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説明員(小幡琢也君) お答え申し上げます。
公社は医学的研究を専門の機関に
昭和三十二年以来お願いして行っておりますが、御
承知のように、喫煙と健康の問題といいますものはなかなかむずかしい問題でございまして、いろいろと肺がんの関係から始めまして、肺がん以外の呼吸器疾患あるいは心臓血管系の疾患、あるいはまた内分泌に及ぼす
影響、ニコチンの薬理の問題、さらには最近は妊婦とか胎児に対する
影響の問題、あるいはまた受動喫煙といいますか、
たばこを吸わない人が
たばこを吸っている人の
たばこから
影響を受けるという問題、いろいろ広範に研究をやっているわけでございます。
それで、現在までこの成果はどうなっているかという御質問でございますが、私
ども専門家でございませんので医学の専門の方々にいろいろと御意見を聞いたりしておるわけでございます。現在までのところは、いろいろ諸外国の研究もございますが、疫学的といいますか、統計的な見地からいいますといろいろデータがございます。
たとえば重喫煙といいますか、非常にヘビースモーキング、これは肺がんの主要な
原因であるとか、あるいはまた心臓疾患、特に心筋梗塞とか狭心症などの心臓障害がある、まあいろいろな指摘がされていることは事実でございます。
しかし、これは疫学的な分野でございますが、医学的研究といたしまして専門家の方々の御意見は、疫学的研究も大事でありますけれ
ども、それだけではなしに、やはりもっと広く病理学の分野あるいは臨床医学、こういったところから喫煙と健康という因果関係の究明をしなきゃいかぬ、そういうことで諸
先生方も鋭意努力していただいているわけでございます。現在までのところではなかなか解明ができない。
といいますのは、この問題は疫学的ではいろんな事実が指摘されていることは確かに事実でございまして、たとえば
たばこを吸う方と吸わない人との肺がん死亡率につきまして、
喫煙者の方は非
喫煙者の三・六二倍という高い死亡率が出ておる、そういうことはございますけれ
ども、やはり病理学といいますか、そういった科学的証拠を追求するということから言いますと、この健康問題といいますのはやはりいろいろな要因が複合しているわけでございます。
特に大気汚染とか
生活環境といったような外的要因の問題、それからあるいはその方の体質なり遺伝、あるいは既往症とか、いろいろ内的素因もございますので、こういったいろいろな要因が複雑にかかわり合って出てきているわけでございますので、その中の喫煙という要因だけを取り出して見つけるということはなかなかできない、まあ現状ではできない。将来はあるいはできるかもしれないということで、現在なお結論を得る段階には至っていない。
したがって、今後さらに研究を充実いたしまして、そういった他の要因とのかかわり合い、あるいはさらにはまた広く精神心理的研究、そういうものを含めまして総合的な研究の拡大が必要である、これが私
どもが委託しております諸
先生方の大体の御意見でございます。
したがって、端的にこの喫煙が健康に害があるかどうかということはなかなか一義的に断定することは非常にむずかしいと言えるわけでございます。
ただ、私
どもはそういう段階でございますけれ
ども、やはり
国民の健康ということは非常に重大な関心事であることは事実でございますので、もっとこれを充実するように持っていこうということと同時に、やはりそういった健康ということへの
消費者の関心ということから、ニコチン、タールの低い製品が求められているということでございます。そういうわけで、まあいろいろ加工技術とかフィルター、香料、あるいはシート
たばこ、いろいろそういった技術的な面からも検討いたしまして、低ニコチン低タール製品の開発ということも大いに進めていきたいと
考えております。
それから、
先生御指摘の研究成果をなぜ公表しないかという問題につきましては、私
どもも何とかできるものならこれは公表したいと
考えているわけでございますけれ
ども、何分いま申しましたように、研究課題の多くはまだ研究途上でございますので、そういった完結していない中間段階におきましてこれを発表するということは、結局非常にそれが専門的かつ部分的になりますし、また、発表の仕方によってはその部分的なところをとらえる、あるいは誤って伝えられるということもあるんじゃないかということで、私
どもが委託しております研究者の方自体がそういうことはどうかなというふうに疑問を持っておられる、そういうのが実情でございます。したがいまして、いままでは
公社としましてはそういう
状況でございますので積極的に公表いたしませんで、研究をお願いいたしました委託者の方御自身が学会とか学術の専門誌に発表するという形で対処してきたわけでございます。
ただ、いつまでそういうことをしていたらいいかということになりますので、私
どもは
先生方にお願いして、ひとつ何とかわかりやすく発表するようなそういった取りまとめをお願いできないかということもいろいろとお願いしているわけでございますけれ
ども、専門家の方が簡単にまとめるということは非常にむずかしいということで今日に至っているわけでございます。
ただ、御指摘のこともございますので、私
どもは何とかどういった形でこれを公表したらいいかということにつきまして、さらに委託研究者の方の御協力を得ながら検討していきたいと
考えております。
それから、とりあえずといたしましては、実は
衆議院の段階で御要求がございまして、生の報告でございますが、
昭和五十二年度の研究報告の概要とそれから
先生方がこの一月に一応お取りまとめいただきました現在までの委託研究の経過と今後の展望という、これも非常に専門的な小冊子でございますが、これを
衆議院の方に御提出したような次第でございます。