまた憲法の趣旨に反するとして元号法案反対論を展開するに至っては、憲法を曲解しているか、あるいは憲法を厳正に守るみずからの意識の欠如を示すものと言えるでしょう。  われわれ政治の場にある者は、現行憲法を遵守し、こうした大多数の国民の明確な意思を信頼すると同時に、正しくますます高揚する努力と責務があることを自覚すべきであると考えます。また政府も、この運用に当たっては、世論の動向に対しては適切に対処し、いささかも古い天皇制復活への懸念を抱かせないよう万全の努力を尽くすべきであります。  以上、元号法案に対する賛成の趣旨を述べ、同時に、伝統文化と民主憲法を調和発展せしめるために、わが党の意思を明確にして、私の賛成討論を終わります。  討論を終わるに当たりまして、私は最後に、当委員会が長時間にわたって慎重審議を行ってまいりました。この中で、桧垣委員長の公正な議事進行に対して心から敬意を表して、終わります。
  236. 森田重郎

    森田重郎君 私は、新自由クラブを代表して、本元号法案に対し賛成の討論を行います。  一言で言うならば、元号そのものは、わが国において千三百余年の歴史伝統を持ち、広く国民生活の間に定着しているということ、このことは確たる事実であります。かつまた、約八〇%になんなんとする国民の方々がその存続希望しているということは、換言すれば、これほど現代において国民合意を得られた問題はないとさえ思量されるものであります。  またこの問題は、わが国固有の文化伝統の上に立った日本人の大方の歴史観を何らかの形で継承していくか、いやその必要はない、その辺は宙ぶらりんにしておいてよいのだ、国際化の進展する現代に即応して計数的把握からする便宜的措置に重点を指向し、この際は西暦指向に力点を置くかの二者択一を迫られているといった、きわめて重要かつ国民的な課題でもあろうかと考えられます。しかるところ、現在元号法的根拠は全くなく、事実たる慣習として使用されているにすぎません。したがって、次の改元の手続は何らそのよりどころすらないといった不安定な状態に置かれているものであります。そのためにも、いまこそ元号存続のための法制化が実現することは、前述した元号不存在からくる空白による混乱を未然に防止することともなり、ためにも、その法制化の実施は理の当然とさえ思量されるものであります。  一方、天皇制に対する問題、また憲法論議上から申しましても、現憲法はいわゆる欽定憲法を全面的に改正否新規憲法制定とも言われるとおり、それは自由に表明された国民の総意によって確立された主権在民のいわゆる民定憲法であることは国民のひとしく認めるところであります。したがって、いやしくも違憲の問題は起こり得ず、象徴天皇制は恐らくは未来永劫に続くものと確信するものであります。  しかし、政府は、元号そのものが国民元号であるという精神を篤と御理解の上、あくまでも国民一人一人に親しく愛され、かつは親しまれる元号としての出発点に今後より一層留意すべきでありましょう。要は、広く国民に公開され、いやしくも法制化による混乱等を引き起こすことなきよう、さらにはまた、国際化の進む中で、仮にもこれを強制することなく、西暦使用もまた国民の自由意思に十二分にこたえ得られるよう、格段の配慮を払うべきであります。  以上、幾つかの点をこの際特に政府当局に要望いたしつつ、本元号法案に対する賛成討論といたします。
  237. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。  元号法案を問題に供します。  本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  238. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  239. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十五分散会      ―――――・―――――