○
参考人(
板野學君) お答え申し上げます。
ただいま
前田先生おっしゃいましたように、近年特に
国際電気通信の
技術革新が非常に早く、かつ非常に大幅でございまして、このような
関係からいたしまして、
国際通信の
需要構造に大きな
変革がもたらされつつあるわけでございます。このような
状況につきましてひとつ御
報告を申し上げたいと思います。
まず
需要構造の
変革ということでございまするが、私
ども国際通信を始めました初期におきまする
電報、
テレックス、
電話等の
需要と、そうしてこの現在の
状況がどのような
利用率になっておるか、それから、将来五十八年、これから五カ年の後にはそれがどういうぐあいになっていくであろうか、こういうことを私
どもいままでの資料により、またこれからのことは私
どもの
推測値でございまするが、一言申し上げてみたいと思います。
昭和二十八年、いわゆる私
どもの
会社の創立から三十五年までにおきましては、大体
電報がこの総
収益の七二%、
テレックスが、これは三十一年から始まりましたけれ
ども一一%、
電話が一一%、こういうところでございましたが、これが
昭和三十六年から四十五年になりますと、
電報が三七%、
テレックスが二六%、
電話が一六%、こういうことになります。それから、
昭和四十六年から五十二
年度におきましては、
電報がわずか一二%に減っております。
テレックスが三三%に伸び、
電話が三九%、非常に大きく伸びてきたわけでございます。
これが将来どのようになりますかと申し上げますと、
予測値でございまするけれ
ども、
昭和五十八年には
電報が全体の
収入に占める比率がわずか二%になります。それから
テレックスが二九.四%、
電話が五二・二%、このように
電報がぐうんと減りまして、
テレックスがやや伸びておりましたのがだんだんこれからは減ってくる、そういたしまして
電話がさらにこれから伸びてくる、こういう
状況でございまするが、こういうような
状況になりまするのも、これからいわゆる新しい
通信サービスでございまする
データ通信、あるいは
ファクシミリ通信というものがここに入ってくる、こういうことでございます。
そこで、どういうような
電気通信技術というものが今後
発展してくるかというようなことをごく最近の
状況を御
説明をいたしたいと思いまするが、いわゆるこの
電気通信の中で非常に大きな問題は、
電気通信技術と
コンピューターの
技術が結合して新しい
サービスを生んでくるということでございます。この新しい
サービスというものは、これは総体的には
収入減、いわゆる
料金が非常にだんだん安くなってくる、こういうことでございます。
それからまた
各種の新しい
端末機械、特に
インテリジェント・
ターミナルというような、いわゆるエレクトロニクスを
利用した
端末機が出てまいりますと、これらが
テレックス回線、あるいは
専用回線、あるいは
デーテル回線、あるいは
データ回線、特に
電話回線とこういうものが結びつきまするというと、これは非常に高
速度の
通信が行われてくる、こういうことで、
テレックスなどの
在来の
業務がだんだこの方に移行してくる、こういう
状況になることが予想されます。現に、私
どもはこういう
インテリジェント・
ターミナルがこの
専用回線、あるいは
テレックス回線等に結びつきまするのはテレテキストというような名称で呼んでおりまするけれ
ども、すでに
ドイツあたりでは一九八一年にはこれを
一般の
テレックス回線なり
電話回線に連結する、つなぐ、接続する、こういうような
計画を持って進めております。
それから、二番目には、御承知のように、
国際航空通信協同組合、SITAというふうに呼んでおりまするが、
国際飛行機の
座席予約等のそういうような
サービス、あるいはSWIFTと言っておりますような、全
世界銀行金融電気通信協会、こういうような新しい態様の
利用組合ができます。こういうことになりますと、私
ども在来の
電報なり
テレックスなり、そういうものがだんだんこの辺に移ってくる、こういうことになるわけでございます。
これらの
需要構造の
変革というものは、わりあい私
どもが考えておるよりも、もう少し早く進展するんじゃないかというふうに私
ども考えておりまするが、先ほど申し上げましたように、これらの
単価というものは
在来の
通信より安い、こういう
通信に移行していくということを私
ども考えておる次第でございます。
これらは大体どういうぐあいに今後
影響があるか。これはもうほんの概数でございまするけれ
ども、
電報というものも先ほど申し上げましたように毎年一〇%ずつ減少していく。これらも
テレックス、あるいはそのほかの大きな商社は
専用線にどんどん移行してそれでやりますということで、五十八
年度になりますともう二%のわずか
収入しかない、非常な大きな
赤字を持って
電報――現在では六十億ぐらいの
赤字でございますけれ
ども、これをやっていかなきゃならぬ。
それから
テレックスというものも、大体
在来では
分数におきまして一八%、
度数におきまして二一・八%もいままで伸びておりましたけれ
ども、この新しい
サービスの
影響いかんによってはこれらの
分数、
度数におきまして従来よりも半分ぐらいな伸び方しか伸びないというようなことに私はなる、そういう
要素を含んでおるというように考えておる次第でございます。
また
電話におきましても、この
電話回線のいろんな
利用、特に
ISDになりますると、やはりこの
一般の
課金単位等も変わっておりまするので、これはわりあい安い
料金で
ISDがやれます。そういうことで、従来
分数におきまして一八%も伸びておりましたのが一三%ぐらいになるんじゃないか、それから
度数におきまして一九・六%伸びておりましたのが一八・四%、これは
度数はわずかでございまするけれ
ども、私
ども収入という点から見ますると
分数ということは非常に大きな
要素をなしまするので、こういう面にも
かなりの
影響を持つんじゃないか。
その反面に、
データ通信というものは二二・六%
程度、これはどんどんどんどん伸びていく、これを
回線数にしますと、これも一〇%ぐらいずつこれから伸びていくんじゃないかというように予想をいたしておる次第でございます。
それからこの
電話級回線――特に
専用線とか
電話級回線につきましての新しい
技術というものがどういうぐあいにうまく
利用されていくかという
状況につきまして御
報告を申し上げますると、最近、
ディジタル電話機というものが
開発されまして、
一つの
電話回線に
四つの
電話機がぶら下がる、
四つ子の
電話というものがもうできまして、現在私
どもが許可をいたしましてそれを
利用されておりまするが、こういう
利用の方法も出てまいります。
それから
ディジタルファクシミリの
利用によりまして、従来A四判
文書一枚の送信時間が四分ないし六分かかっておりましたが、これ一分から三十秒
程度に縮まってくる、こういうような
開発がどんどんされております。
それから
高速モデムの
利用によりまして、七、八年前までの
データ伝送速度が二千四百
ボーでございましたのが、現在は九千六百
ボーまでできる、これは非常な大きな
速度で……、
料金も後で申し上げまするけれ
ども、非常に
単位当たりの
料金が低い、こういうことになるわけでございます。
それから
一つの
電話級回線から、従来は五十
ボーという
速度の
電信回線を二十四
回線ほどとれておりましたけれ
ども、いままでのFDM、いわゆる
周波数分割というものが、
時分割
多重装置、私
どもTDMとこういうぐあいに称しておりまするが、こういう
技術が
開発されまして二十四
回線が百八十四
回線、約八倍の
電信回線がとれるようになる。これは
一般利用者もそういう
設備をすれば
利用されるわけですから、非常なこれは大きな
技術的な
革新がある。また
時分割装置の
利用によりまして、一
電話級回線で
電話をやりながら
ファクシミリ文書も打てる、こういうこともなるわけでございます。
それからまた、
新型の
端末機を
利用することによりまして、
電話回線はさらに
ファクシミリ等の
記録通信が可能になってきますというと、これはもう
テレックスに非常に
影響を与える。いわゆる
電話機のそばに
一つの
カプラ式な
装置を置きまして、
電話回線につないで
テレックスをやっていく、こういうような
端末機械のいわゆる
インテリジェントのいま
国際基準というものをCCITTで討議しておりまするけれ
ども、そういうものが果たせますとやはり非常に大きな
影響があるということが言えると思います。
その他、いま
ISDということを申し上げましたけれ
ども、
自動コールというものによりまして、現在
一般のパーソナル・
コールとか、あるいはステーション・
コールというものは
平均の
取り扱いの
課金時分といいますか、
料金収入になります
時分が大体八分でございます。
料金にいたしますと大体一万円見当になります。ところが、
ISDでかけますと、いまの
平均利用時分が五分そこそこでございまするので、これに一分千八十円を掛けますと大体五千数百円で
利用できる。そういうことになりますと、
ISDを奨励して
人件費を少しずつ節約できまするけれ
ども、
収入はやはり三割以上減ってくる。こういうような
状況を私
どもは抱えております。
そこで、これらの新
技術がこの
国際通信に採用されまするというと、
利用単価というものがどのくらい安くなるかという例をちょっとここで御披露いたしたいと思います。これは百字
当たりの
料金について申し上げますと、現在
電報では百字送りますのに千百八十円かかります。
電話では大体標準的に、NHKでお調べになる標準の
速度で話すということにいたしますと、これは一分間で約三百字ほど話せるということにいたしまして、
電話では大体百字ほど話すのに三百六十円かかります。それから
テレックスでは二百七十円でございます、百字で。
ファクシミリ電報になりますとこれが二百九円になります。
それから新しい型のデーテル、いわゆるデーテルという
一つの
ファクシミリ電報とか、あるいは
データ通信、こういうものになりますと大体百字で十六円。それから、
VENUS計画というものが入ってきまして、
一般公衆
回線によってこの
データ通信というものが行われるということになりますと、これはごく試算でございまするけれ
ども、十三円で百字が済む、こういうことに相なるわけでございます。
それから、特にいまいろんな問題になっておりまする
専用回線についてちょっと申し上げますと、電信級
回線の標準
速度の五十
ボーという
速度をとってみますると、これは百字で大体五十九円かかります。これは電信級でございまするけれ
ども、
電話級回線を今度は使うようになりました。いま
電話級回線のこの
専用回線というものにつきましては、御承知のように四千八百
ボーについては一割、九千六百
ボーについては二割の加算
料金をいただいておるということになっておりますが、この二千四百
ボーという
電話級回線をとりますと百字が四円で送れます。四千八百
ボーの
電話級回線では二円なんです。それから九千六百
ボーで送りますると百字が一円なんです。ここで
テレックスが百字で二百七十円のものが九千六百
ボーで送れば一円で済むと、こういうことでございます。
私
どもは
一般の公衆がお使いになる
通信というものと、それから専用的にお使いになる、これは大きな企業が多いと思いますが、そういう企業との間にはすでにこういうようなやっぱり
料金上のある
程度のひとつそこに利点というものが与えられておるわけでございまするから、そういう点を考えまするというと、やはり
電話級の
回線というものはいろんなさらに
技術的な
革新によりまして一層
単価というものが下がっていくという傾向にあるわけでございまして、私
どもはこの
単価の減によりまする将来のいろんな
収入等を考えてみまするというと、今後五カ年間で総
収支率をはじいてみますると、五十三
年度は九二・四%でございましたが、五十八
年度にはこれが九五・四%、大体三%
程度総合の
収支率は下がっていくんじゃないかということを私
どもは予想をいたしておるわけでございます。
そこで、私
どもはこういう局面に対処いたしまして、しからばどういうことを考えるかということを先生お尋ねでございまするが、私
どもはこれらのいわゆる新しい
技術が採用され、情報の流通というものが高度化いたしてきておりまするから、さらに国際間の競争というものはこれから
国際通信にこそ競争が起こってくる。これはキャリア同士の競争ばかりでなく、新規の参入というものが国際的には考え得るんじゃないか。
それから、いままでのお客さん、カストマーといたしましても、
端末機械というものが非常に
発展いたしまするというと、これは
電話回線に結びついて非常に
利用が簡便になる、こういうことになります。したがいまして、私
どもはこういう点をいろいろ勘案をいたしまして今後対策を考えていかなきゃならぬというように思いまするが、まず私
どもの対策といたしましても、何としても
サービスを
向上いたしまして、そして
在来の
電報、
テレックスでも
電話でも、どんどん
利用をひとつ多からしめるということを私
ども図っていかなけりやならぬと思います。
また、新しい
データ通信、あるいは
ファクシミリ電報、こういうような
画像通信等につきましても、これはお客さんの御
要望でございまするので、今後こういうような施設をいたしまして、これも積極的に私
どももやっていきたい、こういうぐあいに考えておりまするが、とりあえず
サービスの
改善施策といたしまして考えておりまするところを御披露申し上げますと、私
どもはまず直通
回線というものを積極的に設定していかなきゃならぬ。直通
回線を今
年度は、先ほ
ども申し上げましたように四百七十六
回線の
増設を考えております。私
どもの直通
回線の中で特に直通
対地というものを開きたい、こういうように考えております。
直通
対地を開きまするというと、これは
料金も安くなります。それから
取り扱いも非常に便利になりまするので、いままで私
どもが一定の
取り扱いの基準量というものがあるものについて直通
回線を考えておりましたけれ
ども、これも私
どもは青天井に近い
一つの
取り扱いをいたしまして直通
回線を設定する。たとえて申しますと、太平洋の真ん中にたくさん多くの、小さいけれ
ども、独立国がございまして、そこに小型の
衛星地球局を置いておりまするから、これは私
ども直通
回線を設定しようとしますればできるわけでございまするから、そういう方面に
努力をいたしたい。
また、いままでの
テレックスの
端末機械は機械的な
端末機械でございましたから、これを電子式な
端末機に置きかえていきたい。これは今
年度はとりあえず千二百台導入いたしまするけれ
ども、五カ年の間には大体これを八千百五十台ぐらい導入していく。全体の経費といたしましては約六十一億円ぐらいこれにかけていきたいと思います。こうなりますと
端末機械も軽量になり、
取り扱いが簡便になります。それから修理、補修も非常に簡単になりまするので、これはお客さんにとりましても、私たちにとりましても非常に便利になると思います。
それから
テレックスの自動
対地をふやしていく。私
どもはいま
テレックスの
自動化を図りまして、大体九三%から四%くらいは自動になっておりまするけれ
ども、相手の
対地、どこと
自動化しておるかという
対地を考えてみますと、
自動化してない
対地から申しますと九十八
対地というものがまだ残っておるわけです。そこで、この百九十三
対地のうち、いま
自動化しているのは九十五
対地、これから九十八
対地を
自動化していきたい。それで、本
年度はとりあえず四十一
対地を
自動化していく。
自動化していきますと、
料金は一分一分制になりまするので
料金も安くなり、
取り扱いも便利になります。こういうことを考えております。
それから
国際電話の申し込み番号、これはいま東京と大阪では申し込み番号を設定いたしましてやっておりまするけれ
ども、地方は全部普通の加入
電話と同じなんですから、混信をしたり間違いをしたりして非常に不便でございますので、これを全国的に〇〇五一番で統一をいたしたい。これはNTT、電電公社の約九千局のクロスバー局を
改善しなきゃなりません。この点につきましては電電公社とも話し合いがついておりまするので、今
年度から五カ年かけまして、これは約十二億円の経費を必要としますけれ
ども、これを全国的に五十六
年度までには〇〇五一でKDDの交換局に直接かかる、あるいは大阪の交換局にかかる、こういうことをいたしたいと考えております。
それから……